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2006-04-05 第164回国会 参議院 経済・産業・雇用に関する調査会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年四月五日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月四日     辞任         補欠選任      大久保 勉君     広野ただし君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         広中和歌子君     理 事                 南野知惠子君                 松村 祥史君                 谷  博之君                 和田ひろ子君                 浜田 昌良君     委 員                 岩井 國臣君                 大野つや子君                 小泉 昭男君                 佐藤 昭郎君                 西島 英利君                 松山 政司君                 吉村剛太郎君                 伊藤 基隆君                 池口 修次君                 津田弥太郎君                 広野ただし君                 峰崎 直樹君                 松 あきら君                 井上 哲士君                 渕上 貞雄君    事務局側        第二特別調査室        長        富山 哲雄君    参考人        株式会社リクル        ートワークス研        究所所長     大久保幸夫君        一橋大学大学院        経済学研究科教        授        大橋 勇雄君        株式会社前川製        作所取締役会長  島賀 哲夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○経済産業雇用に関する調査  (「成熟社会における経済活性化と多様化する  雇用への対応」のうち、高齢者雇用在り方に  ついて)     ─────────────
  2. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ただいまから経済産業雇用に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、大久保勉さんが委員を辞任され、その補欠として広野ただしさんが選任されました。     ─────────────
  3. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 経済産業雇用に関する調査を議題とし、「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、高齢者雇用在り方について参考人からの意見聴取を行います。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、株式会社リクルートワークス研究所所長大久保幸夫さん、一橋大学大学院経済学研究科教授大橋勇雄さん、株式会社前川製作所取締役会長島賀哲夫さんに御出席いただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  御多用のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本日は、本調査会が現在調査を進めております「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、高齢者雇用在り方について忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず大久保参考人大橋参考人島賀参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、午後四時ごろまで各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず大久保参考人からお願い申し上げます。
  4. 大久保幸夫

