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2006-05-23 第164回国会 参議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年五月二十三日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月二十二日     辞任         補欠選任      沓掛 哲男君     小斉平敏文君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         弘友 和夫君     理 事                 荒井 正吾君                 谷川 秀善君                 簗瀬  進君                 木庭健太郎君     委 員                 青木 幹雄君                 山東 昭子君                 陣内 孝雄君                 関谷 勝嗣君                 南野知惠子君                 江田 五月君                 千葉 景子君                 前川 清成君                 松岡  徹君                 浜四津敏子君                 仁比 聡平君                 亀井 郁夫君    国務大臣        法務大臣     杉浦 正健君        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    沓掛 哲男君    副大臣        法務大臣    河野 太郎君    大臣政務官        法務大臣政務官  三ッ林隆志君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   大谷 直人君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 英明君    政府参考人        警察庁長官官房        長        安藤 隆春君        警察庁生活安全        局長       竹花  豊君        警察庁刑事局長  縄田  修君        法務省刑事局長  大林  宏君        法務省矯正局長  小貫 芳信君        財務省主計局次        長        松元  崇君        文部科学省スポ        ーツ・青少年局        スポーツ・青少        年総括官     西阪  昇君        海上保安庁次長  平田憲一郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○刑事施設及び受刑者処遇等に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、沓掛哲男君が委員を辞任され、その補欠として小斉平敏文君が選任されました。     ─────────────
  3. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  刑事施設及び受刑者処遇等に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会警察庁長官官房長安藤隆春君、警察庁生活安全局長竹花豊君、警察庁刑事局長縄田修君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長小貫芳信君、財務省主計局次長松元崇君、文部科学省スポーツ青少年局スポーツ青少年総括官西阪昇君及び海上保安庁次長平田憲一郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 刑事施設及び受刑者処遇等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 荒井正吾

    荒井正吾君 自由民主党の荒井正吾でございます。質問をさせていただきます。  今回の法律改正は長年の経緯を経たものでございますが、なぜ問題があるとされながらこんなに改正に時間が掛かったのかというのがまず不思議に思います。明治四十一年に制定された監獄法が廃止されるという大きな意味がありますが、その中で代用監獄冤罪人権侵害温床といわれてきたことがその改正が遅れた大きな原因だというふうに報告書にもございます。本当にそうなのか、あるいはそのような証拠があってのことなのか、あるいは観念的な批判ではないのかというようなことについての疑問がわき起こります。  警察留置明治以来歴史上容認され、治安が維持されてきたのは、市民の間に警察への信頼基礎にあったのではないかというような気もいたします。一部の外国警察では買収が日常茶飯事でありましたり、警察は強きを助け弱きをくじくといったような市民の敵のような扱いで映画なりテレビに出ることもあります。日本はむしろ信頼されてきた警察というような気がいたします。  明治の初めに川路利良警視警察制度基礎をつくったといわれておりますが、江戸時代与力司法警察第一線を担っておったようでございますが、侍の端くれですが、むしろ身分の低い侍、侍は軍事をやって戦いをするのが高尚な侍で、取り締まるのは下級侍というような差別があったようでございます。その中で、ある程度の重罪以上は自白が必須、自白がないと罪がいけないというようなことでございましたので、被疑者が恐れ入りましたと言わないと犯罪にならないということで、自白強要主義ということで、証拠主義とはほど遠いことが江戸時代行われた。そのような中でも、拷問をするのには町奉行が老中許可を得なきゃいけないという制度があって、老中許可を得るのは司法警察の恥にもなるので、そういう拷問をしないで自白をさせるというのを慣行になっていたというようなことも聞きます。  自白主義の影響もその後あるような気がしますが、ただ、明治に入りまして、川路警視がフランスからポリス制度を、標語の中にポリスは人民の保傅というような、ポスターのようなものがありまして、警棒を持ったポリスが町のおばあさんに道案内をするという親切なポリスを見て、これからはこれだというふうに言ったという話を聞きます。  川路利良写真が残っておりますが、警察庁安藤官房長にお聞きしたいんですが、ひげを付けると大変似ておられる写真なんですが、未決拘禁者処遇等に関する提言が今年の二月二日に出て、有識者会議で、その改正が遅れた理由が、一節がございまして、代用刑事施設制度に関する認識評価対立を背景として、その将来的な存廃について意見対立が見られた、このような理念的な意見対立のゆえに未決拘禁者処遇に関する法整備が進まずというふうに述べられ、理念的な対立なのか、現実的な評価が分かれたのか。  先ほど申しましたように、私は、警察への信頼というのが基本にあって日本法秩序が維持されてきたように思うんですけれども、この代用監獄冤罪人権侵害温床と言われるようなゆえがあるものかどうか。御当局に聞くだけじゃ本当は不公平なんですが、法案質疑でございますので、御当局の御意見をまず伺いたいと思います。
  7. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) ただいまの御質問でございますけれども留置施設において虚偽の自白を強要した事例等が挙げられることがありますけれども、それらの事例は、私どもとしては、事実として把握されていないものやあるいは取調べ等捜査過程におきまして不適正な取扱いがあったものであると承知しておりまして、基本的には代替収容の問題ではないと考えております。  警察の方で、現実には昭和五十五年から留置施設におきまして、組織上、留置業務捜査を担当する刑事部とは別の総務部刑務部という管理部門に担当させることといたしておりまして、また運用上も、捜査員被疑者処遇に当たることのないよう各種施策を講じてきておるわけでございまして、これがきちっと定着をしているというふうに考えております。  このような警察のいろんな措置、今御指摘のような国民から信頼されるように警察活動を行っていくということを、絶えず警察の幹部としてはいつもそういうことを心掛けてやってまいるわけでありますが、そういう事情もありまして、被疑者勾留場所というのはその大多数が裁判官の判断によりまして留置施設に指定されているものと考えられまして、留置施設冤罪温床であるとの批判は私どもとしては当たらないものと考えております。
  8. 荒井正吾

    荒井正吾君 冤罪とかいうのは、やはりある程度意図しなくてもあり得るような感じもいたします。あるいは犯罪人が法の網をくぐり抜けるといいますか、見付からないということも逆にあるような気がいたします。いろんな活動の中で、ある人間の昼夜を問わない活動の中でこの部分は犯罪だというふうに法は罪刑で定義するわけですが、それを全部見付け出すというのはいかなる国家作用でもなかなか至難の業だと思いますが、ただ、見逃すよりも冤罪に陥れるのはよくないというのが当然の風潮だと思います。  かつて同僚の警察官僚が誤認逮捕したときに、やはり県警本部長の辞職を懐に入れて、三度ぐらいは懐に入れて上司に提出したというような話も聞きましたが、第一線の人はやはり若干の思い込みもあるかもしれないし、行き過ぎた正義感があるかもしれないというふうには思うわけでございます。ただ、基本的な警察に対する信用は私はまだ日本は立派なものじゃないかというふうに思っております。  私も法執行機関端くれ責任者をしておりましたので、代用監獄を使用した責任者でもございました。外国人犯罪人逮捕し、代用監獄を利用したわけでございます。しかし、そういうことがないか、人権侵害がないかどうかというのは、御当局に聞くよりも被疑者経験者に本当は聞かなきゃいけないと思うんですが、日本監獄を利用した人、外国監獄を利用した、両方利用した人に本当に忌憚ない意見を聞けば比較ができるように思うんですが、そのような機会もないままの批判というように思います。  昨年の九月十六日に日弁連の方から御提言がございまして、その中で代用監獄廃止必要性という項目がございまして、日本恥部代用監獄代用監獄制度先進国を自称する日本恥部である、代用監獄冤罪人権侵害温床であり、捜査機関である警察署被疑者の身体を管理する異常な事態は絶対に是正されなければならないという文言がございました。  私は法執行機関をやって、こんな評価を受けるのは本当に腑に落ちない、証拠を示してほしいと。証拠を示してほしいと、証拠主義がこの批判の基になるべきだと、観念的な批判じゃないかというふうな疑いを強く持つものでございます。証拠があれば改善される、証拠なしの観念的な争いは改善の糸口もないというふうに強く感じます。この場で言うのも余りふさわしくないかもしれませんが、若干品のない表現で諸外国評価がそうだと言うよりも、本当にそうならば、こういうところを直せということをもっとあげつらっていただいて、現実改善されるという方が望ましいんじゃないかと改めて思っております。法執行機関責任者をしておりました者といたしましては、このような言われ方をしますと大変落ち込む気持ちになります。  そこで、法務省に改めて、これも御当局なので一方の評価になるわけですが、代用監獄の功罪についての御意見というのを、議論スタート台ということになるかもしれませんが、法務省にお伺いしておきたいと思います。
  9. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 我が国刑事司法制度の下におきましては、最大二十三日間という限られた身柄拘束期間の中で、被疑者取調べあるいはその他の捜査を円滑かつ効率的に実施しつつ、一方においては被疑者と家族あるいは弁護人等との接見の便にも資するためには、やはり津々浦々にきめ細かく設置されております留置施設被疑者勾留することが現実的な方法でありまして、代用刑事施設制度はこのような観点から見ますと現に重要な役割を果たしているものと考えております。  代用監獄冤罪温床であるという指摘があることは承知しておりますけれども、これまでも警察におきましては捜査留置分離を徹底し、また今回の法案におきましては法律上もその分離を明文で規定したほか、代用刑事施設制度について種々制度的な改善を加えているのでございまして、被留置者人権保障十分配慮をしているものと考えている次第でございます。  以上です。
  10. 荒井正吾

    荒井正吾君 自白主義から客観主義証拠主義というふうにまだ行き渡ってないという面があるかもしれませんが、それは江戸時代からの、自白をすれば罪が一等軽くなる、しかし重罪は、自白をしないと重罪になかなかできないというような風習があって、むしろ、恐れ入りましたと言えば罪が軽くなる、済みませんと言えば物事が済む、水に流すというような風潮があるようにも思いますが、それは近代の司法制度の中で日本的にどう定着していくのか、冤罪をどう防げるのかというのはまだ新しい課題のように思うわけでございます。是非、この施設管理捜査在り方という現場の話からのみならず、基本的な法執行の体制が更に透明性を高め、客観的な司法になるように努めていただきたいというふうに思う次第でございます。  具体的な日弁連法務省意見の交換の中で、大規模独立留置場法務省所管とすべきという意見がございます。一つの提案であろうかと思いますが、所管を替えると被疑者処遇改善されるという考えはなかなか飛び付きにくいように思っております。どこの所管であっても処遇保障を確保する、人権保障を確保する仕組みというのがやはり基本的に要るものではないかと思います。  今回の法律改正におきましては、従来法定化されていなかった警察留置場における医療、保健、視察委員会処遇に係る不服申立て機関あるいは重大事件否認事件等に係る勾留場所外部交通課題未決拘禁者に対する労働と教育などについて、法に基づく処遇の態様が規定されているわけでございます。適正な法執行という観点から、未決勾留者人権捜査必要性ということをどうバランス取るかということを法の規定をして、その法の規定が不十分であれば改善するという民主国家的なプロセスを今後とも経ていただきたいと思うわけでございますが、大規模留置施設所管替え意見につきまして、施設所管者がだれかというよりも、このような具体的な法規制が十分にされるとむしろ改善される、それが不十分であれば改めて法を改正すればよいというふうに思うわけでございますが、大規模留置施設を含めた刑事収容施設管理在り方ということにつきまして法務省のお考えを伺いたいと思います。
  11. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 委員指摘のように、未決拘禁者がどこの施設に収容されるかということにかかわらず、捜査、公判の適正な遂行が確保されるという面で配慮するとともに、人権を尊重した処遇が行われるように、バランスのとれた制度仕組みが必要であると、こう考えているところでございます。  委員指摘のとおり、今回の法案では種々処遇について改善を加えております。法的根拠明確化あるいは外部交通規定整備等々でございまして、これは委員指摘のとおりでございますので繰り返しはいたしません。また、こういった適切な処遇を確保していくという上では、処遇についての法整備のみならず、その適正な運用を担保するための仕組みも必要であろうと、このように考えておるところであります。  そのような観点から見ますと、本法案におきましては、実地の監査、不服申立て制度整備、さらには刑事施設留置施設においては第三者から成る視察委員会を設けまして、その運営に関して意見を述べていただくことによって施設の適正な運営が確保される仕組みも設けられているところでございます。さらには、今回の改正法案、三者の共管でございますので、将来にわたって三者の間で情報を共有化しつつ、いろいろ協議を加えて処遇改善を図って、処遇均一化を図っていくようなシステムの構築も今後の課題として残っているだろうというふうに思っている次第でございます。
  12. 荒井正吾

    荒井正吾君 法務省とされましては、施設管理者警察であれ海上保安庁であれ法務省であれ、その仕組みをやはり共通の人権擁護の、人権侵害がない仕組みにするというシステム管理という観点で、是非その仕組み運用の監察と今後の改善ということを責任者という自覚の下で努力をしていただきたいというふうに思う次第でございます。  代用監獄が大変な悪者にずっとなってきておるわけでございますが、それを暫定的施設として位置付けたらどうかという提言がなされております。それと、衆議院でもそのような議論がございまして、冤罪人権侵害温床というふうにあるレッテルを張られた面がありますが、そのようなものであったのか、あるいはこれからそのような、少しでもそのような事情があるのかということを監視を続けて、証拠があれば改革するということは大基本であると思いますが、施設の性格を暫定的というふうに位置付けると改善にも腰が入らないのが管理者の心情ではないかと思います。  有識者会議提言では、会議のメンバーは、それぞれが理念を異にしつつも、現実を踏まえた議論を展開した、意見の一致を見なかった論点については、国民の声に耳を傾けつつ、治安人権双方に目を配りながら、関係機関が引き続き専門的見地からの検討議論を重ねていくことを期待したいという有識者会議提言が、拝見いたしました。同じように思うわけでございますが、代用刑事施設の将来的見通しについて、法務省及び所管されている警察庁双方から御意見を伺いたいと思います。
  13. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 今回の法整備につきましては、先ほども触れましたように、この代用刑事施設制度現実我が国刑事司法制度において重要な役割を果たしていると、こういう認識から、この制度の存続を前提といたしまして、これに制度的な改善を加え、代用刑事施設の被収容者の適正な処遇を図ろうと、こういうことに今回の改正の視点がございます。  それでは、将来のことはいかんという御質問でございました。この代替収容制度は、これを私どもとしては所与の制度として考えているわけではございません。将来、刑事訴訟迅速化、あるいは裁判員制度公的被疑者弁護制度の導入などによりまして刑事司法全体が大きな変革の時代を迎えていることなどを考えますと、今後、刑事司法在り方検討する際には、取調べを含む捜査在り方に加えまして、代替収容制度在り方についても、刑事手続全体との関連の中で検討は続けていくべきものと承知しているところであります。
  14. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) お答えいたします。  代用刑事施設制度を暫定的なものとするという規範を設けることにつきましては、私どもとしましては、被疑者の大多数が留置施設勾留されているという現実必要性を無視するものでございまして、捜査活動に支障を招くおそれがあるということ、さらには、現在の過剰収容状況におきまして、収容力確保に努めていることに反しまして、留置施設収容力を減じる方向にこれが働く規範となり、各都道府県が現在取り組んでおります治安回復のための諸対策に逆行するものであることから、不適当であると考えておるわけであります。  このようなことを踏まえまして、未決拘禁者処遇等に関する有識者会議におきまして、その提言の中で、今回の未決拘禁者処遇等に関する法整備に当たっては、代用刑事施設制度を存続させることを前提とするものとしているわけでございます。  ただ、御案内のとおり、同提言にもありますように、代用刑事施設制度在り方についても、刑事手続全体との関連の中で、検討を怠ってはならないとされているところでもあり、私どもとしては、その時々の情勢により必要に応じて所要の検討がなされるものであると考えております。
  15. 荒井正吾

    荒井正吾君 警察庁勾留をして、身柄勾留して捜査をするというのと、刑事手続の中で警察と検察、司法がどのように役割を分担するかというのは、まだこれからいろんな経験を踏まえ検討していかなきゃいけない問題があろうかと思いますが、ただ、警察の方はやはり司法警察を充実させるというふうに大きな動きがあるように思います。行政警察は、どちらかというと事前にいろんなことをチェックして、若干おせっかいのようなことも行われてきたという歴史もあるわけでございますが、法の執行機関の大変重要な役割警察も担っておられますので、司法警察を充実させるという方向に動いているように感じます。そのような中での施設運営捜査の充実ということを是非努めていただきたいというふうに思うわけでございます。  事の本質は、捜査身柄勾留との関係をどうするのか、治安人権の調和とバランスをどうするのかということにあろうかと思います。有識者提言の中で、未決拘禁者人権保障は普遍の理念である、それとともに、刑事司法手続はそれぞれの国の歴史国民性を反映して築かれているものであり、我が国制度が良好な治安の維持に大きな役割を果たし、国民信頼を得てきたことも忘れてはならないというふうに書いております。今後ともその信頼が持続するように努めていただきたいと思うわけでございますが。  外国に比べて日本はいいの悪いのと言われることがあるわけでございますが、まあ余り悪いというふうな感じはしないんですけれども、諸外国における実情考え方と、日本が特段特殊だと言われるような点、その評価について御紹介をして、御意見を伺いたいと思うわけでございます。  江戸時代はやはり与力司法警察を担って、大変下級武士でございますけれども与力がやっていた。ただ、下級武士ですけれども暮らしぶりは大変良かったと書かれております。暮らしぶりが良かったのは付け届けがあったからだと。当時は警察付け届けするのが社会通念上許されていた。特に、地方の大名が東京で、江戸詰めの侍がしょっぴかれると国の恥になるので、江戸与力付け届けをした、それが与力暮らし向きを支えていたという報告があるわけでございますが。  明治司法警察あるいは戦後の司法警察、若干、新聞で拝見いたしますけれども外国に比べてそのような点は非常に少ない警察組織のようにお見受けいたしますが、諸外国実情考え方について、日本の特徴と比較した場合どのようになっているのか御紹介をしていただき、また御意見を賜りたいと思います。
  16. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) まず結論的なことから先に申し上げますけれども未決拘禁者身柄拘束に関する制度というものは、取調べの主体がだれであるか、身柄拘束期間はどうであるか、さらに身柄拘束場所等々、制度全体の関連の中で理解する必要があると考えられるところでございます。  我が国刑事司法手続は、検察官身柄が送致された後も警察官が中心となりまして詳細な取調べを行い、最大二十三日間という極めて短期間検察官起訴、不起訴を決定するために必要な証拠を収集すると、こういう特質を持っているものでございます。  諸外国制度でございますが、これを網羅的に把握しているわけではございません。そこで、まず、比較的我が国制度に近いものとして韓国制度について説明申し上げます。  韓国におきましては、警察官による逮捕が行われた場合には、逮捕後四十八時間以内に拘束令状を請求しなければなりません。そして、裁判官拘束令状を発付したときは被疑者を十日間拘束することができますが、その場合、被疑者警察留置場留置されることになります。そして、警察が十日以内に被疑者を釈放しないときには検事に引致しなければならないこととされておりまして、検事は引致を受けた後、被疑者を拘置所に留置した上、原則として十日間身柄を拘束して捜査をすることができるものとされているようでございます。  さらに、これに対して日本とは相当違う制度のフランスの例について説明申し上げます。  フランスにおきましては、警察官により逮捕された者は警察署内にとどめ置かれた後に、重罪の場合、原則として最大四十八時間以内に予審に付されることとされております。そして、身柄を拘束された場合には拘置所に勾留されることとなりますけれども勾留起訴まで延長を含めると最長四年間に及び、その間の捜査は予審判事が主体となって行い、取調べも予審判事が行うものと承知しております。  以上でございます。
  17. 荒井正吾

    荒井正吾君 制度的な比較だけではその捜査実情というのはなかなか分かりにくいことが多いようにも思います。捜査の体験をいろんな国で経験するというのもなかなかできないことでございますが、この分野の研究が更に進むように願うものでございます。  いずれにしても、冤罪を防ぐには自白の任意性というのを十分確保されなきゃいけないということが基本になろうかと思います。そこで、処遇取調べバランスが現場ではどのように工夫をされているのかということを伺いたいと思うわけでございますが、その際、無罪推定の原則を踏まえて未決拘禁者に対する処遇考えろと、無罪推定の原則の解釈について分かれているようでございます。  無罪推定をするといっても、未決拘禁者は一方で有罪の嫌疑が掛かった人たちでありますし、捜査の主たる対象者である場合が多いわけでございます。自白の任意性がやはり公判、公正な裁判を受けるために基本的に必要だと思いますが、その自白の任意性を証拠立てるためにも、処遇あるいは拘禁の処遇の程度というのは保障されるべきだと思いますが、一方、拘禁は、あるそういう条件を確保した上での拘禁は必要でないかというふうに思うわけでございます。  処遇取調べ必要性バランスをどのように取っていかれるのか、取っておられるのか、それが今までのことについていろんな批判なりある中で、どのように改善されていこうとしているのかを警察庁からお伺いをしたいと思います。
  18. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) 今御指摘の適正な処遇取調べ等捜査必要性とのバランスということで、これが非常に、委員指摘のとおり大変重要なことでありまして、新法でも、留置業務管理者は被留置者の起床、就寝時間、食事の時間、運動の時間等をあらかじめ定めることとしております。  被留置者処遇は、原則としましてこれらの起居動作の時間帯に従って行われることとなるわけでありまして、運用もそういうことでできるだけ尊重するということでやっておりますが、他方、委員指摘のように、被留置者というのは刑事手続の対象でもあるわけでございまして、勾留質問とか取調べ、引き当たり捜査、あるいは公判出廷、弁護人等との面会等を実施すべき公益上の必要性もございます。そこで、実際の現場では具体的事案に応じまして、やむを得ず、今述べました起居動作の時間帯どおりに実施することができない場合もあり得るわけでございます。  そのような場合にはどういう措置をしているかということでございますが、一つは、運動を定められた時間どおりに実施できないという場合には、これは留置施設に戻った後直ちに実施をすると。さらに、就寝時刻を超えまして長時間の取調べが行われるような場合には、これは取調べの打切りについて検討するよう留置担当から捜査担当に要請をしております。さらに、就寝時刻が遅くなった場合には、これは翌日の起床時刻を遅らせまして十分な睡眠時間を確保すると、こういうような措置をとりまして、この両者のバランスといいますか、それを可能な限り調和するように現場では努力しておりますが、さらにこれは努力してまいる所存でございます。
  19. 荒井正吾

    荒井正吾君 現場の自白なり証拠の客観性というのは、裁判員制度ができてくるとますます重要性が増すんじゃないかというふうに思います。裁判員の方に証拠の客観性、立証を十分しなければ公判が維持できないということになってくると思いますが、その取調べの現場では十分な客観性を持った、自白も含めて証拠を提出されるように、まあ御苦労も多いかと思いますが、是非新しい司法制度の中での司法警察の努力を続けていただきたいというふうに思う次第でございます。  その中で、取調べの可視化ということが話題になっております。検察庁の方では可視化を実験的に導入される。先日、テレビでは、オーストラリアでしたか、取調べの可視化を実験的にやるというふうに世界的な風潮にもなっておるわけでございます。  三年前の法務委員会で理事をしておりましたときに、附帯決議で、野党の方から可視化を導入しろという文言があって、法務省の御当局と調整したことがございますが、可視化という文言を入れるのに女性の担当検事さんが頑強に抵抗されまして、大変難儀をしたことがございます。  ただ、可視化ということを、やはり重要な文言だと思って、これを検討するということも入れないというのは大変ちょっとおかしいように思って、それは入れろということで、可視化を検討するというような文言を附帯決議で入れたことがございます。ただ、その頑強な抵抗の対応からして、十年間はもう可視化というのは姿が見えないんじゃないかというような印象を持ったんですが、数年たって法務省の方で可視化を実験するということで、むしろ進捗に驚いた次第でございます。  一方、警察の方では、なかなか現場は難しいというふうに伺っております。たくさんの人を収容してその扱いをどのようにするかというふうに、大変現実に直面されているように思うんですが、外国でも検察でも可視化の実験が行われていく中で、取調べの可視化は警察庁として今後どのように対応されようとしているのかをこの際伺っておきたいと思います。
  20. 縄田修

