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2006-05-11 第164回国会 参議院 総務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年五月十一日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月十日     辞任         補欠選任      藤末 健三君     鈴木  寛君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         世耕 弘成君     理 事                 景山俊太郎君                 森元 恒雄君                 山本 順三君                 高嶋 良充君                 内藤 正光君     委 員                 小野 清子君                 柏村 武昭君                 木村  仁君                 椎名 一保君                 二之湯 智君                 山崎  力君                 吉村剛太郎君                 伊藤 基隆君                 鈴木  寛君                 高橋 千秋君                 那谷屋正義君                 平田 健二君                 蓮   舫君                 魚住裕一郎君                 澤  雄二君                 吉川 春子君                 又市 征治君                 長谷川憲正君    国務大臣        総務大臣     竹中 平蔵君    事務局側        常任委員会専門        員        高山 達郎君    政府参考人        総務大臣官房技        術総括審議官   松本 正夫君        総務省情報通信        政策局長     竹田 義行君        総務省総合通信        基盤局長     須田 和博君        総務省政策統括        官        清水 英雄君    参考人        東洋大学経済学        部教授        通信放送の在        り方に関する懇        談会座長     松原  聡君        慶應義塾大学商        学部教授     井手 秀樹君        株式会社テレビ        新潟放送網取締        役相談役        社団法人地上デ        ジタル放送推進        協会理事長   北川  信君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○行政制度公務員制度地方行財政選挙、消  防、情報通信及び郵政事業等に関する調査  (通信放送在り方に関する件) ○政府参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) ただいまから総務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十日、藤末健三君が委員を辞任され、その補欠として鈴木寛君が選任されました。     ─────────────
  3. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) 行政制度公務員制度地方行財政選挙、消防、情報通信及び郵政事業等に関する調査のうち、通信放送在り方に関する件を議題といたします。  本日は、本件の調査のため、参考人方々から御意見を賜ることといたします。  参考人方々を御紹介いたします。  東洋大学経済学部教授通信放送在り方に関する懇談会座長松原聡君、慶應義塾大学商学部教授井手秀樹君及び株式会社テレビ新潟放送網取締役相談役社団法人地上デジタル放送推進協会理事長北川信君、以上の方々でございます。  この際、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ、当委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の調査参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人皆様からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人皆様及び質疑者発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず最初に松原参考人からお願いをいたします。松原参考人
  4. 松原聡

    参考人松原聡君) 松原でございます。  ただいま総務大臣私的諮問機関であります通信放送についての懇談会座長をしておりますので、その懇談会座長立場として今日はお話しさせていただきます。  懇談会は、十一回にわたって議論を続けてまいりまして、最終段階を迎えております。前回、五月九日の会議におきまして、今までの議論を整理し、それから最終報告に向けての論点整理を私の方からお出しいたしました。それに沿いまして、今日は十分弱でお話しさせていただきます。  私の配付資料資料四、四ページをごらんいただけたらと思います。  この懇談会を始めました経緯が、通信放送融合技術的にも実態的にも進んでいると、それにふさわしい行政及び規制体制を考えるべきではないか、こういう問題意識に基づきまして議論が始めたわけでございます。  それで、その際に、一番大事な視点として、ユーザー立場ユーザーの側から見て一番ふさわしい体制に持っていくべきではないか、こういう視点議論を始めまして、九日の段階論点整理の案が出たと、こういうことでございます。  四ページ以降がその九日に出しました論点整理の案でございまして、この中で、ほぼ九日の段階合意に達したものもあれば、これからあと数回になるかもしれませんが、そこで最終的に決めるべきことというのが両方ございますが、しかし、ここに書きました項目が大体最終報告書に載せるべき項目だと、このように考えているわけでございます。  それで、とりわけ重要だと思われる点についてお話しさせていただきます。  五ページ目、二、融合を進めるための環境整備の中の①、これが正にユーザー視点でございまして、ユーザーの側から、種々の映像コンテンツ、これを享受しやすい環境をつくるべきだと。当面、そこで一番大きな制約になっているのがIPマルチキャスト放送でありまして、これは、現在のように通信扱いではなくて放送扱いにして、早急にこれが流通しやすいような形態をつくるべきだと、この点につきましては懇談会でほぼ一致いたしました。  それから、同じところの③、通信放送法体系でございますが、私どもは通信放送技術的にも実態的にも融合しつつあると。しかしながら、規制体系縦割りだと、通信放送で分かれていると。その放送も、放送有線放送、有テレ法役務利用放送法等縦割りになっていると。これを融合時代にふさわしい横割りの、横断的な法律の体系に見直すべきだと。こういう認識でございます。  それから、具体論といたしまして大きな問題になるのがNTTでございまして、そのNTTに関してはこれから、今の通信インフラの非常に重要な部分を担っていると。それから、今後、それがブロードバンド化、光化していく上でも非常に重要なプレーヤーであると。このNTT在り方について我々は検討いたしまして、現在のところ、NTT在り方については四つ可能性があるのではないか、このような問題提起をいたしました。  一番目は現状のままでいいと、持ち株会社の下に東会社西会社やドコモ、コミュニケーションズがぶら下がるような形、現状のままでいいというのが一つパターンであります。もう一つは、NTTが持つアクセス部門に関して現在よりはより強い分離を掛けるべきだと、一種の機能分離であります。これが二であります。第三のパターンは、それをより強めて、機能分離ではなくてそのアクセス部門組織的に分離すると、構造分離、別組織にすると、これが第三の案でございます。そして、第四の案は、アクセス部門組織的に分離した後にNTT法を廃止して資本関係を絶つと、資本分離でありまして、これが第四のパターンでありまして、その四つパターンについて現在議論している最中です。  九日の段階では、やはりアクセス部門ボトルネック性等を勘案すると今のままではよろしくないのではないか、すなわち一のパターンはないというようなところでは一致いたしましたが、二でいいのか、それとも資本分離まで持っていくのか、その時間的な経緯をどう考えるかについては議論している最中でございます。  それから、放送に関しましては、六ページ目、四の①、マスメディア集中排除原則の緩和につきましてはほぼ方向性が一致いたしました。  キー局は五系列しかございませんから、そのキー局同士合併するような、くっ付くような形はやはり放送文化多様性という観点からは好ましくないだろうと。しかし、キー局地方局関係キー局BS局CS局との関係については、やはりマスメディア集中排除原則の存在がその関係をいびつなものにしているのではないかと、もう少しストレートに関係を結んでいいのではないかということでほぼ意見は一致いたしました。  しかし、その具体的なやり方といたしまして、キー局地方局子会社化するような形もあれば、純粋持ち株会社をつくって、その下にキー局地方局BS局CS局もぶら下がるという形もあって、そのどれがいいかについてはこれから議論しなければいけないと、こういうことでございます。  それから、NHKについてでございますが、NHKについてはやはり組織としてのガバナンスがしっかり利いていないという認識では一致いたしました。  これは、現在は経営委員会理事会相互に牽制するという形を取っているわけでありますが、相対的に見て経営委員会の力が理事会にとって弱いと、ですから経営委員会の強化が必要だと。これは一部委員常勤化とか幾つかの方法があると思いますけれども、理事会に対して経営委員会がより強い形にしなければガバナンスは利かないだろうと。同時に、理事会内部在り方についての検討も必要だと。いずれにしても、NHKガバナンスに関しては抜本的な改革が必要だと、こういう認識に立ちました。  それから、NHKチャンネルについてでございます。  具体的な、どのチャンネルがどうかというところの議論までは進んでいませんが、地上波テレビ放送の二波、総合教育に関しては、これをすぐ削減するとか、あるいは民間に売却するといったようなことは国民的な合意を得ることは難しいと、その機能はやはり残すべきだということで、地上波テレビの二波については残そうと、こういうことでございます。  しかし、BS及びAM、FMに関しては、公共放送としてやる必然性が本当にあるのかどうかについては検討して、削減について考えていかなければいけないと、こう思っております。  そして、今後NHK課題として、今後の課題として出ている番組アーカイブブロードバンドによる提供及び国際放送については、やはりこれは重要な任務であって強化すべきだというところでは一致いたしました。しかし、それをNHKの本体の中でやった方が効率的、合理的なのか、子会社にして外に出した方がいいのかについては、今議論をしている最中でありまして、そのことを踏まえて最終的にNHK及びNHK子会社を含めたNHK組織全体の見直しについて議論している最中であります。  以上でございます。
  5. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) ありがとうございました。  次に、井手参考人にお願いいたします。井手参考人
  6. 井手秀樹

    参考人井手秀樹君) 慶應大学井手と申します。  今日は、放送通信融合という問題についてですけれども、私、平成十三年に公正取引委員会の方で、放送通信融合競争政策在り方ということで報告書をまとめました。その内容については今回述べませんけれども、短い時間ですので、特に通信の問題について今日意見を述べさしていただきたいと思います。  お手元資料、一枚紙を用意しておりますけれども、四項目立てております。一から三まではもう既に御承知の点も多いかと思いますけれども、通信政策を考える上で是非とも共通認識として持っておかなければいけない現状認識というものをお示ししております。そして四番目に、今後あるべき方向ということを考える上での課題というものを整理しております。  まず一番目から三番目について、現状認識ですけれども、これはもう既に御承知のとおり、今年の三月に新しい、アメリカで新ATTというものが誕生いたしました。極めて大型な合併ですけれども、こういった合併というものについて通信政策というのがどういうふうに変わっていくのかということを、私はちょうど三月、合併のときに、アメリカ通信政策規制当局であるFCCあるいはベライゾン、AT&Tといったところとディスカッションをしてまいりました。そういった経験を踏まえて今日発言をさしていただきたいと思います。  一番目、IP化に伴ってサービス融合化が始まると、これはもう既によく言われていることですけれども、距離の概念というものがなくなると。本来、市内、市外、国際といったもの、こういったものは元来人為的に区分されていたものですけれども、こういった区分がなくなると。あるいは、先ほどありましたように、通信放送という区分というのが今後消滅化していくという方向にあると。そして、通信事業者CATV事業者といったものがトリプルプレー、あるいはそれに移動というものを加えて、サービス一括してワンストップで低廉にサービスを提供すると、こういったことが実際に起こってきているわけであります。  そして、二番目の世界の動向ですけれども、アメリカ、先ほどのアメリカの例を出しましたけれども、新しいAT&T、これがベルサウス合併いたしましたけれども、地域電話会社あるいは長距離との合併というものを繰り返しまして、そこで誕生したものは新しい二大寡占というふうに言われております。  しかしながら、ここで見落としてはいけないのは、新ATTというのは、一つ戦略として全米に強力な通信事業者、そしてグローバルな事業者というものをつくらなければいけないと、こういう認識AT&Tにはあると。そして、ワイヤレスの比重を高めていくといったことが一つ事業戦略としてあるわけであります。そして、同じように固定あるいは移動といった、FMCと言われておりますけれども、そういったサービス一括、一元的に提供していくと、こういったことが今回の合併で明らかになってきたわけです。その中で、やはりアメリカFCC通信政策というのは大きく変わっているという、こういったことをやはり規制当局、そして企業というのはキャッチアップしなければいけないというふうに考えるわけです。  それから、アメリカ通信政策が大きく変わっているという中で、光というものがブロードバンドの中心かというと、そうではない。光のオープン化というのは義務化というのは廃止されておりますし、いろんな技術がそこに出てきております。ワイヤレスあるいはWiFi、WiMAXとか、それから電力線を使うパワーライン、こういった新しい技術によってブロードバンドサービスというものが提供されていると。そういった技術中立性というものを考えて、可能性を考えたときに、規制というものがその発展を阻害してはならないというのがアメリカFCCの考え方であるということであります。  ヨーロッパも同様でありまして、やはりドイツの例でいきますと、光のインフラストラクチャー、これをどういうふうにして促進していくかといったことが極めて重要な問題となって、光のオープン化というものについては義務化を廃止すると、こういったことが実際に起こってきているわけです。  こういったその認識の中で、日本はどうかといいますと、もう御承知のとおり、FTTH、光ファイバーについては大国というふうに、これのやはりトップレベルにあるということを、これを忘れてはならないだろうと。こういったことを今後とも推進していく、その環境というのを整備していくと、これが極めて重要ではないかというふうに思います。  四番目、今後の課題ということですけれども、一つは、ここに書いておりますけれども、私は電力とかガス、エネルギー専門としておりますけれども、その中で、自由化の中で極めて重要な問題というのは、インフラ投資、これを自由化の中でいかにして促進していくかというのが重要な問題になってきていると。  これは、電力について、御承知のとおり、ブッシュ大統領インフラ投資を刺激するためにどういった政策を取るべきかということを非常に重要な政策として考えております。通信も同じであります。FCC通信政策において、ブロードバンドサービスのためのインフラ投資をいかにして促進するかというのは極めて重要な問題であると。  そして、NTTの再編の問題というのは、やはりこれはIP化あるいはIP網発展とともにやはり見直していくと、これが必要だろうと私は思います。  しかしながら、日本通信政策というのを過去の歴史を考えますと、どうも組織論的にどうあるべきかということに極めてエネルギーを費やしてきておりまして、本来、通信政策あるいは今後のブロードバンド政策を考える上で何が重要なのかと、これを見落としてはいけない。そして、ブロードバンドサービスの促進というものを阻害するような環境というのをやはりつくるべきではないと私は考えております。  それから、四番目の最後から二番目に書いておりますけれども、CATV、これは御承知のとおり、アメリカにおいては極めてブロードバンドサービスにおいては重要な地位を占めております。  翻って、日本CATVを見ますと、極めてNTTの光あるいはDSLに対抗するに十分かというと、そうではない。したがって、CATVを育成していく、そして競争事業体として育てていくと、これもやはり重要な今後の放送通信融合というものを考えたときに一つ政策課題ではないだろうかというふうに思います。  最後に、先ほどの懇談会報告の案にもありましたけれども、ネットワークオープン化ということであります。  日本においてはメタルについては完全にオープン化というのが進んでおります。先ほど言いましたように、諸外国では光というものについてのオープン化義務化というのは撤廃しております。そして、本来、自由化というのが設備投資競争というのであれば、いかにして設備投資を促進させるか、そしてこういう設備投資を促進するためにやはりインセンティブを与えないといけないと。NCCは、いわゆる競争事業者は、光ファイバーというのをNTTのを借りれば足りるというのではなくて、やはりNCCとしても積極的に設備投資というものをやっていくということが必要だろうと。その設備投資を促進する上で必要な、例えばライト・オブ・ウエーと言われています電柱等オープン化については、やはりルールを更に明確化し、透明性を高めるということが必要ではないだろうかと。  最後に、アクセス部門構造分離というのは、OECDの報告書にもかつて掲載されましたけれども、諸外国が置かれている事情というものを勘案して、構造分離というのはベストの選択肢ではないということを電力エネルギー等自由化の中でやはり学ぶべき教訓ではないだろうかというふうに考えております。  以上で終わらしていただきます。
  7. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) ありがとうございました。  それでは、最後北川参考人にお願いいたします。北川参考人
  8. 北川信

    参考人北川信君) 最近の放送は非常に大きな変動の中にあります。今日は、放送の現場、地方局経営視点も交えて放送の実情についてお話をしたいと思います。お手元資料がございますので、そのページに沿って進めてまいります。  資料の一ページは、テレビネットワーク一覧図でございます。ごらんになれば分かるとおり、いまだに四局地区もあり、広域地区もあり、それから二局地区、一局地区というところもありますが、これは五十年間の歴史的所産というふうにお受け取りいただいて、説明に入ります。  二ページ、民放テレビ局の全体像。広域局県域局独立U局百二十七局が全国に配置されていると。十三の独立U局を除く百十四局は五系列のいずれかに加盟していると。この加盟は、法規によるものではなくてネットワーク協定という任意的な協約に基づいて行われております。系列加盟の主たる目的は三つございまして、主に、一、番組共同調達共同制作、それから二番目がニュースの共同取材相互配信、三番目が主要な時間帯での一括販売と。これ、分かりにくいんですが、ネットスポンサーをまとめて付けるというような営業行為のことを言っております。系列化により、キー局(多くは東京、大阪局)の番組全国で視聴可能となる、これはネット番組になるということでありますが。また、県域番組、ブロック、数県にまたがるネットワークなど柔軟な編成を実現していると。つまり、ネットワークができ上がったことで県域のごく狭い放送もあれば全国放送もあると。それがハイブリッドに成立しているというのが現状でございます。  三ページ。しからば、そのネットワークは一体どのぐらいのオーディエンスをカバーしているのかと、系列ごと世帯数のデータが出ております。これはちょっと読みにくい表なんで取りまとめて説明をさせていただきますと、五系列それぞれにカバーしている地域が違いますので単純に足し上げるわけにはいきませんが、すべてを重ね合わせて計算をすると日本全国、ほぼ一〇〇%をカバーしていると。御承知のとおり、現在の世帯数は四千六百万世帯ですか、それに対してこの百十四社足した分は五千三十八万というような数字が出ておりますので、ちょっと数字にずれがございますが、ほぼ一〇〇%と見ていいと思います。NHKは、さらに、全国普及義務を負っておりますので、放送法上負っておりますので、総合教育の二チャンネルも同様にほぼ一〇〇%をカバーしていると。一〇〇%をカバーしているのは、それじゃインフラは何であるかというと、当然、中継局ということになりますが。  五ページ。中継局建設状況を示したものですが、ここでごらんいただきたいのは、左の方の欄の一番下、合計中継局数一万四千八百七という数字であります。説明をいたします。地上テレビ伝送サービスアナログ時代の五十年間、中継局を増やしながら営々、粛々と拡大した。その結果、現在一万四千八百七中継局、一親局当たり八十八中継局、これ平均値です、が働いていると。この数は世界に例のないものであり、山地と離島の多い日本独特な悪条件である。アメリカでは親局総数が五千百八十四、一親局当たり中継と。だから、アメリカローカル放送免許を取ろうと思うと中継アンテナ三つ建てればできちゃうということで、大変ハッピーだと思いますが、例えばテレビ新潟では、現在、四十七中継局新潟全県をカバーしております。  七ページへ行きます。  中継局のほとんどは、対象地域ごと放送事業者が建設したものであると。各社、貸借対照表では固定資産として計上しております。すなわち、ハード・ソフト一致は当初から免許条件として制度化されていたという現実でございます。  今次、地上波デジタル化は、この中継機能のすべてをデジタル仕様に再建する、そういう意図で設計されております。設備総額八千八十億円という数字をお聞きになった方あるかもしれませんが、これは推計数字でありまして、その中の二千六百十億が中継局建設費でございます。実際には、現在、全放送事業者中継局建設経費を集計中でありますんで少し変わってくると思います。かなり大幅な圧縮の見通しが出ております。  次のページへ行きまして、これだけの中継局が地上インフラに乗っかって運ばれているものは何かといえば、コンテンツであります。地上テレビは、NHKを含めれば七系列によって毎日番組放送されています。各系列一日二十時間、二十時間以上の放送もございますが、二十時間とすれば、百四十時間の番組、コンテンツが一日に流れていると。年間で計算すれば五万時間ということで、これを商品の個数と考えれば膨大な数になります。  九ページ。ただ放送していればいいというものではなくて見られて何ぼの世界でございますので、一体実際に見られているのはどのぐらいかということが大事になってきます。それが地上テレビの視聴実態ということですが、膨大なコンテンツも視聴者に見られなければ、むなしく宇宙に消えていくだけと。  地上テレビはどの程度見られているのかというと、下にビデオリサーチの調査データがございますんでごらんいただきます。一世帯当たり一日平均視聴時間が八時間、個人視聴時間でいきますと、一人当たり一日四時間と。大体、一日は二十四時間しかなくて、八時間寝て八時間仕事すると。そうすると、個人の生活時間は八時間しかない、そのうち半分の四時間はテレビ見ていると。これはいいことなのか悪いことなのかと問題になるんですが、そのぐらい。  このうちの九二%が実質地上波でございます。そういう意味で、地上波の持っているコンテンツ量のシェアというのは非常に大きい。この高視聴率が、地上民放テレビ二兆三千億、これは年収でございますが、この年収の裏付けとなっている。  しからば、その中でローカル番組というのはどういうふうになっているのかと。十ページへ参ります。  地上テレビの全放送時間のうち、ローカルニュースやローカルワイドなど地方局制作の比率は平均して一〇%から二〇%。これは時間数にすれば、さっき言いましたように、二十時間ぐらいが一日の放送量でありますんで、二時間から四時間、地域全体では十二時間。この二時間から四時間といいますと、たったそれっぽっちかと、ローカル局は一〇%しかやっていないのかとよくしかられるんですけれども、考えてください、どの放送局もこれやっているわけですから。地域全体では十二時間から二十四時間、これは民放プラスNHK、合わせて六チャンネルということで計算するとこうなります。このサービスは、どこか一か所ではなくて、日本じゅうどの地域でも行われている。これだけ活動しているメディアというのは、実にほかには皆無ではないかと思います。  ローカル番組地域の視聴者にとって必需情報、ライフラインそのものである。高視聴率を維持している番組も少なくない。ローカル番組は、量は少ないかもしれないけれども、非常に効率の高い番組が幾つかございます。  地方局の報道制作力。地方局のというよりもむしろ系列全体の、一番最初のページにありました系列でごらんいただきますと、大体、一番多くてNNN系列の三十局、あとは二十八局とか、それ系列によって違います。この中身はちょっと企業秘密みたいなものもありますんで公表された数字ではございませんが、私は日テレ系なんで、日テレの情報をいろいろ探り出したというか、聞いてきたのがこの結果でございます。  時間がありませんので細かく説明は省きますけれども、例えば、報道局員はこの表で見ますと全部で六百十四人いると、系列全体で、ヘリコプターの契約台数は十四台、SNGというのはCSを使って、衛星を使って事件の現場から放送局まで映像を届けるための機動車でありますが、これが四十三台、取材カメラは、まあ数え切れないんですが三百五十八台、こういうふうに、言ってみれば、ローカル局を含みテレビ全国ネットワークというのはこういう大きな工場部門を持っているというふうに考えてもいいんではないかと思います。  次の十二ページ、十三ページは、私の地元テレビ新潟新潟中越地震のときどういう取材態勢をしたかと。これなかなか成果を上げましたんで発表しようと思って調べてきたんですが、時間がないので省略いたしますが、ここの十二ページにちょっと書いてありますように、系列二十局二百八十三人の応援が加わり、総出動人員は延べ二千五百人に達した。大変、信じられないぐらいの大きな規模の取材があの災害報道の毎日毎日の映像というものを生み出しているわけであります。  十四ページ。このように、それぞれの地方局は大きな機動力を持っており、独立した情報発信基地であるだけでなく、ネットワーク全体と連携することで全国ニュースの手足となっている。日本列島に、周辺空海域を含め、どこで何が起こっても、必ずそこにはカメラが駆け付け、同時進行で映像が送られてくる。この地上テレビのすごさの原動力は地方局を含めたネットワークの結集によるものだ。  取りまとめに入ります。  十五ページ。地上テレビネットワークの使命。地上波ネットワークは、一九五三年発足以来、ただの伝送ネットワークにとどまらず、ニュースの取材態勢を中心にコンテンツの制作と調達機構として発展してきた。コンテンツの制作、調達はコストもリスクも大きく難事業であるが、成功したときは、テレビ局の周辺に作家、タレント、プロダクションなど、創造性豊かな人材が幾重にも育ち、実り多きマーケットを形成する。例えれば、無名の画家を育てる画商の役割というものもテレビ局の欠かせぬ長期的使命である。  次、地上放送デジタル化とはアナログ信号をデジタル信号に切り替えること、これにより放送通信との親和性が高くなり、多様なコンテンツ、サービスが生まれる。その結果、新しいビジネスモデルが生まれ、相乗的にマーケットを拡大するのがねらいである、放送通信もと。携帯端末向け放送、ワンセグなどは、今言いました相乗的マーケットの典型的事例として期待されるのではないかと思います。  最後に、このような使命を無事に達成していくための現時点での幾つかの前提があると思いますので、これは私の考えでまとめたものでございますが、確認をして終わらしたいと思います。  放送通信の広範な提携を進めるための前提として、一、ハード・ソフト一致の堅持、二、免許制度の地域原則の堅持、三、集中排除の緩和による経営の拡大、強化、四、二〇一一年デジタル移行の完全実施と、この四つをまずきちんと固めることが基本、前提ではないかという意見でございます。  最大の留意点は、視聴者を置き去りにしないこと、ライフラインと化している最大の基幹メディアである地上テレビで絶対に視聴者の不利益変更を起こさないこと、これは国も放送事業者も徹底して努力すべきであろうと考えております。  以上でございます。
  9. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 おはようございます。自民党の柏村武昭です。  参考人皆様、本日は御苦労さまでございます。そして、大変勉強になるお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。  通信放送の分野というのは大変多岐にわたっておりまして、限られた時間の中にいろいろお尋ねいたしましても収拾が付かなくなりますので、私は、公共放送としてのNHKに絞って、中心に質問をしたいと思います。  まず、通信放送在り方に関する懇談会座長でございます松原参考人にお尋ねいたします。  私は、先月この場で、総務委員会の場でNHK予算に関しての質問をさしてもらったんですが、大変短い時間だったので消化不良の感は否めなかったんですが、公共放送としてのNHKにエールを送るつもりで私は質問をいたしたんですが、余りにも皆さんが紋切り型に官僚的に答弁をなさるんでいささか感情的になった部分がありまして、聞きようによっては大変辛らつなNHK批判になったということは大変反省しているわけでありますが、それより驚いたのは、その後視聴者の皆さんから私のところに届いた反響の多さでございまして、私のホームページにたくさんのメールが届きまして、それは質問の内容に対する賛同の声もありましたし、NHKに対する不満の声、こういったものが随分多くて、ここまでNHKは国民に一挙手一投足が注目されているのか、改めてNHK問題の深刻さを感じたわけでございます。  そこで、松原参考人にお尋ねいたしたいと思いますが、懇談会座長としてNHK改革に積極的に今取り組まれておられることには大変敬意を表しておるところでありますが、私の考えでは、この問題の根幹にあるのは、やっぱり今から五十六年もの前にでき上がった放送法ですね、これが完全にもう時代に対応していないんじゃないかと。一家に一台、床の間にでんと据えられたテレビの時代のその放送法が今完全にもう時代から取り残されているんじゃないかという、そういう私は思いを持っておるわけです。  したがって、不祥事がなくても受信料おれは払わないよという層が三割近くにいるということは、これからもその層は決して減りはしないと私は思っているわけでございます。しかも、また、ワンセグとかカーテレビとかあるいは腕時計付きのテレビとかそういったものがどんどんどんどん出てきている現在、何かこの放送法が全然時代に即応していないんじゃないかという気が、これは私だけではなくてみんなそれを感じているわけでありますが、だれもそれに手を付けようとしないんですが、NHK改革はこの放送法の改正なくしてあり得ないんではないかと僕は思うんですが、これは松原参考人の率直な御所見をまず伺いたいと思います。どうぞ。
  11. 松原聡

    参考人松原聡君) NHKに関しましては、放送法で言うと第二章の項目になっておりますので、御質問の趣旨がNHKであればその第二章についてどうするかと、こういう御質問だと判断してお答えいたしますと、まず経営委員会の強化とかガバナンスの強化等に関して第二章をいじらないでも即座に実施できるような内容もあるだろうと。それから、技術開発の義務等も第二章の中にございますから、その辺りの見直しや、あるいは放送波、チャンネルの見直し、その他組織の見直し等で第二章、放送法の第二章のNHKにかかわる部分を変えなければ実現できないような改革もあるだろうと。  私どもは、現段階では、NHKについては、経営委員会からチャンネル数の見直しから受信料制度の在り方を含めて抜本的に見直すべきだと、こう考えております。それで、放送法をいじらないで済むところは即座にと。それから、放送法の第二章を変えることに関しましては、与党及び国会での審議、合意が必要ですから、それについては提言を投げ掛けたいと、こういうスタンスでおります。
  12. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 次に、ボイスという雑誌に掲載されました「座長が語る本音」という中で、NHK子会社改革の必要性を述べられておりますね。全く私も同感でございます。受信料を準税金ととらえるならば、税金によって子会社をつくり、NHK本体から業務委託を得てそれで利益を上げて、さらに天下りの温床と化している、こんなおいしい組織は民間ではなかなかないと思います。  私に寄せられましたメールの中にこういう意見がありましたのでちょっと御紹介しておきたいと思うんですが、これは決して偽メールではありませんので、よろしくお願いします。  ある番組制作会社の社長さんですが、我々がある番組やビデオを制作する過程において、戦前など古い映像資料を使用したいという場合は、どうしてもNHKに頼らざるを得ません。そこで利用するのが財団法人NHKサービスセンターなるNHKの関連会社です。そこでは必要な映像素材があるか検索するだけでその料金がまず五千円要ります。試写三本までが一万五千円、映像使用申込書の作成費にまた五千円、最後に複製費がランク別で、最終的にはたった一分程度の映像使用に数十万の経費が掛かってしまいます。NHKが保有している映像は、元をただせば受信料から作られたもののはず。NHK番組で一度使用した映像でまた利益を生むのであれば、それは受信者に還元するべきではないでしょうかという内容なんですが。  私も放送業界にはいた人間ですから、このアーカイブ利用料はいささか、ちょっと暴利をむさぼり過ぎているんではないかと思うんですが、この九日の懇談会でアーカイブをブロードバンドで提供すると提案されたようですし、子会社の抜本的な整理統合にも言及と報じられておりますが、参考人はボイスの中でも、準税金によって経営が成り立っているのであれば、業務の発注に際しては他の公共事業同様、一般競争入札が当然で、現在の在り方は明らかに問題がある。その挙げ句、子会社ばかりがもうけてNHK本体の利益は少ないという状況になっており、この経営形態を見直せば受信料が更に安くなる可能性も高いと指摘されていますね。  不祥事のデパート化した難問山積のNHKに国民の不信感はますます増幅し、受信料の不払も増えております。松原参考人は、NHK改革に果たして何が一番必要である、取りあえず。いろいろあるでしょうが、優先順位でいけば一番最初に何が必要である、率直な御意見をお聞かせください。
  13. 松原聡

