○公述人(片山善博君) 先ほど御紹介いただきました鳥取県知事の片山です。
本日は、
委員会の
委員の皆様方には、私どものこの鳥取県にわざわざお越しをいただきまして、私どもから地域の生の声を聞いていただく機会をつくっていただきまして、大変ありがとうございます。本当に、せっかくの機会でありますので、思うところを述べさせていただきたいと思います。
私は基本的には、今回国会にかかっておりますこれらの法案につきましては基本的には賛成であります。
特に、行革を国も地方も進めて、一体として真に簡素で効率的な
政府をつくるということは、これから本当に必要なことだと思います。それから、
競争原理を
導入して
公共サービスの
改革をするというこの法案につきましても、地方団体も国の施策に準じてこれを
導入するということに多分なると思いますけれども、地方にとりましても
行政改革の
一つの手法が選択肢として増えるということでありますので、基本的には賛成であります。
ただ、幾つか懸念でありますとか、この
法律が成立しました後に運用の段階で懸念されるべきことでありますとかもありますし、それから、この際、
行政改革全般について少し
委員の
先生方にお聞き届けいただきたいこともありますので、そうした観点での話をさせていただきたいと思います。あらかじめお手元に一枚の簡単なレジュメを用意させていただいておりますので、それをごらんいただきながら
お話をしたいと思っております。「真に簡素で効率的な
政府及び自治体の実現をめざして」という題名のレジュメであります。
先ほど言いましたように、基本的には賛成でありますが、この法案についての感想でありますとか、それから留意していただきたい事項がやはりございます。それは、今回の行革法の中に自治体の行革についても触れているくだりが幾つかあります。
例えば公務員の数を、地方公務員も、千分の四十六だったと思いますけれども、削減するということが書かれております。それはそれで結構だと思うんでありますけれども、その際に、今までの
政府のやってきた経緯を見ますと、大体一律主義で地方団体に施策を押し付けてくるといいますか、下ろしてくるというのが通例でありますが、そうしたことが大変大きな弊害を生むということをまず申し上げたいんであります。
そこにありますように、多様な自治体を画一的に扱う愚は避けるべきというのがそのことでありまして、千分の四十六を削減する、トータルとして地方公務員全体の千分の四十六を削減するという
政策は、
政府の方針として打ち出されるのは結構だと思いますけれども、これを、今恐らく千八百幾つかになったと思いますが、すべての自治体に一律にどこもかしこも千分の四十六減らせということを大体
総務省はやるんであります。今も現に、集中
改革プランを作りなさいと、その中には公務員の数を四・六%減らすようなことを盛り込みなさいというのを全部流しておりまして、せっせとそれに合わせて今自治体はその集中
改革プランを作ったりしているところが大半なんであります。
これは実は愚かなことでありまして、といいますのは、現在の自治体というのは画一でありませんで、非常に多様性に富んでおります。多様性に富んでおりますというのは、例えば行革をやっているかやっていないかという面におきましても、もう既に本当にスリム化をして真剣に行革に取り組んできた自治体もありますし、必ずしもそうでもなくて、まあじゃぶじゃぶのようなところも実はあるんであります。
その辺が国と違うところでありまして、そういう、もうスリムになったところもあるし、じゃぶじゃぶになったところもあるのに、にもかかわらず一律に四・六%今後五年間で減らせというようなことをやると、どうしても弊害が出てくるわけであります。ですから、そういう画一的にともすればなる、そういうやり方は絶対にやめるべきだと私は思っております。
そういう画一的に国から地方に行革をやれといって号令を掛けて国がモニタリング、監視をするというようなやり方ではなくて、自治体が自らの判断と責任で行革に取り組む、そういう枠組みを国としてはしつらえるべきではないかというのが次の論点であります。
じゃどうするんですかと。実際に、そんなことを言ったって、自治体は真剣に行革に取り組まないところ多いじゃないですかと、大阪市を見なさいと、すぐそういうことになるんでありますけれども、実際はそうなんです。千八百二十もありますから、真剣に取り組むところもあれば取り組まないところもあります。
