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森参考人 富山市長の森
雅志でございます。よろしくお願いをいたします。
私の方からは、
富山市という
地方都市の実情を説明させていただきまして、結論として、
地域公共交通を
活性化させることが
地方都市にとっていかに大切かということを述べさせていただきたいと思います。
お
手元の資料を御参考にお願いいたします。
富山市は、海岸からヘリコプター事故のありました水晶岳まで大変広範な市域を有する
都市ですが、
下段にあります、十一年の資料で古いのですが、パーソントリップでの
自動車分担率は七二・二%、通勤だけに限りますと八二%という極端に車に特化した
地域社会でございまして、それに伴いまして薄く広く町が発展してきました。その結果、DID地区の人口密度は全国の県庁所在地で一番低いという典型的な車
都市であります。
二
ページに行きますが、その結果、しかしながら、車を自由に使えない
市民にとっては極めて
生活しづらい町となっております。右側に表がございますが、
富山市で昨年度調査しましたところ、約三割の
市民は車を自由に使えない。免許を持っていない方もたくさんいますが、仮に持っていても、自由に使いこなす車を自分一人で持っていないという意味で、家族に送迎してもらっているとかいう人を含めますと、三割は交通弱者です。かつ、これが人口
減少時代に入ってどんどんふえていく、特に
高齢者を
中心にふえていくというのが実情です。
また、薄っぺらな
都市構造ですので、ごみの収集延長ですとか除雪ですとか、このまま拡散型の
都市構造を続けていくと
都市管理コストが増嵩し続けていく、こういう問題も抱えています。また、全体に
都市活力が低下している。
そういうことを踏まえまして、4にありますように、幸い
富山駅に
幾つもの鉄軌道が結節していますので、鉄軌道と
バス路線を使った
公共交通を
活性化したコンパクトなまちづくりというものをまちづくりの方向性と位置づけております。
三
ページ目の上に目指すべきビジョンを述べておりますが、一定水準以上の鉄軌道と一定水準以上の密度の高い
バス路線を
公共交通軸と位置づけまして、この軸の沿線にこれからの居住だとか文化だとか商業だとかという施設を誘導していこう。つまり、だんごと串の
関係のように、この図にあります緑とか青とか黄色の線はそれぞれ鉄軌道でございます、赤の破線が密度の高い
バス路線でございまして、この沿線に人の住まいというものを将来に向けて誘導していこうという方向を打ち立てたわけでございます。
そのために最初に
取り組みました
事業が、
富山ライトレールの
取り組みでございます。
八十六、七年の歴史のありました
富山港線というJR線でございますが、廃止というような流れになってまいりました。その背景には、四
ページにありますが、
富山駅周辺の北陸新幹線の工事に合わせまして、今連続立体交差
事業に取り組んでおりますが、場所が極めて狭隘でございますので、
富山港線を廃止することによって工事がやりやすいというスペースをつくる。そのために、
富山港線を廃止したまま
バスに代替するのか、あるいは違う
道路上を走らせて
富山駅へ入れることによって
富山港線を延命させるのか、この選択に迫られたわけでありますが、
道路上に新たに軌道を敷設して
LRT化することによって
富山港線を生かしていこう、こういう選択をいたしました。準備に三年かかりまして、昨年四月に供用開始したところであります。
四
ページの下にありますが、運行密度を上げる、あるいは時間帯も二十一時台に終電が終わっていたものを二十三時台まで延ばす、こういうふうな
取り組みをし、かつ、運賃は二百円均一としたところであります。十八年度いっぱいまでは日中百円で運行をしてまいりました。四月から二百円に戻したところであります。
五
ページにありますのがその実態でありまして、
LRT化することによって、ベビーカーを含む乗車の乗りやすさ、あるいはフィーダー
バスとの接続を乗りかえ抵抗の少ないドア・ツー・ドアで乗りかえできるような形、さらには電停もふやし、全体をトータルデザインでイメージを上げるというようなことに取り組んでまいりました。
六
ページは
整備費用でございますが、
整備に当たりましては、最初から公設民営でいこうということを
市民に打ち出して、
市民の
理解も得て進めてきたところであります。
富山市のような
地方都市では、やはり輸送密度が低いことから、
基盤整備費用まで運賃収入で賄うというのは当初からもう無理だと
市民に説明をいたしまして、
整備は行政がやります、三セクでつくりました
