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2006-05-22 第164回国会 参議院 本会議 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年五月二十二日(月曜日)    午後一時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二十六号     ─────────────   平成十八年五月二十二日    午後一時 本会議     ─────────────  第一 証券取引法等の一部を改正する法律案及   び証券取引法等の一部を改正する法律施行   に伴う関係法律整備等に関する法律案(趣   旨説明)  第二 健康保険法等の一部を改正する法律案及   び良質な医療を提供する体制の確立を図るた   めの医療法等の一部を改正する法律案趣旨   説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 扇千景

    議長扇千景君) これより会議を開きます。  日程第一 証券取引法等の一部を改正する法律案及び証券取引法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案趣旨説明)  両案について提出者趣旨説明を求めます。与謝野国務大臣。    〔国務大臣与謝野馨登壇拍手
  3. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) ただいま議題となりました証券取引法等の一部を改正する法律案及び証券取引法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案趣旨を御説明申し上げます。  まず、証券取引法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  本法律案は、金融資本市場を取り巻く環境の変化に対応し、投資者保護のための横断的な法制として、証券取引法を改組して金融商品取引法、いわゆる投資サービス法とする等の整備を行うことにより、利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上、貯蓄から投資に向けての市場機能の確保及び金融資本市場国際化への対応を図ろうとするものであります。  以下、その大要を申し上げます。  第一に、証券取引法の題名を金融商品取引法に改めるとともに、組合契約等に基づく権利が包括的に有価証券定義に含まれるよう整備を行い、デリバティブ取引定義有価証券以外の資産を原資産とするもの等も含めるなど、その規制対象の拡大を図ることとしております。さらに、有価証券及びデリバティブ取引に係る販売勧誘のほか、投資助言投資運用及び顧客資産の管理に係る業務金融商品取引業と位置付け、原則登録制とするとともに、所要行為規制等整備することとしております。  これと併せて、銀行法保険業法のほか関係法律においても、幅広い金融商品についての横断的な法制整備を図る観点から、金融商品取引法における金融商品取引業に係る行為規制準用等所要整備を行うこととしております。  第二に、公開買い付け制度について、規制対象範囲拡充等投資者への情報提供充実等のための規定整備を行い、また、大量保有報告制度について、機関投資家に認められている特例報告提出頻度及び期限の短縮等を図るための規定整備を行うこととしております。さらに、企業内容等開示制度について、四半期報告制度整備財務報告に係る内部統制評価制度整備等所要整備を行うこととしております。  第三に、開示書類虚偽記載や不公正取引等に係る罰則を強化し、また、相場操縦行為等に係る規定整備を行うこととしております。  第四に、取引所における自主規制業務が適切に運営されることを確保するため、自主規制業務を担う別法人として自主規制法人を設立することができ、又は株式会社形態取引所自主規制委員会を設置することができるよう、所要制度整備することとしております。  次に、証券取引法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  この法律案は、証券取引法等の一部を改正する法律施行に伴い、金融先物取引法等の四法律を廃止するとともに、金融商品販売等に関する法律等の七十二法律規定整備等を行うものであります。  以上がこれらの法律案趣旨でございます。(拍手)     ─────────────
  4. 扇千景

    議長扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。田村耕太郎君。    〔田村耕太郎登壇拍手
  5. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 私は、自由民主党及び公明党を代表して、政府提出証券取引法等の一部を改正する法律案外一法案につき質問いたします。  私事ではありますが、さきの連休にアメリカを訪問し、アメリカ証券監視委員会ニューヨーク証券取引所、ナスダックを訪れ、経営幹部から貴重な話を聞くことができました。そこで、資本市場発展のためには投資家信頼、これが何よりも大切であると再認識しました。  御存じのように、アメリカでは、エンロンワールドコム等粉飾決算事件により投資家がその資本市場への信頼を失い、株価は低迷し、社会に多大な損失が生まれました。その反省から、企業内部統制情報開示強化する法律を作り、その法律執行市場監視委員会監査法人役割を分担しながら徹底的に行ってきました。そして、ニューヨーク市場では、このたび株価が最高値を更新することができました。徹底した内部統制情報開示強化、それが株価更新という形で実を結んだのです。投資家信頼あっての資本市場なのです。  また、ニューヨークでは、日本に積極的に投資する投資家、これから初めて日本投資したいと考えている投資家らに会い、話を聞くことができました。多くの投資家日本企業そして日本経済の更なる発展可能性を信じ、これから積極的に投資したいと言っておりました。  世界基準で見て優れた技術、図抜けたシェアを持つ企業内外投資家によって再認識又は新たに発掘され、株価経済を引っ張るという好循環が生まれています。これからの我が国資本市場発展の余地、裏を返せば、内外投資家の期待は大きいと思われます。  しかしながら、我が国でもバブル崩壊後の最安値から大きく株価は上昇はしましたが、先般のカネボウ事件ライブドア事件など、資本市場信頼を大きく揺るがす事件が発生しています。このような事件が二度と起こらないような環境整備を続けていくことが不可欠です。  我が国は今まで製造業中心に繁栄してきました。しかし、これから我が国が置かれる経済的環境考えますと、製造業だけでは今までと同等の繁栄は果たせないと思われます。製造業に加え、その豊かな金融資産にも汗を流して働いてもらう投資大国をも標榜すべきと考えます。  投資とは、自らの責任で自らが、発展する、社会に貢献すると判断した企業にお金を出すことにより、社会発展の基盤である企業活動を活性化し、それを通じて企業社会、そしてその構成員皆が潤うことになる、こういうことを目指す尊い行為です。投資という行為物づくりをも支えることになるのです。  こうした観点から、ポテンシャルが高い我が国資本市場魅力を更に高めていくためには、投資家が安心して投資を行える環境整備に取り組まねばなりません。具体的には、あらゆる投資家に対して正確な情報が公正に開示され、その情報を持って安心して投資ができ、公正に価格が形成されねばなりません。資金調達する企業仲介機能を果たす業者、市場開設者一般投資家、これらすべての者が高い志とモラルを持って取引を行う環境整備を急がねばなりません。そのためには資本市場において不断の改革総理がリーダーシップを持って強力に進めていかれるべきと考えます。  総理の数あるイニシアチブの一つインベスト・ジャパンがあります。日本に対する直接投資を倍増させるというものです。そのためにも資本市場が果たす役割が大きいのです。インベスト・ジャパンを標榜される総理に対し、資本市場改革の決意をお伺いします。  今回の法律案は、我が国資本市場基本法ともいうべき証券取引法を抜本的に改正するものです。この法律案のねらいは何か。その前提として、今後の我が国資本市場のあるべき姿、果たすべき役割をどのように考えておられるのか。これらについて総理にお伺いします。  次に、この法律執行体制についてお伺いします。  この法律の意図をより効果的に実現させるためには、執行の効率を上げていくことが重要だと考えます。個人的には、証券取引所我が国監視委員会において、会計市場取引を熟知した専門家スタッフを拡充し、彼らにより市場市場における取引を徹底的に監視するべきと考えます。ここでは個別の議論はしませんが、執行重要性と、それに対する政策措置についてどのようなお考えでいらっしゃるのか、金融担当大臣にお伺いします。  次に、公認会計士監査法人在り方についてお伺いします。  適正な情報開示のためには、公認会計士監査法人が厳正な監査を行わねばなりません。ところが、カネボウライブドア事件と、監査法人公認会計士を巻き込む不祥事が続いております。この根本原因は、公認会計士監査法人インセンティブねじれにあると考えます。  本来、公認会計士監査法人株主のために監査を行うのです。しかし、監査契約内容報酬経営陣によって決められることが大半となっています。よって、株主より経営の方を向いて監査をしてしまう可能性が出てきます。  アメリカでは、独立取締役のみで構成される監査委員会報酬決定公認会計士の選定を行うことになっています。我が国ではこのインセンティブねじれにいかに対処されるのか、金融担当大臣のお考えを伺います。  最後に、金融教育について総理にお伺いします。  厚みのある資本市場の実現のためには幅広い投資家の参加が必要です。また、不正行為を行う者にもだまされない自己防衛力の高い投資家の養成も大切です。そのためには、国民投資に対して正しい基本知識を持つことが重要です。投資は単なる金もうけのためではなく、投資を通じて社会発展に貢献するのだ、そういう志こそ教えていくべきと考えます。  言い換えれば、我が国金融立国投資大国として発展するためには、それにふさわしい知見を国民皆さんに持ってもらうことが不可欠だと考えます。総理のお考えを伺います。  今回の法案を始めとする改革努力が、我が国資本市場を更に透明で公正なものにし、国際的にも厚みがあって国際競争力にたけた市場として更に飛躍していくことを期待して、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎登壇拍手
