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2007-04-17 第166回国会 参議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十九年四月十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  四月十七日     辞任         補欠選任      若林 正俊君     小池 正勝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山下 栄一君     理 事                 岡田  広君                 松村 龍二君                 簗瀬  進君                 木庭健太郎君     委 員                 青木 幹雄君                 小池 正勝君                 陣内 孝雄君                 関谷 勝嗣君                 谷川 秀善君                 江田 五月君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 前川 清成君                 松岡  徹君                 浜四津敏子君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君    国務大臣        法務大臣     長勢 甚遠君    副大臣        法務大臣    水野 賢一君    大臣政務官        法務大臣政務官  奥野 信亮君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 英明君    政府参考人        内閣大臣官房        審議官      荒木 二郎君        警察庁長官官房        審議官      野村  守君        法務省刑事局長  小津 博司君        法務省矯正局長  梶木  壽君        厚生労働大臣官        房審議官     森山  寛君        国土交通省道路        局長       宮田 年耕君        国土交通省自動        車交通局次長   桝野 龍二君        国土交通省自動        車交通局技術安        全部長      松本 和良君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○刑法の一部を改正する法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 山下栄一

    委員長山下栄一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  刑法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会内閣大臣官房審議官荒木二郎君、警察庁長官官房審議官野村守君、法務省刑事局長小津博司君、法務省矯正局長梶木壽君、厚生労働大臣官房審議官森山寛君、国土交通省道路局長宮田年耕君、国土交通省自動車交通局次長桝野龍二君及び国土交通省自動車交通局技術安全部長松本和良君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 どうも御声援ありがとうございます。自民党の関谷勝嗣でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  今回の刑法の一部を改正する法律案は、いろいろな法律改正というのは行われるわけですけれども、その一番大きなパワーになりますのはやはり世論の動向というものだろうと思うんですが、この刑法の一部を改正する法律案はその範たるものといいましょうか、そういう世論の声に押されて、平成十三年に改正されてわずか五年でまた改正をするということですから、世論の力でこの改正の流れができたと、そのように思っております。  昨年の、飲酒運転等々でいろいろな事件が起こりましたが、その内容を見ますと、本当に涙なくして読めないような事故がたくさんあるわけでございまして、十八年の八月の二十七日に福岡市で起こりました飲酒運転で、猛スピード、八十キロ以上で追突されて夫婦と子供さん三人が欄干を飛び越えて、子供さん三人が亡くなられた。本当にこれはもう殺人以外の何物でもないと思うんでございますが、そういうようなことが続きまして今回の法律改正というふうになったわけでございます。  もちろん日本法治国家でございますから法律でいろいろ制限をするというわけでございますが、私は、やはり厳罰といいましょうか、罰を重くしていって社会を治めるというのは本来の姿ではないと思っております。しかし、こういう飲酒運転とかそういうようなことで事故が多発いたしておりますから、この分野においてはもう厳罰化をする以外には方法がないと思っております。  そういうようなことで、まずその後の交通事故発生状況を御報告いただきたいと思うんでございますが、まず二十年前と比較してどのような状況にあるか。そしてまた、平成十三年にこの刑法の一部を改正する法律案改正をされたわけでございますが、その後の五年間の推移の概要について御説明をいただきますようにお願いいたします。
  6. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 平成十八年の統計によりますと、交通事故発生件数が八十八万六千七百三件、死亡者数が六千三百五十二人、負傷者数は百九万七千五百九十一人となっております。  二十年前の昭和六十二年の数字を見ますと、交通事故発生件数が五十九万七百二十三件、死亡者数が九千三百四十七人、負傷者数は七十二万二千百七十九人となっておりまして、十八年の数値を二十年前に比べますと、発生件数につきましては約三十万件増加しております。死亡者数につきましては約三千人減少しておりますものの、負傷者数は約三十八万人増加していると、このような状況でございます。  また、ここ五年間の推移ということでございますが、平成十四年から見まして、死亡者数平成十四年の八千三百二十六人から年々減少傾向にはございますけれども発生件数はおおむね九十万件前後、負傷者数はおおむね百十万人前後でございまして、なお高い数値推移している状況にあると認識しております。
  7. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 ありがとうございました。  この交通事故によります業務過失致死傷罪量刑と、それ以外の業務過失致死傷罪量刑について説明をいただきたいと思います。  なぜそういう質問をするかといいますと、やっぱり交通事故量刑がもう上部の、つつ一杯のところまで来ておるということも今回の法律改正の一因でもあるわけでございますから、その辺り状況をお願いいたします。
  8. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 危険運転致死傷罪が施行されました平成十四年以降の業務過失致死傷罪科刑状況を調査いたしましたところ、四年以上の懲役又は禁錮に処せられましたのはいずれも自動車運転による事案でございまして、正にこのような事案につきまして法定刑処断刑上限近くで量刑されている事案が増加しているという状況にございます。  この間、自動車運転によるもの以外の業務致死傷事犯につきましては、四年以上の懲役禁錮に処せられた者はございませんでした。
  9. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 交通事故によります業務過失致死傷罪禁錮刑を科する事件はどのような事件でしょうか。禁錮刑懲役刑よりも刑の重さからいくと下にあるようでございますが、そのどこで峻別をするといいましょうか、懲役刑になるのか、そして禁錮刑になるのか、その辺りをお教えをいただきたいと思います。
  10. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 御指摘のように、業務過失致死傷罪につきましては懲役刑禁錮刑法定刑として定められております。そのほかに罰金刑も定められておるわけでございますが。  さて、懲役刑禁錮刑をどのようにして選択するのかということでございます。  これは、個々の事案ごとに裁判所において判断されることでございますので一概に申し上げることはなかなか難しい面がございますけれども、あくまで一般的に申し上げますと、例えば酒気帯び運転速度超過などの道路交通法違反を伴う場合など悪質な事案につきましては懲役刑が選択されまして、それ以外の事案について禁錮刑が選択されているように承知しております。
  11. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 その禁錮刑に服している方の状況を伺いますと、禁錮刑をそのまま受けている方は少ないようで、やはり労務に就くという方が多いようでございますが、ということは、懲役刑内容は同じような形になるわけですね。ですから、交通事故によります過失致死傷罪での禁錮刑を受けた方の、さて、何十%ぐらいが労務を希望しておるのか、そういうようなデータがあるかどうか分かりませんけれども、もしありましたらそれをお教えをいただきたいと思います。
  12. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) 本年二月末の数字で申し上げます。  全国の受刑者数が七万一千八百七十名おりました。そのうち、罪名を問わず禁錮受刑者というのが三百三十二名おりました。今委員指摘のとおり、禁錮受刑者でありましても、刑事施設の長に申し出て作業を行うことができます。そのような形で作業に就いている者が二百九十九名、約九割の者が作業に就いているという結果でございました。
  13. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 七万一千名の中で禁錮刑が三百三十二名というと本当にごく一部でございまして、その方の中の二百二十九名が労務を希望しておるということでございますから、そうすると、三百三十二名という方はどういう過失致死傷なんでしょうね。
  14. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) 現在、手元でその三百三十二名の内訳はちょっと持っておりません。申し訳ございません。
  15. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 受刑者作業報奨金というのは一か月どのぐらいであるのか、それとその作業報奨金というのは、ちょっと言葉としてはどうなんでしょうね。報奨金というのはちょっと、刑に服している方にお払いする給与なんですけれども、それが報奨金というのは、これちょっとどうなんでしょうかね。専門家方々大勢いらっしゃるんですけれども、その辺りもちょっとお教えをいただきたいと思います。
  16. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) この作業報奨金と申しますのは、刑務作業に従事した者に対しまして釈放の際に支給するわけでございますが、もちろんのこと、勤労意欲を高めて所持金を持たせて釈放することによって改善更生の一助となそうと、こういう目的でございます。  ただ、一方で、作業といいますのが矯正処遇の一つの方策であるということ、あるいは懲役刑受刑者にとりましては刑罰の内容そのものであるということがございまして、一般の社会における労働、あるいはそれに対する対価とは多少違った考え方で我々は考えてきたところでございます。
  17. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 それで一か月どのぐらいですか。
  18. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) 平成十八年度の平均値でございますが、約四千円でございます。
  19. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 四千円というのは、それはどうするんですかね。預金をしておくのか、刑務所内での何か必要物品を買うことに使うことができるんだろうと思いますが、その辺りちょっと説明をお願いします。
  20. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) 今御指摘のとおり、この四千円というのは計算上の金額でございます。最終的には刑務所を出所するときに手にするわけでございますが、一定の条件の下で、例えば自分の親族で養う者がいるとか、あるいは所内でどうしても必要なものを購入しなければならない、そういった場合に一定の限度で許可を得て所内で使用するということが許されておるわけでございます。
  21. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 今回の法律改正されます大きな要諦になっておるわけでございますが、危険運転致死傷罪で立件される数は交通事故による業務過失致死罪に比べて余りにも少ないわけでございまして、被害者遺族方々の中には、その適用要件が厳し過ぎるからその範疇に入ってこないというような声がたくさんあるようでございますし、また、要件が抽象的になり過ぎておりまして、捜査の現場にも戸惑いがあるといった声も聞いたりをいたしておりますが、危険運転に関するより具体的な基準を作るなどの努力をすべきではないかと、そういうような思いを私は抱いておるわけでございます。  そういうようなことで、危険運転致死傷罪発生件数、それから死傷者数、それから科刑実情について、前回の法律改正が行われました以降五年間の推移について説明をいただきます。
  22. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 危険運転致死傷罪、施行は厳密に申しますと平成十三年の十二月二十五日でございますので、統計平成十四年以降ということでお答え申し上げますが、危険運転致死傷罪で公判請求されました人員は、平成十四年から平成十七年までは年間約三百人から三百三十人ほどで推移をしておりました。平成十八年でございます、まだ仮集計ではございますけれども、三百七十六人となっておりまして、その前年に比べまして約二割ということで、かなり大幅な増加になっているということでございます。  また、同じく統計上、各年とも検察庁が危険運転致死傷罪で受理した件数よりも同罪で公判請求した件数の方が多くなっております。例えば、平成十八年では危険運転致死傷罪による通常受理人員は二百四十二人でございましたけれども、先ほど申し上げましたように、公判請求した人員が三百七十六人であります。これは業務過失致死傷罪で送致された事件でありましても、危険運転致死傷罪要件に該当しないかという観点から、警察と協力しながら十分に捜査を尽くしまして、その結果、業務過失致死傷罪ではなくて危険運転致死傷罪に該当するとして公判請求する件数もかなりの数に上っているところでございます。  また、危険運転致死傷罪により公判請求された事件における死傷者数について申しますと、当局で把握している限りでは、平成十四年は死亡者六十八名、負傷者五百四名、平成十五年は死者六十七名、負傷者五百四十一名、平成十六年は死者四十三名、負傷者五百四十一名、平成十七年は死者五十七名、負傷者五百五十八名となっております。  最後に、科刑状況でございますけれども平成十四年から十七年までの四年間で有罪が言い渡された者は千百四十九人でございます。そのうち、三年を超えて五年以下の懲役刑が言い渡された者が百十一人、五年を超える懲役刑が言い渡された者が六十二人と、このようになっております。
  23. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 それでは、改正案内容に入っていきたいと思っておりますが、危険運転致死傷罪対象を四輪以上の自動車から、その四輪以上という言葉を外しまして自動車に改めております。ということは、二輪車などが入るということなんですけれども、そもそも、ですから、こうなりますと、自動車というのは刑法上どのように定義をされるのか。例えば、原動機付き自転車も含まれるのか等々、自動車刑法上の定義、軌道を走らないものが自動車であるとかいうようなことも言われておりますけれども、その辺りをはっきりしておかないとこれまた取締りにも困るんだろうと思いますが、よろしくお願いします。
  24. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 刑法におきまして自動車と申しますのは、レール又は架線を用いないで原動機によって走行する車両を意味すると、このように以前から解釈されておりまして、そういうことでございますので、原動機付自転車もこれに含まれるわけでございます。  なお、道路交通法におきましてはこの点が刑法解釈と若干違っているわけでございますけれども、これはいろいろな立法の経緯で、行政的な措置をいろいろする区分をするためにそのような違いを道交法上は設けているということでございますが、刑法上は一般的な言葉意味に従いまして、先ほど申し上げたような解釈を取っておるということでございます。
  25. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 そうすると、自転車刑法上は入らないわけですね。
  26. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 自転車は入りません。
  27. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 この二輪車を加えることについては、平成十三年十一月の法律の制定時に国会でも繰り返しその必要性が問われたところでございまして、当時の法務省刑事局長はその必要性はないと答弁をいたしていたようでございます。  ということは、二輪車を追加する必要性がこの五年間で特段に生じたということでなければ、当時の刑事局長が甘かったということになるんではないかなと、そのように思いますが、五年間で二輪車がそんなに大きな事故が増えたのかどうか、その辺りを、別に責めるつもりはありませんから正直に経過だけおっしゃってください。
  28. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 御指摘のように、平成十三年の法改正のときにそのような議論がございまして、衆参両法務委員会におきまして、自動二輪車運転者危険運転致死傷罪対象とする必要性につきまして、今後の自動二輪車による事故実態を踏まえて、必要性につき引き続き検討することという附帯決議がなされたわけでございます。  そこで、法務省におきましてこの附帯決議を受けまして、この点につき引き続き検討するということで、危険運転致死傷罪が新設された後に発生した二輪車運転者による業務過失致死傷事犯を調査いたしましたところ、酒酔い運転によるもの、赤信号無視によるもの、著しい速度超過によるものなど、危険かつ悪質な運転行為によって被害者を死亡させ又は被害者加療期間一か月以上の重傷を負わせるなどの重大な結果を生じる死傷事故が少なからず発生している状況にあることが認められました。また、二輪車による事故被害者遺族方々などから、同罪対象が四輪以上に限定されていることを疑問とし、その対象二輪車に拡大することを求める声も私どもにも寄せられるようになったわけでございます。  そこで、二輪車の悪質かつ危険な運転行為による重大な死傷事故事案実態に即した適正な処罰を行うために、今回の法改正が必要であると考えたものでございます。
  29. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 決していじめるわけではないんですが、ですから、甘さがあったということは認めるんですかね、認めないんですかね。  二輪車対象であった場合、ですから、五年前に二輪車も含めておったら、その二輪車危険運転致死傷罪適用があったと思われる事例はどのぐらい件数があるんでしょうか。
  30. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 十三年当時、何分危険運転致死傷罪という新しいものを設けましたので、その対象をどこまでにするかということにつきまして、一定の慎重な判断を法務当局としてはさせていただいたと、こういういきさつではございますけれども、それでは、その後現在に至るまで、仮に危険運転致死傷罪対象自動二輪車にまで広がっていたらどれぐらいのものがその対象になったであろうかと、こういう御指摘であろうかと思います。  もちろん、同罪で裁判をしておりませんので、さてどれぐらいであろうかということを申し上げることはもちろん困難でございますけれども、先ほど私が御答弁申し上げました法務省のその後の調査で大変悪質なもので重い結果が生じているものということで、その限りにおいて申しますと、その件数は五十一件ございました。
  31. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 それでは、一応そのことはその辺りで自由にさせてあげたいと思いますが。  今回の改正案は、業務過失致死傷罪から自動車運転過失による致死傷罪を切り離して新たな犯罪類型として重く罰することとしているわけですが、業務過失致死傷罪自体法定刑を引き上げても目的を達することはできると思われますが、新たな犯罪類型を設けた理由は主にどういう点にあったんでしょうか。
  32. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 業務過失致死傷罪法定刑を全体として引き上げますと、当然のことながら自動車運転以外の事犯についても引き上がるということになるわけでございます。自動車運転以外の事犯につきましては、そのような事犯量刑実情を見ますと、それを必要とすべき理由は直ちには認められないと一方で思われるわけであります。  また、違う観点で申しますと、近時の自動車運転による過失致死傷事犯には飲酒運転等々の悪質で多数の死傷者が出る、重大な結果を生じるものが少なからず発生しているわけでございまして、そのような事案に対する処罰について量刑法定刑国民規範意識に合致しないということで御意見が強く見られるようになったということでございますし、また、科刑状況につきましても正にそのような事案について上限に近いところで判決がなされるようになったということでございます。  さらに考えますに、自動車運転と申しますのは、ほかの業務に比べまして人の生命や身体を侵害する危険性が類型的に高いということが一つございます。また、鉄道や航空機のように機械化、組織化された安全確保システムの整備が事故防止に非常に意味があるという分野とは異なりまして、基本的に運転者個人注意力に依存するところが大きいわけでございますので、そういう意味では自動車運転者には特に重い注意義務が課されていると言うこともできようかと思います。このような意味でも、この部分を切り離してその部分だけ罰則を強化する合理性も認められるのではないかと、このように考えた次第でございます。
  33. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 最後にお伺いいたしますが、今回の厳罰化による効果についてどう考えるかということでございますけれども、その厳罰化によりまして運転手を、まあどういいましょうか、萎縮さすといいましょうか、その方にこの厳罰化が働きますと私はマイナスの方向になると思うんですけれども運転時の注意力を喚起すること、そしてまたそういう、どういいましょうか、飲酒だとかあるいはスピードの出し過ぎだとかいうことが今までは日本交通事故に対してやはりまだ甘いところがあったと思うわけでございますが、本当にこれはもう殺人と同等であるというような感覚を持って運転手方々も日ごろの、どういいましょうか、健康状態の維持等々も含めてそういう注意をするようにしていただければこの厳罰化というのは効果が出てくることだろうと思っておりますが、この厳罰化に対して故意犯過失犯の境界をあいまいにすることになるという意見もございますが、そういうことに対してはどのようなお考えを持っているのか。  時間が参りましたので、最後大臣に聞こうと思っておりましたが、もうやめますから、どうぞゆっくりとお座りになっておっていただいて、あるいは刑事局から、そういうことで、この厳罰化が、私が今言いましたように、運転をする皆さんにいい方向影響が働くようにやはりまた指導もしていかなければならないと思いますが、そういうことに対する考えを伺って、質問を終わりたいと思います。
  34. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 今度の法改正、どのような影響があるかということにつきましてはいろんな見方があるかもしれませんが、やはり特に酒酔い運転等悪質な運転行為をして事故を起こすという可能性のある、そういう人たちに対しては抑制効果といいますか、それが大いに期待されるのではないかと私どもとしては考えているところでございます。
  35. 関谷勝嗣

