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2006-06-08 第164回国会 参議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年六月八日(木曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員異動  六月一日     辞任         補欠選任         野村 哲郎君     鶴保 庸介君      平野 達男君     主濱  了君  六月二日     辞任         補欠選任         鶴保 庸介君     野村 哲郎君      主濱  了君     大久保 勉君  六月五日     辞任         補欠選任         大久保 勉君     主濱  了君  六月六日     辞任         補欠選任         谷合 正明君     魚住裕一郎君  六月七日     辞任         補欠選任         岸  信夫君     坂本由紀子君      松下 新平君     犬塚 直史君      魚住裕一郎君     谷合 正明君  六月八日     辞任         補欠選任         坂本由紀子君     岸  信夫君      犬塚 直史君     松下 新平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岩城 光英君     理 事                 加治屋義人君                 常田 享詳君                 小川 勝也君                 小川 敏夫君     委 員                 岩永 浩美君                 岸  信夫君                 国井 正幸君                 小斉平敏文君                 野村 哲郎君                 三浦 一水君                 犬塚 直史君                 郡司  彰君                 主濱  了君             ツルネン マルテイ君                 松下 新平君                 和田ひろ子君                 谷合 正明君                 福本 潤一君                 紙  智子君    国務大臣        農林水産大臣   中川 昭一君    副大臣        農林水産大臣  三浦 一水君    大臣政務官        法務大臣政務官  三ッ林隆志君        農林水産大臣政        務官       小斉平敏文君    事務局側        常任委員会専門        員        高野 浩臣君    政府参考人        法務大臣官房審        議官       深山 卓也君        財務省主計局次        長        松元  崇君        農林水産省総合        食料局長     岡島 正明君        農林水産省生産        局長       西川 孝一君        農林水産省経営        局長       井出 道雄君        農林水産省農村        振興局長     山田 修路君    参考人        鹿児島農業協        同組合中央会会        長        川井田幸一君        東京農工大学名        誉教授      梶井  功君        株式会社農林中        金総合研究所特        別理事      蔦谷 栄一君        愛媛大学農学部        教授       村田  武君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○農業担い手に対する経営安定のための交付金  の交付に関する法律案内閣提出衆議院送付  ) ○砂糖価格調整に関する法律及び独立行政法人  農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律  案(内閣提出衆議院送付) ○主要食糧需給及び価格の安定に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付  ) ○政府参考人出席要求に関する件 ○派遣委員の報告     ─────────────
  2. 岩城光英

    委員長岩城光英君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日までに、平野達男君及び松下新平君が委員辞任され、その補欠として主濱了君及び犬塚直史君が選任されました。     ─────────────
  3. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案砂糖価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案主要食糧需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、参考人といたしまして、鹿児島農業協同組合中央会会長川井田幸一君、東京農工大学名誉教授梶井功君、株式会社農林中金総合研究所特別理事蔦谷栄一君及び愛媛大学農学部教授村田武君に御出席をいただいております。  参考人皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変お忙しいところ委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  ただいま議題となっております法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りたいと存じますので、何分よろしくお願い申し上げます。  ここで本日の議事の進め方について御説明いたします。  まず、川井田参考人梶井参考人蔦谷参考人村田参考人の順序でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっております。  また、参考人方々の御発言は着席のままで結構でありますが、質疑者は、慣例により、起立の上発言することとしておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、川井田参考人からお願いいたします。川井田参考人
  4. 川井田幸一

    参考人川井田幸一君) おはようございます。  私は、鹿児島農協連中央会川井田でございます。  本日、参考人として意見を述べる機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。私は無論、鹿児島沖縄両県のJAグループ生産者にとりまして大変有り難いことと心から感謝を申し上げます。岩城農林水産委員会委員長を始め、理事並びに委員先生方に衷心より厚く御礼を申し上げます。  また、かねてより、私どもサトウキビカンショ生産振興生産者経営安定に多大な御配慮、御指導を賜っておりますこと、この場をおかりしまして改めて御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。  本日は、砂糖及びでん粉価格調整に関する法律案に関し意見を述べたいと存じます。  砂糖及びカンショ作物政策の見直しに当たりましては、農林水産省平成十六年八月に砂糖及びでん粉に関する検討会を設置し、平成十七年三月に政策基本方向を取りまとめましたが、私は、この検討会委員として参画をし、地域農業基幹作物であり、地域経済社会で重要な位置を占めておりますサトウキビカンショを守り育てる政策をつくるべきだと強く主張してまいったところでございます。そして、取りまとめられました基本方向は、私ども生産者側意見が十分に取り入れられたものであると理解をいたしております。  この法律案は、この基本方向を踏まえ、かつ、その後の産地側との協議、検討を重ねた内容に即したものと判断をいたしておりますので、基本的には賛成するものでございます。  しかしながら、十九年度からの新たなサトウキビ及びでん粉原料用カンショ品目別経営安定対策への移行に当たって、サトウキビで約三万戸、カンショで約一万五千戸の生産者を始め、関係者が幾つかの点において将来への不安を持っているところでございます。  これらの点につきまして意見を申し上げますが、生産者がこれからも意欲と希望を持って生産を続けられる政策となりますように、国会での十分な審議を心からお願いをする次第でございます。  まず、サトウキビについてでございますが、第一に、最低生産者価格を廃止し、新たに生産条件格差を補う交付金交付する制度となるわけでございますが、生産者手取り水準がどうなるのか、最も不安に思っているところでございます。  申すまでもなく、現行手取りは、最低生産者価格関連対策も含め、トン当たり二万四百七十円となっておりますが、販売価格生産者手取り分交付金を合わせ、現行手取り水準確保することが生産者経営安定とサトウキビ増産を図る上で必要不可欠であると思っております。  第二に、新たな経営安定対策による交付金交付対象者の問題でございます。  対象者が絞られ、サトウキビ作りができないのではないかという小規模生産者の声が現場にございます。  現在、サトウキビ一戸当たり収穫面積は一ヘクタール未満が七割強と零細であり、かつ高齢化が進んでいるという問題を抱えてございます。今後、産地において認定農業者育成規模拡大作業受託組織育成などの取組を加速させていく考えでございますが、新しい制度において零細農家対象にならないと、鹿児島県の南西諸島耕地面積約五割強、沖縄県で約六割強に作付けされているサトウキビ作付面積が減り、また、両県合わせて約二百三十億円とも言われるサトウキビ生産額が大きく減少することになり、結果として島に住めなくなるということも懸念されます。  鹿児島県では、平成二十一年の生産目標平成十六年に比べ八万トン増の五十八万五千トン、また沖縄県では平成二十一年の生産目標平成十六年に比べ十八万トン増の八十六万五千トンの増産計画を立てております。この生産計画を支える多数の零細農家が頑張れますように、鹿児島県の南西諸島並び沖縄県の現状歴史的経緯を十分認識した上で、対象要件特認設定担い手確保状況を踏まえた特認期間設定を強く要望するものでございます。  第三に、交付金支払時期がどうなるのかという不安が根強くございます。  新たな制度においては、生産者交付申請に基づき、農畜産業振興機構交付業務を行うことになっております。現在は、工場受入れ後、遅くとも一週間以内に生産者支払っております。また、サトウキビ収穫期は十二月から四月であり、営農面は無論、生産者生活設計面でもサトウキビ収入は重要となっております。担い手農家ほど支払時期が遅くなることの影響は大でありますので、何とぞ二週間程度支払われるような対応方を切にお願いを申し上げたいと存じます。  次に、でん粉原料用カンショについてでございます。  第一に、現行行政価格制度を廃止し、新たな経営安定対策に移行するわけでございますが、サトウキビと同様に、生産者手取り水準がどうなるかが問題であります。現行手取りは、関連価格対策を含め、トン当たり三万一千六百六十円となっております。この現行水準確保生産者営農意欲を喚起する上で必要不可欠でございます。  第二に、新たな経営安定対策対象についてでありますが、申すまでもなく、火山灰土壌地帯であり、かつ台風常襲地帯である鹿児島県にとって、カンショ代替作物のない極めて重要な作物でございます。しかしながら、一戸当たり作付面積は五十アール程度と極めて零細であり、生産農家のうち認定農業者の占める割合も五%程度しかないという現状にございます。また、近年のしょうちゅうブームにより、しょうちゅう向け原料が増えてまいりましたが、カンショ用途別仕分も、でん粉用のシェアを現状で四五%、平成二十一年度で四四%の現状維持を見込んでいるところでございます。今後とも、でん粉用カンショの位置付けは変わらないと考えております。今後、産地において認定農業者作業受託組織育成に全力を挙げていく考えでございますが、零細農家が支えている生産現状を十分御認識された上で、サトウキビと同様の特認による対応を強く要望をいたします。  第三に、交付金支払時期の問題でございますが、サトウキビと同様の対応を切にお願いを申し上げます。  次に、でん粉の抱き合わせ措置の廃止の問題でございます。この制度は故山中先生がおつくりになった措置でございまして、正に国産でん粉生命線としての制度でございました。この抱き合わせ措置が廃止されることによって、国産でん粉需要が確実に確保されるのかどうかという懸念がございます。場合によっては国産でん粉から輸入でん粉需要がシフトする事態も想定され、でん粉工場は大きな在庫を抱えることになるのではないかと心配をいたしております。国産でん粉自給率が現在一割強と低水準にある中で、新たな制度においても、国の責任において国産でん粉の確実な需要と販路を確保できる対策を講じていただきますように、よろしくお願いをいたしたいと存じます。  最後に、新たな経営安定対策環境変化対応した仕組みとすることが重要と考えます。  具体的には、WTO農業交渉やEPAにより国際規律が強化された場合や、砂糖及びでん粉国内価格が変動した場合などにより生産条件格差が拡大した場合などにも的確に対応できる仕組みとし、このような場合にも生産者所得確保できることが重要であると考えます。また、輸入砂糖並びに輸入でん粉などの調整金を徴収し経営安定対策の財源に充てるとされておりますが、交渉によっては、市場アクセス水準が引き下げられ調整金水準の大幅な削減が求められた場合など、十分な対応が可能なのか心配いたしております。将来的にも安定した政策となるよう、万全の予算措置が必要と考えます。  加えまして、原料作物は、甘蔗糖製造業者並びにでん粉製造業者あって生産が成り立っております。新たな制度においては、これら製造業者に対しても交付金による政策支援が行われるということであり、申すまでもなく生産者事業者は車の両輪でございますので、この点につきましては大変感謝をいたしているところでございます。  現在、甘蔗糖鹿児島沖縄両県で十五社十七工場体制カンショでん粉鹿児島県で二十八工場体制となっております。これらの製造事業者合理化による製造コスト削減努力を重ねておりますが、原料生産量の減による操業度の低下や小規模工場ゆえコスト削減の限界という課題にも直面をいたしているところでございます。今後、製造業者工場の再編も含め更なる合理化を求められることになりますが、交付金水準によっては製造業者経営に多大な影響を与え、場合によっては製造中止に追い込まれることも想定されますので、交付金の算定に当たっては十分な検討お願いを申し上げます。  以上、様々な意見を申し上げましたが、新たな政策生産者が前向きにとらえ努力を重ねていくように政策誘導していくためには、生産者並び関係者の不安を払拭し、円滑に新制度へ移行する環境を整えることが重要でございます。  サトウキビ及びカンショは、全国的には極めてマイナーな作物でございます。鹿児島沖縄両県にとって、ただ単にサトウキビから砂糖原料を作る作物、また芋はでん粉を作る作物ということだけでなく、島の人々が今まで生きてきた、そして、今からもこれからもこれで生きていくという地域にとって最も重要な作物なのでございます。環境国土保全の機能を持っている作物でもございますし、また長年にわたって地域の文化を支えてきた作物でございます。  参議院農林水産委員会の下で産地の実情を十分踏まえていただき、努力した者が報われる政策となりますよう心からお願いを申し上げ、私の陳述とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
  5. 岩城光英

    委員長岩城光英君) ありがとうございました。  次に、梶井参考人お願いいたします。梶井参考人どうぞ。
  6. 梶井功

    参考人梶井功君) 梶井でございますが、委員長、最初のごあいさつ忌憚のない意見をということでございましたので遠慮のないところをしゃべらせていただきますが、特に私は、この農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案、これに的を絞って意見を申し上げたいと思っております。  といいますのは、この今回の法案の非常に大きな特徴は、経営安定施策一定規模階層以上の経営に限定してやっていくんだと、それで構造改革を加速させるんだと、こういう趣旨になっておりますけれども、私は一定規模階層以上、例えばこれ、示されているところですと例えば四ヘクタール、都府県で四ヘクタール以上とかなっておりますけれども、施策対象一定規模階層以上に絞った形でもって経営安定施策を講ずるということは、構造改革の加速になるんではなくて、私はかえって減速になるんじゃなかろうかというふうに思っております。その点を中心にお話ししたいと思うんですけれども。  お手元に今日、五ヘクタール以上農家階層変動という表をお配りいただいたかと思うんですけれども、これは都府県数字でございますが、この数字は、これは一九九〇年から一九九五年、九五年から二〇〇〇年と、こうなっておりますけれども、いずれもセンサス数字の比較であります。  この農業構造動態統計というのは、先生方御存じだと思いますけれども、ただ、九〇年のセンサスのときの個票と九五年のセンサス個票で比べて、九〇年のときに例えば五ヘクタールだった農家が九五年には幾らになっているかということを一々突き合わせた上でもって集計している非常に特徴のある統計なんですね。世界でもこういう統計を作っているのは非常に珍しくて、大変統計情報部、苦労して作っている統計だと思うんですけれども。  それで、見てください。九〇年から九五年のこの五年間でもって、期首戸数といいますのは、九〇年に五ヘクタール以上の農家都府県で二万六千四百十八戸でした。これがこの五年間、九五年までの間の五年間でもって、規模が変わらなかったのは一万九千七百六十一戸。この五年間に五ヘクタール以下へ規模縮小してしまったと、この規模縮小の中には、これ便宜上離農も含めてありますけれども、六千六百五十七戸あった。五ヘクタール以下へ五年間で規模縮小してしまったんですね。  当然、二万六千四百十八戸は、六千六百五十七戸、五年間の間に減っちゃうわけですけれども、逆にこの五年間の間に五ヘクタール以下の階層から規模拡大して五ヘクタール以上になったという農家が一万五千九百十五戸ありました。つまり、五ヘクタール以下に規模縮小する方よりも、五ヘクタール以下の方々でもって意欲を持って、おれは頑張ろうということで意欲を持って規模拡大した方が一万五千九百十五戸。三倍近くいたということなんですね。  それで、結果として、九五年の期末戸数は三万五千六百七十六戸というふうに増えました。増えたわけです。つまり、二万六千四百十八戸の中から六千六百五十七戸、二〇%以上は規模縮小しておっこちてしまうけれども、おっこちてしまう以上に五ヘクタール以下の方々から規模拡大して上がってくる方がいたからこの五年間でもって五ヘクタール以上の農家が増えたわけですね。  同じことは九五年から二〇〇〇年の間でも見れます。数字を見てください。期首戸数は三万五千六百七十六戸、その中で二割ぐらい、二割以上の七千七百六十二戸は五ヘクタール以下に規模縮小してしまいました。しかし、その倍ですね、一万五千九百二十戸が五ヘクタール以下のところから新たに規模拡大して五ヘクタール以上になったと。それで、結果として四万三千四百三十八戸に増えましたと、こういう形なんですね。  この九〇年から九五年、九五年から二〇〇〇年、この間の農産物価格状況というのは、諸先生方御存じだと思いますが、九〇年から九五年まではそんなに悪くないですよね。それから、決定的に悪くなりますのは私は九九年からだと思いますけれども、九五年から二〇〇〇年の間もまあまあ良かった時期なんです。そういう時期でも、五ヘクタール以上の農家方々でもって、せっかく五ヘクタール以上になったにもかかわらず、何らかの事情でもって二割以上は規模縮小せざるを得ないような状況に置かれる。これは、これだけ何万戸もいればいろんな事情が働くわけですね。働き手が病気になったとか、あるいは家族がけがしたとか、そういう形でもって規模縮小せざるを得ない、そういう条件が働いて、二割以上、下へおっこっちゃった。  しかし、この条件農産物価格が良かったという条件の中では、五ヘクタール以下の方々の中から、よし、おれはこの状況の中で頑張って規模拡大してやっていこうじゃないかと、営農意欲を燃やして規模拡大やった方々規模縮小する方々よりも多かったと。これが多かったから、九〇年から九五年、九五年から二〇〇〇年というふうに五ヘクタール以上農家の増という形でもって、言わば構造改善は進んだわけですよね、進んだわけです。  私、先ほど九〇年から九五年、九五年から二〇〇〇年は農産物価格条件がまだ良かった時期だと、こう申し上げました。そういう時期でもこうなんです、そういう時期でも。だからそうなるんですね。  それが、この数字は、これは構造動態統計取ってごらんになればすぐ分かりますけれども、ただ、三ヘクタール以上という形で取ってもほとんど同じ数字になります。三ヘクタール以上取りましても、ほとんど同じような構造になります。一定数はどうしても、幾らいい条件の中でも何らかの事情でもって規模縮小せざるを得ない農家は出てくる。しかし、反面で、農産物市場条件が良ければ、営農意欲を燃やして上がってくる方がいると。そういう構造がある中でもって、そういうメカニズムが働いている中でもって構造改善は進むんだと、こういうことですね。  今度の新しい経営所得安定政策でもって一定規模階層以上に施策を絞る、その施策対象にならない人は、今後、これから見通されるのは、農産物価格は一層低下するぞという見通しの中でもって裸で放り出されるということになったら一体どういうことになるだろうかと。  施策対象になる一定規模階層以上の方でも、この五年間の間に五ヘクタール以上は二〇%以上が規模縮小せざるを得なくなったということが示しておりますように、私は、やっぱり二〇%とは言わないまでも、一〇%とか、必ず規模縮小せざるを得ないような状況に置かれる方はかなり出てくると思うんですね。今後は絶対そういうことがないよという保証は何もないわけです。当然、下へおっこちるという可能性は出てくるんだということを前提にしていろいろ考えなきゃいけないんです。  しかも、なおかつ、あんたはもう施策対象外よということでもって低農産物価格状況の中に放り出されるというときには、その状況の中でもって、おれは意欲を持って規模拡大やっていこうという方が出てくるでしょうか。私は出てこないと思うんですね。出てこないと思う。  これは、もう四年前のあれになりますか、三年前のあの〇二年の農業白書の中でもって、これは新潟県の農林水産部の調査を引用した形でもって農業白書は紹介していましたが、例えば、十年ぐらい前は規模拡大にとっての障害は農地の出し手がいないということだったと。しかし、今やそうじゃなくて、価格条件が非常に悪い、悪い上に生産調整の重荷がかぶさってくると、そういうことでもって拡大意欲をなくしているというのが農業白書でもって引用をしておりまして、それで構造改善見通しは非常に暗いということを白書は結論しておりました。  そういう状況に私は、これからは、特定規模階層に絞った形でもって施策を講ずるというふうなことをやったら、この数字が示しておりますように、もう下から、つまりこの施策対象よりその下が、四ヘクタールなら四ヘクタール以下の方々から、意欲を燃やしておれ頑張ろうというふうな意欲を取っちゃうわけですね。取っちゃうわけです。上昇してくるということを期待できない。しかし、片や、施策対象にしている人たちの中からは、確実に何%かは私は下へおっこちてしまうだろう。下から上がってくる方をいなくさせておいて、おっこちる方はこれはもう防ぎようがないということからすれば、これは構造改革の加速になるんじゃなくて、構造改革の減速になるんじゃなかろうかというふうに、こう思っております。その点が一つ。  それからもう一つ、この施策対象を絞るということに関しまして、私、大変危惧を持っておりますのは、これは施策対象外方々が今現実にどれだけの耕地面積をカバーしているのかと、そういう問題なんですよね。  これも数字申し上げるまでもないかと思うんですけれども、都府県でいいますと、三ヘクタール以下の方々のところに耕地面積の七〇%は耕作しているわけです、現実に。それが急速に担い手のところに動いていくという条件がそんなにあるわけじゃない。これから長期の中でもって構造改善進むかもしれませんけれども、七〇%は現に耕作しているわけです。その七〇%の方々がこれは施策対象外よというふうな形でもって放り出されるということになったときに、一体本当に食料自給率の方は大丈夫なんだろうかと、これが大変気になります。  特に問題になりますのは、今回の新しい基本計画の中では、自給率四五%、これ達成していくために何が必要であるかということで、いろんな主要作物作付面積はみんな減になっておりますよね。減になっているやつを埋めるために、各作物はみんな単収を上げる計画になっているわけです。全生産者生産意欲をうんと燃やして生産増強に努めてもらわなければ単収は上がっていかないわけです。それが大前提になって自給率の問題というのは計画されている。それに響いてしまうんじゃなかろうか。ここのところが大変気になるところなんです。その点は当然、営農意欲をなくしますと耕作放棄地というふうなものも増える可能性というのは多分にある。農地は動かないで、増える可能性がある。  そうしますと、これ、四百五十万ヘクタールの耕地確保というのが、これは我々の生存権が懸かった数字として今度の基本計画でも、これは頑張っていくんだという数字が出されている。その四百五十万ヘクタール確保のところまで響いちゃうんじゃなかろうか。そういう点でいいますと、これからの国民食料の安定確保という点について非常な問題が出てくるんじゃなかろうかということを、この法案に関して私はそういう心配を持っております。  以上です。
  7. 岩城光英

    委員長岩城光英君) ありがとうございました。  次に、蔦谷参考人お願いいたします。蔦谷参考人
  8. 蔦谷栄一

    参考人蔦谷栄一君) 農林中金総合研究所の蔦谷でございます。  私は、経営安定対策と併せて、農地・水・環境保全向上対策、これも含めて意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。  お手元にレジュメのような形で資料をお配りをしておりますけれども、結論的には、一九九九年に制定をされました新しい農業基本法、食料、農業、農村ということで、新たな方向付けをしたという意味で大変評価をしているわけでございますけれども、それに沿った形で価格政策から所得政策への転換が行われる、あるいは本格的な環境政策、こういったものが導入されるという意味では大変私は評価をしたいというふうに思っているわけであります。ただ、二番目に書いてございますように、かなり運用のレベルで問題がやはりあるのではないかということでありまして、この問題をどういうふうにクリアをしていくのかというのが最大の課題ではないかと。  私が今日、特に申し上げたいと思いますのは、やはり基本的にその新しい基本法で方向付けができたとはいえ、なかなか日本農業の基本的なイメージが非常にばらばらではないんだろうかと。一方で非常に、構造改革といいますか大面積、コスト低減と、こういうことを一方でやりながら、一方では環境に優しい農業と、こういったものをどういうふうに調和をさせ、日本的な農業を形成をしていくのかと。そういった一つの共通したイメージみたいな、もっと言えばグランドデザインみたいなものを作って、それに向けて粛々といろんな政策を積み上げていく、あるいは今回の対策もそういった意味で運用もいろいろと改善をしていくと、こういうことが必要なのではないのかなというふうに思っております。  まず初めに、経営安定対策について、若干危惧している点を幾つか申し上げたいと思います。  やはり、面積で基準を作っているということから、とにもかくにも足切りが現実には発生をしてしまう。意図しているかどうかは別として、かなり担い手の絞り込みということが行われてしまうということであります。  ここのところはいろいろ議論があるところでありますけれども、私は、基本的に特定の担い手に絞り込むということが、言ってみれば強靱な経営体といいますか、あるいはコストの低減をねらいとするということで言われているわけでありますけれども、むしろ実態としては、そういう部分は一部あろうかというふうには思うわけでありますけれども、現実には相当耕作放棄地なり遊休地が増加をしてくるというのが実態でありまして、こういった、農地を特定の担い手にある程度集積をしていくということが現実に求められてきているわけでありまして、そういった意味で、そういう農地の集積をバックアップする支援対策といいますか、そういう位置付けで理解することができないんだろうかと。  これが今回の趣旨とどういうふうに関係するのかというのはあるわけでありますけれども、ある程度絞り込みをしながら農地の集積を図る、そういった農地の保全を念頭に置きながらということが大変重要ではないのかなというふうに思っております。  もう一つの懸念が、やはり従来、集落ぐるみでやっていたその村社会でありますけれども、こういったこれまでの紐帯がこの措置によってばらばらになる可能性があるのではないかと、こういったことが大変懸念をされるわけでございます。  もう一方、集落営農、その認定農業者に該当しない者については集落営農ということでありますけれども、順番として見ると、まず認定農業者ありきで、残った人たちで集落営農というのが、なかなか現実にその集落を維持していくためには、やはり両方あって初めて集落が成り立っていたわけでありますし、この認定農業者と集落営農のバランスといいますか、私は、基本的にはその地域営農といいますか、いろんな担い手が一緒になって地域計画を作っていく、そういうことがまず前提になってくるのではないのかなというふうに思っております。そういった意味でも、単純にまず認定農業者ありきと、で、残った人たちで集落営農と、これは一つの手法としてはそういう手法かもしれませんけれども、考え方としてはやはり地域の営農をどうしていくのかと、そこでの話合いが非常に重要なのではないのかなというふうに思っております。  それから、農地・水・環境保全向上対策でございますけれども、いろいろ現場の声を集約をしてみますと、やはり一番出てきている声が、これまでの環境保全問題については有機農家がある意味では大変孤軍奮闘といいますか一匹オオカミ的な形で、日本の中でのその有機農業というのはなかなか認知をされてこなかったわけでございますけれども、そういった中でかなり努力を積み重ねてきたわけでございます。  今回その共同作業に加えて、そういう環境に優しい対策を講じることによって政策支援対象になるということでありますけれども、ここのところは非常にその地域とのこれまでの関係も含めて、あるいはもう一つは、有機農業あるいは環境保全型農業といっても非常にその手法といいますか、これまでの技術の体系というのはいろんなものがあるわけでありまして、そういった意味では地域ぐるみで取組がなかなか今やりづらいという、そういった現状もあるわけでございます。そういう、これまである意味ではリードをしてきた有機農家もこういった支援の対象になるような考え方といいますか、そういったことが運用の段階で盛り込むことができないだろうかと、こんなふうに考えているわけでございます。  三番目のところでございますけれども、これからのその政策をちょっとお話しをしたいというふうに思います。  私は、現地を聞いて大変痛感をするのは、やはり今回の措置措置としていろんな弾力的な運用等々あったにしても、これからの日本農業はどうなるんだろうかと、先行き希望が持てるのかどうかという、ここに対する非常に不安が強いと思います。やはり、この不安を払拭するためには、一定の、もう一回、日本の農業とは一体何かという、こういった議論が本当に必要なのではないのかなというふうに思っております。  時間の関係であれもこれもちょっと申し述べられませんけれども、基本的に私は今日強調させていただきたいと思っておりますのは、やはり農業が生命産業であるという、まあ工場の論理ではなかなか仕切れない不条理な、不合理な命というものを扱っている、あるいは農村の生産と生活が一体になっている、こういったものをやはり大事にしていくということが基本なのではないんだろうかということでございます。そういった意味では、経済合理性をより追求すると同時に、非経済的な価値、多面的機能を含めて、こういったものをより重視をしていく、バランスを取っていくということが大事なのではないのかなというふうに思います。  それから、担い手の関係でございますけれども、やはりこれから人口減少の時代、あるいは真の豊かさは一体何かということが問われる時代になってきていると思うわけでありまして、そういった意味では、従来の高度経済成長期は農村から都市にいかに労働力を供給するかということだったわけでありますが、これからはむしろ、いろんな都市政策、生きにくさというものが募ってきているわけでありますけれども、そういった中でその農村の良さ、あるいは住みやすい農村をつくっていく、そういった都会から農村に対する人口の還流というものが必要なのではないかなというふうに思っております。  そういった意味でも、どんどん高齢化が進む、あるいは荒廃が進んでくるわけでありまして、ただでさえ担い手というものがなかなか確保が難しい。それを選別をするということではなくて、むしろそういう担い手もできるだけ手厚く残す。新たな新規参入、そういったものを可能にするような措置というのがむしろ必要なんではないのかなというふうに思っております。  それから、ここのところが非常に大事だというふうに思っておりますけれども、やはりアメリカ型の大規模、単作の農業というのは日本ではなかなか難しい、特に国際競争力を得るというのはほとんど不可能に近いのではないのかなというふうに思います。そういった意味では、日本の特徴を生かした農業というものが追求すべきではないのかなというふうに思っております。  そういった意味では、ある程度の大規模化志向というのはあったにしても、基本は多品種少量生産、あるいは小規模も大事にしながらの農業ということになるのではないか。その中の大きい柱として、環境にも配慮した優しい農業ということになってくるのではないのかなというふうに思っております。こういった農業を、やはり専業農家、兼業農家あるいは自給的農家、定年帰農、そういったいろんな担い手が多様な形でかかわり合ってつくっていく、そういう農業というものがイメージされる必要があるのではないのかなというふうに思っております。  特に、今回の措置、あるいはこれからの問題として重要だと思いますのは、やはりお年寄りが生きがいを持てるような、やはりそういう農業なり集落、あるいは女性が元気であってこそ農村というのは活気が出てくるのではないのかなというふうに思います。そういった意味で、特定の担い手に着目すると同時に、やはりお年寄りも住みやすい、生きがいを持てる、女性も元気が出るような、そういう農業、農村にしていく必要があるのではないのかなというふうに思っております。  私は、地域社会農業という言葉、あえて地域農業に社会を加えておりますけれども、やはりこれからは農業に加えて地域文化、食文化、お祭り、いろんな多様な要素を農村持っているわけでありますけれども、こういったものを重視をしていく。あるいは、地産地消、消費者あるいは都会から交流をする方、そういった方々総体でつくっていく地域農業地域社会農業、そういったものを一つのイメージとして立てていきたいなというふうに思っているわけでございます。  そういった意味では、今回、価格政策から所得政策に移行するわけでございますけれども、こういった所得政策も含めて、あるいは環境保全対策も含めて、地域全体を見ての地域社会政策、そういった形でこれからいろいろと検討していく必要があるのではないのかなというふうに思っております。  それから、環境関係でございますけれども、やはり今の非常に課題と思いますのは、これからの日本農業環境に優しい、安全、安心、これをどこまでどういうふうに引っ張り上げていくのかという一つの目標なりステップ、こういったものを刻んでいく必要があるのではないのかなというふうに思っておりますけれども、残念ながら有機農業というものはなかなか今現実には認知をされていない状況になっているわけでございます。全体としては非常に、環境に優しい農業環境保全型農業、これが大事だというふうに思いますけれども、これを、全体を含めてやはり一つの基本的な法律の中で、生産から表示、流通、いろんな形でのトータルの基本法的なものが必要なのではないのかなというふうに思っております。  現状は、有機農業あり、GAPがあり、持続農業、エコファーマーがあり、IPMがありと非常に概念が混乱をしている、分かりにくい。そういうこともございますし、基本的にJAS法の中に有機農業も位置付けられているということでございまして、言ってみれば表示の世界に限定をされているということでありまして、むしろこれからの日本農業の在り方の中にきっちり位置付けて法的な対策も講じていくことが必要ではないのかなというふうに考えております。  こういったことに向けて、取りあえず今必要とされる対応ということで最後にまとめさせていただきたいと思いますけれども、やはり基本的には、まず多様な担い手あるいは地域にふさわしい適地適作を基にした、やはりそういう地域営農計画、地域農業計画、これの策定を是非強力に進めていただきたいというふうに思います。補助金をもらうための集落営農だとか認定農業者と、そういうことではなくて、あくまで地域営農をどうしていくのか、地域農業をどうしていくのか、ここに本当に集落ぐるみあるいは消費者も含めて地域営農をどうしていくのかという、そこの岩盤をきっちりやった上で必要な担い手が支援を受けていくと、こういうのが筋道ではないのかなというふうに思います。  それから二番目に、やはり要件がいろいろあるわけですけれども、北から南まで、あるいは多様な日本の自然条件というと、本当に盆地一つ隔てると相当状況が違うわけでございまして、そういった意味では極力可能な範囲で弾力的な措置お願いをしたいというふうに思います。ある意味では、その地域事情を優先をした形で支払がなされればというふうに思っております。  それから三番目でありますけれども、やはりこれからの日本農業の在り方といいますか展望といいますか、やはりこれを早く協議をしてほしいというふうに思います。いろんな食と農の再生プランなり、今回の新農政プラン等々出ておりますけれども、まだもう一つ、農家の実感として、これからの農村をどういうふうに持っていくのか、自分たちとのかかわり合いというのが非常にまだ希薄な部分が非常に多いのではないのかなというふうに思います。やはり今回の担い手問題、これだけ議論になっているわけでありますから、そういう担い手がどうやって地域を守っていくのか、そういったことが十分納得できるような、そういう計画、ビジョン、そういったものを早急に作っていくことが重要ではないのかなというふうに思います。  以上です。
  9. 岩城光英

    委員長岩城光英君) ありがとうございました。  次に、村田参考人お願いいたします。村田参考人
  10. 村田武

    参考人村田武君) 愛媛大学農学部におります村田でございます。  本日は参考人陳述の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。お手元に本日用の陳述メモを配付していただいていますので、ほぼこれに沿って発言させていただきます。昨年三月まで九州大学農学部におりましたので、本日の陳述の主としてフィールドとしますのは北九州米麦二毛作地帯を念頭に置いておると、これに愛媛県等加えておると御理解いただければと思います。  さて、新たな食料・農業・農村基本計画は、旧計画の見直しの域を超えた大掛かりな農政改革として策定され、その実質的な目標が、国境措置に過度に依存しない政策体系への移行と望ましい農業構造への構造改革、そして食料自給率の向上にあるとされているものと理解しております。  それを推進する中軸的な施策としての経営所得安定対策等大綱における品目横断的経営安定対策の提示は、低い国境措置の下で、構造改革自給率の向上を同時に達成するという原理的に困難な課題を実現せんとするものでありますけれども、構造改革を実現してこそ自給率の向上が達成されるという政策的な論理構成を取っているために、構造改革の優先度がより高くなっております。そのため、同対策対象担い手に限定するという、欧米の直接支払政策には見られないところの直接支払それ自体に農業構造の改革を期待するという意味での日本型になっていると理解いたします。  以下では、農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案を中心に意見を申し上げたいと思います。  メモをめくっていただきまして、二ページ目に参りますが、第一に、対象農業者の限定ではなく、基本的な価格所得政策はすべての生産者、販売者を対象にすべきだということであります。  法律第一条及び第二条二項で規定されている対象農業者の限定は、農業就業者の高齢化の中で水田普通作の認定農業者の形成が弱く、米生産調整にもブロックローテーションなど集団転作での対応を余儀なくされているような地域では大きな戸惑いと混乱を引き起こしております。  認定農業者育成しようにもいかんともし難い地域では、要件が緩められた集落営農をともかくも組織しようではないかということで、農業改良普及センターの普及指導員や農協の営農指導員が連携して集落座談会に力を入れるといった状況にあります。私なども農協営農指導員研修会等に講演で引っ張り出されますけれども、愛媛県のように、裸麦では一千七百ヘクタールという全国一の産地なんですが、しかし全体として水田農業での認定農業者の形成が非常に弱い中では、これは集落営農でいかざるを得ません。当然、そうなれば、営農指導員や改良普及員に対してしっかりと現場で品目横断的経営安定対策を説明し、あなたたちは集落営農を組織しないと、後になって対象から外された農家から不作為責任を問われることになりかねませんよといったような、半ば脅迫的な言辞を弄するといったことになっておるわけであります。  少しメモ以外のところに触れましたけれども、メモに戻りますと、経営安定対策対象に認められる集落営農の要件が、特定農業団体となるか、これと同様の要件を満たす組織に緩和されたとしても、いいのは、農用地の利用集積目標、規約作成、経理の一元化までは何とか対応できるんですね。ところが、主たる従事者の所得目標を定め五年以内の農業生産法人化計画の作成、これにはちゅうちょせざるを得ないと。というのも、現実の集落営農は非常に多様であります。兼業従事者がオペレーターを担当するのは当たり前という組織がたくさんあります。定年帰農者に期待するしかない組織もあります。主たる従事者を育てるのではなくて、不安定兼業農家、特に土建・日雇い型、運送業、トラック運転手等、不安定兼業農家にとって重要な農業所得確保を主眼にした組織であります。そうしますと、正に集落営農は地域の実情に即して多様に組織されているわけでありまして、そのような現実に対して、第二条の二項ロにいうところの「特定農業団体その他」というこの組織の縛り、つまり法人化をタイムスケジュールに織り込まざるを得ないというこの集落営農の組織化、これが苦しいわけであります。  私は、言わばこのような強行的な集落営農の組織化と言いたいわけでありますが、これが戦後の、私、東欧社会主義農業を研究した経緯を持っているんですけれども、かつて一九五〇年代から六〇年代の旧東ドイツを含め東欧諸国における事実上の強制的な農業集団化をほうふつさせますね。あの東ドイツ、東欧諸国の農業集団化が大きな抵抗と農業生産力の停滞を招いた歴史は御承知のとおりでありまして、地域農家の自発性と合意の下にじっくり時間を掛けて組織されるのではなく、政治が迫る集落営農が日本農業の足腰を強くさせ、農村社会の安定、定住条件確保につながるとは到底思えないということを強調しておきたいと思います。  二番目に、食料自給率の向上と対象農産物及びゲタ対策、ナラシ対策の矛盾の問題であります。  法案第二条において、対象農産物の選択が、第一項では「国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要なもの」とされながら、結局のところはWTO農業協定における国内支持の削減対象、つまり黄政策の緑化を主眼とするものになっております。我が国は国内支持削減約束目標を既に大幅超過達成しておるにもかかわらずであります。そこに数字を並べましたけれども、メモの三ページの四行目でありますが、二〇〇二年には七千三百億円にまで減らしております。これは三兆二千四百億円余り国際約束では余裕を抱えておるわけであります。  AMSの削減を主眼にするからこそ、経営安定対策の直接支払を第一条の第一の交付金、いわゆるゲタ対策が導き出されることになりました。このゲタ対策を緑化するためには、過去の作付面積に対する交付金のウエートを高めざるを得ないと。もし交付金の七割を過去面積に支払うという設計をすれば、どういう事態を迎えるかと。小麦過去面積二十ヘクタールの認定農業者が、平成十九年に小麦を作付けせず野菜など対策対象作物を作付けしたとしても五百六十二万八千円の交付を受けることができます。これでは食料自給率が向上しないだけでなく、モラルハザードを引き起こしかねないわけであります。  さらに、AMSの削減を主眼にしたことが、同じく第一条の第二の交付金、ナラシ対策にも、これをいわゆる収入変動影響緩和措置として、ナラシ対策にとどめるものになりました。  私の知る福岡県など北九州米麦二毛作地帯の認定農業者は、異口同音に、米に対するナラシ対策が米価の趨勢的下落の下ではセーフティーネット機能を持ち得ないことに大きな失望の声を上げ、経営の不安定性がますます強まらざるを得ないことに危機感を強めております。なるほど、西日本の大都市近郊の稲作大規模経営の中には、米を農協に、既に一万二千円まで下がっておる米価で、これで出荷するのではなくて、言わば自家精米を、○○家のお米という自家精米、袋詰めで何とか十キロ四千円で顔の見える近隣消費者に販売することで米価下落をしのいでいる経営も少なくありません。しかし、言わば、そのような恵まれた条件環境にある認定農業者は決して多数派ではないわけであります。  そこで、提案であります。  第一に、米に対するナラシ対策を固定型の基準価格に基づく不足払い化すべきであります。法案第四条に、ナラシ対策に水田農業についてのセーフティーネット機能を持たせるということであります。  というのも、品目横断的経営安定対策は、米に生産条件格差是正を目的とするゲタ対策を導入して、それが米の経営安定対策の第一の交付金になるといった事態は想定されていないと考えられます。このレジュメの末尾に、米にゲタ対策が導入される場合を計算しております。関税、現在の三百四十一円が二百十二円二十銭になればゲタ対策の導入の条件ができるわけでありますけれども、しかし問題は、米のゲタ対策交付金生産者価格の合計が米生産費をカバーする事態というのは、これはあり得ません。現在の麦や大豆並みの低率関税と低自給率を米に想定するならばあり得るんですけれども、それは食料自給率の向上が重要な政策目標である限り非現実的であります。そういう意味で、是非ともナラシ対策に固定型の基準価格に基づく不足払いが、その制度が必要であります。  具体的に提案いたしますと、旧稲作経営安定対策、現稲作所得基盤確保対策担い手経営安定対策に代えて、固定基準価格に基づく不足払いを導入すべきであります。  基準価格は全国一本の生産者受取ベースで決定し、その水準は六十キロ当たり一万四千円としてはどうかと。これは全国四、五ヘクタール層の生産費相当であります。もしこれが全国農家、稲作総平均でいきますと一万七千円台になりますが、そこまでは予算との関係から見ても無理かとするならば、四、五ヘクタール層、この一万四千円でどうであろうかと。  これを基準価格として、全国平均指標価格マイナス平均流通コスト、つまり、生産者手取り額がこの基準価格を下回ったらその差額に、全産地銘柄について同一額の補てんをすると。平均流通コストは一俵当たり恐らく二千円から二千五百円でありますので、もし全国平均指標価格が一万六千円辺りを下回れば、一万六千円から一万六千五百円を下回ればこの対策の導入ということになろうと考えておるわけであります。これによって、この基準価格を下回ったらその差額について全産地銘柄について同一額の補てんという方式でありますので、各産地銘柄の販売における安売りモラルハザードの問題は基本的に回避できます。  さらに、この支払、不足払いを生産調整への参加を要件とするならば、現行WTO約束上は青となってクリアできます。  二番目に、生産調整、水田利用複合化(転作)助成、過剰米対策についてであります。  米の生産調整は国のプログラムとして継続すべきであります。  その根拠は、第一に、二次関税を払って自由に輸入され得る輸入米価格生産調整廃止時の国産米需給均衡価格を上回っている限り、国産米の生産調整による市場価格維持の意義と有効性があります。  第二に、日本の水田を食用米以外の作目に利用複合化する必要性は、今後増えることはあっても減ることはありません。そのための政策としても、水田他作目への誘導措置と組み合わせた生産調整が有効であります。  第三に、国の生産調整プログラムとリンクした直接支払として、上の不足払いについて青政策のポジションを維持し得るわけであります。  次に、現在の集荷円滑化対策を、豊作以外の要因による過剰米にも発動できる過剰米対策に拡充し、その処理費用を一万円、これは米の全国平均物財費でありますが、あるいは最低でも七千五百円に引き上げて、実効性を確保してはいかがかと。  次に、麦、大豆についてであります。これは、水田重要品目の例として取り上げますが、第一に、基本的に、品目に対する支払生産費をカバーし得る仕組みとしてはいかがであろうかと。時間がございませんので、その数字ははしょらせていただきます。  小麦、大豆、こういったものについても、これらの直接支払現行WTO約束によるAMSの範囲内で対応可能であります。  もう一つは、水田利用複合化助成として、引き続き麦、大豆、飼料作を水田以外の戦略的作物と位置付けて、十アール当たり稲作所得約六万円の格差補正のために水田利用複合化助成を行うと。小麦、大豆では、上の品目ごと水準による直接支払とした場合、助成額は十アール当たり小麦四万五千円、大豆三万五千円程度となります。ホールクロップサイレージ米を含む飼料作にも直接支払を行うべきであります。重要であるのは、これらは「国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要なもの」であって、食料自給率向上交付金的性格を強めるべきだという視点に基づく助成であります。  以上で陳述を終わります。
  11. 岩城光英

    委員長岩城光英君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 岸信夫

    ○岸信夫君 自民党の岸信夫でございます。  本日は、参考人の皆様におかれましては、大変貴重な御意見を賜りました。本当にありがとうございました。  私たち参議院の農林水産委員会でも、この法案についてしっかりと時間を掛けまして、今審議をしておるところでございます。今までも参考人方々に御意見を伺ったり、あるいは地方公聴会に出て、地方の現場の方の御意見を伺ったりしてまいりました。先日も、この月曜、火曜で、北海道旭川に行ってまいりました。大変大規模農業をされているところでございます。そこで、公聴会また水田を中心とした大規模農家方々にもいろいろな話を伺ったわけでございます。  我々、北海道に参りますと、いつも非常に、空の上から見ますと広大な大地で、広い農地を見ることができるわけです。そういうところを見ますと、非常に生産条件の整ったところで非常に強い農業が行われているんではないかと、こういうふうにイメージとして考えるわけでございますけれども、実際に現地の方のお話を伺いますと、決してそんなに楽なことではないということでございます。  特に、近年の米価下落の傾向が続いております中で、その水田を中心にした主業農家の方が多いと、こういうのも非常にその要因になっているんだと思うんですけれども、その中で、今日のお話にもございましたけれども、品目横断経営安定対策の中の面積要件の部分なんですけれども、これを絞ると経営意欲をなくする農家が出てきてしまう、今日の御議論にもあったと思います。  私自身は、いわゆる土地利用型の農業について、ある程度規模担い手施策を集中していくと、それで強い農業をつくっていくというのは方向性としては正しいんではないかというふうには理解しているわけでございますけれども、一方で、じゃ、どこの規模を切るのか。今回の場合でしたら、四ヘクタールあるいは北海道でしたら十ヘクタールというのがあるわけですけれども、それがいいのか。あるいは、いろいろな御意見の中で、その規模だけではなくて、例えば売上げとかほかの要素を取り入れて、その中でしっかり取り組んでおられる農家に対してもこの対象にすべきである、こういうような御意見も伺ったわけであります。  非常に難しい問題ではあると思うんですけれども、弾力的に運用すべきであるというような御意見もあったわけですけれども、この件について、すなわち、要は担い手集中、このこと自体への御批判もあると思うんですが、今回の法案ということを考えて、今の基準の数字というのが本当に妥当なのかどうか、あるいはほかの要件も入れるべきかどうかということについて、各参考人から御意見をいただければと思います。
  13. 岩城光英

    委員長岩城光英君) じゃ、川井田参考人から順番にお願いいたします。
  14. 川井田幸一

    参考人川井田幸一君) ただいまのお尋ねの件についてでございますが、いわゆる規模だけでこういった担い手というものの位置付けでよいのかというお尋ねですね。  このことについては、私ども四ヘクタールという、北海道以外の地域ではかなり厳しいんじゃないかという、まず思いました。しかし、こういった政策担い手あるいは認定農家等を中心にやっていくという形の中では、今後、そういった大規模農家あるいは法人化された農家づくりを急がなければならないだろうというふうに思っておりますし、救急にはこれでは対応し切れない地方もあると思いますし農家もあると思いますが、私どもJAグループとしては、やはりこういった集落営農あるいはJAの部会等に加入することによってこの四ヘクタールといういわゆる面積のところはクリアしなければならないだろうと思いますし、そういった集落を決めていく、あるいは法人化された農業を認定していくという中では若干の時間が必要かというふうに考えております。  以上です。
  15. 梶井功

    参考人梶井功君) 私、先ほど申し上げましたように、一定規模階層で切るということそれ自体が反対なんですね。それではもう構造改善の加速になるんじゃなくて減速になるというふうに考えております。  その意味で、施策対象者として考えるんであれば、私としては、このナラシ対策の中でもって、三対一ですか、これ参加者にも施策対象者に一定金額積ませるわけですね。拠出させるわけですね。そういうことをやるということが前提になっているとすれば、私は営農意欲のある方、そしてやろうという意欲を持っている方は、すべてこれは施策対象にすべきだと。  その場合の意欲のあるなしというやつを見るのは、例えば生産調整に参加して地域のプランに従って頑張るんだという意欲を見せ、しかもなおかつ、その意欲を見せる具体的な姿として求められている拠出金を積むということをやっていれば、そこで十分に意欲分かるじゃないかと。そういう方を対象にしたらどうかと。別に要件をくっ付けるというようなことじゃなくて、そういう意味で、施策対象者を何らかの形でもって切るというようなことじゃなくて、むしろ、この意欲と能力のある方は全部対象にする。その意欲と能力のあるというのは一体何が決め手になるかといえば、生産調整をやり、地域の計画に従って生産調整をやり、かつ、求められている三対一のうちの、その一の拠出金にせよ、積むということが求められているわけですから、それに応ずるよと、やるよという意欲を、意思を表明している方はすべて対象にすべきじゃなかろうか、そう思っております。
  16. 蔦谷栄一

    参考人蔦谷栄一君) 私は、先ほど申し上げましたように、基本的には財源が限られているということで、特定、絞らざるを得ないのかなという、そういう感じは持っておるわけでございますけど、ただ、面積要件で一律に切るということは大変やはり余りにも差し障りが大き過ぎるかなという感じがしております。  そういった意味では、先ほどお話もいたしましたように、やはり地域全体でどういうふうにその地域農業を守っていくのかという、そういった中で、特定の担い手がどれだけの面積を集積をしていけるのか、あるいは兼業農家がどこまでやっていけるのか、むしろそういう地域の話合いの中で弾力的に決めていってはどうなのかなということでありまして、そういった意味では、全国一律の要件、それではなくて、あくまで地域の話合いで集積をする方にある程度厚めにしていくというような、そういった対応の仕方がある意味では一番地域の納得、あるいは地域の先ほど申し上げましたようないろんな紐帯が崩壊しかねないとか、そういうことがあるわけでありまして、そこはむしろ地域営農計画を作る、あるいは担い手をどういうふうに割り付けをするのかと、そういった中で地域ごとに判断をしていってはどうなのかなと、そんなふうに考えております。
  17. 村田武

    参考人村田武君) お手元に配付されています関係資料の二十八、二十九ページをごらんいただけますでしょうか。福岡県の事例を挙げておりますけれども、現在の担い手集中によって、例えば福岡県、佐賀県といった北九州、全国トップクラスの北海道に次ぐ麦作産地で、平成十五年から十七年福岡県産麦で一万七千ヘクタールほど、これで現行のゲタ対策対象となると見込まれる確定面積はまだ六千三百ヘクタールほどにとどまっております。四割行っておりませんですね。これは、現場では必死になって今集落営農を含めてカバー率を八割までは上げようということで努力をやっておるわけであります。この秋、当然麦の播種が始まる前に確定しなければなりませんので、頑張っておるわけでありますけれども。  二十九ページの知事特認といいますか、特例措置で、所得確保の場合の特例で野菜作を複合している専業的な農家については、ここにありますように、恐らく一・五ヘクタール経営規模で、ハウストマト五十アール、水稲一ヘクタール、裏作麦一ヘクタールといった経営であるならばこれはクリアできるわけでありますけれども、所得確保の場合の特例で救えるわけでありますが、問題は第二種兼業農家なんですね。  その下にありますように、助成対象農家、第二種兼業農家、これは生産調整からの離脱なり農地貸しはがしなりブロックローテーションからの離脱で、福岡県の減反四割ですから、四割減反の中での転作放棄が第二種兼業農家層から動き出しますと、もうにっちもさっちもいかないという困難が現場の中であるわけであります。現実に一定の要件緩和もしながら、販売額や集落によって農地規模の差に基づいて特例措置も導入していますけれども、現場では、これは残念ながら、麦作、大豆作、一〇〇%ゲタで対象にするなんということは困難だということで危機感が強まっているということだと思います。
  18. 岸信夫

    ○岸信夫君 ありがとうございます。  確かに、非常に日本全国でそれぞれ様々な形で行われている中で、画一的な規模要件というものを付けるということに多少やはり無理があるということもあるんだと思います。ただ、こうした施策を取っていく上で何かの基準を作らなければいけないということなんだと思いますが、それを、要件に達しないところをカバーすべき集落営農でございますけれども、この点について蔦谷参考人にお伺いしたいと思います。  今回、農地の集積を進めるためのツールとしての集落営農組織をまた担い手対象にしていく、こういうことなんですけれども、地方を考えてみますと、近年非常に、いわゆる地域の力というもの自体が非常に弱まってきておると思うんです。その中で、なかなか集落営農を組織自体を組むことが難しい。これは、非常に人間的な部分も含めて、そういう事態というのも起こっているんじゃないかというふうに思うわけですけれども。  先ほども御意見の中でもございましたけれども、集落営農、一つは単独での担い手、それから集落営農、また場合によっては、そこにも乗ってこないという方が出てくると。できる限りそういう形ですくい上げていくというのが本来の目的というか方向性だとは思うんですけれども、現実として、この施策が果たして地域にとって地域の連携を強めることになるのか、あるいはそれとも、かえってこれがゆえにばらばらになってしまう可能性があるのか、その点も資料の中には御指摘されていたと思うんですけれども、少し詳しくお伺いできればと思います。
  19. 蔦谷栄一

