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2007-03-15 第166回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十九年三月十五日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月十五日     辞任         補欠選任      大門実紀史君     井上 哲士君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         尾辻 秀久君     理 事                 愛知 治郎君                 金田 勝年君                 坂本由紀子君                 中島 啓雄君                 吉村剛太郎君                 小林 正夫君                 櫻井  充君                 芝  博一君                 澤  雄二君     委 員                 岩城 光英君                 小野 清子君                 大野つや子君                 太田 豊秋君                 岡田 直樹君                 加納 時男君                 中川 義雄君                 南野知惠子君                 松村 祥史君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 山下 英利君                 山本 一太君                 足立 信也君                 浅尾慶一郎君                 池口 修次君                 喜納 昌吉君                 島田智哉子君                 下田 敦子君                 主濱  了君                 白  眞勲君                 広田  一君                 広野ただし君                 前川 清成君                 蓮   舫君                 木庭健太郎君                 遠山 清彦君                 鰐淵 洋子君                 井上 哲士君                 大門実紀史君                 仁比 聡平君                 福島みずほ君    事務局側        常任委員会専門        員        村松  帝君    公述人        中央大学法学部        教授       富田 俊基君        ジャーナリスト        ・東北公益文科        大学大学院教授  北沢  栄君        静岡県立大学国        際関係学部教授  伊豆見 元君        早稲田大学教授  重村 智計君        経済ジャーナリ        スト       荻原 博子君        国立感染症研究        所ウイルス第三        部長       田代 眞人君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成十九年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十九年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十九年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、平成十九年度一般会計予算平成十九年度特別会計予算及び平成十九年度政府関係機関予算につきまして、六名の公述人方々から順次項目別に御意見をお伺いしたいと存じます。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  本日は、平成十九年度予算三案につきましてお二方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願いをいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度で御意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、財政経済について、公述人中央大学法学部教授富田俊基君及びジャーナリスト東北公益文科大学大学院教授北沢栄君の御意見を伺います。  まず、富田公述人にお願いいたします。富田公述人
  3. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 御指名をいただきました富田俊基と申します。  平成十九年度予算についてと題し、一般会計特別会計財政投融資計画についての私の考えを申し述べさせていただきます。  お手元の三枚組の資料も御参照ください。  我が国経済は、平成十四年度初から息の長い景気回復を続けており、拡張期間は戦後最長を更新しています。債務、設備、雇用の三つの過剰にもがき苦しんだ二十世紀末から立ち直り、企業収益は好調を続け、雇用環境も緩やかながら改善を続けています。こうした中で税収も回復し、歳出削減とも相まって、十九年度新規国債発行額は二十五兆四千億円と見込まれております。十八年度補正後比で二兆円、決算ベースピークであった平成十一年度から十二兆円もの減少です。とはいえ、国と地方を合わせた長期債務残高GDP比は約一五〇%と先進主要国の中で最も重い債務を抱えています。また、我が国の歴史においても、第二次世界大戦末期を除いて最も深刻な状況にあります。    〔委員長退席理事吉村剛太郎着席〕  図の一の青い太い線をごらんください。  我が国国債が初めて発行された明治三年から平成十九年までについて、国債残高がその年度税収の何年分に相当するかを見たものです。近年、やや低下しているとはいえ、依然として税収の十年分を超える国債残高を抱えており、日清日露戦争の時期をはるかに上回り、第二次世界大戦末期を除いて最悪状態にあります。  そもそも、国債は国王の借金の元利払い議会保証することによって誕生しました。イギリスでは、名誉革命直後の一六九二年に国債発行が始まりました。当時は、国債発行するごとに利払い費相当税収を毎年生み出す新税を設けました。つまり、将来の利払い増税で担保したのです。  十九世紀イギリス経済学者デビット・リカードが、国債発行せずに一時的に二千万ポンド増税することと、国債発行しその利払いのために百万ポンドの恒久増税をすることは等価であるという命題を提示しましたが、実はそのとおりのことが現実に行われていたのです。  国債発行するごとにその利払い増税で担保する。市場が注意深く見守っていたので、政府はそれを繰り返し繰り返し行いました。これによってイギリス国債信用力が高まり、国債国内で最も安全な資産という地位を築きました。そして、十九世紀にはイギリス国債世界で一番信用力のある国債となったのです。今日においても、国際金融市場が各国の国債元利償還がきちんと税で担保されているかどうかを注意深く見守っております。  次のページにお移りください。  図の二は、最近の我が国での国債発行額税収とを比べています。  一九九八年度平成年度から借換債を含めた毎年の国債発行額税収を上回っております。国債大量発行が続いた結果、満期を迎える国債を償還するための財源がない。そこで、借換債発行して償還財源確保しているのですが、最近の借換債発行額年間百兆円にも達しています。新規国債発行が減少しても、巨額の借換債発行しなければならないので、それを含めた国債発行額税収の二倍以上も上回る状態が続いているのです。  平成十九年度について見ますと、国債発行額新規分二十五兆四千億円に借換債九十九兆八千億円が加わり、合計すると百二十五兆円です。税収見込みの五十三・五兆円の二倍を上回ります。  ここで、仮に名目経済成長率が一%上昇すると、税収弾性値を一・一として一・一%の増加、つまり年間六千億円近く増加することになります。これに対して、長期金利先行き成長率期待インフレ率を反映して決まるというフィッシャーの考え方に基づきますと、利払い費国債発行額の一%相当の一・二五兆円にも増加することになります。経済成長率が高まっていくことを私も強く望みますが、利払い費増加税収増加を上回るということを見過ごしてはならないのです。  最近、我が国では、財政健全性歳出から利払い費を除いたプライマリー収支で議論することが多くなりました。平成十九年度の国の一般会計プライマリー収支赤字は四・四兆円です。しかも、プライマリー収支で見れば、今後の利払い費増加は考慮されず、税収増加だけがカウントされるので、先行き経済成長率が高くなりそうだとすると収支見込み改善します。  昭和五十年代に財政非常事態が宣言され、増税なき財政再建が標語となりました。当時は、図の二にごらんのように、借換債発行はわずかで、税収国債発行額よりもはるかに多かったのです。歳出を抑制すれば経済成長国債発行が減少するという状況にあったのです。  しかし、一九九八年度以降、国債発行額税収を大きく上回り、成長率が高まればプライマリー収支改善するが財政収支は逆に悪化するという極めて深刻な事態に陥っています。一九九八年八月のロシア国債デフォルト宣言を契機に日本国債の国際的な信用が揺らいでいるのは、この脆弱な財政構造を反映したものと考えられます。  この影響東京都債にも及んでいます。東京都では、バブル期をも上回る税収が見込まれ、財政健全化が進んでいます。そして先月、ムーディーズ社から外貨建債券トリプルAという最上級の格付を取りました。  しかし、図の三をごらんください。昨年の九月から先週末までのユーロ建て東京都債の金利を見たものです。二〇三四年満期ユーロ建て東京都債の金利は、同じ満期カタルーニャ州債よりも二五ベースポイント、つまり〇・二五%も高いという状態が続いています。いかに東京都の経済力財政力がスペインのカタルーニャ州より良好であっても、東京都は日本国に所在するがゆえに東京都債は日本国債国際的信用力を反映せざるを得ないのです。  国債発行税収を上回るという脆弱な財政構造、それを反映した日本国債国際的信用力の揺らぎという厳しい現実を踏まえた財政運営目標が必要です。我が国国債管理政策は既に欧米主要国並み水準に整備が進んでいます。しかし、いかに国債市場が整備されていようとも、それは財政健全化に取って代わることはできません。財政健全化に向けた明確な目標方針が必要とされるのです。  三ページにお移りください。現在、我が国では、まずは二〇一一年度、つまり平成二十三年度には国、地方プライマリー収支を確実に黒字化させる、二〇一〇年代半ばにかけては債務残高GDP比の発散を止め、安定的に引き下げることを確保するという方針の下で財政運営が進められています。この全体が認識され、二〇一一年度以降も確実に視野に収まっているのであれば問題はないのですが、二〇一一年度プライマリー収支黒字だけがとかく強調されているように見えます。それは財政健全化に向けて確実に通過しなければならない一里塚ではあっても、ゴールではありません。  本年一月の内閣府の試算を見ますと、二〇一一年度に向けて地方は二〇〇五年度からのプライマリー収支黒字が今後更に拡大していくと見込まれています。一方、国の方はプライマリー収支赤字が続き、利払い費を含めた一般会計国債新規発行額が足下の平成十九年度から毎年増加するという姿になっています。二〇一一年度に国と地方を合わせたプライマリー収支黒字化を達成した後も、さらに国、地方それぞれの債務残高GDP比を発散させず、安定的に引き下げることが必要です。国も債務残高GDP比を安定的に引き下げることを目指さねばならないのです。  欧米主要国では、利払い費を含む財政収支均衡債務残高引下げ財政運営目標に掲げています。ブッシュ大統領は本年初めに、二〇一二年度までに財政収支均衡を実現すると表明しています。ドイツではメルケル首相が、経済が好調なときにこそ財政再建に目を向けた決断をすべきであるとして、本年一月に付加価値税率を一六%から一九%に引き上げました。そして、二〇一〇年の一般政府赤字GDP比は〇・五%に縮小し、ほぼ収支均衡が実現できるという見通しを述べております。フランスでもドビルパン首相が、二〇一〇年までに一般政府収支均衡を回復し、債務残高GDP比を六〇%以下に低下させると公約し、二〇〇七年予算実質歳出伸び率をマイナス一%に抑制しました。  イギリスでは昨年十二月のプレバジェットレポートで、EUのマーストリヒト基準で見た政府債務残高GDP比を二〇〇七年度四三・七%から二〇一〇年度四四%へと引き続き抑制するという展望を描いております。イタリア・プロディ政権経済財政計画は、一般政府財政赤字GDP比を二〇〇七年度二・八%から二〇一一年度〇・一%へ、そして政府債務残高GDP比を二〇〇七年度一〇七・五%から二〇一一年度九九・七%に引き下げることを目標としています。カナダでは、現在総選挙の可能性が取りざたされておりますが、保守党のハーパー首相は、毎年三十億ドルの債務償還を行い、債務残高GDP比を二〇〇五年度三六%から二〇一三年度に二五%に引き下げるとしています。  このように、欧米主要国では我が国よりも債務残高GDP比がはるかに低いにもかかわらず、プライマリー収支均衡ではなく、二〇一〇年代初頭における財政収支均衡債務残高引下げ目標に置き、歳出歳入の両面から財政健全化に取り組んでいます。  さらに、欧米主要国政府長期的な財政推計を発表しています。アメリカでは向こう七十五年間にわたる歳入歳出見通しを毎年初の大統領予算教書で提示しています。イギリスでは向こう三十年間にわたる財政見通しを公表しています。ドイツは二〇五〇年度までの財政持続可能性についてのレポートを発表しています。また、多くの欧州諸国も二〇五〇年ごろまでの財政見通しを発表しています。  これに対しまして、我が国財政試算は二〇一一年度で終わっています。私も含め団塊の世代が基礎年金受給者になるのはその翌年からです。欧米主要国よりも少子高齢化が深刻で、将来の年金、医療などの社会保障制度持続可能性国民が強い関心を寄せております我が国こそ、少なくとも二十一世紀半ばまでを視野に入れた長期財政推計が必要であると思います。    〔理事吉村剛太郎退席委員長着席〕  次に、特別会計についてです。  洋の東西を問わず、特別会計特定財源が各省庁既得権の温床になってきたのではないかという批判が行われてきました。かつて十八世紀イギリスのエドモンド・バークは、大蔵大臣が国庫全体を統括できないことが巨額財政赤字官僚腐敗の原因であるという有名な議会演説を行いました。最近の我が国では、母屋でおかゆ、離れすき焼きという問題提起が有名です。  本来、特別会計には事業ごと収支を明確にし、受益者には適正な負担を、所管省庁には歳出削減努力を促すことが期待できるという意義、目的があります。その一方、我が国では特別会計の問題としてこれまで主に次の四点が指摘されてきました。第一に、特別会計が多数設置され、予算一覧性が損なわれ、複雑で分かりにくくなっている。第二に、経済社会の大きな変化に対応できず、予算配分が硬直化しがちとなる。第三に、一般会計からの繰入れや借入れが常態化し、事業収支確保歳出削減がおろそかになっているのではないか。そして第四に、不用、繰越し、剰余金が発生し、予算全体の効率性が損なわれているのではないかという問題です。  こうした問題を踏まえて、平成十九年度特別会計の大改革が行われます。資料にありますように、現在三十一ある特別会計を今後五年で十七に統合し、特別会計借金をする場合のルールや剰余金の取扱いを一本の法律で縛るという改革が行われます。特に、特別会計でお金が余っているときは一般会計財政健全化に貢献させることが大きな意味を持つものと思います。  最後に、財政投融資計画についてです。  平成十三年度財投資金調達の仕組みについて改革が行われました。財投対象事業については、特殊法人等整理合理化計画などを踏まえた事業ごと見直しが進み、これが功を奏して財投規模は大きく縮小してきました。図の四にごらんのように、財投計画額ピークであった平成年度の約三分の一の水準にまで抑制されました。およそ三十年前の水準にまで規模が縮減されたのです。  個別事業見直しと並行して、質的な改革も進展しました。政策コスト分析によって財投事業の将来の国民負担が推計されるようになり、また財投機関民間準拠の財務諸表を作成するようになりました。両者が相まって国民へのディスクロージャーも著しく進展しました。そして、これらを用いて不良債権化懸念がある事業が洗い出され、住宅金融公庫、都市再生機構について事業の撤退など抜本的な見直しが行われました。これらによって、財投不良債権化しているという批判懸念は払拭されたものと思います。  こうして、我が国財投は量的にも質的にも改革が進展しました。  この間、アメリカでも財投改革が進んでいます。我が国政府金融機関改革では、融資から保証へという考えが強調されているようですが、アメリカ財投学生ローン、つまり奨学金融資は、政府保証から政府による直接融資への切替えが進行しています。このアメリカでの財投改革は、一定の政策目的を達成するのにできるだけ国民負担が少ない方が良いという言わば当然の考えを反映しています。  民間金融機関政府資金調達コストとを比較すれば、銀行よりも国の信用力は高いので、国債による調達の方がコストが低いのは当然です。高い金利資金調達をした銀行の貸出しに政府保証を付けるよりも、政府国債資金調達し直接融資した方が学生ローン金利が低くなり、しかも国民負担も少なくて済みます。  いずれの国におきましても、国債は最も信用力が高い金融資産であり、国債金利の変動が国内のすべての企業と家計の借入金利影響を与えます。財政健全化への道を踏み外すと、国債信認は低下し、国債金利だけではなくすべての金利が上昇することになり、経済成長を脅かすことになりかねません。  したがって、財政健全化させ、国債信認を向上させることは、我が国経済民間主導の安定的な経済成長を続けていく上で極めて重要であります。  御清聴ありがとうございました。
  4. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ありがとうございました。  次に、北沢公述人にお願いいたします。北沢公述人
  5. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 御指名にあずかりました北沢栄です。  時間が限られていますので、特別会計の問題に焦点を当ててお話ししたいと思います。  結論から申し上げますと、お手元にお配りしたレジュメをどうかごらんになってください、財政経済改革のキーポイントは、第一に、財政の好転に向け、まず、金余りで使い切れない特別会計特会から手を付けるべきと考えます。第二に、消費増税の前に特別会計の無駄遣いをやめさせること、そして第三に、特会改革の問題を永久に解決するために特別会計制度自体を廃止するしかないと思います。  初めに、財政経済状況について述べます。  近年の特徴として、いろんな側面がありますが、二つの大きな特徴が現れてきていると私はとらえています。  一つは、戦後空前の財政危機。これはもう何度も繰り返し現れている現象ですけれども、税収増改善方向にありますが、先進国最悪借金財政。国と地方長期と短期合わせて一千兆円にも上る借金財政。国の一般会計予算、今年度八十二・九兆円の三割を借金で賄う現状。あるいは、一般会計税収の十年分の借金国民一人当たり借金財務省資料によりますと約四百二十八万円。これは、夕張市民借金夕張市民の一人当たり借金が約五百四十万円という試算がありますから、余り変わらないということですよね、国民一人当たり借金負担がですね。  それで、この財政危機と並んで、二極景気回復というこれまでと違った景気回復側面がもう一つ特徴かと思います。すなわち、大企業は過去最高、過去最高経常利益を出しますね、三月。社員は不満。あるいは、全企業の七割弱が赤字若しくは繰越欠損。あるいは、正社員バーサス正社員、あるいはシニアバーサス若者、それから東京バーサス地方都市というように、格差社会という問題が起こってきました。これはもう一つ資料参考資料を是非ごらんください。  ここ十年来に中産階級が縮小して社会が二極化の方向へ行っているということは、何やら一九二〇年代末から三〇年代初めにかけてのナチスの台頭を招いたあのワイマール、ドイツですね、に似ていないこともないですね。それを連想させます。  そういう状況下で、このような政治社会問題に対応して財政措置は講じられるべきであるということは当然だと思います。この財源確保をじゃどうするのかというのが問題になるわけですけれども、まず特会改革が重要だと考えます。これは行財政改革の本丸と言ってよいと思います。  財政改革というと、じゃ特会とはどういうふうに関連するのかと申しますと、まず肥大化した特会という、相当大きくなりましたよね、一般会計の、これ年によりますけれども、約六倍規模。二〇〇六年度歳出予算では四百六十兆円強ですね、一般会計の五・八倍。会計間や会計内の出入りなどの重複計上分を除くと、特別会計の純計は一般会計巨額の繰入れなどから実に六・七倍にも膨らむという状況です。今年度改善が多少なされて三百六十一・九兆円になりまして、一般会計予算の四・五倍というふうに縮小していますが、依然大きいということです。  しかも、特会金余りで使い切れないという状態にあるわけですね。それは本当にそうなのかといいますと、会計検査院が去年の十月に参院あてに出している報告書を読みますと、余っている不用額、この不用額というのは用いない方ですね、用いない額と書く不用額、これ二〇〇四年度決算書から検査院が検査したわけなんですけれども、予算執行後に残った剰余金から翌年度への繰越額を除いた額ですね、不用額、つまり使われなかったと、その不用額は何と十・五兆円に上る。十・五兆円ということは、消費税分にすると四・二%相当あるということです。この二〇〇二年度から二〇〇四年度の三年間に連続して百億円以上、かつ予算の一〇%以上の不用額が発生した特別会計は八会計十勘定に上るという非常に大きな数字が挙がっています。にもかかわらず、こうした状況下にもかかわらず、一般会計の繰入れは相当多いわけですね。今年度予算では四十九兆三千億円強が特別会計へ繰り入れられている。  一般会計金不足に対し、特会金余りというそういう傾向がはっきり出てくるわけです。離れすき焼き会計ですね、先ほども出ました、あの塩川さんのおっしゃった正にそのとおりの状況があって、これはここ数年何とかしなきゃいけないと改善方向にはありますが、現状は先ほどの検査報告にあるように進んでいないと見ています。  それで、その特会財政が非常に規律なき財政にあるというところが注意しなきゃいけないと思うんですね。それはどこに現れているかといいますと、積立金が膨脹して二〇〇四年度末で二百一兆円超。その中には、これには外国為替資金特会とか積立金を管理運用している財政融資資金特会は入ってなくて二百一兆円超あるわけですね。ただし、これは年金積立金が含まれていますから、そういう絶対に取り崩せないというか、必要な積立てはもちろんあるわけなんですけれども、数量として膨大なあれになりますね。それで、ほとんどの特会積立金の適正基準がないことは分かった。これ検査報告です。  その次に、じゃ行政改革のために特会というのはどういう位置付けなんだという、そういうお話をいたします。  省庁が自分たちの裁量で官業などに使う事実上の官の財布になっているというところが言えると思います。それはどういう証拠なんだと言われますと、これはもう新聞とかマスコミに取り上げられましたけど、雇用保険料や年金保険料財源の箱物事業ですね、サンピアとかグリーンピア、それからサンプラザ、プラウザとか、いこいの村など二千四百三十施設、これ年金財源省庁あるいは公務員宿舎を整備した、それからゴルフクラブやマッサージ機も購入していたということがありましたよね。  もう一つの例を挙げますと、労働保険特会の法人別予算を見ますと、ほとんどは天下り先の独立行政法人に配分されているということです。雇用保険料を財源とする労働保険特会雇用勘定ですね。この雇用保険三事業というのがあるわけですけど、この二〇〇五年度予算を見ますと、二千六百億円超の予算の八八%が所管の独立行政法人である雇用・能力開発機構とか高齢・障害者雇用支援機構などに分配されているわけですけど、残り一二%はどこに行っているかというと、これも所管の三十四の公益法人に配分されているということが分かりました。労災勘定の労働福祉事業も同様の傾向です。  ということで、これは財政改革のためにも行政改革のためにもこの特会を何とかしなきゃいけないと言えると思います。要約しますと、特会の問題というのは五つあるかと思います。  一つは、特会の金はだぶついている。それはコスト意識の欠如とか公金の無駄遣いをもたらす土壌になるわけですけれども。二番目に、情報公開されてなくて、長い間、すき焼き会計の発言があったころから動き出したんですけど、それまでは事実上国会でも審議されずマスコミも滅多に報道しなかったという沈黙の、どういうふうになっていたかというと、沈黙のやみ会計、隠された裏予算と言っていいかと思います。三番目に、ですから今の隠された不透明マンモス会計という状況が続いて、三番目として、省庁が自分たちの裁量で使い道を決めますから省庁の裏予算と化しているという、そういうゆゆしき実態があります。それから、天下り先となる官業の、先ほど独立行政法人とか公益法人向けに支給されたように、官業の主要な資金源になっている。官の聖域に資金供給されているということですね。五番目に、省庁の管理裁量下にあり、財務省もチェックをおろそかにしてきたということから、この五つの特徴によって非常にこの改革をとにかく抜本的にやらなきゃいけないということに至ると思います。  じゃ、どういう究極の解決策があるのかといえば、これは特会制度を制度ごと廃止するのが一番いいかと思うんですね。  特会制度というのは、歴史調べてみますと主客転倒の歴史であったと、あるいは倒錯、倒錯の歴史であった。何が倒錯かといいますと、歴史的にこれは非常に古くて前身は明治二年にさかのぼりますけれども、この大蔵省資料によりますと、昭和財政史というのがありますけれども、一九五九年発行の大蔵省編の第十七巻によりますと、一般会計への従属性が強く、特別会計は、特に戦時期には特別会計所属資金一般会計に繰り入れられる場合が多かったというふうになって、現状は、法律上は同格、全く財政法で二つの会計に経理区分されていますよね。ですけれども、規模として六倍とか、特会の方が規模が圧倒しています。ですから、法的には同格、規模、量的に見ると特会が主で一般会計が従のような倒錯した状況にあるのではないかということですね。  で、政府が今成立を目指している特会改革法案に対しては、これは制度自体をなくしませんから、統合したということでやる、統合を軸にやるわけですけれども、これでは省庁が悪用する仕組みがそのまま温存されると考えます。ですから、制度自体をなくして透明にするにはどうしたらいいかというと、アメリカ一つ参考になると思います。  アメリカでは、特会はなくてファンドごとに独立させて収支が分かるように経理区分している。統合された一般会計方式ですね、統合予算なんて言われていますけれども。  米政府の、アメリカ政府のホームページを見ますと、例えばこの二〇〇七年会計年度の連邦予算、大統領の予算教書がどんとありますよね。そしてそのほかに、ホームページに各省庁予算のずっと一般項目、日本と同じように並んでいるわけですけど、それと並んでナショナル・サイエンス基金とか社会保障運営ですとか小企業の管理などという項目で政策分野別に配列されて、一般の人は、納税者はクリックして自分の関心項目を確認できるということですね。  それで、特会自体を廃止して、そんなこといっても国債の借入金の償還とか利払いとかそういう特殊なあれはどうするんだという、そういう疑問は当然出てくると思いますが、どうしても必要な特会事業のみを一般会計上で区分経理してはいかがなものかと思います。特会制度自体をまずやめて、無駄遣いを生む各省庁による特会の管理運用に永久に終止符を打つ、永久にピリオドを打つ。そして密室型の特会をオープンな一般会計に統合する、一本に統合する。  そして、それはイメージとして、私は陸上競技場方式と呼んでいるんですけど、陸上競技場というのはずっと見えますよね、これはずっとトラックもフィールドも見えますよね。トラックを一般会計と例えるとフィールドの各種競技、個別区分された経理はスタンドである納税者から見られるということですね。ですから、あそこのやり投げは面白そうだから見ようとか、今、円盤投げやっているとか、そういうふうに見ますよね。あるいは百メーター競争に入ったというので今度はトラックを見ますよね。そのような米国版をモデルとして、それよりも透明で簡潔な日本版をつくるという時期に来ているんではないだろうかと私は思います。  で、その作業工程というのはこういうふうにしたらいかがなものでしょうか。全特会を制度ごとに廃止して一般会計に統合する。二番目に、どうしても国の関与が不可欠な特会事業に限り一般会計上で区分経理する。三番目に、すべての国の事業の財務内容を分かりやすくするために民間会計方式を取り入れるという、この三つの作業工程を経て特会制度自体なくすと。それによって非常に分かりやすい公的会計制度、予算制度が確立すると、それが大改革の基軸に据えることができるスキームになるだろうと私は思います。  それでは、以上で終わります。ありがとうございました。
  6. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 自由民主党の愛知治郎でございます。  富田先生、北沢先生、両公述人におかれましては、本日、大変お忙しい中、当予算委員会にお越しをいただきまして、誠にありがとうございます。先生方の大変貴重な意見をこれからも審議の参考に、それから政策の上でもしっかりと参考にして生かしていきたいというふうに考えております。  また、私自身、本日、時間が、限られた時間なんですけれども、本当はもっともっと時間を掛けていろんなことをお伺いしたいなというふうに思っていたんですが、限られておりますので、端的に、まず前提としての両先生方の認識をお伺いをしたいんですが、富田公述人からもございましたけれども、いろいろ数字が言われております。イザナギ景気を超えたとか雇用改善してきたとか、いろんな数字が、税収ももちろん上がってきております。  ただ、この日本経済自体、本当にこれで回復したのか安心なのか、今現状どうなのかということを、まずお二人の公述人、先生方にその認識をこれからの議論の前提としてお伺いいたしたいというふうに思います。
  8. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 先生お尋ねの景気でございますけれども、二〇〇二年の二月を底にいたしまして、景気拡大過程を、輸出、設備投資主導という、極端に表現すればそういうものでありますけれども、民間主導で、過去の回復期に比べればテンポは遅うございますけれども、確実に景気は拡大を続けております。それが、家計への波及がどうかということでありますけれども、じりじりと続いております。  景気は、単に大企業だけではなしに、やはり一生懸命努力をなさって国際競争力を高めた企業、また国民、消費者が望むものをよく観察し作っている企業、中小企業であればやはり大きな成果を上げられている。ただ、懸念材料としてまだアメリカの景気等、懸念もあるわけですけれども、かつてない民間主導の着実な景気回復過程を依然として歩んでいるというのが現状であると存じます。
  9. 北沢栄

    公述人北沢栄君) お答えいたします。  確かに景気は上がってきていますけれども、非常に脆弱だと思うんですね。それは、可処分所得が、サラリーマンの可処分所得が伸びませんよね。今度の、トヨタの春の賃金引上げも千円という段階ですね、今。ということは、もうかなり渋く抑えますから、全体にサラリーマンの収入が伸び悩んで、それが国内消費に火をつけることはないであろうと。  ですから、設備投資は確かに堅調、輸出も堅調ですよね。でも、輸出が今度は中国、アメリカが主ですから、中国とアメリカのシェアが主ですから、これがどうなるか。特にアメリカがちょっと揺れていますよね、今。ということで、確かにこのままいくかどうかとなると、不透明だと思います。今現状はいいけれども、非常に脆弱であるということと、将来的には確たる、上がっていくという見通しは強いとは言えないと思います。
  10. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございました。  私自身は確実に、お二人の先生のおっしゃられるとおりだと思いますし、さらに、私自身はまだ危惧を抱いている部分がありまして、もちろん回復基調、いい傾向が出てきているというのは私もそう感じておるんですが、まだまだであると。本当に北沢公述人からもまだ脆弱であるというお話ありましたし、富田公述人からも、もちろんいい傾向であるけれども、確実に非常にいい状態で今現在あるというわけではないというお話だと思うんですけれども、まだまだと思っております。  安倍政権においては、これを確実なものにするために成長路線を取っているというところであるんですけれども、例えば先ほど、今日、またそのお話もお伺いしたかったんですけれども、北沢公述人からも格差の話がございました。いろんなこの国会でも格差の話、議論をこれからされて、今までもされてきたんですけれども、いろんな問題あると思います。  ただ、ほんの数年前までは、正に小泉前政権の時代もそうだったんですけど、日本経済はほぼ破綻し掛かっていたという状態で、それからやっと回復基調に進めてきたというのがまだ現状であって、それだけの、日本経済、今すべての問題を解決するだけの余裕があるのかどうかということなんですね。このまましっかりと成長路線を軌道に乗せるか、それとも、もうそこは安心してほかの問題に取り組んでいいかという、その境目だと思って私は先生方に認識をお伺いをしたんですが、私はまだまだ正常ではないと思っております。  その点で、もう一点違った側面でお伺いをしたかったんですけれども、先日、日銀が政策金利を引上げをいたしました。この判断について、先生方の御意見をお伺いしたいというふうに思います。
  11. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 物価の安定ということはあらゆる経済活動の私は基本だと思うんです。つまり、企業からすれば、自分が作っている商品の需要が強いので物が売れているのか、あるいは一般物価が上がっているのにつれて自分の商品の値段が上がっているのかと、これをいろいろ見極めるのはなかなか難しいわけです、いろんな商品があって。そういう意味で、長期にわたって物価が安定するということは、企業活動、そして国民生活において極めて重要な意味を持っているというふうに思います。  金融政策は翌日物の金利にしか影響を与えることができない。したがって、その翌日物の金利をいかにうまくコントロールすることによって長期国債、あるいは社債の金利、人々の経済活動というものに影響を与えていくということでありますので、私は今回の政策金利の誘導目標の引上げということは良かったというふうに思います。
  12. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 私は個人的に、昨年十二月に日銀がフォワードルッキングでやるかと思ったんですね、〇・二五。これやらないということは、いろいろ圧力とか言われていますけど、コアにある部分はやっぱり一進一退、景気のまだら模様というか、いい面は確かに出ているけれども、悪い面もありますよね。一進一退のところで結局決断を見送って、そのうちに時間がたってきて、それで、今度は円安になりましたからということもあって踏み切ったのかなと思うんですね。  ですから、かなり確信犯的、確信犯と言うとちょっと言葉は悪いんですけど、確信的じゃなくてちょっと受け身になってやったのは金融政策的には良くなかったんじゃないかと思いますね。つまり、金融政策というのはやっぱりフォワードルッキングでいかなきゃいけないけど、それだけ見通しが難しかったとも言えると思うんですよね。ですから、ようやく上がったなという感じを、印象を受けました。
  13. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございます。  どうぞ遠慮なく、御意見は忌憚のない意見をお伺いしたいので、どんどんどんどん思ったことを素直に言っていただければ、私も言葉がうまい方ではないので、どんどん言っていただきたいというふうに思います。  さて、まだまだ予断を許さない状態ということで、財政改革の前に経済の話をさしていただいておるんですが、もう一点だけ。  やはり、不安な材料として個人消費が伸び悩んでいるという話があるんですが、賃金がなかなか伸びないという点が一点もちろんございます。その点が一点ありますけれども、もう一点、富田公述人は、先ほど団塊の世代、私もだというお話をされましたけれども、大量に退職をされた方々、その人たちの賃金を伸ばそうとしても無理なわけですよね、基本的には。雇用を、しっかりとまた働いていただく場をつくるというのは一つの政策だと思いますけれども、基本的に退職をされた方、賃金という観点から物は考えられない。となると、年金社会保障であるとか、私が先ほど日銀の金利の話をしましたけれども、退職金をいただいたり今までの蓄え、それに対する預金金利ですね、運用ができてしっかりと収入が確保できるか、将来に対する安心、老後に対する備えが確保できるか、その点に非常に個人消費、団塊の世代の方々の財布のひもが緩むかどうかというのはかかわってくるという判断もあると思います。  その点で、私は金利についてお伺いをしたいんですが、もう一点、個人消費について、今のは私の考えでありますけれども、両先生方のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  14. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 先ほど、物価の安定ということを申し上げましたけれども、冷戦が終わってからとりわけ中国とかのアジアの国々よりたくさん安価なものが豊富に入ってまいりまして、名目で見ると消費は停滞しているように見える。ですけど、私、着ているものというのは三十数年前にサラリーマンになったというときの値段とほとんど変わらないんですね、シャツにしろスーツにしろ。したがって、やはり実質で観察する必要があるだろうというふうに思います。  とりわけ団塊の世代として言わせていただきますと、長期にわたって年金、医療といったセーフティーネットが本当に持続可能かどうかということがやはり一番不安でして、預金金利云々というふうなことをおっしゃったんですけれども、そういうことは市場、マーケットに任して、やはり長期にわたるセーフティーネットが持続可能かどうかということについてまだ懸念を持っているかもしれないということであろうかと思います。
  15. 北沢栄