    政府参考人縄田修君) 警察といたしましては、第一次捜査機関として事案の真相を明らかにすることが重要な責務であると考えております。被疑者取調べも正にその目的のために行うものであります。  警察における取調べの、御指摘のありました録音、録画につきましては、これは私どもといたしましては、取調べの機能が大きく阻害されるというふうに考えております。  もう少し具体的に申し上げますと、取調べにおきましては、やはり委員御案内のとおりで、地道に被疑者とのコミュニケーションを重ねまして信頼関係を構築する、そういった中で被疑者からの真実の供述を引き出していくということが重要であります。そういったことは、録音、録画というそういった状況の中では、人間の心理としてなかなか真実が話されないのではないか。これは、取調べという場面だけじゃなしに社会生活の中でもいろいろあろうかと思います。なかなか、これが人間の心理、取調べに影響を与えるというふうに一つ考えております。  もう一つは、組織的な背景をこれ聞き出していくと。特に、暴力団等の組織犯罪になりますと、これは内部告発的な供述を得ることも必要でありますし、それから被疑者取調べが、これが第三者に知られる、例えば自分の首領あるいは共犯者等に知られると、こういうことになりますと、組織内での報復とかあるいは組織内で信用失墜、まあ放逐されるといいますか、そういったことが考えられる。そういう状況の中では、やはり供述を得ることが難しくなるのではないかというふうに考えております。  さらに、犯罪立証に必ずしも関係のない、被害者あるいは周辺の方々のことも取調べの中ではいろいろ話に出てまいります。そういったことがやはり供述する上では不安になってくるということもあろうかと思います。  したがいまして、警察といたしましては、取調べ状況の録音、録画、これを実施することにつきましては極めて慎重な検討が必要だろうと、こういうふうに考えております。  司法制度改革審議会等でもお話もございましたし、先ほど委員の、ありました附帯決議等もございますが、司法制度全体の中で今後議論されていくものだろうと、こういうふうに認識をいたしております。
  21. 荒井正吾

    荒井正吾君 デジタル化が進むといろんな仕組みは利用しやすくなると思うわけでございます。真実を追求するというのは、どういう形でやるのかというのは、やっぱり公正な法の執行が行われるという社会が一番活力のある社会だと思いますが、可視化もその一つに寄与、そういう公正な法執行に寄与する分野じゃないかというふうに思います。罪におとしめるという気持ちは更々なくても、いろんなことが起こり得る可能性もあるわけでございますので、可視化という言葉はむしろビジュアルがもう少し違う、客観性をどのように担保するかという仕組みを今後とも追求していただきたいというふうに思う次第でございます。  海上保安庁にも一つお聞きしたいと思います。  警察庁に随分お聞きいたしましたので、同様のことをお願いしたいわけでございますが、海の上での取締り機関だということで、陸上とまた違った困難があるように思います。現場では法執行をするというのと、現実に対応するというのが若干困難な場合がございます。  例えば、留置施設ではないんですが、プレジャーボートの免許証というのを日本は発行しておりますが、これは日本独特でございまして、外国では免許証もないと。海の世界は自己責任の原則だということで、免許証なんかは発行するなと、勝手に自分で責任を取るべきだという意見が、例えば衆議院の中村正三郎先生は常に主張されておりまして、余計なことをするなと、無駄な取締りを極力するなという御意見でございます。  そのような中で、免許証を取って、無免許運転は日本は海の上でも許されないということでございますので、免許が持っているかどうかを海の上で取り調べることを法執行機関としてきたわけでございますが、海上保安庁にいたときに、もうプレジャーボートにはそういう取調べはしないようにということを業務方針を決め通達を出した経緯がございます。海の上では免許を持っていようと持っていまいと、安全性は天候だとかライフジャケットの着用の有無とか、そういうようなので決まるので、現実の安全が確保されているかどうか注意をしてあげるというのが海の警察の役目で、法の違反を取り調べるのは二の次でもいいじゃないかということをしたわけでございますが、法執行機関としては、心理的なジレンマもあるというふうに感じたところがございます。  現場主義ということにもなりますが、海の現場は陸の現場と多少違うところもあると思いますので、そのような海の上での取調べ実情、例えばプレジャーボートに対する法執行の方針というものは、その後どのように進捗され、今後の新しい刑事司法の、司法刑事の進捗に対して対応をされようとしているのか、お伺いしておきたいと思います。
  22. 平田憲一郎

    政府参考人平田憲一郎君) お答え申し上げます。  海上保安庁のプレジャーボートなどに対します法執行活動の方針についてのお尋ねでございます。  ただいま委員の方から御指摘がございましたように、国民の皆様方がマリンレジャーを安全に楽しめる環境づくりをしていくことも海上保安庁に課せられた重要な任務であると認識しております。  このような観点から、私ども海上保安庁といたしましては、平成十二年にマリンレジャー活動船舶に対する適切な対応についての通達を発出いたしまして、健全なマリンレジャー活動をその活動海域で妨げることなく、事前のマリンレジャー関連情報を周知徹底させるとともに、安全啓蒙活動を主たる施策として、健全なマリンレジャー活動の安全の確保を推進してきているところでございます。また、現場の指導に当たりましても、親切、丁寧な対応に努めまして、海上保安庁業務への理解、協力が得られますよう、十分に配慮するよう指導しているところでございます。  したがいまして、引き続き、健全なマリンレジャー活動につきましては、極力これを妨げないという方針は現在においても継続した方針でございます。  一方で、海難事故の船舶隻数の用途別の比率を見てみますと、過去五年の平均ではプレジャーボートにかかわります事故が約三六%を占めております。さらに、マリンレジャー活動船舶を用いて薬物、銃器の密輸、密航者の瀬取りを行った事案が実際に過去に発生しておりまして、これら健全なマリンレジャー活動とは言えない悪質事案に対応いたしました法執行活動が適正に実施される必要があることも現実問題でございます。  いずれにいたしましても、委員指摘のように、国民の皆様方の御理解と御協力がいただけますよう、海上保安庁といたしましては、今後とも健全なマリン活動、マリンレジャー活動と両立を図るべく適切な法執行活動に努めてまいりたいと考えております。
  23. 荒井正吾

    荒井正吾君 これ陸の警察も同じでございますが、市民の健康な活動を守ると、それを支えるという警察に期待される面と、その中に紛れて悪いことをする人たちを摘発するという、考えればなかなか困難な仕事を一捜査機関として、警察、海も陸も期待されているというふうに思うわけでございます。海と陸とはよく協調して、犯罪人が海に行けば海上保安庁所管だ、陸に行けば陸上だというふうに所管が分かれたことがございましたが、仲良くしていただいて、共同していただきたいと思います。  江戸時代に、自殺した人が落ちて、その落ちたところがお寺の境内か町の道路かで所管が寺社奉行と町奉行が分かれて、どちらにするかというのをもめたことがあったようでございますが、上の方の公事方の判断がございまして、首の落ちた方の場所所管を決めろというふうに名判断があったようでございます。  がけで自殺した人が海に漂えば海上保安庁、陸に上がれば警察庁と、冗談のような話があるわけでございますが、犯罪を犯す人は海も陸も関係なく渡られますので、是非、捜査機関としては仲良くしてお勤めを果たしていただきたいというふうにお願いする次第でございます。  最後の質問をさせていただきたいと思いますが、刑事収容施設処遇改善について、いろんな意見対立があった中での改正でございます。十分意義のある改正だというふうに思うわけでございますが、理念対立をそのまま固定しないで、一歩進めて、その後の一歩進めた足跡の進捗の状況について十分監察をして、機会があれば、その監察の結果、客観的な評価を対外的にも発表され国会にも御報告願い、改善に意を尽くされるように司法当局に期待するわけでございます。  今度の改正の意義をある面高く評価するものでございますが、今後の努力についても期待するところがございます。最後に、法務大臣にその辺りのお考え、決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
  24. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 正に先生の御指摘のとおりだと思います。私どもも不断の努力をしていきたいと思っております。  私も大臣就任以来あちこち施設を見て回ったんですけれども、例えば設備という面だけ見てみましても、その時代とともに変わっているんですね。例えば、東京拘置所はもうエアコン付きでありますが、昭和四十年代前後できた拘置所は扇風機でございまして、暖房も入っていないという拘置所もあれば、当時の国民生活がエアコンと無縁の時代だったわけですから、拘置所だけ良くするわけにいかないということだったと思うんですけれども時代とともにそういう設備の面も考えていかなきゃいけないというふうに思います。  本法案で、未決拘禁者の適正な処遇の確保のために、先ほど矯正局長がいろいろ御説明しましたが、いろんなことを考えておるわけでありますが、その運用状況については不断の検証が必要であります。  今度、刑事施設視察委員会が設けられることになりました。二十四日付けで発令いたします。中身拝見いたしましたが、お医者さんですとか弁護士さんですとか地方自治体の職員なんかにも入っていただいて常時視察していただくという制度もできました。そこからもいろいろな御意見が伺えると思いますし、そういう制度が実施されていくことによって、国民の皆さんからも様々な御意見が寄せられるものと思っております。そういうことによりまして、その是非や効果を検証できるものと考えております。  いずれにいたしましても、不断の改善の努力が必要だと考えております。
  25. 荒井正吾

    荒井正吾君 最後の質問と申したわけでございますが、もう一言程度、事情により質問をさせていただきたいと思います。  今、刑事施設代用監獄について中心にさせていただいたわけでございますが、具体的な中で、これは法務省でございますか警察庁でございますか、その具体的な扱い自身が施設所管だとかその法の手続よりも超えて、取調べを客観性を保つためにいろんな対応の仕方を改善しなきゃ、これは人対人のことでございますのでなかなか全国一律にするのは難しいというふうに思うわけでございますが、警察庁にお伺いしたいんですが、取調べの具体的な客観性を高め、人権を守り、証拠として十分なる、冤罪が起こらないように、しかし隠された犯罪の真実を明るみに出すようにというのは、これは取調官の能力、個人の能力によることが大変大きいかと思います。そのような粒ぞろいの取調官をそろえるのはなかなか至難の業だと思うわけでございますけれども、その教育にしろ、その後の研修にしろ、これは自治警察でございますが、地域ごとにいろんな差があってはいけないというふうに思われるわけでございます。  警察庁として、その取調べを粒ぞろいにして、そのようないわれをなくすという取調官、その仕組みの研修、教育というのにも意を用いられているようにお伺いするわけですが、今後の施設在り方管理捜査分離という仕組みとともに、その取調官の資質の向上、養成、教育というのも大事なことかと思いますので、そのようなことにどのように意を用いていかれるかについてひとつお伺いをして、質問を終わりたいと思います。追加で恐縮です。
  26. 縄田修

    政府参考人縄田修君) 取調べ関係でのお尋ねでございます。  警察といたしましては、これは取調べを行うに当たりましては、憲法、刑事訴訟法その他法令を遵守して、当然人権を不当に侵害することのないようにということが第一でありまして、これは十分に配意をして、取調べで得られた供述について十分その内容を検討して裏付け捜査をすると、そういったことで供述の任意性、信用性を確保していく、これで事実を明らかにするということが責務であろうと思っています。  取調官の育成、あるいはそういった人権感覚豊かな捜査官の育成についてお尋ねでございますが、警察といたしましては、これは全国警察におきまして、初任科、まず最初に学校に入りますが、こういった場面でも刑事の諸般の教養の時間があります。これは正に、先ほど申し上げましたように、憲法から入りまして、法令の関係、あるいは人権の尊重のためにどうあるべきかというようなこともやっておりますし、当然、刑事任用科と申しまして刑事を選考する場面でも同様の教養を更にグレードアップしてやっております。さらに、昇任時教養等々でも行っております。  もう一つは、本当に優れた調べ官を育成していくというのは、やはりそういった教養と併せて、正に人と人とが信頼される、私も調べ官、優秀な調べ官何人も当然承知しておりますけれども、やはり人間的に魅力があるといったところがあります。そういったことも十分そういった優秀な捜査官と一緒に仕事をさせながら学ばせていくといいますか、そういったことも極めて大事だろうというふうに考えております。  以上でございます。
  27. 荒井正吾

    荒井正吾君 ありがとうございました。  終わります。
  28. 前川清成

    ○前川清成君 おはようございます。  荒井先生に引き続いて質問をさせていただきます。  荒井先生は二〇〇一年、そして私は二〇〇四年、いずれも奈良県選挙区からこの国会に送っていただいておりますが、私が二〇〇四年の七月に国会に送っていただいて、その直後、二〇〇四年の十一月十七日に奈良市の富雄北小学校で小学校一年生の女の子が誘拐され殺されてしまうと、そんな痛ましい事件が起こりました。  その事件の翌日、ちょうどこの法務委員会質問をさせていただく機会に恵まれましたので、当時の南野大臣にお取り組みをお願いいたしましたところ、早速に性犯罪者の処遇プログラムを確立していただき、今年度から実施に移していただいています。また、法務省から警察庁に出所者情報を提供するなどの工夫もしていただいておりますし、文部科学省では安全マップの作成、防犯教室の開催、スクールガードの指導、養成等の施策が実施されていると、こんなふうに伺っております。ところが、今般、またしても、秋田県で小学校一年生、男の子、米山豪憲君の悲劇が発生をしてしまいました。川崎市では先日、小学生がマンションから投げ落とされてしまうと、そんな事件も起こっています。  これまでいろんな、子供たちを守るということでいろいろなお取り組みを政府一体として続けていただいておりますが、その効果が現れていないのではないかなと、こんなふうに思っています。この点、特に通学路の安全について文部科学省の方から御説明をお願いできますでしょうか。
  29. 西阪昇

    政府参考人西阪昇君) お答えいたします。  通学路を含む学校の安全確保につきましては、従来から万全を期するよう各学校に要請、指導をしてきたところでございます。  これを受けまして各学校におきましては、それぞれの地域の実情に応じまして、地域の方々に対し、学校安全ボランティアへの協力要請を行い、地域全体で子供を見守る体制整備を進めること、あるいは、通学路の安全点検を実施することによりまして要注意箇所の把握と関係者への周知、あるいは、児童生徒を極力独りにしないよう集団登下校を実施する、あるいは、警察等と連携をいたしまして防犯教室を開催をいたしましたり、先生御指摘いただきましたように、児童生徒も参加をいたしました通学安全マップの作成などを通じまして実践的な安全教育を推進するということを実施してきたところでございます。
  30. 前川清成

    ○前川清成君 私、質問取りの際に、質問に答えていただいたらそれで結構ですからと、こういうふうに申し上げました。  私は今、効果が現れていないのではないですか、こういう質問をいたしましたところ、これまでの政策を今反復、オウム返しなさいました。私はそんなことは聞いてなくて、効果が現れてないのではないかと、そこについてお答えいただきたい、このように思っています。
  31. 西阪昇

    政府参考人西阪昇君) このような私どもの指導、要請に応じまして、各学校におきましては、地域の実情に応じて取り組んできたところでございますが、今般の事件に遭いました児童が通っております藤里小学校におきましても、集団下校を実施をいたしましたり、地域の学校安全ボランティアの活動が行われておりましたり、また安全マップをこの四月に作成をする、あるいは防犯教室も本年二月に開催をしております。また、全児童に対して防犯ブザーを配付をしたりしております。  今回の事件の状況につきましては、まだ明らかでない部分がございますので、私どもといたしましては、今回の事件の状況につきまして、事実関係を把握をいたしまして、今後必要な対策につきまして検討していきたいと考えております。
  32. 前川清成

    ○前川清成君 まず質問に答えるように委員長の方から御注意を願えませんでしょうか。
  33. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 西阪スポーツ・青少年総括官質問に的確にお答えをいただきたいと思います。
  34. 前川清成

    ○前川清成君 私は、今、効果が表れているかどうかをお尋ねいたしました。それに対するお答えがありませんでした。現実に秋田県でこのような悲劇が起こっています。文部科学省の取られてきた政策では十分ではなかったと、まずはこの点をお認めいただかなければならないのではないかと思います。  先ほどの御答弁の中で、従来から万全を期してきたと、こういうふうに明言をなさいました。そこで、お伺いいたします。従来とはいつからか、開始時期、取組の開始時期をお答えください。
  35. 西阪昇

    政府参考人西阪昇君) 学校安全全般につきましては、これは学校運営基本でございますので、従来から各学校に対して取組を促してきたところでございますが、具体的に登下校につきましての安全確保ということにつきましては、昨年の大変残念な事故を受けまして、昨年十二月六日付けで、私ども、登下校時における幼児児童生徒の安全確保についてという通知を発出をいたしまして、ここで五点の点につきまして要請をしたところでございます。
  36. 前川清成

    ○前川清成君 今のお答えは、従来から万全を期していた、その従来というのは平成十七年十二月六日からですと、こういうお答えですね。
  37. 西阪昇

    政府参考人西阪昇君) 登下校時の安全確保につきまして通知を発出いたしましたのが昨年十二月六日付けでございます。
  38. 前川清成

    ○前川清成君 先ほど西阪さんの方から、秋田の事件については発生したばかりでまだ詳細を把握していないと、こういうような御答弁でありました。しかしながら、奈良市の事件からはもう二年近くが経過しております。一年半前には栃木県でやはり小学生の女の子が通学途中に、帰宅途中に殺されています。広島でも一年前に殺されています。いずれも通学路であります。通学路の安全に対する取組は不十分だったと文部科学省はお認めになるべきではないでしょうか。
  39. 西阪昇

    政府参考人西阪昇君) 今回、下校時にこのような大変痛ましい事故が発生したということにつきましては、私ども大変残念で無念に思っております。それに対しまして、更なる対策につきましては、今回どのような状況で事件に遭遇したのかというのがまだはっきりと分かっていない部分がございますので、それを受けて考えていきたいと思っております。
  40. 前川清成

    ○前川清成君 西阪さんは何か隠したいことがあるんですか。どうして質問に対して正面からお答えになろうとしないんですか。秋田県の事件が悲しい事件だ、みんな認めてますよ、ここにいる人。何でそんなことをオウム返しにおっしゃるんですか。何が答えたいんですか、あるいは国会をばかにしておられるんですか、どちらですか。国会で私は国民の代表としてお尋ねしています。あなたは国民に対して、文部科学省の取組が十分なのかどうなのか、説明する責任があると私は思います。十分であるならば改善は要らないでしょうし、不十分な点があるならば改善検討していかなければならない、それが当たり前のことであります。  私は行政の無謬性をここであげへつらうつもりはありません。民間会社ではどこの会社でも、プラン・ドゥー・チェック、その繰り返しでより良い施策を考えている。これだけ小学生、一年生が悲劇に遭う、事件が繰り返されているにもかかわらず、痛ましい事件ですね、お気の毒ですねって、全くあなたの感情が伝わってこない。それはやっぱり小泉総理の指導なんですか。西阪さん、はっきり答えてくださいよ。今で十分だと考えているのかどうなのか、改善の余地があるのかないのか、はいか、いいえでいい。
  41. 西阪昇

    政府参考人西阪昇君) 大変、このような事件が起こりましたので、対策につきましては今後必要な措置を検討していかないといけないと思っております。
  42. 前川清成

    ○前川清成君 去年、広島市ではやっぱり女子が、女児が殺されてしまうという事件がありました。これ、報道によりますと、その犯人はペルーで性犯罪の前科を持っているというふうになっています。これが事実かどうか私には分かりません。もちろん、人権やあるいは外国人との共生という視点も必要ではありますが、外国人犯罪を水際で防ぐということも考えなければならないのではないかと思っています。  この点、法務省はどのようにお考えになっているのか、お伺いいたします。
  43. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) 昨年十二月の広島の事件でございますが、ペルーの関係当局と協力していろいろ所要の捜査をしてございます。しかしながら、被告人が複数の名前を使用していたということがございまして、同種の前科が本国であるかどうかの認定に困難を来しているところでございます。公判における検察官の冒頭陳述におきましては、前科について言及していないと承知しております。
  44. 前川清成

    ○前川清成君 佐賀県では、交通事故の加害者が事故を隠匿するべく被害者の小学生を山中に運び遺棄した、こんな事件が今般発生をいたしました。この点については私、今朝インターネットで読みましたので、申し訳ないんですが、夕べの質問通告のときに通告していないんですが、インターネットのニュースによりますと、この被害者の毅君ですが、警察も捜索をしていたんだけれども警察捜査を中断した。しかし、お母さんが捜索をお続けになって、血の付いたタオルを発見されたと。そのタオルを基にお兄さんが毅君を発見したと。毅君はもうその時点においては意識はなかったんだけれども、幸い一命を取り留めたと、こういうふうに報道がありました。  先ほど荒井先生の方から、警察への信頼基礎に秩序が維持されてきたと、こういうような御発言がありました。しかしながら、他方において、桶川の事件、神戸の大学院生の殺害事件、あるいは栃木のリンチの殺人事件、警察市民を守ってくれるのかと、そんな不安を抱いていることも事実だと思うんです。  警察が、この後やりますが、自白の獲得に熱心なことはよく分かっておりますし、後で証拠を示してお尋ねしたいと思っているんですが、市民を守るということに対する熱意だけでも結構ですから、この場所でお聞かせいただくことはできないでしょうか。
  45. 縄田修

    政府参考人縄田修君) お尋ねの交通のひき逃げの事案につきましては、ちょっと所管外で、突然のお尋ねでございますので、詳細な状況を把握していないので、誠に申し訳ございません、答弁は差し控えさせていただきたいと存じますが、いずれにしましても、桶川の事案の御指摘もございましたし、幾つか残念ながら本来あるべき姿を逸脱したものも捜査の過程でございます。そういった折には、私どもといたしましては、十分その状況を把握した上で、厳しくその事実を指摘して是正をするということで、諸般の会議、あるいは執務資料等々を通じながら対応しておるところでありますし、正にその過程の中で刑事罰を科すような事案があれば、厳正に対処をいたしておるところでございます。
  46. 前川清成

    ○前川清成君 どうかよろしくお願いいたします。  私も、今二人の子供の子育ての真っ最中でありますが、小学校五年生と中学校二年生の二人の子供がいます。今、子供を持つ親にとって一番の心配は、子供が犯罪に巻き込まれてしまうんじゃないかということであります。朝元気に出掛けていってくれたその子供が、夕方またお腹を空かして帰ってくる、この当たり前の幸せを私たちは大切にしたい、そんなふうに思っています。  先ほど、文部科学省にいろいろお尋ねをいたしました。私は、文部科学省の対応は極めて不十分だと思っています。それで、私たち民主党では、専ら学校の安全対策に従事する者を配置してはどうかと、そのような具体的な提案をさせていただいています。この提案について、文部科学省の方でどのようにお考えいただいているのか、お答えいただきます。
  47. 西阪昇

    政府参考人西阪昇君) 子供の登下校を含めました安全確保につきましては、学校の教職員だけでは対応が不十分な面がございますので、地域の方々にも御協力をいただいて、地域全体で子供を見守るということが重要であろうというふうに考えております。  私どもといたしましては、平成十七年度から、各学校におきましては、地域の方々に御協力をいただいて学校安全ボランティアという形で子供たちを見守っていただく、あるいは各学校のそのようなボランティアの方々を指導する立場の方として、先生も御指摘いただいたと思いますが、スクールガードリーダーの配置を昨年から始めておりまして、昨年は九百名の配置でございましたが、十八年度は全小学校をカバーできるようなということで配置をしたいというふうに考えているところでございます。  このような体制を整備することによりまして、また、関係省庁、警察などと連携を深めまして、万全を期していきたいというふうに考えております。
  48. 前川清成

    ○前川清成君 どうかよろしくお願いいたします。  法務大臣にお伺いしたいんですが、法務大臣は、国会議員になられるまで何年間ほど弁護士をなさっていたんでしょうか。
  49. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 約十二年ほどだったと思います。
  50. 前川清成

