○簗瀬進君 冒頭に、雪害で亡くなられた皆さんに心からお悔やみ申し上げるとともに、大雪と懸命に闘っている皆さんに心からエールを送りたいと思います。
さて、私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました
平成十六年
度決算について、
総理並びに
関係大臣に
質問をいたします。
小泉総理、
総理就任後、本日で一千七百三十八日でございます。在任期間一位の佐藤首相は二千七百九十八日、二位の吉田首相が二千六百十六日、三位の中曽根首相は一千八百六日、したがって、あと二か月で
総理は歴代三位となります。中曽根さんを抜き、吉田、佐藤という歴史上の宰相と肩を並べることになる。歴史好きの
総理御自身は定めしお喜びと思いますが、重要なのは五年間の小泉政治が
国民にとってどうであったかであります。
小泉
改革は、
社会を勝ち組と負け組に二分し、間違いなく
日本をアメリカ型
社会に近づけています。重要な外交問題を心の問題にすり替えての靖国参拝は、ますます
日本を孤立化させています。効率優先の
経済志向は、
社会から優しさを奪い、虐待の連鎖反応を蔓延させています。恐らく、後世の歴史家は、小泉
時代の五年間で
日本は変わってしまったと評するでありましょう。
まずは、
総理御自身に、在任五年をどのように
評価しているのか、反省したりする点は全く思い当たらないのか、御
所見をお
伺いしたいと思います。
さて、
総理、二十日の
施政方針演説で、耐震
偽装、ライブドアといった
国民の重大関心事には一言も言及なさらなかったのはなぜですか。その後に起きたBSEの問題も含めて、この三つの大事件の共通項は一致いたしています。小泉
改革の致命的欠陥。三事件が雄弁に語っているのはこのことに尽きると思います。そのことを
総理御自身、実は意識しているからこそ、あえて
演説では触れなかったと思いますが、なぜ
施政方針演説でこれらの重大問題に触れなかったのか、その
理由を
総理から
伺いたいと思います。
ところで、小泉
改革の本質は何かと、正に
決算と同時に小泉政治を総
決算をするこの時期に
当たりまして、私は、だれもが思い当たるのが一九九三年の宮澤・クリントン会談以来現在まで日米間で継続をいたしておりますいわゆる年次
改革要望書の存在だと思います。
持ち株
会社の解禁、時価
会計、大規模小売店舗法廃止、確定拠出年金制度、法科
大学院、これらの
改革のほとんどはアメリカの
要望項目に既に載せられたものであります。そういえば、株式交換制度も、法
改正の二年前の九六年、前から
要望項目に登場していたというではありませんか。もちろん大物の
郵政民営化も十年前から
要望項目に入っていました。
総理、私は、ここで
郵政民営化政策の元祖論争などといった、そんな
議論をするつもりはありません。私が指摘したいのは二つです。まず、アメリカ側の年次
改革要望書に一貫して流れている思想は何かということ、次に、
要望項目の処理については、アメリカ
政府に対しては毎年しっかりと
報告しておきながら、同様の
報告を
日本の
国会には全くしようともしない
政府の属国的な態度であります。
さて、アメリカの年次
改革要望書に流れている一貫した思想こそ、私は小泉
改革の本質に流れ込むものだと思います。年次
改革要望書の
中心にある考え方は、競争政策の
推進であり、
民営化政策であります。一九八〇年代以来、アメリカが外国向けの開発政策の基本に置いてきたワシントン・コンセンサスがここには色濃く流れております。ワシントン十五丁目にあるのが合衆国財務省、十九丁目にあるのがIMF、そのコンセンサスのワシントン・コンセンサス、簡単に言うと三つの柱から成っております。第一は国有
企業の
民営化、第二は市場の自由化、第三は小さな
政府の三つであります。
そこで、首相及び
竹中大臣にお尋ねしたい。この三つの政策を今後も
我が国の
改革の基本指針として維持していくおつもりなのでしょうか。
さらに、年次
改革要望書の内容は、
我が国の内政全般にわたる大変広範な内容を持っています。現在、在日アメリカ商工
会議所のホームページに掲載されている二〇〇四年十月十四日の
要望書を見てください。電気通信から始まって商法、流通あるいは法務制度
