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2006-10-26 第165回国会 衆議院 本会議 第10号
公式Web版
会議録情報
0
平成
十八年十月二十六日(木曜日)
—————————————
平成
十八年十月二十六日 午後一時 本
会議
—————————————
○本日の
会議
に付した案件
経済
上の
連携
に関する
日本国
と
フィリピン共和国
との間の
協定
の
締結
について
承認
を求めるの件の
趣旨説明
及び
質疑
午後一時三分
開議
河野洋平
1
○
議長
(
河野洋平
君) これより
会議
を開きます。
————◇—————
経済
上の
連携
に関する
日本国
と
フィリピン共和国
との間の
協定
の
締結
について
承認
を求めるの件の
趣旨説明
河野洋平
2
○
議長
(
河野洋平
君) この際、
経済
上の
連携
に関する
日本国
と
フィリピン共和国
との間の
協定
の
締結
について
承認
を求めるの件につき、
趣旨
の
説明
を求めます。
外務大臣麻生太郎
君。 〔
国務大臣麻生太郎
君
登壇
〕
麻生太郎
3
○
国務大臣
(
麻生太郎
君)
経済
上の
連携
に関する
日本国
と
フィリピン共和国
との間の
協定
の
締結
について
承認
を求めるの件につきまして、その
趣旨
の御
説明
を申し上げさせていただきます。 この
協定
は、
日本
と
フィリピン
との間において、
物品
及び
サービス
の
貿易
の
自由化
及び
円滑化
を進め、
投資
の
機会
を増大させ、
ビジネス環境
の
整備
を図り、
知的財産
の
保護
を
確保
し、幅広い
分野
での
協力
を促進するものであります。 具体的には、この
協定
は、
両国
における
物品
及び
サービス
の
貿易障壁
を
削減
、撤廃すること、また、幅広い
分野
での
法的枠組み
や
協力
のための
枠組み
を設定することを定めております。これは、例えば、
投資機会
の増大、
ビジネス環境
の
整備
、
知的財産
の
保護
、反
競争的行為
の規制、人の
移動
の
円滑化
、また、
人材育成
や
中小企業
の支援などの
分野
での
協力
についてであります。 この
協定
は、
平成
十五年十二月の当時の
小泉内閣総理大臣
と
アロヨ大統領
の
会談
において
交渉開始
に合意したことを受け、
両国政府
間で
締結交渉
を行ってきたものであります。その結果、本年九月九日にヘルシンキにおいて、両
首脳
の間でこの
協定
の署名が行われた次第であります。 この
協定
の
締結
により、
両国
間の
経済
上の
連携
が
強化
されることを通じ、
両国
の
経済
が一段と活性化され、また、
両国関係全般
が一層緊密になることが
期待
をされます。 以上が、
経済
上の
連携
に関する
日本国
と
フィリピン共和国
との間の
協定
の
締結
について
承認
を求めるの件の
趣旨
であります。(
拍手
)
————◇—————
経済
上の
連携
に関する
日本国
と
フィリピン共和国
との間の
協定
の
締結
について
承認
を求めるの件の
趣旨説明
に対する
質疑
河野洋平
4
○
議長
(
河野洋平
君) ただいまの
趣旨
の
説明
に対して
質疑
の通告があります。順次これを許します。
三ッ矢憲生
君。 〔
三ッ矢憲生
君
登壇
〕
三ッ矢憲生
5
○
三ッ矢憲生
君
自由民主党
の
三ッ矢憲生
でございます。 私は、
自由民主党
、公明党を代表しまして、ただいま
議題
となりました
経済
上の
連携
に関する
日本国
と
フィリピン共和国
との間の
協定
の
締結
について
承認
を求めるの件につきまして、
外務大臣
及び
農林水産大臣
に対して
質問
を行います。(
拍手
) まず初めに、本
協定
の
意義
について
質問
いたします。
我が国
は、
貿易自由化
に向け、戦後一貫してガット、
WTO
を通じた
枠組みづくり
を進めてきました。他方、近年になり、
WTO
を補完する
取り組み
として、
世界
的な規模で
自由貿易協定
を
戦略
的に
締結
する
動き
が活発化しています。そうした
動き
の中で、国際的に
ビジネス
を展開している
我が国
の
企業
が
競争力
を維持
強化
するためには、
我が国
としても他の
国々
におくれをとることなく、
FTA
や
EPA
の
締結
を積極的に推進していくことが重要だと
考え
ます。また、
WTO
や
FTA
あるいは
EPA
の
取り組み
は、
国内消費者
にとっても、
輸入品
の
価格低下等
により選択の幅が広がるという意味で、実質的な
利益