    参考人大久保幸夫君) リクルートワークス研究所大久保でございます。本日はこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。私は、こちらの画像は使いませんで、お手元に配付しております紙の資料を基にしてお話をしたいと思います。  まず、一ページめくっていただいたところのお話から入りますが、御承知のとおり、二〇〇七年から九年にかけて団塊世代六百六十九万人の方々定年退職年齢を迎えます。これを称して二〇〇七年問題というふうに一般に言われております。この団塊世代の六百六十九万人の方々定年退職を迎え、その後六十代前半においてももし現在の就業を維持しようとすると、男性においては百万人程度、女性においても六十五万人程度就業の場が確保されないと同じ就業率を維持できないということになっておりまして、これが一つ団塊世代方々にどういう形で就業の場を確保できるのかということが問題になっております。  ただ一方では、この二〇〇七年問題に対して企業危機感というのがございまして、このような方々定年退職をしてしまうことによって、そのためのその技術の伝承というのがなかなか次の世代にできないとか、あるいはその抜けた穴を若年であるとか中堅で埋めるのは難しいという問題も指摘されているわけであります。これはまあある意味非常に不思議な話でございまして、一方では就業の場がなくて困るという話があり、一方ではその人たちの抜けた穴が埋まらなくて困るということを言われているわけであります。このある種矛盾のようなものが私はある高齢者問題、高齢者雇用問題の本質ではないかというふうに感じております。  既に人材採用労働市場においては、この二〇〇七年以降の団塊世代方々退職を想定して若手採用が非常に活発になっております。恐らく来年の三月に卒業する大学四年生ですね、この人たち採用数はバブル時期の求人数とほとんど変わらないレベルになる見通しが今出ております。それだけこの団塊世代定年退職を見込んで若年採用の方が活発化している。そしてまた、企業はこれは人が採れないということで大変悲鳴を上げているという状況になっているのが現在でございます。  ただ、このような大きな変化が起こるタイミングというのは、長年議論されながら高齢者雇用の問題というのは余り前に進んでこなかったところがありまして、このような高齢者雇用の新しい市場をつくる、形を整えるということにおいては大変いい機会、チャンスなんではないかという見方を私はしております。  この高齢者なんですが、次に、就業率の問題を次のページにまとめておりますが、六十五歳以上の就業率というのを私大変気にして見ております。そこに図も示してございますが、一九五五年、ちょっと古い、さかのぼれるのはここまでしかきちっとしたデータがないのでそこからを取ってあるわけですけれども、一九五五年には六十五歳以上の方の就業率というのは四二%あったわけです。ところが直近、二〇〇五年のデータでは、とうとう一九%しか就業してないという状態になってしまいました。  今後、御承知のように本格的に高齢社会になります。六十五歳以上人口比率というのは、二〇〇〇年の一七パーから二〇二五年には二八パーまで高まると。こうなる中で、この一貫した六十五歳以上の方々就業率低下というのは、大変これは大きな問題なんじゃなかろうかというふうに感じているわけであります。  その背景には、今の現在の日本就業構造というのが、雇用される、つまり、サラリーマンを中心とした社会構造になっていて自営業方々比率が非常に小さくなってきているということが背景にあるだろうというふうに私は理解をしております。国際的に見て日本高齢者就業率状態というのは大変高い水準にあるわけですけれども、一方で、それだけではなく、このような低下傾向というものも同時に見ておかないといけないだろうというふうに私は思っているわけであります。  このときに、現在、六十五歳への年金の支給開始の引下げということがございまして、六十五歳までの雇用確保ということに非常に大きなフォーカスが当たっているわけでありますが、もちろんそのこと大事なんですが、それと同時に、それ以降のことも視界に入れた高齢者雇用対策ということが必要なんではないかというふうに感じている次第でございます。  このちょうど四月に改まりましたけれども、四月一日付けで改正高齢者雇用安定法というものが施行されたことは御承知のとおりでございます。この法律によって、定年年齢の引上げか、若しくは継続雇用制度導入か、あるいは定年制そのものの廃止か、この三つの中のどれかの措置をすることが企業には義務付けられました。それはまさしく今スタートをしたところでございます。  最終的な報告はまだ発表されておりませんが、この三つの選択肢がある中で、九割以上の企業継続雇用制度導入というものを選択として選んでいる模様でございます。つまり、定年制そのものを、決まりを六十歳から六十五歳等に引き下げるのではなくて、基本的にはいったん六十歳で定年退職していただいた後に、それは期間を決めた再雇用という形で対応する、このようなものが中心的な今企業の施策になっていると、こういうことだというふうに御理解いただけると思います。  