    公述人北沢栄君) お答えいたします。  個人消費については、私はこう思うんですね。要するに、非正規雇用の人たちいますよね、非正規雇用が約三分の一いますので、この人たちに対して、今出てきましたような持続可能性からいって安心できるようなネットをつくるべきだと思うんですね。それには、例えば最低賃金、これは相当低いところありますから、これを一定水準以上に上げて守らせるですとか、それからあと、正社員化の条件づくり、明確化ですね。それから、正規社員に対しては、これは残業代をきっちり払わせるというのが一番いいかと思うんですね。相当働いていますよね、百時間とか。月百時間で働いているのが三割とかいろいろ出ていますよね。ですから、そういう正規社員に対しては残業をサービスしないようなシステムをきちっとやることが重要かと思います。
  16. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございます。  ちょっとお伺いできなかったんで、もう一度北沢公述人に。  今のお話というのは現役世代のお話だと思うんですけれども、退職された方々、その方々のマインドというか、富田公述人はお答えいただいたんですが、その点についてもう一点聞かせていただけますか。
  17. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 私は、退職して何がみんな心配になるかというと、一つ大きな要因は年金だと思うんですよね。年金がどんどんどんどん受取額が少なくなっていくという不安ですね。それから、先にどんどん時期が先送りされていくというような歴史的な経緯がありますから、この年金をしっかり、特に基礎年金をしっかりできるかどうかがポイントだと思うんですね。  基礎年金をしっかりするには、税金できっちりやるという、そういうやり方が一番いいかと思います。そして、報酬部分は支払った額に応じてプラスされていくというのがいいと思うんですね。ですから、年金制度をしっかりしないといけないと思いますね。
  18. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございました。  やはり、国民の皆さん、将来に対する不安というのが一番だと思いますし、それがなかなか個人の消費に結び付かないという認識だと思いますし、先生方もそうだというふうに理解をいたしました。  やっと本題に入るというか、要は政府に対して、社会に対して不安感がある。この財政の問題も特にそうなんですけれども、安心できない。年金社会保障、安心できないからこそなかなか景気が本当の意味で上がっていかないと、個人消費が伸びていかないという部分もあるということだと思います。だからこそ、徹底して財政改革しなくちゃいけない、そこにつなげたいがためにここまで時間を使ってしまったのですが、現実にこの財政改革、どういった手法でやらなければいけないのか。  まず、特会については北沢公述人がすべて廃止せよと、特会制度自体を廃止したらどうかというお考えをお述べになられましたけれども、この点について、富田公述人におかれましては具体的にどのような形で、また北沢公述人意見に対してもどのような考え方を持っているのか、お聞かせ願いたいというふうに思います。
  19. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 特別会計につきましては、先ほど北沢先生よりいろいろ御指摘あったんですけれども、御指摘あったような指摘はすべて踏まえて本年度特別会計改革に生かされているというふうに私は思います。  特会を全部廃止するという御意見なんですけれども、廃止して一般会計にするとかえって見にくくなってしまうという問題があります。やはり、主要な事務事業について独立して受益者から負担を求めた方がいいのかどうか、さらに各所管省に歳出削減努力を促す方がいいのかどうかといったことも含めて、特別会計の本来の意義ということもやはり注目する必要があろうかと思います。そういう意味で、三十一あったものをほぼ半分にするところが最適であったのかなというふうにも思います。  さらに、使い残しのことがいろいろ御指摘あったんですけれども、これは、例えば地震が来なかったので、当然地震保険のお金が剰余金になるということもあります。したがって、先ほどの剰余金がたくさんあるというのも、より厳密にそれぞれの特別会計の性格を見て判断すべきものというふうに存じます。  そしてまた、何よりも特別会計で検討しなくてはなりませんのは、実は、特別会計という仕組みそのもので考えるよりも、それぞれのやはり財政の個別分野についての見直しが大事だということなんです。つまり、特別会計では総額が三百六十二兆円と。純計額は、先ほど北沢先生御指摘のように百七十五兆円と。しかし、その百七十五兆円をよく見ますと、まずは国債費なんですね。これは絶対に最優先で、あらゆる経費よりも最優先で利払い、償還を行わねばなりません。これが七十九兆円。それから、社会保障給付、これは先ほどグリーンピアとか御指摘あったようなことではなしに、国民に対して直接に支払われる年金とか医療の給付、生活保護の給付、これが五十一兆四千億円。あと、財投債を発行する、その分等で十九兆円。それから、地方交付税交付金、約十四兆八千億円。したがって、残りは十一兆六千億円なんです。そこに道路特定財源もあれば雇用・能力開発機構への支出も入っているということでして、大どころのところは、今申し上げました地方交付税をどうするか、それから社会保障給付をどう考えるかというところが特別会計の議論の大きな必須項目なんです。当然残りは少ないんですけれども、それをどう国民によく理解し、また議論していただけるような形にするかということが今回の改革であるというふうに私は存じます。  したがいまして、特会というものの改革は終わり、個別の事務事業についてのその必要性をやはり議会、国会において議論をすることが重要であろうというふうに存じます。
  20. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございました。  今の点で、特別の意義を有するというか、やはりある程度、事務的なものであるとか国債費であるとか、そういった必要な部分があるというお話でしたけれども、その点について、今のお話を踏まえた上で北沢公述人から御意見を伺いたいというふうに思います。
  21. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 確かにいろいろあるでしょうけれども、問題の根幹は、要するにまず不透明なんですよね。ずっと不透明だったんで、それがやっと見えてきたという段階だと思うんですね。ですから、私が言っているのは、確かにそこで必要な措置としての国債利払いとかそういうようなものはありますけれども、そういう役割はありますけれども、国民の目から見て、納税者の目から見て分かりやすくしなきゃいけない。そのためには一般会計化すべきであろうと。  これ、特別会計というのは今三十一ですよね。かつて、日露戦争後、六十あったんです。なぜかというと、六十ですよ、六十の特別会計あって、それは帝国学校ありましたよね、東大とか。帝国学校が特別会計として運営されていた。ですから、そういうのがなくなりましたから一遍に減ったとか、あるいは戦後は一番多くて三十八ぐらいですかね、戦後間もなく。それで、これは結局、陸軍とかそういうところの特別会計はなくなったけれども、自作農の支援するための特別会計とかいろいろ出ましたよね。そういうことで増えていって、これ時代によって相当変わってきたわけですけれども、いずれにしても、共通の傾向というのはやっぱり分かりにくいんですよね。  今回、財務省のちょっとホームページごらんになると分かると思うんですけれども、この予算の説明に特別会計の説明ないですよ、予算の説明ないです。数字はありますよ、ちょこっと出ていますけれども。普通、一般会計はこうで特別会計はこうだとやらなきゃいけないでしょう。ないんですよ。だから、情報公開は厳密にされていないということですね。  終わります。
  22. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございました。  私が一番聞きたいことを、聞きたかったことが時間がなくなっちゃってもうほとんど聞けないんですが、実は、もちろん特会見直しをした上で一般会計、それからすべてできるだけ透明にしてチェックをしていく、無駄な部分をそぎ落としていくということが必要だと思うんですけれども、私自身、実は、昨年なんですけれども、政府の一員として防衛、その当時庁だったんですけれども、その政務官をさせていただいて、いろんな問題あるなというふうに感じました。  一つは、陸海空、自衛隊ですから、陸海空が全く同じものを調達するのにばらばらに注文していたんですね。一括にまとめればそれだけで経費削減になる。もちろん、あとは戦闘機であるとか、いろんなものを長期的に一括して買うということで経費が削減できる。どこも困らない。役所も困らないし、それから業者の方も特に損害が出るわけではない。ただ、効率的にやる。それから、一般的によく言われるんですが、いまだに私は言われます、年度末になると道路工事が多くなるねという話で。水道工事であるとか、それから電気であるとかガスであるとか、その都度その都度ひっくり返しながらやっているんじゃないかというふうに言われます。  そういった点では、それを一括してやるとか、縦割り行政を改めるとか、当たり前の話ですけれども、予算を効率的に執行していくというやり方というのはどうしても必要だと思うんですけれども、具体的に、なかなか口で言ったところで動かないのが役所であったり、その意識自体をまず改革はしなくてはいけないんですけれども、なかなか言っても進まないという部分があります。  これを具体的に進めていくためにどのような手法を使ったらいいのか、アイデアというか、考え方があればお聞かせいただきたいというふうに思います。
  23. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ほとんど時間がございませんので、申し訳ありませんが、短くお答えいただきたいと存じます。富田公述人
  24. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 短くということですので、基本は、主権者の代表であるこの議会、国会におきまして予算をやはり個別に議論をすることだというふうに思います。
  25. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 基本的に、透明性を高めれば議論が出てきますよね。悪い点も分かるんですね。その透明性、情報開示というところに一番重要視してやっていけたら、かなりそこから出てくる、いろんな道が開けると、必ず良くなると思います。
  26. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございました。
  27. 広田一

    ○広田一君 民主党・新緑風会の広田一でございます。  本日は、北沢公述人、また富田公述人、大変お忙しいときに、また貴重なお話をいただきまして、本当にありがとうございます。  それでは、早速質問に入らさせていただきたいと思います。  先ほど愛知委員の方から、今の経済情勢、景気動向についてのお話があったわけでございますけれども、私が一点お伺いをしたいのが、昨日十四日の東京市場、日経平均株価が五百円超値下げをされました。二月末の上海発の世界同時株安、今度はアメリカ発で起こってしまったわけでございますけれども、この原因といたしまして考えられるのが、米国市場で個人向け住宅ローンの焦げ付き問題、サブプライムと呼ばれる高金利の住宅ローンの焦げ付き問題が主な要因ではないかというふうに言われておりますけれども、しかしながら一方で、本当にそれだけでこれだけ株価が下がるのかというふうな指摘もあるわけでございます。  先ほど来、富田公述人の方からも、我が国の方は輸出でこの景気等も引っ張っているというふうなお話もあったわけでございます。そうなってくると、米国経済の動向というのは我が国のこれからの経済、景気を見る上でも大変重要だというふうに思いますので、この動きについて両公述人の御所見をまずお伺いしたいと思います。
  28. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 株価という非常に難しいことの御質問だったんですけれども、私は先ほど国債については国債残高税収のグラフをごらんいただいたわけですけれども、株価につきましては、その企業の時価総額と毎年の利益、この比率というものが非常に重要になってまいります。PERというふうに呼ばれております。PERが何倍まで買われているかということが、つまり何年分の利益がその企業企業価値なのかということなんで、それをやはり尺度にして考えるべきだろうというふうに思います。それを見た場合に、現在の水準ですね、上がったり下がったり、いろんな思惑で動きますけれども、決して割高、大きく割高ではないというふうに観察されます。  株価は、今おっしゃったような短期的な理由でも動きますけれども、やはり長期的なことを見て多分多くの投資家の皆さんは行動なさっているんではないかと。それは、やはりその企業の技術開発能力とか、あるいは様々なマーケティングのイノベーションとか、そういうことを見ながら判断されていて、単に上海がどうでアメリカのサブプライムローンがどうだということだけではなしに、やはり必死に努力して大きな成果が出そうなところは堅調だろうと、堅調な株価で推移するんであろうというふうに思います。
  29. 北沢栄

    公述人北沢栄君) この株価の最近の揺れ、私が理解するには、アメリカも中国も基本的にはちょっと調整局面ですね。ピークアウトしたという意見とか、あるいはもう一段落、一回ここで調整局面に入ったからということで売りに出ているという、そういう色合いだと思うんですね。  アメリカの場合には、実需プラスITのような、企業の投資行動とかそれから技術革新、そういうものを見て先取りしてやっていくところがありますけれども、最近はどうでしょう、実需中心に見る方向に行っているかと思うんですね。  例えば、住宅ローンとか自動車で、ちょっと悪くなると株を売っていく。だけれども、アメリカというところはすごくクリエーティブなところがあって、住宅ローンでもいろんなサービス付けたり、自動車なんかそうですよね、すぐにぼおんとボーナス付けて売ると、今度フォードなんかぼおんと上がったりGMも上がるというような、かなり激しいですよね。つまり、それだけアメリカのダイナミックな消費行動がそのまま今後も出てきて、上がるだけ上がったところに出てきますから、上下がかなり続くんだろうと思うんですね。ですから、わあっと上がったと思ったらまた下がる。  中国も同じように、北京オリンピック目掛けて上がってきたやつが、例えば不動産は、上海なんかは物すごくいろんな、状況が悪化しているというふうに聞いているんですね。状況悪化というのは、かなりバブルっぽく、バブルになっていますよね。したがって、中国も同様に変化が激しく、かつ揺れがそこで起こって、日本もかなり翻弄されるのかなと思います。
  30. 広田一

    ○広田一君 そうすると、いろいろなぶれ等はあるにしても、今回の大幅な株価の下落につきましては、先ほど言いましたように個人向け住宅ローンの焦げ付き問題が端を発したわけなんですけれども、これに伴ってアメリカにおいて信用収縮が起きて、結果として個人消費等にも影響を及ぼすんじゃないかというふうな指摘があるんですけれども、その立場は両公述人とも取らないというふうな理解でよろしいんでしょうか。
  31. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 大きなリスクがあるかどうかということなんですけれども、リスクを表します様々な指標ですね、例えばアメリカ国債に対して社債の金利がどれぐらい上乗せ金利になっているかとか、そういうものを見ましても、現在それが大きな危機を示す指標は私はまだ見ておりませんですけれども、そういうことはないだろうというふうに思います。だから、依然として米国景気、後退するとしてもソフトランディングの可能性が大きいだろうというふうに存じます。
  32. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 私は、アメリカの場合には個人消費がそのまま冷えるということは考えられないと思うんですね。そのぐらいアメリカというのは個人消費が強いですよね。それはやっぱりオプティミズムがあると思うんですね。すごくやっぱりすぐに消費行動を変えたりというのも早いですよね。ですから、そこでイノベーションの商品も生まれ、普及しやすいということが出てくると思うんですけれども。  それから、アメリカの場合には、例えばIT絡みでいくとかなり激しい変化していますので、今グーグルが一番絶好調の一つですよね。それも、ついその前はほかの企業だったですよね。そのように、もうイノベーションでやっていくというところが消費を刺激しますから、私はアメリカの消費というのは強含みでいく、すなわち潜在力があると見ています。
  33. 広田一

    ○広田一君 そういうことを踏まえまして、ちょっと一点だけ、長期金利、日本の長期金利についてお伺いしたいんですけれども、今回この株安等を受けて日本の長期金利というのが一・五六五%と、昨年十二月下旬以来の低水準になりました。これは二年債の動向ともかみ合わせますと、もうこれはほとんど低下余地がないんじゃないかというぐらいまで下がってきたわけでございます。今回、一番安心できるところに逃避、逃げたのかなというふうな分析もなされているわけでございますけれども、こういったのも一時的なことなのかもしれませんが、この平成十九年度長期金利見通しについてお伺いしたいと思います。  内閣府は二・一%というふうに見ているわけでございますけれども、この長期金利というものは潜在成長率、そして期待インフレ、さらにはリスクプレミアムというものが加味されて出てくるということですけれども、お二人の公述人、今回、十九年度の日本の長期金利、どういった要因、理由で大体どの辺まで上がっていくだろうというふうにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  34. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 先生御指摘のように、長期金利というのは、将来にわたる成長率、実質経済成長率見通し、そして物価上昇率の見通し、加えて、その見通しが狂うかもしれないというリスクプレミアムの合計として決まるということであろうと思います。  国債金利なんですけれども、これが低位安定して私は今後も推移するんではないかというふうに思います。今の瞬間で見れば一・六%割れということなんでしょうけれども、やはり例えば十年国債考えますれば、向こう十年間の実質経済成長率なりあるいは予想されるインフレ率というものをベースに金利市場で形成されているんだろうと。  物価連動国債というのが出ましたんで、この十年国債金利をどういう理由で一・六%ぐらいなんだろうということを見ますと、実質成長率の部分が物価連動国債の利回りというので表すということが言えますので、それが大体一%近くになっておりまして、残りの〇・六%ぐらいが年率の物価上昇だというふうに市場が見ておると思います。経済が緩やかながらも着実に回復を続け、物価も安定を続けるという、ある意味良好な状態を反映した正常な金利水準であろうと。  ただ、可能性としては、それが現在よりも高くなる、今御指摘の二・一%かどうかは私は分かりませんけれども、いずれにしても物価、経済が穏やかに安定的な拡大を続けていることの様子が十年国債からうかがえるんだというふうに存じます。
  35. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 私は、これヤマカンですけれども、二%台の前半かなというふうに思っているんですね。やはり景気の今の基調は弱い、確かに続いていますけれども弱いということと、あと物価の見通しもスラギッシュだと思いますね。つまり、インフレの危険性というのはないことはないんですけれども、まだ弱くて、物価上昇も、物によってはすごく上がるものがありますよね、原油のように。だけど、ほかで下がったりとかいうのがありまして、しかも個人消費が弱いですから、そこで今のような状態がさほど急速に変わるとは思えないんですね。ですから、そんなものかな、二%前半のような水準で行くんじゃないかと思います。
  36. 広田一

    ○広田一君 どうもありがとうございました。  それでは、財政の問題の方に移らさせていただきたいというふうに思います。  先ほどのお二人の公述人のお話を聞きますと、富田公述人国債債務残高、この問題の切り口から、我が国財政が危機的な状況であるということをまた改めて私自身も認識をいたしました。また、北沢公述人の方からはこの国自身が夕張化しているんだというふうな御表現があって、本当にそうだなということで、我が国の危機的な財政状況をこれまた改めて認識したわけでございますけれども、実はこの十八年度まで、政府は自らの財政再建が進んでいる理由といたしまして三つの改善というものを挙げておられました。すなわち、対前年度比でプライマリーバランスの赤字の縮小、国債の新規発行の減額、そして一般歳出削減ということであります。  その視点に立って平成十九年度予算案を見ますと、一般歳出といったものが対前年度比で六千百二十四億円も増加しているわけでございます。つまり、二つの改善にとどまってしまっております。そういったことを踏まえますと、お二人の公述人の問題意識からいうと、財政再建路線というものが私は後退しているんじゃないかというふうに見えてしまうんですけれども、この点についての御所見をお二人の公述人からお伺いしたいと思います。
  37. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 私は財政再建路線が後退しているとは見ておりません。着実に財政健全化に向けて歩を進めているというふうに思います。  ただ、私が申し上げたかった点は、財政健全化の一里塚だけが強調されている、その最終的な目的としての国の債務残高国債残高GDP比を安定的に引き下げていくということをやはり国会においても認識されることを申し上げたいがために申したわけでございます。そういう意味で、着実に財政健全化の一里塚に向けてこの十九年度予算は進んでいるというふうに思います。  それから、御指摘の一般歳出が増えたということなんですけれども、これは特別会計改革とも関係しておりまして、これまで電源開発促進税というのが一般会計繰入れではなかったんですね。それで、一般会計に繰り入れることにして、そしてこの一般会計の中で予算を決めるようになった。だから、それによる増加ということもございます。  したがいまして、今言われたプライマリー赤字の縮小、それから国債発行額の減少、それから一般歳出削減というのが十九年度も行われているというふうに見ることができます。
  38. 北沢栄

    公述人北沢栄君) お答えします。  財政再建路線というのは基本的に続けざるを得ないと思うんですね。ですから、今確かに揺らいでいるような側面はあっても、基本的には続けざるを得ない、それほど悪化しているわけですね。結局、今どこに目掛けて歳出削減をやるか、それから少ない財源をどう使うかですよね、問題は。それが政治の課題だと思うんですよね。  私は、繰り返しますけど、不用額が十兆円も超えるような特別会計を放置してはならないというさっきの持論になるわけです。  終わります。
  39. 広田一

    ○広田一君 お二人の公述人からは、北沢公述人の方から財政再建路線はこれ続けざるを得ないというふうな御指摘、富田公述人の方からは国の財政再建は着実に進んでいるというふうなお話だったんですけれども。  対前年度比から見ればそのような議論も成り立つかもしれませんが、事、対地方で見れば、実は地方財政と国の財政を比較した場合に、プライマリーバランスとか債務残高、これ地方の方がいいわけでございます。にもかかわらず、一方で十九年度地方財政計画、これを見ますと、地方の場合は八年連続のマイナスでして、額にしても七千四百億円も削減をいたしております。つまり、国の一般歳出が増える中で、国よりもプライマリーバランスも債務残高も良好な地方の方が一般歳出の方は削減していると、こういうふうな状況も見ると、私はまだまだ国の歳出改革というのは非常に道半ばではないのかなというふうに言いますが、この点についての御所見は、今日は時間も限られておりますのでこれまでとしますが。  その中で、富田公述人にお伺いしたいのは、プライマリーバランスが一里塚だというふうなお話をされております。そういった中で、着実に国、地方を合わしてのプライマリーバランスというものは改善をしておるわけですけれども、そういった中で、私自身もっと歳出改革を、国の歳出改革を進めるためには国自身の黒字化についても明確な年限を持って取り組むべきだと思いますが、この点についての御所見をお伺いしたいと思います。
  40. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 先生御指摘のように、国自身もプライマリー黒字化、そして財政収支均衡化ということも長期的には明確な目標として設定する必要があろうと思います。  その際に留意すべきは、やはり国と地方との関係であります。例えば、十九年度予算では、地方はこれまでの交付税特別会計からの借入金の地方負担分を国からの交付税で返済することになっております。対しまして、国は、地方交付税が不足するということだったんで、地方に対して五十兆円ほど国の負担でこれまで支出を行ってきたんですけども、その返済については赤字国債発行して返済をしているというのが実態でありまして、地方交付税が不足から余剰の時代に入っている中において、この処理が不足期と余剰期で非対称になっておるという問題もあります。  いずれにしても、地方における地域の格差、それをすべて交付税で引き受けているということを今後とも続けることができるのかどうかということが、先生御指摘の国におけるプライマリー黒字化という問題とも密接に絡んでいるように思います。
  41. 北沢栄

    公述人北沢栄君) お答えします。  歳出改革については、地方への税源を移譲する、それをどういうふうにどの規模でやるかということと密接にかかわってくると思います。ですから、国対地方という視点がないとこれは駄目だと思うんですね。
  42. 広田一

    ○広田一君 それでは、特別会計について北沢公述人にお伺いをしたいと思うんですけれども、先ほどのお話の中で、特会資金の流れが非常に複雑、不透明だというふうなのが分かったわけでございますけれども、使われ方についても非常な不透明感があるんじゃないかなというふうに思いますので、この点についてちょっと具体例を挙げて、自分たちが地元に帰ったときに説明しやすいようなお話があれば教えていただきたいと思います。
  43. 北沢栄

    公述人北沢栄君) お答えします。  ちょっと待ってくださいね。その点で、資料が今ちょっと手元にあるのがどこか、どこかにあるんですけど、今探しますね。  これ、会計検査院の検査ではっきり指摘されています。例えば、登記特会というのがあるんですよね。登記特会というのがあって、その目という、予算の使う目という、こういう項目で使うというのがありますけれども、それが積算の段階に、例えばこれこれで使うという項目ありますよね。それが決算の段階ではないという。ないから何に使われているか分からないんですね。数字だけがあるんです。それ、実際に起こっている話ですので、一番いい例だと思うんですね。使われ方が、要するに、予算の段階ではこれこれに使いますよと、これこれの経費と、こう書いてあるんですよね。ところが、決算段階ではその事項がなくて、事柄、何に使っているかがなくて、ただ幾ら使ったという、そういう表示になっているんですね。で、これは予算のときにあった内訳がないということで、これ大変な不透明な決算だと思うんですね。
  44. 広田一

    ○広田一君 不透明な決算についてのお話がございました。また、特別会計につきましては、北沢公述人の方から沈黙のやみ会計だというふうなお話、また塩川大臣のすき焼きのお話の一方で、先ほど富田公述人の方がお触れになったように、地方交付税特別会計の中には借入金、五十兆円を超える借入金がございまして、これは今まで隠れ借金というふうに言われていたものが、いよいよいかにして処理をしていくのかというふうなことになったと思います。  そういった意味でも、これからの我が国財政考えたときには、この特別会計改革、廃止を含めた抜本改革というものを取り組んでいかなければいけないということを今回のお二人の話を聞いて改めて感じたことを強く強調いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  45. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 公明党の鰐淵洋子でございます。  公述人富田先生、北沢先生、本日はお忙しいところ国会までお越しくださいまして、また貴重な御意見を賜りました。大変にありがとうございました。  私の方からは、先ほどから各委員の先生からもお話がございましたが、今、日本の経済はどうなのか、またこれからどうなっていくのか、また格差社会はどうなっていくのか、こういった声もいただいておりまして、これも正に重要な課題だと思っておりますので、改めてこの件に関しましてお二人の公述人にお伺いしたいと思っております。  先ほどもお話ございましたが、様々経済指標を見ましても、経済改善している、そういったことは間違いないと思いますが、残念ながら、経済が回復しているその恩恵が国民の皆様まで行き届いてないということが大きな課題でございます。そのために、大都市から地方へ、また大企業から中小企業へ、企業から家計へ、この三つの流れを起こして、また確実にしていく、これが一つの大きな課題だとも思っております。  そこで、今申し上げましたこの三つの流れ、都市から地方へ、大企業から中小企業へ、企業から家計へ、この三つの流れを確実に起こして確実な流れにしていくためのそれぞれの公述人のお二人のお考え、またポイントがございましたらお伺いしたいと思います。
  46. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 先生御指摘のような流れというのは大変重要なことだと思います。ただ、これをどうするかというのはなかなか答えがすぐあるわけじゃないと思うんです。  と申しますのも、我が国経済世界経済の中の日本であります。日本の中だけで何かしても、この世界経済の大きなうねり、とりわけ冷戦が終わってから極めて安価で豊富な労働力がより自由と豊かさを求めて市場経済に参入してきて、そしてよりいい物を安く生産するようになりました。その恩恵を、我々国民、都市も地方も大企業も中小企業も家計も、全員が被っているわけでございます。  それと同時に起こっていることは、そういう、世界の中でたくさんの方が市場経済に入ってきた結果、これまで日本でそういう産業に従事していた、物を作っていた人というのは非常に激しい競争に立たされているわけです。したがいまして、より生産性、付加価値の高い分野にどう我が国経済全体がシフトしていくかということが大きな課題だろうと思うんです。  やはり、厳しいときには人間頑張って知恵が出るんだというふうに私は思いたいんです。したがって、この答えがなかなか見付からなくて大変恐縮なんですけれども、何か方法があるんだろうということの前に、私は、この大きな世界の流れの中で、個々の企業そして個々の個人が考えていくことがまず第一にあるべきだろうというふうに存じます。
  47. 北沢栄

    公述人北沢栄君) お答えします。  基本的に、まず安心、安全のネットワークをきっちりつくれるかどうかが一つポイントだと思うんですね。  というのは、安心、安全がないと消極的になって消費も増えませんよね。先ほどアメリカの話出ましたけど、私の友人は個人的に破産したことがあるんですよ。でも、楽観的ですよね、その後。今は相当年収をかなり得ていますね、弁護士として。ですから、それこそ敗者復活的なものができるという機能、これ重要ですよね。  それから、とにかく頼れるものがあるという、その頼れるものは、最終的には例えば年金があれば何とかやっていけるというのがちょっと将来の受給不安からおかしくなっているというところはすごく重要なことだと思うんですね、だれでも年取りますから。その安心、安全のセーフティーネットワーク。  それからもう一つは、企業負担、個人の負担を減らす。どうやって減らすかはもう知恵を出して工夫しなきゃいけませんけど、負担減ですよね、それは精神的にはストレス減とも言えますけど。そういう負担、いろんな負担ありますよね。規制によるもう面倒くさい負担もありますよね、手続の。だから規制解除しろとか緩和しろという要求にもなりますけど。それはもうケース・バイ・ケースあるんですけど、とにかく負担を減らすということと安心、安全のネットワークをしっかりすると。  現実的なことを言いますと、今厚生年金へのパートへの拡大ありますけど、これははっきり言って企業負担が物すごく掛かりますから、私はこれは不適当だと思っているんですよ。  なぜなら、保険料、半額企業負担ですよね。そうなると、これ物すごい法人税以上の負担になっていきますので、じゃどうしたらいいのかといったら、パートの人もフリーターも、基礎年金についてはもう税金で、消費税でやるとか、そのプラスアルファは自分たちが支払った額に応じて受け取れるようにすべきですけど、そういう、もう国民年金制度が崩れちゃっているから、厚生労働省もここで取りたいところから取るということでやっているんでしょうけど、これ企業負担が大きい上に、パートの人も必ずしも全部いいわけじゃないですよね。だって、負担しますからね。手取り減っちゃうから反対者の方が多いという。アンケート調査によると、全国ストア協会がやったんですけど、反対者の方が多いですね。なぜなら、今ある確実な収入が減っちゃうという。  イソップ童話に、ドゥー・ノット・スロー・アウェイ・プレゼンツ・シュワティー・フォー・フューチャーホープスというのがあるんですけど、フューチャーホープがあればいいですよ、まだ年金がちゃんともらえる。それもないから、今の確実な収入は減らせないということがありますから、このパートへの適用拡大というのは非常に大きな欠点を持っていると私は見ているんですね。  じゃどうしたらいいかといったら、抜本的なもっと改革。それがさっき言った安全、安心のセーフティーネットは、例えば国民年金はもう瓦解していますと、じゃこれに代わってどういうふうにやるかといったときに、もっと知恵を出して根本的な改革をやるべきだと思うんですね。
  48. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  先ほど私も申し上げましたが、大企業から中小企業へ、中小企業から家計へ、この景気回復の恩恵を、この流れをつくっていくということで課題としてお話しさせていただきましたが、その中でやはり中小企業の生産性を向上して、ここが一つの大きなまたポイントでもあると思いますけれども。  その中で、これまでも予算委員会でも各委員の先生方からも課題として取り上げられておりまして、例えば、先日もテレビの捏造番組の件で全日本テレビ番組製作社連盟がアンケート調査をいたしまして、その中で、孫請制作費が過去十年間で半減をしていた、そういったこと。また、そのほかにもキックバックや接待の要求、こういった下請いじめや孫請いじめ。こういった実態が改めて明らかになっておりまして、こういった中小企業におきます問題や課題もございますし、こういったことも含めて、今政府としてもこの中小企業の生産性向上に向けて様々政策を講じているわけでございますが、その政府の政策に対して何か御意見、また、もっとこういうふうにしていったらいいんではないか、そういった具体的な御提案ございましたらちょうだいしたいと思います。  お二人からです。お願いいたします。
  49. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 鰐淵先生から非常に重要な御指摘あったわけですけれども、中小企業対策として、現在も大企業には適用されていない政府系金融からの融資というのが受けることができるわけでして、そういう意味で、将来の事業展望をきちんと作成し必死に努力する中小企業に対しては門戸が大きく開かれている、大きな企業以上に開かれているのが日本の現状であろうかと思います。  今先生御指摘のような問題もいろいろと報道されてはいますけれども、もう今は中小企業だからということではないと思うんです。企業規模の大小というよりも、もう中小企業の中にも非常に大きな成長力を秘めた企業はたくさんあり、株式市場からも資金調達して更に大きな発展を遂げていこうという企業もたくさんある時代になっておりますので、余り大きい小さいというふうなことで区別して物を見るというのは、私は、だんだん二十一世紀になったら、やはりそういう考え方からも決別する時期が来るようになってきたというふうに楽観的に考えております。
  50. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 私は、今の中小企業の問題は、一つはいじめの問題と共通する深刻な問題だと思うんですね。それは今御指摘があった世界的な大競争時代で、何とか企業、生き延びなきゃいけないと。そこで、日本がコストずっと高かったですからコストダウン、リストラを含むコストダウンを迫られてやりましたよね。その今コストダウン要求というのは常に激しいですから、それを下請に転嫁する形で、例えばあるあるの場合の孫請の問題もそうですよね。  ですから、これは下請いじめというのは現に起こっていて広がっているので、これは実は独禁法違反ですよね、あるいはほかの違反にもなりますよね。ですから、独禁法の優越的地位の濫用を厳格に適用してもらいたいと思いますね。それは、談合の場合には去年から相当厳しくなりましたよね。談合は独禁法の改正によって相当厳しくなった結果、このごろ、去年の三知事の逮捕とか、今年に入って名古屋とか、いろいろ出ていますよね。  同じように、コンプライアンスの問題として、銀行とか大企業、つまり、中小企業にとってどこかに依存する率が例えば三割以上とか高い場合には、コストダウン要求とか理不尽な要求に屈せざるを得ないとか、あるいは、やらないと脅かされちゃう場合ありますよね、取引の縮小とか停止とか。そういうやはり濫用があると思うんですね。なかなか自分から手挙げられませんから、それを公正取引委員会はきちっとコンプライアンスの適用を求めるということがいいと思うんですね。
  51. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  先ほどもそれぞれの公述人からも少しお話が出ておりましたが、今グローバル化が進展する中で、インドや中国、こういった新興経済国の労働市場が日本に入ってきていると。そういった中でやはり日本人の給料が下げ圧力に遭っているのではないか、そういった見解もあるわけでございますが、これに対するそれぞれの先生方のお考え、また、今後更にグローバル化が進んでいく中で、どのように日本の、具体的に言いますと、日本の方の給料を上げるための方策といいますか取組、ちょっと時間が限られておりますが、お考えをちょうだいしたいと思います。
  52. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 私は、やはりほかでは作れない、あるいはほかの企業では作れないようなものを創意工夫して製品を作っていく、あるいはサービスを行うという、それぞれが比較優位を持つようなものに特化していくということが大事だろうと思うんです。同じことを、他の新興国と同じようなことをやっていれば競争に負けてしまいます。  そういう意味では、そういう分野をやはり個々人、そして個々の企業が必死に探し、そしてそれを製品化し供給していくことだろうというふうに思います。
  53. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 私二つあると思うんですね、ポイントは。  一つは、外国人労働者を多く受け入れてきちんと使うと。法律に基づいてきちんと使う。今現状は、十四万五千人ほどいる外国人請負労働者、これは例の日本でも超一級の企業の例えば子会社が偽装請負やっていたことが発覚したり、要するにモラルが喪失しているわけですから、この外国人の最底辺部分をそういう使い方しちゃまずいですよね。ですから、これをきちっと受け入れるような法的体制をつくるというのが一つ。  それからもう一つは、日本人の特性を生かす、例えば、小型車見ても、これ、やっぱり外国車にないですよね。日本の小型車というのは、もう収納箱から何から物すごく細かいでしょう。ああいうすごく神経の行き届いたそういう美的センスを含むいいものがあるんですよね。そういういいセンスを生かすような職業訓練を公的に行うと。  今、雇用・能力開発機構というのは、私の見る限りそういう、私のしごと館じゃ駄目ですね。ああいう、ただぼんとあって、行った人が言っていましたよ、何にも役に立たないって。ああいうただ見るだけじゃ駄目で、ちゃんともっと実用的な訓練するような、ドイツなんかあるんですよね。そういう公的職業訓練が必要だと思いますね。
  54. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 以上で終わります。  大変にありがとうございました。
  55. 大門実紀史