    関谷勝嗣君 どうもありがとうございました。
  36. 松岡徹

    松岡徹君 民主党松岡徹でございます。関谷先輩の後、非常にやりにくいんですが、質問させていただきたいと思います。刑法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。  関谷先輩が、大臣質問、時間切れで聞けなかったので、私は冒頭に大臣考え方を聞きたいと思うんですが、民主党といたしましても昨年、最近の交通事故状況、それに対する国民意識等々含めまして、やはりバランスが悪いと、そごが生じているんではないかということもございまして、民主党としても昨年、今回の刑法の一部を改正する法律案の同趣旨法律案提出をさせていただきました。したがって、基本的には私たちもこの法律案については、その思いというのは同じでございます。そういう意味で、それらの、今回の法律案が本当にその効果をもたらすように、そういう視点で質問をさせていただきたいというふうに思っています。  それで、冒頭、今回の法改正について、大臣の方の提案理由の中に、一つは、量刑とか法定刑国民規範意識に合致しない、またあるいは、重大な結果が生じた事案等について、事案実態に即した適正な科刑を実現することを可能とする必要があると、このような提案説明がございますが、国民規範意識あるいは適正な科刑を実現するということとはどういうことなのか、改めて大臣の認識をまず冒頭お伺いしたいというふうに思います。
  37. 長勢甚遠

    ○国務大臣(長勢甚遠君) 昨今、交通事故が大変重大な結果を生んでおる事例もたくさん出ておりまして、特に被害者方々を始め国民の皆さんから、今の制度あるいは科刑状況でいいのかという御批判といいますか御要望が極めて多数出ておるわけでございます。  私どもの方にも、十八年中には全国交通事故遺族の会などから十何万という要望書が、署名が来ておりますし、また十九年二月二十二日には、川口、園児四人がひき殺されるという大変痛ましい事故でございましたが、遺族などからより厳罰化をすべきだという要望書が参っておるわけでございます。また、法制審議会においても関係団体のヒアリングにおいて御意見がたくさん出され、また昨年十一月に内閣府政府広報室で交通安全に関する特別世論調査を行いましたが、飲酒運転などについては罰則、行政処分を強化すべきという意見が七割を超えるという状況でございました。  今、現行の制度また裁判の状況は先ほど刑事局長から御答弁申し上げたとおりでございますが、自動車、走る凶器とまで言われているわけで、いったん何とかということになれば大変な重大な結果をもたらすわけでございまして、これに対する国民規範意識を強化をするためにも今回の改正を是非御理解をいただきたいものだと思っております。
  38. 松岡徹

    松岡徹君 大臣の今の認識についても、私たち、私自身も異論はございませんが、もう一歩深めていただきたいという思いで改めて質問をさせていただきたいと思うんですが、この国民規範意識がここまで高まってくるというのはどういう背景なのかということをやっぱり見なくてはならぬだろうというふうに思うんです。  すなわち、義務を果たさず重大な結果、事故を起こしてしまった、それに対する責任は余りにも軽過ぎるという国民規範意識はあると思うんですね。それによって被る被害者思いというものもしっかりと思いをはせなくてはならないというふうに思いますし、同時に、そういったことを求める国民規範意識のもとは、こういった事故がなぜ予防できなかったのかということもあろうかと思うんですね。そういう意味では、事故を起こした、すなわち運転免許を与えられて、当然のように注意義務、あるいは今大臣がおっしゃったように車というのは一つ間違えば凶器でありますから、だからこそ注意義務というものが課せられるわけでありまして、その注意義務を果たさない、そしてその結果起こした事故というのは、当然のようにその結果に対する責任を負うことは当たり前のことであります。  その結果に対して、余りにも、今の刑法処罰内容からすれば、被害者状況被害者人たち思いからすれば、あるいは他の刑法処罰内容から見ても、現在の処罰規定では余りにもバランスが悪いということだと思うんですが、そういう意味では私は、被害者の方が思うことの中に、まずそういったことによって事故を起こした責任をどういうふうに科刑をしていくのかということについては今回提案されていますけれども、もう一つ思いをはせるならば、被害者思いとすれば、その事故を被って生活が破壊されるという場合がありますね。例えば、自分の父親があるいは自分の愛する人が事故によって失われる、人生が狂うんです。そのときそのときの生活が変わります。そこの家庭の子供たちの環境も変わっていきます。正に単なる自分の身内、愛する人を亡くすだけではなくて、これからの生活を破壊されてしまうというこの思いをどう酌み取るのかということなんですね。だからこそ、被害者をどう救済するかという視点が同時になければならないというふうに思いますし、そして国民規範意識の中には、だれもがこういった事故に遭いたいと思っておるわけではありません。  そういう意味では、故意犯過失なのかということの判断もあろうかと思いますが、そういう意味ではなぜこういったことが予防できなかったのか。そういう走る凶器、しかしその凶器というべき自動車、車の社会というのは私たち社会にとって必要なものであります。そういう意味では我々は、国民の意識とすれば、今回の刑法改正で重大な事故を起こした加害者に対して重罰を科す、それで直接の被害者でもない加害者でもない国民がほっとするというのは、またそれだけでは足らないと私は思うんですね。  逆に言えば、私たちは、そういった意識が客観的に見れば加害者になっているんではないか。すなわち、交通状況というものを私たち社会の、私たち自身も社会の一員でありますから、そういう危険なものを社会がこれからも必要とするならば、当然のようにそれを安全になし得るようなシステムあるいは交通環境というものを整えなくてはならないと思うんですね。そういった声にも私たちは声を上げなかったら、重罰化さえすればいいんだというふうな国民意識は、私はこれから最も必要とするモラルを高めていく点でもやっぱり大事な視点だと思うんですね。そういう意味では、我々自身も加害者にならないためにもその三つの視点をやっぱり認識として受け止めるべきだというふうに思うんですが、改めて大臣、いかがですか。
  39. 長勢甚遠

    ○国務大臣(長勢甚遠君) 当然、厳罰化をすれば事足れりという問題ではないと思います。  自動車は、何か事故を起こそうと思って走っている人は普通いないわけですが、いつでも起こり得る可能性があるわけですから不断に注意力を持ってないかぬと、このことをやっぱり喚起する意味でこの今回の改正は意義があると思いますが、同時に、走る人たちが安心して走れるような環境整備というもの、また社会の在り方というものもきちんとやっていかないと、厳罰化だけでみんな注意したからだけというわけにもいかない場合もあり得るわけですから、社会を守る上でそういう施策を更に強化していくことが非常に重要だと思いますし、また被害に遭われた方々に対しても今被害者救済のための政策を強化しつつございますけれども、そういうことも含めて、全体としてのこういう重大な事故に対する社会の救済方法というものを考えていかなきゃいけないというふうに思っております。
  40. 松岡徹

