○志位和夫君
日本共産党を代表して、
福田総理に
質問します。(
拍手)
まず、文部科学省の
教科書検定で、
沖縄戦での
集団自決への
日本軍の強制があったとする記述が削除された問題についてです。
この
政府による歴史の歪曲に対して、
沖縄では島ぐるみの怒りのうねりが沸き起こり、九月二十九日に開かれた
教科書検定意見撤回を求める県民大会に
参加した人々は十一万人を超えました。
命どぅ宝、命こそ宝という心を持つ
沖縄で、自分の親や
子供を手にかける
集団自決が、
日本軍の強制なしに起こり得なかったことは明らかであります。体験者の痛みを伴う証言が、軍の強制を紛れもない事実として裏づけています。
県民大会で発言した高校生は、おじい、おばあたちは重い口を開き、苦しい過去を教えてくれました、この記述をなくそうとしている人たちは、
沖縄戦を体験したおじい、おばあたちがうそをついていると言いたいのでしょうかと述べました。
総理は、島ぐるみのこの声をどう受けとめますか。この問題を引き起こした
責任は、
政府、文部科学省にあります。
政府は、みずからの
責任において、検定意見の撤回と強制記述の
回復という県民の要求にこたえるべきです。
集団自決に対する
総理自身の歴史認識とあわせて答弁を求めます。
次に、貧困と
格差の問題について
質問します。
総理は
所信表明演説で、
構造改革が
景気回復などの成果を上げたとして、
改革の
継続と安定した
成長を進めると述べました。
確かに、大
企業はバブル期を上回る空前の利益を上げています。しかし、サラリーマンの平均給与は九年連続して減り続けています。年間通して働いても年収二百万円以下の人がついに一千万人を超えました。懸命に働いても
生活保護水準以下の
生活から抜け出せないワーキングプア、働く貧困層は、四百五十万世帯とも六百万世帯とも言われ、広がり続けています。
企業の収益は伸びても、
労働者の所得は減り、貧困層が
拡大する、これはまともな
成長の姿と言えるでしょうか。
総理の
基本的認識を伺います。
この背景には、
労働法制の規制緩和による派遣、請負、パートなど非
正規雇用の
拡大があります。
政府は、派遣
労働を一九九九年に原則自由化し、二〇〇四年には製造業にまで
拡大しました。この結果、日雇い派遣、
人材派遣会社に登録し一日単位で仕事に派遣される
労働者が、若者を
中心に急増しています。携帯電話にメールで仕事の内容や集合場所が送られてくる。一日働いて手にするのは六千円から八千円、一カ月働いても収入は十万円台前半。仕事がなかったり体調を崩して休めば、たちまちアパートの家賃も払えなくなり、ネットカフェなどで寝泊まりせざるを得なくなる。これが日雇い派遣の
実態です。
人間としての尊厳を否定し、物のように使い捨てにする、こうした働き方を強いられている若者が一体どこにあすへの希望を見出すことができるでしょうか。
総理に伺いたい。若者があすへの希望が持てる国をつくると言うなら、
労働法制の規制緩和路線を根本から
見直し、非
正規雇用の規制に踏み出すべきではありませんか。わけても、日雇い派遣をなくし、安定した仕事を保障すべきではありませんか。そして、
格差の
実態から決して目をそらさずと言うなら、その数さえ定かになっていないワーキングプアの
実態調査を緊急に行うべきではありませんか。答弁を求めます。
総理は、お年寄りが安心できる国をつくるとも言っておられます。それならば伺いたい。今多くのお年寄り、
国民が
社会保障制度から排除されているという
実態を
総理はどうとらえているのでしょうか。
例えば、
医療からの排除です。
国民健康
保険料が高過ぎて払えず滞納している世帯は四百八十万世帯、加入世帯の二割に達しています。自社さ政権が行った法改定によって、滞納世帯から保険証を取り上げ、病院の窓口で十割全額負担を求める資格証明書への置きかえが急増しています。病院に行けず重症化、死亡する痛ましい
事件が全国で続発しています。
滞納世帯は、そのほとんどが
保険料を払いたくても払えない人たちです。そういう人たちから保険証を取り上げ、窓口で全額払えと迫る。これは、金がなければ死ねと言わんばかりの冷酷無情な
政治ではありませんか。
国民生活の最後の命綱である
生活保護
行政で無法が横行しています。北九州市では、
