○黄川田徹君 民主党の黄川田徹であります。
私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました
政府提出の
農山漁村の
活性化のための
定住等及び
地域間交流の
促進に関する
法律案について
質問をいたします。(
拍手)
まずもって、一昨日の能登半島地震でお亡くなりになられた方の御冥福を申し上げますとともに、被災された
方々の一日も早い御回復をお祈り申し上げます。また、
関係各位の御尽力に敬意を表します。
私は、過去、地震、津波で多くの犠牲が出ました三陸
地方の出身であります。三陸
地方は、三十年以内に九九%の確率で大規模地震が起きると想定されております宮城県沖に隣接しておりますので、本当に人ごとではない、そう思っております。
さて、ふるさとを持つ人も都会で生まれ育った人も、
日本人であればだれでも
農山漁村に対しあこがれの念を抱きます。そんな
農山漁村が荒れなんとしているとき、その
活性化を図ろうとすることに
異議を唱える者はまずいないでしょう。特に、
団塊の
世代の大量退職が始まろうとする今、
都市住民の
農山漁村回帰を後押ししようとする考え自体には、一定の
理解が得られるものと思います。
問題は、この
法律案がどのような背景で提出され、現下の農政をめぐる
情勢のもと、どのような位置づけを有するのかという点であります。
農政をめぐっては、食料自給率の向上、
農業経営の安定方策、
農地制度の見直し、WTO、EPA交渉への対応など、
課題が本当に山積しております。こうした農政の諸
課題に当たられる
農林水産大臣のこの職責たるや、極めて重いものがあります。
しかしながら、このところ
国会では、こうした農政
課題ではなく、
農林水産大臣御自身の政治家としての問題をめぐって疑念を呼び、現在に至るまで、
大臣から、
国民が納得する満足なお答えはいただいておらないと思っております。
政治は、
国民の信頼の上に立ってこそ初めて成り立つものであります。
国民から信頼をいただくためには、透明性の
確保が不可欠であります。私も、ここにおられる同僚
議員も、みずからの政治
活動に伴う事柄について地元で
説明しなければなりません。
農林水産大臣というお立場にあっては、なおさらであります。
農林水産大臣がみずからに向けられた疑念、疑惑への対応に追われていたら、農政の推進は上のそらになってしまいませんか。また、きちんとした
説明をしない態度が、
国民の政治離れ、政治不信をますます加速するでしょう。
天地神明に恥じず、農政を推進していくには、昨今取り上げられているみずからの
事務所費の問題について、
国民にわかりやすく
説明し、疑念を晴らさなければなりません。これが満足にできないようであれば、
説明責任を怠ったのであり、私は、強く辞任を求めます。こんな
状況では、農政推進はおろか、この
法案の
農山漁村の
活性化は不可能でありましょう。
農林水産大臣の真摯な答弁を求めます。
農政をめぐっては、いよいよ
平成十九年産から、天下の悪法、
担い手経営安定新法に基づく品目横断的
経営安定
対策が導入されます。
昨年の通常
国会で、民主党・無所属クラブは対案を提出し、活発に論戦を繰り広げました。あれから一年近くになりますが、四月一日からの品目横断的
経営安定
対策の本格
実施を前に、
農業、
農村現場は混迷の度を深めております。
経営規模で足切りをするという一方的な選別
政策により、
経営規模が小さい農家は、
政策支援の対象とされないことから、一様に
営農意欲を喪失し、
地域全体が元気を失っております。
政府は、みんなで集落
営農組織をつくれば
担い手となることができると猫なで声でささやきかけておりますが、集落
営農を組織化するため、既存の
担い手である認定
農業者から
農地を取り上げようとする貸しはがしの問題が顕在化するなど、各地であつれきが生じております。
本来、
農業、
農村現場は、大規模農家、小規模農家、
経営規模を拡大しようとする農家、規模を縮小しようとする農家など多様な
主体が有機的に結合して成り立っているものであります。こうした
農村地域社会において営々と営まれてきた互助の精神、結いの精神が品目横断的
経営安定
対策の導入の前に失われようとしていることは、与党の皆さんも本当にわかっているでしょう。
これに対し、
政府は、
経営規模要件にも特例が設けられているから切り捨てではないとか、品目横断的
経営安定
対策と車の両輪の
関係となる
農地・水・
環境保全向上
対策を導入するなどと
説明してまいりました。つまり、
政府の
説明によれば、
農山漁村は
活性化する、そういう
理解になってしまいます。
それならば、なぜ今になって、
農山漁村の
活性化を目的としたこの
法律案を提出するのですか。
政府のシナリオどおりに進むのであれば、この
法律案は必要はないと思われます。しかも、この
法律案は定住や
地域間交流の
促進をうたっていますが、その内実は、元気な
地域づくり
交付金など既存の予算
措置を法律補助にしただけの、そういう代物でありまして、何ら新しい発想、新しい物の
考え方、それが何もないわけであります。
今回の
法律案提出は、
政府みずから、品目横断的
経営安定
対策に対する現場の不満、不安におののき、既存の予算
措置を法律補助にするだけの
法律案を急場しのぎでつくってお茶を濁そうとしたものであることは明白であります。これは、
農業、
農村現場を欺く、まやかし以外の何物でもありません。
安倍総理は
地方の
活性化を
内閣の
重要課題として挙げておりますが、もし本気で
地方の
活力なくして国の
活力はないとお考えであるならば、いっそのこと、品目横断的
経営安定
対策の誤りを認め、これを直ちに廃止し、民主党が掲げる戸別所得補償