が感じられることと思います。 そうした
観点
からは、第一義的には、我が
国産業界
そして
我が国
の
消費者
に配慮して
貿易
の
自由化
のための
政策
を推進することが重要となりますが、
EPA
にはそれ以上の
意義
があります。幅広い
分野
にわたって
経済
上の
結びつき
を
強化
する
EPA
には、
我が国
にとっての
パートナーづくり
といった側面があるものと
考え
ます。すなわち、
EPA
を通じて、
我が国
の一部の
業界
が
利益
を得るだけではなく、
相手国
も
利益
を見出すことによって、
相手国
との二
国間関係
のさらなる
強化
に
つながり
、
我が国
にとって
外交戦略
上有益な
国際環境
が形成されるべきであります。 ついては、今次の
フィリピン
との
協定
において、
日本
と
フィリピン
の
双方
にとってどのような
利益
が
期待
されるのかという点も含め、本
協定
の
意義
について、
麻生外務大臣
にお
伺い
いたします。 次に、本
協定
による
農林水産業
への
影響
についてお
伺い
いたします。 本
協定
に限ったことではありませんが、
我が国
と
FTA
や
EPA
の
締結
を希望する
相手国
が、
我が国
の
農産品市場
のさらなる
開放
を求めていることは、多くの場合事実であろうと思います。しかしながら、
FTA
や
EPA
のあり方を
考え
るに当たっては、例えば、
産業界
が
利益
を得るために
農業
がいたずらに犠牲を強いられるという
事態
は避けなければなりません。私は、
FTA
や
EPA
における
農林水産物
の
関税交渉
は、
我が国国内
の
現状
に十分留意し、
我が国
の
農林水産業
における
構造改革
の
努力等
に
悪影響
を与えないような形で進めるべきだと
考え
ます。また同時に、
我が国
の
食料安全保障
の
確保
、
農業
の
多面的機能
への配慮も欠いてはなりません。 そうした
観点
から
質問
いたしますが、本
協定
による
市場開放
の結果、
我が国
の
農林水産業
に
悪影響
を与えることにならないかという点につき、
松岡農林水産大臣
にお
伺い
いたします。 次に、
看護師
、
介護福祉士
の
受け入れ
についてお
伺い
いたします。 今回の日・
フィリピンEPA
の
交渉
において、
看護師
、
介護福祉士受け入れ
が
経済連携
の
枠組み
の中で合意されたことは、
日本
と
フィリピン
の人的、
経済
的な
つながり
を強固にする上で非常に有益と
考え
られます。また、
フィリピン
からは
世界各国
へ多数の
看護師
、
介護福祉士
が派遣されており、
フィリピン人看護師
、
介護福祉士
が
世界
的に見て評価されていることがうかがえます。
日本
が今後、
少子高齢化社会
を迎える中で、このような
フィリピン人看護師
、
介護福祉士
が
日本
でも活躍することを切に願うところであります。 今回、
外国
からの
看護師
、
介護福祉士
の
受け入れ
のために
枠組み
を設けることについては、
日本国政府
としても全く初めての
取り組み
と聞いておりますが、日・
フィリピンEPA
により具体的に何が新たに可能になるかという点につき、
麻生外務大臣
からの御
説明
をお願いしたいと思います。
最後
に、今後の
EPA
、
FTA交渉推進
の
戦略
についてお
伺い
いたします。
我が国
が推進している
経済連携
の
取り組み
を概観してみますと、まずは二〇〇二年に
シンガポール
との間で
EPA
を
締結
しました。それ以後、二〇〇五年には
メキシコ
、二〇〇六年には
マレーシア
との間で
EPA
を
締結
し、
フィリピン
との本
協定
は
四つ目
の
EPA
となります。そのほか、
タイ
、インドネシア、
ASEAN
全体、
チリ
、ブルネイ、
湾岸協力理事会
というように、数多くの
相手
と
協定交渉
を行っているものと承知しております。
我が国
が推進している
EPA
は、
物品
の
貿易自由化
のみならず、
投資
の
自由化
や
保護
、
知的財産
の
保護
、
競争政策
での
ルールづくり
、さまざまな
分野
における
協力等
、幅広い
分野
において包括的に
相手国
との
経済関係
全体を
強化
するものであり、そのため、
EPA
は、その
準備過程
また
交渉過程
において大変な労力を要するものと理解しています。 しかしながら、そうした
現実
は
現実
として、我が
国産業界
が
競争力
を
強化
するためにも、
戦略
を持って、合理的な
考え
にのっとって
相手
を選び、
協定
を
締結
していく必要があると思います。また、
フィリピン
との
協定
は
