運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2007-03-27 第166回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十九年三月二十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月二十日     辞任         補欠選任      江田 五月君     高橋 千秋君      田  英夫君     近藤 正道君  三月二十二日     辞任         補欠選任      岡田 直樹君     若林 正俊君      高橋 千秋君     江田 五月君      松岡  徹君     大塚 耕平君  三月二十三日     辞任         補欠選任      大塚 耕平君     松岡  徹君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山下 栄一君     理 事                 岡田  広君                 松村 龍二君                 簗瀬  進君                 木庭健太郎君     委 員                 青木 幹雄君                 山東 昭子君                 陣内 孝雄君                 関谷 勝嗣君                 谷川 秀善君                 江田 五月君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 前川 清成君                 松岡  徹君                 浜四津敏子君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君    国務大臣        法務大臣     長勢 甚遠君    副大臣        法務大臣    水野 賢一君    大臣政務官        法務大臣政務官  奥野 信亮君        財務大臣政務官  椎名 一保君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   高橋 利文君        最高裁判所事務        総局人事局長   大谷 直人君        最高裁判所事務        総局経理局長   小池  裕君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  小泉 博嗣君        最高裁判所事務        総局家庭局長   二本松利忠君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 英明君    政府参考人        法務大臣官房訟        務総括審議官   大竹たかし君        法務大臣官房司        法法制部長    菊池 洋一君        法務省民事局長  寺田 逸郎君        法務省刑事局長  小津 博司君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○執行官法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 山下栄一

    委員長山下栄一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、田英夫君及び岡田直樹君が委員辞任され、その補欠として近藤正道君及び若林正俊君が選任されました。     ─────────────
  3. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び執行官法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会法務大臣官房訟務総括審議官大竹たかし君、法務大臣官房司法法制部長菊池洋一君、法務省民事局長寺田逸郎君及び法務省刑事局長小津博司君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び執行官法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  両案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 岡田広

    岡田広君 自由民主党の岡田広です。  裁判所職員定員法そして執行官法、両案一括議題でありますので、先に執行官法について二点ほどお尋ねをしたいと思っております。  国家公務員恩給制度は、御承知のように昭和三十四年に国家公務員共済組合法が施行されたことによりまして共済年金制度移行したわけであります。しかし、この執行官法は、その後である昭和四十一年に成立をしたにもかかわらず、執行官についての恩給制度を残して今日まで至っているわけであります。  この執行官についての恩給制度が今日まで維持されてきたのはなぜなのか、また今になってこの恩給制度を廃止することにした理由について、まず法務当局お尋ねをしたいと思います。
  7. 菊池洋一

    政府参考人菊池洋一君) 執行官につきましては、制度発足当初から恩給を支給するという仕組みになっておりました。ただいま御指摘のとおり、現行の執行官法国家公務員共済年金制度ができた後の昭和四十一年に制定されたものでございますけれども、そのときも、これまた制度当初から維持されております手数料制をその際も維持するということにされたわけでございます。したがいまして、俸給制を前提とする共済年金には入れないということでございましたので、昭和四十一年の際にも暫定措置として執行官に対する恩給制度を維持するということにされたところでございます。  暫定措置でございますのでいずれ見直すことが予定されていたものでございますが、現在では、現職の国家公務員が退職した際に恩給が支給されるというのはもはや執行官だけになっておりますし、最近では公務員共済年金民間厚生年金に合わせるという、いわゆる被用者年金一元化というのが政府基本方針になっておりますし、昨年は国会議員先生方互助年金も廃止されたといったような諸情勢がございましたので、執行官皆さんの御理解も得て、今回、執行官恩給を廃止するという法律案を御提出させていただいたところでございます。
  8. 岡田広

    岡田広君 被用者年金一元化あるいは手数料制ということで御答弁をいただきまして中身理解をさせていただきましたけれども、執行官裁判の内容を実現することを職務としているわけでありますけれども、この執行官の適正な職務の遂行がなければ判決をもらっても絵にかいたもちに帰してしまうという、そういうことでありますので、司法への信頼を確保するためにも職責は大変重要、ますます拡大して複雑化している執行官のこの職務というのは大変重要であろうと、そう思うわけであります。  この執行官に有能な人材確保していくことは重要であり、その観点から、報酬について手数料制を取ることによりまして執行官モチベーションを保ってきたと思われるわけでありますけれども、しかし他方で、国家公務員の中で手数料制を取るような官職というのはほかにはないんだろうと思います。俸給制への移行ということも今後検討する必要があると思われるわけであります。  国家公務員であるにもかかわらず共済年金に加入できず、今日まで恩給という古い制度によらなければならなかった最大の原因は、御答弁にありましたように執行官手数料制を取っているということにあると考えられるわけでありますけれども、この手数料制から俸給制移行するという考え方について、法務当局にこれもお尋ねをしたいと思います。
  9. 菊池洋一

    政府参考人菊池洋一君) ただいま御指摘のありましたとおり、執行官につきまして手数料制を一貫して維持してきたのは、執行官裁判執行という非常に重要な仕事をしているわけですが、そのモチベーションを高めるということでございます。  俸給制への移行についての検討をという御指摘でございますが、執行官モチベーションといいますか勤務意欲の維持、あるいは執行官に優秀な人材確保することができるかどうかといったような問題、それから、技術的になりますが、仮に俸給制にしますとどの程度の給与を支給するのかという格付の問題、さらには、現在は公務員の総人件費を抑制するということがまた政府基本方針一つになっているといったような問題、これらなかなかそうすぐには解決することが難しい幾つかの問題がございますけれども、私どもといたしましては、執行官皆さんの御意見もお聞きしながら、今後とも引き続き御指摘の点について検討を続けてまいりたいというふうに考えております。
  10. 岡田広

    岡田広君 是非答弁にありましたように、執行官というのは全国で、数字聞きましたら六百七十二人という数字をいただきましたけれども、やはり十分意見を聞きながら、この手数料制から俸給制移行をするという、こういうことも是非検討をいただきたいと思っているところであります。  次に、裁判所職員定員法についてお尋ねをしたいと思っております。  我が党が政府とともに強力に推し進めてきました構造改革は着実に進んできております。中でも、以前の官が中心事前規制型社会から、国民の自由な活動を重視し、トラブルが生じた場合に事後的に処理をする事後チェック型社会への移行は、我が国の更なる発展のために欠かせない構造改革であると思います。司法改革は、事後チェックの主役である司法を充実強化して、国民からより身近で、早くて頼りがいにあるものにすることを目的としているわけであります。これは構造改革のかなめとなるということも言えるだろうと思います。  これまで、我が党が中心となって司法改革のために必要な立法を数多く行ってきました。制度整備は一応果たされてきたものと言えると思います。しかし、これからは、今回の定員法改正もその一つでありますけれども、制度を動かす人を適切に増員し、設備、環境も整えるなど、司法制度改革国民にとって実感できるよう、制度実施に向けた適切な取組が必要になるだろうと思うわけであります。  そこで、今後の司法制度改革の更なる推進に向けて政府全体としてどのように取り組んでいくのか、法務大臣のお考え、決意をお伺いをしたいと思います。
  11. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 今般、司法制度改革、諸先生の御支援の下にたくさんの制度を進めてまいりました。裁判員制度あるいは総合法律支援制度、また法曹養成制度などなど本当に重要な改革ができ上がったなと思っております。  御指摘のとおり、今後はこれらをきちんと実施をして、国民皆さんに信頼される、また身近な司法制度にしていくことが極めて大事だと思っております。それを担う裁判官あるいは法曹方々の定数といいますか量を増やすということが極めて大事であるということはおっしゃるとおりでございまして、裁判官始め検事また各般の方々定員確保全力を挙げておるわけでございます。  また、今後の課題としては、二年後に迫った裁判員制度実施、あるいは法テラスの着実な推進、あるいは来月からは裁判外紛争解決手続認証制度が始まりますのでその円滑な実施、あるいは法令の外国語訳整備推進ですとか法教育推進ですとかたくさんの課題があります。  今後とも、これらの制度改革実施中心法務省でございますので、我々が中心になって、また内閣一体になってそういう体制も組んでおりますので、政府全体でこれらの推進全力を挙げていきたいと考えておるところでございます。
  12. 岡田広

    岡田広君 ありがとうございました。是非長勢法務大臣の強力なリーダーシップの下で政府全体で、この裁判員制度、二年後に迫りました、あるいは既に始まりました法テラス推進等司法制度、大変いろいろ問題があるわけでありますけれども、この司法国民に身近なものと感じてもらえる、そしてやはり迅速で頼りがいのある制度ということで、是非国民にも周知徹底、広げていただきたいと思っているところであります。  裁判官の多くはキャリアでありますけれども、若いころから裁判官一筋にやってきた者で占められるということであります。しかし、司法を身近なものにするという観点から、いろいろなバックグラウンドを持って社会の動きを骨身にしみて感じてきた裁判官が多数いる方が国民にとっても親しみやすいと思われるわけであります。その意味で、社会の最前線で様々な経験を積んだ弁護士裁判官となり、その経験裁判に十分に生かしていくということはとりわけ重要なことであると思うわけであります。  弁護士としての豊富な経験を有している者を裁判官として積極的に登用していくといういわゆる弁護士任官について、これまでの採用の状況、そしてこの弁護士任官を拡大するための今後の取組につきまして、これは最高裁判所の方の担当にお尋ねをしたいと思っています。
  13. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者大谷直人君) 裁判所といたしましては、現在の複雑で変化の激しい社会裁判所が的確に対応していくためには、今御指摘がありましたとおり、多様な給源から裁判官人材を得ることが重要であり、弁護士として豊富な実務経験を有する優れた法律家裁判所部内で活躍することは有意義なことであると、このように考え弁護士任官推進してきたところでございます。  そのような観点から、昭和六十三年に判事採用選考要領を策定いたしまして、その後二度にわたる選考要領の改訂を経て、現在まで判事六十七名、判事補十七名の合計八十四名の任官がございました。  この間、弁護士等から任官しやすい環境を整えるために選考要領を見直すなどの工夫を重ねてまいりましたほか、弁護士がその業務を行いながら裁判官と同等の権限を持って調停手続を主宰するいわゆる調停官制度平成十六年一月からスタートしております。この制度によりまして、裁判官への任官を考えている弁護士の方にとっては、裁判官職務執務形態への一層の理解を深める機会が得られるとともに、事件や事務所の引継ぎなども進めることができるので、今後弁護士任官推進につながるものと、このように期待しております。  今後とも、裁判官にふさわしい優れた人材が数多く任官されるよう必要な対応をしてまいりたい、このように考えております。
  14. 岡田広

    岡田広君 ありがとうございました。正に、弁護士裁判官任官、これももう資質を高めていく、人材育成という、そういう意味では大変重要なことでありますので、また更に取組を拡大をしていただきたいと思っております。この人材育成養成につきましては、またこの後、考え方を述べさせていただきたいと思います。  このキャリア制度の下で国民に対してより質の高い司法サービスを提供するためには、若い裁判官検察官視野を広げ見識を深めることは重要であります。そのためには、裁判官検察官がその職をしばらく離れて裁判官そして検察官以外の経験を積むこと、これも非常に重要で意義のあることであろうと、そう思っているわけでありますが、この裁判官検察官他職経験の実情はどういうふうになっているか。  弁護士職務経験だけではなくして、国民的な視野を持つ法律家を育てるためには、発展途上国への法整備支援に参加する、こういうことも一つ大事なことではないかと思うわけでありますけれども、こういうことも含めまして、この考え方につきまして、これは法務大臣あるいは最高裁判所考え方お尋ねしたいと思っております。
  15. 水野賢一

    ○副大臣水野賢一君) 検察官の場合は、公益の代表者でございますので極めて重大な職責を有しておりますので、先生今おっしゃられましたように、幅広い視野とか識見を涵養することが大切でございます。  そうしたことから、検察官一定期間、一般の国民意識や感覚を学ぶことができる場所で執務させるなどの方策実施すべきということでございまして、平成十六年の六月には判事補及び検事弁護士職務経験に関する法律成立をいたしました。この法律に基づきまして、現在、一定期間身分を離れた検察官、そして弁護士となってその職務経験する、そういう検察官の方が、この制度平成十七年度からスタートしたんですが、現在八名の検察官がその身分を一時的に離れ弁護士として執務をしているところでございます。  あと、後段おっしゃられました途上国などでの法支援整備お話でございますけれども、これは我が国にとっても極めて国際社会の一員として主体的な役割を果たす上で重要でもございますし、現在、法務省を含めた関係省庁においてアジア地域等開発途上国への法支援整備推進しておりますので、法務省においても検察官JICA長期派遣専門家としてベトナムとカンボジアへ派遣をしておるほか、JICA短期派遣専門家としても両国を含むアジア地域諸国派遣するなど着実に取り組んでおります。  今後とも、検察官資質能力の向上を図りつつ、必要かつ効果的な法整備支援により、法支援整備、一層努めていきたいと考えております。
  16. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者大谷直人君) 先ほど委員からお話がありましたとおり、裁判官国民の要請に十分こたえていくためには社会事象等について多様な知識やあるいは広い視野等を備えることが重要であり、裁判所の外の社会に出て多様な経験を積むことは大変有意義である、このように思っております。  こういった観点から生まれました、先ほどもお話がありましたが、弁護士職務経験制度につきましては、裁判官で申しますと、平成十七年に第一期生の十人がその職務経験を開始し、平成十八年に十人が、本年の四月にも九人が職務経験を開始する予定となっております。また、裁判官外部経験につきましては、今申し上げた弁護士職務経験のほかにも民間企業等での研修あるいは行政官庁等への出向など様々なプログラムを用意しているところでございます。  それから、委員指摘されました国際的視野を育てるという点でございますが、これにつきましては、ベトナムにおける法整備支援について、現地専門家あるいは法整備支援を担当する法務総合研究所国際協力部教官裁判官出向させておりますほか、海外留学あるいは在外公館への出向も行っておりまして、その派遣国は欧米のみならずアジア大洋州にまで広がっております。  今後とも、裁判官視野を広げ、高い見識を備えるため様々な方策を講じてまいりたい、このように考えております。
  17. 岡田広

