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2006-03-24 第164回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年三月二十四日(金曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  三月二十三日     辞任         補欠選任      常田 享詳君     末松 信介君      小川 敏夫君     柳澤 光美君      谷合 正明君     澤  雄二君      井上 哲士君     紙  智子君  三月二十四日     辞任         補欠選任      柳澤 光美君     小川 敏夫君      福島みずほ君     近藤 正道君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         小野 清子君     理 事                 市川 一朗君                 木村  仁君                 小泉 顕雄君                 鶴保 庸介君                 藤井 基之君                 小林 正夫君                 辻  泰弘君                 平野 達男君                 加藤 修一君     委 員                 秋元  司君                 浅野 勝人君                 岩井 國臣君                 岩永 浩美君                 大野つや子君                 岡田 直樹君                 岸  宏一君                 佐藤 昭郎君                 末松 信介君                 関口 昌一君                 田村耕太郎君                 伊達 忠一君                 谷川 秀善君                 南野知惠子君                 山本 一太君                 浅尾慶一郎君                 犬塚 直史君                 小川 敏夫君                 喜納 昌吉君                 黒岩 宇洋君                 櫻井  充君                 下田 敦子君                 主濱  了君                 内藤 正光君                 前田 武志君                 柳澤 光美君                 山根 隆治君                 蓮   舫君                 若林 秀樹君                 澤  雄二君                 山口那津男君                 渡辺 孝男君                 紙  智子君                 大門実紀史君                 近藤 正道君                 福島みずほ君    国務大臣        内閣総理大臣   小泉純一郎君        総務大臣     竹中 平蔵君        法務大臣     杉浦 正健君        外務大臣     麻生 太郎君        財務大臣     谷垣 禎一君        文部科学大臣   小坂 憲次君        厚生労働大臣   川崎 二郎君        農林水産大臣   中川 昭一君        経済産業大臣   二階 俊博君        国土交通大臣   北側 一雄君        国務大臣        (内閣官房長官) 安倍 晋三君        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)        (内閣特命担        当大臣(防災)        )        沓掛 哲男君        国務大臣        (防衛庁長官)  額賀福志郎君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣金融、        経済財政政策)        )        与謝野 馨君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣規制改        革))      中馬 弘毅君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣科学技        術政策食品安        全))      松田 岩夫君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣少子化        ・男女共同参画        ))       猪口 邦子君    内閣官房長官        内閣官房長官  鈴木 政二君    副大臣        外務大臣    金田 勝年君        財務大臣    赤羽 一嘉君        経済産業大臣  松 あきら君        国土交通大臣  松村 龍二君    大臣政務官        防衛庁長官政務        官        愛知 治郎君        財務大臣政務官  野上浩太郎君        農林水産大臣政        務官       小斉平敏文君        経済産業大臣政        務官       小林  温君        国土交通大臣政        務官       吉田 博美君        環境大臣政務官  竹下  亘君    政府特別補佐人        公正取引委員会        委員長      竹島 一彦君    事務局側        常任委員会専門        員        村松  帝君    政府参考人        内閣官房構造改        革特区推進室長        兼内閣構造改        革特区担当室長  大前  忠君        内閣府政策統括        官        丸山 剛司君        内閣府政策統括        官        林  幹雄君        内閣犯罪被害        者等施策推進室        長        荒木 二郎君        公正取引委員会        事務総局審査局        長        松山 隆英君        警察庁刑事局長  縄田  修君        警察庁情報通信        局長       武市 一幸君        防衛庁防衛局長  大古 和雄君        防衛施設庁長官  北原 巖男君        金融庁総務企画        局長       三國谷勝範君        法務省刑事局長  大林  宏君        外務大臣官房長  塩尻孝二郎君        外務大臣官房審        議官       遠藤 善久君        外務大臣官房参        事官       伊藤 秀樹君        外務大臣官房参        事官       佐渡島志郎君        外務省北米局長  河相 周夫君        文部科学省初等        中等教育局長   銭谷 眞美君        文部科学省高等        教育局長     石川  明君        文部科学省研究        開発局長     森口 泰孝君        文部科学省スポ        ーツ・青少年局        長        素川 富司君        文化庁次長    加茂川幸夫君        厚生労働省医政        局長       松谷有希雄君        厚生労働省医薬        食品局食品安全        部長       松本 義幸君        厚生労働省職業        安定局長     鈴木 直和君        厚生労働省社会        ・援護局長    中村 秀一君        厚生労働省社会        ・援護局障害保        健福祉部長    中谷比呂樹君        厚生労働省保険        局長       水田 邦雄君        農林水産大臣官        房技術総括審議        官        染  英昭君        農林水産省生産        局長       西川 孝一君        林野庁長官    川村秀三郎君        資源エネルギー        庁長官      小平 信因君        資源エネルギー        庁次長      細野 哲弘君        資源エネルギー        庁原子力安全・        保安院長     広瀬 研吉君        国土交通省総合        政策局長     竹歳  誠君        国土交通省都市        ・地域整備局長  柴田 高博君        国土交通省道路        局長       谷口 博昭君        国土交通省住宅        局長       山本繁太郎君        国土交通省航空        局長       岩崎 貞二君        環境大臣官房審        議官       桜井 康好君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○委嘱審査報告書に関する件 ○平成十八年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十八年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十八年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 小野清子

    委員長小野清子君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  この際、御報告いたします。  本委員会は、平成十八年度総予算三案につきまして、内閣委員会外十二委員会にその審査を委嘱いたしておりましたが、各委員長からそれぞれ審査概要について報告書が提出されましたので、お手元に配付しております。  つきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小野清子

    委員長小野清子君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  4. 小野清子

    委員長小野清子君) 平成十八年度総予算三案に関する理事会決定事項について御報告いたします。  本日は一般質疑を百分行うこととし、各会派への割当て時間は、自由民主党二十分、民主党新緑風会五十二分、公明党十五分、日本共産党八分、社会民主党護憲連合五分とすること、また、午後一時から国民生活教育に関する集中審議を百八十分行うこととし、質疑往復方式で行い、各会派への割当て時間は、自由民主党七十分、民主党新緑風会七十五分、公明党二十分、日本共産党十分、社会民主党護憲連合五分とすること、質疑順位につきましてはそれぞれお手元質疑通告表のとおりでございます。     ─────────────
  5. 小野清子

    委員長小野清子君) 平成十八年度一般会計予算平成十八年度特別会計予算平成十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。末松信介君。
  6. 末松信介

    末松信介君 おはようございます。自由民主党末松信介でございます。  私は、まず、新聞特殊指定見直しについて公正取引委員会並びに内閣官房長官にお尋ねをいたします。  新聞全国統一価格での販売を定めた特殊指定見直し公正取引委員会が今検討を進めておられます。六月ごろ結論を得たいとされているわけであります。これについて各党、懇話会を設置されたりしまして、いろんな議論を今交わされているわけでございます。私ども自由民主党でもかなりの議員が反対を唱えているというように仄聞をいたしているところでございます。  特殊指定再販制度のことにつきましては委員先生方も御存じの方多いと思うんですけれども、念のため、資料として配付をいたしました。  特殊指定が見直されますと、販売店との間で過度の競争が起こって価格影響が与えられることが予想をされます。そうなると、配達コストなどに問題が起きまして、住宅がまばらな地域には基本的に宅配が困難になってくるという可能性が出てまいります。  郵政民営化のときにも、ユニバーサルサービスを維持できるかどうかということが大変重要な問題の一つになりました。私は、情報共有化日本人の知識レベルの維持、日本語を大切にする心を考えると、宅配制度が崩壊するかもしれないという危惧とか、都市部山間部におきまして新聞価格に大きな差異が出るということは決して好ましいことではないというように考えております。新聞特殊指定見直しにつきまして、公正取引委員会の現時点での考え方をまずお尋ね申し上げたいと思います。  それと、九九年に改正がなされました。今なぜこのタイミングで改めてまた改正を唱えられるのか、このことについてもお伺いいたしたいということ。それともう一つ再販制度が維持されれば現場は混乱することがないというようにお考えと、お持ちというように伺っておりますけれども、その根拠をお聞かせいただきたいと思います。
  7. 竹島一彦

    政府特別補佐人竹島一彦君) お答え申し上げます。  この新聞特殊指定の問題につきましては、御質問いただいて大変有り難く思っております。私ども、昨年の十一月以来、関係業界新聞協会等々と議論を重ねておりますが、いろいろ新聞に報道はされておりますが、公正取引委員会の言い分というものが紹介されたことは一度もないということでございます。特殊指定廃止反対であるという記事は出ておりますが、公正取引委員会が何ゆえにそういうことを提案しているかということについて説明された記事は残念ながらありません。そういう意味で、今日、末松委員から御質問いただいたのは大変有り難く思っております。  三点御質問いただきましたが、若干時間が必要なので、少し長くなりますが、お許しをいただきたいと思います。  我々が議論しておりますのは、活字文化でありますとか新聞特殊性だとか、知る権利のために戸別配達が大事であるとか、そういうことに対してそうではないということを言っているわけじゃ毛頭ございません。  今の、この特殊指定というのは分かりにくいんですが、一方で再販制度というものがございます。再販制度というのは、本来は独占禁止法によって禁止されている行為につきまして、著作物に関しては例外として再販をやってよろしいと、民民規制をやってよろしいということでございまして、これは独禁法にちゃんとそのための条文があって、適用除外条文があって行われているものでございます。  で、この再販制度については、私どもはこれをいじるつもりはございません。したがって、それぞれの新聞本社価格政策に基づいて、全国一律だれにもどこでも同じ値段で売るということを言っておられるその新聞各社販売店をしてそうさせる行為は、これは正に適用除外で認められている再販制度としていいわけでございますので、これは、このことについては我々問題にしているわけじゃないわけでございます。  ところが、新聞協会が車の両輪とおっしゃっておられるもう一方の新聞特殊指定と、これを問題にしているわけでございまして、この特殊指定というのは、釈迦に説法でございますけれども優越的地位濫用とか不当廉売とか、そういったこと、これ、いわゆる不公正な取引方法ということで、独占禁止法の第十九条によって禁止されている行為でございます。具体的に何が不公正な取引行為に当たるかということにつきましては、公正取引委員会指定するということに法律上なっております。  で、その具体的な指定の仕方として二つありまして、一般指定特殊指定というのがあります。一般指定というのは、あらゆる事業者にこれは共通して適用される指定でございますので一般指定でございます。それで、それでは十分ではない、特殊な事情があるというものについては特殊指定というものを別途指定することができていると。で、今現在、最近まで七つございました。そのうちの一つ新聞特殊指定というものでございまして、そういう位置付けの特殊指定でございます。  これは法律でも政令でもございません。法律上に根拠を置いて、公正取引委員会公正取引委員会決定に基づく告示として、その指定をしておるわけでございます。  それで、問題の新聞特殊指定になりますが、その新聞特殊指定というのは何を定めているかと。三つ定めてございます。この一つは、新聞発行本社地域又は売る相手によって定価を変えてはいけませんよと。要するに、値引きしてはいけませんよと。値引きをすれば独禁法違反になりますということが第一項に書いてございます。今度は、第二項は、今度は販売店の問題でございますが、販売店値引きをしたら、これは独禁法違反になりますよと、ことを書いてある。三番目は、今度は販売店に対して新聞発行本社が、いわゆる押し紙と称して、要らないと言うのに、いや何部取れということを押し付けるという行為、これも禁止しております。  三番目の話は、これはちょっと優越的地位濫用の話でございまして別でございますが、私どもが特に問題にするのは第一項、第二項。およそ新聞に関しては、価格競争をすれば独禁法違反になるという規定なわけでございます。  それは、そもそも、そういう規定というものが法律的に正当化できるのかと。独禁法というものは正当な公正な競争をしなさいという法律でございます。価格競争というのは、その公正な競争をする場合の競争手段として極めて重要な手段でございます。その手段を使ったら事もあろうに独禁法違反になるという、そういうことがどうして言えるのかというのが私が今言っていることでございまして、じゃ、歴代公正取引委員会、それはどうしたんだということでございますが、何とこれは五十年前に、昭和三十年に導入されたものでございまして、当時大変その乱売合戦が行われまして、これではどうにもならぬと。景品はばらまく、値引きはするということで、過当競争になってどうにもならないというんで、公正取引委員会にいろいろな方面からお願いがあってこの特殊指定というのが誕生したという経緯があるんですが、さて、その独禁法に基づいてそういう特殊指定というものが定められるのかと、その法的根拠はあるのかということを私が今提起さしていただいているわけです。  ですから、それがなければ、いかにほかの面から、文化だ、知る権利だ等々からこういうことが必要だと言われましても、必要であると言っても、法律的にできないことはできないではないかということを今申し上げているわけでございまして、これがまず第一の問題点でございます。  私は、ほかの面から考えて定価販売というものが仮に必要であるとすれば別な手段でやっていただくしかない。それが、そういう政策が正しいかどうかという議論は大いにありますが、少なくとも独禁法に基づいて、価格競争をやれば独禁法に違反するという説明はできないはずであるということでございます。そこがまず第一点でございます。そういう観点から見直しをする必要があると。  そこで、この見直しに至る、何で今するのかということでございますが、これはこの五十年の歴史のある古い特殊指定が五本残っておりました。それで、昨年からそういうことに気が付きまして……(発言する者あり)はい、済みません。気が付きまして、五つ、古い五十年の歴史のあるものを五つ全部見直すということでゼロベースの見直しを進めてまいりました。それで残ったのが今新聞特殊指定になっておるということでございまして、新聞特殊指定だけを問題にしているわけじゃございません。残り四本はもう廃止をさしていただくということにさしていただいています。  それから、これをつぶしても、廃止しても困らないだろうと公正取引委が言っているということにつきましては、戸別配達という宅配サービスというのは、再販制度とか特殊指定があるから宅配サービスが行われているというふうには私どもは考えておりません。これは、その証拠に、こういうものがないその前の時代から宅配サービスは行われているわけでございまして、宅配サービスというのは、購読者消費者にそのニーズがあるからこそ行われているものであると。その証拠に、再販特殊指定もないアメリカにおいても七〇%の宅配率がある。逆に、再販制度を持っている極めて例外的な国である日本ドイツドイツにおいては六〇%しか宅配率がないということに見られるように、宅配というのは、こういう特殊指定があるからこそ存在しているのではなくて、ニーズがあるから存在していると私は思っております。
  8. 末松信介

    末松信介君 三つまとめて質問をいたしまして、御答弁いただいたんですけれども新聞協会の調査によりますと、宅配を是非続けてほしいというのが七二・六%、できれば続けてほしいというのが一四・二%、合計で八六・八%に達しております。世界に冠たる戸別配達率は九四・二%なんですよね。  今、こういった世論の動向を踏まえた場合、内閣官房長官としては、先ほどの公取委員長お話からどのように今感想をお持ちか、お尋ね申し上げたいと思います。
  9. 安倍晋三

    国務大臣安倍晋三君) 現在、新聞業においては、独占禁止法第二条第九項の規定に基づき新聞特殊指定指定されており、同特殊指定により、新聞発行本社による多様な価格設定販売店による値引き行為自体が原則的に禁止されているところ、公正取引委員会において、このような規定を見直すべきではないかとの観点の下、見直し作業を行っていると。それは今、委員長から答弁したとおりでございます。  この見直し作業については新聞業界反対をしておりまして、その理由としては、ただいま委員が御指摘になった点でありますが、仮に新聞特殊指定廃止された場合、価格競争が激化し、販売店経営状況が悪化することにより、新聞が読者の下に毎日配達されるいわゆる宅配制度が崩壊すると主張しているというふうに承知をいたしております。新聞宅配制度については、我が国の文化の振興や国民の知る権利といった観点からも重要であって、多くの国民が望んでいるサービスであり、今後とも維持されることが望ましいと、このように考えているところであります。  いずれにせよ、公正取引委員会においては、新聞特殊指定見直し作業に当たっては、いかに国民の利益の確保、向上を図っていくかという観点に立ち、検討を行っていただくことを期待をしている次第でございます。
  10. 末松信介

    末松信介君 官房長官お話のように、宅配制度は維持されるべきであると、私も全く同感でございます。  実は、私は思うんですけれども公正取引委員会販売正常化を論じておられます、正常化を論じておられます。公取委と違う考え方皆様方は、日本語国語文化の堅持であるとか情報化の、共有化を同じ土俵で論じるから、結局議論がおかしい方向に行ってしまうと思うんですよね。特殊指定見直しによる影響評価の切り口が実は違っていると思うんです、私は。かみ合うわけがないんですよね。  ところで、さきおととい、知り合いのある新聞販売店にその現状を伺いました。公取委員長が今おっしゃったような話がたくさんありました。民主主義社会の基本である、国民の知る権利を支えるのが新聞であります。しかし、販売競争は大変すさまじいものでありました。関西地域では、ある新聞社が入ってきたから一層激化したとおっしゃっておられました。四年間購読したら一年間無料と、これは二五%引き一緒です。それで、一年間取ってくれたら一万円の商品券を差し上げると、二〇%引き一緒なんです。冷蔵庫もくれるという話もあったそうなんですよ。新聞事業者もそれを承知しておるんですけれども、それは販売店が勝手にやったことだという話になってしまっているんですよね。  私は、こうした事実は改善されなければならないと思っておりますし、新聞協会もできるだけ改善するという、何かセンターをつくってやっているという話もあったんですけれども、こういったサービスではなくて、新聞は、記事の正確さや有意義な特集とか、社説の鋭さ、あるいは記事の見やすさ、カラー遣い、社会的公平性、そういう観点から購読されるべきであります。  物事には起承転結がありますから、始まりと終わりが大変大切だと思うんです。ですから、記事を書いてそれを読んでもらうという一連の流れにすべて新聞事業者は責任を負うべきだと私は思うんですけれども。  そこで、私、提言を申し上げたいことがあるんです。情報は、時間の経過とともにその価値が損なわれていきますね。しかるに、夜十時にコンビニに行っても朝刊が百三十円で平気で売られています。その時刻にはもう夕刊が出ているんです。昼の十二時になったらもうパソコンにはその新聞社記事が、ホームページでもう記事が出されているんです。プリントアウトができる状態なんです。  ですから、そういう状態にもかかわらず新聞は百三十円で売られているわけなんですけれども宅配制度は絶対維持すべきだと思うんですけれども、全体の売上げの一割程度である店売りの新聞については、時間の経過とともに値下げ若しくは値引きをしてもいいんじゃないかということを、私はそのように思っています。  それと、朝刊と夕刊の料金は昔からセットにされているんです。最近、共働きの家庭が多くて、夕刊を読む暇ないからという声が多いわけなんですね。契約は、もう夕刊は要らないと言いたいんですけれども、割引率が低いのでやっぱり取っておこうかということになっているという。  こうした国民生活にも非常に変化が起きていますんですけれども、こういう点について公取委員会がどのように考えておられるかということと、併せて内閣官房長官の感想をお願い申し上げます。
  11. 竹島一彦

    政府特別補佐人竹島一彦君) お答え申し上げます。  今先生が幾つかおっしゃった、言わば値引き価格の多様化、これは従来、公正取引委員会も、幾ら再販といってもそんな硬直的なことではなくて、長期購読者に対する割引だとか、朝刊だけでいいという人に対する割引とか、口座振替をする人に対する割引とか、一括前払をする人に対する割引、そういうものがあっていいではないですかということを提案してまいっておりますが、そういう提案は受け入れられておりません。要するに、全国一律だれにでも同じ値段で売るんだと。  それで、おっしゃるように、その実態としては、特に近畿地方は有名でございますが、無代紙というのが横行して手を焼いておられると。しかし、この特殊指定があるからといって、これを取り締まってくれという話は一切ないと。こういう現状でございまして、筋も通らない特殊指定について実行もされていないということからして、おっしゃるような本来あるべき価格の多様化というものが阻害されている。  価格の多様化というのは、本来、発行本社が自分たちの価格政策がどうあるべきか、新聞離れが言われている中でどうやって購読者に、内容とともに価格も含めて魅力ある新聞を提供するかというのは、あちらがお考えになるべきことであると私どもは考えております。
  12. 安倍晋三

    国務大臣安倍晋三君) ただいま委員が御指摘になった前段の部分なんですが、例えば、いわゆる販売店は、実態としては、一か月間無料で配るので取りあえず見てもらいたいとか、三年、四年購読するということをしていただければ一か月、二か月無料にするということを実態としてやっているのも間違いのない事実でありまして、私の秘書のところにもある新聞社が一か月間、二か月間ただで取ってもらいたいと、こういうことを言ってきたわけでありまして、私の秘書が取るわけのない新聞社が言ってきたわけでありまして、当然断ったそうであるわけでありますが。  また、いわゆる押し紙も禁止されているのに、いわゆる押し紙的な行為が横行しているのではないかと言う人もいるわけでありまして、実態としてはそういうところもしっかりとちゃんとこれ見ていく必要もあるんだろうと、こう思うわけでありまして、要は、先ほども申し上げたわけでありますが、これはいわゆる新聞業界を守るということではなくて、これはやはり国民の知る権利をきっちりと守っていく。これは東京にいようがあるいは過疎地にいようが離島にいようが、そうした、どういうことが今世の中で行われていると、そうしてそれに対してはどういう批判があり、どういう論評があるかということを知ることができるという社会をこれは維持をしていくということは、これ当然のことなんだろうと、このように思うわけでありまして、その観点からもしっかりとこれは検討を行ってもらいたいと。国民の利益のこれは確保、向上を図っていくということから検討をしていただきたいと、このように思っているところであります。  また、先ほど末松委員が御指摘になられたような、そういう価格に、いわゆるコンビニ等で売っている、駅売りも含めて、そこについてはバリエーションをある程度付けてもいいのではないかということはもちろん、それは、当然そういうことも含めて検討をして、これは業界側も検討をしていくことではないだろうかと、こんなように思っております。
  13. 末松信介

    末松信介君 販売正常化につきましては、公取委員長、これは進めていくべきだと思うんですけれども宅配制度の維持の長官答弁ありました。あるいは、反対する議員がおっしゃっている国語文化の維持であるとか情報共有化という点、この点だけの観点、きちっと頭の中に入れて協会と話し合っていただきたいと。十分その点お願いを申し上げたいと思うんです。  押し紙行為についても、実際押し紙行為じゃないんですけれども、三千売っていたら、目標として三千五十どうでしょうかという言い方をするそうですよね。やはり問題はあると。(発言する者あり)そうですか。もう一回答弁を求めた方がいいということで、理事の御指摘でございまして、委員長
  14. 竹島一彦

    政府特別補佐人竹島一彦君) 新聞文化でありますとか著作物としての公共性とか、それは私どもも十分に理解しております。そのためにあるべき政策というのは当然議論されてしかるべきであると。  しかしながら、私どもが言っているのは、残念ながら新聞特殊指定というものは筋が通りませんということを申し上げているわけなんで、その新聞特殊指定が今存在するからそれを前提にと言われましても、法的根拠について説明ができないものについて続けるのは、いささか準司法機関としてはこれは問題が大き過ぎるというふうに思っているわけでございます。  何も宅配サービスに悪影響を及ぼそうとか、そういう意図は全くございません。それは大事なことであって、消費者の支持がある限り工夫されて維持されていくだろうというふうに思っております。
  15. 末松信介

    末松信介君 どうぞ官房長官、御退席していただいて結構でございます。ありがとうございました。  次に、教科書の特殊指定廃止する方針があると伺っております。  教科書会社の営業の行き過ぎ、不正には、国家公務員倫理法や刑法の贈収賄罪があり、それが歯止めになるという考え方があるようですけれども、教科書会社としては、公立、私立は公務員、非公務員という違いがあってもセールスの手法は極めて似通ってきておりまして、現場で混乱や要らざる中傷、投書が出てくるということを大変危惧しております。人間の性善説、性悪説、心の強さ、弱さ、いろんな問題が関係して、いささか心配な向きがあろうかと思います。教科書はやはり中身で勝負でございます。中身で決定されるべきであると、それ以外のことは余り考えない方がいいと思うんですけれども文部科学大臣のお考えをお伺いいたします。
  16. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 末松委員御指摘のように、教科書も特殊指定が行われているわけでございますけれども、文部科学省といたしましては、教科書の採択について、教科書の内容についての十分な調査研究によって適切な手続により行うように各都道府県教育委員会に対して指導をしてきているところでございまして、仮に現時点で特殊指定廃止された場合、これまでの長年にわたり運用されてきた規制が急に廃止されるということによりまして、採択関係者の間に混乱を招くのではないかということが懸念をされます。  また、過当な宣伝行為が行われるおそれがあると同時に、今まで行ってきた教科書見本の送付等の制限、あるいは他教科書の中傷誹謗の規制など、これまで同様に廃止された場合にこれが維持できるのか、その辺の懸念があるわけでございまして、現在、公正取引委員会において特殊指定廃止に関する意見募集を行っているところと承知しておるわけでございまして、公正取引委員会における手続を注目しながら、引き続き教科書採択の公正確保が図れるようによく検討してまいりたいと考えております。
  17. 末松信介

    末松信介君 公取委員長文部科学大臣からまあ公正にという言葉が出ます。その点十分念頭に置いていただきたいと、そのことを要望いたしておきます。  質問は次に移ります。  私の地元にあります神戸市道路公社が所有する新神戸トンネルの有料道路の阪神高速道路株式会社への移管についてお伺いをいたします。  これは、社会資本の有効活用という観点からであるというように御理解をいただきたいと思うんです。阪神高速三号神戸線は、まあ東行き、西行きともによく渋滞をいたします。そのため、阪神高速三号神戸線の渋滞情報を得たとき、私は時々阪神高速北神戸線に入って箕谷ランプから新神戸トンネル有料道路を利用して神戸の市内に入ってまいります。ところが、大半の車はそうしないんです。なぜかといったら、第二神明と阪神高速神戸線を使うと通行料金は七百円なんです。しかし、北神戸線と新神戸トンネルを利用して渋滞を回避しようとしますと千百円、四百円余分に掛かってしまうんです。そのため、渋滞情報がもたらされても神戸線へ多くの車は突っ込んでいって、そのため三号神戸線は更に渋滞がするということになっているわけなんです。  今、新神戸トンネルの現状を見るにつけまして、社会資本が有効に活用されているかどうかといったら、私は少し寂しいものがあります。ここにおられる赤羽副大臣もこの問題については長らく取り組んでまいられました。  そこでお尋ねしたいのが、今回の阪神高速道路株式会社が各路線の管理運営するに当たって、兵庫県、大阪府、神戸市など、道路整備特別措置法第三条第三項の規定に基づき、関係県市の同意を得ることとなっております。兵庫県は、本年三月六日に同意をしました。阪神高速の対距離制については議論がたくさん出たようでありますけれども、県議会は同意をしたそうであります。  その県が同意するに当たって附帯意見として盛り込まれたその一つが、阪神高速の更なるネットワークの充実に向けて積極的な取組を行うことが、この一文が入っているわけなんです。これは明らかに新神戸トンネルの阪神高速道路株式会社への移管と、湾岸部、湾岸線の西伸部の事業を指しております。  移管のことについてお尋ねをしたいわけなんですけれども、ここで私、自分の考えを申し上げておきたいのは、一つは、対距離制になれば、阪神高速道路株式会社もこの新神戸トンネル区間も料金収入が入るということが一つ事実が生まれてまいります。二つ目は、建設費のかさんだトンネル、これ特別料金区間として徴収してもよいと思います。三つ目は、まあこれからの話ですけれども、道路特定財源を有効に活用して、料金を下げて利用を促すことも一案だと思うんです。そして四つ目、最後に、どうしても阪神高速道路が管理できないならば、トンネル部分は引き続き神戸市道路公社に管理を委託して、阪神高速道路が償還をしていくということも手法としてあろうかと思います。  いずれにしても、阪神高速道路ネットワークに早急に踏み込んでいただくことが利用者、国民にとって大変重要なことでありますので、この点についてお伺いをいたします。
  18. 谷口博昭

    政府参考人(谷口博昭君) お答えいたします。  委員お尋ねの新神戸トンネル有料道路の阪神高速道路株式会社への移管につきましては、神戸市、阪神高速道路株式会社及び近畿地方整備局において、新神戸トンネル有料道路と阪神高速道路とのネットワーク化に関する検討会を設置し、その可能性を探るべく種々の検討を行ってきているところでございます。  昨年十月から民営化されておりますが、今般の民営化の主要な趣旨が四十五年以内の確実な償還であることにかんがみれば、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構及び阪神高速道路株式会社の償還、経営に悪影響を与えないことが原則と考えているところでございます。  一方、委員御指摘のとおり、有料道路の既存の有効利用、利用者の利便性向上のためには、利用しやすい料金体系の実現が重要な課題と考えておりまして、関係機関が協力して努力すべきものであることと考えておりますので、引き続き、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構も含め、関係者で検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  19. 末松信介

    末松信介君 ありがとうございます。ハードルが高いと思います。いろんな問題あろうかと思いますけれども、どうか積極的な対応を心からお願いを申し上げます。  最後に、羽田空港の再拡張についてお尋ねをいたします。  国家の国際競争力の向上のため、羽田空港の再拡張が十六年度より事業化されております。この四本目の滑走路について、来年度予算一応千六百二十四億必要予算が計上されるとともに、二〇〇九年度までに国際定期便の就航を図るとしています。しかし、今春よりの着工が予定されているもののいまだ行われておらず、閣議決定である二〇〇九年供用開始はこのままでは可能かどうか疑問の声が実は上がっているわけであります。  着工が遅れている原因と、その見通しをお尋ね申し上げます。昨日も国土交通委員会で航空法の一部改正で羽田の混雑、混雑空港のことについていろんな議論がなされました。御答弁のほど、お願い申し上げます。
  20. 北側一雄

    国務大臣(北側一雄君) 今、羽田空港は年間の離発着の回数が約三十万回でございます。ところが、もう御承知のとおり、一杯になっておりまして、国内の地方空港等から是非羽田に入れたい、また増便をしたいというふうな声は各地域地域にたくさんあるわけですけれども、今の容量では入れないという状況にございます。  さらには、この羽田空港の再拡張につきましては、再拡張後は約十万回から十一万回離発着回数が増えるわけでございますが、その一部を国際化していこうというふうに考えております、近距離の国際便を飛ばそうと。これまた非常に近隣諸国から期待をされております。  また、我が国の経済界からも大変期待をされているところでございますが、そういう意味で、この羽田空港の再拡張、四本目の滑走路を造るというのは、我が国の国際競争力の強化、さらには我が国の経済の活性化、この経済の活性化というのは単に首都圏の経済の活性化じゃなくて各地方等と羽田がつながるということですから、これは各地域地域の経済活性化にもつながってくるわけでございまして、私は、この羽田空港の再拡張事業というのはまさしく国家的なプロジェクトで、極めて優先順位の高い事業であると。二〇〇九年中の竣工というのはこれは是が非でも実現をしなければならないと考えているところでございます。  今、早期の現場の着工、まあ今春でございますが、現場着工を目指しまして、環境アセスメント、それから漁業者との調整を実施をしているところでございます。漁業者調整につきましては、東京都、神奈川県、そして千葉県と三県にまたがるわけでございますけれども、それぞれの漁業関係者に事業についての御理解を得るべく、今、連日、鋭意説明をさしていただいているところでございます。  今後とも、この関係自治体の御協力をいただきながら、早期に漁業関係者の同意を得れるように、そして現場着工が早くできるように、そして計画どおり、予定どおり二〇〇九年中に供用できるように、最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  21. 末松信介

    末松信介君 二〇〇九年の供用開始、是非お願いをいたします。  以上で終わります。ありがとうございました。
  22. 小野清子

    委員長小野清子君) 関連質疑を許します。関口昌一君。
  23. 関口昌一

    ○関口昌一君 自由民主党の関口昌一です。  もう限られた時間でございますんで、早速質問に入らしていただきます。  最近の大きな事件、ライブドアの問題、そして耐震構造の偽装の問題、東横インの建築基準法違反など、最近のこうした社会問題化している事件を見ますと、私は、日本全体から倫理観や道徳主義が失われているのではないかと強く感じております。現在の学校教育を見ましても、小中高、まあ大学においても受験を一つの目標にして頑張るという、そうした中で、もう今大学においては学生のうちに金もうけのためにベンチャー企業を起こすことを目的にするという者まで出てきております。  現在のこの教育に関して、これでいいのかということ、まず、御自身が受けられた教育と比較して御所見を小坂文部大臣にお伺いいたします。
  24. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 関口委員の御意見承っておりまして、確かに最近そういった御意見が多くなってきたなということも感ずるわけでございまして、いずれの時代も子供たちに自立する強さ、命の大切さや人を思いやる優しさというものが大切なことだと思いますし、最近はどうも規範意識や公徳心というものが薄れてきたような感触を私も持っております。そういった規範意識、公徳心を培うことは大変教育においては重要なことだと思っております。  子供たちが教科書の学習に励むことは重要でありますけれども、学校は知育、体育、徳育と、そして最近は食育も併せたバランスの取れた教育を行い、学力だけでなく、道徳心や倫理観も含めた全人的な人間形成を図る必要があると考えております。特に、今日規範意識の低下などの課題も指摘される中で、人格の完成を目指して道徳教育の推進に今後とも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  25. 関口昌一

    ○関口昌一君 しっかりとした答弁いただいたんで本当に心強く思っておりますけど、最近の社会問題ですね、私はこれらの考え方、拝金主義の横行、犯罪でなければ何をやってもいいんだというような風潮、そして倫理観、道徳観の欠落の最大の原因、こうした原因は私は教育にあると思えてなりません。  今、与党の中で教育基本法の改正議論されております。人間が人間らしく生きる、そして人間として社会の中で生きていくすべを身に付けていく、こうしたことは私、すべて教育によってであると思っております。安倍官房長官いらっしゃいませんが、安倍官房長官はいろいろな講演の中で、国を愛する心を教育基本法の中に書き込んでいきたいということをおっしゃっておりました。私も全く同感であると思っております。  過日のWBCの野球の世界大会、日本は優勝いたしましたけど、あの割合個人的、個人主義のイチロー選手がああやって日本を優勝させるんだと、そして選手が一丸となって、また国民が一丸となって日本を応援した。これも一つは愛国心につながってくるかと思いますが、ここで改めて教育基本法の改正について、小坂文部大臣の決意と御意見を聞かしていただきたいと思います。
  26. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 関口委員が今御紹介なさいましたWBCにおける王ジャパンの優勝というのは、本当に国民に大きな勇気と希望を与えてくれたように思いました。ああいったスポーツの持つ大きな力を私も大切にしてまいりたいと思っております。  昭和二十二年の基本法制定以来、今日まで改正がされておらないこの教育基本法でございますけれども平成十五年三月の中央教育審議会答申におきまして、従来から大切にして、普遍的な理念と言われておる人格の完成や個人の尊厳といったこういう理念は今後とも大切にしながら、伝統文化の尊重や郷土や国を愛する心、道徳心、自立心の涵養、公共の精神や学校、家庭、地域社会の連携協力、そして、更に言えば生涯教育の、生涯学習の理念、こういった今日的な極めて重要な理念や原則を改めて明確にしていく必要があるんではないか、その点から教育基本法の改正は必要であると、このように認識をいたしております。  ただいま与党における議論も進んでまいりまして、また各党の中においての教育、そして教育基本法に対する考え方についての議論も進んでまいっております。そういった与党における環境が整えば、私としては、今国会でもそういった環境が整えば法律を提出できるように準備を進めてまいりたい、このように考えております。
  27. 関口昌一

    ○関口昌一君 是非、教育基本法の改正、しっかりと取り組んでいただきたいと思っておりますし、また、これは私の考えでございますが、その中に国を愛する心を是非書き込んでいただきたいと要望をさせていただきたいと思います。  次に、地方分権の問題を取り上げたいと思っております。  政府の施策によって平成の大合併と言うべき市町村合併が進んで、数年前までは三千三百あった市町村が今、二月の時点で二千十九と三割以上も減少している、その分それぞれの市町村の規模が大きくなって行政の効率化が図れる、私はこれは大変すばらしいことであると思っております。これは、小泉内閣でなければこれほどの大合併は進まなかったんじゃないかなとも併せて思っている次第であります。  そこで、竹中大臣に伺いますけれども、この市町村合併はまだ目的は達成されていないと思いますけれども、今後、最終的に地方自治体の数や役割を、どのような自治体を目指していくか、そのグランドデザインについて簡潔にお答えをいただければと思っております。
  28. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 簡潔にということでございますので難しいんでありますが、委員ももう実感しておられると思いますけれども、やはり地方分権を推進していくことは重要であると。そして、そのためには住民に最も身近な総合的な行政主体がしっかりしていかなければいけない。イメージされるのは市町村でございますけれども、その意味では、そういう基礎自治体がそれなりの財政基盤を持つためにはある程度の人口規模が必要であろうというふうにずっと考えられてまいりました。どの程度の人口規模が必要かということに関しては、専門家の間でも意見が分かれていると思います。十万程度と言う人もいれば、いや三十万程度と言う人もいる。そういう方向に向けて今進んできたわけでございます。  御指摘のとおり、合併かなり進みまして、平成十八年三月三十一日には千八百二十一になる見込みでございます。七年間で三千二百から千八百になるわけですから、これは相当の成果を上げたというふうに申し上げてよいのではないかと思いますが、一方で地域ごとには差異が見られるというのも事実です。そして、人口一万未満の市町村も五百四残る見込みでございます。  その意味では、相当進んだけれども、更にその基礎自治体の正に基礎体力を高めるために、合併というのはこれは万能薬ではありませんが、やはり一つの有効な手段であるというふうに位置付けて、政策を更に進める必要があると考えております。
  29. 関口昌一

    ○関口昌一君 合併が大きく進んできたということであります。地方を見ますと、合併したくても地域の事情で合併できない町村もあるということでありまして、そうした町村に対してもしっかりと支援をしていただきたいと思っております。今回の平成の大合併が地方自治の大きな分岐点になるということを私は期待しております。  さて、二月の二十八日ですか、地方制度調査会が道州制の在り方に関する答申をまとめられました。北海道をまず手を付けるということでありまして、過日、政府案において北海道特例を生かすということでありまして、これは我が党の伊達忠一参議院議員を始めとする北海道選出の国会議員の与党の方々が頑張っていただいた成果であるかと思いますが、私は、この北海道の道州制、これはしっかりとしたものにしていく、そして道民が喜ぶ形が得られる、それがひいては道州制につながっていくかと思っております。  そこで、その調査会でまとめられました道州制の導入の意義と概要について簡潔に御説明をいただきたいと思います。
  30. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 先ほど御答弁させていただいたような、市町村の合併が進んでいると、そして都道府県を越える広域行政の課題が増加をしている。そういう中で、現行の都道府県制度のままで、これでいいんだろうかということを真摯に御検討をいただいたと認識をしております。  第二十八次の地制調、二月二十八日に決定した道州制の在り方に関する答申では、これその意味で広域自治体の在り方を見直すと、これは決して、地方の改革というよりは国と地方双方の政府を再構築するという、そういう位置付けであろうかと思っております。そして、結果的に地方分権を加速をする、国家としての機能を強化する、国、地方を通じた力強くて効率的な政府を実現していく。その意味で、この方向というのは適切なものであるということの御答申をいただいたと。同時に、その答申の中では、これはやはり国民的な議論が必要であるという大変重要な点も御指摘をいただいております。  我々としては、やはりその国民的な議論の深まりに資するような適切な役割を是非果たしたいというふうに思っておりまして、この答申を基礎として道州制に関して国民的な議論が幅広く行われることを期待をしているところでございます。
  31. 関口昌一

    ○関口昌一君 答申が出されて国民的なレベルでこの道州制の議論が起こるということは、地方の役割を見直すということで私は大変重要であると、いい機会であると思っております。ただ、残念なことに、この道州制の導入にしても現在の市町村合併にしても、財政的な支援の議論がまだまだ不十分ではないかと思っております。  今政府が行っております税源移譲も、義務教育費国庫負担金を始めとする義務的経費が大半を占めております。地方からすれば、地方の裁量を増やして国民に最も身近な地方自治体に主体的な政策を行わせるという、むしろ裁量的経費の税源移譲をもっと増やすべきではないかと私は考えております。  補助金改革は平成十六年から十八年度までと言われておりますが、竹中大臣、いろいろ御苦労されているのは十分分かっておりますが、まだまだこれでは十分ではないと私は思っておりますが、補助金改革、また地方への税源移譲についてお考えをお聞かせいただきたいと思っております。
  32. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 補助金改革、税源移譲、大きく進んだということも事実でございますが、まだまだ道半ばというのももう全くそのとおりであろうかと思います。  委員の御指摘の中で、特に裁量的な経費というふうにおっしゃいましたが、要するに自治体が自らの自由度を持って使えるようなお金が必要だと、これはもう全くそのとおりだと思います。そういうことに、そうすることによって真の地方自治が実現していくと考えております。その意味では、今回の補助金改革で、これは谷垣大臣と随分と御議論をさせていただいたわけでございますが、施設費が初めて補助金の廃止、税源移譲の対象になったということは非常に大きな前進であろうかというふうに思います。  自治体の方に伺いましても、やはりその施設費関連で、公共事業ないしは施設費の関連で総合的な観点からの自由度を一番発揮したいんだという要望がかねてからございました。ところが、一方で、その財源は国債に頼っていると、移譲すべき税源がないではないかという財務当局からの御意見もあったわけでございますが、そこは双方知恵を絞って、この施設費についても今度の税源移譲の対象になったと。そういう方向を引き続き私としても目指してまいりたいと思います。  同時に、これ全般について申し上げると、やはり交付団体、不交付団体の比率を見ますと、交付団体が余りに多過ぎると、不交付団体が余りに少な過ぎるのではないかと。そういうことも視野に入れながら、不交付でやっていけるような団体が増えるような仕組みをつくっていかなければいけないということだと思います。  そういう中で、税源の配分についてもしっかりと引き続き財務大臣とよく話し合っていきたいと思っております。
  33. 関口昌一

    ○関口昌一君 よく地方で、我が党の片山幹事長もおっしゃっていますが、国と地方の仕事、税の配分、国が六、地方が四、そして実際仕事の内容は、地方が六、国が四、まあ三兆円規模の税源移譲が行われまして、まあ五八%、四二%ということになって、努力されているということは分かりますが、最終的にはフィフティー・フィフティーの税源移譲をする中で、また地方が独自に発揮できる裁量的経費の税源移譲は大幅に考えていただきたいということを要望させていただきたいと思います。  慶應大学の土居先生は、公営企業金融公庫を見直して、単独では地方債の発行が難しい自治体の地方債の共同発行機関とすべきという御意見を持っておりますが、この案についてどうお考えでしょうか、大臣
  34. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 土居先生の意見は承知をしております。  公営企業金融公庫、そもそもについて申し上げますと、政策金融改革の中で、行革の重要方針の中で、これはやはり政策金融機関としては廃止をするということをもう明示しております。そして、資本市場等を活用した仕組みに移行するということ、同時に、必要な財政基盤を確保する等その廃止へ向けた一定の措置を講ずると、その枠組みの中で具体的な制度設計を今検討しているところでございます。  いろんな考えがございますし、土居先生のようなお考えも多々あるということは承知をしております。その方向については、廃止等々の方向については行革推進法案に明記したところでございますので、それは今後御審議をいただきますけれども、我々としては、必要な、やはりいわゆる財務基盤の弱い団体についてどのようなことが考えられるかということを十分に考慮した上で制度設計に取り組みたいと思っております。
  35. 関口昌一

    ○関口昌一君 慶應の土居先生、その他いろんなお考えもあるかと思いますが、是非そういうものも参考にしながら取り組んでいただきたいと要望さして、次の質問に移らさせていただきます。  少子化対策について、少し視点を変えて質問をしたいと思います。  それは、専業主婦や三世代同居世帯の問題であります。少子化の問題になりますと、働く女性の支援という話がよく出てまいります。これも私も大変重要であると思っております。しかし、専業主婦のように我が国の家族を根底で支える方への支援がまだまだ十分ではない、そして、女性が働くことは奨励するけど、家庭で家族を守る役割の重要性を声高に唱えることは余り行われていないのではないかなと思っております。  猪口大臣男女共同参画も担当でございますんで、家庭の中で家族を守る女性の意義というものについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  36. 猪口邦子