    参考人蔦谷栄一君) 大変もろ刃の剣の要素を持っているというふうに思います。やっぱり、この要件をどういうふうに持ち出すかによって、意欲を喪失する可能性を持った方がたくさんおられるというのは事実だろうと思います。  したがって、この地域のまとまりをやっていくためには、繰り返しになりますけれども、やはりその地域で土地利用型の作目と、技術集約的なそういった作目、適地適作を含めて自分たちの地域、そこに畜産、果樹、野菜、米、麦、そういったものをみんな含めて、そういう生産形態をどうやってやっていくのかということ、やはりその中に多分、兼業農家あるいは自給的農家、いろんな人たちの役割というものが出てくるのではないのかなというふうに思うんですよね。  したがって、これを単にお米だけ、あるいは土地利用型作目だけに限定をして、あなたはこっちの升に入りますよと、あなたはそうじゃないと、こういうことではなくて、やはりその地域全体をどういう農業へ持っていくのかと、そういう話合いの中で、一つのお互いの分担関係といいますか、ちょっときれい事になるかもしれませんけれども、お互いにすみ分けをしていく中で、米、土地利用型の農業については今回の対策をこういった形で受けていく、あるいは別な形で環境保全対策をそれ以外のところでいただいていくとか、やはりそういうことになってくるのではないかと。  基本は、やはり今回の営農計画を作るときに、土地利用型だけでやることの大変難しさといいますか、むしろ先ほど申し上げましたように、高齢者なり女性なり、やっぱりそういった方々の出番も含めて考えていくということになれば、やはり地域全体のいろんな多品目を含めた計画作り、それを彼らが主体になってやっていくということが基本になってくるように思います。
  20. 岸信夫

    ○岸信夫君 ありがとうございます。  それにも関連してくるんですけれども、地域のことなんですけれども、今回、車の両輪という形で資源、水、環境保全ということが出てきておるわけですけれども、この我々の議論の中でもなかなか、いわゆる内容が具体的にまだはっきりしない。実際には、非常にある意味大切な部分だと思うんですね。いわゆる農業、いわゆる農業生産だけの側面ではなくて、やはりその地域を守っていくと、こういうところから全体の農業を救っていくような形に持っていくためにも、この辺りの考え方というのは非常に大事だと思うんですけれども、なかなかはっきりとした形、イメージができてこないんですけれども、この点について蔦谷参考人、どういう形でこの部分を持っていったらいいかということについてお話しいただければと思います。
  21. 蔦谷栄一

    参考人蔦谷栄一君) これ、やはり一つ現実に実践をしておられる中心になっているのは有機農家だと思うんです。それと、全般的に減農薬、減化学肥料という、そういう動きも広まってはきていると思うんですけれども、非常に大事なことは、そういう孤軍奮闘してきた有機農家の経験なり知恵なり、やはりそういったものをできるだけ一般化をしていく。確かに、有機農業というのはレベル、ハードルが高いと思うんですけれども、そういった方々の知恵、力、経験をかりながら、いかにその地域全体に広めていくかという、その環境保全型の中で一つの目標として有機農業というのがあると思うんですけれども、現実的にどういう刻み、ステップを組んでいったらいいのか、やはりそこのところの具体的な進行表といいますか、あるいは目標としてこういったところまで行くんだと。  したがって、最初から有機農業と言ってしまえばなかなか難しいのかもしれませんけれども、レベルアップという形で、やはり地域での、取りあえず農薬を三分の一に減らしてみるとか、あるいは半分にしていくとか、そういう刻みの仕方になるのかなというふうに思っております。  それと、この環境というのが、ともすれば、農薬、化学肥料の使用量ということにかなり限定をされるわけですけれども、やはり基本は土づくりから、いろんなローテーションから、持続的、循環型の農業を進めていくというのが基本的な考え方だというふうに思います。  したがって、そういう土づくり等々も含めて、ベーシックな農業技術といいますか、やはりそういったものを集落それぞれで共有化をしていくという、そういった中にいろんな環境問題、生き物調査だとか、いろいろ最近出てきておりますけれども、そういったものを位置付けていくということが大事なのではないかというふうに思っております。
  22. 岸信夫

    ○岸信夫君 ありがとうございました。  村田参考人にお伺いしたいんですけれども、WTOとの関連ということになるかと思います。  このたびの担い手政策、先日からのこの委員会でも、この政策というものが今進行中の交渉を先取りした、WTOの結論を先取りしたものではないということは大臣以下から御答弁いただいているわけでありますけれども、一方で、既にある国際ルール、これにのっとって施策を進めていくと、これはある意味では非常に重要なことであると思いますし、また、国際競争の中に入っていくいずれにしてもわけですから、そうした中で我が国の農業経営を強めていくと、こういうことも必要なんだと思うわけですけれども、いわゆる国際的に見て力強い農業にしていくということに、そういう観点から今回の施策考えた場合に、果たしてそういう形に、体力強化という形に、体質強化という形につながっていくのかどうか、この点について、もう一度お話をいただければと思います。
  23. 村田武

    参考人村田武君) 結論から申せば、体質強化につながるということにはなかなかいかないのではないかというこの政策の持っている矛盾というか困難さを感じます。  やはり、今行われていますこの新しい直接支払というのは、一つのデカップリング型の農政というのは国際潮流ですね。EUもアメリカでもそういう動きの中で、それは、言ってみれば既に日本が今目指している農業構造の改革というものがもう一段階完了した段階での、言ってみれば相当規模の大きな、半ば企業的な、家族経営であっても半ば企業的な経営生産の大宗を担っている農業構造が成立している下での直接支払なんですよね。  それであるだけに、これが社会的に意味がある、社会的に、一般国民にとってもこの支払が意味がある、公正だということで、いよいよ、いわゆるグリーニングと言っていますけれども、環境支払型へ、農地の保全が国土の保全につながり、できれば持続型の農業を行っていく、超集約ではなくて粗放型の、持続型の農業を行うということを前提にして、環境支払型になることで国民との折り合いを付けていっていると考えられるわけですね。  そういう国際的な動きの中で、我が国は言わばWTOの国際ルールにのっとって政策転換をしなければならない。しかし、そこは多くの方が主張されているように、東アジアにおける水田、東アジア・モンスーン地帯の水田農業なんだと。この農業構造を欧米型の一定の規模層の企業型の経営が担うという、そういう農業構造で農地、国土保全ができるかといったときに、それは違うだろうということが多くのところから主張されていることとのかかわりですね。  岸先生の御質問とのかかわりでいけば、これは残念ながら、日本のあるべき、求める農業構造の展開を、先ほどの梶井先生も主張されていたような、むしろ農村に混乱を起こして定住条件を揺るがしてしまう危険性の方が高いということから、御質問とのかかわりでいえば、残念ながら強化につながらないよというふうに主張せざるを得ないですね。
  24. 岸信夫

    ○岸信夫君 なかなか厳しい御意見でございます。  本当に我が国としてしっかりと自給率も上げていかなければいけない状況の中では、まだ議論すべき点もあるのかというふうにも思っております。ありがとうございました。  甘味資源につきまして、川井田参考人にお伺いしたいと思います。  今回の品目横断には、例えばてん菜は入りますけれども、御地元のサトウキビは品目別の施策と、こういうことになるわけですね。てん菜が品目横断に移行することで、サトウキビも含めた甘味資源の施策全体が今回見直しと、こういうことになるわけですけれども、サトウキビ生産農家の皆さん、非常に零細規模でございますね。その中で、地域としては非常に厳しい中ですけれども、特に離島も含めて、面積という意味ではなかなか農地集積も難しいような環境だとは思います。  ただ、その中で、例えばこのところの実績を見てみますと、面積については、二十年前大体三万六千ヘクタールぐらいあったのが、ずっと減ってきて、このところは二万三、四千と了解していますけれども、減ってますね。単収も非常に下がっているというような状況だと思います。  農家戸数も減っておられるということで、一戸当たりの面積というのは余り変わってないんだというふうに思いますけれども、そうした中で、今回の品目別の面積要件についてですけれども、非常に難しい面もあるんじゃないかというふうには思っております。その中での今回の法改正に対する御評価について伺いたいと思います。
  25. 川井田幸一

    参考人川井田幸一君) 評価をというお尋ねなんですけれども、私ども今回のこの改正に当たりまして、鹿児島県で担い手要件から外れる農家、どういうふうな割合になっているんだろうということで実態調査をいたしました。その結果を見ますと、サトウキビで三五%、カンショで五九%のいわゆる政策支援対象外になるという、見込まれる生産者の割合が非常に高いということでございます。また、沖縄はそれ以上の対象農家が出てくるのではないかというふうに考えておりまして、そういう意味でいきますと、やはり今後こういう、私ども組織体としてJAの役割が非常に大きくなってくるんじゃないかというふうに考えております。  そこで、JAの部会強化というか、部会に参加をさしていただきまして、その中で作業受託あるいは経営規模を拡大されていく、先ほどありましたが、意欲のある農家担い手をつくり上げていく、これが必要じゃないかというふうに考えております。そうすることには、やはり先ほどごあいさつで申し上げましたように、特認としての期間なり、あるいは勉強する場をお与えいただきたいと、これが私どもの考え方でございます。
  26. 岸信夫

    ○岸信夫君 ありがとうございます。  先ほどもお話ありましたでん粉用カンショの件なんですけれども、最近いわゆるしょうちゅうブームということで、そちらに原料を取られてなかなか原料不足ということもあるんだとは思いますけれども、工場ですね、現地の鹿児島にもかなりの数の工場がおありになる、そこでの操業率が非常に低くなっておられるわけです。  合理化とか、より生産性の向上というもの、あとそれとともに価格のコストダウン、競争力の強化と、こういうことも非常にこれから重要になってくるんではないかと思いますけれども、そうしたいわゆる鹿児島県の産業としてのもう少しその構造強化、こうした面についてお話しいただければと思います。
  27. 川井田幸一

    参考人川井田幸一君) 今、でん粉工場の操業率等についてお尋ねをいただいたところでございますが、確かにしょうちゅうブームということで、十六年度の二十八工場の平均操業率は五七%ということで、この原因は、もう一つにしょうちゅうブームによるしょうちゅうの増産ということで取られたというのが大きな要因であったというふうに考えています。  今後、このしょうちゅう向けが一つのブームなのか、あるいは本格的なしょうちゅうの形なのかというのの見極めは必要でございますが、やはり鹿児島県におけるこのでん粉用原料カンショという主体的な形は変わらないだろうというふうに思っておりますし、このでん粉工場が存在することでしょうちゅう工場が、まあ並立するというか、そういう動きも、流れもございます。そういった意味では、先ほど申し上げましたが、今後、でん粉用カンショというのは原料シェアの四五%程度を推移していくんではないかというふうに考えているところです。
  28. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 時間が参りました。
  29. 岸信夫

    ○岸信夫君 終わります。
  30. 郡司彰

    ○郡司彰君 民主党・新緑風会の郡司と申します。  今日、四人の参考人の方に大変ためになるお話を伺いまして、これからの審議の示唆をいただいたんではないかなというふうに思っております。  限られた時間でございますので、それぞれからお話を伺いたいと思いますけれども、まず川井田参考人にお伺いをしたいと思います。  鹿児島県のJAの会長でいらっしゃいますから、私の方からお話をするようなことは今更何よというようなことなのかもしれませんけれども、協同組合という組織でございます。社会的にあるいは経済的に弱い立場といいますか、そういう階層方々がまとまって向上を図っていこう、そういうような組織であるというふうに理解をしておりますわけでありますけれども、今回の新法をその前段の取組から見ますと、国としては農業の分野においても集中と選択というような手法を取るんだと、こういうような言われ方をしてきたわけであります。  そういうようなことからいたしますと、農業というのは、工業とかその他の経済活動とは一線を画すんだと言われてきたところにも、そういう手法を取らざるを得ないというような時代になってきた。その中で、先ほど会長からのお話にもありましたけれども、生産者が絞られてくるだろう、あるいは、時によって島に住めなくなるような可能性も出てくる人たちもいるんではないか、そのようなお話がございましたけれども、この新法がもたらすことの結果として、一つは勝ち組といいますか負け組といいますか、極ができ上がったり、そういうことが多分に懸念をされているわけでありますけれども、これは農協、JAのこれまでの理念、皆様方に、ひとつ一緒にやろうじゃないか、みんなで一緒に取り組もうじゃないか、万人は一人のために、一人は万人のためにというような標語でも表されてきたところでもありますけれども、こうした理念が崩れるのではないかという疑念を抱いている方も大変多いんではないかと思いますけれども、会長のお考えをお聞かせいただければと思います。
  31. 川井田幸一

    参考人川井田幸一君) ただいま先生お尋ねの件でございますが、確かに今回のこういった政策というか、移行するに当たって、私どもJAグループにも生産者にも戸惑いはございます。しかし、いわゆる法律でそうした形に移行していくという流れの中では、私どもJAグループあるいは生産者もそれに沿った対応をしていかざるを得ないだろうというふうに考えております。  現在、鹿児島県、畑作地帯が非常に多うございまして、零細規模農家が多いということ等もあって、特にこの集落営農という概念は今までなかったわけでございまして、これをどうつくり上げていくかが今大きな課題になっているところでございます。  そういった中でございますが、私ども農協組織でその役割をしっかり果たしていこうということでございまして、作業受託を中心にした組織づくりをやっていかなければなりませんし、いわゆる集落営農だけでいいのかという問題もありますが、先ほど申し上げましたJAのそれぞれの専門部会の強化というか、機械化等も含めた共同利用というか、そういうものをしっかりつくり上げていって、この移行するいわゆる法律案に沿った形をつくり上げていかなければならないだろうというふうに考えます。  先ほど岸先生お尋ねのときにも申し上げましたが、そういった意味で、今回この三年間の移行期間を与えていただいたということにつきましては、私どもJA関係者というか、非常に有り難いと思いますし、その三年間の中でしっかりつくり上げていきたいと思いますし、その三年後にどうなったかという検証もしていっていただきたいなというふうに考えています。
  32. 郡司彰

    ○郡司彰君 ありがとうございました。  続いて、梶井参考人にお聞かせをいただきたいと思いますが、先生、いろいろなところでいろいろな時代に農業に対しての御提言をたくさんされてきたんだというふうに思っております。  先生の持論といいましょうか、お話の中に常々、この日本の農業政策というのは反省をするという機会が少ないんではないか、それをきちんと行わないから逆に信用されないんではないかというようなお話も承っているところでございまして、その点からすると、先生のお話の中では、時に、情勢は変わっていないんだ、情勢は変わっていないんだけれども、情勢は変わったといってやる施策が余りうまくいっていないということが情勢そのものじゃないかというような話もございました。  先ほどのお話を伺っておりますと、今回の新しい担い手の新法に対しまして、余りうまくいかないのではないかというようなお話がございました。  大変恐縮な言い方でございますけれども、これまで行ってきた施策が余り効果を上げなかったというような見方をなさっているとすれば、あるいはまた、反省がなかったということの言い方をかりるとすれば、国としては随分思い切った手を打ってきたのかなというふうに私は思うんでありますけれども、今回の施策、先生の目からごらんになって、長い歴史をひもといていただく時間がないんでありますけれども、簡潔に、これまでのことを振り返ってみてどのような評価点をお付けになっていらっしゃいますでしょうか。
  33. 梶井功

    参考人梶井功君) なかなか大変難しい問題ですけれども、私は、少なくとも農政で例えば基本法農政が展開した時期、それで、基本法農政の展開に伴っていろんな諸法制なんかも変わってまいりました。例えば農地制度なんかの問題に関して言えば、基本法の展開を見越して七〇年改正でもって自作農主義農地法から耕作者主義農地法に大転換したわけですね。あれなんかは正に私はむしろ政策としては非常に的を射た政策であり、対応も良かったと、こう思うんです。  問題は、問題はしかし、今度の政策の中なんかでもって、確かに例えば水田農業なんかについて構造改善後れている。後れている原因は一体何なんだということを私は十分に詰め切っていないというところが非常に問題なんじゃないかと思うんです。例えば、先ほど私、〇二年農業白書の分析を紹介しておきました。あそこで明らかに言ってることは、今の価格低迷、先行きの見通し困難、これが規模拡大意欲をなくさしているんだということを白書は分析しているわけですね。  じゃ、それに基づいての施策というのは一体何であるべきなのかといったら、その価格低迷の状況を一体どういう形でもって脱却するのか、あるいは、その先行き見通しが不透明だというのに対して透明な見通しをどうやって与えていくか、ここにあると思うんですね。ところが、今回の施策はそれに対してこたえているか。それにこたえていないわけですね。というのは、その一定階層に絞るというふうなことでもって、これで構造改善は加速化すると、こうおっしゃっている。本当に加速化する要因ありというふうにだれも実証していないわけですよね。むしろ今までの現実は、こういうことをやったんじゃ、今まで下から上がってきた人たちのやつを落とすことになっちゃわないか、上がらせなくしてしまうじゃないか、マイナス要因になるんじゃなかろうか、そいつを私なんかは非常に心配しているわけです。本当に今、構造改善、加速化が必要だということにすれば、一体じゃ何が一番それにとってプラスになるんだということを事実に基づいて僕はもっと詰めるべきだと思う。白書の分析で、なぜあんな分析やったにもかかわらずその分析をちっとも生かそうとしないのか。  あれについて、御承知だと思いますけど、私は非常に頭に来たことが一つあって、こういうことで言っていいのかどうか分かりませんが、忌憚のないところを言えというから申し上げますけれども、朝日新聞が珍しく農業白書を社説で取り上げてしかりましたですね。こんな弱気なことでどうするんだと、かつての明治の革新官僚みたいな国士的気概を持って構造改善当たれと、農業構造の改善の見通しは非常に暗いというようなことを書くのは一体何事であるかとしかっていました。  僕は、朝日のしかり方はおかしいと思うんですね。現実に難しい状況がここにあるという形の分析出したんですから、それに対して、じゃ具体的にどうやったら一番いいんだということを議論すべきなのに、逆に構造改善意欲をなくしているといってしかるだけなんですね。そのしかられたせいかもしれませんけれども、今度逆にそいつをじゃどうしたらいいかというので、加速させるには特定階層だけてこ入れして手当てしていけばいいだろうという発想に行っちゃった。ここのところは、私、間違えているんじゃなかろうかと思うんですね。と思います。
  34. 郡司彰

    ○郡司彰君 ありがとうございました。  梶井先生に少し細かくお話を伺いたいと思いますが、先ほど五ヘクタール以上の移動の話をなさっていただきましたけれども、私、たまたま三から四、四から五という四ヘクタール前後の五年ごとのちょっと資料を探していただいたんでありますけれども、五ヘクタール以上に大変な出入りがございます。どこかの時点で四ヘクタールで区切るということは、これは今先生がおっしゃったその時代的に言うと価格の問題があったのかもしれませんが、それがあるなしにかかわらず一定程度の状態の移動というのは常にあるんだろうと思うんですね。それを一定のところで何ヘクタールというところで区切るということのこれ難しさというものは相当政府の方も分かっていてやってきたのかなというふうに思うんですが、この危うさがどのような影響地域あるいは農業にもたらすというふうにお考えでしょうか。
  35. 梶井功

    参考人梶井功君) 私、一番問題にしておりますのは、今のこの数字というのは農業構造動態統計を見れば、各階層ごとにそいつは全部出ています。ですから、どの点を取って計算しても似たような計算はできるんです。私も三ヘクタール以上というところで切って計算したことがございますけれども、そんなに違った結果にはならない。  一番の問題は、私は、この特定階層を切ったときに一体その階層から上でもってどれだけの農業がカバーされているんだということなんですね、現実に。先ほど言いましたように、都府県で言えばもう七〇%の耕地は三ヘクタール以下の方々が耕作しているわけです。これから本当に日本農業を担っていってもらわなきゃいけないいわゆる基幹的農業従事者ですね、農業従事を主たる、している人であって、しかも職業としてやっているという人。この基幹的農業従事者で、しかも六十四歳以下というふうな方々はやはり三ヘクタール以下のところに八〇%いるわけですよ、都府県で言えば。その人たちの営農意欲というものをなえさせるようなことで本当に日本の農業は維持できるのか、これが一番問題だと思うんですね。そこのところをどう考えているんだろうか、そこが一番僕は気になる点なんです。そういう点での配慮というものが今度の施策にはないということが一番問題にすべき点なんじゃなかろうかと。  つまり、三ヘクタールにしろ四ヘクタールにしろ、切ったその上で一体どれぐらいの農業生産がカバーされていて、それは今度どれぐらいまでカバーできるような見通しがあるのかということですね。松岡先生が何か新聞にしゃべった話で、これでもって五割ぐらいの面積がカバーされればというような話を何か私、新聞で拝見したんですけれども、五割ぐらいカバーされればいいというようなことで済むんだろうかですね。ということは、五割以下のところは一体どうなっちゃうんだよと。そこのところが生産が落ちていく、あるいは耕作放棄地が増えていくというようなことになったら、これは正に自給問題に響くわけです。それを一番問題にすべきなんじゃなかろうか。五割程度のカバー率でいいんだとは思っていらっしゃらないと思うんですけれども、当面は五割ぐらいなんですということじゃ話にならないと、こう思うんです。
  36. 郡司彰

    ○郡司彰君 あと二つほどお聞かせをいただきたいと思いますが、梶井参考人は、特定農業団体、今回の集落営農に先立つような組織の大分優秀なところでも新法に当てはめてみるとなかなか厳しいのではないかというようなこともお書きになっていらっしゃいますけれども、その点について少しお話をいただきたいのと、それから先生、耕畜連携についても大分述べていられまして、地域づくり交付金ですね、そちらの方に変わったことによるマイナスなどもお書きになっていらっしゃいますけれども、この二つについて簡単にお話いただけますでしょうか。
  37. 梶井功

    参考人梶井功君) これは先ほど村田参考人がこの点指摘しておりましたけれども、私、村田参考人の指摘に賛成なんです、意見はですね。  今度の特定農業団体なんかについての一番の問題点というのは、これは主たる担い手を決めろと、あるいは候補でもいいよと、それについては一定の農業所得、目標とすべき農業所得に基づいて決めるということになっていますね。あそこのところはやはり私は一番の問題じゃなかろうかと。  今の特定農業団体あるいは集落営農なんかの実態を見ますと、集落の人たちのやれる力というものを極力、あなたは何ができるか、じゃ、いつ、何ができるか、そういう持てる力を集めて対応していこうと、地域農業を維持していこうというのが今の特定農業団体あるいは集落営農なんかが頑張っている姿ですよね。その中では特定の担い手を決めるんだと、担い手はこれですよというのを決めるのはなかなか難しい。  私、今日お配りしていただきましたあれに、滋賀県の一つの例を例示として挙げておりましたですけれども、あの中でもって中心になっているのは、皆さん全部勤めを持った方々です。勤めを持っている方々がその中でもって自分はいつ何ができるかということを相談しながら皆の力を結集して、しかし、例えば米なら米の生産性という点でいえば滋賀県なんかの平均水準をはるかに上回る高い生産性を上げている。そういうことを可能にしているわけですね。そういう体制を大事にすべきなんじゃなかろうか。そこへ、おまえのところの特定農業団体はだれが中心的な担い手だよと、そこに所得はどれくらい上げさせることが目標なんだと、こんなことを言わせるようでは、これは話にならないんじゃなかろうかというふうに思っております。  交付金の方のやつは環境の方に関連してですか。──失礼しました。  私、その点に関しては非常に問題なんです。といいますのは、農業生産やるのは一定のこういう担い手ですよと、認定農業者ですよと、あなた方はもうそれの対象外ですよという形でもって営農意欲を失わさせておいて、それでいて農道なり水路なり、その環境保全も含めて集落でもって頑張りなさいと。それで、集落の非農家も含めて、そういう団体でやるんだったら交付金出しますよ。そういう形でやっても、私、実効上がらないと思う。というのは、おまえさんはもう農業生産担い手じゃないんだからという形でそでにしておいて、その人たちが農業施設の維持管理、それに一体どれくらい意欲を燃やすことができるでしょうか。これはできないと思うんですね。
  38. 郡司彰

    ○郡司彰君 ありがとうございました。  続いて蔦谷参考人にお尋ねをしたいと思いますけれども、お話の中に日本的農業というような言葉が何度か出てまいりましたけれども、そのグランドデザインを示すことが大事なんだというお話もございました。私どもが考える場合に、そのグランドデザインのファクターというのはどういうものがあって、また優先順位からいうとどのような形になるのか、簡潔にお話しいただけますでしょうか。
  39. 蔦谷栄一

    参考人蔦谷栄一君) やはり水田農業が基本になるというふうに思っております。やはり適地適作といいますか、その地域に合ったものをできるだけ作っていくのが一番生産性が高い、あるいはいろんな文化も守っていけるということでございます。  そういった意味では、村田参考人からもお話がありましたように、単にお米を通常に作るだけじゃなくて、いろんな形で、ホールクロップサイレージだとか飼料用に活用していく、いろんな形で水田を有効活用していくと、これがまず基本的に重要なイメージだろうというふうに思っております。  それともう一つは、やはり日本は森林の大国であるということでありまして、そういった意味では、森と、先ほど耕畜連携というのもあったわけですけれども、林畜経営も含めて、やはり地域全体として林業、農業、こういった視点で地域考えていく、デザインをしていくことも大変重要ではないかというふうに思っております。これに加えて、やはり環境に優しい、あるいは家畜福祉、循環型と、こういったものが基本的なファクターになるのではないかというふうに思っております。
  40. 郡司彰

    ○郡司彰君 ありがとうございました。  私も、やはり日本というのは米に何といっても適していると、ポスト米は何だといったらやっぱり米だと。飼料作物でもいい、セルロースにして、あるいはでん粉質を使ってバイオマスエタノールを作ってもいい、そういうような形をやって水田を維持するのが一番いい、いざとなったら熱量にもできるというようなことも含めて常々言っているんでありますが、今、水田というのは、一方で、先ほどからお話がありますように、地域で水の管理やなんかをしなければいけないということになっておりますね。  私、ちょっと資料をいただいてびっくりしたんでありますけれども、一九九〇年から二〇〇〇年までの十年間に、農家の集落が十四万から十三万五千に、ちょうど五千ぐらい減っていますね。それから、五戸以下の集落というのが大変に増えて、十戸以下の集落というのも合わせて七千八百ぐらい増えている。当然のように、五十戸以上、百戸以上の集落は激減をしているというような形になっているんです。  この政策がもたらす結果で、先ほど川井田会長の方からは、島に住めなくなるような人たちも出てくるかもしれないんだ、だけど受け入れるんだというような話がありましたけれども、この日本的農業と言われる中の形が今回の施策で、蔦谷参考人の方については評価をするんだと、運用の問題なんだというような話がありましたけれども、私は、もしかすると根本的に大変なことになるんではないかという危惧を持っておりますが、その辺はいかがでございましょうか。
  41. 蔦谷栄一

    参考人蔦谷栄一君) 今の先生の御指摘、大変うなずくところ大でありますけれども、そういう一つのイメージを議論をしながら取りあえずのステップを刻んでいくしかないのかなという大変現実的な思いでおります。  ただ、いろんな弾力的な運用をやって、ばらばらということではなくて、やはり十年先、五十年先、やっぱりそういったものをにらみながら積み重ねることによって、やはり将来に通用するといいますか、堪えられる、そういう方向性を持った形で展開していくべきではないかということが趣旨でございます。
  42. 郡司彰

    ○郡司彰君 次に、村田参考人にお尋ねをしたいというふうに思いますけれども、大変私どもの頭の中では分かりづらい話もございました。  いわゆるWTOで言っている色ごとの政策というのが非常に実は一般の人たちからすると分かりづらいんだろうと思うんですね。国境措置、過度に依存をしない農業の関係なんだというような形からいうと、緑とかあるいは黄色の政策までは何とか国の方でやってもいいじゃないかというような形になってくる。しかし、先生のお考えの中では青でいいじゃないですかと。これは多様な農業の共存というような形からいえば、当然そういうことも出てきて当たり前なんだというようなことになるんだと思うんですね。  私は、これまでも、どこの国にも食料の主権があって、生命産業であって、どこでも持続的に最大限作るということが世界的な飢餓の問題からいえば必要なんだと。だから、私個人からいうと、WTOで農業問題なんか課題にすること自体が私はおかしいといつも言っているんですが、それを言っちゃおしまいだということになるわけでありますから、それが言えない。しかし、先ほどのような議論の中で、青の政策を国民の皆さん方に理解してもらうためにはどのような考え方を端的に示せばよろしいんでしょうか。
  43. 村田武

    参考人村田武君) 青の政策というのは、今回のこの政府のWTO農業交渉日本提案でも青の政策は堅持と、維持するということを提案をしておる。  これは、御承知のように、黄色と緑の中間、過渡的な意味で、緑とはいけないけれども、過渡的に緑だという意味での青なわけですけれども、これを日本は堅持すべきだという。このドーハ・ラウンドでも、政府、大変厳しい交渉の中で、中川大臣以下大変苦慮されていると思うんですが、これがどう決着付くかということでまた大変な事態を迎えるとは思うんですが、それよりも、少なくともこの間のウルグアイ・ラウンドの農業合意、日本約束についても、何でこんなに超過達成しなければならないんだと、逆に言えばですね。  先ほどありましたようなAMS、黄色の政策削減は二〇%という約束をしているにもかかわらず米を外してしまいましたし、わずか七千三百億円まで減らしてしまう。これは国内における言わば農業予算の縛りというか、削減要求が厳しいということからの圧力だとは理解はいたしますけれども、国際的なWTOとの関連で、今、日本はアメリカやEUから指を指されることは一本も、一つもありませんよね。ウルグアイ・ラウンド合意、約束は粛々と超過達成してきておる。アメリカはこの間、一九九六年農業法から二〇〇二年農業法でも、またぞろ不足払いの復活ですね、枠内ではありますけれども。十分約束の範囲内でやれることは農業予算投入しているわけですよね。  そういう意味で、国民との関係、国内の消費者との関係からいって、私自身も、WTOそれ自体の自由貿易原則を農業に当てはめることの苦しさといいますか、農業の共存につながるようなシステムではありませんので、何とかWTOの合意を農業の共存につながるような方向にしていく国際世論の形成が非常に重要だと思っておるわけでありますけれども、今回の法律、新法案との関係で、WTOとの整合性が第一に出てくるわけですけれども、これはちょっと論理の立て方として行き過ぎだと。やはり、自給率を上げるということが第一の主眼でありますから、これとの関係で政策を立案すべきだというふうに理解しておるんですけれども。
  44. 郡司彰

    ○郡司彰君 あと三分ぐらいでございますので、最後の質問、全員に簡単にお答えいただくのは大変難しいのかもしれませんが、簡単にお答えいただければと思っています。  内容は、私ども民主党も実は衆議院の段階では対案を出しましたけれども、第二条の一項の「その他の農産物」というものに、例えば都道府県でいいから、分権の視点も入れて、一つぐらいは地域の特産となるようなものを入れてはどうなんだというようなことを主張してきてまいりました。  大変時間がなくて恐縮でございます。川井田参考人の方から、そのことに対して簡潔に、そうだ、いや、そうではないんじゃないかとお答えをいただけますでしょうか。
  45. 川井田幸一

    参考人川井田幸一君) 大変申し訳ありません。もう一回、その他の農産、ちょっと質問の趣旨がよく……
  46. 郡司彰

    ○郡司彰君 済みません。  品目横断で品目が決まっておりますね。法律には「その他の農産物」というふうに書いてあって、そこはまだ決まっていないということになっているんでありますけれども、私どもは、都道府県で一つぐらいは私のところはこれなんだというものを加えてもいいのではないかというふうなことを主張しているんでありますけれども、それに対してのお考えをいただければ。
  47. 川井田幸一

    参考人川井田幸一君) それには私個人の意見としては賛成です。
  48. 梶井功

    参考人梶井功君) 私も賛成です。
  49. 蔦谷栄一

    参考人蔦谷栄一君) 賛成します。
  50. 村田武

    参考人村田武君) 賛成いたします。  ただ一つだけ。民主党の中で麦、小麦に限定されたのは、裸麦産地としては何とかやっぱり麦類にしてほしいのと、それから菜種も賛成でございますし、ホールクロップサイレージ米を是非入れてほしいと思っています。
  51. 郡司彰

    ○郡司彰君 終わります。
  52. 谷合正明

    谷合正明君 公明党の谷合正明でございます。  まずは、基本的に私、この法案につきましては賛成の立場で質問させていただきますが、ただやはり配慮しなけりゃならない事項というものはたくさんあるだろうと。特に、私は中国地方を地盤としておりますので、中国地方の中山間地域、集落営農については本当にこれが維持されていくのだろうかという本当に危機感を持っております。  そうした中、早速質問をさせていただきますが、先ほどの質問の中にも、これまでの農政を総括するような反省をしっかりした上でのこの今回の新しい法案なのかというような問題提起がございました。  私も、この本委員会で、旧農業基本法以来この農政が展開してきたわけでございますが、しかしその意図してきたところと逆の状況となっていると、つまり生産構造の脆弱化などがあったわけでございますが、そこでその原因は何かということで農林水産省に尋ねたところ、担い手規模拡大意欲が抑制されたということ、優良農地が出てこなかったということ、また機械化等の進展で兼業農家が土日農業で継続可能になったということ、また価格政策で一律に幅広い農業者を対象としたということに理由を挙げられまして、だからこそ品目横断的経営安定対策が必要だというような答えであったんですが、先ほど梶井参考人に対する質問でしたので、今回、蔦谷参考人村田参考人に、まず、いわゆる旧農業基本法以来の農政の反省点というのは、農林水産省の見解を踏まえた上で、それぞれの参考人の御所見を伺えればと思います。
  53. 蔦谷栄一

    参考人蔦谷栄一君) 私は、やはり基本法農政で追求してきたものが十分に実現できなかったというふうにやっぱり理解をしております。ただ、その理解の仕方が、それで必然性が当然あったというふうに思っています。  既に御承知のとおりでありますけれども、畜産あるいは野菜、果樹については主業的農家が九割前後を占めているわけでありまして、水田、稲作についてだけ主業的農家が三割と。したがって、その構造改革が遅れている、特に土地利用型については遅れていると、こういう評価のされ方をしているわけでございますけれども、私は、兼業農家が残る必要性、必然性はやっぱりあったんではないかというふうに理解をしています。  現実に米の価格がどんどん下がっている、先ほどお話があったようないろんな制約条件もあるわけでありますけれども、今の兼業農家がいるからこそ水田農業が支えられているという、こういう面が非常に私は強いのではないのかなというふうに思います。むしろ、兼業農家を積極的に評価をする。言ってみれば、価格政策とは別なところで農外収入を得ながら地域を守り、お墓を守り、水田を守っていると。こういうのは、逆に言えば日本的な一つの貴重なシステムではないのかと。したがって、私はこの兼業システムというのをもっと大事にすべきではないのかなというふうに基本的に考えております。  ただし、兼業農家も代が替わるごとにどんどん面積が縮小していく、あるいは自給的農家にどんどん縮小していくと、そういう傾向があるのではないのかなというふうに思いますので、そういった意味では、いわゆる農地の出し手として、どんどん集積の必要性がやっぱり出てくる。したがって、逆に言えば、兼業農家が今水田農業を支えている間に、やはり集落営農なり法人組織をつくって、外部からも新規の参入ができるような、あるいはそういう集積をできる能力のある人たちが集まった組織をいかに早くつくるかということだろうと思います。したがって、私は、兼業農家を排除するのではなくて、兼業農家のいる間にやはりこういう集落営農やなんかをうまく活用しながら次のステップを刻んでいくことが大事ではないのかなと。  そういった意味では、新しい基本法ができた。やはりそういった持続的な農業をいかにつくるかという意味で、正に今回の措置、出し方なり運用はいろいろ問題はあろうかと思うんですけれども、大きな方向性としては集落営農、特定の担い手というのは必要になってくるのではないかと考えております。
  54. 村田武

    参考人村田武君) 十分なお答えになるかどうか自信ありませんけれども、旧基本法以来の農政との関係で、私は、とりわけ選択的拡大品目を中心にしながら大型産地形成と大型流通、これは中央卸売市場制度整備を含めて、ねらいとするところの農家経営についても、自立経営型の今日の借地型経営と一定の、目指したものは一定の到達点まで来ているんだろうと。東アジア・モンスーン地帯農業の在り方として相当の構造変動も起こしてきていると思うんですが、ここに来てといいますか、大きく言えば八〇年代に始まるグローバリゼーション、そして一九九五年のWTO自由貿易体制の下で、旧基本法及び新基本法でつくり上げてきた農業の我が国の生産力から、農業構造の到達点が、ここに来て基幹品目のというか、選択的拡大品目を含む基幹品目の価格の総崩れ状態が起こって、これは外圧も含めて、激しくこれまでつくり上げてきた構造を転換せざるを得なくなっているということはよく分かるんですね。  その転換を、今回の新法のような、言わばそれこそ選択と集中型で農業構造を改革するということに絞り込んで展開をするということについての大きな危惧を抱いていると。そういう問題ではなさそうだと。今までつくり上げてきたものを、この構造改革が迫られているにしても、どういう構造改革かというときに、欧米型の農業構造を展望した政策では展望を切り開けないだろうというのが私の主張であります。
  55. 谷合正明

    谷合正明君 続きまして、梶井参考人にお伺いいたしますけれども、今のいろいろな参考人から話がありましたが、ここで集落営農につきまして質問させていただきたいと思います。  私は、先ほど中国地方と言いましたけれども、特に西日本を見ていきますと、集落営農の多くというものが、効率的な農業経営を実現するというよりは、もう少し地域の地縁的なまとまりであったりだとか、地域環境財でもある集落農地を保全するという何か意識が強いんじゃないかなというふうに思っているわけでございます。こういった集落営農、必ずしも経営体でない集落営農もあるんじゃないかと、自然体というふうに呼ぶ学者の方もいますけれども、そういう集落営農の自然体としての集落営農の在り方というのもあるんじゃないかと。  今回の委員会質疑の中で、集落営農にいわゆる参加しない人はいてもできない人はいないという説明があるんですけれども、ただ、本当に別途の基準があったとしても、どこまでこういった方々を守っていけられるのかと。究極的に言いますと、農村を維持していくことというのは本当にできるのか、どういった妙案があるのかといったことをお伺いしたいわけでございます。どうぞよろしくお願いします。
  56. 梶井功

    参考人梶井功君) 正に西日本の方の集落営農に、議員おっしゃるような形のやつが随分あると思います。私は、しかし、そういうふうないわゆる自然体と表現されたような集落営農でも、個別経営でやっているよりははるかに高い生産性を上げているんですね。これは事実です、これは事実。自然体と言われるような、そういう経営体と言うには、なかなかそこまで言えないような集落営農であっても、その地域の個別経営よりははるかに生産性は上げているわけです。それは、集落営農として一つの水田をまとめて、集落としてまとめて使うということからくるメリットというのは非常に大きいわけですよね。  それから、機械の利用なんかについても、個別で使うよりははるかに効率的に使える、コスト安に使える。そういう意味で、経営体と言えないような、自然体として表現されるような集落営農であっても、その地域の中においては生産性をもっと上げていますよと、この事実を私は評価すべきじゃないかと思うんですね。その点が一つ。  そういう点を評価する観点からいえば、今は正にそういう人たちの力も結集して地域の営農をどう守っていくか、またさらに、そういった地域の営農をどう強化していくか、ここが一番のポイントであって、そういう点でいえば、今回のあれについて、この村田参考人の整理の中の二ページのところに、農用地の利用集積目標、規約作成、経理の一元化まではともかく、ここまではいいよと、その後の、主たる従事者の所得目標を定め五年以内の農業生産法人化計画の作成、これにはちゅうちょせざるを得ないと書いているんです。私もそのとおりだと思うんですね。私は、そういう自然体としての集落営農であっても、この一、二、三はみんなできるんですよ、これ。これもまたここで、例えば規約作成といっても、村は村なりに、集落は集落なりにみんないろんな決めを持っているわけです。その決めを文章化すれば、これは規約になるんです。私はそれで十分だと思うんですね。  その点に関して言えば、今、経営基盤強化法に移っておりますけれども、農用地利用増進事業ができたときに、あのときに利用改善団体をベースにして農地の利用調整を集落でやるんだという方向を初めて一九七五年の農振法改正でやりました。それが農用地利用増進法に引き継がれたんですけれども、そのときに利用改善団体を作るというので、それを、今日も何か言っていませんが、規約を作るのが条件だったわけですね。その規約に関して、当時の指導方針として、規約といったってそんな難しいことを考えなくてもいいよと、集落がみんなやっている決めをそのまま文章化すれば規約になるんですということを農水省自体が指導していたわけです。私はそれで十分だと思うんですね、ここで規約なんて言っているのは。そこまではみんなできるんです。だから、そういう形で私は地域を守っていく、これが今は非常に大事なんじゃなかろうか、そう思っております。
  57. 谷合正明

    谷合正明君 続きまして、川井田参考人にお伺いいたします。  今、集落営農の話をしてまいりましたけれども、鹿児島県また沖縄ではサトウキビの耕作ということが面積でも大きいわけでございます。その集落営農、今までの話も基本的には水田地帯を対象にしていたような話だと思うんですけれども、今後、サトウキビの場合は担い手の形態として集落営農はどのような形になっていくのか、どういうふうに、どのような姿があるべきなのか、この辺りについて御所見いただきます。
  58. 川井田幸一

    参考人川井田幸一君) 今のお尋ねいただきました水田との、サトウキビとの絡みというか、サトウキビに限らず、畑作地帯は非常に集落営農の在り方というのは非常に厳しいなというふうに思っております。  と申しますのも、まず水田の場合は水系に基づくいわゆる集落が形成されている。これは日本特有のものでございますが、あわせて畑作の場合は、もうその農家ごとにというか、いろんな様々なものがつくられておりまして、そういったものが今度は逆に団地化されているところが非常に少ないというのがございます。さらには、こういう畑作地帯というか、機械化がまだ十分でないという地域、あるいは農作物ごとにその機械化も違うという面もありまして、そういう面からいきますと、今後のお尋ねのサトウキビ地帯については、やはりハーベスターの受託組織、今これを随時進めておりますが、これをしっかりとやって生産体制をしっかり維持するというか、いわゆる集落的な体制に持っていく、このような形をJAグループを中心に今強力に取り組み始めているという状況でございます。
  59. 谷合正明

    谷合正明君 続きまして、蔦谷参考人にお伺いいたします。  グランドデザインの具体化を早急化すべしという話でございました。先日、公明党の都市農業フォーラムで蔦谷先生に講演をいただきました。そのときも、日本的農業の特質というものをいかに発揮すべきかということが大事だということを言われておりまして、私も全くそのとおりで、日本には安心、安全に敏感な大量な消費者がいると、そしてまた消費者と生産者が近い距離にいるという、これ本当に日本の特質なんだろうと。  その中で、そのときは都市農業を切り口としての日本的モデルを説明されておりましたが、この日本的農業の特質、これを都市農業について言えば分かるんですけれども、これが果たして実際に水田農業、水田地帯に具体的にどのように反映されるべきなのか、そのビジョンをお伺いしたいと思います。
  60. 蔦谷栄一

    参考人蔦谷栄一君) 今お話ありましたように、所得水準の高い消費者が大変大量にいるという、あるいは安全、安心に大変厳しい消費者が多いというのが特徴であると同時に、やはり都市と農村の絶対的な物理的、時間的距離が短いというのは、これも日本的な特徴の最たるところではないかというふうに思います。全国津々浦々、大体東京から半日あれば行けるような状況だろうというふうに思いますけれども、それだけインフラの整備も進んできているわけでありまして、そういった意味では、都市と農村の交流といいますか、やはり地産地消ということもあるわけでありますけれども、基本的には、先ほど申し上げましたように、都市から農村の還流と同時に、やはり顔と顔の見える生産と消費の関係、あるいは食と農の分離をいかに一致をしていくのかというのがこれからの日本農業を守る場合の一つの大変大きいキーワードになってくるのではないかというふうに思っているわけであります。  そういった意味では、大陸の諸国は、近いとはいえ、なかなか物理的に遠い、あるいは日本からいえば海外というのはかなり困難性も伴う、言語も違ってくると。そういった意味では、やはり日本の中で、逆に言えば、都市農業が、正に身近なところで農的な空間を供給すると同時に、新鮮で安全な野菜供給、農産物を供給するということはありますけれども、私はその日本農業の一つの先行モデルといいますか、典型が都市農業ではないのかなというふうに思っているわけであります。  むしろ、海外からの輸入品というものがどんどん増える中で、これと差別化をしていくためにも、やはり顔と顔の見える関係、地産地消あるいは都市と農村との関係、言ってみれば生産者と消費者のコミュニティー、コミュニケーション、そういったものを重視をしたやり方というものは、むしろ全国津々浦々でやれるのではないか、あるいはそういった方向を求めていく、そういったところに地域の特性を生かしていく、地域の特産物もその中にいろいろと工夫をして売り出していくと、こういう流れになるのではないかと考えております。
  61. 谷合正明

    谷合正明君 そうしましたら、最後に村田参考人に、改めまして経営安定対策の品目について、確認の意味で質問させていただきます。  参考資料の中にも、経営安定対策品目は要再検討ということで書かれておりました。先ほどの質問の回答でおっしゃられたことがあったんですけれども、まだ時間がありますので、一分あると思いますので、回答いただけましょうか。
  62. 村田武

    参考人村田武君) 本日配付いただいたところの資料の最後の辺りの提案のところもまたごらんいただければ有り難いんですが、基本は、水田農業の総合的な発展を支える作目というふうに理解することが食料自給率の引上げにとっても決定的に意味を持つ品目ではないだろうかと理解しております。  したがって、米は当然食用米に限らず、現在の産地づくり対策で助成をしてきた転作作目としてではなく、非食用米も、これも対象作目に入れるべきだろうし、麦、大豆それから是非期待するのは菜種であり、先ほど言いましたホールクロップサイレージ米ということであります。
  63. 谷合正明

    谷合正明君 終わります。
  64. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。今日は、四人の参考人の皆さん、本当に参考になる御意見を伺っておりました。  この間の参考人質疑と、それから地方公聴会ということで先日北海道の方に行きました。それで、賛成で推進をしていただきたいという方も含めて、やっぱり懸念ということが非常に出されているというのが一つ特徴だなというふうに思っております。  それで、最初に村田参考人の方からお聞きしたいと思うんですけれども、お話の中で、この担い手対象者の問題、共通した御意見もありましたけれども、限定じゃなく、生産者、販売者、対象すべき、全体すべきだということですとか、それから実際の集落営農の組織という問題についても、現実にはいろいろな形で、実態にかみ合う形で努力がされていて、組織がされているわけだけれども、実情を無視して、上から何かこう規格で、このとおりやらなきゃいけないということで迫っていくやり方というのは決して日本の農業の足腰を強くさせないし、農村社会の安定や定住条件確保につながるとは思えないというようなお話もあって、この点は私も全く同感なんです。  それで、これは北海道の旭川の公聴会のときにも実はそういった話もやっぱり出されていて、例えば肥料の関係での集団つくってやってたりとか、機械で集団をつくってやったりとか、それぞれやっぱりかみ合う形で対応しようということで努力をしてきたわけで、それをこう無理に枠をはめてやると、そもそもやってきた努力が瓦解してしまうというか、そういう逆の問題なんかも触れられていたというふうに思うんです。  今日、私お聞きしたいのは、まず一つは、参考人が述べられていた中で、食料自給率の向上という問題と、対象農産物及びゲタ対策、ナラシ対策の矛盾ということが言われているんですけれども、WTO協定の話も出ましたけど、国内支持の削減対象ということで、生産を刺激するやり方取っちゃいけないというようなことになって、それとのかかわりで、今回やっぱりいろいろこういうふうな形にせざるを得ないということでもあるんですけれども、でも結局そうすると、生産の拡大ですとか、それから実際の中身としてはセーフティーネットの機能も持ち得ないということなんかも述べられているんですけれども、この関係について、もう少しちょっと分かりやすくというか、説明をしていただけたらと思います。
  65. 村田武

    参考人村田武君) 今回私は、対象農業者の限定でなく、基本的な価格所得政策はすべての生産者、販売者を対象にすべきだということと、その背景として、食料自給率向上という新基本法が掲げている目標との関係で、このゲタ対策、ナラシ対策という今回の品目横断経営安定対策というのはつながらないではないかということを、これはもう当初から、考えてみれば基幹的な、地域で基幹的に担ってくれている認定農業者ということに生産者を限定してしまうわけですから、対象を。  あと中小、これは、転作を含めて麦、大豆は何とか今日の生産量まで引き上げてきている中で、対象を限定してしまうことによって、当然のことながら第二種兼業農家を中心にした農家は、これは転作放棄、もう売れる米作り。その売れる米作りといっても、農協に出荷するのではなくて自家精米で近隣で何とか売ると。  御承知のように、西日本の農協の米の集荷率は、もう四割を切っているところが幾らでも出ていますよね。もう東北の八割、九割とは全く違う米集荷の現状がある中での今回の品目横断政策でありますから、これは私はそんなことを期待するわけでも何でもないんですけれども、言わば零細農家型は幕藩期における逃散型の対応をせざるを得ないと、逃げ出してしまうと。自己保存のために逃げ出さざるを得ないという、こういう対策ではよろしくないだろうというのが、私は最初からの自給率との関係で議論してきたところであります。  そもそも、今、構造を何とか改革しながら食料自給率も上げなければならないという難しい課題を負っているときに、農政がこれほどぎくしゃくしたといいますか、言わば農家はみな経済合理主義で動いてくれるなんということを期待するような政策ではなくて、もっと懐の深い政策を展開しないことには農村の活力は失われるというのが目に見えているということだろうと思うんですね。  その点で、私はEU農政の研究者でもあるんですけれども、EU農政は農業財政の削減を目指しておりますけれども、そんなに一挙に減らせるものではないし、まあ時間を掛けざるを得ないと。この間、デカップリングをやってきていますけれども、中小農家の減少が物すごく進んでいっているんですよね。それで、特に農山村から過疎地域での活力が落ちていくものですから、いわゆる従来型の価格支持や直接支払農業政策とみなされてきたものから、地域政策だとか環境支払環境政策というところに大きくシフトしながら農村、過疎地域を維持するために力を入れざるを得なくなっていますよね。  現実に私、驚いていますのは、EUがまた昨年から、初めて生乳の、牛乳の不足払いを始めたんですよ。これは北海道の今の酪農の状況等を見たときに、どんどん直接支払型に転換をして中小農家が崩れていく中で、一番基本である、ヨーロッパでいう土地利用型農業の基本である酪農経営がもたなくなっていくために、一キログラムの生乳に対して三・五五ユーロといいますから五円ほどの、一キロ、ほぼ一リットルに五円ほどの助成金をやはり農家に対して支払わないことには酪農経営が維持できなくなっているという、言わば構造改革の進んだヨーロッパでも、構造改革が進めば進むほど農村ががたがたになっていくという現実にやはり対応せざるを得ないんですよね。  そういう状況を私、他の先進国で見ながら、日本が今どういう政策を持っていくべきかという、価格が総崩れになっていく中で農業生産者を全体としてやっぱり励ましていく政策こそ求められるわけですよね。  私が言った六十キロ一万四千円、これは全農家のコストはカバーし切れませんけれども、例えば一万四千円には、絶対それ以下の米価が下がったときにはちゃんと補てんをしますよという、この一点がありさえすれば私は構造改革も進むだろうし、自給率を何とかこれ以上落としていかないための農村頑張ろうという、国からの農家に対するアピールにつながると思っているんですけれども。  お答えになったかどうか、十分確信はありませんけれども。
  66. 紙智子

