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2006-10-26 第165回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年十月二十六日(木曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員異動  十月二十四日     辞任         補欠選任      小林 正夫君     千葉 景子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山下 栄一君     理 事                 岡田  広君                 松村 龍二君                 簗瀬  進君                 木庭健太郎君     委 員                 青木 幹雄君                 山東 昭子君                 陣内 孝雄君                 関谷 勝嗣君                 谷川 秀善君                 江田 五月君                 千葉 景子君                 前川 清成君                 松岡  徹君                 浜四津敏子君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君    国務大臣        法務大臣     長勢 甚遠君    副大臣        内閣府副大臣   渡辺 喜美君        法務大臣    水野 賢一君    大臣政務官        法務大臣政務官  奥野 信亮君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   高橋 利文君        最高裁判所事務        総局人事局長   山崎 敏充君        最高裁判所事務        総局経理局長   小池  裕君        最高裁判所事務        総局刑事局長   大谷 直人君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 英明君    政府参考人        警察庁生活安全        局長       竹花  豊君        法務大臣官房長  池上 政幸君        法務大臣官房司        法法制部長    菊池 洋一君        法務省民事局長  寺田 逸郎君        法務省刑事局長  小津 博司君        法務省矯正局長  小貫 芳信君        法務省保護局長  藤田 昇三君        法務省人権擁護        局長       富田 善範君        法務省入国管理        局長       稲見 敏夫君        外務大臣官房審        議官       西  正典君        文部科学省スポ        ーツ・青少年局        スポーツ・青少        年総括官     西阪  昇君     ─────────────   本日の会議に付した案件政府参考人出席要求に関する件 ○法務及び司法行政等に関する調査  (死刑執行状況に関する件)  (再犯防止対策に関する件)  (司法制度改革実施状況に関する件)  (代理出産における親子関係の確認に関する件  )  (学校内のいじめの実態把握対応策に関する  件)  (ヤミ金融事犯取締状況に関する件)  (諸外国における国際組織犯罪防止条約締結の  ための国内法整備状況に関する件)     ─────────────
  2. 山下栄一

    委員長山下栄一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十四日、小林正夫君が委員を辞任され、その補欠として千葉景子さんが選任されました。     ─────────────
  3. 山下栄一

  4. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 松村龍二

    松村龍二君 まず、長勢法務大臣、御就任おめでとうございます。また、副大臣政務官もそれぞれ御就任されまして、おめでとうございます。  長勢大臣におかれましては、司法制度改革のときにも中核的な役割を果たしておられ、また特に裁判員制度裁判官国民裁判員の数をどうするといった問題等について大変御奮闘しておられたという記憶を持っておりまして、そのようなベテランの方に法務大臣になっていただいたと、心から再度お喜び申し上げる次第でございます。  さて、今回の内閣は、美しい国日本、また世界一安全な国日本復活を目指すということを言っておられますが、治安が安定しているということは非常に大事な問題であると思います。もう、最近の世相はテレビ、新聞マスコミを見るまでもなく、大変に皆、国民が憂慮しているところであろうと、こういうふうに思います。  そういう中で、死刑の問題について私取り上げたいと思うんですが、平成七年にオウム事件が発覚いたしまして、富士のすそ野にオウムの本拠地があるということで、そこに捜索が入って松本智津夫も検挙された。それから、それが地下鉄にサリンをまいた、五千人近くの方が傷を負ったと、あるいは死者がたくさん出たといった問題、あるいは弁護士の殺人事件松本サリン事件等が暴き出されまして、非常にこのような犯罪を犯す人間については当然に死刑になるだろうというふうに国民は常識的に判断しておりましたところ、なかなか裁判が手間取りまして、今年ようやくその首魁について判決確定するといった状況、それまでに実行犯の何人かは死刑判決が出ておる、しかしその刑の執行を受けたということを聞いていないわけです。  やはり、この死刑制度についていろいろな位置付けがなされると思いますけれども、とんでもない犯罪をした場合には死刑になるということは、小学生に至るまで、国民日本法体系について信頼を寄せる原因に、状況になっているんじゃないかな、こういうふうに思うわけです。  その意味におきまして、前法務大臣が、十一か月以上勤務しておられたのに死刑執行について執行書へサインされなかったということでございます。これについては、法務大臣就任早々マスコミからいろいろ質問を受けられたり、また先週は、二十日には衆議院でも石関議員質問したというふうに承知しているわけでございます。  そこで、質問に入っていくわけですが、長勢法務大臣は先日のごあいさつの中で法務行政に対する思いを述べられましたが、そのトップに、世界一安全な国日本復活に向けて全力を挙げられる旨取り上げられ、犯罪者を早期に逮捕し、迅速な裁判を行って、適正な科刑を実現し、刑事システム強化に努めると発言されておられます。適正な科刑とは、執行段階においてもきちんとした対応が求められるということでもあると考えますが、適正な科刑を実現することとの関連において、死刑執行についてどのように認識されておられるのか、お伺いします。
  7. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) おはようございます。  刑事法制又はその執行がきちんと行われることが治安基本でございます。それを所掌する役所として、そのために全力を挙げてまいりたいと思っております。  さて、死刑の件でございますが、私も就任以来、私のホームページにもたくさんの意見が寄せられました、死刑に関してですね。大部分が、死刑執行については早く署名しろという意見が大多数でございまして、そういう国民の声かなと伺ってはおるわけでございますが、死刑というのは人の生命を絶つことになりますので、極めて重大な判断を要する問題だと思っております。  一方で、この法治国家において、確定した判決を確実に実行するというのは基本でありますから、このことは重く考えなければならないことでございます。  こういう観点から、刑事訴訟法において、死刑執行について規定が設けられておるわけでございますので、その法に沿って慎重に判断をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  8. 松村龍二

    松村龍二君 まず法務省刑事局長に、手続的な現在の法体系について伺うわけですが、死刑判決確定から執行までの具体的手続はどのようになっているのか、お伺いします。
  9. 小津博司

    政府参考人小津博司君) お答え申し上げます。  死刑判決確定いたしますと、その後、関係の検察庁の長から死刑執行に関する上申を待ちまして、確定記録を取り寄せます。そして、法務省内の関係各部局におきまして、判決及び確定記録の内容を十分精査いたしまして、刑の執行停止再審非常上告事由あるいは恩赦相当とする情状有無等につきまして慎重に検討し、これらの事由等がないと認められた場合に初めて法務大臣において死刑執行命令を発することとなるわけでございます。  なお、検討の過程におきまして、再審請求恩赦出願等がなされている場合にはこれも十分参酌されることになるということでございます。
  10. 松村龍二

    松村龍二君 昨今、新聞を見ておりますと、死刑判決というのは非常によく目立つわけですね。マスコミ解説でも、一人を殺した人間はなかなか死刑にならないんだと、複数以上は何とかと、いろいろ解説をされるわけですが、そういうような話をクリアして恐らく裁判官としては判決を下されるんだと思うんですが、死刑判決というのは非常に昨今目立ちますね。  そういう意味におきまして、死刑判決がどれぐらいあるのかということは、今お手元に資料として配付しておりますが、これは最高裁の司法統計年報によるものでございます。平成八年から十一年までは十名以下でございましたけれども、平成十二年以降、第一審において十名以上の判決があると。それから、控訴審平成十三年に十六人、十五年、十六年、十七年と、控訴審死刑判決がございます。これ、足すものではなくて、第一審においてこれが控訴されて判決というようなことでの、そういう関係にあると思いますが、上告審においてはこのような数字でございまして、死刑判決がかなり最近よく行われているというふうに思うわけでございます。  そこで、それでは、確定した数はどうなっているのかということで、近年におきます死刑確定者数はどのようになっており、その結果、現在執行されていない死刑確定者は何人いるのか、また、そのうち死刑判決確定してから六か月を超えている人は何人いるのか、法務当局にお伺いします。
  11. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 最近十年間の死刑確定者数でございますけれども、平成九年が四名、十年が七名、十一年が四名、十二年が六名、十三年が五名、十四年が三名、十五年が二名、十六年が十四名、十七年が十一名、本年十八年は九月末現在で十三名でございます。  死刑判決確定して未執行の者は、本年九月末現在で合計九十名でございます。また、そのうち死刑判決確定後六か月を超えた者につきましては全体で八十二名でございますが、このうち現在及び過去に再審請求等を行ったことのある者が相当数含まれていると、こういうことでございます。
  12. 松村龍二

    松村龍二君 近年における死刑確定者数がこの三年間だけでも三十八名と。一方、死刑執行された数は、矯正統計年報によりますとこの三年間では四名、四件、平成十四年は二名と、このような数でありますから、先ほどお話のありました九十ないし八十二名から、このような数の死刑執行者であるということで、この九十名ないし六か月以上八十二名という数は大変な数ではないかなというふうに御指摘さしていただきます。  それでは、現時点において、死刑確定後、最も拘置期間が長くなっている人は何年ぐらいなのか、法務当局に伺います。昔、帝銀事件ですか、のときに平沢さんが非常に死刑執行されない、確定した後、死刑執行されないという記憶がありますけれども、何年ぐらいになるでしょうか。
  13. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 特定の案件について直接お答えするということは少し差し控えさしていただきたいのでございますけれども、拘置期間が二十年を超えている者が数名いるわけでございます。これらの者につきましては再審請求が何度も出ている等の事情があると、こういうことでございます。
  14. 松村龍二

    松村龍二君 新聞報道によりますと、池田小学校事件の犯人が判決確定後、短い期間内に執行されていたようでありますが、死刑確定後、執行までの平均期間はどれぐらいになるのか、法務当局に伺います。
  15. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 平成八年一月から平成十七年十二月までの十年間におきまして死刑執行された者につき見てみますと、判決確定後、執行までの平均期間は約七年五か月でございます。
  16. 松村龍二

    松村龍二君 刑事訴訟法を見ますと、再審請求等がなされている場合や受刑者が心神喪失の状態にあるときや懐胎しているときには死刑執行は停止されていると。法律で執行が停止される場合ありますけれども、これを除きますと、執行までの期間が、今七年五か月というお話でありましたが、長くなっているという背景としてはどういう理由が挙げられるのか、法務当局にお伺いいたします。
  17. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 刑事訴訟法第四百七十五条第二項は、死刑執行命令裁判確定の日から六か月以内にしなければならない旨規定しておりますが、裁判執行とはいえ、事は人命を奪う刑罰の執行に関することでございますので、すべてについて機械的に六か月以内に執行することが妥当を欠く場合も考えられ、その執行につき慎重を期すべきという趣旨から、同項のただし書におきまして、上訴権回復再審請求非常上告恩赦出願等がなされたような場合には、その手続が終了するまでの間はこの六か月の期間に算入しないことが規定されております。  判決確定の日から執行までに相当期間を要しているのも、再審請求恩赦出願等を再々行っている者がある等の事情により、その執行に慎重を期していることによるものでございます。
  18. 松村龍二

    松村龍二君 答えにくい質問かと思いますが、死刑執行を受ける者の選択はどういう基準に基づいているのか、法務当局に伺います。先ほど申しましたように、サリン事件実行者死刑判決が下っておると。しかし、首魁については決まっていないというようなときに、まあ順番が回ってこないとか、いろいろな判断基準があろうかと思いますが、お伺いいたします。
  19. 小津博司

    政府参考人小津博司君) 先ほど御説明申し上げましたように、死刑判決確定した場合には法務大臣命令によってその執行をしなければならないわけでございますけれども、原則といたしまして死刑判決確定した順に検討を行いまして、個々の事案について関係記録を十分に精査し、刑の執行停止再審非常上告事由あるいは恩赦相当とする情状有無等につき慎重に検討いたしまして、これらの事由等がないと認めた場合に初めて執行命令が発せられるということで、慎重かつ適正に対処しているところでございます。
  20. 松村龍二

    松村龍二君 拘禁ノイローゼ発症等危険性を考えますと、判決確定してなお長い期間拘禁しておくことは死刑確定者にとってはかえって残酷であるとする意見もありますが、この点についてはどのように考えておられるのか、法務当局に伺います。
  21. 小津博司

    政府参考人小津博司君) ただいま委員指摘のような意見もあるということは私どもとしても承知しているところでございます。  他方判決確定の日から執行まで相当期間を要しているのは、先ほど申し上げましたような事情によりましてその執行に慎重を期しているということでございます。
  22. 松村龍二

    松村龍二君 そこで、大臣にお伺いするわけですが、死刑制度廃止を求める団体などは、国際的な動向として世界の半数以上の国が死刑廃止していると訴えております。  一方、国内を見ますと、平成十六年十二月に行われました世論調査では、八一・四%の人が場合によっては死刑もやむを得ないと答えております。これは過去最高の数値ということであります。  他方、前回の平成十一年九月に行われた世論調査と比較すると、どんな場合でも死刑廃止すべきであると答えた人の割合は低下しております。八・八%から六%に下がっております。また、死刑制度の将来の存続についても、将来も死刑廃止しないと答えた人の割合が五六・六%から六一・七%に上昇しておりまして、状況が変われば将来的には死刑廃止してもよいと答えた人の割合が低下いたしております。三七・八%から三一・八%という結果が出ているのであります。  日本という国は、古来、あだ討ちという物語もありますように、国民的な感覚、今、安倍内閣日本伝統日本的なものを重視するというようなことも述べておられますけれども、日本人のそのような今世論調査に表れた数字は、日本人秩序観あるいは総合的な観点からそのような判断をしている結果が出ているものというふうに思うわけであります。これらの世論調査の結果を踏まえた上で、死刑制度の存廃について法務大臣所見をお伺いします。
  23. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 死刑制度をどうするかということは、我が国刑事司法制度の根幹にかかわる大変重要な問題でございます。  今、日本伝統というお話もありましたが、いずれにいたしましても、国民世論動向に十分配慮しながら、社会の正義の実現、また治安の維持等々の観点から慎重に判断をしていかなきゃならないと思います。  御指摘のとおり、国民世論の多数は極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないという考えが多数でございます。昨今またいろんな凶悪犯罪が発生をしておると、こういう状況を考えますと、著しく重大な凶悪犯罪を犯した者について死刑を科するということもやむを得ないのではないかと考えておるわけでありまして、今死刑廃止するということは適当ではないというか、慎重に考えなきゃならぬというふうに考えております。
  24. 松村龍二

    松村龍二君 死刑については誤判危険性がよく指摘されて、いったん間違ったときには取り返しが付かないというような表現が行われるわけで、そういうことから廃止を求める声がありますが、しかし、日本の場合は欧米の陪審員制度と違います。また、現在、日本司法が非常に慎重であるというようなこと、信頼性があるというようなことから、誤判の問題については日本では諸外国に比して少ないんじゃないかなというふうに思いますが、論理的には懲役刑についても同様の問題があるはずであります。間違って懲役刑務所に過ごしたということになれば、その人の一生にとっては取り返しが付かないということは同じでございます。  そういう意味においては誤判防止に努力を傾注すべきであり、捜査や裁判の一層の適正化や充実を図っていくべきものと考えますが、この点について法務大臣所見をお伺いします。
  25. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 死刑制度については、廃止という御意見の方もおられるわけで、今御指摘のような論拠を持っておられる方もおられると思います。  死刑に限らず、裁判に誤審があってはならないということは言うまでもないことでありまして、それに法務当局も、また法曹にかかわる裁判官を始め皆さん方全力を挙げておられるわけですし、特に我が国は三審制を取っておりますし、また再審制度を含めて非常に慎重な手続を取っておるわけでございますし、また確定した後も慎重な、執行に至るまで、先ほど刑事局長説明いたしましたような、慎重な配慮をしておるわけでございます。  そういうことを踏まえて、かつ、昨今凶悪な犯罪が増えておるということも含めますと、今おっしゃったような観点から廃止をするということは必ずしも適当ではないというふうに考えます。
  26. 松村龍二

    松村龍二君 大臣の御判断、また御決意はよく伝わりましたので、これぐらいで質問を終わらしてもよろしいかと思いますが、最後にもう一つお伺いします。  司法判断確定しているのに行政側執行しないということは行政の怠慢とも言えるのではないか。死刑執行につきましては、先ほど説明がありましたように、刑訴法四百七十五条において、死刑執行法務大臣命令による、また四百七十六条においては、法務大臣命令があったときは五日以内に執行しなければならないというふうにされております。  死刑執行についてはひとえに法務大臣判断によるところとなっております。被害者遺族感情や一般の国民感情にとっても死刑判決確定したということだけで足りるものではありません。死刑に至ってこそ完結を迎えるものと思います。また、国家のありようから見ても、確定した判決執行が適正に厳正に行われてこそ法治国家と言えるのではないかと、こういうふうに思います。  私も、江戸時代科刑というちょっと本を読んだことがありますが、日本のその時代においては、被害者報復意識、これを満足させるを大変な重点が置かれていたというふうにその記事の中に書いてございました。江戸時代には、死刑、遠島、島流し、それから軽い犯罪等については大きなお店のでっちに預けて周りの兄貴分から矯正してもらうといったのが原則的な日本科刑システムであったというようなことで、私の福井の田舎においても、小さいころ銭湯に行きますと、科刑、斬首があった話をそこの老人から聞いたこともございます。  そのようなことで、前大臣が確信的に死刑執行しなかったようにうかがわれるわけですけれども、先ほどの数字から見ましても、日本治安を全うする、また少年に対して勧善懲悪といいましょうか、悪いことをしたら報いがあるということを教え込む意味でも死刑執行が厳正に行われるということが大事であるというふうに思いますが、重ねて法務大臣の見解をお伺いします。
  27. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 科刑報復という観点からだけ考えられるべきものかどうかは議論のあるところだろうと思いますが、被害者のことも心情として配慮をしなければならない大事な問題だと思います。  いずれにいたしましても、大変気の重い話でございますが、法務大臣は法の執行責任者という立場にあるということを十分認識をして判断をしてまいりたいと思っております。
  28. 松村龍二

    松村龍二君 次の質問に移りますが、私も参議院の法務委員会に長らくお世話になっておりましたが、この一年間法務委員会離れておりました。ちょうど一年前、刑務所の問題について、過剰収容状況があるということで、予算も計上されて施設増強等にも努めてきたと思うんですが、最近の収容状況、その対策について法務大臣にお伺いします。あわせて、刑務所内におきます矯正処遇のうち、性犯罪等について改善指導の効果的な実施にどのように取り組んでいくのかもお伺いします。あわせて、刑務所からの仮釈放者の所在不明の問題、就労先の確保の問題、民間の更生保護施設では対応し切れない場合があるという問題等を踏まえ、社会内処遇強化のためこの間どれほど進展してきたのか、施策をお伺いいたします。
  29. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 刑務所過剰収容の問題は御指摘のとおりでございます。  もう収容者が年々大きく増大をしてまいっておりまして、受刑者平成十七年度中に約三千六百人増加をするという状況にございます。平成十八年七月末現在でもう七万七百人という状況で、いずれ八万人になるだろうということが予測されるわけです。現在の収容率も一一六%という状況でありまして、大変厳しいものがございます。このため、施設の増築工事等々をやってまいりまして、平成十七年度末には約千八百人分の収容棟などが完成をしましたし、これからPFI手法などを活用いたしまして、平成十九年度末までに約九千人収容能力を強化をすることにいたしておりまして、これが完成すれば少しは緩和に役立つ、大きく役立つと、このように期待をいたしております。  しかし、まだまだ今後の増加傾向を考えますと大変な状況でありますし、施設だけではなくて刑務官等の増員も併せてやらなきゃなりませんので、大変大きな課題だと思っております。是非、先生方の御支援をよろしくお願いいたしたいと思います。  次に、刑務所における改善指導についての御質問がございました。  改善指導は、受刑者犯罪の責任を自覚させ、社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるために行うものでございますけれども、特に薬物に対する依存があることなど、犯罪につながる特別な事情を有することにより、改善更生及び円滑な社会復帰に支障が認められる受刑者に対しては、特別改善指導として標準的なプログラムに基づき薬物依存離脱指導、暴力団離脱指導、性犯罪再犯防止指導、被害者の視点を取り入れた教育、交通安全指導、就労支援指導を実施をいたしておるところでございます。  これはなかなか苦労の要る仕事でございますが、プログラムの充実や指導者の育成に努めるとともに、専門的知識や経験を生かした指導、援助をしてくださる民間の方々にも御協力をいただくなどして充実を図っておるところでございますので、今後とも効果的な改善指導実施に努めてまいりたいと思っております。  また、仮釈等の所在不明者の問題についてお話がございました。  一昨年から昨年にかけて保護観察対象者による重大再犯事件が多く発生をいたしました。こういうこともありまして、法務省においては保護観察における再犯防止機能を強化することといたしております。まず、保護観察中に所在不明となった者の所在調査強化をすることとし、昨年十二月から警察の協力も得て所在不明者の発見に努めており、平成十八年七月末現在で所在不明中の仮釈放者は前年同月比約百八十名減りました。それでも今現在四百三十三名でございます。また、対象者の就労を確保し、生活の安定を図るための取組を強化をすることとして、今年の四月からは厚生労働省と連携をして職場体験講習の実施、試行雇用奨励金の支給、身元保証制度を始めとする総合的な就労支援対策実施しておるところでございます。  さらに、主として刑務所からの仮釈放者、あるいは少年院からの仮退院者の改善更生と自立を目的としていわゆる自立更生促進センター構想を今推進しておるところでございますし、こういうことを含めて、今後ともこの再犯防止また保護観察処分の強化対策に努めてまいりたいと思っております。
  30. 松村龍二