交渉
に相当の時間を要したと承知しておりますが、
交渉
の
スピードアップ
が求められているところであります。 もっとも、
交渉
それ自体は
相手
のある話であり、例えば
FTA締結
の経験豊かな
チリ
とは本年二月に
交渉
を開始し、先般九月には早くも
大筋合意
に至ったと聞き及んでおります。そのように、
協定交渉
は、
相手側
の
交渉経験
の豊富さや
双方
の
経済関係
の
状況
などにより差異が生ずるものとは理解いたしますが、
相手
次第というばかりではなく、
我が国
としても何らかの
対応策
を講じていくべきものと
考え
ます。 ついては、今後の
EPA
、
FTA交渉推進
の
戦略
と
スピードアップ
の
方策
について
麻生外務大臣
のお
考え
を
伺い
まして、私の
質問
を終わります。 ありがとうございました。(
拍手
) 〔
国務大臣麻生太郎
君
登壇
〕
麻生太郎
6
○
国務大臣
(
麻生太郎
君)
三ッ矢議員
から三問
ちょうだい
をしております。 まず、本
協定
の
意義
でありますが、本
協定
は、
物品
や
サービス
の
貿易自由化
のみならず、
投資
、
知的財産
、
ビジネス環境
、人の
移動等
、幅広い
分野
を
対象
とする包括的なものとなっております。これらの
分野
での
法的基盤
を
強化
することにより、
日本
・
フィリピン
間の
経済関係
が、
貿易
・
投資
を中心に、より一層
強化
をされるということになります。このことは、
日本
・
フィリピン双方
にとっての
利益
であり、この
協定
を通じて
両国関係
のさらなる
緊密化
が
期待
されているところでもあります。また、
日本
にとっては、本
協定
が他の
東アジア諸国等
との
EPA交渉
をさらに促進するということになり得ると
期待
をいたしております。 次に、
看護師
、
介護福祉士
の
受け入れ
についての
お尋ね
があっております。 この
協定
によりまして、初めて、一定の
条件
のもとで、
国家資格取得
を
目的
とした
フィリピン人
の
看護師
、
介護福祉士候補者
の
入国
及び一時
的滞在
の
受け入れ
が実現することとなります。また、本
協定
の
枠組み
で
入国
した者が
国家資格
を取得した場合は、
看護師
、
介護福祉士
として引き続き
就労
が認められることになっております。
最後
に、今後の
EPA
、
FTA
の進め方及び
交渉
の
迅速化
についての
お尋ね
があっております。 現在、
日本
では、特に
東アジア諸国
との
EPA
を積極的に進めております。今後の
交渉相手
は、一昨年十二月の第三回
経済連携促進関係閣僚会議
で
決定
をした
基本方針
にのっとって検討してまいりたいと
考え
ております。すなわち、
日本
にとり有益な
国際環境
の形成や、
経済利益
の
確保
に留意をして
交渉相手
を
決定
してまいりたいと思っております。 また、
交渉
の
迅速化
、
スピードアップ
をするためには、
交渉
の当初から条文の
ひな形
をあらかじめ提示することや、また、
相手
により
交渉内容
を絞ることなどを既に実践もいたしております。(
拍手
) 〔
国務大臣松岡利勝
君
登壇
〕
松岡利勝
7
○
国務大臣
(
松岡利勝
君)
三ッ矢議員
の御
質問
にお答えいたします。 日・
フィリピンEPA
の
我が国
の
農林水産業
に対する
影響
についての
お尋ね
でありますが、
フィリピン
との
EPA交渉
に当たりましては、
我が国
の
輸出関心品目
でございますその
品目
につきまして
関税撤廃
を求める一方で、
農林水産業
の
多面的機能
や
食料安全保障
の
確保
、
我が国農林水産業
の
構造改革
の
努力
などに
悪影響
を与えないよう、十分留意して
交渉
に取り組んできたところでございます。 その結果、
フィリピン
との
協定
におきましては、一つといたしまして、
我が国
の
関心品目
でございますリンゴ、ブドウ、ナシなど
フィリピン
の
関税撤廃
を行う一方で、二つといたしまして、
国内農林水産業
への
悪影響
が極力生じないよう、
我が国
の
基幹品目
や
地域
の
重要品目
などにつきましては、
個別品目
の事情に応じ、
関税撤廃
の
例外品目
としたり、
経過期間
を設定するとともに、
関税撤廃
、
削減
により
輸入
が急増し、
国内
で
影響
が生じた場合に発動できる二
国間セーフガード
を
確保
するなどの措置を行ったところでございます。(
拍手
)
—————————————
河野洋平
8
○
議長
(
河野洋平
君)
笠浩史
君。 〔
笠浩史
君
登壇
〕
笠浩史
9
○
笠浩史
君