    大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史でございます。  本日はお忙しい中ありがとうございます。個々の問題に入る前に、まず財政経済政策の基本的な考え、そもそもの考えをどう考えるかお聞きしたいと思います。  今、市場原理主義とか新自由主義という言い方で、何といいますか、規制緩和と市場原理がもう万能のようなそういう、経済政策にも表れておりますけれども、風潮といいますか、なってきている中で、規制緩和も市場経済も全部否定するわけではございませんが、余りにもやり過ぎといいますか、競争あるいは生き残りといえば何やってもいいというものではないような事態が今生まれているというふうに思います。  マルクス経済学もケインズ経済学も、最低限立場は違っても共通するのは、人間に対する優しさのようなものはあったと思うんですが、もうそういうものも失われているような今経済の路線とか、そういうものになっているような気がいたしますけれども、まずその点についてお二人の見解をお伺いしたいと思います。
  56. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 市場ではできないことを政治が資源を配分する、これが正に現在行われておりますこの予算の審議であろうと思います。  つまり、市場が万能ではないということはもう民主主義国家いずれの国でも認識されておることでありまして、我が国においては、歳入を大幅に上回るほどの政府の支出を行っているのが我が国でありまして、私の認識では、決して我が国が現在市場万能主義に立っているわけではないというふうに思います。  だから、マルクスのとかケインズのお話が出たんですけれども、逆に、すべて政府が行おうということで人々の自由や豊かさが実現できなかったのが、できなかったがゆえに旧ソ連邦が崩壊したということが広く認識され、中国においてもより市場経済を取り入れましょうという動きになっているというふうに考えることができると思います。  したがいまして、先生の御指摘、極めて基本的で重要なことなんですけれども、やはりその時々の国民がどう考えるかという選択に依存した問題であろうかというふうに思いますが、私は、現在が市場原理主義だとかあるいは新自由主義だということではなしに、大きな赤字を出してでも政府が活動を行うことによってできるだけセーフティーネットを維持しようというあの動きになっているというふうに思います。
  57. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 私は今の御指摘に対してこう思うんですね。  規制緩和については、基本的に民の自由度が増すかどうかが非常に重要ですよね。ですから、何でもかんでもいいわけじゃなくて、その観点から、例えば環境なんかで規制緩和したらたちまちごみ捨て場になっちゃうとか、高速道路で今やっていますけど、森なんかもっとだれも見てませんからね。そういうのはいけませんよね。ですから、民の自由度を上げられるかどうかというのが尺度にある。  それから、市場原理については、基本的にはこれ、いい面としての合理化の方向、つまり、いろんなしがらみとかそういう、ありますよね、規制を排除するんだから、基本的にはいいことがあるんですね、たくさん。基本的にはいいんだけど、副作用もというか反面のものもありますよね。それ、しゃにむにやっていくと弱肉強食性が強まって、これ、現代の特徴にもなっていますけど、非常にハンディキャップの人にとっては辛い時代になりますよね。それはセーフティーネットをしっかりやらなきゃ駄目ですよね。  ですから、セーフティーネットなき弱肉強食市場主義は非常によくないと思いますね。セーフティーネット、これは例えばドイツとかヨーロッパはすごくしっかりとやっているようですよね。アメリカなんかは割合そっちの方ずさんというか、自分の身で、西部劇の伝統ありますからね、西部劇というか西部開拓の、自分の身は自分でという、アット・ユア・オウン・リスクでやっていますけれども、日本はそこへいくとアメリカ追随ではよくないんじゃないでしょうかね。
  58. 大門実紀史

    大門実紀史君 ありがとうございました。  そしたら具体的な問題で、まず北沢公述人にお伺いしたいんですけれども、年金積立金の問題でございます。  私、国会でも何回か取り上げたことがあるんですけれども、今、年金積立金というのは恐らく二百兆レベルになっているんではないかと思います。膨大な積立てを、ほかの国に比べて数年分の積立てをやっているわけですけれども、これは元々保険料を払っている人たちのお金を、差額を積み立てているから国民のお金でございますけれども、それを計画的に取り崩せば、すぐ年金が危ない危ないと騒ぐことじゃないんじゃないかと、余りにも金額が膨大ですからですね。そういうことも国会で取り上げたりして、三年ぐらい前ですか、とうとう厚労省も百年プランで取り崩しますと、五十年間は積み上げますが、五十年後から取り崩しますと。これを私、国会で追及したんですけれども、要するに、五年ごとにまた見直して、五十年後がどんどん先に行くような、何かかなりトリックじみた計画でしたので指摘をしたんですけれども、指摘をしたとおり、今、三年ぐらい前は、私が国会で質問したときは百六十七兆円ぐらいが、今二百兆レベルになっていると。更に積み上がっているわけですね。私、こういうものこそきちっと取り崩すなり中を見直すということをやれば、年金の問題も不安も相当今受け止められているイメージとは変わってくると思うんですね。  この年金積立金について御意見あればお伺いしたいと思います。
  59. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 私、数年前に調べたときに、年金、厚生年金国民年金合わせて約百五十兆の積立金があって、五年分あるんですね。そうすると、五年分支給、五年分あるのならそれを取り崩すべしという論文を書いたことありますけれども、取り崩すということは必要ですね、貯金と同じで、時に応じて、年がら年じゅう取り崩すというわけじゃなくて。今は、その抜本対策がしっかりできるまではそれで、その方がいいかと思うんですね。つまり、もうすごく小手先の政策で来ていますから、抜本対策をきっちりやるまではその過渡的な措置としての取り崩しというのは容認すべきだと思うんですね。ですから、私は取り崩し論に賛成なんです。
  60. 大門実紀史

    大門実紀史君 ありがとうございます。  そしたら、富田公述人にお伺いいたします。  インフレターゲット論というのがさんざん国会でも議論されてまいりました、最近は鳴りをひそめている感じはいたしますですけれども。それで、日本銀行が、まあその前からですけれども、いろんなものを、買いオペとか、買わされてまいりました。で、とうとう土地も買えとかいうことまで話になりましたけれども、そういうインフレターゲット論そのものが私は邪道だと、しかも国がそういうことをやったからってインフレになるとは限らないと、もし日銀が買うならば、土地どころかもう世の中のあらゆるものを買うぐらいでないとインフレなんか実現できないと、荒唐無稽だということも含めて批判をしてまいりました。  いずれにせよ、いろんな、政府かあるいは与党か分かりませんが、そういう圧力があって日銀がいろんなものを買い込んで、国債もファイナンスするというようなことまでなってまいりました。この十年ぐらい振り返っていただいて結構なんですけれども、日本銀行の役割というのが厳しく問われなきゃいけないと思ってまいりましたけれども、この日本銀行の功罪について、富田公述人、思われることあれば教えていただきたいと思います。
  61. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 今先生おっしゃったように、過去を振り返りますと、日本経済も極めて大きな危機の中にあったわけですけれども、余り通常には行われることはないであろうようなことも、例えば株式の購入ということも行われました。経済正常化してからは、それらは売却ということで正常化の道を歩んでいると。  そこで、そのインフレーションターゲティング論なんですけれども、将来の物価安定というときにそういう単一指標だけを見て機械的に操作する方がいいのか。つまり、金融政策がより将来の物価安定に寄与するかどうかということについては、私はかなり疑問だと思います。  先生の御指摘は、過去、日本経済が非常に大きな危機のときに流動性を供給するために非常に異常なことまでやってきたんだから、何かもっと明確なディシプリンがあった方が、例えばインフレーションターゲティングとかですね、そういうものがあった方がより中央銀行としての信頼性は高まるんではないかという御指摘であろうかと思ったんですけれども、そうであるとすれば、私はそうではないだろうと。多分、先生も同じかもしれませんです。  確かにこれまではそういうこともあったんですけれども、日本経済の正常化とともに日本銀行の信頼性も大きく回復し、単一のインフレーションターゲティングだけで運営を行うというよりも、より多面的な要素を、資産価格も含めた、物価も多種類ありますので、そういうものを見た運営ということが大事であろうというふうに存じます。
  62. 大門実紀史

    大門実紀史君 ありがとうございました。
  63. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  今日はお二人の公述人の方、どうも本当にありがとうございます。  まず、北沢公述人にですが、改革のポイントは情報公開だと、透明性を高める必要があるという御意見は全くそのとおりだと思います。拝見した論文で様々示唆に富むものがありまして、まず天下り規制についてどう思われるか、教えてください。
  64. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 今、渡辺さん、自民党の行革相が出していますよね。あれは僕はちょっと驚いたんですね。というのは、自民党から、まあ失礼な話ですけれども、自民党からあれが出たことにちょっと驚いたんですけれども、自民党からというか、今の政府から。結構ラジカルな、ラジカルというか当然の内容がかなり含まれているので、あの天下り規制は、私は実はあの種のスキームを考えていたんですね、既に発表していますけれども。それは、基本的に省庁の天下り業務をやめさせるということですよね。天下り業務というのは要するに官房長とかそれから人事部局が幹部に対して割り振りしますね、あれをやめさせて、第三者機関があっせんするというのはいいと思いますね。それを基本にやっていって、その背後にある早期退職慣行ですね、こういうものに触れないといけないと思うんですね。早期退職慣行まではっきり今回のは出ていないと思うんですね、そこは。ぼんやりしていますよね。ですから、早期退職慣行を廃止して、そして今の天下り業務を廃止するのを二つの軸に考えたらいいかと思うんですね。
  65. 福島みずほ

    福島みずほ君 それでは、北沢公述人は格差の問題、格差是正についても書いていらっしゃいますが、格差是正はポイントは何か教えてください。
  66. 北沢栄

    公述人北沢栄君) 格差はいつの時代でもありました。ただし、どういう内容の格差かですよね。その格差がレベル、程度それから格差化のスピードですね、それから固定的になっているかどうかというのが問題かと思うんですね。で、今非常に危険な状況にあると。格差をいい、まあいい格差と言っちゃおかしいんですけれども、当然出てくる格差というものがどの程度のスピードで現れて弊害に転化していくかというようなやっぱり個別の問題あるかと思うんですけれども、そこで、だから、全体に安全、安心の尺度に沿って人が安心するようなものを考え出すということですよね。  だから、それはじゃどうなのかといったら抽象的なんですけれども、これ具体的にはこうこう、例えばさっきちょっと言いました最低賃金は今相当低いですから、そこをしっかり守らせると、決めて守らせるということですね。守っていないですよね、結構多くの企業は。ですから、そういう安全性をしっかり見るということが重要だと思うんですね。
  67. 福島みずほ

    福島みずほ君 富田公述人にお聞きをいたします。  書かれていらっしゃる論文の中に、我が国資産には、基軸国、通貨国のアメリカでは考えられない規模の外貨準備六十兆円があるなど書いていらっしゃいます。また、アメリカ国債を日本がどれぐらい買っているのか、このことに問題がないのかについて教えてください。
  68. 富田俊基

    公述人富田俊基君) 先生お尋ねの件は、我が国政府資産について私書いたものでして、それを日米比較ということで書いておりますけれども、日本の政府資産が大きいということの大きな要因といたしまして、我が国は外貨準備を持っている。中国に抜かれちゃいましたけれども、世界で二番目に大きい。これは、アメリカにはそういう資産ないわけですね。そういう意味で、我が国としては安定的に国内経済が推移するようにということで為替市場への介入が行われてきたと、その結果が七十兆円ほどの外貨準備であるということでございます。  それが一つと……
  69. 福島みずほ

  70. 富田俊基

    公述人富田俊基君) はい。アメリカ国債への投資でありますけれども、我が国の機関投資家や個人も、当然その資産をより安全に運用しようということで、いろんな通貨で資産を運用しております。アメリカ国債を買ったり、あるいはオーストラリアだ、あるいはユーロ建てのものとか、そういうものの一環として、やはり個々人が長期的に自分の資産を安全運用しようということでお持ちになっているものであり、これはそれぞれ自己責任でやっておられますので、これは外貨準備とまた違った意味でございます。  つまり、外貨準備は経済運営という観点でありますが、アメリカ国債の保有ということは個々人の資産運用ということでございます。
  71. 福島みずほ

    福島みずほ君 ありがとうございました。
  72. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  73. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十九年度予算三案につきまして、公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  本日は、平成十九年度予算三案につきましてお二方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度で御意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、外交・安全保障について、公述人静岡県立大学国関係学部教授伊豆見元君及び早稲田大学教授重村智計君から順次御意見を伺います。  まず、伊豆見公述人にお願いいたします。伊豆見公述人
  74. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) ありがとうございます。  静岡県立大学の伊豆見でございます。またお招きをちょうだいいたしまして、大変光栄に存じております。  お時間が二十分程度ということでございますので、ごく簡単にといいますか、ポイントだけを申し述べさせていただきたいと思っておりますが、最近の朝鮮半島情勢の変化の中で恐らく最も注目されますのが、いわゆる六者会合、六か国協議がようやく動き始めると。六か国協議がスタートいたしましたのは二〇〇三年の八月でありますので、既に三年半以上の時間がたっておりますが、ようやくそれだけの時間を経て動き始めていると。このまま順調に取りあえず進むのであれば、四月の半ばまでは、まずは北朝鮮がプルトニウムを追加的に生産するといいますか、これ以上プルトニウムを増やすということについて一応の歯止めを掛けるということになろうかと思います。  非核化へ向けた道というのはまだ依然として非常に遠いと言わざるを得ませんが、しかし、それでも過去三年半は何も動かなかったということを考えれば、それでも一歩であれ半歩であれ前に進むということは、これは意味のあることだと思います。  今回どうして、ようやく三年半を経て六か国協議が動き始めたかということを考えてみますと、やはり最大の要因は、ブッシュ政権の政策が正に百八十度転換したということであろうかと思いますが、これは一言で言えば、ブッシュ政権がいわゆる関与政策といいますか、エンゲージメントの政策の方に踏み切ったということであろうかと思います。  過去六年間、ブッシュ政権はそれについては非常に後ろ向きといいますか慎重であったわけでありますが、それが変わりました。変わったきっかけは、もちろんイラク、あるいは民主党が中間選挙で多数を占めた等々いろいろな要因が言われておりますけれども、やはり一番重要なことは昨年十月九日の北朝鮮の核実験であると。  実は、アメリカの変化はその直後から生じておりました。中間選挙は十一月四日だったと思いますが、それのはるか以前、十月九日の実験を受けてアメリカは北朝鮮と、正にエンゲージでありますが、直接協議を通じて一つ一つの段階で取引をするという方向にかじを切りました。  核実験がそれほど切迫感を持たせることになったと言ってよろしいと思いますが、その大きな理由は、これで北朝鮮の核兵器がテロリストの手に渡る可能性というものがより現実味を帯びたということだと思います。核実験を行ったことで、北朝鮮の核兵器への信頼性というものが十月九日以前と比べれば飛躍的に増しました。  アルカイダのようなテロリストグループがそれを使用し得る、使える兵器ということが非常に可能性が高くなったわけでありますし、ブッシュ政権の目から見ますと、そうなりますと、当然のことながらアメリカ本土にテロリストグループがその北朝鮮の核兵器を持ち込みアメリカを攻撃するということが一番懸念されるということでありまして、だとすると、これ以上の状況の悪化は防がなきゃいけないと。  本来、もちろん究極的な目的は北朝鮮の非核化という点にありますし、それをブッシュ政権があきらめているとは考えられませんが、しかし、それは時間も掛かることでもありますし、悠長に構えていますと、状況は更に悪化し、北朝鮮の核能力は更に向上し強化され、アメリカ本土が北朝鮮の核兵器がテロリストの手に渡ってそれで攻撃されるかもしれないと、そういう可能性が出てきたということについてブッシュ政権は敏感に反応いたしましたし、言わばがらっと政策を変えることになったということだと思います。  三点重要なことが恐らくありますが、一つは米朝の直接協議、交渉というものをやるようになったと。これはずっとブッシュ政権が拒んでいたものでありますが、もうそれを今は積極的にやると。  二番目には、いわゆる相互主義ということになりますが、北朝鮮がこれこれある具体的な行動を取るのであれば、それに対してアメリカ側も応じた行動を取ると。言わば取引でありますが、その取引も、非常に細かいレベルで一つ一つステップを踏む中で取引をするということに踏み切りました。相互主義というものの方向に大きく踏み出していると。  恐らく三番目に重要なのは、それまでのブッシュ政権の考え方というのは、やはり今の金正日体制を変えなければいかぬと。レジームチェンジという言葉が当初言われ、途中からレジームトランスフォーメーションということが言われるようになりましたが、言わば体制を変革するということだったわけですが、そちらではなくて、北朝鮮の今の金正日政権の政策を変えさせると。ポリシーチェンジでありますが、政策の変更というものを求める方向に転換をしたということであります。  この三つが恐らく特徴として言えるであろう。直接協議、相互主義、そして体制変革から政策変更へということでありますが、この三つは、考えてみますと、ブッシュ政権がリビアに対して取った政策と基本的に同じ形でありまして、御案内のように、リビアに関しましては大量破壊兵器を放棄させることにアメリカは成功をいたしました。大きく違うところがあるとすれば、リビアのケースに対しては、アメリカイギリスと組んで言わば米英という形でやりましたが、今回のアメリカの政策変更はアメリカが単独で行っている、言わばイギリス相当する存在がないということが大きな差だということになろうかと思いますが、しかし、リビアに対するアプローチと現在北朝鮮に対してブッシュ政権が取り始めているアプローチは極めて似ているということになろうかと思います。  ブッシュ政権が変化したことによりまして北朝鮮の方も変化をいたしました。この変化で大きいのは、当面、北朝鮮は核実験を行わない可能性が高いわけでありまして、あるいはミサイル試射というものも行わないと考えられる。  御案内のように、昨年の四月五日にミサイルの試射をいたしましたし、十月九日には核実験をした。それまでなかなか北朝鮮が踏み切れなかったこと、二つ大胆なことを北朝鮮はやったわけでありますが、しかし、仮にアメリカに対して完全なる抑止力を持とうと考えるのであれば、まだ道半ばであるということは間違いないと思います。  すなわち、核実験を更に繰り返すという中で核兵器の小型化というのを完全に確実なものにし、そしてそれを弾頭化して弾道ミサイルに装てんするということで、言わば核ミサイルを手にするということがまず必要でありましょうし、同時に、その核ミサイルがアメリカ本土を直撃できるという足の長い弾道ミサイルになる必要があるということもありますので、完全なる対米抑止力ということを考えるのであれば更に核実験を繰り返す必要があるでしょうし、さらにミサイルの発射、とりわけテポドン2号と呼ばれているアメリカ本土に到達する長距離ミサイルについてはまだ完成をいたしておりませんので、その完成を急ぐということも一つの選択肢としては考えられましたが、しかし現在の北朝鮮はそちらを追求することをしていない。  むしろ、アメリカとの交渉を通じた取引が可能になったということを多として、そちらの方向でどこまでアメリカと取引できるかという方向に北朝鮮自身もかじを切っているということが言えようかと思います。したがって、アメリカの変化は北朝鮮の変化をもたらした。当面我々はしばらく安全という状況は、まあしばらくでありますので、いつまた元に戻るか分かりませんけれども、しばらくはそういう状況になってきたということであります。  こういう新しい変化を受けて考えてみますと、北朝鮮をどうして変えていくことが可能なのかと、大きく北朝鮮に本格的な政策変化をもたらすという意味で何が重要なのかということでありますが、もちろん本来最も望ましいのは、圧力とインセンティブといいますか、ものがうまく組み合わせられることであろうと思います。それが両方が効果を発揮するのであれば、北朝鮮を変えるのには最も有効であろうと考えられますが、しかし、現在それは不可能な状況にあると。とりわけ圧力の面ということになりますと、それを発揮して最も効果があるのは中国と韓国でありますが、しかし中国と韓国は非常に大きな圧力を北朝鮮に加える可能性は今のところ認められない。特に、昨年ミサイル発射あるいは核実験ということがあったにもかかわらず、中国と韓国が北朝鮮に大きな圧力を掛けるということには至らなかったわけであります。  一方、インセンティブの面でいえば、最も効果があるのは、それはアメリカと日本ということになりますが、現時点では、日本にはそのインセンティブを加えるという状況にはないということになると思いますが、しかしアメリカが、さきに御説明をいたしましたように変わり、変化し始めました。そのアメリカがインセンティブを与えるようになったことだけでも動き始めたということは事実でありますので、本来ですと、非常に強力な圧力が一方で掛かり、他方でその圧力を掛けて北朝鮮が変わるんであれば北朝鮮にもいいことがあるぞというインセンティブが、非常に魅力的なインセンティブが与えられるということが最も望ましいと思いますが、そういう形にはなりませんが、しかし現在、アメリカがインセンティブを提供するようになる、同時に圧力の面でいえば、不十分なものかもしれませんが圧力を掛けていることも事実でありますし、あるいは国連の安全保障理事会で決議が通って制裁を今行っていることも御案内のとおりでありますので、一定の圧力はある中で、アメリカのインセンティブを与える政策、関与、エンゲージメント政策というものがある効果を持ち始めたというのが今の状況だろうと思います。  だとしますと、これを更に推し進めて北朝鮮の本格的な政策変化というものをもたらすためには、やはり日本もアメリカと同様な関与政策への転換、あるいはインセンティブを与えるということが重要になってくると私は思っております。  したがいまして、現在のような、今までのような一種の圧力一辺倒から、圧力とともにインセンティブを与えるということも行うと、双方一緒に実施するということが重要だと思いますし、インセンティブを与え、少しずつ物事を動かしていくという意味は、すなわち取引をするということでありまして、これは極めて今の日本の雰囲気、状況からしますと不愉快な話でありますけれども、しかし、あえて不愉快な選択であっても、その取引という方向に私は進んでいく必要があると考えております。  そのためには、まず関与政策、エンゲージメントということでいうならば、大事なことは私は核とミサイルの問題をやはり拉致問題と同等の重みで扱うべきであろうと。現在、拉致問題が最優先の課題であるということは、私はそれは当然理解できることでありますし、結構なことだとは思いますが、しかしそのために核問題、とりわけミサイル問題、二の次、三の次、下手をすると、四の次か五の次か分からないような非常に低い政策優先順位になっているということが、私はそれは改めるべきであろうかと。まずは、核、ミサイルも拉致問題と同等の位置付け、同等の最重要課題として位置付けられるということが必要でありましょうし、それは一つの関与政策を行う上での前提になると思います。そしてまた、関与政策ということを進めるんであれば、やはりアメリカと同様に北朝鮮に対して圧力だけではなくてインセンティブも与えるという方向に切り替えていくべきであろうというふうに考えております。  インセンティブということになりますと、まず日本にとって一番大きなインセンティブはもちろん国交正常化ということでありますし、国交正常化の後の大規模経済協力ということになろうかと思いますが、それが北朝鮮にとって魅力のあるインセンティブになり得るという状況をつくるためには、日本側に、条件が満たされるならば、すなわち北朝鮮が変化するんであれば我々は国交正常化をするんだということを、日本側に強い国交正常化の意思があることを北朝鮮側に信じ込ませるというんですか、北朝鮮側にそれを確信させることが必要であろうと。北朝鮮が日本の意思を疑うということであれば、幾ら拉致問題を解決しても日本は正常化をしないのかもしれない、あるいは核問題、ミサイル問題が解決しても日本は正常化をしないのかもしれないと北朝鮮が思うのであれば、それは動いてくるということは期待できないと思います。  そういう点では、北朝鮮に国交正常化というものを日本が意思を持っているということを確信させることがまず重要だと思いますし、同時に、そのための条件の中には、拉致問題、核問題に加えてミサイル問題もあるということ、これミサイル問題については、とりわけ日本全土を射程に収めているミサイルについて、いわゆるイニシアチブを取ってこの問題の解決に動けるのは日本だけでありまして、その日本が非常に消極的な今対応を取っているということは私は好ましくないと思いますので、やはりミサイル問題の解決に積極的に取り組むべきであろうと思います。  最終的には、その関与政策を通じて、やはりアメリカ及び周辺の諸国に日本が本当に信頼に足る利害共有者と、まあ今、アメリカ、ブッシュ政権が好んで使う言葉の一つでありますが、ステークホルダーでありますが、利害を共有している、しかしそれは信頼に足る利害の共有できるパートナーであるということをアピールすることが重要だと思います。  というのは、この核問題が進んでいっても、日本が積極的に関与をしなければ、その利害共有者の反対語というのはただ乗りであります、フリーライダーであって、利益は享受するが責任を果たさない、コスト負担しないということになるわけでありまして、積極的に日本がコミットをする、役割を果たすということをしなければ、日本は利害を共有している者よりもむしろただ乗りの論者、ただ乗りではないかという評価を得る危険性も十分にあろうかと思います。  そういう点で、具体的に北朝鮮の非核化のプロセスに入る、あるいはその非核化の手前でもプルトニウムを、あるいはウラニウムをどう管理するか、そしてそれを国外に搬出するかという課題がこれから出てきますが、そういうもののいわゆる検証のプロセスに日本は積極的に関与し、これをアメリカや中国に預けるというようなことをしないようにするということが日本の責任感というものを示す一つの具体的な方途だと思いますし、さらに北東アジア地域の平和と安全のメカニズムをつくるということが、これは当面、朝鮮半島の平和と安全に限定されて、四か国、朝鮮戦争の当事国であった米中両国と南北朝鮮の間で四か国の協議が始まると思いますが、我々にとってもその朝鮮半島の平和と安全、あるいは北東アジアの平和と安全のメカニズムをつくることは、我々も当事者の一人でありますので、この問題についても積極的に関与をすることが望まれると、かように考えております。  お時間になりましたので、これで終わりにさせていただきます。  ありがとうございました。
  75. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ありがとうございました。  次に、重村公述人にお願いいたします。重村公述人
  76. 重村智計