    国務大臣(猪口邦子君) 関口先生にお答え申し上げます。  私は、専業主婦として生きる生き方というのは大変尊く、また尊重すべき選択であり、尊い献身を伴う判断があると感じております。  男女共同参画を担当する私といたしましては、男性、女性それぞれが能力や個性を十分に生かして自由な選択ができるということが重要であると考えておりまして、そういう意味で、働く女性の環境整備も重要ですし、今冒頭にはっきりと申し上げましたとおり、専業主婦という生き方についても深く尊重して、必要な支援、当然ながら展開されるべきであると考えております。  そして、昨年十二月に第二次の男女共同参画基本計画を策定し、閣議決定いただいたわけですけれども、その中で、社会で働きたい女性も専業主婦も、すべての女性及び男性を対象とした施策を盛り込んでございます。また、昨年十二月にこれも決定したことなんですけれども、いったん家庭に入られて子育てが一段落した段階でもし社会にまた復帰したいという希望を持つ女性に対して十分な支援が展開されるよう、こういうことも政府の施策として展開しております。
  37. 関口昌一

    ○関口昌一君 少子化対策の問題、働く女性に対する支援、これも大変重要でありますが、こうした専業主婦に対してもまたいろいろ支援策を考えていただきたい、これは要望だけにとどめさしていただきたいと思っております。  もう時間がなくなってまいりましたんで、あとをはしょって申し訳ございませんが、税制の問題で財務大臣にちょっとお聞きしたいんですが、過日、昨日ですか、与党の協議会、政府・与党の協議会において、子供の数もカウントするというような、控除も考えるというふうなことも中川政調会長も発言されているということでありますが、私も大変結構なことだと思っております。  N分N乗方式ですか、も検討されているということでありますが、一歩踏み込んで、おじいちゃん、おばあちゃんも二人分として三世代同居の世帯に対して更に優遇する税制は考えておられるか。六月に骨太の方針が出されるということでありますが、そうした私、一つ提案なんですが、子供の数のほかにおじいちゃん、おばあちゃんの数もカウントするということも少し考えていただきたいと思うんですが。
  38. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 今の御質問は、三世代同居みたいなものをもう少し推し進めることができないかという御趣旨だろうと思います。  子育てとか少子化対策という観点から考えましても、子育て世代の夫婦にとって、自分の親と同居して、その親から手助けを受けると、そしてまた孫と祖父母との交流を図る、それは子育て負担の軽減にもつながるし、子育ての支援にもなるという側面は、私は確かにあるんだろうというふうに思います。  そこで、今、税制がどうなっているかということを申し上げますと、現行制度におきましても、三世代同居を含めたお年寄りと同居する世帯については、普通の一般の扶養控除、これは三十八万円ですが、それよりも割増しされた老人扶養控除、これは五十八万ということで、これを設けることで、老年者を扶養することによって税の支払能力が落ちてくると、それをカバーしようという制度になっているわけですね。  こういう割増しあるいは加算措置をどう評価するかということですが、これは扶養親族のいろんな特徴を考慮してきめ細かな対応を図るという、これは大きなメリットがあるわけですが、他方、扶養控除制度というのは何かえらく複雑なものになっているねという御批判もあります。  そういうんで、これから税制の中で今のような問題をどう考えていくのかと。結局、家族の在り方とかそれから働き方といった、何というんでしょうか、人の生き方、価値観にかかわる問題でございます。それに伴って税負担が変動してくるということでございますから、これはいろいろ議論、この少子化の問題の中で幅広い議論をして結論を出していきたいと考えているところでございます。
  39. 関口昌一

    ○関口昌一君 是非、こうした提案もちょっと考えていただければと思っております。  もう時間がないんで、最後に医療の問題についてちょっと質問させていただきたいと思います。  川崎大臣、今回、医療改革、制度改革を行われました。私も、これはもう今の財源を考えるとしようがないかなと思っております。そうした中で財源を確保するためには、私はやっぱり消費税の社会保障関係目的化というんですか、そうしたことで取り組んでいって、しっかりと財源を確保するというのは重要になってくるんではないかなと思っておりますが、こうした考えについて大臣、川崎大臣また谷垣大臣にお伺いをしたいと思っております。
  40. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 御指摘いただきましたように、我が国は人口構造が大きく変化する時代を迎えようといたしております。すなわち、戦後に生まれた団塊の世代、二百六、七十万人ずつ毎年生まれましたけれども、一方で昨年生まれた子供は百六万人。そういった大きな変化の中で、どちらかというと、負担をする立場でありました我々の世代が給付を受ける時代に変わっていく。したがって、相当社会保障費というものが大きくなる時代を迎えるであろうと。  もちろん、二年前には年金改革、そして昨年は介護保険、今年は医療保険の改革をお願いをいたしているところでありますけれども、いずれにせよ社会保障給付というものが増えざるを得ない。  安定した財源をどこに求めるかという中で、今年は基礎年金の負担分、少し財務省にいろいろやりくりをしてもらいました。児童手当についてもやりくりをしてもらった。しかし、安定した財源ということになると、消費税の議論というものを避けるわけにはいかないなと。そういった意味で、税制改革全体の中で消費税の論議、その中で私どもの社会保障の負担をどうしていくかというものをしっかり議論をしてまいりたいと、このように思っております。
  41. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 社会保障については、これがちゃんとこれで将来も持続していけるんだという安心感をつくっていくことが一番大事だと思うんですね。  それで、そういうことを考えていきましたときに、今厚生労働大臣からも御答弁がありましたように、消費税というものが幅広く公平に国民の負担をお願いする、そういう意味で社会保障を支えていただくには適した税制であることは間違いないと思っております。  ただ、私ども考え方からしますと、目的税化をしていきますと、今も特定財源をできるだけ縮めていこうとか、あるいは特会なんかでもできるだけ特別会計というのは減らしていこうという流れの中で、目的税というものはややいろんなものを硬直化させてしまうところもあるじゃないかという問題点がございまして、私ども、基本論は余り目的税というのは賛成じゃないんです。  しかし他方、今のような社会保障に対する国民の不安が、持続可能かという不安がある中で、国民の理解を進めながら物事を進めていくという点では目的税化というのは意味があると思っております。  これは大きな議論でございますので、まだ私どもも結論を得たわけではございませんけれども、幅広くこれは議論をして落ち着きどころを探していくべきことだと考えております。
  42. 関口昌一

    ○関口昌一君 しっかり議論していただき、そして是非目的税化を目指していただきたいと要望さしていただいて、質問を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  43. 小野清子

    委員長小野清子君) 以上で末松信介君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  44. 小野清子

    委員長小野清子君) 次に、前田武志君の質疑を行います。前田武志君。
  45. 前田武志

    ○前田武志君 民主党の前田武志でございます。  まず、地球温暖化対策等について議論をしたいと思います。  このところ、毎年のサミットで小泉総理は非常に地球環境、温暖化対策について熱心かつ積極的に取り組んでおられます。昨年のグレンイーグルズ・サミットですか、地球温暖化に関する行動計画等が合意されて、我が国は気候変動イニシアチブを発表し、大いに積極的に取り組みたいというふうにしたというふうに聞いておるわけでございますが、このサミットの成果をどういうふうに評価をしておられるのか、また、その行動計画を二〇〇八年に日本で行われるサミットに報告するというふうになったと聞いておりますが、どういうふうに具体的に進められるのか、このことについて、環境副大臣が来ておられるんですかな──政務官、はい、お願いいたします。
  46. 竹下亘

    大臣政務官(竹下亘君) 先生御指摘いただきましたように、昨年のグレンイーグルス・サミットでは地球温暖化に関する問題が主要議題の一つとして取り上げられまして、正に二十一世紀は環境の世紀であるという方向に向けて動き出したなという感じはつかめた感じがいたしておるところでございます。我が国は、途上国支援やCDMの促進、地球環境あるいは気候変動影響監視の推進などの取組を掲げました気候変動イニシアチブを発表いたしまして、積極的にこの取組を推進していくということを表明をさしていただきました。  そのサミットの成果でございますが、三つございます。一つは、気候変動の科学についての認識の共有ができたこと、二つ目、具体的な分野ごとの取組を掲げたグレンイーグルス行動計画というものを策定をいたしたこと、そして三つ目が、新興経済諸国とのパートナーシップの強化、こういう三つの点で進展があったと高く評価をいたしております。  このうちグレンイーグルス行動計画につきましては、我が国が議長を務めます二〇〇八年のG8サミットまでの期間にその実施状況を評価していくということになっております。この計画には、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの利用拡大などに関する各国の具体的な行動や共同の検討作業などが盛り込まれておりまして、我が国としてはこの計画の推進に向けて積極的に貢献をしていきたいと、こう考えておるところでございます。
  47. 前田武志

    ○前田武志君 今の御報告聞いておりますと、非常に具体的かつ積極的な取組をやるということになったのだと思います。  実は、この本予算委員会が開かれている途中だったんですが、二月の二十四日にロンドンでGLOBEという、これ地球環境国際議員連盟というんでしょうか、のアドバイザリーミーティングが行われて、急遽私がこの日本のグローブ・ジャパンの皆様方に指名をされてトンボ返りで行ってまいったんです。EU等が非常に熱心に取り組んでおられるということを実地に体験をいたしました。そしてまた、口々に、この二〇〇八年の日本のG8に対してのこの行動計画、これをずっと報告するために取り組むんだというような話が随分出ておりました。  一種の危機感を持ちまして、今政務官が御紹介されたように、非常に積極的に日本は取り組むということになっているんですが、いやいや、EUの方がもっと先端的にやっているぜというような感じを持ったわけでございますが、政務官の方からGLOBEというもの、私はこれは初めて参加させてもらったんですが、小池大臣を始め、ここにも加藤議員だったり熱心な先生方多いんですね。御紹介をください。
  48. 竹下亘

    大臣政務官(竹下亘君) GLOBE、通称グローブでございますが、地球環境国際議員連盟でございまして、地球環境問題に対する立法者、議員の間の国際協力を構築するために一九八九年に設立された国際的な議員連盟であります。  現在、日本はもちろんでございますが、アメリカ、欧州に加えましてロシア、南アフリカ、また南中央アジアなどの地域が参加をいたしております。そして、積極的な活動をしておるわけでございますが、評価も非常に高いと。国連持続可能な開発委員会の承認を受けたNGOでございまして、世界の環境の分野でGLOBEといえば、環境問題に取り組んでいらっしゃる方々の間にはもう定着しておる非常に格の高い組織でございます。気候変動枠組条約締結国会議などにももちろん積極的に参加をして活動されております。  日本地域組織でありますグローブ・ジャパン、これも超党派の議員連盟でございまして、GLOBEの設立当初からの中心的な役割を果たしてきていると承知をいたしております。先ほどお話しになりましたように、前田委員もそのメンバーでございますし、小池大臣もGLOBEのメンバーでございますし、現在は谷津先生がグローブ・ジャパンの会長をしていらっしゃいます。本当に積極的に活動をしておりまして、環境省としましても、こうした世界に通用するNPOの皆さん方と協力してこれからも活動していこうと考えておるところでございます。
  49. 前田武志

    ○前田武志君 たしかおととしのサミットで地球環境に取り組むその教育の十か年とかいう提案があったと思うんですが、日本においても非常に熱心に取り組んでいる小学校等があります。そんな例を私も一つ御紹介したような次第でありました。  ところで、この会議で排出量取引というのが非常に熱心に議論されておりまして、EUにおいては排出市場という経済取引というものがもう本当に市場化されて非常に活発に動いているという印象を受けた次第です。排出量取引、排出量、どういうことなんですか。具体的に御説明ください。
  50. 竹下亘

    大臣政務官(竹下亘君) 温室効果ガスの排出量取引につきましては、京都議定書に基づく国際排出量取引と各国が独自に導入しております国内排出量取引というものがございます。  京都議定書上の国際排出量取引は、先進国が国際的に協力して温室効果ガスの削減目標を達成するための有力な手段、補助的な手段とも言えますが、同時に有力な手段であると思っております。削減目標を達成できない国は、達成しているほかの国から余っております排出枠を購入することにより達成したとみなす仕組みでございます。  なお、京都議定書では、国際排出量取引のほかに、先進国が海外における温室効果ガスの排出削減事業に対する投資や技術協力を行うことによりまして、その事業から生じた排出削減量を自らの排出削減分として取得することができる仕組みでありますクリーン開発メカニズム、通称CDMと呼ばれているものでございますが、と、もう一つは先進国間でやります共同実施、これはJI、ジョイントインプリメンションでしたか、ちょっと忘れましたが、の活用、この二つを認めておるところでございます。  他方、各国が独自に導入しております国内排出量取引は、国内の工場等の排出源に対しまして排出上限枠をそれぞれ設定をいたしまして、その排出枠について達成ができない排出源は、達成しているほかの排出源から余っております排出枠を購入することにより達成したとみなす仕組みでございます。  これらの排出量取引を活用することによりまして、市場原理に基づきまして、コストを最小化しながら温室効果ガスの総排出量を減らすことができると、そういうことをねらいにした仕組みでございます。
  51. 前田武志

    ○前田武志君 そこで、実際のこの排出権取引、日本でどういうふうになっているのか、そしてまた今政務官御説明の京都メカニズムというんですか、発展途上国との間の取引だとかというようなことについて具体的にどういうふうに進めようとしているのか。ここは実際の分野を担当されている、実力分野であり実力大臣である二階先生に聞きたいわけでございますが、まあ色男金と力はなかりけりというわけじゃございませんが、環境省はまあ金の方は余りないと聞いておるわけでございますが、経産省において今この排出権取引の国内市場の整備であるとか、それからまたこれは日本を取り巻く発展途上国、中国等、中国を発展途上国と言うと失礼かも分かりませんが、大変な排出量を出す国々があるわけでございますが、そういった国々に対するこの京都メカニズムの適用、戦略的にどういうふうに考えておられるのか、二階大臣から御所見をお伺いいたします。
  52. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) お答えをいたします。  京都メカニズムは、我が国など先進国の優れた技術を活用して、途上国の皆さんのいわゆる環境問題に対しての協力、また排出削減事業等について積極的に対応していこうというものでありますが、先進国は削減分を京都議定書の目標達成に活用できる仕組みとなっておることは御承知のとおりでございますし、今、竹下政務官からも御説明のとおりであります。これにより、地球規模で温暖化を防止しよう、途上国の持続可能な開発に貢献することができる。同時に、我が国企業にとっても海外事業展開の新たなチャンスとなることが期待できるわけであります。  このため、我が国は京都議定書目標達成計画において、いわゆる京都メカニズムの活用を推進することとしております。今国会には、私たち所要の法案を提出しております。ただいま衆議院におきまして、提案理由の説明を申し上げてきたばかりであります。  本年五月、また中国との間において日中省エネルギー環境総合フォーラムを開催する予定をいたしております。その議題の一つとして、中国側からは既に京都メカニズムに関する提案がなされております。このように、途上国も京都メカニズムに高い関心を持っております。このような機会を生かして、京都メカニズムの活用を推進してまいりたいと思っております。
  53. 前田武志

    ○前田武志君 このグレンイーグルの合意文書の中では今後の長期的な傾向、どのくらいなんでしょうか、五十年先ぐらいなんでしょうか、どの程度のエネルギー消費量がアップするのか、そして、本当に地球環境を何とか最低限悪化させないためには温度上昇をどの範囲ぐらいに長期目標としてとどめるべきか議論されたと思うんですが、その具体的内容をお聞かせください。
  54. 竹下亘

    大臣政務官(竹下亘君) グレンイーグルスの合意文書では、世界のエネルギー需要は今後二十五年間で六〇%増加すると見込まれているというふうに推測をいたしておりまして、GLOBEでは気温の上昇を二度C、二度以内に抑えるべきだということを主張をいたしております。  そういう中で、我が国も中央環境審議会の国際戦略専門委員会におきまして、温暖化による悪影響の顕在化の未然防止という観点から、将来にわたる温度上昇を工業化前、これ一八五〇年ごろを想定しておりますが、これを基準にいたしまして、上昇を二度以内に抑えるという考え方、これを長期目標の検討の現段階での出発点となり得るという中間報告をまとめていただいております。
  55. 前田武志

    ○前田武志君 昨今来の、今年の豪雪もありますし、台風あるいは洪水、いろんなことを含めて、日本国民のみならず世界の人々が確かに地球環境危機が迫ってきたということを実感し始めていると思うんですね。  そういう中で、今政務官からも御紹介ありましたように、もう非常に世界はまさしく日本がイニシアチブを取っているこの環境問題について、もう大きく覚悟を決めて踏み切ろうということになったわけですが、そういうことを受けてEUの域内排出量取引制度なんかが去年一月一日から始まって、非常に活発に動いているということの印象を持ったわけでございますが、どうも日本の場合、それは今までの効率的にエネルギー排出量を抑えるのに成果を上げてきた日本の実績というものはあるわけなんですが、相当積極的に取り組まないと後れを取るのではないかと、こういうふうに感じております。  二階大臣の決意と御所見をお伺いする次第です。
  56. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) この問題について大変見識の深い前田議員からのお尋ねでございますが、私も今議員がおっしゃるように、この環境問題に対しての取組というのは、今御指摘ありましたとおり、相当の決意を持って対応しなくてはならないということを考えております。  例えば、先ほど申し上げました中国との問題におきましても、中国の環境問題を考えるだけではなくて、中国の環境問題は日本の環境問題でもある。もう空はほとんど御承知のとおりつながっておるようなものでありますから、この点におきましても、ともに対応しましょうと。  そして、私たちも過去には環境問題、当時はよく公害問題ということを言われたわけでありますが、公害問題で大変悩んでまいりました。苦労してまいりました。企業も存立の危機に瀕するような状況さえ各所で発生しました。今、皆そういうことを我が国は乗り越えて、世界一の環境国ということが言われるようにまでなりました。これは正に官民挙げての協力の結果だと思います。  この私たちの持つ経験と知見をできるだけ広く多くの世界の人々に供給していく、そしてまた貢献していくということが大変大事なことだと思っております。私たちがこの分野で思い切り活躍をするということはいずこの国も異議を挟まないわけでありますから、私は、環境分野こそこれからの日本が活躍する最も大きな舞台である、また同時にその責任もある、このように考えております。  今度の五月末、東京で開催する中国との最初の環境フォーラムにおきましても、できるだけ多くの皆さんの御協力を得たいというふうに考えておりますので、環境関係に大変御理解の深い各党の議員の皆さんにもお力をちょうだいできるように私たちも取り組んでまいりたいと考えております。
  57. 前田武志

    ○前田武志君 このグレンイーグルズ・サミットでも議題になったわけでございますが、排出量を削減するだけの対応ではなしに、再生可能なエネルギーというものを大幅に開発し、導入していく必要があるという指摘があります。この面についての大臣の御所見、そしてまた環境政務次官の考え方をお聞きいたします。
  58. 小野清子

    委員長小野清子君) 二階大臣でよろしいんですか。
  59. 前田武志

    ○前田武志君 はい。
  60. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) ただいま議員御指摘のように、これからはエネルギー、できるだけ環境に負荷を掛けないエネルギーの開発が必要であるということで、私どもも正に省を挙げて取り組んでいるところであります。そして、その結果、だんだんと太陽光発電であるとか、あるいはまた最近は、これまあ随分以前から、前田議員も御承知のとおりでありますが、波力という問題に対してもこれを見過ごすことなく対応を考えるべきではないかということでありますし、バイオエタノール等のバイオエネルギー、これの活用等についても熱心に御意見を寄せていただいておりますし、近ごろは国際会議等におきましても、ブラジル等はこのことに関して、日本との協力に対して大変積極的であります。そして、電気自動車等につきましても、我が国は既に時速四百キロも出るような自動車を開発することに成功しているわけでありますから、こうした面でもしっかりした取組を行ってまいりたい。  このことに対して、今後、税制の面であるとかあるいは予算面であるとか、我が国がもっと積極的な対応をして、この新しい新エネルギー構想ということに関してしっかりした取組が必要だと思っておりますし、今、経済産業省におきましても新しいエネルギー構想について方針を打ち立てようとして懸命の努力をしておるところであります。
  61. 竹下亘

    大臣政務官(竹下亘君) 御指摘をいただきましたように、例えば太陽光あるいは風力などの再生可能エネルギーは大変温暖化対策として大きな可能性を持っております。世界規模でこれを利用していかなければならないというのも課題の一つでございます。グレンイーグルス行動計画におきましても再生可能エネルギーを推進することが合意されておりまして、私どもも各国と連携しつつ積極的に力を注いでいきたいと。特に太陽光につきましては、日本の太陽光発電の生産量は世界一なんです。ただし、それを今導入しているスピードはこのところドイツの方が少し上回ってきておりまして、もっともっと努力しなければならないなと。  現状でいいますと、太陽光発電、今百十三万キロワットの能力がありますが、二〇一〇年度目標四百八十二万キロワット、四倍以上に増やそうと。風力発電も、これも三倍以上に増やす。バイオマス発電も十万キロワット以上増やすと。バイオマスの熱利用につきましても、今は原油換算で六十八万キロリットルでありますものを、これを三百八万キロリットルまでと。もうこれは数字、目標を、生半可なことでは到着できない目標でございますので、懸命の努力をして目標に到着しなければならないと、そして温暖化を防がなければならないと、こう思っております。
  62. 前田武志

    ○前田武志君 そこで、再生エネルギーを導入を促進するためにRPS法というのがあるわけですが、EU等に比べるとまだまだそのインセンティブが弱い、もっと飛躍的にという今の御答弁ですが、そのために、資源エネルギー庁、どういうふうに今取組をしておられるのか、お答えをください。
  63. 細野哲弘

    政府参考人(細野哲弘君) お答え申し上げます。  今御指摘のRPS法でございますけれども、新エネルギー等から発電される電気を一定以上小売電気事業者引き取らせて、それを義務化して、電力分野における新エネルギー等の更なる導入を拡大するのがこの法律の趣旨でございまして、大変重要な法律だと思っております。  現在のRPS法に基づく導入目標量につきましては、長期エネルギー需給見通しにおける平成二十二年、これは二〇一〇年度でございますけれども、この新エネルギー導入目標をベースにいたしまして、これまでの新エネルギーの導入実績でありますとか潜在的な導入可能量、あるいは技術とかコスト、こういったものを総合的に勘案いたしまして、現在、平成十五年度から二十二年度の数値を決めております。  十六年度の時点では、この実績が導入の目標を達成はしているわけでございますけれども、最終の二十二年度の目標とする導入量百二十二億キロワットアワーとの関係でいいますと、足下の十六年度、十七年度の利用目標は約三倍ということでございます。先ほど来大臣及び政務官から御答弁がございましたように、こういった目標を達成するのは生半可なことではない、非常にたやすいものじゃないという自覚は十分ございます。したがいまして、当面この目標を是非達成をするべく、民間における努力、それから我々の政策面での努力を最大限に組合せをいたしまして、達成の努力をしてまいりたいと思っております。
  64. 前田武志

    ○前田武志君 そこで、再生可能エネルギーの一つとして、今お触れになったバイオマスエネルギー、サミットにおいてもこのバイオマスエネルギーについて議論がなされたと承知していますが、その内容について農林省、お願いいたします。
  65. 染英昭

    政府参考人(染英昭君) グレンイーグルス・サミットでは、バイオマスエネルギーにつきましては気候変動の項目で議論がなされております。先ほどからお話出ておりますように、この気候変動の議論の中では、省エネルギー、クリーンエネルギーの活用などの具体的行動を含むグレンイーグルス行動計画に合意されております。  この行動計画の中でバイオマスエネルギーにつきましては、バイオマスエネルギーを含む再生可能エネルギーに関しまして、開発途上国の能力構築、政策枠組みの策定、研究開発の実施、さらには潜在的な利用可能性の評価について協力を行うこと、さらには、特にバイオマスの利用が進んでおります途上国におきましてより広範なバイオマス及びバイオマス燃料の導入を支援するための国際バイオマスエネルギーパートナーシップを創設することとされたと承知しております。
  66. 前田武志

    ○前田武志君 バイオマスエネルギー、要は太陽エネルギーを固定するのは、これはバイオマスしか、特に植物系のバイオマスしかないわけでございます。私はかねて、この日本の緑を守り木の文化を発展させるという意味においてこのバイオマス利用促進を後押ししているわけでございますが、そこで中川農林大臣に、バイオマス・ニッポン、その取組の状況、そしてこれからどういうふうに大きく発展させようとされているのか、お伺いをいたします。
  67. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) 政府としてはバイオマス・ニッポン総合戦略というものを策定しておりますが、特にエネルギー関連では、日本の場合には化石燃料の占めるウエートが高いわけでありますが、これは有限資源であり、また環境に与える影響も非常に大きいわけでございます。そういう意味で、今、前田委員御指摘のように、バイオマスという再生可能なエネルギーをもっともっと利用していくことはいろんな意味で重要だと思っております。環境面においてもそうでありますし、それからエネルギー政策においてもそうでありますし、私の所管の農業、林業、水産業といった観点から、攻めの政策を進める上でも今後の大きな柱になってくると思います。  バイオマスエネルギーにつきましては、廃棄物系と木質系を中心とした未利用資源の利用、それから資源作物を中心にしたエタノールというような輸送用とかそういった面に利用できるもの、これはもう世界じゅうが今ある意味で争って競争しているわけで、ブラジル、あるいはアメリカのトウモロコシ、あるいはドイツの菜種といったものを利用して車やあるいはエネルギーに利用されているわけでございます。  日本も、資源がないと言いながら、しかし自然資源、木質系あるいはまた植物系があるわけでありますから、今から、先ほど申し上げたいろんな面で貢献できるバイオマスエネルギーの実験もやっておりますし、一部実用化もやっておりますけれども、更にこれを急ピッチで進めていくことが私の仕事、あるいは政府全体の仕事としても大変重要であるというふうに理解をしております。
  68. 前田武志

    ○前田武志君 農林省にお聞きいたしますが、木質チップを瞬時に工業ガス化する技術が開発された、何か農林二号だとか三号とかいって、すばらしいそのガス化技術、これを直ちに、発電にも使えるし、もちろん工業原料にもあるいは燃料電池にも使えるというようなお話聞きましたが、現状評価、今後の方向、お聞かせください。
  69. 染英昭

    政府参考人(染英昭君) 先生からお話ありましたように、木質系のバイオマス、あるいは草とかですね、その辺を原料といたしまして、それをガス化していくと、そのガスを昼間は大体電力に転換していくと、夜は電力需要が落ちるという点もございますので、これをメタノール等に変換していくというような技術を開発しております。  これ現在、実証試験中でございまして、現場でガス化の効率であるとか電力あるいはメタノールへの転換効率等について検討をしておるところでございます。これ現在、この十七年度までの実証事業ということでやってきたわけでございますが、今後更に、十八年以降につきましても、まあいろんな問題点を抱えておりますので、その辺を今後とも十分検討しながら、最終的には実用化に結び付くようなことをやってまいりたいというふうに考えております。
  70. 前田武志

    ○前田武志君 日本の国土の約七割が森林なわけでございますが、今、農山村、大変な疲弊をしております。しかし、日本の環境を支え、環境立国の将来の一番の大きなフロンティアになっていくわけであります。  そういう意味において、最後に、前の経産大臣をやられた中川農林大臣、そしてまた、我々、広大な紀伊半島のバイオマスの宝庫の代表でもある二階経産大臣に、最後にお二人から御決意をお聞きいたします。
  71. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) まず、地球環境ということは、これはもうサミットだけではなくてあらゆる会合でも非常に大きな世界における共通認識だと思います。  去年私が担当しておりました愛・地球博におきましても、あるパビリオンにおいて、今の地球というものはこんなに汚れていると、この地球というのは先祖から我々がもらったものじゃなくて、未来の子供たちから預かっているものなんだというテーマが非常に私には印象に残っていたわけであります。  先ほど申し上げましたように、有限な化石燃焼を、化石エネルギーを中心にした、そしてまたCO2等の排出量の大きいものから、元々資源がない日本は、再生利用ができて、クリーンで、そして農政の部分でも大きな攻めの柱になるこのバイオマス、そしてバイオマスエネルギーというものを先ほども申し上げたようにこれは大いに利用していかなければなりません。  いろんな利用の仕方があります。そしてまた、ブラジルのようなこういう大木もありますし、日本のように、紀伊半島で利用できるものを利用して地域エネルギーとして活用するという方法もあるんだろうと思います。そして、それはもう循環していくわけでございますので、これは地域エネルギーとしても、また農山村、農山漁村の振興のためにもこれからますます重要になってくると思います。  私も、昨年のときにはいろいろな場で、日本は、エネルギー会合等で、日本の技術は世界一であると、省エネ技術、環境技術、これを日本だけではなくて中国や途上国に対して技術移転をして世界で一緒にやっていかないと、先ほどの経産大臣のように、海や空から不必要というか有害なものが断りなしに飛んでくると。これは先方の国の責任ではありますけれども、先方にも限界があります。いろんな意味で限界がありますから、日本としてもそれを大いに支援をしていくということで世界に対しても貢献ができると思いますので、政府全体として、また私の所管の部分でも全力を挙げて取り組んでいきたいと思っております。
  72. 前田武志

    ○前田武志君 実は、このバイオマス利用というのは農山村再生の決め手になると思っているんですね。そこで、このバイオマスエネルギーというのは、元々はやっぱり農林省が主管としてやってきた。エネルギーの主管である経産省においては、バイオマスは割と後発なんですよ。だから、今熱心に取り組んでいただいているということは承知をしておりますが、その辺を含めて、今、中川大臣と二階大臣がそろえば一挙にこれが進展すると思いますので、御決意をお願いします。
  73. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) 紀伊半島は、前田議員の御出身地と私どものこの半島がくっ付いて紀伊半島を成しておるわけでありますが、仰せのとおり、森林資源には恵まれておるわけでありますが、この森林資源の活用ということが常に言われている中で、バイオマスの研究ということに対して多くの関係者の皆さんが今日まで取り組んできていただいたことに対して、むしろ私は感謝をしておるわけでありますが。  最近、和歌山におきましてもあるいはまた徳島地方におきましても、次世代エネルギーパークというふうなものをやってはどうかという地元の提案といいますか声があります。それはいろんな種類の新しい太陽光であるとか風力であるとか、いろいろあります。ある中で、バイオマス等の研究、実験等についてもできるだけ予算を低く抑えて対応することができないかなどよくお話を伺うわけでありますが、私ども、そういう面で正に地域挙げてこのエネルギー対策、その中でも間伐材等をうまく活用してバイオエネルギーにつきまして成果が得られるように考えていきたいと思っております。  なお、先ほどの御質問にもございましたが、いわゆる今後、欧米諸国等、一次エネルギーの供給に占める再生可能なエネルギーということが言われておりますが、最近までアメリカが大体五・九%、そしてイギリスが一・二、ドイツが三・七、我が国は五・〇というところまで来ておりますが、これをできるだけ早く六%に、七%に上げていく努力をしなければいけない。その一環として、それぞれの地域の森林での間伐材等の活用につきまして、これは農林省とも十分御相談をしながら、経済産業省としても地域経済産業局を動員して積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  74. 前田武志

    ○前田武志君 次に、違法伐採のことを議題といたします。  G8においてこの違法伐採が大きな課題になったと承知しておりますが、その内容はどういうことであったか、農林大臣から御説明を願います。
  75. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) お答えいたします。  昨年七月のG8のグレンイーグルズ・サミットにおきましては、関係各国が森林の減少に危機感を深めまして、国際的枠組みの中で違法な森林の伐採を防ぐためのグレンイーグルズ行動計画に賛意を表したところでございます。  この中で、同年三月のG8の環境・開発大臣会合の違法伐採についての結論を承認するというのが一点ございました。また、この目的を更に推進するため、各国が最も効果的に貢献できる分野において行動することによりまして推進するという合意がなされたところでございます。  具体的な中身といたしましては、一つは木材生産国への支援、二つ目は違法伐採木材の輸入と市場売買を止めるための段階的な取組、合法的な木材を優先使用する木材公共調達政策の奨励、採択又は拡大、四点目といたしまして違法伐採対策に対応するための二〇〇六年中のG8の森林専門家会合の開催に取り組むということにされております。
  76. 前田武志

    ○前田武志君 日本の木材需要のもう大半が、ほぼ八割ぐらいが輸入木材だと、こう聞いているわけなんですが、この違法伐採を起源とする木材というのは大体どの程度あるんですか。
  77. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) 違法伐採木材の我が国の利用の実態ということは、なかなか現時点ではその識別が困難でありまして把握することは難しいわけでございますが、ただ生産国におきます事例で申し上げますと、例えばインドネシアでございますが、生産される木材の過半が違法に伐採された木材であるという政府レベルの調査報告がありますほか、また、ロシアにおいては約二〇%が違法に伐採されているという環境NGOの報告もあるところでございます。
  78. 前田武志

    ○前田武志君 ということで、私もこの間からニューギニア、インドネシア、それからロシアの違法伐採、NGOなんかの報告を聞いたことがあります。  今朝、たまたまテレビをひねっていると、中国、ロシアの国境地帯、中国東北地帯が非常に二国の状況が良くなってきて発展をしております。テレビで映っていたのが、国境を越えて貨物列車に木材を満載してどんどんどんどん運んでいる、それが蓄積されている、そういう状況を見ました。いったん中国に入って、製材して日本に入ってくるというのも随分多いわけですよね。  そういう意味においては、この違法伐採を起源とする木材についてのしっかりとした対応策を講じていただきたい。今どういうことになっているのか、お答えください。
  79. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) 今御指摘の違法伐採問題でございますが、正に地球規模での環境保全、持続可能な森林経営の推進ということで極めて重要な課題でございます。そして、我が国としましては、違法に伐採された木材は使用しないという基本的考え方で対応してきておりますが、取り組んできているところでございます。  具体的には、日本、インドネシア間の二国間協力によりまして違法でないものが適正に流通するような形を取るといったような仕組みをつくり上げようというような努力、あるいはまた東南アジア諸国とも同様な地域間の協力をしておりますし、また、国際熱帯木材機関を通じました熱帯木材に関する多国間の協力を通じて、違法に伐採されました木材を排除するというための技術開発あるいは情報交換ということに取り組んでおります。また、本年の四月からは、政府調達の対象を合法性、持続可能な証明ができた木材にするといったような措置も導入されるということになったわけでございまして、我々としても、今後とも引き続き積極的に取り組んでまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  80. 前田武志

    ○前田武志君 次に、林野庁、国有林の話題をいたします。  まず、平成十年だったですか、独立会計から大きく転換したきっかけがありましたが、その政策の大きな転換について御説明を願います。
  81. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) 御指摘のように、平成十年に国有林野行政事業の大転換をしたわけでございます。これは、国土の二割、森林の三割を占めます国有林のこれからも維持、継続をしていくことが国土政策上も極めて重要であるという観点から、国有林野の九割を公益的機能を重視した森林に区分すると、残りの一〇%につきましては循環型の資源利用を中心にやっていくという管理経営をすることに転換をしたところでございます。
  82. 前田武志

    ○前田武志君 かつて屋久島の国有林が、屋久杉が切られてというシーンがあったわけですが、そういうのを、今度はむしろ日本の大きな天然資源、後世に残すべき生態系というようなことで、政策転換にも伴って残していく一つのシンボルだろうと思うんですが。  ここにお配りしているこの写真、これは御提供いただいたものですが、一ページ目は、これは北海道の中川農林大臣の御地元の伐採状況ですね、国有林野の。カツラ、センノキ、シナノキ、なかなかいい、この地方にしかないような木もあるようです。そして、その伐採の方法もこうやって、もちろん効率化ということでブルで引いている。まあこれは土壌も壊すことになりかねない。国有林野でもうこんなことをやめたらどうですか、大臣
  83. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) まあ私の地元も森林地帯でございますけれども、先ほど申し上げたように、森林そのものの機能というものは多面的であります。その一部がこういう資源を循環型で利用をしていくということでありますが、当然大きな負債も今時点でもあるわけでございますから、経営の効率化ということについては、これはもういつも最重要の国有林野行政として考えていかなければならないというふうに考えております。
  84. 前田武志

    ○前田武志君 林野庁にお伺いしますが、国有林の今、伐採量ですね、どういうことになっているのか、そして、おおよその市場価格、市場に出すんでしょうから、年間どのぐらいの売上げがあるのか、教えてください。
  85. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) お答えいたします。  平成十六年の数字で申し上げますと、まず販売量の量的な問題でございますが、針葉樹で二百十一万立方、それから広葉樹で二十万立方となっておりまして、販売金額でございますが、針葉樹が百六十五億円、広葉樹が十八億円と、こういうことになっております。
  86. 前田武志

    ○前田武志君 まあ、もちろん、特別会計で経営努力もということなんでしょうが、スズメの涙にもならぬですね、これじゃ。  ここの二ページ目に、これは樹齢三百年を超える天然秋田杉、ブナの大きなこの原生木の横で伐採したような、こう書いてあるんですが、私が思うに、例えばこの奈良の社寺なんていうのはもう今や手に入らないんですね、改築するときに、柱にしろ、木材が。興福寺、これも今改修をしようとしておりますが、そのはりであるだとかそういったところをアフリカから持ってくると言っているんですね。まあ、こういったものを百六十五億円トータルで売るよりも、もう本当に国の宝を維持管理していくために必要なところだけ出すというぐらいのことにすべきじゃないかなと思うんですが、大臣、いかがですか。
  87. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) まあ、そういう興福寺とか伊勢神宮とかいったところがやはり日本で何百年と育ってきた木を使うということについては、何といいましょうか、精神的な意味でも極めて大事なことだろうというふうに考えております。  そういう意味で、日本にはまだまだいい木が一杯、天然林あるいはまた人工林含めてあるわけでございますから、それをできるだけ利活用していくということ。いろんな利活用の仕方があって、地産地消、あるいはまたちょっとしたところでの利活用から今のような日本の象徴的な分野に使っていくことから含めて、とにかく山を守りながら、目的をきちっと設定をして、そして資源を有効に活用していくと。そして、国有林野の事業も、常に緊張感を持って、国民の大事な財産、生命を守っていくんだということでこれからもやっていかなければなりません。引き続き、前田委員の御指導をお願いしたいと思います。
  88. 前田武志

    ○前田武志君 行政改革の中で、今、林野庁もその行政改革の当然対象になっていると思いますが、どういうような議論がされているんですか。大臣にお伺いいたします。
  89. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) お答えいたします。  昨年十二月に閣議決定をされました行政改革の重要方針というものがございまして、この中で、国有林野事業特別会計につきましては、平成二十二年度に、借入金の処理等事業運営に必要な措置を講じつつ、企業特別会計としての特性及びこれまでの取組などを踏まえ、その業務の性質により一般会計への統合・独立行政法人化を検討するというふうにされておるところでございます。  これを受けまして、農林省といたしましては、正に水源の涵養等公益的機能を有しておりますし、また世界自然遺産に指定されました屋久島、こういったような森林も始め貴重な森林、生態系も有しておるところでございますので、この国有林野を適切に管理、保全をいたしまして、国民共通の財産として後世に伝えていくことが重要ということを考えております。こういった基本的な視点に立ちまして、適切に対応してまいりたいというふうに思っております。
  90. 前田武志

    ○前田武志君 この辺の議論財務大臣にも聞いておいてほしいんですが、この国有林が持っているすばらしさというかすごさというのは、確かに私ももう各所で実感しているんですね。逆に言うと、この独立会計でやっていた時代、我が地元の大台ケ原なんかも、民有林のところは一生懸命維持するんですが、国有林野の方が無残に伐採してしまった。それはもう、こういう独立行政法人化なんていうような方向へ行ってしまうと当然そうなるんですよ。山の尾根、木曽の山地、下北、北海道、秋田、もう本当にこの国有林野が持っているのは、林野が持っているんじゃないんですよね。国民の資産であり、日本の自然の源流なんですね。生態系、そこに動物、微生物、土壌。土壌なんていうのは何千年伝わって初めてそこにあらゆる豊富な植生が出てくるわけですから。  そういう意味においては、独立行政法人というのは、行く行くは廃止か、あるいはペイするものは民営化という話じゃないですか。もちろん、持ってる大きな資産の中で効率的に民に開放した方がいいのはどんどん開放していったらいい。しかし、残る日本の宝のところは、むしろ林野庁はレンジャーになって、職員がこの自然を守る誇りある職務としてやっていくべきなんですよ。  そして、あわせて、さっきの違法伐採だって、まああんなことを言っていますが、全然調べていない。こっちの方はもう調べているんですが、そこまで手が届いていない。レンジャーになればそこまで調べられるじゃないですか。本当にこのすばらしい日本の自然を守るために林野庁、環境省と一緒になって実力ある日本の自然を守る、そういう組織になってほしい。  農林大臣の御所見と、そして、そんな五十年償還で毎年百六十億ぐらい、もうそんなもの話にならぬ。財務大臣の御所見、併せてお聞きをいたします。
  91. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) 木やあるいは木の文化、その他に大変造詣の深い前田委員の貴重な御指摘だと思います。  私のつたない知識でも、昔、今から二千年以上前、地中海を制していたフェニキアという国は、レバノンスギというすばらしい杉が取れて、これでもって船を造ったりいろんなものをつくって経済的に支配を、支配というか覇権を持っていたわけでありますが、切ってしまってそのままにして、今やもう砂漠になっていると。イギリスも、第二次大戦の後、国土が荒廃をして、今、国が一生懸命国有で森林を今育成をしていると。  日本は木の国でございますから、この木の文化歴史、伝統というものを守り、そしてまた、先ほどのバイオエネルギーのように新分野に向かっても可能性のある分野でございますから、本来国がやるべきことは、百年先、五百年先に向かって視野をしっかり持ちながら、国がやるべきコアの部分については今後もやっていかなければならないというふうに考えております。
  92. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) うろ覚えのことを申し上げていけないんですが、二階大臣、あるいは鶴保先生のふるさとである紀の国の神様はイタケルノミコトとおっしゃったと思います。日本書紀を読みますと、この方はスサノオノミコトのお子さんですが、韓半島に行かれたんだそうですが、どうも自分の持っている木のさがとあっちの地が合わないんでまた日本に戻ってこられたという記述が日本書紀にはあったと思います。今おっしゃったあの日本の国有林のすばらしさというのは、やっぱりそういう日本の風土に合った森林を長い間つくってきたということだろうと私は思っているわけでございます。  先ほど、平成十年で木の政策を大転換したというお話がございましたけれども、森林の持っているこういう公的、公益機能と、それからやはりその長い文化や伝統をはぐくんできたということは私はゆるがせにすべきではないと思っておりまして、もちろん私の立場から申しますと、限られた財政でございますから、今までのこの赤字等をどうやって埋めていくかというのは、またこれ非常に苦しい中で知恵を発揮しなきゃいけませんけれども、この公益機能やそういう長い間残してきたものを失うようなことがある解決は私は良くないと、このように思っております。
  93. 前田武志

    ○前田武志君 そこで、国土交通大臣、お疲れのようでございますが出番でございまして、この木の文化をしっかり支えていく一番の力持ちは、やっぱり下流の国民がいかに木を使うかですよね。まずは住宅です。  住生活基本法を提出されようとしておりますが、この日本の国の木をこの住宅基本法の中にどう位置付けておられるか、お聞かせください。
  94. 北側一雄

