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2006-12-07 第165回国会 参議院 国土交通委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年十二月七日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員の異動  十二月七日     辞任         補欠選任         田名部匡省君     柳澤 光美君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大江 康弘君     理 事                 末松 信介君                 脇  雅史君                 藤本 祐司君                 山下八洲夫君                 谷合 正明君     委 員                 市川 一朗君                 太田 豊秋君                 小池 正勝君                 田村 公平君                 中島 啓雄君                 藤野 公孝君                 吉田 博美君                 加藤 敏幸君                 北澤 俊美君                 輿石  東君                 田名部匡省君                 羽田雄一郎君                 前田 武志君                 柳澤 光美君                 魚住裕一郎君                 小林美恵子君                 渕上 貞雄君                 後藤 博子君    国務大臣        国土交通大臣   冬柴 鐵三君    副大臣        国土交通大臣  渡辺 具能君    大臣政務官        国土交通大臣政        務官       藤野 公孝君    事務局側        常任委員会専門        員        伊原江太郎君    政府参考人        金融庁総務企画        局参事官     山崎 穰一君        国土交通省住宅        局長       榊  正剛君    参考人        慶應義塾大学教        授        村上 周三君        社団法人日本建        築士事務所協会        連合会会長    三栖 邦博君        社団法人日本建        築構造技術者協        会会長      大越 俊男君        社団法人建築設        備技術者協会会        長        牧村  功君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○建築士法等の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     ─────────────
  2. 大江康弘

    委員長大江康弘君) ただいまから国土交通委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  建築士法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会金融庁総務企画局参事官山崎穰一君及び国土交通省住宅局長榊正剛君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大江康弘

    委員長大江康弘君) 御異議がないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 大江康弘

    委員長大江康弘君) 建築士法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 小池正勝

    小池正勝君 おはようございます。自由民主党の小池正勝です。今日はこの改正案についての御質問をさせていただきます。  先日の大臣提案理由説明の中で、まず冒頭大臣から、「国民の間に建築物安全性に対する不安と建築界への不信を広げております。」というふうに述べておられまして、正に今回の姉歯事件、一年前に報道された姉歯事件を始め、一連事件で大きくこの建築というものに対しての国民の信用を失墜したと、信頼を失ったと、正にそのとおりだろうと思うんですが。  そこで、正にこの大臣の御認識のところについての御質問をまず冒頭にさせていただこうかと思うんですが、もちろんこの事件については、まず悪いのは設計した姉歯であり、建築した者であり、そして売った人間が悪い。これはもうそのとおりだろうと思うんですが、そこにまず一義的な責任があるというのは、もうそれはそのとおりだろうと思うんですが、しかし一般国民からすると、建築確認という行為を通じて専門家がチェックしてくれておった、確認してくれておったと、だから安全なんだ、安心なんだと思って買ったんだという方は多い。逆に言うと、もちろん悪いのは姉歯を始めとする人たちだけれども、建築確認をしたというところについてもやはり責任があるというのはもう事実なんだろうと思うんです。正にこの安全性に対する不安と建築界への不信というのは、この建築確認というものに対しても不信、不安、疑問というのがあるということはもう事実なんだろうと思うんですね。  そこで、まずこの建築確認ということについて御質問をさせていただこうかと思うんですが、建築確認特定行政庁でやっているものもあれば、あるいは民間確認検査機関でやっているものもあるわけですけれども、そのまず特定行政庁でやっているもの、市町村とかでやっているわけですが、これの中で、今回の一連事件を通じて、特定行政庁建築主事さんというものの数が非常に少ないんではないか、人員不足ではないのか。あるいは、これだけ建築というものがどんどんどんどん進歩してきて専門化してくる以上は、この建築主事さんの能力が追い付いてないんじゃないだろうかというふうな指摘が盛んにされたわけであります。  そこでまず、一年がたつわけですけれども、特定行政庁への人手不足といいますか、能力が不足しているんではないかというふうに言われた点について、どのような対応をされてこられたのか。それから、民間確認検査機関というものについても、これはどうしても市場競争、営利でありますからお客さんということがいるわけでございますので、そこで、この市場競争を通じて民間建築確認というのが形骸化しているんではないかというふうなことも指摘されたわけですけれども、それについて、一年たったわけですが、どのような対応をされてこられたんでしょうか。
  6. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 建築確認とか検査業務民間開放ということは、特定行政庁における建築確認等の負担を軽減させ、そして違反是正措置など本来行政機関でしかできない事務執行に集中をさせるということで、建築規制制度実効性を確保しようとしたものでございました。法施行後、指定確認検査機関は着実に増加いたしまして、今では全体の六割の建築確認民間で行われるようになりました。これにより、建築行政に関する地方公共団体執行体制が効率的なものとなりまして、違反建築物対策などを重点的に行うことができるようになってきたと認識をいたしております。  一方で、建築行政においては、今般の構造計算書偽装事件を踏まえ、建築確認検査業務を的確に実施するための審査体制あるいは監督体制の強化を図るとともに、これに加えて、耐震改修アスベスト対策等既存建築物安全対策省エネルギー対策バリアフリー対策など、新たな政策課題についても適切に対応していくことができるようになると思っております。  このため、国はもとより都道府県及び特定行政庁がそれぞれの地域の実情に応じて、かつ必要十分な執行体制を整備していくことが重要であり、今年二月には、地方公共団体に対してその旨を私の方から通知をしているところであります。さらに、それぞれの主体において具体的な整備プログラムを策定するとともに、建築主事建築監視員等職員数違反建築物の摘発、建築士等処分等実情実施状況について定期的に公表すべきであると考えております。  また、建築主事を始め建築行政職員は、建築技術高度化建築基準法令改正等に的確に対応できるよう継続的な研修等を通じて十分な審査能力を維持し、その向上を図っていくことが必要であると考えております。このため、各特定行政庁の取組に加え、国におきましても、日本建築行政会議など関係機関の協力の下、建築技術、特に建築構造に関する研修プログラムを毎年継続的に実施するなど、建築行政職員能力向上に努めてまいりたい、このように考えております。  人員不足能力欠如ということを御指摘いただきましたが、その点についても十分配慮していきたいと思っております。
  7. 小池正勝

    小池正勝君 今、人員不足能力不足対応してきたというお話をされたんですが、そこで具体的なことをお伺いしたいんですけれども、人員不足対応すると。しかし、今行革ですから、特定行政庁もそうですが、市町村、国もみんな行革を一生懸命やっているわけですから、人をむやみやたらと増やすことはそれはできない。これはそうだろうと思うんですね。ですから、不要不急のところを削って人を回すと、こういうことをやっていくんだろうと思うんですが、しかし、建築主事というのは建築専門家ですから、一般行政職ではありませんので、どこにでもいるという人じゃないんですね。ですから、こっちの課をやめさしてこっちに回すということは、それはできないんですよね。  そうなってくると、建築主事が不足しているという場合どうするか。やはり増やさなければしようがないという話になるわけですけれども、そうすると、例えば交付税算定のときにこれはきちっとカウントするようにしましたとか、そういうことがないと、具体的に市町村としてはこれ対応するというのもなかなか対応できないという話になると思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  8. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 実は、委員指摘のように、確認件数みたいなものが交付税算定基礎になっておりまして、先ほど大臣から申し上げましたように、確認検査だけではなくて、中間検査の数でございますとか違反建築物をパトロールするですとか、いろんな政策課題の方が県なり特定行政庁にございますので、そういった内容につきまして交付税算定基礎に入れていただけるようなお願いを総務省に対していたしたいというふうに思っておるところでございます。
  9. 小池正勝

    小池正勝君 今おっしゃった交付税算定基礎に入れていただけるということになれば、特定行政庁市町村対応しやすくなるわけですから、市町村もリストラやっていますので、是非そういった人的な問題、あるいは能力の問題もそうですが、是非対応をお願いしたいと思っております。  それと、もう一つ大きなお話質問させていただこうかと思うんですが、今回の事件を通じて言われましたのは、もちろん悪いのは姉歯であり木村でありヒューザーであるわけですけれども、そしてそこに責任を追及していくという話になるわけですが、しかし、例えばヒューザーであれば倒産してしまった、責任追及しようと思っても追及できないと、こういう話になってしまうわけですね。  そこで言われたのは、瑕疵担保保険を付けるべきではないかと、付保して売るべきではないかということが指摘されて、これは国土交通省の方でもそんな御議論をされたと聞いているんですが、一年たった現在、まだ何の動きもないんで、これについて是非前向きな対応ということを御検討いただかなければならないと思うんですが、いかがでしょうか。
  10. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 住宅品質確保促進等に関する法律によりまして、民法では引渡後一年という短い除斥期間が設けられておりますけれども、新築住宅売主等に十年の瑕疵担保責任が義務付けられることとなりました。  しかしながら、今般の構造計算書偽装問題を見ますと、業者の倒産など、売主側に十分な資力がなく瑕疵担保責任を履行できない場合、瑕疵の修補がなされず、住宅所有者が極めて不安定な状態に置かれることが明らかになりました。  そこで、これについて、社会資本整備審議会答申、これ八月の末でございますが、踏まえまして、現在、瑕疵担保責任を履行するため、新築住宅売主等、すなわち建築主もそうですが、保険供託というような仕組みを活用した資力確保を義務付け、消費者を保護する制度についての、関係機関との連携を図りながら検討を進めているところでありまして、次期通常国会に法案を提出したいというふうに思っております。  この部分だけが積み残しになっているというのは、保険会社保険の範囲とか、保険である以上、当然に故意又は重過失というものは保険の対象にならないという問題とか、売主側としては供託金といったってすごい金額になりますから、そういう問題をどう考えるかということで、関係団体とかあるいは専門的な知識を有する人々との議論、調整が時間が掛かりまして今回の改正には間に合いませんでしたけれども、次期国会には必ず提出をさせていただきたいと思っております。
  11. 小池正勝

    小池正勝君 大臣から、次の国会へ出すんだという力強いお話を賜りました。是非よろしくお願いしたいと思っております。  それでは、各論の方の御質問に入らしてもらおうかと思うんですが、まず今回の改正の中で幾つか御質問させていただきますが、まず一つ管理建築士というものについての御質問をさせていただこうかと思うんですが、まず建築事務所というのは別に建築士でなくてもだれでも管理建築士を雇えば開設できる、それはそれでよろしいんですね。
  12. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) そのとおりでございます。
  13. 小池正勝

    小池正勝君 そうなってくると、だれでも開設できる。しかし、管理建築士を雇えばだれでも開設できるんですから、管理建築士さんというのは極めて重要な職責を担う、こういう話になるんだろうと思います。  そこで、この管理建築士さんが事実上重要な職責を担うわけですが、この管理建築士さんがここはおかしいぞと思ってみても、開設者がいやそれはそれでなくてこれでいいんだと、こう言われたときに、管理建築士さんの意見尊重するという規定が、これはたしか審議会答申の中でもこの管理建築士意見具申に対して開設者尊重義務を付すべきだというふうなことが言われておったと思うんですが、今回の改正にはそれが欠落しているわけですが、これはなぜでしょうか。
  14. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 管理建築士意見に対する尊重義務ということでございますけれども、事務所開設者管理建築士意見に対して配慮、尊重をするというのは至極当然、もっともなことでございまして、そういうこともございまして今回の法改正では措置いたしておりません。  と申しますのは、省庁再編のときに、実は各審議会意見尊重義務というのが書いてございました。そのときに、審議会意見につきましては尊重するのは至極当然ではないかということで、実は尊重義務というのを各審議会意見につきまして全部削除をした経緯というのがございまして、内閣法律を取りまとめる際にそういう議論をいたしましたところ、わざわざ管理建築士技術的観点から開設者に述べた意見というようなことでございますので、規定するまでもなく当然尊重されるものであるはずだということで法改正では措置いたしておりませんが、今般の制度改正施行通知とか解説書などにおきまして、こうした内容を明確化いたしまして周知をする方向で検討したいというふうに考えております。  さらに、管理建築士意見が全く尊重されない結果として基準法違反になるといったようなことがあっちゃいけませんので、そういった場合には建築士法二十六条二項十号といったような形で監督処分を実施することになるのではないかというふうに思っております。  それから、言わば尊重規定がないということの裏腹ということではありませんが、こうした措置実効性を確保するために、今回の建築士法改正で導入いたしました建築士事務所年次報告、これは年次報告事務所開設者都道府県の方に出すということになるわけですけれども、これについて、管理建築士開設者に対して技術的観点から意見を述べた場合といったような場合については、その意見の概要を年次報告の中に記載するといったようなことを検討していきたいというふうに考えておるところでございます。
  15. 小池正勝

    小池正勝君 今のお話は、当たり前だから書かなかったんだと、こういうことですが、例えば薬局というのを考えてみますと、薬局もだれでも開設できる、しかし薬剤師を雇わなければいけない。薬事法を読んでみると、薬剤師意見尊重義務というのが法律に書いてあるんですね。なぜ薬局の方は書いてあるのにこっちはできないという話になるんでしょうか。
  16. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 薬局の場合は、薬を保管いたしますと、食品賞味期限じゃありませんが、薬効期限というのがあったりなんかするものですから、それについてきちっとしたようなアドバイスをせにゃいかぬと、薬剤師の方でですね。そういうこともあってそういうふうに規定されているというふうに理解をいたしております。  先ほどもちょっと触れましたが、建築士事務所年次報告というのは、必ず事務所開設者都道府県に対して報告をするものでございます。この年次報告の中に管理建築士がアドバイスした内容を必ず書かせるといったような方向が、多分これは省令改正になろうかと思いますが、そういったようなことができれば、どういった意見を述べたということが少なくとも都道府県の方に報告をされるということになりますので、そういったような形での尊重義務担保を考えたいというふうに思っているところでございます。
  17. 小池正勝

    小池正勝君 薬局は薬だからと、こうおっしゃるけれども、建築というのは正に命にかかわるというのは全く同じ話なんですよね。薬だけが命にかかわるわけではないんで、薬効はどうのこうのとおっしゃるけれども、建築なんていったらもっともっと大勢の人に影響するという話になるわけですから、もっともっと大切な話なんだろうと思うんです。  そこで、先ほどの話ではないが、建築事務所というのはだれでも開設できる、だからこそ管理建築士が大事だと、こういう話になっていくと思いますので、これは与党ですからこれ以上言うわけにもいきませんので、是非その意見尊重義務ということを指導していただきたいと思っております。  それともう一つ、この管理建築士がそれだけ大切なことだということであるならば、この管理建築士というのは常に勉強してもらわなければいけない、常に講習を受けるとか勉強してもらわなければいけない。正に今回、管理建築士講習の義務付けというのが行われるようになって、それは一歩前進だろうと思うわけですけれども、しかし、管理建築士は一回でも講習を受ければ、十年前に講習受けようが何年前に講習受けようが、一回さえ受ければずっと構わないと、こういう話になっている。  これだけ重要な管理建築士というのが、古い昔に受けたというだけでいいんでしょうか。建築というのは常に常に新しく進歩していく話なんだろうと思うんですが、そんなんでいいんでしょうか。
  18. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) このたび管理建築士の要件を強化いたしまして、三年以上の実務経験に加えまして所定講習を受講していただきたいと、こういうふうにいたしたところでございます。  実は、この管理建築士というのは、まあ会社でいうと、社長に次ぐといいますか、その設計部門責任者ということでございますから、まあ会社でいえば担当の部門トップと、専務とか常務とか、そういったような方に当たられるということではないかというふうに思います。  したがって、この管理建築士に求められる能力というのは、事務所管理能力を習得させるために実施するといったことでございまして、そういった意味で、その管理能力というのは、基本的にその建築技術進展とか制度改正によって求められる内容が変わるものではなくて、むしろ、定期的に更新すべき性質のものではなくて、言わば経営管理者的なセンスで、その建築部門トップとしてどういったような資質が求められるかというようなことの内容講習になるのではないかと思っております。  そういった観点からいえば、管理建築士講習は一回限りの受講というふうな形にいたしておりまして、むしろその建築技術進展とか制度改正といったものは、この管理建築士さんもやっぱり建築士でございますので、その建築士定期講習という形で三年ごとに新たな必要な知識を習得していただくと、こういったようなふるい分けといいますか、講習の分け方をいたしておるということでございます。
  19. 小池正勝

    小池正勝君 管理建築士というのは事務所開設者ではないんですから、経営者ではないんですよね。あくまでも技術トップなんですよ。ですから、経営的な判断があるから、研修は一回昔受けたんでそれで構わないんだと、これは説明としておかしいんではないんでしょうか。
  20. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) ちょっと言葉足らずだったかもしれませんが、管理建築士というのは、そういう意味建築に関する事務所管理能力という観点でやっておりますので、事務所管理能力を習得させるための講習ということでございますので、むしろ新たな建築技術とか基準法令改正といったようなものは定期的に三年ごと講習という形で、この方も、管理建築士さんも建築士でございますので、そちらの講習で新たな技術なり新たな制度改正といったようなものは習得していただくと、こういうことかなというふうに思っておるところでございます。
  21. 小池正勝

    小池正勝君 そうすると、この管理建築士って一体何だという話になるんですよね。経営者なのか技術屋さんなのか、要するに専門家なのか、どっちなんだというのが極めて不明確な位置付けになってしまう。あくまでも、今回、技術に対する不信、不安というのが出た以上は、やはり管理建築士さんが建築士事務所技術面はすべて責任があると、こういう位置付けなんだろうと思うんですね。経営とか採算とかというのは、それは管理建築士さんじゃなくて開設者が考えると。それはそれでいいんだと思いますが、管理建築士さんは、そういうことをもちろん考えなくていいとは言いませんけれども、しかし、正に技術的な面はこの人が言ったから心配ないということがトップとしてきちっと考えていかなければならない、責任があるという人なんだと思うので、ここは私は、過去に、もう何十年前でもいいから一回講習受けたらそれでいいやという話にはならないんだろうと思いますので、是非そこはお考えをいただきたいと思うんですが、もう一回御答弁お願いします。
  22. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 何度も同じような答弁になるかもしれませんが、そういった意味で申すれば、新たな建築技術とか建築基準法令改正につきましては建築士としての定期講習という形で義務付けられておりますし、この定期講習については、実は考査終了といいますか、講習が終わった後に一定のチェックをさせていただいて、ちゃんと講習内容を理解しているかどうかという考査を実施したいというふうに思っておりますので、そういった意味で言わせれば、新たな建築技術基準法令制度改正、それについてはきちっとこの方としては習得されると、その上で事務所管理能力があるかどうかということでございますので、一度ではございますけれども、所定講習をきちっと受けていただくということかなと思っておるところでございます。
  23. 小池正勝

    小池正勝君 ここは平行線ですから、これ以上言ってもしようがありませんが、いずれにしても、管理建築士というのをきっちり位置付けてきっちり指導していただくということを是非お願いしたいと思っております。  もうあと時間も五分になりましたので、次の質問に入りますが、設備ですね、これは衆議院の方でも議論があったようですが、今回は設備についても一級建築士という資格を持っている設備設計一級建築士ですか、という形のものができて、それでないと五千平米以上のものの設計はできないと、こういう話になったわけですね。それはそれで結構なんですけれども、しかし、設備やっている方というのは、今現在、一級建築士の資格を持っている人というのは非常に少ない。特に地方、私、徳島ですけれども、徳島なんかでも数えるほどしかいません。  そもそも、設備一級建築士を持っているという人はどれぐらいいて対応できるんでしょうか。
  24. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 設備設計一級建築士が関与することになると思われます三階建て以上でかつ床面積五千平米超の建築物でございますが、私どもの方では年間三千五百棟程度ではないかというふうに想定をいたしております。  現在、建築設備士の方は三万三千人という方がおられます。はっきりしたデータを持っているわけではないんですが、アンケート調査を実施いたしますと、建築設備士の約一割の方が一級建築士としての資格を有しているというデータがございます。したがって、設備設計一級建築士としての能力を現時点で持っておられるんではないかというふうに想定いたしますのが少なくとも三千人から四千人の間ではないかというふうに思っております。  こういったような数字を見ますと、全国規模で見ますと、設備設計一級建築士の方が不足するということはないのではないかというふうに考えておりますが、実はこの設備一級建築士の法適合チェックの義務付け、言わばこの法律の施行でございますけれども、約二年半ございます。二十一年春ごろになるのではないかと思っておりますが、そういったような、今後施行までの間に、地域的に見ても人材不足がないように関係団体とも連携を図りながら人材の育成に努めてまいりたいと思います。また、その人材が少ない地域に対して関係団体と協力して設備設計一級建築士のあっせんを行うといったようなことも今後検討課題ではないかというふうに考えているところでございます。
  25. 小池正勝

    小池正勝君 今の御説明は、三千五百棟程度だと、想定されるのがですね。それに対して、一級建築士の資格持っている設備やる人は三千人から四千人ぐらいいるだろうと、だからとんとんじゃないかと。トータルでは確かにそういう数字が出てくるんだろうと思うんですが、問題は、ほとんどの人が東京、大阪の都市にいて、徳島にはたしか二人か三人しかいません。そんなんでいけるかと、こういう話なんですね。特に、その偏在という問題なんです。そこへの対応というのをどうされるのか、もう一回御答弁お願いします。
  26. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 人材が少ない地域に関しましては、関係団体と協力しながらその設備設計一級建築士の御紹介をさせていただくといったようなことについて検討いたしたいというふうに思っておりますし、今後、施行までの間に約二年半ぐらいございますので、そういったような、地域的に見ても人材不足がないような形で育成を図っていきたいというふうに思っておるところでございます。
  27. 小池正勝

    小池正勝君 もうこれで時間が参りましたので、一言だけ大臣から御答弁をお願いしたいんですが、大変大きな不安、不信が広がっておるというのはもう事実でございまして、これをこの改正で払拭するということだと思いますので、是非国民へのPRということを、周知徹底ということは極めて大切だと思うんですね。是非大臣から、これで不安はもう心配ないよということを是非大臣の口からおっしゃっていただければ有り難いと思います。
  28. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 今回の不祥事によりまして国民の間に醸成された不安というものを完全に払拭するために今回の一連の改革をやっているわけでありまして、これを通じてピアチェック等建築確認につきましても、一度一級建築士が行った設計図書につきましてももう一度審査をし直す等の作業も行うことといたしましたので、今後はこのようなことは絶対に起こらないように頑張ってまいることを皆様方に申し上げたいと思います。  ありがとうございました。
  29. 小池正勝

