○
参考人(
鈴木満君)
食品リサイクル法の
改正に当たりまして
意見を述べる機会を与えられたことに感謝をいたします。
私は、自治労連現業
評議会清掃委員会の
委員長をしております
鈴木満といいます。仕事は所沢市の東部クリーンセンターに勤務している所沢市の職員です。
私
たち清掃
委員会では、地球環境問題をベースにして、自治体の清掃行政を考えています。地球環境を守ることが
地域の生活環境を守ることであり、最大の市民サービスだと思っています。
食品リサイクル法改正に当たっても、環境問題をベースにして
意見を述べさせていただきます。
まず、今回の法
改正の大きな主眼の
一つは熱回収ではないかと思っております。
熱回収と一くくりにすると大変誤解を生みやすいものです。熱回収には、
バイオマスによるバイオエタノール化、バイオディーゼル化、
メタン発酵によるガス利用といった
ガス化型の
エネルギー回収と直接焼却による熱源利用の二つがありますが、
ガス化型の熱回収は大いに推進すべきであると思います。しかし、直接焼却による熱回収というのは、
食品循環資源の
再生利用の
促進という法
改正の趣旨には矛盾するもので、認めるべきではないと考えています。
なぜなら、
食品自体は自燃するカロリーは持っておりません。自燃というのは自分の力で燃えるということでありまして、要するに
食品廃棄物を燃やすためには重油、灯油、都市ガスなどを助燃剤として燃やさなければ燃えないということであります。ですから、直接焼却を熱回収と言うことは成り立ちません。少なくとも、
食品廃棄物はこれまで
堆肥化やえさ化、バイオ
ガス化による熱回収などの
方法で再利用されて、焼却処理による熱回収は
再生利用の手法から外されてきました。それは、
技術的には十分
資源化に対応できるということからです。今回の法
改正ではこの二つが
一緒に扱われており、明確ではないということをまず指摘しておきます。
一般廃棄物は年間約五千万トンで、このうち七六%ほどが自治体の焼却炉で焼却されています。五千万トンのうち、三〇%から四〇%は
事業系廃棄物とも言われています。所沢市では、年間約十二万トンのうち三四%に当たる四万一千トンが直接許可業者等によってクリーンセンターに持ち込まれている
ごみです。そのほかにも、一般市民
ごみと
一緒に集積所に出される
事業系もあると思われる
ごみも
相当あるかと思います。
許可業者によってクリーンセンターに直接持ち込まれる
事業系ごみの中には、
食品廃棄物も
相当な量が含まれています。スーパーやコンビニエンスストア等の
商品の売れ残りばかりでなく、
食品加工業者から排出される
食品廃棄物も多く持ち込まれています。野菜くず、パンくず、豆腐のおからや、時には売れ残った大量の野菜、ニンジン、ネギなど
段ボール箱ごとパレットで持ち込まれることもありました。多くの自治体の現場から同様な話を聞いています。
所沢市では、
事業系の可燃
ごみとして十キロ当たり百五十円、トン一万五千円で受けています。所沢市の近郊でも、多少の差はあっても同様な処理手数料となっています。そういう料金体系の中で、
事業系廃棄物は
事業者責任としながらも、自治体の焼却炉には多くの
事業系廃棄物が持ち込まれているのが現状であります。熱回収の中身をあいまいにしたまま法案を認めれば、一層
事業系食品廃棄物が自治体の焼却炉に集中することが危惧されます。
事業者は、トン当たり一万五千円の処理手数料ですから、
食品残渣を
分別し
堆肥化するより圧倒的に処理経費は安く付きます。
堆肥化した後のことまで考えなくてもよいということもあります。
いずれにしても、焼却処理手数料を払ってしまえばそれで責任を果たしたことになってしまうからです。現在、再生に回っているものまで発電という熱回収を名目に焼却に走る事態が危惧されています。
事業系廃棄物は
事業者が責任を持って処理することは
廃棄物処理法でも定められた大原則です。
しかし、
事業系ごみが自治体の施設に持ち込まれることによって、自治体は大きな処理能力を持つ施設を確保し、維持しなければならなくなりますから、
ごみ処理基本計画まで見直すことも出てきます。結果的に自治体の施設に持ち込むことによって
事業者責任を自治体責任へと転嫁することになってしまいます。これでは自治体の
ごみ減量化計画に水を差すことになってしまいます。
事業系生
ごみを可燃
