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2006-11-02 第165回国会 参議院 財政金融委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年十一月二日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十一月一日     辞任         補欠選任      池口 修次君     岡崎トミ子君      大塚 耕平君     芝  博一君  十一月二日   委員糸数慶子君は公職選挙法第九十条により   退職者となった。     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         家西  悟君     理 事                 沓掛 哲男君                 中川 雅治君                 野上浩太郎君                 大久保 勉君                 峰崎 直樹君     委 員                 泉  信也君                 椎名 一保君                 田浦  直君                 田中 直紀君                 舛添 要一君                 山下 英利君                 尾立 源幸君                 岡崎トミ子君                 芝  博一君                 富岡由紀夫君                 平野 達男君                 広田  一君                 円 より子君                 西田 実仁君                 山口那津男君                 大門実紀史君    国務大臣        財務大臣     尾身 幸次君    副大臣        財務大臣    富田 茂之君    事務局側        常任委員会専門        員        藤澤  進君    政府参考人        内閣府政策統括        官        高橋  進君        金融庁検査局長  西原 政雄君        総務省統計局長  衞藤 英達君        厚生労働省職業        安定局次長    鳥生  隆君    参考人        日本銀行総裁   福井 俊彦君        日本銀行総裁  武藤 敏郎君        日本銀行理事   稲葉 延雄君        日本銀行理事   山口 廣秀君        日本銀行理事   水野  創君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融調節に関する報告書に関する件  )     ─────────────
  2. 家西悟

    委員長家西悟君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、池口修次君及び大塚耕平君が委員を辞任され、その補欠として岡崎トミ子君、芝博一君が選任されました。     ─────────────
  3. 家西悟

    委員長家西悟君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として金融庁検査局長西原政雄君外三名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 家西悟

    委員長家西悟君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 家西悟

    委員長家西悟君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のために、本日の委員会に、理事会協議のとおり、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君外四名の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 家西悟

    委員長家西悟君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 家西悟

    委員長家西悟君) 財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 山下英利

    山下英利君 おはようございます。自由民主党の山下英利でございます。  今日、この委員会トップバッターとして質問をさせていただく機会をいただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。  本日は、前回の委員会で御説明をいただきました日銀通貨及び金融調節に関する報告書、これを中心に質問をさせていただきたいと思います。  あわせて、私はこの報告書が、七月にゼロ金利解除になったと、その前の段階の、言ってみればトンネルを抜け出るといいますか、明かりが見えてくる報告書だろうというふうなことで丹念に中身を拝見をさせていただきました。  また、昨日、十一月一日に発表されました二〇〇六年十月の経済物価情勢展望というのと併せて拝見をさせていただき、やはりこれからの先行きについて改めて日銀にもしっかりとお話を伺いたいと、そのように思った次第でございます。  正に昨日発表されましたこの経済物価情勢展望、二〇〇六年十月におきましては、実体経済については内需外需がともに増えてきていると。そして、企業部門から家計部門へと波及が進む中で、これから先、息の長い拡大を続けると、こういう予想をするというふうに記されております。また一方、物価は二〇〇七年度にかけて前年比プラス幅が次第に拡大していくと、このように予想されているわけでございます。  ここでまず私が日銀総裁にお聞きをしたいなと思っているのは、同時にこの上振れ・下振れ要因というものも記載されているわけでありますが、現在デフレ状況は脱却したと考えてよいのかどうなのか、この点については報告書拝見してもはっきりと明確に記されていないというような状況で、どう読み取ったらいいのか、その点につきましてまず福井総裁の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  9. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) おはようございます。日本銀行福井でございます。  今日は日銀半期報の御審議、よろしくお願い申し上げます。  ただいまの山下委員の御質問にお答え申し上げます。  委員のお言葉のとおり、一昨日でございますが、日本銀行では新しいいわゆる展望レポートを発表いたしました。この中で、二〇〇七年度までを展望し、経済として、今委員指摘のとおり、内需外需がともに増加し、企業部門から家計部門への好影響波及が進む下で日本景気は息の長い拡大を続けると、こういうふうに予想させていただきました。また、こうした下で、物価をめぐる環境も、これは既に徐々に変化してきておりますが、更に好ましい方向に変化していくだろうというふうに見ています。  物価指数に即して見ますと、国内企業物価国際商品市況高などを背景としまして前年比三%台の上昇となっておりまして、先行き上昇基調を続けるというふうに考えております。また、消費者物価指数の方は前年比で見てプラス基調で現在推移しております。先行きも前年比のプラス幅は少しずつ拡大していくというふうに予想しています。  今お尋ねのデフレということでございますが、デフレという言葉はなかなか難しく、様々な意味で用いられているというふうに思います。また、どの程度の幅や期間の物価指数の下落をデフレと呼ぶかも、これは論ずる方々によっては大変異なっているということでございます。したがいまして、デフレ脱却時点についても様々な見方があり得るわけであります。あらゆる人が納得されるような一つ時点をくっきりと見いだすということは難しいというふうに私どもは思っています。  ただ、大切なことは、経済が持続的な成長を続ける下で物価が安定的にプラスで推移していくと見込まれる状況であるかどうか、これが非常に重要な点であります。経済の前向きの循環メカニズムがきちんと働いて息の長い成長につながるというのは、正にこの点をしっかり見据えていれば判断できるからでございます。日本経済景気が緩やかに拡大している中で、今申し上げましたような方向で着実に歩を進めていると私ども判断いたしております。
  10. 山下英利

    山下英利君 ただいまの御説明を伺っていると、基盤としてはもうデフレを脱却しているというふうに聞こえてくるわけでございます。  既にそのレポートの中でも拝見をいたしておりますけれども需給ギャップというものは既に需要超過をしてきていると。これまでは供給が過剰であったと、だから物が売れなくてデフレ状態になってくる。しかし、今度は需要の方が供給を上回ってきていると、これはもう物の値段が上がってくるんだと、分かりやすく言えばそういう理屈になるわけでございますね。  ですから、需給ギャップ需要超過となってきていて、先行き超過幅は緩やかにもっと広がっていくだろうと。そして、供給過剰の調整はもう既に終わったんだと。インフレ局面への対応もしっかり視野に入れていかなければならないと私も思うわけでありますから、デフレは既に脱却したと、そういうふうにもう明言されてもいいんじゃないかと思うんですが、まだそこまで言葉が詰まらない、煮詰まらないと申しますか、大変慎重に扱われているということに対しまして、もう一度、もうこれだけの環境がそろってきたんだからデフレ脱却と言ってもいいんではないかと私なんかは思っているんですけれども、そこに至らないところの明確な理由というものをもう一度お聞かせいただけますでしょうか。
  11. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 少なくとも、物価が下がり続け、生産所得支出循環が後ろ向きに動く、経済が落ち込む方向に動く、併せてデフレスパイラルリスクを人々がいつも感ずると、こういう状況からはもう相当脱却して前進してきているというふうに思います。今は物価基調がだんだんしっかりしてきていて、生産所得支出メカニズムが前向きにようやく働くようになってきたと。そういう意味では景気拡大のパスにきちんと乗っていると言えるわけですけれども、更に足固めをしながらしっかり前進していくことが重要だと、そういう時期になっていると、私どもはそう思っています。  そういう意味では、一言でデフレを脱却したか否かというのをクリアカットに申し上げることが適切かどうか、非常に微妙な段階を前向きに今経過しつつあると、こういう状況だというふうに思っています。
  12. 山下英利

    山下英利君 丁寧な御説明ありがとうございます。  やはりそこのところの言葉を選ばないと、このデフレを脱却したかどうかということを総裁の立場で明言されるということは非常にいろんな波及効果をもたらすという、そういった観点から慎重に言葉を選ばれているんだろうなと、そのように思います。  ただ、いっとき言われましたような原油が高騰を続けるということも最近落ち着いてきております。まだ不安定な要因は残っているということですけれども、だからこそ七月にゼロ金利解除されたんだと、そのように思うわけなんですけれども。  余談になりますけれども、この財政金融委員会というのは、私も支持者の間で聞いていると、専門的で非常に難しいというふうに言われます。ですから、この財政金融委員会質疑が大変難しい経済理論やり取りにならないように私自身も気を付けていきたいと、そういうふうに思っておりますので、できるだけ分かりやすいやり取りでやらなければ、今の日本経済がやはり回復基調に向かっているんだということを国民にしっかりと伝えていく、そういったメッセージとしては分かりやすいというのは非常に大事なことではないかなと、そのように思いますので、黒か白かということについてそれをはっきり明言するというのは難しいことでしょうけれども、言ってみればどういう方向下にあるのかということはしっかりと伝えていただきたいなと、そのように思っているところでございますので、よろしくお願いいたします。  また、三月に量的緩和解除されまして、そして七月にゼロ金利解除されたと。私は、言ってみれば日銀がようやく金融政策のカードをお持ちになったと、そういうふうに受け止めております。そして、それは今までゼロ金利にならざるを得なかったというような状況で、日本国内経済状態、それを考えますと、金融政策だけでは景気がもう支えられなくなってきたというふうな時代、長い時代を経てきたわけですから、言ってみればこれは非常に異常な状況だったと、そのように私も考えております。そういった意味においては、金融政策の限界というのもこの間の金融政策運営の中で出してしまったのかなと、そういうふうに思うところなんですが、この間、ゼロ金利を続けたことによって、やはり安い金利で借りてそれが海外投資に向かうとか、やはり必ずしもプラスの面だと言い切れないいろんな事情も起こってきておりました。  ですから、私はそういうのは余り好ましくないというふうに常々思っておりましたので、このゼロ金利解除についてはもう時期的にもこれは当を得ているんだろうなと、そういうふうに思っているところなんですが。  一点お聞きをしたいのは、これ七月にその決定をされました。私自身日銀はこの量的緩和解除方針に三月に転じて、それで七月に解除したという中で、なぜ七月に踏み切ったのかという点をもう少し具体的にお聞きいたしたいんです。  と申しますのも、八月に発表される四月から六月の経済指標を見た上で、これは大きな、ゼロ金利から、それを今度は金融政策の幅を持たせるという大きな政策の転換ですから、これを七月にやる意味と、それから、八月のそういった出てきた四—六月の指標を見た上で、しっかりと足腰を強くして判断に踏み切るということでもよかったのではないかなと。  結果としては、どう受け止めておられるかということは、それから大きな市場混乱等はなかったと私は思っておりますので、結果オーライというふうなことも言えるかと思うんですが、説得材料として、なぜ七月にやったのかということについてちょっと総裁、お聞かせいただきたいと思います。
  13. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) お答え申し上げます。  非常に大切な御質問で、ここから先の金融政策運営タイミングを考えていく場合にも今の御質問に正しく答えなければいけないというふうに思います。  実は、一昨日出しましたあの展望レポート一つ前のレポートを四月に出しています。三月に量的緩和解除を行いまして、経済見通しをある程度出したんですけれども、四月の展望レポートで、やはり二〇〇六年度、七年度まで展望して日本経済及び物価の言わば望ましい経路シナリオというものを出しました。そして、それに沿ってその後の経済が動くかどうかということをつぶさに点検しながら、七月まで進んできたということでございます。そのことは、我々だけがそうしてきたというんではなくて、マーケットの方におきましても、あるいはもうマーケットを離れても、多くの方々がそういう標準的なシナリオと実際の経済動きと平仄が合っているかどうかという感じでずっと経済をごらんになってこられまして、やはりあの七月の時点で事前に想定していた経済及び物価経路とほとんどそごがなく経済が推移しているということが確認できたということでございます。  マーケットの方もほぼそういうふうな認識をお持ちになったようで、市場の中で表現されます先物の金利等にそれが非常にくっきり出てきて、そういう意味では、日本銀行マーケットとのコミュニケーション量的緩和以降数か月の間に相当進展し、ほとんど認識不一致がないと。完全な一致ということはなかなかこれは常に難しいんですが、ほとんど不一致がないと。したがって、翌月以降出てくる経済指標についても、おおむね予測が付くというふうな状況になりました。  金利変更タイミング、早過ぎないでかつ遅過ぎないでというのはなかなか難しいんですけれども、私どもは七月の時点でこれ以上先延ばしする理由はなくなったと。むしろ、日本銀行が先延ばしをしていると、やっぱり経済物価情勢の着実な改善との対比で見て、金融政策面からの刺激効果が次第に強まっていくことを容認するんだなという感じになりかねないと。それは、もしそのようなことになりますと、結果として、将来、経済物価が大きく変動するリスクが逆に出てくるわけでして、私ども物価安定の下で息の長い、長続きする景気拡大を実現したいと視点は明確に定めておりますので、その方向性に明確に沿った判断はやはり七月であったというふうに思っております。
  14. 山下英利

    山下英利君 これ、七月だったか八月だったかというのは、一か月の違いですけれども、今、福井総裁がおっしゃったように、相当いろんな判断の中で、たかが一か月ではなくて、この一か月の判断の違いというのは、その日銀市場に対するスタンス、これを市場に受け止めさせるのには大変大きなインパクトがあると私は思っているんですよ。  だから、先ほどちょっと申し上げましたように、四—六月の実績、これはもう間違いないだろうと踏んで判断されるのと、そこのところをしっかりと確認した上で判断をされるということにおいては、やはり日銀というのは足下をしっかり見て判断をされているなと、あるいは、そこのところはかなりやはり経験値から判断をされているんじゃないかというふうに思われる。そこの違いというのは大変大きいと思うんです。だからこそ、マーケットはどちらかというと先行き日銀がどう動くのかということで動きますから、慎重な対応をして、言ってみれば石橋をたたいて、たたいて、たたいて渡るというふうなスタンスで、今のまだ経済の動向、必ずしも安定、上昇基調に入ってないという中においては、私は石橋をたたいて、たたいてもたたいても、確認の上で判断をされるということがまだ必要なんではないかなと、そのように思っているわけでございます。  今、ちまたといいますか報道なんかでも年内に再利上げというようなことも言われているわけですけれども、この辺は、日銀の七月に利上げに踏み切ったというスタンスをどういうふうにとらえるかということでそういう報道がされているんだと思うんですね。だから、ここはもう一歩しっかりと実体経済を見た上でということが市場に定着してきますと、金利というのは私は落ち着くんじゃないかなと思っているんです。むしろ、そういった経験値でこの先こうなるからということで踏み切ったと受け止められているからこそ、またもう一回再利上げがあるんじゃないかというようなことも報道がなされるんじゃないかという懸念もあるんですが、総裁、どうお感じになりますか。
  15. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) まず申し上げなければなりませんのは、次の利上げについて私どもは予断を持って臨んでいないと。特定タイミングとか特定政策内容ということを頭の中で前もって描きながら判断に臨んでいるわけではないと。今のところは全くオープンでございます。市場の方も、いろいろと出てくる経済指標に反応しながら、この先の経済の本当の基調的な動きは何だろうかと、まだ探りを入れている段階だと私は思っています。  一昨日出しました日本銀行展望レポートシナリオを下敷きにして、これから新しく出てくる指標をどう読むかと。我々は分析的手法で読んでまいりますが、市場はいろいろな市場の価格とかレートを表現しながら、やっぱり市場も結局は基調的な動きを探っているというわけで、その市場の探ったところと私ども分析的な判断がいずれ一致する可能性がやっぱりあるわけです。必ず一致してきます、ある時期に。そういうコミュニケーションの繰り返しの中で最も正しいタイミングをつかんでいきたい。今のところは全くオープンということでございます。  そういった市場とのコミュニケーションの枠組みは、量的緩和政策解除時点で私どもがつくり上げまして市場に提示し、七月に一回経験済みと。これからは更にその経験を磨いていきたいと、こういう段階で、委員指摘のとおり早過ぎず遅過ぎずと、これも私どもにとって最大の責任課題ですが、最も難しい課題でございます。しっかりやってまいります。
  16. 山下英利

    山下英利君 ありがとうございます。しっかり慎重に是非、市場を見ながら、しかも景気というものに敏感に反応する金融政策、これに邁進をしていただきたいと、そのように思うわけであります。  やはり金利政策というものにおいては、ゼロ金利政策のときのように、まあこれは日銀の方も報告の中にお書きになっていらっしゃいますけれども経済物価情勢と長く離れて継続する場合は、中長期的に見て金融行動投資行動を通じて経済活動の振れが大きくなる。これは私も非常に理解できるところであります。片っ方の金利がゼロで止まっていると、もう片っ方の方は動いていると。それで、経済の振れの幅がどんどん大きくなってしまって、先ほどちょっと申し上げたように、プラスの面もあればマイナスの面もあるというのは正にそこじゃないかなと、そのように思っておるわけでありますけれども。  物価上昇率が非常に大きく動くという面でのリスクがあるということは理解できるんですけれども経済成長が、もう一度また同じことを申し上げますけれども上昇安定軌道に乗ったかどうかを判断する大変微妙な時期でもありますから、今の総裁答弁のように、時期を逸さず、しかも先走らずということを本当にしっかりと守って政策運営当たっていただきたいと、そのように思っております。  政府日銀が一体となったやはりこの景気回復の更なる押し上げの中で、もう一つ私が日銀にお聞きをしたいのは、今言われている格差の問題、これについて日銀として金融政策の中でどう受け止めておられて対応されていくのか、まず今言われている格差の問題というものに対する御認識総裁からお聞きしたいと思います。
  17. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 日本経済、過去何回も景気のアップダウンを経験し、この景気回復局面というものを経験してきておりますけれども、今回の特徴は、景気が緩やかに拡大している中で、地域企業規模によって回復程度に依然としてばらつきがあると、今おっしゃった格差があると、これが今回の景気回復及び拡大局面一つ特徴でございます。  恐らく今回は、国内構造調整の進捗、それから世界経済拡大背景とするものでございますため、世界経済との結び付きが強く、過剰債務などの構造的な問題を早めにめどを付けた大企業、とりわけ製造業企業業況改善が目立っていると。その一方で、中小企業などにはそこまでの景気拡大の実感がまだ出ていないと。  また、グローバルな大企業の中には、生産拠点海外への移転を進めている企業も多うございまして、その影響を主としてこれは関連工場下請企業のある地方が受けてきたというふうな面もあるというふうに私ども分析をいたしております。もっとも内外需がともに増加し、企業部門から家計部門への好影響波及が進む下で、回復動きは次第に幅広い範囲に波及しつつあることも事実でございます。先月の支店長会議におきましても、水準の差はかなり大きいと。しかし方向としては、すべての地域において景況感改善動きが見られることが確認されました。  したがいまして、私どもとしては、景気拡大の芽を摘むことなく、息の長い拡大を続けていくと、続けさせていくと、これを実現するということが、このばらつきのある経済であっても、すべての地域に恩典が及ぶことが実現できるだろうと、こういうふうに考えております。
  18. 山下英利

    山下英利君 今総裁の御答弁の中で、地域的には差はあるけれども全般的に上向き基調であると、そういった中での政策判断をしているというふうに御答弁をいただきまして、それは支店長会議でもいろんな地域状況というのを報告を受けながら政策判断されているということで、私も一定の理解をさせていただいております。  そういった中で、私は、この地域経済報告というのも毎回必ず目を通させていただいています、日銀がお出しになっている。これは、支店長会議で、それぞれの地域日銀の支店長さんが地域経済状況といったものも報告をされながら取りまとめられているということだと思うんですが、いつも気になるのは、この地域経済報告の下に、「本報告は、本日開催の支店長会議に向けて収集された情報をもとに記述されている。 なお、記述内容は支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものであり、必ずしも日本銀行全体の統一した見解ではない。」と、そういうただし書が付いているわけなんですね。  ここにただし書を付けられる意味についてちょっとお聞かせいただけませんか。
  19. 武藤敏郎

    参考人(武藤敏郎君) 地域経済の実情を把握するということは極めて重要だという、御指摘のとおりでございまして、三十二の日本銀行の支店においてその調査を行い、支店長会議報告を受けると。その上で、これは昨年の四月からなんでございますけれども、今お示しのありました、我々さくらレポートと、色が桜色をしているものですからさくらレポートと呼んでいるんですけれども、これを公表することといたしました。この位置付けは、各支店のそれぞれの地域報告というものをまとめたものでございます。  日本全体の日銀としての考え方というのは、これを踏まえた上で、また別途、毎回の政策決定会合の都度、月例の報告という形で出しております。これは全国についての記述でございます。  ですから、これは、そういう意味では、各支店の報告をまとめたものであるということであって、「全体の統一した見解ではない。」とわざわざ書くのもちょっと書き過ぎかもしれませんけれども、趣旨はそういうことでございます。
  20. 山下英利

    山下英利君 今副総裁がおっしゃったとおり、ちょっと書き過ぎじゃないかというのは、何でこういうことまでわざわざ書かなきゃいけないのか、そこまで慎重にならなきゃいけないのかというふうなところをちょっとお聞きをしたかったわけであります。  そして、政策決定会合におきまして、やはりこういった地域経済状況、これをどういうふうに政策決定の中に織り込んでおられるか、これについては余り政策決定会合の議事録を拝見いたしましても読み取れる部分が非常に少ないんですよ。だからこそ今この地域経済報告についての質問をさせていただいたわけなんですけれども。  やはり今大事なことは、国と地方、それから要するに、これは先ほどちょっと総裁もおっしゃいましたけれども、大企業中小企業、また都市と地方といった面における違いですね、これに対して、経済が上方、安定志向に向かいつつある中で、やはり地域経済というのはまだら模様の状況を呈しているというところを踏まえた金融政策というのが私は求められるんだと、そういうように思います。  ですから、最初に質問させていただいた点は、どちらかというとマクロ経済から見た議論というふうに私は受け止めておりますけれども、やはりその地域経済というミクロの観点から、要するに家計と国全体というふうなマクロ、ミクロではなくて、やはり国全体と、それから地域というものに焦点を向けたやはり判断というのは大変重要だというふうに思っています。  そういった意味で、この地域経済報告拝見すると、やはり伸びているところ、それから横ばいのところ、そしてやはりまだ低調なところというところが出ています。政策決定会合の中で、その状況を踏まえたときに、伸びているところ、横ばい、まだ低調といったところを、どこを基準に決定会合での議論がされているのか、それを教えていただきたいんです。要するに、一番下のところで見ていらっしゃるのか、あるいは真ん中なのか、真ん中であればやっぱり下のところに対してはどういうふうに考えられるのか、そういったところもやはり示していかなければいけないんではないかなというふうに思いますが、いかがでございますか。
  21. 武藤敏郎