    小池正勝君 終わります。
  30. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 おはようございます。民主党・新緑風会の加藤敏幸でございます。  今日も、建築法改正案について幾つか質問させていただきたいと思います。  まず初めに、この法改正の意義と、それから、先ほど小池委員の方からもるる御指摘がありました、国民が抱えている不安、この問題について、あるいは現実の問題に対してどういうふうに問題を解決していくのか、この展望等について冒頭大臣に御質問を申し上げたいと、このように思います。  姉歯一級建築士による耐震構造偽装事件が発覚してはや一年が経過をいたしました。昨年の今ごろ、いろいろと質問国会議論があったわけでありますけれども、事件の背景にあったものや問題点あるいは課題があぶり出されて、再発防止に向けた施策がいろいろ取られつつあると。さきの国会での建築基準法の改正に続きまして、今回の建築士法改正もまたその一環であると、このように思います。さらに、消費者保護の立場に立った、先ほど御質問がございましたけれども、賠償保険加入の問題、また建築業界の体質改善の問題など、解決を急ぐべき重要案件もまだまだ残されているということでございます。  特に、最大の課題は、私は施工段階におけるいわゆる手抜き工事や不良工事にどのように対応していくかと、こういう問題があると思いますし、さきの建築基準法の改正で三階建て以上の共同住宅には中間検査が義務付けられ、今回は工事監理業務の適正化措置が行われることになりますけれども、これで完全に手抜き工事や不良施工を予防できるという保証はないわけでございまして、依然として道半ばと私は感じておる次第であります。  そこで、建築物の安全確保と建物の安心、安全、これを確保するという究極の政策課題の実現に向けて、今回の建築士法改正に続き、今後の国土交通省としての施策なり法改正の展望、先ほど御答弁もございましたけれども、大まかなスケジュールとか方向性とか含めて、冬柴大臣大臣としての決意も込めて御答弁をいただきたいと思います。
  31. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 今回引き起こされた問題を契機といたしまして、種々の問題が指摘をされ、国民の間には大変な不安が醸成されました。  これに対処するために今般、建築士法、建設業法等を改正いたしまして、建築士の資質、能力向上というものを図る、それから建築士の育成、活用、しかも、これは特殊な構造計算とか設備、そういうものについて専門家としての育成や活用を行うということで、一級建築士の中からも選別をするというようなこともいたしました。  そしてまた、高さが二十メートル超の鉄筋コンクリート造りの建築物など一定規模以上の建築物の構造設計、設備設計へのこの人たちの関与を義務付ける。多くのマンションがたくさん建っているわけでございますが、そういうものはほとんどが二十メートル以上の高さを持っておる鉄筋コンクリート造りが多いわけでございますが、そういうものについて非常に高度な技術を持っている人たちの関与を義務付けるということで、国民の安心というものを担保しようといたしております。  そして、それらの人が、関与した人が、今まで元請設計が安易に下請設計を使うということで責任の所在が非常に不明確になっていたわけでございまして、こういうものを防止するために関与した設計士のすべての人たちの名前を明記し、記名、押印をさせるというようなことで責任を明確化するということも配慮いたしました。  あるいは建築士事務所の業務の適正化ということを通じまして、建築士事務所に所属する建築士に対する講習を義務付けるとか、あるいは工事監理や受託契約の締結前に管理建築士、先ほども問題になりましたけれども、そういう人たちに重要事項説明、施主さんに重要事項を説明させるという義務を明らかにするとともに、それを書面にしまして、そしてそれを交付するというような義務付けもいたしました。  また、マンションなど一定の建築物の設計については、一括委託、いわゆる設計を一括して丸投げしてしまうということももちろん禁止をいたしたわけでありますし、それから建築工事の適正化ということで、建設業法も一部改正をいたしまして、こういう建物についての一括して下請負を禁止するという措置も講じました。  それから、一定の民間工事におきましても、監理技術者資格証明書というようなものも作りまして、これに監理技術者の講習を受講を義務付けるとともに、その証の裏にきちっとそういうものが明記されると。そして、こういう人たちに、資質の高い技術者に工事現場への専任配置も徹底をするというようなことも配慮をいたしました。  それから、さきの国会で成立いたしました建築基準法の改正で、高さ二十メートル超の鉄筋コンクリート造りの建築物など高度な構造計算をする一定の高さの建築物について構造計算適合性判定、いわゆるピアチェックと通称していますけれども、もう一度一級建築士審査をさせるということも、二重にチェックをするということもいたしました。建築確認申請のときにはそういうものもすべて提出をいたしまして、そしてそれを担当したすべての建築士の名前も明らかにするということを義務付けました。  それから、今回の建築士法、建設業法改正によりまして建築物安全性の確保と建築士制度への国民の信頼の回復を図りたいと考えておりまして、建設工事への適正な施工を確保するための、いわゆる建築士事務所に対する立入検査とか、適正に事務が処理されているか、あるいは報告徴収を行うことができるというようにし、それから、それに対する担保として厳正な監督処分を行うことも規定をいたしました。  そのようなことから、現在の醸成された不安というものは一応は担保されたと思うんですが、先ほども出ましたように、瑕疵担保責任ですね、十年間に及ぶ売主の瑕疵担保責任が売主の倒産とか資力不足で十分な瑕疵修補とかあるいは建て替えということができなくなるということをおもんぱかりまして、これに対する保険制度とかあるいは供託制度というものを今鋭意検討しているところでございまして、次期国会には必ずこの法律提出をしたいということを皆様方にお約束することにより今回引き起こされた不安を、解消に全力を尽くしたいというふうに思います。  ちょっと長くなりましたけれども、よろしくお願いします。
  32. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 総合的な政策、私はやはり総合的な政策を展開する中で今回の建築士法改正というものの位置取りがあって、そこがどういうふうに展開するか、どういう議論ができていくかだと、このように思います。  そこで、この建築士の在り方を議論する場合に、今回の耐震構造偽装問題の本質はどこにあったのかということを少し考えてみる必要があるのではないかと。  私は、第一には、姉歯建築士を始めとする建築関係者の職業倫理の欠如と、こういうふうな問題があったと、ここは非常に大事なことではないかと。裁判の判決では今回の事件が組織的犯罪であったということは否定されていますけれども、しかし単なる姉歯建築士個人の問題では済まされない側面は、これは依然として残っていると考えております。  第二には、建築確認制度の問題、これはさきの通常国会でも議論されてきたテーマでありますけれども、基本的には確認機関の民間開放の問題、あるいは構造計算プログラムの問題、さらには特定行政庁審査体制の問題など、政府、自治体にはいろいろとした多くの課題がまだ残っていると考えております。さきの建築基準法の改正と今回の建築士法改正によって設計段階での偽装はある程度防止できると、私はそのようには展開できているとは思いますけれども、安全性を満たしていない建築物や欠陥住宅を完全になくするというところまで行けるかどうかについてはなお課題は残っているということだと思います。  そして、第三には、コスト削減を優先する業界の体質の問題、やっぱりここに本質的にあるのではないかと。あわせて、後ほど御質問申し上げますけれども、構造計算を行う建築士を始め、建築士の労働報酬というものがやっぱり安定化していない、こういうふうなことも、こういう実態も事件の根っこにはあったのではないかと、このように問題意識を持っておりますので、以上三つの基本的な問題意識を持ちながら、順次質問をさせていただきたいと、このように思います。  そこで、今回の法改正建築士制度の在り方を問う二つの側面があると思います。一つは、先ほど申し上げましたけれども、姉歯事件を教訓に建築士の倫理意識の向上とその職業倫理を担保する資格制度そのものの改革と、それからもう一つは、従来からの建築士団体の取組課題であった職能としての建築士の地位の向上と社会的評価の向上という、こういう視点、これがあると思います。両者は相互関連するものでありますけれども、今回の法改正においてはきちんとした目的意識を持って議論をしないと二つの目的とも中途半端に終わってしまってはいけないなと、こういうふうに思っておるわけであります。  そこで、今回の政府案の目玉と言われている施策は、まず建築士の資格を機能別に分けて構造設計一級や設備設計一級という上位資格的なものを新設して設計段階での安全性の精度をより上げると、こういうところを目指していると思います。一方で、建築士建築事務所の登録制度建築士への研修制度を導入することで建築士のレベルアップを図り、この二つの政策目的を同時に達成されようとしております。しかし、これらの施策が日常的な設計業務や工事監理において、本当に現場が変わっていき、安全性確保の実効性が上がっていくのか、なかなか現段階ではストレートに具体像が見えてこない。  また、一方で、公的な規制強化、例えば国家試験の資格をより厳密化したり登録制度を徹底すると。どうも公的機関による、行政による管理強化的な側面がやや前面に出てきている。そういう状況は致し方ない側面もありますけれども、そのことが本当に先ほど言った本質的に職業倫理の向上とそれから建築士という資格の社会的な地位の向上ということにつながっていくのか、こういうふうな私は問題を持っている。  そこで、職能団体としての地位の向上や報酬を含めた資格の社会的認知の向上を図る方法はほかにもいろいろ考えられるわけです。特に、団体主義の下に自律的規制や自主的事業をもって職業倫理を大いに高め、また建築士という職能を高めていくことが本来の姿。つまり、自治において、自分たちのことは自分たちでしっかりせんかいと、そういう思いようがないと、まあ行政からがりがりやられるから、そういうことでは本当の意味でのこの法律が目指すところには到達しないのではないかと、こういうふうに私は思っておるわけでございますけれども、この辺、やはり他の弁護士だとかいろんな資格団体がそれぞれやっぱり努力しながら自らの職能の倫理、それから地位の向上を図ってきたということも含めまして、大臣のお考えを是非お伺いしたいと思います。
  33. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 今、加藤委員から指摘されたような思想の下に今回の法案は組み立てられていると思います。具体的には、建築士の資質、能力向上とか、あるいは建築士事務所の業務の適正化を図るということを通じてこのような問題を解決していきたいということであります。  建築士の倫理意識と地位の向上を図るためには、建築士自らの資質を高めるということとともに、その属する団体自らが建築士の資質向上に資するという制度、あるいは建築士事務所の業務の適正化に取り組むことによってその倫理意識とかそういうものも高めるような、そのような制度を考えようということが今回の骨子であります。  建築士会あるいは建築士事務所協会というものに対して、所属する建築士建築士事務所開設者に対する研修の実施を義務付けたというのはその一環でございます。そしてまた、建築士事務所協会あるいは建築士事務所協会連合会というものを今回法律上認知きちっとしまして、そして、それらにユーザーからの苦情相談等の業務を担っていただくということでございます。こういうことを通じまして、それぞれの団体建築士の資質や能力向上とかあるいは建築士事務所の業務の適正化のために積極的に取り組んでいただくことによって、団体による自律的な監督体制の強化を図り、そしてまた、そのような団体に入らない建築士というものが社会から疎外されていくだろう、すなわち団体へ加入するという建築士がやっぱり増えてくるだろうということも期待しているわけでございまして、このような一連のものを通じて建築士個人の倫理の向上、そしてまた、建築事務所に対する一般社会の信頼というものを高めたいというふうに思っている次第でございます。
  34. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 最終的にはそういう協会とか団体への加入率が上がっていくということでしか見えないということも事実であって、精神論だけではなかなかその実態は分からないということも言われるとおりだと、このように思っております。  そこで、私、ここのところに非常にこだわるのは、私も物づくりの現場をやってきた人間として、今教育特をやっていますけれども、教育の問題がいろんな形で火が噴いている、嫌な事件が一杯起こっている、そういうふうなことを考えたときに、いろいろな解決策はあると思うんですけれども、しかし、私は、一人一人の国民はやっぱり職業、仕事を通じて社会参加をしていくというのが近代あるいは現代における一つの形だと思うんです。そのときに、職業倫理をどうとらえていくのか。金もうけだけなのか、稼ぎだけなのか。やっぱり世の中に対する務めということを果たしていくことによって社会は秩序がやっぱり維持されていくという根本原則があると思うんですよね。だから、そういうときに、職業倫理を守るというのは、守らされるという思想では駄目であって、やっぱり社会の一員として誇りを持って、私は、それぞれ職業人が自分たちは自分たちでしっかりやっていくという、これが大切だなという、もうこれはあっちこちで言っているものですから、そういう信念があって、そういう思いがあって、こういうことを言っているわけです。  そこで、各種公的機関のかかわりとの関係でいきますと、まず建築士試験の受験資格にかかわる教育機関への関与、これは間接的でありますけれども、文部科学省によって科目がどうだこうだと、こういうようなことで、建築士の問題はいろいろ規定がされてくると。二つ目に、建築士の国家試験を実施する財団法人建築技術教育普及センターというのがあり、この機関は建築士法第十五条に基づき国から指定を受けた機関である。三、そして、新たに公的管理として登場するのが建築士の登録をする中央指定登録機関並びに指定事務所登録機関。四番目として、講習を実施するために指定される講習機関があり、五番目として、現在の建築士会、建築士連合会、建築士事務所協会、建築士事務所協会連合などの職能団体への監督強化が図れるよと、こういうふうなことであります。これらの団体一般社団法人という公益法人であることから、現在でも行政から管理監督を受けていると。  この団体は端的に言って顔が見えないなということもありますし、これだけ大事件になって国民の皆さん方が不安顔しているのに、そういう職能団体、職業団体が大きく社会的に運動を起こすとか発言をしているというのがなかなか見えねえな。だから、国土交通省がいろいろ手取り足取り、ああしなさいこうしなさいと、駄目ならこうだということで、管理的な手法でやっていくと。ここにやや問題解決において、それは、これはもっと間に合わぬのじゃないかとか、もっと本気を出せよとか、そういうふうな国民の声が出てくるということであります。    〔委員長退席、理事山下八洲夫君着席〕  そこで、質問は、このように建築士に関する国の、自治体の関与がより拡大強化されていくことによって、あるいはこのことについて、この設計や工事管理の業界なり建築士という業種、職種ががんじがらめに管理されるという印象を与えるのではないだろうか。もちろん、このことで建築士への信頼が増すという側面もありますけれども、一方で、業務がより複雑化、煩雑化したり、あるいは講習義務が課せられることに日常業務に差し障りが出てきたり、様々なマイナス面も予想されると。  このような懸念が持たれないように、行政として現場の実態を配慮した適切な運営をしてもらいたいという要望を込めながら、ちょっと長く質問にしては言い過ぎたんですけれども、そのことも含めて私は国土交通省としての見解をお伺いをしたいと、こういうことです。
  35. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 今般の法律改正でございますけれども、先ほど大臣が申し上げましたように、一つは、姉歯さんに見られるように、建築士の資質能力に課題があったというようなことから、定期講習の義務付けなり受験資格につきまして学科主義から科目主義に改めるとか、そういったようなこともやっております。  それから、業としております建築士事務所については、管理建築士というのは全く実務経験なくてもなれたというようなことでございましたので、実務経験講習を義務付けまして、事務所もきちっとしていただくというと同時に、設計契約、管理契約を締結する際には、今までと違って、重要事項説明すると同時に、それを書面化するといったような形で消費者に明確になるようなことをやってきたわけでございます。  さらに、私どもとしては、職能団体としてきちっとした位置付けも必要だろうということもございまして、審議会の中では加入の義務付けというようなこともございましたけれども、まだ組織率もいまだ低いということもございまして、現段階では時期尚早だろうというようなこともございまして、それじゃ一体どうやって加入率を高めるのかというようなこともございましたので、ここでは建築士事務所につきましてきちっとした研修をやっていただくと同時に、紛争相談みたいなこともやっていただくと。場合によって講習もできるというような規定に改めまして、そういったことを通じて言わば自律的な、団体の自律的監督体制の強化を図っていただけるというふうに思っております。  建築士会、事務所協会とも倫理憲章を既に持っておりますので、そういった倫理憲章を、きちっとした形で研修を実施していただくといったようなことを通じてやっていきたいというふうに思っているところでございます。
  36. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 ただいまの答弁の中で、ちょっと講習の話も出てきましたので、建築家登録と研修の一体性という視点から少し質問をさせていただきたいと思います。  欧州などの事例を参考にすれば、基本的には建築家としての職業資質の認定と職業能力の維持、研さん、そして紛争処理への支援というものは、一つの公認された職業団体が一貫して対応していくと、もうこれがやっぱり一つ合理的な方策ではないかと私は考えております。  今回の制度改正においても、登録機関と講習機関とはある程度連携若しくは一体化をしていくのが望ましいのではないかと考えるわけでありますけれども、法改正では、団体による自律的な監督体制の確立として、建築士事務所協会等の法定化や苦情解決業務の実施、あるいは建築士会、建築士事務所協会等による研修の実施ということが掲げられておりますけれども、問題は、我が国においては建築士建築士事務所で組織される団体が多岐にわたっており、今後統一的な対応ができるかどうかということであると思うわけであります。これらを束ねる上位の団体をつくるとなれば、これまた屋上屋を重ねることにもなりますし、職能団体としての建築士の地位の向上能力向上、紛争の解決など職能を守る立場では、当事者団体が、国土交通省じゃなくて当事者団体が一貫してこの機能を担うことが望ましいと思いますけれども、今後の登録機関、講習機関などの認定における方針をお伺いしたいと。  ただ、まあ役所がとやかく言うことでもある意味でないわけであって、当該の皆さん方自身の自覚にまつという側面もあって、質問された方もやや困るということがあるかも分かりませんけれども、ただ、どう考えるのかということについては、国土交通省としては、やっぱりたいまつを掲げるという言葉ありますけれども、私は、意味があるのではないかということで、答弁をお願いしたいと思います。
  37. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 指定登録機関の指定ということでございますと、一級建築士ということになりますと全国に一つということでございますし、都道府県指定登録機関については各都道府県ごと一つに限りして行うと、こうなっておりますので、事実上、やはり各都道府県に協会がないと駄目だということに相なります。  そういう組織というのは、実は一つしか今現存しておりませんので、そういったようなことを念頭に置くということでございますけれども、法律の建前が団体からの申請に基づいてということになっておるものですから、そういったことかなというふうに思っております。  ただ、講習につきましては、各業界団体講習をやってみたいと、こういうお話もございまして、これも登録基準に合致すれば、複数の団体ということで業界団体に限らず、例えば専門学校といったようなところも出てくれば、講習は受けられるということではないかというふうになっております。したがって、資格登録と講習を特定の一つ団体に行わせるという仕組みにはなっていないんですが、申請があれば、両方の基準が合致する場合には同一の団体で行うことも可能というような実は制度になっております。  そういったことでございますけれども、私どもとすれば、委員指摘のような点もなかなか利点があるなというふうに思っておりますので、そういったような方向団体の方が前向きに対応してくれると、これはいいことではないかというふうに思っているところでございます。
  38. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 そこで、国の指定機関が増えたり、一般社団法人の役割、機能が強化されているということでございますけれども、端的に冬柴大臣衆議院での委員会審議で天下りは一切認めないと、こう明確に非常に分かりやすく答弁されておりますけれども、本当にこれを将来にわたってしっかりと担保できるのかと、そういうことでございますので。
  39. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 今回の改正によりまして、指定登録機関とか、あるいは登録講習機関、まあ登録講習機関ということになりますと、現在建築士さんが百万人いらっしゃるわけですから、相当な数がいるわけで、これを全部指定とかあるいは公でやりますと大変なことになります。そういうことから、要件を決めて、これを充足する人からの申請があれば、先ほど局長も答弁しましたように、いろいろな、例えば予備校のようなところも手を挙げてこられるだろうと思います。  そういうところがたくさんできるということを前提に、そこへまた国土交通省の役人が天下りするんじゃないかという疑問がわくのは当然でございます。しかしながら、私は、一連の今回の流れ、改革というものを踏まえまして、一切新たには天下りはさせないということを明言したわけでございまして、これは私の代だけではなしに、ずっと今後もこのことだけはきちっと、国会で答弁しているわけですから、国土交通省として引き継いでいきたい、引き継いでいくべきであると私は思っておることを披瀝申し上げたいと思います。
  40. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 目と目が合っての答弁ですから、しっかりとお願いをしたいというふうに思います。  さて、改正建築基準法と新しい構造設計建築士との関係について少しずつ、ちょっと具体的な質問に入っていきたいと思います。  さきの建築基準法の改正によって、一定の建物、鉄筋コンクリート造りの場合は二十メートル超について、都道府県ごとに設置される構造設計適合性判定機関による判定が義務化されました。この判定については、一、建築構造分野を担当する大学教授、助教授、二、この分野で高度な専門知識を持つ研究者、三、国土交通大臣がこれらの者と同等以上の知識、経験を持つと認める者となっております。この三番目の要件、ここですけれども、これとして、構造設計、工事監理の経験を持つ建築構造士や構造専攻建築士民間資格でございますけれども、などが想定されているとは聞き及んでおります。  まず、判定員については、現在こういう考え方でいくのかどうか、確認を含めて御説明いただきたいと思います。
  41. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 判定員ですが、要件自体は国土交通省令で定めたいというふうに思っております。  具体的には、委員指摘のように、大学、短大、高専におきまして建築構造を担当する教授若しくは助教授、それから試験研究機関において建築構造分野の試験研究の業務に従事して高度の専門的知識を有する者、さらに③といたしまして、建築構造設計又は工事監理に係る業務に関して相当の実務経験を有し、専門的な知識を有する構造設計者というふうに書いておりまして、私どもの想定では、日本建築構造技術者協会の建築構造士、日本建築士会連合会の構造専攻建築士といったような方の中から、原則として七年以上の実務経験がある方ということと、ピアチェックということでございますので、二十メートルを超えるような鉄筋コンクリート造りの建築物について複数年の実務経験がある方というようなことを想定しておるところでございます。
  42. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 そういたしますと、今回の建築士法改正によって構造設計一級建築士による構造計算、あるいは構造設計一級建築士以外の建築士によって行われた構造計算などに対して、構造関係規定への適合性の確認実施が新たに付け加えられますけれども、確認機関でのチェックも含めると、基本的に、機能的にも人材的にもダブるのではないかと、この点についてどのように調整されるのかお伺いをしたいと。    〔理事山下八洲夫君退席、委員長着席〕  また、このように機能的にダブるということは、構造設計一級建築士設備設計一級建築士は試験による資格ではなくて実務経験講習によって付与される資格であるので、更なるチェックが必要ということになるのですかなと。どういうことなのかと。当然、安全確保において二重、三重の対策を講じることは、これはダブルチェックということで理解できますけれども、余りにも設計、構造計算に比重を置き過ぎるのではなかろうか。中間検査を徹底したり、個別の建材の安全性をより厳密にチェックするとか、施工段階における安全対策に重点を置くべきで、こういうことも必要ではないのかと。余りにも建築士に対する性悪説に立った施策が前面に出過ぎているのではないかと、こういう受け止め方もやっぱりあるのではないか。  そういうのを含めて御見解をお伺いをしたいというふうに思います。
  43. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) さきの通常国会で、指定構造計算適合性判定機関という制度、ピアチェックという形で入れさせていただきました。これは、言わば指定確認検査機関なり特定行政庁といったところが偽装を見逃したということもございますので、そういった見逃さない審査体制という意味で、ある意味で行政側の審査体制を確立するということでございます。  今回の改正は、むしろ、設計段階といいますか、建築をする以上は建築計画をまず作らないかぬと。そうすると、その建築計画を作る人がきちっとした計画を持っていないと、幾ら厳密な審査をしてもそれはいかぬじゃないかという話がありまして、計画段階でもきっちりしようといった意味制度改正をいたしておりますのが今回の建築士法改正ということでございまして、言わば申請者と受け手側というような形で、双方ともにチェックさせていただくと、こういうことになっておるところでございます。  それから、御指摘の施工段階の安全対策といったようなことでございますけれども、さきの建築基準法の改正におきまして、三階建て以上の共同住宅については一律に中間検査を義務付けるということにいたしております。これ以外の建築物については特定行政庁が地域の実情に応じて対象となる建築物を指定もできるということになっておりますので、こういったような形で特定行政庁で地域の実情に応じた中間検査をきちっと実施していただくというようなことをすれば、中間検査段階での施工段階の不良というのは防げるということと、完成検査につきましても、今どんどん率が上がってきておりますけれども、こういうものをどんどんやっていきたいと、こういうふうに思っておるところでございます。
  44. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 予定された時間が近づいてきました。やっぱり総合的に施策を展開していくということが当然大切であって、その中に基準法の改正建築士法改正、いろいろなものが組み合わされていくんだと、このように思うわけであります。  ただ、あつものに懲りてなますを吹くということわざがございますけれども、いろいろやることはそれはそれでいいことなんですけれども、しかし、やり過ぎるとある部分やっぱり無駄になるところもこれは社会的にありますし、そのことが社会全体のコストを上げていくという要素もこれはまたあるということも事実でありまして、なかなか最適化というんですか、的確な対応というのは、まあ質問するのは簡単なんですけれども、それを実現することにはなかなか難しいということはあるわけであります。  ただ、そこのところは、まあ一言申し上げれば、行政としての、おれたちは全部やったんだと、悪い言葉で言えばアリバイづくりの法改正ではなくて、本当に国民にとって現実の安全、安心確保という、この目的を実現するための方法論なんですよということを是非とも肝に銘じていただくということを要請申し上げまして、本日の質問はこの程度にということで、質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  45. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合正明です。  耐震強度偽装問題の発覚から一年がたちました。さきの通常国会で、第一弾の建築基準法等の改正が行われました。第二弾として、今この国会建築士法等改正が審議されております。また、明年の通常国会におきましては瑕疵担保責任の問題を議論する第三弾と続くわけでございます。我が党としましても、この問題が起きて真っ先に動いたわけでございます。特に、耐震強度偽装問題の再発防止策を申し入れるために、三月にはその対策本部として安心、安全の確保をしっかりと要求をさせていただきました。その多くが法律となり、また今この法案となっていることに評価したいと思うわけでございます。  この一連の改革というのはそもそもだれのための改革かというと、やはりそれはユーザーであり国民のための改革であります。そうあるべきでございます。国民の間に建築物の耐震性に対する不安ですとか建築界に対する不信というものが広がったわけでございます。これを取り除く、これがまず第一義でございます。  この一年たちまして、事件の原因究明についてはある程度進んだのではないかというような、ユーザーのアンケート調査の中にもそういう意見は見られます。しかしながら、国や自治体の進める対策というのは進んでいないんではないかと。進んでいるというふうに回答する割合ですが、一〇%もいないような状況でございます。しかしながら、国や自治体が進める対策については非常に関心があるというのがいわゆる国民、ユーザーの率直な心情ではないかと思うわけであります。  そこで、まず冒頭大臣の方に、前回、通常国会ありました。また今回、今、建築士法改正を行おうとしていますが、この国民の信頼回復にどれだけ寄与し得るものなのか、その辺りの見解、というよりは決意をまずお伺いしたいと思います。
  46. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) お説のように、今回の事件を契機といたしまして、能力が欠如した建築士が存在するということが一つ、それから元請設計、これが下請建築士事務所に丸投げをしてみたり重要な部分がいろんな事務所に分かれて発注されたりというようなことを通じて非常に責任が不明確なままに安易な外注がされていたという事実、そしてそういうことが契機となって建築士の職業倫理の低下をそういうことが助長したと。関与した建築士というものはだれだったのかが表に見えないというような、そういうところがあったということの反省に立ちまして、第一弾、第二弾、第三弾とおっしゃいましたけれども、今回建築士、第二弾として建築士法改正いたしまして、建築士の資質、能力向上させようという、研修を義務付ける等、そういう改正をいたしました。  それから、次は高度の専門能力を有する建築士の育成、活用をやろうということで、特に姉歯事務所は大きな建物の構造計算のみを下請したわけでございます。したがいまして、構造計算というのはだれでも建築士だったらできることになっていますけれども、大変高度な事務だと。そして、しかも建物のボリュームが最近非常に大きくなっているわけでございまして、私もこの計算書を見せてもらいましたけれども、コンピューターで打ち出されたこんな厚さのが構造計算書でございまして、非常に専門的だということから、こういう一級建築士とはいえ、その中からこの構造計算についてきちっとした専門能力を有する人というものをより分けて選別をする。それから、設備設計につきましても非常に大きな床面積の中で消火施設とかあるいは昇降機、エレベーターとか冷暖房、空調とか非常に多くの設備があるわけで、こういうものについてもボリュームが大きくなっているだけに、専門知識を有する人をきちっと認定して、それをまた選別をしようというようなこともいたしました。そして、その結果、二十メートルを超えるような鉄筋コンクリート、ほとんどのマンションがそういうことになりつつありますが、そういうものについては今言ったように選別された専門家の関与、専門化された設計士による関与ということを義務付けるということで、そしてそれら関与した人たちすべての名前が外側に分かるようにいろんな面で、そしてまたそれが外部からも閲覧できるように取り計らうということもいたしました。  それからもう一つは、先ほどの質問でも明らかにされましたように、建築士個人の資質の向上とか能力向上をしましても、切磋琢磨するためにも、一つ団体というものの中でそういうものが恒常的に切磋琢磨して向上していくということが必要であろうということで、建築士事務所の業務というものを明らかにして、そしてその中で研修を義務付ける。あるいは、管理建築士という人を置いて、ユーザーと契約をする際にはその人たちに重要事項説明、これは不動産取引のときの取引主任がその不動産についての重要な事項をきちっと告知しなきゃならないということがありますが、それと類似のような制度をここへ導入しまして、重要事項をきちっと説明させる、そしてその説明した事項を書面にして、そしてそこには関与した建築士の名前もきちっと明記させてそれを交付するというようなことも明らかにしたわけであります。このようなことを通じまして、分譲マンションのように施主とユーザー、使う人が別々の建物については特に重い配慮をして、設計についても、あるいは建築施工についても下請を要はさすということを禁止するというようなことを通じて責任を明らかにするということにしたわけでございます。  このようにして失われた信頼というものを回復すべく一生懸命取り組みたいと思いますし、また残された問題として、売主の瑕疵担保責任の実効を確実なものとするために、来国会には売主等、いわゆる売主あるいは建設した人、その人たちの十年間にわたる瑕疵担保責任の履行を確実なものにするために保険制度の導入とか、あるいはその人たちが故意とか重過失でそのようなことを行った場合でも担保されるように供託制度とか、そういうものも導入しようということで現在努力中なのでございます。  こういうことの一連の作業を通じて、失われた信頼を必ず取り戻したいし、二度と再びこういうことが起こらないようにするために頑張ってまいりたいというのが決意でございます。
  47. 谷合正明

