○飽戸
参考人 BPOの
理事長を拝命いたしております飽戸と申します。きょうは、
発言の機会を与えていただきましてありがとうございます。
私は、本来、社会調査を専門としております研究者として、テレビについても三十数年にわたって研究をしてまいりました。そうした御縁で、
BPOの中にあります
放送と人権等権利に関する
委員会、BRCの
委員を創設当初から昨年の三月まで九年間にわたって務めさせていただきました。また、ことしの四月から
BPOの
理事長を務めております。
さて、総務省が
国会に
提出されました
放送法の
改正案において、虚偽の
番組が
放送され、
視聴者に著しい誤解を与え、
国民生活に大きな影響を与えた場合に、
総務大臣が
放送事業者に
再発防止計画の
提出を
求めることができるという新しい条項があることを承知しております。私自身は、
放送の
内容にかかわる問題に
総務大臣が大きな権限を持つことは、憲法二十一条に定められた表現の自由の
観点から大きな問題があると
考えております。
その一方で、現在のテレビを中心とする
放送にさまざまな問題があり、また、誤りも生じがちであることは否定できません。
放送で生じた問題は個々の
放送事業者がみずからの責任において解決することを第一義とすべきですが、みずからを律するといっても、簡単なことではなく、独善に陥りがちであります。これを防ぐためには、社会からの批判を謙虚に受け入れる回路が開かれているということが極めて大切であります。
BPOの最も重要な
役割はこの点にあります。社会からの批判を受けとめ、これを
放送局に伝えること、そして批判の背景にある問題点を調査し、
BPO自身の判断として
放送局に示すことであります。
お手元に
BPOのこのようなパンフレットが行っているかと思いますが、これをごらんいただきたいと思います。
BPOには三つの
委員会があります。
まず、
放送倫理検証委員会。これはことし五月に設置したもので、虚偽や
捏造番組の
審理を行うとともに、
放送番組の向上のための
審議を行う。この
委員会については、後ほど少し詳しく説明させていただきます。
次のページに、
放送と人権等権利に関する
委員会、BRCの説明があります。これは、
放送によって名誉やプライバシーなどの人権を侵害された人からの苦情を受け付け、その
内容を
審理し、権利侵害があった場合には、
放送事業者に訂正などを行う勧告を行うほか、
見解を明らかにします。BRCは設立十年を迎えますが、これまでに二十五事案三十四
放送局に対する決定を行ってまいりました。このうち、勧告が六事案、
放送倫理上問題ありが十八事案、問題なしとしたものが十事案、計三十四事案であります。このうち、本年に入ってからの決定は、例年はBRCの決定は年に三、四件でありますが、本日通知する事案を含めまして、既にことしは五件を数えております。
放送と青少年に関する
委員会は二〇〇〇年に設立され、主としてテレビ
番組が子供たちに与える影響について議論して、
見解などを発表してまいりました。これまでに、バラエティー系
番組に対する
見解、消費者金融CMに関する
見解、血液型を扱う
番組に対する要望など、九件の
見解、要望を発表してまいりました。このうち、消費者金融については、最近改めて社会問題化しておりますが、
BPOの青少年
委員会はいち早く、子供たちがよくテレビを見る時間帯である午後五時から九時に消費者金融CMの
放送をすることについては自粛するよう五年前に
求めました。民放テレビ各局には、営業上の影響もあるのではないかと思われますが、これを受け入れていただいたという実績もございます。
BPOには、これら三
委員会の
委員の選任を行うための機関として、評議員会が設置されております。この評議員には、議長に慶応義塾大学名誉教授生田正輝先生、元
文化庁長官の三浦朱門先生、首都大学東京の学長西澤潤一先生など、六人の先生にお願いして、三つの
委員会の
委員の選任をお願いしております。中立性を保つためのお目付役としてお願いをしております。
そして、
委員会の運営をサポートし、
視聴者からの苦情を受けるために、
理事会及び
事務局が置かれております。この
事務局で受けている
視聴者からの
意見は、昨年度は初めて年間一万件を超えました。ことしに入っても、去年の同じ時期を大幅に上回る件数を受け付けております。
さて、先週金曜日のこの
委員会におきまして、
放送法改正案の
審議の一環として、
BPOが
機能している限り
総務大臣は
放送事業者に対して
再発防止計画の
提出を
求めない旨の御答弁があり、この条項を削除すべきという御議論も行われていることと伺っております。そこで、御
出席の議員の
皆様が最も
関心をお持ちと思われる
放送倫理検証委員会について少し説明させていただきます。
放送倫理検証委員会は、ことし一月に関西テレビ
放送の「発掘!あるある大事典2」でデータの
捏造などが行われていたとして問題が発覚したことを受け、三月に、
BPO、
民放連、
NHK、三者が設置の合意をしたものであります。
委員会は、法律の専門家である弁護士三名、このうち一名は裁判官御出身です、表現の領域に詳しい作家や脚本家五名、
放送メディアの研究者である大学教授二名、計十名で構成されております。
委員会は、虚偽
放送が疑われる事案が発生し、その真偽を調査する必要がある場合には、事案の複雑性や規模に応じて専門家から成る特別調査チームを設置したり、当該
放送事業者に対し第三者から成る外部調査
委員会の設置を勧告するなどの権限を持っております。民放、
NHKの御協力を得て、虚偽や
捏造などの
放送が行われた場合には、十分な調査と判断ができる体制が整えられた、こう自負しております。
放送倫理検証委員会は、まだ設置から半年しかたっておりませんが、既に一件の
審理を行っております。
TBSの情報
番組「みのもんたの朝
ズバッ!」における
不二家関連報道に関するものです。先ほど
郷原先生の御説明がありました。
委員会は、当該
番組の視聴、
制作担当者へのヒアリング、関連
資料の精査を行いまして、八月に
見解を発表いたしました。
見解では、
TBSの
番組制作体制の不備を厳しく指摘しております。
TBSからは、この
見解を受けて
制作体制の
見直しなどを図っている旨、
放送倫理検証委員会に報告されております。
放送倫理検証委員会は、虚偽
放送事案の
審理だけでなく、毎月、新聞、雑誌等で指摘された
放送番組にかかわる問題や
視聴者から寄せられた
意見をもとに、広く
放送倫理を向上させるための議論をしております。最近では、
番組で予告なく霊能者と称する人にメッセージなるものを伝えられ傷つけられたと出演した人が主張している
番組についても議論を始めております。これらの
審議等については、すべてホームページを通じて一般の皆さんにもわかりやすく公表をしております。
放送で起きた問題は
放送局が自主的に解決することが基本でありますが、中には、表現の自由と基本的人権という、憲法に定められた重要な権利の調整について判断を
求められる問題があります。
BPOは、
放送倫理検証委員会の設置により、これらの問題を解決するための独立した第三者機関として十分な
機能を果たすことができるようになったと
考えております。今後も、そのような努力を続けていきたいと思っております。
どうもありがとうございました。(
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