○
簗瀬進君
民主党・新緑風会を代表して、
衆議院送付の
国民投票法案及び
国会法改正案の
趣旨説明に対し、
質問いたします。
まず、
発議者に
質問いたします。なぜそんなに急ぐのですか。
国民の理解の深まりをなぜ待てないのですか。余りにも性急な
国民不在の
審議強行は、
憲法改正権者としての
国民に対する重大な
背信行為です。まずは、
主権者としての
国民の権威を踏みにじる
暴挙に対し深く謝罪すべきではありませんか。
発議者の所見をお聞かせください。
そして、このような
暴挙を導いた張本人の
安倍総理に断固として抗議いたします。
憲法改正の
論議を
党利党略で行ってはならない、
参議院の
憲法調査会にあってもこのことは党派を超えた
共通認識でした。このような
与野党の
信頼関係を破ったのは、正に
憲法改正を
参議院の争点とするとした
総理の妄言であります。
総理のこの一言ですべてが変わってしまいました。さらに、
国民投票法が
議員立法でもあるにもかかわらず、
総理として再三にわたって
国会の
審議に容喙してきました。これは三権分立の
基本を侵すものであり、
憲法違反の
暴挙でもあります。
以上の
総理の対応について、
発議者の
認識を聞かせていただきたいと思います。
二〇〇〇年一月二十日、
衆参ともに
憲法調査会が設置されました。以来七年間の年月が経過しましたが、注意すべきは、そのうち五年間は
憲法本体の
論議に費やされたということであります。
手続法としての
議論が
衆議院でスタートしたのは昨年の五月からでしかありません。また、
参議院においては
手続法の
論議はほぼ白紙状態であります。
言うまでもなく、この
国民投票法案はすべての
法律の中でも最も
憲法に近い存在であります。
憲法に準ずる高い規範性を持たなければなりません。戦後、我が国の
国会が定めた
法律の中での最重要
法案であります。それにもかかわらず、
衆議院における
法案提出後の
審議時間、これ
特別委員会でありますが、五十八時間であります。小
選挙区制の導入を決めた政治改革
法案でも
特別委員会では百二十二時間、郵政民営化
法案は百二十時間、教育
基本法は百六時間、これらと比較しても
審議時間は余りにも少な過ぎます。
発議者の所見をお聞かせください。
次に
お尋ねしたいのは、
法案の
審議に
国民の参加を求める
姿勢が全く欠落していることであります。
主権者としての
国民の
権利の発動の
手続を決める
法案の
審議でありながら、主役の
国民は無視されています。こんなことを許してはならないと思います。
国民を完全に無視した
審議の進め方に私は大変激しい怒りを覚えます。
国会の外に出て
国民の声を直接聴こうとした公聴会が開かれたのは三月二十八日のたった一日だけ、しかも新潟と大阪のたった二か所を慌ただしく飛行機で移動して行ったにすぎません。正に、一応は
国民の声を聴きましたというアリバイづくりのための公聴会であります。さらに、この日の前日に
与党の
修正案が
提出されたばかりであります。正に、
修正案の中身など
国民に知らせる必要もないとの
姿勢が露骨に表れた公聴会でありました。こんないい加減な対応を良識の府としての
参議院は絶対に認めるわけにはまいりません。
憲法の力の源泉は、
主権者としての
国民の
憲法に寄せる思いであります。
国民そっちのけの
憲法を幾ら作っても、しょせんそれは張り子のトラでしかありません。
与党の
皆さんは、たかが
手続法と
考えるかもしれません。しかし、
手続こそ
民主主義の命なのです。
手続を知らなければ参加の意欲も生まれません。
そこで、
発議者の
皆さんに
質問したいと思います。
参議院では、
国民の
意見を各地で聴くための地方公聴会を徹底して開催すべきでありましょう。本来であるならば、四十六都道府県のすべてで行うべきであります。それが無理であるなら、最低でも、北海道から始まって四国、九州の各ブロックごとに行うべきではないでしょうか。
発議者の
意見を求めます。
さて、
衆議院の
議論で最大の対立点となったのは
国民投票の
対象の問題でした。
与党案は
最後までこの
手続を
憲法改正手続に限定されました。しかし、
民主党は一貫して重要な
国政問題についての
国民投票制度の創設を求めてまいりました。四月十日
提出の我が党の
修正案は、この
姿勢を一層明確にするために、重要な
国政問題の
内容を更に具体化して四つのパターンを提案したものであります。すなわち、第一は
憲法改正の
対象となり得る問題、第二は統治機構に関する問題、第三は生命倫理に関する問題、第四はその他の別に
法律で定める問題としました。
私は、この
投票対象の
議論こそ今回の
法案審議の最大の対立点であり、それは実は自公案と民主案の本質的な違いに直結する極めて重要な論点だと思っております。
この
民主党案に対しては、間接
