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2006-04-18 第164回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年四月十八日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         弘友 和夫君     理 事                 荒井 正吾君                 谷川 秀善君                 簗瀬  進君                 木庭健太郎君     委 員                 青木 幹雄君                 山東 昭子君                 陣内 孝雄君                 関谷 勝嗣君                 南野知惠子君                 江田 五月君                 千葉 景子君                 前川 清成君                 松岡  徹君                 浜四津敏子君                 仁比 聡平君                 亀井 郁夫君    国務大臣        法務大臣     杉浦 正健君    副大臣        法務大臣    河野 太郎君    大臣政務官        法務大臣政務官  三ッ林隆志君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  高橋 利文君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 英明君    政府参考人        内閣官房司法制        度改革推進室長  本田 守弘君        法務大臣官房司        法法制部長    倉吉  敬君        法務省民事局長  寺田 逸郎君        法務省刑事局長  大林  宏君        外務省国際法局        長        小松 一郎君        厚生労働大臣官        房審議官     松井 一實君        厚生労働大臣官        房審議官     草野 隆彦君        厚生労働省職業        安定局次長    高橋  満君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○法の適用に関する通則法案内閣提出) ○組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益規制等に関  する法律の一部を改正する法律案内閣提出) ○犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に  関する法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  法の適用に関する通則法案の審査のため、本日の委員会内閣官房司法制度改革推進室長本田守弘君、法務大臣官房司法法制部長倉吉敬君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長大林宏君、外務省国際法局長小松一郎君、厚生労働大臣官房審議官松井一實君、厚生労働大臣官房審議官草野隆彦君及び厚生労働省職業安定局次長高橋満君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 法の適用に関する通則法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 荒井正吾

    荒井正吾君 自由民主党の荒井正吾でございます。御質問をさせていただきますが。  今度の法律は、旧法、法例という二文字法律改正でございますが、二文字法律は四つあるそうでございますが、民法、刑法、商法、法例と。四つのうちの一つがなくなるということで大変寂しいことでございますが、憲法日本国憲法ということで五文字だそうでございます。最近、三文字景観法というのができて、作った人は大変褒められたと。二文字法律というのはなかなかこれからできないというような感じがいたしますが。  ところで、今度の法律名前が法の適用に関する通則ということでございますが、これも若干意味がもう少し分からないところがございます。一般国際私法適用契約に対する適用すべき法律準拠法決めると、国際私法分野法律だと、こう言われておるんですが、なぜ法の適用に関する通則というような大げさな名前を付けたのかなというような気がします。基になる条約ということでローマ条約を国内法化したイギリスの例を法務省の方に示されたんですが、イギリスの法は契約の義務について適用すべき法律というふうにはっきり書いてあるわけでございます。なぜ法の適用に関する通則というようなことを、大げさな名前を付けたのか。適用すべき法律を明確にするという法でございますので、その法はどういうところを適用するかということを不明確な名前で売り出すというのはちょっと趣旨にかなわないというふうに思うんですが、その点について、まずお聞きしたいと思います。
  6. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) 確かに、先生のおっしゃるとおり、一般社会には法例といいますと国際私法適用に関する法律だというふうに認識されているのは間違いないと思います。法例という意味は、元々、法の適用通則を定めたものを意味する言葉なんですが、実態としては、三条以下、国際私法に関する部分がその大部分でございます。  法の適用に関する通則法と、こう法例現代語化したわけですが、いささか大げさじゃないかという認識は先生お持ちのようでございますが、私、正直言って、印象としては大げさかなという感じもしないわけではございません。ただ、現行法法例片仮名文字法律明治時代にできたあれですから、それを現代語化しようという趣旨から改正に取り掛かったということから、法例現代語化するとすれば、法の適用に関する通則法とするのが適切であろうということでこういう名前になったんだというふうに承知をいたしております。  現行法例一条には法律施行時期に関する規定が設けられております。ただし、今の法律はほとんどただし書でやられております。法律施行期日を定めておりますから、実質上これが働いておる法律というのは皆無と言っていい状況ではないかと思います。ただ、慣習法、二条については、これは規定をどこかに置かなきゃいけないわけでして、これは国際私法関連ない、この二つ条は国際私法関係ないものでございます。しかし、いずれも、一条も二条も三条以下も法規範我が国において法として適用される場合を定めたものでございます。  今回の法の適用に関する通則法案におきましても、今まで法例にございました法の適用に関する通則を定めた法律としての基本的性格が維持されております。法例をそのまま残すという考えもないわけではないと思うんですが、二文字法律ということで、ただ一般にはなじみがないと考えられますので、これを国民に分かりやすい現代語に直して法の適用に関する通則法としたものでございます。  以上でございます。
  7. 荒井正吾

    荒井正吾君 ありがとうございます。後の四条以下を読みますと、契約に関する法の適用に関する通則と、こうしてもいいような感じがしたんですが、まあ今からどうこうと言えないような状況でございますが。  ところで、法の適用といったときに、商行為だと強行法規が、国際的な商行為強行法規適用される場合がありますが、例えばアメリカ独禁法が国際的な商取引適用される、それも法の適用だと一般的に読めるんですが、この法律準拠法決め法律はそういうことを扱ってないというようなことをお伺いいたしました。  グローバル化する中で、国際的な商活動、昔、定期船同盟という海運の運賃カルテル国際運賃カルテル仕事をしたことがございますが、アメリカ独禁法あるいは競争法適用域外適用をどのように排除するかということを日本の中あるいはヨーロッパと組んで延々と、もう何年も何年も議論した経緯がございますが、経験がございますが、この日本船社あるいは日本ヨーロッパ船社国際運賃カルテルしたときにアメリカ独禁法域外適用されるというのを排除するということをどこかで書けないものかというように思うわけでございます。それは、ここの強行法規アメリカ強行法規域外適用についてこの法で規定するのかどうかも最初の一条から見るとはっきり分からないと。余り期待しないでこの法律適用考えないかぬということのように思います。  国際的な商活動がどんどん増える中では、各国強行法規も含めて法の適用の在り方、それから抵触調和ということは、法務当局の大きな責任分野ではないかというふうに思うわけでございます。その法務省の立場というのは、そういう法の適用の、円滑な法の適用、法の抵触調和ということについてどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  8. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) 先生がおっしゃった国際的な商取引、今国際化が進んでおりますが、そういうものに対していかなる法が適用されるかという点につきましては、国際的な法適用調和という観点先生指摘ございましたが、そういう観点から、可能な限り適切な準拠法が決定されることが重要であるということは御指摘のとおりでございます。  その一方で、外国独禁法独占禁止法のような公法的な性質を有する法につきましては、その適用は専らその法の適用意思に懸かっております。その国の機関による法の適用意思に懸かっておりますことから、各国私法適用調和を目的とする国際私法改正によってその調和を図ることは難しい面がございます。しかしながら、本法律案におきましても、当該外国法私法規定適用の結果が我が国の公序を害するような場合など一定の場合には、そのような不当な結論を導く外国法適用は排除するといたしておりまして、そのようにして妥当な結論を導き出すことができるものと考えております。  先生のおっしゃった個別の法分野におきまして過剰な管轄とか法の域外適用等によって我が国において問題が生じる場合、先生指摘国際カルテルの問題もそうでございますが、そういうような場合には、その問題の内容に応じて法務省としては関係省庁と協力して適切に対処してまいりたいと考えております。
  9. 荒井正吾

    荒井正吾君 この法の適用に関する通則ということなのでそのような配慮なのかと思って読むと、それは各省の担当でやると。公法、私法というのも余り書いていないもんですからよく分からないと。  しかし、その今のお話だと、日本の公序良俗に反する外国の法は国際的な商取引でも適用されないということならば、最近話題になっております制裁的、懲罰的制裁という非常に法外な罰金を取られるというのがどのように扱われるのか。日本も、日本法律域外適用すると、レシプロシティーで相互域外適用するということを主張したことはないように思うんです。アメリカの一方的な域外適用日本は受け入れてきたということは、これはどこの省の、その域外適用というような大きな法の適用範囲の決着は大きな意味法務省の基本的な責任じゃないかと思うわけなんですが、それぞれの所管省庁で当たれというのもなかなかちょっと難しい面があるんじゃないかというふうに思うところでございます。  さすれば、繰り返しになりますが、法の適用に関する通則というのはやはり大げさじゃないかなというふうに改めて思うわけでございますが、ちょっと大きな問題ですので、時間も限られていますので、是非その問題意識を保留していただきたいというふうにお願い申し上げたいと思います。  具体的な条文でございますが、大事だと言われている七条、八条の法律行為準拠法原則でございますが、先ほど申し上げましたように法律行為と書いてございます。ほかの、基のあれは契約というふうになって、契約法律行為、ちょっと範囲が違うように思うんですけども、わざわざ日本法律契約としないで法律行為というのは誤解を呼ぶんじゃないかという論もあるんですが、この国際的な私法の場で通常契約と言われているような準拠法決め規定をわざわざ法律行為としたというようなこと。  そこから、もう一つはその法七条でございますが、法律行為成立及び効力はとかという、効力というのは普通、あるいはもっと、基だと契約について適用すべき法をどこにするかを決めるというような条約になっておりますが、なぜその法律行為としたのでしょうか。あるいは、七条で成立というのを入れた意味というのはどういうことでしょうか。ちょっと条文中身になりますが、寺田局長に。
  10. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 二つ質問がございまして、まず第一は、法律行為ということを基本的な法律単位として維持して、契約ということにしなかった理由でございます。  現在の法例もそうでございますけれども、大部分契約ではございますけれども、その契約以外に単独行為というものがございます。これは当事者単独意思表示によって効力が生ずるという行為でございまして、これらを併せまして法律行為と通常呼んでいるわけでございます。現在の法律もそうでございますし、この新しい法律の七条もそうでございますが、この単独行為についての準拠法をどうするかということもやはり欠かせてはならないだろうということで、あえて法律行為ということを維持いたしまして、契約だけの規定には変えなかったということでございます。法制審議会でも、この点につきましてはそれをばらばらにするなり、いろんな議論もございましたけれども、やはり今の法律行為という規定でも支障はないという実務の方の御意見等もございまして、これを維持することとしたわけでございます。  国際的には、先ほど荒井委員も御指摘になられましたローマ条約、これはヨーロッパ統一条約でございますけれども、ここでは契約というような単位で物事のルール化を図っているところでございますけれども、他方ヨーロッパ各国においてはそれぞれ単独行為も含めた、あるいは単独行為を類推適用するというような形でルールを置いておりますので、決して日本やり方が極めて異例ということではないということでございます。  それから、第二に、七条の契約成立という決め方をしたのはどういうことかということでございます。  おっしゃるとおり、この法律行為でございますけれども、その法律行為成立効力ということは法律行為について非常に重要な効果でございますので、これについてどう決めるかということをここで論ずるわけでございますが、その成立には、一つ法律行為実質的な成立要件ということがございます。それは、例えばおよそそういう法律行為として成り立つかどうか、それは違法ではないか、あるいはこの法律行為を完成させるにはだれかの許可が要るかどうかというようなことを実質的成立要件として扱うわけでございます。  このほかに、しかし形式的な成立要件というのが一般的に国際私法では問題になりまして、例えば契約においても書面性を要求するというようなことがあるわけでございます。これについては別の扱いをするのが通例でございまして、この新しい通則法案でもそのような区別をしているところでございます。
  11. 荒井正吾

    荒井正吾君 専門じゃない、よく分からないんですが、七条で、その基のローマ条約三条で、一項というので選択の自由という項目の一項がございますが、三文ございまして、その三文のうちの一文をこう訳して、更に法律行為というので契約から法律行為成立効力のうち成立を入れる、そこから選択した法と、当事者選択をするのは法なんだけれども、ここは地を入れてあると、三つちょっと第一文では違うところがあるように思うんですが、更にその二文、三文というのが入ってないんですね。  二文は、契約適用法はその契約によってはっきり表現されなきゃいけないとか、状況によってそのデモンストレートされないかぬという条文があって、これも法制審では議論になったようでございますが、そのような義務的な規定を入れる。それと、契約を、準拠法指定するのに全体で一つなのか、分割してこの部分はほかに行けるかと、分割指定ができるという条文が基の条約にはあるんですが、どうして日本はその一文だけにしたのか。二文、三文、どうせ横を縦にする法律なら全部ちゃんと訳した方がいいんじゃないかというふうに思うんですが、その寺田さんが訳されたのか削除されたのか分かりませんが、これはどういう意味なんでしょうか。
  12. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) これは、基本的に法制審議会でいろいろ御議論をいただいた結果、こういうところに落ち着いたわけでございます。まず、その選択した法律ではなくて選択した地の法律という点でございますけれども、この国際私法におきましては、ある法律関係と密接に関係する地の法律を準拠して法として適用するというのが基本的な考え方でございまして、法律そのもの選択するというよりは、ある法律適用になっているその法域というものを選択するという考えでございますので、我が国においてはそれを表現するために、そういう選択した地の法律という表現ぶりを取っているわけでございます。  二つ目に、明らかに当事者意思が示されるといういわゆる明示原則というのがおっしゃるとおりローマ条約にはございますが、この点についても様々議論はあったわけでございますが、ただ、この準拠法合意についてのみ明示に限定するというようなことは余り適当ではないんではないかという御議論法制審議会の中で結局は多数を占めましたので、今までこの点の、言わば黙示合意というものがやや広過ぎて、それによるゆがみがあるということが指摘されたのはそのとおりでございますけれども、しかし黙示も否定する、全く否定する理由はないんではないかというようなところもあったわけでございます。  それから、三つ目準拠法分割でございますが、これもやはり法制審議会で御議論があったところでございまして、これは現行法解釈としては当然、当事者の方でそれを言わば合意でお決めになるわけでございますから、これを分割してお決めになることも、自分でルール実質的に決めることができる以上はそういうことも決してできないわけではないわけでございます。  ただ、このような分割決めるとなると、一体どういう単位分割するかというようないろんなルールを念頭に置かなきゃなりませんので、結局のところ、今のように分割指定ができるということが解釈上ほぼ確立しているので、それをあえて崩すまでのことはないという御議論で、結局のところは新しい通則法案のように、あえて分割の点についての明文を置かなかったと、こういう経緯がございます。
  13. 荒井正吾