    ○紙智子君 先ほども議論になっていて、前回の参考人質疑のときにもやっぱり出されたものでもあったんですけれども、やっぱりWTOとのかかわりを非常に気にして、国内の言わば生産者にとっては非常に厳しい施策を取っているということを、もうちょっと何とかならないのかという思いといいますか、これは参考人のときも出ていましたし、北海道の公聴会のときにもあって、やっぱりもっと工夫できるんだというのもあって、例えば今お話あったような、アメリカにしても不足払い制度を復活しているとか、EUにしてもやっぱり価格政策については二段構えでやっている問題ですとか、そういうことを考えれば日本だってやれるんじゃないのかと、もっと工夫ができるんじゃないのかということが出されていて、その意味で、私は今日、村田先生から伺ったこの中身というか提案されているのは、非常にそういう意味では考える示唆を与えられているような気がしたんですよね。  それで、青という政策がありました。これをやれば、WTOの中でもというか、批判されずにやれるのかなというふうにも思うんですけれども。  もう一つ、過剰米処理のやり方についても提案があって、これも先日北海道を回ったときに作況指数が一〇九で、上川の地域が一〇九で、それで、三十二ヘクタールのお米作っている方が、その過剰米については一体何俵を保管で出さなかったのかということを聞いたら、百七十俵だと言うんですね。百七十俵出さなかったら、結局六千円ということなんだけど、もう普通でいえば半額ですよね。それだけのやっぱり収入減にもつながっているということでもあると思うんですけど。  そういう中で、やっぱりこの過剰米処理のやり方ということでは、提案されているような生産調整を国のプログラムとして継続をして、リンクした形の直接支払としての不足払いで、青の政策でポジションを維持し得るんだということが言われているわけですけれども、これについてもちょっと再度説明をいただきたいと思うんです。
  67. 村田武

    参考人村田武君) 紙先生が御指摘のとおり、私も今回の新政策が余りにWTO対応というんですかね、この点で国内支持を中心に超過達成しているにもかかわらず、したがって、次のドーハ・ラウンドが決着してもこれは国内支持の分野はもう政策を変えなければならないということではないと判断している中で、このような提案をさせていただいております。  この間の地域農業ビジョン作り、つまり新たな米政策改革の中で現場は頑張っているんですよね。そして当然、私は今、福岡県の米麦二毛作地帯をまずイメージしておりますけれども、これからの水田農業の基本は、個々の品目の単収を上げると同時に、農地の、水田の利用率をどうアップするかということが地域農業の基本だろうということが麦作、大豆作の拡大につながっている。つまり、四割減反を前提にした上での地域農業振興を地域でイメージをするわけですよね。  その努力は、一つは、今の助成金制度の下で二十ヘクタール経営で四割減反の中では、麦作経営安定資金及び大豆交付金等を積極的に活用するということの中で農地の利用率を高めることにつながりますけど、期間借地型で麦作それから裏作野菜、こういったものを規模拡大をして所得を上げていくという努力地域的に行われると、典型的には福岡県糸島地域をイメージしていただければいいんですけれども。  そういう取組をしている中で、当然、米を何とか個別に販売してきたけれども、そういう自家精米でやって四千円というのはもうぎりぎりです。現実には四千円で売れなくなってきています。三千八百円がいいところ。筑後地域になれば、もうこれは業者に売らざるを得ませんから、三千五百円で売れたらもう万々歳であります。そういうことからこの過剰米対策が注目をやはり浴びるわけであります。  頑張って生産力を上げながら、収量確保も目指しながらの中での作況が一〇〇を上回れば、現行の集荷円滑化対策の中で安くしか売らざるを得ないというのは、これは規模拡大を頑張っている農家については元気が出ませんよね。  したがって、是非ともその一万四千円を指標価格とするセーフティーネットを張ってほしいということと、もう一点は、この過剰米対策をリンクさせて米対策を取るならば、これは減反が崩れないでいけると。  私は、今回の新法のここがどうやって崩れるかと思えば、第二種兼業農家辺りからの転作離脱が始まって、とりわけ私、東北もそう思います。麦、大豆が、これがない単作型の東北はこの政策から離脱して、もういよいよ米単作型が進むという中で、転作、現在の米の生産調整を崩しては絶対日本の農業の展望ないと思うんですよね。  これをしっかり維持するということからしますと、米についての基本的なセーフティーネットと集荷円滑化対策を拡充ということを確保しておきさえすれば、西日本の稲作農家は転作から離脱をしないで、頑張って転作をやりながら対応できるだろうと考えております。
  68. 紙智子

    ○紙智子君 ありがとうございました。  それじゃ、梶井参考人にお聞きしたいと思うんです。  先ほど、実は聞きたいと思っていたことを既に聞かれたというのはありますので、ちょっと梶井参考人には、この出されている資料の中に書いてある論文の中にあったんですけれども、ばらまき批判という問題が書いてありましたね。  それで、ともすると、いや農林水産の関係はばらまきじゃ駄目なんだと、そういう批判があるから、今、担い手をとにかく絞って、それでやっぱりお金をできるだけ、今厳しい中だから、そういうばらまきはやらないという形で絞ってくるということもあるのかなというふうに思うんですけど、確かに三兆円ぐらいの農林水産の予算の中で、じゃ、その中で無駄に使っていないところがあるのかということになると、私がぱっと考えただけでも、いや本当に必要なんだろうかと思われるところはあります。  北海道でいっても、例えば山の中でちゃんと道路が横にあるのに、こういうループ橋というんですか、ぐるっと円を描くような道路が造られて、途中で予算がなくなってそのままになってもうキツネが通っているような状況があったりとか、農道空港なんかも、最初の発想としては産地のものを新鮮にということがあったんでしょうけど、結局これも使われないようになってしまったりとか、そういったことはあるんだけれども、しかし実際に農業生産にとって必要な部分といいますか、生産者の側から見れば何ら、ばらまかれてその恩恵にあずかったなんという意識の人はいないというふうに思うんです。  むしろ、本当に価格の補償の部分といいますか、少なかったというのかな、いうことはあると思っていまして、そういう点で、梶井先生がばらまきということについていろいろ、もっとこれ自体も、だれが何をとらえてばらまきというふうに言っているのかなということを解明しなきゃいけないというふうに思うんですけど、その辺のところをちょっとお聞かせいただければと思います。
  69. 梶井功

    参考人梶井功君) いや、私、そのばらまきというのはどういう意味なんだろうというのを広辞苑で調べたところ、ばらまきという名詞はありませんね。ばらまくという動詞があります。ばらまくというのは一体何だといったら、ぱらぱらまくと、これは文字どおり、それが①です。②の方は、金品を惜しみなく多数の人に与えることと書いてある。今までそういう形でもって僕は農家の方に政府の方から気前よく与えられたことがありますかって聞いてみたいんですけれども、まずはないと思うんですね。  僕は、その一番の、そういうことで一番、政策、そういうことをおっしゃる方の念頭にあるのは価格政策だと思うんですね。しかし、価格政策であっても、これはばらまいているわけじゃないんですよね。一定の農産物に対する対価として与えている、対価として補償している、これは価格政策ですから。しかも、その価格政策が、私は、よく、基本法でもって所得均衡をうたって以来、構造改善が進まないものだから価格でもって所得不均衡をカバーしてきたという俗説があります。これはもう決定的に間違っているんですね。  例えば、生産費と米価との関係というものも、基本法農政が一番華やかで、米価がうんとウナギ登りにずっと上がってきたという六〇年代から七〇年代の前半までいけば、これは生産費との関係でいえば非常にコンスタントなんですね。ほぼ生産費用の一・九倍です、その線にぴたっと止まっているんです。つまり、コストの、物価の方が上がっていくのに応じて価格は上がってきただけの話であって、特に優遇されて上がっていたわけじゃ全然ないんですね。  それを僕は、生産費並びに所得補償方式という、あの名称が非常に大きな誤解を与えているということで、いつか全中の皆さんにあの生産費並びに所得補償方式という名称をやめたらと僕は勧めたことがあるんですけれども、どうも全中の方々所得補償というお言葉好きで変えなかったんですけれども。そういう従来の価格政策についても、私は、最低限、米を確保するためのもう最低限の価格という性格を持っている。  ちなみに、生産費用の、生産費の一・九倍という価格のラインというのは、戦前、米が自由に売買されていたときの昭和九年から十二年、この間の平均的な米価と、米価と生産費の関係が正にそうなっています、一・九倍から二倍。だから、自由市場に取引されていればそこに落ち着くよという形に、これは非常に僕は、理論的にはそれ説明付くんですけどね。そんなに、ですから優遇米価でも全然なかったわけです。  僕は、優遇米価というふうに言われるようになってくるのは、優遇というふうになってくるのは、米過剰の中でもって米価は据置きになった、それが非常に優遇米価だと、こうなっているんですけれども、それだって、片や生産調整を逆に強制されたわけですね。生産調整強制されれば、作付面積が減るわけですから、当然コストは上がるわけです。上がったのをカバーし切れないで来ているわけですから、そんなに優遇されたってわけでもないと、こう思っております。  ですから、基本的に言って、ばらまき政策なんていったら、先ほど議員がお挙げになったそういう、何か施設投資でもって妙な施設投資やった例、結構ございます。そういうのに関して批判すべき点はあるということは確かですけれども、中心になる政策に関して私はばらまき政策なんという言葉は当たらないんじゃないかというふうに思っています。  その点に関連して、今非常に、現在の所得補てん政策なりなんなりという点でまず第一に考えておかなきゃいけないのは、やっぱり生産調整というものの政策的位置付けというものもこれは明確にしておく、はっきりさせる。政策としての位置付けって一体何なんだと、こいつを抜きにして議論をするから話がおかしくなるんじゃなかろうかと思うんですね。  価格維持のためのカルテル行為であって、これは生産者団体が当然やるべきものだというふうにお考えになっていらっしゃるようです、政府は。私は、そこからそもそも間違いが起こっているんじゃなかろうかと、こう思っております。
  70. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 時間が参っております。
  71. 紙智子

    ○紙智子君 はい。そうですね。  お二人の方、済みません、じゃ最後一つだけ。
  72. 岩城光英

    委員長岩城光英君) もう終わりです。
  73. 紙智子

    ○紙智子君 ああ、そうですか。じゃ、申し訳ないです、終わります。
  74. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼を申し上げます。  参考人の皆様におかれましては、長時間にわたりまして御出席をいただき、なおかつ貴重な、そして忌憚のない御意見を賜ることができました。委員会を代表しまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十四分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  75. 岩城光英

    委員長岩城光英君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案外二案の審査のため、本日の委員会法務大臣官房審議官深山卓也君、財務省主計局次長松元崇君、農林水産省総合食料局長岡島正明君、農林水産省生産局長西川孝一君、農林水産省経営局長井出道雄君及び農林水産省農村振興局長山田修路君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  77. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案砂糖価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案主要食糧需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  去る五日及び六日に行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。加治屋義人君。
  78. 加治屋義人

    加治屋義人君 委員派遣の御報告を申し上げます。  岩城光英委員長、常田享詳理事小川勝也理事小川敏夫理事、岸信夫委員野村哲郎委員松下新平委員和田ひろ子委員、福本潤一委員、紙智子委員及び私、加治屋義人の十一名は、農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案外二案の審査に資するため北海道に派遣され、去る六日、旭川市におきましていわゆる地方公聴会を開催し、四名の公述人から意見を聴取をした後、質疑を行いました。  公述の要旨について申し上げます。  最初に、北海道農業会議会長の藤野昭治公述人からは、今回の施策には基本的に賛成であるが、真に担い手を守る長期的な施策となるよう、生産条件格差是正対策交付水準担い手経営安定に必要かつ十分な所得確保できる水準とすること、また、政策効果が十分発揮されるよう所得税の特例措置を講じること、過去実績を持たない農地については農業委員会があっせんしても受け手が現れない可能性が高いことから、農地の流動化を阻害することのないよう別途の対策を講じること、収入変動影響緩和対策は収入下落に十分対応できる制度とすること、農業委員会など関係機関の負担軽減措置をとること等の意見が述べられました。  次に、北海学園大学経済学部教授・北海道大学名誉教授の太田原高昭公述人からは、所得政策の導入に踏み切ることは高く評価できるが、担い手要件が土地利用型農業の盛んな北海道であっても要件を満たす経営体は三五%とかなり厳しい、食料自給率向上の点からも、より多く対象者確保するため、担い手要件の特例措置を適正に運用すること、農地・水・環境保全対策については、支援水準が低く、また地方の負担を前提としていることから実効性に疑問があること、農家が安心して営農できる制度となるよう現場の動向に注視し、適切な対応を取ること等の意見が述べられました。  次に、全上川農民連盟書記長の高見一典公述人からは、農業者が減少する中で担い手を限定することに対し現場で混乱が見られること、食料自給率の向上に資するものとなるよう生産条件格差是正対策における過去実績は農地流動化を阻害するおそれがあるため、麦、大豆だけではなく、米や野菜などについても別途支援策が必要であること、価格変動影響緩和対策は想定外の価格下落に対応できるよう最低価格保証的な機能を持たせること、環境支払は十分な支援水準確保するとともに、地方負担分を全額地方交付交付金対象とすること等の意見が述べられました。  最後に、農民運動北海道連合会委員長の白石淳一公述人からは、担い手以外の農業者の営農意欲が低下し、食料自給率に悪影響をもたらすおそれがあること、規模拡大している農家ほど米価下落の影響が大きく、耕作放棄が今後も増大する可能性があること、担い手を増やすにはフランスの制度を参考にした対策が必要であること、過去の生産実績のない農地は農地の流動化を阻害する要因になるおそれがあること等の意見が述べられました。  これらの公述人の意見に対し、派遣委員より、施策対象とならない農家は今後どのような経営を目指すのか、米価が下落する中で麦や大豆も作れない農家への対応策についてはどう考えるのか、ミニマムアクセス米の輸入は日本のマーケットに影響を与えないとする考え方についてどう思うのか、農地・水・環境保全対策は本来どうあるべきと考えるのか、担い手に準じた支援対象者の拡大についてどう考えるのか、担い手になれない農家は集落営農にも参加せず離農してしまうおそれがないのか、新たな施策によって食料自給率がどの程度向上すると考えるのか、対象作物地域に応じた特産品等に拡充することについてはどうか、十九年度から施策を実施することについてどのように考えるのか、施策は工程管理と評価によって検証し、必要に応じて見直しを行うことが重要であることなど広範多岐にわたる質疑が行われました。  以上が概要であります。  公聴会の内容は速記により記録いたしておりますので、精細はそれによって御承知願いたいと思います。  なお、公聴会終了後、旭川市等において、大規模な稲作農家あるいは稲作と施設野菜との複合経営を営む農家及び経営の多角化を進める法人の三農場を視察いたしました。  最後に、今回の公聴会の開催等に当たりまして、地元の関係者を始め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。  以上、御報告申し上げます。
  79. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。  なお、地方公聴会速記録につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することといたします。     ─────────────
  80. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案外二案につきまして質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  81. 国井正幸

    ○国井正幸君 自由民主党の国井正幸でございます。  この質疑も随分回を重ねてまいりまして、午前中は参考人質疑等も行わさせていただきました。そういう意味で、今も視察の、あるいは地方公聴会の報告もあったわけでありますけれども、私は残念ながら行けなかったんでありますが、大変こう、何といいましょうかね、やはり全国どこでも同じような考え方があるんだなと思って今の委員派遣の報告もちょっと聞いておったわけでございます。  率直に申し上げて、今回の品目横断的な経営安定対策というものに対して、やっぱり両論、率直のところあると思っているんです。一つは、いや、これで期待できるぞという評価の声というか、頑張っていこうという考え方が、そういう声があるのも事実でございます。しかし、その一方で、果たしてこれ本当にいいのと、農業をやっている立場からして、今回のこの品目横断的経営安定対策というものに対して、何が、おれたちのメリットが何かあるのかねというのを率直に私どもも地元を含めて聞かれます。ですから、そのときに、国際的ないわゆるWTOの枠組み含めて、従来と同じような政策はなかなか取りにくくなってきているんだと、ですからそのことについてはまず一つは理解してもらいたいということを私なんかは申し上げて、そういう中でなおかつ、専らその職業で、農業でしっかり生計を立てていこうという人がやっぱりそれで暮らしが立たぬということでは困るので、そこをやっぱりしっかり支援しようということでやっているという話を率直のところするわけですよ。  しかし、そのときに、じゃ聞くけれども、この役所から示されている資料ですね、これかまくらも雪だるまも含めてですよ、これ公開されていますからね。そういう中で、そういう国際規律との関係でなるというのはまあ分からないわけではないけれども、決して農業者サイドから見て好ましいことだと思っているわけではないと。それは政治の判断としてきっと皆さんの判断はそういうのあるのかもしれませんなということで理解してくれる人もいるし、理解をされない人もおりますよね。よしんば理解されたにしても、今、役所が示している部分は、現行ベースですと直接支払のもこういう形になりますと、今の価格というか、今の支援水準ですね、これをベースにしてこういうことですと、四万だ三万だということでこれ出ているわけなんです。  そうしてくると、この対象者は今までは多くの人が対象になってきた。今度は対象者は限定されますよ、その対象になるためには条件がありますよ、その条件をクリアしてもらわなくちゃ今度は支援できませんよということになっている。そして、支援する中身が従来と変わらないというのでは、これはやっぱり率直のところ国民から見ると、だって、対象者対象面積とそれといわゆる支援水準、それ掛けていって片っ方が減ってくれば、単価が同じだって結局安上がり農政なんじゃないかと、そんなことで本当にいいのかねという疑問が率直のところこれは我々の方にもあるんですよね。  これは与党だ野党だという話ではない。やっぱり現場としてそういう意見があるということはこれ事実なんですよ。だから、今の北海道においても、賛成をする立場であってもそういう危惧の念が表されているということでありまして、我々も党の政調の中でこの法案の採択については賛成をしてきた。  でも、賛成をしたといっても、私個人の思いでありますが、そういうことを万やむを得ず選択せざるを得ないんだなという思いで、一つはこれ対象者の限定というのも万やむを得ない。本当だったら、全部にできればその方がいいに決まっている。しかし、そういうわけにもいかぬ。だから、万やむを得ない。そういう形で対象者を絞り込んだんであれば、やっぱり今よりどこまで良くなるんだ、今度はこういうふうになったんだから今までよりは良くなるぞと、そういうその対象になる、中心になって育てようとしている人、この人に対して施策を集中して、少なくとも今までより良くなるぞということを明確にやっぱりこれはメッセージとして発する必要があると思うんですよ。  具体的には来年の施策ですから、今年のいわゆる予算措置のときに、どこまで金目で積み上げることを含めて、これやんなくちゃならない課題だというふうに思いますが、どうも、いやいろんな条件付けられてきた、対象も限定されてきた、しかしその割に、限定されたがゆえにこういうふうに良くなるんだぞと、そういう思いがなかなか伝わってこないというんだ。  その辺をひとつ、率直のところこれ出してもらわぬと、やっぱり夢とか希望とかいったって、良くなる話が出なかったら夢も希望もなくなっちゃうと思うんですよ。その辺について率直のところいかがなものかと思うんです。これは最後には大臣にこれ聞かなくちゃならない部分あると思うけれども、局長でもいいんですよ、これは。やっぱり、これ準備したんだから。そのときに、しっかりそういう思いというか、それをちゃんと語れるのかと、そういう部分をちょっと聞かしてもらいたいと思うんだよ。
  82. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) お答えいたします。  この品目横断的経営安定対策の中身についていえば、一つは、諸外国との生産条件格差是正のための措置。これは、過去の生産実績に基づく支払が今後は継続的、安定的に受けられるようになるわけでありますから、そういった対象者となられた方には、自分のところへいわゆる緑ゲタとしてどのくらいのものが来るかということが事前に分かるわけでございます。そのことを通じて経営の自由度を高め、規模拡大をするとか新たな作物を導入するとか、そういった経営の戦略が立てられるようになると。  また、黄色ゲタについては当該年の農作物の品質に応じた支払をいたしますので、これは従来どおりいいものを作ろうと、いいものを作ってくれたらたくさん当たるというインセンティブを与えているわけでございます。  また、いわゆるナラシと言われるものにつきましても、何回も申し上げていますが、農業者の負担割合を平均一対二であったものを一対三にするということで、国の負担割合を三分の二から四分の三にかさ上げをいたします。こういった中で、従来、負担感が高いと言われていましたナラシについても、農業者の負担を軽減しながら収入変動の影響を緩和できるように再構成をしたわけでございます。  もちろん、この本対策のみで担い手と言われる人の経営の安定が一〇〇%図られるかということになりますれば、本委員会でも御議論が出ておりますように、規模拡大をしたり、生産調整の拡大局面において麦や大豆の作付けを増やさざるを得ないというような場合についても、この対策の外側として、やはり十九年度予算の上で検討をしていかなければならないと思っておりますし、さらに、予算だけでなく、金融、公庫資金とかですね、税制の面につきましてもこの担い手対策に大きくシフトをしていくということで、十九年度予算編成に当たりまして十分意を用いていきたいと考えているところでございます。
  83. 国井正幸

    ○国井正幸君 税制でどんなことあるのかはちょっと分からぬけれども、まあ細かい議論だから後にするけれども。確かに、これから自分の経営のそろばん勘定をはじけるぞという意味で、私が言ったのは、当初は二つあると。一つは期待する声があるという一方で、危惧の面もあると。  期待する部分ではそういう部分確かにある。そこで重要なのは、是非これしっかり確認をしてもらいたいと思う。いわゆる今の平均的な担い手生産費をもって支援水準を予算上策定しますね。一反歩、それが現行ベースでいえば幾らですか、三万とか何がしというの出ていますね。それはそれで平均的な、担い手の平均的な生産費でもって逆算しての算定になるんだろうというふうに思うんですが、それを超えている、それよりも効率的ないわゆる生産体制にある人たちは、そういう水準でやると自分たちは余計もらえるということになりますから、非常に好ましいことだと、こういうふうに思うわけですよ。  往々にしてこれまであることは、来年になったら、また今度それが、いや生産費が下がったからねということでまた今度その水準を下げてきて、ずうっと馬の鼻先にニンジンぶら下げるような話でいじってきたんでは、そういう期待が期待じゃなくなってしまうということなんです。  だから、やっぱり、ああ、今度はおれたち頑張れるぞといって頑張って、そして多くの所得を手に入れることができるぞといってやって、そうしたら今度、次の年になったら、ちょっとあなたもうけ過ぎというか、だから今度下げますねという形でやられたんでは、これはやっぱりかなわぬわけですよ。それは期待を裏切る形になる。  だから、せめて、未来永劫とは言わないけれども、ある一定期間はここをしっかり固定して、先行きのそろばん勘定がはじけるようなことは今の時点で約束してもらいたいと思うんだ。予算措置だから毎年だと言われれば毎年になるかもしれないが、少なくともこうやって品目横断的経営安定対策とうたっているんだから、毎年毎年算定基準を変えるなんということをしないである一定期間はしっかりこれでやる、そういうことを、どうですか、言えますか。
  84. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) ただいま委員からお話のありましたこのゲタの部分の一定期間の固定というお話でございますが、私どもも先ほど御説明をいたしましたように、やはり予測可能性というものを与えることが非常に大切であると考えておりまして、このゲタの水準については一定期間は固定していきたいと、こういうふうに考えておりまして、そういう線に沿って今予算の積み上げもいたしております。
  85. 国井正幸

    ○国井正幸君 是非、これ正に経営安定ということなんですから、やっぱりそういうことをしっかり先行きの見通しが立てるようにこれやってもらいたいなと、こう思っていますんで、是非ゲタとナラシと含めてお願いをしたいと。具体的には、我々としてもまた来年の予算編成へ向けてその時点でしっかりやらなくちゃならないと、こう思っております。  それから、ちょっと話題変えますけど、いわゆる食料・農業・農村基本法を作り、それに基づく基本計画を作り、さらに基本計画の見直しをしたということで今日まで来ていて、やっぱりここの中で食料自給率の向上というのが一番大きな一つの目標になっているわけですね。数値も出している。しかし、過去五年間やってきた中で残念ながら目標に到達することにできなかった、だから引き続き食料自給率の向上を目指していきましょうと、こういうふうなことになっているわけですね。  したがって、この品目横断的な経営安定対策の中でも土地利用型作物として特に麦や大豆等が入っていると、自給率が低いという中で。それで、これまで米政策との関係から見て、やっぱり転作作物という側面がこれあるわけですよ。麦も大豆も転作作物という側面がある、かつ自給率が低いということもある。だから底を上げるという必要性もある。  そこの中にいわゆる飼料用作物もあるわけです。特に、稲発酵粗飼料と言われているホールクロップサイレージがあるわけですね。これは連作障害もないし、非常にいい。我が栃木県なんかも酪農では北海道に次いで全国第二位の生産県であり、かつ米の生産も全国第八位で、大体両方とも三十二万トンぐらいの生産ベースなんでほぼ同じような状況にあって、私も地元へ帰って、栃木辺りでこのホールクロップサイレージの耕畜連携のきっちりしたことができなけりゃほかへ行ったってなかなか難しいんだから、やっぱりしっかりやったらいいということで、随分頑張ってこれやってきた、定着するようになってきたんですよ。  そういう中で、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用バレイショということにこれなってはいますが、先ほども郡司先生の質問の中に、それぞれの地域でこれはというふうなものを、更にこれに限定することなくプラスしていったらどうなんだという御意見もあって、私もなるほどなと思って実は聞いておったわけでありますが、私はやっぱり自給率の低い飼料用作物等はこういう中で是非加えるべきなんではないかなというふうに思っているんです。  今年こういうことで設計してきたから、今年間に合わないとするなら、来年からの部分でですよ、なかなか難しいとするならば、是非やっぱり今後の課題として、当面じゃこれで出発しますが、全国の農業の実態等をよく精査をして、あるいは農業者の意向等を聞いて、その上で品目についても必要があればやっぱり見直すと、そういう柔軟な考え方というのは、どうなんでしょう、これ、持つことできないんでしょうかね。やっぱり、基本計画では食料自給率の向上というのはこれは最大の命題になっているんですね。そういうものをやっぱり実現するためにも是非必要なんではないかと、こう思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  86. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 飼料作物について言えば、この生産振興を図ることは、もう委員御指摘のとおり、自給率の向上を図る上からも非常に重要なことと認識をしておりますから、従来からも、また今後とも、稲発酵粗飼料の生産拡大でありますとか国産稲わらの飼料用利用の拡大等については十分意を用い、力を入れて支援策を講じていくことと考えております。  品目横断的経営安定対策対象品目についてでございますが、この法案にもございますように、対象農産物の要件としまして、「国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要なもの」と、また、特にゲタにつきましては諸外国との生産条件の格差が顕在化しているものということになってございます。  そうしますと、この飼料作物について見ますと、飼料作物はもちろん家畜のえさとして摂取されておりますから、最終的には畜産物の形で国民に対して供給されるわけでございまして、畜産物あるいは畜産の世界では、これとは別途に、畜産対策としてその飼料作物対策も含めて現在講じているわけでございます。  それから、生産条件格差考えますと、自給飼料の場合には、粗飼料を外国から買ってきた場合と自分で作った場合を比較しますと、案外理解されていないんですが、実は自給飼料を自分で作った方が生産コストがはるかに安いということにもなっておりまして、そういう点からも、現在のこの品目横断の仕組みの中に飼料作物を入れることは現時点ではなかなか難しいと考えております。  ただ、冒頭申し上げましたように、この飼料作物自給率向上のために非常に大切でございますので、畜産政策の中の重要な柱として今後とも力を入れていきたいと考えております。
  87. 国井正幸

    ○国井正幸君 粗っぽい話ですが、我が国の穀物の需要量が大体およそ四千万トンで、家畜のえさに二千万トンだと、米が一千万トンだと、麦、大豆等で雑穀含めて一千万トンだと。米は一〇〇%自給だから、四分の一というのは二五%、それに若干の麦や大豆があるということで穀物自給率が二八%だと、こういうふうなことになっている。  そこの中で、穀物の需要量の半分占める部分はほぼ輸入ですよ、これ、えさとしてはね。だから、そこをやっぱりしっかりやるということもこれは自給率向上に大きく寄与することでありますから、粗飼料という側面もあるし濃厚飼料の側面もあるし、いろいろこれ総合的に是非検討してもらって、この品目の見直しというものについてはやっぱりその都度よく検討をしてもらいたいとこれは思いますので、今後の課題ともなると思いますので、受け止めておいていただきたいというふうに思っております。  それから、やっぱりもう一つは、これからの米の需要量をどういうふうに見るかというのも大切なことだというふうに思うんです。  最近、一・二五ショックという、合計特殊出生率ですね、それで一・二五の話題が出ていましたが、そのときに、昨年一年間に生まれた方が百六万余であって、お亡くなりになった方が百八万余でありまして、合計二万一千四百八人我が国の人口が昨年は減ったということで、今年はそれ以上に人口減るであろうと言われているわけですよね。そういう中でありますから、頭数も減ってくるわけであって、米の消費が伸びるという状況にはなかなかないと率直のところ思うわけでございます。残念な話なんだけれどもね。そうするとやっぱり、今だって平均転作率三五%からの転作はやっているわけであって、よりそれを増やさざるを得ないかもしれない、そういう状況になるわけですよね。ですから、転作作物をやっぱりしっかり作るということは必要なんですよね。そういう側面からも、この稲発酵粗飼料等についてはひとつお願いをしたいということもあるわけですね。  これは、どうなんでしょうかね、産地づくり交付金、今ありますが、この制度を是非私は維持してもらいたいと思っている一人なんです。それは、前にも申し上げたと思うんですが、過去実績による支払が今度の中でありますね、過去実績。すると、過去のない人というのも存在しちゃうわけですね。前にも私申し上げたと思うんですが、私の例なんかがそうなんです。田んぼがありますよと、しかしなかなか転作作物を作るだけの技術もない、時間もない。やれる条件はあるんだけれども、しかしできない、だから水張り管理水田のようになっている。しかし、そういうことだけしていてもこれもったいないから、この際、地域で集落営農でやろうということで、私の地区なんかもなっておるわけですよ。ところが、みんな過去実績が存在しない人たちの集まりなんだ。そうすると、過去実績が発生しないわけですよ。しかし、麦を作ったり大豆を作ったり、その他担い手あるいは集落営農と認定されるような条件はすべてクリアしている、ほかと同じだと、同じ行為をする。しかし、過去実績がないからあんたは駄目よという話では、同じ認定農業者であり同じ担い手でありながら、もらったりもらえなかったりする。どうもこの直接払いの大体七、八割が過去実績だと、こう言っているわけですね。品質、数量の方は二、三割だというんでしょう、ウエートの掛け方として。すると、大宗を成す部分が過去実績がないからといって外れるようでは、これはやっぱり具合が悪いと。しかし、やっぱりこれ、国際規律との整合性との関係から見ると、ないものはないんだから払えないというのも一方の事実だと思う。  そうすると、結局どういう形でそれをやっていくのか。新規就農者を含めて、意欲を持ってこれからやろうという人が芽が摘まれちゃって、全然あなたはそのときにエントリーできてなかったんだからもう駄目だと、努力するとしても何しようがもう駄目ですよと、こういうことではやっぱり我が国の農業の振興、食料自給率の向上なんというのはとても図れない。だから、新たに決意をして頑張るという人はやっぱりそこで対象になって拾い上げていかなくちゃならない、そうでしょう。だって、今認定農業者になったって、その人が未来永劫やっているわけじゃないんだから、何年かするとやっぱり人間というのは寿命があって交代していくわけですからね。  そういう意味合いから見ると、やっぱり実績がなかった人も同じようにこれを処遇するということになると、この産地づくり交付金の今の在り方は、これ転作含めて、是非これ大臣ね、私重要だと思っているんです。こっちである程度使い勝手のいい部分、これはWTO協定上は黄色だ何だというふうに言われるかもしれない。しかし、そうでしょう、我々があえて、緑の政策だけではなくて、イエローカードだということを承知の上で品質、数量に基づく支払をなぜ選択したのか。それは国際規律とは幾ら整合性があったって、我々がやる政治というのは日本国民の中に信頼と納得がなかったら、そんなものは幾ら外国人が納得したといったって、そんなものは政策として選択できませんよ。だから我々はこれをやったわけでありますから、それは幾らWTO協定上黄色だ何だと言われても、現実的な私は農政展開の上で使い勝手のいい産地づくり交付金のようなものは是非これ維持してもらって、地域のバランスを取っていく、このことは非常に大切だと思うんですが、是非、いかがでしょうか、その辺。
  88. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) 私の方から産地づくり交付金について御説明をしたいと思います。  産地づくり対策につきましては、水田において米を含めた品目横断的経営安定対策が導入されますこと、また、平成十九年産から新たな需給調整システムへの移行を目指すこと、こういったことを踏まえまして、米の需要に応じた生産を促進して水田農業構造改革を進める観点から、所要の見直しは行いますが、引き続きこれは措置をするということとしております。  予算規模をどうするのかということでございますけれども、この詳細につきましては、現在も政府・与党間で歳出歳入一体改革という厳しい議論をされているわけでございますが、いずれにいたしましても、十九年度の予算の概算要求時までにこれは産地づくり交付金について要求をしていくということにしていきたいということでございます。
  89. 国井正幸

    ○国井正幸君 是非、これなかなか予算厳しい部分があって、往々にすると、財政当局からすると、今度新たな品目横断的な経営所得安定対策という一本の柱が立ったんだからそっちで行けばいいんじゃないのみたいな話で、片っ方が切られがちになるから、しっかりそこは踏ん張って、我々もそれは協力は惜しまないわけだから、これは大臣先頭にしっかり予算確保してもらわぬと、現実は今言ったようなことで回らない部分というのはできてきますから、是非これはお願いをしておきたいと、こう思うわけでございます。  それからもう一つは、これ集落営農をつくって、助成金等を受け入れる口座を作ると、一つ。それから、販売代金が入ってくる口座も作ると。これはもちろんそういうことでいいと思うんです。ですから、そこへ支援をしていくわけなんですが、そのときにやっぱり私は中山間地域の直接支払で反省すべき点、率直のところあるような気がしているんです。  私の住んでいる隣の町というのは非常に一生懸命頑張っていまして、たくさんいただいているんですよ、この中山間地の直接支払ね。ところが、集団の方にお金がたまっちゃっていて個人の方が少ないんですね。結局、半分半分、原則として半々にするということは我々も議論して決めさせてもらったんですね。しかし、それはあくまでも目安として原則だと。あとは地域の実情の中で決めていいですよという話になっているというわけなんですよ。何度聞いてもそうなんです。ところが、しかし現場に行けば絶対半分じゃなくちゃ駄目だとなっちゃうんですよ、なっているんですよ、これね、現実になっているんです。  そうしますと、兼業農家の人は、兼業農家はそれでもまあいいんですね、所得の道がほかからありますから、まあ何とかそこから持ってきてやる。ところが、専業農家というのはそこからしかお金入る道というのはないわけですね。道ないわけですよ。だから、集団で持っていて、いや、先進地研修に行こう、いろんなことをしよう。それは非常にいいことなんですよ、やられることはいいことなんです。しかし、そういうことでどんどんお金だけが行っちゃって、家へ帰ってきてみたら自分の財布が薄くて、子弟の教育も生活も大変だと。そういう状況があるわけですから、私はやっぱり、原則やっぱりその構成員にお金ができるだけ多く渡るようにしてもらいたいと。  それで、研修経費とか何かが必要なら構成員から徴収すればいいんだ。そうすれば無駄な研修なんというのはやらなくて済むんですよ。それ、研修なんかばかりやる金というのは、これは格好がいいというか予算取りやすいかもしれない。そんな中でろくでもない研修なんかが行われていたら、やっぱりこれは問題だと私は思うんですよ。そういう意味からすると、しっかりと個人に渡るようにしてもらいたいと思っているんです。  そういう意味で、これ、中山間地直接支払は農村振興局長のところでやっているんだと思いますが、そこら辺を明確に僕はしてもらいたいと思うんですね。
  90. 山田修路

    政府参考人(山田修路君) 今、国井委員からお話がありましたとおり、中山間の直接支払交付金の使途につきましては、おおむね二分の一以上をその地域の共同活動に充てるようにということで指導をしております。  これは先生御案内のとおり、担い手が不足しております中山間地域におきましては、農業生産を継続していくためには集落ぐるみのやはり活動が大事だということでこういう指導をしておりますが、ただ、今、先生おっしゃいましたように、その地域の実情によってかなり異なっているというのが現実でございます。生産される農作物も異なりますし、あるいは生産体制の組織化の状況もそれぞれ異なっているということでございまして、地域に支援をしていくよりはあるいは今先生おっしゃいました個々の農家の方の活動を支援をしていくという方が効果的な地域もあろうかと思っております。そういうことで、私どもとしては、そういう原則的な指導はしておりますけれども、地域の実情に応じて交付金の配分を決めていただきたいというふうに考えております。  現実に申しましても、確かに半分ぐらいは地域活動として使っているところが協定自体としては多いんですけれども、一方で、すべて、全体をその地域で使っているというところも一割ぐらいあれば、個人にすべて分けているというところも、数パーセントですけれども、ございます。これは正に地域によって決めていただければいいということでございます。  先生おっしゃるように、なかなかこういう話が地元に伝わらないということでございますので、私どもは、原則の考え方と、例外としてこういうことができるんだということは担当者会議等でも指導していきたいというふうに考えております。
  91. 国井正幸

    ○国井正幸君 是非、こういう品目横断の話をして、今度、集落営農の集団、口座も作ってもらうよと、こういうふうな話なんかも私も地元でしたときに、中山間地域の直接支払も見直しになってからなおきつくなっちゃったというんですよ。そういう、個人に行くんじゃなくて集団で使うような指導がより強まったと、こういうふうなことだから、いやいや、それは私は別の方向をずっと言っているんでということを申し上げてきたんですが。是非、やっぱり地域の実態の中で使えるということにしてもらいたいなというふうに思っておりますので。  こっちの、どうなんですか、このいわゆるもろもろの、農地・水・環境保全向上対策等も、これ行くわけですよね、行くわけでしょう、これ、集落営農に行くわけでしょう。そこの基本的な考え方というのはどういう形になっているんですか、これは。
  92. 山田修路

    政府参考人(山田修路君) 農地・水・環境保全向上対策でございますが、これは先生御案内のとおり、地域において農地ですとか農業用水などの資源がうまく維持保全できなくなりつつあるという現状を踏まえて、農家のみならず非農家の方あるいは都市の方々にもできれば参加していただいて、地域全体の資源として保全をしていきたいというようなことで実施をしようとしております。  十八年度、モデル事業を実施しておりまして、モデル事業におきましては、中山間地域、平場を区別せずにどちらでもできるということでやっております。先ほどお話ありました中山間地の直接支払の中で、その支払を受けて農地なり水路の保全をしている地域もありますので、今度新しく農地・水・環境保全対策を十九年度から本格実施をする際に、その中山間地域の直接支払とこちらの農地・水・環境保全対策支払の関係をよく整理をして十九年度の本格実施に向かっていきたいというふうに考えております。
  93. 国井正幸

    ○国井正幸君 是非ここのところはうまくやってもらいたいと思います。  そうはいいながらも、私は、やっぱり地域コミュニティーをしっかり形成するというのもこれ重要なことですから、全部個々人でやったらいいということを言っているわけではない。やっぱり、それは集団の中で地域コミュニティーを増進をして、しっかりみんなで、やっぱり水路を守るのだって一人じゃできぬわけですから、お互い協力があればこそできるという部分もあるので、そういうものは残しながらも、しかし全部そっちへ行っちゃって個人が成り立たぬような話ではやっぱり余り具合が良くないんじゃないかなと、こう思っているわけでございますんで、是非よろしくお願いしたいというふうに思っております。  それから、今度、米の生産調整の話だけちょっとお聞きしておきたいというふうに思いますが、農業者、農業団体が中心となって生産調整進めることになるわけなんですね。  そのときに、結局、今度、支援対象になる人とならぬ人ができるわけでしょう。そうすると、ならないという人は、もうおれは支援もしてもらえないんだから好き勝手にやらしてもらうわいということになると、これは大変なことになってしまうんですね。だから、やっぱりそういうことにならぬように、そのために集落営農なりをしっかりつくって地域みんなで協力して地域農業を守ろうと、こういうことでやってもらう方向を我々は模索しているわけだけれども、しかし、そうはいいながらも、全部を拾い上げることが可能であるとは言い難いわけですよ。何ぼか落ちこぼれというのができる可能性がある。  そのときに、そういう人がじゃ好き勝手にやらしてもらうぞと、それがモラルハザードの引き金を引いて生産現場がすさんだ形にならぬようにこれはやっぱりやってもらわなくちゃならないんですが、その辺の考え方はいかがでしょうか。
  94. 岡島正明

    政府参考人(岡島正明君) お答え申し上げます。  委員御指摘のとおりでございまして、まず第一点としては、品目横断的経営安定対策対象にできるだけなっていただくということでございまして、対象となる担い手については、認定農業者又は一定の要件を満たす集落営農であって、一定の経営規模以上のものを基本としておりますけれども、小規模農家や兼業農家についても、集落営農に参加する場合や経営面積が小さくても複合経営などにより相当水準農業所得がある場合には対策対象となることが可能となっております。  また、地域で集団的、団地的な転作の推進に一定の役割を果たしている受託組織につきましても、生産調整の推進の観点から、経営規模要件を緩和できることとしており、可能な限り米の需給調整に配慮しているところでございます。  また、委員御指摘のとおり、対象にならない方、そういう方々も出てくるかと思いますけれども、その場合にあっても、需給調整を実施する場合の支援策といたしまして、十九年度以降も産地づくり対策を実施するとともに、当該対策の中で、当面の措置といたしまして、担い手以外の方に対しても一定の米価下落対策が行えるよう措置することとしております。  このように、十九年産からの移行を目指す新たな需給調整システムの下において、品目横断的経営安定対策の導入と併せて生産調整の実効性を確保するため、品目横断的経営安定対策対象とならない農業者を含めまして、生産調整を的確に推進するための対策を講ずることとしているところでございます。
  95. 国井正幸

    ○国井正幸君 大臣、いろいろ局長の皆さん等と、最終的にいろんな疑念もあるものですから、思いを申し述べさせていただいたわけなんですが。  やっぱり今の国際的な環境あるいは財政的な状況、そして今日的な農業構造改革を進めるという必要性等からすれば、私はこの政策を選択するのは万やむを得ないことであろうと、こう思っておりまして、我々はだからこれは成立をさせるという思いなんでありますが、しかしそうはいいながら、さっき言ったように、やっぱり今度は良くなるぞと、頑張れば良くなるよというメッセージがどうしてもやっぱり農村の現場に必要なんだというふうに私は思っているわけなんです。  そういう意味で、いろいろ、これ初めてのことですからね、初めてのことですから、やってみて、いや、思いのほか効果が出たということもあるでしょうし、あるいは、いや、ここは直した方がよかったかなという点なんかも恐らく出ると思うんですね。だから、余り固執することなく、一方では柔軟な見直しも是非してもらいたいし、そうかといいながら今度、所得の安定という側面から見て、ちょっとあんた今年は良過ぎるから下げるぞなんということのないように、こういう部分はしっかりと長期的に見通しが立つようにしながら、是非大臣、現場に対して、何かいいことあるかいなという素朴な疑問に対して、こういうふうにやりたいという思いをひとつ最後にお聞かせいただいて私の質問を終わりたいと思うんですが、よろしくお願いします。
  96. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 国井委員は農政隅々までよく御存じでございまして、その上での質疑ということで、先ほどから拝聴いたしまして、本当にやる気と能力のある経営体が、一条にございますように、経営の安定を図り、そして国民に対する食料供給の責任を果たしていこうということでございます。それがもう最大の目的でございますから、そして他産業並みの所得を目指すということで、あくまでも四ヘクタールとか十ヘクタールというのはスタートラインでございますし、また、御指摘のように、品質向上あるいはまた規模拡大等々で、よりやる気と能力を示そうと思ったにもかかわらず、そんなことにならなかったというのは全く法の趣旨に反することでございまして。  そういう意味で、きちっとした経営体が努力をすればいい結果が出るんだということ、このことを、今は正に法案を審議していただいている最中でございますけれども、全国で御説明を申し上げ、また公聴会でも貴重なやり取りをやっていただいたわけでございまして、仮に法律が成立をさせていただきましたならば、一層そういう趣旨で関係者の皆さんにきちっと御理解をいただき、そしてまた努力が報われるようなインセンティブを付けていかなければならない。  予算措置で決めることも多いというのは御指摘のとおりでございますが、これは毎年の財政当局との協議ということになりますけれども、この法案そのものは、これはもう内閣が決定している法案でございますので、何も農林水産省だけが頑張っているわけではございませんで、財政当局の財務大臣もこの法案に署名をしているわけでございますから、趣旨は十分御理解をいただいた上で、実態がきちっと成果が出るようにこれからも努力をしていきたいと思います。  何よりも、当委員会委員長を始め委員皆様方の御指導を賜ることが何より頼りでございますので、引き続き御指導のほどをよろしくお願いをいたします。  決して、安上がり農業、農政を目指すというものではないということは改めて申し述べさせていただきたいというふうに思います。
  97. 犬塚直史

    犬塚直史君 民主党・新緑風会の犬塚直史でございます。  今日は、農林水産委員会の大変貴重なお時間をちょうだいをいたしまして、カネミ油症問題についての質問をさせていただきたいと思います。まず、御配慮いただきましたことを心からお礼を申し上げます。  皆さん、多分もう御存じだと思うんですが、若干背景を御説明申し上げます。  一九六八年、昭和四十三年ですので、東京オリンピックから四年後になります。正に日本が高度成長をひた走っていた時代に、日本の食品安全にとって非常に重大な事件が起こりました。まず、原因不明の鶏の中毒が西日本を中心に二百万羽起こりました。そのうち四十九万羽が死んでしまうという事件が起こりまして、その後、全く同じ原因による食品中毒被害が、やはり西日本を中心に一万四千三百二十名という被害の届けが出たわけであります。  今、この三十八年前に起こった事件が何で今、いまだに引きずっているのかといいますと、主に言いますと二点ございまして、まず第一点は、いまだに被害者が確定していないということであります。今申し上げた一万四千三百二十名の被害者のうち今年の一月末で被害者と認められた方、食品中毒と認められた方が千八百九十二名しかいないということでございます。ということは、残りの一万一千名の人たちはいまだに何ら救済措置がとられていない。  これ、何でこんなことになったかといいますと、ダイオキシン類の人類始まって以来の経口摂取、口からの中毒なんですけれども、このダイオキシン類が原因だと分かったのが事件起こってから三十年後だと。当時は全く原因が分からなかったということに起因しているということが一点ございます。ここから始まりました医療手当あるいは生活手当、そして専門の医療機関や研究機関の設置等々は、民主党議員立法という形で先月末参議院に提出をさせていただきました。  もう一点の原因が、実はこれは仮払金の返還の問題であります。この問題は、実は七次にわたる訴訟のうち二つの下級審で国の責任が認められまして、そして国による仮払金が、人によって違うんですが、大体三百万円から四百万円ぐらいの金額が支払われたわけでございます。しかし、弁護団の判断で最高裁で訴を取り下げたためにこの仮払金を返還しなければならないということになってしまいました。この仮払金の返還業務が十年の時効を前に一斉に行われたために、健康被害にプラスして更にいろいろな悲劇を生んできたということがこの事件の二つ目の大きな理由でございます。  今日は、この仮払金の問題だけに絞りまして中川大臣にいろいろと御質問さしていただきたいんですが、実は大臣に三月の九日の参議院の予算委員会におきましてこの件につきまして質問さしていただきましたところ、大変前向きに御答弁いただきまして、患者さんの今事情も考慮して、債務免除の適用の検討も含めて、債権管理法に基づいて、政府としてよく相談をしてやっていきたいという御答弁をいただいて、その後の記者会見やあるいはその後の質問においても、政治家としてあるいは人間としてしっかりと対応していきたいという御答弁をいただいておりますので、この件について何かございましたら一言お願いします。
  98. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 犬塚委員が御指摘のように、参議院の予算委員会の審議のときに、この問題は私も子供のころからニュースとしては知っておりましたけれども、いまだに大勢の皆さん方が今御指摘のように不安定な状態の中で大変苦しんでいらっしゃる。たしかあのときにも、いろんな資料、手紙等を御披露されて、そして傍聴席にも関係者の皆さんがお見えになっていたというふうに記憶をしております。そういう意味で、とにかく時間の経過という、何といいましょうか、苦痛、これもやっぱり想像を絶するものだろうというふうに思っております。  御指摘のように、この仮払金の返還問題につきましては、法律の範囲内で、したがって十年という期間を経過するとか、あるいは無資力であるということ等、幾つかの要件があるわけでございますけれども、政府といたしましては、農林水産省といたしましては、法律の範囲内というただし発言が付くのは、誠に関係者には申し訳ないと思いますけれども、その範囲内で全力を尽くして最大限の対応をさせていただきたいと思っております。  なお、民主党案あるいはまた与党案で、議員立法でいろいろと御議論があることも承知をしておりまして、議会の方の御判断というものも今後我々としてもしっかり受け止めて取り組んでいきたいというふうに思っております。
  99. 犬塚直史

    犬塚直史君 ありがとうございます。  参議院の予算委員会で傍聴に来られていた被害者の方が、今の法律の範囲内というただし書はありますが、大臣の前向きな御答弁を聞いて、手をたたいて喜んでくれたという経緯がございます。  今日は、実はその法律の範囲内ということについて少し質問をさせていただきたいと思っております。  今おっしゃいました、それでは債権管理法に基づいてこの債務の放棄あるいは延期をするに当たっては、債権管理法三十二条、免除規定の弾力的な運用ということになると思います。そこで一番問題となりますのは、どういうときに免除あるいはこれをなかったことにできるか、弾力的に運用できるかといいますと、これは「無資力又はこれに近い状態」という、ここの部分に当てはまると弾力的に運用ができると、ここに明文で書いてあるんですね。  この件につきまして政府に問いただした実は質問主意書がございまして、その回答によりますと、このように書いてございます。「お尋ねの「無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、弁済することができることとなる見込みがないと認められる場合」については、個別具体の事例に即して判断すべきものであるが、例えば、生活保護法による扶助を受けている場合が考えられる。」と、こういう政府の答弁が出てきたわけでございます。  これについて、まずは財務省に伺います。「無資力又はこれに近い状態」というのは、これは解釈の問題なんでしょうか。
  100. 松元崇

    政府参考人(松元崇君) お答えいたします。  「無資力又はこれに近い状態」に該当するかどうかということにつきましては、事案により個別に判断していただくということになっております。  若干敷衍して申し上げますと、本条に規定します無資力という状態は、今御指摘がございましたが、生活保護による扶助を受けている場合などが該当すると考えられます。  また、無資力に近い状態と申しますのは、無資力債務者ではないものの、社会通念上、債権を回収することが債務者の生活状態に照らして過酷であり、かつ将来的に弁済できる見込みがない場合などが該当するということでございまして、これに該当するか否かにつきましては、各債務者の資力の程度、年齢、家族構成などを総合的に勘案して個別に判断をしていただくということになっております。
  101. 犬塚直史

    犬塚直史君 そこで、その総合的に勘案して判断をするのは農林水産省の現場の担当者だということでよろしいんでしょうか。
  102. 松元崇

    政府参考人(松元崇君) そういうことでございます。
  103. 犬塚直史

    犬塚直史君 それでは、今回の場合ですと九州農政局の担当者の方になると思うんですけれども、ここを管轄されております農林水産の方にお伺いしたいんですが、どういう判断基準に基づいて、だれがこれを判断するのか、教えてください。
  104. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) 調停の実施に際しまして、履行延期のための条件となります「無資力又はこれに近い状態」の判断は歳入徴収官、これは具体的には九州農政局の総務部長がこれに当たりますけれども、歳入徴収官が行っているところでございます。  「無資力又はこれに近い状態」にあるか否かは、個々の債務者につきまして、収入と資産の状況に個別具体的に判断をしております。  収入につきましては、生活保護を受けている場合や、これに準ずる程度の生活状態にある場合にはこれに該当するものと判断をしております。また、資産につきましては、生活保護費の支給に際しまして、居住用不動産等の一定の資産の保有が認められていることも考慮するといったことをしております。  いずれにいたしましても、私どもとしては、患者さんの実情をできる限り考慮しながら判断をしているということでございます。
  105. 犬塚直史