民主主義を
基本とする
憲法の
趣旨に
違反する疑いがあるといった批判、あるいは
投票効果の違う二つの
国民投票を一つの
法律に盛り込むべきではない等の批判が寄せられております。
この批判を十分に
認識しつつも私
たちはこの
考え方を貫いたことには実は幾つかの
理由があります。それは、間接
民主主義の限界を強く意識しているからであります。
民意と議会の乖離、そして
議会制民主主義の限界は正に現代政治の
基本的な問題となりつつあります。その背景にあるものは、冷戦構造の崩壊とイノベーションによる世界の急激な変貌であります。グローバリズム、テロ、環境問題、格差問題、これらの問題に共通するのは、十九世紀的な国家、国境、
国民、経済などの
基本的な概念が正に大きく崩れつつあるということであります。
EUの出現、通貨
主権や領土
主権の大胆な変更、EU
憲法、そしてマーストリヒト条約の承認についての
国民投票、ヨーロッパの新しい状況は衆参の
憲法調査会の
議論も大きく刺激されました。今我々が行わなければならない
憲法論議は、もはや戦後レジームの脱却などではありません。復古主義的な
憲法論議の残滓に取りつかれている
安倍総理の
憲法論議に対し、
民主党案は正に二十一世紀レジームの創造を目指したものであります。だからこそ、これら新しい
事態に対処するためにも、間接
民主主義を補完する直接
民主主義の積極的な活用を求めているのであります。
少なくとも
発議者の
皆さんは、私
たちのこの
主張をそれなりに受け止めていただいたように感じております。その痕跡は、先ほども御
説明あった
与党の
附則十二条であります。
その文章を引用いたしますと、国は、この
規定の施行後速やかに、
憲法改正を要する問題及び
憲法改正の
対象となり得る問題についての
国民投票制度に関し、その
意義及び
必要性の有無について、
日本国憲法の採用する
間接民主制の確保その他の
観点から
検討を加え、必要な
措置を講ずるものとする、これは
与党の
附則でございます。
これは、先ほど紹介した
民主党の
修正案のうちの最初のものだけを認めたようにも読むことができますが、実はもっと広げて解釈することも可能でございます。例えば、
憲法改正の
対象となり得る問題の中には、道州制の可否とかあるいは通貨
主権等の統治機構関連の問題も含めることができますし、さらに、
基本的人権に関連する問題、例えば脳死もそれであります。これは生命倫理に関する問題として、この
与党の
附則の中にも含めて解釈できそうであります。
したがって、
発議者にお聞きしたい。
附則という形式ではあるものの、「
検討を加え、必要な
措置を講ずるもの」の中には、
民主党修正案として先ほど御
説明申し上げました第一から第三までのほぼすべてが含まれていると解釈できるのではないかと私は思いますが、この点、
発議者の見解を求めます。
しかし、
附則十二条には少し気になる文言もあります。それは、
必要性の有無について
検討するとして、
必要性がない場合も含めているところであります。ところが、
最後の
部分では、「必要な
措置を講ずる」となって締められております。この矛盾する箇所の解釈をどうしたらいいのか、
発議者に
伺いたいと思います。
次に、
投票権の
年齢の問題について
お尋ねいたします。
与党案の第三条では
国民投票権の
年齢を満十八歳以上と
規定しながら、
附則三条の第一項では、
公職選挙法、
民法などのその他の
法令の
規定について必要な
措置を講ずるといたしております。さらに、
附則三条の第二項においては、これらの
措置が講ぜられるまでの間は満二十年以上のままとなっております。結局、
措置が講じられなかったら二十歳のままなのでしょうか。
まず、
附則三条一項のその他の
法令とは具体的に何を言うのか、さらに、全部の成人
規定の
引下げ措置が終わらない限り、依然として二十歳のままに据え置かれるのか、それぞれ明らかにしていただきたいと思います。
民主党の
修正案は、このようなあいまいさをなくすために、二項の
規定は削除、他の関連する
法律の成人
規定の
措置が終わらなくても、
国民投票の
投票権の
年齢は十八歳とすることを明らかにいたしております。
与党の
年齢規定は、正に羊頭を懸けて狗肉を売るたぐいのものではありませんか。マスコミは一斉に十八歳に
引下げと大見出しで報道しています。しかし、公選法や
民法の
改正が終わらない限り二十歳のままとするのであるならば、これは
国民をペテンに掛けるようなものであります。
発議者の明快な答弁をお願いをいたします。
次に、
公務員の
国民投票運動への
制限規定についても
発議者に
質問いたします。
この分野での
与党方針の極めて節操を欠いた変身ぶりはあきれるばかりであります。
与党は、先月二十七日の
与党修正案提出の直前に、