    公述人(重村智計君) どうも、重村でございます。本日は、どうもお招きいただきましてありがとうございます。  私は、北朝鮮の立場から見た場合、今の国際関係というのはどういうふうに映るのかということを中心に御説明しようかと思うんですが、時間がありませんので用意したものを少し読ませていただくんですが。  外交と安全保障に関しては、相手がどのような状態にあるのかということについての正確な情報収集と分析が欠かせない。日本での朝鮮情勢とその分析には、北朝鮮の立場に立った、北朝鮮をどう見るかという分析と情報が相当欠けていると言わざるを得ないと。平壌からその事態を見ますと、異なった景色が見えてくる。孫子の言うとおりに、戦略には相手の置かれた状況を冷静に判断する必要があるということなんですね。  東アジアの安全保障を左右する北朝鮮の内情と最近の情報、北朝鮮が直面する危機、それに日本がどう対応するかということについて述べさせていただきたいと思います。  日本では報道されていないんですが、平壌の高官たちの間では、二月以来、大物高官の逮捕と失脚が大きな関心を今呼んでいます。北朝鮮には朝鮮総連を監督し、日本人拉致にも加わった社会文化部という工作機関がありますが、かつて対外連絡部と呼ばれていた部局なんですが、日本人拉致にも関与していると言われている。この社会文化部の部長であり大物幹部の姜周一という人がいるんですが、この人が二月初めに秘密警察の国家保衛部に逮捕され、失脚されたということは確認されています。対日工作の責任者の一人ですから、対日政策に大きな影響が出てくることは間違いないだろうと。姜周一は今年一月に日本の政治家に招待状を送り、平壌でひそかに会談したことが確認されています。この会談も逮捕の理由の一つではないかと見られています。  北朝鮮では、現在、日本担当の高官が任命されていません。ですから、本格的に対日外交を展開できない状況にあります。小泉前首相の日朝首脳会談の際には、国家保衛部の副部長であったミスターXが任命されました。ミスターXは日本側には金哲という名前を名乗ったんですが、これはもちろん偽名です。日本側には名前を明かさないようにと、こう言ったと言われているんですが、日朝首脳会談の失敗で対日担当を外されました。ただし、出世して国家保衛部の第一副部長に今昇進はしています。  このため、現在、北朝鮮には金正日総書記に直接報告できる対日担当が任命されていません。ということは、日本と本格的に交渉し話し合う準備が北朝鮮にはできていないということなんですね。このため、さきのハノイでの日朝の作業部会で、北朝鮮側には日本と真摯に話し合う準備ができていなかったと言うしかない。対日担当の高官が任命されるまで、北朝鮮には日本と本格的に話し合うことは不可能だと言わざるを得ない。  また、北朝鮮の外交戦略を我々は振り子外交と呼ぶんですけれども、アメリカとの交渉に力を注いでいる時期には日本との本格的な交渉には乗り出してきません。米朝が進展しているように見せ、日本を焦らせようとする作戦です。しかし、米朝交渉が行き詰まると、今度は日本との交渉に取り組んできます。この振り子外交と日米韓の分断戦略が今も昔も変わらない北朝鮮のやり方です。  ですから、平壌の事情から事態を見れば、日本の一部で主張される日本孤立化、あるいはバスに遅れるなという指摘は正しくありません。  北朝鮮は、二〇〇五年のアメリカの金融制裁で非常に危機的な状況に直面しました。外貨を運用できない、さらに銀行取引ができない、アメリカが凍結したバンコ・デルタ・アジアの口座はわずか二千四百万ドル、日本円で三十億円の資金でしかない。  ところが、金融制裁の結果、世界の金融機関が北朝鮮との取引を中止してしまった。また、預金の引き出しを制限されました。スイス銀行には四十三億ドル預けてあることをアメリカは確認しましたけれども、この引き出しができない。西側の銀行が北朝鮮との取引を全部中止してしまった結果、銀行取引やドル資金の運用が不可能になってしまった。この結果、極度の外貨不足に陥っていったというのが最近の状況ですね。  北朝鮮は、当初は金融制裁を解除しない限り六か国協議に参加しないと主張していました。それなのに、六か国協議に参加したわけです。これは明らかに北朝鮮の譲歩ですね。また、金融制裁が解除されない段階で核施設の凍結と封印を約束しました。これも北朝鮮の譲歩です。さらに、凍結口座の解除だけで核施設の封印とIAEA職員の復帰を受け入れました。これも北朝鮮の譲歩です。核施設の封印で北朝鮮が得られたのはわずか五万トンの重油だけです。公式には、北朝鮮のメンツは丸つぶれです。わずか五万トンの重油と三十億ドルの凍結口座解除で核施設の封印を認めたわけです。一九九四年のジュネーブ合意では二基の原子力発電所と毎年五十万トンの重油の供給を獲得しました。それに比べれば極めて小さな対価と言うしかない。これは北朝鮮の譲歩と言うしかない。  北朝鮮の国力についてもう一つ頭に入れておいていただきたいと思うんですけれども、北朝鮮の経済力、国力は日本の島根県や福井県よりも小さい、極めて小さな経済力だと言っていいと思いますね。北朝鮮の昨年の国家予算はわずか三千六百億円、日本円にして、四千億円以下ですね。国内総生産は一兆円に満たないと推計される。  韓国銀行は、これまで北朝鮮のGDPを二兆円とはじき出してきました。ところが、昨年はこの推計を発表しなくなった。なぜ発表しなくなったかというと、計算が合わなくなってしまった。北朝鮮は二〇〇一年にドルの交換比率を一ドル二ウォンから一ドル百五十五ウォンに、およそ七十五分の一の切下げをしたんですが、韓国銀行の推計にはこの切下げが全く入っていなかった。つじつまが合わなくなってきて去年は結局発表できなかったんですが、その計算からすれば、北朝鮮のいわゆるGDP、国内総生産は一兆円以下と、せいぜい一兆円程度と言うしかないのが現実ですね。  北朝鮮では民間企業というのはほとんどありません。いわゆる民間の経済活動というのはほとんどないのが現実です。また、製鉄あるいは造船などの産業は三〇%以下の操業だと言われる。辛うじて動いているのは軍需産業だけですね。そうした状況から考えると、経済力は一兆円以下、日本の五百分の一以下の国力と言うしかない。ですから、アメリカの金融制裁や日本の経済制裁が相当にこたえている、相当に効いているのは間違いないんですね。  もう一つ、北朝鮮の国力、現状考える上で、北朝鮮の戦力はどのくらいなのかということを考えた場合に、北朝鮮には通常兵力で全面戦争を戦える戦力が全くありません。ですから核開発とミサイル開発を急いだ、自分たちが攻撃されるのではないかと心配したからですね。  何で戦争能力がないかというと、北朝鮮には全く石油がないんです。油田はありませんしね。輸入しなきゃいけない。北朝鮮の昨年の石油輸入量は約百万トン、百万トン以下なんですね。中国から五十万トンの原油、ロシアから四十万トンのディーゼル油、製品を輸入しています。五十万トンの原油から軍事用に使えるガソリンやディーゼルがどのぐらい取れるかというと、最大でも二十万トンしか取れない。ということは、北朝鮮の今の状況では、民間用に石油を一滴も使わないとして、軍事用に使える油は最大六十万トンだと言われる。ですから、六十万トンはないということですね。六十万トンでは逆立ちしても戦争はできない。日本の自衛隊は年間で百五十万トンの石油を使用しています。日本の都道府県の石油使用量で、どんなに少ない県でも百五十万トン以上です。北朝鮮程度の石油しかない県というのはどこもありません。  こうして見ると、北朝鮮は外貨資金が枯渇し、軍事用の石油もない危機的な状況に直面していたということがよく分かるわけであります。電力もありませんし、食糧も不足していますし。北朝鮮の幹部の間でさえ、この状態が二、三年続けば崩壊の危機に直面する、あるいは危機的な状況になるという話合いがなされていたという声が聞こえてきます。  それから、北朝鮮の幹部の間では、昨年秋ごろから、アメリカと国交正常化をするか、あるいは核開発を放棄するかという、いろんな論議があったと言われております。それが北朝鮮のいろんな譲歩、政策転換に変化したんだろうと思われるんですが。  こうした北朝鮮の状況から見た場合に、結局は六か国協議で譲歩せざるを得なかった、北朝鮮としてもですね。アメリカだけが譲歩したんではないということがよく分かるだろうと思いますし、六か国協議で合意すれば、韓国から肥料と食糧を獲得できるという見通しがあったわけです。それがもう一つ、六か国協議に合意した理由であるんですけれども、ただ、それで北朝鮮の根本的な問題が解決するわけではないようですね。  六か国協議を必要としていたもう一つの国は、北朝鮮だけではなくて韓国ですね。韓国は年末に大統領選挙が行われます。その大統領選挙で与党が勝利するためには、アメリカと北朝鮮の緊張緩和と、対立の緩和がどうしても必要だった。大統領選挙で勝利するためには、南北首脳会談が不可欠ですし、今まあ南北首脳会談が六月から八月に行われるだろうという見通し相当強くなってきた。大統領選挙で与党が勝利するためには、太陽政策の成果を宣伝して、北朝鮮への支援を拡大する必要がある。支援を拡大しなければ、北朝鮮が南北首脳会談に応じないという状況があるわけですね。アメリカの北朝鮮への政策が緩和されると、太陽政策を批判する野党には非常に不利になる、打撃になる。そうなりますと、年末の大統領選挙で与党勝利の可能性が非常に大きくなってくるという、こういう計算があるわけです。  アメリカと北朝鮮が関係改善と国交正常化に向けて進んでいるとの指摘がありますけれども、ブッシュ政権の任期中に米朝が正常化するという予測もありますが、この可能性はまずないと言っていいだろうと思います。米朝の正常化のためには、核開発と核兵器を放棄して、核査察を受け入れなければいけない。人権問題を解決しなければ、アメリカ議会は正常化を認めない。  米朝の連絡事務所が開設される、開設しようという動きもありますけれども、実は連絡事務所は、一九九四年のジュネーブ合意で当初合意していた。しかし、北朝鮮の事情で実現しなかった。当時アメリカは、初代の事務所長を既に内定していて、連絡事務所を作る予定だったんですが、結局、金正日総書記は認めなかった。その理由は、北朝鮮の秘密が漏れて、米国が平壌で反政府活動とか工作活動を展開するということを心配したと言われる。さらに、そのアメリカの連絡事務所を作ると、いわゆるリビアのカダフィさんのようにアメリカから攻撃される、金正日総書記が暗殺される可能性があるということを心配したとも言われる。  こうした状況から見ると、米朝の正常化は決して簡単ではありませんし、査察、いわゆる核査察が合意した後、どんなに早く完了しても三年から四年掛かる作業なんですね。ですから、過去のプルトニウムや核兵器、保有核兵器の破壊あるいは濃縮ウラン施設の査察を考えれば、通常であれば十年は掛かる、タイム、時間の掛かる問題になるわけです。  ブッシュ政権の任期中には多分、その米朝の正常化についてのいわゆるロードマップ、どういう段階を踏むかということが作成される可能性は高いだろうと思います。このロードマップ作成の一環として、連絡事務所を開設する可能性は出てくるだろうと思いますね。  六か国協議や米朝交渉のその状況から、日本が孤立するとか、日本が取り残されるという論理がありますが、これは間違いと言わざるを得ない。米朝交渉はやがて行き詰まる可能性が非常に高いと。北朝鮮は核開発を先に放棄できないというのが理由ですね。核開発を放棄すれば北朝鮮はただの貧乏国ですから、だれも相手にしてくれない。これは北朝鮮崩壊へのシナリオが進行することになってしまう。また、核開発を続けても、やがて破綻する。これが今、北朝鮮が直面している大きなジレンマになるわけです。  北朝鮮の最大の目標は、現在の体制の維持ですね。ですから、その体制の崩壊につながる政策は採用できない。  この問題を別の視点から考えてみますと、北朝鮮は我々の基準からすれば独裁国家ですし、厳しい人権弾圧を続けていますし、核開発も続けていますし、国際的に尊敬されてない国家であると。経済は破綻状態にある。こうした国家との国交正常化に積極的に取り組むことが日本の国益にかなうのかどうか、日本は国際社会で尊敬される国家になるのかどうかということを、もう一つ考えるべきだろう。  拉致問題を棚上げして、北朝鮮と関係改善をするように求めている国家がありますけれども、そうした国家は、中国にしろロシアにしろ、必ずしも民主主義をきちんと採用していない、人権問題をなお抱えている。韓国にしても、なお民主主義には問題がある。こういう状況にあるという現実を我々は理解すべきである。  日本の使命は、アジアの国家が民主的で人権問題を解決していく方向に導いていくこと、そこに使命があるんだろう。アジアの国民と民衆が、個人の権利を拡大し、民主的で豊かな生活を獲得することが、この地域から対立と紛争を解決する道であろうと思います。報道と言論の自由が保障され、独裁者や政府の誤った判断を阻止できるシステムが重要になってきます。  この視点から考えますと、拉致問題を棚上げにして、日朝関係改善経済支援をしても、核開発は推進されかねない。つまり、核開発を完全にやめるという約束なしにいろんな支援をすることは、逆に核開発を進めることになるんではないか。また、その独裁体制をそのまま維持することになる。やはり、日本は、アジアの平和と非核化、人権の拡大、民主的システムの拡大を外交と援助、安全保障の戦略として対応することこそが歴史的な使命ではないかというふうに考えます。  どうもありがとうございました。
  77. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  78. 岡田直樹

    ○岡田直樹君 自由民主党の岡田直樹でございます。  本日は、伊豆見公述人、重村公述人から、それぞれ御専門の領域でございます大変貴重なお話を伺いまして、誠にありがとうございました。  私個人のことを申しますと、以前新聞記者でありまして、平成九年と十年に、与党の訪朝団に付いて北朝鮮へ参りました。そのときの状況は、金日成が死後間もなくでありまして、金正日は一切姿を見せず、政府間交渉も断絶をいたしておりましたから、例えば金容淳とかああいう人を窓口にして政党間、議員外交をするしかなかったわけであります。当時、拉致と我々が一言言った途端に、北朝鮮は激高して席をけって出ていくというような状況でありました。  それから九年、十年たつわけでありますが、中に小泉総理の訪朝、そして金正日が拉致を認めた、また何人かの被害者の方は帰還をされた、そういう大きな変化があり、隔世の感を抱くわけでありますが、その一方では、何らその問題は解決していないのではないかと。あるいは、核、ミサイル、そういった潜在的な脅威は高まるばかりと。大変歯がゆい思い、閉塞感を抱きながらただいまのお話を伺った次第であります。  そこで、御質問を申し上げたいと思いますが、先ほど伊豆見公述人が、六か国協議の結果について、日本としてもあえて不愉快な取引、あえて不愉快な取引も選択肢とすべきではないかと、こう述べられました。私にはこの点についてちょっと迷いがあって、どちらとも決めかねているところであります。日本はアメリカ同様の関与政策にかじを切り替えるべきか、つまりアメリカを追い掛けて政策を変換すべきか。あるいはアメリカと役割分担をすべきか、つまりアメリカがあめに変わってきたのなら、日本は依然としてしばらくむちを振り続けると、そうした選択肢もあるのではないかと。少なくとも、日本が現状で重油の支援をしないという選択肢を取ったことは私は正しいと思いますが、今後についてどうこの二つの選択肢を選んでいくか。  差し当たり、この十九日に六者会合の全体会議がありまして、中国の武大偉外務次官は六者会合の議長役でありますが、先般、浅野外務大臣に対して、できるだけ早く、十九日の全体会議が終わったら、できるだけ早く日朝の作業部会をもう一度やるべしということを発言をしたそうでありまして、この場で日本として何らかのインセンティブというかあめをちらつかす、つまり、取引を行うことの是非というのを是非、伊豆見公述人、また重村公述人、お二方から伺いたいわけであります。  確かに拉致が大前提でありまして、拉致解決、これは決して譲れないところでありますけれども、その入口で引っ掛かってこのまま全く作業部会が進まないということがあっていいのかと、本当に私、今二つの選択肢の間で自分自身揺れ続けているところでありまして、政府もそういうことを真剣に考えておると思いますが、この点について両公述人の御意見を賜りたいと思います。
  79. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) ありがとうございました。  幾つか今、岡田先生おっしゃったと思うんでありますが、御指摘だったと思いますけれども、まず三月十九日に次の六か国協議が、第六ラウンドになると思いますが、開かれて、その後また日朝の作業部会があるということになるかどうかは今のところ見通しはまだ立っていないと思いますが、ただ、六か国協議の中に作業部会というのはきちっと位置付けられたわけでありますし、日朝が直接協議をする機会というのはこれからも増えてくるだろうと思いますので、その場でどういう対応を取るべきかというお話だと思いますが、私は、先ほどやはり取引を辞さずということでやるべきだと考えておりますと申し上げました。  ただ、すぐ今具体的に、じゃ、拉致問題を解決する上で何かの取引を考えるのかということになるとは思っておりません。  最初に重要なのは、先ほども申し上げましたように、日本側に国交正常化の意思ありということを北朝鮮側に確信させることが私は重要だと思っておりますし、それ自身が大きな北朝鮮に対するインセンティブであると。  北朝鮮は、二〇〇二年の九月に小泉総理が訪朝をされた際に、拉致問題については言わばその時点で百八十度態度を変えました。その以前は、北朝鮮は、拉致問題などは存在しない、でっち上げだと言っとったわけでありますが、それが小泉総理の最初の訪朝時に金正日国防委員長が拉致問題そのものを認め、そして謝罪をし、二度とそれを起こさないというところまで言ったと。もちろん不足の部分がたくさんあって我々が満足できるような結果ではないというのは事実でありますが、しかし、それ以前、九月十七日以前と比べれば北朝鮮の姿勢が百八十度転換したことは事実でありますし、それは、恐らくその時点で北朝鮮、金正日側は日朝の国交正常化というものが可能であると。すなわち、日本側の示す条件を満たす、あるいは日本側との間の懸案というものをもし解決するんであれば国交正常化が可能であると考えたから、別の言葉で言えば得をすることもあると思ったからこそ態度を変えたというような話なんだろうと私は考えておりますが、それ以後の展開からすると、北朝鮮は、今、日本との関係において、大きく政策を変える、態度を変える、譲歩をすることによって何か自分たちが得られるものがあるかどうかについて極めて疑問に思っているのであろうと。そういうときの北朝鮮は動かないと私は思います。動かすためには、国交正常化をする意思というものをまず日本は強く示すべきでありますし、それが北朝鮮に確信させるということが非常に重要だと思います。  ただ、この国交正常化というのは、もう一つ重要なことは、無条件に我々国交正常化しようとしているわけではなくて、少なくとも、小泉政権から現在の安倍政権に至る日本政府の主張をまとめるならば、拉致問題と核問題とミサイル問題が解決しなければ正常化はできないわけですし、それは今の金正日体制と国交正常化をするわけではないわけです。変化した、生まれ変わった北朝鮮、生まれ変わった金正日、我々にとって害をなさない、我々の目から見てこの相手ならば正常な国交を開いて付き合っていけるという、そういう存在に北朝鮮が変化したときに初めて国交が我々正常化できるわけでありますし、ただ、やはりそういう条件も真剣に取り組んで解決しようとしているんだぞということを私はやっぱり北朝鮮には示す必要があると。日本に国交正常化をする意思があるかどうか分からないと私は今北朝鮮は疑っていると思いますが、だとすると、北朝鮮は、日本が拉致問題を真剣に解決しようとしているかどうかもよく分からないし、核問題を真剣に解決しようとしているかも、ミサイル問題を真剣に解決したいと思っているかどうかも分からないと、彼らはそういう疑問を持っていると思いますので、そこを、そうではないと、我々はすべての問題を解決したいし、北朝鮮に変化してもらいたいし、変化して生まれ変わった北朝鮮とは国交を結びたいということを言うべきではないかと、それが今一番最初に必要なことだというふうに考えております。
  80. 岡田直樹

    ○岡田直樹君 ありがとうございました。
  81. 重村智計

    公述人(重村智計君) 岡田委員指摘の問題、三つの点から考えると分かりやすいかと思います。拉致問題と核、ミサイル問題と日米同盟という視点ですね。  拉致問題については、北朝鮮がやはり拉致問題が解決しない限り日朝国交正常化はできないんだというはっきりした理解を持つことが一番重要で、これまで岡田委員が訪朝した際にもいろいろあったろうかと思うんですが、日本の政治家の中で、拉致は適当にしても国交正常化はできるという期待を抱かせた人たちが我々からするといたんではないかというところが一番問題であって、拉致が解決しないと国交正常化できないということをはっきり理解させて、その上で、じゃ、北朝鮮は何ができる、日本は何が譲歩できるのかということがまず必要なんだ。  それから、核とミサイルの問題、勘違いしないでいただきたいのは、北朝鮮は核とミサイルについては日本とは交渉しないと言っているわけです。核とミサイルの問題はあくまでもアメリカと交渉するんだ。日本に期待されてるのは何かというと、合意したときにお金を出すことだけなんです。合意したときにお金を出すことはやぶさかではありませんよと、しかしその前に拉致問題は解決してくださいよというのが日本の立場であるべきなんで、それを理解しない前からいろんなインセンティブを与えたり、あるいはあらぬ期待を抱かせるということが一番まずいわけでして、やはりあらぬ期待は上げない。  岡田委員もいろんな取材の過程でお気付きかと思うんですが、結局、日本の北朝鮮外交というのは、小泉総理が訪朝して日朝首脳会談やる前ではほとんどお願いをやっていたわけで、外交はほとんどなかったわけですね。ですから、外交というやっぱり駆け引きをきちんとやっていくというのがもう一度重要なのと、それからもう一つは、日米同時に北朝鮮と国交正常化するような事態でないと日米同盟が崩壊するおそれが極めて強いということですね。  御存じのように、同盟というのは共通の敵、あるいは共通の目的と共通の価値観というこの二つの条件が整わないと同盟は成立しない。日米は今取りあえず北朝鮮が共通の敵。核開発をしている、人権問題は解決しない、それから民主化、人権問題の解決、さらに市場経済というのは共通の価値観なんです。それを、日米どちらか一方が相手の了解なしに勝手に国交正常化すれば、一方は北朝鮮は敵だけれども一方は敵でない、同盟が必要とする共通の敵、あるいは共通の目的を失う。さらに、北朝鮮側が拉致問題を解決しない、あるいは核問題は解決しない、どちらか一方だけ解決したということで日米どちらの国が国交正常化をすれば、その共通の価値観も失うことになるわけで、北朝鮮との国交正常化というのはやはり日米共同歩調を取って日米同盟を維持する、強化していくという方向で交渉して駆け引きをしていくということが一番重要であろうと思います。
  82. 岡田直樹

    ○岡田直樹君 どうもありがとうございました。  お二人の公述人の御意見がかなり真正面から対立をして、鶏が先か卵が先か、本当に悩ましい問題であります。  この点についてはまた改めて御教示をいただきたいと思うんですが、先ほど伊豆見公述人が、生まれ変わった金正日としか国交回復ができないと、正常化ができないと。しかし、その金正日が生まれ変わるということがあるんだろうかということを少し疑問に思うわけであります。体制変革ではなくて政策変更を、方針チェンジを求めると。金正日も、安倍総理に言わせれば、会った印象は合理的判断のできる人物と、そういう話もありますけれども、金正日体制というものがそうしたドラスチックな政策の変更というものを行い得るのかどうか。  また、先ほど重村公述人から北朝鮮の内部情勢についても言及がございましたけれども、内部から瓦解をすると、これは少し希望的観測かもしれませんけれども、そうした予兆というものがあるのかどうか。例えば、軍というものがそうした訓練用の油にも困るといった事態に非常に不満を抱いて、金正日の、国防委員長の統制が利かなくなると、そういった事態が起こり得るのかどうか。こうした点も含めて、金正日体制の今後について両公述人の御意見を伺いたいと思います。
  83. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) ありがとうございます。  最も難しい御質問なんだろうと思いますが、まず第一に御指摘になられました金正日が生まれ変わるかどうか、これは私、分からないと思います。だけど、生まれ変わらないと放棄する必要は全くないと。我々はそれを努力する必要があるし、少なくとも試してみるべきです。北朝鮮を、あるいは金正日を真剣に生まれ変わらせようという努力は決して今まで十全ではなかったわけですから、十分なテストをしていないままで、ああ彼は駄目だろうと、変わらないだろうということは全く私は言えない。しかし、そこまでやってみた上で本当に変わるかどうかは今の時点では私は分からないというふうに思います。  金正日体制の今後はどうなるか、これも似たような話でありまして、瓦解する可能性というのは常に胚胎していると思いますし、さらに最近では、恐らく今までと大きな違いがあることは、金正日を支えるエリート層に対する金正日が特権、特別待遇をするその手段を我々が絞り込んできていることである。これは二〇〇三年からの、これはブッシュ政権が一番力を入れてやって、ある意味で非常に効果的なことであったと思いますが、一方でPSIと呼ばれる拡散防止構想といいますか、と同時に、もう一つはIAIというのがありまして、イリシット・アクティビティー・イニシアティブというのがあるんで、不正行為防止構想と、正式に言っているわけじゃないんですけれども、それも一緒にやっていると。言わば、北朝鮮が不正で、不法行為を通じて外貨を獲得している道をともかく絞り込んでくるということをやり始めた。これは金正日のポケットマネーを絞り込むという意味でありますし、彼が自分の権力を維持する上でその特権階級に対する特権を保障することを難しくさせるという効果は必ずあるはずですし、それが不正を通じて、不正行為を通じてお金が、外貨が得られなくなると当然影響してくるのは間違いないわけですから、今後それが金正日の権力を痛撃する可能性は一方で相当あるだろうと思います。ただ、本当に困り始めたら別の形でエリート層の歓心を買おうというふうに金正日が変わるのかもしれませんし、あるいは国全体の経済の立て直しということを真剣に取り組むようになるのかもしれませんから、まだ今の時点でどうなるという話にはならないと思います。  続いて、一番恐らく重要なのは、今の軍優先という、その先軍政治ということといい、軍の発言権が強そうに見えるし、軍は一体どう考えているのかと、こういうことでありますが、やはりある意味では、北朝鮮の軍というのは我々の常識からすると非常に分かりにくい今状況にあると思います。なぜならば、通常兵力が極めて陳腐化していると。そして、それがもう今や韓国の軍事力と比較しても全く相手にならないということは事実であります。その通常兵力の近代化というのはお金がないからこれはできないわけですし、この十年、二十年を見て、北朝鮮がその部分に関して相当な力を入れているというふうに見える兆候は全くないわけです。通常兵力の近代化をやらないで軍人が満足しているというのは、もうある意味では信じられないような話でもあります。  しかし、じゃその分がむしろ大量破壊兵器、やすい兵器に回っているんだと、やすいというのは通常兵力に比べれば近代化が、現代化がやすいという意味でありますが、核兵器、そしてミサイルの改造には邁進してきたではないかと、そうであります。しかし、これも最初、冒頭で私申し上げましたけれども、今ここでやめるというのは何なんだという話になります。昨年の二つのミサイル発射と核実験というのは、明らかに北朝鮮の大量破壊兵器能力、核能力、ミサイル能力について大きな前進を示したわけであります。しかし、それはまだまだ不足なわけでありまして、これを継続してやれば、核の部分でいえば核ミサイルというものが確実に手に入るかもしれませんし、ミサイルの部分でいえばアメリカを直撃できるミサイルを持てるかもしれない。初めて現実的な目標に今なっているはずですから、そこを今一時ペンディングにしているといいますか、休んでいるわけですね。これでまた軍人が何で納得するんだろうか、私よく分からないんですけれども。  非常に、そういう意味でいうと、軍がいろんな意味で金正日に対する不満、批判というのもあるのかもしれませんけれども、現時点において北朝鮮の軍が金正日体制というのを揺るがすような兆候があるとは私は思いませんし、今のこの傾向が続くんであれば将来的にもそうではないというふうに考えます。
  84. 重村智計

    公述人(重村智計君) まあ長い将来、長い将来でいけば、北朝鮮が崩壊するのは間違いない。歴史の中で社会主義諸国、社会主義国が生き残るわけがないですし、独裁国家が生き残るわけがないんですね。これは歴史の一つの経験ですから、いずれ崩壊するのは間違いない。  その時期が十年なのか二十年なのかということなんですが、短期的に今の北朝鮮の状況を御説明しますと、まあどうも北朝鮮は集団指導体制に入ったんではないかという指摘がなされている。これは、日朝首脳会談を準備した日本側の担当者、高官たちも、どうもおかしいということをここ数年言い出している。  それから、今一番疑問に持たれたと言われる、どうも変化が起きたんではないかというのは、それは二〇〇三年の九月に四十一日間、金正日さんが出てこなかったことがあるんです。ところが、出てきた後、金正日さんが現地指導としていろんなところに視察に行くんですが、それ以前の現地指導と相当変わって、ほとんど六人、軍人四人、組織指導部の第一副部長二人、六人。この軍人四人と、六人でわきを固めて、ほとんどほかの人は入れない。それまでは党の幹部とか政府の幹部とかというのが付いていくことがあったんですが、二〇〇三年の九月以降はほとんどこの六人で囲い込んでいるような格好になっている。やはり、どうも軍に全権を握られたんではないかというのが今の言われている一つの解釈なんですが。  ただ、金正日さんと軍の唯一の目標、価値が一致しているのは、体制を維持していくという、今の体制を維持していくことがすべてなんですね。ですから、今の体制を崩壊させるようなことは採用しない。ですから、中国は盛んに改革と開放をやれと、体制は保証するから改革と開放をやれと言うんですが、やっぱり受け入れないという状態が続いている。  あと、一番の疑問は、後継者をなかなかどうも選定できない、発表できない、やはり何かがあったんだろうと。ここ数年の北朝鮮での、先ほどのお話にあった金容淳さんの死亡を始め、いろんな高官の死亡、粛清、失脚を見ていると、ピョンヤンの中でいろんな勢力争いが起きているのは間違いないだろうということは言えるわけなんですが、それが実際に崩壊につながる方向で今起きているというのは言えない。  どういう状態で崩壊が起きるかというと、唯一の条件は軍が分裂したときですね。軍が二つに割れて戦闘を始める、けんかをすれば分裂する、崩壊するんですが、軍が分裂しない限りは崩壊しないというのが今の北朝鮮のここ数年の、まあ将来を見渡した場合の現状だろうと思います。しかし、長い歴史を見てみれば結局は崩壊するんだという展望はお持ちになっておいていいんではないかと思うんですね。
  85. 岡田直樹

    ○岡田直樹君 ありがとうございます。  軍事独裁政権がこの世から一つなくなるというのは私の本願望でもありますから、その点では全く同感なんですけれども、ただ、日本が極めて近い隣国であることを考えると、余りがしゃんとハードにつぶれてしまうということは好ましくないであろうということを思うわけであります。  そして、通常兵力はそれほど恐るるに足りないとしても、ミサイルを持っている。アメリカにはまだ十分届かないでありましょうし、また反撃も怖い。そして、韓国に対しては、これは同じ民族、同胞に対してミサイルを撃つものかどうか、とりわけ核を使うものかどうか、そう考えると、一番のど元に突き付けられているのは我が日本ではないかと思うわけであります。  ノドンミサイルに対して有効なミサイル防衛がどこまで可能か、そのことは別として、それしか、ミサイル防衛しか差し当たり選択肢はないのかなと思いますが、この辺りについて、もう時間が限られておりますので、一言だけ、両公述人にお願いをいたしたいと思います。
  86. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) ミサイル防衛だけじゃないと私は思います。やはりとりわけ、今委員御指摘の日本を直撃し得るノドンミサイルというものをどう廃棄、解体させるかというのは、提起するのは日本以外どこにもありませんから、アメリカにも関心がなければ韓国にも関心がなくて、ましてやほかの世界に全く関心がないとすれば、やっぱり我々はそれを廃棄させるということを強く言うべきでありまして、それは例えば国交正常化と結び付けられると。ミサイル問題の解決というのは、例えばノドンミサイルを全部廃棄しなければ駄目だという言い方も当然できるわけでありますし、その前にまずミサイル問題の解決とは何ぞやという定義をまずしていただかないと、ミサイルというのはノドンだけじゃなくテポドンもありますし、あるいは短距離のスカッドもあります。それについてどういうふうに考えるのか。あるいはミサイル輸出の問題もあります、技術の輸出の問題もありますが。  何をもって日本政府は、あるいは日本は今ミサイル問題の解決と言っているのか不幸にしてさっぱり分からないという状況でありますので、まず最初にそこの定義をきちっと固めることが重要だと思いますし、その上で私は北朝鮮との交渉を通じた取引でその問題の解決に近づいていくことは可能だと思います。
  87. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 時間が参っておりますので、恐れ入りますが、短くお答えください。重村公述人
  88. 重村智計

    公述人(重村智計君) 簡単に一言だけ言えば、日米安保体制を生かすことが一番で、北朝鮮に対して、ノドンミサイルもし撃ってくれば、アメリカが日米同盟でもう数百発の巡航ミサイル発射するということをはっきり言えば、それでもうできないわけですからね。実際に撃たせないということに関していえば、日米同盟を機能させるということが一番重要だと思います。
  89. 岡田直樹

    ○岡田直樹君 どうもありがとうございました。  終わります。
  90. 白眞勲

    ○白眞勲君 民主党・新緑風会の白眞勲でございます。  両公述人におかれましては、私がここでお聞きすることもなく、いつもあちこちでお会いさせていただいておりまして、何を聞こうかなと逆に迷っていた部分もあるんですけれども、私とお二人との会話というよりも、今日は皆様、自民、公明、民主、いろいろな皆様がいらっしゃいますので、皆様に聞いていただきたいという部分でまたお話の方もさせていただきたいというふうに思っております。  特に、伊豆見公述人におかれましては、何年前でしょうかね、お会いさせていただいたときに、まだミサイルも、九四年のミサイルはたしか発射、九八年でしたっけね、あのミサイルが一回発射された後でしたけれども、そのうちいずれ北朝鮮は核実験するぞと、そのときから、まあ予想というのは変な言い方なんですけれども、それをはっきりと言明されていたという部分では私はへえと思ったわけでございますし、また、重村公述人におかれましては、御経歴からして、ソウルの特派員、そしてまたワシントンの特派員と、韓国、アメリカ、特に北朝鮮にとってみても非常に重要なこの二つの国で実際に住んで取材をされていたと。特に韓国においては、これは私の宣伝にもなるかもしれませんが、朝鮮日報という私の出身の新聞社と仲よしの新聞社の、今はもう特派員の事務所はお互いに持っているという中でいろいろな活動をされていたということで、非常に尊敬を申し上げているわけでございます。  まずお聞きしたいのは、今、この二〇〇二年の九月十七日の日朝平壌宣言、それと同時に、それに伴って、先ほど伊豆見公述人の方からもお話がありましたように、北朝鮮ががらっと変わったと、日本に対してですね。今まで認めていなかったものを認め始めたということにおいては、本当に大きく転換をしたことは間違いないんじゃないかなというふうに思うんですけれども。  どうも、私もそのときの状況なんかを見ていると、確かに拉致の被害者は一部帰ってきたと。それと同時に、日本の一般の北朝鮮に対する認識というものもそれとまた比べてがらっと変わったというふうに思えるわけですけれども、じゃ、それで実際、本当にあのときのあの時点であれは良かったんだろうかという検証もまた我々が考えていくそろそろ時期になっているんじゃないのかなというふうに思います。  確かに私は、まあこれは野党の立場ですが、小泉総理の北朝鮮訪問というのは一つの大きな転換点だったという部分においては、数少ない小泉総理の功績の中の一つじゃないかなというふうに私は思うわけでございますが。  ただ、ミスターXと言われている人物が日本の外務省のどなたかといろいろとやり合っていたとか、実際あのときには拉致の被害者は日本に帰っても一時帰国だという形を取っていたとか、何かその辺りで、どうも我々の見えない、何かちょっと言い方は変ですけど、怪しいと言っちゃ何ですけれども、それで実際に今、伊豆見公述人もおっしゃっていたように、北朝鮮はもうこれで拉致問題はおしまいだと、終わったものだと、それで日朝国交正常化の交渉に入って、低迷する北朝鮮経済経済協力を中心としたそういう協力を受けることによって、自分たちの体制の維持あるいは国内の引締めということも考えていきたかったんじゃないかなというふうに私は思っているんですけれども、その辺の検証、つまり政府はあれで、本当にあの対応でよかったのか、と同時に、今もこの時点で政府の、日本政府の対応はよかったのかということをお二人にちょっとお答えいただきたいというふうに思います。
  91. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) 私は平壌宣言を評価する人間でございまして、それは、もうそろそろ九月で五年になりますが、五年になっても変わりません。しかし、その後の展開でいうならば、平壌宣言、あるいは第一回目の小泉訪朝で開いた道といいますか、それをやはりそれどおりにといいますか、いい方向に歩めなかったというふうに思います。  もちろん最大の問題は拉致問題であることも事実でありますが、しかし、平壌宣言あるいは最初の小泉訪朝で大きかったことは、もちろん正常化をする意思があることを北朝鮮に明確に示し、北朝鮮もそれを確信したんだと思いますが、そのための条件として少なくとも、もちろん拉致問題の解決が必要でありますが、同時に、安全保障上の日本側の懸念というものが解消される、すなわち安全保障上の問題の解決が必要であるということが大きなテーマになっていたことが重要であった。  本来ですと、ですから日本は、私は、二〇〇二年十月以降も拉致問題に加えて核問題、ミサイル問題というものを極めて重視し、同等に位置付け、北朝鮮との交渉に当たるべきであったと思いますが、しかし実際、十月の終わりに一回だけ日朝国交正常化交渉が開かれて以降の雰囲気でいえば、明らかに拉致問題が第一、核問題、ミサイル問題、安全保障の問題は二の次、三の次ということになった。これは私は誠に残念なことであったと思います。  とりわけ、平壌宣言で私が忘れられませんのは、一番、平壌宣言の最後の一行は、日朝は別途に安全保障上の協議をすると、日朝間に安保協議を別途につくることは、これは北朝鮮が非常に逡巡していたものを日本側が最終的に説得して入れて入ったものがありますが、しかしこの単独の日朝安保協議というのは実は一回も開かれてないんです。昨年の二月の包括協議の中に安全保障が含まれましたけど、これでもそういう意味では単独のものではない。  実は、二〇〇二年の九月の平壌宣言で約束を取り付けた安全保障についての問題を協議し、解消、解決するための場というものを実は日本側は自らが使ってこなかったという点において、私は大変それを遺憾とするものであります。
  92. 重村智計

    公述人(重村智計君) 平壌宣言の問題点は、もちろん小泉総理が北朝鮮に拉致を認めさせて五人を取り返したということは評価できるんですが、しかし平壌宣言の一番の問題は、拉致問題が主権侵害だと言わなかったことなんです。拉致は主権侵害ですからね。国際法上、主権侵害は原状回復が原則。原状回復は、拉致された人たちを元に戻すというのが原状回復で、これを交渉の場で言わなかったというのは一番の欠点で、これがないためにその後の拉致の交渉がうまくいっていない。これはやはり日本ははっきりすべきだということですね。  それから、平壌宣言のもう一つ、核の問題に関して言えば、核開発を放棄するということを入れさせなかったことですね。日朝国交正常化の後には北朝鮮は核開発を放棄すると入れさせなかった。それは入れない理由は何かといえば、北朝鮮は核の交渉はアメリカとやると言っているから入れられなかった、それがもう一つの問題ですね。  問題は、やはり白委員がおっしゃったように、ミスターXとの関係もあるんですが、ミスターXとの交渉について当時の外務省の高官は一切の記録を残してない。秘密交渉の記録を残さないというのは外交交渉ではあり得ない。一切の記録を残してないというんだから、これは非常にゆがんだ交渉と言うしかないんですね。どんなに公表できなくても外交記録は残さないといけない。いずれ何十年かして公表できるというのが原則なんですが、これがないというのは、やはり日朝正常化交渉は異常であったと言わざるを得ない。  ですから、普通の外交というよりは、やっぱり北朝鮮に対するお願いをやったんではないかと。外交とか駆け引きをきちんとやらなかったんではないかという不安が付きまとう。  それから、外交文書としては、我々新聞記者で外交交渉を取材するときには必ず合意したという言葉を探すんですが、日朝平壌宣言には合意したという言葉が基本的なところにはほとんどないんですね。だから、合意してない外交文書なんだと言わざるを得ないのと、それから北朝鮮側に拉致は解決したんだと言わせる三分の理というか、一分の理ぐらいは日本側が与えてしまった。それは何かというと、小泉総理は北朝鮮に行く前に、拉致被害者八件十二人の安否情報だけ教えてくれと言ったんです。八件十二人全員返せとは言わなかったんです。ですから、北朝鮮は五人生存、八人死亡という安否情報を教えただけで、それは北朝鮮に拉致問題は解決したと言い張る根拠を与えてしまった。そこがまた問題であったと言わざるを得ないと。
  93. 白眞勲