    国務大臣(北側一雄君) 先ほど来、前田委員お話を聞いておりまして、私も非常に興味深く聞かしていただいておりました。たしか森は海の恋人というんですかね、日本の河川を美しくするためにも、海をきれいにするためにも、国土全体を本当に美しくするためにも、森をしっかり守っていくことが私は原点であるというふうに思っておりまして、健全な森林の育成というのが極めて大事な国策であるというふうに思っております。  我が国の国民も、非常に木造住宅に対するニーズというのは非常に高いものがございます。内閣府の調査によりますと、八割以上の国民は木造住宅に住みたいと、木の住宅に住みたいというふうにおっしゃっておられます。現に新築住宅の八割以上、これはもう木造住宅でございます。  長寿命で良質な木造住宅を整備することが重要な住宅政策としての課題であるというふうに考えておりまして、今委員の方からおっしゃっていただきました、今国会で提出をしております住生活基本法案では、第四条で、地域の自然、歴史文化その他の特性に応じて、住民が誇りと愛着を持つことのできる良好な居住環境の形成を図ることを基本理念とすると。また、第七条で、住宅の建設における木造の使用に関する伝統的な技術の継承及び向上を図るため必要な措置を講ずる旨、国の責務を規定をしているところでございまして、木造住宅の振興につきまして、今後とも、規制の合理化によりまして木造住宅を建てやすい環境の整備をしていくとともに、木造住宅の生産体制の整備、特に地域材を活用した木造住宅の生産体制の整備に努めてまいりたい。また、担い手でございます大工技能者の育成をしっかりと推進をさせていただきたい。  今後とも、このような積極的な施策を推進してまいる決意でございます。
  95. 前田武志

    ○前田武志君 残りの時間を高松塚古墳等、文化財の保存について議論をいたします。  ここに写真集を持ってまいりましたが、(資料提示)皆さん御存じの、これは高松塚古墳の、あの昭和四十七年に発見されたすばらしい飛鳥美人なんですね。あのときとはちょっと違うんです、これ。あの美女が今や傷んでいるんですよ。かわいそうに涙を流しております。  なぜこういうことになったかということですが、文化庁の方から、この飛鳥の高松塚古墳の発見、発掘、そして途中で劣化が進み、そして今対応策を練っておられるわけですが、その経緯を御説明ください。
  96. 加茂川幸夫

    政府参考人加茂川幸夫君) お答えをいたします。  お話にございました高松塚古墳壁画でございますが、昭和四十七年に発見されたわけでございますが、その保存対策につきましては、翌年、四十八年に専門家から成ります保存対策調査会が設けられまして、現地保存の方針というのが確認されたわけでございます。この方針に基づきまして、この古墳内、石室内でございますが、大変狭隘で高温湿な厳しい作業環境にございましたけれども、その時々の最新の保存科学の研究成果に基づきまして壁画の保存、修理に最大限の努力を私どもは払ってきたところでございます。  ややこの経緯、詳しめに申し上げますと、具体的には、昭和五十年代に第一次から第三次にわたる修理作業を行ったわけでございます。カビの対策、若しくは、しっくいが傷んでおりましたのでしっくい層の剥離の防止等を行ったわけでございます。また、カビの防止策につきましては、滅菌方法を改善などいたしまして一定の成果、カビ等の発生を抑制することができる等の成果を上げることができました。この結果、この一次から三次にわたる修理の後でございますが、平成元年度以降はいわゆる生物活動の平衡状態が保たれていたわけでございます。  なお、壁画の劣化、傷み等に関係しますカビ等でございますが、カビの発生は、実は発見当初、昭和四十七年当時から確認をされておりましたし、私どもの確認ができております限りでは、具体的な線の劣化等は先ほど申し上げました修理作業で明らかになっておりまして、昭和五十六年以降には確認ができておるわけでございます。しかしながら、その後、この平衡状態が保たれていたその後でございますが、予想外の気温の上昇でありますとかカビ防止のための薬品の影響、さらには、十三年度に石室前の工事を行ったわけでございますが、これを契機といたしまして、カビと小動物のいわゆる食物連鎖が進行いたしまして環境がかなり悪化をしたわけでございます。  こういった状況を踏まえまして、応急的なカビ対策を実施するために、平成十五年には緊急保存対策検討会議を設置をいたしました。さらに、翌平成十六年には恒久的な保存を図るため、恒久保存対策検討会議を設置をいたしまして様々な保存方法を検討いたしましたが、その結果、昨年六月になりますけれども、現在の環境で壁画を維持することは困難という結論に至りまして、石室を取り出しまして壁画の修理、保存措置を行わなければならない、これを適切な施設で行わなければならないという判断に至ったものでございます。  なお、現在の壁画の状況について申し上げますと、委員報告書、写真集をお示しいただきましたけれども、壁面の汚れ、線の薄れにつきましては、私どもとしましては、原因いろいろあるわけでございますが、石室の開封、すなわち石室を開けたことによって長期にわたって安定していた石室内の環境が変化してしまった、それがカビ等の微生物に影響を与えた、それが結果的には壁画の劣化に結び付いたものと考えておるところでございます。  現在は、昨年九月からその墳丘部の冷却、温度を下げることでございます、若しくは日射、雨水の浸入を防止する措置を講じておりまして、カビ等の微生物の繁殖は現時点ではある程度抑制されておるものでございますが、長期の抑制は難しいとされておりまして、先ほどございましたが、本年二月には西壁の女人群像の顔に染みが発見されるなど、大変厳しい状況に至ったわけでございます。そこで、先ほどの恒久保存対策に基づく対策を講じなければならない状況にあるわけでございます。
  97. 前田武志

    ○前田武志君 次長は専門家だと思いますので、この高松塚古墳のこの壁画の美術的な評価、そして歴史的な評価を端的に述べてください。
  98. 加茂川幸夫

    政府参考人加茂川幸夫君) 先ほど申し上げました四十八年に専門家から成る対策調査会が設けられまして、この壁画につきましても古墳につきましても、大変文化的、学術的に評価の高いものということが意見の一致を見ておりまして、現に四十八年にはこの古墳が特別史跡に指定をされておりますし、壁画につきましても、委員御案内の四十九年に国宝に指定をされておるわけでございまして、極めて学術的にも文化的にも歴史的にも価値の高いものという認識をいたしておるところでございます。
  99. 前田武志

    ○前田武志君 文化財保護法の四条に公開規定が載っていると思いますが、説明してください。簡単でいいですから、公開の部分。
  100. 加茂川幸夫

    政府参考人加茂川幸夫君) 申し訳ございません、手元に今条文を持っておりませんけれども文化財保護政策若しくは文化政策一般につきましては、極めて国民の関心も高く、行政の課題としても大きなものがございますので、情報公開について極力努力をしてまいりたいと思っておりますし、これまでもこの高松塚古墳の関係につきましても同様な線で対応してまいったところでございます。
  101. 前田武志

    ○前田武志君 四十七年の発掘の直後に応急対策調査会を発足させたと、こう言っておられましたが、そこに発見者である明日香村、そして奈良県、橿原考古学研究所ですね、その専門家が入っていたか、そしてカビの専門家が入っていたか、端的にお答えください。
  102. 加茂川幸夫

    政府参考人加茂川幸夫君) お答えをいたします。  当初の専門家の会議には、地元の住民代表は含まれておりませんでしたけども、県立の考古学研究所の所長が含まれておりましたし、カビの対策に関しましては化学の専門家が一名委員として含まれておりました。
  103. 前田武志

    ○前田武志君 今までのお答えを聞いていると、できるだけのことは対応してきたというお答えなんですよ。だけど、これを見ていただいたら分かるように、この写真を初めてデジタルで撮ってこの写真集を出版したのが、これが昭和六十二年だったですか、違う、(発言する者あり)平成十六年だ、平成十六年にこれが出て、そしてこれはおかしいということで元々のこれが発掘されたと。そして、この写真で初めてこの状況が分かった。そこで新聞報道されて、大変なことになっているということで世に知れたわけです。情報公開がなされてなかったんですよ。それをまるでずうっと情報も公開してきたようなことを言っている。  ここで、もう時間がないので小坂大臣に、よく聞いていただいたと思うんですが、それぞれは専門家として一生懸命やっているんですよ。だけど、専門家同士で狭い範囲でやってしまうもんですから、何もこれを公開するんじゃなしに、どういう人選をしたか、どういう専門家を入れたか、それを逐次公開をしていけばこういうことにはならなかった。その時々の知見、先端の技術、入れることができたと思うんですね。  そこで、もう時間がありません。申し上げると、地元の方々はこの高松塚古墳を守ってきた、千四百年来守ってきているんですよ。その地元の方が、もう返してほしい、埋めてほしい、もうそっとしてほしい、飛鳥美女をこのまま我々とともにおらせてほしいと、こういうふうに嘆いているんですよ。地元と遮断してしまって何十年も、三十年たって出てきてるんですかね、この結果が。誠に、日本の至宝と言われる、あれを通じて考古学が言わば日本国民全体に市民権を得た。そして、歴史に対する誇り、あの当時、天武天皇・持統朝の飛鳥・藤原時代、世界の文化を全部集めて文化国家をつくった。そのころの歴史に思いをはせて、しかもこのようなすばらしい美女ですよ、我が日本の元祖美女ですよ。こういう誇りを全部国に預けて、きっとちゃんと守ってもらえると思ってあのときの地元の明日香村の文化財の専門家も奈良県の橿考研の専門家も、これは国でやってもらおうと思って預けたんです。そして、行政の無謬というようなことはもうええ加減にして、この辺りで一度、責任の所在ということをしっかりとかみしめて再スタートをしなければ、また同じ轍を踏む。  小坂大臣、時間がないんで私の思い、言えないんですが、大変なこれは思いがこもっているんですよ。大臣の御答弁をお願いいたします。
  104. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 前田委員がしっかりとお述べになりました日本の国宝であり文化財としての高松塚のこの価値というものは本当に大切なものでございますから、国民の資産としても、また世界人類の歩んできた道と、こういった文化的な価値からしても、今後の、後世に伝えていくべきものと、そういう重要性をしっかり認識をいたしております。  そういう意味で、今御指摘がありましたように、平成十三年のカビの大量発生以降の保存対策の会議は公開をされておりますけれども、それまでの状況について必ずしも十分でなかったという御指摘も踏まえまして、今後の在り方につきまして、また保存方法につきましては、しっかり現在得られるすべての知見を集約できるように心掛けて、そして適切な保存方式等、それからいろいろ御指摘をいただきましたけれども、今日までお守りをいただいた地元の皆さんの意向を尊重しながらこの保存方法を適切に行ってまいりたいと存じます。
  105. 前田武志

    ○前田武志君 終わります。
  106. 小野清子

    委員長小野清子君) 以上で前田武志君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  107. 小野清子

    委員長小野清子君) 次に、喜納昌吉君の質疑を行います。喜納昌吉君。
  108. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 民主党新緑風会喜納昌吉です。  初めに、十三日の予算委員会の続きで幾つか質問します。沖縄密約事件の真相を暴露した吉野文六元外務省アメリカ局長は、職務上の機密を公表したことによって国家公務員法違反にならないかと、前回、法務大臣に質問しました。誤解のないように申し上げますけど、私は吉野文六氏を真実を生きる勇気ある方だと尊敬しております。法と真実は人類が社会的営みを生きていく上で欠かせないコインの裏表だと思っています。しかし、国益の名の下に国家機密漏えいという言葉を使い、法を利権と権威のためにゆがめ、真実から遠ざけるところに今の政府の問題があると見ます。  法務大臣、いま一度聞きます。違反か違反じゃないかをお答えください。
  109. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) お答え申し上げます。  前回も御答弁申し上げましたとおり、捜査当局において法と証拠に基づいて検討されるべき事柄であろうと考えております。  なお、あくまで一般論として申し上げますと、国家公務員法では「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」とされております。これに違反して秘密を漏らした者は一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処するものとされておりますので、これに該当するか否かが検討されることになるものと考えられます。
  110. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 はっきり違反か違反じゃないか、もう一度よろしく。
  111. 小野清子

    委員長小野清子君) もう一度ですか。
  112. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 はい、はい。
  113. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) ただいま御答弁申し上げましたとおり、違反であるかないかは捜査当局において法と証拠に基づいて検討されるべき事柄であると考えております。
  114. 小野清子

    委員長小野清子君) 喜納君、手を挙げてください。
  115. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 法務大臣、法務大臣の考えではどうですか。(発言する者あり)
  116. 小野清子

    委員長小野清子君) 聞き取れなかったようで、もう一度御質問をゆっくりお願いします。
  117. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 法務大臣のお考えではどうですか。
  118. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 法務大臣の立場として申し上げております。
  119. 小野清子

    委員長小野清子君) 済みません、手を挙げてください。
  120. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 私は違反か違反じゃないかを聞きたいんです。
  121. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 繰り返しての御答弁になりますが、違反するかしないかは捜査当局において法と証拠に基づいて検討されるべき事柄であると考えております。
  122. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 もう非常に困りますな、はっきり言ってね。  法務大臣ぐらいの、なる方ですから、捜査当局に任すだけではなくして、そのぐらいのことは御返事できるんじゃないですか。個人的な見解でもいいですよ。
  123. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 法の執行者の立場としての意見を申し上げさせていただきました。
  124. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 私は、非常に今、政府の立場をよく吐露しているような感じがしますよ。何とも言えないというね。私は、そこに今の政府の実態があるような感じがします。これはまあ、この質問はまたゆっくりゆっくり、楽しみながら追い掛けていこうと思っています。  麻生大臣に聞きます。  前回、私が毎日新聞の西山太吉元記者に関する質問をした際、あなたは西山フトキチと発言しました。これビデオに残っています。  これは西山氏を侮辱する言い方です。侮辱したという認識はあるのかないのか、麻生大臣、答えてほしい。
  125. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) これ、西山フトキチと言うんじゃないんですか。ちょっと名前、ダイキチというように読むのが正しいと言われたいのでしょうか。フトキチと読む以外の読み方がある、その名前が表現されてないと言われたいんですか。意味がよく分からぬのですけれども
  126. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 分からないというのが不思議なんですけどね、本当に分からないのかな。  当時は、情を通じてとか、太いやつ、けしからぬやつだとか、西山さんの尊厳を落とすような風潮があったのを御存じですか、麻生大臣
  127. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 記憶に全くないと思いますが、西山さんの話というのは、たしかこれは外務省の職員とどうのこうのという話だったと記憶しますけれども、今のような話に関しての記憶はありません。
  128. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 今までも何度もこの機密漏えい、国家機密漏えい事件に関しては質問してきたんですよ。その流れの中でその当事者の名前も知らないというのはちょっと問題であると思いますけれどもね、どうですか。
  129. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 御指摘の話があったんだとは思いますけれども、西山フトキチという名前で私は記憶いたしたと思っております。
  130. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 もし、麻生太郎というあなたの名前が麻生フトロウとだれかから呼ばれたら面白くないと思いません。このフトは西山さんの太吉のタと同じですよ。だから、タと呼ばないとちょっとおかしいなと私思うんですけれどもね。まあ、それはどうでもいいです。  国政の場で、予算委員会で名前を堂々と間違えて、あるいは正しい読み方じゃない形で発音したことについて西山氏に謝るつもりはないか、麻生大臣、答えてほしい。
  131. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) この方の名前はタキチだというのが正解なんですか。
  132. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 大体、麻生太郎と言えば西山タと読むと想像できるんですけれどもね。タと読みます。よろしくお願いします。
  133. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) タキチと言うんでしたら、今後記憶をいたします。
  134. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 謝ることはしませんか。
  135. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 特にそれほどの、それほど、是非謝れということでございましたら謝らさせていただきますけれども、その種の話を、太郎が別の名前で言われても余り私自身もそんなに、まあ私の場合は余りほかに呼ばれたことがありませんので、名字は間違えられたことはありますけれども名前は呼び間違えられたことはありませんので、余りちょっと気にしたことはございませんけれども、どうしても謝れという御質問が西山さん御自身からいただければ。
  136. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 まあ有り難いですよね。たまたまあそこに歴史的連想で、このフトキチというのがイマジネーションが余り良くないんですよね。だからその点を謝ってほしいんですよね。まあそれはいいです、はい。  麻生大臣に別の質問します。  政府・外務省は国連の敵国条項撤廃のためにどのような外交活動を展開したのか、お答え願いたい。
  137. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 敵国条項につきましては、一九九五年の国連の総会で既に死文化しているとの認識を示す決議が圧倒的多数の賛成で採決をされております。  昨年の九月、国連首脳会議で採択された成果文書におきましても、同条項に関しましては敵国への言及を削除するとの決意が示されておりますので、私どもといたしましてはこの採択に積極的な役割を果たしましたが、今後、国連総会等の機会をとらえて、旧敵国条項を早期に廃止を訴えてまいりたいと思っております。  ほかにルーマニア、ハンガリー、ドイツ、イタリア、フィンランド、いろいろあろうと思いますけれども、同じようなことだと存じます。
  138. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 分かりました。頑張ってください。  麻生大臣は、今月十八日、シドニーで日米豪外相会談に臨み、イランの核計画に重大な懸念を表明するという声明を発表しました。  では、大臣、潜在的核兵器保有国、事実上の核兵器保有国と長らく呼ばれてきたイスラエルの核にはなぜ重大な懸念を表明しないのか。米国のイスラエルとイランに対する核問題の二重規範、ダブルスタンダードをあなたは認めたことになります。この点で御見解を聞きたい。
  139. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) イスラエルというのは核保有国になっていないと思いますが。核保有国としてNPTの中に加盟しているという事実はないと記憶いたしますので、今の御質問は、イスラエルは核保有国であるという前提でというお話ですと、それは核保有国か核保有国でないというのは極めて不明確な状況になったままということになっていると思いますが。
  140. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 我々は、不明確な情報もある程度考えるようになってるんですね。その方が本当の、何というのかな、安全保障に重要な情報を解釈する考え方だと思っているんですね。我々は、不明な情報であるが、中国であろうが北朝鮮であろうが不明な情報をある程度見抜いていくという考え方あるんじゃないですか。今は大体もうイスラエルが核を持っていることを、もうこれは国際的に承知じゃないですか。どう思いますか。
  141. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) イスラエルが核を持っているかいないかにつきましては、北朝鮮は持っているかいないかが私ども確認はできておりませんけれども、御本人は持っていると言っておられるわけで、イスラエルの場合は、御本人は持っているかいないかということを正確に表明しないのがイスラエルの態度であると言っておられるわけですので、私の方としては持っているか持っていないか何とも言えぬとしか言いようがないと思いますが。
  142. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 イランに関してはどうですか。
  143. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) イランに関しましては、IAEAによりまして、少なくとも、核は全くない、そういったこともやっていないという話を十八年間イランの場合は言い続けてこられましたけれども、イランとしては、御存じのように、IAEAから見て持っていないということを確認できる状況にはないというのがIAEAからの報告だったと記憶しています。
  144. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 かつてのアメリカの、何というのかな、イラクに対する一つの見解が間違っていたことがありますよね、あの大量核兵器の件で、アメリカのイラクに対する。そこに追随した日本の責任はどう思いますか。
  145. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) イラクの話だと思いますけれども、イラクの話につきましては、これは基本的にはイラクに大量破壊兵器があるか否かということにつきましての見解だと思いますが、この件につきましては、イラクはかつてクルド地域に対して大量破壊兵器を使ったという事実がありますから、その点に関して、イラクが持っていないという状況を証明する責任はイラク側にあるというのは、これは国連の一致した意見でございますので、それを証明されなかった以上、その責任は掛かってイラク側にあるということになるんだと存じます。
  146. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 まあさすがだなと思っています。  テロにいかなる理由があろうが、死体の山しか作りません。報復にいかなる正義があろうが、死体の山しか作りません。戦争にいかなる大義があろうが、死体の山しかありません。(発言する者あり)死体、死んだ体の死体ですね。どこかに間違いがあると思います。  私たちは、二〇〇一年九月十一日を総括し、第三の道を選択することです。それは、人が喜びのうちにあり、人類が生き、輝く道です。その意味では、自衛隊が人一人も殺さず殺されずに戻ることは、私は喜ばしい奇跡だと思っています。  米英軍のイラク侵略の始まる戦争は、今月二十日、開始から四年目に入ります。イラク市民は四万人近く死んでいます。米兵も二千三百人以上命を落としました。泥沼状態で、これを内戦状態ととらえるイラク人が少なくありません。  麻生大臣、内戦状態という見方についてあなたの御見解を聞きたい。
  147. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 内戦の定義について聞いておられるんでしょうか。
  148. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 内戦状態ですか。
  149. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 今の状況が。
  150. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 はい。
  151. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 少なくとも、今、イラクは新たに選挙をやり、憲法を新たに作り、その憲法に基づいて新たに選挙をやって、選ばれた人たちによって少なくとも議会を去る三月十六日に開催しという状況に来ております。したがって、今新しい憲法の下に選ばれた国会議員による政府が樹立されつつあるという状況で、それまでの間はこれまでの政府がその状況、次の政府ができるまでの間、前の政府がその政務を施行するということになっておりますので、今の状況において内乱状態になっているという状態には法律的にはないと存じますが。
  152. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 分かりました。  サマワ駐留の自衛隊の安全の見通しは──ちょっと待ってくださいね。そうだな、額賀さんにも聞きたいな、同じ質問を。  額賀長官は、現在のイラクの情勢が相当に困難な状態だと考えますか、あるいは内戦状態と考えますか。
  153. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) 今、麻生大臣からお話がありましたように、我が自衛隊が行っているサマワ地区、南東部地区は比較的安定的な状況であり、この二年余り、自衛隊は道路とか学校とか、あるいはきれいな水を供給するとか、様々なインフラ整備、人道復興支援対策をしてまいりまして、地域住民あるいはイラク政府から大歓迎を受け、感謝をされております。今でもきっちりとそういう仕事をさせていただいているわけでございます。  私どもは、自衛隊の安全をどういうふうに確保するかについて万全の体制をしいてこの復興支援活動を行っているわけであります。それは、一つは、地域の皆さん方と密接な連絡を取り、情報交換をし、あるいはまた米国や英国や豪州軍と率直な意見交換をして安全を確保しているということ。自らもその地域内でいろんな監視体制だとか様々な安全策を講じて万全の体制をしいているところであります。私も二十四時間、彼らが安全を確保するために神経を配っているところであります。
  154. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 内戦状態ではないという見解だと思いますけれども、それじゃ、そのサマワ駐留の自衛隊の安全の見通しは言えるということなんですか、今の。
  155. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) 安全を確保するために全力を注いでおります。安全があるから人道的な復興支援活動が行われているわけであります。自衛隊は、治安の維持のための活動をしに行っているわけではありません。法律に基づいて仕事をしているということであります。
  156. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 まあ、なるべくならば早く帰してほしいなという気持ちなんですね。今帰ると非常にすばらしいと思うんですけれどもね。  小泉首相は、日本は独自に自衛隊撤退を決めると言っています。いつ撤退開始か、展望を聞かしてください、額賀長官
  157. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) お答えします。  今、麻生大臣からも話がありましたように、選挙が終わって本格的な政権づくりをしている重要なときであります。そういう状況を見ると同時に、まあ米国とか英国とか豪州軍がどういうふうに今後動いていくのか、あるいはまた、イラク人によるイラク国家建設ができていくような形がいつ整うのか、そういうことを見ながら、我々は自衛隊の活動について考えていきたい、総合的に判断をしたいというふうに思っております。
  158. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 分かりました。  次は、法務大臣国家公安委員長に、法治国家における法適用の平等について伺います。  昨年十二月十五日の夜、自民党所属の中根一幸衆議院議員が東京池袋の飲食店で店側とトラブルになり、女性店主に暴力を振るったとして、同店主が警視庁池袋署に被害届を出しました。これは今年二月初めの新聞報道で明らかになり、周知の事実です。  その後、この自民党議員の事件に関し警察は書類送検をしましたかと聞くつもりでしたが、今日の朝刊に書類送検したという、一斉に記事が出ました。昨日の夕方、私の議員事務所で警察関係者にこの質問をすることを通知した途端に新聞発表がなされた。まあ姑息ではないかと思っているんですけれども国家公安委員長、このタイミングを、発表した理由を説明してください。
  159. 沓掛哲男

    国務大臣(沓掛哲男君) 警察庁におきましては、この中根議員の事件につきましては、任意事件といたしまして、三月の二十日に書類送致を既にいたしております。  木俣さんの、については、御承知のとおり、これは同様……(発言する者あり)あっ、いいですね。
  160. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 いつ書類送検をしましたか、国家委員長。いつ、(発言する者あり)三月、はい、分かりました。後に飛んでしまいました。
  161. 沓掛哲男

    国務大臣(沓掛哲男君) 新聞発表等は両案ともにいたしておりません。
  162. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 多分二十日の月曜日だと思うんですけれども、その日はWBC、ワールド・ベースボール・クラシックで日本が準決勝進出を決めた翌日で、キューバとの決勝戦の前日です。つまり、日本世論がWBCで沸いているときに書類送検をされたわけです。  与党議員に政治的配慮をしたと思われても致し方ありません。国家委員長、いかがですか。
  163. 沓掛哲男

    国務大臣(沓掛哲男君) そういう特別な配慮はないものと思っております。
  164. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 本当にそうですか。
  165. 沓掛哲男

    国務大臣(沓掛哲男君) もうそのとおりです。
  166. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 事件発生が昨年十二月の半ば、新聞報道が二月初めです。私はこの件で質問主意書を提出しましたが、東京都池袋という一地域の案件は質問主意書にはなじまないと却下されました。その後に書類送検がなされています。  書類送検が遅れた理由を説明してほしい、国家委員長国家公安委員長。
  167. 沓掛哲男

    国務大臣(沓掛哲男君) 任意事件として取り扱いまして、その任意事件として書類送検したものでございますので、これはあくまでも関係者の名誉やプライバシーに関係いたしますので、それ以上の答弁は差し控えたいと思います。
  168. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 参議院議案課ともつながってます、コンタクトしてます、参議院の議案課と。(発言する者あり)議案課、この主意書を出してる議案課ですね、参議院の。
  169. 沓掛哲男

    国務大臣(沓掛哲男君) 承知いたしておりません。
  170. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 余りにもすべて、この自民党以外の議員にはタイミングが良過ぎて困ってるんですね、本当にね。  なぜこのような……(発言する者あり)ごめんなさいね、ゆっくり分けて言います。なぜこのような質問をしたかといえば、同じこの、同じような事件に関与したある参議院議員が被害者との示談成立後、書類送検されました。これが報道され、その議員は社会的に制裁され、深い反省と誠意を示すため党籍を離脱したほどです。もし、問題の自民党議員の書類送検の事実が公表されずに、取材記者たちがかぎ付けることができなければ、結果として世論から事実が隠され、曲がりなりにも保護されることになり、一方で別の国会議員が書類送検の事実を報道され公になったことは重大な問題であると思います。  司法機関が真に平等中立を重んじるならば、中根議員の事件についても、通常はこの種の事案では書類送検を発表しないが、別の議員の事件で大きく報道されたため、それとの釣合いを取るために発表に踏み切ったというような判断を今年の初めごろすべきではなかったか。法適用の不公平とは、発表、公表と表裏一体です。国民の知る権利にこたえなければならないのは、警察、検察、法務省も同じではないでしょうか。  法務大臣国家公安委員長、私が言ったことについて考えを述べてください。
  171. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 捜査情報の公表の基準でございますが、公益上の必要その他の事由がございまして相当と認められるか否かでございます。その判断に当たりましては、個別に公益上の必要、関係者の名誉及びプライバシーへの影響及び捜査、公判への影響の有無、程度等を総合的に勘案する必要がございます。  いずれにせよ、この問題については種々の事情を総合的に考慮し、適正に判断していくことが肝要と考えております。
  172. 沓掛哲男

    国務大臣(沓掛哲男君) 捜査に関しまして報道機関等に発表を行うに当たりましては、各都道府県警察において、関係者の名誉やプライバシーの保護と、発表することによって得られる公益性等の事情を総合的に勘案しつつ、個別具体的な事案ごとに、案件ごとに発表の賛否を検討しているものでございまして、この二人のことにつきましても、警察においては報道発表していないものでございまして、その取扱いについて何ら差異があるものでもなく、厳正に取り扱っているものと承知しております。
  173. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 誤解の生じないようにうまくバランスを取ってください。  次の質問に移ります。  最近、警察、自衛隊などからパソコン情報が大量に流出する事件が続発してます。例えば、流出した岡山県警情報には、岡山県選出の国会議員たちの後援会名簿や議員事務所を訪ねた車の車籍照会の一覧表も含まれていました。  国家公安委員長、情報流出で一番困っているのは、全国の警察が市民をこれほどまでに細かく監視している事実が暴露されたことではないか。どうですか。
  174. 沓掛哲男

    国務大臣(沓掛哲男君) 今御指摘されましたように、岡山警察等におきまして警察が保有する捜査資料等の情報の流出が続いたことは大変遺憾であるというふうに思っておりますが、岡山県警察において流出したことについては既にいろいろ説明させていただいておりますし、また後ほど、もしそういうことがあれば詳細に御説明したいと思いますが、特にこの場合において、いろいろ流出されたことでお困りというようなことに対しては、そういう方々に対しては、その事情を説明したり、了解というか、相手に理解を得るようなこともいたしております。
  175. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 国民を監視しているという概念はありますか。
  176. 沓掛哲男

    国務大臣(沓掛哲男君) 決して国民を監視するというような意味はありません。ただ、適正ないろいろな資料というものは得ているものだというふうに思います。
  177. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 幾ら犯罪予防や警備の準備のためといっても、警察の市民監視の現状は過剰ではないか。これで民主警察と言えるのか。国家公安委員長、もう一度お答え願います。
  178. 沓掛哲男

    国務大臣(沓掛哲男君) 決して過剰なものを保有しているというふうには思いませんが、警察としては、治安を維持していくという、そういう職務、使命もございますので、ある程度必要な情報については確保しているものと思います。
  179. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 警察の仕事上の中毒でそうなってしまう可能性はないですか。
  180. 沓掛哲男

    国務大臣(沓掛哲男君) そういう中毒というようなことはあり得ないというふうに思ってますが。まあ何しろ、国存立にとって一番大切な治安ということについて、そういう必要な資料は確保することをしているというふうに思います。
  181. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 では、よろしくお願いします。  いや、元々、仕事というのは何でも職業病というのが起こりますからね。まあ非常に、こういう自由主義というものを世界に、イラクに自由を輸出しながらイラクから独裁を輸入してしまったら困るなと思っているんですよね。  次は、安倍官房長官に質問します。  昨日、二十二日、東京高裁でNHK番組改変問題に関する訴訟の口頭弁論があって、当時のNHKの担当プロデューサー永田浩三氏が証人として出廷しました。永田証人は、放送前に安倍晋衆議院議員に会ったのは呼び付けられたのではなく、NHK側から出向いたことにしようとNHK幹部たちがすり合わせをしたと証言しました。  安倍官房長官、あなたはNHK幹部らを呼び付けた事実を認めますか。
  182. 安倍晋三

    国務大臣安倍晋三君) これはもう従来から申し上げておりますように、私が呼び付けたのではなく、先方が予算の説明をしたいということで私にアポを取り会いに来たということでございまして、私のところに来た方々もすべてそれを認めておりますし、NHKもそれを認めています。  ちなみに、その証言をした永田さんというプロデューサーは伝聞で証言をしているということであって、彼がそれを直接、その場にいたわけではなくて、伝聞であると。しかも、その伝聞をだれから聞いたのかということについては、それは言えないということであって、とても証拠価値のあるものではないのかなとも思っておりますし、まるで、聞いてきた人のことを、彼がそういうニュースを取ってきた人のニュースソースを言えないというのは、今日、別の懲罰委員会で証言をしている永田さんと同じ永田さんなのかなとも思ってしまいました。
  183. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 ほとんど、呼び付けた事実がないなら、永田証人は偽証罪になるのですか、官房長官
  184. 安倍晋三

    国務大臣安倍晋三君) 私は呼び付けた事実はないと言っているわけであって、それが、もしそういうことを、呼び付けたという、そういういわゆる打合せをしたということであれば、それを述べた人そのものが、それを直接聞いた人がはっきりと言うべきではないかと、このように思います。
  185. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 安倍官房長官、あなたね、まあ、それで分かりました。  長官、今後一切NHKに圧力を掛けないと誓いますか。最近の世論調査では、次期総理に一番近いのは安倍さんだという結果が出ています。将来の指導者が言論の自由を守らないのでは有権者が、有権者が困ります。答えてください。
  186. 安倍晋三

    国務大臣安倍晋三君) そもそも、私は圧力を掛けていないのであって、私は呼び付けてはいないわけであって、それは、私は呼び付けていないと言って、先方も、それは呼び付けられたのではなくて自分たちがアポを取ったと、こう言っているわけであります。  この記事を書いた朝日新聞も、呼び付けたという事実を、残念ながら真相に迫ることができなかったという調査を発表しています。この調査の発表に対して、毎日新聞は、それでも新聞ですかという厳しい社説を書いているわけであって、こういうことをもし告発するのであれば、事実をちゃんと、その前にちゃんと確かめてもらいたいと、このように思うわけであります。
  187. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 それじゃ、まあ一応、事実上、その圧力を掛けないという宣言でとらえていいですね。  次は猪口大臣に聞きます。  地下鉄サリン事件から今月二十日で満十七年となりました。被害者たちは、国が被害者への損害賠償金を立て替える特別法の制定を強く希望しております。政府にこれに応じる意思がありますか。災害や大事件に対する一般的な対応ではなく、サリン事件被害者への賠償立替えという問題についてだけ答えてください、猪口大臣
  188. 猪口邦子

    国務大臣(猪口邦子君) 喜納先生にお答えを申し上げます。  私は、犯罪被害者等の施策につきましての担当大臣といたしまして、昨年末に犯罪被害者等基本計画を取りまとめ、また年末に閣議決定いただいております。  それで、この基本計画におきまして、犯罪被害者等施策推進会議の下に有識者等による検討のための会を設置しまして、社会保障そして福祉制度全体の中におけます犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿を検討することとされております。その中で、御指摘の点につきましても検討がなされます。で、二年以内を目途に結論を出すこととしております。  御指摘の点につきまして、私として非常に切実で大変重いものと受け止めておりますので、十分に検討がなされるよう取り組んでまいります。
  189. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 次に、米軍再編など米軍関係の質問に移ります。  今月十六日の公聴会で自民党から推薦されて公述した軍事評論家の小川和久氏は、日本が米軍に出ていってほしいと言えば、米軍は困って、米国は金を払ってでも日本に居続けたいという趣旨の発言をしました。この点が理解できず対米追随の日本外交は、どうしようもないという印象すら受けました。  防衛庁長官、麻生大臣、この小川氏の考え方をどう受け止めますか。よろしく。
  190. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) お答えしますが、今の質問は、米軍は日本に居続けたいという……
  191. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 お金を出してでも居続けたいという。
  192. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) 米軍がそういう思いであるということを言っているけれども、どういう見解かということですね。
  193. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 はい。
  194. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) 今、日本の安全は日本独自で自衛隊が守っていこうということと、日米同盟関係をもって日本の安全及びこの地域の安定、安全を確保しようということでございます。その抑止力を維持していくために米軍基地が存在をしておりまして、そして今後も日米同盟関係というのは、日本だけではなくてアジアとか世界の安全確保のために公共財的な役割を果たしていく。  その意味で、私どもは、米軍基地を提供して日本の安全を守ってもらうという仕組みは維持することが国益につながる、国民の安全確保につながるというふうに思っているところでございます。
  195. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 基本的には、今防衛庁長官と同じところになろうと存じますが、少なくとも、日本の場合は他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないというのを大前提にして、基本的にはアメリカとの安保体制、安全保障体制を堅持という形で、日本の国を取り巻いておりますいわゆる国際環境の安定を確保するために外交努力をやるというのが私どもの与えられている立場でありまして、少なくとも冷戦終了いたしました後も間違いなくこのアジア地域に対しては不確実、不安定なものが存続をいたしておりますんで、そういった意味では、防衛力の整備を引き続き実行をしていくに当たって、日米安全保障体制との関連を非常にうまく使ってここまで日本というのはやってきていると思っております。
  196. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 かつてクリントン米大統領は、日本人はサッカーボールのようにけっ飛ばせばけっ飛ばすほど言うことを聞くという趣旨のことを言いました。この戦術に政府は見事にはめられ、もがいているのではないでしょうか。日本人はもはや対米外交交渉における密約やつかみ金など、屈辱的で正しくない取引を許しません。許すほど愚かではなく、国民の懐も余裕がなく、国庫も膨大な赤字を抱えています。米軍のグアム島移転費など政府は敢然と拒否すべきではないか、麻生大臣、よろしくお願いします。
  197. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) アメリカの言いなりとか、何でしたっけ、ラグビーボール、サッカーボールでしたっけ、ちょっとその何のボールだか忘れましたけれども、(発言する者あり)サッカーボール。サッカーボールの話が出てましたけれども、そういったような感じを持っているかと言われれば、持っておりません。  アメリカとの関係においては、日米ともに双方で補完し合う関係になっている。少なくとも極東の安全保障に関しましてはそのようなことになっていると私どもは理解をいたしておりますので、今御指摘のありましたように、サッカーボールのようにけ飛ばされてもなかなか、け飛ばせばけ飛ばすほどうまく転がるなんていうような話に関しては、私の方としては理解を超える表現だと存じます。
  198. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 WBCの日本・アメリカ戦での誤審騒動のボブ・デービッドソン審判のみならず、WBCルールをずるいと思いませんか。  これはさておき、WBCルールは日米同盟の本質を表しているように思いますけれども、ローレス国防次官の交渉の在り方と日米地位協定のルールはずるいと思いませんか、麻生大臣
  199. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 私はWBCにそんな詳しいわけじゃありませんのであれですが、野球の話と外交が一緒になるほど単純とも思ったこともありません。また、WBCのことに関して、多分審判の話なんだと思いますが、ストライキの真っ最中でA級審判は、あの審判のところが審判協会は、たしかあれはメジャーリーグの審判が参加してなかったんですかね、たしか。たしかそういう記憶だったと思いますんで、いろいろ判断の間違いがあったということだと思いますが、それに対して王監督のコメントが最もさわやかなコメントだったと思いますんで、私どもは野球発祥の地でこのような審判が行われるとは思わなかったという、あれが最も正しい表現だと思って、王という人の人間性に触れてえらい私どもとしては良かったと思っております。  それで、日米の防衛関係がWBCと同じと、ちょっとなかなか理解のし難い表現なんでおっしゃっている意味がよく理解できませんが、審判ということに関して言わせていただければ、今申し上げた表現になろうと存じます。
  200. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 まあ王さん、イチローさんのように、あきらめずにやってほしいですね。  ローレス国防副次官と大野防衛庁長官は二〇〇五年六月五日、シンガポールでひそかに会談しました。そのときローレス氏は、普天間の移設先を嘉手納基地への統合、読谷飛行場への移設、キャンプ・シュワブ内陸への移設の三案を提示し、大野長官は帰国後、シュワブ陸上案で本格検討を進めたといいます。  しかしその後、民間組織である沖縄県防衛協会北部支部が辺野古沖縮小案を作成し、米国に持ち込みました。その後、ローレス氏は自ら提示した陸上案に難色を示し、辺野古沖縮小案を主張するようになります。現在、最終合意を目前に控え、米側は既に合意した沿岸案についても地元合意がなされなければ2プラス2は開催する意味がないと主張を翻しています。  このように筋を守らないアメリカ外交に何をびくびくしているのか。アメリカに対してはっきり物を言わない日本政府が沖縄に特措法を押し付ける事態になるならば、大変な迷惑です。  麻生大臣しっかり交渉してくださいと言いたい。麻生大臣、日米地位協定のルールをフェアに戻し、日米安保条約を平和友好条約に切り替えることはできませんか。
  201. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 日米地位協定のお話と日米安全保障条約の話なんだと思いますが、日米地位協定につきましてはこれまでもいろいろ答弁をさせていただいたとおりです。今までの改善ということで、これまでもいろいろ改善をさせてきていただいておりますので、そういった方向でやらせていただきたいと思っております。  日米安全保障条約につきましては、今、先ほどの答弁と重複するところもあろうと存じます。  今、極東の状況若しくは東アジア情勢というのは、冷戦構造崩壊後も極めて不安定、不確実な状況、その中にあって、日本一国で自国を完全に防衛するというよりアメリカの抑止力というものと組んでやるという方向は決して間違っていない選択だと思っておりますので、これをいかに有効に活用するかを考えるというのが基本的な考え方だと存じます。
  202. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 分かりました。  次は、防衛庁長官防衛施設庁長官に質問します。  米海軍と米海兵隊の航空基地、つまり軍用飛行場には安全基準があります。OPNAVINST11010・36Aという文書に規定されています。辺野古崎とその沿岸に建設しようと政府が計画している普天間基地の代替基地は、この安全基準を満たしているのか、満たしていないのか、詳細に検討してきたか、防衛庁長官と施設庁長官に答えてほしい。
  203. 北原巖男

    政府参考人(北原巖男君) 喜納先生に御答弁申し上げます。  ただいま御指摘をいただきました文書につきまして、これはアメリカ海軍におきまして、飛行場の騒音ですとか、あるいは安全面に関する措置を規定した基準であると私どもも承知しているところであります。それで、普天間飛行場の代替施設に関しましてどのような基準を用いるかといった点につきましては、今後の日米協議によりまして決定されるべきものと考えております。  いずれにいたしましても、私ども普天間飛行場代替施設につきましては、騒音ですとか安全面ですとか、そういった点を十分配慮してまいる所存でございます。
  204. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) 今、北原長官お話ししましたように、代替施設が辺野古に移転した場合は、日米の間でよく協議をし、また地域の皆さん、地元の皆さん方には国内法を通して万全の体制を取りたいというふうに思っております。
  205. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 この安全基準は絶対だと思いますか。
  206. 北原巖男

    政府参考人(北原巖男君) ただいま御答弁申し上げましたように、私ども今の基準については十分承知しておりますので、そうしたアメリカの考え方ですとか、あるいは我が国の国内法に基づきまして、日米で十分協議をして決定をしてまいりたい。そして、その際には、これも繰り返しになりますが、やはり代替飛行場の騒音や安全面に、これには十分配慮してまいりたい、そのように考えております。
  207. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 沖縄県内の建設会社の談合の実態が公正取引委員会などの調査で明らかになっています。彼らは膨大な課徴金や賠償金を支払わなければなりません。それは当然のことでしょう。  公取委は、いつどのような理由で沖縄での調査を開始したのですか。沖縄県発注分と那覇防衛施設局発注分とそれぞれ答えてください、公取委員長
  208. 竹島一彦

    政府特別補佐人竹島一彦君) 沖縄県の発注する土木建築工事につきまして談合の疑いがあるということで公正取引委員会として立入調査をいたしまして、やはりそうであったということで、排除命令並びに課徴金納付命令を既に事前説明ということで各業者に対してさせていただいておりまして、今もう最終段階に来ておると、いずれ近々正式な命令を出させていただくというつもりでおります。  一方、防衛施設局関係につきましては、これは御案内のように、検察当局が今捜査をされて起訴もされているという段階でございまして、公正取引委員会としてこれをどうするかはこれからの問題でございまして、談合の事実、刑法の談合罪、偽計入札妨害罪だけでなくて、独禁法違反事件に当たるという事実に接した場合には、我々としては当然のことながら厳正に対処するつもりでございます。
  209. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 今回の談合捜査は、沖縄の建設業界を懲らしめるためですか、それとも辺野古先への普天間代替基地建設に反対している稲嶺県政を刺激するためですか。
  210. 竹島一彦

    政府特別補佐人竹島一彦君) 公正取引委員会といたしましては、そういう予断は一切持っておりません。違反事実があれば、沖縄であってもどこであっても厳正に平等に対処しているつもりでございます。
  211. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 どうもありがとうございました、大変。
  212. 小野清子

    委員長小野清子君) 以上で喜納昌吉君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時開会
  213. 小野清子