    岡田広君 裁判官、この視野を広げるということ、いろんな経験を積むということはとても大事なことでありますので、更に一層広げていただきたいというふうに思うわけであります。  この裁判所裁判官だけで裁判をしているわけではありません。裁判所書記官を始めとして、速記官とかあるいは家庭裁判所調査官裁判所事務官などの職員一体となって事件に当たることで、裁判官事案に沿った適切な解決へと導くことができるようサポートしているわけであります。身近な司法という観点から見ても、窓口を担当する裁判所職員国民にとっては司法そのものに感じられるわけでありますから、その適正な職務執行が強く望まれるわけであります。  今回の改正では裁判所職員員数増加させておりませんけれども、この裁判所体制、これについて大丈夫なのかどうか、これも最高裁判所お尋ねをしたいと思います。
  18. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、裁判裁判官だけで行っているわけじゃございませんで、裁判官裁判所書記官を始めとする裁判所職員が連携、協働して事案に沿った適切な解決へ導けるよう努力しているところでございます。  裁判所としましては、今後ますます増加することが予想される司法需要にこたえるために、事件処理体制を充実強化することが必要でありまして、裁判官増員確保するとともに、裁判官以外の裁判所職員につきましても必要な増員確保しなければならないと考えております。  そこで、新受事件数が依然高原状態にございます、特に医療過誤をめぐる事件、それから建築瑕疵建築設計書どおりに造られていないというようなことで争われる建築関係事件等の複雑困難な事件増加傾向にございます民事訴訟事件、それから、同じく新受事件数増加傾向にございます刑事訴訟事件家事事件に適切に対処するため、また、来るべき二年後に実施されます裁判員制度実施のための態勢整備を図るために裁判所書記官を百三十人増員することとしております。  一方で、裁判所国家機関一つでありますことから、政府定員合理化計画に協力することといたしまして、庁舎管理業務等合理化を図ることにより、技能労務職員中心として増員数と同数の削減をしたものでございます。この結果、裁判官以外の裁判所職員員数には増減はなく、裁判所職員定員法二条の改正を行う必要はないことになるわけでございます。  今述べましたとおり、必要な裁判所書記官増員を行い裁判部門を充実させたことで事件の適正迅速な処理に遺漏なきよう努めてまいりたいと、そのように考えております。
  19. 岡田広

    岡田広君 裁判所人的基盤を拡充をしなければならないというのはもちろんでありますけれども、我が国では法律家の数が全体としては不足しています。より大きな視野に立って検察官弁護士を含めた法曹人口増加をさせていく必要があると思うわけであります。  司法を身近に感じるためには、まず身近に法律家が存在することが重要であります。他方法律家は単にその数を増やせばいいのではなくして、あくまでも国民の期待にこたえることのできる質の高い人材確保が要請されるわけであります。  そこで、今後の法曹養成の在り方、特に法律家の質と量の確保重要性について法務大臣政務官のお考えをお伺いをしたいと思います。
  20. 奥野信亮

    大臣政務官奥野信亮君) 今委員お話しになったように、身近な司法というものは今、日本において大きな課題であります。そして、その体制確保というのも大変大きな課題だろうと思います。  特に、平成十三年六月に司法制度改革審議会というところから、二十一世紀の司法を支えるために質と量の確保を求めていくと今の制度ではもう無理である、限界であると、こういうことが指摘されまして、法曹養成制度改革意見書として提出されたわけであります。  その量の側面でありますけれども、グローバルに少し見てみますと、法曹界は今、日本全体で二万人の人がおります。法曹人一人当たり国民の数というのは六千三百人ぐらいであります。アメリカ法曹人口が百万人おりまして、法曹人一人当たり国民の数は二百九十八人であります。全然違うわけであります。まあ日本は今まで単一民族で争いをできるだけ避けたいという意識を持った国民が多くて、法文化も若干アメリカとは違ったわけでありますが、それに加えて日本には特殊な隣接八士業というのがありまして、それとの関係もあって法曹人口は少ないというふうに指摘されるんではないかと思います。これを今現在、平成三十年ごろまでに五万人、それは法曹人一人当たり国民は二千四百人という数字になりますけれども、そうしますと、アメリカにはほど遠い水準でありますが、フランスの千六百人ぐらいに近い水準になるというふうに考えております。  そして、量と質の確保に向けて今までどういうことをやってきたかということでありますけれども、やはり司法試験と修習の連係プレーというのが大変大切なことだろうと思います。  皆さんあるいは御承知だろうと思いますが、平成十六年に法科大学院というものが設立されたわけであります。これは、今現在定員が五千八百人で三年の学習をするということになっているわけであります。そして、司法試験中身についても、従来のようにイエス、ノーといいましょうか、簡単な試験じゃなくて、論述、口述中心に加えて課題の事実だとか対応というものを掘り下げて解答を求めるような形にしておりまして、法曹試験としては非常に質の高い試験ではないかというふうに思います。そして、司法修習制度一年を加えて、これで充実した法曹人が巣立っていくであろうと私どもは考えているわけであります。  その結果として、今、十八年九月の法科大学院卒の法曹、いわゆる法曹試験合格者というんでしょうか、これは千人、それから学部からの方が五百人。これを二十二年までに三千人ぐらいにしたいということで考えておりまして、今年の九月には法科大学院卒が二千人、それから法学部卒が三百人ぐらいの成果を上げたいと、こういうふうに考えているわけであります。  いずれにしましても、やっぱり国民の求める身近な司法制度というものに対応していくためには、おっしゃるとおり質の確保と量の確保、両面から今我々も一生懸命やっているところでありまして、皆さんの御理解を得たいと思っているわけであります。
  21. 岡田広

    岡田広君 奥野政務官から今後の法曹養成の在り方、そして法律家の量と質の確保重要性等について御答弁をいただきましたが、時間が来てしまいましたので、最後に、裁判員制度開始など司法制度改革実施、これが山場を迎えるに当たりまして、現在の政府全体の司法制度改革推進体制と今後の体制を充実させる方策について法務大臣にお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  22. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 先ほども一部御答弁申し上げましたが、司法制度改革が予定しておる効果を上げるように、国民に身近でまた頼りがいのあるものになるように全力を挙げてまいりたいと思っております。  特に裁判員制度については、もうあと二年後に迫りましたので、これを国民皆さん理解を得て円滑に実施する上では、法曹三者、裁判所法務省、また弁護士会の連携協力というものが大変大事だと思っておりますし、また政府内で連絡会議も設けておりますので、関係各省とも連携を取って今後推進全力を挙げていきたいと思っておる次第でございます。
  23. 岡田広

    岡田広君 是非、しっかりと各省庁連携の下でこの司法制度改革推進に力を尽くしていただきたいと思います。このことを要望して、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  24. 江田五月

    江田五月君 裁判所職員定員法一部改正案、それと執行官法一部改正案について質問いたしますが、執行官法の方は、予想してましたとおり、既に岡田委員から質問ございまして、私もそれ以上特別の質問あるように思いませんので、これは通告もしていませんし、いたしません。  裁判所職員定員法の方について伺いますが、これは司法制度改革をどういうふうに実効あらしめるかということでございまして、今日は財務省椎名財務大臣政務官ですよね、来ていただいておりますが、ちょっと聞いておいていただいて、最後に締めくくり的に御答弁いただければと思います。  総人件費抑制と、行政改革事務局がこの主導的な役割を果たして国家公務員全体についてスリム化を図っていて、そういう中で裁判所もそれに協力するという姿勢ではあるけれども、協力はしながら、しかし、さはさりながら司法制度改革という大きなこの流れの中で、また他の行政改革スリム化ということが迫られている行政各部と違った要請があるということを是非理解をいただきたいと、よく聞いておいていただきたいと思います。  さて、最高裁判所伺いますが、前にも伺ったんですが、司法制度改革審議会が審議を重ねて意見書を出して、それに伴って推進本部ができ法律ができいろいろやってきておるわけで、この司法制度改革というのはまあ百年に一度といいますか、本当に歴史的な改革をやろうと。裁判所ももちろんそうした歴史的な改革に伴って、裁判所あるいは裁判官というもののあるべき姿というものについて何か大きなデザインがあってしかるべきだと思うんですが、どうもこの改革の方向に従って一生懸命やりますという、それはいいですけれども、何か個別のことに、状況対応型に終始をしていて、本当にこれからのこの社会の紛争解決の中で裁判所あるいは裁判官はこういう役目を果たすんだという、そういうグランドデザインが一向に聞かれないと。  前にも伺ったと思うんですが、もう一度、何かその後お考えがあれば聞かせてください。
  25. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) 今般の司法制度改革の意義ということで御質問でございますけれども、この今般の司法制度改革におきまして、裁判における審理の充実、それから専門的知見を必要とする訴訟への対応などの事件処理体制の充実強化というところから始まりまして、法曹養成制度改革などの司法を支える人的基盤の充実、さらには国民司法参加にまで及ぶ非常に広範囲な領域にわたる改革であったわけでございます。  この改革は、国民の価値観が多様化し複雑困難な訴訟が増える中で、事前規制型の社会から事後救済型の社会への移行が求められ、そうした事後救済の中心的役割を果たす司法裁判所の役割が今後ますます重要になるという共通認識の下になされてきたものと理解しております。また、少子高齢化社会など社会状況の変化によりまして、成年後見制度でございますとかドメスティック・バイオレンスの問題、それから児童虐待の問題など、伝統的な司法といいますか、民事、刑事の裁判であります司法というような枠から、さらに司法の後見的な役割、福祉的な役割が期待される分野にまで裁判所に対する期待が広がりを見せているという認識を持っております。  裁判所といたしましては、このような社会経済状況の変化に伴う司法機能の充実強化を求める国民の期待にこたえ、中立公平な立場から個々の紛争に法を適用しこれを適切に解決していくという司法中心的な役割を全うすることができるように今後とも努力を続け、個々の事件において適正迅速な裁判を積み重ねていくことが国民の期待にこたえる道であると考えており、そのための司法の基盤整備にも努めてまいる所存でございます。  司法機能の充実強化のニーズの拡大に対応するために、裁判所としましては、平成十三年、司法制度改革審議会におきまして、裁判の迅速化、専門化への対応のために、今後十年間で裁判官五百人プラスアルファの増員が必要であると意見を述べたわけでございます。そして、この意見に基づきまして、平成十四年度から計画性を持って増員を行ってきておるところでございます。さらにこれに加えまして、平成十七年度以降は裁判員制度導入のための態勢整備を計画的に行っているところでございます。  今後とも、裁判所に与えられた機能を十分に果たし、国民の期待にこたえることができるように、委員指摘のとおり計画性を持って必要な人的体制の充実を図っていきたいと考えております。
  26. 江田五月