ただ、今回、法的な措置がとられましたけれども、元々多くの企業はこのような継続雇用というのを慣例としては持っておりました。厚生労働省調査でも、七割程度事業所は元々六十歳で定年退職した以降も継続雇用とする慣例があったと、こういうふうに調査結果を発表しておりますので、そのことが今回の立法措置によってより強化、制度化されたということだろうというふうに思います。このこと自体は大変大きな前進でありまして、一定成果として評価ができるものだというふうに感じております。  ただ、もう少し細かく見てみると幾つか気になる点も残っております。この継続雇用制度を持つ事業所、これは千人以上の規模のデータを見てみたんですが、のうち、継続雇用されない定年退職者比率というのは七〇%を超えているわけであります。つまり、継続雇用制度があるからといって、それを使うかどうかというのはまた別の問題だと、こういうことになります。  では、なぜ六十歳を超えた方々が必ずしもこの継続雇用制度を活用しないのかということを少し考えてみたいというふうに思うわけですが、その中には幾つか聞いてみるとなるほどと思われる理由が存在しているわけです。  一つは、右側に図で示してありますが、定年退職を迎えた以降の高齢方々希望する働き方と、継続雇用で提供される就業の場とが必ずしも一致していない。ちょっとその希望するものと機会ミスマッチを起こしているということがあろうかと思います。高年齢者方々は、フルタイムでなくややその時間を縮小して短時間、短日数で働きたいという志向を持っていますが、実際に提供されている継続雇用は、定年前と同じ水準労働時間を求めているものが八五%に達しているというのがここに書いてある内容であります。  あるいは通勤に関しても、定年退職したので通勤負担のないところで働きたいとか、居住地域や近所で働きたいといった志向を足すと五割方の人がそう感じているんですが、定年時の職場継続雇用されるのが九三%ある。あるいは仕事の中身も、どちらかというと後輩を指導したりあるいはいろいろな方々の相談に乗ったりアドバイスをする仕事をしたいという志向が比較的見られますけれども、基本的には定年前と同じ仕事をしていると。  そうすると、その仕事を引き続きしたいかどうかというと、ちょっと本来求めているものといわゆる企業の中で継続雇用で提供されているものは違うのかなと感じる人もいるわけであります。あるいは企業によっては、法制化されたので継続雇用の場を用意したけれども、実質的にはなかなか高齢方々本当意味で活躍していただく場をつくるのが難しくて、言わば六十五歳までの若干の給料はお支払いを続けるけれども、それほど本格的に成果を上げるような、期待をするような仕事高齢者方々にやっていただく機会はなかなか提供しづらいと。つまり、まあ悪い言い方をすればのんびりしていてくださいと、お給料はお支払いしますからという、そういう実態になっている会社もあるわけであります。そうすると、それが魅力でない、あるいは期待されていないということでやりがいを感じられないと、こういった高齢者もいるんだろうというふうに思います。  我々が首都圏高齢世代方々に昨年調査をしたところによると、定年退職を迎えたときに、元々いた会社お世話になる、つまりその会社継続雇用されたり、その会社で紹介されたところに行って就職をするという方が定年退職した方のうちの大体四割ぐらいです。で、元の会社に関係なく自力で別の仕事場を探してくる人がまあ三割ぐらい。そして、残り三割ぐらいの人が引退をすると。こうなっているのが大体構造なんです。  ところが、いざ元の会社お世話にならずに自力で探しに行こうとすると大変に苦労するわけです。なぜなら、これは右下のところに数字を示してありますけれども、実際に六十歳以上の高齢者方々に提供をされている仕事というのはどんなものかと。例えばハローワークに行ってどんな求人があるのかとごらんになると分かると思うんですが、警備員とか守衛の仕事が全国で六万人強ある、あるいは営業個人向け営業仕事が五万人ある、清掃関連が五万人、ホームヘルパー四万人と、こう出てくるわけですね。これは一般方々からすると、必ずしもやりたい仕事とは言えないかもしれない。本来自分のやりたい仕事と、実際に求人が、ハローワークに行ってあるものとの間には随分ギャップがあると、こういう感じ方を高齢者方々はするんではないかというふうに思うんですね。  つまり、やはりその高齢者人たちが働くための労働市場というのは、まだまだ本当に整備されていないんだということでありましょうし、継続雇用だけで多くの問題が解決しているというわけでもないんだというふうに考えておいた方がいいのではないかというふうに私は思っております。  改めて、次のページになりますが、高齢者がどんな働き方をしたいと思っているのかというのを、私の研究所でもこの一年間随分調査をしてまいりました。