    参考人松原聡君) 組織全体のガバナンスが利いていないということが一番の問題だと思っておりまして、その組織というのはNHKの本体だけではなくて、NHKの関連会社等三十数社ございまして、その全体のNHKグループについて見直していかなければいけないと、こういう認識に立っております。  本体についてのガバナンスばかりが議論されていますが、それは周辺にある子会社の問題を含めて見ていかなければいけない。これは実はNHK放送法第二章で設立されているわけですから特殊法人でございまして、ほかの特殊法人が抱えていたような本体と子会社との不透明な関係はやはりそのまま抱え込んでいるわけで、そのことを含めてしっかりとしたガバナンスを利かせなければいけないと、このように考えています。  その際に、本体と子会社との関係をしっかりとした一般競争入札等のような関係にすることはもちろん、それから、子会社である必要がない部分についてはグループから外に出すと、これも当然であります。それから、本体に関しましても、受信料でしっかりやるところだけを本体に残して、それ以外のところは逆に子会社化してもいいだろうと。しかし、当然そのときに子会社に対するガバナンスがしっかりとマーケットメカニズムを利かなければいけないのは当然だと。  そのような意味で、NHK本体だけではなくてトータルを見直していって、本体からの切離しもあれば、子会社を外に出す必要があるかもしれないし、子会社同士の統合もあるかもしれない。ともかく、NHK組織全体についてしっかりとしたガバナンスを利かせることが一番肝要だと考えております。
  14. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 分かりました。  次に、北川参考人にお伺いいたします。  御経歴を拝見しますと放送一筋、中でもデジタルの専門家とお見受けいたしました。地方局トップの立場から、デジタル分野のウオーキングディクショナリーとしての、専門家としてのお立場で、デジタル難視聴対策にどのような対策を講じるおつもりなんでしょうか。例えば、私のふるさと広島もそうなんですが、島があります。岡山・香川地区もそうです。長崎地区もそうですね。すべての中継局デジタル化するのがなかなか困難であると指摘をされておりますが、これは技術的な問題でありますが。  一方では、このデジタルについて、あくまでも意地でもデジタルを拒否する、あるいはデジタル化を理解しないという方、あるいはもっと言えば経済的に買い換えることができないという方、すべてを称してデジタル難民といいますが、このデジタル難民が相当な数に二〇一一年にはなるんではないかと思います。  北川参考人はこの世帯数をどれぐらいと想定しておられますか、ずばり一言お願いします。
  15. 北川信

    参考人北川信君) アナログ難民といいますか、デジタル難民といいますか、デジタル化によって見えなくなるケースというのはいろいろあるかと思いますけれども、二〇一一年七月にはアナログ停波ということが法的に決まっておりますので、恐らくそれは実施するということになるかと思います。  その場合に、テレビを見ることができなくなることに幾つかのケースがあると思いますが、まず第一は、本当に波が全部そこまで行っているかと。私どもがチェックをいたしましたのは、アナログ放送だったら見えたのにデジタル時代になったら見えなくなっちゃったと、テレビがといううちが一軒でも出てきたら、これは先ほど申しました不利益変更、正に視聴者の不利益変更ということでありますので。現在やっております作業は、アナログエリアを完全に一〇〇%埋めると、それは事業者の責任で埋めるということを、カバーするということをやっております。主体は放送事業者の自主努力と。  ただし、現在のアナログサービスのカバーエリアというのは五十年掛けて営々として広げてきたもんでございますから、これを一気に五年か六年で終わらせてしまうというのはいかに何でも無理であるというところから、間に合わない部分について補完的な手法も思い切って使おうと。度々出てきますIPマルチキャストの活用などというのも、ある限定条件の中でそういうものを使っていいんじゃないかと、CSも使っていいんじゃないかと。今までの放送法、電波法の建前でいくと使わなかったそういった手法も、このデジタルを一〇〇%に持っていくためにはやるべきことは全部やろうということで今進めている作業だということは御承知のとおりでございます。  それから、結局一番問題になるのはお金の問題でありまして、中継局を結局建てるだけのその工期的な余裕がないというよりも、経営的に費用が間に合わないという場合に、それじゃそれはどういうふうに埋めていくのかというようなことも含めまして、必要最低限の公的支援ということも今後検討をいただかなければいけないかと思います。  それから、問題は、デジタル受信機がどこまで安くなるのかと。絶対買わないと、おれはと言っている人も、例えば専用受信機が三万円を切ればアナログ時代とほぼ同じということになるわけであります。これはD―PA、地上デジタル放送推進協会理事長を二年やっておりましたので、その間にメーカーと話をしまして、できるだけそういう受信機普及について低廉化というものを努力してくれということをもう再三申しました。その結果、非常に予想以上早いスピードでテレビの低廉化というのは進んでいると思います。  それでも買わない人がいるという場合に、それは一体どこまでシビルミニマムとして支援するのかというのは、これは実態を把握していろんなケースを調べなきゃならないと思います。現在、私はもう辞めておりますけれども、全国協議会、総務省と事業者との間で全国協議会、推進協議会というのをつくっておりまして、その協議会でそういう最終的な救済方法、あるのかないのか、どういう条件で責任を果たさなければならないのかということを国を含めて検討中というふうに聞いておりますので、かなり一〇〇%に近く行くんではないかというふうに思っております。
  16. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 昔、白黒テレビからカラーの時代の、そのときの国民の皆さんの反応はそれほど抵抗感がなかったように思うんですね。何としてでも色の付いたテレビを見たいという。しかし、このアナログからデジタルは、どうも国民の皆さんは、よし、何とかデジタルを買おうというあんまりそういう意欲がそのときに比べると薄いような気がいたします。  これはやはり何といっても、国策であり、お上の都合、視聴者不在の政策と言われても仕方がない部分があるんでありますが。幾らお上の都合だといっても、あしたからこのテレビはもう映らなくなりますよと言われても、デジタルへの移行についてやっぱり経済的に付いていけない方も結構いるんじゃないかと私は思うんですが、どうなんでしょう。  アメリカの場合は、実施時期を延長したようですね。これはいろいろ、アメリカ日本の場合は考え方もちょっと違う部分があります。ケーブルテレビが普及していることもありますし、そういった受信機が高額である、法律で決めた普及率八五%の基準も満たせなかった、そういう条件があったにしても、法改正を行ってアメリカは補助金を必要とする世帯を認定して四十ドルの補助金をクーポン券で出していますね。二〇一一年、日本でまあ大混乱とまではいかなくても混乱が起きるんではないかと私は非常に心配しております。そこで、何らかのそういった補助という形を考えてもいいんじゃないでしょうか。まあよほど広報活動もしっかりしなきゃいけないと思うんですが。  ただ、幾ら広報活動を徹底してやらなきゃいけないといっても、これを理解させるには随分と無理があると思いますね。うちの母なんか八十五歳で、アナログからデジタルになるのはどこが違うのかと聞かれて私は随分困りました。映りが良くなるよぐらいですね。しかし、それでも母は、別に映りは変わりはしないじゃないかというふうな人もいます。だから、こちらの都合でやることですから、果たしてどういうふうになるんだろうと。  説得力のある説明をこれから丁寧に時間を掛けてやらなきゃいけないんですが、放送のあまねく普及をうたい、受信料をその負担金と位置付けている公共放送NHKの存在意義にもかかわってくる重要な問題になってくると思いますが、これは北川参考人、高齢者や社会的弱者に対する補助政策について、何か思うことがあれば、時間がございませんので、短めにひとつよろしく。
  17. 北川信

    参考人北川信君) おっしゃるとおりであると思いますし、アメリカなんかのそういった補助制度を特設的に設けているケースがあるということもよく承知しておりますが、先ほど申しましたように、まず電波を届かせること、それから受信機を安くすること、それから普及広報に努めることと、すべての条件を果たして、なおかつ地域的にあるいは経済環境的にそういう問題があれば、やっぱり国としては何らかの対策を立てるべきだというふうには思います。  ただ、現在そこまで条件が詰めてありませんので、今後の課題というふうに認識しております。
  18. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 二〇一一年をあくまでもここでぱたんと切らずにサイマルでずっと延長していって、非常に自然的にデジタルに変更するとか、そういったいわゆる何というのかな、デジタル難民などが出ないような優しさみたいなものを持って取り組んでいくことも私は必要ではないかと、あんまり二〇一一年にこだわる必要はないんじゃないかと私は思うんですが、そういう意味ではこれからもデジタル化いろいろと大変だと思いますが、一生懸命頑張ってください。  以上で私の参考人質疑を終わります。
  19. 鈴木寛

    鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。  三人の参考人皆様方、本当に貴重な御意見をありがとうございました。  まず、松原参考人にお伺いをしたいと思いますが、先ほど懇談会論点整理について御報告をいただきましてありがとうございました。  それで、幾つか御報告を聞いて、十分ということでございましたので、そういう意味でより詳しく御説明をいただきたいということでお伺いをしますが、先ほど五ページのこのNTT在り方に関して四つの選択肢があるというお話がございました。  私のまず立場を申し上げますと、とにかくやっぱりユーザー第一だと、ユーザーがいかに安くてそして高品質のブロードバンドサービス、あるいは放送通信融合でありますから、そういうことに基づいた様々な新しいサービスも含めてこれを享受できるかと、このことがすべての施策の中心にあるべきだと。この点は恐らく松原参考人と同じスタンスだというふうに思います。それで、このNTT事業分野の四つの選択肢、まあいずれも考慮に値する選択肢だと思いますけれども、私は果たしてこの四つだけかなと、こういう思いを強くするわけでございます。  私も、九六年当時議論されましたNTTの再編の問題、当時、情報通信政策立案に携わっていた者といたしまして、やはりIPのことを十分に見据えた、それを前提とした再編でなかったということについては松原参考人認識を一緒にしております。かつ、当時、同じころアメリカで起こっていた通信の再編というものも横目で見てきたわけでありますけれども、率直に申し上げまして、先ほど井手参考人からお話がございましたが、この懇談会での議論というのはややアメリカの十年前の議論を後追いしているような感が否めないなということで、その点の補足をお願いしたいんですが。  私はこの四つの選択肢に加えて、要するに今の欧米で主流となっている選択肢、すなわち、むしろIP化が進んでどんどんどんどん業態が大きくなっていって、そして国際競争が物すごく激しくなっていると。そういう中で、先ほど井手参考人から、新しいAT&T、正に二〇〇六年の三月にベルサウスまで合体をしてしまうと、合弁をしてしまう、こういうお話がございました。こういう選択肢というのは日本では考慮の対象になってしかるべきではないかと、こういうふうに思うわけであります。  と申しますのも、結局、今、DSLについては、極めてこれうまい公正有効競争がなされたと、関係者のすべての御努力によって。そして、今懸念は、そのブロードバンドの本格版である光ファイバーの問題について、要するにNTT議論しているわけでありますからその点だと思いますが、私の認識は大都市圏においては公正競争が行われていると思いますし、地方のシェアの高いのはむしろこれはユニバーサルサービスの問題であってという認識がありますが、百歩譲ってここに若干のその心配、懸念があるとしても、私は改めて松原先生のお書きになった「民営化と規制緩和」という御本を確認をさせていただきました。  私も、これ以前より参照させていただきましたが、その三十九ページで、コンテスタブル・マーケット・セオリーと交差弾力性理論の御紹介があります。すなわち、参入圧力や業態間競争がある場合には、現実の競争の不成立をもって直ちにその規制をすることが正当化されるわけではないということを非常に明快にお書きになっております。正に競争の成立いかんは参入圧力や業態間競争をも考慮に入れた上でなければ問えないこととなるということなわけでありますが、この理論は極めて、非常に明快な理論だと思いますが。  これを光ファイバーのことに当てはめますと、正にその業態間競争ということで、要するにIP化が進むということは正にこの業態間競争を促進するということになるわけで、具体的には例えばWiMAXのようなものが出てくれば、これは明らかに、ここでは要するにガスと電力の例を引かれていますけれども、正にWiMAXと光ファイバーということでの業態間競争が起こるわけでありますし、まあ参入圧力についても、KDDIグループとかあるいはソフトバンクグループも統合を進めて、非常にその何といいますか立派なプレーヤーに成長しつつあるという中で、参入圧力はこれはもう十分にあると。  こういうことを考えますと、むしろあれ、なぜAT&Tが更に更にこのように合併をしているのか、それは例えば中国とかインドとかアジアの市場においてブリティッシュ・テレコムとの大変な競争にどう打ち勝っていくか、こういう観点、それからこの世界、まあ私もいろいろずっと勉強をしておりますが、結局その知的財産政策競争政策をどういうふうにバランスさせるかという大変難しい問題で、かつウィナー・テークス・オールですから、要するに一番最初の技術開発で負けてしまえば、要するにオールロスするわけですね。そういう中での欧米の判断の中でこういうことになっているんだろうと。  こういうことを考えますと、私は先ほどの四つに加えて、やはり欧米を参考にした業態論の在り方というのはあってしかるべきだというふうに思うんですが、この点はどういう御議論があっているのか、教えていただければありがたいと思います。
  20. 松原聡

    参考人松原聡君) まず、これから先、どういうような形の電気通信事業における競争がいいのかと、こういう議論はもちろん必要なわけです。おっしゃるように、WiMAXもあればPLCもあるし、いろいろな新しい技術があると。技術中立でなければいけない、それから競争環境を整えなければいけない、それは当然のことだと思うんです。  しかし、私どもの認識は、その前に今のNTT現状についてどう考えるか、ここが一番大きなポイントだと思っておりまして、今委員の御指摘があったように、九六年に議論されて九六年の秋ぐらいに合意した今のNTTの再編のスキームを見ると、これはやはり非常に問題が多いと。まずそこを何とか変えることが第一だと、このように認識しているわけです。  どこに問題があるかというと、御指摘のように、IPを前提としていないメタルの電話網を想定した分割のスキームでした。ですから、持ち株会社の下にNTTの東と西、それからドコモ、コミュニケーションズ、それからデータが主としてぶら下がるような形になっていますが、NTTの東と西に関してユニバーサルサービス義務が課せられる一方で県内通信に特化させられている、それからNTTの東と西は静岡県辺りで分断させられている、そういう分け方自体が今のIP化の時代からすると大変そぐわない形になっていると、そこがすべての問題のまず根底にあるわけです。  今のままでいいわけがないでしょうと。その東と西が特殊会社として種々の規制を受けながら、その一方でコミュニケーションズは県間と国際はどうぞ自由にやってください、こういう形になっている。そういう性格を異にする企業が持ち株会社の下にぶら下がっていると。そのような形でこれから先うまくいくのかというと、私どもはうまくいかないだろうと、こういう認識に立っているわけです。  その際に、例えば委員の御指摘のように、通信放送融合しているわけです。それから、通信の中で見てもFMCで携帯と固定融合も進んでいるわけです。そのときに、今のNTTの形はそれが法律上無理やり分けさせられている。その無理やり分けさせられている中でNTTは頑張ってシームレスと言っていますけれども、それは基本的に無理なことをやっているのではないかと、こう思っているわけです。そうなると、まず今のNTTのスキームというもの自体がIPにそぐわないという認識が一点です。  それからもう一点は、そのNTTが持つ市場支配力、とりわけボトルネック部分の独占性、ドミナンス性についてどう考えるかでありまして、まずメタルに関しては、これは間違いなく独占性があったわけであります。  それで、光に関してどうだと、こういう御質問でありますが、光に関しては、メタルに関しては今四割ぐらいまでDSLではそのシェアが落ちておりますが、光に関しては六割ぐらいであります。ここが難しいところで、メタルに関しては既にあるネットワークを開放したわけですから、開放は非常に易しかったわけです、ある意味ではですよ。しかし、光のように建設しながらということになると、その営業活動と建設活動みたいなものが一体化していて、結果的にそのことがシェアを高めている懸念があると。そうなると、やはり一つ事業者が六割ぐらいのシェアを占める状況というのは好ましくないのではないかと、こういう判断です。  それで、最後に一点、委員がおっしゃった、我々が四つ考えたうちで五つ目があるのではないかといったような御指摘だと思います。統合の側面があるのではないかと。  私どもが考えている例えば第四の資本分離というのは、実はNTT法も廃止ですから、東も西もいろいろな規制をなくして自由な事業会社にすると、こういう発想ですから、その自由な事業会社にいったんした後に当然統合はあるだろうと、統合があってもしかるべきだと。しかし、そのときには当然独禁法のような市場支配力によるチェックは必要ですけれども、しかしそのプロセスを経ないで、今の九九年のスキームのままでごちゃごちゃやっていると、それはいろんな意味での公正な競争条件としてはおかしいと。仮にゴールがそういうところにあるにしても、そのステップは絶対に必要だと、こういうふうに考えておりますので、四は実は先生がおっしゃった第五のところを含意していると考えていただきたい。
  21. 鈴木寛

    鈴木寛君 資本分離ということがかなり前面に出ておりますので、今の先生で半分ぐらい、かなりその誤解が解けたわけでありますが、私もNTT法をきちっと見直して、そしてきちっと他の事業体、他の業態と同じように独禁法制を掛けていくということは有力な選択肢だと思っています。でありますので、是非きちっとそうした議論も、この二、三、四、どれも聞くと、分離分離分離と聞こえるものですから、やはり正しい在り方を見据えていただきたいということは、これはお願いでございます。  ただ、一方で、世界でやっと、やっと、私が九五年に担当しましたときは世界で二十二番とか三番ですよ、それがやっと世界一のブロードバンド環境になったと。むしろここは世界マーケットに対して今度は攻めを挑んでいくと、こういうふうなステージで、じゃ逆に言うと、いろいろ確かにいびつなものはありつつも現在日本ユーザーは困っているんだろうか、あるいはこれから日本ユーザーの観点から立ったときに、何が望ましいのかという観点で是非いろいろな選択肢について更なる議論を深めていただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。  それと、済みません、時間が余りありませんので手短にお願いをしたいんですが、基礎研究の分離の話が、これも出ております。これも私、少し違和感がありますのは、私も、いわゆるこのICTの分野のRアンドDマネジメントということを少し勉強してきた者として申し上げると、基礎と応用というのが一番分離しにくいのがこのICTのRアンドDの世界だというふうに思います。  例えば、創薬のような場合は、要するに基礎研究になってから臨床まで、安全性チェックとか人体のチェックみたいな話がありますけれども、例えばノーベル賞を取ったショックレーなんかは、これはむしろ応用研究所の所長が基礎で取ったり、あるいは村井純先生というのは、元々これは数理科学のプロフェッショナルなわけでありますが。でありますから、基礎と応用というのはこれは峻別できない。  特に、これは、例えばソフトウエアというのはアルゴリズムそのものですから、ほとんど数学なわけですね。それから、例えばハードで申し上げると、光の光源、これは正に量子井戸効果とか、正に量子力学そのものなわけで、この分野において、何か概念的に基礎とか応用とかというと分かりやすいんでありますが、もう少し技術実態を見た議論というものが私は必要ではないかと。  なぜ、DSLの世界では日本が韓国とアメリカに負けてしまったけれども、光ファイバーにおいては成功できたかと。幾つかの要因が私はあると思います。それはすなわち、ソフトウエアとハードウエアと、それからそのメンテナンスのヒューマンウエアと、ここが統合的にといいますか有機的にその開発と、そしてこういうものというのはいわゆる複雑系といいますか、それぞれの技術開発を合わせてテストベッドで実証してみて、そこからのレスポンス、フィードバックでもってもう一回開発をするという、こういう研究サイクルというのが非常に重要になってくるわけで、光のことだけで申し上げると、このバランスが我が国においては良かったなということはやっぱり評価せざるを得ないと思うんですね。  そのことを踏まえて、私は、別に放送分野の研究と通信分野の研究の融合、これはどんどんやった方がいいと思いますが、しかし、まあそういう点を踏まえていただきたいと。  それから、まあ言葉じりかもしれませんけれども、五ページの中で、分散しているのは問題ではないかと、こうおっしゃるんですが、これはポストモダン型の特に不確実性の高い基礎研究においてはむしろ自立分散して、しかしながらそのテーマごとにコラボレーションをしていくということが、どっちの、スコープが広い、要するに数撃たなきゃいけないわけですね。要するに、シリコンバレーにおけるRアンドDのいいのは、一杯いろんな人たちが自立的に研究していると。しかし、そのコラボレーションが組織組織じゃなくて、いろんな個人も含めた、絡み合っているというところがあれなものですから、分散しているのは問題ではないかという表現は問題ではないかというふうな印象を持ったわけでありますが、この点いかがかと。  それから、ちょっと済みません、もう時間がないので、縦割りから横割り放送通信の法制、法体系を変えるというお話があった。これも私は総論としては賛成であります。しかしながら、放送については規制をしなけれりゃいけない理由は、正に電波の有限性です。ここはやはり引き続き残らざるを得ないというふうに思っていますが、いわゆる通信について、これは無線通信のことも入っているのかどうか、そこがよく分からないんですけれども、通信についてはさっき申し上げましたように、電気通信事業者としての届出をして何をしているかというと、情報が常に取れるとか、役所とコミュニケーションが取れると、いろんな事態においてですね、不正アクセスとか有事とかいろんなことがありますから、そういう意味での最小限の届出制のようなことは必要だと思いますが、いわゆる業態規制については、通信について私は不要な方向に行くのではないかと。そうしたときに横割りにといったときに、これ通信については何が残るんだろうかと、こういうことを懸念するわけです。  我々がずっと一貫して懸念していたことは、放送というのはどうしてもコンテンツ規制の部分が掛かりますよね、中立の報道のこととかですね。こういうことが決して通信の分野に及ばないようにしなければいけないという、いろいろな懸念があるわけで、そうしたことについて是非御留意をいただきながら御議論を更に進めていただきたいなと思いますが、御所見と御感想をいただければと思います。
  22. 松原聡

    参考人松原聡君) まず一点だけ。世界一のブロードバンド大国になったのは、これはNTTが頑張ったからではなくて、電気通信事業法でしっかりとした開放義務が課せられたことだと認識しておりますので、だからNTTをそのまま強化すればいいという話には論理的にはつながらないという認識を持っております。  それから、基礎研究についてお話しさせていただきますと、ここにいろいろな文言がございまして、分散、分散こそが大事なんじゃないかと、それはもうおっしゃるとおりだと思います。  むしろ私どもがその基礎研究について問題と思いましたのは、NHKNTTというのがそれぞれ法律で技術開発を義務付けられていると。NHK放送、言ってみればNTT通信技術開発を法的に義務付けられていると。その経緯をたどれば、NHKがやはり放送事業者の中で圧倒的なシェアを持っていた、それはNHKに対して放送技術開発を義務付けるそれは合理性があったと。今はシェアは半分以下になっているわけです、六千億しかないわけですから、二兆以上の中でですね。じゃ、そのNHKに法律上義務付けることの意味はあるのか。同じような意味で、通信に関しても、電電公社一社独占だった場合には、それは通信の電電公社が一社だから、そこが通信技術開発をやりなさいと法的に義務付けられていると。  しかし、このように通信放送も多様化していろいろな競合的な事業者が出てきたときに、一社だけにそういう義務を課していることが、もしかしたら技術の独占に結果的にはつながらないか、オープンにする義務があるのは十分承知していますが、結果的にそういうことにつながらないか。そのことに合理性があるのかということをしっかり見直していきたいと。こういうところが実はこの問題提起の根底にあるわけです。  さらに、分散はそのとおりなんですけれども、しかし、ベースが通信でちょっと放送に出ているとか、NTTは、逆にNHK放送がベースだけどちょっと通信に出ているとか、その辺りが法律で規制されている中で本来の通信放送にふさわしい技術開発ができているかと、こういう問題意識も同時にあるわけです。  更に言えば、例えばNTT法が廃止されるような世界を想定すれば、時期を想定すれば、そういう技術開発義務自体をNTTが負わなくなると、そういうことも想定したときに、やはり今の技術開発の体制というもの、放送NHK通信NTT、その一方でNICTという国の独立行政法人もあると。この辺りの検討、再検討は必要だろうということです。  ただ、それをどうすればいいかについてはまだ議論をしている最中でありまして、先生がおっしゃった分散が大事だとか、それからICTに関してはとりわけ基礎と応用が切り離せないんだという御指摘も大事だと思いますので、そこは考えていきたいと思っております。  それから、コンテンツを含めた縦割り横割りの法規制の問題についてでありまして、横割りにしていくということは、例えば伝送に関していうと、放送の側も電波も使うし、それから光ファイバーも使う、こういう形になってきている。一方で、通信の方が一対一から一対nになって、映像も流せるようになってくると。そうすると、例えば伝送路に関して、今は届出、免許ごちゃごちゃになっていますから、それが実態的に一緒になりつつあるのであれば、それにふさわしい横割り規制にすべきであろうと。  それから、コンテンツに関して、おっしゃるように、放送に関してはコンテンツ規制があるわけです。逆に、通信に関しては憲法の通信の秘密ですから、コンテンツ規制を逆にしちゃいけないわけです。しかし、通信の中で事実上放送的な一対nの映像配信サービスが多様化してくると、出てくると、実はそれは多分に通信の中で放送的な部分になってきているわけで、それを今のままでいいかというと、その部分を包含したようなコンテンツ規制がもしかしたら必要かもしれなくて、当然そうなると一対一の電話みたいなものはその枠の外にあるのはもう言うまでもないことでありまして、そういう意味で、レーヤーごとに今の縦割りをできれば横割りにしていきたいと。でも、完全に全部横になるかというと、例えばコンテンツに関しては規制していい部分と絶対しちゃいけない部分と分かれるのが当然だと、そういう認識でおります。
  23. 澤雄二

    ○澤雄二君 三人の参考人皆様、今日は本当にお忙しい中、また貴重な御意見、ありがとうがございます。  私、松原座長にお伺いをいたします。  おととい、懇談会論点整理が出ました。今日も説明をいただいたんですけれども、私もこの懇談会が目指しているものについては大賛成でございます。多分、日本の将来を決める大事なことだというふうに思っております。  ただ、当初からこの懇談会のメンバーにはテレビのことを残念ながらよく御存じの方がいらっしゃらなかったという不安がありました。それで、論点整理の結果を見ても、正しくテレビのことを認識、理解したとは少し思えないところも出てきております。松原座長も経済が御専門でございます。今回、通信テレビのことをいろいろ勉強されたんだと思います。テレビも経済的側面というのはすごく大事だと思っていますし、非常に重要でございますが、ただ、テレビが相手にしているのは視聴者でございます。視聴者ということは人の心をとらえるということを相手にしている。これは多分、テレビをよく御存じでないと分からないことかなというふうに思うんです。  先ほど、今も御説明をされました法体系縦割りから横割りにするんだと、これも機能的にはすごくよく分かるんですが、これは突き詰めていくと、テレビ機能のコンテンツを作るソフト部門とそれから送出をするハード部門の切り離しということにもつながってまいります。このソフト、ハードが一致しているテレビ文化と分離しているテレビ文化がどういうものかというような御理解は、多分このメンバーの中の方にはないんだろうというふうに思っております。そういうことが少し心配だなと。これから何回か開かれて詰めていかれるというんで、その辺のことも十分ちょっと吟味していただきたいということを最初に申し上げたいと思います。  質問させていただきますけれども、今も議論されていましたけれども、地上デジタル放送の補完的な役割としてIPマルチキャストを使ったらどうだと。つまり、一〇〇%二〇一一年の段階では今のアナログの放送エリアをカバーできないということで、それを補完的にIPマルチキャストを使ったらどうだ。せんだってのNHKのスペシャル番組松原座長もそういうお話をされて、これが放送通信ということがすごく分かりやすい象徴的な話なんだというお話をされていましたけれども、そういう御理解で今もよろしいですか。
  24. 松原聡

    参考人松原聡君) 済みません、ちょっと趣旨が分からないので、もう少しお話しいただいてからまとめてお答えしたいと思います。
  25. 澤雄二

    ○澤雄二君 地上デジタル放送がカバーできないところがあると、そのカバーできない地域の人たちのためにIPマルチキャストを使うとテレビが見れるようになります、これが正に通信放送融合ということの分かりやすい一つの象徴なんですというお話をNHKのスペシャル番組でされました。そのお考えは今でも変わりないかということです。
  26. 松原聡

    参考人松原聡君) IPマルチキャストの扱いについて、今委員がおっしゃった補完的というのは、実は総務省が情報通信審議会で昨年に出した中間報告の中でそれが示されているわけです。要するに、地デジ、地上波デジタル化に際して電波だけでは通らないから、補完的にIPマルチキャストあるいはCSですね、衛星を含めて使うと、この方針自体は懇談会の方針ではなくて、政府の審議会で出た方針であります。  それで、私自身は補完的であるかどうかについてはまだ留保しておりまして、既にCATVのような太い光ファイバーを通じたものも大分主流になってきていますから、私自身の認識としては、地上波デジタルに移行する中で電波だけではなくて、これは伝送路がむしろ多様化していくと、そういうような認識に立っているわけです。ですから、補完かどうかということについてはちょっと留保しております。  しかし、CATVでもそれからIPマルチキャストでも流せるということになると、電波ということになると県域制が非常に高いわけです。正に中継塔を建てて一生懸命届かせなければいけないわけですけれども、IPマルチキャストやCATVCATV事業者間はもう光でつながっていますから、可能性としては全国放送もいつでもできるようになってくると。そういう伝送路が多様化したような状況というものをユーザー視点で上手に生かしたいと、こういう認識でして、無理やり、電波が県外に出ないんだから、IPも衛星も全部県内だけ届くようにしましょうということについては、ユーザー視点から考えるといかがなものかという認識に立っているということです。
  27. 澤雄二

    ○澤雄二君 NHKのスペシャル番組ですから、大変な視聴者がいらっしゃって、その中で、お聞きしたかったのは、つまり補完という意味ではなくて、放送通信融合という例えでその話をされたので、その趣旨は変わりないかという意味で、今、まあそういうことだとおっしゃいました。  私はちょっと違う考えを持っています。つまり、鉄塔が建たなくてカバーできない地域というのは、多分山間へき地であろうというふうに思います。まあ十数人かもしれないし、五十世帯、百世帯の小さな地域かもしれない。その山間へき地に住んでいらっしゃる方たちというのは、多分お年寄りが多いんだろうと。そのお年寄りの方たちが、IPマルチキャストでテレビが見られるからといって、改めてインターネットを十万、二十万掛けて買われて、しかもそれを起動させてパスワードで見れるようにして、しかもチャンネルを変えていく。さらに、今までただで見ていたテレビを基本料金を取られてしまうというようなことがあるんだろうか。  それから、この間、NTTの社長さんにもお話を伺いましたけども、つまり、そこにブロードバンドを引くコストというのは、テレビの鉄塔を建てるより、マイクロの鉄塔を建てるよりも高いんだと、そんなことはNTTは考えませんよというふうにおっしゃっていました。つまり、松原座長テレビでおっしゃった、通信放送融合の象徴と言われたことは、実はこれは融合ではなくて、つまり、総務省が言っている補完的な役割、だから、テレビが見れない地域が出てきてしまうことに対して補完的な役割のメディアの一つとしてIPマルチキャストというのはあるんだと。  IPマルチキャストというのは、このほかに僕はすごい可能性はたくさんあるというふうに思っております。思っておりますが、今回のその論点整理を見ていると、そのIPマルチキャストについての考え方というのは、何か、テレビが持っているコンテンツをそこで流したいということが何か主流になっていて、私は、IPマルチキャストのビジネスモデルというのは、そういうことはもう捨てた方がいいんじゃないかと。もっと独自の新しいビジネスモデルを作った方がいいんじゃないかと。つまり、テレビ的な動画を流すにしても、いろんなビジネスモデルというのはそこを考えた方がいいんではないかということを思っています。  ですから、IPマルチキャストで放送することが放送通信融合の象徴ということについてはちょっとどうかなと。その辺も、テレビの御専門家がいらっしゃらなかったということの不安な点でございます。  それからまた、そのNHK番組で、その融合の必要性についてはこういうこともおっしゃいました。映画は再利用率、ちょっと数字はよく覚えてないんですが、三〇〇%ですか、テレビは、コンテンツの再利用率は七ですか、八ですか、(発言する者あり)八%だとおっしゃっていました。だから、テレビは再利用率がこんな低いんだから、もっとそれを上げるためにインターネットを利用すべきじゃないかと。それが放送通信融合のまた一つの象徴なんですという話をされました。これはそういうことでよろしいですよね。  それで、これもちょっと認識が違うんですけど、映画というのは一本物すごい高いコストを掛けて作っております。ですから、その映画を作るときに、ロードショー公開をどれぐらいの期間やるんだと、ロードショーが終わったらテレビに売ろうと、テレビに売った後はDVDにしようと、DVDにした後はビデオショップに流してそれでも金を取ろうというようなこと、つまり再利用そのものがビジネスモデルになっているから三〇〇%というすごい高い再利用率になると。これは座長よく御存じのことだと思うんです。  一方、テレビは二十四時間、三百六十五日放送しています。ドラマも放送していますが、テレビのドラマの制作費というのは映画とは比較になりません。ですから、再利用して売れるドラマというのは一体どれぐらいあるんだろうか。一生懸命頑張っているんですよ、その低いコストの中でね。  それから、毎日日常的に放送しているものもたくさんあります。例えばワイドショーであるとかニュースであるとか、これはもう一日たってしまうととても再利用なんかできるコンテンツではないんです。ですから、ただ、衝撃的な映像だとかすごく面白いシーンばっかり集めたものをピックアップして再利用することはやっております。  だから、テレビというのはもともとそんなに再利用率が高いものではないんだというふうに思っておりますが、その辺の御所見はどうですか。
  28. 松原聡

