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参考人(
堀切川
一男君) どうもおはようございます。
私、東北
大学の、名前がちょっと妙な名前ですが、
堀切川と申します。
今回、この参議院の
経済産業委員会におきまして、
中小企業の
ものづくり基盤技術の
高度化に関する
法律案につきまして、
参考人として御
意見と御提言を申し上げる貴重な機会をいただきましたことに、まず感謝申し上げたいというふうに思います。
本日、ちょっと厚めの
資料を作ってまいりましたが、話が途中になってもあれなので、私の言いたいことは最初の一ページ目と二ページ目に要旨でまとめさせていただきました。お暇でしたら三ページ目以降の細々したのも読んでいただければと思います。
あと、十ページ目以降に
参考になる図表を付けさせていただいております。特に一番最初の図1の
お話を申し上げるので、それも
参考にしていただければというふうに思います。
私は、これまで
大学におきまして工学の分野の教育研究にずっと携わってきている人間でございますけれど、非常にたくさんの
中小企業の
皆さんといわゆる産学連携によって様々な研究
開発に取り組んでまいりました。
例えば、もう八年前ですが、長野オリンピックのときには、ボブスレーという競技ございますけれ
ども、長野オリンピックの、ボブスレーの氷とこするところを、これ、ランナーといいます、このランナーを
日本製として初めて
開発させていただいて、オリンピック採用されるということがございました。ライバルだったジャマイカチームに、このランナーの性能によって勝てたのではないかと若干思ったりしているところでございます。
そのほか、農業の分野から出る副産物である米ぬかから工業用の新しい材料、RBセラミックスという名前を、私、付けさせていただきましたが、この
開発もさせていただきました。
そのほか、いろんな
開発をさせていただいたのを今日の
資料の一番最後に付けさせていただいております。この
開発のほとんどが実は
中小企業の
皆さんとの共同
開発であったということなんです。
また、私の研究室には毎年五十社以上の、ほとんどが
中小企業の
皆さんですが、五十社以上の方が相談にいらっしゃいます。今まで全国の五百社以上の
中小企業の
皆さんの相談を基本的に無料で受けるということをさせていただいてきております。多分、
大学の人間としては相当珍しいスタンスで研究
開発しているかなと
自分では思っております。
私は法律の専門家でもございませんし、経済産業政策の専門家でもございませんが、非常にたくさんの
中小企業の
皆さんと研究
開発の現場にいる人間の一人として、また私は
中小企業の
皆さんの熱烈な応援団のつもりでございますけれど、その応援団の一人として、今日、御
意見と御提言を申し上げたいというふうに思います。
まず初めになんですけれど、二十世紀の我が国の産業構造がどのように変遷してきたのかということを簡単に総括させていただいて、その上で、現在の我が国の産業構造にはどんな問題点があるのかということを、素人ながら私の
意見を述べさせていただければというふうに思います。
言うまでもなく、我々の国のこれまでの産業経済を牽引してきたのは、繊維産業とか鉄鋼、
自動車、電気・電子産業、最近では情報、ITと言われるようないわゆる基幹産業が我が国の経済を牽引してまいりました。そういう意味では、二十世紀は基幹産業の登場と成長、そして成熟の
時代であったというふうに私は考えています。
しかしながら、バブル経済がはじけた九〇年代中盤以降のタイミングとも合うのかもしれないんですが、こういう基幹産業を引っ張ってきた大
企業さんも、
東南アジア各国のいろんな
企業の急速な追い上げに今遭ってきて、もう既に右肩上がりの成長なんというのは
期待できなくなっているという状態で、大
企業でさえも大量のリストラをして生き残りを図っているというのが現状だというふうに思います。例えば、巨大
企業が一万人のリストラをして
自分の
会社が生き残ったとしましても、実際には五十人の
中小企業で考えれば二百社がつぶれるのと同じだけの失業者を生むことになってしまいます。ですから、大
企業がつぶれないからそれでいいというわけにはいかないというのが
一つ大きな問題でございます。
もう
一つなんですが、この基幹産業を陰で支えてきたのは
中小企業のいわゆる
ものづくりでございます。ただ、その
仕事ももう急速に
東南アジア各国にシフトしてきているということで、いわゆる空洞化に歯止めが掛からないというのが今の現状だと思います。
技術力のある
会社でも
