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荒井正吾君 先般行われました
委員派遣につきまして、その
概要を御
報告申し上げます。
去る一月十六日及び十七日の二日間、
司法行政及び
法務行政等に関する
実情調査のため、長崎県及び福岡県を訪れました。
派遣委員は、
弘友委員長、
簗瀬理事、
木庭理事、
仁比委員及び私、
荒井の五名でございます。
一日目は、まず、長崎県の大村入国管理
センターを訪れました。
同
センターは、旅券を有していないなど送還までに時間を要する人たちが収容されておりますが、その大部分は中国人が占めております。収容
定員は八百名でありますが、視察当日は、女性三十六名を含む七十六名が収容されておりました。また、昨年の平均収容日数は一人当たり二十六日でしたが、収容の長さによる不満等はほとんど生じていないとのことでありました。
同
センターが抱える
課題としては、常勤の医師がいないことから、夜間、休日の病人には
対応し切れず、せめて常勤の内科医師が欲しいとのことでありました。
不法入国者等を
我が国に来させない、あるいは入れさせないためには、不法入国の実態の把握が重要であります。収容
施設においても、被
収容者の入国の動機や背景等の
情報を入手する機会はあると考えられますので、これら
情報の収集、分析に積極的に取り組み、
関係部局との緊密な
連携を進められることが期待されるところであります。
次に、福岡県に移動し、福岡少年院を訪れました。
同少年院は、初等・中等少年院であり、十四歳から二十一歳までの百三十八名が収容されておりました。収容
定員は百五十名で、昨年始めまでは
定員オーバーの
状況が続き、最多では二百名近くを収容していたとのことであります。非行別人員を見ると、窃盗が約半数を占め、
再犯率は
全国統計と同様二割程度とのことでありました。
こちらでは、様々な教育活動が行われていましたが、中でも介護サービスと育児福祉の実習は、男子少年院としては
全国で初めて
導入されたものであります。これらを通じて弱者の気持ちの
理解や思いやりの心をはぐくむことに効果があるとのことでした。
少年非行の背景には保護者の問題も挙げられているところですが、保護者としての責任を自覚させるため、保護者会を入院当初と退院前の二回実施しているほか、非行少年を持った経験者で組織する「非行と向き合う親の会」のメンバーを招き、苦労話等をしてもらうことを始めているとのことでありました。
次いで、福岡高等
裁判所を訪れ、
裁判所、検察庁及び
法務局からそれぞれ管内の概況等について
説明を聴取した後、実際の裁判員法廷を視察いたしました。
裁判所からは、地裁民事第一審訴訟
事件の新受件数は、
平成十六年の人事訴訟の家裁への移管、簡裁の事物管轄の引上げの影響もあって、同年から減少傾向にあるとのこと、その一方で、簡裁の同
事件が
増加傾向にあること、刑事第一審訴訟
事件は、地裁、簡裁ともに
増加傾向にあるほか、凶悪重大
事件が増えていること、破産
事件は
平成十五年をピークに減少傾向にあるが、個人再生
事件は急速に
増加していること、家事審判及び家事調停
事件は減少傾向にあること、少年
事件についても、一般保護及び道路交通
事件ともにおおむね減少傾向にあることなどの
説明がありました。
裁判員制度につきましては、法曹三者のほか、マスコミの
協力も得て積極的な広報活動が進められておりましたが、現実に
制度を実施するとなると、
裁判官の
増員が是非とも必要であるとの要望がありました。
検察庁からは、最近、凶悪重大
事件の発生が後を絶たず、特に複数の被害者が殺害される
事件が目立っていること、少年
事件では小中学生による憂慮すべき
事件が相次いでいることなどの
説明がありました。
また、最近の暴力団には、徹底した反警察の方針を取る傾向もあるとのことでした。このような暴力団の存在は、市民からの
協力者が得られにくくなるほか、今後の
裁判員制度の円滑な実施にも大きな障害となる問題を含むものであり、
対応の
強化が求められるところであります。
法務局からは、最近の登記
制度をめぐる動きへの
対応等について
説明を聴取しました。昨年の不動産登記法の改正により、オンラインによる登記申請手続が可能となりましたが、まだ利用件数が少ないとのことで、より使いやすいものとして、利用を拡大していくことが