    犬塚直史君 ということは、今おっしゃられたいろいろな判断基準というのは、別に明文にされたものではなくて、これはあくまでも運用の問題だということでよろしいんですか。
  106. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) 運用の範囲というふうに考えております。
  107. 犬塚直史

    犬塚直史君 この油症問題で、全部で一万四千三百二十名の被害者がいるんですが、当該、今話題になっております方たちが住んでおられるところは二か所ございまして、一か所は長崎県の奈留島というところです。ここに行きますのは、まず長崎市からジェットフォイルで約西に一時間、片道約六千円、往復割引で一万円。そこで船を乗り継ぎまして、離島からもう一つ離島に渡ったところにある人口約三千五百人の島であります。この島で一体どういう今まで十年以上にわたって生活をしてきたか。  例えば、これは一人の、まあいろいろな方がいらっしゃるんですけれども、例えば夫婦、子供六人全員が認定されていると。御主人は十四年六か月で、脳梗塞のため妻は家から出られない。そして、病名の分からない病気のために福江から久留米に行ったために資金がなくなってしまった、サラ金に手を出してしまった。これはそんなに珍しい話ではないんですが、福江というのはジェットフォイルで行ける島のことなんです。ですから、離島からまた離島に行きますので、この間の交通費は当然支給されない。福江にいたんですけれども、それがまた久留米の病院に行ってしまったということですので、ここでちょっと考えていただきたいんですが、仮に四百万円を受け取ったとしましても、十年間にしますと一年に四十万であります。としますと、毎月毎月三万円強ぐらいの資金をこういう交通費、往復で今では値上がりしまして一万一千円です。こういう交通費、そして医療費の自己負担分もほとんど出ません。  あるいは、今生き延びている人たちはほとんどがいろいろな、自ら漢方薬ですとか、はり、きゅうの治療ですとか、絶食療法ですとか吸い玉療法ですとか、あるいは尿を飲むですとか、いろいろなことをやって生き延びた方なんですね。こういう方たちの経済的な負担というのは、これは資産の調査やあるいは収入の調査でとても推し量ることができない非常に広範囲な特殊な事情があると思うんですけれども、これを十分に勘案する、そしてこの方たちの一律の免除ということをやっぱり運用で行うべきではないでしょうか。
  108. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) 資力の範囲と、判断ということになるんだろうというふうに考えておりますけれども、先ほども申し上げましたけれども、私どもといたしましては、患者の方々一人一人の実情を十分考慮して対応してきているわけでございますけれども、これにつきましては、今後ともそういった一人一人の実情をよく考慮して適切に対処していきたいというふうに考えているところでございます。
  109. 犬塚直史

    犬塚直史君 それでは、一つお伺いしますが、この資産に船は含まれるんでしょうか。
  110. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) お答えします。  カネミの仮払金債権について履行延期の特約を結ぶに当たりましては、船については、これは原則として資産としては評価しておりません。
  111. 犬塚直史

    犬塚直史君 そうであれば、現場の運用で五年前に起こったことが大変問題になってくると思うんです。  ちょっと今、これ体験談です、読ましていただきます。これは奥さんなんですけどね、お子さんが黒い赤ちゃんで生まれた、これは二世、三世の問題なんですけど、子供が黒い赤ちゃんで生まれてしまうという事例が大変多く出ているんです。この赤ちゃん、体に障害を持たれておって、高校生のときに亡くなった。御主人は漁をされておったんですが、御主人が亡くなったので船を売った。船を売ったところ、仮払金を返せと言われたと。もちろん、船がないわけですから、この島は漁だけの本当に経済の島ですので、奥さんは収入がない、漁ができないのに返せというのかと言ったところ、相続をしたんだから返せということで、結局はこの船を売却をした資金を仮払金の返済に充てたと。  これは五年前の話でありまして、私はこの方にお会いしたかったんですが、どうしてもお会いすることはできなかったんです。地元ではこの方の話は大変有名な話になっておりまして、今でも経済的には大変困っておられるということを聞いておるんですが、今の、船は資産にならないという話とちょっと違うんじゃないですか。
  112. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) この場合は相続をしたということになると思いますけれども、漁業用の事業に供されている船につきましては、生活保護費の支給に際しまして、当該地域状況等から判断して他世帯との均衡を失することとならない場合にはその保有が認められているというふうに考えているわけでございますが、今の事例の場合は、相続によって生じた、相続によって債務の方が相続されたという例に当たるというふうに思います。  この仮払金については、当事者が亡くなられた場合には、それは相続財産ということになるというふうなことで相続されたというふうに判断されるわけでございますが、ただ先ほど来申し上げておりますように、この返還をいただく場合には、その家庭の個々の事情を十分考慮しながら対応をしてきているということでございます。そういうことで、払うことによって生活ができないということにならないような対応をしてきているつもりでございます。
  113. 犬塚直史

    犬塚直史君 というお考えであれば、この事例の場合の運用というのは大きなミスがあったんではないかと思うんですが、今相続の話が出ましたので、現地でお話を聞きますと、相続の問題がやっぱり一番皆さん心配されておられるんですよ。特に、もう三十八年前の事例ですから、この債務が子供たちに行ってしまうんではないかということが皆さん一番心配をされておるんですね。  特に、私、一人お話を伺った方がいるんですが、家族で本人のみが認定されている、子供は四人いるんですね。この方は漁をされている。左の耳はいつもごうごうという音がして、よく聞こえない。毎年、脱毛がひどいんですね。私がお会いしたときも、後ろの半分ぐらいは髪の毛はなかった状態なんですね。一番困るのは、指の関節が曲がらないんです。ここがはれていまして、魚の漁をやっているもんですから、仕事に差し支えが出てきているわけなんですね。あと二、三年頑張れば年金が出るので、それまで手がもてばいいと。しかし、イカがだんだん釣れなくなって、しかも油代が高くなったので、沖に行けなくなってきたと。  この債務が子供四人に相続されてしまうことが一番心配だとおっしゃっているんですが、ここでちょっと伺いたいんですけど、例えばこれ、年金も収入として数えられるんでしょうか。
  114. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) 年金も収入としてカウントされます。
  115. 犬塚直史

    犬塚直史君 この方たちは、もうよく農水の方は御存じだと思うんですけど、全く何の罪もないといいますか、ただ単に市販されているライスオイルを買って家族で食べたという方たちでございます。その人たちが国の責任認められたときに、国が三分の一、カネカが三分の一、カネミ倉庫は三分の一という勝訴をかち取って、その後、カネミ倉庫は資産がないということで、これはまだ被害者の人たちはカネミ倉庫に対しては債権を持っておるわけですね。ところが、国に対しては仮払金を返さなきゃいけない。十年間こういう生活をしてきたんで、お金は使ってしまったと。しかし、毎年毎年この督促状が来る。これ今日実物を持ってきたんですよ。督促状、年に一回これ来るみたいですね。四百四十五万七千五百八円、これ毎年毎年これが来るわけです。公の資料ですから、こういう島の人たちは大変これが来るだけでもう正直言ってびくびくして暮らしている方たちも多いわけですね。  それと同時に、これ見さしてもらったんですけどね、油症患者生活資金借用書、これは社協から毎年のようにやっぱり借りているんですね。借りている金額が十五万円、これは完済しているそうです。二十一万円、これも返しました。二十万円、これも返しました。同じ方です。十五万円、これも返しております。これは、借りるたんびに連帯保証人何人も取られ、印鑑証明を取りに行ってと、こういうことをやりながら、しかもその仮払金の返済を月に何千円とかいうことをしなければいけない。本人には何の罪もない。しかも相続の心配もしなきゃいけない。相続の心配をしなきゃいけないということは、先祖代々の土地を自分の長男に渡すということは、その長男に対してカネミの債務まで譲り渡すことになってしまうんですよ。こういう状態にいるこの患者、被害者に対してもうちょっと違う運用ができるんじゃないでしょうか。どうですか。
  116. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) この仮払金の返還問題は、裁判が取り下げられたということによって生じたというのは冒頭委員お話があったとおりでございますけれども、先ほど来御説明いたしておりますように、私どもとしてはこの支払の延期という措置も講じてきておりますし、また、個人の大変これはプライバシー等の問題もあって、そこも大変注意をしながらやっているわけでございますけれども、患者の方々事情をよくよくお伺いし、まあ直接本人ではなくて、もちろん代理人の方とか、プライバシーの保護の観点からいろいろ注意をしておりますけれども、その中で、事情を考慮している中で延期もしてきていると。  また、お支払をいただいているお金も月々生活の支障にならないようにという範囲内でその金額も決めていくと、一律幾らというやり方で決めているわけでもないという中で、繰り返しになりますけれども、個々の事情を十分お伺いしながら対応をしてきているし、これからも対応していきたいというふうに考えております。
  117. 犬塚直史

    犬塚直史君 農水の方が今まで二十年ですか、この問題についてできるだけの対応をしようとしたということは私も現地では聞いておるんですよ。しかし、実際に今申し上げたような毎年督促状が来る。そして、自分の、まあ大したあれじゃないですよ、資産価値はですね。しかし、先祖代々持っている土地も子供には受け継がせることができない、しかも治療費もまだ払ってもらってない、生活も大変であるというようなところを年金の心配をしながら、年金も取られるんじゃないかというようなことをやっているわけですね。  初めに戻りますけど、こういう運用、解釈の問題というのは別に法律に書き込んであるわけではありません。「無資力又はこれに近い状態」にありという、「無資力又はこれに近い状態」かどうかというのは、あくまでも農水省の現場の担当の方が運用として解釈として決めることなんであります。  私は、このカネミの恒久救済なくしては日本の食の安全はないと思っております。何とかこの三十八年続いたこの事件を、中川大臣のリーダーシップで現場の人間に是非強力に指導をいただいて、弾力的な運用をお願い申し上げたいと思います。一言どうぞ、お願いします。
  118. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 犬塚委員から予算委員会で御指摘があった後、西川局長を通じて農林水産省として何ができるかということを、ある意味では一生懸命考えているつもりでございます。  改めて今日、実態、船の移動の、治療のための経費であるとか、あるいは親から受け継いだ大事な資産が返還の対象になるとか、相続の問題とかそういった問題、あるいは年金といった問題を考えますと、これは何とかしていかなければいけないなと率直に言って思うところであります。  我々としても、運用で何らかの工夫ができるか、できるだけ知恵を絞ってみたいと。実際に、これも法律に基づく運用でございますので、どこまでできるかは私としてもよく分かりませんけれども、患者の皆さん方、長い間苦しんで、そして相続されていくというんですから、債務は、これから未来永劫続くということにもなりかねない方々もいらっしゃるということでございます。  ですから、我々は、与えられた法律の中で最大限、人間の気持ちというものも踏まえながらやっていきたいと思いますし、できますことならば与野党を通じての議員立法というものがある意味ではこの問題に対しての大きな前進になっていくということをある意味で期待しております。責任逃れとか、そういうことじゃなくて、我々には限界がございますので、この問題が正に食の安全の戦後の一番悪い代表例であったわけでございますので、行政として、農林水産省としてできるだけ知恵を絞らせていただきたいと思いますし、立法府の方でのまたいろいろお知恵や行動も是非ともお願いを申し上げさせていただきたいと思います。
  119. 犬塚直史

    犬塚直史君 終わります。     ─────────────
  120. 岩城光英

    委員長岩城光英君) ここで委員異動について御報告いたします。  本日、犬塚直史君が委員辞任され、その補欠として松下新平君が選任されました。     ─────────────
  121. 小川勝也

    小川勝也君 民主党・新緑風会の小川勝也でございます。  余りカネミ油症の問題は詳しくなかったわけでありますけれども、犬塚委員が執念を持ってこの問題を取り組んでおられまして、中川大臣が前向きな御答弁をいただいているということで、今日も目頭を熱くするような内容でございました。法律あるいは慣例、いろんな壁があろうかと思いますけれども、大臣農林水産省の一層の御努力お願いをしたいというふうに思います。  本題に入るわけであります。  この間、私の地元におきまして地方公聴会を開催いただきました。岩城委員長と与党理事の温かい御配慮、心から感謝を申し上げたいというふうに思っています。  実は、この品目横断を含む三法案、農政ウオッチャーあるいは政策立案に非常に興味を持っておられる北海道の主業的農業経営者の皆さんが大変大きな期待をしておりました。公述をいただいた公述人の中で全上川農民連盟の書記長高見さんからも公述をいただきましたけれども、高見公述人でさえ大きな期待を持っていた一人でございます。そして、何を隠そう北海道選出の私も、この法律案は府県にとっては厳しいけれども、北海道にとっては少しはメリットもあるのかなと、そういう期待もしておりました。  議論を進めるにつれて、あるいは参考人からいろんな御高説を伺うに従って、大変厳しい評価をせざるを得ない、そういう法案だと結論を付けたいというふうに思います。  しかしながら、優しい私でございますので、すべてこの悪さを法案に帰結させることはできないだろうというふうにしっかりと認識をしております。それは、世の中の変化あるいはグローバル化、市場経済化の流れ、そして人口の都市へのとどまるところのない移動、これは農業政策の立案セクターの方々だけに責任を押し付けることができないだろうというふうに思います。しかしながら、この法案によって私が今申し上げましたような都市に向かう人口の流出を農村地域からとどめることができるか、そういう効力を持つ法案かどうかというふうに考えますと、答えは合格点は与えられませんし、むしろ加速させる懸念が消えないわけであります。  余り参考になるかならないか分かりませんけれども、先日、北海道農業を見ていただきました。空から映るあの畑の美しい姿、空気も水もきれい、こんなところで農業ができたら本当に幸せだろうなというふうに思います。北海道農業、中川大臣御存じのことだと思いますけれども、たくさんの入植者が北海道に夢と希望を持って入ってこられました。たくさんの苦労の積み重ねでございます。後でお話を申し上げますけれども、北海道十勝、アメリカにも負けないほどのすばらしい畑作地帯です。そして、御努力が実って、今安定的な経営者も、日本の農業者の中では代表する経営者が中川大臣の地元十勝から生まれています。しかし、本当に血がにじむような努力の積み重ねだったというふうに聞いています。  例えば、主濱さん、おられますけれども、東北、北海道は冷害の常襲地帯でございました。冷害で、春種をまく、あるいは定植をする、遅霜によってすべて駄目になる。あるいは収穫を目前とした農産物がやられる。夏場の冷害しかり。本当に苦しかったそうであります。そして、場合によっては年を越せないので、札幌などの都市部の小学校でも、十勝の冷害に苦しんでいるお百姓さんにちょっとずつでもカンパしようなどという動きもあったんだそうであります。そして、酪農地帯でも本当に筆舌に尽くし難い苦労、それは夜逃げと自殺の歴史だったかもしれません。  私のふるさともそんな農業地帯の一つであります。最盛期の人口が一万二千数百人、私が小学校に入学するとき、町の人口は八千六百人というふうに聞きました。現在四千三百人です。小学校、一番多いときには十一の小学校と四つの中学校がありました。今は中学校一つ、小学校一つ。そして、その十一校の小学校の中で、私はベビーブーマーのかなり後ですけれども、その中の町の一番大きな小学校で、小学生のときには一クラス三十人で九十人の三クラス。町で一つになっていました中学校の卒業生が、百二十人の卒業生でございました。今、私の母校に学ぶ小学校一年生は一けたでございます。  これはどういうことを申し上げたいかというと、食えないから出ていく、農業をやめる、そういう方々の後を負って、残された農地を隣の担い手が少しずつ膨らませていって、何とか集落をかすかに維持をしていますけれども、農村集落の破壊というのは、本当に農家経営安定という一言で表せないことなんです。  そのことによってどういうことがもたらされるでしょうか。少しでも農地面積を拡大しないといい経営ができないぞ、北海道農業に対して農林水産省からは幾たびも指導がありました。その指導を一つ一つ実現をして、農業委員さんから勧められて借金に借金を重ねて隣の土地を買う、離農者跡地の土地を引き受ける、それが今の北海道農業者の実情だろうというふうに思います。  府県からおいでいただいた先生方にも申し上げました。このすばらしい北海道で借金がない経営をすることができれば農業はバラ色かもしれません。あるいは負債の小さい中で今回の政策に移行されるということで、過去実績に基づいて毎年確かな交付金を受けられる農家は幸せだな、それは確かに実感として持っています。  そんなことを考え合わせると、何を申し上げたいかといいますと、北海道は更にもっと経営努力しろということが今回の法案の中身だろうというふうに言われています。あの北海道でさえ今回の担い手のカテゴリーに入る農業経営者は三五%、豊橋に次いで多分日本で二番目の農産物出荷額を誇る旭川市でさえ千八百戸の農家のうち担い手が六百戸で、そのうち認定を受けているのが四百戸と、こういう報告も受けました。更なるその市場原理に近づく経営を北海道農家にもしろ。そして今、府県にも厳しい過酷な使命が与えられようとしています。そのことを少しでも、もう釈迦に説法だとは思いますけれども、北海道のあの雄大な農業がどういう歴史を持って今の姿になっているのか、そこの悩みは何なのかを分かってもらいたいと思っているから、こんな話をしています。  すばらしい空気の中でお父さんとお母さんが経営をする、しかし、小学校に通うときには十数キロなんていう小学生も多数いるわけです。本当にそれが幸せでしょうか。そして、お父さん、お母さんはその圃場のあるところに経営をし、そして住んでいるけれども、若い夫婦は、やはりそんな町から遠いところには住めないということで、離れ離れに生活する。当たり前の光景となってまいりました。  幸いにして私のふるさとはまだJRが残っております。しかし、過疎によって人口が減って、そして、これはスパイラルだというふうに私は申し上げています。人口が減ると小学校も減る。あるいは商店ももう存在意義を失う。銀行も撤退する。郵便局も合併される。電報電話局も北電もなくなる。あるいは営林署も統廃合なんていうと、どんどんどんどん人口が縮小均衡になってしまって、そうすると、集落だけぽつねんぽつねんと残って、今度は人口が少なくて役場の効率が悪いんで合併しろと、こういう話が来ています。  これは、多分この法案が通った未来の姿、日本全国同じ姿になるんではないかというふうに私は危惧するものであります。神奈川県の人口が大阪府の人口を超したようであります。  そこでもう一点、私が別に知識を披瀝するわけではありませんけれども、後で気付いたことがあります。北海道と府県とは農業の基盤が大変違います。それは何かといいますと、やはり北海道に比べて面積も集落もコンパクトだということであります。そこに働く場所が得られたということであります。ですから、農業所得プラスアルファを得ることによって、その農村集落が維持されてきたわけであります。  例えば、和田ひろ子先生の地元には富士通の工場があります。これは、例えば昔の古い因習で、長男はやはり田地田畑を守って後を継がなきゃいけない、そういうすばらしい優秀な農業経営者がいるわけであります。そして、幸いなことに、農業収入だけでは家計を維持できない、そこに着目した様々な製造業メーカーがそういった日本全国をリサーチして、ところどころ、いいところに工場をもたらしてくれたわけであります。ですから、そこの地域工場から得る収入、農業から得る収入で地域を維持し、そして雇用があって、人口を維持することができたわけであります。  今、四ヘクタールの要件が府県に掛かって、そして、大部分のその網から外れる農業者の中には高齢者が含まれています。担い手にもなれなかった、あるいは、言葉は申し訳ありませんけれども、農林水産省施策の光から外されてしまった、そんな人が、おれはもう引退だけれども、息子や、東京から戻ってきて後継がないかい、こういうふうに言うでしょうか。これは多分、どんどんその高齢化された後継者のいない世帯の農業経営者世帯は消えていく運命になるでありましょう。  そうすると、そこには優良な労働力がなくなってきますので、例えば工場の撤退などという話がもう遠くない将来に起こってくるでありましょう。そのことが農村集落の崩壊につながる、そして、大臣がどうお考えか分かりませんけれども、都市一極集中に拍車を掛ける。  そして、もっと言うと、私たちの国の人口、今、少子化問題が大変深刻です。ベビーブーマーと呼ばれるときに、本当に裕福な家庭で生まれた方というのはあんまりいなかったと思うんですね。ところが、大半の揺りかごは農村でした。たくさんの子供たちが農村で生まれました。今のぜいたくな食生活、あるいは衣、あるいは住環境、どれを取ってみても満足ができるような状況じゃなかったかもしれないけれども、そこに希望がありました。  「三丁目の夕日」という映画はあの安倍晋三先生の好きな映画なんだそうでございますが、そんなことが農村の夕日だったんじゃないかな。そして、そういうところから、まあ仕方ないから都会に出るかという若者が今、都会でどういう生活をしているのかというのを、もう皆さん想像に難くないだろうというふうに思います。  そういう、農村から希望を持って農林水産省に入るぞという英才はいいかもしれませんけれども、地元に働く場所がないから仕方なくという若者の中には、希望を失って、あるいは結婚するチャンスも失って少子化の犯人の一部に組み込まれるような人たちも出てくるでありましょう。  そういったことを考えたときに、先ほど申し上げましたように、政策立案者だけの責任に、あるいは農業の担当者だけに押し付けるわけにはまいらないとは思うんですけれども、今回の法律案が余りにも経営体の効率化に重きを置く、そんなことによって農村、集落の崩壊、あるいは都市への人口流出に加速をするのではないか。この懸念について、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  122. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 小川委員、いろいろと私の地元も含めて大変よくまとめていただきまして、ありがとうございます。  正に、狭い日本ですけれども、一億二千六百人という人口がいて、そして歴史もあるわけでございますから、多様な農業というものがあるわけでございます。御地元の旭川も、つい十数年前は、江丹別はもう文字どおり牧草の耕作放棄地になり掛けていたわけでありますけれども、今や日本一のソバ畑として日本のソバを支えている地域になっておられるわけでありますし、御地元では大変花の美しいところもありますしと、そういう北海道のようなところでもいろいろな農業がございます。  私のところは米を作っておりません。そして、全国においても都市近郊農業あるいは中山間地域、離島、いろんな農業があるわけでございまして、それぞれが日本の食料政策あるいは農業の果たす多面的な役割というものを発揮してもらわなければなりませんし、更にバージョンアップしてもらいたいというふうに思っております。そういう観点から、今回、品目横断経営安定対策というものを御審議いただいているところでございます。  小川委員の御指摘は私も賛同する部分もあるわけでございますが、是非とも、これからの農政、食料というのは、とにかく消費者に好まれるものを、選ばれるものを作っていかなければなりませんし、消費者に好まれるものは私はもっともっと生産ができるというふうに思っております。安全、安心、顔が見える、そして品質がいいといったものがどんどんどんどん皆さん方の知恵とそして消費者ニーズがうまく合って、先ほどの江丹別のおソバだとか、あるいは旭川空港の近くの大変おいしいアイスクリーム屋さんであるとか、そういったところが、やっぱり消費者の人は知っていますね。旭川空港に着いたら、空港の近くの、若い女性がやっているアイスクリーム屋さんでちょっとアイスクリームを食べようとか、私もしょっちゅうあそこへ寄ったときはおいしいアイスクリームをいただくわけでございます。  そういったふうに、消費者に好まれるものを努力して作っていくということが、何といっても自給率四〇%低過ぎると国民みんなそう思っているわけですから、ある意味では国内生産に対して期待をしていると、その期待にこたえていくことが私はこれからの農業であって、それは何も北海道だけではなくて都市近郊、先ほど豊橋の話されましたけれども、豊橋は豊橋で大変御努力をされているわけでありますし、また三浦大臣の熊本であれば、規模は小さいけれどもいろいろな野菜や果物等々を作って効率的、高収益の農業をしていると。  そういったところに対してやっていくことが、逆に言うと、ほっておくと日本全体、特に農村が高齢化あるいは人口減少という中で、もうこのままある意味では先が見えているという状況でもありますんで、とにかく生産面あるいは多面的機能、都市と農村の交流、あるいは子供に対するいろいろな意味の教育的側面等々からいっても、やはりプロの農村、プロの農業というものを日本の基幹的農業に位置付けていくということは、私は、国民的期待であると同時に、そういう農業者はこれから私は、一定の試算で三割、五割とよく議論になりますけれども、どんどんどんどんそういう農業者、農業経営体が増えていくと、そのための施策を実現をしていきたいというふうに考えております。
  123. 小川勝也

    小川勝也君 総理もよく、リンゴは輸出できるとか、ナガイモは台湾で売れているとか、江丹別のソバまで出していただきましたけれども、そういう問題じゃないと思うんですね、後で議論をいたしますけれども。  もう一点は、私は先ほど今回の法案だけではないというふうに申し上げましたけれども、実はWTO関係で緑、黄色、青などという議論が先ほどもございました。実は、ヨーロッパ型の緑の政策所得補償の政策をこのWTO交渉のやっぱり始まる前に導入していて今を迎えるのとばたばたするのと、大きくハンディキャップを背負っているんだろうというふうに思います。ですから、もっと早い段階に政策転換をしておれば何とか農村の崩壊をもっと遅らせることができたんじゃないかなというふうに、うらみが私は残ります。この、たらとか、ればとか、イフという話は余りないわけでありますけれども、その辺の思いは共通でしょうか。
  124. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 確かに、ヨーロッパですと共通農業政策というのはもう十数年前からやっているわけでありますし、アメリカですと一九九六年農業法というものでかなりWTO整合的な政策を取っているわけであります。その後、二〇〇二年農業法というのでかなり青若しくは黄色のような政策になってきているわけでありますけれども、しかし大前提をまず考えていただかなければならないのは、今回のラウンドというのは開発ラウンドであって、多くの、百か国以上の国々をどうやって農業や工業その他で発展をさせていくかというポイントであります。  農業において一番のポイントは、何も日本の農政とかアメリカの農政とかヨーロッパの農政、すべてまとめて、こういう金持ちの国は国内で税金使って農業補助ができるんですよ、多くの国々は貧しくて国内支持ができないんですよと、そのことをまず日本もアメリカもヨーロッパもまずWTOの大前提として考えておかなければならない。いや、アメリカは何兆円使った、ヨーロッパは何兆円使った、日本もどうだと言っていますけれども、これは世界でごくわずかのもう金持ちの議論なんですね。  ですから、前にもお話ししたかもしれませんけれども、アフリカの一日一ドルの生活の国々は、すべての輸出の九十何%はコーヒーしかない、綿花しかない、砂糖しかない。そういうところがアメリカの補助金付き輸出、ヨーロッパの補助金付き輸出と大議論をやっている。我々は、これはやっぱりアメリカ、EU、少し考えてもらわないと、ラウンドの趣旨からいって違いますよねと。ですから、我々はアフリカに対しても一生懸命支援をし、応援をしているわけでございます。そのほかにも、鉱物資源だけしか輸出できないという国も一杯あるわけでありますから、我々は、アメリカ、EUと交渉し、けんかすることももちろん大事でありますけれども、多くの途上国に対しての配慮というものも必要であります。  今回の交渉がこの法案の審議と直接関連するものではございませんけれども、御承知のように、このWTOの農業の国内支持政策については、すべての補助金、それから黄色の政策、青の政策、デミニマス、全部削減しようという大前提で議論しているわけでございまして、マーケットアクセスについてもどのぐらい削減するかということが大前提の議論をやっているわけでありまして、日本としては日本の立場でやるべきことをやっていこうと思っておりますけれども、この政策を導入することが早いか遅いかという御指摘については、正にこれ以上遅らせると大変なことになると。  先ほど、小川委員も崩壊を少し遅らせることができるのではないかという御指摘がありましたが、我々は、この趣旨が多くの農業者の皆さんに御理解をいただければ、都市が農村を支持してきちっとした食料供給ができる、それによってもうかる農業がどんどんどんどん増えていくと。都市に限らず、農村に限らず、私はそういう目的を持ってこの法案が実現できるものと、実現することによってそういう方向に向かっていくものというふうに期待をしております。
  125. 小川勝也

    小川勝也君 この法案が、期待があったにもかかわらず、ここまで心配事が多い法案になった原因を私なりに分析をしてみたんですね。  大臣はどうおっしゃられるか分かりませんけれども、私はやはり世界を相手に今厳しい交渉をしておられるというのは認めます。しかしながら、今相手が、例えば家を建てるときに、あるいは建ててある家の壁を何色から何色に変える、ひさしが長過ぎるので切るという段階に、私たちの国は今基礎をやっているんじゃないかと、やっぱりそういう判断をせざるを得ない。  それから、先ほどの参考人の方からも、あるいは衆議院の議論でもあったかと思いますけれども、WTOルールを厳密に守ろうとする余りに、余りにも硬直したインパクトのない施策になっているんではないかという点が一点でございます。それから、財政が厳しいということで、本当に農家の皆さんにとってインパクトのある施策になっておるんだろうか、あるいは世界の市場主義というのが年々強くなってきているのも一因だというふうに思いますし、とりわけアメリカ合衆国との関係もその一因だろうというふうに思います。  それともう一点、私は思うわけでありますけれども、言ってもせんない話かもしれませんけれども、例えば予算編成のときにシーリングシステムというのがあります。私たちの国の農業をどういう形でどこまで守ろうか、そしてそのためには幾ら予算が要るかという議論が私たちの国はできない国であります。そして、新しい施策をやるときに、例えば今回のゲタに幾ら、ナラシに幾ら環境幾ら、そのときに、いや、そんなことをいっても何局と何局と何局と林野庁と水産庁という各局の硬直化した予算編成というのがあるんじゃないかと私は想像するわけであります。ですから、本当の意味で農村を守ろうとか食料自給率を上げようとか、耕作放棄地をなくそうとか、本当に最終的に満足する案なのかどうなのか、私は疑問に思うわけであります。  余りいい答えは期待できないわけでありますけれども、局長でも結構ですけど、どうでしょうか。
  126. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) もちろん、農林省の中も局、庁に分かれておりますから、毎年の予算編成におきまして、それぞれの部署で必要な額を積み上げ、要求をして、内部で調整をして財務省にお願いに行くわけでありますから、当然そういうことはございますけれども、例えば今回の品目横断的な経営安定対策につきましては、はっきり言いまして、私の経営局には財源ははっきり言って何もございません。  そういう面では、この政策を打ち立てるに当たりまして、正に官房にお願いをして全省的に農林省の予算を組み直していただくという中からこの対策を打ち出そうといたしているわけでございまして、この今回の新たな基本計画に基づく品目横断ですとか、農地・水であるとか、そういった新しい政策については、根っこのベースになる予算があってそれをただ組み替えれば構築できるという生易しいものではございませんので、現在、全省的な予算の見直し、組替えの中で財源を生み出そうという努力をいたしております。
  127. 小川勝也

    小川勝也君 後でもう少し興奮してきたら言おうかと思うんですけれども、結局、日本の食料自給及び農村を守るために農林水産省があるわけです。ですから、農村が崩壊するということがもし起こり得るとすれば農林水産省は要らないわけでありますよね。僕はそう思うわけであります。もし仮に、今、こういうグローバル化された時代だから農業が市場原理で行われるべきだというふうにおっしゃるなら、これは農林水産省の役割もほぼ小さくなるでありましょう。  ですから、もし本当の意味で市場化を進めたいならば、政策的経費を、どこまでが政策的経費かというのは別として、小さくして、この直接支払のゲタの部分さえ大きくしていけばそこに近づくんじゃないかなと私は思うわけであります。  それで、もう一点。ちょっと離れますけれども、大臣今ちょっといらっしゃらないんで、高見公述人がこういう言い方をしていました。担い手にならない人は、今回のことの後、多分まだ周知が徹底されていないんで、自分が対象にならないのにわくわくどきどきされている経営者の方がごまんとおられるんだと思うんですね。それで、もし、ああ何だ、おれは駄目かというふうに分かったときに、全国に多数おられる非担い手と呼ばれる経営者の方々がどういう気持ちでどういう行動に出るというふうに想像しておられるのか、これちょっとお伺いしてみたいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  128. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) ただいま委員から、実は対象にならないのにわくわくどきどきしている人がたくさんいるんじゃないかというお話がございましたが、私どもは、実は対象になるのに悲観的にそっぽを向いていらっしゃる方が多数いるんじゃないかとも思っているわけでございます。  と申しますのは、先ほど来申し上げておりますけれども、四ヘクタール、十ヘクタール、二十ヘクタールという非常にインパクトのある数字が先行しておりますから、やはり中山間地等で地域特例によりまして、決して四、十、二十が全国どこでも貫徹しているわけではないということや、所得特例という形で複合的な経営をなさっている方で野菜とか果樹にかなりウエートのある方、あるいはこの所得特例は、地域でその隣近所の勤め人の人と同じような所得規模を得たいという階層を効率的かつ安定的な経営といっているわけですが、それの大体半分ぐらいの所得を現在得ている人、農業からですね、そういう人を所得特例で全部拾っていくというシステムになっているわけでございます。  ですから、委員の見方とは異なるかもしれませんが、恐らくその星雲状態のところにおられる方がかなりおられまして、その御努力をいただく、あるいはそのことに気が付いていただければ、こちらの対象になるという方もかなりいると思っております。  それから、北海道の方にはなかなか御理解していただけないんですが、集落営農というものは、決して次善、三善の策として講じているわけではございませんで、西日本、北陸を中心に既にそういう集落営農から育って立派な法人格も得ているような集団もございます、たくさん。そういった中で、この集落営農というのは、正に地域を守りながら、その集落の中で役割分担をして人口を減らさない、その集落の中でだれもが役割を持って生きていけると、そういうものを志向して皆さん方がつくってきたシステムでございますので、私どもは、そういうものを拾い上げて、地域をちゃんと残していくということにも意を用いていきたいと思っているわけでございます。
  129. 小川勝也

    小川勝也君 今ちょっと集落営農の話が出たんで、そこにちょっと話を移してみたいと思いますけれども、集落営農の中でも、主業的な役割を果たす方の中にもほかの仕事を持っておられる方がたくさんおられるという話なんですけれども、あるいはもう一点、例えば北海道の大規模畑作地帯であれば、車の両輪の品目横断の緑のゲタの部分、例えば麦、大豆。てん菜とでん粉原材料のバレイショは府県ではほとんどありませんので、麦、大豆の部分で交付金をたくさん得られる地域というのは、私は余りないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、府県の麦、大豆のボリュームについてはどういうふうにお答えをいただけるのか。  それから、先ほど私がたまたま思い付いたもので、今の兼業農家体制というのは、その労働力を当てにした企業の立地と、そしてもう一点は、これは和田先生が地元で痛感しておられたと思うんですけれども、公共事業ですね、土木建設事業というのが今までその兼業体制を支えていたわけであります。  今、残念ながら、二十一世紀になりましてから公共事業も多分減ってきておりますので、兼業農家地域、地帯を支えてきた工場と公共事業の両輪のうち片方が苦しんできているので、そういう農村集落に今回揺さぶりを掛けたことによって、もし人口減少、あるいは集落の戸数減少や高齢者のリタイアの後の補充が利かないというようなことになると、集落の働き手が減っていくので、私は、兼業農家が兼業でいられるのはもう一つの事業があるからだというふうに仮定した場合、黙っていても厳しくなる段階、今回の法案で揺さぶりを掛けてその複合技が厳しくなってくるんじゃないかなと思うんですけれども、その二点、お答えをいただきたいと思います。
  130. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 麦、大豆のボリュームというお話ですが、従来の麦作経営安定資金とか大豆交付金支払額で見てみますと、トータルとしまして一千百四十五億円支出されていますが、そのうち北海道が六百六十七億でございまして、都府県は合計しますと四百七十七億円ということになっております。  もちろん、麦、大豆は全国におしなべてあるわけではございませんで、いわゆる主産地というものに偏りがございます。ですから、上位十県ぐらいを寄せるとシェアの相当部分を占めているということになりまして、当然、東京の近県では麦も大豆もほとんどございませんので、そういう地域バランスの、何といいますか、アンバランスはその四百七十七億の中ではございます。  それから、二点目のお尋ねでございますが、確かに今、公共事業が非常に不調でございます。私どもも地域に参りますと、非常に、何といいますか、現金収入の機会が減っていると、それから、建設業をやっていらっしゃる方が、このままだと自分の雇っている人を解雇しなきゃいかぬということで、非常に苦しんでおられる実態もかいま見ております。  そういった中で、今、建設業者の方々の中から、正に、従来特区で、今は全国展開をしまして、リース方式で企業の農業参入を一部認めてまいりましたけれども、この地場の建設業者による農業への参入というのが非常に目立ってきております。  これは、今、委員おっしゃいましたように、実際にお勤めの方は実は農家でございますので農業機械を動かすのはお手の物だということと、建設業者は重機を保有していらっしゃいますので非常に効率的に作業ができるということで、集落の中で耕作放棄になり掛けているとか高齢化をして思うに任せない集落等から依頼を受けて作業受託をしたり、さらには、もう積極的に農業経営部門を建設業の中に独立させるというような動きも出てきているわけでございます。  そういったことで、農業と公共事業、本当に、正にそういう意味では車の両輪で地域を支えてきたわけでございまして、それが、今それぞれが難しい時期になる中で、そういった公共事業の主体も農業に参入する形の中で、正に兼業としてお勤めになっている方の職場を開拓していると、そういう事態もあるというふうに思っております。
  131. 小川勝也

    小川勝也君 今、高齢化を迎えまして、農業者人口もどんどん減るというふうに思うわけでありますけれども、どういった、何というか、ペースで農業者人口が減ると予測をしておられるのか。それにプラスして、新規就農者をどのぐらい見込んでおるのか。そちらのお持ちになる数字と年限で結構でございますが、お答えをいただきたいと思います。
  132. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 私どもが昨年三月に公表しました農業構造の展望というものがございますが、これは平成二十七年、十年後においてどういう姿になっているだろうかということを展望したものでございます。その中では、現在、平成十六年に総農家数二百九十三万戸ございますけれども、平成二十七年には二百十万戸から二百五十万戸程度になるだろう、こういうふうに予測をいたしております。  また、その中で、基幹的農業従事者と言われる方々が現在二百二十万人おりますけれども、これは二十七年には百五十万人程度になりまして、六十五歳以上が六割を占めるという状況になると見込んでおります。  それから、新規参入の方でございますが、現在のところ、平成十一年から大体毎年一万二千人程度が新規参入をいたしておりますが、こういった傾向は平成二十七年においても同程度水準で継続するというふうに見込んでおります。
  133. 小川勝也

    小川勝也君 それと、耕作放棄地についてはどういう予測と希望を持っておられるでしょうか。
  134. 山田修路

    政府参考人(山田修路君) 耕作放棄地でございます。  平成二十七年のその基本計画の前提でございますが、現在のところ四百七十一万ヘクタールの農地がございますが、これまでの耕作放棄地あるいは農地の転用の見込み、このまま推移すれば四百三十一万ヘクタールになるという見込みでございます。  これに対しまして、耕作放棄地の発生を、その見込みの場合に想定をしておりますのは、趨勢値でいきますと二十六万ヘクタール耕作放棄地が二十七年までに出るというふうに見込んでおりますが、耕作放棄地の発生の抑制等をやっていくということといたしますと、全体で、あるいは耕作放棄地を再活性化していくということで、十九万ヘクタール面積がその趨勢に比べて上乗せされるということでございまして、最終的には平成二十七年の農地面積は四百五十万ヘクタールということを基本計画の前提としているというところでございます。
  135. 小川勝也

    小川勝也君 どうして耕作放棄地を減らしたいんでしょうか。
  136. 山田修路

    政府参考人(山田修路君) 平成二十七年の目標、これは自給率の目標を決めておりますけれども、自給率の目標、四五%まで上げていくという目標を持っておるわけですが、その場合に、その前提となりますのは農地を確保する、それから耕地利用率を上げるということで生産確保していくということになりますので、一定の農地面積とそれを効率よく利用していくということが必要であるということでございます。
  137. 小川勝也

    小川勝也君 ちょっと唐突な質問だったろうというふうに思いますけれども、耕作放棄地をなくしていくということは農地が増えるということです。そして、効率的な農業をしてすべての農産物生産コストを下げたいという思いはありますか。
  138. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) 耕作放棄地といいますか、これは主として高齢化、労働力不足ということで生じてきているわけでございますけれども、これを出さない、あるいは再活用するということは、やはりしっかりとした担い手がいると、先ほど建設事業者の話も出ましたけれども、担い手がいるということがないとまずは使えないわけでございます。今回、しっかりとした担い手育成しようと、確保しようという対策をしていると。  それと、私ども、耕作放棄地問題に対して今着目しておりますのが、放牧ですね、肉用の繁殖牛の放牧と。最近、西日本では、まあ北海道の酪農地帯は放牧というのは当たり前なんですけれども、肉用の繁殖牛の放牧というのは非常に少なかったんですね。最近、そういう中山間地というか荒れ地といいますか、廃園であるとか耕作放棄されたところに繁殖牛を放しますと、何といいますか、農地が牧草地になってくると、あるいは鳥獣害も少なくなるといったことで非常にいい面が出てきておりまして少し拡大しているし、また水田地帯でも水田放牧ということで和牛の、繁殖和牛の放牧というのが増えていると。  ちょっと話変わりますけれども、和牛については、何とか繁殖和牛を我々増やしたいと思っているわけです。そういった面で、そういう放牧なども有効活用することが、これは大変そういう放棄地対策としても有効なのではないかと、そういうふうに考えているところでございまして、現在それを進めております。
  139. 小川勝也

    小川勝也君 それでは、耕作放棄地はいわゆる牧草地、放牧地にしたいということでいいでしょうか。
  140. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) 何を使うかは正にその経営体が判断するわけでございますけれども、今現在、現場で取り組まれている例としてあるのが、一つの有力な手段として放牧というのがあるということを事例を御紹介申し上げたし、また我々の飼料の増産という面においてはこの放牧というものも一つの手法だというふうに考えているというところでございます。
  141. 小川勝也

    小川勝也君 ちょっと強引かもしれませんけれども、耕作放棄地をなくして自給率を上げたいと、そのために放牧地を作って、そこに和牛などを飼って育てたいと、こういう話だろうというふうに思います。  ほかのえさ、肉の自給のほかに、自給率を上げたいと思っているものは何でしたっけ。
  142. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) 生産努力目標の中で、それぞれの品目について生産努力目標を出しているわけでございますけれども、今特に面積的に拡大したいと思っているのが、一つは飼料作物ということでございますし、また野菜につきましても、今現在、何といいますか、中食といいますか、家庭で消費する野菜じゃなくて、加工用の野菜というのは大変海外から入ってきているわけです。メーカーといいますかユーザー側は、もう少し、ほんの少しでいいんだと、価格、コストダウンをしてくれれば国産に替えたいんだという方々はたくさんいらっしゃるわけですね。そういう方々に対してしっかりと国産で供給をすると。  今海外に取られたその加工食品といいますか中食用であるとか、その加工用の野菜に転換するというのも一つの方法というふうになると思いますが、ただそのためには、大臣が冒頭にもおっしゃられましたけれども、これはいいものを供給するということですから、しっかりとした、能力と意欲という言葉がよく使われますけれども、私は生産局の立場からすれば、技術力を持った農家、そういう方に物づくりをしっかりとしていただくと。そういうことによって、その耕作放棄地も防げるし、また再活用の道もあるというふうに考えているところでございます。
  143. 小川勝也

    小川勝也君 なぜちょっとこの引っ掛けみたいな質問をしたかといいますと、この前、参考人でお見えになった西原さんが、後でまた米の話もしますけれども、作るものがないと一言申されたんですね。後でまた麦の話もしますけれども、自給率を増やしたい、しかしその品目が、今その品目横断の品目は限られている、過去実績がない、何を作ったらいいのか。放牧地なんというのは今初めて聞いて、ああ、そうかと思ったんですけれども。  それで、もう一点、我々が自給率を上げるためには輸入農産物と戦わなきゃいけないわけです。安心、安全なんというキーワードはありますけれども、実は市場も二極化しております。お金持ちは本当においしくて安全なものを食べたいと。この前、視察の際にごちそうになりましたイチゴ、本当にきれいなイチゴだったですよね。そういうイチゴが、例えば北海道で生産者努力して作る、そのイチゴ戦争が、国井先生や岩永先生にいわゆる、何というか、挑戦状をたたき付けているんですよね、今。これはいいですよ。  そういうのはもちろんあるけれども、一つは価格を低くしないと太刀打ちできない分野がたくさんあります。それから、例えば我々も意図的に言っています、中国の野菜は絶対買わないと。あんな、どんな農薬がどのぐらい使われているか分からないものをおれは絶対食わないよと皆さんに声を大にして言っているんだけれども、実は私が言うよりも相当安全になってきているんだと私は思うんですね、入ってきている野菜は。そしてなおかつ、残念な話ですけれども、日本の商社が日本の種子を使って外国で安い労働力を使って生産をする農産物と戦うわけですよ。そこでもう少し安くと言われても、もう最初からそんな太刀打ちいかないよという話になるわけですよね。それで、もし限られたこのマーケットの中で農家の方が努力して、いわゆる市場に認められて、販売し、金額を受け取ったときに、だれかがどこかで泣く話じゃないですか、これ。それは、農業たりとも市場経済の中から隔離するわけにはまいりません。中川大臣がおっしゃるように、消費者が求めるものを作る、これは当たり前のことです。しかし、その競争というのは何を意味するか。不安定ということです。農業分野で大事なキーワードがあります。それは、持続的なあるいは再生産が可能なということであります。このリスクを農業者に負わせるというのは実は最小限にとどめたいと私は思うわけであります。  ちょっと思うわけでありますけれども、私たちが、例えば緑の政策、直接所得補償、直接支払、あるいは環境支払、ヨーロッパでこのことを中心に農業視察に行った経験は私はありませんけれども、どちらかというと、いわゆるゲタの部分があって、あとは、のんびりとは申し上げません、楽しくすばらしい環境の中で安全な農作物を都会や町の消費者に届けるという誇りを持って、安心して農業を続けられるというのが我々のこの理想だったわけです。ところが今回、何とか支払というのは入っていますけれども、我々の思いから懸け離れているんですね。本当にこの今ヨーロッパ型の直接支払も非常に難しい局面を迎えているという報告もありますけれども、私たちの国でもっと農業者が、猫の目農政というふうに言われて、今度はどうだろう、今度はどうだろうというふうに言われながら、市場経済と絶えず戦って、見えざる敵、佐賀と戦う、栃木と戦う、こういうことばっかりが本当に農業なのかなというふうに思うわけであります。  もっと、さっき私が幻想かもしれないけれども思ったように、すばらしい自然の中で農作物を安定供給するという誇りを持って、安心して農業経営する、息子に継がせるといった農業は日本においては不可能なんでしょうか。これはちょっとどなたかにお答えをいただきたいと思います。
  144. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) いい意味で私は佐賀や栃木と競争をしていただくことが消費者ニーズにもこたえられることだろうというふうに思っております。しかし、あくまでも国内の生産をきちっと確保するということも大前提でございますから、もうルールなしの競争とか、もうとにかく競争すればいいんだというものでもないということは、私も小川委員と基本的に同じでございます。  工業品と農産物はおのずから違うわけでございます。生産のスピード、あるいはまた土地というものが極めて重要な生産要素であること、自然、生き物相手であるということ、これはもう世界共通の必然でございますから。と同時に、ここはもう小川委員と全く同じでございますけれども、危険な、そして情報のない外国の野菜等々がどんどんどんどん入ってくるということに対しては、消費者の方がこれを大変警戒をしているわけでありますから、そういう意味で安全、安心な食品を供給するということも我々の責務でございます。  そういう中で、楽しくということは生きがいを持ってと、農業をやる上で目標を持って、そしてその目標に向かって努力をして、その努力が報われるような農業、これは北海道であろうが都市近郊であろうが中山間であろうが、多様な農業のそれぞれの目標を実現できるようにしていくような農政というものが消費者との共通認識の下で実現できるようにしていきたいというふうに考えているところでございます。
  145. 小川勝也

    小川勝也君 中川大臣もまるっきり相手が倒れてつぶれるまでに価格競争をやればいいというふうなお考えではないというふうに思います。  この問題、後にまたしますけれども、実は一番の懸念は一貫しております。今回の法案が成立することによって、あに図らんや、米の生産調整に狂いが生じて、全国で米が過剰になる懸念があるということであります。この懸念、様々あるわけでありますけれども、まず府県では、先ほどの担い手の網から外れた人たちが、それだったらもうしようがないと、どうせお金は要らないから、縁故米というんでしょうか、米を作って親戚や子供や兄弟に送るという米がまた増えやしないかというふうに懸念をするわけであります。そして、農林水産省は、米の価格は市場が決める。例えばナラシ政策なんというのも一応は説明を受けました。しかし、ここから数年間はもう右肩下がりで、米の価格が下落するんじゃないかというふうに思っておりますので、例えば北海道の米の主産地域では、いわゆるところの生産コストを割り込む結果になるということを最大の懸念に私はしておるところでございます。  米の生産、そして価格、そしてその後どういう推移と考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  146. 岡島正明

    政府参考人(岡島正明君) お答え申し上げます。  まず、米の価格についてでございますけれども、確かに、近年、食生活の変化の中で消費量が減少する、あるいは消費の川下における低価格米への志向が強いといったようなことで、価格下落傾向が見られるところでございますけれども、一方、御案内のとおり、作況が七四だった平成五年でございますとか、作況が九八でありました平成十年、あるいは作況が九〇であった平成十五年には需給状況を反映して米の価格は上昇しているところでございます。  平成十七年産の米でございますけれども、全国ベースでは作況一〇一でございます。そうした中で、北海道は非常に好天候に恵まれまして作況一〇九だったわけでございます。そうした中で、この十七年産の北海道産のきらら三九七が今どういう状況になっているかということでございますけれども、実は十七年産、初上場しましたのが昨年九月下旬でございます。そのときの落札価格が一万二千二百円でございます。それが直近の五月末には、これいずれも一俵当たりでございますけれども、一万二千二百円だったものが一万三千八百五十八円と、全平均銘柄ではかなり停滞というか、価格が横ばいなわけでございますけれども、そうした中で、北海道産きらら三九七におきましてはかなり価格が上がってきたということがございます。  このように、私どもとして考えておりますのは、一つは、昨年の天候が良くて非常に品質が良かったということもございます。それから、作況一〇九の中で、北海道、非常に関係者の方努力されて、集荷円滑化対策をきちっとやられて、区分出荷をきちっとやられたということがございます。それから、価格戦略として値ごろ感のあるものから持っていったというようなこともございましょうし、ふるい下の主食用に回すものをきちっと止めたということもある。あるいは道庁を始め関係者方々がいわゆる地産地消、食率向上、食べる率ですね、食率向上運動に取り組んでおられると。こういった複合的な要因できららの値段が今上がってきておると、こういったこともございます。  そうしたことから、いずれにしましても米価のこれからの見通しでございますけど、一つは、やはり米の消費拡大にきちっと取り組んでいきたいということでございますし、もう一つは、需要に応じた生産をやっていく必要があるだろうということでございます。  しからば、今、委員から御質問ございました十九年産から生産調整がどうなるのかということでございます。これは、この前にも国井委員からも御質問があったわけでございますけれども、一つは、できるだけ担い手対象になっていただくように、先ほど経営局長から申し上げたいろんな特例もございます。それから、集落営農にも参画していただくと、そういった道があろうかと思います。それから、現実に地域で集団的、団地的な転作の推進に一定の役割を果たしている受託組織についても、生産調整の推進の観点から、経営規模要件を緩和できることとしておりまして、可能な限り米の需給調整に配慮しているところでございます。  それから、それでもなおかついわゆる担い手対象にならない方々、そういった方々について産地づくり対策等の中で米の需給調整に対する支援策を行うということで、いわゆる担い手以外の方に対しても一定の米価下落対策が行えるよう措置することとしております。  こういったことによって、小規模な方も含めて生産調整を的確に推進するための対策を講ずることとしておるところでございます。
  147. 小川勝也