実際、マスメディア等高齢者の方が本当に生き生きと働いているということで紹介されている事例の会社を十数社、実際に訪問をして、そこの方々にインタビューを繰り返し、それを分析するということをやってまいりました。その結果、高齢者が生き生きと働いている職場には二つの共通したことがあるということが分かりました。  一つは、高齢者がいわゆる無理なく働いているという状態が担保されているということです。  無理なくというのはいろんな意味が入っていまして、全く知らない不慣れな仕事でないとか、あるいは、何というんでしょうかね、日々の仕事の中で自分より若い人に、おまえ、これやれと命令されるわけではないとか、つまりある程度自分のやりたいやり方でやらしてもらえるということであったりとか、非常に重い責任とかノルマがあるものではないとか、あるいは非常に長い時間の労働ではないとか。そういう意味で、ある一定の無理がない範囲で働いている人たちであったということであります。  もう一つは、これは大事なんですけれども、非常に役に立っているという実感が持てる仕事であると。こういう仕事に就いたときに本当に生き生きと自分が働いているというふうになる、こういうことが見えてまいりました。  役に立つというのはいろんな意味がございます。自分よりもっと若い人のために役に立つということもあるし、一緒に働いている仲間のために役に立つということもありますし、あるいは、もっと抽象的ですけれども、社会のために役立つ、あるいは社会に恩返ししているというふうな実感が持てるというものもありますし、もちろん目の前に実際にいる顧客のために本当に役に立っているというふうに思えるものとか。こういうふうな役に立つという感覚を持っている仕事、こういうものが生き生きと働いている職場では見られたわけであります。  右側幾つか、四つぐらい、実際に生き生きと働いている職場がどんなスタイル高齢者に頑張ってもらっているのかと。例えばモデル一は、若手と組み合わされて、若手一緒に組み合わさって二人でいい仕事をしている、お互いに助け合いながらやっているものもあります。あるいは、労働時間を限定して、チームで仕事を分け合いながらやっているような職場もありました。過去の専門的な自分知識を、トレーナー型といいますか、いろんな方々にそれを教えるという仕事をやりながら一緒仕事をするという、もうこういうスタイル会社もありました。あるいは以前やっていた業務知識を生かして、今度は地域密着本当にお客さんのためになるように、利益は上がらなくてもいいから、最低限の収入でいいから、それを提供しようというやり方をしているところもありました。  様々な場が高齢者が働く場として用意されていたわけでありますが、そのような場がもっと開発されていくことが私は必要かなというふうに思っております。  次のページにありますとおり、実際は、日本労働市場というのは多様化しているというふうに言われますが、雇用形態は多様化しているんですが、一方で働き方がそれほど多様化してないんではないかと。つまり、パートタイマーも長時間働いていますし、短時間働くという働き方はいつになってもなくて、雇用形態だけは多様化しているというのが私は日本実態ではないかというふうに危惧をしているわけでありますが、本当意味での多様な働き方が用意されないと高齢者にとっていい社会ではないだろうというふうに感じております。  団塊世代の中で調査をされている機関がありまして、退職のときにNPOなどに参加をして、そこで働いてみたいというふうに思っている人が全体の二四%いるという発表がされております。これは、高齢者が今後公共サービスの一部を担うところで活躍していく可能性を示唆するものだというふうに思います。  あるいは、LLPという有限責任事業組合のような、ああいう形の新しい組織こそが高齢者にとっては非常にやりやすい組織であるというふうな考え方もあるかもしれません。私たち調査でも、就業形態希望を聞いたところ、高齢者自ら自営、起業してやっていきたいというふうに回答した人が三二%おりましたし、あるいは今申し上げたLLP企業組合NPO等構成員としてやっていきたいという方も一二%いらっしゃいました。  つまり、正規社員として、正社員として働く、あるいは非正規社員として働くという雇用以外にもいろいろな可能性があって、そのようなニーズがあるのだということであろうと思います。六十代の新規開業件数は、右の図にありますとおり、非常に増えております。こういった高齢における創業支援といったものも、政策的には一つ課題であろうというふうに私は感じているところであります。  最後ページになりますけれども、高齢者というのは職業能力が決して低いわけではございません。幾つかの研究者高齢者能力についての研究をしておりますけれども、実際にこれまで経験したことを応用して、そして生かしていく力、これを結晶性知能というふうに呼ぶらしいですが、こういうものは非常に長く高い水準を保持し続けるわけであります。