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参考人(
住江憲勇君)
全国保険医団体連合会とは、まず
一つには
国民の
医療、社会保障
制度を守り発展させる、そして二番目には、
地域での
医療機関としての経営を守ると、そういう
立場で活動している団体でございます。
資料を見ていただきます。
まず、長期にわたり療養しようとする患者が入院できるそういう
療養病床削減への疑問ということで、二ページ見ていただきます。
これは、御承知のように、三十八万床を十五万床に削減、二十三万床削減される計画でございます。この実現のための二つの課題ということを挙げております。削減自体には私どもは反対ではございますけれども、これを施行するに当たっては、入院
医療を代替する在宅
医療の構築、基盤整備、そういうことが絶対必要でございます。また、
病床転換促進のための様々な現在の
医療機関に対する施策というのもこれもまた必要でございます。
三ページ目、「
療養病床の「居住系」への転換」ということで、こういう様々な
施設を列挙しております。要するに、入院から入居への転換ということになろうかと思います。
四ページ見ていただきたいと思います。
民間病院
療養病床の転換後のイメージ図でございますけれども、地元では営々と
地域医療機関として築いてきたそういう
努力が、ここにも表していますように、一部外来診療として残すのみで、あとは介護複合
施設への転換を余儀なくされる。もう本当に営々として築いてきたそういう
努力に対しては、本当にその先生方にとってはじくじたる思いがあろうかと思います。
続きまして、二番目の在宅概念の大転換で行き場を失う老人難民を大きく生み出すということでございます。
五ページを見ていただきたいと思います。
これは厚労省
保険局担当課長の
発言から抜粋したものですけれども、驚くべき
発言でございます。これは私ども福岡県内の会員の参加しておられる講演で述べられたことですけれども、終末期
医療の適切な
評価の検討というのはホスピス、ターミナルケア病棟というふうに考えてよいのか、どのような
方向でお考えかという質問に対して、いやいや違う、家で死ねということ、住民票を移してそこにおればもう家とみなす、往診も行けるし訪問看護も行けるし、そこで死んでということ、病院に連れてくるなと、こういう驚くべき
発言、そういうところの
発言、厚労省官僚によって誘導された今回の問題点ではなかろうかと思います。
六ページ見ていただきます。
そういうことによって、在宅概念の大転換を要求されております。今後の二十一世紀型在宅のイメージ、自宅ではない住まいを多様に用意する、
医療機関でも介護
施設でもない居住
施設に移ってもらう、
医療も介護サービスも外部から出前するんだというシステムにする、居住
施設に住み続け、そこで亡くなってもらう在宅死を増やすと。入院、入所から入居へという、そういう大転換でございます。
七ページ見ていただきます。
そういうことによって行き場を失う高齢者の入院患者。御承知のように、特別養護老人ホーム、今年に入ってこれ調査では三十八万四千とも言われております。
老人保健施設も満杯でございます。あとは居住系
施設、そして自宅、そういうところに行けなければ、行き場のない患者が大量に出現するのは必至でございます。
次、三番目に、
療養病床削減計画の動機とされる二つの調査結果の活用に私どもは大きな疑義を持っております。
八ページを見ていただきたいと思います。
これも
保険局担当課長の
発言ですけれども、今回の
療養病床再編の動機は、二つの調査、私ども自身がやって中医協に出した調査と
医療経済研究機構がやった調査で、別個にやったのに、入っている人の半分が
医療の必要度がないという同じ結果を得たと。本年の
診療報酬改定でこんな低い点数だったら追い出されるんじゃないか、正に意図的にそういう点数にしたんですよと、こういう驚くべき、これは五月に愛知県内で行った私どもの会合での懇談会の
発言でございます。
九ページ見ていただきます。
医療経済研究機構が行った、左側ですけれども、一から五の設問、それによるデータが下の円グラフでございます。
そこで、四番目の、医学的管理をさほど必要とせず容体急変の
可能性も低いという、そういう項目が、右の、これは厚労省説明会資料の、左のを基にして作成されたんですけれども、急変の