    江田五月君 よく分かりました。  というのは、つまり、やはり個々の事件処理を一生懸命やって国民の期待にこたえたいと、まあそれしかないといえばそれしかないのかもしれないけど、しかし、私はやはり、事前規制型の社会から事後救済型の社会に変わっていく、あるいは裁判員制度というものを取り入れて国民皆さん裁判に、主体的な裁判をするという側にもう入ってきていただく、そして裁判所が本当にこの国民主権の下の裁判所になっていく、これはやっぱり司法というものの大きな変化だと思うんですよね。  私も十年足らずですが裁判所にいたことがありまして、当時思い出すんですが、横浜の地方裁判所にいました。判事補十年目でございましたが、横浜の地方裁判所はたしか常置委員会と言ったと思うんですけども、各裁判官からグループ分けをして代表者を出して、委員会を作ってそこで司法行政を決めていくということをやっていて、私は判事補を代表してその常置委員になっておりまして、そしてその当時に一番問題だったのが法廷をテレビでどう映すかというのが問題になりまして、アメリカでは御承知のとおりすべてをもうテレビで映して洗いざらい国民に同時中継するということをやっている。日本もマスコミからそういう強い要求があってどうするか。私も当時は、やっぱりまあ裁判の場というのはそういう場じゃないだろうと。ですから、メモをこっそり取っていただく程度にしてテレビはどうぞ御遠慮くださいというような、そんなことで横浜のマスコミの皆さんといろいろ私も折衝に携わったようなこともあったりしたんですけれども、やはりこの同時中継がいいかどうかは別として、本当に裁判所がもっともっと国民のものになっていかなきゃいけないと。  ところが今はどうでしょう。裁判所へ、それはだれも、もちろん民事で被告にはなりたくないけど原告にだってなるのはそれは嫌ですよ。まして被告人になって裁判所へ呼ばれるのはそれはだれにとっても嫌だから、裁判所というのはやっぱり行きたくない場所ですよね。その行きたくない場所にそれでも裁判員で来てくださいという、国民裁判員になるの嫌だというのは当たり前の話で、それでも来てくださいと言うには、裁判所というのがやっぱり行ってそこでいつお縄ちょうだいになるか分からぬということじゃなくて、もっと、裁判所へ行ったら何かほっとするねとまではいかなくても、何か行きやすい場所になっていかなきゃならぬ。  そうすると、裁判所の例えば玄関の受付はもっとにこにこするとか、あるいは書記官室へ入っていったら書記官が眼鏡の下から上目遣いでじろっと見ると怖くてもうすぐ帰ってしまうというんじゃなくて、もっと何か優しい裁判所になっていかなきゃならぬ。とりわけ家庭裁判所なんていうのはそうだと思うんですよね。  そうすると、そうすると、今の裁判官を増やしていくのはそれはいいです。もちろんもっと増やさなきゃならぬと思います。そして書記官も増やしていく、これもいいけれども、今やっているのはあれでしょう、書記官以外の職員定員枠を振り替えて書記官にして、ほかの職員はどんどん減っていっているわけでしょう。そうやってほかの職員がどんどん減るというので本当に国民に優しいにこっとほほ笑む裁判所になるのかどうか。どういう気持ちでおられるのか、お聞きいたします。
  27. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) お答え申し上げます。  これから裁判員制度が始まりますと、毎週あるいは毎月五十人あるいは百人の方が裁判所裁判員となる候補者としておいでになるわけでございます。そのときに、やはり刑事訟廷が中心になると思いますけれども、そこで接する職員がやはりきちっと対応できる、接遇できると。まあ喜んで来られている方というのはそれほど多くないかと思うんですけれども、ただ、まずやってみて良かったというふうに思っていただけなければやはりいけないと思います。その意味で、委員指摘のとおり、裁判部門書記官の充実、事務官の充実、人的体制の充実というのはこれは非常に重要なことだと私ども思っております。  今般、書記官を百三十人増員しておりますが、先ほど申し上げましたとおり同数の削減もしております。ただ、この削減の内容は、そういった裁判部門を削ったわけではございませんで、庁舎の掃除をしてくれる方々であるとか警備をしていただく方々だとか、いわゆる技能労務職員、こういったところを削っております、削減していただいております。ですから、裁判部門につきましては従来どおり充実して、そういった委員指摘のような御懸念のないように十分な人的体制整備を図っていきたいと、さように考えております。
  28. 江田五月

    江田五月君 懸念じゃなくて本当に心配しているんですよ。  それは、受付だって、何か裁判所へ行ったら怪しいやつが来たというような目でぎょろっと、どこかで怪しいのが来たら困るというんで目を光らせている必要はあるんですよ。それは、裁判所というのはなかなか大変なところですから、いろんな事件も起きるところですから、どこかで目を光らせているんだけれども、しかしやっぱりそこは、国民との接点というものはもっとソフトになっていかなきゃいけないんで、掃除のおばさんもそれはにこっと笑ってもらわなきゃ困るわけですよね。  書記官百三十人増員をされるわけですが、これで一体どの程度裁判機能が充実をしていくのか。百三十人をどういうふうに配置をされるおつもりですか。何か具体的な案が今もうあるんですか。
  29. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) お答え申し上げます。  今回、百三十人書記官増員いたしますけれども、それは先ほど申し上げましたとおり、依然高原状態にございます、医療、建築等の複雑、困難な事件増加傾向にある民事訴訟事件、それから同じく事件増加傾向にございます刑事訴訟事件や家庭事件、特に家事事件、成年後見事件等は非常に増加しております。それに適切に対応、対処するため、それから、二年後に参ります裁判員制度の円滑な実施のための態勢整備を図るために増員をお願いしているところでございます。  裁判所書記官は、具体的には民事訴訟事件においては、委員承知のとおり、調書作成事務等の公証事務に加えまして、いわゆるコートマネジメント事務を行いますほか、刑事訴訟事件においても事前準備、特に公判前整理手続とかこれからますます増えてくると思いますけれども、それから期日管理の準備を含めまして、裁判官と協働しながら審理の進行管理に重要な役割を果たしておるわけでございます。  また、家事事件におきましても、成年後見につきまして、様々な申立ての要件審査や当事者への説明等を担当しております。家事相談などにも応じておるわけでございます。  さらに、裁判員制度が導入されますと、先ほど申しましたように、これは年に一度の事務でございますけれども、裁判員候補者名簿を毎年作って、事件ごとにその名簿から裁判員を選任する手続というものが更に加わります。  書記官の担当する事務が相当数増加することが予定されるわけでございまして、これらの事務を今回の増員をお認めいただくことによりまして更に適切に行うことができるようになると、さように考えております。
  30. 江田五月

    江田五月君 コートマネジメントという、初めて聞きましたが、これは日ごろ使われている言葉なんですかね。  要するに、訴訟法上の裁判所のマネジメントもあるし、それから具体的に法廷のマネジメントもあるし、さらに国法上の裁判所全体のマネジメントもあるし、いろんな場面、今私三つ挙げた、ぱっと気が付いただけでそれだけあるわけですが、そういうものを書記官がやっておると。  国法上の裁判所のマネージは、書記官というよりも、それは書記官という官職ではあるかもしれないけれども事務局長を中心にしてやるということになる、事務官になるんですかね、いかがですか。
  31. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) コートマネジメント業務というふうに先ほど申し上げましたのは、書記官として事件の進行を管理する、当事者との事前連絡、法廷の前の事前連絡でありますとか、そういう事件の進行を管理するという意味で先ほど申し上げましたけれども、様々な事務局長が担当する部分もありますけれども、先ほど申し上げましたのはそういう意味でございます。
  32. 江田五月

    江田五月君 分かりました。事件の進行管理もあるけど、コートというのは、そういう裁判部としてのコートもあるけど、そのほかにもいろんな意味のコートがありますので、すべてやはり、裁判官はもちろん最終的な、それぞれの訴訟法上の裁判所については最終的な責任を負っておるけれども、やはり中心になって、裁判所の庁舎管理などなど行うのも書記官がかなり大きな役目を果たすだろうというような感じはしますので、そうしたところで、書記官あるいは事務官、あるいはその他のいろんな技能労務職員など、すべて皆本当に国民の公僕として、国民が主権者なんだと、国民に奉仕をする立場なんだと、そういう意識をしっかり持ってもらわなきゃならぬと。  県庁とか市町村役場とか、これは知事や市町村長が選挙で選ばれるので、選挙のときに本当に市民に身近な市役所にしますというようなことで、そしてそれを実行するためにいろんな努力をしますよね。今はもうそういう努力をしない市長さんなんというのは、おれは市長だと言って威張っているような市長はもうすぐにこれは首ですよ。東京都がどうだかちょっと気になるところではありますが。  しかし、裁判所はそういう意識を、本当に意識的にそういう意識を、駄じゃれじゃなくて、やっぱり付けていかなきゃいけないと思うんですね。そうすると、一番重要なのはやはり裁判官がそういう意識を持つかどうかということもあるし、それから、裁判官がこれ間違っても、例えばセクハラだとかパワハラだとか、そういうようなことになっちゃいけないというようなこともあるし、裁判官の研修、今のような新しい裁判所をつくっていくという意味での研修は非常に重要だと思いますが、どういうふうにお感じになっていますか。
  33. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者大谷直人君) 今委員からお話がありましたように、新しい時代に裁判官に対する要求は様々なものがあり、また裁判官として律していかなければならない場面というのもいろいろ時代とともに変化してくると思います。そういうことについてきちっとした研修が必要だということは、委員指摘のとおりだと思っております。  今、セクハラ、パワハラというようなこともありましたが、それに関連して若干御説明いたしますと、司法研修所では経験年数等に応じて実施している各種研修におきまして、専門の学者による講演などによりまして、人権擁護に関するカリキュラムあるいは国際的な人権に関するカリキュラムといったものを実施し、裁判官の人権感覚あるいは国際人権水準についての理解を深めるように努力しております。  それから、いわゆるセクハラ、パワハラ等の新しい問題でございますが、こういった点につきましても、今申し上げましたような各種の研修、あるいは支部長それから部総括、こういった人たちを対象とする研修などにおいて、問題となり得るケースにも言及するなどして問題の具体的な重要性を認識させるとともに、相手方の受け止め方というものにも配慮した言動が求められている状況についてきちんとした理解を深めるように、このように努めております。
  34. 江田五月

    江田五月君 ちょっと、やはりもう一歩踏み込んで聞きますが、先ほど言ったとおり、司法制度改革というのは裁判所も変わっていくんだと。変わっていくというのは、国民主権の下で国民に、主権者である国民に奉仕する裁判所なんだと、そういう意識裁判官がしっかり持たなきゃいけない。その国民というのは、その辺にだれかいる抽象的な国民じゃなくて、正に一人一人の国民裁判所の目の前に来るあなたに私たちは奉仕をするんだという、そういう意識を持って、そういうことが単に頭の中だけでなくて体に言葉に手足に表れてこなきゃいけない、そういう意識改革の研修というものを裁判官に対しておやりになるかどうか。
  35. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者大谷直人君) 正に裁判員制度というのもその一つのだろうと思いますけれども、広い意味でのコートサービスといいますか、国民からのアクセスがきちんとしたものとして成り立つように裁判官中心とした裁判所がこれを受け止めていかなければならないと、この点はもう委員指摘のとおりだと思います。  研修に関しましては、今後ともそういう点に配慮しながら充実に努めていきたいと考えております。
  36. 江田五月

    江田五月君 コートマネジメントに続いて今度はコートサービスという言葉が出てきて、追い掛けるの大変ですが。  裁判官もそうだし、そして、念を押しておきますが、書記官も、あるいは事務官もその他の職員もすべてそういう意味意識改革してもらわなきゃいかぬというので、この意識改革是非お願いをしたいと思います。  意識だけじゃ駄目で、やっぱり人手が足りなかったら、人間忙しかったらそんな国民の方まで見ていられないですからね。やっぱりこれは人手もしっかりとなければそういうことができないということだと思うんですね。  検察官も最近、これは法務大臣答弁をお願いすることになります。この間の志布志の事件でも、もっと検察官がしっかりしていなきゃ駄目じゃないかという声はやっぱり強いですよ。それから、法廷をずっと検察官立ち会っているわけです。その法廷の一つ一つの動きを見れば、私は細かくずっと検証はしていませんけども、節目節目で、おお、これはちょっとおかしいぞというようなことがもう明らかになってきているケースのように思いますね。それが最後に論告求刑のときに、それは起訴したときにあらかじめ求刑も決めて起訴していますから、それを述べるということの枠を外せとまでは言いませんけども、それでもやっぱり訴訟というのは生きていますから、民事だけじゃなくて刑事だって訴訟は生きていますから、起訴したときのその思いのままを論告で述べればよろしいというんじゃ、立会い検事は要らないんですよ。  やはり私は、最近の事件をずっと見ていますと、やっぱりこれ、検察官もちょっと忙し過ぎて、もう立会いは半分寝ていようと、捜査が忙しいというようなことになっていたんだとするならばこれは大変なことで、さらに裁判員制度が導入されると、今までの、今までのと言うと悪いですけども、形だけ立会い検事がいるという、それで刑事裁判は一応体を成しているというだけじゃ駄目なんで、立会いの検察官裁判員に、素人の裁判員に分かるような法廷活動をしていかなきゃならぬということになったら、やっぱりここも人が大切。人というのは質もあるけど量もある。検察官をもっと大幅に増員するように、これは法務大臣、頑張っていただかなきゃならぬと思うんですが、いかがですか。
  37. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) まずもって、いろんなことで検察に対しまして御批判をいただいていることにつきましておわびを申し上げたいと思いますし、また、検察におきましても、いろんな事件を踏まえて精査をして、これからの在り方に生かしていきたいと今努力をしておりますし、そうなることを私も強く指示をし、また期待をしておる次第でございますので、今後ともよろしくお願いいたしたいと思います。  今、検察官増員についての御提案でございます。我々も全く同じ考え方でこの必要な体制整備に鋭意努力をしてまいっておるわけでありますが、何せ定員の問題は政府全体の中でいろいろ問題もあり、大変苦労しておりますが、毎年四十名、五十名ぐらいずつは増員をさせていただいております。しかし、これで大変非常に十分だというふうには全く思っておりませんので、今後とも検察体制国民に信頼をされるように、十分な機能が発揮できるように全力を挙げていきたいと思っております。  また、今、法廷の中での検察の在り方についても御提案がございました。どうしても、私は役人上がりでございますし、また役所においてもそういう傾向がありますし、まあ余計なことかもしれませんが、政党間の議論においても前の言ったことにこだわるというところがどうしてもありがちでございまして、こういうことも正直言って勇気を持って対応できるような検察であってほしいなと私自身は思っておる次第であります。
  38. 江田五月

