○小池
公述人 ただいま御紹介いただきました、私、
大阪商工会議所の副会頭をしております小池俊二でございます。
きょうは、私からは、中小
企業に関する問題について申し上げたいと思います。
第一に、来年度
中小企業対策予算の件、それから来年度税制改正の件、
政府系金融機関
改革についての問題、
人材確保支援の問題、
経済成長戦略大綱関連三法案の問題、この五点に絞って申し上げたいと思います。
中小
企業問題は非常に多岐にわたりますので、
予算的な視点から見ても大変問題が多いわけでございますが、きょうはこの五点に絞って申し上げたいと思います。
まず、
平成十九年度、来年度
中小企業対策予算の件でございますけれども、まず第一に、このような緊縮基調の
予算の中で、
中小企業対策予算、
政府全体で千六百二十五億円、〇・六%、それからまた、
経済産業省分で千二百四十五億円、三・四%前年を上回る
予算を確保していただいたことをまず感謝申し上げたいと存じます。
課題として、ただ、中小
企業予算は、
平成十九年度
政府予算全体、一般歳出でございますが、このわずか〇・三五%にすぎず、その規模は
余りにも小さいと言うほかございません。
中小
企業は、
企業全体の九九・七%、常用
雇用者の七一%を占めるなど、我が国
経済において中心的な役割を果たしております。地域
経済の再生あるいは
日本経済の活性化を図るためには、多様で活力のある中小
企業の
成長、発展が不可欠であることは御承知のとおりだと思います。この点について
政府内でも我々と認識を共有していただいて、今後とも
予算額の十分かつ安定的な確保をお願いしたい、こういうふうに思っております。
消費の回復が当面我が国
経済の
最大の課題でございますけれども、このことは、やはり七一%の
雇用を占める中小
企業の肩にかかっておりますので、そういう意味で今のようなことを申し上げた次第でございます。
二番目でございますが、来年度、
平成十九年度の税制改正の問題でございます。
税制改正については、まず、成果として、資本金一億円以下の中小
企業法人の同族法人の留保金課税を撤廃していただいた、これは
評価したいところでございます。この問題については、大変長い期間の私どもの要望でもございました。ようやくこれが実現したということでございます。
また、減価償却制度についても、法定耐用年数を全額償却できるようにしていただいたこと、これも、私ども中小
企業がこれから攻めの
経営に転じようとしているときでございますので、大変必要なことであったというふうに思っている次第でございます。
ここらの問題につきまして、別紙に
参考資料としてデータをそれぞれ項目ごとに記載しております。それをまた
参考としてごらんいただければというふうに思っております。
課題として、この機会にお願いしたいことは、特に事業承継税制の件でございます。
事業承継については、小規模宅地等の課税の特例だとか取引相場のない株式の相続税
評価の減額等につきまして減額措置を講じられましたことでございますが、必ずしもまだ十分ではないというふうに思っております。
中小
企業の
経営が安定するためには、円滑な事業承継が不可欠でございます。中小
企業の事業承継は単に
経営者の私的な相続ではなく、スムーズなバトンタッチが阻害されると、従業員あるいは取引先、特に地域
社会への重大な影響を及ぼすことになります。ひいては我が国
経済の活力がそがれることにもなるわけでございます。
高度
成長期に創設された中小
企業の多くが、今現在、
世代交代を迎えている時期でございます。ぜひとも、財産の相続ではなく、事業の存続という視点、観点に立って制度を抜本的に見直していただきたい。具体的には、事業用資産の相続については、
欧米諸国で導入されている減免措置に準じた制度を講じていただきたいというふうに思って、
参考資料にも記載しております。
以上が、税制改正の問題でございます。
それから、特に重要なのは
政府系金融機関の
改革の問題でございます。
中小
企業にとっては、命綱は金融でございます。大
企業の場合は市場から資金を調達できますけれども、中小
企業の場合は銀行の借り入れによって資本を維持している。借り入れが疑似資本的な性格もございます。したがって、生命線は金融でございます。
まず第一に、商工中金について申し上げますと、
政府系金融
改革について、商工中金については次の点を成果として
評価したいと思います。
新体制が、引き続き、中小
企業団体とその構成員に対する金融の円滑化を目的とするものであることということが明らかにされております。二番目に、特別準備金が、自己資本の充実等財務内容の健全性の確保に資するものとして設計されていることでございます。三番目に、金融債がこれまでと同様に発行できるような措置がなされていること。四番目に、完全民営化に当たっても、
政府が中小
企業団体とその構成員に対する金融の根幹が維持されるよう必要な措置を講じる旨規定されていることでございます。
商工中金は、
一つの
政府施策を実行してくる協同組合を組織して、それからまた、その構成員に対する融資をしてきたわけでございます。そういう意味で、以上の点は私どもとしては高く
評価しているわけでございます。
しかし、課題も残っております。一方で中小
企業にとって不安な点が二点ございます。この点について要望したいと思っております。
特別準備金が財務内容の健全性の確保に資するものとして設計されたものの、その額については明確に示されておりません。新体制の業務運営等に支障が生じないよう、特別準備金の金額を適切に確保していただきたいというふうに思います。
