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2006-05-30 第164回国会 参議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年五月三十日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岩城 光英君     理 事                 加治屋義人君                 常田 享詳君                 小川 勝也君                 和田ひろ子君     委 員                 岩永 浩美君                 岸  信夫君                 国井 正幸君                 小斉平敏文君                 野村 哲郎君                 三浦 一水君                 小川 敏夫君                 郡司  彰君                 主濱  了君             ツルネン マルテイ君                 松下 新平君                 谷合 正明君                 福本 潤一君                 紙  智子君    国務大臣        農林水産大臣   中川 昭一君    副大臣        農林水産大臣  三浦 一水君    大臣政務官        農林水産大臣政        務官       小斉平敏文君    事務局側        常任委員会専門        員        高野 浩臣君    政府参考人        内閣法制局第四        部長       外山 秀行君        文部科学省スポ        ーツ・青少年局        スポーツ・青少        年総括官     西阪  昇君        農林水産大臣官        房総括審議官   佐藤 正典君        農林水産大臣官        房技術総括審議        官        染  英昭君        農林水産大臣官        房統計部長    小西 孝藏君        農林水産省総合        食料局長     岡島 正明君        農林水産省消費        ・安全局長    中川  坦君        農林水産省生産        局長       西川 孝一君        農林水産省経営        局長       井出 道雄君        農林水産省農村        振興局長     山田 修路君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○農業担い手に対する経営安定のための交付金  の交付に関する法律案内閣提出衆議院送付  ) ○砂糖価格調整に関する法律及び独立行政法人  農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律  案(内閣提出衆議院送付) ○主要食糧需給及び価格の安定に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付  ) ○参考人出席要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件     ─────────────
  2. 岩城光英

  3. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案砂糖価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案主要食糧需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  三案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 岩永浩美

    岩永浩美君 おはようございます。自由民主党の岩永浩美です。  この三法律案に対する基本的な姿勢について、まずお伺いをしたいと思っております。  この三法案について、今まであらゆる角度から、いろいろな議員各位からお話がございました。いよいよという感じで過日趣旨説明があり、今日から質疑に入るわけでありますが、今まではすべての農家対象として品目ごとに講じてきた価格政策、これを農業担い手対象に限定した上で経営の安定を図るというその趣旨の中で、今回三法案提案をされました。  この法律案の基になっている去年の十月の経営所得安定対策大綱で、品目横断的経営安定対策のほかに、米政策改革推進対策及び農地・水・環境保全向上対策を行うことに今回しておられますね。そういうことを踏まえて、平成十六年から始まった米政策改革のための産地づくり交付金など、今までのあらゆる一つ政策、そういうものを変更し、資源保全とか環境保全政策とか、全く今までにかかわりのなかったことについても新しい一つ施策を講じて今後は推進をしていこうという今回の法律案、これは私自身も多としたいと一面では思っています。  そこで、本法律案品目横断的経営安定対策対象になっている担い手、それから集落営農といった人たちだけがやっぱり今後対象になりますけど、私はかねてからいつも議論していますように、担い手は、集落営農だけが日本農業を担っているという感じを私自身持っていないんですね。しかし、今回それを一つ支えることによって規模拡大を図っていき、効率的な農業経営を行うために、何としてでもやっぱり農地集約を図っていかなければいけない、そういう一方における問題の認識ということは理解しながらも、現実の問題として、日本一つの狭隘な土地の中で、集落営農担い手だけにシフトした一つ農業の在り方で今後の地域農業農村というのは守っていけるのかという思いを強く私自身がしているものですから。  そういう点で、今までずっと農業政策推進してこられた大臣は、あらゆる角度からいろいろな問題についてよく理解をしておられるし、そしてまた将来の展望についても一つ見識をお持ちであることは十分理解します。ただ、今回の法案提出するに当たって、今までの一つ反省の上に立ってお出しになったその一つ思いですね、それを大臣は、この法案を具体的に我々質疑をしていく前に、大きな見地からどういう考えをお持ちなのか、それをまずお伺いしてから質問に入りたいと思います。
  6. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) おはようございます。  今、岩永委員岩永委員大変農政には造詣が深くていらっしゃるわけでございますが、まず基本的な御質問でございます。  今までの農政、これは農業基本法時代農政でございますけれども、これは都市農村格差是正ということが主目的でございましたので、とにかく生産して、作って作って、売ればいいと。そして、その法が意図していたかどうかは別にして、売ってしまったらあと関係ないよということであったわけでございます。  それではもう駄目だということで、平成十一年に新しい基本法を作って、基本計画に基づいて施策を進めてきたところでございます。新しい基本法は、単に作ればいい、作ったらおしまいということではなくて、日本食料あるいは国土保全等々の多面的機能というのは、単に農業者だけではなくて、消費者国民、あるいはまた途中の食品加工、流通といったところ、あるいは自治体、そしてまた、言うまでもなく国が、それぞれ役割をみんなで担っていきながら、日本食料政策あるいはまた国土政策等々の多面的な政策を推し進めていこうという趣旨でございます。それに基づきまして今回基本計画を見直しし、そして御指摘のような大綱を決定をした上で、本法案を御審議を本日からいただくわけでございます。  日本農業は、言うまでもなく、いわゆる農業の中核的な人あるいは農村地帯だけではなくて、例えば都市近郊農業も重要でございますし、中山間地農業ももちろん重要でございます。そういう意味で、それぞれのところで農業活動等を通じていろいろな役割を果たしていただきたいというわけでございますけれども、それと同時に、この担い手経営安定対策というのは、いわゆるやる気能力のある農業者に更に頑張っていただいて、消費者国民ニーズに合ったものを生産することによって、消費者にいいものを買ってもらう、食べていただくということ、それによって、作った方もよりある意味では収入が上がると、端的に言うともうかるという形にしていくことがこれからの農政食料政策と言った方がいいかもしれませんけれども、必要ではないかという観点でございます。  そういう意味で、やる気能力のある農業者というものを定義するときに、担い手、そして面積要件がございますけれども、決してそれだけではない。御指摘のように、集落営農規模はそれぞれ小さいけれども、みんなで集まって、そして経営計画等を立ててこれから頑張っていこうと、みんなで頑張っていこうという形でも対象になるわけでございますし、あるいはまた、規模は小さくても経営感覚を持って高収益を上げているような農業者対象にしていこうということでございます。  我々は、やっぱり自給率というものをこれから向上していかなければならないというふうに考えておりますので、そういう意味で、今回のこの経営安定対策というのは、土地利用型であって、そしてカロリーベース自給率向上に資するような農業者対象にしておりますけれども、その中で、必ずしも面積だけで切るのではないと。先ほど申し上げたように、できるだけ幅広く、やる気能力のある農家に対してこの施策が有効に資するようにしたいということでこの法案提出をさしていただいたところでございます。  これからもそういうふうになっていく人がどんどん増えていっていただきたいし、それによって日本供給側需要側とがともにウイン・ウインの関係になっていくことによって、より足腰の強い日本食料体制ができていくことを是非ともつくり上げていくような方向で、この法律が稼働いたしましたならばそういう方向になるように貢献をしていきたいという気持ちでこの法案提出さしていただいたところでございます。
  7. 岩永浩美

    岩永浩美君 大臣思いはよく私も分かります。我々も一部そういう大臣思いは共有しながら今まで議論に参加をさしていただきました。  そこで、法律案周知徹底なんですけど、また今回のやっぱり法律案というのは、今までの一つ農政を抜本的に改革をしようとするだけに、やっぱりその政策変更の範囲は非常に広いし多岐にわたっていますね。それだけに、支援仕組みとかあるいは要件も非常に複雑なものになっていて、現場皆さん方、十分にやっぱりこのことを理解していないんですね。まず、新しい制度仕組みというものを現場皆さん方理解しなくては、本当にこの法律案が仮に施行されてやっていったとしても、うまくいくかどうかということは甚だ疑問なんですよ。  今までの委員会の中で、私自身も申し上げましたけど、ほかの数多くの同僚の議員からも指摘をされていたように、それぞれの地域によっても考え方が違うし、後継者のいる人といない人、あるいは土地要件が非常にやっぱり大きなところと小さいところにまたその思いが違ってまいりますね。それぞれの皆さん方にある一定のやっぱり理解を得るための努力というものが十分になされてきたかというと、まだ私は十分になされていないような気がするんですね。  また、後ほど私は触れますけれども、WTOのモダリティーがある程度やっぱり見えてからこの問題に具体的に入っていくという要件も今回の法案の中には含まれていますね。それだけに、やっぱりこの説明責任というのは十分になされていかないと、この法律ができたとしても本当に意味を成さなくなってしまうんじゃないのか、混乱に拍車を掛けてしまうんじゃないかという思いを強くするんですよ。  十九年から施行していくということを言っておられるけど、現実的に多くの農家皆さん方参加意欲を高める、生産意欲を高める、そういうふうなことをしていくために、今まで御答弁いただいた通り一遍の一つ説明は十分やってまいりましたよと、JAや県や、一緒になってそれぞれの集落みんなで入ってやってきたということ言われるけど、本当にやっぱりその成果が上がっているというふうに御理解しておられるのか、まだまだ不十分だからもっとやっぱり周知徹底をしないとこれはうまくいかないぞというような見識をまだ今なお持っておられるのか、そこら辺はどうなんでしょうか。
  8. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 御指摘のように、いい方向になるという前提で法律を作ったとしても、肝心の農業者はもとより、消費者等々が御理解をいただかなければ、これはもう全然プラスにならないわけでございます。例えば、既にあります認定農業者制度、これにつきましても、これもある意味では、それによってプラスになるという面があるわけでありますけれども、ほとんど、ほとんどといいましょうか、思ったよりも認定者が少なかったということも事実でございました。  したがって、先ほど申し上げたような、そしてまた岩永委員も共有していただいているこの目的達成のためには、是非理解をいただくための努力説明責任とおっしゃいましたが、まさしくそのとおりでございまして、そういうことをしていかなければならないというふうに考えております。既に農林水産省、あるいはまた自治体、あるいは農業団体等を通じて、できるだけの努力をしているつもりでございますけれども、まだまだ、私も先日、岩永委員の御地元等々を回らしていただきましていろいろと話を伺いましたけれども、幹部の人たち、上の人たちは分かっているけれども、どうもまだ末端がという声も私自身聞いてきたところでございます。  まだ少し時間があるというか、もう法案が御審議をいただいているということで余り時間がないというか、どっちか分かりませんけれども、とにかく、これからも一層、あらゆる手段を通じて、とにかくこういうことをやっているんだと、こういうことをやりたいんだと、こういうことをまず御理解をしていただいた上で、その上で、じゃ自分参加しようとか、自分も実は参加ができるんだなとかいうような御判断をいただけるように、いよいよ、これからますます御理解あるいはまた周知徹底するように、農林水産省、あるいはまたあらゆるツールを通じて説明をさしていただかなければならないと、こういうふうに考えております。
  9. 岩永浩美

    岩永浩美君 説明される方によって、やっぱり説得力のある説明をされる方とそうじゃない場合と、それから、非常に意欲を持っておられる皆さん方意欲を持っていないという言葉、非常に語弊がありますけどね、農業の未来について非常に意欲を持っておられる方は積極的にこのことに参加していこう、それは濃淡があることは事実ですね。ただ義務的に、説明を果たしてきたからこれはもう自動的にずっとやっぱり進んでいくんだというやり方は、必ずしもいい効果を私はもたらしていかないと思うんですよ。そこは十分に留意しながら、やっぱり役所の一つベースでやっていくということだけはないように、丁寧な説明是非やっぱりお願いをしておかなければいけない。  それで、私は、やっぱり生産、我が国のやっぱり農業実情というのは、年々歳々良くなっていったら、こういうふうなものについては非常に積極的に取り組んでいただけると思うんですよ。しかし、現実的に今のやっぱり農家の実態というのは、対前年比で比べていくと、大変、毎年毎年、やっぱり減っていっているんですね、所得も。すべてのことについてやっぱり良くなっていっていないんですよ。  そういう実情を踏まえたときに、こういう一つのやっぱり大きな変革に付いていけない農家人たちが数多くおられることを考えると、丁寧さが私は必要だということを強く言っておきたいと思います。  それで、この法律案で定義されている担い手ですね、具体的には四ヘクタール以上の規模要件が必要だと、これは地域によって違いますがね。そして、この四ヘクタールが最低一つやっぱり規模要件になっている。それ、四ヘクタールで本当に担い手皆さん方が実質的に農業専業農家としてそれで十分に所得を得ていくような農業経営者には私はなれないと思うんですよ。十年ぐらいしたら、その規模要件というのは二倍から三倍に増やしていかない限り、現実的に農業専業担い手としては私はやっていけないと思う。特に、稲作水田農業については特にそうだと私は思う。あるいは、施設園芸水田、あるいは畜産水田をやっている複合経営皆さん方は本当に担い手として専業農家としてやっていくことができると思うんですけど、現実的に今回の法案の大きな一つの柱は、水田農業稲作農業をどうするかということが私はこの法律の根幹だと思うんです。  そこについて、やっぱり将来、例えば三倍から四倍の農地集約、そういうふうなものができるという想定した中での法律案提案をしておられるのか、最低四ヘクタールでも生産が成り立っていく、経営が成り立っていくという考え方に立っておられるのか、そこはどうなんでしょうか。
  10. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今回のいわゆる格差是正の方の対策は、麦、大豆、バレイショでん粉、それから砂糖という四品目に限っているわけでございますけれども、そこで、その要件一つとしては四ヘクタールというものが一つの区切りになっているわけでございます。これはあくまでもその地域の他産業並み所得を目指すというスタートラインでございまして、御指摘のように、じゃ、四ヘクタールあればやっていけるかというと、必ずしもそうではないんであろうと思います。  ですから、スタートラインとしては、その四ヘクタールというのは、ある意味では他産業所得の半分ぐらいをカバーするところからまずスタートをして、これはもう今回認定されたらそれでもうおしまいだじゃなくて、是非とも、それでもその地域の他産業に比べればまだまだ低いわけでございますから、そういうところに対して是非支援をすると。そこは、創意工夫、文字通りやる気能力を持って、高品質のもの、あるいはまた御指摘のように規模拡大をする、あるいはまたみんなで集団的にやっていく、高収益の作物も作っていく等々で、行く行くは他産業並み所得が得られるように、既に得られている農家もあるわけでございますけれども、今回はそういうところに達していないところも四ヘクタールということをスタートラインにして、将来的にひとついい経営をやって、つまり売れるものをどんどん作っていただくということをやっていただくことによって所得を上げるということを後押しをさせていただくということでございまして、現時点においてのあくまでもスタートラインでございまして、行く行くは他産業並みになるというための後押しとして是非活用していただきたいという趣旨でございます。
  11. 岩永浩美

    岩永浩美君 これは、昭和三十六年に農業基本法が制定されたときも、今、大臣がおっしゃったように、都市農村所得格差是正していくために農業基本法を制定して、その格差をやっぱり埋めていこうということで農業基本法制定されましたね。それから後、五十年過ぎて、今なお新しいやっぱり農業政策を展開するに当たって、今言われたように、格差社会のことを今ほかの件でも論じられておりますけれども、農家所得というのはそんなにやっぱり増えてないんですよね。  だから、五十年前もそういう一つ所得格差是正するために新しい農業基本法を制定して、農家所得向上のために寄与していくようにしていくんだということで制定された。今回もまた、都市並み所得はできなくても、半分以上の所得はできるようにやっぱり新しい農業政策の中で具体的に示していこうというお話を伺うわけだけど、それなら旧農業基本法、三十六年に制定された農業基本法については大臣はどういう評価を今しておられますか。
  12. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 昭和三十六年といいますと、当時は食料自給率カロリーベースでたしか七割ぐらいございまして、金額ベースで言うともう九〇%ぐらいあったわけでございます。今、岩永先生指摘のように、都市農村格差是正のために農業の憲法を作ろうということでスタートしたんですけれども、結果的には自給率がどんどんどんどん下がってくると。農業生産も、私が政治家になったころは十兆円と言われていたものが、今は九兆円を切るような状況になってきているわけであります。いろいろと反省すべきところは多々あるわけでございますから、基本法を作り、そして今回の法案の御審議をいただいているところでございます。  その反省一つは、農村所得都市並みにということでございましたけれども、農業者地域によって、また同じ地域でもいろんな農業者がいらっしゃるわけでございますから、そういう中で一様に同じような施策をやっていたと。典型的に言えば、さっき、冒頭申し上げましたように、米や麦は作ったら全量国が買い上げてくれると。したがって、あとは知らない、知らなくてもいいと。そうすると、当然経営感覚、あるいはまた消費者の顔というものが見えないわけでございますから、消費者との間のミスマッチというものも出てくるわけでございますから、そういう意味で、どうも消費者サイドから見ると、日本のものよりも外国のものの方が、値段もそうですし、我々が食べたい、あるいは食品として作りたいものとしてこっちの方がいいじゃないかということになってきたというのが結果として正直なところだと思っております。そういう流れを何としても是正しなければならない。  他方、高齢化社会に入ってくる、人口減少社会に入ってくるという形の中で、これからの、冒頭申し上げたような、国内で、今の基本法というのは御承知のように国内生産基本として輸入と備蓄という三本柱ということになっているわけでございますけれども、そういう中で、何としても、食べる人あっての生産である、国内のものを消費者も期待をしている、安全で安心で顔の見える良質のものを期待しているというニーズにこたえるということは両方にとってプラスになるわけでございますから、そういう意味で今回の基本法、そして今回の法律におきましては、そういう形からプロの農家、あるいは農家集団あるいは地域というものに対してインセンティブを与えていくということでございまして、基本法時代から平成十一年に至る三十数年間の間の反省を踏まえた上での流れの中での今回の、まあある意味では第二弾といいましょうか、ステップアップという施策として今回の担い手に対する経営安定対策というものを位置付けているというふうに理解をしております。
  13. 岩永浩美

    岩永浩美君 大臣は今、高齢化問題にも触れられました。昭和三十六年、農業基本法が制定されたとき、当時の二十歳ぐらいの人がもう七十歳になっておると。七十歳になって、もう正に第一線からリタイアされる年齢になってきました。その間、やっぱり専業農家は、果樹とか畜産農家については後継者もある一定後継者を確保できたと思います。稲作農家について、あるいは稲作農家兼業農家の人がやっぱり多いんですね。そこには後継者というのはやっぱり育ってない部分がまだたくさんあると思うんですよ。  私が一番懸念するのは、やっぱり日本型、今までずっと長い歴史の中で、日本農村社会というのはやっぱり家族労働を中心とした農業というのが今後も私は続いていくと思うんですね。担い手集約をしたり、集落営農でその地域農村社会を、ある一定規模はそこで守られたとしても、それに入れない家族農業ということは私はずっとやっぱり続いていくと思うんです、水田農業に限って言えば。そういう点で、やっぱりそういうふうな家族、兼業農家で、集落にも入らない農家皆さん方の耕作放棄地をつくらない一つ仕組みをつくっていかないと、一方で農地集約化し、集落営農を営んだとしても自給力の向上には私はつながっていかないと。一方では耕作放棄地ができたりすると。  そういうやっぱり今後も日本型の、今まであった日本型の兼業農家、家族農業の在り方については持続していくというふうにお考えか。それとも、それはもう放棄してそういうことをなくしてしまった方が、本当に競争力の強い農業を育成していくことの方が自給率は高まるというふうに考えられるのか。それ、大臣にお伺いしたいんですけどね。  現実的に、中山間地域を抱える農家皆さん方にとって、集落の営農にも担い手にも限界がある部分ということについての認識はどれほどおありになるのかお聞きしたい。
  14. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) このままいきますと、高齢社会がどんどん進展していきますし、農村はその高齢化のスピードが都市よりも速いわけでございますから、このままほうっていきますと、今、岩永委員指摘のような状況になって、後継者がいない、そして耕作放棄地がどんどん増えていく、それによって日本食料のいわゆる安全保障の面からも大変な問題が起きてくるということは目に見えているわけでございます。  したがいまして、この耕作放棄地対策と同時に、土地の利用率の向上ということと両方で掛け算をしていいものを供給をする体制をつくっていこうと、掛ける品質ということになるわけでございます。  そういう意味で、耕作放棄地を防ぐ、優良な農業経営の中に組み込んでいくという観点から、個々の農家については、自分農業をやめたい、やめざるを得ないという人がいらっしゃるかもしれません。それはまあ御判断でございます。後継者がいない、もう自分も高齢になってしまったという方は農業をやめる。でも、その農地は、やはりある意味では、私有財産ではございますけれども、食料政策からいうと極めて重要な国家的な政策対象になるわけでございますから、そういう意味で、規模拡大で買ってもらうとか、あるいはまた新規に外から新たに入ってきていただくとかいうことも含めて、効率的に、何としても有効に農地を利用をしていかなければならないと考えております。  いずれにいたしましても、日本農業は、実は規模の大きい小さいは別にして、アメリカもやっぱり家族農業が中心だと私は理解をしておりますし、ヨーロッパも基本的には家族農業が中心でございます。まして、日本農村社会の伝統あるいはまた文化というものに成り立って今日まで来ているわけでございまして、日本農業は正に家族農業が中心でありますし、今後も家族単位がやっぱり日本農業の中心であって、そしてその中でやる気能力のある農業者に頑張っていただけるような体制になっていただきたいというふうに私は考えております。
  15. 岩永浩美

    岩永浩美君 農地集約あるいは集落営農による効率的な農業、これ一方で進めていくことは当然だと思うんですけどね。それはそれとしても、やっぱり今ある耕作放棄地をなくすように努力していかない限り、やっぱり自給率向上にはつながっていかないと思うんですよ。一方において、そういう一つ担い手が、その地域の中に優秀な担い手があって土地集約が可能な地域もあれば、どうしてもそういう担い手が、閑疎になって担い手もいなくなり、集落営農を営んでいくにしても、その集落営農も高齢化のために維持できなくなってきつつある農家も出てくると私は思う。  今あるその一つ集落営農担い手集約できない農地の確保と維持を今後どういう形で推し進めていくのかということは、並行してそのことを進めていかないと、自給率向上にもつながらないし、国土保全もできないしということが出てくるので、そこはどうなさいますかということをお尋ねをしている。
  16. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 中山間地等の条件不利地域につきましては既に中山間地対策等々があるわけでございまして、それはそれとして、ある意味では車の両輪として、放棄あるいはまた転用にしないようにしていくというのはもう既に大きな我々の政策課題になっているわけでございます。と同時に、今度は今の御審議いただいている法律でもって、規模拡大でもってやっていきたい、あるいは新規参入でもってやっていきたいというインセンティブを与えることによってそういうところを吸収していきたいというふうに考えております。  岩永委員の御指摘は、それでもという話でございますけれども、そういうことのないように、これから我々は、その中山間地等の対策と今回の施策とで両々相まちまして、耕作放棄地を、我々の見通しでは、増えている方向を減らしていって農地を増やしていきたいと、対象者等々に吸収してもらって、規模拡大等々によってより効率的にやっていただきたいと思っております。  ちなみに、兵庫県の中山間地でありながら、いろんなところの農地を借りて大規模にやっているという農家の実例もございますし、農家というのは、一つのこういう例もある、また全然違う例もあるということでございますから、今申し上げたのはあくまでも一例でございますけれども、とにかくやる気能力のある農家に、あるいは新規の就農者にそういう、ほっておくと放棄するようなところをできるだけ集積をする、また集積するための施策を、インセンティブを与えていかなければいけないというふうに考えております。
  17. 岩永浩美

    岩永浩美君 後ほど耕作放棄地の解消のための補助金、交付金の在り方でまた尋ねたいと思いますが。  次に、価格支持政策生産補助金について伺いたいと思う。  今度の法律案で、芋やでん粉、砂糖最低価格保証や大豆交付金、大豆経営安定対策の個別品目価格支持、生産補助金は廃止するということになるんですね。この価格支持と生産補助金はWTOの黄色の政策で、その削減が今後求められるからということが廃止の理由だということですけど、そういうことですか。
  18. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 冒頭申し上げなければいけなかったと思いますけど、今回の法案趣旨というのは、現行WTO協定の整合性というものも念頭に置いているわけでございまして、そういう意味で、いわゆる四品目についての格差是正対策、助成金というものは過去払いが前提でございます。したがって、WTO上はこれは緑であるというふうに考えております。  ただ、ぽんとキロ当たり何円を乗っけるというのは、WTO上はこれは緑ではないということになるわけでございますので、できる限りWTO、整合性を持たせたいというふうに考えておりますが、それだけでは先ほど申し上げたような日本食料自給率あるいはまたやる気のある農業農家に対してのインセンティブになりませんので一部分黄色の政策も導入をしていくということにしているわけでございますし、例えば規模拡大をやるとか品質向上をやるとかいうことは、これは生産刺激的になりますので、どう見てもWTO上、緑というふうには言えないのではないかという前提で、我々としては、そういう前提でありながら、つまり黄色であるということを認識をしながら、冒頭申し上げたような趣旨でやっていきたいというふうに考えておりますので、大豆あるいはまたその他の作物につきましても、緑できちっと過去払いで説明できる部分と、それ以外に、黄色あるいはその他の予算措置でやっていかなければいけない部分等ございますけれども、いずれにいたしましても、現行の制度から大きく変更をしていくということが今回のポイントでございます。
  19. 岩永浩美

    岩永浩美君 それでは、今回削減されるその黄色の政策は緑の政策にどれぐらいカウントできるんですか。
  20. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 過去の数年間の平均値で交付される金額は緑でございます。しかし、それだけでは足りない部分、例えば品質向上であるとか、あるいはまた農地規模拡大するとかいう部分については黄色ということになりますけれども、現行のまますっと横に行って、規模拡大しない、収量も拡大しない、単収も拡大しないということであれば、そのまま横に行けば、これはもう過去払いだけということになればこれは緑でございますけれども、それだけでは進まないということなので、黄色等々の予算措置が出てくるということになるわけであります。
  21. 岩永浩美

    岩永浩美君 非常にデリケートなところで、どこまでを緑にカウントするかとか黄色でやるかというのは難しい問題かもしれませんけどね、今の段階で。ただ、アメリカの方では黄色の一つ政策の削減率というのは非常にやっぱり小さかったりしていて、まだやっぱり戦略的にこちらの方が黄色の政策推進していくというようなこと、言葉として、やり取りの中でまだ交渉の過程があるんじゃないんですかね。具体的には、それぞれの一つのやっぱり保護政策の黄色の政策の部分、もっとやっぱり少なくしていいんじゃないのかなと、現実的に。  だから、私たちはやっぱり今回のこの法律案担い手の三法案のやつについては、あくまでも一方に一番上にあるのはWTO交渉の中における日本の保護政策をどうやって解消していくかということを認めさせない限り、WTOでは交渉非常にうまくいかないことが前提にあるわけでしょう、今回の担い手対策というのは。そうじゃないんですか。
  22. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私はむしろ逆に考えておりまして、現行WTOにあえてこの段階で政策転換をするということがむしろWTOの現在の交渉にプラスになるというふうに考えております。  しかし、岩永委員指摘のように、じゃ次の新しいWTO体制になったときのための準備だというふうに仮に考えますと、何かWTOをもう既に念頭に置いて、次どうなるか分からないけれども、何か日本としては、いや、緑の政策と黄色の政策とを組み合わせてぐっと緑の方にシフトしたんじゃないかというようにとられると、理解されるということは、交渉を今やっている大詰めの中で、これはもう交渉上、全く私としてはやりにくいということになってしまいます。  冒頭申し上げましたように、現行WTOの整合性ということを前提にしておりまして、今後どうなるか分かりません。この国内支持の議論がどういうふうになっていくのか分かりません。正に今交渉をやっている最中でありまして、岩永委員先ほどおっしゃいましたように、アメリカはちょっと少し余裕を持って提案を出しているんじゃないのかとか、もう少し削減できるんじゃないのかという議論は確かにやっておりますけれども、その交渉を、今お互いにすきあらば相手を攻めようと、私もやりたいと思っているんですけれども、それとこの交渉によって何か次のWTO体制を見据えて事前に先回りをして対応をしているんだということではないということは是非とも御理解をいただきたいと思います。
  23. 岩永浩美

    岩永浩美君 私の質問の仕方が悪かったのか、具体的に次のWTO交渉の先駆けでこちらの国内対策をしているということを申し上げているんじゃないんですね。あくまでもWTOと不可分のかかわりがあるでしょう。国際競争力を高めていく農業をつくっていかないと、WTO交渉の中で日本の主張ができないということなんでしょうと。やっぱりその競争力を国内対策の中でつくっておかなければ、農産物だけではないわけですから、WTO交渉というのは。その中に農産物ももちろんあることは言うまでもありません。だから、我々は今後、本当にやっぱりWTO交渉の中における農業分野における主張が、我々の主張が本当にやっぱり通っていくためにどうすべきかということは、我々自身の中にもそれぞれありますね。  そんな中で、じゃ次に私も進みますけれども、WTO交渉で今一番問題になっているのは、今交渉の過程だから言えないというふうにおっしゃられる、予断を持ってしゃべることはできないよと大臣は言われるかもしれないけど、今までずっと団体やこの委員会の中で議論されてきた多くの意見は、やっぱり上限関税を死守してほしいというのが皆さんの御意見だったと思うんですね。あるいはMA米についてどう処理をされるかということも関心事の私は一つだと思うんですね。それは今の段階からどういうふうになっているんでしょうね。
  24. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、MA米の扱いにつきましては、これはいわゆる重要品目の扱いという議論と関係してくるんだろうと思います。ただし、これ前提として是非ともきちっと申し上げておかなければいけないのは、重要品目に何を入れるかということは現時点では決めておりません。もちろん、米が重要であると、国内的に重要であるということは言うまでもありませんけれども、WTO上、何%、タリフラインの何%にして、その中に何を入れるかということについては、日本は一切出しておりません、各国も出しておりません。  ですから、国内的に言っている重要品目とWTO上の重要品目とで米のことについては遮断をされているという前提でお話をさせていただきたいと思いますけれども、そういう一次税率、二次税率の議論、それに関連するミニマムアクセスの議論と、ミニマムアクセスといいましょうか、一次税率の数量の問題ですね、TRQと言われている問題でございますけれども、この議論もやっております。アメリカ、G20等々がいろんな提案を次々と出してきておりますし、日本としても日本の主張を前提にした提案を出しております。かなり技術的な議論を現時点においてジュネーブでやっているわけでございますけれども、日本としては日本の立場、G10の立場、そしてEU等とも連携を取りながらマーケットアクセスの重要品目の扱いについて議論をしております。  上限関税の導入阻止につきましては、G10はこれはもう絶対に譲るところのできないところでございまして、日本、スイス、ノルウェーを中心にして、これもジュネーブで現在鋭意やっているところでございます。EUとは基本的に同じ方向でありますけれども、しかしEUは上限関税一〇〇%という提案を既に出したわけでございます。アメリカは七五%という提案を出したわけでございます。EUのマンデルソン委員と話すたびに、いや、おまえの、日本の言っていることはよく分かると、しかし出してしまったと。  それから、先週、フランスの農業大臣日本に来て長時間お話をいたしました。フランスの立場は、EUの中でも最も日本に近い国の一つだというふうに私は理解をしておりまして、なぜそういう提案を出したんだと。日本は絶対のめないので、是非理解をしてもらいたいということをフランスの農業大臣にも申し上げたところでございます。EUとしては、関係ないから出しちゃったというのがどうもEUの本音のようでございまして、今更撤回もできないけれども、日本の立場もよく分かるよということでございます。  他方、ここで重要になってまいりますのは、途上国にとってのスペシャルプロダクツという問題が出てきているわけでございまして、SPと言われるものでございまして、途上国には途上国の特別関心品目があるんだから、是非ともこれについて理解をしてもらいたいと。  日本、私はいち早くSPについては支持をするということを去年から申し上げているところでございます。そして、上限関税阻止についても是非とも理解をしてもらいたいということを、そういうSP関心国、とりわけインドなんですけれども、インドの大臣にはお会いするたびに、SPを支持すると、日本の上限関税阻止についても支持をしてもらいたいということで話合いをしているところでございまして、正に状況は率直に申し上げて守る側でございますから、決して楽観を許すものではないわけでございますけれども、日本は、ウルグアイ・ラウンドの反省に立ちまして、多くの国々の仲間づくりをしながら、重要品目、あるいはまた上限関税の導入阻止に向けて今必死にジュネーブベースあるいは日本全体挙げて努力をしているところでございますので、当委員会の一層の御支援をよろしくお願いをいたします。
  25. 岩永浩美

