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2007-06-19 第166回国会 参議院 法務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十九年六月十九日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月十五日     辞任         補欠選任      岡田  広君     北岡 秀二君  六月十八日     辞任         補欠選任      北岡 秀二君     岡田  広君      関谷 勝嗣君     南野知惠子君      角田 義一君     芝  博一君      松岡  徹君     林 久美子君      浜四津敏子君     澤  雄二君  六月十九日     辞任         補欠選任      山東 昭子君     木村  仁君      若林 正俊君     岸  信夫君      芝  博一君     角田 義一君      仁比 聡平君     吉川 春子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山下 栄一君     理 事                 岡田  広君                 松村 龍二君                 簗瀬  進君                 木庭健太郎君     委 員                 青木 幹雄君                 木村  仁君                 岸  信夫君                 陣内 孝雄君                 谷川 秀善君                 南野知惠子君                 江田 五月君                 芝  博一君                 千葉 景子君                 林 久美子君                 前川 清成君                 澤  雄二君                 仁比 聡平君                 吉川 春子君                 近藤 正道君    国務大臣        法務大臣     長勢 甚遠君    副大臣        法務大臣    水野 賢一君    大臣政務官        法務大臣政務官  奥野 信亮君        厚生労働大臣政        務官       松野 博一君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   小川 正持君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 英明君    政府参考人        内閣男女共同        参画局長     板東久美子君        警察庁生活安全        局長       片桐  裕君        警察庁刑事局長  縄田  修君        法務省刑事局長  小津 博司君        法務省矯正局長  梶木  壽君        文部科学大臣官        房審議官     布村 幸彦君        厚生労働大臣官        房審議官     村木 厚子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑  事訴訟法等の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付) ○法務及び司法行政等に関する調査  (配偶者からの暴力防止及び被害者保護に  関する法律の一部を改正する法律案に関する件  )     ─────────────
  2. 山下栄一

    委員長山下栄一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、浜四津敏子さん、関谷勝嗣君松岡徹君及び角田義一君が委員辞任され、その補欠として澤雄二君、南野知惠子さん、林久美子さん及び芝博一君が選任されました。     ─────────────
  3. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認め、それでは理事岡田広君を指名いたします。     ─────────────
  5. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会警察庁刑事局長縄田修君、法務省刑事局長小津博司君及び法務省矯正局長梶木壽君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 前川清成

    前川清成君 おはようございます。民主党の前川清成でございます。  今日は南野大臣もお越しになってますし、奥野先生にも御指導いただきましたので、余り荒々しいことは申し上げたくないんですが、前回質問の際に、私、大和都市管財のことをお尋ねいたしました。質問が終わったら判決を届けるというふうな法務省説明に、そんなあほなことあるかいということを申し上げました。  実は、昨日の夜七時、私は既に会館を出てたんですが、その時間になって判決をお届けいただいたそうです。これって大臣、一体どういう御対応法務省はされているんでしょうかね。もちろん、大臣が指図されているとは到底思わないんですが、ちょっとやり方が汚いというか、そういうふうに私は感じるんですが、大臣、いかがですか。
  9. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 先般も委員からそういう御指摘がありまして、そのときは、その前日のお話だったようでございますが、事情を知らなかったわけでありまして、その際も、もちろんいろんな事情で遅れることもあるかとは思いますが、よく御説明をし、十分先生の御意向に沿うように指示しておったわけでありますので、昨日届いたというのは私、それもちょっと、済みません、監督不行き届きと言われればそれまでですが、存じ上げませんでしたので、事情は正確には分かりませんが、できる限り御要望に沿って早急に処理、御要望に沿うように努力したものと思っておりました。申し訳ありません。
  10. 前川清成

    前川清成君 私は、この前この場所でも申し上げましたけれども、もう今更判決なんか要りませんと、こういうふうに申し上げているんですけれども、なぜか言い訳のように昨日の七時に無理やりに置いておかれたそうですので、今日、一行も読まずにお返ししておきましたので、このことはよろしく。  さて、大臣前回委員会で、簗瀬理事の方から、大臣の個人的な事柄についてお尋ねがありました。それについて少し私お尋ねせざるを得ない立場でございまして、恐縮なんですが、大臣実家建物、これは相続されてその後手を加えられたと、こういうお答えでしたけれども、前回、これは、実家建物はいつどなたが新築されたんでしょうか。
  11. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) ちょっと前回の答弁はそのように申し上げたつもりはないんですが、今の御質問にお答えいたしますと、私の生まれた魚津の実家は、私が生まれたときにはもう既にありまして、したがって、多分おじいさんの代かその前の代かに建てたんだろうと思いますが、いつ建てたかは私は知りません。  その後ずっとありまして、おやじが、もう今からどれくらいになりますかね、死んだのがもう二十年前ぐらいですからその前だろうと思いますが、二十年以上前に、私の家は農家でしたんで馬小屋とかあったんで、うまやとかなんとかを壊して普通のところにちょっと建て替えたということがあったことは覚えております。  私が相続したときには、おやじが建て替えた後のままのものを私が相続しておりますので、私が相続した後は何ら手を加えたことはありません。
  12. 前川清成

    前川清成君 分かりました。もうこのことはこれで結構でございます。  次に、これも本題に入る前に少しお尋ねしたいんですが、公安調査庁のことであります。朝鮮総連との関係についてお尋ねしたいんですが、公安調査庁、これはどのような目的で設置されて、どのような仕事をしている役所でしょうか。
  13. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 公安調査庁は、破壊活動防止法規定による破壊的団体規制に関する調査及び処分請求、並びに無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律規定による無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する調査処分請求及び規制措置を行い、もって公共の安全の確保を図ることを任務として設置されたものでございます。  そういうことでございまして、公安調査庁は、破壊活動防止法に基づき、暴力主義的破壊活動を行う危険性のある団体について調査し、調査の結果、規制の必要があると認められる場合には、その団体活動制限や解散の指定などの規制処分請求公安審査委員会に対して行う。また、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律に基づいて、過去に無差別大量殺人行為を行い、現在も危険な要素を保持していると認められる団体について、公安審査委員会に対し、観察処分又は再発防止処分請求を行うとともに、観察処分に基づき団体施設への立入検査等を行う職務を行っております。  また、これら団体規制に関する調査において収集、分析した内外情勢に関する情報についても、内閣情報機能の強化や危機管理及び政府重要施策の推進に貢献するため、必要に応じて関係機関等提供いたしております。
  14. 前川清成

    前川清成君 この公安調査庁というのは何名ぐらい人がいらっしゃって、何か長官等々は検事の方から、これは出向されるんでしょうかね、その人事というのはどうなっているのか、お尋ねしたいんですけど。
  15. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 人員についてのお尋ねでございますが、平成十九年度末における公安調査庁定員は千五百十四人であります。このうち、内部部局施設等機関を合わせた定員は三百六十一人、地方支分部局定員は千百五十三人ということになっております。  人事についてのお尋ねでございますが、公安調査庁法務省外局ということになっておりまして、人事任命権者は、公安調査庁長官にあっては法務大臣、その他の職員については公安調査庁長官ということになっております。長官については検事さんがなっておられることが多いというふうには承知をしております。
  16. 前川清成

    前川清成君 長官検事が務めるのが多いということですが、それは何か理由があるんでしょうか。
  17. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 公安調査庁法務省外局でありますけれども、それのみならず、国民基本的人権に重大な関係を有する破壊活動防止法等の厳格な運用が求められる行政機関でもありますので、長官には司法及び治安分野における識見を有する検事を充てるということで、そういう考え方で検事を充てておると思っております。
  18. 前川清成

    前川清成君 この公安調査庁というのは朝鮮総連調査対象にしていると、こういうことでよろしいんですね。
  19. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) そのとおりでございます。
  20. 前川清成

    前川清成君 いつから、どうして朝鮮総連調査対象にしておられるんでしょうか。
  21. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 公安調査庁では、破壊活動防止法に基づき、朝鮮総連結成後間もなくのころから調査対象としておるものと承知しております。朝鮮総連は、かつて暴力主義的破壊活動を行った疑いがある在日朝鮮統一民主戦線を前身とする団体であり、今後の治安情勢のいかんによっては、将来継続又は反復して、さらに団体活動として暴力主義的破壊活動を行う危険性を否定し得ないことなどから調査を行っておるというふうに承知をしております。
  22. 前川清成

    前川清成君 朝鮮総連ができたときからということですが、それはいつごろになるんでしょうか。
  23. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 朝鮮総連結成は昭和三十年五月というふうに聞いております。
  24. 前川清成

    前川清成君 そうなりますと、一九七七年に横田めぐみさん、一九七八年、地村さん、蓮池さんらが拉致されているんですが、その当時も公安調査庁朝鮮総連調査していたと、こういうことなんですね。
  25. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) そのとおりでございます。
  26. 前川清成

    前川清成君 拉致と朝鮮総連との関係等々はまだ判明していないんですか。
  27. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) ちょっと今の段階で私から申し上げるのは差し控えさせていただきます。
  28. 前川清成

    前川清成君 それで、今回、元公安調査庁長官緒方重威さんが経営するハーベスト投資顧問という会社朝鮮総連中央本部土地建物を購入されました。この件について法務大臣としてはどのようにお考えになっておられるのでしょうか。
  29. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) ハーベスト投資顧問会社は、元公安調査庁長官である緒方氏が代表取締役を務める会社というふうに承知をしております。本件取引は、緒方公安調査庁長官は既に退職された方でありまして、その個人的な、個人としての行為だとは思いますけれども、在職中の立場等考えると、より慎重な配慮が必要だったんではないかと私は思っております。しかし、在職中の職務との関係は一切ないというふうに承知をしております。
  30. 前川清成

    前川清成君 慎重な配慮が必要だったと今おっしゃったんでしたかね、緒方長官は慎重な配慮が必要だったと、こうおっしゃった。具体的には、違法あるいは合法、犯罪に当たる当たらない、その辺の判断としては大臣はどのようにお考えになっているんでしょうか。
  31. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 違法、犯罪ということになりますと捜査当局において御判断されることでありますので、私からは申し上げませんが、この公安調査庁朝鮮総連との関係といいますか、等を含めれば、いろいろなことを考えられる、そういう疑いを持たれる可能性もあるわけですから、そういうことはやっぱり慎重にお考えいただきたかったなと思っております。
  32. 前川清成

    前川清成君 今、この緒方さん、あるいは土屋公献日弁連会長等々の取引に関して世間が非常に大きな関心を抱いておられます。連日のように報道されてます。それに対して、その最高責任者である法務大臣の御見解が慎重に配慮すべきであったという程度であれば、私はちょっと国民皆さん方に対する説明責任を果たしていないと思うんですけれども、もう少し、例えば組織に対する反省であるとか、あるいはこれから何をどのように取り組んでいかなければならないのか、その大臣としての御見解、御見識はないのでしょうか。
  33. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 元長官行為についての御質問でありましたのでそのように申し上げましたが、公安調査庁は先ほど申しましたような職務をやっておるわけでありますから、それが国家のために公正に整然と行われておるべきことであって、逆にその対象団体との、何かそれとは関係のない関係があるというふうに疑われるようなことがあってはならない、それはそのとおりでありますし、また情報の保持ということも大変大事な職分でありますので、そういう意思を持ってきちんと仕事をするように私からも長官等には申し上げておきましたし、今後、国民皆さんにいろんなあらぬ関心を持たれないようにきちんとやるように指導してまいりたいと、このように思います。
  34. 前川清成

    前川清成君 私、最初にどうして公安調査庁長官検事なのですかというふうにお尋ねをいたしました。それに対して大臣の方からは、破壊活動防止法等々に対する法律的な知識が必要だと、こういうふうにおっしゃいました。私は、破壊活動防止法だけではなくて、刑法や民法等法律に関して、検事ですから幅広い知識、専門的な知識を持っておられると思います。ところが、大変失礼な言い方ですが、今回の判決直前差押え対象になるであろう不動産を譲渡しておいて、一点の違法もないとか、ちょっとその法律家としての基本的な何かが欠けていると思わざるを得ないような御発言があるんです。  そこで、ちょっともう少し緒方さんの問題あるいは公安調査庁の問題について法務省においてしっかりとお取り組みをいただかなければならないのではないかと思っています。それと、整理回収機構自体も、これサービサーの登録をしていまして、法務省監督対象監督というんですかね、指導対象になっているそうです。ただ、今回の事件も、実は整理回収機構裁判に先立って仮差押えをしておけば何の問題もなかった。それなのに、その仮差押えを、私、登記簿謄本は確認していませんが、報道等では仮差押えしていない。これ、両方とも、公安調査庁だけじゃなくて、整理回収機構の方にも少し慎重な丁寧な作業がなかったのではないかなと、私はそう思っています。その点で、またこの辺も是非お取り組みをお願いしたいと思います。  時間の都合もございますので、本題に入らせていただきます。  さて、前回簗瀬理事も言及されましたけれども、十三日にこの法務委員会では参考人質疑をさせていただきまして、地下鉄サリン事件被害者会代表世話人高橋シズヱさんたちから御意見を承りました。その際に、高橋さんは、裁判は、御主人、亡くなられたその刑事裁判ですが、何が何だか分からないうちに終わってしまいましたと、こういうふうにお述べになりました。  そこで、今日、警察庁にもお越しいただいているんですが、今まで警察は、被害者やその御遺族に、いつだれから何をどのように伝え、説明してきたのか、警察から被害者被害者の御遺族に対する情報伝達についてお尋ねをしたいと思います。
  35. 縄田修