    松岡徹君 ありがとうございます。  今回の法改正は、私は質問をずっと事前に考えていく中で、やっぱりその視点を決して忘れてはならないなと。そうでないとこの今回の刑法改正は生きたものにならないだろうというふうな思い大臣の見解を冒頭に聞かしていただきました。  被害者の心情をどういうふうに私たちは、国民はあるいは国は受け止めるのか。被害を受けた人たちは、正に二次被害としての生活破壊があるわけでありますし、やっぱり国民の意識の規範意識の根本となるのは、こういった事故が起きないような、二度と起きないようなどういう環境をつくるのかということもしっかりと我々は受け止めなくてはならないだろうと。そういう意味考え方を聞かしていただきまして、是非ともそういう視点でこれからもお願いを申し上げたいと思いますが。  それで、今回の法改正で、平成十三年に危険運転致死傷罪が創設をされました。先ほどの関谷先生の質問もございましたが。そして、今回の改正自動車運転過失致死傷罪というのが新設をされました。この違いといいますか、いうのをまず御説明いただきたいと思います。
  41. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 危険運転致死傷罪でございますけれども、これは故意に危険な自動車運転行為を行い、その結果人を死傷させた者を暴行によって人を死傷させた者に準じて処罰しようとするものでありまして、そういう意味では、暴行の結果的加重犯であります傷害罪、傷害致死罪に類似した犯罪類型でございます。  危険運転致死傷罪に掲げられております危険運転行為、これはアルコールの影響によって正常な運転が困難な状態での走行等々、幾つかを類型化して掲げているわけでございますけれども、これは悪質、危険な自動車運転行為のうち、重大な死傷事犯となる危険が類型的に極めて高い運転行為であって、暴行の結果的加重犯である傷害、傷害致死に準じた重い法定刑によって処罰すべきものと認められるものに限定しているわけでございます。  他方、自動車運転過失致死傷罪でございますけれども、これは人の生命、身体の安全を保護法益といたしまして、自動車運転上必要な注意を怠り人を死傷させた者を処罰しようとするものでございまして、過失致死傷罪の加重類型となる過失犯でございます。これまでそのような事犯業務過失致死傷罪により処罰されてきたわけでございますが、一般にこれがこの新しい自動車運転による自動車運転過失致死傷罪に当たることになると考えているところでございます。
  42. 松岡徹

    松岡徹君 危険運転致死傷罪というのは故意犯だというふうになるんですね。  先ほどもありますが、民主党も今回の法改正で注目しているのは、昨今聞かれるのは、この危険運転致死傷罪が新設されてから、いわゆるひき逃げといいますかね、いうものが増えているんではないかというふうに思うんです。要するに、故意犯ですから、それを危険運転致死傷罪の構成要件であるアルコール、薬物、スピードとか、そういった構成要件を立証していくといいますか、そういうことがあります。  薬物とかスピードというのは後の現場調べれば分かると思うんですが、アルコールによる危険運転致死傷罪適用しようとすれば、それを立証するためにその現場で確保しなくてはならないんですね。ところが、それから逃れるためにその現場から逃げてしまうと。要するに、翌日だれかに付き添われて自首するとか、そういうことがあったんではないのか。これは極めてもう悪質だというふうに思うんですね。  こういった適用平成十三年からありましたけれども危険運転致死傷罪適用件数と例えばこの間のひき逃げの実態、このひき逃げはすべて飲酒によるものかどうかは分かりませんが、それももし分かればちょっと教えてほしいと思うんですが、数字教えてください。
  43. 小津博司

    政府参考人小津博司君) まず、危険運転致死傷罪件数につきましては、平成十四年以降の推移がございまして、また平成十八年に少し上がったと申しました。その十八年で申しますと、検察庁が警察から送致を受けた人員は二百四十二人であったわけでございますけれども危険運転致死傷罪で公判請求したのが三百七十六人と、このように数字が違うということ、先ほども説明申し上げましたわけでございます。  これは正に、警察の方から業務過失致死傷罪で送致された事件でございましても、危険運転致死傷罪に該当しないかということでいろいろと警察と一緒に捜査を尽くしているわけでございます。現場から逃げた者につきましては、確かにその時点での血中アルコール濃度等々を厳密に測ることはできないわけでございますが、危険運転致死傷罪要件は、呼気あるいは血中のアルコール濃度がどれだけという数値で決めてあるわけではございません。そこで、本人が出てきてと申しますか、検挙した後で、そのときの飲酒状況飲酒の量などをいろいろと捜査をして、その結果としてそのような要件が立証されて公判請求に至ったというようなこともあるわけでございます。  なお、ひき逃げの発生件数につきましては、警察でお調べになっている数字が手元にございますが、平成十八年は一万八千件を超えているという数字があることは今手元の数字で承知しております。
  44. 松岡徹

    松岡徹君 この危険運転致死傷罪平成十三年に創設されて、適用されるという件数が余りにも少な過ぎるんではないかという、そういう批判もあるんです。なぜ適用されないのか。その構成要件とそれを立証するための方法なんですね。先ほど関谷先生のときにもありましたが、例えば平成十八年でいうと、送致時、危険運転致死傷罪として送致したのは二百四十二件だが、公判請求したのは三百七十六件ということなんです。この差というのはなぜ生まれるんですか、簡単にちょっと。
  45. 小津博司

    政府参考人小津博司君) これは、警察の方が犯人を検挙いたしまして、往々にして、まあ身柄が拘束されるといいますか、逮捕されて検察庁に送ってくるということも多いわけでございますので、その限られた時間の中で警察の方は業務過失致死傷という要件は立証できたということで検察庁に送ってくると。  さて、そこで検察庁の方は、それは業務過失致死傷は成立するかもしれないけれども、更にもっと捜査を尽くせば危険運転致死傷罪要件が立証できる、実態はそうではないかという観点からもっと捜査をしようではないかということで、鋭意捜査を警察と一緒になって引き続き行って、例えば飲酒状況についてもその後十分に立証することができたということで、起訴をするときには危険運転致死傷罪で起訴をするということも何件かはあるということで、委員、今も御指摘のございました数字の違いというものが出てきているということでございます。
  46. 松岡徹

    松岡徹君 要するに、どこでその危険運転致死傷罪適用するのかというのは、まず現場でやると。先ほど言ったように飲酒状況によっても違うと。どれぐらい飲んでいたら危険運転致死傷罪に当たるのか当たらないのかというのはその状況によって違うと。必ずしも飲酒だからといって危険運転致死傷罪適用するかどうかは分からないと。  要するに、二百四十二件のとき、その後に三百七十六件ですか、公判請求したという十八年の事例がありますけれども、この差というのは、例えばその二百四十二件の危険運転致死、これは明らかに当たるといったときの送致時の判断というのはどんなときなんですか。ちょっと教えてください。
  47. 小津博司

    政府参考人小津博司君) どういうことが考えられるかということで御説明申し上げますと、警察が犯人を検挙して、重大な事故でございますので逮捕したと、このように考えます。その逮捕して検察庁に送ってくるまでの限られた時間の間に危険運転致死傷罪要件が警察として立証できたと。例えば、飲酒でございましたら、非常にたくさんのお酒を飲んでいてとてもまともに自動車運転できるような状態じゃなかったということが立証されたとか、あるいは、非常な高速で大変に乱暴な運転をしたということが既にそのときに警察として分かっている、こういう場合に危険運転致死傷罪という罪名で検察庁に送致をしてくるわけでございます。それで、検察庁は、その罪名で本当に公判請求ができるかどうか、認められるかどうかということをその後引き続き捜査をするということでございます。  ですから、理論的には、検察庁でいろいろ捜査をしたけれども、やっぱり危険運転致死傷罪は無理だなということだってもちろん制度としてはあり得るわけでございますけれども、これは現実的には、仮にあるとしても極めて少ないだろうと思っております。  それから、一方で、警察が限られた時間内ではそこまでの立証が難しかったと。全く例えばでございますけれども、本人がその場からいなくなってしまっていたのでその短い期間内ではどの程度お酒を飲んだかということがはっきり分からなかったので、まずは業務過失致死傷罪で検察庁に送ってくると。しかし、これはもっともっと捜査をすればそこははっきり分かるじゃないかということで、引き続き警察あるいは検察庁も一緒になって捜査をした結果、そこの要件が立証できましたということになって、今度は危険運転致死傷罪で公判請求すると、こういうようなことが考えられるわけでございます。
  48. 松岡徹

    松岡徹君 例えば先ほど言った二百四十二人に対して三百七十六件の公判請求をしたという昨年の事例をいうと、その差の百三十四件は、例えばその中にひき逃げ事件、ひき逃げというか、アルコールを飲んでひき逃げという、私が指摘している危険運転致死傷罪を創設した後に逃げ得を許すようなひき逃げという実態がこの数字となって表れているんではないですかということなんですが、どうですか。
  49. 小津博司

    政府参考人小津博司君) この十八年のこの差の件数が御指摘のようなものかについては、申し訳ございません、資料はございませんが、正にこの差というのは、検察庁に送られた後の段階で立証できたわけでございますので、そのような逃げ得ということは許されなかった事案ということになるわけでございます。  ですから、もっとも問題があるとすれば、検察庁に送られてからも捜査を尽くしたけれども、やっぱりそこのところが立証できなかったという事例があるとすれば、そこのところが正に問題であろうとは思っております。
  50. 松岡徹

    松岡徹君 それもちょっとよく分かりにくいんですが、要するに危険運転致死傷罪適用されるかどうかというのは、事故状況、すなわち事故の結果なんですね。すなわち人を死傷している事故なのかどうか。特に重大な事故事件と言われている判断なんですね。重大な事件、すなわち事故というのは、正に人が死傷するという事故だと思うんですね。その現場を見た段階で、これは危険運転致死傷罪に当たる可能性適用する可能性があるということは、現場で当然判断すべきだと思うんですね。その上で、ずっと調べるんですね。  そうすると、例えばその百三十四件ほど送致時と請求の数が違うというのは、現場の捜査が一体どうなっているのかというのがちょっと分かりにくい。すなわち、危険運転致死傷罪として立件していくための環境というか条件というものが一体どうなのかと。先ほど言ったように、必ずしも飲酒をしているからといって危険運転致死傷罪には当たりませんですと、それはちょっと私は、重大な事件の場合、例えば人が死んでいる事故を起こした場合、その人が酒気帯びかあるいは酒酔いかということではなくて、当然構成要件に入るはずなんですね。この説明をどういうふうにするのかということについてです。
  51. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 先ほど来、その前提となる御説明を申し上げませんで失礼いたしましたが、危険運転致死傷罪の構成要件は、一定の類型化された悪質な運転行為を故意に行ったということでございます。  その類型でございますが、一つは、アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態での走行行為、これが一つ。二つ目は、進行の制御が困難な高速度での走行行為、これが二つ目。三つ目は、技量未熟での走行行為。四つ目は、人、車の通行の妨害を目的としての運転行為。五つ目が、赤信号を殊更に無視をする運転行為と。このように類型化されているわけでございます。しかも、このときに限って成立するわけでございます。  したがいまして、事故の結果が非常に重大な痛ましいものであるということだけでこの犯罪が成立いたしませんので、やはりその要件については十分な捜査をして初めて立証ができると、こういうことになっているわけでございます。
  52. 松岡徹