    委員長小野清子君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十八年度総予算三案を一括して議題といたします。  これより国民生活教育に関する集中審議を行います。鶴保庸介君。
  214. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 自由民主党鶴保庸介でございます。  いよいよ四日目の集中審議ということになりました。自民党予算委員会の理事として今日は質問の機会を与えていただいたことを同僚の皆さんに改めて感謝を申し上げたいと思います。  総理、昨年の選挙は大変お世話になりました。今日この場所にいる参議院議員のほとんどがあんまりやりたくなかった選挙だろうと思います。厳しい選挙ではありましたけれども、その中で、やはり選挙のやっている意味を考えましたし、また、そうはいいながら、小泉総理始め自民党が改革を止めるなということで大きな第一歩を踏み出したことを私は評価をしたいと思いますし、これからもその意気込みを忘れてはならないと思う者の一人であります。  しかし、残念ながらそれでもまだ不安は隠せないというのが私の正直な気持ちでございます。これから改革の先に何があるのか、このことについてはもう何度もこの委員会で、総理ももう嫌だというぐらいお話しになってこられました。私なりにまだ理解が進んでいない部分もあります。したがって、ちょっとお付き合いをいただければと思いますが、その前に、郵政民営化のことについて、経営の多角化が今進んでおると。そのことについて全銀協の幹部から、そんな話は審議の中でも出てこなかったじゃないか、民業圧迫じゃないかと、今ごろ何だという話が新聞記事なんかで報道されております。総理にまず冒頭、このことについての御感想をお伺いをしておきたいと思います。
  215. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 全銀協の幹部がどういう発言か、私にはまだよく分かりませんが、国営企業を民営化する場合、また、国営企業と似たような民間の企業がある場合に、必ず言われるのが、どこまで国営の企業が民間と同じようなことをしていいのか。サービスは良ければ良いほどいいと。民間同士の競争だったらば、これは政府がとやかく口を出す必要はないんですけれども、似たような事業がある場合には、民間がやっている事業に国営企業が進出しますと、これ民業圧迫という批判が出ます。  それは、国営企業というのは、民業の補完といいますか、民間がどうしてもできないこと、しかし国民がどうしてもそのサービスを必要としている、そういう部分に国営の企業はとどめるべきだという観点から、民業補完、あるいは国営企業がやり過ぎますと、民間のやる仕事まで役所が奪ってしまうという民業圧迫という批判が出るわけでありますので、その辺は、今後この郵政事業が国営の時代また公社の時代から、今後民営化される場合には、その過程において、まだ同じような同一条件でないときに、将来の民営化を見越して今民間がやっていると同じような仕事をしているのでは、これはまだ不公平じゃないかという民間の経営者の方からもよく声が聞かれるわけですが、それは着地点を踏まえて、そして同時に、多くの国民が今まで郵便局のサービスを維持してくれ、あるいは更に良くしてくれという期待をどう踏まえるかと、その兼ね合いだと思うんです。  実際の具体的な事業の展開によって、これは民間と同じことをやっているじゃないかと。片っ方は、それは税の恩典を受けて民間と同じ仕事をやられちゃたまらぬというその点と、国営から民間にしたんだったらば、立派な民営化の会社にしたいと、いい会社にしたいと。民営化の暁には株式を魅力ある株式にして売却したいというその責任を経営者も担っていますから、その辺の兼ね合いだと思いますね。  具体的な事業については、よく識者と、また専門家等の意見を聞きながら判断すべき問題だと思っております。
  216. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 私なりに理解はしたつもりであります。よく分かりました。丁寧に説明をしていただいている総理の姿は、予算委員会、そしてまた郵政の特別委員会等々でもお目に掛かり感じておったところなんです。  しかしながら、しかしながらなんですけれども、その説明責任というやつは、一つの個別の問題それぞれに丁寧にお話をしていただくということも大事でありますけれども、それでカバーできないぐらい大きな問題、つまり着地点がどこにあるのかという辺りがやはり必要なんではないかと前々から思っております。一つ一つの問題が起こってきたときに、今のように一つ一つまた返事をし、また所感を述べろと言われておっては、もう総理も大変身がもたないという状況になるんではないか。  そもそも改革って何を目指しているのか、構造改革って一体どの構造部分を改革をしなければいけないのか。また、もっと翻って、今までの日本はどこが悪かったのか、いつから悪くなってきたのか、そしてどこをどう変えてどういう社会をつくりたいのか。ここがやはり一番大切なところで、その部分においての改革をし、そして、そればっかりではうまくいかない部分もあるだろうから、これは、この分野は原則、この分野は例外的な問題なんだと、その辺りの説明さえできれば、国民一つの力になって一致協力をして応援をしていただけるんではないかと、そんなふうに思ってならないわけでありますが、その辺り、そもそも改革とは何の改革なのかという辺りを是非総理にお伺いをしておきたいと思います。
  217. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 基本的な考え方の問題でありますが、政治というのは国民生活を豊かにするものであると。そして、自由と民主主義、これを守っていかなきゃならない。そういう中で豊かな社会を実現するためには、今までの例を見ますと、共産主義的な統制経済がいいのか、計画経済がいいのかと。  これは、国民に必要なサービスなり商品を提供する場合に、一部の役所の、学校の成績の優秀な頭のいい人たちが計画的に考える経済がいい、これが一方の社会主義的な考え方であります。国民の貴重な資産というものを一握りの頭のいい人たちに任せた方が有効に効率的に使われるのではないかと、これが当時の社会主義的な、その方向を目指したのはかつてのソ連でしたね。一方で、いや神の見えざる手というものがあると。違うような、自由で国民の創意工夫を発揮させるような市場経済重視の方が国民が必要とする商品も提供してくれるだろうし、サービスも提供してくれるだろうと。自由と民主主義ということを考えるなら企業活動も自由であるべきだと。経営者なりその民間の企業の、どういう商品を出したら国民が買ってくれるか、どういう商品を国民が必要としているか、そういう問題については、一握りの、優秀であるが一部の公務員なり役所にゆだねるよりは様々な考えを持っている民間の人に任せた方がいいのではないかと、いわゆる市場経済重視、こういう考え方が大きく分ければ二つあったと思うんであります。  もとより、完全なそういう市場はないと思います。完全市場、完全な統制経済、完全な計画経済もないし、完全な自由経済、自由、市場原理主義の経済もない、それをどうやってお互い補っていくかだと思うんであります。  そういう中にあって、私は、今までの歴史を見ますと、やはり国民を豊かにする、国民の必要としているサービスや商品を提供するためには自由市場経済重視の方が統制経済、計画経済よりも国民生活を豊かにするのではないかというのは、今までの、戦後の、第二次世界大戦後六十年の現実の世界の姿を見ても明らかだと思うんであります。  現に、同じ民族でもドイツは、ソ連側に支配された東ドイツと自由主義経済を重視した西ドイツ、同じ民族であります。どっちの経済が発展したか、どっちの国民がより豊かな社会になったか。朝鮮半島、片っ方は完全な統制経済の北朝鮮と、自由経済を志向した韓国と、同じ民族なんです。どちらが国民が豊かか、これもう歴然としています。  そういうことから、私はどの商品を買いなさい、どの商品をこれだけ作りなさい、値段はこれだけにしなさいと言うよりも、民間の創意工夫、同じ商品でも売るところによって値段が違う、作る人によって値段が違う、そういうやっぱり様々なサービスにおいても民間の創意工夫を発揮しやすいような、個人にも自由を与えるんだったらば、企業経営者にも自由を与えると、そういう経済の方が国民を豊かにする。  だからこそ、今の私の目指す構造改革は、国民の資源を有効に、効率的に配分するには役所がやらなくてもいい仕事は民間に任せた方がいいのじゃないかということから、今の国営事業、これは民間にゆだねた方がいいというのが郵政事業の民営化であり、道路公団の民営化であり、具体的に言えば。そして、できるだけ国民の将来の負担を軽減していこう、またサービスを多様化していこうと。  そして、国営事業よりも民間にやってもらった方が利益を出すように必死にやりますから、そうすると税金も納めてくれる、税収も上がってくる、ひいては国民もその方が負担が軽くて済むのじゃないかと。負担はあってもサービスがいいということになれば、これは必然的に増税をしなきゃできませんから、どのような施策を展開するにしても国民の税負担なしにはできないということも考えていかなきゃならない。  社会保障にしても公共事業にしても、あらゆる施策は国民の税負担によって成り立つ、そういう点を考えると、私は税を納めてくれる立場の方々の創意工夫を発揮しやすいような環境をつくっていくのが政治として極めて大事な役割だと思っております。
  218. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 市場重視、そして民でできることは民へ。まあ官から民へという流れのことをおっしゃっておられるんだろうと思うんです。それはよく分かりました。  ただ、その理念からすると、じゃ、この郵政のときにも問題になった話ではありますけれども、その官の民営化を進める理念というのがもう一つ見えてこないような気がするんですね。  今日は厚生労働大臣お見えですから、集中審議でありますので、別にハローワークに私は恨みがあるわけではありませんけれども、あの郵政民営化議論のときにも問題になりましたハローワークの民営化。まああれは正直に申し上げて、民間の企業も同じようなことをしている、民でできないことはない分野の一つであります。  ハローワークの民営化について、総理はどうお考えになられますか。
  219. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) ハローワーク、前は労働基準監督署というんですか、職業安定所というんですか、今はもうハローワークの方が一般的になりましたけどね、公共職業安定所といいましたかね、それがハローワークになりました。職業を見付ける、仕事がない人に対して仕事を紹介する、あるいは見付けてもらうということについては、かつてはこれは役所がやるべきだと、公務員がやるべきだと。  ところが、民間にもできるんじゃないかと、民間でやる場合には紹介料も取ってもいいんじゃないかと。この職業を紹介する場合には、見付けた人には紹介料とか見返りの報酬を取っちゃいけないということでありましたけれども、ある程度職を見付けて給料がもらえるんだったらば紹介料を払っても職業を見付けてもらった方がいいという人もいるのは事実であります。  そういう点については、公務員よりも民間の人がやった方が職を見付けてくれるんじゃないかとか、この人に職を見付ければある程度自分の実入りにもなる、利益にもつながるという考えを持った方が、より一生懸命その人個人個人に親身になってその人の特性に合った職を見付けてくれるんじゃないかと。役所に行くとどうしてもサービスが悪いと。おれたちがおまえたちに職を見付けてやるんだと見下されるのは嫌だという一部の批判もあったぐらい、それよりは親切に、民間だけども、見付けてあげれば自分たちの利益にもなるんだから親切になると。まあ、お金が入んなくても親切な公務員もいますけども、ある程度利益を求めるような形で職業を見付けられれば両方のプラスになるということから、民間でもできることならその分野を広げていこう、いってもいいんじゃないかと。  もちろん、全部を開放するんじゃなくて、両方やってみて、お互いどっちがいいかという競争をさせながら、お互い努力することによって職を探している人にできるだけ職を見付けるような、そして失業者がなくなるような社会をつくっていこうということでありますので、私は、そういう点で民間が意欲的に職を探している人に一生懸命探そうとする努力を活用していくような対策も必要ではないかなと思っております。
  220. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 ハローワークだけに関して言えば、また後ほどお話しさせていただきますけれども、労働の流動化がどんどんどんどん進んでくる、総理が進められる努力する者は報われる社会、敗者復活のある社会、敗者復活ということは職が変わってもなおかつ再チャレンジするということですからね、そのためのジョブコーチでありますとか、そういう役割は恐らくどんどんどんどん増えてくるんだろうと思うんです。その割にサービスの業態というのはまだ、申し訳ないけれども、官業体制が続いているという気がしてなりません。それを補完する形でどんどんどんどん人材派遣の業種でありますとか職業紹介の民間企業が伸びてきているという現状でありますから、積極的に今総理がお話しになられたことは進めていただきたいと思いますし、進めなければならないもう時代が来ているんだろうと思うんです。  ただ、今日ここでハローワークのことを一時間やるわけにいきません。お話をしたいのはその理念であります。先ほどお話しになられました、市場化、市場主義とか、それから官から民へという流れなんですけれども、これは私に言わせれば、総理もそれを、それだけを理念として言っておられるんではないと思うんです。むしろ、一人一人の国民生活国民が幸せになるためにどうあるべきかということを論じるのが政治であり、それが理念だろうと思うんですね。そのために出てきた手段というのが市場主義であり、官から民へとか、あるいは小さな政府とかいう言葉でなかろうかと。  今の議論を聞いておりますと、昨今の議論を聞いておりますと、小さな政府にしなければいけない、あるいは官から民への流れを付けなきゃいけない、だからこうなんだと、そのための目的になっちゃっているんですけれども、それは違うと思うんですね。一人一人の生活、一人一人の幸せのために何をするべきかということの視点を忘れてはならない。そういう意味で、努力した者は報われる、そして敗者復活がある、しかしその再チャレンジできる社会というのには幾つかの条件があるんだろうと私なりに思うんです。  総理のお言葉を幾つか拾ってみまして、私なりに整理をしました。それは、一つはルールですね、明確なルールが必要であろうということであります。そして、もう一つはセーフティーネット。再チャレンジをしても、そのチャレンジをするからにはどっかにしっかりとした信頼できるセーフティーネットがしいておかれなければ、あした路頭に迷うかもしれないといえばチャレンジする気にもならない。そしてもう一つ、三つ目ですけれども、そうはいえども、再チャレンジをするには決定的な格差があってはならない、その格差の固定を失するような方策、これは必要だろうと。この三つぐらいは少なくとも条件のうちに当たるんだろうと、今回の予算委員会議論を聞いておって思ったわけであります。  それで、それぞれについてお話をいただければと思ったんですけれども、時間がだんだん迫っております。はしょりながら駆け足でちょっとお伺いをしたいと思うんです。  まず一番目、ルールの重要性というやつは、この委員会でも何度もお話しになられました、事後規制の社会。そしてまた、ライブドア問題にかかわるような法すれすれではありながら、そのルールって一体何なのか、法律で決められていないことはルールでないのか。そう言われてみればそうではありません。やはり社会の規範というものもルールの一つだろうと。そんなことも議論しました。だから、ここであえてもう深くは入らないことにします。本日は、厚生労働を中心とする国民生活集中審議でありますから、特にセーフティーネットに焦点を向けてお話をしていただければと思います。  厚生労働大臣、セーフティーネットと言われるといろんなものが思い浮かぶと思うんです。ただ、私は時間の関係上、一つ、大問題になっております高齢者雇用についてちょっとお話をいただければと思うんです。  仄聞するところによりますと、大臣は高齢者雇用については大変造詣が深い、関心が高いということも聞きました。今厚労省としてどういう取組をし、また来るべき高齢化社会に対してどんな例えば施策を打っておられるか、その決意と所感をお述べいただければと思います。
  221. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) いつも申し上げておりますけど、私五十八歳でございます。我々の仲間がそろそろ六十歳、会社でいえば定年を迎える。そのときに我が国はどうなるかということをお互いに考えなきゃならない時代。  我が国の最大特徴といいますのは、特にヨーロッパとの違いは、六十歳を超えた人の労働意欲、労働力人口と言いますけれども、男性の場合、七〇%は働きたい、こうした強い意思を示しております。ヨーロッパは半分ぐらい。そしてもう一つは、二年前の改正になりました年金法、そうした仕組みの中でだんだん年金をもらえる年が上がってまいります、六十五歳まで上がってくると。したがって、改正高齢者雇用安定法に基づき、平成十八年四月一日から、年金支給開始年齢の引上げに合わせて段階的に六十五歳まで雇用を、定年の引上げ、若しくは継続雇用制度の導入を講じるということで施策を進めてきております。  結果論を申し上げますと、まず五十五歳から六十四歳の失業率、今全体が四・四という数字でございますけれども、五十五歳から六十四歳は四・一という数字に変わりました。そういう意味では、企業自体が高齢者の雇用を進めていこうという決意が現れてきていると。既に大企業等も随分進みましたけれども、三百人以上の規模の企業におきましては、今九八%は改正法に沿った高年齢者雇用確保措置を導入するという対応になっております。したがって、あとは中小企業等への徹底をしていくと。  いずれにいたしましても、これからの時代、どうやってお互いが支え合うかというときに、高齢者の雇用、女性の雇用、そしてもう一つ問題になっておりますのは若者の雇用と、この三つに焦点を合わせながら労働政策を進めていきたいと、このように考えております。
  222. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 大臣、今言われましたとおり、二〇〇七年から二〇〇九年にかけては六十歳、団塊の世代と言われる方々がいよいよ六十歳に達する時代に入っております。一刻も早くこの制度整備をしていただかなければならない。  継続雇用制度の導入についての話がございました。これは引き続き雇用をする者としては有用な政策だろうと思います。また、それ以外にも、いったんその会社なり勤めていた先を辞めてまた再就職をする道、それについても、今ちょっとはしょられたようですけれども、再就職の促進策について書面交付を義務付けるでありますとか、そういうことも努力されておられるというふうに聞いております。そういう大きな意味で、高齢者雇用というのはセーフティーネットの中で一番必要な最も喫緊の課題のうちの一つだろうと思うんです。  ただ、高齢者雇用が、じゃ、できればみんな再チャレンジするような社会ができるかと言われてみると、それは考えてみればそうではないのであって、雇用状態に外れた人たち、この人たちは正直申し上げて、いよいよ、現金収入と言われるものは年金が主たる収入になってくるという状態になるわけなんです。彼らが、彼らといいますか、お年寄りは、その現金収入以外に子供の仕送りを当てにしていたのが今までの時代、家族体系の実態であったろうと思いますけれども、御存じのとおりの少子高齢化で、子供はなかなか頼りにもならないといいますか、仕送りがじゃできるかというと、子供の負担が大変重い時代がやってきております。  そこで、年金制度という話が出てくるわけでありますが、この年金制度も、皆さん御案内のとおり、制度上の設計が大変厳しい今ことが判明してきております。私なりに、じゃ、そういう世代、そういう人たちが死ぬまで、終身安心して暮らしていける、豊かではないにしても、少なくともそういう制度設計というのは今までの日本にあったように必要なのではなかろうか。  そこで、ちょっと個別、ミクロの話になるんですが、リバースモーゲージというものを考えました。これは古くて新しい議論であります。持家、所有不動産を、死ぬまでお金を借り続けて、亡くなった時点でその不動産を処分する、そして清算をするという仕組みでありますけれども、これは日本では調べてみましたら余りまだ普及しているとは言い難い状況にございます。やはり、六十五歳以上の持家率が八八・九%という我が国、また高齢者の世帯にとって年金がどれだけ重いものか。千円上げる、千円の給付を下げるというだけで、皆さんの事務所にも大変な抗議というか陳情のファクスなり手紙が来るんだろうと思います。それだけ現金収入について高い関心をお持ちの今我が国にあって、自分の家に、立派な家には住んでいる、住んでいるけれども現金収入がほとんどないという家庭は案外日本には多いんだろうと思うんですね。  そういう意味では、リバースモーゲージのような、持家率八九%ですから、持家を、自分の持っている資産を、不動産、土地も含めての不動産を担保にしながら、死ぬまで何とかこれを活用するような方法、これが有効になる余地があるのではないかと考えますが、大臣の御所見をいただき、また問題点があれば、その辺も併せてお伺いできればと思います。
  223. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 今の御指摘は長期生活支援資金貸付制度、平成十四年度から設けられた制度でございます。  ただ問題点、先に申し上げれば、どちらかというと低所得者の福祉の面からの支援という形でございますので、後から御質問あると思いますけれども、やっぱり金融という部分、切り口、それから住宅制度全体という切り口からやはり全体を仕上げていかなければならないなという感をいたしております。  市町村民税非課税程度で一定の居住用不動産を有する高齢者世帯を対象に、所有不動産を担保に生活資金の貸付けを行っております。事業の実施主体は各都道府県の社会福祉協議会、条件は、所有する居住用不動産は借受人が自分の物であること、単独で所有、抵当権等が設定されていない、借受人の配偶者又は親以外の同居人がいない等の条件がございます。今現在、平成十七年十二月現在で三百七十八件の貸付けということでございます。居住用不動産の評価額の七〇%まで貸していただけるということになりますけれども、ただ、所得のまず問題があります。ここはもう少し大きな枠組みで考えていった方がいいのかなと、こう思っております。
  224. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 さっきも申しましたとおり、所得の低い方だけの問題ではないんですね。現金収入がない、立派な家に住んでいるんですけど現金収入がないという家計は案外多いのではないかということなんです。  そこで、調べてみましたら、同じような制度で進んでいる国はやはりアメリカでありまして、ファニーメイと言われる、連邦住宅公庫ですかね、が同じような事業をし、しかもそれは中古住宅を含めて相当な規模で盛んになっておるという話であります。  住宅といえば国土交通省でありますから、今日は松村副大臣にお見えをいただいていますので、国交省の取組としてリバースモーゲージ制度にちなんだ制度があるかどうか、またその問題点について御意見を伺えればと思います。
  225. 松村龍二

    ○副大臣(松村龍二君) お答えいたします。  住宅事情がヨーロッパと日本と違う。私もよく映画等見るわけでございますが、何といっても石造りの恒久的な家に住むという生活から発しているヨーロッパ人、またアメリカ等の映画を見ましても、中古の家に進んで住む、売買が行われるといった状況の違いがあるというふうに、前提としてあると思います。  しかし、リバースモーゲージは、高齢者が自ら所有する不動産を活用して、ゆとりある生活の資金を確保する上で役立つものと認識しております。  一方、リバースモーゲージを普及させていくためには、先ほど申しました観点からも、国土交通省のみならず、金融政策、福祉政策等関係する各省が連携協力して課題を解決していくことが必要でありますが、リバースモーゲージの担保となる住宅について言えば、融資を実行する際の担保となる住宅の質が維持され、資産として適切に評価されることが必要であります。住宅の質の維持並びに中古住宅の流通の促進の観点から、国土交通省といたしましては、住宅の質についての情報を提供する住宅性能表示制度を普及促進する、また宅地建物取引業者の価格査定の合理的手法として策定した価格査定マニュアルにおいて、中古住宅の質や管理状況が適切に評価されるよう査定項目を追加するなど、中古住宅流通市場を始めとする住宅市場の環境整備に取り組んでおります。  このほか、住宅金融公庫におきましては、高齢者が持家のバリアフリーリフォームやマンションの建て替えを行ったりする際に必要となる資金につきまして、生存時は毎月利息のみ返済すればよい、死亡時に元金を一括して返済する、抵当権を設定するわけでありますが、いわゆる高齢者向け返済特例制度によりフローの収入の少ない高齢者でも融資が受けられるよう支援を行っているところでございます。  今後とも、国土交通省といたしましては、これらの施策を推進し、高齢者の豊かな暮らしの実現に向け努めてまいる所存でございます。
  226. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 結論から申し上げると、住宅政策については、中古住宅市場が成熟していない、そしてまたそのために必要な性能表示等々のまだ制度を整備する必要があるという段階だろうと思います。したがって、それを一つ一つクリアしていって最後に住宅リバースモーゲージの市場ができますよというような状況であるのかと言われると、今さっき申し上げたとおり、時間はそれほど待ってくれないわけでありまして、もっと持てるものといいますか、持てる不動産をいかに活用するかについては是非とも急いで検討の余地があるのではないかと、これはリバースモーゲージに限りませんけれども。さっきも言いました、大きな意味でセーフティーネットということを考えると喫緊の課題だろうと私は思ってならないわけであります。  先を急いで申し訳ありませんが、その次であります。  じゃ、さっきも言いましたが、ルールがあってセーフティーネットがしかれている、その次に、じゃ、チャレンジをするのに決定的な格差があってはチャレンジする気にもならない、またチャレンジをするのに相当な努力をしないと同じレベルまで行き着かないというような格差があれば、これはチャレンジを阻害する、チャレンジ精神を阻害するということにもなりかねないということであります。格差の固定化防止についてもこの委員会で大変な議論になりました。  そこで、このことも国交省が主にやっておられる事業だということで、しましたけれども、地方の建設業を中心として、他分野へ転職をしたりするときの援助、ジョブコーチみたいなことをしているというのが国交省の事業にあるようであります。新分野への進出の事業だということでありますが、時間がないので一言だけ松村副大臣にちょっと御紹介をいただければと思いますが。
  227. 松村龍二

    ○副大臣(松村龍二君) お答えいたします。  建設業は、我が国の就業者数の約一割、平成十七年で五百六十八万人おります。基幹産業として地域の経済社会において大きな役割を担っております。しかしながら、建設業は、建設投資の急速な減少によりまして御承知のとおり過剰供給構造となりまして、特に公共事業への依存度が高い地域の中小中堅建設業は厳しい経営状況に直面しております。  したがいまして、このような状況の中、建設業が持っております技術、ノウハウ、まあ建設業というのは段取りを手際よく仕事をするといったこと、あるいはまあ橋を架け、トンネルを造るにしても両方から掘っていってきちっと合わぬといかぬわけですから、やることがきちっとしているというような特徴があろうかと思いますが、そのような技術、ノウハウ等を生かして、地域においてニーズの高まっている農業、福祉、環境等の分野に進出することが建設業の再生のみならず地域再生の観点からも極めて重要な課題であると認識しております。  このため、政府といたしましては、建設業の新分野進出を各省庁横断的な政策群として位置付け、新分野進出に関するサービスを一か所でまとめて受けられるワンストップサービス、これは各建設業界に置いてあるわけでございますが、ワンストップサービスセンターの運営や先導的な取組をモデル事業として選定し支援するなど、関係省庁が連携して建設業の新分野進出を積極的に後押しする施策を展開しているところでございます。
  228. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 御丁寧な御答弁ありがとうございました。  問題点というと、まあちょっと私の方で申し上げておきますが、これはやはり実を言うとそれほど活用されてないんですね。また、その建設分野に限っている。このことは、建設業に携わる人々の影響力、あるいはその数が多いということに基づくものなんだそうですけれども、じゃ何で建設だけなのかと、地方を支える労働力というのは建設業だけに従事しているわけではありません。まあ繊維産業だってそうですし、それから医療の周辺分野にかかわる方々だってそうなんだろうと思います。  どうしてそうなのかという辺りを厚生労働大臣にちょっとお伺いしたいわけですが、その前にちょっと資料一を見ていただければと思うんです。  ちょっと古い資料なんですけれども、労働移動が、失業率が高いところほど昔は労働移動する、転出超過というような傾向があったわけですね。つまり、地方で食えなくなった場合、まあ転出するという傾向は昔はあったんです。ところが、二〇〇〇年見てください。だんだんだんだんこのプロットがちっちゃくなってくる。つまり、もう田舎で暮らして地方から転出するというインセンティブがだんだん働かなくなってきている。  これは何を示しているかといいますと、その土地で失業率が高くて食べれなくなってでも、よそへ出ていく体力がないか、あるいはいろんな事情でその地域を離れたくないという気持ちの方が強いか、どっちかなんですよ。この両方どっちであったとしても、この格差というのがこれだけ暗い影を落としているということ、つまり地方の地域で、その地域で転職する、あるいは職があるということがどれだけ大切な時代が来ているかということを私なりに感じるんですけれども厚生労働大臣に所感を含めてお伺いをしたいと思います。
  229. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 今、建設省の方から御説明ありましたけれども、もっと私の方から申し上げると、平成二年で建設投資額が八十五兆円でございます。今、十七年で五十一兆円。働く人は平成二年で五百八十万、一番多かったのは平成九年で六百八十万まで増えました。約百万増えた。今百万ほど減った五百六十八万でございますけれども、八十五兆円の建設投資があったときに建設で働く人が五百八十万、今五十一兆円しかないのに五百六十万が働かれておる。したがって、まだまだこれから実は困る人たちが出てくるというのは間違いない。したがって、そこへやっぱり集中的な手を差し伸べなければならないというのが各省庁横断でやらせていただくという理解だろう。  それからもう一つの切り口としてお話ございました、他の分野にもそういう分野があるんじゃないかと、そういう分野にもしっかり目を向けろと、これは正に言われるとおりでございます。  それからもう一つは、じゃそこへ対してどうするのかという施策のみなのかということになると、そうじゃなくて、委員の言われるように、新しい産業をどうやって創出するか、新しい事業をやるという人にどうやって手を差し伸べるんだというところが課題であろうと。そういう意味では、私ども新分野進出を行う事業主が必要な人材を雇い入れる際に助成措置というのを行っております。  いずれにせよ、建設、経済産業省等と連携を取りながらしっかりやっていかなければならないと、このように思っております。
  230. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 そのとおりだと思うんです。資料二も配りましたけれども、新分野進出だといっても、新しい分野に類せられるのは農水の関係であるとか既存の分野が多いわけであります。新しい新規の産業みたいなものを起こすぞみたいな話では決してありません。そこに大変な問題点をはらんでいるということを踏まえた上で、最後に、総理にちょっとだけお時間をいただいてお話をしておきたいことがございます。  地方のあるべき姿を皆さんがそれぞれのお立場でお話しになられます。私たち国会議員は、地方の代表としてこの場でいろんな意見を申し述べてまいりましたし、これからもいくことになるんだろうと思うんです。  総理がリーダーシップを取って改革を進めておられることは、大変私はある意味、この混迷の時代にあっては必要なことだろうと思いますが、大統領制の国ではありません、日本は。議院内閣制の国であります。議院内閣制の国である以上、地方の意見を反映する仕組みというのは、大統領に一票を投じることができないわけでありますから、その地方の代表選手である地方国会議員にしか一票を投じられないわけでありますから、我々の意見というのはもっともっと虚心坦懐に聞いていただけるようなつもりでいただきたいと思いますし、私たちもそのつもりでこれからいろんな意見を申し上げていきたいと思います。  最後になりますが、以前お話しになられました若泉敬教授のお話が総理、ございました。若泉さんは私にとっては恩師に当たるんです。その若泉さんが常々言っておられたのは、やはりこの国の理念でございます。その理念を持って政治に当たらねば、この国は幾ら栄えても人心から滅んでいくだろうということを最後に申し上げながら、その人心についてのお話を関連の小泉先生にお渡しをさせていただきます。よろしくお願いします。
  231. 小野清子

    委員長小野清子君) 関連質疑を許します。小泉顕雄君。
  232. 小泉顕雄

    小泉顕雄君 どうもありがとうございます。自由民主党小泉顕雄でございます。  御承知のことかと思いますけれども、コイズミアキオという同じ名前の国会議員さん、二人いらっしゃいまして、念のためにお断りをしておきますが、私は比例の小泉でございます。どうぞよろしくお願いをしたいと思います。  さて、新しい世紀が始まりまして既に五年余りが経過をしたわけでありますけれども、この二十一世紀の出発に当たりまして、例えば環境の世紀であるとか、あるいは人権の世紀であるとか平和の世紀であるとか福祉の世紀であるとか、いろいろな表現が用いられてきたわけでありますけれども、私は二十一世紀は心の世紀だという表現に非常に共感を覚えるものがあります。  考えてみれば、二十一世紀という世紀は、物質文明極めて華やかな、どちらかといえば物中心の世紀でありました。そういう二十世紀の反省から、二十一世紀こそは大いに心に焦点を合わせた政策の推進あるいは国づくりを進めることが、我々政治家の重要な責任であるというような認識も私の中には高まっておるわけであります。凶悪な犯罪であるとか、あるいは本当に信じられないような犯罪が多発をする中で、正に今、日本人の心というものが大変厳しく問われております。  ラフカディオ・ハーンこと小泉八雲、まあ残念ながら、これは私の先祖ではないわけでありますけれども、この八雲の日記の中に、当時の明治の初めの日本の生徒たちあるいは若者たちの行儀作法、礼儀作法といったものが本当にすばらしいということを絶賛をしているという話を聞いたことがあります。これは八雲だけじゃなしに、明治の初めに日本を訪れた外国人の多くが同じような気持ちを持ったことだというふうにも聞いておるわけでありますけれども、それを思えば思うほど今の日本人の心というもの、日本人が失ったものの大きさというものをつくづく思い知らされる気持ちでおるわけであります。  かつて見られた日本人の美しい身の処し方あるいは日本人の美しい心というものを問題とするとき、私は二十一世紀のこの国の教育の在り方というものに焦点を合わす議論がどうしても必要であると、そういう認識でここに立たせていただいておるわけであります。以後、小泉総理並びに文部科学大臣を中心に質問をしてまいりますので、よろしくお願いをしたいと思います。  さて、これまでの予算委員会の審議の中で、格差という問題がいろんな視点から話題になりました。その中で、学力の格差という問題が取り上げる際に、総理はその都度、習熟度別学習というものの成果を非常に強調をされました。私自身も習熟度別学習というものを否定するものでは決してありませんし、推進すべきところは推進すべきだというふうに思っておるわけでありますが、そういう議論の中で、何かどうも学力だけに偏った学校における格差の問題が議論されているのではないのかなという疑問を持ちました。  というのは、今正に問われているのは、学力といった知育を中心としただけの問題ではなくて、むしろその子供たちの背景にある深刻な社会状況というものをやはり見据えながらそういう格差をどう乗り越えていくのかということだと私は思うわけであります。学校、とりわけ義務教育というのは、学力というよりもむしろ人間をつくる、心を育てる場所であるというふうに私は思っておりますし、やはりそういう視点というものをもう一度みんなが再確認をしなければ、学力格差というところに象徴される教育上の問題の本質的な解決というものは私はないというふうに思うわけであります。  そういう意味で、義務教育というものの役割あるいは意義というものについて総理はどのようなお考えをお持ちか、是非お教えをいただきたいと思います。
  233. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 教育について、その重要性については幾ら指摘しても指摘し過ぎることはないと思っております。やはり、人あってこその社会でありますから、お互いが支え合っていく、そしてそれぞれの違う能力というものを磨き合っていく。その際に、教育、これなくしては必要な能力も育たない。そういう観点から、能力というのは人様々であります。学力も一つの能力であります。学力はなくても、その人がいるだけでその場が温かくなるとかその場が明るくなるとか、これもまたその人の持てる能力だと思っております。学力が秀でた人、これもすばらしいことでしょう。しかし、机に向かっての学問よりも、違う方の文化なりスポーツなりで特別の才能のある方もたくさんおられる。様々な持ち味がありますから、そういう点をどうやって引き出すか。  特に義務教育という御質問でありますけれども、今、小学校、中学校、義務教育はすべての生徒に対して必要な社会に出て困らないような一定の学力を付けてもらうという観点から、どのような所得にあろうが、どのような出身であろうが、一定の教育を受けるような環境、義務教育というのは極めて重要な制度だと思っております。
  234. 小泉顕雄

    小泉顕雄君 どうもありがとうございました。  いずれにしましても、私は、知育というものを重視をして知育中心に進んでいった教育というものが知性のない人間を数多く生んでしまったという、そういうことについてはやはり反省をしなければならないのかなというような思いを持っております。  さて、心の教育の大切さというものが今正に問い掛けられているわけでありますけれども、そういう中で教育改革は正に待ったなしの状況であると思います。その際最も重要かつ緊急を要するのは、私は教育基本法の改正の問題だというふうに思うわけでありますが、小坂文部科学大臣改正ということに、今国会で何とかというような前向きな御発言もあちこちでしていらっしゃるようにも承っているわけでありますけれども改正についてのお考えをお述べいただきたいと思います。
  235. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 小泉委員が御指摘されましたように、義務教育は、この国に生まれて、そして生きる力を養っていく、人格を形成し、そして国と社会を担う人材の育成という大変重要な役割を担っているわけでございますが、その基本になります教育基本法は、昭和の二十二年に制定されて以来、今日まで改正をされずに来ておるわけでございますが、その間に社会の状況は大きく変化をしておりますし、こういった変化に対応できる人材の育成という観点からしても、また道徳心や自立心の低下というようなことが今日的課題として叫ばれております。  この際、教育の根本にさかのぼって改革が求められているという認識を持っておりまして、平成十五年三月の中央教育審議会の答申を踏まえ、それ以降、丸三年、それぞれの場で皆さんの議論が進んでまいりました。与党における審議も大分進んでまいりました。これらの議論の行方をしっかり踏まえる中で、私はできるだけ速やかに、この教育基本法の改正をする環境が整えば、その法案を提出できるようにしていきたい、このように考えているところでございまして、与党における協議会や検討会での議論を注目をいたしているわけでございますし、また野党の中における動きも踏まえ、また世論も踏まえる中でこの問題に対応してまいりたい、このように考えているところでございます。
  236. 小泉顕雄

    小泉顕雄君 どうもありがとうございました。  この教育基本法の改正ということを考えるに当たりまして、私は、この教育基本法の中にどういうふうに心というものを盛り込んでいくかということを常々考えているわけでありますけれども、心というものを考えるときに、一つは愛国心の扱いの問題、それから宗教教育の扱いというようなところが問題になろうかと思います。この点につきましては与党間でもなかなか一致が見られないというようなお話も聞いておりますけれども、一日も早く一致を見ていただいて、改正に向けた取組を加速をしていただきたいというふうに思うわけでありますが、一つ、その愛国心の問題でありますけれども、これは帰属意識の問題と私は考えております。  かつて小坂大臣が就任当時の新聞インタビューに答えられた記事を拝見をいたしましたけれども、どうも今の日本においては、例えば家族への帰属意識あるいは地域への帰属意識、そういうようなものが非常に薄れているんだということがありまして、そういう延長として国への帰属ということを通じたその国を愛する愛国心といったものは非常に説得力があるのではないのかなというようなことをおっしゃっておったわけでありますけれども、私は正にその点は同感であります。  何としても与党間での一致を見られるようなお取り組みを進めていただきたいというふうに思いますが、ある識者がこういうことを申しております。愛するものの対象というものを家族から社会へ、社会から国家へと拡大をしていった人間、愛するものを家族、家族から社会、社会から国家へと拡大をしていった人間と、そういう人間を我々は英雄と呼ぶんだというような表現がありました。非常に味わいの深い文章だというふうに思いました。もう少しこの点についてもこだわりたいわけでありますが、時間がありませんので。  もう一点、宗教教育ということにつきまして私の思いを述べさせていただきたいと思うわけでありますが、申し上げるまでもなく、宗教というものは、人間に心のいやしあるいは安心、また時には勇気を与えるものであります。また同時に、我が国の文化を考えましたときにも、このすばらしい文化の形成に宗教というものが及ぼした影響は非常に大きいわけであります。そういった意味で、宗教の持つ社会的なあるいは文化的な役割というものは極めて大きいというふうに考えております。  先ほどの小泉八雲でありますけれども、「神国日本」という本の中で日本人の宗教観をこれまた絶賛をしているということを聞いたことがあるわけでありますけれども、こういった特性を持つその宗教というものを教育の場において今後どういうふうに扱っていくのか、私は大変大きな関心を持っているところであります。  去る二月十三日に出されました中教審の初等中等教育分科会教育課程部会の審議経過報告の中に、義務教育の中において人間の力を超えた崇高なものに対する畏敬の念を持つことも重要であるというような表現がありますけれども、私はこういう姿勢こそ大事にしなければならないと思いますし、宗教情操の涵養の根拠が正にここにあるというふうにも思っておるわけであります。  心の在り方というものが非常に厳しく問われる中で、愛国心の問題あるいは宗教教育というものも特に私は重視する必要があると思っているわけであります。ただ、特定の宗教や宗派というものに偏った教育を行うということは、これは決して許されるものではないわけでありますけれども、敬けんな気持ちを教育の中で育てていくということは、正に心の時代に要請されることだというふうに思っております。  ただ、今のは私の全くの私見であるわけでありまして、これについて大臣の見解を求めるつもりは全くありませんけれども、やはり心の教育というものを中心としながら、これをやっぱり大切なものとしながら教育基本法の改正を進めるべきではないかという私は考えを持っておるんですけれども、この点についての御認識をお伺いをしたいと思います。
  237. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 委員が御指摘なさいましたように、やはり人間はその生まれ育った家庭の環境、そしてふるさと、そして国、今日的に言えばさらに世界、そして地球への慈しみというような心が必要とされていると思うわけでございます。  そういった意味で、今日の教育基本法の改正、そしてそれを踏まえた上での学習指導要領の見直し等にあっては、やはり豊かな心を醸成するということをその中でしっかりとらえていきたい、私はそのように考えております。また併せて、体験とかそういったものを通じた今日的な要請にもしっかりこたえられるようにしていきたい。  改正について申し上げると相当時間を食ってしまいますので、お問い合わせがあればまたお答えをしたいと思っております。
  238. 小泉顕雄

    小泉顕雄君 ありがとうございます。  この基本法の改正と併せまして、学習指導要領の改訂ということについて御質問をさせていただくつもりでいたわけでありますが、どうも今のお話で、学習指導要領の改訂の中においても心の豊かさというものを留意をして改訂に取り組むというお話を先にいただきましたので、細かな点については質問を行わないようにしたいと思うわけでありますが。  ただ、私、これはお願いとして聞いていただいても結構でありますけれども、昨年、前の中山文部科学大臣の下で政務官として仕事をさせていただきまして、各地にスクールミーティングに出掛けました。  現場の先生方の非常に切実なお声をじかにもうお聞きをする機会があったわけでありますけれども、特にこれは大変だな、大切なことだなと思った指摘は、一つには芸術教育というものが非常に軽視をされている。美術教育であるとか音楽教育であるとか、子供たちの感性を養う教育に割かれる時間が極めて少ない。これについて非常に悲痛な訴えを聞きました。やはり、心の問題を重視しなければならないこの世紀の出発に当たって、私は、芸術教育というものの持つ値打ちというものを再認識をして、もっともっと学校教育現場の中に時間数を取り入れるような取組が必要ではないのかなと思っておるわけであります。  同時に、心を豊かにするためには体験が必要なわけでありますけれども、自然体験とか野外体験とか、こういったことも極めてその時間が足らない。全体として、とにかく直接体験が、子供たちにチャンスが、与えられる時間が非常に少ないために、子供たちの豊かな感性あるいは豊かな心というものの育成に大きな問題が生じていると、こういう指摘を現場からいろいろ聞きました。  こういう点につきましては、心の教育ということを中心に据えながら、しっかり学習指導要領の改訂の中にも生かしていただくようにお願いをしておきたいというふうに思います。  もう一点お願いになりますけれども、昨年の今ごろでしたか、新聞にでかでかと出ました、イラクがどこにあるのか知らない学生が非常に多いという話がありました。  私も大変驚いてそのニュースを聞いたわけでありますけれども、よくよく聞いてみますと、いわゆる地理教育というものも非常に今軽視をされているという状況があるとも聞きました。こういう点につきましても、グローバル化が進む社会の中で、青少年の国際交流というものが叫ばれるこの時代にあって地理教育がいささかおろそかであるということは、これは悲しい限りでありますので、こういう点についても今後の指導要領の改訂の中で十分に御配慮をいただきたいということをお願いをしておきたいと思います。  続きまして、文化庁の方に質問をさせていただきたいと思います。  私が申し上げるまでもなく、文化活動というものは人間の心というものを豊かにするものでありまして、地域において、特に地域文化の振興ということに力を入れることは、地域の連帯感あるいは地域愛といったものを育てていく上で非常に大きな役割があります。  地域文化振興のためにこれまで多くの施策が実施をされ、十八年度予算においてもいろいろなメニューがそろえられているわけでありますけれども、ところが、地域の実態というのはどうも担い手が足らないといったようなところに象徴されるように、やはり人的な面で将来的に大きな不安があるわけであります。まあ、格差の問題がこの場でも何度も議論をされてきたわけでありますけれども、地方はとにかく過疎という非常に深刻な問題を抱えながら、その中でいかに文化の振興あるいは伝統芸術の継承というものを図っていこうか本当に悩んでいるわけであります。  過疎を象徴する話でありますけれども、それも是非お聞きをいただきたいわけでありますが、私は、ある地方の御寺院の住職とお話をしました。聞いてくださいと、もうこんなことが我々の実情ですよと。どうしたんですか。一回お葬式を出すともうそれで一つのお檀家さんがなくなるんですよ、一つお葬式を出すともうその家がなくなるんですと、こういう声を聞きました。それほど過疎は深刻であります。  また、今年の冬の豪雪によって多くの尊い人命が失われたわけでありますけれども、これも独り暮らしの老人の方々が圧倒的に多かったという話を聞くわけですけれども、本当に過疎はそれほど厳しい現実であるということを皆さんが認識を共有をしていただきたいと思いますし、そういう地域でいかに次の文化を担っていく人材を育てていくかということがどれほど困難であるかということも御認識をいただきたいというふうに思うわけであります。  本来、地域文化というものは、これは何世代にもわたってその土地の人々が伝承し、また発展をさせていくべきであるわけでありますけれども、今言いましたように、過疎あるいは格差の拡大の中で担い手の確保ということがやはりこれは真剣に取り組まなければならない緊急の課題であります。特に、子供たちがこれからの担い手として育っていく条件を整えるということも大変大切なことでありますし、また、幸い都市にはたくさんの人材があるわけであります。都市で活躍する人たちがもう一度地域振興、文化振興のために帰ってきて、一旗振ろうというような仕組みをつくることも大切かと思うわけでありますけれども、これにつきまして文化庁の御見解をお伺いをしたいと思います。
  239. 加茂川幸夫