    ○白眞勲君 正に私もその部分じゃないかなと思うんですね。結局、今こうやって日本がこの拉致問題においてなかなかその後の進展がうまくいってないというのは、北朝鮮側が拉致問題は解決済みだというふうに言っている根拠をもしかしたら日本側も、今、重村公述人がおっしゃったように、その日朝平壌宣言のあのときに話し合ったか、あるいはその前の今おっしゃったミスターXがどうこうということかもしれませんが、何かそこの間で何かがあったんじゃないのかというふうにも思わざるを得ない。それが結局、その後の今の状況にもつながってきているんじゃないんだろうかと。  それから、正に伊豆見公述人がおっしゃったように、拉致だけ、今、結局、日本の安全保障にとってみても、また拉致ももちろん重要ですけれども、プラスやはり核、ミサイルの問題、この問題についてどうも日本側のスタンスがうまくいってないという部分においては、私も非常にこれはやはり日本外交にとってみて今後どうしていくかということがまたポイントになっていくんではないかなというふうに思うんですけれども。  そういう中で、そうは言ったって、ここまで来てしまった以上、何とかしてこの拉致問題も解決していかなきゃいけないということがあるんですけれども、端的にお聞きしたいんですけれども、これ、拉致解決するためにどうしたらいいというふうに思いますか。
  94. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) 妙案がすぐ出せるということには私はならないだろうというふうに思いますが、ただ、まずは今、北朝鮮との交渉ということも一方で行うことになりました。他方で圧力を掛け続ける、制裁を続けているということは、これは北朝鮮の態度が変わらない限りは解除するという話にならないと思いますので、それはそのまま継続するのでありましょうが、それに加えて、六か国協議の枠内での作業部会ということで日朝の交渉も始まったということでありますから、一つは、その交渉を通じて、じゃ拉致問題をどういうふうに解決の方に導いていくのかということだと思いますが、もちろん第一は、北朝鮮の態度を二〇〇二年九月の段階に戻させることだと思います。  二〇〇二年九月の段階から二〇〇三年の、これいつ正確に変わったかというのは明確な時期は申し上げられないんですが、失礼、二〇〇三年じゃなくて二〇〇五年の春まで続いたですかね。北朝鮮は、拉致問題は原則として解決したと、原則としてという、あるいはほとんど解決したという言い方だったのが、現在は御案内のようにすべて解決したと。したがって、すべて解決したと向こうが言っている限りはもう取り付く島もないわけでありまして、交渉を通じて解決に持っていこうとする場合に、まず第一に我々が彼らの態度を変えさせなきゃいけないのは、もう一度二〇〇二年九月の線に戻させると。あの時点では彼らは完全に解決したとは言っていなかったわけでありまして、それが後になって完全に解決するというようなことがあり得るわけではないわけですから、もう一度原則としての解決、ほぼ解決と。ということは、まだ解決していない残された問題があり、したがってそこを詰めていくという、これが交渉の一つの突破口になると思いますので、まずそこは絶対にどうしてもやらなきゃいけないということだろうと。  それが前提になって、さて、じゃ交渉を通じてどういう形で拉致問題が解決していけるのかということが考えられるような話になるんだろうと思いますが、私は、これはかなり包括的に進めていくしかないのであろうと。すなわち、拉致問題だけが突出しても、私は、北朝鮮が態度を変える可能性というのは非常に薄いと。なぜならば、拉致問題を解決しても、核問題もミサイル問題も解決しなければ日本とは国交正常化ができない。国交正常化できなければ日本からの大規模経済援助も得られない。北朝鮮にとって得になることは何もないと。得になることは何もないと考えると、私は北朝鮮は動かないのではないかと思いますので、だとすると、拉致問題の解決というのは、実は核あるいはミサイル、それと並行してといいますか、すべてをともかく包括的に、日本政府は元々包括的に解決すると言っているわけですから、ともかく包括的に問題の解決という方向で当たって、その中で拉致問題を解決を目指すというのが望ましいのではないかと考えております。  以上です。
  95. 重村智計

    公述人(重村智計君) 唯一の方法は、金正日総書記と直談判するしかない。いかに下の人とやったって、こんなの上に伝わりませんからね。ですから、それは金正日総書記と直談判するか、あるいは金正日総書記に直接言える人と交渉するか、この二つしかない。さらには、金正日総書記に会う中国の指導者、ロシアの指導者にはっきり言ってもらう、あるいは交渉してもらう。そこが解決しないとだれも決断できないので。  金正日総書記は、二回にわたる小泉総理との会談の後で、もう三度目はだまされないと、こう言っているそうですからね。一度目は、国交正常化して経済協力資金もらえると言ったのにもらえなかった、二度目は、二十五万トンの食料をくれると言ったのに半分しかくれなかった。二回もだまされて、三度目はだまされないと、こう言っていると言われていますからね。そこをしないとやはり進展はないんで、いろんな外交の表の面と裏の面がありますから、いろいろな水面下での交渉なり接触なりは可能でしょうから、そういう形を重ねながらやはり金正日総書記と直接意思を疎通してやる。  ただし、北朝鮮が欲しいのは正常化よりもお金ですから、日本から経済協力資金をどうやってもらえるかということですから、そこをどのようにクリアするか。核問題を解決しないと駄目なのか、核問題の解決の前にも出せるのか、その辺をクリアする協議は、アメリカとの協議をきちんとした上で、北朝鮮、特に北朝鮮の指導者と話し合っていくということがない限り、なかなか進展は難しいだろうと思うんですね。
  96. 白眞勲

    ○白眞勲君 そういう中で、一つ今正にアメリカと北朝鮮が、結局私は北朝鮮の二国間、アメリカとの二国間の交渉に入りたいという彼らの論理に今正に何か六か国という枠組みの中で乗ってしまっている、結果的にですけれども。残りの五つの作業部会のうちの四つが正に付け足しみたいな形になっている、そういう印象も私は与えられるんではないんだろうかという中では、日朝作業部会がああいう形で、二日目はたしか四十五分だったと、交渉の時間ですね。四十五分といったって、結局通訳を入れれば半分の二十分でお互いに話していただけですから、二十分ということは、お互いに言いたいことを十分ずつ言っておしまいというだけの話だということになりますと、ただやったというだけの話になっているということだと私は思っているんですけれども。  そういう中で、いわゆるアメリカと北朝鮮との核をめぐるいろいろな今動きが出てきていますが、正にお二人の公述人がおっしゃっているように、寧辺の五万トンについてはこれは何とかなるかもしれませんけれども、私は、その次のハードルというのは、極めてこれ大変なハードルになるのではないかなというふうに思っております。本当にこれが解決するだけの道筋がこの六か国の中での、米朝の中で本当にうまくいくのかなと、途中で何かぐじゃぐじゃになっちゃうんじゃないかと。結局、韓国、中国がそういう今進展しているんだからさと言って食料とか重油とかが、供給を受ける。それを北朝鮮はもくろんでいるんじゃないんだろうか。正に今、重村公述人もおっしゃったように、核を全く放棄してしまったらだれにも相手されないところになっちゃうんじゃないかみたいな部分において、最終的には、私は国内の引締めと体制の維持という、金正日氏のその考えとは違った方向に向かう可能性を彼らは非常に警戒していると思うんですが、その辺はいかがでしょうか。伊豆見先生。
  97. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) どういうふうに申し上げられるのかってあれですが、北朝鮮がどう動いていくかということを考えるときの話になろうかと思う……
  98. 白眞勲

    ○白眞勲君 九十五万トンの話。
  99. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) 九十五万トンの話がまずあれですか。そうですね、それは九十五万トンは次の段階措置と言われていまして、それが本当に実行されるのかどうかは分からないというのは、私も当然そうだろうと思います。  これは、六か国協議というよりも、もう本当に米朝関係がどのくらい進んでいくのかということに応じている話だと思いまして、九十五万トンという、ものの部分を私は余り重視しない方がいいと。九十五万トンももちろんこれはそれ相当の、九十五万トンの例えば重油に相当する分の経済、エネルギー、人道支援という話になっていますから、大体九十五万トンの油が行くことはまず一〇〇%ありません。  そのうちアメリカがもし分担できるとすれば、その油は議会の承認が要りますんで、今議会は承認しませんから、行政府として出せるのは人道援助という形で食料援助なり医療援助を出すということになると。そうすると、そもそも九十五万トンの油が行くということはもう最初から全くないんですね。一番最大限に見積もっても七十五万トンとかそのくらいしか行かない。それは北朝鮮もよく分かっている話ですから、今これは大事なことは、北にとってもどれだけ物がもらえるかというのがインセンティブになっているという話ではないと。  それと、南北のコンテクストの話は、文脈で言いますと、別に六者とは関係はないわけではないですけれども、韓国は出し続けたいという意思があって、ほぼ韓国からの援助というのは制度化されていますし、これは来年、今度の大統領選挙の結果によっては随分変わってくるかもしれませんけれども、それは核問題が進展するか進展しないかとは余り関係なしにもらえる物があるというんで、これは北朝鮮の目から見れば全く別物だというふうに私は考えていると思いますし、同じことが中国に関しても言える話で、中国は、要は北朝鮮が安定してくれているということを最優先しているからこそ物を出しているわけで、これはそういう点でいいますと、核兵器をもし放棄すれば本当に極東の単なる極貧国なんですが、極貧国でそんなの相手にしないよというのは、日本やアメリカが相手にしないよというふうな話にはなる。とりわけアメリカはそうなるかもしれませんが。  しかし、中国、韓国というのは、私は姿勢はそれほど変わらないと思います。核を持とうが持つまいが、今の北朝鮮が崩壊してもらっては困る、不安定になってもらったら困るということで言うならば、韓国が支える、中国が支えるというあれは全然変わらない。ですから、極貧国ではあっても、中韓という大変有り難いパトロンがくっ付いている、そういう存在であることは、核を持とうが持たないであろうが変わらない。  だから、問題は、核を持っていると日本とアメリカとはいい関係には入らない。核を放棄しない限り、日本、アメリカとのまともな関係が持てないということだと思いますんで、それは北朝鮮が今後どう考えていくかという課題だろうと思います。
  100. 重村智計

    公述人(重村智計君) 今、白委員おっしゃったように、米との交渉の行方はこれはもう不透明である。非常に難しいのはもうそのとおりですよね。取りあえずの核戦争の封印までは行くでしょうけれども、その後は、核査察になると北朝鮮はこれまで一切受け入れていませんので、核査察を受け入れなければ核問題の解決にはならないんですよね。  ですから、結局は相当時間の掛かる厳しい交渉になる。あるいは途中で挫折するかもしれない。ただ、アメリカは今、ブッシュ政権はこの任期の二年の間に、事態が進展した、外交的に交渉しているという状態が続けばいいわけで、その状態で持っていきたいと考えているわけですね。  あと、北朝鮮の今後の行方は韓国の大統領選挙に懸かっているわけでして、大統領選挙で与党が勝利すれば北朝鮮への支援は続くでしょうけど、野党がもし勝った場合には北朝鮮への支援は相当少なくなるのは間違いない。中国は、もう今支援している状況で目一杯ですから、年間五十万トンの石油あるいは五十万トンの食料というので、これ以上はもうただでやる気は全くありませんから。ですから、北朝鮮が期待している北朝鮮の経済の回復、あるいは体制の強化につながる支援はどこからも来ないというのが現状なんで、そうすれば、いずれ日本に結局は頼らざるを得ない。結局、大きな支援、お金を出せるのは日本しかありませんので、大きな流れの中では最終的には日本に頼らざるを得なくなってくるという展望を持っておくことが重要ではないかと思いますね。
  101. 白眞勲

    ○白眞勲君 時間もそろそろでございますが、最後に一言ずつお聞きしたいんですけれども、六か国協議といっても、何となく日本の側から見るとロシアの位置付けというのがよく見えてこない。ロシアは一体どういうことを動いているんだろうかというのが見えていない。でも、私は、きっとロシアというのは何か何かやっているんじゃないかなというふうにも思えるんですけれども、その辺についてのお二人のお考えはいかがでございますでしょうか。
  102. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) ロシアは、要するにお金は出さないと、コストは分担したくないと、しかしプレゼンスは示したいというのが六か国協議の中におけるロシアの位置付けだと思います。  そうすると、今委員がいみじくも御指摘になられたように、よくロシアの存在が見えなくなるということであります。我が国が第二のロシアになるということになるのかもしれません。
  103. 重村智計

    公述人(重村智計君) ロシアは、中国とは国際的な政策を分けていて、アジアについて発言権は残すけれども、アジアの基本的な政策は中国を尊重するという、その代わり、中東なりヨーロッパの政策については中国に協力してくれと、イランについてもロシアにやらせてくれと、こういうことで、作戦でやっている。  それと、ロシアとしては、金は一銭も出す気はありませんけれども、いずれ六か国協議が合意した場合にその利益はもらいたい。例えば、シベリア鉄道と南北の縦断鉄道をつなぐという、釜山からヨーロッパへのコンテナ輸送をするとか、あるいは北朝鮮へのエネルギー支援、石油支援のときには、石油は出すけれども金は日本に出してほしいと、そういうもくろみがあるものでつながっているというのがロシアの状況だろうと思います。
  104. 白眞勲

    ○白眞勲君 本当に、お二人の公述人には本当にありがとうございます。時間になりましたので、これで終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  105. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。  両公述人にはいつも大変、公明党にも講師で来ていただいたりして、いろいろとお話を伺ってありがとうございます。  今日、お二人が北朝鮮の御専門家ということで、私も昨年の九月末まで第三次小泉内閣で外務大臣政務官という立場をやらせていただきまして、麻生外務大臣の下で、私、政務官としての地域の担当がアジア太平洋地域でございましたので、その一年弱の間ですけれども、北朝鮮との交渉担当の最前線の外務省の職員と何度か突っ込んだ意見交換をさせていただいたことがございます。大変、当時も、外務省の中にいても、この北朝鮮との交渉というのは大変困難だなということを感じました。  お二人はよく御存じだと思いますけれども、北朝鮮と日本政府の代表が交渉をすると、同じような話を五回延々と、全く一字一句変わらずに演説調で聞かされると、先方からですね。それに対して交渉していくということで、大変普通の国との交渉とは大分違う、趣の違う外交戦だなというふうに感じた記憶がございます。  今日、最初に、いろいろともう最初に立たれた方に聞かれてしまったんですが、まず、重村公述人にお伺いしたいんですけれども、日朝協議について、よく、すべてではないですね、一部と言った方が正確なんでしょうけれども、一部の新聞とか雑誌とか、あるいは場合によってはテレビメディアもそうかもしれませんけれども、日本外交が行き詰まっているという表現が出てまいります。  そうしますと、私がいた当時も外務省がすぐ批判をされる、何やっているのかとなるわけですけれども、重村公述人が雑誌等に書かれた中に、日本外交が行き詰まっているということを書くこと自体がある意味北朝鮮を利すると。実際本当に行き詰まっているのはどっちだというと北朝鮮じゃないかと、それを日本外交だけが行き詰まっているように書くのはおかしいと。  それからもう一点、これは私は合意をしますけれども、何もしないことも外交の一手段のときがあると、場合があると、これもそのとおりだと思っております。他方で、国会議員もそうですし政府の一員になってもそうなんですが、拉致問題の早期解決を望む国民の声というのがまた現前にあるわけでございまして、恐らくメディアの方はそういう、その拉致被害者が北朝鮮の中に現に生きてまだいるかもしれない、いるんだろうという前提の下に早く解決をしなきゃいけない、早くこの事態を動かしていかなきゃいけないという、ポピュラープレッシャーというんですかね、そういうのが実際政府にもありますし、国会議員、与野党超えてあると思うんです。  そういう中で、どうしても、しばらく何も進展がないと焦りが政府の中にも出てくることはこれは否めないことでございまして、そうしますとメディアから、焦ってはいるけれども何も成果ないじゃないかと、日本外交行き詰まりと書かれてしまうということがございます。  是非、ちょっと重村公述人から、このメディアが報ずるこういう日本外交行き詰まりということと、実際にこの北朝鮮との間で交渉していく中で、事態を少しでもいい方向に進めていく上で大事なポイントは何なのかということを教えていただきたいと思います。
  106. 重村智計

    公述人(重村智計君) 私は新聞記者やっていてメディアにいたんですけれども、新聞記者って大体外交を全然知らないんですよね。国際政治のいろんな交渉の舞台で取材した人というのは極めて少ないもんですからね。で、時々良からぬ政治家がいて、日本外交行き詰まりだなんてこう耳打ちして書かせて自分の出番をつくろうとする人たちがいるもんですから、それにだまされるというのはよくあるんですね。  行き詰まっているのはやっぱり北朝鮮だというのがよく分かってないもんですからね。やっぱり外交で行き詰まっているのは日本でなくて北朝鮮だと。今の北朝鮮の状況というのをよく把握しておくのが一番重要で、行き詰まっているからいろんな手練手管を使ってくるわけで、交渉に来ても交渉しないようなふりをして圧力を掛けるということをやるわけですけれども。  ただ、いろんな場をつかまえて話し合ったり交渉することは重要なんで、たとえ成果がなくてもつないでいくというのは一番重要で。ただ、残念なことにというか、かわいそうなことに、北朝鮮の外交官というのはほとんど決定権を持っていませんので、実際の外交、この前のハノイもそうなんですが、ピョンヤンで言われたとおりのことを言うだけですし、交渉する前に北朝鮮の外交官というのは必ずその交渉の予行演習をしてくるんですね。日本側に立つ人がいてやり合って、大体こういうことが出てくるだろう、じゃこう出てきたらこうしようという全部シナリオを決めてきているもんですから、シナリオどおりやったということをこっちが理解していればそんなに慌てる話ではないんでして、いずれにしろ、拉致問題についてなかなか進展しないと、新聞がどうしているかとすぐ書くんで困ったもんなんですけれども、新聞記者というのはどうも困ったもんなんですね。私もやってたんですけれどもね。  大体、政治家についてもいいこと書くとデスクに怒られますから、悪いこと書かないといけないという、これはもう新聞の商売上しようがないと思っていただくしかないんですけれどもね。何だおまえ、あいつの手先かなんて言われることになるんでね。それは逆に言うと、善かれあしかれ、政治家の方は善かれあしかれ書かれるうちが花だと思っていただくのが一番いい、書かれなくなったら終わりだと考えていただければと思うんですが。  それはともかくとして、結局一番重要なのは、やはり常に声を出していくこと。参議院でも、あるいは政治家の方々でも、やっぱり拉致問題について常に声を出して、拉致問題解決しないと駄目だという声明を出していくなり、あるいは主権侵害だという決議をしていくなり、そういう北朝鮮に対してメッセージを送り続ける、あるいは北朝鮮が何か言ったときにそれにきちんと反発するなりこたえていくというのが重要なんで、北朝鮮とのそういう意味での対話を継続していく、まあ相手にしてあげるということが重要なんですね。  ただ、北朝鮮側の意向に乗ったり、あるいは乗せられたりする必要はないので、一番いけないのは慌てることなんですよ。慌てふためいたり驚くとまずいんでして、これはいずれ解決する問題なんだと、時間が、何しろ時間たつかもしれない、あるいは解決するのは間違いないんだということをやはりきちんと理解しておくべきこと。  それからもう一つは、いずれ、十年にしろ二十年にしろ、北朝鮮はいずれ崩壊するのは間違いない。その崩壊したときに、実は拉致被害者がもっとたくさんいた、こんな人たちもいたというのが出てくるのも間違いない。そのときにやはり何をしていたかという非難だけはやっぱり受けるべきではないんですよね。きちんとやっぱり我々はそれを主張していく。  これは御存じだと思うんですが、北朝鮮側は去年の日朝の実務協議で、私的な会談のときに、八人死亡の人は出せないけど、いわゆる特定失踪者の中で二、三人出したら解決してくれないかというようなことを持ち掛けているんですよ。それは生きている人がいるということです。逆に、そういう話を持ち掛けてくるということ自体が北朝鮮も困っているということなんですね。ですから、そこは解決する道があるんだと、何もないんではないんだということをやっぱり我々がしっかり理解しておくことが一番重要だろうと。
  107. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 率直な御意見ありがとうございます。  両公述人にお聞きをしますけれども、伊豆見公述人から伺いますが、米朝協議で、先ほどから話題出ておりますが、アメリカ政府が、日本政府としては拉致問題について解決がない限り最終的な対北朝鮮の問題解決というのもないですよという基本的、原則的立場なわけですが、アメリカ政府に着目してみますと、いわゆる一つの国際社会が注目しているのは、アメリカ政府が北朝鮮のテロ支援国家としての指定を、これは金融制裁とセットだと思いますけれども、解除するかどうかという点なんですね。  当然日本政府から見れば、拉致の解決がなしでアメリカ政府が北朝鮮のテロ支援国家の指定解除をするということはあり得ないと、そういう趣旨の答弁、安倍総理も実際国会の予算委員会でしているわけですけれども、しかしながら、アメリカの国益の立場から考えたときに、確かに日本の拉致問題大変だと、しかしながらアメリカからすれば核とミサイル、自分たちの、アメリカの安全保障の脅威にならないということを優先するという立場から、もしかしたら米朝協議で、米朝の二国間協議で、この拉致問題の進展がないまま突然北朝鮮のテロ支援国家としての指定を解除するということを決断する可能性があるんではないかという、これは私というよりも専門家の間でもそういう指摘が実際あります。それについてどう思われるかお聞きをしたいんですね。  ここで、当然、私は何もアメリカ政府を牽制しているわけではないんですが、この質問で。要はアメリカの非常に合理的に考える人たちの中には、核のない北朝鮮にした方が拉致問題の解決も図りやすいでしょうという論理を、後付けかもしれませんけれども、持ち出してくる可能性もあるんじゃないかなと思っておりまして、それぞれ御見識を伺いたいと思います。
  108. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) ありがとうございます。  可能性があるのかどうかとまず御質問されれば、それはありますと申し上げるべきだと思います。  しかし、唯一考えられるのは、北朝鮮が核兵器を放棄するという段階まで行ったときだろうと思いますね。ということは、その前にまず核プログラムを放棄させなきゃいけない。ということはまだ、今始まった動きはプルトニウムを北朝鮮が増やすことを止めることを始めました。これは恐らくできます。次に大事なことは、今持っている北朝鮮のプルトニウムを明らかにさせてそれを吐き出させることをやらなきゃいけない。さらに、ウラニウムがあります。ウラニウムについても明らかにして吐き出させる。そして、そのプログラムがもう一度稼働しないように、プルトニウムをつくれないようにする、ウラニウムもつくれないようにするということで、その施設をつぶすという話です。そして、その後にようやく核兵器の廃棄の問題、現有の彼らが持っている廃棄の問題が出てきます。そこまで来たときにアメリカがテロ支援国家リストから北朝鮮を外すということは、私は唯一考えられるとすればその段階だと。  しかし、そこまで行くには相当大変でありますし、まず時間的に。その時間の間に、逆に言えば日本が幾らでもまだやり得る余地というのはたくさんあるから、今心配するという、この点についてアメリカが途中で変わるかどうかと心配するかどうかというならば、全く心配する必要はないと申し上げます。
  109. 重村智計

    公述人(重村智計君) 今御指摘のあったように、テロ支援国家指定が早期に解除される可能性は非常にあるんですね。なぜあるかというと、アメリカが北朝鮮をテロ支援国家に指定した理由はただ一つなんです。日本から逃げた日本赤軍の人たちをかくまっているということなんです。ほかの理由はないんですよ。一時、一時中東のテロ組織を支援したということを書いたことあるんですが、次からなくなった。それから、日本の拉致問題をテロ支援国家指定の理由には挙げていないんですよ。ですから、簡単に言えば、北朝鮮が日本赤軍を追放すればテロ支援国家指定の理由はなくなる。  これは実は以前から北朝鮮は要求していて、アメリカは、それじゃ赤軍の連中を追放しろと言うんですが、できなかったんです。なぜできなかったかというと、亡くなった金日成主席が日本赤軍の連中を保護しろという指示を出した。保護しろという指示が出ている以上、本人たちが出ていくと言わない限り追放できないんですよ。それが最大の理由なんですね。  テロ支援国家を、指定解除を止めることは難しいんですが、延ばすことができるのは、日本政府がもしいわゆる赤軍派の連中を追放したらすぐ捕まえるということを言うことですね。それから、赤軍派の連中を北朝鮮から追放するについては日本政府は交渉は一切しないと。つまり、北朝鮮側の要求は罪に問わないでくれ、刑務所に入れないでくれ、そうしたら出せると、こういうことですから、そこをはっきり言うことですね。  それから、やっぱりもう一つは参議院で、参議院ででも結構なんですが、アメリカ政府に対してテロ支援国家を解除するなと、拉致問題が解決するまで解除するなと決議案を出すことですね。それでアメリカに働き掛けていくというのが非常に重要だろうと思いますね。
  110. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 多分数十秒しか時間がございませんので終わりたいと思いますけれども、今の最後の話題のテロ支援国家、アメリカ政府が北朝鮮に指定しているものの解除というのが拉致問題の解決なしに起こり得るというふうに私は、今の両公述人の、それはタイムのラグはあるにしても理解をしまして、この点について政府また国会でしっかりどういう対応をしていったらいいか議論を深めていかなきゃいけないというふうに痛感をしたということを申し述べて、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  111. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。今日はお二人の公述人、本当にありがとうございます。  最初に、北京での六か国協議の評価について重村公述人にお聞きをいたします。  先月のこの協議が共同文書を採択をしたわけで、私たちは、北朝鮮の核兵器とその開発計画の放棄に向けた最初の具体的な一歩であるし、また朝鮮半島の非核化や日朝の関係改善を含む五つの作業部会が決められたことは北東アジアの平和と安全にとって重要な一歩だと考えております。伊豆見公述人からは一歩であれ半歩であれ進むことは意義があるというふうなお話がございましたけれども、重村公述人はこの先月の北京での協議についてどういう評価をされておるか、まずお聞きしたいと思います。
  112. 重村智計

    公述人(重村智計君) 前回の六か国協議の合意は、核交渉という点から見ればまだまだ核交渉に全く入っていないという合意ですね。核交渉に入って一番重要なのは何かといったら査察なんですよ。査察を全く受け入れさせていないという意味では、北朝鮮の核問題を解決する交渉には全く入っていないということなんです。一応その前々段階ぐらいの状況にあると。  もう一つは、アメリカがこの段階で譲歩した、北朝鮮も譲歩したんですけれども、のは、結局、ブッシュ政権のいわゆる事情による、中間選挙で負けたというそういう事情があって譲歩してしまったということなんですが、ただ、前回のジュネーブ合意と違って唯一期待、一つ期待が持てる、あるいは進展する、期待が掛けられているのは、中国が参加していて、中国が北朝鮮に対するおもしになっている。  つまり、今回の場合には、北朝鮮が五十万トンの重油あるいは百万トンの重油なんというのを要求したんですが、結局、いや五万トンでいいんだ、あんなの五万トン以上あげる必要はないと、こう言ったのは中国ですね。ですから、その中国が非常に現実的な対応をしている。それから、もし約束を破った場合には、合意を破った場合には、中国のメンツを傷付けることになるので、その中国が加わって、中国が監視人みたいな役割をしているところではこれまでと違った要素があると。その意味では期待が、一つの期待が持てる可能性があるということです。ただ、前途は決して楽観はできないということが現実だと思いますね。
  113. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。  その北京での協議を受けて今月の五日と六日に米朝国交正常化の作業部会が開かれ、そして七、八には日朝の国交正常化の作業部会が行われました。この点について伊豆見公述人にお聞きをするわけですが、米朝国交正常化については、その目標に向けて努力するよう約束することを再確認もし、北朝鮮側は完全な非核化を実現する必要性を再確認したなど一定の協議の進展が見られたわけですが、日朝協議はお互いの立場を表明し確認をするだけで、時間も非常に短く終わりました。  重村公述人の先ほどのお話では、そもそも今、日本と交渉する高官自体が北朝鮮にいないんだというような背景のお話もあったわけですが、こういう日朝協議と米朝協議の違いができていることについてどういう御意見をお持ちか、お願いしたいと思います。
  114. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) やむを得ないとまず思います。それは、先ほど御説明いたしましたように、米朝でいうならば、アメリカの政策が変わったことが大事なんであって、北朝鮮は一貫して、ですからアメリカと直接交渉したい、取引をしたいと望んでいましたが、それに対してアメリカが積極的にこたえるようになった。  そして、この前の作業部会のお話をお触れになられましたけれども、その前にまず十月三十一日に北京で米朝は協議を持ちました、クリストファー・ヒルと金桂冠というのはですね。そして十一月にも、二十八、九だったですかね、一回持ちました。そして、十二月に六か国協議が久しぶりに再開され、それで一月には今度三日間、ベルリンで十六から十八まで協議を持つと。そういうものを繰り返してきてやった三月の五日、六日の米朝協議でありますから、もうそれと、日本みたいに昨年の二月以降ずっと協議がないままに来て、久々に一年一か月ぶりに再開される協議。しかも、日本側が政策を変えた、姿勢を大きく変えたわけでもないというときになれば、もうそれはおのずと米朝協議と日朝協議に差が出るというのは当然であったということだと思いますし、日朝協議の場合にはもう少し時間を掛けてみないことには、北朝鮮側がどれだけ変わってくるかというのは今の時点では分からないと思います。
  115. 井上哲士

    井上哲士君 両公述人にお聞きいたします。  二月の十九日の日経新聞に、同社とアメリカ戦略国際問題研究所が行ったシンポジウムの記事が出ております。その中で、元アメリカ国防副次官補のカート・キャンベル氏の発言が載っております。こう述べられております。  六か国協議内部では力学が変わりつつある、アメリカと日本の間に距離感が生まれ始めている、アメリカ側では、日本の拉致問題は戦略的な問題ではなく、感情的な問題だとの意見を持つ人が増えている、アメリカが六か国協議の合意を探る中で、現在最も重要なパートナーは恐らく日本ではなく中国だと、こう述べられております。  私はまあごく一部の意見かなと思ったんですが、その後、今月の四日に東京新聞にジェラルド・カーティスさんがやはり書かれておられまして、こう言われていますね。  米国人は拉致被害者とその家族に対して深い同情を抱いている、米国は日本の立場を配慮して、同情の念を表明し続けるだろうし、北朝鮮に問題を解決するよう促すだろう、だが、一番のねらいは核兵器放棄であることを忘れてはいけない、外交戦略は現実を直視して展開していかなければならない、世界は北朝鮮の核兵器放棄を求めている、安倍政権もそうだが、同時に拉致問題の解決も求める、後者の追求のため、前者に非協力的であるように思われてはいけない、日本の対米戦略の再考が求められていると、こう言われておりまして、同様の御意見かなと思ったんですね。  伊豆見公述人もこの核問題の位置付けというものをきちっとするということを繰り返されておられたわけですが、米国内でこういうような意見があることについて、それぞれ感想をいただきたいと思います。
  116. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) アメリカ人の中では、今委員が御指摘になられた議論というのはかなり多いということだと思います。たしか、カート・キャンベルという人は民主党の人ですから、よりその部分を明確にかなり厳しく言う人であろうと。まだ、比べれば、共和党系の人たちの方がもう少し日本に対して同情的ということにはなると思いますが、しかし、明らかに今アメリカはかじを切ったわけでありまして、エンゲージすると、関与するという形で北朝鮮の核問題を解決しようというような話になれば、やはり日本にも同調してほしいという気持ちになるのはよく分かると。  中国、中国と言っているのは、それは例えば、私は、キャンベルさんなんか、あるいはカーチスさんみたいに日本ということもよく分かっている人からすれば、なぜそこが中国になってしまうのかと、本来だと日本だろうと。だけど、今、日本を挙げて言うことはできないですよ、今のブッシュ政権からしますと。なぜならば、その政策がかなり今、日本とアメリカはずれてきちゃっていると。そこに対して口惜しいという気持ちが相当あるんだろうと思います。  ですから、本来、六か国協議の枠内でもアメリカが最も信頼できるパートナーであり、一緒に同調してこの問題の解決に歩めるのは日本だと、私はやっぱりアメリカの多くの人たちは思っていると思いますが、残念ながら今そういう形になかなかなっているように見えないんで、中国、中国と言わざるを得ないという状況があると思います。
  117. 重村智計