    荒井正吾君 法制審議会で、いつも法制審議会法制審議会言われるんですけれども、法制審議会でも意見分かれていて、一般的な意見を聞いたときも意見分かれていて、しかし条文になるとこんなに分かりにくい条文になるという過程がちょっと分かりにくいように思うんですが、またこれは今回で尽きないですので、機会があればと思いますが。  もう一つ分かりにくい文言が、特徴的な給付という、裸で八条二項で出てきているんですが、基のローマ条約だと、契約者二人とその一方、より契約特徴的な給付を実行する者というような感じの訳なんですが、給付特徴に応じてその給付を実行する当事者が常住する国の法というような書き方にも読めるんですけれども、これ裸で特徴的給付と言われても普通の人はよく分からないと思うんですが、学説を条文化するというのがこの法律仕事じゃなしに、実務の人が分かるような表現をしてほしいというふうに思うんですが、寺田さんの人柄にふさわしくない不親切な表現ではないかというふうに思うんですが、この点について御説明を願いたい。
  14. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 一般的に、国際私法の非常に困難な点は、非常に一般の方に分かりやすく述べるがごとく書くということが一方では分かりやすさの追求、非常にポイントにはなるわけでございますけれども、他方、非常に抽象的なレベルでのありとあらゆる事象を全部拾ってそれをカバーするという必要があるわけでございます。それで、どうしても分かりにくくなる点が一方では避けられない。  そのバランスを取るというのが確かに今、荒井委員がおっしゃったように重要で、ややこの特徴的給付についてはバランスが欠けているんではないかというようなおしかりだとは思いますが、元々この特徴的な給付については、当事者準拠法指定がない場合にその当事者意思を推し量ると申しますか、最も密接な関係がある地の法律というだけではやはり不親切でございますので、それぞれの契約ごとにサービスの提供をする、あるいは物の給付をする、そういう側が対価を払うというよりは、特徴的だというそういう見方に基づきまして、この特徴的給付についてそれを最も密接に関係があるということに結び付けていくわけでございます。それを抽象的に言うがために特徴的な給付という言い方しかなく、ローマ条約も、おっしゃるように特徴的な給付を行うべき当事者というような言い方をしているわけでございます。この新しい通則法案におきましても、特徴的な給付当事者の一方のみが行うときはその給付を行う当事者常居所地法と、こういう表現をしておりますので、基本的にはローマ条約と全く同じ発想でできているわけでございます。  したがいまして、私どもも、この特徴的な給付というのがもう少しこなれていけばお分かりいただけるかなとは思います。当初は非常に違和感を持ってあるいは受け取られるおそれも感じないわけではございませんが、包括的にある種の供給側ということを指し示すには、やはりこういう言葉でなければ現在はなかなか規定しにくいのかなという感じでこういうことにいたしたわけでございます。ローマ条約との差というのは基本的にはないものというふうに御理解をいただければと思います。
  15. 荒井正吾

    荒井正吾君 ローマ条約では特徴的給付と、そういう体言で表現されてないんですね。私が言うのもなんですけれども、その訳は特徴的給付と訳していいのかなとちょっと思うんですけれども、これちょっと論争する場じゃないので、しかも余り中身もないので遠慮をいたしますが。  それと、その特徴的給付とでき上がったような言葉でするのがどうもおかしいというのと、それと各国法律アメリカ抵触法スイス国際私法、この参考資料にありますが、もう少し、参考事例法律に書いてあるんですね、一つの立法のやり方かと思いますが、このようなたぐいの法律は、民間の活動されている人に親切に、契約でどの法律に準拠するか言わない場合はこのように推定されますよと、もう少し親切に指し示すのが法の基本的な精神じゃないかなというふうに思って、このようなちょっと慣れない質問をさせていただいた次第でございます。  最後でございますが、基の法例では行為地法によるとだけ書いてあって、行為地法によるというのは密接関連地の法による特徴的給付常住地によると、こうだけなって、それだけ変わっただけのようにも思うんですけれども。あいまいさは変わらないんじゃないかという印象が受けるんですが、大胆に変えたというほどの改正かどうかという今の段階では疑問に持つんですが、最後に、この改正意味というのをもう少し、もう一回明確に御説明願えたら有り難いと思います。
  16. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) 現行法例規定一般的で抽象的なものとなっております。監獄法もその例だと思いますけれども、従来、したがいまして、解釈を柔軟に行って運用をしてまいりました。  総じて言えば、それぞれの事案に適した適正な法の適用が確保されてきたものと考えられますけれども、しかし一方におきまして、柔軟な解釈による運用ということが主であったことから、準拠法に関する予見可能性について問題があるという指摘もございましたし、また解釈によっては賄うことが難しい不都合も次第に明らかになってまいりました。  例えば、当事者による選択がない場合における法律行為成立及び効力、例えばインターネットによる取引がその典型でございますが、現行法例が一律に行為地法準拠法としているため、そのような場合には当事者黙示意思が過度に探求されざるを得ないと、そんな批判がございました。  また、消費者契約及び労働契約準拠法につきましては、現行法例には消費者及び労働者保護に配慮した特則がございませんでした。  また、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力につきまして、現行法例には、原因事実の発生地法によるという抽象的な規定しか存在しませんでした。  また、債権譲渡の債務者その他の第三者に対する効力につきましては、現行法例は債務者の住所地法によるとしておりまして、債務者が外国にいたり、転々としたりしたような場合に、現在、債権の流動化等の金融実務が行われているわけでありますが、その阻害要因になっているといったことでございます。  今回の法改正によりまして、これらの問題点はいずれも改善されるものと考えております。
  17. 荒井正吾