民主党
の
笠浩史
でございます。
民主党
・
無所属クラブ
を代表して、ただいま
議題
となりました
日本
・
フィリピン
の
経済連携協定
について、
政府
に対して
質問
を行います。(
拍手
) 私
ども民主党
は、
WTO
において自由で多角的な
貿易体制
の
強化充実
のための
協議
を促すと同時に、
アジア太平洋地域
における
相互協力
と
信頼醸成
を進め、
EPA
、
FTA
の
締結
を積極的に推進していくべきと
考え
ております。そして、このような
蓄積
によって、究極的には、
東アジア共同体構想
の実現へとつなげていくための
ビジョン
を描いております。ともに生きる
社会づくり
を掲げる私
ども民主党
としては、
アジア
に対しても
EPA
、
FTA
のネットワークを整えつつ、共同体的な
つながり
が熟していくように努めてまいりたいと思っております。 まず、
外務大臣
にお
伺い
いたします。 今回の
日本
・
フィリピン経済連携協定
も、このような
東アジア共同体構想
につながるものとして位置づけられているのでしょうか。基本的な哲学についてお聞かせください。そして、その際、
アメリカ
をどう位置づけるのかも含めて、具体的にどのような
構想
をお持ちなのかもお答えください。
各国
では、
WTO交渉
が停滞する中、
EPA
、
FTA締結
の
動き
が活発化しております。
アジア諸国
でも、特に中国は、積極的に二国間及び
ASEAN
との
協定交渉
を加速させています。
我が国
としては、
東アジア共同体構想
について、やはり
日本
が最終的に
リーダーシップ
をとっていきたいとの思いを強く持つべきであると思いますが、
外務大臣
は、今後
日本
がイニシアチブをとるためにどのような
方策
をお
考え
になっているのか、お聞かせください。 また、包括的な
WTO体制
と二
国間関係
である
EPA
、
FTA
を
我が国
の
経済外交政策
の中でどのように位置づけ、推進し、
活用
していくのでしょうか。現在
交渉中断
に陥っている
WTOドーハ
・ラウンドについて、
事態
をどのように打開し、
交渉再開
に進めていくおつもりなのかもあわせてお答えください。 今回の
フィリピン
との
協定
のほか、
我が国
はこれまで、
シンガポール
、
メキシコ
、
マレーシア
と
EPA
を
締結
、発効しましたが、
タイ
とは、
大筋合意
にこぎつけたものの、先般の
クーデター等
により
締結交渉
が停滞しており、韓国とは
交渉
が中断したままです。先日の
日韓首脳会談
では、中断していた
交渉
を再開したい旨の発言もあったと聞いておりますが、
政府
は、現在
交渉
中の
各国
の動向をどう認識し、
交渉
をどのように進めていくのでしょうか。 また、
政府
からは、今回、
メキシコ
との
EPA
の規定に基づき、今後三年間の
関税割り当て
の
枠内税率
を確定する
内容
の
議定書
も提出されております。今後の
EPA交渉
を成功させるためにも、既に発効している
EPA
に対する評価をしっかりと検証しておくことが極めて重要でございます。
EPA締結
による
経済
や
外交
への効果、
影響
についてお答えください。
日本
・
フィリピンEPA
の最大の眼目は、初めて
労働市場
を一部
開放
し、
フィリピン人看護師
と
介護福祉士
を
受け入れ
ることだと思います。
我が国
では、
看護師
と
介護職員
の
不足
が深刻化しております。現在、
看護師
は全国で四万人以上も
不足
しており、
介護福祉士
についても、充足している
施設
は四割にも満たないという調査があります。このような
状況
のもと、
我が国
として
フィリピン人看護師
と
介護福祉士
を
受け入れ
るべきと
考え
て今回の
協定
に同意をされたのか、
厚生労働大臣
にお
伺い
をいたします。 ちなみに、
我が国
の
看護師
や
介護福祉士
の方々の置かれている
労働環境
は極めて厳しいのみならず、結婚や出産に伴って職場を離れざるを得ない
ケース
も多いと聞きます。
フィリピン人看護師
、
介護福祉士
の
受け入れ
に当たり、まずは
日本国内
の
医療
、
介護
の
現場
における
労働条件
の
現状
をどう認識され、今後どのような
施策
が必要とお
考え
なのか、
厚生労働大臣
の
見解
をお聞かせください。(
拍手
)
医療
、
介護
の
現場
における慢性的な
人手不足
の緩和のため、
フィリピン人看護師
、
介護福祉士
を安価な
労働力
として
活用
しようとしている
施設
があるという話も聞いております。一方で、
日本人
の
看護師
、
介護福祉士
のさらなる
待遇悪化