  6. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 田村議員答弁いたします。  我が国資本市場改革についてですが、私は、外資警戒論から外資歓迎論考え方を改めるべきであり、外国企業日本市場魅力を感じ投資を拡大できるような環境整備をすることが日本経済発展につながると考え、現在、外国から日本への投資を五年間で倍増させる計画を推進しております。このような考え方の下に、今回の金融商品取引法を適正に実施していくことにより、公正、透明で内外投資家資金調達者にとって魅力的な、国際的に信頼される市場を構築してまいりたいと思います。  今回、法案のねらいと今後の我が国市場在り方についてですが、今回の法案は、幅広い金融商品について横断的な利用者保護の枠組みを整備し、市場公正性透明性を確保することで利用者利便を向上させ、貯蓄から投資への流れを支え、国際市場としての我が国市場魅力を更に高めることを目指すものであります。今回の法案の適切な実施により、内外投資家資金調達者が幅広く参加する、国際的にも信頼される活力ある市場の構築を図ってまいります。  金融教育についてですが、国民一人一人が金融やその背景となる経済についての基礎知識と、自立した個人として金融サービス利用について判断し、意思決定する能力を身に付けることが求められていると思います。こうした知識を充実する機会を提供する金融経済教育の取組は重要であり、関係省庁一体となって、関係団体とも連携しつつ積極的に取り組んでまいります。  残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣与謝野馨登壇拍手
  7. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 田村議員から、執行重要性とそれに対する政策措置についてお尋ねがございました。  市場公正性を確保し、投資家保護を図る上で執行が重要であることは御指摘のとおりでございます。このような観点から、金融庁監視委員会のほか自主規制機関等が必要な連携を取り、それぞれの役割を果たすことが重要であります。そのために、例えば、専門的な人材の育成強化のほか、法令の周知、自主規制充実強化などの施策を着実に実行し、的確な執行に努めてまいります。  次に、公認会計士監査法人在り方についてお尋ねがございました。  経営者との関係において、会計監査人地位強化することは重要な課題であり、先般施行された会社法においては、監査報酬決定する際に経営者をチェックする立場監査役会等の同意が必要とされたところでございます。監査法人制度在り方等については、金融審議会において総合的な検討に着手したところであり、御指摘の点も踏まえ、会計監査人地位強化等について、関係省庁とも連携しつつ、十分に検討を進めてまいりたいと考えております。(拍手)     ─────────────
  8. 扇千景

    議長扇千景君) 櫻井充君。    〔櫻井充登壇拍手
  9. 櫻井充

    櫻井充君 私は、民主党・新緑風会を代表いたしまして、ただいま議題となりました証券取引法等の一部を改正する法律案に関して、小泉内閣総理大臣及び関係大臣質問いたします。  なお、あらかじめ申し上げさせていただきますが、答弁が不十分な場合には再質問をさせていただきます。  さて、小泉総理政権に就かれましてから五年が経過いたしました。小泉総理の言葉をかりれば、改革がどんどん進んでいって、そしてこの国は良くなったような、そういう御発言がございますが、私にはとてもそうは思えません。例えば、国の財政はどうでしょうか。小泉総理が就任されたときの税収一般会計で四十七・九兆円、今年の税収の見積りは四十五・九兆円、要するに税収は落ち込んだままです。こういった中で財政再建をすること自体無理な話でして、小泉総理になってから発行した新規の国債の額は二百兆円に達しようとしています。つまり、歴代の総理の中で実を言うと一番財政を悪化させたのは小泉総理であり、しかし、そこの中でさも財政再建を行ったように振る舞っているのも小泉総理です。  そこで、総理にお伺いいたしますが、総理財政を悪化させたという認識はおありでしょうか。さらに、小泉改革によってこの国のどこが良くなったのか、さらにどの点に問題が生じたのか、具体的に、そして根拠を示してお答えいただきたいと、そう思っています。  規制緩和競争社会、そして市場原理、これが小泉内閣のキーワードです。規制を緩和し、そして競争社会を実現する。官が余り関与せず市場原理によって淘汰されていく。このことだけ聞いてみると、優良企業が勝ち残っていくような印象を受けます。ところが、実態は違っています。なぜならば、本当の意味での競争が行われていないからです。規制緩和流れの中で不正を行う、そして、法律違反まではしないけれど、脱法行為を行ってくる、そういうことによって利益を上げている人たち大半であって、その典型がライブドアだというふうに考えてきています。  ライブドアが行ってきたことは、投資事業組合を悪用して、そして粉飾決算を行う、それだけではなくて、大量の時間外取引を行う、常識外れ株式分割を行う、そういった手法で利益を上げてきたように見せ掛けて、そして株価時価評価を引き上げてまいりました。この問題から浮かび上がってくることは一体何なのかというと、規制改革は進んだかもしれないけれど、そのルールがきちんと担保されてきていない、そして監督体制が不十分だということです。  要するに、小泉改革で進められている規制緩和は、野っ原でけんかをしているようなものです。本来であれば、この国の国技である相撲のように、まずきちんとした土俵が定められ、そしてルール整備されなければいけません。そして、そのルールにのっとって勝負が行われ、そして、その勝ち負けを判定するために行司がいて、その行司の判定が正しいかどうかを判定するために、実は五人の審判がいます。きちんとした競争を行っていくためにはルール整備が必要であり、そしてもう一つは、こういった監視体制が必要になってまいります。  小泉総理は、この規制改革を進める上に当たってきちんとした形でルール整備され、監督体制整備されているとお考えでしょうか。また、規制緩和が進められる中で経済が活性化されたとすればどの分野なのか、具体的にお答えいただきたいと思います。今回の法案改正によって本当に第二のライブドアが出現しないようになるのか、この点については与謝野金融担当大臣にお伺いしたい、そう思います。  次に、公認会計士監査制度について質問いたします。  中央青山監査法人は、カネボウ粉飾決算の問題で二か月間の営業停止処分を受けました。しかし、こういった粉飾決算が続いてきているのは、公認会計士企業モラルの問題もありますが、しかしもう一点は、公認会計士企業に雇われている、つまり公認会計士立場が弱いという点にも問題があります。  そこで、その点を解決するために我が党では、公開会社においては、公認会計士が、会社経営者違反行為をした場合、それを発見した場合に証券取引等監視委員会に報告する、そういう制度を義務化するべきではないかという提案をしていますが、この点に関して金融担当大臣の御所見をお伺いいたします。  さらにもう一点、悪用された投資事業組合に関して質問いたします。  先日、財政金融委員会で、私は産業再生機構入りいたしましたカネボウの問題について質問いたしました。そのカネボウは今、トリニティに営業譲渡され、そしてその一部であるカネボウフーズは投資事業組合に譲渡されていますが、その大半日本国内法規制されているわけではなくて、ケイマン法規制されておりました。今回の法律改正で、国内投資事業組合に関しては登録制度が義務化され、悪用に一定の歯止めが掛けられています。このように外国組合がつくられ、そしてマネーロンダリング等に悪用された場合に、金融庁としてどのような形で対処できるのでしょうか。金融担当大臣の御所見をお伺いしたいと思います。  次に、監視体制に対して質問いたします。  私たちは、現在の証券取引等監視委員会中心とした監視体制では不十分であり、金融庁から独立したイギリスにあるようなFSAのような組織を構築するべきではないかということを提案してきています。今回の政府提案では、証券を含む金融商品証券取引等監視委員会が、商品先物経済産業省農水省が検査・監督に当たるとしています。証券取引等監視委員会には押収差押権限がありますが、経済産業省農水省にはこの権限がありません。後で述べますが、商品先物に対してのトラブルはもう圧倒的に多く、これを取り締まるためには立入検査だけでは不十分であり、押収差押権限を持たせるべきだと考えております。  この点を踏まえて各担当大臣にお伺いしたいと思いますが、商品先物経済産業省農水省だけで監督するのではなく、金融庁と共管し、そしてその実務を証券取引等監視委員会に担わせる、そういう制度が必要ではないかと思いますが、この点について御質問いたします。  そして、もう一点、理想を言えば、我々が主張しているような金融庁から独立したイギリスにあるようなFSAのような組織を構築するべきではないかと思いますが、この点に対しては金融担当大臣に御所見をお伺いします。  もう一点、縦割り行政弊害について質問いたします。  今回の法律改正で、金融庁は相当頑張ったと思います。しかし、省庁の壁は厚く、金融商品やそして商品先物に対しての規制在り方が異なっています。例えば、金融庁所管金融商品に関しては、不招請勧誘に関して原則禁止になっていますけれども、しかし商品先物に関しては不招請勧誘は認められております。こういった形で、省庁が異なることによって規制が違ってくるのでは投資家皆さんが混乱するのは当然のことです。  さらには、国民生活センターに寄せられている投資に関する苦情の件数を調べてみますと、証券に関しても商品先物に対しても四千件でほぼ同程度となっています。ところが、口座の開設数は、証券は六百七十五万件、商品先物に関しては十一万四千件で、実は六十分の一になっています。このことから分かるように、投資に対するトラブルの割合は商品先物の方が圧倒的に多いということです。また、この問題に詳しい弁護士の先生方にお話をお伺いしてみると、自分から投資をした人たちよりも勧誘を受けて投資をした人たちトラブルの方が圧倒的に多いんだと、そういうような説明も受けております。  そのことから考えてみると、商品先物の不招請勧誘に関して禁止するべきではないかと考えますが、関係大臣、なぜ各省庁によって不招請勧誘規制が異なっているのか、この点について御説明いただきたいと思いますし、小泉総理縦割り行政弊害を今後どうやって是正していくのか、そのことについて御答弁いただきたいと思います。  最後に、政策決定過程について、プロセスについて質問させていただきます。  私は、小泉政権になって本当にずさんになったと、そう考えています。今行われている、もちろん、省庁の根回しが済んで自民党の総務会にかけて、そして形だけの閣議決定をやっていく、その過程にも問題はあります。いわゆる族議員という方々が横やりを入れて政策をゆがめることもあります。しかし、今の新しいシステムよりまともだと思っているんです。それはなぜかというと、その政策決定にかかわってくる人は国会議員であり、そして国家公務員であり、責任を問われる人たちだからです。  現在は違います。経済財政諮問会議を見てください。いわゆる民間委員という方々政策を決められ、その政策内容を十分理解されているとは思えない総理がお墨付きを与え、トップダウンでその政策が決められていきます。問題は、この民間委員方々責任を問われることもなく、しかもある特定の大臣の意見と一致した人だけが集められ、その方々企業利益が追求されている、私はここに問題があると思っています。  テレビドラマドラゴン桜」の中で、勝ち組勝ち組のためにルールを作っている、だから勝ち組は一生勝ち組なんだ、そういうせりふがありました。まさしく今そのような政治が行われています。これでは格差が付くのは至極当然のことです。総理は、今の政治決定システムに対して、何か問題があるとお考えでしょうか。さらに、経済財政諮問会議だけではなくて、規制改革会議議長、この方も自社の利益を上げるために規制緩和を行っているんじゃないか、そして利害の抵触に当たるんじゃないかということを指摘される方もいらっしゃいますが、この点に対しての総理の御答弁を求めたいと思います。  小泉総理は、格差が付くことは仕方がないことだと、そういう発言をされています。確かに、競争社会において格差が付くのは当然のことでしょう。しかし、政治家がそういう発言をすることは私は不適切だと思っています。例えば、がんの末期の患者さんに対して医師が、あなたは病気だから死ぬのは仕方がないですね、そう言ったら医師はどう問われるでしょうか、そして患者さんはどう思うでしょうか。こういう責任を放棄した医師発言と私は小泉総理発言は全く同じではないのか、そういうふうに感じています。本来、医師がやらなければいけないことは、その患者さんの残り少ない人生を有意義に生きるようにできるために一緒に頑張っていくことだと、私はそう思います。  再度申し上げますが、小泉総理格差が付くことは仕方がないのだと、そういう発言をされたことは、私は政治家として、そして総理として責任を放棄した不適切な発言であり、現在の職に就く資格はないと思いますが、この点について総理の御見解をお伺いして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎登壇拍手