    荒井正吾君 ありがとうございました。  以上、終わります。
  18. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 おはようございます。  先日、この通則法に絡む参考人の質疑が行われました。私もいろいろと改めて勉強させていただきましたが、その資料の中で非常に気になる言葉がございまして、日本法の競争力が落ちていると、そういう議論が昨今一部の専門家の間ではにぎわっているというお話がございました。  確かに、百年前、明治維新、そして明治の新国家、それは国家の建設であると同時に、新しい法制度の建設ということでもあったわけでございまして、いち早くアジアの諸国の中では日本が西洋の近代法制を取り入れたと、その後、アジアの諸外国諸国については、随分日本法に対する、参考にしながら自国の法制度を整える等のそういう観点があったような感じがしますけれども、どうも昨今、その勢いが非常に、日本法に対する魅力が低下をしたのでしょうか、ちょっと勢いが落ちているんではないのかなと、それが日本法の競争力の低下ということのようでございます。  実は、先年、私は女房とともにイギリスを旅行いたしました。スコットランド地方からウェールズの方に移動してまいりました。湖水地方を旅行するということであったんですけれども、ちょうどそのバスが止まったところがグレトナ・グリーンというところでございました。これは、国際私法を学ぶ人間にとってみればグレトナ・グリーンというのは大変なシンボリックな地名でございまして、ああ、この湖水地方でこういうところを旅行できたんだなんということで、私も非常に興味を感じながらそこに行ってみましたら、私の印象と随分違っていまして、グレトナ・グリーンは恋人たちの非常にシンボリックなそういう場所なんですね。  それはどういうことかといいますと、当時、ウェールズとスコットランド、法体制が違うわけです、婚姻法が違う。だから、ウェールズにいた恋人たちはウェールズでは結婚できない、だけれどもスコットランドに入れば結婚できるということで、スコットランドに追っ手を振り払うようにして飛び込んでいってそこで結婚式を挙げたというのがあのグレトナ・グリーンでございまして、正にイギリスという一つの国内の中でも法体制が違う、そういう中で様々な悲喜こもごもの人間ドラマがあると。  正にそういう意味では、イギリスもそうであり、またアメリカでもドイツでも各連邦ごとに法体制が違うというそういう状況の中で、世界の多くの国は一つの国の中に異なる法体制を必ず抱えているような国が結構一般的にありまして、そこをどう調整するのかということが、言うならば法の抵触に関する通則をどう作るのかという非常に重要な問題でございます。  ところが、日本はどうかといいますと、海に囲まれていますから、国境というようなものの観念が非常にある意味では薄いんじゃないのか。国境を越えれば別の法体制になるという、そういう観念が我々には基本的に薄くて、一つ法律を作ってしまうと、その法律がもう一様に適用されるということがまあ半ば常識的になってしまう。そこから法の抵触の問題についての一般的な国民の関心が低いということに何か結び付いていて、それが先ほどの競争力の低下ということに結び付いているのではないのかなと、こういうふうな印象を持つわけでございます。  私は、そういう意味で、まず冒頭に、今回の質問大臣の御認識を問いたいのは、そういう意味で、海ということで自然に囲まれていて、法の抵触というようなものを余り考えずに生きられる我々日本の幸せな状況というようなものが、現在はある意味で、もうインターネット、国境がもう観念としてどんどんどんどん意識が低くなっていくような、こういう状況とかなりずれを、ほかの国と比べると日本の方がより以上にそのずれを生じさせているということが背景にあって、我が国法律についてのブラッシュアップのエネルギーというようなものがなかなか出てこないんじゃないのかなと。その結果、新しい世界の状況日本法律というようなものがどんどんどんどんいろんな分野でずれてまいりまして、結果としてどうも諸外国から引用されるというふうな、そういう契機が非常に薄らいできてしまっているのではないのか、一種そういう危機感を持つのでありますけれども、大臣の御認識はどうでございましょうか。
  19. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) 法務省の中で法整備の支援を担当しているものですから、大臣に代わりましてお答えをさせていただきたいと思います。  法律の競争力という考え方は非常に大事なんだと思います。日本法律に基づいたような法律各国で作ってくれることができれば、それだけ日本のプレゼンス、ソフトパワーというものが世界に広がるわけでありまして、法務省も少し法律というものをソフトパワーとして位置付けて、法整備支援に力をしっかり入れてまいりたいというふうに思っております。  確かに、日本法律の多くは明治時代に作られたものでございますが、いろいろな時代、あるいは経済社会状況の変化に応じていろいろと修正をしてまいりました。若干一時的に修正がたまったこともありますが、この司法改革の中でいろいろと努力をさせていただいたと思っております。  そういう意味で、競争力が低下しているかといえば、例えば民事の分野では倒産法制あるいは会社法の整備というのをやってまいりました。会社法につきましては中国から、中国が大分興味を持っていただきましてスタディーの引き合いも来ておりますし、倒産法制に関しましてはアジアからこの倒産法制をいろいろ参考にしたいということで、いろいろな支援もさせていただいております。そういう意味では、依然として日本法律は競争力があるのではないかというふうに思っております。特に、今アジアの中では日本と中国がよく引き合いに出されるわけでありますが、中国の今の体制下の法律より日本法律の方が、それ以外のアジアの国々にとってみれば参考にするべきものである、そういうふうに思われていると思っております。  ただ、だんだんグローバル化が進みまして英語が標準言語になりつつございます。そういう意味で、若干政府内で法律を英語に訳すときの語句がばらばらであったりということがございました。昨今それをしっかり統一をしていこうということになってまいりましたので、外国に向けての発信力を落とすことなく、しっかりやってまいりたいと思っております。
  20. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 正に答弁のとおりであると思います。非常に魅力的な法体系、あるいは法律、あるいは制度を作っていくということは、今ソフトパワーというお言葉がありましたけれども、私も全くそのとおりだと思いまして、昨今やっぱりどうも国際環境がかなり、インターネット、IT革命によってどんどんどんどん変わっていく、国境観念がどんどん低下をしていく、グローバル化、そういう状況の中で、どうもいろんなところで我が国法律というようなものが老朽化しつつあるというようなものが昨今があっと目立っているような状況だと思うんですね。  御案内のとおり、もう昨年は会社法の改正がございましたし、それから今度の国会でもこの通則法そして信託法が出てまいります。信託も、やっぱり信託概念が非常に新しい経済状況の中で対応できなくなりつつあるということの中でのブラッシュアップをしていくと。こういうふうな状況でありますんで、私は、この今の激しい国際環境の変化あるいは急激なイノベーション、それにいかに法制度をきちんとマッチさせるような体制を整えていくのかという非常に重要な観点だと思っておりますんで、是非とも、今後ともしっかりとやっていただきたいなと思います。  そういう中で、一点気になるのは、実はこういう法制度あるいはルールというようなものをしっかりと、言うならば自分の国の影響力を高めていこうという、そういうことでかなり意図的に、戦略的に行っている国があるんではないのかなと私は思っております。それが実はアメリカなんではないのかなと思っております。  昨今話題になっているあの「拒否できない日本」というその本を引き合いに出しながら、この前の本会議でも私は、決算ということでありましたけれども、質問をさせていただきました。例えば、法律という形での質問から若干離れるかもしれませんけれども、例えば会計基準とか、あるいは言うならば公認会計士やら税理士の資格とか、場合によっては、今姉歯で問題になっておりますけれども、いわゆる建築士の資格とかですね、そういうルールとかシステムの部分でどんどんどんどんかなり意図的にアメリカナイズを各国に輸出をしつつあるんではないのかな。  実は、中国も随分そういう意味ではアメリカナイズされているような傾向が出てるんではないのかなと思うんですけれども、その辺についての、杉浦大臣も官房副長官としていろいろなところにお回りになりましていろんな方のお話も聞いたと思いますんで、どうでしょうかね、率直な御感想をちょっと聞かせていただければ大変いい議論ができるんではないのかなと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  21. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) アメリカアメリカの法制をそんなに押し付けているという印象は受けません。受けませんが、しかし、例えば取引、金融にしても何にしても、もう国境を越えていますですよね。もうどんどん、これは途上国であろうと先進国だろうともう関係なく国境を越えて進み始めておるわけです。会社にしても国境を越えております。国境を越えた企業がどんどん誕生しておる。  そういう客観状況といいますか、グローバリゼーションという言葉が、一語で言うとそうなるかもしれませんが、なる以上、例えば会社の規律にしても、ドイツと日本と違う場合に、その日独の合弁会社ができた場合にどうなるかとかいうことが起こってまいります。一事が万事そうだと思うんです。  その場合に、国際ルールとしてどういうルールを採用すべきかという問題が起こると思うんですね。それぞれの国にその国の歴史と伝統文化に沿った法制があるわけでして、独自のものがございます。これはもう国それぞれ千差万別と言っていいと思うんですが、そういう国際的な問題に対処する場合には、場合によってはアメリカのものを採用するとか、場合によってはEUのものを採用するとか、その国際基準というのをどこに求めて、それを要するにみんな守ってもらわないと困りますから、ということになって様々な問題が起こっておると思います。  この法律の、法例現代語訳にいたしましても様々な改定を加えておりますけれども、大きな意味でいうとそういう国際的な流れに沿う内容にしなきゃいかぬということが一つのモメンタムになっているというふうに私は理解いたしております。
  22. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 国際的な流れに沿うという形、私もそのとおりだと思います。しかし、その流れをキャッチするアンテナをどの程度張り巡らしているか、あるいはそのアンテナの中でキャッチされた情報をとらまえて、それを直ちにこの法制度の中で反映をさせるような、そういう具体的な動きを出していくのかというと、やっぱりスタッフの問題に私は行き着くんではないのかなと、こういうふうに思っております。  どうも、聞いてみますと、この法例改正、三年越しの話でございましたが、なかなか少ないスタッフをほかから応援お願いをしたりしてある程度増やして、ようやく今日に駆け付けた等の話を聞くんですけれども、やはり先ほど話に出た会社法でも信託法でも、何となく変えなきゃなんないなと意識しながらも、どうも具体的に法改正の結果が出てくるのに時間が掛かり過ぎるような法務省の人的な体制の言うならば貧弱さというようなものが背景にあるんではないのかな、私はこれは極めて重要な問題だと思います。  常にそういう海外の変化をキャッチできるような、情報をどういうふうに取って、そしてその情報を受けてどういうふうな新しい仕組みを提案をしていくのかと、このための恒常的な常設的な取組を法務省の中でやっぱりしっかりと位置付けていく必要があるんではないのかなと思うんですけども、その現状あるいは今後の方針ということについて大臣のお考え聞かせていただければと思います。
  23. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) 御指摘のとおり、経済状況の変化あるいは国際的な環境の変化に対応して速やかに必要な法律改正をやっていかなければならないというふうに思っております。そういう意味では、引き続き必要な体制を充実強化してまいりたいと思っております。  ただ、時々によってテーマが変わります。今度のこの法例改正も外部の専門家の皆さんのお力をおかりをしてやったわけでございますので、かちっと固めたものを持っているのがいいのか、必要に応じていろいろなところの力をおかりをしながらやるのか、そこは多少議論があるところだと思いますが、いずれにいたしましても、世界の先端を走る、法律をソフトパワーとして使えるぐらいの体制をしっかり確保して頑張ってまいりたいと思います。
  24. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 重要な点なので若干突っ込んで質問をさせていただければ、先ほどアンテナの話をいたしましたけども、海外の法制変化を責任を持って把握をしつつ提案をしていくというようなセクションは、しっかりと決まったものがあるんでしょうか、法務省には。
  25. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) これは、法務省は刑事畑と民事畑とございますので、私の方から全般的に申し上げるのはやや差し出がましいというふうに思いますが、一般的に今は非常に国際交流が盛んでございます。この国際私法はもちろん国際的な法律でございますので専門のスタッフを置いておりまして、かつその専門の人たちが集まるようなフォーラムといたしましてオランダのハーグに国際私法会議でございますが、そういう常設の機関が置かれておりまして、私どももそこに専門のスタッフを派遣しているわけでございます、代表といたしまして。  そういう体制を取っているわけでございますが、会社法でございますとかその他の経済関係の立法あるいは身分法、それぞれにいろいろな問題はございますが、今大変に国際的な会議も盛んでございますので、そういったところでの情報交換というのを主として活用をいたしているところでございます。もちろん、補充的には外務省の方で様々な調査に御協力をいただくということにはなってございます。  法務省全体といたしましても、実は法整備に支援を行いました過程でこのような外国法の言わば情報の受入れと、逆に日本法の情報の発信というのが非常に密接に結び付くべきものであるという認識を深めましたので、国際民商事法センターというような組織も活用いたしまして、様々なセミナーも行い、かつ専門家同士の交流も行っているところでございます。
  26. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) アンテナにつきましては今答弁のあったとおりでございますが、これまで法整備の支援につきましては、例えばインドシナを中心にかなり積極的にやってまいりました。ただ、今まではどちらかというと、要請があればそれにこたえるという感じでございましたが、少しソフトパワーとして日本も戦略的にどうやっていったらいいかということの研究を、法務省の中でも少し専門家のお知恵をおかりをして、これからどういうやり方をしていったらいいのかという検討を始めたところでございます。  ただ、この法律は、こっちからこれをやれと言って押し付けるわけにはいきません。あくまでも向こうが、それはいいねと言ってくれないといけないわけですから、日本が戦略を立ててやろうと思っても、それは相手がそれがいいと思っていただかなければいけないわけで、難しい面は多々ありますが、少し情報の発信という面では戦略的にこれからやっていきたいというふうに思っております。
  27. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 是非とも、常設の機関等をつくってしっかりと取組をしていくということで御対応をお願いしたいなと思う次第であります。  次に、先ほどの参考人の中で、経済界からお見えになりました、三菱商事でしたか、の理事をやっていらっしゃる大村多聞さん、かなり突っ込んだお話をいろいろ聞かせていただきまして、非常に面白かったんですけれども、その中で、若干表現はちょっと極端かなという感じもしたんですけれども、海外活動をする大企業はもう準拠法について合意があるのは当然であって、今回の改正合意がない中小企業にのみニーズがあるんだみたいな、そのような、ある意味では明確な御認識を示されておるんですけれども、この指摘について大臣はどう思われますか。
  28. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) 三菱商事のような大企業に限らず、国際取引をされる方々はおおむね準拠法について合意をされているのが通常であるということは承知しております。それは、国際的な民事法上の法律関係が生じた場合には必ず準拠法の決定という問題が起こる、これはもう当然のことなんですが、そういう現実が一方にあり、また国際的な私法秩序においても、我が国においては本法律案七条で当事者の決定が優先すると、よるということを原則をうたっておるわけでして、そういう法体系があるからこそ、各国の、三菱商事に限らず準拠法合意するというふうになさっているんだと思うんです。  ただ、合意さえあればすべていいかというと、そうでもございませんで、例えば本法律案九条、法律行為後の、法律行為、いったん決めたその合意を後で変更する場合、必ずしも第三者との関係ではその合意のとおりいくわけではないよと、無条件に準拠法合意ができるわけでないよということもございますし、また、不法行為等の法定債権、契約でないものについては、当事者間の合意によってはあらかじめ準拠法が決定できないものもございますから、三菱商事さんのように商行為商取引を主とする方については言えても、そういう方々もその他の問題については起こり得るということも御認識いただかなきゃいけないと思いますし、また、私が知っている限り、中小企業でも最近もう国際取引をどんどんやっておられます。そういう方々も準拠法については非常にセンシティブになっておられるということも承知をしております。  したがって、ともかく国際私法というのは、国際的に活動する企業にとってはそれを適用を念頭に置いて活動していただくことが必要不可欠な分野だと申してもよろしいんじゃないでしょうか。
  29. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 最高裁判所の民事局長さんもお見えでございますので、先ほどの参考人のお言葉から演繹をしてまいりますと、我が国の裁判あるいは判決の中で法例が使われているケースというのはそんなにないんではないのかなというふうな想像もできるわけでございます。  また、参議院のいただいた参考資料から見ますと、渉外家事事件についての統計例はあるようなんですが、その他の民事とか商事について、法例絡みで統計資料が手元には伝わってこないということで統計は取られてないのかなという感じもいたすんですが、実感としてはどうなんでしょうか。法例というのは日本の裁判例ではそれほど使われない法律なんでしょうか。その辺について御認識聞かせていただければなと思います。
  30. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) お答えいたします。  法例、これは非常に重要な法律でございまして、特に最近、外国企業、外国人と日本人との商取引あるいは外国人と日本人との婚姻、こういったことが非常に多く行われておりまして、それがうまくいっているときはいいんですが、破綻したりトラブルが起きたときに、一体まず日本の裁判所に管轄があるのかと。これは今回の法の適用に関する通則法より一歩手前の国際的な裁判管轄の問題でございますが、日本の裁判所に管轄があるのかどうか、裁判権があるのかどうかということがまず争われることがございます。  次に、日本の裁判所に管轄があるという前提で審理するときに、その契約について、あるいはその離婚についてどの国の法律適用されるのか。これが法例の、現行法でいう法例、今度の新法の適用が出てくる場面でございますけれども、実際、私東京地裁で勤務したりしておりますけれども、そのときの感覚からいいますと、先ほど大臣の方からも答弁がございましたように、多くのケースは、契約の場合は多くのケースは当事者間で準拠法についての合意がございまして、法例七条、新しい法律でもやはり七条でございますが、準拠法についての当事者選択がされればそれに従う、それによって準拠法は定まるというのが大きなルールでございまして、それで大体決着が付く。  ただ、不法行為のような場合でございますと、例えば不法就労のパキスタンの人が日本の会社で働いていて労災事故に遭ったというような場合、これも準拠法の問題としてはいずれも日本法が適用されるということは争いがございませんでして、問題は、損害の賠償の額をどうするかと。日本法で計算、日本法でずっと滞在する場合を前提にするのか、あるいは数年後にパキスタンに帰ってそこで働くことを前提にするのかと。そういう賠償額の関係で問題になることがございますけれども、準拠法関係ではそれほど問題になることはございません。  ただ、相続関係、相続絡みで韓国法が適用される場合と日本法が適用される場合と額が違ってくることがございまして、それが争いになるというケースはございまして、特に人事訴訟の関係では、これは当事者選択ということが、準拠法選択ということが認められておりませんので、これはきちんと法例の定めるルールに従ってどうなるかということを裁判所が決めなければいけませんので、その意味で家事審判の方は外国人が当事者である場合の統計を取っている、民事の場合は取っていないということでございます。
  31. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 これは質問通告にはないんですけれども、前回の参考人質疑のときで谷川議員も質問の中で触れられておりました。  世界の常識は日本の非常識という言葉がありますけれども、私は、一つの国の中で法律体制が違う、そういう体制というのは、一種の法の世界ではある意味で常識なんでしょうね。したがって、そこから抵触法というようなものが出てくる、その異なる法体制の中ではどこを準拠法にするのかということはいつも本当は意識しながらいなければならないのに、どうもこの国ではそういう意識が極めて低いというのは、ある意味でこれからのグローバルの時代のリーガルセンスを育てていくということでは極めて問題のポイントなんではないのかなと思うんです。  そういう観点に立って、私はちょっとおかしいなと思うのは、司法試験の科目として、新試験では復活をしたというお話もございますけれども、いったん国際私法を外したというふうなことで、どうも行政やらあるいは司法試験のそういうものの中では国際私法の重要度というようなものの認識が揺らいでいるんではないのかなと。むしろこれから強めていかなければならないのに、何となくその辺の意識が薄らいでいるんではないのかなという、そういう心配をするんですけれども、杉浦大臣もあるいは民事局長もお二人とも司法試験お受けになったろうと思いますので、そんな経験も踏まえて、司法試験と国際私法の在り方についての御両者の意見をちょっと聞かせていただければなと思うんですけれども。
  32. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) 法的といいますか、中身については局長に答えてもらいますが、国際私法、私、私法を取っておりませんけれども、選択で、取りませんでしたが、あれ、試験問題、出しにくいんじゃないですかね。試験問題としては余り適切じゃないんじゃないかと。勉強すればいいわけで、だから法科大学院でもっとしっかりと教えるということが大事だと思いますけれども、試験としてはいかがでしょうかね。  局長の方から詳しく。
  33. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 感想ということでございますので、やや筋道立った話にはならないわけでございますけれども、元々、国際私法という科目自体は大学でも一番最終年度に教えられるのが通例でございまして、しかも、ここの御審議でももう既に出てきておりますけれども、ありとあらゆる法律関係というものを一応頭の中に置いて、その上で、しかし、それを適用するに際してどういう問題があるかということを論ずるわけでございますので非常に高度な議論になるわけでございますし、かつ、学者の先生の御議論を伺っていましても大変に入り組んだ議論になるわけでございます。したがいまして、こんなことを申してはなんですけれども、受験生の立場からいいますと、どうしても敬遠しがちな側面が一つはございます。  新しい今度の法科大学院を中核とする法曹教育における司法試験というのは、より実務に即した法科大学院における教育を前提として作成するということになっておりまして、そこでは基本的には法科大学院でどういう科目が教えられるかということを前提に、法務省の多部局を中心として科目を選定して司法試験委員会で御確認になったということになっておりまして、そこでは国際私法という科目はございませんが、国際法の関係で私的な法律関係というのが一部門を成しています。ありていに申し上げますと、これは国際私法にいわゆる国際取引法その他実質法を加えたものでございます。  これは、今までの国際私法議論というのはどうしても非常に学究的な議論になりまして、試験問題としては頭の体操みたいなところがあるわけでございますが、むしろ実務ではそれを現実的な題材に即して応用的に理解しなきゃなりませんので、そういう応用の能力を試すという意味では非常にいい問題もできるかなということで恐らく採用されるんだろうと思います。  ただ、現実にはなかなか、おっしゃるとおり、今大臣からも申し上げたとおり、問題がつくりにくい面もあるいは若干あるのかなという感じはいたしておりまして、受験生の方もそれほど多くないようにも聞いておりますけれども、しかし今後は、やはり実務の上では欠かせない素養ということにはなるんだろうと思いますので、その重要性はやがて認識されていくんだろうと私も期待をしているところでございます。
  34. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者高橋利文君) 私自身も国際私法は授業は受けましたけれども試験科目には取らなかったわけでございまして、やはり今法務省の民事局長からもおっしゃったようにかなり高度なもので、当時ちょっと勉強が足りなかったから受けなかったんだと思いますが、今後やはりいろんな商取引、それから国際的な婚姻だとか増えてきますと、この国際私法、法の適用に関する通則法の意義というのは非常に重要なものになってきますので、そこら辺を踏まえまして関係の方たちで議論をしていただいて、これは科目に採用する必要があるかどうかもまた将来検討されていくのではないかなという感想は持っております。
  35. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 同じくこの前の大村参考人でもう一つ気になったのは米国の話でございまして、過剰訴訟はここでも再三議論のあるところなんですが、この前の参考人のお言葉の中で極めて私にとっては強烈な印象を残したのは、米国の過剰管轄問題あるいは米国の過剰域外適用問題、こういう言葉がぽんと出てきたことでございます。米国は管轄を過剰に、国外でも自らの米国裁判所の管轄が持ち得るというふうな、そういう法体制になっているのかどうか、現状はどうか、あるいは過剰域外適用というふうな実態があるのかどうか等の質問をまずさせていただいた上で、時間もなくなってまいりました、まだたくさんあるものですから、これに対するそれぞれの対応策についてどのようにお考えになっているのかお聞かせいただければと思います。
  36. 河野太郎

