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2006-02-23 第164回国会 参議院 財政金融委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年二月二十三日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  二月二十一日     辞任         補欠選任      松岡  徹君     富岡由紀夫君      松下 新平君     尾立 源幸君      蓮   舫君     山本 孝史君  二月二十二日     辞任         補欠選任      富岡由紀夫君     水岡 俊一君  二月二十三日     辞任         補欠選任      水岡 俊一君     白  眞勲君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         池口 修次君     理 事                 岩井 國臣君                 田村耕太郎君                 中川 雅治君                 櫻井  充君                 峰崎 直樹君     委 員                 泉  信也君                 田浦  直君                 田中 直紀君                 鶴保 庸介君                 野上浩太郎君                 溝手 顕正君                 若林 正俊君                 尾立 源幸君                 大久保 勉君                 大塚 耕平君                 白  眞勲君                 平野 達男君                 広田  一君                 水岡 俊一君                 山本 孝史君                 荒木 清寛君                 山口那津男君                 大門実紀史君    国務大臣        財務大臣     谷垣 禎一君    副大臣        財務大臣    赤羽 一嘉君    事務局側        常任委員会専門        員        藤澤  進君    政府参考人        内閣計量分析        室長       齋藤  潤君        内閣経済社会        総合研究所国民        経済計算部長   飛田 史和君    参考人        日本銀行総裁   福井 俊彦君        日本銀行総裁  武藤 敏郎君        日本銀行理事   小林 英三君        日本銀行理事   白川 方明君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融調節に関する報告書に関する件  )     ─────────────
  2. 池口修次

    委員長池口修次君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、松岡徹君、松下新平君及び蓮舫君委員辞任され、その補欠として尾立源幸君、水岡俊一君及び山本孝史君が選任されました。     ─────────────
  3. 池口修次

    委員長池口修次君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として内閣計量分析室長齋藤潤君外一名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 池口修次

    委員長池口修次君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 池口修次

    委員長池口修次君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君外三名の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 池口修次

    委員長池口修次君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 池口修次

    委員長池口修次君) 財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 中川雅治

    中川雅治君 自由民主党の中川雅治でございます。  現在、日本銀行量的緩和政策をいつ解除するのかということが焦点になっておりまして、その時期をめぐって活発な議論あるいは意見が交わされていると、こういう状況だと思います。私は、金利機能という金融市場の役割を殺してしまう現在の量的緩和政策というのは異例であるということは確かでありまして、実体経済が正常に戻っていけば、金融政策を平時に戻すのは当然のことだと思います。しかしながら、現状日本経済が正常化したと判断してよいのかどうかということが問題となっていると思います。  解除に慎重な立場を取る方はいろいろ言っておりますけれども一つ消費者物価消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%以上の状況が続いていると、今はまあ続いているわけですけれども、そういっても現状程度では経済デフレ克服軌道に乗っているというふうには言えないんではないか。やはり、デフレ脱却軌道から外れないことが確認できるまでは量的緩和を継続すべきではないかというふうに言っていると思います。  先ほど発表されましたGDPデフレーターは前年同月比一・六%低下しているわけでありますし、それから、もう一つ日本銀行判断基準としている消費者物価指数につきましては、八月に基準改定が予定されているわけであります。指数を構成する品目やそのウエートが最近の消費の実態に即して見直されることになっているわけでありまして、消費者物価指数には上方バイアスがあるというようなことも言われておりますし、現在のようにわずかにプラスになったというだけでデフレ脱却がもう軌道に乗ったというようなことにならないんじゃないかと。八月の基準改定計算をし直してみたらマイナスだったと、あるいはほとんどプラスになっていなかったというようなことにもなりかねないんではないかと。〇・何%というようなわずかな変動に一喜一憂しないで、消費者物価上昇率がしっかりとプラスになるということを確認してからでも遅くはないんじゃないかというような意見が出ているわけであります。  そこで、いわゆる量的緩和政策解除につきまして、これはもう異例な事態なんでもう一刻も早く解除した方がいいという意見と、それから、もう少し、もうしばらく継続すべきではないかという議論、いろいろ今交わされているというふうに思うわけでありますが、まず日本銀行基本的スタンスについてお伺いしたいと思います。
  9. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 福井でございます。  本日、御審議のほど、よろしくどうぞお願いを申し上げます。  まず、ただいまのお尋ねの件でございますが、御指摘のとおり、日本銀行は、現在の量的緩和政策、これは日本経済が危機的な状況に陥るのを緊急避難的に対応する、そのために臨時異例措置として導入した金融政策枠組みでございます。臨時異例でございますので、本来ならばできるだけ早くこれは解消すると、こういうことが基本になると思いますけれども日本銀行では、日本経済が危機的な対応を脱して、なおかつ望ましい方向に向かって正常な動きをし始めるまでに相当これは時間を課す必要があると、こういうふうなことを当初から想定いたしまして、消費者物価指数生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまでこれを継続すると、こういう決意をし、かつ国民の皆様と固くコミットメントをして今日までやってきたということでございます。  したがいまして、緊急避難的措置ではございましたけれども、既に五年近くと、大変長い間これを実行してきております。なおかつ、消費者物価指数が前年比上昇率が安定的にゼロ%以上になった状態というのは、この五年前の時点から考えましても、恐らく同時に経済がかなり正常な状況になっている段階であろうと、当然そういう想定の下にこういう時期的な目標を置いたわけでございます。  現在の時点におきましては、昨日も政府におかれまして経済見通しの上方改定されたと。私どもも、情勢認識、全く同じものを持っておりますけれども日本経済は着実に回復過程に入っていると、この先の見通しにつきましても、私どもは引き続き息の長い景気回復を続けるであろうという点について確信を持っております。  昨年の十月の消費者物価指数以降、消費者物価指数はごくわずか、ゼロ%以上という状況に到達してきているという状況でございますが、今後とも日本銀行におきましては、今申し上げましたような経済物価情勢全般を更に詳しく点検しました上で、この物価指数が約束の条件を満たしたものとなったかどうか、慎重かつ冷静に判断をしていくと、こういう所存でございます。重ねて申し上げますけれども消費者物価指数の背後にある経済情勢を十分点検し、これを判断の基礎とするということが重要だというふうに考えております。  そう申し上げました上で、今後公表されます今年一月以降の消費者物価指数、これにつきましては比較的はっきりとしたプラスになるであろうというふうに見込まれております。そうしたことから、消費者物価指数生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となったかどうかの判断がこれから先は従来にも増してより重要になってきているというふうに考えております。
  10. 中川雅治

    中川雅治君 量的緩和政策解除につきましては、マーケットは三月あるいは四月というような観測がかなり出ておりまして、そういう意味では三月か四月に量的緩和政策解除があるんではないかということを織り込んでいるという見方も出ているわけであります。  しかしながら、この解除段階的に進むのか、あるいは一挙に、一挙といっても、もちろん三十五、六兆から一挙に十兆まですとんと落ちるというようなことはもちろんないと思いますけれども、このペースが相当マーケット予想より速いといいますか、その辺が非常にまだ見方が割れているといいますか、定まっていないというふうに思います。  それから、解除後にゼロ金利がどの程度続くのか、そのゼロ金利の後はどういうふうな短期金利水準になっていくのか、その辺のところは市場はまだまだ何も織り込んでないというふうに思います。今、マーケットはやはり日本銀行金融政策というものを信頼しているというふうに思うんですね。まあ、マーケット予想といいますか、まだもちろん織り込んではいないんですけれども、しかし日本銀行マーケットに対して極端なことはするはずはないと、こういう信頼の下に今進んでいるというふうに思うわけであります。  しかし、ここのところが非常に重要でありまして、金融政策については透明性柔軟性バランスということが言われております。日本銀行もそうおっしゃっているようであります。そういうことを考えますと、この量的緩和政策解除タイミング、それからどのようなステップでそれを行うのか、そして解除後の金融政策についてゼロ金利状態をどういう状態になるまで続けるのか、その後どうするのかと、こういった点について、やはり透明性を重視して市場予見可能性を与える配慮をしながら対応していかないと、市場混乱をし、長期金利にも響いて経済全体に不測影響を与えかねないというふうに思うわけであります。  そういう意味で、この辺の解除タイミングについての御答弁は今ありましたけれども、もう少し先を見通しての日本銀行スタンス、今、市場に対して信頼性を非常に与えているという状況だと思いますので、それを踏まえて、日本銀行市場に対する信頼を裏切らないようにきちんと対応すると、こういうメッセージを与えていただければというふうに思います。
  11. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) ただいま御指摘のとおり、現在、日本金融市場におきましては、量的緩和政策枠組み変更修正、そのことにつきましてはある程度織り込みが進んでいると。一方、その後の金利プロセスについては全くオープン状況になっていると。現在の状況に即して考えれば、マーケットの消化の仕方は私ども考えている方向性とかなり平仄の合った状況になっているというふうに私ども自身考えております。  それで、枠組み変更タイミングは別の話といたしまして、ある時期、枠組み変更を行うということになった場合、まず金融調節操作目標をこれまでの量、つまり日銀当座預金というものから市場金利に置き換えると、オーバーナイト金利にその操作目標を置き換えるということでございます。そして、それと同時に、これまで多額に積んでいただいております当座預金残高準備預金制度上の所要準備額に向けて次第に削減していくと、これが最初のステップでございます。  当座預金残高削減に当たりましては、量的緩和政策が五年間続いたという状況の下で、金融機関が長期間にわたって多額当座預金残高を前提としながら資金繰りをしてきたと、これがかなり慣れになっているという状況を踏まえまして、この流動性残高を減らしていく過程金融市場混乱が起こらないように、十分日々点検しながら慎重にこれを進めていく必要があるというふうに考えています。  単に慣れの問題といいますよりも、市場構造そのものが過去五年間のうちに非常に変わっております。かつて都市銀行と言われた銀行が、合併、再編で今少数のメガバンクに変わっている。かつて資金の取り手であった銀行が出し手に変わっている。あるいはリスク削減観点からRTGSといいまして、即時グロス決済というふうな先進的な決済手法市場において取り入れられていると。これらは日中流動性の手当ての必要性を以前に比べると格段に高めているわけでありますけれども、そうしたことに、所要準備額相応市場残高当座預金残高の下で資金繰りが円滑に行われるかどうかというのは、これから量的緩和枠組み修正過程でテストを重ねながらみんなで確認していくことでございます。そこをきちんと確認しながら、しかし、市場参加者には早くそうした新しい市場条件に慣れていただくという意味ではこれを促しながら、そのプロセスを進めていきたいというふうに思っております。  このプロセス、つまり多額流動性削減していくプロセスにおきましては、引き続き所要準備を上回る当座預金残高が存続し続けるということでありますので、ごく短い金利は、多少の振れはあるにいたしましても基本的にはゼロということになると思います。  そして、そのプロセスを経まして、その後の短期金利水準、時間的経路、これにつきましては、市場は全く織り込んでいない。私どもも、その点につきましては正にその後の金融経済情勢金融市場状況次第ということでありまして、私ども自身も現在は全くオープンでございます。  ただ、その先とも経済バランスの取れた持続的な成長過程をたどる中にあっても、物価上昇の圧力というものが抑制された状況として続くというふうに判断されるのであれば、それが望ましいケースでありますが、そういう望ましいケースが続くのであれば、極めて緩和的な金融環境を提供し続けることができるであろうというふうに思っております。  その点につきましては、既に昨年十月の日本銀行展望レポートの中でマーケットにもきちんとお示ししておりまして、その範囲のことは市場も十分御承知おきのことだということでございます。
  12. 中川雅治

    中川雅治君 ありがとうございます。  金融政策について柔軟性透明性ということが言われているわけでありますが、やはり金融政策変更するということになりますと、私はやっぱり透明性というものを重視しなければならない、まあ多少その柔軟性犠牲にしても透明性を重視しないと市場混乱をする、不測影響を与えてしまうというふうに思うわけです。  長期金利がここのところずっと安定しておりますが、それもやはり国債管理政策が非常に透明性を高めて市場予見可能性を与えているといいますか、マーケットフレンドリーに行われているということだと思うんですね。  最近の国債管理政策は、国債発行計画を前年に概略示すと、これは予算案の決定と同時に示す。ですから、もう大体一年間の大まかなスケジュールなり発行量というものはマーケットがそこでもう知るわけであります。それも、その前の段階で、マーケット関係者と十分に協議といいますか状況を聞いて、要望を聞いてそういった計画に反映をしている。具体的な入札スケジュールにいたしましても、三か月先まで事前に公表する。発行予定額入札一週間前に公表するということで、発行当局の手を縛って柔軟性犠牲にしても透明性を高めて進んでいるというふうに思うわけであります。これが非常に私はうまくいっているんではないか、うまくいっている原因ではないかというふうに思っております。  そういう意味では、これから金融政策が変わっていくということであれば、やはりきちんと透明性の方を重視すべきだと私は思うんですね。まあ、日本銀行は今、総裁の御答弁でもその辺はオープンだというようなお話もございました。ですけど、やはり自由度を確保したいという気持ちは当然おありでしょうけれども、やはり慎重な判断をされた上できちんと予見可能性を与えるという配慮をしていくということが大事だと思うのであります。  この辺、武藤総裁は、国債管理政策も御担当されていたわけでありますので、その辺よくお分かりなんではないかと思うんですが、柔軟性透明性バランスについてどうお考えか、お聞きしたいと思います。
  13. 武藤敏郎

    参考人武藤敏郎君) 現在のこの量的緩和政策そのもの先例のないものであると同時に、この枠組み変更先例のないものであるという意味で、金融市場におきまして経済物価情勢に応じた価格形成が円滑に行われると、そのように配慮することが極めて重要であるというのは御指摘のとおりであります。  今お話のありました長期金利につきまして、経済物価に応じて安定的に形成されていくということは、これは国債管理政策財務省の方においてきめ細かくやっていただいているわけでございますけれども日本銀行としても強い関心を持っているところでございます。  金融政策透明性向上というお話がありましたが、日本銀行はいわゆる展望レポートというのを春と秋、年二回公表しておりまして、この透明性向上に積極的に取り組んでおります。金融経済情勢に関します判断、あるいは金融政策運営に関する基本的な考え方というものをこの展望レポートなどを通じまして丁寧に説明していくと、それによって期待安定化に努めると、その結果、その情勢変化に応じて適切かつ機動的に対応していくことができると、そのように考えているわけでございまして、この透明性向上につきましてはこれからも真剣に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  14. 中川雅治

    中川雅治君 ありがとうございます。  景気回復基調がはっきりしてきたこの段階で私が一番心配しておりますのは長期金利の動向であります。  全国の銀行が保有する国債残高は昨年末で九十六兆円余りとなっているわけでありまして、社債とかあるいは地方債まで合わせますと百六十兆円を超えているわけであります。仮に金利が一%上昇しますと、銀行保有債券は四・五兆円の評価損が発生するとの試算もありまして、これはBIS規制上の自己資本の約一割にも相当する金額であります。もちろん、金融機関はいろんな形でヘッジをしているでしょうから、単純にそういった試算どおり状況になるとは限りませんけれども、しかし、金利が急激に上昇するということになりますともう大変大きな影響を受けます。金融機関は大きな損失を被りまして、せっかく不良債権処理を進めてきた金融機関リスクテーク能力が再び低下し、日本経済には大きな打撃となる可能性もあります。  長期金利というのは、いったん上昇しますと一斉に債券の売りが出て更に金利上昇させるというスパイラル的な金利上昇が発生するおそれもあるわけであります。長期金利基本的にはインフレ期待があると上昇します。ですから、デフレ脱却は当然目指さなくてはなりませんけれども一定レベルを超えたインフレというのは、これは絶対に避けなければならないというのが私の意見であります。  インフレになれば、名目の税収も増えるし、五百三十兆円も残高のある国債実質価値も減るし、給与も地価も上がるということで、暗いデフレ時代よりインフレの方が明るいと考える人もいるでしょう。しかし、もうこれは昔の非常に大変なインフレ時代の経験をもう忘れて、デフレ時代が続いていたものですから、何かインフレの方がいいと、こういうふうに思う人がいるのではないかと思うのであります。財政当局インフレへの誘惑に駆られるときもあるのではないかと思うんですね。しかしながら、インフレになれば、もっとインフレになるのではないかという期待が生じまして、そうなれば長期金利が上がる。長期金利はともすれば急上昇しかねない。そうなりますと、明るい兆しの見えてきた日本経済は再び沈没してしまう可能性があります。国債利払い負担上昇財政も更に悪化してしまう、こういうことになると思います。  ですから、日本銀行が将来の急なインフレの芽を摘むために適切な金融政策を取るということであれば、これは長期金利には良い影響を与えると思っております。日本銀行長期金利は操作できないという立場でしょうけれども短期金利長期金利はつながっているわけでありまして、いろんな形で日本銀行金融政策というものが非常に大きな影響を与えると思うわけであります。そういうことで、常にやはり日本銀行短期金利のみならず長期金利にも目配せをして金融政策運営すべきであるというふうに考えております。  日本銀行長期金利に対する御認識をお伺いしたいと思います。
  15. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 財政再建との関係で、今後長期金利在り方が非常に重要だというお考えの方々に比べて、日本銀行長期金利に対して比較的冷淡ではないかというふうなお言葉をいただくことがしばしばありまして、私どもは大変心外に思っているところでございます。日本銀行も今後の長期金利在り方に関しましては、ただいま武藤総裁が答えましたとおり、大変強い関心を持っております。  と申しますのも、これから先長い将来にわたる日本経済にとって重要なことが二つあると日本銀行では思っているからであります。一つ企業イノベーションを促して日本経済成長実力を上げていく、実質潜在成長能力を上げていくと、もう一つ財政再建を確実に果たしていくと、この大きな目標があるというふうに思います。  財政再建は、やはり日本経済成長実力が上がって、かつそれが現実の成長率として発揮されるということによって最も確実に達成されていく道に通ずると、こういうふうに考えますので、この二つの道は常につながっていると、こういうふうに考えています。  日本経済実質成長率実質潜在成長能力というものを上げていくためには、企業イノベーションを施して長期的な投資を絶えず行っていってもらわなきゃならないと。企業が長期的な投資を行っていくためには、長期金利が安定していませんとその投資を行うことが難しくなるという関係にございます。そういう観点から、日本銀行も今後の金融政策運営に当たりましては、長期金利経済とか物価状況に見合って安定的に形成されていくようにということを非常に重要な関心事項として注意しながら運営していかなければならないというふうに思っています。  長期金利につきましては、そういうふうに経済全体の運営よろしきを得て安定的に形成されるということが大事ですけれども、ともすればこの経済物価状況に見合った金利水準以上にプレミアムが付く可能性があります。委員指摘のとおりでございます。特に、インフレ懸念というものが市場あるいは経済のどこかでにおってまいりますと、必ず長期金利にはリスクプレミアムが付き、金利の動きも不安定になるということになると思います。そういう意味では、日本銀行といたしましては、物価の安定を基礎として、持続的な経済成長、経済が余り大きな波を打たないような安定的な運行ができるように健全な金融政策に長期にわたり努力をしていきたいと、そういう固い決意を持っている次第でございます。
  16. 中川雅治

    中川雅治君 ありがとうございます。  それで、長期金利との関係で、一つ、長期国債の買い切りオペの額が今後どうなるかということが非常に重要であり、市場関心事だと思うんですね。仮に減額された場合は市場への影響は大きいと思います。日本銀行国債の買入れ額について、基本的に国債保有残高が日銀券発行残高を上回らないように運用しているというふうに承知をしているわけでありますが、当面今の買入れペースを維持しても、日本銀行の場合には国債の償還額の方が新たな買入れ額より多いというようなことで、日銀の国債保有残高は減少する見込みになっていると聞いているわけであります。  したがって、今のこういう段階国債買入れ額を減少させる必要性はないはずでありまして、買入れ額は維持していただきたいと私は思っておりますが、この点についてお伺いしたいと思います。
  17. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  長期国債の買い切りオペにつきましては、現在の量的緩和政策の下では円滑な資金供給を実現する上で必要というふうに判断される場合に実施してまいりました。また、その際、委員指摘のとおり、金融市場調節柔軟性を確保する観点から、銀行券発行残高を上限として運営してまいりました。日本銀行として、こうした考え方を量的緩和政策採用時に対外的にも発表し、透明性を確保してまいりました。  長期国債の買入れを含めまして、量的緩和解除後の金融市場調節運営につきましては、その時点におきます短期オペによる資金供給の状況など、金融調節の対応力次第でございまして、そうした点についての点検を踏まえました上で政策委員会において適切に判断していきたいというふうに思っております。
  18. 中川雅治

