○
参考人(
河内山哲朗君) 冒頭、ちょっとごあいさつだけ申し上げます。
常日ごろからの
地方行政あるいは大変難しい
財政の問題等々、
先生方には大変お力添えをいただいておりますことを
感謝を申し上げたいと思います。このような
意見の陳述の
機会をいただきましたことを御礼を申し上げたいと思います。
今日は羽田空港が濃霧で着陸ができませんで、随分いらいらいたしましたけど、
片山先生がもうお話しになって、その後に話すのは何となくパンチもないし、論点ももうみんな言われていると思いますけれども、全然お話を聞かずにお話しさせていただくんで、大変ダブってしまうようなことがあるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。
それでは、座ってお話をさせていただきます。
私は
平成五年に
山口県の柳井というところの市長になりまして、今もう十四年
たちました。なりましたときは三十四歳で、随分若くして市長になりまして、それから今日に至っておりますけれども、この十四年間というものを考えてみますと、私自身の市長としての経験だけで申し上げましても、やはり
地方は
分権の方向には行き始めておりました。
平成五年に衆参両院で
地方分権に関する国会の決議が行われましたけれども、
地方分権の方向に進みつつありましたけれども、やはり日本の国というのは、中央と
地方、かなり協調して政策を実施をしておりますので、
分権の方向には行きつつありますけれども、かなり国の意向とか国の施策に
地方公共団体、
地方自治体は連動して
仕事をしてきた、そういうつもりはございます。
今日のテーマでございます
健全化に関する
法律の幾つかのポイントについて申し上げたいと思いますが、そういう国とお付き合いをしてきた
地方自治体の立場からしますと、まず申し上げたいのは、やはり過去非常に
財政出動を余儀なくされた時期に、
全国の
地方自治体、
全国の都市は
借金の積み上げを行っております。このことについての落とし前というのをちゃんと付けずに、事後ルールでいろんな指標を持ち出されるということは、若干我々としてはいかがなものかということはございます。
もちろん国も
地方も
財政の
健全化を図らなきゃならない、あるいは
財政を再建をしなけりゃならないという一大方向については一致をしているわけですけれども、
片山先生のお話にも若干関係あるかもしれませんけれども、本来的にはやはり
分権の
時代に
財政を
健全化するというのは首長であり
議会であり、最終的には
納税者、有権者が、我が
自治体、我が市は少し経常収支の比率が高まっているんならこうこうこういう改革をすべきではないかということを、あるいは
起債の
残高が積み上がっていれば、今後はやっぱりプライマリーバランスを早く取るようにすべきだというのは、
地方自治体が自らの判断と自らの
責任でまさしく自ら律するという方の自律的に
健全化を行うのがやはり筋だと思っております。
しかしながら一方で、我々も反省をしなきゃなりませんのですが、分かりやすく自らの
財政の
状況をこれまで市民に、あるいはひょっとすると
議会に、我々首長あるいはいわゆる執行権を持つ者は示してきたか、
情報を分かりやすく開示をしてきたかということになりますと、これはいささかちょっと自信がないところがあります。
これまでは、我々の
財政が健全かどうか、あるいはどういう
状況にあるかというのは、これは収支がどうなっているかという黒字か赤字かという数字と、それから公債費比率であるとか
起債制限比率という数字と、それから先ほど言いました経常収支の比率がどうかとこの三つぐらいで、我が
財政はどうであるかというのは判断をしていただくために
情報開示していましたけれども、これはなかなか
議会の方でも本当にどのぐらいが健全性の限界なのかというふうなことについては、なかなかはっきりした目標値にはなっていなかったんだろうと思います。
したがいまして、今回いろいろと
法律の中で書かれている新たな指標というのが出てくること自体については、我々も、その指標が内部的には昨年に比べて今年は良くなったのかとか、あるいは十年前に比べてどう変わっていくのかという意味では非常に有効な数値の目標だと思っております。
しかし、先ほども申し上げましたように、これをどこからか急にとやかく言われるというようなものではなくて、やっぱり自律的にやるべきだということはやっぱり大事な点ではないかと。これがやはり自己
責任、自己決定、そして最終的には自らがその
健全化というものを果たすことによって、市民や有権者、
納税者に迷惑を掛けずに行政運営をしていくという、そういう
時代だと思います。
それが一点と、それからもう一点申し上げたいことは、
自治体にはやはりそれぞれ特殊要因というのがございます。現在の
財政の指標、
内容、あるいは今度示される指標というものは、過去に行ったその特殊要因の結果が数字として現れているわけでございます。
具体的に二、三申し上げますが、例えば
平成の大合併で
全国の
自治体は数が千八百程度に再編をされました。私のところは、小規模合併、一市一町合併ということでございますんで、さほど今から申し上げることが特に目立っているわけじゃございませんが、例えば
山口県内で市長会でいろいろと議論しますと、例えば萩市というのは本当に面積が広くなりました。
一つの萩市と周りの町や村、合併をしました。そうしますと、過去、これ例えば
山口市も全く同様なんですけれども、過去、過疎債であるとか、あるいはかなり手厚く町村についてはやはりいろんな
財政措置がされてきたこと、これは手厚くされていますけれども、キャッシュで
財政措置がされているものもあれば、今回正に問題となっております
起債で
財政措置を、
財政というか、応援していたこともございます。
とりわけ、この