    参考人(武藤敏郎君) 地域経済の実情を把握して金融政策を運営することが大事であるというのは、全く私ども同じように考えております。  このさくらレポートを、昨年四月から作りまして、それを踏まえて金融政策決定会合に生かしているわけですが、どのように生かしておるのかということでございます。  まず、四半期ごとに支店長会議が開催されまして、そこの場では九人の政策委員全員出席いたしまして、相当濃密な意見交換を行っております。したがいまして、政策決定会合に臨む政策委員は、その場での地域経済の実情というものを十分頭に置いて判断をするということでございます。まあ、どのレベルをその基準にするのかというお尋ねに明確にお答えするのは難しいわけでございますが、今申し上げましたように、九人の委員がそれぞれ実情を踏まえた上で判断をするということであります。  基本的に、地域格差というものを念頭に金融政策を運営するということにおいては、全く私どもも重要と考えておるわけでございますが、マクロの金融政策運営に当たりましては、どうしてもこのマクロの政策ツールというものを我々は、何というか、通してマーケットに働き掛けるということでございますので、個々の地域に、かゆいところに手が届くようなことになりますと、このマクロ金融政策という手段ではなくて、更にほかの政策手段というものも併せ考えていく必要があるのじゃないかというふうに思いますが、マクロの視点からも、しかし今申し上げたような形で、我々自身は大いに考慮に入れて行動するということが重要だというふうに思っております。
  22. 山下英利

    山下英利君 今、副総裁、御答弁されたとおりだと私は思います。  しかし、私自身もこのさくらレポート、これ日銀がお作りになられて、これは大変いいことだと、そのように思っているわけです。昨年からお作りになられた。やはり、今地域経済がまだら模様だという中で、日銀がしっかりとそういったことも見ていらっしゃるという部分においては、こういったものが作られているということは私は大いに評価をさせていただきたいと。内容の充実については、またどんどん検討をしていただいて、より細かいしっかりとしたものにしていただきたいと思うわけなんですけれども。  やはりこういったレポートが、しっかりしたレポートが出てくるということは、それぞれの地域の支店長さん、日銀の支店長さんは大変よく回っておられます。そして、地域中小企業、事業主さんとも本当によく動いて、そして状況を把握されていると。ということになりますと、やはり日銀がマクロでもって政策決定をする際には、やはりそれが地域の実情をどういうふうに考慮して決定をされたのか、今度は支店長さんがその地域のそういった事業主さんに行ったときにしっかりと説明をしていただいて、そして地域の事業主が今の日銀政策決定というのはどういう方向を向いているんですよということを示していただきたいというふうに私は思っておるわけです。支店長さん、大変努力をされていらっしゃる方、私も存じ上げておりますので。  やはり私も地方へ行きますと、地方はまだまだ全然景気回復の実感がないんですよと、そういう声を引き続き聞くわけであります。ですから、日銀とすれば、マクロという部分ではこういう政策決定をした、その背景にあるミクロの、いわゆる地域の部分についてはこういう見方をしているからということで、しっかりと双方向コミュニケーションを取っていただきたいと、そういうふうに思うわけですけれども総裁、どうお感じになられますか。
  23. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 支店長会議は、極力政策決定会合の直前に行うことにしておりまして、政策委員と地方の支店長との間で率直な意見交換をする、本部の考え方も支店長には十分伝えて、地方に帰ったときに地方の企業金融機関その他の方々にきちんと説明できるようにしております。  それから、政策決定会合でマクロの指標を基に議論する場合にも、そのマクロの指標の裏にある各地域の事情というのが、十分各政策委員の頭の中に入った上での議論になっていると、こういうふうに御理解いただいていいと思います。  それで、地域の実情につきましては、支店長頼り、支店長にばかり頼っているわけではありませんで、地方におきましても私ども、例えば商工会議所の会頭さんと議論をいたしますときに、地方の事情については詳しく御説明を承っております。そうしますと、商工会議所を通じても日本銀行の考え方が地方にも御説明いただいているのではないかというふうに思っております。  そういうふうに幾重にも通じてコミュニケーションを良くして、政策の透明性というものはそういう形でも図っていきたいというふうに思っております。
  24. 山下英利

    山下英利君 どうぞよろしくお願いいたします。  今回のゼロ金利解除にしても、ああ、これは異常な状況なんだから、金利引上げはやむを得ないという声と同時に、何でここで金利を引き上げるんだという声もあるということをやっぱり認識をして、それに対しては丁寧なやはり説明というものが必要だろうと私も実感をしているところでございます。  ですから、今るる総裁から、政策決定会合の状況といいますか、もう委員の頭の中には地方がしっかり入っているというお答えをいただいたんですけれども、私は、政策決定会合の中にいわゆる現場の支店長さんがお入りになって実際に意見を交わす、そういったこともあってもいいんではないかなと。もちろん、だから支店長会議でいろんな議論をされますけれども、その会議で話し合われたことを、やはり実際に政策決定会合に代表として支店長さんが入るということも一つ考えてもよろしいんじゃないかなと、そういうように思っていますが、その辺のところはいかがでございますか。
  25. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) これはなかなか難しい問題でございまして、政策決定会合というのは、やはり国会で御承認をいただいた正式のメンバーが議論して意思決定をするという仕組みになっています。したがいまして、この議論というのは、九人のメンバーが新しい結論を見いだすための、かなり格闘でございます。討議を通じて一つの結論を見いだすと。したがいまして、国会の御承認を得ていないメンバーが討議に加わるということは、今の仕組みの中ではなかなか難しいことではないかと。前もって十分そういう情報を頭に入れて、各委員の見識がそれを十分こなしていくこと、これが前提になっているのではないかというふうに思っております。
  26. 山下英利

    山下英利君 確かに、国会同意人事ですから、そういった面における難しさ、これはあると思うんですね。だから、私が言いたいことは、政策決定委員の中に本当に現場をよく知っていらっしゃる、そういった方をやはり政策決定委員の中に入っていただいて、やはり地方の状況というものがしっかりとお話ができる方、こういう方を是非とも考えていかなければいけないんじゃないかなと。  マーケットだけ見ていても駄目なんですよ、今の状況というのは。そういう金融市場と地方というものがばらばらであってはいけないし、むしろ地方というものをどうやって活性化していくかということに対応する金融政策というものは、必然的に今度はマーケットを引っ張っていくだろうと、そのような考え方も持っていることをちょっと申し上げておきたいなと、そのように思うんで。  政策決定の中身については、これは日銀対応でございますけれども、どうか、先ほど申し上げたような格差という問題も今非常に議論をされておるところでありますから、金融政策においては地方という、このさくらレポートをもっと充実させていただいて、これを政策決定に十分反映させていただきたいと、そのように申し上げておきたいと思います。  最初のちょっと質問に戻らせていただきますけれどもデフレからの脱却というのは政府にとってもこれは大変重要な課題でございます。それで、なぜ戻るかというと、大分状況デフレ方向からインフレの方向へ向きつつあるというふうに読み取れるところがあるわけであります。  したがいまして、従来から言われていたようなインフレ目標値の設定、いわゆるインフレターゲットという議論というのはまた最近よく言われるようになってきたわけでありますけれども、さっき慎重にという総裁の御答弁をいただきました。その慎重にという中においては、このインフレターゲット論については、インフレターゲットというかその目標値ですね、今までは物価ゼロということを念頭に置いて緩和をしていくんだというお話でございましたが、ある一定の目標値というものを置いた、そういった金融政策の運用については、今は福井総裁、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  27. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 日本銀行におきましては、インフレーションターゲティングと、こういう枠組みについて頭から否定しているわけではありません。金融政策の透明性を高めるための一つの枠組みだというふうに認識しています。  金融政策の透明性を高めるということは大変重要なことでございまして、金融政策金融市場金融機関行動を通じて効果を発揮するものでございますので、政策の有効性を高める上でも、また中央銀行の説明責任を果たしていく上でも透明性確保ということは非常に重要な課題だと考えています。  具体的にしかし、その透明性を高めるために日本の実情に合った枠組みとして何が最も適当かと、これはなかなか追求が難しい課題でございます。国によって、中央銀行の仕組みによってかなり異なり得るものでございます。海外中央銀行の状況を見ても、インフレーションターゲティングを含めて様々なバリエーションが透明性向上の手法として存在しています。  日本銀行は、これまでかなり長い時間と、何といいますか、討議を経まして、日本銀行金融政策運営の透明性向上のために新しい枠組みを持ちたいということで検討を重ねてまいりまして、去る三月の量的緩和政策解除の際に新しい枠組みを公表いたしました。その枠組みの中身は一々御説明申し上げなくても委員既に御承知のとおりでございますが、その枠組みの中に「中長期的な物価安定についての理解」というものを出させていただきまして、これは数値的表現を伴った表明の仕方になっております。  具体的には、ゼロ%から二%の幅、中央値が約一%ということで、これを政策委員のメンバーがそれぞれに中長期的な物価安定ということを、そういう形で理解するということを前提として金融政策をやるということになっておりますので、インフレーションターゲティングとは違いますけれども、極めてフレキシブルな形で、やはり国民の皆様方と共有できるであろう物価安定の理解を数値的にもお示ししていると、ここまで日本銀行も今のところ前進してきているということでございます。  この枠組みは、海外の事例、インフレーションターゲティングをやっている国の事例も参考にしながら、今及びこれから先の日本経済にとって最もふさわしいものではないかというふうに相当程度自信を持って日本銀行判断し、採用したものでございます。今後の金融政策の運営をごらんいただいて、この枠組みが本当に有効かどうか是非チェックをお願いしたいし、私どもも真剣に、本当に我々の新しく持った道具が有効かどうか、常に検証を繰り返していきたいというふうに考えています。
  28. 山下英利

    山下英利君 持ち時間が大分過ぎてしまいましたので、それ以上の質問はまたの機会にさせていただきたいと思いますけれども、インフレーションターゲティングの是非、是非ということではなくて、私はさっき総裁がおっしゃったように半歩後れず半歩進まずと、的確な対応をするためには何を使えばいいのかということを明確に示しながら金融政策を進めていっていただきたいと、そのように思います。  それで、残りがわずかなんで、ちょっと次の質問に移らせていただきたいと思うんですけれども、今日は金融庁にも来ていただいています。  やはり日銀も、日銀考査という形で市中の金融機関の資産査定等をやっているわけであります。これは金融庁ももちろん金融検査やっているわけでございます。  まず、その辺でかなり情報を共有化すればもっと効率性が上がって、しかも金融機関にとっては事務負担も軽減されるというふうな部分があろうかと思うんですけれども日銀がやるべきことは、やはり市場の流動性をしっかりと保っていく、そして安定した資金供給によって経済を円滑に回転させていくという中における考査だというふうに思っているんですが、今申し上げたように金融庁の検査とそのクレジットのと、いわゆる信用の部分においてはダブっている部分があるんじゃないかと思うんですが、それぞれにそのお考えを聞いて、聞いた上で、その効率化を図る努力を私からしていただきたいということを申し上げたいと思うんですが、いかがですか。
  29. 西原政雄

    政府参考人西原政雄君) 金融検査と考査との間での連携といいますか情報交換、そういった面で現状について御説明をさせていただきたいと思います。  私ども日銀におきましては、それぞれの検査か考査を実施しているわけですが、双方が円滑かつ効率的に実施できるように必要な連携を図っておるところでございます。この点につきましては、昨年七月に私ども金融検査に関する基本指針というのを策定させていただいておりますが、そこの中におきましても明示しておりまして、「検査等の実施に当たっては、日本銀行が実施する考査との間で、適切な連携の確保に十分配慮する。」と、こういう具合にうたっているところでございます。  それでは、具体的にどういうような連携を取っているかということでございますが、例えば緊急に集中的に複数の相手に対して調べなきゃいけないと、こういうような場合にはお互いに分担をして実施したケース、こういうものもございます。一方で、そういうようなケースじゃない場合には逆に重複をしないように、そういう意味では金融機関の負担、こういった点も考慮しまして同一の決算期を対象としないように、そういった検査、考査の時期の調整と、こういうものを図ってきているところでございます。そういったことで、今後ともその点には配慮してまいりたいというふうに考えております。  それから、その情報、資料、こういったものを共有することができるんではないかと今お尋ねでございました。  この点については、例えば今申しましたように基本的には対象決算期が異なるというようなことが一般的なものですから、その辺の情報の共有化がどこまで効果的かというような点で問題はあるかもしれませんが、ただ、一方で負担軽減といった観点、この観点から更なる工夫が余地がないかどうか、この点については日銀ともよく相談をして検討してまいりたいというふうに思っております。
  30. 山下英利

    山下英利君 済みません、どうか、日銀の方にはこの件はお聞きをいたしませんけれども、連携を取っていただいて、それでむしろ効率化を高めてしっかりと市場の方に、もっと注視できるところはないのか、そういったところで検査機能のダブりといいますか重複は避ける形での改善を是非よろしくお願いを申し上げたいと思います。  もう残り時間わずかなんで最後にお聞きをしたいと思いますが、この十月に日銀が発表された職員の金融取引等に関する特則がこれから円滑に正しく運用されるためには、内部検査あるいは職員の研修、外部からのチェック体制の整備、これがもう必要であると思っております。私自身、この内容は相当厳しい内容ですけれども、中央銀行の職員のモラル維持に努めながら、本当に頑張って日銀の信頼性を回復といいますか高めていただきたい、また切に願うところでございます。  そういった中で、最後になりますけれども、前国会でももちろん答弁をされておりますけれども福井総裁自身の責任問題というのがいまだ解消されてないんではないかというような声も聞いております。現在での、現段階での今回、内部規定の厳格化について、その引き金となった福井総裁に対しまして、総裁のこの責任問題に対するお考えをお聞かせいただいて私は質問を終わらせていただきたいと思いますが、お願いします。
  31. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) ただいま委員指摘のとおり、私を含め日本銀行の役職員にとりましては、法令その他のルールを遵守するとともに中央銀行としての職務の公正性を確保していくと、この二つの点が非常に重要であると基本的に認識をいたしております。  私の個人的な資金拠出との関係で申し上げれば、私としては職務の公正性に十分配慮した上で行動してきたつもりでございましたけれども、結果として世の中から、世の中の皆様方から大変厳しい御批判をちょうだいしております。これを非常に重く受け止めております。真摯に反省しながら、今後とも難しい課題に前向きに対処して職責を果たしてまいりたい、そういう形で責任を全うしたいというふうに思っております。
  32. 山下英利

    山下英利君 どうぞよろしくお願いいたします。  最後に私からもそれを切にお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  33. 平野達男

    ○平野達男君 民主党・新緑風会の平野達男でございます。  今日は、日銀総裁を始め日銀の皆さん方並びに財務大臣にいろいろ質問をしたいと思います。  その前に、今日この場で日銀総裁質問するということについては、私は必ずしも納得しているわけではありません。その理由は、先ほどの最後の山下議員の質問にもございましたけれども、ファンドの問題についての日銀総裁の責任問題ということは私は全く納得していないということの理由に尽きます。  そこで、冒頭、このファンドの問題から一応、質問に入っていきたいと思います。    〔委員長退席、理事峰崎直樹君着席〕  先ほどの質問の中にも出ましたけれども、先般、日本銀行役職員の金融取引等に関する内部規程等の見直し等についてということでその内部規程の見直しが行われましたけれども、この見直しは総裁のファンドへの投資、これが契機であったというふうに理解していますが、そういう理解でよろしいでしょうか、総裁にお伺いします。
  34. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) ただいまもお答えいたしましたが、私の個人的な資金拠出につきまして、結果として国民の皆様方から大変厳しい御批判をちょうだいしている、このことを非常に重く受け止めております。私として大変遺憾でございます。真摯に反省いたしております。  こうした中で、日本銀行役職員の金融取引等に関する内規の在り方につきましても、これで十分であるかどうか、世間から様々な御指摘をちょうだいいたしました。それは事実でございます。私どもはこの事実もしっかりと受け止めて内規の見直しを行ったと、非常に厳しい内規に仕立て直したと、こういうふうに考えております。
  35. 平野達男

    ○平野達男君 この内規の見直しの中で、幾つか見直しがあるんですけれども金融商品等との取引につきまして役員に対する規制が掛けられています。これを見ますと、全金融商品と投資目的不動産の取引を原則禁止という規定が入っておりますが、これはなぜこういった規定が入ったんでしょうか。
  36. 水野創

    参考人(水野創君) お答えさせていただきます。  日本銀行の役員は、職務の遂行を通じて金融商品等の価格形成に影響を及ぼす可能性がございます。また、その過程で非公表の情報に接する機会を有しております。こうした日本銀行役員の職務にかんがみますと、秘密保持に対する疑念を招く事態を避ける観点から、貯蓄性、決済性商品の一部を除く全金融商品と投資目的不動産の取引を原則禁止することが適当と考えたものでございます。  以上です。
  37. 平野達男

    ○平野達男君 その取引には途中解約も入りますね。
  38. 水野創

    参考人(水野創君) はい、そのとおりでございます。
  39. 平野達男

    ○平野達男君 それともう一つ金融商品等の保有ということで、取引先金融機関の株式、債券等、これ審議委員を除くと書いてございますけれども、と私募ファンド、上場が見込まれる未公開株式の保有を禁止、就任時に保有している場合には速やかに処分と書いてありますが、これはどういう意味でこういう規定が入ったんでしょうか。
  40. 水野創

    参考人(水野創君) お答えさせていただきます。  役員のうち、正副総裁と理事につきましては、金融機関との取引関係等の決定や調査の実施に責任を有しており、その職務を通じて金融機関の経営に影響を及ぼし得る立場にあるということから、職務の公正性の確保に疑念を招かないために、取引先金融機関の株式、債券等の保有を新たに禁止することといたしました。  それからまた、私募ファンドや上場が見込まれる未公開株式は一般の投資家が購入できない特別な金融商品と見られやすいこと、それから商品内容に関する情報開示に制限が課されている可能性は高く、それを保有している場合、役員としての職務の公正性がゆがめられていないことを説明することは容易ではないことから、すべての役員について保有を新たに禁止することとしたところでございます。
  41. 平野達男

    ○平野達男君 私は至極真っ当な議論だろうと思います。  今のこの審議委員方々にそうそうたるメンバーが入っていますが、わざわざこんなメンバー集めなくたって今のような結論は出せるはずなんです。ところが、日銀総裁は、大変申し訳ありませんが、今禁止した規程に反することを二つやっているわけです。一つは、私募ファンドの保有をしたことです、在任中に。もう一つは、取引をしたことです。この規程の見直しの中でこれはやってはいけませんよということを、日銀総裁は結果として、今のこの規程に当てはめれば、やってはいけないことをやったということははっきりしているわけです。  これは、私は今までいろんな説明を聞きましたけれども、前の規程上はルールに抵触しません。しかし、このそうそうたるメンバー集めても集めなくても分かるような話を、日銀総裁が在任中にそのルールに反するようなことをやってしまったという責任は、これは大変私は重いと思います。つまり、この委員と今回の規程の改定は、日銀総裁がやった行為というのは間違いであったということをはっきり言ったわけです。これに対しては、いろいろな説明、既定のルールとか何か聞きましたけれども、いかなる説明をしたとしても、これは説明ができないのではないかというふうに私は思いますけれども、それに対する総裁の見解、認識をお伺いしたいと思います。
  42. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 今、水野理事から御説明申し上げましたとおり、新しい内規では私募ファンドについて保有を新たに禁止することといたしました。役員就任時に保有している場合には三か月以内に処分するというふうにも規定されています。その趣旨は、職務の公正性が確保されていることが外部から見てもより分かりやすい、より透明性の高いものにするという方向に厳しく規程が改正されたものと、こういうふうに私は理解しています。  この点、私がファンドを早期に解約せずに保有し続けたと、このことは当時の内規ではこれは禁じられていなかったわけでありますし、自分自身、その後職務の公正性をこれによってゆがめたということはないわけでありますけれども、現時点で振り返ってみますと、就任時に解約しなかったということは一つの大きな反省事項でございます。そのことは率直に認めたいと思います。大いに反省し、今後、新しい規程を踏まえながら、一段と身を律して処してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  43. 平野達男