    参考人松原聡君) まず一点、構成員の名誉のために言うと、構成員の中にいらっしゃる慶応大学の菅谷実先生は放送業界の日本の第一人者でございまして、放送専門家が懇談会の中にいないという御指摘は私はちょっと同意できません。それから、私自身、この懇談会が始まる以前から、また始まってからも菅谷先生と繰り返し議論してまいりました。その点だけはちょっと申し上げたいと思います。  まず、ブロードバンドについて、補完的だということであれば正に本当に過疎地にどうしようかということであります。それに関しては、むしろ政府の方がブロードバンドゼロ地帯の解消を二〇一〇年、大体地デジのときに合わせているわけですから、そのことについてはNTTがやるかどこがやるかは分かりませんが、恐らくそこまではブロードバンドが行っていると。  それから、ブロードバンドで、IPマルチキャストで地上波デジタル放送を再送信するときは、パソコンを介してではなくてセットトップボックスを通じてダイレクトにテレビで、チャンネル等で操作できると思いますので、お年寄りの方がそこで不便を感じるようなことは恐らくないんじゃないかと思っています。  ただ、私は、先生が御指摘のように、そういう補完的な役割としてではなくて、もう少しメーンのしっかりとした放送をそこで流すというような役割としてとらえたらどうかという認識に立っていることは御指摘のとおりであります。  それから、テレビのアーカイブ等の過去の番組の再利用についての御指摘で、三〇〇%と八%というちょっと衝撃的な数字を私が出したのはそのとおりでございます。しかし、それではテレビの過去の番組に対するニーズがないのかというと、これは恐らくそうではない。過去のドラマを見たい、それから過去のバラエティー番組を見たい、こういうニーズは非常に高い。それから、アメリカ等、韓国もそうです、諸外国の状況を見ると、例えば、ドラマが終わったら、もう次の日すぐそのドラマがいつでも見られるような状態になっている。  そういうニーズは非常に高いし、実際それが進んでいる国もあるのに、日本の場合には余りにそれが進んでいない。進んでいないことの理由は一つで、一つはやはり著作権法上の権利処理の問題です。これがアメリカのようなジェネラルプロデューサーが一言でばっと流せる話と、そうではない日本との差が出てきています。それからもう一つは、テレビ地上波、もう限られていますから、そこで過去の番組をどんどん再利用するというのは、流すというのは無理ですから、流すとしたらIPマルチキャストで流すしかないわけですけれども、そちらの方の整備も進んでいないと。  その二つの理由で八%になっちゃっていて、それが映画並みの三〇〇になるかどうかは全く別ですけれども、ニーズは物すごくあるし、ビジネスチャンスもあるという認識でおります。
  29. 澤雄二

    ○澤雄二君 テレビもいろいろ努力をしておりますから、再利用するものがあれば、例えばケーブルテレビでそういう専門チャンネルをつくるとかいろんな努力をしていると思いますし、BS、CSのチャンネルの中で過去のコンテンツを使ったりとかもしています。それから、この中の、論点整理の中でも出ていますけれども、地上デジタル放送の今後の使い方によってはそういうところでも可能だというふうに思います。  インターネットについてもやっていますよね。ただ、トレソーラというような、六、八、十が一緒になってやっても大赤字とか、今、日本テレビも新しい第二の開局だってやっていますけれども、ただ、今のところインターネット、インターネットでですよ、コンテンツを流すことのビジネスモデルというのはなかなか先が見えていないというのが現実だと思います。  時間がなくなりました。  論点整理の中の一つをちょっとお聞きしたいと思うんですが、「現状認識」の一番目のところで、「通信放送の制度的な枠組みが、融合の進展、デジタル化IP化のメリットの社会への浸透を阻害している面があるのではないか。」というふうに言われています。これをちょっと具体的に伺いたいんですが、制度的な枠組みというのは何を指しておられるのか、融合というのはどういうことを指しておられるのか、それからデジタル・IP化のメリットの社会への浸透を阻害していると、具体的にこの阻害というのはどういう現象をとらえて言われているのか、お聞かせください。
  30. 松原聡

    参考人松原聡君) 融合の進展というのに関しましては、例えば携帯電話という通信機器でワンセグという放送が見られるようになっていると、例えばそういう状況ができている。それから、トリプルプレーサービス、あるいはクワドロプルと、携帯も入れてもよろしいわけですけれども、そういうのが一体化している。一本の光ファイバーで電話もインターネットも放送もと。かつ、その光ファイバーが、通信光ファイバーでも同じことが可能ですし放送事業者CATV光ファイバーでも同じようなことが可能になっている。  そうすると、ユーザーの側、国民の側から見ると、通信機器の電話でテレビも見られるし、一本の光ファイバー、それも通信事業者光ファイバーCATVかは関係なしにいろいろなサービスが受けられるようになっている、そういう意味で実態的に融合が進んでいると。  それに対して、規制の方が付いていっているか。例えばワンセグ放送NHK放送を見ても、今のところ受信料を取る方向にはなっていないわけです。しかし、受信料を取ると言った途端にそれが全く普及しなくなってしまう可能性もある。それから、光ファイバーを見たときに、通信事業者が引く光ファイバーとやはりCATV事業者が引く光ファイバーとは規制上大きな差があるけれども、受けるユーザーの方からすると同じになっている。その辺りのところをスムーズにすることによって、よりトリプルプレーサービス等が可能になるし、そのことのメリットを受けることができるだろうと、こういうことです。  それから、IP化デジタル化という点に関しては、やはりその放送コンテンツが、繰り返し申し上げますが、ほとんど再利用されないというのは、地上波で再放送をしようとしても、再放送の時間帯自体が制約されていますし、そのネットは五つしかありません、NHK入れても七つですから、その時間帯の中に過去の番組流していくということは事実上できないわけです。しかし、そういう番組デジタル化されていて、かつそれをインターネットプロトコルでも流せるということになると、繰り返しになりますが、ニーズがあると思うんですね。それを可能にするような技術的な条件が整ってきていると。しかし、制度の方を見ると、繰り返しになりますが、著作権法とかですね、それからIPマルチキャストのいろいろな条件等を考えると、その技術的な成果を国民が享受できない状況にあると、こういう認識であります。
  31. 澤雄二

    ○澤雄二君 融合といえば言葉の問題もあると思うんです。何か溶け合って混ざり合って新しいものが出てくるというような印象があって、そのためには法体系から何から全部変えなきゃいけないというような印象をもし持たれているとすると、今松原座長がおっしゃったことも、単なる新しい技術が出てきて、融合というか、何というか、調和とか連携とか提携とかという言葉の方がふさわしいんだみたいな僕は印象を受けました。ですから、その辺のところをきちっと立て分けて考えないと、融合で新しいものが出てくるから全部変えなきゃいけないんだということには多分ならないんだと。  松原座長がお話しになったことも、今までやっている地上波テレビ放送がこう変わったというよりも、新しい技術テレビも見れるようになったということの方が多かったと思うんです。  それからもう一つは、古いコンテンツを見るニーズはあるんだと座長がおっしゃいましたけれども、そこが一番最初に申し上げた、視聴者の心をどう見るかということが分かっているか分かっていないかで、本当にニーズがあるのかないのか。もしあるとしたら、トレソーラというもう壮大な実験をやったわけです。四、六、八、十のチャンネルが一緒になって、過去のアーカイブ出せるの全部出してみようと。もう惨たんたる有様であります。今のところ多分そういうものはビジネスにならないだろうなという見通しの方が大きいんです。  だから、もしやるとすると、インターネットで……
  32. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) そろそろ時間です。
  33. 澤雄二

    ○澤雄二君 済みません。  インターネットで再放送するよりも、もっとほかの媒体、例えばCSとかBSとか地上波デジタルとか、そういうものの方が可能性があるんだというふうに多分テレビの方は考えておられる。ですから、IPマルチキャストの使い方のビジネスモデルというのをもっと違うことを考えた方がいいんではないかなという感想を持っております。
  34. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) 松原参考人、時間が来ていますので、簡潔に。
  35. 松原聡

    参考人松原聡君) じゃ、一点だけ。  そのトレソーラとか第二日テレがうまくいってないことについて私なりの判断は、ニーズが一番多い人気のある過去のドラマとかバラエティーに関しては、権利処理が難しくて番組として流せていないんです。今トレソーラ等が流せている番組は主として権利処理が非常に簡単なものであって、逆にそのことはニーズに合ってない番組しか流せていないと。  ですから、その辺りの処理がしっかりできれば、私は違うビジネスモデルとして成り立つ余地は十二分にあると。諸外国も実際にそうですね。実際見たい番組が流せてないと、権利処理ができてないということが一番大きい問題だというのが私の認識です。
  36. 澤雄二

    ○澤雄二君 終わりますから、十秒だけ。
  37. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) 澤雄二君、簡潔に。
  38. 澤雄二

    ○澤雄二君 著作権処理だけの問題ならば、この問題はすごく分かりやすいんです。ですから、その辺も立て分けてこれから議論をしていただきたいなというふうに思います。  終わります。
  39. 吉川春子

    ○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。  三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。  まず、北川参考人からお伺いしたいと思うんですけれども、中越地震のときに大変ローカル局としてすばらしい放送をされてその実力を発揮されたということは私もこの総務委員会でも取り上げたことがあるんですけれども、そういう点でローカル局の持っている力というのは非常に貴重だと思いますし、私自身も、御巣鷹山に日航機が落ちたときに、地元のテレビ局、新聞社でしたかね、あれは。かなり苦労して、一番近くにいるという条件を生かして情報をいち早く東京の局に負けないように国民に届けたという、そういうドラマ、NHKドラマだったと思うんですけど、拝見して感激したことがあります。  それで、そういう役割を果たしていくためにやっぱり人材ということが非常に重要だと思うのですけれども、デジタル波に切り替える中で大変な設備投資をされておりまして、この七ページにも、民放試算として二千六百十億円が中継局という報告もさっきいただいたところなんですけれども、こういうインフラ整備への投資がローカル局の本来持っている人材とか情報収集とか番組作成の方にマイナスの影響にならないのかどうか、その辺についてはどのような認識でいらっしゃいますか。
  40. 北川信

    参考人北川信君) 結論だけ先に申し上げますと、先ほど言いましたように、設備投資というのはアナログ時代でもあったわけで、ハード・ソフト一致で最初から進んできていますから、アナログ設備も二十五年ぐらいたてば壊れますので更新していかなきゃならないと、そういう更新も含めて経営が成立しておりますので、デジタル投資を今やったから突然その分赤字になったというようなことではございません。  ただ、実際には、経営者が自ら判断して適切な時期に適切な設備更新をやるというのが経営なんですが、今回は国の方針で一斉に一定の期間の中で強制的にやらされたということから経営に非常に無理が来ている。その分が負担になっていて、おそらく今年から来年、再来年にかけて、赤字決算をやるローカル局はかなり増えてくるだろうと思います。当然、それは人件費にも差し支えるというか、人件費と同時に番組制作費ですね、番組作るのにお金掛かりますから、それは大変響いてまいります。  したがって、これを、番組も質を落とさず、それから従業員の生活も守り、なおかつデジタル投資を完成させるというのは至難の業でありますので、大変な努力をしていかなきゃならないということは事実でありますが、ただ、基本的に言いますと、それは一時的な現象と。これでデジタル化が完全に進めばそれは一つの新しい生産力になるわけですから、そこで改めて新しいデジタル時代のローカル放送経営のモデルというのはつくっていかなければならないし、やればできることだと思っています。  今ローカル局が苦しんでいる問題はそのことだけではなくて、やっぱり地域の経済自体が低調になっていると。それから、民間放送というのは広告産業でありますので、広告というのは消費マーケットに対する要するに宣伝費の投入ですね。だから、我々の放送局の収入というのはスポンサーの宣伝費を収入にしているわけですから、消費マーケットとして経済が停滞すれば収入も減ってくるというようなことがあります。  それから、いろんな問題が東京一極集中が進んでいますので、地方と東京とのウエートがどんどん変わってきていると。そういう全体的な状況の中で、やっぱり地方自治、地方経済、地方文化そのもののレベルと合わせて地方局の経営というのはやっていかなきゃならないという意味で、複合的な難しさというふうに理解しております。
  41. 吉川春子

    ○吉川春子君 もう一点お伺いしたいんですけれども、二〇一一年にデジタル化ということでアナログ波が停止すると。しかし、それまでに、インフラ整備だけではなくて、今度、国民の側の受信機の保有の問題とかいろいろあると思うんですよね。それで、総務省に聞いても、いや、二〇一一年に完全にやりますという答弁しか返ってこないんですけれども、万が一、アナログ放送を二〇一一年以降も続けるというような事態になったときに、経済的に民放局が持ちこたえられるか、あるいはそれは非常に困難なことだとお考えなのか、その辺はいかがでしょうか。
  42. 北川信

    参考人北川信君) さっきもそういうお話が出たわけですが、延長戦あるのかないのかという話だと思うんですけれども、我々は、放送事業者立場からいうと、全部計算をして今の設備が償却できる形でぎりぎりのところでやっておりますので、それがまた、いや、だから多分二〇一一年にはこの機械はつぶれるだろうなと、壊れるだろうから今の機械を長もちさせて使っておこうよと言っていたのが、いや、実はもう二年延びるんだと言われると新しい機械をまた買わなきゃならないというような設備投資の非常に不合理が起こります。  それから、今、御承知のとおり、局はデジタル放送とアナログ放送と二波をやっていますから、簡単に言うと、電気代も含めて経費のかなりの部分が二倍掛かっているわけですね。この負担にはかなりきついなと思っておりますので、二〇一一年にはそういうサイマル放送のその負担から終わるという意味でも計画どおりに終わらせてほしいというふうに考えています。  実は、同じ問題がメーカーの側にもありまして、メーカーの方ではやっぱりどの段階でアナログの機械を作るのをやめるかとか、それからどの段階まではアナログのチューナーを組み込んで入れるとか、いろいろ生産計画がありますが、それが全部狂ってくるというようなことにもなりますので、そういうことまで考え合わせると、なかなか時間を延ばすという話は実現しにくいのではないかと思っております。
  43. 吉川春子

    ○吉川春子君 井手参考人にお伺いいたします。  最初のペーパーをいただきまして、「今後の課題」という点の中で、「世界最先端のブロードバンドサービス普及の流れを止めず、ICTを活用した少子高齢化等の社会問題の解決と経済成長力・国際競争力の向上を実現」と、こういうふうに書かれているんですけれども、この点について、さっき時間の関係もあって余り御説明いただけなかったと思うんですけれども、特にその少子高齢化等の社会問題の解決というのはどういうことを指していらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  44. 井手秀樹

    参考人井手秀樹君) こういったインフォメーション・コミュニケーション・テクノロジーというのを利用して、いろんな社会問題があるということですけれども、少子高齢化、非常に高齢化が進む、例えば医療の問題、教育の問題、こういったことに対して、こういったテクノロジーを使って、さらに、何ですか、インターネット等々を使いながらブロードバンドを拡大していくと、それが経済成長力に、基盤産業としての経済成長力にもつながっていくと、こういう考え方でございます。
  45. 吉川春子

    ○吉川春子君 私、朝地下鉄で通っているんですけれども、ずっと若いころ通っていたときは、電車の中で結構文庫本を読んだり活字を読んでいる人がいたわけですよね、日本人は活字が好きですから。ところが、最近はもう、一番長いいすには七人座るようになっているんですけど、そのうち四人、五人が携帯を見ているという風景を見て、また、立っている人でも携帯をやっているという風景を見て、私も活字中毒みたいに活字が好きな人間として特に思うのかもしれませんけれども、これで一体日本の将来どうなるんだろうかという慄然とした思いに駆られるわけですよね。  今、新聞も読まない若者も増えているんだとかいう大学生協の報告もあるんですけれども、こういうIP化あるいは、私もパソコンを便利に利用さしてもらいまして、パソコンなしではもう一日たりとも過ごせない、そういう便利さはあるんですけれども、もう一方、そういう大きな何か文化の変化というものが日本を襲っていて、これが経済が拡大するよ、そういう産業が伸びるよ、便利になるよ、瞬時に情報が取れるよ、そういうところばっかりに目を取られていると、一体そういう活字とか思考力とか、じっくり物を考えるとか、そういうところがどうなるんだろうかという不安を感じるわけなんですけれども、井手参考人は大学の教授でもいらっしゃいますし、今の若者を見てそういう面についての不安というものに駆られたことはありませんか。
  46. 井手秀樹

    参考人井手秀樹君) 確かに御指摘の点は、活字離れ等御指摘のとおりだと思います。しかしながら、携帯電話によるインターネットあるいはパソコンによるインターネット、これの拡大によるいわゆる情報の、得る、情報の拡大というのはこれもまた否定できない点でありまして、確かに活字離れとは言いますけれども、いろんなホームページ等を活用しながら様々な情報に若者はアクセスすると。それは活字を実際には読んでいるわけで、そういう意味ではその情報の取得の在り方というのがかなり様々なバリエーションの中でできてきていると、私はそういうふうに思っておりますので、確かにその中でデジタルディバイドの問題というのは重要な問題として今後議論していかなければいけないと思いますけれども、その先生が御指摘の点というのは、確かに将来の不安というのは御指摘のとおりだというふうに思っております。
  47. 吉川春子

    ○吉川春子君 やっぱりディスプレーの画面でインターネットで情報を取って読むのと、本になったものをじっくり読むのとでは全然違いますし、質問準備などをする場合に物を読むにも、やっぱり画面だけで読んで質問準備というのはできないんですよね、国会議員の立場として。  そういうことで、私はその行け行けどんどんという風潮が物すごくあって、デジタル化とかいろんなことでもっともっと進むと思うんだけど、そういう日本本来の良さ、教育力といいますか、そういう点をなくさないような配慮も同時にしなきゃいけないなというふうに個人的には思っていますので、伺いました。  それから、松原参考人にお伺いしたいんですけれども、さっきの報告書の七ページで、NHKに関する問題なんですけれども、受信料を大幅に引き下げるべきではないかということが書かれておりますよね。NHKは今受信料によって行われておりまして、その受信料の収入が大幅に不祥事等によってダウンしている中で危機に瀕しているわけですよね。この受信料を更に大幅に引き下げるべきではないかというお考えの底には、広告収入に頼れとかそういうようなこともあるんでしょうか。それとも、それに頼らないとすれば、どうやって大幅に引き下げるということが可能になるのか、その点お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  48. 松原聡

    参考人松原聡君) まず、広告収入等に頼るという考えは全くございません。民間放送公共放送の二元体制が必要だという考えを最初に打ち出しておりまして、その二元体制というのは、ビジネスモデルとしてはCMモデルの民間放送と受信料モデルの公共放送NHKと、こういう考えでございます。  それで、受信料のやはり具体的な中身について見ていったときに、我々がですね、例えば受信料収入の一三%が徴収コストになっているわけです。七、八百億円というお金を掛けて徴収している。それでようやく六千億稼いでいるという状態で、これは常識的な企業としてはあり得ないのではないか。さらに、七割以上が口座振替ですから、そこについては徴収コストは事実上ほとんど掛かっていない。ですから、残りの二十数%と契約していない人たちに対して契約を促すためのコストにそれだけ掛けていると。そのことを見直すだけですぐ数百億円のオーダーにはなるだろうと、こういうことであります。  それからもう一つ、既にほかの委員からの御質問にもありましたけれども、非常に多くの子会社を抱えていて、その子会社と本体との関係が非常に不明確。本体が余りもうけていないのに、子会社が非常に多くもうけているような状況があると。そうすると、本体とNHK子会社との関係を見直すだけで、これまた大きな受信料の節約にもつながるだろうと。  それからさらに、これはもっと詳しく見ていかなければいけませんけれども、NHKのいろいろな番組制作等に掛けるコストの掛け方が、不祥事に象徴されるように空出張とか、本来掛けるべきではない、いけないところに回しているところがもしかしたら相当多くあって、その辺りの見直しも進めるべきだと。そういうようなことを総合的に見ていくと、やはり今のNHKの予算の中身というものは相当問題があって、スリム化が可能だと。  その上で、チャンネル数の見直しとかあるいは国際放送とか、あるいは過去のアーカイブをブロードバンドで流すというようなことを収入を取ってやるようなことも考えられると。それを総合的に見ていけば、受信料は現状のままでも相当大きく下げる余地はあるというのが私どもの判断です。
  49. 吉川春子

    ○吉川春子君 今の点とちょっと関連してもう一つ、⑥のポツ二の方なんですけれども、フリーライドが多い現状は看過できないことから、将来的には受信料支払の義務化、罰則化も検討すべきではないかというふうに書かれておりますよね。  それで、この問題も当委員会で度々、NHKが今契約不履行とか、あるいは契約していない人に対しても何らかの方法を取るということが検討されている問題をめぐって議論があったことなんですけれども、受信料支払の義務化、罰則化ということになりますと、これは今国民合意の下に支払って、そしてもらっているという根本的なNHK対国民の関係が崩されるのではないかという懸念があります。  しかし、後段に、NHKの抜本的な改革が行われ、かつ国民の理解を得ることが前提ということも書かれているんですけれども、その場合、参考人は、前段の問題と含めて、その場合の国民の理解を得るという、その国民の理解の内容についてどういうことを指しておられるのか、伺います。
  50. 松原聡

    参考人松原聡君) まず、ちょっと認識が違うかもしれませんが、今のNHKの受信料に関して、国民とNHKが両者で合意して契約が結ばれているのではございませんよね。要するに、受信設備を持っている人はNHKと契約を結ばなければならないわけで、それは法律上の事実上の義務でして、それをあえて不履行にしているという状態だと思いますから、正に私はその点についてはフリーライド、本来果たすべき義務を果たしていない状態だと。合意を得ているということではなくて、主体的にそれを拒否しているというような形で、それは不自然だと、こういう認識にまず立っております。  それから、フリーライドが問題なのは、これは年金等と違いまして、受信設備を持っている人は契約を結ばなければいけないのに、結ばなくても事実上見れちゃうと。逆に、そういう方たちの存在によって、まじめに契約している方は、例えば三割が未契約であれば三割余分に料金を支払わされていると、こういうような状態でありますから、そのことは看過できないと。  それから、諸外国の状況を見ましたときに、ほとんどの国が義務化、罰則化でありまして、徴収率は九五あるいは九八%となっておりまして、日本だけが七割ぐらいの水準です。それも計算の仕方によってその分母が変わりますから、例えばホテルで一室一室にテレビがあっても受信契約をしていない例が多くあるんです。病院なんかも同じでして、それを全部勘案すると五割ぐらいかもしれないと。やはりそういうような状況は看過できないというのが私たちの基本認識です。  しかし、その一方で、義務化、罰則化すると、NHKは徴収の努力なしに自動的にお金がわんさかわんさか入ってくることになりますから、そうなると、今ぎりぎりの状態ですけれども、支払拒否とか、契約しなきゃいけないのにしないということがNHKに対するプレッシャーになっていてまだ規律が利いている面があるのが、今の状態で義務化、罰則化するとそれが解消されてしまう、余計規律が緩んでしまうことに対して私たちは強い懸念を持っているわけです。その意味で、国民的な合意ということであります。  その具体的な中身についてはまだ議論していませんが、例えば、契約していても受信料の支払を拒否している人の数がどんどん増えているような状態は全く合意が取れていないと。それがまたどんどんどんどん減り始めていくとか、あるいは全体の契約率が上がっていくとか、やはりそういうようなある程度具体的な方向性が出てこない限り義務化、罰則化は難しいと。  それからもう一つだけ、義務化と罰則化はやはりちょっと距離がありまして、今は受信契約を結ぶ義務ですけれども、放送法でしっかりと受信料を払えという義務を明示するのが第一段階です。ただ、罰則化となると、それはもう強制力を持って徴収するということになりますから、その二つの間には恐らく時間的な距離を置く必要もあるかなと、そういうような考えでおります。
  51. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  52. 又市征治

    ○又市征治君 社民党の又市です。  参考人の皆さん、大変今日はありがとうございます。意見陳述が十分ずつということだったから、全く言い足りないということなんだろうと思いますので、そういう点では、個別に幾らか、もう少し突っ込んでお聞きしたいという点に絞ってお尋ねをしたいと思います。  まず、北川さんにお伺いをしたいんですが、地方局の大変御努力をなさってきて、民放連の大変苦しいお立場といいますか、そんなことも背負っておいでになったわけですが、三月二十二日にこの懇談会松原さんの懇談会でもいろいろと述べられているのはちょっと拝見をさせていただきました。その中で、通信放送と同様になって多数の事業者から、東京などから全国へ直接に発信されるようになれば、現在地方局が東京のキー局から受けて放送しているテレビは視聴率が激減するだろうし、独自にコンテンツを流しても利用者は限られ、スポンサーも減る。地方独自のニュースや番組制作をする力量、つまりは経済力、技術力、人材などということだろうと思いますが、これも失われてしまうと、こういうふうに危惧を述べられておりますね。これはもっともな御意見だろうと思います。  私も地方に住まいを置いておりますし、東京と往復している者の一人でありますけれども、地元の情報ソースとしてのテレビを大切に見ております。また、文化、娯楽の面でも、地元のネタが流されるとやっぱりほっとするといいますか、身近に感じてうれしいわけですが、逆に、東京キー局番組ばかり続くと面白みないですね、これは。通信規制緩和によって通信系の情報が洪水のように地方を直撃すると予想されるのに対して、御主張の情報の地方分権を守ることは大変重要なことだと、こんなふうに私も思います。  そこで、それには、資本の自由に任せるのではなくて、相対的に弱い立場にある地方メディアを住民や地方経済界のみならず中央政府も意識的にやっぱり守っていくことが必要なんだろうと、そうしなければ立ち行かないんではないか、こういう感じがいたします。私も、地方住民の情報発信力の確保であるとか、地方メディアの経済的自立のために必要な規制は維持拡大すべきではないかというふうに思うんですけれども、この点について加えて御意見をお聞かせいただければと思います。
  53. 北川信

    参考人北川信君) 今質問されましたその壊滅的状態だろうというのは、私の文章の中にございましたか。
  54. 又市征治

    ○又市征治君 違いましたかね。
  55. 北川信

    参考人北川信君) あっ、民放連会長。分かりました。  やっぱりローカル情報どうなんだと、どのぐらい大事なんだと、それからどうやって守るんだということの御質問だと思います。簡単に申し上げますけれども、県民が必要とする地域の情報、それを地域放送局が流す、あるいは地域の情報を全国に向かって発信する、県民の声が外へ伝わっていく、この二つの方向のローカル情報というのがあるわけですが、地方局がそういう二つの目的のためにローカル番組を作り発信していくということは絶対必要です。  私はローカルの社長を十年やりましたけれども、その経験の中でそこに住んでいなければ絶対気が付かない情報、ニーズ、感覚というのがございます。だから、これを大事にしていくきめの細かさというのが今の放送の制度的な一つの魅力ある点であり、この長所は伸ばしていかなきゃならないと思っています。  それから、ついでに触れますと、現行の放送免許地域原則主義を堅持するということをさっき申し上げましたが、それも電波の有効利用ということの目的のために放送免許があるわけですが、そういう監理上の要請だけでなくて、国としてやっぱり地域の情報を大事にするという姿勢がこの免許制度に表れているというふうに私は理解しております。  ただ、さっきのネットを通じて直接配信が始まれば地方局は壊滅するだろうというのは、私はそうは思っておりません。今まで要するに、地上波はケーブルの登場、BSの登場、CSの登場、三回にわたって要するに他メディアからの攻撃を受けて、現在では例えばスカパーだけでも、CS放送ですが、三百チャンネルが空から降ってくると。だから、よほど足腰が強くなければつぶれるかもしれませんが、実は地上波、今まで負けたことないんです。  だから、これからもどうだと言われると、それは分かんないから頑張ろうぜという話ですが、先ほどの報告の中で申し上げたように、やはり今、地上波、いろいろな批判を浴びて問題点抱えておりますけれども、結局はコンテンツ生産は一番大きい、強い力を持っていると。それから、視聴者の信頼も非常に高いと、現実の利用度も非常に高いと。こういう長所に恵まれているうちにやっぱり次の時代に生きていくような自己改善をしていかなきゃいけないなということで、やはり今のネットワークを崩さずに、キー局とローカル局、二十八局なり三十局なりが力を合わせてそういう機動的な放送システムをより高度化していくというようなことがまず第一だろうと思います。それを怠って、単なる規制上、何か法律の力か何かで支援を仰ぐとか援助をもらうとかいうような形では足腰が弱くなるだけの話ですので、その辺は地方局としてはきちんと気を付けてやっていくべきことだろうと思っております。
  56. 又市征治

    ○又市征治君 ありがとうございました。  先ほどもちょっと御報告ありましたように、中越地震のときのテレビ新潟の果たされた役割というのは非常に大きかった。私も隣の富山県出身でございまして、そういう点ではこうしたローカル局が本当に、この頑張りというのはああいうときに本当に大事だということをつくづく感じるわけでありまして、是非それぞれのところでまた頑張っていただきたいと思います。  時間の関係もありますので、お一人に一問ずつしかならないんですが、次は井手参考人にお伺いをしたいと思います。  民放連の主張のとおり、放送は基幹的なメディアであり、国民があまねく広く同時にかつ公平にということですが、もう一つ私加えさせていただくならば、安い値段で、できるならば無料でと、こういうことに提供されるということが民主的で平等な社会にとって不可欠な情報インフラだろうと、こう思います。  今、放送通信融合の名の下に、どのメディアでもどのコンテンツも見られることが崇高な理想であるかのように唱えられているわけですが、しかし、これ裏返してみると、利用は個人の経済力次第ということになりはしないか。多様なメディア機器や豊富に売られるようになったコンテンツを持てる者はますます持てる、持たざる者はますます持てないという、こうした弱肉強食の論理が情報の利用にまで貫徹をし、格差社会が拡大していくことを危惧するわけです。しかし、言うまでもないことですが、放送だけでなく通信も私有財産ではなくて社会的共有財産でありますし、一定の公共性を帯びていることは言うまでもないことだろうと思います。政府は、通信の公共性、あるいは低所得者等に通信の利用を保障するシビルミニマムの政策体系というものを構築していかなきゃならぬと、こんなふうにも思います。  通信自由化、商業化を市場原理のまま放置するというだけではなくて、こうした社会政策、金銭面を含めて、通信の公平な利用の保障をどう築き上げていくべきか、この点について何かお考えございましたらお伺いしたいと思います。
  57. 井手秀樹