    松岡徹君 構成要件の中にある薬物とか、例えば特に薬物の影響によって正常な運転ができない、これは危険運転致死傷罪適用の構成要件の一つになりますね。あるいはスピード違反とか、俗に言うスピード、制御できないほどのスピードを出すとか、あるいは信号無視というような危険な運転をするとか。  こういったことは、アルコール以外の部分は、特に覚せい剤をもし使っていたとか、あるいはその薬物がどこまでなのかというのは分かりませんが、例えば検尿をやったりとかそういうので大体確認はできると思うんですが、あるいは信号無視の場合は、要するに目撃者とか証言とかあるいはスリップ痕とか、そういったことがあるんですが、アルコールの場合は、これは時間がたてば消えるんですね、これ。だから、逃げ得というのが生まれるんではないかという心配があるんです。  だから、アルコールを、例えば飲酒状況も、必ずしもお酒を飲んでいるから適用するとは限らないというのがどうも分かりにくい。重大なそういった事故を起こした場合、アルコール、たとえ酒気帯びか酒酔いかは別にして、これは当然のように適用対象になるべきではないかと思うんですけれどもね。  そういう意味で、どうも要するに処罰規定といいますか構成要件を持ちながらそれを処罰していく規定というものが非常にあいまいだといいますか分かりにくい、国民から見てもね。こういった状況が、逆に言えば国民規範意識といいますか、そういったものをいたずらにあおるというようなことになってしまう危険性があるという意味で、是非ともその辺を明確にするように、そしてまあ言えば現場の恣意的な判断をつくらせないためにもしっかりとしていく必要があるだろうというふうに思います。  それで、警察庁の方にも来ていただいていますので、今回の刑法の一部改正と合わせて道交法も大きく処罰規定変わってきたと思いますが、道交法の今回の改正内容を簡単にお願い申し上げたいと思います。
  53. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  今回の道交法改正につきましては、四つの柱からその内容としております。  具体的に申しますと、第一の柱が悪質運転危険者対策でございまして、これにつきましては、先ほど来御議論になっております飲酒運転に対する制裁の強化のほかに飲酒運転の周辺者に対する制裁の強化、あるいはいわゆるひき逃げでございますが、救護義務違反に対する罰則の引上げ等を内容とするものでございます。  それから第二の柱が、高齢運転者あるいは聴覚障害者に対する施策でございます。まず、七十五歳以上の高齢運転者に対しまして、免許の更新時におきまして簡易な認知機能の検査をさせていただくというものが一つでございます。そのほかに、七十五歳以上の高齢運転者自動車運転時の高齢運転者標識、さらに聴覚障害者の自動車運転時におけます聴覚障害者標識のそれぞれの表示の義務付けでございます。  それから第三の柱が、自転車利用者の対策でございます。具体的には、普通自転車が歩道を通行できる要件を明確化いたしますが、そのほかに、幼児ですとか児童の自転車乗用時におけますヘルメット着用の努力義務というものを導入いたします。  それから最後に四番目でございますが、被害軽減対策といたしまして、後部座席におけるシートベルト、この着用を義務付けたいというふうに考えております。  以上の四点を中心に今回の法律改正提出いたしまして、現在御審議していただいているところでございます。
  54. 松岡徹

    松岡徹君 その中で、特に今回の刑法とかかわるところで酒気帯びといいますかアルコールのところなんですね。そこでちょっと若干聞きたいと思うんですが、先ほどもありました酒気帯びと酒酔いの違いね。それぞれ今回も酒気帯びあるいは酒酔いの刑罰も厳罰化しておるんですね。この酒気帯びと酒酔いの違いって何ですか。
  55. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  処罰対象となります酒気帯び運転でございますが、これは身体に政令で定める程度、すなわち具体的に申し上げますと血液一ミリリットルにつきまして〇・三ミリグラム又は呼気一リットルにつきまして〇・一五ミリグラム以上のアルコールを保有する状態で車両等を運転するというものをいっております。それに対しまして、酒酔い運転とはアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転するということになっております。
  56. 松岡徹

    松岡徹君 私の友人は奈良漬けを食っても顔が赤くなるんですね。酒気帯びと酒酔いの違い、これは要するに事故を起こさない、飲酒検問とかで捕まった場合、この人は酒気帯びとか酒酔いというもので処罰の差があるかもしれませんが、しかし危険運転致死傷罪の構成要件にアルコールがあるんですよ。これ、酒気帯びと酒酔いとどう違うのか。要するに、事故まで至らなくって、未然にですよ、検問で引っ掛かってやる場合は道交法違反で処罰を受けますけれども、しかしそれが、危険運転致死傷罪の構成要件にあるアルコールからすれば、この酒気帯びと酒酔いとどう違うんだと、その結果犯したものでということになるんですね。ちょっと分かりにくいんですね。  それは、同じようにそういう意味で、必ずしも飲酒状況によってみんなすべてが危険運転致死傷罪適用、立証になるとは限りませんよというようなこのあいまいさを残しているのは、あいまいに聞こえるのは、実は酒気帯びも酒酔いも何かよく分からないということ。先ほどありましたように、酒酔いの場合、正常な運転ができないような状態と言っているけれども、私は非常にお酒が強い方ですが、例えば五合お酒を飲んでも真っすぐ歩ける自信はありますけれども、しかし奈良漬けを食べて、おちょこ一杯でも本当に眠ってしまうような、眠気を持つような、要するに体質の違いだったんですね。それで酒気帯びと酒酔いの違いでここまで厳罰化するというのはよく分からない。何とかもっと違う基準を考えていくべきではないかと思うんですが、いかがですか。
  57. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  まず、道交法の禁止規定といたしましては、基本的に酒を飲んで運転してはいけないということになっております。ただ、先生御指摘のように、奈良漬けとか一定のアルコールでほとんど影響のないものにつきましては、処罰としては酒気帯びに当たらないということで処罰をしておりません。  それで、先生お尋ねの酒気帯びと酔っ払い、いわゆる酔っ払い運転酒酔い運転でございますが、この酒酔い運転は、単に酒気を帯びているだけではなくて、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがあるということでございますので、道路交通上非常に危険な状態であるということでございまして、酒気帯びよりは重く罰するということにしておるところでございます。
  58. 松岡徹

    松岡徹君 余りよう分かりませんが。  その中で、今回、アルコールを提供する者、提供者の処罰も重くしていますね。その処罰を重くした理由というのは何なのか。そして、これで処罰された者の数ですね、最近の数字はどうなっていますか。
  59. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  酒類でございますが、酒類を運転者に提供するということになりますと飲酒運転の成立が非常に容易になります。私ども考えでは、酒類を提供するということは飲酒運転の成立に欠くことのできない要素であるというふうに考えております。  したがいまして、飲酒運転をすることとなるおそれのある者に対しまして酒類を提供する行為は飲酒運転を助長する程度が非常に高くございまして、飲酒運転を幇助する行為の中でも悪質なものと評価できるというふうに考えまして、飲酒運転の根絶を図るためにはこのような行為の発生を確実に抑止していく必要があるという認識に立って今回の法律改正をしております。そこで、飲酒運転をするおそれのある者に対し酒類を提供すること、これを防止するために、飲酒運転の幇助犯よりもより重い罰則ということで今回の措置をしたところでございます。
  60. 松岡徹

    松岡徹君 アルコール提供者の中には悪質なものもあると思うんですが、事前にもらっていますんで、例えば教唆犯、酒酔い、酒気帯びの合計でいいますと、昨年で三百二十七件あるというふうに事前に資料をいただいていますが、例えば店の人が、お客さんで来て、車で来たと。店の人が、車で来ているんだったら飲ませぬ、しかし代行運転頼むからと言って飲んで帰ったところ、代行運転頼まないで自分で乗っていった場合、これは幇助、教唆に当たるんですか。
  61. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  まず最初に件数でございますが、今回新しく法律を作りますので、今幇助ということでお答えしなきゃいけないと思いますけれども、十八年の数字、酒酔いあるいは酒気帯びの教唆・幇助犯は先生御指摘のとおり三百二十七でございますが、そのうち酒類提供、酒類を提供した幇助につきましては四十五でございます。  それから、飲酒運転をするおそれとなるものということでございますが、これは個々の事例によって考えなきゃいけないもので、一般論としてなかなか言い難いところがありますが、代行を呼ぶということできちっとそういう話をしておりまして、その上で酒を提供するという場合につきましては基本的には当たらないんだろうというふうに考えております。
  62. 松岡徹

    松岡徹君 酒を提供する側といいますか、そういうお店とかそういうところからすると、非常にややこしいといいますか分かりにくくなっていますので、そういうこともはっきりしていただきたいと思うんですが。  次に、今回の自動車運転過失致死傷罪が新設されました。これは故意犯ではなくて過失犯ということで、今までの業務過失自動車による事故についての処罰としては業務過失というものから今度は自動車運転過失というふうに新しく創設して、そこで対応しようということなんですね。  そこで、この自動車運転過失致死傷罪の中にある構成要件の一つになると思うんですが、構成要件ですが、運転上必要な注意でありますが、この運転注意というのはどういうことを指しているんですか。
  63. 小津博司

    政府参考人小津博司君) この御審議をお願いしております刑法改正自動車運転過失致死傷罪を設けていただければと思っておるわけでございますが、その構成要件に御指摘のとおり自動車運転上必要な注意という文言が出てくるわけでございます。これは、自動車運転者自動車の各種装置を操作して、そのコントロールの下において自動車を動かす上で必要とされる注意義務意味するものでございます。  逆の方から申しまして、自動車に関係する事故でこれに当たらないものはどういうものがあるかということで申しますと、自動車の修理工場で修理をする者がうっかりと変な修理をしてしまった結果として、その車をほかの人が走らせていて事故が起こったという場面を想定いたしますと、これは正に交通事故でございますし、自動車運転にまあまあ関係してといいますか、ある意味では起因した事故でございますけれども、これは自動車運転上必要な注意を怠ったということにはなりませんので今回の構成要件には該当しないと、このようになるわけでございます。
  64. 松岡徹

    松岡徹君 逆で言われると分かりにくいんですがね。  要するに、一つ一つの事例によって判断していかにゃあかんのですね。ところが、それがたくさんの事例がありますし、状況によって違いますから、だからこそ今度新しく自動車にかかわる事故とかいうものは、事案は、今まで旧来の刑法業務過失致死傷罪というもので図っていたのを自動車に係る部分はこの新しく創設した部分で対応しようということですから、だからこそ運転上必要な注意とは何なのかということをできる限りはっきりしなかったら分かりにくいんですね。それが、逆に言えば、例えば今回の法改正の背景には、重大な事故事案が起きてきて現在の刑罰では軽過ぎるというこのバランスがあるとか、そういう国民世論状況を反映してやるわけですから、それをはっきりしなかったら、今まで、例えば軽微な事故が、これまでの、例えば前方不注意で壁に当ててしまったとか前に追突してしまった、例えば交差点のところでもうブレーキ掛けていっているけれども物を落として拾おうとして前にちょこっと当ててしまったとか、これも追突事故なんですね。これも含めて今までは業務過失というものでいっていたんですね。  ところが、今度は自動車運転過失致死傷罪のところでいくわけですから、しっかりとその辺も、全体まで底上げする、重罰化するということではないと思うんですね。その重大なという部分のところとそういう意味ではしっかりと分けていかなくてはならないというふうに思っています。そういう意味で、この自動車運転過失致死傷罪が規定する運転上必要な注意というものをしっかりと明確にしていただきたいというふうに思うんですが、どうぞ。
  65. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 新しく自動車運転過失致死傷罪を設けるわけでございますけれども、これは、従来業務過失致死傷罪処罰されていた行為の一つの類型を言わば切り出して別の犯罪類型として新しい構成要件にするということでございます。  どのような場合に自動車運転に関して過失が認められるかということは大変に難しいことでございますので、具体的な事例でいろいろと判例の積み重ねがございます。非常に大きな過失につきましてはそういう意味での問題がないんですけれども、その過失があるかないかという限界事例については非常に難しく、その累次の裁判例、判例の積み重ねがあるわけでございます。  この自動車運転過失致死傷罪につきましては、運転上必要な注意という文言だけを刑法ですので書きましたけれども、それの解釈は、基本的にこれまでの業務過失致死傷罪解釈、判例が基本的にそのまま引き継がれるというように考えております。
  66. 松岡徹

    松岡徹君 もう時間がありませんので、最後ぐらいにしたいと思いますが、大臣に今までのやつで議論を含めて最後にお答えいただきたいと思うんですが。要するに、私たち自身は、車を運転する者は当然のように義務を負うわけですね。正に危険なものでありますから、一つ間違えば大変な事故につながるということを自覚して、注意を怠らずにしなくてはならないという義務があります。  しかし、それでも起こした結果に対して責任を負うというのは当然のことでありまして、とりわけその義務を全うしないで違反して事故を起こすというのは、これは極めて悪質だというふうに思っています。そういう意味で、それに対するしっかりとした刑罰を与えていくというのは基本でありますけれども。  しかし、今日様々な車社会がますます発展して、先ほど大臣がおっしゃっていました過失といったときに、埼玉の川口市の事件もありましたですね。あれは、あのときの状況を見れば、彼は何か別のものを操作していてやったんですね。しかも、あそこの道路は最高時速が六十キロという制限だと、しかもそこの道には歩道と車道の区別がない、そしてそこが保育所園児の通園路といいますか、通路になっている。そういう中で起こした事故なんですね。そこでお子さんを亡くした遺族からすればやるせない思いなんですね。加害者を責める、それで自分の思いが収まるかといったらそうではないんですね。  こういった事故を生み出したのは、必ずしも加害者の注意義務だけではなくて、なぜそこには車道、歩道の区別がなかったのか、少なくともなぜガードレールがなかったのか、保育所の子供たちが日常通園する道路であるならば、しかもそんな道路がなぜ最高時速六十キロに設定しているんだということがあります。そういう意味では、そのことに対してしっかりと答えを出さなかったら私たちは、国会もですね、加害者の側に立ってしまうというふうに思うんですね。それは、先ほど申し上げた国民意識の酌み取るべき大事な点だと思っています。  あるいは、最近では大阪の方で起きたあずみ野観光のバス運転手による事故がありました。あれも、そういう意味では道交法では過労運転禁止というのがありますが、すなわち本人が薬物とかアルコールによってとかそういうことではなくて、雇用関係とか、あそこでは当然運転手は二人置かなくてはならないところを一人で彼はずっと運転をしていた。それが会社の雇用形態ですね。すなわち、過労は運転手だけの問題ではなくて、過労を生み出すような環境があるということも含めて、雇用面や運転者の道路交通環境をも整備していくということが大事な視点になってくるんではないかと思っています。  そういう意味で、最後に、大臣の改めて今回の刑法改正にかかわる思いをこれからの課題も含めてどういうふうに考えられているのかということをお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
  67. 長勢甚遠