    ○谷合正明君 それで、第一弾の改革の中の話させていただきたいんですけれども、ピアチェックが改革の目玉だったと思います。  ここで確認をさせていただきたいんですけれども、先日も朝日新聞の報道でこの第三者審査を明年六月に施行されるわけでありますけれども、なかなか三十道府県で専門家が不足しているというような報道がございました。特に地域の偏在の問題等もあると。実際に私も一級建築士の方からいろんな話を聞きますと、やはり地方に行けば行くほど大変なんだというような、大変というのはその専門家が不足しているというようなお話を聞いております。  後ほどの構造設備専門家の話とちょっとリンクしますので、まずここで明年のその六月までにちゃんと実行できるのか、そういったところを確認させていただきたいと思います。
  48. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 指定構造計算適合性判定機関でございますけれども、構造計算の審査を専門的に行う公正中立な第三者機関ということでございまして、先ほどの質問にもございましたが、大学教授ですとか研究者、優れた構造設計の実務者といった方々を構造計算適合性判定員という形で選任をいたしまして、構造計算の過程の詳細な審査とか再計算を実施する機関ということでございます。  現在、来年の六月の施行に向けまして、各都道府県で準備作業を進めていただいているところでございます。地方の住宅建築センターといったようなところが指定構造計算適合性判定機関という形で指定されるというふうに考えておるところでございます。私ども、今年のこの九月に実施した調査によりますと、約半数の都道府県で管内の機関を立ち上げる予定というふうに伺っております。  じゃ、あと半数はどうするかということでございますけれども、構造計算適合性判定員という方が、まあ構造の専門家でございますけれども、大都市圏に集中をして地方都市で不足しているという指摘もございます。したがいまして、私どもでは、日本建築行政会議ですとか関係団体等と連携を図りながら、円滑な施行に向けまして、都市部におられる構造専門家を地方の判定機関に紹介、あっせんするといったような必要な支援を行いたいというふうに考えております。  さらに、指定構造計算適合性判定機関として業務を行う機関がないというような県もひょっとしたらあるかもしれないということでございますので、そういった場合には、全国的な組織といたしまして日本建築センターなり日本建築総合研究所というのがございますので、そういったところで広域的な業務を実施できるような必要な支援や仕組みということも検討してまいりたいというふうに思っているところでございます。
  49. 谷合正明

    ○谷合正明君 それで、建築確認検査制度、それを再構築するというのが建築基準法、またこの建築士法改正の主眼でも、一つでございます。  そこで、さきの通常国会でも盛んに議論になりました建築主事とその指定機関の関係でございます。  改めて確認をさせていただきますが、現在、建築主事と指定機関の関係、まあ公と民間関係ですが、同等な立場で基本的にこの建築確認検査業務というものは実施をしております。しかしながら、民間開放して以来、建築主事特定行政庁におけます建築主事の役割というのが、むしろ今後は、例えば指定機関の指導監督あるいは違反建築物の摘発等に特化することの方が効果的ではないかと、また効率的ではないかとか、そういうような意見もございます。ただし、さきの通常国会におきましては、耐震強度偽装事件という問題の性質上、なかなかそういう抜本的な改革には至らなかったというような北側大臣の答弁もございましたが、そもそも将来的に、この建築確認検査制度を再構築するに当たって、この建築主事と指定機関の関係というのはどのようなものが望ましいと考えているのか、改めて国土交通省の見解を伺いさせていただきます。
  50. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 実は、指定確認検査機関制度ということでございますけれども、阪神・淡路大震災のときの教訓を基にいたしまして、平成十年の基準法改正いたしまして建築確認検査を民間開放したという背景には、建築物が大規模化、高度化する中で、確認検査といったような実施体制が行政だけでは十分に確保できないという状況を踏まえまして、官民の役割分担の見直しを行って的確で効率的な執行体制を創出することが求められたということでございます。このために、建築主事が行っておりました確認検査事務につきまして、新たに必要な審査能力を有する公正中立な民間機関も行うことができるというふうにしたところでございます。  法施行後、この検査機関が着実に増加いたしまして、現在では百二十五機関が指定されておりまして、確認検査業務の六割を実施するに至っております。結果として、建物の完成後の完了検査率も、平成十年の三八%から平成十七年には七六%という形で倍増をしております。これは、公共団体執行体制の効率が促進をされまして、御指摘のように、行政だけではできないような違反対策、指導監督業務に重点を置くことができるようになった結果ではないかというふうに思っておりまして、そういった意味で、違反建築物件数も一万二千件から約七千七百件ぐらいまで減ってきたというふうに、減少しているということで、一定の効果と、まあ民ができることは民間でという方向での制度改正には効果があったのではないかというふうに認識しております。  ただ、確認検査を全部民間で行って、行政は違反是正とか指導監督業務に特化するんだという制度ということであると、まあ公正中立な民間機関ということではございますけれども、民間の常識的な振る舞いとして、業務区域なり業務区分といったようなものを、採算の取れるようなところで業務を実施するとか、こういった採算の取れるような部門でしか実施しないとか、そういった可能性が営利目的ということであれば高うございます。そういった意味で、住民サービスの観点といったような意味でいえば、日本全国をカバーするということにはちょっと不適切ではないかというふうに思っております。  したがいまして、建築主事指定確認検査機関、いずれもが確認検査を行う制度というふうにいたしまして、どちらを選択するかというのは建築主の判断にゆだねられているということではないかというふうに思っております。  今回の指定確認検査機関のみならず、一部の特定行政庁も実は構造計算書の偽装を見抜くことができなかったというのも事実でございまして、この点非常に遺憾に思いまして、今回の建築確認検査制度の抜本的な見直しを図ることとしたところでございます。  そういった意味でいけば、本年の六月の建築基準法改正の中では、建築確認検査を厳格化するために国による確認検査の指針を作って、その指針に従って確認検査を厳格化していただく、それから指定構造計算適合性判定機関におきます構造計算の判定の義務付け、それから特定行政庁の立入り権限を、指定確認検査機関に対する立入り権限を付与いたしまして指導監督の強化をやるといったようなことを行いまして再発防止に向け万全を期したいと、こういうことでございます。
  51. 谷合正明

    ○谷合正明君 既にもう時間がなくなってきてしまったんですけれども、行政、今行政の話させていただきましたが、行政、また施工、設計と、この三者の役割の責任を明確化していくことが大事であると、この質問大臣にしようと思っていたんですけれども、ちょっと時間がないですのでまた来週にさせていただきますが、先ほどピアチェックの話も出ました。  各論に入りますけれども、構造設計一級建築士設備設計一級建築士が新設されます。先ほど設備設計一級建築士の数の問題が出ました。今度の、私、聞きたいのは、構造設計一級建築士の、それぞれ何人必要なのか、確保できるのか、そしてピアチェックの先ほどの不足の問題がありましたが、それとも関連していくのか等、今、国土交通省のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  52. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) まず、構造設計一級建築士でございますけれども、二十メートル超の建物ということになりますと、現在で大体六万件から七万件程度というふうに想定をいたしております。現在、構造設計を行っておられる建築士の方が約一万人程度ではないかというふうに推計をいたしておりますが、そのうち、やはり一定規模以上の建築物の構造設計ということになりますと、大体三千人から四千人の間の方ではないかというふうに推計をいたしておりまして、これらの方が自ら設計若しくは設計のチェックを行っているケースがほとんどではないかというふうに思っております。したがって、そういった方が三千人から四千人おられますので、こうした方の大半が法施行後に構造設計一級建築士というふうになるのではないかというふうに思っております。  それと、設備設計一級建築士でございますけれども、三階建て以上、かつ床面積五千平米超で約年間三千五百棟程度ということでございまして、これも私どもの推計によりますが、建築設備士の方でなおかつ一級建築士を持っておられる方というのがやっぱり三千人程度ではないかというふうに思っております。そういった意味では、数字的には双方とも十分対応可能ではないかというふうに思っております。  ただ、今申し上げましたのは全国的な規模で見たトータルの数ということでございますので、先ほども御指摘ございましたけれども、地域的に見て人材不足があるかないかというような点もございます。それで、この制度自体が二十一年春ごろということで、あと二年半近くございますので、そういった地域的に見ても人材不足のないような形で人材育成を努めていきたいというふうに思っているところでございます。
  53. 谷合正明

    ○谷合正明君 終わります。
  54. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。  今日私は、建築士法そのものについての質問につきましては次回にさせていただくこととしまして、耐震偽装被害者の支援について質問させていただきたいと思います。  耐震偽装事件発覚からもう既に一年余りがたちました。ここで改めてお聞きしたいんですけれども、退去を余儀なくされました分譲マンションでは建て替えの推進決議や決議がどれほどなされているか、そして同時に、十一月十六日の各紙を見ますと、国交省は二〇〇九年三月には建て替え完了の見通しがあるというふうに報道もされています。その根拠をお示しいただけるでしょうか。
  55. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) まず、保有水平耐力比〇・五未満の危険な分譲マンションのうち、ヒューザー建築主のものが十一棟ございます。そのうち建て替え推進決議を行ったものが十棟でございまして、建て替え決議等を行いましたものは五棟という形になっております。それから、一棟は耐震改修を行うという方向でございますので、そういった形になっておりまして、また、そのうちマンション建替え円滑法に基づきます建て替え事業認可というのが現在二棟となっておるところでございます。  それから、平成二十一年三月までに完了する見通しということでございますけれども、これは、地方公共団体から現在の進捗状況を踏まえましてヒアリングをいたしまして、大体いつごろまでにできそうかねということでお聞きをして、それでまあ二十一年三月ぐらいまでには何とかなるのではないかということで申し上げたところでございます。
  56. 小林美恵子

    小林美恵子君 では、今御説明いただきましたけれども、そういうふうにして決議は上がってきたり、また国交省として見通しがあるというふうにお述べになっているわけでございますけれども、実際はどうかということで私は大臣にお伺いをしていきたいと思います。  十月二十九日に建て替え決議をしたグランドステージ東向島の方は、決議が上がったが自分たちの生活を取り戻しつつあるという気持ちにはほど遠い、生活再建への展望は到底ない、追加負担のことや課題は多いと。そして、その東向島の方の中で建て替えに賛成した世帯には、近所まで来ると動悸が激しくなるほど精神的負担が大きく戻り入居での生活はもう難しいと、再建後に物件を売却して再入居を断念すると、そういう方も出ておられるという話なんですね。さらに、十一月二十六日に建て替え決議を上げたグランドステージ稲城の方ですね、子供の教育費とか車のローン、年金暮らしなど生活が苦しいので追加負担をできなくなるおそれがあると、そういう思いがあるんですけれども、しかし、どちらの方々も、いつまでも御近所に迷惑を掛けられないと、だから反対をすることはできないだろうということで決議をされたというわけです。  それで、私、大臣にお伺いしたいんですけれども、建て替えの推進や決議は数としては上がってきていますけれども、しかし、その奥底には被害住民の皆さんの重い負担があると、そして将来への不安はまだまだあると、そういうことは大臣としても御認識されているかどうか。そして同時に、御認識されておられるのでありましたら、被害住民の気持ちに即して最後まで支援をしていただくということをお約束していただけるでしょうか。
  57. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 耐震偽装というようなとんでもない事件に巻き込まれた被害者の方は、本当に生涯の買物だと思うんですね、そういう自分の生活の本拠を追われ、そして、今言われたように不安におののく生活を余儀なくされているという方、そういう方々の心情に思いを致すときに、本当に私は人間的にお気の毒だというお気持ちとともに、これは何とかしなきゃならないという思いに駆られます。  私ども、兵庫県の人間でございますので、阪神・淡路大震災で突然何もかも失う、そしてまた肉親の命まで奪われた人もあるわけでございます。そういう人たちに対して我々が行政として行ったこと、それと同等程度の対応をしようということで、昨年の十二月六日には地域住宅交付金という制度を活用いたしまして、あとう限りの支援策は今までも講じてきたと思うわけであります。これが十分かどうかは別としましても、我々はそういう災害に遭った人たちと同等の扱いはこの人たちにもすべきであろうということでできるだけのことをしてきたつもりでありますし、今後も、この方々が新しい住居に入って、そして平穏な生活を営まれるまで最後まで頑張りたい、このように思っております。
  58. 小林美恵子

    小林美恵子君 では、ヒューザーの破産手続に対応した国の補助金の削減についてお聞きをしたいと思います。  住民にとりましては、配当金から約四百万円ぐらい補助金の削減という形で自治体に渡すことになると、住民の足を引っ張るようなやり方はやめてほしいんだという声が上がっております。偽装事件で何の罪もない被害住民の皆さんは、それこそ建て替えるためにどれだけなら自己負担できるだろうかと、ヒューザーからの配当金も追加負担に充てようと資金繰りもしながら相談を私は積み重ねてこられていると思うんですね。苦労して再建のために頑張っている最中に水を掛けるようなことをするのかというふうにおっしゃる住民の方もいるわけですけれども、私は、こうした皆さんの御苦労をやっぱり酌み取っていただいて、この補助金問題といいますか、これも是非とも対応していただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。
  59. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) これはちょっと誤解があると思います。  国が全くまず支援をしなかったときのことを考えていただきましょう。そうしますと、破産財団から、例えば四千万のマンション買った人の場合二割の配当があるとしますと、八百万の配当が被害者である住民の方に支払われます。しかしながら、それは待っていられないということで、行政の方が仮に二千万ですね、二千万、いろんな名目でこの人たちに、税金からですよ、その人たちにお渡しをしたということになりますと、ヒューザー破産財団に対する債権者は、その建物の所有者である被害者の方二千万とそれから行政が支払った二千万、この二人の債権者がそれぞれ二千万ずつの債権で配当にあずかり、そして二〇%であれば四百万円ずつの配当を受けるという形になるのが普通であります。  しかしながら、これを両方とも債権届をしますと、破産財団はその査定に非常に困るわけです、私も破産管財何回もやりましたけれども。そこで、三者で話合いをして、行政の場合は破産債権の届出を控えてほしい、そして債権者を一人に絞ってほしいという形で、被害者の建物所有者に絞ることによりその関係を単純にして早く配当をするという手続が取られたわけでございます。  そうすれば、その人は八百万を一挙に受け取られるわけでございますけれども、行政の方は四百万が入ってこなくなるわけですね。それをもうあきらめてくださいというのが今、小林さんが言われた言葉の内容だと思うんですけれども、我々としては、これ税金から支払っているお金ですから、その配当請求権というものを完全に放棄してしまうということは、これはできないわけであります。したがいまして、これは最後に、一番最後に払ってもらったらいいという形で、調整という形を取ろうということを取っているわけでございまして、これは決して無理な話じゃないと私は思うわけでございます。  そのほかの問題はまた違うんですよ。建て替えについての支援とか、これはもうもちろんやるわけですけれども、破産財団という形に対する配当という形では、やはり調整ということが、これは他の災害のときの補償というものと比べても、私は決して不公平な扱いをしているとか、あるいは情に欠けるような扱いをするということはないと私は思いますので、本当に御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  60. 小林美恵子

    小林美恵子君 私は、この偽装を見逃したといういわゆる自治体としての責任もあるというふうに思うわけです。  今日、そのことについて余り質問するつもりはなかったんですけれども、大臣のおっしゃる仕組み上の話はよく分かるわけでございますけれども、それにしましても、何といいますか、即刻削減という形は取らないようにと、そのことを私はお願いをしたわけでございます。
  61. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 十分配慮します。
  62. 小林美恵子

    小林美恵子君 分かりました。  それでは、もう一つお聞きしたいんですけれども、そうはいってもやっぱり、先ほど申し上げましたけれども、被害住民の皆さんの負担は大きいです。例えば、既往ローン三千万円、追加負担二千万、五千万を超えるという方もいらっしゃいます。  私は、この間、何度も負担の軽減を幾度も求めてきました、この委員会も予算委員会もですけれども。それで、閉会中に、グランドステージ稲城の被害住民の皆さんは、せめて恒久の金利免除という要請がありましたり、また元本金利を含む総支払額の減額をというお話もあります。一定期間の支払凍結をというのを求めていらっしゃるんですね。私は、そもそも担保価値のないマンションにずっとローンを払い続けなきゃならないというそのこと自体が本当に理不尽でならないと思うんですけど、こうした点でいきますと、被害住民の皆さんの要請というのは本当に控え目な、もう本当に最小限の要請じゃないかなというふうに私は思うんですよね。  それで、この間、調べてみますと、銀行が幾つかの対応をしています。例えば、一部の銀行では三年間の支払凍結や金利引下げで支払総額の減額の例がありました。支払凍結をやっている一部の銀行がございました。こうした銀行の三月の利益は三十二億円とか百六十七億円なんですね。  本当は金融庁にお聞きするつもりでしたけど、ちょっともう時間がありませんので私が言いますけれども、被害住民の皆さんがかかわっていますほかの銀行を調べてみました。みずほ銀行とか三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、ここは、例えば利益が、みずほ一千三百二十五億、三菱東京UFJ一兆八百九十一億、三井住友五千百九十五億円と上っています。こうしたところは、例えば凍結とか、そういうことはなさっていないわけですね。  私は、そういう点でいきますと、それほど利益が大きくないところが支払凍結の措置をしているのに、これだけ利益を上げているところがなかなかそうは踏み切っていない、それはやっぱり銀行の対応として十分と言えるのかという点で、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  63. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 大変これは難しい問題でして、二重ローンという、これはもう阪神・淡路大震災のときに一番しんどかった問題ですよ、もう家が壊れちゃったわけですから。ところが、それに、その壊れた家にローンがずっと残ると。そして、今度また建て替えたらもう一度ローンを組んだって、もう筒一杯のローンを組んでいるのにもう一度ということで、何とかならぬかということでもう我々も一生懸命しましたけれども、残念ながら解決できなかったのが実情でございます。  今回も、そういうことも併せて我々の方から金融機関にお願いをしまして、そして何とか、まずは支払猶予をお願いしたいと。それから、金利は減免をお願いしたいということで、金融機関もそれに応じて、そして三年間を支払は全部猶予しますということが一つです。そして、その猶予したのは、元金だけのところもあれば、元金と利息の支払も、元利金の、利息というのは大きいですから、ローンの場合、その支払も全部猶予しますという銀行があります。それから、猶予中の支払金利につきまして一・五%引き下げます、免除しますという、いわゆる減額ですね、しますということがおおむねの銀行の合意でございまして、これは阪神・淡路のときにここまではなかなかできなかったと思います。  なるほど、その以外に三年間の金利を免除しますという信用金庫がありますが、貸付件数と金額がもう全然違うんですね。ですから、一律に、こんなふうにやっている銀行もあるから、おまえのところもうかっているんだから全部やりなさいと、なかなかそうは行政としてはそこまでは指導できないけれども、本当にできるだけのことは我々しているつもりでございますので、まあ次の、二重ローンになる後のお金も借りやすいような方法まで我々も配慮していますので、そこは御理解いただきたいと思います。
  64. 大江康弘