    政府参考人加茂川幸夫君) お答えをいたします。  委員御指摘にございました地域に根差した特色ある文化芸術を振興する上で、それぞれの文化活動の担い手を確保育成することは文化政策上も大変大きな課題であると認識をいたしておるわけでございます。このため、まず各地域におきましては、関係者に対する多様な研修の場の提供を行ったり、あるいは地域住民がボランティアとして文化芸術活動に参加しやすい仕組みを設けるなど、様々な人材育成確保の努力を行っておるところでございます。  もちろん、国と地方の役割分担が求められるわけでございますが、国としましては、このような地方の取組事例を情報提供することでありますとか、さらには、地域における文化活動の担い手を育成するためのモデル事業を実施することによりまして、こういった各地域の取組をまず支援をすべきだと考えておるわけでございます。  さらに、お話にもございました将来の文化の担い手の育成を図る必要があるという認識を私ども持っておりまして、子供たちを対象として本物の舞台芸術に触れる機会を確保することでございますとか、伝統文化に関する活動を継続的に体験、習得できる機会の確保等につきまして意を用いてきておりまして、特に、お願いをしております十八年度の予算におきましては、感性豊かな文化の担い手育成プランの推進として位置付け、拡充をお願いをしておるところでございます。こういった事業を通じまして、我が国の文化を継承、発展させる環境の一層の充実に努めたいと思っております。  また、地域間格差のこともございました。都市と地域の交流によって、その地域文化の担い手に何か資する事業ができないかということでございますが、新規に地域文化芸術情報オンライン整備事業をお願いをしてございまして、これによって地域と地方の情報交換、連携の場が確保できて、地域の人材が地方にも役立つような機会の提供になればと期待をしておるところでございます。
  240. 小泉顕雄

    小泉顕雄君 ありがとうございました。  いずれにしましても、地域文化力というものを改めて向上させる中で、再び地域あるいは地方に人が住む喜びを感じられるような方向に進むことを願いますとともに、文化庁に大いに期待を申し上げたいというふうに思います。  さて次に、ちょっとこれまでの話とは変わりますけれども日本教育におきましては、大学というのはこれは最高学府と言われまして、専門的な知識を身に付け、品格のある社会人としてこの国を支える豊かな、心豊かな人材を養成するところであるはずであります。その意味で、大学の果たす役割というものは極めて大きいものがあるわけでありますけれども、最近、この大学の質が厳しく問われる事態が生じてまいりました。  十八歳人口が次第に減少する一方で、規制緩和の流れの中で大学の数はむしろ増加をする傾向にあるわけでありますけれども、新設大学の中には大学としての資質あるいは機能というものを十分に備えているのかどうか非常に疑わしいものも増えているというふうに言われております。特に、構造改革特区における株式会社立大学の参入ということによりまして、今では大学設置は何でもありというような状況にさえあるというふうに言われておるわけであります。  法政大学の顧問である清成氏が、「旧来の規制を壊すことばかりに腐心したため、秩序やルールの整備が後手に回ってしまった。」というふうに、大学の設置認可をも含めた規制改会議の方針につきまして非常に厳しい指摘をしておられますけれども、実は、この指摘を裏付けるように、最初の株式会社立の大学である二つの大学において法令上に極めて大きな問題があることが文部科学省の調査で明らかになったわけであります。  まあ、中身について具体的に触れる時間はありませんけれども、狭隘な校舎であるとか、あるいはずさんな単位認定であるとか、教員や学生が国会議員に自ら窮状を訴え陳情をするというような事態にも及んでいると聞いておるわけであります。  もちろん、特区というものには実験的な意義がありましょうし、株式会社立大学全体の評価というものは、これは拙速に行うべきではありません。しかし、このような法令上の問題のある特区計画の事業に対しては、やはり厳正な対応が必要であるというのはどなたも認識を共有されるところだと思うわけであります。事前規制から事後チェックへという規制改革の考え方からも、問題が生じた以上、これは厳しく対処をすべきであるというふうに思うわけであります。  それで、まず一点目、このような問題の生じている特区計画につきましては特区法に基づき必要な措置をとるべきであると考えますし、また学生への被害が拡大しないよう特区計画の認定の取消しを行うこと、あるいは、そこまでに至らずとも、特区計画から問題のある事業者を削除させたり、新規事業を凍結させたりすることなどを検討すべきと考えますけれども、中馬大臣、どのようにお考えでしょうか。
  241. 中馬弘毅

    国務大臣(中馬弘毅君) 平成十五年に大学設置法がかなり大幅に改正されまして、これまでの敷地面積その他のいろいろな学部の設置等の基準が緩和されまして、その一環といいましょうか、それで株式会社大学も特区において認めるということの流れになりました。  そうした特区の中の大学のことでございますが、しかし、特区を活用した株式会社立の大学であっても既存の学校法人立の大学であっても、大学としての最低限の質は同様に求められているものであります。この点につきまして、大学制度を所管する文科省の方から、この今御指摘のLEC大学と言いますが、この大学などの株式会社大学に対しまして改善を求める指摘があったことは私ども大変残念に思っておるところでございます。  特区担当大臣の私としましても、特区計画が円滑かつ確実に実施されることが重要と考えておりまして、特区計画策定全体として事業を推進する立場にある地方公共団体、これと両方で、共管で認定を申請することになっておりますから、この地方公共団体と大学が密接に連携を取りつつ、法令に基づいて適正な学校運営が行われるように求めてまいる所存でございます。私どもも、三月十七日にこの各自治体に対しまして、これ十二ありますが、これに対しまして私どもはこうした一つの適正な運営をするようにということを通達を出したところでございます。具体的には、去る三月十七日に関係自治体にこうして出したことでお願いをしたようなことでございました。  今これの取消しの話も出ましたけれども、制度上は特区の認定を受けた地方公共団体に対しまして、特区計画の実施状況に関する報告や必要な措置を講ずることを求め、それによってなお弊害が生じる場合には特区計画の認定取消しの可能性もあり得ると、このようになっております。  これは、評価委員会がまずは評価することになっておりますから、こうしたことも通じまして、もちろん制度上としては可能でございますが、今のところは、こうしたことを改善してもらうことがまずは大事かと思っております。
  242. 小泉顕雄

    小泉顕雄君 時間がなくなってしまいましたけれども、お許しをいただいて、今の件につきまして、文部科学大臣、これからの対応とか反省も含めて一言御意見をいただきたいと思います。
  243. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 時間が参っておりますので、端的に申し上げます。  ただいま中馬大臣の御報告がありましたように、三月十七日に呼びまして、五月十五日までの期限を切って是正を求めております。  そしてまた、今後につきましては、七年ごとに大学基準協会等の認証評価制度を導入したと、こういうようなことも踏まえまして、新設及び既存の大学に対して、規制緩和は踏まえつつもしっかりと対応してまいりたいと存じます。
  244. 小泉顕雄

    小泉顕雄君 ありがとうございました。
  245. 小野清子

    委員長小野清子君) これにて小泉顕雄君の関連質疑は終了いたしました。  以上で鶴保庸介君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  246. 小野清子

    委員長小野清子君) 次に、辻泰弘君の質疑を行います。辻泰弘君。
  247. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 民主党新緑風会、辻泰弘でございます。  小泉総理には、この予算委員会で四度目の質問になるわけでございますが、今日は、国民生活教育問題につきまして、この五年間の、小泉政権のこれまでの五年間を振り返りながら迫ってみたいと、このように思っているところでございます。  まず、教育問題について二点お伺いしておきたいと思います。  この場におきましても、私、義務教育国庫負担制度の問題が議論になっておりますときに、財政の論理が優先し過ぎていると、やはり教育の論理が本体でなければならないと、このような主張をさせていただいてまいりました。やはり結果として、振り返ってみても、やはり財政の論理が極めて支配濃厚と、地方分権の論理もいまいちと、このような結果だったように思うわけでございます。ただ、最終局面で、中教審の審議などもあり教育の論理も加味されたと、このような結論だったかと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、最終的にはつじつま合わせに終わったと、このような感がぬぐえないわけでございます。  そこで、文科大臣にお伺いしたいと思いますけれども、やはり日本教育の根幹を成す義務教育というもの、これをしっかりと堅持していくために国が財政責任というものを果たしていかなければならない、このことは本当に重要なテーマだと思うわけでございます。また同時に、そういった日本教育の根幹にかかわるものがころころ変わってはこれはまた困るわけでございます。  そういった意味合いにおいて、これからどういうふうに対応していかれるのか、決意のほどをお示しいただきたいと存じます。
  248. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 義務教育は、一人一人の人格形成と国家社会の形成者としての育成を図るものでございまして、極めて重要なものであり、また、このために憲法二十六条では、機会の均等、水準の確保、そして無償制という義務教育の根幹を定めているわけでございます。  憲法の要請に従ってこれらの根幹を定めて、私どもはその責任を担っているわけでございますが、この義務教育の根幹を制度的に担保するために義務教育費国庫負担制度があり、これによりまして、国と地方の負担によって教職員の給与費が全額保障されるという今日のこの制度の意義があるわけでございまして、質の高い教員が一定数確保されるということにおいて国として義務教育の条件整備に努めてまいりたいと考えております。  昨年の政府・与党の合意によりまして、義務教育費国庫負担の制度の、負担率は二分の一から三分の一へと国の負担率の割合は下がりましたけれども、義務教育費の国庫負担制度そのものは、国と地方の負担によりこれが堅持をされるということで、引き続き義務教育の根幹を保障し、国家社会の存立基盤が揺らがないようにしっかりと対応してまいりたいと存じておりますし、また、このことによりまして、教育現場にありました不安定な状況に一つのけじめを付けて、安定的に教育の現場で取り組んでいただけるような環境整備ができたものと考えております。
  249. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 財務大臣にもお伺いしておきたいんですけれども、過般、この予算委員会におきまして財務大臣も、義務教育に対する財源確保についてはしっかり取り組んでいくと、こういった旨の御答弁をされておりますけれども、そのことについて御発言をお願いいたします。
  250. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 教育の重要性は今文科大臣から御答弁がございました。私たち政治家はやっぱり魅力的な日本をつくっていかなきゃならないということだろうと思うんですが、資源の乏しい我が国としては人材こそ魅力的な日本をつくるわけでございますから、そういう形で、教育というものはやっぱり大切なものだということだろうと思います。  そういう中で、憲法二十六条の下で、国が責任を持ちながら教育の機会均等を図っていくために無償制が書いてある。そして、義務教育国庫負担法によりまして、義務教育に対するその費用の一部を国庫が負担することになっておりまして、今、小坂大臣が御答弁になりましたように、その範囲がどうかというのはいろんな議論がございました。また、三位一体の議論の中で今度のような結果になったわけですが、私どもはこれでしっかり教育をやっていかなきゃいかぬと思っております。  そして、特に今後の課題としては、それぞれの地方とか学校といった教育の現場により近い者の創意工夫をどれだけ発揮して教育の質を高めていくか、そういうことに私どももこの財政の観点からしっかり取り組んでまいりたいと思っております。
  251. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 総理にお伺いいたします。  文科大臣、また財務大臣はやはり国の財政責任というものをしっかり大事にしてということをおっしゃったわけですが、そういった方針を、当然総理としてもその方針で臨むと、こういう理解でよろしいでしょうか。
  252. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 教育の重要性というのは、国であれ地方であれ、また国民であれ、多くの方々がその重要性を認識していると思います。その中で、地方にもっと裁量権を渡せという地方の意見と、いや、この義務教育の分野については国が責任を持つんだという論争が盛んに行われました。どの程度国がこの義務教育に責任を持つのか、地方が独自の裁量なり独自性を発揮して教育の重要性を意識しながら子供の教育に当たるかというのは、今後とも様々な議論が出てくると思いますが、私は、教育に対するしっかりとした責任というのは、国でも地方でもお互いしっかりと持っていかなきゃならないものだと思っております。
  253. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 国の財政責任というものもしっかりと果たしていただくように求めておきたいと存じます。  もう一点、教育問題で、やはり最近大きな問題は、学校、子供の安全の問題でございます。  学校内における安全、学校の建物自体の安全、また登下校時の安全ということで、大変子供にかかわる事件が多発している誠に残念な状況にあるわけでございます。国民生活における子供の存在というのは極めて大きなものがあると、このように思うときに、対策が急務であると、このように思わないわけにはまいりません。  私ども民主党といたしましても、去る二月二十三日に、国、都道府県、市町村の責務を明確化し、学校安全対策の推進に関する基本的な施策を定めた学校安全対策基本法案を本参議院に提出さしていただいたところでございます。政府としても、このような提案を真摯に受け止めていただいて、学校の安全と子供をめぐる犯罪の防止に各省庁連携の下に内閣を挙げて全力で取り組んでいただくように求めておきたいと思いますが、総理のこの点についての御見解、一言お願いいたします。
  254. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 子供の安全対策、各省、府省が連携しなきゃならない点がたくさんありますし、地域の協力、そして家庭と学校と地方公共機関、様々な連携があると思いますし、そういう中で今お互い連携しながら、どう子供の安全を確保していくかと。単に警察とか公的機関にゆだねていては地域の安全を守れないということで、地域のそういう公的機関に属さないボランティアの方々もこの動きに加わってくれております。そういう意欲を引き出しながら、公的な責任というものについてもしっかり政府は連携して取り組んでいきたいと思っております。
  255. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 是非、各省庁挙げて、政府を挙げて取り組んでいただくように御要請を申し上げておきたいと思います。  さて、国民生活にかかわる今回の予算の関連で、定率減税の問題でお伺いしておきたいと思います。  この定率減税は、平成十一年度の税制改正で決められたことでございまして、所得税が二〇%、上限額二十五万円、住民税が一五%、上限額四万円ということで今日まで来ております。そして、年収五百万円の方でいうと三・五万円、七百万の方で八・二万円の定率減税廃止になるとそれだけ増税になると、こういうものでございます。昨年度の税制改正で今年一月から出発した、今年度の税制改正で来年一月から出発すると、これで全廃になると、こういう流れになっているわけでございます。  それで、振り返りますときに、平成十一年度の税制改正の折、どういった法案だったかといいますと、所得課税の在り方について抜本的な見直しを行うまでの間、特例を定めるということで定率減税が出発いたしました。当時の小渕総理大臣平成十一年一月に、将来の抜本的見直しを展望しつつと答弁されております。また、当時の宮澤大蔵大臣も、二十一世紀の日本の恒久の税制ができる、それまでの税制だと同年二月におっしゃっておられるわけでございます。  今回の私は定率減税というのの廃止というのは、これらの公約に反するものだと私は言わざるを得ないわけでございます。  この点につきましては、三月八日の本委員会において谷垣大臣とも意見交換をさせていただきました。その中で、大臣の答弁は、配偶者特別控除の上乗せ廃止、老年者控除の廃止、公的年金等控除の見直しや税源移譲で今回行われる税率構造の見直し、これが抜本的改革に当たるんだという見解を示されたわけでございます。  しかし、当時の法案、まあ今度の税率構造もそうですが、そのときにはそのことについて抜本改革とは一言も言っておられなかったわけでございます。そしてまた、だれもそれが抜本改革だと思っていたわけではない。それを今になって、あれは実は抜本改革だったんですと、だからハードルを越えたからやっていいんだというのは極めて勝手な解釈だと私は言わざるを得ない。  総理はかつて、昨年の十一月に、谷垣さんはちょっと調子外れのことをたまに言うと、このようにおっしゃっていましたけれども、この見解というのは調子外れの見解じゃないですか、どうですか、総理。
  256. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 調子外れかどうか、自分で答弁するのは大変難しゅうございますが、度々辻委員とも議論させていただきました。  やはり、抜本的改革は何かということになりますと、消費税の構造を見ますと、一つは控除の在り方というものがやっぱりあるだろうと思いますね。それからもう一つは税率構造というものがあるんだろうと思います。  それで今、辻委員がおっしゃったのは、当時、私の言ったこの控除の見直しというのは、配偶者特別控除の上乗せ部分とかあるいは年金に関する控除の見直しについて、当時は抜本だとは思ってなかったという趣旨のことを今おっしゃっているわけですよね。私は、やはりこれは働き方、あるいは年金の不公平感をぬぐうという意味で大きな改革だったと思います。  それで、特に今回三位一体との関係で税源移譲をやりますに当たりまして、これは今までやってきたそういう改正に加えまして、地方税とそれから地方住民税と所得税の役割を見直していくという大きな改革であるというふうに私は思うんです。つまり、地方住民税の方は、地方税の方は応能負担というようなことに照らして一〇%のフラット化をしていくと。それに対応して、今度は所得税というものは所得再分配機能、こういうようなものをもう少し発揮させようということで累進度を高めていくと。そういう大きな改正をやるわけでございまして、今までやってきた控除の見直しと併せて所得税制というものは大きく変わった。今度、今御提案を申し上げていることで大きく変わるというふうに私は考えております。
  257. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 今、大臣は大きな改革とおっしゃいました。そういうことであれば、それは一つ妥当するかもしれません。しかし、当初、この法案の当時に言っていたいわゆる税制の抜本的な見直しというものに値するかと言えば、私はそうではないと、このように言わざるを得ないと思うわけでございます。  それで、振り返りまして、平成十五年二月に当時の塩川財務大臣がどうおっしゃっているか、この配偶者特別控除の上乗せ廃止についてですね。所得税全般についてではなくして部分的に今回配偶者特別控除等一部を修正させてもらうことにしたということをおっしゃっていて、全く抜本的な改革なんという意識、さらさらないという感じですね。  それからまた、平成十六年二月の公的年金等控除の上乗せと老年者控除のときは谷垣大臣御自身が説明されて、これはお年を取っておられるから優遇しなきゃならないという思想に立っていると、これは美しい思想であると、しかしお年を取っているからということだけで優遇するのは少し問題があるんじゃないかという考え方から、これを廃止して制度をつくったと、こうおっしゃっているわけなんです。  ですから、これは、これはこれで一つのこのときの論理として別に私は間違ってるっていうんじゃないですよ。ただ、抜本的な改革ということは一言も言っていない。そんな認識を持って臨んでいない。  そしてまた、今回の税率構造の問題にいたしましても、今般の所得税法の一部改正においても、大臣は説明で税源移譲に関し所得税の税率構造を改組するという発言、財政演説においても、別にその抜本的改革という、三位一体改革の一環として税源移譲を実現すると、これ、税制改正という言葉にはもちろんなると言っていますけれどもね。  だから、そういう意味で、いわゆる抜本改革という言い方など一度もしてないわけですよ。だれもそんなこと思ってなかったというんです。後付けで、実はあれは抜本だったんですというのは極めて一方的で身勝手な、ある意味で国民を欺くと言わざるを得ないようなやり方だと思うんですね。  こういうことというのは本当許されない。年金制度改革のときも総理は、抜本改革かと言われて抜本改革とおっしゃったですよね。そのことについての評価はあったかもしれません。しかし、やっぱり抜本改革と言って抜本改革をするということだったわけです。  しかし、今回の場合は、そのときは言わなかった、まあ改革だろうが改正はそれは当たり前のことですけど、しかし抜本改革というこの一番大事な、元々の定率減税を定めた法案のときに、抜本的見直しを行うまでの間というふうに書いてあって、その後の、それはそれぞれの当事者にとっては大きな税制改正ではありますけれどもね、配偶者特別控除にしても老年者控除にしても公的年金等控除にしても。しかし、税制全体として見ればある意味では一部のことでしかない。そのことをやったからといって抜本的な見直しだというのは極めて手前勝手な詐欺的なことだと言わざるを得ない。  どうぞ、総理にお答えいただきたい。総理は、これは大事なことですよ、小渕総理のときからの話なんだから。だから、総理としてこれは抜本的見直しを、それがした結果なんだと、そう思われるかどうか。そのことについて。
  258. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) それは、人の見方によって抜本的の解釈は違うということは認めます、私は。消費税を導入するということが抜本的改革だと言う人もいます。しかし、今回の定率減税廃止等、これはもう当時、経済停滞しておりました。減税が景気刺激効果になるだろうという論理と、さらに所得税の抜本的改善も図らなきゃならないということから、今回大きな改革も実現しているわけです。あの当時、まさか所得税の地方への税源移譲を考えた人はほとんどいなかったと思いますよ。地方税をフラットの一律課税にするという方も、思っていた人、余りいなかったんじゃないですか。老年者控除、配偶者控除、税率変えて、これも私は抜本的と言えるのじゃないでしょうか。  いやいや、消費税始めすべての改革をやらなきゃ抜本的と言えないという理屈も分かりますけども、抜本的改革というのは一つではないと思っております。
  259. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 やはり後付けの理屈と言わざるを得ないですね。  税源移譲の問題も、今までは五、一〇、一三だった住民税、それを一律フラットで一〇%にするから、低いところの人は増税になるから所得税低い五%を作ったと、それから一三%の人は減税になるから三七%の所得税率を四〇%に上げたということで、四段階を六段階にしたと、こういうことになっているわけですね。それはある意味では機械的なことでしかないわけですよ。  そもそも考えていたのは、所得課税の、やっぱり税制のその負担の求め方というところが本来のこの抜本的見直しの対象だったと思うわけなんですね。だから、宮澤さんも、二十一世紀の日本の恒久の税制ができる、それまでの税制だとおっしゃっているわけですからね。そういった意味では、国民にどういった税負担をお願いするかという、そういうことについての抜本改革だというふうに理解するのが普通の理解だと思います。そういった意味では非常に一方的な勝手な解釈でありまして──まあ、じゃ一言、簡単にお願いします。
  260. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) いや、そうおっしゃって、地方住民税をフラットにするから後付けで数字を、この税率もいじらなきゃならないとおっしゃいますが、三兆円の税源移譲というのは大きな話なんですよね。  それで、そのときに、地方税と国税の所得課税の役割を見直そうというのは、決してこっちをフラットするからこっちは仕方なくやったというんじゃないんです。やっぱり地方税は応能負担とかそういう原理を貫徹させようと、そうしたら国税は累進制とかそういうものを考えて、所得再分配機能をもう一回きちっとしようと、そういう論理と筋道のある改正だということを御理解いただきたいと思います。
  261. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 やはり原点に返って、抜本的な改革、抜本見直しを行うまでの間という、その法律の趣旨に私は沿ったものでないと、このように言わざるを得ないと思います。同時に、我々から見れば、昨年の選挙におけるサラリーマン増税はいたしませんということにもかかわってくる、私は国民を欺くやり方だと言わざるを得ないと、このように思うわけであります。今日はテレビも入っているようですけれども、やっぱり政府に都合のいい一方的な理屈で公約がねじ曲げられて、国民生活にかかわる重大な問題が決められている現状というものをやはり強く御指摘申し上げ、やはり国民皆様方にもその点は理解をしていただきたいと、このように思うわけであります。  そこで、次の問題に移らせていただきます。格差の問題でございます。  それで、総理は三月二日の衆議院予算委員会で、どうしても自分一人で立ち向かうことができない方々に対しては、しっかりとしたセーフティーネットなり社会保障制度を整備していくことが政治として極めて重要なことだとおっしゃいました。  総理がおっしゃるセーフティーネットとは何でしょうか、お伺いしたいと思います。
  262. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) これは、社会保障制度の全般であります。年金にしても、医療にしても、また生活保護にしても、これはセーフティーネットの一環であります。  どうしても一人で立ち向かっていけない、今ホームレスの方、住むうちがないという方に対しても、公的機関に行けば必ずそのような住める場所、生活手段を提供できるセーフティーネットは整えられております。そういう面においても、私は、日本社会というのはセーフティーネットというものに対して配慮された社会であるし、このどうしても収入もない、一人で立ち向かっていけない人に対して一定の生活ができるという保障機能、これは大変重要なセーフティーネットだと思っております。
  263. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 そういたしますと、今非常に注目されている格差の拡大というのがございます。その点についての総理の御見解、よく承知しておりますけれども、そういった格差が拡大していかない一つの手だてとして、やはりそういった社会保障、セーフティーネットが極めて重要であると、そういうことの認識でいいわけですね。
  264. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) そのどうしても一人で所得を得る道がない、また生活できない人に対しては、一定の生活できる基盤は整えていく。さらに、能力のある人、意欲のある人、こういう人に対しては、できるだけチャンスを提供していくと、そういう道をたくさんつくっておく。  そういう人たちが活躍することによって税収も増えてくる。みんなを、強い人がいれば弱い人を守ることができる。そういう能力のある人、意欲のある人はどんどんどんどん伸ばしていくということによって、そうでない人を、強い者ができるだけより弱い者に対して支え合っていこうという、そういう社会をつくることが大事ではないでしょうか。
  265. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 それで、ちょっとパネルを見て、(資料提示)ちょっと手前みそになって恐縮ですけど、実は五年前に、小泉内閣が発足したのが平成十三年の四月の二十六日でございました。その二週間後に、私は実は当時候補者の立場でしたけど、どう言っていたかというのを地元の神戸版で見たんですけども、「小泉純一郎氏の改革は競争、効率が重視され、経済の視点が強すぎる。政治の目標は国民の生活を安定させること。」ということを総理が内閣発足後二週間後に申しました。そして、一か月後の五月二十六日には、「小泉内閣の改革は日本の社会の格差を広げる改革だ。」と、下のところですね、そういうふうに私は申しておりました。  それは、なぜそう言って、なぜそのようなことを申し上げていたかといいますと、例えば総理の一番初めの所信表明演説のときは、競争的な経済システムをつくると、それと同時に、経済、社会全般にわたる徹底的な規制改革を推進する、社会的規制も徹底的に緩和するんだと、こういったトーンがあったと。また、社会保障においても、自助と自律の精神を基本とするということで、正に競争、効率、自己責任のその論理が貫徹される姿勢だったがゆえに、そのような私の主張であったわけでございます。  それで、私、実はそのような問題意識の下に国会に参りまして、一番初めの厚生労働委員会でも格差の問題を申しました。  それから、二年前に初めて総理に御質問申し上げたんですけど、そのときも実は格差の問題について御質問申し上げたんでございます。そのときに総理に、所得格差の拡大の視点を持って政策に取り組んでほしいということを平成十六年二月五日に申し上げてるんです。そのときに私が引用しましたのが、今そこに、お手元にございます、ちょっと古いですけれども、十年前の経済白書でございます。一九九六年度の経済白書でございます。ちょっと読みますと、   戦後の日本は所得・資産格差が比較的小さく、それが社会的安定の維持や階層分化の防止に役立ってきたと評価できる。何よりも、所得・資産格差が固定していないことが、人々の意欲を引き出し、また能力の発揮を妨げないという意味で、経済の活力を高めたといえるであろう。   もちろん、やみ雲に所得・資産格差を是正することが唯一の目標となるわけではないが、できる限り個人の責に帰すことのできない所得・資産格差を発生させないことが、公平性の点からも、また、社会の活力という点からも重要なことと考えられる。こうした観点から、所得・資産格差の動向を注視していく必要があろう。 と、十年前の経済白書にこのように出ていたわけでございます。そして、ここで、「改革が展望を切り開く」と、こういうサブタイトルになっているわけですが。  私は、改革というものはこの視点を持って進めるべきものであると、改革は必要であるけれどもこの視点を併せ持って進めるものであったと、そのように思うわけです。結論的に言いますと、総理の改革はこの視点が欠けていたんじゃないか、その点を私は私なりの結論と思っているわけですが。  そこで、総理にお伺いしたいのは、実は二年前に質問したときに私、総理はどうおっしゃったか。実は今と同じようなトーンでおっしゃってます。その点については一貫していると思います。一つは、努力した人が報われ、成果が得られることが必要だとおっしゃいました。これは、今風に言えば勝ち組対策ということだと思います。そして規制緩和をされ、官から民へということもおっしゃってやられた、そのことについての一定の評価はあるかもしれません。  しかし、後者の、もう一つおっしゃっている、自らの力では成果を上げることのできない方に対して社会保障として対応することが必要と、これはさっき言った三月二日の衆議院のときも同じようなトーンでおっしゃっていて、その点は一貫していますが。まあ、正にこれが今で言えば負け組対策というんでしょうか、あるいはセーフティーネットという部分だと思います。  振り返って、中小企業金融だとか政府保証だとかかなり大きくやられたところもありますし、個人のレベルでも未払賃金の立替払制度の若干の拡充というのが平成十四年一月にありましたけども、そんなこともありました。  しかし、やはり振り返ってみて、個人に着目したセーフティーネットというものが、私は非常にお寒いものでしかなかった、新たに整備したものはなかったと、このように私は思うんです。  総理は、自らの力で成果を上げることができない方に対して社会保障として対応することが必要、セーフティーネットを張ることが必要だとおっしゃってきたわけですけれども、この五年間において総理として、セーフティーネットとして何をやったのか。将来のことじゃありませんよ。この改革期間中に、セーフティーネットから落ちるような可能性の方に対してどうやってセーフティーネットを差し伸べようとしたか、具体的にお答えいただきたい。
  266. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 厚労大臣が今日は出席されていますから後ほど具体的に話されると思いますが、職のない、収入のない人に対しては生活保護、これできちんと対応していると。そして、年金にしても医療にしても介護にしても、これは将来持続できるような制度に改革をしてきた。また、失業者も、私の就任時はたしか五・五%程度だったと思いますが、今や四%台に下がってきていると。そして、経済を活性化するという意味において、今や企業もリストラ、人減らしから新規採用を増やすような状況にしてきた。そして、ようやく最近は経済についても明るさが見えてきて、金融緩和策を解除するというような施策も日銀として打てるような状況になってきた。  デフレ脱却を目指すといってやってまいりましたし、経済活性化のための不良債権処理というかなり厳しいと言われる政策も打ち出してまいりましたけれども、明るさも見えてきて、企業もそれぞれ業績を上げるような状況になってきた。また、やる気のある人は会社を起こすこともできるようになってきた。お金がなくても会社を設立することができると。株式会社だって、一千万円以上ないとできないというのが、今や一円以上あればできるというふうになってきたわけですし、私は、そういう意味において、セーフティーネットにしても、これは教育の面においても、教育を受けたい人に対しては無利子の融資とか、働いた後にその資金は返せばいいと。言わば奨学資金なり教育資金を受けたいという申請者に対してはすべて手当てができるような制度になってきていると。  私は、今日の社会において、しっかりとしたそういう社会保障制度という点についても、私は、日本社会というのは世界の各国に比べて決して遜色のない水準になっていると思っております。
  267. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 私、いわゆる勝ち組対策のことを言っているんじゃなくて、負け組対策の部分で何をやったのかということを申し上げているんですけれどもね。  まず、医療、年金、介護というふうにおっしゃいましたけれども、これもそれぞれ法律、総理はいつも持続可能性ということをおっしゃるわけですけれども、それは将来に向けてのことであって、当面の、この五年間の構造改革の中において、まあ落ちるといいますか、ネットから外れるような方に対してどうすることをやったのかということなんですね。現実には、医療、年金、介護も給付を下げて負担を上げているわけですから、それはそれにはかなわないわけですね。  それから、セーフティーネットの根幹で、幾つか私考えましたけれども、生活保護もおっしゃったけれども、結局、去年地方に財政を渡す渡さないでやって、結局元へ戻ってきましたけれども、結局不安を与えたものでしかなかった、結局生活保護としてセーフティーネットを新たに整備しましたということは別になかったわけですね。それから、障害者自立支援法だって、結局所得保障のない障害者の方に不安を与えたということでございました。  それから、派遣労働も大変増えましたけれども、総理のときに製造業への拡大もしたし、一年から三年の期間延長もしたわけですけれども、派遣労働の方というのは結局社会保険がほとんどない。二百万人おられる中で被用者保険に入っているのは五十万という大体数字のようですが、あとは国保、国年に入っている方がどれだけおられるかということはあり得ますけれども、しかし、かなり無保険の方がおられるんじゃないかと類推できるわけでございます。結局そのことを拡大したわけですよね。  それから、国保においてもですよ、医療保険とおっしゃったけれども、現実に資格証明書になっている、すなわち国保が無保険の状態になっている方々が三十万世帯になっていると、急増しているということがあるわけですね。これとても、国保の財政単位が小さいから結局無理があるというところに起因していると私は思いますけれども、こういうことも全く放置してきたんです。  年金のこともおっしゃったけれども、基礎年金だって、おととしやりましたけれども、結局、総理自身が基礎年金は基礎的消費支出を賄うものだと答弁されていますけれども、それについても、基礎年金についてもマクロ経済スライドを掛けて実質低下させるということを求めたのがおととしの年金法案ですよ。  そしてまた、無年金者も、八十万おられるというのが厚生省の見解のようですけれども、これとても、議員立法で無年金障害者の対応はこの間やりましたけれども、しかし政府として全く無年金者、放置したままですよ。  最低賃金だって、規制緩和をやって、タクシーなど最賃が守れないような業種が増えていますよね。そして同時に、産別最賃と、産業別最賃をやめて地域最賃に一本化するということで実質低下させるような、そういったことを企図して、結局、今国会は出さないという話がありますけれども、いずれにしても最賃に対してだってそれだけ後ろ向きに取り組んできた。  失業保険だってやったとおっしゃるけれども、財政が厳しいときにやれないというんで従前の約束を切り下げたという実態があったわけですね。  あるいは、よく労働債権と租税債権という問題がございましたけれども、結局、日本の法制は非常に冷たくて、倒産したときに税金と社会保険料を払わなければならない、片っ方、労働者に賃金払わなければならない、こういう状況があるときに、働いた人に賃金払うよりも、先に税金、保険料を払わなきゃ駄目だという、いわゆる租税債権よりも優先順位が低いという法制が続いてまいりました。  このことも、私、ずっと言ってまいりましたけれども、結局どうなったかというと、十六年の五月に、破産法の改正のときにやっとなって、十七年一月からそのことが、労働債権も優先順位が上がることになりました。しかし、その十七年一月にはもはや企業倒産は非常に収まっていて、総理自身が企業倒産は非常に少なくなったというふうにおっしゃったときなんですね。ですから、倒産のときの対応のセーフティーネットが実は倒産が少なくなったときにやっと発動するという、こういったことでしかなかったわけなんです。  だから、こういったことを幾つか振り返りますときに、総理が本当にセーフティーネットを張ってきたと言うことは、全くむなしく聞こえるしかないわけなんですね。その結果として、すべて総理が悪いわけじゃありませんよ、しかし、やはり三万人の自殺者とよく言われますし、総理の就任以前からそういうことがあったわけですけれども、しかし、このようなセーフティーネットがもっともっとしっかりと整備されているならばもっと軽減することができたろうと私は思うわけでございます。  総理は、数年前に企業が破綻したとき、倒産したときに、私の改革が順調に進んでいる証拠だと、こういう言い方をされたことがございましたけれども、やはり小泉政権の政策運営というものがこのことに非常に象徴的にその本質を言い当てているように私は思うわけでございます。  これまでを振り返りますときに、やはり、よく世の中に勝ち馬に乗るというのがありますけれども小泉総理の場合は勝ち組に乗って負け組に思いを致さずと、光ばかり、光ばかり追っ掛けて影に目を向けなかったこの五年間であったかと思うわけであります。光の当て方にもやはり工夫があってしかるべきだったと、このように私は思っているところでございます。  そのような中で今の所得格差の拡大ということになっていて、また、国民の意識調査、最近見ますと、八七%の方が拡大を実態だというふうに意識しておられると。こういったことがそのことの帰結ではないかと思うわけでございまして、その点についてのセーフティーネットを私は実は言いながら実態として何もなしてこなかったその責任は極めて重大だと、このことを強く御指摘申し上げておきたいと思うわけであります。  そして、もう一つ、雇用の問題について申し上げておきたい。  実は、雇用対策でどれほどのことをやってきたかということになるわけでございます。日本の雇用の基本の法律として雇用対策法というのがございます。この雇用対策法には、雇用対策基本計画を定めなければならないと書いてあります。そしてまた、その雇用対策基本計画は政府の経済計画と調和あるものでなければならないと、こういうことになっているわけなんですね。そういうことで、今までずっと昭和四十二年から、このパネルでもございますけれども、経済計画ができたらその後ほどなく雇用対策基本計画、ずっと作られてきた、大体一貫して作られてきているわけですね。近いところで見たら、平成十一年七月に経済計画が作られて、十一年八月に雇用計画が作られている。  それなのに、平成十四年一月に改定された「改革と展望」、新たな計画になったにもかかわらず、結局雇用対策基本計画は改定されないまま今日に至っております。平成十四年に私は福田官房長官に聞きましたけれども、改定する必要性はないというふうなことを答弁されてきて今日に至っているわけであります。それで、非常に時代後れになっているわけです。  どうぞ次に。(資料提示)「改革と展望」というのは毎年変えるんですけど、この雇用対策基本計画は十年区切りなんですね。それで、お寒い話なんです。見ていただければと思うんですけれども、どんなことが書いてあるか。その中を読みますと、「現在、我が国の経済・雇用情勢はかつてないほど厳しい状況にある。」、「雇用失業情勢は極めて厳しい状況にあり、」「当面は厳しい状況が続くと考えられる。」と、これが基本認識なんですね。しかし、最近の月例報告では、「景気は、回復している。」、「雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる。」と、こういうふうに言っている。  また、高年齢層というのも五十五歳以上、六十歳台前半層。普通、六十五歳以上とかそういうことが普通ですよね。  それから、特定不況業種の法律に基づき、また地域改善対策法律に基づきという表現がありますけど、これは平成十三年、平成十四年にもう既に失効している法律なんです。  それから、「年間総実労働時間千八百時間の達成・定着を図るため、」とありますけど、去年法律改正されまして、これはもう既に、閣議決定で千八百時間というのを推進計画定めていましたけど、これはもうなくなりました。だから、これはもう今や意味がないというか、時代後れになってしまっていることですね。  それから、「二〇〇〇年度から導入される介護保険制度は、」というのは、これはもう制度が導入されて五年たって、その新たな見直しまでやって昨年法改正をしたわけですね。こんな古ぼけた表現がある。  それで、もう今やない労働基準局という言葉がある。今、労働局になっているわけですけどね。  それから、総理がよくおっしゃるニート、フリーター、こういった今の状況、対策が必要だとおっしゃるけど、そんな表現は全くありません。これだけ陳腐な古ぼけた計画になっている。それが小泉内閣の雇用対策基本計画なんです。  総理、この実態を見てどう思われますか。
  268. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) まず、第九次の雇用対策基本計画でございますけれども、基本的に小泉内閣ではありません、前の内閣でありますけれども、十年間の目標として立てさせていただいて、失業率を三・七と置かせていただいております。四・四まで回復してまいりましたので、あと一歩と、このように考えております。  また、全体的な方向としては、総理からもお答えありましたように、民需主導による景気回復を図る、それによって雇用状況を改善をしていくということでありますから、その方向に沿いながら今日までやってきたと思っております。  また、ニート、フリーター問題、フリーターも十五万人ほど減りました。当時は若年者及び地域の雇用に対する認識というものの形で示させていただいておりますので、基本的にはこの十年間の計画に沿いながら、そして毎年私ども様々な政策を打ち出しながら、また毎月閣議で雇用情勢を御報告しながら、御判断をいただきながらやらせていただいているところでございます。
  269. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 そんなむなしい答弁は何遍聞いたことか分かりません。  これだけ時代がずれていて、状況がずれていて、これでも変えないというんですからね。このぼけ方というのは本当に許し難いものがありますよ。  総理、ずれ方が、ずれ方がおかしいですよ。総理、この雇用対策基本計画がこんなにずれているのに、やはり改定すべきですよ。経済計画は小泉総理のときに改定されたんです。それに整合性を持った調和あるものでなければならないというのが雇用対策基本計画なんです。その雇用対策基本計画がこんな古ぼけた、こんなもう今や意味のないものであっていいんですか。それが今の小泉内閣の雇用対策基本計画ですよ。そんなことが許されますか、どうですか。
  270. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 随分民主党もずれてきましたね。駄目だ駄目だ駄目だと、いつも、相変わらず小泉批判のオンパレード、就任以来。  悲観論から新しい挑戦は生まれない。ようやくこの五年間、経済も明るさも見えてきた、デフレ脱却の兆しも見えてきた。労働派遣法の改正もなかったら、私はもっと失業者増えていたと思いますね。これ広げてきたからこそ、非正規社員でも働きたい、あるいは会社も、正規社員はなかなか無理だけども非正規社員だったら雇用してみようということで就業者数も増えてきているんです、失業率も減ってきているんです。それは、非正規社員と正規社員とどちらがいいかといえば、正規社員になりたいという人の方が圧倒的に多いのは事実であります。しかし、仕事が見付からない人と、非正規社員でも仕事を見付けたい人ということを比較すれば、非正規社員でも何とか仕事を見付けたいという人が多いんです。そういう人を企業も採用しやすい、仕事も、短時間でもフリーターでも仕事をしたいという人に対してチャンスを与えようというのが労働派遣法の改正であります。そういうのを延ばしちゃいかぬと言ったら、私はまだ失業率というのは改善していなかったと思いますね。今様々な悲観論を辻さんは展開されましたけれども日本経済、私は、私の就任以来、着実にやればできるという明るい兆しが見えてきていると思います。  先ほどのWBCの、ワールド・ベースボール・クラシックじゃありませんけれども、一回や二回負け組になっても、ああ駄目かと思ったときに思い掛けないチャンスが提供された。二回敗れたけれども、ようやく三度目で勝利を得て準決勝から決勝へ進んだ。最強のキューバ、オリンピックでもなかなか勝てないというあの試合でも、見事、アメリカではなくて日本が優勝しちゃった。やはりやればできるんだなと。負けた、負けたで悲観ばっかりしてはいかぬと。やっぱりチャンスがあったらそれをつかみに行こうという意欲を持って取り組んでいく。非常に私はあの野球を見ていて興奮もしましたし、感動もしましたし、選手諸君の頑張り方、これからも野球に限らずあらゆる場面においても、一度や二度の失敗や挫折に懲りずに多くのチャンスを提供して、やればできるんだという社会にしていきたいなと思っております。
  271. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 今日、改めて小泉総理、小泉内閣の、やはり国民の生活や暮らし、それにしっかりと目を向ける、このような視線が欠けているということを痛感した次第でございます。  関連質問に譲ります。
  272. 小野清子

    委員長小野清子君) 関連質疑を許します。山根隆治君。
  273. 山根隆治

    ○山根隆治君 今日は、国民生活に限定した議論の場でございます。昨年の予算委員会で、私は総理に、これからの日本をどのような国にされていこうとするのか、その具体的なイメージをお聞かせいただきたいという御質問をいたしましたところ、なかなか明確なお答えをいただけませんでした。  五年半ほど前、小泉純一郎衆議院議員がさっそうと内閣総理大臣として登場をされました。国民の目には、まばゆいほど改革の旗手というふうに当時映っていたものであります。しかし、あれから五年半たちまして、今、辻議員からも御議論ございましたけれども、ここで顕著になってきたのは国民のいろいろな格差、これが明らかに私はなってきたと思っております。所得の格差、地域の格差、そして企業の格差、土地の値段、地価の格差、こうしたものが顕著になってきているわけでありますけれども小泉総理が目指してきた国の形あるいは国の心というのは現下の日本のこのような姿を想定していたものかどうか、この点について御見解をお聞かせください。
  274. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 現在の日本の社会におきましては様々なひずみもあります。是正されるべき点も多々あります。しかし、現在の状況、全般的に眺めて総括すれば、歴史始まって以来の豊かな社会になっていると思います。  そういう中で、衣食足って礼節を知るという言葉がありますが、必ずしもそうではないなという最近の風潮を考えてみますと、人間社会というのは極めて難しいもんだなと。  世界一長生きできる社会にしようと、戦後、目標を立てて一生懸命頑張ってまいりました。現実に世界一長生きできる社会になった。そういう中にあっても、必ずしもああいい世の中だと思っている人ばかりじゃない。いや、昔の方が良かったと、ますます世の中悪くなったと思っている人も出てくる。これほど医療が進歩した中でもなかなか病気もなくならないし、難病を抱えている方も、困難を余儀なくされる方もたくさんおられる。世の中は、どんな進歩があっても、どのような制度が整備されても、やはり苦しく、困難な面があるんだなと。  そういう中でも、いいところは伸ばしながら悪い点を直していく。そして、多くの方々ができるだけ意欲を持って独り立ちできるような社会にしていく。そして、独り立ちできない方々に対してはお互い支え合って、この世の中、助け合いながら平和のうちに豊かな社会にしていこうという、そういうことが政治の場におります我々にとってはますます重要ではないかなと。  ともかく、六十年間一度も戦争を経験することのなかったこの平和の有り難さをかみしめて、より良い社会に、豊かな社会に、そして多くの方々が助け合いながら、支え合いながら、活発に自らの希望なりを実現できるような社会にしていきたいと思っております。
  275. 山根隆治