富山ライトレールという会社は運行だけやってください、将来にわたる
維持管理、例えば除雪車を去年新たに購入しましたが、この部分も行政でやりますというふうなやり方であります。
建設費五十八億を要しましたけれども、内訳は、一番右端にありますように、連続立体交差
事業から
富山港線はいわば支障補償を下さいということで三十三億を回していただき、街路
事業あるいは国交省で新たにつくっていただきました
LRTシステム整備費補助などを使いながら
整備をしてまいりました。
具体の内訳は真ん中にありますとおりでございます。また、上段にあります運営費三億、仮に三億と見込みますと、
維持管理費の一億は、仮に一億になっても毎年市が負担をする、ただし運行経費については運賃収入で賄ってください、こういうこととしたところであります。
なお、三月末での決算、今、仮決算ですが、九十八万円の黒字となりました。本当はもう少しあったんですが、開業費五千四百万円を償却しようとしておりますので、実際はもう少し、三千万
程度で利益は出たかなと思っております。
また、
市民、企業からは資本金への出資も、五一%ほど
民間企業で出していただきましたし、そこに記載のありますように、ベンチドネーション百六十八脚、五万円ですとか、新駅のネーミングライツ一駅一千五百万円ですとか、広告収入ですとか、そういうことも
市民の
協力を得ながら進めてまいっております。
なお、
市民の寄附も含めて、現在二億六千万
程度の基金を持っておりますので、今後仮に単年度
収支に問題があったとしても、ここら辺を担保として
経営をしていきたい、こう思っております。
七
ページは、一年たちました後の実績でございます。JR
時代に
平成十七年十月二日と六日に乗車人員の具体の調査を行いましたものと比較してございます。青く記載しました部分がJR
時代の数字でございます。一日平均で、かつて平日で二千二百六十名
程度だったものが現在四千九百ということであります。
また、下の
棒グラフを見ていただくとわかりますが、どこの時間帯で乗車人員がふえてきたのかということを見てみますと、十時台とか十一時台とか、休日もそうです、日中の乗降客がふえております。そして、それはだれなのかと見てみますと、3の
グラフで見ますように、五十代、六十代、七十代の層の方がふえている。つまり、日中、
高齢者を
中心に外出機会を新たにつくったという効果だろうと思っています。このことは、将来の介護保険ですとか医療費とかを
考えましても、介護予防の観点で非常に意味があるというふうに思っています。また、4にありますように、新規二〇・五%という
利用者、これがまさに今言った層に当たるのではないかと、今途中の段階ですが、分析をいたしております。
八
ページ以降は、そのほかに
富山市が独自に取り組んでおります
公共交通活性化の
施策であります。
まず、7と記載しましたところはJR高山本線の
活性化の
社会実験です。二時間に一本
程度しか日中走っていませんJR西
日本の高山本線に、
富山市が費用負担をいたしまして、いわば電車をチャーターして、これはディーゼルですが、運行頻度を上げた。今、一・五倍にしたところでございます。まだ去年の十月から始めたばかりでありますけれども、正確な分析は済んでおりませんが、十九年度いっぱいまずは続けてみたい、このように思っていまして、二割ふえるとか一割五分ふえるとかということになれば、その段階で判断をして、もう一度延長を図っていきたいと思っています。
なお、JR西
日本さんとは、十七年度の
利用実績をベースとしまして、それよりふえた部分は、その運賃収入に相当するものを
富山市に返してください、こういうふうな約束事となっていますので、乗車人員が一・五倍になると負担がゼロになるということですが、さすがに一・五倍は無理だと思いますが、一割なり二割なりふえることを期待して、沿線でさまざまな、駐輪場の
整備ですとか駐車場の
整備ですとか、JR保有の駅のトイレの
整備ですとか、そういうことを今一生懸命やっているところです。
8は、市内でいろいろと運行しています
コミュニティーバスですが、我が市は
一般会計一千六百億
程度の市ですが、その財政
規模で、右側にありますように、
コミュニティーバスに約二億、それから民間の
バス事業者の市の
赤字路線への補助で三千二百万
程度。これが仮に三億になっても、今ここでお話がありましたように、
富山市としてはやはり負担していかざるを得ないだろう、過疎
バスも含めて、
地域の足としては大変大事なものだろう、こういうふうに思っております。
それから九
ページでございますが、もう