中小企業さんが今つぶれているという状態があるというふうに私は認識しております。その原因は多分、
開発型の
中小企業というのがまだまだ少なくて、どうしても下請体質になっていると、それで
東南アジアに
仕事を取られるという状態なんだろうと思います。
この現状を打破する一番いい方法は、新しい基幹産業をつくることだと思いますけれど、当面、例えば
自動車産業のような大きな産業が
あと十年でできるかと言われたら、これは私は難しいというふうに考えています。
では、こういう
状況を踏まえてこれから先、二十一世紀の我々の国の産業構造はどうあるべきかということについて、またまた素人ながら私の考えを述べさせていただきたいというふうに思います。
私は、これから先、二十一世紀の少なくても前半は新しい小さな産業をたくさんつくることだというふうに考えています。あるいは、それをつくらなければ
日本経済は駄目になると考えています。こういう新しく生まれる小さな産業を私はベンチャー産業と呼んでいるんですけれど、産業が安定していない、まだ小さいという意味ですけれど、二十一世紀というのは多彩なベンチャー産業の登場の
時代であるというふうに私は考えています。
それで、様々なベンチャー産業がたくさん集まって集積もしできれば、それが新しい雇用を生みます。また、新しい
ものづくりの
仕事を生み出すことになります。その結果としては、今現在ある
中小企業の
皆さんに新しい
仕事を提供することになるということで、
中小企業さんの生き残りを図るにはちっちゃな産業をたくさんつくるということが非常に大切なことになります。その小さな産業をつくる多分非常に重要な役割を担うのが既存の今ある
中小企業さんだと私は思っています。
そういうチャレンジャーを私は
中小企業系ベンチャー
企業というふうに勝手に呼ばせていただいておりますが、実は
中小企業さんが新しい
事業を成功させるには、
技術力、
資金力、営業力、
経営力、
社員力という、私はこの五つの力がそろわないと勝てないと思っています。特に、この五つを全部そろえるというのはなかなか足腰の弱い
中小企業さんでは難しい。特に
技術力と
資金力と営業力の面を考えますと、
中小企業さんが新しい
事業を成功させるためには、多分、産学官の連携というのが最も有効だというふうに私は考えている人間でございます。
その産学官連携の
一つとしてよく言われるのが公的補助金でございます。こういう
中小企業の
開発あるいは産学連携による
開発にはこの公的な補助金、国の補助金というのは非常に有効でございます。ただ、この補助金は必ずしも高いお金が必要なわけではありません。よく高い金を取りたがる傾向がなきにしもあらずなんですが、大体、高額の補助金
事業はほとんどが成功まで行かないというふうに私は考えています。それで、
開発支援に相当分あれば十分であるというふうに思います。
ただ、
中小企業さんから、あるいは産学連携から成果を上げるためというふうに考えますと、実は
開発を始めてから予想と違うことがどんどん起こります。そうすると、どうしても当初の計画を変えないと有効なゴールに行かないという場合があるんですけれど、補助金
事業ではゴールまで設定されています。
それを考えますと、
中小企業の
皆さんが補助金をより取りやすくて、またより有効な使い道のためには、まず
一つは応募書類を非常に簡素化してほしいと。非常に難しい書類なんです。あれは大
企業さんでも相当悩みます。これを簡素化していただくということが必要だと思います。それからもう
一つは、補助金の使い方にもうちょっと自由度がほしいと。本気で
開発するんであれば、
開発変更は当たり前であるという認識がほしいというふうに思っているところでございます。
もう
一つなんですが、実際に、現行で公的な補助金制度で様々な支援がされているんですが、現実に新しい
製品化まで行ったとか新規
事業、新規産業をつくったという具体的な成果はまだまだ少ないというふうに私は思っています。そういう意味では、具体的な成果を生み出す産学官の連携はどうあるべきかというのを早急に検討する必要があるのではないかというふうに思っているんです。
実は、私が取り組んできました産学官連携というのは、非常に体力の小さな
中小企業さんでは一部公的な補助金をいただいて何とか成功まで行ったものもございます。ただ、ほとんどが全く補助金なしで私はいろんな
企業さんとやってまいりました。その割には短い期間の間に数多くの
製品化まで支援できたつもりでおります。
それで、そういう具体的な成果を生み出す産学官連携はどうあるべきかというためのヒントを与える事例として、私が今、仙台市の中で取り組んでいる、ここ二
年間の取組事例をちょっと御