    江田五月君 そのほか、例えば家裁調査官ですね、これもどうも今年は増員を求めていないようなんですが、少年事件、あるいは人訴移管とか成年後見などの導入による家事事件、いずれもやはりこれからますます重要性は増してくるし、質もまた、もっともっと調査官というものが得意分野とする様々な分野に裁判所が役割を発揮をしていくということはますます求められていくんだろうと思います。  あるいは、そのほか、弁護士任官の話もありますし、全体として検察官も含んで司法の質的な変化と言えるような大充実が必要なんで、これを踏まえながら財務省としてしっかり予算措置を考えていっていただきたいと。  裁判所の予算は、財務省の思惑を気にしながらじゃなくて、どんともう思い切ってやって、それを入れてもらえないんだったら自分の案も付けて国会へ提出するという仕組みになっているんですが、裁判所もそのくらいのことを一遍、かつてやったこともあるようですけども、聞きますと、何か裁判所宿舎、裁判官の官舎の関係でそんなことをやったことがあるということで、大変、裁判官上がりとしてはうれしいことというか、今もそんなことをやるというんじゃ、これはもう何をか言わんやですが、そうじゃなくて、その程度の意気込みで予算要求してほしいし、財務省としても、そういう司法に携わる者の切なる思いというものをしっかり理解しながら予算措置を講じていただきたいと思いますが、覚悟を聞かせてください。
  39. 椎名一保

    大臣政務官(椎名一保君) お答えをさせていただきます。  著しい犯罪情勢の変化と裁判員制度実施を目前にいたしまして財務当局として今日呼んでいただきまして、大変貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まず江田先生に感謝を申し上げる次第でございます。  法務大臣からも答弁がございましたけれども、特にこの五年間、裁判所におきましては、伸び率は、総定員の伸び率は一・四%でございますけれども、裁判官につきましては一〇・四%。検察庁につきましても、全体が二・三%の伸び率の中で検察官につきましては九・五%と。それなりに考えて配慮をしてきたところでございます。  ただいまの御意見、十分に承りまして、今後、司法制度改革と諸般情勢の変化に対応できるように十分に財務省としても対応をしていきたいと思っておるところでございます。よろしくお願いいたします。
  40. 江田五月

    江田五月君 司法に関しては、行革事務局の主導で総人件費抑制という、そういう中でやるんじゃなくて、もうそれは外に出したらどうだと言いたいぐらいの思いではありますが、今日はそこまではお尋ねをいたしません。どうぞ、もう結構です。  そのほか、裁判員制度フォーラムのこととか、あるいは裁判員制度の広報経費の転用があったとか、契約書が最後の段階になってやっと書面にされるとか、いろんな問題がございまして、最高裁判所の経理局長にも来ていただいておりますが、ちょっと時間の方がないので、これらのことについては、来ていただいて大変恐縮ですが、そういう点について国会が問題意識を持っているということはひとつ是非理解をいただいておくということで、次に移ります。    〔委員長退席、理事松村龍二君着席〕  親子関係について法務大臣伺います。  親子関係というと紳士淑女の関係じゃありません、親子の関係なんですが、法律家はもう親子関係というのでそう言っておりますが、母子関係、母と子の関係について最近最高裁が注目すべき決定を出しました。向井亜紀さんのケースですがね。私は、これは高裁がなかなかいきな計らいをしたなと、あれでよろしいと思っていたんですが、最高裁はそれを入れませんでした。  司法の判断ですから、それを立法府にいる我々が批判めいたことを言うのはどうかと思いますので、この判断が司法の判断だと、これを受け止めて、その上で一体立法として何をすべきなのかということを考えなきゃならぬと思いますが、それにしても、この司法の判断をどういうふうに理解をすればいいのか、法務当局としてどう理解をされているかということを若干聞いておきたいんです。  朝日新聞に棚村教授という人のコメントで、新しい問題、古い理屈で判断という、正にそのとおりじゃないかなという気がするんですが、法務大臣、母親と子供との関係というもの、法律をちょっと離れて、何によって成立する関係だと思いますか、母親と子供の関係
  41. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 当然生物学的な要素もないわけではないと思いますけれども、やはり子を慈しむという母親としての役割をきちんと持っている女性と、またその親に対して親しむというか頼ろうというといったらいいんでしょうか、そういう特に若い子供のころの時代はそういうものが社会的に認められるものを母子関係という社会であってほしいなと私自身は思っております。
  42. 江田五月

    江田五月君 私もよく分からないんですけどね、本当はよく分からないんですが、母親と子供の関係というのは、一つは遺伝的な関係というのがありますよね。それから、産む機械と言った人もいるようですが、機械じゃないと思うけれども、しかし、やっぱり子供を胎内に宿して、そしてこれを出産するというそういう関係もあります。それから、家庭の中で子供を慈しむ、今大臣言われた、そういう社会的な関係というか、人間同士の関係としての母子関係というのもあると思います。  これ、以前は一体だったんですよね。遺伝的な関係も出産の関係も、家庭で子供が家族の中で育っていくというのも全部一体だったんですよ。それが今ばらばらになってきたんですね。ばらばらと言うとおかしいけど、分離できるようになってしまった。遺伝的な関係と出産の関係も分けられるようになってしまった。出産の関係とそれから家族の関係と、ここはもうなかなか難しいですが、しかしそれはそれで分からぬわけじゃない。しかし、その遺伝的関係と出産の関係が分かれるようになったというのは、これは正に新しい問題なんですね。どっちを重視していくのか。  私は、やはり遺伝的関係を別にオールマイティーにするつもりはないけど、それでもやっぱり生命の萌芽というのは出産ではないんで、生命の萌芽というのはやっぱり母胎から生ずる卵子が刺激を受けて分裂をしていってそして胎児になって出産してくるという、その受精卵というのが生命の萌芽だと、これがあるから受精卵についていろんな今悩ましい問題を我々抱えてきているわけですね。受精卵なんというのは単なる物で、あんなものは生命とは関係ないんだと言ってしまったら余り難しい問題はなくなってくるのかもしれませんが、そうじゃないんで、そうすると、そういういろんな関係をどういうふうに法的に整理をして法的にこれに枠組みを与えていくかという話なんで、今度の最高裁の決定によると、遺伝的な関係で生ずる母子関係というのは法律上はむしろ公序良俗に反するみたいな言い方さえされているわけですね。実際に遺伝的関係で母に当たる人について母子関係法律上生じないと。    〔理事松村龍二君退席、委員長着席〕  じゃ、出産の関係で母子関係が生ずる人はどうかというと、これはアメリカの方で遺伝的関係の母子関係法律上母子関係と認めると、そういう裁判が出ているもんですから、そっちの、つまり出産の関係による母子関係もないと。子供は現にいる、子供は現にいるのに母親はどこにもいない、こんな変な法律関係になってしまっているわけですね。これ、大臣、何とかしなきゃいかぬと思いますが、いかがですか。
  43. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 先生がるる御指摘になった状況といいますか、流れはそういうことかなと私も思います。つづめて言えば、医療の発達がこういう問題が起こる一つの大きな契機になっているんだろうなと思います。もうちょっと踏み込んで言えれば、いろんなもので科学が発達する、科学が発達したら科学の発達によって何でもしてもいいのかということが今一つの問題として問われているんだろうと思うんです。しかし、現実に今回の事件を含めていろんなことが深刻な問題を生じておることも事実でございます。  最高裁の判決について、私も先生ほど判決を読み取る力はありませんし、またいろいろコメントを申し上げることもなんでございますが、恐らくそういうようなことも含めて現在の社会のルールとしての法律の解釈としては正当だということを御決定になったんだろうと思っておりますし、私自身もそういうことなんだろうと個人的にも思っております。  ただ、そうすると、今先生言われたように遺伝子の問題もある、また社会としての問題もある。また、私が申し上げましたように、科学でできることは何でもしてもいいのかという問題もある。非常にこういう全体を総合した結果は、結局は国民皆さん全体が納得できるようなルールを作っていくということが法律のありようだと思います。法律論だけで決めるわけにもいかない。まして医学だけの判断で議論するわけにもいかない。もっとほかの、どれとどれかと言われても私自身もよく分かりませんが、例えば生命倫理の問題だとか社会の倫理の問題だとか、いろんな観点からの御議論をしていただきたいというふうに思いまして、昨年、厚生労働省と法務省とで学術会議に御検討をお願いをいたしたところでございます。  今、鋭意御検討をいただいておると聞いておりますし、また、今先生のようなお話も含めて各方面で御議論があるように伺っておりますので、そういうことを、その御議論を踏まえながら検討を進めていくべきことかなと今思っておる次第であります。
  44. 江田五月

    江田五月君 私は、この最高裁のこれ判決じゃなくて決定なんですよね。古田裁判官、その裁判官の補足意見というのがありまして、この特別な本件の事情は十分理解できると、子の福祉も重要だと、しかし代理出産で生ずる問題について何らの法制度整備されてない状況では向井亜紀さんと子供との法律上の母子関係を認めるのはちゅうちょするという意見なんですね。  法律制度整備されていないから、この子には母親は法律上は認めないんだというのも冷たい話ですよね。国連は特別総会でチルドレンファーストという大原則を宣言しているわけですよ。これから世界じゅうはすべてのことをやっぱり子供を第一に考えていこうと、こういうふうに宣言をしているそういう時代に、法制度整備されていないから母子関係は認めないという、えらいことだなと思うんですね。  しかし一方で、この最高裁の決定は、遺伝的な事実としての母子関係法律的な母子関係とは違いますというんで、そういう事実としての遺伝的な母子関係があっても法律上はそれを認めないという。ところが一方で、今度、七百七十二条関係、これ今いろいろ議論されておりまして、法律の枠組みがこうなっているというのがちゃんとあっても、いや、事実としての生物学的な父子関係はそうじゃないから、その生物学的な父子関係法律制度を合わせようという、そういう議論が今国会議員の中で行われている。  私、法務大臣法務省がそこをそう簡単でもないんだといってちょっとちゅうちょされているように見える。それは分かるんです。ここは決して、法務大臣、そんなけしからぬと言うつもりもないんですが、しかし、やっぱり急いで何かをしなきゃならぬ案件であることは確かなので、これは学術会議が代理出産はもう禁止をするという方向をあるいは打ち出すかもしれません。私はそれもそれで一つの方向だと思います。思いますけど、幾ら禁止をしたって、そういう禁止されている母子関係が遺伝学上生じないというわけにはいかないですよね、それはいろんな世の中様々ですから。  そうすると、その場合に、あんたは、禁止されているんだから法律上の親子の関係法律では認められませんといって切ってしまっていいのかという問題はやっぱり残るんで、真剣にひとつ検討して、そして、トータルな問題の解決が難しければ個別の案件の解決でもいいじゃないですか。最高裁によるとそういう特別の立法で個別の解決をすると公序良俗に違反するなんて怒られそうですが、そう最高裁もいつまでも古くはないと思いますので、ひとつ一緒に協力しながらやっていきたいと。これまでも長勢法務大臣とは法務大臣になる前にいろんなことで協力しながら立法の努力もしたこともございますので、またいろいろ知恵をお互いに絞りたいと思います。覚悟を聞かせてください。  以上で終わります。
  45. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) もう法律の専門家の先生からそうまでおっしゃられると、大変恐縮に存じますが。  今、代理懐胎の話、また、七百七十二条のお話もありました。特に、おっしゃるように、仮に代理懐胎を禁止するということであれば、罰則をもって禁止するのかどういうことになるのか分かりませんけれども、だからといってそういうことは生じないという保障はないわけで、そうすればお子さんが生まれるわけで、それはもうほうっておくということはそれはあってはならないことだと私も思います。  それをどういう仕組みでどうしていくのかというのは大変難しいわけで、現行法制では、言葉が法律上適切かどうか分かりませんが、一種の実子相当の形にできるようなバイパスも用意をしておるわけで、それだけでいいのかどうかというような問題になるんだろうと思います。  私も今結論を持っているわけではございませんし、国民皆さんの納得する形のものをどうやってつくるかというのは大変難しい作業だと思いますが、また先生方におかれましても十分御議論いただきたいと思いますし、法務省においてもそれらを踏まえながら検討していきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
  46. 江田五月