    ○副大臣(河野太郎君) アメリカ域外適用に関しましては、外国企業が外国で行った行為に対して反トラスト法を適用した、そういう例があるというふうに承知をしております。  それから過剰管轄でございますが、例えばカリフォルニアだったと思いますけれども、短時間でもそこへ滞在をした人に法廷が、失礼、訴状の送達をその州の中に滞在をしたときに送達することが認められて、それに基づいて管轄権を発生させているというのがカリフォルニアだったと思います。  それから、外国の企業が支店や営業所などを有していなくとも営業活動をやった場合に対して、外国企業に対する訴えについてその州の裁判所に管轄を認めた、ニューヨークだったかと思いますが、ちょっとそこは自信がありませんが、そういう州法が存在しているということでございます。  そういうことにつきまして、例えば域外適用に関してはその通則法の二十二条の特別留保条項あるいは四十二条の公序に関する条項によりその適用を排除することができると思っておりますし、過剰管轄につきまして命じられた判決につきましては民事訴訟法百十八条、民事執行法第二十四条に基づいてこれを許さないとする対応を取ることができるというふうに考えております。  また、それ以外の個別の法分野における過剰な域外適用、管轄につきましては、関係省庁としっかり連携をしてまいりたいと考えております。
  37. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 今も御答弁の中に出てまいりましたけれども、いわゆる特別留保条項でございまして、今回の法改正に当たっては各界の意見書が出ているわけでございますが、経団連と日弁連の間で明瞭に食い違いがあったのがこの二十二条一項の話でございます。これはもうそこにあるとおり、当該外国法適用すべき事実が日本法によれば不法とならないときは外国法によって不法行為であっても不法行為としないよと、こういうふうな中身でございまして、これについては過去の、改正前の法例にも同じようなものがございました。それを存続させるかどうかについては、諸外国ではこういう例はないと、累積適用日本法で不法行為にならない場合は他国で不法行為になったとしてもこれを適用しないというのは余りに国家エゴが強過ぎるんではないのかと、これを取るべきだと、こういう意見も一方でございます。しかし、大村参考人の指摘によれば、今のこの指摘は米国の過剰管轄あるいは域外適用と実は絡むわけでございますけれども、米国が様々な形で域外適用をされてくると、それに対するガードを持ってなければならない。そのガードの意味として、我が国で、例えば米国を想定すると、米国では不法行為とされても我が国で不法行為とならない場合はそれは適用しないでいいんだという、そういう形になるわけでございまして、そういう観点から、日本の企業を守るという観点でも、これはある意味で想定をされているのは米国のいわゆる域外適用に対抗するという、そういう観点もあってこの規定は是非とも残していただきたいと、これが経済界の意見であったと、こういうふうなお話でございます。  そこで、現状は一体どうなっているのか、そしてどのような御判断をなさった上でこのいわゆる累積適用の問題を、従前どおり日本法で不法行為とならない場合は不法行為としないと、こういうことで継続をさせたのか、その辺について、それを存続させた理由、この二点を聞かせいただければと思います。
  38. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) ただいま簗瀬議員は、米国の域外適用の問題からこの特別留保条項をごらんになって、いろいろ御議論があるだろうという御提示をされたわけでございますが、もちろんアメリカの法の域外適用もこの問題に関係はないわけではございません。  しかし、この特別留保条項は特にアメリカ域外適用を念頭に置いて作ったものではございません。むしろ、やや細かくなりますけれども、アメリカ域外適用は、基本的に公法分野で立法管轄権を域外の事象にまでカバーするような規定の仕方をしているというところに非常に大きな問題点があり、かつ、その結果起こり得ることに対しまして行政的な管轄権を及ぼすというところに非常に特徴があるわけでございます。  これに対しまして、ここで扱います問題は、基本的に法律の強行性があるという意味では共通の問題ではございまして、域外適用で問題になる法律の一部は確かにここで適用が問題になるわけでございますけれども、基本的にこれは私法分野の話でございまして、それが不法行為の基準としての不法性というものをどう判断するか、その際の手掛かりになるかどうかということを論じているわけでございます。  具体的に申し上げますと、この法例の十一条の二項が現実に適用された例というのは、これは最高裁では一例最近でございまして、平成十四年の九月二十六日の最高裁判決でございますが、ここではアメリカの特許権の侵害というものが問題になりまして、それを積極的に誘導する行為日本で行われたということを理由とする損害賠償請求がございます。  その際に、今の法律の、法例の十一条の一項では、原因たる事実の発生地が基本的には連結点でございますので、それでこの権利侵害という結果はどこで生じたかということをその判決では問題にしたわけでございますけれども、それはアメリカであるということでございまして、したがいましてアメリカ法が適用になるだろうと。そこで、アメリカの特許法に関連する損害賠償責任が肯定し得る、そういう状況に置かれている。  これに対しまして、この十一条二項があるために我が国法律で累積的に適用されるというわけでございますが、そういたしますと、我が国の法令では特許権侵害を登録された国の領域外において積極的に誘導するという行為は不法行為にはならないという判断がされまして、それで結果的にこの成立要件は、不法行為成立要件が具備されないという判断があって、損害賠償請求は結局のところ理由はないということで排除された、こういう例でございます。  ここではやはり、その域外適用とは別の問題といたしまして、その不法行為の根拠というものがどういうところにあるのか、その不法性というものがやはり日本においても認められない限り不法行為は認められないということの非常に重要なポイントが示されているわけでございまして、一部にはこういう問題は公序で排除できるんではないかという御議論も確かにございます。つまり、一般的に公の秩序に反する規定というのの適用というのは避けるという一般的な、いわゆる一般的な条項がございますので、それで十分ではないかという御議論がございます。法制審議会のこの特別留保条項を残すかどうかという御議論の中にも、そういう議論も確かにございました。  しかしながら、そのすべてのこのような不法性を持つもの、その根拠なるものがすべてその公序に引っ掛かるというわけではございません。これは基本的に外国で不法行為ということはあり得るわけなんで、それをすべて日本で不法行為がないから直ちにそれが日本の公序に反するというわけではさすがにないわけでございます。  しかし、その不法行為のこの条項というのは、やはりそういう公序には至らないまでも、やはり国民の行為というものを規制するという面においては重要だという判断で、法制審議会ではやはり結論といたしましてこの特別留保条項を残すと。櫻田参考人も部会長でいらしたわけでございますが、櫻田先生も当分の間というような留保は示されておられましたけども、残すという判断になったわけでございます。
  39. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 時間がないのでもうちょっと短く御答弁していただきたかったんですけども、次からの答弁は極めて端的にお答えいただければと思います。  十一条、消費者契約で、言うならば不動文字で例えば準拠法指定をされてあったとしても消費者のサイドの常居所地法に持ってこれると、こういうふうな扱いをして消費者保護の思想が出てきたということは私は大変評価をしたいと思います。その上で、十一条一項の適用上、やっぱり法律言葉なんでなかなか、具体的にどんなことを考えているのかなということが分かりづらいのがあるんで、ちょっと聞かせていただきたいと。  まず、十一条一項なんですけども、消費者がその常居所地法の特定の強行規定適用すべき旨の意思を事業者に対し表示したときはとなっているんですけども、この表示というのは具体的にどのようなことを意味しているのか。強行規定っていうことを知らないような人もあるわけですよね。まあ法律の認識は問わないのかもしれないけども、その辺の表示という言葉の具体的な中身やら表示の仕方について。それからその次に、表示したときはとなっていますけれども、この「ときは、」というようなものはいわゆる契約の事前、事後についてどういうふうな考え方をしたらいいのか。この二点について見解を聞きたい。
  40. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 端的に申し上げますと、この表示というのは意思表示でございます。したがいまして、私はそういうような適用をしてほしいという意思を示されればそれで結構でございまして、それから「ときは、」は、平仮名で書いてございますのは時点ということを意味しませんので、これはそういうことを事前であろうが事後であろうが、失礼、そのときであろうが、それ以後、その裁判になってからでも結構でございますので、そういう意思表示をされればそれで足りるということでございます。
  41. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 そういう法律をという、そういう法律というものを素人は知らないわけですよね。だから、その点、具体的にどのような表示の仕方すればいいのか。そういう法律って今おっしゃいましたけども、どの程度の意思だったら表示と認められるんですか。
  42. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 例えば、本来の準拠法日本法ではないケースで、しかし日本法の例えば消費者の契約法でございますとか、あるいは割賦販売法等における例えばクーリングオフの規定適用したいということであれば、私は割賦販売法のクーリングオフをしますと、こう言っていただければ結構でございます。
  43. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 次に、六項がございまして、先ほどの原則として消費者保護があったわけでございますけど、その保護が破られる場合があるわけです。それを六項に今定めてありまして、その一号に、よく能動的な消費者というふうな言葉がありまして、消費者が言うならば事業者のところに出向いていったというふうなことについて、そういう例があるならば、いわゆる事業所の常居所地法でもいいよというふうな、こういうようなことになるだろうと思うんですけれども、ここに、赴いてというのと、逆にそれが言えなくなる場合は事業者側から勧誘をしたという、その赴いてと勧誘という言葉が入っているんですけれども、具体的に、赴いて、勧誘と、中身がどうもはっきりとしているようなはっきりとしていないような感じなんですけど、勧誘というのは例えばどの程度積極性が示されればいいのかとか、その辺の解釈をちょっと明らかにしていただければと思います。
  44. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) まず六項一号の赴いてでございますが、これは先ほどおっしゃいました能動的消費者ということを想定しておるわけでございますけど、この赴いては、具体的にはその場所に自分で行くと、移動するという意味であります。典型的には、パリのお店に日本の観光客が行かれる、そこでお買いになるということが想定されるわけでございます。  次に、勧誘でございますが、これはおよそ物をお売りになる方は何らかの意味では勧誘をされているわけでございまして、広告というのもあるわけでございますが、そういう一般的なことを意味しているわけではございませんで、具体的、積極的な働き掛けを個別の契約に向けてするということでございます。例えばダイレクトメールを送る、あるいは東京の有名なブランド品のお店で、パリのお店で行かれたらどうですかというような働き掛けをされる、そういうことを勧誘とここで申し上げているわけでございます。
  45. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 続いて、三号、四号なんですけれども、消費者契約の締結の当時、事業者が、消費者の常居所を知らず、かつ、知らなかったことについて相当の理由があるときというのが三号。それから四号は、事業者が、その相手方が消費者でないと誤認し、かつ、誤認したことについて相当の理由があるときというようなことなんですけれども、例えば事業者が消費者の常居所を知らずなんということは当たり前のことなんではないのかなという、そういうことも考えられるんですが、この三号、四号というのは具体的にどんなことを想定をなさっているんでしょうか。
  46. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) まず三号でございますが、これは知らないというのは、むしろ普通は知らないとおっしゃるのはそのとおりでございます。  ただ、先ほども申し上げたように、例えば勧誘行為があって、その人はどこから来た人だということを知っている場合ももちろんあるわけでございますけど、まあしかし飛び込みのお客様は原則としては知らないわけでございます。  しかし、ここで言う、知らず、かつ、知らないことについて相当の理由があると申しますのは、例えば消費者の方であえて自分の常居所をパリのお店で自分はパリに住んでいるというようなことを言って、本当は東京に住んでいたのにそういう虚偽のことを言うと、それは当然のことながら知らないことについて相当の理由があるということになるわけでございます。それが一番の典型例でございます。  それから四号の場合でございますが、これは事業者が消費者を消費者でないと誤認し、その誤認に相当の理由があるというわけでございますけれども、こちらの方はもう少しあり得ることでございまして、例えば普通のお客さんで、普通の事業者ですと、手形で大量に継続的に商品をお買いになるというのがまあ通常でございます。そういうことをされるお客様の中にも、事業者でない方で、あるいは会社でない方も個人でそういうことをおやりになる方もおありになるわけでございます。しかし、そういうことは誤認してかつ誤認に相当の理由があるということになるわけでございまして、そういう場合はここから除かれるということを意味しているわけでございます。
  47. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 続きまして、十七条の不法行為でございますが、いわゆる不法行為は、今まで原因行為が出たところのいわゆる原因行為地法であったというところを、今回は結果発生地に変えたと。言うならば、不法行為の損害賠償をする際に損害が出た方の側の利益を原則的に考えると。このお立場は私は評価をしたいと思うんですが、その後の、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときはという文言が入っております。  この通常ということを、例えば中国でいわゆるばい煙が出た、NOxが出た、それが流れて日本で酸性雨になったと。中国の人は、例えばばい煙が出た、それが雨と一緒になって酸性雨になるという、そういうふうな認識は普通はないかもしれませんね。だから、この通常予見というようなものの通常性の判断基準をいわゆる原因結果のその地に求めるという形になると、ほとんど意味がないことになるんではないのかなと思うんですが、この通常の意味、その判断基準はどこに置くのか、これについてのお答えをお願いします。
  48. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) ここは、実は法文上表現するのも非常に難しいと思ったところでございまして、これはポイントは、その地における、ここに本当はゴシックか傍点を打ちたいところというような気持ちでございますが、その結果の発生が通常予見できないというところにポイントがあるわけでございます。  つまり、結果の発生自体が予見できるかどうかというのは、これは不法行為そのものの問題でございますけれども、ここでポイントになりますのは、まさか煙があんなところに行くとはなということを念頭に置いたわけでございます。とんでもない異常気象があって、通常ですと中国のおっしゃるようなばい煙はニュージーランドには届かないのに届いたというようなことを想定してここは通常予見できないということを申し上げているわけで、酸性雨の発生原因そのものは、これは実質法の方の不法行為の成否の問題でございます。
  49. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 駆け足で恐縮なんですが、十八条の生産物責任についてもかなりきちんとした対応が取られたかなと思うんですけれども、その中にいわゆる生産物、被害者が生産物の引渡しを受けた地の法によるとなっております。  この引渡しを受けた地の法というのは、生産物というのは市場を前提にして考えるわけでございますので、通常いわゆる生産物を市場で取得した地、いわゆる市場地主義を取ったというふうに理解をしていいのかどうかということが第一点。  それから第二点としては、引渡しというふうな形でいいますと、所有権が移ったのか、占有が移ったのか、両方の解釈が成り立つわけでございます。そういう意味では、引渡しの意味というのは具体的に何を言わんとしているのかということについてのお考えを示していただきたいと思います。
  50. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) これは、こういう法制を取っている国はみんな共通でございますけれども、基本的にはマーケットというものを前提にしてこの生産物責任というものの特別の連結が決まっておりますので、委員もおっしゃった市場地ということで結構でございますし、その引渡しは基本的には占有を移すということを意味するわけでございます。
  51. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 それから、被害者がということがございます。  この被害者についていろんなケースが考えられるわけでございまして、お手元にお配りをしてあります図表の一を見ていただければと思います。これはこの前の参考人の弁護士さんの方も言われておりましたが、例えば生産物責任、いわゆる製品の瑕疵によって損害が生ずるという形になりますと、例えば製品の中では、例えば交通機関等は損害という形になれば、運航を供用している、運航を提供している側の損害であると同時に、利用者に損害を起こすという形も当然想定されるような場合があります。  航空機の例がよく出されるようでありますけれども、図表一では、例えばアメリカのカリフォルニアの航空機製造会社が飛行機、旅客機を製造した。その引渡しを日本の航空会社にロサンゼルスで行いました。それを日本の航空会社が運航に使いまして、そして日本でお客様を仮に乗せたとします。それが、飛行機がいわゆる製造物の瑕疵、飛行機の瑕疵によりましてそれが原因になって落ちて、インドネシアで事故を起こしたと。  こういうふうな例を想定をされますと、生産物の引渡しはロサンゼルスで、日本人乗客が事故を起こして亡くなったのはインドネシアと、こういうふうな関係があるわけなんですけれども、こういうような場合には、この十八条の解釈でいうとどういうふうに考えられるべきなのかなと、正にここで言っている被害者というようなものは、当然飛行機を買った日本の航空会社もいわゆる瑕疵の被害者ではありますけれども、その飛行機に乗ってけがをして例えば死亡をしたという、その損害を発生させられた日本の乗客というようなものも、これもやっぱり被害者の中に入るんではないのかなと。  そうすると、非常にこの引渡しというふうな形でやった場合の準拠法が損害を被った乗客の立場からいってみると非常に混乱を起こすことになるんではないのかなと、こういう指摘ができるんではないのかなと思うんですけれども、その御見解を示していただきまして、私の質問は終わりにしたいと思います。
  52. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 時間でございますので、答弁簡潔にお願いします。
