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参考人(
根本忠宣君)
中央大学商学部の
根本でございます。よろしくお願いいたします。
本日はこのような機会をいただきまして大変ありがとうございます。私の方からは、実はお手元の方に簡単な
メモ書きの
ペーパーを用意さしていただいたんですけれ
ども、
政策金融改革の
意義と
課題ということで、今後のこの
改革の
意義そして今後の
課題ということについての簡単な論点について
説明さしていただければと思っております。
時間が十五分というふうに限られておりますので、
ペーパーの
前半側はその
必要性と
有効性ということの教科書的なお話なので、この辺は少し省略をさしていただきたいというふうに思っております。
今回、
政策金融改革が行われて、一番私
自身が最初に感じたものは、
縮小という行革の一環ですから、
縮小ということが当然その
前提になるというのは分からなくはないんですけれ
ども、
事中小企業金融に関連して言わしていただければ、なぜその
縮小ということがその
前提になる
必要性があるんだろうかということについてはいささか疑問を持っております。
それはどういうことかというと、
政策金融の
有効性というのは
それなりに認知されておるということと、これまでの
中小企業金融公庫なり
国民生活金融公庫の実績というのも
それなりに高い
パフォーマンスを上げてきているということを私なりにも確認しておるんですけれ
ども、そういう
状況にあってなぜ
縮小かと、この点についてはいま一度確認しなければいけないのではないかというのが私の率直な
感想でございます。
その点についてどのように展望すればいいのかというと、これは
ペーパーでいえば、四番目の今後も
政策金融は必要かという点に関連するんですけれ
ども、果たして
民間サイドの今非常に活発に行われている
イノベーションということによって、果たして従来の形のものから抜本的に改善するんだろうかということについてのこの
期待値というものをより詳細に
検討することが必要なのではないかというふうに思っております。この点に関して、その
縮小という
議論の中で果たしてその詳細なる
検討があったのかということについて、この点について実は私
自身は若干疑問を持っておるという次第です。
もちろん
期待値の非常に大きい人から見れば、全面的に
廃止をしてもいいと。私
自身も知っている
アメリカの例えばFRBの人々なんかは、
アメリカのSBAという
信用保証でさえも全面的に
廃止していいという、こういうドラスチックな
意見を述べる人がいるということも存じております。しかし、果たしてその理由というものについて問うと、果たして本当だろうかということについてはいささかの疑問なしと言えないということです。
具体的にどういうことかというと、
民間の側の行方ということを展望してみると、確かに
競争が
活発化をしてきているということで、アクセスが非常に容易になってきているという点は一点があるかと思います。さらに
金融の
イノベーションということが非常に進展しておりますので、いわゆる
信用金庫等も含めて高い
審査能力というものの蓄積が徐々に進んでいるということも事実です。それに対応して
リスク対応型の
プライシングということも徐々に
検討されて、それが実地に
導入されようとしていることも事実でございます。
さらに
補完・
代替調達手段としてノンバンク、
エクイティー市場ないしは
証券化と呼ばれているような代替的な
市場が発達したことによって、いわゆる
間接金融と直接
金融の
連続性というのをかなりの高い
レベルで実現しようとしていることも事実だというふうに認知しております。
しかし、これらが果たして実現したとして、
中小企業金融というものが従来以上に大きく
民間市場によって改善していくんだろうかということについては、かなりやっぱり慎重な
議論が必要であろうし、少なくともここ数年の
動向というのを見る限りにおいては、そんなに急速にいわゆる
運営レベルにおいてこれらの
イノベーションというのが改善というものをもたらしているかどうかということについてはそんなに拙速な結論は出せないんではないかというのが私の率直な
感想のまず
前提です、
議論の
前提ということで理解していただければと思っております。
第二点は、今後も
政策金融は必要かという点について言うと、長期的な
日本の
経済の
動向ということを予想した場合に、これは
ペーパーでいえば七ページに相当するんですが、
競争激化による