    公述人(重村智計君) この意見は別に驚くべきものではなくて、六か国協議の始まる当初からアメリカが抱いていた考えでしてね。では、なぜ六か国協議をやったのか。つまり、米朝の直接交渉を北朝鮮は求めている。しかし、六か国協議をアメリカがしたというのは、ブッシュ政権はもちろん直接交渉も嫌だったんですが、核問題の解決をアメリカだけに責任を負わされるのが一番嫌だった。だから、中国を引き入れて中国に責任を負わせようということで六か国協議を始めた。  そこに日本がメーンのプレーヤーであるかないかって、メーンのプレーヤーであるわけがないんでしてね。メーンのプレーヤーになったら、逆に今度は責任を負わされるわけですから。必要以上に日本が、そこにおれを主役にしろと言ったら、おまえ責任持てと、こう言われるだけの話ですから。  アメリカが一番心配しているのは何かというと、合意したときに金を出すのは日本なんですよ、金を出す日本にそっぽを向かれると合意が実行できなくなる。そこを担保しておきたいために、こういう、人によっては脅しを掛けてみたり、人によってはなだめすかしてみたりということを言っているだけで、別に中国を重視して日本を外すという意味で言っているわけではない。アメリカは、あくまでもこの問題を中国にも責任分担させて中国に負わせようということで始まったのが六か国協議だという基本認識が、我々にしてみればそう変わった話じゃないということなんですね。
  118. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。終わります。
  119. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  今日は、御両人、公述人として来てくださいまして本当にありがとうございます。  社民党は、前党首土井たか子さんの時代から北東アジア非核構想、北東アジア安全保障構想を訴えて、先日も大統領来られましたが、モンゴル、国連で非核国家宣言を出していらっしゃるモンゴル、韓国、中国などを訪れ、非核構想、安全保障構想を発表いたしました。  先日、武大偉さん、六か国協議の議長が社民党本部に来られて、決議案の中に社民党の提案してきた安全保障構想を入れましたとわざわざ言ってくださいました。  それで、御両人にお聞きをいたします。  今日の話が全体としてそのことについてだというふうにも言えますが、北東アジアにおける安全保障構想、非核構想について、どうやって実現するか、あるいはそのビジョンなどについてどう思われるか教えてください、どう考えていらっしゃるかお話しください。
  120. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) 私は北東アジア地域に非核地帯ができることは望ましいと思いますが、しかし、現実はますますその道が遠くなっていると。すなわち、昨年の十月九日の北朝鮮の核実験によってその構想の実現というのがより遠のいてしまったとまずは思います。  そうしますと、当面我々が取り組まなきゃならないのは、その北朝鮮の核能力がこれ以上向上しないように抑えることでありますし、そしてその次に今の北朝鮮を核保有国から非核保有国へ変えていく、すなわち非核化を実現するということだと思いますが。それでも、北東アジアということを考えますと、周辺に中国、ロシア、そして太平洋を挟んでアメリカという核保有国がいるわけでありますんで、まだまだそこまで来ても北東アジアの非核化、非核地帯化というものを追求する道は遠いと。しかし、そこを目指して努力していくのは、それは当然のことであろうかと思います。
  121. 重村智計

    公述人(重村智計君) やっぱり、北東アジアの非核地帯って、北東アジアの非核化というのを呼び掛けないと、ここで北朝鮮の核を阻止できない。北朝鮮の核開発がもし、もし進展すれば、あるいは日本も持つかもしれない、韓国も持つかもしれない、台湾も持つかもしれないとみんな心配しているわけでしてね。その心配をてことして、例えば今行われている六か国協議を、うまくいけば今度は外務大臣級に格上げすると言いますし、更にそれを首脳級に格上げして、六か国のそういう安全保障体制、六か国で東アジアの非核化問題を話していくという機構をやはりつくっていくというのが非常に重要でないかと思うんですね。それのイニシアチブを取るのは、やっぱり日本が一番非核国家として取るべきだろうと思いますし、その発言を続けていくこと、あるいはそういう組織をつくっていくことが一番重要であろうと思います。
  122. 福島みずほ

    福島みずほ君 私もこれどう考えたらいいのか実は悩み続けているのですが、北朝鮮に対する経済制裁について御両人どうお考えでしょうか。
  123. 伊豆見元

    公述人(伊豆見元君) どの経済制裁ということでおっしゃっていらっしゃるのかあれですが、少なくとも今、日本が行っていること、国連の安保理決議に基づいて行っていること、これは当然続けるべきでありまして、それは国連の懸念が解消されるまで、国連決議に北朝鮮がきちっと従うまでは続けるべきで、それに加えて独自制裁を行っているということも、これも私は基本的に構わないと思います。  やはり、昨年の北朝鮮の取った二つの行為、ミサイルとそして核実験ということをいかに我々が深刻に受け止めているかということを常に示し続けなきゃいけないという点では、私はこの経済制裁は続けるべきだと。しかし、それだけでは絶対に解決しないのも明らかで、日本の経済制裁が私、有効な効果を上げているというふうには考えておりません。ただ、効果がないからやめた方がいいとは思いませんということであります。
  124. 重村智計

    公述人(重村智計君) 現在取られているいろんな経済制裁は当然だろうと思うんですね。  これ、今まで北朝鮮は日本の主権を侵害したり、あるいは覚せい剤を密輸したり、違法な行為をたくさんしてきた。ところが、違法な行為をたくさんされたにもかかわらず、日本政府はこれまで処罰を一回もやっていない。つまり、処罰をしないということは、やっていいということを言ってきたわけですね。覚せい剤が密輸されても、するなとは言わなかったと、言わないということはやっていいということなんで。それはやはり日本国民の安全と生命、財産を守るという立場からすれば、はっきり物を言わなきゃいけない。はっきり言うことをやはりしなかったことがここまで事態を悪化させたと。そういう意味では経済制裁は、これはもう仕方がない。北朝鮮に国際的な秩序は何かということをはっきり理解してもらう上では必要だと思う。  ただ、もう一つ考えていただきたいのは、経済制裁というのは、何もここで北朝鮮と話合いをしないとか交渉をしないということではなくて、逆にこの経済制裁を外交カードとして、北朝鮮が対応すれば経済制裁は解除できるんだというカードとして使えるんだということをもう一度理解していただければと思うんですね。
  125. 福島みずほ

    福島みずほ君 どうもありがとうございました。
  126. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  127. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  128. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) それでは、引き続き公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  本日は、平成十九年度予算三案につきましてお二方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度で御意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、国民生活について、公述人経済ジャーナリスト荻原博子君及び国立感染症研究所ウイルス第三部長田代眞人君から順次御意見を伺います。  まず、荻原公述人にお願いいたします。荻原公述人
  129. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) ただいま御紹介にあずかりました荻原です。  今日は、私、今忌憚のないところをいろいろ話してくれということなので、折々考えていることをここで述べたいと思います。  まず、私、今の政治で一番大切なのは、みんなが誇りを持てる、一人一人が誇りを持てる国をつくっていくことだと思います。  今なぜこういうことを言うのかというと、やっぱり経済が今グローバル化されている。グローバル化されている中で、その中で一番言われているのが規制緩和と競争ですね。これは、例えて言うなら、この規制緩和、例えて言うならどういうことかというと、今まで動物園があったわけですよね。動物園のおりの中には、ライオンのおりもあって、トラのおりもあって、ウサギのおりもあって、タヌキのおりもあったわけですね。ところが、このおりを全部一斉に取り払ってしまう、そうすると一体どういうことが起きるのか。  よく競争社会という中で言われているのが、適正な競争がなければ相互に伸びていかないだろうという、そういう意見が言われているんですけれども、それは例えばトラとライオンが競争したときには相互に切磋琢磨できるかもしれない。ところが、動物園のおりを一斉に取り払ってしまうと、まずトラもライオンもウサギをねらうわけですね。ウサギとかそれからタヌキ、こっちの方に跳んでいってこれを何とか食べようとする。  実は今、この規制緩和で行われているのがこういう状況で、本来この規制緩和の前にしなければいけないのは、トラとライオンはこっちでおりを取り払うけれども、タヌキとウサギは線を引いておこうねというようなことがまずあってから規制緩和をしなければいけなかったんですが、実はそれが明確な線がないままに規制緩和がスタートしてしまった。その結果、どういうことが起きたかというと、これが今言われている格差というものにつながってくるわけですね。実際に、このおりを全部取り払ったことによって大都会の資本が地方にだあっと行ってしまった。  実は、私のふるさともそうなんですけれども、今の子供たちの遊び場というのは皆さんどこか御存じでしょうか。昔は商店街だったり、それから神社の軒下だったり、いろんなところで子供は遊んでいたわけですよね。ところが、今の子供たちの遊び場はジャスコです。ジャスコに象徴されるような大型、まあジャスコって、済みません、民主党の、じゃ、イトーヨーカドーと言いましょうか、イトーヨーカドーに象徴されるような大型何と言うんですか、大型店ですね、イオンです。そういう大型店にお母さんが買物に行く。子供も一緒に付いていって、お母さんが買物をしている間、ゲームセンターに行ったりいろいろして、そこで遊んでいる。ですから、もうそういうところが今地方の子供の遊び場になっているんですよね。  じゃ、実際にその周りの商店街はどうなのか。商店街はお金が落ちないからシャッターだらけになっています。これは私の地元の長野県佐久市というところなんですけれども、この佐久市に、佐久平に新幹線が来ればきっと佐久は良くなるだろうと思って誘致をして、新幹線と一緒にやっぱり大型店舗が一杯やってきた。今、佐久の町は壊滅状態ですね、シャッター街で。ですから、結局そうやって来た資本が稼いでいるお金はどこに行ってしまうかというと、地元に落ちないで、やっぱり東京に持ち帰られてしまうんですね。これがやっぱり地方がどんどん貧しくなって、都心の資本が大きくなっていく、そういうやっぱり一つの形になってきている。  それからあと、同じ都心の中でももうかっている人ともうかってない人、今一番もうかっているのはマネーゲームをやっている方ですね。ですから、本来例えば下町でいろんなメリヤス編んだり板金やったりしながら、もう本当に汗水流して働いているお父さんたちがもうかっているのではなくて、ヒルズにいながら冷房の中でコンピューターをいじっている人たちが一番もうかっている、そういうやっぱり社会になっている。  これが、今、ですから競争というのがどういう形で行われているかというと、同じ力の者同士が競争をしているのではなくて、強い者が弱い者と戦う、戦うというよりは、弱い者を食べてより強くなっていく、これがやっぱり今のグローバル化している社会だと思います。  ここでサラリーマンの生活について、私はいろんな御家庭の家計をいろいろ見ているので、そういう御家庭を見ていて思うのは、ここ景気回復と言われていても、そこでサラリーマンの御家庭が非常に裕福になってきているとか、余裕が出ているとか、ゆとりが出てきた、そういうのが全く見られないんですね。実際に国税庁の調べでも、サラリーマンの給料はここのところ六年ですか八年ですか、連続して下がっています。実際にその家計簿を見ても余裕の出ている御家庭が非常に少ない。  特に今、昔は例えば銀行マンなんというのはすごくいい職種だったわけですよね。ですから、いったん銀行に入ればもう後は一生食うに困らない、そういう商売だった時期がありました。ところが、今銀行マン、大手銀行銀行マンの平均退職は五十歳ですね。五十歳になると、じゃ、このまま会社に残るのか、それとも辞めて、その会社を辞めてどこか自分で独立するのか、そういう道を選ばなくてはならない。会社に残ると、今まで千二百万ぐらいだった年収が七百万ぐらいに下がるわけですね。でも、それでもやっぱり外に出るのが怖いという人はそこに残っていく。ですから、本来、まあそれが本来の姿だったのかもしれませんけれども、取りあえずそういう銀行マンの家計にさえもそういう状況が出てきているというのが現状です。    〔委員長退席理事吉村剛太郎着席〕  今、中高年の方のうつ病が非常に多いと言われています。それから自殺も非常に多いと言われています。この大きな原因というのは、やっぱり自分たちが育ってきた価値観と今のグローバル化された社会の価値観が余りにも違う、そこら辺のところで大きなひずみが出ているんだと思いますけれども、実際中高年の方の自殺が多いというのは日本が世界で一番だそうですね。そういう状況が今の日本にあります。  じゃ、その中高年の下、若年層はどうなのか。この間二十歳の人たちといろいろ話をしていたら、もうこの若年層で、就職できた人はいいんですけれども、できなかった人はもうほとんど将来に対しての夢は何もないですね。彼らもやっぱり仲間のうちでもうかなり自殺をする人が多いと言っていましたけれども、多分若い人たちも希望を失っている。再チャレンジといいますけれども、やっぱり今の三十代の氷河期、就職氷河期にフリーターになった方は、どうしてももう立ち直ることができないような今せっぱ詰まった状況があります。ですから、そういう意味では非常に、負けている人がますます負けていくというようなそういう厳しい現実が今起きていると私は認識しています。  じゃ、一体そういう中で誇りの持てる社会にするにはどうすればいいのか。まず、私一つ思うのは、職人さんとか、昔、日本には、日本がこれから行かなければいけない道というのは、アジアの中できらりと光る宝石のような、小さくてもいいからきらりと光る宝石のような国になっていかなければいけないと思うんですね。そうなるためには、日本が今まで培っていた技術をしっかりこれ磨きを掛けて、それで商売できるようにしていかなければいけない。  じゃ、その技術というものはどういうものかと。例えば大工さんというのがありますね。大工さんの技術は一体どうなのか。今、大工の、私は以前、大工さんといろいろ知り合いで、話を聞いてびっくりしたことがあって、皆さん、建築家にお家を造るの頼むと、こんな分厚い設計図作るんですよね。それで家を建てるわけですね。ところが、大工の世界というのは、たった二枚の図版、そういう図版というのを、たった二枚ですよ、これで東北の大工も九州の大工もそれを見て同じ家が建てられるんですね。そういう、何というか、物すごく高度な技術を大工の世界は持っている。  じゃ、この大工の世界が今どうなっているのかというと、今、大工は、ほとんど技術に関係なく、大手ハウスメーカーの下請に組み込まれています。ですから、大工さんと飲んでいると時々怖いことを言うんですけど、いや、もうあの施主は何かちょっと生意気な施主だから柱一本抜いてやったよと。昔の職人は、そんな、どんなに施主があれだろうが、自分の技術に誇りを持って、自分の仕事に誇りを持っていたんで、そんなことはしなかったですね。ところが、今や大工は、ただ時給幾らでたたかれる下請にもう格落ちしてしまっている。ですから、どんな技術を持っていてもそこでは発揮できないわけですね。そこでは、例えば東南アジアから来た、ボルトで家をだだだって留めていく人と同格になってしまっているんですね。でも、それはやっぱり日本の今まで培ってきた財産の損失だと思いますね。  本当に、例えば大工の世界で、だから、大工の世界と、あと中小企業もそうですよね。日本の中小企業というのは、非常に切磋琢磨していろんな技術を持っている企業が多い。でも、これがやっぱり大手企業の下請に組み込まれていってしまう。そういうような状況の中で本当に限りなく規制緩和をしていくと、単なる資本の理論だけになってしまうと私は思います。  単なる資本の理論になってしまうと、これはアメリカですよね。アメリカは確かに六〇年代はフォードもGEもぴかぴかのあれでしたね、そこに勤めている人たちは自分たちがアメリカを背負っているんだという自信を持ちながらそこで働いていました。ところが、今やもう本当に破綻寸前のよれよれの会社になっていて、アメリカで今、アメリカの産業自体が製造業というのはもうほとんど衰退してきて、今、金融業が七割を占めていると言われていますね。多分、日本もこのままいくとそういう形になっていくんだと思います。そうすると、確かに金を稼ぐ分にはいろんなものが稼げるかもしれませんけれども、ただ、そこで暮らしている人たちが本当に誇りを持って暮らしていけるのか。  私は思うんですけれども、やっぱり人間は、例えば子供たち、今子供の問題って非常に大きいですけども、お父さんが誇りを持って働いているお父さんを見ながら育ってきたら、子供もそれは何かしらのものを感じていくと思いますね。ところが、お父さんが下請にいじめられ、それから、上の人に何かこづかれ、それから、いろんなことで、うちはお金ももうからずみたいなことになると、よおし、おれもカツアゲしてやろうじゃないかという子供も育ってきちゃうんじゃないかと思いますね。  ですから、その子供の問題というのは、決して子供だけの問題ではないと思う。それはやっぱり、親がどんな仕事であろうが誇りを持って臨めるような仕事を持っている、その誇りを持つことと、じゃ、グローバル化した中で生産効率が下がってしまうじゃないかという話も一方にあるかもしれませんけれども、そこを何とか分けていくのが、例えば大工の技術だったら大工の技術を、こんなすごい技術が日本にはあるんだ、例えば左官の技術。  左官というのは、もう東京には七組ぐらいしかないんですけれども、左官のすごいところは、土壁ありますよね、あの土壁というのはリサイクルできるんですよ。土壁というのは、全部壊してもそれをまた違うところに行って、練って、また壁造ることができるんですね。日本の家もそうですね、従来の家もそうですね。在来軸組み工法の家というのは、その家が例えばそこに、そこから朽ち果てたとしても、そこでリメークしてまた違う家を建てることができる。  そういうような日本の本来持っている非常に高い技術、そういうものを生かしていけば、それは商売になっていくんじゃないかと思いますね。そこのやっぱり道筋を政治なりなんなりで付けていく。そうすると、日本は、私は、本当にきらりと光る東洋の宝石のような国になっていくんじゃないかと思います。  もし、そういうことが、ですから、経済効率第一主義という、今例えば規制緩和というのが盛んに行われていますけれども、その規制緩和、これは功罪ありますけれども、極端な規制緩和の、この間バスの事故の例がありましたよね。  バス業界、深夜バスというのは、皆さん、規制緩和でかなり、千五百台ぐらい、千四百ぐらい、ちょっとど忘れしましたけれども、一千社ぐらい、千二、三百社、規制緩和で新規参入業者が増えたんですよね。その七割がバス十台以下の会社なんですよ。規制緩和する前は、バス料金というのはそれなりの料金があった。ところが、規制緩和で新規参入がどおっと増えてきたんで、バス料金自体が半分になってしまった。そこに、だから、参入してきたときには、おお、バスはもうかるぞってみんな参入してきたわけですね。ところが、参入してきてみたら、料金がどんどん下がっていっちゃうんで、バス十台以下のところはもう本当にフル稼働しなければやっていけない。運転手が眠れない、眠らない運転手が事故を起こすという悪循環でこの間悲惨な事故が起きました。こういう悪循環が非常に至るところに規制緩和の後に起きてきているような気がする。  実際に私なんかはいろいろ金融商品のことを書いているので、金融庁なんかに行って、こういう例えば外国為替証拠金取引なんて早いところこれなんとか規制掛けないともういろんな人が被害に遭うんじゃないですかと言うと、いや、今は規制緩和の方向ですからね、いろんなことが起きてきたら私たちもそういうことができますけど、起きてないのに、いや、規制緩和の方向に逆らうわけにいかないよと。そういうような状況があって、それでたくさん被害者が出てくると、さあということでできるということなんですね。  でも、それは、やっぱりさっき言った、動物園のおりを最初に全部取り払って、さあ、見てみたらウサギばっかり食べられていると、じゃ、ちゃんとウサギのところはさくしようねと言ったときには、もうウサギは絶滅危惧種になっているかもしれませんね。ですから、そういうことがやっぱりあらかじめ、政治の力で前もってやっていってほしいと私は思います。  ちなみに、この数年間を振り返ってみると、確かに企業の業績はウナギ登りに上がってきました。これはグローバル化のせいだと思います。実際に、竹中さんは、一番最初に、ジェット機は前輪が上がると後輪が付いてくると言っていましたね。でも、前輪は上がったけど、今、後輪が付いてきてないんですね。それが庶民の生活の実感だと思います。多分これは街角で十人が十人、景気回復の恩恵を受けていると思いますかと言うと、普通の新橋のちょっと一杯入っているおじちゃんたちに聞けば、絶対にそんなことはないよと言うんじゃないかと思いますね。そのぐらいやっぱり正直な庶民の感情としては、景気回復というのは一体どこにあるんだろうというのが実際のところじゃないかと思います。  それどころか、ゼロ金利が、ゼロ金利そのものは恩恵もあったけれども、やっぱり年金生活とかそういう人たちにとっては非常に大変な状況を生み出している。  それから、あと、不良債権の処理なんです。私は一つちょっとおかしいなと思うのは、不良債権の処理、これ国を挙げてやりましたよね。それで、かなりのお金がつぎ込まれました。その間に、庶民はかなり、さっき言ったような、いずれは景気回復するからということで耐える生活を続けてきたんですけども、実際にその不良債権をつくった張本人、経営者がほとんど牢屋に入れられてないですよね。やっぱりそういう人たちは一体どういう経営をしてたのということをまず問い詰められなければならないはずなのに、どういうわけか分からないけど、とにかく不良債権を処理しなきゃっていうムードの中でどんどんどんどん推し進めていたという感じが、これが庶民的な感覚です。  ですから、そういう意味では、もちろん政治も、政治にもやっぱりある程度の責任はあったんじゃないかと思いますけども、そこの責任追及もないまま、結局、不良債権処理に多額に使われたお金というのは、もしかしたら庶民がその分負担しているのかなという私は気がします。ですから、そういうことでどんどん家計からお金が出ていくと、とにかく今、家計はお父さん一人ではやっていけないんですね。ですから、しようがなくお母さんも働きに出る。今、何か働きに出るときに女性の云々かんぬんという話もいろいろ出てきますけれども、でも、実際に今働きに出る人は、やりがいのある仕事を求めてというところまで行っていない人が多くて、とにかく何とか家計を助けなければいけない、そういう一心でパートに出、子供を保育園に預けという方が多いと思います。  それはそれで、そういう形態で行けるところはいいけれども、ああ、そうですね、どうも時間が来てしまったようなんですが、とにかく、実際にそういうある程度安心してみんなが生活できる環境になければ誇りを持った生活というのはできないんじゃないかと思います。誇りを持てない中でプライドだけが高いと、これは変なファシズムに乗っていってしまう危険が私はあると思います。  ですから、本当に生活が充足し、それから誇りが持て、安心して暮らせる、そういう社会をやっぱり政治にお願いしたいと思います。
  130. 吉村剛太郎

    ○理事(吉村剛太郎君) ありがとうございました。  次に、田代公述人にお願いいたします。
  131. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) 国立感染症研究所の田代でございます。よろしくお願いいたします。  今、荻原先生から、安心して生活できる政治ということお話がありましたけれども、私は国民生活を脅かす非常に憂慮すべき状況が今我々の身近にだんだん近付いているということをお話し申し上げて、それに対して政策として今どういうことを第一にやらなければいけないかということを幾つか提言したいと思います。  現在、鳥のインフルエンザ、高病原性の鳥のインフルエンザが東南アジアを中心にして広がっておりますけれども、これが新型インフルエンザ、人の新型インフルエンザに変身して大流行を起こすのではないかということが世界全体で非常に心配されているわけです。  これに対して、昨年来、国会でもいろいろ質問が出ましたし、それから政府においても各方面で準備が進められているというところなんですが、一般に、ほかの国と比べますと、日本の危機意識というか、それが非常に希薄なように感じます。それが非常に心配されるところです。なぜこういうことがきちっと国民一般、それから政策を策定していくそういう方々の間に浸透してきていないのかということが大きな問題ですけれども、一つは正確な情報が不足しているということと、また一方で楽観的な意見がかなりあちこちから出まして、それでその結果、実際の政策担当者が大したことないだろうということできちっとした政策を打ち出してこなかった、若しくは予算化してこなかったというそのツケが今回ってきているのではないかというふうに考えております。  三年以上、既に三年前になりますけれども、東アジアを中心にしてH5N1型の高病原性鳥インフルエンザというのが蔓延しております。日本でも二〇〇四年の初めに山口県、それから大分県、京都府というところで大きな被害が出たことは御記憶にあると思いますが、その後、鳥のインフルエンザは東南アジアを中心にして、さらに中国から南シベリア、中東、インド、ヨーロッパ、アフリカというふうに非常に広い範囲で広がって、既に三年を経過しております。既にそういう地域では鳥の間でそのウイルスが定着をしてしまっておりますので、我々は今後近い将来、しばらくの間そういう鳥のウイルスの脅威にさらされ続けなければいけないという、そういう状況になっております。  それで、本年になりましても、再び宮崎県、岡山県で鳥の間での流行が起こって大きな経済的な問題になったことは御記憶に新しいことだと思います。現在の鳥のH5N1型のウイルスというのは特に病原性が強いと、過去我々が経験した鳥の高病原性のウイルスの中でも最も病原性の強いウイルスであるということが心配されるところであります。  それで、鳥のウイルスには弱毒型と強毒型がありますが、弱毒型のウイルスというのは鳥の呼吸器と消化器の表面だけに感染しまして、普通鳥は全く病気を起こさないで我々は気が付かないわけですけれども、高病原性の鳥のウイルスというのは鳥に全身感染を起こして、通常四十八時間以内に一〇〇%鳥を殺してしまうという非常に恐ろしい病気です。  これに対して、鳥の問題として皆さん大変心配されているところなんですが、実はこれは鳥だけの問題ではありませんで、ここから人の健康に大きな脅威を与える事態が今既に生じておりますし、今後それが大流行に結び付くということも心配されているわけです。  現在の鳥のウイルスは、従来の鳥のウイルスですと鳥の間だけにしか感染を起こしませんでしたけれども、実は猫とかネズミ、それから豚、犬、様々な種類の動物にも感染して致死的な全身感染を起こしてまいります。人も例外ではありません。こういうような状況が今広がっているわけです。  鳥の間でウイルスの流行がコントロールされないで広がり続けていますが、一方で鳥から人への偶発的な感染というのが世界各地で報告されています。鳥のウイルスが人に感染した場合には、通常我々が知っているインフルエンザという呼吸器の病気ではなくて、もっと病原性の強い重症の病気を起こしてくるということをきちっと認識していただきたいと思います。これが高病原性鳥インフルエンザというふうに名前が付いておりますと、通常我々が知っておりますインフルエンザの少し重い病気だろうというくらいに誤解している方が大変多いわけですけれども、これはインフルエンザではありません、全く別の病気です。ウイルスはインフルエンザウイルスですが、人に起こす病気はインフルエンザではないと。ウイルスは呼吸器にとどまらずに血液中に入って全身に広がっております。  それからさらに、通常ですとインフルエンザウイルスに対する生体防御反応であるいろんな体の抵抗のメカニズムが働きますけれども、それが過剰に反応してかえって自分自身を傷付けてしまう、サイトカイン・ストームというふうに呼んでおりますが、その結果多臓器不全というのが生じまして、様々な臓器に障害が生じて、非常に予後の悪い、現在のところいったん発症しますと六〇%以上の方が死亡するという、通常のインフルエンザとは全く違う病気を起こしているということをきちっと認識していただきたいと思います。  それからもう一つ、人の問題としては、偶発的に人に感染する、今お話ししたことに加えて、鳥の間で流行が広がって、さらにそこから人に感染が広がるという、ウイルスの増殖が続く限り突然変異がどんどん蓄積してまいります。インフルエンザウイルスというのは毎年のように流行を繰り返しますが、これは突然変異を繰り返しているために新しい顔つきのウイルスが次から次へと出てくるわけですけれども、現在の鳥のウイルスの間での流行が広がりますと、人から人へ効率よく感染が広がるような、そういうヒト型のウイルスに変化してしまいます。これが、どこがどういうふうに変化すればヒト型になるかということについては全部分かっておりませんけれども、幾つかの重要な遺伝子の変化がキーになるだろうということが幾つか想定されておりますが、その幾つかが既にもうヒト型に近付いているということも起こっております。それですから、新型インフルエンザが出現するのはもう時間の問題だろうというふうに理解している研究者がかなりの主流を占めているというふうに思います。    〔理事吉村剛太郎退席委員長着席〕  一方、これに対しまして、実際にこれ新型のインフルエンザが大流行を起こしますと、とんでもない大きな健康被害が生じます。二十世紀に我々は三回大きな新型インフルエンザの大流行を経験しております。  一回は一九一八年のスペイン風邪と言われる大流行。このときは、世界の人口が現在の三分の一以下の十八億人でしたけれども、世界じゅうで四千万人から一億人くらいの方が死亡したというふうに推定されております。その結果、社会機能が麻痺して大変な悲惨な状況がもたらされたということが幾つか報告されています。それから、その二回目が一九六七年のアジア型の大流行で、このときは二百万人くらいと言われています。それから三回目が一九六八年の香港型の大流行、このときもやっぱり同じくらいの健康被害が出ております。  現在はそのときに比べまして世界の人口は六十四億人と三倍以上増えています。地球の面積は同じですから、人と人の間の距離がそれだけ近づいているということで、インフルエンザの飛沫感染を中心とする感染様式考えますと、非常に感染を起こしやすい状況になっています。  それから一方、九十年前と比べますと、当時は船と鉄道しか交通手段はありませんでしたけれども、現在は大型のジェット機による大量高速輸送ということで、人の動きが大変激しくなっております。スペイン風邪のときに、アメリカ東海岸から出現した新型のウイルスが世界を席巻するのに大体一年かかっておりました。ところが、現在は、二〇〇三年のSARSのあの流行のときに、たった一人の患者さんが香港のホテルの中に泊まったために一週間後にそのウイルスが世界じゅうに広がったと、そういう経験をしております。  こういうことを考えますと、現在スペイン風邪と同程度のウイルスが出現した場合には、一週間以内に世界じゅうに広がって世界ほぼ同時に非常に大きな流行が起こるだろうと、その結果大きな健康被害がもたらされると、そういうことが心配されます。その場合の実際の死亡推定につきましても、スペイン風邪のときの人口を単純に三倍してもかなりの数になりますが、それ以上に健康被害が出るのではないかということが心配されております。  これ、幾つかのエスティメーションがありますが、国連においては一億五千万人くらいの死亡、世界で出るのではないだろうかと、そういうようなことも言われております。これに対して、日本の現在の厚労省の対策の基になっております推定値というのは、日本では六十四万人程度の死亡ということになっております。これは、スペイン風邪のときには、現在の人口が一億三千万ですけれども、本土だけの人口で日本は五千五百万人でした。そのときにも三十八万人から四十五万人以上の方が亡くなっております。  これだけ大きな健康被害が生じているにもかかわらず、当時のことについて日本ではほとんど記憶に残っていないと。その五年後に起こった関東大震災では十万人の方が亡くなっていますが、それについては映像がたくさん残っておりますので、皆さんよくそういうことは理解されて、地震対策についてはいろんな心の準備その他進んでいると思いますけれども、新型インフルエンザについては全く忘れられていると、そういう状況であります。そこで、またそういう新型インフルエンザが起こったときの大きな問題ということをきちっと認識していただきたいというふうに思います。  それで、今心配されますのは、先ほど言いましたように、強い病原性を持った鳥のインフルエンザウイルスがだんだん人に近づいているということなんですが、これがもし人から人に広がるような新型インフルエンザに変身して大流行を起こした場合には、今までの新型インフルエンザ、過去の新型インフルエンザというのはすべて弱毒型の鳥のウイルスに由来していました。したがって、人の病気というのは我々が知っている呼吸器に限局したインフルエンザという病気で大流行を起こしたわけですが、これがもし全身感染を起こすような、又はサイトカイン・ストームを起こして多臓器不全を起こすような、インフルエンザではない病気を起こすウイルスとして大流行を起こした場合には、我々の想像を絶するような大きな健康被害が出るのではないかという、この最悪のシナリオということも一応想定しておかなければいけないと、そういう状況だと思います。  それで、この新型インフルエンザが実際に大流行を起こしてしまった場合には、何も準備をしておきませんと全く丸腰ですべて対応しなければならないと。今から九十年前の状況と同じような状況でなるわけですけれども、この九十年の間に医療は進歩しておりますので、今はそういう同じような病気が流行しても大したことはないだろうというふうに考える方もいらっしゃいます。  ところが、その新型インフルエンザに対する我々の対抗手段というのは、一つはワクチンです。ですけれども、ワクチンというのは、新型インフルエンザが出現してから作り始めますと、半年から一年たたなければ国民のほとんどの方には行き渡らないというそういう状況なので、最初の第一撃、第一波の流行に対してはワクチンはほとんど間に合わない可能性があります。  それからもう一つ、それを補完するために抗ウイルス剤、タミフルというのが日本では非常に有名な商品名ですけれども、それを事前に備蓄しておかなければいけないわけですけれども、これも十分量がない場合には健康被害をさらに最小限にとどめるということは難しいと、そういう状況になっております。現時点でどういう状況かといいますと、決してその両方についても万全な準備ができているという状況ではありません。  それで、新型インフルエンザに対する事前準備ということが健康被害を最小限度にとどめるためには必須になってくるわけですけれども、そのために今、現時点で、まだ新型インフルエンザが出現する前の現時点で十分な準備を進めておかなければいけないと、そういうふうに思います。  それから、もう一つ新型インフルエンザの大きな問題は、大勢の方が病気になったり死亡したりして健康被害が増えますと、その人たちが社会に担っている社会機能というのは崩壊してまいります。  特に、現在の社会考えてみますと、医療機関に大勢の患者が殺到しますと、医療のサービスがまず崩壊する可能性があると。それから、その結果、患者の数がどんどん増えまして二次的に社会機能に影響が起きてくると。社会機能の維持にエッセンシャルな仕事を担っている方が倒れますと、そういう社会機能が崩壊してくる可能性があると。  で、今の社会で一番心配されるのが、一つは物流、交通関係の従業員、そういう職種の方が倒れられますと物流が止まってしまう、交通機関が止まってしまうと。その結果、二次的に食料の供給それからエネルギーの供給ということが停滞することが一番心配されます。こういうことについて事前に十分な準備をしておかなければいけないと。その事前準備というのは、現在できる準備をきちっと計画を立てて進めておくということと、それから二番目に、実際に起こったときの緊急対応を計画を立てて、それがいつでも実施できるような状況にしておくと、その二点にあると思います。  それについては、厚労省だけが健康問題を対象にしていただけでは不十分でありまして、世界全体の、まあ国家全体のレベルでの危機対応ということを、そういう問題をきちっと考えて準備を万全にしておかなければいけません。  現在までは、一応関係省庁連絡会議というのがありましたけれども、一応厚労省が中心になって様々な計画を立ててその実施を図ってまいりました。これに対して、やはり外国でも行われておりますように、政府の首脳、首相がトップになって国全体の横断的な危機対応対策、そういうシステムをつくって、すべての省庁を挙げて対応していかなければいけないと。  それからもう一つ大きな問題は、中央省庁においてもこういうふうに温度差があって準備が遅れているという状況だと思いますけれども、さらに、地方においては更にそういう危機感が希薄で、実際にこの対応をする実施主体である地方の準備というのは非常に遅れております。それについても、やはり地方議会それから地方の行政、そういうものが中心になってこの問題についてきちっとした問題を認識していただいて、一日も早くきちっと十分な準備を進めていただきたいと思います。  以上です。
  132. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  133. 松村祥史