    岩永浩美君 大臣は、今、上限関税あるいは重要品目のことについて、米を守っていくために、死守をしていくために一定一つの御説明をされましたけれども、私は前の委員会質問のときにもちょっと大臣にお聞きしましたけれども、当初EUと一緒になってやっていた一つのWTO交渉が、EU、アメリカと同盟国になって、G10として今、日本が主張をしていますね。その日本のG10の主張と途上国連合との間に影響力というのはどれぐらいやっぱりあるんですかね。やっぱり本当にG10の主張というのは、百七十か国近いWTO参加国の中で、ある一定理解を得られるまでに来ているんでしょうか。それとも、非常に不安定な要素をまだ持っていてちょっと分からないというようなことなのか。  特に、大臣はいつも言われるように、今回のWTOの交渉は、守るべきは守り譲るべきは譲るというその一つの方針でいかないとうまくいかないんだと。特に、モダリティーの確立は、やっぱりそこに、一方だけ自己主張だけしていても本来の一つの成果は得られない、そういうお話を折に触れて大臣は御答弁の中で言っておられますけれども。G10の主張というのが本当にWTO交渉過程の中でこのままずっと突き進んで、我々が是非やっぱりお願いしてほしい上限関税の死守、あるいは重要品目、米を守るというその一つの立場に立ったときに、そのG10の主張というのは確固たる信念で高い評価を受けているのかどうか、そこはどうなんでしょうか。
  26. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) WTOというのは百五十か国が参加をしておりまして、いろんなグループがあるわけでございます。一番大きな、今回のドーハ開発アジェンダの一番新しくて大きな問題というのは先進国対途上国という、開発アジェンダという前提になりますので、そういう問題があります。  したがって、G10の中にも途上国と称する国々がいるわけです。韓国がそうです。それからモーリシャスがそうであります。イスラエルもそうであります。等々おります。先進国と途上国との合体がG10でございます。他方、先ほどのSPとかG20とかG30、SPはG33と言われておりますけれども、G90とか、そういった国々はみんな途上国のグループになっているわけでございます。  だからこそ、G10だけで百四十対十ということではもうこれは多勢に無勢ということになりますので、だからこそEUと連携を取りながらも、途上国、G33というのは特別品目グループと言われているわけでございますので、そういったインドネシアとか、こういった国々とも連携を取っていくし、それからG20というとブラジルという感じでありますけれども、このG20というのも不思議な組織でありまして、最も輸出競争力のあるブラジルと、最も輸入を阻止したいインドが二つのリーダー、機関車としているという誠に不思議なグループなわけであります。くくりは途上国であるというだけ、だけと言っちゃ失礼ですが、グループであります。しかし、影響力は非常に大きい。  したがって、G20の中では、ブラジルとは激しくやりますけれども、インドとは折に触れて連絡を取りながら、インドの輸入阻止については日本は全面的に支持をすると。また、SP、あるいはSSMという特別なセーフガード、途上国向けの特別セーフガードというこの二本柱についても、日本、G10は支持をすると。だからこれは、日本の言っている重要品目、それから日本の言っている上限関税の阻止についても、一緒に理解をして支持をしてもらいたいということを折に触れながらやっているわけでございます。  しかし、先ほどから申し上げているように、交渉は守る側でありますから、マーケットアクセスにつきまして、守る側でありますから、これだけ取ると、もう多勢に無勢というのは、多勢に無勢と言うと結論が見えちゃうということで、決してそうじゃなくて、数的には非常に少ないということであります。  だからこそ、アメリカの国内支持もおかしいじゃないかと。あるいは、ブラジルがパラ24というもので農業とNAMAとの関連性を言っている以上は、ブラジルが農業で野心の高い主張をするんであれば、NAMA、非農産品のグループに対してももっと先進国の、今度は我々は攻めの立場にこっちはなるわけでございますので、もっと工業品については市場開放せよというふうなことをやりながら、何次元、何次方程式かよく分かりませんけれども、いろんなことを言いながらやっていかなければならない。  そういう中で、昨年末に小泉イニシアチブというLDC向けの極めて包括的かつ斬新なパッケージを出したということはアフリカ・グループから大変評価をされているところでございまして、日本とアフリカとの対話というものもWTOにおいては非常に最近連携が密になってきて、連携といいましょうか、お互いの立場を理解するようになっておりまして、私がお話をすると日本の立場はよく分かりましたということでございますので、大詰めでございますけれども、精力的に日本の立場を大いに発信をし理解をしていただくように全力を挙げて努力をしていきたい。また、議員外交も大事でございますので、どうぞ委員の先生方にもよろしくお願いをいたします。
  27. 岩永浩美

    岩永浩美君 理事の特別な計らいで一日の日に改めてまたやっていいということですから、時間が来ましたので、もう一問だけお聞きしておきたいと思いますが。  WTO交渉、今いろいろ大臣から御説明がございました。日本国民並びに農業団体も、私自身も含めてですが、今回のWTO交渉の中で、守るべきは守り譲るべきは譲る、その守りは、端的に私自身は上限関税の死守、ミニマムアクセス米の枠の拡大が絶対ないようにということがやっぱり国民の願い、農家の願いだと私は思うんですね。それを絶対やっぱり守ってもらうということで臨んでいただいているとは思いますが、大変難しい局面もあるのかもしれません。私はそれは分かりません。  ただ、最後に重ねてお願いをしておきたいのは、その交渉の中で上限関税の死守とMA米の枠の拡大につながらない交渉を、是非大臣には一生懸命交渉にお骨折りをいただいて御帰国いただくことを心からお願いを申し上げて、私の質問を終わります。
  28. 岸信夫

    ○岸信夫君 自民党の岸信夫でございます。  まず初めに、中川農林水産大臣が二十六日、去る二十六日ですけれども、フランスの農事功労章、コマンドゥールを受章されました。WTO交渉での活躍などが評価されてのこのたびの御受章ということなんですけれども、この農事功労章の最上位の等級でありますこのコマンドゥール、これは日本人として初めての御受章と伺っております。大変お忙しい中で我が国の農林水産業のためにWTOの交渉の最前線で指揮を取っておられる大臣に対しまして、心より敬意を持ってこのたびの御受章をお祝い申し上げたいと思います。  WTO交渉について、我が国はフランスとも、先ほどのお話にもございましたとおり、連携をしっかり取っていただかなければいけないわけであります。フランス自体も、交渉という意味では非常にしたたかな面もあるんじゃないかと思いますけれども、今回の御受章を更にパワーアップしていただいて、頑張っていただきたいと思います。我々も応援していきたいというふうに思っています。  それでは、本件に入らせていただきたいと思います。  まず、品目横断的経営安定対策につきましてですけれども、WTO交渉との関係であります。先ほども一部、岩永委員からも御質問ございました。それとも絡んでくるかとは思います。  今回、対象農産物を限定して担い手施策を集中していくと。このことによりまして、コストの低減とかあるいは品質、生産性の向上、こういうことで強い農業経営を実現していく。それと同時に、実需者のニーズに対応して安定供給できる体制をつくっていく、この確立を図っていくと、こういうことだと思います。今後、いやが応でも我が国の農業は国際競争にさらされていくと。国際間の競争という厳しい環境の中にあるわけですけれども、それでも食料自給率向上という、これは大きな目標でございますけれども、これに向かって、この目標の達成に向けて取り組んでいかなければいけないわけであります。  先ほど大臣お話にもございました、今回のこの法改正は、次のWTOのためにやっているんではなくて、現行のWTOのルールの中での改正であると、こういうことでありましたけれども、そうはいいましても、世界の大きな流れというのがございますし、今のWTOの交渉の終着点というものも大変関心のあるものであると思います。そこにおきまして我が国の主張をしっかり通していくということが、ある意味では今回の法改正による農政改革というものがしっかり維持できるかどうかということにもつながってくるんではないかと、こういうふうに思います。  そういう意味では、WTOの交渉、大変重要な位置付けになるかというふうに思っておるわけでございますけれども、これから大詰めを迎える交渉に臨まれる大臣の決意を改めてお聞かせいただきたいと思います。
  29. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 二〇〇一年の十一月にスタートいたしまして、各国とも非常に熱心にやってまいりましたけれども、昨年の香港閣僚会合、これも遅れに遅れたわけでありますが、そこで決められた四月末のモダリティーの確立、これも延びてしまったわけであります。しかし、七月末、そしてまた十二月末の全体の合意という、野心といいましょうか、約束は維持されているわけでございまして、したがいまして、五月、六月と、正に今、現時点、ジュネーブで大変農業あるいはNAMA等を精力的に交渉をやっているわけでございます。  しかし、これはあくまでもジュネーブベースということで、大使あるいはまた事務方レベルの交渉でございまして、我々閣僚レベルで今年になってもう三回、四回、五回と会うたびに、最後は首都ベース、あるいは閣僚、政治ベースの決断が必要であると。今回も、先週お許しをいただきましてパリでの閣僚会合へ行ってまいりましたけれども、それが確認されて、六月中にモダリティーを出して、そして七月には譲許表等の提出を、作業を終わらせようということが確認されたわけでございます。  確かに、議論そのものはもうお互いに、どの国が何を取りたくて何を守りたいかというのはもう全部分かっているわけでありまして、ある意味ではがちっと膠着状態になっている。ある人に言わせると、三角形の三すくみになっていると。三すくみというのは、アメリカの農業国内支持とEUの農業のマーケットアクセスとブラジルのNAMAという三すくみだということでございます。日本はその中でマーケットアクセスというものがEUと同じような立場にあるわけでございます。細かいことは別にして、基本的にそういう立場でございます。  ですから、日本としては、先ほど岩永委員にも申し上げましたけれども、これは更なる貿易の伸展ということはコンセンサスでございますから、日本提案、G10提案も、関税削減率を四五%にしましょうという提案を出しているわけでございまして、しかしアメリカは九〇%だとか、我々から見ると誠に許すことのできないような提案をしているわけであります。重要品目についても、日本はぎりぎり絞って一五%だと言っていますけれども、アメリカは一%と。我々が試算して、アメリカが本当に一%でアメリカの農業団体収まるのかなと思うわけでありますけれども、これは正に今御指摘のように交渉ということになるわけでございますので、我々としては、その交渉にある意味では振り回されることなく、できれば振り回して、できるだけ、守る立場だからこそ相手に対して強く言っていかなければならない。  最近、私がブラジルやアメリカ等に言っているのは、こういう膠着状態になったときに、しかも、きちっとタイムリミットを守ろうよと、みんなで政治的な決断をしようよということであれば、これは普通は攻めている方、要求する方がまず一歩下りないと我々としても動くことができませんよと。どうして我々が先に動かなきゃいけないんですかということを強く言い続けているわけであります。  と同時に、先ほども申し上げたように、インドとか、あるいはインドネシアなんかもそうなんですし、アフリカ等の国々、もうLDCの国々は本当に気の毒でありまして、一日一ドル以下の国民の国家が一杯あって、しかも調べてみますと、その国の輸出品目の九九%はコーヒーだけとか、九〇%はコットンだけとか、九〇%は砂糖だけとか、そういう国に対してアメリカが補助金付きで砂糖を作ったり綿花を作っていると。こんなばかな話があるのかということも現実あるわけでございまして、ともすればアメリカとEUとブラジルだけのけんかのように見えますけれども、決してそうじゃないんだと、開発ラウンドなんだと、原点を忘れるなということを申し上げながら、日本としては正にそこが攻めるところだと私は思ってやっているわけでありまして、そういう攻めたり、あるいは多少譲るところは交渉ですから譲らなければいけないのかもしれませんけれども、守るところはきちっと守りながらやっていく。  そして、これができるのも、ひとえに当委員会始め国会、そしてまた何よりも国民世論ということになります。ウルグアイ・ラウンドの最大の反省点は、最後は一部の農業関係議員農業団体と農林省だけが孤立をして交渉を最後行ったということが反省でございましたので、現時点では国民後押し、当委員会始め国会の後押し、そして国民の総意でもって交渉ができているということは、私にとりましては大変有り難いことだなというふうに思っております。
  30. 岸信夫

    ○岸信夫君 ありがとうございました。是非交渉頑張っていただきたいというふうに思っております。  担い手集中の支援ということですけれども、これによって強い農業構造の構築につながる、これは実際事実であろうと、こういうふうに思います。ただ、こうした対象担い手対象にどうしてもならない農家も出てくるだろうということでありまして、結果として耕作面積が減少してトータルの農業生産力というものが低下につながることがないのだろうかということが一つ大きな懸念というふうになっているわけです。  近年、耕作放棄やあるいは農地の転用というものが増加をしておるわけです。平成十六年に農地面積四百七十一万ヘクタール、最近の耕作放棄地の趨勢ということを考えて、平成二十七年時点、十年たった時点で、耕作放棄二十六万ヘクタール、農地の転用十四万、こういうことで、合計四十万ヘクタールこのままでは減ってしまうだろうと、こういう見通しがございます。今回の施策によって耕作放棄の抑制効果が大体十九万ヘクタールぐらい働くだろうと、こういうふうな試算があるわけですけれども、本当にそのシナリオどおりに事が動くのだろうかというのが大きなところであります。  農地面積の減少というものが生産性の向上を上回ってしまう、結果として生産力、トータルの生産力が落ちて、いわゆる自給率向上という目標が更に難しくなってしまうのじゃないかというのも大きな懸念としてあるわけですけれども、この点についてちょっとお伺いしたいというふうに思います。
  31. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 耕作放棄地、更に自給率の問題についてのお尋ねでございますが、今回の品目横断的経営安定対策対象者につきましては、我が国農業の構造改革を加速化するという観点から、やる気能力のある担い手対象といたしております。  現在、農業従事者の減少、高齢化の進行などによりまして耕作放棄地の一層の増大が見込まれております中で、本対策の導入によりまして担い手による農地の有効利用が活発になると、そういうことがこの耕作放棄地の発生を防止する上で重要であると考えております。また、単独では本対策対象となりません小規模農家などにつきましても、集落営農経営に構成員として参画していただくことによりまして、結果として集落の中で農地の有効利用が図られまして、耕作放棄地の発生が防止されるものと考えております。  食料自給率につきましても、生産性の高い担い手生産の相当部分を占める強靱な農業構造の実現を図ることを通じまして、農作物の生産コストの低減や品質の向上が図られますとともに、消費者食品産業の需要に的確に対応した農作物を安定的に供給できる体制が確立されると、こういったことによりまして国内農産物の生産拡大し、自給率向上に資するものと考えているところでございます。
  32. 岸信夫

    ○岸信夫君 今度、対象農産物についてなんですけれども、今回の対象になっている農産物ですね、麦、米、大豆、てん菜、でん粉製造用のバレイショと、こういうことですけれども、それぞれ我が国の食料自給率向上という観点から、カロリーの主要な供給源としての品目だと思います。  そこにその他の農産物と、こういうふうに記されていると思いますけれども、これはどういったものを具体的に念頭に置いておられるのかということでございます。将来そういったものを更に追加をしていくとか、あるいは、その場合ですけれども、やはりカロリーベース食料自給率向上という観点から選定をしていくのかというようなことがあると思います。  そのカロリーという意味でいいますと、飼料作物ですね、飼料穀物、あるいはそれ以外の作物についてですけれども、今、自給率二五%程度じゃないかと思いますが、この主要な、我々にとって主要なカロリー、重要なカロリー源となります国内での食肉生産については、これは重要な位置付けと、こういうことになってくるわけでありますけれども、そう考えますと、飼料用の農作物というのも対象ということにも将来的には考えられるのか、この点について将来的な展望も含めてお伺いしたいと思います。
  33. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 品目横断的経営安定対策対象品目についてのお尋ねでございますが、その対象品目につきましては、法律上、一つは、国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要であること、二つ目には、他の農産物と組み合わせた生産が広く行われていること、我が国土地利用農業の状況を踏まえましてこの二つの要件を課してございます。  こういった熱量供給量に占める割合ですとか国内生産の状況等を踏まえまして、米、麦、大豆、てん菜及びでん原、でん粉原料用バレイショの五品目を本対策対象農産物として政令で規定することといたしておりまして、この五品目以外の農産物については当面予定はいたしておりません。  将来そういうことがあるのかということでございますが、その場合におきましても、あくまで法律趣旨でございます、やはり国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要であるものというものに該当する農作物が出てきた時点で政令で追加されるというふうに考えております。  では、飼料作物についてでございますが、飼料作物は当然家畜のえさとして摂取されるわけでございまして、最終的には畜産物の形で国民に対して供給される中間生産物である、国民に対して直接熱量を供給しているわけでもないということで、今回の対象農産物としては考えておりません。  しかしながら、もとより飼料作物の生産振興を図ることはこれは大変重要な課題でございまして、農林水産省としても、この飼料作物、特に粗飼料の一〇〇%自給を目指すというようなスローガンも掲げて今やっておるわけでございますから、これは本法案とは別に、今後とも稲発酵粗飼料の生産拡大でありますとか国産稲わらの飼料利用の拡大など、飼料作物対策として各般の支援策を積極的に講じていくというふうに考えております。
  34. 岸信夫

    ○岸信夫君 今のカロリーベースでの自給率の計算根拠の中に、やはり家畜に対する飼料自体が輸入で賄われていると、これが計算根拠として結果的に自給率、数字の上で引き下げている、これも事実だと思います。そういう意味でも、何を取って自給率向上というかという問題はあるにしても、カロリーベースで考えますと、この飼料作物についてもやはり、局長おっしゃられたとおり、大変重要な我々にとっての品目であると思いますので、今回の法律に直接関係するかどうかは別として、やはり国内での供給の向上、これについては積極的に対応していただきたいというふうに思っています。  次に参りたいと思います。  今回の直接支払に関してなんですけれども、先日、行政改革関連の法律が成立したわけであります。小さな政府の実現、こういった取組がスタートしまして、総人件費の五%以上の削減あるいは特別会計の改革といったものをこれから推進をしていくと、こういうことでありますが、農林水産省においても、効率化を進めていく、積極的に取り組んでいっていただきたいと、こういうふうに思っております。  一方で、今後我が国の新しい農業の在り方としての攻めの農政を実現していくためには、行政が担っていく役割というものも、これはこれで重要であろうと、こういうふうに思っておるわけです。  今回の改正で、農業者に対する直接支払、これのいわゆる事務的な部分、負荷といいますか、事務量、これも相当に増えてくるんじゃないかなというふうに思っております。当然、更なるIT化の推進等も含めて、この事務の効率化というものは図っていく必要というのはあると思うんですけれども、小さくても強靱なサポートの部分を担っていただかなければいけないわけであります。正に効率的な行政ということになろうかと思いますけれども、今回の改正に当たりまして、農水省内での今後の体制づくり、特に事務的な面について所見をお伺いしたいと思います。
  35. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 今回の対策におきましては、基本的に、交付金交付を受けようとする農業者が国に交付の申請を行いまして、国が農業者に対し直接交付金交付を行うというシステムを取ろうといたしております。これは、本対策食料の安定供給という国の責務を果たす観点などから、国が中心となって行うことが適当であるとの考えによるものでございますが、一方、今、委員御指摘のように、本対策の効率的かつ円滑な実施を図るためには、やはりこの事務処理の効率化ということが最大の問題でございます。  現在、申請内容を効率的に審査、管理するための電算処理システムの整備など、農林水産省内の体制整備を積極的、効率的なものにするべく検討を進めておりまして、この対策にかかわります農家の方々にこの事務処理によりまして御迷惑をお掛けすることのないよう、迅速なサービスが講じられますよう、その事務処理体制については徹底した合理化と迅速化を図っていきたいと考えております。
  36. 岸信夫

    ○岸信夫君 今回、その直接支払なんですけれども、それぞれ農業者の皆さんの生活というものがあるわけですから、この支払のタイミング等、例えばこれ、もう期末に一括してぽんと払うというんじゃなくて、期中にでも概算の支払とか、そういったことも考えていただかなければいけないんじゃないかというふうに思いますけど、そうしますと、当然ながら、そういったことの事務量というものも当然増えてくるんじゃないかなというふうに思います。お金が絡むわけですから、当然間違いがあってもいけないわけですけれども、ただ、行政の本当の仕事、やはりサービスを受ける農業従事者の皆さん、これに対するサポートをしっかりやっていただかなければいけないというふうに思っています。  一方で、人件費を減らさなければいけない、一方でそういった面での特に農業者の方々とのインターフェースといいますか、直接対応してもらう部分、窓口の部分も充実していただかなければいけないというふうになるわけです。  特に具体的にその辺り、何かございましたら、いただきたいと思います。
  37. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 委員御指摘のとおり、農林水産省全体といたしましては、旧食糧あるいは統計を始め、かなり思い切った人員削減を図るということになっておりますが、この直接支払の事務につきましては、やはり農政事務所の窓口で、やっぱり親切、丁寧な応対ということがまず第一でございますので、四月一日に農政事務所にこの担当をする者をしっかり配備をいたしまして、今東京にそれぞれ呼びまして合宿して研修をさせているというようなこともやっております。  また、対象要件の確認や対象品目生産量等の確定という、かなり難しい面倒な作業が必要でございますけれども、あくまでも担い手の営農に支障が生じることがないよう、できる限り早期に支払うということで努めてまいりたいと考えております。
  38. 岸信夫

    ○岸信夫君 本当に新しい制度が導入されるということで、農業者の皆様も非常に戸惑いも多いんじゃないかなと、疑問点も大変多い中でのこういう審議になっているわけでございますけれども、そういった不安をこれからしっかり解消していただかなければいけないと思いますし、そうしたところでもそういうそれぞれの現場での対応というのが大変重要になってくるんじゃないかなというふうに思いますんで、本当に、おっしゃられたとおり、親切、丁寧にしっかりとやっていただきたいというふうに思っております。  次に、今回の三法のうちの食糧法の改正の部分に入っていきたいと思います。  今回の改正ですけれども、四点ございますね。麦の政府無制限買入れの制度の廃止と、それから麦の需給見通しの策定、そして標準売渡価格制度の廃止、最後にSBS方式での輸入と、この四点であります。  まず無制限買入れのことでありますけれども、これ、近年の買入れ実績を見ますと、国内産麦の生産が増えている中で、国としての買入れ、これほとんどゼロと、こういうふうになって、民間流通がしっかりと進んでおるんだろうと、こういうふうに思います。そういう意味では、無制限買入れの廃止自体は、現実的には大きな問題にはすぐにはなってこないんだろうというふうには思います。  ただ、それでもこの生産自体は天候に左右される部分というのも大変多いんじゃないかなというふうに思います。結果的に好天に恵まれて大増産と、こういうふうになっても、すべてが民間流通で消化されるような仕組みが今でき上がっているというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  39. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) まず、麦全体につきましては、これまでも国内産麦では量的あるいは質的に満たせない需要分につきまして、いわゆる外国産麦を輸入するとの考え方の下で、国家貿易によって国内需要の約九割を外国産麦で賄っているところでございます。  今回の法改正後も、麦の食生活上あるいは農業上の位置付けは変わらないということから、国家貿易について従来同様の考え方で運用していくこととしております。  具体的には、本改正では、政府が内外麦を包括した麦の全体需給についての見通しを策定することとしておりまして、需給見通しには需要量とこれに対応する国内生産量及び輸入数量を示すこととしておりまして、今後、政府はこの需給見通しに即して輸入を行うこととしております。  政府といたしましては、このような形で国家貿易の運用を図る一方で、引き続き、先ほど委員御指摘のとおり、現在、播種前契約によりまして民間流通、全量民間流通になったわけでございますけれども、その播種前契約の徹底を図りまして、生産者が需要に応じた生産をより計画的に行えるようにすることを通じまして、いわゆる行き場のない麦が発生しないよう対応していく考えでございます。  それから、その上で、万が一にも大豊作となって、播種前契約を大幅に超える麦が発生した場合につきましても、民間流通の中で適切に引き取られるよう対処していく考えでございます。
  40. 岸信夫

    ○岸信夫君 その部分は、もちろんこれは民間ですから、お互いの合意ということだと思います。その部分に行政が余り入っていかないと、こういうことで了解してよろしいんでしょうか。──分かりました。  今、ちょっとお話がございましたけれども、その麦の需給見通しの策定ということであります。国内産麦の生産又は民間流通の確保を図るとともに、外国産麦の安定供給を実施する、このために、客観的なデータに基づき麦の需給見通しを策定すると、こういうふうになっておると思います。  具体的に、この客観的なデータというのは、過去の統計ということになるかとは思いますけれども、どのような実際の手続を経て策定をしていくんでしょうか。また、この策定を民間流通のいわゆる円滑化にどのように結び付けていくのかについてお伺いしたいと思います。
  41. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 正に委員御指摘のとおり、まず麦の需給見通しの策定の目的でございますけれども、一つは、国家貿易の実施主体たる政府自身が輸入方針を明確に示すと。一方で、生産者と実需者が共通の需給見通しの下で取引を行える環境を整備するということで、今回、食糧法に新たに規定を設け策定することとしたものでございます。  具体的には、麦の生産をめぐる現状や需要動向などにつきまして専門家を含む関係者の意見を広く聴取する必要があることから、食料農業農村政策審議会の意見を聴くことになっておりまして、透明性も十分に確保していく考えでございます。  こういったことによりまして、国家貿易あるいは民間流通について、生産者、実需者が共通の需給見通しの下で安定的に民間流通がなされるものというふうに考えております。
  42. 岸信夫

    ○岸信夫君 麦については先ほどからも出ていますけれども、約九割が輸入の麦、こういうことでありまして、そういう意味でも国家貿易がずっと維持されてきたということであります。  確かに、我が国にとっても大変重要な食の原料になる麦ですから、その九割を輸入に頼らざるを得ない現状においては国家貿易の維持というものも大変重要なんだろうというふうに思っております。この位置付け自体は変わるものではないというふうに思うわけでありますけれども、特にこの需給見通しの策定がなされると、それによって国家貿易の運用の仕方が今後変わってくるとか、そういった面で影響してくるということはないんでしょうか。
  43. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 先ほども申し上げましたように、輸入麦についての運用の考え方についてはこれまでどおりということでございます。  そうした中で、今回の改正で、政府がいわゆる内外麦を包括した麦の全体需給について見通しを作成するということにしておりまして、今後は政府はこの需給見通しに即して輸入を行うこととしております。  このような形で国家貿易の運用を図ることで、従来にも増して、生産者と実需者が共通の需給見通しの下で取引を行える環境が整うということでありまして、民間流通の安定化を図りつつ、外国産麦の安定供給の確保が実現されるものというふうに考えております。
  44. 岸信夫

    ○岸信夫君 それでは、麦の備蓄制度についてなんですけれども、不測の事態、様々な事態があると思いますけれども、こういったことに対処するために備蓄を今二・三か月に圧縮するように見直しが行われたところであります。  当然、備蓄にかかわる金利、倉敷の削減努力、こういったものは当然やっていただかなければいけないわけですからあれなんですけれども、一方で主要な食料原料としての麦の安定的な確保という観点から、本当にこの二・三か月というのが必要十分なレベルと言えるのかどうかと、こういうことだと思います。  過去においても、様々な突発的な事故、アメリカで火山が爆発して川がせき止められてしまったとか、そういったことも過去あったわけですけれども、予期せぬ事態で我が国への輸入が突然ストップしてしまうということも十分可能性としてはある、そういうときにも備えを取っておかなければいけないと、こういうことだと思います。  特に、そこまでの事態に至らなくとも、たくさんの輸入港があるわけです。また、銘柄ごとでの管理ということもあるわけですけれども、そういったところのそれぞれの在庫ということを考えますと、これまででも非常に厳しい中でしていかなければいけない状況というのはあったと思うんですけれども、さらに今回、麦の買入れのSBS化が進んでいくと。そうしますと、当然そのSBSの麦自体はもう実需者とのひも付けと、こういうことになって輸入されるわけですけれども、そうした中で本当にこの二・三か月のレベルというのが不測の事態への対処として十分、必要十分なレベルなんでしょうか。
  45. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 麦の備蓄について二点の御質問一つは、備蓄総量として、かつて二・六か月だったのが二・三か月になったということ、それから、今回新たに導入しますSBS方式の導入によって備蓄がどうなるかという二点の御質問かと思います。  まず、最初の備蓄総量につきまして、これは委員御指摘のとおり、かつて海外での港湾ストライキによる供給トラブル等の不測の事態に備えるために、従来、国全体で外国産麦需要量の約二・六か月分を保有してきたところでございます。  こうした中で、内外麦を通じた新たな麦政策を構築するため、平成十六年、食料農業農村政策審議会の下に設置された麦政策検討小委員会における議論を踏まえまして、一つは、輸出エレベーターの新設等により船積み能力向上したことから、特定の一地域が何らかの支障を、輸出の支障を生じたとしても、他の輸出国からの代替輸入に要する期間が大体〇・三か月程度圧縮された、短縮されたというようなこと。それから、過去最大の備蓄の取崩し、これは平成五年から六年にかけてのカナダの冬季の小麦船積み遅延でございましたけれども、このときが備蓄を一・八か月程度取り崩したというようなことから、十七年度末までに〇・三か月を分圧縮して現在約二・三か月分を国全体で保有しているところでございます。  なお、この水準につきましては、仮に従来の輸出国からの輸入が途絶した場合において、他の輸入国からの代替輸入するまでに必要な期間を勘案して国全体における必要量を設定しているところでございます。  二点目のSBS化との問題でございます。  SBS化が進んだ場合に、結果的に麦の安定供給に支障が生ずる可能性があるのではないかという御指摘でございますけれども、SBSの導入に当たりまして、私ども当初から全銘柄を対象にするということではなくて、初年度におきましては銘柄を限定して試験的に実施することといたしております。  また、導入後の実際にSBS方式を運用する中で、輸入業者や実需者などの関係者の意見を聴取しながら対象銘柄の拡大などについて段階的に検討を進めることとしていることから、今後とも麦の安定供給あるいは備蓄に支障が生じないよう万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  46. 岸信夫