    小川勝也君 生産調整対策といいますと、今おっしゃられたのは、いわゆるところの担い手にならない小規模の稲作農家に対しても生産調整をしっかり守ってもらうために何らかの施策を行うということに理解してよろしいですか。
  148. 岡島正明

    政府参考人(岡島正明君) そういう方向で我々としては施策を打っていきたいということでございます。
  149. 小川勝也

    小川勝也君 先ほども申し上げましたけれども、担い手にならなかったということで、もうおれたちはいいと、もうお上の言うことは聞かないと、こういう動きにもなるんじゃないですか。余り甘い見通しをしていると北海道の米生産者にも迷惑が掛かる話なんですけれども、大丈夫なんでしょうか。
  150. 岡島正明

    政府参考人(岡島正明君) 正に米の生産調整生産農家全体の取組として、もちろん地方公共団体も含めて地域協議会等でも生産調整をできるだけしていただく、そのための支援策として今申し上げているような産地づくり対策でも工夫をしていくということでございます。
  151. 小川勝也

    小川勝也君 もう一つ、米の消費拡大、これはできなくてもやらなきゃいけないことなんで、一生言い続けなきゃいけないことだろうというふうに思いますけれども、少子化と食生活の変化で大変厳しい状況だろうというふうに共通認識を持っておるところだろうというふうに思います。  そして、人口が減っていく中で、先ほどちょっと逆説的な質問をいたしましたけれども、いわゆる農地は減らさない、耕作放棄地も減らすということなんで、バランスが崩れないか心配なんですけれども、もし仮に北海道の米生産農家がいつまでも区分出荷ばっかりしててもしようがないと、これは米じゃなくて別なものを作ろうというふうに考えたときに作るものがないと、こういう話だったわけですね。  それで、一義的に考えたら、私はこの前も申し上げたんですけど、やはり私たちの国でいわゆる自給率が低い農作物は何か。これやっぱり麦、大豆なんですね。一つ、やっぱり麦、大豆に関して言うと、この過去実績ということで言うと、これからどんどんどんどん作ってくださいという奨励、インセンティブにならないということがまず大問題なんだろうというふうに思います。このことがWTOの色の問題で非常に気遣いをされた分野だということはよく知ってますけれども、このままで、一方で大豆の過去実績を受け取っておられる方がいる、麦の過去実績を持っている人たちがいる中で、米から過去実績のない中で麦、大豆を作ろうという人は出てくるんでしょうか。この辺の見通しについてお伺いをしたいと思います。
  152. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) この新しい政策、品目横断的経営安定対策では、これはもう何度も申し上げておりますように、緑の政策として過去実績に基づく支払をするということでありますから、今、委員がお尋ねのような場合にはこの品目横断的経営安定対策の緑の部分は当然当たらないわけでございますが、以前にも何度か御答弁しておりますけれども、やはりこの担い手規模拡大をしていくということは、四ヘクタール、十ヘクタールでとどまるわけではなく、やはり土地利用型農業でやっていく限りには更にもう少し大きくならないと自立はできないわけでありますから、そういった担い手規模拡大要求を減殺しないようにという観点から見れば、この品目横断的経営安定対策とはまた別にこの担い手規模拡大対策として別途十九年度でも予算を考えていきたいというふうに考えております。
  153. 小川勝也

    小川勝也君 巷間言われているんですけれども、例えば非担い手になって、今まで麦を作っていた人が米にまた戻ってくると、こういう懸念があるわけでありますけれども、その辺はきちっと過去実績がなくとも麦を作っていこうというふうに意欲が持てるような対策なんでしょうか。
  154. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 私が申し上げましたのは、あくまで担い手となっていただいた方が過去実績のない部分についても農地を集約して規模拡大をされる分についてはこの緑ゲタとは別の政策として規模拡大分について手当てをしようということでございます。  ですから、そういうこともするんだということをちゃんと農業者の方に分かっていただく、熟知する中で、やっぱり担い手になった方がメリットがあるんだなということを分かっていただくということが必要だと思っておりまして、品目横断だけがあってあとは何にもしないんだと、もう規模拡大しようが新規参入しようが政策対象にならないんだということではないということを我々は考えておりますので、そのことについて従来地方に対しての発信が弱いと言われてもおりますんで、そのことも含めてしっかりと説明をしていきたいと思っております。
  155. 小川勝也

    小川勝也君 基本的に、変な話ですけれども、過去実績をもって交付金を受けている人が隣にいるのに、自分は何ももらえないのに新しく麦を作るという人はほとんどいないだろうというふうに思います。これは生産者の中でもいわゆる疑問の声が上がっています。我々の国はやっぱり米の自給率は高いけれども麦、大豆の自給率はこれはもう大変恥ずかしい数字なわけで、これは政策的に誘導をする必要が実はあるんだろうというふうに思います。  そんな中で、実はもう一点、苦しい話があるんだろうというふうに思います。国内産麦がもし生産されても、製粉事業者等の実需の方で大変なミスマッチの問題が起因してくるということで、実は麦の自給率を上げたいんだけれどもその道は険しいと。ですから、基本的に言うと麦の自給率は上がんないんじゃないかと、いわゆる上げられないんじゃないかというふうにあきらめている向きも聞こえてくるわけであります。その辺の事情はいかがでしょうか。
  156. 西川孝一

    政府参考人(西川孝一君) 小麦と大・裸麦という、まあ麦には、通常四麦という言葉で言われておりますけれども、大きく分けて小麦と大・裸麦ということで整理してみますと、日本の小麦はこれはもう委員も御案内のとおり、品種特性、これは日本の気象も原因していると思いますけれども、めん用というところに主用途を置いているということでございます。ところが、我々生産部局としてはユーザーサイドから品質が悪いということでさんざんクレームを受けているわけです。と申しますのも、めん用の場合はやはりたんぱく含量が理想的には九・五から一一・五とか、まあちょっと数字は不正確かもしれませんけれども、一定のたんぱく含量がないとしっかりとした歯触りのめんにならないと言われているわけですが、残念ながら我が国で生産される小麦は非常にばらつきがあると。北海道の小麦とか九州の小麦とか、主産地の小麦というのは評判はある面においてはいいわけですけれども、そういった面で大変国産麦については品質評価が低いということがございます。  それと、めん用の需要は一体どのぐらいあるのかということなんですけれども、それほど多くはないんですね。今、大体日本めん用で供給しているのが四十三万トンぐらいでございますけれども、全体としては多分六十万トンとか七十万トンとか、ちょっと数字は正確ではございませんけれども、それほど多くはないんです。どこに需要があるかというと、もう一つはパン用とか中華めん用にあるわけです。ところが、この中華めんなりパン用ということになってきますと、たんぱく含量が先ほど申し上げた日本めんより少し高くないとこれが駄目なわけです。最近になってこの辺のところの品種育成がされてきたわけですけれども、ただ、一般の国民の皆様方がお食べになっている小麦、パン用の小麦とか中華めんというのは世界の最高水準の品質のものを原料として作られた製品を食べていらっしゃる。そこに行くわけですから、作り方も含めて相当努力をしていかなきゃいけないと。  むしろ、小麦については、したがって今ある生産量をきちんと確保する、需要確保する、パン用にはパン用として、向くものはパン用にも向けていくと、そういう努力は必要だろうというふうに思っておりますし、これからも品種開発なり技術開発もするし、品質管理も強化しなきゃいかぬと思うんです。  ところが、大・裸麦になりますと、基準年の十五年で二十万トンなんですけれども、足りないものですからむしろ増やしたいということで、大・裸麦についてはもっと増やしたいということで考えているというか、いろんな対策もそれに向けて打っているということでございます。
  157. 小川勝也

    小川勝也君 そういった事情もあって、麦を作れば自給率が上がって幸せ、ハッピーというわけにはなかなかいかない事情もあるようであります。  先ほどの参考人の話もありましたけれども、元々、我々の国は水田に適した地域でございます。今、冗談でちょっとふっと浮かんだんですけれども、小麦に罰金でも掛けて、やっぱり米に戻してもらった方が有り難いねと思ったわけでありますけれども、そういうわけにもいかない。で、先ほどの作るものがないというふうになるわけであります。  それで、野中さんという家に視察にお邪魔をいたしました。二十町歩ぐらいだったんだけれども、いろいろ検討した結果、家族経営の水田経営は十五ヘクタールが最もコストが一番下がる点だと、印象的でございました。これは北海道の例だろうというふうに思います。機械だとか様々な設備投資だとか考えると、それはもうでかければでかいほどいいというのは、例えば十五の倍数だといいのかもしれないですけれども、そういうところですね。それで、後継ぎの御子息に聞いたら、やっぱり何がもうかるかというふうに考えてイチゴと。長男がイチゴで、三男がナンバンという、トウガラシですね、こういうふうに今やっていると。その考え方は正に中川大臣考え方に非常に合致した頼もしい後継者ですね、何がもうかるか考えたと。変な物作ったら、中国や外国から入ってくるから、競争力のある品目じゃなきゃ駄目だ、イチゴならば運んでくる間に駄目になるから競争力は強いぞ。そして、いや、でもね、ガソリンじゃなくて油をたくんで栃木県や佐賀県に対してビハインドがあるんじゃないかと聞いた。したら、いや、冬場の日照は旭川は結構強いんでこれは結構有利なんだと。そこまで研究して先ほどのイチゴ生産をして、本当にきれいなすばらしいイチゴを、これは市場にも認められて、有り難いいい話です。  こういうふうに、結局、米じゃなくて野菜に行かないと、何か金を取れる品目に移行しないと農業経営が成り立たないということなんです。そのこと自体が悪いかどうかというふうに思いませんけれども、先ほど大臣との若干の論争がありましたけれども、絶えず競争をさせられるのが農業経営者だなと、こういうふうに思ってしまったんです。  そうしますと、さっきなぜ耕作放棄地を解消したいんだと。日本は、内外価格差の関係から残念ながら外国からも農産物が入ってくる、そして麦の自給率は上がらない。あと時間があれば油の原材料やえさのこともお話ししたいけれども、基本的に厳しい中で、飽和状態の野菜や果物の中でみんな戦いをしなきゃいけないわけです。  そして、先ほど言ったように、野菜のカット野菜、もうちょっと原価安くできないか、そういうふうに原価を安くする競争をすれば、家族経営農業というのはもう風前のともしびになる。先ほど来も答弁の中にある、例えば建設会社が農業に参入する、大きな農業生産法人がいわゆるところの、経営の、いわゆる農業の主体的従事者ではなくて、いわゆるところのアルバイトを使って農作業をさせる。もっと考えると、安く農産物を作ろうと思ったら、大規模経営して、あるいは外国人労働者を使えば安い、あるいはそれは研修生かもしれない。そういうふうに際限なく、際限なく安くなっていく。  そして、そのたびに倒れるライバルが出ていくということで言うと、先ほどヨーロッパ型の安心の農業は幻想かというふうに私申し上げましたけれども、いつまでたっても落ち着かない。北海道弁に直すと、あずましくない農業をずうっと続けなきゃいけない。ピーマンで失敗したから今度は何がいいかなっていろんな研究をしてイチゴをやった。イチゴも、今度はこっちの産地から攻められて駄目になったと。そのうち米の価格も暴落した。カボチャでどうだろう、キャベツもまねされた。  これを、もっと言うと、例えば孫悟空でも閻魔様でもいいんですけれども、農林水産省という奈良の大仏がいて、野菜も米もそして果物も、様々な品目を、おい、おまえらもう自分たちで好き勝手に売れる物考えろと。くるくるくるくる回って、それは売れないから隣の土俵に行ったらどうだ。隣の土俵もまた苛烈な競争をする。農家はいつまでも安心を得ることなく、絶えず市場を気にし、消費者に振り回されて、安くていい物を、安くていい物をというお題目の中で苦しい農業経営を強いられることになるんではないかなというふうに私は思ってしまったんです。  そこで、中川大臣に、藤野農業会議会長、御存じですね、の懸念をちょっとお尋ねしたいというふうに思います。それは、先ほど村田参考人が資料の中に御用意いただいたものです。読みますよ。「品目横断的経営安定対策の第三条交付金(ゲタ対策)が導き出されることになった。このゲタ対策を「緑」化するためには、過去の作付け面積に対する交付金のウエイトを高めざるをえない。交付金の七割を過去面積に支払うという設計をすれば、」これ、仮にですよ、「小麦過去面積二十ヘクタールの認定農業者平成十九年に小麦を作付けせず、野菜などの対策対象外農作物を作付けしたとしても、」、この試算で言うと「五百六十二万八千円の交付を受けることができる。これでは、食料自給率が向上しないだけでなく、モラル・ハザードを引き起こしかねない。」、こういう参考人の方の文章がありました。  これは例えば、小麦でもてん菜でもでん原バレイショでもいい。そして、多分これぐらいの大きな過去面積を持つのは、まあ普通十勝と北網しかないわけですね。それで、藤野会長の御懸念は、十勝の優良畑作農家がゲタの対象品目の過去実績を持っておられる方はたくさんいます。てん菜もバレイショも、そして麦もやっているわけです。そして、その方が、その品目を作付けせずに、ナガイモで成功したように、例えばニンジンをぐうっと作る、アスパラをどおっと作るなんということになったら、いわゆるいち早く転作をし、協力をして一大野菜地帯になった富良野の価格形成能力そのものが脅かされかねないという懸念を持っているわけです。実は、このことはその富良野地区の藤野会長だけではなくて、北海道の様々な地域でも同じ懸念を持っているわけであります。  ということは、これはある種競争はしなきゃいけない、市場で勝てばいいわけですから。そうしますと、ゲタを持っている農業者が戦略的農産物で勝負をかけてくる。十勝の農業規模は大きい。てん菜を作るふりして作らないで、ニンジンでがばっと作る、ゴボウでがばっと作る。そして、市場から認められて、もうかることによってほかの産地を駆逐するなんということがこれは可能なんですね。こういうことを懸念しておられました。これは、今法案の大変大きな問題点だろうというふうに思うわけですけれども、中川大臣はいかが御感想をお持ちでしょうか。
  158. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) いいものを安くが消費者にとっては一番いいんでしょうけれども、いいものを作れば、消費者に評価をされれば、やはり安全、安心、おいしいというものであれば、私はそういう農産物を消費者は求めているんだろうと思います。もちろん、さっき小川さんがおっしゃったように、全部が全部ではありません。二極化という言葉を使われていたと思いますけれども、大いに小川委員の御地元でも、イチゴであろうがスイカであろうがトウガラシであろうが作って、そして収益を上げて他産業並みの収益で暮らしを豊かにしていただきたい、これが我々の目指す農業、農政の方向性でございます。  そういう中で、十勝の例を挙げていただいて大変恐縮ですが、今、ナガイモの話がありましたが、たまたま先日の日曜日、私、ナガイモ工場を見てきたんですけれども、十アール当たり五十万円の収益を上げている。でもピークに比べると半分に減っちゃったと、こう言っておりますが、それでもまあ百万だ五十万だということで、これはほかの農作物に比べると収益率は大変高い。しかも、これは東アジアでもよく売れていると。ただし、物すごく手間が掛かるんですね、御承知のとおり、一メートル掘らなきゃいけないわけですから。暗渠も明渠も深くしなければいけない。そういう投資なり努力をすることによっていい結果が出るということであります。  それはそれとして、高付加価値農業でありますけれども、それも大事ですけれども、国民の自給率を上げるために土地利用型でカロリーで貢献できるもの、さっき何か麦作るのは罰金取れとかいう冗談の御発言もございましたけれども、米も大事、麦も大事、でん粉も大事、砂糖も大事ということでありますから、御指摘のように、みんなが同じものをばっと作っちゃうと、それは値崩れが起きて、それはもう大変なことになる。よく大根やキャベツが豊作になって土に埋め返るなんという、誠にこれも気の毒なことが時々あるわけであります。他方、最近は総じて野菜の値段が高くなって、今度は消費者の方々が困っているという状況でありますので。  やはり、これは、はしの上げ下げを農林水産省や行政がああだこうだということを細かく指導したり命令したりする時代ではもうなくなった。米においてもあるいは政府管掌作物と言われているものについても随分と政策が変わってきているわけでございます。しかし、自給率であるとか、安全の問題であるとか、主要な作物についてはやはり政府全体が国民全体を見ながらやっていくという責務はこれからも大事だろうというふうに思っております。  そういう二つのニーズがあって、その中で大いに、小川委員のところも専業大規模が多いと思いますから、プロの判断でこれを作って大いにいいものを消費者に売ろう、買ってもらおうということで、高品質のものを作る、そして過去払いあるいはまたその他の品目横断の支払も受けるということで、文字どおり目標を持って、よりもうかる農業をやっていただけるような農政をこれからも進めていきたいと。  こればかり言うと、じゃ残りは切り捨てかということになるわけでございますけれども、そっちはそっちでいろいろな対策で少しでも多くの農業者にこの対策が該当できるように、これからもよく説明をし御理解をいただいて努力をしていきたいというふうに考えております。
  159. 小川勝也

    小川勝也君 たまたまこの法案は北海道のためにあるというふうに言われました。どちらかというと府県の皆さんにとっても、この四ヘクタールという壁も云々、あるいは集落営農の難しさをいろいろ伺っても大変厳しい法案だなというふうに思っていました。北海道もみんなと一緒に現地で公聴会もし、そして視察もいたしました結果、特に旭川、上川は大変な事態だなというふうに私は理解しています。  そんな中で、大臣の御地元、たまたまですよ、たまたま十勝の大規模畑作農家で順調に借金も返し、そして今回の対象品目の作付実績もあり、そして商品価値の高い雑豆やナガイモで収入も得るなんという農家は、これは本当にすばらしい法案だなというふうに、皮肉じゃなく思いました。  今の大臣の最後の言葉をかりれば、そういうふうに競争力のある農家がどんどんどんどんいいものを作って安く作って生産性を高めて競争する、そしてそこに参加できない農業、例えば家族農業、こういうところには、仕方ないですねと、ここはゲタを上げますからその地域で頑張って農業してくださいというのが、これが僕は緑の政策だというふうに思うんです。それなのに、その人たちはもう集落営農に入れなかったら駄目ですと。あるいは四町歩なければ駄目ですなんていうふうに切り捨てられているのが今の農業じゃないですか。これは、集落営農に参加すればいいじゃないかというふうに役所の皆さんは図面の上でかいているけれども、これ大変なトラブルがあります。時間がないからその辺は言いませんけれども。  それで、効率的な農業をどんどんどんどん続けていくと、先ほど申し上げましたように、無限のスパイラルで、安い労働者で大きな規模農業経営をするということに、帰結はそっちの方に向かうに決まっているんです。建設会社が幾つもの圃場を担当してやる、これは効率良く機械も人も回せる。それから、例えば企業の委託を受けて、いわゆる耕作請負の人たちがやる。そういうように家族経営がないがしろにされていくんじゃないかというふうに懸念をするわけです。  ある人はこういう、逆に私に言いました。いや、そんなこと言っても、もう農業経営者は決定的に足りなくなるんですよ、だからそういう人たちに参入してもらわないと農地はもう荒れるばかりですと。だから、今回は仕方なくそういう人たちに参入を促すように法案のインセンティブをして、将来的に効率的な農業や建設会社や農業生産法人や大規模農場を誘発するためのインセンティブとしてこの法案はあるんだと、こういう説明の方もおられました。  私のこの懸念と、私にこの話をしてくれた人の話をどのように御判断されますでしょうか。
  160. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) まず、この法案は北海道のためにあるのではないか、つまり、小川さんや紙さんや中川のためにあるのかと言われれば、そういうメリットもありますけれども、それだけではない。つまり、この四とか十とか二十とかというのはあくまでも一つの目安であって、面積要件で区切るんじゃないんだと。ポイントは、とにかくやる気と能力がある、まあいろんな言い方ができると思います、経営感覚があるとか目標をしっかり持っているとか。それは面積だけではなくて、よく三浦大臣のところのお話をいたしますけれども、熊本のように、面積は小規模であってもいろんな作物を作って、そして高収益を上げているところもあります。全部が全部ではない。  私のところも、この二十五年で耕地面積は倍になって収益が二・五倍になったと。もちろん、農家戸数は半分以下になりました。その間には、今御指摘があったように、豆等の冷害で離農したり、場合によっては命を失ったりということもありましたし、つい十年前までは、もうこれは小川委員のところも同じだと思いますけれども、酪農で借金で困って困ってと、もうあしたがないと、ちょっと踊り場の政策をつくってくれよなんて随分言われたわけでございます。  そういう意味で、ちょっと余計なことかもしれませんけれども、ナガイモ、ナガイモとおっしゃいますけれども、ナガイモのお手本は夕張とか、ああいうところの炭鉱で働いている人の栄養源としてあの地域で作っていたんですよ、元々。もっと言えば、青森からそれを運んでいって、今はもう炭鉱なくなりましたけれども、炭鉱という非常に体力を使うところの人たちの栄養源としてナガイモを昔からあの地域で作っていたのを十勝で品種改良をして、今は非常に有名になりました。  もっと申し上げれば、夕張メロンだって、あの地域で一生懸命努力をされて、商標権まで取って、正に今や日本じゅうでも大変人気のあるということでありますから、まさしく苦労もいろいろあったし、一朝一夕でやはりそういう、ブランドというのはお客さんが付けるものですから、自分たちがブランドだと言っても、相手にしてくれなかったら、これは意味ないわけでございますので。  そういう意味で、経営感覚、面積でただ二十ヘクタール糾合すればいいんじゃなくて、お互いにその中で、高齢者の方には高齢者の役割を、あるいはリーダーにはリーダーの役割といった質的な面で、まあ有機的な結合と言っていいんだろうと思いますけれども、そういう形の集落営農というものは、私は今後非常に意味のあるものであるし、そういうことをやっぱりやっていくことによって規模の小ささをまさしく、まあこれから始まるサッカーに例えたら怒られるかもしれませんけれども、体が小さくてもみんなで知恵を絞って小回りをもってやっていくことによって勝ち抜いていくと。  そういう農業もありますし、十勝や上川のようにどんとやって、何を作ったらいいのかということも含めてやっていくような農業も大事ですし、都市近郊で花や野菜を高付加価値で作る、これも結構手間が掛かりますから、そういった農業も含めて。単に四だ、十だ、二十だと、それに満たなかったら駄目だとか、それさえくっ付ければいいんだというものでもないんだろうというふうに考えております。
  161. 小川勝也

    小川勝也君 紙委員の言葉みたいですけれども、大臣農業は勝ち組農業だと、そういうふうに感じますね。私は紙さんと大臣の間にいると思っていたんですけれども、大分その……。  夕張メロンなんというのは、これは世界で最も成功した例です。それと、田村ファームのアイスクリームにしろ、そんなたまたま成功したブランドだけを羅列して農林水産大臣だというのは、ちょっとおかしいと思う。それは、一人一人の農業経営者がどんな思いで農業をしているのか。そして、この審議をどういうふうに見守っているのか。自分たち農家にどういうふうな使命が与えられるのかをみんな、かたずをのんで見守っているんですね。  それは、負ける人がいるから勝つ人がいる。今言ったのは、産地間競争だって激しいし、何か大きなロットで野菜に参入してくると、価格形成能力がある集団が来ると価格が下がって、それで周りの人は大変な思いをするわけです。それは、市場が、消費者が選んだんだからしようがないだろうというのが中川大臣です。それが一回だけなら私もしようがないと思う。しかし、そのことが恒常的につながっていくスタイルになっているから問題だというふうに私は申し上げているんです。  だから、上川では作るものがないというふうに、こう言っていました。だから、それは何でもいいです、トウガラシでもイチゴでも。それは、生きていかなきゃいけないから、もうけなきゃいけないから作るじゃないですか。涙ぐましい努力をする。そのことによって市場を奪われていく人たちが必ずいるわけですよ。だから、そのことは一回や二回は当たり前だけれども、未来永劫続くのがこのスタイルなわけです。私は、先ほど申し上げましたように、この環境支払とか直接所得補償とか直接支払というのは、安心して再生産ができる、循環型の農業ができるというのがこの直接支払なのかなというふうに思っていて、そのギャップが激しくて驚いているんです。  もう一つ、品質もいいでしょう。お金ある人がどんどん出てくるわけでありますので、一個八百円のリンゴが二千円になっても、おいしくて栄養があれば買って食べる人がいるでしょう。その先に加工業も外食もあります。どんどんどんどん安い農作物が求められてくるでありましょう。そうなると、先ほど申し上げましたように、経営者ばかり集まったってうまくいかないわけでありまして、それは安い労働力を使った方が生産性が高まってコストが下がってくるわけであります。そこに、株式会社参入の問題や、あるいはアルバイトを多用すればそれだけ収益は上がってくるでしょう。そして、外国人の研修生や外国人労働者を使った方が安くなっていく。このことについては、大臣、どうお考えですか。
  162. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) ですから、労働力がない、でも農業をやれるし、やりたいと思っている人たちはいろんな工夫が必要だろうと。ですから、その一つの形態として集落営農という実質的な結合でもっていい経営を目指す。  それから、そのときには、多分小川委員のところもそうでしょう、収穫時期になると、ジャガイモの収穫なんというと、いわゆる出面さんを、アルバイトですね、近所の御婦人なんかにお願いをしてやる、これも必要だというふうに思います。常に雇用していくわけにいきませんから、ピーク時対策として必要だと思います。  それから、先ほどの建設会社のように、企業が農業をやりたいということになりますと、一定の制約、つまり農地の保有は認められないという前提でありますけれども、そうやって農業に参入していただくと。あるいは農業法人についても、そういう形で今後とも位置付けとしてあるわけでありますが、これはWTOの交渉の日本の基本的スタンスでありますけれども、やはり日本の農業というのは家族経営が中心だというふうに考えております。
  163. 小川勝也

    小川勝也君 大臣の答弁を聞いていると、まあ二年後や三年後は分かりませんけれども、将来的に家族経営が相当厳しくなるなという予感を私はいたします。  時間がなくなりましたので、ちょっと私なりの締めをさせていただきたいというふうに思いますけれども、冒頭申し上げましたように、農村が崩壊し、人口が移動してしまうだろう懸念が払拭できない。家族経営というスタイルを大事にしてきた日本農業が、生産効率を優先する市場原理主義を色濃く反映させた農業への近道にこの法案がなってしまうのではないかという懸念が払拭できない。  そして、例えば私もさっき皮肉な質問をいたしましたけれども、耕作放棄地が、例えばホールクロップサイレージとか菜種とか、あるいは一部麦もあってもいいかもしれない。特殊な作物を作っていくためにしっかりと耕作放棄地が耕作されることがあってもいいと思う。その代わり、余りにも過酷な市場原理主義をすべての品目において課せられることによって、農業経営者の負担が非常に重い。離農がある、それから後継ぎができないなどという、この大きな問題を今回の法案が多分起因をさせるだろうというふうに思っています。  そしてもう一点、メニューが余りにも大上段からの、いわゆる机の上で作って、例えば今日は農地・水・環境の話はできませんでしたけれども、それもなかなかこの机の上で作られた感じがするし、集落営農というのも、これなかなか人と人、個性と個性の集まりですので大変難しい。そういった意味でいうと、今の農業経営者の方々から、あるいは集落の一軒一軒の農家の皆さんには非常に有り難くない法案メニューだろうというふうに断言せざるを得ないというふうに思っているところであります。  私は、野党民主党の理事として、いろんなこの法案をどういうふうに審議しようかというふうに与党の理事さんとも打合せをしてきたわけでありますけれども、野党の仲間からは何とか廃案にできないのか、継続審議にできないのか、どこかで修正協議はないのかと、いろんな相談も受けましたけれども、私の力のなさと責任感の薄さというんでしょうか、ちょっとじくじたる思いでございます。  ですから、大変口幅ったいわけでありますけれども、この法案の問題点を様々指摘してまいりました。今日この後、私の後、和田委員、そして来週はツルネン委員と主濱委員と郡司委員からまだ質問が残っています。将来こうなるんじゃないか、ここは大丈夫かという懸念がメジロ押しであります。野党ゆえのつらさというのもありますけれども、しっかりとこの法案を、後からも悪い点はみんなで検証して直していく勇気がやっぱり必要だろうというふうに思います。  委員長にお諮りをさせていただきますけれども、来年以降様々この法案を実行していくに当たって、あるいは政省令ができて、農村集落にいろんな方が説明に行って、いろんなことが回転していく中でいろんな問題が浮き彫りになってくることを、多分次の委員長や次の理事や次の委員で審議をすることになろうかと思いますけれども、大変私たちの国の農業政策にとって重要な法案なんで、次の委員会でも、来年の通常国会の委員会でもしっかりとこの問題を審議してほしいという理事会決定か委員会決定をしていただきたいというふうに私は思いますけれども、委員長にお諮りをしたいと思います。
  164. 岩城光英

    委員長岩城光英君) その件につきましては、後刻理事会において協議することにいたします。
  165. 小川勝也

    小川勝也君 大変言いたいことばかり言いましたけれども、その思いは多分同じだろう和田ひろ子委員にバトンタッチしたいと思います。  ありがとうございました。
  166. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 実は、この法案に対して質問本当はしたくないなという思いがいたします。だって、通ってしまうんだもの。与党の皆さんが、通ってしまうというか、採決されてしまう。与党の皆さんは、この委員会で本当に私たちと同じ思いで、農家の皆さんのお気持ち、自分たちが農業経営をされているお気持ちをしっかり吐露されておられるので、きっとこの法案を継続にしていただけるのかななんという思いでずっと聞いておりましたら、そうはいかないよと、さっきだれかがおっしゃいましたが、私たちは、やっぱりこの法案、担い手法案というのが本当に日本の農業の将来をしっかり支えていけるんだろうか、本当に農家の皆さんの役に立つんだろうか、本当に消費者の皆さんがこれで安心、安全な食品が自分たちに手に入るんだろうかと。もう懸念ばかりでございます。  参考人の質問がありました。また、公聴会にも行ってきました。今日も参考人の方たちにいろいろ言っていただきました。最初の参考人の生源寺先生以外は全員がこの法案に大きな懸念を示されておられました。山田専務でさえも大変な懸念があるというふうにおっしゃいました。一昨日の藤野さんは、実は最初に公述人の御意見を述べられるときにこの法案には賛成しますというお言葉でしたが、安心して取り組める施策はないんでしょうかと。例えば、農業委員会に離農の御相談に来られるとき、一番先に言われることは、借金で困ってしまったんだ、後継者がいないんだ、もう農業には更々未練がないんだというふうにおっしゃる方がおられるというふうに言っておられました。この法案に賛成する農業委員会の会長の藤野さんですら、やっぱりこの法案には懸念があるというふうにおっしゃったんだと思います。太田原先生は、やっぱり生産調整が進めばどうなると思いますかと、でもやっぱり米に移行するんじゃないでしょうかというふうにおっしゃいました。また、高見さんも、米に移行する、おれたち北海道が本当に困るというふうにおっしゃいました。白石さんも、やっぱり米に移行していくので本当に米が深刻な状況になるというふうにもおっしゃいました。  そして、今聞くところによりますと、生産調整担い手にきちんと守ってもらうけれども、担い手から外れた人にもきちんと守ってもらうということなんですね。だから、政府がやれやれと言って、その言うことを聞いた人には守ってもらうし、言うことをどうしても、この中には、枠には入れない人にも生産調整は守ってもらう。そして、もし守らなかったらペナルティーも町村にあるんだとすれば、これは本当にだれのための、だれが喜んで安心して農業を継いでいけるための法案なのか、大変疑問に思っています。  大体、担い手という言葉、担い手、これは農林省の言葉なんですか。担い手だったら、お菓子屋さんを継ぐ後継者も担い手だし、本当はだれでも親の家業を継ぐ人は担い手であるはずでありますが。  今、大臣は、四ヘクタールとか十ヘクタールという面積の問題ではないというふうにおっしゃいましたが、最初はそういうふうに出てきたんですよね。みんなそういうふうに理解をしているんですよね。四ヘクタールになれないからどうしようか、会津の人たちは三ヘクタールしかないから一ヘクタールを借りてこなくちゃいけないとか、みんな四ヘクタール、十ヘクタールにこだわっています。もし面積でないというふうにおっしゃるんならば、それは最初から言うべきであるし、三ヘクタールでも何でもスタートなんですよ、これがスタートで、将来は四ヘクタールになるような、そんな政策なんですよと言うべきだし、集落営農なんて、例えば一つの村で、この間いわきに行って、足りないから隣の隣の町の人が田んぼを借りてきて、それで十ヘクタールにするというふうにおっしゃっていました。本当ならば、一つの集落で、たとえ十二ヘクタールだろうが十五ヘクタールだろうが、それが一緒になってやるということが集落営農の基本なんじゃないですかって私は思っています。そういう意味では、この法案には大変な誤解があるし、大変言い足りないこともおありになるんだろうし、また、この法案に付いていかなければいけない人の理解がまだまだ得られていないということもある、大きな、大きな大変な問題だと私は思っています。    〔委員長退席、理事常田享詳君着席〕  先ほどおいでになった梶井さんが言っておられた中で、全国農業新聞の十七年の十一月十六日付けで、農政の解説の欄に、与党の、去年、選挙で圧勝したおかげでこの法案が出てきたんだ、まあ八十程度ならばらまきの延長だけど、六十ではまあまあの雰囲気だなんというふうに書いてあるんですけれども、それって本当にそんなこと言ったんですかね。農業新聞、まさか間違ったことは書かないんですよね。これ、教えてください。
  167. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 実は、私、初めてこれ知ったんですけれども、こんなことを言った覚えは私もありませんし、私の周りでも聞いたことはございません。
  168. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 じゃ、何か皆さんの心を農業新聞がちゃんと透かして、思いをおもんぱかって書いたのかなというふうに思いますけど。私は、この、何というか、農業新聞が言っていることは、まあ本当に農業新聞はよく読んだなという思いがします。  私は、大体こういうことは農家の皆さんの施策には合わないというふうに思います。農家の皆さん、みんな誇りを持っているんですね。本当に誇りを持って農業をやっています。私は、いつもいつも言うんですけれども、会津なんか、雪が解け始めたら、もう第一番に、村一番に田を耕すということが誇りなんですね。競争なんですね。そして、農機具でいえば隣よりいい物を買いたい、幾ら借金しても隣よりいい物を買いたい。  そういうのが、農家の人の、何ていうか、誇りと言ったらこれはあれなんだろうけど、農家の人の何か本当に自慢は、うちの農機具はいいというような自慢もしたいし、そしてだれよりも早く田植をしたいし、もう水の関係があるからそんなことできないにしても、だれよりも早くに田を耕したい。  そういう農家の誇り、そういうものが、例えば農機具を一つにしたらいいんじゃないの、集落一つで農機具やれば一番いいんじゃないのなんて、こんなことずっと何十年も前から言われているのに、これ一つできないんですよ、農家の皆さん。みんな一国一城のあるじだから、人の機械なんか使いたくない。人に頭下げたくないと言ったら失礼だけど、本当にそれが農家の人のお気持ちなんですね。そういうことを農林省の皆さんは御存じなのかなというふうに思います。  それを、四ヘクタールとか十ヘクタールとか、もうみんなでくっ付けろとか併せろとか、そんな、本当にそういうことができたら、もっともっと日本の農業は変わっていたのかもしれないけれども、こういう誇りを持った皆さんが、自分の自負心でやってきた農業が日本のこの農業を支えてきたんだというふうに私は思っています。  そういう意味では、何か今の政策って町村合併の政策にちょっと似ているなというふうに思います。もう何が何でも地方財政緊迫しているからくっ付け、そういうことで、できるところとできないところがいて、うちの矢祭町なんていうのは象徴的に最初からやらないって手を挙げたおかげで、総務大臣に、矢祭町が後でほえ面かいても、ごめんねって来ても構わないよ、審議会で言っているんですね、ちゃんと。そういうような言い方をされているような今の法案じゃないかなというふうに思いますけど。    〔理事常田享詳君退席、委員長着席〕  本当に、この担い手法案、私は農家の皆さんのためにはなっていないということをもう本当に言いながら質問をしていきたいと思います。  さっき、ばらまきのこと、出ました。実は、今日の参考人でおいでになった梶井さんが、先ほど紙さんも質問したんですけれども、ばらまきの政策については衆議院でも何回も議論をされたようだけれども、ばらまき政策って、ばらまきなんていう日本語はないんだ、ばらまくっていう動詞はあるけれども、ばらまきという名詞はないというふうにさっきもおっしゃいました。これまで農政にばらまきという施策があったのか。衆議院の議論の中で、中川大臣もばらまきという指摘には当たらない法律を提案しているというふうにおっしゃった以上は、やっぱりばらまき政策というのはあったのかなというふうに私も理解しました。  そういう答弁がされたとすると、今回の政策はやる気と能力というか、意欲と能力のある農業者を支援することになるのかどうか、食の安全や信頼が得られるんだろうか。そういうばらまきの延長策にしないということから、まずお答えをいただきたいと思います。
  169. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 私は、今回の政策がばらまきだということではございませんという答弁いたしましたし、過去においても価格政策という政策はありましたけれども、ばらまき政策という政策は私は使ったことございません。
  170. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 ばらまきにはならないというふうにおっしゃったんだから、やっぱりばらまきというのはあったんじゃないんですか。そして、ばらまきにならないように、言葉じりつかんで申し訳ないんですけれども、しないということからそういう担い手の絞り込みというのにつながってきたんですか。
  171. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) ですから、ただいま申し上げましたように、価格政策からやる気と能力のある農業者あるいは農業経営体に施策を絞ったということでございます。
  172. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 例えば、衆議院でも言われたんですけれども、フランスとかドイツとかイギリス、直接支払、さっき小川さんも言っていましたけれども、直接支払の割合というのは本当に農業の収入の中に、農業収入と割合してみると多いんですよね。フランスなんかは七九%が直接支払、ドイツは一〇七・四%、イギリスは九一・五%、アメリカは一戸当たり百九十七ヘクタールを平均耕していて、二八・九%なんです。日本は北海道も入れて平均すると一・八ヘクタールなんだけれども、その直接支払は一・八%にしかすぎないんですね。こういうことを考えて、日本の農業が本当にこれから直接支払というものに対してどういうふうになるんだろうかなというふうに思っています。  例えば、私たち民主党は一兆円構想というのがあって、直接支払をきちんと考えています。今いろんなところで、それは、それこそばらまきだなんていうふうに言われるんですけれども、例えば小麦、大豆、甘味、でん粉で二千三百五十三億円使っています。米は二千七百億円使っています。畜産は五百三十億円使っています。野菜、果実類は百二十二億円使っています。中山間地の直接支払は二十一・八億掛ける二ということで、これが六千百四十一億円掛かっています。それに環境支払なんかをきちんと足したり、例えば無駄な公共事業なんかを排除することによって決してばらまきではない、私たち民主党の直接支払になります。  私たちは担い手を絞るなんということはしません。販売農家全員が直接支払の恩恵を被るように集落の支援はもちろんしていくんですけれども、基本的には支払をしたり、品質が加算されたり、規模が加算されたり、環境が加算されたりします。  例えば、有機農業なんてやっている人たちにもきちんと支払をするというふうになっておりますが、民主党のこの案と、今言われている政府案というのはどういうふうに対比をされ、どういうふうな思いでおられるか、ちょっとだけ大臣お願いします。
  173. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 御審議いただいておりますので言葉を選んでお話ししたいと思いますが、民主党の案、衆議院での御議論を聞いておりますと、一兆円、途中から二兆でも三兆でもという話になりまして……
  174. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 例えばの話です。
  175. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) いや、例えばというか、現にそういうふうに発言されておりました。  それから、自給率を五〇%、政権取ったら六〇%、行く行くは自給率一〇〇%。そして、その根拠は最大面積、最大収量で計算をしてやっていったときに五〇から六〇、そして行く行くは一〇〇になるというふうに提案者はおっしゃっておられました。  ほかにも一杯違う点がございますが、我々は限られた予算の中でやる気と能力のある農業者に施策を、あるいは農業組織に施策を絞って、そして農地・水・環境対策と車の両輪で施策を集中して、プロの農業、もうかる農業で消費者に安定的な食料供給をすると。それによって四〇%から、大変難しいとは思いますけれども、四五%の自給率を目指してやっていきたいということでございます。
  176. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 大変難しいと私は思います。だって、五年間過ぎてもちっともならなかったわけだから。  まあ、私たちが難しくないということではないんですね。この自給率というのは大変難しい問題だと思いますが、民主党は政権取ったら五〇%とは言っていません。十年後に五〇%、将来は六〇%、行く行くは一〇〇%になるようにと言っていますから、お間違えいただきたくないんですけれども。  私たちは、例えば、お米は生産調整は取り払うということにしています。そして、きちんと棚上げにして市場には戻さないということを提案していて、そういうことから、もう本当に私たちの案はすばらしいなというふうに思いますが。  それで、三番目。  参考人の資料の中からなんですが、対象農家を絞り込むことによって対象の農地面積は五〇%程度になると言われているが、これで食の安全や信頼につながるのか。新基本計画では、現在約四百七十万ヘクタールの農地面積を維持することは困難としても、平成二十七年の時点で四百五十万ヘクタール確保を目標としている。これが国内農業で国民が最低限必要とする食料の供給を確保するためであるというふうのぎりぎりの農地面積だったはずであります。しかし、今回の施策対象面積が約半数になるのでは、四百五十万ヘクタールすら維持できないのではないかと梶井さんが大変心配をしておられますが、それにどうお答えいただけますでしょうか。
  177. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) その梶井先生の論文というか、見ますと、何かこの対策対象にならない五〇%は何か農業者が輸入農産物と裸で競争しろと言っているんだというようなことをおっしゃっておりますが、これは大いなる誤解でございます。  なぜなら、現在、米についても現行担い手経営安定対策というのは、対象者はもっといると思いますが、実際に入ってくださっている方はごく少数ですけれども、その他の農家の方はいわゆるだれでも入れる稲得の保険の上に米作りをされておりまして、しっかり米を作っているわけでございますから、この対策対象にならなかった人がすべて米作りをやめてしまうとか、そういうことはあり得ないわけでございます。これはもう米については現行の国境措置で守られている中で価格形成がされているわけでありますから、先ほどのきららの話等でも従来の担い手経営安定対策、今度の新しいナラシに参加されない方でもそれは需要に見合った生産をされてくるということだと思います。  ですから、残りの五〇%の部分について、ちゃんと米作りをしている相当な面積があるということがまず第一点でございますし、それから野菜、果樹についてはこの対策対象外でございますから、野菜の専作農家とか果樹専作農家という方が耕されている農地はこの対象の五割の外にあるわけでございますので、決してこの対策対象が、まあ万が一、五割であったとしても、それだからといって耕作放棄が増えるということはあり得ないと思っております。
  178. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 実は、政府は施策対象にならない五〇%の農地の耕作放棄というのを実は歓迎しているんじゃないかというふうに梶井さんは言っているんですよね。  耕作放棄地等に特定利用権を発動し、特定法人に農業経営をやらせることも二〇〇五年改正の経営基盤強化促進法でも可能になっているので、受皿になっているんじゃないかという懸念があるんですが、いかがですか。
  179. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 私、昨年改正した法律が本当にそんなふうに機能すれば大変なことだと思いますけれども、現実には本当に耕作放棄をされて何年も草ぼうぼうになっているようなところをようやくいわゆる所有権の壁を突き抜けて、他のちゃんと耕作していらっしゃる方に貸してあげるとか、あるいは市町村が強制的に草刈りぐらいはできるとか、あれはそういう措置でございますので、現在のところも、現実には一件も実行に移ったものはないわけでございます。  先ほども申しましたように、五〇%が万が一この対象にならないといたしましても正に本対策対象農産物以外の野菜ですとか果樹ですとかいうものの作付けを行っていらっしゃる方もいますし、また、先ほど申しましたように、政策支援を受けずに米作りをされる方もいらっしゃいますので、直ちにその農地が遊休化するということを意味するものでもありませんし、私たちは当然、耕作放棄地の発生を歓迎しているなんということは決してございません。
  180. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 大臣がお帰りにならないんだけど、大臣に質問なんだけど、五番は。  じゃ、次のところに行きますね。  兼業農家なんですけど、兼業農家がこの対象にならないような感じで、兼業農家が実は大変、本当は日本の農業、いや、もう本当に、専業農家が支えてきたときもあったんでしょうけど、今はずうっと兼業の皆さんが支えているんですよね。もう本当に何回も私は言っていると思いますが、田んぼでは本当にもうからないんだけど、家族がみんなで働いて農機具の借金払っているんだなんてみんな言っています。本当に兼業農家の皆さんが集落も支えているし、本当に兼業農家が日本の農業を支えていると言っても過言じゃないというふうに思いますよ。  経営安定対策を構築していくに当たって、これは蔦谷さんがおっしゃっているんですけれども、兼業農家の役割等についてもっと突っ込んだ議論があってもしかるべきだったというふうにおっしゃっています。畜産、野菜、果樹については既にかなりの程度まで主業農家への集約が図られている一方で、水田稲作、米については主業的農家への集約が三七%にとどまっている。それはそれなりの必然性があってのことであると考えるべきであるが、すなわち畜産、野菜、果樹のような主業化、専業化によるメリット確保が可能な集約型の作物については規模拡大が既にかなりの程度実現されてきています。さらに、これに対して、土地利用型の米については、価格支持がなくなるとともに、消費量の減少によって価格の下落傾向が続いて、さらに関税の引下げによって低価格の輸入ものの流入が懸念される中では、主業化、規模拡大によるメリット確保は大変難しい。兼業農家が農外収入を確保しながら、採算度外視しても水田稲作を守り、ひいては地域農業、農村を守っているのが多くの地域の実態である。その意味では兼業農家地域で重要な役割を果たしており、単に小規模経営というだけで兼業農家を批判したり排除したりするのはおかしいんじゃないかという蔦谷さんのこの中でのあれがありますけれども、どういうふうに思われますか。
  181. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) おっしゃるとおり、日本の特に土地利用型農業は兼業農家によって支えられている面が非常に多いと思います。特に、集落営農の非常に盛んである北陸地方とか中国地方なんかを見ますと、集落営農組織、立ち上がったところで総兼業という、つまり主業農家は一軒もないという中で集落営農組織が出てきているところがほとんどでございます。  じゃ、そういう兼業農家が何で集落営農に行こうとしているかということでありますけれども、結局、今まではそれぞれの方がほどほどにお若くて、働き盛りで、四十代、五十代前半ぐらいで、兼業収入もしっかりあって、農機具に対して投資もできたわけでありますが、これから五年、十年たちますとそういう方が、団塊世代を含めて、リタイアをされます。その人たちは収入がなくなるわけであります。年も取りまして非常に重労働というか重作業に堪えなくもなります。そうしますと、機械を従来のように、兼業収入を充てて新品の機械を買うなんということは非常に難しくなりますし、そんなことをしてまで六十五や七十になって本当に農業を自分一人で狭い面積耕して続けていくのかと。そういう中で、集落の中で、機械は一台、二台にしようと、みんな機械が壊れた都度もう買うのはやめようと、そういう中で、話合いの中で集落営農というのは育ってきているわけであります。  先ほど委員が御指摘のように、もちろん農家の中には、自分の機械を持ちたいとか、人の世話にはなりたくないとか、人よりも先に篤農家として頑張っているというのを誇りにしていると、それが日本の稲作農家の典型的な方だったと思いますけれども、我々が見るところも、本当に五年、十年たってそういう方が高齢化をし、今はもう既にぼろぼろといなくなっているわけであります。その後継者が育っていない中で何とかこの組立てを直しませんと日本の農村地帯に本当に担い手がいなくなってしまうと。  ついこの間も山形県にお邪魔しましたら、そこの篤農家の方がおっしゃるには、井出局長、私は青年部でずっとやっていたけど、四十六になったけど、私の後には一人もいないんだよと、四十六になっても青年部だと、このままいくと五十六になっても青年部だと、こうおっしゃっていました。  ですから、そういうことで、何とかしなきゃいかぬと、一人じゃもうどうにもならぬので集落の中でみんなでよく話し合って何とかこの集落を維持していかなきゃいかぬと、農業をやっていかなきゃいかぬと、そういう思いを私たちは酌み取って、制度の中にもそういう集落営農でやっていく、あるいは転作集団として頑張っていらっしゃる方もくみ上げて担い手として位置付けていこうと、そういうことで頑張っている人たちにエールを送っているというつもりでございます。
  182. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 先ほどの蔦谷さんはこのことについての質問に答えて、基本は、土地利用型だけでやることは無理がある、小規模であっても兼業であっても、また高齢者や女性を十分に活用していかないと集落は守っていけないというふうにおっしゃっていました。局長もそのようなことをおっしゃいましたけれども、やっぱりそういうふうにしないと集落は絶対に守れないというふうに思いますので、よろしくお願いします。  局長お願いします。対象者とされる特定農業団体というのは、若しくは特定農業団体と同様の要件を満たす組織というのはどのくらいあるんですか。
  183. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 集落営農組織全体としては昨年の五月現在で全国で約一万存在するという調査結果が出ておりますが、特定農業団体という資格を取得しておりますものは今年の三月末で二百十三団体でございます。また、この特定農業団体と同様の要件を満たす組織というものについては、当委員会でも御議論いただいております規約作成、経理一元化あるいは法人化計画を持っているというような五つの要件を満たすことが前提となっておりますが、これらの五つの要件につきましては、この集落営農を組織する構成員の方の合意に基づくものでございますから、この一万のうちこの五要件を現在満たしているものがどのくらいあるのかということについては私どももまだ把握をいたしておりません。
  184. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 十九年にならないと分からないという答えですね。  この間の質問でちょっとこれ聞き逃したんですけれども、例えば、集落営農の人が懸念していたのは、もし赤字になったらどういうふうに、だれが責任取るんだろうな、担い手が取るのか、リーダーが取るのか、構成員が取るのか、作業に従事した人が取るのか、それとも従業員が取るのか、そういうのはどうですかというふうに聞かれましたので、このことちょっとお答え……。
  185. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 正に集落営農組織というのは、当然モデルはございますけれども、あるいは先人が立派な経営をされているのは横にございますけれども、自分のところでどういうふうにするかというのは正にその集落の中のメンバーが相談をして決めるわけでございますから、スタートする時点に規約にどういうふうに書くかとか、そういう時点でしっかり決めていくということだと思います。
  186. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 自分のことは自分でしなさいと、自分のしりは自分でぬぐえということで、どうも失礼いたしました。  先日の、十四戸でつくっている二十六ヘクタールの集落営農のところで、これももう一つ聞かれたんですけれども、例えばその集落営農が構成できなくなって二十ヘクタール以下になってしまってもいいというふうにおっしゃったんですよね。これ私、重ねて昨日電話で聞かれたので。
  187. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) いや、私が御答弁しましたのは、そういうことじゃございませんで、スタートした時点で二十ヘクタールは満たしていたけれども、まだよちよち歩きなので、集落営農組織として認定された後も、やはり周りの普及員ですとか市町村の職員ですとかJAの営農指導員とか、そういうチームをつくって今一生懸命支えているわけですね。そういう人たちがしっかり支えをして、そういった事態になって、せっかくつくったのに一、二年で要件が外れてしまうということのないようにサポートする、そういう活動についてしっかりやっていただくと同時に、我々も支援措置を講じていきたいと、こう申し上げたところでございます。  ですから、結果的になってしまったら、これは要件が外れていますので、なる前の予防ということでみんなで、要件を満たした形で続くということを外の人も含めてやっていこうということです。
  188. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 私がお聞きしたのは、例えば、この間おっしゃいましたけど、五ヘクタール足りなくなる人がいて、それはじゃ隣の人、構成員の中に譲るというふうにおっしゃったんですけど、実はこの持っていた人は東京から来て、私はもう有機農業を勝手にやりたいからというふうに持っていかれちゃったらどうします、そうしたら要件満たなくなりますよね。
  189. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) もちろん、その二十ヘクタールを超えた分に、今仮説を言われました五ヘクタールの人が……
  190. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 仮説じゃないんですけど。
  191. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 五ヘクタールの人が、私は別のことをやりたいからと。どうしてもその人の意思が固ければ、それは当然そういうことでやむを得ないということになってしまうと思います。  だから、その場合にも、せっかく作ったものをどうしていくのかということについては、それ以外の、例えば作業受委託をして他の集落のものを預かっているというようなものもカウントできることになっておりますので、そういったことができないのかとか、そういったことも含めて、あの二十ヘクタール規模というのをどうやって維持していくかということをメンバー及びその周りでサポートする人々で一生懸命考えていただくということになろうかと思います。
  192. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 もう時間ないんですが、一つ大臣にお尋ねします。自給率の問題です。  参考人の皆さんも、公述人の皆さんも、この法案は自給率の向上には資さないというふうに一昨日みんなもおっしゃいましたけれども、経営安定対策、一定規模階層を切ってしまうということは構造改革の減速にはつながるけど加速はしないというふうにさっき梶井さんも言われました。  自給率が向上しない、また減速してしまうということに対して大臣のお考えというか、大臣はこの法案をどういうふうに持っていって自給率を向上させるつもりなのか、構造改革を加速するつもりなのか、お答えお願いします。
  193. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 一貫して自給率が下がって、また耕作放棄地が増えてきていると。これを何としても食い止めなければいけないということは和田委員と我々共通の認識だろうというふうに思っております。  そういう中で、やはりやる気と能力のある、つまり、これはあくまでも土地利用型を前提にした品目横断でございますから、そういう意味で規模のメリットというものが追求しやすいようにしていくということが必要だというふうに考えております。  先ほど小川委員の御指摘で、米作で十五ヘクタールぐらいがベストだというお話がありましたが、それは過去の、それぞれの農家によって多少事情が違うかもしれませんけれども、やはり耕作放棄になるような土地を買いたい、規模拡大をしたいというふうな施策になるような方策を今回この法案の中で是非取っていかなければならないというふうに思っております。  また私の地元の例を出して大変恐縮でございますけれども、何も、昔厳しかったわけでありますから、余り自慢するつもりは毛頭ございませんが、こういう例があるということで御紹介いたしますと、私のところはむしろ土地が足りなくて、もっともっと拡大したいということで、ある意味では土地の奪い合い状態になっているわけでございます。  そういうところもございますし、全国でもうまくマッチングすれば、私は耕作放棄地は少なくなっていくと。この法律がスタートすれば、そういうふうに思っておりますし、その結果、規模の拡大、耕作放棄地の減少、あるいは土地の合理的な利用によって、私は消費者に好まれる農産物が供給できることによって自給率の向上につながっていくというふうに考えております。
  194. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 終わります。
  195. 福本潤一