  53. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 大変難しい問題を簡潔にということでございますが、基本的にこの生産物責任、製造物責任の特別連結と申しますのは、完全な不法行為というよりも一歩契約責任に近付いたような、そういう混合的な性格のものだという理解でどこの国もやっているわけでございます。  したがいまして、その市場というものが連結として認められているわけでございますが、その考え方から申し上げますと、この場合、日本の航空会社が航空機製造会社を生産物責任で訴える場合には当然のことながら今の規定がそっくりそのまま当てはまるわけでございまして、引渡しのロサンゼルスの地の生産物責任法律、その他の法律適用されるわけでございます。  これに対しまして、乗客の方は基本的にマーケットと全く関係がない被害者でございますので、この生産物責任準拠法指定そのものには当てはまりませんので、これは一般の不法行為準拠法適用されるという関係に立つように思われます。  ただし、そうはいいましても、しかしこのインドネシアが必ずその結果発生地ということで準拠法になるかどうかは分かりませんで、より密接な関係がある地の法律適用される可能性もございますので、なおもちろんアメリカ法あるいは日本法が適用になる余地も全く否定はできません。しかし、基本的には一般の不法行為の問題だというように連結上は理解していただければと思います。
  54. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 終わります。
  55. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 公明党の浜四津でございます。  法の適用に関する通則法案第二節、法律行為についての質問から始めさせていただきます。  第七条、第八条、契約準拠法についてお伺いいたします。  第七条では、法律行為成立及び効力当事者選択できる、つまり当事者合意した地の法によるのが原則とされておりますが、八条で当事者準拠法合意をしていない場合について、一項で最密接関係地を、二項で最密接関係地についての推定規定を設けております。  現行法例第七条二項では、合意がない場合は行為地法によるとされているのを今回大幅に改正したわけでございます。なぜこのように改正されたのか、現行法例七条二項ではどういう不都合があったのか、またどういう批判があったのか、御説明いただきたいと思います。
  56. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) おっしゃるとおり、これは現行法で申しますと法例の七条の二項の問題でございます。今の法例の七条二項が定めております行為地法主義に対しましては、最近の法律行為、とりわけ契約というものの在り方との関連性が非常に疑問であるという指摘が出てきているわけでございます。すなわち、まあ明治時代を想定していただければお分かりになると思いますが、ようやくのことで両当事者がどこかで会って、それで契約をするということになりますと、そこの場所というものが両当事者にとって非常に重要な場所だということになるわけでございますが、最近は契約をする場所というのはその契約にとってどれぐらいの意味があるかというと、非常に関連は薄れてきているというふうに一般契約については考えられるわけでございます。とりわけ今の、最近の状況でございますと、電子取引等もございまして、全く場所から切り離された形で契約が行われるということもございますので、そういう意味では行為地というのを維持するのはもはや相当ではないということはほぼこの関係者の共通の理解となっていったところでございます。そこで、この規定を改めるということにいたしたわけでございます。
  57. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 この法案八条二項で、その法律行為特徴的な給付当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者常居所地法を最密接関係地と推定すると、こうあります。  ここで言う特徴的な給付とは具体的にどういう内容をいうのか御説明いただきます。
  58. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) これは冒頭にも荒井委員から御批判ございましたとおり、特徴的給付そのものはまだこなれた言葉ではございません。  しかし、例えば売買でございますと、この売買を特徴付けるのはやはり物の所有権が売主から買主に移転するということでございまして、給付を行う点について特徴的なのは売主側でございます。したがいまして、この特徴的給付の理論の適用上は、売買でございますと売主側の基本的に常居所地あるいは事業所ということがこの特徴的給付の理論上は言えるわけでございます。
  59. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 この特徴的給付による推定というのはすべての契約について妥当な結論を導くとは限らないのではないでしょうか。特に現代の複雑な契約には必ずしも特徴的給付が認められないという事案も多いのではないかと思いますが、その点についてお伺いいたします。
  60. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 三つほど申し上げますが、まず第一にこれはあくまで推定でございますので、それを上回るやはりこちら側の関係の法がこの契約についてより重要だというファクターがあれば、そちらの方に引きずられていくことがまず一つございます。  それから第二に、おっしゃるとおり、売主と買主を通常事業として考えてみますと、やはり売主側の方が強いというケースが多いのかもしれません。とりわけ相手方が、買主側が消費者であるというケースもあるわけでございます。しかし、そういう場面におきましては、これはやはり消費者ということを別に構想いたしまして消費者保護のための規定を設けているわけでございますので、それはそちらの方でカバーされるということでございます。  それから、最終的に、それでもなおこれはどうしても耐え難いということになりますと、これは一般条項の公序等が働いてくるわけでございますが、契約についてそう多くこれが働くことは余り期待はできませんが、そういう最後のセーフガードもないわけではございません。
  61. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 次に、十一条の消費者契約の特例について二点お伺いいたします。  その十一条の一項では、消費者がその常居所地法中の強行規定を特定して主張しなければその適用を受けられないと、こういうふうにされておりますが、法律に詳しくない消費者にとっては過大な負担になるのではないかとも思いますけれども、その点についてどうお考えでしょうか。それが第一点でございます。  第二点は、消費者契約のトラブルというのは必ずしも裁判でなされるとは限りません。消費者による強行規定適用の主張は裁判外でも行うことができるのかについて確認させていただきます。
  62. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) まず、この主張は裁判外でもできるということでございます。  それで、この規定が現実的ではないのではないかという、一般の方にとってはという御指摘でございますが、なるほど一般の方にとってこういう法律関係にあるということを御主張になるということはやや御負担があることは、これは否定できないところでございます。ただ、他方、この規定にパラレルな規定として自動的に強行規定として消費者を保護する規定適用されるという法制も実はないわけではございません。私どもも、ヨーロッパの一部でそういう規定がございますので、そういう点も検討してみたわけでございますが、むしろそういう規定の下では裁判所はあらゆる点においてどこが消費者にとって有利か不利かということを様々比較して、その結果準拠法が決まると、こういう経過をたどるわけでございますので、どうもそのような法制を採用している国の実務ではそれは非常に煩瑣で、かえって裁判を長引かせ、妥当な結論に至るに時間が掛かり過ぎる、あるいは裁判官にとっても負担が非常に大きいということで、結果的に消費者のためにもならないというような指摘が非常に強くされるに至っております。そこで私どもは、若干御負担はございましても、より簡明な方法というのを選択すべきだということで、法制審で様々御議論をいただいて、その御意見もあるいは一般の方々の御意見も参考にした上でこのようにさせていただいているわけでございます。
  63. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 十一条について、もう一点お伺いいたします。  十一条の六項第一号ただし書及び第二号ただし書の勧誘についてでございますが、先ほど同僚議員からの質問に対してお答えがありました。その勧誘というのが具体的にどういう場合を指すのかということについても御答弁ありましたので省略いたしますが、その御答弁の中で、一般的な広告は含まないんだという趣旨の御答弁があったように思います。  そうしますと、例えば外国の事業者がインターネット上にウエブサイトを開設して商品を販売していて、日本に常居所を有する消費者がそのウエブサイト上の宣伝広告を見てインターネット経由でその事業者から商品を購入したような事例では、この消費者保護規定適用はあることになるのでしょうか、お伺いいたします。
  64. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) そのとおりでございます。むしろ、そのようなときに一番この消費者保護の規定が働くわけでございます。
  65. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 次に、十七条、不法行為準拠法についてお伺いいたします。  十七条では、不法行為原則的な準拠法は結果発生地が原則と、こういうふうにされておりますが、十八条で生産物責任について特例を設けております。この特例は生産業者寄りの規定であって、被害者保護の観点からは問題があるのではないでしょうか。そう思われるような危惧がありますけれども、いかがでしょうか。
  66. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 先ほども多少触れさしていただいたんですが、この生産物責任と申しますのは、一般のこういう不法行為に比べまして結果として実質法の面では非常に有利な規定になっております。  しかし、その規定適用をされる生産者側の立場に立ってみますと、いわゆるこの規定適用範囲というのはその当時自分が予見できるような範囲に収まってほしいと思うのは、これは当然でございます。そこで、そのバランス上、やはりその接点でありますマーケットというものを基準にいたしまして、そのマーケットでの引渡しというものを連結点と考えているところでございます。
  67. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 次に、二十三条、債権譲渡についてお伺いいたします。  債権譲渡の債務者その他の第三者に対する効力準拠法について、これまでの債務者の住所地法から今回は譲渡に係る債権の準拠法に改められた理由と、ここで言う譲渡に係る債権について適用すべき法の意味について御説明いただきます。
  68. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) これは、とりわけ今の規定では非常に多数の債務者がおいでになった際に債権譲渡に大変な御不便があるということでございまして、これはやはり公平の立場から見ますと、債権そのものの準拠法によるというのがバランスとしてはいいんじゃないかということが御意見の上でも多数を占めたわけでございますので、そうさしていただいたわけでございます。  そこで、この債権の、譲渡の対象になる債権の準拠法でございますが、これは先ほどの御議論からもお分かりになりますとおり、例えば契約でございますと契約そのものの準拠法、つまり当事者選択した法あるいはその他の密接関連法、不法行為でございますと結果発生の地の法律というようなことになるわけでございます。
  69. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 今回の法案作成に当たりましては、債権の流動化を円滑化するために、債権譲渡の第三者に対する効力準拠法を譲渡人の所在地法とすることも考えられたと伺っておりますが、この考え方は今回の法案では結局採用されずに、今御説明のありました譲渡に係る債権の準拠法にされました。  そこで、債権譲渡の第三者に対する効力準拠法を譲渡人の所在地法としなかった理由についてお伺いいたします。
  70. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 先ほど申しましたとおり、第三者の効力、対する効力ということを特に考えてみた場合には、債権者の常居所地法というのが一番便利であることは間違いないわけでございます。しかし、債務者に対する効力との関係でこれを債権譲渡の対象となる債権の準拠法にした以上、これと違う法律を対第三者関係準拠法にいたしますと、この食い違いによりまして第三者としては非常に複雑な地位に立たされるわけでございます。  一方で、どちらの債権者が勝つのかということについての法律と、どちらに支払えば免責されるのかということが食い違うわけでございますので、これは非常に不便でございます。そこで、合わせる意味でも、これを対象となる債権の準拠法と、こういうことにいたしたわけでございます。
  71. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 次に、知的財産権についてお尋ねいたします。  近年の国際化の進展に伴いまして、特許権などの知的財産権に関する国際的な紛争が増加しております。我が国において特許が登録されている発明を、外国において無断で使用して製造された製品が我が国に輸入された場合や、外国において登録された特許の我が国における効力が問題になる場合などについて、どの国の法律準拠法になるのか明確にする必要があるのではないかと思います。この点につきまして、通則法案では名誉毀損などとは異なりまして特別な規定を設けておりません。それはどのような理由によるものなんでしょうか。
  72. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) この知的財産権というのは非常に特殊な分野でございまして、かつ非常に公法的な色彩もあり、準拠法についての議論もまだまだ未成熟なところでございます。したがいまして、法制審議会でもこれをどうするかという御議論がございましたが、もう少しその議論が成熟して世界各国共通の理解に立った上で新しい規定を作るべきだという結論になったわけでございます。
  73. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 最後大臣に決意をお伺いいたします。  今回の通則法案によりまして、我が国国際私法に関するルールが整備されたことは非常に意義深いことと思いますけれども、日本法の競争力という観点から見ますと、このような国際私法ルールの整備と同時に、例えば国際的な契約において我が国法律準拠法として選択されるように、外国の方々にもその内容を理解してもらうための施策が必要ではないかと思います。  そのような観点から、例えば我が国法律を英語に翻訳して世界に発信するなどの取組が必要と思われますが、大臣として日本法の競争力を高めるためにどのように取り組まれるのか、御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  74. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) 先ほど副大臣から一部答弁したところですが、法律の英語訳が我が国の場合極端に後れております。憲法は元々英語で作られたんですからきちっとしたのがあるわけですが、ほかの法律となりますと、もうりょうりょうたるものです。  これは各法律を所管する各省庁が取り組んでおったわけですけれども、まあ主要法律でもないということで、実は日本においては各渉外事務所や弁護士さんの事務所がそれぞれ勝手に、勝手にと言うとおかしいですが、翻訳して依頼者に説明するということをやっておったわけです。  これではいけないということで、司法制度改革推進本部で議論の末、まあ自民党でも議論したんですが、法令外国語訳を推進すべきだと、積極的に取り組む必要があるという本部決定がなされまして、実は私、官房副長官のときですが、平成十七年一月二十七日に内閣に法令外国語訳推進のための基盤整備に関する関係省庁連絡会議が設置されました。その下に、有識者と学者とか弁護士さん、全府省が横断的に参加する法令外国語訳・実施推進検討会議が設置されまして、翻訳のための基本原則、推進の在り方、翻訳された法令の利用を容易にする体制の整備等について検討いたしまして、本年三月最終報告が取りまとめられ、それを受けて、各関係省庁連絡会議において所要の意思決定が行われているところでございます。進み始めておりまして、一定年次を決めて、主要法律については英訳しようということで取り組み始めております。  ただ、この英訳につきましては、オフィシャルな、オーソライズはできない。あくまでも基本は日本語による法律効力を持つわけで、翻訳された英語はその英語に基づいて、英語は日本語による法律と同等の効力は持たないのは当然なんですが、そういう限定付きですが、ともかく英語にして各国に知っていただくのが一番大事じゃなかろうかということで政府としても取り組み始めておりますし、法務省もその中で所管する法律を中心にして積極的な役割を果たしてまいる所存でございます。
  75. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 終わります。
  76. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  私も、まず改正案でいいますと二十三条、債権譲渡の第三者対抗要件規定の経過についてお伺いをしたいと思います。  振り返りますと、この件については元々二〇〇〇年、平成十二年の十二月に行政改革推進本部の規制改革委員会が見解を出されて、これを受けた形で翌〇一年、平成十三年の三月に規制改革推進三か年計画が閣議決定をされています。  その中で、いずれも国際的な統一ルールとしての譲渡し人住所地法による考えが定着しつつあるという趣旨の認識に立って、債務者の中に海外居住者が含まれる多数の債権を一束にして国際取引が行われると、そういう売買の流動化のために譲渡し人住居地法に変えるべきだというような趣旨議論がなされているのだと思うんです。その観点から閣議決定もされていると。これは、改正案の譲渡対象債権の準拠地法という考え方とはこれ違うわけですね。法制審議会議論を拝見をして、私どうしてこういう結論になったのかというのがようやっと分かったような気がしたわけでございます。  国際私法の現代化に関する要綱中間試案の補足説明というようなものを拝見をしたんですけれども、今申し上げている点について銀行界などの実務家委員から法制審でどのような意見が出されたか、御紹介いただけますか。
  77. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 今委員がおっしゃったような経緯はそのとおりでございます。  それで、法制審議会でも元々この債権譲渡に関しては準拠法自体は改めなきゃいけないという認識はあったわけでございますが、それをとりわけ対第三者との関係でどうするのか、債権者の常居所地法にするのか、あるいは対象債権の準拠法にするのかということで大分議論があったわけでございます。  今おっしゃいました実務界、とりわけ経済的なバックグラウンドをお持ちの先生方、あるいは試案でもそれに対する意見を出された方は基本的に債権者の常居所地法の方が望ましいというお考えでした。と申しますのは、やはりその方が対象債権の将来債権を念頭に置いても便利でございますし、とにかく債権ごとに準拠法がばらばらだと、ある程度ばらばらだというケースにおいても対応できるということで簡明だという、そういう非常に実務的なプラクティカルな面からの御意見でございました。しかし、最終的にはそういうニーズというのの強さと、それと逆に譲渡債権との準拠法との食い違いから生ずるいろんな問題を避けるということとのいろいろな議論の中で、最終的に対象債権の準拠法に落ち着いたわけでございます。
  78. 仁比聡平