    江田五月君 終わります。
  47. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 裁判所職員定員法の本日は法案の審議でございますが、本法案は提案理由に、民事事件及び刑事事件の適正かつ迅速な処理を図るとともに、裁判員制度導入の態勢整備を図るためというのが本提案理由でございます。この定員法でも、また、これ毎年審議をしているんですが、増員を図ってきて、また御議論があるとおり、なお増やさなければならないという状況になるということでございますが、もちろん裁判員制度の導入とともに裁判の迅速化という問題、司法サービスの迅速化という問題には正に人数を増やしていくことは不可欠であって、私どもももちろん今回の法案は賛成いたしておるところでございますが、増員するといってもやはり大事なのは、先ほども御議論があっておりましたが、どういう展望を持ちながら、中長期的に展望を持ってこの年までにどうしようというようなことを考えながらやることが必要であると思いますし。  まず、ともかく二十一年には裁判員制度実施されるようになっていくわけでございますから、まず二十一年までにどんな体制整備をしていくのかと、こういうことを考えておくことが大事であるとともに、それが実現していくことによって国民に対して、例えば裁判の迅速化という問題、こんなふうに早くなっていくんですよというような方向性も持っていくことも必要だと思うんですが、最高裁の方に、正にこの二十一年までにどういった構想を持ちながらやろうとされているのか、もしそれができることによって平均審理期間というのはどれくらい迅速化していこうと思っていらっしゃるのか、併せて御答弁をいただきたいと思います。
  48. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) お答え申し上げます。  裁判所といたしましては、平成十三年、司法制度改革審議会におきまして、裁判の迅速化、専門化への対応等のために今後十年間で裁判官約五百人プラスアルファの増員が必要であるという意見を述べたところでございます。平成十四年度から計画性を持って増員してきているわけでございますが、これに加えまして、平成十七年度以降は、裁判員制度導入のための態勢整備を理由の一つとする裁判官増員を行っているところでございます。裁判員制度が導入される委員指摘平成二十一年までに必要な人的体制を計画的に整備していきたいと考えております。  司法制度改革審議会におきまして、裁判所裁判官増員を図り、それにより裁判官の手持ち件数を減らすことによって、判決までに平均で二十一か月以上掛かっていた人証調べのある地裁民事訴訟の審理を一年以内に終了できるようにしたい旨の意見を述べたところでございます。平成十八年末におきましては、その既済事件の平均審理期間は依然十九か月程度掛かっております。しかしながら、民事第一審訴訟未済事件のうちの二年を超える長期未済事件平成十二年末で一万二千件以上ございましたが、平成十八年末ではその半分の約六万二千件程度にまで減少しております。
  49. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 六万二千。
  50. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) はい。約半分程度にまで減少しております。これはやはり、人員を増やしていただいたために古い事件を集中的に処理できたということではないかと考えております。  従来、審理の長期化が目立っておりました専門訴訟につきましても、医事関係訴訟では平成十二年に三十五・六か月掛かっておりましたものが平成十八年末では二十五・一か月。それから、知的財産関係の地裁の民事訴訟におきましては、平成十二年に二十一・六か月でありましたものが平成十八年末では十二・四か月、約一年程度にそれぞれ短縮されております。知財事件といいますのは非常に専門的なところが問われる難しい事件でございますが、それが大体平均して一年程度で終局しているということでございます。大幅な審理期間の短縮が実現しております。  現在、最高裁判所では、裁判迅速化法に基づきまして、裁判の迅速化に係る検証に関する検討会での意見を聴きながら審理期間の状況、長期化要因に関する検証作業を進めているところでございますが、この検証結果を踏まえつつ、今後とも充実した審理による裁判の迅速化を実現するため、必要な人的体制整備を図っていきたいと、さように考えております。
  51. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 人的整備をしていく、先ほど議論があったとおりでございますが、もちろん人数を増やしていくとともに大事なことは何かというと、例えば今の裁判迅速の問題もそうなんですが、単に人を増やしただけではなかなかこれうまく物は進んでいかないんで、どれだけその集まってきた人たちの質を高めるかという問題が今後は大きな焦点になっていくだろうと思いますし、是非そこは人数を増やすとともに、質をどうきちんと確保するか。増やしたけど質は落ちるというのではこれどうしようもないんであって、そこの部分をどうやっていくかが一つのポイントになっていくんだろうと思います。  どうやってその優秀かつ見識の高い人間を集めていくか。先ほどいろんな方法もあるというお話もございましたが、最高裁として裁判官、優秀な人材確保するためにどのような工夫をしていこうとお考えになっていらっしゃるのか、最高裁の方から伺いたいと思います。
  52. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者大谷直人君) より一層適正かつ迅速な裁判を実現し司法に対する期待にこたえるためには、優れた資質、能力を備えた人材裁判官として確保するということが重要課題であることは、今委員指摘のとおりであると思っております。  そのための方策ということで申し上げれば、まずは司法修習生からの採用当たり、優れた資質あるいは将来性を備えた人材確保できるよう努めていることは申すまでもないところでございます。また、裁判官に多様な人材を得る方策として、弁護士からの任官も最高裁としては推進しているところでございます。  さらに、平成十五年の五月には下級裁判所裁判官指名諮問委員会が設置されまして、裁判官の指名に当たり裁判官にふさわしい人材であるかについて学識経験者等から成る委員会においての審議が行われるようになっておりまして、この面からも裁判官の質の確保が図られることとなったものと考えております。  今後とも、裁判官に優れた人材確保するよう努めるとともに、裁判官視野を広げ、識見を高めるため様々な措置を講じてまいりたい、このように考えております。
  53. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 また、裁判官になってからの研修の問題でございます。もちろん、採用のときにどういう人材確保するか、それとともにその能力、識見を高めるためにどういう取組を継続的に行うかも一つのポイントになっていくんだろうと思います。  判事補の研修問題、どんな方針でどうやっていらっしゃるか。つまり、今オン・ザ・ジョブ・トレーニングというんですか、職場研修でいいと思うんですけどね、私はね。何か言葉が最近、さっきもコートとかいろいろ横文字が多いんですけど、日本語で論議したいなとも思うんですけど。ともかく、なってから後の研修の問題ですが、やっぱり国民が納得できるようなそういう形のものをやるためにも、この判事補の研修についてどのような方針でどう実施していこうとしていらっしゃるのか、これも最高裁に伺っておきたいと思います。
  54. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者大谷直人君) 裁判官として得られた人材に力を発揮してもらうためには継続的な研さんが重要であるということも御指摘のとおりであると思います。  裁判官の研さんは、何よりもまず、今お話がありましたオン・ザ・ジョブ・トレーニングという言葉が用いられますが、すなわち日頃の執務において具体的な事件処理を通して行う研さんが中心になります。訴訟進行の検討あるいは合議事件における裁判官同士の議論を通じまして、事案のとらえ方、さらには訴訟運営のノウハウについての理解を深め、また判決起案を通じてより分かりやすい判断の示し方などを習得するといった点につきまして、主体的な研さんを深めていくことができるよう、その重要性につきまして若い判事補に指導しているところでございます。  一方で、そのような自己研さんというものを補完し、支援することも重要でありまして、そういった目的から司法研修所におきまして各種の研修を実施しております。判事補任官直後に行われる研修を始めとしまして、その後も各法律分野に応じたテーマ別の研修等を多数開講しておりまして、これにより職務に必要な知識を得る機会を失することのないよう十分に配慮しているところでございます。  さらに、判事補裁判所外部で多様で豊かな経験を積ませることを目的として、弁護士職務経験行政官庁等への出向海外留学民間企業等への派遣も行っているところでございます。  今後とも、日頃の事件処理に地道に取り組むことを中心としながら、職務を離れた研修を効果的に組み合わせるなどして、裁判官の能力、識見を高める研さんの在り方というものを検討してまいりたいと、このように思っております。
  55. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ。先ほどこれ政務官の方からちょっとお答えがあっておりましたが、これから裁判官だけでなくて法律家増員法曹人口の増大という問題、大事な問題だということで、我が党もこの司法制度改革の中での言わば中核だということで御指摘もさしていただいて、一層の充実を申し出てきたところでございますが、裁判官それから検察官、何といっても結局司法試験に合格した司法修習生がどうなっていくかという問題であって、司法試験の在り方、前回いろんな形で変えさせていただきましたが、この司法試験の在り方で、例えばこの法曹の質、正に量、密接に関係する問題だと思うんでございます。これも、ですからある意味ではどうやって弁護士含めた法曹人口を拡大していくか、数をどんなふうにしていくかという問題は極めて大事なことだと思います。政府においても、そういう意味できちんと計画を立てながら戦略的に進めていこうという方向性だろうと思いますが、正にそういった戦略が必要だと思います。  そこで、これまでの法曹人口増加、どのように推移してきているか。具体的に言うならば司法試験合格者数の推移、そして今後どんなふうにして見通しながらやっていくのか。これはもう当局で結構でございますから、伺っておきたいと思います。
  56. 菊池洋一

    政府参考人菊池洋一君) まず、これまでの司法試験の合格者の数の推移でございますけれども、平成二年までは毎年五百人前後でございましたが、その後、徐々に増加をしてまいりまして、平成十一年には一千名程度、平成十四年に一千二百名程度、平成十六年からは一千五百名程度となっております。なお、昨年の平成十八年からは従来の司法試験と新しい司法試験と両方が行われておりますが、昨年の合格者数は合計で一千五百五十八人となっております。  今後の見通しでございますが、ただいま御指摘がありましたとおり、私どもといたしましても質を維持しながら計画的に数も増やしていくということが基本であろうというふうに考えております。この点につきましては、司法制度改革審議会の御意見、それからこれを受けて閣議決定をされました司法制度改革推進計画におきまして、法科大学院を含む新たな法曹養成制度整備の状況等を見定めながら、平成二十二年ころには司法試験の合格者数を年間三千人程度とすることを目指すということとされております。  具体的な今後の合格者数につきましては、今申し上げましたように質を維持しながら計画的に数を増やしていくという基本方針の下に、法科大学院の教育の現状や受験者の動向等を踏まえて、司法試験実施しております司法試験委員会におきまして適切に検討していかれるものというふうに考えております。
  57. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 部長、去年ですか、いわゆる司法修習研修所の卒業試験の落第者、百名超えたのが去年でしたかね。そういう意味じゃ、今量と質という問題おっしゃったんですが、本当にその質という意味をどうこれ本当に増やす中で確保していくことができるのか、なかなか悩ましいなと。定員増やせば増やすほど落第者も増えているという現状だとちょっと聞いているんですけど、この辺どんなふうに考えながらどうされるつもりか、もう少しおっしゃっていただいた方がいいと思うんですけれども。
  58. 菊池洋一