    中川雅治君 今、総裁の方からも、インフレ懸念があると、長期金利がリスクプレミアムが乗って上昇するという、そういったお話がございました。  政府・与党の中には、日銀が達成すべき物価上昇率を示すインフレ目標インフレターゲットを導入すべきであるという意見も強くあるわけであります。目標値を掲げることで期待インフレ率が安定する効果があるのであれば、長期金利を安定させることにつながるという面もあるわけですから、私もそういうことであれば反対するものではないんですけれども、このインフレ目標というのが、インフレ率を抑制する目的ではなくて、ここまではインフレに持っていくんだということでありますと、この数字をもっと高めようと、こういう政治的意図が働くこともあると思うわけです。そうなりますと、市場期待インフレ率を更に高めて長期金利が跳ね上がっていくということにもなりかねないので、日本ではどうなのかなと。諸外国の中には、むしろインフレ率をここまでは抑えましょうということでインフレ目標が導入されている国もあるというように理解をしているわけですけれども日本の今の現状は逆になってしまう可能性がありますので、どうなのかなというふうに思うわけであります。  ただし、中央銀行金融政策という政策を担当する一部局でありまして、公的部門であることは当然のことですから、政府と中央銀行が行う政策には整合性がなければ実体経済市場混乱する可能性があるわけであります。これまではデフレ脱却という政策目標政府もそれから日本銀行も共有してきたと、共同歩調を取ってきたというふうに思うわけでありますが、ここに来て、デフレ脱却判断、そしてその後の政策運営に関しては政府部内を含めてまだ十分に調整できていないように思うわけであります。  そんな状況でございますが、日本銀行の方はこのインフレ目標を設定することを含めて今後の政策運営についてどうお考えなのか、総裁から御答弁いただきたいと思います。
  19. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 今の時点日本銀行から明確に申し上げられますことは、今後とも金融政策透明性を更に高めていく努力を行っていくということでございます。金融政策透明性を高めることは、金融政策金融市場金融機関行動を通じて効果を発揮するものだということを考えますと、政策の有効性を高める上に欠かせない、それから中央銀行として説明責任を果たしていく上でも欠かせない重要な課題だと考えるからでございます。  インフレーションターゲティングというのは金融政策透明性を高めるための一つ枠組みないし道具立てであるということは十分認識しておりまして、今後とも選択肢の一つとしては十分検討していかなければならないと思うところでございます。  量的緩和政策枠組み修正後の新しい金融政策運営の中で透明性の打ち出し方をどうするか、日本銀行としてどういうメッセージを出せばいいのか、現在政策委員会のメンバーそれぞれに持てる知識を活用しながら頭をフル回転さしているという状況でございまして、まだ意見集約をするという段階に入っておりません。いずれ、これはきちんと政策委員会の場で討議を尽くして、きっと国民の皆様方から前向きの印象を持って受け止められる新しい枠組みを出したいというふうに思っているところでございます。  改めて、インフレーションターゲティングでございますけれども、諸外国の事例につきましても私どもつぶさに勉強、研究をいたしております。委員指摘のとおり、諸外国におきましては、ほとんどすべてと言っていいと思いますが、インフレーションターゲティングと、そのたぐいのことを採用している中央銀行のほとんどすべてはインフレをいかに抑えるかという方向でこれを使っている。インフレ率をここまで引き上げるという感じで使っている中央銀行はほとんどないというのが事実でございます。  それから、世界の中央銀行を、インフレーションターゲティングを採用している中央銀行とそうでない中央銀行というふうに白黒二分できるかというと、必ずしもそうではないように思います。インフレーションターゲティングと言われているものの中でも、採用している国ごとにかなり仕組みが違う。それから、似たような仕組みを採用していても、実際の金融政策運営の仕方はかなり違うと。一方、インフレーションターゲティングないしはその類似のものを全く採用していない中央銀行におきましても、透明性向上のためには相当な努力をして、その国の実情に合うフレームワークをやっぱりきちんとつくり出しているということでございます。  そういうわけでございますので、諸外国の例を勉強すれば勉強するほど、日本としては、今後の日本の実情に合った透明性枠組みというものをやっぱりつくり出していく責任が我々はあると。単に、外国のテキストブックの丸写しで、これが宿題の答えだというのでは、やはり我々の努力がまだ足りないということになりかねないというふうに思って勉強を続けております。
  20. 中川雅治

    中川雅治君 ありがとうございます。私も全くそのように思うわけであります。  日本銀行の独立性ということが言われますが、これはやはり専門家としての日本銀行に対して市場信頼をしていくと、こういう意味日本銀行金融政策の手段について、もちろん今総裁自らおっしゃっていますように、透明性を高めていくということは当然でありますが、やはり独立性をきちんと認めていかなければならないと思うわけですが、この言わば政策目標につきましては政府と与党と、もう政治も含めて、やはり共有していくということが私は必要だと思います。この辺のことにつきましては、政府部内、さらには政治の場におきましても議論をして認識を共通にしていくということが必要だというふうに思います。今後の議論を更に深めていくという必要があるということを痛感しております。  それでは、最後に一点、もう既に総裁答弁でおっしゃっていたわけですが、長い間この金融緩和政策が取られていたので、言わば日々の資金繰り銀行自ら緊張感を持って見て、そして短期の資金を取り入れていくという、そういう言わば必要性がなかったということで、そうしたノウハウを持っているディーラーあるいは担当者が非常にもう今減っちゃっているというようなことも言われているわけであります。  また、いわゆる短期金融市場、コールの市場、それからTB、FBの市場、CPや手形の市場と、いろんなこういった短期金融市場をこれからきちんと立て直していかなきゃいけないと思います。それから、各金融機関、これはもう大手だけじゃなくてもう中小、もうすべてですね、本当に日々の資金繰り、万が一、今まで日本銀行の方から資金が供給されるので漫然と考えていたところが、資金ショートしてしまったというようなことになったらもう大変なことなんであります。  こうした担当者の教育といいますか研修といいますか、育てていくというか、そういったことも含めて、市場を立て直すということも含めて、日本銀行の御見解をお伺いしたいと思います。
  21. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  日本銀行による潤沢な資金供給の下で金融機関日本銀行のオペに対する依存度を強めてまいりまして、結果としまして、短期金融市場における取引が大幅に減少しております。  こうした状況の下で、金融機関におきましては、委員指摘のとおり資金部門に対するディーラーの配置を含めまして、経営資源の配分が小さくなっておるということでございます。もっとも足下では、市場参加者の間で量的緩和政策枠組み変更の時期が近づいているという見方が強まる中で、資金部門に対する人員配置を増強しましたり、あるいは練習のために資金調達事務の手順や、あるいは市場で調達可能な金額を確認する、そうした動きが広がっておるということでございます。日本銀行としましては、市場機能の回復に向けましたこうした市場参加者の自主的な準備の動きというのは大変望ましいというふうに思っております。  なお、量的緩和政策枠組み変更後の日本銀行当座預金残高削減に当たりましては、量的緩和政策の下で金融機関が長期間にわたって多額当座預金残高を前提とした資金繰りを行ってきたということを踏まえまして、短期金融市場状況を十分に点検しながらこれを行っていく必要があるというふうに考えております。
  22. 中川雅治

    中川雅治君 ありがとうございました。
  23. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 今、中川委員の方から的確な質問と、非常に私が思いますに明快なお答えがありましたんで、そこを補足する形で幾つか質問をさせていただきたいと思います。  私自身も、やっぱり量的緩和解除というのはしっかりもうやれる時期に来ているんじゃないかと思うわけです。やっぱり量的緩和解除をやることによって、イールドカーブ、すなわちタームの異なる金利というのが本来の意味を取り戻すことになりますんで、日銀の政策の柔軟性が高まって、物価や景気に対していい影響を与えると思うんですね。しかし、物事にはやっぱりメリットとデメリットがあると思うんですね。  このデメリット、量的緩和解除のデメリットに関しましてちょっとお話総裁の方からお伺いしたいんですけど、まあもちろん、解除するぞ解除するぞということに対する市場の反応が収まった後、特にこのメッセージ効果、この後、本来、本質的にどのようなデメリットが考えられるかどうか、ちょっと総裁のお考えをお聞きしたいと思います。
  24. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 委員御承知のとおり、量的緩和政策枠組みというのは、分かりやすく簡単に言いますと、本体はゼロ金利。それに流動性を、たくさん供給するという量が上乗せされていることと、そうした金融調節のやり方を消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまで続けますというコミットメントと、量とコミットメントがゼロ金利という本体の上に上乗せされていると。  量というものは、何といいますか、金利の低位安定ということをいやが上にも保障する文鎮のようなものであるし、金融機関が信用不安のリスクに直面したときに、金融市場の中でどこかの金融機関流動性を取り漏れることによって不安が増幅するということを徹底的に防ぐと、こういう効果を持っておりますし、それからコミットメントの方は、単にオーバーナイト金利だけではなくて、より長い期間の金利についても下押し圧力を持つと、イールドカーブをそういう意味では押し下げると。悪く言えば、ディストーションをあえて政策的に起こす、そのことによって緩和効果を強め信用不安を防ぐ、こういう効果を現に強く発揮してきたわけでございます。  しかし、現状におきましては、経済がかなり正常なリズムで回転するようになり、消費者物価指数も辛うじてゼロ%から上に顔を出し始めてきたと、こういう状況になってまいりましたし、昨年の四月からはペイオフ全面解禁ということも極めて落ち着いた雰囲気の中に行われているということでございますので、言わばイールドカーブの姿をゆがめてまでこういう異例な政策をいつまでも続ける必要性というものはかなり薄れてきた。別の言い方をすれば、ゼロ金利のそのものは効果として持ち続けるということで取りあえずのところは十分ではないかという状況に次第に近づいてきているということだと思います。  量的緩和枠組み修正に当たっては、しかしながら、やはり本当に解除条件として私どもがお示ししてきました消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になったかどうかということを正確に見極める必要がある。経済情勢判断というものを大きく下敷きにしながらその判断を冷静に見極める必要がある。何か、我々は異例措置だから早く取りたいという気持ちだけが先行してこの決断を行ってはならないと。そういったリスクはあると思いますけれども、そのリスクをきちんと避けて、我々が確信を持って正当な判断に至ったならば、その後はイールドカーブが正常化する方向に向かいますので、今後は通常の金利政策の枠組みの中で情勢判断にマッチする形で慎重な金利政策を運営していけば、むしろ委員のおっしゃる弊害の部分は少なくなってくるんではないかというふうに考えております。
  25. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 私がなぜここをお聞きしたかったかといいますと、やっぱり緩和解除に関しまして、私が思うに、誤解に基づく議論というのが結構なされているんじゃないかなと思うわけです。株価にしましても為替にしましても債券相場にしましても、企業経営、財政、ちょっとまあ正しい議論じゃないなというのが展開されているんですけれども、やっぱりそこで一番重要になってくるのが、先ほど中川委員もお聞きになった透明性柔軟性バランスというところだと思うんですね。  特に、総裁は一月二十日の記者会見で、市場参加者金融政策の先行きを読みやすいようにするための新たな目安を示していくと述べられていますけど、この目安ですね、私は金利が一番の目安だと思うんですけど、それ以外に何か、これ、こう理解していいのか、それともそれ以外に何か考えられているのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  26. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 量的緩和政策枠組みの下での透明性確保の一番の中心になっておりましたのは、CPIが安定的にゼロ%以上になるまで続けるというコミットメントでございます。これは日本銀行が自らの手足を完全に縛るということによって透明性を逆に明らかにしていたというやり方でございますが、委員指摘のとおり、量的枠組みを脱却した後は金利操作目標として通常の金融政策を行うということでありますので、金利をして多く物を語らせなければならないと。我々は市場参加者との間でコミュニケーションはますます濃密にやっていくということでありますけれども、単に、何といいますか、表現でもってコミュニケートするというよりは、金利を仲介としてコミュニケートしていくというふうに本質は変わってくると思います。  私どもが、私どもの持てる経済物価についての情勢判断見通しと、これは表現してまいりますけれども、そのことと、市場参加者が自ら持っておられる経済物価への見通し判断と、これが自然にすり合わせが行われて市場金利金利として我々に今度は語り掛けてくると、我々はそれに対して金融調節というアクションをもって逆に働き返し、そういう、何といいますか、表現と表現の交換、プラス金利を通ずるアクションの交換によって会話はより濃密に行われていくと、こんな形になるわけでして、そういう意味では、委員のおっしゃるとおり、金利が重要なコミュニケーションツールになってくるというふうに考えます。
  27. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 最後にちょっと、私は今のお答えで十分満足しておるんですが、非常に明快だと思うんですが、やっぱり自民党内にはいろんな議論がありまして、特にゼロ金利解除のときのああいう問題もありましたんで、日銀の裁量だけに任せていいのかという議論が今ありまして、その中でいろいろ手かせ、足かせを課せよということじゃないですけれども、いろいろな議論あるわけですね。  その中で今浮上しているのが、総裁もよくもう御存じになっていると思うんですけど、中間目標というのを導入してはどうかという議論が今言われています。操作目標と最終目標、最終目標というのは物価の安定ですね。政策金利通貨供給量が操作目標だとしたら、その間にまあ二年ぐらいのラグがあると、タイムラグがあると。その間に物価の先行指標となるような中間目標を導入してはどうかと。カナダなんかでこれは導入されたことがあるそうですけど、今党内で考えられているのは、実質長短金利ですとか実質為替レート、こういうものを盛り込んでそういう先行指標みたいなのを作ったらどうかという議論があるんですけど、これ総裁、正直、言われてどう思われますか。
  28. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 私どもも、何と申しますか、金利政策に移行した後の操作目標オーバーナイト金利と。で、最終目標委員指摘のとおり物価の安定と。金利を操作したときに何か中間にビビッドに反応する指標とか指標の集合体があって、その反応を確認すれば、いずれあるタイムラグをもって最終目標である物価にきちんと弾が行き当たると。こういうものを見いだすことができればそれだけ金融政策として容易になるし、かつ透明性も高まると、この考え方はよく理解しております。  ただ、現実の問題として、日本の場合にそういう中間目標として最適なターゲットを置き得るかどうかと、これが非常に難題でございます。私どもも今後とも研究を続けてまいりたいと思いますけれども、まあ、カナダの例はかつてございました。しかし、今はカナダもこれは採用しておりませんけれども、かつて採用しておりました。これは、米国とカナダの経済とは非常に密接な関係があり、為替相場というものがカナダの国内の物価安定との関係で非常に大きなウエートを占めていたとかいうふうな様々な特殊な事情も踏まえた上でのああいう金融政策運営の仕方であったのかなというふうに思います。  日本は、日本の実情として、本当にそのシミュレーションがきちんとできて、実際にもこれを適用可能な中間目標があり得るかどうか検討したいというふうに思います。  一般的に申し上げれば、経済のグローバル化が進展し、金融の自由化が進展し、経済も構造改革が進展するという中にあっては、特定の中間目標をきちんと組み立てることが一般的にはなかなか難しいと、各国の中央銀行も懸命になって努力をしておりますが、今のところ、そういう中間目標、最適なものを入手した中央銀行は残念ながら存在していないわけでございます。しかし、それはギブアップしないで研究に値することだというふうに思っています。
  29. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 期待をしておりますので、しっかり頑張ってください。  以上で終わります。
  30. 山口那津男

    山口那津男君 公明党の山口那津男でございます。  私からは、高邁な議論というよりも、市井のおじさん、おばさんの観点で分かりやすく質問もいたしますし、また御答弁もお願いしたいと、こう思います。  まず、お聞きしたいことは、量的緩和解除が取りざたされる中で、様々な素朴な疑問といいますか懸念といいますか、そういうものもあるわけですね。  まず一つは、この景気回復の流れを受けて、いわゆる過去のイザナギ景気を超えようという観測もある中で、長期にわたって景気回復が続いてきていることは事実であります。しかし、一昔前、デフレといえばこれは不景気と同義で受け取られていたわけでありますけれども、今の景気回復日本経済デフレに陥ってから始まっておりまして、にもかかわらず景気は回復の一途をたどっている、長く続いていると、こういう状況であります。  そういたしますと、現時点デフレが続いているのか否か、あるいは脱却し得るのか否かということがどういう意味を持つのかということを改めて見直してみる、評価してみるということが必要だろうと思いますが、この景気回復デフレとの関係デフレ脱却の評価との関係、これについてお尋ねしたいと思います。
  31. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 大変重要で、かつ非常に難しい御質問をちょうだいしているわけでございます。  デフレって何だということを考えますときに、本当に考えられるお方によりまして眺めておられる視点が非常に違う。おっしゃいましたとおり、経済が不況にどんどん向かっているじゃないかというところを着目される方、それから物価指数を見て、なかなかプラスにならない、ずっとマイナスが続いているということを重視してごらんになられる方、それから資産価格がまだ下落しているということを重視される方とか、見方によりましてそれぞれ判断が異なり得る事柄ではないかというふうに思います。  しかし、私ども金融政策立場からデフレというものを考えます場合には、結局のところ、金融政策の目的は、企業及び我々一人一人の個人が日々経済活動をするときに、将来望ましい何物かを実現したいと思って活動するわけでして、将来にわたって我々が今経済行動にこういうふうに踏み切るときに、様々な与えられた条件を考慮して判断しなければならないわけですけれども、その中で一つ物価がどんどん上がるんだということを前提にしてきちんと判断ができるかと。逆に、どんどん物価が下がるというふうなことを前提として判断ができるかというと、これは非常に判断が難しくなってしばらく様子を見ようということになりかねない。あるいは、インフレの場合には、早く今のうちにやってしまえということになりかねないとか、いろいろ将来の望ましい姿を実現するためにふさわしい行動が取りにくい方向に行ってしまうと。そういうことがないようにするというのが本当の物価安定の値打ち、価値じゃないかと、こういうふうに思います。つまり、人々の経済行動の前提として、物価がどちらに行くかというふうなことが余り大きな懸念材料としては持っていただかないような状況にすると、これが一番大事なことじゃないかというふうに思っています。  現在の状況に即して言えば、景気が持続的な回復を続けるんだということに人々にもっと確信を持っていただきたいし、その場合に、物価については、長い間下落を続けたけれども、これからはプラスの世界で、しかしどんどん上がるんではなくてプラスの世界で安定的な状況は確保されるんだなと、せめてそういうふうな認識を非常に多くの方が持っていただければと。そこが我々の、非常に漠としておりますけれども目標としているところでございます。
  32. 山口那津男

    山口那津男君 量的緩和解除条件としてその物価プラスに転じる、そして安定的に推移するということを掲げていらっしゃるわけでありますが、しかしまたその要因を分析した場合には原油高の影響もかなりあると思われます。灯油、ガソリンなどの値上げも続いているという状況にある中で、そうした意味でのその物価上昇というのは国民生活にとっては余り有り難くない、負担増になる、そういう上昇なわけですね。  ですから、これをデフレ脱却の要因あるいは量的緩和政策解除の根拠として説明することにいささかの抵抗がないものかどうか、国民に対してどう説明したらいいか、この点についての評価をお願いしたいと思います。
  33. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 物価に対しては様々な特別の要因がショックをもたらしてくる、このことは繰り返し起こってくることでございますが、最近におきましては原油価格の高騰、これは日本だけではなくて世界のすべての国の経済に対してある程度ショックを起こしているということだと思います。  原油価格の高騰につきましては、経済に対しては、これを、所得移転をもたらして経済を不況の方向に引っ張っていく力と、それから物価上昇インフレ方向に引っ張っていく力と両方のリスクを持っている、二面性を持った危険物でございます。  したがいまして、どちらの方向に危険が現実のものとなりつつあるんではないかどうかと、各国の中央銀行は真剣に目を凝らして自分の国の経済を眺めている状況でございますが、幸い今日までのところ、これが決定的な不況要因というふうにならずに済んでいると。逆に、これがまた決定的なインフレ要因にならずに済んでもいるということで、非常に心配しながらも、現状は、原油価格の高騰については比較的うまくその影響が吸収されているというふうに認識されているのが共通のところでございます。  そう申し上げました上で、物価全体の判断ということになりますと、日本の場合に特にそうでございますが、景気回復がそんなに華々しいものではなくても、ある持続的なペースをもって続いている、今後も続いていくという中で、それと物価との関係をどう見るかということになりますと、経済の全体としての需給のバランスがどういうふうになってきているか、もう一つは、賃金の上昇などが伴ってきた場合に、いわゆる単位当たり労働力コストというものが物価を押し上げる方向に働いてき始めているかどうか、この二つが経済全体の動きとの関係では物価の基調的な動きを判断する重要な視点でございます。日本の場合には、余り目立ちませんでしたけれども、二〇〇二年の初め以降、今日までずっと景気回復が続いていて、やはり点検しますと、着実に需給ギャップは縮まってきております。  もう一つは、ユニット・レーバー・コストでございますが、これはずうっと下がり続けておりました。しかし、最近雇用が増え始め、賃金も上昇し始めて、ユニット・レーバー・コストの下落テンポというものがかなり減衰してまいりました。これら二つの要因は、デフレから安定した物価状況物価の基調を押し上げていく上に非常に強い力を次第に発揮しつつある状況だと。  こういうベースの上に現実に出てくる物価指標そのものを分析していると、こういうことでございまして、私どもは、消費者物価指数が昨年十二月末までの時点ではわずかプラス〇・一でございますけれども、その底を支えてきているものはかなりしっかりしてきていると、こういう判断を添えているわけでございます。
  34. 山口那津男