    ○岸信夫君 そのSBS化、全部いきなりやるわけではないと、一部分についてスタートをするということですから、その様子を見ながらと、こういうことになっていくんだろうと思います。  ただ、将来的にこのSBSにかなりの部分が移行していく、こうしたときに、やはり備蓄との兼ね合いがどうなっていくのか、これについてはやはり将来的な問題として出てくるんじゃないかというふうに思っています。備蓄自体を民間で賄っていくのか、民間保有の備蓄という形で賄っていくのか、あるいは国としてやはり備蓄は備蓄として持っていかなければいけないのか、こういったところというのも今後大きな課題になってくるんじゃないかというふうにも思っています。この辺りも議論していかなければいけないんだと思います。  SBSについては、ちょっと後ほどもう一度お尋ねしたいところもあります。  もう一つ、標準売渡価格制度の廃止についてであります。特に、輸入麦、輸入価格の変動を反映した価格で売り渡すという仕組みにしていくと、こういうわけであります。  これまで、標準売渡価格が決まって、一年間その値段、価格で売渡しが行われてきた、こういうわけでございます。これは、どんなに国際価格が、国際相場が変動しようと、製粉会社にとっては一定のコストでこの小麦を購入することができたわけですね。その分、価格変動のリスクを農水省の方で取っていただいてきたわけであります。  今回の制度、売渡価格を買入れ価格の変動にリンクさせていくと、こういうことであると思います。そうすると、今後、その価格変動リスク自体は実需者であります製粉会社が直接的には負担することになってくると、こういうことになるんでしょうか。  なかなか、製粉会社の製品、すなわち小麦粉、あるいはその先のパン、めん、こういったことを考えますと、原料価格の変化というのが我が国ではなかなか直接価格転嫁できない、できるような仕組みにはなってないんじゃないかというふうにも思うわけですけれども、この価格、相場変動のリスクをより実需者に近いところの方々が取っていくということについて、どのようにお考えになるでしょうか。
  47. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 麦の売り方でございますけれども、委員御指摘のとおり、現行標準売渡価格制度の下におきましては、政府が保有する外国産麦の売渡予定価格につきましては政府が年一回定める標準売渡価格を基準に定めることとされてきたところでございます。  一方、標準売渡価格制度の廃止後の外国産麦の政府売渡予定価格につきましては、委員御指摘のとおり、国際相場の変動を反映した買入れ価格一定のマークアップを上乗せしたものを基準に定めることといたしております。  この結果、国際相場の変動を反映した価格で製粉企業へ売り渡す仕組みに移行することにより、従来と比較しますと、より短期間に価格変動の影響が製粉企業に及ぶこととなるということでございます。  ただし、この場合におきまして、具体的に、価格の改定期間をどれぐらいにするか、あるいはマークアップの水準等、制度の具体的な運用につきましては、実需者の経営にも密接な関係がございます。こうしたことから、制度の運用が円滑に進められるように、現在、実需者などの関係者の意見も踏まえつつ、具体策について慎重に検討しているところでございます。
  48. 岸信夫

    ○岸信夫君 製造業者にとってコストの変動というのは非常に大きな、頭の悩ましいところだと思います。ある程度長期間にわたってコストが一定であると、これが分かっている場合、これはやり方がある。あるいは逆に、国際相場に直接的に変動していくと、この場合は例えば先物相場にヘッジをしていく、こういういろいろな手だてがあるんじゃないかと思うんですけれども、おっしゃられたとおり、当初は、今まで一年間決まっていたものを、ある程度少ない、例えば半年に一回とかあるいは三か月に一回とか、そういう形で恐らく進めていくと、こういうことだろうと思うんですけれども、中途半端な部分というのが一番逆に言いますとやりにくくなってくるんじゃないかなと、こういうふうにも思うわけです。  非常に、当然ながら、民間の企業ですから、相場を敏感に感じ取ってもらわなければいけない。また一方で、SBSがスタートするということですから、将来に備えても、そういう感覚というものも備えてもらわなければいけないわけです。特に、ほかの国の製粉会社というのは、当然ながらそういうものを既に自分たちでマネージをしているわけですから、我が国の製粉企業についてもそういったものが十分自分の会社でマネージできるような体質に変えていくということは、これは必要なことなんだろうというふうに思いますんで、その流れという自体は否定すべきものではないというふうに思います。  ただ、今申し上げましたとおり、移行の期間ですね、かえって実需が運用しにくくなることのないように、しっかりとその辺りの制度づくりをやっていただかねばいけないと。あるいは次の価格を通知してから実際にその麦が届く、あるいは買い入れる、そのタイミングですね、このギャップをどういうふうにつくっていくか、こういったところもこれからの制度づくりでは非常に重要になってくるんじゃないかなというふうにも思います。  一方で、国際相場の変動によってその価格が反映されるわけですから、製粉会社の買い付けの動向というものにもこれは影響してくる可能性あるんではないかなと。原産国ごと、あるいは銘柄ごとに、買い付け量がいわゆる価格のスプレッドによって変わってくる可能性というのは十分考えられるわけです。例えば、アメリカのDNS、あるいはハイプロの小麦に対して今までカナダの小麦は高かったと、だけれども品質がいいと、そこの見合いをどうするかなと、こう考えてきた部分がぐっと迫ってくる、あるいはどんと開いてくる。そうしたときに、買い付けの動向というのは当然変わってくるんじゃないかなというふうにも思うわけです。  今まである程度、もちろん生産量にもよるわけですけれども、年間この銘柄はどれぐらいと、こういうことを計画を立てて購入、買い付けをしていたと思うんですけれども、今後、よりそういったものに対してフレキシブルに対応しなきゃいけないと思うんですが、こういった実需者の要望に応じた輸入というものが可能になってくるのかどうかについて伺いたいと思います。
  49. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 正に委員御指摘方向に運用していきたいというふうに考えております。  これまでも、実需者から要望のある銘柄、数量、輸入時期等を聞き取りつつ、相当程度、実需者の需要に応じた輸入を行ってきたというふうに考えておりますけれども、今後、価格変動制の導入によりまして、それぞれの銘柄の価格が国際相場を反映し変動することになりますけれども、これまで以上に実需者の要望に的確に応じた輸入を行っていく所存でございます。
  50. 岸信夫

    ○岸信夫君 分かりました。  続きまして、SBS、今度導入されることになりますSBSの方式でのことでございますけれども、年間約五百万トン以上の小麦が今輸入をされていると。この輸入のされております小麦にどのようにSBSを導入していくかということが非常に大きな関心事になってくるんじゃないかなと思います。  当初、先ほどおっしゃられたとおり、全部に広げるんではなくて、当初は部分的な、限られた銘柄に導入していくと、こういうことだろうと思います。将来これを広げていくと、こういうことになっていくんだろうというふうに思いますけれども、その展望の見通しといいますかスケジュールといいますか、そういったものがございましたら教えていただきたいと思います。
  51. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) まず、SBSの導入に当たりまして、同一銘柄で、いわゆるSBS、それと一般国家貿易とを併存させるということを考えました場合には、例えばSBS輸入分の到着時期が予定より若干前後する、そういった場合に、その調整を一般国家貿易分で行うというようなこと等も考えられて、その場合には一般国家貿易の需給操作に大きな影響が生じるという可能性もあるということでございまして、当初、SBS輸入の導入に当たりましては、段階的に対象銘柄を追加していくことが適切であるということで考えております。  具体的に、初年度におきましては、一つは、用途が特定されており他の銘柄との代替関係が比較的少ないこと、二つ目には、原料調達面での実需者の経営負担を考慮して年間の需要量が比較的小規模であること、三つ目といたしましては、共同買受けがしやすいよう荷揚げ港が少ないこと、こういった条件を満たすような対象銘柄とすることで検討しているところでございます。  具体的な銘柄について今念頭にありますのは、これまで一般国家貿易で輸入されてきましたデュラム小麦、これが年間需要量約二十万トンでございます。それからプライムハード小麦、年間需要量約二十四万トン、その全量につきましてSBS輸入の対象とすることを考えております。また、これ以外にも、これまで民間貿易によって輸入されてきましたフランス産小麦、パン用が主でございますけれども、十七年度で輸入実績約二千トンがございます。そういった実需者ニーズのあるいわゆる特殊な小麦、特殊な麦につきましても、SBS輸入の対象銘柄に加えることを検討しているところでございます。  一方で、対象銘柄の拡大につきましては、実際にSBS輸入を運用する中で、関係者の意見を聴取しながら検討を進めることとしております。
  52. 岸信夫

    ○岸信夫君 ありがとうございます。  デュラムあるいはプライムハードという限られたところからのスタートということですから、これはおっしゃられたとおり、使用者もある程度限定されてくると。その中で、積み合わせあるいは共同配船と、こういうことが比較的しやすいところからのスタートということだと思います。  ただ、将来的に、より大きな、大量に買い付けておる銘柄についてもこの買い付けが進んでいくと、こういうことになっていくんだろうというふうに思います。そのときに、今おっしゃられたように、一つの銘柄で、SBSでの輸入、それから一般の国家貿易としての輸入と、この両方が入ってくるということも移行期においてはあり得ると、こういうことだと思います。  そうしますと、SBSは、そのときのマーケットを反映した価格で実需者にそのままつながっていくわけですね、マークアップというものがあるにしても。一方で、さっきおっしゃられた部分、すなわちこれまでのような形での輸入については、三か月程度のスパンで価格変動すると。そうしますと、そのコストというのには差が出てくる可能性というのもある。SBSの方がはるかに安い場合、あるいはSBSで買うよりはこっちから買った方がいいと、国家貿易、国で一般に輸入した分から買った方がいいと。かなりそのときの相場状況によって実需者の動向というのは左右されるということにもなるんじゃないかなというふうにも思うわけです。そういった意味でも、さっき申しました、余り価格の変動と実際の相場の変動とのギャップというのが大きくならない方がいいんじゃないかなというふうにも思っておるわけです。  当面、国家貿易自体は堅持すると、こういうことだと思いますけれども、SBS輸入というのは限りなく民間貿易に近い形になってくるわけですね。それが量的に増えてくる。将来的に全量になるのかどうか、そこまでは分かりませんけれども、いわゆるSBSの次の段階として、もう全くそういったところは外して民間輸入に移行してしまうと、こういったことを将来念頭に置いておられてのお考えなんでしょうか。
  53. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 外国産麦の輸入につきましては、取引相手国であります豪州、カナダにつきましては、いわゆる輸出国家貿易ということでやっておりますし、アメリカについてはいわゆる穀物メジャーによる大規模輸出を行っておるということでございまして、この三か国との輸出入ということになりますと、貿易交渉におきまして相手方が一本になっておるということから、有効なバーゲニングパワーを確保する観点からは、やはり実需者の幅広いニーズがある基幹的な銘柄については引き続き国が主体となる一般国家貿易で輸入することが取引量や価格を安定させるためにも基本となるというふうに考えております。このため、現時点では、SBS輸入を実需者の幅広いニーズがある基幹的な銘柄にまで単純に拡大することは、量的あるいは価格的な面における安定化を図りづらくさせる可能性を排除できないところでございます。  したがいまして、一般国家貿易とSBS輸入の両者を併せて初めて実需者のニーズにきめ細かく対応できる外国産麦の輸入が可能となるものでございます。現時点では全量をSBS輸入に移行させることは想定しておりません。
  54. 岸信夫

    ○岸信夫君 ありがとうございます。  先ほども御答弁にありましたとおり、SBS輸入についてかなり難しい、実務的に難しい面、すなわち港の配船とかあるいは積み合わせの問題とか、そういったことが出てくるということから限られたところに今絞っているということだと思います。  今回の制度変更の一つの大きな目的なんじゃないかなと思うところは、やはり製粉企業の体質強化というところもあるんだと思います。今、約百社ぐらい製粉会社あるんだと思います。このSBS導入当初のデュラムあるいはプライムハードというものに限ったものであればあれですけれども、もう少し広げてきたときに、それが実際に自分自身で買える会社と、どこかに頼らなければいけない会社というのは当然出てくると。結果としてこのSBSが拡大していくと製粉会社の統合というものも加速していくんじゃないかと、こういうふうにも思うわけです。  元々、いわゆる大手の四社と残りの九十社以上の会社、これは格段の体力格差というものが、規模も全然違いますし、そうした体力の格差があるわけですね。これまで、逆に一般の農水省の輸入によるところでは一定の、どの会社も基本的に一定のコストで輸入できていたものが、これからSBSという形になるとそれぞれのロケーションあるいはボリュームといったものに応じてコストに差が出てしまうということも当然出てくるわけですね。当然、本船単位で、大きな船で持ってきた方が安いわけですから、大量に買い付けのできる大手に乗っかると、こういったところもかなり増えるんじゃないかなと思います。あるいは、ローカルの港にある会社、あるいは内陸にある会社、いろいろあると思うんですけれども、そういったところは輸入国から更に回送を掛けていくと、そういったことで更にコストアップにつながってしまう、こう思うわけです。  そうしますと、特に小手、まあ中小、小手といいますよりも中小かも、中規模かもしれませんけれども、こういったところの廃業なり吸収なり、あるいは大手への系列化と、こういったことも余儀なくされるんではないか、こういうふうに思うわけです。そういったことで中小に対して非常に厳しい状況になってくるんじゃないかと思います。この点についてちょっとお伺いしたいと思います。
  55. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 今回のSBS方式の導入につきましては、確かに、原料調達面も含めたコストダウンでございますとか、多様な商品開発を促進するということで国内産麦の持続的な生産に不可欠な麦加工産業の競争力の強化を図ること、そういったことを目的としているところでございまして、製粉企業の規模による対応力の差が拡大すれば業界の再編が進むことも考えられます。  一方で、御指摘の中小製粉企業につきましては、やはり地域におけます国内産麦の安定的な需要者として重要な役割を果たしていると、そういう面も我々持たれているということから、食料産業クラスター推進事業などを通じまして中小製粉企業などによる国内産小麦を原料とする新商品開発などを支援する施策を講じているところでございます。  今後とも、こうした施策を通じて、中小製粉企業を含めた食品製造業者と生産地の連携を強化して国内産麦を利用した高付加価値商品の開発を促進するなど、中小製粉企業の自主的に行う経営体質の強化を図る取組を促進してまいります。
  56. 岸信夫

    ○岸信夫君 製粉企業の体質強化、これは大変重要なことだと思います。ただ、こうした今回の施策が余り大手、結果的に大手優遇という形になって、より寡占化が進んでしまうような事態だけは避けていただかなければいけないと思います。  それぞれ、大手の目指す道、あるいはそれ以下の目指す道というのが違うかもしれません。中小はそれぞれ、製品にしても特徴のある製品を作っていくとか、そうした独自の生きる道というのもあるんだと思います。そういった面を是非支援していただきたいというふうに思っております。  ちょっと、全体的な小麦の貿易についてお伺いしたいところがございます。世界の穀物の需給を考えますと、長年にわたりましてどちらかというと供給が需要を上回ってくると、こういう状況が続いてきたわけです。その中で、我が国は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、この三か国からそれぞれ、それぞれの国での最高の品質の小麦、品質の縛りを付けて買うことが、必要なだけ買うことができたということであります。  ただ、今後の需給状況等を考えますといろいろな要素が出てくるんじゃないかな。中国において人口が更に大きく膨らんでくる、あるいは、人口という意味ではインドもそうだと思います。これまで、例えば中国は、食料は自給できていたというところが、特に大豆なんかの油糧では今後大量に輸入していくと、今、世界の貿易の大豆の五割ぐらいになっているんだと思いますけれども、こうした状況が小麦においても出てくるのかな。小麦も世界の生産量、生産力といいますか、そういったものを考えると、もうある意味、ピークに近づいているんじゃないかなというふうにも思うわけです。ほぼ約六億トンぐらいになるんじゃないかなというふうに思いますけれども、今後、人口増によって全体的な穀物の需要が増えてくる、小麦についても同様の動きが出てくる、そうした中で考えますと、我が国は本当に大丈夫なのかなということであります。  これまで、長い間、輸出国との間、特にオーストラリア、カナダといった国については、我が国は協定を結んでまいりました。最近はこれは結んでいないと思いますけれども、長いスパンで考えますと、例えば過去、アメリカが穀物をいわゆる戦略物資としていろいろ政治的にも使ってきたという歴史はあるわけでありまして、そういった時代がまた来ないとも限らないわけです。いかなる環境においても我が国が必要とする食料を確保していく、これが一つ国の役割、大きな役割一つだというふうにも思っております。そういう意味で、外交という意味でも大変重要、食料の確保というのは非常に重要な位置付けになってくるんじゃないかというふうに思うわけです。  今回の改正がそういった不安定な要因とならないように様々なケースを想定しておかなければいけないというふうにも思っておるわけですけれども、この食料確保、将来において我が国が安定して食料を確保できる、していくと、こういうことに関して大臣のお考えを、所見をいただきたいと思います。
  57. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 岸委員御指摘のとおり、日本国内生産基本としてと、もう先ほどから申し上げておりますが、全体の国内自給率、特にこの麦の場合には自給率が一〇%前後ということでございます。そしてまた、米と並んでといいましょうか、米に次いでといいましょうか、極めて大事な基幹穀物であるわけでございます。  そういう中で、今後の見通しとしては、御指摘のように、生産がそんなに飛躍的に増えるとは思わない、世界人口がこれからどんどん増えていく、そしてまた飢餓人口も他方大勢いるわけでございますが、そういう中で、日本としては安定的に国内生産、そしてまた輸入をしていかなければならないわけでございます。  中国については、私の手元のデータによりますと、需要が飛躍的に伸びるというよりも、生産がむしろ頭打ちというか微減になって、そして需要においては高品質、今御指摘のような、日本が求めているような小麦にどんどんどんどん変わっていくのではないかというふうに考えております。したがいまして、日本にとっても、中国の動向というのはやはり注視しなければいけないと思います。したがいまして、日本としては、安定的に外国から確保するためには、アメリカ、豪州、カナダといったところとのある意味では信頼関係というものは大事だろうと思います。  昔、小麦が非常にストップした経験で、安倍・バッツ協定というもので安定的に供給するような協定を結んだことによって日本の安定供給が確保されたという過去の例もあるわけでございますので、これからも、自由な部分は自由にしながら、しかし基本的には国家貿易でございますので、こういったものについては安定的に、国内生産の増強と同時に安定的な輸入を確保する努力を国としてもしていく必要があるというふうに考えております。
  58. 岸信夫

    ○岸信夫君 ありがとうございました。
  59. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  60. 岩城光英

    委員長岩城光英君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案砂糖価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案主要食糧需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  61. 郡司彰

    ○郡司彰君 民主党・新緑風会の郡司でございます。  今日から三法の審議が始まるということでございますので、大変重要な法案だというような話を常々聞かされておりますけれども、まず最初に、この担い手経営安定新法、大臣のお考えの中では戦後の農政の中でランキングを付けると大体何位ぐらいに位置する法案なのかということについて、お聞かせをいただければと思っています。
  62. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 思わずはっとするような質問でございますが、戦後でいいますと、まず戦争直後に制定された農地法とか農協法とか、これは当時としての極めて大事な法律だったと思います。それから、昭和三十六年の農業基本法、これも午前中質疑がございましたように、都市農村格差是正ということで大事だったと思います。それから、平成十一年の食料農業農村基本法、これは正に需要者と一緒にやっていこうということ、あるいは所得政策への転換、あるいは自給率目標の設定等、これまた下がってきた自給率を何としても回復しようということで大きな法律であったと思います。  そういう意味で、基本計画を見直したという前提でこの法律があるということでございますけれども、これが二番、三番というような決して低いものではない。時代時代、それぞれ要求されている課題があるわけでございまして、現在我々が要求されている課題を解決するという意味では一番の法律だというふうに思っております。
  63. 郡司彰

    ○郡司彰君 戦後、度々農政改革というものが行われてきたわけでありまして、今、大臣がおっしゃいましたほかにも、農地改革ですね、いわゆる農地解放など、GHQの時代に行われたこともあり得るわけでございまして、私の思いからすると、一九五五年にガットに加盟をし、六〇年に安保条約を結んで百二十一の自由化を行って、翌年六一年には基本法を作り、それから三十八年ほどたって新しい基本法に移る間にもUR対策でありますとかいろんなことがあって、私も今の段階で言えばもちろんこれ一番大事な法案になってくるわけでありますけれども、そういう意味では、戦後の中を比べても、GHQを除けば、一、二、三位、同等の一位ぐらいにはまず入ってくるだろう、大変に大転換であるというふうに認識をしております。  この農政の大転換とも言われます、それからさきに、昨年の秋ですか、でき上がりました大綱等によりますれば、根本的な見直しなどと、そういうような表現もございますけれども、だとすると、その農政の大転換と言われるそのゆえんはどのようなところから来ているのか、また今回の中でどのような形でそれが示されているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  64. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、郡司委員が御指摘のように、農政の大転換というふうに我々も申し上げているところでございます。何が大転換かといいますと、今、私も、郡司委員もおっしゃられたように、時代時代で大転換があって、大転換は一回だけで済むものではない、時代とともにやっぱり転換すべきときは大転換すべきだと私は思っております。  今回の大転換の一番のポイントというのは、やはり経営感覚を持って、やる気能力のある人たち施策を当てて、そして文字どおり国民あるいは実需者が求むものをプロとして生産をしていくというところを後押しをさせていただくというところが私は一番のポイントだというふうに考えております。
  65. 郡司彰

    ○郡司彰君 転換という言葉を辞書で調べますと、倒れるような病気の問題もありますけれども、方針が変わるんだと、こういうようなことが一般的ですね。その方針が変わるんだということのほかに、百八十度変わるんだというような表記をしている辞典等もございます。そういう意味からいうと、今、大臣がおっしゃったようなところ、大綱等の文書を見れば、価格政策から所得政策に変わるんだとか、あるいは全農家から担い手に絞り込むんだとか、あるいはまた農業政策地域政策を区分をする、分離をする、そういう言い方もありますし、これまでと違って工程表の管理で行っていくんだと、こういうような言い方もしているわけでありますけれども、私ども、なぜこれだけの大事な法案、大事な中身、これは生産者だけでなくて食の問題含めての問題でありますから、国民的にも大変な議論を呼んでしかるべきだろうと思うんですね。ところが、なかなかそうはなっていない。  そのことも含めまして、私自身は、転換という場合には、何がしかこれまでの反省があったり総括すべきものがあったりということが前提にあった方が分かりやすいだろうし、ほかの人たちもだからそうなのかということになり得るんだろうというふうに思いますけれども、この反省点あるいは総括すべき点、そのようなものは特にない、これまではすべてうまくいっていたんだが、これからまたうまくやるために変えたんだと、そんなことでよろしいんでしょうか。私は反省すべき点もあったのではないかと思っておりますが、どうでしょう。
  66. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほども申し上げましたように、これは平成十一年の新しい基本法に基づいての基本計画、そして五年間の基本計画が新しい基本計画に変わったという意味では、土台の法体系としては、流れとしてはまあ同じといいましょうか、同じ土台にあるわけでございます。しかし、反省点、総括点がなかったかといえば、私は大いにあったというふうに理解をしております。  午前中も申し上げましたが、今から考えると、同じ趣旨であったかもしれないしなかったかもしれません、認定農業者制度というものを設けたわけでありますけれども、これが思ったよりも参加者が少なかった。農業者サイドから見ると、何も余りメリットがないからそれに参加する必要はないという御判断があったのではないかというふうに思います。等々、我々の政策について幾つかの反省点があったことは事実であります。  と同時に、時代の転換ということもあるわけでございまして、大きくいえば、少子高齢社会である、あるいはまた環境とか、あるいは地域社会とか、あるいは世界との関係において、世界の貧困対策食料対策というものも日本のある意味では責務だというような世界的あるいは日本的な時代の要請、時代に対する転換の必要性というものもあるということ等々、反省あるいは時代の変化等々を総括した上で、この基本法に基づいて、先ほどの担い手施策を、大いに頑張っていただくようにする、あるいはまたこれと車の両輪としての農地、水、環境等の対策等々セットで、私は総括、そして総括の中には主要部分として反省もあるという前提でこの法案が今正に必要であるというふうに理解をしております。
  67. 郡司彰

    ○郡司彰君 私も、ただ相対的に、この地域社会における役割でありますとか、経済活動に占める割合といいますか、役割でありますとか、低下をしてきているんだろう、だからこそ、なおかつ真摯に国民皆さん方理解をしてもらうような訴え掛けをきちんとこの議論の中でしていかなければいけないのかなと、そんな思い質問させていただきたいと思いますが。  この法案提出に至るまで政策的な経緯があったと思いますけれども、その政策的な経緯についてお話しをいただけますでしょうか。
  68. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 政策的な経緯といたしましては、繰り返しになりますが、平成十一年の新しい基本法、この基本法の理念と、あるいはそれぞれの責務というものが明記されておりまして、それに基づいて基本計画というものを策定されるわけでございます。その第一回目の基本計画が終わって第二回目、つまり五年ほどたった現時点におきまして、幾つかの時代の要請あるいは必然というものがあって、それも考慮に入れていかなければならないと。  先ほどは少子高齢、人口減少ということを申し上げましたが、消費者サイドでは食に対する安全、安心、あるいは表示に対する要望、あるいは五年前には日本では考えられなかったBSE、鳥インフルエンザといった問題もあるわけでございまして、そういった流れ、経緯の中で臨機応変に法律を余りにも変え過ぎると猫の目と、こういうふうに言われるわけでございますけれども、大きな流れの中で過去を総括し、そして中長期的に日本農業農村、あるいはまた食料、あるいは環境といった総体的な、総合的な面から、これからの方向性をつくっていくというためにこういう法律が必要だというふうに我々は考えて御審議をお願いしているところでございます。
  69. 郡司彰

    ○郡司彰君 私も、やはり十一年の基本法、新しい基本法からいろいろ流れがつくられてきて、それぞれの節目節目に政策的な提言やら法律という形でこれまで来たんだろうというふうに思っています。最終的には、昨年の秋にできましたこの大綱、このような形まで来ているんだというふうに思いますけれども。  先ほど言いましたように、工程表を作って管理しながらやっていくんだと。昨年までは、大綱を作って中身を詰めながら、今回は、法律を制定をして十九年度からそれが実施に移すんだと、こういうような工程表の中で今動いてきているわけでありますけれども、実際には昨年の秋に作られましたこの大綱というところでおおよそ考え方はまとまってきていたんだろうというふうに思うんですね。  先ほど大臣がおっしゃいましたように、時あたかもBSEの問題その他がたくさんございまして、私どもからすると反省もあって、この大綱についてしっかりこの国会で議論をしたんだろうかということになると、実質的に時間を取って正式の委員会を開いて大綱を議論をするようなことはなかったというふうに思っているわけであります。  そして、過日、大臣の方から、こちらの方の中で提案をいただいて、私どもは、少なくともこのものを読んで法案審議をしよう、こういうふうに今立ち至っているわけでありますけれども、どうも私、これ、何回これを読んでも余りよく理解ができないようなところもございます。政令で定めるというのが二か所ございますし、省令で定めるというのが十六か所ございまして、この辺のところを含めて、これは局長の方にお伺いをしたいと思いますが、この法の体裁をこのようにまとめたというのはだれの御指示であったんでしょうか、若しくはだれの判断でこのような形で国会に提案をしていただいたんでしょうか。
  70. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 今回の法案におきましては、この対象者や交付金基本的な枠組みについては明確に規定しております。  その上で、具体的な経営規模要件交付金の算定方法、申請手続などにつきましては、法律に規定する事項といたしましては細目的、技術的な事項である、あるいは手続的な事項であること、又は事態の推移に応じて臨機応変に措置しなければならない事項であるというようなことから、一般的な立法ルールに基づきまして政省令にゆだねることとしたものでございます。
  71. 郡司彰

    ○郡司彰君 一般的になさったと。だれがそこを指示をして、だれの判断で出されたんですかというふうにお聞きをしているんです。
  72. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) ですから、私どもからこの一般的な立法ルールに基づいた形で原案を作りまして、内閣法制局の御審査を受けた上で、こういう形でお出ししたということでございます。
  73. 郡司彰

    ○郡司彰君 私どもというのは実際にはどこを指すのか、どういう権能なのかよく分かりませんが、法制局の方からもおいでをいただいておりますので、改めてちょっと確認だけさせていただきたいと思いますが、まず、憲法の第四十一条、七十三条の六項等がございますね。その関係で、法律と命令の関係でございますけれども、今おっしゃったように、命令というのは、法を実施をするために、補完的であったり細則的であったり、あるいは技術的なものであるというふうに、そのことにとどまるというふうに解してよろしいんでしょうか。
  74. 外山秀行

    政府参考人外山秀行君) ただいま政省令、すなわち行政機関による立法と、それからその規定する事項の範囲についてお尋ねがございましたので、その点につきましてお答え申し上げます。  現行憲法下におきましては、法律の規定を実施するためのいわゆる執行命令と、それから法律の委任を受けて定められる、いわゆる委任命令と言っておりますが、この二つが認められているところでございます。  このうち、いわゆる執行命令で規定できる事項といいますのは、その性質上、法律の規定を正に執行するために必要な細則的事項に限られるものというふうに考えられるところでございます。  次に、いわゆる委任命令として規定することができる事項につきましては、先生先ほども御指摘ございましたように、憲法四十一条という規定がございまして、そこに、国会は国の唯一の立法機関であるというふうに定められておりますことから、この趣旨を否定し、言わば実質的に国会の立法権を没却するような包括的、抽象的委任は許されないと。逆に申しますと、何が許されるかということでございますけれども、例えば手続的な事項、それから技術的な事項、それから事態の推移に応じ臨機に措置しなければならないことが予定される事項といった事柄などについての個別的、具体的な委任に限られるべきものというふうに解されているところでございます。
  75. 郡司彰

    ○郡司彰君 確認の意味でもう一度お聞きをいたしますが、基本的には、立法機関にゆだねられた立法の機能、それを国会が持っているということでありますから、国会の委任を受けて初めて委任立法が成り立つということでよろしいんですね。
  76. 外山秀行

    政府参考人外山秀行君) ただいまのお尋ねでございますけれども、いわゆる委任立法と申しますのは行政命令への委任ということでございまして、これは、法律が政省令に対して一定の事項について規定することを委任するということでございますので、こういった委任を行うことに関する立法府の御意思に基づいて行われるものでございます。  このような意味におきまして、したがいまして、国会の委任があって初めてできるのではないかというただいまの御指摘はそのとおりであるというふうに考えております。
  77. 郡司彰

