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宮脇参考人 北海道大学公共政策大学院の
宮脇でございます。
本日は、当
委員会で
意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、大変光栄に感じております。よろしくお願い申し上げます。
それでは、早速でございますけれ
ども、
意見を述べさせていただきたいと思います。
私は、この
地方公共団体の
財政の
健全化法案でございますけれ
ども、今後この実施に当たりましてさらに詰めていくべき
課題、あるいは
地方分権改革等を
推進した際におきましてさらに
充実をさせていくべき
課題というものは存在しているというふうに思っております。ただ、
基本的に、この
地方公共団体の
健全化に向けた
法案というものにつきましては、こういった
法案が
提出され御審議いただいていることに対して、
評価させていただいているところでございます。
この
法案の
中身につきまして、
評価をさせていただいている点をまず四点挙げさせていただき、その後、今後の
課題等について整理をさせていただきます。そして最後に、今後の
課題としてこの
法案と大きな
関係のございます
債務調整といった問題についての
関連というところを
意見として述べさせていただきたいと思っております。
まず、四点、
評価できる点ということでございます。
まず第一点といたしまして、やはり、
地方自治体の
財政を
健全化する
制度といたしまして
準用団体制度というものが存在しているわけでございますけれ
ども、この
制度は、御
承知のように五十年間にわたりまして
見直しというものが行われないでまいりました。この間、我が国の
経済社会は大きな
構造変化をいたしておりますし、特に九〇年代以降におきましては、
財政と金融のかかわりというのが大きく
変化をする中で、
地方財政あるいはその中での
地方債のあり方といったようなこともやはり
見直しを迫られる、そういう環境にあったかと思います。
そういう中で、この
健全化に向けた
制度というものが、戦後の
地方財政の非常に危機的な
状況を救済するための、ある意味でいいますと臨時的な
措置を準用するという形で今日まで続いてきた。この点につきまして、今回、恒久的な
制度としての
見直しという形でこうした
法案が
提出をされたことに関しましては、非常に前向きな
取り組みではないかと考えさせていただいております。
そして、
評価できます第二点目でございますけれ
ども、やはり、これまでの
制度にはなかったいわゆる
早期是正という
仕組みを組み込んでおられるということでございます。
これは、私が申し上げるまでもなく、
現行の
準用団体制度につきましては
財政再建団体という
制度しか存在せず、
早期の
段階で
地方財政が
健全化をするという
方向に対して、
地域住民も含めて
議論をし、また
判断をするというツールが必ずしも十分ではなかったと考えさせていただいております。
したがいまして、今回の
仕組みは、
早期に
地方財政の
健康診断ということを行い、そしてそこにおいてある
程度の異常な
数値あるいは注意をしなければいけない
数値というものが出たときに、まず第一
段階といたしましては、
住民が
財政のことをいろいろと考え参加する中で
地方財政の
健全化に
努力をしていくという
仕組みであり、
地方自治という
観点からも、
評価できる
仕組みではないかと思っております。
そして、三番目の
評価点でございますけれ
ども、これはやはり、
指標というものの
充実が図られるということでございます。
これまでの
地方財政制度におきましては、要するに
実質収支比率という
フローの
指標によって
地方財政の
状況というものを
判断してまいりました。しかし、この
指標が、
地方財政全体の
診断をするに当たりましては、その見ている
範囲というものが非常に狭いというふうに言わざるを得ないと思います。多くの
地方自治体におかれまして、
財政が
危機的状況になる、夕張の件もそうでございますけれ
ども、やはり第三
セクターを初めといたしました外郭的な組織における
財政的な
負担というものが最終的に
普通会計に及んでくるという
構造を持っております。したがいまして、先ほどの
早期是正という
仕組みと
関係いたしますけれ
ども、場合によっては、
地域住民にとっては必ずしも
地方財政の実態というものが十分に認識できない中で、ある意味で突然
地方財政としての破綻的な
