○江田五月君
法務省だけの範囲を超えているという趣旨のことですが、これは私どもも
行政争訟
制度というのを更にブラッシュアップしていきたいと思っておりますが、自民党の皆さんはもうこの点については本当に無理解で、でもないんです、実は。今の官房長官の塩崎さんとか、あるいは世耕さんとか林芳正さんとか、そういう点で非常に何か先手を切っていきたいという、そういう人もおられまして、我々の方がちょっとたじたじというところもあるんで、是非とも省庁を超えて、
法務大臣、ひとつエンジンになって官房長官辺りもつっついて、この
行政法
制度の改革を更に進めていただきたいということをお願いをしておきます。我々の方ももちろん頑張ります。
いじめの問題などの話。どうも文部科学省、いかぬですね。何かいじめの件数が減っているって、減らせといって
数字だけ減らして実態は何も解決付いてないとか。これに対して
法務省の方は、国、各県にずっとある
法務局、地方
法務局で人権救済がしっかり事案として挙がってきているということで、こういう問題も含めながら人権というのを一体どうするのか。人権擁護法案が大変まだ迷走中ですが、これをどうするのかという話もありますが、ちょっとこれも後に回します。
調達の問題も聞きたいと思いますが、これも時間があったらということにして、さて、
代理出産について伺います。
個別の事案についてどうするという
お話を伺おうと思っているのではありません。しかし、個別の事案の紹介だけちょっとしておきたいと思うんですが、私は、やはり法には血も涙もあるんだと、法の適用の結果、血も涙もないということになるならば、それはやっぱり立法府あるいは
行政府協力して、法に血も涙もあるような、そういう法に変えていかなきゃいけないと、それが私たちの仕事だと思うんですね。
この事案は、御存じの方も多いと思いますが、向井亜紀さん、本名は高田と言うんですが、高田延彦さん、お二人。これは当然、届出をした法律上の夫婦です。しかし、この亜紀さんは子宮がんで子宮を摘出するということになった。だけど子供が欲しいというので、放射線治療の際に御自身の卵巣を骨盤の外に移して、そして手術、治療をされたと。何とか自分たちの子供が欲しいというので、
日本ではなかなか難しい、アメリカに渡った。ネバダ州で御自身の卵子に夫の精子を受精をさせて、そしてアメリカの女性、この女性も結婚しておられる方ですが、と契約を結んで、いろんな、後々の養育の
関係、あるいは費用の
関係などなど、いろんなかなり厳重な契約を結んで、その女性の子宮に着床させて出産をさせたと。卵子二つで子供が二人というケースですね。
ネバダ州に法律、法
制度があって、その出産について
裁判所で、この出生の事実、この卵子の提供者である亜紀さんとその夫、精子の提供者、この二人が両親だという、そういう法律上の父母であることを確認をする、そして出生届、出生証明書、こういうものの
関係についての一定のことを命ずる、こういう主文の
裁判ができました。同様の
裁判類型というのはカリフォルニア州やマサチューセッツ州などでも存在していて、しかも、これは対世効、つまり、当事者の中だけの効力じゃなくて、一般的にもそういう、この出生の事実については
裁判所の決定が効力があるという、そういうことになっているということなんですね。
この
裁判が、これが
日本でどういうふうに扱われるかというのが問題で、民事訴訟法百十八条では、
外国の
裁判所の
確定判決は
日本でも公序良俗に反しない限り有効だということになっているので、この
判決を基に亜紀さんは品川区役所に出生届を出した。しかし
日本では、分娩の事実がないから、亜紀さんにですね、だからこれは母ではないということでその出生届を受理をしなかった。これに対して家庭
裁判所に審判を申し立てたら、東京家庭
裁判所がそれを却下をしたので、東京高裁に抗告をした。それで、東京高裁の、原審の審判を取り消して品川区長は受理をせよという、そういう決定を出したと。
こういう事案で、これは法律上いろいろな問題を含んでいますから、私は、
法務大臣と協議の上、品川区長が許可抗告を
最高裁にされるということがけしからぬと、そういうつもりはありません。これはしっかり
判断いただければいいと思うんですが、しかしこれ、なかなかこの決定は本当に苦労して書いておられて、この