    松村龍二君 どうもありがとうございました。  終わります。
  31. 岡田広

    ○岡田広君 自由民主党の岡田広です。松村委員の関連でお尋ねをしたいと思っております。  今、松村委員からも治安が安定していることが大事ということであり、長勢大臣のごあいさつの中でも世界一安全な国日本というごあいさつがありましたが、平成元年版の犯罪白書では、当時の我が国治安に関し、刑事政策上、今後の課題が少なからず存在すると指摘した上で、戦後の社会環境等の改善に加えて、刑事政策における総合的な政策が功を奏して、世界で最も安全な国の一つになったと書かれてあります。世界一安全な国日本という神話、こういう時代であったろうと思いますが、しかしその後、国民の生命、身体、財産等を侵害する一般刑法犯の認知件数は、平成八年以降毎年戦後最多を更新し、十四年には戦後最多の約二百八十五万件を記録をしています、御承知のとおりであります。検挙率も低下しまして、十三年には戦後最低の一九・八%を記録をしています。十五年からは減少に転じまして、数字は申し上げませんが、戦後あるいは十年前に比べるとこの認知件数は相当高い水準にあると思われるわけであります。  こうした情勢を受けて、十五年十二月の犯罪対策閣僚会議において、犯罪に強い社会の実現のための行動計画、世界一安全な国日本復活を目指してを策定をしていろんな政策を実行しているということであろうと思います。さらに、十七年の十二月、犯罪から子供を守るための対策に関する関係省庁連絡会議が、犯罪から子供を守るための対策を策定をしました。いろんな対策があるだろうと思いますが、今日は、この子供が被害者となる犯罪への対策についてお尋ねをしたいと思っております。  昨日、長野で行方不明になっていた小学六年生の女子が無事保護されました。大変よかったなと思っております。  しかし、最近、秋田県の男子及び女子殺害・死体遺棄事件のように親が子をあやめた事件、あるいは広島市の女子殺人・死体遺棄事件、奈良県の女子誘拐殺人事件などのように子供が被害者となる凶悪な事件が多発しております。犯罪白書によりましても、児童虐待による殺人や傷害等の検挙件数は平成十一年以降増加傾向にあるわけであります。このような子供が被害者となる事件については、法務省だけでは解決できないわけであります。関係省庁が協力して省庁横断的な取組を行うことが重要であると考えておるわけであります。  新しく法務大臣になられました長勢法務大臣は、前小泉内閣の下で前安倍官房長官を支えて官房副長官として官邸にあって、全省庁を統括をしながら指導し、小泉改革を進めてきた私は中心的な人であると考えております。今までの中でも、更にこの犯罪対策についても長勢法務大臣の手腕を期待をしているところであります。  そういう中で、この問題に対する関係省庁との協力を踏まえた法務省の取組について、まず法務大臣にお尋ねをしたいと思います。
  32. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 子供の犯罪をめぐる状況あるいは政府の取組の経過につきましては、今先生お話しのとおりでございます。こういう問題に対しまして、国民の安全、また安心を確保していくことは大変大事な課題になっております。  法務省としても、特に再犯防止対策と、こういう方々、こういう犯罪を犯す方々が再犯によって子供さんに大きな被害を与えるということが度々出ておりますので、特に警察当局とも連携をしてこういう問題に今力を入れております。  平成十七年六月から刑務所及び保護観察所において、十三歳未満の子供を対象とする暴力的性犯罪により受刑した者の出所情報等を警察に提供し、警察において出所者による再犯防止に向けた措置をとることができるようにいたしました。また、矯正局及び保護局において、受刑者仮釈放者及び保護観察付刑執行猶予中の者を対象とする性犯罪者処遇プログラムを策定をし、平成十八年度から実施しております。こういう問題に今一生懸命取り組んでおりますし、また、当然、捜査あるいは処分、これは警察と連携をして厳正に行うということを一生懸命取り組んでおるところでございます。  子供さんをめぐるこういう問題は、法務省だけではなくて、例えば厚生労働省あるいは文部科学省等々いろんな役所も総合的に検討しなきゃならぬ、またその情報連絡等もきちんとやっていかなければならないということは先生御指摘のとおりだと思いますし、我が国が非常に安全な国であったのは、こういう治安当局を始めとするものだけではなくて、それを支える家族、社会というものがあって、そういう社会規範の中でこういうものが生まれてきた部分もありますので、こういうことも含めてひとつ、健全な美しい国をつくるために政府を挙げて取り組んでいかなければならないと思います。
  33. 岡田広

    ○岡田広君 家族、社会のきずな、人間関係が希薄化になっている、こういう今日でありますが、是非、世界一安全な国日本、これをつくるためになお一層の努力をお願いをしたいと思っております。  子供が被害者となる事件が発生する一方で、子供が加害者となる事件について見ますと、少年刑法犯の検挙人員の人口比は戦後全体を通じて高い水準にあります。また、その内容を見てみますと、十四歳未満の低年齢の少年による凶悪な事件も後を絶たない状況にあるなど、現行の法制度では十分に対応できてはいないのではないかとの疑問もあるところであります。  そういう中で、現在国会に提出されている少年法改正案が出されたんだろうと思いますが、このような少年非行の現状に対応したものと、これは承知をしているわけであります。内容については、また法案が参議院に送付されてから詳しく議論があるんだろうと思いますが、この少年法改正、これの意義、重要性、そして大臣がこの少年法改正案に懸けた決意等、国民に分かりやすくお話をしていただきたいと思っております。
  34. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 少年刑法犯の検挙人員というものはここ数年、約二十万人前後で推移をしておりますが、少年人口が減少する傾向にあるということから、委員指摘のように、少年人口千人当たりの少年刑法犯検挙人員というものがここ数年増加傾向にあります。平成十八年は若干減少しておるようでありますが、戦後全体を通じて見ていても大変に高い水準にあります。  また、佐世保市内における小学生による同級生殺人事件など、十四歳未満のいわゆる触法少年による凶悪重大な事件も発生をしておるわけで、少年非行というものは大変に深刻な状況にあると思っております。  法務省としては、このような現状を踏まえて、少年が立ち直って、そして社会に戻っていくために一層適切な処遇等を行うことが重要と考えておるわけでありまして、今回の御提案申し上げております法整備は、このような観点から、触法少年、虞犯少年等々、少年非行の事案の解明をより十全なものとし、個々の事案に応じた処遇の選択を可能にするためのものであります。是非この法案の早期成立をお願いをしたいと思っておりますので、それを踏まえて我々としてもこの問題に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。  先ほど、十八年に若干減少したと申し上げましたが、十六年から少し、若干減少しております。失礼しました。
  35. 岡田広

    ○岡田広君 少年法改正については、法案が参議院に送付されてからまた議論をさせていただきたいと思っています。  次に、受刑者の再犯防止関係についてお尋ねをしたいと思っております。  受刑者の再犯を防止して円滑な社会復帰を図るためには、職業に就かせることが重要なことは言うまでもありません。このため、受刑者に対し手に職を持たせるという観点から、職業訓練を充実させるべきであると考えます。  衣食足りて礼節を知るという言葉がありますが、着ること、食べること、そして住、住まいのこと、衣食住、これはほぼ満たされてきたと、私は日本社会ではそうだと思っていますが、私は新医職充という言葉をよく使っています。医というのは医療、医学、健康ということです。職は職業の職ということです。そして、充は充実の充。今、六十の手習いという時代ですが、今八十の手習い、そういう時代にあっても、手に職を持っている、技術力を持っている、これは健康になり、そして充実した生活が送れるという、そういうことになるんだろうと、私はそう思っているわけであります。  職は大変重要なことであります。これは受刑者の人たちでも、有職者と無職者によっては再犯率が全然違うわけであります。技術を持たせて職に就かせる、大変重要なことでありますので、この職業訓練の充実について刑務所において具体的にどのように今後取り組んでいくのか、お尋ねをしたいと思っております。
  36. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 職業訓練の充実につきましては、委員指摘のとおり、円滑な社会復帰をする上で極めて重要なものと、こう考えております。  その上で、本年五月から施行されましたいわゆる受刑者処遇法におきましては、作業は、できる限り、受刑者の勤労意欲を高め、これに職業上有用な知識及び技術を習得させるよう実施するものとすると、こう定められ、さらに、職業訓練を作業の一環として実施すべしという方向が示されております。  今後、当省といたしましては、この趣旨に即しまして職業訓練の充実に努めてまいる所存でございます。  ちなみに、平成十八年度を例に取りまして具体的な中身をちょっと説明さしていただきますと、十八年度につきましては、ホームヘルパー科とフォークリフト運転科を充実させるとともに、ビル設備管理科、販売サービス科、さらには農業園芸科等を新設いたしました。  今後とも、雇用情勢等の動向を慎重に踏まえながら、受刑者の希望あるいは適正を十分考慮いたしまして、円滑な社会復帰につながるような職業訓練の充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  37. 岡田広

    ○岡田広君 是非、技術力を身に付けさせるということは大変重要なことですから、積極的に、いろんな教育科目があるだろうと思いますが、特に職業訓練、技術訓練というのに重点を置いていただきたいと思っております。昨年でしたか、安城市で仮釈放中の方が、更生保護施設に入って、ハローワークに何日も通ってなかなか職業が見付からないということで、刃物を買って子供を殺害するという痛ましい事件も起きたわけであります。是非お願いをしたいと思っています。  今、刑事施設の中での職業訓練の状況について御答弁いただいたわけですけれども、犯罪をした者を真の意味で立ち直らせるためには、刑事施設の中だけではなくて、刑事施設を出てからの支援も大切であるわけであります。私としては、社会内で犯罪者を立ち直らせるには仕事に就かせることが何よりも、さきに述べましたように重要であると考えております。特に、犯罪や非行をした人に対する就労の支援を中心に、保護観察の充実強化にどのように取り組んでいくのか、これは水野法務大臣にお答えをいただきたいと思っております。
  38. 水野賢一

    ○副大臣(水野賢一君) 先生御指摘のとおり、犯罪や非行を犯した者を更生させていくためには職に就かせて生活を安定させるということは極めて重要でございますし、現実に再犯などの統計を見てみても、職を持っている者に比べて無職の者の方の再犯率の方が大体五倍ぐらい高いとか、そういうようなデータもございますので、この点は従来から、公共職業安定所の就職あっせんを必要とする者については、保護観察所長から公共職業安定所長に対し個別に職業紹介の依頼を行ったりする連携というのは、個別なものはあったんですけれども、今のような御指摘もございますので、本年度から、今度は厚生労働省と連携した総合就労支援対策を開始をして、無職の方に対しての、職に就かせるために一段と強力な支援を実施することにいたしました。  これでは、保護観察所とか公共職業安定所などで構成する就労支援事業協議会というものを設置をいたしまして、まあ従来個別的にやっていたものをより総合的、計画的に支援対象者を選定をしながら、関係機関が有する様々な支援策を活用して支援をしていく、実施をしていくということでございます。  そうした結果、現在のところ、公共職業安定所への求職登録件数や就職件数ともに昨年度に比べて大幅に増加をしているところでございますし、こうしたことを今後もしっかりと、より進めていきたい、そういうふうに考えてございます。
  39. 岡田広

    ○岡田広君 御答弁いただきましたが、厚生労働省とも共管をしまして、今年から厚労省で試行雇用奨励金ということで、刑務所出所者等の雇用をした企業には、月額五万円掛ける三か月ということで、六十七人分という予算一千五万円、厚生省は今年度予算で予算措置をしていますが、九月三十日まではこれまだ一例もありませんでしたが、十月になって二件、この利用があったということでありますから、これ六十七人分、是非満額使い切るように、そしてさらにこの予算も増やしていただきたいということで、厚労省の方にもお願いをしたいと思っております。  さらにまた、協力雇用事業所、これ、今年の四月現在では約五千七百社でしたか、こういうところも増やしていただいて、その企業の業種を見ますと、建設業が半分以上あります。製造業、サービス業がなかなか少ないのが現状でありますから、建設業は今公共事業、こういう改革の中で大変厳しい状況の中で、製造業とかサービス業、ほかの業種にも広げていくという、こういうことも是非お願いをしたいと思っております。  正にこれは、安倍内閣が掲げる再チャレンジできる、受刑者の再チャレンジということで就労に力を注いでいただきたいということをお願いをしたいと思っております。  次に、保護司の実費弁償金についてお尋ねをしたいと思っております。  保護観察は、御承知のように、保護観察所の保護観察官が地域に精通した保護司とともに協働してこれに当たっているわけであります。最近、人と人とのつながりが希薄になり、家族も親の観護能力の低下が叫ばれて久しい中で、地域を基盤とした民間人であることの利点を生かした保護司の活動がますます難しくなっていく、これが現状だろうと思います。  なかなか保護司のなり手も最近少なくなりました。人数とか申し上げませんが、定員に対して相当現在の人数は減っていると思いますけれども、それとともに、あるいは更生保護女性会、全国二十万人いると言われておりますが、この高齢化、そしてもう一つはBBS連盟の組織、全国五千、約五千人いるということでありますが、残念ながら私の茨城県は二十五名しか調べてみましたらおりません。そういう中で、やっぱり若いときからこういう活動に参加をさせる、これもとても私は大事なことであろうと、そう思っているわけであります。  更生保護のあり方を考える有識者会議報告書によりますと、保護司の充足率は十六年一月から下降傾向にあり、従来からの保護司のネットワークを利用した保護司適任者の確保のみでは限界に達している地域もあるということで、ある地域では公募制にしていると、こういう地域も出ているわけでありますけれども、正にこの保護司制度の必要性、あるいは保護司が地域社会の中でいかに地域貢献をしているかと、こういうこともPRに努めていただきたいというふうに考えているわけであります。  そして、お尋ねしたいことは、保護司が実際に事件を担当した際の負担額に見合う実費が支弁されていない現実があるわけであります。保護司組織に対する国費の支給も可能にしていかないと、今、市町村合併で、それぞれ市や町や村が出していたこの助成金もカットをされようと。ある市町村では一律二割カットとか、この助成金について見直しが行われているそういう状況の中でありますから、是非この保護司に対する実費弁償金の現状、そして今後の取組方について、これも副大臣にお尋ねをしたいと思っております。
  40. 水野賢一

    ○副大臣(水野賢一君) 保護司の方々は、保護司法に基づいて、現在無給でボランティア活動を行っていただいているというような形になるわけです。一方で実費弁償は払われるわけでございますが、その額というのは、今年度の額が約五十二億七千万円の予算が実費弁償金として計上されてございます。  これについては極めて重要なものでございますので、平成十九年度の概算要求におきましても、保護観察処遇の一層の充実を図るとともに、保護司会活動に対する支援を充実させるために約六十五億五千万円を要求したところでございますし、今後もこの保護司の方々の活動を支援し、その御労苦に報いるためにも実費弁償金の充実に努めていきたいというふうに考えてございます。
  41. 岡田広

    ○岡田広君 それでは、外国人の不法滞在問題について最後にお尋ねをしたいと思います。  実は奥野政務官にもお尋ねをしたかったんですが、もう時間が来ておりますので、最後に大臣にお尋ねをして、質問を終わりたいと思っております。  この在日外国人の不法滞在問題については、もう御承知のとおりでありますが、不法滞在者半減プロジェクトということで平成十六年一月一日から始まりました。施策の開始後二年間で約三万人の減少とのことでありますけれども、この半減の目標が本当に達成できるのかどうか、また今後、目標達成のためにはどのような具体的な対策を講じていくのか、最後に法務大臣にお尋ねして、質問を終わりたいと思っております。
  42. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 不法滞在者を半減するという目標を持ってずっと取り組んでまいりました。今二年間でどうにか三万人減らしたわけでありますが、なおこれから強力に進めていかなければ目標達成できませんので、あと二十年までこの目標の達成に向けて全力を挙げて、全職員を挙げて邁進をしてまいりたいと思っております。  これを減少させるのは、不法滞在者をまあ分かりやすく言うと摘発をして、収容して、強制退去をさせるということでありますが、従来、人が足りない、また収容施設が足りないということで、警察の方々と連携しながらやるにしても、実際やろうにもやれないということがありました。  そういうこともありましたので、まずこの摘発体制を、警察との連携した摘発体制を強化をすると同時に、収容施設の増員、増設を図ってまいりまして、本年度は成田空港における収容施設の収容定員を三百五十名に大幅に拡充をいたしました。また、現在、大阪入国管理局及び名古屋入国管理局の収容施設拡充を伴う庁舎の新営工事を行っておりますので、これらによって効果的な摘発体制を組むことができるかなと思っておる次第であります。  また、もう一つは、不法に入国をしないようにする体制を強化をしていかなければなりません。十九年度には、さきの国会で成立した改正入管法による個人識別情報を活用した上陸審査の導入が予定されておりますので、これが導入されたときには相当この不法入国の阻止に大きな効果が発揮できるんではないかと。  こういうことも含めまして、今後、不法滞在者の半減という目標を確実に達成するように全力を挙げてまいる決意でございます。
  43. 岡田広

    ○岡田広君 大臣、副大臣法務当局からそれぞれ御答弁いただきましたが、いろんな課題、問題あろうと思いますけれども、是非、前小泉内閣で官房副長官として改革を進めてきた長勢大臣、全省庁に人脈を持っている方でありますから、国民の安全、安心が最も大事なわけでありますから、更に力を尽くしていただきますことをお願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  44. 江田五月