    ○国務大臣(長勢甚遠君) 刑事局長からるる御説明申し上げたところでございますけれども、なかなかやっぱり法律というのは難しいもんだなと思うときもあるわけでございます。  危険運転致死傷罪は言わば故意犯という形で構成するわけですので、今度の自動車運転罪は過失という範囲でございますが、結果の重大性を考えたりすると、被害者方々にとっては割り切れないものもあろうかと思わないわけではありません。しかし、いずれにしても、この立証ということが裁判では大事なんだろうと思いますので、捜査当局においてもそれに万全を期していかなければならないと思っております。  今回の刑法改正の意義等については先ほど御答弁申し上げたとおりでございますが、今おっしゃられたとおり、運転者には当然十分な注意をしてもらわなきゃいけませんし、といって我々も、一般の人もそういう被害に遭わないようにやっぱり注意もしていかなきゃいけませんし、またそういうことが十分できるような環境をつくっていくということが行政の本質的責任だろうと思います。それはやはり交通標識であれば警察の仕事でしょうし、道路整備であれば国土交通省ということになるんでしょうか、市町村も含めてですね、おっしゃるように過労であれば厚生労働省の仕事ということになります。みんなそこだけで生きているわけじゃないんですから、いろんな面から交通事故をなくすように努力をしていかなきゃならないと思いますし、また一緒にやっていきたいと思います。
  68. 松岡徹

    松岡徹君 終わります。
  69. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほどから議論があっておりますように、昨今というか、自動車運転による様々な痛ましい事故があり、それを受けて法整備が追い付いていないんではないかというような指摘を受け、また被害者の皆さんの署名活動を含むいろんな要望がある中での今回の刑法改正の議論であると思っております。  私の地元福岡でも、先ほどお話がありましたように、飲酒運転の人による子供三人が亡くなる、お母さんが海に飛び込んで中へ潜って一生懸命揚げようとしたけれども命を助けることができなかったというような、本当に痛ましい事故もございました。  そしてもう一つ、今日この論議の一番の原点になっているのは、やはり川口で、今お話があったように児童四人が亡くなって、しかしそれが問えるのは業務過失致死傷罪上限でやるしかない。こういったところはやはり被害者感情も含めて、また事故を防ぐいろんな観点から、やはり今回この改正をせざるを得ない状況の中での法改正だと思っておりますし、私どもも是非ともこれは実現しなければならない問題だ。とともに、今御指摘があっているように厳罰化だけで解決できる問題でもないことは当たり前のことであって、総合対策をこれからしなければならない。私どももこういう問題にこれからも提言もさせていただきたい、していくということも表明した上で論議に入りたいと思うんですが。  まず、法務当局に、これまでこの自動車運転による死傷事故に対して様々な取組、特に法整備という意味で年々いろんな取組をやってきたと思いますが、概括的に法務当局に、これまでこの自動車運転における死傷事故に対する法整備、どうしてきたのかという概要を伺っておきたいと思います。
  70. 小津博司

    政府参考人小津博司君) まず、随分以前のことで申しますと、昭和四十年代に業務過失致死傷罪法定刑が現在のように引き上げられたわけでございますけれども、比較的最近で申しますと、先ほど来御質問いただいておりますように、平成十三年に危険運転致死傷罪を新設したわけでございます。故意に悪質かつ危険な運転行為を行い人を死傷させた者に対する罰則を強化するための刑法の一部の改正でございます。また、平成十八年には、刑法の一部改正罰金刑が引き上げられました。その中で、業務過失致死傷罪や重過失致死傷罪に当たる事案のうち罰金相当の者について適正な科刑を実現するということで、それまでの罰金刑上限の五十万円を百万円に引き上げるなどしたものでございます。  刑法改正という意味では以上でございまして、当然、道路交通法改正というのが別途あるわけでございます。
  71. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今お話があったように、今回はこの当法務委員会では自動車によるこういう刑法改正をやらしていただいているわけでございまして、同時に、今国会におきましては道路交通法の一部改正案提出され審議をしていただいている。先ほども概括的にどういう法案かということはありましたが、御確認で、特に悪質・危険運転者対策についてどういうふうな内容になっているのか、その点を確認しておきたいと思います。
  72. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  御指摘の悪質・危険運転者対策につきましては、まず第一に、運転者本人に対しまして飲酒運転及び救護義務違反に対する罰則を強化いたしております。酒酔い運転につきましては、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金ということで引き上げております。それから、酒気帯び運転につきましては、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金ということで引き上げております。救護義務違反につきましては、そのうち交通事故による人の死傷が運転者運転に起因するものにつきまして、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に引き上げております。  このほか、運転者本人だけではなく、飲酒運転をした者の周辺で飲酒運転を助長し又は容認した者につきまして、車両又は酒類の提供行為の厳罰化、それから飲酒運転されている車両に要求又は依頼して同乗する行為の禁止等を盛り込んでおります。
  73. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうすると、今回この刑法改正が成立をし、なおかつ道交法改正が成立する、いずれも成立したという場合、飲酒運転中に事故を起こした場合の刑はこれまでと比べてどんなふうに変わっていくのか、御説明刑事局長いただきたいと思います。
  74. 小津博司

    政府参考人小津博司君) まず、現行法では、酒酔い運転中に交通事故を起こして人を死傷させた場合につきまして、酒酔い運転の罪と業務過失致死傷罪の併合罪でございまして、上限が七年六か月、七年六か月以下の懲役等でございます。改正後には、これが十年六か月以下となるわけでございます。また、酒気帯び運転中に交通事故を起こして人を死傷させた場合、現行法では同じく併合罪で六年以下の懲役でございますけれども、今度の両法の改正が実現いたしますと十年以下の懲役となるわけでございます。  ちなみに、危険運転致死傷罪につきましては、既にその構成要件上、酒を飲んで運転したということが評価されておりますので、これは併合罪にはなりませんので、この点が二十年以下というのは変わらないということになるわけでございます。
  75. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 つまり、今回の自動車運転過失致死傷罪懲役禁錮法定刑は七年になっているわけですよね。ただ、この七年という問題、そして併合罪がなった場合は今おっしゃったような形になるわけでございますが、やはりこの危険運転の二十年というのがある。そして今の業務過失致死傷罪がある。その本来、中間的位置付けのような形に刑としてはなっていくわけですが、そうなった場合に、例えばこの七年という問題について特に交通事故被害者、また遺族の中で声が大きかったのは、少なくともこれ七年じゃなくてやっぱり十年ぐらいのものは規定すべきだったのではないかという意見も強くあったようでございますが、このような意見に対してどうお考えか、当局に伺っておきたい。
  76. 小津博司

    政府参考人小津博司君) そのような強い御意見があるということは私どもも重々承知しておりますし、また直接にもお聞かせいただいているところでございます。交通事故被害者の方あるいは遺族方々の御心情からすれば誠にごもっともな御意見であろうと思うわけでございます。  他方、刑事罰則を所管する私ども考え方からいたしますと、そのような御要望を十分踏まえたといたしましても、やはり危険運転致死傷罪というものが傷害あるいは傷害致死罪に匹敵する故意犯であるという位置付けが一方にあると。他方で、今般、業務過失致死傷罪自動車運転過失致死傷罪とはいたしますけれども、やはりこれは過失犯であるという位置付けがあるわけでございます。この部分を言わば切り出しましたけれども、それ以外の業務過失致死傷事犯につきましてはそのような立法事実がございませんので、五年以下にとどまるわけでございます。  自動車以外の業過との関係、また過失犯というもののやはり刑法全体の中における位置付けということを考えまして、今回の改正で五年を七年以下というところまで引き上げるのが相当ではないかと考えた次第でございます。
  77. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今もう御説明いただいたんで、やはり被害者の皆さん、遺族の皆さんにとってみると、故意犯過失犯という違いがあるとはいうものの、危険運転致死傷罪法定刑がやはり致死の場合が一年以上二十年以下という大きなものになっている。過失ということなんですけれども、今回の自動車運転過失致死傷罪が七年と。余りに大きな開きというイメージをどうしても持ってしまう。ある意味では、一般の人には非常に分かりにくいですよね、この辺が。だから、この辺はもう少し説明の具合というか、何かできないのかなという気がするんですが、どうでしょうか。
  78. 小津博司

    政府参考人小津博司君) この立法の趣旨等々につきまして、更に不十分な点を分かりやすく今後とも御説明させていただくということは一方で我々の責務であろうと思います。  それから、捜査当局の立場からいたしますと、実際は危険運転致死傷罪に該当するような行為なんだけれどもそれが立証できないということで業務過失致死傷になってしまうと、あるいはそういうおそれがあるのではないかということについても強い御指摘があるわけでございます。  この点につきましては、先ほども数字を挙げてるる御説明申し上げましたとおり、捜査当局としては鋭意努力を行っているところでございますし、またその中で捜査当局捜査技法と申しますか、認定の方法、あるいはそれについての裁判所の積極的な判断、評価というものも積み重なってきておるわけでございます。  平成十八年にその件数がまた多くなったということを御紹介申し上げましたが、それはそのようなことを背景にしておると承知しておるわけでございます。  さらに、直接の御指摘とはあるいは関係がないかもしれませんが、逃げ得という問題につきましては、今回の道交法改正で非常に重い罰則になったわけでございますので、いずれにしても、逃げたら大変なことになるということになるわけでございます。  これらのことを総合してやるということ、またその内容を十分に御説明していくということが重要であろうと考えております。
  79. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非、特に一生懸命この問題に取り組んでいらっしゃる被害者遺族に対して、やはりいろんな形でのきちんとした説明ができるようにこれはお願いをしておきたいと、こう思っております。  そして、内閣府に来ていただいておりますので、この自動車運転による死傷事故に対して、今回の法案、一つは厳罰化という問題できちんと対処していく。これも極めて大事な視点の一つだと我々も思っておりますが、もう一つ、やはり死傷事故に対しては再発防止対策を政府として総合的に取り組んでいくということがこれは不可欠であって、このことを求めて私たちもおりますが、今、この総合的な交通安全対策、再発防止対策、いろんな取組を内閣府いただいておりますが、簡潔に御説明をいただいておきたいと思います。
  80. 荒木二郎