    ○山根隆治君 私は、総理のこの五年半の言動、行い、そういうものを見てきますと、総理が漠然と目指していたのはやはりアメリカ型の社会を目指していたのかなというふうな私は感想を持っております。アメリカも非常に懐の深いところですし、明るい、活力に満ちた魅力のある国であります。しかし、他面、CEO、経営最高責任者、仮に社長といたしますと、社長と労働者との報酬の差というのは、実は一九九〇年には百七対一でありました。そして、それが二〇〇三年になると三百一対一、そして二〇〇四年では四百三十一対一、ますます個人の所得の格差というのがこのように、アメリカ社会はですよ、広がっているということであります。  日本はそこまで行きませんで、民間の調査機関の数字見ますと、大体、社長と一般従業員、初任給比べると、四倍から六倍ほどの格差ということになっております。これはそれほど大きな形で顕著にはなっておりませんけれども、そういう社会であります。  ところで、一九一八年にシュペングラーの「西洋の没落」というのが、名著ができました。そして、一九七九年にはエズラ・ヴォーゲルの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が出版をされ、一九八三年には大平元総理が構想をされていたものを後から有識者等がまとめられた「近代を超えて」という本が上梓をされたわけでございます。  ここで私何を申し上げたいかというと、市場原理信奉する小泉総理の経済政策等について、本当にそれが日本の社会にかなったものなのかどうかと、そういう疑問を私は実は抱いているところでございます。やはり、今申し上げましたような歴史的な流れからすると、私はもう既に近代合理主義というものは行き詰まってきているというふうに思えてならないわけであります。総理がやはり学ぶべき、習うべきものは、アメリカにあったのではなく、欧米にあるのではなく、日本の営々として築かれた日本文化、伝統、人のことを思いやったり、そして気遣い合う、そういう私は和の心というか、大きく和する大和の心というか、そういうものに総理は習うべきだったというふうに思えてなりません。いろいろな識者の方から私もそんな御意見等もいただいておりますので、そういう多くの国民の声がある、国民の声があるということを是非この際総理にもお伝えをさせていただきたいと思います。  それでは、通告をさせていただいております統合医療の問題につきまして御質問をさせていただきたいと思います。(資料提示)  総理は統合医療という言葉、余り耳慣れないものだと思いますけれども、実は、統合医療というのは西洋の医学だけではなく、東洋医学あるいはそのほか伝統的な四千年、五千年世界で続いた医療技術というものがあるわけでございますけれども、そういう技術を、医療技術というものを融和させて、国民の健康、個人の健康というものを守っていこうと、こういうふうな考え方で実はございます。  この中には、例えば日本でいいますと、はりであるとかきゅうであるとか、あんまであるとかマッサージであるとか、そういうふうなものも、分野のものも入ってくるんですけれども、総理は、そうした代替医療というもの、これには掛かられたことがございますか。
  276. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 私も、はり治療とかマッサージとかカイロプラクティックとか、いい治療だと思っておりますし、たまにお願いしてやっております。もとより、お医者さんの中にも腕の違いがありますが、そのお医者さんを選ぶことも大事だと思います。
  277. 山根隆治

    ○山根隆治君 実は、患者の方の側から非常に今、総理も経験されている。私自身も、実はテニスをやっていまして、ひじを痛めたり腰を痛めたりいたします。そんなときに、もう歩けないような状態のときでも、はり治療でもう一時間後には歩いて帰ってこられる、そんなふうに非常に即効性もあるということで、私も非常に重宝いたしております。  先日、ある御婦人からこんな話を聞きました。国会でこんなこと質問するということを実は申し上げましたらば、実は自分自身も病気で切開手術をして縫製をしてそこがうんでしまったり、あるいは痛みがずっと続くということで、はり治療に行ったら本当にそれが見る見るうちに全快をしていった、痛みもなくなったと、こんなふうなお話を聞きました。  あるいはまた、これもアメリカで研究所ではっきり科学的な立証もされておりますけれども、がんにかかられて副作用、当然いろんな治療の中で副作用が多くて、吐き気であるとか痛みであるとかだるさだとか、そういうふうな副作用がどうしても避けられないときに、はり治療が非常にこれは有効だということを科学的にもこれも立証はされたということで、その研究所では発表も実はされているわけであります。  我が国におきましては、なかなか西洋医術を持ったお医者さんと国民の一種の意識のギャップというものがあって、なかなかまだ東洋医術というものが日の目を見ないというところありますけれども、欧米では、一九八〇年以降非常に研究が活発になってきまして、例えば米国では、一九九八年時点ではアメリカ国民の四二%がそうした代替医療というものを経験をしているということであります。そして、一九九九年には、ブッシュ大統領の肝いりで国立CAMセンター、代替医療の研究のセンターができまして、十三の大学にそうした代替医療の、統合医療の研究をする、そうした学科が開設をされたりしているというふうな状況で、かなりアメリカ、そしてヨーロッパでも、イギリス、スコットランドではもう研究施設も造られておりますし、ヨーロッパ、ミュンヘン、ロンドンでは国際会議も開かれている、こういうふうな状況になってきているわけでありますけれども日本国としてはこうした統合医療に対しましてどのように評価して取り組んでおられるのか。そして、来年度予算で一億円の予算が計上されているということでありますけれども、今後どのように予算措置をされようとしているのか、厚生労働大臣、お尋ねをいたします。
  278. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 今るる御説明いただきましたように、西洋医学に含まれない医療領域、相補・代替医療、それと現代西洋医療と効果的に組み合わせる、それに対する国民の関心は今委員が御指摘のように高まってきていると、このように考えております。  厚生労働省においても、あん摩マッサージ指圧師を国家資格として位置付けさせていただきました。さらに、平成十八年度からは、統合医療に関し内外における普及の状況や経済効果、西洋医学に相補・代替医療を併用することにより具体的に高まる効果などについて研究を実施するために、一億円の予算を組ませていただいて統合医療を推進するための土台づくりを図ろうと、このように考えております。  こうした研究によって得られた成果等を踏まえ、国民や医療関係者等に対し情報提供を行うとともに、医療現場において適切な取扱いがなされるよう努めてまいりたいと考えております。
  279. 山根隆治

    ○山根隆治君 アメリカの国立衛生研究所の二〇〇五年度の相補、お互いに補う、代替医療の研究費というのは、日本円にしますと三百五十億円になっているわけであります。そして、今大臣から御答弁ありましたように、日本では来年度予算で一億円ということで、三百五十対一の比率と、アメリカと比べて、そういうふうになっているわけであります。日本統合医療学術連合というところから遠慮がちに、日本のこの予算、関係予算というのは、五年間で百億、年間二十億、予算要望をしたいんだというふうなお話を実は聞かせていただいておるところであります。  やはり、この統合医療について我が国が欧米に比べてかなりの後れを取っているということにかんがみて、私は来年度以降も思い切った予算措置というものが必要だと思うんですけれども、この点についてもう一度厚生労働大臣の方から踏み込んだちょっと御答弁をお願いいたします。
  280. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 欧米に比較して後れているという御発言もありました。一つの側面ではそうだろうと。しかし一方で、東洋医学を取り入れているということについては我が国はかなり進んでおるという認識をしております。現実に、今申し上げたように国家資格として位置付けてやっているわけですから、そういう意味では、今申し上げたような研究をしっかりさせていただいて、医療とこのもの、相補・代替医療を組み合わせることによってどう効果が得られるかと、これはきちっと出していかなきゃならぬと、こう思っております。
  281. 山根隆治

    ○山根隆治君 国家試験があるから、制度として確立しているから、それでしっかり担保されているということは少し、国民がそれでどのぐらいそれでは治療を受けているかということからすると、東洋医学でありながらアメリカ人はよっぽど、数倍の患者数というか、持っているということをこの際御指摘をしておきたいと思います。  国民の医療費の今後はトータルでどのように推移されると想定しているのか、お尋ねいたします。
  282. 水田邦雄

    政府参考人(水田邦雄君) 国民医療費の将来見通しについてのお尋ねでございますけれども、まず今回の医療制度改革実施前の見通しについて申し上げますと、二〇〇六年度、平成十八年度は三十四兆円、二〇一五年度は四十七兆円、二〇二五年度、平成三十七年度は六十五兆円という見通しを立ててございます。  これに対しまして、平成十八年度の診療報酬改定、それから健康保険法等の改正の効果を織り込んだ国民医療費について申し上げますと、二〇〇六年度につきましては三十三兆円で一兆円の減、二〇一五年度は四十四兆円で三兆円の減、二〇二五年度は五十六兆円ということで八兆円の減との見通しを立ててございます。
  283. 山根隆治

    ○山根隆治君 欧米では、この統合医療を導入させることによって医療費というものを見直して、そして大幅な削減計画というものを立てているわけですね。  日本も、今見直しをされて、当初予定よりもかなり削減するということでありますけれども、膨大する医療費、まあGDPに比べてどうかという議論はありますけれども、これを、私は統合医療というものを積極的に導入することによって、これは特にやっぱり予防医学の面からも非常に画期的な手法が、たくさん蓄積というものがあるわけですから、私は、もう大胆にこれを取り入れることによって医療費の削減というのはもっと可能だと思いますし、また関係者、この統合医療学会の役員の方々も、もっと大きく削減できるはずだということを口を酸っぱく私にもそんな話を聞かせていただいたり、読ませていただくことが多いんですけれども、これについて、もっと大胆に導入することによって削減計画というものをもっと大きくできるのではないでしょうか。厚生労働大臣
  284. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) ここにお示しいただきましたように、既に老人医療それから介護の現場に東洋医学等入っていることは事実でございます。また、これから予防重視というものが、これは医療の面、それから介護の面、両面で必要であります。  そういった意味では、先ほども申し上げておるとおり、予算面どうのということについてはすぐ答えられませんけれども、組合せをして、いい医療をつくり上げるということについてはしっかり考えてまいりたいと思います。
  285. 山根隆治

    ○山根隆治君 私、冒頭、はり治療のお話をさせていただきました。これは自分の実体験でございました。しかし、このはり治療についても、先ほど制度のお話大臣されましたけれども、例えば柔道整復師さんですと、その先生のところに行くについて、保険の適用については医師の許可が必要でなく、そして患者さんが柔道整復師の病院、医院に行きまして、保険の分以外のものを、保険適用以外の部分のお金をお支払をして通院するという形が行われております。そして、保険の請求については、保険者に対する請求は柔道整復師の先生がされるということになっております。  ところが、まあどういう、いろいろな経過があるようでありますけれども、はりの先生、鍼灸の先生についてはそうしたことが実は行われておりませんで、私はそこのところ、受領委任払いというその制度というものを、やはり私はしっかりと適用をすべきもう時期にそろそろ来ているのではないか。  つまり、患者、今のままですと患者さんがお医者さんから許可を受けて、そしてその鍼灸の治療院に行って、行っても保険の支払については自分で、例えば国民健康保険であると市町村の方に行って保険の請求をするという手続を患者さん自身が取らなくてはいけないという煩わしさがあって、もう保険の適用、事実上なかなかできないと、こんなふうな状況があるわけでありますけれども、もうそろそろこの点見直すべき時期に来ていると思いますが、厚生労働大臣、いかがですか。
  286. 水田邦雄

    政府参考人(水田邦雄君) お答え申し上げます。  健康保険法等に基づきます保険給付は、保険医療機関等からの現物給付ということで療養の給付を行うことが原則とされてございます。それが困難である場合で、保険者がやむを得ないと認める場合に、療養の給付に代えて現金給付として療養費払いを行うことが認められているところでございます。  お話のありました柔道整復師が行った施術に係る療養費についてでございますけれども、これは特例的に受領委任払いが認められてございますけれども、その理由といたしましては、整形外科医が不足していた時代に患者さんが治療を受ける機会の確保を図る必要があったというまず経緯がございます。  それからもう一つ法律上応急手当ての場合には、医師の同意なく、柔道整復師さんの場合には医師の同意なく施術ができるということが定められておりまして、言ってみますと医師の代替機能というものを有しているという特性がございます。このようなことから特例的な扱いが認められているわけであります。  一方、マッサージ及びはり、きゅうに係る療養費の対象疾患についてでございますけれども、これは外傷性の疾患でございませんで、発生原因が不明確で治療と疲労回復等の境界が不明確であるということから、受領委任払いは認めていないと、こういう現状でございます。
  287. 山根隆治

    ○山根隆治君 今大臣、現状をお話しされたんですが、これはもう政府参考人の立場から仕方がないことだと思うんですけれども、私が申し上げているのは、もう時代が大きく変わってきている、統合医療というものが見直されている、厚生労働省でももう踏み切っている時代に来ている、そうした歴史の大きな転換点なので、政治判断でこれは改革をすべきだという私は提案をいたしているわけであります。  総理はいかがでしょうか。御答弁いただけますか、政治決断ですから。
  288. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 私も厚生大臣経験していますから、はり治療とかあんまさん、指圧、マッサージ、カイロプラクティックの良さ、普通の掛かったことのない人に比べればはるかに効果、効能はわきまえているつもりなんです。保険が利かないのに、カイロプラクティックにしてもはり治療にしても、なぜあれだけ多くの人が引きも切らず高いお金を払って行くのか。これは効果があるからなんですよね。  しかし、今、水田局長言われたように、これが治療なのか予防なのか疲れを取るなのか分からない。本来は、治療より予防ということを考えると、病気になる前に疲れを取るということは非常に大事なことなんですよね。生活習慣病もこれは大事です。ですから、それを実際保険の点数にどう組み入れていくか。あるいは、お医者さん同士の境界争いがあります、自らの、これがまた複雑なんですよ。  だから、そういう点についてはずっと私検討しろ検討しろと言ってるんですよ。それがなかなか、そのお互いの縄張争いと言っちゃちょっと語弊があるかもしれないけれども、これは難しいんですよね、この許可を与えたら、私たちの職業、仕事が減っちゃう。ここが何か政治家とは違ったまた争いがあるんです。そういう点は、今後十分、人間の体全部を考えて健康を考えると、この統合医療というのは私は大変重要だと思っていますよ。
  289. 山根隆治

    ○山根隆治君 いい答弁だったと思います。あとは実行ということで、厚生大臣に強くひとつおっしゃっていただきたい、指示していただきたいと思います。  私は、この際、今はお医者さんの指示の中でというところでの受領委任払いのお話をいたしましたけれども、私は、例えばがん治療、がんの手術をした後の回復期に、多くの方が総理のようにはりに行かれたりなんかして非常に助かっていらっしゃるということがあるんですね。ですから、そうした私は限定をした中でも、医師の指導ということで必ずしもなくとも、そうした限定した中での行為として、私はこの際保険の適用ということに踏み切ることも私は大事だろうというふうに思いますけれども、この点について短く端的に御答弁、総理の方からお願いできますか。
  290. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 総理からもお話ございますし、党内にもいろいろな議論がございます。今日は、委員の御意見として受け止めさしていただきます。
  291. 山根隆治

    ○山根隆治君 今年の二月に、実は国際シンポジウム「日中韓で統合医療を考える」というものが日本で開催を実はされました。  今、中国、韓国との関係がいろいろなファクターに、要因によってぎくしゃくした関係にあるということは多分総理もお認めになるんだろうというふうに思っておりますけれども、私はこの際、中国、韓国、日本と、三国による統合医療の研究所というようなものをつくって、そして日本の健康、アジアの健康、世界の健康のやっぱり発信基地というものを日本が主導的な役割を果たしてつくるということで、これが一つのアジア、東アジアにおける平和構築の第一歩にすることも私は可能だろうと思うんですけれども、こうした発想について総理の御所見お聞かせください。
  292. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) そのような東洋医学の研究がどの程度今進んでいるかというのは定かではありませんけれども、その発想というのは大変いいことだと思っております。
  293. 山根隆治

    ○山根隆治君 是非ひとつ御検討いただいて、今すぐ御答弁いただけるような話ではありませんけれども厚生労働大臣と御協議いただきたいと思います。  次に、大学入試センターのリスニングテストのことでお尋ねをいたします。  国立大学受験をされる方が大学入試センターのリスニングテストを今年から受けました。一月二十一日、三百一の会場で行われたわけでありますけれども、英語の聞き取り試験について、実はICプレーヤーが不具合で四百六十一名の方がもう一回テストを行うというふうなことになりました。一人ずつの方がプレーヤーを聞いて、そこから音を聞くということでやられたわけでありますけれども一つの会場で、いろいろな検討がされた結果だとは思うんですけれども、私はやっぱり館内放送で一斉にリスニングテストを行うという方法をなぜ取らなかったのか疑問であります。お聞かせください。
  294. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 英語のヒアリングテストの実施に際しましては、今おっしゃったような一斉方式あるいは個別音源方式等が検討されました。一斉方式は各会場のスピーカーを使ってやるわけでございますけれども、そのスピーカー、新しいスピーカーを全部供給するというようなわけにいきませんので、備付けのスピーカーが、まあその会場によっては音が割れたり、あるいは窓際に座っている人とスピーカーに近い人で音の状況が違う。特に、窓際の人の外を大きな音をした街宣車のようなものが通れば聞き損ねてしまう。もうやり返しが、やり直しが利かないわけですね。そういったような点から、これは大学関係者、高等学校の関係者、有識者等の意見も十分にお聞きした上で、慎重に検討してこのICプレーヤーによる個別音源方式が採用されたところでございます。  平成十六年の九月に同方式によるテストが行われまして、三万六千名の皆さんにトライアルをやっていただきました。その結果、十八名の方から不具合の申出がありました。〇・〇五%という不具合率でございますが、今回の実施に際しましては、四十九万人受けられたうち四百五十人から不具合が申出がありまして、これは〇・〇九%に当たるわけでございますけれども、この四百五十名の方々の中には、高い試験の緊張から実際の操作を誤ったというようなものも含まれているというふうに考えられますので、現在、入試センターがメーカーとともに検証中であるわけでございます。  いずれにいたしましても、こういった個別音源方式を使ってやった方式というものは御理解をいただきたいと思いますが、四百五十名の受験生の皆さんが不具合によって多大な御迷惑を被ったということでございまして、心から遺憾だと思っておるわけでございます。
  295. 山根隆治

    ○山根隆治君 今、遺憾の表明がありましたけれども、昨年テストをやってみて、〇・〇五の事故率というか不具合の具合、そして本番になってみたらまたそれが増えているということですね。これはもう仕方のないという、想定の範囲というふうに考えておられたのかなというふうにも思います。  時間がないので先に行きますけれども、これは一台当たり二千六百円でございまして、五十万人ほどの方が受験生、受けられておりまして、一台ずつ配られて、十六億円実はこれ掛かっているわけですね。しかし、これはもう使い捨てになっているわけであります。  例えば、民間でもこのことを想定して、いろいろな塾、予備校などではいろいろなテストをやっています。これは年間四回使って、そしてそれを三年繰り返し使うと、これは代々木ゼミの話ですけれども、そういうことをやっておられる。一回で駄目で、お持ち帰りでどうぞと。これは、今、国民の生活がまだまだ不安定な中で、これ許されるんでしょうか。そして受験生にも負担がいくということで、こんな無駄なことはない。どう考えますか。
  296. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) そのことにつきましてはいろいろ検討されたようでございますけれども、持ち帰って、そして検証するということも踏まえて持ち帰りということを考えて、そのような方式を取ったということでございます。
  297. 山根隆治

    ○山根隆治君 いや、だから、それが無駄でしょう、もったいないでしょう、なぜそういうことをするのかということを聞いているんです。
  298. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 仮に次年度使うといたしますと、一年間保管をするわけでございます。約五十万台のものを保管して、電池を全部交換して、その不具合を全部チェックして、メモリーとの整合性等も全部チェックしなきゃなりません。その費用は製作の費用よりもはるかに上回るというふうに計算されたというふうに聞いております。
  299. 山根隆治

    ○山根隆治君 心の問題ですね。国民の負担というもの、先ほど定率減税の話、辻委員からもございましたけれども、そういうメンタルの面はどう考えるんですか。
  300. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 物を大切にするということは大変重要なことでございますから、私も物を大切にする心というものは尊重いたしたいと思います。  しかしながら、その保管の結果、また新たな不具合が発生するという危険性を考えますと、新たな機器を生産して、それを十分にチェックをして、そして試験に適用するという方が現実的という判断があったというふうに私は考えております。
  301. 山根隆治

    ○山根隆治君 それでしたら、私はやはり、個々にプレーヤーをお渡しするということではなくて、一斉にその教室で聞かせる、リスニングテストをさせるということをもう一回私は検討すべきだと思います。  時間です。終わります。
  302. 小野清子

    委員長小野清子君) これにて山根隆治君の関連質疑は終了いたしました。  以上で辻泰弘君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  303. 小野清子

    委員長小野清子君) 次に、渡辺孝男君の質疑を行います。渡辺孝男君。
  304. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男です。  私は、最初に、国民の命を守る救急救命に関しまして質問をさせていただきます。  パネルをごらんください。(資料提示)救急救命で重要なのは、救命の連鎖という考え方です。第一の鎖の輪は早い通報、第二は早い応急手当、第三は早い救急処置、第四は早い医療処置です。救命の連鎖とは、大切な命を救うためにこれらが迅速に、そして途切れることなく行われることの重要性を示しています。  そこで、第二の鎖の輪であります早い応急手当の一つである心肺蘇生法に関して質問をいたします。  学校教育の現場では、この心肺蘇生法がどのように教育、研修が行われているか、その方針と実績について小坂文部科学大臣にお伺いをいたします。
  305. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) お答え申し上げます。  文部科学省では、従来より、教職員を対象といたしまして心肺蘇生法の実習、講習会などを実施しておりまして、心肺蘇生法を含む応急手当に関する教職員の資質の向上に努めてきたところでございます。また、中学校や高等学校の保健体育の学習指導要領におきまして応急手当について盛り込んでおりまして、心肺蘇生法を含めた指導を進めているところでございます。  今後とも、心肺蘇生法を含めた応急手当の重要性にかんがみまして、教職員の研修や学校教育における指導の充実に努めてまいりたいと存じます。
  306. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 厚生労働省が推進をしております母子の健康を守る国民運動であります健やか親子21では、大切な子供の命を守るために、親には心肺蘇生法を一〇〇%知ってもらうことを目標に掲げています。  川崎厚生労働大臣、現在の実績はいかがですか。
  307. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 御指摘のように、健やか親子におきましては、心肺蘇生法を知っている親の割合、一〇〇%にしたいという目標を掲げました。その理由は、先ほどパネルでもお示しいただきましたように、一歳から十九歳までの子供さんの死因順序を付けますと、不慮の事故というのが一番でございます。そういった意味では救急な対応というのが一番大事であることは間違いない。しかし、一方で、残念ながら目標に掲げたときよりも実は数字が下がってしまっております、一五%。今文科大臣からも御回答ございましたけれども、両省力を合わせながらしっかり周知に努めてまいりたいと、このように思います。
  308. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 子供さんの命、少子化で大切なものでありますので、何としてもこの心肺蘇生法を親がしっかり知っていただけるようにしていただきたいと思います。  次に、国民全体に関しても数値目標を掲げて、心肺蘇生法の周知、研修を推進をしてはいかがか、そのように思いますけれども、竹中総務大臣にお伺いをいたします。
  309. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 心肺蘇生法の普及、本当に重要であると思います。これは消防機関が重要な役割を果たしますが、消防機関だけではなくて、日本赤十字社、保健所等、様々な機関におきまして一般市民に対する応急手当ての講習というのが行われております。  消防機関による講習の受講者数でございますけれども、これ年々増加しておりまして、平成六年、二十五万強であったものが平成十六年には百十二万と、この十年間で四・五倍になりました。この結果、救急車によって搬送された心肺停止傷病者のうち、一般市民によって、専門家ではなくて一般市民によって応急手当てが実施されたものの割合、これも平成六年の一三%から平成十六年には三四%にというふうに高まっております。  救急車が到着するまで一般市民によります応急手当て、これは救命効果に非常に大きく寄与するものでございます。引き続き関係機関と連携しましてその普及啓発に、推進に是非努めてまいりたいと思います。我々としては、その方向を是非きっちりと示したいと思っております。
  310. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 次に、第三の鎖の輪であります早い救急処置について質問をさせていただきます。  不整脈がひどくなっている場合には、そして倒れてしまった場合には、心臓に電気ショックを与えて治す除細動が重要です。最近、自動体外除細動器、AEDと呼ばれるものが、そういう良い器械が普及しつつあります。一般の方でも講習を受ければ使えるわけです。  公明党は、今から四年前、この普及を提唱してまいりました。一般国民へのAEDの講習等が現在どのように行われているのか、竹中総務大臣にお伺いをいたします。
  311. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) AEDについて御紹介がございましたけれども、心臓にいわゆるショック、電気ショックですね、大変重要な機能でございます。  消防庁として救命講習をしておりますけれども、その救命講習の実施に当たりましては、今御紹介のAEDによる除細動の内容を組み入れたものにするよう指導しているところであります。  改めまして消防機関によるその講習の状況を調査したわけでございますけれども平成十七年、去年の第一・四半期から第三・四半期にかけて、前半の方でございますけれども、その時期には全講習者のうち六三%の者がAEDの内容を含めた講習を受けていたわけですけれども、これが第四・四半期には全体の九〇%の人がその内容を受けるというふうに比率が高まっております。こういう傾向を是非続けたいと思っております。
  312. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 多くの人が集まりますホテルとか公共施設、そしてまた学校とか公共交通機関などにはどの程度AEDが設置されるようになってきたのか、また今後の設置目標などについて、北側国土交通大臣、小坂文部大臣にお伺いをしたいと思います。
  313. 北側一雄

    国務大臣(北側一雄君) 公共交通機関におけるAEDの設置状況につきまして御報告申し上げます。  鉄道につきましては、この三月末までに少なくとも百四十駅に設置される予定でございます。また、来年度中には少なくとも約二百七十駅で設置される予定でございます。  航空につきましては、本年二月時点で、主要空港でございますが、成田国際空港に四十二台、関西国際空港に三十五台、中部国際空港に三十九台、東京国際空港に五十台、大阪国際空港に二十台設置されているほか、主要航空会社の航空機につきましても約九割が搭載済みとなっております。  旅客船につきましては、平成十八年末までに少なくとも四十二隻、十二ターミナル等にAEDを設置する予定でございます。  先般は、今月の十六日でございますけれども、都営の大江戸線の都庁前駅で駅員がAEDを用いまして救命措置を施した結果、男性が一命を取り留めると、こういうこともございました。  今後、公共交通の各分野におきましてもAEDの設置が更に推進されるように頑張ってまいりたいと考えております。
  314. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 大人ばかりでなくて、小さな子供さんも不整脈の発作が起こり得るわけです。八歳未満の幼児の場合には小児用のAEDが必要ですが、日本ではいつから使えるようになるのか、川崎厚生労働大臣にお伺いをいたします。
  315. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) いわゆるAEDについては、八歳未満の子供への使用は今現在認められておりません。医療機器を製造販売する企業からの申請を受け、今八歳未満への子供への適用拡大について審査を行っております。一方、日本救急医学会から早期承認について要望もいただいております。保健衛生上の必要性が高いと考えられることから、申請企業及び審査を担当する医薬品医療機器総合機構に対し迅速に対応するように指示しております。現時点において特段の問題がなければ四月中に承認したいと考えております。
  316. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 先ほど学校におけるAEDの配置についてお聞きをしておりませんでしたので、小坂文部大臣、よろしくお願いいたします。
  317. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 学校におきましては、すべての県立学校に設置済みの県といたしまして福井県あるいは愛知県、愛知県は百八十二校全部に設置をしております。平成十八年度よりすべての県立学校に設置予定の県が青森県、鳥取県、広島県、福岡県等でございます。また、すべての市立の中学校、高等学校、養護学校に設置済みの例としては仙台市等がございます。  いずれにいたしましても、AEDが大変有効でございますし、また、学校が応急避難場所に指定される場所でございますので、そういった観点も踏まえまして、学校設置者に十分に状況を理解していただきまして、文部科学省としては、教員への研修等を進めるとともに、今後とも全国調査を行うなど、AEDに対する各自治体の意識を高め、そして学校設置者によって設置されるような判断を促してまいりたいと存じます。  また、最近では国会の中にもAEDが設置されておりまして、見学者の皆さんあるいは国会議員の応急対処ができるようにしておりますが、私も是非とも、心肺蘇生法はできますけれども、AEDの使い方は分かりませんので、近々に取得したいと思っております。
  318. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 国会議員もそういう場面に遭遇することがあると思いますので、研修を進めていただきたいと思います。  ところで、いざというときに一番頼りになるのはやはり救急車ですけれども、AEDはこの救急車全車に積載されているのかどうか、竹中大臣にお伺いをいたします。
  319. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 昨年の十二月末現在で、全国の消防機関の救急車というのは、大体でありますけれども、四千八百台ございます。そのうち九二・六%に当たる四千五百台ぐらいにこのAEDが掲載されております。今月末までに新たに追加されますので、本年度中に九五%の救急車に掲載されるという見込みになっております。
  320. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 九五%と。あと五%残っているということでありますので、やはり救急車にはAEDが積載されてほしいと、そのように思います。  小泉総理、いつまでに全車配置されますか。
  321. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) いつまでには今聞かれてもすぐ分かりませんけれども、できるだけ早く付けた方がいいと思っております。
  322. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 できるだけ、救急車にはやはりAEDが必要だと、少なくともそう思いますので、よろしく御検討をお願いいたします。  第三の鎖であります早い救急処置に関しまして、その主役は救急救命士であります。公明党は四年前に、AEDの普及とともに、救急救命士の気管挿管や一部薬剤が投与できるように業務の高度化を提唱したわけであります。気管挿管は二年前から可能となりました。この四月からはエピネフリンという薬の投与が認められる予定です。  そこで、この研修は順調に進んでいるのかどうか、竹中総務大臣にお伺いをいたします。
  323. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 平成三年からこの救急救命士の制度始まっておりますけれども、今御紹介のありました強心剤でありますエピネフリンの投与というのが可能になる、これに向けまして病院実習を含めた追加講習が求められるわけでございます。  今、救急振興財団等々でこれ本年度から実習され始めたということでございます。この救急振興財団におきましては、先行的に本年度後半に百十五人に対して講習を行いましたけれども、来年度以降は毎年度八百人程度の規模で講習を行っていくというふうに考えております。  こうした取組を通じまして、このエピネフリンの投与が可能な救急救命士が着実に増加していくように、まあ始まったばかりでありますので先は長いんですけれども、しっかりと対応してまいります。
  324. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 救急救命士業務、高度化がなされているわけですけれども、救急車に救急救命士がやはり全員配置されていることが望ましいと思うんですけれども、これまでどの程度達成されたのか、またいつまでに一〇〇%救急救命士が救急車に乗られるようになるのか、竹中総務大臣にお伺いをいたします。
  325. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 御指摘のように、救急救命士、救急自動車にすべて乗っていただくというのが望ましいと、これはもう間違いなくそうだと思います。  こうした観点から、救急自動車に搭乗する救急隊員のうち一人以上は救急救命士とすることとしまして、すべての救急隊への救急救命士の配置を推進をしているところでございます。今救命士が配置されている救急隊の状況について見ますと、平成十六年四月現在では全国の救急隊の七三%でございましたが、平成十七年四月現在では約八割になっておりまして、一応改善が着実に図られてきております。  しかし、近年、このいろんな救急救命士に期待されるところは更に大きくなっております。最近では毎年五%から六ポイントずつ改善してきているわけでございますが、一日も早くすべての救急隊に救急救命士が配置されるように、各消防本部に対しましてこの要請を求めてまいりたいというふうに思っております。
  326. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 是非とも早期に実現をしていただきたいと思います。  質問飛ばしまして、救命の連鎖で、第四番目の早い医療処置の点でございますけれども、やはりこのレベルアップのためにはドクターカーあるいはドクターヘリが、医師が搭乗して、乗って、そして救急現場で早い処置をするということが大切であります。  パネルにございます。(資料提示)このドクターヘリはどのように日本で運航され、そして今後全国配備に向けて展開されていくのか、川崎厚生労働大臣にお伺いをいたします。
  327. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) ドクターヘリは、事故、急病や災害等の発生時に直ちに医師等が同乗し、ヘリコプターで救急現場等に出動するものでございます。  平成十三年度以降、ドクターヘリ運営費を補助してきており、自主的に導入しているところも含め、これまで九都道府県において十機が運航されております。十八年度についても一つ増える予定でございます。十六年四月から平成十七年三月までの一年間で、対象が七機でございますけど、三千三百六十五回の搬送を行っておりますので、一機当たり五百回、大体一回半、一日行っていることになります。  重度後遺症の防止や救命率の向上については、搬送時間の短縮化、救急医療に精通した医師が救急現場等から直ちに救命医療を開始、救命救急センター等、救急医療機関に到着するまで連続的な必要な医療を行うことができるということで大きな成果を上げることが期待されており、平成十五年の厚生労働科学研究によると、一定の前提を置き、ドクターヘリによる救命率が三四%向上、後遺症は三二%軽減すると推計をいたしております。
  328. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 まあドクターヘリはやはり予算が掛かるということで、診療報酬上それを移送費の加算点数というものを付けていただければと、そのように思っております。是非とも御検討をお願いします。  それでは、別な質問でございますけれども、東北の友人から、東北エリアの高速道路にはオストメート対応のトイレが一か所も設置されてない、何とかしてくださいと、そういう依頼がありました。  そこで、全国の高速道路のサービスエリア等におけるオストメート対応のトイレ、設置状況と今後の設置の計画について、北側国土交通大臣にお伺いをいたします。
  329. 北側一雄

    国務大臣(北側一雄君) 議員御指摘のオストメート、人工肛門や人工膀胱を保有するオストメートにも対応したトイレにつきましては、現在のところ東北自動車道の蓮田サービスエリアなど、全国の九つのサービスエリア、パーキングエリアで設置されているだけでございます。  一方、旧日本道路公団のファミリー企業の剰余金の還元によりまして、高速道路利用者に対する安全性、また信頼性、サービスの向上を図るための社会貢献事業を行う実施機関として、高速道路関連の社会貢献協議会というのがございます。これ、昨年の八月に設立されたわけでございますが、その社会貢献事業の一環として、全国サービスエリア約二百か所にオストメート対応トイレを設置していくことが決定をされたところでございます。  この決定を受けまして、平成十八年度中におおむねすべてのサービスエリアにおきましてオストメート対応のトイレを設置する予定であると聞いておりまして、引き続き障害を持った方々も含めまして、すべての人が利用しやすい高速道路造りに努めてまいりたいと考えております。
  330. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 まあ、そのほかにも公共施設等ございますので、そこにもオストメート対応のトイレ等を整備していただきたいと思いますが、この点に関しまして、小泉総理の御所見をお伺いをいたしたいと思います。
  331. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) できるだけ大きな駅や公共的な施設等、これらオストメート対応トイレ設置するように努力しておりますので、今後とも障害者の皆さん方ともよく相談しながら、できるだけ数を増やして障害者が社会に参加しやすいような、活動しやすいような施設造りに努力していきたいと思っております。
  332. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 ありがとうございます。
  333. 小野清子

    委員長小野清子君) 以上で渡辺孝男君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  334. 小野清子

    委員長小野清子君) 次に、紙智子君の質疑を行います。紙智子君。
  335. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  介護保険が改悪をされて、昨年の十月からこの介護施設における居住費、食費、いわゆるホテルコスト、この施設利用者本人の負担が掛かるようになりました。介護の現場では当初から心配をされていて、高額の負担に堪えられない高齢者の方が退所するような事態になるんじゃないかということで、我が党としても実施を前に申入れを行った際に、当時尾辻厚生労働大臣が必要な介護が受けられないようなことにならないようにしなきゃいけないと、あってはならないというふうにはっきりとおっしゃいました。これは総理も同じお立場だと思いますけれども、まずそのことについて、総理。  総理です、総理です。
  336. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 必要な介護が受けられるような対応をしなきゃいけないと思っております。
  337. 紙智子

    ○紙智子君 今そういうふうに総理もおっしゃられたわけです。ところが、実際には心配する事態、必要な介護が受けられない事態が現実に生まれている。  これは、私、札幌で聞いてきたんですけれども、認知症の九十六歳のお母さん、そして七十二歳の妻と暮らしていますけれども、六十五歳のAさん。夜中に二時間ごとに起き出して徘回をする母親、昨年の八月にようやっと老健施設に入所させることができたわけです。年金は全部で二十万と。この老健施設に六万出してこのお母さんを入れながらぎりぎりの生活をしてきたわけですけれども、去年の十月から二万円増えると、負担が増えるということを言われてこのお母さんを引き取ったわけです。で、実は、この妻も要支援ということで認定されていて、できればまた入所させたいというのはあるわけですけれども、しかしできない。いつ共倒れになるか分からないという状況の中で今介護を必死になってされているわけなんです。こういう例はAさんだけじゃないんですね。各地からこうした例が報告をされているわけです。  ところが、政府は今度の医療制度改悪で、改革でこの介護保険の二の舞を言わばやろうとしている。長期入院療養病床の患者にも居住費、食費ということで導入しようとしているわけです。お金のない高齢者、もう病院にも入れられないし、必要な医療が受けられないということになりかねないというふうに思うわけです。  それで、このパネルを見ていただきたいと思うんですけれども、(資料提示)高齢者のための病床そのものを今縮小しようとしている。政府は、療養病床三十八万床今ありますけれども、これを二〇一二年には十五万床に削減をしようということですよね。突然こういうのが出されてきたものですから、医療現場もそれから家族、患者の皆さんも非常に不安が広がっているということなわけです。  療養病床がやはり、療養病床が受け入れている患者さんというのは、多くが回復はしていても病状の変化に対応した医療や看護が必要だと。療養病床は、特養でも老健施設でも自宅でも結局受け入れることができない、そういう人たちがここに入って、そういう意味では患者さんの生命や生活を支えてきたわけです。この療養病床二十三万床を削減しますと、病院を出ても行き先のない、そういう患者さんや高齢者が多く出ることになるんじゃないのかと、こういう不安が今本当に広がっているんですけれども、この点いかがでしょうか。
  338. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 最初に、介護保険の御指摘がございました。  昨年の見直しにおいては、公平の負担性という観点から、介護保険施設における居住費、食費については在宅の方と同様、保険給付の対象外とし、施設給付においても介護に関する部分に給付を重点化いたしました。ただし、見直しに当たっては、所得の低い方であっても必要な介護が受けられるよう、所得に応じた低い額の負担上限額を設けております。  具体的に申し上げますと、生活保護の方々ですと、利用者負担今二万五千円でございますけれども、同じ負担になります。先ほどの例の八十万円以下の年金の方々は四万円の負担が三万七千円になるということで、かえって減額されるようになっておりますので、個々のケースはもう少し調べてみますけれども、全体的に申し上げればそのようなケースは考えられないと思っております。しかしながら、昨年の十月から実施して、私どもウオッチしております。また、個々の事例が出ましたら、しっかり対応してまいりたいと思います。  それから、療養病床三十八万、これの転換を図る二十三万、こういう御指摘がございました。  今回の療養病床の再編では、療養病床は医療の必要度が高い患者に限定し医療保険で対応するとともに、介護療養型医療施設については六年掛けて介護保険施設に転換していくこととしております。この場合、医療の必要度の低い方々への対応としては、療養病床が老人保健施設等の介護施設に転換することにより、大きな改修することなく受皿となることが可能と考えております。  療養病床の再編に当たっては、入院している方々の追い出しにつながらないようにすることは大前提でございます。今後六年間、医療、介護双方の病床に円滑な転換ができるよう、経過的な類型を設けることといたしております。そうした状況でございますので、しっかりやらしていただきます。
  339. 紙智子

    ○紙智子君 今のお答えで、まず実際に現実に、こういう人たちはむしろ減っているというふうにおっしゃるわけだけど、現実に二万円プラスということで、できないという状況があるわけですよ。それなのに、そういうことは余り聞いていないとか個別の問題だと言うんですけど、だったら個別に対応するんですか。そういうことをやらないで今まで来ているじゃないですか。まずそれが非常に問題だということが一つと。  それから、後半の方のお答えでしたけれども、結局六年掛けてやるとおっしゃった。そして、いろいろこの転換をしていくんだという話ですよね。  で、現在の療養病床を、今のお話でいいますと、有料老人ホーム、それからケアハウスですか、それから老健施設に転換していくという方向だと思いますけれども、これ、有料老人ホームについて言いますと、高額の入居金と合わせて月額料は九割の施設が十万円以上掛かるんですよ。それだけじゃないですよ。そのほかに介護費用と光熱水費が必要になるわけです。  じゃ、ケアハウスはどうなんだといえば、これ月額平均で約九万円ですよ。で、プラス介護費用が掛かるわけです。低所得者にとってはこれ負担できないんですよ。  それじゃ、老健施設はどうかといえば、数か月から一年で退所を迫られて施設を転々としなきゃならない。今現場で何て言われているかというと、老健ジプシーというふうに言われているんですよ。こういう現実があるわけですよ。  じゃ、特養はどうかと。特養について言えば、待機者が三十四万人いるんですよ。今申し込んだって、二年三年待ってくださいというのが現実なんですよ。  こういう現実を目の当たりにして、本当に介護、そして看護が必要な高齢者というのは、結局お金のある人は、高い利用料を払える人以外は行き場がないということになってしまうんですね。  で、しかも、施設転換するというんだけれども、じゃ、どれだけ財源の確保できるのかと、そういう必要なことは何ら明らかにしていないじゃないですか。で、六年で解消する保証なんて何もないですよ。  で、やはり社会的入院の解消っていう問題がずっとこれまで言われてきた。確かにそれ解決しなきゃいけない問題だと思いますけれども、本気で解決するというのであれば、まず先に高齢者が施設でもそれから在宅でも安心して暮らせるような介護のサービスの基盤整備をするべきじゃありませんか。いかがですか。これ、総理に是非お答え願いたい。
  340. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 介護の問題は、先ほど数字でお示ししたとおりでございます。ただ、個々に違うというケースがあるなら私どもその話を聞かしていただきますと、こういうふうに申し上げました。  それから、療養病床からの転換は、大前提は、今入っていられる方がきちっとケアされるということでありますから、六年間の経過期間の中できちっと処理をしてまいりますと、こう申し上げました。
  341. 紙智子

    ○紙智子君 追い出されることないんですか。実際に今入っている人が絶対出されることないって言えるんですか。
  342. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 六年間ありますのでね、しっかりやってまいります。
  343. 紙智子

    ○紙智子君 もう時間になりましたけれども、やはり、私は本当に所得の格差がこういう生命の格差につながるということは絶対に許されないということを最後に申し上げて、質問を終わります。
  344. 小野清子