    山口那津男君 今の御認識は我々も共有するわけでありますけれども、しかしながら、その景気回復とは言いながら、地方あるいは中小企業ではその実感がなかなかつかみ切れていない。これは景気の回復の中心ともいうべき東京でも、実際、中小企業者の声というのはなかなか厳しいものがあるわけであります。  そうした中で、この量的緩和解除政策をこれから取っていった場合に、格差が広がってくるということになりはしないか。より現実的に言いますと、低利時代に融資を受けた中小零細企業あるいは個人で住宅ローン等の融資を受けた人々、こういう方々が金利上昇の流れができた場合にそれに乗り切れない人が多く出てくるのではないか、そういう不安を持つ人たちも結構いるわけであります。この点についてどうお考えになるんでしょうか。
  35. 武藤敏郎

    参考人武藤敏郎君) 我が国の景気について一言で申し上げれば、全体として回復しているということなんでございますけれども、御指摘ありましたとおり、地域により、あるいは企業規模によりまして回復の過程にばらつきがあるというのは御指摘のとおりだと思います。  ただ、最近におきましては、内外需バランスの取れた回復の下で次第に幅広い範囲に波及しつつあるというふうに見ておりまして、一月の日本銀行の支店長会議におきまして、地域によって水準自体にはかなりばらつきがあるんでございますけれども方向としてはすべての地域において景況感に改善の動きが見られると、こういう報告がありました。日本銀行では、こういう支店などの調査を通じまして地域経済の実情把握ということに努めております。  昨年四月からは、この調査結果をより効果的に生かすことをねらいといたしまして、地域経済報告、通称さくらレポートと言っておりますけれども、その作成、公表を行っております。今後とも、こういうこの地域経済状況というものを含めまして、きめ細かく点検しながら適切な金融政策をやってまいりたいというふうに考えております。  ただ、一つ強調しておきたいのは、この量的緩和政策解除が即金融の引締めを意味するものではないという点でございます。量的緩和が仮に解除された後におきましても、経済が全体としてバランスの取れた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価がなお反応しにくい状況というのが続いているのであれば、引き続き極めて緩和的な金融環境を維持していけるというふうに考えているわけでございます。  ということでございますので、緩和的な政策運営ということを続けることによって、物価安定の下での持続的成長の実現に向けての金融面からのサポート、これをしっかりやってまいりたいというふうに考えております。
  36. 山口那津男

    山口那津男君 前回、展望レポート、昨年の秋に出されたもので量的緩和政策在り方について一定の条件といいますか、基準といいますか、そういうものもお示しになり、またその後の政策のプロセスというものも大まかにお示しいただいた。言わば規範というか基準をお示しいただいたと我々は思っておりますけれども、それらに対して現実の経済動向を当てはめを行って、適宜メッセージを市場に対して発してきたということだろうと思います。  次回の展望レポート、四月末に出される予定と思いますが、ここではより具体的なその後の基準といいますか、それからその半年間の様々なデータの総合的な分析といいますか、そういうものをより明確にこれをメッセージとして発する必要があると期待をするわけでありますけれども、この前回のレポートと、それから今後お出しになるレポート、これの役割やその内容の見通しについてお聞かせいただきたいと思います。
  37. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) この先、四月の末の政策決定会合で検討の上発表いたします展望レポートは、二〇〇六年度の経済物価見通しをもう一回見直しまして、新しい見通し、それに加えまして明年度、これが大変難しい作業でありますが、二〇〇七年度につきましても経済物価見通しを、我々としての見通しをお示ししたいというふうに思っています。そういう意味では、今年度だけではなくて、明年度までカバーする金融政策運営の経路なるものを可能な限り説明できるような内容にしたいと、こういうふうに思っております。  量的緩和政策枠組みをいつ修正するかということが未確定な状況でございますので、それとの関連でどうなるかということは今の時点では全く分かりませんが、少なくとも二〇〇七年度の展望まで含めた政策運営の姿について、できるだけ透明性の高いものにしたいということでございます。
  38. 山口那津男

    山口那津男君 先ほども同僚委員からの質疑があったところでありますけれども、この量的緩和解除ないしはその枠組み修正という方針、これが具体的に今後どう実施されていくのかということで先ほども答弁があったところであります。  そこで、その中身について、所要の当座預金残高というのがあるわけですが、今の政策とは相当乖離があるわけですね。そこへ段階的に導いていくというのが一つ方向性だろうと思います。  それともう一つは、ゼロ金利に近い状態が生じるというお話もありました。しかし、この量の段階的な引下げというのと、それから金利の位置付け、変動というのは同時に併存する。例えば、順次に引き下がって所要の水準に至らない前であっても、この金利の面では多少の上昇に転じる動きが出てくると、こういうこともあり得るんだろうと私は思うんでありますが、その点の関係性、この量から金利へ移るというその関係性が分かりにくいところでありまして、それをひとつ御説明をいただきたいと思います。  なお、このゼロ金利に近いところであったとしても、それは総裁の言葉をかりれば、それ自体も超緩和の状態であると、こういう御評価であろうと思いますから、先ほど緩和的な環境、金融環境目標とすると、こういうお話もありましたところで、超緩和というのも差があるわけですね。その点で緩和的環境に至るプロセスというのも検討しなきゃいかぬことだろうと思います。  それら、それぞれの関係について御答弁いただきたいと思います。
  39. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  委員指摘のとおり、金融機関は法律に基づきまして、自ら受け入れます預金債務の一定割合をこれ準備預金制度に基づく準備預金としまして日本銀行に預けるということが義務付けられております。現在、この金額は約六兆円でございます。一方、日本銀行が供給しています当座預金の残高は三十から三十五兆円ということをめどに今現在運営しております。  したがいまして、量的緩和政策解除するということは、まず、その金融調節の主たる操作目標日本銀行当座預金残高から短期金利変更いたします。その上で、この当座預金残高を先ほど申し上げました所要準備の金額に向けて削減していくということになってまいるわけであります。  このプロセス金利と量、どういうことが起こるかという御質問でございますけれども、この量を減らす過程は、しかしそれでも所要準備を大幅に上回る当座預金がまだ残っておりますので、したがいまして、ごく短期の金利、例えばコールレートにつきましては日々多少の振れはまああるにせよ、基本的にはゼロ%という状況がその過程では続くというふうに思います。  その後の金利水準につきましては、これは先ほど総裁からお答えいたしましたとおり、経済物価情勢次第でございます。次第ではございますけれども経済バランスの取れた持続的な成長過程をたどる中にありまして、物価が反応しにくい状況が続くということでありますと、引き続き、極めて緩和的な金融環境を維持していけるというふうに考えております。  その際、長期間にわたる量的緩和政策の下で短期金融市場の機能が様々な形で低下しておりますことを踏まえますと、資金の運用、調達が円滑に行われなくなるという可能性もございます。したがいまして、日本銀行としては、この当座預金残高削減に当たりましては、短期金融市場状況を十分に点検しながら行っていくと。そういうふうに行うことによって、その過程におきます短期金利の変動も抑えていくというふうに考えております。
  40. 山口那津男

    山口那津男君 今おっしゃられたプロセスをたどっていくといたしますと、先ほど総裁からも、この量的緩和の政策に市場が慣れていると、長い間慣れているということもおっしゃられていました。そういたしますと、やはり一定の期間というのは必要になるわけでありまして、それがどれくらいかというのはなかなか今確定しにくいんだろうと、経済状況に依存するんだろうというふうには思いますけれども、しかし、まあ安定的に推移するだろうという見通しもある程度見込める状況から、そのたどるプロセスの期間というのは、まあ常識的に言って二か月や三か月で一気にそのゼロ金利から次の局面へというのは考えにくいんだろうと思うんですね。また、政策のシフトの変更があったとしても、先ほど言った義務的な準備残高に至るまでも、これも相当な期間が必要だろうと思います。  ですから、まあ私の感覚からいうと、少なくとも二、三か月以上必要とするんだろうと、こう思いますけれども、その点の感覚的な御判断をお聞かせいただきたいと思います。
  41. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  量的緩和解除しました後の当座預金の削減のスピードいかんという御質問でございます。  日々、日本銀行金融調整を行っておりますけれども、当座預金の残高規定する要因は基本的には二つでございまして、一つは、銀行券あるいは財政資金の動き、こうした日本銀行から見ますと取りあえず外生的な動き、これがどういうふうになってくるかということと、もう一つは、日本銀行自身が行っております資金供給オペで、これの期日がどういうふうに到来するかというのでございます。  日本銀行のオペの期日が、例えば向こう一か月十兆円ございますと、もしこの資金供給オペを、期日をつながなければ、この十兆円が落ちることによって量が調整できるということでございます。現在、そうした資金需給の状況あるいはオペの状況、こうしたものをもちろん私ども日々、毎日見ておりますけれども基本的にはこうした要因で決まってまいります。  具体的に何か月なのかということについては、数字でもって具体的に何か月というふうに申し上げるわけにはなかなかその事柄の性格上難しいわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような短期金融市場の機能を円滑に回復していくと、で、その間市場混乱しないようにしていくということを十分見極めながらやっていきたいというふうに思っております。
  42. 山口那津男

    山口那津男君 量的緩和政策解除後の政策の透明性を高めるというのは実に大事な課題だろうと思います。そういう手段の一つとして道しるべが必要だと、こういうふうにおっしゃられる方も日銀政策委員の中にはいるわけですね。  この道しるべなるものについて、具体的にどのように考え得るか。それはいわゆるインフレターゲットというものと別なものなのか、同類のものなのか、この辺の御認識を伺いたいと思います。
  43. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) この点につきましては、量的緩和枠組み修正がいつになるか分かりませんけれども、いつになるにせよ、日本銀行の政策委員会のメンバーそれぞれといたしましては、既に今から自らの頭の中をフル回転しながら考え続けているというところでございます。私自身も、他のメンバーと同じように、自分の頭の中を一生懸命回転して、できるだけいいアイデアに到達するよう今努力中ということでございます。まだ一度もすり合わせをしたことはございません。最終的に政策委員会できちんと合意を得なければ、どんなにいいアイデアであっても成立、案として採用されないことになります。したがいまして、単にアイデアを練るというだけではなくて、十分これが説得力を持つものであるかどうか、他の委員をどうやって説得するかということまで含めて頭を回転させなければなりません。だんだんそういうプロセスに今入っているように私は察知いたしております。  御承知のとおり、合議体、議会と同じように合議体でございまして、とにかく多数の賛成を得ないと、いかにいいアイデアでもこれは通用しないわけでありますが、議長である私の悩みは、始めからは票読みができないと。日本銀行の政策委員会は与党、野党と分かれていませんので、事前の票読みは全くできません。各メンバーが一人一人独立の党であるような感じでございまして、実際、意見をぶつけ合って、互いに他を説得しながら何か新しいものをつくり上げていくという、格好良く言いますと、一つの創造的過程として討議を進めなければならないわけでございます。その討議に十分堪え得るようなものを一体何人の委員の方が出してくるかと、今真剣なプロセスが進んでいるというところでございます。  もちろん、インフレーションターゲティング的なものというものを念頭に置きながら考えておられる方もいらっしゃるだろうと思いますし、そうではなくて、全くそういったこととは正反対の距離で考えておられる方も今の時点ではあるように察知しておりますが、最後は一つの結論を出さなければいけません。やっぱり、日本の実情に合うようにというところが共通の分母になることは間違いないというふうに思っています。
  44. 山口那津男

    山口那津男君 先ほど、インフレターゲットを取る国々、政策として取る国々もあると、しかしそれは物価を抑制するという意味で使われていることが多いと、こういうお話でもありました。そのインフレターゲット政策を取る国々では一定の消費者物価水準というものを持っているわけでありますが、総裁はかねてから国民日本国民物価観ということを常々おっしゃっておられます。そういう日本国民物価観というものが諸外国と比べてどういう関係にあるのか、その物価観こそ国民の思う望ましい物価水準だと置き換えてもいいんだろうと思います。ですから、それに向かって抑制的な、物価抑制的な政策が取られる、結果が出るということは国民も歓迎するということになるんだろうと思いますが、その国民物価観、総裁の御認識を伺いたいと思います。
  45. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) ただいま委員からお話のございましたとおり、私、ふだんから考えておりますこと、日本銀行物価の安定ということを究極の目標として金融政策運営に当たらしていただいている。我々が認識する物価の安定というものが国民の皆様一人一人が頭の中で、あるいは体の中に染み込んで持っておられる物価の安定という感覚とずれたものであっては本当の政策にならないんではないかというふうに思っているわけでございます。  どうしてかと申しますと、先ほどから申し上げておりますとおり、国民のお一人お一人が日々経済活動をなさるときに、つまり将来の何がしかの夢を実現するために活動をなさるときに、物価がどっちに大きく変動しそうだということが心配の種であってはきちんとした行動はできないということであります。したがって、自分の持っている物価観とこれから実現していくであろう物価というものとの間に大きなギャップがないというふうに言い換えてこのことを表現することができるんではないかと。そういう意味では、日本国民の皆様方が心の底で暗黙のうちに抱いておられる物価観というものを十分探り当てながら我々も金融政策をやっていかなきゃいけないというふうに思っています。  この探り当てることはなかなか難しいんですけれども、しかし、我々は日常生活をしていて過去の系譜を引きずっています。この延長線上で将来の経済活動も営んでいくということでございますので、この日本国民の皆様の物価観というのは、過去長い間、日本の平均的な物価上昇率はどうであったかということが暗黙のうちに刷り込まれている可能性が強いというふうに私ども考えています。  そうしますと、過去数十年間の平均的な物価上昇率というのは、海外の主要国に比べまして日本の場合は明らかに低いわけでございます。そういったことが暗黙のうちに皆様方の感覚の、つまり深層心理の中に存在するとすれば、そうしたことも尊重しながら、我々は金融政策の企画立案の中にそれを忍び込ませて、いい政策立案をしたいと、こういうふうな感覚を持っています。
  46. 山口那津男

    山口那津男君 最後に、アメリカの連銀、連邦準備理事会の議長がグリーンスパンさんからバーナンキさんに替わるという局面でありますけれども、このグリーンスパンさんの金融政策運営について、総裁として、思い出といいますか、学ぶ点があるとすればどういう点か、またバーナンキさんに対してのその政策手腕に対する評価や期待といったものについてお触れいただければと思います。
  47. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) グリーンスパン議長が議長として就任されましたのは一九八七年、いわゆるブラックマンデーが起こる直前でございます。ブラックマンデーが起こりましたときは、私は日本銀行の営業局長をしておりまして、ちょうどそのとき以来グリーンスパン議長と仕事の上でいろいろなお付き合いをさせていただきました。  私の第一印象は、相手は連銀の議長、私は一介の局長でありまして、そういう身分の分け隔てなく、本当にざっくばらんに意見交換をさせていただける大先輩というのが私の基本的なグリーンスパン議長に対する思い出でございます。  で、まあ大変な功績を上げられましたものですから、多くの人がグリーンスパン議長を偶像視してごらんになっていると。それも当然だと私は思いますけれども、十八年間私がいろんなポジションで、一貫して先方は議長であられたわけですけれども、お付き合いさせていただきました印象は、非常に気さくで分け隔てなく意見交換させていただける十年年上の先輩ということであります。ぼそぼそと物をおっしゃる、なぜコミュニケーションポリシーがお上手なのかというのはぴんとこないぐらいぼそぼそおっしゃるんですけども、コミュニケーションポリシーが非常にお上手だし、市場も納得していると。非常にそういう意味で優れた能力を持っておられると思いますし、経済を見る目が、経済物価とそしてマーケットと、これをいつも一体的に分析する目を持っておられたというふうに思います。実体経済はこうだ、物価はどうだとか市場はどうだとかいうふうに別々の分析というよりは、常に一体感を持って分析しておられたと。したがって、先を見る目というのが自然に鋭くグリーンスパン議長は持っておられたというふうに思います。  一つの例は、一九九〇年代、ITの大変な投資ブームがアメリカで起こって、まあドットコムブームですかね、ひところは、九〇年代、アメリカは大変なIT関連の投資ブームが起こったけども、アメリカ経済全体として、これがなかなか生産性の上昇に結び付かないと、プロダクティビティーパラドックスと言われた時期が随分長い間あったわけですけども、既にその時期から、これはいずれ、IT産業そのものでなくても、アメリカの広い産業にわたって生産性上昇に結び付く可能性が強いんだということを見抜いておられました。これなどはやっぱり部分的な分析の成果としての彼の鑑識眼を養ったというよりは、常にやっぱり経済マーケット、技術というふうなことを一体となって物を見る癖を自ら持っておられたことによる炯眼であったんではないかというふうに思います。  もう一つは、様々なショックが起こったときに果断に対処される勇気というものをやっぱりしっかり持っておられた。何がしかのショックが起こりましたときに果断な対応を取れるかどうかというのは、これは正に、連銀も日本銀行と同じように政策委員会を持っておりますけれども、みんなが迷うときに議長がリーダーシップを発揮するということが大変大切でありまして、その決断力は非常に優れておられたというふうに思っています。  バーナンキさんは学者として大変な業績があり、私は学者でありませんので、そういう意味では随分距離感のある人ですが、しかしお人柄からいって、これまでも私はある程度親しくお付き合いをさせていただいております。既に連銀の理事会のメンバーであられたわけですし、大統領経済諮問委員会委員長もなさったということで、実務、経済政策の実務の面でも既にある程度実績を示しておられる方ですし、先般の米国の議会証言を見ましても、非常に現実的な証言をしておられるということで、非常にいいスタートを切られたんじゃないかと私思っています。  三月の国際決済銀行の中央銀行総裁会議、バーゼルで定例のものが開かれますが、初めてバーナンキ議長、バーゼルに来られますので、私も是非行って、最初に会話をしたいと、こういうふうに思っています。
  48. 山口那津男

    山口那津男君 終わります。
  49. 池口修次

    委員長池口修次君) 午前の質疑はこの程度とし、午後零時三十分まで休憩いたします。    午前十一時二十五分休憩      ─────・─────    午後零時三十分開会
  50. 池口修次

    委員長池口修次君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日、水岡俊一君が委員辞任され、その補欠として白眞勲君が選任されました。     ─────────────
  51. 池口修次

    委員長池口修次君) 休憩前に引き続き、財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  52. 広田一

    ○広田一君 どうも皆さんこんにちは。民主党・新緑風会の広田一でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。  午前中の御質問とダブるところ多々あろうかと思いますけれども、御容赦願って質問をさしていただきたいと思います。  まず、本題に入る前に、ライブドア事件についてお伺いをしたいと思います。  この問題につきましては、いわゆる三千万円メールで今話題をさらっているところでございますけれども、ここではあるべき市場、資本市場在り方という視点で御質問をさしてもらいたいと思います。  福井総裁は一月二十日の記者会見におきまして、このライブドア事件に関して、これは市場のキャパシティーの問題だけではなく、取引ルールも含めたインフラの整備や会計基準市場の規律を高めるように常に見直され、市場参加者が自分の取引内容や帳簿を示して透明性を図るだけではなく、結果として市場の仕組みそのものが自然と人々の取引活動の透明化を促進する、そういう方向に常に新しく見直されていくことが非常に大事であるというふうなことをおっしゃっております。  このように総裁自身、ライブドア事件は非常に重要な材料を提供したというふうに述べているわけでございますけれども、この会計基準であるとか取引内容の透明性ということで具体的に見直さなければいけないことが、今回のライブドア流の錬金術の装置、隠れみのになった投資事業組合だろうと思います。  本来、投資事業組合といいますのは、その自由度、利便性から投資を活性化させる重要なインフラでございますけれども、その匿名性というものを悪用すれば、証券取引法第百五十八条で禁止する偽計取引も秘密裏にすることができることが今回明らかになったわけでございます。  世間ではこの投資事業組合そのものを悪者扱いする風潮もあるわけですが、そのことも踏まえて、総裁のお言葉をかりればフォワードルッキングに、透明性を高めるための規制の在り方を含めて、今後どのような観点に立って資本市場発展のために新しいルール作りを進めるべきか、御所見をお伺いしたいと思います。
  53. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 日本銀行は資本市場を直接規制、監督する立場にあるわけではございませんけれども、資本市場は、狭い意味金融市場の更にその延長線上として金融政策の効果を広く浸透させていく広い意味での金融市場というふうに私どもは理解いたしております。世の中の資源の再配分機能の中枢を担うという意味で、今後のダイナミックな日本経済をつくり上げていく上で非常に重要な役割を果たす位置付けにあるものだというふうに考えています。したがいまして、資本市場はより活発に、より健全にみんなで育てていかなければいけないわけですけれども、非常に難しい問題でもございます。  一昔前ですと、資本市場というのは大体こんなもんだと、健全な姿はこんなもんだというふうにテキストブックで一つの一定のコンセプトで表現し得るような状況であったと思いますけれども、今は本当に資本市場は、どこの国の市場、特に先進国の市場を見ますと、正に生々発展するものだと、日々新しい参加者が入ってくる。今おっしゃいました投資組合等も資本市場との関係では次第に重要な位置付けを占めるようになっておりますし、加えまして、ネット取引という形で非常に資本市場そのものがリアルな世界とバーチャルな世界、その間のリエゾンということで、ますますこの範囲を広げている、機能も多様化しつつあると。しかし、資本市場は更にそういう新しい要素をどんどん付け加えながら発展していかなければならないものだというふうに、スタティックではなくてダイナミックにとらえながらこれを育てていく必要があるということではないかというふうに思っています。  今回のライブドア事件を契機に、そこから多くの教訓を読み取って、我々としては、新しい規制の仕方、そして市場の中でのルールの作り上げ方、そして規制やルールをいかにしてこれを守っていくか、エンフォースメントの在り方、そしてまた最終的には、それらのルールが市場参加者を締め付ける、あるいは締め出すと、市場機能の発展をむしろ妨げるという方向でなくて、常に最終的には市場参加者が何がしかその中から規律をより強く感じ取るという形で、そして市場参加者が自ら次のルールを提案してくるという段階まで行けば、これはかなり成功のパスに乗ってきた段階だというふうに思います。  インフラの築き方、そういう市場の中でのルールの築き方、そして外から規制当局がレギュレーションを加えていく場合も、そうしたダイナミックな発展の過程をいかにつくり上げていくかという観点で、従来の規制のしき方とは違うと、締め付けて何かの秩序を保つという発想から一歩抜け出すものがやっぱり必要だと。  非常に抽象的なお答えでございますけれども、我々は、市場を良くしていくという立場からはそういうふうに考えています。大変難しい課題だというふうに思います。
  54. 広田一