    政府参考人荒木二郎君) お答えを申し上げます。  御指摘のとおり、事故防止のためには罰則強化だけではなくて総合的な交通安全対策が重要であると考えております。昨年の三月、五年間にわたります交通安全に関する総合的な施策の大綱として第八次の交通安全基本計画を策定をいたしました。この計画は、交通事故のない社会を目指しまして、特に子供やお年寄りなどいわゆる交通弱者を守る人優先の交通安全思想を基本理念としております。事故の起きにくい道路交通環境の整備、とりわけ通学路等におけます歩道の整備等を進めることといたしております。また、体験型、実践型の交通安全教育やお年寄り運転者に対する運転者教育の充実、交通事故被害者の方の心情に配慮した被害者に対する支援活動等を推進をすることとしております。  さらに、福岡の事件など大きな飲酒運転事故が相次ぎましたことから、昨年の九月に交通対策本部におきまして飲酒運転の根絶についてのメッセージを発出をいたしました。飲酒運転をしない、させないという国民の意識改革を図るために、集中的、継続的な政府広報を行い、また、運転する人にはお酒を出さないということで関係業界に働き掛けを行ったところでございます。さらに、今後、いわゆるアルコール依存症等の方が飲酒運転の常習者になっておられるケースもあるわけですけれども、こういった常習者対策につきまして関係省庁挙げて検討を行うこととしております。  この基本計画におきましては、平成二十二年までに交通事故死者を五千五百人以下とすると、さらには、けが人の数についても今回初めて目標を掲げまして、百万人以下とするという数値目標となっております。来月の十一日からは全国春の交通安全運動が行われますけれども、こういった取組も強化をいたしまして、目標達成に向けて政府を挙げての総合的な事故防止対策に取り組んでまいる所存であります。
  81. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 非常に、やってください。どうしても総合対策になると、言葉が優先してしまって、具体的にどうこうなるのかというところがちょっと欠けてしまうようなところが、まあ内閣府がやることですから、大きく網を掛けてそれぞれの省庁にやっていただくということになるんでしょうから、是非その趣旨を徹底していただいて、本当に総合的に取り組んでいただきたいという気がいたしております。  法務省の方に、先ほどもちょっと議論になっておりましたが、やはりその再発防止という意味でいくと、業務過失致死傷罪に問われた方、これからは自動車致死傷罪に問われた方たち、服役するわけでございまして、こういう人たちにどう中でやっていくかという問題が大事になってくるんだろうと思うんですよ。再発防止のための、自動車運転による再発防止のプログラムというのがあるやなしや。特にこの飲酒運転という事犯者に対するプログラムという問題について、あれば御説明をいただいておきたいと思います。
  82. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) まず、交通事犯者に対する教育でございますが、大きく分けて三つの種類の教育をしております。一つは交通安全指導というもの、二つ目が酒害教育、三つ目が被害者の視点を取り入れた教育、こういうものでございます。  この交通安全指導と申しますのは、飲酒が体あるいは行動に及ぼす影響あるいは被害者への対応等について具体的に考えさせようとする、こういう教育でございます。  酒害教育と申しますのは、民間の断酒会あるいは病院等の御協力を得まして、酒の害について理解させた上で断酒に向けた具体的な方策について考えさせる、こういう教育でございます。  最後被害者の視点を取り入れた教育でございますが、視聴覚教材あるいは被害者方々の講話を聞かせるなどいたしまして、被害者やその家族の心情を理解させ、そして被害者に誠実に対応することの必要性を理解させる、そういう目的で教育を行っているところでございます。
  83. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非そういったものを徹底していくことが一つの大きな事故を防いでいくという視点になると思います。  それともう一つ、先ほど委員の方から生活道路での事故の問題の指摘がありました。川口の事故、正に狭い道路で起きているということの問題、ガードレールがなかったことの問題。最近の事故を、特に重大な事故を起きたケースを見ていますと、やはりどういうところで事故が起きているかということを見ていくと、幅が五・五メートルですか、以下の言わば生活道路において様々な問題が起きていると。川口の事故もその典型だと思います。  そういった意味では、そういう狭い道路、生活道路に対してどういった施策を打っていくかということが極めて大事だということになってくるんだろうと思いますが、今、道路管理者である自治体と連携して、これ警察庁と国交省ですか、合同で生活道路事故抑制マニュアルを作成するというようなことになっていると思いますが、どう進捗しているんでしょうか、警察庁から伺っておきます。
  84. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、生活道路における交通事故はここ二年ほど少し数字が減少いたしましたが、全般的には御指摘のように増加基調にございまして、交通事故の抑止対策が喫緊の課題というふうに私どもも認識しております。そのために、マニュアルの話が先生から出していただきましたが、その前に、私どもとしては、従来より道路管理者と連携いたしまして、社会資本整備重点計画に基づきまして安心歩行エリアの整備を進めております。  ただ、これだけでは不足ということで、都道府県警察に、安心歩行エリア以外の生活道路につきましても交通事故の抑止対策を効果的に推進できないかということで、平成十七年の十一月に御指摘のようにその推進方法をマニュアル化いたしまして各県に示したところでございます。現在は、各都道府県警察におきましてその具体的推進方策について検討を進めているというところでございまして、これから鋭意取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
  85. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それと、国交省にお聞きしておきたいんですけれども、福岡のあの痛ましい事故があった後、いわゆる何か運転者の呼気から一定量のアルコールを検知するとキーを回してもエンジンが始動しないというアルコールインターロックという装置があって、海外ではこんなものもあるんだと盛んにテレビで放送されていて見たんですけれども、当時はいろいろ騒がれていましたけれども、今この問題、どんなふうになっているのか。  あらゆるいろんな手法を使いながらこういった問題は取り組まなければいけないと思うんですが、今申し上げたアルコールインターロックですか、これについて国交省として何か取り組むお考えがあるのかどうか。これも、私はこういう問題も細かい問題かもしれないけれども、きちんと取り組んでいくことが必要だと思うんですが、どうなっておるでしょうか。
  86. 桝野龍二

    政府参考人(桝野龍二君) 先生御指摘のアルコールインターロック装置、この開発、実用化につきまして、私どもは一月三十日に、警察庁、法務省、それから私ども国土交通省、それから自動車メーカーの専門家や学者の先生なども入っていただきまして、アルコール・インターロック装置の技術検討会というのを立ち上げております。この場においてこの装置に関する課題などを整理し検討して進めているところでございます。  現在のところは、この検討会においては、確かに一部実用化というか、実用化されたところがあるわけでございますけれども、乗った人が本当にその本人なのかどうか、運転する人じゃない人が呼気を吐き掛けているんじゃないかというような問題とか、車の装置として組み込んだ場合に耐久性が十分でなく安定性が欠けるんではないかというような問題点、また不正改造などに対してどのように対応できるのかなど、いろいろ課題が出てきております。  しかしながら、この問題も含めながら、飲酒運転の防止、抑制については非常に有用かという指摘がございますので、年内をめどにいたしまして、例えば飲酒運転の常習者への活用などを念頭に置いた技術的要件の検討、さらには一般車両などに技術的に組み込んでいくという意味での活用についての技術的課題についても検討を進めていきたいと思っております。  先ほど、外国においては使っているんじゃないかという御指摘ございましたのでちょっと御紹介をいたしますと、例えば、アメリカにおきましては飲酒運転をした違反者に対する制裁としてこれを付けるというようなことが州単位で行われているという例がございます。また、スウェーデンにおいては、新車全部に構造上製造の過程にこれを付けるべきだという法案の準備が政府内では行われていると聞いておりますが、なかなか先ほど申しました課題もあるようで、国会にはまだ提出されていないと聞いております。  私どもは、このような諸外国での動きなども十分踏まえながら、先ほど申し上げた検討会において検討を進めてまいりたいと思っているところでございます。
  87. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非、ちょっと検討会やったやつをもう少し何か派手に露出する手はないのかと。いや、やっているんならやっているということが見えないと、国民には。何か一時花火のように上がったけど、また消えてしまっている。これじゃ総合対策にならぬのであって、是非その辺は、今お取り組みいただいているわけですから、もっともっとマスコミに露出するように是非努力をしていただきたいと思います。  最後大臣に、この法案だけでなく、先ほども議論になっておりましたが、やはりこういった事故を防ぐためにはどうすればいいかと。総合対策の問題、幾つかの省庁も今日は来ていただいて議論をしたわけでございます。私は、法務大臣も、言わばこういった問題、特に痛ましいようなこういう事故を防ぐためにどうすればいいのかという問題は、正に法の厳罰化の問題とともに総合対策。その中軸の一つを握るのは、やはり法務大臣が閣内の中でも御発言をし、今回は法務省としてはこういう対策をしたと、しかし全体を防ぐためにはやはり総合的対策が必要だ。正に法務大臣もリーダーシップを発揮していただきたい一人だと思っておりますが、そのことも含めて、今回この法案を通すに当たって、こういった事故撲滅に対して大臣の決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
  88. 長勢甚遠

    ○国務大臣(長勢甚遠君) 今回の法改正厳罰化というのが、どういいますか、現れた姿ではございますけれども、これによって、運転をされる方、また国民一般にこういう問題の重大さに認識を新たにしていただくという効果もあると思いますし、また、そういうことを前提にして、今、先ほど来委員の先生方がお話しのように、もういろんな観点から考えていかなきゃならない。  先ほど来、警察あるいは国土交通省のお話もいたしましたけれども自動車メーカーもあれば働き方の問題もあれば、いろんな分野で気を付けていかなきゃならないことがあるなということをしみじみ感じたわけでございまして、内閣一体となってこの問題に取り組んでまいりたいと考えております。
  89. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  90. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  先ほど来、福岡市、そして川口の件を始めとして、後を絶たない飲酒運転やひき逃げ、こういった悪質な交通犯罪に対してどう取り組んでいくのか、審議がされているわけでございます。私も福岡市の子供さんたちがお亡くなりになったあの事故の現場は時折通うことがございまして、あの事故の日以来、本当に痛ましい思いをしているところです。  今回の刑法改正案は、量刑面からその防止策を図っていこうというものでございまして、私どもとしても賛成をさせていただきたいと思っておるんですが、今日、限られた時間でございますので、二つの点をちょっと伺いたいと思います。  まず第一は、危険運転致死傷罪適用の問題です。  今日、さきの委員、先生方のお話にもありましたけれども平成十三年に改正をされたこの危険運転致死傷罪でどうして立件できないのかという国民的な感情が強いわけですね。当然、犯罪の構成要件ですから、この明確性や限定というのが必要なんだけれども、この危険運転致死傷罪を成立をさせていく過程で、被害者の皆さんはもちろんですし、国民的に大きな議論があったその期待にこたえられていないんじゃないかという感情、思いがやっぱり強いわけです。十三年の導入以来のこれまでの適用の経験も踏まえて、改めて、この危険運転致死傷罪というのがどういう罪質のどういう罪なのか、捜査上どういう問題意識や困難があるのか、少し伺いたいと思うんですね。  この法制定時、改正時には、今日も少し触れられているんですけれども、この罪質は、故意によって悪質かつ危険な運転行為を行ったという故意行為、ここに着目をして、その結果人を死傷させるという重大な事態をもたらした、ここに着目をする行為だと言われてきました。説明をされてきました。  飲酒による、特に私、今日、飲酒運転に絞りたいと思うんですけれども飲酒による危険運転、構成要件でいうと、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車運転するという行為だと思うんですけれども、この正常な運転が困難な状態というのはどういう状態をいうんでしょうか、局長
  91. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 御指摘の正常な運転が困難な状態とは、道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいうと解しております。例えば、酒酔いの影響により、前方の注視が困難となったり、ハンドル、ブレーキ等の操作の時期やその加減について、これを意図したとおりに行うことが困難になるなど、現実にこのような運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることが必要となるわけでございます。  そして、御指摘のとおり、この罪は故意犯でございますので、正常な運転が困難な状態であることの認識が必要になるわけでございますけれども、認識が必要なのは、困難な状態の認識が必要なわけで、どの程度困難かというその評価自体の認識が必要とされるわけではないと、このように理解しております。
  92. 仁比聡平

    仁比聡平君 先ほど松岡委員質問の中で、酒酔い、道交法上の、道路交通法上の酒気帯びあるいは酒酔い運転定義にかかわる議論があったわけですけれども、この道交法上の酒酔い運転というものと、この危険運転、アルコールの影響による危険運転ですね、ここはどういう関係になるわけですか。
  93. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 道路交通法上の酒酔い運転の罪における酒に酔った状態とは、正常な運転ができないおそれのある状態でございます。危険運転致死傷罪は、正常な運転が困難な状態ということで、違う表現を使っているわけでございまして、道交法の方は言わばおそれのある状態でその罪が成立するし、危険運転致死傷罪の方は正に困難な状態であることが必要であるということでございます。
  94. 仁比聡平

    仁比聡平君 これは、正常な運転が困難な状態による運転行為ということであればということが必要であって、それが構成要件事実であって、道交法上の酒気帯びか酒酔いかというのとはこれは基本的に関係はない、刑法上のこれは判断が行われるということですよね。  この正常な運転が困難な状態、それも飲んで乗っているというそのことが、そこの行為が危険な行為だということになるんだと思うんですけれども、一般的に単に飲んで乗ったということではなくてもちろん悪質なということなわけですが、その故意行為、危険運転行為に着目をして捜査をする、そして立件、起訴をする、ここに当たってのこれまでの運用を踏まえての問題意識や、あるいは一定の何か困難を感じておられるのであれば、その問題意識をちょっと披露いただきたいと思うんですが。
  95. 小津博司

    政府参考人小津博司君) まず、御指摘の点につきまして、報道その他で、その場から立ち去ってしまいさえすれば、つまり逃げてしまいさえすれば危険運転致死傷罪適用はできないのだというようなことを前提にして書いておられることがございます。もちろんこれは御批判としては十分我々は受け止めなければいけないんですけれども実態から申しますと逃げたら危険運転致死傷罪の立証ができないということではございません。  先ほど来御説明申し上げておりますように、場合によっては警察が逮捕して四十八時間以内にはその立証ができないかもしれません。その場合には業務過失致死傷罪で送ってくることがあるかもしれません。しかし、それを受けて検察庁がまた警察と相談いたしまして、そうはいってもその者はどこでお酒を飲んだんであろうか、そしてそれはどれぐらい飲んだんであろうか、そうするとどれぐらい飲んだら大体その時間帯にはどれぐらいのアルコールが体内にあったであろうかと、これはそれぞれ証拠を集めることができるケースも相当あるわけでございます。現実に捜査機関もこの間いろいろな捜査の経験を積むことによって、またできるだけそのような立証をしていこうということで、お酒を飲んだ事案につきましてはそのような点を特に意識して捜査に当たっているものというふうに認識しております。
  96. 仁比聡平