改革、十一の分野に及んで何と四百十の項目がそこに列挙されている。そして、毎年それらについての
実施状況を
行政ベースで日米は
報告し合っている。まるで、これは
日本という国の心臓にうずめ込まれたペースメーカーじゃないですか。その
関係は、双務的といいながら、私は究極の内政干渉
システムだと言わざるを得ません。
そこで、
総理及び
竹中大臣にお
伺いしたい。年次
改革要望書を介しての日米双方の相互
改革システムを今後とも継続していくおつもりなのかどうか。そして、もし継続するなら、毎年の
報告書をアメリカ
政府に
提出する前にしっかりと
我が国の
国会にきちんと
報告をすべきではないでしょうか。
総理の明快な御
答弁をいただきたいと思います。
ところで、クリントン政権の
経済諮問委員会の
委員長を務め、さらに二〇〇一年にノーベル
経済学賞を受賞したジョゼフ・スティグリッツという
経済学者がおられます。彼は、「人間が幸福になる
経済とは何か」という著書の中で大変興味深い文章を残している。例えば、彼はこう書いています。我々が国外で推奨した枠組みは、正にアメリカの
企業が国外で成功するのを助けるものだった。国内では消費者や労働者に配慮しなければならなかったから、そうした政策には歯止めが掛かった。しかし、国外ではそれがなかったと。学者というよりも、政権中枢にいた人の言葉として私は衝撃を受けました。
総理、御
質問したい。ここで彼の言っている国外で推奨した枠組みの一つに、正に
日本に対する年次
改革要望書が含まれているとはお考えになりませんか。
また、彼はこのように書いている。アメリカは大きい
政府が悪いという神話を完全に信じたことはない。大半のアメリカ人は、規制のみならず教育や
社会保障やメディケアなど不可欠な
サービスの提供においても
政府の果たすべき役割があると考え続けている。アメリカは、国外では国家の役割を最小限に抑えた資本主義を説くが、それはアメリカ自身が拒絶している資本主義だ。
総理及び
竹中大臣は、このようなアメリカの
海外政策の二面性についてどのような御
所見をお持ちなのか、是非とも聞かせていただきたいと思います。
特に、
竹中大臣は、
総務大臣というお
立場よりも、小泉
改革の
中心として
改革の旗を振るってきた
責任者としてお答えをいただきたい。スティグリッツさんはクリントン
改革の
中心で活躍した人であります。その人がアメリカの本音を率直に語っているではありませんか。この言葉をどのように考えているか、小泉さん、竹中さんからしっかりとお答えを聞かせていただきたいと思います。
次に、耐震
偽装事件について
伺います。
私は、この事件は小泉
民営化政策の致命的欠陥を示していると考えます。官から民へは小泉
改革の合い言葉。しかし、民に任せれば何でも良くなると考えるのは余りにも短絡した考え方であります。
さらに、
効率化の点で官よりも民が優れているというのも一概に言えることではありません。官民の仕分はあくまで仕事の内容によって決まるのではないでしょうか。民の基本は私的利益を上げることにあるのは当然でありますけれども、こうした私益の追求と
業務内容が調和しているときには民の良さが出てまいります。しかし、
検査業務や監査
業務のように、建築基準法の遵守とか
会計基準、規則の遵守といった公的な色彩を持った場合には必ず私益と公益の衝突といった側面が出てくる。
言わば、まないたの上のコイがお金を出して料理人を雇っているような状態です。金主元のコイに対して料理人が厳しい包丁を振るってコイを殺してしまうとお金は入ってこなくなる。コイと料理人のなれ合いの危険性、これは必ず出てくる。
耐震
偽装事件は、このような
民営化政策がはらむ本質的な危うさを私たちに教えてくれていると思います。何でも
民営化すればよいというものではありません。
民営化に潜む様々な危険性を予測しつつ、安全、安心、これを
確保すべき
対策をしっかりと事前に用意した上で
民営化に臨むべきではありませんか。
しかし、小泉
改革はまず
民営化ありき。
準備不足のまま
民営化を強行する。こんなことでは
我が国の
経済社会をいたずらな危険に陥れてしまう。これでよいのでしょうか。
総理の御