    ○郡司彰君 今の御答弁をいただきましたように、これは実は私どもが反省をしなければいけない事項だろうというふうに思っているんですよ。  例えば、憲法が制定をされたときに、これほど多くの法律が閣議決定、内閣の方から出てくるというふうなことだけを想定していたのか。もしかすると、立法府という私たち自身法律を出す、そのことを審査をするというふうなことが相当立法のこの中ではあったんではないかというふうな思いがありまして、しかし、現実問題として、今の国会の中で相当数の法律が出てくる、その本数を一定の決められた日数の中で審議をしなければいけない。それから、場合によっては専門的な事項について、煩雑的なものも含めて私どもはゆだねてきたというふうなことが多かったんだろうというふうに思います。  私は、いつもこの法案の審査をしているときに、なぜこういう政省令にゆだねるというような法律の中身で審査をしなければいけないんだろうと。先ほど午前中も、これからもあると思うんですけれども、例えば四ヘクタールだというその適格要件とか、あるいは実際に交付される額の水準というのは幾らなんだとか、これは私は先ほどから聞いておりまして、補完的だとか、あるいは細則的だとか、あるいは技術的な問題だというふうに多分お考えでこういう法の体制を作ったんだと思うんです。  しかし、私どもからすると、これは日本の持っている農業の構造的な問題として、規模拡大とかそういうことをずっと追求してきたわけなんです。しかし、なかなかそれができなかった。時代の要請もあって、新しい農業の在り方やなんかをこの法律でもってつくっていこうということになっている。だとすると、私は、四ヘクタールが本当に可能なんだろうか、北海道においてはまた別の基準がある、それから作物についても、先ほどからあったように、ここに提示をされているものだけでいいんだろうか。  私は、これはすべてがこの補完的あるいは技術的だというふうに思わないで、基本的な部分が相当含まれている、それをこういう形で提案をするということになると、実際のところ議論のしようがないというふうに私は思ってしまうんです。  先ほど前段に大臣の方にお聞きをしましたけれども、いろいろな経緯の中でこういうものが出てきましたね、それは間違いないんですね。こういう経緯の中で、大綱のところで最終的には中身の問題も出てきた。しかし、私どもは院の中で、委員会の中で一度も大綱については議論もせずにこの法案のところまで入ってきている。こういうふうなところの中で十分に反省をしなければいけないと思うんですが。  ひとつ、これは委員長の方にお願いになるんだと思いますけれども、少なくともこの政令、省令、定まっている中身のものについて相当数あるんだろうというふうに思いますけれども、これをまず御提出をいただくように取り計らっていただけませんでしょうか。
  78. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 後刻理事会において協議することにいたします。
  79. 郡司彰

    ○郡司彰君 法制局の方、大変ありがとうございました。この問題について、これ以上時間を取るということは好ましくないと思っておりますんで、私もこの辺でとどめたいと思いますけれども、いつも私ども国会の中にいて議論をするときに、結果として役所の方の裁量の幅を広げるような形の立法の形をずっと取ってきた、国会議員が。このことはもう十分に反省をしなければいけないんだろうと思っています。  たまたま五月の二十七日の朝日新聞の天声人語に、ちょっと要件は違うことでありますけれども、次のような文章が載っておりました。憲政の神様と言われた尾崎行雄は、きちんと審議をしない議会は議事堂ではなくて採決堂だと批判をしたというふうにありますけれども、これは自分たちの戒めとして、これからこういう問題についても、ただ出されたものを、これによらないでそれ以外の資料を使っていつも質問をする、この形は好ましくないなというふうに思っておりまして、これは質問ではございません。もし大臣、何かお考え等がございましたら。
  80. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 読んで恐縮ですけれども、この法律目的というのは条文には書いてございます。もう郡司委員始め委員の皆さんは条文そのものはお読みになっていらっしゃると思いますけれども、確かに提案理由説明で、最初の方に冒頭があって、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます、第一に交付金対象となる農作物云々と、いきなりどんと出てきちゃうんですね。そういう意味で、この提案理由だけを読めば、一体何のためにいきなり麦、大豆、馬でんが、砂糖が出てくるのかという御疑問はごもっともだろうと思います。  ただ、法律目的、条文そのものの目的の中に、担い手あるいはそれをしっかり応援するためというようなことも書いてございますけれども、いずれにいたしましても、法律そのものをこの場で御審議いただき、願わくは、速やかに御賛同賜りますようにと結んでございますんで、どうぞよろしくお願いいたします。
  81. 郡司彰

    ○郡司彰君 大臣、別なところで乳製品のPRのときに、ヨーグルトにゴーヤを入れて飲むとおいしいというような話をされたということでございますが、何かこれ、私ども、これだけいただきますと、ヨーグルトがなくてただゴーヤだけ食べているような感じ審議にどうもなってきているような感じがしておりまして、この辺のところは、ちょっと先ほども言いましたけれども、提案をする側でなくて私どもの方が少し手を抜いてきたというような感じがしております。  ほかの国のことを言っても、これは自分たちの国で作るしかないわけでありますけれども、そんなことも任せないで全部法律に入れるという国だってあるんだろうと思っています。  それから、よしんば骨格的なもので法案を作ってたとえ成立がしても、その後、政令、省令ができたらば、それは速やかに国会でもう一回きちんと審議をする、そういうような機能も私たち自身が持っていかないと、結局は、でき上がった法律、すべて後は役所の方にお任せで何のチェックもできないで、結果として、農業、この場合でいえば農業そのものの衰退をもたらしてしまうようなことがあってはいけないというような、そんな思いでちょっと今までのところの質問をさせていただきました。  ちょっとまた次の質問に入らさせていただきたいというふうに思いますけれども、次に、自給率向上について先ほど来からも議論がございましたけれども、私も、実は質問を作るときには政令、省令が全部出てからしようということで、余り直接この法案にかかわらない、しかし大事だと思われるところについて質問をしようということで準備をしました。  耕畜連携ということでございます。これ、ただ単に飼料作物というようなことだけではなくて非常に深い意味があるというふうに思っておりますけれども、この耕畜連携について、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。
  82. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 耕畜連携というのは、例えば私のところ、畜産地帯でありますけれども、畜産・畑作地帯であれば、牛から出たふん尿等を畑にまいて堆肥にすると、そして麦等から出たわらを敷きわら等に利用すると。これはまあ一つの例でございますけれども、いわゆる米地帯であれば、稲わらと畜産の方とを利用するとか、そういう意味で、いわゆる堆肥を畑にまいて地力を増進させる、あるいはまた、米、麦等のわら、あるいはまた、稲そのものを発酵させたりなんかして生産拡大をするということ等で、お互いに有効利用し合ってプラスにしていこうということで極めて大事だと、御指摘のとおりだと思います。
  83. 郡司彰

    ○郡司彰君 大臣から、私の思っているような答弁をいただきました。  実は、この自給率に関していえば、なかなか寄与するところが少ないんですね、努力をしても。例えば飼料作物でいえば、一〇%上がっても熱量のカロリーの関係でいえば一%程度しか上がらないというふうなこともございます。しかし、それはそれで大事だということがある。それから、このものをやっぱり国産で自給をするというふうなことは、食の安全の問題、ここのところにもきちんとかかわってくるんだというふうに思いますね。  それから、大臣が言われましたように、結局循環のシステム、このことがやっぱりこれからは一番農業にとっては求められてくる。それから、景観のところでも、例えばうまくやれば、これまでにはなかったようなところで、耕作というものには適さないようなところでも、牛が草をはんでいるような、そういう景観的なものも出てくるだろう。  いずれにしても、この耕畜連携ということは非常に大事だろうというふうに思っているんでありますけれども、ただ、実際に、この飼料自給率向上ということが三五%目標ということで立てられていて、それぞれ取組をされている。中身的には、転作のところで植えたものがかなり増えているけれども、全体トータルでは若干減ってきているし、都道府県によっても相当なばらつきがあるというようなことになっているんだろうと思っております。  この辺のところは御案内のことだと思いますからちょっと時間の関係で省きますけれども、要するに、ホールクロップサイレージ、この関係について、これまでの施策、〇四年度から若干変わって、そのことが作付面積、収量その他に影響をしたんではないかというふうにも思っておりますけれども、この点について、現状のつかんでいるところについてお話しをいただけますでしょうか。
  84. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) ホールクロップサイレージ用稲ということでのお尋ねであったかと思いますけれども、委員御指摘のとおり、我が国粗飼料の自給率を上げるというためにホールクロップサイレージ用稲というのは大変大事な役割を果たすだろうというふうに考えております。そういった面で、特にこれまでは主食用のお米をホールクロップサイレージというのではなかなか収量上がらないといったことで、基本的には品種改良をかなり進めてきております。北海道は日照時間の関係からいってまだ適正な品種はできておりませんけれども、南東北以南においては一応使える品種ができてきたと。  十七年度も二品種できているといったことがございますし、また、もう一つは、加工をするといいますか、ホールクロップとして利用するにはやっぱり利便性が大事でございますけれども、ビニールのようなもので巻く中でいい発酵粗飼料になると、そういった技術も開発されたし、また機械も開発されてきているといったことで、少しずつ伸びてきている。  十六年度に少し減ったわけではございますけれども、十七年はまた少し盛り返して、十八年度更に拡大に向けまして今取組を推進しているということでございます。
  85. 郡司彰

    ○郡司彰君 非常に耳当たりのいいお話をいただいたんですが、これ政務官の写真が入っているようなやつもいただいて読ませていただいていますが、私、先ほどちょっとお聞きをしましたのは、実際のところはその転作助成ということでもって上限十アール当たり七万三千円ぐらいのものがございました。それから、受け取る方の、実需者の方の関係についても二万円ぐらいの助成金がございました。  これ、産地づくり助成の方に変わって、上限の関係でいうと、一番上が六万三千円で、実際には県とか市町村のところで五万円台、四万円台のものも出てきている。それから、実需者のところに助成の方は二万円が一万円で、二万円が一万円だから半減という言い方が当たっているのかどうかは分かりませんが、やっぱりこういう制度の問題が変わると下がってきているんじゃないかというような感じがしているんでありますけれども、こういう制度がもしかすると今回の新しい法律関係も含めて全体の米政策その他の、あるいは水田関係も含めて関連があるんではないかという感じがしておりますけれども、その辺のところはどうでしょうか。
  86. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 十六年度から転作の仕組みというのは変わったことは御案内のとおりでございますけれども、地域でそれぞれ必要な作物に対して助成をするという中で仕組み地域によって変わっていると、助成水準もですね、それは御指摘のとおりでございます。  先ほど申し上げましたように、あと十六年の場合は少しお米の作付けが増えたといったこともございましてホールクロップサイレージが減っているということでございますけれども、先ほど申しましたように、十七年度は少し回復したということでございますし、これから更にしっかりと畜産農家との結び付きを強くする中で拡大に向けた取組をしたいということでございます。今回の対策、新たな対策の中でということでございますけれども、これ御案内のとおりですけれども、飼料作物は要するに畜産農家ときっちりと結び付きがあるという中で生産振興をやっておりまして、特に機械等が必要になりますので、新しい制度の中でもしっかりとこれは畜産農家によって良質な粗飼料が受託生産なりあるいはコントラクターとかそういう中で取り組まれていくというふうに私どもとしては考えているところでございます。
  87. 郡司彰

    ○郡司彰君 コントラクターも含めてその三者の間での連携というものが大事だろうということはよく分かります。  それから、ただこの稲のWCSの関係でいいますと、これやっぱり基本のところは水田自給率を保持しましょうというところから始まっているといいますか、そういう考え方というのはやっぱり根底のところにあるんだと思うんですね。そういうふうなところからいうと、新しい法律ができて、もしかするとこれまでの形ではなくて担い手に絞ったり、あるいは地域の中においてこれまでと違うような農村社会というようなものができ上がってきたりすると、私は思っているように三五%という目標が難しいんじゃないか。それよりも、具体的にはこういうような根拠があってこういうような組立てだから三五%になるというよりも、自給率そのものの中で、このものの自給率にカウントするものもこれだけあるんだというような、簡単に言えば二十七年に四五%、何々でこれだけ、何々でこれだけ、あんたのところはこの飼料作物についてはこれだけやるとこういうふうになりますよというような、どうも便宜的に数字の上から作られているだけで、中身的にきちんとしたものができてないんじゃないか、そんな思いがありますけれども、そんなことはございませんですか。
  88. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 現在の、先ほど委員御指摘がありましたように、飼料作物の生産が横ばいないし微減になっているのは御指摘のとおりでございますが、この原因がどこにあるかというふうに見てまいりますと、特に青刈りのトウモロコシのようなものがやはり高齢化等によって担い手不足といいますか、そういうような中で減ってきているということと、あとは草地の更新そのものがうまくいってないといったところでこの現状があるんだろうというふうに考えているところでございます。  それにつきましては、畜産対策についてはこれは経営安定というか品目横断ではなくて、個別対策で今後とも講ずることにしているわけでございますけれども、先ほど申し上げましたコントラクターの育成をするとか、あるいは委員お話ございました放牧を、最近西日本では盛んにこれ増えてきておりますけれども、放牧を活用するとか、そういう中でいい飼料をしっかりとした担い手、あるいはその中にはコントラクターも含みますけれども、そういう方々に担っていただく中で全体の良質な飼料生産を確保して自給率向上を図ると。それと、三五%の中には残渣利用なども一応含んでおりますけれども、粗飼料についてはそういう格好で考えているというところでございます。単収等ももちろん想定した中で見通して作っているということでございます。
  89. 郡司彰

    ○郡司彰君 繰り返しになりますからあれですけれども、先ほど言いましたように自給率の問題だけではなくて、全体、この畜産のことを考えても食の安全の関係もありますし、それから本来、日本農業の中にはそういう循環システムというのもやっぱりきちんとつくるべきだとかいろんなことがあるんだろうと思っています。  畜産の、例えば鶏の卵でも肉でも豚肉でも生産の比率は高い、しかしいろんなことでカロリーの自給率になるとがくんと落ちる、その辺のところも含めてしっかり耕畜連携というのはこれからの農業考え方の中に入れていただければなということを申し上げたいというふうに思っております。  次に、サトウキビ、砂糖関係についてお聞きをしたいというふうに思いますけれども、まず、地元からの新しい法律に変わるについての要望がございますので、二つほど要望を申し上げたいというふうに思います。  一つは、これまでと違って説明が非常に不足をしているというような話がございます。これはどういうふうなことかというと、皆さん方の方がよく御存じのように、これまでは国が直接かかわって行ってきた、これからは自治体、県や市町村等がそのものを担っていくような形も取るというふうなことですから、県や何かが実際には説明を行うという形になっているんだろうというふうに思います。  このサトウキビの関係でございますけれども、沖縄あるいは鹿児島の南西諸島の方々からお話を聞きますと、特に端的な例は、宮古島なんかは一ヘクタールまでもちろん行かない、しかもハーベスターが二割ぐらいしか使わない、説明を聞いたらば、もう既にこれは私たちは該当しないなということで移行をし始まっているような人たちも出てきているというふうなことがありますから、この説明を、やはり十九年度から始まる、何年度から始まる、きちんともう一度丁寧に行っていただきたいということが一つ。  それから、政策支援金でございますけれども、水準とすると一万六千四百九十円ぐらいというような数字が出ております。これも、現地の方々から聞きますと、初め、これまでは一週間ぐらいで出ていたんだけれども、半年ぐらい掛かるんだと、それじゃどうしようもないということで大変努力をしていただいて二週間から十日ぐらいの間には出るような形になってきたというふうに話を聞いておりますが、実際にはこのハーベスター、要するにオペレーターの方に即金でその日に払うんだというような形の大体関係なんだそうですね。大変、一週間が二週間になるとハーベスターを使えないというような心配をしている方があります。  これは地元の要望でございまして、善処方をお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  90. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 対策の現地への浸透というのが一点目でございますけれども、十九年産から新たな対策に円滑に移行しなきゃならないということで、私どもといたしましては、農業者農家向けにパンフレットなどを作成した上で、県、市町村の担当者の参加も得まして、本省からも直接現場に出向きまして、農協、製造事業者などを対象に新制度の枠組みについて説明をするといったことを行っております。  また、今年の一月から四月までの間は、含みつ糖を生産するすべての島を含む全国十九か所における現地説明会の開催も行っておりまして、周知をしているということでございますが、現在、この現地説明会を受けまして、市町村、農協等によりまして各生産農家への説明が進められているというところでございます。  具体的にもう少し申し上げますと、鹿児島県では、JAグループが主体になりまして、今年の夏ごろを目途に新制度対象となる担い手農業者生産組織の育成を目的とした担い手育成のための組織の立ち上げなども計画されております。沖縄県でも、JAに品目経営安定対策の専任担当者チーム、これを配置しておりまして、新制度周知等に当たっているところでございますが、いずれにいたしましても、今後とも、私どもとしても、周知状況を確認しながら地域における取組強化をしていきたいと、円滑な移行に万全を期していきたいというふうに考えているところでございます。  なお、二点目の交付金交付の時期と払込時期のところでございますけれども、これ現在、交付申請に係る事務の簡素化あるいは提出書類の確認方法について、農畜産振興機構、これ事業行うものですから、そこと一緒に現在検討しているところでございます。  生産者から、お話しのように、早期支払の要望があることは承知しておりまして、農家単位での対象者の要件の確認、生産者と糖業者とのデータの突合など、大変業務量は多く、事務量が多くなるわけでございますけれども、そういったことで、交付金は適切に交付されなければならないということも一方あるわけでございますが、いずれにいたしましても、迅速な支払について、どこまでできるかということで更に検討をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  91. 郡司彰

    ○郡司彰君 地元の要望でございますので、適宜にきちんとやっていただければと思っています。  次に、このサトウキビの関係でございますが、砂糖関係でございますけれども、WTOそれからEPAその他の関係の動きの中で、どのような議論がされ、どのような扱いになろうとしているのか。加糖調整品との競合をめぐる問題でありますとか、あるいはEPAでいうとアジア諸国、大変にその辺が競合するところがございますので、その辺の流れについて、あるいはまた日本考え方についてお聞かせをください。
  92. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まずEPAにつきましては、今まで、シンガポール以外、メキシコあるいは今やっておりますアジア各国等々で向こうの関心品目であった、あるいはあるわけでございますけれども、日本としても、重要なカロリー源であり、そしてまた地域にとっての大事な作物でもございますので、極めてセンシティブであるということで除外、あるいはまた、期間を置いての、譲っても再協議ということにしているところでございます。  それから、WTOにおいてはこの砂糖というのは、午前中もちょっと申し上げましたが、ある意味ではアメリカと最貧国が争っているという極めておかしな、おかしなというのは、私はアメリカがおかしいと思っているんですけれども、補助金付きでアメリカが砂糖を作っていると。片方ではもう砂糖しか作れないというところが、もうそれが圧迫されて困っているということでありますから、私は全面的にこの砂糖についてはアフリカ諸国等について支援をしているところでございます。  ただし、それは直接的に日本に入ってくる問題ではないので大いに頑張れと言っているわけでございまして、日本においてこの砂糖は、さっきも申し上げましたけれども、何を重要品目に入れるかは別にいたしまして、日本にとって極めて大事な品目であるという観点から、この砂糖についての交渉についても臨んでいきたいと思っております。
  93. 郡司彰

    ○郡司彰君 いろいろなところを読ませていただきますと、例えば、WTOの交渉経過を、推移を見つつ総合的な対応策を検討をすることが必要というような書き方になっております。  今言いましたように、地域的にというよりも、各国歴史的にやっぱり砂糖というのは大変重要な作物だったんですね。ここのところ、異性化糖とか、日本の場合でいうと加糖調製品とかいろいろな問題があって、国民の多くの方々は砂糖というのはもう余っているんだと、取り過ぎてもう要らないんだというような感覚が多いんでありますけれども、これ重要品目だということには変わりはないんだと思っています。製糖業、精製業者その他も、重要品目から除外をされるような形になるとこの後の展開が読めない、日本政府としては重要品目という形で頑張ってくれというような声が届いておりますが、大臣、よろしくお願いいたします。
  94. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 午前中、米についても、あえて重要品目とは決めておりません。どの国も重要品目と決めていないというのは、これは極めて交渉上の戦略でございます。現時点において、アメリカ等は重要品目に入れた方が不利になるような提案すらしているわけでございまして、そういうことも含めまして、今重要品目というのは、どういう形の削減方法にするのかとか、品目をどういうふうにするのかという議論をしている最中でございまして、その中に何を入れるかということも、ある意味では各国が相手のことを虎視たんたんと、日本も見ておりますし、日本も見られているという状況でございますので、現時点においては、何を重要品目に入れるか、米も砂糖もその他を含めて現時点では決定しておりませんので、公表ももちろんしておらないということでございます。
  95. 郡司彰

    ○郡司彰君 米のことは非常によく話題になるわけでありますけれども、どうしても砂糖ということなりますと関心がいま一つということなもんですから、付言させていただきました。  次に、これまでのものと違って、モンスターケーンと言うんだそうでありますけれども、単収が非常に多く取れるものが栽培をされているというように聞いておりますが、このモンスターケーンについて、どういうものなのか教えていただけますでしょうか。
  96. 染英昭

    政府参考人(染英昭君) 御指摘のモンスターケーンでございますが、現在沖縄県の伊江島におきまして、このモンスターケーン、これ通常のサトウキビよりもバイオマス量が高いサトウキビでございます。これを原料といたしましてバイオエタノールを生産いたします。それを更に三%混ぜましてエタノール混合ガソリンといたしまして、公用車の燃料として利用することを目的といたしまして、平成十七年度から農林水産省、経済産業省、環境省、それと内閣府が連携いたしまして実証試験を開始しておるというところでございます。  これ、余り成績がございませんので、当面、平成十七年度の実証試験で申し上げますと、この伊江島でモンスターケーンの栽培試験は五十アールしております。そういたしますと、単収につきましては、十アール当たりの単収は従来品種が約六トン程度であるところが、このモンスターケーンは約十四トン、二倍以上取れるというようなすばらしい品種でございます。それと、糖度の指標でありますブリックスというものがありますが、これ従来品種が一八・五%のところでありますが、これが多少低くて、モンスターケーンの場合には約一五・六%というふうな状況になっております。
  97. 郡司彰

    ○郡司彰君 今お話をいただいて大体どんなものかよく分かりました。形状というか、でき上がった形も相当違うんだというふうにも聞いております。基準糖度、普通のものですと一三・七とか、そういうものを基準にして作っている。  この場合には、今お話を聞くと、バイオマス利用に行うんだと、エタノール生産のために作るんだということになるんだというふうに思うんですね。私は、エタノールは一杯やってください、バイオマスはどんどんやってくださいということをいつも言っているんです。  ただ、ここでちょっと問題にしたいのは、このモンスターケーンというものを栽培として、一般の今サトウキビ、砂糖にするために作っているところ、そこのところにもこれから広げるんですか。若しくは、これまでと違う耕地にということはあり得ないんだと思うんですよね。その辺のところはどうなんですか。私は、作っている農家の方は、何によらずサトウキビを作る、どんなものでも作って、それが収入になって成り立つんならばそれはいいんだというふうにお考えの方も相当出てくるんだと思うんですよ。  しかし、日本砂糖政策として考えた場合に、沖縄あるいは鹿児島の南西諸島のサトウキビ生産をこのモンスターケーン、いわゆるバイオマスエタノール生産のために切り替えようというお考えでしょうか。そのことについてお聞かせください。
  98. 染英昭

    政府参考人(染英昭君) 先ほどモンスターケーンの特徴を申し上げましたが、一般的に申し上げますと、このモンスターケーンというのは、一株当たりの茎数が多くて単収の増加が大変期待できます。それと、エタノールの原料となる糖みつが通常のサトウキビよりも多く得られると。さらに、大量に発生いたします搾りかすのバカスがエタノール生産の濃縮の燃料として用いることができるというようなメリットがございます。  ただ一方で、従来品種に比べますと個体当たりの糖度が低い、先ほど申し上げたとおりでございます。それと、単収が大きくなりますので刈取りに大変多くの労力が必要となるというような点もございます。それと、さらに製糖工場での処理量が増加するということで、製糖工場でも下手すればコストが掛かってしまうというような、そういうようなデメリットも一方であるということでありますので、今後のこの利用を進めるに当たりましては、今申し上げたような特徴を十分見極めながら、今後の可能性、実用性については検討する必要があろうというふうに考えております。  そういう意味で、現在、実証試験でございますので、その結果を見てから判断するということになるんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  99. 郡司彰

    ○郡司彰君 サトウキビというのは非常に日本の作物の中でも特異な地位だと思うんですよね。まず、沖縄、鹿児島の南西諸島からいうと、農家の七割がそれにかかわっている。耕地面積でいうと五割がかかわっている。戸数でいうと三万戸ぐらいの方々がそこにやっていて、じゃそれ以外の物を作れるかというと、代替の作物というのはほとんどないだろうというふうに言われていますね。それから、沖縄だけに限っていうと、それ以外のものだって作れるよ、作れるけれども、そこの農地は今は米軍の基地になっていて作れないという考え方がありますね。だとすると、地域経済の中においてもこのサトウキビというのは大変に重要な作物だろうと思うんですよ。  これからは農業政策地域振興政策というのは分けていくんだというのが考え方の、先ほどの冒頭のところにもありましたけれども、あるんですね。だから私は、先ほど言ったように、これがバイオマスでエタノールに使おうと、そこの人たち生産ができ上がって所得が確保されてということになれば、それはそれでいいんですよ。ただ、日本砂糖政策として、砂糖というものは、私は、今は、先ほど言ったように、異性化糖とか調整品も一杯入ってきて余っているような感じがするけれども、これは国にとってやっぱり譲れない作物だろうと思うんですね。  ここからなんでありますけれども、時間がないんで結論の方から言いますと、新法の、先ほどの担い手経営安定新法の方ではてん菜が入っていますね。でん粉用のバレイショも入っていますね。考えようによっては、砂糖の方の政策は、産業としては、農業としては北海道の方にゆだねちゃうと。沖縄とか南西諸島のサトウキビは、これはもうエタノールにするんだというふうになると、これは日本砂糖政策ということをきちんと議論をしないままでそういうふうな流れになると私は非常に困るなと、おかしいなというふうに思うんですが。この辺は、ちょっと大臣、もしよろしければ。  法律が変わってこのような形でモンスターケーンもやっていて、結果として沖縄、鹿児島、南西諸島のサトウキビというのは日本砂糖政策から外れるようなことになり得るんではないかというちょっと心配をしておりますけれども、どうでしょうか。
  100. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 確かに、何でてん菜が入ってサトウキビが入らないんだと、まさか中川がいるから北海道だと思われるのは大変心外でございまして、この四品に絞ったのは、提案理由でも申し上げたかと思いますが、土地利用型で輪作体系、あるいはまた転作あるいは二毛作という中での対象作物であるということが前提でございます。  じゃ、砂糖はどうなのかというと、砂糖全体は今、郡司委員が御指摘のように、極めて重要な、カロリーベースでも重要でございますし、ましてや、私も沖縄、石垣に視察に行ったことがございますけれども、サトウキビしかできないという地域でございます。しかも、台風が来る、離島であるということでございます。じゃ、砂糖ばっかりどんどん作ればいいかと、砂糖を食べるかというと、現時点においてはむしろ砂糖の消費は減っているわけでございます。  そこで、今御指摘のように、エタノールというものに転換をしてエネルギー政策としてもやっていけばいいじゃないかということでありますが、私は、連休中ブラジルに行って、サトウキビ畑、広大な、もう日本の千倍、何千倍というところを見てまいりましたけれども、ブラジルのことをちょっとお話しさせていただきますと、石油の値段が上がってきたから、どんどんどんどんエタノールの方にシフトしていったんですね、サトウキビ。ところが、余りにもシフトしていった結果、今度砂糖が足りなくなってしまって砂糖の値段が上がってしまったんで、今度はエタノールにするのをまた砂糖の方に絞ってきているということでございますから、そういう意味で、人間が食べる砂糖と車が使うエタノールとの代替性があるという意味でも私はサトウキビというのは極めて重要な資源作物だと思っております。
  101. 郡司彰

    ○郡司彰君 私も、実際のところは、たまたま中川大臣は経産大臣をやって農水大臣をやって、そこのところの連携はきちんとあってしかるべきだと思うんです。ただ、結果として、今回のことで砂糖政策が話がされないままに何かしら大掛かりな変更があったとすると、それは直接その生産にかかわっている方々の生活、所得に関してはかかわりなくても、日本農業政策としてはいったん議論をしておく必要があるんではないか、そんな思い質問をさせていただきました。  ただ、私は、この担い手新法と砂糖関係は非常によく似ているなと思うんですよ。一方が四ヘクタール、一方が一ヘクタール。しかし、なされているところは、やはり重要な作物についてはそれぞれ同じような考え方でやってくださっていると、こういうふうなところもありますけれども、場合によっては、日本全体を考えるよりも、このサトウキビの関係砂糖関係で沖縄あるいは南西諸島をとらえると、これからの日本の目指そうとしている担い手新法の縮図が出てくるんではないか、そんな思いでちょっとこの辺のところについて今日は質問をさせていただきました。  もう時間がございませんで、大変大臣に、日本農政は支持をされているかということでお聞きをしたかったんでありますが、まず、大臣農業新聞でアンケートがございました。ほかのところとやっぱり違うんですね。農業については意外と厳しい評価もあります。それから、思ったよりは新しい法律が浸透をしてきている等々もあります。  それから、一番私が関心を持ったのは、ポスト小泉で一番目、二番目、安倍さんとそれから福田さんと、ほかの新聞より接近しているんですが、三番目は中川大臣の名前が挙がっておりまして、これは、ほかのところと違って、これは場合によっては大臣にもポスト小泉の意欲をお聞きをした方がいいのか、そんな気持ちもしているんでありますけれども。  最後になりますが、このアンケートの結果、ごらんになりましたでしょうか。日本農政、これまでのところ支持をされているというふうにお考えでしょうか。
  102. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まあ支持、不支持の前に、この今御審議をいただいている目的、それから内容について、まだまだ我々はこれでいいということはないと、法案のできる前、法案を御審議いただいているとき、そしてまた成立をさせていただきましたならば、いよいよ法律ができましたという段階含めて実施の日まで、あるいは実施した後も含めて、私は常に国あるいはいろんな団体等が周知徹底をして御理解をしていただいた上で御支持いただきたいというふうに考えております。
  103. 郡司彰