    ○福本潤一君 公明党の福本潤一でございます。  今日は委員方々も朝九時から、また質疑も午後一時から長時間にわたって行われておりますので、お疲れのところと思いますけれど、私も若干の、今回の法案の重要性にかんがみて、質問をさしていただこうと思います。  今回の法案、長時間の審議に及んでおりますし、参考人も、十二人の方から御意見を伺ったと。まあ賛否は半々になるにしても、賛成の方からも様々な懸念を、また将来の不安も開陳いただいたと。また、説得力ある意見を聞かしていただきましたので、野党の質疑に関しても、様々この法案に対する懸念、いろいろな観点から質問があったと思います。  私、この法案の題名からしても、なかなか農家方々、分かり切れてないという状況がございますし、ある意味では、現地で視察したときも、農水省からの説明が、うまく法案の中身が理解できるような形での構造改革という形で意識ができてないということがございますので、今回は特に、一つの大きな計画の見直しという以上に、大変革、農業改革と言ってもいいような改革が中身としてございます。  ですので、今日は質問を簡潔に投げて、むしろ農水省の方々に、今回、法案変わったらどういうふうに農政改革なっていくのか。まあ夢と希望とまでいかないでも、現実に安心する改革なんだとか、不安の除去されている改革、若しくは、今回の構造改革しないでいると、また遅らせるとどういうふうに大変なことになるのかという観点の意識も持っていただいて説明いただくようにしていただければと思います。  というのは、例えば品目横断的経営安定対策といいますと、分かったようなつもりになるんだけど、若干、よく聞いていると、それ何だと。また、農業に関心のあるほかの議員の方々からも、それ何だというふうによく聞かれます。そういうときに農水省に聞いたら、いや、要するに今まで価格安定政策だったのを人中心に支援するんだというふうに聞くと、ああ、なるほど、そういう改革なのかという理解が進むということがございました。ですので、最初に、人中心に対策対応をするという意味で、担い手の要件について農水省の側から、我々の議員の方からではなくて、絞って最初聞かしていただきます。  農業経営に関する各種施策対象担い手というふうにしております。これに集中化、重点化すると。担い手となる認定農業者と集落営農の現状、また今後の見通しをどういうふうに考えてこの改革を進めようとされておるか、これをお伺いしたいと思います。
  196. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 認定農業者につきましては、今年の三月末現在で二十万経営体を超えました。集落営農の総数については、昨年五月現在で一万を超えております。  一方、私どもは二十七年度に向けて構造の展望というのを出しておりますが、ここではあくまで家族農業経営が中心でありますが、効率的かつ安定的な農業経営、言葉を換えて言いますと、農業で他産業並みの所得確保し得る経営と、これを家族農業経営で三十三万から三十七万戸程度、集落営農経営で二万から四万程度、法人経営で一万程度というふうに見通しまして、これの担い手育成確保を徹底的にやっていくというふうに考えているところでございます。
  197. 福本潤一

    ○福本潤一君 そうしますと、担い手に選ばれる、選ばれない、また選別されたような状況、現実に起こってくるというふうになります。  そうしますと、大臣、今多くの方々、また北海道でもそうでございましたけど、担い手になれそうにない方に対する今後の担い手育成策、これをきちっと言っておいていただかないと、なかなか現状で変革されたときに将来は暗やみだとか、正に田園荒れなんとする方向に行きよるんではないかという不安が出てくると思いますので、担い手育成策、どのように考えておられるか。
  198. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) まず、担い手になる意欲を持っていただくということが大前提だろうと思います。担い手になれば、もちろん経営安定対策対象になりますし、それから価格変動のときの負担も軽減されるということになるわけであります。その他、先ほど井出局長からも税制上のあるいは予算上の、あるいは融資の面でのいろいろなメリットがあるわけでございます。  最初から担い手になる気がない人に無理やり担い手になっていただくかどうかということはちょっと別問題といたしまして、農政の観点からは、担い手になっていただいた方がより経営が安定し、そして地域のほかの産業並みの収入を確保することができるという目標があるわけでございます。  そういう意味で、先ほどから申し上げておりますように、スタートラインとしての一応の面積要件はありますけれども、それをもっともっと面積だけではなくて一定の要件、とりわけ収入が増えていくと、他産業並みの収入を目指すことができるという観点から、そういう方々に対してこれから一層きちっと御説明を申し上げ、そして御理解をいただいた上で担い手になっていただきたいというふうに考えております。  ちなみに、今週の日曜日に北海道でタウンミーティングというのがございますので、そこでもできるだけ分かりやすく、法律用語ではなくて、分かりやすく御説明をし、またいろんな御意見をちょうだいしたいというふうに考えております。
  199. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういう説明を大いに農民の方、また市民の方にも働き掛けていただければと思います。  スタートラインの担い手の基準ということでございました。四ヘクタール、十ヘクタール、二十ヘクタールという話、先ほどから出ておりますけれど、今後このスタートラインに基づいて推移していった場合、見込みと違う状況が生まれた場合に、規模要件は面積要件だけではないというお話、先ほどありましたけど、再検討、また、むしろフィードバック等々も含めて検討する可能性、どのように考えておられるかもお伺いしたいと思います。
  200. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 先ほども申し上げましたように、我々はスタート時点で、正にこの対策対象となる担い手農家あるいは法人経営に、集落営農組織が将来的に他産業並みの所得確保し得る農業経営に発展していくと、そういう努力を後押ししようという観点から定めておるわけでございます。  もちろん、制度開始後も、構造改革の進捗状況については定期的に点検をしまして、その結果を踏まえて、望ましい農業構造の実現に向けた見直しを行っていくことは必要と考えておりますが、それが規模要件を緩和する方向でというようなことは現時点では考えておりません。
  201. 福本潤一

    ○福本潤一君 緩和する方向性は考えておられないということでございますけれど、ある意味では農家一人一人の不安というのはそこにもあるということが我々現地調査で実感したところでございますし、私も、法案とはちょっと離れて、担い手の次に準担い手という考え方どうかというふうに北海道の公聴会でも聞きましたら、これはやはり将来に対する不安の除去という意味でも一つの考え方ではないかという方が多くございました。ですので、今後の推移を見守りながら検討するということも考えていただければと思います。  そういう中で、経営規模要件の特例基準というのが現実に今回の法案の中身にも入っておるようでございます。この特例基準を設けることができるという、その中身はどういうふうになっておるかをお伺いしておきます。
  202. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 対象者の要件については何度も御議論いただいておりますが、四ヘクタール、十ヘクタール、二十ヘクタールというのが基本であるということでございますが、集落内の農地が非常に少ない場合ですとか、経営規模は小さくても複合経営などにより相当水準所得確保されている場合、こういった場合については、物理的に無理だとか、あるいは、その所得水準から見て発展可能性があるというようなことで特例を設けているところでございます。  物理的特例につきましては、規模拡大が困難な地域につきましては基本原則のおおむね八割まで、中山間地域の集落営農組織については五割まで緩和できるということになっております。  また、生産調整をしっかりやっていくという観点から、地域生産調整、麦、大豆の集団化を担っている組織につきましては、その地域生産調整面積の過半を受託する組織というのを対象にいたしまして、この場合には二十ヘクタールに生産調整率を乗じた面積、中山間は更にこれに八分の五を乗じるということで、面積要件を大幅に緩和してその生産調整を担っている組織も対象にしていくということにしております。  また、所得特例につきましては、市町村が基本構想というもので、我が町でのいわゆる他産業並みの農業所得というのはどのくらいかというのを決めております。それを五百万とか四百五十万とか六百万とか決めておるわけですが、その市町村が定める基本構想の過半の農業所得確保していると、かつ、今回対象になります米、麦、大豆等の対象品目から得られます収入、所得、又はそういった対象品目を作付けています経営規模が全体のおおむね三分の一以上である経営については事情に応じて個別に特例として認定をするということにいたしておりまして、この所得特例で、野菜ですとか果樹でしっかりした経営をされている方が、一方で米も作っていますというような場合については大体対象者にすることができるということになっております。
  203. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういう意味では、面積要件の特例基準、ある意味では準担い手のような形の運用の仕方もこういう特例を利用することによって可能になるのではないかというところもございますので、対策検討お願いします。  特に、瀬戸内海、島たくさんございますけれど、そういう瀬戸内海の島や何かになりますと、なかなか担い手になりにくい、さらには集落営農自体も中山間地、離島では困難という状態が想定されますが、こういう地域の実情に応じた対応、これについてはどういうふうに考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  204. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 先ほども一部申し上げましたけれども、中山間地域だけでなく、離島地域についてもいわゆる条件不利地域でございますので、先ほどの経営規模要件の特例を設ける中で、農地が少ない場合の特例の下限については五割の範囲内まで緩和できると、あるいは生産調整受託組織の特例につきましては、一般は七ヘクタールが下限でございますけども、この中山間地域、離島地域等については四ヘクタールまで下限が下ろせるということになってございます。
  205. 福本潤一

    ○福本潤一君 先ほども様々な懸念、質問ございましたけど、こういう担い手、選別されたような状況が生まれる可能性もありますし、絞り込むという形になりますと、食料自給率との関係、十年後四五%目標達成も難しくなり、さらには横ばい、低下も可能性があるんではないかということございます。現実にどういう対応対策されるか、大臣お願いします。
  206. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 今回の対策の前提といたしまして、やはり現実に農業従事者が大幅に減少し、高齢化が加速度的に進行してきておりまして、耕作放棄地の一層の増大が見込まれておるわけであります。その中で、この対策を導入することによりまして、いわゆる担い手と言われる方々が、農地を集約して規模拡大をしたり農地の有効利用についてインセンティブを働かすことによって耕作放棄地の発生を防止するという考え方でございます。  もちろん、小規模農家などについては集落営農経営に参画していただくことによって集落ぐるみで農地の有効活用を図ると、そのことによって耕作放棄地の発生が防止されるということを考えているわけでございます。また、そういった生産性の高い担い手生産の相当部分を担うという構造が実現されますれば、農作物生産コストも低減され、また品質も向上されると、消費者や食品産業が望むような品質のものをしっかりと需要に合わせて生産をするということになりますれば、その自給率の向上にも資していくんだというふうに考えております。
  207. 福本潤一

    ○福本潤一君 もう一つ、農地・水・環境保全という対策考えておられるようですが、この担い手を絞り込むという中で、耕作放棄地が更に現実には増大する、また田園も荒れなんとするという状況も懸念されるわけでございますが、その対策をどのように考えておられるか、お伺いします。
  208. 山田修路

    政府参考人(山田修路君) 耕作放棄地対策でございますけれども、現在、耕作放棄地、発生している原因を見ますと、一つは担い手がいないという、あるいは受け手がいないという人に関連をする問題、それからもう一つは、農地の状況が悪い、あるいは圃場整備が十分進んでいないということで、その土地に起因するような問題、それからあるいは農産物価格が下がってなかなか意欲が出ないというようなそういう農業環境をめぐるような問題、こういった問題が非常に、いろんな要因が重なって発生をしてきているという状況にございます。  農林水産省としては、耕作放棄地を解消し、あるいは防止をしていくという観点から、先ほど言いました人、担い手育成するためにいろんな施策を講じますですとか、あるいは農地をそういう担い手に集積していくような対策を講ずる、また条件の不利なところでは中山間地域の直接支払を実施するなどによって下支えをしていく、また基盤整備を行うなど農地の条件を整えていくと、こういった総合的な対策を実施することによって耕作放棄地の防止なり解消に努めていきたいというふうに考えております。
  209. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういう発生しかねない放棄地でも、新しい農作物、また、例えばBDFのようなものも含めて対応対策検討していかれることも検討していただければと思います。  同時に、農業用水の保全というものも困難になる場所も出てきはしないかというふうに思います。農家の減少ということが具体的に起こってきたときのことでございますが、今回、農地・水・環境保全向上対策を導入する意義を農水省の立場からきちっとお答えいただければと思います。
  210. 山田修路

    政府参考人(山田修路君) 農地・水・環境保全向上対策でございますが、農地なり農業用水という資源は、食料の安定供給ですとか、あるいは農業の持つ多面的機能、これを発揮していくという意味で社会共通資本というふうに考えております。こういった社会共通資本につきましては、地域共同の取組によって適切に保全管理を図っていくことが重要であるというふうに考えております。しかしながら、今、委員がおっしゃいましたように、農村において高齢化が進行したり混住化が進むということで集落機能が低下していく中で、こういった資源の保全管理が難しいというような状況も見られます。  平成十六年度に農林水産省農家の意向調査を実施をしたわけですが、こういった資源について将来にわたって維持し続けることが非常に難しくなるというふうに答えられた方が約八割の方ございます。また、そういう中で、こういった資源を維持管理するために農業者以外の方と連携協力していきたいという方が約九割いるというような状況にございます。こういった農村の方、農家の方の御意見等を踏まえますと、こういった農地、農業用水等の資源を将来にわたって適切に保全していくためには、農業者だけでなくて、地域住民等多様な方々に参画していただいて地域の農地や農業用水等を守っていくというようなことが重要ではないかと考えております。  こういった観点から、この地域共同の活動を支援いたします農地・水・環境保全向上対策を十九年度から本格的に導入したいというふうに考えている次第でございます。
  211. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういう意味では、農業用水の水利権の中にも地域用水等々も新たに参入してきたりしておることもございまして、地域の水の担い手という意味で土地改良区水利組合というものも考えられると思います。ただ、現実には、農村地帯疲弊している中で、水利組合も経営主体として維持困難になってきているという現状もございます。そういう意味では、この土地改良区水利組合も、農村と山村、また都会が一体化してくる中で、水の担い手、都市用水を含めてそういう立場に発展していくのが本当は一番いいんだと思いますけれど、特に渇水時や何かに、農業用水は若干水利権多く持っておるので対応できるけれど都市用水はできないというときに、都市住民の方々からそういった水に対する要求、要望も出てくるかと思います。  水利権問題で大変な問題あると思いますが、用途転用を含めて、そういう渇水時も含めて対応策をどのように考えておられるかをお伺いしておきます。
  212. 山田修路

    政府参考人(山田修路君) 渇水時におきましては、今、委員からお話がありました水利組合ですとか土地改良区あるいは集落といった、そういう地域方々地域関係者が協力して水管理を徹底をする、あるいは見回りを十分するというようなことで節水対策を行いましたり、あるいは番水という、先生よく御存じですが、ローテーションを組みながらかんがいを実施をしていく、あるいは用水の反復利用を行っていくというようなことで、農業用水等非常に限られた状況の中でこれを有効に利用していくという取組が極めて重要でございます。  今回導入をいたします農地・水・環境保全向上対策につきましては、農業用水を有効利用していくための取組ということも当然念頭に置いたものでございますので、特に渇水のおそれのある地域におきましては、そういった先ほど申しましたような渇水時における取組ということも念頭に置きながら、地域の実態に合った活動計画を決定をしていただくということも可能な仕組みということになっているところでございます。
  213. 福本潤一

    ○福本潤一君 先ほど大臣、タウンミーティングでまた様々地元へ、また市民にも農民にも説明していただけるということでございますが、今回の法案通りますと、地域コミュニティーの中で新しく新規に農業参入する、そういう方々に対しても、またなかなか条件も様々難しい問題が出てきかねないということで、新規就農者の支援策についてお伺いしておきたいと思います。
  214. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 福本委員御指摘のように、この持続可能な、もう文字どおり、中長期的に日本の農業を力強いものにしていくためには当然新規就農を円滑にすることが大事だと思います。  一時期に比べますと新規就農者の数は増えているわけでございまして、学卒でも一時期は千七百人と言われていたものがもう、微々たるものではございますけれども、二千二百人と。とりわけ団塊の世代がこれからどっと新規就農に参加される、ある意味では期待をしているところでございまして、これにつきましては平成二年に四千八百人だったものが十倍近い四万二千三百人ということで、農業後継者以外の就農も一時期に比べれば、十倍近いといっても五百三十人でございますけれども、一時期に比べて増えているということでございます。この流れを是非とも我々としては維持をし、新規に経営者として、できればプロ的な農業者として参入してもらいたいと思います。  よく問題になりますのは、技術、資金、それから農地ということでありますけれども、中小企業を起こすときでもよく言われますが、デスバレーという幾つかの谷を越えていかなければいけないわけでございますので、特に農業の場合には水管理あるいは農村集落といった、一人だけで幾ら頑張っても限界があるわけでございますので、地域の受入れ体制もきちっと協力をしながらこういった問題をクリアをして、新規就農の皆さんに大いに活躍していただけるように、一番大事なのは、分からないとき、困ったときにきめ細かく周りの人々あるいは農業組織、自治体、必要に応じては国というものが対応できるようにしていかなければいけないというふうに思っております。
  215. 福本潤一

    ○福本潤一君 正に今回の改革、大きな大変革でございますし、農家の方も、また参考人の方もいろいろな形で言っておられる中に、今回、構造改革を進めると、逆に農業、また経営体としても衰退するんじゃないかという不安を持っておられるというのが根底にあると思います。ですので、今回の構造改革を逆にしなかったらば今後日本の農業はどんな状態になるか。ある意味では日本の農業崩壊ということ、逆に導入しなければ起こりかねないよという現状も具体的に客観的に見たら、国際的に見たらあるんだということも含めて、説得力のある言い方をタウンミーティング、また国民に対しても訴えていただければと思います。  以上で質問を終わります。
  216. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  五月三十一日に参考人質疑をやって、六日に旭川での公聴会と、今日午前中、再び参考人質疑をやりました。関係する現場の農業者や、それから農業団体、そして研究者の方々、各方面から本当に率直な意見が聞かれたというふうに思います。本当に出された意見に対して真摯に耳を傾けて、これをやっぱり反映させていくと、政策に反映させていくということが必要だというふうに思いますし、そういう立場で出された意見や法案の問題点について質問をしていきたいというふうに思います。  まず、担い手の問題です。  旭川で、品目横断的経営安定対策についての生産者、関係団体、研究者の受け止めということを改めて意見を聞きながら思ったわけですけど、北海道は言わば最も規模拡大ということでいえば全国の中でも先進とも言えるといいますか、農業基本法の問題で言っても、それに基づいて施策を進める上では優等生と言われてきたということがあるわけだけれども、そういう北海道でも今回の政策というのは担い手限定の選別政策だということで、そういう受け止めがそれぞれの公述人の方から出されているわけです。四人共通してやっぱりそういう言い方をされていたわけです。  これまで、北海道で見ても、この間三分の二くらいの農家が離農しているわけですよね。言わば、そういう多くの農家の人たちが家族経営を含めて離農している。その土地を放して、そういう土地を集積をしながら現在のその大規模農業経営がつくられてきたと。そういう中で、不十分ではありながらも、一定の価格制度で支えられてきたという経過があるというふうに思うんです。  彼らはやっぱりより充実したものを、政策を要求してきたわけだけれども、しかし今回の対策の中では期待していたものとやっぱり懸け離れているということも出されているわけですね。その中で、例えば、現在、北海道で言いますと、今度の対策で、特例ということで面積というだけじゃなくて所得の面でも下げて、そこに入る人が増えるようにというようなことでの対策をやっているということなんだけど、それに特例でもって七割対象になるという話も言われているんだけど、しかしと言って旭川の方が言われたのは、稲作中心地帯である旭川では一千八百戸の農家のうち六百戸しか対象にならないと。そのうち認定ということで、未認定という言い方していましたけれども、二百戸が未認定だと。そうすると四百戸なんだと。そうすると、全体の二割にしかならない。だから、対象になれない農家というのは出てくるわけですけれども、そういう農家は集落でやれと言われるけれども、できないんだという話ですよね。やっぱり広大な農地の中で集落というのも簡単じゃないということが生産者の方から出されていたわけです。  四人が四人ともやっぱりもっと担い手の幅を広げるべきだということをおっしゃっていたわけですけれども、北海道で集落営農でなかなか進んでいかないということについての原因といいますか、なぜそうなのかということについてどのように分析をされているでしょうか。
  217. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 北海道は、確かに全国平均の一戸当たりの約十倍の耕地面積、十八ヘクタールぐらいあるわけでありますし、とはいいましても、幾ら北海道の食料自給率が一八〇%だといっても、全国の農地の五分の一ぐらいしかないわけでありますから、その中で面積的には米を一番作っているわけであります。また、転作も一杯しているわけであります。  そういう意味で、先ほどから北海道ですらいろんな農業、農村があるんだということでございまして、特に米作が価格が下がっている、先ほどからも御議論ありますように、あるいは作りたくても作れない、でも生産調整をしないと最終的に困るのは生産者の皆さんですということは私は御理解をいただいているものというふうに理解をしております。  そういう意味で、集落営農に参加したくてもできないんだ、あるいは期待外れだというふうにおっしゃいますけれども、まだまだこれから予算措置その他で具体的に決めていかなければいけないことがたくさんあるわけでございまして、スタートの十九年度に向けて作業もまだまだ必要でありますし、何よりも生産者の皆さん、現場に御理解をいただいて、規模の問題もあるでしょう、あるいは特例の問題もあるでしょう、あるいは集落営農に参加しにくい、しないということであれば、なぜそういうことなのかということもきちっと意見交換をしてやっていくと。もう今から駄目だ駄目だという話ばっかりされると、その中にはこれからもやっていきたいという農家もあるわけであります。  それから、そういう農業も大事でありますし、日本の農業というのは大きく分けてそういう地帯、それから都市近郊も約三割の粗生産を挙げておりますし、中山間地域でも立派な生産活動をトータルとしてやっているわけでありますから、そういうところを経営意欲を持って単独であるいは共同でやることが私は質の高い農業経営に資する、そのための法案だというふうに思っておりますので、どうぞそういう観点から御議論をいただければ大変有り難い。  まだ時間があります。我々がやることはたくさんございますので、御理解いただきたいと思います。
  218. 紙智子

    ○紙智子君 旭川の公聴会のときに、担い手の位置付けの話ですとか基準ということでの議論もあったんですね。その中で、やっぱり担い手はできるだけ多くの人が農村に残って続けられるようにする対策が必要じゃないのかと。これ当たり前のことなんですけど、やっぱり残っていなきゃいけないと、人口がどんどん減っていくという中で。そういう位置付けが必要だということが言われていたわけですけれども、これ以上人がいなくなっていくと、やっぱり集落そのものが維持できなくなるということだと思うんです。  やっぱり食料・農業・農村基本法ということの中にも農村というのが入っているぐらいですから、やっぱりそういう集落として形成されていくということを考えるならば、やっぱり今度の対策のように、四人の方が共通して言われたように、限定した政策ということじゃなしに、もっとやっぱり広げていく必要があるんだということだと思うんですけど、これについてはどうでしょうか。
  219. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 多分、限定したというのは、何回か申し上げております、一定の試算をしますと三割、五割、だからそこに限定して残りは切捨てと、こういう御議論の意味で限定というお言葉を使われているのかもしれませんが、これは今後、先ほどの平成二十七年度に向けたいろんな目標、これには何といっても農業者の皆さんの御理解と協力がなくちゃできないわけでありますけれども、それによってできるだけこの対象者を増やしていきたいというふうに考えております。  それから、質的な意味の限定という意味で申し上げれば、先ほどから申し上げております特例措置であるとかいろいろな措置も前広に、WTO上黄色であるということも認識をしながらもやっていって、最終的には自給率の向上あるいは耕作放棄地の減少に資する政策になっていくものというふうに理解をしております。
  220. 紙智子

    ○紙智子君 集落営農をやっていくということ自体、非常に困難であるということが一方で出ていたんですけれども、もう一方で、例えば県などが実際に集落営農で努力されているという中で、じゃ全くやらないということなのかというと、そういう努力とかそういう議論というのは確かにこれからもそういう話合いの中で出ていく可能性はあるし、追求もしていくことも必要かもしれないと。ただし、今のように上から枠を押し付ける形でやられたんではうまくいかないんだと。実際に下から、地域で本当に話し合われて、やっぱり必要なんだと、この地域で農地をしっかり守っていくためには必要なんだということで話合いがなされてやっぱり自主的にそういったものが生まれてきたときに、国がそれに対して支援していくという形でやってもらえれば、もっともっとそういう意味では可能性が出てくるんだと。  だけど、今のように、こうこうこういう要件があってと、それに当てはめる形で、これで認められればあなたたちは支援が受けられるんだと。だから、支援を受けるために形式的にやるようなことであれば絶対長続きしないし、そうじゃなくて、やっぱり本当に実際の実情に合った形に対して支援をするというような形でのそういう国の支援ということであれば、これは受け入れられるんだという話もされているわけです。私も、それはそのとおりだなと。実際に、こういう政策の方向が出されるということでもって、地元というか現地では、例えば機械集団とか堆肥集団とか、いろいろそういう形というか、つくられているわけですよね、実際には。  だから、そういう工夫がある中で厳しいやっぱり要件を課してやれということではなくて、そういうものをやっぱり拾い上げて生かしていくような形で対応すべきなんだと、そういう意味ではもっと柔軟にすべきなんだというような意見が出されているんですけれども、この点についてはどうでしょうか。
  221. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 集落営農組織でございますけれども、上からの押し付けでなくて地域で自発的に考え組織するのが本筋という御意見ですが、これはもちろんそのとおりでございます。  ただ、今回の対策については、やっぱり政策として打ち出すわけでございますから、政策の方向として私どもがこういう方向で進んでいっていただきたいと、そういう一定の枠組みを示しているわけではございます。  昨年の十月に大綱を示して以来、各県ブロックで御説明を繰り返してまいりましたけれども、正にその中で、地域の問題として積極的に、自発的にこの集落営農というものを考えてみようと、そういう受け止め方をしていただいて、かなりの進捗を見ている県も出てきているわけでございます。  北海道の場合には、他の都府県に比べますと、小なりといえども規模が大きくて、なかなか集落営農組織というものになじみがないという点もありまして、なかなか取っ付きが悪いという点はあろうかと思いますが、私たちは決して上から押し付けているということではなくて、そういうものをお示しした中で、米改革のときもそうでありましたけれども、集落の中で徹底的な集落構成員の話合いをしていただく中で、我が村はどっちへ進むかと、我々はどっちへ進むかという、正に理解と納得の上で方向を決めていただくと、こういうことでございます。  それで、やはり機械利用集団とか転作集団とか、いろいろあるわけでございますけれども、やはり地域担い手として継続的、安定的に農業をやっていっていただくという点になりますと、やっぱり機械を利用するときだけくっ付いているというだけでは、過去にもそういうものはある程度の期間がたちますと雲散霧消していくと、そういった歴史を経ておりますので、経営主体としての実体があって、将来やはり効率的かつ安定的な農業経営に発展していく可能性のある組織ということで最低ラインの要件をお示ししているわけでございます。  ですから、経理の一元化など、繰り返しになりますけれども、決して高いハードルを課しているわけではございませんで、入口のところでまず飛び込んでみてくださいという要件になっていると考えているところでございます。
  222. 紙智子

    ○紙智子君 だから、決して押し付けているわけじゃないというふうにおっしゃるんですけど、やっぱり今の話になってきますと、例えばこの前岩手の花巻の話しましたけど、そういう形はもうできていて、もうすぐなんだけど、なかなか手が挙げられないと。それは、米については、その岩手の例でいいますと、それぞれ自分たちでやっていく、それ以外のものをみんなでやろうということで形はできてきているんだけれども、それに米を入れなければ認められないという中で結局手を挙げられないという話があったということを紹介したんですけど、そこはやっぱり変えないわけでしょう。
  223. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 特例として、先ほど来申し上げています生産調整を担っている集団に対する特例という形で、規模要件等をかなり緩和をいたしております。ですから、面積要件で転作集団が外れるということは余りないのではないかと思います。ただ、将来方向としては、やはり転作にとどまることなく、稲作の部分についてもやはり協業化、共同化を目指してほしいと。そういうことによってその集団が生産性が上がってくるわけでございますので、そういうことは目指してくださいねということは申し上げております。  この前、例を挙げて申し上げましたけれども、現実にはやはり全作業が受託で出てくるとか、あるいは一挙に米をやめられて集団に任せるというのはなかなかないわけでありますが、部分的にやはりできない作業からそういう集団にゆだねていくということは現実問題として各地域でも起こっておりますし、私も岩手県へ何度かお邪魔して、紫波とか江刺とか、実際に集落営農のリーダーの方にも何人もお会いして伺いましたけれども、やはり集落営農のリーダーの方はそういう知恵をお持ちで、無理やりはぎ取るんではなくて、皆さんが納得してこちらに任せてくるのを待つと。  ただ、我々は、スタートラインで最低の要件だけは満たしてスタートしてくださいと、それと、近い将来には米も含めて集落全体で協業化、共同化をしてコストダウンが図られ、また参加してくださった農家にちゃんと還元ができるような組織に育ってほしいと、そういうことの最低ラインの要件をお願いしているということでございます。
  224. 紙智子

    ○紙智子君 やっぱり柔軟性を持って対応していくということはこれからも続けるということなんでしょうか。  そして、やっぱり要はその地域に残って続けられるということでなければ、結局は、いろいろ言われたけれども、難しいということで、離れて出ていかなければならないような状況になってはいけないというふうに思うわけですけど、そこはよくこれからも話合いでもって、柔軟性を持って対応できるということなんですか。
  225. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 私どもの目的としているところは、今その地域農業に従事されている方が、この高齢化の波と、それからそもそも農業就業人口はどんどん減っていくという中で、この地域農業をどう守っていくかということを村々の中でよく話合いをしていただいて、納得ずくで農業を守っていくということが基本でございます。  そういう上で、集落営農組織、あるいは集落営農組織の前哨形態として生産調整集団というものもこの対象に含めるということにしているわけでございますから、一方では、どうも四ヘクタールと二十ヘクタールの影響が強過ぎて、そういう細目にわたってお話が進む前にあきらめてしまうとか、あるいはもう面倒くさくなってしまうとか、そういうことがあるのかもしれないと。これは私どもも反省をして、時間のある限りそういう情報を提供し、具体的なお話をさせていただきたいと思っております。
  226. 紙智子

    ○紙智子君 前回の参考人質疑、三十一日の日でしたけれども、全中の山田専務さんから出されていて、みんなが言っているということだと思うんですけれども、集落営農や受託組織などを地域ごとにこれまでつくり上げてきた地域の実情に即した担い手が品目横断の経営安定対策対象になるように努力をしていると。集落営農を位置付けてきたんだけれども、地域ごとに格差が生じているということ、取組の弱いところでは手取りに格差を生じかねないし、混乱が懸念されると言っていると。それから、米価の下落で担い手所得も落ち込んでいると。担い手経営を安定させる内容をしっかりさせないと、米価下落の対策、これをやらないと、やっぱり根本的にというか、進んでいかないんだという話もされているんですけれども、これに対してはどのようにお考えでしょうか。
  227. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 米価の下落については、もちろん基本は生産調整をしっかりやっていただくということが基本なわけでございます。需要に合った生産ということがまず肝心でございますし、これは、生産調整をしっかりやっていただくための支援措置というのは、先ほど総合食料局長から御答弁申し上げたように、様々なシステムが構築されているわけでございます。  ですから、集落営農組織をつくったり担い手を育てていくという上では、米の流通を担っている農協あるいは全農、その他の流通段階を担っている方々が、私ども全農改革という中で、農家手取りを増やすべく、全農が委託料として取っていたものを削減するとか、あるいは先ほどの北海道のきららが最近値段が非常に好調であるというのも、それは間に入っていますホクレンがきららの米の売り方を抜本的に変えたと。そういう中で、米の価格維持あるいは復元が図られているわけでございますから、そういったこともさらに外縁部では含めてしっかりやっていくことが必要だと思っております。
  228. 紙智子

    ○紙智子君 ところで、北海道において担い手になっている農家でも経営が厳しいというふうに言っている理由についてなんですけど、ナラシ対策にしても、これまでの水準を引き上げるどころかますます引き下げることになる、そういう不安があるんだと。米については、今までは稲経とか担い手経営安定対策があったわけだけれども、これ廃止をしてナラシの方に誘導していくということですよね。そうすると、これまでと同水準ということではなくて、これ年々下がっていくことになるんじゃないかと。価格の下落による、収入の変動による影響を基準収入の差額の九割補てんという仕組みですよね。基準収入の一〇%の減収に対応し得る額、これ、あらかじめ生産者が一で国が三の割合で拠出しなければならないと、こういう仕組みなわけです。  稲経自身も、前の年が下がったりすれば、今度それの九割ですからまた下がってくると。もしそれよりも下がれば、またそれに合わせて下がっていくと。限りなく下がっていくという、そういう欠陥持っているということは言われたわけですけども、結局こういうふうな仕組みになっているにもかかわらず、拠出する方は、今度は米、麦、大豆を生産している場合には三品分の拠出が求められると。そうすると、今までよりも持ち出しが多くなるんじゃないかと。ならないというような保証があるんでしょうかということなんですけど、いかがでしょう。
  229. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 従前、ベースになっています稲得は一対一に国が三百円だけ余分に出すと。担い手経営安定対策の乗っかっている部分だけが一対三と。そうしますと、根っこから通算しますと大体一対二というのが相場でございました。これを一対三ということで国の負担割合を今度は引き上げるわけでございます。  そのことによりまして、まあ試算でございますけれども、十アール当たりで、従来担い手経営安定対策に入っていらっしゃった方を試算をしてみますと、やはり十アール当たり五千四百円ぐらい負担をされていたと。今回はこれが一対三になりますんで、この米の部分が三千百六十円ぐらいになると。そうしますと、米農家で、従来米と大豆についてナラシがあったわけですが、今度はそれに麦が追加されますけれども、麦の分が追加されましても農家の出す拠出金はかなり大幅に軽減されるという見通しでございます。
  230. 紙智子

    ○紙智子君 麦は今までは拠出なかったんですよね。でも、今度は麦も拠出することになるわけですよね。それでも少なくなるんですか。
  231. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 私どもの試算では、麦についての農業者の負担額は十アール当たりで三百三十円ぐらいというふうに見込んでおります。米に比べると麦、大豆の農業者の負担額というのは非常に少ないということでございます。
  232. 紙智子

    ○紙智子君 これはちょっと確認をしたいと思います。  それから、生産条件の格差是正対策で、これは前回も大臣に質問をいたしまして、それに答弁があったんですけど、それに対してちょっともう一度聞きたいんですけれども、生産条件の格差是正の対策大臣が答えられたのは、牧草地については、麦、大豆の実績はないわけだけれども、それについては緑の政策以前の、緑の政策とは別の政策対応するというふうにおっしゃったんです。新たに該当の四品目を作る者については、別の観点からこれに対する品目横断経営安定のための支払がなされるんだというふうに言われたんです。  これについてちょっともう少し詳しく、意味といいますか、お聞きしたいと思うんですけど。
  233. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 今度の品目横断経営安定対策では、緑の政策に合致するためには過去実績払いということになっておりますけれども、農地を担い手と認定された方が集約する場合に、その過去実績が乗っていない農地であっても、それを買ったり借りたりすることによって規模拡大を図っていくということは、担い手によります主要食糧の安定供給とかあるいは構造政策の観点からも非常に好ましいことでございますから、そういう場合にはこの過去実績払い、品目横断的経営安定対策とは別に予算措置でそういうことに対応できるようなことを考えたいと思っております。
  234. 紙智子

    ○紙智子君 ちょっといまいちよく分からないんだけど、それでその後また井出参考人から関連して説明がされたんですけど、過去実績のない農地を取得して、そこで何を作るのかと。野菜を作る場合は制度に乗っていなくても買いたいということになる。また、農地の権利を移動して、それが担い手規模拡大につながるということであれば、今回の品目横断対策とは別に、今これ言われたことなのかな、政策目的に沿ったものである場合には別の対策として十九年度予算で措置したい、今言われたことですよね。  ちょっと、これ、新たな対策ということなんですか、今まであったものなんですか、新たな対策なんですか。もう少しちょっと分かりやすく説明いただきたいんですが。
  235. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 見ようによっては新たな対策ということになると思うんですが、担い手規模拡大を促進したり新規参入を支援するという観点から、別の事業として予算措置で助成、支援をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  236. 紙智子

    ○紙智子君 要するに、WTO上生産を刺激する政策はできないと。緑の政策で、いうことで表に出すものと分けて対策をするということなんじゃないのかなと思うわけですけれども、現場の農業者は全くと言っていいほどそういうことは知らない、知らされていない、知らないです。問題は、その話というのは、あくまで担い手としてその対象になる人の場合ということなんですけれども、しかし、この後、今、農業交渉をやっている途中なんですけれども、思いどおりに進まないでというか関税率が更に下がっていくと価格が下がり続けるということになると、それこそ、ここで担い手というふうに言われている人さえも経営難に追い込まれるんじゃないかと、そういう心配はないのかなということなんですけど、この点はどうですか。
  237. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 御承知のように、この四品目については内外の生産格差条件があります、米については高い関税率で守られておりますからこれの生産格差条件対象にはいたしませんということで、この経営安定対策考え方でございます。  交渉につきましては、まさしく今月、来月、いよいよ山場ということでございますんで、何回も申し上げておりますけれども、だとするならば、関税がどんと下げられた場合にはこうこうこういう対策を取りますということをこの国会の場で申し上げるということは、もうすぐにジュネーブやアメリカ等にも伝わることにもなりかねませんので、我々としては、とにかく守るところをきちっと守るべく最大限努力するということで、御支援をよろしくお願いいたします。
  238. 紙智子

    ○紙智子君 それはそういう面もあるだろうと思いますけれども。  それで、さらに、これも全中の山田専務が問題提起されていたんですけれども、十九年度産からの生産者生産者団体が取り組む新たな需給調整システムへの移行についてということで、豊作分等の過剰米の在庫対策の充実がないと簡単には移行できないと。現在、計画生産に参加していないと見られる農家が四十二万人に上っていて、過剰生産が五十万トンを上回るんじゃないかと推測されていると。そうなると、出回りが遅い東北、北海道の主産地の米の在庫が他産地に比べて多く、米価は入札の時期が遅いほど低下する傾向からして、東北や北海道ほど米価の低落に苦しむんじゃないかという懸念が述べられているんですけれども、これらについては何かの対策というのは考えておられるんでしょうか。
  239. 岡島正明

    政府参考人(岡島正明君) 豊作による過剰米につきましては、食用米と区分して出荷し市場から隔離する集荷円滑化対策を十六年産から講じております。十七年産については、先ほど小川委員との質疑でも申し上げたとおり、全国作況一〇一、北海道においては一〇九ということでございまして、豊作による過剰米八・六万トンのうち、当初の予定どおり七・六万トンが区分出荷されたところでございます。十九年産からの米の需給調整システムにおいても、集荷円滑化対策を引き続き継続し、豊作による過剰米対策の的確な実施に努めていくこととしております。  それから、後段で御質問がありましたいわゆる作況が良かった、作が良かった場合、出回りの遅い地域がより米価下落の影響が特に大きいのではないかという御指摘がございましたけれども、十七年産の米の価格動向を見ますと、先ほど小川委員との質疑でもお答え申し上げたとおり、十七年産の北海道産のきららでございますけれども、九月下旬、一回目の上場では六十キログラム当たり一万二千二百円だったものが本年に入りまして上昇しております。直近の五月では、五月の落札価格は六十キログラム当たり一万三千八百五十八円ということでございます。  もちろん、そのきららが上がった原因、私ども考えておりますのは、先ほど申し上げたとおり、昨年の天候が非常に良くて品質が向上したというようなこと、あるいは集荷円滑化対策をきちっとやっていただいて豊作による過剰米を厳格に区分出荷したということ、当初の値決めが、指し値が値ごろ感のあるものから入ったというようなこと、あるいはふるい下の米が主食用に回らないように産地が厳格に指導したということ、それから道を始め関係者方々が地産地消のいわゆる食率向上運動に取り組んでおられること、そういったもろもろの要因があるということがございますけれども、いずれにいたしましても、十七年産の米につきましては作が全国的にも良かったという中で、出回りが遅い北海道産のきららについては今価格が上がっていると、そういう状況があることも御承知おきいただければと思います。
  240. 紙智子

    ○紙智子君 たまたま作況指数が一〇九というようなことで、だけどこれは年によって物すごく変わりますから、そういう意味では、今現在はこうだということだけじゃなくて全体をやっぱり踏まえて対策考えておく必要があるというふうに思います。  それから、MA米についてなんですけれども、WTO農業交渉において、現在、上限関税の導入については何としても阻止するということで取り組んでいるわけですけれども、この導入を止められたとしても、例えばMA米が更に拡大されるというふうなことになったとすれば、これは国内の需給に大きな影響を与えるんじゃないのかと。  これまで一貫して農水省の説明というのは、いや国内には影響を与えないんだというふうに言われているんですけど、実際に、これは何度も多分説明されていると思いますけど、現場の生産者の皆さんはだれ一人としてそのとおりだというふうに思っている人はいないぐらいですよ。今回、旭川の公聴会のときにも、そういうふうに農水省は言っているけれどもそう思うかと言ったら、みんなが全くそうは思えないという話をしていて。  特に、今までに六百七十八万トン輸入されているわけですよね。その内容について調べた方がいるんですけれども、半分が業者に売られていると。その値段も、この前初めてここで六十キロ当たり一万三千円だというので、おおっとびっくりしたんですけれども。それで、残りの三〇%が海外に出して、あと四分の一、これは四分の一ということは六百七十八万トンですから約百七十万トンぐらいですかね、これは不利用で、在庫として大阪の倉庫に入っていると。これを維持するために相当のコストが掛かっていて、ここにも税金が投入されているんだということで、片方では過剰になることを止めるためにそういうことをやりつつも片方はこういう事態があるということに対しては非常に納得できないという声があるんです。  これに対して、大臣、どうでしょうか。
  241. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 御指摘のように、ウルグアイ・ラウンドの対策の中でMA米は国内生産影響を与えないという閣議了解がございまして、これは現在も生きているわけでございます。  ミニマムアクセスですから、義務的輸入ということになりますけれども、これについてもいろんなやりくりをして国内生産影響を与えない。現に、主食用として販売されたミニマムアクセスは六十四万トンですけれども、百十二万トンの政府米が海外援助に使われているわけでございます。  御指摘の、そのお金が掛かっていることについてはけしからぬということであれば、これはそういう目的のために当然経費が掛かるということで、これからもその閣議了解を遵守しながら米の運用をしていきたいというふうに考えております。
  242. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 時間が過ぎております。
  243. 紙智子

    ○紙智子君 続きは、じゃまた来週行います。
  244. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十九分散会      ─────・─────    〔参照〕    旭川地方公聴会速記録  期日 平成十八年六月六日(火曜日)  場所 旭川市 旭川グランドホテル    派遣委員     団長 委員長      岩城 光英君        理 事      加治屋義人君        理 事      常田 享詳君        理 事      小川 勝也君        理 事      小川 敏夫君                 岸  信夫君                 野村 哲郎君                 松下 新平君                 和田ひろ子君                 福本 潤一君                 紙  智子君    公述人        北海道農業会議        会長       藤野 昭治君        北海学園大学経        済学部教授          北海道大学名誉        教授       太田原高昭君        全上川農民連盟        書記長      高見 一典君        農民運動北海道        連合会委員長   白石 淳一君     ─────────────    〔午前九時開会〕
  245. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ただいまから参議院農林水産委員会旭川地方公聴会を開会いたします。  私は、本日の会議を主宰いたします農林水産委員長岩城光英であります。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、本日の地方公聴会に参加しております委員を紹介させていただきます。  私の右隣から、自由民主党所属の常田享詳理事であります。  同じく加治屋義人理事です。  同じく野村哲郎委員です。  同じく岸信夫委員です。  公明党所属の福本潤一委員でございます。  次に、私の左隣になりますが、民主党・新緑風会所属の小川勝也理事です。  同じく小川敏夫理事です。  同じく和田ひろ子委員です。  同じく松下新平委員です。  日本共産党所属の紙智子委員です。  以上が委員のメンバーであります。  次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。  北海道農業会議会長の藤野昭治公述人でございます。  北海学園大学経済学部教授・北海道大学名誉教授の太田原高昭公述人でございます。  全上川農民連盟書記長の高見一典公述人です。  次に、農民運動北海道連合会委員長の白石淳一公述人でございます。  以上の四名の方々でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様方には、大変御多忙のところ本日御出席をいただき、誠にありがとうございます。  私ども参議院農林水産委員会におきましては、現在、農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案砂糖価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案主要食糧需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案について審査を行っておりますが、本日は、この三法案について皆様方から貴重な御意見を賜るため、当地旭川市において地方公聴会を開催する運びとなりました。  皆様方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の委員会審査の参考にいたしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、公述人の方々からお一人十五分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、これより公述人の方々から順次御意見をお述べいただきたいと存じます。御発言は御着席のままで結構でございます。  まず、藤野公述人からお願いいたします。
  246. 藤野昭治