    政府参考人菊池洋一君) 数が増えたことが原因で今御指摘のその司法修習生の落第者が増えたという因果関係があるかどうかということは、確かな証拠があるとは聞いておりませんので、そこははっきりしないわけでございますけれども、ただ一つは、新しい法曹養成制度中心法科大学院で充実した教育を行っていただくということでございますので、この点についての一層の努力が必要であろうと思います。  それからもう一つは、新しい法曹養成制度は、従来のように司法試験の合否という一発勝負ではなくて、法科大学院における教育、次に司法試験、最後に司法修習という三つのプロセスの中での養成ということでございますので、司法試験も従来のような内容ではなくて、法科大学院の教育を踏まえた出題にするということが重要であろうと思います。  私どもとしては、そういったことも今後更に工夫をしていきたいというふうに思っております。
  59. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非法科大学院の在り方、その授業内容、司法試験の在り方含めて様々な意味でよくチェックしながら、どういうふうになっているのかと、何をやることによってこの質の向上ができるのか、その辺を是非いろんな角度で検討もしていただきたいなという強い要望をしておきたいと思うんです。  そして、先ほどの話でいくと、三千名ぐらいに将来的には司法修習生がなる。これだけ増えてくると、司法修習の間、これ大変だなという、現在のこの司法研修所の体制でやるにはなかなか大変な現状にあるんじゃないかなと。  これ、三千名になるのが平成二十二年ごろという先ほどのお話でございます。その二十二年ごろまでにこの多くの人数、三千人程度の人たちをどう研修をしていくのか、支障なく。これが体制が整わなければまたこれ落第生の問題につながっていくわけですから、そういった意味では、体制づくりを今からしておく必要があると思うんですが、支障なくこの三千名を超える人数の人たちを司法修習する、この体制についてどのような検討をなさっているのか、最高裁から伺っておきたいと思います。
  60. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者大谷直人君) 司法制度改革審議会意見書におきまして、法科大学院を導入し、それから司法試験の合格者数を三千人程度にすべきであるという提言があったことを受けまして、最高裁、それから司法研修所では新しい法曹養成制度にふさわしい司法修習の在り方を検討してまいりました。  新しい司法修習は昨年十一月から開始しているわけでございますが、その在り方を検討するに当たりましては、司法修習生が年間三千人程度まで増加すると、こういうことを見込みまして、より効率的、効果的に司法修習を実施する方策検討してまいりました。  司法研修所におきましても、必要な教室棟、教室の棟の増築あるいは教官の確保を行うとともに、配属庁会に対しましては指導者、指導スペースの確保など配属者数の増加への対応を求め、司法修習の中核である実務修習を含め、司法修習が支障なく実施できる体制整備を行っているところであります。  なお、司法研修所における集合修習でございますが、これは二班体制を取ることによりまして、同時に修習を受けるのは三千人の司法修習生の約半数となるという予定でございます。  また、司法修習の内容でございますが、幅広い法曹の活動に共通して必要とされる言わばスキルとマインドと申しますか、言い換えますと、法的問題の解決のための基本的な実務的知識・技法、それから法曹としての思考方法、倫理観、心構え、見識、こういったものの養成に焦点を絞った教育を行うことにより法曹に求められる質を保つことができるのではないかと考えております。  このような諸方策を講じておりますが、司法修習に支障がないよう、更に十分検討を重ねてまいりたいと思っております。
  61. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ職員の方の問題でございますが、もちろん、先ほどの迅速化、裁判員制度、いろんなことを導入される中で、裁判官だけでなくて裁判所職員、どうここも教育していくかという問題で、この問題につきましては、平成十六年、この法務委員会でございましたが、裁判所法を改正をさせていただいて、裁判所職員総合研修所というのが設立されたはずでございます。新しい研修体制ができていると。これ、どんなふうに今行われているのか、裁判所職員に対する研修の現状、これを一応、最高裁からこの際伺っておきたいと思います。
  62. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者大谷直人君) 委員指摘のとおり、裁判所が適正、迅速に事件処理し、司法に期待される役割を果たしていくためには、裁判所書記官家庭裁判所調査官など裁判官以外の職員執務能力の向上も不可欠でありまして、こういった観点に立って、先ほどもお話がありましたとおり、裁判所職員総合研修所を設立したわけでございますが、これを機に各種研修の一層の充実に取り組んでいるところでございます。  例えば、裁判所職員一体となって事件処理に取り組んでいく、こういう体制を強化していく必要があるといった認識の下に、裁判所書記官と、それから家庭裁判所の調査官の研修や実務研究会におきまして二つの職種共通する科目を合同で実施したり、さらに、司法研修所とも連携を取りまして裁判官もこういったものに参加する、こういったカリキュラムを取り入れるなどしておりまして、こういった研修の連携によって相乗的な効果を上げているというふうに考えております。  また、研修の内容につきましても、司法制度改革が実行段階になっているということを踏まえまして、各種の新しい専門的知識の付与あるいは当事者への応対の仕方の習得など時宜に合ったものを盛り込むように工夫しているところでございます。  今後とも、こういった観点からの工夫や取組を続け、適正、迅速な事件処理に向けて、裁判所職員総合研修所設立の趣旨を生かした研修や研究会を実施してまいりたいと考えております。
  63. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、研修の中でもおやりになっているのでしょうが、事件処理していく、その中で何が一番多分増えていくかというと、IT化というか情報化、どうこれを処理していくかという問題だと思っております。事務ももちろんIT化が進んでいくことになっていくんだろうと思いますが、ただ、このインターネットの問題になるといつも最近新聞をにぎわすのは、すぐ情報が、あれっ、また漏れている漏れているという漏えいの問題ばかりでございまして、そういう意味では、最も大事な公的な情報ですから、これをどうきちんとやっていくかという体制づくりというか、職員意識改革も、そして体制づくり、両方あると思うんですが、裁判所においてどうこういう公的な情報、プライバシーを守るかということは検討しておかなければならない大きな課題だと思うんですが、裁判所において、こういう事務のIT化という問題、また情報漏えい防止という取組、どんなふうになっていくのか、またなっているのか、伺っておきたいと思います。
  64. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、司法需要増加が予測される中、裁判所におきましては、裁判の迅速化あるいは司法行政事務の効率化、能率化の観点国民の利便性の向上の観点から、IT化になじむ部門においては積極的にITを利活用していくという姿勢で臨んでおります。  効率的に事務を処理するための施策といたしましては、各種事件処理についてシステム化を行うほか、最高裁内のLANと下級裁の端末をネットワークで結びまして、各種判例情報の参照、それから司法行政上の連絡に利用している司法情報通信システム、これを部内ではJネットと申しておりますが、それの充実を図っているところでございます。これは裁判所の内部でのIT化でございます。  また、国民の利便性を向上するための施策、これは外に向けられたものでございますけれども、裁判所における裁判手続のオンライン化としまして、昨年の九月に督促手続のオンライン化システムが本格稼働を開始いたしました。これは、一般の第三者、業者も含めてですが、自分の事務所あるいは自宅からパソコンで督促の申立てができるというシステムでございます。  さらに、適正かつ迅速な裁判を実現し、国民のニーズに的確にこたえるため、今後とも、事務の効率化等に向けてITの導入を検討していきたいと考えております。  このIT化に伴いまして、委員指摘のとおり、情報漏えいの防止対策が必要となってきております。とりわけ裁判所においては、委員も御指摘のとおり、プライバシーを守る必要性が高い情報等の取扱いに細心の注意を払うべき情報が多いことから、情報管理は極めて重要と考えております。司法情報通信システム、いわゆるJネットへのコンピューターウイルスの侵入を防止する対策でありますとか、このシステムからの情報漏えいを防止する対策等を取った上で、職員に対しては、執務関連の電磁的な情報の持ち出しの禁止、許可を得て持ち出して作業をするパソコンへのファイル共有ソフト、いわゆるウィニーと申しておりますが、ウィニーのインストールの禁止等を徹底しているところでございます。  また、裁判官は自宅で判決起案をするということが多いんでございますが、その場合におきましても、使うパソコンをインターネットに一切接続しないことを原則としております。つまり、スタンドアローンで使っていただく。そうでないパソコンを使う場合には、判決等を作成する際にはインターネットから切断するような状態にしていただく。ウイルス対策のソフトをインストールしていただいて常にウイルスチェックを行うこと等の対策を取るように、最高裁の事務総局情報政策課長から下級裁に通知するなどして情報漏えい防止対策の周知徹底をしているところでございます。  今後とも事故が起こらないように、万一の漏えい事故が起こらないように万全を期していきたいと、さように考えております。
  65. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に大臣に。  今、今日は質の問題含めてやったんですが、もちろん質の問題大事なんですけれども、その前には量の問題がもちろん第一番に大事なのは当たり前のことであって、法務省として、量の確保というか、裁判員制度、迅速化に向かってこれまでも取組をやってきましたが、なかなか人的確保という問題は、政府内においても全体総抑制の時代ですから、大変な作業だということはよく分かっておりますが、是非大臣としてこの人的確保を今後もどう図っていくのかという決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
  66. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 政府定員管理は、財政とも絡みますが、検事裁判官ということに、あるいはその職員ということになるわけでございます。  もう先ほど来申し上げておりますとおり、人的確保先生おっしゃるとおり大変大事な、また基本的な問題であると認識しておりまして、今までも、大変定員管理が厳しい中で御理解もいただいて、相応の増員は図ってきたと思っておりますが、まだ十分ではありませんので、今後とも、諸先生の御支援もいただいて、全力を挙げて増員に努めていきたいと思っております。  また、裁判官につきましては最高裁の方で御努力されておられるわけでございますが、司法一体でございますので、このことについても、我々もできる御支援があればしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  67. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  68. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  両案には私ども賛成でございます。  法案の質疑に入る前に、裁判に関して、国が被告となっているいわゆる集団訴訟、これについての訴訟に臨むべき態度についてちょっとお尋ねをしたいと思うんです。  御存じのように、原爆症認定訴訟あるいはC型肝炎訴訟について先週も相次いで原告側勝訴の判決が出されました。あるいは、トンネルじん肺訴訟や中国残留孤児訴訟を始め、社会的に大きな問題となっている、政治的にも問題となっている訴訟が続いているわけですけれども、今日その一つ一つについて具体的にお尋ねする時間もつもりもないわけですけれども、全体を見ていまして、例えば、最高裁で既にその争点については判決が確定しているというような争点についても、その後もずっと下級審で同じように争い続けているというような国の訴訟態度がございます。  例えば、原爆症の認定訴訟でいいますと、集団訴訟が始まってから五連敗、国がですね。先行した訴訟から続けますと、最高裁判決も含めて十二連敗というような状況の中で、どうしてこの国はそのように争い続けるんだろうかという点が大変な疑問なわけですね。当然、政治問題、社会問題としては、厚生労働省を始めとした省庁がここの大きな責任を持っているわけですけれども、事は、訴訟ということに関しては国、法務省が、訟務の皆さんを現場にしてこの裁判を担当していらっしゃるわけです。  それで、私改めて、審議官おいでいただきましたので確認をしたいんですけれども、国が被告となっているそのような事件について、争いを続けること自体が目的ではないはずだと思います。裁判というのは、事実と法に基づいて社会的な紛争を解決するために人類社会の中で生み出されてきた知恵でありシステムであるわけで、その社会的な紛争の解決を図るべきだという点について改めてお考えを伺いたいんですが、いかがでしょうか。
  69. 大竹たかし

    政府参考人大竹たかし君) お答えさせていただきます。  私どもは、一般論でございますが、裁判を通じて法律が適正に実現されるということが大切であると、こういうふうに考えております。  そこで、勝訴すべきものについては勝訴しますが、敗訴すべきものについては敗訴するというのが訟務の基本的な立場でございます。ただ、勝訴すべきものなのか否かという判断は、これは容易なものではございませんし、裁判の途中の段階では必ずしも判然としない場合があるということでございます。
  70. 仁比聡平

    仁比聡平君 何をおっしゃりたいのか、係属をしている事件でもありますから、大変微妙な、デリケートなおっしゃり方をされているんですけれども、敗訴すべきものは敗訴するという、それが方針だというのは大変正しいですよね。  最高裁も含めて、国が負けている事件というのは、当然相応の理由が、あるいはその前提となる深刻な被害、国民的な現実があるわけでございまして、立場はもちろん原被告、あるいは国、あるいは国を訴える国民という立場で違うだろうと思いますけれども、近年、国が被告となって敗訴をした大きな事件で、事件名はあえて申し上げませんけれども、その政治的な解決社会的な解決のために法務省が大きな役割を果たしたという事件があったことも私も仄聞をしているところでございます。  実際に、国、被告側の担当省庁として法務省以外の省庁がある場合がほとんどだと思いますけれども、そこの意向がいろいろある。あるいは、財政上の理由もあるかもしれない。そういうことがいろいろあるかもしれないけれども、私は、事実と法に基づいて、理性と道理の府として法務省が威信を持って、そのような省庁に対して道理を持って説得するということがあっていいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  71. 大竹たかし

    政府参考人大竹たかし君) 恐らく、委員の御指摘の場面あるいは控訴するかどうかというような場面で大きく問題になるんだろうと思うんですけれども、私どもの方は、法解釈上あるいは事実認定上の問題があると思われるものについて上級裁判所の判断を仰ぐ必要があるかにつきましては、関係の行政庁ともよく協議した上で、先ほど申しましたようなことで判断してまいりたいと考えているところでございます。
  72. 仁比聡平

    仁比聡平君 大変残念な御答弁なんですよね。  これだけ国が被告となっている集団訴訟でそれぞれが長期化をし、そしてその中で被害者が高齢化をして亡くなっていく、そういうふうな状況も続いています。その裁判解決をするということが国の在り方あるいは国民生活の在り方にとって大変重大な意味を持っているということは重々御承知のことだと思うんですね。  例えば、C型肝炎訴訟についても、あるいは原爆症認定訴訟についても、この間の判決について私は控訴はすべきでないと思います。控訴はせずに、全面的な問題の解決について私どもも政治決断をするべきだと思うし、政府にもそれを求めたいと思うんですけれども、法務省にも、いたずらに関係省庁の立場だけにかかわるのではなくて、例えばこれは民事の依頼者と弁護士関係でもそうですよね。依頼者が仮に争い続けたいと言っても、それに道理がないと思えば弁護士は道理を尽くして説得をするということはこれはあるわけでございまして、もう答弁は時間もありませんから求めませんが、そのような態度を是非お願いをしておきたいと思います。  それで、裁判員定員法にかかわりまして、今日は家庭裁判所についてお尋ねをしたいと思うんです。今日、最高裁家庭局長にもおいでいただきましたけれども、この一連の司法改革の中でも、人事訴訟の移管の問題やあるいは児童虐待あるいは児童福祉法の関連のお仕事、それから成年後見制度が軌道に乗り始めてのお仕事などなど、家庭裁判所に新たに期待をされる分野が大変増えているというふうに思います。そういった中で、家庭裁判所の役割は今一層重要性を増してきていると思うわけです。  かつて、初代の家庭局長をなされました宇田川潤四郎氏が家庭裁判所の五つの理念というふうに語られたことがあるということを私以前お伺いをして、最近、家庭裁判所のことを考えるたびにそう思うわけです。その五つの理念といいますのは、独立的性格、民主的性格、科学的性格、教育的性格、社会的性格と、このような五つの項目にまとめて語られているようですけれども、局長に、その理念への思いも含めて、家庭裁判所の役割、機能の重要性についてどのように今認識しておられるか、お尋ねしたいと思います。
  73. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答えいたします。  家庭裁判所は、家事事件、人事訴訟事件及び少年事件処理を行うことを役割とする裁判所でありますが、その特色である、先ほど委員指摘のような科学性や後見性などを発揮しながら、紛争や非行の背後にある原因を探り、家庭や親族の間の紛争や少年の非行の問題を的確に解決するという機能を有しております。  先般の司法制度改革審議会意見書においても、家庭裁判所の機能を充実する必要性が指摘されているところですが、近年大きく変化する社会経済情勢の下、家庭や少年を取り巻く状況が大きく様変わりするとともに、国民の価値観も多様化していることから、裁判所といたしましても、家庭内の様々な問題の解決や非行少年の再非行防止に当たる家庭裁判所の機能、役割は重要性をますます増しているものと認識しているところでございます。  以上でございます。
  74. 仁比聡平