    委員長大江康弘君) もう時間がありません。簡単にどうぞ。
  65. 小林美恵子

    小林美恵子君 大臣はいろいろ銀行の対応をお答えになりましたけれども、要するに私はやっぱり特別な措置が要るんだと思うんですよ。この間、何度も申し上げてきました。銀行に応分の負担をしてもらうような国として特別の措置をつくるということが、今やらなかったらそういうちぐはぐになってしまうということがあるというふうに思いますので、改めてそのことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  66. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社会民主党の渕上でございます。  構造計算書偽装問題は、多くの住民の安全と居住の安定に大きな支障を与えただけでなく、国民の間に建築物の耐震性に対する不安と業界への不信を広げたとともに、その偽装をそれぞれの段階で見抜くことができず、制度に対する信頼が大きく失墜をいたしました。  さきの国会では、これらに対応するために、建築確認の厳格化と偽装行為の罰則強化を柱とした建築基準法など四法案を改正をし、今回は建築士法の改定案が提出をされていますが、これらによって構造計算書の偽装は防ぐことができると思っているのかどうか、お尋ねをいたします。
  67. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 今回の問題でいろいろな問題が指摘されたわけでございますが、その中でも二つ。建築士側の課題、すなわち建築士能力や職業倫理が低下し、一級建築士が故意に構造計算書の偽装を行ったという点でございます。二番目は、建築行政側の課題でございます。これは、指定確認検査機関のみならず、地方公共団体においても構造計算書の偽装を見逃してしまったという点でございます。  したがいまして、この二つの点をとらえまして、我々は、建築士側の指摘された課題を改善するとともに、特に建築行政についての課題を解決するために、例えば構造計算とかあるいは設備設計について専門知識を有する人たちの関与を認め、そういうものを必要とするという形にしたほか、もう一度そのピアチェックということで、構造計算適合性判定をもう一度行うと、二重チェックですね、こういうことを通じて、偽装は少なくとも二度とできないだろうというふうに思っております。
  68. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 世の中、悪いことするのは一杯おるわけでしてね、新しく法律作ればどうやって抜け道考えるというのはおるわけで、なかなか難しいことですが、法を作ることによってそういうことの今後事故がないように、ひとつ努力していただきたいと思います。  構造計算書の偽装を見抜くことができず、結果として住民に犠牲と負担を押し付けることになりました。どうも責任の所在というものがあいまいなような気がします。特に、指定検査確認機関を指定をした国や建築確認を行った特定行政庁には責任がないものと考えておられるのかどうか。これまでの処分内容を含めてお教え願いたいと思います。
  69. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) こういうものを見過ごしてしまったということについては、本当に遺憾であります。その法律的な構成といたしましては、特定行政庁というところがその最終的な責任を負うという仕組みになっております。しかしながら、我々、国が責任がないということを言っているわけではありません。私は国の責任も重いと思います。したがいまして、その責任を果たすために、今回の、二度と再びこういうことが起こらないようにする制度を確立をし、そしてそれを誠実に履行していくということが国の責任を果たす方法であろうというふうに考えるわけでございます。
  70. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 結果として制度に不備があるためにこのような法改定を行うものと理解をしますが、私は、国として被害に遭われた住民の皆さんに対する援助はもちろんのこと、やはり被害者住民の皆さんに謝罪をすべきだと考えるんですが、その点はどうでございましょうか。
  71. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 私はもう再々、遺憾の意を表しているわけでございます。国として心からその方々に対して御同情申し上げ、そして、そういうことが起こったことについて遺憾の意を改めて表したいと思います。
  72. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 民間検査機関に対して、耐震データだけでなく、防災上の安全を考えると、やはり民間の場合は早さを競うと思うんですね。したがって、民間機構だけに任せていいのかどうかという疑問が少し残ると思うんであります。このような疑問や不安を改定することによって解消することができるかどうか、その点、大事なことじゃないかと思います。やはり、民間に委託をすれば、民間はやはりどうやって早く下ろすかという、それぞれ業者間の競争というのが私は生まれてくると思うんですね。そこに不信が残ってはならないと思うものですから、その点、いかがでございましょうか。
  73. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 民間指定確認検査機関におきまして、より良いサービスをより安価にということ自体は歓迎されることではないかというふうに思っておりますが、そうはいいながら、今回、一部の指定確認検査機関におきましてこれほど多くの偽装が見過ごされたということは誠に遺憾でございまして、競争の結果、安全性がおろそかになるといった、で、審査内容が不適切であってはならないというふうに考えております。  さきの六月の基準法改正でございますけれども、建築確認検査制度を抜本的に見直そうということで、確認検査の際の指針というのを国が作ることにいたしました。これによりまして、確認検査をまず厳格化するということを行いました。  それから、特定行政庁の立入り権限を付与いたしまして、指定確認検査機関に対する指導監督の強化をするといったようなこと。それから、立入検査時におきます検査内容なり検査体制の見直しも行うということでございまして、確認検査の厳格化及び指定確認検査機関への指導監督の強化を図るということにいたしております。  さらに、二十メートル以上の特定の建築物ではございますけれども、一級構造建築士といったような形と、特定の方の関与を義務付けるというようなことを通じまして、審査に怠りがないようにというふうにしたところでございます。
  74. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 失われた信頼を回復するには大変な努力が要ると思うんですね。今回の法を改定することによって建築士に対する信頼が回復できると考えているかどうか。もちろん、これは建築士業界全体の努力もさることながら、どういう業界自体も努力するかどうかというところにもありますけれども、建築士自体の問題もあると思いますけれども、また信頼回復のためにはどんな努力をされようとしているのか、お伺いをいたします。
  75. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 現在、建築技術高度化に伴いまして、設計自体も高度化、専門分化といったような形で、分業体制による設計が常態化いたしております。こうした中で、こういったような構造計算書偽装問題を契機といたしまして、建築士による不適切な設計の実態が明らかになりました。  これは、資格取得後に実は新しい知識技術力の維持向上を怠ったというようなことで、能力がちょっと欠落している建築士の方がおられるということと、建築士事務所自体が元請、下請関係を不明確なまま、安易に設計の外注を行っているといったような実態が見受けられまして、そういった意味で、建築士の職業倫理の低下、能力の欠如した建築士の設計活動を助長しているんではないかといったような問題が背景にあるのではないかと思っております。  今回の建築士法改正いたしまして、建築士の資質、能力向上といったようなことと、高度の専門能力を有する建築士の育成、活用を図るということ、さらには、建築士事務所の業務の適正化、団体による自律的な監督体制の確立といったことを通じまして、建築士制度の抜本的な見直しを行うことといたしております。  さきの国会で成立いたしました基準法の改正と今回の建築士法改正によりまして、建築物安全性の確保と建築行政建築士制度への国民への信頼回復を図りたいというふうに考えておりまして、今後、この法律の運用に万全を期すよう努めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
  76. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 姉歯氏の裁判の中でもいろんなことが言われておりますけれども、やはり生活のためと言ってみたり、自分の技術をアップするために、他に信頼してもらうためにはうそでも何でも言ってしまうというような、大変悪質な行為であったことはもう裁判の中でも明らかになっているわけですが、提出をされましたこの建築士法の改定によって、偽装を引き起こしたような悪質な建築士はいなくなるかどうか。その点、何回も質問しますが、どうなのか、お伺いをいたします。
  77. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 実は、法制度的にはさきの基準法改正と今回の建築士法改正を的確運用していけば、不良、不適格な建築士が違法な建築物を新たに生み出すといったような構造にはならないんじゃないかというふうに思っているところでございます。  加えて、今回の改正案でございますけれども、実は建築士名簿の閲覧ということがなされておりませんでしたので、まず建築士名簿の記載事項を充実させまして、これを消費者に対して閲覧させるということにいたしました。その閲覧の内容は、例えば定期講習の受講歴ですとか、構造設計一級建築士であるかどうかとか、それから建築士の処分の処分歴があるかないか、どんな処分を受けたのかといったような事柄を名簿に記載事項にいたしまして、それを消費者に対して閲覧をしていただくということと、それから免許証を持っておっても、一枚しかなくて、非常にでかい、大きなものですので、これを携帯用免許証に変更して、言わば顔写真付きで、なおかつその免許証の中には定期講習を受けたか受けていないかとか、そういったようなこともきっちり書くといったようなことにいたしまして、言わば消費者に対する情報の充実といったようなことも行いまして、こういったような形で消費者に対する設計者の情報を開示するといったような方向で、結果として悪質な建築士が排除されていくものだというふうに考えておるところでございます。
  78. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 今回提出をされました法案では多くの登録機関や講習機関の規制が設けられておりますが、やはり大変複雑な、だんだんだんだん複雑にやはりなってくると私は思うんですね。そこで、やはり公益法人への業務拡大ということにつながるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  79. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 業務が拡大するかどうかという意味でいえば、業務を拡大すると思います。  実は、今回の改正案では、建築士の登録事務を県とか国で行っておりましたものを指定登録制度機関に移譲するということで、実は先ほど申し上げました建築士名簿の閲覧ですとか、顔写真入りの携帯用免許証の交付ですとか、構造設計一級建築士証の交付といったような事務を新たに付け加えております。これでは大変だろうということで、こういったような登録事務関係を指定登録制度機関に代行させるということを考えております。これによって、建築行政自体が、先ほども御指摘ありましたけれども、違反建築物の是正といったような事務執行も可能になる体制になるのではないかというふうに思っています。  それで、そういった意味では、新たな消費者に対するいろんな開示事務というのを指定登録制度機関にやっていただいて、それから登録講習機関についても各公益法人が望めばできるという形で、実は自律性の確保といったような観点から、そういったこともやっていただきたいというふうに思っているところでございます。
  80. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 時間でございますので、質問通告していますが、次回にすることにいたします。  終わります。
  81. 後藤博子

    ○後藤博子君 国民新党の後藤博子です。  最後です、午前中最後になります。よろしくお願いいたします。  少し言葉を換えて質問をいたします。  大臣にまずお伺いをさせていただきますけれども、大臣、家というものは、やはり子供たちが安心して寝泊まりをするというか、寝たり、また妻と向き合ったり、大臣のおうちはどういうおうちか分かりませんけれども、安心して眠れて朝になったらまたそこから出ていくという、非常に家というものは私たちに安心と、それこそ安全と心の安らぎ、そういうものがある場所だと思うんですね。そういう場所であるのにもかかわらず、あなたの家は、あるいはマンションは、地震があったらいつ壊れるか分かりませんよみたいなことになってきますと、非常に安心して寝られなくなってしまいます。  私は、この事件が起きたときに、日本の技術者とか、日本の技術とかいうものに携わる人たちのモラルがここまで崩壊してしまったんだろうかという非常に情けない思いがいたしました。大臣は、一国をあずかる大臣でございますし、これからのこの問題、国民の安心そして幸せをどのように担っていこうとされておられるのか。前回の質問のときに、大変失礼ながら、大臣の哲学も含めてお伺いしたいと私は言った覚えがありますけれども、今回の構造計算書偽装問題をどう大臣は総括しておられるのでしょうか。また、その措置を講じていくのでしょうか。耐震偽装事件から国民をどのように守っていくのでしょうか。大臣のお考えをお伺いいたします。
  82. 冬柴鐵三

    国務大臣冬柴鐵三君) 総括をいたしますれば、建築士側の課題がある、それから建築行政の側にも課題がある、もう一つは工事施工業者側あるいは住宅売主側にも課題がある。三つの点に集約できるんではないかというふうに整理できるんではないかと、そのような総括をいたしております。したがいまして、その一つ一つに対して対策を講じなければならないということで、今回一弾、二弾、三弾と立法措置を講じようとしているわけであります。  第一点目の課題、いわゆる建築士側の課題でございますが、これにつきましては、建築士制度を抜本的に見直しまして、建築士の資質、能力向上、あるいは建築士事務所の業務の適正化を図らなければならないというふうに思っております。そのような措置を講じようとしております。  二番目の課題、すなわち建築行政の課題でございますが、これにつきましては、さきの国会におきまして建築基準法の改正をしていただきました。高さ二十メートル超の鉄筋コンクリート造りの建築物など高度な構造計算を必要とする一定規模以上の建築物については、一級建築士の関与を必要とする上に、もう一度構造計算適合性判定というものを第三者機関で、もう一度第三者の目で専門的な目から、ピアチェックと言っていますけれども、これを義務付けることといたしました。それから、特定行政庁の権限を強化をいたしまして、指定確認検査機関の業務について立入検査の権限あるいは報告を求める権限等、行政権限を強化をし、その業務の適正を図ることといたしました。  それから、三番目の問題、すなわち工事施工者とあるいは住宅売主側の問題でございます。これに対してこたえるために、建築工事の適正化ということを図るために、さきの建築基準法の改正で三階建て以上の共同住宅、マンション等でございますが、中間検査を、今までもあるんですけれども、これを義務付けるとするとともに、今回の建設業法の改正におきまして、このように施主とユーザーが違う分譲のマンション等でございますが、これには、それだけではなしに公共的な建物を今回は加えておりますが、建設工事における一括下請負というものを全面的に禁止するというようなこととしてこたえようといたしております。  そして最後に、消費者の保護ということでございますが、売主とか建設業者のそのような責任を実効あらしめるために瑕疵担保責任の履行を確保しようということで、来国会にはこの法律提出をさせていただこうというふうに思っております。  このようにして三つの課題にこたえて、そして包括的な施策を講じることにより、失われた国民建築行政に対する信頼というものを是非早急に回復し、そして住宅というものが、生涯の中でも一番長い時間過ごすところでございます、そしてまた家族と一緒に子育てをし、そして夫婦が一家和楽の、このようなくつろいだ安らぎの場所でございますから、そういうものが安全であって安心でなくてどうして幸せというものを国民に確保させることができるだろうかということで思いを致すときに、我々はこのようなものをきっちりと守っていかなければならないし、それが我々の使命だというふうに思っています。
  83. 後藤博子

    ○後藤博子君 ありがとうございます。大臣の三つの具体的な対策、そして決意のほども含めて述べていただきまして、ありがとうございました。  先ほど大臣もおっしゃられましたように、建築士の資質、能力向上、そして建築士としてのやっぱり倫理、先ほどの質問にも出ました。さらには、建築士としてのプライド、やっぱりそれを持ち続けるためには、具体的な対策、施策が必要だと考えております。人間は一度資格や免許を手に入れてしまいますと、もう努力することを怠ったり形骸化してしまいます。また、地位におぼれたり謙虚さを失ってしまいます。定期講習を受けたり講習を義務付けることは、初心に戻ることができ、また自らを律することになり大切なことだと私も理解できます。  そこで、更新制ではなくて、定期講習の受講を義務付けたとしたのはどのようなお考えからなのでしょうか。これは局長になりますか、よろしくお願いいたします。  済みません、時間ありません、短く。
  84. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 分かりました。  他の業務独占資格を見てみますと、運転免許、海技士免許、狩猟免許といったような形で、適性試験で視力とか聴力に支障があるかないかといったようなことが実は現行制度では更新制になっております。したがって、建築士資格を考えますと、身体機能の低下で能力低下するということはないのではないかということもございまして免許の更新制の導入は困難ではないかと思っていますが、今回の改正案では定期講習の受講を義務付けることにいたしておりまして、これによって実質的に免許の更新制と同様の効果があるものと考えております。  といいますのは、単なる講習を受けるだけではなくて、講習を受けた後にちゃんと講習の成果が現れているかどうかという意味考査を実施したいと思っておりますので、そういった意味で実態上同じような効果があるように運用したいというふうに思っておるところでございます。
  85. 後藤博子

    ○後藤博子君 ありがとうございます。  私たち、国会議員になる前は電気工事屋です、電気工事屋の女房ですから、電気工事士だったり技術屋をたくさん抱えておりまして、いろいろ講習を受けるんですけども、一か所に集められて、朝から晩までお経読みみたいな講習であれば受けているあれもないと、費用だけ掛かってもったいないというようなこともありますから、その辺併せてちょっと質問したかったんですけども、時間がありませんのでそこはよろしく、講習の中身についてもよろしくお願いしたいと思っております。  ですから、安全で安心な建物を建てるためには、建築士だけではできませんよね。やっぱりそこには設備設計士や電気工事士といったような専門の技術者が必要です。専門分化するということは、各々が責任を持ち、より良い安心と安全な建物を造るということだと考えておりますが、一つ手掛けた建物が完成したときにはやはり誇りを持ったり、うちの父ちゃんもそうですけども、子供たちが小さいときには、これはおれが建てたんだぞといってやっぱり胸を張って子供たちにその建物を見せていくという、そういうことをやっていました。ですから、そういう技術屋をつくる、また夢のある技術屋にもつながっていくのではないかと思っております。話をすると長くなりますので。  ですから、一級建築士ということだけではなくて、そこにはやはり建築設備士という方々の位置付けというのも必要になるかと思うんですね。ですから、建築設備士の位置付けはこれからどうなるのでしょうか。そしてまた、現行の建築士法第二十条の第四項では、建築設備士の意見を聴いたときには、設計図書においてその旨を明らかにしなければならないと規定されています。それも何かなかなか実効性が乏しいように思っておりますが、この規定の徹底を図るべきではないかと思っております。  また、新たに設備に関する一級建築士制度設備設計一級建築士が創設されると建築設備士の仕事が逆になくなるのではないかと現場では心配をしております。その点はどうなのでしょうか。  今まで私ども電気や機械に携わる技術者の多くは、工業高校とかやはり専門学校、大学の工学部での電気若しくは機械での専門分野で学習しておりまして、建築士の受験資格も持っておりません。どのようにして多くの設備技術者が建築士をまた取得すればいいのでしょうかということも含めますが、ちょっとたくさんになりましたけど、最後の方は通達しておりませんので、最初の現行設備士の位置付けでもせめてお答えをいただきたいと思います。
  86. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 今回、実はここの条文は全くいじっておりません。いじっていないということはどういうことかといいますと、この建築設備士の位置付けは変わることではないということでございまして、引き続き建築設備の適正な設計、工事監理を確保するために建築設備士が活用されるよう期待をいたしているところでございます。  意見を聞いたけども一体その後どうなるんだというお話がございますが、我々の考えでは、実際にだれが業務を行っているか不明朗な形になりますので、今回の改正に合わせて公共団体とか関係団体に対して改めて周知徹底を図りたいと思っておりますし、建築士事務所といったような関係の業務が何か増えたような感じに見えておりますので、今までの仕事がなくなるんじゃないかというような御懸念もあるということでもございますので、こういったような誤解が生じないように、公共団体なり関係団体に対しまして改正内容の周知徹底を図りたいというふうに思っておるところでございます。
  87. 後藤博子

    ○後藤博子君 ありがとうございました。  じゃ、次の質問のときに、先ほど最後に言いました、どうやって資格を取ったらいいのかということですね。今までは、一級建築士を目指すわけではなくて設備士を目指した者が、今度は逆に建築士の資格も取ろうというときになかなか……大丈夫ですか。はい、ではよろしくお願いします。
  88. 榊正剛

    政府参考人榊正剛君) 実は、今回、資格試験の学校の学歴要件みたいのを見直そうということにしておりまして、今まで学科主義で、例えば何とか大学の建築学科出ればいいということにしておりましたが、それを科目主義に変更いたしたいと思っておりまして、どういったような建築に関するような科目を履修されておるかということで、そういう意味では設備関係の科目も入ってまいるということになろうかと思っております。  そういったような形で受験資格を考えておりますので、例えば電気学科の方が建築学科についての科目も併せて在学中に取られるということであれば、電気学科卒業でも一級建築士を受けることが可能なような仕組みにはなると思います。  それから、審議会答申の方でも、設備士についての関係で、一級建築士の受験資格の要件の見直しについて御指摘がございまして、建築設備士の知識と技能を適正に評価できるよう、今後そういったような学歴要件なり実務要件の見直しと併せて総合的に検討をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。
  89. 後藤博子

    ○後藤博子君 では、もう時間がなくなりました。  私ら同じ仲間が現場にもたくさんおりますので、そういう仲間の皆さんのためにも、どうかモラルをきちんと保っていただき、日本の誇るべき技術屋として是非御尽力をよろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  90. 大江康弘

    委員長大江康弘君) 午後一時三十分まで休憩といたします。    午後零時十七分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  91. 大江康弘

    委員長大江康弘君) ただいまから国土交通委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、田名部匡省君が委員を辞任され、その補欠として柳澤光美君が選任されました。     ─────────────
  92. 大江康弘

    委員長大江康弘君) 休憩前に引き続き、建築士法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、慶應義塾大学教授村上周三君、社団法人日本建士事務所協会連合会会長三栖邦博君、社団法人日本建構造技術者協会会長大越俊男君及び社団法人建築設備技術者協会会長牧村功君、以上四名の参考人に御出席をいただき、御意見を聴取し、質疑を行います。  一言、参考人の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。  本日は、年末の大変お忙しい中にもかかわりませず、私どもの委員会参考人ということで御招請を申し上げましたところ、快くお引き受けをいただきましてお越しをいただきましたことを本当に心からお礼を申し上げたいと思います。  どうか、今日は忌憚のない御意見をいただきまして、私どももこの法案の審議の参考にさしていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。  まず、村上参考人、三栖参考人、大越参考人、牧村参考人の順序でお一人十五分ずつ御意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人の方々の御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず村上参考人にお願いいたします。村上参考人
  93. 村上周三