    参考人井手秀樹君) 今日の私の趣旨から少し外れたちょっと質問だと思いますけれども、確かに、だれでもがアクセスできるというユニバーサルサービスという概念、これは非常に重要でありまして、NTTのかつての再編のときにも、競争政策というだけでなくて、ユニバーサルサービス、それからそれを開発するためのRアンドD、通信の開発のためのRアンドD、それから通信主権とか、それから株主の利益、権利の保護と、こういったいろんな観点からNTTの再編というのが行われてきたわけで、さらにそのNTT在り方を論じるときに、やはり拙速に結論を求めるんではなくて、十分議論をするということが必要ですし、その際にやはりそういった、先ほども述べましたけれども、デジタルディバイドということが拡大するということがないように、そしてさらに、ブロードバンドというものが発達することによってユニバーサルサービスという概念もやはり違ってきます。  そういう中で適宜、ユニバーサルサービスは何か、そして、だれでもが安くアクセスできるという、こういった制度というものを構築していくということは当然必要でありまして、あわせて、アメリカあるいはイギリス等でも取られていますように、いわゆる低所得者に対する支援ですね、こういったこともやはりユニバーサルサービスというものと併せて考えていかなければいけないと、これは当然のことだというふうに認識しております。
  58. 又市征治

    ○又市征治君 ありがとうございました。  最後に、松原参考人にお伺いをしたいと思います。  放送通信融合を進めようという場合に、最大の障害は著作権問題ではないかという、こういう説もあるようであります。著作権者、隣接権者といいますか、つまりシナリオ作家であるとか俳優であるとか音楽家、その他レコード会社、出版社などいろいろあるんだろうと思うんですが、一流の人たちはともかく、そうではない、どういう表現すればいいのか分かりませんが、一回しか出ないとか端役とかという、こういう方々もたくさんいらっしゃるわけです。  そういう人たちにとっては、自分の一回だけの執筆であるとか一回だけの出演した作品などが何回も利用され、そういう意味でいつどう自分のが振り込まれてくるか、出演料というかそういうようなものがですね、そういうような点は分からない。途中の放送事業者又は役務利用放送事業者はこの放映で幾ら金銭的利益を得ているのか、極端には、自分の知らないところで不正コピーされていないかということなどは、こういう方々にとってみては生活の糧が懸かった問題になるんだろうと思うんです。  加えて、今回、著作権処理の簡便化が主張されておりますけれども、通信の普及活用とか輸出振興の名の下に著作権料の切下げが行われるのでは、この人たちの文化創作活動の再生産というのがおぼつかないわけでありまして、本日の参考人の中にこうした著作権関係の方に入っていただいた方が一番よかったのかもしれませんが、松原さんのこの懇談会の中でもこの問題が論議をされているようでありますから、ここのところはさらっとさっきお話しなさっただけでしたので、代わって御意見をちょうだいをしたいと、こう思うんです。  なお、これに関しては、日本経団連などが暫定ルールという形での著作権の両立を提案をしていることは私も存じておりますし、またスクランブルやコピーの一回制限等によって技術的にカバーできるという面もあることは承知をいたしておりますが、その上で、今申し上げたこの著作権問題というのはどうしていくべきか、この点、どんなように御論議されてきているかということをお知らせいただければと思います。
  59. 松原聡

    参考人松原聡君) IPマルチキャストでの再送信に関して、現在は放送という枠組みに位置付けられていないので、例えば番組一つ見たときに、一人一人の著作権にかかわる人すべての許諾を得なければいけないと、こういう形になっているわけです。ですから、台本を作った人、実演者の方、すべての方の許諾を求めなければならない。その方が亡くなっていた場合には御遺族の方を探して許諾を得ると、こういう形になっているわけです。  一方、放送の場合には、放送として位置付けられれば、変な言い方ですが、お金さえ払えば何回でも放送できるという形になっていますので、一つ一つの権利処理は要らないわけです。それから、おっしゃったような、端役の方といいますかですね、という方も、まあ自動的に、繰り返し放送されるたんびにそれに応じたのが支払われるようになると、こういう仕組みでございますね。  それで、私どもは、IPマルチキャストで流そうとしたときに、放送と同じような扱いにしたらどうかと。そうすれば、一人一人の著作権者の許可なしに一括して、お金は払うわけでありますので、その方がスムーズになるだろうと、こういう発想でございます。  それで、この点、是非御理解いただきたいのは、今、例えばそういうIPマルチキャストでそういうのが、いろんな番組が流れていて、そこから著作権料を引き下げたり権利を奪おうという話ではなくて、そもそも回ってないわけですから、むしろ回ることによって有効に、見る側も楽しめるし、実演家の方、著作権を持っている方にも、今は死蔵されちゃってる状態ですから、それを動きやすくしようということで、この点に関しては、ウイン・ウインというか、ことだと思うんです。  ただ、おっしゃるような、比較的弱い立場にいらっしゃる番組制作の方とか、それから実演家の方についての配慮というのは十分必要だと思っていますが、あるのを取るのではなくて、動いてないのを動かすことによって、見る人も、出た人も、作った人もうまくお金が入るようなそういうシステムにしたいと、こういうことでございます。
  60. 又市征治

    ○又市征治君 終わります。
  61. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 国民新党の長谷川憲正でございます。  午前中の参考人の皆さんには本当お疲れのところだと思いますが、私が最後の質問者でございますので、いましばらく御辛抱いただきたいと思います。  最初に北川参考人にお伺いを申し上げます。  私、かつて一応政府の役人をしていたことがありまして、地方都市にも住んだことがあります、名古屋でございますとか松山ですとか熊本ですとか。さらには、もっと田舎になるんですけれども、宮崎県の小林というところにも住んだことがあります。そういう経験から申しますと、地域テレビ会社の存在というのは物すごく大きいんですね。これはもう東京にいるとなかなか感じられないんですけれども、私は、地方に住む人にとって、テレビ局が今後とも健全にどんどんと活躍をしていただくというのは大変重要なことだというふうに思っておりますので、御活躍に対して敬意を表しますとともに、今後の一層の発展に期待をしておる者でございますので、そのことをまずお伝え申し上げたいと思います。  そこで、先ほど又市委員の方から御質問がありまして、この通信放送融合というのは大変な打撃を与えるんじゃないかということに対して、そうではないよという前向きのお話をいただいて大変心強い気持ちがしたんですが、御提出をいただきましたこの説明資料の一番最後に、「前提となる基本方針」としておまとめになったところがございます。そこで、通信放送の広範な提携を進めるための前提として四つのことを書いておられます。ハード・ソフト一致の堅持、それから免許制度の県域原則の堅持、集中排除の緩和による経営の拡大、強化、それから二〇一一年のデジタル移行の完全実施と。  お気持ちは大変よく分かるわけでありますが、今、今日、松原参考人お見えでございますが、政府サイドでこの通信放送融合問題大きく取り上げて検討している中で、こういった、皆さんの立場からすると極めて重要な基本方針というのは維持されるとお思いでございましょうか。その点のまず御感想をお聞きしたいと思います。
  62. 北川信

    参考人北川信君) ちょっと質問の意味がよく分からないんですが、堅持すると書いてあるけど、例えば一、二について、本当に堅持できると思っているのかというあれですか。
  63. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 そういうことです。
  64. 北川信

    参考人北川信君) 思っております。
  65. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 心強い御発言でありがとうございます。是非、私も、この点は議論の余地はたくさんあると思いますので、これから恐らく議論になるんだろうと思いますけれども、こういった地方の、言わば社会を支えている県域テレビ会社の強い御意見というのはやはり政府としても十分に踏まえて検討すべきではないのかなというふうに思う次第であります。  次に、井手参考人にお伺いをしたいと思います。  井手先生は、もう通信の分野での大専門家でいらっしゃいますので、実はいろいろお聞きしたいこともあるんですけれども、今日は通信政策全般を広く議論するような場でもございませんし、時間もございませんので、一つ二つだけお伺いをしたいと思うわけでありますが。  一つは、今、松原先生の懇談会の中で広範な議論が行われている中で、NTT在り方の問題も入っております。先ほどの御説明でも、そのアクセス網、要するに市内回線網ということだと思いますが、機能分離だとか構造分離だとか資本分離だとかということが検討されているというお話がありました。それに対して井手先生の御説明の中では、やはり通信インフラに対する投資というのは極めて重要だというような観点、あるいは世界的な動向から考えてもこのアクセス部門構造分離というのはベストではないとたしか御発言があったと思うんです。  大変短い時間のお話でございましたので、必ずしも私ども趣旨を十分理解したとは思えないものですから、その辺の御説明をもう一度お願いできればと思います。
  66. 井手秀樹

    参考人井手秀樹君) 通信に限らずエネルギーもそうなんですけれども、世界的に構造分離、そして機能分離、会計分離と、こういったことが一般的に論じられて、それが一つ世界的な潮流であるわけで、しかしながら、その中で様々な問題点が浮き彫りになってきていると。  そこで出てきた考え方としては、各国置かれているいろいろ事情があるでしょうと。例えば、先ほどアメリカの例を出しましたけれども、CATV、ケーブルテレビというのがブロードバンドに大きな役割を果たしていると。それに対して日本は全くそれが競争事業体として位置付けられていない、あるいはDSLについて競争事業者がかなりそのシェアを奪っている、こういった各国置かれている事情、日本に置かれている事情というのが様々違うだろうと。その中で、やはり世界的に構造分離あるいは資本分離というものがベストかというと、いろんな問題が出てきているということで、やはりそこの点については慎重に考えないといけない。  例えば、機能分離と言うときに、イギリスではオープンリーチという言葉がございます。なかなかメタルの、銅線のオープン化というのがなかなか進まなかったという状況があります。これは日本とかなり違っておりました。したがって、そのメタルのオープン化が進まなかったことによって機能分離という、オープンリーチという言葉で言われていますけれども、機能分離が行われたと。それは日本と全く違うわけで、日本はメタルについては、先ほど言ったように、競争事業者がかなりシェアを奪ってきておると。光については、アメリカあるいはドイツでもそうですけれども、光の義務化というのが外されてきていると。結局は、やはり競争事業者としても自分はそのリスクを負いながらかなりの設備投資というものをやらないといけない、こういうものが本来の競争ではないかというふうに私は考えております。  そういう意味では、NTTだけに対して光の開放義務があるということも問題ですけれども、将来的に光だけが本来ブロードバンドの中心かというと、そうではないということを先ほど申し上げました。いろんな技術が出てきております。したがって、光だけに焦点を当てたその規制在り方というのはひょっとすると将来のブロードバンド在り方をゆがめる可能性もあると、私はそういうふうに認識しておるわけであります。
  67. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 井手先生にもう一つお尋ねをいたします。  今、通信放送のこの融合問題というのが非常に脚光を浴びた形になっておりますけれども、実はこれ、融合というようなことが言われ出したのは昨日今日のことじゃございませんで、もう九〇年代初めからいろいろ話がありました。恐らく技術的にはこれから先も大きな変化が続いていくんだろうと思いますけれども、そういう流れを考えましたときに、いつも議論をしていかなきゃならぬ課題だとは思いますけれども、今特に取り上げて重要な時点にあるという認識は先生ございますでしょうか。
  68. 井手秀樹

    参考人井手秀樹君) その点は、本当に放送通信融合という問題はかなり以前から議論されておりますけれども、やはり最大の問題は、事業法が別々にあるということもよく言われていますし、それからやはり放送というものをかなり限定した中でとらえていく、そして通信というのをある意味では広くとらえていく、これが必要だろうと。  それから、この場でも何度も出てきましたけれども、著作権の処理という、こういうルールというのをやはり早急に検討していかなければいけないというふうに思っております。アメリカのようにシンジケート市場というようなものもありますけれども、著作権処理の問題で、例えば入札、こういったことによってマルチユースですね、コンテンツのマルチユースというものを考えていかないといけない。  最後に、やはり通信インフラ通信レーヤーだけではなく、いわゆるコンテンツ、それからアプリケーションのレーヤー、こういうものも含めて産業論あるいは競争政策というものを考えていかないといけない、こういう時期にあるだろうと。これは今後非常に重要な問題だというふうに認識しております。
  69. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 どうもありがとうございます。  そこで、最後松原参考人にお伺いをいたします。  今のお話のように、通信放送融合問題、技術も進んで制度との不一致があちこちに生じていると。正に喫緊の課題になってきているというときにこの先生の懇談会がつくられたということで、大変な今精力的な仕事をしておられるんだろうというふうに思います。まずそのことに敬意を表したいと思います。  そこで、今日のこの論点整理などを拝見し、また新聞での受け止め方などを拝見をいたしますと、通信放送融合ということもさることながら、NTT在り方とかNHK在り方、あるいは受信料の値下げというようなところが非常に大きく取り上げられておりまして、これは私の個人的な感じ方かもしれませんけれども、世の中の受取方というのはむしろ、通信放送融合問題を研究する懇談会というよりは、これは情報通信分野における構造改革をやる懇談会ではないのかと、こういう受け止め方があるのかなという気がするんですけれども、座長としてはどんなふうにお考えでございますか。
  70. 松原聡

    参考人松原聡君) もうちょっと具体的に御質問いただきたいんですが、要するにここの、五月九日に出したペーパーでその問題意識、それから現状認識についてはしっかり述べているつもりでありまして、また私自身も雑誌等で書きましたのは、やはり通信放送融合についてしっかり今議論しなければいけない、井手先生がおっしゃったように、それはやはり相当緊急の問題だと。私どもは、とりわけ地上波デジタル化が目標である二〇一一年の七月、それから政府がIT改革の新戦略で出した二〇一〇年度までにブロードバンドゼロ地域を解消すると、やはりこの二つのことを考えると、そこに向けての作業を今緊急にやらなければいけないと、こういう認識でありまして、やはりそのことは通信放送融合、大きな枠組みだと。  NTTNHK問題は、私はその中の各論にすぎないんだと繰り返し申し上げてまいりまして、その認識は今も、それからここに反映いたしました論点整理でも変わっておりません。
  71. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 もちろん、総論と各論の違いがあるというのは十分に分かりますが、その場合に、この懇談会として、もう残りの時間も恐らくそんなにないんだろうというふうに思いますけれども、どういうお取りまとめをなさるのかなというところが気になるわけでして、総論を中心にまとめられるのか、あるいは総論は総論として各論に力を入れた方向を考えておられるのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  72. 松原聡

    参考人松原聡君) 本日お配りしたペーパーで、資料四で四ページ以降、「対応の方向性」というところが今先生がおっしゃった具体的な項目に当たると思います。  現在、それぞれについてどこまで具体的に最終報告に盛り込めるかの議論をしている最中でありまして、そのいろいろな項目の中で著作権とか幾つかについてはもう既に大体固まったということは最初に申し上げました。  そして、NTT組織問題とか、NTT組織問題、こちらに関してここに書いてあるところはまだ抽象的でありまして、その先の議論を今やっている最中であります。そこについてどこまで最終的なところで私たちの報告書の中で具体的に書き込めるかどうかは、まだ議論している最中。しかし、ここにございますように、多くの項目についてやはり相当しっかりとした具体的な方向性として出していきたいと。  これは論点整理ですので、すべて、ではないかで文章は終わっているんですが、そのではないかを取っていく作業を、べきであるで止める作業をしておりまして、具体性に欠ける部分についてはそれをなるべく具体的にして、べきであるというような形の最終報告にしたいと。  ですから、総論ではなくて、しっかりと各論に踏み込んだ最終報告に何とかしたいと今努力している最中でございます。
  73. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 そこで、お願いといいますか、勝手な注文を付けさせていただきたいと思うわけでありますけれども、私は、これは大臣の私的懇談会でありますから、先生方、特にお集まりのこの八人の先生方はいずれも情報通信世界の大家でいらっしゃいますから、言いたい放題のことを言っていただくのは大変結構なことだとは一方で思いますが、同時に危惧があるわけです。  それは何かといいますと、今のこの小泉構造改革が進んでいる状態の中で、世の中の人の危惧、先ほど新聞での書いてあるものに対する私の印象をちょっと申し上げましたけれども、それは何が危惧なのかといいますと、要するに松原先生のところの懇談会でこうあるべきであると、こうあるべきであるという報告書をお作りになったといたします。それは貴重な御意見だとは思うんですけれども、世の中にはそれに対していろんな意見があり得るはずだ、いろんな利害が錯綜する問題でもありますし、見方も変わりましょう。例えば、この報告書論点整理でもユーザー視点からというふうに書いてございますが、放送関係の方だったらユーザー視点からとは言われない、視聴者の視点からと言われるだろうと思うんですね。  そういうことで、視点でさえいろいろ違いがあり得るわけでありますから、そういう意味で、本来であったらいろんな意見が出てしかるべきところを八人の委員でおまとめになるわけでありますから、べきであるという集合体の報告がそのまま大臣に提出をされ、それを大臣がどういうふうに料理をされるかは分かりませんが、聞くところによると、政府の骨太方針にそれを盛り込むという考え方もあるやにお聞きをするわけでありまして、そうなりますと、それがあっという間に政府の言ってみれば政策になり、そしてその法案に準備をされてくるということに流れとしてはなるのかなと。そういう意味では大変重い責任を今負っていらっしゃると思うんですね。  従来の政府のやり方でありましたら、そこは審議会を開きまして、いろいろ時間も掛け、あるいはいろんな分科会をつくったりして多角的な観点から検討をし、その報告書にも、例えばこんな意見もある、こんな意見もあるというようなまとめ方をすることが多かったと思うものですから、実はお願いと言いましたのは、広範な意見をなるべく反映した報告書にしていただきたい。それから、報告書が出たらおしまいということではなくて、むしろそこから更に一層高まった議論をするスタートにしていただけないものかなと、こんな希望でございますので、御感想があれば承りたいと思います。
  74. 松原聡

