○白眞勲君 私は、
民主党・
新緑風会を代表して、ただいま
議題となりました
外交防衛委員長田浦直君
解任決議案に
賛成の
討論をいたします。
イラク特措法改正案は、我が国安全保障関係法制の
在り方を考える上で非常に重要な
法案であるのみならず、派遣された自衛官の命にかかわる最重要
法案であります。国会には、国民から期待されたシビリアンコントロール、全うするためにも、慎重かつ十分な
審議が求められるのは論をまちません。特に
参議院は、良識の府、再考の府として、与党が三分の二を占める
衆議院の行き過ぎを正していくことが国民から期待されているわけです。
しかしながら、田浦
委員長は、昨日、野党理事や
委員が激しく抗議をし、騒然としてだれの声も聞き取れない中で、
イラク特措法改正案の
採決を強行してしまいました。全く不正常な
採決であり、良識の府
参議院としてあるまじき暴挙と言わざるを得ません。
イラク特措法については、これまでの少ない
審議時間の中でも看過できない様々な問題点が明らかとなりました。しかし、政府はこれに対する説明責任を十分果たしておりません。
審議が全く足りません。
まず、政府が、米国等による
イラク戦争開戦を、米国からの情報を検証することもなくいち早く支持してしまったことに対する検証がなされていないことが問題であります。そもそも
イラク戦争に正当性はないのであります。米国が
イラク戦争に突入した本当の理由はどこにあるんでしょうか。
日本は
イラクによる国連決議違反等を
イラク戦争支持の理由としておりますが、米国は国際政治をパワーゲームと考えており、そんなことはお構いなしです。国連決議にはそれほどのウエートを置いておりません。そもそも米国の
イラク戦争開戦の目的は、九・一一テロに懲りたこともあるでしょうが、それと同時に、九・一一テロを奇貨として、中東にある独裁国家
イラクに対し、その独裁体制を排除することに目的があったのではないでしょうか。大量破壊兵器の存在やアルカイダとの関係などは後付けの理由にすぎない。ブッシュ大統領は誤りであったことを認め、謝罪しましたが、開戦するために理由を捏造した可能性もあるのです。
その後、
イラクでは宗派間対立が激化、治安は極度に悪化し、アメリカ兵の死者数も三千五百人を超えております。この間、米国では中間選挙で、
イラク政策の見直しを主張する
民主党が上下両院で過半数を制し、共和党が大敗しました。ブッシュ大統領は約二万人の米軍増派を始めとする
イラク新政策を発表しましたが、事態は好転しておらず、効果を上げるかは疑問であります。
このような状況の中、事ここに至っても、政府は自衛隊派遣を延長することで米国の機嫌を取ろうとしております。
六月七日の外交防衛
委員会において、同僚の喜納昌吉議員は、
イラク戦争を支持した当時の政府判断の検証についてただしました。久間大臣は次のように答弁しております。日本の政府としては、あのときのアメリカの武力行使を支持しないとは言えない状況だったとし、また、あのときに支持しないという選択は日本にはできなかったと明言しております。これは、当時の政府による
イラク戦争支持が日本の自由な意思ではなく、不可抗力的に支持せざるを得なかったということであり、結局、
イラク戦争支持は米国の機嫌を取ったその結果であることを認めたことにほかなりません。
イラク戦争を支持した当時の政府判断について検証を行うことが必要じゃありませんか。
私は、五月二十三日の本
会議において、久間防衛庁長官のブッシュ大統領の開戦判断は間違っていたとの発言を引きながら、政府の
イラク戦争支持の誤りの認識と責任についてただしました。これに対し塩崎官房長官は、安保理決議に基づき取られた行動を支持したと、これまでどおりの答弁を繰り返し、反省のかけらもなかったじゃありませんか。
衆議院の
附帯決議においても、
イラク戦争を支持した当時の政府判断について検証を行うこととしており、どのように検証するつもりかとの私の問いに対し、塩崎官房長官は、
附帯決議にある
事項についてはその
趣旨を十分尊重してまいりたいと、いんぎん無礼な対応に終始したわけであります。質問に全く答えてないじゃありませんか。久間大臣に至っては、
イラク戦争の正当性について、正当かどうかは後世の歴史家が判断すると、まるで人ごとのような答弁です。本
会議で私は再々質問までして誠意ある答弁を求めたわけですけれども、全くないじゃありませんか。
政府の判断については、当時の検証結果を速やかに発表し、広く国民の間で議論がなされるべきでありますし、本来であれば、この国会において、この
法案の
審議中に検証結果について議論しなければならないのです。しかし、口先だけでうやむやにされてしまいました。全くもって議論が不十分です。