    仁比聡平君 ちょっと表現が、局長の今おっしゃった表現、よく分からないんですが、先ほど申し上げた中間試案の補足説明を見ますと、九十六ページのところですけれども、譲渡対象債権の準拠法によるという意見について、これは銀行界等実務家委員を中心とする意見であるという御紹介になっていまして、準拠法が異なる集合債権の譲渡や、準拠法が定まっていない将来債権の譲渡に対する実務上のニーズは現時点においてはほとんど認められないというふうにあるわけでございます。  一方で、譲渡し人所在地法によるべきという意見は、これは学者委員を中心とする意見でありというふうにこの補足説明では整理をされているんですけれども、こういう理解でよろしいんですか。
  79. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) この時点における議論はそのとおりでございます。
  80. 仁比聡平

    仁比聡平君 前回の参考人質疑でも、三菱商事の大村多聞参考人も、この点を含んで本法案、これは妥当なものであるというふうに意見が述べられたわけです。  そこで聞きたいわけですけれども、国際的な統一ルールという、この規制改革委員会やあるいは閣議決定のこの表現を裏付ける事実があるんだろうかと。私、その補足説明を始めとしてちょっと勉強させてもらったんですけれども、実はその国際的な統一ルールというほどの実情といいますか、これ実はなかったんじゃないのかなという感じがどうしてもぬぐい去れないんですね。  具体的に、譲渡し人住所地法を採用している国としてはどこがありますでしょうか、御紹介ください。
  81. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 具体的に譲渡し人の常居所地法に合わせるルールは、ベルギーが既に効力を生じている法律としてはございます。また、未発効ではございますけれども、国連の国際債権譲渡条約もそのような考え方を取っているわけでございます。  若干釈明をさせていただきますと、私ども、この点については非常に趨勢は見極めにくいところではございましたが、この時点ではこの国連の条約議論もあり、相当にその意見各国ヨーロッパの間でも強くなっているなという認識は実は持っておりました。ただ、結果といたしまして、その後、意見の揺り戻しと申しますのも変でございますが、様々な意見が出て、実際に定着している国際私法の実定法のルールとしては対象の債権の準拠法も相当に多いので、どちらが今の時点で国際的な趨勢かと聞かれれば、今の時点では何とも申し上げかねるというようなのが実情でございます。
  82. 仁比聡平

    仁比聡平君 例えばイギリスあるいはドイツ、あるいは今回の法改正の中でも随分参考例と挙げられています韓国の国際私法、こういう辺りでは譲渡対象債権の準拠法という本改正案と同じ立場ということになっているんだと思うんですね。    〔委員長退席、理事谷川秀善君着席〕  一方で、確かに局長言われるように、国連の関係条約云々という議論があるけれども、それは未発効。というのは、つまり批准している国が少ないから効力を生じていないわけでしょう。  もう一つアメリカ法律がありますよね、ちょっと紹介してもらえますか。  局長。通告しているじゃないですか。
  83. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 申し訳ありません。  アメリカは基本的に単一の実定法はございません。判例法を基にしました統一商事法典というようなものがありまして、それの九編によりますと、債権譲渡の第三者に対する対抗要件の優劣の準拠法は譲渡し人所在地法とされますけれども、特定の債権については適用除外ということになっております。
  84. 仁比聡平