    参考人(村上周三君) 御紹介いただきました慶應義塾大学の村上でございます。  私、今回の社会資本整備審議会の方で建築分科会会長を務めておりまして、また基本制度部会の会長としまして審議会報告の取りまとめに当たりました。また、現在、日本建築学会の会長を務めております。  昨年来、この建築分野で幾つか不祥事が明らかになりまして、危険な建物が設計あるいは施工されているということが明らかになりまして、国民の皆様に多大の不安と混乱を与えまして御迷惑をお掛けしたことを建築関係者の一人として大変遺憾なことであると思っております。早急にその抜本的な対策を示しまして、建築界が社会の信頼を回復することが強く求められていると常々考えております。  その意味では、本年六月の、既に終わりましたけれども、法律改正と今回提案されております法律改正は、一連の不祥事により失われました建築物安全性建築士制度に対する国民の信頼を回復するという意味で大変適切な対応であると考えております。  今回の改正の原案を見せていただきますと、建築士の資質とかあるいはその能力向上や専門分化と、さらには設計や施工監理や工事の適正化にかかわるものとなっております。これらの内容は本年二月に社会資本整備審議会から出されました中間報告を受けておりますもので、いずれも緊急に対策を必要とされる項目であります。したがいまして、今回の法律改正衆議院で与野党の全員一致で可決されましたことを私は大変心強く思っております。今後、その法律改正が実施に移されまして、それらが早急に建築設計や建築施工の現場に反映されることを強く希望しております。  今回の法律改正が承認されたといたしまして、その後、これが実施に移す際の具体的な制度設計に関しまして、幾つか現時点で注意を払うべき点があると考えております。それぞれについて指摘させていただきます。  まず第一は、人材養成の問題でございます。今回、建築士の専門分化の方法として、構造設計一級建築士設備設計一級建築士が提案されております。これらは大変結構な内容であると考えております。しかしながら、これらの制度の円滑な運用を図るためには、これらの資格に該当する技術レベルの高い専門建築士が多数必要とされます。しかし、現状ではその数は決して十分とは言えないのではないかという危惧を抱く次第でございます。  したがって、今後一番大事なことは、建築構造士や建築設備士の養成の仕方や業務環境の現状でございますね、これは決して業務環境はいいとは言えません。こういうものを視野に入れて、円滑な運用のための制度設計を図ることであると考えております。その中には当然、一級建築士の試験制度の検討も含まれると考えております。  その際、留意すべき点として三つのことを指摘しておきたいと考えます。  一つは、この法律改正にかかわらず、全国で建築の設計、施工の現場は継続しております。ですから、その資格制度の変更に伴って、現場で混乱が生じないように配慮していただきたいと思います。  二つ目は、現在ある建築構造士や建築設備士にはいろいろ問題がございます。その辺の実情を十分に酌み取っていただいて、その問題点の改善を是非反映した制度にしていただきたいと、これもお願いでございます。  それから三つ目は、今後とも若い世代の多くの人たちが希望を持って建築士を目指すことのできるような制度を目指していただきたいという、これもお願いでございます。これらの留意点は、建築士試験の受験資格の見直しにも関係する部分がございます。  私、思っておりますことは、建築分野として一番大事なことは、全国の建築の現場で活躍する優秀な技術者を確保することでございます。これは将来にわたってこの分野に若い人に入ってきてほしいと。ですから、間違ってもこの建築士の試験制度の見直しが、若い人のこの分野に対して貢献したいという志をそぐことのないよう配慮することが大切であると考えておりまして、今後この点に是非御配慮いただきたいと考えております。  最後に、法令規制と建築の質という問題について一言お話しさせていただきます。  六月の法律改正を中心として、その一連改正には規制強化という側面が見られます。今回一連の不祥事が発生しまして、これだけ多くの不安と混乱を国民に与えたのでございますから、この規制強化はこれは仕方のないことだと考えております。しかしながら、その法令強化は、質の悪い違反建築を排除すると、これには大変効果がございますが、質の良い建築を造るためのインセンティブを与えるわけではございません。また、その規制強化は行政手続のための時間やコストの増加を招くことになりがちでございます。これらは結果的に国民に降り掛かってくるわけでございます。でございますから、長期的目標としましては、信頼できる技術者倫理をベースにしまして、簡素で信頼性の高い設計や施工のシステムをつくることを目指していくべきではないかと考えております。これが国民の最終的な利益に資することになると信じております。  このような目標の下で質の良い建築を造るための仕組みをつくっていただいて、産官学と民が協力してこれを推進することが重要であると考えております。  以上でございます。
  94. 大江康弘

    委員長大江康弘君) ありがとうございます。  それでは次に、三栖参考人にお願いいたします。三栖参考人
  95. 三栖邦博

    参考人(三栖邦博君) 今日は参考人として意見を述べる機会をありがとうございました。  お手元にグレーの資料、ございます。この中に今日私が陳述したい内容と資料が入っております。クリアファイルのものでございます。表に参議院国土交通委員会参考人三栖邦博と書いてあるものでございます。これを見ながら私の話を聞いていただければと思います。  今日は三つに分けて話します。まず第一は、私ども日本建築士事務所協会連合会とはどういう団体かということと、この構造偽装事件を受けてどのような行動を取ってきたか、これが一ページ目でございます。二ページ目には、今回の改正法案について私たちがどのように受け止めているか、これが二ページ目です。三ページ目に、今後の課題ということで、三つに分けてお話をさせていただきます。  まず最初の一ページ目でございますが、私たち日本建築士事務所協会連合会は、全国にある建築士事務所協会を会員とする唯一の全国組織であります。今の建築士法では、建築士を雇用すればだれでも建築士事務所を開設できるということになっております。それからまた、設計監理その他業務を他人から報酬を得て行うには、建築士事務所登録をし、管理建築士を選任しなければならないということで、実際、依頼主から仕事を受けるのは建築士事務所であるということであります。  そういったことで、世の中一般には設計事務所と言われているものですが、法律では建築士事務所という言葉ですから建築士事務所協会ということになっております。それと同時に、私どもの団体建築士法で言う指定法人というふうに指定をされている団体であります。  今回の構造偽装事件に対する私どもの基本認識を申し上げますと、当然のことながら、職業倫理の欠如。我々一般に士資格と言われている資格者は業務独占が与えられているわけですから、生命、財産を守るというそういう使命がありますが、それを踏み外した、あってはならないことだという認識をしております。  二番目は、さりながら、やはりいろいろ見落としもあるだろうということで、いろいろなチェック機構が働くシステムになっております。今回は構造偽装でしたが、元請の建築設計事務所が依頼主から仕事を受け、構造の部分を下請に出しているという形だったと思いますけれども、元請の設計会社がチェックができなかった、さらには確認機関がチェックできなかった、それから現場段階でも監理者それから施工者も見落としたと。そういったことで、これは構造的な不備があるんではないかというふうに認識をしております。  それから、今の建築士法制度で私どもが長い間主張してきましたのは、建築士事務所に関するルールがないと。要するに、建築士法は、基本的には資格法ですけれども業法がありませんので、業法的側面を持った資格法という位置付けですが、そういう建築士事務所の業に関する部分が甚だ不備であったと、そういったふうな認識をいたしております。  こういったことで、私たちはこの偽装事件を受けてどのようなことをしてきたかということを簡単に申し上げますと、私どもは、今申し上げましたけれども、建築士事務所はだれでも建築士さえ雇えば業を行えるわけですから業法が必要だということで、設立以来四十数年間、業法制定運動をやってまいりました。その内容はここに書いてありますので、後でごらんください。  今回、構造偽装事件を受けまして、四つのことをやりました。簡単に申し上げます。業務の適正化、職業倫理を徹底しようということで、各都道府県建築士事務所協会に周知徹底、綱紀の徹底を図りました。それから、マンションの住民の不安を解消しなければまずはいけないということで、相談窓口を設置し、六千件を超える相談に対応しました。それから、昨年十二月に建築士法の抜本改正ということで、北側国土交通大臣に提言を申し上げました。これは、お手元の資料の黄色い、これに全部書いてございますので、主なことがここに書いてございます。チェック機構の適正化であるとか、職業倫理の遵守、これは団体加入の義務化を含むんですが、それと消費者保護、それから建築士管理建築士講習受講の義務化、そういったことで何項目か提案をさせていただきました。これは私どもが先ほど言いました業法制定運動の中で主張し要請してきたことを当然中に含んでおります。  そして、社会資本整備審議会議論と並行して、私どももだんだん重要事項を絞ってきまして、二つの大きな課題を要望しました。それは、管理建築士に病院長並みの責任と権限、併せて講習の義務化が必要だと。だれでも開設できる建築士事務所の中にあって、管理建築士は所属する建築士を統括し技術的な責任を持つわけですから、病院で言えば理事長に対する病院の院長に当たる管理建築士責任と権限と要件、この三つをはっきりさせよということを主張しました。  それから、やはり職業倫理の欠如。これは、その職業倫理というのは法でぎりぎり縛るわけにいきませんので、どうしても団体の加入義務化によってそういう職業倫理を涵養する環境をつくらなければいけないと、そういったことをやってきました。  次に参ります。  次のページに、今回の改正案につきまして私どもがどういうふうに評価しているかと言いますと、まずは、先ほど言いましたけれども、建築士事務所の業務の適正化が大事だということで、ここで三つに大きくまとめて見解を述べさせていただきます。  まずは、今回の改正案で業法的な側面が充実強化されたというふうに思っております。具体的に言いますと、先ほど言いました管理建築士の要件の強化が図られました。管理建築士責任がより明確化され、権限が確保され、それで要件、まあ確保に関しては後で課題が少しあるんですけれども、それから要件が強化されたというふうなことで、管理建築士に対しては前進があったと思います。  それから、業務の適正化でございますが、契約前に重要事項を説明するとか、それから元請が構造とか設備とかそれから再委託、そういったことに対する、そういうのはいいんですが、丸投げ禁止とか、そういったことが制限ができた、そんなことで業務の適正化のルールも進んだと思います。  それから、今回の特徴的なことは、建築士というのは登録で百万を超えていますが、その中で建築士事務所に所属して設計監理等の業務を行っている建築士、私どもは事務所に属する建築士又は業を営む建築士と言っていますが、そういう建築士をほかと区別して初めて概念化されたということも大きな前進だと思います。  次に、団体の自律的監督体制がこれで確立できる道が開けたと思っております。団体加入義務化、これは士資格である弁護士とか税理士とか、いろんな資格者は全部加入義務化です。しかし、私どもはそうなっておりませんが、加入義務化は将来的な課題とされましたが、加入促進の措置が講じられたと。例えば、今回、非常に大事なことなんですけれども、建築士法の中でいわゆる建築士の資格者としてのルールと、それから業を行う建築士事務所のルール、これがかなりはっきりしてきまして、団体としても、法定団体として建築士会、それからもう一つ事務、業を行う団体としての建築士事務所協会が、二つが法定化団体にされたということは、建築士法の業法的側面が強化され、ようやくバランスの取れた資格法になって、法律になってきたという理解をしております。  それから、消費者からの苦情処理業務が団体の業務としてしっかりと明記されたと。  それから、もう一つ、これも大事なことなんですけれども、事務所登録を団体に指定してやらせるという方向ができる、団体を活用する指定登録法人制度が創設されたということであります。建築士事務所は五年ごとに登録更新がございます。団体の加入促進のためには、五年に一度は事務所協会に行って登録をすると。そういったところで倫理を涵養するいろいろな活動もできますし、建築士事務所の協会の存在も、会員にならない建築士事務所にも知ってもらうこともできる、そんなことでこれは大変重要なことだと思っております。  次に、専門性が明示されました。建築士法が制定されたときは、建築士一人で構造も設備も意匠も全部できた時代です。計算尺で簡単に構造もできたんですが、今は全くそうではありません。業の実態としても、専門特化、専門分化が進んでおります。建築の全体をまとめながらデザインと意匠を担当する建築設計担当と構造と設備は、全くお互いに役割を分担してやっております。そういった状況にようやくこれで専門性が明示される制度ができるということで、これも大きな前進であったと、このように思っております。  それでは、最後のページになりますが、今後の課題はどうかということでございます。  繰り返し申し上げますけれども、今回の法改正によって、建築士事務所の業務の適正化については大きな前進が図られると、そのように私は受け止めております。更なる課題として、三つほど挙げました。  管理建築士の権限の強化をより実効性を上げるために、開設者に対して管理建築士技術的な総括の立場から意見を言うというふうになっておりますけれども、これも一方的に言うんではなくて、聞く側、開設者側にもある程度尊重義務を課すべきではないかと。それから、管理建築士は、所属する建築士事務所に対する指導監督の権限もはっきり明記すべきではないか。そういったことが今ございませんので、これがそういう管理建築士の権限強化がより実効性が上がるような、そういったことを改めて要望したいと思います。  それから二番目は、指定事務所登録機関でございますが、加入義務化に向けて加入率を上げるということが非常に重要なことですが、是非、私どもとしては、これは知事指定になるわけですけれども、事務所登録の指定機関になるべく全力を上げて取り組む所存であります。  それから三番目は、業務報酬基準の見直しでございますが、非常に建築士建築士事務所の業務報酬が大変低いという問題は事実であります。そういったことで、告示一二〇六という国が定めた報酬基準がございますけれども、もう二十年来改定がなされておりませんので、今の実態に合わせるべく見直しをし、しかも、それを今後も定期的に見直す、そういったことを是非やっていただきたいと、そういったことでございます。  以上でございます。ありがとうございました。
  96. 大江康弘

    委員長大江康弘君) ありがとうございました。  次に、大越参考人にお願いいたします。大越参考人
  97. 大越俊男

    参考人(大越俊男君) 日本建築構造技術者協会会長の大越でございます。  最初に、私たち、JSCAと呼んでおりますが、この協会は、現在正会員三千六百名、そのうち二千五百名から六百名ぐらいの建築構造士としての協会資格者がございます。  それでは、この法律案に対する意見を述べさせていただきます。  最初に、耐震偽装事件の、いろいろ議論されておりましたが、その一つにありましたのは、構造設計者というのが匿名化されていたという問題があります。今般、この改正案はこれを是正するために策定されたものと考えております。  この戦後五十年間にわたる高度な技術の発展に伴い、建築士そのものは職能を分化いたしました。今回のこの専門資格の創設は、単なる偽装の防止にとどまらず、良好な建築生産システムの形成のためには十分な議論が必要だと考えております。それで、合理的な運用という視点で意見を述べさせていただきたいと思っております。  最初に、この建築基準法というのを見ていただきますと、現在、全部で百三条ございます。その中で、安全に関する定義というのは実は二十条にたった一つしかございません、その中で。ですから、そういう意味ですと、その専門分化というのが基本的にはないという法律になっております。一方、建築士法も当然同時に作られておりますので、やはり分化、専門化、専門分化という意味では全然なされていなかったわけですね。今回、そういう意味で、構造設計及び構造設計者という記述がずっとなかったわけです。そういう中でこの事件が出てきたと思っております。  本来、建築基準法第一条に定義されている国民の生命と財産の保護というのは、この専門資格がない構造設計者にゆだねられていたという事実がございます。それは、ある意味では、全体の建築生産システムという意味では重大な欠点だと常々考えておりました。そういう意味で、今般の構造設計一級建築士の創設は大いに評価できるものと思っております。  それから、資格審査についてでございますが、この今度できます構造設計一級建築士は、国民の安全を守るという重要な責務を担うものになります。その資格は、一級建築士資格取得後五年間の構造設計実務経験を経て後、講習会を受講して取得するという法案でございます。  この職責の重要性にかんがみますと、実務経験五年間というのは大変長くて、多分国家資格で非常に厳しい資格になると思いますが、やはりそれだけではなく、もう一つ多分重要だというのは、その単に五年間仕事をしていたというわけではなくて、やはりその業務が資格を持つような業務になっているかという、本当は確認が要るんではないかと思って、これは要望いたしたいと思っております。  それから、先ほどからも出ておりますが、やはりこの偽装事件全体の設計者を見ますと、やはり構造設計者、特に報酬の低さというのが挙げられると思います。専門資格を創設するだけではなくて、やはりそれに見合った適切な報酬確保の環境を整えることが必要ですので、もしこれから考えられていることがあれば、やはり構造設計をやっております実務者の意見を反映させて、実際、現実に即した建築士の報酬規定の見直しを是非ともお願いしたいと思っております。特に、現在のこの報酬を規定する基となります法律は、大臣告示一二〇六号にございますが、この中では一切そういう意味ではまだ分化されておりませんので、やはりこの新しく創設される資格に対応した作業量というものを考えていただきたいと思っております。  今般の資格制度改正は、業務実態により即したものになることが評価できます。しかし、社会が信頼できる効率の良い建築生産システムを確立するためには、やはり資格制度の確立と建築審査制度の連帯がこれから望まれております。  それから、ちょっと蛇足にはなりますが、六月に基準法を改正されまして、構造計算適合性判定制度ができております。その中で、報道機関でいろんなことが議論されておりますが、私たちはまだ半年後の施行を踏まえて、協会としては全力を挙げて、この社会に対して建築家の信頼を取り戻すべく対応を協会挙げてやっております。それと、我々設計者というのは、実際設計しかしておりませんので、ほかの設計者が作った計算書とか設計図というのを見るのについては、実はそれほど、それほどってほとんど慣れておりません。そういう意味では、六月から始まるこの新制度に対して慣れるまで時間を少し手間取ったりするとは思いますけど、これは逆に言えば、皆様の御支援をいただければ、それと慣れるに従って非常に適切にできると思っております。それで、その資格制度と併せて将来的に非常に優れた制度になると考えております。  以上でございます。よろしくお願いいたします。
  98. 大江康弘

    委員長大江康弘君) ありがとうございました。  次に、牧村参考人にお願いいたします。牧村参考人
  99. 牧村功

    参考人(牧村功君) 建築備技術者協会会長の牧村でございます。  まず、この国土交通委員会という公の場で、設備設計業務にかかわる者がこんな形で意見を述べる機会をいただきましたこと、誠に感謝申し上げます。  当協会は、建築士法改正されました際、建築設備士というものが制定され、その機会に建設大臣の許可を得て一九八九年に設立されました社団法人でございます。構成員は、建築設備士、それから空気調和・衛生工学会の設備士及びこれらの資格取得を志す者のいわゆる建築設備技術者から成る職能団体でございます。  今日、お渡ししておりますパンフレット、これ中をごらんになっていただければというふうに思います。  私ども、常に技術向上と、それから社会的地位の向上ということを目途にしまして、社会への貢献、環境の保護、法の遵守等の当協会の倫理綱領、これ次のページに一枚ございますけど、こういう綱領を定め、それに基づいて行動をさせていただいております。  まず、今回の建築基準法及び建築士法一連改正でございますが、昨年の耐震強度偽装事件により、大変国民消費者に対して抱かせました建築物に対する安心、安全への不信感、それを払拭するに十分な対応ができると判断させていただき、高く評価をさせていただいております。  また、今回の専門分野の資格を設ける建築士法改正についてでございますが、大変私事でございますけれども、設備設計監理にかかわる技術者として、また、私自身大学のときに先輩から言われたことでございますが、建築の設計というものは、意匠、構造、設備の各分野のプロが相互の立場を尊重、そして信頼し合って、その三者がいろいろ意見を言い合いながら議論を重ねた上で建築というもののコンセプトをつくり、そして補完し合いながら竣工するまで検討し続けて、そして各々の責任分野を全うすると。そこで初めて高品質で良好な社会ストックが生まれるという先輩の言葉をいただき、それを基に私自身四十年仕事をしてまいりました。  この先輩の助言が今回建築士法改正によって設備監理にかかわるすべての意匠、構造、設備関係者が対等な立場で業務にかかわって、そして建築主と社会のニーズにこたえた良好な建築物を造り上げることができる、そのような環境になるということで、大変高く評価をさせていただいております。  言い換えますと、今まで過半の建築物がいわゆる意匠設計が主で、構造、設備が従という、そういう関係で設計されていたのではないか。結果的にエンジニアの意向が十分に設計に反映しづらい関係で設計されていたのではないかというふうに言えるかと思います。  今回、建築設計の歴史始まって以来初めて、構造と設備の設計者にとって大変責任と権限のある法的な裏付けのある業務独占というもののある資格ができようとしているということは大変高く評価し、建築業界でエンジニアとして活躍してきた多くの者が感謝をしているというところでございます。  私ども協会を含め、建築設備団体、六団体ございますけれども、そこの協議会をつくりまして、昨年の事件以来、一年間にわたり国土交通省住宅局の建築指導課長、それから室長、担当官と月一回、それ以上のペースでいろいろと意見交換、議論を重ねてまいりました。我々の要望をよく理解していただき、是々非々で回答をいただきながら本日を迎えましたことに関してもまた感謝申し上げます。  ここで設備設計者の社会的地位向上及び技術向上の歴史をちょっと述べさせていただきますと、一九五〇年に建築士法が制定されて以来すぐ、いわゆる設備技術者の資格という問題がその仲間の中で発生しました。当時、社団法人の衛生工業協会、これは現在の空調・衛生工学会になっておりますけれども、その中で設備士の制定設置構想というものを作成しまして、当時の建設省、それから衆参両議院関係者と接触をいたしましたが、結果的には法制化に至りませんでした。  ということで、まず民間ペースで設備士という資格をつくり、そして資格者の団体として設備士会、行く行くは日本空調衛生設備士協会という形で変わってきましたけれども、そのような民間団体で資格をつくり、そしてその資格の普及、それから活用の推進、それからもう一つ、一番大きな法制化の推進ということを目的として活動してまいりました。結果的に、三十年間その活動をした結果として、一九八九年、一応その会は解散したわけでございますけれども、これは正に建築設備士という士法が制定されたタイミングに次の組織へ移っていって私どもの協会に変わっていったという経緯がございます。  建築設備士の誕生の経緯と現在の業務の実態を紹介させていただきますと、実は一九六九年、かなり前のことでございますが、建設省さんの呼び掛けによりまして建築業務基準委員会というものができ上がりました。その場で一番大きな問題は、設備技術者の法的資格の早期実現ということで、当時の建設大臣に幾度と要望を出させていただきました。一九八三年になりまして、建築審議会答申の中で、建築設計・工事監理業務のうち、建築設備に係るものに携わる者の資格を創設することとするという結論までいただいたわけでございます。それを受けて、当時、建設省さんの方でいろいろと改正案を検討されました。  諸般の事情によりまして、結果的に業務権限、いわゆる独占業務のある資格創設というのは見送られまして、皆様御存じのように、建築士法の第二十条第五項に書いてありますように、ちょっと読み上げますと、建築士は、大規模の建築物その他の建築物建築設備に係る設計又は工事を行う場合において、建築設備に関する知識及び技能につき建設大臣が定める資格を有する者に意見を聴いたときは、設計図書又は工事監理報告書においてその旨を明らかにしなければならない。これは正に建築士に対する助言はできても、実質的にはその設計に対して責任を負う立場ではないという、そんな形で建築設備士というものが生まれたわけでございます。  それ以降、建築設備の登録団体として当協会が一九八九年に発足したわけで、それ以降、建築設備士の活用範囲というのは単なる一級建築士に対するアドバイサーの立場ではなく、いろいろな業務にかかわってまいりました。設備設計及び監理の協力業務、これが実は主たる業務でございまして、民間の中では大変重要な資格として運用されているということを紹介させていただきます。  また、実際、建築設備士というのはどんな仕事をしているかということで、私ども、中学生向けにこの「くうき・みず・でんき」を皆様にお渡ししているかと思いますが、こういう絵本をつくらせていただきました。この中に実は建築設備内容ということを網羅させていただいております。これだけ多くの内容を、かなり深いものを、かなり専門的な能力を持った人間でないとこういうものは設計できないということで、参考までにお渡ししたいと思います。  今年の三月現在で建築設備資格者の取得者は三万五千人強でございます。その中で登録者が約三万三千人、そのうち約四分の一の方々が当協会の会員となって活躍していただいているわけでございますが、この建築設備士の構成比率、これ大変重要なことでございますけれども、建築系の大学を出た方が恐らく二割弱ではないかと。それで、機械系の大学を出た方が約四割強、それから電気系の出身の方が四割弱という形で、約一対二対二という形で構成されているのではないかというふうに想定しております。  実は、三万二千人のうち、実質的に実際設計にかかわっている方というのは約一万人以下ではないかなというふうに思っておりますけれども、その一万人では実質的に設計をするという行為に対しては足らないということで、当協会では何とか毎年千人ずつの資格者をつくり上げ、結果的には約三万人を超える組織をつくっていかないと、この設備設計ということをサポートする組織にはならないんじゃないかというふうに思っております。  今の建築設備士がつくり上げてきた歴史とそれから実情説明させていただきました。  それでは、これから設備設計一級建築士というのが二年後に施行されるということになりますが、その中で、どんな形でいろんな方々がかかわっていくべきか、それから制度内容はどうあるべきかということで具体的なお話をさせていただきたいと思います。  まず、建築設備士の活用でございますが、士法に定められておりますように、アドバイスをした場合には確認申請図書に建築設備士の記名、捺印、そして登録番号を書くという形で通達をいただいておりますけれども、実質的にこの運用をされているというのが地方自治体では大変少ない。これを徹底して運用していただくことによって、建築設備士というものがこのプロジェクトに責任を持ってかかわっているんだろうということが分かるような形で運用をしていただければということで、是非この建築設備士の有効活用を図っていただきたいというふうに思っております。  それから、今までいろいろ議論がございました設備設計一級建築士を制定したとしても、恐らく当初は三千人ぐらいしかいないんじゃないかと、それから地方にはそういう方が少ないんじゃないかということで懸念をされている方、特に地方の設備設計事務所の方々は心配されているわけでございますけれども、これに対する一つの対策というのを提案させていただきたいと思います。  現在、三階以上でかつ五千平米以上の新築建物というのは年間三千五百件という実績があると聞いております。そのうち、約三分の一が地方で仮に建設されるというふうに想定しますと、約千二百件。この千二百件をだれが法適合性証明を設備部門でやるかということになりますと、例えば建築設備技術者協会に設備設計一級建築士というものの資格を持った者でかつそれが委員会活動として百人のメンバーがそろえられたといたしますと、一人年間十二件、一か月一件というペースでできる。たとえその業務が集中したとしても、一週間に一件対応すれば十分第三者の機関としてその法適合性証明ができるということになるかと思いますので、こんな形で運用するということも一つの方策ではないかというふうに思っております。是非、こんな形で御検討いただければというふうに思っております。  あわせて、設備設計一級建築士だけはなく、建築設備士という空調衛生の専門部門とか電気専門の部門が併せてそのチェックに加われば、いわゆる品質を向上するという設計性能のチェックもできる、いわゆる設計コミッショニングといいますけれども、こういうことも可能になるのではないかということで、レベルを上げるために建築設備士というものを有効に活用していただくということが必要ではないかというふうに思っております。  それから、設備設計一級建築士の認定要件でございますけれども、やはりかなり高いレベルのものでなくちゃいけないということで、一級建築士から設備設計一級建築士に認定される基準というものは、建築設備士の資格を持っている者又は同等の技術レベルを持つ者を目途として確認を受けた者に承認をするという形で運用していただければというふうに思っております。  それから、先ほどちょっと紹介させていただきましたように、建築設備士というのは、機械系や電気系の人間がかなり多いということで、今後、一級建築士の受験資格、試験方法に関しましては、電気系、機械系の出身者が大変チャレンジしやすいような試験制度とすべきではないか。先ほど村上先生からも言われましたけれども、若い電気系の技術者が、また機械系の技術者が設備設計にチャレンジするということの門戸を狭めてしまうということは大変まずいと思われますので、そんな形で試験自身が受けられやすいようにすべきであると。  具体的に申し上げますと、例えば建築設備士を持っている人は新一級建築士の受験資格があるとか、それから試験の問題に関しましては、実は一級建築士の試験というのは学科試験と製図試験になっております。学科試験に関しては設備関連の問題の比率をかなり多くするということ、それから設計製図試験に関しては、可能であれば意匠、構造、設備というコースに分けて、そして選択制として試験を構成するということも、若手の電気、機械の技術者を養成するという意味でも必要ではないかというふうに思っております。  最後に、CPDのお話をさせていただきたいと思います。  いわゆるCPD、継続職能開発ということに関しては、各建築関連職能団体建築学会を始めとしていろんなところで制度化されておりまして、既に民間ベースでこの技術レベルを上げるという制度は確立し運用されています。是非、一級建築士建築設備士の技術レベルをアップさせるということに関しては、この民間のCPD制度を有効に利用するということでやっていただくということと、それから五年ごとに指定講習を義務付けるということで運用していただければ、一級建築士建築設備士の技術のレベルが上がるのではないかというふうに思っております。  当協会では、建築設備士で更に五年間いろんなレベルで研修し、そして実績を持った者に対してジャブミーシニアという称号を与えております。空調衛生の分野とか電気の分野ということでもって与えておりますので、これがいわゆる建築設備士のある特定分野のプロフェッショナルであると、そういうプロが一級建築士設備設計一級建築士の助言者として設計協力として活躍できるということを目標にしながら、私ども技術向上、それから倫理観の育成ということを対応しながら、これからも協会の活動を進めていきたいというふうに思っております。  大変時間が限られておりまして、私自身いろんな意見を申し上げたいと思ったんですけれども、それで言い足らないところは、実は「建築設備士」という雑誌、これは当協会の機関誌でございます、十月号の冒頭のところに十一ページにわたって私の綿々とした思いが入っておりますので、後ほどまた目を通していただければというふうに思っております。  技術者協会の会長の立場で意見を述べさせていただきました。大変ありがとうございました。
  100. 大江康弘