紹介させていただきたいというふうに思います。
実は、仙台市あるいは宮城県では、東北
大学と連携しまして地域連携フェロー制度というのを導入いたしました。これは、東北経済連の
会長さんと宮城県知事と仙台市長と我々東北
大学の総長という産学官の地域のトップ四者のラウンドテーブルというのが行われて、三年前にこの導入が決まったものです。で、二年前から、
平成十六年度からですけれど、地域連携フェロー制度というのが導入されております。これは東北
大学の教員が仙台市役所あるいは宮城県庁の嘱託職員、地域連携フェローという嘱託職員となって地域の自立的な新産業創出の支援活動をしようというものなんです。私は声を掛けられて、今、仙台市役所の地域連携フェローをやっています。
私が取り組んできた中で、新
製品開発に非常に有効だったと私自身が認識している新しい取組があります。これが御用聞き型
企業訪問というチャレンジでございます。
この御用聞き型
企業訪問というのは、私と私を支援していただいている市役所の方と市の外郭団体の市の産業振興
事業団のマネージャーの方、この人は地元の
企業出身者なんですけれど、この三人で支援チームを組んでいます。それで、今、市内
企業を中心に県内
企業を広域で今三十社以上回っているんですけれど、通常は何か困り事があって来てくれって行くのは一杯あるんですけれど、勝手に押し掛けていって、何か
技術で困ってませんかと、研究
開発で困ってませんかと押売のように出掛けていくという、御用聞き型
企業訪問というのはこういう作業です。
その結果、現場の
開発が今抱えている問題をいち早く掘り起こすことができて、
あとは
大学のシーズあるいは我々の経験を生かしてそれをゴールまで導くという応援ができると。具体的に言いますと、地元の
企業さんと私の研究室の間で、そこから共同研究がこの二
年間で八つ生まれました。この八つは全部
製品化、今二
年間でさせていただいたところなんです。
例えば、高圧送電線の鉄塔の上の電線を自動で中身が壊れてないかを調べる移動型の
ロボット、これを
開発してきた
企業さんあったんですけれど、その
ロボットは動かないことを除いてすべて完成したんです。動かないと
ロボットになれないんです。その動かすところの駆動のローラーを私の
開発した新素材で使ってもらったら、動くようになりました。これだけで初年度三億円の売上げです。それで、非常に簡単な、四か月で
製品開発できたんです。こういうふうに、実は仕組みをうまく工夫、努力をうまくやれば
製品化はたくさんできるんです。
私らがうまくいったというふうに勝手に認識しているその理由についてなんですけれど、実は地元の
中小企業さんに我々の方から出掛けていって、
あと一歩で成功するのに失敗しちゃったとか今大きな問題があるんだというのを直接我々が掘り起こして、すぐ
大学のシーズでそれを解決すると。そういうことを積極的に我々の方が動くことで、二
年間で八つの
製品ができたというふうに私は理解しています。
なお、この私の地域連携フェロー活動につきましては、私を支援していただいた仙台市産業振興
事業団というところが、
経済産業省さんの外郭団体だと思いますけれど、
日本新
事業支援機関協議会、JANBOというところですが、そこのJANBOアウォーズ二〇〇五という表彰制度がございまして、全国で最も効果的で独創的な新
事業創出支援を行った産業支援機関に対して、今年度ただ一件だけ与えられる地域プラットフォーム大賞というのがございます。これを受賞することがつい先ほど、先週でしょうか、決まったところでございます。
そのように、我々のこの仙台市での二
年間の新しい取組というのは国レベルでも評価をいただいて、また全国、今六つの県から仙台市に、この制度はどういうふうにやっているんだと緊急ヒアリングを受けているところなんです。こういった取組が実のある産学官連携をやる意味でヒントになればいいなということで申し上げたところでございます。
多分、今日の、今朝の練習では二分オーバーしますが、よろしくお願いいたします。あらかじめお断りします。
それでは、
中小企業の
ものづくりの支援施策について、私、今までも御
意見、御提言申し上げましたが、まとめてまた申し上げたいと思います。
最初の方で申し上げたように、これからの二十一世紀というのは多彩なベンチャー産業、小さな産業をたくさん登場させる
時代です。その小さな産業をつくる主役になるのは何かといいますと、実は既存の
中小企業であるというのが私の考え方です。
全部の雇用者数、今四千万人と言われていますけれど、そのおよそ七〇%、二千八百万人は、実際には今、現行の
中小企業に勤めておられるわけです。
