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政府参考人(
寺田逸郎君) この点も、実は
現行法が少し硬直的に過ぎる、あるいは使いにくいと言われるところでございまして、
現行法の二十六条の一項によりますと、
受託者は
原則として自ら
信託事務を処理しなければならないということになっているわけでございます。
しかしながら、この
法律の下において、一体どこまで
信託事務自体なのかということが必ずしも明らかでないわけでございます。例えば、
ビルの
管理というものを、先ほど申し上げましたような
土地信託が行われる場合には、
受託者が行う本質的なところとしてあるわけでございますけれども、
ビルの
管理といいましても、
現実に例えば
ビルの掃除をするとか、あるいは
ビルの
テナントに
賃料の
請求をするとか、様々な
事務があって、一体どこまでを
自分がやらなきゃならないのかということがはっきりしないわけでございます。
それで、しかも非常に、徐々に非本質的な
義務になっていくだろうと思いますけれども、その例えば
賃料を
請求するために
請求書を機械的に何人ものその
賃借人に対して送付するというような
行為は、どうも必ずしもその
受託者自ら行わなくてもいいんではないかというようなことが、これは
共通認識としてむしろあるわけでございます。
そこで、むしろこの
関係をもう少しはっきりさせようということが
審議会でも議論されたわけでございまして、とりわけ、
現行法が
制定された当時に比べますと、いろんなことが
専門化されているわけであります。今申し上げましたのは非常に卑近な分かりやすい例でございますが、例えば特許についての
信託が行われた場合に、一体どういうところをどういう人がやるのが一番ベストの
管理であるかということは、なかなか現在では複雑にむしろなっておりまして、
専門のことは
専門の人に任せた方がいいというような思想的な転換もあるのではないかという議論があったわけでございまして、それを基本的にはやはり現代にマッチした形で取り入れようということで、必要な場合には
信託事務の処理を
第三者に委託する方がむしろ合理的であるというような考えに
信託法案においては立っているわけでございます。
そこで、
現行法では
信託行為に別段の
定めがある場合等が例外として
規定されておりますけれども、
信託行為に別段
定めがない場合であっても、
第三者に
信託事務の処理を委託することが
信託の
目的に照らして相当であるという場合には、この処理を委託することができるということに二十八条の二号でしておりまして、そういう意味では、
現行法と比べて
信託事務の処理を
第三者に委託することができる
範囲を一部拡大したということになるわけでございます。
具体的には、先ほども例で申し上げていることの裏返しになるわけでございますけれども、
受託者が自ら行うよりも他人に委託した方が費用や時間の点で合理的になる場合、例えば報告書を
受益者に送付する場合において、その送付
事務を
第三者に委託する、あるいは投資
信託の
テナントビルの広告というものを広告代理店に委託するような場合、こういうような場合は
典型的にこの条項に当たるわけでございまして、
信託行為に特に
定めがなくても、ある場合が実務上は通例ではございますけれども、ない場合においてもこういうようなことが認められるということで、事業者が行う
信託でない場合にもこういう必要があることでございますので、こういう手当てをいたしているわけでございます。