    ○公述人(藤野昭治君) ただいま御紹介賜りました藤野でございます。  参議院農林水産委員の先生には、日ごろから北海道農業の振興、発展に特段の御尽力を賜っておりますことに厚くお礼を申し上げる次第でございます。  私は、富良野市の農業委員会会長も務めてございますが、実に畑四十五ヘクタールの畑作経営を行い、携わっている農業者でもございます。  本日は、担い手経営安定新法外関連法案の審査ということで地方公聴会を開催いただいたところでありますが、今回の新法の考え方であります、担い手対象を絞り、経営全体に着目した対策という基本方向につきましては、農業で生計を立てている主業農家が主体の北海道農業にとって評価できるものであり、基本的には賛成するものであります。  今後、施策の具体化に当たりましては、担い手意欲を持って営農に取り組めるよう、以下の六点につきまして十分な御配慮をお願い申し上げたいと思います。  まず第一点は、生産条件格差是正対策による支援水準の十分な確保についてであります。  この点は申し上げるまでもないかと思いますが、戦後農政の大転換によって、担い手経営が不安定になるようなことがあってはならないと思うのであります。いわゆるゲタ対策の支援水準につきましては、少なくとも現行の品目別価格対策と遜色のない支援水準とすることなど、担い手経営安定について必要かつ十分な支援水準となるよう要望したいと思います。  二点目は、過去の生産実績に基づく面積支払、いわゆる緑ゲタと農地流動化との関係についてであります。  結論から申し上げますと、面積支払仕組みが今後の農地流動化に支障を来さないよう十分な配慮をお願い申し上げたいと考えております。  私ども農業委員会組織の最大の仕事は、農地流動化対策であります。つまり、担い手に対して農地の利用集積を図り、農地の遊休化防止と効率的な土地利用を実現することにありますが、生産条件格差是正対策の面積支払、緑ゲタにつきましては、過去に、つまり基準期間となります平成十六年から十八年までの三か年ということでございますが、この三年間に品目横断的経営安定対策対象作物生産実績を持たない農地の場合には、農地の売買、賃借に際して、農地価格の下落や小作料水準の低下などが懸念されているところであります。また、過去の生産実績を持たない農地が売りに出されている場合、農業委員会があっせんを行いましても、引き受ける担い手が現れず、あっせん不成立となる事態も想定されるところでございます。そうした状態が続いてしまいますと、とりわけ条件不利地域などでは農地の遊休化にもつながりかねないわけであり、構造改革を進めるという新法の趣旨にも反することとなるのではないかと心配をいたしているところでございます。  したがいまして、認定農業者などの担い手が過去の生産実績を持たない農業者から農地を取得する場合の支援措置を別途講じる必要があると考えております。  また、現在検討中の仕組みでは、緑ゲタの対象となっている農業者の所有する農地の権利が移動する場合、交付金の算定基礎となります期間平均生産面積については、出し手と受け手の合意により任意に定めることができるとされております。しかし、それだけでは、新しい仕組みだけに、農村現場での混乱も予想されますので、生産条件格差補正対策交付金が受け手となる担い手に円滑に引き継がれていくよう、国がガイドラインを示すなど、十分な対応お願い申し上げたいと思います。  いずれにいたしましても、面積支払の導入によって農地の流動化を阻害し、その遊休化につながることのないよう特段の措置を講ずることを要望したいと考えております。  私ども北海道農業会議では、かねてから掛け替えのない農地と担い手を守り生かす運動ということで、農地は掛け替えのない公共財であるという考え方を基本に、農地の利用集積、遊休農地の解消と遊休化の未然防止に取り組んでおります。農地は一たび遊休化してしまいますと、元の優良農地に復元するには多大な費用と時間を要します。農地や水などの資源を良好な状態で守り、次の世代に引き継いでいくことが現役世代の我々の責務であります。今回の担い手新法が農地遊休化の引き金になってしまうことがあってはならないと思う次第であります。  次に、三点目でございますが、いわゆるゲタ対策に係る税制上の取扱いでございます。  品目横断的経営安定対策対象作物となります畑作四品につきましては、当該年の生産量と品質に基づく支払、いわゆる黄色ゲタと、過去の生産実績に基づく支払、いわゆる緑ゲタの両方で生産条件の格差を是正することとされています。  したがいまして、生産性格差是正対策に係る交付金がそのまま所得税の対象となってしまいますと、生産条件格差の是正が不十分なものとなり、せっかくの政策効果が薄れてしまうこととなるわけであります。こうした実情を十分に御配慮いただき、交付金に係る税制上の取扱いにつきましては特例措置の御検討お願い申し上げたいと思います。  四つ目は、収入変動影響緩和対策、いわゆるナラシ対策についてでございます。  ナラシ対策は、担い手のセーフティーネットとして重要な役割が期待されているところであります。御案内のとおり、近年は特に米の価格が非常に低下しておりまして、昨年の北海道米の落札価格は過去最低の一万二千円台で推移したところであります。こうした状況の中で、五中三平均を取りましても担い手所得確保機能を十分に発揮することができるのか、とりわけ稲作地帯の農業者は強い不安を感じているところであります。どうか収入の下落に十分に対応できる制度設計とするようお願い申し上げます。  五つ目は、贈与税納税猶予制度に係る法人化特例の期間延長についてであります。この問題は、今回の担い手経営新法に直接かかわる問題ではございませんが、関連制度として御要請申し上げたいと思います。  平成十七年度税制改正で、私どもがかねがね要望しておりました贈与税納税猶予制度に係る法人化特例が措置されたところでありまして、この点につきましては衷心よりお礼申し上げる次第であります。  ただ、本特例の適用期間は平成十七年四月から平成二十年三月末までの三年間とされております。一方、品目横断的経営安定対策対象とする集落営農は五年以内に法人化することを要件の一つとしております。しかし、集落営農の参加者に贈与税納税猶予制度の適用を受けている農業者がいる場合、平成二十年三月までに法人化しなければならないとなれば、実質的にはもうあと二年にも満たないことになります。  近年、北海道では法人化に対する関心が非常に高まっております。現在、北海道の農業生産法人数はおよそ二千三百に上りますが、この三、四年は年間約百法人ずつ増加している実態であります。今回の品目横断的経営安定対策への対応考えますと、法人化への志向は一層強まるものと考えております。  一方、北海道では、特に昭和五十年代を中心に、農業後継者の育成確保のため、農地等生前一括贈与に係る贈与税納税猶予制度の活用が非常に多かったわけでございまして、そのことが現在法人化の障害の一つにもなっております。担い手を支援する施策として、是非とも本特例の期間延長をお願い申し上げる次第であります。  最後に六点目でございますが、農業委員会などの関係機関への支援であります。  品目横断的経営安定対策の事務につきましては、国の機関であります農林水産省の地方農政事務所が中心に実施することになるようでございますが、私ども農業委員会は、対象者の加入要件となります面積規模を確認する農地基本台帳の整備を行っております。  私どもとしましても、もちろん農地基本台帳に誤りがあってはならないということで、農業委員会総会での許可案件であります農地の権利移動や農地転用などに伴う補正はもちろんですが、住民基本台帳や固定資産税課税台帳との照り合わしなどを定期的に行うなど、点検、確認に努めているところであります。  今後、品目横断的経営安定対策に係る事務の円滑な推進を図るには、農村現場で重要な役割を担う農業委員会の体制強化が不可欠であると思います。農業委員会などの関係機関に対する更なる御支援をお願い申し上げたいと思います。  以上、農業委員会系統組織という立場から様々なお願いを申し上げましたが、今回の品目横断的経営安定対策が真に担い手を守る長期安定的な制度として確立されますようお願い申し上げ、意見といたします。  本日はこのような場を与えていただき、大変ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
  247. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) どうもありがとうございました。  次に、太田原公述人にお願いいたします。
  248. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) 北海学園大学の太田原でございます。  本日は、遠い北海道まで出向いていただきまして、現地の声を直接聞いていただける機会をつくっていただきまして、ありがとうございました。  御存じのように、北海道は、本日のテーマであります品目横断的所得安定対策という制度、新制度にとりまして極めて重要な意味を持っている地域でございます。  私はかつて、平成十一年でございますが、食料・農業・農村基本法に関する衆議院の地方公聴会が札幌でございましたけれども、そこで公述人を引き受けまして、一つは、北海道は、農業基本法、あのとき何か農業基本法は十分役割を果たさなかったから変えるんだというような話だったんでありますが、北海道は、農業基本法の理念どおりに、これは農家の三分の二が離農するという大変な犠牲を払いながら大規模な専業農業地帯というのを築いてきたわけですね。それを支えてきたのは基本法に明記された価格制度だったわけでありますけれども、この価格制度が失われるということになればこの大規模専業地帯をどうやって守っていくのかと。これはどうしても生産コストの内外格差を補てんする所得補償政策の導入が、これは基本法の中でも不可欠であるということを主張いたしました。  これ繰り返しになりますが、北海道は、都府県農業とは対照的に、農家の八割が主業農家でございまして、酪農、畜産、今回の政策対象となっております畑作物については我が国最大の産地であり、ほぼEU並みと言われる生産力を備えております。こうした生産基盤をつくり上げる上で農産物価格制度の役割が極めて大きかったのでありますが、WTO協定の下で価格支持政策を続けられないということになりますと、これ北海道としては大変危機感が強かったわけでございます。  しかし、当時の措置としては、所得政策の導入ということでは中山間地への直接支払制度という、これをつくっていただいたわけでありますが、我々が主張していた趣旨からいいますと、この生産力の大半を担っている平場の専業地帯に対する対策というのは実現しなかったと。言わば、政策的には積み残しになっていた分野だと思います。  北海道の専業農家は、この後陳述される北海道農民連盟などを通じまして、このことを引き続き実現するように運動してきた経過がございます。私も、今日の資料の後ろの方にちょっとありますように、事あるごとにEUの直接所得補償政策を紹介して国内への導入ということについてその必要性を表明してきたつもりでございます。  そういう点からいきますと、今回の法案は、このような経過を踏まえて我が国で初めて農業担い手対象とした所得政策の導入に踏み切ったというものでありまして、その点については私は高く評価するものでございます。  しかし、この政策の中身をよく検討すると、どうもいろいろと心配なことがございます。  経営所得安定対策につきましては、昨年十月に農水省の大綱が発表されましたが、それに基づいて北海道でも行政あるいは生産現場で随分いろんな議論をこれまで積み上げてきております。しかし、そういう中で、どうもこれが自分たちの要求してきたものと同じなのかどうかという、大変戸惑いが広がっているというのが道内の実情でございます。やっぱり、その最大の問題は、この政策担い手限定の選別政策になっているということでございます。  担い手の資格となっております都府県四ヘクタール、北海道十ヘクタールという条件は、日本農業の現実、農家構成から見ると、これは極めて厳しい線の引き方でございます。北海道は、その中でも、藤野さんのように四十五ヘクタールとかそういう大規模担い手が育っているんですが、この旭川は上川地方を始め稲作地帯でございまして、稲作地帯に限定いたしますと、この線の引き方でいきますと、十ヘクタール以上ということになると三五%の経営体をカバーするにすぎないということで、北海道にとってもかなり厳しい条件ということになります。  確かに、限られた財源で政策効果を上げるためにはばらまきでなくて対象を絞るということにつきましては私も理解できるわけでありますが、ただしこれは所得政策であって、構造政策ではないはずであります。  ここのところが私今日一番申し上げたいところでありますが、EUでもアメリカでも、所得政策というものは国際協定等の政策変更によって損害を被る農業者に補償するという考えが基本になっております。ですから、これは経営面積の大小は本来関係ないということであります。これだけ受益者のハードルを高くしているというのはちょっと先進国を見ても例がないわけでありまして、私は、基本法にうたわれております食料自給率向上という観点から見ても、担い手の幅をやっぱり広げる方が望ましいというふうに思っております。  また、実際的な政策効果といたしましても、実際このままやられますと、担い手から外された小規模稲作農家が小麦や大豆への転作への意欲を失いまして、水稲作付けを拡大するということが十分予想できるわけでありますけど、そうなりますと、更に米価を押し下げて担い手所得を更に減少させるということも考えられるわけであります。  ただ、この点につきましては、農水省の大綱を見ましても、営農集団による組織的な対応や複合経営で比較的高い所得を上げている経営体については面積規模の制限を緩和するなどの特例が幾つか考えられているようでございますから、実施に当たりましては、こうした規定を十分生かして担い手をできるだけ増やす方向で運用していただきたいということを希望いたします。  次に、農地・水・環境対策というのがございます。これは所得安定対策と車の両輪となるべき施策でありまして、国内農業を重視するという国民的合意を得る上でも私は大変重要な意味を持っていると思います。  特に北海道におきましては、現在、北海道では、食の安全・安心条例というものを制定いたしまして、それに基づいてクリーン農業や有機農業を積極的に推進するという、官民挙げてその努力を行っている最中でありまして、そうした取組へのかなり強力なサポートになるだろうというふうに私は期待していたんでありますが、残念ながら今示されている支援水準は極めて低くて、しかもこれは地方自治体による積み増しというのが必要になっておりまして、現在の地方財政の状況からいいますと、これは大変道央の辺りの対応を見ても少し逃げ腰になっているようなところがございまして、そういう点で実効性に疑問があります。やはりこの対策の重要性から見て、国費による支援をもっと強化していただきたいということもお願いしておきたいと思います。  それから、最後になりますが、北海道は専業的な大規模農業地帯でございますので、都府県では見落とされがちな幾つかの問題がございます。藤野さんがおっしゃっていた対象作物のいわゆるゲタの部分の作付け実績のない農地の流動化の阻害というこの問題も大きな問題の一つでありますが、私は、農協への影響についてちょっと申し上げさせていただきたいと思います。  農協についてはいろいろな御意見があるようでございますけれども、少なくとも北海道の農協は、これまで営農指導や市場開拓に大変熱心で、実績を上げ、生産基盤をつくってくる上で大変重要な役割を果たしてまいりました。特に、この対策対象作物となっております畑作四品などはほとんどが農協を通じて販売されてきておりまして、その販売手数料がまた農協経営の大きな柱になってきております。今回、これで市場価格が大きく引き下げられるということになりますと、これは農協経営への影響は非常に大きなものになるだろうということが大変心配されております。  政策変更による収入の減少への補てんという所得政策の原点から考えますと、この農協についても何らかの支援策をやはり考えていただきたいと思っております。例えば、直接支払支払方法というのがまだ決まっていないようでありますけれども、これについて、かつての食管制度時代の米代金と同じように、農協の組合員口座への振り込みということをしていただくとこれはかなりのサポートになるんじゃないかなと思っております。  いずれにしても、この価格政策から所得政策への変更というものは戦後農政の大転換であるというふうに言われておりまして、農業者も行政もともに未知のゾーンにこれから入っていくわけでございますから、予想しなかった様々な問題も生じてこようかと思います。  今後も、現場の動向と現場の意見に細心の注意を払っていただいて、柔軟に見直しを重ねていって、農業者が安心して生産に従事でき、また食料自給率の向上にもつながると、そういう制度に育てていただくことを希望いたしまして、私の公述を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  249. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。  次に、高見公述人にお願いいたします。
  250. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) 改めまして、おはようございます。  全上川農民連盟の書記長を務めております高見と申します。  はるばるここ北海道上川管内旭川に来ていただき、農業政策についての率直な現場の声を聞いていただきます貴重な時間を与えていただき、心より厚くお礼を申し上げ、公聴会意見公述として私からこれより述べさせていただきますので、よろしくお願いいたします。  簡単に経営内容を含めまして自己紹介をさせていただきますが、私は、旭川市で三代目として、十四年前、父から農業経営移譲し、移譲時は自作地のみの水稲単作で約六ヘクタールの経営でしたが、現在での全経営面積は約十八ヘクタールと、私の代から徐々に規模拡大を図ってきました。稲作を中心に粗収入の増加を目指し、転作田には野菜及び畑作を経営する複合農家です。近年において、我が宅地と隣接している関係で、農業委員会のあっせんを受け農地二・五ヘクタールを購入しましたが、近年の低米価続きの中、更に追い打ちを掛けた昨年と一昨年の二年続きの米価大暴落と野菜価格の安値低迷が響き、所得が伸び悩み、厳しい経営状況に追い込まれています。二十二歳の息子が後継者として営農をともに励んでいますが、この先果たして営農を続けられ、息子が経営意欲を持って四代目として経営移譲を託すことができるのかどうか不安が募る状況であります。  まず初めに、今回の食料・農業・農村基本計画の見直しにおける担い手要件及び品目横断的政策については、基本的には反対の立場であり、抜本的な見直しを求めるものであります。  それでは、総論的な意見を前段に申し上げます。藤野会長、太田原教授と多少重複する点もあろうかと思いますが、御了承願います。  戦後最大とも言われる今回の農政改革は、来年度から品目横断的経営安定対策と称して導入されようとしています。しかしながら、認定農業者であって、北海道では十ヘクタール以上の面積要件、又は二十ヘクタール以上の集落営農を基本とし、知事特例措置があるといえども、これははっきりとした選別的農業政策と言え、農業構造改革によって、今までの全農家対象から担い手に限定する政策転換を図り、護送船団的な政策、各品目別政策を改め、めり張りの利いた政策、いわゆるプロ農業経営に着目した支援の転換によって国民合意形成と国際化に対応した強い国内農業にするとうたわれています。しかし、急速な政策の大転換によって現場では混乱を来し、農業者個々においては複雑で理解しづらく、政策自体も思うように浸透していない状況であります。  現況での上川管内農業経営体戸数、個人、法人含むは約一万戸のうち、個別的な政策支援を受けられる担い手農家は特例措置を含め上川全体では約七割と高い数字を示していますが、ここ旭川の全農業者戸数は約千八百戸です。そのうち、面積要件の特例措置を入れてもわずか約六百戸しか対象にならず、全体の三割程度と非常に低い数字となっています。しかも、その六百戸のうち、必須要件の認定農業者数は約四百戸で、未認定が二百戸であります。二百戸の未認定の方が今後進んで全員認定農業者になれば三割であって、高齢化や何らかの理由により未認定のままだと担い手対象者は更に低くなり、二割台になることが懸念されます。  面積要件がクリアできなくても、国は、すべての農業者に政策支援を受ける道はあると集落営農を示唆しています。また、知事特例によって所得要件と作業受託組織も可能としていますが、まずその集落営農が北海道、更にここ上川管内においても具体的な動きが出ていない状況です。  なぜかというと、なかなか一言で表現あるいは理解していただくのは非常に難しく、単なる言い訳にすぎないととらえられるかもしれませんが、北海道はそもそも本州とは違い、中小規模といっても面積的にも大きい中、戦後の農地解放以降、脈々と受け継いできた個別的な専業農家、家族的農業が多い中、集落営農という概念を持つこと自体にアレルギーや不安を感じていること。また、過去にはコスト低減や作業の効率化推進として農業構造改革政策に誘導され、機械利用組合や生産組織等も数多く立ち上げ運営してきましたが、ことごとく解散している現状の中、リーダー的人材不足や役割分担の重荷など、経理の一元化とした法人には積極的に取り組みづらい背景があるのだと思います。しかしながら、各地域では一人でも多くの農業者が支援対象となるよう、一つの方向性として、知事特例による北海道型としての作業受託組織が可能かどうかを模索している段階であります。  例え話になり恐縮でありますが、長年お城の天守閣を支え続けてきた石垣のように、大中小の農家が組み合わさって今までの農村地域社会の維持、振興が図られ、守られてきたのです。中小の石が砕かれ、なくなれば、大きな石だけではやがて城の石垣は崩れ、城も倒壊してしまうのではないでしょうか。中小の石がなければ、盤石な石垣を再建することもできず、瓦れきの山となってしまいます。  また、深刻な問題の一つとして、近年、農業者戸数の急激な減少問題があります。  上川管内だけではなく、当然全国的な問題でもあるのですが、ちなみに、現在から三十三年前の昭和五十年、上川管内農業者戸数は約二万四千戸であった戸数が、先ほど約一万戸と申しましたが、昨年の統計調査、農林業センサスでは、とうとう一万戸を割り込む九千九百九十二戸という数値が出され、六割近くも減少しています。農山村地域では、少子高齢化や離農、離村を含め人口の過疎化が顕著に現れており、このままでは農村地域社会の崩壊を招くことが危惧されています。  一体、なぜこれほどまでに減少が進んでいるとお考えでしょうか。  多くの要因が挙げられますが、その大きな要因の一つは明白であり、それは所得が上がらないからであります。国が唱える他産業並みの七百万円、八百万円の所得確保されればこれほどまでの減少には至らず、後継者や新規就農者も育てられたと言えます。こうした農業者戸数の急激な減少が続く中、更に絞り込みを掛ける今回の政策が、私にはどうしても理解に苦しむところであります。農業者戸数の減少の歯止めあるいは増加対策を推進することが私の本音とした願いであります。  次に、食料自給率に関してでありますが、平成十一年に制定されました食料・農業・農村基本法の中では、先進諸国で唯一食料自給率、カロリーベースを低下し続けている我が国は、二〇〇〇年から二〇〇五年までに四〇%から四五%へと引き上げる目標を当初設定しましたが、結果、一%も上げることができず、今回の基本法の見直しにおいて、さらに十年後の平成二十七年度をめどとして再度四五%の目標が掲げられましたが、ただ単に期間を延ばし、数字を掲げるだけの無責任ぶりでは、またしても四五%の達成はできないのではないでしょうか。  昨年六月、食育基本法が成立され、日本型食生活の見直しを含め、大変良いことと言える一方で、海外からの農畜産物の輸入額は年々急激的な増加を続けており、昨年度では農業予算より約一兆八千億円も多い過去最高の約四兆八千億円、本年は更に上回る勢いで輸入され、最終的には五兆円に達するであろうと言われています。一体どこまで輸入し続けるのでしょうか。大量消費、大量廃棄の時代をいつまで続けられるのでしょうか。国は、言っていることと行っていることが矛盾してはいないでしょうか。国際貿易推進による経済的発展の言葉を盾に食糧安全保障をないがしろにしているのではないでしょうか。日本国民の八割が命と直結する食料に対して不安を抱いている中、農業を含めた第一次産業の衰退しているこの現状が本当に日本の国益と言えるのでしょうか。競争社会、市場万能主義、規模拡大、効率優先がすべてだと言えるのでしょうか。  続けて、現在の米政策について言えば、家族労賃さえ賄えない米価の下落続きで、稲作主体の大規模経営農家ほど経営難に陥っている現況であります。  我が国の主食である米は、食管法の廃止に伴い、逆ざやは解消され、これからの米価は市場原理による取引価格で決まる。米が思うように売れないのは売れる米作りや販売努力が足りないから、米価が低いのは高い価格で売れるような米を作らないから、米価下落の原因はすべて農業者の側にあって、それは農業者の努力が足りないからだと一方的に稲作農家が批判されるのは理不尽であります。また、国が求める米作りの本来あるべき姿として、需給調整は集荷団体及び生産者自らが行うものとしていますが、何事にも生産者努力し、問題がすべて解決していくこととするなら、農業政策そのものの必要性もないということにはならないでしょうか。熾烈な販売競争によって淘汰された多くの水田、農地が荒れ果てていくという過酷な姿しか私には見えてきません。  今後、少子高齢化の中で、一つしかない人間の胃袋を考えれば、米価を下げれば米の需要が大幅に増える要因とはなりません。農水省の言うように、市場全体の需給価格が決まるだけでは片付けられない多くの問題があることを是非とも御理解願います。  それでは、食料・農業・農村基本計画に係る品目横断的政策への転換、担い手・農地制度の見直し、農業環境・資源保全政策の確立などについて簡潔に所見を述べさせていただきます。  まず、品目横断的政策生産条件格差是正対策、いわゆるゲタ対策についてですが、ここ旭川では、米や野菜を主とした作付け農家も多く、その米、野菜はこの対象から外されているため、ゲタ対策として位置付けるか、あるいは別途対策を強く求めるところであります。このゲタ対策では過去の生産実績に基づく支払が行われますが、地域実態を反映した単収を用いても、再生産可能な支援水準確保できるのかという点で大きな疑問と不安があります。また、担い手に農地集約するとしていますが、作付け実績のない土地などは経済効率が悪いので耕作放棄地となる危険性が高いと考えられ、農地集積及び流動化に向けた別途対策が必要と考えます。  さらに、WTO上問題があるとされていますが、今述べました作付け実績のない土地問題や新規就農者対策も含め、日本型のゲタ対策では、十九年度以降の円滑な農地流動化に備え、恒久的な固定とするのではなく、一定期間を置いて見直すことも必要ではないかと考えます。いずれにしましても、農産物価格安定法、甘味資源措置特別法など、農業制度の改廃による農業所得の減少分を十分補てんする支援水準確保することが大前提であります。  また、収入変動緩和対策、いわゆるナラシ対策でも、基準収入の取り方や支援水準設定は、再生産可能で安定した経営が維持できる水準での設定が必要であります。現在の米改革制度は本年が最終年でありますが、担い手経営安定対策、略して担経でありますが、この担経はこのナラシ対策に組み込まれ、米も収入変動緩和対策対象になるとしています。しかし、現在の担経は下落率一〇%範囲内までの対応となっており、想定外の価格下落が生じた場合や市場価格が右肩下がりの中ではナシのつぶてであり、セーフティー機能が全く機能しない対策であります。  来年からの収入変動緩和対策も、一〇%範囲内の収入下落率を設定し、国三、生産者一の割合で拠出負担となっています。このナラシ対策は、言葉どおり、米を含む対象五品目全体での収入減少分の九割補てんとなっており、これも積立金範囲内ということや五中三の平均を採用しても収入減の右肩下がりの中であっては、現在の担経同様、収入補てん機能が十分発揮されないことが想定されます。加えて、本来、自然災害等による収入減ではなく、収量減の補償が趣旨である農業災害補償制度を控除することは、整合性からも納得できるものではありません。  以上述べました問題点の改善策あるいは特別措置を講ずることや、経営が最低限持続できるよう基準収入の設定における最低所得保障制度の確立、又は積立金が経営安定に必要な財源が確保された時点で生産者拠出金の軽減や無事戻しなど、臨機応変に対応できる対策へと改善すべきです。  一方、車の両輪とされる地域資源保全施策については、地域の主体性に基づく多様で幅広い取組を支援できる仕組みとするとともに、制度の簡素化、支援単価の大幅引上げ、地方公共団体が支出した助成額を全額地方交付金として戻す措置が必要であると考えます。  具体的には、支援単価が低ければ地域、特に非農家の同意が得られないことや、近年、地方交付交付金が減少している中で、地方自治体の負担を軽減、考慮しなければ、地方自治体も体力を失い、豊かな自然や国土、農地を保全していくことは困難であります。農業の多面的機能の効果を十分に評価して支援水準を決定し、毛細血管のように緻密に張り巡らされた公共性にも富む貴重な水路の維持など、土地改良事業との整合性を図りながら地域農業の振興を是非とも図っていただきたい。  また、環境保全向上対策につきましても、環境保全型農業の積極的な推進を図るため、地域資源保全対策とは別の対策として、全額国費による助成措置を講じていただきたい。加えて、助成額については、コスト増加や掛かり増し経費相当額にとどめず、環境保全型農業を積極的に奨励し得る水準とすることが必要です。環境負荷低減に向けた取組で、肥料や農薬の使用低減に伴う収量減や品質の低下による所得減少を補てんすることが重要だと考えます。加えて、地域共同の取組要件とは別に、個人でエコ農法に取り組んでいる農業者に対する直接支払の導入も考えていただきたい。  最後になりますが、農業が果たしている多面的機能、いわゆる外部経済効果に対して環境等直接支払政策を創設し、国土・環境保全機能の発揮と農村地域の振興を図る農業政策の確立を強く望むところであります。  我が国の農業は、安全、安心な食料の供給のほかに、国土、環境の保全、水源の涵養、良好な農村景観の形成、文化の継承など様々な大切な役割を担っています。個人的な見解ですが、その役割を担うためにも、農畜産物の適正価格による農業者の所得確保を前提とした、国内におけるフェアトレードのような運動について国民合意形成ができれば良いと考えています。そのためにも、併せて食農教育、スローフード運動、グリーンツーリズムなどを通じて食に対する理解、農業に対する理解を国民、消費者に深くかかわってもらい、農村に多くの人々が集い、行き交い、定住していくことが農村地域社会の復興になると考えています。  農業、林業、水産業、この第一次産業が土台、国家の上に三角形の第一底辺として幅広くしっかりと腰を据えていれば安定していますが、今や逆三角形状態で足腰が弱い先細りした不安定な状態では、いつ国が崩壊、沈没しても不思議ではありません。国家の基本は第一次産業の発展であると、自身とらえてやみません。  現在、国際的貿易交渉によるグローバル化が進展し、国際化の流れにも対応し得る力強い農業を目指す努力はいたしますが、最も重要なことは、自国で自国の国民に安定的に食料を供給することであります。すなわち、食料生産の向上と食料自給率向上を目指し、生きる根源であるその食料を生産するために必要不可欠な豊沃な土地、貴重な水資源、豊かな森林や自然を次世代に末永く継承していくことが我々農業者に与えられた使命と自覚して営農に励んでおりますので、特段の御理解と御尽力をよろしくお願い申し上げますとともに、抽象的な意見が多くなりましたことをおわび申し上げ、意見とさせていただきます。  ありがとうございました。
  251. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) どうもありがとうございました。  次に、白石公述人にお願いいたします。どうぞ。
  252. 白石淳一

    ○公述人(白石淳一君) 御紹介いただきました農民運動北海道連合会委員長の白石でございます。  今日は、地方公聴会にお招きをいただきまして、意見を述べる機会を与えていただいたことに感謝を申し上げる次第でございます。  私は、空知の岩見沢市で水稲、タマネギを中心に小麦、野菜などを栽培している生産農民でございます。北海道の農業、とりわけ稲作地帯の実情を紹介しながら意見を述べたいと思います。  まず、農村の現状でありますが、ここ数年、生産者手取り価格、米価は一万円をわずかに超える程度で推移をしております。暴落した価格が定着をした感すらあります。このため、生産現場では、こんな米価ではもう農業は続けられないとの声が渦巻いている状況であります。農家は何とかやりくりしながら経営を続けておりますけれども、生産費割れの現状を何とかしてほしいというのが稲作農民の切実な願いであります。この米価暴落の要因が、いわゆる米改革による政府の米管理からの撤退と価格を市場原理にゆだねた結果であり、その上、毎年増え続けたミニマムアクセス米の影響が追い打ちを掛けているものであります。  私は、米改革に伴う食糧法案が審議された二〇〇三年の参議院農林水産委員会参考人として出席し、意見を述べる機会をいただきました。委員の皆さんから、米改革が実施されたら農村の現場では何が起こるかという質問をいただきましたけれども、四人の参考人のうち私を含む三人が離農が進むなど農村に重大な影響を与えるというふうに答えました。今正にその懸念が現実のものになっているというふうに言わざるを得ません。  そもそも、米改革にしても今回の経営所得安定対策においても、WTO体制を前提に進められてまいりました。WTOが動き出した一九九五年からの十一年間、資料を用意しておりますが、図表の一をごらんいただきたいと思います。日本で増えたのは、米を始めとする農産物の輸入と減反であります。下がったのは、農畜産物の価格と農民の所得、食料自給率であります。図の二をごらんください。日本の食料率は、カロリーで四〇%、穀物で二八%という、砂漠地帯か極寒地帯の国並みの水準となっております。一方、減反面積は水田面積の全国で四〇%、北海道では五〇%を超えております。日本では米は余っているのであって輸入する必要は全くありませんが、ミニマムアクセス米の輸入はこの十一年間で六百七十八万トンに及びます。農産物の輸入の急増は、農薬残留農産物や遺伝子組み換え食品のはんらんを招き、消費者の食の安全に対する不安が広がっております。結局、WTO体制下での十一年間は日本の農業の危機を一層深め、農民や消費者にとって何一ついいことがなかったと言わざるを得ません。  こうした状況の下で、北海道の農業、農村、そして日本の稲作にとって最も求められる農政上の視点は、その第一は、歯止めの掛からない米価の暴落対策に対する対処であります。このことを抜きにあらゆる対策を講じても、無力と言っても過言でありません。  第二は、異常に低下している食料自給率に対し、国内の生産拡大を軸に国家的な事業としてどう向き合うのかという点であります。  第三は、戦後の日本の農政を規定した家族経営にかかわる態度の問題であります。戦後の農政は、戦前の寄生的土地所有制度を、戦争に突き進んだ社会的、経済的背景としてこれを解体し、自作農を創出いたしました。そして、戦後農政は、家族経営育成することをもって国民全体の健康な生活に貢献するというものでありました。世界の趨勢もまた家族経営を軸に生産を拡大することにあります。こうした農業の歴史的、物理的背景を踏まえるなら、日本農業においても家族経営を軸に、これをどう育成するかが問われていると考えます。  以上の点に品目横断的経営安定対策はこたえているとは言えず、むしろこうした社会的要請に背を向けているというふうに言わざるを得ません。したがって、私は、品目横断的経営安定対策には反対であるとの態度を表明いたします。  次に、品目横断経営安定対策生産現場の実際の営農を進める上での矛盾がございます。その幾つかについて述べさせていただきます。  その一つは、担い手の問題であります。  従来の生産現場の実態は、所有する面積の大小や年齢のいかんを問わず、それぞれの農業者が持ち味を発揮して地域農業を支えてまいりました。集落の中でどこかの家で病気などで作業が遅れれば集落全体で作業を手伝いカバーする、そんなことがごく自然に行われてきたのであります。これが農村集落の機能であります。しかし、品目横断的経営安定対策では、現行のすべての農業者を対象にした制度をやめて、対策対象を要件を満たした一部の担い手や集落営農に限るとしております。このような制度に移行するならば、従来の農村の集落機能が失われるだけでなく、多くの農家経営を維持する糧を失い離農を余儀なくされます。今でさえ心配されている担い手の減少は、国内の農業生産そのものを縮小させることにつながり、食料自給率の向上にも否定的影響を与えるものであります。  二つ目は、支援の対象になれば万全かという問題であります。  私自身、認定農業者であり要件をクリアしますので、担い手での支援対象者であります。しかし、今回の対策の前提は、関税を引き下げて輸入を拡大して、外国の安い輸入原価と競争することにあるわけであります。一切の価格の下支えがないままの対策経営が安定する保証はどこにもございません。かつて北海道の炭鉱が閉山するときに、去るも地獄、残るも地獄という言葉で炭鉱の状況を表現いたしました。多くの農民を農政の対象から締め出す政策は、農業の崩壊に拍車を掛けるものだと言わざるを得ません。  また、水田の生産調整を麦、大豆で行っていた支援対象から外れた農家は米にシフトせざるを得ず、一時的な米過剰を引き起こし、更なる米価の暴落も心配される次第であります。  三つ目は、諸外国との生産条件格差是正のための対策、いわゆるゲタについてでありますが、この対策の主要部分が過去の生産実績による支払のため、生産実績を超えたものは支援対象とはならず、生産拡大は事実上不可能な対策となっております。自給率向上にそういう意味からも逆行するものであります。  また、先ほどからも御意見がありますけれども、規模拡大を図る農家が麦、大豆などの対象作物以外の作物を作付けしていた農地、例えば水田の生産調整で牧草地としていた農地は生産実績がないため支援の対象にはならず、そうした農地を引き受けるには大変困難があります。また、そうした事情から耕作放棄地にもなりかねないということも懸念をされておる次第であります。農地の流動化にとっても阻害要因になりかねません。したがって、政府自身が進めてきた規模拡大や農地の流動化の路線とも全く矛盾するものとなっておりまして、生産現場での戸惑いは広がるばかりであります。  こうした状況の下で、食料自給率を向上させ日本の食と農を守るために今何が必要なのかということを提言をさせていただきます。  基本的な農政上の命題については冒頭申し上げたとおりでありますが、日本の食と農の危機を一層深め農村社会に重大な影響を及ぼす品目横断的経営安定対策は中止すること、その上で次の事項の実現を強く求めます。  その第一は、WTOの農業交渉においては、より一層の市場開放を許さないという毅然とした態度を貫くことであります。そして、ミニマムアクセスの拡大につながる政府提案は撤回をすること。WTOが矛盾を深めて交渉が事実上暗礁に乗り上げているときに、国際ルールは厳しくなるなどという結論を先取りした対応は行うべきではありません。  第二は、農業を工業と同列にして市場原理に当てはめることほど愚かなことはありません。世界の多くの国が価格保証と直接支払の組合せによる経営安定対策を実施しております。米価の暴落で生産者の日給は労働者の時間給並みになっております。図の四と五に表現しております。暴落している農産物価格に歯止めを掛けて生産を継続できるようにするために、主要農産物価格保証を復活、拡充すること。  第三に、担い手育成というならば、せめてフランスが行っている農業後継者助成制度、図の六、七でありますけれども、これを参考にした担い手確保対策を腰を据えて行うべきであります。また、地域条件を踏まえた助け合いによる多様な取組が各地で行われており、地域農業に大きな役割を果たしている事例がたくさんあります。これに一律の基準を押し付けるのではなく、地域の自主性を尊重し、これを支援すべきであります。担い手減らし政策はやめて、農業を続けることを希望するすべての農家施策対象とすることを強く希望するものであります。  以上申し上げましたが、世界の飢餓が問題になっているときに、世界の人口のわずか二%の日本、図の三に表現してございます、貿易に出回る食料の一〇%を買い占めております。こんなことは許されることではありません。貿易よりも自給生産を優先するという食料主権の原則に基づいて国内で生産可能な農産物をできる限り自給することは、安全、安心な食を取り戻す上で不可欠であります。自給率を向上させることが世界への貢献であることを申し上げて、私の意見とさせていただきます。  ありがとうございました。
  253. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) どうもありがとうございました。  以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。  これより公述人に対する質疑を行います。  時間は一時間三十分程度といたしますが、質疑は自由に行うことといたしますので、質疑のある方は、挙手の上、委員長の指名を待って発言を願います。  なお、質疑及び御答弁は着席したままで結構であります。  それでは、質疑のある方は挙手願います。  小川勝也君。
  254. 小川勝也

    小川勝也君 四名の公述人の皆さん、ありがとうございます。  委員長の御理解をいただいて、この旭川、上川の地方公聴会の運びになりました。  私も、この法案をいろいろ勉強させていただいて、様々な不安と懸念を持っているわけでありますけれども、非公式ではありますけれども、昨日、農林水産省の担当者から、どちらかというと今回の法律改正は北海道のためのものです、こういうお話がありました。なるほど、中川大臣の地元の一部の本当の優良畑作農家にとってはいいのかな、逆に優良経営者がどんどんどんどん安定して良くなっていくという、まあ農業分野においての格差拡大の、そんな懸念もあるかなというふうに感想を持っているところであります。  今日は、たくさんの委員の皆さんから質問をしていただきたいんで、口火を切らせていただくときに二点質問させていただきたいと思います。  一点は、この規模の大きい北海道上川の農業地帯でさえ対象となる担い手の数が少ないという点で、改めてびっくりをいたしました。それで、もし、担い手以外に今回の新しい政策対象にならない農家が今後どういう気持ちでどういう営農になっていくのか、その御感想でも結構です、想像でも結構です、四人の公述人の方にお尋ねしたいと思います。  そしてもう一点は、私が一番懸念することであります。公述人の中からも意見が出ました。  一時期、米の生産調整がうまくいかないことになってしまう、これは府県も北海道も同じだろうというふうに思います。そうしますと、米価が下落するという方向性にベクトルは進んでいくだろうというふうに思うんですが、このときに、先日、参議院の参考人質疑参考人としてお見えになりました西原淳一参考人が、もしそうなっても米を作っていた農家がほかに作るものがない、こういう決定的な陳述をされました。なるほど麦、大豆はまだ生産拡大の余地が我が国農業としてあるわけですけれども、ポイントが付かない、過去実績がないという人たちにインセンティブがないわけであります。これが私どもの上川、空知にとっては一番大きな悩みなのかなというふうに思います。  この米をめぐる問題、そして、もし米が生産が続けられないような、最悪の状況ですけれども、もしなったときに、今回の対策だとほかに転換する作物がないというのが二次的に大きな重大な欠陥だろうというふうに私は思っているわけでありますが、この二点、それぞれの公述人に御感想をお伺いしたいと思います。
  255. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) それでは、それぞれお答えいただきたいと思いますが、まず藤野公述人からお願いいたします。どうぞ。
  256. 藤野昭治

    ○公述人(藤野昭治君) ただいま二点の御質問がございました。大半は今皆さんからお話しをいただいているわけでございまして、特別申し上げることはないかと思いますけれども、ただ、規模の大きい担い手の数が年々減っていっている、これはもう言うまでもなく私もそのとおりだと思っております。  農業委員会で、農地のあっせんですか、売手側のお話を聞いておりますと、あっせんの申出を出してもらうわけですけれども、その中身について、どうして農業をやめるのか理由を書いて提出をしなさいというようなことを言って出していただいております。大半は負債整理ですね。あと、高齢化でもうこれ以上農業が続けられないというような人たち。もう一つは、いつも思う残念なことでございますけれども、もう農業に未練はないと、これ以上農業を続けていれば将来の見通しがないのでここら辺でやめていきたいという意見もあるわけですね。この人たちが、要するに四十、五十代のこれから北海道農業をしょって立たなきゃならない立派な後継者が、もう未練がなくて、見通しがなくてやめていくというような状態を見ているわけでございますけれども、非常に残念なことであるなというふうに思っております。  私からどうこう申し上げるまでもないわけでございますけれども、この人たちを何とか意欲を持って農業に取り組める施策をひとつ一日も早くつくり上げていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。  もう一点でございますけれども、米の生産調整に対してでございますけれども、私ども富良野市は、いち早く米の減反が始まった当時から野菜に取り組んで、今、町場の近郊の水田地帯が元これが水田だったのかというような光景さえ見受けられるわけですけれども、今通っていただければ、大半が要するにビニールを掛けた施設園芸だとか、また、野菜を植えて、その上に少しでも出荷を早く促進させるべく断熱方法だとかというようなことで取り組んでやっているわけでございます。  ただ、この野菜も非常に数が増えれば安くなるわけですね。もう一つは、やっぱり輸入の問題が大きな問題になるんだと思いますけれども、過剰になりますと、本当に生産が合わないというんでしょうか、所得が生まない大変なときがあるわけでございますけれども、こうしたものにも野菜、あるいはスイカ、メロンだとかというああいう果菜だとか畜産もあるわけですけれども、そうしたものも全体で所得安定対策の中で取り組んでやっぱり施策を進めてもらわなければ、この人たちだって最後はどうなるのかという不安で一杯でいるわけでございますので、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。
  257. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 太田原公述人、お願いします。
  258. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) 私も藤野委員と同じ意見でございます。  今回、担い手から外された人たちがどう動くかという御質問でございますが、これは、北海道の場合は主業農家が多い、兼業農家が少ない、内地と対照的でありますけれども。  これは、一つはやっぱり客観的な条件がありまして、やっぱり労働市場が遠い。府県だと三十分も車で走れば勤め先がありますけれども、北海道はなかなかそうはならない、出稼ぎするしかないという、こういうことがあります。  もう一つは、やっぱり北海道のこの寒冷地、大規模農業における重装備ということですね。兼業で片手間では農業ができないと。少なくとも農業に真剣に取り組めば、これはやっぱり主業的農業でやらざるを得ない。  そういうことが大前提にあるわけでありますから、担い手から外されるということになると、これはもう大変なことであります。ですから、兼業という逃げ場がないというふうに考えていただきたいと思います。ですから、特に若い人たちはこれは必死になっていろんな対応策を考えると思います。  そういう意味では、営農集団とかそういうことも、今いろんな農業委員会や農協や行政が指導してそういうことを一生懸命やっておりますから、そういう部分もかなり増えてくると思いますが、一番考えられるのは、皆さんがおっしゃっているように、離農の更なる増加ということですね。このことを私たちも大変心配しておりますので、この点は是非そうならないようにお願いしたいと思います。  それから、米の生産調整がうまくいかなくなるだろうということは私も陳述の中で申し上げましたけれども、これは、実際問題としては、みんな、小麦や大豆はお金にならないわけですから、そこから逃げて、結局米と野菜を増やすということになるんですね。それが両方過剰になると。今、米価の下落に加えて、複合経営を支えている野菜が更に暴落すると、こういう結果が見えているわけですね。  ですから、これも藤野委員おっしゃいましたように、野菜対策というと、今ポジティブリストとかいろいろやられているようでありますけれども、やっぱり外国からどんどん輸入が増えているわけですね。それがなければまだまだ国内で野菜を増やす余地はあるわけでありますから、そこのところを少し総合的に考えて、正にそういうことをやっていくのが政治だと私は思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  259. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 高見公述人。
  260. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) それでは、小川委員さんから二点の部分での御質問があったわけでありますが、一点目の今回の品目横断的経営安定対策担い手対象から外れた方の今後はどうなるのかという部分。これは私の意見公述の中にも言おうかと思ったんですが、時間の都合上省いたんでありますが。  とにかく、やはり対象から外された、まあ旭川、ここ近況、上川管内の数字的な部分を申し上げましたが、実際、旭川でも多い中で、じゃ一体、ゲタ政策も含めてそういった対策支援が受けられないとなると、まず営農意欲をなくす、そういうことですね、まず。それによって、当然麦、大豆を植えることはできません。当然、民間流通価格、大豆、麦なり、民間流通二千円から三千円含めて、それは市場流通ですから価格の変動はあるにしても、とにかく生産費を割り込むような価格では、もうそのような対象者から外れた人は麦、大豆、植えることはできないと思います。  ただ、じゃ一体何を植えて残り少ない営農を続けていくかというと、太田原先生がおっしゃったように米、野菜しかないということなんです。米については、当然今の米価の下落、市場流通に任せた価格で決まった中で、また、まして今需給調整が乱れて根本的に崩れている中での所得減少がある。野菜においては、もう昨年度においては百万トンを超える輸入量に達したということも含めて、果菜も安値低迷で所得が伸びない。本当に八方ふさがり。そういう人たちにおいてはもう離農を余儀なくされるであろう。要するに、農業者人口の加速を増すことが懸念されるということがまず言えると思います。  続きまして、二点目の米の生産調整でありますが、先ほど私の意見も述べさしてもらいましたように、最終的には集荷団体及び生産者自らが行うものということで、現在の米改革の中にある稲得、担経、集荷円滑化対策、過剰米対策である集荷円滑化対策においては、加入率が北海道は九八%と、本当に一〇〇%に近い数字で加入しておりますが、全国的には六八%と低い。そんな中で、過剰米対策ですらそのような状況の全国的な六八%に低い中で、米の生産調整自体が、生産者自らがどうやって調整をやって、調整をしながら、需給調整が円滑に、米の適正価格が維持できるような調整ができるというのが非常に疑問を感じております。  そんな部分含めて、今後の、作る自由、売る自由があるとはいえ、非常に難しい問題。国がやはり責任を持ってこの生産調整農業政策として位置付けるべきだと、このように思います。  以上です。
  261. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 白石公述人。
  262. 白石淳一

    ○公述人(白石淳一君) もう既に三人の方の意見と私も同意見でございますけれども、小川先生からの質問でございますので、端的にお答えしたいというふうに思います。  まず一つ目の、対象から外れた農家はどうなるだろうかと。今ほどお話のありますように、離農の道を選ばざるを得ないということはもう明白だと思います、一切の支援対象にならないわけですから。したがって、今当面の対策はどうするかというふうに考えると思うんですが、当然米を作らざるを得ない。皆さんが言われているとおりだと思います。ですから、私も公述の中で申し上げましたけど、一時的な米過剰というのは、これはもう今から予想できるというふうに申し上げましたが、そういう状況が生まれるんでないかというふうに思います。  それから、そういう状況の下で生産調整が大変困難になるというふうに私どもも考えておりまして、今北海道で盛んにいわゆる面積特例やら所得特例を使ってできるだけ担い手を増やそうということで最大の努力を町村中心に行っておりますけれども、そのやはり大きな理由が、生産調整が非常に大変心配だということに大きな理由があります。当初は、実は私どももそれほど深刻に受け止めていなかったんですが、よくよく突き詰めてみると、今ほど申し上げたような事情が明確に浮き彫りになってくるわけですね。対象から外れた人方が米を作らざるを得ない、ここに一番米地帯の深刻な悩みが今この品目横断対策ではあるというふうに私は考えております。  ただ、いろいろその対象から外れた農家の人方の話を聞くと、もう既に気持ちはすっかり決めていまして、いや、分かった、国はもうこれ以上対策を打ってくれないんであれば、もう国には頼らないでやれるだけやるさという方が非常に多くなっている。日本の国の食料ということを考えた場合は、非常に心配される事態が進行しているというふうに思います。  以上です。
  263. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ほかにございませんか。  紙智子さん。
  264. 紙智子

    ○紙智子君 四人の公述人の皆さん、本当にありがとうございます。  私は、お話の中身を聞きながら、本当に、特に生産者を代表しての公述人の方の話からも、怒りといいますか、本当にそういう胸に突き刺さるように受け止めながら、やっぱり今のこの日本の農政の置かれている現状といいますか、政治として本当にやらなきゃいけないことということで、私たちも農水委員会の一員でもありまして、そういうことに本当にしっかりと向き合ってやっていかなきゃいけないということを痛感しながらお聞かせをいただきました。  それで、今お話の中でもありましたけれども、特に生産者の二人の方にお聞きしたいのは、品目横断的な経営安定対策は、今回のこの政策、今本当に求められているということでいうと、価格の暴落に対しての歯止めを掛けるという問題ですとか、それから自給率の向上という問題ですとか、それから家族経営をいかに軸にやっていくのかということで求められているけれども、それらに対してこの経営安定対策というのは、現場で実際営農を進める上では矛盾があるということで今のお話がされていたというふうに思うんです。  それで、特に一部の担い手、集落営農に限るということになるわけですけど、先ほどもちょっと話出されましたけど、本州の人からは北海道はいいさねという話はよく声を掛けられて、いや、そんなことないよというふうに言うんですけれども、そこのところは、さっきも北海道のためのじゃないかということがあるんですけど、実際に担い手になられる人にとっても先行きに対しては非常に不安で、そこには価格がずっとどんどん下がり続けてきているという問題ですとかありますし、旭川においては、実際担い手になれるのは、大部分が担い手になれるんじゃないかというふうにみんな思っているんですけれども、そうじゃない事実ですとか、こういう点でほかの人たち含めてどんなふうに受け止めておられるのか。御自身の経営自身から、そういうこれからの不安な状況ということについて、もう少し具体的にお話をしていただきたいなということが一つ。  それからもう一つは、ちょっとこれはあれなんですけれども、ミニマムアクセスというか、一方で米が余っているといいながらミニマムアクセスということで外国から入れていると。農水省は、ミニマムアクセスというのは日本の国内の流通市場には影響しないんだと、しないようにやっているんだというふうによく言われるんです。そういう説明を受けていると思うんですけど、その点についてはどう思っておられるのかということ、率直な意見を聞きたいということです。  それから、藤野公述人には、今度の対策の中でも、例えば農地・水・環境保全の対策のことを言われていて、これに対してはやっぱり、太田原公述人も言われたんですけれども、これに対しては、結局当初期待していたものとちょっと違っているんじゃないのかと。やっぱり財政的に言えば、今回は国と地方で一対一という割合なんだけど、実際の現場の自治体の財政状況ですとかいうことに立つと、極めてこれは実現が危ぶまれるというか、そういうやっぱり不安の声というのはほかからも聞いているんですけれども、この点についてもう少し掘り下げてどうなのかということでお聞きしたいと思います。  また後から聞きますけど、取りあえずはそれで。
  265. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) それでは、一点目と二点目につきまして、まず高見公述人からお願いいたします。どうぞ。
  266. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) 紙委員さんから二点、生産者の御意見を聞きたいということでありまして、まず一点目は、今回、来年から導入される品目横断的経営安定対策について生産者としてどういう部分が不安を抱いているか、その部分についてお聞かせしていただきたいという点でありますが、意見の公述にも述べさせていただきましたように、もうとにかく経営が安定できる、再生産可能な最低限、家族労賃も今出てこないような今の農業政策所得の在り方、実際、もう市場原理に任せ、ゆだねられている、そのような段階で本当に、実際にこの新たな品目横断的経営安定対策に移行して、実際我が家の経営所得が一体どれだけになるのかというのが、具体的な数字というのはなかなかちょっと見えてこないというのが大きな不安であります。  先ほど申し上げましたように、他産業並みの七百万、八百万本当に確保されれば、本当に、これからも農業をやっていこう、頑張ろう、機械の更新も含めて、規模拡大も含めながら、そういった部分でも見えてくるんですが、実際として一体本当に、いわゆる複雑で分かりづらい、そして、ましてその金額的な部分が、当然、基準収入であるとかそういった生産費の算出も含めて具体的な数字は出ているけれども、各農家個々において、実際として我が家の経営に当てはめたら一体どれだけの金額が措置されるのかというのが見えてこないというのが大きな疑問であります。その点が一点であります。  二点目の御質問のミニマムアクセス米について、国内の米市場には影響はないと言われているがどういうふうに思っているかと言われている部分であります。  このミニマムアクセスにおきましては、当初、最低輸入義務から関税に変えていったわけですが、年間六十万から七十万トンの輸入ということで、そして、それとは同時にSBS米、同時入札売買制度によるSBS米も多少影響もあり、これが影響ないとは絶対に言えないと思います。とにかく、やはり米が過剰している中で更にこの国内生産量の一割程度の米が輸入されている、市場には当然影響すると思われます。  そんな部分含めて、ミニマムアクセス米は即時撤退して、いや、撤退というかやめていただきたいというのが私の本音であります。  以上であります。
  267. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) じゃ、白石公述人、お願いします。
  268. 白石淳一

    ○公述人(白石淳一君) まず、担い手になった場合の経営に対する影響の問題でありますけれども、一つは、先ほどから論議がありますが、米価が暴落するという不安ですね。水田農家ですから、水田が中心になってほかの転作作物との組合せで経営を維持しておりますから、ほかのものが若干手当てされたにしても、ほかの作物が手当てされたにしても、米が暴落をすると差引きマイナスになる可能性が非常に強いというのは先ほどからの議論でお分かりいただけると思います。  もう一つ、今回の対策で問題になるのは、いわゆるゲタの部分の生産量に基づく支払がありますけれども、過去実績はWTOでは緑、生産量は黄色というふうに言われておりますが、そうなると、当然この部分については削減せざるを得ないということにならざるを得ないでしょうということを指摘せざるを得ないと思うんですね。ですから、今幾ら当てにしても、将来的には下支えが下がってくる可能性が非常に強いという点が二つ目の問題です。  それから、ナラシ対策についても、結局全品目トータルで収入の九割ということですから、満度ではないわけですよね。これが年々下がるおそれがありますね、あの基準年の収入が下がってくる可能性がありますので。そうなると、本当にこれで生産が続けられるのかどうかという心配が大変強まるというのが実態であります。  あわせて、先ほどから担い手地域という問題を盛んに私も申し上げました、農村社会ということを申し上げましたけれども、今の農村の社会はやはり集落の機能でもっていると。いろいろ水路の維持、農道の維持も含めてたくさんの人手が必要であります。この機能が少ない担い手でやれるのかという問題が当然浮上してくる。そういう心配もあるということであります。したがいまして、担い手になったからといって、支援対象になったからといって万全では全然ないと、むしろ不安の方が大きいというのが今水田地帯の、とりわけ水田地帯の農家の皆さんの声であります。  もう一点、ミニマムアクセスについてでございますけれども、先ほど公述の中で私、この十一年間で六百七十八万トン輸入されたというふうに申し上げました。これの使途をいろいろ調べておりますけれども、このうち消費者、まあ業者の方に政府が売った量というのは約半分の量ですね。残り三〇%が海外援助に充てられております。四分の一、これがいわゆる不良在庫になっておりますね。  私も各地ちょっと見させていただいて、ミニマムアクセス米の保管状況を見させていただいたことがありますけれども、大阪の倉庫ではきちっと冷房の利いた倉庫に入っておりましたから、大変なコストを掛けながらこのミニマムアクセス米を管理しているというのが実態だと思います。国民が食べないものを入れて国の財源を使って措置をする、これほど無駄なことはないし、先ほども申し上げましたが、世界では飢餓がどんどん進んでいる。今年になりましてから、農水省はどうも家畜の方にミニマムアクセス米を回すというふうなことを決められたようですけれども、世界の状況から見ると、食糧に向く米が家畜にされるほど世界の飢餓に悩んでいる人方の神経を逆なでする問題はないというふうに私は思います。  そういう意味からも是非、このミニマムアクセス米というのは日本では是非減らすなりやめるなりしていただきたいというのが私の意見でございます。
  269. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。  じゃ、藤野公述人、お願いいたします。
  270. 藤野昭治