    ○広田一君 今の総裁が御指摘のように、大変、今回の事件を踏まえてどのような規制を掛けていくのかということは悩ましいことだろうと思います。ただ、そういう中で、これがこの後の量的緩和解除でのキーワードの一つになります透明性を高めていくというふうな観点から、今まで自由にやっていた、匿名性が高く自由にやっていたものに対してやはり今規制強化というものが必要というふうにお考えなのか。また、そういういろいろな活動を監視する機能、私たちは日本版SECというふうに言っていますけれども、そういうやっぱり監視機能をこれから強化していく方向性が今後の日本の資本市場の発展を考える場合に必要というふうにお考えなのか。御所見をお伺いしたいと思います。
  55. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) いろいろな形で透明性を高めていくということは、市場を発展させていく場合に一番重要なキーワードだと、単にワードというだけではなくてキーファクターだというふうに考えます。したがいまして、市場のルールあるいは規制の在り方、インフラの整備の仕方、いずれもその共通の原則は透明性向上だというふうに思います。  その場合に大事なことは、例えば規制の在り方考えます場合にどういう組織立てでやっていくかということも最終的には非常に重要な判断なんですけれども、例えばアメリカのSECの例などもしょっちゅう挙げられて、日本の場合とどう違うということを、機能を比較対照することによってその違いということを述べられるケースがあると思います。非常に参考になる検討の仕方だと思うんですが、私は、同時にアメリカのSECの場合は、市場参加者がちゃんとチャージを払って自ら監督を受けるという関係もあるわけですね。つまり、きちんと監督を受けることでいい市場ができ、自分たちがその規制に従うことが次のバリュークリエーションにつながるという、非常にダイナミックな価値をベースにしています。つまり、市場参加者は金を払ってでも規制を受けたいと、その方が市場の発展につながるという要素が入っているんです。  したがって、監督組織を別につくって両方向から締め付けるという感覚にはなっていないと、ここが非常に大事な点だというふうに思います。
  56. 広田一

    ○広田一君 これまでの福井総裁お話を踏まえながら、私たちもより良い資本市場発展のためにルール作りの議論に参加をしていきたいと思います。  それでは次に、地域経済と地域間格差についてお伺いをします。  福井総裁は、今の日本経済につきまして、理想的までとは言わないまでも、比較的バランスの良い経済の姿になっているという認識を示されております。また、先日発表されましたGDPの速報値も年率で五・五%の成長ということで、総裁の御認識を裏付ける結果ともなっているわけでございますけれども、その一方で、私のように四国に住む地方の者は、今の日本全体としての景気回復を、まあ頭では何とか理解しながらも、そして良いことだとも思いながらも、日々の生活の中で肌でなかなか実感することができません。その大きな要因の一つが、我が国の景気回復の動きがかなり大きな地域格差を伴いながら進んでいるということだと思います。このことについては日本銀行の皆さんも十分御認識をしてくださっております。先日、武藤総裁の方から、概要説明でも、地域経済状況についても引き続きしっかりと点検をしていきたいというお話がございました。そしてまた、具体的には地域経済報告、いわゆるさくらレポートという形で情報提供もしていただいております。  そこで、お伺いしたいんですけれども、今のこの地域経済停滞の一つの要因は、長引く原油高に伴う原材料価格の高止まりにあるというふうに言われております。大企業を多く抱える地域などは、コスト削減であるとか高付加価値化とか量産効果で吸収できるかもしれませんけれども、中小零細企業が大部分を占める地域ではそういうわけにもいきません。人件費削減とかリストラをしてもなかなか対応できない会社などは、廃業、倒産に今追い込まれているわけです。その現象は、特に農業とか漁業、また運輸・運送業から、さくらレポートでは旅館業まで広がっているというふうな見方を示されております。  日銀としては、こういった原材料価格の高止まりに伴う中小零細企業への影響をどう分析をされていらっしゃるのか。また、この影響を本当に力強く乗り切っている企業もあろうかと思います。こういった取組について、何か情報提供できるものがあればお示しをいただければと思います。
  57. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  原油価格でございますけれども、昨年八月にピークを付けまして、その後いったん軟化いたしましたけれども、このところ再び上昇しているということでございます。こうした下で、企業は仕入価格や輸送費など諸コストの増加に今直面しておりまして、価格交渉力が相対的に弱い中小零細企業では収益が圧迫されがちであるということは、これは事実だというふうに思います。  もっとも、先生御指摘のとおり、企業はいろんな方策、工夫を講じまして、その影響を最小限にするという努力を、大変な努力をしているということも事実でございます。一つ一つが非常に細かな動きでございますけれども、私どもの支店で地元の企業と接触をしてみますと、いろんな努力をしている。例えば、やや抽象的でございますけれども、省エネの徹底あるいは代替燃料の活用、生産工程の改善、輸送効率の引上げ、あるいは他社との共同一括購入、いろんな事例が報告されております。  今日はちょっと時間の関係で具体的に申し上げませんけれども、昨年十月の地域経済報告、さくらレポートでその辺、個別の具体例も含めましてそこで詳しく報告をしております。そうした企業の取組努力もありまして、経済全体で見てみますと、原料価格上昇影響は何とか吸収されまして、企業収益の増加ということが続いているという状況でございます。こういうふうに、何とかそのエネルギー価格の上昇を吸収しているということは、日本が他の国に比べましてエネルギー効率が高い、まあ高いということでございますけれども、こうした企業の取組ということのたまものだというふうに思っております。  いずれにしましても、原油価格高騰の影響、これが経済物価にどういうふうに影響するか、あるいはその中でまた地域の経済にどういうふうに影響するかについては今後ともしっかり見てまいりたいというふうに思っております。
  58. 広田一

    ○広田一君 もう少し具体的な取組のお答えがいただければなというふうには思っておったんですけれども、いずれにいたしましても、この原油高の推移をやっぱりどういうふうに見守っていくのかというのが大事なポイントだろうというふうに思います。私も地元の企業の皆さんと、また農業とか漁業をやっていらっしゃる方とお話をしたときに、やっぱりこのままじゃ苦しいのでほかの、例えばハウスをやっている方だったらガスに変えようかとか、そんなお話を聞くわけでございますけれども、やっぱり彼らは非常に肌で感じて、このままずっと高止まりじゃないかという感覚はある面合っているかもしれませんけれども、ある面非常に危険なことでもないだろうかなというふうに思います。  そういう中で、なかなかお示しすることは難しいだろうと思いますけれども、今後の原油高の動向について日本銀行としてどのような御見解をお持ちなのか、お尋ねをいたします。
  59. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えします前に、先ほどの具体的な例、ちょっと余りにも細かい話かなというふうに思いましたので若干省略いたしましたけれども、例えば地域経済報告で支店から上がってきています影響、その具体策でございます。  例えば、運輸業界でいきますと、燃料価格が上がっておるということで、例えばETCの利用を一段と促進していくとか、あるいはアイドリングストップの励行だとか、あるいは競争環境の違いで地域間で燃料価格が違いますので、まめに安いところで買っていくとか、いろいろなことを積み上げて大変な努力をしているという事例が数多く報告をされております。  次に、お尋ねの原油価格の上昇でございますけれども、これは、ごく足下の動きとそれから少し長い目と、両方分けて考える必要があるというふうに思います。  この数年間、世界的に原油価格が上がってきたわけでございますけれども、この最も大きな理由は、中国を始めとしてエマージング経済が大変な勢いで成長してきた、しかもこうした国は相対的にエネルギーの依存度が高い、エネルギー効率が高くないということで、このエマージング経済の拡大が世界全体の原油の需要につながり、それが価格の上昇につながった、これが一番大きな理由だというふうに思っております。  そうした中で、石油製品、特に下流の石油製品の供給能力が十分に増加していないということがありまして、需要、供給のバランスから価格が上がってきているということでございます。それに加えまして、時々いろんな短期的な要因がございまして、例えば昨年の秋につきましては米国のハリケーンの影響、こうしたものもございました。それから、時々マーケットでの思惑ということもございましてアップダウンを繰り返しているということでございますけれども、しかし元にエマージング経済の拡大ということがございますので、こういうかなり構造的な要因も今加わっているかなという感じがいたします。
  60. 広田一

    ○広田一君 今後とも、原油高の動向であるとか、また地域の中小零細企業の動向についても関心を持って見ていただきたいと思います。  次に、地域経済の活性化に対します地方自治体の役割についてお伺いをします。  御承知のとおり、需要動向を見たときには、唯一といっても低調なのが公共投資であります。良くも悪くも公経済に依存している地方経済は、時代に適応した産業構造の転換もできないままあえいでいるのが現状です。国にたがわず地方の財政状況も大変厳しく、当面は公共投資削減されていくというのは必定であります。正に公共投資により地域経済に貢献してきた地方自治体の役割は大きく変わらなければなりません。これは、さくらレポートでも地方自治体の取組として、従来からの企業誘致はもちろんなんですけれども、ほかに、企業が引き続き地域に残るための留置そして育成、こういった取組を紹介されております。  そこで、日銀として、この地域経済の活性化に関する今後の地方自治体の役割の大きさをどう評価しているのか、そして具体的に、地方自治体の初期投資コストの軽減支援であるとか、また規制緩和、こういった取組をどう評価し分析をされているのか、お伺いします。
  61. 武藤敏郎

    参考人武藤敏郎君) 地域再生といいますか、地域経済の活性化は、地方公共団体あるいは地域の経済界の大変重要な関心事であるということだと思います。  今お話がありましたとおり、公共投資を通じて景気回復をしていくという高度成長期以来のメカニズムというものがもはや変容してきているという状況の下で、どうやって地域経済を活性化していくかということかと思います。結局、そのなかなか妙案といいますか、一つの切り札ということはなかなかないわけでございまして、その地域の民間企業がその地域特性というものを生かしながら付加価値の高い製品あるいはサービスを提供するというのが、結局は地域経済活性化の道であるということだと思います。  中央政府においてもいろんな形で、最近は構造改革特区でありますとか、あるいは観光産業の育成でありますとか、いろんなことに取り組んでいるというふうに理解をしておるわけでございますけれども、地方自治体がどういうふうに対応したらいいかということになりますと、結局、今申し上げましたような地域の民間企業の取組というものをどうやってサポートしていくか、どうやって生かしていくかという、そういう観点から地方公共団体の役割が期待されているのではないか。  それぞれの地域において様々なことでありますので、なかなか一般論として申し上げることは難しいと思いますけれども、そういう民間の活力というものをいかに引き出していくかという観点からの地方公共団体の役割というのが期待されているのではないかというふうに理解をしております。
  62. 広田一

    ○広田一君 副総裁お話を聞きまして、とかくお役人が、うちの高知も商工労働部ありますけれども、武家の商法というふうに言われてしまうんですが、やはりこれからは地方自治体も民間感覚を持った取組をしていかなければいけないということを改めて感じました。  それでは、本題の量的緩和政策についてお伺いをしたいと思います。  これはもう午前中にもるるお話がございました。この件については、金融関係者関心はむしろ量的緩和政策はいつ解除されるのか、そして解除後の金融政策のかじ取りに集まっております。ただ、私も含めまして一般国民の皆さんには、この非常な手段と言われている量的緩和政策とは一体何なのかという十分な認知も認識もないまま、ごく近い将来に解除の時期を迎えるのは、一般の国民の皆さんに対するアナウンスメント効果があったかどうかも含めて少し考えさせられます。  それはともかくといたしまして、最近の日銀の政策委員会のメンバーは、量的緩和政策解除に向けて、地ならしと取られるような発言を繰り返しされております。福井総裁自身も、今月九日の記者会見でも、三月の次回以降の判断はより重要になっていくと述べられております。  私は、この量的緩和政策につきましては、解除の三条件がクリアされたならば、約束に従って速やかに解除していただきたいと思います。仮にたとえ解除いたしましても、多くの市場関係者の常識を逸脱するような時期まで、政府とか何らかの圧力によって延びたと市場判断したならば、これは日銀の信認低下は避けられず、このことはかえって金融市場に悪影響を及ぼすのではないかと懸念いたしますが、この約束の実行について、基本認識について再度お伺いいたします。
  63. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 量的緩和政策は、二〇〇一年の三月以降、長きにわたって実行してきておりますけれども、その導入当初から、この異例な政策は消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上となるまでというふうにコミットメントいたしまして、国民の皆様方と私どもが目線をそろえてこの異例金融政策運営を行ってきたということでございます。最後まで目線をそろえ、私どもが、本当にCPIが安定的にゼロ%以上となるまでというこの条件が満たされたかどうかを客観的かつ冷静に判断し、判断に至れば直ちに解除したいというふうに思っています。  このCPIが安定的にゼロ%以上となるまでという条件は、量的緩和政策導入の当初から決められていたことであり、過去五年にわたり政府その他から異論を私どもは聞いたことがないということもまた事実でございます。そういう意味では、国民の皆様方及び政府におかれる方々とも目線はそろってずっと来ているというふうに考えています。
  64. 広田一

    ○広田一君 そうしたら、それに関連をいたしまして、私自身は一連のこの地ならし発言の意図は一体何なのかというふうに思ってしまうわけでございます。それに対して金融市場も呼応をいたしておりまして、量的緩和解除を盛り込んで、短期、中期の金利上昇をいたしておりますし、逆にこういったことを踏まえますと、こちらが何か予断を持たずにこのような状況を見たときに、三月以降いつ解除があってもおかしくないのではないかなというふうに思います。  それでは、ちょっと逆に、前回の金融政策決定会合で供給面、需要面でもバランスが良く、部門別でも企業部門好調と、家計部門、金融部門も着実に回復していると。こういった中でも、まだ現時点で安定的にゼロ以上とは言えないというふうな判断に至った最も大きな理由は何でしょうか、お伺いしたいと思います。
  65. 白川方明

    参考人(白川方明君) 消費者物価指数の動きでございますけれども、全国で生鮮食品を除くベースで見てまいりますと、過去四か月間の間にマイナス〇・一、ゼロ、それからプラス〇・一という形で少しずつマイナスからプラスの世界に今転じているということでございます。この数字が今後どういうふうになっていくかということでございますけれども、これは物価規定する基本的な要因をまず我々チェックいたしまして、その上でまた計数の動きもチェックしようということでございます。  基本的な要因につきましては、午前中、総裁からお答えいたしましたとおり、経済全体の需給バランスが着実に改善をしているということでございますし、それからユニット・レーバー・コストの方も、これがマイナス方向に寄与するという状況がだんだん減衰しているということでございますし、さらに先々の物価観も着実に変化をしてきているということでございます。そういう意味で、物価の大きな流れというのは確実に変化をしてきているというふうに思います。  他方、計数につきましては先ほど申し上げたような数字でございまして、毎月発表されていきます消費者物価指数の動きを注意深く見て、その上で判断をしたいということでございまして、先月につきましてはまだ安定的にゼロ%を上回ったというふうに判断をすることは適当でないというふうに判断したところでございます。
  66. 広田一

    ○広田一君 それでは次に、この量的緩和政策自体の目的と効果についてお伺いをいたします。  出口策を考えるにはそもそも政策の効果について振り返る必要があると考えます。よく量的緩和政策は時間軸効果のシグナル効果を強めたとか金融システムの不安を和らげたとか言われております。一方で、山口泰前日銀副総裁が述べていますように、量的緩和政策そのものが景気の押し上げ効果、物価の押し上げ効果にどれくらいあったのかよく分からないというふうな論文も書いているわけでございますが。  そこで、この量的緩和政策における短期金利の効果、長期金利の効果、資産価格への効果、また金融機関のポートフォリオの組替え、そういった効果について、量的緩和政策の景気や物価への与えた影響をどのように評価しているのか、御所見をお伺いしたいと思います。
  67. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  量的緩和政策という言葉で表します内容というのは二つの内容がございます。一つは、潤沢に資金を供給して金融機関所要準備を上回る金額を供給するということでございます。二つ目は、そうした下で実現しますゼロ金利状態、これを消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になるまで続けるという、そういう明確な約束、この二つの部分から成り立っております。  この二つの部分のうち、まず最初の潤沢な資金の供給の方でございますけれども、この点につきましては、今委員も御指摘のとおり、金融システム不安が強かった時期においては、金融機関流動性需要にこたえることによりまして金融市場の安定や緩和的な金融環境を維持しまして、経済活動の収縮を回避するのに大変大きな効果を発揮したというふうに考えております。  一方、消費者物価指数に基づく約束、これによってゼロ金利状態を続けるという約束したわけでございますけれども物価が下落を続ける下ではこのゼロ金利の継続予想が中長期の金利の低位の安定に貢献したということでございます。こうした効果は量的緩和政策を始めましてずっとございましたけれども、特に現在のように景気が強くなってきて、企業の収益率も上がってきて、その中でなおかつゼロ金利が続いているということが企業活動を支える上で現在大きな効果を発揮しているというふうに思っております。  他方、今委員から御質問のございましたポートフォリオのリバランス、資産の組替え、こうしたことにつきましては、理論の上ではそうしたことももちろん排除できません。これは現実にデータを見て判断していくことでございますけれども、そうしたルートを通じて経済を刺激する効果が大きかったかというと、これまでのところ限定的であったというふうに考えております。  いずれにしましても、こうした政策の効果は経済物価情勢金融システムの状況に応じて変化してまいります。現在、金融システム不安が大きく後退し物価が下落から上昇に転じてきている、この下では量的緩和政策の効果は短期金利がゼロであるということによる効果が中心になっているというふうに判断しております。
  68. 広田一

    ○広田一君 どうもありがとうございました。  続きまして、量的緩和政策の副作用についてお伺いをいたします。  日本銀行さんは、今回の量的緩和政策を導入する際の説明では、今後、コールレートの変動は市場にゆだねると、そして資金需要が圧迫する際にはある程度上昇したり、信用リスクの差が金利に反映される余地も広がると。言わば市場メカニズムをできるだけ損なわないように配慮しつつ、ゼロ金利政策の有する金融緩和効果を実現するというふうに述べておりますけれども、結果といたしまして、期末後や年末後に生じる一時的な金利上昇といった通常の季節性も封殺されたというふうな指摘がございます。  こういった指摘に対しまして、当初の導入時の御説明との関係、この資金調整機能を失ったことに対する副作用についてのお考えをお示しいただきたいと思います。
  69. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  量的緩和政策を採用しました二〇〇一年の三月の段階で、私ども、量をターゲットにする政策の一つの効果として、量をターゲットにする限り短期金融市場での金利が何がしか変動することが許容されて、その結果として市場機能も最低限維持されていくというふうに考えたところでございます。  その後、量的緩和政策を採用した後、先ほども少し触れましたけれども日本金融システムをめぐって大変大きな不安がございまして、そうした下で、まず一番大事なことはこの金融システムの不安定性を回避すると、で、デフレスパイラルを防いでいくと、これが一番大きな課題でございました。結果として、資金を大量に供給していく、その結果として短期金融市場における金利がその分低下をしていくということで、結果としては短期金融市場機能が低下をしてきたということは、これは事実でございます。これは確かに副作用でございますけれども、しかし一方で、経済全体の安定を図るというそういう政策目的との関係で、効果とそれからデメリットを比較考量したということでございます。  いずれにせよ、短期金融市場の機能が今後回復していくということが大変大事だというふうに思っておりまして、午前中も少し申し上げましたけれども、最近、短期金融市場におきまして市場機能が回復してくるという動きが今出てきておりますけれども、私どもはそれは大変望ましい動きだというふうに判断しております。
  70. 広田一

