○塩川鉄也君 日本共産党を代表して、関係大臣に質問します。(
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冒頭、昨日発覚した北陸電力志賀原発一号機における言語道断の臨界事故隠しについて、国に
報告がなされなかったのはなぜか、こうした事態を国が把握できなかったのはなぜか、安全システムそのものに重大な問題があるのではありませんか。政府は、直ちに全容を解明し、その責任を明らかにすべきであります。
さて、今日、日本経済に問われているのは、多国籍化した大
企業が軒並み未曾有の利益を上げている一方で、労働者、国民の雇用不安は一向に改善されず、貧困と格差が拡大しているという問題です。それは、この数年来、政府が
構造改革の名のもとに、設備、債務、雇用の三つの過剰を解消するとして、
企業部門のリストラ再編と雇用流動化を促す労働法の
規制緩和を車の両輪として推進してきた結果であります。
にもかかわらず、安倍内閣は、
経済成長戦略大綱において、
構造改革によって
景気回復を実現したといい、一層の雇用の流動化とリストラを推進するために、
産業活力再生法の
改正などを行おうとしています。
そこで、まず、九九年制定の産活法が日本経済に何をもたらしたのかであります。
産活法は、
企業の
事業再構築、リストラ計画を政府が認定してお墨つきを与え、減税などで
支援する、世界にまれな
制度です。この間、大
企業の主要な
事業再編のほとんどに関与し、
登録免許税だけで一千億円の減税、その結果としておよそ十万人のリストラ人減らしを後押ししてきました。このリストラ
支援策によって、九九年度比で大
企業の経常利益、役員報酬は二倍、株主配当は三倍に上る一方で、労働者給与はマイナスという社会の二極化が進み、ワーキングプアに象徴される貧困と格差の拡大をもたらしました。甘利大臣は、政府の政策がもたらした事態をどう受けとめていますか、答弁を求めます。(
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以下、本法案が、労働者と国民生活、
中小企業、
地域経済に何をもたらすか、具体的に質問します。
第一に、労働者、国民生活にとってどうか。
今回の産活法
改正案は、リストラ再編政策を継続し拡充することを柱としています。例えば、先ごろ、五千人もの新たなリストラ計画を発表した松下電器産業は、この間、産活法を活用し、グループ
企業で累計二万七千人に及ぶ大リストラを強行してきました。その計画の中核は、偽装請負が社会問題となった松下プラズマディスプレイ社への再編でした。この最新鋭工場では、派遣、請負の労働者が多数を占めています。偽装請負を告発した請負の青年労働者は、その結果、解雇されました。働く人を物扱いにするリストラ推進を継続、拡充することは許されません。
法案は、新たに、
サービス産業の
生産性を
向上することを掲げ、重点サービス六分野の一つとして、人材サービス業、派遣・請負業の育成を挙げています。派遣、請負をめぐる違法行為が蔓延しているにもかかわらず、その育成を掲げていることは極めて重大です。
日本経団連会長でキヤノン会長の御手洗氏は、自社の派遣法違反を労働局から七回も指導されながら、
法律の方が悪いとして、派遣・請負法制の見直しを主張しています。無法を合法化せよという理不尽な要求を受け入れるつもりですか。
キヤノンユニオン・宇都宮支部長の大野秀之さんは、予算
委員会の公聴会で、キヤノンという会社が好き、働き続けたい、でも、派遣期間制限の撤廃を要求する御手洗会長の発言には、奴隷のように働けと言っているように聞こえると訴えました。柳澤大臣、この声にどう答えますか。
そもそも、派遣、請負などの間接雇用は、職安法四十四条で禁じられている労働者供給
事業に該当するものであり、労働者派遣法は直接雇用の原則の例外として制定されたものです。当初、政府は、派遣労働はあくまで臨時的、一時的なものであって、常用雇用に置きかえないと言明してきました。ところが、現実には、常用雇用が派遣など非正規雇用に置きかえられています。制定時の立法