一つユニークなことをやっております。これは、六十五歳以上の方に限り、市内のどこから
バスに乗っていただいても、
中心市街地で乗降する場合に限り百円という
制度でございまして、9の
利用実績の欄にありますように、六十五歳以上人口の二七・五%の人がこの
制度を
利用しております。平日、千四百人
程度が使っておりますので、これもまた新たな外出機会をつくる効果につながっていると思います。
当初は
中心商店街に人を呼び込もうというねらいで始めたわけですが、
利用実態は、
中心部まで行くと百円で、そこで乗りかえるとまた遠くへ出るのも百円ですので、結局A地点からB地点へ行くのにわざわざ
中心部へ寄って二百円で移動するということにつながっておりまして、これが結果的には
バス利用者を随分ふやすことにつながってきた。
地元の
バス会社とは、当初、これは
利用者は百円払うわけですが、
富山市も百円相当を払う、こう言っておりますが、当初わかりませんでしたので、月額四百万円払いますと言って始めて、三カ月試行しましたところ、
バス事業者は、これはいいからやりましょう、こう申し出がありまして、私どもは四千八百万円を覚悟していたんですが、二千六百万円でいいというお話でしたから、恐らく、仮に千四百人毎日乗ると十四万円ずつが現金で入ってきますので、やってみると結構売り上げ増になったんだろう、こういうふうに評価しております。
最後に、10でございます。図面がありますが、その図の中の下に新規軌道
整備区間と記載してございます。この新規区間を除く部分をいわばコの字型に
既存の市電が走っております。また、先ほど申し上げました
富山ライトレールという
LRTは北の方から
富山駅に乗りつけております。高架
事業が終わりました後、今度はライトレールと
既存の市電をつないで、新幹線や在来線の高架下を地表レベルで
路面電車でつなぐということを構想しておりまして、せっかくそれをやるからには、
既存の市電網の南側の部分があいておりますので、ここを何とかつないで、そして町の
中心に
路面電車、
LRTのループをつくりたいと思っています。ウィーンのリングのような形にする。そうすると、真ん中にぐるぐる電車が走っている
都市構造となりますので、この周辺に、
高齢者賃貸住宅ですとかケアハウスですとか、あるいは今後投資する図書館ですとか文化施設ですとかというものを集約していこうという
計画であります。
そうすると、先ほど言いました市内にあります
幾つもの鉄軌道は全部
富山駅に結節しておりますので、その沿線にさえ住んでもらえれば、車に乗れなくなった
高齢者であっても
都市機能というものを十分享受できるだろう、こう思っております。
そのためには、この南部分をつなぐ必要がございますが、その際、先ほどの
富山ライトレールは公設民営ではございましたけれども、費用負担を公設民営としましたので、施設は
富山ライトレールが保有をしています。しかし、今度は民間の鉄軌道
事業者にお願いをするわけですので、ぜひこの部分を上下分離でやりたい、こう構想をしているわけでございます。
整備費は
富山市が負担して、運行は
富山地方鉄道という民間会社が実施していく、この
考え方で、ぜひ三年間で
整備を仕上げたいと今思っているところでございます。
富山ライトレールという株式会社で
LRTを
経営してみましたが、この場合、全額補助で
整備しましたので圧縮記帳ができますことから減価償却の対象となりませんけれども、こういうふうに
民間企業に市が
補助金を出して
整備するというのでは、やはりどうしても減価償却の負担に耐え切れないということが起きてまいります。あわせて、公費を投入するという際に、
市民の
理解を得ようとしますと、資産は市の所有なんです、市の資産を民間
事業者が
利用しているんだという位置づけをつくることができますと、公費を投入することについての
市民の
理解も得やすい。
この二つの観点から、ぜひとも軌道においても上下分離の実現ということが、極めて大きな期待を持っているところでございますので、今度の新しい
法律の中でそのことがうたわれておりますことに非常に大きな期待を持っているところでございます。
ただ、そうは申せ、今のケースで言いますと、
富山市が新たにつくる軌道を保有させていただくとしても、そのことにあわせて技術者を必置として要請されますと、市の職員として技術者をそこに持つことは非常に大きな負担となりますので、このあたり、
導入しやすい形での上下分離というものの実現をぜひとも望みたいと思っているところであります。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)