    ○前川清成君 弁護士出身の大臣が、今般法務大臣におなりになったと、そのことに対する何か感慨みたいなものはあるんでしょうか。特に、弁護士の時代に取り組んできたこととか、何かについて今回実現してみたいと、そのような思いを大臣はお持ちになっておられますでしょうか。
  51. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 国政に参画させていただきたいという決意でふるさとへ戻ったわけでございますので、特に弁護士としてのいろいろな活動の中で感じたことをとりわけ実現するために国政の道に入ったわけじゃございませんが、弁護士時代、様々感じたことがございます。  例えば、この法案につきましては、昭和五十七年に国会に提出されたわけですが、その当時、私は第一東京弁護士会の副会長でございまして、あのときは日弁連、弁護士会挙げて反対運動に立ち上がったわけであります。第一東京弁護士会は、どちらかというと保守的といいますか伝統的といいますか、そういう日弁連のいわゆる反対運動については冷ややかな、冷ややかって適切じゃございませんが、保守的な態度を取っている会だったわけですが、あのときは一弁の長老から若手まで一致してこれはいけないということで立ち上がったわけでありますが、結局、紆余曲折を経て廃案になったわけですけれども、その後、何回か提案されたけれども廃案になると。いろいろ申し上げたいことございますけれども、それが二十五年たってこのような形で国会で御審議願うようになったということは、ある意味では感慨無量であります。  留置施設在り方についても、あの当時の留置場と今では隔世の感がございます。豚箱という言葉がよく使われておったわけですが、今は豚箱は死語になったんじゃないでしょうか。  一例だけせっかくのお尋ねですから申し上げさせていただきますが、ちょっと時期は忘れましたが、反対運動をやっている最中、警察庁は御存じですが、警視庁の本庁が建て替えられまして、今の本庁ですね、そこに当時、留置施設としては最新鋭の留置場が誕生したわけであります。私、見に行きませんでしたけれども、非常に画期的だと。要するに、留置官と取調官が完全分離されていると、施設も当時の拘置所をはるかに凌駕するすばらしい内容のものだと評価されておりました。  今度、法務大臣に就任して、一番古い留置場と、都内ですね、一番新しい留置場を見たいということで警視庁にお願いをして伺ったんですが、何とその本庁の留置場が一番古いと。一番新しいのは池上署の留置場だと。両方視察いたしましたが、もちろん、池上署の方が設備は若干いいわけですけれども警視庁本庁の留置場も初めて拝見したんですが、法務省所管している拘置所のどれに比べても勝るとも劣らない設備であり、運営もなされているという実感を受けたわけでございます。  さっき警察、官房長の答弁では、昭和五十五年ごろから留置制度を置いて捜査留置分離を始めたというふうに説明しておられたんですが、始められたのは五十五年かもしれないけれども、五十七年時点においては、全国、まだ捜査留置分離は行われていなかったと思うんですね。私ども、当時、設備もよくないし、捜査留置分離されていない、そこに焦点を当てて、今のままで監獄法改正したら今のようなひどい留置場が永続的になってしまうんじゃないかということで反対運動をしたわけでありますが、その後の経過を見ますと雲泥の相違の改善がなされているというふうに思います。全国、私の地元でもどこでも留置場はありますけれども、非常に改善を見ておるということでございますので、もちろん所与のものとして未来永久に、こういう施設、本来分離するのが理想かもしれませんが、現実の姿からすると、現実刑事司法で果たしている役割を見ますと、現実に今のような留置施設があることを前提にしてこの法律案が提案されるということも一つのこれ時代の進展の結果かなというふうに感想として思っておる次第でございます。
  52. 前川清成

    ○前川清成君 大臣が一弁の副会長までなさったとは存じ上げませんでしたが、私も平成二年に登録をさせていただいたんですが、たしかその当時でも、やっぱり日弁連、前の古い建物も、あるいは大阪の会館でも、拘禁二法反対、代用監獄反対という垂れ幕が常に掛かっていたように思います。それが、今回このようになったのが私も意外な感じがしているんです。  それで、今の大臣の丁寧な御答弁の中で若干よく分からなかったのは、一弁の副会長当時は大臣代用監獄はいかぬということで熱心に反対をなさった。しかし、五十五年当時から始まった代用監獄改善によって、今回は随分改善されたから代用監獄を認めてもいいんだと、そういうふうな気持ちになってきたんだということをおっしゃったのかなと思って今聞いていたんですが、私の聞き取り方がそれで正しいのであれば、大臣がそのようにお考えを変更なさったのは、一体どの点改善されたと、代用監獄の実態がどのように改善されたのか、その点お伺いできたらと思います。
  53. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 先生のおっしゃるとおりでございます。  実態として、当時のいわゆる留置場と今とはもう比較にならないほど、施設設備の面においても、運用留置官と捜査分離という点でも徹底していると。しかも、相当、全国津々浦々、警察署には必ず留置場はありますから、私はそんなに、片田舎の警察まで行って見たわけじゃありません、私、地元の留置場は見ておりますけれども、まあ警視庁並みの留置施設改善されているのかなという印象を受けております。  理想論としてあの当時も拘置所をもっと増設しろということを言ったんですが、これは国家財政の問題であって、もちろんどんどん増設、改善、改築はしておるわけですが、犯罪状況に追い付かないという一面もあるんじゃないでしょうか。  今後とも、拘置所、拘置施設改善、増設というのは行ってまいると思うんですけれども、法改正前提として、今の留置施設刑事司法の中で果たしている役割を踏まえますと、これを前提として法改正するということが現実的だというふうに思っております。
  54. 前川清成

    ○前川清成君 今大臣は先生のおっしゃるとおりというふうなまくら言葉を付けていただきましたけれども、私は、ちょっと残念ながらまだ全国の拘置所が改善されたと言うほどの経験もありませんし、認識もございません。  ただ、代用監獄自白強要の温床になるということが日弁連代用監獄に反対してきた実質的な理由ではなかったかなと思います。食べるものが貧しいからどうこうじゃなくて、自白を強要してしまうと、だからこそ代用監獄に反対し続けてきたのではないかなと思うんですが、この自白の強要の点について、大臣の先ほど来の御答弁の中には、いやもう自白強要の心配はいいんだと、その点の危惧はぬぐえたんだという点がなかったように思います。この点、いかがでしょう。
  55. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) それをそういうふうにお聞き取りいただいたとしたら誤解でありまして、全くそんなことはございません。  ただ、あの当時の私どもの主張としては、留置施設における捜査留置をしっかり分離しろと、代監である以上、それを強く主張しておったわけで、その主張に関する限りは、ほぼ今の警察、これは都道府県警が設置しているわけですけれども、実現されているかなと、おおむねそういう認識でおります。取調べそのもの、強要というのは、制度とかいろいろなもの以外に、これは捜査官と調べられる人との間の関係でありますから、これは常に法務省としても検察庁としても警察庁とともに留意して、そういうことが行われないように様々な措置をし、配慮していく必要があると思っております。
  56. 前川清成

    ○前川清成君 その自白の強要の点について少し議論をさせていただきたいと思います。  確かに、捜査官が仕事の熱心さの余り行き過ぎた捜査があるというようなことは、これは絶対に私はこの世の中からなくならないだろうと、そんなふうに思っています。ですから今、大臣もおっしゃったように様々な施策が必要でありますし、その点、私は令状主義、裁判所が捜査機関の行き過ぎをいかにチェックするか、これが大事なのではないかなと思っています。  今更言うまでもありませんが、刑事訴訟規則の百四十三条でも、逮捕は逃亡のおそれと罪証隠滅のおそれがある場合に限って認められることになっておりますし、最高裁の平成十年の九月七日の判決も、逮捕状の請求を受けた裁判官は、提出された資料などを取り調べた結果、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情を照らし、被疑者が逃亡するおそれがなく、かつ、罪証を隠滅するおそれがないなどの明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を棄却しなければならない、このように判示をしています。  しかし、実際は七十二時間の逮捕、そして二十日間の勾留というのは自白を獲得するために行われているのではないのかなと、私はそんなふうに思っています。  そこで、最高裁にお伺いしたいんですが、裁判所はこれまで、逃亡のおそれもない、罪証隠滅のおそれもない、それにもかかわらず逮捕勾留を認めてきたのではなかったでしょうか。この点、最高裁にお伺いをいたします。
  57. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 逮捕の要件につきましては、今委員指摘のとおりのことが法及び規則に掲げられているわけでありまして、裁判官は一個一個の事件について、その要件があるかどうかということを慎重に審査していると私は思っております。もとより、いろいろな弊害があるというような指摘もありますので、万が一にも直接人権にかかわる令状事務についてはそういった慎重な姿勢で臨まなければならないと、これもそのように考えております。
  58. 前川清成

    ○前川清成君 私は、裁判所は逮捕必要性、すなわち逃亡のおそれもない、あるいは罪証隠滅のおそれもないのに警察あるいは検察庁から出される逮捕状の請求あるいは勾留状の請求、これを黙認し続けてきたと、そう思っています。  また、裁判所にとっても、自白事件の方が判決を書くのが楽なので、むしろ警察、検察庁、そして最高裁が共謀共同正犯になってこの自白を偏重する、自白を強要する日本捜査体質を生み出してきたのではないかなと、そんなふうに思っています。認めないと、自白しないと保釈されないというのが現実であります。これを私たちは人質司法と、こういうふうに呼んでまいりました。この人質司法自白を偏重する今の捜査体制が、警察においては科学的な捜査を行うその熱意をそいできたのではないかなと、こんなふうに思っています。  先ほど荒井委員の方から、観念的な争いは解決の糸口にはならない、証拠を示さなければならない、正にそのとおりの御指摘がありましたので、私も具体的な例を示して、最高裁が令状主義を守っているのか、人権擁護の最後のとりでとして裁判所が機能しているのか、この点をお伺いさせていただきたいと思います。  なお、個別の事件の内容に立ち入って、その判断、裁判官の判断をあげへつらうために質問するつもりはありません。この代用監獄制度考えていく上の資料としてお答えいただきたい、そう思います。  そこで、まず最初にお伺いしたいのは、今般逮捕されました耐震強度偽装の小嶋さんの件であります。小嶋さんの国会喚問はたしか昨年のうちだったと思います。あれからもう半年近くが経過しています。逃げようと思えば逃げれた、証拠を隠すつもりであれば既にもう隠し終わっているはずであります。ですから、私は、小嶋さんのやったことは良くない、真実であれば、報道されているとおりのことをやったとしてはそれは良くないし、耐震強度の偽装も良くない。しかしながら、この事件、小嶋さんの事件において、本当に逃亡のおそれがあるのか、証拠隠滅のおそれがあるのか、それはないんじゃないかな。しかも、これはマスコミも含めだれもこの点を批判、非難しない。堂々と、昼間堂々とこの違法な逮捕が行われている。今の日本のこの精神風土自体が代用監獄などと相まって自白偏重を生み、冤罪を生み出しているのではないかなと、そんなふうに思っています。  そこで、最高裁にお尋ねしたいんですが、一般論で結構です。小嶋さんの事件の当不当をあげへつらうつもりはありません。小嶋さんの事件において、一体どの点で逃亡のおそれがあって、一体どの点で罪証隠滅のおそれがあるのか、お答えいただきたいと思います。
  59. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 今委員から、個々の判断についてあげつらうつもりはないということを前提として伺いました。ただ、それを踏まえましても、裁判所としまして、最高裁の事務当局といたしまして、個別の事件につきまして具体的な事案は承知しておりませんし、またそういう個別の事案を前提としながら要件があったかなかったかということを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  60. 前川清成

    ○前川清成君 それでは、痴漢事件、痴漢冤罪事件を例にして、裁判所が令状主義をどのように考えているのか、この点について議論をさせていただきたいと思います。  昨日の質問取りの際に何例かの新聞記事をお示ししています。二〇〇〇年十月十九日に大阪地裁で四十二歳の専門学校教員に対して痴漢容疑が無罪判決が出ました。この件については六十八日間勾留されています。二〇〇六年の三月八日、東京高裁で逆転無罪判決、やはり痴漢事件ですが、逆転無罪判決が出ています。このケースにおいては百五日間勾留されています。二〇〇四年の十一月九日、大阪高裁でやはり逆転無罪判決があります。このケースでは四か月半勾留されています。  そこで、お伺いしたいんですが、痴漢事件において何か物証はあるのかどうか、まず警察にお伺いしたいと思います。
  61. 竹花豊

    政府参考人竹花豊君) 突然のお尋ねではありますけれども……
  62. 前川清成

    ○前川清成君 突然じゃないよ、予告、通告しているよ。後ろで手挙げてはる。
  63. 竹花豊

    政府参考人竹花豊君) 失礼しました。
  64. 縄田修

    政府参考人縄田修君) 恐縮でございます。遅れまして申し訳ございません。  痴漢の事件、これは被害者が、混雑した電車内での事案が多いということで、非常に羞恥心を利用した、そういったものを利用して敢行されるもので、女性に深刻な被害を与えるということを認識しています。  事件として立証していく上で最も大事なことは、目撃者がなかなかこういった場合には分かりづらいといいますか、明快なものが出てこないということ、あるいは、私どもといたしましては、できるだけ被害者の供述に頼らず物証をということで指導しておりますが、そういった中では、手の内にわたるので余り大きな声で言いたくはないんですが、いろいろな微物関係等々、こういったものにつきましてもできる限り採取をすべきというような指導もしてございます。  そういった中で、被害者の供述あるいは被疑者の供述等々を踏まえて、さらに物証等どこまであるのかというようなことも踏まえながら私どもとしては判断しているところでございます。
  65. 前川清成

    ○前川清成君 今お答えいただいたんは安藤官房長でしたか、安藤さんですかね、ちょっと今の。
  66. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) いや、縄田刑事局長
  67. 前川清成

    ○前川清成君 縄田刑事局長ですか。出てこられたんが安藤さんですか。
  68. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) いやいや、竹花さん。
  69. 前川清成

    ○前川清成君 竹花さん。ちょっとその辺、横の連絡をよろしくお願いいたします。  それで、今の縄田さんのお答えがちょっとよく分からなかったんですが、縄田さんでよかったですね。  物証は特にないというお答えでいいんですかね。
  70. 縄田修

    政府参考人縄田修君) 捜査といたしましては、供述あるいは物証、そういったもので立証していくと。できるだけ、当然のことながら物証をまず求めていくということではありますけれども、事件の性質によってはなかなか物証が得づらいものもあると、こういうことでございます。
  71. 前川清成

    ○前川清成君 痴漢事件で、痴漢事件で物証って、例えば何かあるんですか。
  72. 縄田修

    政府参考人縄田修君) 私どもといたしましても、委員指摘のとおり、この種の事件、なかなか難しいものがあります。昨年来、客観的な物証をということで、今も、先ほども御答弁申し上げましたけれども、いろんな微物関係等々がうまく採取できるといいますか、そういう事案であり、採取できれば物証となる場合もあろうかと思っています。
  73. 前川清成

    ○前川清成君 ちょっと今の答えがはっきり分からなかったんですが、私の方で解説いたしますと、要するに、女性の、女性もいらっしゃる前で誠に恐縮ですが、女性の下着の中にまで手を入れて触った、そういうようなケースでは犯人の手に付着物があることもあるでしょうと。そうでなければ、衣類の上から触ったようなケースでは物証、痴漢事件において物証などはおよそ考えられない、これが科学的な結論だろうと思います。  そこで、最高裁に伺いたいのは、痴漢事件においておよそ物証はありません。だから、その物証を隠滅するなんてことは考えられないんです。あるいは、仮に女性の下着の中にまで手を入れた、手に付着物があったと、それは洗えばしまいなんで、四か月半も勾留して罪証隠滅のおそれを、罪証隠滅を防ぐなんて趣旨は全くないわけです。  それにもかかわらず、この冤罪、無罪事件では、今申し上げたように六十八日間であり、百五日間であり、四か月半なり勾留されている、身柄勾留されている。これこそ正に自白を強要するための逮捕であり勾留であって、それを裁判所は、令状発付に当たって警察や検察庁と共謀共同正犯として認め続けている。その実態を何よりも端的に示す証拠そのものではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。最高裁、最高裁。
  74. 竹花豊

    政府参考人竹花豊君) 痴漢にかかわる捜査は生活安全部門と刑事部門の両方でやっております関係で今の、先生御指摘のような、私どものちょっと連絡の不都合があったわけでございますが、痴漢の捜査につきましての物的な証拠の問題につきましては、女性の衣類を触ったこと、その衣類の繊維のかけらが手に付いていることがございまして、そのことが一つの物証として有罪判決を受けた者は多々あるように承知をいたしております。
  75. 前川清成

    ○前川清成君 竹花さん、話の腰を折らないでくださいよ。今、わざとこれ、時間の妨害違うの。今、趣旨分かっているでしょう。仮に、犯人の手に衣類の糸くずが付いていました、それを四か月半勾留する理由になるんですか。四か月半手に付けたまま歩いている人がいてるんですか。何を言いたいの。  僕は、そうじゃなくて、今、最高裁と議論をしたい。令状主義で捜査官の行き過ぎを裁判所がチェックすることになっている。手に糸くずが付いていましたと、あるいはそのほかのものが付いていましたと、そんなケースが千件に一つあるのかもしれません。そんなの千件に一つですよ、竹花さん。僕、こうやって今自分のスーツ触ったけど糸くず付かないもの。  そんな千件のケースがあるのかもしれないけれども、私が今言いたいのは、およそ罪証隠滅のおそれがないにもかかわらず、可能性がないにもかかわらず、否認をする、自分はやっていませんと、そう言ったばっかりに四か月半なり百五日間なり勾留されている、これについて最高裁は令状主義を徹底しているというふうに胸を張れるのかどうか、お答えください。
  76. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 罪証隠滅のおそれの対象というのは、これは千差万別でありますので、一般論として申し上げますけれども、つまり、今御指摘の事案がどうだったかということはちょっと申し上げられませんが、罪証の対象としては物証だけではございませんで、被害者の供述あるいは目撃者がいた、その場で何を供述していたかと、こういうものも証拠になるわけでございます。  したがいまして、罪証隠滅につきましては、そういった関係者との接触可能性といったことも一般的には判断の対象となろうかと思います。しかし、逆に言えば、接触の可能性がないという場合には、それは勾留が却下される場合、あるいは保釈が認められる場合もこれは当然のことながらございまして、今具体的な数字は申し上げませんけれども、いわゆる痴漢の事件につきましては、勾留されないままに起訴されたりあるいは起訴後に保釈されるという事件もそれは言うまでもなくございます。
  77. 前川清成

    ○前川清成君 大谷さん、個別事件についてはコメントしないと言いながら、今都合のいいことだけ言い出したんですから、この後個別事件についてはコメントしないなんて禁句ですよ。大谷さん、僕も分かっていますよ。  例えば、証人威迫についても罪証隠滅のおそれがある、そうしたら保釈の条件で接触を禁止したらしまいじゃないですか。あるいは、私は、何も判決に至るまで勾留し続けている、だからけしからぬと言っているんじゃないですよ。今、時期を明確に言っていますよ。二〇〇〇年の大阪地裁のケースでは六十八日間、東京高裁のケースでは百五日間、大阪高裁の二〇〇四年のケースでは四か月半、判決までずっと保釈していないと言っているんじゃないんです。  ただ、痴漢事件で、痴漢事件というのは、下着の中に手を突っ込まずに衣類の上から触った場合であれば、大体罰金五万円程度なんです。罰金五万円程度の犯罪で四か月半あるいは百五日。痴漢はもちろん女性の人権に対する侵害です、いけないことは十分分かっています。しかし、自白しないから罰金五万円の罪のために勾留し続ける、逮捕し続ける、ここに冤罪温床があるのではないかということを御指摘申し上げたいと思っているんです。  そして、この自白偏重の態度が警察の科学的な捜査、今、竹花さんは付け足したように糸くずが手に付くんだと、こういうふうにおっしゃいましたけれども、例えばですが、大阪地裁の二〇〇〇年十月十九日の判決は、その判決の中で、勾留したら自白するだろうと、そんな安易な見込みの下で勾留したんだというふうに判示をしています。東京高裁の二〇〇六年三月八日、これはいずれも被害者を誘導した、大阪高裁の二〇〇四年十一月九日のケースでも被害者を誘導したというふうに判示をしています。特に、二〇〇〇年の八月二日のケースでは、捜査官は、私が今申し上げたように、罰金五万円程度の罪ですから、簡単な罪なんだから早く言った方がいいですよと、そう言って自白を強要したと、こんなことが判決で明示をされているんです。警察においてはそんな捜査を行っていないと竹花さんあるいは縄田さんおっしゃるのかもしれませんが、判決の中でこういうふうに認定され、しかも判決が確定しているわけであります。  痴漢事件、これから夏になりますが、サラリーマンの皆さんは満員電車に押し込まれて通勤をなさっています。いつ自分が疑われるのか怖いと、そう言って両手を上げて通勤をする方だって今いらっしゃるわけです。  具体的なケースでどうこう、これも言うつもりはありませんが、「正論」という雑誌の平成十五年四月号に、痴漢冤罪被害者の叫び声を聞けというような、冤罪事件の被害者本人、被告人、元被告人だった方の手記が載っておりまして、その中では、そういう女性はごくごくまれなんでしょうが、示談金目当てに痴漢事件を捏造する者がいる事実を社会に訴えたい、こういうふうにもおっしゃっています。  どういうことかといいますと、今申し上げたように、自白しないと、自白しないと勾留されてしまう、逮捕されてしまう、何か月間も。しかし、罪を認めて被害者にお金を払ったら、罰金五万円で済ましてくれる。だから、悪い悪い方はごくごくまれでしょうけれども、お金目当てで痴漢に遭ったと善良なサラリーマンを被害者にしてしまう、そういうケースもあるわけであります。  この点、警察において今、科学的な捜査、特に痴漢事件においてどのような捜査を心掛けておられるのか、自白偏重の捜査ではなくて、どのような捜査をなさっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  78. 縄田修

    政府参考人縄田修君) 先ほどちょっと言葉足らずでございましたが、痴漢事件の正に無罪判決も等々ございましたし、今御指摘のようなこともあります。警察といたしましては、これは誤りのない捜査を厳格に行うということで、昨年秋に一線に対しても一般的な留意事項等で指示をしてございます。  一つは、先ほども申し上げましたが、これは目撃者の確保、これがなかなか難しいところですけれども、これが一つ。それから、実況見分と証拠保全の徹底ということであります。これは現場の状況を再現しながら、本当に事実かどうかといったところを確認していく。もう一つは、被害者及び目撃者の供述調書の作成上の留意点ということで、これは特に女性が被害者でありますので、本当に真相を話していただけるようにということで、希望があれば当然女性の警察官というようなこと等々配慮すべきだということ。それからもう一つは、微物、繊維片の鑑定の積極的活用ということでございまして、否認事件を念頭に置きながら、早期に被疑者の手指、手の指から微物の採取を行い、繊維片等の異同識別を行うという、こういったこともしっかりやるというようなことで指示をしてございます。  微物関係のこういった鑑定につきましては、徐々に必要に応じて実施されておるものと、こういうふうに認識をいたしております。
  79. 前川清成

    ○前川清成君 この点についてはもう少し議論もしたいし、平成十四年の十二月五日の判決については判例時報にも詳しく載っていますので、これについてもお尋ねしたいと思っていたんですが、私の持ち時間が残り八分になりましたので、次の質問に移らせていただこうと思います。  そこで、法務省にお伺いいたします。  今、実際のところ留置場では、弁護士の接見についてお伺いしたいんですが、留置場では二十四時間、夜間であっても休日であっても、接見が可能でありますが、拘置所では、私の知識ではたしか、大阪の拘置所の場合、午後の四時半までに入らないともう接見を認めていただけない、そういうふうになっていたんだろうと思います。  それで、大臣も十二年間弁護士をしていただいていたということですので、その辺の事情はよくよくお分かりいただけるかと思うんですが、私のような本当にそこにでもごろごろごろごろいる弁護士の場合には、刑事事件を受任するということは非常に非日常的なことであります。民事事件がほとんど中心で、昼間の間は裁判所へ行って弁論があったり、あるいは証拠調べがある、家庭裁判所へ行く。刑事事件を受任して被疑者に会いに行こうにも、昼間はそうやって何か月も、ある場合には何か月も前から民事の裁判の予定というのは決まっていますから、それをキャンセルして行くわけにはいかないと。結局、夜行くしかないと、その日予定されていた民事の事件をすべてこなした後、夜行くしかないわけであります。  ところが、拘置所の場合、四時半で、四時半までに行かないともう被疑者には接見もできない、被疑者に会うこともできない。こうなりますと、大変、被疑者の弁護権を奪ってしまうことになります。  裁判員制度になれば連日開廷が原則になってしまいます。この夜間や休日の接見について、更にその制度を拡充する必要があると私は考えていますが、法務大臣の御見解、いかがでしょうか。
  80. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) 第百十八条第一項におきまして、未決拘禁者の弁護人との面会については、日曜日その他政令で定める日以外の刑事施設の執務時間内とするというふうに原則規定をしてございます。これらは、刑事施設においては一般に、夜間及び休日には面会に対応するための十分な人的体制を取ることが困難なことが多く、管理運営上の制限をする必要があることに基づくものでございます。しかしながら、一方で、今御指摘のように、防御権を実質的に保障するためには夜間や休日に弁護士さんと面会ができるような配慮がなければならない場面が多々ございますので、百十八条第三項に、執務時間外の面会の申出がある場合においても、管理運営上支障のあるときを除き、これを許すものというふうにしてございます。  どのような場合について、またどのような範囲で認めるかにつきましては、その必要性を勘案しつつ具体的な方法を検討してございますが、必要な場合には確実に夜間、休日面会を実施することができる体制の整備を図ってまいりたいと思っておりますし、今御指摘をいただきました裁判員制度が実施されたような場合には、これはもう確実に面会ができなければならないわけでございますので、そういう場合には管理運営上の理由をもってこれを拒むことがないようにいたしたいと思っております。
  81. 前川清成