    ○平野達男君 私は、この件に関しては、一番最初にといいますか、予算委員会ですね、二回目で質問立ったときにも申し上げましたけれども、多分日銀総裁は厳密な意味でのルール違反はされていないと思いますということを申し上げました。その上での前提でずっと議論を続けてきております。  そこで、その背景にあるのはやっぱり日銀総裁の信頼性という問題だろうと思います。総裁が発言する言葉というのは本当に市場に大きな影響を与えてくると、それによって市場動きも変わってくるという意味において、日銀総裁の役割というのは非常に重要だろうと思うんです。これはもうここで改めて繰り返す話でもございません。  かつまた、もう一つ、この財政金融委員会の中で議論したことの中にコンプライアンスという問題があります。コンプライアンスというのは法令遵守とかというふうに訳されていますけれども、この財政金融委員会の中では、いろいろ議論したところでは、法令に書いてあることをぎっちり守ればいいという話じゃないんだと、書いてなかったことだってやっちゃいけないことはやっちゃいけないことだというふうに判断することなんだという議論があったと思います。  株の取引の時間外取引、あれは何だったのか、株の細分化、あれは何だったのか。結局、法律に書いていないからあれは合法だったわけですという判断がなされたような気がしますけれども、あれはしかし、社会的に見たらやっぱりやっちゃいけないルールだったんだろうというふうに思うわけです。  それで、総裁がやられたこの一連のファンド、解約しなかったこと、投資したことは私は一切問題ないと、されたことはどうのこうのと言うつもりはございません。これは日銀総裁の以前の問題ですから。そしてまた、結果的に解約をしたということは、これは取引をしたということです。  この中で、いろんな疑念が出てきた。この疑念というのは、国会の中でも出てきましたし、週刊誌がありとあらゆること、いろんなこと書き立てていますね。やれ一千万出してなかったんじゃないかとか、あるいはその解約時には別ないろんな、例えば村上ファンドに対する礼は尽くしたとか、じゃなくて、支援というものについてのことの反することをやったとか、そういう答弁とは別な理由があるんじゃないかとか、いろんな疑念が出てくる。でも、疑念が出てくるようなことが、疑念が出てきたということに対して、そういう環境をつくったということも私は大変問題だと思っています。  そこで、そのコンプライアンスということなんですけれども総裁はルールに反していないからいいという先ほどの説明でした。コンプライアンスというのは、総裁はどのようにお考えになっているんでしょうか。
  44. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 私を含め、日本銀行の役職員にとってコンプライアンス、これは法令その他のルールを遵守すると、加えまして中央銀行としての職務の公正性を確保すると、この二つが重要な柱だというふうに思っています。  私自身、日ごろから、法令遵守は当然のことでございます。それに加えまして、職務の公正性に十分配慮しながら行動してきたつもりでございます。  ただ、今回の件について振り返ってみて、厳しい御批判をちょうだいしている、このことは大変重く受け止め、厳しく反省し、これから一層身を律して対処してまいると、こういうふうに申し上げている次第でございます。
  45. 平野達男

    ○平野達男君 私は、この法令遵守という意味についての誤ったメッセージを福井総裁は今回の件で国民に送ったというふうに言わざるを得ないと思います。法律に違反していなかったからということで答弁がありました。確かにいろんな反省の弁もございました。しかし、一般の職員がそういう反省の弁をするのはまだ別ですけれども日本銀行総裁の弁としては、私はそれだとちょっと不足ではないかというふうに思っています。  例えば、あともう一つは、総裁のこれまでのいろんな答弁の中で、自分の行為は公明正大性、公平性を欠くものではなかったという発言がございました。それは信じたいですよ。信じたいんですが、それを証明するものがない。繰り返しになりますけれども、そういう疑義を生じたということは大変大きな問題だということは繰り返し繰り返し申し述べさせていただきたいと思います。  それで一点、細かいことで、こんなことは余り確認したくないんですけれども、MAC投資事業組合に対する出資によるものが平成十一年十月、平成十三年二月までやられていまして、これはいったん解約しています。このときに二百四十二万円というものが分配金として支払われました。総裁はこれを、この二百四十二万円というお金をどのように扱われましたか。
  46. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 最初のファンドの仕組みが九九年から始まって、これは非常に初歩的な立ち上げの姿としてでき上がったファンドで、きちんとファンドの体裁が整ったのは二〇〇一年でございます。その二〇〇一年、きちんとファンドの姿を整えるときに、いったん計算上の処理として、何といいますか、利益部分を還元し、元本部分のみで新しいファンドをきちんとした仕組みでつくり直したと、こういうことでございます。私自身の意識としましては、当初から、したがいまして同じものがずっと続いている、ただ仕組みが途中で変わって、仕組み切替えのための一時的な分配金が手元に来たと、こういう理解でございました。  この拠出金、そもそも本件資金の拠出は、初めの時点に立ち返って考えましても、元本も返ってこない可能性も十分念頭に置いていたものでございます。コーポレートガバナンスを改善させるためのファンドの活動というのはそんな生易しいものではないんで、リターンが完全に予測できるなんてものでは到底ないというふうに私は思っておりました。  したがいまして、当初から、仮に最終的に利益が出たとしてもこれは自分のためには使わない道があり得るというふうに思っていたものでございます。そして、お金が途中で一回返ったものも、これは一つの経過的なものでありまして、最後まで、終わってみるとこれすら消えてしまうかもしれないという、こういう性格のものであったというふうに思います。  そういう意識でございましたために、村上ファンドが拡大する過程でのスキームの変更時に受け取った分配金、約二百四十万円ですけれども、これを含め、最終的な損益が分かった段階で全体の処理を行うことが自然な結論だと、こういうふうに考えておりました。
  47. 平野達男

    ○平野達男君 私は、今までの議事録を見ますと、もしこの議事録をこのまま読めば、二百四十二万円の分配金が出た段階で何らかの処理、自分の口座に入れるんではなくて寄附なりほかのところにやっていれば、今までのこの一連の答弁、例えば当初から利殖を目的としているものではございませんということについてもある程度の理解は得られたような感じもします。  しかし、二百四十二万円そのものについてはずっと今まで御自身の口座などで保管されてきているわけです。ここで今回問題が出てきて、それも含めて、今回いろんな寄附とか何かにされたみたいですが、そういう処理をやられているといったこと等も含めて、やっぱり答弁にはまだまだ納得できないことがあるんです。これは幾ら詰めてもこの疑念というのは払拭できないと思います。そういう疑念を持った方が日銀総裁の職に就くということについては、私は大きな抵抗感があります。  日銀総裁は、職責を全うしたい全うしたいということを、全うするということを再三言われていますけれども日銀総裁の言われる職責を全うするというのはどういうことなんでしょうか。
  48. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 一段と厳しく身を律しながら、これから出てくる様々な難題をきちんとこなして職責を全うすると、こういうことでございます。
  49. 平野達男

    ○平野達男君 先ほどのじゃ私の言ったことに対して、関連して別な角度で質問させていただきますけれども、私はいろんな疑念は残ったままだと思います。そういう疑念を幾ら説明されても本当にそうかという思いが残ってしまう。そういう方が日銀政策決定に関与する。それは、もうプロの目で、プロの判断でいろいろ判断されるでしょうから、間違った判断するとは私は思っていません。  大事なのは、私はずっと冒頭から申し上げているように、コミュニケーションなんです。総裁の発する言葉が非常に重要なわけです。その発する方がどこかそういう疑念を持っているということに対しての印象を与えてしまったことに対して、総裁はもっともっと私は深刻に考えなくちゃならないと思うんです。  職責を全うするというのは任期を全うするということじゃないと思いますよ、私は。それも、任期を全うするということは任期を全うしないということも場合によったら入っているかもしれません。ある適当なところでけじめを付けて、これまでのいろんなこういう疑念について、国民の中にそういう疑念を出したことに対してしっかりとしたけじめを付ける、しかし今はいろんな意味で、利上げをどうするかとか政府との間の中でいろんなちょうちょうはっしのやり取りもされているようですから、まだそれは離れられないということもあるのかもしれません。しかし、私は、繰り返して言いますけれども、職責を全うする中に任期を全うするということはやっていただきたくない、これだけは申し上げておきたいと思います。  私の質問は、疑念を与えたということに対してどのように総裁説明されるつもりか。身を清くしてとか、それは当たり前ですよ。これから、これからの話で、こんなのは言わなくたって当たり前の話なんですよ。だけど、もう既にこういう状態をつくったという状態はいかなる話をしたとしてもこれは消えないんです。  このことに対しての感想を最後にもう一回だけ求めておきたいと思います。
  50. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 繰り返しで恐縮でございますが、重ね重ね深く反省し、厳しき批判をいただいたことは重く受け止め、職責を全うすると、これに尽きると思います。
  51. 平野達男

    ○平野達男君 この議論の中で、今日は与謝野大臣がもういませんからあれなんですが、与謝野大臣に、日銀総裁を務めておる方がファンド投資してる、そういうことに対して、そういう保有をしていることに対してどう思いますかという質問をしたら、就任のときに慌ててやめなければならないような投資というのは一体あるんだろうかということを伺いたいという、こういう答弁が返ってきたりしました。もし与謝野大臣がここにおられたら、そういう投資があるだろうかと伺いたいどころじゃない、さっきの日銀規程の中で、こういうものは保有してはいけませんということははっきり規定されている。政府対応もおかしかったですよね。  こういう閣僚が、まあもう閣僚替わっちゃったから今どうのこうの言ってもここでしようがないんですけれども、その本来あるべき姿ということに対して私は冷静に判断するということが、内閣の、当時の内閣、特に与謝野大臣にもなくて、あれは福井総裁を擁護するつもりでやったと思うんですが、かえってそれがいろんな意味で私は今回の日銀に対する信頼性を結果的にやっぱり損ねているということにもなったというふうに思います。まあ、これは本当は与謝野大臣がおられるときに言いたかったんですが、多分その機会はなかったと思いますので、議事録にその発言をちょっと残させていただきます。  では、この問題につきましてはもう新たな展開というのはないと思いますし、新たな展開とか、また、えっと思うような事実なんかは出てきてもほしくもないし、この件に関しては多分私は委員会質問することはないように期待をしております。ただ、最後にもう一度だけ言わせていただきますけれども、職責を全うするということは、中には、任期を全うするということは入れてほしくないということだけ最後にもう一度だけ申し上げておきます。  それから、次の質問に入らせていただきます。金融政策に関してであります。  安倍総裁は、デフレからの完全脱却の決意について問われたときに、これは十月二日の衆議院本会議でございますけれども日銀には引き続き金融面から確実に経済を支えていただくことを期待するという発言をされてます。その後、いろんな記者会見の、記者会見というかいろんな場でも、総理は金融面から確実に経済を支えていただくことを期待する旨の発言をしています。  これは一体何を意味しているんだろうかということについての質問でありますが、どうも新聞はこれをとらまえて、早期の利上げを牽制しているというようなことを書いている向きもございますが、しかし反対に本当にそうなのかと。あるいは、そういう疑問が出てきていますので、あえてここは窓口たる財務大臣に、これはどういう趣旨なのかということをちょっとお聞きしたいと思います。
  52. 尾身幸次

    ○国務大臣(尾身幸次君) 安倍総理が十月二日の衆議院の本会議におきまして、日銀に対して、「引き続き金融面から確実に経済を支えていただくことを期待しております。」と発言をされておりますが、私もそのとおりに考えております。  日銀は、先般公表されました展望レポートにおきまして、「極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持しながら、経済物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行うことになる」との考え方を示していると承知しておりますが、具体的な金融政策の運営につきまして政府があれこれ申し上げるのは適当でないというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  53. 平野達男

    ○平野達男君 そうしますと、これは金融面から確実に経済を支えていただくことを期待ということは、要するに日銀が言われている、出された方針そのものを要するに追従しているだけですよと、そういう話でしょうか。
  54. 尾身幸次

    ○国務大臣(尾身幸次君) 展望レポートにおきまして先ほど申し上げましたような考え方を示されておりますが、私どもは先ほどのとおり、引き続き金融面から確実に経済を支えていただくことを期待しているという一般的、総論的な意見を申し述べておりまして、個別具体的な政策については政府の方からあれこれ申し上げるのは適当でないというのが私どもの立場でございます。
  55. 平野達男

    ○平野達男君 そうしますと、新聞が言うところの、利上げを急ぐなと、利上げを急ぐべきではないというような論調であるということは、これは間違いであるということでよろしいですね。
  56. 尾身幸次

    ○国務大臣(尾身幸次君) 利上げを急ぐべきであるとか利上げをどうすべきであるとか、あるいは今のままの金利を維持すべきであるというような個別具体的なことを申し上げているわけではございませんし、また、その種のことを私ども日銀に対して具体的な政策の内容として要望することは適切じゃないというのが我々の考えであります。
  57. 平野達男

    ○平野達男君 至極真っ当な答弁だと思います。  ただ、こういう、引き続き金融面から確実に経済を支えていただくことを期待ということの発言をすることによって、そういう、まあ一部マスコミが勝手に発言していることだと思うんですけれども、こういう利上げを急ぐというシグナルを送っているという報道がなされているわけです。であれば、そういうことに対しては違うということは何らかの形でやっぱりはっきり言っておくべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
  58. 尾身幸次

    ○国務大臣(尾身幸次君) 個別に利上げをどういうタイミングでするとか、あるいは利下げをするとかいうようなことについて政府が申し上げ、あるいは要望をするのは適当でないというのが我々の考え方であります。
  59. 平野達男

    ○平野達男君 そういうことをこの委員会でやったということだから、まあ、よしとしましょう、そこの部分は。はい、分かりました。  そうしたら、それでは別な質問に入りますけれども、先般の展望レポートですね、展望レポートの中で、これは四ページに大変興味深い記述が私は出てきたというふうに思っています。四ページの中段なんですけれども、ちょっと読ませていただきますと、「極めて緩和的な金融環境のもとで、企業が、期待成長率や資金調達コスト・為替相場見通しなど、採算に関する楽観的な想定に基づいて投資を一段と積極化する場合には、成長率が一時的に大きく上振れる反面、その後は資本ストックの過剰な積み上がりの反動が生じ、調整を余儀なくされる可能性がある。」というふうなことが言われております。これはこの委員会の中でも再三議論なされましたけれども、まず資金調達コストについては、これからインフレ期待が出てくれば実質金利が下がると、それが投資を誘発するんだということで、これをよくウオッチしておく必要があるというふうな内容の話が日銀からあったように記憶しています。  それから、期待成長率、これは企業が期待成長率を過度に持ちますと、当然これ、投資が加熱する可能性が出てくるということで、物価安定の立場からこの動きについてはよくウオッチをしていかなくちゃならないんだということなんだろうと思います。  そこで、今、日銀としてはこの期待成長率、このインフレ期待についてどのようなとらえ方をされておるのかということについての御説明をお願いしたいと思います。
  60. 稲葉延雄

    参考人(稲葉延雄君) ただいまの家計あるいは企業のインフレ期待、あるいはその期待成長率について日銀がどう見ているかと、こういうお尋ねでございました。  まず、企業や家計の物価についての見方でございますけれども、各種サーベイ調査によりますと、ここのところ上向いてきておりまして上方修正されてきております。  例えば、短観を見ますと、企業自身の販売価格が先行き上昇すると答えている企業の数は多くの業種で増えてきておりまして、特に消費者物価との関連が深い小売業では、先行き上昇するというふうに答えている企業の数が下落すると答えている企業の数を上回っております。  また、日銀が一般の方四千人を対象に実施しています生活意識に関するアンケート調査ですけれども、現在の物価に対する実感として、上がったと回答している人が約六割、それから一年後の物価については上がると回答した先が約八割に達しております。  企業の期待成長率、こちらの方は内閣府の企業アンケート調査で見ることができるわけですけれども、二〇〇一年ごろをボトムにしまして徐々に好転してきていまして、足下では平均しますと二%程度というふうになっております。  こうした企業や家計のインフレ期待、過熱感とか、そういうのが見られるということではございませんが、こうした先行きについての見方は、企業投資とか家計の消費行動の変化を通じて経済動き物価先行きに影響を与えるものでございますので、引き続き注意深く見ていくべきものだというふうに考えております。
  61. 平野達男

    ○平野達男君 今の答弁の中では、期待成長率については市場ではかなり高く見ているのではないかと、あるいはインフレについても将来の物価についてもこれは上昇する方向で見ているのではないかというふうにとらえているという、そういう理解でよろしいでしょうか。
  62. 稲葉延雄

    参考人(稲葉延雄君) 数字の水準自体はともかくとして、方向としてはそういう方向になってきつつあるというふうに認識しております。
  63. 平野達男

    ○平野達男君 そうすると、これは今度は金利の話にもなって、大変微妙な話になってくるわけですけれども、いわゆるもう名目金利が一定のままの中でそういう状況が続くとすれば、やっぱり投資の過熱が起こりかねないという中で、どうしても利上げということが視野に入ってくるんじゃないかなというふうに思うんですが、一般論としてはそういう理解でよろしいんでしょうか。
  64. 稲葉延雄

    参考人(稲葉延雄君) この辺のところは先般発表いたしました展望レポートでも付されている、書かれていることでございますけれども経済物価安定の下で持続的な成長を続ける可能性は高いわけですから、その下でもゆっくりと物価が上がっていくという可能性が高い。    〔理事峰崎直樹君退席、委員長着席〕  こうした状況をそのままにしていくと、緩和が行き過ぎるリスクもあるということですので、今後の政策の基本的な考え方としては、極めて低い金利水準を当分維持しながらも、経済物価動きに応じてゆっくりと金利水準の修正をしていくと、こういうことになろうかと思います。
  65. 平野達男

    ○平野達男君 くどいようですけれども、今極めて金利水準というのは、現状はそうなんです。そうなんですよね。しかし、これから金利を上げるときに、私、これは一つの考え方を設定したと思うんです、金利操作の。期待成長率が上がってきています、それから期待インフレ率が上がってきていますと。そういうことを見ながらやっぱり金利操作についてのことを考えていきますよという宣言したようにも取れるんです。そういう理解でよろしいでしょうか。
  66. 稲葉延雄

    参考人(稲葉延雄君) お答え申し上げます。  政策運営を考える際のファクターというのはいろいろございます。その一つの要素として、人々が、あるいは企業先行きどのような物価に対する見方をしているのか、あるいは成長に対する見方をしているのかという要素も大事な要素だとして考えていく必要があるというふうに思っております。
  67. 平野達男

    ○平野達男君 いずれ、この表現は議論の中でも、この委員会の中でもこういった議論はされていまして、しかし文章にしたのは初めてなんですね。これは本当に、ああ、これは大きな意味を持つのだなと思って今ちょっといろいろ御質問をしたところなんですが。  今の答弁の中でもゆっくりとという言葉がありました。総裁も、これからゆっくりと利上げをするとか金利調整をしていくということだったと思うんですが、ゆっくりとという言葉を使われています。このゆっくりとという意味が、これも言葉じりをとらえていろいろ考えてしまうわけですけれども、いろいろ解釈されるんですね。一つは、ゆっくりとと言うんだから、これは当面利上げはしませんよというメッセージなのか。それからもう一つは、その上げ幅を小刻みにやっていきますよということでのゆっくりという解釈もあるかもしれません。それからもう一つは、いろいろ判断して、いや、今が利上げ時期なんだけど、多少時間差を、遅らせますよというような、時間差を設けて利上げをしていきますよというような、そういう解釈もあるのかもしれないんです。このゆっくりとということは具体的にどういうことを想定されているのかということをちょっと御説明いただければ有り難いんですが。
  68. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 大変難しい御質問ですけれども、お答えをいたします。  今、平野委員と私どもの稲葉理事との間の議論なんですけれども、これは私ども展望レポートの中では、今そんなことが具体的に予見されているわけではないけれども、将来起こり得るリスクとして、つまりアップサイドのリスクとして、企業がもし高い期待成長率を持ったり、一般の期待インフレ率が高くなったりするような場合には、企業行動が積極的になり過ぎて景気に大きな波を打つリスクがありますというリスク要因指摘でございます。逆に、リスク要因指摘としては、海外要因などを出発点にして経済が逆にスローダウンするリスクもありますと。  アップサイドリスクとダウンサイドリスクをひとしくお示ししていまして、前回のレポートに比べますと、委員指摘のとおり、少し具体的に分かりやすい表現で書いているということは事実です。ただし、どっちのリスクをより重く見ているということではありませんで、アップサイドリスク、ダウンサイドリスク、今すぐには予見できませんと、でも将来起こり得るリスクとしては等しいウエートを置いて見ていると。  結局、その真ん中にある私どもの標準的なシナリオは何かというと、物価安定の下で息の長い着実な景気拡大が続くと、これがシナリオになっています。このシナリオの場合、前提として、政策金利はある程度上がると、政策金利がある程度上がることによってこのバランスの取れた経済が長もちしますという、こういうシナリオになっているわけです。  したがって、リスクが顕現化した場合ではなくて、標準シナリオどおりいった場合に、ある程度政策金利上昇が前提となってうまくいくというシナリオなものですから、今年度から来年度にかけてゆっくりとという表現はそこから出てくるわけですね。何かリスクが顕現化するから慌ててという必要はありませんということになります。  最も難しい御質問は、三つお挙げになりまして、当面利上げをしない、利上げをするときには小刻み、段階を踏んで行う、三つ目に利上げタイミングを本来のタイミングよりも後ずれさせるのかと。これ大変難しい質問でございまして、率直なお答えをすれば、一番目の当面利上げをしないというふうに申し上げるわけにはいかない。それから、三番目の利上げタイミング来ているのに本来のタイミングより後ずれさせるというのもやっぱり該当しないと思います。強いて言えば、真ん中の利上げをするときには小刻みに段階を踏んで行うということなんですけれども、小刻みに、インターバルについてはゆとりを持って判断をしていける状況にありますと。  これでも正確な答えでないかもしれませんけれども、一応そういうふうにお答えをさせていただきます。
  69. 平野達男

    ○平野達男君 それ以上の答弁は期待申し上げておりませんので。分かりました。  次に、質問に入りますけれども、これまた新聞報道からの質問なんですけれども、昨日の新聞ですね、読売新聞なんですけれども、塩崎官房長官が、これまた、このように発言したわけじゃないんですが、新聞の勝手な解釈なんですが、ある発言を受けて、日銀金融政策の在り方について経済財政諮問会議で議論していくべきだという趣旨の発言をしたという報道がされていました。  そこで、私の質問なんですけれども日銀金融政策というのは確かに経済政策と一体的であります。財政再建とも一体的だろうと思います。その中で、経済財政諮問会議で議論していくべきだという考え方も出てきても不思議はないのかなという感じがするんですが、財務大臣日銀金融政策の在り方について経済財政諮問会議で議論していくべきだと考えておられるでしょうか。
  70. 尾身幸次

    ○国務大臣(尾身幸次君) 金融政策につきましては日銀の所管であり、具体的な金融政策の運営は日銀にゆだねられているところであります。しかし、日銀法は、経済政策の一環である金融政策につきまして、政府経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、政府との十分な意思疎通を求めているところであります。  そこで、経済財政諮問会議日銀総裁出席されまして経済全般の運営方針等について議論する場でありまして、政府日銀間の意思疎通を行う一つの機会として活用しているところでございます。  今後とも様々な機会をとらえて政府日銀間で意思疎通を図っていくことは有意義であると考えております。
  71. 平野達男