公務員等の
地位を利用した
投票運動への
罰則規定は撤回されました。しかし、
他方で
国家公務員法、
地方公務員法等の
政治的行為の
制限を
適用しないといった従前の方針もあっさりと転換をし、
適用除外の項目を削除してしまいました。刑罰はないものの、懲戒免職などの行政罰によって
公務員の
国民投票運動についてはしっかりと監視していこうということなのでしょうか。
衆参の
論議の基調に流れていた
考え方は、
憲法改正手続は、人を選ぶ
選挙とは違う、できるだけ自由濶達に、そして、できるだけ多くの人に参加してもらおうといった
考え方でした。しかし、
修正合意がまとまらないと見切りを付けたら、あっさりと
基本方針を簡単に転換してしまう。正に衣の下のよろいを露骨に見せ付けられた瞬間でもありました。
発議者の船田
衆議院議員は、先月二十二日の公聴会で、「
国民投票運動における
公務員の
政治的行為の
制限規定を
適用除外する、こういう方向で話をまとめようとしている」と明言なさっております。公聴会でのこの発言は一体何だったのでしょうか。この発言の真意とともに、
与党の
基本姿勢がなぜ変わったのか、その
理由をお聞かせいただきたいと思います。
さらに、
附則十一条の
意義についても御
質問させていただきます。
同条によると、
公務員が
国民投票に際して行う
賛否の
勧誘その他
意見の
表明が
制限されることとならないよう、国公法、地公法その他の
法令の
規定について
検討を加え、必要な
法制上の
措置を講ずるものとすると
附則に
与党案が
規定いたしております。
この
規定に言う、その他の
法令とは何なのか、その数はどれくらいあるのか。また、
意見表明が
制限されることのないような必要な
法制上の
措置とは具体的にどんなものを
考えられているのか、明快にお答えいただきたいと思います。
さらに、その上で、
公務員の
政治的行為の
制限規定を
適用除外としなかったことと、この
附則十一条との
整合性、あるいは優先、劣後の関係について明瞭に答弁していただきたいと思います。
さて、自公案と民主案の双方で触れられていない新たな問題点について
質問したいと思います。
まず初めは、
憲法改正について両院に置かれる
憲法審査会とその合同
審査会の
在り方についてであります。
結論から言えば、私としては、
憲法改正原案の
論議の手順は
法律と同様に
考えるよりも両院の合同
審査会を積極的に活用した
国会全体としての
発議を目指すべきではないかと
考えております。
もし、
憲法改正の
発議を
法律案の
審議と同じように
考えると、結果的にどんなことが起こるでしょう。私が心配するのは、
改正論議においてかなり
参議院の存在感が失われてしまうということであります。
具体的に言えば、
憲法改正原案に
賛成する
議員の数が衆参の両院で三分の二を超えていれば、先議の
憲法審査会での
議論であらかた決着が付いてしまいます。後議の
議院の
議論は限りなく不要となります。
他方、両院ともに三分の二をクリアできそうでなければ、そもそも
発議すら行われないということになる。正に、
法律案と同様の
審議の仕方によれば、後議の
議院は限りなくその存在感を失っていきます。これでよいのでしょうか。
そこで、改めて
憲法九十六条の
規定を読んでみると、
国会の
立法権を
規定した五十九条一項とはその書きぶりがかなり違っております。九十六条は、「総
議員の三分の二以上の
賛成で、
国会が、これを
発議し、」となっておりますが、五十九条一項は「両
議院で可決したとき
法律となる。」と、このように書いてある。
もし、
憲法改正の
発議を全く
法律と同様に
考えているとするならば、九十六条の
規定でも、
憲法改正案は、三分の二以上の多数で両院で可決したとき
国会が
発議するといった文言となるはずであります。しかし、九十六条は両院の可決とは言わずに、両院を合わせて
国会の
発議としています。
衆議院の公聴会で公述人となった
憲法学者の江橋先生もこの違いを
指摘いたしました。すなわち、九十六条は、両院が一体となって
発議する姿を
原則に
考えているようにも解釈できるわけであります。
そのように
考えると、
国会法改正案の百二条の八の両院の合同
審査会をむしろ
原則的に開催を求めるように変更すべきではないかと
考えますが、
発議者の見解を求めます。
次に、最低
投票率についての
発議者の見解を
伺います。
例えば、お隣の韓国でも、有権者の五〇%以上の
投票となっている。したがって、
改正案が承認されるのはその過半数ですから、全有権者の二五%以上の
賛成がなければ
憲法改正案は成立できません。このように、承認
要件や最低
投票率を定めている国は多数あります。
今回の
投票法案についても各党においてこの
議論はありました。しかし、今や……