  10. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 櫻井議員に答弁いたします。  財政状況の認識についてですが、私は就任以来、財政健全化に向け努力してきたところであります。公共事業費を約四割削減するなど十三兆円を上回る歳出改革を進めつつ、経済成長を実現させているところであります。さらに、十八年度予算においても、一般歳出の水準を二年続けて前年度以下にするとともに、民主党は二〇〇八年度予算において実現するとされた国債発行額三十兆円未満も二年前倒しして実現し、財政健全化への歩みを進めたところであります。民主党より先を行っているということであります。  今後の課題は、引き続き簡素で効率的な政府を目指して徹底した行財政改革を行うとともに、持続的な経済活性化を実現していく上で財政がその足かせとならないようにするため、高齢化により増加する社会保障の財源をどう賄うか、また膨大な債務をどうすべきかといった点も含め、将来に向けた財政健全化への道筋を示していくことであると考えております。このため、本年六月を目途に、歳出歳入を一体とした財政構造改革の方向についての選択肢及び工程を明らかにし、改革路線を揺るぎないものとしてまいります。  小泉改革に、どこが良くなり、どこに問題点があるのかというお尋ねであります。  私は、我が国の再生と発展に向け、金融、税制、規制、歳出にわたる広範囲な構造改革を進めてきました。その結果、就任当初に最も大きな影と言われた主要行の不良債権問題を正常化させるとともに、郵政事業の民営化などを実現しました。また、我が国経済は民間需要中心の持続的な回復軌道をたどり、実質GDP成長率は二〇〇一年度マイナス〇・八%でしたけれども二〇〇五年度には三%に回復、失業率はピーク時の五・五%から二〇〇六年三月には四・一%まで低下、有効求人倍率は二〇〇六年三月には一・〇一倍と一を超える水準といった成果が上がっていると考えております。  他方で、将来の格差拡大につながるおそれのあるフリーター、ニート等、若年層の非正規化や未就業の増加、生活保護受給者の増加といった最近の動き、また回復にばらつきが見られる東京などの都市と地方の格差といった最近の動きには注意が必要であると考えております。  このため、引き続き景気の回復を図るとともに改革を進め、地域や多くの国民が持っている潜在力が自由に発揮され、国民一人一人が将来の夢を実現、実感できる活力ある経済社会の構築に向けて全力で取り組んでまいります。  規制改革についてですが、これまで進めてきた規制改革は、例えば、金融部門において株式売買委託手数料が自由化され個人投資家の拡大につながったこと、最低資本金規制が緩和され三万社以上が新規に起業したことなど、幅広い分野で経済の活性化に寄与していると考えております。  また、それぞれの規制改革検討するに当たっては、生命、身体、健康や個人の権利等に係る問題について当然ながら十分に配慮しつつ、情報開示の義務付け、独占禁止法、公正取引委員会の審査機能等の見直し・強化証券市場の監視機能の強化など監視体制整備、消費者契約法の改正など安全、安心のための新たなルール作りなどにも同時に取り組んできたところであり、今後とも必要なルール監視体制整備を図りつつ、規制改革を推進していきたいと考えております。  縦割り行政についてですが、勧誘その他の取引に関する規制内容は、取引の性質や利用者被害の実態等を勘案して定められるべきものであり、必要があれば所管省庁の枠を超えて対応すべきものと考えております。本法案では、幅広い金融商品に対して、所管省庁の枠を超えて横断的な投資者保護の枠組みを強化しているところであります。  経済財政諮問会議など、現在の政策決定システムについてですが、経済財政諮問会議は私が議長として責任を持って運営しているところであります。  これまで、経済財政に関し優れた識見を有する民間有識者から有益な意見を提出していただき、委員間で議論の上、いわゆる骨太の方針を策定するなど、適切な経済財政運営や構造改革の着実な推進に貢献してきたと考えております。  また、規制改革・民間開放推進会議における審議や答申の決定等は、優れた識見を有する委員が幅広く意見を聴取の上、合議により行われており、御指摘のような利害の抵触の問題があるとは考えておりません。  いずれにしても、最終的な政策決定は内閣又は国務大臣責任で行うものであり、委員の利益につながる政策が作成されているとの指摘は当たらないと考えております。  格差についてでありますが、私は、どの時代、どの国にも、どの企業においても、どの個人においても、どの地域においても違いがある、これは必ずしも悪いことではないと思っております。人間、持てる力にも違いがあります。要は、お互い助け合いながら、自ら助ける精神と自らを律する精神を大切にして、努力すれば報われる社会を目指していくことが大切であり、この点に関し改革を批判する声も聞きますが、改革を行っていなければどうなっていたか、こういう点も考える必要があると思っております。  ただし、どうしても一人でやっていけない方々、そういう方に対しては助け合いながら、支援の手が差し伸べられるということは必要であります。また、勝ち組とか負け組に固定せず、常に様々なチャンスが与えられるという社会が好ましいと考えております。一度や二度敗れてもまた挑戦しよう、選挙で一回や二回落選してもまた当選しようという人もたくさんいますし、様々なチャンスが与えられる、そしてより個人の持てる力を発揮されやすいような環境整備することが必要だと思います。  これまで景気の回復を図り、雇用・中小企業のセーフティーネットの確保、ニート、フリーター対策の充実、地域経済の活性化策などに取り組んでまいりました。さらに、現在、官房長官の下で、多様な機会が与えられ何度でも再挑戦が可能となる仕組みについて政府全体として取り組むため、いわゆる再チャレンジ推進会議を設け議論を行っているところであり、影と言われる部分についてはしっかりと手当てをしてまいりたいと考えております。  残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣与謝野馨登壇拍手
  11. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 櫻井議員にお答えいたします。  今回の法改正によるルール整備ライブドア事件についてのお尋ねがございました。  本法案では、ファンドを含む幅広い金融商品に関する横断的な投資者保護法制整備、四半期開示の法定化など開示制度の充実、罰則の強化などの方策を講じております。これらを通じて、投資家保護や不公正取引の防止にしっかりと取り組むことにより、我が国市場公正性透明性が一層向上し、国際的にも信用される市場が構築されるものと考えております。  次に、監査において違法行為を発見した場合の通告義務についてのお尋ねがございました。  会計監査人監査過程経営者の違法行為を発見した場合には、会社法上、監査役等に報告して適切な対応を求めることとされております。また、違法行為の結果、財務書類に虚偽がある場合には、不適正意思を表明することとされており、会計監査人がこうした手続をしっかりと行うことがまずもって重要であると考えております。  一方、御指摘のような通告義務を課すことについては、市場規律や会社内部の自浄機能の発揮を前提として、財務諸表の適正性について意見を表明するとの監査の性格を大きく変えることになる等の指摘もあり、なお慎重に検討すべきものと考えております。  次に、国外の投資事業組合を通じたマネーロンダリング等への対応についてお尋ねがありました。  現行法上、マネーロンダリング等の防止のためには、銀行や証券会社等に対し、顧客等の本人確認や疑わしい取引の届出を義務付けております。今回の改正では、国内だけではなく、国外の投資事業組合等のファンド持分について販売勧誘を行う者に対しても、原則として業者としての登録を求め、マネーロンダリング等の防止のための義務を適用することとしており、当局としては、こうした枠組みを通じてマネーロンダリング等への適切な対応を図ってまいります。  次に、商品先物の検査・監督の所管についてのお尋ねがありました。  商品先物の検査・監督金融庁も共管するとの御提案につきましては、商品先物取引は農産物や鉱物など現物の生産、流通に係る施策と密接に関連すること、三元行政による弊害が新たに生じるおそれがあること、金融庁及び証券取引等監視委員会の人員・体制面にも制約があること等に関して慎重な検討が必要だと考えております。まずは、現在の所管官庁において必要な体制整備を進めるとともに、違反行為の検査・監督に厳正に取り組むことが重要であると考えております。  最後に、金融行政機構の在り方についてのお尋ねがございました。  民主党が主張されている日本FSAの設置については、まだその詳細を承知しておりませんので、所見を申し上げることは困難でございます。  金融庁としても、今後とも、人員の増強、専門的人材の育成強化等により、必要な体制整備に引き続き努めてまいります。(拍手)    〔国務大臣二階俊博君登壇拍手
  12. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) 櫻井議員にお答えをいたします。  商品先物取引の検査・監督権限についてのお尋ねでありますが、商品先物取引は、石油などの現物取引の価格変動リスクに対して保全機能、つまりヘッジ機能を提供するなど重要な産業インフラであると考えております。このため、商品の生産、流通に係る政策と一体不可分であり、経済産業大臣及び農林水産大臣がその規制責任を有しているものと考えております。  昨年五月、大幅に規制強化しました改正商品取引所法を施行し、経済産業省としても、その検査・監督体制強化した結果、商品先物取引に係る苦情件数が大幅に減少しております。このため、引き続き、経済産業省及び農林水産省が検査・監督に全力を尽くすことが重要であると判断をいたしております。  不招請勧誘規制についてのお尋ねでありましたが、金融商品取引法案においては、一律に不招請勧誘を禁止するのではなく、店頭金融先物取引のみを政令により指定し禁止する方向であると伺っております。商品取引所法においては、取引所取引について、一度断わった者に対する再勧誘を既に禁止しております。また、個人を対象とする店頭取引については、不招請勧誘はもとより、取引そのものを禁止しております。  このように、商品性や実態等を勘案し、それぞれの商品について利用者保護規制が講じられているところであります。したがって、今直ちに不招請勧誘取引規制は必要でないと考えております。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣中川昭一君登壇拍手