    ○郡司彰君 終わります。
  104. 主濱了

    ○主濱了君 本会議に引き続きまして、質問をさせていただきます。  早速質問に入ります。質問項目を実は示させていただいておりますが、質問項目の中の担い手の項目から早速質問をさせていただきたいと思います。  ただいま郡司委員からもお話がありました。この担い手についてそもそも議論したことがないと、正面切って議論したことがないと、こういうことでございますが、担い手に対してだけ集中的、重点的に施策を講ずることとすること、これはもう、皆さん御存じのとおり、農政の大転換だと私も思っております。  それで、経営所得安定対策担い手要件、認定農業者ですと四ヘクタール以上、それから集落営農なんかですと二十ヘクタール以上、そもそもこの四ヘクタールであるとか二十ヘクタールであるとか、この要件がどのようにして決められたのか、様々な議論があったと思います。ただ、この四ヘクタールであるとか二十ヘクタールであるとか北海道の十ヘクタールであるとかということは、これによって農家一つの振り分けの基準になるわけですから、極めて大事なことだと思います。  それ、どういう形で決められたのか、私どもこれをもう前提にした話をしている。でも、元々の決めたその中身をまだ聞いていないということですので、まずここから質問をさせていただきたいと思います。
  105. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 品目横断的経営安定対策対象者の要件でございますが、本対策対象者となります担い手につきましては、将来的に他産業並み所得を確保し得る農業経営に発展していくと、そういう可能性のある方ということでございまして、そういうスタートラインに立てる方ということで、現状では他産業並み所得を確保できる面積のおおむね二分の一と、これを基本として定めたものでございます。  ですから、都府県でいえば四ヘクタール以上、北海道では十ヘクタール以上と定めましたのは、他産業並み所得を米を中心として得ていくとすれば、やはり八ヘクタール以上、二十ヘクタール以上が必要であろうと、その二分の一ということでございます。
  106. 主濱了

    ○主濱了君 それでは、まずお伺いします。  農業におけるその規模のメリット、農業における要するに一定規模、必要としているわけですけれども、農業におけるその規模のメリットをどのようにお考えになっておられますか。
  107. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 使用します農業機械あるいは資材その他を完全にフルに活用するということになりますと、やはりそれぞれの農業形態によりまして、適正規模といいますか、一番コストが安くなる規模というのが想定されるわけでございます。  土地利用農業、特に稲作を中心とする農業におきましては、我が国で使用されています農業機械の体系を考えますと、十ヘクタールから十五ヘクタールあるいは二十ヘクタール程度までは従来型の機械化体系でコストが一番削減できるものであるというふうに考えられております。それを超えますと更に大きな機械を今度は買わなければなりませんので、二十の次に効率的な経営というと二十五ではなくて更にもっと大きな経営ということになろうと思いますが、十ヘクタールから二十ヘクタール規模であれば、現行機械化体系で一番効率的でコストが安くなるというふうに考えております。
  108. 主濱了

    ○主濱了君 それから、将来発展可能性のある規模の二分の一、当面二分の一というふうに説明があったと思いました。この二分の一というのは何なんでしょう。なぜ二分の一なんですか、そのままじゃ駄目なんですか、三分の一じゃ駄目なんですか、十分の一では駄目なんですか。なぜ二分の一なんでしょう。
  109. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 二分の一か三分の一か五分の一か十分の一かというのはいい加減に切っているわけではございませんけれども、今申し上げたように、その町で他産業に従事されている方に匹敵するような収入を農業で上げようと、そういうことを目指すわけでございますから、そのスタートラインに立つ経営規模として余りにも小さい規模であればその方が五年後、十年後にそこに行くということを見通すことは困難であろうと。かといって、余りにも大きな規模を予定しますれば、その対象者も非常に少なくなりますし、これから発展しようとする人たちにそのインセンティブというか、努力していただくということにならないだろうと。ですから、ある程度のハードルはあって、頑張って規模拡大をして農業でちゃんと食べられるような経営に育っていっていただきたいということと、一方では余りにそのハードルを高くして参加する意欲を失わせてはいかぬということとの兼ね合いで決めております。
  110. 主濱了

    ○主濱了君 極めて私はあいまいな決め方だというふうに思いますね。農家はこれによって振り分けられるんですよ、対象になるかならないか。これ大変な問題なんですよ。それを二分の一って、それ、大体その辺ぐらいが、それで決められたんでは、これは農家たまったもんじゃないですよ。これだれが決めたんでしょう、先ほどの質問じゃないですが、どなたが決めたんですか、大臣ですか。
  111. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 更に付け加えますと、現行の米の、まあナラシといいますか、稲得の上に乗っかっております担い手経営安定対策対象者、これは平成十六年から既に実施しておりますが、この担い手経営安定対策におきましても、この対象者として、都府県四ヘクタール、北海道十ヘクタールという規模を決めております。
  112. 主濱了

    ○主濱了君 それじゃ、ちょっと話を先に進めたいと思います。  先ほど岩永委員からもお話がありましたけれども、担い手要件を満たせば経営安定対策等の支援対象になりますけれども、このことでいわゆる効率的かつ安定的な農業経営に近づくことになるのか、ならない可能性も十二分にあると思いますが、なるのかと、そういうふうに想定しているのかということをまずお伺いしたいと思います。そして、担い手要件を満たした場合の、その規模に応じた費用ですね、規模に応じた費用とそれから販売収入、あるいはその収入のほかには交付金であるとか補助金であるとかそういったようなものが入ります。要するに、コストと収入がどのような関係になっていって効率的かつ安定的な農業経営になるのかと、こういったようなところをお示しをいただきたいと思います。私も、先ほど岩永委員がおっしゃったように、担い手になったとしても経営はやっぱり厳しいのではないかと、こういうふうに思っているところであります。
  113. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) ただいまの御質問のまず前段について私からお答えいたします。  先ほども申しましたように、四ヘクタール、十ヘクタールというのはあくまでもスタートラインとしての規模でございます。このスタートラインに立って今後、対策導入後も規模拡大努力を続け、他産業並み所得を確保できるのに必要な規模にまで到達していただきたいということでございます。そのため、農林水産省としても、この対策のほか、担い手に対しましては、各種施策を今後集中的、重点的に実施して、効率的、安定的な経営に発展することを後押ししていくと、そういうことにしておるわけでございます。  後段の方は統計部長から。
  114. 小西孝藏

    政府参考人小西孝藏君) 規模ごとの収入とコストとの関係でございますが、稲作農家について見ますと、平成十六年産の米生産費統計によりまして、都府県の十アール当たりの粗収益を見てみますと、〇・五ヘクタール未満の階層では十一万九千円、三から五ヘクタールの階層では十二万二千円、十ヘクタール以上の階層では十二万四千円というふうになっております。  一方、農家が米の生産のために支払った経費につきましては、〇・五ヘクタール未満の階層では十一万二千円、三から五ヘクタールでは七万円、十ヘクタール以上では六万八千円というふうに、作付規模面積が大きければ大きいほど低くなる、コストが低くなる傾向にございます。  この結果、粗収益から経費を差し引きました十アール当たりの所得は、〇・五ヘクタール未満では六千円、三から五ヘクタールでは五万二千円、十ヘクタール以上では五万六千円というふうになっております。
  115. 主濱了

    ○主濱了君 いずれにいたしましても、これは農家への説明におきましては、なぜ四ヘクタールなのか、なぜ二十町歩なのか、この辺はきちっと説明していかないと農家が納得しないというふうに思いますし、それから担い手となった以上、きちっとした、何というか、対策支援を講じないといけないというふうに思うんですよね。その辺ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  それからもう一つ、このコストの関係お話を申し上げたいんですが、担い手が借地という形で農地集約をした場合、地代という新たなコストが生ずるわけですけれども、これは多分結構大きいと思うんですよね。この新たなコストについての新しい基本計画における考え方、あるいはこれ自体が構造改革に影響を及ぼさないかどうか、この点についてお伺いいたします。
  116. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 現在、北海道を除きますと、農地の権利移動につきましては、やはり高い農地価格、あるいは農家の資産保有意識が影響いたしまして、近年は売買よりも賃貸借による移動が大きく増加しているのが現状でございます。  これは、農業経営者の方が経営規模拡大によりまして、今、統計部長から説明いたしましたように、地代を含んでも生産コストが相対的に低下するということを考えまして、価格の高い農地を取得するよりも地代を支払う方が有利と判断して借地を中心に規模拡大による経営改善を図っているためと考えられます。ですから、規模拡大すれば当然、借地ですから借地料を払わなければなりませんけれども、規模拡大することによって平均的なコストが下げられると、そちらの方が有利だということであれば規模拡大が続くということであろうと思います。  私どもとしましては、こういった担い手と言われる方に円滑に農地の貸付けが行われ、あるいは利用権の設定が行われるようということで、この担い手への農地の利用集積の促進に対しまして従来からも各種施策を講じておりますけれども、今後更に担い手に集中化、重点化して、この農地流動化対策もしっかりやっていきたいと考えております。
  117. 主濱了

    ○主濱了君 先ほどの質問に実は戻りたいと思います。  先ほど、規模拡大したことのメリットの中に今の話は出てきませんでした。関連付けて御説明をお願いしたいと思います。
  118. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 先ほども申しましたように、同じ機械を使っておりましても、それがフルに稼働するか、ほんの一部、一時期しか稼働しないかによって、実際に規模の差によるコスト差というのは、そういう機械をフルに活動しているかどうかというような点が非常に大きいわけでございます。ですから、地代を払いましても、規模拡大して今持てる機械の能力を十分に発揮してコストが下がるということであれば、規模拡大した方が有利という判断がされるということでございます。
  119. 主濱了

    ○主濱了君 よく分かりませんが、またもしあればもう一回お伺いしたいと思います。  先を急がせていただきまして、次は諸外国との生産条件格差是正対策についてお伺いをいたします。  まず初めに、先ほどの質問と若干重なる面があるわけですが、農業構造の展望、平成二十七年の農業構造の展望のその他の販売農家の中に稲作農家がどれぐらい占めるのか、まずお伺いしたいと思います。
  120. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 昨年三月に公表しました農業構造の展望におきまして、平成二十七年において効率的かつ安定的な農業経営以外のいわゆるその他の販売農家は百三十万から百四十万戸程度になると見込んでおるわけでございますが、このうち稲作の、つまり米の販売金額が最も多い農家稲作が主にやっていると思われる農家は八十六万戸程度と見込んでおります。
  121. 主濱了

    ○主濱了君 次に、国内産米の主な流通経路とその価格決定システムですね、これについてお伺いいたします。国内産米の流通経路、それから価格決定システムですね。
  122. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) まず、国内米の流通につきましては、平成十六年に改正された食糧法により制度改革いたしまして、創意工夫ある米産業の発展と需要に応じた米作りの促進の観点から、生産者は様々な需要者と自由に直接取引ができるなど、流通は自由化されたところでございます。  十七年産米の流通経路に関しましては、本年三月末に更新いたしました基本指針によれば、生産者から単位農協などへのウルチ米の出荷数量は本年一月現在で五百三十三万トン、このうち単位農協などから全農などの全国出荷団体への販売委託数量が四百六万トン、残りは単位農協などから卸売業者などへの直接販売でございます。さらに、以上のほかの経路といたしまして、生産者から消費者などへの直接販売が百十五万トン程度あるものと考えております。  また、価格についてでございますけれども、米の価格につきましては、いわゆるコメ価格センターを通じて取引される場合には入札により個別産地品種銘柄ごとの価格が決められており、コメ価格センターを経由しないいわゆる相対取引などにおいては、センター価格も参考にしつつ、売手と買手との間で価格が決められているところでございます。
  123. 主濱了

    ○主濱了君 今のは国産米ですね。  次は、現在、ミニマムアクセス米、先ほども話題になりました、このミニマムアクセス米は幾ら輸入されて、それで国内に幾ら流通しているか、これについてお伺いしたいと思います。
  124. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) ミニマムアクセス米につきましては、平成七年四月から輸入しているわけでございますけれども、平成七年四月から平成十七年十月までの間に輸入された累計としてのミニマムアクセス米の数量は、総計で玄米ベースで六百七十八万トンとなっております。  用途別の国内流通量は、主食用に六十四万トン、加工用に二百四十万トンとなっておりまして、販売残に係る在庫のうち二百万トン程度を援助用に供給しております。その結果、平成十七年十月末現在の在庫量は百七十万トンというふうになっております。  なお、主食用に六十四万トンを販売しておりますけれども、これを大きく上回る量の政府国産米を援助用に活用することによりまして、国産の主食用米の需給に影響を及ぼさないようにしているところでございます。
  125. 主濱了

    ○主濱了君 今の御説明である程度分かったんですが、もうちょっと詳しく、ミニマムアクセス米の販売先、要するに、ミニマムアクセス米ですから関税ゼロのお米ですよね、その販売先はどこになっていますでしょうか。まず、販売先からお伺いしたいと思います。
  126. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 用途別に見てみますと、ミニマムアクセス米については、国産米で対応し難い低価格の加工用の需要を中心に供給を行っております。具体的には、みそでございますとか米菓、米穀粉、しょうちゅうなどの原料として加工用需要者に供給してきております。  また、SBS方式による主食用需要に対しましては、主として外食事業者などの業務用需要に供給されております。
  127. 主濱了

    ○主濱了君 そういったような国内に流通するミニマムアクセス米の販売価格、先ほど国内米の関係お話をいただきました。このミニマムアクセス米の国内価格はどうやって決められるのか。それともう一つ、実際の流通している、流通というか売買価格は幾らぐらいになっているのか、お知らせいただきたいと思います。
  128. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) ミニマムアクセス米の売渡価格でございますけれども、大きく分けますと、いわゆるSBS方式で主食用に供給されるもの、それから加工用に供される一般ミニマム米と二種類あるわけでございますけれども、まず主として主食用向けに販売されるSBS方式の場合でございますけれども、政府が決定いたします買入れ予定価格以下であり、かつ、売渡し予定価格以上の申込みのうち、国際約束に基づくマークアップの上限、今キログラム当たり二百九十二円でございますけれども、その範囲内で差額の大きいものから順次予定数量に達するまでのものを売り渡すこととしております。その際に、直近の申込み状況を踏まえて、国内産米の市況価格の動向を勘案して最低売渡価格を設定しております。  次に、加工用に供される一般ミニマムアクセス米の販売におきましては、直近の申込み価格の状況でございますとか、同等の原材料用の国産のいわゆるくず米の市況などを勘案して最低売渡価格を設定した上で、競争により売り渡すこととしております。  具体的にそれでは幾らの価格になっておるかといいますと、平成十七年度のSBS方式による主食用の売渡価格は、全銘柄加重平均でトン当たり二十一万七千四百七十一円となっております。また、加工用の売渡価格につきましては、これは産地国や加工用の中での具体的な用途によってかなり幅がありますけれども、直近、本年の五月における価格水準は、トン当たり四万四千八百九十三円のものから十三万四千五百円という幅になってございます。
  129. 主濱了

    ○主濱了君 今のトン当たり二十一万円というのは、六十キロ、一俵当たりに直しますと幾らになりますか。
  130. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 六十キログラム当たり一万三千四十八円でございます。
  131. 主濱了

    ○主濱了君 ありがとうございました。  今、ミニマムアクセス米の例で、外国産の米の流通の仕組み、流通した場合、実際に流通しているんですけれども、その一端を示していただきました。それで、一般的に、生産条件に格差のある安い外国産米が日本に流入した場合、これが一応どのような形で流通するかというのが推測できるんじゃないかなというふうに思っております。  本会議での中川大臣の御答弁では、仮に米が格差是正対策対象品目になったとしても、担い手以外の農家はいわゆるゲタの対象にはならないと、このように御答弁をいただいているところであります。そうしますと、一般的に考えますと、その担い手以外の稲作農家、これは、安い外国産米が流通すればこれは壊滅的な打撃を受けることになってしまう、その他販売農家ということですので、百四十万程度の中の、先ほど御答弁では八十六万戸程度の稲作農家、これはもう壊滅的な打撃を受けてしまうと、こういうことに私はなってしまうというふうに思います。これが一般的なシナリオであろうというふうに思っておりますが、別のシナリオがあるとすれば、これをお示しいただきたいなというふうに思います。
  132. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) お尋ねの件につきましては、先ほど大臣からるるお話しいたしましたように、ただいま交渉中の事案でございますから、その結論を先取りして、ある想定を置いてお答えするということは差し控えたいと思っております。  ただ、大臣が申し上げましたように、今回の新たな経営安定対策につきましては、そういったWTO交渉の帰趨とは別に、我が国の農業が、農業者の減少、高齢化、あるいは耕作放棄地の拡大という事態に直面しておるわけでございまして、こういった我が国土地利用農業の構造改革を進めるために、やる気能力のある担い手対象を絞って、こうした人たちに頑張ってもらうということをしなければならない瀬戸際にあると、こういう認識の下に法律を出しているわけでございます。  ですから、零細・兼業農家といえども、集落営農組織に参加するなどの方法は、門戸は開かれておるわけでございまして、そういった中で、事情の変化があれば、ますますそういった集落営農組織等への参加をいただいて担い手になっていただくということが更に必要になるのではないかと考えております。
  133. 主濱了

    ○主濱了君 今のところでまず二点指摘をさしていただきたいと思います。  二十七年の農業構造の展望というのは、このWTOでの米の扱いについて全く考慮に入れてないか、一番甘い考え方をしているというふうに私は判断をせざるを得ないと。もし、もっと厳しい考え方、シナリオを考えているのであれば、まずそれをお示しいただきたいということ。  二つ目。先ほど来、農林水産省の皆さんは、やる気能力のある者を選ぶと、こう言っておりますが、民間農家やる気能力もあるんですよ。少なくとも、米を作るためにはみんな自分が一番だと思っているんですよ。それを、やる気能力のある人をそこから選ぶというのは、私は非常に今農業で頑張っている人たちを侮辱しているんじゃないか、こういうふうに思います。  この二点、お伺いいたします。
  134. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 前段の構造展望でありますが、昨年の三月に公表されているわけでございます。現時点におきましてもWTO農業交渉は継続中でございます。ですから、その結果を予測して展望をつくるということは考えられないわけでございます。それが甘いかどうかは分かりませんけれども、昨年三月の時点で、我が国の農業の実態を正確に見据えた上で、さらに一定政策支援を行うことを前提として望ましい姿として示したものでございます。そういう事情にあるということを、この構造展望の性格上、御理解いただきたいと思います。  それから、やる気能力のあるという言葉でございますが、それは土地利用農業の場合に宿命的にある程度の耕作規模を擁せなければ所得が上がらないわけでございます。現在、ほうっておきますと、この高齢化の中で耕作者がどんどん減っており、耕作放棄地がどんどん増えているわけでありますから、これをしっかりと担っていただける農家を、ある程度の数、限られた時間でつくり上げていかなければならない、そういう瀬戸際に立たされている、そのための、今そういう努力をしようとされている経営体に対してエールを送ると。さらに、具体的な農地の流動化であるとか、資金の手当てであるとか、そういったものを明確な形で示すことによって、なかなか厳しい農業情勢の中だけれども、規模拡大努力してみようという人たちにやっぱり元気を与えていくということが必要なのではないかと考えております。  そういった観点に立って今回対象者を決めているわけでございまして、その対象から外れた方に意欲能力もないと言っているつもりもございません。
  135. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) よろしいですか。
  136. 主濱了

    ○主濱了君 大臣にはまとめてお伺いしますので、誠に申し訳ございません。  後段についてはまた後で議論をしたいと思うんですが、前段について反論申し上げたいと思います。  前段、要するにWTOの結果が分からないので何ともしようがないというのであれば、WTOの結果が出てからこの法案提出すればよろしいんじゃないですか。あるいは今回の食料農業農村基本計画を完成すればよろしいんじゃないでしょうか。これがまず第一点。  もしそうでなければ、そうでなければ、最善のシナリオと最悪のシナリオ両方を考えて、それを国民にきちっと説明をすると、これ当然のことだというふうに思うんですよ。こうだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  137. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) もう主濱委員も御承知だと思いますが、今回四品目、いわゆる生産格差是正対象品目として四品目を選んでいる。じゃ、なぜ米を入れないのかということでございますけれども、これはもう、いわゆるAVE換算で七百八十何%の関税があると、これは世界的にもう周知の事実になっているわけでございます。我々は三百四十一円と、こう言っていたわけでありますけれども、WTOのルールに基づくと七百八十数%と極めて高い関税、したがって内外格差は十分関税によってファイアウオールされていると。したがって、今回は内外の生産条件の格差による不利益は被らないというのが現時点でございます。  それじゃ、WTOの結果はどうなるのかということ、これはもう農家の皆さん、米作農家の皆さん極めて御関心の高いところだろうと思いますけれども、文字どおり来月あるいは七月中にどうなるかというぎりぎりの交渉をやっているということで、いや、それでは仮に最悪の場合、何をもって最悪にするかと考えるかはまた別といたしまして、最悪に対しても、その場合には、それでは、じゃ四品目に加えて米の方も五品目め入れますなんということを答弁をしたら、ああ、それならそれは七百何十%、アメリカが言うように九〇%カットして米の関税を八〇%にしてもいいのではないかと、その分価格差補てんをすればいいんだ、品目横断でぼんと加えてやればいいじゃないかという議論にもなりかねません。我々はそういう方向を決して望みたくありません。  現行の中で日本の米作というものを守っていきたい、そしてまた、できれば頑張っていただいて、輸出すら我々は今視野に入れながらいいものを作ってもらいたいと、こういうふうに思っているわけでございますので、どうかこの六月、七月に当たりまして、これはあくまでも現行WTO協定に基づいての政策であると、したがって七八〇%を前提にしての品目横断対策であるということを是非とも御理解をいただきたいと。  交渉については、頑張れというふうにいつも応援していただいております主濱先生でございますので、そういう意味でも、是非ともよろしく御理解のほどをお願いいたします。
  138. 主濱了

    ○主濱了君 この議論についてはまた後ほど、もう一回あるとすればもう一回やらしていただきたいなというふうに思います。  まず、中川大臣には、五月二十三日、パリにおける非公式の閣僚会議への御出席、本当に御苦労さまでございました。  WTOに関して、中川大臣は、パリでは一般的には市場アクセス、それから国内支持、それからNAMA、この三つの課題が、大きな三つの課題があります。これに加えまして、途上国の開発を指摘していると、非常に発展途上国のことも考えた主張をなされたというふうに聞いております。本当に御苦労さまであったと思います。さらに、要求する側がまず譲るべきとの主張もしたと、こういうことでございます。これも私ども、そのとおりに思っております。引き続き頑張っていただきたいわけなんですが。  ちょっと本題からずれますけれども、このWTOについて一つだけ提案しておきたいんですが、日本としての整合性を取るべきだ、農業分野だけではなくて、鉱工業分野だってあるわけです、サービス分野だって、一杯の分野がある。しかしながら、今WTOにおいては、農業分野は中川大臣とか、それから鉱工業分野は二階大臣であるとか、個別に対応している。日本がない。日本としてどう対応するんだというところが私はないような気がする、全体として攻めたり守ったりしなくちゃいけないわけですよね、工業分野も含めて。農業分野だって、アメリカの国内支持に対しては攻めなくちゃいけないし、うちの方の関税に対しては守らなくちゃいけないし、そういうふうな全体の中でやらなくちゃいけないんだけれども、その司令塔がない、各省があって日本がないと、こういう状況だと思うんですよ。ですから、これは何とかWTOについては司令塔を設ける。そうすれば、今のようなちぐはぐなことは出てこないのではないかなというふうに思うわけであります。これは要望でございますので、以後、よろしくお願いをしたいと思います。  次、生産調整についてお伺いをいたします。  まず、生産調整についてですが、基本的な認識、問題といたしまして、そもそも米の生産調整は何ゆえ必要なのか、まずお伺いいたします。
  139. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 米につきましては、潜在的な生産可能数量が需要量を大幅に上回る、いわゆる需給ギャップが存在しておりまして、需給価格の安定を図るためには生産調整が必要であるということで実施しております。このため、米につきましては、食糧法において米の需給の均衡を図るための措置として生産調整を位置付けているところでございます。仮に生産調整を廃止した場合には、過剰な生産により膨大な余剰米を発生させ、米の価格の大幅な低下を招くものと考えております。
  140. 主濱了

    ○主濱了君 ありがとうございました。  生産調整の数量を決め、割り当てる主体はまずはだれでしょうか。また、生産調整しなければならない、生産調整の割当てを受ける側、これはだれでしょうか。そして、生産調整に応じない場合、主体から対象に対するペナルティーはあるのかないのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
  141. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 十九年産から移行を目指しております新たな需給調整システムは、農業者農業団体が地域の販売戦略に基づき主体的に需要に応じた生産に取り組むことにより、米作りの本来あるべき姿の実現を図るものでございます。  生産調整のための生産目標数量の配分を行う主体についてでございますけれども、現状までの需給調整システムでは行政が行ってきておりました。十九年産からの移行を目指す新たな需給調整システムでは、JA、市町村などを構成員とする地域協議会の設定する配分の一般的なルールなどに基づいて、JAなどの生産調整方針作成者が自らの生産目標数量を決定するとともに、傘下の生産者に配分することとなります。配分を受ける対象者は、現行の制度、新たなシステムにおいても、いずれにおきましても生産者でございます。  ペナルティーの関係でございますけれども、現行の需給調整システム及び新たな需給調整システムのいずれにおきましても、生産調整に参加しないことによるいわゆるペナルティーというものはございませんけれども、一方で、産地づくり対策などの米政策改革に係る諸施策生産調整を的確に推進するためのメリット措置として講じているところでございます。
  142. 主濱了

    ○主濱了君 ありがとうございました。  需給調整のために生産調整をすると最初に御答弁をいただいたわけですが、それでは、生産調整を実施しない場合、数量がどの程度増加して、価格がどこまで下がると想定しておられるんでしょうか。これは大事な問題だと思うんですよ。生産調整というのは、これは所有権の制限ですよね、所有権の制限。一般的に言うとそういうことで、これ、所有権を制限するとそれなりの補償をしなくちゃいけないと、こういう問題だというふうに思います。ですから、その所有権を制限する以上の事情がないといけないわけですよ。どの程度とお考えでしょうか。
  143. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 生産調整を廃止した場合の米価水準とのお尋ねでございますけれども、まず生産調整を廃止したときに、まず現状の中でどの程度水稲に復田するのかといったような見込み、そこについてかなり大きな仮定を置かなければいけない。それから、一般的に米は需要の価格弾力性が低いということでございまして、わずかな供給の増加があっても価格が大きく下落するという価格弾力性の問題等々があって、これをどの程度予測するか、こういったことでかなり大きく左右されると見込まれていることから、具体的な水準を見通すことはなかなか難しいと考えております。  このような中で、平成十四年、生産調整に関する研究会におきまして、一定の前提を置いて試算した場合には、米の生産量が約百七十万トン増加し、短期的には六十キログラム当たり八千円程度にまで下がるという試算値が紹介されたところでございます。  いずれにいたしましても、生産調整を廃止した場合には、大幅な米価の下落を招くことは避けられないと考えております。
  144. 主濱了

    ○主濱了君 ちょっと今の説明だけでは、本当にその所有権を制限してまで生産調整を進めるという理由になり得るのかどうか、私にはちょっと判断できかねます。  関連しまして、生産調整をしているにもかかわらず、近年、米の価格が低下しております。これをどう説明していただけるんでしょうか。
  145. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 生産調整を行っているにもかかわらず米の価格が下がっている背景として、食生活の変化、食料消費におけるパン、めん類等との競合の中で消費量の減少が続いていること、あるいは外食事業者等のアンケートなどを取りますと、やはり仕入価格の安さというのを重視されているといったようなこと、そういった消費の川下における低価格への志向が根強いことも挙げられるかと思います。  また、十六年産につきましては、十五年産、御案内のとおり不作でございました。その結果、卸売業者等が不作であった十五年産米の在庫を大幅に抱えた、そういったことから十六年産新米の買入れ意欲が停滞したということがございます。それから、十七年産につきましては、いわゆる全農米事業改革の中で販売対策費の見直し、その影響も出ているのかというふうに考えられると思います。
  146. 主濱了

    ○主濱了君 ちょっとはっきり言ってよく分からないんですけれども、ちょっと先を急ぎたいと思います。  この生産調整と実は基盤整備の関係なんですけれども、生産調整をしながら、一方において基盤整備の促進を図っていると。要するに、基盤整備はどちらかというと効率的な効果的な生産を目指すと、同じ土地であれば生産量が上がると、こういうことを進めているんですよ。私は、はっきり言ってこれはアクセルとブレーキ両方同時に踏んでいるのかなと、こういう感じがいたしますが、これが政策に整合性が取れていると言えるんでしょうか。又は、取れているんであればそのことについて説明をお願いをいたします。
  147. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) ちょっと質問通告なかった質問でございますのであれでございますけれども、いわゆる基盤整備事業においても、いわゆる水田を単に米として利用するだけではなくて、水田水田として他作物も作付けできるような、そういった形の土地改良もやっているというふうに認識しております。  そうした中で、先ほどからるる申し上げているように、潜在生産力が大幅に上回っておるという中で生産調整は実施していく必要があるというふうに認識しております。
  148. 主濱了

    ○主濱了君 これもちょっと、今の答弁よく分かりませんでした。私もこの点については質問通告していませんでしたので、後ほどまた改めて議論をさしていただきたいというふうに思います。  それで、最後になりますけれども、その生産調整の主体が行政から民間に移ったということなんですが、なぜ今生産調整の主体を行政から民間へ移したのかと、こういうことについてお伺いをしたいと思います。事情が変わったのか、必要性が弱まったのか、はたまた、そもそも生産調整を必要としないと、こういうことなのか、どういう事情があったのかということであります。  私は、生産調整を必要とするということであれば、これは政府が責任を持って、行政が責任を持ってやってしかるべきだというふうに思います。しかし、所有権の制限なんかに生ずるその責任だけを回避して、実は裏でコントロールをしている、こういうことであっては非常にいけないというふうに、こう思います。そういうこそくなといいますか、そういうふうなことであってはもうこの今のやり方そのものに反対をせざるを得ないわけですが、この点どう考えているのか、お願いいたします。
  149. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 米政策改革につきましては、平成十四年十二月の米政策改革大綱に基づきまして、平成二十二年度に米作りの本来あるべき姿の実現を目指すこととし、平成十五年七月に食糧法を改正するとともに、十六年産からその実現、いわゆる米作りの本来あるべき姿の実現に向けて取り組んでいるところでございます。平成十四年十二月の米政策改革大綱の中では、早ければ十九年度に農業者農業者団体の主体的な需給調整システムの移行を図ることとされているところでございます。  こうしたことから、十九年産からの移行を目指す新たな需給調整システムは、農業者農業者団体が地域の販売戦略に基づき、主体的に需要に応じた生産に取り組むことにより、米の需給価格の安定を図るという米作りの本来あるべき姿の実現を図るものでございます。  この新たな需給調整システムにおきましては、国、都道府県、市町村のそれぞれが需要量に関する具体的な情報の提供を行う、行政から提供された需要量に関する情報を基に、地域協議会において配分の一般ルールなどを設定した上で、JAなどの生産調整方針作成者が傘下の農業者生産目標数量の配分を行うこととしているところでございます。  さらに、国は、地域水田農業ビジョンの実現が図られるよう構造政策経営政策及び生産政策を総合的かつ有機的に連携を図りつつ実施することとしているところでございます。
  150. 主濱了