    松村祥史君 自由民主党の松村祥史でございます。  今日は、荻原公述人、田代公述人、お忙しい中においでをいただきまして、貴重なお話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。まず冒頭にお礼を申し上げたいと思います。  お二人の今お話を聞いておりまして、今日は国民生活というテーマでお話を聞いたわけでございますけれども、それぞれのお立場がございましたから、共通した認識というものを少し考えてみますと、やはり今この国民生活が抱えている問題、これから来る問題に対しての危機管理というのがキーワードかなと、こう思って聞かせていただきました。  その中で、荻原公述人にまずお尋ねをしたいと思っておりますが、いやいやお座りください、私も三年前までは地方で中小企業の経営者をやっておりましたから、やはり規制緩和、このことによる競争、大変なものを実感として持っておりましたし、やはりこの弱肉強食、コスト削減社会でいいのかという実感を私も持っておりました。ですから、今日のお話は非常に共感を覚えるところも多うございましたし、その中でいかに伸びていこうかということが経営者の観点であったわけですが、これは一つの観点でありまして、そんな中で、こういう世の中になっているというお話の中で、格差という言葉が今大変クローズアップされております。  今日もそのお話でありましたけれども、今お話を聞いた中で、荻原公述人は、国民の皆さん方はこの格差というものをどういうふうに理解をされ、どういう対処をしてこれからいこうかと、荻原公述人なりの、国民の皆さんがどうお考えになっているか、まずお聞かせをいただければ有り難いと思います。
  134. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) まず……
  135. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 指名を待って御発言をください。荻原公述人
  136. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) まず、格差というのは、一つは、非常にもうかっている景気のいいところがあるのを横目に見ながら、自分のところは全く給料も増えていないし、逆に給料が減っている、一体この先どうなっていくんだろう、待遇はどんどん悪くなっている。そこでやっぱり心理的な格差というのは非常に大きいと思います。それともう一つは、具体的に、もう本当に弱い人はどんどん弱くなっていくという今世の中になっていますね。ですから、そういうところの具体的な格差と二つ合わさってやっぱりこれを今何とかしていかなければいけないんだと思うんですけれども、じゃ、これがこの先縮まっていくのか。まず、これ自然に放置しておいたら縮まらないものだと思います。  それだけではなくて、この先に、例えば今、五月に三角合併という話が出てきていますよね。そうすると、企業が、外資が持ち株で日本の例えばさっき言ったような宝石のような企業、日本は一杯あるわけですよね。そうすると、その宝石箱ごと安く買って、時価総額安く買って、その中の宝石を全部ばら売りしてもうけていってしまうというような状況が出てくるんじゃないかという危機感が今みんな持っているわけですね。  そうすると、今何が行われているかというと、会社はもうすごいもうかっているんですけど、そのもうけが株主の配当に行ったり、それから自社株の消却に行ったり、そういうところに行って、従業員の方に回ってきていない。これはますますひどくなっていくんじゃないかなと思いますね。  ですから、私は、一年間、自民党の議員の方が頑張ってこれを伸ばしたことは賢明だったと思うんですが、一年で足りたのかと思いますね。そこら辺のところはやっぱり政治的な判断なので、そういうふうにどんどん行ってしまうと庶民生活の方にしわ寄せが来てしまう。  それと、もう一つやっぱり庶民生活の中でちゃんと考えていかなければいけないのは、本当に低い、再チャレンジもできないような層、こういう層を一体どうしていくのか。今、国の予算を見ていると、天下り先に六兆円ぐらいばらまいていますよね。ところが、障害者自立支援法、それからあと生活保護の老人の給付、それから母子家庭の給付、こういうものを切っていっても、その百分の一ぐらいなんですよ。そういう配分の仕方というのはやっぱり私はおかしいんじゃないかと思います。それは政治にできることなんじゃないかと思います。  ですから、そういうところをもう少し見直していくことによって、本当に再チャレンジもできないような底の底上げをしつつ、もうちょっと皆に安心感を、例えば、うちの会社買収されてこの先どこかに売られちゃうと自分たちはリストラだよなみたいな、そういう不安感でざわめいている心理をもうちょっと和らげるようなことができる施策を取っていく。そういうことによってある程度防ぐことはできるんじゃないかなという気はするんですけど、取りあえず私が知っている限りでは、皆さん非常にざらついた心で今、今の状況にあるということは確かだと思います。
  137. 松村祥史

    松村祥史君 確かに格差というものを一言で言うと不安なのかなと、私もそんなふうに思ったところでありますけれども、今経済の格差ということでお話をいただいたと思いますけれども、これがまた格差の中にもいろいろありますし、地域の格差もございます。私、熊本でございますけれども、熊本の中にも都会と地方がありまして、この中にもやっぱり格差が点在すると思っております。  そういう意味では、この日本の中で、地域格差について御意見があればお聞かせをいただければと思います。
  138. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 地域の格差というのはこれからますますひどくなっていくと思います。  それはなぜかというと、やっぱり三位一体改革地方交付税の在り方が見直された。そうすると、高齢の老人を一杯抱えているような過疎地は一体どういうふうになっていくのか。やっぱり今、市町村にアンケートを取って、五十二の市町村が破綻に瀕し、そういう夕張のような状況になっていくんじゃないかという危惧を抱いているというデータが出ていましたけれども、そういうようなところというのは、やっぱりそういう老人を抱えているところ、過疎地、立ち行かなくなっているところかなり出ていくと思います。これがますます進めば進むほど、これはやっぱり一つの政治の枠組みでもあるわけですよね。ですから、それでやっぱり疲弊してくるところはかなり出てくると思います。  ですから、そういう意味では、地方と都心の格差、ますます、だから、東京のように地方交付税をもらわなくても悠々自適といけるところと、奄美の方のように、もう市民に、うちは破綻寸前、もう破綻、実質上破綻しているんだからみんな協力してよと呼び掛けなければならないところと、本当にどんどん差が開いた二極化になっていくと思います。
  139. 松村祥史

    松村祥史君 ありがとうございました。  正に、そのことを政治がどうやって解決をしていくかというのが一番肝要なことですし、またこの予算委員会の中でしっかりとやっていく問題であると思っております。ありがとうございました。  次に、田代公述人にお尋ねをしたいと思います。  ウイルスについてお話をいただいたかと思いますけれども、鳥インフルエンザから始まりました話でございますが、先般、宮崎、岡山でも鳥インフルエンザが発生をいたしまして、まあ一応の終えんは見たものでございますが、まだまだ不安は抱えております。ただ、鳥自体の商品にはこれはもう安全性が確認されたということで、消費に関しては決して問題はございません。  そういう意味では、原因の究明に努めていらっしゃいますが、いまだにはっきりとした原因が分からない。恐らく渡り鳥であろうとは言われておりますが、このことは、我が国だけではなく、やっぱり世界的な規模でいろんな追求をやらなければ、今日御提案いただいたような解決の糸口はつかめないと思っております。  そこで、この鳥インフルエンザの原因についていろいろお考え、御意見がありましたらまず聞かせていただければと思います。
  140. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) 鳥のインフルエンザの元々の起源というのは、渡り鳥が持っている弱毒のウイルスです。これは、北半球でいいますとシベリアで卵をかえして、そこでひな鳥が感染を受けて、それで南の方に行って越冬してそこに広げていくという、そういうことが毎年繰り返されているわけでして、鳥のインフルエンザそのものを完全に地球上から根絶するということは不可能です。  その弱毒のウイルスがたまたま鶏の中に入ってきますと、鶏から鶏に弱毒のウイルスが広がっていく間に、もちろんその間は病原性は示しませんけれども、突然変異が起こりまして、そこで強毒になるわけです。そうしますと、強毒の鳥インフルエンザとして大流行を起こして、大きな問題になります。そういうことがどこで起こってもおかしくないわけです。  昨年、茨城県で起こりました弱毒型のH5N2型という流行がありましたけれども、あれもあのままほっておけばいつか必ず強毒になったはずです。日本ではその辺のきちっとした知識の共有とそれから行政の対応ができていますので、早期の封じ込めということが成功しております。ところが、東南アジアではそれができませんでしたので、初期の封じ込めに失敗してしまいましたので、世界じゅうに広がってしまったと。現時点で、既に三年たっていますけれども、世界で流行している鳥のウイルスの間ではそれぞれ遺伝子の突然変異が進みまして非常に多くの系統のウイルスが併存していると、地域ごとに広がっているという、そういう状況です。  日本で今年宮崎と岡山で流行したウイルスの起源は、遺伝子学的に調べますと中国の北の方で流行しているウイルスとほとんど同じだろうということで、起源は多分そこら辺にあるのだろうというふうに考えられていますけれども、どういうルートで日本に入ってきたのかということについては残念ながらまだ分かっておりません。その原因、ルートが分かっていないということは、またいつ入ってくるかもしれないという、そういう危惧はあるわけです。
  141. 松村祥史

    松村祥史君 ということは、先ほどおっしゃったように、どこから飛んでくるかも分かりませんし、どこから発生するのかも分からない、またいつ人に感染するかも分からないと。そういったときに、今日のお話の中で、やはり危機管理をもっと進めていくべきだと、そこにやっぱり予算も投入しながら政府としての対応も考えていくべきだというような御意見であったかと思いますが、実際どのような対応策を取っていくべきであろうかと、御意見をお聞かせいただければと思います。
  142. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) 日本は、以前から事前対応、特に危機管理というのは余り得意でないというふうに言われております。厚労省でも事前対応型の行政ということを何年か前から打ち出しておりますけれども、実際には何か問題が起こらないとなかなか行政が動かない、若しくは予算が付かないという、後手後手に回っているというのが実情だと思います。  今回心配されているのは、鳥の間での流行というのはもう既に世界レベルではコントロールがほぼ不可能になってしまったと。そうしますと、次に、じゃ鳥のウイルスがヒト型になることをどうやって防ぐか、それもなかなか難しいわけです。  そうすると、ヒト型になって新型がどこかに出たときに、そこで封じ込めをまずしてしまうと、大きく広がる前にそこで封じ込めをしてしまうというのが一つの戦略です。それは恐らく日本国内ではなくて、東南アジアでそういうことが起こるのではないかということが心配されております。  それについていろんな戦略が考えられていますけれども、早期にそこに対して抗ウイルス剤を非常に広範囲に予防投与をして、それから人の移動制限を掛けて、そこの中でヒト型の新型インフルエンザの流行を封じ込めてしまおうというのが第一段階です。それが突破されてしまった場合には世界じゅうに広がってしまう可能性があるわけですけど、国内の場合には、恐らく最初には飛行場から、外国から日本に入ってこられた方が持ち込むということが一番心配されます。そこで、検疫における対応というのが次に大事になってくるわけですけれども、それも潜伏期に通り抜けてしまった場合には突破されてしまう可能性があると。そういうことで、初期の封じ込めというのは非常に難しい、初期の対応というのは非常に難しいと思います。  それにつきましては、厚労省の方で様々なシナリオの下にステージ別に対応を考えております。実際、残っちゃった場合が大変なわけですけれども、それについてはまだ十分な準備ができているということは言えないと、そういう状況だと思います。
  143. 松村祥史

    松村祥史君 予測の話は余りよろしくございませんけれども、実際そのことが起こり得る可能性、危機の現実性というのはどれくらいあるんでしょうか。少し御意見ありましたらお聞かせください。
  144. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) どのくらいの可能性があるかというのは、これは数字で挙げろというのはなかなか難しいことなんですが、鳥のウイルスはめったに人にはかかりません。今まで世界じゅうで数億羽の鳥が恐らく感染していると思います。人も何十万人という方がそれに暴露していると思いますが、実際に患者が発生しているのはWHOの報告では二百八十人くらいで、それが氷山の一角としても、非常に人への感染効率は悪いと。  ですから、そうめったにはかからないわけですけれども、先ほどお話ありましたように、鳥のウイルスというのは、流行が広がってウイルスが増えれば増えるにつれて掛け算で突然変異が蓄積してまいります。そうしますと、いつか必ずヒト型になってしまうと。それで、どういう遺伝子が幾つ突然変異を起こしたらヒト型になるかということの全貌は分かりませんけれども、今のところ大きく二つのファクターが大事であるということが分かっています。  一つは、レセプターの特異性といいまして、今の鳥のウイルスは鳥の細胞にはくっ付きやすいけど、人の細胞にはくっ付きにくいという性質を持っています。ところが、それを決めている遺伝子というのは、一つの遺伝子が変わっただけで、一つの塩基が変わっただけでヒト型になってしまうんですね。そういうウイルスは既に見付かっています。  それからもう一つ、鳥の体温は四十二度という高い体温で、鳥のウイルスは四十二度でよく増えるけれども、人の体温の三十六度、七度では増えにくいという性質があります。それを決めるのも一つの場所で決まるわけです。それについても、ヒト型で低温の方がよく増えるようなウイルス、そういうふうに変わってしまったウイルスも見付かっています。  そういうことを考えますと、一歩一歩だんだん人に近づいているという、そういう危機感を持っております。これは、突然変異というのはいつ起こるか分かりません。確率の問題です。ですから、もしかすればあした起こるかもしれないし、二年後、三年後かもしれません。いつということは言えませんけれども、流行が続く限りはその危険は増え続けると、それだけは確かだと思います。
  145. 松村祥史

    松村祥史君 ということはですよ、いつ変わるか分からない。しかし、今のところ背景として、鳥インフルエンザが出た背景とすれば、やはり大型の鶏舎でという背景がありましたですよね。これについては、やはり弱毒性、弱毒型ですか、を持っているそれぞれの渡り鳥がやってきて、そういうところが少々感染はしているものの、いつ変革するか分からない。であるならば、そこを媒体としてという可能性は大きいわけですよね。であるならば、やっぱりこういったものは肥育、肥育と言えませんが、管理システム、こういったものが何かいろいろと、こういうふうにというのがありましたら是非お聞かせをいただけませんか。
  146. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) これにつきましても、元々は野生の渡り鳥が運んでくる弱毒のウイルスですので、そこから養鶏場に直接ウイルスが入ってこないように、若しくは間接に入ってこないような、そこのバリアをきちっとするということが大事なことかなと思います。  それからあともう一つは、養鶏場の中でウイルスが広がっているかどうか。これはいろんな検査がありますけれども、それによって常にモニターをしていくと。それで、もしその心配されるような事態が生じた場合には、早くそれを見付けて早く報告して早く封じ込めをしてしまうと、その体制が大事かと思います。日本では比較的それがうまくいっているのではないかというふうに評価しております。
  147. 松村祥史

    松村祥史君 ありがとうございました。  要は、この危機管理をどうやっていくかということで、やっぱり政府レベルでしっかりとやれというような御意見でもあったかなと思います。  そのことをやったときに、今のインフルエンザでございますけれども、先ほどおっしゃられたように、今までのインフルエンザとは違うものとの認識が大切だと、こうおっしゃいました。お恥ずかしながら、私もそのインフルエンザに対する認識というのは非常に低い方かもしれません。やっぱりそのことをしっかりと国民の皆さん方に周知をしていく、そしてやっぱり自己管理もしていただきながらと、こういう機運をやっぱり高めていく、意識の改革をやっていく必要があると思いますが、具体的にどんな形で国民の皆さん方に周知をしていく、今おっしゃったようなとても危機意識の高い話でございますから、こういったことを一般の国民の皆さん方に御理解をいただけるどのような形を考えたらよろしいか、御意見がありましたらお聞かせいただけませんか。
  148. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) 今の問題は非常に大事な問題で、リスクコミュニケーションという専門の分野があるくらいの大きな問題です。  外国のメディアと比べますと、日本のメディアの対応というのは非常に緩慢であるという印象を受けています。これはどういう理由かは分かりませんけれども、世界じゅうのインターネットを開けていただきますと、もう世界じゅうで新型インフルエンザに対する危機意識、それに対するいろんな様々な討論というのはされております。日本ではそういう状況、情報が非常に希薄であると。  一つは、やっぱりメディアを通してきちっとした正しい情報を伝えていくということですね。それから、実際に起こった場合は、まあ対応はともかくとして、現時点でできるということは、やっぱりその正しい知識、その情報を共有していくと。それで、具合の悪いことを隠していくとか気休めの情報を流していくということが一番危険だと思います。やっぱりこれ、情報を出すところに対して信頼感を失うようなことがあった場合には、後から何を言っても信用されないと。そうすると風評が広がって世の中パニックになりますので、そこは我々も心してきちっと対応していく必要があるかと思います。
  149. 松村祥史

    松村祥史君 そういう意味ではメディアの役割というのは大変大きなものがあると思いますが、特にメディアにはよく登場されている荻原公述人、メディアのこういったものに対する役割について御意見がありましたら。ございませんか。
  150. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) いや、もう私は別に、私、テレビ局の人間でも何でもないので、私がそういうことを語っても、鳥インフルエンザの先生みたいなやっぱり専門家の方が語らないと説得力がない。私がもし言うとしたら、やっぱり家計が今大変だという、それに関しては私は説得力のある話ができると思います。  ちなみに、六月には、本当に各御家庭、今、財源移譲の三位一体とそれから定率減税の廃止が重なって、年収五百万円の御家庭だったら税金が今の一・五から一・六倍になります。これは本当に衝撃的な数字で、実際にその六月の給与明細を見たときの参院選というのは私はちょっと大変なんじゃないかと思いますね。  本当にそういう意味ではこれから家計はどんどんどんどん苦しくなっていくんで、そういうことに関して皆さん気を付けましょうということは私は言えます。
  151. 松村祥史

    松村祥史君 これは失礼いたしました。ありがとうございました。  インフルエンザの話でございますけれども、これはまたそういうヒト型に変わる前の話でございますが、今タミフルの話が出ましたけれども、このタミフルについては大変今年になって残念な事件が起きております。また、この因果関係についてもいまだ、究明はまだされておりませんが、できるだけ早くこれはもう究明をして国民の皆さんに安心、安全をやっぱりお届けすることが最優先だろうと思いますが、こういったインフルエンザの特効薬として使われているタミフル、今お母様方も、保護者の方々もその服用に関しては選択をやっぱり避けられるという方々も出たというようなお話も聞いております。これについて、田代公述人から御意見がございましたらばお聞かせいただきたいと思います。
  152. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) タミフルの問題については我々も非常に憂慮をしております。  タミフルというのは、今先生御紹介ありましたけれども、決して特効薬ではありません。この薬を飲んでいればインフルエンザからすぐに治るとかそういうものではなくて、発熱期間を一日ないし二日くらい短くするという、そういうような薬です。  ですから、タミフルが本当に必要な患者さんというのはやっぱり、インフルエンザが重症化して肺炎を起こして合併症を起こしたり死亡したりする危険の高い高齢者とか、様々な慢性の基礎疾患を持った患者さんだと思います。健康な若い人にはあえてタミフルを投与する必要は必ずしもないと。  日本は世界のタミフルの製造量の七〇%を消費しているという、ちょっと異常な状況ですけれども、これに対してはやっぱり、万一タミフルを処方しないでインフルエンザ脳症とかそういうことが起こった場合には、医師の方が責任を問われるから薬を投与しておいた方がいいだろうというような、そういう考えもあると思いますし、それから患者さんの方でも、親の方でも薬をもらっておいた方が安心だろうという、そういうふうなところがあって非常にこういう異常な使われ方をしてきたんだと思います。  今回の問題を契機にして、タミフルそのものが原因かどうかまだ分かりませんけれども、必ずしも必要でない薬というのはやっぱりなるべく使わないようにしていくということが大事かと思います。  それからもう一つ、タミフルの問題ですけれども、今、新型インフルエンザ対策に対してタミフルの備蓄を国でも進めております。これは、世界的にもすべての国でこういうことを進めていて、WHOもそれを強く勧告しています。  これは、タミフルの安全性の問題とはまた別に、新型インフルエンザが出た場合に、先ほど言いましたようにワクチンがすぐに供給できないような状況では、その健康被害を少しでも減らすためにはやっぱりタミフルという薬を使わざるを得ないだろうと。その場合のメリットを考えますと、多少のリスクということもあえててんびんに掛けた場合には目をつぶらざるを得ないんじゃないかというふうに考えます。もちろん、その因果関係がはっきりした場合にはそれに対する注意を十分に施した上で処方していくと、そういうことになると思います。
  153. 松村祥史

    松村祥史君 お二人の公述人には大変貴重なお話をいただきまして、大変ありがとうございました。もう時間となりましたので、終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  154. 蓮舫

    ○蓮舫君 民主党・新緑風会の蓮舫でございます。  まずは、お二人の公述人には、大変な貴重な時間を割いていただき、それぞれ御専門のお話を拝聴させていただいたことを心より感謝を申し上げます。  まず、田代公述人にお伺いをさせていただきたいんですが、新型インフルエンザ、鳥のインフルエンザが何らかの原因で人に感染をして、将来それが人から人に感染するのではないか。そうなると、相当、想定したくないような危機的状況が広がる、大変分かりやすい御説明をいただきました。  一つお伺いさせていただきたいんですが、この鳥インフルエンザが人に感染する原因、つまり、この原因を突き止めないとその対策というのもなかなか講じることができない。どれぐらい時間が掛かると見通していますか。
  155. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) 鳥のインフルエンザというのは人にはそう効率よくはかからないわけですけれども、患者さんの数は何人かいるわけです。そのかかった人とかからなかった人にどこに違いがあるのかということについてはまだ分かりません。これは恐らく遺伝的な何かしらの違いがあるんだろうと。それの解明というのはもうかなり時間が掛かると思います。それよりはむしろ、人にかかって人から人に広がるのをどうやって防ぐかと、そのための対策を考えていくということが必要かと思います。  それで、新型インフルエンザが大流行を起こすという、インフルエンザという名前がその場合に適当かどうか分かりませんけれども、飛沫感染で広がるということが一番心配されます。そうしますと、外に出ていってほかの人からうつるという、そのために広がると、また自分が出ていって人にうつして広げると、そういうことが一番大きな流行をもたらす原因です。そのためには、外に出ないことがいいわけです。人に会わないようにするわけです。正に籠城です。  アメリカでは、そういうふうな国の計画を立てて、各自が籠城できるようにどういう準備をするか。  外に出る理由というのは三つ大きくあると思います。一つは仕事に行く、それから学校に行く、それから日常の買物、そういうことです。その三つをしないで済むようにすれば籠城できるわけですね。そうすると、職場を閉鎖した場合にそのビジネスをどうやって続けることができるかと、その計画をそれぞれ立てなさいということをアメリカは強く勧告して、各企業がそういう準備を進めております。それから、学校を閉鎖した場合にはその教育をどうやってバックアップするか。それから、休んでいる子供を親が面倒を見なければいけないわけで、仕事ができなくなる可能性があります。それについてどういう対策を立てるかと。それから三番目の、買物に行かないで済むためには備蓄をしておくと、日用品、食料の備蓄をしておくと。その三つをアメリカでは強く勧告しております。  日本の今の現在検討しておりますインフルエンザ対策の行動計画についても、大筋ではそういうことを盛り込んでおります。
  156. 蓮舫

    ○蓮舫君 ありがとうございます。  田代公述人のお話をお伺いしていて、私、BSEのことを思い出していたんですね。BSEも元々は羊から感染したものが種を超えて感染をしていって、最終的には牛に感染をして、その牛の肉を食べた人に感染をして、イギリスでは死者が出ていて、その関連性というのも議会の中で正式に認められているんですね。脳がスポンジ状になっていく。元々あるプリオンという物質が正常な働きから異常な働きになることによってこのBSEが、狂牛病が人に感染をするわけなんですが、その原因もまだ分かってなくて、対抗策である薬もない。  じゃ、果たして新型インフルエンザも、まあ新しい病気というのは往々にしてそうなんでしょうけれども、もう本当に人と科学とそれとその病気の、何というんでしょうね、成長というんでしょうか進化というんですか、それの追い掛けっこになると思うんですね。  先ほど田代公述人は、タミフルを厚労省が備蓄をしていて、まだその対応というのもどうなのかという苦言も呈せられておりましたが、タミフルというのが果たして、今インフルエンザにはリエンザとタミフルと二種類しかないと言われているんですけれども、このタミフルが本当にこの新型インフルエンザの特効薬といいますか、一時的な熱を下げる解熱作用のみならず、何らかの形で人が生きていく上で大切な薬になるんでしょうか。
  157. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) それについては、実際にどういう形の新型インフルエンザが出るか分かりませんので、今のところ何とも正確な答えを申し上げることはできません。  ただ、鳥型のH5N1のウイルスが人に感染した例、ベトナムとかタイ、インドネシアの例でタミフルを使った場合に、通常の使用量では完全には回復しなかったと、効果がきちっと認められなかったということが言われています。ただ、その場合に、使用する使用開始が通常は四十八時間以内に使用しなければいけないということなんですが、それよりも遅くなってしまっているということで、それが一つ見掛け上の効果を減少させている原因かと思います。それから、試験管の中でタミフルの効果を見ますと、新型インフルエンザ、現在のH5型から発生したとしても有効性がかなり期待できるというふうに考えらえます。  ただ、心配されますのは、耐性のウイルスが幾つか見付かってきています。タミフルの耐性のウイルスというのは恐らく感染効率が悪いためにそれほど流行はしないというふうには考えられますけれども、そういうものが出てきているということは、タミフルがもしかすれば効かなくなってしまう事態というものも一応は想定しておかなければいけないと、そういうふうに考えております。
  158. 蓮舫

    ○蓮舫君 ありがとうございました。  続いて荻原公述人にお伺いしたいんですけれども。私思うんですね、安倍内閣になって、あるいは小泉前総理時代のときもそうだったんですけれども、景気は堅実に確実に回復をしてきていると、安倍総理がおっしゃられたのは、もうイザナギ景気を超えて物すごくいい形で経済は発展していくんだというようなことをおっしゃっているんですけれども、私この言葉が物すごく実感としてぴんとこないんですね。自分の生活、あるいは自分の地元の町ですとか、あるいは出張で行った地方ですとか、どこを見ても豊かになってきているんだという活気が感じられないのが私は今の日本だと思っているんです。  そういう部分では、総理がおっしゃっている言葉と今この日本で生活で広がっていることの随分と開きがあるように思えるんですが、いかがお感じになられます。
  159. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 実際に開きはどんどん、これ小泉内閣、安倍内閣と、この差はどんどん広がっていますね。実際に今地方なんかは本当に、おっしゃるとおり、本当にシャッター街という状況になっている。  それとあと、過疎地が非常に、老人がもう本当に割合を占めていて、働ける人は、例えば夕張のようなところでも、ちゃんと再チャレンジできる人はどんどん夕張市を出ていくんですけれども、再チャレンジできないような人だけが夕張市に残されていくという、やっぱりそういう構図ができてきて、明らかに勝ち組、負け組という様相は物すごく強くなっていると思います。
  160. 蓮舫

    ○蓮舫君 つまり、高度経済成長時代と今と決定的に違うのは、景気が良くなる、つまり大企業、牽引する役の大企業の利益がどんどん上がってくると、それが結局労働者に跳ね返って、賃金が上がって、それでそれが消費に回って、それがある種うまく経済が回っていたものが、今は労働分配率がどんどん下がってきていて、ある種、また同時に、今働いている方の三分の一が非正社員ですから、働いても働いてもなかなかそれが自分の懐に跳ね返ってこないんだ、それも消費に回らないんだという悪循環があるように思えるんですよね。  そこにおいて、イザナギ景気を超えたというこのセンスはいかがでしょうか。
  161. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 確かに、この景気回復は家計には回ってきていないという印象を私も強く受けます。実際に、これは私が強く受けるだけではなくて、日本のシステム自体が高度成長のころと今とはかなり変わってきています。  去年の五月に会社法というのが改正されました。それまでは、日本の会社というのは、あのフーテンの寅さんのタコ社長の会社のように、例えば社長が、もう今は不況だからみんな頑張ってよ、とにかくこれ、好況になってきたらみんなにボーナス一杯出すからと言って、みんな、じゃしようがないねとみんなで歯を食いしばって頑張り、それで景気が回復したら、よし、みんなキャバレーに連れていってやるぞというそういう中小企業とか、そういう分配の会社と、それはなぜそういうことが起きていたかというと、会社というのは社長と社員が支えるものという認識があったんですね。  ところが、去年の五月の会社法ではっきりうたわれたものは、会社はだれのものか、それは株主のものであると。やっぱり株主をちゃんとしなければいけない。株主にしっかり配当を出し、株主をちゃんとしていくためにはどうなるのかというと、やっぱり従業員は、その利益を出すための一つのこまになっていくわけですね。ですから、そういうことが実際に出てきている。  そういう中で、やっぱり、じゃ給料が本当に上がっているのかというと、景気が回復したといいながらも給料は、これは国税庁の調べですけれども、ほとんど上がってきていない。上がってきていないどころか、今ある路線というのは増税路線ですね。企業は減税路線をずっと来ているんですけれども、庶民にとっては増税路線。  配偶者特別控除もなくなりまして、今度、今年は、さっき言ったように定率減税が全廃になります。そうすると、今回は、定率減税と三位一体の税制の割合が変わることで、六月には今の一・五倍から、普通の年収五百万円ぐらいの家庭だと一・五倍から一・六倍ぐらいの税収増になってくる。じゃ、それで終わりなのかというと、その向こうに、もう雲に掛かった消費税というのがありますね。これが一体、秋からは検討すると言われているんですけれども、どうなるのか分からない。雲に掛かったまま、選挙が終わってからという消費税がある。  ですから、そういうのを見ていると、庶民にとってはやっぱり不安材料が物すごく大きい。そういう意味で、皆さん多分そういう状況が分かっているので、今は非常に不安な状況にあると思います。
  162. 蓮舫

    ○蓮舫君 全く同じ認識なんですね。  つまり、家庭で見てみますと、年金保険料が上がったり医療保険料の負担も、お年寄りの方も増えてきていますし、あるいは定率減税実質廃止というのは、実質これ増税ですよね。所得税あるいは住民税も増税。いわゆる保険料アップあるいは増税感で極めて、しかも、賃金が八年連続で国税庁の調査によると下がっていますから、物すごい自分で使える可処分所得が減ってきている。  しかも、秋以降は消費税を上げるんだというような声も聞こえてきたときに、それで三位一体改革をして、地方分権だと言っているんですけれども、十分な税源移譲をしていないがために地方財政もしっかりとした行政サービスをちゃんとお返しするだけの余裕が今なくなってきている。だから、一体だれのための政治がこれまで行われてきていたのかなというのを私は普通の生活者の感覚で思うんですね。  ただ、そう考えたときに、定率減税の廃止と、本来だったら、我々庶民に対して増税をもう一回押し付けるんであれば、企業に対してもこれまで定率減税を止めていたものはこれは元に戻すべきじゃないか、あるいは高額所得者のいわゆる最高税率、五〇から三七%に今減税していますけれども、この処置も戻すべきではないかと思うんですが、その辺りいかがお考えでしょうか。
  163. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 実際に今景気回復をしていると言われている大きな要因が、アメリカと中国が非常に好調だということですね。ですから、どちらかというと、例えて言うならシンデレラの馬車のアメリカと中国が馬で、引っ張ってってくれていると。で、馬車は勢いよく走っているというのは今、日本の経済状況ですね。じゃ、この馬が止まってしまったらどうなるんですかというと、やっぱりシンデレラの馬車はカボチャになってしまうでしょう。それがやっぱり今一番危惧されることですよね。  そうなったときに、本来だったらここで消費が回復していれば馬車はまだ走れると思います。ところが、この消費が、今皆さんどこの家庭でも、統計を見ても、総務省の家計調査を見てもそうなんですけれども、実際の御家庭を見てもそうなんですけれども、私自身も、まあこんなことを言うとなんですけど、あんまりお金は使わない方がいいよって皆さんに言っちゃってるんですけれども、それはやっぱり将来不安だから余りお金が使えない、消費ができない、そういう状況がやっぱり片方にあると思います。  そうなると、私たちやっぱり、これから政治の力でしていかなければいけないのは、せっかく勢いよく走っている馬車をカボチャにしちゃわないことですね。そのためにはやっぱりこの消費というところをしっかりてこ入れして上げていくようにしなければ、私はこの状況は非常に不安定な状況が続くんじゃないかなと思います。
  164. 蓮舫