  13. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) 櫻井議員の御質問にお答えいたします。  まず、商品先物取引の検査・監督業務の所管につきましてのお尋ねでございますが、商品先物取引投資としての側面がある一方、当業者における、農産物取引における価格変動リスクに対して、リスクヘッジによってこれらの物品に対しての流通を円滑にするというような産業基盤としての役割を果たしております。このため、商品先物取引におきましては、従来から現物取引の生産や流通をめぐる政策と密接に関連するものとして、必要な商品取引における規制を行っているところであります。  今後とも、農林水産業を所管する農林水産省におきまして、必要な保護を含めまして、法に基づきまして適切な指導管理を行ってまいりたいと考えております。  次に、商品先物におきます不招請取引勧誘につきましてのお尋ねでございますが、いわゆる不招請勧誘を禁止することにつきましては、営業の自由との関連や他の金融商品との関連を慎重に検討することが必要であるというふうに考えております。  なお、金融商品取引法案におきましては、不招請勧誘の禁止は、政令で指定することが必要であると考えておりますので、その対象は外為取引の店頭取引に限定して考えてやっていかなければならないと考えております。商品取引所法では、一度断った商品に対する再勧誘を禁止する措置を既に講じており、同法の適切な運用によりこの委託措置の徹底を図っていきたいと考えております。(拍手
  14. 扇千景

    議長扇千景君) 櫻井君から再質疑の申出があります。これを許します。櫻井充君。    〔櫻井充登壇拍手
  15. 櫻井充

    櫻井充君 総理に三点再質問をさせていただきたいと思います。いつも再質問をしますと答弁書をそのままお読みになりますが、その場合は再々質問させていただきますから、きちんとした形で御答弁いただきたいと思いますが。  私が財政再建財政に関して申し上げた点は、二百兆円もの借金を抱えたというところに問題がないのか、このことによって財政を悪化させたという認識がないのかどうかという点について、その点について質問をさせていただいているわけです。  ですから、今のプロセス、過程をどうのということではありませんし、それから総理は、さもプライマリーバランスは民主党より二年先に黒字化できているようなお話をされていますが、それはあくまで計画であって、実現できているわけではありませんので、その答弁は私は不適切だと思っています。  それから、縦割り行政弊害に関しては、今回の問題だけではなくて様々なところで起こってきていて、行政改革そのものが小泉総理の今回の一番の大きな方針であるとすれば、そういう縦割り行政弊害をどう解決するのかということをお伺いさせていただいております。  それから最後は、要するに格差社会の問題の中で、私は、格差が付くことが、政治が是正しなければいけない。つまり、競争社会格差が付くのは当然のことですが、それを是正するのは政治家政治役割であって、一国の総理がそういったことが仕方がないとあきらめてしまうような発言をすることが政治家としての責任を放棄することではないのかということでお伺いしているわけです。ですから、改めて、その発言政治家として、そして総理として私は不適切ではないのかと思いますが、この点について御答弁いただいて、十分でなければ再々質問させていただきます。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎登壇拍手
  16. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 櫻井議員に再答弁いたします。答弁したつもりでありますが、あえて再質問されましたので再答弁いたします。  財政状況についてでございますけれども、私は財政健全化に取り組んできておりますし、民主党も二〇〇八年度予算においては国債発行額三十兆円未満をやると言っておりましたけれども、ということは、毎年度三十兆円を新規国債発行を超えるということを前提とされるからこういうことを言っているんだと思います。ということは、今財政健全化を急ぐ余り、経済全体を失速させてはいけないという考えだと思うんです。二〇〇八年度には三十兆円未満にするというのを既に二年前倒しで実施しちゃったんですから、実現しちゃったんですから、それは民主党、方向よりも早く実現しているということで、財政健全化にも取り組んでいるということは御理解いただけると思います。  縦割り行政弊害でありますけれども、私は、必要があれば所管省庁の枠を超えて対応すべきものと考えているという答弁をしております。本法案では、幅広い金融商品に対して所管省庁の枠を超えて横断的な投資者保護の枠組みを強化しているところであります。  また、格差についてでありますが、私は、どの時代においてもどの国においてもある程度格差があるということを言っているんです。どの人間においてもどの企業においても違いがある、持てる能力においても違いがある。しかし、これを固定化するのは好ましくない。それぞれの持ち味、能力が発揮されやすいような環境は整えていくべきだと考えているんです。そして、お互い助け合っていく、支え合っていく、どうしても自分一人で立ち行けない人に対してはしっかりとした社会保障制度の構築をして支えていく、これが大事だと思っております。(拍手
  17. 扇千景

    議長扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。      ─────・─────
  18. 扇千景

    議長扇千景君) 日程第二 健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案趣旨説明)  両案について提出者趣旨説明を求めます。川崎厚生労働大臣。    〔国務大臣川崎二郎君登壇拍手
  19. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、健康保険法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  我が国は、国民皆保険の下、だれもが安心して医療を受けることができる医療制度を実現し、世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきました。しかしながら、急速な高齢化など大きな環境変化に直面している中、国民皆保険を堅持し、医療制度を将来にわたり持続可能なものとしていくためには、その構造改革が必要であります。このため、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、都道府県単位を軸とした保険者の再編統合等の措置を講ずることとしております。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、予防を重視しつつ、生活習慣病対策の充実や平均在院日数の短縮といった中長期的な医療費適正化対策を計画的に進めるとともに、現役世代並みの所得のある高齢者の患者負担の引上げや療養病床に入院する高齢者の食費、居住費の負担の見直しなど短期的な対策を講ずることにより、医療費適正化を総合的に推進することとしております。  第二に、七十五歳以上の後期高齢者を対象とする新たな医療制度を創設することとしております。  この制度においては、七十五歳以上の高齢者の心身の特性等を踏まえ、それにふさわしい医療サービスを提供するとともに、保険料、現役世代からの支援及び公費を財源とし、都道府県単位ですべての市町村が加入する広域連合が運営することとしております。  また、六十五歳から七十四歳までの高齢者の医療費について、国民健康保険及び被用者保険の加入数に応じて負担する財政調整制度を創設し、超高齢化時代に備えた安定的な高齢者医療制度を創設することとしております。  第三に、都道府県単位を軸とした保険者の再編統合を進めていくこととしております。  このため、国民健康保険においては、都道府県内の市町村国保間の保険料の平準化等を図るための共同事業の拡充を行うこととしております。  また、政府管掌健康保険を公法人化し、都道府県ごとの医療費を反映した保険料率を設定することとしております。  以上のほか、中央社会保険医療協議会において、委員構成の見直しや団体推薦規定の廃止等を行うとともに、介護保険における介護療養型医療施設の廃止等の所要改正を行うこととしております。  最後に、この法律施行期日は、現役世代並みの所得のある高齢者の患者負担の引上げなどについては平成十八年十月に、医療費適正化計画の策定や新たな高齢者医療制度の創設などについては平成二十年四月にするなど、改正事項ごとに所要施行期日を定めることとしております。  次に、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  我が国医療提供体制については、国民の健康を確保し、国民が安心して生活を送れるための重要な基盤となっております。一方で、高齢化の進行や医療技術の進歩、国民意識の変化など、医療を取り巻く環境が大きく変わる中、だれもが安心して医療を受けることができる環境整備するための改革が不可欠となっております。  このような観点から、国民医療に対する安心、信頼を確保し、質の高い医療サービスが適切に提供される医療提供体制を確立するため、患者の視点に立った制度全般にわたる改革を行うこととし、本法律案を提出することとした次第であります。  以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。  第一に、患者国民による医療に関する適切な選択を支援するため、都道府県を通じた医療機関に関する情報の公表制度の創設や広告規制の大幅な緩和など、医療に関する情報提供を推進することとしております。  第二に、医療計画制度を見直し、医療機能の分化、連携を推進することを通じて、地域において切れ目のない医療の提供を実現し、質の高い医療を安心して受けられる体制を構築することとしております。  第三に、へき地や、小児科、産科など特定の診療科における医師の偏在問題に対応し、地域における医師確保の推進を図ることとしております。  第四に、地域における医療の重要な担い手である医療法人について、非営利性の強化などの規律の見直しを行うとともに、救急医療、小児医療など地域で必要な医療の提供を担う医療法人を新たに社会医療法人として位置付けることとしております。  第五に、医療従事者の資質を向上し、国民医療に対する安心を確保するため、医師、歯科医師、薬剤師、看護師等の医療従事者について、行政処分を受けた者に対する再教育制度の創設など行政処分の在り方を見直すこととしております。  以上のほか、医療安全支援センターの制度化など医療安全の確保の推進、在宅医療の推進のための規定整備等を行うとともに、外国人臨床修練制度の対象として新たに看護師等に相当する海外の資格を追加するなどの改正を行うこととしております。  最後に、この法律施行期日は、一部を除き、平成十九年四月一日としております。  以上が健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手)     ─────────────