二番目に、商工中金の株主は
政府と中小
企業団体とその構成員に限定されていますので、
政府が保有株式を放出すると、かわって中小
企業団体や中小
企業が取得しなければならないわけでございます。これは当然でございますけれども、中小
企業団体や中小
企業が、大変財政面で苦労もしておりますので、無理なく取得できるよう、
政府株式の処分に当たっては、時期や金額について適切に検討していただきたいということでございます。
そのほか細かい問題はございますが、主な点は以上のとおりでございます。
それから、中小
企業金融公庫の問題でございます。
中小
企業金融公庫は、来年十月に、国民
生活金融公庫などとともに
株式会社日本政策金融公庫に統合されることが決まっておりますけれども、中小公庫は、民間金融機関では対応困難な
長期のリスクマネーを供給してきていただいた実績がございます。中堅・中小
企業にとって大変頼りになる金融機関であったことは事実でございます。今後、
改革に際して、果たして、今まで中小金融公庫が実施してきた金融措置を地域の民間金融機関が十分引き受けて果たし得るかどうか懸念しているところでございますので、その視点からも十分検討していただきたいというふうに思っている次第でございます。
次に、
政府系金融機関全般の問題でございます。
今申し上げた国民公庫、農林公庫、中小公庫及び国際協力銀行を統合して、
株式会社日本政策金融公庫が設立されることになっておりますが、中小
企業者の資金調達を支援する
政策金融機能については、統合によってその必要性が低下しないということを念じている次第でございます。どうか必要な財政基盤をしっかりと行っていただきたい、こう考えているわけでございます。
また、金融危機や災害あるいはテロリズムなど、危機時の対応については、新しい機関は中小
企業者にとって、まさに、先ほど申し上げたとおり命綱でもありますし、またセーフティーネットとして大変重要な役割を担っているわけでございます。新機関法で新たに設けられている危機対応スキームにおいて、今回の
政策金融
改革により対応できなくなった金融を確保したり、これまでどおりのセーフティーネット機能が維持されるよう、危機対応スキームを活用した指定金融機関による中小
企業への資金供給が迅速かつ十分行われるようお願いしたい、こう思っているわけでございます。そのために必要な財政措置について御用意いただきたい、こう考えております。
最後に、これは非常に重要な問題でございますけれども、新機関のトップ人事について、いろいろと問題にされますけれども、私どもは、出身が官であれまた民であれ、優秀な
人材を登用していただくことは極めて重要なことでありますが、さらに、ここで申し上げたいことは、プロパーの職員の登用も選択肢の
一つにして考えていただきたい。それぞれの機関は、長年にわたって、新卒から
雇用し、各地区を足で回って現実を見てきて、ピラミッドの形で体制ができておりますので、大変優秀な
人材が豊富にございます。この
人材を活用していただいて、トップに据えていただく、そのことは、職員の活力、気力を充実させる原因にもなるかというふうに思いますので、特にお願いしたいところでございます。
次に、
人材確保支援について申し上げたいと思います。
中小
企業の
物づくりの
人材の育成、確保の観点から、地域の
産業界、
教育界、行政等が一体になって行う工業高等学校への実践
教育を活用した事業をこのたび創設いただいたことを高く
評価したいというふうに思っております。
景気は全体的には回復基調に乗っております。中小
企業でも新事業展開に向けた採用を強化するところが増加しております。それに加えて、いよいよ二〇〇七年問題を迎え、団塊
世代の大量退職が始まることから、その補充要員への需要も高まっております。
大
企業に比べると、中小
企業における
人材確保は極めて難しい状況に直面していると言えます。目の前の
仕事をするために、中小
企業ではすぐにでも戦力が欲しいというところが大変多いのが現状でございます。
長期の視点に立って
人材育成をしていくことは大変重要なことでございますけれども、
人材確保、このことが今現在
最大の課題となっておりますので、何らかの意味でこの支援をしていただくことが必要ではないかというふうに思っております。
若年層の
人材確保については、今まで、ジョブカフェや商工
会議所などを中心に、職場体験や、あるいは
企業に対して採用力を向上する支援を行ってきているわけでございます。若者と中小
企業のネットワーク構築事業をいろいろな形で進めてきておりますので、さらにこの充実も御支援いただきたい、こう願っております。
さらに、
高齢者が有する経験、技能を活用して、中小・ベンチャー
企業の事業展開を支援するため、現在、
企業OB
人材活用推進事業が展開されております。中小
企業の
人材不足は一層深刻化すると危惧されております。こうした中、少子
高齢化が進む中、
高齢者と中小
企業の縁結びをする事業を
拡大していきたい、また、これについて御協力も願いたいというふうに思っております。
全国ではOB
人材の登録が既に六千二百九十七人、昨年の末でございますけれども、成約ができたのが二千三十八件に上っております。
大阪商工会議所だけでも既に五百四十人の登録が行われておりますし、また、五十一件の成約ができております。これからOB