    仁比聡平君 今局長の答弁の中にもありましたように、事故直後に飲酒検知を逃れるために逃げたり、あるいは大量に水を飲んだりというようなことがるる報じられるわけですね。今の小津局長のお話は、そのようにして事故直後に飲酒検知が仮にできなかったとしても危険運転致死傷罪による立件と訴追を免れることはできないぞというそういう決意なんだと思うんです。  具体的にどのような証拠をもってそのような危険運転行為を現実に立証してきているのか。先ほども警察からの送致を超えて危険運転致死傷罪で立件をするという例が近年といいますか特に十八年度大きくなっているというお話がありました。逃げ得は許さないというその決意も含めてもう一度伺いたいと思います。
  97. 小津博司

    政府参考人小津博司君) これ警察から検察庁に送られてくるのが業過であるということを念頭に置きましたけれども、その逃げ得を許さないという気持ち、それからそれに向けての努力は警察御当局も同じでございまして、正に警察と検察が一緒になってやっているわけでございます。  具体的な捜査手法といたしましては、やはりお酒を飲んでいる場所を突き止め、それを見ていた人を探し出し、店であればどれだけ出したのかということ、場合によっては伝票等の物証があるかもしれません。そういうようなことから、どのようなアルコール類をどれだけ飲んだのかということが一〇〇%厳密ではなくてもかなり分かれば、そのときの酔っ払い具合といいますか、それは通常人でやったらこうだということが出てくるわけでございますので、その辺りのところを主として捜査当局が鋭意努力をしているということでございます。  もう一方、先ほども指摘させていただきましたが、道交法改正によりまして、逃げたということ自体の罰則を非常に今回重くするということでございますので、この両方を併せることによって、正に逃げ得を許さないということを是非実現していきたいと考えております。
  98. 仁比聡平

    仁比聡平君 今のような御努力の上で起訴をされれば、それが証拠上本当に立証として足るのかという点が今度は公判で裁判上きちんと争われるというのは、これは当然だと思うんですね。そのことも含めて、社会全体として飲酒運転を根絶するという全体の努力が厳正にそして適正に行われていく上で検察の努力を更にお願いを申し上げておきたいと思います。  この点に関連して、二つ目に、道交法改正について、先ほども少しお話があったんですけれども道路交通法改正案の法案でいいますと百十七条の二の二の一項三号で、六十五条の三項、これでお酒を提供した人の罪がこれが強化をされるということになるわけでございます。  この点について少し伺いたいんですが、従来、飲酒運転の幇助犯、教唆犯となる場合のみ処罰されるという酒類の提供者について、今度の道交法改正案は、車両等を運転することとなるおそれがある者に故意をもって提供し、飲酒を勧めたという者は独立して処罰されるということにしようという御提案なわけですよね。この構成要件事実を明確にするということは大変肝要なことだと思います。先ほども指摘がありました。  それで、運転することとなるおそれがある者というのは、これはどんな場合をいうのか。このおそれというのは大変不明確なように受け取られかねませんので、お尋ねをしたいと思います。
  99. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  飲酒運転することとなるおそれがあるということでございますが、これは、酒類の提供を受ける者が飲酒運転をする意思のあることが明らかでありまして、車両や酒類を提供すればその者が酒気を帯びて車両を運転することとなる蓋然性があるということをいうものでございます。  具体的に提供者について飲酒運転することとなるおそれがあるということを知っていたかどうかにつきましては、提供者と被提供者の人間関係、被提供者の飲酒運転に関する言動あるいは飲酒運転が当然推認されるべき事情、その他個々具体的な状況に応じて判断することになるところでございます。
  100. 仁比聡平

    仁比聡平君 今の御答弁で私はおおむねいい、理解がいっているんですけれども、一つだけ、蓋然性という言葉をお使いになっておられるんですが、蓋然性があることというふうに今御答弁だと思うんですね。蓋然性というのがどれほどの可能性のことをいうのかというのは、これは日本語的には様々なグラデーションがあり得るかと思うんですけれども、この蓋然性というもので、法案提案者としてはどんな強さ、高さをイメージしておられるのか。  これは罪質としていいますと、勉強させてもらいますと、これ従来、幇助犯、教唆犯として処罰されてきた事案のうち特に悪質な事案を加重処罰しようという御趣旨だというふうに伺っていますが、そういうその提案の趣旨と併せて、この蓋然性という言葉についてもう一度御説明をいただけますか。
  101. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  先生御指摘のように、現在も幇助犯に該当するものにつきまして今回これを厳罰化しようというものでございまして、範囲が広がるわけではございません。したがいまして、現在の幇助犯と全く同じ考えでございますが、先ほども申し上げましたように、蓋然性ということにつきましては、同じことを恐縮でございますが、提供者と被提供者の人間関係、あるいは被提供者の飲酒運転に関する言動その他の個々具体的な状況に応じて判断するということになるわけでございます。
  102. 仁比聡平

    仁比聡平君 確認ですが、そうしますと、従来、幇助犯、教唆犯として処罰はされていない事案、そのような事案を立件をするとか、あるいは、そのために酒類提供者、例えばスナックのママさんだったり、お酒を売っているコンビニの店員さんだったりということがあるかと思いますけれど、その酒類提供者を、従来幇助犯、教唆犯として処罰されていないような事案まで被疑者扱いして捜査をするということは、これはないということでしょうか。
  103. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  先ほど御答弁申し上げましたように、基本的に幇助犯というもので現在処罰されているものを対象とするものでございます。もちろん、具体的に幇助犯につきましても実際の捜査でいろんな努力をしてやっていくということになりますので、その点も同じでございます。
  104. 仁比聡平

    仁比聡平君 先ほどの御答弁で、飲んで運転する意思があることが明らかな場合とおっしゃいましたかね、その飲酒運転をするおそれがある人ですね、の対応についてお話がありましたけれども、具体的にどんな事案がそれに当たるのか、御紹介ください。
  105. 野村守

    政府参考人野村守君) お答えいたします。  具体的ということで例示で申し上げたいと思いますが、例えば飲食店の店主が、車で来店する常連客がおるといたしますと、その者がこれまで度々飲酒後に車を運転して帰るということを知っていながら、今回もその注文に応じて当該常連客に酒類を提供した場合、こういったものが当たろうかというふうに考えております。
  106. 仁比聡平

    仁比聡平君 今御紹介のあったような事案に類するといいますか、並ぶといいますか、そういう悪質な事案を特に加重処罰をしようという御趣旨だと私としても受け止めております。  先ほどもお話がありましたが、駐車場のあるお店で、車で来ている、だけれども代行を呼んで帰るから大丈夫とか、あるいはタクシーで帰るから大丈夫というふうにいって、お客さんにお酒を出したという場合がこの加重処罰対象に当たりますか。
  107. 野村守

    政府参考人野村守君) お答えいたします。  先ほど来申し上げて恐縮なんですけれども、御指摘のような事例が処罰対象になるかどうかということは個々具体的な事例に則して判断するということになりますが、一般論で申し上げますと、運転者が帰りに代行を呼ぶというふうなことで店側に言っているような場合には、特段の事情がない限り、通常は飲酒運転することとなるおそれがある者に酒類を提供したということにはならないというふうに考えております。  ただ、これは、恐縮でございますが、先ほど来申し上げておりますように、提供者と被提供者の人間関係その他、個々具体的な状況を判断して決めることになろうかと思います。
  108. 仁比聡平

    仁比聡平君 時間が参りましたので終わりますけれども、今のこの点は処罰範囲の拡大になりはしないかということが大変各方面から懸念をされているところでございます。社会全体が飲酒運転を根絶しようということで、今お店なんかに行きますと、飲んだら乗るなというバッジを付けたり、お店で、あなた今日、車じゃないでしょうねと確認しておられるスナックのママさんなんかも大変多くなっていますから、この流れを大きく広げていくことこそが大事だと思うわけですね。決して処罰範囲の拡大にならないように適正な運用を求めて、質問を終わります。
  109. 近藤正道

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。  近時、埼玉、いろんなところで悪質、重大な、かつ悲惨な交通事犯が発生をしておりまして、本当に心を痛めているところでございます。そういう中での今回の刑法改正、そして、関連して道交法改正という問題がありまして、酒、あるいは重大な悪質交通事犯の撲滅というところに大きく踏み出したということで、私自身は評価をしておりますし、今回の刑法の一部改正についても容認したいと、こういう立場でございますけれども、改めて、一番最後質問でありますので、少し確認的な質問を冒頭さしていただきたいというふうに思っています。  悪質、重大な交通事犯をどうやって撲滅するかということでございますが、昭和四十年に業務過失致死傷罪法定刑の引上げ、そして平成十三年に危険運転致死傷罪の新設、平成十八年に刑法の一部改正罰金刑の引上げと、この間、何度かこの悪質、重大事犯撲滅に向けての動きがあったわけでありますが、さらに加えて今回の動きになったわけでございます。  今回の動きにつきましては他にもいろんな選択肢があったんではないかと、こういうふうに思っておりまして、一つには、危険運転致死傷罪の構成要件を緩やかにする、適用範囲を拡大をすると、こういう動きが一つ可能性としてはあったんだろうと思っております。もう一つは、業務過失致死傷罪法定刑を引き上げると、こういう形があったんだろうというふうに思いますが、そういう方法を取らないで自動車運転過失致死傷罪という、この新設という方向を取った。  幾つかの選択肢の中でこの道を取った理由について、まあこの間るるお話もありましたけれども、まとめてもう一度御説明をいただきたい、こういうふうに思います。
  110. 小津博司

    政府参考人小津博司君) まず、いろいろな選択肢の中で、危険運転致死傷罪の構成要件を緩めると申しますか、これが適用される類型をもっと増やすということでございますけれども、これにつきましては、やはりこれが故意犯であって、しかもそれが結果的に傷害罪、傷害致死罪に匹敵するほどの悪性を持っている、だからこそ法定刑も非常に重い、こういう罪として設けました。そこで、現在設けられておりますのに類すると申しますか、並べられるような類型があるかどうか、そのように切り分けられるかどうかというのが大変に難しいと考えたわけでございます。  もちろん、その過失の中で、その態様の中でも非常に悪いというのがありますと、それも入れたらどうかという御指摘があるのも十分理解できるところでございますが、しかし、何かを加えますと、それじゃそういうような不注意は全部その危険運転致死傷罪の特別の類型に当てはまるのだと、こういうことに罰則ですのでなってしまうわけでございます。そのように考えてみますと、なかなか難しい。それから、仮に幾つかのものを付け加えてみましても、やはりそれから抜け落ちるものは出てくるだろうと、こういう問題が本質的にこの罪にはあるというのが一つでございます。  次に、業務過失致死傷罪法定刑を引き上げるなどの方策はどうかと、これも選択肢としてあったわけでございます。この点は、自動車運転によるもの以外の業務過失致死傷事犯について法定刑を引き上げるような理由があるだろうかと、このように考えますと、科刑状況からして少なくともそのような事情がないなというのがまず一つございました。それでは、科刑状況からすると確かに自動車運転だけであるとなりました場合にも、多少理屈の上でと申しますか、今までずっと業務過失致死傷罪でやってきたもののうち、自動車運転だけを切り出して、しかもその部分だけある程度重くするということが合理的であろうかというふうに考えたわけでございますけれども。  そのような観点で改めて考えてみますと、いろいろな反復継続して行う行為、これを業務性があると言っておるわけでございますが、その中でも特に自動車運転する行為というのは非常に危険が伴う行為であると。しかも、それは一般の方々運転をするわけでございます。もちろん、道路を整備いたしますとか等々、自動車事故を防止する施策はいろいろと取るべきではありますけれども、やはり最後運転するその個人の方の注意に懸かっているということでございます。  そう考えますと、すべての自動車運転する人については実は重い注意義務があるのだというふうに考えることができるなと。もちろん、自動車運転以外の事故につきましても大変悲惨な重大なものはございます。その中で、それは個人の罪責を追及するべきものもありますし現に起訴されているわけでございますけれども、ただやはりそれは一つの大きなシステムの中で起こった事故だという面もございます。個人にだけその責任を帰すべきことはできないという面もある。  これらのことを総合的に考慮いたしまして、今回、私どもといたしましては、刑法の業過の中から自動車運転部分を切り出して、それを五年から七年にするという選択をしたと。  以上でございます。
  111. 近藤正道