  20. 扇千景

    議長扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。山本孝史君。    〔山本孝史君登壇拍手
  21. 山本孝史

    ○山本孝史君 民主党・新緑風会の山本孝史です。  質問に入る前に、衆議院厚生労働委員会において、議論が尽くされないまま与党が本法案を強行採決したことに強く抗議します。前回健保法改正案の審議時間五十一時間三十分と比べても、今回はわずか三十四時間余り、しかも大改正となる医療法の改正案の審議も含めてです。与党に猛省を求めるとともに、患者本位の良質な医療を実現するため、本院では十分な審議時間を確保することを与党に強く求めます。  それでは、理想の医療を目指された故今井澄先生の志を胸に、また、私事で恐縮ですが、私自身がん患者として、同僚議員始め多くの方々の御理解、御支援をいただきながら国会活動を続け、本日、質問にも立たせていただいたことに心から感謝をしつつ、議題となりました二法案について質問をいたします。  まず総理に、日本社会保障の将来像についてお尋ねします。  テレビで全国中継もされた先月四月十九日の衆議院行政改革特別委員会の総括質疑で、総理と安倍官房長官から社会保障に関して次のような御答弁がございました。  まず、安倍官房長官は、これまで政府が実現すると言ってきた小さくて効率的な政府と、提出法案名の「簡素で効率的な政府」の目指すところは基本的に一緒だ、我々が目指すところは、社会保障制度、この正に安心の仕組み、セーフティーネットそのものを小さくしていくことではない、このことを申し上げておきたいと御答弁されました。  聞いていて、私は首をかしげました。例えば一昨年の年金改革、与党は、マクロ経済スライドを導入して、今後、基礎年金だけの人も含めて、年金額を実質一五%カットするという非常に厳しい給付削減策を導入しました。介護保険も障害者福祉も、給付水準の引下げと給付範囲の大幅な縮小が行われました。労働法制も緩和され、派遣やパートなどの非正社員が急速に増えました。  総理小泉政権の五年間は、結果として見れば、セーフティーネットそのものを小さくしていく過程となったのではないでしょうか。総理の率直な御所見をお聞かせください。  同委員会では小泉総理も、安全とか防衛、治安、教育、福祉の必要最低限度の部分、こういうどうしても必要な部分は政府がやる、あとはできるだけ能力のある人は自由に活動してくださいと述べられました。  自民党政治がもたらした国家財政や地方財政の破綻により、社会保障の水準は下がる一方です。国民は将来に大きな不安を抱いています。年金や今回の医療費のように、社会保障費の削減目標を国民に示すのであれば、同時に、政府は国が将来にわたり維持する水準を示す責任もあります。  総理御自身がおっしゃった政府が保証する福祉の必要最低限度の部分について、将来どの程度のレベルとなるのですか。年金の所得代替率は将来五〇%を保証するということになるのでしょうか。今年度、六十五歳から支給される老齢基礎年金は四十年加入の満額で月額六万六千円ですが、将来とも政府が保証する基礎年金額は現在価格に置き換えれば幾らになるのかなど、具体的な数字も含めて、年金、医療、介護など日本社会保障の将来像について総理の丁寧な御説明をお願いをします。  前回、平成十四年の健保法改正案の附則に、与党は、将来にわたって負担割合は三割とすると書き込み、総理も三割負担が限界とかつてこの場で答弁をされました。将来、保険免責制の導入や三割以上の負担となることがあるのでしょうか。また、患者負担の増額は貧富の差が受けられる医療格差に直結するとの認識はお持ちでしょうか。  恐れ入りますが、二〇一一年度までに十兆円の歳出削減を行うとの議論に関係しておられる総理、厚労大臣、財務大臣経済財政担当大臣にそれぞれ御答弁をお願いします。  医療費を削減するには診療報酬の引下げが手っ取り早い方法ですけれども、これ以上診療報酬を引き下げると、医療従事者としての使命感で過重労働に耐えている人々が黙って医療現場を離れていくことを加速されます。私自身、入院や通院を通じて医療現場に余裕がないことを肌身に感じています。  医療費の半分以上は人件費です。病院でもらう医療費の明細を見てください。何と診察料や技術料の安いことか。診療報酬はもっとめり張りを付けるべきだし、高い外国製の医薬品や医療機器の価格を見直すべきです。領収書の明細書発行は、医療に対する患者の受け身的な姿勢を変え、医療費への国民の関心と理解を高める手掛かりになります。  政府内では更に診療報酬を下げることも検討されていますが、それは医療崩壊を招きます。医療や介護は地域経済に貢献し、雇用も生み出していることも御認識ください。  診療報酬について今後どのように考えておられるのか、再度、総理、厚労大臣、財務大臣経済財政担当大臣のそれぞれに御答弁をお願いをします。  次に、独立型の高齢者医療制度の創設について伺います。  政府案では、七十五歳以上の高齢者は、それまで加入していた国保や健保などから抜けて、別の新たな制度である高齢者医療制度に加入します。そして、受診時の自己負担は一割、現役並みの所得がある者は三割です。給付財源は、高齢者が負担する保険料で一割、公費が五割、残りの四割は現役世代の保険料に上乗せして徴収する後期高齢者支援金で賄います。この後期高齢者支援金は、負担と給付の関係にはないために税金と同じです。  このように、給付財源の九割を公費や後期高齢者支援金で賄う仕組みでは、介護保険法の改正で実証済みですけれども、高齢者医療費をもっと削減しろと圧力が掛かることは必至です。高齢者には若い者には迷惑を掛けたくないと思わせ、若い者には高齢者は早くいなくなればいい、そのように思わせるような制度をつくっていいのでしょうか。  総理や厚労大臣は、高齢世代と現役世代の負担を明確化し、分かりやすい制度とする必要があると説明されますが、そもそも年金と違って、病弱な高齢者を含む医療制度において世代間の負担の公平を強調することは間違っています。  提案理由では、七十五歳以上の高齢者の心身の特性を踏まえて、それにふさわしい医療サービスを提供するとされますが、まだ治癒の可能性が残っているにもかかわらず、安易に延命と決め付け、積極的に治療しない、あるいは高齢だから治療をしても意味がないとされて見放される、それではまるでうば捨て山です。団塊の世代の高齢化に伴う認知症や病弱な高齢者の増加、さらには死亡者が急増する多死社会、多く死ぬ多死社会への対応は大きな課題ですけれども、法律制度が人を死に急がせることを私は決して認めるわけにはいきません。  七十五歳を境に、高齢者に対する診療内容や診療報酬はどのように変わるのですか。まだ先のことですとか、これから検討するという答弁ではなく、提案理由に盛り込んだのですから、厚労大臣に明快な答弁を求めます。  前期高齢者の財政調整の仕組みは、これまでの老人保健拠出金の仕組みと全く同じです。あわせて、税制改正のあおりを受けて、国保保険料の算定方式を住民税方式から所得比例方式に変える動きが、北九州や札幌、大阪、福岡などの政令指定都市で相次いでいます。  混乱の反面、自営業者も給与所得者も、ともに所得に応じて保険料を払うことになるのですから、医療保険制度の一本化が視野に入ってきます。私が指摘したさきの問題点も含めて、それでも独立型の高齢者医療制度の創設は正しい選択だとお考えなのか、総理お尋ねをいたします。  次に、四十歳以上七十五歳未満の全国民が健診を受けるよう医療保険者に義務付けることについてお尋ねをします。  今井澄先生は、無理やり健診を受けさせて、病気になるぞと脅すことに反対でした。健診データを保険者間で共同管理・利用することも不安です。国の責務は、自己責任論の強調ではなくて、国民が自ら健康管理するように知識を持たせ、健診を受ける必要性を認識させることであって、ましてや医療費削減のために健診を義務付けることではないと私は考えます。自分の健診データという最もセンシティブな情報がどこかで総合的に管理されている社会に住んでみたいのですか。そもそも、全員健診で医療費は将来どの程度削減できるのでしょうか、厚労大臣お尋ねをします。  後期高齢者支援金は、負担に対する見返りとしての給付がないにもかかわらず、その料率は法律では明確に規定されていません。これは租税法律主義に反するのではないか。また、後期高齢者支援金は本来は税で賄うべき性格のものではないのか、厚労大臣お尋ねをします。  厚労大臣には、事業主に保険料を通じて自らの被保険者ではない後期高齢者への支援金や療養病床転換金まで負担を求める根拠を明確に示してください。  財務大臣には、この際、社会保障財源としての企業への外形標準課税と、医療や保健事業の財源としてのたばこ税増税の是非について御認識をお聞かせをください。  後期高齢者支援金や支払基金の事務費、特定健診や保健指導の財源、さらには療養病床の転換支援金までが保険料財源を通じて支出されます。若年者の保険料負担の実に半分が自らの医療給付費以外に使われます。新たな財源が確保できないからといって、何でも保険料として一括して徴収し、後は自由に配分するというのでは、医療保険制度への国民信頼が失われてしまうのではないでしょうか。厚労大臣答弁を求めます。  国民皆保険の下、いつでも、どこでも、だれもが最良の医療を受けられるとの目標と現実との間には大きな落差があります。総理は、今後どのような方針の下で医療提供体制整備すべきだとお考えですか。これまでの目標は放棄せざるを得ないのか。地方における医療機関の集約化によって病院が遠くなることは仕方がないことなのか。プレハブ教室で学んだ団塊の世代の最後はプレハブ病棟となっても仕方がないのか。どうぞ、総理のお考えをお聞かせください。  医師不足・偏在問題への対応策として、地域医療の担い手としての家庭医の養成、自治医科大学と同様、一定期間、地元での医療従事を条件とする入学定員枠の拡大が必要と考えますが、文部科学大臣の御所見をお聞かせください。  また、総理には、多額の税金の投入によって養成される医師には職業選択の自由を若干制限することも許されるのではないかとの提案について、是非御所見をお聞かせをください。  最後に、がん対策法の今国会での成立について、議場の皆さんにお願いをします。  日本人の二人に一人はがんにかかる、三人に一人はがんで亡くなるという時代に入っています。乳がんや肝臓がんなどは若い患者も急速に増えています。今や、がんは最も身近な病気です。しかし、がん治療には地域間格差、施設間格差があって、治療法があるのにもう治らないと言われて見放されたがん難民が日本列島をさまよっています。厚労省もがん対策推進室やがん対策本部を設置しましたが、どのようなレベルでの治療が全国で行われているのか、その実態すら残念ながら把握をしていません。  がん患者は、がんの進行や再発の不安、先のことが考えられないつらさなどと向き合いながら、身体的苦痛や経済的負担に苦しみながらも、新たな治療法の開発に期待を寄せつつ、一日一日を大切に生きています。私があえて自らがん患者だと申し上げましたのも、がん対策基本法の与党案と民主党案を一本化し、今国会で成立させることが日本の本格的ながん対策の第一歩となると確信するからです。  また、昨年、本院厚生労働委員会では、自殺対策の推進について全会一致で決議を行いました。そして、自殺対策に取り組む多くの団体の要望に基づいて、自殺対策推進基本法の今国会での成立に向けて各党での取組が進んでいます。  私は、大学生のときに交通遺児の進学支援と交通事故ゼロを目指してのボランティア活動にかかわって以来、命を守るのが政治家の仕事だと思ってきました。がんも自殺も、ともに救える命が一杯あるのに次々と失われているのは、政治や行政、社会の対応が遅れているからです。  年間三十万人のがん死亡者、三万人を超える自殺者の命が一人でも多く救われるように、がん対策基本法と自殺対策推進基本法の今国会での成立に向けて、何とぞ議場の皆様の御理解と御協力をお願いをいたします。  総理にも、国会議員のお一人として、この二つの法案の今国会での成立にお力添えをいただけないか御答弁をお願いして、私の質問を終わります。  御清聴ありがとうございます。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎登壇拍手