    ○前川清成君 今の河野副大臣の、しかしながら以下を大切に聞きたいと思います。  それで、今副大臣の方から法務省の決意を聞かしていただきました。ただ、副大臣もおっしゃったように、刑事施設の人的なスタッフの問題もあるんです、だから十分にはこたえられないんです、こういうお答えでした。  そこで、今日は財務省にも通告をさせていただいています。財務省にあっては、そもそも裁判員制度という名前を御存じなのかどうか、その点からも心もとないんですが、今、河野副大臣がおっしゃったように、どうしても夜間、休日の接見体制を充実しなければ司法改革の大きな柱がとんざしてしまいます。  そこで、財務省にお伺いします。小理屈を付けて予算をけちるというようなことはしないですね。
  82. 松元崇

    政府参考人松元崇君) お答えいたします。  必要な予算は付けていく必要があると考えております。
  83. 前川清成

    ○前川清成君 そうしたら、今、必要な予算は、松元さんは今の副大臣の答弁は聞いてなかった。聞いてた。河野副大臣がおっしゃったように、夜間、休日の接見体制を充実させなければならないわけです。そのための人員、財務省はどう考えているのか、お答えください。
  84. 松元崇

    政府参考人松元崇君) お答えいたします。  裁判員制度が導入されますと、ただいま副大臣の方からもお話がございましたように、連日的開廷によります集中審理が基本的な審理形態になるということがございまして、裁判所の構内での接見が円滑に行われるようにする必要があるということで、現在、裁判所におきまして関係者の意見も聞きながら接見室の計画的な整備必要性について検討をしているというふうに伺っております。  財務省といたしましては、厳しい財政事情の下、これらの検討結果に基づく具体的な予算要求を踏まえまして、効率的かつ円滑な裁判員制度導入に向けて十分検討してまいりたいと考えております。
  85. 前川清成

    ○前川清成君 松元さん、今読む原稿を間違っておられるんじゃないですか。今、刑事施設の中の、拘置所の中の予算についてお伺いしたのに、何で裁判所の意見を聞きながらってなるんですか。この法律で、拘置所の、刑事施設管理権は裁判所に移ったんですか。もういいです。時間ないから。  いずれにしても、財務省は司法改革についてよくお分かりにならないのであれば、最高裁や法務省のことをもっと謙虚に耳を傾ければどうかなと、こんなふうに思っています。  それで、今、松元さんが間違って読んでしまった原稿の質問をこれからいたします。  私が事前に通告しているのは、今年の三月二十二日、この法務委員会で、裁判員制度が始まったならば、裁判所の中で、裁判が終わってすぐ、被疑者、被告人が拘置所に押送されるまで裁判所の中ですぐ接見できる、そういう体制を充実させなければならないのではないかというふうに申し上げました。それに対して、大谷刑事局長が、最終的には今委員が御指摘のとおりのスケジュールで間に合わせなければならないということは十分認識しておりますと。最終的なスケジュールというのは平成二十一年五月までと。要するに、平成二十一年五月に間に合うように裁判所の中における接見室を充実させていくという大谷さんのお答えでありました。それに対する財務省の御見解をお聞きしようとしたところ、松元さんが今間違って先の答弁原稿用紙をそのまま棒読みしてしまった、こういうことであります。  今の大谷さんのお答えも是非是非よく御理解いただいて、二十一年五月という、もう締切りもありますので、この点、御配慮をお願いいたしまして、時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  86. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  87. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、刑事施設及び受刑者処遇等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  88. 松岡徹

    ○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。  午前中の同僚議員であります前川議員に引き続きまして御質問をさせていただきたいと思いますが、その前に、今回の法案につきまして、その提案趣旨の中にもありましたように、明治四十一年に制定された監獄法を言うならば百年ぶりぐらいに改正しようというような法案であります。そういう意味では、今日の質問に立つまでにそれぞれ私もいろいろと検討させていただきましたが、しっかりとこの法案については議論をする必要があるし、様々検討について加えなくてはならないというところがたくさんあると思います。できる限り、この法案の内容につきましてたっぷりとした時間を取っていただくように心からお願いを申し上げたいというふうに思っております。  それでは、今回の法案の中で特に代用監獄制度について、今回の改正理由の中には、この制度を維持しつつ改正しようという内容になっています。午前中の質疑にもありましたが、この代用監獄制度が世界的にも様々な視点で批判もされておりますし、さきの本会議で我が同僚の千葉景子議員の方からも代表質問でありましたように、世界にとって日本のこの制度は「DAIYO KANGOKU」というふうに正にそのままの呼び名で指摘をされているところであります。その指摘の内容は、今回の改正提案理由の中にありますように、被収容者の権利義務の関係とか、そういったものが法文上明確にされていない、すなわちこの制度によって未決拘禁者処遇が非常に狭められて抑圧的に扱われている、そしてこの制度によって自白強要や冤罪が起きる温床になっているというような指摘がございます。これは、ずっと古くて新しい課題であります。  今回、そういう指摘があるにもかかわらず、この制度を維持しつつ改正するというふうな提案になっています。私は、それぞれ議論はありますが、この代用監獄制度について、基本は、本来、未決拘禁者というのは拘置所での留置というのが原則だというふうに考えておりますが、改めて法務大臣にその基本的なところをお聞かせいただきたいというふうに思います。
  89. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 法案の第十五条第一項の規定は、被疑者等を刑事施設勾留することに代えて、留置施設にも勾留することができるとするものでございます。これは、監獄法第一条第三項に基づく代用刑事施設制度を存置するものでございます。  現行法上、勾留場所につきましては、留置施設とする場合を限定するような特別の要件は何ら規定されていないことなどから、拘置所とするのが原則であるとは解されておりません。これは通説的理解であり、実務上も勾留場所裁判官が具体的事件ごとに諸般の事情を総合的に考慮して、裁判官の裁量によって決定しているところでございます。  今回の決定はこうした解釈を前提とするものでございますけれども我が国の現在の刑事司法制度前提とする以上、迅速、効率的な取調べを含む捜査を遂げる必要性などから勾留場所の決定は裁判官の健全な裁量にゆだねられるべきであって、拘置所への勾留を原則とすることは現実的ではないし、適当ではないと考えております。
  90. 松岡徹

    ○松岡徹君 ちょっと解釈の立ち入り過ぎじゃないかと思うんですが、拘置所での刑事施設への拘置というのがこれは原則論として確立されているのかどうかということよりも、そういうふうにこれまでの監獄法を始め読めるんではないかというふうに思うんですよ。刑事施設そのものだけではなくて、警察留置施設をも代用として利用することができると、そのいずれにするかということについては、裁判所の専権事項として、その事件の、事案の特徴でありますとか様々なことを勘案をして裁判所が決めると、こういうふうに解するのが本来だと思うんですが、改めて、大臣、どうですか。
  91. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 先ほどお答えしたとおりでございます。明治四十一年ですか、監獄法が制定された当時、警察署は全国的にあったと思うんですけれども、拘置所はほとんどなかった状態から出発しておるわけでして、監獄法規定では代用してとなっておりますが、実態は、そもそもの明治時代警察から出発したんだというふうに思われます。  もちろん、国としても拘置所は整備してまいりましたし、現在も整備を行っております。法務省としては、例えば昭和五十五年以降を取ってみても、約二千人分の未決の被収容者の収容能力の拡大を図ってきたところであります。現在、名古屋拘置所を始めとする六施設で増改築工事をいたしておりまして、これらが完成すれば更に約九百人分の定員増を加えることになります。トータルいたしますと、未決被収容者の収容定員は一万八千人を超えることとなります。  施設整備を進めておりますけれども、実態としては、現在の司法制度の状況全体を見ますと、なお留置施設を存置した上で未決勾留者処遇を図っていくというのが現実的であるというふうに私は思っております。
  92. 松岡徹

    ○松岡徹君 ちょっと、大臣、全然話がちょっと違うんですけれども、私は、どういうふうに解釈するかというよりも、どういうふうに理解をしたらいいのかということなんですが、大臣がおっしゃるように警察留置所も拘置場所として基本的に存在しているんだということになれば、これ議論の立て方がまた違うんですね。刑事訴訟法のありようからこれ議論していかなくてはならないんです。  あくまでも代用という言葉を用いているというのは、基本はといいますか、未決者の拘置については刑事施設留置するというのが本旨であって、しかし現状としてはなかなかそういう場所がないというのと、取調べのあるいは事案の内容によって裁判所が総合的に判断をして代用をすることができるということになっていると思うんですね。そのこと、代用してきたこの事実を私は違法だとは言いません、正に法律に代用することもきちっと明記されているわけですから。だからこそ、私は、代用なんですよ。すなわち、本来あるべき姿に代わって用いる、すなわち代用なんですよ。  ところが、大臣の今の答弁でいったら、代用がなくなって、それも拘置場所なんだと、本来の場所なんだということになれば、今回の改正理由は、この制度を維持しつつということはどういうことなのか、提案趣旨からもう変わってくるんですよ。私、そこを、そこの最初の基本のところを大臣に聞いているんです。そういう位置付けで今回、大臣が今おっしゃったように、今やられている代用監獄警察留置場所も代用ではなくて本来の拘置場所なんだという認識で提案されているんですか。改めて答えてください、そこを。
  93. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) いわゆる代用刑事施設制度は、我が国刑事司法制度の下で、誤解を与えるかもしれませんが、明治以来と申しますか、重要な役割を果たしてまいりましたし、現に重要な役割を果たし、大半の被勾留者は代用刑事施設留置されているのが実情でございます。  今回の法案はこうした刑事司法運用実情を踏まえまして、また、最近の未決拘禁者をめぐる厳しい収容状況や現下の財政状況等にかんがみますと、現時点において代用刑事制度を廃止したり、あるいは漸減させることは現実的ではないことをも考慮しまして、代用刑事施設制度の存続を前提として、これに制度改善を加え、代用刑事施設の被収容者の適正な処遇を図ろうとするものでございます。  もとより、代替収容制度は、これは所与の制度考えているわけではございません。刑事訴訟迅速化裁判員制度公的被疑者弁護制度の導入などによりまして刑事司法制度全体が大きな変革の時代を迎えていることなどを考えますと、今後、刑事司法在り方検討する際には、取調べを含む捜査在り方に加えまして、代替収容制度在り方についても、刑事手続全体との関連の中で検討を怠ってはならないものと考えております。
  94. 松岡徹

    ○松岡徹君 私、そんなところまで聞いてないんですが。  一番冒頭の答弁よりも、今の答弁はまた最初のところ違うんですけれども、要するに、代用刑事施設としてその制度明治時代からあるということは事実です。法務大臣、私も、今まではなくって違法なことをしてきたと言っているんではないんですよ。そんなことは言ってないんです、あったことは事実ですから。しかし、その基本のスタートは、本来やっぱり刑事施設留置するというのが基本でありますから、そういうふうに解して、現状や、あるいは捜査のためとか様々な条件があって、そしてこの代用刑事施設としての制度があったということも私は否めない事実だと思っています。しかし、その基本を変えるのか変えないのかというのは非常に大事なこれは分かれ目なんですよ。一番冒頭の大臣の答えは、その分かれ目どころか、いや、元々一本ですというような言い方ですから、それはちょっと違うでしょうと。  私たちは、そういう意味では、これからの、先ほど言いました捜査迅速化とか、これから裁判員制度も始まっていきますから、様々な状況に対応するような今後の在り方というものは検討していかなあかんことは事実です。その検討していく課題の中に、未決拘禁者処遇の問題であったりとか人権という問題もだんだん議論されてくるんです。ですから、それは後の問題なんですよ。議論していきましょう。しかし、基本としては、これはあくまで代用、代用の刑事施設留置場として認める、留置場をそういうふうに認めるということができるということでしょう。  そこだけもう一度大臣に、その部分だけでいいですから確認をしたいと思います。
  95. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 繰り返しの答弁になりますけれども、今回の法案は、刑事司法運用実情を踏まえまして、また最近の未決拘禁者をめぐる厳しい収容状況、現下の財政状況等にかんがみますと、現時点において代用刑事施設を廃止するとかあるいは漸減させることは現実的ではないことも考慮いたしまして、代用刑事施設制度の存続を前提として、これに制度改善を加え、代用刑事施設の被収容者の適正な処遇を図ろうとするものでございます。
  96. 松岡徹

    ○松岡徹君 大臣、ちょっと質問に答えてほしいんですが、私は、この制度をなくせという議論を私は今言っているんじゃないんですよ。漸減していけとか、そういうことは適切なのかどうかという議論はまだ、そんなところをやっているんじゃないんです。この制度そのものはあくまでも代用でしょうと、代用制度でしょうと。この代用制度が今までなかったんだと言っているんじゃない、明治以降も厳然としてあったんですから、今もあるんですから。これからも必要なのかどうかというのは後の議論ですよ。そんなことを言っているんじゃない。あくまでもこれは代用でしょうと言っているんです、代用の制度でしょうと。それを聞いているんですよ、大臣
  97. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 先生のおっしゃるとおり、代用刑事施設制度でございます。
  98. 松岡徹

    ○松岡徹君 この議論で十五分も時間掛かったんですけれども。  要するに、あくまで私は、その次の議論なんです。先ほど大臣が答えていただいた、これからも必要な制度なのかどうかというのをしっかりと議論していこうという、この次なんです。  さきの衆議院法務委員会等々でも様々議論がありますが、そういう意味では、法務委員会の附帯決議にも、拘置所の増強計画とかですかね、そういったことに努力をしていくということが附帯決議の中にありました。そうすると、一方で、また今度も、あさってですか、現地視察へ行く予定にもなっていますが、大規模独立留置所がどんどん各地に建設されていっています。それとも相まって、その基本からいきますと、この附帯決議にあります拘置所の増強計画というのを今お持ちなんでしょうか。それ、ちょっとお聞かせを願いたい。
  99. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 先ほどちょっとお触れいたしましたが、昭和五十五年以降、約二千人分の未決被収容者の収容能力の拡大を図ってまいっているところであります。現在、名古屋拘置所を始めとする六つの施設で増改築工事をしておりまして、これらが完成いたしますと更に約九百人分の定員増を加えることになり、未決被収容者の収容定員は一万八千人を超えることとなります。
  100. 松岡徹

    ○松岡徹君 そのことについては今後またしっかり議論したいと思うんですが、私は、この代用監獄、今回の法改正のところで存続させる必要はあるのかどうか、それをちょっと端的に例を出していただきたいというふうに思います。
  101. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) この点は、先ほど御答弁申し上げたとおり、いわゆる代用刑事施設制度我が国刑事司法制度の下で、過去も重要な役割を果たしてまいりましたし、現に重要な役割を果たしております。大半の被勾留者は代用刑事施設留置されているという実情であります。  今回の法案は、こうした刑事司法運用実情を踏まえまして、また最近の未決拘禁者をめぐる厳しい収容状況や現下の厳しい財政状況等にかんがみますと、現時点において代用刑事施設を廃止し又は漸減させることは現実的ではないことも考慮いたしまして、代用刑事施設制度の存続を前提として、これに制度改善を加えて、代用刑事施設の被収容者の適正な処遇を図ろうとするものでございます。  もとより、先ほど申しましたように、代用収容制度は、これを所与の制度考えておるわけではございませんで、先ほど申しましたように、刑事訴訟迅速化裁判員制度公的被疑者弁護制度の導入などによりまして刑事司法制度全体が大きな変革の時代を迎えていることなどを考えますと、今後、刑事司法在り方検討する際には、取調べを含む捜査在り方に加えまして、代替収容制度在り方についても、刑事手続全体との関連の中で検討を怠ってはならないものと考えております。
  102. 松岡徹

    ○松岡徹君 今回も、この代用監獄制度というものを存続させて改正を言っています。存続させる理由は何なのかということをやっぱりもっとはっきりしなくてはならないと思うんです。今大臣おっしゃったように、今、日本未決拘禁者のほとんどが警察留置所で拘置されている。そして、財政上の問題があると。捜査迅速化等々言っておられますけども、私はそのこと自身がこの制度のこれからもずっと残していくべき制度であるという理由にはならないというふうに思うんです。  そういう意味では、一方で拘置所の、先ほど言いましたように、法務省として拘置所の整備をきちっとしていくという努力がしっかりなかったら、それこそこの制度を未来永劫これからずっと続けていくのかという議論になっていくわけでありますから、そういう意味ではその理由をはっきりさしていただきたいと思うんですが、私は、具体的に申し上げますけれども、この制度そのもの、冒頭申し上げたように、様々な批判があります。国際的な批判や、国内でも、冤罪を生み出す温床になっているんではないか、それは捜査自白偏重ということが強過ぎて、それを強要していくような場所になっていっているのではないかというようなことも様々指摘をされてきたところであります。そういった意味では、そういったものをどうなくすのかということも非常に大事になってきます。  一方で、私は気になるのがありまして、これは事前に通告もしていませんが、例えば、アメリカ軍の基地が日本に、沖縄や様々なところであります。そして、そのアメリカ軍の兵士が様々な事件を起こしています。女性に対する暴行事件やあるいは殺害事件など、凶悪な事件も起きています。その中で、その米兵が起こす犯罪について、それを日本身柄を拘束して取り調べるということがすべてできているのかどうかといえば、なかなかそういうわけにいかないというような状況も聞いております。  毎年の米軍構成員の検挙人数を見ていきますと、平成十六年だけでも、米軍の構成員が起こす犯罪といいますか、まあこれは全部ですから、七十二人がこういったこと、起きています。昭和四十七年からずっとトータルしますと五千二百四十五人ですね、米軍基地といいますか、米軍構成員が犯す犯罪であります。  この中で、一体どれだけの人たちが日本警察取調べに応じて、あるいはそこでやられたのか。聞くところによりますと、やっぱりアメリカ軍が自分のところの米兵が犯した罪を調べるのに日本警察にゆだねないのは、実は代用監獄制度とかあるいは取調べのありようが、すなわち未決拘禁者処遇が極めて不透明だというような声があるというふうに聞いているわけですね。実際のところ、それが理由に日本で裁判を、あるいは取調べができないというような状況が生まれてきたということも過去にあったかと思っております。  そういう意味では、そういったことも勘案しますと、しっかりとこの代用監獄制度の、今回も継続する、維持するということについてしっかりとした理由を言わなくてはならないというように思いますし、同時に、併せて、先ほど冒頭確認しました、基本としては刑事施設への拘置というのが基本でありますが、現状としては代用施設として留置場もその施設として代用することができるということになっています。一方で、基本となるべき刑事施設整備していくというのは、これは当たり前のことでありますから、当然のように先ほど私は増強計画はあるのかということを聞かしていただきました。  そこで、大体各地で大規模な独立留置場というものが整備されていっています。例えばこれを地方のところから法務省に切り替えたらどうか、留置所からそれを拘置所に切り替えてはどうかというふうに提案したいと思うんですが、これについてはどうですか。
  103. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 留置施設は、都道府県が地方の治安責任を全うする必要性から、独自の財源を充てて、厳しい財政運営の中から設置しているものでございます。これを国の所管に移すということは、治安に関する地方公共団体と国の役割分担や責任の所在にかかわる重大な問題でございます。  また、留置施設は、逮捕後の留置とこれに引き続く勾留を通じて用いられているところであります。したがって、要員の点でも、逮捕から勾留まで一貫して地方公務員である施設の看守勤務員が対応しております。したがって、仮に留置施設を国の所管に移すとしても、逮捕後の留置を行う施設としての留置施設は存続する必要があり、留置施設の機能を分割して被勾留者の収容に関する部分のみを国の所管とすることとなりますが、その場合、国の業務を行う区画を別に設け、共通した業務に従事する職員を国と地方ごとに配置せざるを得なくなるわけでございます。  こうした点などにおきまして、留置施設所管法務省に移すことは現実的ではないと考えております。
  104. 松岡徹

    ○松岡徹君 すぐに拘置所整備増強するというのはなかなか難しいと思いますが、地方でこういうふうな大規模な独立した留置場を建設をしていっているということからすれば、一方で、法務省からすれば拘置所の整備増強という計画があります。やっぱり施策の切替えでありまして、それを法務省の拘置所としての位置付けに切り替えればこれは済む話なんですよ。それが地方の治安自治、治安責任を越権するとかいう問題ではないと思うんですね。  それで、なぜそれができないのかと。それは財政上の問題なんですか。財政上の問題でできないのか、いや、それともそれ以外の問題があるのか、改めて大臣、お答えください。
  105. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 一つは財政上の問題があると思います、人の確保も含めまして。衆議院の予算委員会で矯正局長が答弁しておりましたが、留置場というのは津々浦々にあるわけです、警察署と併設されて。それに見合うだけの拘置所を全国に建設するとした場合、ちょっと金額忘れましたが、兆単位のお金が掛かると、それに加えて人員を増強しなきゃならないという実情もあるというような答弁をいたしておりました。  現在、法務省施設関係の予算は、平年分が約二百億円、今は補正予算で刑務所等の大増設、大体、年によって違いますが、三百億円から五百億円手当てしていただいております。それで現在の計画賄っておるわけでございまして、現在の代替勾留施設の機能を全部引き取れるような大計画を仮に作ったとした場合、相当息の長い時間が必要になるんじゃないかというふうに思います。(発言する者あり)御質問があったからお答えしております、財政上の問題と。
  106. 松岡徹

    ○松岡徹君 私、全部をせいと言っているんじゃないですよ。そんなのもう無理ですからね。物理的にそれは私も無理だと思います。  財政上の問題があるならば、例えば、一方で法務省は拘置所整備増強していかなくてはならないという責務を負っていますから、そして一方で地方が独立した留置場をどんどん建設しようとしていると。なぜそこにちょっと相入れるような方法はないのかということなんですよ。それは決して無駄なことではないと思いますし、財政上も、極端な、全部をということを言っているんではないんですね。現実的な対応はできないのかということなんですよ。  一方で、法務省は拘置所の増強計画、増強していかなくてはならないという責務を負っているわけですから、ですから、先ほど、財政上の問題でいうたら、午前中のうちの前川委員が財務省に特段の財政的な配慮をお願いをしたいと言っていますから、あとはもう法務省の腹一つなんですよ。そういうふうに変えていこうと、現実的なところで変えていこうというような対応ができないのかどうかなんです。どうです、大臣、ゼロか一〇〇かではなくて、現実的に。
  107. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 与えられた条件の中で最大の努力はしていると私は見ております。  例えば、拘置所の増改築にいたしましても、今度やる大阪にしても名古屋拘置所にしても、もう昭和四十年代ぐらいですから非常に古いんですね。ですから、その設備を新しくするという意味も込めて増改築をやるわけでございまして、多大の経費といいますか予算を必要といたしております。事務方に、指定されておりませんので、どうなっているのか、詳細、必要があれば事務方から答弁させますけれども、できる限りの努力はいたしておるというふうに私は承知しております。
  108. 松岡徹

    ○松岡徹君 別に事務方の方が答えぬでも結構ですが。私は法務省の姿勢の問題を言っているんで。  現実的にそういうのができているんですから、正にそれが代用施設として認定されていくわけですから、逆に言えば、それを代用施設として認定する前に法務省がそれを拘置所とすればそれで済む話なんですね。ですから、予算は一緒、国民の税金を使って造るわけですから、しかもその目的が治安責任をそれぞれ果たしていこうという立場も踏襲しているんですから、是非ともその辺は前向きに検討いただきたいと。  これでまた次行かれなくなると困りますので次に行きたいと思いますが、未決拘禁者処遇について二、三聞きたいと思います。  一つは、その三十一条のところで、未決者としての地位を考慮しというふうにございます。その未決者としての地位とは何なのかということを簡単にお聞かせ願いたいと思います。
  109. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) 法案第三十一条が「未決の者としての地位を考慮し、」と規定しているのは、未決拘禁者捜査の対象又は裁判の当事者としての地位を有する者であり、いまだ有罪の裁判が確定した者ではないことを考慮しなければならないという意味でございます。
  110. 松岡徹