私は、それはもう自業自得だと思うんです。取り組むところはちゃんと持続可能な財政運営が可能になりますし、そうでないところ、ぼやぼやしているところは破綻をすると。破綻をしたらどうなるかというと、それは行政サービスが、市民に対する行政サービスが著しく低下をするとか市民の税が増税になるとか、そういうふうなことになるメカニズムがあれば、勢いみんなが真剣に行革をやるようになるんであります。そのメカニズムを私は大事にしたいし、
政府はそういうメカニズムが働くような枠組みをつくられるべきではないかということです。
今、竹中
総務大臣などが破綻法制の整備ということを説いておられたりしますけれども、私は基本的にはあれは賛成であります。自治体、全国知事会なんか反対していますけれども、私は賛成であります。
ただし、破綻法制といったときに、
二つ条件がありまして、
一つは、破綻防止のメカニズムが働くようにならなければいけない。まず、破綻をさせないというメカニズムがしつらえられなければいけない。それはだれがするかというと、それは住民のチェックとか情報公開とか、それから
金融市場によるチェックとか、そういうものがメカニズムとしてなければいけない。それからもう
一つは、破綻法制というのは倒産型ではなくって再建型の破綻法制でなければいけない。そういう留保条件はあるんでありますけれども、基本的には賛成であります。そういうことを通じて、言わば自業自得の地方自治制度というのが、冷たいようでもこれが必要なんではないか。
そうしますと、のんきで無自覚な自治体は破綻をする可能性が大いにありますから、そこで主権者である住民がはらはらして、いい人をちゃんとその代表として選ぶと、こういうことになる。それが、迂遠なようでも一番の近道だと思います。
あと、「自治体が上辺だけでなく行革に取り組まざるを得ないシステム
改革が望ましい」と書いていますが、先ほど言いました、国が今集中
改革プラン作れといって全国に号令掛けているんですけれども、みんな作っています。四十七都道府県のうち作ってないのは鳥取県だけです。私どもは作りません。行革などは、国にレポートするものではなくって、自ら判断して当該地域の住民の皆さんに説明責任を果たすべき代物ですから、ちょろちょろっと作って国に報告したりするのは本当の行革ではないと思っているものですから作っておりませんが、大半の自治体は作っております。ほとんど全部ですね。
どういうことが起きているかというと、例えば四・六%公務員の数減らしなさいよという命題があるんですけれども、そうなると、真剣にやっているところもあるとは思いますが、例えば
一つの行政
機関を地方独立行政法人にする、エージェンシー化する。となりますと公務員の数はそこでその分だけ減らすことができるんであります、形式上。ですけども、じゃ、その人間がいなくなるのかというと、そうではなくて、独立行政法人の職員になっただけで、身分が変わっただけで何にもトータルコストは変わらないわけであります。ところが、そんなことをしても、上辺だけがちゃんとつじつま合っていればよしよしということになったりするんです。ですから、そういう愚かなことにならないような、もっと本質的なシステム
改革が用意されなければならない。
それは、じゃどんなことですかというと、
一つは、もう情報公開を徹底する。徹底せざるを得ない仕掛けを作ればこれで大半のことは片が付くと私は思います。私自身が県知事になって一番力を入れたのは、この情報公開を徹底ということであります。そのことで
行政改革は随分進みます。例えば、大阪市のような給与の不適切な運用なんというのも、情報公開しないから、秘密の中でこそああいうことは起こるわけであります。情報公開すればあんなことは一掃されるわけであります。したがって今回も、ばれたら直そうという、こういうことになるんですね。ばれたらというのは、あれは情報公開をしたということになるわけです。情報公開をせざるを得ないシステムをつくるということが必要です。
それから、行革法案の中に、地方団体に
財務諸表、例えばバランスシートでありますとかそういう
財務諸表を作成するようにしむけていくというのがあったと思います。それは私は結構だと思うんですけれども、自治体になぜ
財務諸表がないか。これは国にもそうですけれども、貸借対照表もありません。なぜないかというと、使う場面がないからです。
民間企業はなぜ貸借対照表を作っているかというと、金借りるときに必ずあれは持っていないといけないわけです、
金融機関に対して説明しなきゃいけませんから。それから株主にも報告しなきゃいけません。
ところが、自治体の場合には、借金するときは
総務省の方の許可とか承認とかというのはありますけれども、貸手によるチェックは何にもないんであります。許可証があれば貸してくれる。したがって、