制度の、
意欲のあるすべての農家を対象とする
制度の導入をこの場で宣言されてはいかがですか。
農林水産大臣の明快な答弁を求めます。
今
国会は、
地域活性化を旗印にした
法律案がメジロ押しであります。九本も出ております。
法律案というものは、たくさん出せばいいというものではありません。
こんな寸劇を耳にいたしました。年老いたお百姓さんが額に汗して農作業にいそしんでいると、
地域活性化号という列車ががたごととあぜ道のほとりの線路を走っていく。あれは何だべとお百姓さんが見送りますが、
地域活性化号はむなしく通り過ぎていき、
農村現場には何ももたらさないというものであります。また、乗り込む車両によって行き先がばらばらであり、気がついてみたら全く違った場所に連れていかれるのではないか、そんな声も聞かれます。
船頭多くして船山へ上ると言います。
地域活性化というのは、各省ばらばらに取り組んだところで、満足のいく
効果は上がりません。実効ある
地域活性化策を講じていくためには、省庁横断的な施策の構築が必要と考えます。
そこで、本
法律案と他省庁所管の
法律案との
役割分担、
連携の
考え方、また、
法律案の一本化による施策の総合化の是非につきまして、
農林水産大臣及び官房長官の見解を伺います。
この
法律案に基づき
交付金が
交付される
事業でありますが、
農林漁業の
振興のための生産
基盤及び施設の
整備に関する
事業、
生活環境の
整備に関する
事業、あるいは
地域間交流のための施設の
整備に関する
事業とされております。
一見して、施設
整備が大変目立ちます。まるで、この
法律案は、箱物
整備のための
交付金を配るという先祖返りしたような
法律案ではないかと思われるわけであります。現下の厳しい財政
情勢のもと、
農山漁村の
活性化のために真に必要な
事業は何か、国としてももっと明確な方向性を示すべきではないでしょうか。
また、施設用地
確保のための
農林地等の
所有権移転等に係る手続の円滑化があわせて
措置されることとなりますが、この
法律案に基づく
事業実施により、
農地の転用が無秩序に進み、景観を損ね、
環境を悪化させることのないよう歯どめが必要と考えますが、どのように対処する考えか、
農林水産大臣に答弁を願います。
次に、今、
農地転用の話に触れましたが、
農地政策をめぐって、
農業外の一般企業の
農業参入の
加速化など、さまざまな意見、
政策提言が寄せられており、農林水産省においては昨年十二月、有識者
会議を立ち上げ、検討、検証に着手したと聞き及んでおります。
そもそも、
農地というもの、先人のたゆまぬ努力により、長い年月をかけて開発され、
整備されてきた
農業の基礎的な
経営基盤でありまして、また、
農村景観を形成する
地域資源でもあります。私有
財産であると同時に、公共財としての側面を有するものであります。
最近の
農地制度を見ると、
平成十三年に
農業生産法人の一形態としての株式会社の導入、
平成十五年には特区における
農地リース方式による一般企業の
農業参入の容認、
平成十七年にはリース特区の全国展開というぐあいに、目まぐるしく
制度改正が行われております。こうした改正に次ぐ改正は、
農業、
農村現場に疲労感さえももたらしております。
かけがえのない
農地を守り、食料自給率向上を達成するためには、一部の有識者による拙速な検討ではなくて、
国民、農民の意見を十分聞いて、時間をかけて
農業、
農村現場の
実情に即した
制度のあり方を検討すべきではないでしょうか。
農地制度の
改革に向けての
基本姿勢を
農林水産大臣に
お尋ねいたします。
次に、
農林水産業を
中心とする
地域社会の最大の問題は、若い人たちの働く場がないことであり、このことが、
農山漁村の
過疎化が進行した最大の
理由であります。
農山漁村における定住
人口をふやそうとするには、
雇用の場が
確保されなければなりません。
法律案では、
農林漁業の
振興のための生産
基盤及び施設の
整備に関する
事業が
交付金の対象となっていますが、この
法律案の枠組みのみでは十分な
効果は期待できないと私は思っております。
雇用の場を
確保するには、行政機構を抜本的に
改革することにより、
我が国を明治以来の中央集権国家から分権国家へとつくりかえ、真の
地方分権を実現することで、
地域の
活性化を図ることが最も有効な方策と考えます。補助金などの
制度を廃止し、それに相当する額を
地方に自主財源として一括
交付するという民主党の
政策は、まさに
地方分権、
地域振興に不可欠のものと考えますが、
農林水産大臣及び総務
大臣にその見解を伺います。
農林漁業の
振興を核とし、
農山漁村が
活性化すれば、命をはぐくむ農林水産物が生産され、豊かな緑と水がはぐくまれ、その恵みは、
都市部を含め
我が国全体に及びます。
そのための
政策としては、品目横断的
経営安定
対策と
農地・水・
環境保全向上
対策を導入しようとしながら、突如この
法律案を提出しようとするような場当たり的な
方法では、
効果は絶対に上がらないと思います。民主党の戸別所得補償
制度を導入し、小規模な
農業生産でも、子を産み育て、安心して生活できるよう総合的な
農山漁村活性化対策を
実施するという、全体として整合性のとれた
政策を着実に推進すべきと考えます。
心のふるさとである
農山漁村が真に
活性化し、
都市住民も
農山漁村の
住民もともに生活維新が実現できることを願うとともに、
大臣自身の政治家としての資質にかかわる問題に今後とも明快な答弁がなければ、松岡氏を農水
大臣として我々は認めるわけにはいきません。このことを申し上げて、私の
質問にかえさせていただきます。
以上であります。(
拍手)
〔
国務大臣松岡利勝君
登壇〕