生活保護の申請さえ認めない水際作戦、道理のない非情な保護打ち切りによって、この間、三人の男性が連続して餓死、自殺に追い込まれるという異常な
事態が起こっています。重病を幾つも抱えた人に、働かぬなら死ねと言って申請を拒否していたなどの事実が次々と明るみに出ています。
生活保護法では、申請は一たん
受け入れた上で審査をすることが義務づけられており、申請さえ認めないのは無法そのものです。
総理は、
生活保護
行政の現場で無法が横行していることをどう
考えますか。
世界第二の
経済力を持ち、憲法二十五条で
国民の生存権を保障している
日本で、
国民の命の支えとなるべき
社会保障から少なくない人々が排除され、命が奪われている。こんなことは絶対にあってはならないことだと
考えますが、いかがでしょうか。
社会保障から多くの人々を排除する圧力となって働いているのが、小泉
内閣で始まった
社会保障予算の抑制路線であります。高齢化などに伴う
社会保障予算の自然増を認めず、二〇〇二年度には三千億円、二〇〇三年度から二〇〇七年度までは毎年二千二百億円ずつ、既に年間一兆四千億円が削減されました。これが、
医療、
介護、
年金、
雇用保険、
生活保護など、
社会保障制度のあらゆる
分野で
負担増と給付削減の圧力となって働き、
社会保障から排除される人々を生み出しています。
政府は、さらに二〇一一年度まで毎年二千二百億円ずつ削減する計画を続けようとしています。
社会保障予算削減路線からの転換を図らなければ、
総理が総裁選挙で掲げた
高齢者医療費負担増の凍結や
障害者自立支援法の
見直しも、一時しのぎの取り繕いとなるか、他の
社会保障分野への新たなしわ寄せをもたらすかのいずれかとならざるを得ないでしょう。
総理、お年寄りが安心できる国をつくると言うのなら、高齢化などに伴う自然増さえ認めない
社会保障予算削減路線からの転換を図るべきではありませんか。答弁を求めます。(
拍手)
社会保障予算削減路線からの転換を図るためにも、安心できる
年金制度を初め
国民生活の
充実を図る上でも、財源が問題になります。
総理は
所信表明演説で、
社会保障の安定的な財源を確保する方途として、消費税を含む税体系の抜本的
改革を
実現させるべく取り組むと述べました。しかし、消費税は、一つのお弁当を二食、三食に分けてぎりぎりの
生活を耐え忍んでいる人々にも容赦なく襲いかかる税金であり、所得の低い人ほど負担が重いという逆進性を持った税金です。
総理に伺いたい。消費税が、貧困と
格差に追い打ちをかける税金であり、
社会保障財源として最もふさわしくない税金だという認識はありませんか。
大体、どうして財源というとすぐ消費税の話になるんでしょうか。きちんとした目で見れば、歳入でも歳出でも、財源をつくる道は幾らでもあるではありませんか。
第一に、大
企業、大資産家への行き過ぎた減税を正すことです。
政府統計によれば、一九九七年度から二〇〇六年度までの九年間で、
資本金十億円以上の大
企業の経常利益は、十五・一兆円から三十二・八兆円に二・二倍にも膨らみ、史上空前の繁栄を謳歌しています。ところが、同じ時期にこれらの大
企業が納めた税金は、十二・一兆円から十三・七兆円と、ほとんど伸びていません。
法人税率を大幅に引き下げた上に、大
企業を優遇する数々の特権的な減税によって、五兆円を超える大
企業減税を行ってきた結果です。
さらに、同じ時期に、株主への配当金は、三・一兆円から十二・〇兆円に三・九倍にもなり、株取引を行う大資産家はぬれ手にアワの大もうけにあずかりました。ところが、株の譲渡や配当への税金の引き下げ、大金持ちへの所得税の引き下げなどによって、大資産家には二兆円もの減税が行われました。
税金は所得に応じてが原則のはずです。九年連続で所得が減っている
庶民には大増税を押しつけながら、空前の利益を上げている大
企業と大資産家には合計七兆円規模の大減税をばらまく。
総理は、この
政治を異常だと思いませんか。大
企業、大資産家への減税を見直せば、数兆円規模での財源がつくれます。ここを聖域にせず、メスを入れる意思はありますか。答弁を求めます。
第二に、年間五兆円に及ぶ軍事費にメスを入れることです。中でも真っ先に削減すべきは、
アメリカの戦争を
支援するための軍事費であります。
アフガニスタンとイラクへの自衛隊派兵のために、既に千六百五十億円の税金が使われていますが、直ちに部隊を撤退させ、これ以上の血税の