    参考人松原聡君) 八人の、まあこの懇談会では構成員という呼び方をいたしますが、そこで今議論をしている最中でありますが、八人それぞれがやはり個人の立場、個人の意見ということだけではなくて、例えばNTTがどう考えているか、NHKがどう考えているか、そういうことを含めた形での議論をやっております。  それから、ヒアリングについても二回いたしました。各事業者から御意見を伺いました。  それから、そのヒアリングに対して不足な面に関しては、私どもはまた再質問をして再回答いただいたり、そのときにヒアリングに来ていただいた事業者の方に、言い足りないことがあれば別途出していただいて結構ということで、その意味では相当十分な意見交換はしている、こういうことでございます。  それからもう一点は、私どもが出した提言が、もしおっしゃるようにぽんとべきであるって書いて、それが法律になればスムーズなんですが、しかし私どもは今はそういう考えには立っておりませんで、実際こういう提言が国会で審議されるのは来年であり、再来年であり、あるいはもう少し先かも知れないと。そういうことを踏まえて今議論しておりますので、最終的にはやはり国民の理解、国会議員の先生方の多数の理解を得られるような結論というのは実は十分念頭に置いて議論している最中でございます。  ですから、学者的な人が集まって自分の意見でばっと提言を出すという形では実は進めておりませんので、その点は是非御安心いただきたい。逆に、勝手なのを出して、二年後、三年後、ただごみ箱に捨てられちゃうようなことであれば、我々自身もやることの価値がないと思っておりますので、その点は十分配慮して議論している最中でございます。しかし、先生の御指摘を受けて、これからもなるべく広範な御意見を伺いながら、まだ何回か議論の機会があると思いますので、なるべくいい、ちゃんと通る、国民の理解を得て国会でも納得していただけるような報告書を作りたいと思っている最中でございます。
  75. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 終わります。
  76. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言お礼を申し上げます。  本日は貴重な御意見を賜り、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  77. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) ただいまから総務委員会を再開いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  行政制度公務員制度地方行財政選挙、消防、情報通信及び郵政事業等に関する調査のため、本日の委員会総務大臣官房技術総括審議官松本正夫君、総務省情報通信政策局長竹田義行君、総務省総合通信基盤局長須田和博君及び総務省政策統括官清水英雄君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  79. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) 休憩前に引き続き、行政制度公務員制度地方行財政選挙、消防、情報通信及び郵政事業等に関する調査のうち、通信放送在り方に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  80. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 質問をいたします。  竹中総務大臣は就任のときに記者会見で、通信放送融合というのが決して既に議論段階ではなくて実現の段階であると、そのことは国民の皆様方にしっかりと実感していただけるような制度体制をつくってまいりたいということを就任演説で御発言になったことを記憶いたしております。  その後、一月に通信放送在り方に関する懇談会を立ち上げられました。今日は、午前中は座長である松原先生にもおいでいただいて、それぞれから御質問もございました。  そういう中で、通信放送融合とか連携、このキーワードというのは随分前から言われておったことでもございます。  特に、旧郵政省の時代でありますけれども、平成六年から八年にかけまして、二十一世紀に向けた通信放送在り方に関する懇談会、この最終報告で、情報活動の形態の変化により、通信放送分野において、それぞれ典型的な通信放送以外の中間領域的なサービスが実現しつつあると、こういうことが論じられておりました。  また、平成十三年度の情報通信白書には、両者の融合につきまして、サービス融合、伝送路の融合、端末の融合、事業体の融合、こういったことを融合ということで紹介をされておるのは御存じのとおりであります。  ところが、一口に融合と言いましても、今言いましたように多くの概念がございます。なかなか分かりにくい点もございます。そういう中で、大臣はこの日進月歩、本当に速いこの通信放送の中で、なぜこういったことをやらなきゃいけないのか、また、構造的な変化を多分求められていると思いますけれども、大臣がどうしてこういう懇談会まで設けてやろうかと、その点をまずお聞かせをお願いしたいと思います。
  81. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 景山委員にお答えを申し上げます。  私も総務大臣を命ぜられまして、そのときに、限られた時間ではありましょうけれどもやはり重要な政策方向付けを是非行いたい、その私の任務を考えました場合に、やはり身近に起こっている技術の変化、これはやはり改めてすさまじいものがあるというふうに思いました。その中で、その社会の枠組み、必要な法律の枠組みの整備を行うことは今の時点で大変必要だろうと、重要であろうというふうに考えたわけでございます。  とりわけ、安価で高速なブロードバンドインフラとしては整備をされて、その中で二〇一一年にはいわゆる地上デジタルに向かう、二〇一〇年にはブロードバンドゼロ地域をなくすという非常に急速な私たちのIT政策全体の体制整備が進む中で、今までは映像情報、音の情報も含めてですけれども、映像情報というのは、やはり電波による放送に限られてきたわけですが、技術の正にすさまじい進展によって、それが通信インフラでもできるようになっているということを改めて感じるわけでございます。  それをもって、先ほど委員は伝送路、端末、事業体の融合というふうな例を御紹介くださいましたが、そういうものが本当にもう目の前に来ていると。ワンセグ、正にそういうことだと思います。そして、トリプルプレーサービス、これももう始まっていると。そのような中で必要な対応をしっかりと議論をして、これ、この先も技術は進歩いたしますから、今すべてを決めるというわけではありませんけれども、重要な一歩を踏み出す必要があるのではないかというふうに感じたわけでございます。  例としてよく私も使わせていただきますのは、CDの生産額が、販売額がこの七年で四割近く低下をしております。音楽を若者は大変好んでいるはずなのに、音声、音声の配信ですね、音声情報の配信、ネット配信に対する対応が遅れてきたということもあるだろうし、その結果がiPodのように、何か技術的には日本で作れそうなものが日本で作れなかったと、アメリカのメーカーが巨大なシェアを持っていると。そういうことを見るにつけまして、やはり私たちが持っている技術を活用して国民のニーズにこたえる、そうして、今、通信放送の二十兆の市場を大幅に増やすチャンスがあると、そのような思いで今の議論をさせていただいているところでございます。
  82. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 初学者的なことを質問するわけなんですけれども、放送通信の違いというのはどういうことであろうかということなんです。  これまでは、一対nの形で、nといいますか多数ですね、一人対多数でやるのが放送であると、それから一対一の形態でやり取りするのが通信であるということでありましたけれども、今言われましたようにインターネットの急速な普及によりまして通信自体も一対一ではなくて一対多数、こういう関係にもなってきております。  両者というのはもう技術面でも既に融合、連携しているということであろうと思いますけれども、異なる特性は両者の、放送放送法、又は通信は電気通信事業法で区別されております。また、規制監督がされております。そうした中で、放送というのは厳しい参入規制及び内容規制が課せられておりますが、当然これは希少資源である電波を排他的に使用すること、その社会的影響の大きさからいろいろ規制をすることは当然であると思っております。  しかし、大臣がどこかの雑誌で書いておられましたけれども、見る方にとりましては放送だろうが通信だろうが全然関係ないと、放送通信というのはそもそも異なるものかどうかを含めて検討し、その違いというのはどうなんだろうかと、こういうことを言われたことがありますけれども、この初学者的な質問でありますが、放送通信の違い、この点について伺いたいと存じます。
  83. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 今委員御紹介してくださいましたが、法律上はどういうことになっているかと申し上げますと、放送法では放送というのは公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信というふうに定義をされております。今、放送を申し上げましたけれども、この法律上の放送は有線、無線を包含する電気通信の一形態という形で位置付けれるわけでございます。  しかし一方で、いわゆる規律の問題から行きますとどういうことが申し上げられるかといいますと、やはりここはしっかりと対比をしなければいけない問題が出てきます。  まず、特定者間の情報の伝達として憲法上の要請である通信の秘密が保障されているもの、これが通信ということに相なると思います。一方で、不特定多数の者に情報を一斉に送信することから、その社会的影響力等にかんがみて、コンテンツに対して一定の規律が課せられる、それを放送という、こういう規律の違いに着目した議論が当然のことながら重要になってくるというふうに議論をしております。  こういう点もしっかりと踏まえまして、通信放送それぞれの規律の違いも踏まえて、一方で急速な技術進歩等を背景に急速に進展しておりますこの融合、連携への対応の在り方専門家に御議論をいただいているわけでございます。
  84. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 通信放送融合が進んで、今も御説明いただいたんですが、大きな相違点の一つに著作権などの権利処理の問題があります。どちらも著作権の許諾が必要なのでありますが、放送が割と簡単な扱いなのに対しまして、通信は個別の事前許諾が必要であるという大きな違いがございます。  現在、IPマルチキャスト放送といいまして、ビー・ビー・ケーブル、なかなか難しい名前ですが、KDDIなどとか、インターネットの技術を使いまして、ブロードバンド回線を通じて映像を配信する事業をこれらが、こういった会社がやっております。現行の著作権法ではこのIP放送通信と位置付けるために著作権の処理が非常に難しくなっておると。同じ二次利用でも放送と定義されますケーブルテレビは、俳優でありますとか音楽家などの実演家の事前許諾が不要であります。後から使用料を払えば済むことに対しまして、通信の場合というのは実演家から事前許諾を得る必要があります。これは今朝の参考人質疑でも出ておったと思いますけれども、こういったことに対しましてIP伝送によるネット配信も著作権上放送と同じ扱いにすべきという意見も多く出されておると思います。  この点について、大臣の著作権の処理につきまして御見解を伺いたいと存じます。
  85. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 景山委員御指摘のように、今の通信放送融合、連携を考える場合に、当面の問題として一番議論をよくされますのは、やはりこの著作権の問題であると私も承知をしております。いわゆるIPマルチキャスト方式による役務利用放送につきましては、これは地上デジタル放送の再送信も視野に入れまして今の懇談会でも主要テーマの一つとして検討されております。その中で、実演家団体からのヒアリングを行うなど権利者の団体からの意見も聞くことは大変重要であると認識をしておりまして、そのような事情聴取、ヒアリング等々も行っているところでございます。  また、四月十九日には、今御紹介がありましたビー・ビー・ケーブルやKDDI、オンラインティーヴィなど事業者十社が参加をいたします役務利用放送協議会から要望が提出されております。要望は、要するに有線役務利用放送を著作権法上の放送に位置付けられるように本年内に措置してほしいと、そのような要望でございます。いずれにしても、これ権利の問題でありますから、しっかりと慎重にやるべきところは慎重に議論をする必要があると思っております。  IPマルチキャスト方式による役務利用放送の著作権法上の位置付けにつきましては、そういった慎重な議論を踏まえながらも、当面の重要課題でありますので、しっかりと議論をして対応していきたいと考えております。
  86. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 続いて、公共放送在り方ですが、これはこの間もNHK予算のときに随分皆さん方も質疑をされ、また大臣もお答えになったんですが、私は、NHKの問題、構造的な問題で、次から次へと今不祥事が出ております。委員会でもいろいろ皆さん方注文、注意をしたり、また決議をしたこともありますし、またこの間は世耕委員長が自ら会長に注意を促したこともございました。これは、NHKガバナンスも含めて非常に大きな問題があろうと思いますけれども、今大臣、NHKに対して総務省としていろいろ監督する立場にありますが、大臣の今のNHKに対する考え方、そしてどうしたらいいかと、そういうお気持ちを聞かせていただきたいと思います。
  87. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) NHKに関しましては、先生方におかれましても本当に真剣にいろんな御検討をいただいているというふうに承知をしております。それもこれも、やはり実は国民の間でNHKの不祥事に対する大変な不満があるその裏返しで大変大きな期待があるというその関係にあるからだと承知をしております。  十六年の夏に発覚した不祥事以来、どんどんいろんなことが続いてくるということは極めて遺憾なことであるというふうに思います。そういう意味からは、やはりNHKの問題に関してはやはりガバナンス、そのガバナンスをしっかりと立て直す、そのために何をすべきかということが最大の問題だと思います。今現象として起きておりますのは、皆さんの信頼感が低下をして、そして受信料の不払問題が起こる、受信料が不払が増えるから、ますます不公平感が募って人々の不満が高まるという一種の悪循環にあろうかと思います。それを断ち切るやはり最大のかなめはこのガバナンスの強化、回復であると思っております。  NHKにおいては、この委員会の附帯決議の趣旨を重く受け止めて、不祥事の徹底的な原因究明と再発防止に向けまして組織を挙げて取り組んでいただきたい、そしてその信頼の確保、回復に是非努めていただきたいと思っております。そのために、政府として枠組みとして何が必要かということを懇談会でも議論をしていただいております。
  88. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 NHKの保有のチャンネルの問題でございますが、今八チャンネルあるわけでありますし、特に衛星第二放送というのは放送普及基本計画において難視聴解消を目的として初めは出発したんですけれども、今でもそれだけではなくて衛星独自の番組も編成しているということもございますけれども、この八チャンネルが多いとか少ないとかいう議論が随分出ております。ところが、片一方では、民放の方を見ますとそう大した感心するような番組もないものですから、やっぱりNHKのこの八チャンネルは維持すべきであるという当然意見もございます。  これをこうだという決め付けることはなかなか難しいんでありましょうけれども、NHKの受信料とかいろんなことを考えたり、また今のガバナンスのことを考えたり、又は国民のユニバーサルサービスを考えたときにどうあるべきかと、この点を、基本的な点をお伺いしたいと思います。
  89. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) NHKチャンネル数につきましてもいろんな御意見があるというふうに承知をしております。  NHKはもちろん大変重要な使命を持っております。放送全国普及、そして豊かで良い放送番組の提供、そういった使命を持って、その使命を果たすために必要な各種メディアを持っている、テレビ二波、ラジオ三波、衛星放送三波を持っているわけでございます。  と同時に一方で、NHKが保有したメディアについては、将来にわたって決して固定的なものではなく、やはり環境の変化、視聴者のニーズ、そして組織在り方も踏まえて、やはり絶えず見直していくということもこれは必要なことであろうというふうに思っております。  先日の懇談会におきましても、これ公共放送の役割とは何であるべきかと、また組織ガバナンスはやっぱりしっかりしなければいけないという観点から削減の必要性についても意見が出されたと、そういう意見が多かったというふうに聞いております。その具体的な在り方については、しかし議論が必要であるというふうに思います。総合的に、やはりNHK公共放送の役割、組織の効率性、ガバナンス、そういったところから総合的に考えていかなければいけないと思います。  実はNHK自身も、平成十八年度から二十年度の経営計画におきまして、放送通信をめぐる状況の変化に応じたNHKが保有する放送波の、波の在り方を見直すことも必要だというふうに表明しているところでございます。
  90. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 県域免許制度とマスメディア集中排除原則の緩和についてでありますけれども、これは詳しく私が申し上げなくてももう大臣御承知のとおりでありますが、過去いろいろな話から、どうも大臣は民放各社が国際競争力のある総合メディア産業に成長する必要性があるというお立場を取っているんじゃないのかなというふうに思います。このマスメディア集中排除原則の緩和に積極的なという一つの見解もお聞きしたいのと、極端な規制緩和が進みますと、民放キー局による寡占化が進みまして県域免許制度が崩れるんじゃないかという片一方には心配もあります。  県域免許制度の本来の趣旨というのは、全国放送を行うNHK地域密着の民間放送の二元体制を取ることによって多様性を図るということであろうと思います。地方局は地元に密着した様々な分野の情報を伝える報道機関の役割を担っておると思います。ところが、片一方ではインターネットの技術を使ってIP放送による地上デジタル放送が実用化される時代になりまして、県域免許制度につきましては送信地域を限定いたしましても意味があるのか分からないような疑問点も出てきております。  この点につきまして、マスメディアの集中排除原則の緩和、規制、このことについて御見解を伺いたいと存じます。
  91. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) いわゆる地上系一般放送事業者放送対象地域を原則として都道府県単位と定めてきたにはそれなりの趣旨が当然のことながらあると思います。住民の要望をローカル局を通してきめ細かく、そして伝えていくと、これは私は大変重要だと思いますし、同時にこのことは、マスメディアはやはり多様でなければいけないと、一つのオピニオンしか出てこないというような社会はやっぱり民主主義社会としてはいかがなものかと。その意味での民主主義のインフラとしても多様な意見を保障するということ、これも私は大変重要なことであるというふうに思います。  一方で、今、景山委員御指摘くださいましたように、放送県域になっているわけでありますが、インターネットは、これはもう壁を越えて、世界を越えて通信されるものでございますから、そこの技術が進歩して放送通信融合してくると、電波の放送だけそういうことをやっていくことにどういう意味があるのかというような問題点も当然のことながら出てまいります。  そういった問題意識の下で議論をしているわけでございますが、私としては、やはり当然のことながら、民主主義のインフラとしての意見多様性を保障する、ローカル性を保障する、そこはしっかりと担保していかなければいけないと思います。その上で今の技術の進展とどのように調和させるかということを正にしっかりと議論しなければいけないと思います。  ちなみに、マスメディア集中排除原則は、これまでもそういった観点から頻繁に、その時々に応じて見直されてきているというふうに承知をしております。是非バランスの取れた議論をしてまいりたいと思っております。
  92. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 最後ですけれども、デジタル化いたしますと、地方の局というのは随分お金が掛かるんですよね。四十億円ぐらい掛かるとも言われておりますし、また一般のテレビを見る人たちも、チューナーを付けたり、いろいろそれでまた金も掛かるんですが、その点、総務省として、随分デジタル化を進められた反面、それぞれに事業者もまた見る方もお金が掛かるということでありますが、その点をどういうふうに、少しは援助もされなきゃいけないと思いますけれども、そういった点につきまして御見解を伺って、私の方は終わらせていただきます。
  93. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) デジタル化に対する期待は非常に高いと。しかし、それにはお金が掛かるというのは事実でございます。  今、御承知のように、中継局についてロードマップを作成し、改定をしてもらっていますが、昨年十二月の九〇%から今九五%以上ということで、カバー率が上昇しております。一〇〇%カバーに向け、更に検討が進められていると思います。  一方で、格差、地域ごとのばらつきが確かにございます。その明示、時期の明示がない中継局が相当数に上る場合が地域によってはあるということも承知をしております。総務省としましては、この開局時期の明示がない中継局については、その地域の事情をしっかりと把握しました上で、自力の建設に向け、最大限の努力を行うように一方で事業者を指導したいと思います。  また、今年の末に、二〇〇八年、二〇一〇年とロードマップを見直して、そしてアナログ時の一〇〇%カバーに向けてその完成度を高めるということをやるとともに、IPマルチキャストや衛星など新しい技術を用いて、伝送路に係る視聴者の選択肢を多様化するということも当然考えなければいけないと思っております。  そうした地域の実情に応じましたきめ細かな対応をすることによりまして、地上デジタル放送全国に行き渡りますように国として是非適切な役割を果たしてまいりたいと考えております。
  94. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 九日に懇談会が出しました論点整理を拝見しますと、通信の分野については、ねらいとして言っておられることと実際にやろうとしておることとが少し、何というか、論理的に整合性が取れてないんじゃないのかと、こういうふうに私は率直に感じました。  サービスの多様化と特に国際的な競争力の強化ということをうたってはおりますが、じゃ何をやるのかといえば、NTT規制を強化するということを言っているだけで、そういうようなことの手段を通じて目的が達成できるのかと、いささか違うんではないのかというのが率直な思いでございます。  今、日本通信業界の状況をどう認識し、それからこれを将来どういう方向に持っていくのが望ましいのかということが基本だと思いますが、その際には事業者のいろんな都合よりもやはり利用者である国民の方々にとって何が大事なことかということが基本的な視点であるべきだと思いますし、特に日進月歩の競争、技術革新が非常にスピードの速いこの分野において国際的な競争力をどう確保していくかと、そのことが日本通信事業のみならず産業全体の成長、発展を維持する上で非常に大きな要素ではないのかというふうに思っております。  電電公社がNTTに民営化され、競争環境が強化されたことによって、これまでいろいろありましたけれども、全体として見たときに、世界的に日本ブロードバンドは基盤の面でもあるいは利用環境の面でもトップを行くところまで来ておるんではないか。全体として非常にうまく順調に政策機能してきましたし、各事業者も各々のポジションで努力をしてこられた、そういうことが具体的な形になって現れてきておるんではないか。そういう中ですから、特にユーザーの方から不平不満、批判というものが聞かれない。そんな中で、あえてなぜその規制を強化しないといけないのかなという感じが一ついたします。  それからまた、アメリカを始めヨーロッパもそうですけれども、一時期、分割の方向に走っておった通信業界が大きく大ぐくりをされて統合化されるという方向にありますし、各国の通信政策そのものもやはりこれを後押しするというような方に方向転換をしてきておるんではないか。  そういう中で、冒頭申し上げたように、懇談会現状認識あるいは方法論は、そういう時代の大きな流れに逆行しているんじゃないのかというふうに思いますが、まず大臣にその点のことについて所見をお伺いしたいと思います。
  95. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 今、森元委員が御指摘になられた、やはり利用者の視点に立ってやらなければいけないというのは、これはもうこの問題を考えるときの重要な出発点だと思います。五月九日に松原座長が取りまとめられた論点整理の一番最初にも、正にユーザー視点からこの在り方を再検討するということが書かれていると認識をしております。  委員の御指摘は、そういう観点から、今議論されている中身がどうなのかという御指摘なわけでございますが、私は決して規制強化、NTTを中心とするその規制強化の議論をしているとは思っておりません。基本的な方向、これから更に議論が煮詰まっていきますが、私が考える基本的な方向は、そうではなくて、規制緩和と公正競争であるというふうに思っております。正に規制緩和と公正競争こそが日本通信事業をここまで発展させてきた原動力であったと思いますし、そのことは世界に共通しているのではないかというふうに思うわけでございます。  それを技術環境の変化、時代認識の下でどのようにするのが規制を緩和して一方で公正競争を担保することになるのか。そこにつきましては、専門家の御意見も踏まえてしっかりと議論をしなければいけないというふうに考えております。  その場合には、恐らくボトルネック性やドミナンス性、そういったものをどのように認識するかとか、しかも背景には、これまでのいわゆる電話回線からIP網に変わっていく中で、そのドミナンス性というのをどのように認識するのかという、やはり踏まえなければいけない重要な問題が出てこようかというふうに思っております。  ただ、細かい話は更にこれから懇談会で煮詰めていただかなければいけませんが、私の基本的な認識は、規制緩和と公正競争、それを適切な時代認識の下で行っていくということが正に改革であるというふうに思っております。
  96. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 問題は、規制緩和をするといいながら、やっぱり今大臣もおっしゃられたように、NTTは、ドミナントであるとかあるいはボトルネックを持っているというふうなことから、公正競争を確保するためには非対称規制的な規制NTTに課さなければいけない、そういうふうに事実上、実際もう制度化されているわけですけれども、そこにあると思うんです。その在り方をこれから更に強化するのか、正に緩和するのかということが今議論の焦点だと思います。  そういう点で具体的にお聞きしますが、特にボトルネック性については、従来のメタルのネットワークについてもボトルネック性があるという、これはだれしも認めるところでありますし、しかもこれは開放政策によって、オープン化によって、むしろ新規事業者の方がシェアをたくさん取っている。したがってこれは、懇談会、今朝ほどの座長さんのお話でもこれは進んでいると。  しかし、光ファイバーの方については、NTTのシェアが六割近く占めているのはやっぱり何か問題があるんじゃないかと。私は、単なるシェアによってそういうことを考えられること自体がいささかどうかなというふうに思いますが、この光ファイバーについては、全く新しく整備をこれからしていく話でありますし、電力系については、地域によってはもうNTTをしのいでいるというふうなところもあるわけでありますし、また光ファイバーそのものもオープン化政策を取っているわけですから、これが今の時点で更に何が問題なのかというふうに私は思いますが、大臣としてどうお考えでございましょうか。
  97. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 委員御指摘のように、そして私も申し上げたつもりでありますけれども、デジタル時代のドミナント性とかボトルネック性をどのように考えていくのかということ、これやっぱり本当に、専門家の技術的な知見も踏まえてしっかりと議論をしなければいけないところであるというふうに思っております。  単純にシェアだけで議論していいというふうには私も思いません。確かに地域によっては、特に関西地域だったと思いますけれども、NTTじゃなくて電力系がむしろ半分ぐらい持っているというような地域もあります。一方で、NTTが九八%を持っているような地域等々もございます。そうしたばらつきも踏まえてどのように考えるかということ、これは当然のことながらしっかりと検討しなければいけないことであろうかと思います。  一方でしかし、やはりNTTのボトルネック性やドミナンス性はないかと言われると、これはやっぱりあるのだというふうに思います。特に、ネットワークの経済性を考える場合に、現実問題として、相当のシェアを持っているということは、これはやっぱり無視はできないのではないかなというふうに思います。単純に一つの数値だけをもって判断するというものは私も確かにいかがなものかというふうに思いますが、デジタル時代のドミナンス性というものが今後どのように変化していくかということも、そういった技術的な問題も見据えながら、ここはしっかりと私はやはり議論をしていかなければいけないのだと思います。  単純に議論をするつもりは私もございませんですけれども、正に技術体系が変化して、あと五年ぐらいでブロードバンドが支配する、完全に支配する時代が来るという中で、私たちは必要な制度整備を行っていかなければいけないであろうというふうに思っております。
  98. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 大事なことは、よく言われますが、結果の平等ではなくて機会の平等だと思うんです。公正な競争条件を整備する必要があるとおっしゃられるのはよく分かります。それは、要するに競争する要件が余り不公平になってないかということに尽きるわけですね。  そうしますと、光ファイバーについては、正にこれから新しくNTTであっても整備していく分野ですから、あるいは電柱の例えば整備状況等から見て、新規にやる人よりは既存の事業者の方がやりやすいというお話もありますが、しかしこれも、NTTといえども全部の電柱を自社で持っているわけじゃなくて、電力会社と共用しているという部分もかなりあるわけですし、あるいは新規事業者には架設する空間を提供しましょうとかいうようなことをやっているわけですね。  したがって、結果としてのシェアが若干NTTがまだ多いかもしれませんが、それは正に企業努力の結果としてそういうものが数字として表れているにすぎない、その前の競争条件がどれほど不公平になっているのかということを十分見極めて議論する必要があるんじゃないかと。改めてお聞きしたいと思います。
  99. 須田和博

    政府参考人(須田和博君) 非対称規制関係につきましてのお尋ねと理解しておりますけれども、現行電気通信事業法は、基本的には、独占であった電電公社を徐々に競争的なマーケットに変えていこうということで、その中で公正かつ有効な競争を促進するためにはどうしたらいいかということで出てきている規制だと私どもは考えているわけでございます。  御指摘の光ファイバーのような固定通信市場におきまして、こうした非対称規制の一環としまして、いわゆる不可欠設備と言われるものを電気通信事業法上第一種電気通信設備と指定して、これに対して、ただいま御指摘ありましたような開放義務あるいはオープンにというふうな義務を課しているところでございますが、このような形での第一種電気通信設備に該当するか否かということにつきましては、現在は、都道府県を基本としました地域ごとに、加入者回線を全体の中でどれだけ保有しているかということで考えているわけでございます。  加入者回線といいますのは、個々の家庭につながるところの回線なものですから、電気通信を行う場合には必ずここを通らなければいけない、非常に重要な回線ということでございますけれども、そこのところの全体のシェアで見ているということで、現在は、これが全体の中での五〇%を超えるようなもの、これを不可欠設備として考えているわけでございます。  あくまで私、現在の政策説明をさせていただきたいと思いますけれども、そうした中で、光ファイバーにつきましては、それぞれを個別に見ますと、確かに民営化して以降の敷設でございますし、また、個々に見ますと、それぞれの都道府県におきまして五〇%を切っているところもございます。しかし、加入者回線といたしましては、従来のメタリックと光ファイバーもそういった意味では基本的には性格が同じなものでございますから、私どもとしましては、この判断に当たりまして、両方を合算する、一緒にした形でどれだけのシェアを持っているかということで見ているものでございます。  そのような形で見ますと、やはり全体的には非常に高くなってきているわけでございますが、いずれにしましても、今後、競争関係が大きく変化していきましてこうしたシェアが変わっていけば、それは当然、非対称規制の適用などについても見直しを図っていくこと必要があるんだろうと思っております。  なお、もっと競争を促進する、もっと平等にやるというふうな考えは私どもも取っておりますので、そういった意味からは、NTTさんなどの御理解も得ながら、電柱の使用手続の簡素化などにも取り組んでおりますけれども、こうした取組につきましてはまだ緒に就いたばかりでございますので、引き続き検討を進めていきたいと思っております。
  100. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 電力系も正に新しく整備を始めているわけで、しかし、電力系についてはこの非対称規制というのは全くないわけですね。そういう意味では、私は、むしろこれは不公平な、不公正な競争条件をNTTに課しておるんではないかと、むしろ見直すならそちらの方向で見直すべきではないかと基本的に思います。  しかし、懇談会の方は、さらにそれに加えて、アクセス系を機能分化しろ、あるいは構造分離しろ、あるいは資本分離しろというような四つパターンで考え方を示しておるわけですけれども、なぜそういうことをしないといけないのかと、全く理解に苦しむわけであります。  アメリカの場合には、むしろこの光ファイバーについてはオープン化を廃止して、そういう条件を事業者に課さないということさえやってこのブロードバンド化をどんどん進めていこうと。それはなぜか。やはり事業者にとっては、リスクをしょいながらやっぱり自らの負担、そういうもので投資をしていかなけりゃいかぬ。そういうインセンティブを働かせるためには、やっても採算に乗らないような条件を与えておったんでは、正に国際的な競争を阻害するだけじゃないかと、こういう発想に立っていると思うんですけれども、このアクセス網の分離についてどういうふうにお考えでございましょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  101. 須田和博

    政府参考人(須田和博君) アクセス網につきましての取扱いをどうするかということにつきましては、現在大臣の私的懇談会の中で検討されているところでございます。  しかし、そういうふうな状況の中で、委員ただいま幾つか御指摘いただきましたけれども、このオープン制というふうな考え方は、外国の動向などは私どもとしましても十分把握しているところでございます。例えば、御指摘いただきました米国の例でございますけれども、米国の場合、ブロードバンドとは実質的にはCATVが約六割のシェアを取っているものでございます。したがいまして、我が国の状況と大きく異なる状況でございます。  また、欧米の方でございますけれども、基本的には光ファイバーというのは余り意識して敷設してない状況にございます。そういった意味では、我が国はそれこそ正に光ファイバー先進国ということで、世界的にも非常に注目を浴びているような状況でございます。  そういう中で、従来の競争政策委員御指摘のように非常に成果を上げてきているのではないかという御指摘がございました。正にそのとおり、我が国の政策は非常に成果を上げてきているということで、国際的にもかなり高い評価を得ているものと思っておりますが、しかし、現実にこうした現状政策はあくまでもメタルの電話回線を前提とした政策が基本となっておりますので、今後正に通信網が大きく変わっていく、いわゆるネクスト・ジェネレーション・ネットワークに切り替わっていくときにこの従来の競争政策をどのように考えていったらよいのかということが、正に我々通信政策の中の非常に大きな課題となっておるものと理解しております。
  102. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 状況なり技術がどんどん変わりますから、それにやっぱり的確に対応して、冒頭申し上げたようにどうあるべきかということをしっかりと見据えて考えてもらいたい。一方方向で、こう決めたら突っ走るというふうなことであってはいけないことはおっしゃるとおりだと思います。ただ、懇談会論点整理を読んでいると、どうもいま一つ、その視点あるいは方策が今申し上げたようなことからすると少しずれているんじゃないのかという思いがぬぐえないものですから、今いろいろ申し上げておるわけでございます。  これも懇談会の、今も私も申し上げた四つパターンが考えられると言っているような、この会社形態の分離、特にアクセス網を中心とした分離について、これは政府が三分の一以上の株を保有する特殊会社ではありますが、今ややっぱり民間法人、三分の二は個人、企業、外国人が保有している民間会社であります。そこが、よほどの事態といいますか、支障を生じるような、あるいは弊害を生じるようなことをやっておるならともかく、今もお話があるように、世界から見ても評価されるような実績を上げつつある、非常に極めて良好といいますか順調に事業を展開している中で、一方的にある部分を切り離せとか分社化しろとか、そういうふうなことをやることは法制的に果たして許されることなんだろうかと私は思うんですけれども、その辺について御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  103. 須田和博

    政府参考人(須田和博君) 委員の御質問の趣旨は、NTTのように民間会社となっているようなところに非常に強い構造的な変革を加えることを一方的にできるのかどうかということと受け止めさせていただきたいと思いますけれども、また、そうしたときの株主、一般株主の存在についてということで受け止めさせていただきたいと思いますが、正に御指摘のとおり、NTTはその株式の三分の二を一般株主が保有する民間企業でございますので、NTT在り方を検討するに当たりましては、一般株主への配慮は重要な視点であると認識しております。  しかしながら、他方でNTTは、NTT法に基づき設立された特殊会社でございますので、NTTの趣旨を踏まえ、あるいは時代の変化などに即して、法律に基づき、あるいは立法措置によりNTTに関する構造的な措置を講ずることはあり得るものと考えております。  なお、現在のNTT体制も、既に民営化されて一般株主も存在していた状況のNTTを、平成九年のNTT法改正により、持ち株会社の下で二つの地域会社と一つの長距離会社に再編する措置を行った結果でございます。
  104. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 それは全く変更あり得ないわけじゃないというのはよく分かった上でお聞きしているんですが、基本的にはやはり事業者であるNTT自身の意向というもの、株主の意を体したそういう事業者としての意向というようなものが尊重されるべきだと思うんです。自らも進んでそういうふうにやろうと、あるいはやむを得ないという同意とか、そういうものがあればおっしゃるとおりですけれども、全くの意に反して一方的に権力的にやるというようなことが適当かという意味で申し上げておるわけでございますので、その辺を踏まえて御検討いただきたいと思います。  それから、時間がなくなってきましたので、あとちょっと放送について二点ばかりだけ申し上げたいと思います。  一点は、NHKチャンネル数を減らしたらどうかというのが論点に出ております。しかし、私は、今正にNHKが不祥事を起こし世間の批判にさらされているというようなことがありますが、しかし日本放送業界全体を考えたときに、公共と民間と両建てである中で、NHK公共放送を担っているというものとしてのその意味は非常に大きいと。これを一時的なそういう空気の中でチャンネル数を減らすということが本当にいいことなのかどうかと。また、チャンネル数を減らすことがNHKの改革に何か実質的に効果があるんだろうかと、こういうふうに思うんですけれども、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  105. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 今、森元委員が御指摘になられましたように、NHK、今いろんな問題を抱えているわけですけれども、こういう構造的な問題に関しては、決して一時的な感情といいますか思いに流されることなく、やはり長期の観点からしっかりとした議論が必要だというふうに私も認識をしております。  今、懇談会でいろいろな議論がなされているのは、チャンネル数についてですね、いろいろな背景があると思います。一つは、やはりガバナンスの問題であろうと思います。もう一つは、公共放送の役割というのをどのように考えるべきなのかという問題、それもあろうかと思います。  今後、そういったことも踏まえてより具体的に私は検討してほしいと思いますけれども、そのチャンネル数を本当にどうするのがよいのかと。そのもし一つとか空く場合はそれを民間で活用することはできないのかとか、やはり資源の有効利用、社会全体での有効利用ということ、その中での公共放送の占めるべき役割、そうした観点から総合的な私は議論が必要であろうというふうに思っております。決して一時的な議論ではなくて、今申し上げたような総合的な観点からしっかりと議論をしてもらいたいと思っております。
  106. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 日本放送の実情を見ましたときに、これ以上民放局を増やす意義があるんだろうかと、私は個人的にそういうふうに思います。時間帯によっては、どのチャンネルを回しても同じ野球放送を実況中継やっているとか、事件が起これば一斉にヘリコプターでどのチャンネル回しても追い掛けているというようなことが、そういう中で更にチャンネルを増やす意味があるのかと。むしろ、やはり視聴率よりも、日本にとって、文化とか教育とか、そういう社会的な、公共的な意味の大きい番組を流すチャンネル数こそもっと充実していくべきではないかというふうに私は思っております。  その関連で……
  107. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) 時間が参っております。
  108. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 はい。意見だけ申し上げたいと思いますが、懇談会の論点には、もう一つ、受信料を大幅に下げるべきだというふうに書かれておりますが、これもやっぱり安かろう悪かろうにつながるおそれはないのか。やはり、いい質の番組を作ろうと思えばそれなりのコストを掛けないといけない。これは安直に、やっぱり料金下げれば世間の風当たりが和らぐだろうなんというような発想には立たないで是非御検討いただきたい。  それだけ申し上げて、終わりたいと思います。
  109. 鈴木寛

    鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。  私も、まずこの放送通信在り方に関する懇談会、私自身もこの十年来最大の関心事項といいますか、非常に日本の国にとって重要なテーマだと思いましたので、この懇談会が設置をされるということを聞いたときは、ついにというか、やっとこの問題がこの永田町でも議論が始まったな、霞が関でも議論が本格化するなと非常に喜んだわけなんですけれども、この懇談会がだんだん進むにつれて、これは私も今日初めて午前中に松原座長から直接にお話を伺いましたのであれなんですけど、それまでは報道による間接的なと、こういうことではありますけれども、少し、まず盛りだくさん過ぎてるんじゃないかと、そのテーマがですね。それから、もちろん大事な課題だし、物すごくポテンシャルがあるし、これはしっかりやっぱりビジョンを持ってやっていかなきゃいけない、これはもう全く大臣と私は同じ見解だと思いますけれども、何をしたいのかと。  大臣は、いろいろな記者会見で、今日もiPodの話をされました。もちろん、ああいうことができることはうれしいことなんですけれども、しかしそれは政策の話なんだろうかと。たまたまアップル社が彼らの総意と工夫によってああいうものを作ってきて、まあそれはそれですばらしいことだと思いますけれども、いつもあの例が出るわけで。  一方、例えば通信サービスについて申し上げると、今も森元委員からお話ありましたけど、我々、ついにですよ、やっと世界で最も速くて品質が高くて最も廉価なこのブロードバンド環境を、この苦節十年、手にしたわけですね。私は、したがって、この十年間、総務省のいろいろな政策は、結果として、政策評価をすれば、この成果を達成したということで合格点を差し上げていいんじゃないかと思います。やっとこれ合格点になったところで、何かこれ、わざと壊れちゃうんじゃないかというような何か方向議論が行っていて大変心配をしています。  それで、今御議論されているその改革案が仮に実施をされますと、今の何が更に良く、ユーザーの観点からですよ、ユーザーの観点から、私も大臣も完全にユーザーオリエンテッドでいろいろな議論も今までさせていただきましたし、私もそのつもりでありますし。だから、この世界一速くて安くて品質のいい光ファイバーあるいはブロードバンド環境というものを、だからまあおおむね満足しているわけですね。だから、これによって何が良くなるんでしょうかということであります。  政策というのは常に作用があれば副作用があるわけで、正にその比較考量をしながらやっぱり慎重に進めていかなきゃいかぬというふうに思いますので、改めまして、現在の特にその通信環境が抱えている問題点、あるいはその改善をしたい、それのネックになっている政策制度論、これは何でしょうか。
  110. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 非常に基本的なことでございますので、ちょっと私の思いを是非述べさせていただきたいと思います。  委員御指摘のように、ようやくブロードバンドインフラを我々は手にしたと、もう全く同じ思いでおります。これ、議論を始めたのは二〇〇〇年の森内閣のときでございました。当時、鈴木委員とは大学で同僚でございましたけれども、そのときのもう一人の同僚で村井純さんという日本にインターネットを持ち込んだ仲間が、実は五年後には本当に大変な時代が来ると、それに合わせて今のブロードバンド化をしなきゃいけない、実はそういう話に私も感化されまして参加したときに、やはり実は今の何が問題なのかという御指摘に直面をいたしました。  インターネットは使いたい人は使おうと思ったら使っていると。いやいや、そうじゃなくて、正にIPバージョン6の時代が来て、家庭電化製品そのものが実はパソコンと同じような役割を果たしてそのIP網の中に組み入れられるんだというふうに村井さんが言ったとき、分かったような分からないような思いがあったわけですけれども、実はそういうことがやはり六年前に一つの、こう何といいますか、ビジョンに基づいて走り出したことが今日正に満足できる状況をつくり出しているのだと思うんです。今のシステムは今のシステムで、だからちゃんと評価はやっぱり私は是非しなければいけないと思います。  と同時に、先ほど申し上げましたように、これから五年後の二〇一一年にはテレビ放送デジタル化されます。そして、二〇一〇年、同じころに新しいICT戦略で、IT戦略で、御承知のようにブロードバンドゼロ地域というのがなくなるわけですね。正に完全にいわゆるブロードバンドアクセスというのが国民にとってだれでも利用可能なユニバーサルなサービスになってくると。そういう中で見越しますと、例えばテレビに関しても、最近はもうワンセグは利用可能になったし、トリプルプレーが可能だし、ギャオのような、若い方はこれ通信放送かって考えて見てないと思います。そういうものが、我々もまだ分からないけれども、どんどん出てくると。しかし、そのときに、著作権一つに代表されるように、やっぱり今のままではなかなか対応できないのではないだろうか、そのための準備を始めたいというのが私の非常に素直な思いでございます。そのための議論をしていただいてます。  これ、先ほど森元委員からも御議論いただきましたように、新しいドミナンス性とは、ボトルネック性とは何なのかとしっかり議論しなければいけないと思いますし、その法律一つにとっても一体何が重要なのかということの吟味は、これはもうきっちりとやらなければいけない。しかし、その方向に向かって走り出して、必要な制度設計にはちゃんと時間を掛ける、そのような取組のスタートをさせたいと、それが私自身の思いでございます。
  111. 鈴木寛