    仁比聡平君 結局、その譲渡し人所在地法という議論は今おっしゃったような実情にあるわけで、これを国際的な統一ルールとしての考えが定着しつつあるというふうな認識に立って、我が国の今規制緩和政策の中心であります、当時で言えば規制改革委員会、その後総合規制改革会議、規制改革・民間開放推進会議、この一連のオリックスの宮内さんが座っていらっしゃるこの会議の要求になっていて、それが閣議決定にもなっているということなわけですね。  私は、その政策決定やあるいは規制改革の在り方の問題として、こういうトップダウンの、法案の段階になれば現場の実務家の方々から、いやそういうニーズはありませんというふうに言われるような、こういう提案がなされているというのはやっぱり在り方として問題なんじゃないかと思うんですけれども、大臣にこんなことでいいのかということでお尋ねをしたいと思います。
  85. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) 一連の規制改革におきましては、先生のおっしゃるトップダウン方式といいますか、そういう形で検討されて、規制改革会議で検討したことを下ろして推進するという方式が取られていることはそのとおり、おおむねそのとおりだと思いますし、この債権譲渡の準拠法に関して先生いろいろ御指摘になって、局長からいろいろ御答弁申し上げておりましたが、そういうようなことは必ずしもこの問題に限らずいろんな分野で起こっておって、議論があり、修正があり、落ち着いたところで結論を出して実行するというふうになっていると私は認識しております。  今度のこの先生指摘の平成十六年三月に閣議決定された規制改革・民間開放推進三か年計画でも、必ずしも債権譲渡人所在地法によることのみを念頭に置いていたわけではなくて、まあ様々な国際的な動向、いろいろ説明がありましたが、そういうものを踏まえた上で法令中の国際私法規定改正を検討するという旨の記載になっておるのだというふうに私は思っております。    〔理事谷川秀善君退席、委員長着席〕  これをもって規制改革一般について一般化してどうこう申すことは、いささか私の立場から申し上げるべきことではないと思っております。
  86. 仁比聡平

    仁比聡平君 私もこれをのみをもって一般化をするつもりはないんですけれども、大臣もその前提の認識としてお持ちのようですけれども、結局、トップダウンという今のやり方の中でも、事実関係をきちんと必要に応じて調査をして、実態、特に国民生活や国民経済にどういう影響があるのか、ここを十分に把握した上でなければ議論は進められないということだと思うんですね。今回のこの件については法制審議会議論の中で実情が明らかになって妥当な改正案に落ち着いたということで各方面から言われているわけですから、これは結構なわけですけれども、そこを政府全体としてよく考えていただきたい。つまり、政策決定の在り方としてよく考えていただきたいと思うわけでございます。  次に、改正案の十二条、労働契約の特例にかかわってお尋ねをしたいと思うんですが、十二条の一項で、一項に言う特定の強行規定ですね、この言葉がどのような意味なのかお尋ねしたいと思います。  例えば、日本企業が外国人労働者を雇用して日本で働いてもらうという場合、これは二項によって労務給付地法である日本法によるということになると思うんですけれども、この日本法による場合に、条文に明文化はされていない、例えば解雇規制にかかわるような判例法理、あるいは社会保険に関する各法令などはこれに含まれるんでしょうか。
  87. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) ここで申します強行規定というのは、基本的に実質法のレベルにおいて当事者合意のいかんにかかわらず適用される法律でございまして、それは必ずしも明文ではございません。もちろん、明文のものといたしましては例えば労働基準法の幾つかの規定が直ちに頭に浮かぶわけでございますが、委員も御指摘になられました判例法理上認められている規定も、当然それが強行的に適用されるということがその判例によって明らかにされているのであれば、それは当然適用になるということでございます。
  88. 仁比聡平

    仁比聡平君 御答弁ありませんでしたが、社会保険にかかわる法令などはどうですか。
  89. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 社会保険にかかわる規定も、これも私法上の契約効力に係る規定だということになりますと、それは強行規定に入り得るところでございます。
  90. 仁比聡平

    仁比聡平君 外国人労働者の実態についてはいろんなケース又はカテゴリーがあるわけでございます。前回の参考人質疑の際に、日弁連の手塚参考人から一例として、日本の解雇規制が厳しいのでアメリカに戻して解雇するというような例があるというようなお話があったわけですけれども、あのときに時間が余りございませんでしたので私もよく尋ねることができなかったんですが、これがどんな例かといいますと、例えばアメリカの企業がアメリカで現地で採用をして日本支社のゼネラルマネジャーとして日本に送ってくると、そこで高額の年俸制で働き、高度の経営判断も含めたそういう働き方をしているような方というような例だと思いますけれども、よろしいですかね。
  91. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) そういうことも想定されるということは理解できます。
  92. 仁比聡平

    仁比聡平君 そういったカテゴリーの中でもいろいろ議論はあるわけですけれども、今日は製造業を始めとして現場で働く外国人労働者の実態についてお伺いをしたいと思います。  厚生労働省においでいただきました。私も、配付資料としてまず一枚目に厚生労働省からお出しいただきました外国人労働者数の推移の表をお手元にお配りさせていただいていますが、まず全体の推移をどう見ているか。  それから、その中で特に現場で働く外国人労働者、特に日系人等定住者層やあるいは特定活動、あるいは不法残留というようなところがそうかと思いますけど、特徴をどうごらんになっているか、御説明いただけますか。
  93. 高橋満

    政府参考人高橋満君) お答え申し上げます。  外国人労働者についてのカテゴリー別の数についてのお尋ねでございますが、御案内のとおり、現在就労を目的といたします在留資格としては、教授、研究、技術等々専門的、技術的分野での在留資格というものがあるわけでございます。これに、この在留資格を取得して働いておられます現在の外国人労働者の登録者でございますが、今の配付資料の一番上の就労目的外国人というカテゴリーでございますが、これが平成十六年末には約十九万人ということでございまして、十年前の平成六年辺りと比べますと、六年末が十一万人でございますので、約八万人ほどの増加ということでございます。  このほかに、我が国で就労しておる外国人労働者のカテゴリーとして、一つはここの表にもございますとおり日系人等の定住層、それから特定活動、主には技能実習制度が中心かと思います。さらに、アルバイト、留学生等で資格外活動の許可を受けて働いておられる方というものが主なものかと思いますが、それぞれ日系人等で十六年は二十三万人、それから特定活動で約六万人、留学生のアルバイトで約十一万人と、こういうふうになってございます。  あわせまして、製造業でどれくらい働いておられるのかというお尋ねでございます。  これにつきましては、私ども、毎年六月一日現在で外国人雇用状況報告というものを、事業所からの理解と協力を得て任意で報告をいただいているものがございます。これで見ますと、十七年、昨年の六月現在で把握をしております外国人労働者全体で十九万八千余でございますが、そのうちの五四・四%が製造業で働いておられると、こういう実態でございます。
  94. 仁比聡平

    仁比聡平君 この数字の傾向をどう見るか、また別の機会で議論させてもらいたいと思います。  二枚目の資料なんですけれども、これは労働基準局から出してもらったもので、昨年一年間に労基署がいろいろなきっかけで監督指導に入った際に、技能実習生を受け入れている事業場がこれ九百六件あった、そのうち違反事業場数が八〇・七%、七百三十一件あったということなんですね。私、これは当たり前であるはずの権利が守られない無法状態、あるいは無権利状態というべきなのではないかと思うわけでございます。  外国人の労働相談などに携わっている方にお伺いをしますと、この研修生あるいは実習生というものの実態というのは、時給が二百円あるいは三百円というような低賃金で働かされていて、これ関係をしていらっしゃるJITCOの方々や労基署の方々がこれは入ったとしたときには、基本給は十二万五千円の約束になっていますというようなことを表には言わせるわけですね。だけれども、実際は四万五千円とか五万円程度の給料しかもらってない。残業はさせてならないはずの研修生が長時間労働を強いられている。例えば、月二百五十一時間という給与明細もございます。約束と違うじゃないかというふうに言おうものなら、決まっていることだ、仕事を頑張らないと中国に返すぞというふうに経営者から脅される。それでも、悔しいわけですけれども、その方々が縛り付けられているその柱がどこにあるのかという点で四点ほどの御指摘をいただきました。  一つは、入国をして企業に入ったときにパスポートを取り上げてしまうというんですね。経営者の側が保管をして、実際に出国をするときにしか返さない。二つ目は、強制貯金です。給料の中から、例えば四万五千円しかお給料ないのに、その中から三万円は強制的に貯金をさせる。これも、ひどい例では成田でしか返さない。三つ目は、中途で辞めれば高額の違約罰を掛ける。四つ目は、本国から日本に送り出されるときに高額の保証金を取られていて、これを払うために自宅を担保に入れて日本にやってくると。それが全部駄目になってしまったらもう生活していけないということなわけですね。私、お話を伺っていて、正に現代版の女工哀史なのではないかと思いました。こういう実態がJITCOの行っている母国語相談などの中でも私は寄せられているんじゃないかと思うんですが。  時間がなくなりましたので、労働基準局に一問だけお尋ねをしておきたいと思いますが、外国人労働者の実態がこういう状況にあるという中で、例えば福井の労働局ではこの技能実習生に特段の着目をした調査を行われたというふうに伺いました。これを全国の規模で、とりわけ外国人労働者の多い地域でしっかり行うべきではないでしょうか。いかがでしょうか。
  95. 松井一實

    政府参考人松井一實君) お答えさせていただきます。  労働基準監督機関におきましては、各事業場ごとに労働基準関係法令の問題があるか否かということをまず把握しまして、問題があると分かった事業所に対しましては必要な是正指導を行うと、さらには法定の労働条件履行確保を図ると、こういった点から、外国人労働者を含めまして事業場で働いております労働者全体の労働実態を把握すると、そういった対応をしてきております。  それで、言われましたように、局ごとのいろんな労働実態を見まして、今言ったような手法を使って様々労働条件の履行確保ということをやってきておるところでありまして、今後ともこの労働条件把握ということをやりながら各事業場で的確な指導をするという視点で、当然外国人労働者なども含めまして労働者全体の条件把握とその履行確保というものを図っていきたいというふうに考えております。
  96. 仁比聡平