    ○江田五月君 久しぶりに私、委員会質問に立つということになりました。緊張しております。  長勢甚遠さん、法務大臣就任、本当におめでとうございます。席外されておりますが、水野副大臣、そして奥野法務大臣政務官、それぞれ御就任、おめでとうございます。  長勢大臣におかれましては、満を持しての御就任だと思います。今、周辺から対決、対決とプレッシャー掛けられておりますが、決して大臣と対決しようと思っておりませんので、ひとついい法務行政のために切磋琢磨しながら知恵を絞り合っていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。  私は、長勢大臣とは、ちょっと個人的なことをいろいろ申し上げますが、大学の卒業が同期なんですね。一緒のときに卒業いたしました。長勢大臣のホームページを見ますと、大臣、卒業式には御両親が一緒に来られたんですかね。私なんかは両親は全然大学なんか来てくれなくて、大臣は大切に育てられたんだなと、そんな感じがしたり。それから、しかし、大学入学が私、二年早いんですよ、六年おりまして。ということは、大臣が入学をされたときに、私は、東京大学教養学部学生自治会自治委員長の二期目の選挙やったときでありまして、私に投票をしてくれたかどうかまでは聞きませんが、そんな時代を一緒に過ごしてきた。  私は司法研修所へ入りましたが、大臣はすぐに労働省へお入りになって、官僚でずっとやってこられて、今政治と。私はどうも、ストレートですとんと東大へ入って、そのままストレートで官僚になって、官僚で一定の仕事をしてという、これは人間としてかなり足りないところが多いんじゃないかと思っておるんですね。  新聞に、「「必修漏れ」十道県六十三校」、公立学校、本社まとめの最初に富山県が出てくる。高岡南というのが出てきまして、富山高校は出てないんでちょっとほっといたしましたが、このように大学受験に必要な科目だけを教えていく、習っていく、そしてインチキをやって自分だけが良ければいいというそういう習性を育て上げられる、そうやってストレートで官僚まで行った、これがこの政治の場に出てくるというのは、政治を冷たくするんじゃないかという気がして仕方がないんですが、仕方がないんですが、長勢大臣は違う。  いや、本当にこれまでいろんなお付き合いをして、労働省というところが良かったのかよく分かりませんが、人間味あふれて、手紙はやはり巻紙に筆で書いた方がいいとか、そういう人の機微をよく心得ておられて、いろんな判断も、本当に困った人、苦しんでいる人、そういうところにちゃんと気配りが行き届く、そういう人だと思って、本当に尊敬もし、法務行政を一緒にやっていきたいと思っておるんですが、そこはちょっと持ち上げて、次にもう一度落とします。  この法務大臣あいさつは、これは何ですか、これは。私は、これはやっぱりちょっと大臣の言葉じゃないと思うんですね。大臣はもっともっと御自分の言葉をお持ちのはずなんで、御自分の感覚をお持ちのはずなんで、これはもう全く終始官僚の皆さんが調整をされたものをそのまま読んだだけという感じがするんですが、どうです、これで大臣、私は所信はこれですと言えるんですか。もっともっといろいろ思いがあるんじゃないかと思いますが、最初にそのことを伺っておきます。
  45. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) どうもいろいろ御指導いただきまして、ありがとうございます。必修漏れと、富山県が必修漏れの最初と私とは余り関係はないと思いますが。  経歴はそういうことですけど、学校にほとんど行ったことがなかったんで、大学時代はですね。また、先生は大変その当時から著名であらせられましたので、立て看板等で名前は見てましたけれども、お顔を拝見したのは相当、国会議員になってから初めてでございます。今日、法曹の大専門家である先生から御質問いただけるということで、私も大変緊張しておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  所信についての御叱責でございますが、私も法務行政、少し関与はしてまいりましたけれども、不慣れでありましたので、役所の責任者として、今後、省として取り扱わなければならない課題を役所が整理をしたものをそのままといいますか、ごあいさつとさせていただきました。それはそのとおりでございます。  と同時に、やはりこの一か月、法務行政に携わらさせていただきましたが、私のいろんな思いが、思うことがありましたが、この役所はいわゆる法の番人という役所の役割でありますけれども、しかし、刑法であれいろんな裁判ざたであれ、我々が直面する問題というのは非常に切実な状況になっている方々の具体的な問題を扱うことが多いわけでありまして、法を執行するということと個々の事情、これはまたいろんな事情がありますので、考えなきゃならない問題がたくさんある。この間をどういうふうにしていくかということは非常にたくさんの考えなきゃならぬことがあるなということをしみじみと考えております。社会全体としてやらなきゃならぬこともある、しかしその中で個人の事情もあると。こういう中で法務行政は大変批判にさらされることもあり、また悩むこともあるということを思っております。  是非、職員も一生懸命やっておりますので、今後とも御指導賜りますようによろしくお願いをいたします。
  46. 江田五月

    ○江田五月君 しみじみと考えておるという言葉、ありました。本当にしみじみと考えてほしいんですね。  もう少し突っ込みたいと思うんですが、法務大臣として法務行政というものはどういうものだと思っておられるかですね。  我が国法治国家で、法の支配、ルール・オブ・ローというわけです。ルール・オブ・ジャングルではありません。ジャングルのルールが支配する国であってはいけないんですね。ジャングルのルールというのは何かというと、これはもう弱肉強食、優勝劣敗、力の強い者が勝つんだと、弱い者は食われてしようがないんだと。我が国はそうじゃないんで、法が支配している。  ところが、その法の中にどうもいろいろまだ足りない部分があるんではないか、これをきっちり整備をする、これやはり法務行政の重要な課題であろうと。例えば、今飲酒運転の事故、これでちょっと法が足りない部分があるんじゃないかというのが課題になっております。あるいは多重債務者が取立てを迫られて自殺まで強要されるようなことになる、これもどうも法がおかしいんではないかというようなところがある。こういう法の整備がある。  しかし、法を整備しただけでは駄目で、やっぱり法がルールになる、法が、どう言うんですか、行き渡っているということがなければならぬ。どうも行き渡っていない部分というのもあるので、その辺りもきっちりさせなきゃならぬ。公務員の犯罪が多いとか、知事まで犯罪をやるとか、弁護士も犯罪があるとか、今の必修をちゃんと受けさせていないなんていうのもそういうことかもしれません。  そういう意味で、法務行政、何か専門的な学者の言葉で、あるいは官僚の言葉で答えろと言っているんじゃないんで、是非大臣のお感じ、法務行政というのは何だろうと、ひとつ何かおっしゃってみてくれませんか。
  47. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 口頭試問を受けているような感じで大変、何を申し上げてよろしいのか、よく分からないわけでございますが。  我が国は、先ほどもどなたかから話がありましたように、日本伝統文化は決して弱肉強食ではないと。家族、地域社会を中心に、そのきずなの中で仲良く支え合っていく一種の共同社会であったと、あると、あるべきだと私は思っております。  そういう意味で、ルール・オブ・ローとおっしゃいましたけれども、ちょっとそういういわゆる厳密な意味での法治主義とまた違う、人治主義と言っていいか、そういう国であるべきである、それが伝統文化であるんではないかと私個人はずっと思っております。  しかし、そういう中で、先生もちょっとお触れになられましたけれども、そういう社会規範を基盤として、全体として守るべきものを明示的にするという手法が特に明治維新以降強化をされてきたのが今日の法治国家の姿というふうに私は思っております。そういう中で、当然、この法を守る、正義を守ると、その成文化されたものを守っていくということをつかさどっておるのが、これは刑事であれ民事であれ我が省の務めであると思います。  同時に、これは、法律というのはどうしても国民の皆さんには、特に昨今この社会規範が乱れた中では非常に分かりにくくなっておるというのも実感をしております。是非、もう少し言葉だけではなくて、理解されるようにしていくという方法はどういうふうにしたらいいんだろうということはやっぱりみんなで考えなきゃいかぬなとつくづく思っておるわけでありまして、ただ法を厳正に適用すれば世の中が良くなるとかみんなが幸せになるとかという問題ではないと。といって、個々の事情だけでやっておったんでは、これまたルールは守られない、これは混乱を招くと。このことも大事でありますので、このバランスは個々の問題で考えていかなきゃなりませんけれども、法制度だけではうまくいかない。このことの前線に立っておるのが法務省であり、特に切実な状況、深刻な状況にある方々を扱う役所であるということはどの分野においてもやっぱり心して行政に当たらなきゃならぬというふうな思いを持っております。
  48. 江田五月

    ○江田五月君 ちょっとよく後で読み返してみたいと思いますが、法治主義ではなくて人治主義が我が国だというようにおっしゃったのだとすれば、よくよくそこはまた議論してみなきゃいけない。もし、人治主義という意味が、上に立つ者の裁量で下にいる者をみんなかばって連れていくんだということだとすると、それはちょっと違う。やはりそれは法なんですよ。そして、国民みんなが主人公なんで、国民主権なんで、その国民主権の下で法を作って、その法を使いこなしながら上に立つ、上に立つといいますか、法を執行する立場の者が世の中を治めていくということなんで、裸の人治主義になってもらっては困ります。  それともう一つ。私は、法というものは確かに厳格です。しかし、厳格だけど、同時に法は冷たくはないんですね。法律には血も涙もあるんで、その血も涙もあるというところをひとつ、今大臣人治主義という言葉で言いたかったのかなと善解をいたしますが、そこのところはやはりあるんですよ。この冷たい法を冷たく適用すれば世の中はちゃんと治まるわけではないという部分が一杯法務大臣の下には出てくると思うんですね。  入管行政の中で、これはちょっと冷た過ぎるとか、あるいは、先ほど死刑の議論、後でちょっと議論してみたいと思いますが、死刑執行死刑執行だけなんです、大臣執行指揮するのは。ほかの刑罰は全部普通の検察官の執行指揮、それから民事の方の執行指揮は、これはもう裁判所でやるんですよね。死刑だけが法務大臣執行指揮をするということの意味、これはやはり単に官僚的判断だけではない意味がそこに深く深く込められている、政治家が判断をするということで。そうすると、記録を精査して間違いがありませんからだけでいいのか。世の中の状況、世間の流れ、日本の、もしあるとすれば長い歴史と伝統、後で申し上げますが、日本死刑というのは決して歴史や伝統じゃなかったんですね。そんなことなどをひとつ言っておきたいと思います。  さて、大臣の方も新しくなられましたが、最高裁判所の、お見えですよね、長官も新しくなられました。これもちょっと個人的な事情で恐縮なんですが、昨日、さすが我が国会図書館大したもんで、法務大臣官房司法法制調査部、難しい名前ですが、の「イギリス裁判所法(一九七一年)」というのをありますかって聞いたら、さっと出てきたんですね。これをずっと見てますと、「訳者の序」という翻訳した者の序というのがありまして、そこに第十というところに、訳出は、ビーチング報告書前半を島田仁郎、報告書後半を江田五月、裁判所法を本吉邦夫がそれぞれ分担したとか、こう書いてあるので、島田仁郎って知ってますかって言ったら、昔、最高裁長官やった人かなってだれか言われましたが、そうじゃありません、なったばかりの人でございますが。何かそんな留学制度が始まりまして、もうフルブライトとかなんとか外国におんぶにだっこの留学じゃ駄目だと。日本が自分の国で自分の留学制度を持とうというんで公務員の二年の留学制度が始まって、島田仁郎さんは一期生です。二、三がアメリカで、一期と、私は四期なんですがイギリスへ行って、もうその当時から正に尊敬する先輩で兄事しておりまして、その島田さんが最高裁長官になられて本当におめでとうと申し上げたいので、是非お伝えをいただきたいと思いますが、その島田さんの下で最高裁判所はどういう裁判所をこれから目指していかれるのか、新たな長官になってどういう決意でおられるのかというのをまず伺っておきます。
  49. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者(高橋利文君) 委員御承知のように、裁判所は裁判官が独立して職権を行使し、具体的事件の適正、妥当な処理を通じて国民の権利の擁護等、法秩序の維持を図り、法の支配を確立するという使命を負っているものでございまして、裁判事務について、長官の交代によって直ちに一定のカラーが出るというものではございません。  もっとも、島田新長官が辞令交付式におきまして新任判事補に対し、裁判官は、人に批判されることが少なく、裸の王様になりやすい。初心を忘れず、謙虚に、人の心の痛みが分かる人になってほしいと語り掛けられましたが、私はこの新長官のお言葉は裁判事務に携わるすべての裁判官が心すべきことではないかと考えております。  他方司法行政事務につきましては、島田新長官が就任に当たり、裁判所の本来の使命は適正、迅速な裁判の実現でありますが、さらに、国民司法に対する期待にこたえるには、国民に分かりやすい裁判、利用しやすい裁判所を目指すことも大切であると考えますと。現に、一連の司法制度改革はそのような方向で進んでおり、私もそれを引き継ぎ、制度改革が順調に進むようその円滑な実施と必要な体制整備に全力を尽くしたいと、その抱負を述べられました。  また、裁判員制度につきましても、実施に向けて最終ラウンドに差し掛かったところで、非常な重要な局面であり、二年余りの任期は相当密度の濃いものになると思いますと、円滑な実施に向けた強い意欲を述べられております。  私ども事務当局といたしましても、長官のこのような司法行政に取り組む姿勢の下で、その意を体して司法行政事務に当たっていきたいと考えております。
  50. 江田五月

    ○江田五月君 もちろん裁判官は独立して職権を行使するわけですから、最高裁長官といえども下級裁判所の裁判官にこの事件はこうしろというようなことを言っちゃいけないのは、それは当たり前の話なんで、古い大津事件その他を持ち出すまでもなく。しかし、今おっしゃるとおり裁判官というのは批判されることが少ない、それゆえにより一層しっかりと自分自身を保ってやっていかなきゃならぬし、それから、やはり裁判所も司法権も国民主権の下にあると。国民が主人公で、国民に自分の裁判をするという権限は由来しているんだと、このことを忘れてもらっちゃ困るんで、くれぐれも全裁判官によくそのことを、命令ではなくて、心底分かっていただくように、司法行政をお願いしたいと思います。  さて、時間がどんどんたっていっているんですが、司法制度改革、今正に改革の真っ最中で、既に幾つかのものが始まった。始まったけど、まだでき上がりのところまでたどり着いていない、激流を一生懸命舟をこいで渡っているところだと思いますが、そういう過程の中にある裁判員制度、あるいは法曹養成、あるいは法テラスその他聞いていきたいと思うんですけれども。  まず、司法制度改革というのはどういう、これは大臣も重要な立場で取り組まれました。私は、自分が司法に身を置いたことのある人間として司法制度改革というのはやらなきゃいけないと。まあ我々は野党ですけれども、事司法制度改革に関する限りは、皆さんが提案するものを我々はチェックをするという姿勢じゃなくて、むしろ提案する、その側にお許しをいただけるならばなるべく入り込んで、提案のところから我々の意見を反映させようといろいろ努力をしてまいりまして、まあ司法制度改革与党だと、我々は、という決意でやってまいりましたが、長勢大臣司法制度改革に、端的に言って、余り長々要りません、どういう決意で取り組まれてきたのか、これからも取り組まれようとしているのか、お聞かせください。
  51. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 御答弁申し上げる前に、先ほど、私も言葉が下手なものですから、人治主義と言いましたんで誤解を与えたようで、決して人が人を支配するという意味で申し上げたわけではございません。言いたかったことは、法といっても、法というのはみんなが自然、普通と考えることが基盤のないものは法と、それをやるだけじゃ法にならないということが基本であるということを言いたかったわけでございまして、御理解いただければ幸せでございますが、そういう思いでこれからも努めていきたいと思っております。  正にこの司法制度改革も、社会のルールといいますか、司法制度はその一つの大きな役割を持っているわけでございますが、それが国民により身近で理解されて、頼りがいのあるというものでなければ平和な安心した暮らせる社会というものは実現できないと、それにおいていろいろな意味で今いろいろ議論が、問題があるということを、そういう観点から改革をしていこうということであると思っております。  今までもたくさんの議論が行われてきて、今具体的に進める段階に来ております。私も裁判員制度等関与させていただいてまいりましたが、是非そういう目的を達成するように全力を挙げて努力していきたいと思っています。
  52. 江田五月

    ○江田五月君 最高裁の方も司法制度改革、なかなか苦労をしておられることと思いますが、今改革真っ最中ですよね。どういう覚悟で臨んでおられますか。
  53. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者(高橋利文君) 一連の司法制度改革は、行政による事前の規制が行われる事前規制型の社会から、規制が緩和された事後救済型社会への移行が求められる中で、公正で透明な手続により紛争を解決する司法の果たすべき役割が今後ますます重要になると、司法に対する需要が増大するであろうという共通認識の下で行われてきたものでございまして、今般の改革の背後には国民司法に対する大きな期待の高まりがあるものと理解しております。  今般の司法制度改革は、専門的な知見を必要とする訴訟への対応などの事件処理体制の充実強化から、法曹養成制度の改革などの司法を支える人的基盤の充実、さらには国民司法参加にまで及ぶ極めて広範な領域にわたるものでございます。知財高裁の設置、労働審判制度の導入、法テラスによる総合法律支援制度、それから法科大学院による法曹養成等は既に実施され、運用の段階に入っているところでございます。  これらの諸制度につきましてはいずれも円滑に実施され、順調に運用がされているものと認識しておりますが、裁判所としましては、引き続き国民司法に対する期待、要請を的確に受け止め、改革の趣旨に沿った適切な運用がされるように努めるとともに、必要な体制の整備を図っていきたいと考えております。  また、これから実施が予定されております大きな制度改革として裁判員制度がございます。裁判員制度国民司法参加を実現する極めて重要な改革であり、その施行まで二年余りと実施時期が迫っております。裁判所としましては、裁判所内の人的、物的な面の体制の整備を図るとともに、裁判員制度に対する国民関係機関の理解と協力を得ながら、この制度の円滑な実施に向けて全力で取り組んでいきたいと考えております。
  54. 江田五月

    ○江田五月君 日本司法制度は、六十年たって時代がいろいろ変わった、それに追い付いていない部分があると、これを変えなきゃならぬ。それが今の知財とかそういった面、ほかにもあるでしょう。  それから、裁判所がどうも国民から遊離してしまっている、あるいは国民の方も裁判所が遠い、裁判所もどうも国民の感覚と外れているんではないかと、これを国民の感覚に近づける裁判員制度。  それから、戦後改革の中で実はこの司法という部分が取り残された部分があって、天皇の名による裁判国民の名による裁判で、名だけは国民だけれども、実際の司法の動きが国民主権の下になってない、市民が主役のものになってないと。だから、例えば民事の紛争でいえば、二割司法なんて言われる。いろんな紛争があっても、どうも裁判所あるいは法曹が関与して解決するという場が小さくて、暴力団であったり地域の親玉であったり、時には市会議員から国会議員まで含む議員であってみたり、そして多くが泣き寝入りであってみたり、そういうものを本当に充実した司法に変えていかなきゃならぬと。そんな意味で法曹人口も格段に増やしていかなきゃならぬし、あるいは身近なものということで法テラスも必要だし、ADRも必要だし、などなどと広がっていってきたのだと思っております。  そこで、まず裁判員制度ですが、これ国民の中には依然としてまだ不安があるんですね。自分がそんな裁判なんて、私は法律のことなんて知らぬよとか、そんな裁判所へ行けと言われるけれども、仕事、私、抜かれたら困るんだとかいろいろあるんですが、そういう不安を解消するためにどういう制度設計をされておられるのか。どういう広報啓発に努力をしておられるのか。これを、もう細かなことはいいですから、法務大臣、お答えください。
  55. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 国民の皆さんが裁判員制度ができたら自分はどうなるんだろうということについて不安をお持ちのことは、そのとおりだろうと思います。そのために、法成立以来、法曹三者協力をして御理解いただくように相当なエネルギーを使ってきたと思います。もうあと二年半になりましたので、あと一息、もう一息、知恵も出し力も出していかなきゃいかぬなというのが今率直に思っております。  国民の皆さんの不安は、一つは、それはそんな、今おっしゃったように、法律なんか分からないよと、そんなところにおれは行って何もできないよという不安がまずあるんだろうと思うんですけれども、裁判員制度は、御案内のとおり、法律知識がある人でなくていいんだというか、ない人、普通の感覚の人たちでやろうというのが裁判員制度ですから、そのことはまず十分御理解いただくようにしていかなきゃならぬと思います。  それから、時間がないよという方もおられると思います。こういう方についても、これは企業の御理解等々もありますし、そういうことをこれから一生懸命御理解いただくようにしていかなきゃならないと思います。  もう一つ、やっぱり人を裁くというのは相当重く感ずる方もたくさんおられるわけですし、何か気分的にも嫌だなという方もおられると。こういう方々をどうするかということは、若干制度の面もありますので、辞退の仕組みとか、こういうことを今もう少し検討しておりますけれども、整理をして国民の皆さんになるべくそこら辺を分かっていただいて、やはり皆様をそれならという気持ちになってもらうようにしていかにゃいかぬと思いますが、総じて実際どういうことになるのかというのが、やっぱり現実に見ることはないわけですから、今パンフレットを配ったり、講演会をやったり、いろんな苦労しておりますけれども、やはりビデオも作ってやっておりますので、しかしこれをなるべくたくさんの人に見てもらうことが大事だろうと思いますし、まあこんなもんかと、なら安心だというようなことにでもなるように、何とかもう少し知恵も出してやっていかなきゃならぬかなと。全力を挙げて取り組みたいと思っております。
  56. 江田五月

    ○江田五月君 裁判員裁判の映画が何本かできていますね。ビデオになっておりますが、これは、法務大臣、ごらんになりました。
  57. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 私自身としては、まだ制度ができる前、日弁連がお作りになった、あのときは裁判官が一人のときでしたけれども、それと、その後、あれは法務省で作ったんでしょうか、野沢元法務大臣も御出演なさっているのは見ました。ほかのはちょっと私はまだ見ておりません。
  58. 江田五月