  22. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 山本議員に答弁いたします。  この五年間におけるセーフティーネットの機能の変化についてですが、社会保障制度国民の安心、安定を支えるセーフティーネットとして重要な機能であります。少子高齢化が進展する中、社会保障が今後ともセーフティーネットとしての機能を維持するためには、厳しい財政状況の下で、給付は厚く負担は軽くというわけにはいきません。給付と負担両面から均衡を図るとともに、経済財政とのバランスの取れたものとして制度を将来にわたって持続可能なものとする、これが必要だと思っております。  こうした観点から、平成十四年度には医療制度改革平成十六年には年金制度改革平成十七年には介護保険制度改革を実施し、本年は御議論いただいている医療制度改革法案提案しているところであります。  障害者についても、障害者自立支援法に基づき、国の費用負担の責任強化するとともに、利用者も応分の費用を負担し、皆で支える仕組みに改革し、制度の安定性、公平性を高めたところであります。  また、労働法制に関する規制改革については、例えば労働者派遣法の改正は、労働者の保護にも留意しつつ、様々な要望にこたえた雇用機会の確保、派遣先での直接雇用の実現など、雇用面において一定の効果を上げております。  こうした改革においても、所得の低い方に対しては国民年金、介護保険、国民健康保険の保険料負担の軽減、医療保険、介護保険、障害者福祉サービスなどの利用者負担について、より低い月額上限の設定などを行ってきたほか、今般の医療制度改革関連法案においても、高額療養費の自己負担限度額を据え置くなどの一定の配慮を行っているところであり、セーフティーネットの確保に十分努めてきたところであります。  社会保障の将来像についてですが、少子高齢化が進行する中で、社会保障制度は引き続きセーフティーネットとしての機能を果たしていく必要があり、国として責任を持って制度の運営に当たっていきたいと思います。このため、給付と負担の不断の見直しを行うとともに、予防や自立支援の推進により、国民の安心感の確保と生活の質の向上を目指すことを通じて、社会保障の需要の増大を抑制するような努力が必要と考えており、社会保障制度に関する一連の改革を行っているところであります。  こうした改革により、年金については、基礎年金も含めて給付水準の調整を進めることとしております。例えば、マクロ経済スライドによる調整が終了する二〇二三年の新既裁定者で見ますと、基礎年金は名目額で七万九千円、平成十六年度価格で六万六千円であり、夫婦の基礎年金額と夫の厚生年金を合わせたモデル年金で、現役世代の平均収入の約五〇%を確保し、老後生活の基本的な部分を支えられる水準を維持していくこととしております。  介護については、要介護度の高い方に給付を重点化し、また、予防を重視するなど給付の効率化を進めるとともに、住み慣れた地域で暮らし続けられるサービス体制整備を図ってまいります。  医療については、切れ目のない医療を提供するため、医療機能の分化、連携の推進や在宅医療の充実、生活習慣病予防や長期入院の是正などにより、患者の視点に立った安全、安心で質の高い医療が受けられる体制を構築してまいります。  なお、現在、経済界、労働界の参加を得た社会保障の在り方に関する懇談会において、今後の社会保障の在り方に関する議論の取りまとめを行っているところであり、今後、そうした議論も踏まえながら、社会保障制度の構造改革を進めてまいりたいと考えます。  保険免責制、三割負担及び患者負担の見直しによる医療格差についてですが、まず、自己負担割合については、平成十四年の健康保険改正法附則において、「医療に係る給付の割合については、将来にわたり百分の七十を維持するものとする。」と規定しているところであり、今回の医療制度改革においても自己負担割合を三割よりも上げることは考えておりません。また、保険免責制については様々な議論があり、今回の法案に盛り込まないこととしたところであります。  いずれにせよ、患者負担の更なる見直しについては、他の施策の見直しと併せて、国民的議論を踏まえつつ検討していくべきものと考えております。  さらに、医療格差についてでありますが、今回の医療制度改革においては、世代間の負担の公平化等の観点から患者負担の見直しを行うこととしておりますが、すべての国民が必要な医療を受けられるよう、見直しに当たっては低所得者の自己負担限度額を据え置くなど十分な配慮を行うこととしており、今後とも必要かつ適切な医療は公的医療保険制度で保障していきたいと考えております。  診療報酬の引下げについてですが、今回の診療報酬改定においては、賃金、物価の動向等の昨今の経済動向、全国の医療機関の収支状況、さらに保険財政の状況等を踏まえ、全体でおおむね三・二%の引下げを行いましたが、これは、医療制度改革の一環として、医療費に係る負担について国民の理解と納得を得ていく必要がある中で、医療提供側にも相応の負担をお願いすることとしたものであります。  具体的な診療報酬点数については、小児科、産科、麻酔科や救急医療、急性期医療の実態に即した看護配置等を重点的に評価する一方、慢性期入院医療の評価や市場実勢価格を踏まえた医薬品や医療機器の価格設定等の適正化を行い、めり張りの付いた改定を行ったところであります。  引き続き、適切な医療を効率的に提供できるよう、今回の診療報酬改定の結果についての検証を行った上で、今後、次期診療報酬改定に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。  独立した後期高齢者医療制度の創設ですが、現行の老人保健制度は、老人医療費について、掛かった費用がそのまま保険者の負担として請求される仕組みであり、現役世代と高齢世代の費用負担関係が不明確である、医療費の支払を行う市町村と実際の費用の負担を行う保険者が分かれているため財政運営の責任主体が不明確であるといった問題が指摘されております。  今後、急速な高齢化に伴い医療費の増大が見込まれる中で、医療費の負担について国民の理解が得られるようにするためには、高齢世代と現役世代の負担を明確化し、分かりやすい制度とする必要があります。このため、七十五歳以上の後期高齢者については、その心身の特性等を踏まえた独立の医療制度を創設することにより、財政運営の責任主体を明確化するとともに、高齢者の保険料と支え手である現役世代の負担の明確化、公平化を図るものであります。  なお、被用者保険と国保とを完全に統合する医療保険制度の一元化については、サラリーマンと自営業者の所得把握等の違いや事業主負担の扱いをどうするかといった課題があり、国民的な議論が必要であると考えております。  医療提供体制整備方針、医師不足・偏在問題への対応についてですが、我が国においては、これまで国民皆保険体制を確立するとともに、へき地医療や救急医療など医療提供体制整備に努め、いつでもどこでも必要な医療を安心して受けられる体制を実現してきたところであり、これは世界に誇るべきものと考えております。一方で、現在、へき地等の特定の地域や小児救急医療、産科医療等の特定の分野における医師の偏在問題は深刻となっており、この課題に対応し早急に対策を実施し、地域において必要な医療を確保していくことが重要であると考えております。  こうした観点から、今回の医療制度改革においては、小児救急医療、産科医療の機能の集約化を推進することとしておりますが、これらの分野における集約化は医療安全の観点などからも重要であり、今後、地域住民にもその趣旨について御理解をいただきながら取組を進めてまいります。  また、今回の改革では、地域の医療関係者の協議により医師確保策を検討する仕組みを制度化するなど、制度、予算、診療報酬等全般にわたる対策を講じることとしております。  医師の職業選択の自由を制限するという御指摘に関連して、今回の法案の議論の過程において、へき地医療、救急医療等の診療経験を病院、診療所の管理者の要件とすることについても検討を行ったところであります。しかしながら、各方面から慎重な御意見があったことから、法律には盛り込まなかったところであります。  いずれにしても、特定の地域や小児救急医療、産科医療など特定の分野における医師の偏在は深刻な問題であることから、今後、今回の法案による取組の効果や医師偏在の状況の推移等を踏まえながら、実効性ある医師確保策について更に検討を進めてまいりたいと考えております。  がん対策基本法案と自殺対策推進基本法案についてですが、我が国においてがんは死亡原因の第一位であり、国民にとって重大な脅威となっていることから、政府としては、これまで一次、二次の十か年総合戦略による対策を進めてきたところであります。  さらに、平成十六年度からは、がんの罹患率と死亡率の激減を目指し、新たに第三次対がん十か年総合戦略を策定し、国民患者の視点に立って、がん予防、早期発見の推進、がん医療水準の地域格差の是正、がんの在宅療養、緩和医療の充実、がん医療技術の開発振興を進めているところであります。  また、自殺対策についても、自殺には健康や生活の問題など様々な要因が複雑に関係しており、多様できめ細かな対策が必要であることから、政府としては、関係省庁が一体となって、自殺予防に関する正しい理解の普及啓発、相談体制の充実、自殺未遂者や遺族の方へのケアなどに取り組むため、昨年末に総合的な自殺対策を取りまとめたところであります。  がん対策及び自殺対策の法制化については与野党ともに真摯な議論が重ねられてきているものと承知しておりますが、国会に提出された法案につきましては、その取扱いも含め国会において十分に御議論いただくべきものと考えております。  残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣川崎二郎君登壇拍手