状況が目に見えてくるといったようなことも少なくないという実態にあろうかと思います。
そういう面で、今回
指標を
充実し、ある意味で第三
セクターといったような最終的に
普通会計ベースでも
負担が発生する危険性があるもの、こういったものを全部含めて
住民の皆さんと情報を共有する
仕組みをつくるということは、高く
評価できるのではないかと思っております。
また、
フロー指標だけではなくて、
ストックという形で、過去の
財政政策の蓄積という形で起こってきている問題を将来の
財政運営に結びつけるための
指標といったようなものを組み込んでおられるという点も、これは
評価ができると思っております。
いずれにいたしましても、
指標を形成するに当たりましては、私は、規範性ということと客観性ということが必要になろうかと思っております。規範性というのは
指標を考える場合の
基本的な
考え方でございますけれ
ども、これは、やはり
地域住民の皆さんがみずからの自治体の
財政というものをきちっと
議論し認識することができるということが必要であり、みずからの地域の将来の
財政状態というものの危険性あるいは抱えている問題というものを共有できるという
指標がまず必要だと思っております。
そして、もう一点の客観性は、比較可能性ということを担保するということだと思います。
全国にいろいろな
状況の
地方自治体というものが存在いたします。また、
規模におきましてもいろいろな自治体が存在するということでございます。しかし、
指標におきましては、いろいろな自治体の置かれている環境というものはございますけれ
ども、それらにつきまして相互に比較ができる
仕組みを導入することがまず必要であり、そのことが
指標に対する信頼性というものを担保することになるんだろうと考えております。
ただ、後ほど整理をさせていただきますように、そうした
指標に対する
評価をどのように行っていくのかということにつきましては、また別の視点が必要になろうかと思っております。
そして、
評価できる第四点目でございますけれ
ども、やはり、
再生振替特例債という新しい
制度を設けていただいたという点でございます。
この
制度につきまして、
赤字地方債ではないかといったような御
議論もあろうかと思いますけれ
ども、この
再生振替特例債につきましては、
再生期間中に必要となる、
再生のために
負担しなければならない、そういう
財政資金が幾らであるのかを確定し、それを明確に示した中で、
再建期間中にこれを解消するためのツールであると考えております。したがいまして、新しい借金を抱えるというものではなくて、過去の
債務を、着実に、明確に見える中でこれを整理していく
仕組みであろうというふうに思っております。
例えば、私も北海道に住んでおりますけれ
ども、夕張市の
財政再建団体化ということがございました。夕張市におきまして、長期間にわたった
財政再建に
努力をしていかなければならないという
状況の一方で、毎年毎年短期の借入金の調達を繰り返していかなければならない、そういう実態もあるわけでございます。したがいまして、長期にわたった
財政再建計画がつくられたのであれば、その期間中に着実に
再建を果たすための
資金調達を行い、そして短期的な不安定な
状況からは解き放してあげるということも一つの大きな選択肢であったろうというふうに思っております。
そういった問題点に対しまして、この新法におきまして、新しい
制度といたしまして
再生振替特例債という
制度を設けていただいたという点が
評価の四番目でございます。
しかし、こうした
評価できる点がある一方で、今後実際にこの
制度を
運営していく場合には、
課題というものもまた一方ではあろうかと思っております。
先ほ
ども御指摘がございましたけれ
ども、
指標につきましてこれから
政令等で
内容を決めていくというふうにお聞きをいたしております。しかし、こういった
指標につきまして、比較可能性を担保するということは最低限の条件として必要でございますけれ
ども、例えば、
地方自治体の
規模ごとにこういった
指標について一定のグルーピングをするですとか、そういった
配慮というのは必要なのかどうなのかといったようなことも、これは当然、
指標を考える場合におきましては重要な
課題になってこようかと思います。
また、そうした
指標を
評価するに当たりまして、例えば、第三
セクターですとか
公営企業、さらには、今回すべての
地方財政に対する領域というのをカバーいたしておりますので、介護保険でございますとか国民健康保険といったような