を危惧する声も聞こえてきます。
日本看護協会
は、自国の
看護師不足
を解消するとの理由で安易に
外国人看護師
を
受け入れ
るべきではないと、反対の声明を出しているほどです。
フィリピン人看護師
は
世界
でも優秀だとされていますが、英国などの
英語圏
では
英語
で
試験
を受けることができますが、今回の
協定
では、
日本
で働くためには、当然ながら
日本
語で
試験
に合格しなければならないなど、ハードルは高く、
現実
的には
受け入れ
はなかなか困難だと思われます。そもそも、
政府
としては、今後、
フィリピン人看護師
、
介護福祉士
の
受け入れ
を
拡大
するつもりがあるのかどうか。もしあるのだとしたら、このために具体的にどのような
施策
を
考え
ているのかについてもお答えください。 さらには、実際の
労働条件
、
労働環境
が劣悪では、せっかく
受け入れ枠
を整えても優秀な
人材
が集まらず、その
活用
も難しくなります。
フィリピン人看護師
、
介護福祉士
を安価な
労働力
と
考え
るのではなく、
医療
に携わる
専門家
として、
日本
で働く仲間として、万全な
受け入れ体制
を整えることも必要です。
フィリピン人看護師
、
介護福祉士
の報酬については
日本人
と同等以上とされましたが、
受け入れ
る
施設側
に遵守させるとともに、より一層の
待遇改善
を図ることで優秀な
人材
を
確保
すべきだと
考え
ます。人の命や健康、心の問題にかかわる
医療
、
介護
の
現場
において、言葉の壁や
制度
、
生活習慣
の違いを克服し、優秀な
人材
を
確保
するために、どのような
受け入れ体制
を整えていくのか、また、
研修
の
実態
の確認など
受け入れ
後のフォローをどのように行っていくのか、
厚生労働大臣
にお
伺い
をいたします。
政府
は、
外国人労働者
の
受け入れ
について、専門的、
技術的分野
のいわゆる高度な
技術者
などに限定し、
一般労働者
は原則拒否するとしながらも、個別に
在留資格
を設け、なし崩し的に
受け入れ拡大
を進めてきました。一方で、現在、
日本
で働いている
外国人労働者
の四分の一以上が
不法残留者
とも言われております。現在の
外国人労働者
の
就労状況
に対する
政府
の
見解
をお
伺い
するとともに、今後、
少子高齢化
の進展によって
労働力
不足
が懸念される中、
外国人労働者
をどのように
受け入れ
ていくのか、
政府
の
基本姿勢
をお
伺い
いたします。 特に、一九九三年から、
途上国
との
国際協力
を進める
目的
で、
外国人研修
・
技能実習制度
が始まりました。この
制度
を使って多くの
研修生
が
入国
をしております。しかしながら、
研修
中は
企業
との
雇用契約
がないため、
労働基準法
などが適用されず、単に安価な
労働力
として長時間の
単純労働
をさせる
ケース
が多く、
実習
に移行後も不当な
条件
で働かせる
企業
も多いのが実情です。こうしたこともあり、多くの
研修生
が、失踪したり、
不法滞在
で
資格外
の職についています。こうした
現状
を放置することは断じて許されません。
政府
として、こうした
失踪者
などの
実態
についてどの
程度把握
をされているのか、具体的にお答えください。 また、
厚生労働省
では
研究会
を設置し、今後の
対応
を検討すると伺っております。いつまでに結論を出すつもりなのか、そして、どのような
対策
を想定されているのかをお答えください。 次に、
農業
の問題についてお
伺い
をいたします。 今回、
フィリピン
との
協定交渉
では、
農業分野
において砂糖の
関税率引き下げ
が問題となり、結局、四年後に再
協議
となりました。また、今後、
アジア諸国
、
ASEAN
との
交渉
に当たり、米の問題が
協議
の中で浮上することも予想されます。このように、
農業分野
における
交渉
で
我が国
が苦境に立たされる原因は、
政府
・自民党が長期にわたって続けてきた場当たり的でなし崩しの
農政
により、
日本
の
農業基盤
が脆弱になってきたことに尽きます。
EPA
、
FTA交渉
を有利に進めるためにも、早急に
日本
の
農業政策
の
抜本改革
と
基盤
の
強化
を行わなければなりません。 私
ども民主党
は、
農政
を根本から改革するため、総額一兆円に及ぶ
個別所得保障政策
を打ち出していますが、今後、
国内
の
農業
を育成しつつ、どのような
交渉
を展開していくのか、
農林水産大臣
にお
伺い
をいたします。(
拍手
) さらに、
民主党
は以前より、
国際競争力
を
強化
し、
科学技術振興
を図るため、
知的財産権
の