課題とされております。
地図整備も
課題となっておりますが、精力的に作業を進めているとのことでありました。
二日目は、まず、福岡保護観察所を訪れ、五名の保護司の
方々との意見交換等を行いました。福岡県における昨年の保護観察対象者は三千名余を数え、人口割合から見て多いこと、少年対象者が
全国平均と同様の六割程度であるものの、少年のシンナー
事件が相当多いことなどの特徴が見られますが、ここで活動している保護司は、
定員二千八十名のところ、現在員は千九百十七名であります。
最近、保護観察対象者による
犯罪が相次いで発生し、対象者を隔離するというような風潮も感じられますが、意見交換を通じて、保護司の
方々が、地域の
理解を得ながら、対象者の立ち直りのため、日夜尽力されておられる姿がうかがえました。一部の
更生保護施設では、保護司が交代で宿直を引き受け、対象者の様々な相談に乗っているとの紹介もありました。
課題としては、保護司の確保が難しくなっていること、中卒程度の学歴ではアルバイト的な仕事になりがちであるという雇用上の問題から、休みの日が多く収入がなくなると再非行につながりやすいこと、保護司と学校の
連携が重要であるが、学校が閉鎖的であることなどが挙げられました。
また、経済面では、マンションに住んでいると、対象者を自宅に呼べないので、面接場所の確保に費用が掛かっていること、保護司会の活動が多岐になっているものの、
予算がなく、会の
運営に支障を来しているとの紹介があり、個人、組織両面における財政援助が要望されました。
次に、福岡
刑務所を訪れました。同
刑務所は、福岡
矯正管区内の医療
センター及び分類
センターも兼ねております。収容
定員は千六百八十三名のところ、
平成十三年以降、収容率が一〇〇%を超え、最近は約二千名を常時抱えるという
過剰収容状況が続いております。平均収容期間は二年十か月、平均入所回数は四・五回とのことで、最多三十回という者もおりました。また、六十歳以上の割合が一三%と、
全国平均よりも高いとのことでありました。
処遇面では、
職員に対する暴力事案が増えているとの
説明がありました。
平成十六年は十一件、昨年は十七件生じ、刑事公判
事件にまで至ったものもあったとのことで、
受刑者同士では命を失う危険があるが、
職員であれば手出しはされないという背景もあるとのことでした。
居室については、単独室が二割余りしかなく、単独室に入るために偽けんかを仕組む者もいるとのことでありましたが、本年度補正
予算で独居棟及び浴室の増設が手当てされるとのことであります。
また、医療
関係の問題としては、外部の病院での治療を要する者が多くなっており、昨年、外部の病院に出向いた日数は延べ三百六十三日に及んでおります。
受刑者一名につき一日当たり六名の
職員の配置を要するため、
職員の年次休暇の取得も難しくなっているとの
説明がありました。
最後に、福岡入国管理局福岡空港出張所を訪れました。
国際化時代の中で
我が国を訪れる
外国人が
増加しておりますが、福岡管内でも
外国人登録者数は年々
増加しております。また、
出入国者数についても全体としては
増加傾向にあり、福岡空港の
外国人入国者数は、昨年、アジア諸国を中心に約三十二万人に至ったとのことでありました。
入管
行政には温かさと同時に厳格な
対応が求められています。虚偽申請等が疑われ、
入国審査官から特別審理官の上陸口頭審理に付した件数は
増加しており、昨年、福岡空港では九百一件を審理に付し、その結果、百九十三名の入国を認めなかったとのことでありました。入管法違反
外国人の摘発件数も
増加しており、
平成十六年は管内全体で二百七十二件、
平成十七年は四百十三件となっております。
国際化の
推進策の
一つとして、地方空港の国際チャーター便の円滑な受入れが挙げられますが、その際の
課題である審査待ち時間の短縮化については、応援
体制の
充実を図るなど努力しているとのことでありました。
また、空港内の審査ブース及び偽変造文書鑑識の現場を視察いたしましたが、鑑識技術の先進性に感銘を受ける一方、ますます巧妙化する偽変造の手口に対し、一層の対策
強化の必要性を改めて実感いたしたところでもあります。
以上が
調査の
概要であります。
最後に、今回の
調査に当たり、御
協力をいただきました
関係各位に対し、この席をおかりして厚く御礼申し上げ、
報告を終わります。