○
前川清成君 ただいま議題となっております
犯罪被害者等の
権利利益の
保護を図るための
刑事訴訟法等の一部を改正する
法律案に対し、民主党・新緑風会を代表して修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりです。
政府提出に係る本改正案は、
犯罪被害者等の権利や利益を
保護するという名目で、
犯罪被害者等が
刑事裁判に
参加する
制度、
犯罪被害者等による損害賠償
請求について
刑事手続の成果を利用する
制度等を創設することを内容とするものでありますが、衆議院において修正がなされております。しかし、修正の目的や意図、内容等については、衆議院修正案提案者さえ十分には答えることができず、何のための修正か不明です。
改正案が導入しようとしている
犯罪被害者等が
刑事裁判に
参加する
制度については、ほぼ同時期に導入される
裁判員
裁判制度に不適切な影響を及ぼす懸念を払拭することができません。それゆえに修正案を提出いたしました。
犯罪被害者等が
刑事裁判に
参加するいわゆる
被害者参加制度は、
裁判所に
参加を申し出た
被害者やその
遺族に対し、
公判への
出席、情状に関する証人尋問、被告人
質問、証拠調べ終了後に求刑を含む意見陳述を認める
制度ですが、
平成二十一年から実施される
裁判員
裁判制度において、
裁判員に対して過剰な影響を与えるおそれがあります。
すなわち、
被害者参加制度が導入されますと、
被害者参加人は法廷で、罪を犯したとされる被告人を前にして、怒りや悲しみなどの感情があからさまになることはむしろ当然です。これに対して、被告人が萎縮をしてしまい、真実を口にできないおそれもあります。
また、
被害者参加人と被告人とが直接対峙して感情的な
質問や応答がなされ、特に、応報感情に基づく意見陳述がなされた場合、
被害者参加人の意見が過度に重視され、証拠に基づく冷静な事実認定や公平な量刑に強い影響力を与えることが懸念されます。とりわけ、
裁判員に対しては、
被害者参加人の意見や
質問は
裁判員の情緒に強く働き、証拠に基づいて冷静になされなければならない事実認定について大きな影響を与え、量刑が過度に重くなることも危惧されます。
刑事訴訟においては、客観的な証拠によって
犯罪事実の存否や量刑が決められますが、
被害者参加人は必ずしもすべての
情報を与えられているわけではありません。検察官と
情報量や
立場が異なっており、証拠に基づく訴訟
活動を期待するには無理があります。求刑についても、
被害者参加人の
立場からすれば重罰を求めるのは当然であり、法定刑の上限を求刑することが予想されますが、それは同じ
事件の検察官の求刑とも異なり、他の同種
事件の求刑との均衡を失することにもなります。したがって、
被害者参加人の意見陳述から求刑に関する陳述を除外すべきであると
考えます。
また、
法務省は、
被害者参加制度の施行時期を
裁判員
裁判制度の施行よりも半年ほど早める予定ですが、
被害者参加人の
裁判員に与える大きな影響を
考えますと、
裁判員
裁判制度が実施され、定着するのを待った後、
被害者参加制度を施行すべきです。
本修正案は、こうした問題について修正を行おうとするものであります。
以下、その内容を御
説明いたします。
第一は、意見陳述から求刑を除外しようとするものであり、証拠調べが終わった後における
被害者参加人又はその委託を受けた弁護士による意見陳述は、量刑にわたってはならないものとしております。
第二は、
裁判員
裁判に係る
被害者参加制度の実施時期を、
裁判員
裁判の開始から少なくとも一年程度後とすることができるようにするものです。
第三は、その他所要の
規定を整備するものとしております。
以上が本修正案の趣旨であります。
何とぞ
委員各位の御賛同を賜りますようお願いを申し上げます。
以上です。