    仁比聡平君 私は、日本人、外国人問わず、もちろんおっしゃるように労働条件の履行確保が行われなければならないけれども、現実に外国人を雇用している事業場で起こっている実態を見れば、ここに着目をした特段の調査をしっかり力を入れてやってもらう必要があると思います。是非御検討をお願いするとともに、大臣にも、まあ所管はいろいろありますけれども、ですけれども、こういう実態を正すために政府を挙げて是非取り組んでいただきたいということをお願いを申し上げまして、質問を終わります。
  97. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 国民新党の亀井でございますが、大臣も大変お忙しいところ済みませんが、何点かお尋ねしたいと思います。  国際私法改正の問題ですけれども、言うまでもなく、百年目の改正だということでございますが、各分野国際化がこの二、三十年の間大変大きなものがあるわけでございますので、もっと早く国際私法改正すべきだと思うけどどうだって言ってこの前参考人に聞きましたら、参考人の先生方は、それは法務省に聞いてくれと、むしろ法務省がサボっていたからと言わんばかりのことを言われましたが、このことについて、遅れた理由は何だったのか、お尋ねしたいと思います。
  98. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) なぜ遅れたかという点ですね。  先ほど来の議論の中でも申し上げておると思いますが、現行法例というのは明治三十一年に制定されたものでございますが、一般的、それから抽象的なものであるために、制定以来長い間、基本的には柔軟な解釈を行うということで適切な運用がなされてきたものと理解しております。このような解釈運用では準拠法に関する予見可能性の点で問題がないわけではないとの指摘もございましたが、総じて言えば、最近まではそれぞれの事案に適した法の適用を確保してきたものと考えております。  しかしながら、一九八〇年代から二〇〇〇年ごろにかけまして、我が国の経済社会は国際化、IT化等が著しく進展して大きく変化いたしました。また、ヨーロッパを中心とする諸外国においても国際私法規定の詳細化、現代化が進められたため、そのころから我が国においても国際私法の現代化が重要な立法課題として認識されるに至ったものでございます。  しかし、他方で、御案内のとおり、バブル経済の崩壊後、不良債権処理の円滑化、企業の国際競争力の強化、起業の促進等を目的、起業というのは業を起こす方ですね、の促進等を目的とする倒産法制、会社法制等の整備などの緊急を要する多数の立法課題がございました。司法改革もございました。こういった立法課題に優先的に取り組んできた結果遅れたわけでございまして、後回しになったということでございまして、これらをおおむね達成した今般、ようやく本法律案の提出に至ったものでございます。
  99. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 ありがとうございました。  次の点についてお尋ねしたいのは、今のお話ございましたように、国際的な取引がどんどん増えてきたり社会情勢も変化するということで、国際私法の整備が大きな課題であることは言うまでもないわけでありまして、今回の法律は、改正はそのためなんですけれども、司法界においてもこの国際私法の重要性というものは当然のことでございますが、そういう意味では法科大学院大学における国際私法に関する教育の実態はどうなっているかということが大きな関心になるわけでありますけれども、どうなっているのかと。  法務省としてはこういった国際私法の教育について強化する方向で指導をしておられるかどうか、それとも学校任せなのか、あるいは文科省任せなのかということをお尋ねしたいと思いますし、同時にまた、民事訴訟法と刑事訴訟法の両方を試験科目にするような改正が行われますし、昔は選択だったですけどね、そういうことで一本になったということから、余り負担を掛けちゃいけないということで国際私法選択科目だったのがなくなっちゃったという状況でありますけれども、今後、改正の意向があるのかどうなのか、しかもこの選択科目の決定権はどなたが持っているのか、お話聞きたいと思います。そしてまた、改正前にはどの程度この国際私法選択する生徒さんがおったのかということについてもお尋ねしたいと思います。
  100. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) 法科大学院制度は文科省の所管で法務省ではございませんので、法科大学院における国際私法の教育の実態とか教育の在り方について責任を持ってお答えする立場にはございませんですけれども、経済の国際化とかグローバル化が進んでいる現状におきまして、法科大学院の教育においても国際私法の問題について特段の配慮がなされることを期待いたしております。  私どもが掌握しているのでは、新司法試験の選択科目を選定するに当たりまして、各法科大学院に対して講座の開設状況を照会いたしております。それによりますと、平成十六年四月開校の六十八校のうち、国際私法を含む国際関係法(私法系)の講座を二単位以上開設しているものは六十校、六十八のうち六十、うち四単位以上開設しているものが四十九校であったと承知いたしております。  法務省といたしましても、先ほど申しましたとおり、国際私法の重要性はますます高まっていくと考えられますので、各法科大学院において実情に応じて適切な教育がなされることを期待しておる次第であります。  ごめんなさい、答弁落ちてました。答弁落ちておりました。失礼しました。  新司法試験でございますが、法科大学院を中核といたしました新たな法曹養成制度の下では、司法試験も法科大学院の教育内容を踏まえた新たなものに切り替えるべきものとされまして、それに伴いまして本年五月から法科大学院修了者を対象とする新司法試験が導入されることとなりました。今回初めてでございます。  そして、新司法試験では論文式試験において選択科目が実施されますが、この選択科目につきましては法務省令により定めることとされ、その際には司法試験委員会意見を聴くこととされております。司法試験委員会では、平成十六年の八月、実務的な重要性や社会におけるニーズの高さ、法科大学院におけるカリキュラム、教育内容や科目開設状況などを総合的に考慮し、国際私法を含む国際関係法(私法系)、事実上国際私法、今までの国際私法でございますが、を選択科目の一つとする答申を行いました。  そして、これに基づきまして法務省令におきまして国際関係法(私法系)を新司法試験の論文式試験における選択科目の一つとすることが定められました。この国際関係法(私法系)はいわゆる国際私法一つの中核的な内容とするものでございますから、国際私法は新司法試験の選択科目に含まれていることになると思います。  司法試験科目、以前のことはどうかということでございますが、私どもが掌握しているデータによりますと、旧司法試験におきましては論文式試験予定者のうち毎年九%から一六%程度の受験者が国際私法選択いたしておりました。  以上です。
  101. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 ありがとうございました。  今、大臣おっしゃったように、いろんな国際私法の強化について期待するじゃなしに、文科省の仕事の面もあるでしょうけれども、司法試験関係法務省仕事ですし、そういう意味では法務省としても責任持って強化の方向に努力してほしいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  次にお聞きしたいのは、大臣趣旨説明の中にも、近時における諸外国国際私法に関する法整備の動向というような表現もございましたけれども、最近の諸外国におけるこういった国際私法についての具体的な動向はどういう状況にあるのかということを説明願いたいと思いますし、特に今回の案で知的財産権などが残された問題になっておりますけれども、これ非常に大きな問題だと思いますけれども、こうした問題について法務省としてはどのように対応される御予定かお尋ねしたいと思います。
  102. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) 一九八〇年にECにおきまして契約債務の準拠法に関する条約が採択されました。いわゆるウイーン条約と言われているものでございます。私どもの今回の改正もウイーン条約、失礼しました、ローマ条約でございました、これを基礎とさせていただいております。それを皮切りにいたしまして、一九八六年及び一九九九年にはドイツにおいて国際私法に関する民法施行法の改正が行われました。一九八七年にはスイス及びオーストリアにおいて、一九九五年にはイタリア及びイギリスにおいて、二〇〇一年には韓国におきまして、また二〇〇四年にはベルギーにおいて、いずれも国際私法改正が行われ、契約及び不法行為等に関する準拠法の決定ルールが現代化されたものと承知をいたしております。  知的財産権の侵害等に関する準拠法の問題が積み残しになったのは先生指摘のとおりでございます。法制審における審議の中でも規定を設けることも検討されたというふうに伺っております。しかしながら、この問題に関しましては我が国の学説上の議論が十分に蓄積されておらず、また国際的な知的財産権の保護をめぐる法的問題については今後、WIPO、世界知的所有権機関等の専門機関において検討される可能性があることなどから、現時点で準拠法を確定してしまうことは時期尚早であるとの意見が大勢を占めたと伺っておりまして、そのため特段の規定を設けないこととされたものでございます。  当面、この問題については解釈にゆだねられることになりますが、今後の重要な検討課題として認識しながら専門機関における検討状況、諸外国の立法動向等を見守り、また我が国における裁判例及び学説等の積み重ねを待ちまして、関係省庁とも協力し適切に対処したいと考えております。
  103. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 ありがとうございました。  今、大臣言われたようにこの知的財産権の問題は大きな課題だと思いますので、是非とも重点的にやっていただきたい、取り組んでいただきたいと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。  次の問題は、法律行為準拠法の問題ですけれども、法律行為成立及び効力に関する準拠法当事者選択した場合はその地の法によりますけれども、当事者による選択がないときには行為地によるという現行制度を改めて当該法律行為に最も密接な関係する地の法ということで最密接関係地法ということに変更されましたけれども、その理由は何なのかということと、それから、不動産を目的とする法律行為につきましては、不動産の所在地を最密接関係地法と推定するということにしておりますけれども、不動産の所在地は動きませんから、そういう意味では最密接関係地として一般考えるのは推定ではなくて、みなすとすべきではないかというふうに思いますけれども、これを推定とした理由についてお尋ねしたいと思います。
  104. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) まず、法律行為一般の問題でございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、この法律行為、とりわけ契約は、かつては両当事者があるところに集まって交渉し、それを成立させるということで、その集まった場所、交渉した場所、最後に締結した場所と、こういうものが非常に重要だったために行為地というものが連結点として考えられていたわけでございますけれども、最近は、どこでどう交渉しようが、それは余り重要な問題ではなくて、最終的にどこで契約したかも余り当事者意思には重要な問題として浮かんでいないというようでございまして、とりわけ最近のインターネット等の国際取引を想定いたしますと、場所から全く切り離された形で契約が行われるわけでございます。そのようなことから、これを切り離しまして最密接関連地法ということを基本に、当事者合意がない場合の準拠法とさせていただいているわけでございます。  次に、不動産についての最密接関連地法を不動産所在地法と推定するということで、みなすことをしていない理由でございますが、これは、基本的には、委員もおっしゃったとおり、不動産については非常に不動産そのものの所在場所と重要な関連があるので、これを中心に据えるということは当然でございますが、例えば不動産の賃貸をするのに、例えば、海外のリゾートマンションを含めて、日本のマンションを含めて全体として百戸を借りたと、そのうち九十戸ぐらい日本にある、その残りの十戸が海外に散在しているときに、果たして当事者はこれを所在地法を基準に契約するだろうかというふうに考えてみますと、これは一括してどこかほかの法律関係を望んでいるのではないかなと普通は想定されるわけでございます。そういった場合にまで絶対に不動産の所在地法でなきゃいけないというのはやや窮屈過ぎるので、推定するということでそういう例外的な場合の含みも残しておきたい、こういう趣旨でございます。
  105. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 ありがとうございました。  次に、お尋ねしたいのは消費者契約の特例でございますけれども、現行法例にない消費者契約を今回の特例に入れたということについてはその理由は何かということをお尋ねしたいし、同時に、消費者が自らの意思で国境を越えて事業者の所在地に行った場合、この場合はいわゆる能動的消費者ですけれども、その場合には勧誘のある場合を除いて法の対象から除外するということになっておりますけれども、その理由は何かということと、同時に、この勧誘という言葉は非常にこれから争点になる可能性がありますので、そういう意味ではどのような行為を具体的に示しているのかということを明らかにする必要があると思いますけれども、この点についてお尋ねしたいと思います。
  106. 寺田逸郎

    政府参考人寺田逸郎君) 消費者契約につきましては、かねてから法律行為、とりわけ契約について当事者選択した法律だということになりますと、どうしても力の弱い者は力の強い方の交渉上のポジションに負けてしまって、法律選択自体も余り適切に行われていないんではないかという御議論があったわけでございます。  それからもう一つ当事者法律選択がない場合に、今回は最密接関連地法ということになったわけでございますが、これも特徴的給付の理論によっての推定というのを設けておりますので、この場合も、どちらかといいますと供給者側の論理というのが優先されるというおそれがあるわけでございます。  そこで、こういったことを考えますと、やはりもう少し消費者にバランスして消費者の立場を守るための規定も必要だということで、今のそれぞれの場合について強行規定適用する余地を残す、あるいは消費者の常居所地法の方をむしろ優先させて考えるというようなことが必要だという御主張が非常に強くなってまいりましたので、それに倣っております。各国とも、この消費者についてはいろいろな形で特例を用意しているのが最近の傾向でもございます。  また、その解釈論のうち、とりわけ能動的消費者から、勧誘があった場合を除外している点についての御指摘があったわけでございますけれども、この勧誘と申しますのは、先ほども少し触れましたが、やはり具体的なその消費者をその地に連れてこさしめるきっかけにならないといけないわけでございます。一般的な広告というのはどこの企業も大なり小なりやっているわけでございますので、そういうものはこれに含まれないということでございます。  具体的に申しますと、先ほど申し上げましたけれども、ダイレクトメールあるいはインターネット等のメールでその特定の店舗に来店を促して割引セールをするというような勧誘するというようなことが考えられますし、また、非常に高級ブランド店が、東京のお店よりもフランスのお店の方がたくさん品ぞろえがあるからそちらの方においでになったらどうですかというようなことを言われる、こういうのが典型例でございます。
  107. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 委員長大臣も忙しそうだから、この辺でやめさしていただきます。
  108. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  法の適用に関する通則法案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  109. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、簗瀬進君から発言を求められておりますので、これを許します。簗瀬進君。
  110. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 私は、ただいま可決されました法の適用に関する通則法案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び国民新党・新党日本の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     法の適用に関する通則法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 国際化の進展に伴い、国際私法の重要性がますます高くなっていることにかんがみ、社会の変化、諸外国の立法動向等へ的確に対応するなど、利用者のニーズに適合した規律が確保されるよう、不断の見直しを行うこと。特に、不法行為に関する特別留保条項については、本法の運用状況を注視しつつ、国際的調和及び利用者のニーズの観点から、その必要性について更なる検討を行うこと。  二 我が国の法令が準拠法として国際的にも幅広く利用され、国際取引の更なる活性化・円滑化に資するよう、法令外国語訳の早期整備及び法制度の一層の充実を図ること。  三 我が国における国際的な紛争をめぐる裁判において、準拠法となる外国法適用が的確かつ迅速になされるよう、国際私法及び外国法の調査研究を行う体制を確立すること。  四 国際私法は、企業間取引のみならず個人の日常社会生活関係に深い関わりを有していることにかんがみ、その十分な周知に努めるとともに、国際私法についての理解を深めるため、法教育の充実を図ること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  111. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) ただいま簗瀬君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  112. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 全会一致と認めます。よって、簗瀬君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、杉浦法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。杉浦法務大臣
  113. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) ただいま可決されました法の適用に関する通則法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。ありがとうございました。
  114. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  116. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 次に、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益規制等に関する法律の一部を改正する法律案及び犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  両案について、政府から趣旨説明を聴取いたします。杉浦法務大臣
  117. 杉浦正健

    国務大臣杉浦正健君) 委員長の触れられました二法律案につきまして、一括してその趣旨を御説明申し上げます。  現行の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益規制等に関する法律は、詐欺、出資法違反といった、いわゆる財産犯等の犯罪行為によりその被害を受けた者から犯人が得た財産等である犯罪被害財産については、被害者の犯人に対する損害賠償請求権等の実現を優先させるため、その没収、追徴を禁止していますが、そうした損害賠償請求権等を十分に行使することができないような事案においては、結果として、犯人に不法な利益である犯罪収益を保有させかねない事態が生じているところでございます。また、暴力団関係者らによる組織的なやみ金融事案の犯罪被害財産の一部が外国の銀行に隠匿され、これが当該外国によって没収されるという事案が発生したことから、当該外国からその財産を譲り受けた上、当該事案の被害者の財産的被害の回復に充てる必要がございます。  これらの法律案は、このような状況を踏まえて、犯罪収益の剥奪及びそのような犯罪の被害者の保護を一層充実させるため、所要の法整備を行おうとするものでございます。  まず、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益規制等に関する法律の一部を改正する法律案の要点を申し上げます。  第一は、現行法上は没収、追徴が禁止されている犯罪被害財産について、犯罪が組織的に行われた場合や当該犯罪被害財産が隠匿された場合など、被害者による損害賠償請求権等の行使が困難な場合には、その没収、追徴を可能とした上、その財産等を犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律による被害回復給付金の支給に充てることとすることでございます。  第二は、外国が没収した財産等の譲与を受けるに際し、いわゆる相互主義の保証を行うことができるようにするため、外国から要請された裁判の執行の共助により没収した財産等を、当該要請をした外国に譲与することができるようにすることでございます。  次に、犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案の要点を申し上げます。  第一は、被害回復給付金の支給手続を定めることであり、没収した犯罪被害財産に相当する金銭の保管を始めとする支給手続の主体を検察官とすること、被害回復給付金の支給の申請をすることができる者については、犯罪被害財産の没収、追徴の理由とされた犯罪行為の被害者のほか、これと一連の犯行として行われるなどした犯罪行為の被害者とすることなど、所要の規定を整備することとしております。  第二は、外国において没収された犯罪被害財産に相当する財産等についても、外国から譲与を受けた場合には、以上の手続に準じて、被害回復給付金の支給に用いることを可能とすることでございます。  以上が、これらの法律案趣旨でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。  ありがとうございました。
  118. 弘友和夫

    委員長弘友和夫君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終了いたしました。  両案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十四分散会