    ○平野達男君 金融政策の在り方について経済財政諮問会議で議論していくべきだということに対しての私の問いに対してのストレートな答えは返ってこなかったと思います。  意思疎通を図るというのは、それは当たり前だと思います。日銀金融政策の在り方について経済財政諮問会議で議論していくべきだと思われますか。
  72. 尾身幸次

    ○国務大臣(尾身幸次君) 金融政策については日銀の所管でございまして、具体的にはこの金融政策の運営は日銀にゆだねられているところでございますが、政府日銀の意思疎通という意味におきまして、経済財政諮問会議はこの意思疎通を行う一つの場であるというふうに考えております。
  73. 平野達男

    ○平野達男君 何度聞いても同じ答えしか返ってこないんでしょうけれども。  それは、金融政策の在り方について経済財政諮問会議で議論をするということではなくて、ということを、もう一度だけお伺いしますが、議論をするということなんですか、しないということなんですか。意思疎通を図るというのは分かりました。情報交換をするというのも分かりました。議論をするということは、金融政策に対して日銀金融政策はかくあるべきだ、こうあるべきだということを議論をして、世に公表して、そして日銀政策政策決定に影響を与えるということを私は指していると思います。そういうことをやるのかやらないのかということを聞いているんです。
  74. 尾身幸次

    ○国務大臣(尾身幸次君) 経済財政諮問会議におきましては、経済財政全般についての意見交換をし、情報交換をし、方向性を出していく場でございまして、そういう場に日銀総裁出席されていろんな御意見を述べられているわけでございますから、この経済財政諮問会議は、先ほど言いました日銀法に基づく経済政策の一環である金融政策について政府経済政策の基本方針と整合性を取れるよう意思疎通を行うという、そういうこの日銀法の規定にかんがみますと、意思疎通を行う適切な場であるというふうに考えております。
  75. 平野達男

    ○平野達男君 なかなか金融政策というのは言葉じり、金融政策もそうなんですけれども、今の財務大臣言葉もなかなか解釈が難しいですね。いかようにでも取れると、いかようにでもできると。だから、そうすると、議論をすることもあり得るんだというふうに取れちゃいますね。そういう理解でよろしいですか。
  76. 尾身幸次

    ○国務大臣(尾身幸次君) 広い意味での経済財政政策の中で、当然金融問題全般についても意見を交換し、情報を交換するということは当然のことであると考えております。
  77. 平野達男

    ○平野達男君 何で私はここにこだわるかといいますと、日銀の独立性という問題もありますが、政府がやろうとしていることと日銀がやろうとしているということは、ある意味でぶつかるところが多々あるんだろうと思うんです。  まず、その一つは、財政再建をやろうと思ったら、やはり今はこれは経済成長も目指さなくちゃならない、あるいは場合によったらインフレもこれは容認しなくちゃならないんだろうと思います。例えば、そのインフレを容認するためには何が必要かといったら、これはマネーサプライの増加が必要でありまして、片一方で日銀金利のこれを、操作をやろうと思ったらお金を吸収していかなくちゃならない。今、日銀金利を上げなくちゃならないという中で、市場からお金を吸収しますよ、政府は、いやそんなことをされたらデフレの脱却もできていない、名目成長率が確保できていない、これは真っ向からぶつかっていくわけです。そういう中で、多分政府はいろんなことを言いたいことあるはずなんですね。  だけど、これ議論していくべきだというのを言ったのは、これは官房長官が言ったんじゃなくて読売新聞が勝手に判断しているわけですけれども、これは非常に重要な提案なんです。政府がやろうとしていることと日銀がやろうとしていることが場合によってはぶつかるかもしれないことはどこで調整されるんだろうか。それは、今の財務大臣答弁みたいに、意思疎通を図りますから、そこでやっていきますから、もごもごの話じゃないと思いますよ。  そういう意味で、この議論していくべきかどうかということを私はストレートにお聞きしているつもりです。本当に議論するということであれば、それは日銀の独立性の問題もあるかもしれません。ありかもしれませんけれども、今のいろんな政府が言ってきた話と、日銀がやろうとしている中の、日銀が、物価の安定という役割を与えられている日銀がやる仕事とどこかでぶつかってくるんではないかと、その部分をどうやって調整するんだろうかということの問題提起でやっているつもりなんです。どうでしょうか。
  78. 尾身幸次

    ○国務大臣(尾身幸次君) 今申し上げましたような考え方の下に、先日公表されました展望レポートにつきましても、この経済財政諮問会議日銀総裁からお話を伺うと、こういうことにさしていただき、そういう中での意見交換を通じて、先ほどのこの日銀法に基づきます経済政策の一環である金融政策につきまして、政府経済政策の基本方針と整合的なものになるよう意思疎通を行うと、こういう法律の趣旨を体してしっかりと進めてまいりたいというのが私どもの考えでございます。
  79. 平野達男

    ○平野達男君 今の答弁を聞く限りは、私は、経済財政諮問会議でこれについては議論をしていくという発言に取られました。  その一方で、日銀の独立性という問題が出てきます。こことの兼ね合いをどうするかであります。こういうところについてはあいまいにしては私はいけないと思いますよ。かくかくしかじかの理由でこういうところで議論するというのは、経済財政諮問会議のところで議論するというならそれは分かりますけれども、その一方で、じゃ日銀の独立性はどうするんですかということも併せて私は説明する義務が財務大臣にあると思いますけれども、どうでしょうか。
  80. 尾身幸次

    ○国務大臣(尾身幸次君) 政府といたしましては、日本銀行に対しまして引き続き金融面から確実に経済を支えていただくことを期待をしているということでございますが、同時に、金融政策につきましては日銀の所管でございまして、具体的な政策の運営は日銀にゆだねられているということでございますが、同時にまた、今のこととの関連で、日銀法で、経済政策の一環である金融政策につきましては政府経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう十分な意思疎通を図っていくと、こういうことでございます。
  81. 平野達男

    ○平野達男君 それ以上の答弁を期待しても無理かもしれませんが。  日銀総裁にお伺いしますけれども日銀法の第二条は、日本銀行は、通貨及び金融調整を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とすると。これは今更読み上げる筋の話ではないんですけれども、このように書いてあります。あくまでも日銀物価の安定なんですね。物価の安定を主眼としている。その中で、今財務大臣は整合性を持ってやりますと言いました、財政再建と。これは大事だと思います。しかし、日本銀行の役割は、第二条の中でこういう役割を与えられて、それを主にやることだと思います。政策審議、ええと何でしたっけ、日銀政策審議会ですね。それも、それでやることになると思うんです。  じゃ、同じことの問いになって恐縮なんですけれども、整合性というのはどこでやるのか。結局、経済財政諮問会議でやるという形になってくるんだろうと思うんです。総裁、そういう理解でよろしいんでしょうか。
  82. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 私、ただいま財務大臣がお答えになられましたところと全く異存がないわけでございますが、私の理解でも、いわゆる経済財政諮問会議、私も出席をさせていただいておりますけれども、これは基本的には政府政策について総理大臣からの諮問に応じて各委員が意見を述べる、より良き政策経路を求めていくと、こういう場だと理解しておりますし、一方、日本銀行政策委員会、これは審議委員で構成しておりますけれども、こちらの方は金融政策を具体的に全責任を持って決定していく場であり、両者の分業関係、役割分担は非常に明確になっているというふうに思います。  その上で、日本銀行法では、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならないというふうにされておりまして、この意思疎通の重要性ということは日本銀行の方におきましても極めて重く受け止めております。具体的には、今諮問会議に私が出さしていただいているというふうに申し上げましたけれども、逆に日本銀行金融政策決定会合には政府の方から御出席をいただいているわけであります。政策決定会合、その場で直接意見交換を行っているというふうなことがございます。  そういうふうに、双方向で意見交換をしながら、金融政策を含む経済政策の大きな方向性についてそごが生じないようにということで不断の努力をしているというのが実態だというふうに思います。  ここから先、財政再建とか非常に重い課題があると。一見、日本銀行政府とが正面衝突しそうだというふうなことを新聞記事もよく取り上げるわけなんですけれども、しかし、この真剣な課題政府日本銀行との間で意見交換いたしますと、対立で物事は解決しないと。やっぱり、今後長期的に物価安定の下で持続的な成長を実現していくと、その持続的成長というのも潜在成長能力、つまり実力をかさ上げしながら実現していくと。これをもし実現し得ないようであれば、政府政策日本銀行政策も国民の皆さんにとって将来への幸せにつながるようなものにならないと、こういう点では認識の一致を、もう今の段階から相当程度持っているんではないかというふうに私思っています。  したがいまして、諮問会議の場で金融政策そのものが議論されるとは思いませんけれども金融政策絡みでいろいろな将来の政策方向性について議論が起こりましても、それは私はもう積極的に貢献させていただきたいし、政策委員会で意見の一致を見ていないものを私が個人的意見でどんどん前へ持って進むわけにはいきませんけれども、ある範囲内で私も積極的に貢献させていただきたい。  逆に、政府あるいは民間委員から将来の日本銀行政策運営よろしきという方向につながるような御意見は、私は謙虚に拝聴をさせていただくと、こういう姿でいいんではないかと思っております。
  83. 平野達男

    ○平野達男君 私が懸念というか、ちょっと心配でもないんですけれども、考えさせられるのは、やっぱりデフレ脱却はまだ宣言はされていない。それから、やっぱり財政再建を考えればある程度のインフレというか、高いインフレでは困りますけれども、緩いインフレであった方がいいという考え方も当然出てくる、名目成長率を大きくしなくちゃなりませんから。そうしますと、それはいろんな経済政策と、規制緩和だとか何かとかいろいろ出てくるはずなんですが、そういう政策と併せてどうしてもやっぱり金融政策がそこに出てくるはずなんです。  前、竹中大臣などはもうはっきりと、はっきりとじゃないですけれども、かなりマネーサプライのことを意識された発言が私はあったんじゃないかと思います。その一方で、繰り返しになりますけれども金利をこれからゆっくりと調整していくということなんですが、その中での日銀のベクトルは、市場から資金を吸収していきますということになるはずなんです。  そういう中の調整がどこでやられるのか。いろんな新聞報道を見ますと、インフレターゲット論がまた盛んに最近言われてきましたね。名目成長率を共有すべき、政府日銀の中で共有すべきだとかそういうことが出てきている。だけど、そういう議論が何か与党筋から出てきているんですけれども、そういう話はどこで調整されるのかというのが議論されないまま、しかしなし崩し的に何かどこかで決まっていくという状況はやっぱり非常にまずいんだろうと思います。そのことについては明確な枠組みを設定して、明確な考え方を設定して私はこれは調整をしていくことも必要ではないかというふうに思います。  これは私の意見として、後で私の意見として申し述べさせていただきますが、時間がなくなりましたので、最後に経済財政諮問会議における総裁の発言についていろいろお聞きをしたいと思います。  これは第二十二回経済財政諮問会議における総裁の発言で、格差は広がると、所得の差は広がるんだということを相当覚悟しておかなければいけないのではないかという発言であります。これは、この発言を読む限り、私は本当にこのとおりだと思います。日本国内で見た場合には、イノベーションを身に付けた人とイノベーションをなかなか身に付けられない人との間の所得の差はむしろ更に広がるということを相当覚悟しておかなければいけないのではないか。そういう差はむしろ縮まるんだという幻想を余り安易に与えない方がいいのではないか。  これについて、この真意といいますか、考え方を更にこの場でちょっと総裁、御説明いただけるでしょうか。
  84. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) この点も報道でやや誇大に取り上げられまして、私もある意味で当惑しておりますけれども、二つのことを申し上げたつもりでございます。  一つは、これは前々から私のかなり個人的な意見としても申し上げておりますけれども日本経済、これからの長い将来にわたって人口が減るという中で、やっぱりいい経済をつくっていこうと思えば、イノベーションを促進することによって潜在成長能力をかさ上げしていくと。かさ上げした潜在成長能力をそのまま現実の成長率として実現し、しかも大きな波を打たない安定的な成長というものを実現していくと、これが最終的には財政再建にも最も近道を提供するものだと、こういうふうに考えています。先般、諮問会議で民間委員から出されましたペーパーには、正にその基本的な経路が明確に書かれていると。したがって、私はフルサポートするというふうに申し上げました。  しかし同時に、イノベーションを強い、太い軸として潜在成長能力を上げていくということは大変難しい課題なんです。やはり、それぞれ日本経済を構成している一人一人の人たちがイノベーションの力をより強く持っていかなきゃいけない。実際、イノベーションの力をより強く持てる人、イノベーションの力をより強く持てるけれどもその程度には差が出てくるとか、いろんな問題があって、やはりイノベーションの力をより強く持てる人と必ずしもそう強く持てない人との間の所得の差というものは、これは経済の論理として必然的に出てくる問題だから、これは現実の生の政策として国民の皆さんに理解しながらやっていただくためには、やはりこの全体の政策のフレームワークについて理解の浸透を図る、この努力が必要だし、そして格差が余りひどくなった場合の最低限の調整措置というふうなやはり手段も講じながら全体をうまく運営していく必要がありますということを、私、申し上げました。  格差の問題を殊更強調して申し上げたわけではなくて、やっぱりイノベーションを促進することが大事で、それに伴って必然的に起こる問題についてやはり国民の皆さんにしっかり理解していただかないと、この政策は、円滑に進めるということについて困難を伴いがちではないかということを率直に御指摘申し上げたわけであります。
  85. 平野達男

    ○平野達男君 どんなものでも正の明るい部分と暗い部分、あるいは正の部分、負の部分があるということで、私は、まあどうしても内閣は正の部分あるいは明るい部分だけを強調したがるというのは、それはしようがないと思いますが、同時に今のような負の部分もしっかり国民に知らしめておくというのは、私、非常に大事だと思います。  特に、話はちょっと変わりますけれども、先ほど総裁の中で、人口減少社会という話がありました。人口減少社会の中で日本経済を持続的に成長させるためには生産性を向上させなくちゃならない、それはいいです。そこが重点なんです。日本は過去五十年間で人口が五割増えたと言われています。これから黙っていれば人口が五割減るとも言われています。まあそんなに減らないにせよ、あと何十年間で一億人を割ります。  じゃ、その人口減少がどこで起きるんだろうか。全国一様で起こるわけじゃないと私は思っています。都会の部分、都会ではそんなに減りません。そうしますと、その人口減少というのはどこに来るかといったら農村部です。山村です。高度経済成長時代には、農村部は過疎化という現象になりました。これから起こるのは過疎化じゃないんですよ。集落が丸ごとなくなっていくんですよ。そういう状況の中で、人口減少社会ですから生産性向上させますよと、これは大事ですよ。しかし同時に、人口減少社会というのはどういうものが出てくるかというと、地域の中では、今言ったように集落が丸ごとなくなっていくような状況が出てくる。そういうことについては全く触れられていないんですね。集落が丸ごとなくなったところはいいですよ、もう人がいないんだから。だけど、その過程の中でその地域医療はどうするんだ、雪かきはどうするんだ、地域の農地はどうやって守っていくんだ、これは明るい話でも何でもないですよ。そういうつらい話があるわけですね。  これは、日銀の今日の場でこういうことを言うのはちょっと必ずしも適切ではないと思うんですが。そういった正の部分、負の部分というのがあって、むしろ政治というのはその負の部分というところを、なかなか内閣としては強調しづらいと思いますけれども、やっぱりしっかり出していくということも大切だと思うし、その意味においては総裁のこの発言は私は本当にいい発言だったということを最後に申し上げまして、時間になりましたから私の質問を終わらせていただきます。  終わります。
  86. 家西悟

    委員長家西悟君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩といたします。    午前十一時四十九分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  87. 家西悟

    委員長家西悟君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  88. 大久保勉

    ○大久保勉君 民主党・新緑風会の大久保勉です。  まず本日は、お配りしました手元の資料に関しまして質問していきたいと思います。  議事録を残すためにあえて読みますが、こちらは産経新聞の七月四日号です。こちらは産経新聞とフジニュースネットワークが合同でアンケート調査をしています。読み上げますと、「日銀福井総裁が村上ファンドに一千万円を拠出していた問題では、福井総裁が「辞任すべきだ」とする人が六九・五%に達した。」ということです。さらに、横線で書いていますが、「村上ファンド問題に対する説明責任についても七九・三%が「果たしたと思わない」と答え、「果たしたと思う」との回答は一一・三%だった。」ということであります。  これが日本銀行の実態じゃないかということで、私はある質問を準備してまいりました。これは、総裁はどのようにして国民の信頼を取り戻すのかということです。ただ、午前中の審議を聞きまして、質問は取りやめることにします。  といいますのは、やはり福井総裁に関しまして、ある大切なものが欠けていると思っております。私は、二十数年国際金融の世界で働いてまいりました。いろんな人たちと話をして、企業家として一番重要なものは何か、リーダーとして一番重要なものは何かと。一致していることはインテグリティーという言葉です。この言葉に関してどういう意味かといいましたら、清廉潔白、こういったことです。インテグリティーの欠けているということは極めて大きな問題があります。そういった人がコーポレートガバナンスを主導するということでございましたら、エンロン事件とかそういった事件と同様の結果になるというおそれがあります。  そういうことで質問の順番を変えまして、まず質問したいのは、一ページ目に「ゼロ金利解除へ」ということで、横線を引っ張っておりますが、「日銀首脳は三日夜、「七月以降重大な局面になる」と述べ、次回以降の決定会合にゼロ金利解除が提案される可能性を示した。大半の政策委員が賛成する見通しだ。」ということなんですよ。  福井総裁、このコメントをした記憶はございますか。
  89. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) そういうコメントはしていないと思います。
  90. 大久保勉

    ○大久保勉君 念のために副総裁質問します。同じ質問をいたします。
  91. 武藤敏郎

    参考人(武藤敏郎君) そのようなコメントはいたしておりません。
  92. 大久保勉

    ○大久保勉君 これ、新聞社の記者に聞きますと、首脳の意味するところは総裁ないし副総裁ということです。通常は総裁ということですから、この記事というのは、総裁、副総裁が記憶にないということは、実態、裏付けのないいわゆる虚偽の報道であったということでしょうか。そういうことですね。副総裁総裁、確認します。異議がありましたらコメントください。
  93. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 恐らく記者の方々は、それ以前の段階で多くの方々、もちろん私を含めて通常の取材をしていると思います。そういう取材の積み重ねの上で、最終段階で様々な観測記事を書かれると、そういうことはあると思います。
  94. 大久保勉

    ○大久保勉君 具体的な裏付けのない観測記事、言わばうその記事ですね。分かりました。これはまた別途お話をします。  こういった記事がなぜ重要かといいますと、市場に相当影響します。ゼロ金利解除することによりまして、それを聞いた人は国債先物を売ったり、若しくは金利敏感株を売却することによって、いざ金融解除がなされ、金利が上がった場合には相当の利益を上げることができます。一千万でも、場合によっては一億でも十億でもそういった経済価値があるんです。非常に重要な問題です。  じゃ、こういったことに対して、私は、村上ファンド投資の本質といいますのは、インサイダー取引に加担するとか若しくは守秘義務を守っていないと、こういったことに遠因があると思っております。  じゃ、二ページ目、お願いします。  日本銀行の方も、こういった守秘義務に関しましてはちゃんと守るようにということで様々な規制があります。その中の一つとしまして、ブラックアウトルールというのがあります。こちらに関して日銀質問します。簡潔に説明してください。
  95. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) お答えいたします。  いただいた資料にも書いてあるところでございますが、ブラックアウトルールと申しますのは、金融政策決定会合の二営業日前から会合終了当日の私ども総裁の記者会見終了時刻までの間、原則として金融政策及び金融経済情勢に関し外部に対して発言しないというルールでございます。  以上でございます。
  96. 大久保勉

    ○大久保勉君 日銀からいただいたルールについてということで、実際の運用ということで、具体的には会合二営業日前からマスコミ、市場関係者との面会を行わないということでありますね。  そこで質問なんですが、こちら新聞記事、これは読売新聞朝刊、三月九日の記事であります。見出しは「量的緩和解除へ」「日銀、きょう最終判断」ということです。  じゃ、これに対しまして、まず三月六日から九日の総裁記者会見終了時までブラックアウト期間であり、さらには、総裁以下政策決定会合出席者全員がマスコミや市場関係者等に面会したり外部に対する発言をすべきでないということは、イエスかノーかで端的にお答えください。
  97. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) 三月六日から九日の間に関しましては、政策委員を始めとして決定会合出席者も含めまして、原則として金融政策及び金融経済情勢に関して外部に対して発言しない期間であるということでございます。
  98. 大久保勉

    ○大久保勉君 私が聞いたのは後半の部分です。マスコミや市場関係者に面会したり外部に発言をすべきでないという。つまり、マスコミ、市場関係者に面会することはできますか、できませんか。イエス、ノーでお答えください。
  99. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) おっしゃられたマスコミ及び市場関係者等に対して、原則として面会したりあるいは発言したりすべきでない時期であります。
  100. 大久保勉

    ○大久保勉君 このブラックアウトルールに関して、実際の運用に関して原則という言葉は何もありませんが、非常に、原則という言葉を使わないといけないほどに何か困った状況だと私は推測しました。  具体的に読み上げますと、読売新聞の記者、横線を引いておりますから、「日銀福井総裁解除提案する意向だ。」。飛ばしまして、「福井総裁解除を提案すれば、政策委員の大半の賛成で解除が決まるのは確実な情勢だ。」。三行飛ばしまして、「八日の初日の会合は日銀執行部が現状の経済物価情勢説明し、意見交換をして予定通り二時間程度で終了した。九日は初日の議論を踏まえて、解除の是非や、金利安定の枠組みで望ましい物価の数値を示すかどうかなどについて検討し、意見をまとめる。」。これはその場にいなかったら全く分からない情報ですから、このことに関しまして質問します。  これは、ですから、この記事は虚偽ですか、それとも正しいですか。日銀質問します。これは福井総裁、お願いします。
  101. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 時間は今すぐ確認できませんけれども、初日は経済情勢を討議し、二日目にそういう決定事項に入るということは事実であります。
  102. 大久保勉