所見を
伺いたいと思います。
次に、ライブドア事件であります。
私は昨日の江田
質問に対する
総理の
答弁にはいささか驚きました。反省の一言もない。冷たくホリエモンを切り捨てる。また、ぶら下がりでは、熱狂をあおったのは自分ではなくてマスコミだと
責任転嫁の発言をなさった。その厚顔無恥さには畏敬の念すら覚えます。
しかし、ここでは別のことを論じたいと思います。それは、
民営化と一体の市場自由化政策との
関係であります。
民営化政策と市場自由化政策は普通は別物として論じられています。しかし、私は、これは実は表裏一体のものだと考えるべきだと思っています。
例えば、
郵政民営化政策でも明らかなように、
民営化すると、それまで官が管理していた巨大な
国民の資産は市場に流入する、これが
民営化政策の本質です。だからこそ、アメリカのウォール街は舌なめずりをしながら
民営化政策や小さな
政府を
推進をしている。その本質を忘れてはなりません。
しかし、
推進論者が信じている完全な市場など現実にはあり得ません。アダム・スミスは見えざる手が市場を最も良くすると説きましたが、それが成り立つためには大きな前提がある。それは、市場の情報が
関係者に平等かつ完璧に与えられていることであります。しかし、現実には、
企業と投資家の間で情報が平等であったことなど一度もない。
情報開示義務のない投資
事業組合を悪用し、株式分割を利用して意図的に株価をつり上げる、株式交換を悪用して自己資金を還流させて
赤字を粉飾する今回のライブドア事件は、
日本の証券市場がいかに不完全であり市場ルールが未
整備であったか、そしてこれを悪用する人々に対して無防備であるかを世界に知らしめました。このような不完全な市場に
国民の巨大な資産を無
責任に投げ込もうとしている、それが
小泉総理、あなたです。これでよいのでしょうか。正に、ライブドア事件は小泉
改革の致命的な欠陥を浮き彫りにしてくれたと考えますが、
総理及び金融担当
大臣の御
所見をお
伺いします。
さらに、不完全な市場のもう一方の
責任は、市場設置者である証券取引所にあります。ネット取引の急増は、処理能力の急
拡大を必要としていたはずであります。株式交換、株式分割、投資
事業組合などの制度の落とし穴を東証は当然知っていた。にもかかわらず、常に後手後手に回る東証の体質的欠陥はどこにあるのでしょうか。
東証の理事長は、一九六七年から実に三十七年間の長きにわたって大蔵省の高級官僚の天下りポストでした。民の仮面をかぶった天下り官僚が支配する
企業風土、そんな雰囲気の中では、
民間の厳しい
経営感覚や機動的な
対応力、そして果断な決断力は決して鍛えられません。
政官財の癒着構造を温存したままでの
民営化は偽りの
改革でしかない。市場の自由化政策の究極の担い手であるはずの市場設置者に民の基本が欠落している。これこそ小泉
改革の究極の欠陥だと思いますが、
総理及び金融担当
大臣の御
所見をお
伺いしたい。
次に、
平成十六年
度決算に関する
質問に入らせていただきます。
自衛隊の
海外活動については区分経理の導入をお願いしたい。
自衛隊の
海外活動が増えています。私は、
財政民主主義、そしてシビリアンコントロールの
観点に立って、
海外活動の
予算、
決算面での更なる明確化を訴えたいと思います。
現在までの
防衛庁予算及び
決算の仕組みは、他
省庁と同様に
省庁横断的かつ包括的であるため、結果として個々の
活動の
財政的規模は極めて分かりづらくなっている。
自衛隊の
海外活動についての
予算、
決算上の把握がもっと明確でないと、
自衛隊に対する民主的統制が不安定になる。
そこで、まずはイラク戦争
関係についての現時点での
自衛隊の作戦行動で国費が幾らぐらい使われたか、支出
目的ごとにできるだけ正確な金額を明らかにしていただきたい。次に、今後の
予算、
決算の仕組みを個々の
活動単位
中心にして組み立て直すべきではないか。
海外活動ごとの区分経理の導入など根本的の
見直しをすべきであると考えますが、
防衛庁長官の
答弁を求めます。
特別会計については、先ほど岩本議員が大変鋭い
質問をいたしましたので省略をいたします。
国民のためのIT
システムのお話をさせていただきたい。