  23. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 山本議員から八問御質問をいただきました。総理からもお答えをいただき、重複する部分もございますが、お答え申し上げます。  保険免責制及び三割負担についてのお尋ねがございました。  平成十四年の健康保険法改正法附則において、「医療に係る給付の割合については、将来にわたり百分の七十を維持するものとする。」と規定しており、今回の医療制度改革においても自己負担割合、三割より引き上げることは考えておりません。また、保険免責制については様々な議論があり、今回の法案に盛り込まないこととしたところであり、現時点において保険免責制の導入については考えておりません。  患者負担の見直しによる医療格差についてお尋ねがございました。  今回の医療制度改革においては、世代間の負担の公平化等の観点から、高齢者にも応分の負担をしていただくなどの患者負担の見直しを行うこととしております。見直し後においても、低所得者の自己負担限度額を据え置くとともに、高齢者については、入院と外来を合わせた自己負担限度額のほか、外来に係る自己負担限度額を設け、一般の高齢者については、現役世代より低額の自己負担限度額を設定するなどの配慮を行うこととしており、必要な医療まで妨げられるものではないと考えております。  診療報酬の引下げについてお尋ねがございました。  今回の診療報酬改定においては、全体で三・一六マイナスの引下げを行いましたが、具体的な診療報酬点数の設定に当たっては、小児科、産科、麻酔科や救急医療、急性期医療の実態に即した看護配置等を重点的に評価する一方、慢性期入院医療の評価や市場実勢価格を踏まえた医薬品や医療機器の価格設定等の適正化を行い、めり張りの付いた改定を行ったところであります。  引き続き、良質かつ適切な医療を効率的に提供できるよう、今回の診療報酬改定の結果について改定の目的を達成しているかなどの検証を行った上で、今後、次期診療報酬改定に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。  七十五歳以上の後期高齢者に対する新たな診療報酬についてのお尋ねがございました。  後期高齢者医療制度の創設に当たっては、終末期医療在り方について国民的な合意形成の下に、患者の尊厳を大切にした医療が提供されるよう適切に評価するほか、地域の主治医による在宅の患者に対する日常的な医学管理からみとりまでの常時一貫した対応を評価するなど、後期高齢者の心身の特性等にふさわしい医療が提供できるよう検討を進めてまいります。  健診データの管理と医療費適正化効果についてお尋ねがございました。  健診データについては、国等において一元的に管理するのではなく、個々の医療保険者が管理することとしておりますが、個人情報保護は極めて重要と認識しており、今回の法案において、保険者の役職員に対し守秘義務を課し、違反した場合には罰則を科すこととしております。  また、肥満、高血糖、高血圧等に着目した健診と保健指導の実施により、糖尿病等に係る医療費が減少し、二〇二五年度には約二兆円の適正化効果があると見通しをいたしております。  後期高齢者支援金の性格についてお尋ねがございました。  後期高齢者支援金については、特に一人当たりの医療費が高く、今後増大が見込まれる後期高齢者の医療費は、国民皆保険の下、国民全体で支え合うべきという社会連帯の精神に基づき、被用者保険及び国保の各保険者が、法律規定に基づき、その被保険者から徴収する保険料により負担するものであり、税で賄うべき性格のものとは考えておらず、租税法定主義に反するものではないと考えております。  後期高齢者支援金等の負担の根拠についてお尋ねがございました。  後期高齢者の医療給付費については、高齢者に応分の負担を求めることとしていますが、賄い切れない部分については、公費のほか、被用者保険及び国民健康保険からの支援が必要であります。  この後期高齢者支援金については、各保険者がその被保険者から徴収する保険料により負担することとしておりますが、これは、後期高齢者の医療費は、国民皆保険の下、国民全体で支え合うべきという社会連帯の精神に基づくものであります。  また、療養病床の入院者の大半は後期高齢者であり、老人保健施設等への転換により、後期高齢者の医療費が適正化され、後期高齢者支援金の負担の軽減につながることから、病床転換支援金について保険料財源を充てることとしたものでございます。  最後に、若年者の保険料が自らの医療給付費以外にも充てられる点についてお尋ねがございました。  後期高齢者支援金及び支払基金が行う後期高齢者支援金の徴収等に係る事務費については、先ほども御答弁申し上げましたとおり、特に一人当たりの医療費が高く、今後増大が見込まれる後期高齢者の医療費は、国民皆保険の下、国民全体で支え合うべき社会連帯の精神に基づき、各保険者が被保険者から徴収する保険料により負担するものでございます。  また、病床転換事業についても、先ほど答弁いたしましたが、療養病床の入院者の大半は後期高齢者であり、老人保健施設等への転換は後期高齢者支援金負担の軽減につながることから、保険料財源を充てることとしたものでございます。  なお、特定健診、保健指導については、医療給付費には含まれませんが、四十歳以上の加入者自らの健診等に充てられるものであり、従来から医療保険者が保険料財源で行ってきた健診、保健指導を発展させるものであることから、保険料財源を用いるものでございます。  したがって、保険料財源をこれらに充てることにより医療保険制度への国民信頼が失われるということはないと考えております。(拍手)    〔国務大臣谷垣禎一君登壇拍手
  24. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 山本孝史議員にお答えいたします。  患者負担の更なる見直し及び診療報酬の更なる引下げについてお尋ねがございました。  高齢化の進展に伴い、医療給付費の増加が見込まれる中にあって、医療保険制度について、経済財政とも均衡が取れ、将来にわたり持続可能なものとしていくことが重要であり、今回の医療制度改革においては、高齢者の自己負担の見直し等を行うとともに、診療報酬の引下げを行うなど、医療給付費の抑制に取り組むこととしております。なお、自己負担の見直しに当たっては、低所得者の自己負担限度額を据え置くなどの配慮を行っているところであります。  将来の患者負担や診療報酬在り方につきましては、その時々の経済財政の状況、国民生活の実態、医療費や医療保険財政の動向等も踏まえつつ検討していくべきものと考えております。  それから、社会保障等の財源としての外形標準課税やたばこ税の税率引上げについてお尋ねがございました。  この点につきましては、企業への外形標準課税が既に地方税で行われていること、たばこの消費量が近年減少していることなどを踏まえ、慎重な検討が必要と考えられます。  いずれにせよ、社会保障財源については、高齢化の進展に伴い社会保障等の費用が急速に拡大している中で、社会共通の費用を国民全体で広く公平に分かち合う観点から、税体系全体の抜本的改革を総合的に検討する必要があると考えております。(拍手)    〔国務大臣与謝野馨登壇拍手
  25. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) お答え申し上げます。  患者負担と診療報酬在り方についてのお尋ねがありました。  経済財政諮問会議では、経済財政と均衡が取れ、将来にわたり持続可能で安定的、効率的な社会保障制度を構築することが重要であるという認識の下、社会保障制度改革について議論を重ねております。将来の患者負担や診療報酬在り方を含む社会保障の給付と負担の問題については、経済財政の状況、国民生活への影響等を踏まえつつ、国民的な議論を行っていくことが必要であると考えております。  以上です。(拍手)    〔国務大臣小坂憲次君登壇拍手
  26. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 山本議員から、医師不足と医師の偏在問題についてお尋ねがございました。  大学の医学部教育におきましては、家庭医に必要な幅広い知識、技能、態度を身に付けるための教育とともに、地域医療に関する教育が実施をされております。また、大学病院における卒後臨床研修におきましても、家庭医として必要な幅広く基本的な診療能力を修得するため、主要な診療科についてスーパーローテート方式により研修を行っておるところであります。今後とも、これらの充実を図ってまいります。  地域における医師の確保の対応策については、大学の所在する地域出身者の枠や地域での勤務を条件とした奨学金制度を導入している例も多く見受けられるところであります。このように、入学時においても地域医療への参加を求めていくことは、議員御指摘のとおり、地域医療問題の対応策として有効であると考えておりまして、文部科学省としては各大学等の積極的な対応を今後とも要請してまいりたいと存じます。(拍手)     ─────────────
  27. 扇千景

    議長扇千景君) 渡辺孝男君。    〔渡辺孝男君登壇拍手
  28. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男です。  私は、自由民主党及び公明党を代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案等につきまして、小泉総理並びに川崎厚生労働大臣、小坂文部科学大臣質問いたします。  日本の高齢化は一段と進み、平成十七年十月一日現在で六十五歳以上の高齢者人口は約二千五百六十万人と過去最高となり、高齢化率も初めて二〇%を超えました。平成十六年度の調査では、平均寿命も男性七十八・六四年、女性八十五・五九年と前年より延び、百歳以上の高齢者数も二万五千人を超えています。  このように、我が国は世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成し、世界保健機構の二〇〇〇年報告では、日本の保健システムの到達度を世界第一位と評価しています。これには、昭和三十六年に国民皆保険が達成されたことが大きく貢献していると考えます。  そこで、まず厚生大臣も務められたことがある小泉総理に、国民皆保険の重要性についての認識について伺いたい。また、今回は保険免責制度を導入しませんでした。この点は高く評価しております。私は今後も導入すべきではないと考えますが、総理考えをお聞かせいただきたい。  さて、長寿化の一方で、平成十六年度の調査結果では、高齢者の約四人に一人は健康上の問題で日常生活に影響を受けており、平成十五年度の資料によると、年間医療費は七十五・三万円と若年者の四・七倍となっています。当然ながら、高齢化が進めば医療費は増加し、医療保険をともに支えている現役世代の負担は重くなります。  直近の推計値では、医療供給費は現在の二十八・五兆円から二〇二五年の時点で五十六兆円にまで増大すると見込まれ、国民皆保険を守り、医療費の増大を国民が負担可能な範囲で適正化すべきとの声が上がっております。  そこで、小泉総理に伺います。今回の法改正でどのように医療費を適正化しようとしているのか、その要点をお聞かせください。  そのような改革を行うことによって、医療給付費の将来見通しがどの程度改善されると期待されるのか、川崎厚生労働大臣に伺いたい。  今回の法改正案を検討している段階で、自民、公明両党は低所得者に対する負担軽減の配慮を要求しましたが、それがどのように反映されたのか、川崎厚生労働大臣に伺いたい。  医療費適正化の中の中長期的対策として重要なのは生活習慣病対策です。二〇〇四年に自民、公明両党は、超高齢社会へ向かっている我が国において、今後目指すべき方向は単なる寿命の延長ではなく、自立して社会で活躍できる健康寿命の延長を基本目標に置き、がん、心臓病、脳血管障害の三大死因疾患や糖尿病などの生活習慣病対策と介護予防の二つのアプローチにより政策を推進するよう政府に求め、二〇〇五年度より健康フロンティア戦略の事業が展開されています。  