中小企業の例えば一〇%が新規
事業に成功されて、そこの雇用者数を二倍、倍増できたとしますと、全体では七%の雇用アップになります。人数で言うと二百八十万人の新しい雇用を生むことになるんです。十人の
会社が新規
事業で二十人になるというのは絶対簡単にできます。一万人の
会社がどんなに頑張っても二万人になることは絶対ありません。一万人の
会社というのは、うまくいけば五千人にしたいんです。
そういうふうに考えますと、これからのベンチャー産業、新規産業をつくるのは絶対に
中小企業であるというふうに私は思っているのでございます。そのためには、下請型の体質を
開発型に変えなきゃいけないと。全部じゃなくていいです、先ほどのように、一〇%の
中小企業が
開発型に変えればもう失業問題はなくなるというふうに私は確信しております。
もう
一つなんですけれど、実は非常に細かい話ですが、
中小企業のやる気を引き出すためには、
ものづくりで成果を上げた
中小企業の本当に現場の
開発の担当者自身を褒める制度を導入してもらいたいと思っています。
中小企業さん自身を褒める制度は今たくさんあるんですけれど、現場で汗を流して頑張って研究
開発したその個人を褒めることでその人のモチベーションが上がって、必ず次またその人はいい
仕事をします。家族も喜びます。そのために、是非とも
中小企業で現場で
開発している担当者を褒める制度を導入していただきたいと。これはお金が掛かりません。何たら大臣の印って押してもほとんど判こ代はただみたいなものでございます。一番高い表彰状でも五百円で金ぴかの立派なのあります。だけど、それをもらうために頑張るんです。それを申し上げたいと思います。
それで、十一時になってしまいましたが、ようやく本題の本
法律案についての
意見を簡単にまとめて申し上げたいと思っております。
今回の
法律案は、私の認識では、
中小企業の
ものづくりを生かした攻めの施策が必要であると私は申し上げたいと思っています。
ものづくりを守るんではなくて、
ものづくりを生かした攻めの施策が必要だと。その方針に私は一致するものだというふうに思いますので大いに
期待したいと、賛成の
意見を述べたいというふうに思っています。
二つ目なんですけれど、この
ものづくりを生かした攻めの施策、それをやるためには
中小企業に知的財産を創出させる施策が極めて重要なんです。今までは大
企業が特許を持っていればいいと。ではなくて、新しい産業をつくる
中小企業が特許というものを持つ
時代でございます。それを強力に推進するというのが本
法律案の趣旨だと理解しましたので、これも賛成でございます。
ただ、この点の運用面について
一つだけ御
意見を申し上げたいというふうに思います。
多分今後、
中小企業と
大学あるいは高専等との産学連携からいろんなアイデアが出て、共同での特許出願という形のものが増えていくと思います。ただ、
大学とか高専によっては、実は知財に関するルールが必ずしも
企業さん、特に
中小企業さんの理解を得る形になっていないところもございます。そういう場合には、
大学や高専等でこの知財に関するルールとか運用方法については現行の
中小企業さんを応援できるような形に変えて運用していただくと。多分、文科省筋の御協力が必要になると思うんですけれど、そういうことの検討の可能性があるということを指摘させていただきたいと思います。
あと、最後、三つ目でございます。
三つ目は、先ほど申し上げたように、単なる産学官連携からは何も生まれないので、具体的な成果を生み出す産学官連携の推進が必要ですけれど、本法律の趣旨というのは多分それに沿ったものだと私は
期待しております。
ここでも実は運用面で
一つだけ御
意見を申し上げたいと思っています。
先ほど申し上げたように、産学官連携で公的
資金を従来、大
企業さん中心にふんだんに投入してきましたが、具体的に
製品化、
事業化まで行った事例というのはやっぱり成功事例は少ないと。是非ともこの成功率を上げるような運用をしていただきたいというふうに思っているんです。我々は、御用聞き型
企業訪問というふうに我々呼んでいますが、最近ではこれを仙台モデルとか、場合によっては
堀切川モデルと言われるようになりました。こういううまい工夫をやることで同じ金あるいは支援が生きてくると。是非ともそういう施策を取っていただければというふうに思っています。金をばらまく施策から知恵を結集する施策をしていただきたいというふうに思うところでございます。
四分もオーバーしてしまいましたが、以上で私の
意見と御提言を終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。