    委員長大江康弘君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、大変恐縮でございますが、時間が限られておりますので、簡潔に御発言くださいますようお願い申し上げます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  101. 小池正勝

    小池正勝君 自由民主党の小池正勝です。  参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。感謝申し上げるところでございます。  実は、午前中もこの法案に対する政府側との質疑が行われたわけでございますが、その中でも先ほど参考人がおっしゃられたことが一つの論点といいますか争点として出てまいりました。  そこで、正に先生方はその現場でお詳しい専門家の先生方ですから、そこでお伺いしたいと思うんですが、まず一番初めに牧村先生にお伺いしたいんですが、牧村先生もおっしゃっておられましたし、午前中のお話にもあったんですが、今回、設備設計一級建築士というのができるようになりました。先ほど先生のお話では、建築設備士のうち、建築系出た人は二割しかいないというお話でした。そうなると、設備設計一級建築士というのが数が不足するんではないかと、こういうことが午前中質疑として行われまして、政府側の御答弁では、大体先ほど牧村先生言ったのと同じなんですが、三千五百棟ぐらい一年間で、五千平米、三階以上というやつがあるから、大体今想定されるのは、設備設計一級建築士は大体三千人ぐらいだろうから大体対応できるんだと、こういう御答弁であったんです。まず、その認識でよろしいかどうかということが一つと。  もう一つは、先生も特に地方は不足するとおっしゃっておりました。私、徳島なんですが、徳島にはたしか二人か三人かというふうなことしか私はいないと聞いたんですけれども、正にこれとてもできないだろうと思うんですね。そうなったとき、先ほど先生の御提言は、東京のセンターに百人ぐらいプールしておいて、そこで見ればいいじゃないかということをおっしゃったんだと思うんですね。そうすると、徳島の人が建築設備をやるんだけれども、すべて東京でやらないと完結した設計にならないと。徳島の工事であるにもかかわらず、全部東京にチェックしてもらわなければいけないということをおっしゃっておられると、そういう趣旨なんでしょうか。その二点をまずお伺いしたいと思います。
  102. 牧村功

    参考人(牧村功君) 今の御質問の一点目、年間三千五百件というのは統計的なデータでございますので確かだと思います。  それから、いわゆる一級建築士を持ってかつ建築設備士を持っている人間が三千人ないし三千五百人いると、これは、これも統計的なデータから推測をしたものでございまして、実質的に実際その中で設計にかかわっている人間というのは恐らく約半数、千五百人ぐらいではないかなというふうに想定しております。  三千件を千五百人で対応するというのは、単純な計算ですとそれはもう全く問題ないわけですけれども、今御指摘のように、地方には先ほど御指摘ありましたように、県で二人しかいないとかということもあり得るかと思います。しかし、このような状況というのは、一級建築士を持って建築設備士を持たなきゃいけないという、業界がそういう認識をしていなかったためにそういう資格を取らなかったと。いわゆる建築設備士というのは業務独占のないものでございますから、あえてその資格を取らなくても、また一級建築士を取らなくても業務ができるということであったがために結果的に少ない人間であったんじゃないかと思います。  今回この制度ができ上がれば、当然それを取ることということが必要条件になってくれば、恐らく二年たてば、また三年たてばその資格者というのは生まれてくるであろうと。とすれば、その過渡的な段階で、今申し上げたようなセンターでそれを法適合性証明だけをチェックするということで対応できるのではないかということで、実は業界の中で混乱が起きないような形でするためにこんな形で当協会としては提言させていただいているということでございます。  今のお話で二つとも回答できたかと思います。
  103. 小池正勝

    小池正勝君 私は、徳島の建物を徳島の人が設計して、それで完結しないで、東京でチェックしなければいけないというのはどうも変だなというのが正直な感想なんです、先ほど先生の御提言についてですね。  それでは、もう時間もありませんから次の御質問をさせていただきますが、これも午前中に政府側と議論がなされた論点なんですけれども、今回、管理建築士でしたかな、管理建築士というのが強化がなされたわけですね。強化がなされて、先ほど三栖参考人がおっしゃっておりましたが、正に建築事務所というのはだれでも開設できる、管理建築士を置きさえすればと。ですから、逆に言うと、管理建築士というのは極めて大切な仕事なわけですけれども、この方は職責も重いし、大事な方なんだと思うんですが、その方が経営者といいますか開設者に対して、これは三栖参考人もおっしゃっておられましたが、意見を述べる、しかし、それに対して尊重義務経営者にはないと、少なくとも法定にはされてないと、こういう状況なんですね。  このことは、今回の審議会答申の中でも尊重義務を設けるべきだという答申があったわけですけれども、今回法律には入ってない。このことについて、大丈夫なんだろうかという心配がしてしようがないんです。  そこで、村上参考人、三栖参考人、大越参考人にこの点についてのお考えをお伺いできればと思います。
  104. 村上周三

    参考人(村上周三君) 御指摘の懸念あるかと思います。  ただ、答申であそこまで強く書いたわけでございますから、法律の条文にしなくても今後是正されるのではないかというふうに私は期待しております。
  105. 三栖邦博

    参考人(三栖邦博君) 今御指摘のとおり、管理建築士の権限強化は非常に、先ほど言いましたように、重要であると理解しております。是非この開設者管理建築士意見尊重させるような実効性の上がる措置を、通達とかいろいろできると思うんですが、できるだけそれは進めていただきたいと思います。
  106. 大越俊男

    参考人(大越俊男君) 私のは構造が専門ですので、現状のところ管理建築士と構造設計者というのは実は余りにも専門が違うという感じで余りあつれきはないんですが、ただ、いわゆるこういった義務尊重で一番大きいと思われるのは、やはり無理をさせるということをないようにするためには、やはり管理建築士がちゃんと権限を持って経営者とは対応できる、こんな事件を起こすような無理なことはしないでくれというようなことが言えるような、そういった権限を持たせる必要はあると思っております。
  107. 小池正勝

    小池正勝君 それからもう一つ、これは三栖参考人にお伺いしたいんですが、今回、事務所協会というのが法定団体化されたわけです。法定団体化されて、なおかつ苦情処理も、先ほどお話がございましたが、苦情処理もやりなさいというふうに責任を課せられたわけですね。  そのときに、建築士の指定登録機関という制度が今回できるわけですが、この事務所協会さんがなるのか、あるいはどうもこの法文上、読ませてもらうと、公益法人であればどなたでもなれるというふうに読めるんですが、それについてどのようにお考えになっていますか。
  108. 三栖邦博

    参考人(三栖邦博君) 加入義務化が見送られ、その代わり加入促進の措置が講じられ、そのうちの一つが指定登録法人制度を使って指定されたところが事務所登録ができるということになりました。私どもは、これは是非その指定を受けるべく全都道府県にある事務所協会が全力を挙げてそういうふうになるように努力していくというつもりであります。既に七つの県では業務委託という形でやっている方ありますし、これは非常に大事なことですので全力をそこに挙げていく、そして、私たちの責任を全うするというふうに思っております。
  109. 小池正勝

    小池正勝君 終わります。
  110. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 民主党・新緑風会の山下八洲夫でございます。  四名の参考人の先生方、本当にありがとうございます。少ない時間でございますので、端的にお尋ねいたしますので、また端的にお答えいただければ幸いだというふうに思っております。  まず最初に、今も若干出ましたけれども、村上参考人さんと三栖参考人さんにお尋ねしたいなというふうに思います。  今確かにお話ございましたとおり、法定団体に認定された団体とされていない団体が今回あるわけでございますが、特に差し当たって一級建築士に特化をいたしまして、二級とか木造ちょっと横へ置きまして、一級建築士さんに特化をいたしまして、私は、指定登録機関をきちっと、弁護士さんの会とかあるいは司法書士さんの会とかあるいは税理士さんの会とか、そのように一つに特化して、例えば仮称でございますけれども建築士の会とか、そういう形で私は団体一つにして、そこできちっと整理していった方がいいんではないかというふうには思っているんです。  それこそ三栖参考人団体のここにも強制加入ということが書いてございますし、こういう方向性を持っていらっしゃると思うんですが、ただ、なぜそういうことを申し上げるかといいますと、今長い歴史がありますのでそう簡単にいかないというのは承知しているんです。それだから激変緩和で、それ十年掛かるか三十年掛かるかは別として、だんだんと順番に整理すれば私はできるんじゃないかというふうに理解しているんです。  それは、何でそういうことを申し上げるかと申し上げますと、例えば建築事務所につきましては、病院もそうでございますが、経営者が資格を持たなくても雇用することによって建築事務所を、一級建築事務所なら一級建築事務所を開設することができるんですね。だけれども、弁護士さんとかあるいは司法書士さんとか行政書士さんは、まず自分が資格を持っていないと事務所を開設することができないということを考えていきますと、もう一方では建築事務所もそういう独立性が強くなりますから、強くなるということは、将来的には地位の向上へつながれば収入の安定も大きくなるんではないかというような気もいたしているんです。  そういう議論というのはなされなかったのか、もしなされていたとすれば、なぜ今回このような形になったのか、ちょっと御意見いただければと思います。
  111. 村上周三

    参考人(村上周三君) 申し上げます。  組織を一つに絞るとか加入を義務付けるとか、随分審議会でも議論出まして、いろいろ事務局でも内閣法制局と相談していただいたそうでございますけど、例えば結社の自由とか、もうちょっと上位の法律概念でなかなか難しいというようなことを聞いております。  それからもう一つは、今最後に先生おっしゃった建築士でなければ事務所が持てないというような業務形態に関しまして、日本には伝統的にゼネコンというような設計と施工一体の業務慣習がずっとございまして、そこではそういう方たちがかなり設計を行っていると。それから、この設計、施工の一体化というのは、海外でもやや増える傾向なんかもございまして、あながちそれを否定するものでもないと。そういう様々な議論を経まして、今回は審議会答申になった次第でございます。
  112. 三栖邦博

    参考人(三栖邦博君) 弁護士とか税理士さんとかは資格イコール業です。ですから一つ団体ということが言えると思うんですけれども、病院と同じように、建築の場合はいわゆる経営する開設者と、いわゆる業を営む病院と医師の資格の医師会は違いますから、私は、資格と業が異なる場合は資格団体と業団体はそれぞれ必要だと思います。  それで、今回、士法の中で、建築士の個人の資格者としての団体と、それから業を営む建築士事務所団体というこの二つが位置付けられたということは、私は方向としては正しいと思います。ただ、なぜたくさんあるのかという御疑問だと思うんですけれども、日本の建築の産業の構造そのものが非常に複雑であります。したがって、そういうふうな過去の経緯からいろんな団体ができているんだと思います。
  113. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 設計と設計監理、それと、今度は施主さんか施工主かは別にいたしまして、これきちっと分離した方がやはりそれこそ安心、安全の確保がもっと高まるんではないかというふうに私は理解をしているんです。  今、業というお話がありましたが、また弁護士さんにいたしましてもあれは業だというふうに思うんですね。あるいは、公認会計士さんにいたしましても業だと思うんです。だけど、現実にはあのような形になっているということは、独立性を評価をし、そしてやはり地位の向上、それからある意味では身分の安定等々、大変すばらしい面がたくさんあるから、倫理綱領含めまして、たくさんあるから今日までこのように立派に発展をしてるんではないかというふうに理解をしてるんです。ですから私はあえて申し上げたわけでございますが、その辺につきましては議論してもなんですから、もうこの辺で結構でございます。  その上に立ちまして、今回もう一つ、ちょっと角度が変わるわけでございますが、今日まで、一級建築士の資格を持っていますと、その方に能力があってもなくても、意匠にいたしましても、構造にいたしましても、あるいは設備にいたしましても、そういう業を行うこともできたんですね。だけど今回は、この新しい新法になってきますと、一定の建築物についてということではございますが、その中に設備と構造については一級の建築士の資格を与えるようになってきたと。  設備で申し上げましても、構造も同じでございますが、実務経験プラス講習を終了すると。実務経験五年と言われておりますから、例えば設備の一級の建築士は、これから新しい方が受けようといたしますと、少なくとも大学を卒業して二年間実務をいたしまして、そこで一級の建築士の合格をして、それから五年間実務をして、そしてそこで一級の設備なら設備の資格を得るということになります。それで、最短距離でいきまして、大学卒業して七年間掛かってしまうと。あるいは、それプラス構造の資格も確保しようとしますと、また構造を五年間実務経験をすると。じゃ、十二年間掛かってしまうと、この両方の資格を得るためには。  現実に、そこまで耐えて今日若い学生が資格確保するだろうかということを考えますと、今日もう一級の資格をお持ちの方は差し当たって、激変緩和期間か何か分かりませんが、多分五年以上たっている方はこの資格を得るための実務経験、あるいは講習等で確保できるかも分かりませんが、新たな方を考えますと、現実にこのような資格が今後若い学生たちが望んでいくだろうかということにつきましてはちょっと心配するんですが、その辺につきまして、構造あるいは設備を担当なさっている牧村先生、大越先生にお尋ねしたいと思います。
  114. 牧村功

    参考人(牧村功君) 今、七年とか十二年待てるかどうかというお話でございましたが、現実的に、私が今勤務している総合設計事務所の中では、プロになれるというのは何年掛かるかということで、大学を出てから大体十年以上掛かるんです。それまでは、チーフの下でいろいろトレーニングをしながら、いろんな勉強をしながらやらないと、建築というものに関して設計者としてプロになるということはできない。となれば、その期間にいろんな資格を取っていくということが十分できるということで、長過ぎるということはないかと私は思っております。  今の御回答でよかったかどうか分かりませんが。
  115. 大越俊男

    参考人(大越俊男君) 先ほど冒頭お話ししましたように、私どもの協会には建築構造士という資格が約十五年ぐらい前から作られておりますが、この資格を取るためには最短でやはり最初二年、いわゆる三年掛けて一級建築士取ります。その後、四年実務を経て五年目に試験をいたしますので、結局やはり最短でも現在三十歳ぐらいしか取れませんし、実際に取るのは、多くはやはり三十五から四十ぐらいの人になります。ですから、それはある意味ではこれでJSCAとしてはずっとやってきておりますし、現在も続いております。  ただし、この数年間の問題がありまして、数年というか十年ぐらいですかね、問題となりましたのは、結局私たちが一級建築士を持っていても構造とか設備は役立たないでしょうと、それに要するに要らないでしょうと、先輩は何で要らないのに取るのというのが実は素朴な意見だったわけです。  そういう中で、現在私たち専門家として一番危惧しているのは、むしろ二十代、三十代の人が一級建築士を取らずに構造設計をやっております。現在、ですからこういう法規制を改正することによって、まずこの若者たちが多分一級建築士取っていきます。そうすると、取ることによってこの資格は、構造の場合はかなり、非常に早い期間で是正されると思っております。
  116. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 それからもう一点お尋ねをさせていただきたいと思います。  基本制度部会での御議論でございますが、これ、建設通信新聞でございますのでどこまで正確かちょっと分かりませんが、ここで特に設備について議論がなされた部分でございます。  三栖参考人でございますが、設備の問題につきましては、専門建築士の創設には賛成だが、一級建築士を前提と考えるのはどうかと、現行の建築設備士から直接の専門資格への道を考えてほしいと、このような御発言をなさっているようでございます。  それから、村上参考人さんでございますが、部会には建築設備関係者が入っていないと、業務の実態を踏まえて混乱のないようにしていただきたいと、このような御発言のようでございます。  それから、構造の、これ、木原さんでございますけど、構造の方は、構造技術者は現在も一級建築士のベースにしているが、設備はもう少し検討の余地があると、特定設備建築士建築設備士の能力に差があるのかどうかも時間を掛けて検討すべきと、このような御心配の御意見がございました。  ただ、この基本制度部会には設備関係者が入ってらっしゃいませんので、設備関係者の皆さん方は逆に違った意味でちょっと心配の発言があるわけでございますが、先ほどもお話ございましたとおり、今建築設備士、いわゆる建築設備士の皆さん、先ほどのお話のとおり、二割が建築方向からと、あと四割弱が電気でございますか、四割強が機械でございますか、そういう関係者がこの建築設備士になられていらっしゃるということでございますが、現行の建築設備士の皆さん方が今度この一級の資格を得たいというふうになった場合、基礎は、一級建築士の資格を取るためには、やっぱり今日までの試験制度で申し上げますと、どうしても、大学では建築科でございますか、そういうところを出ていないとハンディがあって、なかなかまた合格するのが困難じゃないかというふうに思っております。  そういたしますと、先ほど申し上げましたように、今回は、一定の建築物については、三階建て以上、五千平米以上でございますか、これにつきましては一級の建築士の資格がない限り法適合チェックの義務付けが要りますから、そうしますと、その一級を持っていない設備士の方が幾ら設計をなさっても最終的にはその方のチェックが必要となってくるということになるものですから、そういう点では、大変、現行の設備士の皆さん方は大変悩んでいらっしゃるんじゃないかなというふうに思います。その辺の御意見というのは会の中では出ていないんでしょうか。  牧村さんに、もう時間ありませんから。
  117. 牧村功