財政状況の部分につきましても、これを含めてきちっと開示をしてください、そういう
仕組みになっております。
しかし、こういったものの中には、当然、
地方自治体単独では
健全化の
努力に極めて限界があるというものもございますし、
公営企業等の中で病院ですとか地下鉄といったような
事業に対して、非常にいろいろと政策的な面というものを考えていかなければならないということもございます。
恐らく、今この
指標を導入した場合に、大きく
赤字部分として多くの自治体で発生するところといたしましては、やはり病院
事業が挙げられるかと思います。そして、
土地開発公社といったようなところもあろうかと思います。こうしたものにつきまして、
指標としては明確にする中で、どのような
評価を行っていくのかということは非常に重要な
課題になってこようかと思います。
そして、もう一点、
課題として挙げさせていただきますと、今回の
仕組みの中で極めて重要な役割を果たすものといたしまして、外部監査といったような
制度があろうかと思います。こういった監査
制度につきましても、監査
制度が信頼あるものになるために、その環境整備というものに
努力をしていく必要性があろうかと思います。当然、そのための環境整備というのは、公
会計の
改革ですとかそういったものに積極的に取り組んでいく。そのことが、最終的には、外部監査だけではなくて、
住民からのチェックにつきましても大きく資するものになろうというふうに考えております。
そして、最後になりますけれ
ども、
債務調整との
関係でございます。
債務調整につきましては、
地方分権改革というものが進んだ
段階での新しい
地方財政の
制度の中で、この
債務調整のあり方についてどのようにするべきかということで、
総務省におかれましても、この研究会を立ち上げて
検討をしているという
状況でございます。その中で、まず考えなければならない点といたしましては、今回の
制度と
関係をいたしますけれ
ども、やはり第三
セクターや
公営企業の
赤字というものがなぜ
普通会計等に及んでくるのかという点でございます。
この点につきまして、やはり
債務保証ですとか
損失補償という
仕組みがございます。
債務保証につきましては、御
承知のように、かなり厳格な
制度設計になっておりまして、
債務保証を行える対象の組織というのは限定をされております。しかし、
損失補償につきましては、こういった
財政規律的な
制度というものが存在をしないということがございます。したがいまして、こういった
事業を行うときに、
損失補償という選択肢が、場合によっては
財政規律という面から非常に甘くなってしまうというようなことが起き、結果として、それが
普通会計ベース、
一般会計ベースの
負担ということで最終的な
影響をもたらしてしまうというようなこともございます。
ということは、まず、そうした
損失補償といったような
仕組みについて、
地方財政の中でどのようなガバナンスをかけていくのか、そして、ガバナンスをかけた上で、そうした第三
セクター等に関する整理というものについてのルール化を行い、また
公営企業等の
検討を行った上で、
普通会計、
一般会計のところに最終的な
債務調整というツールを導入するべきなのかどうなのかということを、全体的な、新たな分権の中での
地方行財政制度の中において考えていくということが必要なことであろうというふうに思っております。
したがいまして、まず、第三
セクターや
公営企業といったようなところと
普通会計、
一般会計との
関係を整理していくということが重要な点ではないかというふうに考えさせていただいております。
最後になりますけれ
ども、今回の
地方公共団体の
財政の
健全化に関する
法律案でございますが、これは、やはり
現行制度の中におけます
地方財政の
健全化に向けて必要な
制度をおつくりいただくということかと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、これから実際に
運営していくに際しましての
課題ですとか、あるいは、
地方分権改革が進んでいく中で新しい
地方債の
制度ですとか税
財政の
制度といったようなものが
議論されてまいろうかと思います、そのときに、今回御
検討いただいている
制度をさらに発展させ
充実させる、そういうことが必要だというふうに思っております。
以上、簡単ではございますけれ
ども、私からの
意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)