強化
に取り組んでまいりました。今回の
フィリピン
との
協定
では、
知的財産分野
において、新たに
権利侵害品
の税関差しとめ
対象
の
拡大
や
出願手続
の
簡略化
などが盛り込まれました。
模倣品製造
は、
ブランド品
や
各種ソフト
のみならず、さまざまな
分野
で広がっており、
にせもの
の薬品や、
にせもの
の部品を使った製品によって
生活
の安全が脅かされる
可能性
も決して少なくありません。 急増する
模倣品
、
権利侵害品
の
対策
は、
我が国
のみならず、
各国
にとっても喫緊の
課題
であります。
模倣品
の多くが
アジア
で製造され、流通しております。今後、
ASEAN
を含む
アジア諸国
と
EPA交渉
を行うに当たり、こうしたことへの
対策
をどのように行っていくのか、
政府
の
方針
をお
伺い
いたします。 また、
知的財産
の
戦略
的な
活用
が
両国
の
経済発展
に資すると
考え
ますが、
政府
の認識をお聞かせください。
最後
に、
東アジア共同体構想
という壮大な
ビジョン
のもとに、今回の
日本
・
フィリピン経済連携協定
を位置づけ、
我が国
としてこのような
蓄積
を積み重ねていくためには、
アジア各国
・
地域
からの
信頼
、
協力
が不可欠であることは言うまでもありません。ともに生きる
アジア
をつくるために、
日本
が果たすべき使命は大変大きいと思っております。力で力をねじ伏せようとする覇道ではなく、王道により
アジア
の
国々
と接することのできる
日本
であるよう心から願って、私の
質問
を終わらせていただきます。(
拍手
) 〔
国務大臣甘利明
君
登壇
〕
甘利明
10
○
国務大臣
(
甘利明
君)
笠議員
にお答えいたします。
EPA
における
模倣品対策
及び
知的財産
の
活用
についての
お尋ね
であります。
EPA
における
模倣品対策
につきましては、日・
フィリピンEPA
におきましても
模倣品
の
販売禁止
が規定されましたが、今後とも、
WTO
の
TRIPs協定
における義務以上の
保護
が達成されますように、
制度整備等
を促していく
所存
であります。 このように、
EPA交渉
を通じまして、
各国
が
知的財産保護
を
強化
し、
投資環境
を
整備
することによりまして、
外国企業
の
投資
や
国内企業
の健全な
活動
が促進され、
アジア諸国
全体の
経済活動
が活発化すると
考え
ます。
経済産業省
といたしましては、引き続き、
模倣品対策
を初め、
アジア諸国
において十分な
知的財産保護
が図られますように取り組む
所存
であります。(
拍手
) 〔
国務大臣麻生太郎
君
登壇
〕
麻生太郎
11
○
国務大臣
(
麻生太郎
君)
笠議員
より七問
ちょうだい
をいたしております。 まず、
日本
・
フィリピンEPA
と
東アジア共同体構想
の
関係
についての
お尋ね
があっております。
EPA
と
東アジア共同体
との
関係
につきましては、
平成
十六年十二月に
経済連携促進関係閣僚会議
で
決定
をされました
基本方針
にも言及をされているところです。すなわち、
EPA
は、
東アジア共同体
の構築を促すなど、政治・
外交戦略
上、
日本
にとって有益な
国際環境
を形成することに資するものであり、
日本
・
フィリピンEPA
につきましても、このような
考え
方に基づくものであります。 次に、
東アジア共同体構想
についての
お尋ね
があっておりました。
日本
は、
地域
の平和と繁栄のため、自由、
民主主義
、人権などの
普遍的価値
とグローバルな規範にのっとった、開かれた
東アジア共同体
を築いていきたいと思っております。
東アジア地域協力
の
発展
に向けて、
アメリカ
を含みます
地域内外
の
諸国
の理解と支持も得つつ、
東アジア首脳会議
を初めとする
各種
の
枠組み
を、それぞれの特色を生かしながら、幅広く
活用
してまいりたいと思っております。 続いて、
東アジア共同体構想
について、
日本
が
リーダーシップ
をとっていくための
方策
についての
お尋ね
があっております。
日本
は、
東アジア首脳会議
を初めとする
各種枠組み
を
活用
して、金融やエネルギー、
感染症対策等
、
地域
のさまざまな
共通課題
に関する具体的な
協力
に積極的に貢献してきたところでもあります。また同時に、
ASEAN
を初めとする
東アジア諸国
との間で
経済連携協定
、いわゆる
EPA
を推進してまいります。こうした重層的な
取り組み
を通じて、将来の共同体の形成に向けて
リーダーシップ
を発揮してまいる
考え
方であります。 次に、