支出はやめるべきです。二隻で二千億円のヘリコプター空母、四機で一千億円の空中
給油機など、海外派兵用の兵器の購入はやめるべきです。
日米地位協定に照らしても
支出義務のない米軍への思いやり
予算に、この二十九年間で五兆円、今年度で二千三百七十一億円もの血税が流し込まれました。
世界でも異常なこの枠組みは、直ちに撤廃すべきです。米国領土であるグアムに建設する基地のための七千億円を初め、米軍再編の費用として三兆円もの税金が投入されようとしていますが、この計画も中止すべきです。
今
国民の中から、イラクやアフガン戦争
支援のために使う金があるなら、
生活保護の老齢加算や母子加算の復活のために充てるべきではないかという声が広がっています。軍事費、特に
アメリカの戦争
支援のための軍事費を聖域にせず、メスを入れる意思はありますか。
総理の答弁を求めます。
次に、
海上自衛隊による対
テロ報復戦争
支援の問題について
質問します。
私は、この問題でまず何よりも重要なことは、
テロに対して戦争という手段で
対応したことが問題の解決につながったかどうかを、事実に即して検証することだと
考えます。
日本共産党は、六年前の九月十一日に起こった同時多発
テロに際して、
国連と
世界各国政府に書簡を送り、この憎むべき犯罪行為を糾弾しつつ、
テロの根絶のためには、
国際社会が
協力して、
テロリストを国際的にも国内的にも孤立させ追い詰めて、法に基づく裁きにかけることこそ必要であること、そうした
努力を尽くさないまま報復戦争に訴えることは、
テロと軍事報復の悪循環をつくり出し、無数の新たな犠牲を生み、
事態を泥沼に導く危険があると訴えました。
それから六年。私たちの憂慮は
現実のものとなっています。米軍などによる報復戦争がもたらしたものは、
テロの温床の
拡大であり、アルカイダのネットワークが
世界六十カ国に広がったと報じられているように、
テロの
世界への拡散でした。
アフガニスタンでは、米軍などによる無差別の空爆などで、ことしだけで三百五十人も無辜の民間人が犠牲となり、それが外国軍の駐留に対する反感を強め、タリバンが復活し、自爆
テロが急増するなど、情勢の深刻な悪循環が起こっています。
軍事的
対応のもたらす悪循環は、
国連も認めています。
国連アフガニスタン支援ミッションがことし九月九日に公表した報告書では、軍事的
対応は、
テロ攻撃者たちが拠点を持っている住民の怒りをかき立てることによって、
テロ攻撃を求める声を高め、攻撃者の数をふやすという不幸な効果をもたらすことにしかならないだろうと述べ、軍事的
対応から
政治的
取り組みに切りかえること、特に
テロの根源をなくすための
政治的、
経済的、
社会的行動が必要であると述べています。
報復戦争は、
テロ根絶に有効でないばかりか、
事態の悪化をもたらした。戦争で
テロはなくせない。
総理は、この動かしがたい事実を認めるべきではありませんか。
そして、問題は、
海上自衛隊が行っている
活動が、この報復戦争への軍事的
支援だということです。
政府は、
海上自衛隊の
活動を、専ら海上阻止行動への
支援、
テロリスト、麻薬、資金などを海上で取り締まる警察行動への
支援であるかのように説明していますが、それは事実を偽るものであります。
海上自衛隊が米軍の
アフガニスタンへの軍事
活動を直接
支援していることは、数々の米側の資料によっても裏づけられています。例えば、米海軍は、二〇〇六年九月四日、アラビア海で、米海軍の強襲揚陸艦イオージマが
海上自衛隊の補給艦「ましゅう」から
給油を受けたこと、その後、九月二十一日までにイオージマから飛び立った攻撃機ハリアーが、
アフガニスタン空爆のために百三十六回の攻撃飛行を行ったことを明らかにしています。これは、米側の資料です。
総理、
日本が提供した油が、
子供、女性、お年寄りなど
アフガニスタンの民間人をも犠牲としている空爆のために使われているという事実を認めますか。
さらに、
テロ特措法に基づいて
インド洋に派兵された
海上自衛隊の
艦船の補給した油が、イラク作戦に使われた重大な問題が明らかになっています。市民団体ピースデポが入手した米海軍航海日誌などで、イラク戦争が始まる二十三日前の二〇〇三年二月二十五日、