    ○大久保勉君 八日の会合の模様に関して詳しく書いてありますが、このことに関してどう思われますか、福井総裁
  103. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 八日の日、一日目でございますが、経済情勢、内外の経済情勢、市場の情勢について執行部から報告を受け意見交換をすると、議論をすると、これは事実でございます。
  104. 大久保勉

    ○大久保勉君 このような詳細なことを記者は裏付けなしに書いたんでしょうかね。それとも、日銀でだれか記者と面会したんでしょうか。いずれが正しいでしょうか。総裁、どう思われます。
  105. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) この記事に示すこの具体的な日、そのときの決定会合の中身についてマスコミが非常に早い段階で知るということはあり得ないんではないかと思います。
  106. 大久保勉

    ○大久保勉君 おっしゃっていることが分かりません。これは事実に基づいた記事か、それとも観測記事か、どちらでしょうか。
  107. 家西悟

    委員長家西悟君) 挙手をして発言をお願いします。
  108. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 初日にそういう内外の金融経済情勢、市場の情勢について報告を受け議論をするというのはいつもの議事運営のパターンであります。そのパターンにのっとって記事が書かれたという可能性はあると思います。
  109. 大久保勉

    ○大久保勉君 では、前半の「日銀福井総裁解除提案する意向だ。」、これは、じゃ勝手に、憶測記事ですね。
  110. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 政策委員会の討議を経ないで私が提案の中身を心の中で固めるということはございません。したがいまして、これは完全な観測記事でございます。
  111. 大久保勉

    ○大久保勉君 じゃ、討論をするために必要な、二段目、「政策委員の大半の賛成で解除が決まるのは確実な情勢だ。」、こちらはいかがでしょう。
  112. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) こちらも観測記事ではないかと思います。
  113. 大久保勉

    ○大久保勉君 日本銀行はこれを、観測記事ということは事実無根であるということですから、じゃこういった事実無根の記事が載ることに関しまして日銀はどのような対応をされるんでしょうか。このことに対しては虚偽であるということで、文書での抗議を行いましたでしょうか。
  114. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) この記事につきましては、記者が日ごろの取材の中から得た情報を基に、記者自身判断、それから推測、そういったものを交えながら書いたものであろうというように私ども自身も推測しております。したがいまして、日本銀行としてこれに対して特に抗議すべきものであるというようには考えていないということでございます。
  115. 大久保勉

    ○大久保勉君 そうですか。こういった推測記事が市場を動かし、市場を混乱させる、市場の信頼をなくすということですから、日本銀行としては、自分たちのことに関して間違った記事が書かれていることに対して厳重に抗議すべきじゃないですか。
  116. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) 非常に難しい点を含んだ御質問とは思いますが、報道機関が自ら集めた情報を基にある程度の観測記事を書くということについては、これは報道機関の一つスタンスだろうというふうに思っております。したがいまして、私どもとしてこれについてあれこれ言い得る立場にはないように思っております。  あえて付け加えますと、正しくないことについては正しくないと言い、正しいことについては黙っているというようなことも、また私ども政策スタンスを言外に明らかにしてしまう可能性がありますので、その辺りも踏まえて我々の対応というのはしっかりやっていく必要があろうというふうに思っております。
  117. 大久保勉

    ○大久保勉君 分かりました。  非常に、これは諸外国の中央銀行に比べまして極めて甘い。ですから、いわゆるインテグリティーの欠いたガバナンスが行われているんじゃないかと私は思いまして、是非これはインサイダー事件の温床になるということで厳しい規制が必要だと思います。申合せだからこういったことができると思います。やはり日銀法を改正するなりしましてきっちり情報を管理することが是非とも必要です。  また、インテグリティーの欠いた、つまり清廉潔白さのないように思える総裁が居座ろうと思ったら幾らでも居座れる、こういった現行日銀法下の日銀に関しまして私は非常に疑問がございます。  続きまして三ページ、これは水掛け論になりますが、これも同じようなことで、横棒で、「日銀執行部は既にデフレ脱却が確実になりつつあるとの判断を固め、福井総裁も三月解除を排除しない意向を周囲に伝えている模様だ。」。  福井総裁質問します。周囲に伝えたことはございますか。村上ファンドの村上さんを含めまして、市場関係者に対してこういったことを簡単に漏らすことがあるかどうか、お尋ねします。
  118. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) そういうことは全くございません。私は政策委員会の議長の立場でございます。議事を進める前に私が個人的見解を示すということはあり得ないことでございます。
  119. 大久保勉

    ○大久保勉君 ということは、この二月二十四日読売新聞朝刊一面、これも観測記事で、虚実記載ですね。私はこれは抗議すべきだと思います。この場合は日本銀行総裁福井総裁ということが限定列挙されております。やはりこれは相当大きい問題であると思いますが、福井総裁、いかがですか。
  120. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 様々な観測記事が我々の立場を悩ませる、悩ましているということは事実でありますが、海外の中央銀行の場合にもやはり多かれ少なかれ事前のメディアの観測記事には悩み続けていると、共通の問題を持っていると思いますが、一方で報道の自由ということがあるようでありまして、抗議をすれば問題が解決するというふうに直結しないところがこの問題の一番難しいところだというふうに思っています。
  121. 大久保勉

    ○大久保勉君 海外に関しては、中央銀行に対して記者クラブという存在はございませんから、いわゆる都合のいい記事を書かせる慣行とか、若しくは、まあこれは一般論で言います、非常にかわいいところに対しましてちょっとしたリークを流すとか、こういった慣行はありませんし、私は現在そういったことはないと思いますが、念のために御指摘します。是非このことは率直に、改善できるんだったら改善すべきだと思います。  続きまして、日本銀行の天下り規制に関しまして御質問します。  現在、日本銀行は巨大なシステム産業でございます。システム会社の上位三社の年間の契約額だけでも二百億円を超えております。また、その三社すべてで随意契約を行っております。その三社及びグループ社において、天下りの実態を説明願いたいと思います。  こちらは資料の四、これは日本銀行からいただいた資料でありますから、このことを踏まえて端的に、この資料が事実か事実でないか、日本銀行からいただいた資料であるかないか、このことを確認お願いします。
  122. 水野創

    参考人(水野創君) ただいま御質問をいただきましたけれども、この資料は私どもが作りまして御提出した資料でございます。この中身に基づいて、今お話にありましたように、システム投資における大口契約先について、どのような者が再就職をしているかを御説明させていただきたいと思います。  日本銀行の役員の者が再就職している先は、現在、二先二名でございます。具体的には、この表の一番上の日本アイ・ビー・エムの再就職者で二人目で書いております三谷氏、それから三つ目、日立製作所で二人目に書いてあります小畑氏、この二名でございます。また、グループ会社に関しましては、現在シンクタンク二社に二名が再就職しておりまして、これはエヌ・ティ・ティ・データ経営研究所の武藤氏、それから日立総合計画研究所の藤原氏でございます。それ以外に、既に退職した者がここには何名か書かれておりまして、今申し上げた以外の者は既に退職している再就職者でございます。  以上でございます。
  123. 大久保勉

    ○大久保勉君 私のコメントは、よくよく読んでみましたら、こちらに載っておりますのは日本銀行の役員を退職した者、若しくは過去十年間、有価証券報告書、若しくは直近のホームページで当該企業の役員を務めたことが確認できる者、いわゆるパブリックデータであります。ですから、日本銀行の役員でなかった者がこの企業の取締役ではない部長とか次長になった場合には入っておりません。通常、理事クラスが天下りした場合に、場合によってはそれと一緒に一人か二人が付いてくるというケースも他企業ではありますから、こういったことがまだ分からないという状況であります。ここはこれ以上は分かりませんから、少なくとも過去に大手三社において、随意契約がある大手三社においては八名の理事が天下ったということであります。  これ、よくよく調べてみましたら非常に優れたシステムでありまして、実は、アイ・ビー・エム、百四億円の契約があります。随意契約もあります。一番重要なポストといいますのはこの特別顧問、こちらがいわゆるプレミアムシートと言われているみたいです。ここにちゃんとはめ込んで、さらには副総裁藤原さんは日立総合計画研究所の取締役社長でありますと、こういった実態であります。  私は、ちょうど十社のシステム会社がありまして、そのうち上位三社にきれいに役員が天下っていると、こういった実態に関して何らかの規制が必要じゃないかと考えております。  そこで、現在の日本銀行の天下り禁止に関する内規を伺いたいと思います。
  124. 水野創

    参考人(水野創君) お答えさせていただきます。  日本銀行では、民間企業への再就職につきまして、これまでも個人の識見や能力を期待して外部から人材を求められた場合に限って、世間からいたずらに批判を招くことのないよう留意しつつ慎重に対応してまいりました。  具体的には、役員や局店長級の職員等の再就職につきまして、まず役員の場合、日本銀行と当座預金取引を有する民間金融機関への再就職は退任後二年間自粛する。次に、局店長級の職員につきましても、退職前二年間に就任していた職位が当座預金取引先と密接な関係がある場合、当該当座預金取引先への就職も退職後二年間自粛するなどのルールを設定しております。  私どもといたしましては、こうしたルールを厳格に運用することで職務の公正性の確保に万全を期しているところでございます。
  125. 大久保勉

    ○大久保勉君 是非、大口の契約企業さらには随意契約を締結しているところに関しましてはもっと慎重に対処すべきじゃないかと思います。やはり、随意契約で非常に高い契約をすると、天下りを押し込んでいくと、こういった構造があるとしましたら極めて問題であります。非常にこれはよくできたものであります。今回はシステム関係の会社でありましたが、恐らくはゼネコンとかいろんな業者にあるんじゃないかと思います。  では、どういう形でこういった構造がつくられているか。  次の質問に参ります。これは戸田分館、いわゆる発券局の問題であります。  埼玉県戸田市に建設した発券施設、戸田分館の建設の経緯や建設規模についてお尋ねしたいと思います。
  126. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) お答えいたします。  私どもの戸田分館につきましては、将来にわたりまして銀行券の取扱物量が増大していくというような事態を想定いたしまして、一方で省力化を図っていかなければならないという私どもの責務も果たしつつ、発券業務の正確かつ安定的な運営を確保すると、こういった観点から建設した施設でございます。  施設の建設面積は一万七千平米、延べ床面積は五万二千平米ということでございます。
  127. 大久保勉

    ○大久保勉君 資料としまして五の一、まず追加提出資料。これは一年間掛けまして戸田分館に関していろいろ聞きました。これは、日本銀行に対する調査若しくはその裏付け調査を行いました。  五の二をごらんください。いわゆる平成八年、戸田分館が建設計画がなされたときの受入れ物量、これは日銀券の受入れ物量の予想であります。一番左側、想定といいますのが予想で、平成八年で二十九億枚です。九年が三十億枚。だんだん増えていきまして、平成十七年四十三億枚。平成二十五年は六十三億枚になるでしょうと。ですから、新しい施設が必要じゃないかということで戸田分館は建設されております。  キーワードがあります。これは日銀法改正。平成九年からスタートしておりまして、ちょうど戸田分館といいますのは、日銀法が改正され、日銀財務省の、当時大蔵省の厳しい管轄から解き放されまして、言わば自由にできると思った時期だと思われます。  これまでは日本銀行日本橋で処理されておりまして、例えば日本橋といいますのは、Bの実績は日本橋というところです、八年が二十九億枚、平成十三年は三十五億枚。平成十五年から戸田分館はスタートしております。ですから、日本橋のキャパシティーは三十五億枚は十分あったということです。現在の日銀戸田分館及び日本橋の実績は幾らかといいましたら三十三億枚でありまして、予想よりも十億枚マイナスであります。つまり、平成八年から約十年間でほとんど増えてないという状況です。これは受入れ物量です。その次のページ、五の三、支払物量は幾らかといいましたら、実績というところで見てもらったら分かります。発券局の合計で三十五億枚あったものが平成十七年で二十八億枚、反対に減っているわけです。  ですから、戸田分館を造らなくても全く支障がなかったということが言えるんじゃないかと思いますが、そのことに関して、若しくは百歩譲りまして、八百億の施設を投資しなくても日本橋の既存施設を手直しをするだけで十分対応できたんじゃないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  128. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 戸田分館の発券センターというのは、日本銀行からいたしますと非常に先を読んだ長期の計画でございます。  御指摘のとおり、戸田分館におきます銀行券の取扱高は、戸田分館が始まりまして以降、御承知のとおり、日本経済が長期の停滞局面を経過いたしました。したがいまして、しばらくのところは銀行券の動きは当初の予想に比べて非常に低めに推移しているということであります。  御指摘のとおり、銀行券の取扱高がこれまでのところ当初想定をかなり下回って推移していると、これが戸田分館というもののキャパシティーが大き過ぎるんではないかというただいまの御指摘につながっているというふうに思います。しかし、銀行券の受入れ物量は戸田分館の建設前に比べましてやはり少しずつ増加してきておりまして、今のような状況であっても既に本店の施設のみではこの受入れは対応できない、こういう量に達しております。  また、別の面がございます。災害時の業務継続力と、これは長期的に見て、日本銀行は発券機能は生命線でございますので非常に大事でございます。戸田分館の建設により耐震性能、それから防犯対応力、これは非常に高まりました。そして、戸田分館と本店との間で相互にバックアップを取るということも可能になりました。コンピューターと同じく銀行券は決済システムのかなめでございます。戸田分館を持つことによってバックアップ体制ができたということで、災害時の業務継続力もこれで格段に強化されたと考えています。  このように戸田分館は、今後とも、長年にわたって銀行券の円滑な供給体制を確固たるものにしたと私どもは考えております。これは中心的な役割を果たすものだということで、今後ともこれは効率的な運営に心掛けてまいりたいと、必ずやいつの日にか、やっぱり持っていてよかったということになるに違いないと思っております。
  129. 大久保勉

    ○大久保勉君 非常に、言葉で聞いたらそうかなと私も思いました、去年聞きましてそうかなということで。  実際にこういった資料を取り寄せました。ページの五の六を見てください。具体的に目で見たらいいと思いますね。  実線は想定であります。で、点線は実績であります。一番が受入れ物量、二番が支払物量。どう見ても、平成二十四年になりましても追い越すようには見えませんし、支払物量に関してはかえって下がっているんですよね。金融危機がなくなりましたらたんす預金が減りますから流通量は減るんじゃないかという観測もありますから、すぐにキャパ一杯になるというのは考えることができません。  あと、反論でありますが、私も調べました。日本橋の施設では手一杯であると。これは、今はそうかもしれません。といいますのは、日本橋の施設の機械を戸田分館に持っていっていますから、今あります日本橋の機械であったら一杯一杯かもしれませんが、それは日本橋の機械を動かしてなかった場合には十分に対応できます。数字で申し上げますと、日本橋だけで三十五億枚カバーできておりまして、今三十三億枚、受入れ物量であります。さらに、平成十三年には三十八億枚、日本橋だけで対応しておりましたのが、現在は二十八億枚、つまり十億枚低いという状況です。総裁の御意見というのは非常におかしいんじゃないかと思います。  さらに、危機対応に関しまして申し上げます。  一番の危機は何か、それは関東大震災です。戸田市といいますのは埼玉県です。日本橋と埼玉県の戸田、大きな違いあるんでしょうか。もし危機対応でしたら、私は大阪とか若しくは名古屋の方にバックアップを造ります。これが第一点です。  第二点は、危機対応が必要でしたら、戸田分館に発券局長を置いて非常時に備えるべきじゃないですか。これは、以前私はこのことに質問しました。当時調べましたら課長さんしかいないと。で、課長さんが金庫のかぎを保管しているという状況でありまして、私の指摘で局長級の人が派遣されております。ですから、日本橋に発券局長、戸田に発券局長の人です。私が思いますのは、二人の局長級がいますと。焼け太りじゃないでしょうか。発券局というのは、非常にうまい、政治力がある組織じゃないかと思いますが、この点に関して御意見を伺います。
  130. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) まず、物量につきましては、当面、短期的には想定物量に対比して実績物量が非常に低位で推移していると、御指摘のとおりであります。しかし、これはこの先二十年、三十年、あるいはそれよりも更に長い期間を展望しながら是非お考えいただきたいと思います。今の本店のキャパシティーというのは、そんなに何十年ももつというほどのキャパシティーを持っていない。で、これを改造するといいましても、耐震性まで含めて考えますと大変コスト高に付くというふうに思います。  それから、震災だけではありませんけれども、災害対応のバックアップということでもう一つのセンターを持つという場合に、コンピューターと違いまして、距離が遠いほどいいというわけにはいかないわけでございます。日本で最大の都市であります東京を中心に物量、銀行券供給のパニックが起こるわけでありますので、東京から余り遠いところへ銀行券のバックアップセンターを持つということは余り意味がないと、こういうことになります。したがいまして、ある距離を持って、かつその新しい拠点については、耐震性という点で取り得る最高の技術を活用して震災に耐え得ると、こういう形で対応しているところでございます。  それから、トップをどうするかということであります。ただいまのところ、発券局長は日本橋の方におります。そして、戸田分館の方には発券局長は常駐はしていないということでありますけれども、これはある種の役割分担ということでございます。発券局の事務は、戸田分館は大口の銀行券の取扱い、そして本店の方は発券サービスの企画立案、関係省庁との連絡調整といういわゆる本部機能、それに加えまして小口の銀行券取扱いということでございます。したがいまして、発券局長はやはり本部機能を担う本店の方に常駐していると、こういうことでございます。
  131. 大久保勉

    ○大久保勉君 端的にお願いします。
  132. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) はい。  戸田分館の方は、しかし、責任者不在というわけにはいきませんので審議役を配置していると、こういうことでございます。
  133. 大久保勉

    ○大久保勉君 次の質問を先に答えられましたもので、もう少し順を追って言いますと、じゃまず前の質問から。  つまり、戸田じゃないといけないと。じゃ日本橋に近い、戸田分館の次に近いいわゆる発券業務を行う支店はどこですか。横浜支店でしたっけ。
  134. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) 仰せのとおり横浜支店でございます。
  135. 大久保勉

    ○大久保勉君 私は、戸田でできて横浜でできないとは思いませんけれどもね。やはりさっきの福井総裁の言い訳は、もう言い訳と言います。日本橋に近くないといけないと。だったら、戸田じゃないといけないと、横浜でもいいんじゃないですか。  第二点。日本橋に斉藤発券局長がいらっしゃいます。同じような局長としまして、システムに関しては原システム情報局長は府中の電算センターにいるんです。ですから、局長というのは日本橋にいないといけないということはないんです。  私は何度も何度もお話をしました。そうしたら、私が合点のいった回答は、いや、日本銀行の三つの重要な業務があるんだと。御存じのとおり、学校の教科書に書いてありましたように、銀行の銀行であったり政府の銀行であります。もう一つ、発券銀行なんです。つまり、発券業務というのは歴史的なものですからプライドが高いんです。ですから、そこに対してなかなか牽制が利かないと。日銀のある関係者は言っていました。この八百億円も無駄な投資をすると。これは実は、大久保さん、これは戦前の関東軍の暴走になぞらえて発券局の暴走だと、こういう批判もあるんですよね。  コーポレートガバナンスのプロ、福井総裁に、これは本当の意味でのガバナンスでしょうか、お尋ねします。
  136. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 日本の信用システムの中枢、決済システムの中枢、これはやっぱり日本銀行であり、唯一の発券機能を持っている中央銀行として発券局の存在が非常に重要だということは委員指摘のとおりです。発券局に所属している役職員のそれぞれは誇りを胸にやはり仕事をしているということは確かでございますけれども、決してそれがおごりとなって関東軍のように暴走しているというふうには私はとらえておりません。  戸田分館の建設につきましても、発券局員の建設的な提案がたくさんありましたけれども、やはり全行的な検討を経て、最終的に政策委員会の決定をもって行われたということでありますので、発券局の主張が一方的に通ったというふうには私は思っておりません。
  137. 大久保勉

    ○大久保勉君 端的にお願いします。  これ以上繰り返しませんが、非常に問題あるということです。  じゃ、こういった施設が何と七百八十億、もう八百億近いコストなんです。費用対効果分析を私はしました。ページ、六ページです。これが日銀からいただいた資料であります。その中で重要なものとしましては、建屋三百十七億、自動化施設百二十七億、什器、これは自動鑑査機等が九十八億あります。  一番上の建設工事費に関しまして、ページ、七ページです。これは日本銀行からいただいた資料を、最初の資料と二回目の資料を加工したものです。  最初は、戸田分館の建物というのが平米単価五十六万するんだと。私は素人だから、じゃ同じようなビルを持ってきてほしいということで、三番のAビルと四番のBビルが出てきました。比べましたら、平米単価五十九万一千と六十万。ああ、こんなものかなと。私は建設の専門家に聞きましたところ、いや、これは違う、これはちょっと乱暴な議論だということになったわけです。  といいますのは、戸田分館というのは地上五階なんです。第三のビルは地上二十一階で地下三階、しかも臨海副都心、都市部です。Bビルも同じように地上十五階と地下四階。地下があるものとないものは相当違いますし、都市部でしたらそれなりの建築コストがありますから、これは、これで比べるのは乱暴だと。逆に私のアドバイザーは、むしろ何かを隠したがっているんじゃないのということで、まずは近くの同系統のビルを探してきた方がいいんじゃないかということで、探してきたのがイオン北戸田ショッピングセンターです。これは五階建てです。もちろん違いは相当ありますが、平米単価七万三千円と。つまり七倍の違いがあるんです。もちろん耐震設備も違うでしょう。若しくはいろんな電気系統の違いがありますが、むしろ同じようなものから立ち上げて、例えばこういう大理石のものがあるから高いんだとか、無駄な、まあエレベーターが一杯ありますとか、そういうことを言ってもらったら分かるんですね。  ここで議論してもこれは仕方ありませんから、是非日本銀行の方で専門家、外部の専門家にこの費用対効果分析を是非した方がいいんじゃないかと私は御提案します。まあ建設会社とか若しくは専門の者に、この戸田分館の五十六万というのは高いか安いのか、是非とも提案しますが、福井総裁、いかがでしょう。
  138. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) お答えいたします。  私ども、先生も先刻御承知のこととは思いますが、戸田分館につきましては、定量的に他と比較してというのは結構難しいところがあるわけでございますけれども、定性的に申し上げますと、やはり発券業務の遂行ということに不可欠な各種のシステム機器がございます。さらに、セキュリティーを確保するための特殊な機器等も設置しております。さらには、それらを支えるための非常に能力の大きい電気設備ですとか空調設備が必須だということもございます。その結果として全体としての重量というのも相当大きなものになるということでございますので、柱とかはりとか、そういったものについてもかなり太くしなくちゃいかぬという特殊な事情もあります。この辺りを是非御理解いただきたいなと思っておりますし、こういったことについては建設会社あるいは設計会社の相当周到な検討と、私どもとの間の調整も経た上でこうした設計にした、こうした建築にしたということでございます。
  139. 大久保勉