    ○江田五月君 見ていただいていて本当にほっとしました。是非ひとつ、自分が見ていないと人に見ろとは言えない。  それから、例えば裁判員休暇制度というのを有給休暇のようにつくることは考えていないというふうなことのようですが、企業にやはりそこは理解をしてもらうために、例えば法務大臣と経済三団体のトップとそんな話をするとか、そういう皆さんと地方へ出ていって是非休暇を取らしてやることが必要なんだというような啓発活動をするとか、大臣にもひとつ是非汗をかいていただきたいと思います。  これ新聞の今朝の広告なんですが、「ともに。裁判員制度」というので、最高裁判所、法務省日本弁護士連合会、三者の、この三者のだれがこの広告を出しているのかなと思ったりもしますが、そういう細かなことはまあいいとして。最高裁、これ仲間由紀恵さんなんですね。彼女をひとつ、模擬裁判の役を担っていただいたりしたら人が関心持つんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  59. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者(大谷直人君) まだそこまでの準備を進めているわけではございませんけれども、仲間由紀恵さんも含めて、こういう裁判員制度の趣旨を理解し、こういうPR活動に加わっていただける方については、いろいろな面でもし可能であればPRしていただきたいと、このように思っております。
  60. 江田五月

    ○江田五月君 いや、これ本当に相当、私もこれ計算していないけれども、相当高いと思いますよ。これだけやるんだったら、もうそれこそ本気でひとつ裁判員制度のキャラクターはこの人というようなのを作ってやっていったらいいんじゃないかと。仲間由紀恵さんがどうかというのは私知りませんけれども、例えばの話で。  裁判所の方は、これ裁判員ということになると、法廷をどうするとか合議室どうするとか、いろんな手当てが必要だと思いますが、準備はいかがですか。進んでいますか。
  61. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 今お話のありましたとおり、裁判員制度の準備としては施設の面についても重要なポイントということになるわけですが、既に平成十七年度までの予算において認められました裁判所庁舎の建て替え工事の中で裁判員制度の施行に必要な法廷あるいは評議室等の施設準備を進めておりまして、これまでに合計七庁において必要な施設整備工事に着手済みでございまして、この中にはもう既に完了したものもございます。  加えまして、平成十八年度予算には三十八庁において必要な施設整備を行うための経費が計上されておりまして、今年度には既に着手済みの分と合わせて合計四十五庁において裁判員制度実施に向けた物的整備の、体制の整備が進むことになります。その余の庁につきましても、所要の予算措置を講じた上で制度施行までに必要な物的整備を、体制を整備していくと、このように考えております。
  62. 江田五月

    ○江田五月君 次に、捜査の可視化について伺います。  裁判員制度ということになると、調書の任意性でああだらこうだらと長々やるというようなことは、それはもうとてもみんな耐えられないんで、ここは捜査の状況を録音、録画をしておいて、こういう捜査で取調べをしたんだから任意性はあるよということをもう一目瞭然とするということで、杉浦前大臣そして但木検事総長の、まあ私は、当たり前といえば当たり前なんですが、状況から見ると大英断だったと思いますが、検察官の取調べを可視化するということにされました。  これは長勢大臣、バックギアに入れることはないでしょうね。
  63. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 私が自民党の裁判員制度の小委員長という立場で議論しておりましたときにこの可視化の問題が大変な深刻な対立点の一つでありました。当時、双方の言い分はそれなりに私なりにそういうものかなと思っておりましたが、検察当局がこういう方向で一つの第一歩を踏まれたということは評価をすべきことだと思っております。  検察当局としては、裁判員裁判における分かりやすく迅速で的確な主張、立証の在り方についての検討の一環として、対象事件における検察官による被疑者の取調べについて自白の任意性の効果的、効率的な立証という観点からこういう可視化を試行することになったというふうに承知をしておりますが、非常に、前大臣もおっしゃったようでありますが、重要な意義があることだと思っております。
  64. 江田五月

    ○江田五月君 何かだんだん声が小さくなって、自信持ってやってください。可視化は本当に必要なことなんで、もう胸を張って、我々も一生懸命応援しますので、是非、何かだんだんだんだんしりすぼみになるようなことのないようにしていただきたい。いいですよね、もう。答えますか。
  65. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) ちょっと字を読んで下見たから声が小さくなったんで、御安心ください。
  66. 江田五月

    ○江田五月君 本当によろしくお願いします。  それで私は、今は検察段階の調べで、しかも裁判員制度の対象事件だけの可視化ということのようですが、それでは本当は足りないんで、警察段階で完全に料理を作り上げておいて検察庁のところへ持ってきて、それで検察庁が食べるときにはもう料理は煮上がって、仕上がっていると、それは可視化だなんて言ったってどうしようもない。警察のところがどうなっているかというのが実は本当は問題であるし、それから、裁判員対象事件だけではやっぱり駄目なんで、特に法務大臣、少年の取調べ、少年の取調べは本当大変ですよ。これ、取調べ自体も大変なんですが、そこに後になって何だか訳が分からなくなっちゃったというのは少年に多いんです、結構。これは、やはり少年の取調べの可視化というのはまず次の緊急課題だと考えていただきたいと思います。まあこれは答弁いいでしょう。お願いをしておきます、この際。  そうそう、これは聞いておかなきゃ。  八月から試行されているんです。ところが、どうも弁護士会、日弁連は全国の弁護士のネットワークを持っているんですが、いまだに一件も、いや自分の取調べのときには録音、録画があったという、そういう情報が日弁連へ上がってきていないというんですね。どうしてかなと、もうそろそろあっていいんじゃないかと思うんですが、試行の状況、これ細かく要りませんから、お答えください。
  67. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 今、八月、七月ですか、実際は、実施は八月からかと思いますが、八月から東京地検で試行を実施ということで、これまでに五件やっておるというふうに聞いております。
  68. 江田五月

    ○江田五月君 初めちょろちょろですね。中ぱっぱといきましょうね。本当に、そしてきっちり制度が定着したら、赤子泣いてもふた取るなと、ちゃんと仕上げなきゃいけないと思っております。  さて、次、法曹養成ですが、やっとロースクール一期生が、これは既修ですが、誕生して、そしてその皆さんの新司法試験が行われた。従来、司法試験というのは合格率三%程度だったと。いや、三%、もっと低かったのかな。しかし、まあ四八%か、五割にまで上がったと。  しかし、司法制度改革審議会の意見書は、これは制度設計をそういうふうにきっちりするという意味じゃないけれども、イメージとして、ロースクールはプロセスで養成をして、ロースクール卒業生は八割程度は司法試験に受かるような、そういうイメージでいたわけで、そのイメージで、これは新しい制度ができる、自分はこの制度の下で法曹になりたい、こういって現に今得ている職をあえてなげうって、自分の人生懸けてこの新しい制度の下での法曹を目指した。ところが、八割と思ったら五割で、人生設計がまるで狂った、そういうような若者も、若者だけじゃないかもしれません。いろんな人が法曹を目指すという、それが制度の目的だったわけですからね、たくさんいるわけです。  法務大臣ね、これは私はその皆さんをすぐ救済せよとかそんな話をしているんじゃないんですが、法は血も涙もあるんだと、法務大臣はその皆さんに対して何かやっぱり温かい言葉を掛けてあげる必要があると思うんですが、機会を提供しますので、温かい言葉をひとつどうぞ。
  69. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) この問題は、この職に就く前に大分前に伺っておりましたが、今御指摘意見書も、七、八割を云々ということは、教育内容なりそういう問題として述べられておることであって、それを約束するというものでなかったと、それはもう先生もお分かりのとおりであります。そのことをやはり十分に周知をして、何で受からなかったんだろうなと、いかにも来たらみんなうまくいくよと言わんばかりの話でやっておったんだとすれば、私はそこもおかしかったなと。これは試験の制度の性格上、言うまでもないことでございますが、もうここまでは必ず合格させるとかというわけにいかないことは分かり切ったことでありますから、それを約束するということはなかなか難しいと思うんですけれども、という思いをずっと持っておりました。  現実に、ただ、おっしゃるように、そういうことで転職を希望された、入学された方もおられるやには伺っておりますので、どういいますか、その方々には御同情申し上げるということなんですけれども、これ、試験制度また大学院の在り方、これをひとつ今後これからの法曹の有為な人材の研修の場として発展していただくように我々も期待しておりますし、また、できることはやっていかないかぬと思っています。
  70. 江田五月

    ○江田五月君 これ、五割ということになると、これから、今あるロースクールが全部ロースクールとしてずっとやっていけるということにはなかなかならぬのじゃないか。厳しい評価を受けてしまうロースクールもあるだろうし、その中にはこれはロースクールとして存続は無理だというようなところも出てくるかもしれない。言わば、制度を立ち上げてそれが定着するまでの過程で起きているいろんな混乱というのはやっぱりあるんですね。  そんな中で、この志を持った若者が自分の志を達成できないということが起きてくる。だけど、私はこの皆さんが法曹を目指そうというその気持ちは、やっぱりその人の個人の人生にとっては大切なことだし、まあ気休めかもしらぬけど、人生至るところ青山ありで、そういう皆さんもその気持ちを大切にしながらこれからの人生をやっていくと。ここでもう挫折で、もう自分の人生終わりなどと、それはそんなことはないんだと、皆さんのそういう、再チャレンジというのが今盛んですが、再じゃなくてチャレンジの精神が次の道を開くんだからという、そのくらいな言葉は是非掛けてあげていただきたいと、これは私が代わって申し上げておきます。  しかし、さはさりながら、やっぱり七、八割程度だと。つまり、いろんなところから抽出されて、ロースクールというのもなかなか関門ですから、それをクリアすれば、その中でまじめに、一定の能力はもちろん必要ですが、ロースクールの教育を受ければ法曹の道が七、八割は開けているんだという、そういう制度にしていきたいというその思いは、これは捨ててはいないんでしょうね、法務大臣
  71. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 合格率を基準にこの話をするということよりも、むしろこのロースクールが法曹養成として十分な役割を果たしていただき、そしてきちんと質量ともに充実した法曹制度を確立する上での試験委員会の決定というか、試験制度になるように、私どもとしては期待をいたしておるということだと思います。
  72. 江田五月

    ○江田五月君 ロースクールだけでは法曹は養成できません、養成は完成しません。最後の試験があります。いわゆる二回試験というんですが、司法修習考試というんですか、考試は、考える試験の試。今年はすごいことになりましたね。何か百七人が合格できなかった。大部分は更にそれこそ再チャレンジの機会が与えられるようですが、もう完全にアウトというのも十人程度はおられると。昨年の約三・五倍、合格基準は変えていないというんですが、これはどういうことだと理解をしておられるんですか、最高裁。
  73. 山崎敏充

    最高裁判所長官代理者(山崎敏充君) ただいま委員からお話しのとおり、本年九月に、一年六か月の修習の後、考試を受けた五十九期司法修習生、これ千四百九十三名でございますが、そのうち百七名の者が合格の判定を受けることができなかったわけでございます。  このような大量の不合格者が出たことにつきまして、我々も実は非常に驚いたわけでございますし、また憂慮すべき事態であると思っておりまして、その原因を探る必要があろうかというふうに思っております。  近ごろどうも司法研修所の教官などから基礎的能力に疑問のある司法修習生が増加しているように感じられると、こういった感想が寄せられていたところでございまして、どうも残念ながら教官たちが抱いていた感覚が客観的な数値として表れてしまったのかなというふうにも思うわけでございます。  ただ、御質問の点、このような事態に至ったそもそもの原因は何かと。これをきちんと解明するのはなかなか難しゅうございます。今問題になっております五十九期から修習生の数が千二百人規模から千五百人規模に増加しましたので、どうも、どうしてもこの点に関心が向くわけでございますが、そのことと大量の不合格者を出したこととの関連、これは今後の推移をいましばらく見定めた上でないと結論めいたことを申し上げるのは難しいのではないかというふうに思っております。  私ども、少し時間を掛けまして、司法研修所の教官などからこれまで以上に司法修習生の実情をよく聞くなどして、その原因を探っていきたいというふうに思っておるところでございます。  いずれにいたしましても、今後とも国民に質の高い司法サービスを提供できる法曹を養成し続けるためには、そのプロセスの各段階におきまして適切な教育あるいは厳正な能力検証を行う必要がございますが、とりわけ司法修習生考試というものは、法曹養成の最終段階におきまして法曹としての必要最低限の能力を有しているか否かを検証するものでございますので、この考試によりまして最低限の水準に達しない者は厳格にチェックし排除していくという機能をきちんと果たしていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  74. 江田五月

    ○江田五月君 旧試験だけしかない司法試験の最後の期ですね。旧試験というものの持っているある意味の欠陥が最後に出てきたということかもしれないし、ロースクールというものがあって、そっちへ行っている者が旧試験を受けたら受験制限、回数制限に引っ掛かるから受け控えというようなことがあったのかもしれないし、分かりません。しかし、重大な関心は持っていただきたい。やはり質の高い法曹をちゃんと輩出させていくことは重要な課題なので、関心を持っていただきたいと思います。  次、日本司法支援センター、法テラスですが、十月二日にスタートいたしました。さて、このスタートは、具体的に国民に見える形というのは何だと思われますか、法務大臣。  ちょっと、もうちょっと質問しようか。スタートは、例の多分私コールセンターだと思うんですね。コールセンターが立ち上がってそこに電話がわっと来る、これを全国にずっとつないでいく。そのコールセンターへ行かれたことはありますか。
  75. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) まだ行っておりませんので、なるべく時間を見付けて行きたいと思っています。
  76. 江田五月

    ○江田五月君 実は私もまだ行ってないので大きなことは言えないんですが、やはり現場を見ていただいて、どういうスタートを切っているのか、そしてどこを手当てしていかなきゃいけないのか、そんなことは是非、これは本当に法テラス、重要なスタートですので、失敗をさせないようにやっていただきたいと思いますが。  この法テラスをうまく動かしていくためには、これまだまだ、スタッフ弁護士をちゃんと整えるとか契約弁護士をしっかり確保するとか、あるいは今全国五十か所でしたか、しかしそれでは足りなくて、五十か所以外にいろんな出張所とか何ですか、何か置かれているようですが、これから相当そのボリュームを増やしていく、そういう努力が必要だと思うんですね。  それから、弁護士ということでいえば、国選弁護事務がこの法テラスに移りました。国選弁護が今被疑者弁護も入るようになって、しかし、まだこれはスタート段階で、これから被疑者弁護は増えていくんですね。今どうだったっけ、あれは法定合議だけかな、それを必要的弁護に持っていくのかな。何かそういうように増やしていく。さらに、裁判員制度になったら、これは裁判員対象事件のかなりの部分は国選で、しかも、その国選の弁護人の役割というのは今までよりももう格段に質的にも時間的にも増えていくというので、弁護士の皆さんに法テラスに協力をいただく体制というのは、まあ弁護士会考えてくれだけではちょっと済まない、例えば国選弁護の報酬とかそういうことがあると思うんですが、もう簡単に、覚悟のほどだけ具体的に聞かせてください。
  77. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 支援センターの弁護士確保、特に国選弁護に向けてそれが必要であることはおっしゃるとおりだと思っております。日弁連さんともそんな話をよく聞いておるわけでありまして、今報酬の問題その他おっしゃられましたが、今具体的に案を持っているわけじゃありませんが、これは確保していかなきゃならぬことはもう言うまでもないことだと思っておりますので、全力を挙げて充実に努めていきたいと思っています。
  78. 江田五月

    ○江田五月君 法テラスに対する財政的支援というのは、これはもう法務大臣の重要な職責だとお考えください。  午前はこのくらいにしますか。
  79. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時開会
  80. 山下栄一

    委員長山下栄一君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  81. 江田五月

    ○江田五月君 引き続きお尋ねをいたします。  司法制度改革のことを尋ねていたんですが、大勢の皆さんにお見えいただいているんですが、どうも時間の方が足りなくなって、少しすっ飛ばしていきますので、せっかく準備したのにと怒らないでください。おわびを申し上げます。  裁判外紛争解決手続、いわゆるADR、これ飛ばします。  行政制度改革。行政事件訴訟法を先般改正をいたしました。これは私ども、国民の期待をしっかり受け止めて、国会の方から裁判所ひとつ頑張れと、こういうエールを送るという、そういうことで改正をしたわけでございますが、その後、下級裁判所もいろいろありますが、最高裁では、例えば小田急線連続立体交差事業認可処分取消し請求事件というので、これは大法廷が当事者適格についてかなり画期的な判決をされたり、あるいはその後、在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件、これも大法廷で画期的な判断が出たりということになって成果が上がっていることを大変うれしく思っております。  しかし、これで行政制度改革、行政争訟制度の改革が終了したというわけにはいかない。現に見直しの条項も入っていますし、また日弁連の方で大変御努力いただいて更なる改革、第二弾の行政制度改革ということでいろんな提案があります。特にその中に、地方で行っている例の住民訴訟、ああいう訴訟形態をひとつ国にも用意をしてはどうかというので、名前は公金検査訴訟制度というような言い方をしているようですが、納税者訴訟という類型をつくろうという提案がございます。  法務省としては議論ぐらいされているんでしょうか。それとも知らぬ顔でしょうか。法務大臣お答えください。
  82. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 御指摘の日弁連さんの要望書の中で、今おっしゃいました公金検査請求訴訟制度というものを設けたらどうかという御提案があることは承知をしております。  この制度の導入について政府の行政訴訟検討会において検討の対象とされましたけれども、そこでは、憲法上、国の支出の当否については会計検査の制度が設けられていること、また内閣は決算を国会に提出することとされていること等、財政に関して国会がこれをチェックする権限が認められていること、こういう関係について更に検討する必要があるのではないかなどの問題点が指摘されておるところでございます。  また、国民意見を会計検査院の検査に反映させる手段としては、平成九年の国会法及び会計検査院法の改正により、国民の代表者としての国会の各議院、委員会等が会計検査院に対し、特定の事項について会計検査を行い、その結果の報告を求めるという検査要請の制度が設けられております。したがいまして、この公金検査請求訴訟制度につきましては、こういう問題を踏まえて十分な検討が必要であると考えております。  法務省だけで検討すべき範囲を少し超えている部分もありますので、更に検討してまいりたいと思います。
  83. 江田五月