    ○松岡徹君 そうですね。まだ決まってないわけですから、だから無罪も有罪も決まってないということで、そういう立場をしっかりと考慮するということが原則だと思います。  そのときに未決拘禁者勾留される場合、どこに勾留されるのか。拘置所なのか代用施設なのかということについては裁判所が専権事項として判断をすると思いますが、改めて確認しますが、その際、代用監獄留置決定をするときに、裁判所に対して警察とか検察の方から書面あるいは口頭で留置留置といいますか留置場での拘置を求めるということはあるわけですか、お聞かせ願いたいと思います。
  111. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) 検察官は、勾留請求に当たり、希望する勾留場所を選定して勾留請求書に記載しているものと承知しております。
  112. 松岡徹

    ○松岡徹君 いろんな事案で弁護人が刑事施設への拘置を要望したときに、その裁判官の決定に対して準抗告をして、また留置施設に収容するというようなことがあります。それを申し上げませんが、こういったことが本当にいいのかどうかということも含めて、私は疑問に感じています。  その際に、逃走及び罪証の隠滅の防止に留意ということがあります。逃走のおそれと罪証隠滅のおそれというのがありますが、これの違いは何なのか、聞かしてください。
  113. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) 裁判官刑事訴訟法第六十条第一項に規定する理由があると判断した場合に勾留されるわけでございますが、逃亡のおそれ又は罪証隠滅のおそれ、これのいずれかの理由だけで勾留することがあるわけでございます。  しかしながら、刑事司法の適正な実現のためには逃亡及び罪証隠滅の防止が万全に図られることが前提であり、その意味で、未決拘禁の目的は逃走及び罪証隠滅の防止にあることから、逃亡のおそれ又は罪証隠滅の防止のいずれか一つが勾留の理由とされている場合であっても、他方について留意しなくてもよいということにはならないわけでございます。
  114. 松岡徹

    ○松岡徹君 先ほどの、午前中の質問にもありましたけれども、罪証隠滅のおそれがあるということで書かれていくと接見禁止とか様々な条件がありますが、例えば、処遇のところで、未決拘禁者処遇される場合、逃走のおそれと罪証隠滅というふうにありますね。それで処遇は違うわけですか。  例えば、未決拘禁者の場合、この人は罪証隠滅のおそれがあるということで、なれば、あるいはそういうおそれのないといいますか、そういうような理由が書かれていない人たちと処遇といいますか、いうものは違うわけですか。違ったりするんですか。
  115. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) 勾留理由の違いがある場合がございますが、勾留理由がいずれか一つであっても、もう片方を考慮しなくてもいいということにはなりません。  例えば、逃亡のおそれが理由として勾留されている場合に、一般の面会で証拠隠滅を依頼する会話がなされたような場合にはこれを停止するわけでございますので、理由の違いによって処遇の違いがあるわけではございません。
  116. 松岡徹

    ○松岡徹君 それから言うと、処遇規則といいますかね、処遇原則にわざわざこんなものを挙げる必要はないと思うんですね。拘置管理者といいますか、そういうふうに一つは思います。  それと、前にも、私は去年の刑事施設処遇改善のところで、特に受刑者のところでも質問いたしましたけれども未決拘禁者の中の特に今女性に対する処遇、これについては今までも、未決拘禁者だけではありませんが、受刑者に対してもそうですが、様々な不祥事がありました。受刑者に対して性的な行為を強要したりとか、あるいはそれによって子供ができたりという名古屋の豊橋支所のこともありました。そういったことが特にあります。  そのときに言うときには、必ず女性の、特に未決拘禁者にかかわる場合、女性の拘置管理者、業務者が対応すべきだというようなことは言っていますけれども、今回の場合もそういった配慮はされているんですか。
  117. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) 御指摘の趣旨は正にそのとおりでございます。しかしながら、女子の被収容者処遇すべてに女性の職員を充てることは極めて非現実的なのが現状でございます。  例えば、拘置所のようなところに一人女性の被収容者がおりますと、二十四時間女性の職員がそこにいるためには四・二人の女性職員が必要になります。拘置所には非常に限られた職員の配置しかしていないものでございますので、そういうところすべてに女性の配置をするというのは現実的にはできません。  しかしながら、またしかしながらでございますが、可能な限り配置の拡大をしなければならないわけでございまして、そのほかにも、例えば女性の被収容者の居室のドアを開け閉めするのは原則として女子職員が行うとか、身体検査の場合に女子の事務官がやるというようなこともしながら、男子職員のみが何か対応しなければならない場合には必ず複数の職員を配置する、あるいは女性区画の廊下に監視カメラを設置をしてしっかり監視体制を、その職員が不当なことをしないような監視体制をする、あるいは幹部職員が頻繁に巡回を強化する、そういうようなことをやりながら女性職員の足らざるところは何とか問題ないようにしっかり努めてまいりたいと思っております。
  118. 松岡徹

    ○松岡徹君 こういったたぐいの不祥事というのは後を絶たないんですね。  例えば、二〇〇〇年の十二月に、名古屋の拘置所一宮拘置支所の三十四歳の男性刑務官が勾留中の女性被告と親密になって、釈放後性的な関係を持って、この職員は停職一か月の懲戒処分を受けたとか、あるいは二〇〇六年、先ほど言いました名古屋の豊橋刑務所の四十六歳の男性看守部長がこの豊橋支所に勾留されていた二十歳代の女性と性的関係を持ったと。この女性は妊娠をしてしまったんですね。やはり女性の棟は違うんですが、本来中でそういうのは分けているはずなんです。今副大臣おっしゃったように分けているはずなんです。にもかかわらず、できる限りというのは、確かに全部が全部今すぐに女性の刑務官なりは整うかどうかという問題はありますが、やっぱりしっかりそういった原則を明記していくということが大事なんですね。それを是非とも明記するようにやっぱり心掛けてほしいし、しなければならないというふうに思っています。それは是非とも、強く要望だけをいたしておきたいというように思っております。  それから、特に留置業務犯罪捜査分離の問題でありますが、第百八十四条の規定によりますと、留置業務管理者は食事とか就寝その他の起居動作をすべき時間帯を定め、これを被勾留者に告知するものとすると書いてあるんですね。これからすると、これをちゃんと法文に義務付けるということを明記すべきではないかというふうに思うんですが、いかがですか。
  119. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) 未決拘禁者の起居動作の時間帯をしっかり守るということは、健康の保持の観点からも大変重要でございます。処遇は原則として起居動作の時間帯に従って行われることとなります。一方で、未決拘禁者刑事手続の対象として身柄を拘束されておりますので、取調べ、公判出廷、弁護人との面会等を実施する公益上の必要性も当然にあるわけでございます。その場合に、取調べを行う検察官等におきまして起居動作の時間帯に配慮をするというのはこれは当然のことでございますが、場合によってはすべてこの時間帯を守ることが不可能となる場合もございます。そういうこともありますので、その時間帯を未決拘禁者が守れるようにすることを刑事施設の長の責務として法律規定することは、これはなかなか適当でないというふうに思っております。  しかし、起居動作の時間帯を守ることができなかったがゆえに未決拘禁者の心身の健康が害されてはいけないわけでございますので、可能な限りしっかりとこうしたことを守らせる、そういう運用をするように努めてまいりたいと思っております。
  120. 松岡徹

    ○松岡徹君 これは非常に大事なところでありまして、要するに自白が強要されたり、あるいは自白調書の信憑性が疑われたり、あるいは過度な取調べが行われていく、そこに冤罪が発生するということがよく言われて、指摘されておりますね。だから、その被勾留者に対してしっかりとその辺のことを伝えなくちゃならない。ところが、被勾留者は朝取調室に連れていかれたときに、朝何時なのか、終わるころが今何時なのかというのが分からないですね。時間の指定もだれが一体教えてくれるのか。私は、そういう意味では、この留置業務に携わる者がこういう義務規定というものでしっかりと教えていくということが大事だと思うんです。長期間にわたる取調べ等々がいろんなそういう疑惑を生み出してきたということは事実であります。  皆さん、鹿児島の志布志の事件というのは御存じだと思うんですが、二〇〇三年の前回の統一地方選挙のときに、鹿児島の県会議員選挙にかかわって買収等の容疑に掛けられて、十三人ほどが逮捕されて不当な取調べを受けたと、そして自白を強要されたということで、実は今月の十七日に五十回目の公判がございました。その自白調書を証拠として採用するかしないかということが、今度の七月の二十七日にそれが出てくるということであります。この事件そのものは大変なひどい、私も事実であれば事件だと聞いています。それぞれの、まあ時間の関係がありますから申し上げますが、二〇〇三年にこの事件が起きたわけであります。この事件は、二〇〇三年四月十四日に県警と志布志警察署は合同の公選法違反、買収、供応で事件が、捜査が始まっていくんです。この中で十三人ほどずっと取調べを受けている。その取調べが非常に自白を強要するものであって、その中に、取り調べられた人の中には自殺未遂まで起こした人たちがいる、病院へ入院した人たちもたくさんいる、そのことが今裁判で問われています。この自白調書の信憑性というのが問われています。私は、この未決拘禁者処遇の問題と、そして留置の業務のかかわりでどうなっているのかということを私は指摘をせざるを得ないと思います。  そういったときに、皆さんももう既に御存じだと思いますが、実は四月の段階で、週刊朝日がありまして、四月の二十一日付けの週刊朝日です。実は警察情報がウィニーで流出したと、それを流出された警察情報が週刊朝日がすっぱ抜いている。取調べのところで、捜査の段階でココセコムというのがありまして、ココセコムというのはセコムのカーナビシステムのあれですね。その本人の了承なしに、その被疑者といいますか、この人と思ったところの車にこれを取り付けて、それをずうっとココセコムで追っていた。すなわち、その人のアリバイを確かめようとしたと。その後に、自供させるまで部屋から出るなという、要するに被疑者取調べ要領というのが流れました。これがその被疑者取調べ要領というものであります。  平成十三年十月四日、適性捜査専科生、被疑者取調べ要領というのがあります。これはどうも愛媛県警の文書でありまして、その中に、被疑者を取り調べるに当たって、事前の把握を徹底するとか、被疑者をよく知れとか、あるいは粘りと執念を持って絶対に落とすという気迫が必要だと書いてある。その四番目に、調べ室に入ったら自供させるまで出るな。これはもう、これはひどいのがありますよ。十二では、被疑者はできるだけ取調室に出せ、否認被疑者は朝から晩まで調べ室に出して調べよ、(被疑者を弱らせる意味もある)、そんなのまで書いてある、これね。これは、これだけではなくて、そのほかにもあるんですね。被疑者取調べ技術の向上方策、捜査第一課盗犯科、係ですか、そこにも同じことが書いてある。一度調べに入ったら自供させるまで出るな。同じことが書いてある。これ、こういうものが盗犯捜査専科というのもございまして、こういうのがウィニーで流出した資料なんです。これは御存じですか。
  121. 沓掛哲男

    国務大臣沓掛哲男君) お答えいたします。  愛媛県警察において、今御指摘の、現在流出したと見られる資料等の詳細を今調査しているところでございますが、取調べに関する心構えを記載したような文章もその対象としているというふうに聞いております。この文章の性格、記載内容の趣旨等については現在調査中でございますが、その内容から見て公的なものではないとの報告を受けており、この警察官が自分の経験等から自分の思いを記載したものではないかというふうに聞いております。  実際、いろいろ警察庁あるいは全国警察においてもいろいろ各種の教養資料を用いて今のようなことについてもいろいろ指導、教養の徹底を図っておるものでございまして、決してこのような文章が公的に使用されたりなんたりしているというものではございません。
  122. 松岡徹

    ○松岡徹君 沓掛大臣はこの現物は見られました。
  123. 沓掛哲男

    国務大臣沓掛哲男君) 詳細には読んでおりませんが、目次程度は見ております。
  124. 松岡徹

    ○松岡徹君 これ、幾つか種類あるんですよ。これ日付まで入っている。被疑者取調べ要領(適性捜査専科生)、それ以外に捜査技術専科教養用、盗犯捜査要領手法、あるいはこちらには捜査第一課盗犯係の文章で被疑者取調べ技術の向上方策、これは今、沓掛大臣がおっしゃったように、だれかが勝手に作ったものなんですかね、改めて。
  125. 沓掛哲男

    国務大臣沓掛哲男君) この愛媛県のこの流出にかかわった警察官が自分で今までの体験などで自分の思いを一応記述したものだというふうに考えておりますし、公的なものではそれはありません。  公的なものについては、今申し上げましたように、ちゃんと警察庁あるいは全国警察においては各種の教養資料を用いて指導いたしておりますから、その教養資料が公的なものでございまして、決してこの一個人の警察官はそういう思いをここに記述して、もし記述したとすれば、記述していたものだというふうに思います。  もちろん、これ全体については現在愛媛県警において調査中でございますので、そのことについては私としてはこれ以上の情報も持っておりませんし、これ以上述べる立場にはございません。
  126. 松岡徹

    ○松岡徹君 今調べ中だということで、是非ともその真相を明らかにしてほしいというふうに思うんですよ。もしこれが組織的に、あるいは警察の中でこれが組織的な取組として手本として実践されていたとしたら、これは大きな問題ですよね。でしょう。  しかし、今おっしゃったように、そのうちのだれかがこれを自らの教本として作ったものではないかというふうに推察されるということでありますけれども、私は少なくとも、これ愛媛県警の文章なんです。少なくとも愛媛県警は平成十三年、日付入っていますから、平成十三年十月四日のこれ文章なんです。被疑者取調べ要領というのがある。これは少なくとも愛媛県警では実施されてきたというふうに推測されると思うんですが、いかがですか。
  127. 沓掛哲男

    国務大臣沓掛哲男君) 今、この流出した件につきましては愛媛県警で調査中であり、速やかにその調査結果をまとめるよう指示いたしております。
  128. 松岡徹

    ○松岡徹君 もう結構前、一か月ぐらいたつんですが、まあそのことは聞きませんが、私が聞いているのは、これは少なくとも平成十三年の文書です、それだけでもこれぐらいあります。同じような内容が書かれています。それぞれが捜査第一課であったりとかいう名称が変わっています。是非とも徹底して調べていただきたいと思うんですが。  問題は、これ愛媛県警だけの文章だとすれば、少なくとも愛媛県警ではこういったマニュアルに沿って取調べがされてきたということを証明することではないですか。それを聞いているんです。
  129. 沓掛哲男

    国務大臣沓掛哲男君) 今、先ほど来申し上げましたように、調査中でございまして、個々のことについては御回答することでは、いろいろなかかわりもございますのでお答えできませんが、全体としてどういうことであったかということは速やかに調査し、御報告できるようにするよう今努めておるところでございます。
  130. 松岡徹

    ○松岡徹君 調べることは私は決して否定しているわけではありません。是非とも全容を解明してほしい、その結果についてここで報告をしていただきたいというふうに思います。  是非ともまた委員長の方でお取り計らいをお願い申し上げたいと思います。
  131. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。
  132. 松岡徹

    ○松岡徹君 それとは別に、先ほど言ったように、この、これ愛媛県警の文章でありますから、個人名書いていません。愛媛県警の文章が、それが愛媛県警の文章としてウィニーを通じて流出したんです。個人用のパソコンを通じてね。  そういう意味では、私は、このこと、このマニュアルに沿って、少なくとも愛媛県警は平成十三年からこの五年間ほどはこのマニュアルに沿って取調べが行われてきたということを推測される、推察されるんではないですかということを聞いているんです。
  133. 沓掛哲男

    国務大臣沓掛哲男君) 警察庁や全国的に見てそういうようなものは使っておりません。今、しかし、御指摘のようなことについては全体を含めて現在調査中でございますので、その調査を見ていきたいというふうに思っておりますが、余り個々の具体的な問題についてはいろいろ捜査上、また今後、関係する人のプライバシーその他にも関係いたしますので、御報告できない面も、個々の問題については全体としては御報告できない面もあるというふうに思いますが、包括的にはこれは御報告させていただきたいというふうに考えております。
  134. 松岡徹

    ○松岡徹君 否認被疑者は朝から晩まで調べ室に出して調べよ、被疑者を弱らせる意味もある、こんなことも書いてあるんですよ。私は、これで、これだけでもほんま徹底的に聞きたいと思うんです。少なくとも私たちは、このマニュアルが愛媛県警のマニュアルとしてウィニーを通じて流出したということであれば、全国でこのマニュアルでやっているとは言っていません。せめて愛媛県警だけではこういったことによって取調べが行われてきたということを推察することができるというように思います。  今回のこの刑法改正のときに大事なのは、正にこういった点がこの代用監獄制度、これがそういったところの温床になっているのではないのかということを言われてきたし、しかも、多くの冤罪がこういうことになっていると。  先ほど言った鹿児島の志布志事件も自白を強要された、あの中に、本人を弱るまで、被疑者を弱らせる意味もあるということが全く当てはまるんですよ。朝から晩まで十三人の取り調べられた鹿児島のこの人たちの中には自殺未遂まで行った人がいる。取調室で、自分の、ちゃんと今ここで自白せえへんかったら、おまえの親や子供どうなっても知らんぞと言うて、足の裏に自分の子供の名前や親の名前を書いて踏み付けろというようなことを強要されて、精神的にどんどんどんどん弱っていく、こういった取調べがされたということを彼らは証言しています。  私は、このマニュアルを見たら、あっ、やってるなと思いましたわ。それが正に、冤罪を生み出す、あるいは人権を考慮していないということになっていますから、今回の法改正のところでは正にその点が不明確であるというふうに思っています。  冒頭に大臣に対してただしました。代用監獄制度は本来あってはならないものであって、ちゃんとした被疑者の、未決拘禁者の権利を、あるいは人権を守る、配慮するということも含めて考えると、この代用監獄制度は一日も早くなくしていくべきだと思いますし、同時に、あわせて、こういった取調べの間で、今日はもう時間なくなりましたが、可視化の問題もただしたかったわけであります。  先般、裁判員制度が導入されるに当たって部分的な可視化を一遍やってみようというところに、発表がありました。私、それ自身は非常にすばらしいことだと思っています。取調べの可視化が十分にされていくということがそういう意味では決して捜査の邪魔をするわけでもないし、捜査を遅らせるということでもないというふうに思っています。  そういう意味で、これからも引き続きこの代用監獄の漸次廃止をするような努力を是非ともお願いを申し上げたいと思いますし、あわせて、こういったことが、愛媛県警のこのウィニーで流出した捜査取調べマニュアルにあるようなことが二度と起きないようにするためにも取調べを可視化していく、ビデオやあるいはテープでしっかりとその様子を記録をしていくということが大事だというように思っておりますが、最後に大臣の所見だけお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
  135. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 検察庁においては、裁判員制度の導入を視野に入れまして、取調べの録音、録画を試みることに相なっております。  裁判員裁判対象事件のうち、検察官が任意性の効果的、効率的な立証のため必要と認めるものにつきまして、検察官による被疑者取調べのうち、立証の必要性考え取調べの機能を損なわない範囲内で相当と認められる部分を録音、録画することを試みるものであると承知しております。  試行期間は本年七月から一年半程度を当面の予定としておりまして、試行庁は東京地方検察庁とのことでございますが、他の地検でも最高検察庁が事件を選び個別に実施することもあり得ると聞いております。  試行後にどのような取扱いをするかにつきましては、試行の結果を検証した上で判断されることになると承知しております。
  136. 松岡徹

    ○松岡徹君 終わります。
  137. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今日から刑事施設及び受刑者処遇に関する法律の一部改正案の質疑が始まったわけでございます。午前中から様々な論点の指摘がございました。  そこで、改めて今回の法律案の意義というのを大臣から聞いておきたいと思っております。  もちろん、今回の法律案は、昨年成立した刑事施設及び受刑者処遇に関する法律の一部を改正する法律になっているわけでございますが、これを改正するものですが、いろんな本委員会でも御指摘がありましたが、大臣は、現行の法制にどういう問題があるから今回の法律が出ているのか、つまり今回の法律案の意義、一番大事な点はどこだと思っていらっしゃるのか、大臣に最初に伺っておきたいと思います。
  138. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 先生御指摘のとおり、昨年、刑事施設及び受刑者処遇等に関する法律が成立いたしまして、この五月二十四日から施行いたしますが、受刑者処遇等に関しましては法整備が行われているところでございます。  しかしながら、未決拘禁者等の処遇につきましては、監獄法の題名を改めました刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律により規定されておるところでございまして、その権利義務関係が、刑事被告人の権利義務関係が明確でないなどその内容は極めて不十分であり、また、例えば、受刑者につきましては刑事施設の長の一定の措置等について不服がある場合には審査の申請などを行えるのに対しまして、未決拘禁者等につきましては情願の申立てしか行い得ないなど、受刑者処遇との間で不合理な法律上の格差が生じることとなっているなどの問題点が残されております。  今回の法律案は、刑事施設留置施設及び海上保安留置施設に収容されている未決拘禁者等につきまして、その権利義務の範囲の明確化、適正な生活条件の保障、健康の維持のための措置、外部交通不服申立て制度などに関する法整備を行うほか、留置施設について運営透明性を確保するために刑事施設と同様に視察委員会を設けるなどの制度改善を行おうとするものでございます。  これによりまして、約百年前に制定されました監獄法は全面的に改正され、未決拘禁者に対する適正な処遇が図られることと相なります。
  139. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほど大臣が弁護士時代経験として、代用監獄の問題が起きたとき、当時は日弁連の方にいらっしゃって、これについては、一弁だ、一弁の方にいらっしゃって反対もされたというようなこともお話しになっておりました。そういう意味では、今回の法改正に当たって、弁護士会も含め様々な方面の意見も聞かれたんだろうと思います。どういう意見をどういうふうに取り入れながらこのような法律に成り立っていったのかと、その辺、どんなふうな御意見をお聞きになりこの法案の立案に至ったのか、現場の局長から聞いておきたいと思います。
  140. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 法務省では、いわゆる行刑改革を成し遂げるために、平成十五年の三月、行刑改革会議を発足させたところでございます。この会議におきましては、行刑運営について議論がなされた上で、この年の十二月、行刑改革会議提言をいただきました。この提言に基づいて監獄法改正作業に当たってきたところでございます。  この改正に関しましては、かねてから代用刑事施設制度在り方未決拘禁者等の処遇在り方などについて様々な意見があったことから、平成十六年七月以降、警察庁とともに日本弁護士連合会との三者協議会を開催するなどして随時関係機関との意見交換を行ってまいりました。さらに、本省では、警察庁とともに、代用刑事施設制度在り方、更には未決拘禁者処遇在り方につきまして広く有識者意見を聞くために、昨年の十二月、未決拘禁者処遇等に関する有識者会議を立ち上げまして、本年二月、「未決拘禁者処遇等に関する提言 治安人権、その調和と均衡を目指して」をいただいたものでございます。  この法律案は、このような協議や提言を踏まえまして立案したところでございます。
  141. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そういう意見を聞いて出された法律でありますが、民主党の議論を聞いておりますとなかなか厳しい批判もあるようでございまして、それを受けるわけではないですが、日弁連の方からも、この法案できた後また衆議院で可決された後も、いまだにこの代用監獄の漸減問題、更に弁護士の秘密交通権の問題、いろんな問題で修正を求める声がいまだ消えないのもこれは今の現状でもございますし、そういった意味では、参議院の議論では是非そういった点についてもどう考え、どういうふうにしてそれについて取り組んでいくのかというような面についても私はお聞きをしていきたいという思いでおります。  まず一点目お聞きしたいのは、先ほど大臣もおっしゃいましたが、今後は施設運営の透明化の確保の問題で、これは刑事施設視察委員会、これは昨年の受刑者処遇法で発足をし、五月二十四日からもう施行されることになるわけでございますが、やはり新しい制度を創設するに当たっては、その透明化をさせる意味でも重要な、どんな方たちがこの視察委員会委員になっているかという問題だということを前の委員会でこれは指摘もさせていただきました。正にこの問題というのは、既に成立しました受刑者処遇法だけでなく、未決拘禁者処遇に当たっても、その運営在り方によっては様々な点が改善できるところになる問題だとも思いますし、そういう意味では、この運営は注目されているところでもあると思っております。  まず、この刑事施設視察委員会についてお聞きしたい第一点は、この委員は是非幅広い層から選任すべきだと、こういうことをかつても申し上げましたが、どのような選任となっているのか、まず伺っておきたいと思います。
  142. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 御案内のとおり、受刑者処遇法八条におきましては、この委員会委員は人格識見が高くかつ刑事施設運営改善向上に熱意を有する者のうちから任命されるということになっております。しかも、その際には、法律家、医師等を含む幅広い人を委員に選定すべきであると、こういう御指摘を行刑改革会議提言でも受けていたところでございます。  こういうことを踏まえまして、各刑事施設におきましては、例えば弁護士につきましては地域の弁護士会から、また医師については地域の医師会から推薦を受けるなどしたほか、社会福祉団体、教育機関、地方公共団体、地元自治会など、幅広く様々な団体から推薦を得て委員の候補を選定したところでございます。現在、これらの方々に対する発令の手続を進めているところでございます。  ちなみに、行刑施設、七十四施設がございますが、一番多い職種でいいますと、弁護士さんが七十五名選定される予定、お医者さんが七十四名選定される予定と、こう聞いております。
  143. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その委員さんたちがある意味ではその視察をきちんとする、見ていくときに、これをどう機能させるかでポイントとなっていくのは、実は本当に委員会に適切な情報提供がなされるんだろうかと、中で起きていることについてきちんとしたものが報告をされるんだろうかということがポイントになってくるだろうと思うんですが、具体的にどんな内容の情報が提供されることになっていくのか、これも発足を前にしてお聞きしておきたいと思います。
  144. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) それでは、端的に結論だけを数点申し上げたいと思います。  まず、この刑事施設の長は、年度の最初の委員会の開催時点におきまして書面でいろいろ報告することになっております。その報告内容の主なものを申し上げますと、被収容者の収容定員、収容人員の推移、職員定員及びその充足状況、収容者に対して講じた保健衛生上及び医療上の措置の状況、刑務作業や改善指導などの矯正処遇等の実施の状況、懲罰の科罰の状況、不服申立ての状況など、施設運営の全般にわたる事項について必要な情報を提供するということにしているほか、刑事施設運営の状況に相当の変更があったという場合にはその都度御報告を申し上げると、こういうことにしてございます。
  145. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、この透明性の確保という観点から、刑事施設に関しては、これは行刑改革会議提言で、不服申立ての公平かつ公正な処理を図るため、第三者から成る機関を設けることが必要であると、こう指摘され、これに基づいてできているのが刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会、これが設置されていると認識をしております。    〔委員長退席、理事谷川秀善君着席〕  この委員も、先ほどお話しされた視察委員会と同様、幅広い分野からということで、法律、矯正行政、医療、これに関する優れた業績を、識見を持つ人が選任されているというふうに聞いておりますが、この調査検討会というのは具体的にどんなふうに機能をしてどのような活動を行っているのか、これも聞いておきたいと思います。
  146. 三ッ林隆志