    政府参考人縄田修君) 警察におきます情報提供の取組ということでございます。犯罪被害者あるいはその家族方々に対しましては、捜査状況、あるいは事件がどのように処理されていくのか、あるいは犯罪によって受けた被害の回復、軽減のためにどうすればいいのか、あるいは支援策などにつきまして情報提供を確実に行うということが大切であろうと考えております。  警察におきましては、平成八年七月に被害者連絡実施要領を制定いたしまして、殺人強盗致死傷等身体犯やあるいはひき逃げ事件被害者方々あるいは御家族方々に対しまして、捜査状況被疑者を検挙した場合の被疑者の氏名あるいは起訴、不起訴処分の結果等につきまして御連絡をするということにいたしております。また、刑事手続の概要、どういう手続でなされていくのか、あるいは民事上の損害賠償請求制度その他の援助あるいは救済制度につきましては、これを分かりやすく記しました被害者手引というのを作成をいたしまして、これを被害者方々に配付をいたしまして、対応をいたしておるところでございます。  さらに、平成十七年十二月に策定されました犯罪被害者等基本計画を受けまして、平成十八年十二月にこれは実施要領を更に改定をいたしまして、実施対象の範囲といいますか、これを拡大するとともに、手引充実等を図っておるところでございます。  オウム関係被害者方々に対する伝達につきましては、平成七年当時、捜査を通じてまだ一生懸命実態が解明をしつつあるといいますか、あるいは情報に基づいてオウム真理教解明を図っているさなかのことであろうと思います。そういった中で十分な対応ができなかったということは、誠に残念に思っております。
  36. 前川清成

    前川清成君 今のお話であれば、逮捕したら逮捕しましたよというのは伝えるということですよね。だから、いつだれが伝えるのかというのをお尋ねしたつもりです。  それをお答えいただきたいのと、今、平成八年あるいは平成十七年に実施要項があると、こうおっしゃったけれども、高橋さんは、警察に何度も尋ねに行きましたと、そしたら警察から新聞コピーをもらいましたと、こうおっしゃっているんです。  伝えますということですけれども、どのような情報を伝えるのか。先ほどの法務省の陰険な対応じゃないですけれども、新聞コピーを渡してもこれは情報を伝えていることは伝えていることなんで、それだったらわざわざ警察まで行く必要ないわけですから、もう少し具体的に、何をどのようにいつ伝えているのか、お尋ねいたしたいと思います。
  37. 縄田修

    政府参考人縄田修君) 要領等によりますと、これはそれぞれ担当警察官捜査をした者中心でございますけれども、これを指名することになっておりまして、その都度、逮捕した、あるいは公判でどうなっておる、処分はどうなった等々、その節目節目のときに被害者方々の御要望も踏まえながら御連絡をすると。それにつきましては、その連絡事項につきましては全部記載して記録にとどめ、所属長等にも報告すると、こういう仕組みになってございます。  先ほどのオウム事件の関連でございますけれども、当時としてはなかなか捜査部門としてオウム真理教状況は分かりづらかったんだろうと思いますが、しかしながら、別に捜査の流れのことだけを伝えなきゃいかぬということじゃなしに、正に被害者の心情を十分解しながら、その捜査上あるいは公益上問題のない事項につきましてはできる限りの事項についてお伝えするということが大切だろうと思っておりまして、事後におきましても申出がありましたら適切に対応すべきだろうと、こういうふうに思っております。
  38. 前川清成

    前川清成君 時間の都合もありますから余り食い下がりませんが、その節目節目とおっしゃっても、平成八年に作った要項節目節目連絡しろと、こう書いてあるんですかね。節目節目って、現場警察官に任せているんじゃ、それは中身すかすかになりますよね。もう少し具体的に、例えば逮捕したときとか、検察庁に送ったときとか、起訴したときとか、そういうふうに具体的な私は指図をするべきだと思いますし、できる限り伝えますと、こう言うたところでも、できる限りの中身もそれは現場警察官お任せですから、可視化の問題ではありませんが一般的には何も伝えないと、それが役所の私は体質であるように思います。  この点は、実は検察庁にも同じことをお尋ねしようと思っていましたが、時間がないので前に進ませていただきます。  それで、具体的にお尋ねしたいんですが、検察庁は、起訴したときに起訴しましたという連絡被害者にしているんでしょうか。
  39. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 検察庁におきましては、平成十一年から全国統一被害者等通知制度を導入しておりまして、その制度によって事件処理結果、公判期日等々について通知をいたしております。  通知を行う相手の方でございますけれども、被害者等の方があらかじめ希望している場合や照会してこられた場合のほか、被害者の方に来ていただいて検察庁事情を伺ったときには、そういう通知を希望されるかどうかということを伺うことにしております。また、被害者が死亡した事件等重大事件にございましては、そのようなことがなくても検察庁の方から通知を希望するかどうかを伺って、その御意向に沿ってやっていると、こういうことでございます。
  40. 前川清成

    前川清成君 今回改正されます刑事訴訟法の三百十六条の三十三、被害者参加ですが、これは被害者からの申出があった場合に参加を許可することになっていますので、裁判が始まっているか始まっていないか分からなければこれは申出のしようがありませんので、是非この点は御配慮をお願いしたいと思います。  それで、小津局長に続けてお聞きしますが、三百十六条の三十四の二項ですけれども、公判期日は、これを被害者参加人通知しなければならないと、こう定められています。反対解釈をいたしますと、被害者参加人以外は公判期日通知しないということになってしまいます。しかし、公判期日が分からなければ参加の申出ができません。この辺、どのように考えればいいのでしょうか。
  41. 小津博司

    政府参考人小津博司君) この法律上は被害者参加人について規定しておるわけでございますけれども、先ほど申し上げました被害者等通知制度におきまして公判期日もその通知の内容となっているところでございますので、少なくとも現在のこの被害者通知制度におきましてもそのような形で通知をするということになっております。
  42. 前川清成

    前川清成君 そのような形で通知するって、どうなるんですか。ちょっと、結論だけでいいですから。
  43. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 犯罪被害者の方に公判期日通知するということでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、すべての被害者の方にその御意向にかかわらず通知をする制度とはなっておりませんので、その意味では、少なくとも現在の被害者通知制度が一〇〇%すべての人に行くようになっているかということでは、そうではないということでございます。
  44. 前川清成

    前川清成君 その点も是非、今後の運用で結構ですので、検察庁に申し出た、だから通知してやるじゃなくて、申し出ることができるかできないか御存じない方がほとんどでしょうから、説明を丁寧にする等々お願いをいたしたいと思います。今、社会保険庁と一緒じゃないかというやじもありましたので、併せて申し添えておきたいと思います。  それで、前回十二日の質疑で、私は、検察官の皆さんの反対尋問が上手ではないのではないかというふうなお尋ねをいたしました。法務省に帰って、あの前川というのはとんでもない悪いやつだというようなうわさは立ちませんでしたでしょうか。
  45. 小津博司

    政府参考人小津博司君) そのような事実は承知しておりません。
  46. 前川清成

    前川清成君 僕は気が小さいもので、よろしくお願いします。  ただ、翌日十三日の、何度も出しますが高橋さん、参考人質疑にお越しいただきました。その際も、検察官の尋問はパターン化しているんだ、被害者に対してつらいでしょうと、だから何キロやせましたか、こういうふうに尋ねるけれども、つらいからやせるじゃなくて、逆に太る人もいるんですよというような、正鵠を得た御指摘がありました。私も三年前の選挙、十七日間で四キロ太ってしまいましたので。  さて次に、求刑のことについてお尋ねをしたいと思います。  これは何度もそれぞれの立場から質問があるんですが、現行刑事訴訟法の二百九十二条の二の一項に基づいて、被害に関する心情その他被告事件に関する意見、これを被害者の方は述べることができます。被害に関する心情その他という表現ですから、被害に関する心情は被告事件に関する意見の例示だというふうに読み取れます。そして、被告事件に関する意見は、事実に関する意見もあれば法律の適用に関する意見もあろうかと思います。ですから、私は文言に即して是非解釈論を伺いたいと思っています。  前回、刑訴法の、私の質問に対して小津局長の方から、二百九十二条の二の一項は、これは被害感情を述べるんだと。新設される三百十六条の三十何ぼでしたっけ、これの方は、法律の適用、事実認定に関する意見、そういうふうにすみ分けがなされるんだと、こういうふうにおっしゃいましたけれども、二つの条文の文言からはどのように解釈すればこういう区別ができるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  47. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 若干その前提としての御説明をお許しいただきたいと思いますが。  実は、刑訴二百九十二条の二を新設する際の法制審議会の議論におきまして、当初、要綱案では、これを被告事件に関する意見という表現で諮問いたしましたところ、審議の中で、それでは検察官が行う事実や法律の適用についての意見と区別が付かないではないかと、この新しく設けるものの趣旨は被害に関する心情を中心としたものであるので、そのことを明確にするべきだという趣旨の御意見がございまして、最終的に答申をいただくときには現在の条文のような被害に関する心情その他の被告事件に関する意見というふうになりました。これを受けまして、その審議の際にも法務当局の方からはそのように理解しているという答弁を申し上げてきたというふうに理解しておりまして、私どもといたしましては、この条文によってそのように解釈をして法案を提出させていただいて、これまでそのように解釈していると、こういうことでございます。
  48. 前川清成

    前川清成君 今のは私の質問に一切答えてもらってないですよ。答えてください。
  49. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 単に被告事件に関する意見と書いてあるのではなくて、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見と表現してあることによって、そのように解釈しているということでございます。
  50. 前川清成

    前川清成君 小津さん、今のは御自身の答弁が破綻していると、小津さんほど優秀な方だからお分かりでしょう。二百九十二条の二の一項は被害に関する心情を述べることができると、こうは書いてないですよ。例示として被害に関する心情を挙げて被告事件に関する意見を述べることができると、こう書いてます。意見なんだから、事実認定に関する意見もあれば、量刑に関する意見もあれば、法律の適用に関する意見もある、全部含まれてしまいます、日本語として。それにもかかわらず、小津さんが二百九十二条の二の一項については被害感情に限るんだと、こういうふうにおっしゃるので、どう読めばそう解釈できるんですか、お伺いしたいと、こう申し上げているんです。  法制審のときの議論がどうだって、そんなの六法に書いてないですよ。これはあれですか、これからは国民皆さんは六法に書いてあることなんか信用するなと、全部法制審のことを知らなかったら口出しするなと、私はそう受け取ってしまうんです。文言としてどう解釈できるのかをお尋ねしています。
  51. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 被害に関する心情その他の被告事件に関する意見という文言からそのように解釈しているわけでございます。  私は被害に関する心情以外のことに全く言及してはならないと解されているとは答弁申し上げておりませんで、被害に関する心情を述べる前提として事実関係に言及することもある、また被害に関する心情を述べる表現として、どの程度の刑にしてもらいたいと思っているかということを言うこともあると、ただ、あくまでもそれは被害に関する心情を中心として意見を述べる、その過程でそのようなことに触れる、あるいはそれを表現する方法としてそのようなことに言及すると、このように理解しているということを答弁申し上げております。
  52. 前川清成

    前川清成君 理解なんかいいんですよ、日本語がどうなっているかという話ですから。小津さんの理解をここでお聞きしているわけでは決してありません。同じことの繰り返しなんで、実例を挙げたいと思います。  十四日に私たちは山下委員長に連れられまして東京地裁に行ってまいりました。そのときに刑事訴訟法二百九十二条、二百九十二の二の一項に基づく意見陳述の実演を見てまいりました。裁判所の方が実演していただきました。その際に、被害者の御遺族に扮した方は、母はコップを投げませんと、私の母は暴力を振るうような人ではありませんと、こういうふうに私たちの前でおっしゃっていました。これは事実に関する意見です。死刑にしてくださいと、そういうふうにおっしゃっていました。これは法律の適用に関する意見です。  東京地裁は、山下委員長や私たちの前で違法なサンプルを見せたというふうには私は思っていないんです。ですから、小津さんはへ理屈は並べられたけれども、今実務でされていることと小津さんが今おっしゃった御答弁とは明らかに食い違っている。いかがですか。
  53. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 私は、現在実務で行われている意見陳述の中で事実に関する事柄について言及がなされ、あるいはどのような刑に処すべきかということについて言及がなされているのは現在の刑事訴訟法に基づいたものであって、それはあくまでも被害に関する心情を中心とした意見を述べる過程でなされているものと承知しております。
  54. 前川清成

    前川清成君 今日は最高裁にもお越しいただいています。ちょっと手続の流れをお聞きしたいんですが、刑事裁判ですが、まず人定質問があって、起訴状の朗読があって、認否があって、証拠調べがあって、その後に二百九十二条の二に基づく意見陳述が行われる。そして、論告があって、改正法ができた後は、三百十六条の三十八に基づく意見陳述がある。そして、弁論があって、こういう流れでよろしいでしょうか。
  55. 小川正持

    最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。  刑訴法二百九十二条のその流れがですか、ええ、結構だと思います。
  56. 前川清成

    前川清成君 もう時間ないですから、長々結構です。これは昨日も言っていますよ。  で、証拠調べが終わったら、普通はその期日、次の期日でなくて、その日のうちに論告、弁論までやると、こういうことでよろしいですね。
  57. 小川正持

    最高裁判所長官代理者(小川正持君) その日のうちに論告、弁論される場合もありますし、別の期日になる場合もあります。
  58. 前川清成

    前川清成君 あるんですけれども、九五%の事件ではどうですか。
  59. 小川正持

    最高裁判所長官代理者(小川正持君) 今九五%と言われましたけれども、ちょっとそれは分かりません。
  60. 前川清成

    前川清成君 じゃ、今の小川局長の御答弁は、僕はコピーして弁護士会に配っておきますよ。今刑事裁判の法廷では、証拠調べが終わったら、その日のうちに無理やりにでも弁論入れられるんですよ。でも、今の局長の御答弁は、それでなくても構わぬと、こういうことですから、それもはっきりさせておきましょう。よろしいですね。  それで、今、小川さんは実務を知らないからかどうか知らないけれども、実務の実態とは懸け離れた御意見をおっしゃいました。しかし、実態は違って、実態は違って、普通の刑事裁判だったら、もう起訴状の朗読から弁論まで二十分ぐらいでやっています、今。被告人質問も入れて全部二十分ぐらい、一回の期日で全部終わっています。それは検事が少ない、裁判官が少ない、法廷が少ないという理由です。  実態はどうなのかというと、今度の新しい刑事訴訟法の三百十六条の三十八ができると、証拠調べが終わったら、その後で二百九十二条の二に基づく意見陳述をやって、そして検察官の弁論があって、また被害者の三百十六条の三十八に基づく意見がある。同じ期日で、しかも短時間のうちに、五分ぐらいの間に二回被害者の意見陳述が行われることになります。私は、それは実務としておかしいと、そう思っています。大臣、いかがですかね。わずか三十分しかやらない、三十分足らずの中で終わってしまう裁判の中で被害者が二回登場して二回同じようなことを言う。そんな必要があるでしょうか。
  61. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 正直申しまして裁判の実務そのものは先生の方が詳しいんでしょうけれども。  いろんなケースがあるんでしょうけれども、場面が違うわけですから、何といいますか、最初の意見陳述と違う立場で最終意見陳述をなさるということもあって悪いということでもないのではないかと思いますが。
  62. 前川清成