WTO体制
と
EPA
、
FTA
に関する
日本
の
方針
についての
お尋ね
があっておりました。
日本
は、
WTO
を中心とする多角的自由
貿易体制
、いわゆる
WTO
の維持
強化
を対外
経済
政策
の基本といたしております。一方、
EPA
、
FTA
につきましては、この
WTO
を補完し、
我が国
の対外
経済関係
の
発展
及び
経済
的
利益
を
確保
することに寄与するものであると認識をいたしております。このような認識のもと、
日本
として、
WTO
とこれを補完いたします
EPA
、
FTA
を車の両輪として、
双方
を着実に進めてまいりたいと
考え
ております。 次に、
WTOドーハ
・ラウンド中断の
事態
打開に向けた
方針
についての
お尋ね
があっております。
WTOドーハ
・ラウンド
交渉
のいわゆる中断というものは、多角的
貿易体制
の恩恵を受けておりますすべての
WTO
加盟国にとって望ましくない
状況
であります。
日本
としても、関連閣僚会合への参加や
関係
各国
との意見交換などを通じて
交渉再開
への働きかけを行っております。引き続き、ドーハ・ラウンド
交渉
の早期再開に向けて積極的に取り組んでまいりたいと存じます。 次に、現在進行中の
EPA交渉
、とりわけ
タイ
及び韓国との
現状
及び
方針
についての
お尋ね
があっておりました。
日本
は、東
アジア
との
EPA
を重要な
課題
と位置づけております。包括的で質の高い
EPA
の
締結
を目指し、スピード感を持って、
交渉
を積極的に進めてまいりたいと
考え
ております。
タイ
との
EPA
の
交渉
につきましては、
協定
の条文は基本的に確定をいたしております。しかし、御存じのように、
タイ
の
国内
事情のために署名には至っておりません。
日本
としては、早期に
タイ
側がこの
EPA
に署名できる政治
状況
になることを望んでおるところでもあります。 韓国との
EPA交渉
につきましては、
交渉
の取り進め方についての意見の相違があります。
交渉
が中断をしておる理由ですが、
日本
としては、引き続き、誠意を持って、
交渉再開
に向けて韓国側に粘り強く働きかけを行ってまいります。
最後
に、既に発効しております
EPA
の効果や評価についての
お尋ね
がありました。 既に発効いたしております
シンガポール
、
メキシコ
、
マレーシア
との
協定
は、
貿易
の
自由化
や
経済活動
の
円滑化
のための
ルールづくり
を行いました。
マレーシア
との
協定
については、本年七月に発効したばかりでありますので、その効果は現時点で必ずしも明確ではございません。しかし、
シンガポール
及び
メキシコ
との間では、例えば
メキシコ
では、一年間に約三八%増加したりいたしておりますので、
EPA
の発効後、
貿易
量が増加し、
投資
も
拡大
をしておるというように思っております。 このように、
EPA
が
日本
と
相手国
との間の
経済
交流を活発化させ、
相手国
との二
国間関係
の一層の
緊密化
につながることに資するものだというように
考え
ております。(
拍手
) 〔
国務大臣
柳澤伯夫君
登壇
〕
柳澤伯夫
12
○
国務大臣
(柳澤伯夫君)
笠議員
から、私に対しては六点にわたって御
質問
がありました。 まず、
フィリピン人看護師
及び
介護福祉士
の
受け入れ
の背景についてでございます。
国内
におきましては、御指摘のように、看護、
介護
いずれの
分野
におきましても、全体としては
人手不足
の
状況
ではないものの、一部
地域
や事業所では
人手不足
感があるものと認識いたしております。こうした
人手不足
感に対しては、有資格者の未
就労
者の
就労
促進等により
対応
すべきものと
考え
ております。したがいまして、今度の
受け入れ
につきましては、
労働力
不足
対策
ではなく、あくまでも
フィリピン
との
経済連携協定
の枠内で例外的、特例的に行うものであります。
我が国
の看護職員、
介護
労働者の労働
実態
について
お尋ね
がありました。 看護職員の労働
実態
等については、
医療
技術の進歩、患者の高齢化、重症化等により、看護職員の役割は複雑多様化しており、その業務密度も高まっていると認識いたしております。このため、新人、中堅等の各レベルでの
研修
を通じた資質の向上等に取り組んでいるところであります。
介護
労働者については、賃金面の不満や定着率が低い等、解決すべき
課題
があると認識しております。このため、雇用管理の改善等に努めてまいります。
フィリピン人看護師
、
介護福祉士
の
受け入れ拡大
について
お尋ね