    委員長小野清子君) 以上で紙智子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  345. 小野清子

    委員長小野清子君) 次に、福島みずほ君の質疑を行います。福島みずほ君。
  346. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  県民経済、都道府県における県民所得の格差が二年連続拡大をしました。地価についても同様です。六本木ヒルズはとても高い地価になりましたが、地方では地価が本当に低いままです。格差は地方でも地価でも拡大をしています。  公務員の数についてお示しをいたします。(資料提示)人口一千人当たりの公的部門職員数の国際比較です。一千人当たりフランスは九十六・三人、日本は三十五・一人、ドイツは五十八・一人、イギリス七十三・〇、アメリカ八十・六人です。このように、日本は公務員の数が実は非常に少ないです。  総理は公務員の数の削減だけをおっしゃいますけれども、しかし、国民にとって必要な公的サービスとは何かという議論が抜けております。この点についていかがでしょうか。
  347. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 公的サービスの役割、必要は何かという視点が抜けていたら、公務員の数を減らすとかどうとかいう議論は出てこないんです。  公務員がやらなければならない仕事、民間でもできる仕事、この役割よく見直して、公務員やらなくてもこれは民間にできるなというんだったら公務員を減らしていかなきゃならないということなんで、今言ったような公務員の役割という視点が抜けてたら公務員の数を減らそうなんという議論は出てこないはずだと私は思っております。
  348. 福島みずほ

    福島みずほ君 これは対GDP社会保障給付率とジニ係数の比較です。(資料提示)このように社会保障費の給付率が高い国、スウェーデンなどはジニ係数が低いです。他方、社会保障給付率が国民総生産に対して低い国ほど格差が大きいです。つまり、社会保障費を下げれば下がるほど格差が拡大をしていくということが統計上明らかです。  福祉の切捨てが行われているのではないか、公共サービス、そこについてお聞きをします。つまり、政府は箱物や天下りにメスを入れずに、命に直結する保育や医療というところを切り捨てていっているんではないかということです。  保育園について、全国各地で民営化が起きています。例えば、横浜市で保育園が民営化となりました。民営化をして、先生を全取っ替えする。そうしますと、園児はそのまま、先生は非正規、パートや契約社員、どんどんどんどん入れ替わって辞めてしまう、そういう事態が起きております。これは福祉のある意味切捨てになっています。  民間が悪いというのではありません。私も子供に、民間保育園にお世話になりました。しかし、民営化が人件費削減のためだけに行われている、だから問題です。民間保育園についての援助も今どんどん切り下げられていますので、民間保育園も悲鳴を上げています。  高知県では、公立病院がPFI方式の病院になりました。これを落札をしたのはオリックスです。規制改革・民間開放推進会議議長、宮内義彦さんが会長を務める会社です。契約金だけで三十年間に二千百三十一億円以上のお金が支払われます。しかし、高知医療ピーエフアイ株式会社に地元企業は一社も入っていません。地元は潤わないわけです。つまり、PFI方式でやる、でも潤うのは大企業、大都会の一部の企業だけで、一体これはどうなるのか。これが採算が取れなければ撤退をしていくのか、どうなるのか、病院が地域でどうなるのか、大変問題が起きております。  総理、このような問題についてどうお考えでしょうか。つまり、福祉や保育を民営化することで現実に日本の中で起きている問題点です。民営化の保育園の問題については各地で裁判が起きています。どうですか。
  349. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 一概に公立が良くて民営が悪いとは言えないと思います。公立のサービスができない分野において、民間が夜間保育サービスとか様々な分野で進出している場合もあるわけであります。公務員がやっているからより安全だとか民間がやっているから心配だというのは一概には言えないんじゃないでしょうか。民間の皆さんでも様々なサービスが展開できるんだったら、そういう福祉の分野にもどんどん参入してきていただいた方が国民全体のサービス向上につながると私は思っております。
  350. 福島みずほ

    福島みずほ君 民営化が、この問題が人件費削減という観点から行われていることが本当に問題です。このことに、例えばPFIでも、大都会の企業はもうかるけれども、地元の企業は下請で買いたたかれております。行政改革が公務員の数の単なる削減であって、小さな政府とすることがみんなの格差を拡大をしていく、福祉が必要な人々の福祉を切り捨てていく、このことが最大の問題であると申し上げ、私の質問を終わります。
  351. 小野清子

    委員長小野清子君) 以上で福島みずほ君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて国民生活教育に関する集中審議は終了いたしました。     ─────────────
  352. 小野清子

    委員長小野清子君) 午前に引き続き、一般質疑を行います。犬塚直史君。
  353. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 民主党の犬塚直史です。  カネミ食中毒事件について質問いたします。  厚生労働大臣、三月九日の当委員会で調査を約束されました食品衛生法五十八条に基づくこの事件の調査報告書、見付かりましたでしょうか。
  354. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 先日の当委員会で調査を行うという形で今調べさせております。省内で見付かった資料、残念ながらまだ一部だけでございます。第四回油症対策本部会議資料、昭和四十四年三月二十日のものでございます。  一方で、もう委員が御存じのように、東京から始まりまして鹿児島県まで一都二府二十一県五市、この地方自治体に対して三月三十一日までに回答してくださいということでお願いをいたしているところでございます。
  355. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 ありがとうございます。  お手元の資料をごらんください。  今大臣おっしゃっていただいたように、この左側の欄を見ていただくと、一都二府五市二十一県、この自治体長が厚生省への報告が確かに義務付けられているわけであります。三十一日までに是非これをお願いしたいんですが、ただ不思議なのは、二週間前に調査を多分指示されたと思うんですけれども、その省内に一部も見付からなかったんでしょうか。
  356. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 自治体からの報告書ですか。
  357. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 はい。
  358. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) はなかったようですね。今、見付かったという報告を受けましたのは第四回油症対策本部会議資料、先ほど申し上げた資料が出てきたと。もう少し探せとは言ってあります。
  359. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 そして、その本部会議、おっしゃった本部会議資料ですね、公表されているというか、私でも手に入る資料なんですね。しかし、この自治体が出す資料で私の方で唯一手に入ったのがこの長崎県の資料なんですけど、これは一月二十四日付けの公文書交付申請に基づいて私の方で送付を受けたものなんですけどね、こういう資料は自治体に必ず保管してあると。中を見ると、これはもうできるだけ早く厚生省、当時、送らなきゃいけないとなっているんですが、大臣、どうしてこれ一部も見付からなかったんですかね。
  360. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) そのときの管理状況というのは私が今から判断するわけにいきませんけれども、福岡県と北九州市、ここが一番数も多く、また倉庫もあるところでありますので、ここにはしっかりした資料があるはずだろうということで、しっかりとした確認作業を行えということで指示をいたしております。    〔委員長退席、理事市川一朗君着席〕  一方で、裁判も行われてきたわけですから、裁判関係の資料がないかということも重ねて今調べさせていただいております。
  361. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。  といいますのは、この未曾有の食中毒事件の公的な資料が私が今手に持っております全国食中毒事件録、このほんの一部、ページ数にいたしますと十四ページだけしか今公表されていないという異常事態が過去三十八年間続いてきたということなんですね。  これについて、事務の方で結構なんですが、事件録の八十七ページ、冒頭から「記」と書いてある前のところまで読んでいただけますか。
  362. 松本義幸

    政府参考人(松本義幸君) 二、疫学調査などの実施状況。診断基準と相前後して、届出者に対する疫学的調査事項、米ぬか油の試験項目などについて、厚生省から指示(表二)が関係府県になされたと。「表二 米ぬか油によると思料される食中毒事件の調査等について」というところで、「標記に関する食中毒事件の原因究明および患者の適正な把握などについては鋭意行なわれているところであると思われるが、届出患者の使用した米ぬか油の試験の項目、および患者の疫学調査の事項を下記のとおりとしたので、これに準拠されたい。なお、貴都道府県、指定都市の現時点でのまとめを報告願いたい。(この場合、まとめ方は指定しないが、まとめた時点を明記されたい。)」ということです。
  363. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 ありがとうございます。  今読んでいただいたように、各都道府県知事、これだけ多くの都道府県知事から各県ごとのまとめが来て、それを厚生省、当時の厚生省は更にまとめて、将来のこういう未知な病気が出たときにどう対応するかというまとめが今ないということが、これは非常に大きな問題だと思うんです。  ついでにもう一度お願いしたいんですが、食中毒処理要領、これも厚生省の資料なんですが、この一番最後の二、記録、評価及び予防対策というところを読んでください。
  364. 松本義幸

    政府参考人(松本義幸君) 二、記録、評価及び予防対策。事件の調査結果を基にして、将来の資料として評価し、記録を十分完備、保存することが必要である。また、統計報告(調査票、事件票など)諸報告(速報、詳報)など作成の基礎となった資料は十分整備し、これらの事例の集積によって、今後の根本的防止対策を講じるために役立たせなければならないということで示しております。
  365. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 大臣、この三十八年前の食中毒事件をいまだに引きずっているわけであります。  この引きずっている理由の一つは、やっぱりその総括がなされてない。特に全国規模のこの疫学調査さえも今公表されたものがない。そして、多分ないと思うんですが、一体カネミ油症事件というのは何だったんだと、将来どういう予防措置を持ったらいいんだ、BSEや鳥インフルエンザ、それからこれから我々が遭遇するかもしれない未知の疾病に対して、一体このカネミ油症からどういう教訓を得ることができるんだという総括の文書がないということが今一番大きな私は問題だと思うんです。  大臣、もしこの報告書がなかったら、食品衛生法五十八条で定める、今読んでいただいた調査報告義務が果たされていないと言わざるを得ないと思うんですが、そういう理解でよろしいですか。
  366. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 最終報告文は全くなかったわけじゃなくて、前回でたしか部長の方からお読みしたように記載があることは事実でありますので、取りまとめが行われたことは間違いないだろうと、こう思っております。  ただ、しっかりした、委員が御指摘のようなしっかりしたものを作ったかということになると、それは私はまだ判断材料を持っていないということですね。
  367. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 この食品衛生法五十八条で義務付けられております都道府県知事からの本件に対する報告書及び食中毒処理要領に基づき厚生労働省に完備、保存が求められている調査票、事件票などの統計報告、また速報、詳報など諸報告一切の提出、さらには本件の最終報告書の提出を求めます。
  368. 市川一朗

    ○理事(市川一朗君) 後刻理事会で協議します。
  369. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 お手元の表を再度ごらんになってください。  この一番下の数字、一万四千三百二十、これがこのカネミ食中毒事件で被害を届けてこられた人たちの人数であります。その上、一万三千三百三十四、これがカネミライスオイルを食べたと、摂食をして何らかの自覚症状があるということを言った人の数であります。  問題は、この上の赤で書いてある九百十三名、そしてその隣の一万二千四百二十一名、これをどうやって振り分けたかということなんです、患者数と非患者数を。普通は、問題になっている原因食品を食べて、本人が何らかの自覚症状があれば、これは食中毒被害者として登録されるのが当たり前のところを、どうしてこれ患者と非患者に分けたのか、説明をお願いします。
  370. 松本義幸

    政府参考人(松本義幸君) この事件は非常に広域にわたっておりまして、今議員がお示しになりましたように、一万数千名の申出、保健所への届出があったということで、そのときに、疫学の基本といたしましては、患者さんを特定し、患者さんに共通する点、また非患者さんとの相違点ということを明確にする必要がありますので、そういう点で非常にこの治験のある、その患者さんの治療等に当たっておりました九州大学に依頼して研究、診断基準を設けたわけであります。その診断基準に基づきましてそのカネミ油症の患者さんであるかどうかということを判断して、その後の疫学調査に活用したということでございます。
  371. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 おっしゃるとおりなんです。  食中毒事件の処理は行政が行うべきところを、当時奇病ということで、行政は食中毒事件の処理を知らない九州大学の研究者の人たちに診断基準の作成を依頼をして、そしてその結果として、その基準そのものに振り回されてしまったという結果があるんですね。  この油症研究の三十年、これ、三十年たった後にまずは英語で出版された非常にアカデミックなこれ論文なんですけれども、この十六ページの六行目から読んでいただけますか。
  372. 松本義幸

    政府参考人(松本義幸君) このように、速やかに診断基準が作られたことは大変有意義であったが、この診断基準には疫学の立場から見ると極めて深刻な欠点が含まれていることもまた事実である。すなわち、油症診断基準は、冒頭に、本基準は西日本地区を中心に米ぬか油使用に起因すると思われる特異な病像を呈して発症した特異疾病、いわゆる油症に対してのみ適用されると述べ、発症参考状況の第一に米ぬか油を使用していることが挙げられているのであると。  これを見ても、研究班が奇病の原因として米ぬか油、すなわちライスオイルの摂取をいかに強く考えたかは明白であるということでありますし、このページの一番上には、今読み上げたところ、前のところですけれども、診断基準のおかげで患者を正しくかつ一様に診断することが可能になり、正確な症例が疫学調査に提供されるようになったからであるというようなことも書いてあります。
  373. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 大臣、これがその油症研究班の三十年間の集大成と言われる本なんですけれども、これにも書いてあるんですが、もちろん功罪両方あるんです、おっしゃったようにですね。しかし、その専門家の目から見ると、疫学的な見地から見ると、奇病というものとライスオイルというものをもう一体にしてしまったために疫学上は極めて深刻な欠点となったと、ここにもう自ら書いてあるんですね。  ところが、同じように食中毒事件として見ますと、この奇病というものと食中毒の患者というものを結び付けてしまった。つまり、奇病が出ていない人たちは食中毒患者ではないというこの診断基準をここに出してしまったんですね。これが未認定の食中毒患者一万人以上を出してしまったという、これが、この原点がここにあるんです。  是非、これ前回も法的な根拠は全くない基準だということを事務の方も認めていただいたんですね。ですから、法的な根拠のない、疫学上も非常に深刻な問題があると御本人が指摘をしている。そしてさらには、食品衛生上も非常に問題のある基準の濫用があったということは、やっぱり大臣、精査するべきだとはお思いになりませんか。
  374. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 今の議論、二つあると思うんですね。  一つは、九州大学関係者に頼んだその科学的知見が誤っていたんではないかという委員の御主張。私どもは、一つの経過の中から九州大学に依頼したことについては間違いなかったんではないかという立場を取っております。これは立場の違いですね、はっきり申し上げて。  もう一つは、食中毒事件について、こういうケースは過去になかったのかと申されると、昭和三十年に森永砒素ミルク事件で診断基準を作成しております。これも法的に基づいたものではございません。それから、最近では平成十二年六月、雪印食中毒事件で、たしか大阪府において診断基準を示しております。  そういった意味では、この食中毒事件というものに対し今日までどういう対応を取ってきたかということになれば、委員の御指摘のとおり、常に法的なものによってやってきたわけではないということについては御理解を賜りたいと思います。
  375. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 今大臣が例に出された森永砒素ミルクの件、これも確かに法的な基準ではなかったんですけれども、関係者の本当に大変な努力によってひかり財団というものをつくって恒久的なこの救済を行ったんですよ。これ、すばらしいケースなんですね。  ところが、それに反して、今の取り扱っているこの事件についてはいまだに、いまだに、私も長崎しか知りませんけれども、北九州の方たちを見ると、未認定患者の人たちはそれはもう大変な、全く何の救済もやられていない人たちが一万人いるという事実はよく御認識をいただきたいと思います。  今後の新しい奇病あるいは新しい物質による国民が遭遇するかもしれない対策に対しては、カネミの解決なくしてはこの対策なしということを強く申し上げて、同僚に譲りたいと思います。
  376. 市川一朗

    ○理事(市川一朗君) 関連質疑を許します。蓮舫君。
  377. 蓮舫

    ○蓮舫君 民主党新緑風会の蓮舫です。  今日は、障害を持つお子さん、障害児について質問していきますが、まず川崎厚生労働大臣、障害者扶養共済制度について、その概要について教えてください。
  378. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) お尋ねの心身障害者扶養共済制度は、心身障害者の保護者の相互扶助の精神に基づいて、保護者が一定額の掛金を納付することにより保護者の死亡時などに子供である障害者に終身一定額の年金を支給することにより、障害者の将来に対して保護者が抱く不安の軽減を図ることを目的とした任意加入の制度でございます。  具体的な仕組みでは、道府県等が条例に基づき実施する心身障害者扶養共済制度を独立行政法人福祉医療機構が再保険することとしており、制度の骨格は、障害者の保護者が道府県等に加入申込みをし、保護者の年齢に応じて一定の保険料、月々三千五百円から一万三千円まで、これは入った年齢によります、お納めいただき、その保険料を原資として団体生命保険に加入し、保護者が死亡したときの保険金を原資として信託銀行に信託し、子である障害者に一月当たり二万円を給付することになっております。  なお、二口までの加入が認められております。
  379. 蓮舫

    ○蓮舫君 お手元にパンフレットの資料をお配りしておりますけれども、この共済制度は障害児の保護者が入る私的保険制度の一種として始まったものです。障害を持つお子さんを育てている保護者の最大の悩み、考えるとつらいのは、自分が死んだ後、子供は生活していけるのか、もっと言えば生きていけるんだろうか、こういう不安の声にこたえたのが障害者扶養共済制度なんです。  猪口大臣はこの制度を御存じでしたでしょうか。障害児も大切な命と考えるとこの制度をどのように思われるか、併せてお知らせください。
  380. 猪口邦子

    国務大臣(猪口邦子君) この制度を私が知っていたかということでございますか。この質問に来るまでにもちろん当然勉強してきております。そして、これが重要であるというふうに認識しております。
  381. 蓮舫

    ○蓮舫君 この質問の通告をしなければ知らなかったと理解をさせていただきます。  この制度は、出発は私的保険制度だったんですが、その後、自治体も国も支援をしてきています。障害児を育てている保護者の不安を軽減するのも、支援策を進めるのも、あるいは障害児がはぐくんでいく環境を育てるのも政治がやらなければいけないと思いますが、猪口大臣、川崎厚生労働大臣、この保険制度、必要ある、必要ない、どちらとお考えか、その理由も併せてお聞かせください。
  382. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) まず、障害者を持つ親の気持ちというものを考えますと是非存続をさせていきたいなと、こう思います。もう一つは、障害児の立場からいえば正にこれが生活の一つの糧になるということでありますから、二つの側面から何とか維持したいと、このような思いを持っております。  一方で、歴史的経過って、先ほど御説明したように、結構ややっこしいですね。そこに、今財政的にもたなくなっているものですから、国と県から補助金を立てていると。まあ、それも事実上、借金消しをするためにやっていると。まあ、そういう意味では、正直、この制度を見させていただいて、どこかできちっとしなきゃならぬなという感想を持っております。
  383. 猪口邦子

    国務大臣(猪口邦子君) 所管の大臣がお答えになりましたけれども、同じでございます。
  384. 蓮舫

    ○蓮舫君 川崎大臣平成二年から平成七年間の、この五年間のこの保険事業の財政状況の結果、そして七年の制度見直し以降、国の支援はどうなってきて、どうなっていくのか、教えていただけますか。
  385. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 今ちょっと申し上げましたように、各年の赤字が、平成二年から平成七年度、五十四億四千万円の赤字となっております。年金収支、赤字の理由は、最初に設計をしたときよりも平均余命が延びたこと、それから、信託いたしておりますので運用利率が大幅に下がったこと、この二つの理由でございます。  したがって、これを何とかしなければならないということから、平成七年度に実は保険料の段階的引上げもお願いを申し上げました。それから、加入期間に応じて三万円から十万円支給して、脱退一時金、これ上げるから少し無理だというお話もございました。そして、保険料で賄い切れない部分を国及び道府県が毎年四十六億円ずつ補助する仕組み。そして、ずっと借金がたまっておりますから、平成二十七年度まで、すなわち二十年間にわたって国、県から四十六億円ずつ入れながら、何とかもたせていきたいということでやらせていただいておりますけれども、先ほど申し上げたように、さあこの形がいいのかというのはそろそろ考えなきゃならぬなと、こうした思いを持っております。
  386. 蓮舫

    ○蓮舫君 五十四億円の赤字が出て、そのときに抜本的な見直しをしないで四十六億円ずつ二十年間国費を投入していく、その法的根拠を教えていただけますか。
  387. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) いろいろ議論あったんだと思います、正直申し上げて。言われるとおり、余りね、成り立ちがあったものですから、まず自分たちの自助努力から始まった。そして県も努力しましょうということで始まった。しかし、その制度、やっぱり全国レベルできちっとやらなきゃならないよねという理解に変わってきた。しかし、現実、今申し上げたように二つの問題が生じた。しかし、しっかりやっていかなきゃならぬということで、予算で措置をさせていただこうということでやらしてもらっている。ですから、それも含めてどこかでしっかりさせなきゃならぬな、こう御答弁申し上げました。
  388. 蓮舫

    ○蓮舫君 公費負担が継続するかどうかって、実はこの制度にとって大変大きいんですけれども、川崎厚生労働大臣、公費負担がなくなる平成二十八年からの年金収支を教えていただきたいんですが、運用利回り四・五、三・七五、三%、二%、それぞれ各推計で二十八年以降の財政を教えていただけますか。
  389. 中村秀一

    政府参考人(中村秀一君) お答え申し上げます。  今大臣からお答え申し上げましたように、平成二十七年度まで公費投入するというスキームで今行われております。この再保険をやっております独立行政法人福祉医療機構の方の推計でございますけれども、年金収支予測、運用利回り四・五%の場合、平成二十七年度までは収支が黒字に保たれますが、公費負担がない平成二十八年度から、四・五%の場合には平成二十八年度で八・四億円の赤字、運用利回り三・七五%の場合は同二十八年度十八・一億円、三%の場合は二十六・六億円、二%の場合は三十六・三億円というふうに、運用利回りが低くなりますと平成二十八年度以降の年金収支の赤字が増えると、そういう構造になっている推計がなされております。
  390. 蓮舫

    ○蓮舫君 つまり、公費負担がなくなる年から赤字になることが明らかになっている、制度はもうそこで破綻をしてしまうと。  併せてお聞きしたいんですけれども平成十六年度決算における責任準備金の繰越欠損金は幾らでしょうか。
  391. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) これは事前に御指摘いただいていましたので、三百九十二億円でございます。
  392. 蓮舫

    ○蓮舫君 今の三百九十二億円というのは、実はこの利回り率を四・五%で推計しているんですね。平成十六年度の利回り率は二・五六%なんです。二・五六%で推計をしますと、三百九十二億円よりももっと足りない額というのが増えて、六百五十億から七百億円足りなくなるんです。  今、保険に加入していて、将来受け取るべき額がもう七百億円足りない、公的支援がなければ平成二十八年以降はすべてが赤字になる、障害児の将来、親が自分が死んだ後、子供のためにと加入していらっしゃる方たちの思いの保険制度というのは破綻をしているということが明らかなんですが、大臣の御認識で、これはそれでも安定的に運用していると言えるんでしょうか。
  393. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 最初に申し上げましたように、まず障害者を持つ親の気持ち、そして親の努力、それを表した形で始めました。しかし、その意欲だけではつながらなかったということから、県や国が何とかしなけりゃならないなという形で、今は事実上救済みたいな形になっております。そして、これを制度としてきちっとどっかで立ち上げなければならないなという感じはいたしています。  一方で、預けたお金の運用問題で、信託銀行や生保会社がございますので、そういった問題をきちっと整理しながらやっていかなきゃならない、それは当然、そこがかんでいるわけですから、預かっているわけですから、長期ということで預かっている。そうした問題をきちっと整理しながらやっていかなきゃならぬと。いや、あと何年か、十年あるんだぞという甘い考え方はしてはいかぬと。したがって、どっかで私が申し上げたようにきちっとしたものに仕上げる努力をしていかなければならないなと、こんな思いをいたしております。
  394. 蓮舫

    ○蓮舫君 この制度が平成二十八年度以降破綻をするというのを加入者は知らないと思うんですよ。それでも自分の子供の将来のために信じて保険料を払い続けている。  猪口大臣にお伺いしたいんですが、どうして、今この加入していらっしゃる方まだ十万人おられるんですが、この方たちはどういう思いで保険料を払っているとお考えですか。
  395. 猪口邦子

    国務大臣(猪口邦子君) 所管の大臣が説明されましたけれども……
  396. 蓮舫

    ○蓮舫君 少子化担当大臣でしょう。
  397. 猪口邦子

    国務大臣(猪口邦子君) ええ、少子化担当大臣としてどういう気持ちで保護者が支払っているかということにつきましては、それはその制度を信じて、また何らかの形で安定的な運用がなされると考えて支払い続けているに違いないと思います。
  398. 蓮舫

    ○蓮舫君 国からの障害児への公的な経済支援が薄いからなんです。  川崎厚生労働大臣、障害年金を受け取るまでの二十歳未満の障害児が国から公的な財政支援を受け取れる制度は何があって、幾らなんでしょうか。
  399. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 二十歳未満の障害児に対する手当制度、すなわち二十歳を超えますと障害年金制度に変わっていきますから、特別児童扶養手当と障害児福祉手当がございます。    〔理事市川一朗君退席、委員長着席〕  具体的に申し上げますと、特別児童扶養手当は、精神又は身体に障害を有する二十歳未満の児童を在宅で看護している父母等について支給いたしております。一級の場合が五万九百円、二級の月額は三万三千九百円でございます。一方、在宅の障害児本人について支給いたしておりますのは、月額一万四千四百三十円でございます。
  400. 蓮舫

    ○蓮舫君 障害児が受ける経済支援は月一万四千四百三十円、これだけなんですね。これも在宅のみで、施設に入っていた場合には受け取れない。だから、親御さんは、この国の公的支援だけでは自分がいなくなった後、子供が生活できるか生きるか分からないからこの保険に入っている、こういう声があると思うんです。  川崎厚生労働大臣、非常に前向きな答弁を先ほどからいただいております、いつかきっちりどこかでしなければいけないと。もう一歩踏み込んでいただきたい。この制度は続けていくのか、それとも、きちっとしたものというのはこの制度を一度ゼロベースで見直して何らかの形で変えていくのか、それはどういうふうに、いつまでに何らかの形を持つのか、もう少し具体的に教えていただけますか。
  401. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 今日の委員会の審議で私の頭がそこまで整理できるといいんですけど、そこまではまだ参りません。しかし、事実上八割近くを国と県で給付しているという実態になっておりますので、そこを、今は支援という形になっておりますけれども、どこかで給付という形に変えた方がいいのかもしれないなという思いはあるんです。  しかし、これは、先ほど言いましたように、信託銀行と、それから生保と、それから現実に掛けておられる一人一人の親御さんがございますので、そうした問題を併せながら、後ろの財務大臣としっかり相談しないとでき上がらないということでございます。ただ、今日、審議を聞いていただいて、財務大臣にも、四十六億円、今、毎年予算立てをしてもらっておりますけれども、御理解を半分ぐらいいただいたのかなと、こう思っております。
  402. 蓮舫

    ○蓮舫君 厚労大臣財務大臣もお立場としては同じ立場と私は理解をしているんですけれども財務大臣に御確認をさせていただきます。  今、この保険制度というのは、国の財政支援がないと成り立たないんですね。今後、国の財政支援としてはどうあるべきだと、どうしていくべきだとお考えでしょうか。
  403. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 先ほど川崎大臣から御答弁がありましたように、平成八年以来、四十六億円、毎年、国からも入れさせていただいていると。  ここから先どうしていくかというのは、確かに、それでもう問題が完全に解決しているわけじゃないのは今の御議論のとおりですから、所管の川崎大臣が、これから、まだ頭が整理できないけれどもこれからきちっと整理するんだとおっしゃっておりますので、私も厚労大臣とよく御相談して適切に対応していきたいと思います。まだ川崎大臣が頭を悩ませておられる間に、私が先にこうじゃないかと言うのは僣越だと思っております。
  404. 蓮舫

    ○蓮舫君 是非、川崎大臣、一日でも早く頭を御整理いただきまして、そして一日でも早く財務大臣と御議論をいただいて前向きな一歩を踏み出していただきたい。  この制度というのは、障害を持った子供を育てている保護者にとっては本当に大切な制度だという認識は共有させていただいていると思いますので、御期待をさせていただきたいと改めてお願いをいたします。  猪口少子化担当大臣、これまで様々なアイデアを口にされていて、残念ながら平成十八年度予算には一切反映をされておりませんが、これまでの発言の中で障害児施策というのは全く聞いたことないんですけれども、障害児政策はどうあるべきだとお考えでしょうか。
  405. 猪口邦子

    国務大臣(猪口邦子君) まず、障害のあるお子様につきまして、その能力や可能性、最大限に伸ばして自立、社会参加のために必要な力を培うということ、そしてそれぞれの障害の程度によりましてきめ細かな支援を行っていく、こういうことが大事であるとまず認識しております。また、乳幼児期から学校卒業後にわたって、保健、医療、福祉、教育、そして雇用ですね、これが一体となって障害のある子供やその保護者に対する相談や支援を行うことが重要であると考えております。  子ども・子育て応援プラン、何度かここで議論させていただきましたけれども、その中に、実際に数値目標なども盛り込みましてこの障害児支援について掲げてございます。本年度が最初の実施年度で、これを推進しているところでございます。  少子化対策という観点からも、この子ども・子育て応援プランは非常に幅広い観点から対応するものであるということをこの予算委員会の場で何度か御説明申し上げましたけれども、障害児支援につきましては、その中におきまして、例えば訪問して行う、ホームヘルプサービスと呼ばれるんですけれども、そういうこと、あるいは障害児通園事業、あるいは重症心身障害児通園事業、あるいは障害児短期入院、ショートステイの事業など、このようなものは数値目標を盛り込んで着実に推進しているところでございます。
  406. 蓮舫

    ○蓮舫君 予算が付いている事業は二つしかないと理解していますが、どうでしょうか。
  407. 小野清子

    委員長小野清子君) 猪口大臣ですか。
  408. 蓮舫

    ○蓮舫君 猪口大臣です。
  409. 猪口邦子

    国務大臣(猪口邦子君) 十八年度予算についてということの御質問でよろしいでしょうか。
  410. 蓮舫

    ○蓮舫君 予算案の話をしているんです。
  411. 猪口邦子

    国務大臣(猪口邦子君) 子ども・子育て応援プランの今申し上げました事業の推進に必要な予算は確保してございます。
  412. 蓮舫

    ○蓮舫君 二十八の行動プランの中で、障害児タイムケア事業と障害児通園事業だけに今回予算が付いているんですが、この二つの施策の予算少子化対策予算の〇・五八%です。これだけで大臣は障害児を支援、障害児を育てている保護者を支援するのに十分との御認識でしょうか。
  413. 猪口邦子

    国務大臣(猪口邦子君) 御指摘のデイサービス、それから障害児タイムケア事業、いずれも厚生労働大臣の所管、厚生労働省の所管の事業として行っていただいております。財政の厳しい中、必要な経費、確実に確保してまいっているところであると私は承知しております。
  414. 蓮舫

    ○蓮舫君 十分か不十分かと聞いているんです。
  415. 猪口邦子

    国務大臣(猪口邦子君) 社会政策の分野におきまして、十分かどうかと問われることは大変難しい、私としては難しい、答えは難しいと思います。  それは、もっと手厚く、もっと広く、いろいろと考えることはできますが、しかし、この障害児通園の事業なんですけれども、それにつきまして、これは日常生活におけます様々な訓練や指導を行う非常に重要な事業でございまして、利用されている児童の方も二万人規模でございまして、必要な予算を確保できております。  また、タイムケア事業、せっかくの機会ですので説明させていただきますと、中学生や高校生等、養護学校の終わった後ですね、下校後に活動する場所、そういうところを確保しているという事業でございます。また、日常的にケアしている家族の一時的な休息のための預かる、まあいろいろな事業が含まれるんですけれども、非常に重要な事業でございまして、推進するに必要な予算は確保できていると考えております。  少子化担当といたしましては、障害があってもなくても、子供の居場所づくり、あるいは子供を持つ家庭への支援、非常に重要であるという観点から、厚生労働大臣あるいは文部科学大臣と力を合わせて必要な施策を推進してまいります。
  416. 蓮舫

    ○蓮舫君 この事業の対象者が二万人とおっしゃいましたが、三障害の障害児というのは三十万人以上おります。一生懸命学んで勉強されてこられたようですが、もっと広い観点で勉強していただかないと。生まれてくる子供は一年間で百六万人いるんです。その中で一定の確率で障害児というのは生まれるんです。障害を持とうが持つまいと同じようにはぐくんでいくのが政治の力で、保護者を同じように支援するのが政治の力で、もっと言いますと、病気や事故で障害を持つかもしれないお子さんもいるということを考えると、もっと広く政策を是非実行していただきたい。  答弁の中で気になるんですけれども、これは厚生労働の所管ですという言い方をしますが、小泉総理が言ったように、その所管同士の障壁を取り除く調整役が猪口大臣なんですから、そういう言い方ではなくて、自分がリーダーシップを取ってやるんだという意欲を是非示していただきたいと思います。  終わります。
  417. 小野清子

    委員長小野清子君) 以上で犬塚直史君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  418. 小野清子

    委員長小野清子君) 次に、加藤修一君の質疑を行います。加藤修一君。
  419. 加藤修一

    ○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  まず、私は、最初に障害者に関するマークについて質問をしたいと思います。  日本障害者リハビリテーション協会のアンケート調査によりますと、車いすマーク、これの件でございますが、車いす専用と誤って認識している回答が非常に多いと。本来の趣旨を考えてまいりますと、身障者が利用できる設備と、それが本来の趣旨でありますけれども、正確に答えることができた人は〇・七%ということでありますから一%未満ということでございます。したがって、内部障害者が駐車場などの車いすマークを使用する際に断られたり、あるいは障害者手帳を提示を求められたり、現場ではそういったトラブルが生じているわけでございます。  今国会でいわゆるバリアフリー法が提出される話でございますので、従来のハートビル法や交通バリアフリー法、これは廃止、発展的に廃止されるということでございますが、ハートビル法の政令の第十二条には車いす使用者というふうに限定して、まあ間違ってとらえかねない表現でございますので、やはり私は車いす使用者等という形でやっていくことが誤解を生じない考え方でないかなと思いますけれども、この辺について、国土交通省、よろしくお願いいたします。
  420. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 御指摘の施設につきまして、現行法上の規定とその課題について若干御説明さしていただきます。  現行のハートビル法におきましては、御指摘いただきましたように、駐車場を整備する場合に、そのうち一つ以上を車いす使用者用駐車施設として整備することを義務付けているところでございます。この車いす使用者用駐車施設は、車いすを使用される方にも建築物の円滑な利用が可能となりますように、駐車スペースの幅を通常のスペースの幅よりも広い幅、三メートル五十センチとすることとか、建物の出入口からなるべく近い位置に設けることを義務付けておりまして、これを、この施設を端的に表すものとして車いす使用者用駐車施設と規定しているところでございます。  で、この趣旨とするところは、車いす使用者が利用できる施設である旨示しているものでございます。御指摘いただいたとおりでございますが。現場では御指摘のような混乱が生じていることは事実でございまして、大事な課題だと認識しております。  今般、国会にハートビル法と交通バリアフリー法を統合いたしまして、新たに高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案、お願いしているところでございまして、今般この新しい法律が国会においてお認めいただきました暁には、障害者の方々の団体を始め関係者からきちんと御意見を広く伺いながら、今御指摘いただきました趣旨を踏まえてきちんとした運用ができますように検討してまいる所存でございます。
  421. 加藤修一

    ○加藤修一君 よろしくお願いしたいと思います。  それから、車いすマークの本来の趣旨がなかなかうまく伝わってないところも当然ございますので、本来の趣旨について啓蒙普及をやはりしっかりやっていくことが大事だと思いますけれども大臣、よろしくお願いいたします。
  422. 北側一雄

    国務大臣(北側一雄君) 大切な御指摘いただいていると思います。  この車いすマークというのは国際シンボルマークになっておりまして、その意味は、車いす利用者限定ということではなくて、障害者が利用できることを表示するものでございます。この国際シンボルマークは、日本工業規格においても障害者が利用できる建築物及び施設であることを表示する案内用図記号として定められているところでございまして、車いす利用者に限定されるものではございません。しかしながら、今委員のおっしゃったように、このマークが車いす利用者専用などと誤って認識をされている場合が大変多いわけでございまして、しっかりとこの本来の趣旨を啓蒙普及をさせていただきたいというふうに考えているところでございます。  今、住宅局長が答弁をさせていただきましたように、この国会に交通バリアフリー法とハートビル法を統合、拡充をしました新しい法律を提案をさせていただいているところでございます。今後、この施設設計に関するガイドラインを作っていくことになるわけでございますが、その検討に当たりまして、障害者団体の皆様の御意見もよく聞きながら、障害者全般が利用できる施設である旨の表示方法や、その意味の周知方法などについてどのような工夫ができるか、よく検討させていただきたいと思います。
  423. 加藤修一

    ○加藤修一君 障害者が分かりにくいいわゆる内部障害者ですね、あるいは高齢者などの身体的弱者も利用できるような、いわゆる分かりやすく使いやすいマークの検討を是非厚生労働大臣にお願いしたいわけでございます。
  424. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 国土交通大臣からも御答弁ありましたけれども、このシンボルマークは、国際リハビリテーション協会、ここにおいて一九六九年に採択されております。日本は財団法人日本障害者リハビリテーション協会が代表して加盟している。第一義的には、まずこれは障害者全体を表すものだという広報をしっかりやっていかなければならないと。第二番目の問題として、何か工夫がないのかということで実はこの委員会でも一度御質問をいただきました。協会としっかり話してみろというような指示をしております。知恵を何か加えたいなと、こんな思いをいたしております。
  425. 加藤修一

    ○加藤修一君 よろしくお願いいたします。  次に、生物産業、特に蚕を含む昆虫産業と地域展開の推進ということについてお聞きしたいわけであります。  農村地域で養蚕とかあるいは糸を紡ぐような、そういう風景というのはなかなか見ることができなくなっているわけなんですけれども全国の養蚕農家数、それから生産額、これについて御提示をお願いいたします。
  426. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) 養蚕農家数の現状という、生産量の現状ということでございますが、十七年度におきます養蚕農家数は全国で千五百九十一戸、細こうございますけれどもそうなっております。生産量として六百二十六トンというのが現状でございます。
  427. 加藤修一

    ○加藤修一君 極めて厳しい現状だと思いますが、しかし今は繊維産業という、そういった視点から物を見たことだと思いますが、一方、見方を変えれば、いわゆる非繊維系という、そういう観点から考え直す部分もあるかなと私は思ってございます。  いわゆるバクテリアや植物から新しい薬あるいは新素材、そういったものを開発される、そういうことが広く知られているわけでありますけれども、蚕などの昆虫を使いながら、昆虫は百万から百八十万種というふうに言われているわけでありまして、そういった意味では地上最大の未利用資源であると、こんなふうに言われておりまして、昆虫由来物質の有用性、あるいはその有用物質の活用の可能性、さらに世界と日本における研究開発の現状、またさらに日本国内における将来の市場規模について、大臣にお伺いしたいと思います。
  428. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) 今、加藤委員御指摘のように、動物のうちの約九〇%が昆虫類に属するということでありまして、今御指摘のように、二十一世紀、残された最大の資源であるという認識を私も持っているところであります。  お蚕といえば生糸、そして生糸といえば日本の伝統文化のある意味では象徴でございますけれども、いわゆるお蚕農家、養蚕農家あるいは養蚕業そのものは大変に少なくなってきておりますが、しかしそこには今隠された無限の可能性があるということでございます。  蚕のゲノム解析は約八割まで進んでいるというふうに聞いておりますけれども、これを利用いたしましてゲノム創薬、例えば脱皮の作用を利用して薬を作る研究でありますとか、あるいは昆虫工場として、糖尿病の検査試薬、これは人間のですけれども、人間の糖尿病の検査試薬の原料を作る蚕の開発、あるいは昆虫新素材ということで絹を利用して軟骨等再生医療素材の開発といった研究開発が進んでおり、現在二十三件の昆虫関連の特許出願をしたところでございます。  無限の可能性があるということでございますけれども、ここのポイントは先端産業である、先端研究分野であると。しかも、日本の蚕技術はもちろん世界一であるわけでございますし、また、ゲノム解析においても、イネ、ヒト等で日本が先導的な役割を持っているわけでありますが、これだけではなくて、地元自治体、あるいは地元の大学、民間企業、そして養蚕農家も参加してこの研究が進められている例が現実に長野県でもあるわけでございますから、従来からの養蚕業としては大変厳しい状況にありますけれども、そういう昆虫、蚕のゲノムを利用した研究あるいは実用化というものを考えますと、ある意味では無限の可能性があるというふうに聞いております。  市場規模に関しましては、無限ということでございますから、現段階では予測ができないぐらいになっていくことを、我々としても人類のために、また地球のためにこういうものが広がっていくことを期待していきたいというふうに考えております。
  429. 加藤修一

    ○加藤修一君 農林水産省は、平成十四年度から、蚕を含むいわゆる昆虫テクノロジー研究、これに着手して、今大臣から御答弁がありましたような内容になるわけでありますけれども、その成果の関係でありますけれども、例えば知的財産権、これはどの程度獲得しているか、そういった状況、あるいは、これ平成十八年度に終わる予定になっておりますが、平成十九年度以降についてはどのような考えでいらっしゃるのか、その辺について教えていただきたいと思います。
  430. 染英昭

    政府参考人(染英昭君) お答えいたします。  これまでに蚕の昆虫利用等の研究によりまして、先ほど大臣からお話ありましたように、一般的にシルクとして使ういわゆる繊維以外の利用方法については、例えばシルクを微粉末化して化粧品に使うとか、あるいは動物の医薬品、これは例えば犬とか猫のインターフェロン、この辺に使われておるというような大変実用化された成果が出てきておるわけでございます。  それとさらに、農林水産省では、今御指摘がありましたように、二十一世紀の最大の未利用資源として注目されております昆虫の特殊機能を活用した独創的な新産業を創出するということから、平成十五年から研究開発プロジェクトを実施しておるところでございます。  研究成果は、大臣申し上げたとおりでございまして、その結果といたしまして、いわゆる知的財産、これは二十三件の昆虫関係の特許が出願されておるという状況でございます。  この研究は一応十八年度までということでございますので、十九年度以降の研究の推進につきましては、二十一世紀の独創的な新産業の創出につながるように、この十八年度までの成果を踏まえ、十八年度、あと一年あるわけでございますので、この成果を踏まえながらその推進の在り方について検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  431. 加藤修一

    ○加藤修一君 是非積極的な検討をよろしくお願いしたいと思います。  それで、この蚕に絡む非繊維系の新しいものを生み出す、そういった面の関係でございますが、先ほど養蚕農家の数をお聞きいたしました、二千軒未満であるということで非常に厳しい状況でありますが、別の角度から見るとこういう形で展望が開けている可能性もなくはない。  そういった意味では、地域にいかに展開するかということが極めて重要でないかなと思っておりますが、この辺のステップ、手順をどういうふうに考えていらっしゃるか、あるいは地域展開を考えていく場合の時期ですね、タイムスケジュール、その辺についてどのようにお考えをしているか、教えていただきたいと思います。
  432. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) 先ほどもちょっとお答えしてしまいましたけれども、お蚕は昭和の始めにはもう百万戸を超えるような養蚕農家があった、御承知のとおり日本の最大の戦前のあるいは明治以降の輸出物資でありましたけれども、今は外国との競争あるいは代替繊維等々との関係で大変繊維としては小さい規模になってきたわけでありますが、先ほど申し上げたような先端研究ということになりますと、やはり蚕を育てていかなければならない、あるいはまた新しい品種の蚕ができればまたそれも育てていかなければならないということで、やはり養蚕農家との関係が極めて、ある意味では新しい関係が必要になってくるわけでございます。  そしてまた、そうなりますと、地元の研究所、大学、あるいはそれを推進するために自治体というものが必要になってまいりますので、私は今後また、今千五百戸という非常に少ない養蚕農家戸数から、ある意味では意欲のある新しいチャレンジをする養蚕農家がこれからまた出てきてもらわなければ研究、実用ができません。そういう意味で、そういう養蚕農家の支援に向けてもこれから我々も努力をしていかないと、さっき言った世界、二十一世紀最大の未利用資源を利用した研究、実用化、そしてその商品化による様々な貢献という目的が達成できないというふうに思いますので、これからまた、養蚕農家というか養蚕そのものに対しての支援もまた改めて進めていかなければならないというふうに考えております。
  433. 加藤修一