起債で様々な応援をしてきたことが合併によって新しく誕生した
自治体としましては、これはどこが
中心ということもないんですけれども、一挙に、全体として見ると、今までは何とか成り立っていたものが一遍に、今回示されるような連結実質収支であるとか、あるいはなかなか難しい概念でございますが、将来負担がどんと大きくなる、これが特殊要因の
一つです。ですから、合併という非常に国を挙げて進めてきたことについて協力をしてかなり頑張ったところというのは、全部とは言いませんが、周辺部を合併したところはかなり
財政が悪くなっているというようなことがございます。これは特殊要因の
一つでございます。
それから、我が市のことを
一つだけ申し上げますと、今私のところは実質公債費比率が一八%を若干超えておりますので、優等生ではございません。この一八%というもののうちの私は三ないしは四ポイント、ですから、三か四引いたものが、特殊要因がなければ私どもの実質公債費比率ではないかと思っているんです。
その三ポイント、四ポイントというのは何かといいますと、私どもの
地域は昔から干ばつ常襲地帯でございまして、温暖多日照なんですが、雨が降りません。それから、河川が非常に短くて流域がないということで、常に夏は水不足の苦労をしてまいりました。
平成十年に広域水道事業というのが完成をいたしまして、我々は今、今年はちょっと危ないかもしれませんが、水不足の心配はほとんど飲み水ではしなくて済むようになりました。これは市民にとっては非常に良かったことなんですが、広域水道事業ですから、柳井市を含めた当時一市九町で始めた事業ですが、柳井市の負担割合は約四割程度ありますが、総事業費でいいますと約六百億円ぐらいの大事業を行いました。実は
山口県の水ではなくて、
山口県と広島県の県境に流れている小瀬川というところの水、弥栄ダムで受け止めた水を我々は供給を受けております。
ただ、その事業の
内容たるや、三十キロ水を引っ張ってきます、導水をします。三十キロのうちの二十キロはトンネルです。それから、広域水道事業ですから、構成する町の隅々まで水を配っていきますけれども、その送水の距離が約百キロございます。したがって、本来は市町村の事務として描かれている水道事業というのはそこまで大規模なものは想定をしていない。水源というのはそんなに遠くにはないだろうということで水道の事業の前提としてあると思いますけれども、これだけ大きな事業をやりますと、やっぱり実質公債費比率でいうとかなり引き上げるようになります。
したがって、こういうふうに特殊要因というのは
一つ一つ挙げていきますと切りはございませんが、そういうものが加味されずに
一つの指標だけで市や町の
財政というものを決め付けるというのは若干疑問が残ると。したがって、これは今から政令等で示されるものになるわけでございますが、そういうことが十分に加味されたような考え方が取られないといけないのではないかと思います。
時間がなくなりましたので最後に申し上げたいと思いますが、今後導入をされます連結実質収支比率の中に入ってきますのは、国保会計、介護保険、あるいは病院、下水道等々、市民にとっては非常に大事なものでありますけれども、構造的になかなか黒字にならない事業がたくさんこの中へ入ってまいります。
私は
全国市長会の国保の対策の特別
委員長をずっと務めて最近おりますけれども、医療制度改革が今行われておりますが、
国民健康保険に関してだけ申し上げますと、
全国の数字を積み上げますと、一般会計からの繰入金は最近の数字では大体毎年一兆円を超える繰入れを行っているわけですね。これは赤字だとか黒字だとか、交付税で措置されているとか、いろんな理屈はありますけれども、もう実質的に見た目というか、数字上は一般会計から常にそれだけ繰入れをしなければ運営ができない。それでも赤字の国保はたくさんございます。そういう意味では、構造的に医療保険制度のというか国保の
問題点が克服されない限り、連結実質収支比率に入ってくる数字というのは
全国的に悪い数字がたくさん出てくると思います。したがって、これは国保だけではございません。
それから、長年にわたって様々な交付税措置というのがいろんなことをされてきましたけれども、その交付税措置で積み上がってきたものも含めて、いわゆる
地方財政を支えているものや
地方財政が支出を余儀なくされているもの自体の構造の改革を行わない限り、こういう収支の比率を幾ら出しても私は改善はすることはなくて、逆に改善をしようとしたら、一時期
夕張市の事例でそういうことが起こりそうになりましたけれども、
財政は
健全化できたけれども、町は再建できないというようなことにもなりかねない。それはもうひいてはやっぱり市民の生活や、あるいはイコール国民ですが、国民生活というものをやっぱり不安定にすることになってしまうと。
そういうことで言いますと、
地方財政だけをターゲットにして今
法律が作られておりますけれども、よく市長会で市長仲間で話をするんですけれども、国の
財政健全化法というのをまず作って、それをまずやってもらって、それと同時に
地方の方もやるというぐらいでないと、どうも余り、分かりましたというわけにいきませんねというのが本音としてございます。そんなことも全部加味して
法律案の審議が今されていると思いますけれども、是非、
地方財政自体の指標を幾ら示しましても、中身をとにかく改革を急いでやらないと、同時にやらないといけないということを市長という立場から感じておりますので、お話を申し上げた次第でございます。
今後とも、先ほど言いましたように、政令等で定められる項目がたくさんあると思いますので、当
委員会の
先生方にはしっかり
地方の
実態、実情というものを踏まえられて、いいものになるように是非御
努力を引き続き
お願いをしたいと思います。
以上で
意見の陳述を終わります。ありがとうございました。