がありました。
外国
人が
日本
語で
看護師
、
介護福祉士
の
試験
に合格することは簡単ではないと
考え
ております。そのため、
受け入れ
に当たっては、
入国
後六カ月間、財団法人海外
技術者
研修
協会において
日本
語
研修
を実施した上で、その後、国家
試験
までの間、病院や
介護
施設
において
日本
語学習や
生活
支援を含む適切な
研修
が行われることを
受け入れ
の要件とする予定としているところであります。 なお、
受け入れ
規模については、当面、現在の
協定
内容
以上に
拡大
する予定はございません。
四つ目
に、
フィリピン人看護師
、
介護福祉士
の
待遇改善
、
受け入れ体制
の
整備
について
お尋ね
がありました。
フィリピン人
との
雇用契約
においては、
日本人
と同等以上の報酬であることを
受け入れ
要件とする予定であります。また、
受け入れ
施設
で
就労
する場合には労働
関係
法令が適用されることから、同等報酬要件等の遵守
状況
や
研修
の実施
状況
について国際厚生事業団を通じて確認するとともに、同事業団が
受け入れ
施設
に対して適正な雇用管理についての助言指導を行うことといたしております。 五つ目は、
外国人労働者
の
受け入れ
方針
等についての
お尋ね
がありました。
我が国
では、すぐれた
外国
人研究者、
技術者
等を積極的に
受け入れ
ることとしているほか、日系人等、身分に基づく
在留資格
で
入国
した
外国
人などが現在
就労
いたしております。その上に、現在
受け入れ
を認めていない
外国人労働者
を新たに
受け入れ
るとすれば、一つ、
労働市場
の二層化等の
悪影響
が生じて格差是正の妨げになること、また二つ目に、滞在の長期化や定住化に伴う深刻な社会的問題が発生する等の弊害が懸念されることから、慎重に対処すべきものと
考え
ております。 その関連で、
外国人研修
・
技能実習制度
について
お尋ね
がありました。
平成
十七年に報告のあった
研修生
と技能
実習
生の
失踪者
の数は千八百八十八人であります。
外国人研修
・
技能実習制度
につきましては、規制改革・民間
開放
推進三カ年計画等におきまして
制度
の適正化について指摘がなされており、このため、
厚生労働省
としては、御指摘の
研究会
を設置し、実務
研修
中の法的
保護
のあり方、不正行為を行った
受け入れ
機関に対する規制の厳格化等の事項を中心に検討を行い、今年度中に結論を得てまいる
所存
であります。 以上であります。(
拍手
) 〔
国務大臣松岡利勝
君
登壇
〕
松岡利勝
13
○
国務大臣
(
松岡利勝
君)
笠議員
の御
質問
にお答えいたします。
農業政策
の
抜本改革
と
EPA交渉
についての
お尋ね
でありますが、
我が国
農業
が秘めております新世紀にふさわしい
戦略
産業としての
可能性
を最大限に引き出すためには、意欲と能力のある担い手に
施策
を集中化、重点化することにより、
我が国
農業
の
構造改革
を進めることが必要であります。 このため、担い手に
対象
を絞った新たな経営安定
対策
を
平成
十九年産から導入すべく、
関係
法律を
整備
したところであり、この戦後
農政
の大転換ともいうべき
政策
改革により、強靱な
農業
構造を実現してまいります。 また、
EPA交渉
に当たりましても、このような
農政
改革の
努力
を最大限に生かすことができるように、
相手国
との
EPA
により、
食料安全保障
の
確保
や
構造改革
の
努力
に
悪影響
を及ぼさないかといった視点を重視するとともに、
農業分野
におきましても、
我が国
農産物の強みを最大限に生かして、ギブ・アンド・テークの
関係
が成り立つよう、
我が国
と
相手国
双方
のメリットのバランスを十分考慮する必要があると
考え
ております。 農林水産省といたしましては、
農業
の
構造改革
による体質
強化
を促進しつつ、攻めるところは攻める、譲るところは譲る、守るところは守るとの
考え
のもと、
我が国
と
相手国
の
農業
の共存共栄が図られますような
EPA
を
締結
できますよう積極的に取り組んでまいります。 以上であります。(
拍手
)
河野洋平
14
○
議長
(
河野洋平
君) これにて
質疑
は終了いたしました。
————◇—————
河野洋平
15
○
議長
(
河野洋平
君) 本日は、これにて散会いたします。 午後一時四十八分散会
————◇—————
出席
国務大臣
外務大臣
麻生 太郎君
厚生労働大臣
柳澤 伯夫君
農林水産大臣
松岡 利勝君
経済
産業大臣 甘利 明君 出席副大臣 外務副大臣 浅野 勝人君