海上自衛隊の補給艦「ときわ」が、米国の
給油艦ペコスを介して、米空母キティーホークと米巡洋艦カウペンスに
給油を行い、その後、両艦はイラク南方監視作戦、さらにイラク戦争に
参加したことが明らかになっています。それは、自衛艦がペコスに
給油した油のすべてがイラク作戦に使われたことを証明するものとなっています。
テロ特措法はアフガン戦争への
支援に限定した法律であり、イラク作戦まで
支援していたとなれば、
日本国憲法に背反するだけでなく、
テロ特措法にも背反することになります。
総理、イラク作戦への転用はないと言い切れますか。
我が党は、
テロ特措法を根拠に
活動してきた
海上自衛隊の
艦船が行った
給油活動の全貌、
給油した油が何のために使われたかの全貌を、
政府が
責任を持って明らかにすることを強く求めます。
加えて、イラク作戦への転用という法律違反の
活動の疑惑が生じているもとで、
政府がイラク作戦に転用された事実はないと言うなら、そのことを証明するに足る資料を明らかにすべきです。
総理の答弁を求めます。
今、
日本がなすべきは、第一に、米軍による報復戦争を
支援する憲法違反の
活動は、どんな形であれ中止し、
海上自衛隊を
インド洋から撤退させることであります。
第二に、
テロ根絶の方途を、報復戦争から、
国連を
中心とした警察と司法による解決、
政治的解決を
中心とした道に切りかえるための
外交努力を行うことであります。
第三に、貧困と飢餓をなくし、干ばつ
対策を行い、
教育の
改善を図るなどの民生援助を抜本的に
強化し、
テロが生まれる根源を除去することであります。
我が党は、これこそ
日本国憲法に則して
日本が果たすべき
責任だと確信するものです。
総理の答弁を求めます。
最後に、北朝鮮問題について
質問します。
昨日、北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議で、
議長国中国は、核施設の無能力化と核計画の完全申告を柱とする、次の段階の措置に関する合意文書を発表しました。我が党は、非核化への重要な一歩として、これを歓迎するものです。
日本政府が、この枠組みの中で
協力を進め、核兵器のない朝鮮半島を
実現するために先頭に立つことは、北東アジアの平和と安定にとっても、
日本の平和と安全にとっても急務となっています。
この点で、北朝鮮の核問題は、
日本にとって一番切実な問題の一つなのに、これまで
日本政府が核問題では熱意がないと
世界の少なくない国から見られてきたのは残念なことです。私は、
現実にそういう弱点が存在するならば、大胆に正されなければならないと
考えます。
拉致問題と核問題の関係では、日朝平壌宣言の精神に立って諸問題、核問題、拉致問題、過去の清算問題などの包括的解決を図る
立場が重要であります。包括的解決を図る過程で、ある問題の解決が先行することもありますが、一つの問題で前向きの突破が図られれば、それは他の問題の解決の妨げになるのではなく、促進になることでしょう。すなわち、今進行しているプロセスで核問題の道理ある解決が図られれば、拉致問題の早期解決の新しい条件が開かれることになるでしょう。核問題で
日本政府が積極的姿勢をとることは、拉致問題に対する国際的
理解と
支援を高める上でも役立つでしょう。
私は、こうした
基本的
立場で今後の外交交渉に臨むべきだと
考えますが、
総理の
見解を伺います。
参議院選挙で
国民が下した自公
政治ノーの審判は、個々の閣僚の不祥事に対する批判だけではありませんでした。それは、貧困と
格差が広がる中で一握りの大
企業だけが栄える
社会の
あり方への審判であり、改憲を声高に叫び、
日本を
アメリカとともに海外で戦争をする国につくりかえようとする動きへの審判であり、過去の歴史に対する無反省な言動が引き起こしたアジアと
世界からの孤立という
事態への審判でした。
今、
国民は、
国民の
立場に立った新しい
政治を求めています。大
企業中心主義、
アメリカ言いなり、過去の侵略戦争への無反省という、これまでの自民党
政治の三つの異常を大もとから正す
改革こそ、
国民の期待にこたえる新しい
政治を起こす道であるということを強調して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣福田康夫君
登壇〕