介護予防に関しては、介護保険制度改正にて本年度より本格的な取組が開始されていますが、生活習慣病対策は今後どのように推進していく方針か、近年注目されているメタボリック症候群対策を含めて川崎厚生労働大臣に伺います。  また、社会的入院の解消にも資する療養病床再編に関しては、在宅医療や介護サービスの充実、老健施設等への転換がきちんとなされることが大前提であり、その方針について川崎厚生労働大臣に伺いたい。  次に、国民の求める良質な医療を提供する体制を確立するためには、医療を提供する側の徹底した意識改革が必要です。特に、権威主義的なパターナリズムの排除が重要です。患者さんが中心であり、患者さんが安心して医療サービスを受けられるようにするためには、適切な情報が分かりやすく提供され、患者さんが自らの意思でサービスを選択でき、納得の下にサービスを受けることができるようにすることが大切です。  また、患者さんの求めに応じてセカンドオピニオンがスムーズに受けられるような体制医療提供側が構築していくことが大切です。このことは、がん患者、家族との意見交換等で強く実感いたしました。  今回の法改正案ではこのような観点からの改善がどのように図られることになるのか、川崎厚生労働大臣に伺います。  また、地方においては医師不足が本当に深刻です。それは産科、小児科に限りません。医局制度の下での医師派遣体制の急激な崩壊と新しい医師臨床研修制度の開始、多忙な勤務医から開業医への転向など、その理由は様々ですが、地方の医師不足解消はまだまだ解決の糸口が見えておりません。  今回の法改正案では、この点どのような改善が図られるのか、川崎厚生労働大臣に伺います。  あわせて、医師養成の責任者でもある小坂文部科学大臣にも、どのような対応を考えておられるのか、伺います。  本年度より二年間の臨床研修を終えた医師たちが初めて後期研修に入ります。まだまだ始まったばかりの臨床研修制度ですが、指導医の業務が十分に評価されていない、地方の病院と研修医との間のミスマッチで地方の医師不足は改善されていないなど課題が山積しております。本臨床研修制度の早期の検証と必要に応じての見直しについて、総理の見解を求めます。  日本社会も戦後六十年を経て成熟社会となりました。バブル期も経験し、景気低迷の苦しい時期もありましたが、小泉総理の果敢なリーダーシップにより構造改革が進み、景気も着実に回復しております。  今日、日本医療に関する課題は様々ありますが、人間を心と体の両面からとらえ、しかも他に代替できない個性ある尊厳な当体として全人的にとらえていこうとする医学の流れも大きくなってきており、また、個人の体質に合わせたテーラーメード医療を目指す流れも確かなものとなってきております。  そのような流れの中で、更に患者さんを中心とした安全、安心、そして信頼に基づく良質な医療を不断に追求し、知恵を出し、改革を継続していけばそれらの課題は克服できることを訴え、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎登壇拍手
  29. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 渡辺議員に答弁いたします。  国民皆保険の重要性と保険免責制についてですが、我が国では昭和三十六年に確立された国民皆保険の下に、だれもが安心して医療を受けることができる医療制度を実現し、世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきたところであります。これは世界に誇るべきものと考えており、今後ともこの国民皆保険を堅持してまいりたいと考えております。また、保険免責制については様々な議論があり、今回の法案に盛り込まないこととしたところであります。  いずれにせよ、患者負担の更なる見直しについては、他の施策の見直しと併せて、国民的議論を踏まえつつ検討していくべきものと考えております。  医療費の適正化でございますが、医療制度については、急速な高齢化の進展に伴う医療費の増加が見込まれる中で、良質かつ効率的な医療を提供し、将来にわたり皆保険制度を持続可能なものとしていくためには、医療における給付と負担の均衡を図ることが必要であります。このため、今般の改革においては、生活習慣病予防や長期入院の是正など、計画的に政策を実施し、中長期的に医療費の伸びを抑制するとともに、保険として給付する範囲の見直しや、おおむね三・二%の診療報酬の引下げを行い、医療費適正化を総合的に推進し、将来にわたり持続可能な制度を構築していくこととしております。  臨床研修制度についてですが、医師免許取得後、病院等において二年間の研修を行わせる臨床研修制度は、医師が将来専門とする分野にかかわらず、基本的な診療能力を身に付けることを目的として平成十六年度から必修化された制度であり、研修医に対して指導を行う指導医の確保を始めとした研修医の受入れ体制整備等に努めております。  地方の病院において医師の確保が難しくなっているという御指摘については、臨床研修の必修化以外にも様々な原因が複雑に作用した結果であると認識しており、総合的に医師確保対策を講じていくこととしております。  臨床研修制度在り方については、施行後五年以内に見直しを行うこととしており、制度の運用状況や現在研修医に対して行っている調査の結果等も踏まえつつ、今後必要な検討を行ってまいります。  残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣川崎二郎君登壇拍手
  30. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 渡辺議員から六問御質問をいただきました。お答え申し上げます。  今回の改革による医療給付費の将来見通しについてお尋ねがございました。  医療給付費の将来見通しについては、先ほど総理から御答弁がありましたように、今回の改革の総合的な医療費適正化方策を講ずることにより、現行のまま推移すれば二〇二五年度医療給付費は五十六兆円に達すると見通されるところ、四十八兆円にとどまる目安を立てております。  低所得者に対する負担軽減についてお尋ねがございました。  今回の法案では、高齢者の患者負担の見直しを行うに当たっては、政府・与党の医療制度改革大綱を取りまとめる段階において、与党より、一割負担から二割負担となる七十歳から七十四歳までの低所得者については自己負担限度額を据え置く措置を講ずることを盛り込むべきであるとの御意見をいただいたことを踏まえ、七十歳から七十四歳までの高齢者を始め、高額療養費について、低所得者の方については自己負担限度額を据え置くこととし、低所得者の方に過大な負担とならないように配慮しております。  生活習慣病対策についてお尋ねがございました。  生活習慣病対策については、これまでも健康フロンティアの戦略等を推進してまいりましたが、今回の医療制度改革においても予防重視を柱の一つに位置付けたところであります。  具体的には、糖尿病等の有病者、予備軍の減少に向け、運動、食生活、喫煙面での生活習慣の改善に向けた国民の意識啓発に積極的に努めるとともに、医療保険者の役割を明確化し、効果的、効率的な健診、保健指導を義務付けることとしております。  特に、今後は、メタボリックシンドローム、内臓脂肪症候群の考え方に着目することにより、安易に薬に頼るのではなく、適度な運動やバランスの取れた食生活、禁煙といった生活習慣の改善が重要という考え方国民医療関係者に広く普及し、本格的な生活習慣病予防の取組を推進してまいります。  療養病床の再編成についてお尋ねがございました。  今回の療養病床の再編では、療養病床は医療の必要度が高い患者に限定し、医療保険で対応するとともに、医療の必要性の低い方々への対応としては、療養病床が老人保健施設等の介護施設に転換することにより、大きな改修をすることなく受皿となることが可能と考えております。  療養病床の再編に当たっては、入院している方々の追い出しにつながらないようにすることが大前提であり、今後六年間は医療、介護双方の病床について円滑な転換ができるよう経過的な類型を設けることといたしております。  また、療養病床の再編に当たっては、在宅医療や介護サービスの充実を図ることを重要と考えており、今回の診療報酬改定において、新たに在宅医療において中心的な役割を担う在宅療養支援診療所を設け、二十四時間往診、訪問看護等の提供体制を構築することとしたところであり、また介護サービスの基盤の整備についても、中重度者の在宅サービスや不足地域の施設サービスについて、地方公共団体ともよく連携して計画的な充実に努めてまいります。  患者に対する情報提供とセカンドオピニオンの推進についてお尋ねがございました。  患者が安心、納得して医療サービスを受けられるよう、患者医療機関を選択するときに、また実際に医療を受けるときに、適切な情報の提供を受けられる環境整備することは非常に重要な課題と考えております。このような観点から、今回の医療制度改革においては、都道府県を通じた医療情報の提供、入院時における文書説明医療費の内容が分かる領収書の無償交付の義務付け等、医療に関する情報提供の推進のための措置を講ずることとしております。  また、今回の診療報酬改定においては、主治医がセカンドオピニオンを求める患者等からの希望に基づき診療に関する情報を提供することについて、新たに評価を行うこととしたところでございます。  最後に、医師不足についてお尋ねがございました。  国民医療に対する安心、信頼を確保するために、へき地などの特定の地域や産科医療、小児救急医療などの特定の分野における医師の偏在問題に対応し、医療機能の集約化、重点化などの取組を地域において進めていただくことが非常に重要であると考えております。  国としても、地域における取組を支援するため、今回の医療改正案では、医療計画制度の見直しにより、小児救急医療、周産期医療など地域において必要な医療に係る具体的な医療連携が確保されるようにすること、都道府県が中心となって、大学病院など地域の医療関係者と医療従事者確保の具体策を検討する場である医療対策協議会の制度化など各般の措置を講じることといたしております。(拍手)    〔国務大臣小坂憲次君登壇拍手
  31. 小坂憲次

    国務大臣(小坂憲次君) 渡辺議員から地域医療を担う医師の確保についてお尋ねがございました。  地域において産婦人科医がいないため、お産すら安心してできないと、こういった医師不足や医師の偏在は深刻な問題となっており、厚生労働委員会において、大学における地域枠の充実等について川崎労働大臣からも要望をいただいておるところでございます。  私といたしましても、この機会に、地域医療における医師確保の観点から、例えば、卒後臨床研修を含めた十年間のうちの八年間程度は地域の医師として活動してもらうことなどを条件とした入学者枠を設定するなど、すなわち出身地にとらわれず一定期間地域で勤務することなどを条件とした入学者枠を設定するなどの新たな対応を検討すべき時期に来ていると、このように考えているところでございます。  今後、厚生労働大臣など関係大臣とも協議をしつつ、地域の声も聞きまして地域医療体制の充実に努めてまいりたいと考えております。(拍手
  32. 扇千景

    議長扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四分散会