    参考人(牧村功君) 制度部会の中でどのような議論がされたかということは、記録だけで私は存じ上げているわけでございますけれど、設備の六団体の中で本当にどういう議論をしていたのかということを申し上げますと、単純に、可能であれば今の建築設備士をそのまま新しい設備の専門資格へ持っていっていただきたいという要望はかつて出しておりました。  しかし、それは、いわゆる設備のプロが移行するということは、全く建築の勉強をしていない、建築の基礎がどこまであるかということで、それがない人間が一級建築士の資格を自動的に取ってしまうということになりますと、それ自身が大きな問題であるということもありまして、ある条件付きで移行すべきではないかという提案をさせていただきました。それが、最終的にはやはり試験というものが必要であろうということで、その試験をクリアすれば、建築設備士の人間も一級建築士を取り、設備設計一級建築士になれるということでございます。  先ほどもちょっと申し上げましたけれど、設備設計一級建築士の役割というのは、いわゆる設備のいろんなシステムがあるものをいわゆる建築というものの中に入れ込んで一体して造り上げていくというのが、これが建築の設計というものだと私は思っておりますので、設備設計一級建築士というのは設備を統合していく役割であろうと。建築設備士というのはその各分野のプロフェッショナルとして、例えば電気の人間であれば電気のシステム本来はどうあるべきかということを徹底的に検討して、そして設備設計一級建築士議論しながら設備というものを造り上げていく、そういう立場であれば、大変いいものができ上がっていくだろうというふうに思っております。  ですから、設備設計一級建築士だけですべてのものができ上がるということはあり得ないだろうと。当然のことながら、設備設計一級建築士の後ろには、また仲間として設備の各分野のプロがいないと設備設計というものはでき上がっていかないと、これがいわゆる実態でございますので、一人の設備設計一級建築士がいればすべてのものができ上がるというものではない。これは恐らく構造でも同じ、意匠でも同じではないかと思います。すべてのものが各分野でチームを組みながら対応をしているというのが実態でございますので、その中での一番のボスが設備であれば設備設計一級建築士であるというふうに私自身は理解しておりますので、大きな問題はないかと思います。
  118. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 ありがとうございました。
  119. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。  四人の先生方、御苦労さまでございます。  早速質問をさせていただきたいと思いますが、八月三十一日の審議会答申には、建築士の業務報酬、賃金水準というのが低いというのが指摘がございました。確かに答申で紹介されている金額を見ると、余り高いとは言えないなというふうに思いますが、それじゃ、あえてこの耐震偽装の問題、構造計算書偽装問題を契機とした今回の建築士制度の見直しにおいて本当に言及すべきことであったのかというふうにちょっと疑問と思わざるを得ません。  ちょうど去年の十二月ですか、姉歯氏が証言されましたけれども、ある意味じゃ衝撃的でありました。そこで言ってきた建築士像というのは、施工主に隷属をする、経済的に恵まれない建築士、そういうイメージが醸し出されたわけでありますが、その後、裁判過程でそういうのがことごとくかつらとともにすっ飛んだというふうに認識をしておりますけれども、しかし、なぜかその審議会議論の中では、現在に至るまで施工主に隷属をする、あるいは経済的に恵まれない建築士像がずうっと生き続けてきたんじゃないのかなというふうに思うんですね。  もちろん、個人の問題として今回の問題を片付けるというのではなくして、この建築確認検査制度、あるいは建築士制度の構造上の問題として改善していくことはもちろん必要ではありますけれども、であるけれども、今ここで、この構造計算偽装の再発防止策の一環、あるいはこの絡みとしてこの建築士の業務報酬、賃金水準の改善を取り上げるというふうになりますと、どういうことを意味するかといえば、建築士はその報酬も賃金も低いままであると何をしでかすか分からない団体だよと、こういうことを自らレッテルを張るようになってしまうのではないのかと、これで本当にいいのかというふうに私は思わざるを得ないんですね。建築の皆さん、あるいは建築士団体関係者はそのことを甘受されるんだろうか。  あわせて、審議会として、ここに載っているのは社会保険労務士とか薬剤師とかいろいろ載っていますが、薬剤師もあるいは社会保険労務士も食い詰めたら何するか分からないというような、そういう集団なんだという認識に立っているのかというふうに思わざるを得ないのでありますけれども、あえてこの報酬とか賃金の問題をこの答申の中で取り上げたことにつきまして御説明、村上参考人にお願いしたいと思いますし、また建築士として三栖参考人あるいは大越参考人に御意見をお聞きしたいと思います。
  120. 村上周三

    参考人(村上周三君) 建築設計のいろいろ末端では極めて業務環境が悪いと、賃金水準も低いというのは、これは私は事実だと考えております。過去に、建築が好きだからそれに耐えて、皆さんほとんど十分な報酬ももらえずに設計してきたわけでございますけれども、そういう倫理に期待するのも限界に来ているのではないかと、これはやっぱりある程度確保しないと、どうしても限界が来てトラブルが発生するのではないかと、そういうことを懸念して審議会答申に入れたわけでございます。  それで、こういうことを入れると、報酬水準が低ければ何をしてもいいのか、何をするか分からないと、そこまで推論するのは予想しておりませんで、あの表現の範囲で御理解いただければ有り難いと思います。
  121. 三栖邦博

    参考人(三栖邦博君) 報酬が低いというのは、これは入札で設計者を決めるという、いわゆる創造的な文化的な社会資本を造るという、そういう大事な仕事をする設計者に対して、安いところにやらせるという、それがそもそも私は全体的にその報酬を低くしている大きな要因だと思っております。  私たちは、設計料入札制度はやめるべきであるという運動をずうっと建築のほかの団体とも連携をしてやっております。コンペであるとかプロポーザルであるとか、そういうふうにそのプロジェクトにふさわしい経験、実績、提案能力のあるところをまずは選ぶべきだと、そういう入札制度をなくしていくこと、これが建築士全体の地位向上には不可欠であると、そのように思っております。
  122. 大越俊男

    参考人(大越俊男君) これは、資格問題で私も提案しましたように、基本的には資格があっても、やはり報酬というのはある意味の社会的な地位を確立するために大変重要な問題だと思っております。  本来ですと、私は今回、構造設計者という立場で非常に賛成はしておりますけれども、でも、実務的に言いますと、だれが、では発注者と契約するかというと建築家なんです。では、建築家の立場はどうなっているかというと、一級建築士三十万人いますけど、実際にそのうちでいわゆる設計を営んでいる人は三分の一、十万人と言われています。  そういう意味ですと、本当に設計をちゃんとできて、社会が安心できるような、いわゆる良質な社会資本をこれから、まあ造ってきたわけですけど、そういうのを確立させるという意味では、本当は建築より設計者の地位確立、つまり、今度は構造設計者、設備設計者はこれで随分審議されましたけど、実はその大本になる、つまり報酬を直接もらうという人たちは実は本当の意味では確立していないんですね。そういう意味で、まずその各地位を、本当はそうすることによって、やはり報酬というのはある意味では社会が認めてくれるから払っていると思っております。そういう意味で、やはり報酬が低いということは社会が認めていないんではないかというふうに素直には思っております。  それともう一つ、やはり、先ほど村上先生の方から話がありましたように、現在非常に若者が、特にエンジニア、技術者離れ非常にしております。それはなぜかというと、やはり大きく言うと報酬の問題が非常に大きいと思います。やはり、そういう意味で、質の高い技術者をどうやって我々は大学に入れ、それで構造設計者なり設備設計者として育てるかというのは、実は今大変な問題に入っていると思います。そういう意味では、やはり、少なくともこれは確かに倫理の問題とは思いますけれども、やはりそういった社会的地位があって、認められて、ちゃんとお金があると。だから、いわゆる学生も建築学科を、建築家を目指すという、そういうルールがきれいに今多分ずっと崩壊し始めたんじゃないかと思っております。  そういう意味では、もう一度、いい時代という言い方はおかしいと思うんですが、やはり良質な資産をつくるためには、それだけ報酬もちゃんと払って優秀な人材を集めなきゃいけない建築生産システムであるということをもう一度認識しないと、やはり制度だけつくったりしていたのでは多分若者は逃げていく一方ではないかと思っております。
  123. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 私、言葉悪いものですから、皆さん、気分を害さないようにしていただきたいと思います。  続いて、今回いわゆる去年の耐震偽装から建築士改正になってくるわけでありますが、これ村上先生、耐震偽装、構造計算書といいながら、出てきたのがこの構造建築士設備建築士というのが出てきたわけでありますけれども、この設備が出てきたのはどういうところからですか、今回の耐震偽装の問題の中から出てきたのは。
  124. 村上周三

    参考人(村上周三君) 建築士の専門分化という問題は昔からこの分野で議論されておりまして、海外ではいわゆるデザインをする人と構造とか設備、エンジニアとは割合分かれておりまして、そういう国が多うございます。  それで、日本でもその専門分化をどうするかという議論はずっとなされておりまして、今回耐震偽装の問題で、その背景の一つとして構造設計というプロフェッションがちゃんと確立されていなかったと、それをちゃんとやりましょうと。そういう目で見ますと、設備も同じように非常に専門分化をすべきところがなされていないと、このチャンスにやろうと、そういうことでございます。
  125. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それで建築設備士というのが既存であって、ただ、補助業務を行う者という位置付けのようでありますけれども、実際はこの元請の意匠設計事務所にはできない設備設計を担っているのは設備設計事務所であるという指摘もございます。先ほど牧村参考人からは、今の設備士がそのまま行けるようにというふうに話がありましたけれども、それで、昔沖縄が復帰したときに、沖縄弁護士が法体系違うわけですね。ただ、一括してもう日本の弁護士として認めるという、そんなスタイルを取ったことがあるわけでありますけれども、そんなことも本当に考えていかないと現場が随分混乱するんじゃないかななんというふうに思っているところでございます。  そこで、牧村参考人にあと簡潔にお答えいただきたいんですが、先ほども御提案ございましたけれども、この建築設備士の業務実態どうなっているのか。また、今回の改正でどのような影響が予想されるのか。また、今後の建築士設備士の関係いかにあるべきか。この点についてお答えをいただきたいと思います。
  126. 牧村功

    参考人(牧村功君) 基本的に設備技術者、いわゆる建築設備士という者は今三万二千人いるというわけでございますけれど、先ほども申し上げましたように、電気、空調、電気系、それから機械系、建築系ということで分かれているというのはこれが実態であると。  先ほど申し上げましたように、彼らはすべていわゆる一級建築士として設計していくという立場ではなくて、申し上げましたように、一級建築士というのは建物を全体的にとらえていって設計するという立場でございますから、そこの中のスペシャリストとして建築設備士というのはこれからは十分活躍していけるというふうに思っております。ですから、電気系の人間が最終的に設備設計一級建築士をねらうのであれば一級建築士という試験を受けて、またスペシャリストとしていくのであれば建築設備士という道でもって活躍できるであろうというふうに思っておりますので、双方の資格というのが長い目で見れば双方補完し合いながら設計ということが行っていけるんじゃないかというふうに思っております。  短期的に見ますと、やはり設備設計一級建築士がある数が生まれるまでは何らかの補完措置が必要であるということで、先ほど提案さしていただきましたように、今一番問題になっていますのは、地方で設備設計一級建築士の人材が少ないときにはせめて建築設備士が協力をして、その結果を、先ほど他の県でやったものを東京でやるのは何かという御質問ございましたけれど、これはあくまでも構造と同じようなペアチェックという概念で考えていただければ、あくまでも法適合性証明を第三者がやって、そしてあなたの設計は問題ありませんという形で戻せば、やはりそこで十分仕事ができていくということになるかと思いますので、短期的にも長期的にも何らかの補完をすれば問題なく運用できるのではないかというふうに思っております。
  127. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 終わります。ありがとうございました。
  128. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。四人の参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。  私、まず四人の参考人の皆さんにお聞きをしたいというふうに思います。今回の改正案建築士の皆さんのいわゆる資質でありますとか能力向上というのがうたわれております。そもそもでございますけれども、いわゆる建築士の皆さんの資質というものは何なのかと、そして使命というものは何なのかと、この点についてお聞かせいただけるでしょうか。
  129. 大江康弘

    委員長大江康弘君) そうしたら、村上参考人から順番にお願いします。
  130. 村上周三

    参考人(村上周三君) 資質と申しますのは、建築士としての専門的能力でございます。それから、使命と申しますのは、長い世代、次のジェネレーション次のジェネレーションにわたって国民の資産として残るようないい建築を造ることと、そういうふうに考えております。
  131. 三栖邦博

    参考人(三栖邦博君) 資質は当然のことながら、建築士の受験資格にもあるように、それだけの勉強をし、それだけの実務経験もあると、そういったことが当然必要だと思います。それから、使命は、これは士資格全体に同様にあるように、人々の生命、財産を守るということに尽きると思います。もちろん、景観の問題であるとか人々の健康の問題、環境の問題、いろんな問題が詰まっておりますけれども、そういったことを確実に担保する、そういった使命があると思っております。
  132. 大越俊男

    参考人(大越俊男君) これは、資質については、私ども構造技術者の試験に当たって実は二つのことから資質を議論しております。いわゆるそれまで四年間、一級建築士にとって四年間にやったまず仕事の話があります。それで、それについてはどうやって確認するかというと、面接を実は行います。その中で、倫理問題であるとかそういったいわゆるやらなくてはいけないことについてちゃんとやってきたかということで実は資質を問うております。ですから、そういう意味ですと、いわゆる私どもは、一日目は面接で二日目は八時間の設計の試験という二つで資質を求めております。  それから、使命というのは、私どもはやはり、構造設計をやっている人は多分みんな、ああいう姉歯氏みたいなのは特殊で、通常はやはり自分の建物は百年残したいというのを持っております。それで、これは構造設計者になるということは基本的にはそういった天命というぐらいに我々は思っております。そういう意味では、使命という以前に我々はそういうすべてのものをやはり社会資本として造る、逆を言えば、そういう使命を持った人しか実は試験に合格させませんという、お答えになるかよく分かりません、ということです。
  133. 牧村功

    参考人(牧村功君) 先ほど私どもからお渡ししました資料の中に建築設備技術者協会の倫理綱領というものがございまして、その前文に正に今の御質問の回答があるというふうに認識しております。読み上げますと、「人間の健康と安全そして自然環境の保全を担う技術者として、その使命と職責を自覚し、品位の向上技術の研鑽に努め、誠意をもって職務を遂行する」と。これ、正にそれができるのが資質であり、それを行動することが使命であるというふうに認識しております。
  134. 小林美恵子

    小林美恵子君 ありがとうございます。いわゆる国民資産、いい国民資産を造っていくと。それも生命、財産、そしておっしゃられたように、人間の健康とか安全、こういうことをしっかりと持つといいますか、それが資質であり使命であるというお話をお伺いしました。  そういう使命をお持ちになっている建築士が、今回のいわゆる耐震偽装事件といいますのはそういう建築士が耐震偽装を行ったと、しかも建築物の性能のうち最も重要な構造の安全を傷付けたというのが重大な問題だったというふうに思うわけです。この点につきましては、原因を解明し、改善を図るのは当たり前のことで、私どもはそもそも建築分野の規制緩和、建築確認民間開放もそうでございますし、そしてまた安全軽視のコスト削減も、これがもたらしてきているというふうに思っているんですけれども、今日は建築士法にかかわる話でございますので、こうした、いわゆる耐震偽装の事件が起こりましたけれども、こうした問題を解決する上で建築士法上で核となるものは何なのかと。今回の改正案でその核となるものが示されているのかどうか、この点について四人の参考人の皆さんにお聞きしたいと思います。
  135. 村上周三

    参考人(村上周三君) 大変お答えにくい難しい質問でございますけれども、一連の六月の法改正含めて、その耐震偽装を防げるような大概の手だては完備されたというふうに考えております。それから、残る点は技術者の倫理教育、行動規範を今後この法令規制とは別のところで進めることだと、そういうふうに考えております。
  136. 三栖邦博

    参考人(三栖邦博君) 今回の改正の骨子、私、先ほど申し上げた中に三つ挙げておりますが、特にその団体による自律的な監督指導が非常に大事だと思っております。我々みたいな専門職業、しかも業務の独占が与えられている専門家としては、やっぱり自浄作用、それが働かない業界というのは社会から信頼が得られないと思っております。  そういった意味で、加入義務化は見送られましたけれども、それに代わる措置として加入促進ということで、そういうふうに社会から信頼される設計監理業界、そういったものをしっかりと社会に根差していきたいと、そのように考えております。団体の役割が強化されたということは一つの核になるんではないかと思っております。
  137. 大越俊男

    参考人(大越俊男君) これは、私、冒頭にこの原因は何かというのでお話しさせていただきましたけれども、やはり匿名性だと思います。これは、いろんな建築界で少しちっちゃい事件もありましたが、その中で、匿名性から外していきまして表へ出すということでほとんどは改善されていることもあります。そういう意味で、今回、本当に彼がその名前を表へ出せない、出せないというか、法律もないので出したくても出せないというのも一つありますけれども、そういう意味で、出すことによって私はこの事件は大半はもうこういうことは起こらないんじゃないかと思っております。
  138. 牧村功

    参考人(牧村功君) 先ほどの資質と使命のところでお話しさせていただきましたように、やはり倫理が一番重要だというふうに思っております。  従来、私どもの年代の設計者というのは、いい建物を造るのは当たり前であって、それがもうみんながその気持ちで設計ということをやっているという、それが当然だと思ってやっておりました。しかし、現在はそういう感覚で設計をしている人がだんだんだんだん少なくなってきているんではないかという嫌いはございます。これは正に倫理観の欠如ということで、これは何も建築業界だけじゃなくて、もう各企業今いろいろなところでトラブルが起きています。これはもう倫理観の欠如でございますので、この倫理教育、先ほど村上先生もお話しされましたように、大学の教育段階から、またもっと若いときからその倫理というものを、倫理観を育成していかないと、結果的にはこの前のような事件が起きてしまうんではないかと。  これは制度でカバーできるものではなくて、やはり最終的には教育であろうということで、私どももCPDの中で少なくとも五年に一回は指定講習を、総合講習を受けなさいと。その中の冒頭に、倫理というものに対して、技術者倫理どうあるべきかということを約三十分、四十分時間を掛けてそのメンバーに伝えて、もう一度自分の仕事と倫理というものを考えてくださいという、そういう講習も行っておりますので、正にその倫理教育が重要ではないかというふうに思っております。
  139. 小林美恵子

    小林美恵子君 私、緊急調査委員会報告を出しておりましたけれども、それを読みますと、設計、建設の技術がいかに早く安く造るかという面で利用されていることが一般化したと、これがディベロッパーに安さを追求し、性能は最低限ぎりぎりに向かわせたと指摘もしています。これ、緊急調査委員会報告指摘でございます。つまり、こうしたコスト削減競争に身を置いたり巻き込まれたりした建築士が偽装を行ったと。私、行った建築士を擁護する気はもう全くございませんけれども、ただそういう業界の体質といいますかね、があるんではないかというふうに思うんですね。  こうした中で、建築士の資質とか能力とか倫理の面を重視、強化をすると。それ自身は大事なことだと思うんですけれども、果たしてそれだけで解決ができるんだろうかと。本来の皆さんがおっしゃる使命というのが果たされるんだろうかというふうに思ったわけでございます。やっぱり、その点ではディベロッパーでありますとか建設会社とか施工との従属関係を是正する、やっぱり建築士の皆さんの独立性の確保というのが大事じゃないかというふうに思いまして、最後にこの点について皆さんの御意見を聞いて、質問を終わりたいと思います。
  140. 村上周三

    参考人(村上周三君) ディベロッパーが分譲マンションを造りまして、それを販売して、あとは手を離れるという形は、これ近年起きた話で、従来、発注した人が自分で使うということと構造が違っておりまして、今のマンションの販売業者はその経済合理性ということでなるべく安い方がいいということで、今御指摘のような傾向があるわけでございます。  ですから、今の建築界の設計と生産のシステムがそういう分譲マンションの発注という形態に十分に対応し切れてないということは、私御指摘のとおりだと思います。それで、今回の法律でも、いわゆる分譲のマンションに一括丸投げ禁止ということをうたっておりまして、政府案から出ておりますけれども、それは特に分譲マンションに考慮したものでございます。
  141. 三栖邦博

    参考人(三栖邦博君) 建築の場合は、今、村上さんも言われたとおり、建築主が必ずしも所有者であったりユーザーでない場合が非常に多い。どんなビルでも建築主がビルを建てるけれども、そこには大勢の方が使われるわけですから。そこでこそやはり建築士の、建築士事務所の使命感があるわけであります。  先ほど冒頭に申し上げましたように、これ倫理観の欠如で我々にとっては青天のへきれき、あってはならないことが起きたということは事実でありまして、ただ、いろいろなその構造的な、いわゆる重層構造になっておって責任が不明確であったり、それからルールが足りないと、そういうことで、今回の法改正においてはいろいろな措置が講じられ、独立性確保に向けては大きな前進があったと思っております。建築士事務所業務の適正化が行われるようなルールがいろいろ新しくできて提案されております。それから、管理建築士、これはかなめになる役割をする建築士ですけれども、それの責任と権限、要件が明確になってきたということで、これをベースに大いに独立性が更に確保されて、社会から信頼される建築士事務所建築士が仕事ができるスタート地点になるというふうに理解をしております。
  142. 大越俊男

    参考人(大越俊男君) この問題は、私ども、随分長く議論されております。その一つは、建築は、先ほどのお話にもありましたように、元々発注者が所有するものだったわけです。そういう中で、こういういわゆるマンションというもので初めて発注者と居住者、つまり所有者が変わるという事態がこの十年ぐらい非常に出てきたわけですね。  そういう中で、我々が本当は望んでいたのは、いわゆるマンション法というのを作っていろんな制約を加えるべきじゃないかというのを実は考えておりました。ただ、そういうのは多分社会的に許されないと思うので、考えだけであります。  それから、コスト削減というのは、これは私はもう四十年設計しておりますけど、これは当たり前です。エンジニアになったら絶対コスト削減というようなプレッシャーはどこでもあります。それで屈するというのは、今回、JSCAで多分三千件ぐらい要するに相談窓口乗っております。それから、その後でも政府の手助けしていろいろ見ておりますけれども、実際にあの事件以外はありません。そういう意味で、あの事件をもってどうの、いわゆるシステムって本当に議論するのは多分難しいんだと思います。そういう意味で、先ほどおっしゃいました施工との独立についても、じゃ、ほかのはみんなそうかというと全然なくて、実際たった一件なんですね、私がつまり今三千件ぐらいで知るところで。  ということで考えていくと、何というかな、施工との独立というのは、いわゆる本当にそれが悪いというわけではなくて、アメリカなんかも最近は例えば設計、施工っていうのは三分の一ぐらい増えて、すごい合理的だというふうな形で変化したんですね。そういう意味では、必ずしも日本社会が発展する上で悪いかというと、必ずしも悪くはないと思います。そういう意味で、今回、六月通りましたピアチェックありますんで、多分それでほとんどはそういった問題はなくなると思っております。
  143. 牧村功

    参考人(牧村功君) かつては建築主はお客様、いわゆるお客様は神様であるということで、客の言うとおりはもうそのまま聞きましょうという風潮がかなり多かったかと思います。しかし、その客自身がいろいろ問題があるということで、今、この世の中はいわゆるトリプルボトムラインといいまして、経済性の話とそれから社会貢献の話とそれから環境と、この三つの軸を常に意識しながら、企業自身も存続できないと。これはもう正に一個人にとっても全く同じことであって、その感覚を片方が持つんじゃなくて全員が関係者が持つということがやはり一番重要であるというふうに認識しております。  そのような形になれば、早く安くということで、それの被害者が建築士であるという単なる一方通行でございますんで、そのときに建築士が、これはおかしい、ノーだよと言える立場で、というよりも、当然のことながらプロですからそれを言う立場であるわけです。その立場を行使して社会貢献、良好な社会ストックになるような建築物を造っていくということが建築士の使命ではないかというふうに思っております。
  144. 小林美恵子