    ○主濱了君 今の答弁も実はよく分かりません。これもまた後で議論をさしていただきたいなというふうに、こう思います。  時間が迫ってきましたので、今度は食料自給率について伺います。  食料自給率の中でも、特に今日文部科学省さんに来ていただいておりますので、そちらの方から先にお伺いをしたいと思います。  我が国が国境措置を講じてまでも守ってきた米、この米を国民が食べなくなってきていると、これは昭和三十五年のもう半分近くになっていますかね、六十一・八で半分近くまで減ってきていると、こういうことでございます。  これは昭和二十九年に学校給食法というのができました。そして、私の地元岩手県で、片田舎なんですけれども、滝沢村という片田舎なんですが、そこに学校給食が来たのが大体私が十歳ごろですから昭和三十五年ごろなんですよ。アルミだったかプラスチックだったか、食器とスプーンで、あと脱脂粉乳とコッペパン、シチュー、大体こんなもんですね、それから食パンがありましたね、食パン、そういうふうな学校給食が始まったと。  この学校給食のいい面については否定するものではないんですが、ちょうど時期的に、この昭和三十五年の七九%をピークに食料自給率が落ち込んでいるんですよ、急激に、平均的には一年に一ポイントずつ落ち込んでいると。この昭和三十五年というその食料自給率が落ち込んでいるのと、それから私のところにまでも学校給食が入ったという時期が一緒なので、これ無関係とはちょっと思えないと、こういうことでございます。  それで、学校給食に対する評価について、これは文部科学省とそれから農林水産省それぞれ、この学校給食に対する評価とそれから学校給食が今後いかにあるべきか、更にもうちょっと言うと、この学校給食を通じて何とか食料自給率を引き上げること、将来十年掛かろうが二十年掛かろうが、将来的に引き上げることができないか、その辺の展望も含めて御所見をお伺いをしたいと思います。
  151. 西阪昇

    政府参考人西阪昇君) お答えいたします。  学校給食につきましては、御指摘いただきましたように、戦後導入されました当初はパンを中心といたしましたものでございましたが、米飯給食につきまして、これは我が国の伝統的食生活の根幹でございます米飯の正しい食生活を身に付けさせるとともに、日本文化としての稲作について理解させるという教育的な意義を持つものであるというふうに認識しております。  このため、文部科学省では、昭和五十一年に米飯給食を導入をいたしましてその推進に努めているところでございます。当初、週当たり昭和五十一年には〇・六回でございましたが、平成十六年には週二・九回ということで、週五回のうち約三回米飯の給食が実施されているという現状になってございます。  ただ、この数字につきましては地域差がございまして、大変進んでいる地域と、それから大都市部を中心としてまだまだ実施率が低いというところがございます。  このような実施率の低い都道府県に対しましては、私ども重点的に指導を行っているところでございまして、これにつきましては農林水産省さんと連携をして取り組んでいるところでございます。
  152. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 今、文部科学省から御説明したこと、また私どもも全く同じ共通認識で現在、米飯学校給食を推進しているところでございます。  今お話ありましたように、都道府県格差、非常に大きいということで、特に重点的に取り組まなきゃいけない都市部におきまして、保護者、学校給食関係者を対象とした米飯学校給食推進のためのフォーラムの開催でございますとか、学校給食関係者を対象としたメニュー講座の開催、あるいは政府備蓄米の無償提供、そういった方法を通じまして米飯給食の推進を図っているところでございます。  米飯学校給食の推進は、食習慣形成の重要な時期に当たる児童生徒に対して、米を中心とする日本型食生活の実現に寄与できるものと考えております。そうしたことから、今後とも文部科学省と連携を取りながら、推進に当たってまいりたいというふうに考えております。
  153. 主濱了

    ○主濱了君 終わります。  ありがとうございました。
  154. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 民主党のツルネンマルテイです。  今日、私たちが審議しているこの三つの法案に対する衆議院での審議が確かに参考人も含めて三十六時間ぐらいあったかと思います。私もその記録を全部手に入れまして、一つの週末を全部掛けて全部読ませていただきました。大変な資料です。もちろん、ほかの参考資料も読みました。  その中で、特に私は、今は主なテーマになっている担い手法案についてのところは丁寧に読みました。だから、どのような問題が衆議院で一番問題になったかということは大体において分かっているつもりです。その記録を読んだもう一つの理由というのは、繰り返し同じような質問にならないようにということも考えました。だから、少なくとも違った観点から私は質問をさせていただきます。  しかし、一回目の質問としては、やはり大臣が、参考人のところは別として、あとは全部に参加したと思いますから、衆議院での審議に対するコメントを少しいただきたいんですよ。どういう印象、どういうふうに考えたかということ。できれば、その中では政府案に対するメリットとデメリットを一つだけでもいいですから、いろんな、ここでももう出ていますけれども。デメリットというのは、欠点というのは大臣の立場ではもちろん言えないと思いますけれども、やはり反省点が少し今日も出ていますけれども、幾らかあると思います。あるいは、これは本当にシナリオのとおりになるかどうか、どういう懸念があるか、せめてそういうところも少し一つぐらいあればいいし、そして私たち民主党の法案もそこで審議されたと思いますから、同じように民主党の法案に対しても、一つでもいいからメリットとデメリットを是非聞かせてください。お願いします。
  155. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、ツルネン委員が三十六時間の審議の議事録を精読されたということを心から敬意を表したいと思います。  衆議院での審議を今振り返りますと、まず民主党が案を出されてきたと。民主党の明日の農林大臣を始め、民主党の農政に極めて詳しい衆議院の委員の皆さん方が委員を出してきて、政府案と野党第一党が提案を出して、それでお互いに与野党の委員の皆さん方がそれぞれ質問をしてきたということで、非常に私はそういう形は良かったなというふうに思っております。  そういう中で、個々の内容につきましては今後また参議院で、別の院ですからまたゼロからスタートをさせていただくと、こういうふうに思いますので細かいことは避けますけれども、与党・政府案といいましょうか、我々がずっと作業をしてきたことの中で反省点といいましょうか、まだまだ不十分だなと思うのは、今日も御質問が出ておりますけれども、国民、特に関係者、農業者の皆さんに対して、我々が今やろうとしていることに対して一生懸命説明をしているつもりではございますけれども、まだまだ中身についての御理解がない。七割は切捨てにするのではないかとか、五割の面積対象にしないのではないかとかいったような御質問等をお聞きいたしますと、まだまだ説明が不十分だったのかなと。  しかし、衆議院での審議を通じて少し御理解をいただいたと思いますけれども、まだまだそれでも不十分だというふうに思っておりますので、参議院での御審議を通じて、賛否、賛成するかしないかの前に関係者、農業者皆さん方に参議院での審議を通じてどういうことをこの委員会の場で審議をしているのかということが少しでも分かっていただければ、これからの法案審議、あるいはまた御賛同をいただきましたならばという前提でございますけれども、この法律の中身について更に御理解がいただけるものと、こういうふうに期待しているところでございます。
  156. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 ありがとうございます。  では、私の方からも、三十六時間の記録も読みましたから、一言それについても私の立場からも話をさせていただきます。  今は大臣の答弁の中でもありましたように、一つ話題になったのは、この新制度がスタートする時点では耕地面積の大体五割が入るんじゃないか、あるいは農家数でいえば三割。その試算に対して何回も話題になりましたとき、そのときの大臣の答弁の中では、それについてこういう言葉も書いてありましたね。その数値は大まかな推定によるものであり、あくまでも幾つかの前提条件を置いて試算したものであるというような答弁もありました。それも強調しました。つまり、それは大きくこれからやり方によっては変わるだろうということ、私もそう思います。  つまり、今後の時点ではその展開を私たちはだれも、与党も政府も私たち野党の方でもまだまだ読めないということは、それは今日の審議の中でもたくさん出ていましたね。認定農業者はこれからまだどのくらい増えるか、あるいは特に集落営農参加する人たち、あるいはその中ではいろんな特例もありますね。例えば、後で私は問題にしますけれども、所得特例で担い手になることも一つの方法でありますね。こういうのはどうなるか、まだ分からないということですね。  次の質問に入る前には、今も言いましたように、私の方から一つ、私はすべてのことを、その前には私たち民主党は、御存じのように、この法案に、政府案に対して反対の立場ですけれども、やはり私はいつも前向きに現実的に考えていますから、政府案の中にもメリットももちろんあります。そして、民主党の案の中でもそうです。  一つのメリットといえば、私から見れば、非常に日本農業のこれからに対する高い目標を立てているということですね、高過ぎるということもありますけれども。やはり農業再生に挑戦できるという一つの夢が与えられているということ、政府は大志を抱いているというふうにも言えるんじゃないかなと思いますね。これは確かにもし本当にそのとおりになれば、これは大きなものであります。夢を持つことは決して悪くないんですね。  しかし、デメリットも二つだけ、たくさん私たちはここでも指摘していますし、これからも私は指摘しますけれども、衆議院の審議を聞いてから、デメリットは二つ、欠点というか、二つ言えば、一つは、何回も問題になっているのはいわゆる担い手だけが参加できる夢というか挑戦ですね、ほかの、そこから外れている人たちはこの夢に参加できないということは大きな欠点であります。  それで、もう一つは、画期的な改革と言っていても、実際には、いわゆるゲタ対策対象となる品目は四つだけであって、そして、今までのその四つの品目に、作物に対して国の方からも支援もあったということですね。しかしそれでも、支援があったにもかかわらず生産がほとんど増えていないということもあります。だから、そういう意味でこれはそんなに画期的なことではない。もちろん、前から準備された一つ対策ではありますけれども。  だから、恐らく政府が考えている、これは私の推定ではありますけれども、この今度の新制度のねらいは、もっと徹底的に農地担い手、つまり認定農業者とか集落営農とか、そういう人たちに集積して、そして国際化や高齢化の進展に備えることであるということ。しかし、果たして、この政府のシナリオのとおりになるのか、もちろん分からないということですね。  しかし、少しずつはこれは一般の農民の中でも浸透されているということの幾つかの兆しもある。さっきは同僚の議員もこの新聞のアンケートも引用しましたけれども、例えばこの新聞の中には、別な質問に対するアンケートでは、この担い手限定をどう思っているか、非常に限られた人数ですけれども、その質問に対しては適切又はやむを得ないとするいわゆる肯定的な回答は五五%あった、まあようやく半分を超えたという、やむを得ないという人も入れてですね、もちろんこれは北海道とかいろんなところで差がたくさんありますけれども、平均としては五五%。しかし、反面、その中では納得できないのも三割まだあるということですね。  本当にもしこの新制度が成功すれば、確かに改革にはなります。しかし、軌道に乗るまでにはかなりの時間が必要であると私も思います。その間、恐らく大変な混乱が農業関係者の中で起きると私も懸念しています。まさしく小泉総理がよく言う、痛みを伴う改革にはこれもなるんじゃないかなと私は思っています。あるいは、達成しないうちに日本農業が崩壊してしまう、そのような懸念をしているのは私だけではない、与党の質問の中でもそのような懸念があったと私は思います。  さらに、民主党の案のメリットは、これももちろん幾つもあります。それに一緒に私もかかわっていますけれども、その中で一番大きなのは、私たちは、この政府案と大きな違いというのは、言うまでもなく、小規模農家兼業農家日本農業の再生に、その夢に参加できる制度になっているということですね。あるいは、食料自給率に関しても、政府が十年間で四五%、民主党は五〇%、将来的には六〇%。これについても私は具体的な、民主党はどういう形でそういうふうに上げることができるかも、ちょっと後でそれも触れますけれども、しかし、これも一つの目標、夢である。  しかし、マスコミでも皆さんの、あるいは大臣の耳にも入っていると思いますけど、私たち民主党の小沢代表が、この食料自給率に対しては五〇%とか六〇%とかそんなことじゃなくて、一〇〇%にしましょうというふうな発言もしているんですけれども、しかしそのような夢を恐らく皆さんがこれは不可能じゃないか、しかし私はやはり夢があってもいいんじゃないかなと思いますから、そこまですぐ達成できなくてもということです。  話がそこからちょっと先へ進みますけれども、私の日本農業に対する夢、夢というか実現したい願いというのは、何回もこの場でも私は話したことがありますけれども、有機農業日本農業の軸に持ち上げること、これも多くの人は、まさしく本当にそんなことになるかと思っているかもしれません、今は一%ぐらいの程度ですから。  しかし、本当に可能かどうかというのを、一つの確かめる方法としては、前から知っていたキューバという国では、世界で今有機農業は一番進んでいるという国がありますから、私たちはゴールデンウイークにそこに視察に行きました。有機農業の視察に行きました。  その視察に対する、ちょっと五分、六分ぐらい、ここではどういうことを私たちはそこで発見しましたかというのを報告しますから、後でそれに対して大臣のコメントを求めます。有機農業理解者でもあると私は見ていますから、このキューバのことはどの程度日本では参考にできるかということについてもちょっとお聞きしたいと思っています。  私たちは十四名で行きました。国会議員は私を含めて私たち三名だけ、あとの人は、有機農業あるいは日本農業の詳しくよく知っている関係者で行きました。一週間そこで回りました。  向こうでは、農林水産省というよりも農業省というのがあります。その農業省の幹部が、局長とか部長たちはずっと最初から終わりまで、まず私たちが見たいところを用意してくれて、そしてずっと最初から終わりまで私たちに付いていってくれました。案内してくれました。だから、向こうは農業省が一緒にやってくれたものであります。  その中で、私は、キューバのように国を挙げて有機農業に挑戦すれば、私のこの夢、あるいは私たち有機農業者関係者の夢は決して不可能ではないということを確信しました。  キューバでは、現在は野菜の大半が有機栽培によって栽培されています。九〇%くらいと言われています。一つの理由は、化学肥料や化学農薬を原則として使っていけないということでもあります。あるいは、手に入らないということもあります。しかし、それでも生産量は、一ヘクタール当たりは慣行農業と同じ程度に達成しているということ、全然減っていないということですね。そして、農業者所得も一般公務員よりも高いということはよく言われました。だから、それを誇りを持ってみんなやっているということですね。そして、私たちも見て回っていくときは、この野菜も見掛けも本当に良く、味もすばらしかった。虫にも全然食われてないということ。つまり、農薬なしで農産物が立派に育つことが私も再確認できたということであります。  例えば、その中では、病害虫防除に対して、日本と同じですけれども、いろんな新しい技術もどんどん発見されていますね。日本でも使われている天敵昆虫とか、あるいは向こうでよく使われているのは混作栽培、つまり、例えばトマトとレタスの混作とか、ニンジンとキャベツの混作とか、ほかの野菜とヒマワリの混作とか、そこで虫を迷わせるというやり方あるらしいですね。一緒にやるということですね。  あるいは、向こうではよく使われているのはニームという木がありますね。日本でもこれは少し今販売されているらしいですけれども、このニームの木から作られた天然殺虫剤もあります。これは日本では認められていないらしいですけれども、これもよく向こうで使われています。あるいは、いろんな微生物を使ってバイオ農薬を使っています。しかし、これは化学農薬ではないんですね。日本でも今は有機栽培には幾つかのこういう微生物農薬も認められているということでもあります。そして、向こうでは肥料としては、もちろんこれはすべては有機肥料で、特にコンポストなどで使っているというのはミミズのふんであります。これを非常にたくさん使っているということですね。もちろん、ほかにもふん尿とかも使いますけれども。  とにかく、この一週間の間では、私たちは多くのファームや試験場を見学したときは驚きの連続でありました。つまり、亜熱帯気候のキューバでは有機農業ができるのなら日本でもできるはずと私は思います。  なぜキューバではここまで有機農業が成功したか、皆様の中でも幾らかそれは耳に入っていると思います。  つまり、ソビエトが崩壊するまでは、すべての農薬とか化学肥料はソビエトから輸入されましたね。崩壊した後は全部輸入はストップされました。しかし、そこではもう危機に瀕していましたから、だから農薬と化学肥料はないんだから、有機農業に頼るしかなかったんです。そこで、十年間余りではその危機に瀕した農業を再生することができたということですね。  残念ながら、日本農業は現在八百種類の農薬に依存していますね。一ヘクタール当たりの農薬使用量は世界一と言われています。私が願っていることは、キューバのように日本でも何らかの危機によって農薬や化学肥料が使えなくなること、それなら日本も恐らくキューバよりももっと短い時間で有機農業に転換できるようになると思っています。  一週間の視察をこんな短くするのは非常に難しいんですけど、これくらいだけでもどういう視察であったか分かったかと思いますから、これを例えば日本ではどのようにモデルとしては生かすことできるか、とにかくこれに対する大臣のコメントをお願いします。
  157. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) キューバというのは私行ったことございませんので、ツルネン委員の貴重なお話、ありがとうございました。  まず、私は、御指摘いただきましたように、有機農業というものを非常に大事だというふうに思っている一人でございます。認定機関の問題だとか有機JAS等についても過去かかわってきたという、ある意味では誇りすら持っております。  他方、WTOでも日本が今主張しておりますように、多様な農業というものが、これはもう自然相手、生き物相手、気候相手でございますから、いろんな農業があるんだろうというふうに思います。  キューバの国土面積というのは日本の約三割ぐらいだと思いますが、国土の六〇%が農地だというふうに伺っております。そうしますと、六百万ヘクタール以上の農地日本面積の三割の国土でありながら持っておられると。人口は一千二百万弱だというふうに聞いております。  そうしますと、六百万ヘクタール、仮に六百万ヘクタールだとしますと、大ざっぱに日本とほぼ同じ面積だと。まあ日本よりもちょっと多いわけですけれども、大ざっぱに同じ面積だとしますと、日本自給率が四〇%ということになりますと、日本の一億二千万人のうちの四〇%、つまり五千万人の分は日本は自給ができるという計算方法になるわけでございますが、五千万人分、日本と同じような農業をやればキューバでも供給できるわけでありますけれども、人口は一千二百万人弱しかいないという、ある意味ではこれはうらやましいと言っていいのかよく分かりませんが、過去、歴史においては、今御指摘のように、肥料、農薬、あるいは輸送手段等々がなくなって、キューバは大変そういう意味では苦労したという御指摘もございました。そういうこともあったんだろうと思います。  だから、有機農法あるいは天敵農法、その他今いろんな御指摘があって、ツルネン委員から見ても大変すばらしいお手本のような農業だと、私もキューバの農業はキューバとして一生懸命やっておられるんだというふうに思います。  そういう意味で、多様な農業、そうやらざるを得ない、日本もこうやらざるを得ない。急峻な気候の中で、雨が一杯降る中で、急傾斜地等々でも一生懸命農業をやっていかなければいけないということで、日本には日本の長所、短所もあり、キューバにはキューバの長所、短所もある中で一生懸命それぞれ農業をやっているということでございますから、一概に私はどっちがいいとは言えませんけれども、有機農法そのものについては世界一の先進国であるという御指摘は、有機農業の専門家でもいらっしゃるんでそのとおりだろうと思いますし、日本としても生産性を上げていくということももちろん大事でございますけれども、持続可能な、そしてまた農薬や肥料をできるだけ軽減をしていくという方向も大事でございますので、今回の法案の中の車の両輪の農地・水・環境対策についての支援というものも、ツルネン委員から見られますとまだまだ不十分だという御指摘があるかもしれませんけれども、今回、こういう形で、この大きな法案の中の一つの柱として、そういう化学肥料を低減したところは支援をしますよというようなことも盛り込まれております。  いずれにいたしましても、キューバに対する貴重な御視察の結果をお伺いいたしまして、なるほど世界には多様な農業、そしてまたキューバのような農業があるんだなというふうに考えさせられたということで、御報告を大変貴重なものというふうに拝聴をしたところでございます。
  158. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 ありがとうございます。  日本には百聞は一見にしかずということわざがありますから、大臣もさっきは、行ったことないんですから、そして日本農業関係者も、私たち有機農業にかかわっている人たちは行きましたけども、私たちの報告だけではなかなか知らないんですから。向こうでは農業省の関係者が繰り返し言いました。是非日本の方からもっと議員とか政府関係者、農林水産省関係者も視察に来てください、歓迎しますからというふうなメッセージもありましたから。だから、大臣は今いろんなほかのことで忙しいでしょうけれども、農林水産省関係者も一回キューバに是非視察に行ってほしい。  しかし、今日はこれは主なテーマではありませんから。しかし、それでも私も、これは私の夢で、私たちの、あるいはこの法案の中にも環境保全農業、そしてその究極的な目的は有機農業でありますから、それも含まれていますし、それについてもちょっと後でここでまだ質問も用意していますから、そういう意味では、私もこの法案もそういう意味でも評価できる部分もあります。  しかし、今度そこでもうちょっと厳しい質問もさせていただきます。  さっきも話がありましたように、この担い手というのはこれからはだれのことを意味しているかということは分からなくなった。恐らく農業者の中では分からなくなったと思います。政府が、農林水産省が用意しているこの品目横断的経営安定対策のポイントというのがあります。かなりよくできている、私もこれも読んでますけれども。その中では、「はじめに」というところには一番この関心なもの、何回も今日もテーマになっているんですけど、担い手というのはこれからはどういうものになるかということ、どの程度限定されているかということは、一つの文だけ読ませていただきます。  「これまでのような全ての農業者の方を一律的に対象として、個々の品目ごとに講じてきた施策を見直し、十九年産からは、意欲能力のある担い手対象を限定し、その経営の安定を図る施策に転換することとしています。」と書いてありますが、日本では、例えば中山間地域では、日本の耕地面積の四二%があります。その中では兼業農家とか小規模農家がたくさんあります。恐らく、多くの人はこの担い手対象者にならない人があります。しかし、彼らも今までは一生懸命、例えばこの対象品目の小麦とか大豆もそれなりに作っていたと思います。彼らはもうそれ作れなくなるということにもなりますから、だから彼らは、もう私たちは日本農業担い手ではないという気持ちに陥る、分かれてしまうんです。  だからこれからは、政府がこれを先へ、実行するために移しているときは、この担い手とはだれか。中山間地域の小規模農家兼業農家はもはや日本農業担い手ではないのか、こういう指摘に対して、大臣のコメントをお願いします。
  159. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 担い手はだれかということでございますが、何度も繰り返しになっておりますけれども、今回の新たな経営安定対策につきましては、そこで、今お読みいただきましたように、やる気能力のある担い手対象ですと、こう言っておりますけれども、規模要件のほかに、小規模農家兼業農家についても、集落営農組織に参加してくださったり、あるいは経営面積は小さくても複合経営やあるいは有機農業等によりまして一定所得が上げられている場合については対象となることができる道を開いているところでございます。決して中山間地農家を切り捨てているわけではございません。現に、中国地方あるいは北陸地方等を中心に、現在でも正に中山間地と言われているところで集落営農組織がたくさんその集落のリーダーの努力によってつくられているということを、私どもも実際に足を運んで見、また意見も聞いてきているところでございます。  ですから、小規模農家兼業農家といえども日本農業担い手としてはどう逆立ちしてもなり得ないということではないと。集落営農組織に参加していただきたい、あるいは複合経営や有機農業によって一定農業所得を上げていらっしゃる方については経営規模を問わず対象となる道を開いていると、このことを私どもも地方にも参りましていろいろ御説明をしているわけでありますが、どうもこの部分の通りが余り良くないということは各委員から御指摘のとおりでございまして、今後とも、こういった隅々まで的確に情報として伝えていくことによって、こういう規模農家についてもやる気を起こしていただきたいと、こういうふうに考えております。
  160. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 この集落営農参加すれば担い手になる。しかし、後でこれも私もデータも教えてもらいますけれども、現時点ではほんのわずかしか参加してない。だから、それを増やすことできたら確かに可能だけど、その壁が、集落営農の組織に加わるというのは気持ちの面でも、後でちょっとそれも指摘しますけれども、極めて難しい面もありますから、だから、これはやはり大きな壁で、今の時点では、大半の中山間地域の人たちは、やっぱり自分たちは担い手にはもはやなれないという気持ちは多いんだと思います。  これにも、今は時間がどんどん進みますからそのくらいにしておきます。後でちょっとそれまた別の角度から触れたいと思います。  もう一つは、何回もここでもテーマになっているのは、食料自給率の目標について、さっきも触れましたように、民主党では十年間で五〇%、将来的には六〇%を目標にしています。その実施のために具体的な政策も、民主党の法案の中でも、あるいは私たちが、民主党が持っているのはたくさんあります。これは、例えば五〇%には十年間で可能ということははっきり示しています。その中の、時間もありませんから、一つだけをちょっと例に出してみたいと思います。  これは民主党の五〇%を目指すところは、例えば小麦の場合は、現在は日本では確かに八十三万トンは生産されていますね。そして、十年間で民主党はそれを四百万トンまで増産するという目標を持っています。もしこれはできるんなら、それだけでも食料自給率が八%が上がるという計算があります。なぜ四百万トンといえば、これは日本では過去最大の生産量です。以前はそこまであったということです。つまり、それは日本の小麦の潜在的な生産可能量でもあります。もちろん、それを実現するためには直接支払とか二毛作をもっと増やすこととか、何といっても耕作放棄地の再利用をすればこれを四百万トンまで今回も持ち上げることは無理ではない。だから、民主党はそれぞれに目標に対してこういう具体的な目標も持っています。  そこで、政府の関係者に聞きますが、同じように政府が四五%、十年たってから、平成二十七年度まで目標にしていますが、その達成するための、一つでも二つでもいいから、同じように具体策をちょっとひとつ示してほしいと思います。お願いします。
  161. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 昨年三月に閣議決定されました食料農業農村基本計画におきまして、平成二十七年度食料自給率目標を四五%と設定したところでございます。この目標達成に向け、生産及び消費の両面において重点的に取り組むべき事項を明確化したところでございます。  具体的には、消費面につきましては、一つは厚生労働省と協力して食事バランスガイドを決定し、その普及をする。あるいは、食育基本法に基づく政府一体となった食育の推進を行う。あるいは、協議会の開催や直売施設の整備の支援などによる地産地消の推進を行う。あるいは、食品表示の充実に資する。外食産業における原産地表示等のガイドラインの策定と普及等の施策を講ずるといったようなことでございます。  また、生産面におきましては、担い手の育成確保でございますとか、売れる米作りの実現のための米政策改革推進でございますとか、あるいは食料産業クラスターなどによる産地ブランド新商品の事業化、商品化の促進等について施策を講ずることとしております。  また、食料自給率目標の設定に当たっては、例えば米につきましては、望ましい食生活の実現により消費減退に歯止めを掛け、これに見合った生産量を確保するといったようなことで設定したところでございます。  今後、関係各方面から構成されております食料自給率向上協議会において策定されました十八年度の行動計画に基づいて食料消費面及び農業生産面における各取組の相互連携を強化することによりまして、食料自給率の達成に向けて関係者と一体となって取り組んでまいりたいと考えております。
  162. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 これも実際にはそういう方針というのはそれぞれの分野では確かにありますけれども、私たちもよくここでも問題にしていたのは、以前にも四〇%から四五%の目標を出しましたけど、それは全然増えなかったということもあります。だから、今度こそはこういういろんな対策では増えるように、もちろん私たちも一緒に力を合わせて頑張りたいと思います。  その中で、ちょっと今触れられましたけれども、この食生活に対して、例えばもっと和食に戻ろうとか、日本食の回帰というか復興というか、それに対して、これは具体的には教育の面でもあると思いますけれども、これは決して簡単なことではないと思いますけれども、それをもうちょっと、これは私の五番目の質問であったんですから、これもちょっと改めて安全局長の方からですか、答弁お願いしたいんです。  そこに私が指摘したいのは、食べ物の残しの削減できるんならこれは自給率向上にどのように影響するか、これにいろんな意見があるんですね。余り影響しない、もちろんこれも減らすのは非常に大きいんですけれども、もし影響しないなら、この食べ残しの削減はどういう形で影響するか、あるいは影響しないか、これも含めて、そして日本食への回帰に対しての答弁をお願いします。
  163. 中川坦