金融機関は全く資産とか債務とかをチェックしない。したがって、
金融機関から
財務諸表のようなものを求められることもないわけであります。
財務諸表を作れといっても、今のような状態で作れといっても
意味がありません、作っても何の使い道もありませんから。そうではなくて、本質的には、地方債に対する関与、国の関与をやめてしまって、貸手がちゃんとチェックをする、借り手の
財務内容をチェックする。こういうメカニズムが働くようにすれば、勢い
財務諸表は作らざるを得なくなります。
今、
総務省に行って起債の許可を求めたり起債の承認を求めたりしても何の
意味もないんです、本当は。貸してくれるわけでもないですし、それから自治体の財政の行く末を
心配してくれるわけでもなくて。何の
意味もないのに起債のチェックを受けているわけです。もうそんなものは外して、そして
金融市場にゆだねるという、こういう仕組みが必要ではないかということであります。
ついでに言いますと、地方債に今関与を受けているわけです。従来許可、今は承認なんですけれども、
協議による承認なんですけれども、これは言わば成年後見制度の下にあるようなものなんです。まともに自分の判断で、自分の責任でお金が借りられない人というのは、今、世の中では成年後見制度下にある人です。一昔前までは禁治産者と言っていました。すべての自治体が今禁治産の状態にあるわけです。成年後見制度の下にあって、地方の自立だとか分権だとか言って、私はそれは全く矛盾していると思うんです。地域の自立の基礎は、まず自分の判断で借金をしてちゃんと自分の責任で返していくという、こういうまともな仕組みを是非つくっていただきたいというのがこの際の
お願いであります。
あと、国の
行政改革などにつきまして全般的な感想と意見を、少し失礼に当たる部分があるかもしれませんが、申し上げますと、私どもから見まして中央
政府は極めて透明性が低いという印象を持っております。透明性の低い中から例えば防衛
施設庁の官製談合が生まれるわけです。透明性が高ければあんなことは絶対起こりません。
それから、例えば予算編成過程が全く不透明であります。概算要求してから
財務原案が出てくるまで全く不透明であります。国の重要な進路を決める予算というものが半年間ぐらい全く不透明な中で、ブラックボックスの中で作業が行われている、こういうことは改めなければいけないと思うんです。
一事が万事でありまして、実は今日
先生方にお越しいただきましたが、ここで、当地で今
政府主催の
会議が、別の
会議もあるんです。
二つほどやっていまして、その
一つが、
総務省の人が来まして中国地方の財政のブロック
会議やっているんです。今、交付税の問題ですとか地方財政の問題で大いに議論しなきゃいけない、時宜にかなった
会議なんですけれども、何と非公開なんです。私ども唖然としました。私どもがやっている
会議なんか全部公開です。ところが、
総務省が主催ですから、主催者の意向でやるんですけれども、非公開。何でそんなもの非公開にしなきゃいけないのか。今こそ我々の地方財政の現状というものを、マスコミの皆さんも含めて大いに知っていただかなきゃいけない、窮状を察していただかなきゃいけない、共感をしていただかなきゃいけない、そのときにわざわざ非公開にするというのは、何か変なことをたくらんでいるんではないかというふうに勘ぐられるのが落ちなんですけれども、あえてそれが非公開で当たり前だというんですね。これがもう一事が万事で、
政府の体質であります。
是非透明性を徹底する、中央
政府の透明性を徹底するということを国
会議員の
先生方に
お願いを申し上げたいと思います。
もう
一つ、私ども見ていまして、三位一体
改革なんかでも権限とか補助金とかはもう絶対に各省は手放そうとしません。
総務省は
総務省で各省の補助金はやめろと言うけれども、起債の権限は手放そうとしません。何でこんなことになっているのかというと、私も国家公務員を長年やっていましたからもう自分でもよく分かっているんでありますけれども、要するに、今の国家公務員のキャリアの皆さんの人事制度がやっぱり間違っているんです。どう間違っているかというと、完璧に年功序列になっているわけです。年功序列の中でピラミッド型の組織、上が先細りになりますから、いずれかの段階ではみ出る人が出てくる。そうすると早期退職をしなきゃいけない。だけどそれは、そこで路頭に迷うわけにいきませんから、どこかで収容しなきゃいけない。それが天下り先。したがって、天下り先が確保されていなければ人事が回らないという、こういうメカニズムがあるわけでありまして、これがあるので各省の皆さんは権限とか補助金とかを絶対手放そうとしないわけであります。