八十歳になった段階でも、まだ二十五歳の若者よりも高いその知恵というものを持っているということがこの研究成果は示しているわけでありまして、この方々知恵をどう生かしていくのかというのは非常に大きな課題だろうというふうに思います。  あるいはリーダーシップを発揮するとか、あるいはボランティア、サポートの業務をするというのは、高年齢になった方がより職業適性が高まるとも言えるわけでありまして、今後、八十歳健康寿命というのを政府が提唱している中でいくと、もっと長いレンジでこの高齢者就業というものを考え、知恵を生かしていくことが必要かなというふうに思います。  最後ですが、EU諸国は本年度から高齢者も、この問題非常に密接に関連していると思いますが、年齢差別禁止法を今年末までに各国が立法化することを決めておりますけれども、日本もこの問題に今後長期的にどう対応していくのかということを併せて考えなければいけないんではないかというふうに感じております。  以上、時間になりましたので終わらせていただきます。
  5. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  それでは次に大橋参考人、お願いいたします。
  6. 大橋勇雄

    参考人大橋勇雄君) 一橋大学大橋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  私、今日のお話は、ここの画面に、あるいは皆さんのお手元にある資料の一枚目の様式に従ってお話ししていきたいと思います。(資料映写)  それで、まず第一に何が問題かということにつきまして、重要な認識といたしまして、少子高齢化とかあるいは団塊世代といったことが指摘されますけれども、一番その本になることというのは、平均寿命延伸ということが一番大事であると。  それはどうしてかといいますと、例えば、少子化の効果というのは、やっぱり合計特殊出生率低下したとしましても大体ワン世代、一世代掛かって効果がフルに出てくると。逆に平均寿命延伸を見てみますと、今から五十年前と比較して日本人の平均寿命は、男子が十五歳、女子が十七歳と、現在、御承知のように、男子が七十八歳で女子が八十五歳なんですけれども。  そうしますと、十五年と十七年という平均寿命延伸に対して、定年は五十年前の五十五から六十に延びたばっかりですね。単純に計算しますと、もし国民一人当たりの老後の生活のための原資を一定としますと、当然、単純計算として十年ほどまだ余分に働かなきゃいけないと。そういう単純計算から単純に七十ぐらいまでは働かなければ、まあ単純計算の結果出てくるわけです。したがって、そうすると、じゃ一体七十まで働けるんですかという疑問が出てまいります。  そこで、今日私がお話ししたいのは、まず働いている人と働いていない人に分けまして、それぞれ健康状態等々あるいは仕事やりがい等々についてお話ししていきたいと思います。  まず、皆さん方のお手元にもあるかと思うんですけれども、グラフを見てまいりたいと思います。  図一、図二というのは男子の六十歳前半層と後半層に分けて見ております。これが、図の一の一が六十歳代前半層人口状況就業状態で、働いている人は結局、就業希望者の前までの人、大体六九%の人は二〇〇四年で働いておられる。それから就業希望者引退者という、就業希望者というのは働きたいが仕事に就けていないと、それから引退者というのは働く気持ちがないという人であります。  これを、六十歳代の前半層と後半層、続いて図の二の方では女子について見ております。大体六十前半から後半に行くに従って大きく変化するのは雇用者ですね。雇用者がかなり、二〇%ほど男子の場合には減少しております。それからあと引退者が逆にその代わり増えているというのが全体の状況になっております。  それから、図の三では、就業状態変化を六十歳代前半層と後半層に分けて見ております。これを見てみますと、就業率は、例えば前半層ですと最近はちょっと上がっております。景気の良さを反映していると思います。それから、雇用者比率も、これも徐々に上がってきております。あと、下がっているのは自営業者ですけれども、自営業というのは比較的高齢者の方にとって働きやすい職種ですので、こういったのが下がってきているというのは非常に残念なことだと思います。  それから、ざっと図を飛ばしていただいて、図の四と図の五は後でお話しすることにしまして、最初にまず、仕事に就いていない人を見てまいりたいと思います。  これは、データは、こういったデータで基本になります高年齢者就業実態調査という厚労省が実施している調査なんですけれども、それからのデータであります。図の六の一は就業希望だが仕事に就けない人、それから図の七の方は仕事をしたくないという、希望のない人をそれぞれ理由別に見ております。  図の六の一は、就業希望だがなぜ仕事に就けないのか、適当な仕事がないというのがやはり圧倒的に多いわけです。ごめんなさい、二〇〇〇年ではなくて二〇〇四年のデータがここに掲載されています。