    前川清成君 場面が違うことないんですよね。  二百九十二条の二でも、死刑にしてくださいとかあるいはコップを投げませんとか、事実に関する意見も述べる、被害感情も述べる。もう一度、新しく新設された三百十六条の三十八でも、死刑にしてくださいとか私の母はコップを投げませんとか、同じことの二回繰り返しするのであれば私は手続として無駄ではないのかと、この辺の整理ができていないんじゃないかなということを申し上げております。  続いて、これは局長で結構ですが、犯罪被害者等保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律、これは長いんですが、何と呼べばいいんですか。
  63. 小津博司

    政府参考人小津博司君) いわゆるということであれば、犯罪被害者保護法と呼ぶことがございます。
  64. 前川清成

    前川清成君 それでは、その犯罪被害者保護法の九条の一項についてお尋ねいたしますけれども、対象となる犯罪が限定されているのはなぜか、これを端的にお述べいただきたいと思います。
  65. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 本制度を円滑に導入して運用していくためには、救済の必要性が強く認められ、かつ簡易迅速な手続で審理するのが相当と思われる犯罪対象とすることが相当であると考えられますので、そのような観点から限定いたしました。
  66. 前川清成

    前川清成君 私は、救済が必要なのは別にここに列挙されている犯罪に限らないと思います。全部の犯罪が救済が必要ではないかと思います。  それで、具体的にお尋ねしたいんですが、刑事訴訟法の三百十六条の三十三の一項に比べて業過が落ちています。これはどうしてでしょうか。交通事故の被害者は救済に値しないということでしょうか。
  67. 小津博司

    政府参考人小津博司君) お答えいたします。  業務上過失致死傷罪、今後、自動車運転過失致死傷罪となりますが、これを損害賠償命令制度対象としなかった理由は次のとおりであります。  まず、事故の当事者のどちらの過失が大きいかといういわゆる過失割合が問題になるような事案におきましては、刑事裁判の中で争っておかないと後の民事の手続で不利になるという理由でその争いが刑事裁判に持ち込まれるおそれが大きいのではないかというのが第一点。  第二点は、交通関係の民事訴訟につきましてはそのような過失割合の審理に時間を要しているということでございまして、専門部や集中部が設けられている裁判所もあり、専門的な判断を要する事項が多いと思われることが第二点。  第三点は、保険会社が絡むような事件につきましては保険会社を含めて解決を図る必要がありますので、この手続を利用した簡易迅速な解決という趣旨にそぐわないのではないかと考えたわけでございます。
  68. 前川清成

    前川清成君 今の理由は、私は二つとも間違っていると思います。  まず、保険会社を絡めないと解決できないと、こういうことですが、保険の契約上は、加害者が法律上負った債務、これは当然に保険会社が保険金として支払わなければならないはずですから、判決あるいは和解に当たってその都度保険会社の了解を取れと、それを国の機関があからさまにおっしゃるというのはちょっと保険会社寄り過ぎると思います。今のは、まず保険契約の約款をお読みいただければ明らかに間違っています。  二番目に、過失相殺のことをおっしゃいました。じゃ、今の実務において、小川刑事局長、最高裁の、過失割合というのはどうやって認定されているんですか。
  69. 小川正持

    最高裁判所長官代理者(小川正持君) 今は民事裁判のことをおっしゃられたんですか。
  70. 前川清成

    前川清成君 はい。
  71. 小川正持

    最高裁判所長官代理者(小川正持君) ちょっとそれは、私、今現実に民事裁判の実務でどのように過失割合が行われているか、今現在はちょっとお答えはできませんが。
  72. 前川清成

    前川清成君 現在はじゃなくて、昭和四十年ごろからどうやって認定されているかという質問ですけれども。  じゃ、お答えできないんだったら、小津さんはお答えできますか。
  73. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 民事裁判の実務について詳細に承知しているわけではございませんけれども、交通事故が起こったそのときの態様等々を審理をして、その双方の過失の割合がどの程度かを認定するのではないかと思います。
  74. 前川清成

    前川清成君 それは当たり前なんですよね、事故態様によって過失割合が決まるなんて。笑いが出ていますけれども。  そうじゃなくて、私が申し上げたいのは、それこそ保険会社の示談担当の社員が過失割合を決めてきているわけですよ、何万件とある交通事故。それを一々、今おっしゃったようなことでやっているかというと、そうじゃなくて、実務はどうやって動いているかというと、東京地裁の交通部が過失割合に関して事故態様ごとの過失割合を公表していて、それが判例タイムズというところから本になっているんです。それに基づいて一律に決められているわけです。ですから、事故態様さえ固まれば、事故態様さえ固まれば過失割合というのは今ほぼ自動的に決まっているんです。  ですから、私は、ここの、過失割合が問題になると時間が長くなるから被害者保護法九条の対象に業過を外すというのは、理由は全くないと、そんなふうに思っています。  ちょっと時間がないんですけれども、保護法の十八条に関してお伺いをいたします。  これは口頭で告知することもできると、こう書いています。口頭で告知した場合というのは、債務名義は五項にある調書になるんでしょうか。
  75. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 御指摘のとおりでございます。
  76. 前川清成

    前川清成君 今、民事のことも知っているじゃないかとやじが出ましたけれども、そうなりますと、民事執行法二十二条との関係はどうなるのでしょうか。
  77. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 二十二条のどの点との関係でございましょうか。恐れ入りますが。
  78. 前川清成

    前川清成君 その債務名義はどこにあるんですか。
  79. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 失礼いたしました。  二十二条の第七号、確定判決と同一の効力を有するもの、これが債務名義になると伺っております。
  80. 前川清成

    前川清成君 そうしたら、今回は調書を債務名義として提出すると、こういうことですよね。調書はいつ交付されるんですか。
  81. 小津博司

    政府参考人小津博司君) いつ作って渡されるかということでございましたら、これはできるだけ早くということだと思いますが、事案によって異なると思います。
  82. 前川清成

    前川清成君 決定に代えて、決定書の作成に代えて口頭で告知するというのは、できるだけ早く被害者を救済しようと、決定書を作成していたらなかなかすぐに執行できないから口頭でしてしまおうと、こういう趣旨だと思うんです。ところが、調書いつになるか分かりませんと言われたら、わざわざ口頭で告知する理由はないのではないかと私は思いますが、いかがですか。
  83. 小津博司

    政府参考人小津博司君) この法案に特段の規定はございませんけれども、委員御指摘の趣旨からしても、できるだけ速やかに交付されるべきであると考えております。
  84. 前川清成

    前川清成君 分かりました。じゃ、できるだけ速やかにというのを是非決めておいていただきたいと私は思います。  それで、次に十六条、お伺いいたしたいと思うんですが、四回になっています、期日は。これ、なぜ四回なのかというのは、ほかの委員の方からも質問がありましたけれども、私はよく分かりません。だから、もうそこは繰り返しませんが、特別の事情があれば四回以上でも構わないと、こうなっています。ここで言う特別の事情というのはどういうことが当たるんでしょうか。
  85. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 四回でやる予定で進めておりましたところ、例えば最後の予定していた日にどうしてももう一回だけやらなきゃいけないという特別の事情が生じたということが考えられます。
  86. 前川清成

    前川清成君 だから、特別の事情は何ですか。
  87. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 例えば、そこで話を聞く予定をしていた参考人が急病で出頭できなくなって、次だったら必ず出れるということになったような場合があり得ると思います。
  88. 前川清成

    前川清成君 ちょっと、今もよく分からないんですが、これもすみ分けをお伺いしたいんですが、あるケースにおいては特別の事情があるので手続を五回、六回と進めると。二十四条の一項ですが、あるケースにおいては審理に日時を要するから終了させる。この区別、どういう場合には終了させて、どういう場合には五回、六回と続けていくんでしょうか。
  89. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 基本的に四回という原則を定めましたのは、この簡易迅速な手続をどれぐらいの期間でやるべきか、逆に申しますと、余りにも十回、二十回と掛かるようなものはこの手続にふさわしくないだろうと。あるいは、一回で済まないから、これじゃもう駄目だから民事の方に回すということも駄目だということで、一定の基準、それで四回でございます。  そこで、先ほど申し上げましたような事情でそれが五回になるということはあり得て、それはこの二十四条で申し上げるような事情ではないだろうと理解しております。
  90. 前川清成

    前川清成君 いや、答えてください。だから、どういう場合は五回、六回となって、どういう場合は終了させるんですか。
  91. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 先ほど一つの例を申し上げましたが、四回で終わるという前提でやっていて、たまたまその日に病気であって、次なら必ず来て終われるというときにはこの手続でやるということになると思いますが、この手続で始めたけれども、四回で終わると思って始めたけれども、まだまだ何回も掛かるというふうに裁判所が判断をしたら民事の方に移すと、こういうことでございます。
  92. 前川清成

    前川清成君 今のは区別の基準をお示しになっていないですよ、今の。  それと、十六条の四項で、訴訟記録のうち必要でないものを除き、取調べをしなければならないとありますが、この取調べというのはどのようにするのでしょうか。
  93. 小津博司

    政府参考人小津博司君) その記録を閲読することによって取調べをするということでございます。
  94. 前川清成

    前川清成君 主語がありませんが、だれが閲読するんですか。
  95. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 裁判所でございます。
  96. 前川清成

    前川清成君 相手方の防御方法はどうなるのか、お尋ねしたいと思います。  十条で、申立て書は相手方には送達されます。その申立て書に記載された事項の立証のためにどのような証拠が取り調べられたのか、おっしゃった表現では閲読されたのか、相手方は認識し得る方法があるんでしょうか。
  97. 小津博司

    政府参考人小津博司君) これは、刑事被告事件の訴訟記録がそこで調べられるわけでございまして、刑事事件で防御活動している過程で、相手方、つまりこれまでは被告人、この手続ではその被告が承知できるというふうに理解しております。
  98. 前川清成

    前川清成君 今、わざとそういうとぼけたことをおっしゃっているんですか。被告人に調書のコピーを渡されるんですか。それだったら、どういう証拠が調べられたって分かりますよ、渡されないですよね。  それともう一つ、例えば国選弁護であれば、刑事裁判で弁護人選任の効力は終わっちゃうわけでしょう。新しい弁護士が付くかもしれない。そのときに、刑事事件でやりましたと言われてどうやって認識するんですか。その認識の方法。
  99. 小津博司

    政府参考人小津博司君) これは、その被告人が刑事記録を閲覧、謄写等をするということが可能であろうと思いますけれども、弁護人が替わるということにつきましては、この刑事の事件の中でその事実を認定する過程で、攻撃、防御は基本的には尽くされているというふうには考えております。
  100. 前川清成

    前川清成君 違うんです。その弁護人が終わって、この新しい損害賠償認定手続の弁護士が別の人が付いた場合どうなのかという質問です。  それともう一つ、今の答えは、そしたらコピーしろと、こういうことですよね。どういう証拠が取り調べられているのか知りたかったらコピーをしろと、こういうことですが、しかし、四項の文言を読んでいただきたいんですが、訴訟記録をすべてを取り調べるじゃなくて、必要でないと認めるものを除き、取り調べると。あるものは必要で、あるものは必要でないんです、それは裁判官が判断します。これは、そうしたら記録に必要、不必要というふうな判こでも押していくんでしょうか。
  101. 小津博司

    政府参考人小津博司君) そのような手続までこの法案に書いてあるわけではございませんけれども、想定しておりますのは、被告人の身柄関係の書類でございますとか、嘆願書等々がここでは必要がないというように考えられるというふうに理解しております。
  102. 前川清成

    前川清成君 今、相手方の防御方法としては、コピー取らんかいと、こういうお答えでした。しかし、コピー取ったところで、どれは必要なものとして取り調べられた、どれが必要なものではないということで取り調べられていない、判断しようがないんですよ。これは全く裁判官のさじ加減一つになってしまうと。もう少しここは詰めた話が必要じゃないかなと思います。  それと、十八条の一項についてお伺いしたいと思うんですが、決定は刑事の有罪判決を言い渡した裁判官が書くことになります。  先ほど最高裁の小川刑事局長が、きっと刑事局長ですから物すごく優秀な方で、物すごく立派な成績で司法試験を通ってエリート街道まっしぐらでいらっしゃった方だと私は思いますし、そのとおりだと本当に思います。しかし、その小川刑事局長でさえ、民事のことなんか分かりませんと、こうおっしゃいました。  民事のことが分からない刑事事件裁判官に十八条の一項の決定を書かせるんですか。損害賠償論等々、例えば先ほどの過失割合等、一体どうやって認定させるんですか。この辺、法務省の方にお聞きしたいと思います。
  103. 小津博司

    政府参考人小津博司君) この手続が想定しておりますのは、損害賠償の基礎となる事実については、刑事裁判で認定されたものについて基本的には争いがない事件であろうということを想定しておりまして、その上でどの程度の損害額かということについてその手続の中でやっていただく。また、これについても相当複雑な法律関係がある、また当事者間に相当な争いがあるということであれば、この手続にはなじまないということで通常の民事訴訟に移行されると、このように理解しております。
  104. 前川清成