    ○広田一君 次に、量的緩和政策解除意味するメッセージについてお伺いをしたいと思います。  日銀の政策委員でもありました東京大学の植田和男教授が、今回の量的緩和解除というものは将来の金利引上げのメッセージを送ることになるというふうに理解していると述べております。ただ、一方で、日銀の皆さんは、これは引締めではないんだというふうなことをおっしゃっているわけですけれども現状のこの量的緩和政策解除意味するメッセージについて、先ほどの専門家の意見も踏まえて、現時点での御所見をお伺いできればと思います。
  71. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 私どもは、繰り返し御説明しておりますところは、量的緩和政策枠組み解除そのものは直ちに金融引締めに直結するわけではないということを申し上げております。そして、量的緩和政策枠組み解除の後一体どうなるのかという点につきましては、昨年十月の展望レポートで一応の概念整理をさしていただいておりまして、枠組み解除後は極めて低い金利水準と、そういう状況を経て、いずれ段階的に経済物価水準に見合った、いわゆる中立的な金利水準に徐々に引き上げていくと、こういう方向性を既にお示しいたしております。これら全体を、物価上昇圧力が強まらない限りは余裕を持ってやっていくというふうにも述べております。  で、植田前政策委員の論文及び書物も私、詳しく読んでおりますけれども量的緩和政策枠組み修正後は、将来は金利が上がる方向だということは、これは確かでございます。私どもも、極めて低い金利水準を経て段階的に、いわゆる中立的な金利水準に余裕を持ったペースで修正していくでしょうということはもう一応申し上げているわけですが、この段階の終結過程までは決して金融引締めではないわけですね。中立的な金利水準以下のところをゆっくり調整していくということでありまして、本当の金融引締めは、必要が生じて、そこから先、本当の経済そのもののスピードを抑制するような金利水準に設定する過程に入る必要が生じるかどうかということでして、私どもの意図は、そういう引き締めなければならないような状況を手前に引き寄せないような形で、つまり景気の安定的な回復を長続きさせるような金融政策運営を今後とも続けたいというところが本旨でございます。  したがいまして、ゼロ金利をスタートにして金利が上がる方向か下がる方向かといえば、必ずそれは上がる方向ですけれども、いわゆる経済のスピード調整をしなければいけないような引締め過程ということを視野に入れて量的緩和政策解除を行うということではないわけでございます。
  72. 広田一

    ○広田一君 緩和解除のメッセージ性については様々な解釈、とらえ方があろうかと思いますので、今後とも市場との対話というものを重視して取り組んでいただければと思います。  それでは最後に、日銀の買い切りオペにつきましてお伺いをしたいと思います。  私は、量的緩和政策解除後に伴う日銀の当座預金残高削減は、異常な政策をやめるということだけではなくて、日銀のバランスシートの健全性を取り戻すことにも寄与しなければならないと思います。昨今のペースで日銀が国債の大量購入を続けると、日銀のバランスシートについても問題視をされかねません。あってはならないことなんですけれども、仮に国債への信頼が揺らぐ状況になったとき、国債を大量に保有している日銀への信頼は揺らぎ、ひいては日銀券への不信にもつながりかねません。  そのようなリスクをできるだけ排除することも日本銀行の大切な役割、使命だと思いますけれども、この点について、まず御所見をお伺いいたします。
  73. 武藤敏郎

    参考人武藤敏郎君) 長期国債の買い切りオペでございますけれども、現在のこの量的緩和政策の下で円滑な資金供給を実現するという上で必要というふうに判断される場合に、この長期国債の買い切りオペを実施してまいりました。同時に、金融市場調節柔軟性を確保するという観点から、この上限を設けまして銀行券発行残高というものを上限としてきたということでございます。  量的緩和解除後、これがどうなるのかというのが御質問の御趣旨かと思いますが、この点につきましては、やはりその金融市場状況、あるいは金融調節上の対応力次第というふうに申し上げるほかはないのかと思います。その時点その時点で今申し上げましたような金融市場状況等を点検しまして、その上で何が適切かという判断をしていくということになろうかと思っております。
  74. 広田一

    ○広田一君 武藤総裁は昨年十月二十日の私の御質問に対しまして、長期国債の買入れにつきましては、先ほど言ったように、日銀券の発行残高を上限とすることを堅持するという方針の下で、日銀として長期国債の買入れを増額しなくても量的緩和政策の実施が行うことができると判断しているというふうに述べられており、今もそのお考えは変わらないだろうと思います。  そうしますと、解除後は、当面は別にいたしまして、今のように毎月一・二兆円もの国債を買い続ける理由はなくなるというふうに考えるのが自然だろうというふうに思います。  また、市場関係者お話ですと、残高を引き上げるのには、一定、技術的には数か月掛かるというふうに言われておりまして、他の国債の償還分であるとか、他の手形買い切りオペなどとの関係もあるとは思うんですけれども、現在の一・二兆円の長期国債の買い切りオペを継続することは、純粋に考えてスムーズな資金吸収を進める上でも足かせになるのではないかというふうに思いますけれども、この点についての御所見をお伺いします。
  75. 武藤敏郎

    参考人武藤敏郎君) 昨年の秋に委員からお話、御質問をいただいたときに、私の理解は、三十から三十五兆円規模の流動性を、当座預金残高を供給する上でこの長期国債の買い切りオペを増やすかどうかという、そういう観点から見ますと、そういう行動を取らなくてもこの現在の、当時続けておりました、現在でも続いておるわけでございますけれども量的緩和政策は堅持できると、そういう趣旨のことを申し上げました。  今回の、今度の御趣旨は、量的緩和解除ということになれば更にどうなるのかということだと思います。  おっしゃるとおり、この長国買入れの経緯から、御指摘にありますような解除段階では、また違った、御指摘のような判断があるのじゃないかということかもしれませんけれども、私が先ほど申し上げましたのは、その判断は、結局、金融市場の今後の状況、それから金融調節上の対応力ということを点検しながら判断していくと、それに尽きるのではないかというふうに考えているということを申し上げているわけでございます。
  76. 広田一

    ○広田一君 時間が来ましたので最後の質問なんですけれども、そう考えますと、結果として、この国債の買い切りオペ額一・二兆円、これを削減する可能性も高いというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。明確にお答えをいただければと思います。お願いします。
  77. 武藤敏郎

    参考人武藤敏郎君) そのように申し上げているつもりはございません。  私が申し上げておりますのは、結局、今後の状況というものをよく点検して、その段階判断していくということに尽きるということを申し上げているつもりでございます。
  78. 広田一

    ○広田一君 どうもありがとうございました。
  79. 平野達男

    ○平野達男君 民主党・新緑風会の平野です。  今日は総裁始め皆様方、どうもありがとうございます。  私は、量的緩和政策については、これがいいとか悪いとかということについては必ずしも判断できる能力もないし、今までこれについていろいろ質問をしてきましたけれども、これはどういう考え方でこういうことになっているんでしょうかという客観的な考え方を一応聞いてきたつもりです。  今回は、そういう延長線上に立って質問させていただくわけでありますけれども、今回は、どうも量的政策緩和、これを解除するらしいという状況ですから、今度は、じゃ本当に解除して大丈夫、それから、それはどういう考え方でやるんでしょうかという、やや否定的な考え方でちょっと質問することになると思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  まず一点目なんですが、デフレという言葉がもう当たり前の言葉として今定着していますが、じゃデフレって何だといいますと、物価が継続的に下落する状態というあいまいもことした概念規定があったり、人によっていろいろ定義が違うようです。ただ、どうもデフレについての脱却はまだなされていないという認識はまず一致しているような感じがするんですが、まず簡単に、日銀として、今、日本経済というのはまだデフレからの脱却の途上にあるという認識で、それでよろしいんでしょうか。
  80. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 経済は常に動くものでございまして、実は私の個人的な感想では、デフレというレッテルを余り強く張り過ぎたり、かつてのように円高不況とかいうふうなレッテルを強く張り過ぎたり、一定のレッテルの下に経済を長く見続けるということの中に非常なリスクが含まれていると、これは私の個人的な感触でございます。  その話は別にいたしまして、現在ただいまの時点におきましても、デフレという言葉でもって表現される方々の中身を静かにうかがっておりますと、やっぱり一般物価の下落に焦点を当てておられる方、資産価格の下落に焦点を当てておられる方、経済の活動の落ち込みとか経済活動の不十分さということに焦点を当てておられる方、かなり幅がございますし、あるいは物価の動きにつきましても、どれぐらいの期間でというふうなことについても随分幅があるというふうに思っております。  そういうことではございますけれども、私ども金融政策運営していく、つまり、より望ましい日本経済の姿を実現していくという観点からデフレということを考えました場合には、大切なことは、景気が持続的な回復を続けると、今後とも続けると。そして、物価が基調として下落からプラス状況に転じて、しかもそれが安定的であると。プラス状況に転じた途端に、今度は人々が本当のインフレを心配するような方向に急に走らないと。プラスであって、かつ安定的な状況として推移する、そういうことが見込まれる状況であるかどうかということを的確に判断していくということだと思います。  現状は、日本経済は、景気は着実に回復を続けておりますし、今後の見通しも私どもはそうであるということに確信を持っております。そして、消費者物価の前年比も既に若干のプラスで推移しているという状況でございますので、今申し上げました、景気が持続的な回復を続ける下で、物価が基調として安定的なプラスに転じていくと見込まれるかどうかということであれば、着実にそういう方向日本経済は歩を進めているというふうに判断いたしております。
  81. 平野達男

    ○平野達男君 デフレの定義がしっかりしないためになかなかそういう難しい説明になるような感じがするんですが、一般的にはやっぱり今、私は、一般の国民にすればまだまだ物価下落が何となく続いているんでしょうねと、その状態がまずデフレだという認識だろうと思うんですよね。しかし、今のような説明ですと、私らは財政金融委員会の場で何回もお話聞いていますからある程度分かるんですが、どうも国民が聞いたときにはちょっと分かりづらいなという感じはします。  それで、今のお話にもありましたけれども量的緩和政策解除経済を持続的な安定成長軌道に乗せていく、金融政策を徐々に正常化するための通過点であるというようなことを総裁は衆議院の財政金融委員会あるいは予算委員会答弁されていたんではないかと思いますけれども、この意味するところはどういうことなんでしょうか。少し具体的に御説明いただけるでしょうか。
  82. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 金融政策は、日本経済を最終的に物価安定の下で持続的な景気回復というものが、必要以上の金融緩和のサポートを頼りにすることなく、自律的にそういう姿で回転していくという姿を実現していくことでございます。  その実現に至る過程は、金融政策が一連の姿、変化を遂げながら最後までこれをサポートしていくと、こういうことでございまして、経済が悪い方向に動き、物価の下落と悪い方向で相互が共鳴しながら流れていくリスクがある時期から、景気の回復が始まる時期、そして物価についても下げ止まりという段階になる時期、そして今のように、景気は着実に回復する、物価上昇率という点では安定的なプラス状況というのがもう目前と、こういうふうな状況。この先は、仮に物価が安定的にプラスになっても金融緩和、金融の超緩和とかあるいは緩和とかいうもので支え続けなければならない、あるいはそういう支えが必要でなくなるところまでいつ行くかという問題にだんだんなってくると思います。  したがいまして、異例金融政策としての量的緩和、続いて極めて低い金利水準、その後段階的に、ゆとりを持ってではございますが、段階的に中立的な金利水準へ持っていく過程、これら金融政策の一連の過程としてとらえまして、最終的な望ましい経済の姿にたどり着きたいと。一番最初の段階異例金融政策枠組みから脱却するというのは、これは一連のプロセス一つの通過点であると、こういうふうに申し上げているわけでございます。
  83. 平野達男

    ○平野達男君 そこで、量的緩和政策なんですが、これは二つの要素から成り立っているわけですね。  これは、一つ目は、金融機関が準備金制度などにより預け入れを求められている額を大幅に上回る当座預金を供給すること、これは量の概念だろうと思います。二つ目は、潤沢な資金供給をCIPが安定的に対前年比ゼロ%以上になるまで継続することを約束するというんですね。約束ですね。これは時間軸の設定だと思うんですが、この二つの要素から成り立っていると思うんですが。  それでは、この量的緩和政策解除解除というふうに先ほど来ずっと言葉が出ていますが、何をもって解除と言うのか。今までの話聞いていますと、どうもこの約束を履行した段階解除と言うのか。しかしその一方で、量的な点に着目しますと、日銀当座預金には準備金制度から求められている当座預金よりもはるかに潤沢な資金供給がされているという状態は続くわけですね。しからば、この状態は何と言うんだろうかと。  一番分かりやすいのは、量的緩和政策解除というのは、まず宣言から、いわゆる所要準備金まで一回下げましたという全体のプロセス解除だというのは何となく分かりやすいような感じがするんですが、どうもその辺り、定義がちょっとあいまいなままやっているような感じ、議論がされているような感じがしますので、改めて、この量的緩和政策解除ということの定義についてちょっとお聞きしたいと思います。
  84. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  量的緩和政策枠組みでございますけれども、今委員指摘のとおり、二つの柱から成っております。  一つは、金融機関準備預金制度等によって預け入れを求めている金額を大幅に上回る日本銀行当座預金を供給するということでございますし、第二の柱は、そうした潤沢な資金供給を消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になるまで続けるという約束、この二つから成り立っておるわけでございます。したがいまして、量的緩和政策解除するということは、この二つのことがなくなるということでございます。  具体的に申し上げますと、量的緩和解除するということは、金融調節の主たる操作目標日本銀行当座預金残高から短期金利変更するとともに、日本銀行当座預金残高所要準備水準に向けて削減していくということになるということでございます。  ただ、量的緩和政策の下で、各金融機関は長期間にわたりまして、日本銀行からの大量の資金供給、多額当座預金残高を前提として資金繰りを行ってきているという事実がございます。そうした下で、短期金融市場の機能は低下をしているということでございます。したがいまして、量的緩和解除した後、短期金融市場の機能は徐々に回復してくるというふうに思いますけれども、しかし、しばらくの間は、金融市場における円滑な資金の運用、調達といった観点から注意が必要なプロセスであるというふうに思います。したがいまして、量的緩和解除したその時点で、瞬時に量が所要準備水準調節されるということでなくて、若干の時間を掛けて当座預金残高削減していくということでございます。  いずれにしましても、量的緩和政策解除するということは何かと申し上げますと、先ほど申し上げた二つのこと、これがなくなった、短期金利操作目標とする金融政策のレジームに戻っていくということでございます。
  85. 平野達男

    ○平野達男君 ちょっと今の説明で分かりづらかったんですが、まず約束を解除するというのは、今日から約束を解除しますよと、約束って、ごめんなさい、CIPが安定的に対前年比──CPIですね、ごめんなさい、CPIが継続的に安定的にゼロ%以上ですよということで、その状態に達しましたというのは、これは通過点として分かるんですね。  もう一つの話として、その準備金制度なんですが、今のお話では、所要準備金までいったん下げた段階をもって量的緩和解除という、そういうお話ですか。
  86. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 明確に申し上げますと、現在は量的緩和政策枠組み、つまり金融政策操作目標を量、日銀の当座預け金に置いているわけです。この操作目標を量、つまり当座預金から金利に切り替えると、そのことを決定することをもって切替えということでございます。  しかし、金利政策の変更であれば翌朝から次の金利になりますけれども、この枠組み修正の場合には、既往の残高を吸収していかなきゃいけません。これは、その自後の経過措置としてそれは吸収していくということでございます。
  87. 平野達男

    ○平野達男君 そうすると、ちょっと言葉にこだわるようですけれども解除というのは、要するに目標設定をやめますと、それからCPIが、当初から約束しているように、安定的にゼロ%以上になる状態になりましたと、ということを宣言したことをもって解除なんですね。  そうしますと、その後の措置としては、繰り返しになりますけれども日銀当座預金には三十兆なり二十五兆なり、これ理屈からいいますと、買いオペを、オーバーナイト物のゼロ金利に焦点を当てながらこれからの金融政策を続けていくということですから、もし解除を宣言して、次からぼんとその金利が、オーバーナイト金利が上がることもありますから、そのときは急いで買いオペやらなくちゃならないかもしれない。あるいは、何にもしなくても、もうオーバーナイト金利というのはゼロ%でずっと移動するかもしれない。この場合は、日銀の担当者の説明によりますと、黙ってても責任準備金の、所要準備金までの水準には三か月ぐらいで落ちますという話もありました。  それで、もし仮にゼロ%の金利がぱかぱかっと動き出しますと、実は三十兆という規模がずっと続くかもしれない、この期間がまるっきし分からなくなるという。しかし、そうはさりながら、ゼロ金利量的緩和政策解除するんですから、まさか三十兆円のやつがずっと続くなんという、そんなことが予想される段階で日銀さんは解除するわけじゃないです。だから、多分その中の適当な水準の中で落ち着くだろうという見通しの中でやるだろうと思うんです。  しかし、そうはいっても、じゃあその経過措置というのは一体どこまで続くんだろうかということが事実上見えなくなりますね。そうすると、私の理解では、量的緩和解除といいながら、実はその余波がずっとこう続くと。その余波という経過措置というのがいつまで続くんだろうということがどうも分からないまま今この量的緩和解除というのの議論がされているんじゃないかなという気がしまして、これは実はいろんな市場、私は市場がどういうふうに反応するかというのは分かりませんが、定義をずっと追っていったときにどうなんだろうかなという疑問がずっとちょっとぬぐえないんですが、そこはどのように説明されるんでしょうか。
  88. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 明確に量的緩和枠組み脱却の日というのは、政策委員会において操作目標金利に替えますということを決定した瞬間でございます。既往の非常に膨大な金額の流動性を吸収していく過程は事実上のその後の経過措置として続いていくということでありますが、市場関心はもうその日から金利に移り、残りの量的、何といいますか、準備預金額がどれぐらいのペースで減っていくかということについては市場関心は急速に薄れていくというふうに思います。  そして、厳密に所要準備額である、例えば仮にそれを八兆として、八兆という残高が毎日固定的に続くわけではないわけでございます。八兆というのは、一か月続いて平均残高として金融機関が持つことを求められていると。毎日の金融市場は資金の余剰の日もあれば不足の日もあるということですので、毎日毎日の流動性残高は当然平常時においても波を打つということでありますので、この経過期間において流動性残高がどれぐらいのペースで減るかと。恐らく、常識的に数か月でかなりノーマルな水準になっていくと思いますが、そのことからは市場関心は急速に薄れるだろうというふうに私は考えています。
  89. 平野達男

    ○平野達男君 日銀の当座預金残高が幾らかは市場からの関心が薄れるというのは、私には瞬間的にはちょっとよく分かりません。それはなぜかといいますと、日銀当座預金は五年掛けてゆっくり上がってきたわけです。二十兆とか三十兆とか、ゼロから、三十兆から三十五兆とこう段階的に上げてきたわけです。その都度に日銀の当座預金残高というのは市場が着目してきたわけです。解除をもって市場が日銀当座預金残高が幾らかなんというのは注目しませんというのは、ちょっと私には理解できません。  もう本当に注目してないんなら、あとはもうそのままほっといてもいいんですけれども、ここで私は疑問が生じるのは、やり方の、その解除の仕方の問題として、五年掛けてゆっくり上げてきたやつを何で要するに段階的に下げていかないんだろうか。つまり、日銀当座預金残高を今ゼロから、三十兆から三十五兆になってますが、取りあえずは二十兆に置きましょうと、十五兆に置きましょうと、というようなスケジュールを作ってやることもこれは理屈上可能じゃないかと思うんです。なぜこういうことをやらないのか。その背景は、もう解除の瞬間に市場残高に一切関心を持たなくなるから意味がなくなるんだといえば、それはそれで答えだと思うんですが、そこはどのようにお考えでしょうか。
  90. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) もう少し御丁寧に申し上げなければならないと思います。  量的ターゲットを引き上げていく過程と後始末として量を減らしていく過程とでは、かなり内容が非対称的でございます。  引き上げてきた過程は、単に数字に意味があったということではないわけでございます。つまり、信用不安というものを常に抱き抱えながら経済が悪い方向に行くリスクというのは、金融市場の中においてあるときある残高があったとしても、それは資金の余裕のある金融機関と資金に余裕のない金融機関というのは毎日金融市場の中で存在するわけですけれども、資金の余裕のある金融機関は、信用不安のリスクが感ずるときには、自分のところでお金が余っていてもそれは市場に放出しないわけです。したがって、資金繰りがその日不足の金融機関は常にその日の資金繰りが付くかどうかということにリスクを感ずるマーケットでございます。したがって、日本銀行が追加的な流動性供給政策を取るかどうかということは非常な強い具体的な関心事項なわけでございます。  しかし、今は経済が順調に動き始めている。そして、昨年の四月からペイオフ全面解禁になり、金融市場の中において、出し手は安心してお金を出す、取り手も何も日本銀行のオペレーションに直接すがり付かなくても市場の中で資金調達ができるという状況になってきていますので、市場の中の資金需給の本質が変わってきていると。そういう意味で、今流動性を吸収していく過程においては関心が薄れるというのはそういう意味でございます。死活問題だったものが、今死活問題でない部分が大きくなっているということでございます。
  91. 平野達男