    大臣政務官(三ッ林隆志君) 御質問の調査検討会は、本年の一月十二日の第一回検討会以降、現在まで九回の会議を重ねております。そして、合計百六件の情願の審査に関する調査をしておりますけれども、うち六件再調査の意見がなされ、また申立てに理由があるとしてこれを採択し受け入れるべきとの提言が一件なされるなど、公平かつ公正な審査に資するための活動が行われているものと承知しております。
  147. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それでは、これからいろんな問題点の指摘があったことについてお聞きをしていきたいと思うんですけれども、これは先ほどから委員の皆さん、御自身がおっしゃっておるんで、でも改めて聞いておきますが、勾留場所というのは拘置所及び警察留置施設と。それでは、刑事施設勾留するのか警察留置施設勾留するのかと。これは、決定の在り方はどうしているのか。当たり前のことですが、当たり前のことをもう一度きちんと聞いておきたいと思います。だれが決めるのか。
  148. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) もう御案内のとおり、勾留場所につきましては、裁判官が当該事件について存在する諸般の事情を総合的に考慮いたしまして、その裁量により決定しているところでございます。その際、考慮事項としては、事件の性質、被疑者の状況、必要と思料される捜査の内容、そのほか収容状況、弁護士等関係者の接見の利便等、諸般のもろもろの事情が総合的に考慮されているのではないかと、こう思っております。
  149. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今おっしゃるように、これはもうずっと裁判官勾留場所を決定していると、こういう言い方に終始しているわけですが、これ様々な御意見がある中で、例えば重大事件であるとか否認事件であるとか女性や少年、この被疑者勾留される場合には、先ほどからこれも議論になっている自白の強要等の冤罪防止というような視点から、裁判官の判断にゆだねるのでなく、制度としてこういった方々については原則拘置所に最初から収容すべきであるというような見解もありますが、こういった指摘について法務当局はどんな見解をお持ちでしょうか。
  150. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 今お尋ねのような場合につきましても、短期間被疑者取調べやその他の捜査を円滑かつ効果的にやっていく必要があると。こういう際には、全国にきめ細かく設置されております留置施設被疑者勾留することが現実的な場合が少なくなかろうというふうに思っております。  また、留置施設におきましては、この委員会でも何度も触れておりますが、捜査部門と留置部門の分離、峻別を徹底しているほか、女性や少年の被収容者に対する配慮もなされているところでございます。したがいまして、重罪事件、否認事件、女性、少年の被疑者に係る事件であるからといって、法制度として拘置所に収容することを原則とするということは適当ではないのではないかと考えております。
  151. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それでは、もう一つ聞いておきますが、現在は法律上いったん裁判官が指定した勾留場所、これを裁判によっては変更することは可能になることがあるんでしょうか、今回の法律案でこの点について変更が起きているのか、これも伺っておきたいと思います。
  152. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 勾留場所の決定は裁判官の判断でございますが、これに不服がある場合においては裁判所に対して準抗告の申立てができます。さらに、裁判官は職権によりましていったん決定いたしました勾留場所を変更することも可能であると、こう判例上言われておりまして、当事者は裁判官に対しその職権の発動を求めることができるということになります。  このように、いったん裁判により決められました勾留場所を変更することは可能でありますし、当事者はこれを求めることができるということですが、今回の法改正はこの点については何ら変更するものではございません。
  153. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それと、結局一番問題になってくるというか、先ほどから指摘があっている点の大きな理由の一つは、結局勾留される被疑者のうち拘置所にいるのがどれくらいかといえば、全体の二%にしか満たないわけでございまして、先ほど捜査事情、いろんなこともおっしゃっておりましたが、やはりこの余りの差というか、二%に満たないという、この辺のことが様々な議論の焦点になってくる理由の一つだと思っているんですが、これは法務当局として、なぜこんな形、つまり、いわゆる拘置所に勾留される者が二%に満たないという現状を迎えているのか、その理由はどこにあるのかと、法務当局のお考えをここで聞いておきたいと思います。    〔理事谷川秀善君退席、委員長着席〕
  154. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 御指摘のように、現在の刑事司法運用におきまして、その大半の被疑者代用刑事施設勾留されている実情にございます。  その原因につきましては、裁判官の専権的な判断事項でございますので立場上推測の域を出ないところではございますが、留置施設というのが全国にくまなく津々浦々に設置されている現状の下におきまして、まず一つは捜査を円滑かつ効率的に行う必要性が高いこと、留置施設における処遇改善されてきたこと、留置施設において捜査留置分離が徹底されてきたこと、未決拘禁者弁護人等との接見の機会が拡充されてきたこと等々などが背景にあるものではないかというふうに思っている次第でございます。
  155. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今種々、少し冒頭の論議をさせていただきましたが、今の法務省のお話をお聞きしていると、つまり今回の法整備というのは、いろんな議論はあったんだけれども議論があったこの代用刑事施設の問題、ただ全国津々浦々にある、捜査上いろんなこともある、そんなことも含めて、今まではこの代用刑事施設については存廃というのをどうするかという議論もあったけれども、現状ではこれを存続しつつ、その制度改善を図るというのが一つの今回の法改正の一番の主眼であるというふうに聞こえるわけでございますが、警察庁に、今この治安の状況というか留置施設過剰収容状況ですか、概況、まずこれだけは伺っておきたいと思います。
  156. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) お答えいたします。  現在の治安情勢でございますが、刑法犯認知件数は平成十四年に戦後最悪を記録しました。しかし、その後、平成十五年から三年連続で減少しまして、犯罪の増加傾向に一定程度歯止めが掛かっているというのが現状でありますが、ただ、依然としてこの数字は昭和期の約二倍となっておりまして、厳しい治安情勢にあるというのは変わりがないと認識しております。  これを受けまして、被留置者数の推移がございますが、平成十七年におきましては延べ五百四十七万人日ということでございまして、これは平成七年の約二・一倍でございます。とりわけ都市部及びその周辺部においては収容基準人員を超えまして収容している留置施設も多く、こうした面で依然として厳しい過剰収容状況にあることに変わりないと認識しております。
  157. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そういう状況の中で、法務大臣、御確認の意味でお聞きしたいんですけれども、そうなると、今回の法整備というのはこの代用刑事施設制度を恒久化するものとなるのか、ここを大臣からお伺いしておきたいと思います。
  158. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 今回の法整備は、先ほど先生が御指摘になられましたとおり、いわゆる代用刑事施設制度現実我が国刑事司法制度において重要な役割を果たしていることから、この制度の存続を前提として、これに制度改善を加え、代用刑事施設の被収容者の適正な処遇を図ろうとするものでございます。  代用収容制度は、これを所与の制度考えているわけではございませんし、これを恒久化する意図を持っているわけでもございません。刑事訴訟迅速化裁判員制度公的被疑者弁護制度の導入などにより、刑事司法制度全体が大きな変革の時代を迎えておりますが、そういうことなどを考えますと、今後刑事司法在り方検討する際には、取調べを含む捜査在り方に加えまして、代替収容制度在り方についても、刑事手続全体との関係の中で検討を怠ってはならないものと考えております。
  159. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そこで、常にこの問題を議論するときに一つの論点になりますのが、昭和五十五年の法制審議会でいわゆる漸減条項と呼ばれるものが全会一致で採択しているわけでございます。これがいつも論点の一つになるわけです。この全会一致で採択された漸減条項の趣旨、これを伺っておきたいと思います。
  160. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 委員指摘の、昭和五十五年、法制審議会が答申いたしました監獄法改正についての要綱百十の(二)の趣旨は、本来、刑事施設に収容することが相当であると判断されるような者につきまして、刑事施設の収容能力が不足していることから留置施設に収容せざるを得ないというような事態が現に存し、あるいはそのような事態が生ずるおそれがあるとの認識に立ちまして、刑事施設所管する法務省に対して、その増設等に努めることによってそのような事態が生ずることがないようにすべきことを要請するものであると、このように理解しております。
  161. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それなら、これはもう大臣が少しお答えになっておられましたが、じゃ法務省がどこまでこの拘置所など未決のいわゆる被収容者の収容能力ですか、増強するために本当に努力されてきたのかという姿形の問題ですよね。ここがどこまで行っているのかということは一応きちんと答弁で残しておきたいと思うので。どうなっております。
  162. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 先ほど大臣も松岡委員に御答弁されておられたというところでございますが、拘置所等の未決拘禁施設につきましては、これまでこの二十五年間に東京拘置所の全体改築を含めまして約二千人分の収容能力の拡大を図ってきております。現在は、名古屋拘置所を始めとします六施設で増改築工事をしておりまして、これらが完成すれば更に約九百人分の定員増を加えまして、未決収容者の収容定員は一万八千人を超えることとなります。このように、厳しい財政状況の下で未決被収容者の収容定員の増加に努めているところでございます。  ただ、しかしながら、現在でも起訴後の被告人について代用刑事施設から拘置所への移送の停滞が見受けられる実情にあることを踏まえまして、更に収容定員の増加に努めるほか、既決被収容者過剰収容状況にあるということで、本来であれば刑が確定して拘置所から刑務所に移すべき受刑者が拘置所に停滞していると、こういう実情にもございますので、いわゆる刑務所の増設にもいま一層の努力をしてまいりたいと、このように考えております。
  163. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 警察庁にも伺っておきたいんですけれども警察庁としてこの日本の法制度の中でこの代用刑事施設が必要とされる理由、警察としてはどうお考えですか、これについては。
  164. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) お答えいたします。  現在の我が国刑事司法制度の下においては、被疑者逮捕後、短期間の間に所要の捜査を遂げ、起訴又は釈放の判断を行うことが求められており、犯罪捜査を迅速かつ適正に遂行することが必要であると考えております。そのため、被疑者勾留場所につきましては、被疑者に対する証拠品の提示、取調べ、引き当たり捜査等所要の捜査を行わなければならないことを考慮しますと、やはり捜査機関と近接した場所であること、さらに取調室等の設備が十分に整備されていることという条件を満たす必要がございます。  こうした現状にかんがみ、こうした条件を満たすものとして、もちろん刑事訴訟法上、被疑者勾留場所として刑事施設とされておりまして、この刑事施設につきましては全国に約百五十四か所設置されているということでございますけれども、他方、留置施設の場合はほとんどの警察署に設けられておりまして、その数は全国で約一千三百施設となっております。さらに、取調室についても、留置施設には約一万室が整備されているのに対しまして、刑事施設では約六百六十室にとどまっていると。これは平成十七年の数字でございます。  このような現状にかんがみますと、先ほど述べました条件、二つの条件を満たしているのは留置施設のみでございまして、被勾留者を刑事施設に収容することに代えまして留置施設留置することができるとする代替収容制度は、迅速かつ適正な捜査を遂行する上で必要不可欠であると私ども考えております。
  165. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ということは、例えばこれから、それはなかなか予算的には厳しいというお話もございましたが、拘置のためのいろんな施設が、刑事施設ができていったと。これは十分な要員も施設も整っていると。でも、それができたとしても、そんな刑事施設ができたとしても、やはり勾留留置施設でなければならないというのが警察考えだということですかね。
  166. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) 今述べましたとおり、都道府県警察が迅速かつ適正に捜査を遂行するためには、被疑者勾留場所につきまして捜査機関と近接した場所であること及び取調室等の設備が十分に整備されているという条件を満たす必要があるわけでございます。  今御指摘のように、仮にこのような条件を備えた刑事施設整備されるのであれば、これが被疑者勾留場所とされることに私どもは特段の支障はないと考えますけれども、現在の収容状況とか財政状況、あるいは運用運営上の問題等にかんがみますと、これは現実的ではないと考えております。
  167. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 だから、その一方でどうなるかというと、やはり隣接するところに置くがために、つまり有罪判決が出るまで留置施設留置するというようなことが起きるために、ある意味では裁判所でのこの被留置者の証言に圧力を加えているというような批判も出てくるわけですよね。こういった批判に対して警察庁はどうお考えでしょうか。
  168. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) 被留置者処遇を行う留置部門は、捜査部門から組織上も運用上も区別されておるというのは御案内のとおりでありますが、そこで、今現在、その独自の責任と判断によって留置業務を遂行することとされておりまして、御指摘のような勾留事務というものが捜査に利用されるようなことはないと我々考えております。  なお、捜査の終了しました被勾留者につきましては判決を待たずに刑事施設に移送することが望ましいと考えておりまして、これは可能な限りそのような運用をしておりますし、関係当局に対してもそのような働き掛けをしておるわけであります。ちなみに、現在、捜査が終了した被勾留者について、留置施設の被収容者の約二〇%ぐらいの割合を占めております。
  169. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 やはり留置施設留置するということが、被疑者留置捜査に利用される、先ほどの例じゃないんですけれども、そんな問題もあり、正に自白の強要の問題、更に進めると冤罪の問題、そういう温床だという批判がこれは絶えない部分もあるわけですね。そういう意味では、こういった批判に対して警察庁として実際にどういう取組、この批判はもう前から続いているわけですから、こういった批判に対して、どんな取組をしたからこういう温床にはなってないと言えるだけのものをつくってこられたのか、お答えをいただいておきたいと思います。
  170. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) お答えいたします。  御指摘のような批判があることは十分承知しておりまして、そういうものにかんがみまして、先ほど来出ておりますが、昭和五十五年以降、被留置者処遇を行う留置部門は捜査部門から組織上あるいは運用分離しまして留置業務を遂行しているということで、我々としてはそれはいろんな努力をいたしまして今日完全に定着しているというふうに考えております。もちろん更なる努力が必要だと思いますが。  そこで、これまで具体的にそれではどういう措置を講じてきたかということでありますが、一つは、留置開始時に処遇に関することはすべて留置担当官が行いまして、捜査官は一切関与しないことをまず告知するというようなこと、あるいは捜査に従事する者は当該被留置者処遇に当たってはならないということを徹底しております。さらに、食事、接見、差し入れにつきましては留置担当官が扱うこととして、捜査官は関与しないこと、さらには、捜査上の必要から留置者留置施設から出す場合には、これは捜査主任からの要請書に基づきまして、留置主任官、これは総務部門でありますが、が必要性等を審査の上承認すること等々を、いろんな措置を徹底しているということで、更にこの新法を機会にそうした措置を徹底してまいりたいと思っております。
  171. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非、様々具体的な取組をここはやっていただいておかないと、いろんな意味で一番批判のあるところでございますし、ここへの取組を更に私どもは強めていただきたいと、そこが一番大事な点ではないかなと、こう思いますし。  これでちょっと法務省にもう一つ聞いておきたいのは、先ほど漸減条項の問題を局長にお聞きしましたが、この漸減条項について、今回の法改正の中で、ある意味では法律の中にこういった項目を規定した方がいいんじゃないかというような御意見もあってみたり、これは衆議院法案で出されておりましたが、修正案が。その修正案を見ると、留置施設代替収容される者の数を漸次少なくするよう努めなければならないというような案も出ておりました。こういったものに対して法務省はどうお考えでしょうか。
  172. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 最近の未決拘禁者をめぐる厳しい収容状況や現下の財政状況にかんがみますと、もとより法務省としては今後とも未決拘禁者の収容能力の増強に努めていく所存ではございますけれども刑事施設の収容能力の増強を図り、やむを得ず被勾留者を留置施設に収容する例を少なくするという結果を十全に実現することは必ずしも容易なことではないと認識しております。  したがいまして、これを求めるいわゆる漸減条項の内容を法的拘束力を有する法文中に規定することは適当ではないと考えております。
  173. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ここ、もう本当に論議をもう少ししなければいけない点だと思いますが、大臣も先ほど話はしていただきましたが、ともかくこの代用刑事施設の問題、現在はこれはこれである一定程度の位置付けをせざるを得ないというお話はされましたが、それでもやはりこれをできるなら変えていく努力というのは、やはり大臣自ら先頭に立って指揮を執りながら、どう本当に両方のこの施設の位置付けをしていくか、ある意味では、やはり減らす方向への決意は持ちながらこの問題に適時取り組む必要があるのではないかと思いますが、大臣考えをここでちょっと伺っておきたいと思います、一言。
  174. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 先ほど松岡先生のときにもお答えしたと思うんでございますが、あらゆる角度から全力を挙げて取り組んでいかなきゃならないと思いますが、ただ、漸減していくというのは非常に厳しい状況だということも言えると思います。犯罪者を減らしていくということができれば、恐らく基本でございますし、施設を増強していくということも基本でございます。  先ほど矯正局長触れませんでしたが、警察署留置場は千二百か所ぐらいあると。拘置所はその一割ぐらいですか。じゃ、全国津々浦々にそれを増設するためには、土地を取得しなければならない、建物を建てなきゃならない、管理の人員を張り付けなきゃならない。刑務所の刑務官まで減らせという声が出るような流れでございます。警察署留置場は、これは留置場として減らすわけにはいかないわけでして、努力をしてまいらないと言っているわけじゃありませんが、非常に厳しい現実であるということは御理解いただく必要があると思います。
  175. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 大臣認識認識としてきちんとしたものがあって、それでいいと思うんです。ただ、全体の流れの中で、やはりこういう拘置、留置在り方、今のままで本当にいいんだろうかという問題意識は常に持ちながら、どういった方向が本当にいいのか。それは人の問題もありますよ。金の問題もありますよ。難しい問題一杯あります。ある中で一体どうしていけばいいのかという方向性を是非いろんな意味で注視して見守りながら努力をいただきたいなと。別に私どもは修正しろとまでは今は申し上げてないわけでございまして、そういう意味では是非きちんとそういう努力を続けていただきたいと、こう思っているわけでございます。
  176. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 努力を続けてまいります。一生懸命頑張ってまいります。
  177. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それでは、もう一つ別の角度からお聞きしていくんですが、これ、衆議院において未決拘禁者は無罪の推定を受けるとの原則を法文上盛り込むという修正案が衆議院で出されたと聞いておりますが、これに対する法務当局のお考え局長から伺っておきます。
  178. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 御案内のとおり、無罪の推定というのは、有罪とするための挙証責任を検察官が負うとする証拠法上の法則を意味するところとされているところでございます。したがいまして、未決拘禁者処遇に直接かかわるものではないと考えております。  したがいまして、法案規定しているように、未決の者としての地位を考慮した処遇ではなく、無罪の推定を受けるという地位にふさわしい処遇とするということがどういうことを意味するのか判然としない上に、無罪推定という表現は、未決拘禁者の権利が、身柄拘束を受けず社会で生活している一般市民と同様に、何ら制限されてはならないかのような印象を与えかねないという問題もかねてから指摘されているところでございます。  したがいまして、これを法文に掲げることは適当ではないというふうに考えておりますが、もとよりその意味するところが、未決拘禁者は有罪判決は確定した者ではないということに留意すべきものだということであるとするならば、今回の法律案におきましても、未決拘禁者処遇原則として第三十一条において、未決拘禁者、未決の者としての地位を考慮しなければならないとしているところでございまして、これにより、いまだ有罪の判決が確定しておらず、その防御権を尊重しなければならない地位にあることを考慮すべしということは法文上も明らかにされているところでございます。
  179. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、これやっぱりその処遇基本原則の中で、例えばこの逃走、証拠隠滅の防止、これは未決拘禁を行うことそのものによって既に達成されているんであるから、これを処遇の原則に規定することそのものは不適切であるというような意見もこれあったとお聞きしておりますが、この点についてはどのような御見解でしょうか。
  180. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) そういう御意見も承っておりますが、刑事司法の適正な実現のためにはやはり逃亡及び罪証隠滅の防止が万全に図られることが前提になるものと思います。未決拘禁制度はこれを防止することを目的としております。  未決拘禁者の逃走そのものは、未決拘禁を万全に行うことによってその防止が図られるものではありますけれども、万が一にも逃走が行われないようにしようという場合には、逃走のための相談をする外部交通を制限したり、あるいは逃走用の器具を不正に所持していないかを検査する必要があったり、さらには、具体的な未決拘禁者処遇に当たっても考慮をしなければならない事柄はあるわけでございまして、処遇の原則として規定する必要があると考えているところでございます。これは罪証隠滅の防止についても同様のことが言えるだろうと考えているところでございます。
  181. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、基本原則で聞いておきますけれども未決拘禁者はこの無罪の推定の原則が働くことを理由としまして、いわゆる未決拘禁者に対して懲罰を科すことに反対する考え、これも結構ございました。この点についてはどうお考えでしょうか。
  182. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 先ほども申し上げましたように、未決拘禁者、有罪を確定した者でございませんので、有罪であることを前提としたような権利あるいは自由の制限ができないことは当然のことでございます。  ただしかし、未決拘禁者等の収容施設、これは多くの者を集団で拘禁すると、こういう施設でございます。したがいまして、被収容者の安全で秩序ある生活を保障して、その適正な管理運営を確保するためには、規律、秩序を害する行為が行われた場合には、この秩序、規律を維持回復するために未決拘禁者に対しても制裁としての懲罰を科す必要があると、こう考えますし、また制度上の合理性もあるのではないかと考えております。
  183. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 少し質問を飛ばさせていただきます。そして、先ほども警察庁の方から御指摘があった捜査留置分離の問題を何点かお尋ねをしておきたいと思うんです。  先ほども少しお話がありましたが、やはりこの捜査留置分離という、これが極めて大事な点だと思っておりますが、この捜査留置分離に関して具体的にとっている措置、先ほども幾つか答弁はありましたけれども、再度、いわゆる捜査留置分離に関する措置についてまず伺っておきたいと思います。
  184. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) お答えいたします。  先ほどもお答えした中身にほぼなりますけれども、具体的には、被留置者処遇捜査とは別に専ら留置部門が行うこととし、さらにこの旨を留置の開始に際しまして被留置者に告知することが一点でございます。  それから、捜査に従事する者は当該被留置者処遇に当たってはならないということを徹底しておりますし、さらに、食事、就寝等、日課時限に掛かる取調べにつきましては、留置部門から捜査部門に対して打切り検討要請を行うこと、また、被留置者の入出場に際しましては、その目的、時間等を書面に記載し、留置主任官がその適否を自ら判断するというようなことなどを徹底しているところでございます。
  185. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうすると、例えばこの捜査留置分離ということをより明確化するために、捜査員が被留置者処遇を行わない旨、これを法律規定するというような方法はなかったのかどうか、これもお答えいただいておきたいと思います。
  186. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) 今御指摘の点は、これは第十六条第三項で、留置担当官は捜査業務に従事してはならないというふうに規定されておりますが、この留置担当官というのは、要するに狭義の、いわゆる留置管理係に専属しているといいますか、所属する者だけではなくて、現に留置業務に従事する者をいうことになります。  したがいまして、現に被留置者捜査を行っている捜査官というのが当該被留置者処遇を行いますと、その捜査官はここに言う留置担当官に該当することとなるため、この規定に違反することになるということで、こういう組立てでございまして、したがいまして、御指摘の趣旨は法案の文言により既に満たされているものと我々は考えております。
  187. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そう言われても、例えば両部門がどうなるかというと、捜査留置、これは結局同一の警察署長の指揮命令を受けてやる形になる。そうすると、この弊害の懸念というのがなかなか払拭できにくいんじゃないかなと思われるんです。  だから、例えばその留置担当官は捜査官に対して、先ほど御指摘ありましたよね、取調べの打切りを検討することを要請できるというような言葉がありましたが、これを例えばもう少し明確に、取調べの打切りを求めることができるというような関係性、これぐらいまで整理してしまった方がいいんじゃないかなと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
  188. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) お答えいたします。  確かに、警察署長というのは両方、両部門を兼ねておるということで、御指摘のような質問があるということは承知しております。  この問題は、捜査留置のどちらを優先するかという、絶えずそういう問題でございますが、やはりこれは個別具体的事情に照らしましてその都度警察署長が判断を行うものであるわけでありまして、警察署長は、確かに捜査責任者であるとともに留置業務責任者でもありまして、留置業務についても適切な判断が期待されるところでございます。  とりわけ、例えば留置業務に関して、被留置者処遇に問題があって不祥事が起きるというようなこと、まあもちろんあってはならないんですが、そういう不祥事案があった場合は、これ当然留置業務責任者たる警察署長は責任が問われるということになっております。  さらに、被留置者留置場への出入りに関しては、あるいは被留置者処遇状況につきまして、これは留置担当者が記録することになっておりますので、警察署長の判断という適切さはこれによって客観的に担保されるものと考えております。  加えまして、今回の法整備におきましては、被留置者処遇に関して、さらに警察本部長や公安委員会に対する不服申立て手続が整備されましたということ、あるいは留置施設視察委員会の視察等によりまして施設運営の透明化が図られていると、こうした措置が今回の新法でとられることになったわけでございまして、このような担保措置によりまして捜査留置分離はより確実に実施されるものと考えております。  そこで、委員の御指摘取調べの打切り要求についてのお尋ねでございますが、御案内のとおり、被疑者処遇というのは日課時限に従って行われることはもちろん望ましいわけでありますが、他方、被疑者刑事手続の対象でもありまして、やはり勾留質問とか取調べ、公判出廷など、そういうものを実施すべき公益上の必要性もあるということでありますので、具体的事案に応じてやむを得ず定められた時間に日課時限が実施できないということはあり得るわけでありまして、今委員の御提案のような留置担当官に一律に取調べを打ち切る権限を付与するということは適当ではないと考えております。
  189. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今回のこの代用刑事施設の存廃問題というのは、これは未決拘禁者処遇等に関する有識者会議で御指摘があっているように、言わば取調べの方法も含めて刑事手続全般にもかかわる、単に施設だけの問題でなく、そういった大きな問題なんだろうと私も認識をしております。  その中で、これも今日は深い論議まで行きませんでしたが、何かというと、可視化の問題ですね、この取調べ状況を録画、録音すること。私どももこれはもう是非今後の課題の中で一番大きな問題だと認識をしておって、是非とも取り組むべきだというつもりでおりましたが、その一部が実は最近、五月九日でしたが、検察庁で、新聞見てもうびっくりしました、本当に。こんなに早くそういう時代を迎えることができるのかという物すごい期待感とともに、でもまずは試行なのかなという厳しい緊張感とともに、あの発表を見させていただきましたが、この取調べ状況の録画についてどのように行うこととされているのか、刑事局長から伺っておきたいと思います。
  190. 大林宏