    ○江田五月君 法務省だけの範囲を超えているという趣旨のことですが、これは私どもも行政争訟制度というのを更にブラッシュアップしていきたいと思っておりますが、自民党の皆さんはもうこの点については本当に無理解で、でもないんです、実は。今の官房長官の塩崎さんとか、あるいは世耕さんとか林芳正さんとか、そういう点で非常に何か先手を切っていきたいという、そういう人もおられまして、我々の方がちょっとたじたじというところもあるんで、是非とも省庁を超えて、法務大臣、ひとつエンジンになって官房長官辺りもつっついて、この行政制度の改革を更に進めていただきたいということをお願いをしておきます。我々の方ももちろん頑張ります。  いじめの問題などの話。どうも文部科学省、いかぬですね。何かいじめの件数が減っているって、減らせといって数字だけ減らして実態は何も解決付いてないとか。これに対して法務省の方は、国、各県にずっとある法務局、地方法務局で人権救済がしっかり事案として挙がってきているということで、こういう問題も含めながら人権というのを一体どうするのか。人権擁護法案が大変まだ迷走中ですが、これをどうするのかという話もありますが、ちょっとこれも後に回します。  調達の問題も聞きたいと思いますが、これも時間があったらということにして、さて、代理出産について伺います。  個別の事案についてどうするというお話を伺おうと思っているのではありません。しかし、個別の事案の紹介だけちょっとしておきたいと思うんですが、私は、やはり法には血も涙もあるんだと、法の適用の結果、血も涙もないということになるならば、それはやっぱり立法府あるいは行政府協力して、法に血も涙もあるような、そういう法に変えていかなきゃいけないと、それが私たちの仕事だと思うんですね。  この事案は、御存じの方も多いと思いますが、向井亜紀さん、本名は高田と言うんですが、高田延彦さん、お二人。これは当然、届出をした法律上の夫婦です。しかし、この亜紀さんは子宮がんで子宮を摘出するということになった。だけど子供が欲しいというので、放射線治療の際に御自身の卵巣を骨盤の外に移して、そして手術、治療をされたと。何とか自分たちの子供が欲しいというので、日本ではなかなか難しい、アメリカに渡った。ネバダ州で御自身の卵子に夫の精子を受精をさせて、そしてアメリカの女性、この女性も結婚しておられる方ですが、と契約を結んで、いろんな、後々の養育の関係、あるいは費用の関係などなど、いろんなかなり厳重な契約を結んで、その女性の子宮に着床させて出産をさせたと。卵子二つで子供が二人というケースですね。  ネバダ州に法律、法制度があって、その出産について裁判所で、この出生の事実、この卵子の提供者である亜紀さんとその夫、精子の提供者、この二人が両親だという、そういう法律上の父母であることを確認をする、そして出生届、出生証明書、こういうものの関係についての一定のことを命ずる、こういう主文の裁判ができました。同様の裁判類型というのはカリフォルニア州やマサチューセッツ州などでも存在していて、しかも、これは対世効、つまり、当事者の中だけの効力じゃなくて、一般的にもそういう、この出生の事実については裁判所の決定が効力があるという、そういうことになっているということなんですね。  この裁判が、これが日本でどういうふうに扱われるかというのが問題で、民事訴訟法百十八条では、外国裁判所の確定判決日本でも公序良俗に反しない限り有効だということになっているので、この判決を基に亜紀さんは品川区役所に出生届を出した。しかし日本では、分娩の事実がないから、亜紀さんにですね、だからこれは母ではないということでその出生届を受理をしなかった。これに対して家庭裁判所に審判を申し立てたら、東京家庭裁判所がそれを却下をしたので、東京高裁に抗告をした。それで、東京高裁の、原審の審判を取り消して品川区長は受理をせよという、そういう決定を出したと。  こういう事案で、これは法律上いろいろな問題を含んでいますから、私は、法務大臣と協議の上、品川区長が許可抗告を最高裁にされるということがけしからぬと、そういうつもりはありません。これはしっかり判断いただければいいと思うんですが、しかしこれ、なかなかこの決定は本当に苦労して書いておられて、この外国判決の中身をきっちりと精査をした上で、これは外国判決外国判決として扱うべきものであると。公序良俗という点については、ああだこうだいろいろありますが、やれ医学界がどうだとか法制審議会がどうとか、いろいろなことがありますが、そういう意見があるにしても公序良俗に反するということはないと。  この過程で、私はこれは一つ法務省に文句言っておきたいんですが、大臣よりもむしろ法務省にですね。この外国、ネバダ州修正法とかその他の制度について申立人がいろんな主張をするのに対して、決定で見るだけでいうと、法務省の方は多分訟務の検事さんか何かが代理人で出ている、品川区長の代理人かな、出ているんですが、知らないって言うんですね。何で一体調べないんだと、ちゃんと。調べて、そしてこの制度はこうなっているというふうにして、両方の間でそんなことを何か一々立証活動を一生懸命やらなきゃならないようなことをする必要あるのかと。まあ、もっとも人訴ですから立証しなきゃいけないでしょうけれども、というような気がしますが、いかにも不親切であり冷淡じゃないかと思いますが、それはまあ言っておくだけで、答弁要りません。  そういう判決で、もう一つ問題は、準拠法というのがあるんですね、どこの法律で親子関係決めるんですかと。この場合には、今言っているのは、亜紀さんと御主人とが親、それで二人の子が子、その関係が成り立つかという話だから、これは両方日本人だから日本法だと。日本法で言えば分娩の事実、だからこれは親子関係ないと。さて、じゃ実際にその分娩をした女性とその夫かなと、その子二人と、この間に親子関係あるのか。これは準拠法はアメリカ法だから、アメリカ法でこういうふうになって、現に裁判まであるわけだから、そこでも親子関係ないと。この子、現に子がいる。いるのに日本でも親子関係がない、アメリカでも親子関係がない、どうなるのというのがこの裁判所の指摘なんですね。  これは、要するに国際社会の法の谷間に落ちてしまったケースであると。そのことというのは重要なこれは事情だと。そのことを踏まえて考えていくと、確かにいろんな違和感はあっても、準拠法ということを考えなきゃならないのかどうかということで、国際私法学者を中心に、民訴百十八条の要件のほかに準拠法の要件も満たさなきゃいけないという、そういう主張があったが、裁判例や、それから戸籍実務、これは私見てないんですが、昭和五十一年一月十四日民二第二八九号法務省民事局長通達というのがあるんだそうですね。これによると、身分関係に関する外国裁判所については民訴法百十八条に定める要件が満たされれば、これを承認するものだと、そういう民事局長通達が出ていると。そのようなことまでいろいろ認定をした上で、公序良俗に反しない。したがって、この場合は、これは本件裁判、これ、ネバダ州の裁判外国裁判所の裁判に該当して、民訴法百十八条の所定の要件を満たすから、同条の適用ないし類推適用により承認の効果が生ずることになり、したがって本件子らは抗告人の子であると確認されるから、出生届も受理されるべきであると、こういう決定になっているわけです。私は、これは筋道通っていると思います。  ですから、我が国で今そういう事態も起きるんだと。それならば、このネバダ州あるいはカリフォルニアかそっちの方、アメリカのいろんな制度も現実に世界を見るとあるわけですから、これはやはりそういう制度日本で、もちろんそのままじゃなくて、それはいろいろ日本流の知恵も働かさなきゃならぬでしょうが、そういうことを研究をして、やはりそういう場合にはこういう方法でちゃんと親子の関係をつくろうと。  まあ、分娩という事実で、これ、父親については血統主義なんですよ。母親の方だけ分娩主義なんです。分娩主義と血統主義は同じだったんです、昔は。こんな変な分離が起こることなかった。しかし、今はそこが、分娩と血統というのが分離してしまう時代が来ていますから。しかも、この戸籍上の親子関係というのは、やはり血族婚を避けるとか、そういう重要な機能も果たすわけですから、これはやはり遺伝とか血統とかということを重視した、そういう制度をひとつつくることを本気で考えたらどうだと思いますが、いかがですか。
  84. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 今、東京高裁の決定の内容、詳しくお話ありまして、そのように認識をしております。で、許可抗告の申出を区がなさったわけでございますが、それはそれとしてということでございますから、それは申し上げませんが。  この問題、私のところにもいろんな方というか、まあ正直言うと大抵の方の意見は、一般の方が多いんでしょうけれども、まあとにかくこういうのを認めろという意見が圧倒的に多いことは事実でございます。  いろいろ科学技術も発達してきましたので、前々からこの議論があったわけでございますね、御存じのとおりでございます。平成十五年に厚生労働省あるいは法務省において、審議会においていろいろ議論が行われて、その段階での結論というのは、今先生がおっしゃったような話にはなっていなかったわけで。  これは血も涙もないというお話がありましたが、二つ問題があると思うんですね。一つは、本当に欲しいけれども産めないという方に、まあ同情というか、その思いをかなえてあげるべきではないかという分野と、それからそれはそれとして、今のところ日本ではそういうものは認めないということになっていますから、そういう意味での違反、違反というか、違った形で生まれてきた子供をどういうふうに扱うかと。それも、これはアメリカでは親子関係は認められているわけですが、日本では認められてないということを、これは血も涙もないんじゃないかという、そういう意味で親子の関係、子供のことをどうするかという問題と、二つあると思うんです。法律関係でこのことを処理すべきかですね。しかし、その法律の基になる、基になるというか、それを形成する事実についての評価をどうするかということと二つあると。  今までの議論では、いわゆる医療界を始め、医療界等々で、そういう形で子供を産むということが許されるべきことかどうかということが議論になってきて、そこの結論が、それはまずいことだという結論を踏まえて、法制審の方でもそれを前提にした法制の在り方というのを考えたと思う、考えてこられたというふうに私は承知をしております。  これを、逆に法制の方から考えて結論を出して、それから、それが世の中で認め、あるべきことかどうかという議論もあるかもしれませんが、なかなかその関係も非常に難しいですし、私のところにはこの科学技術が発達した中で昔と同じことをやっておっておかしいんじゃないかとかという議論もたくさんありますけれども、どうもまだ、何といいますか、こういう生殖補助医療のこの分野について、みんながそういう形で子供をつくるということはいいというほどの合意に達しているという状況ではないんじゃないかなと。その合意をどういうふうにつくっていくかということが、また遅れているといえば遅れておると。非常に今悩ましいところだなと。むしろ、その合意をつくる筋道をつくること自体もどうしたらいいのかなと、正直言って、今悩んでおるというか、考えなきゃいかぬなと思っているというところでございます。
  85. 江田五月

    ○江田五月君 悩みが深いことはよく分かりますが、認められていないといったって、何で認められていないかというと、私、それはいろんなところ、ほかにもあるかもしれませんが、厚生科学審議会生殖補助医療部会の報告書とか、法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会とか、それから日本産科婦人科学会の会告とか、そういうところであって、その皆さんがこれは医療としてそういうことをやることは妥当でないと、我が国のそういう医療にかかわる人たち、医療に携わる人たちにはそういう方法は認めないということを言っているということであって、別に法律上許されていないとか、これが罪になるとかという話とは違うんですね。  それから、今現に外国へ行って、そういうやり方で子をもうけている人たちがいるわけですね、現に。外国へ行ってだけじゃないんで、日本にもそういうケースがあったわけですよ、これは報道されましたけれどもね。そういう事態のときに、しかもさっきのように、子供の親が法律上決まらないというような事態になるんですね。  もちろん、日本で、日本でアメリカのその産んでくれた人を母親にして届ければ出生届は受理されるでしょう。したがって、それを受理してもらった上で今度は実際に卵子の提供をした母親に養子縁組すれば、それは一定の法律関係はできるだろうけど、本人たちの意思は全くそうじゃないんですね。したがって、それはやらないですよ。出生届を出している、それをあくまで受け付けてくれとしかないですよ。じゃ、アメリカの方へ行って、その実際に産んだ母親に出生届を出せっていったって彼女が届けるわけはないんですよね、今のこういう事案では。  ですから、やはり私はここはね、日本だけが世界に存在しているんじゃないんです。世界にはいろんな国があって、国境はあったって人は移動できる、移動して向こうで産むことがあり得るわけですから。だから、日本がこうなんだというだけではそれは済まない、とても済まないと思いますよ。  真剣にひとつ、もっと悩むのは、もう幾ら悩んでくれても結構ですから、血も涙もあるそういう道筋を、道筋付けるのは大臣なんですから、付けてほしいと思います。
  86. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 血も涙もあることは大変大事なことだと私自身も思っていますが、アメリカでやれるから日本で認めるということになれば、今度、日本の皆さんが日本でそういうのはもういいんだということになると。それはもちろん、今禁止しているといっても、禁止を破ったから罰則が掛かるということではありませんけれども、そういう意味では、しかし、今先ほどおっしゃいましたけど、それなりの方々が、みんな関係者の方々が集まって結論を出され、当時は出された。ただ、そのときも何らかの法的整備が必要なんじゃないかという目的意識を持ってやった結果、その結論も国民の全体の中では合意が得られないまま今日に来ておるという経過でございますよね。  ですから、今先ほど申しましたように、法的にきちんと認めたら世の中がみんなそれを認めるというような事案であろうかと。個々の問題としちゃ確かにおっしゃるとおりのことでありますけれども、それで社会全体としていわゆる生命倫理といいますか、そういうことも議論の一番の基本だと思いますので、私に余りせがまれ、せがむというか迫られても、迫られても、どうもこれ、厚生労働大臣にせがまれても厚生労働大臣も困るだろうと思いますが、正直言ってどういう形で議論して納得できる結論を出すのがいいのかなということすら難しいなという段階だと思います、正直言って。  また、アメリカの一部の州あるいはイギリスでは認められているというふうに承知をしておりますが、アメリカの一部の州あるいはイギリス以外の世界、例えばドイツとかフランスでも、ちょっと法の形式の中身までは正確には承知をしていませんが、こういう生殖補助医療は許されているというふうには伺っておりません。
  87. 江田五月

    ○江田五月君 それは法務大臣に迫られても、せがまれても困るとかおっしゃるけれども、じゃだれに頼めばいいんですか。いや、それは、それならば我々議員立法考えなきゃいけないんで、これは本気で検討しなきゃいけないことになるのかもしれませんが、皆さんの方がそれだけ人がそろって、賢い顔した皆さんばっかりがそろっているんですから、やっぱりこれはやってくださいよ。まあ今日は、今日は陳情しておきます。  一つ、検察審査会についてちょっと伺いたいんですが、検察審査会が一生懸命仕事をなさっていること、そして国民が検察審査会を構成する割当てを受けて、そこへ行っていろんな仕事をしてよかったと思っていると、そういうこともあることもよく分かっております。  しかし一方で、どういう具合なのか、検察審査会にいろいろ申し立てても、何か本気でやってくれているんだろうかと、検審というのは結局はガス抜きになってしまっているんじゃないかというような声も届けられるんですが。  国民の声ですから、ここはひとつ検察審査会を、どういうんで、所管しているということになるのか、裁判所の方、検察審査会の国民へのアピールについて、国民への説明についてどうお考えなのか、お答えください。
  88. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 今御指摘がありましたとおり、例えば審査員、補充員の任期を終了された方のアンケートなどを見ますと、選ばれたときには六〇%以上の方が余り乗り気ではなかったと。しかし、任期終了時には九四%余りの方が非常によかった、よかったというような感想を漏らしておられます。  こういったアンケート結果も、これがすべてとは申しませんが、現在、検察審査会で真摯で充実した審査が行われているということの一つの表れではないかと思うわけです。  このほかにも、数字で申し上げますと、現在の起訴相当あるいは不起訴不当、要するに検察官の処分が相当でないということを含む議決というのは、平成十七年でおきますと全体の議決の五・六%、それから十六年におきましても五・五%というように毎年一定数出されておりまして、このことも、個々の事件についてどうこう申し上げることはできませんけれども、全体としては選ばれた国民の代表者である審査員あるいは補充員の方々が、忙しい中を審査会に出頭していただいて、そして検察官の起訴、不起訴処分の良しあしをしっかりと見ていただいていると、こういうことの一つの表れではないかと思っておるわけです。  もちろん、この制度の維持運営に当たる私どもといたしましては、制度がきちんと機能するように、今委員からも御指摘がありましたように、常に留意していかなければならないことは言うまでもありませんし、特に検察審査会法については、その改正法の実施というのが近づいております。そういう状況も踏まえまして、今後とも一層そうした努力を継続していきたいと、このように考えております。
  89. 江田五月

    ○江田五月君 お話のとおり、我々検察審査会法を改正して、更に強い権限を持っていただくということにしていますので、是非よろしくお願いをしておきます。  調達について伺います。  これは、私、もうびっくりしたんですね。ぶっ飛んだと言ってもいいかもしれません。裁判所のこの契約が何とまあ、随契でやらなきゃ、いや、随契じゃないや、反対ですね、競争入札でやらなきゃならぬものが何と一〇〇%随契だったという、よくよく聞くとどうもそうじゃないんで、公益法人や、あるいは民間、OBを受け入れている、天下りを受け入れている民間企業などと結んだ随意契約で不適切だった割合というものがどのくらいあるかというと、まあそういうものがこれこれとテーマがありまして、それを全部見直してみたら何と全部これは不適切で、もうちょっと改善をすべきものだったというのが最高裁の場合であって、法務省の場合はそれが八八%だったというようなことのようですが、それでもやっぱり不適切だったということは当然許されるべき話じゃないんで、どういう事案であってどういうふうに変えようとしておられるのか、最高裁の方、お答えください。
  90. 小池裕

    最高裁判所長官代理者(小池裕君) これまで、今委員指摘のような随意契約というのはどういうものが行われていたかということを御紹介しますと、民事執行あるいは破産事件の補助業務、例えば郵便を出すとかいう業務とか、あるいは保存期間の過ぎました裁判記録を廃棄する事務がありますが、そういう業務とか、あるいは証人調べの録音テープの反訳の業務等について、委員が御指摘ありましたようなOBがおります公益法人との間で随意契約を結んでおりました。そこの専門性というところに着目しておりました。私どもといたしましては、こういった契約の結び方は会計法規にのっとって、沿っているという意味で適切さに欠けるところはなかったと考えております。  しかし、今政府で所管公益法人等の随意契約を徹底的に見直すという方針が出されておりまして、それを踏まえて十七年度に公益法人等で行った随意契約について見直しを行いましたところ、今後工夫をすればそのすべてについて競争等に移行できるという見通しを持てましたことから、これは良い機会だということで、より適切な契約を目指して積極的に見直しをすることにしたということでございます。  ちょっと長くなりますのではしょりますが、執行、破産あるいは記録の廃棄というところについては十九年度からこれを比較競争によることにしますし、録音、反訳の方につきましては、これは調書にかかわるところでございますので、民間業者の状況等を調査して安定供給の見通しを付けた上で競争入札に移行することにしたいと。そこで今、民間業者の実態の調査等を鋭意進めているところでございます。  以上でございます。
  91. 江田五月

    ○江田五月君 これ、OBが作っておられる公益法人と司法協会ですね、そういうところに裁判所のOBがおられることを、どう言うか、けしからぬことだと言うようなつもりは毛頭ありませんし、司法協会は司法協会でいろんな仕事も、重要な仕事もあるだろうと思っておるんですが、しかし、やっぱり裁判所のOBがいるところへ、とにかく記録の廃棄だとかあるいはその反訳とかをもう随意契約で一括この仕事を下ろしているということになると、やはり国民から見ると税金を本当に適切に使っているかという疑問は生じてくるので、ここは是非改めていただきたいと、透明性高くやっていただきたいと思います。  法務省はこれについて、八八%は何か言うことはありますか。
  92. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) ちょっと細部はあれでございますが、今最高裁から御答弁あったように、今まで契約相手は一つだなと思い込んできた節もありますので、この際法律等で契約の相手方が明示されているなど、国民から見てだれでもこれしかないんだということが分かるもの以外は移していこうということを方針としておるところでございます。  具体的に今までどうなっておったか、もし必要があれば当局から説明させます。
  93. 江田五月

    ○江田五月君 時間になりましたので、終わります。
  94. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 大臣就任おめでとうございます。  早速でございますが、先ほど江田委員も少しお触れになっておりましたが、いじめの問題、私、地元福岡でございますが、福岡でも大変痛ましい事件がございましたし、そういう意味では今、最も深刻な一つの問題がこのいじめの問題だと思っておりますし、私ども与党といたしましても、この問題については、是非再生会議も含めて集中的な議論をしながら、一つ一つの対策について手を打っていかなければならないと思っておりますし、大臣自体も、このいじめの問題、必死になって取り組んでいきたいという表明があっているところでございます。  法務省調査を見させていただきましたが、学校内のいじめについて学校側が不適切な対応をしたとする、これは人権侵犯事件の数になりますが、平成十三年が四百八十一件、平成十四年が五百二十四件、十五年五百四十二件、十六年五百八十四件、十七年七百十六件、言わばこれは増加をしておりまして、その内容も、法務省調査を見させていただきましたが、言わば中身も執拗で陰湿な事例が多いというようなこともあって、懸念をいたしているところでもございました。  法務省は、たしか今年度から、相談事を自由に書いて法務局の人権担当者に無料で郵送できるというSOSミニレターですか、これを始めたと。いじめの実態の把握をしているということでございますが、同制度について、簡単な御説明とともに今どうなっているか、もし、分かる範囲で御説明がいただければと思います。
  95. 富田善範

    政府参考人富田善範君) いじめ、児童虐待等を始めとする子供の人権問題が社会問題となっていることから、本年六月より、全国の小学五、六年生と中学生を対象として、手紙によって相談に応じる子どもの人権SOSミニレターを約七十万枚配付する取組を行ってきております。  これは、手紙が返信された場合には、子供の人権問題に造詣が深い子どもの人権専門委員を中心に、児童生徒の悩み事に返答し、相談内容から児童生徒に対する人権侵害の疑いがあると思料されたときは、人権侵犯事件として救済手続を開始しております。  このたび、いじめを苦にする遺書を残して児童生徒が自らの命を絶つという痛ましい事案が相次いで発生したことを受け、一層この取組を強化することとし、約三十万枚を増刷して更に配付することとしております。
  96. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今もお話がありましたが、このミニレターとともに、もう一つ大きな課題として、人権擁護で取り組んでいただいているのは、今話があった、人権擁護委員の中から、子供の人権にかかわる問題についてということで子どもの人権専門委員を指名してこういう擁護の制度実施しているということもお聞きしております。  これは平成六年から既に始まっておりますから、この子どもの人権専門委員、活動状況がどのようになっているかとともに、大事なのは何かというと、そこで掌握したとしてもそれがどう現場に反映するかという問題だと思うんです。活動状況も知りたいんですけれども、それ以上に、ミニレターでも結構です、子どもの人権専門委員でも結構です。こういったもので実態を把握して、把握したいじめに対して、これにどう実効性ある措置を講じるかというのはある意味では一番大事な視点であって、特に、この問題について言うならば、法務省だけでは、法務局だけではなかなか対応できない問題であり、言わば地元で言えば教育委員会との連携問題も起きると思うんですけれども、そういった教育委員会との連携も含めて、どういった形でこれに臨まれようとしているのか、そして実際に臨んできているのかということがあれば御報告をいただいておきたいと思います。
  97. 富田善範