    ○平野達男君 先ほど来議論の中にある量的緩和の効果の中に、例えば、市場には潤沢に資金が供給されているから安く銀行から借りられてドルを買ってドル投資しようという、だからこれが円安にちょっと方向に働いているんだという見方とか、あるいは逆に、銀行からお金を安く借りて株に投資するから株価に影響を与えているんだとか、そういう見方もあります。日銀さんは、それは分からないということで、そういう効果があったかどうかというのは必ずしもはっきり言えないという、そういう答弁だと思います。  しかし、問題は、市場はどうもそういうふうに見ているかもしれないということですね。その中で、量的緩和というのが、日銀当座預金関心がないというふうな方ではなくて、実際これは減っていくだろうというふうに、市場がどのように考えるかというのは、現に量的緩和されたことによって伴う株価に与える影響、それから円安、為替に与える影響とか、そういったことなんかも十分踏まえながら考えていく必要があるんじゃないかなという感じがするんですが、それはどのようにお考えでしょうか。
  92. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) おっしゃることは非常によく分かります。非常にたくさんの流動性を吸収していく過程で、その流動性がいかに使われていたかによってその巻き戻し過程にはある種の混乱のリスクというのはあると思います。したがって、そこは慎重に見ていこうということでございますが、仮に、もはや量的緩和がこれ以上必要がないという判断に至った場合に、それ以上これを延引する場合のリスクの方がより大きいと、そういうふうに考えなければいけない問題でございます。
  93. 平野達男

    ○平野達男君 それでは、ちょっと角度を変えてちょっと質問をさしていただきますけれども、この量的緩和政策のもう一つ期待される効果ということでフィッシャー効果というのがあるというふうに、これは学問的な話なのかどうか分かりませんが、要するに、名目金利は実質金利期待インフレ率との和であるということから、名目金利がある一定水準で固定されていて期待インフレ率が上がれば実質金利は下がると、実質金利が下がることによってそれが景気刺激されるという、そういう理屈ですね。  で、この量的緩和政策の中には、一時、それを求める、期待する声もありました。しかし、御承知のように、いわゆる流動性のある状態の中では目詰まりが起こって期待インフレも何も起こってこないと。だから、これはもうフィッシャー効果、そんなものは議論なんてことは出てこないんだということは私も分かりました。  しかし今、日銀さんはこうも言っているんですね。物価が下落から、金融システムの不安は大きく後退している、これはこのとおりだと思います。次に、物価が下落から上昇に転じるとの見方が増加している、これもそのとおりだと思うんです。で、今この言葉だけとらえますと、実は名目金利をちゃんと抑えていけば、の上昇率を抑えていけば実質金利は下がるという状況が出てくるわけですね。  確かに、今これからオーバーナイト物で、ゼロ金利に着目、金利をとにかくゼロ金利に置くような金融操作を続けていますということを宣言するんですが、それよりは量的緩和をある程度継続しておいて、その方がこれは絶対的にもう金利はゼロ%以上上がらないという安心感を与えますから、その一方で物価上昇期待が高まってくれば、失礼しました、期待インフレ率が出てくれば、当然これはもう実質金利が下がるということは、これはっきり出てくるわけですね。  そうすると、これは景気刺激策だという、効果が出てくるというふうに言われているわけですが、正に今ここ、私は冒頭の中で、今デフレというのはどういう状況にあるんでしょうかと。私の認識の中ではまだ、まあ単純にデフレからの今脱却途上にあると、デフレからの脱却途上にあるときにはどうするかというのはやっぱり景気刺激のいろんな政策が欲しいと、が必要であると。その中でこの量的緩和政策というのは、まあ初めて、初めてというか、景気刺激効果というのが出てくる状況にあるんじゃないかなという感じもするわけです。  もちろん、それはこの揺り返しで、実は過剰流動性を一杯用意してあるわけですから、本当に景気が良くなってきた、さあ投資しようとなりますと一遍にインフレに大振れする可能性もあるわけでして、その芽は摘まなくちゃならないというのも分かります。しかし、この量的緩和政策をここまで続けてきて、やっと今、日本経済が良くなってきたという途上にあったときに、この機能をもうちょっと活用してもいいんじゃないかという見方は、これ出てくると思うんですが、これは日銀の中でどういう議論、そういう議論というのはなかったんでしょうか。
  94. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 物価上昇率物価の変化率というものがプラスになって、それが安定的に続くということであれば、人々の先行きに対する物価観も当然物価上昇方向期待インフレ率が形成されると、金利水準を一定に保てば実質金利が下がる、いわゆるフィッシャー効果的なものが出ると。この点につきましては、量的緩和政策枠組みの下でも、コアはゼロ金利でございますので、量的緩和政策枠組みから脱却して名目金利をゼロというふうに置いた場合と、その点には変わりがないわけでございます。  量的緩和政策枠組みは、量というものがそれ自身金融不安を防ぐというふうな意味とか、あるいは別途学者が考えておられたようなポートフォーリオ・リバランス効果があるとかいうふうな場合でございますけれども、一応それを抜きに考えますと、金利水準を中心に考える限りは同じなんでございますが、違いますのは、そういうふうに実質金利がどんどん下がっていくいわゆる超緩和という状況が長く続いた場合に、もしかして何かの弊害が出た場合に、金利政策に戻っていれば機動性があります。翌日からでも金利調整が可能です。しかし、量的緩和政策枠組みを残していて、数か月も量の調節に掛かるというふうなことを我々が責任持ってやりますということは絶対に言えないことでございます。
  95. 平野達男

    ○平野達男君 よく分かったような気がします。  ただ、ここまでというか、繰り返しになりますけど、三十兆から三十五兆まで積んだと、あの量というのは、確かにシステミックリスクを解除する、回避するという意味では大きな役割を果たしたということだと思うんですが、このいわゆるフィッシャー効果については、前国会でしたか前々国会でしたか、総裁にいろいろお聞きしたことがございますけれども、この効果というのを今本当に発現できる機会にあるんで、もうちょっと慎重にやってもいいんじゃないかなという感じがちょっとしましたんで、ちょっとお聞きしました。  それで、次の質問に移りますけれども、今ですね、今ですか、ずうっと名目成長率金利関係の話が国会でずうっと議論されています。まあそれが何が正しいかというのは今私もよく分かりませんが、ただ、今の状況から見ると、少なくても国債長期金利の方が名目成長率よりも高いという状態になっていると。そういう中で今回量的緩和政策解除しますと、成長率の、名目成長率がまだ大きく伸びる状況にない中で短期金利、ひいては長期金利にも影響を与えるような政策の導入を先にやるということになるんだろうと思うんです。  その一方で、竹中大臣は、いわゆる名目成長率を上げて金利を低く抑えるような政策が必要ではないかというようなことを経済財政諮問会議で発言しています。じゃ、それはどういう意味かということを昨日の財政金融委員会で岡田前代表が質問をしたら、要するに市場メカニズムをゆがめるような話じゃないんだという答弁を竹中大臣はされていましたけれども、しかし量的緩和政策自体がもう既にかなり金利にも影響を与える、かなり影響を与える政策でありますから、この量的緩和政策解除自体も実は金利に大きな影響を与える政策であるということは、これは間違いないだろうと思うんです。  要するに、質問は何かといいますと、片っ方でそういう政策の、政府の中には、まず成長率をきっちり上げる政策を取ってから、取る一方で金利はできるだけやっぱり抑制的にすべきだという意見がある中で、こういう解除を行うということについての不協和音というのがこれからも出てくることはないのかどうか。もちろんこれは日銀は独立性ということで、この解除の時期はいつやるかというのは日銀が判断することですけれども、この政府とのすり合わせというのが本当に果たしてどこまでしっかりできているのかということについて、ちょっと御見解をお伺いしたいと思います。
  96. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 昨日も政府経済見通しの新しいバージョンを発表なさいました。当面の経済見通しにつきまして、日本銀行政府との間で判断に全く相違がないということを改めて確認さしていただいたわけでございます。それに加えまして、物価安定の下での持続的成長を実現していくという一番大事な経済政策の運営方針についても相違がないということはかねがね私ども確認させていただいているところでございます。  さらに、先ほどの委員の御意見では、よりロングランに見て、経済運営の姿、成長率金利との関係をどう考えるかというお話であったと思います。  この点につきまして、私自身の見解として度々国会でもあるいは記者会見の場でも申し上げておりますことは、物価安定の下で高い名目成長率が実現でき、経済が活性化し、財政の再建も容易になるということであれば、それはそんなに幸せなことは国民にとってないんだけれども、今、日本に与えられた条件で本当にそういったことがやすやすと実現可能なのであろうかということが基本的問題だというふうに申し上げています。  つまり、現在の日本実質潜在成長能力というのは、計算の仕方によって多少幅がありますけれども、多くの計算では一%台と、こう言われています。これから大事なことは、人口が減少をするという逆風の中でもこの実質潜在成長能力を引き上げていく、そして実質で高い成長率を上げて、安定的な物価を上乗せして、結果として出てくる名目成長率という過程を取らざるを得ないんではないかと。実現可能か不可能か分からないような名目成長率を先行してターゲットに立てて、差額はインフレ率で埋めるということになりかねないような物の考え方は大変危険だということを強く申し上げているわけでございます。
  97. 平野達男

    ○平野達男君 じゃ、先ほどの量的緩和政策解除のそのプロセスの話にちょっと、プロセスというか、宣言した後の経過措置というんですか、そこの話にもう一回ちょっと戻りますが、量的緩和政策解除をしますよというふうに言った後、結局、日銀当座預金を縮小する方向で資金を吸収しなければならない。じゃ、しからばどういう手段で吸収するんだろうかということについては、具体的な方策というのはこれは出されるんでしょうか。  私は、その中で少なくとも、まあ出されるか出されないかは別として、長期国債の売りはしないということは少なくとも私は宣言しておく必要があるんじゃないかなというふうに思うんですが、これについての御見解をちょっと伺っておきたいと思います。
  98. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  量的緩和解除しました後、資金を吸収するその方法でございますけれども、これは幾つかの方法がございます。  まず一つは、財政資金、それから銀行券を含めまして私ども資金需給と呼んでおりますけれども、外生的な当座預金の変動要因、これが例えば減る方向に働きますと、実は自然体でいきましても当座預金残高が減っていくということ、これがまず一つの方法でございます。  それから二つ目の方法は、日本銀行のオペ、これは今大変多くの金額を実行しておりますけれども、このオペの金額、オペが期日を迎えまして、その日に再度オペをオファーしないと、その分その当座預金の供給が減ってくるということがございます。  で、どういう方法がいいかはそのときの金融市場状況を見ながら判断をしていくということでございまして、どの程度の時間を掛けて減らしていくか、その際にどういうふうな方法を使うかということにつきましては、その時点での日本銀行の短期オペによる資金供給を含めまして金融調節上の対応力ということに基本的には規定されます。そうした点検を踏まえた上で政策委員会において適切に判断していくということでございます。  ただ、いずれにしましても、その際、私どもが恣意的にそれを決めていくのではなく、あくまでも量的緩和解除する、それを決めたその瞬間から今度はターゲットは量から金利に移るわけでございますけれども、短期金融市場において安定的に金利が形成されるように円滑に量を減らしていく、そのためにその方法を選んでいくということでございます。
  99. 平野達男

    ○平野達男君 じゃ、ちょっと時間も迫ってまいりましたんで多分最後の質問になるかと思いますが、まあ日本経済は順調に回復しているということは、平均レベルでは確かにそのとおりだろうと思います。設備投資なんかもどんどん増えていますし、雇用者所得はまだ増えているとは私は思いませんが、平均値で見るとやっぱりそういう傾向にあるということは事実だろうと思います。しかし、その一方で、今日も何人かの委員から議論がございましたけれども、格差というものがやっぱり広がっているんじゃないかと。  確かに、例えば有効求人倍率なんかで見ますと、岩手県でも秋田県でも最悪の状況は脱しています。今〇・六とか、しかし〇・六とか〇・七です。その一方で、景気がいいと言われるような愛知県だとかあるいはその他の県ではかなり高い有効求人倍率になっている。全国平均では一・〇なんです。全体的に上がっているんですけど、しかし格差は、いいところと悪いところの格差はどんどん広がっているという状況にありますね、この有効求人倍率の指標を取ってみますと。  で、この今の日本経済状況の格差というのは、平均ベースでは良くなっているんだけど、しかしいいところと悪いところということを、これは業種別というんじゃなくて、今地域別、地域ごとという観点で聞いていますけれども、格差はやっぱり広がりつつあるんじゃないかなという感じがするんですが、それは日銀さんでは今どのように認識されているか、ちょっとお聞かせ願えますか。
  100. 武藤敏郎

    参考人武藤敏郎君) 御指摘のとおり、全体として回復を続けている中で、地域間にばらつきがあるというのは事実だというふうに認識します。  ただ、最近の、先ほど申し上げましたけれども、日銀の支店からの報告によりますと、今まではなかなか回復していないと、まあ回復しているというところと回復していないというそういう地域のばらつきがあったんですが、方向としては回復していると、改善しているというふうにあらゆる地域においてそういう報告が来ました。ただ、御指摘のとおり、このレベルには相当差があるというのは事実だということだと思います。  で、こういう地域経済状況をどうやって把握して、我々、この金融政策運営の際に考えていくかということは大変重要な課題でございまして、昨年四月からこの支店長会議を通じて各地域の状況を収集し、その調査結果を地域経済報告ということで公表することといたしました。  日本銀行としても、この地域の経済情勢というものを十分に踏まえながら、適切な金融政策運営していくということについては十分配慮してまいりたいというふうに考えております。
  101. 平野達男

    ○平野達男君 終わります。
  102. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 民主党・新緑風会の大塚でございます。  今日、朝から日銀の量的緩和解除などについていろいろ議論が行われておりますし、もうかねてから再三衆議院でもこの参議院でも議論が行われておりますので、なるべく重複は避けて質問をさしていただきたいと思います。  まず冒頭に、私も元日銀の職員として先輩方にお願いといいますか、エールを送らしていただきたいと思いますが、本当に大事な局面に来ているというふうに思いますので、前回のバブルの時期に現場の一職員として働かさしていただいた人間として、同じ轍を踏まないように適切に御判断、御対応をしていただきたいということをお願いを申し上げたいというふうに思います。  まあ率直に申し上げて、それは十五年前と今と環境は全然違いますが、しかし平成元年の財政再建目標に向けて財政には負荷を掛けられないので金融で何とかしようというふうに全体の枠組みが動いていたその当時と、今またプライマリーバランスの均衡を目指してどのような政策目標を立てて、そしてその政策目標いかんによっては金融にバイアスが掛かる可能性があるという、そういう枠組みは、遠目に見ると非常に似ているなという気がいたしますので、その当時と今との違いを重々御検討いただいた上で適切に御対応をいただきたいということを重ねてお願いを申し上げたいと思います。  今日、午前中からの同僚委員の御質問等を拝聴していまして触発された部分もありますので、通告をさしていただいている質問以外に二、三確認をさしていただきたいんですが。  まず、田村委員から中間目標を設定したらどうだという、そういう御提案がありました。与党におかれてもそういう建設的な御検討が行われているというのは大変すばらしいことだと思いますので敬意を表したいと思いますが、私の理解では、最終目標はもちろん物価の安定であったり、あるいは経済の安定的成長ということであったわけですが、従来の日銀の中間目標というのは教科書的に言いますとマネーサプライではなかったのかと思いますが、そこをちょっと確認をさしていただきたいんですが。
  103. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えをいたします。  中間目標という概念でどういうものを念頭に置くかによって、人によって様々な議論ございますけれども、先ほど総裁からお答えいたしましたように、ある時期、中央銀行はマネーサプライ等の指標を中間目標として使えないかという問題意識で取り組んだ時期があったこと、これは事実でございます。ただ、マネーサプライにつきましては、日本銀行につきましてもこれは中間目標として正式に付けたことはございませんけれども、しかしマネーサプライの動きについてそうした観点も含めて注意深く見ていこうということを長く続けてまいりました。  ただ、マネーサプライの動きをその後見てまいりますと、これは日本に限らず世界的にそうでございますけれども金融技術革新、グローバル化の進展の下で、マネーサプライのそのマネーの持つ意味が大幅に変わってきて、どうも中間目標としてはなかなか使いづらいなという感じになってまいりました。  したがいまして、例えばFRBも一九九〇年の半ばに、従来は議会に対しての報告書の中で正式にマネーサプライの見通しを発表していた、それをまた法律で求めていたわけですけれども、この公表を停止するということに踏み切っておりまして、ほかの中央銀行でも大なり小なりそうしたことになっております。ただ、このことは別にマネーサプライが重要じゃないということではもちろんございませんで、マネーサプライも含めて中間指標を見ているということでございます。  あと、中間目標として、先ほどこれも総裁が申し上げましたとおり、カナダにおきまして、例えば為替レートであるとかあるいは株価であるとか、そうしたいろんな変数を何か一つの指標に統合できないだろうかということでいろんな試みもなされてまいりまして、ある時期そうしたものがうまく働いた時期もあったんですけれども、これもまた環境が変わってくるとなかなかうまくいかない。  そういう意味で、多分それを中間目標として言うかどうかは別にしまして、日本銀行の持っている、中央銀行の持っている政策変数、つまり短期金利でございますけれども、それから最終目標物価、その間をつなぐ何か役に立つ変数を常に環境の変化に応じて点検をしていくということかなというふうに思います。
  104. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ということは、現在は、表向き公表しているかしてないかは別にして、日銀の内部において、操作目標たる、今は量ですけれども、やがて金利、そして最終目標との間で、行内的に何かベンチマークにしている中間目標はないという理解でよろしいですか。
  105. 白川方明

    参考人(白川方明君) ベンチマークというものが単一の指標、つまりほかの指標じゃなくこの指標だけだという意味で中間目標を定義した場合には、そうした意味での中間目標はございません。いろんな指標を見ているということでございます。
  106. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 そうしますと、また、やはり外から日銀の金融政策を拝見している立場としては、総合判断という言葉と、あとはずっと議論されておりますこの量的緩和解除条件に対する厳格なコミットメント、この二つしか外から見た場合の言わば説明力のあるものというのはないわけでありますので、なおさらのことその解除条件というのを厳格にコミットメントを果たされるということが重要になってくるなという印象を取りあえず申し上げさせていただきたいというふうに思います。  その上で、今、平野委員が最後の方で長期金利と名目成長率の話をしていただきましたが、この議論は当委員会においては、谷垣大臣も御存じのとおり、おととしぐらいから延々と続けておりまして、ようやく日の目を見てきたなという思いでございますが、そのときに、そもそも名目成長率長期金利よりも高くなるような形で経済財政モデルを内閣府が回して、そのモデルから出てきた試算結果を、竹中大臣がそこに座られて、これはモデルで計算してるので極めて客観的で信頼に足るものだというふうに何度も何度もそこで御発言されたわけですね。  そこで、今日は内閣府においでいただいていると思いますのでお伺いをしたいんですが、あの当時の議論の際に私に公開していただいた経済財政モデルというのは、今その仕組みというのは変わったんでしょうか。
  107. 齋藤潤

    政府参考人齋藤潤君) 経済財政モデルでございますけれども、これは計量モデルでございますが、これは様々な議論に対応できるようにいろいろ拡充をしておりますし、それから基となるデータで申しますと、一昨年の連鎖指数への変更あるいは基準改定どもございましたので、それに応じて改定を行っております。  ですから、細かいことを言いますといろいろ変更がございますけれども、大きな枠組みは余り変更はないというふうに考えております。
  108. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 細かい話で恐縮ですが、そうすると、八百二十九本の方程式を使ってモデルを回しているという、そのモデルそのものも変わりがないという理解でよろしいですか。
  109. 齋藤潤