    ○蓮舫君 カボチャに戻っても、そのカボチャがまだおいしく食べられるんだったらいいんですけれども、傷んでしまった場合にはもう二度と馬車には戻れないわけですから。  今その部分で消費と言いましたけれども、消費というと、これから少子高齢化で、高齢者の人口配分の方がどんどん大きくなってきた、その高齢者が、じゃどういう消費行動に出てくれるかというのは、これは大きなチャンス、ビジネスから見たらチャンスになると思うんですが。残念ながら高齢者から見たときに、消費に回すか、あるいは自分の将来を考えてたんす貯金に回すかといったときに、私は後者だと思うんですね。それはなぜかというと、年金制度、ただでさえその制度が現役世代で御高齢者を支えるというシステムにおいて子供がどんどん減ってきているわけですから、ここで消費に回るというのがなかなか考えづらいと思う。  そこで、皆さんが今不安に思っている年金制度について荻原公述人はどのようにお考えでしょうか。
  165. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 年金については、取りあえず百年安心だったはずなんですよね。ですから、こういうところに素材が上がること自体がおかしいと私は思うんですが。でも実際に皆さんの声を聞くと、もう本当に年金と税金、この問題で皆さんは不安が一杯というのが、これはどんなアンケートを取っても上位に来るんですよ。ですから、やっぱり皆さんだれも百年安心だったなとは思っていらっしゃらないと思うんです。  実際に、今その百年安心の土台だったものが、実際のところ、出生率その他、今非常に不安定な状況にありますね。そうなると、やっぱり次に年金の審議をされるときには、もう既に、年金というのは三つの方法しかないですね、保険料を引き上げるか、給付を減らすか、年齢を引き上げるか。で、このもう二つはこの間、百年年金でやってしまったので、最後の一つの年齢を引き上げるというのが今度来るんじゃないかと私は思っています。そうすると、六十七歳支給とか、そういうことになるんじゃないかと思います。  医療の方もそうなんですけど、今老人医療というのはかなり、七十五歳とか、昔はもっと低かったんですけど、だんだん上がってきて、それで健全化してきたという過程がありますね。ですから、年金も同じようにだんだん支給年齢が上がってきて、年金というのは、確かに安倍総理がおっしゃるようにつぶれないと思います、七十五歳支給とかにすると。めちゃめちゃ健全になるんじゃないかと思います。でもそうなると、だれももらえなくなってしまうというのがあるんで、やっぱり今の六十五歳ぐらいで何とかみんながもらえていくような制度設計をしていかなければいけないと思う。  そのためにはまず、しっかりした情報公開、それをやっぱり専門家がしっかり分析して将来を立てていく、それが必要だと思います。
  166. 蓮舫

    ○蓮舫君 おっしゃるとおりで、確かに年金百年安心だったはずなんですが、〇四年次の改正時には、改正するときの出生率は一・三二で試算をしていたのが、改正した直後に出生率は一・二九だったということが明らかになって、しかもこれ、厚労省がその情報を大臣に上げていなかったという失態まで明らかになって、〇六年度にはこれはもう一・二六ですから、出生率はどんどん下がってきている。厚生労働省自体が試算をしてみると、その〇四年度経済前提で出生率を一・二六に上げると、政府公約だった所得代替率はもう五〇%を切っているんですね。この五〇%を切っているのをどうやって底上げしていくか、上げ底をしていくかというと、これは景気が良くなる、これでしか数値というのは良くならないんですよ。景気が良くなるという厚労省が二月に出した暫定試算だと、来年度の賃金上昇率が二・五%増える、その翌年は三%増えるんだ、四%までこの五年間でどんどん上がっていくんだと、こういう明るい展望というのは、経済の御専門家でおられますけれども、あり得るんでしょうか。
  167. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 実際に年金の制度ができたときからどれだけ賃金が上がっているのか、それを見ると明らかだと思いますけれども、実際には賃金は、まあ人によっても差はあると思いますが、良くて横ばい、中には減っている人もいるというような状況で、総体的に見ると、さっきの国税庁の調査によれば、給料というのは八年連続下がってますね。ですから、そういう状況の中では、さっき言った大前提そのものが危ういものになっていると言わざるを得ないと思います。
  168. 蓮舫

    ○蓮舫君 そこは政治がしっかりと変えていかなければいけない部分だと思います。  百年設計で、しかもこの国のために頑張って働いてくださった方たちの老後の最低限のセーフティーネットなんで、明るい見通しを置いて安心だとごまかすんではなくて、本当の部分で情報公開を、先ほど荻原公述人が言ったように、情報公開をして、社会保険庁が今まで何をしてきたのか、本当に欲しい人に届いているのか、あるいは払ってきたんだけれども払えなくなった方たちどれぐらいいるのかと、やっぱりすべてを調べていく必要が私はあるんだと思うんですね。  荻原公述人の先ほどの公述の中でおっしゃった、一人一人が誇りを持てる国をつくる。全くそのとおりで、私は、美しい国の前に一人一人が誇りを持てたら、それは結果として美しい日本になっていくんだと思うんですが、残念ながら、今、この誇りを持てる、この誇りを持てるんだという基盤になっている、例えば仕事ですとか生き方というのが随分揺らいでいるように思えるんですね。  仕事で先ほど左官屋さんとか大工さんのことをお話しされましたけれども、私、三十年前、四十年前と今と一番何が違ってきたのかと感じると、子供たちが仕事というのを身近に感じない町になってきた、日本になってきたと。先ほどフーテンの寅さんとおっしゃいましたけれども、例えば三丁目の夕日、オールウェイズですとか、あるいは森繁さんの社長シリーズでも何でもいいんですけれども、昔の映画を見ていると、子供のそばに必ず仕事があった。自営業があったり、あるいは中小企業の会社に子供が遊びに行ってたり、自宅の周りに仕事というのがあって子供が育っていって、そこでお金の感覚とか仕事、働くというのはどういうことなのか、学ばなくても身近に感じて育っていった。近くに仕事というのがあった。でも、今それは、会社法の改正でも明らかになったように、会社というものになって見えなくなってきている。もっと言うと、ネットで簡単に稼げるんだとか株ができるんだとか、極めてバーチャルな世界になって、働くというのを今の子供たちは教えていかないと分からない時代になったように思えるんです。  実は、東京の豊洲にキッザニアという施設、これ、民間の施設で、今大変、子供、小さなお子さん、小学校六年生までのお子さんしか入れないテーマパークなんですけれども、予約がもう春以降取れない大変な人気なスペースで、五十種類以上のいわゆる建物があって、ハンバーガー屋さんやピザ屋さん、美容師さん、モデルになる、新聞の記者あるいは運送屋さん、いろんなビジネス形態があって、子供がそこでこれをやりたいと言ったら仕事の体験を本当にして、お給料をもらっている。そのお給料、キッゾという、そのキッザニアの館内でしか使えない、そのキッゾをもらって、キッゾでお土産を買うこともできるし、そこで貯金を、いわゆる自分の預貯金をつくることもできて、預けて出すことも、引き出すこともできる。ここで働く楽しみとか苦しみ、つらさとか、お金が増えるんだ、増えたものは使ったらなくなるんだというのを本当に疑似体験できる、私はすごくいい施設だと思うんですね。民間の力ってこういうところですごいなと思うんです。  ただ、一方で、一言だけ言うと、例えば厚生労働省なんかに任せるととんでもない施設を造って、京都に私のしごと館、これは労働特別会計です。造ったはいいんですけど、一年間の収入一億に対して二十億円の赤字です、二十億円の赤字ですよ。こういうものを子供に見せていくんだという官の発想のお金があるんだったら、私はもっと民を補助、助成していくべきだと思うんですが。  お金を出して仕事の楽しさを学びに行く時代になってしまった悲しみもあるんですが、先ほど荻原さんは子供たちの遊ぶスペースが大手スーパーに変わってきたと言っておられましたけれども、子供たちにやっぱり将来仕事の夢を持って、次の子供たちが、一人一人が誇りを持てるようになるためにはどうすればいいとお考えでしょうか。
  169. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 私はやっぱり、子供が誇りを持てるというのは、大人が誇りを持てなければそういう社会はできないと思います。大人が誇りを持てるということは、やっぱりお父さんが今働いている仕事に誇りが持てる、それから自信を持てる。そういう家庭の中でやっぱり子供は、お父さんを見て、お母さんを見て、安心して自分の道を進んでいかれるんだと思います。  ただ、今やっぱりお父さんが余りにも会社の中で酷使されて、本当に今過労死とかいろんな問題が出ていますけれども、正社員でも非常に過酷な労働を強いられている。まして、その下にいる派遣とかパートとか、そういう人は本当に想像を絶するような仕事体系の中にほうり込まれている人もいます。  ですから、そういう人を、そういうお父さんを見て、子供がああいうふうになりたいなと思えるわけがないと思います。ですから、やっぱりそういう、ちゃんと人が人として誇りを持って働けるような職場なり仕事なりをちゃんと守っていく、それがやっぱり子供が誇りを持って育っていける土壌だと私は思います。
  170. 蓮舫

    ○蓮舫君 正に正社員負担が押し付けられている一方で、増えている、もう労働者の三分の一だという非正社員の方たち、例えばキヤノンの埼玉工場の方にお話を伺った。彼は請負で、工場の極めて技術力の高い仕事をしている技術士なんですけれども、三か月で契約更新だと。四か月先が見えない自分が、将来両親が倒れたとき、結婚をするとか子供が育ったとき将来設計が描けないんだ、これに対して国は何をしてくれるのか。で、自分たちは何ができる。もうできることはないんです、一生懸命働いていて。次、契約を更新してもらえるように頑張っていて、でも先が見えない不安というのは物すごく身につまされている。いろんな働き方を用意することは大切なんですが、その働き方の先に、自分が次にチャレンジをしたいという働き方が用意されていない今の労働体系というのは、私も全くおかしいと思います。  改めて、政治に求められるものがあればお聞かせいただきたいと思います。
  171. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ほとんど時間がありません。荻原公述人
  172. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 一言、私は本当に政治に求めたいのは、安心して暮らせる生活だと思います。これをやっぱり政治の力で実現していただきたいと思います。
  173. 蓮舫

    ○蓮舫君 ありがとうございました。今おっしゃったことは、恐らく与野党ではなくて、すべての政治家が思って仕事をすることだと思っています。  両公述人、本当にありがとうございました。
  174. 澤雄二

    ○澤雄二君 公明党の澤雄二でございます。  荻原、田代両公述人、今日はお忙しいところ、また貴重な御意見聴かせていただきまして、本当に感謝しております。ありがとうございます。  田代公述人にお伺いをいたします。  先生は、国立感染症研究所でウイルス部長でいらっしゃって、WHOが世界の学者の中で新型インフルエンザ対策のために六人の学者をピックアップされたその中のお一人、日本代表で今参加をされておりますが、その田代先生にお伺いしますが、去年の五月にインドネシアで七人か八人の家族といいますか一族の方が、新型インフルエンザといいますか鳥インフルエンザでお亡くなりになりました。このときのウイルスは非常にヒト型に近いと言われていて、たしか田代先生も現場に行かれて、それを封じ込めるための最大限の努力をされたと聞いております。そして、インドネシアでは去年も数十人の方が亡くなり、今年になってからも毎月のように数人の方が亡くなっています。  世界で一番鳥インフルエンザで人に感染している被害が大きい国だと思いますけども、このインドネシアを含めて、今鳥インフルエンザの状況どうなっているのか、それからこれは、新型インフルエンザ問題は先ほどから議論もありましたけど、一体いつ来るんだということが最大の関心でございますので、その辺のお話を、インドネシアの状況、併せて伺えればと思いますが。
  175. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) 昨年の四月、五月にインドネシア・北スマトラで一族八人の方が感染してそのうち七人が亡くなったと。その間に人から、最初の患者さんは鳥からうつったと考えられますけれども、その後は人から人、更に次にもう一代人と、そういうことが起こったんだろうということが強く疑われております。  そのウイルスについて今いろいろ調べておりますが、今、澤議員が言われたこととちょっと違っていまして、このウイルスそのものは我々が知っている範囲の中ではまだ鳥型のままであったと。それにもかかわらずそれだけの伝播をしたということは、我々が知っている鳥から人への種の壁というのがそれほど高いものではないと。ですから、まだ鳥型だからといって決して安心できないという、そういう警告だというふうに理解しております。  そのインドネシアですけれども、二億二千万人の多数の人口が恐らく二万くらいの島に生活しているということで、小さいところそれから小さい島それから地方においてどういうことが実際に起こっているのかということがなかなか中央政府が把握し切れない、そういう状況だと思います。ですから、WHOに報告される数字というのは正に氷山の一角で、それ以外に同じような事態があちこちで生じているということが強く危惧されております。これは何もインドネシアだけではありませんで、ほとんどの途上国、今鳥の流行が広がっているそういう国ですね、そういうところで同じような状況が起こっていると思います。  特に心配されるのがアフリカです。アフリカで、ナイジェリアで一人の患者さんが見付かりましたけれども、これはたまたまその家族がお金持ちの家族で、父親が解剖して原因を確認しろということをかなり強くプッシュしたためにやっと報告がされたということで、それ以外には全くそういう報告がありませんので、我々が数字として見ている以上の流行が、流行といいますか、その感染は人の間でも広がっていると。  いつ人の世界に入ってくるか、ヒト型になってくるかということには先ほど答えましたけれども、だれも予想できない状況ですけれども、現在の鳥の流行の動き、それからそこから人への偶発的な感染の数の増加というのを見ていますと、今の状況が続けばいつか必ずヒト型になるだろうということが心配されております。
  176. 澤雄二

    ○澤雄二君 この新型インフルエンザが、ウイルスが出現をいたしましてパンデミック、大流行期になったとしますと、これはもう我々人類が経験したことのない事態が予想されるわけでございますけれども、今国も自治体もその対策にやっとといいますか、本腰を入れて対策に乗り出していただいておりますけれども、いずれにしても国も自治体も限界があると思います。それは人もお金もあるわけではありませんから。となると、我々個人といいますか家庭といいますか企業というか会社というか学校といいますか、あらゆる組織が自分たちで一体どうやって身を守れるかということを考えていかなければいけない。これも非常に大事だと思うんですけど、こういうことを考えるときに、先生のお考えで、こういう視点は忘れるなというところがあったら一つ二つ教えていただければと思います。
  177. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) 今、澤さんの言われたとおりでして、こういう感染症の大流行というのは、政府若しくは厚労省がしっかりやったためにそれで防げるというものではありません。限界があります。  それで、実際に大流行が起こってしまった場合には、これは無差別に感染を受ける可能性があると。そうすると、我々はある程度の健康被害というのを覚悟しておかなければいけない。それはもう政治の及ぶところではないわけですね。そういう覚悟をしておくということがまず大事だと思います。  そのために我々個人個人で健康被害のリスクを最低限にするためにはどういうことをするかと。先ほど言いましたように、外に出ないということも非常に大事なことだと思います。それが、外に出ないで済むためにはどういう準備をしなければいけないかと。そういうことについてやっぱり行政はきちっとした情報を流して知識を与えて、合意と納得をしていただいて冷静に準備をしていただいて、実際に起こったときには冷静に行動していただくと、そういうことが非常に大事になってくると思います。
  178. 澤雄二

    ○澤雄二君 もう少し伺ってもいいでしょうか。  まあ会社、企業、組織はともかくとして、我々個人が家庭で家族を守るためには、一体今からどういうことを考えておかなければいけないか。もし、何か準備することがあれば教えていただければと思います。
  179. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) 家庭でできることにつきましては、今作成中の厚労省のガイドラインにも一部書かれておりますし、まだ具体的なことは決まっておりませんけれども、それから、アメリカでは政府が出したガイドラインにはそういうことがかなり細かく書かれております。  外に出ないで籠城する、そのためには、先ほど言いましたように日用品と食料品を最低二週間程度、更にもう少し長ければそれにこしたことないわけですけれども、そういう備蓄をしておくということが大事です。それは事前にやっておかなければいけません。実際に大流行が起こってから買いに行っても、恐らく流通がストップしているために物はなくなっているかもしれない、それから大勢の人が買いに行くためにもう物は売り切れてないかもしれない。そういうことで今やっておく必要があると思います。  それからもう一つは、家庭の中で親がもし寝込んだ場合に、家事その他について子供が実際にはそういういろんな面倒を見なきゃならないことがあるわけですから、それについても家庭内できちっと計画を立ててふだんからそういうような教育をしておくと、危機対応を家庭の中でもできるようにしておくと。そういうような身近なことが非常に大事かと思います。
  180. 澤雄二

    ○澤雄二君 アメリカブッシュ大統領が、アメリカは非常にこの対策が進んでいるんでありますけれども、ノアの箱船だという表現をされたことがありました。つまり、連邦政府は、地方政府、コミュニティー、それから国民の一人に対して、できることはすべての対策はやったと、あとはノアの箱船だと。こういう流行が来るか来ないかはあとは皆さん次第だと。そのときに悲惨な目に遭っても我々連邦政府を恨むんじゃないよというようなことをスピーチされたのを聞いたことがありますけれども。  ですから、私もこのインフルエンザの勉強させていただいてから、大変だというんで家で備蓄を始めましたけれども、幸いにして我が家は一軒家でありますけれどもなかなか備蓄というのはかさばって大変でございまして、しかも賞味期限があるんで半年ごとに取り替えるって、これは結構大変だ。だから、これは政府の場所ではないんでございますけれども、できるだけこういう大流行期が来ないようにということをまあ望みたいわけでございます。  今、ガイドラインの話をされました。厚生労働省は今必死になって作成中でございますけれども、このガイドラインの中では、その流行期の混乱を防ぐために、先ほど言われましたように閉じこもりということになるといろんな社会機能が全部止まってしまいます。その止まってしまったり、それから、どうしても救急とか消防とか、それから電車の運転士とか、そういう人たちというのは社会を維持するために必要だというんで、厚生労働省はそのガイドラインの中で社会機能維持者という位置付けをして、一千万人にはタミフルとかワクチンの予防投与を優先的に行うということを今決めようとしております。  この人たちは言ってみれば社会の混乱を防ぐために選ばれた人たちでございます。ですから、この人たちは一体どういうことを自覚してほしいのかということと、そのうちの半分の五百万人は医療従事者、医者、看護師であります。この人たちが倒れてしまうとだれも守れなくなるんで、それは当然だと思うんですが、この医療体制は大丈夫かということを併せてお伺いいたします。
  181. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) 今、厚労省で策定中のガイドラインでは、備蓄ワクチンですね、それをだれから接種するかという、限られた量ですけれども、その対象としては、やはり現場の第一線に立つ医療従事者、さっき澤さんが言われたように、そこが寝込んでしまうと医療サービスができなくなって健康被害が増え続けるということになりますので、そこがもうエッセンシャルだと思います。  それから二番目に、それと並行して、社会機能の維持にエッセンシャルな職種といいますか、そういう、それが、何が社会機能の維持に本当に必要かということについてはかなり議論があります。厚労省だけでそれをもちろん決められるわけではありませんけれども、一応大筋の合意としては、消防とか警察とか、それからあと様々な広い範囲がありますけれども、もう一つは報道関係か国会議員ということも一応今プランになっております。そういうことで、そういう方に優先的にワクチンを接種してその仕事を継続していただこうと、そういう目的でやっております。  ですから、そういう人たちが、自分たちでワクチンを打って後はもう逃げてしまうということが起こってもらっては困るので、そういうワクチン接種を受けるというその対象になられたそういう方々というのは、やっぱり自分が、社会における自分の責任といいますか、仕事の責任をきちっと果たして社会的な対応をきちっとやっていただきたいと、そういうふうに思っております。
  182. 澤雄二

    ○澤雄二君 アメリカ、ヨーロッパは、私、去年の委員会の質問のときから申し上げておりますけれども、国の危機管理対策としてこの問題を、対応を考えてきました。日本はいまだにまだ厚生省が公衆衛生レベルの対応しかできていません。  それに対して、先日、当委員会でのやり取りの中で、官房長官が総理大臣を本部長とした対策本部の設置を検討しますというふうに答弁をしていただきました。この対策本部に一体どういうことをお望みになりますか。
  183. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) そういう総理の答弁があったということで非常に心強い思いをしておりますけれども、(発言する者あり)ああ、官房長官ですか。  アメリカでは、もう二年前になりますけど、ブッシュ大統領がそういうことをきちっと国連の場でも宣言しまして、現在、アメリカにおける新型インフルエンザ対策というのは国の国家安全保障会議というところが責任を持っています。ここはテロ対策とか核攻撃に対する対応とか、そういう国の危機管理を検討する場所ですけれども、そのレベルで次の新型インフルエンザに対して今から準備をする、実際に起こったときには対応すると、そういう体制になっております。すべての政府省庁がその中に入ると、トップダウンで国を挙げて国家の危機対応、危機管理に対応するという形になっています。  ですから、今後、もしそういう対策委員会みたいなものが政府の中にできた場合には、そういうような責任を持って、そういう意識を持って対応していただきたいと思いますし、それから、現在、厚労省の中で検討されております委員会というのは主に医療従事者が中心になっておりますので、どうしてもそういう形、面からの偏りがあると思いますので、是非、国を挙げて全省庁でやるというところには様々な分野の方が参加されて様々な意見をそこの中で討議していただきたいと、そういうふうに思っております。
  184. 澤雄二

    ○澤雄二君 どうもありがとうございました。  荻原公述人にはちょっと先ほどの年金の話等にお伺いしたいと思ったんですけれども、あと三十秒ほどしかありませんので、次の機会にゆっくりお話をお伺いしたいというふうに思います。  今日はどうもありがとうございました。
  185. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  お二人の公述人、今日は本当にありがとうございました。  私ども、なかなか熱く語りたいんですがその時間がございませんので、まず、荻原公述人からお伺いをしたいと思います。  先ほどの庶民増税負担増のお話をお伺いをする中で、改めて、私たちのこの国にとっての税や社会保障の役割というのは何なんだろうかということも感じたわけですけれども、その点についてお考えがあれば、お聞かせいただけますか。
  186. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) やっぱり国民が、さっき一番最初に言ったように、動物園を全部取っ払ってサファリにしてしまったら政府は要らないんですよね、みんなやりたいようにやりなさいということになりますから。でも、そこをちゃんと管理していく、弱い人をちゃんと守りながら適正な競争をしていく、そのためにやっぱり国というものがあるんで、そこのところでやっぱり弱い人を守るというところが今ちょっと余り力が入っていないかなという感じは私は個人的にしています。  ですから、そこの部分でもうちょっと、例えば予算についても、六兆円ぐらいを官僚の天下り先にばらまくんだったら、そのうちのせめて一割ぐらいを弱い人の方に回すというような、そういうやっぱり政治が今望まれているんじゃないかなという気がします。
  187. 仁比聡平

    仁比聡平君 ありがとうございます。  先ほどの冒頭の御意見をお伺いをする中で、銀行が今、今というか、これまでどんなやり方で不良債権の処理も含めて公的資金の投入を受けながら低金利の中でやってきたのかとお話があったんですけれども、時間の関係だったかと思うんですが、少しもうちょっと語られたいところがおありなのかなと思って聞いていたんですが、銀行と庶民の暮らしの問題ということで、お考えがあればお聞かせいただけますか。
  188. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 銀行というか、もちろん不良債権処理に関してかなり手厚く銀行がされたというのは、一面では金融不安から守るということがあったと思いますけれども、それだけではなくて、今の状況を見ると物すごく金融機関もうかってますね。ただ、そのもうけが、じゃ良くなったから庶民の方に回っていくというような構造はまだできていないような気がします。  ただ、それ以上にやっぱり私は問題だと思うのは、民間の不良債権はそれで今大まか何とかなったんですけど、一体この国にどれだけの不良債権があるのか、これが全く明らかにされていない。特に地方、夕張が破綻しましたけれども、夕張は一体どういう状況にあってああいうふうになってしまったか。その第二、第三の夕張が今実際にあるわけですよね、時限爆弾を抱えているようなところが。ただ、そういうところの情報公開がされないまま、破綻してしまったらそこで皆さんの税金をというのは、これはとても困ることだと思います。  ですから、もちろん金融機関の問題もさることながら、今やっぱり大きな不良債権の問題というのは自治体なりやっぱり国にもありますね、財政融資、そちらの方の。そういったものをやっぱり洗いざらい白日の下にさらすことが、これからの大きな破綻を回避していくすべじゃないかなと私は思います。
  189. 仁比聡平

    仁比聡平君 今御指摘いただいた問題点も、私ども当委員会でも力の限りいろいろ議論をしていきたいと今思っているところです。  それで、もう一つ、先ほど来の大工さんのお話とかあるいは中小企業の技術のお話とか大変示唆に富むお話をいただいたんですけれども、私たちの国にもこの中小企業やあるいは零細の業者を大企業やあるいは親会社とかそういうところから保護をしよう、守ろうという一定のルール、一応のルールといいますか、こういうのがあるのはもちろん御存じだと思うんですね。  だけど、私も実際にそういう町場の皆さんと話をしてて、そんなのがあること自体も分からないし、そもそもあろうがなかろうがその力を実感することがなければないのと同じということで、例えば単価をたたかれたりというのが当たり前になっているというような実態あると思うんですけれども、その辺りのルールとその苦しみの実態、ここの関係についてはどんなふうにお感じでしょうか。
  190. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 確かに今非常に中小企業であえいでいる方多いし、そういう方たちに何とか手を差し伸べなければいけないというのも片方にあると思うんですが、それと並行して私は、それも大切です、それも大切なんですが、私がさっき言っていたのは、日本が生き残るためですね、日本が生き残るためには今まで日本が蓄積して、ところが蓄積があるにもかかわらずそれを全部ゼロにしてきたものって一杯あるんですよ。  例えばさっきの大工さんの技術なり中小企業の持っている金型の技術なり、そういうものをもう一回再発見しなければいけない。それを再発見することによって、それで商売が成り立つようなスキームを作っていく。そうすれば、日本の中小企業というのは非常にいろんなものを持っているので、それをすべて外資が来てMアンドAで取っていってしまうということもなくなるだろうし、そこら辺の、もちろんあえいでいる人たちを救うということと並行して、今ある宝石に磨きを掛けてそれがちゃんと商売になるようなスキームを作る。  それが、ただ、今できているかというと、実際にはそういうものがすべて大企業の下請に組み込まれたり、いろんなことでうせていってしまっているというのが現実だと思いますね。ですから、そこら辺のところをもう一回発掘することによって日本が発展していく足掛かりをつかめるんじゃないかなと私は個人的に思います。
  191. 仁比聡平

    仁比聡平君 大変私もそのとおりだと思って、実際にそういう経験を持っている地域だとか、あるいは別の問題ですけれども労働力の非正規化とか様々な問題をお伺いしたいなと思うんですけれども、時間が何せないものですから、本当、ありがとうございました。  田代公述人に一問お伺いをしたいと思うんですけれども、新型インフルエンザの問題での重大さ、お話をお伺いをしていて本当によく分かったように思います。  その中で、いわゆるタミフル問題を大変憂慮しているというふうにお話があって、特効薬ではないという点と、それから異常な使われ方をしているという点、これが今問題になっている服用と副作用、あるいは異常行動と言われている問題の因果関係の問題と並んで、副作用の因果関係の問題はもちろんあるんだけれども、それとは別の問題として、特効薬ではない、あるいは異常な使われ方をしているという問題あるんだなということを感じたわけです。  これ、備蓄の問題とは私も別の問題だと思うんですけれども、このタミフル問題という点についてどういう検証が必要だと思われますか。これ、早急にやっぱりしていくということが必要だと思うんですけれども、いかがでしょう。
  192. 田代眞人

    公述人(田代眞人君) タミフルにつきましては幾つかの問題、整理できると思いますけれども、一つは、異常行動が起こっていると、タミフルの服用をした後に、それが若い青年層に起こっていると。それが服用と関係あるのかどうかという問題が一つあります。  それから一方で、この五、六年前から大きな問題になっていますけれども、日本ではインフルエンザの流行期にインフルエンザに感染したお子さんが、主に一歳から五歳の小さいお子さんですけれども、インフルエンザ脳症というのが生じています。これについては、恐らく毎年百人から五百人くらいの患者さんが出ているだろうと。そのうちの二五%くらいの方が亡くなって、またその三分の一くらいの方が後遺症を残すと、そういうような非常に重症な、大きな問題であるということが片方にあります。  タミフルを使うということについては、そういうものをタミフルを使用することによって少しでも防げるのではないかということで小児科の先生方はそれを使うということがあると思います。一方で、タミフルがそういう脳症を本当に抑えているのかどうかということが、残念ながら今のところきちっとした証拠がありません。そこを一つ明らかにする必要があると思います。  それから、今、一歳から五歳で脳症が出ていますけれども、それよりも大きな年齢ですね、十歳から二十歳くらいの年齢でも同じようなことが起こるのではないかと。その場合に、やっぱり、小さいお子さんでもそうですけれども、幻覚とか妄想とかが出る可能性があるわけですね。そうしますと、小さなお子さんは熱が出てぐったりしていますから行動できませんけれども、少し年長のお子さんになってくると、その恐怖感から逃れるために自分で動いてしまうと、行動を起こしてしまうと、そういうこともあり得るのではないかということが一つ指摘されております。  それと、それからタミフル自身によって何か起こるのか、若しくはそういう病態にタミフルを使うことによって更に何か悪く、悪化させるのではないかと、様々なことが考えられます。  それについては、厚労省では研究班、組織していまして、今年じゅうに早急にその辺の因果関係を明らかにすると、そういう方針であるというふうに聞いております。
  193. 仁比聡平

    仁比聡平君 本当にありがとうございました。  時間が参りましたので、終わります。
  194. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  御両人、本当にありがとうございます。  荻原公述人にお聞きをいたします。  小泉構造改革、安倍総理の政策についての評価をお聞かせください。
  195. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 私は、これは個人的な意見ですけれども、この国の、例えばこの国が宝としてきた物づくりの文化と、それから人間中心の、人間を資源とした経営、それがかなりの形で壊れてきたと思います。ですから、それがマネーゲームに取って代わるような、そういう仕組みができてきた。それに対してはやっぱり、そのマネーゲームの方が先行している今の状況で恩恵を受けているのが一般の家庭ではなくて、やっぱりそのマネーゲームをしている人たち。ですから、そういう国の形はこれからもう一回見直してみなきゃいけないんじゃないかと思います。
  196. 福島みずほ

    福島みずほ君 荻原公述人にお聞きをいたします。  安倍総理の再チャレンジ構想についての評価をお聞かせください。
  197. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 私、ちょっと見えないので、何やっているのかよく分からないので何とも言えないんです。済みません。
  198. 福島みずほ

    福島みずほ君 ありがとうございます。  先ほど、六月の段階で定率減税の廃止や、それから老年者控除、あるいは今度介護保険や年金の保険料が上がりますので大変負担増になるという、で、年収五百万の世帯で一・五倍から六倍だろうというふうにおっしゃっていただきました。常に家計、生活の面から御発言をされているのは本当にすばらしいと思います。  ところで、現代における日本におけるのは格差の拡大が問題ですが、まあ金持ちはいいわけです。問題は貧困、貧困が広がっているということが問題だと思いますが、それについての御意見をお聞かせください。
  199. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 実際に家計で見ると、もう二割の家計が貯金ができなくなっていますね。収入に関して見ても、かなりの人が低所得者の方にこぼれ落ちている。ですから、そういう意味では貧困がどんどん増えているということは言えると思います。
  200. 福島みずほ

    福島みずほ君 荻原公述人にお聞きをいたします。  今後、例えばアドバイスとして、今日随分話していただきましたが、こういうふうにするともっといいんじゃないかという政策的な提案、もしありましたらお聞かせください。
  201. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 私は、家計の立場からすると、増税路線やめたらどうかと思いますね、今の庶民に対する。これをやっぱりやめて、ある程度消費を底上げしていく、で、消費で景気を引っ張っていくような形をつくっていったらどうかと思います。
  202. 福島みずほ

    福島みずほ君 美しい国より温かい国の方がいいんじゃないかと私も思いますけれども、せっかくの機会ですから、もう少し、今おっしゃっていただいたほかに、例えば中小企業支援などについての、まあ今日大分出ておりますが、改めてお聞かせください。
  203. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 中小企業の場合には、これ確かに実力のないところが落ちていくというような表現をされがちなんですけれども、実は実力があっても構造的に落ちざるを得ないというところが一杯ありますね。ですから、そういうところの構造を実際に変えていかないと、例えば、本来、さっき言ったようないい技術を持っていても、下請に徹して夜中のもう何時までも仕事しなければ食べていけないというような、そういうような形ではとてもやっていけないと思うんですよね。  ですから、そういうことを、それどういうふうにセーフティーネットを張っていくのかというのはやっぱりこれ政治の問題だと思いますけれども、そういう人がいるということを忘れないでいただきたいと思いますね。
  204. 福島みずほ

    福島みずほ君 教育における格差について一言お願いします。
  205. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 私は、サッチャー式の教育を取り入れると、やっぱり日本の教育は、一握りの本当に恵まれた人と大部分の恵まれない人、その格差を大きくすると思います。
  206. 福島みずほ

    福島みずほ君 少子化について一言お願いします。
  207. 荻原博子

    公述人(荻原博子君) 少子化については、まず柳澤大臣にお願いしたいのは、フランスでは半分以上が婚外子です。ですから、ちょっと非常識と思われるかもしれませんけれども、そういうことで子供を増やしている国もあるんだという、そういう考え方を持っていただきたいと思います。
  208. 福島みずほ

    福島みずほ君 ありがとうございました。  終わります。
  209. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  次回は来る十九日午前十時から委員会を開会することとし、これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時五十九分散会