    前川清成君 時間が参りましたので、これで終わりたいと思うんですが、この被害者保護法の手続につきましても、本当に実際の裁判の過程をよく分かった上で制度設計されているのか、私は大変疑問だと思います。何が証拠として取り調べられるのか、その相手方は分からない。あるいは、今おっしゃったように、辞め検の公証人が利息制限法違反の公正証書をどんどん作るということを南野先生が法務大臣でいらっしゃったときにお尋ねしましたけれども、それと同じようなことが起こってしまうのではないか。最高裁の刑事局長でさえ民事のことなんか分かりまへんと、こうおっしゃっているわけですから、裁判官は優秀だとは思いますけれども、それでも実際にこの手続に携わる裁判官がきっちりと民事の損害賠償論等々を理解した上で決定をお書きになるのか、大変問題が多いのではないかな、そのことを御指摘申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  105. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  今日は立ってまで傍聴人の方々がいらっしゃっておられまして、この法案審議への大変な重大な国民的な関心というものを感じます。当委員会の傍聴席が大変少ないということで、国民皆さんに御迷惑をお掛けをしているわけで、今後の傍聴の対応については是非理事会としても協議をお願いをしたいと思っております。  そこで、質問に入りますけれども、参考人質疑の中で、日弁連の細田参考人から、この現在の法案の被害者参加人というのは法的には一体どういう立場なのかということについて、学者の間でもどうも定まらないようだという御意見が述べられました。私的復讐を公的刑罰に昇華させてきた人類の知恵というのはやはり重たいものがある、それと被害者参加人とがどうマッチングしていくのか、学者もよく分からないと言っているという御意見なんですね。その点について、法制審の刑事法部会の幹事をお務めになっておられる大澤参考人にも私お尋ねをしたんですが、大澤参考人からは、当事者ではないが、刑事裁判における尊厳を認められるべき対象としてそこに入ってきているというお答えがあっただけで、私はやっぱりこの刑罰権、そしてその実現の手続被害者参加人の方々の法的な地位というのははっきりしないように思うわけです。  そこで、大臣に、まず国家の刑罰権ですね、国家が刑罰権を独占をし、それを国家が訴追する国家訴追主義というものの本質はどこにあるのか、その権限を一人の検察官が行うと、その独任制と言われる原則の趣旨について御答弁をいただきたいと思います。
  106. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 国家刑罰権についてのお尋ねでございますが、近代国家においては一般に国家が刑罰権を有しており、法律で定められた刑罰の手続により裁判が行われ、有罪とされた者に対し国がその刑罰を執行するということにされていると考えております。我が国においても、当然このような考え方によって刑事司法制度が取られているところであります。  また、訴追権については、近代国家においても、国の機関が独占的に行うものとするものと、私人による訴追をも認めるものとがあるというふうに承知をしておりますが、我が国においては、公訴を提起する権限や提起された公訴に基づいて主張、立証を行う権限は、基本的には国家機関である検察官のみがこれを有することとする国家訴追主義が取られていると考えております。  我が国においては、検察官は公益の代表者として公正誠実に職務を遂行する権限と責任を有していると考えられており、そのような検察権の行使に関しては、個々の検察官が自ら国家意思を表示、決定する権限を有する独立の官庁とされ、これが一般に検察官が独任制官庁と言われている理由であるというふうに承知をしております。
  107. 仁比聡平

    仁比聡平君 このテーマについては、刑事訴訟法の中では公訴権論争という大変難しい議論として戦後行われてきたところがありまして、その論争の中で様々述べられています要素については、大臣の今の御答弁の中に必ずしも含まれていなかったようにも思うわけです、その趣旨としてはですね。これは時間がございませんから、今後の議論にしたいとは思うんですけれども。  そこで、局長に、まず独任制との関係についてお尋ねをしたいと思うんです。  といいますのは、前回、私の質疑の中で、検察官と被害者参加人とのコミュニケーションの問題について、被害者参加人の側が納得されなかったらどうなるのかというお話の中で、検察官の説明について被害者の方が強い不満を持たれて、これは法律からしてもその必要性の判断がおかしいというときには、検察は組織でございますので、その検察官の上司に言っていただく等々のことはもちろん可能でございますというお話があったわけです。検察官の独任制の原則とこの御答弁との関係をどのようにお考えでしょうか。
  108. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 委員御指摘のとおり、検察官は独任制官庁であると言われております。その意味は、検察権は個々の検察官に属し、検察事務については個々の検察官が自ら国家意思を決定、表示する権限を有するとされておりまして、個々の検察官が検察事務を取り扱う独立の官庁であると解されております。典型的な例は起訴状に検察官の名前を書くということもその一部だと思います。  しかしながら、個々の検察権行使における過誤を防止して国家意思を正しく反映させるとともに、全体としての検察の機能をより効果的に発揮させるためには、統一の取れた検察官の組織が必要となるわけでございます。その要請にこたえるものといたしまして、検察官同一体の原則と呼ばれているものがございまして、具体的な表れといたしまして、上司の指揮監督権があると解されております。上司は、検察官に対し、適正な検察権の行使のために意見を述べるなどの指導ができると考えられております。  もちろん、本法案における検察官の権限や義務、これは検察官が行うものでございますので、被害者参加人に対する説明の必要性の有無、説明すべき内容についての判断は、まずは独任制官庁でありこの説明義務を負っている検察官が合理的な根拠に基づいて行うことになると考えられるわけでございますけれども、その内容に特に強い御不満がある、あるいは違法ではないか等のことがございましたら、今申し上げました指揮監督権の発動を求めて、その検察官の上司等に言っていただくと。それを受けて、その内容が被害者参加人の方の言われるとおりだということであれば、適宜その検察官に対して指導をするということが考えられるということでございます。
  109. 仁比聡平

    仁比聡平君 昨日、今申し上げたテーマについて通告をいたしまして、当局から何か参考になるものはないかとお尋ねをして送っていただいたのは、松尾浩也教授の教科書なんですが、ここで、職務の独立性について、松尾教授、こう書いておられます。良心に従って職権を行使し、憲法及び法律を尊重するという法律家の精神は検察官にもひとしく妥当する、また外部からの圧力に屈することがあってもならない。  このコミュニケーションとして問題になっている三百十六条の三十五に言う検察官の権限の行使というのは、これは正に刑罰権そのものの実現にかかわるものですね。証拠の評価にしても、訴訟遂行にしてもそうだと思います。ここについて、国家を代表する者として独任官としての検察官にゆだねられていると、検察官バッジにかかわって秋霜烈日という信念が語られるわけですけれども、これはつまりそのような職務の独立性というのを示しているのだと思うんです。これがゆがめられることにならないかという点について、私は懸念も持ちますので指摘だけしておきたいと思います。  別の角度で国家刑罰権との関係、それから国家訴追主義との関係被害者がどのように位置付けられるのかということが大きな問題でございます。  私、前々回に、国民の多くの皆さんは常識的な法感覚として、検察官の職務はこれは被害者を中心とした国民被害感情を中心に国民の法意識、これを代表する、それを公益を代表するものとして行われているものだと理解をしているのだと思うんですけれども、この国家訴追主義と被害者関係についてはどのようにお考えですか。
  110. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 被害者の方は、その尊厳にふさわしい処遇という観点から特別の地位が今後与えられることになるという法案でございますけれども、これは国家刑罰権の行使のその一部を検察官に代わってあるいは検察官とともに行使していただくという位置付けではないと理解しております。
  111. 仁比聡平

    仁比聡平君 少し先走って御答弁になっておられるんですけれども、今局長のなされた答弁は、つまりこの法案で制度化をされる被害者参加人の訴訟行為は検察官の刑罰権の行使を一部代替をするというものではないという、そういう意味ですね。
  112. 小津博司

    政府参考人小津博司君) そのような意味でございます。御指摘は現行法ではということでございましょうか。現行法では、被害者方々捜査機関に対して犯罪を申告して処罰を求める告訴ができるということになっておりまして、そういう意味では国家刑罰権の発動を促すと申しますか、そういうことができる立場にはなるわけでございます。  また、捜査の過程で現行法上、これは昔からでございますが、処罰感情を伺ってその内容を供述調書として、あるいは法廷に証人として来ていただいて証言をしていただいて、その内容を裁判に適正に反映するようにしていただいていると。  また、平成十二年に新設されました意見陳述では、この処罰感情等が情状として考慮しても構わないということになっておりますので、そのような被害者方々の行われること、あるいは話される内容が適正な国家刑罰権の行使のために有用とされているということはそのとおりだと思います。
  113. 仁比聡平

    仁比聡平君 局長も実務家なのでそんなふうにおっしゃるのかもしれない。つまり被害者の意思あるいは感情がどのように検察官の職務に反映されているか、そこの仕組みのお話をされていますよね、告訴だとかという。だけれども、今刑事司法の、被害者皆さんの関与ということで問題になっているのは、そういう細かい制度といいますか、手続の問題とちょっと違うんじゃないですか。  被害者方々は、私どもも繰り返しこの委員会で申し上げてきましたけれども、置き去りにされているという、疎外されているという、そういう思いをお持ちなんでしょう。具体的に証人尋問の場面においても、あるいは証拠の取扱いや報道に関しても、具体的に多くの被害者方々が検察や警察対応について問題としているんですよ。国家の刑罰権というのはそうしたら一体何ですか。私的な報復から公的な刑罰に昇華をするという、これは近代市民法の大きな到達点ですよね。それを代表していらっしゃるんでしょう、一人一人の検察官が。そこについて告訴の制度がありますなんていう話にならないじゃないですか。
  114. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 現行法でおよそ被害者の方が国家刑罰権の行使に制度上どのような関係があるかということで御答弁申し上げました。  委員御指摘のとおり、そのような制度をこれまで運用してまいりまして、検察に対して被害者方々が、あるいはもっと広く刑事司法制度全体であるのかもしれませんけれども、大変強い不満をお持ちになり、それをより強く表現されるようになったわけでございまして、今回の法案もその流れの中でございます。  検察は、先ほど申し上げましたような制度の中で、被害者方々意向も酌みながらやっているという意識ではおりましたけれども、そのような被害者方々の強い御意見を伺うと、そのような検察側の気持ちが実際にはそのようになっていない、あるいは被害者の方に伝わっていないということを私どもとしても非常に強く感じるようになったわけでございまして、その第一歩として平成十一年に被害者通知制度というところから始めたわけでございますけれども、その後、詳細省略いたしますが、検察としては運用上できることにつきましては次々と制度を立ち上げ、また研修その他で被害者方々に来ていただいてお話を伺い、これまでの検察組織全体、あるいは検察官の対応がどのような点で不十分であったのかということについて言わば学びながらやってきていると、こういう実情でございます。
  115. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、私はそんな御答弁だったら秋霜烈日はどこに行ったんですかと言っているんですよ。国家の刑罰権というのは、つまり検察がこれを独占をして、被害者はもちろんのこと国民皆さんが納得をし、そして犯罪による被害がきちんと社会的、法的に回復をされるために運用されなきゃいけないんでしょう。そこに私はこの法案審議の中での局長法務省の答弁には私は哲学がないとそう感じてまいりました。猛省をしていただきたいと思います。  先ほど局長が少し先走って御答弁をされました件についてなんですが、かかわるんですが、証人尋問についてこれまでもお尋ねをしてきたわけですけれども、これは参加人の方からの申出があった際に自ら検察官が尋問する場合もあるということになるわけですね。この点について昨日当局にお伺いをしてみましたら、その尋問を検察官がやってもいいんだけれども、参加人の方にやっていただいた方がいいという場合もあるだろうからそこでは役割分担があると思います。私、ちょっと何度か尋ねたんですが、役割分担というその言葉を使われたんですけれども、これは局長も同じお考えですか。
  116. 小津博司

    政府参考人小津博司君) これは、いささか比喩的に申し上げたわけでございまして、あくまでも検察官としてその質問をするのが適当かどうか。つまり、他方で被害者参加人立場で一定の要件の下で尋問することが認められている趣旨にかんがみれば、直接やっていただいた方がいいかどうかということを判断するということでございます。
  117. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、それは比喩的ではないですよ。局長、ここでごまかそうとされるというのは、これはずるくないですか。私、度々追及しましたよ。だって検察官は情状立証についてもすべての責任を負っているわけですよね。それも刑罰権の実現の重要な一部なわけですから。これを一〇〇%あるいは一二〇%検察官の質問被害者参加人の方も納得をされたという場合にも被害者参加人の方が質問に自ら立ちたい、尋問に立ちたいということがあり得るのかという、その議論も前回させていただきました。ここでも局長の答弁よく分からなかった。だから、私尋ねたら、役割分担はあり得ますというふうにおっしゃるから、だから聞いているんですよ。どうなんですか。
  118. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 検察官は公訴を行う者としての役割で訴訟活動をしている。そして、被害者参加人はこの法案の趣旨に基づいて被害者参加をしているという役割がある。それぞれの役割があって、それぞれの趣旨にかんがみれば、特定の事項をどちらが尋問するのがいいかということが判断されると、こういうことでございます。
  119. 仁比聡平

    仁比聡平君 時間がなくなってしまって本当に残念なんですけれども、このような議論はしっかり慎重に深められて、国家刑罰権との関係も、それから前々回申し上げた当事者主義的訴訟構造との関係もしっかりと議論を尽くさなければならないと思います。  先ほどおっしゃった答弁に関して言うと、役割分担とおっしゃると、何のための役割分担か、何を目的とした役割分担かというと、結局、刑罰権の実現に向かって被害者がやるのか検察官がやるのか、どちらが有効なのかという目的意識での役割分担ということに私はならざるを得ないんじゃないかという感じがするんですよ。そうすると、検察官は情状立証の一部を自らのコントロールの下で被害者参加人にやらせるという、そういうことになりはしないかと、私は重大な懸念を指摘して、質問を終わります。
  120. 近藤正道