ごみという名目で自治体の施設に持ち込まれないようにしていただきたい。
次に、
発生抑制という点から。将来、地球温暖化により世界の穀物生産量は急激に低下すると言われています。少ない食料を世界の人口で分け合うことになりますから、国際的な食料事情を踏まえた
視点も入れる必要があります。具体的には、できるだけ無駄な
食品廃棄物を
発生させないということで、
食品リサイクル法では第一条の目的において
発生抑制とうたわれていますが、具体的な条文がありません。今回の法
改正で
報告制度を義務付けるとしていますが、
発生抑制を位置付けた
減量計画の作成や、計画どおりに実行しているかフォローアップを行うなど、実効性のある
報告制度にすべきと考えます。
法が施行されて五年経過して、
食品リサイクルの
取組がなかなか進まないという背景として、経費が掛かる問題や異物混入のリスクが言われています。経費問題では、
商品化された
食品がほとんどパッケージされておりますから、それを
分別して
リサイクルにするというのはだれしもが手間暇が掛かる、大変であるということは分かります。
しかし、一方では地球温暖化問題は深刻な事態を迎えており、
京都議定書で約束した温室効果ガス排出量のマイナス六%をどうして達成するか、日本にとっても大きな課題であります。今回の
改正では、せっかく固定化された炭素を更に助燃剤の炭素を加えて二酸化炭素として大気に放出されるわけですから、こんな大きな矛盾はありません。
事業者サイドからすれば、経費削減のためにできるだけ一括で処理できる焼却を望んでいるかもしれませんが、地球環境問題を前にこうしたことは許されません。ましてや、人手さえ掛ければ
技術的に難しいことは全くありません。むしろ、
廃棄物処理に対する経費を惜しむ
企業体質あるいは
社会事情が問題だと思います。この問題は地球温暖化を前にして
事業者が超えなければならない
社会的責任があると考えます。
私は、この四月からISO14001番の環境マネジメント
システムの担当になりました。自治体は、地球環境のために小まめな消灯やガスの節約、節水に気を遣っています。そして、コピー用紙一枚でも節約し、
廃棄物を減らしたり温暖化ガスを減らす努力をしています。そして、数字的に結果を残さなくてはならないということで苦労しています。こうした活動が温暖化の速度を緩めることであることはだれしもが認めるところであります。
こうして大変な思いをして温室効果抑制を図っている一方で、
技術的対応可能なものまで
事業者の経費節減のために焼却処理を認めることは、そうした
取組に水を差すものにほかなりません。
異物混入の問題は、
再生利用の安全性を確保する上でも重要です。そのためには、排出する段階で
分別することが最も効果的、効率的です。例えば、
食品廃棄物を三ランクに分類し、第一の分類では調理前の野菜くずなど、第二の分類は調理後で異物なし、第三は異物混入のおそれがあるものとして、第一、第二の分類はえさ化や
堆肥に、第三はバイオガスなど、用途分けをしたらどうかと思います。産業別分類が分かりやすいかもしれません。
各地で
堆肥化施設を造って実践されているところも多く出てきましたが、
堆肥にしたけれど、なかなか利用先が近郊にないということで苦労されているところもあるようです。しかし、安全で良質な
堆肥は人気があります。安全性を高める
システムづくりも念頭に置いた法の枠組みが必要です。
最後に、日本は食料の大きな割合を海外から輸入しています。そして、残った
食品廃棄物やし尿、汚泥を国内で処分してきました。一方海外では、土壌の流出や温暖化による乾燥で砂漠化が広がっています。日本の有機性
廃棄物やし尿汚泥
堆肥、自治体で
相当の量が焼却されている樹木の伐採の枝葉を焼却しないで
堆肥化して、砂漠の緑化につなげられないかと考えています。異物の混入や油分、塩分、あるいは種子の混入などのリスクもありますが、最
優先されるべきは、地球上の緑地を広げ、木を植え、大気中の二酸化炭素の固定化が最
優先されるべきだと考えます。これが可能であれば、無限に
堆肥化は進めることができます。
地球上から森林が消失していく中で、有機性
廃棄物は基本的に大地に戻す、そのことが私
たちが目指す循環型
社会ではないでしょうか。
以上、自分が清掃の現場に三十年携わった
ごみ問題と環境問題の最終結論であります。
終わります。