    政府参考人齋藤潤君) 細かいことで申しますと、今お話しになったのは経済財政モデルの第一次版だと思いますが、そのときの方程式は八百四十五本でございました。しかし、今申しましたように、その後、拡充あるいは修正を施していますので、一番新しいもので申しますと方程式数は二千四百本余りということになっております。  以上でございます。
  110. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 方程式の数が増えたことは結構なことだと思うんですが、その当時、八百四十五とおっしゃいましたが、私が公開していただいたのは八百二十九本で、ただ、よくよく見てみるとそのうちの七百四十五本というのは定義式なんですね。つまり、試算をしているわけじゃなくて、政府が、例えば厚生労働省が置いた社会保障の前提などを数字をただ単にはめ込むための定義式であって、本当の意味でモデルと言える部分は八十四本で極めて小さなモデルであったわけですが、今お伺いした二千四百本のうち、推計式と定義式を分けると何本対何本になりますか。
  111. 齋藤潤

    政府参考人齋藤潤君) 今二千四百本余りと申しましたけれども、そのうち推計式によって求められる内生変数は百十九でございます。それから、定義式によって求められますのが二千三百余りということでございます。これは当然、財政とか社会保障関係というのはかなり定義的な関係が非常に込み入ってまいりますので、それによってこういう数になってくるということでございます。
  112. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 こういう御質問にきちっとお答えいただけるようになったということは、私もこの委員会五年間在籍させていただいておりますが、委員会の審議のクレジビリティーが高まっているという意味で非常に結構なことだと思いますが、二千四百本と言いながら二千三百本が定義式ということは、前提の置き方によっては相当結果が変わってくるモデルだという理解でよろしいですね。
  113. 齋藤潤

    政府参考人齋藤潤君) もちろん前提も大事でございますけれども、今申しましたように、財政とか社会保障というのはその定義的な関係が非常に込み入っていますので、したがって、例えば財政の歳出ですとか歳入が例えばSNAにどういう関係でつながってくるかというのは、まあ定義的ではありますけれども、綿密につなげなきゃいけないということでございますので、そういうことで数が多くなっているという面もあるというふうに御理解いただきたいと思います。
  114. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 社会保障との関係とか財政のその制度的に決まっている部分がアプリオリに決まるというのは、これは分かります。  そこで、今話題になっている名目成長率長期金利関係ですが、これは竹中大臣がそのモデルを所管しておられたときと今とでは全く異なる前提でその金利成長率について組み込まれているという、そういう理解でよろしいですか。
  115. 齋藤潤

    政府参考人齋藤潤君) 全く異なる前提ということで、どういうことをお尋ねなのかよく分かりませんけれども、当然、まずデータベースが変わっているというのがございます。先ほど言いましたように、実質GDPの前提となるものは連鎖指数に変わっております。それから、基準改定もございますのでデータが変わっております。それから、その後、客観的な状況も変わっております。世界経済状況、原油価格の状況も変わっております。それから、政策前提も変わっているわけでございます。ですから、そういったものの影響が織り込まれているということかと思います。
  116. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 一点だけ数字お伺いしますけれども、あの当時私がもう一つ問題にしたのは、税収の所得弾性値なんですね。今幾つで置かれていて、その数字というのはいつごろの実績値を基に使っている弾性値でありますか。
  117. 齋藤潤

    政府参考人齋藤潤君) 税収弾性値はあらかじめこうだというふうに数字を置いて求めているわけではなくて、先ほども御紹介ありましたし御指摘もありましたけど、推計式の部分でやっております。その中には当然制度的な増減税というものもデータには入ってきますので、それを取り除くということもベースラインとしての税収の変化を見るためには必要でございますが、今申しましたように、制度増減税の部分を除いて所得と税収との関係というのを、それだけ取り除いてやりますと、事後的に見た場合には一・〇から一・一ぐらいの間となっております。
  118. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 今の御説明、理解できた部分と理解できない部分があって、所得弾性値が推計式で可変的に出てくるもんだという御説明が前半であったんですけども、後半は一から一・〇を今使っているというようなお話だったんですが、以前公開していただいて検証さしていただいたときには、それは、弾性値というのは推計で出てくるものではなくて、高度成長期の弾性値を置いて計算をしておられたというふうに記憶をしておりますので、まあここで余り細かい議論をしていると委員長から怒られますのでこの話はこのぐらいでやめますが、せっかく本当にいい形で議論が進むようになってきましたので、是非またその二千四百本の方程式を公開していただいてきっちり御説明をいただきたいんですが、別にこの場内でもいいですし場外でも結構ですので、それを一応お約束、公開も含めてお約束いただけるということでよろしいですか。
  119. 齋藤潤

    政府参考人齋藤潤君) 現在、公開に向けて準備中でございますので、準備が終わりましたら速やかに公開いたします。
  120. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 すぐそうやって御回答いただけるというのは本当に大前進だと思いますので、是非よろしくお願いします。  その際も、この内閣府の試算財務省が毎年毎年やっておられる後年度影響試算との違いは何かということで随分議論をさしていただいたんですが、技術的、実務的な話は大臣でなくても御回答は結構ですのでお伺いをしたいんですが、財務省の後年度影響試算のやり方はその当時と今とは変わっておられませんですか。
  121. 谷垣禎一

    ○国務大臣(谷垣禎一君) 基本的に変わっておりません。
  122. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 財務省の後年度影響試算においては、長期金利と名目成長率関係はどのように置いて今回最新のものは計算されておられますですか。
  123. 谷垣禎一

    ○国務大臣(谷垣禎一君) 今年出したものは「改革と展望」の二〇〇五年度改定の記述を採用いたしまして、二〇〇六年度以降、実質成長率一・五%あるいはそれ以上、名目成長率は二・〇%程度あるいはそれ以上の成長経路をたどるものと見込まれるという記述に基づいております。  それから、十年国債金利については、市場金利水準が昨年度とほぼ同程度で推移しておりますので、昨年度の試算と同様、二・〇%というふうに置いております。
  124. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 その財務省の後年度影響試算との比較も、内閣府のモデルのデータを公開していただいたところでしっかり勉強さしていただきたいと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。  通告では五つ質問をお伝えしてございますが、ちょっと順番が変わりますけれども、先に一番最後に申し上げていたGDPデフレーターについてお伺いをしたいんですが、時々谷垣大臣にもお伺いをさしていただく場面があるかもしれませんので、もしお時間が許せばそのままおいでいただければ有り難いと思います。  量的緩和解除するかするべきでないかという議論をめぐっては、日銀の方はCPIを基準に見ると大分いいところまで来ているというふうにおっしゃっているわけで、片や先日発表されました十—十二月のGDP速報でGDPデフレーターは大きくマイナスが増えたので解除が時期尚早であると、こういう議論も行われているわけですね。  このGDPデフレーターというのは、これはCPIと比べるとどのような特徴や傾向が出るものなんでしょうか。これ、内閣府にお伺いできればお伺いしたいんですが。
  125. 飛田史和

    政府参考人(飛田史和君) 飛田でございます。お答えいたします。  GDPデフレーターはパーシェ型、言わば直近のウエートまでを換算したもので計算いたしておりまして、先ほどちょっとお話ございましたけれども、ただいま、連鎖指数と申し上げまして、ウエートを毎年変更して直近のウエートを換算する方式になっております。一方で、CPIの方は二〇〇〇年基準のラスパイレス指数計算されているというふうに承知しております。
  126. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 私の理解では、CPIの方は上振れしやすくて、GDPデフレーターの方は下振れしやすいと、こういう傾向があるというふうに一般的に言われておりますけれども。  そのGDPデフレーターの実績値は、もう専門家の皆さんばっかりですから細かい説明は省きますが、原油価格が上昇している影響とかが輸入デフレーターを控除するときに低め低めにデフレーターそのものを押し込んでしまうとか、生鮮食料品とかそれから公共料金ですね、電気、ガス等の事業者の皆さんの営業努力で下がっているような公共料金の下押し効果というものもバイアスとなって出てくるというふうに理解をしておりますが、GDPデフレーターにはそういうバイアスが掛かっているという理解でよろしいですか。
  127. 飛田史和

    政府参考人(飛田史和君) お答えします。  御指摘になりました上振れ、下振れの効果というのは、基準年から経過いたしますと、ラスパイレス指数については上振れ、パーシェ指数に関しては下振れというバイアスがあるということを御指摘されたものと思います。  先ほども申し上げましたように、GDPデフレーターに関しましてはパーシェ型指数を使っておりますけども、そのウエートを毎年、これは二〇〇〇年基準ではなくて毎年変更をいたしておりますので、そういった下振れの効果は非常に少ないものというふうに考えております。
  128. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 いや、一般的には下振れの効果が大きいと言われているんですね。今回の報道なんか見ていただいても、各社、原油価格の影響、生鮮食料品、まあ公共料金のことについて触れている先は余りなかったですけれども、やはり政府の一部門としてGDPデフレーターのマイナス幅が大きくなったから解除が早いというロジックの根拠となっているわけですから、私はその特殊要因を除く努力は一回された方がよろしいんではないかなと思うんですが、僕が今申し上げました特殊要因をGDPデフレーターの実績値から控除した数字を出すというのは、これは難しいことですか。
  129. 飛田史和

    政府参考人(飛田史和君) お答えいたします。  GDPデフレーターに関しましては、GDPにおきましては、GDP全体のデフレーター、それから家計消費とか設備投資とかいった需要項目別のデフレーターを計算いたしております。これは、GDPの性格上、国民経済計算枠組みに沿って決められた需要項目の経済動向を把握しデフレーターを算出しているということでございます。このため、今御指摘ございましたような例えば特殊要因、例えば原油だとか生鮮食料品、そういったものを、特定の品目を控除したデフレーターというものは現在算出はいたしておりません。
  130. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 いや、現在出しているか出していないかじゃなくて、控除したものを出せますかということをお伺いしているんですが。
  131. 飛田史和

    政府参考人(飛田史和君) 控除するときにどういう考え方で何を特殊要因と申すのかと、そういうような定義をする必要があろうかと思います。いずれにしましても、より詳細なものを出すという努力はしてまいりたいというふうに思っております。
  132. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 これは先ほどの田村委員の午前中の御提案とも関係がするんですが、片や日銀はCPI、政府GDPデフレーターで、我々から見ていると違う材料を提示し合って議論が擦れ違っているように見えてしまいますので、非常に大事な局面ですから、これは中間目標じゃなくて、まさしく物価は最終目標でもありますので、そのCPIとGDPデフレーターと、何か内閣府と日銀で統合してお互いに同じ数字で議論できるインディケーターを作るということはできませんでしょうか。これは日銀と内閣府と両方にお伺いをしたいんですが。
  133. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  CPIとGDPデフレーターでございますけれども、私ども、CPIにしましても、あるいはGDPデフレーターにしましても、それぞれの物価指数としての特性に応じて見ていくということであるというふうに思っておりまして、どちらの指数がすべてだとかすべてでないということではなくて、それぞれの特性を踏まえて判断をしていくというふうに思っております。で、日本銀行につきましては、消費者物価指数を使って時間軸、量的緩和継続の期間について約束をしているということでございます。  今委員御質問の両者を併せた統計を作っていくということでございますけれども消費者物価指数はこれは日本銀行が作成している統計では直接的にはございませんもので、消費者物価指数を作る総務省と、それからGDPデフレーターを作る内閣府との関係でそういう議論があるかどうかということでございまして、日本銀行としましては、いずれにしましても、今委員から御指摘のあった様々な要因、これがどういうふうな影響を及ぼすか、これから注意深く見ていきたいというふうに思っております。
  134. 池口修次

    委員長池口修次君) 大塚耕平君、内閣府はいいんですか。
  135. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ええ。内閣府にお答えいただく前に、今、白川理事からそういうお答えがありましたので。  そうであれば、政府部門内の話ですから、CPIとGDPデフレーターを言わば統合した何か指標というのは作れませんでしょうか。
  136. 飛田史和

    政府参考人(飛田史和君) 私どもはGDPを作成いたしておりますので、今の御質問に直接お答えする立場ではないかもしれませんけれども、GDPという言わば国民経済の家計簿を作成している立場といたしまして、どういうルールにのっとった分類をし、より詳しい情報を出していくかということについては、今後も検討してまいりたいというふうに考えております。
  137. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 是非、御努力をしていただきたいんですが。といいますのは、仮に量的緩和政策解除して、経済政策は実験ができませんから、ひょっとしたら成功したと言われるようなその後状況になるかもしれないし、いや時期尚早だったと言われるような状況になるかもしれない。そのときに、いやいや、日銀はCPIで判断していたからで、政府GDPデフレーター判断していたからで、判断が違ったのはしようがないとか、そういう国民の側から見ると不毛の議論にならないように、是非一度すり合せをしていただきたいなということを要望申し上げます。  その上で総裁にお伺いしたいんですが、なぜこんなことをお伺いしているかというと、先ほど公共料金の話申し上げましたけど、デフレにも実は一時期、良いデフレと悪いデフレという言葉で議論をされた時期がありまして、企業の努力やあるいは産業構造の変化で、まあ今まで高コストだったものがまさしくいい意味で下がってきている、価格が下がってきているという部分もあろうかと思うんですね。そういうものも全部一緒にして、その中に、CPIにそれが全部入ったり、GDPデフレーターの中にざっくり入ってくるという、こういう議論の結果として、まだデフレだから量的緩和解除を遅らせるということになると、そのいいデフレの部分まで否定した議論になってしまうような気がするんですね。  したがって、私は、できれば指標は統一していただきたいですし、そのときに、いや、構造改革を与党の皆さんも進めていらっしゃるわけですから、構造改革の結果、これまでコスト高であったと思われる部分がまさしくいいデフレとして下がってきた部分は控除した上で、従来型のインフレというのはどの程度起きているのかということを検証する努力をされないと、つまり、金融政策そのものは前例のないまさしく実験的な政策をやっているんですが、その金融政策をハンドリングする上で参考にしている指標そのものが、従来型の極めて古い指標で判断をし、その中には実は構造改革の目標でもあったいいデフレも全部ごちゃ混ぜになって入っているという、そういう気がするわけですが。  総裁にお伺いしたいのは、いいデフレと悪いデフレというものがあるのかないのかということと、そして今私が申し上げたような意味でのいいデフレというのは決して否定するものではなくて、いいデフレであればそういう状況があったとしてもそれは量的緩和解除の障害にならないかどうかということについてお伺いをしたいと思います。
  138. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 極めて個人的な見解になりますけれどもデフレを仮に継続的に物価が下がる状況というふうに考えれば、多分いいデフレ、悪いデフレという区分をすることはむしろ危険ではないかと。継続的に物価が下がる状況というのは、何か経済について悪い兆候を示しているんではないかという目で見た方がいいという立場を取っています。  で、先ほども申し上げましたとおり、物価はさりながら常に厳密に分析しなきゃいけない。すべての物価指標はどういう特性を持っているか、かつまたその個々の物価指数についてどういう特殊要因が含まれているかというふうに、物価の中身を解きほぐしながら見るということも非常に大切だと思っておりますけれども、しかしこの手法にも限界があると。  特殊要因と称していろいろなものをそぎ落としていきますと、まあ吟醸酒みたいなお酒が本当のお酒かというふうな話にだんだん突き当たっていって、やっぱり我々の日常生活は、多少不純物も含みながら日常生活をしているわけでして、全体を含んだ物価指数に我々はやっぱり直面して生活しています。最終的には物価水準はすべてのものを含んだ物価指数で見ると。ただ、物価のトレンド、短期的にどういう、振れの多い物価の中からトレンドを抽出するためには、特殊なものを除いて見るという手法は有用だというふうに思いますけれども、これは万能でないと。  結局のところ、私どもは、そういう物価を分析する作業もかなり十分に追求しながら、しかし最終的には、今経済がどういうトレンドを示しているか、持続的な成長のパスにきちんと乗っているかどうか、その上でその今の物価指数の動きというものを総合的に判断すると。このアプローチが一番間違いのないやり方ではないかというふうに思っています。
  139. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 総裁としてはそういうお答えになるのかもしれませんが、しかし何のために構造改革をやってきたかというと、日本の様々な産業コストあるいは生活コストを上げているような国の構造を変えるために構造改革をやってきたわけで、構造改革が成功していれば物価が下がるのはある意味で当たり前なんですね。  そうすると、GDPデフレーターがマイナス一%台とか、あるいはCPIがプラス〇・一、ほぼゼロになってきたというのは、この状態でノーマルだというふうに判断をしないと、構造改革によってコストが下がると言い続けてきたここ数年の基本的なロジックが崩れてしまうんじゃないかなと、私はそう思うわけであります。  で、現実に自分の身の回りを見ていても、構造改革、小泉さんの言うように成功した部分と必ずしもそうなっていない部分といろいろありますけれども、ある程度効果が出て下がっている部分もあると思うと、もう実は今、実質的な、昔の感覚で言う物価というのは、ほぼ三%とか四%、まあ四は言い過ぎかもしれませんが、二、三%ぐらいの現状ではないかなという気もいたすわけでありますが、この辺についての御感想はいかがでしょうか。総裁にお伺いしたいと思います。
  140. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 日本経済自身の構造改革が、物価を押し上げるという方向の様々なショックを吸収する力を従来よりも身に付けさせるファクターになっていると。それから、中国のような新興エマージング諸国のローコストな競争圧力、これもこの企業段階においてはコストを自ら吸収しなければいけないという努力を強める作用を果たしている。結果として、日本経済全体として従来に比べますと物価上昇圧力が高まりにくい経済になっているということだと思います。これを踏まえながらやっぱり金融政策をしなければいけない。  そういう意味では、デフレ脱却過程で、異例金融政策については、経済指標としては遅行指標であるCPIを基準に最終期日を設けたとしてもインフレリスクを大きく内包することなく終着駅を迎えられるんではないかという設定になっておりますし、そして、この量的緩和政策枠組みを脱却した後も、かなり低い金利あるいは中立的な金利に持っていくプロセスが比較的ゆっくりしていてもインフレを起こすリスクは少ないんではないかという取りあえずの判断に結び付いているということでございます。  金融政策運営姿勢と、委員がおっしゃいました構造改革の成果ないしは外圧と申しますか、外からの競争圧力の強まりに対する日本企業の対応力の強化の成果、こういったものが最終的に金融政策の姿そのものをも変えつつあるというふうに私どもは理解しています。
  141. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 私の立場は先ほど来申し上げているとおりでありますので、やはり従来的な固定的な観念でCPIやGDPデフレーターをごらんになることなく、是非、実質的にどうなのかということを御検討いただきたいなというふうに思います。  といいますのも、やはり本当に今の経済成長率でいうと昔に比べたらまだまだ低くて、これで景気がいいなんて言われたら困ってしまうという企業経営者が多い中で、本当にこれを持続させていくためには次は家計部門の消費が本格的にどう増えるかということだと思うんですが、それを考えますと、早く量的緩和解除して金利の世界に戻らないと、家計部門のその金利の逸失収入というのは相当な規模に達していて、初めのころは、一時的には緊急避難的にはしようがないというふうに私も思ってたんですけれども、といいますのは、金融政策は別に家計の金利収入を確保するためにやるわけではないという立場に立てば緊急避難的には仕方ないと思っていたんですが、これだけ長期に続くと家計部門の逸失金利収入というのはちょっと無視できない規模になってきていると思います。  その上でお伺いしたいんですが、バブル崩壊以降の家計部門の想定逸失金利収入、これについて、九一年あるいは九三年ぐらいを基準にした場合にどのぐらいの規模になるかということを、一定の前提を置いた上でお伺いしたいと思います。
  142. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  家計部門の逸失金利収入を推計するというのはどうしても機械的な前提を置いて計算せざるを得ないという性格のものでありますけれども、そうした前提条件を置いた上で申し上げます。  国民所得統計におきます家計の受取利子額を用いて試算しますと、一九九一年における受取利子額、これは三十八・九兆円でございますけれども、これがその後二〇〇四年まで継続したというふうに仮定した場合と現実の金利収入との比較で見た逸失金額は累計で三百四兆円となります。また、一九九三年におきます受取利子額、これは二十九兆円でございますけれども、これがその後二〇〇四年まで継続したという前提との比較で計算しますと、逸失金額は累計で百八十兆円となります。  家計部門の利子所得の減少がこれまでの金融緩和政策のマイナス面の一つであることは十分認識しております。ただ、同時に、金融緩和政策の評価は家計の利子所得の減少という面だけでなく、借入金利の減少の影響などを含め、経済活動全般に与える効果も総合的に判断していく必要があるというふうに考えております。  いずれにしましても、計数につきましては機械的な前提で計算しますと先ほど申し上げた数字でございます。
  143. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 まあ、あくまで想定の数字、バーチャルな数字だということは理解はしておりますが、しかし、その三百兆とか百八十兆とか、なかなか無視し難い数字でありまして、非常に遠目にこの十五年間の動きを見ると、やはり金融機関不良債権処理、そして企業部門の過剰債務の処理の過程において、今お答えいただいたような金利収入などの所得の移転が部門間で起こって、それによって不良債権が処理されたという、後から見ればですよ、マクロ的にはそういうことが起きたんだということは否定できない事実だと思いますので、私はぼちぼち、いや、経済は良くなったというふうに片方で政府はおっしゃりながら、しかし片方でこれだけアブノーマルな金融政策をなお長期に維持するということは、できる限り早くおやめになられた方がいいのではないかという個人的な感想は持っております。ただ、そのときに市場経済に過剰なショックを与えないように十分な配慮が必要だということも重々承知をしております。  そこで、あと五、六分になりましたので、谷垣大臣にもお伺いしたいんですが、その様々な配慮一つに、今日午前中に中川委員国債管理政策について聞いていただきましたが、まさしくその、やあやあ、その量的緩和解除して金利が上がり始めたら長期金利が上がって国の資金繰り影響を与えるという、そこが一つの論点にもなっているわけですが、それはもう分かります。そのことはだれも否定しませんし、もうみんな分かってますので。  私は、これだけ国債を抱えた財務当局として、例えば長期金利がどのぐらいになればどのぐらいのコスト増加になるかとか、これは別に公式に出していただかなくても、確かに計算すれば我々もある程度想像はできる世界なんですが、国民向けに、あるいは国会向けに、財政当局として長期金利がこのぐらいの水準になった場合にはこうだと、しかもそうなったときに新たな国債管理政策上のコストを賄うためには歳出はこのぐらい削らなきゃいけないとか、幾つかのケーススタディーというかシミュレーションを公表されてはいかがかと思うんですが、その辺についてはどのようにお考えですか。
  144. 谷垣禎一