    仁比聡平君 先ほど、江田委員の御質問の中でも国民に開かれた裁判所の在り方が大分議論になりましたけれども、家庭裁判所というのは、これはもう戦後の発足当初から、家事調停委員採用といいますか仕組み、あるいは家裁委員制度などを始めとして市民参加が元々出発点としてつくられてきた裁判所ではないかと思います。あるいは、今局長からお話のありました科学性、後見性という問題につきましても、家族の事件あるいは子供の事件が実際にその背景として抱えている様々な問題について、ケースワーク的にもあるいは福祉的にも、それから社会学、心理学的な専門性の面でも大変な科学的な分析や事実調査に裏打ちをしながら、最終的には審判官、裁判官が行う判断の適正さを保ち、そして子供たちの健全な成長やあるいは家族関係を修復をしていくというような点でも大変重要な役割を果たしてきたと思うわけです。その家庭裁判所の機能が、今家族の問題それから子供たちの問題が複雑化をする中で、更にこれから一層充実をさせていかなければならないんじゃないのかと思いますが、いかがですか。
  75. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答えいたします。  先ほど委員指摘のとおり、家庭あるいは少年を取り巻く状況は大きく変化しております。そういった中で、家庭裁判所の機能をますます充実するために、家庭裁判所調査官の能力向上も含めて家庭裁判所としてもその事件審理を的確に行うように努めてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  76. 仁比聡平

    仁比聡平君 数字ですから私の方でも紹介をしたいと思いますけれども、調査室に作っていただいた資料で見ますと、そういう家庭裁判所の機能の重要性の中で、家事事件の新受件数の推移を見ますと、十年前の平成八年が四十二万六千五百十一件、一方で平成十七年、これは七十一万七千七百六十九件ということで、これは家事事件については大変に増えてきているということかと思います。  一方で、少年事件は、新受件数としては平成八年の三十万件程度から平成十七年二十四万件弱に減っておりまして、これは大変事件が減るということはいいことかと思うんですが、ただ、その中身としては、複雑化、多様化という傾向はとりわけ指摘をされているわけですね。その中で、家庭裁判所の調査官を始めとして裁判官以外の裁判所職員の数は私はさほど増えてないと思うんですけれども、いかがですか。
  77. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) お答え申し上げます。  家庭裁判所事件数の動向は、今委員がお述べいただいたとおりでございますが、家庭裁判所におきましても、事件動向、事件処理状況に応じて裁判官及びそれ以外の職員の人的体制整備してきております。  増員につきましては、平成十二年度から平成十八年度までの間に合計六十八人の家庭裁判所調査官増員を行いました。また、毎年各裁判所事件動向及び事件処理状況に応じまして、裁判官、家裁調査官、裁判所書記官等の配置数を見直しておりますが、家庭裁判所におきましては、事件動向等に応じて事務分担を見直すなどした上で、成年後見関係事件を始め増加する家事事件、先ほど委員指摘がありました増加しております家事事件処理するために、更に必要な職員については増配置していきたいと考えております。  なお、平成十六年四月に人事訴訟事件が地裁から家裁に移管されました際には、人事訴訟が多数申し立てられる大都市圏の家庭裁判所中心としまして、家裁調査官を増配置したほか、人事訴訟事件処理に必要な数の裁判官裁判所書記官を地裁から家裁に配置換えをしております。今後とも、家裁における事件の動向でありますとか事件処理状況等を注視して、より適正迅速な処理が図られるように必要な人的体制整備に努めていきたいと考えております。
  78. 仁比聡平

    仁比聡平君 事実関係の調査につきましても、あるいはその解決のための方策をいろいろ考える上でも、調査官の方々の役割というのは大変重要なものがあると思います。ところが、なかなか増えてはいなくて、今回の法案の関係の資料にもございますけれども、二〇〇六年の十二月一日現在でいいますと、調査官は十八人欠員になっているということなんですね。本来、柱にあるいは重要な職として頑張ってもらいたい調査官の方々が定数よりも欠員になっているというのは本当に残念なことだと思うわけです。  大都市部でいいますと、家事と少年で調査官の係などが分かれて専門的にやっておられるというところもあるのは承知をしていますが、地方の裁判所に行きますと、なかなかそんな手当てもできずに、少年事件それから家事事件、大変事件数も多い中で御苦労されているのが実情なのではないでしょうか。  例えば、私も実務で経験がございますが、少年事件で子供たちのこれからのことを考えたときに、試験観察という制度の活用を是非お願いしたいと感じるケースがよくございます。直ちに結論を決めてしまうんじゃなくて、一定期間、補導委託先、そこでボランティアをするとかあるいは仕事をするとかいうような形で働いたり社会生活をしてもらいながら、その間、調査、観察をし、教育的な効果も働かせるというような指導が必要な子供たちというのはたくさんいるんじゃないかと思うんですが、なかなかそのお願いをする上では調査官の方々の負担が大変重いですから、ここを解決をしていかないと子供の事件も、それから、例は申し上げませんが、家族の事件も、本当に裁判所の本来の役割を果たすということにならないのではないのかという思いもするわけです。  そういった中で、家庭裁判所の調査官が今どうして欠員になっているのか。これはもう早急に解決をして、むしろ増員を図るために最高裁としても頑張っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  79. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) お答え申し上げます。  委員指摘の家裁調査官の欠員は、年度途中の自己都合退職等に伴うものでございます。家庭裁判所の調査官はかなり、委員も先ほど御指摘のありましたとおり、かなり高度の人間関係諸科学の知識を要する専門職でございます。そういう専門職でありますことから、裁判所職員総合研修所の所定の研修を修了した者から任命を行う必要がございます。そういうことで、年度内に充員ができずに欠員となっているわけでございます。  この欠員の補充は、裁判所職員総合研修所の家裁調査官養成課程を修了し家裁調査官任命資格を取得する予定の者、現在の官名は家裁調査官補でございますが、その任官及び退職する家裁調査官の再任用等により行うことになりますが、委員指摘の欠員につきましては、平成十九年の四月期にはほぼ充員される見込みでございます。
  80. 仁比聡平

    仁比聡平君 最後に大臣にお願いを申し上げたいと思いますけれども、今、家庭裁判所調査官方々のお仕事を中心にちょっとお話をしましたが、裁判所に働く職員さんの仕事の分野というのは専門性の高い分野含めて大変多様なものがあると思うんですね。これは最終的に法律で出てくる何人増員という、プラス・マイナス・ゼロだとかという数字に表れない御苦労がたくさんあるわけです。その現場の皆さんの御苦労や仕事の大切さを是非踏まえて、財務省相手にもあるいは官邸相手にも是非司法予算の確保のためにあるいは増大のために頑張っていただきたいと思います。  時間がございませんので決意、もし一言いただければと思いますが、いかがですか。
  81. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 検察においても検察事務官、大事な役割していますし、今おっしゃった裁判所においても調査官の方々の御苦労が多いんだろうと思います。  裁判所職員の配置、増員については最高裁の方でいろいろお考えになる問題ではございますけれども、法務省といたしましても、裁判所の人的体制の強化についてできる限りの御支援を申し上げていきたいと思います。
  82. 仁比聡平

    仁比聡平君 終わります。
  83. 近藤正道

    近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。  今回、七十五名の裁判官増員の要求でございます。もう既にこれの関連の質問も出ているようでありますが、最初に、今回の増員要求そのものについて、まとめの意味も込めまして質問したいと思います。  司法制度改革のための人員体制整備の状況が進んでおりますが、その中で、今回の裁判員増員の位置付け、そして増員効果をお伺いをしたいというふうに思います。
  84. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) お答え申し上げます。  裁判所といたしましては、司法制度改革審議会で述べた意見に基づきまして、平成十四年度から計画性を持って増員を図ってきたものでございます。  事件動向について見ますと、地方裁判所に提起される民事訴訟事件は、平成十六年四月からの人事訴訟の家庭裁判所への移管や簡易裁判所の事物管轄の拡大もございまして、平成十六年、十七年と若干民事訴訟事件は減少いたしましたが、平成十八年におきましては前年と比べてかなり増加傾向が見られるようになってきました。さらに、医事、建築等の非常に専門的な知見を要する複雑困難な事件も依然として高い水準で提起されております。  また、地方裁判所に提起されます刑事訴訟事件平成五年以降増加傾向にございまして、平成十七年、十八年はわずかながら減少いたしましたが、依然として高い水準にはございます。さらに、今般の司法制度改革の中でも最も広範囲に影響を及ぼす裁判員制度を円滑に導入するために、計画的に人的体制整備する必要がございます。  こうした要素を考慮いたしまして、平成十九年度は判事四十人、判事補三十五人、合計七十五人の裁判官増員を図ることとした次第でございます。
  85. 近藤正道

    近藤正道君 先ほどと全く同じ答弁、ありがとうございました。  次に、私の地元で少し今議論になっていることについてお伺いをしたいというふうに思っています。  新潟でございますが、新潟は新潟地方裁判所の下で五つの支部がございます。新潟の本庁の隣に三条支部がございますが、この三条支部管内の刑事事件、これは原則といたしまして、地検の三条支部や三条区検に送致をされた上で裁判所の三条支部又は三条簡裁に起訴される、これが原則でございます。  ところが、数年前から、三条で事件が発生した、そして被告人も三条の管内に住所、居所も持っている。そして、逮捕、捜査も三条の警察が行っている。弁護人も三条の居住の弁護士が付いている。にもかかわらず、新潟の本庁の検察庁あるいは新潟区検に事件を送致をさせて、そしてその新潟の地方裁判所に起訴をすると。こういうケースがたくさん出ておりまして、そうされますと、事件の被告人の応訴の関係だとか、あるいは弁護人の交通の関係だとか、いろんな面でやっぱり不都合が出ると。何のために事件配分がきちっとされているのか、簡易裁判所の管轄が行われているのか、よく分からないと。これはおかしいんではないか、原則に従って支部で起こった事件は支部で処理をする、こういう原則に立ち戻るべきではないかと、こういう言わば不満がかなり出て、新潟の第一審強化方策協議会の中でもかなり議論が行われております。  背景には、地検の三条支部に検察官が常駐をしていないと。みんな本庁の方に検事が、検察官が連れていかれて、そしてせっかく事務分配を、あるにもかかわらず、本庁の方でみんな処理をして本庁にその事件を起訴すると、こういうやり方が行われている。これはやっぱり下級裁判所の事務処理規則だとか、あるいは下級裁判所の設置及び管轄区域に関する規則というのが最高裁の規則であるんですが、こういうことに違反しているんではないか。  検察官事件によって本庁に起訴したり、あるいは支部に起訴したりということになりますと、事件の扱いの公平という観点からもいろいろ問題になるんではないかというふうに思いますし、また、今は司法制度改革の中でできるだけ法曹の過疎というものをやっぱりなくしていく、どこにおいてもひとしくそういうサービスが受けられるようにやっぱりすべきではないか。法曹が全体としてそういう方向になっているにもかかわらず、事件をどんどんどんどん、多分、検察官の人手不足ということが一つあるんだろうと思うんですけれども、みんな県庁所在地の本庁の方に持っていってそこでみんな処理をしてしまうというのは、これはやっぱり司法改革の流れにも逆行するんではないか、こういうふうに私思えてならないんですが、この三条におけるこういう扱いについて法務省はどういうふうな見解をお持ちなのか、どういう対応をこれからされるのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
  86. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 委員指摘の三条支部の件でございますけれども、確かに御指摘のとおり、一時期、当該支部管内において発生した刑事事件を地裁の本庁に公判請求をするという取扱いが行われていたところでございますけれども、これは、事件関係者の利便性への配慮等のために支部が設けられているわけでございますので、そういう趣旨にかんがみまして、その後、支部管内の事件につきましては通常どおり地裁支部へと公判請求しているものと承知しております。
  87. 近藤正道