自衛官の安全
確保も問題です。六月五日、外交防衛
委員会において同僚の櫻井充議員は、自衛隊機と同型のイギリスのC130輸送機がバグダッド近郊で撃墜された例を挙げながら、本当に安全なのかについてただしました。政府は、燃料タンクに防爆フォームを施し燃焼しにくくしていることや、コックピットについては装甲板で装甲している旨答弁しましたが、かえって実際に攻撃される危険性があることを印象付ける結果となりました。政府はバグダッド空港周辺を非戦闘地域と言っておりますが、実際にミサイル攻撃を受ける可能性があるのです。これを戦闘地域と呼ばずして何と呼ぶのでしょうか。説明になっていないじゃないですか。
このほか、
参議院では、
衆議院の特別
委員会において以下の点を政府に求める
附帯決議が付されたことから、その対応が繰り返しただされました。
附帯決議は、シビリアンコントロールに資するような必要な情報開示を行うこと、
イラク戦争を支持した当時の政府判断について検証を行うとともに、今後十分な情報収集・分析体制の
強化に努めること、出口戦略につき必要な
検討を行うこと等を政府に求めております。しかし、政府から誠意ある答弁はついになされませんでした。特に、
航空自衛隊の
イラクでの
活動については、どこで、何を、どうやって運んでいるのか、政府は理由をこじつけて全く明らかにしませんでした。シビリアンコントロールの観点から極めて問題です。政府の国会対応は国会軽視も甚だしく、安倍
内閣の性格をよく表しております。
政府・与党には、国会において誠実に答弁し、もって日本外交とシビリアンコントロール、民主主義に資するとの概念が欠如していると言わなければなりません。
一体、日本の外交と民主主義はどうなってしまったんでしょうか。安倍総理は戦後レジームからの脱却を声高に叫んでおりますが、このたびの
イラク特措法改正案を始め、在日米軍再編特措法にしても、政府の姿勢は米国の機嫌だけをうかがい、ただただひたすらに追随するばかりであります。これが戦後レジームからの脱却と言えるんでしょうか。
また、
委員会のキャパシティーを超えるまで
法案を次々と
提出し、どだい無理な国会運営を強いることは、国会の、特に
参議院の
審議権をも否定するものであります。戦後、日本が築き上げてきた民主主義そのものも破壊するおつもりなんでしょうか。私は、安倍政権のこのようなわがままで一方的な
在り方を見るにつけ、議会政治が崩壊する危険性を感じざるを得ません。
先日は、私は外交防衛
委員会で自衛隊の情報保全隊が
イラクへの自衛隊に
反対する市民運動や報道機関の取材に関する情報を広範囲に収集、分析していたことに関し質問いたしましたが、議会政治を無視するこのような方向が続いていき、与党の皆さんも人ごとではありません。我が党の増子輝彦議員が、自衛隊を応援している立場だと本人は言っているにもかかわらず、自衛隊の
イラク派遣は憲法違反だと言っただけで反自衛隊
活動だと、とんでもないことじゃありませんか。与党の皆さん、あなた方も皆さん、調査いつされるか分かりません。お気を付けくださいとしか言いようがありません。
委員会の
委員長の職責は、一党一派に偏ることなく中立公正な運営を行うことで真っ当な議会政治を守ることにありますが、例えば、私が当日の
委員会で、
イラク派遣の件で、国連と日本政府が結んだ交換公文あるいは秘密保持に関することについて、公電を出すなり何らかの証拠を出してもらうように
理事会で協議していただきたいと
委員長に要求したことに対し、
委員長は、後ほど
理事会で協議
検討すると約束したにもかかわらず、その舌の根も乾かぬうちに、その要求を知らんぷり、無視したまま
法案の
採決を強行してしまった。とんでもないことじゃありませんか。お願い事にちゃんとこたえてください。極めてその対応は不誠実であり、本当に議会政治を守る気概があるのか、問題があります。
正直申しまして、私は田浦
委員長を個人的には、また本来は温厚で誠実な方であると考え、尊敬申し上げております。大好きであります。しかしながら、国会運営にまで理不尽に口を出す安倍政権のごり押し、強権体質に翻弄され、言われるがままに強行
採決を行ってしまった以上、このまま放置するわけにはいかないのであります。そのような運営を行ってしまった田浦
委員長を直ちに解任しなければ、
参議院が良識の府であることが国民から疑われてしまいます。
このような結果を招いた責任を厳しく問うとともに、ここに田浦
委員長の解任を強く求めて、私の
賛成の
討論を終わります。(
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