    ○加藤修一君 非常に積極的な答弁、ありがとうございます。  それで、次に世界遺産の関係の話に突然参りますけども、それは決して突然な話でなくて、シルク産業と極めて密接にかかわる話でありまして、先ほど明治以降の輸出物質であるという話がございました。歴史的象徴であります、まあ我々も中学校ごろに富岡製糸場というのを学びましたわけですけども、その歴史的価値あるいは産業文化遺産としては、非常に我が国が世界に誇るべきそういった歴史的な建築物であるように私は理解してございます。明治政府の官営工場として明治五年、西洋近代建築の粋を結集して建造したれんが建築物でありまして、これはもう極めてしっかりと現存しているものでございます。  やはり私は、いろいろな議論が当然あるわけでありますけども、一日も早く我が国の世界遺産として暫定リストに登載すべき建造物であると、このようにとらえているわけでございますが、文部科学大臣、よろしくお願いいたします。
  434. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 御指摘の富岡製糸工場は、明治政府の殖産興業政策の一環として最初に設置をされました直営工場でございます。我が国近代の経済産業史を理解する上で大変重要な史跡であると認識をいたしておりまして、昨年の七月、史跡の指定を受けて、残っております工場及び繭倉等の建物、赤れんがのきれいな建物は重要文化財としての価値があるものと考えておりまして、現在指定のための準備を進めているところでございます。  一方、世界遺産への登録につきましては、世界遺産条約、すなわち世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約に基づきまして、ユネスコの世界遺産委員会において、世界的に顕著な普遍的価値を有するか否かについての専門的、学術的審査及び保護のための緩衝地帯の設定や保存管理計画の策定などについての検討が厳しく行われる対象物でございます。  そういうような観点に踏まえまして、富岡製糸工場についてはこれらの要件を充足するか否かを見極めつつ、今後の暫定リスト見直しの際に他の候補物件とともに適切に対処したいと考えておりますが、現在暫定リストに四件登載をされておりまして、また、暫定リスト登載の運動をなさっていらっしゃるところが五十件以上ございます。これらの中で適切な対応をしてまいりたいと存じます。
  435. 加藤修一

    ○加藤修一君 私、群馬県に住んでおりまして、そういった意味では非常に大事な案件であると考えておりまして、地元も一生懸命頑張ってまいりますので、よろしく御指導のほどをお願いを申し上げたいと思います。  それでは、次に環境金融、余り耳にすることはない言葉かもしれませんが、この件について参りたいと思います。  さきの補正予算の関係でも、環境立国ということについてどう思うかということで、二階大臣にもあるいは環境大臣にも、そして総理にもお聞きいたしました。皆さんから返ってくる言葉は、正にそういうことが非常に大事であると。  例えば、環境大臣には所信表明でも環境立国をうたっているわけでありまして、また補正予算の中では、小泉総理は、今後、環境保護と経済発展の両立を図り、日本は世界から環境大国であると、環境投資、環境をあれだけ重視しても経済発展しているというような国にしていかなければいけないと、こういう形で明言しているわけでありまして、そういった意味では、非常にこの環境立国というのは将来の日本のあるべき姿の一つではないかなと私は考えておりまして、金融庁担当大臣といたしまして、与謝野氏は政治家としてどのようにこの辺はお考えでしょうか。
  436. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 当然、経済も発展をしていかなければならないと思いますけれども、やはり我々の掛け替えのないこの地球、我々の日本、こういうものの環境を守るということは、やはり何事をやる場合もまず考えなければならないことだと思っております。当然、経済活動をやりますと環境に負荷を与えるわけでございますけれども、その負荷をどうやって軽減していくかと、これはやっぱり我々の発想の原点になければならないものであると思っております。
  437. 加藤修一

    ○加藤修一君 様々な環境破壊あるいは環境汚染、午前中も環境問題について質問された委員がいらっしゃったわけでありますけれども、さらに、気候変動問題は深刻化しているわけでありまして、そういった意味では、どのように持続可能な社会をつくっていくかということは、やはりもうあらゆる分野が総結集して知恵を出してつくり上げていかなければいけないというふうに考えております。そういった意味では、環境配慮型の社会をどうつくるかということは極めて大事な、言うまでもなく大事なことだと思います。  そういった意味では、お金の使い方についても、それは融資の関係、投資の関係含めてどういうふうに使うか。環境を汚染するような企業にどんどん融資あるいは投資、投融資をしていきますと、もしそれが主流になってくれば、社会全体が環境汚染になってしまうという話になってまいります。  そういった意味では、金融の在り方というのが極めて私重要な役割を担っているように思ってございまして、こういう点については、金融担当大臣としてはどのようにお考えでしょうか。
  438. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 金融業における委員御指摘の環境配慮行動の意義というのは、実は平成十四年三月に環境省が取りまとめた金融業における環境配慮行動に関する調査研究報告書において、金融機関自らが事業による環境負荷低減を行う以外に、投融資の対象や被保険者となる企業や個人の環境配慮行動を促進する点にあると指摘されております。  こうした金融機関による環境配慮行動としては、例えば、環境配慮に優れた取組を行っている企業に対する金利優遇や、そうした企業を中心に投資を行うファンドの形成、金融機関自身によるエネルギー使用量、廃棄物の削減目標の設定などの取組が行われているところでございます。  もとより、金融庁が強制すべきものではなく、金融機関がそれぞれの自己責任原則にのっとって行動するという性格を持っておりますけれども、また、金融庁としては監督指針の中でこれに言及をしております。
  439. 加藤修一

    ○加藤修一君 強制すべきではない、あるいは自己責任であるということは基本的に私も理解しておりますけども、例えばアメリカのいわゆる連邦準備制度理事会、FRB、これは一九九〇年代に環境責任通達というのをしっかり出して、金融機関がしっかり環境に対しても配慮しなければいけないというふうになっておりますし、あるいは連邦預金保険機構、FDICでありますけども、環境リスクガイドラインというものを出しているわけでありますけども、この両方について説明をいただきたいと思います。そして、説明の後に大臣から見解を是非お伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  440. 三國谷勝範

    政府参考人三國谷勝範君) 御指摘のように、アメリカにおきましては、一九九一年に連邦準備制度理事会が環境責任と題する通達を出す形で、各金融機関に対しまして環境指針及び教育プログラムの策定、それから新たな借り手、担保不動産に対するガイドラインの確立、潜在的な環境リスクに対する適切な分析の実施、環境リスク面から見た既存ローンの点検などを求めているところでございます。また、一九九三年には連邦預金保険公社が環境リスク計画に関するガイドラインを公表し、各金融機関に対しまして計画実施のための教育体制の整備、環境リスクにも配慮した与信方針等の策定、ローン実施に当たっての事前リスクの分析の実施などの項目を含む環境リスク計画の策定を求めていると承知しております。  こうした通達やガイドラインは、一九八〇年にアメリカにおきまして包括的環境対処・補償・責任法というものが制定されまして、土壌汚染などにかかわりました者に対し幅広く責任を問うことが可能となり、八〇年代半ば以降、土壌汚染等にかかわった事業者に融資した銀行にまでその責任を負わせる判決が出てきたことを背景といたしまして、銀行に対しまして環境リスク管理体制の整備を促すために作成、策定されたものと承知しております。
  441. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 金融機関の環境配慮の取組は、まずもって個々の金融機関の経営判断で行うもので、基本的に当局が強制すべき性格のものでないと考えておりますけれども、一方、金融機関は様々なリスクに対して適切なリスク管理を行う必要があり、こうした米国における施策の目的や方法等は大変興味深いものであると認識しております。
  442. 加藤修一

    ○加藤修一君 大変興味深いというふうに御答弁がありましたが、その興味深いところについては非常に私も期待しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  それで、金融庁の検査マニュアル等ということになりますが、いわゆる金融機関に対して取引先の環境配慮のいわゆる規定というのは当然、今までの大臣の答弁にありますように、ないわけでありますけども関心はある、今の答弁の関係になってまいりますが、私はやはり、例えばこういうことも考えていいのではないかなと思ってございます。  いわゆる環境金融について推進するための検討会みたいのを立ち上げてはどうかと。そういった中で、環境配慮自主行動規範、そういったものを策定すると、あるいはさらに環境金融実施ガイドライン、そういうものを作成するということも一つ考え方としてあり得るのかなというふうに思っておりますが、この辺についての御見解はどうでしょうか。
  443. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 先生の御質問の趣旨は、米国のように環境金融に関するガイドラインを策定し、各金融機関を誘導すべきではないかという御質問と考えております。  繰り返しになって恐縮なんでございますが、金融機関の環境配慮の取組は、まずもって個々の金融機関が自己責任原則にのっとった経営判断に基づき行う性格のものであり、法令に基づく場合を除き、基本的には金融行政当局が強制すべきものではないと考えております。  金融庁としては、監督指針において環境配慮を含む企業の社会的責任重視の取組についての情報開示の枠組みを示しており、また、現在、社会的責任を重視した取組に関するアンケートを実施しているところであり、こうした各種施策を着実に実施してまいりたいと考えております。
  444. 加藤修一

    ○加藤修一君 今年の末でしょうけれども、新BIS規制の関係も含めて、その中でいかに信用リスクあるいはオペレーショナルリスクですか、そういったのをいかに強化していくかという非常に大事なものがございますが、いずれにいたしましても、今後、こういった面については非常に大事ですので、また別の機会に議論をしてまいりたいと思います。  それじゃ、関連質問よろしくお願いいたします。
  445. 小野清子

    委員長小野清子君) 関連質疑を許します。渡辺孝男君。
  446. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。  私の方は、まず最初に自然体験活動について質問をさせていただきます。  平成十三年に学校教育法及び社会教育法が改正されて、ボランティア活動などの社会奉仕体験活動や自然体験活動などを充実することになりました。具体的に、平成十四年度から豊かな体験活動推進事業が行われております。  この事業開始から既に四年になりますが、自然体験活動の結果はどうであったか、小坂文部科学大臣にお伺いをいたします。
  447. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 委員御指摘の豊かな体験活動推進事業でございますけれども、この事業は御指摘のように平成十四年度より始まっておりまして、都市と農山漁村の交流にかかわる体験を実施する地域間交流推進校、それから長期にわたる集団宿泊等の体験活動を実施する長期宿泊体験推進校、そして社会奉仕体験や自然体験など様々な体験活動を実施する体験活動推進地域・推進校の指定などから成っておりまして、武蔵野市のセカンドスクールを始めとして、十八年度の予算で千百七十五校が指定を受ける予定をしております。  このように浸透してまいりました事業でございますが、指定校からは、自然の大切さを実感したり環境に対する関心が高まった、あるいはすべての生き物を大切にしなければいけないなと思った、働くことの喜びや苦労が分かったなど、いろいろな成果の報告が出てきておりまして、このように、子供たちが自然のすばらしさを感じたり、あるいは命の大切さを学んだりする大変高い教育的効果が確認をされております。  今後とも推進をしてまいりたいと存じます。
  448. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 大変すばらしい結果が出ているということで、私も推進をしていただきたいと、そのように思います。  先日、超党派の議員から成ります自然体験活動推進議員連盟というのがございまして、その主催の勉強会で、脚本家で、富良野自然塾を設立し、子供たちの自然体験活動を推進をしていると、そういう倉本聰氏の講演を聞く機会がございました。倉本氏は子供たちが五感のバランス良く成長することの重要性を訴えておりまして、そのためには自然体験活動が有効との、そういうお話がございました。  この点に関しましてどのようにお考えか、小坂文部科学大臣、川崎厚生労働大臣、そして中川農林水産大臣にお伺いをしたいと思います。
  449. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 体験活動というのは、自分の体を通して実際に経験、そして手の感触を始めとして五感を駆使していろいろなものを理解することにつながってまいります。私自身も、子供のころにボーイスカウトの体験の中から、キャンプ活動を通じていろいろなことを学んできた経験がございます。  手で土や水に触れる触覚、目で四季の山々の色を見たり景色を眺める、見るということ、視覚、そして、鼻で草花のにおいをかぐ嗅覚、耳で鳥や虫の鳴き声を聞く聴覚、口で収穫したものを味わう味覚といったいろいろな五感を働かせて、あるいはそれを組み合わせて学ぶと、そういう体験活動は今後とも推進すべきと思っておりますが、ある小学校では、里山での稲作体験活動や学校農園での野菜作りなどを通して土の感触や水の温度を肌で感じたり、作ったものを収穫して食べたりする活動が行われておりまして、体験活動によって子供たちの感性を磨くことは子供たちの成長過程において非常に大切なことだと、このように文科省としても認識をいたしておりまして、今後とも都市間の交流、都市と農村との、農山漁村との交流を通じて、このような体験活動を一層推進してまいりたいと存じます。
  450. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 厚生労働省といたしましても、児童の健全育成の観点から自然体験は重要であると認識しております。  例えば、保育所においては、保育の目標の一つとして、自然や社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の基礎を培うことを挙げており、子供の発達段階に応じて身近な動植物や自然と親しむなどにより健全な心身の発達を図っているところでございます。また、児童館においても、こうした取組を推進するために、民間児童館が児童の自然体験活動を実施した場合に補助を行っております。  今後とも、児童が自然と触れ合いながら健やかに成長できるように、こうした機会の推進に努めてまいりたいと考えております。
  451. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) もう言うまでもなく、自然体験活動は、子供の成長、情操に対して極めて大きな貢献があることは言うまでもないと思います。大都会に住んでいるだけでは、毎日食べる御飯がどういうふうにしてできてくるのか分からない、あるいはシャケというもの、マグロというものの本物を見たことがないとかですね、ということも時々聞くわけであります。  そういう意味で、本物を見て、そして体で感じて、今、渡辺委員は五感とおっしゃいましたけれども、私は、情操とか直観力とかいった六感、七感に対しても効果があるのではないかというふうに思います。  私の地元でも、牛の乳搾りをやったり、馬に乗ったりしてですね、あるいはまた、ほかの地域では、自ら稲を植えて、そして収穫をして、そして自分で御飯を炊いたり料理を作ると。もう一粒残らずおいしく食べるということは、もうテレビなんかでも最近はよく放送されているところでございます。  そういう意味で、本物を体験をする、それも体で体験するということは、子供の成長に対して非常にもう極めて重要な役割をいたしますので、農林水産省としても、政府一体となってこれからも強力に進めていきたいと思っております。
  452. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 関連しまして、学童の身体の発育状態に関しまして年次を追って調査を行っている、そういう項目がございましたらどのようなものなのか、文部科学省にお伺いをしたいと思います。
  453. 素川富司

    政府参考人(素川富司君) お答え申し上げます。  文部科学省では、児童生徒等の身長、体重、座高の発達状況でございますとか視力とか歯の疾病などの健康状態を把握する学校保健統計調査を毎年実施しております。これは昭和二十三年から毎年実施しているものでございます。更に加えまして、児童生徒を始め国民の体力の現状を把握するために、短距離走でありますとか握力などを調査内容といたします体力・運動能力調査を毎年実施しているわけでございまして、これは昭和三十九年から実施しているものでございます。
  454. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 体力的にいけば、五十メートル走とかソフトボール投げの、そういう体力が落ちているというようなお話も聞いておりますけれども、子供の五感のバランスの良い発達とか、そういうものに関して調査研究を行い、何らかの客観的な評価方法を確立すると、そういうような研究というのは行われているのかどうか、この点を文部科学省にお伺いをしたいと思います。
  455. 素川富司

    政府参考人(素川富司君) お話がございましたように、自然体験活動が五感のバランスの良い発達を促すというようなことでございます。  文部科学省におきましては、国立少年自然の家などでも自然体験活動を盛んにやっているわけでございますけれども、例えばそのような自然体験活動につきまして、独立行政法人の国立少年自然の家が行った研究におきましては、長期自然体験活動に参加した子供につきましては、自然に対する感性でございますとか意欲が向上するといった調査結果が報告されているところでございますし、また、独立行政法人の国立オリンピック記念青少年総合センターが行いました実態調査におきましても、生活体験や自然体験の豊富な子供ほど道徳観とか正義感が充実しているという傾向が見られるということが報告されているところでございます。
  456. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 最近、味覚、子供さんたちの味覚が衰えているんじゃないかとか、アレルギー疾患があるんで嗅覚も衰えているんじゃないかとか、そういう懸念もあるわけですけれども、そういう体全体のそういう感覚のそういうバランスというようなものも視野に入れた研究等が、やっていただければ、子供の健やかな成長というものを図る一つの指標になるんじゃないかなと。第六感が分かればそれはすばらしいことですけれども、そういう調査もできればしていただいて、年次的にしていただいて、最近は子供さんたちのそういう能力が落ちているなというようなことが分かれば、やっぱりもっと自然体験活動等を推進するとか何らかの方策が出てくるんじゃないかと、そういうふうに思いますので、そういう研究もできれば支援をしていただきたいと思います。  次に、政府は都市と農山漁村との交流、対流を推進しておりますが、これは都市部の子供たちにとって自然体験学習の機会を提供することになり、教育観点からも大変意義があるものと考えております。また、農林水産業の現場に直に触れる機会が得られることから、食育にとっても大変すばらしいことと考えております。  農林水産省は二月末に農林漁業体験学習の取組、教育ファームの実態調査を報告しました。この教育ファームの実施状況並びにその成果について、中川農林水産大臣にお伺いをいたします。
  457. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) 御指摘のように、食育基本法の条文の中に、自然の恩恵の上に成り立って、そしてまた食にかかわる人々の様々な活動についてよく知って、そして感謝の念や理解が深まるよう配慮されなければいけないという条文に基づきまして、二月に実態調査を行いました。これは全国でどの程度の自治体がこの取組に取り組んでいるかということの調査が中心でございますけれども、取組主体は自治体であり、自治体と同時に教育機関、あるいはまた農業団体や市民団体のようなNGOといったグループが一定の基準以上取り組んでいるところが全国で約四二%あるという調査になっております。食育推進会議の下で、食育推進基本計画案におきましてはこの割合を更に上げて六〇%以上にしたいというふうに考えております。  これは、都市においても、また地方、私の地元のような地方でも市の中心部に行くとなかなか自然に体験する機会がないということですから、これは地方においても大事なことだと思いますので、当面は六〇%を目標にして更に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  458. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 この課題の最後に、小坂文部科学大臣に、今後の学童の自然体験活動推進の決意をお伺いをしたいと思います。
  459. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 委員の御指摘、またそれぞれの答弁の中にありましたように、大変教育的効果の高いこの自然体験でございます。今後とも、指定を受けました推進校のモデル事業を通じまして、そこで得た成果を広く全国に普及をさして、そしてこの体験活動を一層推進し、児童の健全な発育、そして高い教育効果を目指して頑張ってまいりたいと存じます。
  460. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 次に、新しい米の研究開発について質問させていただきます。  杉花粉症の緩和や糖尿病の対策として開発されている新しい米の研究状況について農林水産省にお伺いをいたします。
  461. 染英昭

    政府参考人(染英昭君) 農林水産省が開発しております、まず花粉症緩和米につきましては、これまでに、マウスによる実験動物でくしゃみの回数が四分の一に減少し、効果のあることが確認されております。  花粉症緩和米は遺伝子組み換え技術を用いて開発したものでありますので、その実用化に当たりましては安全性を厳密に評価し、問題がないことを確認することが必要となります。このため、人が食べても毒性がないか、アレルギーを生ずるおそれがないかなどを確認するための基礎データを収集しているところであり、現在、猿を用いた長期毒性試験等を実施しているところであります。  このほかに、現在、遺伝子組み換え技術を用いまして、血糖値をコントロールすることができるインシュリン分泌促進ペプチドを導入いたしました糖尿病予防米、コレステロール低下米、高血圧予防米などの健康機能性を有する米の開発に取り組んでいるところでございます。
  462. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 様々なお米が開発されていると、健康志向、あるいは健康を増進するようなお米が開発しているというようなお話でございました。  今後の研究の推進や臨床応用に関連しまして、中川農林水産大臣並びに、疾病の予防あるいは治療にも関係するということでございますので、このような研究に関しましてどのようにお考えになっているか、川崎厚生労働大臣にお伺いをしたいと思います。
  463. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) 先ほど加藤委員には、蚕でもって糖尿病に関する、蚕を利用して研究が進むというやり取りをさせていただきましたが、機能性のお米でもって花粉症が緩和されると。これは、花粉症に悩む方々にとっては大変耳寄りのお話だろうと思います。  しかし、何といいましても食品でございますから、安全性というものがきちっと確保されなければいけません。最終的には、ネズミのくしゃみではなくて人間のくしゃみの問題でございますんで、臨床実験、試験が必要になりますので、臨床の専門家等々、専門家の皆さんの御指導をいただいて、安全性というものをまず大前提にして、その上でくしゃみの数が減ればこれは大変結構なことだということで、できる限り早期の実用化を目指してこの事業に参加していきたいと考えております。
  464. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 御質問の農林水産省の農業生物資源研究所とかが開発している遺伝子組み換えのいわゆる花粉症緩和米等については、これ厚生労働省の立場から申し上げますと、効能、効果を標榜して販売されるのであれば医薬品ということになりますので、医薬品としての治験を行い、その承認を得ることが必要だと考えております。  一方、この花粉症緩和米等が仮に医薬品に該当せず食品に該当する場合、その場合は遺伝子組み換え食品として、安全性の観点から食品安委員会のリスク評価が必要であります。その手続を経た後、食品としての販売が可能になると。こうした手続を踏みながら、いい商品が開発されることを期待したいと思います。
  465. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 新しく開発されたお米が人においても健康に資する効果が認められるようであれば、今お話ございましたとおり、安全性の確保と、これを十分に行っていただきまして、希望する国民の方がいらっしゃったら利用ができるようにしていただきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  466. 小野清子

    委員長小野清子君) 以上で加藤修一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  467. 小野清子

    委員長小野清子君) 次に、大門実紀史君の質疑を行います。大門実紀史君。
  468. 大門実紀史

    大門実紀史君 日本共産党の大門でございます。  この予算委員会で何度も非正規雇用の問題が取り上げられてまいりましたけれども、その非正規雇用の中で違法派遣、偽装請負あるいは不当労働行為がまた急増をしているという問題を取り上げたいと思いますが、もう結論から申し上げますと、その元凶の一つになっているのが、昨年この予算委員会でも私取り上げましたが、日本最大の請負企業でありますクリスタルグループでございます。  この巨大企業は、資料をお配りいたしましたけれども全国で二百四十を超える子会社を持っております。売上高が五千四百億円、従業員数が十三万五千人と、世界でもトップクラスの人材請負会社でございます。しかし、株式未公開で、ホームページにも社長のあいさつは載っているんですけれども社長の名前が載っていないというふうな、マスコミからもやみ夜のカラスとか異形の帝国と呼ばれている実態のつかめないグループでございます。この巨大グループがとにかく大企業の製造現場に若者たちを送り込んで違法行為繰り返し、ピンはねをしながら急成長しているわけでございます。  例えばどんなことをやっているかということで、昨年、このクリスタルグループの関連会社が行政処分を受けた事例について説明をしていただけますか。
  469. 鈴木直和

    政府参考人鈴木直和君) グループの関連会社というお話でございましたが、恐らくタイアップそれからシースタイルの事例かと考えております。  株式会社タイアップにつきましては、是正指導に従わず事業所の新設に係る届出がないままに労働者派遣事業を行っていたことから、昨年六月三十日付けで東京労働局長より改善命令を行いまして、新設に係る届出を適正にするように、それから再発防止、遵法体制の整備等の実施を求めたところでございます。  それから、株式会社シースタイルにつきましては、合併した関連会社から引き継いだ事業所におきまして、死亡事故につながった労働安全衛生法違反の無資格者の派遣を行っていたこと等から、昨年七月二十九日付けで愛知労働局長より九か所の事業所について一か月間の事業停止を命じますとともに、企業全体に対する改善命令を行いまして、一つは、労働安全衛生法により資格が必要な業務に係る労働者派遣の即時改善、それから新設に係る届出、遵法体制の整備等の実施を求めたところでございます。
  470. 大門実紀史

    大門実紀史君 今ございましたシースタイルですけれども、これは事業停止命令というのは、過去に一件しかない非常に厳しい措置を受けたわけでございます。  なぜかといいますと、これを実際に違法行為を行ったのは、このシースタイルに吸収されたクリスタルプロダクツという会社なんです。この会社に略式命令が出る直前にこのシースタイルが吸収合併をして処分を逃れたと。それでは許さないということで、愛知労働局が頑張ってシースタイルそのものに厳しい処分をしたということで、私、愛知労働局、頑張ったなと思っております。  もう一件、一昨年、日立製作所で起きた事件で書類送検になっていますが、その内容を説明してもらえますか。
  471. 鈴木直和

    政府参考人鈴木直和君) 日立製作所の問題という御指摘ございましたが、これは十六年九月二十八日に発生した労働災害に関連しまして、株式会社日立製作所につきまして書類送検をした事例というふうに承知をしております。
  472. 大門実紀史

    大門実紀史君 この事件は、私、去年の予算委員会、ここで取り上げたんですけれども、これ偽装請負だったんじゃないですか。そういう指摘をしましたけど、どうですか。
  473. 鈴木直和

    政府参考人鈴木直和君) この労働災害に関連しまして調査をしましたところ、ここで請負事業者が入っておりまして、その間で行われた業務の実態、これを見ますと、形式上は業務請負であるものの、実態として労働者派遣に該当するものであり、いわゆる偽装請負であったと認められるものでございます。
  474. 大門実紀史

    大門実紀史君 このクリスタルは全国でいろんな名前の子会社がありますけれども、処分だけではなくて行政指導を含めると大変な数の問題を起こしております。私、現場は非常に頑張っていると思いますが、正に今日、今申し上げたのは、時間の関係で氷山の一角にすぎません。  私たちが調べている中では、社会保険に加入させないと、社会保険加入を申請したら辞めさせるというような、いわゆる偽装雇用というんですけれども、そんなことも平気で行っております。このクリスタルグループは、マスコミもこの間注目しておりまして、ただ、少しでも新聞に取り上げる、記事に取り上げるとすぐ訴訟を起こすんですね、提訴するんです。これは、かつてサラ金の武富士が何か書かれるとすぐ訴訟を乱発したというのと私大変似ていると思います。事実無根というよりも、何といいますか、書かせないために訴訟を乱発するというやり方をして、マスコミを足止めさせるねらいで、この間も毎日新聞だとか東洋経済とかダイヤモンドとか、そういうことになっているわけで、何を書いても訴えられないのはうちの赤旗ぐらいなもんだということでございます。例えば、毎日新聞がオーナーの林純一さんのことを内部資料に基づいてほんの少し書いただけなんですね、ほんの一行書いただけでも大抗議を受けております。  今日はその内部資料を全面的に取り上げたいというふうに思うわけですけれども、人生観と経営姿勢という、林純一オーナー、この方は幾ら調べても経歴が分からないというなぞの人物でございますけれども、この人生観と経営姿勢というのを作って、これで、京都で行われる子会社の社長会でこれを徹底しております。この経営方針というのが先ほど言ったいろんな行為引き起こしているということが分かりましたんで、申し上げたいと思います。  これは全体で四十項目もある社長の経営指針でございますけれども、一々取り上げるのはばかばかしくて取り上げられないんですけれども、見過ごせないのが二つございます。これの三十六項目めに、大競争に勝ち残り業界ナンバーワンになるには、プロは規制緩和の違法行為が許されるということを書いています。もう一つは、三十七項目めですけれども、第三者に迷惑を掛けない違法、うそは許されると。  こういうことを社長を集めて訓示をして徹底しておりますし、これに営業ノルマを物すごく重いものを与えるわけですね。そうしたら、先ほど言いました違法行為全国で行われるのは、私、当たり前ではないかと、平気でやっているのは当たり前ではないかというふうに思います。私は、もう監督官庁の厚生労働省そのものをなめて掛かっていると、最初からなめて掛かっているグループだというふうに思います。  私も各地で、いろんなところで労働局の方と一緒に取り組んできましたけど、みんな頑張っております。本当にこの問題では頑張っておりますけれども、こうなるともうグループぐるみで違法行為を平気で、どうせもう罰金なんか大したことないということで、違法行為で、要はグループぐるみでやっているというふうに見るべきだと思います。  その点では、本省として、この本社、グループ本体を呼んで指導するとか、次の段階の手を打つ必要があると思いますが、川崎厚生労働大臣、いかがですか。
  475. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 個別の企業の名前を私が申し上げるわけにはいかないということは御理解賜りたいと思います。  一般的には、複数の都道府県にわたって事業を行っている派遣元事業主や請負事業主等に対し、各事業所を管轄する都道府県労働局の間で指導の状況等の情報を交換すること、同一事業主と複数の事業所において法違反が見られる場合には本社への指導監督を行うこと等により対応することとし、今後とも、労働者派遣事業の適正な運営を確保するため、厳正な指導監督の実施に努めてまいりたいと。行政処分等を実施、公表しているケースを除き、具体的に申し上げることはできませんけれども、違法な事案を把握した場合には、当該事業所及び必要に応じその本社に対し厳正な注意を行うということで、私の方からも指示をしてあるところでございます。
  476. 大門実紀史

    大門実紀史君 ありがとうございます。是非、本社にやってほしいと思います。  このクリスタルグループは脱税でも摘発されておりまして、大阪国税局でございますけれども、十七億八千万の申告漏れがございました。これ本拠地京都なんですけれども、私も京都生まれでございますけれども、本当に京都人として恥ずかしい企業だと思います。  谷垣大臣も京都でございますけれども、国税当局までなめられているこの会社、あるいはこの会社の方とお会いになったこともあるかも含めて、どういう御所見か、お伺いしたいと思います。
  477. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 京都人として恥ずかしいとおっしゃいました。  私は、この会社の方とお目に掛かった記憶は全くございません。ただ、今脱税というようなことをお触れになりましたけれども、個別の事案ですから、私ども守秘義務が課せられておりますので、これについては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  478. 大門実紀史

    大門実紀史君 これもコンプライアンスが全く欠如した企業だから起こしていることだということを指摘しておきたいと思います。  二階大臣、わざわざ来ていただいてありがとうございます。  実は、大企業の製造現場にほとんどこのクリスタルグループが入っております。製造業全体にとってこういう企業が現場で相当入っているというのは私ゆゆしき事態だというふうに考えているところでございます。  実は、大企業の中には、このクリスタルグループについて私の方に、私ずうっとこの問題取り上げていますので、このグループはどうなの、どういうことなの、どういうグループなんですかという問い合わせが、私にも相談とか来ているぐらいでございまして、大企業もちょっと問題だというふうに今認識をし始めているところでございますけれども経済産業省としてこういう企業があるということを認識していただきたいのと、衆議院大臣は非正規雇用の問題を経営者の方々と話し合う場が、話し合っていきたいと、場があればとおっしゃっていましたけれども、是非こういう問題も認識を深めてもらうように機会があれば大臣として働き掛けていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  479. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) お答えをいたします。  製造業におきましては、議員も御承知のとおり、アジアの途上国の追い上げ、また競争環境の国際的な激化等に伴い、請負労働や派遣労働などの外部の人材の活用が増えていることも事実であります。これは一般論であります。  こうした請負・派遣事業が労働基準法や労働者派遣法等の関係法令にのっとり行われるべきであることは委員御指摘のとおりであります。当然のことだと思っております。また、この点につきましてユーザー企業においても十分留意していくことがこれはもう常識であり、極めて重要なことだと思っております。  先ほど私の衆議院における答弁につきましてお触れになりましたが、私は先般、参議院の委員会でも申し上げたんですが、将来は正規雇用と非正規雇用と、この中間のような何か新しい制度を考えるとか、あるいはまた、この非正規雇用の方々でも、不況が長く続いたがゆえに、五年、十年、その間熟練工になっておる人たちもおられるわけであります。それらの人の中から正規雇用として取り扱うこと、採用するあるいはまた引き上げるということができないかどうか、その点も私どもも考えてみたいと思っております。  今御指摘にありましたように、経済界の皆さんと懇談の席でこうした問題について、今回の国会、衆参両院においてこの問題に御意見をちょうだいしていることなどを率直に申し上げて、関係者の御理解、また御協力を得たいと、このように考えております。
  480. 大門実紀史

    大門実紀史君 どうもありがとうございました。  終わります。
  481. 小野清子

    委員長小野清子君) 以上で大門実紀史君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  482. 小野清子

    委員長小野清子君) 次に、近藤正道君の質疑を行います。近藤正道君。
  483. 近藤正道

    近藤正道君 社民党・護憲連合近藤正道でございます。  余剰のプルトニウムは持たないというのが我が国の国際公約でございます。しかし、現に日本の国は約四十三トンの使い道の定まらないプルトニウムを持っております。そういう中で、六ケ所、ここの再処理工場でアクティブ試験、言わば試験運転が始まるわけでございまして、新たにプルトニウムが作り出されるわけでございます。これはプルトニウム余剰に拍車を掛けることになりませんか。
  484. 松田岩夫

    国務大臣(松田岩夫君) お答え申し上げます。  我が国のプルトニウム利用につきましては、厳に平和の目的に限っていることについての国内外の理解と信頼の向上を図るため、原子力政策大綱に示しておりますとおり、利用目的のないプルトニウムを持たないとの原則の下で行うこととしておりますことは委員御案内のとおりでございます。  平成十七年度及び十八年度に六ケ所再処理工場のアクティブ試験により回収されるプルトニウムの利用目的につきましては、電気事業者が既に公表し、原子力委員会は、現時点の状況を適切に示しており、我が国におけるプルトニウム利用の透明性の向上の観点から妥当なものと考えると判断しているところでございまして、私としても御指摘の余剰プルトニウムが生じるとは考えておりません。
  485. 近藤正道

    近藤正道君 使い道が具体的に定まらないのは、私は余剰ではないかというふうに思っております。いずれにいたしましても、四十三トンのプルトニウムの決着、これがまず先決なんではないでしょうか。国際公約を踏まえるならば、四十三トンのプルトニウムを放置しておいたままアクティブ試験を強行するのは政策的にも整合性が取れないんではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  486. 松田岩夫

    国務大臣(松田岩夫君) 先ほど御答弁したところでございますけれども、正に我が国におけるプルトニウム利用の透明性の向上の観点から妥当なものと考えると原子力委員会は判断しておるわけでございますが、私もそう考えております。
  487. 近藤正道

    近藤正道君 答弁になっておりませんが、なぜ四十三トンのプルトニウムを先にやらないんですか。
  488. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) お答えをいたします。  我が国は使用済核燃料から回収されるプルトニウムを有効利用するということを原子力政策の基本方針としておるわけでありますが、今後、六ケ所再処理工場で回収されるプルトニウムは原子力発電において着実に利用されるものであります。既に我が国が保有する四十三トンのプルトニウムにつきましても同様であります。したがって、これらのプルトニウムは余剰とは考えておりません。  今後とも、着実に核燃料サイクルの推進に取り組んでまいりたいと考えております。
  489. 近藤正道

    近藤正道君 現在ある四十三トンは具体的に使途が定まってないじゃないですか。どうしてそれが余剰でないと言えるのか私はさっぱり分かりませんが、先へ行きたいというふうに思います。  本日、金沢地方裁判所で志賀原発二号炉、この差止めの裁判がありまして、住民が勝訴いたしました。耐震対策が不十分、これが住民が勝った主な理由だそうでございます。  耐震基準の誤り、実情に合わないことが指摘されたというふうに思いますが、設置許可をした担当大臣としてどんな感想をお持ちでしょうか。
  490. 広瀬研吉

    政府参考人(広瀬研吉君) 北陸電力の志賀原子力発電所の耐震設計につきましては、耐震設計審査指針に基づきまして、周辺の活断層など詳細な調査を実施して、想定すべき最大の地震動を策定し、原子力安全委員会による二次審査を含め、厳格に耐震安全性を確認しております。志賀二号機の安全性に問題はないと考えております。  なお、耐震指針の策定とその改定に責任を持っておられる原子力安全委員会からも、本日、志賀の発電所の安全審査につきまして、原子力安全委員会としては、耐震設計審査指針に基づき、耐震設計に関する基本的な方針の妥当性について判断したものであり、安全審査に問題はなかったという見解をいただいております。
  491. 近藤正道

    近藤正道君 皆さんそうおっしゃるけれども、現に金沢地方裁判所、一審ではありますけれども、耐震性に問題ありということで皆さんを敗訴させる、そういう判断を出しているわけでありまして、それに対してどういうふうに思っているかというふうに私、聞いているわけですよ。  いずれにいたしましても、これは通常の原発だけではなくて、「もんじゅ」だとかあるいは核燃料施設にも共通する私は大きな問題だというふうに思っています。  こういう判決が出た段階で、六ケ所のアクティブ試験、これはやっぱり問題なんではないか、少なくとも延期をすべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょう。
  492. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) 本日、金沢地方裁判所におきまして、今議員御指摘のように、北陸電力側が敗訴の判決を言い渡されたことは事実であります。この裁判は民事訴訟であり、経済産業省としてはこの当事者ではありませんので、現時点で私の方から本判決に対してのコメントを申し上げることはいかがかと思っておりますが、これらの点を十分参考にし、今後の原子力政策の推進に当たっていきたいと思っております。  志賀二号機につきましては、原子力の安全委員会による二次審査、ただいま保安院長からも御説明申し上げましたが、厳格な審査がなされております。このため、耐震安全性を含め、安全性には問題ないと考えております。  経済産業省としては、今後とも、原子力施設に対して厳格な安全規制を行い、それにより地元の方々を始め国民の皆さんの信頼を得るように努めてまいりたいと思っております。したがって、今回のこの裁判の結果が他の原子力発電所の建設計画等に対して直ちに影響を及ぼすというふうなことではないと判断をいたしております。
  493. 近藤正道

    近藤正道君 全く電力会社の方は設置許可を得たということを大前提に裁判をやったんですけれども、こういう結論になりました。私は、こういう中で六ケ所のアクティブ試験、ここに入るべきではないと強く指摘をさせていただきたいというふうに思います。  そして、松田大臣にお尋ねをいたしますけれども、金沢の裁判は、耐震見直し、これにやっぱり大きな影響を与えるんではないかというふうに思っております。松田大臣の所感もお尋ねをしたいというふうに思いますが、いずれにいたしましても、原子力安全委員会、耐震基準の見直し論議をしているわけでございますが、やっぱり更にこの論議を急ぐべきだと、速やかに不安を持っている国民に対して見直しのやっぱり結論をしっかり示すべきだと、こういうふうに思いますが、どうですか。
  494. 松田岩夫

    国務大臣(松田岩夫君) お答え申し上げます。  委員御案内のように、現在原子力安全委員会では、原子炉施設の耐震安全性に対する信頼性を向上させることを目的とした耐震設計審査指針の改定に向けた議論を進めております。  現在、議論は大詰めの段階にあると聞いております。原子炉施設の耐震安全性については、国民の皆さんの関心も高いことであり、私としても、是非早期に取りまとめが行われるよう尽力したいと思っております。
  495. 近藤正道

    近藤正道君 そういう中で、玄海、伊方、そしてさらに、指摘をされております浜岡についてもプルサーマルの論議が加速をされております。一方で、今ほどお話がありました原子力安全委員会が耐震見直しの論議を行っております。そして、その上で、今日の判決でございます。私は、せめてこのプルサーマル計画については、耐震見直しの論議の決着が付くまで私はストップされるべきだと、それが政治の責任ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  496. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) 耐震指針につきまして、現在の指針の妥当性に問題があるわけではないと考えております。原子力安全委員会は、信頼性の一層の向上に向け見直しを行っているものと理解をいたしております。  また、プルサーマル、すなわちウランとプルトニウムの混合燃料の使用によって原子炉の耐震安全性が影響を受けるものではありません。このため、指針の見直しが行われていることを理由にプルサーマル計画を中止する必要はないと考えております。
  497. 近藤正道

    近藤正道君 全く私はおかしいと思うんです。やっぱり安心は政治がしっかりと与えなければならないというふうに私は思っています。原発の耐震性に問題ありということで今見直しの論議が行われている中、プルサーマルというより慎重でより厳重な管理が必要とされるそういう新たなレベルに突入すべきで私はないというふうに思っております。それが政治の私は最低限度の責任ではないかというふうに思います。  重ねて大臣の見解、聞かせてください。
  498. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) 私も、念には念を入れということで、先般も青森に出張しまして現場を調査をしてまいりました。そして、関係者の皆さんも今この問題の受入れに対して慎重に対応しているところでありまして、既に隣県からもいろんな御意見や御質問に対しても徹底的に対応するようにいたしておるところであります。  御意見は御意見として十分承っておきたいと思いますが、国の原子力政策推進の基本については、これは基本方針どおり取り組んでいきたいと、このように思っております。
  499. 近藤正道

    近藤正道君 プルサーマルといっても特別なものではないと、交付金の増設だとか新設はないと、これまで皆さんはそういうふうに言ってきたのに、なぜか今回、来年度予算の中で核燃料サイクル交付金制度を創設されました。金の力で強引に進める、あめをぶら下げて同意を迫る、こういうやり方は道義、品格に欠けるやり方ではないか、私はそういうふうに思います。  核燃料サイクル交付金制度を撤回して、住民が冷静かつ自主的に判断できる、そういう体制、方法をしっかり取るべきではないかと思います。いかがでしょうか。
  500. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) 使用済燃料を再利用するプルサーマルは、原子力発電所において資源を有効利用するものであります。安全の確保を大前提に、地元の御理解と御協力を得るために、今後とも私どもは地方振興を図ることが必要であります。関係者の皆さんは国の政策に協力をする、そういう態度で熱心に今日まで取り組んでまいりました。  青森の計画につきましては、このことが最初にスタートしてから、議員も御承知のとおり二十年を経過しておるわけでございます。その間に地元の村そして県、周辺の市町村関係の皆さんの今日までの御努力に対して、私どもとしては平成十八年度予算案について核燃料サイクル交付金を創設したところでありまして、地元に対して地域振興を図るという点で対応しているわけでありまして、今議員の方から御指摘ありました金の力で云々というふうな、そういう気持ちは毛頭ありません。そういうことは、むしろ地元の御協力をいただいた関係者に対して失礼なことでありますから、私どもはそうしたことに対しては慎重の上にも慎重に対応していきたいと思っております。  この交付金は、平成十八年度までにプルサーマルの実施に同意した地域を支援する制度といたしております。これは、電源特会に対して様々な御意見がある中で、交付金の新設に当たり時限的な措置としたものであります。平成十九年度以降は、十八年度の交付金の利用状況やその後の支援の必要性等を勘案し、今議員からもいろいろ御意見をいただいたことなども十分念頭に入れて今後判断をしてまいりたいと思っております。
  501. 近藤正道

    近藤正道君 最後に小坂大臣にお尋ねをしたいと思います。  ナトリウム漏れ事故で止まったままの「もんじゅ」、これが〇八年、再運転を目指して今動き出しておりますし、予算措置もとられております。十年以上の長期停止後の運転再開は、原発でも世界的にまれではないか、まして高速増殖炉では前例がないというふうに思っています。志賀原発の判決が出た今、廃炉を求める人たちが九十五万の署名をもって再考を求めております。改めてこの署名を真摯に受け止め、再考すべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  502. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) お答えいたします。  十年以上停止した後に運転を再開した原子力発電所はまれであることはそのとおりでございますが、「もんじゅ」の安全性につきましては、徹底した原因究明及び設備全体にわたる安全総点検等に基づく改造工事を実施していること、そしてまた、安全規制を担当されます原子力安全・保安院において長期間停止している設備、機器等の健全性を含めた安全確保の全般にわたる検証を実施していること、これらによりまして安全に運転が行われるものと考えております。  文部科学省としては、高速増殖炉サイクル技術の確立によりまして長期的なエネルギーの安定供給を確保すると、このことは国の存立基盤を成す重要課題と認識をいたしておりまして、このため、国民の皆様の声を真摯に受け止めつつ、安全の確保を大前提として「もんじゅ」の運転再開に向けて努力をしてまいりたいと考えております。
  503. 近藤正道

    近藤正道君 六ケ所の再処理工場も、そして「もんじゅ」も、そしてプルサーマルも国民は納得してないということを申し上げまして、質問を終わります。
  504. 小野清子

    委員長小野清子君) 以上で近藤正道君の質疑は終了いたしました。  次回は来る二十七日午前九時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時六分散会