人材の活用をどう持っていくか、これは、
大阪商工会議所ばかりじゃなくて
日本商工
会議所の課題でもございます。
次に、
経済成長戦略大綱関連三法案でございます。この三法案を成立させていただくということは、これから大変重要な課題だというふうに思っております。
まず第一に、中小
企業地域資源活用促進法でございます。
成果として申し上げたいのは、
全国総合開発計画
時代に、国土の均衡ある発展ということを目的に国主導で進められた画一的な地域振興策にかわって、地域固有の
経営資源に着目した地域の資源を活用するプログラムを推進しようとする中小
企業地域資源活用促進法のねらいというのは、大変時宜を得ているものと私どもは
評価しております。
地方分権が今後進み、道州制がクローズアップされているように、確かに今、
地方が主体的に考え行動する時期を迎えているわけでございますので、こういう法律が非常に大きな役割を果たすものと考えております。
みずから知恵を出して頑張る
地方を重点的に支援して、公共事業に頼らない自立した
地方経済を構築することは、逼迫した国の財政状況を考えて大変急務だというふうに思っております。また、小さくともきらりと光る多様な
産業が
全国に点在しております。特に地域は中小
企業が輝いているところがたくさんございます。我が国の
経済の厚みを増して
競争力を強化する上からも不可欠だと考えております。
この法律は、当初、地域資源として産地の技術や
農林水産品を想定していたものと考えておりましたけれども、大都市でも使える
仕組みになっているということで、当
大阪商工会議所でも大変大きな関心を持ってこれに対処しているわけでございます。
この法律では、地域外市場をねらった新商品の開発、事業化を支援するため、都道府県が振興するべき地域資源を指定した基本構想をまとめることによって成り立つわけでございますが、
大阪商工会議所は、賑わい創出プランということで、
物づくり、それからツーリズム、バイオサイエンス、この三つを重点的に強化していくという運動を既に三年前から展開しておるわけでございます。
そういう意味で、大阪には観光資源がたくさんございますし、また、
物づくりの鋳造だとか鍛造だとかメッキだとか、そういう基盤技術
産業がたくさんございます。それから、
情報家電等の
成長有望
産業に関連する
分野もございますし、バイオ・ライフサイエンスについても大阪は特記すべき実績を持っておりますので、今後、こういうような地域資源を生かして、関西の、大阪の活性化を図っていきたい。ぜひ今回の国会で成立させていただきたい、こう願う次第でございます。
次に、地域
産業活性化法の問題でございます。
地域
産業活性化法も、さきに述べました中小
企業地域資源活用促進法と同様、集積
業種や集積地域など、地域の特性や事情に応じた
企業立地を通じて活性化を促進するというものでございまして、地域本位の
考え方でございますので、大変賛同するところでございます。
企業誘致は地域の
雇用や消費などに大きな
経済効果が見込めるわけでございます。同法では、工場敷地に義務づけられている緑地面積比率の変更や、新規立地に伴う機械や建物の特別償却など、地域挙げて
企業立地に知恵を絞ってくれることになっております。厳しい
国際競争にさらされている中小
企業にとって非常に歓迎すべき法律だというふうに考えております。
また、やや広域に見た
産業政策の面でも、
企業の立地
環境を整えることの意義は大変大きいわけでございます。関西では、兵庫県尼崎市に松下電器
産業株式会社がプラズマディスプレーパネル工場をつくりましたが、これに関連して旭硝子
株式会社が大阪の臨海部に工場を
建設して、ことしの五月からは量産を開始すると聞いております。もともと
企業や
産業は独立では存在し得ず、工場誘致を
戦略的に行えば理想的な連鎖が見込めるものと考えております。ひいては大都市の
産業のあり方を変えていくものと考えるわけでございます。
最後になりましたけれども、
産業活力再生特別措置法の一部改正法について一言申し上げたいと思います。
この法律では、中小
企業再生支援協議会の活動を九年間延長していただくということを高く
評価したいと思います。私も、大阪府中小
企業再生支援協議会の会長をして既に三年有余、
企業再生に取り組んでおりますが、ようやく本格的な再生が軌道に乗ってきた段階でございます。大
企業はほぼ終わったとしても、中小
企業はこれからが本番に入るわけでございますし、再生するわけですから、息の長い努力が必要かというふうに思っております。
銀行の不良債権比率は現在平均二・七%、メガバンクは一・五%、これはもうサービサーにぼかっと売って処理も落ちますので、そこまで減っている。しかし、地域銀行は四・四%、それから信金、信組は六・九%。しかし、こういうふうな不良債権でも、将来、やり方
一つによってはいつでも再生できるという
環境がこの三年間見ていまして十分ございますので、十分な体制の中で腰をおろして再生していく。これは、今後、中小
企業の活力を増強する方策でもございますし、
雇用を確保していく、既に私ども、この
産業再生、要するに
企業再生によって七万人以上の
雇用を確保しているわけでございます。そういう意味で、今後、こういうふうな特別措置法ができますことを本当に
評価したいというふうに思います。
ちょうど時間になりましたので、私の
公述を終えさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)