    政府参考人中川坦君) まず、食育の中での日本型食生活の推進という点でございますけれども、農林水産省では、食育を推進する中で、米を中心にして、それと畜産物、水産物あるいは野菜といった様々な副食を組み合わせた非常に栄養的にもバランスの取れた日本型食生活の実践というものを推進をしてきております。この日本型食生活が広まっていけば、自給率向上にも資するものだというふうに考えているわけでございますが。  それでは、どういうふうにして具体的にこの日本型食生活を推進していくかということでありますけれども、これ何よりもやっぱり国民の方々、消費者の方々の実践に結び付かないといけませんので、具体的に、毎日どういった食品をどれぐらいの量取るかといったものをもう少し具体的によく普及していく、あるいは知っていただくと、そして実践していただくということが大事だというふうに思っております。その一つの手段、ツールが食事バランスガイドというものを広めていこうということであります。  具体的に言いますと三つぐらいあるかと思いますけれども、一つは、シンポジウムですとかあるいはイベントの機会をとらえて食事バランスガイドというものについての認知度を高めると、そしてそれを日々の食生活に実践していただくというのが一つの取組であります。  それから二つ目としまして、食品を購入する場あるいは消費をする場ということで食品の小売店、スーパーあるいはレストラン、そういったところでの食事バランスガイドというものを活用していただく。そこへポスターでも何でも張ってあれば、物を買うときに少しでも、何を買うか、今日は何を食べるかということで実践に結び付くんではないかというふうに思っております。  それから三つ目が、この食事バランスガイド、よくポスターなど出ておりますけれども、これは決して食品の組合せというのは固定的なものではありません。ですから、地域の郷土料理などを取り入れた、そういった地域版の食事バランスガイドといったものも大いに普及をしていきたいというふうに思っております。  こういったものを通じまして、日本型食生活の実現、普及に向けて努力をしていきたいと思っております。  それから、後半の方で食べ残しの削減というものがございました。これは直接的には自給率向上に結び付くものではないというふうに思っております。といいますのは、輸入品だけを食べ残しを少なくするというようなことはなかなか現実問題難しゅうございますから、むしろ一般論としての食べ残しの削減ということ。これは、資源の有効利用あるいは環境への負荷をできるだけ低減していくという意味で大変大事な取組だというふうに思っております。  そういう観点から、食育の一環としまして、これは食育推進基本計画の中でも述べられておりますけれども、私たちの食生活が自然の恩恵の上に成り立っていて、またこの食べるという行為が動植物の命を受け継いでいくというふうなこと、あるいは食料生産にかかわる様々な活動に支えられている、人々の様々な活動に支えられているといったことについての理解を深めるために、農林漁業の体験活動などを促進をしていきたいというふうに思っております。  それから、あわせまして、これは食生活指針でも述べられていることでありますが、日々の購入活動の中で買い過ぎあるいは料理の作り過ぎといったことには注意をする。また、食べ残しをしないように適量の摂取ということを心掛けると。あるいは、賞味期限それから消費期限、こういう表示についてもきちっと理解をしていただいて、適切な消費に心掛けていただくと。こういう取組を広げていくことによって、無駄なものの、食べ残しの削減といったものについてより効果を上げていきたいというふうに思っております。
  164. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 今答弁にありましたようないろいろな対策は本当に実を結ぶように私たちも祈りたいと思っています。  これは、私たちは一般のすべての国民に教えるためには、もちろん政府の方でもいろんな取組をしなければならないんですけど、私は、マスコミをうまく利用することも、NHKでもそうですから、これはやっぱりそれをみんな自分の家で見るということだったら、そうするとやっぱり日本食の方にもっと戻れば、これはいろんな意味では、健康の面でも日本人にもっと合うということでメリットですから。ちなみに、私はほぼ一〇〇%は日本食ですね。もうすべて、家の中でもそうですけれども、多くの日本人も同じようになればいいなと思っています。  時間が余りもう六分、七分しかないんですよ。たくさんまだ質問を用意していますけど、残りは残すしかないんですけれども。  一つは私は、六番目の質問ですけれども、この新制度の中では、ゲタ対策の中では、四つの中で特に大豆と小麦の生産目標、政府の案では十年間で二十三万トンから二十七万トンまでと書いてあるはずですけれども、これを本当にカバーできるかどうかということ。  さっきも触れましたように、今まで、兼業農家とか小規模農家もその対策があったんですから作れていたんですね。コストの面と値段の面では、たくさんの補償金が入っていたんですから、できた。しかし、今度は外れたら、その人たちはまずやめます。あるいは、本当に将来を考えると、それを担い手の方に貸すということもある。しかし、そこまでやらないなら、やはり今まで使っていた農地は耕作放棄地になる可能性が非常に高い。衆議院の審議の中では、例えば長崎県の壱岐郡の場合は、これも私たちの党の議員指摘でしたけれども、麦七〇%、そして大豆の四〇%しか今の中では直接支払の対象になっていない、こういうところはたくさんあります。  だから、本当にこれをカバーする、あるいはこの目標を達成するためには、どうやって今までやっていた人たち農地もカバーできるように、その具体的な考えがありますか。
  165. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 小麦と大豆の生産努力目標の達成についてというお尋ねでございます。  その説明する前に、我が国の小麦なり大豆の生産の現状というものを見ますときに、非常に生産が不安定であると、品質的にもかなり実需サイドから見て課題を持っているということで、これに対する対応が極めて大事というふうに考えております。  それで、新しい基本計画では、一方で農業従事者の高齢化や減少が急速に進むという中でございますけれども、小麦なり大豆の生産努力目標を達成するために、意欲能力のある担い手にその小麦なり大豆生産の相当部分を集積をすると。その中で生産コストを低減する、あるいは品質の向上を図るというふうなことを基本に据えているところでございます。  これ委員御案内のとおりでございますけれども、大豆、麦類を、これは水田転作で増えているものでございますけれども、そのまま植えますと、水管理をしっかりしないと、水も横浸透、縦浸透というのがあるわけでございますけれども、そこの遮断をしっかりしてやらないと育たないわけでございます。そういう面で、しっかりとした担い手が中心になって生産を担うことによってこの生産努力目標が達成できるんだろうと。  具体的に、現在、私どもといたしましては、この麦なり大豆の産地農協に産地協議会を設置していただいておりまして、三百今設置されておりますけれども、それぞれの協議会におきまして計画を作ってその麦、大豆の計画生産、品質、生産性の向上といったことについて取組を開始していただいていると。  農林水産省といたしましては、それらの取組を支援するためのいろんな助成制度でありますとか品種改良、その導入について支援もしていくということを今続けていると、これらを通じまして努力目標を達成したいというふうに考えているところでございます。
  166. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 ありがとうございます。  それに対する反論の時間がもうありません。私はあと五つくらいもありましたけど、一つだけに絞りたいと思いますよ。そして、また機会がありましたら、改めてその残ったところを質問させていただきます。  ここでは大臣に、そこで私の七番目に入っていますけれども、この所得特例の対象条件というのは私も知っています。そして、大体どういう条件であるかということも分かります。これは衆議院の審議の中ではかなり問題になったと私は記録を読んでいます。例えば、この所得特例の法律的根拠があるかどうか、これも省令で定める、これを私は読みましたけれども、それにも今ここでは触れません。  最後の二分くらいしか時間がありませんから、なぜこの所得特例を導入したのか、それについてもし大臣の最後に答弁があれば有り難いです。
  167. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) ツルネン委員が冒頭おっしゃいましたように、四ヘクタール、十ヘクタールという要件一つございます。二十ヘクタールという要件もございます。それを一定の幾つかの仮定を置いた、あくまでも試算として出せという御要求に基づいて出させていただいたのが、そういう試算の下では、戸数で三割、面積で五割ということでございました。  しかし、これは、ツルネン委員もおっしゃいましたように、あくまでも試算であって、認定農家が、あるいは参加したいと、そのために頑張ろうという農家がどんどん増えていくことを我々は期待をしているところでございます。  しかし、面積要件だけではなくて、先ほどやる気能力というやり取りもございましたけれども、規模は小さくても、つまり対象作物の規模は全体として小さくてもいろいろな作物を作って、つまり野菜なんというのは手間が掛かりますけれども、収益が割といいとか、そういうような一生懸命やっておられる、そしていい結果を出している、つまり所得水準が相当高いというような農家にも是非これからもっと頑張っていただこうという観点から、単に面積だけを前提にして、まず面積要件ありきということではなくて、中身にも着目をして面積等が仮に四なり十なりに満たなくてもそういう形でいい結果を出す、あるいはまた、もっといい結果を出していただくというために、この施策是非活用したいという観点で所得特例要件というものを導入したところでございます。
  168. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 もう時間が終わりましたけれども、私も、今はあと四つ、五つの質問を用意しましたから、関係者が答弁の用意していますけれども、八日にもしまたチャンスがあったらそのときこれについて質問させていただきます。  ここで終わります。
  169. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合です。  まず、質問通告をしていないんですけれども、ジャワ島の地震に対する食料援助ということで、農水省の対応について伺いたいと思います。  今日の報道でも、大臣の方から的確な対応を指示されたといったことが出ておりまして、このジャカルタの近郊の、近郊というか、ジョクジャカルタですけれども、死者五千人を超えているというこの大災害におきまして、どういう対応を今検討されているのか、まず伺いたいと思います。
  170. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、谷合委員御指摘のように、一年半もたたないうちにまたインドネシアで大きな自然災害があったということで、日本のある意味では隣国での災害でございますから、日本としてできるだけのことをしなければならないというふうに思っております。  昨日、事務次官には、どういう要請なりがあっても対応できるようにという指示をしたところでございます。我々としては主に食料関係ということになろうと思います。現時点では、食料に対する要請を、インドネシア政府から来ておりませんけれども、ニュース等を見ますと、被災された方が食べ物がないというようなインタビューといいましょうか、映像が流れておりましたので、どういう形でやっていったらいいのか、現地で調達をして送っていったらいいのか、日本から届けていったらいいのか、また通路が大変災害に遭っているという条件もございますので、とにかく必要最低限の、例えばめんであるとかあるいは脱脂粉乳であるとかいったものを念頭に置きながら、それに限りません、何でも対応できるように関係者にはお願いしながら今待機しているという状況でございます。
  171. 谷合正明

    ○谷合正明君 そういう対応のお話しいただきまして、今ある程度ほっとしたところでありますけれども、私もやはり、このような検討だけじゃなくて、実際に要請が今のところないかもしれませんが、実際はニーズはあるんだろうと思いますので、是非実行していただきたいなと、どういう形であれ、思います。特に、タイミングを失うとこの援助も迷惑になりますので、例えば脱脂粉乳を送ったとして、向こうの倉庫でたくさん山積みになっているとか、あるいは向こうのマーケットを阻害するというか混乱させるような事態にもなりますので、こういう緊急事態の食料援助というのは、食料援助というか支援というのは、やはり日ごろから準備して、いろいろなケースを想定して準備しておくのが大事なんだろうと思いますので、日本から食料を送るだけじゃなくて、現地調達だとか、あるいは農機具であるだとか、あるいは市場、崩壊しているかもしれません、そういった市場の修復だとか、いろいろなステージに合わせた手段があると思いますので、是非大臣の方でしっかりと検討していただきたいと思います。  続きまして、今回の法案について質問をさせていただきますけれども、まず担い手経営安定法案でありますが、これは戦後農政を転換するものであると、それは直接支払による政策支援一定の基準を満たした担い手に限定したものだと、すべての農業者対象とした一律の農政からの大転換を意味するものだと、これはもう午前中からの質疑で出ておりますが、そういう意味で私もやはりこの新しい新法を導入するに当たっては、これまでの農政というものを総括すべきであると、しっかり総括するべきだと思っております。  昭和三十六年の旧農業基本法、これは農工間の所得格差是正することを目的としたものでありまして、規模拡大あるいは生産向上によるコストダウンによって農業構造を改革して農業所得向上を目指したものでありますけれども、実際、現実としては農家所得というものは伸び悩んでいて、生産構造も脆弱化してきていると。また、農地の集積も思うように進んでいない。あるいは、一方でもう耕作放棄地も増えていると。耕作放棄地も、昭和三十五年から約四十年間で二百四十万ヘクタールものが耕作放棄地となっていった。これは、農地改革で小作人に解放した百九十三万ヘクタールよりも大きいというようなものであります。  また、昭和三十五年から今日まで、GDPに占める農業の割合というのも九%から一%に減少してきたと。一方で、六十五歳以上の高齢農業者の比率というのも一割から六割へ上昇したと。フランスにおきましては、五十四歳未満の農業者が今六割以上ということです。対照的な結果になっているんだと思います。  私の方からまず冒頭に、これまでの農政ということで、これが思いどおりに、思い描いたとおりに進まなかった理由というものは何なんだろうかという、その辺りの反省点を踏まえた分析を聞かせていただければと思います。
  172. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 委員御指摘のとおり、現在、農業従事者の減少でありますとか高齢化、そういった中で農業生産構造の脆弱化が進行しております。特に、水田農業を中心に担い手が十分に確保されているとは言えず、また担い手への農地の利用集積についても近年増加率が鈍化してきておりまして、土地利用農業を中心に農業の構造改革が立ち後れているのは事実でございます。    〔委員長退席、理事常田享詳君着席〕  このように、水田農業を中心に構造改革が進んでこなかった主な要因といたしまして、一つには、近年の経済状況の中で、担い手と言われる層の規模拡大意欲が抑制されてきたと。また、担い手から見て、これは欲しいという優良な農地がなかなか出てこないと。そのために、農地を取得しましても非常に使い勝手の悪い農地を分散錯圃で所有する形になっていると。また、機械化の進展を背景にしまして、兼業農家等が稲作に特化した経営をいわゆる土日農業で継続することが可能な状況になっていると、こういった点が考えられます。  政策面については様々な御指摘があるわけでございますが、本質的には経営対策として、価格政策のように幅広い農業者を一律に対象としてきたために担い手が伸びていくというその素地が与えられなかったということが考えられます。  このため、今回の基本計画、新たな基本計画におきまして、何とか望ましい農業構造の実現に効果的に結び付けるために、この品目横断的経営安定対策を始めとしまして農業経営に関する各種施策対象をできる限り担い手に集中化、重点化して実施するということで、この担い手層に元気を出してもらい頑張っていただきたいと、そういう観点で施策の集中化を行おうとしているところでございます。
  173. 谷合正明

    ○谷合正明君 そういう分析が今ありましたけれども、次に、それでは日本農業のそういう今の負の側面というか、これまでの農政を含めた反省点であったわけでありますが、日本農業においてもやはりそれは一方では強み、特質というものがしっかりとあります。  その日本農業の特質、強みというのは何なのかと。よくWTOの説明なんかを聞きますと、日本農業多面的機能を有しているんだといったことをキーワードに攻めたりしているわけであります。いろいろな強みというのはあるんだと思います。  先日、党の農業フォーラムに、蔦谷農林中金総研特別理事が講演されたんですけれども、強みというのはいろいろあるけれども、例えば豊富な地域性、多様性、里地里山、棚田等の優れた景観、豊かな森と海、水の存在、それから水準の高い農業技術、高所得かつ安心、安全に敏感な大量な消費者の存在、都市農村の極めて近い距離といったことが挙げられました。  私、特に最後の二つ、安心、安全に敏感な大量な消費者の存在と、都市農村の極めて近い距離、これは諸外国に比べましてやはり、農村、中山間地域といえども車で何時間掛けていけば行けるといった近い距離にあるんだと思います、日本の場合は。私は、こういった特徴をしっかり発揮していくことが大事なんだと、追求していくことが大事だと思っております。品質とコミュニケーション、消費者生産者のコミュニケーションを図る、そういう力点を置く農業を模索しないといけないんだろうなと思っております。  そこで、大臣に、日本農業の強み、大臣はよく諸外国に行かれます、日本農業説明されていると思いますけれども、日本農業の強みというのは何なんだといったことを大臣のお言葉で聞きたいと思います。
  174. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、谷合委員から多面的機能というお言葉がありましたが、これは強みというよりも、むしろ多様な農業、そして多面的機能、これは当然の各国の主張として認めるべきであると。先ほどのツルネン議員のキューバ、キューバはキューバで、あるいはまたヨーロッパはヨーロッパで、東南アジアは東南アジアで、アフリカはアフリカで、それぞれ多様な農業があるということは、これは強みとか弱みよりも、当然のものとしてお互い認め合わないとこれは交渉にならないのではないかということをいつも申し上げているところでございます。    〔理事常田享詳君退席、委員長着席〕  日本農業の強みというのは、今御指摘があったように、一つは、国土が、細長いんですけれども、主要の農業国あるいはいわゆる大国というところから見ると比較的小さいと。最近はフードマイルという言葉がございますけれども、作ったところと消費するところの距離というものが、例えば太平洋を渡るとかオーストラリアから来るということによるマイナス面、できるだけ食べ物というのは近いところで、その究極が地産地消ということになろうかと思いますけれども、そういった面で日本は、フードマイルが非常に短いだけではなくて、今や国民的な御理解の下で地産地消というものを我々も後押しを受けながら一生懸命進めているところでございます。  それから、対外的に説明できるかどうかは別にして、我々が誇りに思わなければいけないのは、先ほどお話がありましたように、日本の農山漁村というのは昔からの、古くからの自然との共生というもの、したがってそこには歴史なり文化なり、そしてそこに住む人たちのすばらしい人間性なりがあると。これが国内の中でのいろんな、北海道から、北海道はちょっとまた北海道固有の歴史があるわけでございますけれども、沖縄に至るまでのそれぞれの地域で多様なそういったものがあるということでございます。  それから、安全、安心ということも顔が見えるということからあると思いますし、これは最近特に我々が強調し、誇りに思っていいと思いますのは、日本型食生活というものがある意味で世界に大変な、我々が思っている以上に非常に評価をされているということでございます。  先ほどの御質問の中でお答えしようと思っていたんですけれども、パスカル・ラミー事務局長が私に対して、四月末までにまとまらなかった理由の一つは、これは、ステーキ料理のようにどんとメーンディッシュ・プラスアルファみたいな形で片付ければいいと思っていたら、極めて、農業、NAMA、サービス、ルール、開発、環境、その他いろんなものが絡み合った大事な、複雑なものであったと、まるで繊細な日本料理のようであったという比喩をパスカル・ラミーさんは私におっしゃっておられましたけれども。  やはり日本型食生活というのは健康にもいいし、また、見て美しいし、そしておいしいしということで、我々、今輸出に向かって力を入れておりますけれども、五年間で、昨年から輸出を倍増しようということでありますが、去年だけでも既に一二%輸出額が伸びているわけでございまして、むしろ、我々がいいんだというよりも、むしろ諸外国の方が日本農林水産物はいいんだと。そして、それを作っている生産現場がいいんだと。また、それを消費する人たちの目利きといいましょうか、まあ舌利きという言葉があるのかどうか知りませんが、といいましょうか、消費者の高いニーズ、そしてそれにこたえようとしている生産者との共生関係といったものが結果的に世界的に評価をされているのではないかということで、我々は直すところは直していかなければならないと思いますが、誇れるところは大いに誇って、守り発展をさせていきたいというふうに思っております。
  175. 谷合正明

    ○谷合正明君 ありがとうございます。  それで、いよいよ法案目的について質問させていただきたいんですけれども、まず前段で農政の総括、そして日本農業の強みといったことを質問させていただきました。この法案は正にその意味反省があり、また日本農業の強みが発揮されるものでなければならないわけであります。  この法案目的というものは一体何なんでしょうか。今おっしゃられた日本農業の特質といったものを生かせるものなのか、そういったことを法案目的としてまず質問させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  176. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 農業多面的機能があるという前提であえて申し上げますけれども、いいものを作って消費者に買ってもらおうと。消費者はいいものであれば買う、安全で安心で顔が見えるものを消費者は求めております。そういうものを作れば売れる、売れれば農家はもうかる、そういう農業をこれからもっともっと発展をしていきたいというのが端的に言えばこの目的であると同時に、車の両輪として、農地、水、環境対策もこれまた密接不可分のものでございますんで、地域の環境保全、発展、と同時に、もうかる農業を、どんどんどんどん参加をしてもらおうという、ちょっと言葉が乱暴かもしれませんけれども、そういう農業経営者に頑張ってもらえるような対策支援をさせていただきたいということでございます。
  177. 谷合正明

    ○谷合正明君 この法案を導入することによって現場農家からは、実際導入後の経営のイメージがわかないとか、そもそも内容が難しいといった声があるんですけれども、実際農業経営の姿というのはどういうふうに変わっていくんでありましょうか。
  178. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 今回の品目横断的経営安定対策対象となります担い手につきましては、一つは、諸外国との生産条件格差是正するために、過去の生産実績に基づく支払を継続的、安定的に受けられることになりますし、当該年の農産物の品質等に応じた支払を受けることもできるわけであります。  また、一方、現行のナラシ、担い手経営安定対策などに比べまして、新しい対策では生産者の負担がより軽減される、つまり、国の負担割合が一対三の、四分の三になるというようなメリットが拡大する中で、市場価格や収量の変動に伴う収入の変動の影響を緩和することができるというメリットを受けることになります。  こうした中で、対象となる担い手は、大臣も申し上げましたけれども、品質に優れ、安全性の高い農産物を供給できるという我が国農業の特質、強みを生かしつつ、新たな作物の導入や更なる農産物の品質の向上などに取り組むことができることになります。その結果、他産業並み所得を得ることができる効率的かつ安定的な農業経営農業生産の相当部分を担うような強靱な農業構造の確立へと進んでいくというふうに考えております。
  179. 谷合正明

    ○谷合正明君 イメージが分かりやすく伝わるように、もう少し柔らかくおっしゃっていただければと思うんです。  次に、この法案国民にとってどういうメリットがあるのかという質問をさせていただきたいと思います。  今、担い手に絞るということでありましたけれども、この担い手に絞るということは、一つの理由としては負担をする国民理解をいただくためだといったことも説明として聞きます。つまり、国民、納税者が今突き付けられている選択肢というのは、極端に言えばすべて外国からの安い輸入食料品でいいのか、あるいは日本で頑張る農業者を応援していくといった二つの選択肢があるんだと思います。  特に、後者の場合はそれ相応の負担が生じるんだというふうに私は理解するわけでありますけれども、ただ、その負担に見合う形で国民にメリットがもたらせるのであれば、それはもう国民消費者はこの新しい農業、この新法に賛同していただけるんだと思います。しかし、国民に対してメリットというものが見えないんであれば、私はこの法案というのは本当に見えないところで審議しているだけの法案になってしまうと思います。  消費者の視点に立ってみて、この法案導入することで実質良質かつ低コストの農産物の増加につながるのかといったところをまずお伺いしたいと思います。
  180. 三浦一水

    ○副大臣三浦一水君) 今回のこの品目横断的経営安定対策等につきましては、今、局長も申しましたように、強靱な農業構造を作っていこうと、そのことがまた国民にも直接、間接にいい影響があるんではないかというふうに見ております。  やや具体的に申しますと、生産性の高い担い手、いわゆるその実現を通じて農産物の生産コストも低減をしていこうと。先般、中川農林水産大臣のいわゆる中川イニシアチブでもって四月四日に決定をいたしました二十一世紀新農政二〇〇六の中では、いわゆる食料全体の供給コストを二〇%削減していこうという誠に野心的な目標も具体的に掲げておるわけであります。この辺は、現実的に実現をしていく中で国民に十分メリットをもたらすことができることになるんではないかと予測をしておるところでございます。  また、消費者食品産業の需要に的確に対応をしていく、そして農産物を安定的に供給できる体制を確立をしていくと、このことのもたらすメリットは大きいのではないかというふうに考えております。  以上、重ねて申しますが、強靱な農業構造の確立を目指すことで国民にもメリットをもたらしていきたいということでございます。
  181. 谷合正明

    ○谷合正明君 そういうことを通じて、食料自給率もこれが減少することないということをしっかりアピールしていただきたいと思います。つまり、国民にとってのメリットというものが明確に示せない限り、幾ら周知しても、国民に対してPRしてもなかなか響かないものだと私は思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  次に、実際に対象となる担い手でありますが、これまでの審議の中で、経営安定対策対象者というのは全販売農家の三割程度、そして経営耕地総面積の五割程度というざっくりとした試算が出ております。  まず、担い手要件として認定農業者というものがございます。認定農業者の数は今全国で約二十万人となっておりますけれども、果たしてこの新しい法律がスタートする時点でどれだけ対象となる認定農業者というものが増えてくるのかといったところが、聞いても、確かにいろいろな特例なんかもあって確たる数値を見通すことは困難ということが言われるわけでありますが、しかし一方で、やはりその数値の見通しというものは重要であります。  その数値の見通しがもし困難であれば、その対象者数の把握に向けてどういった対策を講じようとしているのか、その点について伺いたいと思います。
  182. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 認定農業者でございますが、現在、行政と農業団体が連携協力をいたしましてその育成について強力に取り組んでいるところでございますが、平成十七年度の一年間で約一万九千人増えまして、今、委員御指摘のとおり、十八年三月末現在でその数は二十万人を超えたところでございます。  しかし、委員もお話しされていましたように、この二十万のうちどのくらいが品目横断的経営安定対策対象品目である米、麦、大豆の作付けを行っておりまして、その原則である都府県四ヘクタール、北海道十ヘクタールの経営規模を満たしているのかということについては、現在残念ながら不明でございます。さらに、今後そういう、今急ピッチで担い手育成の取組が進んでおりますので、この対策導入時点でどれだけ認定農業者が増えてくるのかということについてもちょっと見通すことが難しいわけでございます。  いずれにいたしましても、この認定農業者の数につきましては、今担い手育成の取組を地方公共団体と協調して推進していく中でそういう者の把握にもしっかり努めていきたいと。もちろん、対象者として申請をしてくださればその時点で分かるわけでありますが、それを待つことなく把握できるように今努力をいたしているところでございます。
  183. 谷合正明

    ○谷合正明君 やはり把握しないとどれだけ新しいこの担い手対策に入ってくるのかというのは分からないわけでありますので、そういう施策もスタートしてみないと分からないということではやはり心もとないと思いますので、いろいろなその推進する過程の中で把握するとおっしゃいましたけども、しっかり急ピッチでやっていただきたいなと、この作業をやっていただきたいなと思っております。  次に、この認定農業者制度地域格差について聞きたいと思います。  先ほど言いましたけども、認定農業者の数というのは約二十万人であります。主業農家に占める割合というのは四五%にとどまっていると。これを地域ごとに見てみると、主業農家で認定農家の占める割合というのは、北海道、北陸地域が約七〇%であると。一方で、関東、近畿、中四国では約三五%程度にとどまっていると。地域間によって格差があると。この今の数字は昨年の十二月末の数字でありますけれども。もちろん、すべての数字が均一になる必要性というものも必ずしもあるわけじゃないんですが、底上げしていく必要というものもあるだろうと。  こうした地域格差を踏まえて、これまでの認定農業者制度をどのように評価するのか、また改善点はどういったところにあるのか、そしてまた、この格差を埋めていくために、この支援対象である認定農業者を今後どのように確保していくのか、その点について伺います。
  184. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 認定農業者制度につきましては、育成すべき農業経営地域段階で明確にして支援を重点化していく制度として地域に定着してきておりますけれども、御指摘のとおり、この認定農業者の主業農家に占める割合についてはかなりの地域格差がございます。  今、委員からも御指摘ございましたけれども、十八年三月末現在で見ますと、一番高率な県は八〇%に既に達しておりますが、低率なところはまだ二〇%台であるということでございます。これは、元々この認定農業者制度が、農家自らが計画を作成して申請するという自己申請主義に基づいているということに、そういう性格によるところが大きいと考えられておりますが、もちろん、これを指導している市町村の姿勢にも随分差があったということが言えると思います。  また、よく言われましたのは、よく似た経営を営む農業者でありましても、住まいされています市町村が異なると認定の仕方にばらつきがあるというようなことも過去に問題として指摘されてきたわけでございまして、現在では、それぞれ市町村において有識者などから成る第三者機関の意見を聴くなどにより、この認定手続の透明性の確保と認定のばらつきの解消を行うための運用改善の指導を行ってきているところでございます。  いずれにしましても、現在も認定農業者の数が少ない地域に参りますと、やはりこれまで認定農業者になっても大したメリットがないじゃないかというようなことで、農家あるいは行政もそういう姿勢であったというところが多いようでございますが、今回は、新たな経営安定対策の導入に当たりまして、個別経営の場合には認定農業者になっていただくということが必須要件になっておりますので、全国的にも今申し上げました主業農家を中心に認定農業者にしようという機運が高まっているところでございます。  農林水産省といたしましても、こういった機運を後押ししまして、主業農家の中で認定農家になっていらっしゃらない方が余りに多い県、そういった県を重点的に今、担い手育成の支援をいたしているところでございます。
  185. 谷合正明

    ○谷合正明君 続いて、集落営農について質問させていただきます。  通告では、農山村の意味について通告していたんですけれども、先ほど大臣の方からの日本農業の強みという特質の中で既に明快に、多様な歴史、文化を備えているといったところが出ておりますので、この農山村の意味についてはやはりそういったところなんだろうと。その農山村を維持していくためにはこの集落営農というのがかぎでありますので、その意味集落営農について、次、質問をさせていただきたいと思います。  先ほどの質問と同じなんでありますけれども、この集落営農、今、全集落営農数は約一万と言われております。認定農業者と同様、そのうちどの程度の集落営農組織が対象となるのかといったところもこれを把握していく必要があるだろうと。平成十七年五月時点で、集落営農の全国約一万のうち、営農と一括管理運営しているのは全体の一五%ほどであります。また、農業構造の展望では、今後十年間で効率的かつ安定的な集落営農経営を二万から四万と見込んでいると。この数のギャップがあるわけでありますけれども、制度がスタートするに当たりまして、対象となる集落営農数がどの程度か、またその見通し、そのための取組、また集落営農参加してもらうための施策といったものをどういうふうに講じられようとするのか、その点について伺います。
  186. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 委員御指摘のとおり、昨年五月に行いました集落営農実態調査によりますと、その時点で集落営農組織と言われるものは全国で約一万存在していると言われております。ただ、これについても、恐縮なのでありますが、今回の対策では、こういった集落営農組織であって、その規約を作る、あるいは経理を一元化するといった五つの要件を満たすことが今回の対象になる前提になってございます。この五つの要件というのは集落営農の構成員の合意にかかわるものでございまして、この一万存在している集落営農のうち、この五つの要件を今満たしている経営体がどの程度存在しているかということについても確たるものを持ち合わせておりません。  現在、ただ、集落営農組織については昨年来、かなりの県で数が急速に増えているという報告はいただいております。  農林水産省としましても、十八年度予算で集落営農対策として百七億円という予算を組みました。特に、ネックになっているというアンケート調査の結果から、リーダーの育成でありますとか、あるいは経理の一元化をどうするのかとか、幾つかの困難な課題、問題点が指摘されておりましたので、その百七億円の予算の中でそれに対応するような措置を講じてきているところでございます。
  187. 谷合正明

    ○谷合正明君 五つの要件を持ち合わせている集落営農の割合がどの程度なのかといった推測というのは実際はされているんではないかなと私は思うんですが、いずれにしましても、この集落営農の実態というか、中山間地域の実態を見るにつけ、ここの施策というのは非常に私自身大事なところであると思っております。  今お答えの中に、リーダーの育成といったことがありました。先日、島根県のある集落に行きましたけれども、大体もう平均年齢六十歳から七十歳という中、若手とは言われても五十代の人が兼業で、平日は仕事しながら土日で作業していると。よっぽどもう時間もなくて、リーダーになろうと思ってもこれ以上もう時間もないと。頑張っているのに、これ以上頑張れとも言えないわけであります。  実際に、リーダーの育成といったところが政策一つとして出てまいりましたけれども、現実として高齢化が進んでいる集落営農、こういったリーダーがいないというのが実情、それはもう御存じのとおりだと思います。実際に、中国地方なんかでは、中山間地域では高齢化して、農地を貸したいけれども周りを見ても集落の中にも借り手がいないだとか、そういった問題も起きているぐらいにもう人がいないといったことがございます。  そういったことを考えると、この集落営農対策というのは簡単な話ではないだけに、相当のきめ細かい対策あるいは決意がないと達成できないんだと私は思います。いろいろ審議の中では、参加集落営農参加しない人はいても参加できない人はいないといった答弁もありますけれども、本当に参加できない人はいないのかなとか、いろいろ考えるわけであります。  この集落営農質問させていただきますけれども、こういった高齢化している集落におきましてどうこの対策を講じられていくのか、もう何遍も質問があるものでありますが、特に集落においては、営農組織だけじゃなくて地域社会といったもの全体を継承していく人が必要でありますので、そういった点について、集落営農を継承していくための施策、どう対応していこうとされるのか、質問させていただきます。
  188. 小斉平敏文

    大臣政務官(小斉平敏文君) ただいま谷合委員から御指摘がありましたとおりに、今回の問題におきましてはリーダーの存在というものが非常に重要だと、このように認識をいたしております。  水田集落の約半数におきましては担い手がいないという現状でございまして、そういう中で、担い手のいない水田集落、これを中心にして将来どのような形で農業を維持していくのか、そういう危機感が非常に強いということも十二分に承知をいたしておるところであります。  また一方、昨年六月に農林水産省が公表いたしました「集落農業の将来展望に関する意向調査結果」、これによっても、集落営農の組織化あるいは法人化に当たっての最大の問題点ということで、そのリーダーの不在ということが指摘をされておるところでございます。  私、先日、自分の地元の宮崎で法人の設立総会に呼ばれまして、行きました。この組織法人というのは、県下で最大の参加農家数、そして面積も最大と、集積が最大という法人であります。ここで行って驚いたのは、設立準備会からわずか十か月で法人が設立されたというんです。いろんな話を聞いておりましたら、正に三人のリーダー、この方々がおられたから、わずかこんな短期間で法人が設立をされたということを聞き及びまして、正にリーダーというものが先生御指摘のとおり一番重要だと、このように考えております。  そこで、平成十八年度の予算におきまして二十億という予算を措置いたしたわけでありますけれども、一地区で四十万、そしてそれを五千地区ということで予算措置がなされておるところでございまして、現在、今現在ですね、現在既に三千二百五十二地区からこれに希望が、手を挙げておられる地区が全国にあるということでございまして、農水省といたしましても、今後、全力を挙げて、御指摘のとおり、リーダーの育成ということに取り組んでまいりたいと、このように思う次第であります。
  189. 谷合正明