例えば二〇〇〇年のデータですと、このデータは二〇〇四年ですけれども、二〇〇〇年のデータですと、適当な仕事がないという人が不況のせいもあって大幅に、七〇%になるわけで、この辺も少し景気、不景気によって変動してまいりますけれども、こういった適当な仕事がないという人が非常に多いと。じゃ、健康はといいますと、これは大体、一九・七と二七%ですからまあ大体二〇%から二五%前後の人がこういった状況にあると。それから、あと、家族の事情、これは介護とか家事ですけれども、こういった方々もいらっしゃる、一五%前後いらっしゃる。  さらに、適当な仕事がないという理由の理由は、技能・知識が生かせないという理由がこれが六一%と圧倒的に多い数字になっています。あと通勤時間が合わないとか賃金が合わないって、三%、三%ですから、余り比率としては多くないと。いずれにしましても、技能・知識が生かせないという人たちが圧倒的に多いと、それが適当な仕事がないというふうにつながってきていると。  それから次に図七で、これは引退した人たちがなぜ引退したんですかという理由なんです。さすがに引退した人については健康上の理由というのが三五%を占めております。それからあと、家事が必要、これ特に女子に多くて、趣味・社会活動というのは男子に比較的多くの割合がいらっしゃいます。  それで、一番ここでの問題は、現在働いていない人たちは健康はどうなんだろうかと。健康を理由に働いていない人たちはどれぐらいいらっしゃるんだろうかということが非常に問題になります。それを見たのが図の八でございます。  図の八は、六十歳代前半層と後半層の二つの層について、それぞれ就業希望者引退し働きたくないという人に分けて、健康を理由として働いてない人の比率を示したものです。これを見て、大変幸いなことに、どんどん下がってきております。特に一九八八年からですと二〇%ほど下がっている。一九九二年ですと、就業希望者については、二〇〇四年まで取れますけれども、こういう形でこれも徐々に下がってきているということで、健康は、やっぱり平均寿命も延びていますから、働けるという人も、大体全体の三割ぐらいの方、働いていない方の三割ぐらいの方が健康を理由に働いていない。では、あとの七割はといいますと、この方々は、適当な職がないとかあるいは家事とか介護という問題もあります。家事、介護の問題は、これは社会的に生産上げているわけですから、この方たちは働くということは難しいかもしれませんけれども、家でぶらぶらしている人等々はこれは働いていただいても結構じゃないかということで、一応七十歳ぐらいまで働いてもらうということについては、状況は改善してきていると。  さらに、健康について幾つかの分析がありますけれども、健康も人間の自然の摂理だけで決まるものではないんですね。これは例えば職種によって違います。一般に短い職種、これは販売とか運輸、通信が健康を害する、六十歳になって健康が悪いという人が多いんですね。専門とか管理の人は比較的元気な人が多いということ。  それから、もっと大事なことは、学歴の高い人ほど六十代に元気であると。そうしますと、現在の六十代というのは、もっと昔の人たちの学歴がここに反映されたとき、現在学歴はどんどんどんどん上がってきていますから、そういう点では健康状態ははるかに改善しつつあると。それで、さらに最近は禁煙も徹底されまして、たばこを吸う喫煙者も減っています。私ばかばか吸いますけれども、その分、多分命が短いと思いますけれども、そういった世の中の状況を踏まえますと、健康問題というのは多くの人にとっては七十までは大丈夫じゃないか。  問題は、じゃ健康が良くないために働かないという人たちがいます。そういう人たちは何が問題かというと、ここで少し、貧困層という概念がありますので、資料の、このスライドでもここに載せました資料で貧困層という、貧困線一、二という、詳しく説明すると時間がありませんので、ここに書いてある、大体一人当たり十一万五千円、結構高いと思うんですけれども、ただしこれは家族数で調整してありますので、二人家族では大体十六万円。だから二人家族で十六万円以下の人は、ここにいらっしゃる人はいないと思いますけれども、貧困線以下になると。私なんかはかなり近くなるんじゃないかなと思うんですけれども、公務員は多分年金がどうなるか分かりませんので。  そういう貧困線で、他に働き手がいない場合確率が一六%上昇する。あるいは働いていない場合で大事なのは、病気がちの場合五%上昇。ただ、病気で働けないと、しかも夫婦でどちらか働いていて、それで働いていた方が病気で働けなくなると、これが一番貧困線二以下に落ちる確率が非常に高くなるわけです。大体二〇%ぐらいにそれはなってまいります。そういう点では、健康が良くなりつつあると言いますものの、健康が悪くなった場合にはやっぱりかなりしんどいことになる。  それからもう一つ、賃金率、労働時間、仕事の満足。今度、働いている人の方の満足について分析したものがあります。