    近藤正道君 どうして支部制度があるにもかかわらず全部事件を本庁に集めると、こういうふうなことをやるようになったのか。検察官の配置は検事正の権限というふうに聞いておるんですが、どうしてせっかく検察庁の各支部があるのにそこに検察官を配置しないで、そして本庁の方に集めるようなそういうやり方を取ったのか、そこはどういうふうに聞いておられますか。
  88. 小津博司

    政府参考人小津博司君) これは、三条支部に限らず全国の検察庁、地検の中で検察官を含め人を配置いたしますときに、全体としての繁忙度、その時々の事件の状況などを考慮して配置しておるわけでございますけれども、三条支部につきましても基本的にはそういう事情があったものとは思いますけれども、そのことでいろいろと御不便をお掛けしているという御指摘もございまして、先ほど申し上げましたように、三条支部につきましては先ほど申し上げましたような対応をするといいますか、対応に戻すといいますか、そのようにさせていただいたところでございます。
  89. 近藤正道

    近藤正道君 三条につきましては、検察庁の三条支部に一時期検察官が常駐をしていなかったということがありまして、事件をみんな新潟の本庁の方に持っていって本庁から新潟地方裁判所に起訴をする、三条の関係者はみんな新潟の方に出向いていかなきゃならぬと、そういう事態がありまして、三条で問題になって、今回、地検の三条支部にも検察官を配置するようになった。  それはそれで結構なんですけれども、しかし、今ほどの法務省説明によりますと、慢性的にどこかの地検の支部で検察官が常駐をしていないと、そういう事態がどうもあるように私には今ほどの答弁聞こえたんですが、そういう実態になっているんですか。たまたま三条は、地元の法律関係者が、まあ言わば文句を言ったというか、それおかしいんではないかというふうに言ったんで改善されましたけれども、そういうことを言わないところは、じゃ検察官が常駐しないで放置をされていくのか、こういう不公平はやっぱり問題なんではないか。  そういうことであるならば、この際、全国の状況を、実情を是非調べていただいて、それぞれの支部の制度があるわけですから、しかもこの支部の制度は、裁判を受ける権利、刑事裁判の公平性を担保するためにあるわけですから、そこで検察官が常駐をしていない、そのためにみんなその関係者が本庁に呼び寄せられるということになると、それも非常に不公平極まりない話でありますんで、是非全国の状況を調べられて、どのぐらい言わば検察官が常駐していない支部があるのか、これ是非一度調べていただけないだろうかと。たまたま三条は声を上げたから是正されたけれども、上げないところは是正されないということでは、これはやっぱり今の司法制度改革の流れからいってもおかしいんではないかと、こういうふうに思います。  今日は裁判官増員の話でありますけれども、検察官もやっぱり非常に人手不足ということがありまして、今どこの県でも県庁所在地にみんな人が集まって、ほかのところはかなり過疎的な状況がある。そういう中で、みんな検察官が本庁に集められて支部に常駐をしていないという、こういう事態をきちっとやっぱり直視をして是正していく必要が私はあるんではないかというふうに思います。  そういう意味で、全国の実情を是非この際しっかりとチェックをしていただきたい、調査をしていただきたいと、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  90. 小津博司

    政府参考人小津博司君) まず、検察官の数につきましては、先ほど来御答弁申し上げておりますように相当数増やしてきていただいておりますけれども、これを全国の事件の繁忙度等に応じて順次配置してきているわけでございます。この努力は今後とも引き続き鋭意進めてまいりたいと考えております。  他方で、正に増えたとはいっても限られる数を全国のどこにどう配分するかということでございまして、その際には、もちろん基本的には事件数でございますけれども、例えば大変に広大な地域を一つのところで管轄しているとか、支部も含めまして、ということはつまり、事件関係者の利便性ということも大変重要であると思います。  本庁と支部の関係そのものにつきましては、もちろんこれは、刑事訴訟法の世界では本庁に起訴しても支部に起訴してもいいということではございますし、それから、利便性ということを考えましても、事件は支部管内で発生したけれども、主な関係者が本庁の方にむしろいて、本庁の方で起訴した方がいいというのもあるいはあるかもしれません。しかし、それは一般的ではないと思います。  そのような中で、検察庁、決して支部からどんどん人を引き上げていくという、そういう流れになっているわけではございませんので、今後とも、そこのところは十分に配慮しながらやってまいりたいと思いますし、御指摘を踏まえまして、全国の状況につきまして私どもとしても必要に応じて十分把握してまいりたいと、このように考えております。
  91. 近藤正道

    近藤正道君 ありがとうございました。  もう一回確認なんですが、今言いましたように、支部の制度があるにもかかわらず、支部に検察官が常駐していなくて本庁で処理をする、これは事件配分の関係で違法ではないというふうに今おっしゃったけれども、しかし、何のために事務配分をしているのかということを考えれば、好ましいことではないことは間違いない。  もう一つ、簡易裁判所の管轄の問題については、これは正に管轄違いの問題がやっぱり出てくるわけで、さっき言ったように、本来であれば新潟の三条の簡易裁判所で審理、起訴されるべきものが新潟の簡易裁判所に起訴される、これは正に管轄違いの問題が出てくる。こういうこともかなりやっぱり横行しておりますんで、是非全国の実情を、支部に検察官がきちっと配置をされているのかどうか、どこにどのぐらい欠員があるのかということをしっかり調べて、実情をこの委員会に報告をしていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  92. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 先ほど申し上げましたように、私どもが適切に職員を配置するためにも、また御指摘もいただきましたので、必要に応じ全国の状況については十分把握をさせていただきたいと思っております。  それをどのような形で御説明させていただければよろしいのかということにつきましては、またいろいろと御指示、御指導いただければと思っております。
  93. 近藤正道

    近藤正道君 じゃ、実態調査をしていただくということでありますので、期待をしておきたい、待ちたいというふうに思っています。  あと三分ほど時間がありますので、もう一つ。去年の四月から始まりました地方裁判所、全国の地方裁判所で労働審判制度、始まっておりますが、この事件処理の状況がどういうふうになっているのか、また人的体制は十分な状況にあるのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  94. 小泉博嗣

    最高裁判所長官代理者(小泉博嗣君) お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、労働審判制度は昨年の平成十八年四月から開始された制度でございます。  その導入の目的につきましては、増加する個別労働関係民事紛争につきまして、事案の実情に即した柔軟な解決を簡易迅速に図るということを目的として導入された制度でございます。  制度開始から十か月を経ました平成十九年一月末現在におきます状況を御説明申し上げますと、労働審判事件の申立て件数は全国で九百四十三件でございます。比較的落ち着いた滑り出しというように思われているところでございます。  事件の終局事由を見ますと、調停成立で既済となったものが全事件の約七〇%を占めております。これに労働審判に対して異議が申し立てられずに確定したものなどを合わせますと、全体で八割近くの紛争が解決しているものと思われます。  また、事件の申立てから終局までの平均審理期間でございますが、七十三日、約二か月半というふうになっている次第でございます。  このような労働審判事件処理の実情からいたしますと、個別労働関係民事紛争を簡易迅速に解決するという制度導入の目的が一定程度達成されているというふうに言ってよいところと思われるところでございます。また、新聞報道や利用者である当事者、代理人の評価を見ますと、事案の実情に即しました柔軟な解決が図られているとおおむね肯定的な評価を受けているところではございます。  なお、労働審判事件の申立て件数が比較的落ち着いているというふうに申し上げましたけれども、労働審判制度が適切に利用されれば、増加する個別労働関係民事紛争の解決方法としては非常に労働審判というのは有用なものとなると考えられておりますところ、現在申立て件数が限られている地域におきましても、今後、労働審判手続にふさわしい事件につきまして積極的に申立てがされるよう、可能な範囲で同制度の周知に努めていきたいというふうに思われるところでございます。  労働審判制度につきましては、労働紛争の当事者等から強い期待が寄せられているところでございます。このような期待に備えつつ、労働審判制度が今後十分な役割を果たすことができますように、制度の運用とともに、委員指摘の人員の配置等につきましても更に研究、検討を進めてまいりたいというふうに存じております。
  95. 近藤正道

    近藤正道君 まだ始まって一年もたちませんので断定的なことは言えません。しかし、私もこの労働審判制度にかかわる弁護士などにいろいろ感想を聞きました。とにかく、国レベルでも今労働相談が年間九十万件ぐらい、県とか市町村を入れればもっともっと膨大な相談があると思うんですけれども、それから見ますと、まずまずと皆さんおっしゃるけれども、圧倒的にまだやっぱり利用されていない。私はそういう思いがしますし、弁護士皆さんもやっぱりそういうことを言っています。もっとこれをPRをして、何よりもやっぱり使い勝手のいいもの、できれば弁護士を付けなくたって個人でもちゃんと気軽に行けるようなそういう制度にしていかないとこれはやっぱり問題ではないかと。諸外国のものから比べると、やっぱりまだまだ敷居が非常に高いと言っています。是非いろんな人たちの声に耳を傾けて使い勝手のいい制度に改良、改善をしていただきますようお願いを申し上げまして、これ後でまた聞きますので、よろしくひとつお願いをいたします。  以上でございます。ありがとうございました。
  96. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより両案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  97. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、簗瀬進君から発言を求められておりますので、これを許します。簗瀬進君。
  98. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 私は、ただいま可決されました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び社会民主党・護憲連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 社会・経済情勢の変化に伴う各種紛争事件の複雑多様化などに対応し、刑事司法の適正な運用に努める等事件の一層の適正・迅速な処理を図るため、裁判所の人的・物的拡充に努めること。  二 裁判員制度導入の意義を十分に踏まえ、国民の期待に応える同制度実施に向けて、国民の参加意識を一層喚起しつつ、司法制度改革の趣旨の周知徹底に努めること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  99. 山下栄一

    委員長山下栄一君) ただいま簗瀬君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  100. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 全会一致と認めます。よって、簗瀬君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  次に、執行官法の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  101. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、簗瀬進君から発言を求められておりますので、これを許します。簗瀬進君。
  102. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 私は、ただいま可決されました執行官法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び社会民主党・護憲連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     執行官法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 執行官の退職後の年金についての暫定措置である恩給の廃止にかんがみ、執行官職務及び報酬制度の特殊性を踏まえ、執行官執務環境整備に十分配意し、事務能率の向上に支障が生じることのないよう努めること。  二 近年、ますます拡大・複雑化している執行官職務重要性にかんがみ、執行官にふさわしい人材確保に努めるとともに、専門性強化のための研修の充実等を図ること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  103. 山下栄一

    委員長山下栄一君) ただいま簗瀬君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  104. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 全会一致と認めます。よって、簗瀬君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの両決議に対し、長勢法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。長勢法務大臣
  105. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。  また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。
  106. 山下栄一

    委員長山下栄一君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  108. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 次に、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。長勢法務大臣
  109. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  裁判員制度の下で、裁判所に同一被告人に対する複数の事件が係属した場合に、事件の内容等によっては、すべての事件を併せて審理すると裁判員の負担が著しく大きくなることがあり得るところ、広く国民裁判の過程に参加し、その感覚が裁判内容に、より反映されるようになることによって、司法に対する国民理解や支持が深まり、司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになるという裁判員制度の意義にかんがみますと、幅広い層から、より多くの国民の参加が可能になるようにするため、裁判員の負担を軽減する必要があります。加えて、裁判員の参加する刑事裁判の審理において、証人尋問等を記録した記録媒体を評議等において活用することは、裁判員が充実した審理及び裁判を行うことができるようにするため特に有用であると思われます。また、検察審査員は、選挙人名簿から無作為抽出した名簿を基に、選挙管理委員会における欠格事由等の資格審査を経て、検察審査会が無作為抽出で選定しているところ、裁判員制度では、裁判員の欠格事由等の資格審査は裁判所で行われることとなるのに伴い、検察審査員の資格審査等の事務も裁判所職員が充てられている検察審査会に移行することが合理的でありますから、そのための選定手続の整備等を図る必要があります。  この法律案は、このような状況を踏まえて裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等司法制度改革関連法の円滑な実施を図るために必要な法整備を行おうとするものであります。  この法律案の要点を申し上げます。  第一は、裁判員制度の下において、裁判所に同一被告人に対する複数の事件が係属した場合に、裁判員の負担を軽減するため、一部の事件を区分し、区分した事件ごとに審理を担当する裁判員を選任して審理し、有罪・無罪を判断する部分判決をした上、これを踏まえて、新たに選任された裁判員の加わった合議体が全体の事件について終局の判決をすることができるようにすることであります。  第二は、裁判員の参加する刑事裁判における充実した評議等を可能とするため、その裁判の審理において、証人尋問等を記録媒体に記録することができるようにすることであります。  第三は、検察審査員の資格に関し、現在市町村の選挙管理委員会が行っている欠格事由等に係る資格の有無の判断を検察審査会が行うこととするとともに、検察審査員等の欠格事由及び就職禁止事由の整理、その他検察審査員等の選定手続等に関し所要の規定の整備をするものであります。  その他所要の規定の整備を行うこととしております。  以上がこの法律案の趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  110. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 以上で趣旨説明の聴取は終了いたしました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十一分散会