    ○谷合正明君 ありがとうございます。  是非、今おっしゃられたような力強いメッセージを、宮崎県だけじゃなくて中国地方にも是非務官にはお越しいただいて、よろしくお願いいたします。  対象品目の絞り込みについて伺います。  これ、ゲタの部分は四品目でございます、ナラシの部分は五品目ありますけれども。先ほど集落の話出ましたけれども、中山間地域などでは、生産条件が不利だといった中で、いろいろなアイデアを使って生産向上に結び付くように、例えばソバだとか野菜などの特産物を、そういったところにも交付金対象拡大することなどが検討されてもいいんじゃないかといったことが指摘されているわけでありますけれども、今回そういう意味対象品目に限定した理由というのは何なのか伺います。よろしくお願いいたします。
  190. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 対象品目についてでございますが、これは法律上、担い手経営全体に着目して、その経営の安定を図るということによりまして食料の安定供給を確保しようとするものでございますので、一つには、国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要であるもの、二つには、他の農産物と組み合わせた生産が広く行われていることの二つの要件を満たすものとしております。  この要件によりまして、熱量供給量に占める割合や国内生産の状況等を踏まえ、米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用バレイショの五品目対象農産物とすることにいたしております。  今お尋ねの飼料作物、ソバにつきましては、飼料作物については先ほどもちょっと申し上げましたが、これは家畜のえさとして摂取されまして、最終的には畜産物の形で国民に対して供給されるという中間生産物でございまして、そこに対して直接の熱量を供給しているわけではないということ、ソバについては、熱量供給量に占める割合がまだ低いことから本対策対象とすることはしておりませんが、もちろん食料自給率向上等の観点から、飼料作物の自給率向上対策でありますとかソバの生産振興対策については別途対策として支援策を講じており、また今後とも講じることといたしております。
  191. 谷合正明

    ○谷合正明君 分かりました。  次に、周知徹底の話でございますが、先ほど大臣の方から、あえて挙げるとすれば農家への周知徹底だとか国民への理解、これがまだまだ足りないといったところが言われましたけれども。  その農家への周知徹底でございますが、これも幾つかもう質疑で取り上げられておりますが、先日、日本農業新聞が四月末に実施したアンケート調査で分かったことは、世代間によってこの制度周知、認知度というものが違うと。また、地域によっても違うといったことが明らかになりました。具体的には、この対策が、法律が成立すれば〇七年度から始まるということを知っているのは、三十代で五五%、四十代で六八%、五十代、六十代、七十代で八〇%が知っていると、そういった世代間によってちょっとこの制度を知っているかどうかのばらつきがあると。  また、担い手づくりの進み具合も各地で差が現れていると。この制度説明を受けたと回答する割合も、最も進んでいる東北では七六%の農家がもう既に制度説明を受けたと言っておりますが、一方で、関東、近畿、四国では説明もないという、いまだに説明もないという割合が六〇%もいるといったばらつきがあります。こういった、まず地域間の機会不平等というんでしょうか、この格差是正するということが一つ農家への周知徹底を考える際に大事なポイントになるのかなと思いますが、この農家への施策の浸透、周知徹底に向けてどのように今後取り組んでいかれるのか、その点について伺います。
  192. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 今御指摘農業新聞のアンケートの結果につきましては、関東、近畿、中四国では進捗が後れてますよと、代わりに東北、北信越、九州では相当進んでいますという報告がなされているところでございますが、これは、私どもも担当者を全国各地に直接派遣をして、足を運んで働き掛けも行っておりますが、そういった中でも、地域によって必ずしも同じように進捗しているかといいますと、やはり若干の差があるということは認めざるを得ないと思っております。  それは、やはり一つには、麦、大豆の主産地と言われているところではやはりこの対策についての関心が非常に高いと。その次がやはり米の主産県でございます。それ以外のところというのは、やはり自分のところは麦も大豆も作ってないしとか、そういう点で関心が少し薄いのかなと。それから、行政やJAにお願いしているわけでありますが、そういったところの動きも、その主産県に比べると鈍いのかなという感じがいたしております。  そういう中ではありますが、先ほど申しましたように、認定農業者総数が一万九千人一年間で増えて二十万の大台に乗るというようなことでもございますし、また、アンケート調査でも、対策の認知度が八割、あるいは担い手にシフトしていくことに対することについても五割強まで肯定的に見ていただいているということで、ある程度認識は高まっているんではないかと思っております。  私どもは、せっかくそういう盛り上がってきた機運を冷やすことのないように、これからも十九年産の導入に向けまして積極的に地域の実態の把握や関係者へのきめ細かな説明に努めたいと思っておりますが、こういうアンケートも参考にして、弱いと思われるところに重点的に情報提供あるいは意見交換等も進めていきたいと思っております。
  193. 谷合正明

    ○谷合正明君 是非、これは農政の一大転換と言われるわけでありますので、この農家への周知というものを徹底していただきたいと思います。  質問を終わりにいたします。
  194. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  私は、この法案をめぐって北海道や東北の現地を調査いたしまして、直接現地の農業者の皆さんの声を聞いてまいりました。また先日、さきに行われた衆議院での地方公聴会、この議事録も取り寄せまして、ずっと目を通させていただきました。やっぱり読んでみますと、ここで指摘されている問題点、言っていることというのは、私が現地から聞いていることとも一致する、そういう問題点などもたくさんあります。そういうことについて質問をしたいと思います。  まず、諸外国との生産条件格差是正対策、これにおける過去の生産実績に基づく支払の問題です。  これが様々問題になっているんですけれども、衆議院の北海道での地方公聴会でも次のように指摘されているんですね。「緑ゲタが農地と結びついた受給権のような性格を持ってしまうことになりますと、」、省略しますけれども、平成十六年から十八年までの三か年に「品目横断的経営安定対策対象作物の生産実績を持たない農地の売買、貸借に際して、農地価格の下落や小作料水準の低下などが懸念される」と。「また、過去の生産実績を持たない農地が売りに出された場合、農業委員会があっせんを行いましても、引き受ける担い手があらわれず、あっせん不成立となる事態も想定されるところであります。そうした事態が続いてしまいますと、農地の遊休化にもつながりかねない」、こういう意見ですね。  これ、私が調査に行ったところでも、やっぱり同じように農家の方から、生産実績のない農地は買えなくなるので、そういった農地は耕作放棄地ということで増えていくんじゃないかと、こういう懸念が出されているんですけれども、まずこの点についてどう受け止めているのかということでお伺いします。
  195. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 北海道の公聴会というのは多分私の地元でやっていただいたんだろうと思いますけれども、まず、農地の売買というのは需要と供給の接点において価格が決定されるというのが自由主義経済における大原則でございます。売手と買手の間で価格が決定されるというのが大前提でございます。  そういう中で、今度は経営安定対策付き農地だからとか経営安定対策なし農地だからとかいうことで上がるとか下がるとかいう御指摘でございますけれども、それは私は直接的には大きな問題ではないというふうに理解をしております。  なぜならば、今までの麦、あるいは大豆、てん菜と、私の地元でいえばそれが該当するわけでありますバレイショの移転についても同じように、今までも過去払いでありますから、同じように付いてきているわけでありますから、むしろ絞られるということについての御議論が今日一杯あったわけでございまして、一般論として今までと全く同じであるというのが大前提だというふうに考えております。
  196. 紙智子

    ○紙智子君 大きな違いがないというふうに今お答えになっているんですけど、じゃ大臣にお聞きしますけれども、もし大臣農業者だというふうに考えたときに、今、豆だとか大豆だとか輪作体系で作っているわけですけれども、例えば牧草地といいますか、酪農で離農した人のを買い入れてやる場合に、そこについては例えば畑として開墾してというか耕作をして作物を作ったとしても、これは実績にならないということになった場合、わざわざ買いますか。どうですか。
  197. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) それは今までとも全く同じでございまして、今までは牧草地については今までの制度でもそういう乳価の不足払い制度というものがあったわけでございます。今度それを買う場合には、今の制度であっても麦、大豆云々について実績はないわけでございますけれども、それについてはいわゆる緑の政策以前の、緑の政策とは別の政策でもって対応をするということでございまして、過去払いと先ほど申し上げたのは、過去払いの部分については緑の政策ですということで申し上げたわけでございまして、新たにこの該当四品目を作る者については、WTOのこれは観点から申し上げているわけでありますけれども、別の観点からこれに対しての品目横断経営安定のための支払がなされるわけでございます。
  198. 紙智子

    ○紙智子君 私、余り難しいことを聞いているんじゃなくて、何払いがどうのこうのというんじゃなくて、もし耕作する側の立場だったら、実績が付かないものをわざわざ買って手間暇掛けてそれをやる気になるかどうかという現場の立場に立って考えたときどうなのかということなんですよ。
  199. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 該当四品目を新たに作れば、それに対しての安定対策対象になるということでございます。
  200. 紙智子

    ○紙智子君 作ったらそれが支払の対象になるっていうふうにおっしゃいました。ならないですよ。(発言する者あり)  じゃ、局長、ちょっと答えてください。
  201. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 農地について、その過去実績のない農地が売れなくなるんではないかというお尋ねだったと思うんですが、今回の政策ではその過去の生産実績は一筆ごとの農地の上に乗っているわけではございませんで、農業者単位で設定されます。  ですから、その農地を売却した人が例えば生産実績のない人だったと、ない農地を売却した場合でも、その農家としてはどこか別の農地で麦、大豆や何かを作っておったと、その過去生産実績をその売りました農地に乗っけて付け替えることは可能でございます。  この過去の生産実績に基づく支払というのは、農地単位ではなくて農家単位に設定されるということが第一点でございます。過去三年間でございますけれども。  それから、値段がどうなるかというのは、正に大臣が申されたように、この需給関係で決まるわけでして、農地の、十勝のように割と引き合いの多いところと、水田地帯のように米価が下がりぎみで引き合いがないところでは恐らく違った傾向を示すのではないかと。というのは、かえって過去実績が乗っていますと、引き合いの強いところはその乗っている分だけ高く売れると。逆に、水田地帯などでは逆に乗っていないと今までより下がってしまうと。そういうことで、やはり農地需給によってその対応が変わってくるんじゃないかなと見ております。  過去実績に基づく支払の対象にはならない、例えば過去の実績を引き継がなかったり、過去生産実績が全くない人から農地を取得しますと、当然これは過去実績払いの対象にならないわけでありますが、今後その農地で何を作るか、つまり、緑ゲタだとか黄色ゲタが必要になる土地利用型作物を作るのか、そうでない、例えば野菜を作るのか、それによりましてまた引取り方が違うと思います。野菜を作る農家なんかは、そんなものが乗っていなくても安く手に入るんであればそれを買いたいということになるのではないかと思っております。  それから、最後に、農地の権利移動をいたしまして、それが担い手規模拡大につながるというようなことであれば、今回のこの品目横断的対策とは別に、その政策目的に沿ったものである場合には、別途の対策として十九年度予算でも措置をしたいと考えております。
  202. 紙智子

    ○紙智子君 実際現場で何度も説明を受けて、それでその人たちが、十勝の場合で、大臣の地元の十勝で言っても、結局はその実績にならないのは買わないということになって、実績があるところは買うかもしれないけれどもね、買わないし、実際に買った人がいるわけですよ。既に、この制度が決まる前に、奥さんの実家が高齢化していて、土地を売りたいということで、酪農をやっていたもんですから、牧草地を買ったわけですよ。ところが、買ったんだけど、じゃこれは今度の対策に乗るのかといったら乗らないと、どうするんだという話になっているわけで、そういうのが実際には買われないで放置されることになると、これは耕作放棄地になっていくんじゃないかという心配の声をみんな上げているわけです。  私は、それを、じゃそのまま放棄地というのはどうするのかなと、どう考えているのかなと思うんです。先ほどもアクセルとブレーキの話があったんですけど、一方では耕作放棄地を増やさないと、増やさないためのいろんな対策すると言いながら、もう一方では、こういうものを放置しておけば今度はこれ耕作放棄地が広がっていくことになるわけで、何か相反するんじゃないですかね。矛盾していませんか。
  203. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今日一日、私が何回か申し上げているように、これはいい経営をしてもうかるようにしていただきたいと、これは生産サイドの方の話であります。消費サイドの方もそういうニーズがあるから生産サイドでそういうものが売れるという前提で何回か申し上げているわけであります。ということは、もっと一杯作ろうじゃないかと、もっといい品質のものを作ろうじゃないかと、もっと規模拡大をしようじゃないかというインセンティブが当然働くわけであります。それに対して支援をするというのが今回の目的なんです。  ですから、さっきから私や局長が言っているのは、過去払いというのは、あくまでも今までの実績だけの話であります。だから、それはWTO上での仕分としては緑の政策として問題ありませんねと。しかし、今、局長も最後に申し上げたように、予算措置でもってそういうものは対応しますと、これは率直に言えばWTO上は黄色であります。黄色でありますけれども、そういう規模拡大をする、品質向上をする、それによって収益が上がるというものに対しての施策というものも当然考えていっておりまして、それは予算措置としてWTO上は黄色の、まあWTOの観点からいえばいい方向ではないかもしれませんけども、自給率向上のためには当然そういうことになるわけでありまして、今のお話だけ聞いていると、ただ同じ量だけ作って、同じ面積だけ作って、同じ収量だけ上げてぐるぐるぐるぐる回っているだけだったら、これは何も日本経営の体質強化、自給率向上に役立つわけがないわけでございますので、是非ともその辺を御理解いただきたいと思います。
  204. 紙智子

    ○紙智子君 今の話はいいとしても、予算措置という話があったんですけれども、何で法律に書かないんですか。予算措置でとどめるんですか。
  205. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 今も申し上げましたように、私どもは、現行のWTO、整合性を高めるという点で緑の政策にできるだけしたいと、そういうことを表に出しているわけでございます。  残念ながら、自給率向上ですとか規模拡大に何とかしてあげたいと。これは予算措置で講ずると言っておりますが、これを、余り大きな声では言えないんですけれども、表に出して法律に書くということは、WTO上は一体どういうことになるのかという問題もございます。そういうことも考え併せて、黄色ではありますけれども、しっかりとそういう規模拡大意欲等は受け止めてやっていくことが必要ではないかということで、予算要求はしっかりするということにいたしているところでございます。
  206. 紙智子

    ○紙智子君 規模拡大をしていかなきゃいけないということなんですけれども、もう一つ、私が調査に伺った北海道の空知、今度は空知なんですけれども、空知の方で米と麦で三十四ヘクタールを経営している大規模経営農家の方なんですけれども、この方からは実は衝撃的な話が出たんですね。今回の生産条件の格差是正対策はがんじがらめで夢がないと言うんです。これではちょっと営農意欲がわかないし、もう離農しようと思っているという話なんですよ。これは過去の生産実績で決められてしまうということを言っているんですね。このことも公聴会でも同じような指摘がされています。  これも十勝の農民連盟の方ですけれども、平成十九年以降、面積を増やした方に対しての担保がないと。地域としては平均以下の農家だったわけだけれども、今度、息子さんがやることによって平均以上の収入を上げることになったんだけれども、ところが、お父さんのときの低いゲタ、その中で農業をやっている限りはなかなか努力が報われないと。果たしてそんなことで本当に意欲のある農家が残るんだろうか。あるいは後継者が安心して意欲を持って農業ができることにつながるんだろうか。そのことについても、今回の政策そのものについては大変危惧するんだと、こういう発言をされているわけです。  大臣、いかがでしょうか。こういう意欲のある農家ほど過去の生産実績でがんじがらめになってしまうような生産条件の格差是正対策で、逆に意欲を失ってしまう事態が生じているということに対してどのように思われますか。
  207. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 何ががんじがらめかちょっとよく分からない上で質問にお答えいたしますが、私の地元は今、平均耕地面積が四十ヘクタール、売上げが四千万でございます。それに対しての平均というか以下かというお話でございますが、とにかく規模拡大をするメリットがある、あるいはより収益を上げるようにするメリットがある。私のところで申し上げて大変恐縮でございますけれども、農家戸数が半分以下に減って、しかし地域全体の粗収入は五割以上増えている、平均の売上げが三倍近くになっているという状況。しかも、不足払いであるとかあるいはいろいろな交付金がどんどんどんどん減っていながら増えているというところもございます。  それから、空知のような米中心地帯だったところが、今度は転作大豆とか、あるいは転作でいろんなものを作っていこうということによって意欲を高めていただきたいということでございますから、過去払いだけではなくて、さっきから申し上げているように、プラスここに該当するような作物を作っていただき、しかも経営に工夫を重ねていただくという結果、いい結果が出るということに対する支援をさせていただくというのが法の趣旨でございますから、ただ右から左へ移動して損した得したというのが今回の法の目的ではないということを是非とも御理解をいただきたいと思います。
  208. 紙智子

    ○紙智子君 大臣が言われている例というのは、言ってみれば日本の中で最も拡大して大きな規模のところでやっている農家ですよね、言わば。私もいろいろ何度も足も運んで、本当に資産もたくさん持っているし、それはよく知っていますけれども、今挙げたこの空知の方なんかも、言わば優良農家というふうに言われて、それで規模拡大してきてやってきたところですよ。そういうところ自身がこんな発言をされるわけだから、だから私は非常にショックを受けますし、ともすれば、本州の方から見ると、いや、北海道はいいじゃないかという話をされるんだけれども、実際、足で歩いて、優良農家と言われる北海道の特に規模の大きなところなんかにしても、経営者の意識がどうなっているかというと、こういう現状にあるんだということなんですよ。  さらに、この生産条件の格差是正対策が北海道の輪作体系ということでも影響を及ぼしかねないということで、みんなが不安の声上げていまして、さっきも話にありましたけれども、酪農家が離農した場合には、その草地を畑作農家が購入しようとしても実績がない農地ということで買うことを控えると。そういう草地というのは耕作放棄地というふうになるとなれば、耕作放棄地が地域の中にこっちにもあっちにもということになれば、地域全体として合理的な輪作体系が形成されなくなるんじゃないかと。  つまり、確かに今ずっと輪作体系で麦作ったり大豆作ったりということでローテーション組みながら作っているんだけれども、さらに目指しているところは、さっき言ったように、大きくしていこうということなんでしょうけれども、そういう耕作地なんか含めてやれるのかどうかということでは、なかなか輪作体系を土地全体を効率的に利用してやるということにはなりにくいということなんかも出されているわけなんですけれども、これについてはどうですか。
  209. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、空知の米と麦で三十四ヘクタールのお話については、これはもう御承知だと思いますけれども、米については価格変動の対策はございますけれども、条件格差対策対象ではないということをまず申し上げておかなければならないと思います。  それから、輪作体系というのは四作あるいは五作で回していくわけでございますから、トータルとしていろんなものを対象にしてやっていくわけでございます。基本形は四作であって、だから麦、豆あるいはバレイショ、てん菜というものが該当するわけでございまして、規模拡大によってその四作なら四作、対象の四作で回していくということであれば、新規の部分については、基本形の部分、つまり緑の部分については対象になりませんけれども、先ほどから申し上げておりますように、WTO上は黄色、つまり生産刺激的なものでございます。しかし、それについてはきちっと予算措置、つまり農家に対しての支払をさせていただくということにしているわけでございます。
  210. 紙智子

    ○紙智子君 今言った問題と併せて、今、北海道の話でお話をしたんですけれども、これ、こういう形のお話というのは北海道以外でも起こってくるというふうに思うんです。  これまで、大豆や麦というのは転作作物として生産伸ばしてきたという経過があります。それから、集団で転作をするということで、ブロックローテーションというので転作を地域農家全体の課題で解決していくということで、圃場をブロックに分けて、毎年、転作を実施するブロックを替えていくということですよね。農家の公平性確保すると、そして転作作物の生産向上にも役立つということで圃場を契機に導入されてくるわけですけれども、主に麦や大豆ですよね、これで利用していって、例えば転作率二五%で四年に一回の回転で実施するとか、四年一巡というんですか、それからもう一つは三年一巡と、こういったシステムを取って地域で取り組んでいるところもあるわけです。  この中には、地域全体でやっていくということなので、担い手の方もいれば担い手じゃない人もいると。交ざって地域全体でやってきているということなんですけれども、そういったところででも、担い手以外の農業者は、大豆とか麦がこれ生産費を大きく下回る価格にさらされることになりますよね、担い手から外れれば。さらされるわけです。そうすると、生産を維持できなくなるので、このブロックローテーションから離脱しなきゃいけなくなるということも考えられるわけですね。多くの担い手以外の農業者が、これ一人二人だったらまだ何とかもつかもしれないけど、どんどん離脱するということになっていけば、これブロックローテーションシステムを壊すことになってしまうと思うんですよ。地域の営農にも打撃を与えることになるわけで、そうならないというような保証があるのかどうか、この点どうですか。
  211. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今この質問が出て、私は正直言ってほっとしております。今までのやり取りは、紙委員と私、つまり北海道だけでやり取りをしているので、この法案は北海道だけのやっぱり法律なのではないかという御指摘を北海道以外の委員の方から受けるのではないかと思っておりました。  正に、このブロックローテーション、つまり水田の裏作あるいは転作としての麦、大豆の位置付けも大きいわけでございます。だから、全国の中でのこの麦、大豆、その他四品を対象にしているわけでございます。北海道以外においては四ヘクタール以上の認定農家が原則でございますし、それ以外でも集落営農あるいは高収益を上げる農業については対象になるわけでございますから、面積要件だけではなくて、是非とも、いい経営をやり、もっといい経営をこれからしようという意欲のある方に対しては該当するというふうに思っておりますので、ブロックローテーションがこの新しい制度によって壊される、ましてや地域が破壊されるということは私はゆめゆめないというふうに思っております。
  212. 紙智子

    ○紙智子君 前回、私質問したときにも、その対象から外される人というのは、今でいえば補てんされているお金がありますからやりくりできるけれども、それこそ二千三百円台ぐらいにぐっと低くなるわけですよね、一俵当たりですか。そうすると、とても再生産できなくなると。そうなったら、今言ったように、そこから外れなきゃいけない事態になるわけですから、そうすると、今はブロックローテーションのそのシステムは崩れないと言うんですけど、崩れないと言える根拠は何なんですか。
  213. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 都府県において麦、大豆等のブロックローテーションが行われている場合、今多くは、その転作作物を中心とするいわゆる受託集団、その集団組織で転作をしている例が圧倒的に多いわけでございます。今回の対策ではそういった転作集団もこの対策の仲間に入るということで、要件としまして、集落営農で要求しております要件を少し下げまして、現在、転作作物の相当割合を受託しているグループで、近い将来に米の一部についてもそういうものをやっていこうというような集団であれば対象になるということにいたしておりますから、恐らくブロックローテーションを転がすということには当然そういう集団組織が必要でございますので、そういった集団組織が対象者になって入ってくるということが考えられます。  もちろん、地域全体が集落営農として組織化されるということが望ましいわけでありますが、次善の策として、そういう転作集団でもよいという扱いをいたしております。また、地域によってはこの転作作物だけを集めて営農されている農家がございまして、その集団化ができないときはそういった専ら転作作物を受託している担い手に集積をすると、そういう手段もあろうかと思います。  いずれにせよ、その地域の実態に合わせて、ブロックローテーションが壊れないように、今どういう形を選択するかということをそれぞれの地域お話合いをしていただいているということでございまして、決して道がないわけではないということでございます。
  214. 紙智子

    ○紙智子君 今いろいろと考えてやっているところだから道がないということなんですけど、非常にそういう意味では不安も出されている中で、これに対してのやっぱりきちんとした回答というか、そういうのをやっぱり用意すべきだというふうに思います。  それから、現地調査の中で出された問題でもう一つあるんですけれども、集落のとらえ方なんですね。農林水産省としては、二〇〇〇年のセンサスで、この集落、整理するというふうになっているんですけれども、市町村合併などの中で実際の集落を反映したものになっていないという声が出ているんです。北海道の空知でいいますと、農事組合が実際の集落で農事組合ベース集落の整理でやってきていたんだけれども、これが変わってしまうということなんですね。二〇〇〇年センサスの集落の取り方が実際の実情に合っていないということなんですよ。  具体的に言いますと、例えば旧岩見沢市というところでは、集落は町内会単位になっていたんだけれども、合併する前ですよね、その前の、その近くにある北村という村とか、峰延とかあるんですけれども、ここでは農事組合単位になっていると、ちょっとローカルな話ですけれども。そういうそれぞれによって集落ということで成り立っていたんだけれども、今度それが合併するということで、片方はこの二〇〇〇年センサスに合わせて集落ということでみなされたときに外れてしまう、片方は外れないと、こういう事態が起こっていて、これもうちょっと実情をよく調べて実態に合うようにやってもらいたいという声が出ているんですけど、これいかがですか。
  215. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) センサスで言う集落の範囲につきましては、基本的には市町村長が、国の出先、いわゆる統計センターでございますが、それと協議した上で原案を作成しまして都道府県知事が認定をするという手続で、その地域の実態を十分踏まえて設定することといたしております。  しかしながら、岩見沢市の例をおっしゃられましたけれども、その例につきましては、岩見沢市から一部の農業集落の設定範囲が農林業センサスの定義に即して見直しをしたいという申出が北海道庁にあったというふうに聞いております。これについては、今二〇〇〇年センサスとおっしゃられましたが、二〇〇五年センサスが出ましたので、今その結果の確定作業をいたしております。確定すればこの二〇〇五年センサスのデータを使いたいと思っているわけでございますが、そのために今、集落の耕地面積の精査をやっております。精査の過程でこういった申出がありましたら、このセンサスの定義と地域の実態に基づいて適切に判断をして確定をしたいというふうに考えております。
  216. 紙智子

    ○紙智子君 分かりました。  じゃ次に、東北の調査で明らかになった問題なんですけれども、日本でも一番集落営農が進んでいるというふうに言われている岩手県の花巻市に調査に入りました。そこでも今回の法案が極めて評判が良くないんです。ここは百五十五の集落営農ビジョンを作っているところなんですけれども、この集落営農ビジョンを推進してきた中心的なリーダーの方は、稲作の組織化に戸惑いとハードルを感じているというふうにおっしゃっているんですね。初年度で米を含めてやれるのは十に満たないと言っているんです。  それはどうしてなんですかということで聞きますと、東北の農家というのは、自分自分土地を耕したいと、農家は皆農業用の機械を持っていて、それが動くうちは水田を維持したいと思っていると。極めてその考え方は強い考え方なわけですね。その背景には、やはり土地というのは先祖代々のものという考え方、営々とした考え方があるわけです。ですから、この集落営農ビジョンを推進してきたリーダーの方も、この花巻の地域集落営農の中心的役割である転作受託、この転作受託で品目横断を認めてもらったら大変助かるということで、農林水産省に対してもそんな声を上げたらしいんですけれども、頑として認めてくれなかったという話なんかも出されているわけです。  農水省として、こういう実態に対してどのように受け止めているのか、どのように対応をしようとされているんでしょうか。
  217. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 集落営農をなさっているリーダーの方にお聞きいたしますと、やはり、今、委員おっしゃられましたように、米についてはなかなか思いがあると。ただ、高齢化が進み、大型の機械をなかなか動かしにくくなり、かつ最初に大体コンバインが壊れるんだそうでございまして、部分的に、ですから収穫作業はもう自分ではできないのでそういう組合に任せますと、次に田植機が壊れて田植もできないので任せますと、最後にトラクターが壊れて全面作業受託になるという話を聞きました。  ですから、我々は、最初から一〇〇%を目指していただくのは結構なんですが、集落の中を全部一〇〇%やらないと要件に当たらないということではないということでございますし、先ほどの生産調整組織の場合の特例で面積要件なりハードルは下げているわけでございます。ですから、米の部分も一部はやっていただきたいわけですが、それは来年から即やってくれとは生産調整組織特例の場合も言っていないわけでございますので、もしもまだまだ地域においてこの制度について十分な御理解がいっていない、あるいは誤解があるということであれば、せっかく委員の御指摘でございますから、私たちも、例えば岩手の花巻なんというのは非常に頼りにしているところなので、そういうところでそういう声があるというのであれば、早速岩手県庁ともお話をしてしっかりやっていきたいと思っております。
  218. 紙智子

    ○紙智子君 それじゃ、日本で一番目に特定農業団体に指定された胆沢町の集落営農のリーダーの方にも話を聞いたんですけれども、主たる従事者に集積する点について、息子が将来、定年後、農業やりたいというふうに言っているので集積に乗れないと。特定の人だけでいい思いをするということにもなりかねなくて合意が取れないんだ、主たる従事者にも後継者がいない、その主たる従事者が倒れた場合は集落営農が大変になることになると。こういうふうなことなどの問題もあって、結局ここも品目横断には乗らないというふうになっているんですね。  これは胆沢町だけの問題ではないわけですよね。むしろ、やっぱり特定農業団体に早くから取り組んでいた地域でもこういう実態があるということが私は重要だなというふうに思うんですけれども、大臣だったらどうお答えになるでしょうか。
  219. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 紙委員のいろいろなところで調査されたお話を伺っておりまして、とにかく、今、井出局長もすぐ花巻に飛んでいくというふうに申しておりましたけれども、是非、まずこれ義務じゃございませんから、自分は今回の対象にならなくても農業をやっていいという選択は当然あり得るんだろうと思います。しかし、こういう対象になりたい、なってもっといい経営をやりたい、いいものを作って食べてもらいたいという人たちに対しては是非ともこの制度参加をしていただきたいというのが我々の切なる願いでございます。  この法案審議を本日から始めていただきまして、今日の審議がまたいろんな形で、先ほどツルネン委員でしたか、マスコミ等をもっと利用しろという御指摘がありました。我々、こんなに大事なことをやっているんですけど、なかなか一般的なマスコミが取り上げていただけられないと。ほかの法案等の方になっているというのはある意味では私どもとしては大変残念でございますけれども、その分、我々、足で、そしてまた直接お会いをしてこの制度について御理解をいただきながら、息子さんが帰ってきて、やりたいと、一生懸命やりたいと、きちっとした経営をやりたい、いい経営をやりたいというような頼もしい農業者に対しては、是非とも我々としても必要であればいろんな施策を取らしていただきたいというふうに思っている次第でございます。
  220. 紙智子

    ○紙智子君 じゃ、もう時間なくなりましたので、実際に大臣も足を運んでいただいて、現地の皆さんの声を聞いていただきたいと思います。  それで、今ある集落営農の多くは、やっぱり小さな農家を守りつつ、集落を維持することを第一にして、関係者の本当に大変な努力でつくられてきていると思うんですね。活動内容や組織形態も、機械の共同利用や農地の利用の調整なんかも含めて非常に多様なわけで、米だけは作りたいという人もいれば、集落営農で担って、水田転作だけというふうに役割分担しているところもあれば、いろいろなこの実態があるわけで、そういう人たち思いを無視して一律にやるということはやっぱりやらないでいただきたいということを最後にちょっと申し上げまして、残りまだ一杯あったんですけど、続きはこの次にということで質問を終わります。
  221. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  222. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案外二案の審査のため、明三十一日に参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  224. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  225. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案外二案につき、北海道において意見を聴取するため、委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  226. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員、派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会