趣旨と大きく異なっているのではありませんか。少なくとも、今日さまざまな問題を引き起こしている製造業への派遣は、直ちに禁止すべきではありませんか。
また、法案は、
サービス産業における
生産性の
向上を図るため、国と協力する民間機関として
サービス産業生産性協議会を設立するとしています。その設立準備のため経産省に置かれた
サービス産業研究会座長の牛尾治朗氏は、日本のサービス業の五〇%は政府の
規制下にあり、それがサービス業の
生産性の低さにつながっていると述べ、公的分野の一層の
規制緩和と民間開放を主張しています。
国民生活に密着した医療、保育といった分野を
サービス産業と位置づけ、効率とコスト優先にゆだねることは、労働者の労働条件を切り下げ、国民の安心、安全を掘り崩すことになるのではありませんか。
経産省は、新経済
成長戦略で、
サービス産業の
生産性向上につながるビジネスモデルの革新として、残業代不払い
制度であるホワイトカラーエグゼンプションの実現を要求しています。
成長戦略の上でホワイトカラーエグゼンプションが必要だというのですか。甘利大臣、お答えください。
第二に、
中小企業について伺います。
政府は、アメリカと比べて日本の
サービス産業の
生産性が低い要因として、ホテル、外食産業、卸売、小売業など、
生産性の低い小規模
事業者が多数を占めることを挙げています。産活法
改正案は、特定の
企業に対する
生産性向上支援策であり、結局、多数の小規模零細業者を淘汰することになるのではありませんか。
政府の底上げ戦略でも、下請
中小企業の
生産性向上を強調しています。しかし、今問われるべきは、大
企業の下請
中小企業に対する不当なコストダウンの押しつけです。
例えば、石川島播磨重工業は、下請
企業に代金を示さずに発注し、納品後に金額を決める違法行為を繰り返し、公取から警告を受けました。石播のある下請
中小企業は、二十年間で三億一千万円を買いたたかれ、倒産に追い込まれています。トヨタの場合は、下請に対しパソコンオンラインで単価を指し値で提示するなど、下請に価格決定権はゼロというのが実態です。
下請振興法は、下請単価について、下請の適正な利益と労働条件の改善が可能となるよう求めていますが、実際には最低賃金も下回っているのが実情です。こうした
現状についての認識をお聞きします。
また、甘利大臣は日本経団連に下請取引の法令遵守をお願いに行ったそうですが、大臣が直ちにやるべきは、下請二法の厳正な運用と専任検査官の抜本的な大幅増員を図り、大
企業による無法の一掃、不当なコストダウン押しつけの根絶に踏み出すことではありませんか。
第三に、
地域経済についてです。
法案は迅速な
企業立地の
支援といいますが、三重県では、シャープ亀山工場の誘致に当たって、知事が議会にも諮らず独断で補助金の約束をしたことが問題になりました。迅速な
支援といって、大
企業誘致のために住民の合意や民主的手続を軽視したやり方が、果たして本当に
地域の
活性化につながるでしょうか。
甘利大臣は、自治体の
企業立地支援策を評価するたらい回しランキングを示し、おくれている自治体にはハッパをかけると言いますが、それは地方自治、地方行政に対する介入ではありませんか。
加えて、政府は、頑張る地方応援プログラムで、地方の頑張りを国が成果指標で評価し地方交付税を配分すると言います。これは、地方の自主財源である交付税を国の政策誘導に利用することになり、地方の自主性を損なうものではありませんか。菅大臣、お答えください。
また、
企業立地迅速化のため、工場立地法の
規制緩和とともに、農地転用の迅速化を図るとしています。この問題で、甘利大臣は直接松岡農水大臣に要請したと報じられていますが、それはいつ、どのような
内容の要請ですか。また、松岡大臣はその要請を全面的には受け入れず、法案は配慮義務との表現になったと言われています。一体両大臣の間でどのような協議が行われたのか、その
経過と理由を明らかにしていただきたい。
以上、質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣甘利明君
登壇〕