ダンピング競争、こういったものがもたらす例えば
過剰投資。それから第二点としては、
リスク対応型プライシングが、これはなかなか実は浸透していないんですけれ
ども、浸透した場合に発生するであろう
金利格差。それから、
審査の
機械化ということが浸透した場合に生じるであろう
交渉余地の欠如。あるいは、
地域金融機関の
経営上の
格差というものがもたらす
地域間格差という問題。
企業サイドから見れば、
事業承継というのがこれから潜在的に非常に大きくなってくると思いますけれ
ども、その
事業承継の失敗による廃業の増大と。
こういった問題というのは、単純に予測しても非常に大きな問題として出てくるんではないかということが予想されるわけですけれ
ども、これらに果たして先ほどの
イノベーションというのが十全に対応できるんだろうかということですね。この点についてのやはり詳細なる
説明がいま
一つ足りないんではないかというのが率直な
感想です。したがいまして、それらを踏まえた上で、今回の
政策金融の
統合ということについては多少の
検証が必要ではないかというのが私の
認識です。
もちろん、では
政策の
改革が必要ないのかというと、これについては、私も必要であるということについては全く異論がありません。なぜ必要なのかというと、それは
縮小ということが
前提なのではなくて、いわゆる
業務の
見直しということがやはり
有効性ということを担保するためにはこれはもう適宜行っていかなければいけないということですね。この点に尽きるというふうに思います。
その
意味でいうと、今の現状の
組織を分けた状態でそれぞれ
業務の
見直しというのは非常に困難であるというのは、これは否めない
部分だというふうに思います。つまり、
組織のそれぞれのセクショナリズムということで、やはり
組織の存続が
目的になるという
部分がどうしても全面的には排除できない以上は、ある程度
統合ということを契機にしながら
業務の
見直しを行うということ、この点において今回の
改革というのは、その
意味においては私も全面的に支持をしたいというふうに思っております。
問題はその
中身ということになるわけですけれ
ども、その
中身ということについて少しこの後半、
議論をさせていただければと思うんですけれ
ども、
改革というのは正に今世界でもう共通に起こっている話で、その限りにおいては
日本の
改革も粛々と進めていただきたいというふうに思っております。
ただし、注意をしなければいけないのは、他国の
状況を見たときに、例えば例として
カナダ、
ドイツ、
フランスを挙げさせていただいているんですけれ
ども、これらの国々の
改革というのもここ数年急ピッチに行われているんですけれ
ども、必ずしも
縮小が
前提ではないという点ですね。ここを十分に理解をした上で
改革を進めていくことが大切だろうというふうに思っております。
改革の
内容という点について少し
コメントをさせていただきたいと思うんですけれ
ども、
改革の
内容について、タイミングは、今申しましたように、私はこの時点において
統合を進めるということについては基本的に
賛成だという点。
第二点としては、
政策金融の位置
付けとして、
民業補完とそして
緊急対応と
セーフティーネットという
部分が強調されたという点についても大いに
賛成できるというふうに思っております。それ以外については、
市場育成、これは
証券化を指しているんですけれ
ども、この点についても大いに
賛成だということ。ただし、もう
一つ、先ほどの
地域間格差という点からいえば、実はこの
政策金融自体が
所得配分、
所得の再分配という
部分の
政策の代替的な
機能を果たすという
可能性もあるということは、今後
是非検討をしていただければというふうに思っております。
第三点目の
業務の在り方という点につきましては、
業務の
内容についてはこれから個々
検討していくことが必要だというふうに思うんですけれ
ども、余りにその
縮小という
部分を強調する
必要性はないんだろうというのが私の
認識です。
縮小というのは、結果として
縮小することもあるかもしれないけれ
ども、場合によっては拡大の
方向に走るということも当然あり得る。それだけやっぱり
経済はダイナミックに動いておりますので、ダイナミックに動けば動くほど
縮小を
前提にするというのは、どうもこれは
論理矛盾ではないかというのが私の見解でございます。これについては
附帯決議というのが今回添付されておりますので、その範囲内でこの
業務については適宜
見直しをしていくということを