この資料、これは働いている人に限って、その人の状況によって仕事の満足がどうかと、賃金とか労働時間それから仕事の内容についての満足がどうかと。五の一に大体の集計結果は載っております。  まず、五の一を見てみますと、これは前半層で、五の二が後半層ですけれども、前半層と後半層と余り大きな差はないと。しかも、賃金以外は大体皆さん普通以上だと。普通というのはちょっと微妙ですけれども、生き生きと働いておられない方も普通と答えられる場合もあるでしょうし、まあまあの方も普通と答えられる場合があるでしょうから微妙ですけれども、これから言えることは、高齢者の方がえらく面白くないという気持ちで働いておられるわけではないのかなというように判断できます。  ただ、これも少し分析によって、高齢者によって年金受給とかいろいろ違いますので、したがって年金受給がよい人、他に働き手が家族にいる人、病気がちな人、定年経験ある人、住宅ローンある人と、六十代になってもまだ住宅ローンある方はいらっしゃいますけれども、そういった人たちの賃金率とか労働時間、やりがい仕事やりがい、経験の活用ってどうかということ、ここは一応統計的に確認できる事実を掲載してあります。  例えば、年金受給のよい人、賃金率は低いと、労働時間は短いと、やりがいは大きいと。他に働き手がある人、これもまあ比較的経済的に余裕があると思いますけれども、賃金率は低いと、労働時間は短いと、やりがいは大きいと。病気がちの人、これは賃金率は病気で余り働けないと、それから労働時間は短いと、やりがい小さい。  これは、見てみますと、結局これまでの高齢者の方は、年金等々を使って自分仕事に余裕ができるような、年金が潤沢に受けている人は、ある程度自分仕事に余裕が出るような働き方ができてきたと。これが非常に大事なんですね。つまり、逆に言えば、経済的に苦しい人はやりがい等々を言っておれないということで一生懸命働くという結果になっていると思います。  ということで、ただ、これから年金が支給開始年齢が延びたりしますと、こういった働き方が高齢者の方はちょっと無理になってくるという可能性が強く考えられます。  それからさらに、今度、企業の方から問題を見たのが資料の表の一の一でございます。これは事業所調査です。明らかに高齢者雇用が問題になる理由としまして、専門・技術、管理、事務というのは能力低下じゃなくてほかの要因が、専門・技術の場合は能力低下が大きいんですけれども、若年者の減少とか人件費の高騰ということ、それに対して現場の人たち、販売、サービス、保安、運輸・通信、生産・労務、この人たちは圧倒的に能力低下。したがって、高齢者対応するときに、職種によって非常に問題が違うということが大事になってきます。  この職種の中で、販売という職種が最も高齢者にとって需要が多いんですけれども、比較的、しかし最も高齢者雇用比率が低い職種になっております。これは結局ノルマを抱えて仕事をするのはしんどいというのが出ているんじゃないかと思います。そういう意味では、販売だけ能力低下は二九・三%と、これを挙げた企業数は低いんです。あと、業態が不適とか接客とか、あるいは人件費が割高といった要因が出ております。  次に、能力低下というところで見たのが表の一の二でございます。能力低下といいましてもいろいろな能力が考えられますので、これで現業の人は、どちらかというと作業能率、正確さが落ちてくる。それに対して管理、事務の方は、新たな知識の吸収、活用とか複雑な事柄の理解、判断に問題があるといったところが出てきております。  あと、それから表の二には、特別、高齢者に対する措置、これは企業の割合なんですけれども、これは驚くのは、極めてまだ高齢化に対して具体的な対応をしている企業は少ない。多いところで運輸・通信の二二、仕事量の調整ですね。したがって、こういったところがまだ大々的に展開されていない。  で、まあできましたら、ちょっと時間がなくなってしまいましたので、できれば質疑応答の中でこういった資料のインプリケーションについてお話しさせていただければと思います。  以上です。
  7. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  それでは、次に島賀参考人、お願いいたします。
  8. 島賀哲夫