    ○近藤正道君 最後の質問になると思います。社民党・護憲連合の近藤正道でございます。多少今までの質問と重複するかもしれませんが、最後でございますのでお許しをいただきたいというふうに思っています。  被害者刑事裁判への参加に伴う様々な問題が議論されているわけでありますが、改めてお尋ねをしたいというふうに思います。  被害者刑事裁判法廷に出席をして自ら被告人質問をする、そして被害者が被告人と対峙する場合、これがこれから出てくるわけでございますが、その場合の、つまり被害者参加し、そして直接被告人と被害者等が対峙する場合の互いの心理的な影響について、萎縮するとかしないとか、言うべきことが言えないようになるとかならないとか、あるいは被害感情が前面に出るとかそうでないとか、いろんな議論がこの委員会でもなされているわけでありますが、被告人と被害者が法廷で直接対峙した場合の心理的あるいは心理学的な影響等について、この制度設計をするに当たって何らかの形で科学的に調査とかあるいは検討がなされた事実があるのかどうか。一番最後になってこういうことを聞くのも恐縮でございますが、お尋ねをしたいというふうに思います。
  121. 小津博司

    政府参考人小津博司君) まず、平成十六年でございますけれども、法務省法務総合研究所で設置いたしました犯罪被害者のための施策を研究する会、ここが、同年の一月から三月にかけまして、現行の意見陳述を行った方々に対してアンケート調査を行いました。その結果、意見陳述をしてよかったとする方が六三%、よくなかったとする方が二〇%でございました。この意見陳述に対する積極的評価としては、直接裁判所に意見等を伝えられたことや、被告人の前で自分の意見等を陳述できたことを挙げる方の割合が高く、消極的な評価としては、被告人が何も感じていないようだったということを挙げる方の割合が高うございました。  それから、法務省刑事局におきまして、平成十八年の五月から十二月までの間に現行の意見陳述が行われた、その運用状況について調査をいたしました。その中で、被害者等の方が殊更に感情的になって訴訟が特に混乱した事例があるかどうかということも調べましたけれども、そのような事例は見当たりませんでした。  その他、文献につきましてはお尋ねがあればまた後で。
  122. 近藤正道

    ○近藤正道君 私は、被告人と被害者双方についてお尋ねをしたんですが、今ほど被害者側についての調査検討の報告はありましたが、被告人側についてはありましたでしょうか。
  123. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 被告人側についてただいま申し上げたような形での調査はございません。ただ、実務家の方々がこれらの制度について論じておられるものの中で、特に訴訟が混乱する、その他いろいろな弊害が生じることはないだろうという指摘をしておられる文献は承知しております。
  124. 近藤正道

    ○近藤正道君 そうしますと、いずれにいたしましても、被告人の心理的な状況等についての調査はどうもないようでございます。これを一つ確認しておきたいというふうに思います。  次に、今ほど来議論がありました現行の二百九十二条の二、それと今度新設されます三百十六条の三十八の関係でございますが、前回も私お尋ねをいたしました現行の二百九十二条の二、これは犯罪事実について必要な範囲でその概要に触れることが許されると、こういう実務の運用になっておりますし、量刑についての意見も処罰感情の一種として事実上認められております。  その上で、今回、三百十六条の三十八が新設をされるということでありまして、果たして短時間のうちに、つまり証拠調べの一番最後に被害者の意見陳述をやって、それから検察の論告求刑があって、またその後に被害者の言わば弁論が許されると、こういう形になるわけでありまして、似たようなものを一度に二度やる、その必要性についていろいろ議論がございました。  私は、改めてこの制度を整理をして一つになぜできないのかという疑問を持つと同時に、どういうふうに二百九十二条の二と三百十六条の三十八を使い分けるのか、分担がどうしてもよく分からない。前回も申し上げましたけれども、私は本当にそういうふうに思います。  そこで、いろいろ実務家に聞いてみますと、法文の上でははっきりしてないんだけれども、これは二百九十二の二、つまり現行の被害者の意見陳述、これは被害者側本人がこれを専ら行うと、そして新設される三百十六条の三十八について、つまりより詳細に事実認定と言わば法の適用、量刑権をいうんですが、これはむしろ依頼した被害者側の弁護人が担うと、こういうことが本当のところ予想されているんではないかと、こういうことを言う人は結構いるんですが、そういうねらいみたいなものがあるんでしょうか。  これは多分、こう言いますと、いや、それは両方できますというふうなお答えをするんではないかというふうに思うけれども、しかしこれだけ似たような制度が事実、本当に同時期に続けて可能になっている。これはやっぱり普通考えれば、なぜここまでやるんだろうというふうに思うわけで、そういうふうに考えますと、最初の現行の意見陳述は、これだって事実と、事実上求刑もやりますよ、これは被害者本人あるいは被害者遺族が行っていただく、後の方の新設されたところについては詳細に今度は依頼弁護士が登場してそこを担うと、それが本当のところねらいなんではないかということについて皆さん率直にどう思われますか。
  125. 小津博司

    政府参考人小津博司君) まず、そのようなねらいではございません。それから、法制審の中でそのような言わば違いが当然出てくることを前提として新しい制度をつくろうという議論も現在の私の記憶ではなかったと承知しております。  現在の意見陳述も、御本人が直接出てきてやる以外の方法も認められているわけでございます。もちろん、委員御指摘のように、現行の意見陳述では正に心情を中心とした意見を述べていただき、それが情状の証拠になるわけでございます。今度の新しい制度は、法律関係についても事実関係についても意見を言うということでございます。  もちろん、この制度を導入する大変大きな理由の一つは、被害者方々が現行の意見陳述だけでは不十分で、更に選択肢を広げて今回のようなものを設けてもらいたいという御要望があったからでございます。  実際の運用で被害者の方に弁護士が付かれた場合に今言われたような運用がなされるのかどうか、これは今の段階で私の方で申し上げかねるところではございますけれども、確かに法律問題等々になりましたら、あるいはせっかく付かれた弁護士の方がやられるのがふさわしい場合もあり得ようかとは思います。
  126. 近藤正道

    ○近藤正道君 私、いろいろ聞いてみました。法制審に参加している方についてもそうなんですが、法曹実務家の中でやっぱりそういうことをおっしゃる方はたくさんいますよ。そして、結局のところ、似たようなものを続けざまに行う、その本当のねらいはやっぱりそこにあるし、多分実務的にはそういう形で定着をしていくんではないかと、そういうことを言う弁護士の方が何人か、結構おられまして、それで、そういうことになりますと、皆さんはそれは否定されているけれども、私はそういう話を聞きますと、やっぱりそういうふうに使い分けていくんだろうと、こういうふうにやっぱり思うのがむしろ自然になってくる。その方が、ああ、自然だなと、こういうふうに思うんです。  そういうことになりますと、これは弁護士を頼める人と頼めない人との間に一定の差が出てきはしないか。確かに、修正意見の附帯意見で、これから弁護士を付けるという制度を充実させるということは盛り込まれておりますけれども、今言った弁護士を付ける人と付けられない人との間の不公平、こういうものは出てきはしないか。こういうことはどういうふうに配慮がされているのか、制度設計上ですね。そこをお聞きしたいというふうに思います。
  127. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 制度設計上は、弁護士の方が付いていない場合であっても、被害者参加人の方が十分に参加していろいろなことをしていただく、あるいはするかどうかの判断がしていただけるようにという観点で、例えば検察官が自分の権限行使について十分に説明をしろということにつきましても、そのような目的に役に立つと思います。  それから、権限行使からは少し離れるかもしれませんけれども、刑事裁判がどのようなものになっているか、どのように進行していくかということについて、検察官あるいは検察庁ですとその被害者支援員の方で十分に説明をして、御希望されるのであれば被害者参加人の方が直接やっていただきやすいように検察庁の方でも努力をしていくと、こういうことになろうかと思います。
  128. 近藤正道

    ○近藤正道君 二年後に裁判制度がスタートするわけでありますが、その下でこの制度が導入された場合、証拠調べの一番最後に現行二百九十二条の二の意見陳述が行われ、そしてその後に検察官の論告求刑が行われ、そしてその後に被害者側の弁論が行われる。三つ続けて行われるわけですね。この何というか事実上の迫力というのは、私はやっぱり相当のものがあるんではないかというふうに思えてならない。これ自身が被害者側の一つの正義実現という、そういう側面は私は当然あるんだろうというふうに思いますが、そういうことであるならば、それに見合う被告弁護側のやっぱり対抗手段みたいなものも何かつくってやらないと少し不公平ではないかなという思いが私の中にはやっぱりそれなりにあるわけでございます。  現行意見陳述と、導入されたのは数年前でありますが、これと量刑の関係についていろいろお聞きをいたしました、前回。参考人の質疑でも出されていたわけでありますが、多くの法曹は、この現行の意見陳述制度導入以来、重罰化の方向に推移しているんではないか、これが実感なんではないかということを言っておりますが、例えば死刑に限定して、平成十三年から現在、八十一の第一審の死刑判決があるようでありますが、この中で被害者の意見陳述がどの程度行われているのか。これ通告しておりませんけれども、もしデータがあったらお聞かせいただきたいというふうに思います。
  129. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 小津局長、答えられますか。
  130. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 失礼いたしました。  平成十三年から十八年までの間に第一審において死刑判決を受けた被告人の数は八十一人でございます。そのうち、被害者等により現行の意見陳述がなされたものが二十一、なされなかったものが六十という内訳でございます。
  131. 近藤正道

    ○近藤正道君 死刑判決でも様々な形態がありますのでなかなか一概には言えないところがあるんだろうというふうに思いますが、私は、被害者参加制度が死刑制度のないヨーロッパで言わば導入をされてきたこと、一方、それに対して我が国においては死刑制度が現にあるということが大変気になるわけでございます。  一つお聞かせをいただきたいのは、アメリカで死刑の制度がございますけれども、一時期、死刑事件については、これから日本で導入されようとしております被害者意見陳述制度、これに類似したものを持ち込むというのは憲法に違反するんではないかと、こういう議論があって、一時期そういうふうにされた時期があるというふうに聞いておるんですが、どうしてこの死刑事件について被害者の意見陳述制度を盛り込むということにアメリカでちゅうちょがあったのか。現在はそうなっていないようでありますが、もしお分かりでしたらお聞かせいただきたいと思います。
  132. 小津博司

    政府参考人小津博司君) ただいま御指摘のアメリカの判例でございますけれども、承知しておりますところでは、一九八七年にブース事件と呼ばれている事件がございまして、連邦最高裁は死刑適用の判断に当たってこのようなと申しますのはアメリカにおける被害者の方の陳述ということでございますが、これを考慮することが合衆国憲法修正八条に違反するとされたわけでございますが、その四年後、一九九一年にペイン判決という判決が出まして、これによって覆されまして、この種の証拠は陪審に必要な情報提供するものであって、死刑の恣意的な適用を招くものではないとして合憲の判断がなされたと、このように承知しております。
  133. 近藤正道

    ○近藤正道君 現在はそうでなくなったという話でありますが、少なくとも一時期、アメリカで死刑事件について被害者の意見陳述制度をやっぱり持ち込むということはやっぱり非常に問題があるよという形でかなりの議論が行われた。  日本でも、死刑制度との関係被害者に求刑までさせるということについて非常に意見が分かれているわけでございますが、この辺については、やっぱり法制審の中でもやっぱりかなりの議論があったというふうに思うし、今でも死刑制度とのかかわりで被害者参加、あるいは被害者の意見陳述について、それはちょっと問題だと、死刑の、言わば極刑を増大させるおそれがあると、こういう意見がたくさんあるわけでございますが、これについてどういうふうな基本的な考え方を持っておられるのか、再度お尋ねしたいというふうに思っています。
  134. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 今の御指摘について二点御答弁申し上げます。  一点は、現在、死刑を選択するべき基準につきましては、最高裁の判例でその判断基準が示されているわけでございます。被害者参加制度が導入されましても、その基準が何か影響があるものではないわけでございます。というのが第一点。  第二点は、死刑事件も含めまして、被害者が意見を言うことが量刑にどのように影響を与えるであろうかと、先般も御質問をいただきました。この点につきましては、私どもで承知しておりますところでは、具体的に統計的にそれが重くなる方向に行くということを述べておられる日本の文献というものは承知しておりません。それから、衆議院の参考人質疑で参考人として出られた椎橋教授がアメリカでそのような影響はないという趣旨の研究報告があるというふうに指摘をされまして、その椎橋教授の御本の中でそのアメリカの研究報告が紹介されていると、このように承知しております。
  135. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 時間参っておりますので。
  136. 近藤正道

    ○近藤正道君 分かりました。もうこれでやめますけれども、私は、とりわけ今の被害者意見陳述の下での、以降もやっぱり重罰化というものはそれなりにやっぱり実感せざるを得ない。こういう多くの法曹の意見の下で、死刑制度について、とりわけ、裁判制度の下での死刑事件について被害者の求刑まで認めるということについては、本当に私はちゅうちょせざるを得ないと。このことをやっぱり消し去ることは私の気持ちの中でできないということをやっぱり申し上げまして、これで質問を終わりにさせていただきたいというふうに思っています。ありがとうございました。     ─────────────
  137. 山下栄一

    委員長山下栄一君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、山東昭子さんが委員辞任され、その補欠として木村仁君が選任されました。     ─────────────
  138. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  本案の修正について前川清成君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。前川清成君。
  139. 前川清成