是非やっていただきたいというのが私の
意見です。
一般貸
付けの
廃止ということについても大きな
議論になっているんですけれ
ども、
一般貸
付けの
廃止についても、私は
前提としては
一般貸
付けというのは
廃止していくというのはさして問題はないと。もちろん、それによって
縮小を
前提にしているんだと問題ですけれ
ども、
一般貸
付けを
廃止することでむしろ
政策の
目的を明確にすることでその
有効性を適宜
評価していくということが、この
統合後には一番求められる
ポイントだろうというのが私の
認識です。
さらに、
統合ということの期待されている
ポイントとして
シナジー効果ということがよく
議論されているようですけれ
ども、その
シナジー効果ということが本当にあるのかということについても、実はここも十分に
検証がされているとはちょっと言い難いなというのが私の正直な印象です。
シナジー効果ではもちろん
間接部門の
共有化というのは図られるだろうけれ
ども、問題はその
業務間の
シナジー効果ということなんですけれ
ども、実はこの
シナジー効果に関しては、欧米の
ケースなんかを見ても、必ずしもこの
シナジー効果が発揮されているかどうかということについてはやや疑問なしと言えないんではないかなというふうに思っております。
とりわけ
日本の各
機関の
動向というのを見ると、やはり私も
現場の方で見ていましたけれ
ども、
現場の
方々の動きというのを見ていると相当
専門性が高いという
部分がありますので、これらの
専門性というのを生かしていくということでいえば、むしろ
業務の
シナジーというよりは、
独立性を担保しながら
お互いの共有できる
部分を探し合っていくというような
視点の方がむしろ
効果が発揮できるんではないかというのが私の
意見としてあります。
実際に
海外の
事例なんかを見ても、
海外でも実はいろんな形で
統合が行われていますので、どういう形で
統合が行われているのかというと、
カナダの
ケース、
ドイツ、
フランス、フィンランドの
ケースで、
ドイツは
持ち株ではないですけれ
ども、それ以外についてはほぼ
持ち株会社ないしは
子会社化をしてそれぞれの
専門性を担保するようにしていると。むしろ
独立性を非常に確保して、
独立性を確保することによってむしろそれぞれの
有効性を発揮していくというような
方向性が非常に強いんではないかなというふうに思っております。その
意味でいうと、場合によっては、これは
法律の
見直しが必要なわけですけれ
ども、
持ち株会社の
導入によるそれぞれの
専門性の発揮という
視点というのが、いずれどの段階かでは
検討が必要になろうというふうに考えております。
今後の具体的な
課題という点で幾つか
コメントをさせていただきますと、
ガバナンス体制というのが第一点にあるかと思うんですけれ
ども、
ガバナンス体制に関して言えば、これはもちろん
株式会社ということでの基本的な
内部監査をきっちりとやっていくという、セルフガバナンスというのを徹底させる、これはもう
議論の
余地はないというふうに思うんですけれ
ども、もう一点としては、やはり
公共性という概念から、いわゆる
第三者機関における
外部チェックということで、いわゆるその
公共性における
有効性の
効果の
評価、
効果に対する
評価というのを十分にやっていくことが必要だろうと。もちろん、この際の
組織的なその
中身について、構成については様々な
議論があるでしょうけれ
ども、その
前提としてはやはり
第三者機関の
必要性というのが当然認められると。事実、
海外事例等に依存しましても、それらの
第三者機関というのがきっちりと確保され、そして
相互チェックというのが行われているという
状況でございます。
さらに、重要な
ポイントとして言うと、いわゆる
政策評価の実施というのが今後の重大な
課題になってくると思うんですけれ
ども、実はこれはもう既に各個別の
機関ごとに
政策評価が実施されているわけですけれ
ども、これらの基準をどういうふうにしていくのかというのは非常に大きな
ポイントだろうというふうに私は
認識しております。
これは、
数値目標を立てるかどうかというのは
一つの
議論の
ポイントですけれ
ども、
数値目標というのはやはり
目標値ですから、いわゆる
政策目標としてこういう
目標があって、それに対してこのくらいの
パフォーマンスを期待したいというような、その
意味での
数値目標というのはこれは立てるべきだというふうに思っております。もちろん、その
数値目標自体が