    ○大久保勉君 もう一つ材料が出てきました。  じゃ、この附帯建設工事をだれが受注したのかと。これは鹿島建設、清水建設、竹中工務店です。じゃ、これは落札率は何%ですかと聞きましたら、九六・九%です。じゃ、戸田分館全体の平均落札率は幾らですかと言いましたら九一%。平均が九一%なのに九六・九%ですと。じゃ、念のために天下りはいますかと。はい、いますと。清水建設に常務さんがいらっしゃるということでよろしいですね、日銀出身の常務が。まあ当時ですが。
  140. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) 当時ということでは事実でございます。
  141. 大久保勉

    ○大久保勉君 じゃ、これ福井総裁質問しますが、私は、李下に冠を正さずという言葉がありますが、いわゆる契約を締結したときに、元日銀人事局長が常務取締役に就任していた、このことが落札に影響したんじゃないかと思われるかもしれませんから、どういうふうな理由で、若しくはどういうふうな、一切関係ありませんということでどういうふうな措置をしたか、このことに関しまして福井総裁にお尋ねします。
  142. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 戸田分館関係のこの競争契約に当たりましては、談合等の不正が生じないようにしなきゃいけない。独禁法の専門家のアドバイスも受けながら、一つには、客観的な基準による入札参加者の選定ということを行いました。二つ目には、見積書徴求による価格積算根拠の詳細な点検と。つまり価格談合が行われにくいスキーム作りに努めたということであります。それに加えまして、三つ目に、入札参加者との入札事務以外での接触を制限して情報管理の徹底を図ることとしました。当時としてはこのように可能な限りの措置を講じ、その透明性、公正性の確保に万全を期したということは間違いございません。  したがいまして、この入札に関しまして、私どもといたしましては、再就職者が関与して不正な行為を行う余地はなかったというふうに理解をいたしております。
  143. 大久保勉

    ○大久保勉君 理解をしているというのはいいんですが、具体的に介在できないようなシステムをもう少し分かりやすく説明してもらいたいと思います。後日書類を提示してください。  もう一つ問題がありまして、随意契約に関しまして、大きい契約としまして、セコムと契約しております、三十五億円。東芝と八十九億円。三菱重工六億円とありますが、このセコムとの契約にも非常に問題があると思います。三十五億円と大規模セキュリティー業務を随意契約でセコムが受注したということであります。元日銀情報サービス局長が専務取締役として天下ったということとの関連を疑う向きがあります。このことに関して、絶対に関係ないということを証明してください。
  144. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) 絶対に証明するということは非常に難しいわけでありますが、是非御理解いただきたい点はございまして、実はこのセキュリティー関係についての随意契約というのは、実は単純に随意契約をしたということではございませんで、候補となり得る大手業者二社、これがございます。この二社から技術面でのプロポーザル、これをもらいまして、それについて設計監理業者の専門的かつ客観的な視点も活用しながら、より優れた提案を行った一社を選定したというプロセスがございます。言い換えますと、価格入札の前に言わば技術入札をやったということでございまして、大手の二社から一社をまず選定し、その上で価格交渉を別途周到に行ったと、その上での随意契約ということでございます。
  145. 大久保勉

    ○大久保勉君 ここはもう少し納得のいく資料を後日いただきたいと思います。  さらには、東芝から随意契約で八十九億円に上る三十台の自動鑑査機を購入しております。これも一台三億円の機械であります。本当にこの機械が必要なのか。つまり、三億円というのは極めて大きいということなんです。ある人が調べましたら、いわゆる連銀をして、非常にチャレンジング、非常に挑戦的な施設であるというようなことを皮肉を込めて、こういったコメントがあるぐらいの施設です。ですから、戸田分館に関しましては、一つ一つを見ていきましたら相当大きな問題があるということを指摘したいと思います。  最後にまとめですが、戸田分館に関しまして、私はやっと分かったと思います。つまり、日本橋だけでちゃんと稼働していたのに、何であえて八百億円ものお金を掛けて戸田分館を建設したか。一番は、随意契約や大口契約を通じて天下り先の確保につながったこと。二番、発券局が局長待遇を増やすなど火事場泥棒的なことを行ってきた、このことが可能であったこと。また、これが一番重点です。三番、一連の取引は、平成九年の新日銀法の下で行われ、適切な外部からのチェックがなかったことが遠因になっていると、こういったことじゃないかと思います。このこと全体に対して、端的に福井総裁のコメントをいただきたいと思います。
  146. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 新しい日銀法で、政策面での独立性が与えられた。その一方で、やはり日本銀行全体のガバナンスを引き締めてやらなければならないと、そういう規定も存在いたします。日銀法第五条において、「日本銀行は、その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならない。」と明記されています。  私といたしましては、この定めに基づき、適正かつ効率的な組織運営に向けて全力で取り組んでまいりたいと。戸田分館については、非常に長期的な視野に立った計画に基づく施設でございます。これから長期的にこの運営効率を上げていく、重要な課題を我々に取り組まさせていただきたいと、こういうふうに思っています。
  147. 大久保勉

    ○大久保勉君 長期的ということですが、じゃ、最近の出来事を質問します。  これは、国内出張等に伴う航空券の不正請求に関してであります。これは、会計検査院が指摘したと聞いておりますが、不正請求金額、件数、対象の人数を問いたいと思います。
  148. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) まず最初に申し上げておかなければなりませんのは、航空機を利用いたしました国内出張につきまして過払いが発生してしまったということにつきましては、私どもとしても非常に重く受け止めているということでございます。  その上で、その過払いの実態について申し上げますと、実は平成十一年四月から十八年の一月、今年の一月までということでありますが、その約七年間におきまして、出張者一千三百人余り、それから出張件数四千七百件余り、これらにつきまして合計七千三百万円の過大な支給が行われていたということでございます。
  149. 大久保勉

    ○大久保勉君 ちょっと別の観点から質問しますが、今日ナガタ理事が見えていらっしゃいますが、ナガタ理事は内部統括担当ということで、内部統括担当理事ということでよろしいでしょうか──ごめんなさい、水野理事。
  150. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) お答えいたします。  私と水野理事との分担ということなんでありますが、私自身は、政策委員会室に組織運営というのがございます。予算ですとかあるいは決算ですとか、あるいは機械化計画ですとか、そういったものを担当する部署でありますが、そこの担当をしております。  それから、水野理事は、総務人事局、人事関係それからコンプライアンス関係を主として担当しておられるということでございます。  内部管理ということでは以上でございます。
  151. 大久保勉

    ○大久保勉君 ということは、水野理事はコンプラ担当ということですね、さっき平野委員の方で非常に重要になったコンプラということです。  これに関連するんですが、一千三百三十人の不正受給者がいて、七千三百万過大な過払いがあったと。これは会計検査院が指摘する、また指摘するまでは日銀内では放置されていたものであります。  では相当の処罰があるんでしょうね。担当者はそれなりに、まあ民間でしたら首なんですが、若しくは左遷ですが、特に譴責という処分を受けた二人に関して御説明をお願いします。譴責というのはどういうものであるか。
  152. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) お答えいたします。  私どもの処分の態様といいますか、在り方ということになりますが、譴責と申しますのは就業規則上の厳しい処分でございます。総裁による処分ないし総務人事局長による処分ということでございます。
  153. 大久保勉

    ○大久保勉君 じゃ福井総裁に確認します。  今回の事件で福井総裁は何か責任を取られましたですか。
  154. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 国内出張におきます航空運賃支給の過払い、日本銀行だけでなくていろいろなところでも生じているんですけれども日本銀行の場合には、この過払いを受けた本人が悪意でいろいろ工作をして過払いを受けたということではございませんで、主な原因は内部規程の不備あるいはその規程の趣旨の不徹底というところにあったということでございます。そのことは会計検査院におかれましても確認していただいていることでございます。したがいまして、こうした規程を所管する部署の関係者を中心に、譴責、戒告その他の処分を行ったということであります。処分の内容につきましては、今回の事態を招いた責任の重さを十分踏まえて決定したものというふうに考えています。  いずれにせよ、大変遺憾な事態であるということは事実でございます。規程整備等の再発防止策を講じるとともに、改めて行内全般にコンプライアンス意識の徹底に努めてまいりたいと。私としては、やはりそういう認識を強く持ちまして再発防止に全力を挙げていきたいと、こういうふうに考えております。
  155. 大久保勉

    ○大久保勉君 いや、私は驚きました。いつも日銀の場合は、内部規程、内部規制といいましたら、本当にお手盛りだなと思いますね。  結局、これだけ問題があるのに二人の譴責と。その譴責、一名は現在の文書局長です。もう一名はコンプラ担当の理事ということです。つまり、すねに傷ある人がコンプラをやっても本当にうまくいくんでしょうか。また、最高のCEOであります福井総裁もすねに傷があるということで、これが日銀流の立派なコーポレートガバナンスでしょうか。私はそう思いません。  やはり、もう日銀法を改正をするとか、ちゃんとしたガバナンスができるような制度がない限りは、何をやっても今は問題ないと、日銀が内部調査をして問題ありませんでした。しばらくして内規を変えまして、若干厳しくなると、これだけ厳しいんだと。  私は、日銀の職員がかわいそうだと思います。まじめにやっている日銀の若い人たちがどんどんどんどん、福井総裁の問題若しくは理事の問題でもってどんどんどんどん厳しくなっていきます。こういった状況でしたら、いい人材は日銀に来なく、若しくはいい人材が離れていくと思いますよ。  私は、福井総裁のインテグリティー、つまり清廉潔白さを期待します。ここに関して福井総裁、何かコメントありますか。
  156. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) インテグリティーという非常に規律の高さ、重要性という意味合いを十分込められたお言葉を発せられたわけでありまして、私どもその言葉を率直に胸にちょうだいいたします。覚悟を一層強く固めて、これから日本銀行の運営より良きものとしていくように努力をしてまいりたいと、そういうふうに確約したいと思います。
  157. 大久保勉

    ○大久保勉君 もう是非、有言実行でお願いしたいと思います。  こちらに関しまして、じゃ、ついでに村上ファンドに関する質問に関して最後にお尋ねします。  一千万円拠出したということでありますが、アドバイスに関する見返りは、バックファイナンスの提供とか投資の元本保証など、いかなる経済的な対価も伴っていないこと、また、ファンドへの拠出資金は福井総裁本人が自己資金を充てたこと、このことを一応念のために確認します。
  158. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) ただいまお尋ねのございました、村上ファンドへのアドバイスに対しバックファイナンスの提供を受けているか、投資の元本保証等を含め、いかなる経済的な対価も受けなかったのかと、この点についてはいささかの対価も受けておりません。借入れ行為もいたしておりません。拠出いたしました資金は、全額私自身の資金でございます。
  159. 大久保勉

    ○大久保勉君 じゃ、念のためでありますが、送金依頼書とか残っていると思いますから、若しくは銀行の通帳の出金、この辺りを私といいますより委員長に出してもらったら、本当に福井総裁というのは立派な規律のある方だと分かると思います。このことはよろしいでしょうか。
  160. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 私が私自身の資金を拠出したことは事実でございます。借入れを受けたものでもなければ、他人からちょうだいしたものでもございません。当委員会であったかあるいは衆議院の方であったか少し記憶がはっきりしませんが、六月の国会で同様の質問をちょうだいいたしました。そのときも、はっきりと私自身の資金でもって拠出をしたということを申し上げました。その後、念のために自分の当該金融機関取引を確認しております。間違いはございません。  そのことについてのデータというお話でございますが、この件については個人情報の取扱いのありようにかかわる話でもあります。委員会においてよく御検討いただきたいというふうに思います。
  161. 大久保勉

    ○大久保勉君 委員長、是非検討をお願いします。  私は、インテグリティーを証明するためには率先して出すというのが一番いい方法じゃないかと思いますね。実際、それは公表する必要がございませんから。ただ、責任を持ってこういったものを処理されましたら、いや福井総裁は潔白であるということで、逆に私としては応援できると思います。  最後でありますが、日銀総裁就任後に村上ファンドへのアドバイスは一切行っていない、また、村上ファンドやファンド関係者との面会、電話等での意見交換は一切していないと、こういう理解でよろしいでしょうか。
  162. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) アドバイスは一切、村上ファンドの運営等に関してアドバイスは一切いたしておりません。  面会等がなかったかという点になりますと、これは既に記者会見でもかつて聞かれたことでありますが、総裁就任後二回ほどお会いしています。それがすべてでございます。
  163. 大久保勉

    ○大久保勉君 電話もないということですね、電話でのやり取りは。
  164. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 電話、メール等はございません。
  165. 大久保勉

    ○大久保勉君 こちらに関しまして、もう少し調べましてまた質問したいと思います。  今回、是非この審議で明らかにしたかったことは、いわゆる企業のガバナンスは何であるかということなんです。私は、福井総裁の問題に関しましては、日本銀行の職員が僕は被害者だと思っております。まじめにやっている若い方にとって、日本銀行で仕事をし続けたいと。また、市場関係者にとって、日本金融市場は極めて重要で、清廉潔白であると、こういうことを信じられるような市場にしてもらいたいと思います。  私、FTとか若しくはウォール・ストリート・ジャーナルの一面に載った記事を見て非常に恥ずかしい思いをしました。いわゆる、こういった一流紙の一面に非常に、ここで発言することがはばかられるような内容が書かれております。  このことを指摘しまして、私の最後の質問といたします。  以上です。
  166. 山口那津男

    山口那津男君 公明党の山口那津男でございます。  今日は、去る十月三十一日に発表、公表されました展望リポートに示された基本的見解に関しまして、基礎的な質問を何点かお伺いしたいと思います。同僚議員の質問と重複する点もあろうかと思いますが、お許しいただきながらお答え願いたいと思います。  まず初めに、外需が増加するという基本認識の下でアメリカの経済先行きをどう見るかという点であります。展望リポートでは、米国経済の足下は減速しているが、安定成長に軟着陸していく可能性が高いと、こういうふうにお示しになっているわけでありますが、一方、アメリカのその足下減速の要因としては、住宅建設あるいは自動車生産などの低迷ということが要因として指摘されているわけであります。これらをアメリカにおいてどう克服して、いつごろまでに軟着陸すると、こう見るのか、この点についての見解をお伺いしたいと思います。
  167. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 日本経済世界経済、米国を含む世界経済と緊密な連関を持って動いておりますので、この先の特に経済のダウンサイドリスクを考えますと、委員の御指摘の点が非常に重要なポイントでございます。私どもも米国経済動きにつきましてはそういう意味で懸命にフォローいたしておりますが、米国経済の現況を見ますと、先日のGDP、アメリカのGDPですが、でも明らかでありましたように、第三・四半期に住宅投資が大幅に減少したと、事前の予想よりも大幅に減少したということだと思います。ただ、その一方で、企業の設備投資は高水準の企業収益を背景に増加を続けております。また、個人消費の減速ペースも、エネルギー価格の下落や所得上昇背景としまして緩やかなものにとどまっています。  このように、個人消費や設備投資の底堅さが崩れていないということを踏まえますと、今アメリカのウイークポイント、住宅市場、それから自動車セクターにおける調整ということですけれども、こういう調整がありましてもアメリカ経済が全体として景気後退局面に入るような事態には恐らく至らない、そういう可能性が高いと取りあえず判断しているところであります。また、インフレ圧力の方も景気減速につれて次第に低下していくのではないかと、その速度というものはまだ十分つかみ切れないと、こういう状況でございます。  このため、アメリカ経済はいつごろになるとアップターンしてくるのかという最終的なお尋ね、ここがまた大変難しいところでございますが、現在のところ正確に読めませんが、来年以降、来年以降次第にアメリカの潜在成長率近傍の安定的な成長パスに戻っていく、そういう姿が明確になってくるんではないかと多少期待を込めて見ているというところでございます。  こうした基本シナリオには、この住宅価格の調整が予想以上急激なものになったり、逆にインフレ予想が高まったりするリスクが存在していますので、今後とも米国経済先行きについては決して楽観視しないで注意深く見ていきたいと、こういうふうに思っております。
  168. 山口那津男

    山口那津男君 海外経済全体として見た場合に、地域的な広がりを伴って拡大を続けると、こういう見方でありますけれども、具体的に、例えば中国やASEAN諸国など東アジアの地域全体の拡大ということもありましょうし、それらが日本外需となって現れるということもありましょう。この関係をどういうふうに見ていらっしゃるか、これは、アジア地域というのは一つの例にすぎないわけでありますが、この点をどう見るかということ。  それと、先ほど申し述べられたアメリカの経済の動向、これによってこの地域的な広がりというものも影響を受ける、そして間接的には日本経済にも影響を受けるということも考えられるわけであります。この点もどう見ていらっしゃるか、お述べいただきたいと思います。
  169. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) アメリカ経済が減速する場合にも世界経済全体としては拡大を続ける可能性が高いというふうに私どもは見ています。私どもだけではなくて、先般、九月に公表されましたIMFの世界経済見通しでも同様の見方が示されております。  世界経済全体の成長率が、IMFの経済見通しのベースでいいますと、既に二〇〇四年、五年と五%前後の高成長を示しました。そして、今走っている二〇〇六年それから明年、二〇〇七年についてもIMFの見通しは五%前後、成長が続くであろうという高成長見通しとなっています。その中には、米国が減速してもその他の世界経済成長力は陰りを示さないだろうということが前提になっています。しかも、その他の世界経済という場合には、委員指摘のとおり、アジア、なかんずく東アジアの経済の力強さということがカウントされているわけでございます。  東アジアにつきましては、中国は固定資産投資や輸出の高い伸びを背景に今も力強い拡大を続けておりまして、この先も恐らく力強い拡大を続けるだろう、ほぼ確実だというふうに見られています。  それから、NIES、ASEANも輸出が緩やかに拡大しておりますほか、内需基調も総じて底堅いという状況でございます。  アメリカ経済の減速につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございまして、基本シナリオどおりに住宅投資を中心とした調整にこれがとどまると。個人消費などに波及して景気後退局面に入るようなことがなければ、東アジア経済への影響も限定的なものにとどまるだろうというふうに思います。もし、アメリカ経済が想定以上にスローダウンのペースが悪い方向に強まるということになった場合に、それでも東アジアの経済がバッファーとなり得るのか、逆に悪い動きが東アジア経済の中で増幅をして動くのかと、ここのところも非常に注意深くその分かれ目を早く見付け出すようにしなければならないというふうに思います。  世界経済全体の中、特にアジア等を見ておりますと、今はもう非常に投資もグローバル化しておりまして、直接投資などを通じた経済統合の進展と域内の貿易比率が非常に高まっています。したがいまして、我が国や中国を始めとして域内の需要が底堅く推移すれば、東アジア経済全体は多少のアメリカ経済からのショックを吸収して、息の長いしっかりとした経済成長を続ける可能性がやはり強いんだろうというふうに見ています。  いずれにしましても、アメリカ経済、東アジア経済、我が国経済との関係で見ますと、この両者は非常に重要な緊密な連関を持って動いていますので、注意深くこの推移を見守っていかなければならないと考えております。
  170. 山口那津男

    山口那津男君 一方で、海外経済リスク要因も幾つか指摘をされているところでありますが、これが基本シナリオに反して予想外に減速をした場合どうなるかということで、この点の我が国への影響については、我が国の企業全体としては、いわゆる三つの過剰等も解消してきているということから景気全体の影響の緩衝材となると、こういう指摘であります。  バッファー、緩衝材、比喩としては分かったような分かんないようなでありますが、具体的に、こういうことが起きて我が国の経済成長率に直接的な、数字的な影響を与えないんだというようなことまで言うのかどうか。この緩衝材ということの実質的な意味、具体的な意味についてもう少しかみ砕いてお示しいただきたいと思います。
  171. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 海外経済が予想以上に減速すると、予想外に減速すると、供給拡大のペースが速いIT関連財などで在庫調整が発生する可能性がございます。世界経済が堅調に推移しているという場合に、その強い投資の牽引力はやっぱりIT関連のところにございます。  したがいまして、経済が減速しますと、非常に供給拡大ペースの速いIT関連のところで在庫調整が発生する可能性があると。企業生産設備や雇用水準が過剰であれば、在庫調整をきっかけとして設備投資や雇用にも調整波及して、経済全体に悪影響が及ぶおそれがあると。世界経済全体として、悪いシナリオメカニズムの一番大きなものがそういうことじゃないかというふうに思っております。  しかし、我が国の企業部門はどうかというふうに見ますと、バブル崩壊以降の設備、雇用、債務の面の過剰といったこの構造的な問題をほぼ克服して現状に至っております。企業収益は全体として高水準で推移しておりまして、雇用の不足感も徐々に強まっているという状況にございます。このため、海外経済の減速がありましても、つまり海外経済の減速から多少の在庫調整が発生したといたしましても、企業が設備投資や雇用などの経営方針を一挙に大きく転換する可能性はかつてに比べればかなり低くなっていると、こういうふうに思います。  経済全体の成長率や失業率への悪影響を遮断する緩衝材として、そうしたいわゆるリストラの進展効果というものが機能するというふうに考えられると思っております。
  172. 山口那津男