外国判決の中身をきっちりと精査をした上で、これは
外国判決、
外国判決として扱うべきものであると。公序良俗という点については、ああだこうだいろいろありますが、やれ医学界がどうだとか法制審議会がどうとか、いろいろなことがありますが、そういう
意見があるにしても公序良俗に反するということはないと。
この過程で、私はこれは一つ
法務省に文句言っておきたいんですが、
大臣よりもむしろ
法務省にですね。この
外国、ネバダ州修正法とかその他の
制度について申立人がいろんな主張をするのに対して、決定で見るだけでいうと、
法務省の方は多分訟務の検事さんか何かが代理人で出ている、品川区長の代理人かな、出ているんですが、知らないって言うんですね。何で一体調べないんだと、ちゃんと。調べて、そしてこの
制度はこうなっているというふうにして、両方の間でそんなことを何か一々立証活動を一生懸命やらなきゃならないようなことをする必要あるのかと。まあ、もっとも人訴ですから立証しなきゃいけないでしょうけれども、というような気がしますが、いかにも不親切であり冷淡じゃないかと思いますが、それはまあ言っておくだけで、答弁要りません。
そういう
判決で、もう一つ問題は、準拠法というのがあるんですね、どこの法律で
親子関係決めるんですかと。この場合には、今言っているのは、亜紀さんと御主人とが親、それで二人の子が子、その
関係が成り立つかという話だから、これは両方
日本人だから
日本法だと。
日本法で言えば分娩の事実、だからこれは
親子関係ないと。さて、じゃ実際にその分娩をした女性とその夫かなと、その子二人と、この間に
親子関係あるのか。これは準拠法はアメリカ法だから、アメリカ法でこういうふうになって、現に
裁判まであるわけだから、そこでも
親子関係ないと。この子、現に子がいる。いるのに
日本でも
親子関係がない、アメリカでも
親子関係がない、どうなるのというのがこの
裁判所の
指摘なんですね。
これは、要するに国際
社会の法の谷間に落ちてしまったケースであると。そのことというのは重要なこれは
事情だと。そのことを踏まえて考えていくと、確かにいろんな違和感はあっても、準拠法ということを考えなきゃならないのかどうかということで、国際私法学者を中心に、民訴百十八条の要件のほかに準拠法の要件も満たさなきゃいけないという、そういう主張があったが、
裁判例や、それから戸籍実務、これは私見てないんですが、昭和五十一年一月十四日民二第二八九号
法務省民事局長通達というのがあるんだそうですね。これによると、身分
関係に関する
外国の
裁判所については民訴法百十八条に定める要件が満たされれば、これを承認するものだと、そういう民事
局長通達が出ていると。そのようなことまでいろいろ認定をした上で、公序良俗に反しない。したがって、この場合は、これは本件
裁判、これ、ネバダ州の
裁判は
外国裁判所の
裁判に該当して、民訴法百十八条の所定の要件を満たすから、同条の適用ないし類推適用により承認の効果が生ずることになり、したがって本件子らは抗告人の子であると確認されるから、出生届も受理されるべきであると、こういう決定になっているわけです。私は、これは筋道通っていると思います。
ですから、
我が国で今そういう事態も起きるんだと。それならば、このネバダ州あるいはカリフォルニアかそっちの方、アメリカのいろんな
制度も現実に世界を見るとあるわけですから、これはやはりそういう
制度を
日本で、もちろんそのままじゃなくて、それはいろいろ
日本流の知恵も働かさなきゃならぬでしょうが、そういうことを研究をして、やはりそういう場合にはこういう方法でちゃんと親子の
関係をつくろうと。
まあ、分娩という事実で、これ、父親については血統主義なんですよ。母親の方だけ分娩主義なんです。分娩主義と血統主義は同じだったんです、昔は。こんな変な分離が起こることなかった。しかし、今はそこが、分娩と血統というのが分離してしまう
時代が来ていますから。しかも、この戸籍上の
親子関係というのは、やはり血族婚を避けるとか、そういう重要な機能も果たすわけですから、これはやはり遺伝とか血統とかということを重視した、そういう
制度をひとつつくることを本気で考えたらどうだと思いますが、いかがですか。