天下り規制をするとか、二年は行っちゃいけないとか、何かいろんなことを小手先やっていますけれども、あんなのは全く本当に小手先であります。元を絶たなければいけない。元を絶つのは何かというと、年功序列をやめればいい。みんな定年まで働けばいいんです。国民のためにいい
仕事をする人は事務次官やったらいいですし、そうでない人は課長補佐で止まってもいい。どこの世界でもそれが当たり前なんです。それをやっていない異常な世界が今の霞が関の公務員と昔の陸軍、海軍、陸士何期、海兵何期と言っていました、今、私は自治省四十九年とかと言われていたんですけれども、同じことを今やっているわけであります。それを解除してあげるのが私は一番の公務員
改革の本丸ではないか。そういうところから、権限にこだわらない、本当に国民の方を向いた公務員の集団ができるんではないかと思っています。
あと参考までに、ごく簡単に、鳥取県では、じゃどんな
行財政改革をやっていますかということを紹介させていただきたいと思いますが、先ほど言いましたように、徹底した情報公開をやっています。それは、例えば予算編成過程はすべて公開しています。私どものところは予算はペーパーレスです。すべて庁内LANのシステムを使って予算編成作業をやっていますから紙なしでやっています。ということは、いずれの段階でもすべてホームページに公開できるわけです。県の場合は、財政課長、
総務部長、知事査定と三段階経るんですけれども、すべての段階でそれを、まあ要求の段階からですけれども、ホームページに掲載をしています。各段階の査定の結果というものは、何ゆえにこの
事業に付けたか付けなかったか、すべてそれぞれの責任者が説明責任を果たすような、そんな仕組みをしています。すべてさらけ出しています。
あと、トータルコスト予算といいまして、
事業費と人件費を組み合わせた予算査定にしています。国も地方も人件費は切り離しているんです。ですから、一体その
事業にトータルコストは幾ら掛かっているか分かりません。それを分かりやすくするためにトータルコスト予算にしました。例えば農業改良普及
事業というのは、従来の予算編成の過程では三千万ぐらいの経費しか計上されてないんです。ところが、改良普及員の人件費をそこにばっと織り込みますと途端に七億以上になるわけです。それで、じゃ、どれだけの行政効果を発揮しているのかということが問われる、そういう予算編成の仕組みにしまして、そこから
行政改革が随分できます。じゃ、こんなに金掛けるのはもうやめようじゃないかとか、これならアウトソースした方がいいじゃないかということに実はなってくるわけであります。そんなことをしています。
公共
事業の透明化。入札制度、いろいろ問題ありますけれども、私どものところは、条例でつくりました審議会、この審議会にはオンブズマンの頭目も入ってもらっていまして、そこで入札制度の仕組み、格付でありますとか、そんなことを逐一チェックをしてもらっている、システムについてチェックを加えてもらっていると。このことで透明化が進んでいます。
労使の
関係も透明化しています。給与の問題が不透明だから問題が起きる。全部、給与も、不適切な運用も、すべて私が知事になりましてからホームページに登載をしました。そこからいろんな批判が出ました。その批判が出たものを順次直してきて、わたりというものも全廃しました。現業職員の給与水準は非常に高い、これも全部今直しました。退職前にみんな課長で辞めた、そんな変なのもやめました。もう大体すべてクリアしましたのは透明化したからであります。
あと、人事は年功序列をやめていますから、天下り先も要りません、県庁では。それから、閉鎖的な部単位とか職域単位の、職種単位の人事
異動もやめていますから、その内部の権限争議、霞が関に見られるような権限争議なんかありません。
男女共同参画を徹底していまして、例えば財政課、国でいうと
財務省の主計局ですけれども、ここもほぼ三分の一の職員を
女性にしています。国でいいますと主計官に相当する職員も三人
女性にしています。何が起きるかというと、やっぱりノーマライズされます。
仕事の仕方も変わります。深夜労働なんかはもう余り、まあ余りというかほとんどしなくなります。肉体労働から知的労働に変わってきます。今、
財務省の主計局なんか見るともう肉体労働になっています。あんなので財政再建できるはずがないです。すぐれて知的な労働のはずなんですけれども、そこを変えなければいけない。そのためにも男女共同参画がいいのではないか。