    前川清成君 ただいま議題となっております犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対し、民主党・新緑風会を代表して修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりです。  政府提出に係る本改正案は、犯罪被害者等の権利や利益を保護するという名目で、犯罪被害者等刑事裁判参加する制度犯罪被害者等による損害賠償請求について刑事手続の成果を利用する制度等を創設することを内容とするものでありますが、衆議院において修正がなされております。しかし、修正の目的や意図、内容等については、衆議院修正案提案者さえ十分には答えることができず、何のための修正か不明です。  改正案が導入しようとしている犯罪被害者等刑事裁判参加する制度については、ほぼ同時期に導入される裁判裁判制度に不適切な影響を及ぼす懸念を払拭することができません。それゆえに修正案を提出いたしました。  犯罪被害者等刑事裁判参加するいわゆる被害者参加制度は、裁判所に参加を申し出た被害者やその遺族に対し、公判への出席、情状に関する証人尋問、被告人質問、証拠調べ終了後に求刑を含む意見陳述を認める制度ですが、平成二十一年から実施される裁判裁判制度において、裁判員に対して過剰な影響を与えるおそれがあります。  すなわち、被害者参加制度が導入されますと、被害者参加人は法廷で、罪を犯したとされる被告人を前にして、怒りや悲しみなどの感情があからさまになることはむしろ当然です。これに対して、被告人が萎縮をしてしまい、真実を口にできないおそれもあります。  また、被害者参加人と被告人とが直接対峙して感情的な質問や応答がなされ、特に、応報感情に基づく意見陳述がなされた場合、被害者参加人の意見が過度に重視され、証拠に基づく冷静な事実認定や公平な量刑に強い影響力を与えることが懸念されます。とりわけ、裁判員に対しては、被害者参加人の意見や質問裁判員の情緒に強く働き、証拠に基づいて冷静になされなければならない事実認定について大きな影響を与え、量刑が過度に重くなることも危惧されます。  刑事訴訟においては、客観的な証拠によって犯罪事実の存否や量刑が決められますが、被害者参加人は必ずしもすべての情報を与えられているわけではありません。検察官と情報量や立場が異なっており、証拠に基づく訴訟活動を期待するには無理があります。求刑についても、被害者参加人立場からすれば重罰を求めるのは当然であり、法定刑の上限を求刑することが予想されますが、それは同じ事件の検察官の求刑とも異なり、他の同種事件の求刑との均衡を失することにもなります。したがって、被害者参加人の意見陳述から求刑に関する陳述を除外すべきであると考えます。  また、法務省は、被害者参加制度の施行時期を裁判裁判制度の施行よりも半年ほど早める予定ですが、被害者参加人裁判員に与える大きな影響を考えますと、裁判裁判制度が実施され、定着するのを待った後、被害者参加制度を施行すべきです。  本修正案は、こうした問題について修正を行おうとするものであります。  以下、その内容を御説明いたします。  第一は、意見陳述から求刑を除外しようとするものであり、証拠調べが終わった後における被害者参加人又はその委託を受けた弁護士による意見陳述は、量刑にわたってはならないものとしております。  第二は、裁判裁判に係る被害者参加制度の実施時期を、裁判裁判の開始から少なくとも一年程度後とすることができるようにするものです。  第三は、その他所要の規定を整備するものとしております。  以上が本修正案の趣旨であります。  何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願いを申し上げます。  以上です。
  140. 山下栄一

    委員長山下栄一君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  141. 仁比聡平

    仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、民主党修正案に賛成、原案に反対の立場で討論をいたします。  犯罪被害者は、十年ほど前まで、事件の当事者であるにもかかわらず、捜査の行方、判決結果さえ知らされないなど、被害者としての当然の要求すら踏みにじられてきました。その大きな要因には、第一次捜査機関であり、本来被害者を始め市民の立場に立つべき警察や、公益を代表して刑罰権の適正な実現、行使に重要な責任を負う検察など、捜査機関の不当、違法な被害者処遇があります。さらには、切実かつ切迫した被害届や告訴を受理せず重大な結果を招いてきたことなど、それら捜査機関による重大な権利侵害が刑事司法全体への被害者遺族の怒りや不信の大きな要因ともなっている点を政府は猛省すべきであります。  日本共産党は、犯罪被害者刑事裁判への関与は、国連の犯罪及びパワー濫用の被害者のための基本原則宣言や、全会一致の犯罪被害者等基本法にも示されるとおり、憲法十三条の個人の尊厳、幸福追求権によって保障されるものであり、これを具体化していく制度は必要だと考えます。しかし、その具体化に当たっては、近代刑事訴訟法が積み重ねてきた原則との整合性を慎重に吟味することが必要です。  本法案は、情報公開やプライバシー保護の拡充など評価すべき点もありますが、証人尋問権、被告人質問権、論告求刑など、法案が設計する被害者参加制度は、刑事訴訟の根本を壊すおそれがあります。  戦後、憲法の下で採用された当事者主義訴訟構造は、無辜の不処罰と無罪推定の原則に貫かれ、それが真実の発見と適正な量刑を導く最も有効な方法として歴史的に鍛えられてまいりました。ところが、法案では当事者の争いに参加する被害者の位置付けは定かでなく、被害者を一方当事者である検察官のコントロール下に取り込むことになりかねません。当事者主義の原則はゆがめられ、今でさえ続発している冤罪が増えることも懸念されます。  また、被害者の心情は多様で、予期せぬ展開になったときに法廷で感情的になることはむしろ自然なことですが、その強い被害感情や処罰感情が裁判官や裁判員の事実認定や量刑に不当な影響を与えることもあり得ます。被害者団体から、裁判参加がかえって被害者の重荷になることや、質問を通じ被害者が二次被害を受けることも指摘されています。  これらの問題は国会の審議を通じても解消されておらず、法案が提案されてからの時間もわずかで、国民的議論も尽くされていません。研究者や法曹関係者、被害者団体の間でも意見は二分されています。このような理由から、法案を今のまま成立させることには賛成できません。  民主党案は、被害者参加人の求刑と裁判制度の施行時期との関係で以上の問題を解消する方向であり、賛成いたします。  日本共産党は、既に三十年余り前の一九七五年に犯罪被害者補償法大綱を発表するなど、犯罪被害者の権利拡充を強く求めてまいりました。被害者の権利を拡充すること、国の責任で被害を回復する制度の拡充は喫緊の課題であり、その実現に向けて努力する決意を申し添え、反対討論を終わります。
  142. 近藤正道

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。  二〇〇四年に犯罪被害者等基本法が全会一致で制定され、犯罪被害者刑事手続に関与できる道が開かれました。基本法の下、真に犯罪被害者権利利益保護を図る法整備が進められるべきであります。このことを表明し、政府案に反対、民主党修正案に賛成の立場で討論を行います。  政府案では、被害者参加という形で犯罪被害者の感情がストレートに法廷に持ち込まれることにより、証拠に基づく冷静な事実審理や適正で公平な裁判が期待できなくなるおそれがあります。被告人が被害者を目の前にした場合、萎縮して何も言えなくなることが予想されます。弁護人の弁護活動にも支障が出かねません。日弁連が指摘しているように、真実の追求という裁判の目的に影響を及ぼしかねません。  また、政府案は被害者に求刑の権利を認めています。証拠とならず、単なる意見とされていますけれども、やはり行き過ぎであります。二年後にスタートする裁判制度では、市民である裁判員が裁判官とともに有罪か無罪かを判断し、量刑を決定いたします。被害者の生の声が裁判員に大きく影響するとの懸念は払拭できませんし、重罰化が強まるおそれもあります。  また、少年事件の場合はより深刻な問題が懸念されます。被害者権利利益保護と同様、被告人の防御権の行使が不当に損なわれないようにすべきであります。  さらに、政府案では、裁判参加するかどうかは被害者の判断となっております。しかし、被害者裁判参加したかどうかで同種の犯罪の量刑が異なることにもしなれば、裁判の公平公正そのものが問われます。  政府案には、日本弁護士会や専門家等からも、近代刑事司法の構造を変容させかねないとの声が上がっております。当事者である犯罪被害者団体の一部からも反対の声が出ているという点は重く受け止められるべきであります。  犯罪被害者の権利保護について与野党に違いはないはずであります。急ぐ必要はありません。裁判制度が円滑な軌道に乗るまでせめて施行後三年ぐらいまでは、どのような参加制度がよいのか時間を掛けて議論を尽くすべきであります。その上で結論を出しても遅くはありません。  以上が政府案への反対理由です。  民主党修正案は、被害者の求刑権の削除と本法案の裁判制度施行後の実施を求めており、賛成いたします。  以上、私の討論を終わります。  以上であります。
  143. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、前川君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  144. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 少数と認めます。よって、前川君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  145. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、簗瀬進君から発言を求められておりますので、これを許します。簗瀬進君。
  146. 簗瀬進

    簗瀬進君 私は、ただいま可決されました犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び社会民主党・護憲連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 犯罪被害者等刑事裁判参加する制度は、当事者主義の理念を前提とし、その実施に当たっては、犯罪被害者等権利利益保護が十分に図られるとともに、過度の報復感情や重罰化を招くことなく、被告人の権利が適切に保障されるよう、制度の公正かつ適正な運営に配意すること。  二 犯罪被害者等保護・支援を図るためには国民の理解と協力が必要であることにかんがみ、本法の趣旨及び内容について国民に対して十分な周知を図ること。  三 刑事裁判手続においては、被害者参加人となった者に限らず、犯罪被害者等と検察官との意思疎通が十分図られるよう努めること。  四 犯罪被害者等刑事裁判参加する制度及び損害賠償命令制度対象となる被告事件の範囲については、本法施行後の制度の実施状況対象とならない犯罪被害者等との権衡等を踏まえて検討を行うこと。  五 犯罪被害者等刑事裁判参加する制度及び裁判制度の実施時期が近接していることにかんがみ、混乱を生ずることのないよう、万全を期すること。特に、被害者参加人による量刑に係る意見については、裁判員が本制度の趣旨を十分に理解することができるよう配意すること。  六 犯罪被害者等への当該犯罪に係る情報提供については、その尊厳を踏まえた対応をするとともに、公判記録の閲覧及び謄写の範囲拡大については、当該公判への不当な影響や被告人を含む関係者の名誉・プライバシーの侵害を生ずることのないよう、十分配意すること。  七 犯罪被害者等に対する給付制度の抜本的見直し等、犯罪被害者等の精神的・経済的支援及び被害回復のための施策の充実に努めること。  八 犯罪被害者等の支援には多方面の施策が関わってくることから、関係府省庁等は一層緊密に連携し、今後も本法の施行状況犯罪被害者等要望、諸外国の犯罪被害者支援政策等を踏まえながら、犯罪被害者等の支援の在り方について引き続き検討を行うこと。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  147. 山下栄一

    委員長山下栄一君) ただいま簗瀬君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  148. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 全会一致と認めます。よって、簗瀬君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、長勢法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。長勢法務大臣
  149. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) ただいま可決されました犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。  また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。
  150. 山下栄一

    委員長山下栄一君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  152. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  153. 山下栄一

    委員長山下栄一君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、芝博一君及び仁比聡平君が委員辞任され、その補欠として角田義一君及び吉川春子さんが選任されました。     ─────────────
  154. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会内閣男女共同参画局長板東久美子さん、警察庁生活安全局長片桐裕君、文部科学大臣官房審議官布村幸彦君及び厚生労働大臣官房審議官村木厚子さんを政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  156. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 法務及び司法行政等に関する調査のうち、配偶者からの暴力防止及び被害者保護に関する法律の一部を改正する法律案に関する件を議題といたします。  本件につきましては、南野知惠子さんから委員長の手元に配偶者からの暴力防止及び被害者保護に関する法律の一部を改正する法律案の草案が提出されております。内容はお手元に配付のとおりでございます。  この際、まず提案者から草案の趣旨について説明を聴取いたします。南野知惠子さん。
  157. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございます。この場をおかりして先生方に感謝申し上げます。  ただいま議題となりました配偶者からの暴力防止及び被害者保護に関する法律の一部を改正する法律案の草案の趣旨及び主な内容について御説明申し上げます。  配偶者からの暴力防止及び被害者保護に関する法律、いわゆるDV防止法は、平成十三年に参議院共生社会に関する調査会で超党派によって作られた法律でございますが、平成十六年の改正の際、施行後三年を目途とした見直し規定が設けられていたところでございます。DV防止法が施行されてから六年、この問題に対する一般の理解も進み、被害者関係団体から一層の対策の充実を求める声も高まっております。この法律案は、こうした被害者の声にこたえるべく、各党の検討を踏まえて取りまとめたものでございます。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、市町村の基本計画の策定であります。  現行法では、基本計画の策定は都道府県のみに義務付けられておりますが、今般、市町村において行われる被害者に対する自立支援施策の充実などが求められている現状にかんがみまして、市町村におきましても基本計画の策定を努力義務とするものであります。  第二に、配偶者暴力相談支援センターに関する改正であります。  現行法では、市町村は、その設置する適切な施設において配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすことができることとなっておりますが、市町村におきましても被害者保護に対する取組を一層進めていただくため、これを努力義務に改めることとしております。  また、配偶者暴力相談支援センターの業務として、緊急時における被害者の安全の確保を行うことができる旨を法律上明記することとしております。  第三に、保護命令制度の拡充であります。  まず、一点目として、保護命令の対象となる被害者につきまして、新たに配偶者から生命、身体に対する脅迫を受けた被害者を加えることとし、その被害者に対して、将来、生命、身体に対する危害が生じるおそれが大きいと認められるときにも保護命令を発することができることとしております。  二点目として、被害者への接近禁止命令の実効性を確保するため、被害者に対し、電話、ファクス、手紙、電子メールなどにより面会を求めること、著しく粗野又は乱暴な言動を行うこと、子の急病の場合その他の緊急やむを得ない場合を除いて連続電話、夜間の電話をすることなどについて禁止命令を発することができることとしております。  三点目として、同じく、被害者への接近禁止命令の実効性を確保するため、被害者の親族や関係者への接近禁止命令を発することができることとしております。なお、その際、親族等の同意を要するものとしております。  第四に、保護命令の発令直後における被害者保護の必要性にかんがみまして、裁判所から配偶者暴力相談支援センターに対して、保護命令の発令に関する通知を行うこととしております。  第五に、この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行することとしております。  以上がこの法律案の草案の趣旨及び主な内容であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。  以上でございます。
  158. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 本草案に対し、質疑、御意見等がございましたら御発言を願います。
  159. 林久美子