    ○公述人(藤野昭治君) まず一番目の、品目横断的に対策……
  271. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 御質問は農地・水・環境保全対策のことですね。三点目の質問だけで結構です。
  272. 藤野昭治

    ○公述人(藤野昭治君) 三点目、農地保全対策ですね。  これに対しては先ほどから、公述人から申し上げられているわけでございますけれども、やはり北海道のいいところは景色だと思うわけです。より優れたいい空気とそして景観、これをやっぱり何としても守っていくのが我々の役目だというふうに思ってございますので、ひとつよろしくお願いをいたしたいということを申し上げて、終わりたいと思います。
  273. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) じゃ、次に、太田原公述人。
  274. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) 先ほど私、公述の中で申し上げたとおりでありますが、どのくらい、本当に過疎地を含めた農業基盤を維持していくのにどのくらい必要なのかと。今十アール当たり三千円とか四千円とかという、そういうのでありますけれども、どのくらい必要かという、これはちょっと難しいんですが、例えば今十アール当たりの水利費で、これ安いところでも五千円は掛かっている。それから、棚田であっても圃場整備というのは大体みんなやっているんですけれども、それの年々の支払が大体平均して一万五千円というふうに言われております。ですから、ああいうまた中山間地などの水田を維持していくためには最低それだけの二万円は黙っていても掛かるわけですね。だから、どのくらい必要かということのこれは一つの目安になろうかと思います。  それから、自治体の上積みがどのくらい期待できるかということ。これは紙委員もよく御存じのように、今年北海道はついに赤字決算も避けられないというような状況であります。したがって、この話を道庁の農政部の人にしても全然乗り気じゃないんですね。道の人もいらっしゃるかと思うんですが、速記録から削ってください。  それから、市町村はなおのこと。私、地域農業研究所という民間のシンクタンクの所長をしておりますが、これは社団法人で農協及び市町村に会員になっていただいているんですが、最近困っているのは、市町村、たった五万円の会費を惜しんでもう次々と脱退届が出てくるわけですね。それは別に合併したからというんじゃなくて、合併していない市町村の方が財政が苦しくて、とにかくそういう会費とかそういうものはもう削ろう削ろうとしているわけですね。そういう中で果たしてこれの積み増しなんということができるのかどうか、私はもう大変心配であります。そういう地方財政の状況もよく考えた上で、この対策そのものは私非常に重要だと思っておりますから、是非この点は参議院段階で改善していただきたいと思います。よろしくお願いします。
  275. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございます。  紙さん、よろしいですか。
  276. 紙智子

    ○紙智子君 はい。
  277. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) では、野村哲郎君。
  278. 野村哲郎

    野村哲郎君 四人の参考人の皆さん方には本当に貴重なお話をいただきました。ありがとうございました。  皆さん方のお話を聞いておりますと、私は鹿児島なものですから、大変畑地にしても水田にしても大体一戸当たり五十アールとか八十アールとかそういったような面積なものですから、全くこれは、先ほど小川委員からもありましたように、何か今回のこの対策というのは北海道のためにあるんじゃないかなと、こういうふうな思いで実は伺っておりましたが、ちょっとやっぱり現実と実態違うんだなというのをつくづく感じました。  ただ、皆さん方のお話の中で、米の依存がやはり高いということで価格の問題が相当出されておりましたが、確かに市場原理にゆだねておりますので現行では大変価格は下がっていく、このままでは本当に農家経営安定にはつながらない。そういう意味で、太田原参考人がおっしゃいましたように、価格政策から所得政策、こういうやっぱりカーブを切っていかないと農家はもう経営はもたないだろうと。  したがって、ナラシという部分で五中三である程度経営所得を安定させようと、こういう考えでありますが、ただ、先ほど来、白石さんもおっしゃっていましたが、これでは九割の補てんしかない。あるいは、ナラシにしても、私もそのことについては問題意識を持っておるんですが、毎年下がっていくであろうと。右肩下がりでやはり下がるということになると、所得という意味での安定性というのが非常に薄らいでくるおそれがあります。そこをどうするのかなというのが一つございますので、皆さん方の御意見をお伺いしたいなと思っているところです。  私もずっと過去十年ぐらいを五中三でずっと取ってみましても、大体やはりここ六、七年で四、五千円落ちております。ですから、そういうことはこれからもなお想定できるわけで、やはりそういったところをどうすればいいのかなという、その辺をちょっとお聞かせいただきたいというのが一点ございます。  それから、高見参考人には、ちょっとお伺いしたいんですが、先ほど、ここの旭川の一千八百名の農家の中で、六百戸とおっしゃいましたかね、認定農業者が、対象者が、今後対象になる、今の面積基準等々で対象になるのは六百戸程度だと。じゃ、あとの一千二百戸の方々は、先ほど来ありますけど、私が知りたいのは、どういう年齢構成なのか、あるいはどういう経営規模で、兼業化はなかなか太田原先生も難しいと、兼業農家になっていくには難しいと、そういった逃げ場がないというお話もされましたけれども、一千二百戸の対象外、まあ外れると言えば語弊がありますが、今の基準でいったときには外れるであろうそういう方々の年齢構成とかそういうものがどうなっていくのか。  やはりその方々はもう米価が下落してもどんどん作り続けていかれるのか。離農されるという話もありましたけれども、だから、集落営農とかあるいは複合経営だとかいろんなことでやっていくわけでありますけれども、その方向で認定農家として言わば認定してもらおう。私どもの鹿児島でも、行く方向は集落営農あるいは複合経営で、どうじゃ畜産を伸ばしていくのか、野菜を伸ばしていくのか、それで認定農業者として所得をある程度一定規模取ってそして認定してもらおうと、こういう動きが今出ているわけであります。  ですから、これでもう米が作れなくなったからもう離農だとか、あるいはもう対象にならないからもう米をずっと作り続けるぞということじゃなくして、別なやはり収入というか、別な作目。鹿児島はそういう水田よりも畑作の方が多いわけですから、あるいは畜産との複合経営も多いわけで、じゃ畜産の頭数を若干増やしていこうと。いろんな形で今模索が続いているわけですね。だから、そういうものでもう少し発展的な考え方でお取り組みはないものかどうか。私どものところはそういうやはり考え方で取組をJAなりあるいは行政と一体となってやっているわけですけどね。だから、そういった、もう対象から外されたからおれたちはもう駄目だぞと、どうにか国はしろよと、そういう話には極端に言っていかないと。これは地帯的な違いがあるのかも分かりませんけれども、そういうものを少し教えていただければ有り難いなと思っているところであります。  よろしくお願いいたします。
  279. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 一点目の質問は全員の皆さんでいいですか。
  280. 野村哲郎

    野村哲郎君 はい。
  281. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) それでは、まず高見公述人から一点、二点についてお答えをお願いいたします。
  282. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) それでは、野村委員さんから二点の御質問。  一点目は米の低価格の問題でありまして、要するに価格政策から、当然WTOのいわゆる生産影響を与える黄色の政策削減していくということも含めて、一九五五年以降、価格政策支持廃止、市場原理にゆだねるということで、これから所得政策へという中で米の低価格のこの問題をどう取り組んでいくのかという。  当然、その品目横断的の収入変動緩和対策も絡んでくるわけでありますが、当然、意見公述の中で言わせていただいた部分で、ずっと羅列した中で部分的に出た部分でありますが、やはり再生産可能な、やっぱり生産費を下回るような価格では当然米作りも野菜作りも畑作も含めてできるわけがないということでありますし、当然その生産費を賄える、更に労賃プラスということも含めて、やっぱり最低所得保障制度の確立というのが私自身としても率直に願うところであります。  非常に米については、ここ北海道については、農水担当者の方には本当に北海道、米作っているんですかと言われる方も事実おられまして、北海道に米は要らないとさえ言うような方もおられる中で、北海道においてはここ上川、空知含めて米の主産地でありまして、上川は昔から百万石と言われて、ここ近年、昨年は過去最高となる大豊作、作況指数一〇九ということでありましたが、実際、地球温暖化の影響で当然皆さん方も御承知のとおり平均的気温が上がっている中で、北海道は本当に最終的には、野村さんは鹿児島県出身、九州は二年続きで不作と、米ということを含めて。本当に米の適作地が、本当にコシヒカリが北海道で主体になるような、そういうような状況になってくるというような感じさえ私自身思えております。  そんな部分で、米においてはやっぱり、麦、大豆を、そういう担い手対象者になっていても、麦、大豆を植えるにしても、やっぱり水路が周りに張り巡らされた中で、どうしても水を引いてやっぱり品質収量ができない、そういうような適地適作という部分で米しか作られない地域もあるんです。そういう部分を含めて、そういうことも御理解をいただきたいと思います。  二点目といたしまして、先ほど旭川の例で、千八百戸の戸数のうち、認定農業者対象である、現段階では六百戸と申しました。では、残る千二百戸はどうなんでしょうかという部分です。  野村委員の言いたいことは、要するに特例措置作業受託組織のある集落営農が組めないものかと。当然、この全上川農民連盟、上部組織としては北海道農民連盟ということで農業生産者のほとんどが加盟している団体であり、一人残らず、こういった農業政策を含めて、中央行動を含めて要望を行ってきている中で、一人の農業者もやはり基本的には対象となるよう取り組む最善の努力をいたしております。  そんな中で、じゃ千二百戸の旭川の場合、集落営農が組めるかといったら、具体的に本当に、先ほども単なる言い訳になるというような形で集落営農に取り組むことがやっぱり進んでいないというのが実情であります。そんな中で、やはり、この旭川市ではないんでありますが、他町村におきましては、やはり農業振興公社が担い手から外れた人を全対象として、作業受託組織でもって担い手支援となるような対策。今、野村さんが指摘された、例えば旭川市の場合、千二百戸の中で、例えばJAが農業振興公社的な窓口となって作業受託組織が、北海道型としての作業受託が可能かどうか。とにかく、集落営農というのが概念にまず先に先行して出てきてないというか、やっぱり五年後、法人化目指した経理の一元というのがやっぱり取り組みづらいというのがあろうかと思います。そんな部分での作業受託組織が可能かどうかということであります。  できれば、本当に一人でも多くの農業者が政策支援を受けられるような形で取り組んでいかなければならないと、私自身もこう考えております。  以上です。
  283. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。  それでは、一点目の米の価格の問題につきましては、それぞれ三名の方々からお答えいただきたいと思います。  まず藤野公述人、お願いいたします。どうぞ。
  284. 藤野昭治

    ○公述人(藤野昭治君) 一点目の価格の問題に対しては、私は若いときから畑作専業農家でございまして、米のことについては余り詳しくはないわけですけれども、やはり減反政策の中で米を作らなければならない水田が野菜また畑作に変わってきたということが一番、目に見えるわけでございますけれども、これはやっぱり、水田は米を作ってもらわなければ、他の要するに作物を作っている者にも多大な影響をやっぱり受けているということでなかろうかと思っているわけでございます。  一生懸命に畑作経営努力して努めていながら、ほかの減反政策の中で畑作経営で作付けされているものがダブるということは、それだけ収量も多くなるわけでございまして、価格は下落するというようなことで、何か、とにかくそこら辺のバランスがうまくやっぱりいってないところに問題があるんでなかろうかというふうに思うわけでございますけれども、いずれにしても、やっぱり少しでも米が、ミニマムアクセスですか、これを止めていただいて、日本の米で自給できるような施策をやっぱりやってもらわなけりゃならないというふうに思っております。  以上です。
  285. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。  次に、太田原公述人、お願いいたします。
  286. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) 野村委員からこのナラシ対策の問題点が出されまして、私も同感でございます。  皆さんがおっしゃっておりましたように、保険、これ一応保険制度でありますが、今の農業共済のような場合は、あれは自然災害を対象にしておりますから、正に偶然的要素で取れたり取れなかったりすると、そこを補てんしていくには共済とか保険というのは非常に有効なんですね。  ところが、価格対象にしますと、これは偶然の要素でやっているならいいんですけれども、自由化みたいなのが背景にあって傾向的に下がっていくという場合は、これは余り有効じゃないですね。前に愛媛県がミカンで、独自にミカンの価格保証というのを共済制度の中に組み込んだことがあるんです。ところがやっぱりうまくいかなかった。これはやっぱり傾向的に下がっていくからなんですね。  今回も、九割補てんといいますけれども、これ毎年下がっていけば〇・九掛ける〇・九掛ける〇・九で無限にゼロに近づいていくという、そういう問題が出てきまして、今、生産者の方が大変不安に思っているのはその点なんですね。  で、どうすればいいかという、これは是非先生方にお考えいただきたいんですけれども、結局この米の生産調整がうまくいかなくなるという話ですから。前に米政策改革大綱というのが出まして、米の生産調整から国は手を引くということに今なっているんですね。それ以降は農業者と農業団体でやっていきなさいということに今なっているんですが、今までの生産調整でも難しいのに、ますます難しくしておいて、後は手を引くからおまえたちやれということでは、これは到底受けられないわけでありまして、これは米政策大綱のやはり生産調整に対する国の責任というところからもう一度考えていただきたいと、そう思っております。
  287. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) はい、ありがとうございます。  最後になります。白石公述人。
  288. 白石淳一

    ○公述人(白石淳一君) 先ほど申し上げたとおりなんですけれども、私は、このナラシ対策、米の問題というのは、最終的にゲタは対象になってないんですが、ナラシだけが米の部分ではこれは法が張れたということになってしまったわけですけれども、私は今度の品目横断的経営安定対策については中止すべきだというふうに思いますけれども、しかし、もし実施されるとするならば、少なくとも米は外すべきだと思うんですね。米は独自の対策でやっぱりやっていかないと、今の様々な条件、ますます難しくするばかりだというふうに思います。  その上で、やはり皆さん異口同音に言われていると思うんですが、生産調整がうまくいかない、その大きな原因に価格の問題が横たわっているわけですから、ここの下支えをどうするかという問題がどうしても避けて通れないというふうに私は思います。いろんな変遷がありまして今に至っているわけですけれども、しかし、ある程度の下支えがあれば米の生産そのものは続けていけるわけですし、日本の農業にとって米の位置付けというのは非常に大きいと思うんですね。  もしこれが畑作物に転化する、主食をパンに変えてしまう。一体幾ら自給率になるんでしょうか。ほとんど輸入に頼らざるを得ない事態というのになってしまうわけですから、米をどう守るかということが日本の食をどう守るかということに私はつながるというふうに思いますので、ここでの対策に十分な力を入れていただきたいというのが私の意見でございます。
  289. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございます。  よろしいですか。
  290. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) 岩城委員長、よろしいでしょうか。
  291. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) はい、高見公述人。
  292. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) 済みません。先ほどの野村委員さんから御質問の部分で抜けていた分が一点と、どうしても言いたいことが一点ありましたので、よろしいでしょうか。
  293. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) どうぞ、お願いいたします。
  294. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) はい、済みませんです。  野村委員さんの方から、年齢構成の部分、問われた部分、千二百戸の部分ですが、ありますが、基本的に、その認定農業者、面積要件で対象となる農家が六百戸と言いました。その中で、認定農業者が四百戸、未認定が二百戸と申しました。  基本的に、この面積要件をクリアする六百戸の方々は、正式な数字を調査したようなことはちょっと手元にないですが、明らかにこの六百戸の方々は、若い、ある程度これから農業を支えていく若い人たちがやっぱり主体となっている。そして、残りの千二百戸の方々高齢化している方がやはり多いということであります。ちなみに、この面積要件で、知事特例による旭川のその格差率、地域の格差率によって、まあおおむね八割ということは、旭川市も十ヘクタールが六・四ヘクタール以上ということでの対象者であります。  で、もう一点の言いたかったことは、この旭川市で例えばこの六百戸の方々は、個人でもって手を挙げて個人で政策支援を受けられる方々です。じゃ、外れたその千二百戸の高齢化の方たちが、それぞれ農地で歯抜け状態の中で、最終的には地域のおおむね三分の二以上集積して法人化ということでありますが、こうした各後継者のそういう個人的な担い手が手を挙げた、そういった農地から歯抜け状態の中で、高齢者やそういった分散化した農地を含めながら、果たしてその中で集落営農が、リーダー的人材不足含めて、そういった人が抜けた中で取り組めるのか。果たして、したら個人的に政策支援を受ける人、おまえは、したら若い、これからだけれども集落営農に入って頑張ってくれということも含めて、そういったことで進んでいけるかどうかと。そういう難しさもあるということであります。  以上です。
  295. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) 委員長、よろしいですか。
  296. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) はい、太田原さん、どうぞ。
  297. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) ちょっと私も、指名はなかったんですが、野村委員のもう一つの御質問で、野菜以外何かもう少し頑張れることないのかと、鹿児島は頑張っているぞという、そういう話がありまして、確かに鹿児島は畜産、それからやっぱりお茶があったというのは強みですね。  そういうことで、今までの転作作物ということだけじゃなくて、あるいは今までの畑作四品だけじゃなくて、もっとどういうことがあるのかと。そこのところはおっしゃるとおりで、北海道でも随分いろんなことを頑張ってきておりまして、特に畑作地帯も、ここ水田地帯ですから野菜の話が大分出ていますけれども、実は十勝も今、日本最大の野菜産地になってきているんですね。決して畑作四品だけに甘えないという努力は北海道はしてきていると思います。そういう中から、例えばナガイモのように輸出品目まで出てくるというようなことで、私は精一杯頑張っていると思っておりますが。  今、一つ考えているのは、これも十勝なんですが、バイオマスエネルギーですね。例えばビートのようにいろいろ、またさらにビートとかバレイショでん粉のように余りが出てきたことをどうするのかと。そういうことについて今、これは農協系統が今中心になっておりますが、かなりの人員とお金を掛けてそこの研究をやっている。そういう頑張りは北海道もやっておりますということを付け加えておきます。
  298. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。  それでは、福本君、お願いいたします。
  299. 福本潤一

    ○福本潤一君 四人の参考人から貴重な御意見聞かせていただきました。  先ほど太田原公述人から、愛媛県自然災害のときにミカン、価格政策してうまくいかなかったというお話いただきましたけれども、その愛媛県におります。愛媛大学で学者を十一年前までやっておりましたので、その関係で太田原さんも含めてお伺いしたいんですけれども。  白石公述人から、今回の担い手の問題、具体的になったときに、行くも地獄、引くも地獄という強烈なお言葉ありました。私ども、中国、四国の農業、かんきつを始め果物、いろいろな形での小規模経営でやっておる。岡山なんかだったらナシとかブドウとか、広島だったらミカン、カキというような形でいろいろなところをやっているところにとっては、今回の政策、なかなか大変だなと。ただ、そういうところでも、例えば広島では県でいうと三位ぐらいに集団営農が進んでいる。ある意味では、深刻な農業状況だから集団営農が逆に進まざるを得なかったというような県も含めて、この中・四国にとっての今後の農業の在り方大変だなと思ったら、北海道もそれと同等ぐらい大変な状況があるんだなということを聞かせていただきました。  そこで、最初四人の方に伺いたいんですけれども、担い手の問題、これは逆に選別政策だという御意見もございました。そうするならば、選別されたときに対象者になったならなかったによって両方とも大変な状況が生まれるということになったときに、今後、担い手という形で考えたときに、担い手の基準、レベルが一くくりで決められてしまっているのが現状なわけですが、これは例えば準担い手とか階段的にやるような政策対応策が、今回修正論議もいろいろ進むかも分かりませんし、一つの法案がもう出ておる段階ではございますけれども、あえて、今後のこの担い手問題というのは大変大きなことになるということならば、準担い手という基準を階段的に設定するという考え方に関してはどういうふうにお考えかをお伺いしたいと思います。  と同時に、集団営農していくという形になりますと、どこでもそうですけれども、個別経営が中心で日本の農業、推進されてきております。広島県においてはそれだけ進んでいるというところが逆に深刻化だからということがありますけれども、北海道でいうと、逆に、集団営農にならないと担い手にならないというときには、ある意味では、土地の持っていることによる安定的な農家経営、これが何か土地を引きはがされるような形に思われる農家も出てくる現状があるのかなということがちょっと危惧されますので、そういう意味では、現実に集団営農が進んでいくときに、北海道の農家方々にとってはこういう担い手になれないというときの、離農する以外に、土地を引きはがされて本当に離農になってしまうという危機感、これはどの程度現状としては深刻な問題としてあるのかということもお伺いさせていただければと思います。
  300. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) それでは、今度は白石公述人から順にお願いいたします。どうぞ。
  301. 白石淳一

    ○公述人(白石淳一君) 担い手についてでありますけれども、準担い手という初めて提起された概念ですけれども、私はやはり、先ほども申し上げましたけれども、できるだけ多くの人方が農村に残るということが基準だというふうに思っております。今続けたいと思っている、農業で生計を立てたいと思っている人方がすべてやはり農村で残れるような、そういう担い手対策というのがどうしても私は必要だと思いますので、言われている準担い手という考え方が、今の出されているものから見れば、そこに要件に当てはまらないけれども将来担い手になれるじゃないかと、そういう人方も位置付けたらどうだというようなことだとすれば、これは一つの可能性として私も是非追求してみる必要がある提起でないかというふうに思います。  それからもう一つ、集団営農の関係ですけれども、実は私たちもいろいろ考えております。ただ、この集落営農といいますか、この問題につきましては、むしろ上からの何といいますか施策の展開というよりは、それぞれ地域の中で大いに意見を出し合って、自分たちの地域どうしようかと農業者自らがやはり考えていく、これで初めて集落営農の機能が維持できるしお互いのやり取りもスムーズにいくというふうに思うんですね。それを何かの基準に当てはめて今のような品目横断的経営安定対策のように集落営農を規定してしまうと、いろんな形態、いろんな地域の実情、人間関係がありますから、そうそう簡単にいかない場合がたくさんあるわけですよ。私は、やはりそういう地域の中での集落営農というのは非常に大事だし、助け合いとか農業を守り立てていく上で非常に大事な部分だというふうに思いますので、今後もこの考え方というのは大いに進む可能性があると思いますし、北海道の中でもうんと追求していかなきゃならない、そういう課題だと思っています。  そういうことを進める上では、国の側はむしろ大いに地域の中で合意できたことは援助するよというようなスタンスで是非臨んでもらいたいと思っていますので、この集落営農によって担い手がどんどんどんどん切り捨てられるなんというのは全く逆さまの論議だというふうに私は思います。そのことを申し上げておきたいと思います。
  302. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 高見公述人、お願いします。
  303. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) それでは、福本委員さんからの御質問、二点ということで、担い手の位置付けの問題かと思います。  私の意見公述でも、選別的農業政策であると、こう言わさせていただいたわけでありますが、担い手の基準というものについてのとらえ方でありますが、意見公述でも若干述べさせていただいておりますが、ここ北海道においては専業的主業農家が多い中で、基本的にはそういった方々を面積要件にとらわれずすべての対象者に支援すべきだというふうに考えております。  そんな中で、段階的な位置付けはどうかという部分で、準担い手であるとか、それは一概には良し悪しとは言えないわけでありますが、基本的にはやはり農地を耕作する農民に対しては政策支援を行うというのが私の根本的な理念であります。  続きまして、集落営農については、先ほどの御質問の中で御答弁にもさせていただいた部分でありますが、今、白石公述人さんも重要なことを言っていただきました。本当に地域でもってそういった集落営農法人組織が必要性があって、みんながそれぞれ集まって自立的に率先した、そういった形での対応は非常にやはり望ましいことであって、やはりこの政策によって、ある意味では支援を受けるため、言葉的には非常に語弊があるかもしれませんが、支援を受けるためだけに形式的な集落営農取り組むようなことがないとも限らないでありますし、かといってその五年後、集落営農が、実際そういった営農作業形態、またその人間的な関係含めて集落営農が仮に解散、壊れて、した場合、それについては当然大切な財源の国費が使われている中で返還という、会計監査上返還という問題を含めて、また残された集落営農としてまとまったその農地をどうするのかという部分での解散、仮にそういうことを想像しては取り組めないわけでありますが、そういう部分も懸念されているという部分があります。  自分自身も集落営農を否定しているわけではないんです。ただ、やはりその重要性も意義も分かっておりますけれども、実際にいざ本当に取り組めるのかという、足を一歩踏み込める、そういったことがなかなかできない状況であるということで御理解いただきたいと思います。  以上です。
  304. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございます。  太田原公述人。
  305. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) 担い手の基準ということについて、大変大事な問題が出されたと思っております。確かに担い手というのはいろんな角度から選んでいくべきもので、今回やっぱり面積だけで切るというのは、これは適当でないと私は思っています。EUでも、EUの所得政策で一番もらっているのはエリザベス女王だという話があるんですね。  やっぱりそういうことを面積だけで決めていけばそういう問題が出てくるわけでありまして、ただ、所得ということになると、それをどれだけ公的に捕捉しているかという公平性の問題が出てきますので、行政的には確かに難しい。面積という客観的なものにしたいというのは分かるんですけれども、これは本当に実態からいっても、特に府県では、四ヘクタールなんかなくても一ヘクタールそこそこで複合経営で何千万の売上げを上げている専業農家はたくさんおられますからね。そういうものが何で担い手でないんだという、これ逆にそういう問題が今噴出してきているわけですね。  ですから、そこは、福本委員おっしゃるように、販売だからとか所得だとかいろんな要因を挙げて、本当に主として農業で生活しているという人はこれは明らかに担い手なんですね。主として兼業所得の方が多くても、日本のこの少ない自給率のかなり重要な部分を担当しているということも十分考えなければならないというふうに思っております。そういう点で、やっぱり担い手の定義についてはもっと柔軟な姿勢が欲しいと思っております。  それから、この集落営農の、北海道ではどうなのかと、北海道では難しいのかというお話がさっきからあるんでありますが、これは大変お二人大事なこと出されました。私も、北海道の集落、北海道というのはどうも外から見るとどこが集落なんだという、山村ですからね。なるほど北海道には集落がないのかというようなことは時々言われるんでありますが、一応集落というのはありまして、しかもこれは専業農家集団ですから、実に様々な組織が実はできているんですね。また、そっちも調査をしていましても、一つの集落の中に機械利用組合だとか堆肥製造組合だとか水田利用組合だとか、実にいろんな組合があって、そういうふうな、ただ、それが今回のかなり機械的な上から決められた基準に合わないだけだという実態があると思うんです。  ですから、そういうものを生かしながら一つの担い手集団としていくことは私は可能だと思っておりまして、また、そういう努力も今一生懸命やっているところであります。この点についてもやっぱり柔軟に見ていただきたいと。私も公述の中で何度も柔軟にということを申し上げましたけれども、やはり実情で判断していただきたい、そう思っております。
  306. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) それでは、藤野公述人、お願いいたします。
  307. 藤野昭治

    ○公述人(藤野昭治君) 担い手の問題でございますけれども、先ほど私からも申し上げたわけでございますけれども、北海道農業会議全体として取り組んでいることは、掛け替えのない農地と担い手を守り生かす運動というようなことで、どうすれば守っていけるのかということに今取り組んでいる最中でございます。  まず、近場の実際に農業を営んでいる担い手の話を時々聞かせてもらうわけでございますけれども、農業委員会は農地のあっせん申出が出てきたら買ってくれと頼みに来るんだけれども、買うのはいいけれども、今の状態の中で何を作ったらいいのか、ちょっとそこら辺聞かせてくれというようなお話を伺うわけですね。なるほど、そういうお話を聞きますと、麦も今もう過剰ぎみであるというようなことで、北海道、麦の面積も制限されているような状態でもありますし、てん菜、ビートにしてもしかりでございまして、もうすべての作物が作りたくても作れないような情勢の中であって、畑を拡大しろ拡大しろと言われても、ちょっと今の状態では買えないぞということが、お話を聞くわけでございますけれども、これはもう大変な問題であるというふうに思うわけでございます。  まだまだ北海道農業、若い後継者の中では意欲と希望を捨てないで頑張っている人もいるわけですけれども、その人たちがいかに作りたいものを作って伸び伸びとできる農業をできるのかという施策がやっぱり大事なのかなというふうに思うわけでございます。農地の、要するに本州はそんなにないと思うわけですけれども、売買が北海道多いわけですね。農地を、今もうかなり価格も下がりまして、場所によってはもう何十万でなくて何万円というようなところも出てきているというような状態でございまして、それでも拡大を図って頑張ろうという担い手がいるわけですけれども、その人たちが、農地の価格に対しての何らかのやっぱり援助というんですか助けを入れてやらなければ、今情勢を見ていますと、拡大を図って一生懸命に頑張っている人たちが最終的には負債整理でやめていかなきゃならないというような現状にあるわけでございまして、是非ともそういう問題を踏まえて拡大を図って、意欲を持てる後継者をやはり助けていただけるような施策を早くつくっていただかなければならないんでないかというふうに思っているところでございます。  よろしくお願いいたします。
  308. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。  和田ひろ子さん。
  309. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 四人の公述人の皆さん、ありがとうございます。  私は福島県の会津の出身でございます。福島県から選出をされております。  やっぱり野村さんが言われたように、北海道の農業の本当に規模の大きいことに驚いていて、私は質問することは何もないなというふうに思っていたんですね。実は、四ヘクタールにするためによそから一ヘクタール借り、一反三万円で借りている農家の皆さんとか、そういう話たくさん聞いていますので、この北海道の皆さんの話とは全然合わないのでちょっと質問があれなんですが、でも、藤野公述人は、担い手に絞ったことに評価をするというふうにおっしゃいました。また、太田原先生も、ばらまきでなく絞ったことには賛成だというふうにおっしゃいました。  でも、ずっと話を聞いてくると、実は内容は、担い手ということに対しても、さっき福本さんが言われたように、準担い手みたいな、本当は担い手農業を継ぐ人はみんな担い手じゃないかというお言葉もあったくらいなんですね。担い手の幅を広げた方がいいというふうに太田原先生もおっしゃいました。  私たちは、この法案、担い手経営法案、この三法案で果たして自給率は上がるというふうに思われますか、四人の皆さんにお聞きをしたいと思います。  そして、全部逃げ道はお米になってしまう、米の値段が下がるんじゃないかというふうにおっしゃいました。  実は、福島県は品目横断の品、麦とか大豆とか、水田には作れないんですね。全部不向きなんです。でも、北海道でさえも麦は過剰だというふうにおっしゃったとすれば、この四品目というのはもっと逃げ道を作って、もっと品目をたくさんにして、担い手に安心して農業を継いでいただけるような政策に持っていくべきではないかというふうに思いますが、いかが思われますか。四人の方々に。
  310. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 二点目も四人の方々にですね。
  311. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 はい。お願いします。
  312. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) それでは、今度は藤野公述人からお願いしたいと存じます。藤野公述人。
  313. 藤野昭治

    ○公述人(藤野昭治君) ちょっと勘が余りよろしくないもので、ちょっと後にしていただければと思います。
  314. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) はい、分かりました。  じゃ、太田原公述人から。で、最後に藤野さんにお願いいたします。
  315. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) 実は私も会津の出身でございまして、会津高校を卒業して北海道大学に参りましてそのまま居着いています。それで、しょっちゅう帰っていますので、大体会津の状況も分かっているんですが、私は、何か会津は全然違うから北海道とは全然違うというふうには全く思っておりません。抱えている問題は同じだと思っております。  それで、今回担い手を絞ったのは賛成だというふうに私が申し上げたというのは、一般論、言うと政策の一般論でありまして、私は所得政策構造政策に使うのは間違いだということを申し上げたつもりなんですよ。ですから、所得政策構造政策に使うとすれば、言うと担い手になるような人への援助を分厚くしてそちらに誘導するとか、そういう方法なら許されると思いますが、機械的にどこか決めてそれ以外は政策対象にしないというのは、私は極めて乱暴な手法だと思うんですね。  そういう点では、私がちょっと申し上げましたように、北海道のこの高見さんの農民連盟というのは北海道独特の組織でありまして、集団農家、専業農家集団だというふうに思っていただいていいと思うんですが、日本の農民団体では唯一このデカップリング政策を要求して運動してこられたわけですね。だから、本来なら高見さんはああ良かったという公述をされるはずなんですけれども、そういう要求してきた母体がこれは反対であるとおっしゃっているわけですから、やはり期待していたものと違うという感覚は、やっぱりみんなこれは持っているんですね。  ですから、そこのところをまず、どこが問題なのかということは、先ほど、みんな今の担い手限定の問題を始めいろいろ言っているところで、せっかくこういう所得政策という画期的な考え方が農政に導入されたわけですから、それが本当の意味で生きるように、是非参議院らしい審議をしていただきたいなというふうに私は思っております。  そのくらいでよろしいでしょうか。
  316. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 自給率向上につながると思いますか。
  317. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) このままでは自給率下がると思います。特に、小麦、大豆というのは一番自給率を上げなきゃならないところなんですが、これの生産者が文字どおり絞られるわけですから、それで大規模農家が飛躍的に拡大するということにはこれなりませんから、間違いなく自給率下がりますね。そこのところをやっぱり十分問題にして検討していただきたいと思います。
  318. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございます。  じゃ、続きまして、高見公述人。
  319. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) 和田委員さんから二点ということで、今回の担い手要件による品目横断的経営安定対策によっての食料自給率が上がると思うかという点でありますが、私も太田原教授と同様に四〇%という間違いなく下がるというふうにとらえております。基本的に、食料自給率といっても、まあ金額ベース、重量ベースとあるわけでありますが、そんな中で肉関係については当然、穀物飼料的には日本国においては二七、八%だったと思いますが、穀物飼料によって豚肉や牛肉などがそういった生産がされて、国内で生産されて、そして国民、消費者がその日本国産を食べて初めて食料自給率であって、そんな部分を含めて、今、太田原先生が言われたように、麦、大豆含めて、そういった作付けも下がる可能性も含めて、下がる可能性が大きいと言えます。  二点目の品目横断的政策に品目を多くするべきかという御意見かと思います。当然、私の意見公述の中にもお話しさしてもらったように、品目横断のゲタ対策におきましては、米は外国からの高関税によって守られているという部分、そして野菜に至っては湯水のように今大量に輸入されているような中でゲタ対策からは外されております。ゲタ対策の黄色の部分では、その麦、大豆においては収量、品質におけるそういった部分での補てんはあるわけでありますが、米、野菜含めて、とにかく酪農関係も含めてこの品目横断的政策には外されております。基本的にはゲタにおいては四品目、麦、大豆、でん原バレイショ、てん菜ということで、ただ収入変動に至っては米は、先ほど言いましたように、米は担経を絡めながら五対象になるということでありますが、基本的にやはりこの野菜、米、酪農関係のそういった部分を含めて、酪農製品含めて、そういった経営安定対策の品目的にはやはり農業全般部門として経営を位置付ける、所得を上げる意味合いからしても、私自身としては品目は上げていただきたいというのが意見であります。  以上です。
  320. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 白石公述人。
  321. 白石淳一

    ○公述人(白石淳一君) 自給率の問題でありますけれども、私はこの対策では自給率は下がるばかりだというふうに思います。  理由は、先ほど太田原先生も言われておりましたけれども、小麦、大豆というのは自給率向上に非常に大事な作物でありますが、この作付面積が制限されるという問題、今以上作付けが増える可能性が非常に低いということが一つありますね。これは非常に大きな自給率を引き下げる要因になると思います。  もう一つは、先ほどから論議のある担い手の問題、これが減少する。当然その残った担い手がどれだけ作れるかという問題もありますから、当然物理的な制約もあるというふうに考えざるを得ないわけで、その両面から見ても自給率そのものは下がらざるを得ないだろうというふうに思っております。  それから、品目を増やすべきかという話ですけれども、私は、今回の品目横断対策というのは、やはり外国、今のその国内の価格保証的な対策をすべてやめて、そして言わば外国のかなり安い原料と同等に肩を並べる、その上でゲタを履かして肩並べるようにするというのが今回の対策のねらいだというふうに理解しておりますけれども、ほかの品目も、国内対策、まあそれほど野菜なんかあるわけじゃありませんけれども、それにしても幾つかありますから、それをそもそも輸入関税が全部取っ払われたような、そういう状態での水準にさらされるとするならば、これまた大変な事態が起こってしまうと思うんですね、輸入との関係で。  したがって、もっと品目横断対策が今の価格の下支えや何かがきちっとされない以上、品目を増やしてもどんどん日本農業を衰退に追い込むだけだと言わざるを得ないと思うんです。そこのところの改善があれば、これは品目を増やすということに私もやぶさかではありませんけれども、現状ではとても賛成できるような、むしろ入れた方が悪いんじゃないかというふうに思わざるを得ないような中身だというふうに思います。
  322. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 ちょっといいですか。
  323. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) まだ藤野公述人が。
  324. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 ああ、そうですか、済みません。
  325. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 藤野公述人。
  326. 藤野昭治

    ○公述人(藤野昭治君) 先ほど担い手経営安定新法について賛成というような御意見を述べられたというふうにおっしゃられたんじゃないかと思うわけですけれども、以下六点申し上げているわけでございます。この六点一つ一つは申し上げませんけれども、それぞれ対応していただけるとするんであれば、北海道、私ども農業にとっては賛成であるというふうに御理解いただきたいというふうに思います。  次には、品目横断的対策についてですか、これについては、それぞれの作物が増えた場合にどうするかということでございますけれども、やはりそれぞれの作物について所得対策が一つ一つ大事であろうというふうに思っておりますので、是非この品目横断的作物の中に入っていない作物も含めてひとつ検討をいただきたいというふうに思っております。  主業農家対象とする理念には賛成であるというふうに先ほど申し上げたわけですけれども、要するに自給率対策ですか、これについては私は下がっていくであろうと、むしろ、いうふうに思っております。これは、やはり耕作する農家が減っていなくなればもう自然と下がっていく方向につながっていくというふうに私は見ておりますので、そのことを申し上げてお願いをしたいというふうに思います。  以上でございます。
  327. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。
  328. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) 補足よろしいですか。
  329. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) はい、どうぞ。
  330. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) この品目の問題で、要するに政策的枠組みの大きなところでちょっとお話ししますけれども、今回はWTO協定上の緑の政策ということでやっているわけですね。ただし、日本の実情を考えたら、それだけではいかないから黄色の政策も一部分入れていると。それは非常に私はいい判断だと思っております。  ただ、もう少しそこを行けば、青の政策というのがありまして、これアメリカの場合はほとんど、ヨーロッパとまた違いまして、品目別不足払いなんですね。不足払いというのはこれ緑の政策ではなくて青の政策なんですが、これはWTO協定によっていろんな関税率とかそういうことで不利になってきた場合、今までの所得との格差について不足払いすると、こういう制度なんですね。  米も含めてその制度を取っていただくと、これは農家にとっては一番現実的に助かる。そういう点がWTO協定との関係でどうなのかということも御研究いただきたいと思っております。
  331. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 和田ひろ子さん。手短にお願いします。
  332. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 付け加えるんですが、私たちは例えば菜種のような油、そういうものとか、あと地域の特産とかいうものを増やしたらどうかということを言っていたのでああいうお話をお聞きしたんです。  それで終わります。ありがとうございます。
  333. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) よろしいですか。
  334. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 はい。
  335. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 紙智子さん。
  336. 紙智子

    ○紙智子君 今のちょっと太田原先生のお話にも関連するんですけれども、実は先日、三十一日の参考人質疑、国会でやった参考人質疑の中でもWTOとのかかわりが一つ議論になって出てきているんです。突き詰めていきますと、やっぱり九五年に受け入れるときにも、これ受け入れなければもう日本は駄目なんだという形で、結局、輸入をしながらそれと価格競争という形になってどんどん目減りしてきたということがあると思うんですよ。  そこのところで今回も、じゃ緑でもって黄色も少しという話なんですけれども、やっぱり日本は今の現実でいいますと、食料自給率もほかの国と比べても非常に低い状況にもあるわけだし、農業の多面的機能ということでもいろいろやっぱり評価されてきている中で、そういう日本としての独自の立場ということも含めて交渉していくと。  現に、アメリカでそういう不足払い制度を復活させているという問題や、EUなんかもやっぱり所得補償一本だけじゃないですよね。やっぱり組み合わせてやっているということが現実にあるわけだから、そういうのを日本の中でもやるということについてもっとやっぱり積極的に検討すべきだというふうに思っているんですけれども、この点、ちょっと今、太田原先生もお答えになっていただいたんですけれども、ほかの皆さんもちょっと言っていただければと思います。
  337. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) それでは、白石公述人からお願いいたします。
  338. 白石淳一

    ○公述人(白石淳一君) 私も積極的に取り上げるべきだというふうに思います。  もう少しはっきり物申し上げますけれども、日本のWTOに対する交渉使節が非常に弱いというふうに私は認識しています。もっと、これだけ日本人の食を担う場面ですから、日本の国の食料をどうするのかという視点でやはり毅然とした対応が必要だというふうに私は思います。  そういう点から見ても、WTOが先にあって、転ばぬ先のつえじゃありませんけれども、国内の対策を、既にもうWTOが決定したかのような対応が次々と打ち出されて、そのことによって諸外国から見ても日本が非常に特殊な、自給率が非常に低いにもかかわらず、言わば丸裸のそういう対応になってきているというところに非常に問題が私はあると思いますので、諸外国の例も大いに研究していただいて国内農業をもっともっと守れるような、そういう対策にしていただきたいということを要望したいと思います。
  339. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 高見公述人。
  340. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) 済みません、紙委員さんの質問がちょっと、趣旨的な部分がちょっといまいち……
  341. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) じゃ、もう一回手短にお願いします。
  342. 紙智子

    ○紙智子君 WTOとのかかわりで、結局、価格支持は駄目ですよということががあんとなっていて、それでこの間、日本の対策として、今までの保証していた、例えば品目別にやられていた価格保証をなくしてという方向に来ているわけじゃないですか。そこのところをWTOとのかかわりで、もっと諸外国なんかはそう言いつつも国内の産業をやっぱり下支えする仕組みというのは残したりしているわけですから、そういうふうに日本もちゃんと守れるような体制で考えていかなきゃいけないんじゃないかと、そういう点についてどう思いますかということです。
  343. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) 済みませんですが、ちょっと意味的に理解できなかったものですから。済みません。  WTO協定、いわゆる今すべてにおいて、皆さん方のお手持ちの緑の冊子の中に、私、昨年第六回のWTO香港閣僚会議にも出席をさせていただいた、その報告内容を、ちょっとコピーした中で字が見づらいわけでありますが、基本的にWTO協定という、本当に一体だれのため、何のためなのかという部分を考えた場合、やはりWTOの閣僚会議で世界各国の農民等や、いろんなセミナーなど参加した中でもうことごとく言っていたのは、やはりこのWTO協定によって利益を得ているのはごく一部の大企業なり輸出している一国家にすぎないということを常々言っていて、自分自身も大きな疑問と憤りを感じた中であります。  基本的には生産影響をさせない緑の政策への移行ということで、日本においてはこの黄色の一部ゲタ部分含めて取り入れているわけでありますが、要するに、今回の資源保全、環境保全も含めて車の両輪とされる部分については、当然我々農民連盟が、一九五五年、WTO協定に日本が加盟して以来、価格支持廃止によって所得政策へ変えるというような中で、市場原理にゆだねられた中で、もうすぐに環境に対する直接支払制度、多面的機能に対する環境等直接支払制度をEUに見習って導入すべきだということを主張してきました。  そんな部分で、今回の資源、環境については、もう本当に支援単価の設定も含めて内容的にも乏しいものであり、我々が望み得る本当に多面的機能に対する、いわゆる外部経済効果に対する評価に対する支援とはほど遠い内容であるということも含めて、やはり先進国であるEUのそういった農業政策地域政策農業振興政策、EUなんかではLEADER事業といって、やはり農業の持続的経済発展のために、やっぱりその支援を行うことがもう国民合意形成の中で執り行われているということで、それが三年間終わって、更に六年間プラスされてLEADERプラス事業ということで取り組まれております。  そんな部分を含めて、WTO協定の中にあっては、やはり当然その所得の補償という部分を絡めながら、地域農業の振興政策というものをやっぱり確実にやっていただきたいというのが意見であります。  以上です。
  344. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) 太田原公述人はございますか。はい、お願いします。
  345. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) 先ほど申し上げたんで、簡単にしようと思いますが。  紙委員のおっしゃるとおりで、一つはやっぱりWTO交渉頑張っていただきたいという、できるだけ有利な条件でやっていただきたいということと、あと、各国とも、農産物価格とか助成金とかというのは直接WTO協定に縛られますけれども、EUなんか見ていてもそれ以外のことをたくさん入れているわけですね。特に、農村地域振興政策と必ずこれ組合せになっていまして、それと条件不利地域対策だとか環境対策だとか、いろんなものが重層的に農村地域に対して出されているわけですね。  これは、やはり文明論的に言っても、都市膨張の時代は終わって、むしろどう農村にその人口を再配置するかという非常に大きな国土政策の中で位置付けられておりまして、これも今回、単にかわいそうな農民を救うという観点だけじゃなくて、やっぱり我が国を二十一世紀にどうするんだと、その場合の人口再配置という観点から考えていただきたい。そうすればこの政策は非常に重要な政策となっていい転換点になるのではないかというふうに期待しておりますので、よろしくお願いいたします。
  346. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。  それでは、藤野公述人、お願いします。
  347. 藤野昭治

    ○公述人(藤野昭治君) WTO問題、紙先生が先ほど申されていたわけですけれども、そのとおりだというふうに私は思ってございます。今、盛んにWTO交渉に向けて議論を重ねられているわけでございますけれども、私は、多様な農業の共存という我が国の主張を貫いてもらうことが何よりも大事であろうというふうに思ってございます。  いずれにしても、足らざる部分は国内対策で、要するに万全を期してもらうべくお願いをしたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  348. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。  それでは、時間が迫っておりますので最後の質問になろうかと存じますが、加治屋義人君。
  349. 加治屋義人

    加治屋義人君 個々のことはもう申し上げませんけれども、かつて我が国のこの農業生産というのは、製造業に、それから輸送業を生んで、そしてまた、流通関係のいろんな分野で相当な貢献をして我が国の経済に貢献をしてきたと、そういうふうに高く私は評価をしているんですけれども、何せ農家生産をして出荷した後に金は全く残らないよねと、農業は大変だよねと、そういう状況がずっと続いてきて、毎年毎年、今皆さん言われるとおり、農業の後継者いなくなった、正に高齢化してきた、どうしようもない状況。このまんまの政策を、今までの政策をずっと続けていくとすれば、もう我が国の農業というのは崩壊するんではないかと。そういう気持ちがあって、今回の大改革、先ほどから出ておりますWTO交渉をどうしても成功させなければいけない。  しかし、その中でも、やはり将来は国際競争にどうしても対応しなければいけない、そういう問題ですね。自給率向上についても、非常に消極的な皆さんの意見聞いたんですけれども、これではどうしようもないわけでして、やはり勇気を持って取り組んでいかなければいけない、これが今回のこの農政大改革の意義であろうと、私はそういうふうに理解をしております。  今日まで北海道の農業というのは、この広大な土地、そして皆さんの自助努力、そしてまた今日御出席のリーダーの、指導者の方々努力によって、正に我が国の最大の食料基地として私どもは高く評価をさせていただいてまいりました。  そこで、先般もそうだったんですけれども、私ども、委員会参考人の聴取をさせていただいて、今日も四人の先生方にこうして御意見を賜りました。これからの委員会質疑の中で十分生かしていかなければいけませんけれども、十九年度からこの制度スタートでございます。そういう意味では、もちろん私どもの政治もそうですけれども、農林水産省、これはもう待ったなしの決意でこのことに取り組んでいかなければいけないと、そういうふうに思っておりますだけに、今日御出席の四人の先生あるいは傍聴いただいている方々、この北海道の農政のリーダーの皆さんでありますので、いち早くこの制度に熟知をしていただいていち早く取り組んでいただく、このことが必要だと思っております。  農業にしても林業にしても水産業にしても、これはもうすばらしいこの北海道でありますので、あとはやる気の問題だと思っておりますので、そういうことを含めて一言ずつコメントいただければ大変有り難いと思います。
  350. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) それでは、藤野公述人、お願いします。どうぞ。
  351. 藤野昭治

    ○公述人(藤野昭治君) もう先ほどからお答えしているので答えることもないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、やはり私ども農業経営者が夢と希望とを持ってやっていける対策対応を国の方でもやっぱりいち早く作っていただきたい。もう一年先だとか二年先だとか、そんな待てる状態に今ないよということを私は申し上げたいと思います。  ひとつよろしくお願いいたします。
  352. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。  太田原公述人。
  353. 太田原高昭

    ○公述人(太田原高昭君) 加治屋理事から、北海道はいろんな条件が整っているので、あとはやる気だというふうに言われたんですけれども、ちょっとやる気をそぐ政策が出てきたんではないかということを先ほどからるる申し上げているわけでありまして、ここのところをもう少しやる気を出すように修正していただけば、おっしゃるとおり北海道は全国の先頭を立って頑張れると思います。  よろしくお願いします。
  354. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。  高見公述人。
  355. 高見一典

    ○公述人(高見一典君) 加治屋委員さんから、当然、農業の役割的、連鎖的なつながりを持っていろいろなという部分につきましては、先ほど意見公述の中でも、私、最後に述べさせていただいたんでありますが、とにかく第一次産業の発展が国家の基本というふうにとらえております。  そんな部分におきまして、やはり北海道において食料基地と言われている中においても、先ほどここ旭川の例を例えてみましたように、そういった対象者も実際少ない中で、ましてや道南地区含めて北海道においてもそういった担い手対象者数が限られてくる、そういう地域もある中、一人でもやはり農家減少に、最後にも要望意見と本音という部分で、やはり歯止めあるいは増加対策というか、もうどうしても、やっぱり少しでも農業者人口の減少に歯止めを掛けるような対策を、是非ともまたその政策支援が受けられるようなことで御尽力いただきたいということであります。  以上です。
  356. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございます。  白石公述人、お願いします。
  357. 白石淳一

    ○公述人(白石淳一君) 農業の問題ですけれども、やはり今食料の問題というのは非常に大事な問題だというふうに思うんですね。これが、食料自給率、今現在四〇%という水準がいかに恐ろしいことかということをむしろもう一度問い直したい。その上に立って、農業がこれ以上衰退することのないような対策がどうしても必要だと思うんです。  私たちは農業者ですから、かなりいろんな困難、特に気象条件などがそうですけれども、そういう中でも全力を挙げて今この北海道の地で農業経営続けておりますが、是非そういう頑張りを大いに支援していただけるような、そういう制度を是非つくっていただくことを最後にお願いしたいと思います。  ありがとうございます。
  358. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) ありがとうございました。
  359. 常田享詳

    ○常田享詳君 よろしいですか。
  360. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) じゃ、一言だけ。
  361. 常田享詳

    ○常田享詳君 質問ではありませんけれども、与党の立場で。  食料・農業・農村基本計画を見直して閣議決定をする段階で、なぜ自給率が上がらないのかと。去年入れて六年間上がらない、四〇%です。そういうことの中で最も見落としていた点は、行程管理をしていなかった。なぜ自給率が上がらないかと、どこに問題があると、漫然として農政を推進してきた。そして、その食料・農業・農村基本計画の延長線上で今この品目横断経営安定対策を導入しているということで、先ほど来公述人の方々から、柔軟にとか、やはりきちっと状況に応じて見直すべきところは見直すべきだというお話がありましたが、我々はしっかりそこのところを、行程管理をしっかりやって、そして実際動き出しておかしいということであれば、しっかりそういったところについては見直していくということは我々議会の重要な役割だと思っておりますので、一言付け加えさせていただきたいと思います。
  362. 岩城光英

    ○団長(岩城光英君) それでは、以上をもちまして公述人に対する質疑は終了いたしました。  ここで、公述人の皆様に一言御礼を申し上げます。  皆様には、長時間にわたり意義のある御意見をお述べいただきました。誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして、重ねて厚く御礼を申し上げます。  また、この地方公聴会のために種々御尽力を賜りました関係者の皆様に、この場をおかりしまして厚く感謝を申し上げます。ありがとうございました。  それでは、これにて参議院農林水産委員会旭川地方公聴会を閉会といたします。    〔午前十一時四十二分閉会〕