    鈴木寛君 今のお話は分かるんですよ。これから正にICTを基に新しいサービス、新しい産業をつくっていくと、そのためにきちっと見直して、大丈夫かということを見ていきましょうと。まあそういうことで、私が思いますに、ICTのサービスの創意工夫を発揮するレーヤーというのは、これだんだん上に上がってきてますよね。正にいわゆる通信レーヤーからアプリケーションレーヤー、コンテンツレーヤーと、こういうところになってくると、私もそういう方向だと思います。  ですから、今大臣がおっしゃった、特にコンテンツレーヤーのビジネスモデルをつくるときに、私も文部科学委員会にずっとおりまして、この間、毎年著作権の審議は私が当たらさしていただきましたので、デジタル著作権の在り方についてきちっと見直さなきゃいけないというのは、総務委員会と文教科学委員会が一緒になってこれはやっていく、それはよく分かります。  そのときに、これから、今ギャオのお話が出ました。私の最大の関心も、ナローバンドからブロードバンドになって何が変わるんだろうと。端的にユーザーの観点から申し上げれば、やっぱりこれは映像、動画というものを本当に安く、そして極めてコンビニエントに見れる、あるいはそれをつくれると、こういう時代が来ましたと。これは本当すばらしい時代だと思います。そうなったときに、今ギャオのお話がありました。今、私が思いますに、インターネットテレビといいますか、私も実はやってますけれども、インターネットテレビ局を個人で、そこに参入していきたいとは思ってますけれども。  大きく申し上げると、ギャオのグループがあると。それから、いわゆるテレビバンク、ソフトバンクグループがテレビバンクに進出をしていく。それから民放連と電通が新しい会社をつくっていく。このどこがどういうふうになるんだろうかというのは私も大変に関心、わくわくしながら関心を持って、もちろんいろいろ山と谷はあるかもしれませんけれども、関心を持っていると。そういうところで創意工夫にあふれたビジネスがどんどんどんどんでき上がると、そのためのインフラをチェックしようと、これはよく、大変よく分かります。  そのときに、私是非申し上げたいのは、この世界は、釈迦に説法ですけれども、正に競争政策とそれから正に知的財産戦略とのトレードオフをどういうふうにしていくのかと。こういう問題と、それからやっぱり情報サービス財に特有の、先ほどネットワーク経済効果のお話がありました。正にネットワーク外部経済効果、結局ウイナー・テークス・オールになるわけですね。結局今までこの十年間、我々日本チームは何に苦しんできたかというと、結局はウイナー・テークス・オールだと。シリコンバレー発信の企業がウイナー・テークス・オールでネットワーク経済効果でどんどんデファクトスタンダードを取っていくと。こういうことの中で、もちろん我々ユーザーとしてはサービスも享受したけれども、しかしそこに日本発のものも、別に日本だけがということじゃありませんけれども、グローバルな新しいビジネスの創意工夫の中に我々の持っている技術とかあるいは人材とかコンテンツとか、そういうものも参画をして、そこに貢献をしていきたい、こういう発想だと思います。  その中の一つが、正に村井先生が進められてきたIPv6なんかもそういうことになるんだと思いますし、それから、今回日本がやっと世界の頂点に久しぶりに上り詰めたこの光技術といいますか光パラダイムといいますかね、これもその一つだというふうに思うわけです。  そのときに、私は、違和感がありますのはというか、要するにこの議論できちっと整理をしておかなければいけないのは、公正有効競争政策の考え方というのをやっぱりコンシステントにしておかなきゃいけないんじゃないかなと、こういうふうに思うわけです。  で、先ほども森元委員との御議論の中で、ドミナントだから規制するわけではないということをおっしゃった、だから必ず、という理由だけで規制するわけではないと、そのところを懇談会に投げているんだと、こういうお話がありましたが、この点は極めて重要な話で、これにはいろいろな考え方がありました。そもそもドミナントだからこれは分割をするという考え方もかつてアメリカに、九五、六年のときに、マイクロソフトの、バーサス司法省の中で、マイクロソフトを分割をするということによって、これは伝統的にアメリカの司法省がやってきた独禁政策ですけれども、分割をして競争をさせてという、こういう考え方ありました。しかし、ITについては、ICTについては、それは結局はそういう方策を取らずにやってきたと、こういう話がありますね。  では次に、今局長も、必ずしもドミナントであるからというわけではないということの御答弁があったと思います。じゃ、次に考え得る考え方として垂直統合というセオリーがありますね。結局、局長の御答弁はそれに近いのかなというふうに聞かせていただきましたけれども、要するに、メタルの加入ではやっぱりシェアが大変多かったと。その多いシェアに基づいてそこにバーティカルに乗っけていくから、この部分はやっぱりドミナント規制を引き続きやる必要があるんだと言うのか言わないのかという、これも一つの論点としてそういう論点はあり得ると思っています。  確かに、アメリカでも、結局、マイクロソフトのOSの上にオフィスを乗っけて、その上にインターネットエクスプローラーを乗っけてと。で、それが要するにネットスケープとのシェア争いにおいて逆転したのは、正にバーティカル統合、垂直統合戦略の結果だったと。  その都度いろんな議論があって、しかしながら、そのパウエルさんはですよ、まあいろいろな規制の考え方あるかもしれないけれども、これだけ技術革新が激しくて、かつパラダイムチェンジが激しい中で、かつマーケットがグローバル化している中で、恐らく彼らの一番の問題意識は、ブリティッシュ・テレコムとアメリカ勢とのいわゆるアジア市場とかにおける国際競争というその現実に直面をし、そして必ずICTは正にそのパテントとのパッケージでもって議論をしなければいけないと、こういう議論の中で、アメリカは今までのオープン規制を、アンバンドルをやめて、そして競争力強化政策に来ているんだと、こういうふうに私は認識しているわけです。  そして、そういうふうなことを踏まえて、今、もちろんいろいろな手を打たなきゃいけないと思います。しかし、順番を間違えてはいけないし、あんばいを間違えてはいけないということと、それから、IP化するということはですよ、結局、正に午前中も交差弾力性の理論の話を松原さんとさせていただいたんですけれども、正に業態間競争で光だけに注目、まあこれ技術ニュートラル性の話がございましたけれども、正にIPが進むということは、要するにそこに着目しているということは、IPプロトコルのところによるその大量なデジタル情報送信のサービスということでいえば、その伝送路は関係なくと、こういう話を展開しようとおっしゃっているわけですから、そうすると、光の話にこだわるというのはその話とは矛盾すると。  したがって、一本筋を通して、なるほどなと、そういう世界観で、こういう行政をやろうとしているんだなというところのこの統一的な、だから、個別個別に見ると、答弁を聞いているといろんな理屈を持ってきて、それぞれはまあコンシステントだけど、全体としてじゃどういうふうなコンシステントでかつ整合的で論理的な情報通信政策というかICT政策をやろうとしているのかということをやっぱりきちっと整理しておかないといけないんではないかなと。  また、現に、やっぱり私はNTTの最大の問題は国際化の後れだと思います、はっきり申し上げて。私は、NTTに今課すべき課題は、きちっと中国とかインドとかのマーケットに出ていくと。  たまたま昨日でしたか、トヨタが売上げ二十兆円を超えたというニュースがありました。我々ユーザーは、トヨタが世界的にグローバルに活躍していただいているおかげで物すごく恩恵を被っているわけですよね。であれば、NTTだって、中国、インドとかで頑張っていただいて、かつ光であれば、これはAT&Tにもブリティッシュ・テレコムにも負けないし、それがNTTサービスを始めれば、当然、日本のICT機器メーカーだってサービスメーカーだってSIヤーだってそこにくっ付いて相当なビジネスチャンスを取れる。しかも、この九月に小泉さんが替わられるということで、対中ビジネスはもう大チャンスなわけですね。  だから、こういうような中で、やっぱりきちっとさっきのセオリー、せっかく竹中大臣が大臣やっておられるわけで、ここの経済性、産業政策を整理していただきたいと思うんですけど、いかがでしょうか。
  112. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 大変難しい御質問をいただいていると思いますが、ちょっと済みません、松原先生とのやり取り、午前中ちょっと別の委員会に私おりましたんで、詳細には承知をしていないので、申し訳ございませんのですが。  鈴木委員の直接のお尋ねである競争政策そのものの体系、そのコンシステントな体系をやっぱり示す必要があるのではないかという点に関しましては、実は同じ問題意識を私自身全く持っておりまして、日本競争政策の大家と、大家というか第一人者と言われる方お二人にそのことをぶつけてみたことがございます。そのうちの一人は委員もよく御存じの人なんですけれども。  コンシステントに競争政策説明できるのか、特にこのネットワークの経済性があるような場合に、アメリカもシカゴとかポスト・シカゴとかいろんな議論がなされてきて非常に紆余曲折しているように見えるけれども、どういうふうな説明ができるのかというふうに直接求めましたら、それが説明できないんだと、実はそういう答えでございました。  その理由は、正に委員幾つか御指摘ありましたように、非常に単純に言えば、ドミナントだから規制するないしは分割すると。しかし、それを超えたネットワークの経済性とか標準化とかそういう問題が新たな現実の問題として入ってきていますから、そこをかなりパッチワーク的に、いろいろその時々のベストの判断をして積み重ねているというのがどうも今の世界競争政策であろうと、そのようなお話でございました。それはそれでなるほどという思いがいたします。  先ほど局長から答弁がございましたように、アメリカの場合はまた日本とは全く違って、既にケーブル事業者という非常に特殊なドミナントな人たちがいて、その中でどのようにやっていくかという問題でありますから、ある種ちょっと、法律でいうと、成文法では説明できなくて判例法でその都度その都度やっていくしかないのではないだろうかというのがその先生の御説明だった。今、私は日本はそういう状況に置かれているのだと思うんです。  ただ、あえて言えば、やはり先ほど言いましたように、私は規制をできるだけ緩和して大変多くの自由を持っていただくと。自由を持っていただくコインの両面として、公正競争が必要であると。自由を持つ主体は、やはり非常に多くの人に自由なものを持っていただかなきゃいけない。ネットワークの経済性があってアクセス網がある場合に、入っていく人たちにとっての自由、アクセス網を引いた人たちの自由、それをどのように調和させるのか、利便者の最大利益になるかということを考えなければいけないのだと思います。  実は先ほどからNTTの話がいろいろ出ておりますが、私は、NTTというのはこの分野で日本で最も重要なプレーヤーであるというふうに認識をしております。そのNTTにしっかりと事業を自由にやっていただけるような基盤をつくっていくことが私の役割だというふうにも思っています。しかし、これだけ強い基盤を持っているからこそ、より大きな自由を持っていただくためには公正競争を担保する方法も考えていかなければいけない。正に懇談会議論をしているのは、個別のことはともかくとして、方向は私は正にそういうことだと思うんです。  委員のお話の中で、ウイナー・テークス・オールの話がありました。ある種、NTT日本国内ではウイナー・テークス・オールに近いというふうに見られるわけですが、残念ながら、世界の中ではウイナー・テークス・オールにはなっていない。それこそが実は問題なわけでありまして、そのために、やはりより大きな自由を持って、国際的に競争して勝っていただくようなプレーヤーに私はもう是非なっていただきたい。そのための自由。しかし、その自由を持っていただくために必要な公正競争のシステム、それをつくっていくことが私たちの今の役割であるというふうに思っております。
  113. 鈴木寛

    鈴木寛君 いや、今の限りでは大臣と私で全く同じ思いでございます。  それで、確かにパッチワークなんですよね。このことは昔よく議論をさせていただきましたけれども、パッチワークのときはどうしたらいいかというと、いい意味でのやっぱり対症療法だと思うんです。問題が顕在化している、そして問題のマグニチュードが重いものからやっぱりその対応をしていくと。そして、要するに答えが分からない、正に標準化の問題も大変な問題です。その中では、冒頭私が申し上げた、せっかくうまくいっているものを、もちろんここも問題なしとはしませんし、先行投資的にいろいろな制度改革あるいはいろんなことをやるべきだと思いますけれども、そういう意味でのプライオリティーがどうなっているんでしょうかと。だから、著作権の話は是非やりたいと私は思います。しかし、このインフラのところでどういう問題。  今大臣おっしゃったように、国際競争力を強めるためにも公正競争力、これも私大賛成です。じゃ、お伺いしますけれども、改めなければいけない、あるいは正さなければいけない、要するに必ずしも公正でないという競争分野というのはどこだというふうに御認識されていますか。
  114. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) まず一点だけ、現状うまくいっているではないかと。私も、今のシステム、この五年間のIT戦略の下での制度設計とその中でNTTを中心とするプレーヤーの皆さんの貢献、それぞれ大変大きかったというふうに思います。  ただ、同時に、例えばNTT一つに取りましても、今で全く問題がないのかというふうに考えますと、これはNTTの皆さんにもいろんな思いがあると思いますが、例えば昔ながらの電話回線の時代の形で距離で会社を分けているわけですよね。東西とコムで分けていると。これ、本当にこれでベストですかというふうに恐らく聞かれたら、皆さんは、いや、やっぱりそうではないだろうねと必ずおっしゃると思うんですね。距離で分ける、IP時代に必要はないではないかと。  それと、モバイルを別の会社にしているわけですが、これも正にフィックス・モバイル・コンバージェンスと言われている中で、これを別の会社にしているのが、今がベストですかというふうに聞かれると、いや、やっぱりこれから変えていかなきゃいけない面はたくさんあるねというふうに、これは恐らく皆さん、どのぐらいのタイムスパンを取るかはあるとして、それは合意していただけるのではないかと思うんですね。だからこそ、その準備を、議論をし始める必要が私はあるのだというふうに思っております。  今の競争上何が問題かということに関しては、これは、実はNTTは御自社でいろんな努力をされて、自社でリストラもしながら資金調達も御努力をされて施設を引いたと。それに対して、一方でコンペティターと称する人たちは、そこがコンペティターから見るとやっぱりドミナントであるというのは、これは恐らく間違いなく皆さんおっしゃるんだと思います。  先ほど言いましたけれども、これ、どちらの言い分にコンシステントな正義があるかという問題では私はないと思います。ただ、現実問題としてそこに競争メカニズムがしっかりと働いて国民の利益になるような形になっているかどうかをしっかりとチェックする、それがやはり今の我々の非対称規制の中での競争政策の促進ということだと思っております。そういう観点から議論していくことが重要だということを懇談会では議論していると承知をしております。
  115. 鈴木寛

    鈴木寛君 私も九六年のNTT再編のときは正にその担当をしておりましたから、その矛盾点、正に、午前中にも言ったんですけど、やっぱりIP時代がここまでなるということを前提にしていなかったということでNTT法制というのはやっぱり問題だ、問題だというか前提が変わっているということで、きちっと検討をしなきゃいけないという立場です。  加えて、先ほどもちょっと申し上げたんですけど、そもそも電気通信事業法といいますか、電気通信事業者にどういう規制を掛けなきゃいけないかというと、最小限の届出とか、あるいはいろいろな、不正アクセスの問題とか、あるいは安全性の問題、リスクマネジメントの問題がありますから、全く規制要らないかというとそうではありませんけれども、かつ、現行の電気通信事業法はかなりそれに近いイメージになってきていると、こういうふうに思っています。  したがって、NTT法はそういう形できちっと見直して、より規制緩和の方向で見直して、そして、NTT皆様方の創意と工夫とリソースをもって正に新しいビジネスを合従連衡で様々な事業者とともにやっていくと、こういうパラダイムは私も望ましいのではないか。  そして、先ほど冒頭申し上げました、例えばインターネットテレビのギャオがいくのかテレビ番組がいくのかというところにも、NTTは直接参画しないにしても、そこでやっぱりNTTが他のプレーヤーと同じように自由に新しいビジネスを連携してやる交渉ができたり、そうしてその経営判断に、今は様々なNTT法があることによってジャッジが遅れている。そうすると、ビジネスパートナーからすると非常にやりにくいということもそのアプリケーションとかコンテンツのビジネスのところでは出てきているわけであります。  したがって、そこは私はオーケーなんですけれども、大臣の答弁を聞いている限りはまあいいんですけれども、先ほど座長からお伺いをすると、NTT在り方についてもう選択肢は四つですというお話がありました。この話を聞くと、あれっというふうに思わざるを得ないんですね。一つ現状維持、これはもうありませんと。ない理由は、それはいろいろお話がありました。次はアクセス部門機能分離だと。次は組織分離だと。そして、NTT法廃止で資本分離だとおっしゃるんです。  私は、第五の方式、第六の方式というのがあるんじゃないでしょうかと。今申し上げたように、NTT法の中の特に経営戦略についてもっともっと自由にやっていくという方法。だけれども、それは資本分離だとおっしゃると、アメリカでは全然違う方向になっていますねと。そうすると、これだけですか選択肢はというところで私は心配になってしまうわけで、もう少しやっぱりいろんな可能性があって、先ほどから大臣がおっしゃっているような観点からやっぱり選択肢は詰めていく必要があるんじゃないでしょうかと、こういうことが心配なので、是非そこは、もちろん懇談会になって、その後審議会があって、そして引き続きまた国会でこういう議論をやって、そこには国民的議論を醸成していただけるんだと思いますけれども、そういう懸念を持っているということは御理解をいただきたいと思います。  それからもう一つ、私やっぱり気になりますのは、技術開発の話なんです。  これもう大臣よく御存じだと思いますけれども、ICTの分野は、基礎研究と応用研究というのは、何が基礎研究で何が応用研究かというのは非常に難しいですよね。例えば、じゃ実用化までのリードタイムで見るといっても、これ、ある、何といいますか、基礎的な基盤的な発明、発見が出ればこれはもう直ちに製品化になるケースもあります。あるいは、それは特許を取るのか取らないのかみたいな話でも、恐らくこのICTの分野は、基礎研究といっても何かしら特許に必ずつながるケースが多いと。  一方で、先ほども申し上げたんですけれども、ソフトウエアというのは基本的にアルゴリズムですから、かなり数学に近いわけですよね。そうすると、村井先生も数理工学ですから、数学というのは一見基礎的な分野とも思えるけれども、しかしそれが一挙に実装すると。それから逆に、さっきも申し上げたんですけれども、ショックレーは応用研究所の所長ですよね、ノーベル賞を取った。だから、そういう意味で応用研究者と基礎研究者というのはないんですよね。かつ、ネットワークサービスというのは、ソフトウエアとハードウエアとそれからヒューマンウエアと、これが正にインテグレートして、テストベッドで実装してみると、いろいろな研究段階では分からなかった正に複雑系なシステムであり、統合的なシステムでありと。そこが正に研究要素であり、そこが面白いところであり、難しいところであると。  そうすると、私は、これ光がうまくいった理由の一つに、やっぱりハードとソフトとヒューマンがかなり密接連携を取りながら、まずハードとソフトがうまくやれて、そしてそれの実装がかなりクイックにできて、それがフィードバックが早くなってというパターンが今回はうまく当てはまったと。しかし、このパターンが今後もいいかどうかは分かりません。分かりませんけれども、結局、DSLのときで、要するにソフトウエアドリブンでブロードバンドパラダイムをリードしていたときから、光になると、かなりハード、WDMとか光技術のところの開発の要素とソフトウエアの技術の開発の要素のインテグレーションのところが極めて重要なポイントになっていきますから、今回それはうまくいったと。  したがって、報告書の中で、基礎研究の機能が分散しているのは問題ではないかという論点整理があるんですけど、特に基礎研究とかあるいはICTの分野というのは、どういう研究パターンとかあるいは研究チームの、何というんですかね、ありようというのがいいのかというのは分からないですよね。  これも御承知のように、西海岸は自立分散協調型です。シリコンバレーでいろいろなベンチャー的な人たちがRアンドDをやって、しかし、物すごくコラボレーションをうまくやれている。一方、東海岸は、かなり集中的、クローズなRアンドDマネジメントをやっていて、それがシリコンバレーに負けたという理由で、今や東海岸のRアンドDのマネジメントもオープン経営型に、オープンネットワーク型に変わってきています。  そうなると、私は、放送通信の研究テーマをあるいは研究者を研究室単位とか研究所単位でコラボレーションをすることは大いに結構だと思いますけれども、巨大なものをつくって、そしてそのテーマ選定も中央集権化してというのは、今のICTの研究開発を本当に促進するのか、それともそこに停滞させるのかというのは、これ分からないというか、ここも相当慎重にやらなきゃいけないんじゃないかというふうに私は思っていまして、ここも心配の点なんですけど、いかがでしょうか。
  116. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 今御指摘いただいた前半の心配な点、実はNTT在り方に関してもいろんな議論がありまして、あえて座長はそれを、いろんな意見があるからあえて類型化をしたということだと私は承知をしておりますが、委員御指摘のように、実は非常に多様な選択肢の中で実際の政策は考えていかなければいけないというふうに私も認識をしております。  お尋ねの研究開発、これはもう大変難しい、しかし重要な問題であると思っております。今、東海岸と西海岸の例を御説明くださいましたけれども、実は私も全く同じ認識を持っております。かつて、MITの何とかラボラトリーというのがすべてを支配していた時代がありました。しかし、どうもそうではない形で、それに代わった言葉として創発という言葉がよく一時使われたんだと思います。ネットワークの末端で、ガレージでジーパンをはいた二人の青年が何かやったことがまさしく世界の標準を瞬く間につくってしまう、それこそが新しいタイプの研究開発であるということが言われた。  一般には、確かに基礎研究というのは重複投資を避けるために集約する方がいい、応用研究の方はむしろ分散して競争する方がいいというのは一般的な話でありますけれども、この分野においては何が基礎か応用か分からないという委員の御指摘にも私は賛同したいと思います。  一方で、今おっしゃったような議論、実は懇談会の中でいろんな議論がなされています。一つ意見として集約のような議論は出ていることは事実でありますが、それが本質的な問題ではないのではないかという指摘もあります。むしろ、そうではなくて、標準化をどうするかということこそが今のその技術開発の問題なのではないかと。それが行われていることこそが重要なのではないかという指摘はなるほどと思わせるところがございます。  そういうことも含めて非常に建設的な議論をしていただいておりますので、委員今御指摘のような、一方的な議論にはならないように私も注意したいと思いますが、実際きちっとした議論をしていただけるものというふうに考えております。
  117. 鈴木寛

    鈴木寛君 いや、是非、本当にこの標準化の問題というのは日本がずっと泣かされていたテーマですから、せっかくこの光で国際標準を取れるというこのチャンスを逃さないようにという視点も重視しながら議論を進めていただきたいなと、こういうふうに思います。  そして次に、ちょっと放送議論をしたいわけでありますけれども、結局、IPということでそこの融合化ということは進むわけでありますけれども、それの物理層のところですね。結局、私は放送の方はそれなりにいろいろな問題、課題を抱えているとは思っておりまして、と申しますのも、地デジ、地上波デジタルの設備投資というのはこれは巨大な投資になる。これは本当にこの何年かに一回大騒動をしながら、国がどこまで手当てをするのか、あるいは民間に任せるのか、あるいはそれこそその地域の問題、それから難視聴といいますか、そこの設備整備が遅れるところの問題があります。  しかし、これももうその議論が始まって、かつそれへの投資が始まって、私は幾つかの大事なチャンスというか、それをもう何回か乗り越えてしまったというか、やり過ごしてしまったという感じがいたしまして、まあなし崩し的にかなりのお金と資源が投下をされてしまっていますと、こういうことだと私は思います。  一方で、これは別にその政策が悪いということは全く言うつもりはありません。むしろこれは技術開発のテンポの速さなものですからしようがないんですけれども、当初地デジをやらなきゃいけないと言い始めたころに比べると、圧倒的にそれ以外の物理層、伝送路によるIP、ブロードバンドIPがサービスとして出てきつつ、あるいは可能性として出てきていると。そうすると、これ投資計画を立てる方からすると、あるいは既に参加コストを払っている方からすると大変な話だし、現にいろいろ地方放送局の経営等々を見ていますと、やっぱりそこのところに相当なエネルギーが、金銭的な意味でも、あるいは経営的に人材的な意味でも取られてしまっている。  本来放送局のコアコンピタンスというのは、正にいいコンテンツを作れる人材であったり、いいコンテンツを作るためのそのいろんなソースを持っているでありますとか、そういうところとの信頼関係を持っているとか、あるいはそういう人材をOJTなどでつくっていくそういうシステムとか、そういうところだと思うんですけれども、そこがどんどんどんどん失われていくのは私は非常に残念だなというふうに思います。  そういう意味で、正に今、いわゆる地デジでカバーできないところの話がありますけれども、それももちろん重要な話ですけれども、地方局のそうした投資イメージというものをだれがこれきちっと、それこそガバナンスを働かせてやっていったらいいのかというのは私は大問題だと思うんですけれども、その点について御所見をいただきたいと思います。
  118. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) ちょっと御質問を正確にとらえているかどうかあれなんですが、地方局において、この地上デジタルを目指してかなりの投資が必要だということはもう御指摘のとおりでございます。一局平均四十億というふうに言われているそうでございます。そうした点も踏まえまして今ロードマップをいろいろ作成しているわけでございますが、私も実は総務省に来るはるか前にこの地デジを見ていまして、本当にできるのかなという思いがございました。しかし、改めて各般のいろんな取組を併せて、今九五%までロードマップ来たわけでございます。これは大変な私は成果であるというふうに思います。  一方で、その中身については今、鈴木委員御指摘のように、実は当初は地上波デジタルというふうに言ったと。今は地上デジタルというふうに言う。正にそこはIP網に代表される電波以外の伝送路の役割が重要になっているという事実、そして、そうした伝送路が着実に利用可能になっているという事実、それを反映しているわけでございます。  最後の五%のところをどうするかということについては、先ほども御答弁させていただきましたけれども、まあとにかく事業者にしっかりやっていただくということ、それに加えて、今申し上げたような別の手段がどのぐらいあるかということ、このやはりロードマップを作っていくということこそが、実は正に一つガバナンス、コントロールになっているというふうに私は理解をしております。したがって、これを更に一〇〇に近づけていくという努力を引き続き行いたいと思っております。
  119. 鈴木寛

    鈴木寛君 最後に、先ほどちょっと触れましたけれども、日本のITの、ICTの産業の、これは論点整理でもインドと中国にコンテンツ制作力の情報発信を充実するという問題意識は書いてあるんですけど、それを進めるためにも、コンテンツもさることながら、それこそ下位レーヤーと上位レーヤーと一緒に出ていくということは、やっぱりいろんな意味でのこのビジネスチャンスを掘り起こすことにつながると思います。  そういう意味で、光を始め、あるいはまだモバイルもどんどんどんどん新しいサービス日本は発信をできるわけでありまして、そこへの戦略をお伺いしたいと思います。
  120. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 基本的には先ほど言いましたように公正な競争、規制緩和、自由にやっていただく、自由にやっていただくチャンスを提供するということと、そして公正な競争をするということ、これがやはり王道であろうと思います。特に、今委員も言葉としてお使いになられたように、各レーヤーの競争を高めていただかなければいけないということなんだと思います。  特に、実はコンテンツの話はこれはもう委員が大変熱心にこれまでも議論してくださったことを私も承知をしておりますが、日本の規模はアメリカの五分の一しかありません。これはすごいことだと思います。これだけ、何といいますか、アニメ等々日本のコンテンツはいいと言われながら、実は市場規模はアメリカの五分の一しかないということ、それだけの余地があるということだと思いますが、同時に、いろんなコンテンツを作る、作りたいと思っている人たちがいるにもかかわらず、そういう人たちが活躍する場が現実にはないということを意味しているんだと思います。テレビ局、民放も実はかなりの部分、外注しているはずであると。にもかかわらず、先ほどもちょっと厳しい御批判がありましたけれども、いい番組が作られていないではないかというような思いを国民の皆さん、やはり持っておられるんだと思います。  そこは、広くやはりレーヤーの競争をしていくということ、それは各レーヤーにおいて必要であると。コンテンツだけではない、各レーヤーにおいて必要であるというふうに認識をしております。
  121. 鈴木寛

    鈴木寛君 中国、インドにおいて、欧米の動向を見ていますと、更に踏み込んで、やっぱり首脳が、相当首脳同士であるいは政治家がそうしたビジネスアライアンスができるための手だてをしていることは事実だと思います。やっぱり日本は足らない。  そういうことに是非大臣も更に目を向けていただいて、そして、繰り返しになりますけれども、本当にこれ大事な懇談会だと思いますので、本当に多角的な観点から、是非もう少し議論のプロセスをオープンにしていただくとその杞憂というものもなくなるかもしれませんし、そういうことも是非お願いをして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  122. 内藤正光

    ○内藤正光君 引き続き、二十分の時間をいただきまして質問をさせていただきたいと思います。  午前中、御存じのように、参考人質疑をやりまして、多くの有識者の方々から本当にためになるお話を伺いました。  そんな中、松原座長も、正に大臣がおっしゃっていたとおり、やはりユーザー視点に立った改革が必要だということを再三再四強調をされておりました。じゃ、具体的にはどういうことか。例えば通信の分野で言うと、例えばNTT組織構造、東、西、コミュニケーションあるいはまた移動体、分かれている、やっぱりこういう組織体系というのはメタル時代の残滓だと、そこを何とかしなきゃいけないとおっしゃっていました。そしてまた、ほかにも、今事前規制ですよね、通信分野というのは。しかし、独禁法によって、事後規制とは明言はしませんでしたが、独禁法による対処が必要だというようなことをおっしゃっていた。なるほどなと思いながら私は聞いておりました。  しかし、実際、この一昨日出された論点整理を見ますと、通信分野のところを見ますと、どうもそういう大きなことが書かれてないんですね。結局は、アクセス網の構造分離だとか機能分離といったものに矮小化されてしまっているというような印象を私は受けましたし、そういう印象を受けたのは私だけじゃないと思うんですね。井手慶応大学の先生も、やはり日本の情報通信政策、往々にして組織論に矮小化されてしまうという問題があると、これはいかがなものかという批判、指摘もされておりました。  そこで、時間も余りないことですから、その辺のアクセス網の在り方について二十分間質問をしていきたいなと思っております。  そこで、まず議論を深めていくために、ここでうたい上げている機能分離構造分離ではなくて機能分離というのがよく分からないんですが、これ具体的にはどういったものをイメージをされてそうおっしゃっているのか。もっと言うと、現行の回線開放義務と何がどう違うのか、お示しをいただけますでしょうか。
  123. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) まず最初におっしゃった議論が矮小化されないようにしろと、それは担当大臣として是非しっかり心掛けてやっていきたいと思います。  アクセス網の在り方で、これ論点整理松原先生がお書きになって、それについて、いや、こうだ、違う、そこは納得できる、いろんな議論がなされましたので、その言葉一つ一つについてちょっと私が全部完全に承知しているわけではございません。今までの議論で私なりのイメージを申し上げるしかないんでございますけれども、厳密にこうすれば機能分離になるというようなもの、そのような姿について議論がなされているとは承知をしておりません。  ただ、アクセス網について、その部分については極めてやはり公共性が高い、ドミナンス性も高いと。そういうところについて何らかの、例えばですけれども、別勘定に、別会計にできるのかどうか、その辺も分かりませんですけれども、そういう何らかの管理をした方がよいのではないかと、イメージとしてはそのようにお話をしておられるのだと承知をしております。  また、その際に例として出されますのはBTですね、BTにおいてそのようなことが行われているのではないだろうかということで、ただ、BTが具体的にどのように制度設計しているかということも、そういう議論は別に私の知る限りなされていないと思います。  いずれにしても、ちょっとさっき委員もおっしゃいましたけれども、距離で分ける必要があるんだろうかと、フィックスモバイルコンバージェンスじゃないんだろうかと、そういうことを自由にやっていただけるようにしたいという議論、自由にやっていただく必要があるからこそ、公共性の高いアクセス部分について、よりしっかりと公正な競争ができるような仕組みがつくられなければならないのではないだろうかと、方向としてそのような議論をしておられるというふうに承知をしております。
  124. 内藤正光