    ○近藤正道君 では、それを今度は受けまして次の質問でありますが、自動車運転過失致死傷罪の最高刑が七年ということになったわけでございます。まあ率直に言いましてなぜ七年なのかということでありますが、業過致死傷の最高刑が五年、これが短くて七年は妥当だというこの根拠についてお聞かせをいただきたい。  その上でもう一つでありますけれども危険運転致死傷罪が二十年以下ということでありまして、今ほど業過から自動車過失運転致死傷、この注意義務の重大性を踏まえて切り出したということでありますが、七年と二十年のこの差は少し大き過ぎはしないかなと、そういう声も普通の人の中にはあるわけでありますが、この差が過大ではないかという疑問についてどういうふうにお答えになられますでしょうか。
  112. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 業務過失致死傷罪を切り出して法定刑を引き上げるときに、それを五年から七年に上げるにとどまらず、もっと上げるべきであるという御意見もございました。私どもとしては結局七年への引上げを今お願いしているわけでございますけれども、やはりこの基本のところは、一つには切り出されない業務過失致死傷罪上限が五年である、しかもこれを更に上げるべき理由は現在のところ見当たらないということとのバランス、それから、それをベースにいたしまして過失犯法定刑というものを引き上げていくときに、五年から一挙に例えば十年というのは重過ぎるのではないかと考えたわけでございます。  じゃ、どうして七かということでございますが、これは現行の刑法におきまして、五年から十年の間では五年、七年、十年と、このような刑が定められておりますので、七年という刑を選択したということでございます。  もう一点の危険運転致死傷罪の二十年との開きでございます。これは、先ほど申し上げましたように、道交法改正されますと、併合罪加重で例えば十年六月ということにはなるわけでございますけれども、それでもその差はあるわけでございます。ここは、やはり故意犯としての危険運転致死傷罪と、過失犯としてのこの構成要件等の違いに立脚するというように説明さしていただかざるを得ないかなと、こういうふうに考えております。
  113. 近藤正道

    ○近藤正道君 先ほど来話がありましたけれども、とにかく悪質、重大な事犯がたくさん出ておるわけでございますが、これに対して厳罰で臨む、これは一つの方法でありますが、しかし、これだけで事は解決するかといえば、決してそうではない。最終的には交通安全の総合的な対策が不可欠であると、こういう話になるわけでございます。  そこで、国土交通省等には、危険な道路の改善だとか歩行者が安心して歩ける安全な道路の整備を急いでいただきたい、こういうふうに思いますが、具体的な質問といたしまして、警察庁に一つお尋ねをしたいというふうに思っています。  先ほどもちょっと話がありましたけれども、生活道路、地域に密着した狭い生活道路、幅が五・五メートル未満のこの生活道路での交通事故の増加率が非常に突出して増えていると。警察庁は、平成十二年から平成十六年の事故の増加率を分析した報告書がございますが、それによりますと、生活道路とみなせる幅員五・五メートル未満の道路はこの五年間で九・二%、事故が増加をいたしました。一方、その五・五メートル以上九メートル未満の幅員の道路については増減がゼロである。九メートル以上十三メートル未満は〇・四%の減だと。十三メートル以上は三・一%の減、こういう数字が出ているわけでございます。幅員五・五メートル未満のいわゆる生活道路は全国の公道の約七割を超えているわけでございますが、それが今大きな交通事故の現場になっている。  ここで事故が非常に増えているということでありますが、生活道路の改善とかあるいは安全対策が遅れているのではないか、こういう声が上がっておりますが、警察庁にこの対策についてお聞かせをいただきたい、こういうふうに思います。
  114. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  幅員五・五メートル未満の道路につきましては、先生は十二年から十六年までの数値で御指摘なさいましたが、そのとおりでございまして、増加しております。ただ、十七年、十八年は連続して減少しているという数字も出ております。しかしながら、生活道路における交通事故が最近増加基調にあるということはこれは確かでございまして、交通事故抑止対策は喫緊の課題ということは私ども十分に認識しております。  警察といたしましては、生活道路を管理します市区町村と連携を図りまして、社会資本整備重点計画に基づきますあんしん歩行エリアの整備でございますとか生活道路事故抑止対策マニュアルに基づきまして、現在も対策を進めているところでございます。  ただ、この幅員五・五メートル未満の道路の実延長は平成十七年四月一日現在で約八十七万キロメートルということでございまして、御指摘のように道路実延長の七三%を占めるということもありまして、対策が十分に行き届いているということは必ずしも言えないというふうに思っております。  引き続き、道路管理者と連携を図りながら、努力してまいりたいと思っております。
  115. 近藤正道

    ○近藤正道君 それで、一つお聞きしたいのは、先ほど来、昨年九月の埼玉県川口市の悲惨な事故のことでございます。保育園児ら二十一名が死傷するという、本当に大事故、大惨事になったわけでありますが、この道路の幅員は六メートルでありまして、ガードレールもない、車道、歩道の区別がない、こういう道路でございます。しかも、現場には速度を規制する標識もなかった。したがいまして、その場合の制限速度は最高六十キロになると、こういうことでございます。  事故を起こした被告人は、当時、時速約五十キロから五十五キロという、まあ言わば制限速度内で走行をしていたわけでございます。一方、近くの幹線道路は四十キロの規制が掛かっていたという状況であります。現在は、遺族たちの強い働き掛けもありまして、事故現場を中心とした半径五百メートル以内の市道には制限速度三十キロの標識が立てられたようでございます。  新聞報道ではありますけれども、警察は事故のあった生活道路について、交差点が連続する道路であり、一時停止を守れば危険な速度は出るはずがないと、こういうふうに考えていたから速度規制の標識を設けなかったと、こういうふうに言っているようでありますが、こうした警察の気の付かない、見落としている、危険と隣り合わせの生活道路はこの国にたくさんあるんではないか、こういうふうに思えてならないわけでございます。  一度、その生活道路の整備や改善、安全対策を進めていく上に、こういった危険な箇所、危険な生活道路、この総点検をやっぱりしっかりやるべきではないか。厳罰の対策を取ると同時に、危険道路の改善が必要なわけでありますが、この生活道路、この総点検を一度やったらどうかと。こういう危険なところがどのぐらいあるのかしっかり調べてみてはどうかというふうに思いますが、どうでしょうか。
  116. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  危険な箇所がたくさんあるということで川口の例を先生お引きいただきましたが、先生にも少し触れていただきましたが、私ども道路交通法上は法定速度というのはございますが、これは必ずしもその速度を出すことを許容するという趣旨ではございません。運転者には安全で適正な速度で走行するという安全運転義務が課されておりますし、この地点におきましては事故発生地点が一時停止標識の直前でございました。したがいまして、この運転者には安全義務あるいは一時停止義務ということが掛かっておるわけでございまして、そういったことから本件事故の場合を考えますと、このような速度で走行することが道路交通法上許容されているということではないという点は御理解いただきたいと思います。  ただ、御指摘のように、生活道路の整備も含めまして対策は急務でございますので、先ほど少し申し上げましたが、私どもとしてはマニュアルを作りまして、市町村と県警が協力しながら進めていくというふうなことをやっておるところでございます。  ただ、生活道路になりますと、非常に量も多うございますし、それから地元のいろんな状況もございます。具体的には、例えばハンプのようなデバイスを設けようというふうなことになりましても、そこは騒音の問題、うるさいという、そういった逆の方からの意見もございますので、これはかなりそれぞれ地元の実情に合ったやり方でやっていかなきゃいけないというふうに思っておりまして、そういったこともありましてマニュアルを今作りまして都道府県警察で取り組んでおるという状況でございますので、こういった努力を積み重ねることによって少しずつ改善していくんではないかというふうに考えております。
  117. 近藤正道

    ○近藤正道君 皆さんの問題意識は分からぬわけではありません。多分相当たくさんありますし、いろんな個々ケースによって対応は違うと思うんですけれども、いずれにしましても生活道路にやっぱり事故が非常に多発している、それはやっぱり顕著な事実でありますので、一度、生活道路の整備や改善、安全対策等を進めていく上で総点検、問題になるような、それが考えられるような箇所はどのぐらいあるのかという総点検をやっぱりやった方がいいんではないか。厳罰化の一方でそういうこともちゃんとやった方がいいんではないかというふうに私申し上げているんですが、そのことについてのストレートな御答弁がないんですが、やる気持ちがあるのかないのか、どちらでしょうか。
  118. 野村守

    政府参考人野村守君) お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますように、生活道路の状況を改善していくということは非常に大事なことだというふうに私どもも認識しております。ただ一方で、それぞれ地域の地元の状況がございますので、今努力しているものを着実にこれからも続けたいと思っております。  先生の御指摘をよく受け止めまして、きちっとやっていきたいというふうに思っております。
  119. 近藤正道

    ○近藤正道君 是非それはやるべきなんじゃないでしょうか。  法務大臣、いろいろ、これは内閣府も国土省も警察もいろいろ関連があると思うんですけれども、これだけ、今回は道交法改正もある、自動車過失致死傷の新設もある、こういう形で正に交通事故を、それも重大事故を撲滅しようという機運が高まっているわけですから、是非私は、その流れの中で、皆さんのこれまでの努力は多としながらも、そういう総点検も是非やっぱりやるべきだと。法務大臣、是非リーダーシップを取って議論を巻き起こしていただきたいと改めて思うんですが、どんなものでしょうか。
  120. 長勢甚遠

    ○国務大臣(長勢甚遠君) 政府全体で取り組むべき問題であるということは先ほど来申し上げておるとおりでございます。  この御提案については、所管の大臣もおいでになることでございますので、その中で御検討されて適切なる対応をされるものと思っております。
  121. 近藤正道

    ○近藤正道君 終わります。     ─────────────
  122. 山下栄一

    委員長山下栄一君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、若林正俊君が委員を辞任され、その補欠として小池正勝君が選任されました。     ─────────────
  123. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  刑法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  124. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、簗瀬進君から発言を求められておりますので、これを許します。簗瀬進君。
  125. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 私は、ただいま可決されました刑法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び社会民主党・護憲連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     刑法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 自動車運転過失致死傷罪が、自動車運転上必要な注意を怠る過失行為に基づくものであることにかんがみ、その運用に当たっては、運転行為の悪質性・危険性や発生した結果の重大性など事案実態に即した適正な処理が行われるよう努めること。また、危険運転致死傷罪対象となる自動車の範囲が拡大されたことにかんがみ、その運用に当たっても同様とすること。  二 危険運転致死傷罪及び自動車運転過失致死傷罪の構成要件法定刑の妥当性については、今後の交通事故実態科刑状況等を注視しつつ、引き続き検討を行うとともに、必要があれば速やかに適切な措置を講ずること。  三 悪質・危険な運転行為により死傷事故を起こした者がいわゆる「逃げ得」となるようなことがないよう適正な捜査の遂行に遺憾なきを期するとともに、刑の裁量的免除規定や罰金刑適用の在り方についても引き続き検討を行い、適切な処理が行われるよう努めること。  四 自動車が移動や輸送の日常的な手段となっていることを踏まえ、交通刑務所等の矯正施設における安全運転に資する処遇プログラムの更なる充実を図る等、再犯防止策の一層の充実強化に努めること。  五 交通事犯被害者等に対しては、その事故発生時、捜査段階を含め、被害者等の心情に適切な配慮を行うとともに、必要な情報の提供や支援等が適切に受けられるよう、その保護策の一層の充実に努めること。  六 自動車事故に係る処罰規定が複雑化していることを踏まえ、本改正内容の周知徹底や交通安全の啓発活動等の充実強化を図ること。特に、飲酒運転等の悪質・危険な運転が許されないことについて国民の意識の一層の向上を図り、事故の未然防止に努めること。  七 自動車事故の防止には、運転者の安全意識のみならず、道路交通環境の整備、自動車の構造改善、運転者の勤務環境の整備、交通安全教育の充実など多面的・総合的に取り組む必要があることにかんがみ、本改正と併せて関係機関等の更なる連携の強化を図り、必要な施策が一層総合的に推進されるよう努めること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  126. 山下栄一

    委員長山下栄一君) ただいま簗瀬君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  127. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 全会一致と認めます。よって、簗瀬君提出附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、長勢法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。長勢法務大臣
  128. 長勢甚遠

    ○国務大臣(長勢甚遠君) ただいま可決されました刑法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
  129. 山下栄一

    委員長山下栄一君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十六分散会