    政府参考人富田善範君) 法務省の人権擁護機関は、従来、文部科学省を始めとする関係行政機関と連携を図りながら積極的に取り組んできたところでございます。  子どもの人権専門委員の方の活動ぶりとしましては、先ほどのSOSミニレターのほか、小学校の現場に行きまして、現場の生徒に人を思いやる心の大事さを啓発する人権教室とか人権の花運動とか、あるいは専用電話、子どもの人権一一〇番による電話相談、こういった相談活動を取り組んでおります。  これに関する文部科学省等との連携につきましては、例えば子どもの人権SOSミニレター事業を実施するに当たっては、文部科学省から全国の都道府県教育委員会及び政令指定都市教育委員会に対し、同事業の実施に際して適切な配慮を願いたい旨の通知を発出していただいております。また、人権教室や全国中学生人権作文コンテストということもやっておりますが、これらの人権啓発活動についても文部科学省の協力を得た上で実施しております。また、人権侵犯事件の調査においても、教育委員会や学校当局の協力を得て実施しております。  今後とも、関係行政機関と連携を図りながら、いじめの問題を始めとする子供の人権問題に対し、その根絶に向けて一層の努力をしてまいりたいと考えております。
  98. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非そういった取組を深めながら、今お話があったように、この問題やはり人権という意識に対する啓発の問題というのが極めて大きな視点なんだろうと、こう思っております。  そして、おっしゃったように、法務省一省で対応できる問題じゃなくて、これは正に学校現場含めた文部科学省、様々な機関が加わった中でなければ、今おっしゃった、最後に根絶とおっしゃいました、是非根絶したいですよ。そのためにも、ある意味では法務大臣、副官房長官から法務大臣になっていじめ問題に取り組むというのは非常に大きな意味があると思います。  正にこの問題に関して言うならば、こういった総合的取組をどうやるか、そこでまただれがリーダーシップを取りながらやるか、もちろん主管という、学校という現場で言うならばそれはある一面文部科学省かもしれませんけれども、どちらかというと、さっきもちょっと話ありましたけれども、文部科学省はいじめとかいう問題をなるべく、余り表にしたくないというような気持ちはそれは出ますよ、学校現場抱えているわけだ、向こうは。法務省はどうなるかというと、言わばそういった問題に対して取り組む側の問題であるし、そういった意味では法務省の果たす役割というのは、このいじめの問題で私は結構大きな役割を担うんではないかと思っています。  そういったことも含めて、法務大臣の、このいじめ問題に対する決意を伺っておきたいと思います。
  99. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 御指摘のとおりだと思いますし、人権擁護という立場から、今局長から説明したようないろんなアンテナを張って、あるいはまた必要に応じて調査活動をするという役割をきちんとやっていかなきゃならぬと思っていますが、同時に、そこで得られた問題点をどうやって現場に生かしていくかというか、確保していくかということが次の問題でありまして、そのためには政府全体で仕組みをつくるなり、体制をつくるなりということも考えていかなければならないと思います。官邸ともよく相談をしながら、役割を果たせるように頑張っていきたいと思います。
  100. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非、総合的取組ができる体制へ、大臣としてもまた経験を生かしながら御尽力をいただきたいと思っております。  次は、これも午前中ちょっと議論がありましたが、更生保護制度の抜本改革の問題をお伺いしておきたいと思います。  これまで当法務委員会法務省が様々に取り組んでこられました一連の刑事司法制度、この改正で様々な問題取り組みましたが、刑事司法制度の言わば最終段階に当たるのが、この更生保護制度という一番最後の部門の改革なんだろうと思います。言わば裁判員制度、行刑改革、いろんなことをやっていきますけれども、その一連の刑事司法制度の最後の仕上げの部分がここに位置付けられるんだろうと思いますし、それを受けて、本年六月二十七日、更生保護のあり方を考える有識者会議、これは一年間に掛かって検討を終えて最終報告を法務大臣に提出したんですが、中身見ると結構厳しくて、日本の更生保護制度というのは結構厳しかったんだなというのを改めて思い知るようなところもあるぐらい極めて率直に厳しい内容の提言を行っておりますし、是非この提言に基づいて一つの新たな形をつくっていかなければならないと私はあの報告書を読みながら実感しましたが、まず大臣に、この更生保護制度をどのように改革しようとするのかと。法案そのものはまた来国会辺りになってくるんでしょうが、是非更生保護制度を改革する方向性、それについて大臣としてどうお考えなのかを伺っておきたいと思います。
  101. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 今おっしゃいました有識者会議の御提言をいただいておりますので、この提言を厳粛に受け止めて、この方向での抜本的な改革を進めていきたいと思っております。  ここで述べられていることは、一つは体制面において、余りにも保護司に依存し過ぎではないかと、保護観察官がより積極的に対応する体制を整えるべきであると、こういうことだと思います。これは定員の問題もありますし、ここをひとつ、いま一層充実強化を図っていきたいと思っております。  また、法整備面でも幾つかの点が言われておるわけで、関係法律の整備を進めなきゃならぬ、その中で更生保護制度の目的を明確化をする必要がある。保護観察の充実強化のためには、科学的、体系的な処遇プログラムの受講や生活状況の報告を義務付けるなど、保護観察対象者が遵守すべき事項の類型について新たに規定する必要がある。仮釈放の審理において、犯罪被害者等の意見を聴取することなど、犯罪被害者等のための施策を実施する必要があるというようなことが指摘されております。これらを踏まえて、来年通常国会に法案を提出するように今は作業を進めておるところでございます。  また、運用面につきましても、現在までに観察中に所在不明となった者の所在調査の充実ですとか性犯罪者に対する処遇プログラムの実施、あるいは保護観察付執行猶予者に対する保護観察の強化、総合的就労支援対策等々によってこの対策の充実強化を進めておりますが、さらに薬物依存や暴力的性行を有する者等特定の問題を抱える保護観察対象者に対する処遇プログラムの開発による観察内容の充実、また、遵守事項に違反した者に対する仮釈放取消し等のいわゆる不良措置の適切な実施など、保護観察の実効性を高める取組を進めてまいりたいと思っております。  これらを総合的に実施することによって、国民の理解あるいは協力が得られる更生保護制度の構築を進めてまいりたいと考えております。
  102. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非、今おっしゃったような様々の視点からおまとめをいただき、来通常国会ぐらいにはこの問題をこの場できちんと議論できるようなところまで是非仕上げていっていただきたいなと思いながら、少し具体的に中身について一、二点だけちょっと伺っておきますと、おっしゃったように、我が国の更生保護制度の特徴というのは、保護観察官という官の側がいまして、その一方で、もう一方に保護司という言わば民間の方たちがいらっしゃって、共同体制でやられているということがある意味では一番大きな特徴であって、これはこれで良さがあると思うんですよ。  ただ、その中でいつも指摘されるのは、そうはいうけれども官側の体制というのは弱いんじゃないかということがいつも言われている。さっき人数の問題おっしゃいましたんで、ここはもう何を充実していくかということを、まあ今は行革でなかなか厳しい時代ですけれども、正に官側の人員整備が今の体制で全国いいのかどうかというところを、もう一回ここはきちんと見直した上できちんと固めていただくことが整備の上では必要だと思うんです。  ただ、もう一方、やっぱりこの問題で現場を歩いたときにお会いする保護司の皆さんたち、それぞれ誇りを持って、無償で、ある意味ではボランティアの精神なんですけれども、一生懸命やっていらっしゃっているわけでございますが、この方たち、実際、更生保護とはだれが主役かといったらこの保護司の方たちが主役じゃないかなというぐらいに本当に活躍されているんです。  ただ、お願いするだけで本当にいいんだろうかと。というのは、ボランティアでそういうこと、まあさっき話があって実費弁償はしているよと言うけれども、この実費弁償これでいいのかなと、私自身もちょっと見ながら、その熱意、情熱に対してどうおこたえするかという問題になると、これどう、本当にこのままでいいのかなということも思うんですけれども。  そういった観点も含めて、この保護司活動、まあ人数も多く抱えるようになった、もういろんな困難な事態がいろいろ生じるような事態になった。それでも大変な中やっていらっしゃるわけですが、この保護司活動の基盤強化というのを何らかの形で幾つかしていく、金銭的な問題も含めてですよ、何か必要な気がしてならないんですが、何か具体的方策、こんなことを保護司活動の基盤強化のために、こういう幾つかこんなところは考えてみたいというようなもし御意見があれば伺っておきたいと思います。
  103. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 保護司の方々には大変もう献身的な御努力をいただいておると感謝をしております。おっしゃるように、実費弁償と言いますけれども、どうもちょっといろんなケースがあるようですが、一般的に言って、一件担当いただくと月のが大体二千八百十円ということで、これは電車賃にもならないというような状況でございますから、本当にお世話になっているなという思いで一杯でありますが、これを一気にばっとなんというわけにもなかなかいきませんが、できるだけ上げるように今努力をして、来年度予算もそういう努力をするつもりでございます。  また、やはり仕事の面でも相当な過重な負担になっているケースもあるわけで、これ保護観察官の増員とも絡んできますけれども、分かりやすく言うと、非常に重たい事件はなるべく引き取って保護司の方に負担をあんまり掛けないようにするとか、あるいは夜間とか緊急は観察官の方でやるとかという体制も充実をしていかなければならないと思います。  ほかにもやることはあるかもしれませんが、この保護司さんと官民共同で体制が組めるようなことの充実というものを更に進めていきたいと思っております。
  104. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、抜本改正のこの更生保護制度の中の一つの柱というか箱物になっていくんでしょうが、一つは自立更生促進センター、この構想でございますが、この構想の中において非行少年の、再び挑戦できるといいますか、再チャレンジとこれを言っていいのかどうか分かりませんが、非行少年のそういった問題についてどう取り組む決意でいらっしゃるか、この点について、更生保護制度について伺っておきたいと思います。
  105. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 自立更生促進センター構想というのは、刑務所を仮釈放になった人あるいは少年院を仮退院した人の改善更生と自立を目的として、保護観察所に併設した宿泊施設にこれらの方々を宿泊させながら、保護観察官が直接濃密で専門的な指導監督と就労支援を行う体制を整備しようというものでございます。  主に少年院を仮退院した非行少年を対象としての施設として、今北海道の沼田町に農業を取り入れた処遇を行うとともに、農業への就職を支援するための施設を整備することを今進めておるわけであります。この施設では、対象となる少年を受け入れ、宿泊させながら、優れた自然環境の下で保護観察官が直接濃密な保護観察を行うとともに、沼田町の御協力の下に、同町が設置、運営する実習農場において野菜作りなどの農業訓練を実施することを計画をいたしております。この計画は、国の施設において農業を通じて非行少年の再チャレンジを支援するという新しい取組でございますが、来年度中の業務開始を目指して今予算要求もし、努力をしているところでございます。
  106. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほども御指摘ありましたが、やはり更生ということを考えた場合、医職充というのを岡田先生が、ああそういう考え方もあるのかなという医、職、医は医療で職が就職だという、正に職というのがどれだけ生きる上での大事な問題だという御指摘もありましたし、そういった意味では極めて私は大事な施設ができ上がるんだろうと思いますし、そういったことにきちんとつながるような運営その他含めてお願いをしておきたいと、このように考えております。  それから次は、外国人のいわゆる不法滞在の問題でございます。  この問題、政府としてはこの不法外国人については半減へ向かって様々な取組、努力もなさって取組もなさっていると。  現在、お聞きしておきたいんですけれども、日本に滞在している外国人はどれだけいて、不法滞在外国人はどれだけいらっしゃるのか。そして、その上で、今日は観点で一つ聞いておきたいのは、現在、この外国人の滞在情報の管理、これはどのように行っているのか、併せて確認をしておきたいと思います。
  107. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) 日本に滞在している外国人の数、これは外国人登録者数ということになりますが、昨年末現在の外国人登録者数は二百一万一千五百五十五人、初めて二百万人を超えております。一方、お尋ねの不法滞在者の数でございますが、今年の一月一日現在、与えられました在留期間を徒過している不法残留者、これが約十九万人でございます。これに船舶密航などいわゆる不法入国、これ大胆に推測するしかないんですが、一応三万人近いと推測しておりまして、この両者を合わせました不法滞在者数、今年の年初当時で約二十二万という具合に推測しておる次第でございます。  次に、在留している外国人につきます情報の管理でございますが、二つの流れがございます。一つは、入管法に基づきまして入国してきたときの情報、それから入国してきた外国人の方が適法に在留し引き続き在留していく在留期間の更新、あるいは目的を変えて在留資格を変更する、そういう目的で私どもの地方入国管理局においでになった際には、その申請におきまして当該外国人の身分関係あるいは所属先等の情報が把握できる、これが一つの流れでございます。  もう一つは、外国人登録法に基づく流れでございまして、お住まいになっている市区町村におきまして、外国人登録を行った外国人の方につきまして、その身分関係や居住関係という情報が把握できるということになっておりまして、後者の情報は随時法務大臣に報告されるということになっております。  以上でございます。
  108. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今おっしゃったその外国人登録制度について、担い手の側の一方である市町村ですか、ここから法務省に対してどのような要望が寄せられておりますか。
  109. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) 様々な御要望をいただいておりまして、大別いたしますと二つになるかと思います。  具体的に申し上げますと、一つは、例えば外国人登録制度にいわゆる転出制度というようなものを導入することを検討されてはどうかというような御意見、あるいは外国人登録を行っている外国人がその登録上の居住地に所在していないことが判明した場合、その外国人に係る登録を閉鎖、これ法律上の用語でございますので、削除と、そういう記録を削除できるようにすることを検討してはどうか。これはいずれも外国人登録の正確性、これを担保する措置に関する要望という一つの大きな固まりの要望がございます。もう一つの御要望は、登録事項のうち削除することができるものはないか検討願いたいというようなことなどを内容といたしますいわゆる事務の簡素合理化に関する御要望、この二つのものがあると承知しております。
  110. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 この問題、大臣外国人の在留管理というのは、言わばそういった意味では二元的みたいな今処理になっている。そういう問題点があるということで、ワーキングチームをつくっていただいて様々な検討がなされているんですよね。これは規制改革・民間開放推進三か年閣議決定においてもこの在留外国人の入国後のチェック体制の強化ということが求められているわけでございますが、今私もちょっと紹介しましたが、その検討状況について大臣としてどう掌握をして、これどう最終的に結論付けて、言わば今後どういうふうにその外国人の在留管理、もう管理管理と、縛るという意味じゃないんですけども、今ある意味じゃ複雑になりながら、そのことが逆に言えば不法滞在の掌握もきちんとしにくくなっていろんな問題がこれによって起こってきているし、実際やっていらっしゃる市町村からももう様々な悩みがあると、こういった問題に対して検討状況の御報告をいただくとともに、今後どういう形でこの外国人の在留管理という問題について取り組もうとされるのか、お答えをいただいておきたいと思います。
  111. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 外国人の滞在情報の管理は、今行政事務の簡素化という観点からも議論になると思いますが、今まで主として議論されてきたのは、犯罪対策というか治安対策という観点から、不法外国人を半減するという意味でも、ただ、どういう形でどうなっているのかがよく情報が入らないということでは勝負になりませんので、これはまたいろんな役所にいろんな行政を通じてデータはあるんですけれども、これをクロスさせるというか、総合的に把握する体制がまだ十分でないものですから、またその対応もばらばらになる心配をしておるわけで、ワーキングチームでもこの連携の仕組みをどうするかということが、早急にまとめていこうではないかということが報告されておりますので、今各省とも連携を取ってこの議論をしております。早急にその方向付けをしながら、制度改正等が必要なものはやっていかなきゃならぬと思いますが、大事な問題として取り組んでいきたいと思います。
  112. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 次は、電子債権法制の問題についてちょっとお伺いしておきたいと思います。  中小企業というのはなかなか資金調達をどうするのかというのがこれはいつも悩みなんですけれども、その中に、資産が乏しい中小企業が経営健全を行っていく上でこの調達手段がいろんな角度であればいいという様々な御指摘もあり、その中で一つ上がってきているのが、これはIT戦略本部が元々決定して、中小企業がその事業資金を調達するための新たな手段を確保するというものの一つとして上げてきているのが、電子的な手段による債権譲渡を推進すると、これを施策として検討を進めようというようなことでおやりになられているということを聞いております。  私は、やはり中小企業にとってみて様々なこういうものを設けておくことが、ある意味ではこれから本当に景気回復とか本格化させるという意味でいけば、中小企業に対してあらゆる手段を提供してあげることが国としてやっておくべきことではないかなと思い、どうなっているのかなと注目もしてきたところですが、かなりまとまりができてきているというようなこともお伺いしておるんですけれども、現在検討されておりますこの電子登録債権制度の概要、大臣からお伺いしておきたいと思います。
  113. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 御案内のとおり、電子登録債権制度は、今の通常やっております手形なんかの問題を回避してコスト等も安くなるというようなことのために議論されておるわけでありますが、具体的には今検討中のものは、一定の要件を備えた信頼できる民間の機関に電子的な帳簿を管理させ、その帳簿に権利の内容を登録することによって電子登録債権が発生し、これを譲渡するには帳簿上の債権者の名前を書き換えることを要することとし、登録の内容と債権の所在とが一致すると、そういう方向で検討いたしております。  また、電子登録債権には手形と同様の取引の安全を確保するための機能として、例えば、権利者として登録原簿に登録されている者が無権利者であっても、そのことを知らずに電子登録債権を譲り受けた者を保護する機能や、債務者は原則として電子登録債権を譲り受けた者に対し権利発生の原因となった事情を理由に支払を拒むことができないという機能などを付与して、これを利用した資金調達が行いやすくなることを目指して今検討いたしているところでございます。
  114. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今大臣からお話があったように、この電子登録債権というのは従来の手形と比べると全く違うような部分が随分出てくる。そういった意味では、これをどう法制化していくかということになるとなかなか難しい課題もあるようでございますが、ともかく、本年三月三十一日でしたか、規制改革の民間開放推進三か年計画においては、この電子債権法の制定に向けた検討を進めて、平成十八年度中に法的枠組みの具体化を目指すというふうに決めて閣議決定しているわけでございますが、これは民事局長から、この法制化に向けて、この電子登録債権制度、現在までの検討状況を伺っておきたいと思います。
  115. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 今委員からもお話がありましたとおり、今年の三月の閣議決定で規制改革・民間開放推進三か年計画、ここにおいて今の立法化が唱えられているわけでございます。  これに先立ちまして、二月八日に法制審議会の総会にこの電子債権法制の整備に関する諮問をいたしまして、現在、検討を続けているところでございますが、既に七月の二十五日に電子登録債権法制に関する中間試案という一応の案を取りまとめておりまして、これを八月に意見照会を各界に行うという形で公表をいたしております。現在はその意見が私どもの手元に戻ってきているところでございますので、その結果を踏まえて最終的なこれから要綱案の作成に向けての検討を行うと、こういうことでございます。  ただし、この電子登録債権を管理する機関というのがございますが、その機関の規制、監督に関する部分については、これは法務省でというよりはむしろ金融庁の問題でございますので、そこの金融審議会において並行して審議、検討がされているところでありまして、今後ともこの金融審議会の検討と私どもの審議会、並行して連絡を取り合いながらやってまいりたいと思います。できる限り早期に関係法案を国会に提出できるよう関係者が努力をいたしていきたいと思っております。
  116. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非、法制化、具体化へ向けてのお取り組みを更にスピードアップさせながらやっていただきたいという御要望をいたしておきたいと思います。  最後に、法テラス関係で一、二問、ちょっとお伺いをしておきたいと思うんですけれども、法テラス、十月二日、いよいよ待望のスタートをいたしました。私ども公明党としては、まあ皆さんで推進してきたんですけれども、我々もこの問題を一生懸命やってきましたんで、現場も党として見させていただいて、順調な滑り出しは見せていると思いますし、受付件数が三週間で二万六千件と、まあまあ、本当に順調な滑り出しと、こう思うんですけれども。  やっぱり、法テラスと関係機関とか団体、そういう連携をどうこれからも強めていくかみたいなことがとても大事な部分だろうと思うんですけれども、この関係機関、団体との連携確保の今の状況、さらに、やっぱり大事なのは、お金もしっかり要る問題だろうと思っておりますので、十九年度の概算要求へ向けて是非頑張り、私どもも頑張りますから、是非法務省としても頑張っていただきたいと思うんですが、この点、併せて部長から御答弁をいただきます。
  117. 菊池洋一