    ○国務大臣(谷垣禎一君) 今ちょっと手元にございませんけれども、大塚委員がおっしゃった、大体一%金利が上がりますと、いろんなもちろん前提がございますけれども、一・五兆、五、六兆の金利負担というものが、ちょっと待ってください──金利が一%上がりますと一・五兆程度の金利負担が増加してくると。これはどのぐらいの金利をあれするかによって随分違うと思うんですが、一応そういうものを計算しておりますので、またお出しをする機会があろうかと思います。
  145. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 じゃ、そうすると、経済財政諮問会議はせんだって二十兆円ぐらいの歳出削減をしないとプライマリーバランスは均衡しないという大胆な数字をお出しになって、実は私どもの党も、三年前に初めて党としての予算案考えたときに、二十兆ぐらい減らさなきゃ駄目だということを申し上げて、ちょうど期せずして同じ数字になったんですが、まあ諮問会議がそうおっしゃるということは、二十兆削らなければならない、しかし多分、諮問会議が言うわけですから、削ろうと思えばある程度は削れるという前提の上でそういう数字が出てきていると思うんですが、そうすると、長期金利が仮に二%上がっても三兆円ぐらいの世界ですから、その長期金利上昇分は不要不急の歳出を削減するという形で吸収するので、どうぞ長期金利の二%ぐらいの上昇は気にせずやってくださいぐらいのことを財政当局として言っていただけないかなという気もするんですが、そこはいかがですか。
  146. 谷垣禎一

    ○国務大臣(谷垣禎一君) なかなかそういうことは申し上げられませんで、やっぱり私ども長期金利の安定ということが必要だろうと思っております。もちろん、今二十兆という言葉を、数字をお出しになりましたけれども、これもいろんな前提に基づいている数字であることは大塚委員よく御承知のとおりでございます。ただ、やはりそういった金利の上がってきた状況とか、それは当然経済のパフォーマンスも良くなってくるんで、税の増収もあるわけですが、いろんな今度は社会保障負担等々に跳ね返ってまいりますから、なかなかそんなどんとしたことは申し上げにくいということでございます。
  147. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 この辺の議論はまた今国会中、繰り返しお伺いをしたいと思いますので。  最後に、日銀総裁にお伺いをしたいんですが、先ほど平野委員がフィッシャーの法則の話をされて、実質金利期待インフレ率の関係で御説明をいただいたんですが、実は私もゼロ金利解除した後はそこが一番気になってまして、実質金利が下がる、つまり量的緩和解除して名目金利をしばらく上げない状態が続くと、例えばゼロ金利のままであったり〇・二五のままであったりすると、物価が上がってくると実質金利マイナスという状態が起きるわけで、これを日銀として、経過期間だからしようがないということで、実質金利がマイナスになっても放置するのかどうかということをお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  148. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 厳密には消費者物価が安定的にプラスになった以降、人々の先行きのインフレ期待がどうなるかと。期待インフレ率と、あれですね、名目金利との関係で実質金利が決まるということでございます。現在も人々の先行きの物価観は、先行き物価が下がるという人のウエートがどんどん下がりまして、先行き物価横ばいとか、あるいは若干のプラスという人のウエートが増えてきております。CPIが安定的にプラスになった以降、先行きのインフレ期待がどれぐらい上がるかということは我々は十分注目したい。それとの関係で実質金利が下がり過ぎる、その結果、経済にかえって悪いひずみが起こるというふうなことはやはり防いでいかなければいけないわけなんです。  ただ、ごく一般的に言えば、CPIが急速に上り坂を駆け上るような上昇の仕方はしないだろうと。今のグローバル経済の中の日本経済ということを考えますと、なかなかそういう状況はにわかには予想しにくいということが一方にございます。その限りにおいて我々は余裕を持って金融政策ができると。我々が余裕を持てるのはその限りであって、現実に期待インフレ率が急速に上り実質金利が急速に下がるということであれば、それは当然調整をしなければいけないということでございます。
  149. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 最後に一言申し上げて終わりにさしていただきますが、実質金利が恐らく今の日銀の御方針ですとマイナスになる局面が出てくると思います。解除してしばらく経過措置で、しかもゼロ金利はしばらく維持してくれというような巷間、期待感も出ている中で、その期待も踏まえつつ政策運営されると、実質金利マイナスという局面が出てくる。その局面をどのようにハンドリングされるかによって、実は十五年前と同じ轍を踏むか踏まないかということの分かれ道があるのではないかなということを、個人的に印象だけ申し上げて終わりにさしていただきますが、更なる議論はまたの機会にさしていただきたいと思います。  もしよろしければ、委員長からお時間いただければ。
  150. 池口修次

    委員長池口修次君) 福井総裁、ごく簡単に。
  151. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 簡単に申し上げます。  十五年前のことは私自身の脳裏にも鮮明に残っております。あれと同じピクチャーは絶対描かないということでございます。かつまた市場の姿もあのときとは非常に変わっておりまして、やはり市場は発達しています。実際に期待インフレ率が上がるというふうな状況になりますと、日本銀行経済情勢判断、その見通し市場の新しい情勢判断とは必ずすり合わせが行われて、市場の中で形成される先物の金利の姿というのはうんと変わってくるだろうと。その中で金融政策は円滑に行っていけるというふうに思いまして、市場が一方的にインフレ促進型の金融政策を我々に求めるというふうには到底考えられないというふうに思っています。
  152. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ありがとうございました。
  153. 大門実紀史

    大門実紀史君 大門でございます。  お疲れさまでございます。もういろいろ議論がありましたので、多くをお聞きするつもりはございません、総裁の御答弁によっては早めに終わるということも思っておりますけれども。  行き過ぎの超、超が二つ付くぐらいの量的緩和でございましたから、解除すると、是正するという点では当然のことだというふうに思っておりまして、以前から指摘してきましたとおりやり過ぎだということを思っておりましたんで、むしろこのまま続けたら本当に大変なことになってくるんじゃないかというふうに思っておりましたので、そこはそれでいいんですけれども、ただ、今まで何事もなかったかのように、ただこれから解除しますと、それだけでいいのかなと。  今日も、お聞きしていますと、何かもっともらしい話が続くんですけれども、やっぱり今までの量的緩和が何だったのかということと、日銀として、私は日銀だけの責任と思っていない部分はあるんですけれども、そうはいっても、日銀として反省すべき点とか、あるいはあれはやり過ぎだったんじゃないかとか、総括をですね、この今までの量的緩和策の総括をきちんとやはり先に言われるべきではないかなと。ちゃんとそういう点、立場を踏まえられるべきではないかなというふうに思いますけれども、そういう反省すべき点とか、あれはまずかったなとか、そういう点は何かございませんか。
  154. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 量的緩和政策を含め、今回の一連の経済を本格的な回復軌道に乗せる過程における金融政策はまだ完結しておりません。したがいまして、総括をする段階にはまだ至っていないと思いますけれども、やはり局面変化は次から次へとむしろいい方向に前進しておりますので、私ども金融政策運営について余裕のある限り振り返りながら、その利害得失いかがであったかということを踏まえながら次の展開を考えると、こういう構図になっております。  現在までのところ、量的緩和が行き過ぎであったかどうか。我々は行き過ぎであったというふうな結論には至っておりません。そこは大門先生といささか見解がもしかしたら違うのかもしれませんけれども、実際の金融政策の場に当たってまいりました我々からいたしますと、やはり直面、金融不安というものが目の前に迫ったときに、この情報は、金融不安の情報というのは世の中のすべての人に行き渡って持っていただくわけにはいかない部分でございます。その見えない部分も我々はすべて見ながら金融不安は絶対防ぐと、必要な流動性は、過大に見えるかもしれないが、我々としては必要最小限の流動性はきちっとマーケットに供給するということをやってまいりましたし、ゼロ金利の限界ということを痛いほど感じながら、少しでもイールドカーブを低くして緩和効果をマクロ経済にも及ぼしたいということでやってまいりました。  そういうことをやらないで逆に経済デフレスパイラルに陥った場合との比較ということは、なかなか比較は困難な問題でございます。幸いにも、デフレスパイラルに陥ることなく危険を回避してここまで来たということでございますので、メリットが全くなかったわけではなくて、やはり効果は相当発揮したと。  それ以上のことをやったかどうかということは、私どもとしては必要最小限のことをやってきたつもりでございますが、もし過剰があったということであれば十分御指摘いただきたいし、我々も十分反省の材料にしたいというふうに思っています。
  155. 大門実紀史

    大門実紀史君 ですから、そういうふうに言われると早く終わるわけにはいかなくなるんですけれども。  実は、この委員会で本当に大変な議論があったわけです、速水さんのころからですね。もう忘れもしませんけれども、今日は与党の皆さんみんな紳士的ですけれども、当時はもう日銀総裁を、もう私なんか聞くに堪えないぐらいもう罵倒するといいますかね、本当にすごい議論があったわけですよね、もっとやれという意味でですね。インフレターゲットの話もありましたけれども。そういう質問の後、私なんかは、むしろ日銀を、圧力に負けるなといって激励の応援をしたりしてきた経過があるわけです。  その中で、私は、もちろん福井さんにもお聞きしたことありますけれども、そういう圧力は関係ありませんと、独自で判断してきましたとおっしゃいますけれども、結果的にずっと流れを見てきますと、そうはいっても、そういう政治状況を見ながら緩和の、私、量的緩和、その政策が間違っているとは言っているわけじゃないですよ。そのやり方とか規模とかですね、これはかなり押されてやってきたなというのが、結果的につくづく本当に思うわけでございますね。  そういう点で、規模とか、例えば今日もありましたけれども、二〇〇一年三月には五兆円目標だったんですね。それがすぐ十五兆になり二十兆になり、福井さんになって二十七兆、三十二兆、三十五兆と、こうなるわけですね。今日もありましたけれども、実際には六兆、そうはいってもプラスアルファとしても仮に十兆ぐらいで私は十分にいろんなことができたのに、もう三十五兆までなっていると。  これは、それが適正な判断だとおっしゃるんならばむしろお聞きしたいんですけれども、三十五兆にどんな意味があるんですか。三十五という数字は何なんですか、そうしたら。
  156. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 三十五そのものは、数字がすべて物語るわけではございません。その増やしていく過程で、例えば三十五兆の直前の流動性レベルは、金融危機が深まる過程においては、一見余分に見える流動性は、資金に余裕のある銀行が全部抱えて出さないという状況ですから流動性としてはカウントできない状況。そこを出発点に我々は毎日の金融市場運営しなければ資金ショートを起こす銀行が出ると。それでもいいんだとおっしゃる議論であれば全く別でございます。  それを防ぐためには、総額としては一見大きく見えても、限界的に我々が追加的に供給する資金というのは、そこに、金融機関がその日銀の蛇口に食らい付かなければ流動性の手当てが付かないという危機的な局面があったわけでございます。それを防ぐための必要な流動性を結果として供給してきたということであって、結果の数字が大きいということは私どもも認めますが、その都度の限界的な供給というのは必要最小限に絞りながら、しかし必要な額は信用不安を防ぐためにきちんと出したということでございます。  どこどこの金融機関がつぶれそうであるからというふうな前宣伝の下に、こういう政策はできるわけではないということは十分お分かりいただいていると思います。
  157. 大門実紀史

    大門実紀史君 細かく触れませんが、私も何回もこの問題質問していきますので、先ほど福井総裁、同僚議員のときに、三十五という数字そのものには意味がないんだとおっしゃったという意味のことを私言っているわけでございまして、それはそのときいろいろあってといったら、今振り返ったらそうですよ、みんなそうなりますよ。仮に今二十五兆だったかも分からないんです、私から言わせれば。そういう意味で申し上げているんでね。その背景とかその考え方とかに、私は、インフレターゲット、物すごく強く言われる方がいて、違うという理屈の上での指摘もさせてもらったことありますけれども。私は、日銀も、日銀がやってきたこととインフレターゲット論者と言われる方と、私はそんなに、もう五十歩百歩のところがあると。大体、資金需要が高まって通貨供給量って増えるもんですけれども、上からといいますか、川上からやっていくというのは、特にサプライサイダー論者の独特の私、一面性があると思いますけれども。  それで、結果的に言えば、結果的に言えば、マネーサプライ増えないで、マネーサプライがここで何で増えないんだという大議論もあったことあるわけですよね。そうしたら、今度は違うことでやってきたと、先ほども半分はそうだったけどと。いろんなことがころころころころ変わっているんですよね。  私は、そういうものが何を生んできたかということで、資料を御用意いたしましたけれども、私は、相当日銀が負の遺産をこの量的緩和で抱え込んだということを指摘しておかなければいけないと、総括としてですね、思います。  これは日銀に作ってもらった資料ですけれども、まず国債残高ですよね。これはもう見てもらったとおりですけれども、九十八兆円という国債を日銀が抱え込んでいると。私、与党の方すべてそうではなかったと思いますが、あのころの、二、三年前のインフレターゲット論の強い主張は、実際にはデフレ克服というよりも国債消化策と、国債消化と、あるいは銀行の株が大変不安になっていましたから株価対策と。こういう点で強く強く主張されて、日銀も、国債、そして二つ目の金銭の信託というのが銀行株の日銀保有ですけれども、こういうものに踏み込んできたというふうに見ているわけです。  大体、中央銀行が自分ところの国債をこんなに、九十八兆も持つということ、持っているということ、このことそのもの異常だというふうに思われませんか。
  158. 白川方明

    参考人(白川方明君) 日本銀行は、二〇〇一年の三月に量的緩和政策を採用しまして、潤沢に資金を供給するという政策手法を取ってまいりました。潤沢に資金を供給するということは、負債サイドでこれは預金が増えますので何か資産を買っていく。その場合に、マーケット全体の厚みがあって比較的中立性が高いという資産、それは国債であるということで、潤沢に資金供給を実現する手段として長期国債を買ってまいったということでございます。現在、日本銀行の当座預金の残高あるいはバランスシートの規模、これがGDPとの関係で大変大きくなっていることは、それはそのとおりでございます。  一方、その買い入れた資産の中で国債がどのぐらいのウエートを占めているかという今度はお尋ねでお答えいたしますと、これはそれぞれの国の中央銀行の資金供給のやり方によって異なっておりまして、例えばアメリカの中央銀行、FRBの場合ですと、買入れ資産の大宗は国債であるということでございますし、あるいは欧州の中央銀行は総体的には国債の割合が少ないということで、これは様々でございます。  以上でございます。
  159. 大門実紀史

    大門実紀史君 私、そんなこと聞いているんじゃないんですよ。こういうことが異常じゃないかということをすぱっと聞いているわけですから。  例えば、金銭の信託は先ほど言いました銀行株の保有ですけれども、これももう二兆円近くなっていると。これ、しかも平成十九年まで持って、それから十年間掛けて売却していくと。まだまだ持たなきゃいけないわけですね、持っていなきゃならないですね。異常ですよ、私から言わせれば。で、国庫納付金も、もう一兆円以上、国に納めるのも減っているわけですね。この一兆円のために予算でやりくりしなきゃいけなくなると、国民の方にしわ寄せが来ているわけですよ。これも仕組みを申し上げると細かくなりますけれども、これ、緩和策の影響ですよね。  日銀そのものの自己資本比率も、実際には一〇%プラスマイナス二の範囲でというふうになっていますから、それも切っちゃっているわけですね。八を切っちゃっている状況ですよ、今。これもなぜこうなったかといいますと、日銀の自己資本比率の分母は銀行券の発行残高ですから、量的緩和をばあっとやりますよね、そしたら分母が大きくなります。しかも、法定準備金の方がそのままだと分子も小さくなるということで法定準備金を引き上げると。そのことによって国庫納付金が下がるというようなこともあってこんな状況になっていると。  とにかく、何といいますか、こういうことを、こういうことを何も総括しないで、何もきちっとどうするかと、あるいはこうなったことは何だったのかということを抜きに、ただこれから解除しますといって何かもっともらしい話ばっかりされているのは私はどうかなというふうに思うんです。これだけこの負の遺産を抱えた結果になって、適切な判断で政策展開やってきたということを、私、本当に言えるのかなと思いますが、福井総裁にもう一度お聞きしたいと思います。
  160. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 経済が危機的な状況に陥りますと、世の中の負債の構造が変わります。民間の負債よりも政府の負債が大きくなると。その中で、日本銀行日本経済を見捨てることなく危機を救うという立場でオペレーションをいたしますと、世の中の負債構造がある程度は日本銀行バランスシートに反映してくると。これはやむを得ない面がございます。  さりとて、日本銀行バランスシートを完全に不健全なものにしてはならないと、そのディシプリンはしっかり持っていなきゃいけないわけでございまして、したがいまして、国債につきましても銀行券の発行残高の範囲内ということを厳守いたしておりますし、委員がおっしゃいました、私が就任しましてから、流動性の供給量というのを増やしました過程では国債の買入れ枠は一文も増やしておりません。  それから、自己資本につきましても、基準となる自己資本比率はきちんと維持したいという目標はしっかり堅持しておりまして、一時的なフラクチュエーションはあるにしてもこれは必ず回復すると、回復する自信があるという範囲内でやっているわけでございます。
  161. 大門実紀史

    大門実紀史君 いや、私申し上げているのは、こういう負の遺産を抱えるような政策であったということですよね、ここまでね。しかも、ここまでですよ、規模がね。規模がここまで、国債の倍になっているわけですね、倍近くになっているわけですね。  そういうことを申し上げているわけで、一個一個こう考えてきましたって、そんな細かい話をしているわけじゃなくって、人間のやることはそんな賢いことばっかりやっているわけじゃありませんから、いろんな影響でいろんな間違いがあって、皆さん政策審議会でそれはまじめな議論されているかも分かんないけれども、結果的に全体として、合成の誤謬じゃありませんけれども、誤った判断もあったんではないかと。私は、どこかできちっとした方向転換があり得たんではないかというふうに思ってお聞きしているわけでございます。  ですから、そういうふうにおっしゃらないで、やっぱり反省すべき点は反省してこそまた前進もあるわけですから、今までの量的緩和のことをもっときちっと、もっと総括をして、これからのね、解除した後のですね、やらないと、何かあったらまた戻ってきますよ。何かあったらまた戻ってきますよ、これは、こんな方向にですね。そのことをきちっとしてもらいたいというふうに申し上げているわけでございます。  言いたいことはそれで、要するに、この五年間で見ると、私は、政治の圧力ですね、こういうものとの、これに対して日銀の独立性をよほどきちっと、よほど厳格に保っていかなければいけないということを私自身は見てきた教訓として、思っているわけでございますけれども。  そういう点でいきますと、今回も、自民党の中川政調会長が日銀のことに対して、日銀法を改正する必要があると、そういう言い方をされましたけれども、もうそういうことは私は言うべきじゃないと思っておりますけれども、ああいう発言をどういうふうに総裁はとらえていらっしゃいますか。
  162. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 日本銀行といたしましては、日本銀行法の目的、明確に規定されております。その規定に忠実に我々は誠実な仕事をさしていただきたい。我々としては、自らの情勢判断に忠実に政策運営をやってまいります。で、政府との関係では、十分意思の疎通を図りながらやらしていただきたいというふうに思います。  日本銀行の独立性のかぎは、日本銀行金融政策が功を奏して日本経済のパフォーマンスが良くなること、それを通じて日本銀行に対していささかでも余計の信頼をちょうだいできることというふうに思っております。
  163. 大門実紀史

    大門実紀史君 もう申し上げたいこと終わりましたんで。要するにですね、教訓としては、国債消化策とか株価対策として日本銀行が使われるべきでないと、こんなことは二度とあってはならないということを申し上げて、ちょっと早いですけれども、私の質問を終わります。
  164. 池口修次

    委員長池口修次君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十九分散会