    山口那津男君 企業部門は強め、家計部門はやや弱いと、こういう御指摘でもあります。その企業部門は強めで好調が続くとした上で、高水準の収益、売上高利益率を維持すると、こういうことでありますが、大企業についてはある程度そうなるだろうなというのは我々予測できるわけでありますが、我が国経済の実体の大宗を占める中小企業、ここに一体どの程度この企業部門の強め、そして好調持続というものが及んでいくのか、この点が必ずしも定かではありません。これをより具体的にお示しいただきたいと思います。
  173. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 委員からいま一つ、別の面から重要な御指摘をいただいたというふうに思っています。  日本経済、次第に順調な、持続可能な拡大経路に乗ってきていると思いますが、経済の中を見ますと、やはり大企業中小企業、なかんずく製造業企業とその他のセクターとの間でかなり景況感、彩りに差があると、それを引きずっているということは事実でございます。国内構造調整の進捗とか世界経済拡大というものをバックグラウンドに置いて考えますと、やっぱり世界経済との結び付きが強くて、つまりグローバルな展開をしている、かつ国内的に過剰債務などの構造的な問題に早めにめどを付けた大企業、特に製造業企業業況改善が目立っているという状況にあると思います。短観によりますと、大企業の売上高収益率はバブル期を上回る水準で推移しているということであります。  これに対しまして、中小企業などはまだそこまでの景気拡大の実感を味わっておられないということでございます。グローバルな大企業の中には生産拠点海外への移転を進めている企業も多いわけですけれども、主として関連工場下請企業のある地方がその影響を受けてきたという面もあるのではないかというふうに思っています。  ただ、こうした非常にばらつきのある状況でございますけれども、その状況の中でも中小企業状況、子細に見ますと、例えば短観九月調査によりますれば、中小企業の経常利益は二〇〇二年度から増加を続けております。今年度も増益となる見通しでございます。また、売上高経常利益率、中小企業ですけれども、ほぼ八〇年代半ば並みの水準にまで上昇してきているという状況でありますので、大企業と開きはございますけれども企業部門の好調は中小企業にも次第に広がってきていると。この点は心強い材料でありまして、今後とも息の長い経済拡大を実現していけば、中小企業への、何といいますか、好影響の広がりも更に明確なものになっていくんではないかと、こういうふうに考えております。
  174. 山口那津男

    山口那津男君 中小企業に対して非常に心強いお言葉をいただいたわけでありますが、我々がちまたでいろんな人の声を聞くと、商店街に行っても、あるいは中小企業の会合に行きましても、報道等で伝えられる好調というのは我々のところには及んでいないという声が非常に多いわけですね。ですから、やっぱり実感を確かに受け止めているということにはなっていないと思います。是非とも、今後の政策運営で広くこれが中小企業や家計にも及んでいくように御配慮をいただきたいと思います。  企業部門に関連してでありますが、設備投資、これが増加をしていくけれども、いずれ伸び率は低下をしていくであろうと、こういう見方をしているわけであります。この設備投資の動向というものは、外需依存度の高い企業あるいは業種、また内需中心の企業あるいは業種で差異があるのか、どの程度のものなのか、この点について教えていただきたいと思います。
  175. 稲葉延雄

    参考人(稲葉延雄君) 今、設備投資についてのお尋ねがございました。    〔委員長退席、理事峰崎直樹君着席〕  まず、現状を申し上げますと、グローバルな企業海外における需要の増加を眺めまして設備の増強、いわゆる供給体制の強化に努めているわけでございますが、内需中心の企業でも、息の長い景気拡大が続く下で企業から家計へ良い影響が波及してきていますものですから、それをとらえて設備投資意欲を着実に高めてきているというふうに思っております。こうした状況ですので、先行き外需依存度の高い企業だけではなくて、内需中心の企業においても設備投資の増加が予想される、当面予想されるということだと思います。  ただ、展望レポートに書かせていただきましたように、〇七年度にかけましてはさすがに設備が積み上がってきますので、設備投資の伸び率ということからすれば低下はしてくるだろうというふうに予想しておりますけれども、この点についても、外需依存度の高い企業とそれからそうでない企業との間に大きな差があるとは思っていません。  いずれにしても、そういう中で、大きな経済の振れを回避しながら、持続的な成長が期待できるんではないかというふうに考えております。
  176. 山口那津男

    山口那津男君 雇用者数は着実な増加をすると、こういうふうに見ていらっしゃるわけでありますが、一方で、九月の統計を見ますと、完全失業率はやや悪化をしていると。また、就業者数、これも一年五か月ぶりに減少をしているという数字が出ているわけですね。これらの数字というのは一時的あるいは表面的な現象にすぎないというふうにごらんになるのか、基調がどうなのか、この辺の見方について改めて確認したいと思います。
  177. 武藤敏郎

    参考人(武藤敏郎君) 確かに、御指摘のように、九月のデータを見ますとそのような状況があるわけでございますけれども、長い目で見ますと私どもはもうちょっと違った見方をしております。雇用者数、月々の振れが大きいデータでありますけれども、ならしてみますと前年比で大体一%台で堅調に増加していると。完全失業率、確かに四・一から四・二に九月に上がりましたけれども、長い目で見ますと緩やかな低下傾向をたどっているというふうに考えているわけでございます。また、先日の日銀短観におきましても、企業の人手不足感は一段と高まっているということでありました。  展望レポートでお示ししましたように、我が国経済先行きも息の長い景気拡大を続ける可能性が高いということであれば、雇用者数の着実な増加も続きまして、結局、労働需給は引き締まっていくということになるのではないかというふうに予想しているわけでございます。
  178. 山口那津男

    山口那津男君 厚生労働省に伺いますが、いわゆるこの失業については、需要が不足しているから失業が増えると、こういう見方、オーソドックスな見方があると思いますが、一方で均衡失業率ということを言う人がいるわけですね。これは、需要不足が解消されても雇用のミスマッチというのは常に存在する、その水準は時代によって変わる、そういうものを指して均衡失業率と、こう言っているようでありますが、定義が人によって一致しているのかどうか、私はよく分かりません。  厚生労働省として、このような見方について厚生労働省としてはどういうふうに認識をしているか、どういうふうに見るか。厚生労働省の見方に従った場合に、今の日本はどの程度の水準にあると、こういうふうに見ていらっしゃるか、これを伺いたいと思います。
  179. 鳥生隆

    政府参考人鳥生隆君) 均衡失業率についてのお尋ねでございます。  当省の試算によりますと、いわゆる需要不足によらない、私ども構造的・摩擦的失業率というふうに申しておりますが、その構造的・摩擦的失業率につきましては、完全失業率が五・四%と高水準にあった二〇〇三年四—六月期には四%程度であったというものが、本年に入ってから完全失業率が四%強で推移している状況下で三%台後半まで低下してきたものと見ております。これ幅を持って理解すべき数字だと考えておりますが、そういった数字でございます。  構造的・摩擦的失業率につきましては、ミスマッチ解消等の雇用対策の推進によりましてその水準を引き下げるということが必要であるというふうに考えておりまして、今後とも雇用対策に万全を期してまいりたいと考えております。
  180. 山口那津男

    山口那津男君 今、雇用のミスマッチの解消という話出たんですが、これは厚生労働大臣もそれに努めるということを強くおっしゃっているようであります。しかし、言うべくしてこれは簡単ではないと思うんですね。特に、若年者でもう学校を出た既卒者のところ、二十代後半から三十代前半の辺りを見ますと、これは求人は非常に高いんですが、しかし実際の就職の結果にはなかなか結び付いていない。また、大企業にいわゆるフリーター層の採用意欲を尋ねてみても、極めて低い数字しか出てきません。  ですから、これを解消するというのは、具体的にどういうふうな政策を展開し、協調してやっていくのか、この点をお示しいただきたいと思います。
  181. 鳥生隆

    政府参考人鳥生隆君) 御指摘のとおり、現下の雇用情勢、全体として改善が進んでいる中で、依然として若者の失業率が高い、あるいは地域の雇用情勢の改善が弱い地域がある、あるいは非正規雇用が増加しているといった問題が見られます。  厚生労働省としては、こうした状況対応していくために、若者について、フリーター二十五万人常用化プラン等によりまして正社員への転換を推進し、二〇一〇年までにフリーターをピーク時の八割に減らすとともに、ハローワークにおきまして非正社員求人につきまして正社員求人となるように指導をする、あるいは正社員としての就職の支援に積極的に取り組むといったことを行っております。さらに、企業において新卒者以外に門戸を広げていただくなど、若者の応募機会の拡大が図られるよう経済団体等へ働き掛けを行っているところでございます。  さらに、今後、法的整備も含めた取組の強化を図るなど、こうした問題の解決に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えております。
  182. 山口那津男

    山口那津男君 既に実施しているトライアル雇用とか、あるいはジョブカフェを活用するとか、もうあらゆる施策を動員してきめ細かに対応してこの解消に努めていただきたいと思います。  さてそこで、総務省の九月の家計調査によりますと、一世帯当たりの消費支出は前年同月比六%減、これは大幅な落ち込みだと、こういうふうに言われております。    〔理事峰崎直樹君退席、委員長着席〕  ここ三か月あるいは半年ぐらいのこの消費支出の動向について、総務省、簡潔にちょっと御答弁いただけますか。
  183. 衞藤英達

    政府参考人衞藤英達君) 家計調査についてのお尋ねでございますが、今先生お話しになったとおり、一世帯当たりの消費支出は、一年前と比べまして、八月、九月と減少幅やや大きくなってございます。九月につきましては、お話しのとおり、実質マイナス六・〇ということでございますが、このマイナス六%の内訳を寄与度で見ますと、自動車等購入などの交通・通信の支出、これでマイナス二・〇五%、それから設備修繕・維持などの住居支出、これがマイナス一・一四と、この二つでこの九月につきましてはかなり大きな減少の寄与ということでございました。  また、最近の状況でございますが、当初申し上げましたように、かなり一年前と比べて減少が続いておりまして、七月、八月、九月でいきますと、消費支出、それぞれマイナスの一・三、マイナスの四・三、それから先ほどの九月のマイナス六・〇と。さらに、半年前から見ましても、マイナスの大体一・三から一・七ぐらいでちょっとずつ減っているというような状況でございます。  以上でございます。
  184. 山口那津男

    山口那津男君 この家計支出というのは、今御指摘のようになかなか厳しい状況が続いているわけですね。  内閣府に伺いますけれども、今のこの支出動向、消費動向というものを、要因をどう分析して今後の見通しがどうなるかというところ、これから半年ぐらいの程度の見通しについてどう見ていらっしゃるか、これをお述べいただきたいと思います。
  185. 高橋進

    政府参考人(高橋進君) 足下の消費の動向につきましては、天候不順などの一時的な要因が影響しているというところもあると思います。  ただ、基調的に見てみますと、雇用情勢の改善が家計の所得改善につながっておりますので、個人消費の増加基調が続いております。先行きにつきましても同様の傾向が続いていくというふうに見ております。  ただし、今後の所得の動向につきましては留意していく必要があるというふうに考えております。
  186. 山口那津男

    山口那津男君 今おっしゃった最後の所得の動向については今後注意する必要があると、これはもうちょっと分かりやすく教えていただきたいと思います。
  187. 高橋進

    政府参考人(高橋進君) これまで雇用の改善が進んできましたけれども、少し足下で雇用の改善に若干足踏み傾向が見られる、あるいは賃金の伸びにつきましても今後伸びが鈍化していく可能性があるということでございますので、留意していく必要があるんではないかというふうに思います。
  188. 山口那津男

    山口那津男君 伸びが鈍化していくと、こういう御指摘でありましたね。  さて、じゃもう一点、今度財務省にちょっと伺いますが、先般、地方財務局長会議で全国的な景気回復傾向を確認をしたということでありまして、一部には拡大傾向も出ていると、こういうことであったようであります。これが今後どのようになっていくかと。これは地方の実態を踏まえた実感の伴ったものだと思いますが、その当面の見通しについてもお伺いしたいと思います。
  189. 富田茂之

    ○副大臣(富田茂之君) まず、景気の現状を見てみますと、企業部門は収益が改善し、設備投資も増加しております。家計部門におきましては、消費はこのところ伸びが鈍化しているものの、雇用情勢は改善に広がりが見られるなど、国内民間需要に支えられた景気回復が続いているというふうに考えております。  この景気回復は構造改革への様々な取組を通じまして主要行の不良債権問題が正常化するとともに、先ほど山口先生御指摘のように、企業部門における三つの過剰が解消するなど、経済の基盤が着実に強化されてきていることが貢献しているというふうに考えております。  先行きにつきましては、アメリカ経済を含む世界経済や原油価格の動向等には留意する必要があるものの、企業部門の好調さが家計部門波及しており、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれます。  ただ、他方、地域によっては回復に確かにばらつきが見られることから、地域がそれぞれの実情に合った創意工夫によって経済の活性化を図ることを促していくことが重要であるというふうに財務省としては考えております。
  190. 山口那津男

    山口那津男君 もう一度内閣府に伺いますが、内閣府で取っている指標というものに景気動向指数の先行指数というのがあるわけですね。これは九月分についてはもう間もなく発表の時期だというふうに伺っておりますが、過去三か月を比べてみると、これが五〇を割っているという動きもあるようであります。今後、間もなく発表になることも含めて、この先行指数をどう見て、今後をどう予測するかというところについてお答えいただきたいと思います。
  191. 高橋進

    政府参考人(高橋進君) 済みません。御質問もう一度繰り返していただけませんでしょうか。
  192. 山口那津男

    山口那津男君 突然の御質問でありますけれども、内閣府で景気動向指数の先行指数というものを発表しているわけであります。過去二か月はこれが五〇を割っているというふうに報道されているわけですね。九月分についてももう間もなく発表される予定と。これは同じく五〇を割るであろうと、そう言われているわけであります。  この先行指数が三か月連続して五〇を割るということは、先行き景気動向が必ずしも楽観できない要素もあるんではないかと、こうも思われるわけでありますが、その点をどう見通しておられるかということを伺いたいと思います。
  193. 高橋進

    政府参考人(高橋進君) 大変失礼いたしました。  足下の先行指標の五〇%割れの要因について見てみますと、例えば在庫率の上昇でありますとか新規の求人の減といったことがございます。ただ、在庫につきましては全体として非常に低い水準にございますので、月々の振れということが考えられると思います。それから、新規の求人数につきましても、基本的に今経済が好調な中で労働需要、労働不足の方向に行っている状況でございますので、こういった数字が今後とも続いていくかどうかというのは分からないというふうに思います。したがって、慎重には見てまいりたいと思いますけれども、こういう数字が定着するかどうかはちょっと分からないというふうに思います。
  194. 山口那津男

    山口那津男君 今総務省あるいは厚生労働省、財務省、そして内閣府等からいろいろな見方を御披瀝いただいたところでありますが、展望リポートに戻りますけれども、ここで家計部門波及するということを言っておられるわけですが、これは四月の展望でも言及されていたわけですね。これ、企業部門家計部門への波及ということは同列に四月のころは言われていたように受け止めました。しかし、今回はやや差があるわけでありますけど、そうはいっても今後賃金上昇はこれは明確になる可能性が高いと、こういうふうに今回は述べていらっしゃるわけですね。  しかし、四月にそういう一般的な見通しを述べていたにもかかわらず、なかなかそういう賃金上昇というのは顕在化しませんでした。現に、消費支出の動向というのは、先ほど述べられたとおり厳しい現状にあります。そうしたときに、内閣府が先ほど、所得のこれからの行方については必ずしも明るい見通しではないという趣旨に私は受け止めましたけれども日銀としてこの賃金上昇が明確になる可能性が高いというのはどういう根拠、どういう理由でおっしゃっているのか、またそのメカニズムがどうなっていくのか、いつごろまでにそれが明確になっていくのか、この点についてお示しいただきたいと思います。
  195. 武藤敏郎

    参考人(武藤敏郎君) 労働需給が引き締まっているという割にはなかなか賃金、特に所定内給与、これが足下ゼロ近傍ということで、やや弱い数字になっておるわけでございます。  労働需給が引き締まっているのになぜ所定内給与がなかなか上昇しないのかということでありますけれども、いろいろな状況があろうかと思いますが、一つには、企業サイドがバブル崩壊後の人件費の抑制という長い努力の中で企業収益を確保してきたわけでございますけれども、その人件費抑制姿勢というものをなかなか容易に緩めようとはされないという企業側の事情もあろうかと思います。それから、労働者サイドでも、過去の厳しい労働環境経験から、賃上げをここで主張するよりは安定的な雇用を維持するという方を優先するという、そういう面があるのではないかというふうに思うわけでございます。  ただ、十五歳以上人口が頭打ちになり、雇用者数ということを見ると前年比一%程度の増加が続いているわけでございますので、やはり今後二〇〇七年度にかけて展望した場合のマクロ的な労働需給というものは引き締まり傾向を避けられないであろうというふうに見ておるわけでございます。主要企業の正社員を含めまして、雇用者数を増加させております。既に派遣労働者やアルバイトなどでは賃金が上昇しているというような情報もあります。こういった点を踏まえますと、企業と労働者の行動は次第に変化をしていって、所定内給与を含め賃金の上昇圧力が次第に高まっていくであろうというふうに見ておるわけでございます。  いつまでにかというお話がありました。これはなかなか難しいところでございますが、私ども展望レポートは二〇〇七年度まで展望しておるわけでございますけれども、二〇〇七年度ということになりますと、四月の展望レポートと今回の展望レポートは基本的に同じような経済成長を考えておるわけでございます。したがいまして、そのぐらいのタイムスパンで見ますと、私どもが今申し上げたようなことが徐々に実現していくのではないかというふうに考えているところでございます。
  196. 山口那津男

    山口那津男君 この賃金上昇要因を労働需給の逼迫というところだけではなくて、やっぱりこの企業所得の分配というところも公正にやるべきだという視点も本当は必要だろうと思うんですね。年末の賞与あるいは来年の春闘、そしてまた新しい人の採用等々、タイミングがいろいろありますので、働く人々にとっては明るい見通しになるように期待をしたいというふうに思います。  さて、潜在成長率は近年上昇しているという御認識でありますが、二〇〇七年度は潜在成長率近傍に向けて徐々に減速する可能性が高い、こうおっしゃっているわけですね。そうすると、上昇していくこの潜在成長率と、近傍に近づいていく傾向と、これの接点というのは一体どれぐらいの水準になるのかというところをお示しいただきたいと思います。
  197. 稲葉延雄

    参考人(稲葉延雄君) 潜在成長率のお尋ねでございます。  潜在成長率は、資本ストックの量とか、それから労働力の水準とかに依存をしますし、それから生産性の上昇率をどういうふうに見込むかということにもかかわってくるわけでございますけれども、したがって、ある程度幅を持って見る必要があるわけですが、我が国の場合、一%台後半というふうな推定を今私どもはしております。  展望レポートでは、実質成長率について、〇六年度は二%台半ば、〇七年度は二%程度と、こう見通しておるわけでございますが、この推移は景気が成熟段階に入っていくにつれて成長率の方が今言った一%台後半と推定される潜在成長率に近づいてくると、そういったようなプロセスではないかと見ているわけでございます。
  198. 山口那津男

    山口那津男君 現在の金融環境の下では、企業の設備投資というのはかなり積極的であって過熱するリスクも潜んでいると、こういうことだろうと思いますが、その場合に財政政策の点で法人課税の在り方とこの金融政策の在り方、これの調整とか役割分担というのがどうあるべきなのかということをちょっとお尋ねしたいんですね。  この法人課税、これを現在の水準よりも低くするとしますと、これは短期的か中長期的かという違いはありますけれども、結局設備投資を促すという効果があることは同様だろうと思うんですね。  さて、この点についてまず財務省に、この点の効果と今後の景気への影響についてまず伺いたいと思います。
  199. 富田茂之

    ○副大臣(富田茂之君) 安倍内閣では、成長なくして財政再建なしとの理念の下、民間主導の経済成長財政健全化を車の両輪とするバランスの良い経済財政運営を目指しております。  税制におきましても、経済活力の活性化を図り、成長を促進していくことは重要な課題であるというふうに考えています。経済がグローバル化する中でイノベーションを加速させ、国際競争力を強化することが求められております。企業が国を選ぶ時代になっており、税制におきましても国際的なイコールフッティングを確保することが重要であり、企業に対する税制の検討に当たりましては、財政の健全化と同時に、このような観点にも十分配慮しながら対応する必要があるというふうに考えています。  このように、今後の税制につきましては、単なる需要喚起的な景気刺激策ではなく、中長期的な視点から企業の体質強化や競争力の強化を通じて経済全体の活性化を図ることが重要だと考えており、こうした観点から、真に効果のある措置を講じることが重要だというふうに考えております。
  200. 山口那津男

    山口那津男君 確かに、ピンポイントで政策的な法人課税を考えるということは共存し得る、金融政策と共存し得ることだろうと思いますが、一方で、日銀の方に、その景気過熱を心配して金融政策調整しようという場合と、この法人課税がどうあるべきか、その点についての基本的なお考えをお示しいただきたいと思います。
  201. 武藤敏郎