    政府参考人菊池洋一君) まず、連携確保の点でございますけれども、御指摘のとおり、日本司法支援センターの情報提供業務につきましては、関係機関との連携を確保し強化することが重要であると私どもも認識をいたしております。  現状につきましては、弁護士会あるいは地方公共団体、経済団体などなど、合計でおおよそ二千の関係団体と連携と申しますか協力関係を築いております。一つの団体につきまして、相談の内容に応じて複数の相談窓口を設けているというところが少なくございませんので、そういう相談窓口の件数という観点で数えますと、おおよそ二万三千の窓口と協力関係を築いております。  さらに、支援センターにおきましては、各地方事務所単位で関係団体等と協議会を開催いたしておりまして、今後もこの協議会の場で連携の更なる強化あるいは深めていくという努力をされていく御予定というふうにお聞きをいたしております。  もう一点、概算要求についてのお尋ねでございますが、十九年度の概算要求、司法支援センター関係では二百十四億三百万円を計上いたしております。  内訳でございますが、国選弁護人確保業務のための委託経費といたしまして百七億一千万円、もう一つ、情報提供業務や民事法律扶助事務などの経費を含めた運営費交付金が百六億九千三百万円となっております。
  118. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に大臣に、法テラスの問題、先ほども質問があったようでございますが、本当にこの法テラスというのは、単に相談だけじゃなくて、犯罪被害者の支援業務をやってみたり、先ほど話が、国選弁護人どうやっていくかと、様々ないろんな業務をやる幅広いものでございまして、いろんなこれ、実際に業務が動き始めると様々現場から問題が生じてくることもあるだろうと思うんです。  でも、ともかく一番大事なのは、せっかくこうやって利用をしていただくと、国民が法に親しむという、そういう機関を初めてつくったわけですから、その利用者に、その声がきちんと反映するような形で常時改善をすることも必要だろうと思うし、大臣近々どうせ見に行かれるでしょうから、是非現場も見ていただいた上で、さらに今あったこの予算の確保も、結構お金掛かるんですよ、これ。財務省、結構厳しく言います。でも、我々も頑張ると申し上げましたが、予算の確保の問題、いろんな問題があると思うんですが、ともかくこの法テラスが今後順調に円滑に滑り出し、そして運営できるために、大臣としてもその改善を含めてどのように取り組んでいくかをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  119. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 今、まず予算の話を今説明させたとおりでございますが、またこの後もいろいろ充実をしていかなきゃならないことがあると思いますが、全力を挙げてその確保に努めていきたいと思っております。  また、まだ始まったばかりでこれからどんどん問題が起きるというのもおかしいんですけれども、いろんなことが気が付かないところがあると思いますが、現在でも相談、来た仕事を仕分をしなきゃならないわけですが、そのやり方もまだ不慣れなところもあるというような話も聞きますし、そのために市町村も含めて各地域ごとに協議会を開催をしておりますので、そこでもそういう意見を反映しながら事務の改善を図り、国民に親しまれる利用されやすいものにしていきたいと、こういう思いで頑張ってまいりたいと思います。
  120. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  121. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  報道を拝見をしましても、貸金業法などの改正につきまして与党・政府からどのような案が出されるのか、まず正に大詰めというところなのだろうと思います。そこで、今日は、改めて多重債務被害の実態について政府とそして大臣の認識をお伺いをしたいと思います。  私、先日、沖縄県にこの被害の実態調査に行ってまいりました。お配りをいたしました資料の一枚目は琉球新報の記事で、そこにございますように、金融業者が小学校に脅迫文を送り付けたという事案です。その中身といいますか、送られた脅迫文を二枚目に付けておりますけれども、ごらんいただきますとおり、ほかの生徒やその御両親に多大な迷惑が掛かりますよ、どんな方法、手段を使っても全額回収させていただく、こういうふうに脅し、集団登校とかトラブルを事前に防ぐためにもというふうに、登下校時の子供たちの安全を脅かすということを示唆をして取立てに協力をせよ、学校にですね、こういうふうに脅しているわけです。  私ども、直接対応されましたこの学校の校長先生や那覇市の教育委員会にも直接お話を伺いましたけれども、この件についてよく連携をして毅然とした対応をされて、幸いこれまでのところ重大な被害は現実化はしていないわけですが、実は那覇で学校への脅迫というのは今回が初めてではございません。二〇〇三年には、電話口に子供を出せ、こういうふうに電話を掛けてきて、これを断ると、おまえは教頭か、殺されたいか、こんな言辞を弄しているわけです。あるいは、脅迫ではありませんけれども、火事だといって消防車が学校に出動をしてくるとか、大量のピザが学校に配達されると、こういう陰湿な嫌がらせもあっているというふうに教育委員会から伺いました。  文科省おいでだと思うんですが、子供たちや学校にまでこのような無法なやからによる被害が及んで安全が脅かされる、こういう事態をどのように受け止めていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  122. 西阪昇

    政府参考人西阪昇君) お答えいたします。  まず、学校は子供たちが安全、安心に学んで生活する場でございます。そういう場に子供を巻き込んだような形でこのような違法な脅迫等があるということは許されることではございませんし、またあってはならないことだというふうに考えております。
  123. 仁比聡平

    仁比聡平君 今御答弁にありましたように、これ違法な行為なんですね。通常国会でも指摘をしてきましたけれども、多重債務の被害というのは、今全国に多重債務者の数として二百万人に上ると言われています。    〔委員長退席、理事松村龍二君着席〕  毎年八千人を超えるあるいは前後の方々が経済苦、生活苦を理由に自殺をされている。その背景にこういう多重債務の被害があるわけで、格差の広がりの中で子供たちへの影響が広がっているということを文部科学省としても重大に受け止めて私は取り組んでいただきたいと思います。毅然とした対応はもちろんのことですが、このような追い込み、取立て、これが許されない違法行為であるという認識に現場の先生方あるいは教育委員会に立っていただきますように強く要望しておきたいと思います。  警察庁、おいでいただいていると思いますが、この事案が検挙に至ったのか、もう一つ、やみ金対策法の施行後、沖縄県警の所管下でどれだけ摘発をされてきたのか、お伺いをします。
  124. 竹花豊

    政府参考人竹花豊君) お答えいたします。  最初に、御指摘の学校に対して文書が出された件につきましては、現在、沖縄県警察において捜査中であると報告を受けているところでございます。被疑者の検挙にはまだ至っていないとの報告を受けております。  それから、沖縄県警におけるやみ金の取締り状況でございますけれども、事件数では、平成十五年が十二事件、十六年が八事件、平成十七年が一事件、平成十八年上半期が二事件。  人員では、平成十五年が十九人、平成十六年が十二人、平成十七年一人、平成十八年上半期が三十人となっております。  被害人員等につきましては、平成十五年が二千五百二十六人、十六年が七百六十四人、平成十七年が四人、平成十八年上半期が、これは非常に大掛かりな事件でございまして、四万九千五百三人を数えております。    〔理事松村龍二君退席、委員長着席〕  被害額といたしましては、十五年が二億一千万余、十六年が二億四千万余、平成十七年が六十一万、平成十八年上半期が十億四千万余となっているところでございます。
  125. 仁比聡平

    仁比聡平君 今の警察庁の御答弁について、資料の三枚目、四枚目を委員の皆さん御参照いただければと思うんですが、つまり昨年の検挙事件数は一件で、今年の上半期は二件にすぎないわけですよね。私はこれ大変残念な数字だと思います。  沖縄県で、その所得水準は全国平均の六五%程度にとどまっています。失業率は全国平均の二倍です。特に、若者の失業率は大変高いわけですね。その生活の、そして商売の苦しみに、あるいはその弱さと優しさに付け込んで県民を食い物にしてきたのがこういう無法なやからなわけです。  今回の貸金業法等の改正論議の中で一つの焦点になっております、日掛け特例に基づく日掛け業者をどうするのかという問題があります。これ、沖縄県の県民生活課の資料によりますと、県知事登録の貸金業者が、ピーク時からは減ったとはいえ、今年三月末、平成十七年度末の時点で五百十六事業者があって、そのうち日掛け業者が約半分の二百四十一業者に上っているわけです。これはもちろん日本一の数に当たります。  沖縄県民の百三十六万人のうち、この五年間で自己破産やあるいは民事調停、そういう形で裁判所に申立てをせざるを得ないという、そういう深刻な多重債務被害に至った方だけで四十人に一人というふうに言われているわけですね。この事態を一体どうするのか。それを考えるときに、警察による無法の検挙ということは極めて重要だと思います。それは、明らかな犯罪の被害を、これを救済するという上でも、そしてこういう手口が、これは許されない違法行為なのであるということを社会的に明らかにして警戒心を高めるためにも、絶対に必要なことだと思うわけです。  ところが、現地で被害者の方々に伺いますと、警察に尋ねたら、うちは民事不介入だと、あるいは、そうは言ってもあなた、これお金借りたんでしょう、そういうことをいまだに言われているというわけですよ。これ、やみ金対策法の制定の過程でも、あるいは前回の通常国会でも私厳しく指摘をして、警察庁はそういう態度ではないんだとおっしゃるんだと思うんですが、だったらば、現場の警察官への関係法令や違法事案の徹底によってこの認識を根本的に改める、あるいは捜査体制を抜本的に強化をしていくことが必要じゃないでしょうか。  だって、県に貸金業に関しての苦情相談というのがあります。これを見ますと、昨年、平成十七年でも合計千四百件の苦情が県に上がっているんですね。ピークの十四年には千八百六十六件の苦情が申し立てられていて、そのうち法令違反が七百件とか五百件とかそういう数になっているわけですよ。そのうちどうしてこの一件や二件の検挙にしかならないのか。ここ、根本から改めるべきだと思いますが、いかがですか。
  126. 竹花豊

    政府参考人竹花豊君) 委員指摘のとおり、やみ金にかかわる事犯というのが大変悪質な事件が多く、これについて警察としては、徹底した取締りをするよう、警察庁は各都道府県警察に対しまして繰り返し指導をいたしているところでございます。  平成十五年には、このやみ金事件は全国で五百五十六事件、検挙人員は千二百四十六人を数えております。その後、平成十六年には四百三十二事件、九百十九名、平成十七年には三百三十九事件、七百六人の検挙人員を数えております。  これらの多くの事犯を、都道府県警察は、体制の許す限り、また捜査もかなり難しいものもあるわけでございますけれども、最大限の努力をしておるというふうに私ども考えておりますし、また、今後ともそのような指導をしてまいりたいと思います。  沖縄県警、十七年中一つの事件ということでございますけれども、事件の数少のうございますけれども、もっと沖縄県に頑張っていただきたいというふうに私も思いますけれども、県警には、しかし、例えば平成十七年はこういう被害者を、これはやみ金ばかりじゃありませんで、例えば出資法違反事件というのがございます。これも多くの庶民の方々をだまして被害に陥れる事件でございますけれども、この平成十七年には沖縄県警は大掛かりなこの種の事件の摘発をしておりまして、その捜査に相当大きな手数を掛けている状況もあったという報告も受けております。  私どもは、やみ金問題について決してそれを手を抜くとかそのようなつもりでおるわけではございませんし、沖縄県警に対しましても今後更に、この種の事件の摘発について更に徹底を期するよう指導してまいりたいと考えます。
  127. 仁比聡平

    仁比聡平君 今おっしゃっているような認識で本気で臨むなら、現場で、民事不介入だからあんたは帰りなさいなんていう話になるはずがないでしょう。被害者の方々は、警察はもう頼りにならない、そういうふうに言っているわけです。あるいは、先ほどの学校に脅迫状を送り付けたこのやからは、電話で脅迫をする中で、警察はこれぐらいのことでは動かない、こちらはプロだ、分かっていると言って脅しているわけですよ。ここを根本から改めるという手だてを具体的に打たなければ、実際にこんな無法行為が全国に蔓延するということになります。  改めて機会を持って具体的にもただしていきたいと思いますけれども、大臣、この警察庁の資料にも現れていますように、こういうやみ金事犯というふうに言われている金融被害の手口というのは、これは登録されているか、あるいはそうじゃないかにかかわらないわけですね。形態が月掛けかあるいは週掛けか、日掛けか、これはいろいろ形態あるけれども、登録業者の中でも無法行為を行っているのが一杯いる。これはすべていわゆるやみ金なのであって、厳しく処罰されるべきだと思いますけれども、所信表明ではこの点についてお触れになりませんでしたが、御所見を伺いたいと思います。
  128. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 登録業者であろうが無登録業者であろうが、違法な取立て行為をする、何であれ、違法な行為は厳正に取り締まるのが当然のことでございます。
  129. 仁比聡平

    仁比聡平君 一つ、その日掛け被害の例を紹介をしたいと思うんですけれども、那覇市内の繁華街でスナックを経営している五十代の女性ですが、売上げが減少して家賃を滞納して、大家さんからもう出ていってくれと言われて本当に困り果てているときに、ダイレクトメールで送り付けられているやみ金のはがきを見て電話を掛けてしまったわけです。すると、保証料の六万円を振り込んだら七十万円貸してやるというふうに言われたものだから、もうせっぱ詰まっているので、その保証料名目の六万円というのを日掛け業者から借り入れて送金をした。そうしたら送ってこない、お金貸してくれない。なぜですかと尋ねたら、いや、前金としてあと六万円足りないんだと言われて、もう一件別の日掛け業者からそのお金を借りて送ったら、もうその後、そのやみ金からは一切連絡はなくて、結局だまし取られているわけですよ。家賃を払わなきゃいけませんから、さらに日掛け業者三社から合計三十万円を借りて、一日合計五千円返していったけれども、御存じでしょうか、この日掛けの金利というのは年利で言うと五四・七五%です。こんな金利が営業の中から生まれてくるわけがないから、返済が滞ります。そうすると、夜の十一時ごろに店や自宅に取立てに来る。昼夜問わず、飯を食う金があるなら飯を抜いて払えとどなられて、借金を返すために新たな業者から借りて、もう深刻な事態になってしまったわけです。  このやからは、司法書士や弁護士に依頼したらこちらもやり返すぞと言って脅します。実際にこの方が司法書士さんに相談をして受任通知を出したら、司法書士に何かあったらおまえのせいだと思えと電話が入って、玄関にポルノ雑誌の切り抜きがばらまかれたり、店のドアのかぎ穴が壊されたり、こういう陰湿な嫌がらせが続いていくわけですね。  つまり、緊急小口の資金の必要があるときに現実には公的な支援がない、そこに付け込んで詐欺やあるいは保証料名目、高利の被害に追い込んでいくわけですね。深夜の取立てが違法なのは当然のことです。  もう一つ紹介をしたいのは、これちょっと小さいのでお見えにはなりませんけれども、大臣、日掛けの償還表というものなんです、日賦の。債務者に渡すのは、この一枚だけなんですね。これ、それぞれ別の業者ですけど。契約書も支払ったときの領収書も一切渡さないんですね。ここに見ると、業者の名前すら書いてない。取立ての担当者の名前とその携帯電話が書いてあるだけで、債務の総額が幾らなのか、その日払ったお金がどこに充当されたのか、実際には利息にもなってないというふうに彼らは言うわけですが、一切明らかにしないんですよ。こういう手の業者が蔓延しているというところに重大な問題が私はあると思います。こういう手口の温床になっているのが私は出資法の日掛け特例というものだと思うんですよ。  先ほど警察庁も、頑張っているけれども一件、二件という話でしょう。県の監督担当のところも一生懸命頑張っているけれども、これ及ばないわけですね。これ、こういった特例をきっぱり直ちに廃止すれば、そうしたらこんな手口、全部違法で、これはもう絶対にあってはならないということがはっきりするじゃありませんか。そうしてこそ被害を根絶することができるのじゃないかと。  まず、法務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  130. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 御指摘の日賦貸金業者に対する特例の廃止については、今、与党における検討状況も踏まえて、金融庁と協力しつつ法案作成作業を行っておるところでございます。  今お話のあったような事例はもう本当に許し難いことでありますし、今言ったようなことの一つの、何といいますか、温床といいますか原因になっているということも指摘されていることでありますから、早急に行うことが望ましいことは言うまでもありませんが、同時に、いつからと、導入時期についてはまた別途、いろんな急激な制度変更に伴う貸し渋り等により債務者の生活への悪影響が及ぶことを防止するという意見もあることもあって、これらの観点も含めて今、検討をする必要があるというふうに今考えておるところでございます。
  131. 仁比聡平

    仁比聡平君 大臣、債務者への生活への悪影響を及ぼしているのは日掛け業者なんですよ。高金利の被害なんですよ。そこを真っすぐに見ないと、今度、今議論になっている改正は一体何なのかという話になる。  例えば、この被害にずっと取り組んできた沖縄の司法書士さんからこんな声が上がっています。回転率が日掛けは高いわけですから、日掛けは回転率が高い、もしこれを三年も残すということになれば、この間に荒稼ぎをして店を閉める、そういう、逆に被害を増長させる、これからの三年間の間に、そういう事態になりかねないじゃないか、これは直ちに廃止をするべきだという声なんです。  今日、金融庁に御出席をお願いしたら、ごらんのように副大臣がおいでいただきました。私、閣議決定等を提出という方向になっているのは承知をしているんですけれども、国会で審議をして、衆議院、参議院、それぞれ審議をしていく時間、ある程度あります、これから。その間に、私が今申し上げている沖縄やあるいは熊本など始めとして、九州の日掛けの被害を金融庁としてしっかり実態を調査をして、で、この特例については即時廃止をするという決断を私は政府としてやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  132. 渡辺喜美

    ○副大臣(渡辺喜美君) 委員指摘のように、日掛け金融、日賦貸金業者の問題点があることは金融庁としても真剣に考えているところでございます。  まず、業者の数でございますが、御指摘のように沖縄が非常に多い。全国ベースで見ますと、日賦業者というのは千百三十六社あります。登録業者が一万四千二百三十六でございますから、沖縄がいかに多いかということがこれで分かります。また、財務局登録の業者の行政処分の状況でございますが、日掛け、日賦貸金業者の割合が三二%というふうに大変高い数字になってございます。  したがって、このような実情を考えて、今現在、与党の方で最終的な協議をいただいております案の中では、この日賦特例は廃止をするということになっているかと存じます。当然のことながら、廃止をされますと、特例金利の五四・七五%という金利は利息制限法の刻みの中に入ってくるわけでございますし、今登録が、Nという文字が入っているのが日賦業者でございますが、これがなくなると。つまり、日賦業者という分類が貸金業の中からなくなるということでございますから、貸金業一般の規制がきちんと掛かってくると。  委員指摘のような取立て規制におきましても、先ほど夜中の取立てという御指摘がありましたが、日中、執拗な取立てをする、こういったことも今回の案では禁止するという方向で検討をしているところでございます。
  133. 仁比聡平