ノルマという形に化してしまって、その
ノルマが無駄な
支援を引き出し、
民業を圧迫していくという、こういう問題を引き起こしてはいけませんので、その点においては、その
数値目標というのは
ノルマではないという
部分の確認は十分に必要だろうというふうに思っております。
さらに、その
政策評価において一番重要なのは、いわゆる
民間ではないわけですから、いわゆる即座なその
効果というよりは、やはり
中小企業が特有に持っているその特性というのを生かしながら、やはり時間を掛けて育てていくという
視点ですね、この
視点についての
評価というのが非常に必要だろうと。私
自身も個人的にこういう
評価というものについて考えてはいるんですけれ
ども、やはり時間を掛けながらその
企業を育てていくという点については、いわゆる
政府系金融機関の方が
民間金融機関よりも正直言うとやはり高い
パフォーマンスを上げているというふうに言っていいんではないかというふうに思っております。
その他、やっぱり
評価については、定性的な
部分での
成功事例、ベストプラクティスみたいなものを適宜
評価をしながら、いわゆる
数値の増分だけではない、その定性的な
部分での
評価というものを
是非ともこの中では取り入れていただきたいというふうに私は思っております。
さらに、今後の
課題として何点か挙げさせていただきたいと思うんですが、当然、
株式会社という形になっていく以上は
採算管理、
リスク管理体制の
強化というのが必要になるかと思うんですけれ
ども、その限りでは、やはり
信用リスク評価モデルを構築し、
管理会計みたいなものを
導入していくということが当然必要になってくるだろうと。これについても、恐らくもう
個々金融機関、各
組織はもう
検討を始めていると思うんですけれ
ども、これをどういうふうに
管理会計システム等についての
統合を図っていくかということについてはかなり難航が予想されますので、これについての
専門委員会というものを早く立ち上げることで、こういったところについての
事務、それこそ
間接コストの
シナジー効果を上げるためにはこういったところの
整備が必要だろうというのが第一点です。
それから第二点としては、
金利設定の方法の
柔軟化ということで、当然、
株式会社という
視点に変わっていきますので、その限りでは、ある程度その
リスクを対応して
プライシングという
導入もどこかで必要になってくるだろうというふうに思っております。その際には、当然、低利という
政策金融の
意義というものを生かすためには、場合によっては
利子補給制度との組合せということを
検討することで、
リスク対応型プライシング等を
前提にしながらも
利子補給を組み合わせていくということで
支援の
効果を上げていくという、こういった方式の
検討も必要だろうというふうに思っております。
さらに、もう一点として言えば、非
金利収入の
検討ということも必要で、これは
カナダのBDCなんかはそうしているわけですけれ
ども、いわゆるその
コンサルティング部門、
中小企業金融公庫なんかが持っている非常に高い
相談機能というのがあるわけですけれ
ども、それらの
相談機能というものを
情報提供型から提案型に変えていくということも非常に
検討の
余地があるというふうに私は考えております。その
意味では、これらについてのいわゆる
手数料収入というものをどういうふうに考えるのかということも今後の
検討課題として挙げる
必要性があるだろうというふうに思っております。
さらに、
最後に
地域との
連携強化ということについて述べさせていただきたいと思うんですが、これからやはり
政府系金融機関という形で新しい体系に変わっていく以上は、やはり
地域との
連携でどうやってその
地域間格差を是正していくのかということに貢献するということが非常に求められると思うんですね。その点でいえば、やはり
地域の
商工会、
地域金融機関、地方の自治体との
連携を図ることで、その
コーディネート役の拠点をこの
政府系金融機関というのは
是非担っていただきたいというのが私の
意見です。
更に言えば、
地域金融機関に対する
ノウハウの移転ということを
是非、その
協調体制、
連携体制を取ることで、
お互いが競合するんではなくて
補完的に
お互いの
ノウハウを改善していくというような、そういう
体制づくりをしていくことが必要だろうというのが
最後に述べさしていただきたい
ポイントでございます。
時間が来ましたので、私の
ポイントとしてはこの点で一応終わらさしていただきたいと思います。