○笠浩史君
民主党の笠浩史でございます。
民主党・
無所属クラブを代表いたしまして、いわゆる
国際刑事裁判所に関する
ローマ規程及び同協力
法案について質問をさせていただきます。(
拍手)
質問に先立ちまして、
麻生大臣におかれましては、先ほど
在職二十五年の
表彰の栄誉に浴されましたことに敬意を表させていただきます。先ほどの謝辞のように、御自身の言葉で率直な
答弁をお願い申し上げまして、質問に移らせていただきます。
私ども
民主党は、ずっと以前から、マニフェストにおいて、集団殺りくや戦争犯罪などについて法で対処していくため、
国際刑事裁判所すなわちICCへの早期加盟を主張してまいりました。まだまだ国際社会は法治システムのインフラを欠いておりますけれども、人類の平和と安寧を法で守りたいとの願いは決して弱いものではありません。
我が国が国際社会でいかなる役割、使命を果たし得るかに思いをいたすとき、この
国際刑事裁判所は、実は率先してかかわるべきものであろうと思います。それなのに、なぜこれまで
我が国は条約加盟をためらってしまったのか。
法律学的なさまざまなこの言いわけはあるにせよ、根本には、
我が国が国際社会においてどのような役割、使命を果たしたいのかについて、みずからのビジョンを欠いていることが一番の問題としてあるのではないでしょうか。
特に、アメリカがこれに消極的であることが
我が国の対応をおくらせてしまった大きな要因であり、私は、そのような政治に甘んじてよしとする現在の
我が国の政治状況に歯がゆさを禁じ得ません。
政府は、このたび、ようやく重い腰を上げたわけです。遅きに失した感はありますが、私ども
民主党は、ICCの問題についてはこれまでも積極的に取り組んできており、基本的に
賛成の立場であります。
しかし、今回の条約加盟により、
日本はICCにとって最大の拠出国となるわけですが、これまで出おくれたがゆえに、例えば、いち早く加盟を果たし、裁判官を出しているお隣の韓国と比べても、運営などに対する
発言権がしっかり確保できるかについて大きな疑問符が生ずるに至っております。
人材の育成あるいは供給の面からも大きく立ちおくれてしまっています。
ちなみに、
我が国は条約加盟により断トツの資金拠出国になると聞いておりますが、一体どれくらい断トツなのか、まず
麻生大臣にお伺いをいたします。また、最大拠出国にふさわしいだけの
発言権を確保していくために、今後の具体的な取り組みについてもあわせてお答えをいただければと思います。
本来、このような
国際刑事裁判所のような事柄は、
我が国が国際社会に率先してリード役を果たすべきものであると考えます。各国の加盟状況を見てみると、国連安保理常任理事国ではイギリス、フランスの加盟にとどまっており、アメリカや中国、ロシアは加盟していません。アジア諸国の加盟も少ない状態が続いております。
国際社会の平和と安全に寄与していかんと
我が国が志しているのであれば、今後、こうした国への働きかけをしていくべきと考えますが、いかがでしょうか。とりわけ、アメリカに対してもきちんと声をかけていくつもりがあるのかどうか、
麻生大臣、明確にお答えをいただきたいと思います。
日本は、ICCの設立までは、国連のアドホック
委員会で副
議長国の役割を果たしたのを初め、
ローマ規程の採択に
賛成するなど、積極的に活動し、これまで大きな貢献をしてきたと理解しております。それなのに、加盟の段階に至り、急に腰砕けになってしまいました。
政府はこれまで、国内法の未整備を表向きの
理由として加盟をおくらせてきましたが、今回の
法案を見る限り、
国際刑事裁判所への協力に関する手続的な事項や同裁判所の運営を害する罪の新設などにとどまっており、本当のおくれの原因は別にあったように思えてなりません。ICCで規定されている戦争犯罪、集団殺害罪、人道に対する罪などについて、例えば、アメリカのブッシュ大統領がそれらを問われかねないことについて遠慮しているのではないかとすら思えます。そのような
政府の及び腰は美しくありません。外交のみならず経済においてもアメリカに追随するだけの政治では、美しい
日本をつくることはできないのではないでしょうか。このことこそが今の自民党政治の大きな
問題点であります。
次に、条約の対象犯罪についてお尋ねいたします。
ICCの対象犯罪とされた集団殺害、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪のほかにも、ICC規程の草案においてはテロ犯罪、麻薬犯罪等が記載されていましたが、結果として、時間的制約などにより、今回対象となっていないことは承知しております。