    仁比聡平君 副大臣も、結局三年残すということについて、私、厳しく申し上げているんだけれども、そこについては認識を示されませんでした。時間がもうありませんので、また機会がきっとあると思いますので、引き続き議論をしたいと思うんですけれどもね。  先ほど司法書士さんからの声にあったように、特例を残すとか、あるいはこれだけ無法なことをやられている、保証料名目の金員の奪取を許すとか、こういうことをやると、そうしたら、これから三年間の間に被害がどんどん続くわけですよ。そこで、支払う義務もないのに、そのことを全く知らないまま支払に苦しんで生活が破綻する、倒産、廃業に追い込まれる、自殺に追い込まれるという方々がこれからもずっと出ていくということになるんですよ。それを絶対に許さないというのが今回の改正の出発点だと思います。そこをはっきり据えた法案の各提出を私は是非期待したいし、仮に法案が提出されるときにその三年の関係があったとしても、あったとしても、審議の中で即時にこれは廃止しようというような御提案があってもいいのではないかと私は思います。  あわせて、見直しを検討するやのその報道もされておりまして、まさか、高金利を改めて復活させるというような見直しをされることはまさかあり得ないと思いますけれども、一切の特例、抜け道をつくらずに高金利をきっぱり引き下げる、グレーゾーンをきっぱり廃止するということを強く求めて、私の質問を終わります。
  134. 近藤正道

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。  私は、共謀罪のことについてお伺いしたいというふうに思っています。今衆議院の予算委員会で付託中でありますので余り中身に入って御迷惑を掛けるわけにはいきませんので、周辺のことを中心に、少し日ごろ思っていることについてお聞きをしたいというふうに思っています。  今回の長勢大臣のごあいさつの中に、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案、これを今国会においてできるだけ速やかに成立させていただきたいと、こういうふうにごあいさつがございました。つまり、共謀罪を今国会においてできるだけ速やかに成立させていただきたいと、こういうふうに言われたと、こういうふうに思います。しかし、共謀罪、まあ一応掛かっているものはあるんですが、この間、三度も与党の方から修正案が出され、そして民主党の方からも修正案が出されております。  ですから、大臣が今国会で成立させていただきたいと、速やかに成立させていただきたいと、こういうふうにおっしゃっている共謀罪のイメージというのは、当初のその法案なのか、それとも三回修正されたうちのどれなのかとか、あるいはいっとき与党が丸のみしようとしていた民主党案なのか、一体どのことをイメージされておっしゃっておられるのか率直に大臣にお伺いしたいと、こういうふうに思います。
  135. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) いわゆる条約刑法の御質問でございますが、度々いろんな場面で申し上げておりますけれども、国連のこの条約について、是非国際連帯の中で国際犯罪を、組織犯罪を防圧していくために、是非この成立をさしていただいて、条約を批准さしていただきたいと、このように思っておるわけでございます。  この内容につきまして、これまでいろんな御議論があったことは承知をしておりますし、しかし、私どもが今度考えております、御提案申し上げておりますのは政府原案でございますんで、その成立をお願いをしておるわけでございますが、今までの議論を踏まえて国会でいろんな議論があるだろうなと思いますが、いずれにしても、重大な組織犯罪から国民を守り、また国際社会との協調を図っていくという観点からの組織的な犯罪の共謀罪ということを新設をすることを含む趣旨の法案が、法律が成立することを期待をいたしております。
  136. 近藤正道

    ○近藤正道君 今の大臣お話だと、政府提案の原案を一日も早く成立させたいと、こういうふうにお聞きをしたんですが、しかしこれは、政府原案は余りにもその処罰対象が広い、これではとても国民の理解が得られないということで、与党は三度も修正をされたんですよ。  そういう言わばいわく付きのものが今残っているわけでありますが、このいわく付きのものをこの期に及んでまだこれを通そうというふうに皆さんは本気になって思っておられるんですか。
  137. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 審議をお願いをしておる立場でございますので、先ほど申し上げましたように、これまでもいろんな御議論があった経過がありますから、そういうことを踏まえて御議論をいただいて、そういう趣旨の共謀罪を含む内容のものが成立をして、この条約の趣旨が日本でも生きるようにしていきたいということでございます。
  138. 近藤正道

    ○近藤正道君 法務省は、共謀罪創設の理由として、専ら国際越境組織犯罪防止条約、まあこれ条約というふうに言いますが、これを批准するためであると、こういうふうに説明をしてきました。共謀罪を作らないと条約の批准は不可能で、国際的にも批判を浴びると、こういうふうに言ってきたわけでございますが、しかしここへ来て、御案内のとおり、条約を批准した各国の状況がどんどん分かってきた。条約の内容あるいは起草経過もよく分かってきた。  そういう中で、共謀罪の創設はどうしてもやらなければ本当にならないのか、条約上の義務なのか、共謀罪など作らなくとも現行法のままでも批准できるんではないか、あるいは最小限度の法改正を行えば条約を批准できるんではないか、いろんな方面から問題提起がどんどん出てきております。  そこで、お伺いしたいんですが、条約を批准した各国は国内法の整備についてどのような対応をしてきたのか、これは国会、前の国会でも議論になってはおるんですが、このことをお聞きしたいと思うんです。  日弁連が国際室という小さなスタッフのところで調査しても、いろんなものが出てまいりました。新たな共謀罪を、立法を作ったところは、ノルウェーなどごくごくわずかなものしかないとか。あるいは、条約どおりの国内法整備を実施していない国が幾つもあると。五つも六つもあるとか。あるいは、セントクリストファーネービスという、まあ私も今初めて聞いたんですけれども、この小さい国では、日本の政府が絶対できないと言っていた越境性も要件にして、かつ国際法で言うところの留保も付けていない、いろんなことが出てきた。  つまり、各国はみんな、国際犯罪組織の撲滅と、そしてその国の刑事法の原則をどうやって調和させるかということで、様々みんな苦労しながらそれぞれその国の実情に合ったやり方をやっていて、決して一律にやっていないと、こういうことが非常に分かってきた。ならばなおのこと、日本の国だって多様な選択肢があっていいんではないかと、こういう議論が出てきたわけでございます。  ですから、私はこの際、日弁連の小さなスタッフでもあの程度の情報収集をするわけではございますので、法務省が外務省と一緒になって是非、世界のこの条約を批准した国、その後一体どういう実情になっているのか、是非しっかりと、しっかりと調べて、調査をして国会に報告をしていただきたいと。まだ法案は衆議院にありますけれども、私らも大変関心を持っております。  是非、ほかの国がどうなっているのかということを知りたいわけでございまして、是非そのことをやっていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  139. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 今までもできる限りの外国状況調査をする努力をしておりますので、詳しくは当局から説明させますが、何といっても、元々共謀罪なり参加罪が当り前だった国と、また日本のようにそういうのはなかった国との違いもありますので、そこら辺も含めて御理解を賜りたいと思います。
  140. 近藤正道

    ○近藤正道君 しっかり調べるんですか。
  141. 西正典

    政府参考人(西正典君) お答えをさしていただきます。  今法務大臣からお話しさしていただきましたように、各国それぞれの法律がございます。既存の制度で条約の求めるところを満たしている場合には新規立法を要せず締結いたしております。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダなどがこういった国であろうかと思います。  他方、先生御指摘のとおり、新規立法を行った国ございまして、先生お挙げになられたノルウェー、これは条約第五条一項(a)の(1)、これを実施するために新たに国内法を整備いたしております。また、条約第五条一項(a)の(2)、こちらを実施するために新たに国内法を整備した国としては、ニュージーランド、オーストリアといった国がございます。
  142. 近藤正道

    ○近藤正道君 調べるかどうかを聞いているんですよ。
  143. 西正典

    政府参考人(西正典君) はい。調べてございます。  それで、先ほどさらに、先生御指摘の五か国、ブラジル、モロッコ、エルサルバドル、アンゴラ、メキシコがこれに当たる国々ということで先生御指摘があったかと思いますが、これに関しましても、本条約締約国会合第二回会合の段階では、第五条一項(a)(1)に従って定められる犯罪に関し自国の国内法上組織的な犯罪集団の関与を求めるが、その国内法は組織的な犯罪集団の関与するすべての重大な犯罪を適用の対象としているわけではない、こういった指摘があって、そこを……
  144. 近藤正道

    ○近藤正道君 調べるかどうかを聞いているんですよ。
  145. 西正典

    政府参考人(西正典君) はい。そういった点で調べてございます。  さらに、セントクリストファーネービスについても既に調べてございますので、そういったものを御回答させていただければと存じます。
  146. 近藤正道

    ○近藤正道君 私は大臣に、日弁連のささやかなスタッフでもかなりの程度のものを調べたと。そこで、是非大使館を使って、この条約を批准したすべての国についてその後どういう状況になっているのかということをしっかり調べて、そして私たちに報告をしてくださいと、こういうふうに申し上げているんです。  やるか、やらぬか、そのことを聞いているわけでございます。
  147. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 今外務省からも答弁ありましたように、やっぱり調べた内容を御報告申し上げたわけでございます。
  148. 近藤正道

    ○近藤正道君 しっかり調べていただきたいと。私はまだその調査の途上だというふうに思っておりますんで、これは是非調べていただきたいと。それとも、もう全部調べてこれ以上はもう調べる気はないということなのか、どっちなんですか。
  149. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 相手の国の事情もありますので、結果が出ているかどうは別にいたしまして、調べるものは調べてしまってあります。
  150. 近藤正道

    ○近藤正道君 是非、どうも、やったのかやっていないのか、どうもはっきりしないんですけれども、これは日弁連等からも強いやっぱり要望が出ていますんで、日本の国がどのような選択肢の中で行動できるのかということを調べる上にとって極めて重要な問題でありますので、是非しっかりと細大漏らさずやっていただきたい。日弁連がある程度やれたんですから政府がやれないことはないわけでありまして、是非最後までしっかりとやっていただきたいと要望申し上げておきたいと思います。  条約が定めた共謀罪と参加罪のうち、なぜこの日本が共謀罪を選択するに至ったのかと、あるいは今回のような内容の共謀罪創設という、そういう選択肢しかなかったのかと、これも大変議論になっております。私もいろいろその論議を読めば読むほど、多様な選択肢まだ可能なんではないか、こういうふうに思えてならないわけでございます。  これを解明する手掛かりとなる重要な資料として、条約第五条の起草経過だとか、あるいはアドホック委員会が設けられておりましたけれども、そのうち第二回と第七回のアドホック委員会にかかわる公電等があるというふうに言われておりますが、この公電は肝心の部分がマスキングされていると、隠されていると。そして、非開示になって中身が分からない、こういう状況でございます。  是非、この非開示の部分、これだけ共謀罪について問題になっていると、これがこの国の刑事法の大原則を損なうのかどうかということはこれだけ議論になっているわけでございますので、共謀罪創設の必要性にかかわる重要な問題でありますので、是非、国はこの公電のマスキングというものを解除してすべての公電の情報を開示をしていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  151. 西正典

    政府参考人(西正典君) お答え申し上げます。  先ほど先生御指摘の点でございますが、これは公開されることを前提としないような、例えば議場外における立ち話とか、そういったような公開とされることを前提としないような各国が行った発言、これが記載されている部分、ここがマスキングの対象でございます。こうした性格の発言を開示をした場合には他国との信頼関係が損なわれるおそれがあるのでそのような措置をさしていただきましたが、それ以外の部分につきましては既に開示させていただいております。  また、条約の審議経過につきましては、本条約に関係する法案御審議のためということで、衆議院の方の場におきまして、昨年七月八日、さらに十月十九日の法務委員会理事懇談会におきまして書面にて配付をさせていただきました。とりわけ、昨年十月十九日に配付したものに関しましては審議経過が十分分かるようにさせていただいております。  私ども外務省といたしましても、できる限りの対応をさせていただきたく思っております。その点御理解いただければ幸いに存じます。
  152. 近藤正道

    ○近藤正道君 私は語学は駄目なんですが、日弁連等の皆さんの話をいろいろ聞いておりますと、多くは開示をされているんだけれども、肝心のところがマスキングをされている。前後の事情の話をいろいろ聞きますと、やっぱりここは極めて問題があるなと、肝心の部分がやっぱり隠されているなと、こういう思いがしてならない。やましい点がないんなら、やっぱりしっかり堂々と出して、そして堂々とした議論ができるような環境を政府としては是非整えていただきたいというふうに思います。  政府は、条約起草会議の場で、最初は共謀罪は日本法体系になじまない、共謀罪は反対だと、こういうことを実は言っていたわけでありまして、今そのことは広く知れ渡っております。しかし、そういう当初態度を取りながら、今は条約の批准のためと称してこの共謀罪法案を出している。しかも、あの、この種国際犯罪を条約で撲滅しようと旗振りをやっていたアメリカが、肝心のアメリカが条約第五条について、国際法で言うところの留保、これを実行していたということが明らかになりました。  しかし、私、問題にしたいのは、政府はこの事実を当初隠そうとしていた。すなわち、政府は、アメリカの留保の事実を知りながら、国会でアメリカの対応を問われると、当時、小野寺外務政務官は、条約との関係では特に問題なく法整備は可能となった、こういうふうに答弁をされて、留保の事実を知りながら留保の事実を言わなかった。隠したと言われても弁解の余地がないんではないか、こういうふうに思うわけでございます。  共謀罪は日本法体系にはなじまない。この国連での日本の政府の当初の発言の事実も、これも日弁連などから指摘をされて初めてこれを認めた。政府自らが公表したものではない。アメリカの留保というこの重大な事実も当初は言わなかったと。これも隠していた。重要な事実の隠ぺい、虚偽答弁すれすれのことをやっておられたわけでありまして、言葉は悪いかもしれませんけれども、こういうやり方は国民やあるいは国会に対する結果的に一種のだまし的なものではないか。今そういうものがいろんな集会の場等でも言われる。私は、やっぱりこれ非常に問題だと。  重要な事実をやっぱり言われない限り明らかにしない、隠していたんではないか、結果としてだましではないか、こういう批判に法務大臣としてはどういうふうにお答えになられるのか、これは外務省の前にちょっと法務省にも是非お聞きをしたいと、こういうふうに思います。
  153. 小津博司

    政府参考人小津博司君) アメリカの留保の件につきましては後ほど外務省の方から御説明申し上げますが、私の方からは、先に条約起草会議の場で共謀罪の制定が我が国の法原則になじまないということを言っていたのではないかと、この点について御説明申し上げます。  この我が国政府の発言は、条約交渉の初期の段階の案文を前提とするものでございまして、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪に限定して共謀罪を設けることができるとされている現在の条約の規定について述べたものではございません。  この点につきましては、これまでも別の機会には申し上げておりますけれども、改めて御説明申し上げますと、まず、我が国の政府が指摘するような発言を行った条約交渉の初期の段階での、現在の条約第五条でございますけれども、これに相当する条文の案文では、共謀罪については、対象となる重大な犯罪の範囲が定まっておらず、また、処罰の対象を組織的な犯罪集団の関与するものに限定することも認められておりませんでした。  他方我が国の現行法では、内乱陰謀罪や爆発物使用の共謀罪など、一部の犯罪については実行の着手前の共謀を処罰する罰則がありますが、すべての犯罪の共謀を一般的に処罰の対象としておりません。  そこで、我が国は、まだ範囲の定まっていない重大な犯罪のすべてについて共謀を処罰することを求める当時の案文の内容は我が国の法的原則と相入れないという意見を述べるとともに、共謀罪について、組織的な犯罪集団が関与するものという要件を加えるべきことなどを提案したわけでございます。この提案に基づきまして、共謀罪については、国内法上求められるときは組織的な犯罪集団が関与するものという要件を付すことができる規定が条約に盛り込まれることになりまして、また重大な犯罪につきましても、その後、長期、四年以上の自由を剥奪する刑と、あるいはこれより重いものということで定まったわけでございます。  そこで、私どもは、現在の条約の第五条の規定、これは我が国の刑事法の体系と整合性を欠くことはないと考えているわけでございます。  この点につきましては、この条約につきまして御審議いただきました平成十五年四月二十三日の衆議院外務委員会において御質問をいただいて、政府側が答弁しておりますし、また我々の、この私どもが提案しております法案を最初に衆議院の法務委員会で御審議いただいた平成十七年七月十二日にも御質問をいただいて、政府側が説明をしているところでございまして、参議院におきましては、平成十八年五月十日の決算委員会におきまして同様の御質問と御答弁をさせていただいているということでございますので、この点について我々が隠していたということは全くないと認識しております。
  154. 西正典

    政府参考人(西正典君) お答え申し上げます。  先ほど御指摘ございました米国の留保の件でございますが、これにつきましては、その留保の趣旨、理由につきまして米国政府に照会いたしましたところ、米国政府からは、本件留保は連邦制度という米国の憲法上の基本原則による限界から生じるものであり、本条約が犯罪化を求めている行為について、連邦法によっても州法によっても犯罪とされていない部分はほぼないと言える、こういう回答を得ております。私どもといたしましては、この米国の回答を踏まえまして、米国の留保は本条約の趣旨、目的に反するようなものではない、かように理解した次第でございます。  また、米国の留保につきまして、これまで国会などで論じられております重大な犯罪を限定する旨の留保などとは性格が全く異なるものと考えております。  さらにまた、先ほど御指摘ございました、昨年十月二十一日の衆議院法務委員会におきます小野寺政務官の御答弁では、米国につきましては共謀罪の規定を既に有していたところ、同条約第五条との関係では特に問題なく法整備が可能であったものと承知しております、かように答弁さしていただき、事実関係を御説明さしていただいたものと承知しております。  いずれにいたしましても、私ども、今後とも誤解を招くことのないよう誠心誠意答弁に努めさしていただく所存でございます。
  155. 近藤正道

    ○近藤正道君 私は、今、国連で当初、日本政府が共謀罪の創設に反対していたこと、あるいはアメリカが留保したと、これはもう広く知られておりますんで、そのことの中身を皆さんから説明を求めようとして質問したわけではなくて、これらの二つの重要な事実は、いずれも皆さんの方から積極的に公表したわけではなくて、かなり、もうどうなんだと言われて初めて皆さんが委員会の場等で明らかにした、そういう、もうストレートにぎりぎり聞かれなければ答えないという、こういうやり方は大変誤解を招きますよと。結果として、重要な事実を隠している、だましていると、こういうふうにみんな受け取っていると、そのことについてどういうふうに考えているかと、こう言っているんですよ。だから、もう完全に答弁すり替えでございます。  最後の、時間がありませんので質問でございますが、いずれにいたしましても、もうこれで三度も与党からの修正案も出ている、そういう状況の中で、土壇場の中で、ここへ来てそもそもの条約批准のためにこういう共謀罪、必要ないんではないか、こういう議論が出る、共謀罪なんか作らなくても一部の法改正で足りるんではないか、こういう根本的な議論が出る、この疑問がどんどん大きくなる、こういう正に迷走に迷走を重ねるような共謀罪は私は、この国会で速やかに通すなどというこういうことをやっぱり改めて、やっぱり撤回するのがいいんではないか、こういうことを言いたいわけでございますが、どうしてもこれをやっぱりやるということであれば、少なくとも、最後に重ねての質問でございますけれども、やっぱり情報を全部オープンにすると、外交機密などという理由にならない理由をくっ付けるんではなくて、すべての情報をオープンにして、日本の国が本当にこの批准のために何ができるのか、何がその選択肢として可能なのかという、そういう議論が十分にできるような、そういう制度を整えると。そのことがやっぱり法務大臣の私は責務だと思う。外務大臣とも十分やっぱり協議をして、そういう状況を是非つくってもらいたい。全部オープンにすると。どうぞ議論してくださいと、そういうことをやっぱり言うのは最低限度の私は義務ではないかと思います。  最後に大臣所見をお伺いします。
  156. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 簡潔にお願いします。
  157. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 日弁連さんの御意見等を引用されながら、外国の例あるいは国連の審議の状況等についてのお話がございまして、共謀罪が必要ではないと、それでも批准はできるというような御意見もあるというお話もありました。いずれも、政府がこれまでそれらの意見に対して、それは間違いであるということを申し上げてきたわけで、なおかつ、そういう話が国民の皆さんに理解されていないことについては大変残念に思います。  いずれにしても、国民の皆さんに理解をしていただいて、これを成立さしていただいて批准をさしていただければ大変有り難いと、このように思っております。
  158. 近藤正道

    ○近藤正道君 情報の公開はどうなんですか。情報の公開。
  159. 山下栄一

    委員長山下栄一君) じゃ、引き続きお答えください。
  160. 長勢甚遠

    国務大臣長勢甚遠君) 審議に必要な説明はさしてきていただいておると思っておりますし、今後とも必要なものは誠心誠意説明さしていただきたいと思います。
  161. 近藤正道

    ○近藤正道君 終わります。
  162. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時五分散会