    小林美恵子君 ありがとうございました。
  145. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社会民主党の渕上でございます。  本日は、参考人の方々、大変御苦労さまでございます。  まず、村上参考人にお伺いをいたします。  今般の事件では、法令を守るべき資格者である建築士が職業倫理を逸脱をして構造計算書を偽装するという、国民の信頼を根底から失う事件が発生したわけですね。そこで今回の法改正と、こういうことになるわけですが、恐らくこの事件で私は明らかになったことは、建築行政建築士にかかわる問題、建設、建築活動にかかわる問題というのが出てきているというふうに思うんです。例えば、建築活動にかかわる問題としては、建設業界の業としての在り方、下請、元請、孫請、それから労働問題における様々な問題が発生しているようなことが業界の中で今起きていますね。  そういうようなこともあるし、建築行政建築士に関する法制度という、今回の法改正参考人は非常に努力をされたというお話でございましたので感謝を申し上げる次第でございますが、やはり私は抜本的に法を改正してはどうかという立場で質問したいと思うんでありますが、やはり政令だとか規制だとか通達だとかというのが余りにも多過ぎるんじゃないかと。したがって、やはり今日のように建築業界が高度化し専門化してきている段階における法体系の在り方というのをやはり根本から見直していくことということが大事なことではないかというふうに思っているところでございまして、そのために、今、各同僚の議員からも様々な問題点が出されておりますけれども、いろんな問題点が出てきていると。これをやはり法的に解決をしていく手段ということも必要じゃないかと。その上で、やっぱり抜本的な改革をしていくべきではないかと。  今回の法改正に当たられてみて、そこのところはどのようにお考えになっているのか。将来の、これから先の建築業界、同時に建設、設計をされる人々の問題等など含めて先生のお考え方をお聞きしたいと思います。
  146. 村上周三

    参考人(村上周三君) お答えします。  先生御指摘のとおり、非常に複雑になっているというのは事実でございます。  それで、今回、ただし非常に国民の信頼を著しく損ねて、その対応策が極めて緊急性が求められていたということで今回私どもは審議会答申を作らせていただきました。極めて緊急性が高かったということでございます。  それで、基本的に、私、冒頭に申し上げましたけれども、法令規制というのは限界があると。これは悪いものを排除するには役立つけれども、いいものを造るインセンティブを与えるわけじゃないということで、今後は、法令規制とは別に、産官学民が協力して社会資産となるような建築を造る、そういう体系を目指すべきであると考えております。
  147. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 今お話ありましたように、今回の場合は社会的な問題になったわけですね。大変国民に対して不安を与えたわけですから、ですから緊急性あったことは、これは了解します。  その上に立って、先生、どうでしょうかね、やっぱり場当たり的、緊急性を場当たり的とは言いませんけれども、やはり基本的なところをちゃんと解決していかなきゃならないと思うんですが、やはりそういう改正をしていこうという雰囲気はあるんですかね。
  148. 村上周三

    参考人(村上周三君) 実を申しますと、建築基準法とか建築士法の問題を今回の事件が起きてからいろいろ調べてみますと、例えば昭和四十年ごろから建築学会から改正の要望が出されております。昭和四十年ごろからです。ですから、ずっと問題はいろいろ指摘されていたわけです。でございますから、今回たまたま非常に不幸な事件を契機にして、私、かなり根本に迫る、例えば専門分化とか、根本に迫る改革ができたと、そういうふうに理解しております。
  149. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 その場合、建築基準法の第一条で書かれている目的というのがあります。加えて、やはり消費者保護という立場で建築基準法も考えなきゃならないと思うんですが、その点、いかがでございましょうか。
  150. 村上周三

    参考人(村上周三君) これ建築基準法の問題かあるいは別の金融とか保険とかそういうシステムかは私直ちに答えられる立場にないんでございますけど、両方セットにして最後のセーフティーネットとして、これほかの商品に比べますと建築の場合は非常に高額でございますから、何らかのセーフティーネットのシステムがこれは必須であると、そういうふうに考えております。それを建築基準法でやるかどうかは私はちょっと今、今日はお答えできません。
  151. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 それでは、業界を組織をされておる三人の方にそれぞれ同じ質問をいたしますけれども、私はやはり国民の生命と財産を保護するという立場で、ということは、やはり消費者保護の立場を明確にしていかなきゃならないと思うんであります。そこで、その点が少し業界としての発言というのはちょっと弱いんではないかという気がいたしましたので、もしお考えがあればお述べいただきたいと思います。  そこで、やはり今般の事件を考えてみて、問題になってきて出されていることを考えますと、やはりさっきも言いましたように、消費者保護の視点というのが若干弱いのかなという気がしながら、それは質問をすることにして、建築士の身分の安定の問題について一つ。ここのところは、一つは身分の安定をしていくための資格制度の問題の在り方ということをどのようにお考えになっておられるのか。  ここのところは、やはり設計者の位置付けというんでしょうか、そこら辺りのことを考えると、資格と今度は建築士の報酬の問題というのがかなり大きく議論されているようでございますんで、そこら辺のところは協会としてやはり果たす役割の重要なところであろうと思うんですが、資格の問題と報酬の問題、制度上の問題についてどのようにお考えになっているのか。  とりわけ、資格のときに、例えば意匠だとか構造だとかといったら、横横の関係はいいかもしれぬけれども、建物全体のことを考えるとばらばらでやっちゃいかぬと思うんですね。しかし、どこが監理をして、例えば構造の方が物が言えるのか、なかなか言いにくいんじゃないかというふうに思いますね。では、意匠の方が物を言うかというと、必ずしもそれも言いにくいんじゃないか。こういうところというのはやっぱり協会がやるべき仕事じゃないかと思うんですが、ここのところが整理されないと建物全体に対して安全かどうかというのはなかなか分かりにくいんじゃないかというのが、私は資格に対する少し意見を持っているところでございます。  次には、やはりそれぞれの建築士の持つ責任と独立性、とりわけ独立性のところと責任のところは協会の果たす重要な社会的な役割の一つではないかというふうに考えておりますが、それぞれの参考人の、協会の関係する方々の御意見をお伺いいたします。
  152. 三栖邦博

    参考人(三栖邦博君) 消費者保護、これは団体の大変重要な役割の一つと心得ております。私どもの団体も、建築無料相談、それから苦情処理、そういったものを受け付けて、その解決をすることを大きな事業にしております。  それから、資格の話ですが、建築という、建築は、一つでき上がって、構造も意匠も設備も仕事としては分かれるけれども、これはでき上がったものは一つで、それで性能、機能を発揮するわけですから、切り分けはできないわけです。  私どもは、横横とかの関係を言われましたけれども、建築はやはり依頼主からワンストップで受ける、それがやっぱり意匠設計とか建築設計とかと言われているところを担当する者が全体の品質のグレードを設定し、スケジューリングをし、予算を組み、そして構造とか設備技術者の協力を得ながら一緒にやっていくと。あくまで、しかし統括的な、全体的な責任は一義的には建築士、前面に出る建築士、いわゆる元請と言ってもいいんですけれども、そこが持つと。そういうことに今のシステムはなっておりますし、その中で更に専門分化、高度化が進んだ技術者を更にその部分はその人でなければできないというようにしたわけですから、大きな前進があります。ただ、大事なことは、建築はあくまで一つ、一体のものであるということを前提にしないで、ただ切り分けてしまうと私は大きな問題が起こると思います。  それから、報酬の問題ですが、これは各団体が、二十年前まではそれぞれの団体の料率表というのがありました。ところが、公取からの指摘で廃止されまして、それ以後は告示一二〇六ということで、ある基準が示されております。そういったことの今見直し、そういったことを定期的にやっていくとか、そういう考え方が示されておりますので、我々団体もできるだけ参加して、適正な報酬基準になるように、その実効性が上がるように協力していきたいと思っております。  それから、独立性のことでございますが、これは、依頼主から仕事を受けるのはあくまでも建築士事務所ですから、やはり建築士事務所がやはり独立、自律性を持って仕事ができない、どういう企業の中にあっても必ず建築士事務所登録をしてやるわけですから、そこのところのルールをしっかりさせて、先ほどから話が出ておりますけれども、技術的な責任を持つ管理建築士をしっかりさせるというところが大事だと思いますし、今回の法改正でそれが随分前進していると思います。  団体の役割は、そういう建築士事務所が社会からちゃんと信頼されるように、団体として自浄作用がちゃんと働いているというふうに安心してもらえるようにしていかなければいけないと思っております。
  153. 大越俊男

    参考人(大越俊男君) 多分三点あったので、一つずつお答えいたしますが、まず消費者の立場というのは、確かに我々構造設計者、特に協会として実は反省しております。  それはなぜかというと、やはり法体系、もう御存じのように、幾ら読んでも多分分からないと思うんですね、一般の方は。そのぐらい実は、海外から見ても、例えば海外のビルディングコードというのは非常に一冊厚いですけど、一冊で分かります。ところが日本の方は、法律があり、施行令、それから告示、その他がこうあるわけですね。そういう意味で非常に、多分、これはプロでも難しいんですから、国民に理解できるわけがないと思うんですね。そういう意味ですと、我々、本来それをかみ砕いて、やり出したところでした、ちょうど。それで全国規模で県ごとに構造展というのをやりまして、実はキャンペーンをやっているやさきにこの事件が起きてしまいました。ですから、そういう意味では我々、確かに協会としては責任があったなという気もいたします。  と同時に、昨年度、この事件で私は随分テレビなんかに出ましたけれども、一番がっかりしたのはやっぱり設計があるって知らなかったんですね。あの事件まで、実に設計者がいるなんて国民はだれも知らなかった。そういう中で、構造がまたあるなんてだれも知らなかったわけです。そういう中であれがわあって出たもんで、一遍に我々ばれてしまったといいますか、そういう意味ですと、社会システムがあれで本当にクローズアップされたんですね。  そういう意味で、今我々、次に出てくるのはおっしゃるとおり倫理の問題です。私どもは倫理規定がありまして、実際上いろんな処分を行っております。やはり協会として独立性を保つということは、除名処分がないと駄目です。ですからこれは、こういうのはやはり協会の独立、責任のためにやむを得ないんですね。ですから、これ自体、これは我々は国民に対する当たり前の規定だと思っております。  それから、報酬の問題は、やはり先ほど、同じことになりますが、やはり公正取引委員会というのがありますんで、我々協会としては実は何も言えません。そういった正しく制度が動くということは協会として会員には伝える、例えば契約書はちゃんと作らなきゃいけないよとか、いろんな規定を守りなさいとは言っております。そういう中で、やはり国民に理解されない限り、多分これは身分の安定もないし、報酬もないと思っております。そういう意味で協会は、やはり国がこういうことを言うわけではなくて、我々協会が自分たちの独立のために、国民に少しずつでも、何といいますか、啓蒙していかなくちゃいけないと思っております。
  154. 牧村功

    参考人(牧村功君) 消費者保護という点で、設備の設計技術者としてお話し申し上げますと、例えば大規模ビル、また中規模でも結構なんですけれども、設備というのはやはり見掛けよりも性能重視でございます。ですから、建物を引き渡したときにその性能が出ているかどうかというのは、設備に関してはすぐ見えるわけです。  ですから、引渡しのときにその性能保証する、性能を満たしたものをお渡しするということが大前提でございますので、消費者にとってみれば、建築のユーザーにとってみれば、設備というのはすぐ間近に見えてそれを引き取れると。これはまあ構造は地震が来ないと分からない、それから意匠系のものは見た目、触った段階で分かりますけれどもその裏は見えないということで、機能を重視した設備というのは本当に消費者というのはすぐ理解できるということで、大変その三つの分野で特殊な背景にあるというふうに思っております。  それから、今回の一連のことで一番大きな問題は、先ほど大越さんからも話ありましたように、消費者が設計者がだれか全く顔が見えなかったと。今回、意匠、構造、設備ということでもって、そのだれであるということは表に出ると、法的にも責任があるということになりますと、当然のことながら消費者はそれは顔が見えるわけです。顔が見えるということは、そこでいろいろまた議論が発生してよりいいものができていくということで、これは結果的には消費者保護、国民の生命等の保護というふうにつながっていくんじゃないかというふうに思っております。  それから、いわゆる設計者としての建物、統括していくのはだれかと、これはもう三栖さんと全く同じ意見でございます。基本的には、ある一人の人間が全体を総括しながらいろんな設計者のいいところを使いながら統合していくと、これがアーキテクトの存在だというふうに思っておりますので、それをより品質の高いものにしていくというのがエンジニアの役割であろうと。そこで、その三者がいて初めてその設計者としていいものができ上がってくれば、結果的には自分自身の身分というのもだんだんだんだん保障されていく、独立性も生まれてくるということではないかと思います。  それから、報酬ですが、これはもう前々からお願いしていたことでございます。かなり長期間にわたって改正がされていなかった告示の一二〇六、これに関して、今回、意匠と構造と設備、それから統括するという業務量、各々の業務量が標準的な建物で何人工あるかということが明確になることによって、意匠系、構造系、設備系の各々のフィーというものが明らかになってくると。そういうことが明らかになれば、建築主もそれに対してそれなりのフィーを払わなきゃいけないという、結果的にはそのようになってくるんじゃないかということで、やはり業務内容、業務量というものを明確にすることによって、結果的に報酬というものがいわゆるリーズナブルな報酬というものにつながっていくのじゃないかというふうに思っております。
  155. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 終わります。
  156. 後藤博子

    ○後藤博子君 最後になりますので、もう少し、しばらくよろしくお願いいたします。  国民新党の後藤博子と申します。よろしくお願いいたします。  この事件が起こったときに、多分皆さんは怒り心頭に達したんじゃないかと思うんですね。皆さん方の技術とかそういうものが、ただ単に何か信頼を失ってしまったという事件につながってしまって、いつもいつもお仕事をされている現場の人間にとっては、私も午前中お話ししたんですけれども、私はまだまだ本当に小さい会社設備設計、電気工事士を置く電気工事屋の女房でございますので、長年その仕事をしてまいりまして、朝からちょっとそんな話をしておりまして、特に私は設備の方なもんですから、今日牧村先生お見えいただきまして、ようやく建築設備が並んだかというように非常にうれしく感じております。だからといって、建築の皆さんが何とかという文句は言うつもりは絶対ございませんけれどもですね。ようやく、やっぱり建築の皆さんから私たちはお仕事をいただくものですから、どうしても建築からの仕事でどうしても地位とか位置なんかが少し下になってしまっていることに、ずっと三十年費やしてきたものですから、ついそういう言葉が出てしまいました。(発言する者あり)はい、ありがとうございます。  そういうことで、先ほどいろいろ倫理の問題とかそういうことをお尋ねしようかと思っておりましたけれども、ほかの委員の先生方がそちらお尋ねありましたから、私はじゃちょっと働く者の立場から少し質問させていただきたいと思っております。  このたびは建築士の資質や能力向上ということで定期講習の受講を義務付けたりしておりまして、受講していくということは義務付けになりましたが、そのためにはやはりその受講するための費用だとかそれに掛かる時間とかいうものを、どうしても働く者にとっては負担の費用が掛かってまいります。その辺のことで、経費の負担は個人が負担されるのか、あるいは会社がある程度負担をされようとされているのか、お尋ねします。  それと同じようなことで、一級建築士制度が今度創設されまして、資格を取ったり、設備設計一級建築士と、そういうものをまた資格を取ろうかということになったときに、勉強する問題とか試験を受けに行く時間だとか、そういうお金とやっぱり時間が掛かるわけですが、その辺を会社がどうフォローされるのか、あるいはそういうのはやっぱり個人的なものだから個人がしっかり取ってもらうと、会社を休んででも取ってこいと言われるのか、あるいは協会さんが何らかの方法で働く方々のフォローをされるのか、その辺のお考えをお聞きしたいと思いますので、それぞれにお考えを述べていただいてよろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。
  157. 村上周三

    参考人(村上周三君) 講習を受けるための費用等は、これは個人の資質を維持するためのランニングコストで、基本的に個人が負担すべきものであると、私はそう考えております。
  158. 三栖邦博

    参考人(三栖邦博君) 初めて講習が義務化されたということは、大変高く評価しております。それで、今御質問の個人か会社の負担かというのは、それはそれぞれの会社に又は個人によるのではないかというふうに思います。
  159. 大越俊男

    参考人(大越俊男君) これは多分、私が知る限りでは、実は組織によって随分差があります。それで、おっしゃるとおり大企業は費用も出すし時間も与えております。ただ一方、小さいところは当然それはほとんど不可能で、多分資格すら難しいというのが現状だと思います。  ただ、私の本音で言えば、やはり本当は個人でこういった費用、それからいわゆる自分の勉強も、個人でできるぐらい本当は給料が増えなくちゃいけないんですね。そういう意味では、本当は設計という報酬がもうちょっと上がって、本来自分でやるものは自分で、自分の資質を向上させるものですから、それは本来個人がやらなくちゃいけない。そのためにはやはり、給料もそこそこにやはりもらえる、そういう報酬規定があれば十分できるとは思っております。
  160. 牧村功

    参考人(牧村功君) 私は、会社へ、企業へ入りましたのが約四十年近く前ですか、そのころは自分の技術は自分で磨けというのが大原則でございました。ですから、会社研修制度もなく何もないという状態で、自分ががむしゃらに勉強してということでございますので、基本的には技術者は自己研さんであろうと。かつて私がそうだったからということではなくて、自己研さんが大事、まあ大前提であろうと。  それから、先ほど費用と時間、ございますけれども、だから費用はそういう意味では自己研さんがベースだと。時間に関しましては、執務時間中は当然のことながら自己研さんに使う時間じゃございません。時間外で自分を磨き、磨いた結果を結果として出して初めてそれで報酬がいただけるということになるわけですから、やはり時間も費用も自分で見いだして自分で磨き上げるというのが技術者にとっては必要条件ではないかというふうに思っております。  しかし、企業によりましては、先ほどありましたように企業がそれを負担すると、それから時間内に研修を受けさせるということも対応しているところもございます。だから全部すべてそうあるべきだというふうに私は全く思っておりません。
  161. 後藤博子

    ○後藤博子君 ありがとうございます。  いろいろ質問させていただいて、技術屋である私たちは、技術を磨くためには現場に出ていくことで技術を磨いていきますけれども、それだけでは足らなくて、やはり勉強したい、勉強するためには会社があると。  会社が私たちみたいなもう下請、孫請のところでは、なかなか勉強する時間もないと。もう疲れ果てて帰ってきて、ビール引っ掛けて寝るのが精一杯というような生活をしている、地方の本当に小さい業者でございますが、プライドだけはちゃんと、誇りだけは持っておりまして、自分がやっている仕事に対する誇り、そしてそれを子供たちに見せていく父親の姿、そういうことをまた子供たちが学びながら、よっしゃ、僕も父ちゃんのようになるぞというようなことでやっていくと。  だから、そういう働く者もちゃんと報酬を受けて、それには、先ほど報酬の問題も出ましたけれども、循環するようなシステムができて人間の資質の向上技術向上が図られるような、そういう皆さん方の協会の御指導があればまたなおさら有り難いなというふうに思っております。  先ほど牧村参考人がおっしゃいました、現行の建築士法第二十条第四項には、建築設備士の意見を聞いたときは設計図書等においてその旨を明らかにしなければならないと規定されておりますよね。実際に意見を聞いたにもかかわらずその旨が記載されていないというのが、私たちも現場でよくそれは話に聞きます。この記載をするということを徹底することで、またその地位の向上も、自分たちの位置付け、ちゃんとした位置付けも図れる、明確にできるのではないかと思っておりますが、自分たちがそのことを守ろうとされていても、あるいは役所からそういう、記載きちんとするんだよというような指導とか通達とかいうことは役場の方からはあったんでしょうか。簡単で結構ですが、お答えいただければと思います、御三人ですね、現場の方なので。
  162. 大江康弘

    委員長大江康弘君) 三栖参考人から、それじゃお願いします。
  163. 三栖邦博

    参考人(三栖邦博君) 自分が作成した図面には、建築資格者であれば当然そこに記名するのは当然であります。これは、専門家としてのこれはプライド、要するにあかしですね。それは役所の通達とかそういったことはあるなしにかかわらず、それは自分としての設計に対する、私が設計したということですから、それは当然やるべきであるし、今後もそういうことは更にきちんと守られるようになるだろうと思っております。
  164. 大越俊男

    参考人(大越俊男君) 私、構造の立場でお話しさして、私どもは実際に困る、困りますというか、一番実務的で有効な手段ということで、実は国ではなく地方行政庁に力を掛けたといいますか、お願いして、構造設計者、例えば東京都には確認申請を出すと現在書く欄がございます。それで、書くように随分私どもはお願いしております。  ただし、実際にそれを、やはり法令で規制されておりませんので、実際に書いているのは多分三分の二ぐらいですね。でも、少なくとも三分の二、半分から三分の二ぐらいはいわゆる構造設計者の名前、実は記名されております。
  165. 後藤博子

    ○後藤博子君 おります。
  166. 大越俊男

    参考人(大越俊男君) はい。それは、ですから、今回は法律でぴたっとこれを改正されますと出てきますが、現在でも嫌がるところを書いてもらうというように努力はしておりました。
  167. 牧村功

    参考人(牧村功君) 今お話がありましたように、地方自治体の中では東京や大阪という大都市に関しては、例えば建築設備士というものも記述しなさいということで、窓口はそういう指導をして、恐らくかなり徹底されていると思います。  しかし、地方の各窓口に関しては、当初建築設備士が制定されたころはかなりそういう運用はございましたけれど、それがだんだんだんだん少なくなってきて、その窓口自身がそのような形で対応しなくなったというところもございますし、場所によりましては、例えば確認申請を出してチェックをしていただいているときに、設備の図面のチェックが出たときに、いわゆる一級建築士の人間が行った場合、いろいろ質問されてもその人が答えられない、実は中身がよく分かっていないということで。だから、あなたが設計したんじゃないでしょうと、設備を設計した人間を連れてきなさいということで指導をして対応しているという、そういう自治体もございますので、各自治体によって運用が徹底されているところと徹底されてないところがある。だからこそ、今回、私ども意見を言わさしていただいたのは、各都道府県市町村、すべて窓口がそういうことを徹底していただくということによって、より問題のないような形になっていくんじゃないかというふうに思います。
  168. 後藤博子

    ○後藤博子君 ありがとうございました。  もうこの二点で私は質問を考えておりましたので、これで終わらせていただきますが、大きな大会社も私たちみたいな中小零細のところにいる技術者も、同じ技術者としてプライドと誇りを持って仕事をしております。そういう点では、このたびの事件が再び起こらないように皆様のお力を是非賜ればと思っております。今日はありがとうございました。  ありがとうございました。
  169. 大江康弘

    委員長大江康弘君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  一言お礼を申し上げたいと思います。  今日は、本当に限られた時間の中でまた制約された中で、それぞれの参考人の皆さんには大変貴重な御意見をいただきました。今後、皆さん方の意見を参考にしてこれからの審議で生かしてまいりたいと思います。心から委員会を代表してお礼を申し上げまして、お言葉に代えさしていただきたいと思います。  本当に参考人の皆さん、今日はありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十五分散会