    政府参考人大林宏君) 先ほど大臣からも御答弁がありましたけれども、検察庁における取調べの録音、録画の試行につきましては、裁判員裁判対象事件のうち検察官が任意性の効果的、効率的な立証のため必要と認めるものについて、検察官による被疑者取調べのうち立証の必要性考え取調べの機能を損なわない範囲内で相当と認められる部分を録音、録画することを試みるものであると承知しております。  試行期間は本年七月から一年半程度を当面の予定としており、試行庁は東京地方検察庁とのことですが、他の地方検察庁についても最高検察庁が事件を選び個別に実施することもあり得ると聞いております。試行後にどのような取扱いをするかについては、試行の結果を検証した上で判断されることになると承知しているところでございます。
  191. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に大臣に、今の問題も含めてこの可視化の問題、いろいろ検討すべき課題もあって、いつ法務省そのものも含めてこういう刑事手続の中での可視化の問題取り組まれるだろうかと。でも、是非これはやっていただきたいなという気持ちで、私どもは先ほど申し上げたように認識をしておりました。  私は、試験的とはいえ、まずはスタートできることについては高い評価をしたいと思います。是非やっていただいて、その上で、やはり私どもとしてみれば、この可視化の問題、単に検察だけの問題でなく、警察の問題も含めて、どう広げていくかという観点を持ちながら、よくよく検討もしていただきたいと思っております。  そういった意味で、今回、もちろん刑事施設の問題に対するこういう質疑をやっているわけでございますが、これからの捜査在り方、手続の在り方全体の問題含めて、私は、検討を更に進めていただき、特に試験的に始めるこの可視化の問題、是非ともいい結果が残せるような方向で、そしてしっかり見守っていただきたいと思っておりますが、大臣の決意を聞いて、質問を終わります。
  192. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 裁判員制度の導入は国民の皆さんに相当の負担を強いるものでございますが、国民が裁判に参加するということでございまして、今後の刑事司法手続に非常に大きな影響を与えるものだと思っております。  まず第一に、裁判、迅速化しなきゃなりません。裁判員をそんなに拘束できません、時間的に。それから、分かりやすくしなきゃいけません。素人の方に事実の判断、量刑も裁判官と同等の立場でやっていただくわけですから、分かりやすい司法が求められると思います。したがいまして、一方において集中審理手続とか法律を制定して取り組んでおります。  この可視化につきましても、これは、公明党としてはかなり前から党の方針として可視化すべきだという方針でいらっしゃったわけでありまして、過去の法務委員会の附帯決議でも検討をすべきだという附帯決議をいただいておったところでございます。これは御案内のとおりです。  裁判員制度導入に当たって、大体二割程度の事件が否認事件だと聞いております。その事件について調書の任意性が仮に争われますと、今までの裁判例ですと相当時間を要するわけであります。裁判員を拘束することになります。ですから、私も就任以来、検察官の立証責任との見地で、この法務委員会等における附帯決議を踏まえて検討すべきではないだろうかということを申してまいったわけでありますが、検察庁においてそういう諸般の状況を踏まえられまして、取りあえずは試みに行うということで可視化に一歩踏み出されたということであります。  これは、何といっても、裁判員裁判で争われた場合に、その捜査の調書の元になっている取調室における状況を裁判員にお見せすれば任意かどうか見て判断できるわけでありまして、これはもう裁判員制度における裁判を迅速に結論を出すためには不可欠なものだと私は思っております。試行となっておりますが、まだ何もやってないところをやるわけですから、試みに行えば問題点も明らかになります。改善もどこをしたらいいかが分かります。私は、裁判員制度、裁判員の導入の裁判には私はこれは不可欠なものだと思っております。  取りあえずは裁判員の裁判に適用されるわけでありますが、これで、まあ正直に申して第一線警察官は戸惑いが大部分だと思うんですけれども、試みにやってもらって、私個人として、いや、やってみれば、未経験なことなわけですから、実際やってみたら案外いいじゃないかという判断もされるかもしれません。そういう経験を積んでいただいて、しかし、裁判員裁判のためにはもう私は欠かせないものだと思っておりますので、試行から三年後ですか、本格実施に際してはこれはどうしてもやってもらわなきゃならない課題だと、こう思っております。
  193. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  194. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  私、本会議場で、この法案に関しましての杉浦法務大臣、そして沓掛国家公安委員長の千葉景子議員に対する答弁を伺っておりまして、この未決拘禁の問題をどのような問題として考えておられるのか、その問題とどのように向き合っておられるのかという点について、いささかのといいますか、強く疑問を持ったわけでございます。  そこで、法案提出の経緯からまずお伺いをしたいと思うんですが、昨年の通常国会で、これは先輩議員の皆さんには当然のことかと思いますけれども受刑者処遇法の改正といいますか、監獄法改正につながりました行刑改革会議活動についての資料をお配りをいたしました。  これを見ていただきますように、全体会だけで都合十回。第一分科会、ここは処遇在り方などですけれども、八回。透明性の確保などという第二分科会が九回。医療・組織体制などのこの第三分科会が八回。全体会、分科会、単純に合わせますと三十五回の大変精力的な調査検討あるいは議論が行われています。この中では、アムネスティ・インターナショナル日本だとか、あるいは元受刑者、あるいは現職刑務官などからのヒアリングを行ったり、国内及び外国の行刑施設及び司法省などを視察をしたり、受刑者や刑務官を対象とするアンケートを実施をしながら検討を行ったというふうに伺っています。  ですから、平成十五年の四月から十二月の大体八か月程度の活動の中ですけれども、その成果として出されました提言を見ますと、受刑者の人間性の尊重、刑務官の負担軽減、開かれた刑務所運営という三つの改革方向が示されて、ここが今日さんざっぱら出てまいります日弁連も含めて高い評価を受けて、昨年の通常国会での改正ということになったんだと思うんですね。  ちょっと長く引用しましたけれども、この行刑改革会議の中でも、未決拘禁や死刑確定者の処遇については我々の力の及ばなかったところだというふうにされました。ですから、政府も、未決と既決を明確に分離して、未決、特にその中心問題である代用監獄問題については今後の課題とすると、日弁連法務省警察庁、三者の協議を通じて協議をしていくということで、既決、受刑者処遇法の部分を昨年改正案として提案をされたんじゃないかと思うんです。  一方で、今回の法改正に当たって開かれた有識者会議を見ますと、四枚目からの資料ですけれども、第一回が十二月の六日に開かれておりますが、ここは二時間半で三者からの、つまり法務省警察庁日弁連、この三者からのレクチャーだけで終わっております。以降、全部で六回。これは取りまとめのための会議も含んでいるわけですが、そこに書かせていただきましたような時間数、長いときで三時間半、短いときは一時間半、こういう会議にとどまらざるを得ませんでした。  ですから、有識者会議報告書を拝見をしましても、我々九人に与えられた時間は短かったと、こう書いてあるわけです。活動の差は歴然としていると思うんです。有識者会議も、代用監獄の問題、代用刑事施設の存廃の問題、ここについて問題の重たさを示しています、書いています。つまり、この問題が最も根元的なものであるという認識を示しているんですが、その最も根元的な問題であるはずの代用監獄問題について議論がどう対立をし、その一方が多数を占めた、占めなかったという表現はあるんですけれどもね。だけれども、その対立している議論の中でどんな国民的な議論が行われて、裁判員制度の導入の始めとして二十一世紀のこれからの我が国刑事司法手続、これが大変革の時代にある中で、この未決拘禁と捜査在り方の問題をどうするのかということについての深まった議論ないしは提言というものには私は至っていないんじゃないかと思います。  だからこそ両大臣の御答弁が、どこで問題に向き合おうとしておられるのかがよく分からないという答弁になっているのではないかと思うんですけれども、今回の法案の提案理由について、大臣も前回の委員会でこうお述べになりました。つまり監獄法、旧監獄法規定ですね、これについて、依然としてその内容は極めて不十分であるとおっしゃっているわけです。なので、私はまず極めて不十分であるとおっしゃっているこの中身についてお伺いをしたいと思います。  私は、立場の違いはあるかと思いますけれども、重要な少なくとも三つの中心問題があると思います。  一つは、単に未決拘禁者をどこに収容するのかという問題ではなくて、被拘禁者の権利にかかわる人権問題である、すなわち憲法問題であるということが第一です。二つ目は、未決拘禁制度捜査在り方と密接にかかわるという点で、刑事手続における重要問題であるという点です。三つ目は、国連を始め国際機関からの改善あるいは廃止の勧告、これにこたえなければならないという点で、重大な国際問題でもあると。  憲法問題であり、重要な刑事手続上の大問題であり、そして国際問題でもある、私はそのように思いますけれども大臣はいかがですか。
  195. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 今回の法律案の意義、理念、目的についての御質問だと承りましたが、明治四十一年に制定された監獄法、お読みいただければ分かりますが、漢字、片仮名の文章でございまして、今の若い人にとっては読むこと自体極めて困難な、中身も不明確な法律であります。四十一年以来一度も改正されることなく、政令、規則等々の継ぎはぎ継ぎはぎの法律によらない運用で今日に至っておったわけでありまして、先生御指摘の被収容者の権利義務関係等が法律上明確にされていないなど、今日では極めて不十分なものとなっていたことはもう申し上げるまでもないところでございます。  先生御指摘のような経緯で行刑改革会議ができ、有識者会議ができ、その旧監獄法規定する事項のうち受刑者処遇に関しては、先生の御説明のような経緯で昨年五月、刑事施設及び受刑者処遇等に関する法律が制定されまして、法整備が行われたところでございます。  一方で、未決拘禁者等の処遇につきましては、旧監獄法の題名を改めましただけの刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律により規定されまして、依然としてその内容は極めて不十分なままでございます。また、受刑者処遇との関係で不合理な格差も生じることとなっているため、早期にこれに関する法整備を行う必要があるところでございます。  さらに、警察及び海上保安庁留置場につきましては、その設置根拠が法令上存在しないこと、これらに留置される者の処遇に関しては規定がないか、あるいは法律の適用関係が不明確であることなどの問題点がございまして、所要の法整備を行う必要があるわけであります。  本法案は、このような状況を踏まえまして、刑事施設及び受刑者処遇等に関する法律の一部を改正し、同法において、刑事施設留置施設及び海上保安留置施設に収容されている未決拘禁者等につきまして、その人権を尊重しながら、適切な処遇を行うため、その処遇に関する事項について定めるほか、留置施設及び海上保安留置施設について所要の法整備を行おうとするものでございます。  先生が御指摘になった行革会議の前から長い経緯がございます。昭和五十五年に法制審議会の答申を得て、昭和五十七年に最初刑事施設法案が国会に提出されました。
  196. 仁比聡平

    仁比聡平君 大臣、そこは分かっています。
  197. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 以来、昭和六十二年、平成三年の三度にわたって国会に提出されましたが、いわゆる代監問題に関しまして意見の隔たりがあったことなどから、いずれも廃案になったところであります。  この間、法曹三者を始め、長い議論の蓄積があります。それから、警察の方におきまして、留置捜査分離施設改善等々、様々な努力も一方においてなされたという経過もあるわけでございます。  そういう二十五年にわたる長い経過を経て、この行革会議そのものはいわゆる名古屋刑務所事案を契機として、行刑運営上の問題が社会、日本全体の中であらわになりまして、受刑者改善更生を図るための処遇を充実させることが喫緊の課題であると広く国内に認識されることになったことなどを背景といたしまして改正の動きが加速したというふうに私は承知しております。  先生のお話しになったような経緯で今日まで至っておるということでございます。(発言する者あり)
  198. 仁比聡平

    仁比聡平君 今同僚委員から声もありましたように、私の質問に答えていただきたい。今の大臣の御答弁はそこをあえて避けておられるように私には受け止められるから、それは監獄法のほぼ一世紀以来の改正、その歴史的な事業を国民に訴えておられる、提起をしておられる、国会に立法を提案をしておられる大臣として、私はもっと語るべきであると思うわけですね。  大臣の今の長い御答弁の中にも人権という言葉がございました。代用監獄問題をめぐって、とりわけ戦後、重大な議論が繰り返されてきて、有識者会議でも、それが調和した解決の道を見いだしたとは到底言えないという状況になっている。今回の法案衆議院を経て参議院に来ても、こういう議論がずっと続けられている。国民的にもそうでございます。そういう議論になっているということの根本の問題の所在は、先ほど申し上げた被収容者人権問題、つまり憲法問題であり、刑事訴訟在り方を左右する重要問題であり、そしてそのことが国際機関からも指摘をされている、そういう国際問題でもあるからだと思うんですね。  ちょっと大臣の、私も持ち時間が一時間あればその議論もさせてもらいたいと思うんですけれども、別の角度で今の議論を続けたいと思うんですけれども、先ほど松岡議員もお聞きになっておられました「未決の者としての地位を考慮し、」という法案三十一条の未決拘禁者処遇の原則にかかわる問題です。  先ほど河野副大臣から定義についての御答弁があったわけですけれども、これが無罪推定の原則とどうかかわっているのか、どう理解をしておられるのかということが私にはよく分からないんですね。特に事務方の方のお話を聞いていてよく分からないので、政治家として大臣に是非聞かせていただきたいと思っているわけです。  国連人権規約の十四条を始めとして、無罪推定原則というものが、つまり有罪と判断されるまでは無罪なのだと、その権利があるというのは、これはもう当然のことだと思いますし、国連の被拘禁者処遇最低基準規則、これの八十四条の中には、無罪として推定されるというだけではなくて、こんなふうにあります。有罪が確定されていない被拘禁者は、無罪と推定され、かつ、それにふさわしく取り扱われなければならない、それにふさわしく取り扱わなければならないと。これは、証拠法上のルールとしての無罪推定だけではなくて、地位としてそれにふさわしく取り扱わなきゃいけないと、こうとしか読めないんですね。  ですから、ここの解釈を人権規約委員会意見として述べているものがありますけれども、ここではこんなふうに言っています。「被疑事実が合理的疑いの余地なく立証されるまで、有罪を推定してはならない。さらに、無罪の推定は、この原則に従って取り扱われる権利を含む。」と申し上げているんです。私が今申し上げているものは、これはもう御存じのとおりの文言ですけれども、資料としては「人権と未決拘禁」、国連が出している資料、分厚いハンドブックがあるわけです。  そういう、国際的に私は確定している、定着していると言っていいと思うんですけれども、その原則との関係で、この「未決の者としての地位を考慮し、」という定義をどのように考えたらいいのか、是非大臣にお伺いしたいと思います。
  199. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) 無罪推定といいますのは、有罪とするための挙証責任は検察官が負うとする挙証責任に関する法則でございます。  未決拘禁者というのは、身柄拘束を受けず社会で生活している一般市民と同様に何ら制限がされないわけではございません。面会などにおいて罪証隠滅を図ることが行われないようにしたり、あるいは防御権を侵害しないように、弁護人との面会についてはしっかり面会の権利、接見の権利を図るというようなこともあるわけでございます。  ですから、一概にその無罪推定ということが未決拘禁者処遇そのものに掛かるわけではありません。未決拘禁者が有罪判決が確定した者ではないということに留意すべきということで、今回の法律案の第三十一条により、いまだ有罪の裁判が確定しておらず、その防御権を尊重しなければならない地位にあることを考慮しなければならないということを三十一条で明らかにしているわけでございます。
  200. 仁比聡平

    仁比聡平君 副大臣がそのようにおっしゃると、私は、であれば、日本政府はこの処遇最低基準規則に定められている国際ルールを受け入れないとおっしゃっているのかというふうに聞こえてしまうので、これは大問題になるんだと思うんですね。  ちょっと申し上げさせてください。  人身の自由というのは、これは自由の基本中の基本なわけです。当然、拘禁されるわけですからね。これは私は捕まえるなと言っているんじゃありません。捕まるわけですから、その拘禁目的に伴う必要最小限の制約を受けるというのは、これはやむを得ないことです。ですから、拘禁をされている、拘置所にいる、あるいは代用監獄にいる被疑者が普通の市民と全く同様に生活することは、これは不可能である、これは当然のことだと思います。  だけれども受刑者とは違うんですから、有罪が確定している受刑者とは違うんですから、ですから、無罪の推定を受ける市民としてできるだけその地位にふさわしい扱いをされなければならないと。そこから具体的にどんな施策、制度が出てくるかはこれはまた別の問題だと思うんですよ。  これはお国柄によってもいろいろあるだろうと思います。ですけれども、その無罪推定の地位にふさわしい取扱いを受けなければならないんだと言っているこの国際ルールを日本の政府が無視するといいますか、あるいは踏みにじるといいますか、これちょっとまずいでしょう。  そういうことは私はできないと思いますし、先ほど来江田議員からも発言があっておりましたけれども、憲法の下で戦後の訴訟構造というのは大きく転換をいたしました。いわゆる当事者主義的訴訟構造を我々は採用していると言われていて、対立当事者なわけでしょう、基本的には、理念的には、構造的にはですね。  実態がどうか、実質的にどうかはいろんな議論があるとしても、先ほどの副大臣の御答弁で、この国際人権上の基本ルールを日本政府がどのようにとらえるのか、そのことについて改めて大臣にお尋ねをしたいと思います。
  201. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 国連人権規約と国際ルールとの関係については刑事局長から答弁させたいと思います。どうも失礼、矯正局長です。
  202. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 先ほども私からこの関係に、無罪の推定の関係で答弁さしていただきました。  この国際人権規約のガイドラインの関係の問題については、まず第一点としては、このガイドライン等が法的拘束力があるのかどうか、この点の議論がまず必要だろうと思いますし、無罪の推定を受ける者にふさわしい処遇が具体的にどのようなことを意味しているのかが……
  203. 仁比聡平

    仁比聡平君 先ほどの御答弁どおりだったら、もう後で議事録を見ますから。
  204. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 判然としませんけれども未決拘禁者に対して有罪であることを前提とした権利、自由の制約を課してならないということは当然でございまして、この法案においてもこのことを前提としているところでございます。
  205. 仁比聡平

    仁比聡平君 この法案前提としているところだということであれば、未決の者としての地位というものの中には、無罪と推定をされて、それにふさわしく取り扱われるべき地位というものがこれは含まれるはずでございます。  今日これ以上は私の質疑の時間ももうないんですけれども、はっきりしないというわけにはいかない重大問題だと思うんですね、ここは。是非、政府全体として考えていただきたいと思います。  国家公安委員長においでいただいたわけですが、代用監獄を廃止、漸減すべきだという日弁連の主張に対して、警察庁が、その日弁連主張に対する警察の対応方針についてというペーパーを国会議員に配ったのは御存じのところだと思います。その中で、我が国独自の刑事司法制度前提として、捜査を迅速、適正に遂行する上で重要な機能が代用監獄にはあるから廃止、漸減は無理でございますというような趣旨のレクチャーがあるんですね。  この我が国独自の刑事司法制度というのは一体何かということについてちょっと私の方で質問をさせてもらいたいと思うんですけれども有識者会議の中で警察庁の見解がペーパーとしても示されていますし、その中で私が特に今日一問、大臣にお伺いをしたいのは、捜査留置ですね、つまり警察留置日本でいえば代用監獄。ここの期間にかかわる問題なんです。  有識者会議では、ドイツやフランスやオーストリアの例を挙げて、警察庁はこう説明しています。我が国のように、二十三日の間に捜査を遂げて起訴までこぎ着けるというふうな厳しい制約の下にある国というのは国際的にも珍しい、極めて珍しい、例を見ない制度でございますと、こう言って、ヨーロッパで四か月できるじゃないか、六か月できるじゃないか、一年できるじゃないかというような身柄拘束期間を挙げられているわけですね。  これ、意図的に、警察留置身柄拘束期間被疑者、被告人に対する身柄拘束期間を混同している議論じゃありませんかね。日本だって、捜査段階で百日、二百日というそういう拘束を受けているという例は先ほど前川議員も紹介をされました。あるいは、起訴後何年あるいは何十年という形で身柄拘束を受けている、そういうことはあるわけです。加えて、捜査起訴後行うということは可能でございます。起訴後の捜査ということは可能でございます。あるいは、余罪の捜査として、既に起訴をされている被告人の別の罪、余罪、これを捜査をするということは現に行われているし、これは一定の制約は必要だけれども可能だというのが今の議論だと思うんですね。  二十三日間で起訴をどうしても迫られて、だからこの代用監獄がなくなってしまったら捜査ができないというようなお話は、これは事実と違うんじゃありませんか。実際、フランス、あるいはドイツ、あるいはオーストリア等々の例がたくさんあります。一つは、九六年に警察学論集というものの中で警察庁の総務課の方がヨーロッパの制度を調べていますけれども、そこで、つまり警察留置期間というのは二十何時間あるいは四十八時間程度のそういう短時間になっている。昨年、日弁連法務省警察庁合同で調査に行かれていますが、例えば、ウィーン、オーストリアでいえば、通常は四十八時間以内に裁判所送致の手続が取られていることになる、それからイタリア、ローマでいえば被逮捕者の平均滞在時間は約十六時間から二十時間である、逮捕後の被疑者を裁判所に引致するまで留置するのが警察署留置場でございますと、三者で連名で報告書も出されているでしょう。にもかかわらず、何で有識者会議でそんなレクチャーをするのか。大臣、いかがですか。
  206. 沓掛哲男