    林久美子君 民主党の林久美子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  本日は、今ほど南野知惠子先生の方から趣旨説明がございましたいわゆるDV防止法の改正案につきまして、わずかな限られた時間ではございますけれども、質問、確認をさせていただきたいと思います。  今御説明がございましたように、これ、元々は超党派の議員立法として成立をし、改正をしてきたという経緯がございます。そしてまた、今回の改正に当たりましても、関係議員の皆様方の本当に大きな御尽力に心から敬意を表させていただきたいというふうに思います。  しかしながら、それぞれの党で考え方をまとめ、それをいろいろ議論する中で積み上げてきたものでございますけれども、一方で、限られた時間であるということや、あるいは法的に困難さを伴う部分等々ありまして、やはりまだ課題も一方で、大きな前進はしたけれども課題も残っているというような認識を持っておりますので、本日はその課題についても幾つか確認をさせていただきたいというふうに思っております。  では、まずこのDV防止法の適用対象についてお伺いをいたします。  今回の改正では、先ほど御説明ありましたように、保護命令の対象行為や禁止行為あるいは対象者などについての範囲の拡大はなされましたが、ただし、その適用者については配偶者とされたままでございまして、同居の交際相手というところまでは踏み込めていないというのが現状でございます。  しかしながら、やはり同居の交際相手の方から暴力を振るわれるというようなケースも多々ありまして、実際に内閣府の調査でも、交際相手から暴行などを受けた人は、二十代の女性では二二・八%に上っているということもございますので、その中でより一層、せめて同居をしている交際相手、要するに性的に親密な関係にある者の間で起こる暴力についてもやはりこの対象に加えるべきではなかったかなというように我々民主党では議論してまいりました。  この点についていかがお考えでしょうか、お伺いをしたいと思います。
  160. 南野知惠子

    南野知惠子君 ただいま先生からいい御意見をいただきました。  我々もそれらは検討してまいりましたけれども、やはり、配偶者からの暴力と同様の事情が認められるのかどうかというような、そういう様々なことを検討させていただき、交際相手という概念では、これは法律上の概念として明確さを欠いているのではないかなということがあり、その他幾つかの観点がございますけれども、このたびはそれを含まなかった。でも、そういうような事案が、先生もお話のありましたように、内閣府等の調査等では出ているということを御報告したいと思っております。  私といたしましても、同居の交際相手からの暴力、それに何らかの対策を講じることができないかということは考えてまいりました。先生の御意見と一緒でございます。よろしくお願いいたします。
  161. 林久美子

    林久美子君 ありがとうございます。  改めて課題認識というのは本当に同じものを持たせていただいているなというふうに思っております。  では、次に、自立支援についてお伺いをしたいと思います。  DVを受けた方というのは、今更申し上げるまでもなく、心身ともに非常に傷付いていらっしゃるのはもちろんですが、生活的に困窮をしているというところもございます。救済をすればそれで終わりではなくて、その後しっかりと自立をサポートしていかなくてはならないと。  そう考えますと、都道府県による被害者の自立支援事業が重要であるわけでございますけれども、都道府県は被害者が自立して生活することを支援するための事業を行うことができるという旨の規定をやはり法的に位置付けることというのが重要なのではないかと思います。あるいは、その事業にかかわる費用については一定国が補助するなどの方策も多々考えられると思うんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  162. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございます。  先生の御意見、もっともだと思いますが、こういう方々に対してはやはり自立支援というところが一番大切な課題であろうということは認識しながら、このたびの法律にも関与してまいりました。  被害者の自立支援の問題につきましては政府においても検討されております。例えば、国土交通省などでは家という問題についても配慮してくださっておりますし、また厚生労働省では保育ということについての配慮もございます。それよりも、もっともっと大きな予算ということの獲得もしなければならないというふうに思っておりますが、これらの施策を見守りながら更にいい状態に持っていきたいと、先生も是非御協力いただきたいと思っております。
  163. 林久美子

    林久美子君 本当に前向きな御答弁いただいて有り難いんですが、今お話しになったように、今やっている補助というのはせいぜい場所の提供であるとか、保育の話ございましたが、よりきめ細やかな、運用にかかわる体制を強化していくための方策という意味でも、是非引き続き御努力をお願いをともにさせていただきたいというふうに思います。  では、三点目なんですが、DVの特徴として加害者側に犯罪の意識が非常に薄いという問題が指摘をされております。再発を防止をして、こうした悲しい事件をもう起こさない、特に暴力の連鎖を断ち切っていくということを考えましても、加害者に配偶者に対する暴力犯罪なんだという認識をしっかりと持ってもらって、それを更生していく、研修を行っていくことが重要であるというふうに考えまして、私たち民主党ではそうした点も今回の論点としても挙げさせていただきました。  そこで、警察とDVセンターが協力をして、保護命令の発令期間中における加害者に対する研修制度などをつくっていくということが必要ではないかと、そういうことについて検討を進めていくべきではないかというふうに考えているんですが、この点はいかがでしょうか。
  164. 南野知惠子

    南野知惠子君 先生のアイデア、これはもう全く同じ私の考えでございまして、この件も検討させていただきました。でも、いろいろ加害者の方、またそれをお世話されておられる方々が、やはりまだ被害者のための充実が足りないと、そこにもう少し力を入れてほしいということがあったことが一点と、それから今、加害者のことについては内閣府、それから法務省又は国家公安委員会又は警察庁におきましてもいろいろと外国の情報も取り入れながら検討を加えていただいている現状でございます。それをこの法律の中に盛り込むところまで行かなかったのはちょっと残念だと、日にちが足りないということもございますが、検討を続けていることは御報告申し上げたいというふうに思っております。  さらに、DVがこれは犯罪であるということについても大きく、もう皆様方御存じだろうというようなところもありますが、もう一度またPRしていかなければいけない、予防が肝心だと。その予防にはいろいろなことが考えられますが、この場では割愛させていただいてもいいのかなと思っております。  今後も引き続きまして、現行法の規定に基づきまして、政府における加害者の更生課題、指導、そういうものについて検討を続けてまいりたいというふうに思っております。
  165. 林久美子

    林久美子君 ありがとうございました。  未然防止、そして再発防止という観点から、本当にしっかりとした取組を進めていきたいなということをお願いを申し上げます。  今の議論でもお分かりをいただけると思うんですけれども、やはり課題があるわけでございます。対象の範囲、自立の支援、加害者の研修、さらには、触れませんでしたけれども、医療機関からの通報がどうあるべきかなど、幾つか積み残された課題というのはあります。  今回、法文上には見直しの規定が入っておりませんけれども、今御答弁をいただきましたように、全く同じ認識で問題をとらえていただいていると思っておりますので、引き続き、やはりより一層被害者の救済を行っていく、あるいは支援を行っていく、加害者の再発を防いでいくということなどからも見直しを行っていただきたいと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  166. 南野知惠子

    南野知惠子君 もう先生御存じだろうと思いますけれども、この法案は元々共生社会、親会があってそこでの調査が始まりましたので、超党派で最初から展開することができましたが、前回規定を設けて三年間の間に改正させていただいた。今回もそのような形でさせていただいておりますが、親会がなくなりましたので、そういう意味ではこのたび参議院の先生方全部でこの法案を議員立法として出させていただくという心持ちがございます。  そこにお座りの千葉先生もその中で大いに活躍していただいておりますし、意見をいただいておりますし、超党派で吉川先生のお声もちょうだいしておりますし、そういう意味では、NPOの方々又は現場の視察を通しながら、そこら辺を全部網羅して、必要なときには必要なものをやっていくという精神でございますので、三年と決めると三年あるからいいじゃないか、五年と決めると五年あればいいじゃないかと、そういうようなことを私は申し上げたくない。タイムリーに一つ一つ解決できれば、法案化していくことも、これは我々の情熱だと思っております。  弱い人たちを助けていく、その下に歩いていきたいと思っておりますので、是非先生方のお力をいただきたいと思っております。
  167. 林久美子

    林久美子君 ありがとうございました。  法律の改正はこれで終わりではなくて、よりスピーディーに、しっかりと現状を変えるべく、被害者を救済すべく取組を進めていくと、改正もしていくという御答弁をいただきました。どうもありがとうございました。  では、次に、内閣府の方にお伺いをしたいと思います。  法律を改正をするということも非常にもちろん大切です。しかしながら、現場で運用を変えていく、しっかりとハードルを越えるような、障壁を取り除くような取組をしていくということをしないとなかなか現場というのは変わっていかないということは、今更申し上げるまでもございません。  そこで、お伺いをしたいのですが、保護命令中に被害者が殺害をされたという徳島で発生した事件、やはり今回の改正もこうした事件を踏まえて行われてもいるわけでございますが、被害者がもっと遠隔地である他県で生活することができていたら、その被害防止できたのではないかというふうに考えます。特にこの被害者は看護師さんという仕事を持っていらっしゃって、手にいわゆる職がある方でしたので、他県に行ってもしっかりと生活もしていけると、転居しても仕事に困ることはなかったのではないかというふうに思います。  DVセンターは被害者の就業の促進などの援助も行っているんですけれども、都道府県単位ではなくて、今回のこの徳島の事件なんかを見ても、より広域的な連携を図っていくことが必要ではないかなというふうに思います。しかし、こうした取組は広域的であるがゆえに都道府県では難しいと。であれば、やはり国、もう一つ言えば内閣府が調整機能を是非これは発揮をしていただきたいと思うわけでございますが、内閣府にこうした広域的な連携を促進、調整するための窓口を置いたり、担当者を置かれたりするおつもりはいかがでしょうか。
  168. 板東久美子

    政府参考人板東久美子君) ただいま委員御指摘のように、加害者の追跡が非常に厳しいというようなケースがございまして、被害者保護などにとりましても、県域を越えた広域的な円滑な連携、取組というのは極めて重要であるというふうに考えているところでございます。  国といたしましても、今までも広域的な連携が進んでいくようにということで従来から地方公共団体にも働き掛けをしているところでございますけれども、現在、全国知事会におきましても、この問題につきましては、広域連携に関して被害者を他の都道府県の施設に入所させる場合の実施責任とか費用負担の問題などの取扱いについて共通認識を図っていこうと、そして全国一律の取扱いを可能とするように申合せをしていこうということで今検討が進められているところでございます。  今、委員御指摘のように、連携というのは非常に重要だと思っておりますけれども、今申し上げましたように、知事会など都道府県間でもこの円滑な連携を進めるための申合せ、取組をしていこうという動きが進められているところでございますので、それを更に、男女共同参画局、内閣府といたしましても、これを支援をし、広域連携の強化、拡大を促進してまいりたいと思っております。  ただ、現在、先生御指摘がございますような新しい組織とか具体的な調整ということを内閣府としてすべきかどうかという点につきましては、我々としては全体的なこういった連携の取組を推進をするということで努めていきたいというふうに思っているところでございます。
  169. 林久美子

    林久美子君 今、内閣府としてすべきかどうかという御答弁がありました。でも、今回のこのDVの施行状況について、こういう立派なものも取りまとめて内閣府がやっていらっしゃるわけですね。じゃ、内閣府がかかわらなくていいということであれば、本当に何のための内閣府なのかということになるわけでございまして、やっぱりそこは一定のリーダーシップなり責任を果たしていただきたいというふうに思うわけでございます。知事会の考え方は考え方として、それは応援をしていかなくちゃいけない。しかしながら、内閣府としてやはり全体的な連携を促進するための役割を担うということでございまして、本当はもう一つ聞きたかったんですが、最後に一点だけ確認をさせてください。  こうした連携を強化をするために、やっぱり市町村あるいは都道府県がしっかりと広域的な連携をやっていかなきゃいけないんだという認識をまず持っていただかないといけないわけですね。そうした意識を促進をしていくため、あるいは被害者を救済するために、せめて通達を出して、そうした連携の徹底を図っていただくということについてはいかがでしょうか。
  170. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いします。
  171. 板東久美子

    政府参考人板東久美子君) はい。  先生御指摘のように連携、非常に重要だと思っておりますので、我々もそれを更に強化、拡大するような形で、地方公共団体通知を出したり、指導していく方向で関係省庁とも協議をして積極的に対応してまいりたいというふうに思っております。
  172. 林久美子

    林久美子君 是非しっかりと、必ず出していただくという形でお取り組みをお願いをしたいというふうに思います。どうもありがとうございました。
  173. 吉川春子

    吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。  まず、南野先生にお伺いいたします。  今回の改正内容は、脅迫も保護命令要因に含めたり、市町村にもDV支援計画策定を努力義務としたことなど、前回改正のとき課題になっていたことが含まれており、積極的な内容になっております。DV法制定と改正においては超党派で検討してきたという経過がありますが、今回はそういう形を取らなかった理由について、簡単でいいんですけれども、お伺いします。
  174. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございます。  先ほど林先生にも御報告させていただきましたが、親会がなくなりまして、そういったところからもう普通の議員立法という形に今戻ってこの作業がされているわけでございますけれども、私といたしましては、その当時の先生方の御意見、またNPOの方々の御意見、さらにこれからどう進めていくかという各省庁間の話を詰め合わせたりすることによって、このたび、この法案、議員立法として出させていただき、委員長提案でもっていただきたいと思っております。私の心は超党派で提出という形になっておりますので、よろしくお願いします。
  175. 吉川春子

    吉川春子君 警察庁にお伺いしますけれども、DV被害者救済においては警察の役割が非常に重要です。それで、伺いますが、配偶者暴力の過去五年間の認知件数、配偶者暴力を原因とする殺人、暴行、傷害、脅迫の件数を明らかにされたいと思います。そして、警察のDV認知時点での対応について御報告いただきたいと思います。
  176. 片桐裕

    政府参考人(片桐裕君) お答え申し上げます。  まず第一点は、都道府県警察において認知をした配偶者からの暴力事案の件数でございますけれども、平成十四年が一万四千百四十件、平成十五年が一万二千五百六十八件、平成十六年が一万四千四百十件、平成十七年が一万六千八百八十八件平成十八年が一万八千二百三十六件ということでございまして、平成十五年以降は三年続けて増加をしているという状況でございます。  罪種別でございますけれども、平成十八年中について申し上げますと、検挙件数合計千五百二十五件でございますが、内訳申し上げますと、殺人、これは未遂も含んでおりますけれども六十二件、傷害が九百八件、暴行が三百五十一件、脅迫が二十一件等となっております。  そして三点目、警察におけるところの配偶者からの暴力事案の受理の際の対応状況でございますけれども、どういった指導をしているかということでございますけれども、私どもとしましては、この配偶者からの暴力事案の被害者に対しましては、事案の特性を踏まえて被害者立場に立った適切な対応を取る必要があるというふうに考えております。  具体的に申し上げますと、例えば可能な限り女性警察職員が相談に対応することとか、相談を受けるに当たっては被害者と加害者が遭遇しないようにすること等といった指導を行っております。また、相談受理時には、刑事手続のほかに保護命令制度でありますとか、配偶者暴力相談支援センターにおける一時保護制度であるとか、また警察本部長による援助制度であるとかといったような被害者が活用できる制度について教示をし、被害者要望を聴取するように指導しているところでございます。
  177. 吉川春子