しかし、特にテロについては、ICC条約が成立した一九九八年の後の二〇〇一年に、アメリカで九・一一の同時多発テロが発生し、数千という人命が奪われました。当のアメリカが、ICCの政治性を懸念し、国際協力によってある程度対応可能という
理由から、正面からとらえることに消極的になっているであろうことは想像できます。しかし、内戦状態とも称されるイラク国内のテロ行為などによって、毎日のように多大な人命が失われているのも事実です。
こうした国際犯罪についても、各国がそれぞれの国内裁判所で処罰することにはなっております。しかしながら、容易に国境を越える今日のテロ
ネットワークの現状を考えると、さまざまな
理由で国際協調が困難な場合などに備えて、今後、未整備の侵略の罪に加え、テロについてもICCの対象とするための検討を行うべきではないかと考えますが、
麻生大臣の御
認識を伺います。
さて、この
国際刑事裁判所は、例えば北朝鮮によるテロである拉致事件、このことに関してどこまで有効に対処し得るのか、あるいは活用し得るのか。北朝鮮による拉致事件はICC設立以前に発生したとか、また、北朝鮮はICCに非加盟であるなどのへ理屈をまかり通らせてしまうのでしょうか。
麻生大臣の
答弁をお聞かせください。
ちなみに、ICC規程七条では、「人道に対する犯罪」として「人の強制失踪」という行為が明記され、「国若しくは政治的組織又はこれらによる許可、支援若しくは黙認を得た者が、長期間
法律の保護の下から排除する意図をもって、人を逮捕し、拘禁し、又は拉致する行為であって、その自由をはく奪していることを認めず、又はその消息若しくは所在に関する情報の提供を拒否することを伴うもの」と定義をされております。
北朝鮮による拉致はこの定義に立派に該当するのではないでしょうか。
大臣の御見解を伺います。
拉致事件では、仮に北朝鮮の工作員による略取という行為がICC設立前に実行されていたにせよ、被害者を御
家族のもとへ戻していないという意味での監禁行為は現在に至るまで継続中であり、私は、拉致事件についてICCの条文は適用されて当然と思いますが、
大臣いかがでしょうか。
次に、ICC関連
法案による
日本人の訴追の可能性について伺います。
例えば、国連のPKOなどの平和活動に積極的に参加するとして、場合によっては、受け入れ主体となる国や
政府が崩壊している事態や、周辺国、関係国を初め派遣
地域の民族や宗派、住民の利害が錯綜し、必ずしも
日本の派遣が歓迎されない事態も想定されます。あるいは、特定の国に対する憎悪等により、
日本にその気がなくとも、憎悪の対象となった国に
日本が加担していると見られるようなことも起こり得ます。
日本の派遣部隊の一員が、ICCの管轄となるような事件に仮に巻き込まれるような場合も想定し得ます。
日本の派遣部隊が、この条約の対象となる集団殺りくなどの犯罪を起こすことは想定されないところですが、混乱した現地で、事実関係が明確でない中で、相手方が政治的な思惑でICCに不当な事実を主張し、問題を提起する場合も考えられないわけではないでしょう。このような点について、本当に大丈夫なのかどうか、
麻生大臣にお伺いをいたします。
国際刑事裁判所という新たなシステムにより国際社会における法の支配を一歩進めることの意義は、幾ら強調してもし過ぎることはありません。しかしながら、アメリカを初めとした大国の消極的態度のみならず、加盟国についても、いわゆる補完性の原則を隠れみのにした、非協力的な事態も多分に想定されるでしょう。そのような場合、法の支配を実効あらしめるためにはどうすればよいのか、
我が国として、国際社会において大事な役割を果たし得る重要な分野であると思いますので、
麻生大臣の今後の決意も含めた
答弁を求めます。
冒頭申し上げましたように、
民主党として、今回の条約及び
法案については、遅きに失したくらいで、その意義については大いに認めるところですが、
我が国がアメリカに遠慮して追随している精神構造がこの分野にも大きな影を落としていることは否めません。この条約を実効あらしめ、国際社会における法の支配を一歩一歩進めるために、アメリカ、中国、ロシアなどを説得することも含めて、
日本が果たし得る役割は非常に大きいと考えます。その点についての
政府のさらなる自覚を促しまして、私の質問を終わらせていただきます。(
拍手)
〔国務
大臣麻生太郎君
登壇〕