    ○内藤正光君 機能分離についてはBTのオープンリーチを意識されての発言だというふうには理解できました。  しかし、午前中、井手先生の発言にもありましたが、なぜオープンリーチというものをつくったのか。あれはブリティッシュテレコムの中に独立した社内事業部門としてつくって、そこが回線を管理しようということだったんですが、そもそもの発端は、イギリスではなかなかメタルの回線開放が進まなかったという、そういう現状があるわけです。そこでどうしようかということでBTは迫られた。そこで自ら、分離するかどうかと迫られたんだけれども、自ら、じゃ社内の独立した部門、オープンリーチというものをつくって、そこで既存のメタル網を運用管理しようということになったわけですね。  そこで、あくまで気を付けなきゃいけないのは、管理しているのはもうでき上がってしまっているメタル回線なんです。実はイギリスというのはアクセス網においてはまだ光ってでき上がってないんですよね、余り。余りというか、でき上がってない。こういうことをまず踏まえなきゃいけない。そして、そもそもこのオープンリーチが設立、でき上がったのは今年の一月なんです。まだこれがどうなるか評価も定まってないんです。そして、ところが欧米の経済学者は、競争がなくなる、したがって、料金、高止まりあるいはもしかすると値上がりしてしまうんじゃないかという指摘もこのオープンリーチということに対して指摘を投げ掛けているわけです。私は、そういう状況でこのオープンリーチという、機能分離ですね、それを取り上げること自体私はいかがなものかなというふうに思うんです。  そういったことを申し上げた上で、私は、これ機能分離もまた構造分離についても当てはまることだと思うんですが、もし、こういう構造分離にしろ機能分離にしろ、アクセス網を切り離したとすると。そうなると、今後NTT設備投資をしていく、造ったインフラはその社内の独立した事業部門が運用管理していくことになる。言葉を換えて言うとどういうことになるのか。インフラ、光インフラNTTは造りなさい、どんどんどんどん造りなさい、ところがその利用についてはあなたの自由にはなりませんよということですよね、構造分離にしても何にしても。そうなると、投資インセンティブってどうなっちゃうのかなという大きな疑問がわいてくるわけです。  もう大臣も御存じだとは思いますが、総務省主催のIP懇と言っていいんでしょうか、一言で、IP化時代に対応した競争ルールを考える懇談会、そこでも座長が明言されているのは、やはり投資インセンティブと開放義務とのバランス、これが大切だとおっしゃっているし、問題意識として持っていらっしゃるわけです。  そこで、大臣にお尋ねしたいのは、アクセス機能あるいは構造の分離でもどっちでもいいです、それをすることでどのように投資インセンティブが維持できるのか、保たれていくのか、教えていただけますでしょうか。
  125. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) ちょっとこれむしろ私じゃなくて松原先生に詳しく聞いていただく方がよかった問題かもしれませんが、私の理解ということで御答弁させていただきますけれども、まず、イギリスのそのオープンリーチの話、これも正に委員が御指摘のように、いろんな経緯を私なりに調べてみますと、むしろ日本でそういったドミナンス性の高い分野についてしっかりとしたそれなりの非対称規制が行われているということを受けてイギリスが日本の例を学んだんだということを主張される方もいらっしゃいます。そういう面も確かに私はあったのだと思います。それと、既存のメタルと今投資進行中のデジタルの新しい回線、これは違うというのも、これも事情としてはもう委員の御指摘のとおりであるというふうに私も承知をしております。  それで、難しいのは、やはり正に御指摘のように投資インセンティブとこの規制とがどのように関連してくるかという問題、これはあろうかと思います。さらには、事業のインセンティブとして、これは正にそのアクセスの部分とその上のレーヤーの部分との関係をどのように考えるのかということの重要な指摘もあると思います。  実は申し上げたいのは、そういうことも含めて、今懇談会では問題の所在を認識しながら議論が進んでいるということでございます。構造分離については、そこまでもちろんまだ議論は進んでおりません。ただ、一つの、なぜ難しい問題をあえて、こういう問題を、技術的には難しい問題があるのに議論しているのかということになりますと、これはもう元から申し上げていますように、これはNTTにいろんな意味での自由度を持っていただいて、日本の最も重要なITプレーヤーとして世界的に活躍する企業になっていただきたいと、より大きな自由を持っていただくというのが出発点だと私は認識をしています。  その自由度を高める一方で、そうすると、今度はコンペティターから当然そのドミナントな部分についてどうするんだという議論が出てきますから、その部分について公正な競争を確保するために何らかやっぱり新しい知恵が必要なのではないのかと、そういう議論の出方が今の状況だと私は認識をしています。委員御指摘のように、投資インセンティブの問題とどう結び付けるか、これは大変重要だと思います。  しかし、いずれにしても、これはもう非常に強いネットワークの経済性を持っている組織で、その中でのフェアネスというのが一体どういうものなのかと。これは本当に世界じゅう頭を悩ませている問題ですけれども、やっぱり問題があるから何もしないということではなくて、問題があるのは分かるけれども、そこを更に最先端のIT国家を目指して議論をしていこうというのが専門家の皆さんの姿勢であるというふうに認識をしております。
  126. 内藤正光

    ○内藤正光君 ここで光アクセス網の競争状況について再確認をしてみる必要があろうかと思うんですね。  私の手元、本当はパネルにしてくればよかったんですが、あのパネルも結構高いものですから、ちょっと説明をさせていただきたいなと思います。  各都道府県ごとにファイバー・ツー・ザ・サービスにおけるNTTのシェアを示した表があるんですね。ちょっとぼやっと見えるかもしれませんが、特徴が幾つか見られるんです。一つは、だれでも思い付くんですが、大都市圏においてNTTのシェアは低い。それは当たり前です、競争が盛んですから、東京あるいは名古屋、あるいは大阪辺り。  そしてもう一つ、実は特徴があるんです。どういう特徴か。これ、私見ていてあれっと思ったんですよ。東日本と西日本で違うんですね。東日本は総じてNTTのシェアが高いんです、九八とか。ところが、西日本になると七〇%前後なんですよ、平均すると。下手すると六〇%になるかもしれない。低いところはかなり削っている。なぜ東と西でこうも違うのか。調べてみたら、やっぱり電力系なんですね。総じて西日本電力会社は通信事業にかなり力を入れていまして、インフラベースの競争を西日本ではNTTに対して挑んでいるんです。その結果、NTTのシェアがもう七〇とか六〇になっているんです。ひどいところはもう四〇ぐらいになっているんです。ところが、残念ながら、東日本の方はちょっと電力会社さん、余り通信事業に力を入れられてないようなんですね。  で、そこでなんです。私はそれだけを言いたいがために今日この場に立ったわけじゃないんです。やはり、そういう競争の結果どうなるかということを私は大臣にお示ししたかったんです。やはり、競争のあるところは、大臣もお認めになるように料金下がるわけです。競争のないところは料金が高止まりする。実際どうかなと。私、インターネットでいろいろ調べてみました、全国。そうしたら、西日本、確かに安いんです。例えば一番安いところはどこか、九州なんですね。どういう条件か。電話サービスもできるプロバイダー込みの戸建て向けの全部の料金ですね、戸建て向け。西日本、九州、安い。六千九十円です、月額。その次が意外なことに四国なんです。六千百九十五円。高いところだと六千八百円ぐらい。大体六千円辺りですよね。ところが、東日本はどうなのか。ばらつきがないんですね。大体七千二百円ぐらいなんです。西日本と千円以上の差があるんですよ。私は、これは競争の結果かなと思っているんです。  もう一つ、ちょっと申し上げなきゃいけないんですね。じゃ、回線開放が徹底されているADSLではどうか。余りちょっと詳しいことを述べる時間はもうありませんが、一言だけ言います。回線開放しろしろとよくおっしゃっている方いますね、事業者で。その方が営んでいる事業者、余り安くなかったんですね。別に私は何も批判するつもりはありません。事実を申し上げているだけです。月額料金はああ意外と高いんだと、安くないんだと思いました。  こういうのを見てきますと、やはり私はあるべき姿、方向性というのは、やはりインフラベースの競争を全国的に促進をさせる、そしてボトルネック性だとかドミナント性を排除させる、もって競争を促進させる、そして結果として料金の低廉化を図っていく、あるいはサービスの多様化を図っていく、私はこれが本筋だと思うんですよね。  私は、インフラベースの競争を支持する立場にあるんですが、しかしまた大臣も松原座長にお任せしているという立場でなかなかお答えにくいところはあろうかと思いますが、あえてお尋ねします。  アクセス機能あるいは構造の分離によっていかなるロジックでいかなる競争が生まれると言えるんでしょうか。どんな競争が生まれるんでしょうか。結局、そうなると、だれも労せずして回線使えるようになるわけですね。競争はそこにはないわけですよ。私は、それ以上ちょっとなかなか想像が進まないんですが、大臣、ちょっと、どういう競争が生まれるのか、簡単で結構ですからお答えいただけますか。
  127. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 今委員からお示しをいただいた都道府県別のシェア、これ私もよく見させていただいております。私や世耕委員長の地元は電力会社が強い地域に入っておりまして、NTTのシェアが低いということも承知しているつもりでございます。  今委員言われたように、競争の重要性、これは全く私もそのとおりだと思います。そして、インフラ競争の促進ということも私はこれは重要な一つの側面であろうというふうに思っております。その上で、しかし、そのネットワーク、何度も申し上げているように、ネットワークの経済性が存するという、非常に我々にとっては重要ではあるけれども競争政策上は厄介な問題とこれ正面からやっぱり向き合わざるを得ないわけでございます。このネットワークの経済性について、ないしは、ちょっと別の言い方をしますと、いわゆるエッセンシャルファシリティーという言葉がありますけれども、この競争政策は私はここから始まっているというふうに理解をしております。  つまり、これはアメリカで実際にあったわけですね。ある鉄道網とある鉄道網があって、これは鉄道網があるわけですけれども、それをつないでいるものが一本のレールしかなかったと。ここが民間の鉄道業者が持っていたと。これは自分が引いたんだから自分のものであると、ここを通りたければ非常に高い料金を出せというふうにこれ当然私有権を主張すればそういうことになる。しかし、そうすると、このネットワークの経済性が生かされないと。そういうことで、いわゆるアメリカのフェアトレードコミッションが、それについては一種のこれドミナントな施設だということでその新しいルールを適用した、それから新しいタイプの競争政策が始まったというふうな話を専門家から聞きました。  結局、これをどのように考えるかということだと思うんですね。それは、施設を引いた人から聞くと、私が引いたんだと、これは私の私有財産に基づく私が利益を上げる権利があるということになるわけですが、社会全体のパフォーマンスを見ると、実はここのエッセンシャルファシリティーを公的な性格を持たせて使うことによって社会全体の利益が物すごく高まると、そういう場合の競争政策をどのように位置付けるかという非常に厄介な問題なんだと私は認識をしています。  その意味では、当事者から見ると非常に割り切れない面が常に付きまとうわけでありますが、社会全体の利益、それが正につながることによるネットワークの経済性でありますけれども、それをやっぱり評価しながら、その時々のその必要な政策を取っていくやっぱりことを考えなければいけないのではないかなというふうに思うわけでございます。  NTT、大変努力をされて引いて、そのアクセス網を持っているわけですけれども、それはNTTが努力した、そのためのリターンを保障するという面と、一方で、これを社会的に活用することによって国民が利益を得るという面、これのやはり調和、これが競争政策であると思っております。
  128. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) もう時間が来てますから。
  129. 内藤正光

    ○内藤正光君 分かりました、はい、じゃ、本当に最後に一言だけ。  ユーザー視点が大事、で、大臣が象徴的におっしゃっているのが、ワールドカップどこでも見られるように。で、NTTは二〇一〇年までに三千万加入。ところが残り三千万がある。これ、非採算地域なんですね。非採算地域、私はここをどうするか国を挙げて考えること、これこそがユーザー視点に立った私は通信放送融合時代における施策だということを申し上げて、私の質問を終えたいと思います。
  130. 澤雄二

    ○澤雄二君 公明党の澤雄二でございます。  十一回にわたりました竹中懇談会、おととい、論点整理、やっと出てまいりました。一つ心配な点は、この論点整理、内容は一つ一つやっぱりこれだけ整理されたことがあってすばらしい内容が含まれている。で、その割には、十分論議をする時間があったんだろうかと、ここまでの論点整理を出されるまでに、ということがちょっと心配でございます。  毎回の懇談会終わった後、議事録が公開されますが、それを見せていただいていて、その中に余り出てこなかったようなこともあの中に、論点整理の中に出てきたんじゃないかとか、それから、これは大変細かい話で恐縮でございますが、十一回目の懇談会論点整理が発表された懇談会、一時間四十五分会議が開かれていました。で、いただいた論点整理、声を上げて読んでみたら十分間掛かったんです。そうすると残りが大体九十分強でございまして、全部で三十項目あるんですね、論点整理。そうすると、平均すると一項目三分ですべてが議論された。あれだけの内容を本当に議論できたんだろうかという心配でございます。一つ一つ内容を十分吟味する時間は余りなかったんではないかな。  で、一つだけちょっと苦言といいますか苦情を申し上げますけれども、現状認識の三番目のところに、「ソフトパワーの強化のためには放送事業者の果たす役割が大きいが、現状ではそれを期待するのは困難ではないか。」というふうに書いてあります。これは放送事業者に対して大変失礼なのかなって、こういうことを客観的に言える、客観的に言うような議論をこの懇談会でされたのかなと。  先ほどちょっとアメリカとのコンテンツの制作費のことを大臣言われていましたけど、アメリカと比較する場合には必ずGDP比があると思うんですよね。それからアメリカは英語圏、日本日本語で日本の顔をしていますよね、だからそういうハンディもあるだろうと。だから、例えばアニメみたいな人種不明なやつは日本は大変健闘していると思うんですよ。それだけが理由じゃなくて、一生懸命アニメはやっているからということがあるんですが、そういうことはやっぱり比較検討の中に入れなきゃいけないのかなって。それにしてもこの言い方はちょっといかがなものかという気がいたします。  何度も申し上げていますけれども、この竹中懇談会日本の将来を決める大変大事なことを決めていらっしゃるということで、私は実は大賛成でありますけれども、この論点整理からこれから具体的な提案、それから骨太の方針に何入れられるかということを検討されていくと思うんで、まだ少し時間があると思います。できれば、例えばもう一回、反対意見があるということは論議が進歩するということですから、もう一度何か放送事業者とかそういう方たちと一回じっくりと、紙のやり取りで十分議論したというのは、ちょっとさっき座長おっしゃっていましたけれども、そうではなくて、腹を割った虚心坦懐の意見の交換というのを一回されてみたらどうかなと、これだけ大事なことをお決めになろうとしていますんでね、そういうことを感じております。  ちょっと御所見をお願いいたします。
  131. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) いろいろと御指摘をいただきましてありがとうございます。  時間の問題、確かにいろいろあろうかと思います。これは、時間はある方、たくさん掛ければ掛ける方がいいわけでありますけれども、同時に、しかし限られた時間の中で議論をしなければいけないという性格を常に持っております。  ちょっと、時間のことを言われて私も思い出したんですが、金融担当大臣になって金融再生プログラムを作るときに、実はあれ、一か月で作りました。で、そのときも、もっと時間を掛けるべきだという御指摘をいただいたわけですが。実はこれもう常にこの問題を日本の最先端で考えている人たち、考えて考えて考え抜いている方々に集まっていただいて、ある種の非常に高いところから出発して収れんの議論をしている、そういう会議であると私は認識をしております。したがって、十一回ではあっても、その背後に何年、何十年のその先生方の議論があって、その上での議論、総務省は総務省でまたそうしたことを常に議論をしてきたわけでございますので、それの集大成であるというような理解を是非賜れればというふうに思っております。  それと、この中で、「期待するのは困難ではないか。」、これはこういう言い方はいかがなものかという御指摘、これは松原座長にしっかりとお伝えをしておきます。あえて弁護を申し上げれば、私は、やはり日本のこういう分野での代表的な世界に通じるプレーヤーとして放送局に対して非常に高い期待を持っているんだということを何度か申し上げてまいりました。そういう期待の裏返しでこういうことを書いたんだと思いますが、これは表現についてはそういう御注文があったと、御指摘があったということは正確にお伝えをしたいと思います。  それと、しっかりと現場といいますか当事者の意見を聞けということでございます。これはちょっとどのようにしたらよいか私も考えてみたいと思います。今後、この問題、与党でもいろいろ御議論いただくというふうに聞いておりますので、その与党の場で議論させていただくこともあろうかもしれませんし、いずれにしても幅広く、いろいろ納得して御支持をいただかなければこういうことはできませんので、そこは注意深くやってまいりたいと思っております。
  132. 澤雄二

    ○澤雄二君 大変御配慮のある御答弁、ありがとうございました。  それではちょっと内容について伺います。  「融合を進めるための環境整備」というところの三項目めで、「二〇一〇年代初頭までに、現行の通信放送で二分された法体系を全面的に見直し、縦割りから横割り法体系とすべきではないか。」というふうに言われています。この部分もそうなんですが、ほかにも幾つか、正にこれはいわゆるソフト、ハード、コンテンツを作る部門と送出をする部門、放送局の、これを分離することに必然的につながってくるというところが何か所かございます。  それで、大臣にお聞きしたいと思うんですが、大臣はこのソフト・ハード分離についてはどういうお考えをお持ちでございますか。
  133. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) この問題、よくいろんな関係者の方から聞かれるわけでございますが、これはもう澤委員に対しましては正に釈迦に説法でございますけれども、衛星放送というのは、実はハード、ソフトをむしろ分離、もう分離の受委託体系になっているわけでございますので、それは既に存在しているわけです。CS放送、有線テレビジョン放送等々についても同様の電気通信役務利用放送法等々のいろんな枠組みがあるわけでございます。だから、そのハード・ソフト分離するか分離しないかというのが一種の神学論争のような形で議論をされるべきではないとかねがね考えております。  一方で、地上波ですけれども、これは地上波は、やはり日本のように災害の多い国で災害放送等々、特に編集、編集じゃない、編成ですね、編成が一体となって番組づくりをやらなきゃいけないと、ここはもう私は大変理解できるところだというふうに思っております。そういう観点から、現実的な議論を私はしっかりしていけばよいのではないかなと思っています。  これ議論が、懇談会議論、決してハード・ソフト分離で固まっているというふうには思っておりませんし、これ緊急事の対応が必要だというような議論懇談会でもなされております。諸外国でも、これいろいろですね。ヨーロッパではこれ分離アメリカでは一致、日本の中でも地上波BS、CSは違うということでありますので、そのハード、ソフトのところだけに余り焦点が行かないような形で現実的な議論を是非進めたいというふうに考えております。
  134. 澤雄二

    ○澤雄二君 ちょっとお話をしたいと思うんですが、そのソフト、ハード、地上波テレビですけども、が分離したら一体どういう事態になるかということを考えてみたいというふうに思うんですけども、私はこのソフト・ハード分離の構想を聞いたのは、実は五年、六年、七年ぐらい前だったと思います。そのときに、その話を聞いたときに、このソフト・ハード分離というのは二つの理由で無理だと思いました。一つは、今大臣が言われたテレビの編成権の問題でございます。それからもう一つネットワークの維持ができない。この二つの理由でソフト・ハード分離はできないだろうと。もし強行すると日本からテレビの文化がなくなると。このテレビの文化というのは、正に今地上波がやっている、無料で総合編成でソフト・ハード一致で築いてきた文化のことですが、これがなくなる。分かりやすい例で言うと、日本からテレビニュースがなくなってしまう、そういう事態も実はこのソフト・ハード分離の中では起きてくるということでございます。  これも釈迦に説法ですからなんですが、簡単に申し上げると、なぜそういう事態が起きるかというと、コンテンツを作る会社と送出する会社が別々になると、送出する会社は送出する会社でその利潤の追求を始めます。利潤の追求を始めたときにどういう形が最も利潤が上がるかというと、つまり、視聴率が取れる番組ばっかりで編成することが一番利潤が上がります。ということは、二十四時間ゴールデンタイムにすることがハード会社にとって一番利潤が上がる方法です。  一方、今一致して、ソフト・ハード一致して、番組の編成権でもって今地上波放送してますけど、この編成権の中でテレビニュースとか教養番組とか情報番組というの、まあ法律で定められていることもありまして、やっています。でも、このテレビニュースというのは、どんなに視聴率が上がろうと、例えば五〇%の視聴率を取ろうと、その番組のCMだけではとってもコスト回収はできません。ですから、ほかの番組で利益上げたものをニュースに投入しているわけでございます。そうやって一致されている放送番組編成権があるからそういうことができるんでありますが、なくなったハード会社はそんなコストの掛かるニュース番組放送しようとは思わないわけです。ですから、またそういうものを作ろうとするプロダクションも現れません。  どうしてもやろうとすると、これはテレビニュースは有料放送にするしかありません。有料放送は、アメリカでCNNがあります。CNNがあるじゃないかと。だけど、CNNは海外の取材は自前でやっています。これは非常に派手な、目立つからであります。でも、アメリカ国内の取材は、ネットワークのローカルから全部素材を買って放送しています。ソフト、ハードを分離するということはそのローカル局も基本的にはなくなることですから、日本のCNNは莫大な金を掛けないとCNNのような二十四時間のニュース番組は作れない。そうすると、多分一か月の有料チャンネル、どれくらいでしょう、三万とか四万とかって、多分それはビジネスにはならない。ということは、必然的に日本からテレビニュースがなくなると。  つまり、ソフト、ハードの分離のやり方によってはですよ、やり方によってはそういうことも起こり得るということが実はこのソフト・ハード分離だと思うんですが、どういうお考えお持ちでしょうか。
  135. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 澤委員の御主張は私なりにちゃんと理解しているつもりでございます。まあこれは特に民放の皆さんとお話しすると、この民放の番組編成の中でニュース番組というのがいわゆるコストセンターになっているかということはよく分かります。しかし、それを果たしてくださっているからこそ、緊急時に海外のネットワークも含めてしっかりとしたニュースができているわけでありますので、とりわけ緊急放送の問題、先ほど私も申し上げましたが、そこは重要だと思います。そういう機能についてはしっかりと重視をしなければいけないというふうに私自身は常に考えております。
  136. 澤雄二

    ○澤雄二君 これは理論武装をしてきてませんので、三十年間テレビをやってきた人間が肌で感じていることを今ちょっと申し上げますと、先ほど言われました衛星放送もそうですし、それからソフト・ハード分離って、結構EUがソフト・ハード分離をされています。  ということを考えると、一致なのは日本とかアメリカとか韓国ですよね。日本アメリカ、韓国とEUのテレビ文化を考えると、イギリスのBBCというのは世界で一番面白くないテレビだと言われているんですよね。フランスでは、テレビって物すごく価値が低いんですよ。テレビのジャーナリストというのは、何だ、そんなことやってるのかと言われるような感じなんですね。日本はこんな威張ってますけれども、つまり、いやいやいや、そんなことは、私は大変謙虚だと思っていますが、ですから、ソフト、ハードが分離している国々のテレビ文化というのは、余りテレビ文化が発展していない。つまり、それはさっき言ったようにいろんなことがあるんだと思うんです。  それから、基本的にはソフト、ハードを分離すると、ペイテレビが基本になってくる可能性があります。いや、必ずしも、さっき言いましたように全部理論武装してませんよ、三十年間の肌で感じたことを言っているわけですけど、ですから、やはり日本がここまでテレビ文化というものが発展してきたというのは、やっぱりソフト・ハード一体になってきたことがあるんだろうと。  それから、先ほど言いませんでしたけど、技術の分野を別にしますと、今まではその全体の収益の中で技術の進歩ということを各テレビ局は一生懸命やってまいりました。だけど、別々の会社にすると、それはコストに跳ね返ってきますよね。それから、別々に送出でもって利潤を上げようとすると、それはコンテンツの制作費にコストとして跳ね返ってきますよね。だから、全体的にもそのテレビ文化というのを押し下げることがあるのかなというふうに思います。  時間がなくなりましたので、ちょっと次に進みますけども、次に、放送通信融合についてお聞きをいたします。  二か月前にこの委員会で、大臣に放送通信、どういうような概念お持ちですかって質問させていただいたときに、問題意識述べられましたけども、具体的な、こういうことを想像しているんだということはそのときは答えることがありませんでした。で、論点整理でいろんなところに融合融合という言葉が出てきますので、もうここはちょっと、ここで言う融合とはどういうことを想定しているんだというお話を聞かなければいけないかなというふうに思っております。  それで、融合というのは、先ほどもありましたけども、コンバージェンシーとかハーモナイゼーションだとかフュージョンだとかっていろんな言い方もあって、日本でも融合の意味っていろいろあると思うんですよ。混ざり合う、溶け合う。その場合には、混ざり合って溶け合って新しいものが出てくるというような意味だとか、調和だとか、それから連携だとか提携だとか、大臣が具体的に融合というのはどういうことを考えていらっしゃるかという中に、その言葉の意味もちょっと答えていただければなという、その辺が明確になってこないとこの議論って常にあいまいなまま進んでいくところがありますので、是非お願いをしたいと思います。
  137. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) イメージについて明確に答えろという御指摘でございますが、私自身、前回お答えしたときとそんなに変わったものを持っているわけでは、申し訳ありませんが、ございません。むしろ、どういうものが出てくるかということを自由な発想で競争の条件の中で考えていただくことこそが重要であろうと。そのビジネスモデルをどうぞ競って考えていただきたいというのが正直な思いでございます。大臣をしている私なんかが考えるよりも、正に民間の最前線の方に考えていただくことこそが重要であるというふうに思っております。  ただ、あえて今少しお尋ねがありましたので、先ほど幾つか御議論いただきましたけれども、まあ融合と言うか連携と言うかは、これはもうちょっと言葉の問題だと思いますが、いずれにしても、今まで区別されていた伝送路が、これが一致してくるわけですね。通信の伝送路と放送の伝送路というのが同じで、かぶってくると。先ほどの地上デジタルどうするのかということについて、もうそれが象徴的に出ていると思います。  一方で、事業者そのものも、両方やったらいいじゃないかというような場面も出てくるのだと思います。これ、IP網でいろんなコンテンツ、映像コンテンツを流す場合、これはもう非常に分かりやすい典型的な一つの事例だと思います。その場合に、伝送路が融合して、しかも事業者融合してくる、一致してくるということもあろうかと思います。逆に、放送事業者に関しては、電波の圧縮が進んで、電波が更に利用可能になったとき、これを通信に使うということも理屈の上ではこれは可能になってくるはずでございます。これをやっていただくのは私は悪いことではないというふうに思っております。  その場合は、もちろん電波行政の枠組みをどうしていくのかとか、制度設計はきちっとやらなければいけないわけでありますけれども、そういう意味では、技術融合して、正に融合してくる中で、一つの典型的な、ちょっと余り面白みがないと言われるかもしれませんが、そのIP網映像コンテンツを流して、放送のように流す場合、そして放送事業者が電波を活用して通信を行う場合、そういうことは一つの分かりやすい例として申し上げてよろしいのではないかというふうに思っております。
  138. 澤雄二

    ○澤雄二君 今の大臣の答弁でもやっぱりそういうふうに感じたわけでございますが、やっぱり融合という言葉の意味をどういうふうにとらえるんだということがはっきりしてこないと、あいまいなままいろんな形で、それぞれが個々に思っている思いの中で議論をされていく、その心配が実はございます。  もし、その今言われたIPマルチキャストいうのが融合という意味の非常に象徴的だ、まあ唯一かもしれません、まあ唯一じゃないかもしれないけど、だということならば、IPマルチキャストが放送放送じゃないかという区別だけしてしまえばこの議論は済むのかなと思うんです。  つまり、放送というのは一対nだということだとすると、IPマルチキャストは放送だとすれば一対nの中に入れてしまえばいい。で、IPマルチキャストは、いや、違うんだと、通信なんだと言われてしまえば、じゃ、通信放送の違いは、一対nは通信で、マルチキャストがそうなんだから、じゃ、放送はどうなのと、今度は一対オールというような概念を持ち込めば解決する話で、何か一生懸命大上段に振りかぶっていろんなことを考えなくても済むような話、それからこのIPマルチキャストを放送としてあまねく敷衍させるための大きな障害が著作権の問題であるならば、それだけ解決すればいい話ではないかなというふうに思います。その辺のところがしっかりと明確に、分け隔てがなくて、理論としてきちっと考えられてなくて議論されると何が何だか分からなくなってしまうというところがあります。  それから、こういう機会ですからちょっと言わしていただきますけれども、IPマルチキャストと地上波テレビ、どこが違うか。これも釈迦に説法でございますが、まず放送事業者。IPの場合、基本的にはだれでもなれます。テレビのは、まあ希少資源でございますから、認可制で許可を得た者しか放送できません。ですから、ハッカーなどのいわゆる安全対策、今IPマルチキャストの安全対策も検証されていますけれども、やっぱりインターネットというのは一〇〇%守ることはできない。しかし、放送はいまだに破られたということは聞かない。つまり、そういう安全性の対策でも違うだろうと。  それから、社会的影響でございますけれども、二〇一〇年にNTTは三千万世帯ブロードバンド地域と言っていますけれども、そのときに、じゃ、IPマルチキャストってどれぐらい世帯できるんですかといったら、二百万だとおっしゃっていました、先週。そうすると、地上波テレビ放送というのは一億三千万人同時にどっと情報を送ることができる。でも、IPマルチキャストは二〇一〇年になっても二百万世帯だと。つまり、そういう社会的影響力の違いもあると。まあ、もちろん、それから法的規制というようなものもあります。  それから、IPで放送するコンテンツの中身と地上波放送するコンテンツの中身のクオリティーは全く違います。ですから、そういうことを考えると、僕は午前中もちょっと申し上げたんですけれども、IPマルチキャストの使い方、通信が進歩をしていって動画が送れるようになったというときには、テレビのコンテンツをそこで送るということは最も発想の貧困な貧しいビジネスモデルで、もっといろんなことが実はこのIPマルチキャストは可能性があるんだろうと。そっちの方に、今日は時間ないから申し上げませんけど、考えていった方がはるかに日本の経済にもそれから生活の利便性にもあるんだというふうに思います。  これから多分いろんな議論をされると思いますので、その辺もよく吟味していただきたいなと思いますが。
  139. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) まず、前半でおっしゃられた、いろんな議論がちょっとごっちゃになっているのではないかという点につきましては、実は私もそのとおりだと思います。本当にいろんな問題を今ある種出して、それをきっちりとだからこそ整理をしてもらいたいと思っております。短期的に著作権の一つの解釈の問題で済むものがあるのかないのか、より長期的な観点から制度全体を議論しなければいけないのか、それをやっぱりきっちりと整理してもらうのがこの懇談会一つの役割であると私は思っております。  今おっしゃったそのビジネスモデル、そのことについて、私も本当にいろんな可能性があると思います。先ほど一つのイメージとして申し上げたのは、余りに教科書的でつまらないイメージを私は申し上げたかもしれませんが、正にいろんな可能性があるからこそ自由にいろいろ競って出していただきたいと思うんです。これはもういろんなものが本当に出てくると思います。いわゆる今までの地上波でやっている放送と、IPマルチキャストが幾ら技術が進んだといっても、同じものであることはあり得ません。そういう中での、しかしいろんな可能性を私は競争状況の中で考えていただきたい。  委員の御指摘に関しては、私もそのとおりだと思っております。
  140. 澤雄二

    ○澤雄二君 一分弱、大臣、ございます。  論点整理の中で、空き周波帯の有効利用の促進、これ地上デジタルのことだと思いますが、専門家に言わせると空き周波帯ではなくて空きビットだとおっしゃっていますけれども、ここで、「空き部分を活用して通信サービス融合サービス等の新しいサービスを提供できるようにすべきではないか。」というのを、これは具体的に何を指していらっしゃいますか。
  141. 清水英雄

    政府参考人(清水英雄君) 先日の懇談会議論の中では、具体的に新しいサービスがどういうものという御指摘については委員の方からはございませんでした。  それから、御指摘のありました周波数の空き部分という表現は若干やはり違っておりまして、現在の周波数帯の中でデジタル化した場合に、いろんな使い方をしたときの余裕部分、そこの部分をどう使うか、それは合間的なものであったり、あるいは時間的なものであったり、あるいは周波数帯の幅の問題のところもあったりするところでございますが、ここのところを含めてもう一度議論をするというような結論になったものと承知しております。
  142. 澤雄二

    ○澤雄二君 そこのところは、大臣が考えていらっしゃることと総括が考えていらっしゃるところちょっと違うかなという、さっきの答弁からしたら感じましたが。  終わります。どうもありがとうございました。
  143. 吉川春子