    参考人(武藤敏郎君) ただいま法人課税の在り方につきましては、国際競争力の強化の観点、あるいは中長期的な観点から検討されていくというようなお話がございました。  金融政策の方は、物価安定の下での持続的成長を確保するということから、経済物価の振幅をできるだけ小さくして、経済の持っております潜在成長力というものを余すことなく発揮させるということが金融政策の使命であるというふうに思っております。  日本銀行として、現時点で設備投資が過熱しているというふうに見ているわけではございません。しかし、御指摘のような設備投資の過熱リスクというものも含めまして、経済物価情勢を丹念に点検しながらこの金融政策運営を適切に進めてまいりたいというふうに考えております。
  202. 山口那津男

    山口那津男君 最後になりますが、二つの柱で点検をするとおっしゃっているわけでありますが、リスクの面を点検をしていった場合に、下振れした最悪のシナリオといいますか、下振れした場合に物価下落と景気悪化の悪循環に転化するリスクは小さいと、こういうふうにおっしゃっております。デフレスパイラルに陥ることはないということは言えるんだろうと思うんですが、これはむしろ実質的にデフレはもう脱却した状態にあるから大丈夫なんだと、こういうことまで言えるのかどうか、この点についてお示しいただきたいと思います。
  203. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) アップサイドリスクとダウンサイドリスクをひとしく点検しながら望ましいシナリオを実現していきたい。そのダウンサイドリスク、今委員指摘の点でございます、私ども認識は、現状におきまして生産所得支出の悪循環が再び始まる、物価下落が伴ってその悪循環が更に増幅すると、いわゆるデフレスパイラルに陥るリスクというのはもう非常に小さくなっていると、少なくともそこは明確に言えるというふうに思っています。  現在、経済は、やはり生産所得支出メカニズムは前向きに循環がかなり順調に始まっている。そして、経済全体の需給バランスを見ましても、需要不足の経済から若干需要超過経済にもう既に転じている。そして、ユニット・レーバー・コスト、賃金のお話がございました。賃金の上がり方まだ鈍いんですけれども、しかしユニット・レーバー・コストが異常な速度で下がっていた時代に比べますと、その下げ幅は非常にマイルドになってきているというふうなことでございます。  したがいまして、この先の経済運営を大事に運んでいけば、こういう前向きの循環メカニズムがより確実に作動するようになっていくであろうと、こういうふうに思っています。  そういう意味では、非常に大事なことは、デフレが終わったかどうかという定義的なことよりも、今申し上げましたような前向きの循環メカニズムがより強く働くようにみんなが注意深く経済を見守っていく、実際の政策運営もそれにフィットしたものを打ち出していくということが一番大事な点だというふうに認識いたしております。
  204. 山口那津男

    山口那津男君 終わります。
  205. 大門実紀史

    大門実紀史君 大門でございます。  私が最後でございますので、よろしくお願いします。  前国会、私も村上ファンド、福井さんの問題についてはかなり厳しく追及をさせてもらった一人でございます。言いたいことはもうすべて前国会言っておりますのでくどくど繰り返すつもりはございませんが、その後の展開を含めて一つだけ、どうしても疑問な点があるので今日はお聞きしておきたいというふうに思います。  私は、前国会最後のこの委員会質問で申し上げました。村上ファンドから福井さんのところに振り込まれるであろう利益ですね、それはお受け取りになるべきではないと。インサイダー取引、不正取引によってつくられた利益の一部でございますから、それを中央銀行の総裁としては受け取られるべきではないということを申し上げました。なかなかお分かりにならなかったようですけれども。  例えば政治家ですと、分かりやすく言いますと、政治家ですと、談合した企業があって公取に摘発されたりして違法行為がはっきりする、違法企業があったといたします。うちはそういうことはありませんよ。そういう企業から献金を受けた場合、もう受け取っていれば後から返すと、その違法企業に返す。それを寄附するなんということはあり得ないんですね。あり得ないですね。そういう違法企業からの献金はこれから受け取らないと、これからのものは受け取らないと。  だから、私たちにとっては当たり前の話といいますか、そういうことで申し上げたんですけれども、どうもこれから入ってくるものについて、福井さんは何ておっしゃったんですかね、自分が受け取らなかったらそのお金はどうなるのかと余計な心配されて、で、受け取るんだと。受け取ってから寄附するんだということを御答弁をされて、実際そうされたようでございますけれども、私は、やっぱり中央銀行総裁はそういうものを受け取ることそのものが問われちゃうと思っておりまして、厳しく受け取らない方がいいというふうに申し上げたんですけれども、実際は受け取られて寄附ももう始められているわけですよね。  簡単に言いますと、寄附というのは、普通、寄附するお金というのは浄財と言われます、浄財と。インサイダー取引、村上ファンドのお金というのは浄財なんでしょうか。どういうふうに認識されていますか、まずそもそも論ですけれども
  206. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 大門委員からこの前そういうアドバイスをちょうだいしたということ、決して忘れておりません。私自身も、実際に資金が戻ってきたときにどうしようかと、迷いながらも真剣に考えました。大門先生の意見が十分頭に残っておりました。しかし、考え方としてはもう結局は二つしかないんで、受け取らない、放棄しちゃう、あるいは受け取って自分のために使わないで寄附をすると。それ以外の道が何かあるのかと考えましたけれども、私は思い付きませんでした。  この二つのうちでは、私が受け取らないという選択は一体どういうことになるんだろうと。今委員がおっしゃいました、政治家の場合に直面されるケースとこのケースが本当に同じかどうか、私にはちょっと判別不能でございます。そして、ファンドの場合の運用益を私が受け取らないという場合はどうなるのか、私には分かりませんが、恐らく他の投資家がそれは結局、最終的にいつかの時点では配分を受けるということに多分なるんだろうと。それが本当に適当かどうかと。自分として、資金の後始末をするのに一番けじめの付いたやり方であるかどうか。それよりは、やはり自分がいったん受け取って、しかるべきところに、自分は使わないでしかるべきところに寄附をすると、この方が最終的な処理まで自分が責任を持って対処できるのではないかという選択をいたしました。  引き続き、委員から御批判を受ける可能性があるなということを十分自覚しながら、自分の判断としてはやはり最後まで自分で処理をしたいと、こういう立場を取らせていただいたわけでございます。
  207. 大門実紀史

    大門実紀史君 いろいろ考え過ぎだと思うんですよね。福井さんは、そういうお金、受け取ったら気持ち悪いと、持っているのは気持ち悪いと。寄附された方ですよ、赤十字と留学生団体ですか、寄附された方だって気持ち悪いんじゃないですか。当たり前のことを私、申し上げているんで、そんな難しいこと言っているんじゃなくて、何というかな、泥棒が稼いだお金はやっぱり泥棒に返すしかないんですよ。それを受け取ってだれかに渡すってことあり得ないんですよ、あり得ないんですよね。これ普通に、もう社会的に常識な話だと思って申し上げているわけですけれども、内心の自由かも分かりませんので強制はできませんから、判断は間違っておられるということだけ今日は申し上げておきたいというふうに思います。  じゃ、ちょっと気分を変えまして、北朝鮮の問題について質問をしたいと思います。  先月の二十五日、アメリカの財務省、FRBが米ドル札の偽造に関する〇六年報告書というのを出しました。いわゆるスーパーノートですね。スーパーノートというのは、北朝鮮で偽造されていると言われています超精密な百ドル紙幣でしたかね、百ドル札だと思いますけれども、これが初めて、アメリカのFRBも含めて、北朝鮮政府が関与の下で製造され、流通しているということを初めて言及したわけですね。それまでは、国の関与というのはそこまで、これ三年に一遍出る報告書ですけれども、国の関与ということに言及したことなかったんですが、初めて言及いたしました。  昨日の報道を見ますと、北朝鮮の方も国内の一部の勢力が関与していることを六者協議の中で認める方向だというふうなことが報道されています。何か拉致問題と同じように、国は関係ないけど、一部の人がやったことを認めるような報道、姿勢だという報告がされております。  このスーパーノートというのは大変精度が高いということで、本物と普通の人は全く見分けは付かないほど超精巧な偽札ということで、北朝鮮自身も本物かどうか分からなくなっちゃって、国内流通外貨をドルからユーロに変えたというぐらいでございます。  これは、アメリカの金融制裁もこのスーパーノートの偽札の存在が非常に大きな原因で金融制裁に入ったとも言われています。まだ定かではありませんけれども、幾つかの資料によると、人民元も偽造されていたんではないかというようなことも話になってきております。  日本円の偽造はまだ出ておりませんけれども通貨当局として、こういう紙幣の偽造、国際的に流通、流通といいますか、流れていると。これについて、日銀として、通貨当局として、日本の円の可能性も含めてどういうふうな対策、あるいはどういうふうに考えておられるか、まず聞かせてもらいたいと思います。
  208. 武藤敏郎

    参考人(武藤敏郎君) 日銀券のこの偽造、北朝鮮による偽造という問題について、私ども、今御指摘ありましたとおりに、具体的にそういうものがあるという情報には接しておりませんが、これは財務省、警察等の関係当局と密接に連絡、連携を取りながら偽造券の発生状況を注視しているということはやっておるわけでございます。  海外日本円、これは北朝鮮に限らず、日本円の偽造をされるケースが増加しているというふうに認識しているわけではありません、今のところですね。しかし、今後ともこの偽造券の発生状況についてはしっかりと見てまいりたいと思っております。  なお、平成十六年に改刷をいたしましてから、国内で発見されます偽造券の枚数は激減しておるということだけは申し添えておきたいと思います。
  209. 大門実紀史

    大門実紀史君 私は、北朝鮮問題も含めてといいますか、考える上で重要なのは、前にもこの委員会で何度も人民元の問題とか通貨協力取り上げさしてもらっていますが、基本的な考え方は、今はどうしようもない国でございますけれども、基本的には、北朝鮮も含めてといいますか、アジアの経済協力とか経済連携が強まることが、経済協力、経済連携強まったところで戦争が起きたことはかつてほとんどありませんので、そういうことを追求していくことが平和にとって、平和問題も大事だと思っている立場から、経済の面でこの問題を取り上げさしていただいているわけですけれども、アジア共通通貨とか、それはもう随分先の話のような気もいたしますし、そこまでならなくても、何らかの通貨の上での共同というのも、金融協力も非常に重要ではないかと思っておるところでございます。  そういう点で、その北朝鮮にも絡みますけれども、日中韓の連携というのが非常に重要ですね。その点で、通貨スワップの問題と、北朝鮮ウォンにも絡んで質問したいと思いますが、今、日中、日韓の通貨スワップというのがなされております。これは円と人民元、円とウォン、人民元とウォンですね、ドルが絡みませんで、直接自国のあれでやるわけですね。これについて、いわゆるチェンマイ・イニシアチブというのがございますけれども、それとの違いといいますか、この日中、日韓のスワップの役割といいますか機能といいますか、どういうふうにこれから考えておられるのか、まず簡単に、簡潔にちょっと教えてもらいたいと思います。
  210. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 大門委員指摘のとおり、日中、日韓といわゆる平時のスワップというやつを締結いたしました。  チェンマイ・イニシアチブとおっしゃいましたのは、九八年のアジア危機のときに危機対応として、ああいう危機がしょっちゅう起こってはいけないので、危機が起こらないようにという努力をみんなでしております。そうすると、スワップというのはもう要らなくなるのかというと、意外にそうではなくて、やっぱり短期の流動性を即時にお互いに供与し合って為替市場金融市場の安定を図る必要性というのは平時でもあると。  それは、例を挙げるのも変なんですけれども、どこかで例えば大規模なコンピュータートラブルが起こったということだけでやっぱり起こります。あるいは地政学的リスク、端的に言えばテロが起こったというときにも起こります。それから、鳥インフルエンザとか、いずれも例を余り挙げたくないような忌まわしいことなんですけれども、平時であっても結構そういう一つのイベント、事故、アクシデントによって流動性危機というのはいつでも起こり得るものですから、長い目で見て健全なアジアの経済、そして金融の何といいますか、共同市場的なものを目指して長い努力を続けていく間に途中で混乱を起こさせないということが非常に大事、そういう意味での平時であって、何かやっぱり平時といっても、何か起こったときに対応するという意味ではそんなに平和的なものではないんでございます。
  211. 大門実紀史

    大門実紀史君 私は、ほとんどそういうケースはレアケースで、実際には起こり得なくて、例えば韓国の一つの銀行が、韓国じゅうの銀行が一遍にATM障害を起こしたら別ですよ、国内全部が。これ、コンピューターのリスク上あり得ません。韓国で一番大きい銀行がコンピューター、ATMで何か障害を起こしたとしても、韓国も外貨準備一杯持っていますし、それを日本が助けるような事態というのは余り考えられないので、おっしゃるようなことはないとは言えませんけど、ほとんど余り、そういうことではなくて、むしろ日中韓の友好のシンボルというふうなこともレクのときおっしゃっていましたけれども、そういう意味合いが強くて、それはそれでいいんですけれども、これが、去年この委員会で申し上げましたけど、やっぱり私は、アジアの共通通貨的なこの枠組みのあるときに、単一通貨は、ユーロみたいなのはちょっと難しいと思いますが、共通通貨的な構想になるときにやっぱり円がイニシアを取っていってもらいたいと、それは重要なことだと思っております。その点で、さっきのスワップが役に立つのかなと思ってちょっと調べてみたんですけども、直接そういうものには、円の流通促進にスワップですから、つながるものではないなということも思ったりしているところですけども。  いずれにせよ、円がなぜ主導権握っていってほしいかといいますと、これは日本の国益のためだけではなくて、やっぱりアジア通貨で安定しているといいますと、ドルは、見解違うかも分かりませんけど、いずれどこかで下がるんじゃないかというのもありますし、人民元は、今最高値ですか、なっていますが、やっぱり不安定な要素が国内にもございますから、何だかんだ言って日本の円が一番安定しているという点では、アジアの中で円がイニシアを取っていくべきではないかなというふうに思っているところでございます。  その点で、人民元が、先ほどの北朝鮮も含めてですけども、流通を拡大しております。北朝鮮の中でもかなり中国貿易との関係で人民元が流通をしていると。これが北朝鮮の経済を液状化さしていて、それに対して軍部が文句言っているとかいろんな情報ありますが、未確認ですけども、いずれにせよ相当流通していますし、中国は北朝鮮だけじゃなくて韓国にも貿易伸ばして、むしろ韓国に伸ばしておりますから、人民元の影響というと韓国もかなり影響を受ける、円よりも人民元の方が影響を受けるようになっております。香港にも人民元が流通拡大しています。  こういう人民元が、何も円対人民元、けんかしているような話をしているわけではないですけれども、人民元が今流通を拡大しているということに対して、これはそれだけ、通貨価値までいかないと思いますが、流通力があるから拡大しているんだと思いますけども、そういうものをどうとらえておられるか。  例えば、この前中国の金融制裁ですけども、中国銀行と中国建設銀行の北朝鮮の口座を凍結したと。調べてみますと、現地の新聞読んでみますと、結局凍結したのはその中の外貨の取引だけで、人民元で両替してならば引き出せるとか、人民元の口座だったらば取引できるとかということで、自分のところの人民元については除外して、外貨だけ口座の取引停止をしているようですね。かなり人民元の流通ということを中国は意識しているようですけれども、そういう、今人民元がかなりアジアのところに流通拡大をしているということを、別に対抗上という意味ではありませんけど、どういうふうに、客観的にも含めて、日銀で円がイニシア取っていくためにというようなことも含めてどうとらえておられるか、その辺も聞かしてもらえればと思います。
  212. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 簡潔にお答えしたいと思います。  まず、ちょっとだけスワップに戻ってお話しさしていただきたいんです。これはやはり、直接的効果がなくとも間接的にやはり円の利用促進をプラスに導く効果は幾らか期待できると思っています。  そもそも、こういうスワップ網の構築について日本がイニシアチブを取っていますし、実際に何か発動するときに問題が起こった国で必要とするのは、交換性があってやっぱり一番利用範囲の広い通貨ということですので、問題が起これば円が欲しいということになるに決まっていると思います。そういう意味で、結果として円の利用促進、そういう円についての価値が認識されれば、平常の取引においても円の利用促進を促す効果がやっぱり間接的にはあるだろうと、こういうふうに思っています。  それから、お尋ねの人民元でございますけれども、おっしゃるとおり、公表物によるしかないんでございますね。人民元が実際にどれぐらい流通しているかというのはなかなか正確につかめません。特に現金の国外流通ということになると分からないんですけれども、中国金融というふうな公表された研究成果は中国人民銀行のスタッフによる推計だと思うんですけど、これによりますと、御指摘のとおり人民元の中国国外における流通は増えていると、現実に増えているというふうに認識されます。ただ、より広く見ますと、まだ、中国の人民元が国際的な自由な取引の対象になっているかというと、むしろまだほとんどそうなっていないと。例えば外国為替市場でも、日本円というのは一日当たり約二千億ドル取引されています。だけれども、人民元は上海市場で約二十億ドルと。二千億ドルと二十億ドルと非常に大きな差がありまして、円の百分の一の取引高にとどまっています。これは元はまだ交換性が回復していない、やっぱり流通範囲が非常に狭いということでありまして、現金は多少そういうふうに広がりを見せているんですけれども、広い意味通貨の国外流通が元を中心に急速に広まっているというふうには私どもは見ておりません。  元と円が競争するわけじゃないんですけれども、我々自身としては、やっぱり円の信認、その利用、利便性の向上ということは地道に努力を重ねて、非常時においても平常時においても円はやっぱり使いやすいと、使うだけの値打ちがあるというふうなものにしていく努力は絶対に必要だというふうに思っています。
  213. 大門実紀史

    大門実紀史君 以前、御質問させていただいたときには、福井総裁は中国の人民銀行の総裁とも緊密に連絡を取り合っておられるということですけれども、そんな話があるかどうか分かりませんけれども、北朝鮮の経済あるいは、北朝鮮ウォンというのはもうほとんど対外的には価値はございませんけれども、そういう中国が北朝鮮の人民元の流通といいますか、その辺をどういうふうに考えているかというふうな話をされたことがあるのかないのか。  あるいは、アジアで通貨での協力をやっていこうというときに、今北朝鮮は入っておりませんですね。視野に入っていませんが、入ったときの通貨というのは、通貨構想というのはどういうふうになっていくかとか、その辺、話をされたことがあるかどうか分かりませんけれども、感触も含めて、中国の人民銀行総裁といいますか、その辺はどういうふうに考えているとお考えでしょうか。
  214. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 中国人民銀行の総裁とは大変親しくいつも意見交換しております。ただ、北朝鮮の問題についてまだ一度も残念ながら意見交換したことはございません。私の持っている感じでは、中国人民銀行総裁も北朝鮮の金融事情、通貨事情についてまだ十分情報を持っておられないんじゃないかなというふうに思います。今度お会いしましたら、ちょっとどれぐらい率直な話ができるかやってみてもいいんですけれども、多分余り情報を持っておられないような感じでございます。
  215. 大門実紀史

    大門実紀史君 北朝鮮の経済というのはそんなに大きいものではありませんから、何か全体の構想に決定的な影響を与えるということはないと思いますが、例えば韓国のウォンがどうなっていくのかとか、韓国のウォンが変わればまた影響がありますですよね。その周りに与える影響という意味でいろいろ検討もしていく必要があると思います。  いずれにせよ、最初に申し上げました、円が国際化といいますか、円ができるだけイニシアを取っていってもらいたいという点でいきますと、円がどうやったら国際化、流通が広くなるかというと、もちろんそれは日本経済の実力が反映というのはもう当たり前の話でございますけれども日銀としてそういう方向通貨戦略といいますか、さっきのスワップも間接的には影響あるけれども、円が流通促進には直接結び付かないところはございますですね。  そういう点でいきますと、中国の人民元をいろいろ普及、頑張っているところに比べると、日本はまだまだ実力は上ですけれども、ちょっとおっとりしているようなところを感じられるんですけれども、円がアジア通貨の中で中心を更にきちっと安定して持っていくためにはどういうふうな、まあ戦略というとなんですけれども方向が必要か、お考えがあればお聞かせいただければと思います。
  216. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 端的に申しまして、産業と申しますか、実物経済での相互依存関係がもう非常に濃密な関係になっていますが、更にこれが濃密になること。それと裏腹の関係で、やっぱりアジアの金融市場がもっと発達して、何といいますか、アジアでせっかく貯蓄を持っているのにアジアの中で直接は活用されないで、いったん外に出て直接投資で戻ってきて活用するとかそういう形でなくて、アジアの貯蓄はアジアの金融市場を通じて実物経済を発展させるのに直接役に立つというふうに金融市場が活性化する。日本金融機関が国内に閉じこもっていないで、もうこれからはやっぱりアジアのマーケットにどんどん出ていって、アジアの国内市場においても十分金融仲介機能を果たすと。やっぱり、日本銀行金融政策がよろしきを得て円の価値がいつも安定していること。そして、アジアの金融市場の発展と日本金融機関の展開の結果として、何といいますか、アジアの金融市場の中における円の利便性というものが高まると。更に言えば、日本はやっぱりイノベーションを中軸としてこれから世界経済のある種のリーダーシップを取っていくわけですので、イノベーションには必ず情報が含まれます。円には必ず新しい情報が含まれていると、情報価値ですね、これが加味されていけば円の利用範囲は更に広まっていくだろうと。少し観念的なお話で申し訳ないんですけれども、そういう方向性を私は持っております。
  217. 大門実紀史

    大門実紀史君 北朝鮮がいずれ民主化されると思います。経済的にも民主化されると思います、あのままではもたないと思いますが。そのときにやっぱり通貨の問題が、今ああいう統制経済的な中の北朝鮮ウォンですから、かなり大きなウエートを占めてくると思いますので、そういうときには日中でそういう点での通貨協力をきちっとやってちゃんと民主化させるというようなことも視野に入れながらアジアでの協力の枠組みを、フレームワークをずっと広げていってもらいたいというふうに思います。  ちょっと早いですが、これで質問を終わります。
  218. 家西悟

    委員長家西悟君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後三時六分散会