    吉川春子君 提案者の南野先生、今、警察の御報告のとおり、殺人事件など凶悪犯罪が一定数あると、DVを起因とする。さらに、傷害、暴行が非常に増えております。また、DVが凶悪犯罪に結び付く例もまれではなくて、私はやっぱり加害男性への対応が今後の課題であると考えています。加害男性のケア、再生プログラムを含めて、どんな対応が必要であるというふうに先生はお考えでしょうか。
  178. 南野知惠子

    南野知惠子君 加害者が男性と決め付けるのはこれまた厳しい条件かなというふうに思っておりますが、一般的には男性の方々が加害者であるというケースが多いと、これはもう認めざるを得ないと思っております。  そういう意味では、どのようにそれを防止していくかというところが大きなポイントであろうと思いますが、DV法の第二十五条におきまして、国、地方公共団体は、加害者の更生のための指導の方法などに関する調査研究の推進に努めると規定いたしております。また、配偶者間の傷害、暴行の犯罪であることを加害者にしっかりとこれを教え込まなければいけないというふうに思っております。二度と起こさせないと、これは再犯の方もおられますので、そういう点はまた気になっているところでございます。  平成十八年に内閣府においてまとめられた書物については、先生も既に御案内のとおりだと思いますので省略いたしますけれども、今後ともこの問題については重大な課題として取り組まなければいけないと思っております。
  179. 吉川春子

    吉川春子君 ドメスティック・バイオレンスは圧倒的に加害者が男性なんですけれども、女性の件数もあるということは、私、認識しておりまして、両方の意味を込めて質問をさせていただきました。  それで、法務大臣、私は今回の改正案の中で、非常に脅迫の要因も保護命令に加えたということが積極的な内容だと思います。  実は、前回の改正の議論のときに、脅迫の中で、その生命、身体に危害を及ぼすものを含めるべきであると私も強く主張したんですけれども、そうはならなかった経過があります。今回、そういう形でその保護命令の対象となる配偶者暴力に脅迫行為を加えるというふうに改正された点について私は大変評価をしておりますが、この脅迫が入ることになったその理論的な発展といいますか、理由といいますか、その辺について大臣から御説明いただければというふうに思いますので、よろしくお願いします。
  180. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 南野先生始め先生方で御議論されてきたことでございますので私から答弁するのが適切かどうか分かりませんが、この法律が施行されて、その後も各先生方いろんな観点から見直しの議論が行われてきたと承知をしております。  そういう中で、いわゆるDVの実態として、生命、身体に対する脅迫を受けた被害者について、脅迫の時点では暴力は受けていない、しかし、その後、配偶者から身体に対する暴力を受ける一定程度の可能性が認められるというようなこともあって、その保護の必要性が被害者等から強く求められているというようなことから、今回、このように要件は生命、身体に危害を加えたことを防止するためという意味で保護命令の対象とされたというふうに承知をいたしております。  そういう意味で、理論的発展という御質問でございましたが、実態に合わせてDVから十分に保護できるような仕組みにお変えになるという御意見を提案されておるものではないかというふうに承知をしております。
  181. 吉川春子

    吉川春子君 厚生労働省にお伺いいたします。  シェルター、つまりDV被害者を第一次的に保護する施設の数、駆け込み寺とかいうふうにも呼ぶんですけれども、そこで働く職員の待遇、正規、パートの割合等はどうなっておりますか。
  182. 村木厚子

    政府参考人(村木厚子君) 一時保護をしているいわゆるシェルターでございますが、ここの職員数でございます。  私ども把握をしておりますのは、婦人相談所の一時保護所の職員数でございまして、平成十八年四月一日現在で、常勤三百六名、非常勤三百二十八名となっているところでございます。  なお、一時保護委託が民間等に対してもできることになっておりますが、そこの職員数の方については私ども把握をしていないところでございます。
  183. 吉川春子

    吉川春子君 民間の数について、共同参画室からお答えいただきたいと思います。
  184. 板東久美子

    政府参考人板東久美子君) 民間のシェルターの数につきましては、平成十八年十一月一日現在、都道府県及び市町村が把握している数ということでございますが、百二施設ということでございます。ただ、その内訳の職員についてはつまびらかにしておりません。
  185. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 吉川さん、時間が参っておりますので、簡潔に。
  186. 吉川春子

    吉川春子君 はい。これが最後の質問です。  南野提案者にお伺いしますけれども、実はシェルターで働いている人たちは大変御苦労されて頑張っておられますし、それから数も決定的に不足しているわけですね。そういう点について、職員の待遇の劣悪な状態を改善するとか、シェルターを増やしていくとか、そういう点について提案者としての御意見を伺って、終わりたいと思います。
  187. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
  188. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございます。  前回は都道府県が中心でございましたが、このたび、市町村に中心を下げて、そしてもっともっと身近に物事を解決していけたらということでございます。そういう意味では、市町村におけるそういうものも大きく啓発していただきたい。  そういうところの中から、シェルターにお勤めの方々、本当に低廉でお仕事をしてくださっております。そして、もっともっと危険な仕事をしてくださっております。そこら辺には大変感謝でございますので、感謝の意を持って次のステップ、次のステップということを考えていきたいと思っております。DVのこの問題については終わりはない、本当に終わらせたいと思いながら、終わりはない課題かなとも思っております。ありがとうございます。
  189. 吉川春子

    吉川春子君 終わります。     ─────────────
  190. 山下栄一

    委員長山下栄一君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、若林正俊君が委員辞任され、その補欠として岸信夫君が選任されました。     ─────────────
  191. 近藤正道

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。  この法案、議員立法で提出ということでございますが、本当に敬意を表したいというふうに思っています。本法案に賛成する立場で、発議者には今日、済みません、質問はございません。行政側に、限られた時間ではありますが、何点かお尋ねをしたいというふうに思います。  まず一番目が、DV被害者の自立支援についてということでございますが、DV被害者の就業支援としてハローワークや母子家庭等就業・自立支援センターでの支援などが考えられておりますけれども、DV被害者の場合、一般の人と違いまして、精神的な面のサポートが決定的に重要でございます。その上で必要な就業支援が受けられる仕組み、これが大切なんだろうというふうに思っています。  そこで、頑張っております民間シェルターに、被害者保護委託だけではなくて、精神的なケアや就業・自立支援を委託できないのかどうか。これがもし進みますと、精神的ケアを求めるDV被害者のニーズに役立ちますし、かつ、今ほどお話もありました、民間シェルターの財政支援にもなるというふうに考えられるわけでございます。  今後、国、地方併せてこの方向での検討ができないかどうかという質問でございます。いかがでしょうか。
  192. 松野博一

    大臣政務官(松野博一君) DV被害者の方の自立支援には、先生御指摘のとおり、就業支援というのが非常に重要な課題であるというふうに認識をしております。  現状、このために、自治体による就業支援策の実施におきましては、DV被害者の方が離婚前であっても母子家庭と同様に取り扱うというふうなことが行われておりまして、本年四月には、母子自立支援プログラム策定事業の対象とさせていただいております。また、母子家庭等の就業・自立支援センターにおいては、同性の方による就業相談等を行っているということをやっております。また、ハローワークにおきましても、特にDVの被害者の方にはきめ細かな職業相談、職業紹介等を行っているところであります。  先生の方からお話がございました、特にDV被害者の実情をよく理解をされている民間シェルターの職員の方がこういった職業支援センター等に一緒に同行していただいたり、またその他の様々な精神的な面を含めての支援を民間シェルターの職員の方がしていただくということは、DV被害者の方にとりましても有意義な場合もあるというふうに考えております。  負担金のお話でありますけれども、もう御承知のとおり、一時保護が今国の負担金の対象になっておりますが、自治体が民間シェルターに対して補助や委託を行いました場合には、国として特別地方交付税による支援を行っているというところであります。今後とも、自治体において自立支援の一環として民間シェルターに補助や委託を行った場合には支援が行われるものというふうに考えております。
  193. 近藤正道

    ○近藤正道君 是非、財政支援という面も含めて、あるいはDV被害者のニーズでもありますんで、保護の点だけではなくて、ケアだとかあるいは就業支援、自立支援、パッケージで是非委託が民間シェルターに対して行われるよう強くお願いをしておきたいというふうに思っています。  次に、DV案件についての警察の研修のことについて、警察庁にお伺いをしたいと思うんです。  一般論でどのような研修を行っているかということではなくて、今日は、外国人女性のDV被害のことについてお尋ねをしたいというふうに思うんですが、この場合は在留資格の問題が絡んでいろいろ難しい問題がございます。つまり、被疑者の側面と被害者の側面と両方あるわけでありますが、いろいろお聞きする範囲で、この場合、被疑者の側面が非常に優先されて、DV被害者としての位置付けが希薄だという非常に声が聞かれております。是非、交番の警察官レベルまで含めて、しっかりそのDV被害、この人たちは被疑者であると同時に被害者なんだというそういう位置付けを明確にしていただいて、実情に合った対応を取っていただきたいと、こういうところの研修が非常に不足しているんではないかという声が非常に強いわけでございますが、御答弁をいただきたいと思います。
  194. 片桐裕

    政府参考人(片桐裕君) 御承知のように、配偶者暴力防止法第二十三条第一項で、警察職員を含む職務関係者は、被害者の心身の状況、その置かれた環境等を踏まえ、被害者の国籍等を問わず人権を尊重し、その安全の確保等に十分な配慮をしなければならないと定められておりまして、私ども、この規定を踏まえまして、全警察職員に対して、配偶者からの暴力事案の特性等を理解させ、また被害者立場に立った適切な措置を講じさせるために一層の研修の充実を図るように指導をしてまいったところでございます。  御指摘のように、被害者立場被疑者立場、両面ございますが、それぞれの立場に応じて、どちらが優先ということではなくて、それぞれに応じた対応を取るように今後とも指導してまいりたいと考えております。
  195. 近藤正道

    ○近藤正道君 三番目の質問でありますが、職員等へのケアについてでございます。  DVを受けた被害者保護する職員もまた大変な精神的な負担が掛かるわけでございます。公的機関、民間機関を問わず職員のケアが大変重要でございます。とりわけ、直接被害者のケアを担当する職員らの負担が非常に大変だという話をたくさん聞くわけでございますが、これらの職員らへのケア、バックアップの体制はどのように行われているんでしょうか。  こうした体制が非常に不足をしているという声を多く聞くわけでございますが、御答弁をいただきたいというふうに思います。
  196. 村木厚子

    政府参考人(村木厚子君) DV被害者対象とする相談や支援は、それに当たる支援者の側にも大変大きなストレスを伴い、しばしばバーンアウトなどの状況に陥るということを私どもも聞いているところでございます。  厚生労働省としましても、このために、婦人相談員の増員でございますとか、それからDV被害者等に対する支援手法の向上のための専門研修などにつきまして予算措置を講じております。この研修の中で相談員のメンタルヘルスケアなども取り扱っているところでございます。  それから、都道府県独自にも様々な取組をしていただいておりまして、例えば、精神科医師による相談ですとか、心理担当職員によるカウンセリングですとか、あるいは一人で抱え込む形ではなくてチームでミーティングをするというようなやり方もやっております。  また、これに加えまして、平成十七年度からでございますが、総理府の事業でございますけれども、相談の充実や相談員の精神的な負担を軽減するために、シェルターですとか配偶者暴力相談センターに対しまして、専門的な知識や経験を有する者を派遣をする配偶者からの暴力被害者支援アドバイザー派遣事業というものを実施しているところでございまして、こういったものを活用しまして相談員の方の精神的な負担を軽減するように更に努力をしてまいりたいと考えております。
  197. 近藤正道

    ○近藤正道君 最後の質問でございますが、先ほどもDV被害の広域連携の話がございました。  とにかく加害者の追及は非常に執拗で厳しいと、この中でどうやってその被害者の、DV被害者保護と言わば自立を図っていくかということが問題になっているわけでありますが、とにかく追及が厳しいと。被害者、女性の場合が圧倒的に多いわけでありますが、この人を配偶者が言わば追跡をすると。サラ金とよく似ているところあるんですが、子供の学校、子供から相手方を、被害者を割り出すと、こういうことがよく行われておりまして、子供の学校の言わば教職員から加害者が、被害者保護されている場所等を明らかにする、そういうケースが結構あるというふうに聞いておりますし、そういう事実も現に多いだろうというふうに思っています。  そこで、学校の教職員へのDVへの研修とか対応、仕方あるいはその協力の在り方がきちっと周知徹底されているんだろうか、時々問題になるわけでございますが、これ文科省の所管になると思うんですが、この関係者、学校の教職員への周知徹底がどのように行われているのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
  198. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 時間が参っております、簡潔にお願いします。
  199. 布村幸彦

    政府参考人(布村幸彦君) お答えいたします。  DV法に基づく政府の基本方針では、加害者の下から避難している被害者の申出があったときには、その子供の通学する学校において被害者の居所が加害者に知れることがないよう十分配慮する必要があるということが定められております。文部科学省におきましては、この基本方針に定められたことを受けまして、各教育委員会を通じて、学校に対してこれらの留意事項について周知を図っているところでございます。また、事例集でも、被害者の子供の転校の際にそこを十分配慮するよう事例を取り上げ、それの周知を図っておるところでございます。  今後とも、様々な会議の場を通じまして、学校等におけるDV問題への対処について周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
  200. 近藤正道

    ○近藤正道君 終わります。
  201. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 他に御発言もないようですから、本草案を配偶者からの暴力防止及び被害者保護に関する法律の一部を改正する法律案として本委員会から提出することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、本会議における趣旨説明の内容につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十六分散会