    ○吉川春子君 共産党の吉川春子です。  政府は、二〇一一年七月二十四日にアナログ放送が終了してデジタル化への全面切替えを実現するとしています。情報通信審議会第二次中間報告に基づくロードマップが公表されて、九五%のエリアがカバーされるものの、残りの五%地域ではデジタル放送が届きません。  法律で期限を区切ったアナログ放送停波というやり方では、条件が不利益な地域が取り残されていくのではないかというおそれがありますが、いかがでしょうか。
  144. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 二〇一一年の段階地上波デジタル放送がアナログ放送のエリアを一〇〇%カバーできるのか、できない場合、取り残される場合があるのではないかという御質問だと思いますが、これ、是非とも二〇一一年までに全国でこの地デジを普及させるためには、デジタル中継局がこの目標時までに着実に整備されていくことが必要になります。  今年の四月十四日に、放送事業者にロードマップを改定していただいております。それによりますと、以前は、去年の十二月段階ではカバー率九〇%であったのが九五%に向上したと。このロードマップ、本年末ですね、そして二〇〇八年、二〇一〇年に見直されてまいります。アナログ時の一〇〇%カバーに向けまして是非完成度を高めていってもらいたいというふうに思っております。  我々総務省としましては、この開局時期の明示されていない中継局について、その地域事情を把握しました上で、自力の建設に向けて最大の努力を行うように事業者に対しては指導に努めたいと思います。同時に、IPマルチキャストや衛星など最新の技術を用いて、先ほどから御議論させていただいておりますけれども、多様な伝送路を用いてその選択肢を多様化する中で実現をしたいというふうに考えているわけでございます。  いずれにしても、地域の事情に応じたきめ細かい対応をしなければいけないと思います。そうすることによりまして、二〇一一年の地上デジタル全面移行という目標が確実に達成するように我々としては全力を尽くしたいと思っております。
  145. 吉川春子

    ○吉川春子君 整備責任をどこが担うかという点がまだ明確になっていないんじゃないかという感じがするんですけれども、地上デジタル化のためにNHKだけで四千億円、民間各局が八千億円、合わせて一兆二千億円という膨大な投資が必要だとマスコミも報じています。  北海道テレビでは大小百六十五か所の送信所設置を検討し、三分の一の六十か所の完成で九八%カバーできる、残る二%をカバーするのに百か所が必要だと。HTBの経常利益が二十億円、送信整備の費用が五十億円余、経営基盤が脆弱な地方局に過大な負担となってかぶさってきていると思います。  事業者の努力ではデジタル放送が届かない地域が出てくるんじゃないか、こういう点について大臣としてはいかがお考えでしょうか。
  146. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) 先ほど申し上げましたように、各地域によって非常にきめ細かくやはり対応を考えていかなければいけないと思っております。  今、北海道の事例、吉川委員ちょっと御紹介してくださいました。ちょっと北海道の資料手元にはございませんですけれども、どういう状況に今後なっていくか、ロードマップの進捗を見ながら我々としてやるべきことはしっかりと検討していかなければいけないと思っております。  ただ、いずれにしましても、いろんな、これもいろんな論者によって非常に多額の投資掛かるといういろんな議論がなされました。しかし、今の時点ではIPマルチキャストでありますとか衛星など、いわゆる通常の、これまでイメージされていた放送の電波以外の伝送路で多様な選択肢を考えることが可能であり、またそれが重要であるというようなことについては理解が進んでいるのではないかなというふうに思っております。  地域的には確かにばらつきがございます。開局時期の明示のない中継局、北海道では局数でいうと四百五十四そういうのあるというふうに聞いておりますので、そこはきめ細かくしっかりと見ていきたいというふうに思っております。
  147. 吉川春子

    ○吉川春子君 その上での話なんですけれども、デジタル放送での一〇〇%のエリアのカバーがされなくても、二〇一一年の七月が来れば、とにかくアナログ放送は打ち切ってしまうのかどうか。その点、お伺いします。
  148. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) これは、二〇一一年にデジタルに全面移行するというのは、これはe―Japan戦略日本のe―Japan戦略に明記された目標でございます。国全体として取り組むべき重要な課題であるというふうに位置付けています。この受信機の問題等々いろいろあろうかと思いますけれども、これに向けて、周知徹底も含めて、我々としてはこの目標を何とか実現したいというふうに考えております。
  149. 吉川春子

    ○吉川春子君 受信機の話はまたこの後伺いたいと思うんですけれども、同時にアナログ放送ももう少し続けるという選択肢はもう絶対にないと、とにかく期限が来たらもう打ち切るんだと、そういうことですか。それとも、一〇〇%カバーできたら、できるということを待って打ち切るというのか、その辺どっちが優先されるんですか。
  150. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) これは、我々としては是非ともこの目標を実現するぞという重要な目標でございます。
  151. 吉川春子

    ○吉川春子君 一〇〇%やるぞということですね。  それで、受信機の普及の問題なんですけれども、こっちの方がもう少し深刻なテーマかなというふうに思うんですけれども、野村総合研究所がデジタルテレビ普及の予測を行ったところによりますと、二〇一一年末でデジタルテレビを一台以上保有している世帯は総世帯の七七%、二〇一一年末でデジタルケーブルテレビ加入世帯は六百八十七万世帯であるために、四百五十万世帯テレビの視聴ができなくなると、こういう予測を発表しているんですけれども。デジタル放送を見るためには専用のチューナーを買うか、あるいはチューナー内蔵のテレビに買い換えるか、どっちかの必要があるわけですね。  デジタルテレビは、私は余り価格詳しくないんですけれども、報道によると一台二十万から三十万すると言われています。テレビが今一世帯に一台じゃなくて、一人に一台ぐらい普及しているというふうに聞いておりまして、これを買い換えるとすると四十万とか六十万とか大きな負担になるわけですよね。二〇一一年のアナログ放送打ち切りを知らない国民もまだ一定数、かなりの数いらっしゃるんじゃないかというふうに思いますけれども、こういうその受信機等の世帯普及率がどの段階になればアナログ放送が打ち切ることができるとお考えでしょうか。いや、どっちみち打ち切っちゃうということなんだとは思うんだけど、そうじゃなくて、やっぱり、どれぐらい普及すれば打ち切ってもいいかなというふうにお考えでしょうか。
  152. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) どれぐらいで打ち切るかという御質問ではございますが、是非そこはもうしっかりと普及をさせたいという思いでございます。  これ、この三月までに出荷台数一千万台に達したところでございます。今年、ワールドカップサッカーもうすぐまた始まりますけれども、そうしたイベントを機に更にこのテレビの普及が進むということを我々も期待しております。  それで、値段の問題、吉川委員御指摘でございまして、それは大変高価なものではないのかという御指摘なんですが、現在、このメーカー、販売店、国等関係者が連携協力をしておりまして、受信機の普及のための取組を積極的に進めています。その結果、今の状況でございますと、一インチ一万円を大幅に切る傾向が出ておりまして、一インチ五千円という目標を掲げる新規メーカーも登場しております。  これまあちょっと価格はいろいろでしょうから一律には言えませんが、先ほどちょっと係に聞いたところでは、十五インチで八万九千幾らというような、そういうデジタルテレビも売られているようでございます。また、十インチ台の今言った小型の地上デジタル放送受信機が販売されている。その意味では、受信機全体で見ると、価格の低廉化と、そして多様化というのは、これは着実に進んでいるというふうに思います。  一方では、もう一点、今委員御指摘になられたのはやはりその周知徹底だと思います。そのことをしっかりと知ってもらわなければいけないと思います。二〇一一年のアナログ停波に係るポスター、パンフレット等々配布しておりますが、販売されている、御承知のように、アナログ受信機に対する停波告知のシール、これ張り付けております。こういったことを軸に周知活動を進めております。また、放送事業者においてもそのような周知活動をしっかりとやっていただいているところでございます。  さらに、購入しやすい受信機の価格帯が実現されて、十分にデジタル受信機の普及が進むということを我々としては期待をしているところでございます。
  153. 吉川春子

    ○吉川春子君 二〇一一年の七月というのは、何か一大、大混乱が起こらないようにしなくてはならないというふうに強く思うわけですけれども、何か買換えを物すごく推進すると、テレビのね。買換えをまず政府としてはお勧めすると、それが経済効果を高めるのかどうか分かりませんけれども、しかし、安価な専用チューナーを設ければ画質はハイビジョンではないけれども今見ているアナログテレビでデジタル放送が見られるという点も、もっと徹底すべきではないかと思います。  高価なデジタルテレビへの買換えしかないということではないと思うんですね。一インチ一万円よりはもっと安くなりそうだと私も思うんですけれども、じゃ五千円になるかというと、そこはまた希望的観測過ぎると思います。やっぱり、安いチューナーで現在のアナログ受信テレビでも引き続き見ることは可能だという点での広報をもっともっと強める必要があると思いますが、その点いかがですか。
  154. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) それは御指摘のとおりであると思います。いわゆるチューナーですね、セットトップボックスと言うんだそうでありますけれども、そういうもので可能だというようなことも含めた周知、これはしっかりやらなければいけないと思っております。  一インチ五千円はちょっと楽観的ではないかというちょっと今御指摘ございましたが、先ほど言いましたように、今聞いている数字では、十五インチで八万九千円ということになりますと、五千円だと七万五千円ですね。したがって、そこにかなり近づいているというのも事実だと思うんですね。その意味では、低廉化については更にしっかりとやりたい。また、より簡便にチューナーで対応できるというようなことの周知についてもしっかりと努めたいと思っております。
  155. 吉川春子

    ○吉川春子君 テレビがもう今ないと生活できないような状態になっていますから、全く生きていく上に必要不可欠なものになっております。デジタルテレビの価格が安くなってだれでも買い換えられるという、そういう日本の社会だといいんですけれども、格差社会も一方では進行しているということがあります。  それで、最後の質問なんですけれども、今、生活保護世帯が百万世帯、非課税の高齢者世帯を含めると六百五十万世帯が生活困難というふうに言えるかなというふうに思うんですけれども、やっぱりこういう世帯に対するその特別な手だてが必要ではないのか。あるいは障害者の世帯、そういうものに対して、やっぱり政府としてテレビが引き続きデジタル化されても見られるような何らかの援助、それを是非考えていただきたいと思いますが、いかがですか。
  156. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) いろいろな御意見があるというふうには思うんですが、これはテレビでございます。そのデジタル放送を視聴するための受信機は、これやはり基本的には視聴者御自身に御購入をいただきたいというふうに思っております。そのために、相当の準備期間を置いた上でアナログ放送の受信からデジタル放送の受信に円滑に移行をするようなスケジュールを我々としては考えているわけでございます。  委員御指摘のように、大混乱するようなことになってはこれは絶対いけないと思います。周知の期間をしっかりと取っているということ。  それと、今年の三月時点でこのことがどの程度皆さんの間に浸透しているかという浸透度調査というのを総務省で行っております。従来のアナログテレビ放送だけに対応した受信機では将来視聴できなくなるということを認知しているかどうか。これ昨年の時点では、六六・四%の方が認知していると、逆に言うと三分の一の方は認知しておられなかったわけですが、これが今年の時点では八五・七%に向上しております。  そういう認知度は高まっているというふうに思いますが、更にこの認知度を高める、周知する、そしてできるだけ低廉な受信機が手に入れられるような環境をつくっていく、チューナーがアベイラブルだということも周知していく、そのことを徹底したいと思っております。
  157. 吉川春子

    ○吉川春子君 委員長、済みません、一言だけ。
  158. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) 吉川春子君、時間が来ておりますので。
  159. 吉川春子

    ○吉川春子君 時間が来ていますので。  やっぱり国策を国の都合で国民に押し付けるという側面がこれはあるわけですね。長い期間取っていると言っても、あと、もう二〇一一年といったら目の前じゃないですか。  そういうことを含めて、テレビ格差みたいのが生じないように強く要求して、終わります。
  160. 又市征治

    ○又市征治君 社民党の又市です。  七人目ぐらいになってきますと、大体ダブってばっかりおって大変質問しにくいな、たまに一番目ぐらいにさしてもらいたいもんだなと、こう思ったりもしないわけじゃ、長谷川さんがもっとそう思っているんじゃないかと思うんですが。  幾つか、ダブらない格好で、あるいは時には再確認ということを含めてやりたいと思います。  大臣や座長松原教授らは、利用者の立場に立つんだ、だから、どこでも、何を使ってもコンテンツを豊富に見られるようにすべきだ、こういうお考えのようであります。としますと、三つばかり私は問題が発生してくるんではないかな、こういう感じがいたします。それで、その点について解明をいただきたいと、こう思っております。  その一つは、出ておりますけれども、著作権処理の簡略化という名での著作権の軽視、切下げのおそれであります。  竹中大臣が、この懇談会だけではなくて、知的財産戦略本部においてもその意見が強まっているんではないか、こういうふうに聞いております。すると、簡略化に便乗して、どうしても買いたたきが強まるんではないかということなんですね。二次的放映に当たって著作権者への支払を少なくするということは、これ事業者側から見れば強い要求になってくる。当然そうなると思うんです。しかし、これが直ちに利用者にも安く提供できることになるかというと、大臣はよくウイン・ウインと、こうおっしゃる。余り横文字使ってもらうとよく分からないんで、日本語にすると、双方とも利益を得ると、こういうことの意味ぐらいなんだろうと思うんですが。それが理想だと言われるけれども、中間で事業者だけがもうかると、こういうことになってはならない、こう思うんですが、この著作権の正当な対価、保護について、大臣の見解をまずお伺いをしたいと。
  161. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) ちょっとその正当な対価がどのぐらいかというのをちょっと明確に申し上げるだけのものを私は持っておりませんですが、委員の御懸念としては、これが権利の切下げになってはいけないと、そこはもうそのとおりだと思います。  先ほども御答弁をさせていただいたつもりでありますけれども、そうした観点から、この懇談会でも実演家団体からヒアリングを行って、守らなければいけない権利はあります、だからそこはしっかりと意見を聴取しながら議論をしなければいけないと思っています。  委員の御指摘で今、買いたたきが進んで、一部の人だけが得するのではないかと、そうなってはならないと、これももうそのとおりだと思います。そうならないようにするためには、やはり健全な枠組みの中での健全な競争が行われていると、そうすることによって、一部の人だけが不当な利益を得るということは妨げられていくのだというふうに思います。  ただ、私の認識では、今著作権の問題というのはその値段、価格がどうこうというよりも、そもそも枠組みとして著作権、特に隣接権で枠組みがしっかりとできていないということに問題があろうかというふうに認識をしておりますので、買いたたき、価格の問題そのものは、私はむしろ非常に健全な枠組みがつくられる中でしっかりと定まっていくものであるというふうに考えております。
  162. 又市征治

    ○又市征治君 今お話出ましたように、著作権あるいは隣接権者の中には、強い交渉権を持った一握りの一流の人たちだけじゃ駄目だと、無名の立場の弱いライターであるとか出演者、演奏家などたくさんいるわけですから、こうした人々が、それが再使用されるに当たって、こうした人々の交渉権とか著作権とかというけれども実質は生活権だと思いますね、これを守らなければ本当の意味のコンテンツの向上、メディア文化の持続可能な発展はないのではないか、そういう立場で是非頑張っていただきたいと、こう思います。  そこで二つ目に、著作権を侵害する完全に違法な使用の問題が二つ目に心配される。  インターネット上などに移されると、利用の実態が極めて分散して分かりにくくなって、不正利用、ただ乗り、これが横行するのではないかという懸念が出てまいります。特に海外に電波で流出してしまえば、海賊版を防ぐ有効な技術はないんではないのか、こういう心配がまず一つですね。  それから、不正流出は事業者にとっては営業妨害になりますから、当然これは研究されていくんだろうと思いますが、この問題、今、政府と民間含めて、現段階で何か考えられておるとすればこれは伺っておきたい。  それから三つ目には、個別の著作権者が自分の作品の利用又は不正利用をチェックできるシステムも構築可能になるんだろうと思いますが、これはもう公的責任で整備すべきではないかというふうに思うんですけれども、この以上三つの点についてお答えいただきたいと思います。
  163. 竹田義行

    政府参考人(竹田義行君) お答えいたします。  まず、一点目のコンテンツの不正流出防止技術につきましては、例といたしまして、まず、受信端末に蓄積させずにコンテンツを配信するという、そういうストリーミングの技術、これがございます。それから二点目としては、コンテンツの複製を禁止したり、あるいは複製の回数を制限する、そういった著作権の管理の技術。それから、今度はコンテンツ自身が不正に複製されたコンテンツかどうかという判断を可能にします電子透かしの技術。こういったいろいろな技術がございまして、それぞれの目的に応じて現在活用されておりますし、こらからもこういった技術が導入されるものというふうに期待しております。  それから、個人の方が作成されましたコンテンツの利用状況の把握という点では、一般的にコンテンツをサーバーに蓄積して利用者の方がアクセスした場合には、これはこの利用に際しましてサーバー側に記録が残ることになっております。こういった一定の利用状況は把握することが可能でございます。  こういった技術をベースにしまして、例えば既に海外では、アメリカのグーグル社がグーグル・ビデオ・ストアといったようなものを設立しまして、個人が作成したコンテンツを販売していく仕組みが立ち上がってきてございます。  それからまた、国内におきましても、フジテレビが個人の制作した動画を配信するための合同会社を設立しておりまして、民間において個人の制作していただきましたコンテンツの流通の仕組みという構築の取組というのが開始されたところではないかなというふうに認識しております。  私ども総務省といたしましては、こうした不正流通防止技術の開発とか、あるいはこれを利用したサービスの動向といったものを見据えつつ、これらの技術の普及とか、あるいはその利用に関する啓発活動に取り組んで、適正なコンテンツの流通の促進といったことを図ってまいりたいというふうに考えてございます。
  164. 又市征治

    ○又市征治君 ありがとうございました。  それじゃ三番目に、この利用者、消費者の間で経済的能力によって利用の格差が生じる問題で、さっきから何人かからはテレビの問題が出ておりました。  利用者の立場に立ってと言われるわけですが、その利用者が所得が高くていろんなメディア機器を全部所有できて利用料を負担できるという場合と、そうではなくて、生活保護を受けている、あるいは低所得でなかなかそんなお金を払えないという、そういう人が現実に存在をするということがあるわけですね。金さえあればという深刻なこんな限定条件が付いてはならないんだろうと思います。  従来の放送というのは、基本的には、あまねくすべての人、家庭が低料金あるいは無料で利用できた。この点からすれば、放送通信の最大の違いというのは所得による格差が付くか付かないか、こういうことにあるわけで、この点は見逃すわけにいかないんではないかと、こういう気がするんです。  したがって、放送だけでなく通信も社会的共有財産ですから、一定の公共性というものを帯びているという理念に立脚するならば、政府は通信の公共性、低所得者等にも通信の利用をどのように保障するかというシビルミニマムの政策体系というものを構築していく必要がある。テレビを、デジタルテレビを何とかそれは援助しなさいよというのは、私もそう言いたい面があるけれども、これ通信になってくると物の見事にそうなるということがあるわけでありますね。  総務省や経済産業省から通信発展のために公共投資がなされているわけですけれども、その大半が設備投資など事業者サイドに投じられているわけですよね。通信自由化、商業化を市場原理のまま放置するんではなくて、こうした社会政策、金銭面も含めた通信の公平な利用の保障をどう築き上げていくか、こういう観点で、全く新しい観点が必要になってくるんだろうと思いますから、むしろゼロからの取組が必要なんだろうと思います。  この点について、大臣のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  165. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) デジタルな時代にいろんな利便性が高まると。しかし、そのデジタルな時代にいろんな格差が起こる可能性がある。正にデジタルディバイドに対して我々は常に目を向けていかなければいけないということだと思っております。  今、その意味では、我々は二〇一〇年にはブロードバンドゼロ地域をなくすということですから、ブロードバンドに対するアクセスについて、地域に偏らず多くの人にこれが可能である、当然その場合は合理的な安い料金で、低廉な料金でアクセスできなければ意味がありませんので、実はそうしたことがあるからこそしっかりと競争をしていただいて、料金の低廉化を実現するということが極めて重要な課題になっているというふうに認識をしております。  その意味では、一九八五年に電気通信事業の自由化が始まったわけですけれども、これまで二十年間その政策を、競争政策を通して、現在では世界有数の低廉な水準というのは、先ほどから御議論いただきましたように、正に政策の枠組みと事業者の努力によって実現をしてきたというふうに申し上げてよいのだろうと思います。  この過程で、規制緩和、競争促進、接続ルールの整備、様々ないろんな努力があったわけでございます。その意味では、正にこれからブロードバンドゼロ地域を、つくるに当たっても同様の競争政策の促進が私たちには求められているというふうに思います。そうすることによって、一層の料金の低廉化、そしてだれもが通信サービスに安心して利用できるように取り組んでいきたい。  実は、懇談会では今まで例えば電話のユニバーサルサービスという概念があったわけでございます。ユニバーサルなサービスだと、それをNTTが担うということであったわけですけれども、これがやっぱり今はブロードバンドサービスブロードバンドにアクセスできるということが一つの新しい基準になりつつあるのではないかという観点から、そのためにしっかりと競争政策を促進しようと、そのような議論がなされていると承知をしております。
  166. 又市征治

    ○又市征治君 もう一つ聞こうと思ったんですが、もう時間がなくなってしまって、私オーバーしたんじゃ長谷川さんに恐縮ですから、終わりたいと思います。  いずれにしても、大変大事な問題はらんでおるわけで、今日ここで議論したからといって何かすぐに解決するという問題でもありませんし、引き続き当総務委員会がいろんな意味で議論をしていく必要があるんだろうと思います。その中でまたいろいろとお尋ねしてまいりたいと思います。  終わります。
  167. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 国民新党の長谷川憲正でございます。  いつものとおり、私が最終質疑者ということでございますが、大臣にお尋ねを申し上げる前に、委員長一つ提案がございます。  と申しますのは、今日のこの集中審議、すこぶる私、楽しく聞かせていただきまして面白かったです。面白かったという言い方は失礼ですけれども、やはりこの通信放送の問題というのは議論すべき課題が一杯あるなということを痛切に感じた次第でありまして、今総務大臣の下で研究がなされているということについても敬意を表したいと思うわけであります。  そこで、私が特に関心を持ったのは鈴木委員の御質問と澤委員の御質問でございまして、すこぶる内容の豊富な私は勉強になる質問だったと思うんですが、ただ、違いがございます。澤委員の御質問は後で議事録をどなたが読んでもよく分かると思うんですが、鈴木委員の、御本人いなくなってしまいましたのでちょっと欠席裁判で申し訳ないんですが、御質問は恐らく情報通信に詳しい人でなければまず分からない。その代わり、情報通信に詳しい方であればアメリカ人であってもドイツ人であってもおおむね何を言っておられるのか分かるような議論でございました。  私は、この前、大臣御出席のときに、非常に最近この委員会では横文字が多くなってきたので人口に膾炙しているもの以外はできるだけ使わないようにしたらどうでしょうかというお願いを申し上げたことがありますが、やっぱり情報通信という性格上なかなか難しいんだろうと思うんですね。  そうなりますと、ここで御提案なんですけれども、こんなことができるかどうか、一度委員長に御検討いただきたいと思いますのは、用語集を、備考で結構でございますので、これはもう鈴木委員から直接お出しいただいて、その御発言の後に添付をしたらいかがであろうかと。今日はそんなことをつくづく感じた次第でございます。国会の議論でございますので、この前も申し上げたようにやっぱり各年齢、各層の皆さんによく御理解をいただくということが必要であろうと思うんで、中身のある議論だっただけに何かそんなことを工夫していただいたらいかがかと、冒頭お願いをしておきたいと思います。
  168. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) 用語の問題は非常に意識を共通させるという意味で重要だと思いますので、後刻理事会で皆さんと御相談の上、対処したいと思います。
  169. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 大変温かい御配慮で御礼を申し上げます。ありがとうございます。  そこで、質問に入りたいと思います。  私、今日午前中に参考人質疑がありました、竹中大臣の下で開かれている松原先生を座長とする懇談会の件で一、二お尋ねを申し上げたいと思います。  私、これだけ通信だか放送だかよく分からないというような技術の進歩に伴っての新しいサービスまた考え方が一杯出てきている。大変すばらしいことだと思うんですね。そういう技術的に新しく可能になるようなことを制度的に阻害するというのはやっぱり良くない。ですから、できるだけ早く識者の間で検討をしていただき、そしてできるような方向で物を考えるというのは大変結構なことだと基本的に思います。  その際に、ただ、いい効果だけでなくて、光と影とよく言われますけれども、影の部分、マイナスの効果も出てまいりますので、そういうものについても十分な配慮が必要だという意味で、関係するいろんな方の意見を聴取をして報告書をおまとめになってくださいねという注文を今日は松原先生にさせていただいたわけでございますけれども、これはどういう報告書が出てくるか分かりませんが料理をされるのは大臣でございますので、大臣がこれを政府の政策としてまとめていかれる段階では一つの工夫をやはりいただくというか、多方面の意見を反映したものになるように御工夫をいただきたい。まず、お願いを申し上げる次第でございます。  更に申し上げたいのは、この通信放送の問題、問題点が多岐にわたります。本当に今日の議論を聞いていてもいろんな議論が出ているわけでございますけれども、その中で一番急がれるのはやっぱり通信放送融合と言われている部分、何をもって融合と言うかという話もいろいろありますけれども、新しいサービスとか新しい技術を可能にするようなところ、これは一番急がれるところだと思いますので、これを急いでいただくのは当然なんですけれども、同時に、放送在り方とか通信産業の在り方、特にNHK在り方、民放の在り方NTT在り方というようなことに議論が及んでまいりますと、拡散するといいますか、八人の先生方であと幾らもない時間の中で全体の議論を詰めていくというのは非常に難しいことではないのかというふうに思うわけですね。  そこで、これは大臣へのお尋ねなんですけれども、報告書が取りまとまった段階で、必要なものはすぐ政策に反映するということになりましょうけれども、基本的な課題については、従来の方法であれば、例えば審議会というようなところで非常に広範な研究をするというようなことが行われているわけでありますけれども、今回の非常に重要な通信政策の検討に関しましては同じようなお考え、すなわち審議会に諮問するというようなお考えはございますでしょうか。
  170. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) まず、長谷川委員が前半でおっしゃられた多方面の意見を聞いて、そして責任者としてしっかりと工夫を持って取り組めということに関しましては、正にそのような思いで取り組んでまいりたいと思っております。  お尋ねの、これあくまで今議論をしていただいていますのは、私の私的な懇談会の中で、私自身の頭の整理のために、総務省自身の頭の整理のためにやっているわけです。そして、一つの大きな流れについて、だからこそ非常に幅広いことを集中的にやってもらっているわけですが、そこではいろんな問題の制度設計などもちろんできません。そういうことは全く考えておりません。必要なこと、例えばこういう問題について法律を見直さなきゃいけないのではないだろうかということがもし懇談会で示されたら、私自身の判断の上で、これは必要な審議会で制度設計を幅広くしていただくとか、当然そういう手続を取らなければいけないと思っております。  何のためにこれをやっているかというと、例えば審議会にいろいろ諮問をする場合も何を諮問するのかと、どういう時代認識の下で議論してくださいということを諮問するのかと、英語を使ったら怒られますが、アジェンダセッティングというか、問題の設定のために今の議論をしているというふうな認識をしておりますので、当然この中にはすぐ総務省の告知等々でやらなければいけないことも当然あるかもしれません。他省庁に投げなきゃいけないものもあるかもしれません。同時に、時間を掛けて法律の制度整備をやらなきゃいけないものもあると思います。しかるべく、当然のことながら透明なプロセスでやらせていただきたいと思っております。
  171. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 安心をいたしました。  世の中に多少その点に関しては誤解があるように思います。すなわち、竹中大臣の頭の中には既に進むべき方向みたいなものがあって、そして、この八人の先生方、先生にとっては非常に親しい方が中心だと思いますが、大臣にとって親しい方が中心だと思いますので、そういう方の検討の中で一定の方向を出して、後はどおっと走っていくんじゃないか、こういう懸念というのがやっぱり世の中にないわけではないというふうに思うんですね。私はそういう、これは誤解であるというのが今のお話で分かりましたので大変安心をいたしましたけれども、そういう誤解が生じるというのは、やっぱりこの問題が世の中全体に対して非常に影響の大きいものだからだろうと思います。  特に、私は、放送業界の方が大変な懸念を持っておられるように自分で感じております。つまり、通信放送融合という話が出たときに、先ほどの澤委員のお話じゃありませんけれども、放送というものが何か通信にのみ込まれてしまって、放送という特別な配慮をしなければいけない非常に世の中に対して影響力の大きいサービスでありますけれども、それが何かそのすべてが通信の中に埋没してしまうという形になるのではないか、もう例えば地方の地上波放送局なんというのは商売ができなくなっちゃうんじゃないかとか、そういうような懸念があるのではないかということを感じておりまして、その点についての大臣の御感想をお伺いしたいと思います。
  172. 竹中平蔵

    ○国務大臣(竹中平蔵君) この問題を取り上げた当初、実は放送の皆さんからそのような、私の知る範囲でも御指摘をいただいたことがございます。ただ、私の認識では、いやいやそうではないということを、国会の場でもそうですし、テレビ等々で、新聞等々でいろんな形で議論させていただいて、大分御理解いただけているのではないかなというふうには思いますが、しかし、委員の御指摘のような懸念、ないわけではないと思いますので、引き続きそこはしっかりと御説明をしたいと思います。  言うまでもありませんが、先ほどの御答弁でも述べさせていただきましたけれども、これ通信には通信の枠組みと規律があって、放送には放送の枠組みと規律、その役割があります。そこはあくまで通信通信であって放送放送であるわけです。にもかかわらず、その伝送路が正に融合というか、同質化しているからこそ新たな問題が今出てきているわけで、そこは通信通信放送放送と違った規律を持っているからこそこの議論を今しなければいけないと、そういう認識でおります。
  173. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 よく分かりました。  私があえてこんなことを今の時点でまた繰り返してお話を申し上げている趣旨は何かと申しますと、今日のお話の中でも何遍か出てまいりましたけれども、e―Japanの計画に従って二〇一〇年には日本の全世帯ブロードバンドを利用できるようにしようという目標が既にあるわけですね。そのために情報通信事業者の皆さんはインフラ整備に一生懸命努力をしておられる、資本投資をしておられる。そして、二〇一一年の地上デジタルへの移行を完成する、完了するという目標がありまして、今日も民放連の方がおいでになっていましたけれども、地方の放送局の皆さんも一生懸命投資の努力をしておられる。そういう中で、何か自分たちの存在がまないたの上にのって根本から何か変わってしまうような大きな議論になりそうだ、こういう不安というのはやっぱり投資意欲をそいでしまうし、またそれ以外にも、視聴者あるいは利用者に向けていいサービスをしようとか、いろいろ前向きの努力をしなければいけない、何かその意気をそいでしまうようなおそれがあるからと思ったからでございまして、大臣のお話を伺って安心をいたしました。  どうぞ大事な問題はどんどん急いでいただいて、大事な問題というか、急ぐべきものは急いでいただいて、そして、抜本的にいろいろ考えなければならない問題につきましては時間を掛けて検討もしていただく必要があると思います。例えば研究開発の話なんかも松原先生の懇談会議論されているように伺っておりますけれども、これについてもいろいろ、今日も出ておりましたけれども、議論がございます。やっぱり拙速という批判を浴びないように是非御努力をいただきたいものだというふうに考えております。  以上お願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  174. 世耕弘成

    委員長世耕弘成君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時二十七分散会