さて、世界最高の情報
サービスを目指して、
政府もここ五年間で三兆円を超える国費を投入してきた。確かに、
住民基本台帳ネットワークシステムや各種の電子申請
手続などが
実現をして、官公庁
業務の電子化は進んでいるように見えますが、
国民の利便性は増加したと言えるでしょうか。
実態を見ると、申請
手続の九六%は電子化していますが、しかし電子申請
システムの利用率は一%を切っている。巨額の国費を投じながら、この超低い利用率はなぜなのでしょう。制度設計をどこかで間違えていやしませんか。また、相変わらずの霞が関発想の中でユーザーフレンドリーな視点が欠けているのではないでしょうか。担当
大臣の
所見を
伺います。
また、今回の
決算報告によれば、現在、国
関係のホームページは一応三十八
省庁すべてそろっているとのことでありますが、例えば視覚障害者のための音声読み上げソフトの
対応ができているのは三十八のうちたった三か所です。情報アクセシビリティーが低過ぎる、もっと向上させるべきです。その他の障害者への
対策もしっかりと立てなければなりません。担当
大臣の
所見を
伺います。
さらに、
政府関係の白書は三十三種類今出ています。しかし、そのうちデータベース化されているのはたった半分以下の十四、また検索機能が付いているのも十一といった低い
状況にあります。せっかく作成した白書の数字を
国民がパソコンを使用して活用していく、それは新しい市民
活動の基盤としても、また
政府の住民
サービスとしても大変、極めて重要であります。そのためのデータベース化や検索機能の付加が行われている白書の数をもっともっと増やすべきであると思います。白書作成の基本仕様として、検索機能とデータベース化、これをしっかりと位置付けるべきだと考えますが、担当
大臣の
所見をお
伺いいたします。
過去の遺物と言うべきレガシー
システムの問題点については、既に我が党の岩本議員が先ほど明確な指摘を行いました。今回の
決算報告では、
社会保険庁の巨大
システムが取り上げられています。私はこれを聞きたい。
社会保険のオンライン
システムに掛かる費用は、
平成十六年度で一千百八億円の大変巨額なお金が掛かっております。例えば、記録管理
システムの被保険者記録数を数えてみると、約二億六千万件ある。膨大な情報を処理するための
システムの維持は確かに重要だと思うし大変です。しかし、それにかまけてコストダウンの努力を怠ることは絶対に許されないと思います。
特定の業者に随意契約で
長期間
システムを管理させた結果、どうしてもコスト
削減の緊張感が失われていく。今回の
検査でも、ソフトの開発やハードウエアの機種選定など、それぞれの項目ごとに努力不足が指摘されました。これを受けて、高コスト構造に更にどんなメスを加えたらよいのか、
総理の御
所見を
伺います。
次に、有料道路
事業について聞かせていただきたいと思います。
全国八十の有料道路の運営
状況ですが、現時点では八千三百四十億円の国の貸付金について延滞の
状況にはなっていないものの、将来ともに大変厳しい
状況にあることが明らかとなりました。すなわち、
全国八十の有料道路のうち、
計画交通量を達成しているものは十四しかありません。残り六十六の有料道路は未達成となっています。さらに、交通量の
見通しが二〇%以下という大変低い達成
状況の有料道路が
全国で三本もある。
問題の根本は、交通量についての
見通しの甘さにある。さらには、開通後、別の道路が造られるなどして連携が悪くなってしまった等の全体の
見通しの欠如というようなこともございます。このような公共
事業に付き物の問題点が全く
改善されていない。
そこで、国土交通
大臣として、更に厳しい
対策を立てる必要があると考えますが、御
所見をお聞かせください。
そして、最後に、地下鉄、モノレール、LRTなどの都市内交通機関の建設を考える際の
需要予測も触れさせていただきたいと思います。
例えば、一九九八年の仙台市の地下鉄南北線、最初の利用者の当初予測は一日
当たり二十二万でした。しかし、二〇〇二年の
実績は一日十六万、結果として三〇%の見込み違い、二〇〇四年度までには一千七十五億円に達しています。
一方で、「ゆりかもめ」のように……