可能性が低く福祉
施設や在宅での対応が可能、そういう項目に変えられているわけですね。そこに、調査表には福祉
施設や在宅での対応が可能かという設問はなかったんですけれども、そういうところを利用して五割が入院
医療不要論に結び付けておられます。
次、十ページを見ていただきます。
これは、中医協患者特性調査の設問項目と厚労省、これは右側ですけど、厚労省説明会資料の比較でございますけれども、厚労省で説明されたデータが下の円グラフでございます。ここでも、一番下の、
医療的な状態は安定しており医師の指示はほとんど必要としないというところが、ほとんど必要なしという言葉に片付けられて、こういうところで、医師の対応がほとんど必要ない人がおおむね五割という結論に持っていかされております。
医療によって機械的に患者を区分することは、
医療現場の実態と大きく懸け離れたもの、特に症状が三十日間あっても七日までしか
評価しないのは、
医療が必要な患者を追い出すことを強いる最たるものでございます。
十一ページ見ていただきます。
これ、ADLと
医療区分をケースミックスしてこういう点数配分されたわけでございますけれども、四十九万円が現行のあれですけれども、もうAでプラス、Bでやっとこさプラス一万、あとはもう減額という、そういう
状況でございます。
次は、十二ページ見ていただきます。
これ、二〇〇五年十一月二十五日
時点での中医協へ出された
医療区分、ADL区分でのケースミックスでのパーセンテージ。
十三ページ。そして、
医療区分三に該当しない者のうち、ですから一、二ですね、以下のいずれかの条件に該当する者ということで、
医療区分に、これもせいぜい七日間の該当
期間ということに限定されております。
十四ページ。これによって、結局、
医療区分一、二、三、そのパーセンテージがどれだけ、今年の四月十三日
時点で昨年十一月
時点よりも、やっぱりそういう統計上にこういう差異が出てきております。
十五ページ見ていただきます。
こういう具合に、近年ずっと在宅死が減り病院での死亡が増えてきているわけですけれども、そこを、在宅の死亡を増やそうと、病院死を減らそうとする、それの何物でもございません。
その根拠が、根拠といいますか厚労省の言い分ですけれども、十六ページ見ていただきます。
左側が、まあこれは
一つのケースですけれども、百十五万円掛かる、一日当たり三万八千三百三十円掛かる入院
医療費を、在宅でならばその半分で済むという、そういう論拠にされているわけでございます。
十七ページ見ていただきます。
これは、厚労省医政局終末期
医療に関する調査等特別調査検討
委員会の出された資料ですけれども、患者さんは、あくまでもやはり
医療施設への入院ができる
体制を望む、そういう方が八四%、最後まで自宅、居宅を望む人はわずか一一・二%、そういう患者さんの切ない思いが出ております。
続きまして、大きな二番目の「
国民の健康、
医療格差を拡大する計画への疑問」でございますけれども、これはもう時間もあと五分ぐらいしかありませんので、よく目を通していただきたいんですけれども、とりわけ「高齢者を直撃—
保険給付削減と
負担増への疑問」というところでございます。
ここで、新高齢者
医療保険制度、新たに
保険料を
支払う高齢者は二百万人とも言われております。もう払えなければ
保険証を取り上げられ、資格証明書が発行されるという、そういう事態が現実に起こります。そして、
後期高齢者専用の診療報酬によって
保険診療を受けることになります。これはみとり
医療とも又は終末期
医療とも指摘されております。
特に問題なのは、障害認定一級から三級を受けた六十五歳から七十四歳までの高齢者も
後期高齢者医療制度への対象になるということでございます。例えば人工腎臓、人工透析ですね。この治療自体、社会復帰そのものでございます。人工透析さえ受けていただければ、十分社会復帰し一般の
方々と同じ社会行動が取れる、そういう
方々。そういう
方々がこういう
後期高齢者専用の診療報酬体系に組み込まれるということは、人工透析二十五万人おられます、その五〇%はこういう対象になる、そういう危険、診療報酬での。そしてまた人工透析、そういう一級から三級の方をそういう