    国務大臣沓掛哲男君) 今委員いろいろ言われましたが、最初に我が国独自の刑事司法制度とは何かということですから、それを一言答えながらお答えしたいと思います。  まず、被疑者逮捕後二十三日間という極めて短い期間内に所要の捜査を遂げ起訴又は釈放の判断を行うことが求められていること、それから、この期間内に第一次捜査権を有する警察が供述、証拠品、動機、犯行の背景等に関する詳細な捜査を遂げる必要があることなどをそういうふうに申し上げているんですが、しかし、国際的にまれとも言いながら、今委員の言われたように、じゃ、それをその欧州並みにどんどん延ばしたらどうかということですけれども、まあ今の我が国の体制から申しますと、(発言する者あり)まあ延ばしてはというそういう意味もあるんだろうと思いますが。  まあこれはなかなか我が国の現状から申し上げますと、逮捕いたします、警察逮捕する、そうすると四十八時間以内に送致が必要でございますし、送致をすれば二十四時間以内にこれ裁判所の勾留の判断をいただいて、そしてその際どこに勾留するかということが決められ、それから十日、十日で今度は起訴をするかしないかということが決められるということで、この期間でなくてもほかのところでもいろいろという今お話がございましたけれども、この裁判制度というものは、速やかにやはり解決していくことが国民のためにも、また国のためにも、当事者のためにも私は是非必要な重要なことだというふうに思っております。そのことができれば、それが不可能であればいろんなまた対応があると思いますが、今のような留置場等を使う、代用として使うことによって、可能であれば私はそのことの方がいいというふうに思っております。  そして、その場合で、今全国に留置場、警察留置場は千何百か所あるわけですけれども、拘置所というのはわずかしかないわけですから、それぞれ留置場で留置すれば、そのいろいろなことの捜査、これからいわゆる犯罪を起こした場所を見たり、あるいは弁護士との、あるいはいろんな方々との接見もその地域でいろいろ行われていく、それが拘置所ということになれば、非常にまた広い範囲でそういうものを行うにも時間やいろんなものが必要になっていくなどなど、やはり私はこの日本のこういう島国において、そしてこういうものを効率的に、そして、かつ国民の理解を得ながらやっていく上において考えられてきた一つの仕組みだというふうに思っております。  このことが、やっぱり人権の問題であるとか、あるいはその自白した者に対する任意性とか信用性、あるいはまた国際的に大きく問題になれば別ですが、そういう問題をこういう形で解決できていけるならば、私はこういう手法というのも非常に日本人らしい優れた解決方法だなというふうに思っております。
  207. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 時間が来ておりますので、質疑をおまとめいただきたいと思います。
  208. 仁比聡平

    仁比聡平君 今の御答弁は、一つには既に国際調査の中で明らかになっている警察留置の状況からすると、日本代用監獄こそが異常なんだということについて正面からお答えにならないという態度ですし、もう一つは、その代用監獄をあたかも日本古来の文化や歴史にのっとった制度であるかのようなニュアンスが感じられました。  私は、今の答弁のままでこの法案、進んでいくわけにいかないと思いますから、次回も是非御答弁をいただきたいと思うんですけれども、私は問題提起だけしておきます。  つまり、代用監獄というのは、捜査機関被疑者を二十四時間完全に支配できる状況にある、そういう構造にある、するかしないか別にして。そこの構造にあるということが私は問題なんだと思います。今日御紹介をしようと思いました事案というのは、後で見ていただければと思いますけれども、そういう支配がなければ自白には至り得ない、そういう構造になっているんだと思うんですね。  私、この委員会でこの法案が審議をするということになりました以上は、今日お話に出ました痴漢冤罪の被害者だとかあるいは志布志事件だとか始めとして、冤罪の被害者が代用監獄であるいは取調室でどのように扱われているのか、その本人や支援の市民団体の方々や、あるいは行刑改革会議が調査の対象にされたそういう団体の皆さんの意見を我々自らちゃんと聞くということをしなきゃいけないんじゃないのか。あるいは、刑法や刑事訴訟法の研究者あるいは精密司法という調書裁判、人質司法、ここについて、裁判員制度を迎えようという新しい時代の中で、大変革の時代の中で、国民が、今日るるお話に出ました精密司法、そういうふうなことでいいと思うのかどうか、そこについても公聴会なども含めてしっかり国民意見を聞くということが必要であり、提案をさせていただいて、質問を終わります。
  209. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 国民新党の亀井でございます。最後になりましたが、今朝からの慎重な審議で大分お疲れだと思いますけれども、もう少し我慢してください。  何点かお尋ねさせていただきたいと思います。  この監獄法改正も、明治四十一年から、成立されてから約百年間たって今回の改正へということになったわけでございますけれども、特に監獄法については問題があるということで、昭和二十二年には監獄法改正要綱が発表され、また昭和三十二年には監獄法改正要綱仮草案が作成されたと聞きますけれども、こうしたものが実際に百年たった今日になったわけでございますけれども、その理由は何なのかお尋ねしたいと思います。
  210. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 御案内のとおり、監獄法改正につきましては、戦前から受刑者処遇等を中心といたしましていろいろと検討が行われてきた事実があるようでございます。  先生御指摘の昭和二十二年の監獄法改正要綱については、これに基づいた草案の作成作業も進められたと、こう聞いておりますけれども、何せ古いことでございまして資料は残っておりませんので、昨夜来勉強しました文献等に基づいて説明させていただきたいというふうに思います。  これについては、いわゆる当時のGHQの関心事と監獄法改正が必ずしも一致しなかった、GHQでは少年法、保護観察に関心を抱いて、なかなか関心を向けていただけなかったという経過があってこれは法案化されなかったと、こういう論述がございました。  さらにまた、昭和三十二年にも監獄法改正要綱草案なるものが矯正局内で作成されております。これにつきましては、当時法務省内でのいろんな会議の中で賛成が十分得られなかったと、こういうことで、矯正局として、法務省の中の一組織としていろいろ検討を加えなさいと、こういう経過になったというふうに文献等では紹介されておりました。  その後も、矯正局、法務省内では監獄法改正に向けていろんな作業を続けてまいりまして、昭和五十一年でございますか、法制審議会に監獄法改正のための諮問が発せられたというのが戦後の大ざっぱな流れのようでございます。
  211. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 今のお話のようにいろいろと検討されたんですけれども、最後は五十二年か三年ですからね、それからもう三十年たっておるわけでございますから、なかなか難しい問題だと思いますけれども、昨年、十二月六日から未決拘禁者処遇に関する有識者会議というのができて、そんなに時間掛かったものが今度は随分早くて、本年二月の二日までの提言の提出までは二か月間に五回の会議と一回の視察ということで、駆け足で行われたわけでございますけれども。  そういう意味で、未決拘禁者処遇については、徹底的な従来議論された問題についての改革は回避されて、多くの問題が先送りされてできたというふうにも言われておるわけでございますが、昨年成立した受刑者処遇法の施行に合わせる意味で未決拘禁者処遇に関する法律を急いだんではないかというふうに言われておりますけれども、今回の法改正をこんなに急いで、大急ぎでやった理由は何なんでしょうか。
  212. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 先ほど大臣からもこの法改正の意義等について御答弁がございました。そこに尽きているわけでございますが、若干付け足すことになるかもしれませんけれども、先ほど御説明申し上げたとおり、未決等を含めたこの課題につきましては長い間の議論の実績がございました。そして、有識者会議の前にありましたいわゆる三者協議の中では、警察庁法務省そして日弁連が十分に詰めた論点整理をいたしまして、そして有識者会議にお諮り申し上げて御意見をちょうだいしたと、こういう経過でございます。  二か月という期間、長くないと言われればそのとおりでございますが、急ぎ過ぎたというふうな評価は私どもはいたしておりません。むしろ、既決について既に処遇種々の手当てがなされたわけでございまして、そのアンバランスを解消するためには急いでやらなくちゃいけない、早急な作業が必要だという認識の下にいろいろ努力を積み重ねてきたと、こういうことでございます。
  213. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 ありがとうございます。  次にお尋ねしたいのは、今朝からずっと議論されておりますけれども代用監獄冤罪関係でございますけれども、非常に日弁連でも冤罪の元は代用監獄だということも言われておるわけでございますけれども、疑わしきは被告の利益にという刑事裁判の大原則を再審制度にまで拡大した昭和五十年の白鳥事件以来でございますけれども、平成十六年までの間、約三十年足らずの間に四百八十三人が再審で無罪になっているということは大変大きなことだと私は思うんですね。四百八十三人の人が無罪になるような人だったということですからね。それからまた、この中には有名な免田事件や財田川事件、更には松山事件そして島田事件の四人の元死刑囚まで含まれているということでございます。  そういう意味では、いずれも捜査段階の自白が決め手になっているということでございます。そういうことから誤った有罪判決が行われたわけでございますけれども、特に弁護士会の方の話を聞きますと、平成六年以降でも、日弁連の把握しているだけでも虚偽の自白事件は四十二件あったそうですが、そのうち二十件が無罪や不処分の結果になっているということですが。  どうもこういうことを考えますと、冤罪が依然として後を絶たないということについてはどうしてだろうかと思うわけですね。一生懸命警察や検察がやっているんだろうけれども、何か原因があるだろうと思うわけでありますが、このことと代用監獄との関係はあるんではないかと思いますけれども、それについてはどう思われますか。
  214. 大林宏

    政府参考人大林宏君) 無罪判決の理由は、関係者の供述や被告人の自白の信用性が認められなかったり、情況証拠から犯罪事実を認定するには合理的疑いが残るとされたりするものなど様々でございまして、一般的に申し上げて、代用監獄における勾留が直ちに自白を強要するものとは理解しておりません。  なお、御指摘のように、無罪判決が見られることは事実でございます。検察当局においては、信用性のある供述の確保とその裏付け捜査の徹底、証拠物やその鑑定等の客観的な証拠の十分な収集及び検討等に一層の意を用い、事件の適正な捜査処理に努めているものと承知しております。
  215. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 代用監獄関係ないというお話でございましたけれども、今朝からもずうっとみんなが心配しているのがこの代用監獄制度の問題ですからね。やはり、皆さんの声を真剣に受け止めて、代用監獄における扱いというか運用というものは十分考えていただきたいと思うわけでありますけれども。  代用監獄については、法制審議会が昭和五十五年に決めたことで、被勾留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすることという答申を全会一致で決めておるわけでありまして、重い決定をしておるわけでございますから、そういう意味では、拘置所を増設して代用監獄を今朝からの話にあるように減していくということが大事だろうと思うんですね。  実際に、代用監獄は、いろいろと改修なんでしょうけれども、増やしてきているという状況ですから、代用監獄を増やすのも拘置所を増やすのも国の金を使うんですから同じことですよね。そういう意味では、やはり代用監獄を減して拘置所を増やしていくということが大事だろうと思いますけれども、このことについて大臣はどのように解釈していらっしゃいますか。
  216. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) お答えする前に、この問題、先ほど申し上げましたように、私が弁護士会副会長になった五十七年から長い経緯がございまして、降ってわいたようだとおっしゃいましたが、あの五十五年のときも、忘れもしませんが、もう引退しました白川勝彦君だとか、高村さんだとか、それから財務大臣谷垣さんとか、当時一、二年生議員でしたけれども、そういう若手と話し合いまして、修正案まで用意して警察法務省と渡り合った経緯があります、廃案になりましたけれども。そういうのを三回にわたってやっておりまして、しかも弁護士会で、私何人も知っておりますが、もう二十何年、当時新進弁護士でずうっとこの問題を追っ掛けている人も何人もいるわけです。その二十五年の長い積み重ね、議論の積み重ね。それから、法曹三者では絶えずこの問題を協議いたしてまいっておりますし、そういった積み重ねの上で有識者会議も開かれている。そういう議論を踏まえている。  それから、行刑会議議論もそうでございますが、新たな有識者意見も聞いておるわけですけれども、そういう長い積み重ねがあった上で議論がなされ、結果が出てきておるということを一言申し上げたくて、お答え前に、何と申しますか、二十五年の歳月の重み。  さらに、一言加えさせていただきますと、弁護士会の中で長年にわたって二十五年努力してきた連中は大変喜んでおります。これまでのアウトプット。ですから、日弁連全体としていろいろ公式的にはおっしゃっておられる面がありますが、御指摘もなるほどという御指摘もありますが、深くかかわってきた人々はここまでやれて良かったという感想を持っておると一言申し上げさせていただきます。  五十五年の法制審議会の答申の意義でございますが、先ほど来御答弁申し上げているとおり、法制審では刑事施設の収容能力の不足から留置施設に収容せざるを得ないという事態が現にあって、あるいはそのような事態が生じるおそれがあるとの認識に立ちまして、刑事施設所管する法務省に対して増設に努めなさいと、そのような事態が生じることがないようにすべきことを求められたというふうに私どもは理解しております。  法制審議会の答申は、代用監獄に収容される被収容者を漸次減少させて代用監獄制度を将来的に廃止するという趣旨を含むものではないというふうに理解いたしております。
  217. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 ありがとうございました。  大臣が弁護士時代から一生懸命やられて、もう二十五年たってこうなったと。一部は喜んでいる弁護士さんがおられるのかもしれないけれども、私のところには日弁連始めとして非常に批判的な声がどんどん届いてくるわけでございますから、そういう意味では慎重にこの問題は扱ってもらわなきゃいけないだろうと私は思うんです。やはり自白させるということはなかなか大変なことだということもよく分かるわけでありますけれども、しかし、だから何やってもいいということではないと思うんですね。  そういうことで、特に勾留の推移を見ますと、昭和四十六年にはいわゆる留置場に収めたのが一八・四六%だと。それが六十年には六・八六に減って、平成十年には三・四五と。何と平成十六年にはわずか一・七三%と、拘置所への留置がこんなに減っているわけですね。かつては、だから二割ぐらいは拘置所だったのが今はわずか二%弱ということで、ほとんどが警察留置場という状況でございますから、これはどういうことだろうかと思うんですね。  さっき言ったように、犯罪が増えるんなら仕方がないと言われるんですけれども、捕まえた人間をちょっと処分するのに、やはりそれを拘置所に置くかあるいはまた留置場に置くかという問題だけなんですから、留置場がこの分だけ増えているということは、留置場の方は金掛けて増やしているんだと思うんですね、野原に放しているわけじゃないんだから。  そうなると、やはりこれについては、何だろうか、よく分からないんですけれども、これについてお尋ねしたいと思います。
  218. 小貫芳信

    政府参考人小貫芳信君) 委員の御質問の趣旨は、二%に下がってきた原因、理由についてのお尋ねと伺ってよろしいでしょうか。  その点については、先ほど来……
  219. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 だから、なぜ警察の方をばっかり増やしていったのかと。だって、もうかつては三〇%、二〇%ぐらいは拘置所で、あと八〇%は警察だったんでしょう。それが、その片方が減っちゃって片方が増えているのは。
  220. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 警察ですか。  警察庁安藤官房長
  221. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) 警察庁の方からお答えをいたしたいと思いますが、先ほども申し上げておりますように、我が国刑事司法制度の下では極めて短期間身柄拘束の間に緻密な捜査を行う必要があるということで、そのような適正かつ迅速な捜査の遂行のためには、やはり被疑者留置場所としましては、捜査機関と近接した場所にあること及び取調室等の設備が十分に整備されていると、こういうことが必要不可欠でございまして、そういう現実的な条件が裁判所の方で判断されまして勾留場所として指定されていると。  あわせまして、御案内のとおり、犯罪情勢が悪化してそれだけ過剰収容の状況があったということで、各都道府県ではやはり目下の治安情勢の悪化に対して手を打つということで、やはり留置場を増設をしてきたということではないかなと思います。
  222. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 今のお話だと、手元に被疑者を置いておいた方が自白させたいから、させやすいからそうしたんだという声に聞こえるわけですね。  だから、そうおっしゃっているわけですけれども、四十六年からどんどん増やしてきている。同じ金を掛けるのを、拘置所は増やさないで警察ばっかり増やしてきている。どうもその辺に冤罪のもとがあるんじゃないかというような気がするわけですね。  今度の法案の十四条一項にも都道府県警察留置場を設置するということが書いてあるんですけれども、これもしかも代用監獄とすることができると定めておりますけれども監獄法では、一条の三項では、昨年成立した刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律の二条では、警察官署に附属する留置場はということで、刑事施設に代用することができるということになっているんで、ですけれども、今度は警察官署に附属する留置場という言葉が使われてないわけですね。だから、前は警察官署に附属する留置場と書いてあったのが、今度はわざわざ落としてあるわけですね。だから、それはどういうことなのかと。  だから、大規模な留置場ができている、独立の留置場できているからそうなったのかもしれませんけれども、そうだとすれば、大規模の独立留置場を正面から認めて、そのための法律が作られているんだと理解していいんですか。正面から認める意味なのか、教えてください。
  223. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 後半の部分は警察に答弁してもらいますが、前半の部分で、手元に置いて自白させたいから手元へ置いておくんだろうという御意見がございましたが、その点について若干誤解されている面もあるんじゃないかと思って立たせていただいたんですが、勾留場所、これは裁判官がその裁量でお決めになるということはもうずうっと御説明したとおりです。警察が決めるわけじゃございません。  現実問題として、先ほど数字も、二%拘置所、九八%留置場というのは取調べ段階でございまして、起訴後ですと、さっきの話では八割ぐらいが拘置所へ移って二割ぐらいが留置施設と。余罪のある人を調べるという部分もあるけれども、大体おおむね起訴すると拘置所へ行くという実情であります。  それで、例えば我がふるさとの実情を申しますと、旧三河ですけど、東西三河なんですが、拘置支所があるのは岡崎市だけです。東三河には拘置支所ありません。西三河も岡崎だけなんですね。豊田の山奥から幡豆の方まで、現状を申し上げているわけです。ですから、裁判官が例えば東三河の新城とか多くの事件で拘置する場所を決める場合に、それじゃ岡崎拘置支所をお決めになるかといったら、なかなか山を越えて一時間以上掛かるところに指定するというのはためらわれるんじゃないだろうかと、ふるさとの状況を思いますと、ですから、そういう場合には場所を、拘置所を、やるならつくらなきゃいけない、何か所か、そういうことが必要になると思います。ということを一言だけ言わせていただいて、あと警察に答弁させます。
  224. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) お答えいたします。  お尋ねの件は、旧監獄法一条三項の警察官署に附属する留置場との文言が今回の新法では用いられていないということの意味ということなどだと思いますが、この旧監獄法で定められている官署とは、これは一般に官庁とその補助機関の総称でございまして、旧監獄法第一条第三項の警察官署というのも都道府県警察警察本部及び警察署という機関を指すものでありまして、物理的な建物を指すものではございません。したがいまして、留置施設警察署等の警察施設と物理的に隔てた場所に建設したとしても、つまり御指摘のような大規模な独立留置場というのがそういうのに当たるわけでありますが、そうした場合も、当該留置施設管理警察が行っている限り、旧監獄法一条三項に言います警察官署に附属する留置場に該当すると考えております。  なお、本法案十四条一項に言う都道府県警察に設置される留置施設、こういうふうに書かれておりますが、これも同様の意味であると考えておりますので、従前と同じということでございます。
  225. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 今お話があったんですが、ちょっと納得できない点もう一度聞きますけど、大臣がおっしゃる山の奥で捕まえた者を町の拘置所に運べと、僕が言っているんじゃないんですよ、それはやっぱりその山の中にある警察署留置場に置かなきゃ仕方がないと思うんですね。それでいいと思うんです。  だけど、昭和四十六年に二〇%が拘置所におって八〇%が警察だったのが、警察の方がどんどん増えているというのは、山の奥の人間ばっかり犯罪人になっているってことですよ。悪いことしているということではそれはないんで、やっぱり四十六年時点に警察留置し拘置所に留置した割合というのは同じ程度やっぱりあったんじゃないかなと僕は思うんですよ。  だから、そうだとすれば、やっぱり拘置所も増やし、警察も増やしというのが常識的には考えられるので、山の奥がこうなったからこれ減ったんだと言われたんじゃ、私も山の中の人間ですけれども、ちょっと納得できないんで、それはちょっとおかしいと思うんですね。  それからまた、警察の方も、聞いていておかしいなと思ったのは、警察官署に附属する留置場という言葉に包含されるんであれば、その言葉を残しておけばうまくできたわけでしょう。わざわざそれをカットしたのはどういう意味ですかと、こう聞いているわけですから。だから、カットしたなら、それは含まれるんだよと言われたって、それはおかしいと思いますよね。職制上指揮下にあるから建物は離れてもいいよと、それはいいんですよ。そうじゃなくって、警察官署の指揮下にあるのはそれでいいわけですから、わざわざカットしたのはどういう意味ですかと聞いているわけですから、そこをちょっと警察の方は答えてください。  まあ大臣の方はそういうことですから、同じ山の中の出身ですから。
  226. 杉浦正健

    国務大臣(杉浦正健君) 一言、ちょっと一言。  先ほどの答弁間違っていまして、豊橋に豊橋刑務支所っていうのがございまして、そこで拘置もしているようでありますが。  ただ、東三河っていうのは広うございまして、山の中だけじゃなくて近くもございまして、西三河だけだって、岡崎しかありませんが、豊田とかずうっと広いんですね。で、留置場は、我が選挙区だけでも岡崎署、西尾と二つあって、留置施設があるわけで、もう警察署の数だけ留置施設がありますから、捜査の必要上、全体、総合判断でしょうが、裁判官は、やっぱりしかるべき近くでちゃんとしたところを裁判所はお決めになっているんじゃないかと。  確かに少な過ぎます。もっと拘置所を造りませんと、裁判官が拘置所に置くという判断をされるにはもっと多数の拘置所を増設する必要が、今の何倍も必要があると、自分の地元のことを考えてもそう思います。先生のところはもっとじゃないですか。
  227. 安藤隆春

    政府参考人安藤隆春君) 先ほど申し上げましたような旧監獄法の解釈でございますが、今回都道府県警察留置場を設置するという設置根拠をここに書いておる、そういう条文でありますが、そこで、先ほど言いました警察官署というのは、いわゆる都道府県警察警察本部とか警察署というそういうものを指す、警察署ではなくてそういう官庁を指すわけでございますので、今回はその古いのから新しい法律でありますが、都道府県警察に設置される留置施設というふうに書かれたものということで、特に他意はございません。
  228. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 時間もないんでなんですけども大臣、やはりこの留置場の問題については、大臣が五十五、六年ですか、それからずっと一生懸命やられたような問題、さらには日弁連を含めて非常に問題視しておるわけですね。そういうことを、裁判所が決めるんだから決めるんだと逃げておられますけれども、私は裁判所にやっぱりこの意味をしっかり言っていく必要は、弁護士さんにも必要かもしれない、弁護士さんにも要求したいと私は思うんですけれども、その気持ちを裁判所にも伝えて、冤罪が少しでも減るようにやはりやっていただきたいと思うんですけれども、よろしくお願いしたいと思います。  時間が来ましたのでこれで今日はやめますけれども、よろしくお願いします。
  229. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時五十九分散会