後期高齢者専用の診療報酬体系に持っていくということに断じて反対を申し上げたいと思っております。そして、驚くことに保健予防からは七十五歳以上は外されるわけです。そうすることによって、何のことはない、
後期高齢者は
保険料負担は強いられますけれども、
制度自体、みとり又は終末期
医療、そういうところに追いやられる、保健予防からも除外されるという、そういう事態を生んでしまうということでございます。
あとの課題についてはまたお目通しいただいて、最後にやはり混合診療の問題ちょっと言わしていただきます。
二十六ページでございます。
現行の特定療養費を廃止して、
保険外併用療養費へ組み替えて、
評価療養と選定療養に再構成するとされております。組み替えた理由や、どのような
内容を想定しているのか、具体的に明らかにした上で、
国民の健康、
医療にどのような影響を及ぼすのか、十分に審議を
お願いしたいと思います。また、実質
負担が四割以上にもなる
保険免責制、これもまた再浮上いろいろなところでされております。この
保険免責制の導入は断じて認めることはできません。
そして、二十七ページ見ていただきたいと思います。
しからば、
医療や社会保障
制度に対して、国やそういう企業
負担がきちっと責任が果たされているかどうかの問題でございます。この上のグラフ、二〇二五年度には
医療給付費が五十六兆円、対
国民所得比一〇・五%と。この五十六兆円自体めちゃくちゃな数字、予測なんですけれども、それにしても一〇・五%、これは本当に
医療費が国家
財政を凌駕するがごとくのような、そういう宣伝されて言われますけれども、そうしたらその一〇・五%、諸外国、OECD諸国で、フランスやドイツなんかはもう九八年度に一〇%を突破しているわけですね。
そしてまた、下のグラフを見ていただきたいと思います。これも二〇二五年度、社会保障給付費、対
国民所得比で百四十兆円とも百五十兆円とも言われていますけれども、それも対
国民所得比にしますと二八・五%になる。これもめちゃくちゃな伸びだと宣伝されますけれども、一九九八年にフランスやドイツはもう既に四〇%の域に達しているわけです。この二〇二五年度二八・五%というのも、ドイツでは一九八九年に到達していた数字です。何で四十年後に予測される
日本の二八・五%が過大だと宣伝されなければならないのか。
二〇〇四年度法人企業の経常利益四十五兆円と言われております。十五年前の法人税率で計算しますと、十・二兆円の今法人税収が二十二兆円になります。ですから、二〇〇六年度の
医療給付費を一〇%に達するために必要な額は十・五兆円でございます。十分お釣りが来ます。歳出歳入一体問題とかいろいろ言われていますけれども、そこでは社会保障削減、そして庶民大増税言われてますけれども、決して法人税、また高額所得者の税を見直すということは一言も触れられないことも、これも指摘せねばならないと思っております。そういうところでの税収をかち取ることこそが喫緊の課題ではございませんでしょうか。そういうところに今の所得格差、そして生活格差、健康格差とも言われる根源があろうかと思っております。
最後のページ
お願いします。
ここで世論調査の結果を紹介します。これは毎日新聞の四月二十二日付けの世論調査の結果ですけれども、
財源はどうしたらいいんだろうかということで、社会保障に対する、他の予算を削って社会保障に回すべきだと。これは何を
意味するかといいますと、税にしろ社会
保険料にしろ、所得再分配
機能を発揮してこその徴収原則であるという毅然とした、かつ健全な
国民の世論ではないでしょうか。
ですから、本当に歳入不足に対しては、歳入を増やすという観点では、先ほど申しました法人税、高額所得者の税率、そういうところを見直す、そういうことによって社会保障を充実させる。そういうところが今ないからこそ、自殺者、昨日も発表されました、三万二千五百五十二人。そしてまた出生率が一・二五という、そういう厳しい数字も出てきているんではないでしょうか。
最後に、年金不正免除問題は徹底究明すべきものと考えております。
医療改革関連法案は、いたずらに
国民の不安をあおるのではなく、現場の実情を十分に踏まえた上で議論を尽くしていただきたいと思っております。十分議論を尽くしていただければ、問題点が山積しております。ですから、そういうことを解決するための手だてを取る。ですから、差し迫ってこの
関連法案については廃案を求めたいと思っております。
以上です。