    参考人島賀哲夫君) 前川製作所の島賀でございます。このような場にお招きいただきまして、ありがとうございました。  私ども前川製作所は上場しておりませんので、ほとんど知らない方が多いと思いますけど、会社のPRというよりも、むしろ経営の中で人についてどういうふうに考えてきたか、そういう昔からの創業以来の考え方がベースにあります。それで、今日のテーマである高齢者雇用の問題について絞ってお話を進めていきたいと思います。  まず、経営の三資源と言われている人、物、金。最近の企業によっては、金に余り執着して社会的な問題を起こす企業等、あるいは不動産を買って転売してそれでもうける企業、まあそういう中で、私どもは物づくりに徹してきております。非常に地味な企業体質でございます。その中で、特に人ということを重視して、経営の根幹に置いて進めてまいりました。(資料映写)  二ページは、まあこれは見てのとおり、ごらんのとおりでございます。約三千名弱の企業でございますが、海外展開が非常に早かった関係で、海外ほとんどの重立った都市には工場及び事業所も置いて、国際化が進んでいる企業一つでございます。  次に、「マエカワの「定年ゼロ」」と称しておりますけれども、実態定年制はございます。六十歳で今までございました。これからも、先ほどの大久保先生のお話のように、継続雇用を続けていくと、六十歳以降も。従来もそのとおりやってまいりました。  (3)のところに書いてございます深川高齢者職業経験活用センターというのを平成九年に、財団法人を地域に開設をいたしまして、本社が江東区門前仲町のそばでございまして、昔は深川と言ったところでございますので、一般にも門戸を開いていますが、なかなかそこへ登録するのは、私どもの定年になった前川製作所グループの社員がそこへ登録して、今まで働いていた職場、私どもは約八十社ぐらいの独立法人経営というのをやっておりまして、まあこれだけでも一時間、なぜそんなやり方をやっているのかお話しすることができるんですけど、市場別、地域別に企業をつくって、前川製作所群のようなグループのような経営を進めております。  したがって、今まで所属していた独立法人、前川グループの、そこと契約をして、まあこれ大体一年契約でございますけど、誕生日にカウンセリングをして、本人の希望その他聞いて、リーダーは降りてもらう、その代わり自分の今まで得意だった、例えばアイススケートリンクの設計でこの先やっていきたいとか、スキー場の人工降雪機、雪をつくる、この仕事の現場監督を随分やってきたから、世界的にそういった仕事をやっていきたいとか、自分の得意の分野に、後ほども出てまいりますけど、集約化して、そこのグローバルな、まあ経営からやっていた人も一歩引いて、自分の特技に特化して六十歳以降はやってもらうと。  まあ受入れの方も、是非その人に引き続きということですから、今までの仕事の延長線のような感じで、六十になったから全然新しい仕事をするということではございません。  現在、この財団には百二十一名の六十歳以上の人間が登録されております。そこから出向という形で前川製作所グループを主に、一部、他企業にも行っておりますけど出向すると、これは恐らく、今のままいくと五年後には三百人ぐらいになるだろうというふうに思っております。したがって、今年からは六十二歳までの継続雇用制を取り入れていますけれども、そういうこと関係なく今までのことをただ続けるだけということで、健康状態で本人が辞めたいというケースがたまたまございます。これは非常に、先ほど来の先生方のデータよりはるかに少ない、過去に、年に例えば六十歳になった人が五十人いると、そこを一つの、自分の人生設計から辞めたいというのは本当に数%にすぎません。ほとんど継続して、ただし給料はそこで平均すると三割ぐらいダウンして、そして六十五歳までいって、六十五歳で年金が出るようになるとまた更に若干ダウンするということはやむを得ないことで、年金が出ますから、そういう仕組みでございます。  その二の「最初から「定年ゼロ」」というところでございますけれども、ここに出ております、私にとっても大先輩の井上和平という開発をやっている技術屋がおります。これは平成十四年にNHKの「人間ドキュメント」に四十五分番組に取り上げていただきまして、ちょうど九十歳になったときでございまして、毎日会社へ来て、電車通勤で、そして定年者の数人と井上研究室というのを設けて、そこで電気関係の開発をやっております。  ただ、見ていますと、象牙の塔に入って、研究室というと大学の研究室のように象牙の塔のような密室でやるんじゃなくて、常にメーンの工場の茨城県の守谷工場に本人も出掛けていって若い人たちとの交流が常にあります。また、向こうからも教えを請いに本社のそばにある井上研究室へ足を運ぶというようなことで、非常に、一年一回、社長とカウンセリングをするんですけど、本人は恥ずかしいからもう辞めろと言われていると、家に帰ると奥さんからも、きっと邪魔になっているに違いないから、言われると。最近は息子さんが定年で家でぶらぶらしていて、私が出ていくのは非常にこっけいだと。大変遠慮深いんで、もう律儀な方で、毎年誕生日間際になると辞表を持ってくるんですけれども、慰留して、あと一年頼みますと、健康なんですから、頭ぼけていないんですからというようなことをやっております。  象徴的で、九十四歳の方はこの方だけですけれども、八十代、七十代も、工場を含めて事務所の中にもおります。  次の「支えているしくみやきめごと」ということで、幾つかあるんですが、そのうちの象徴的なものをここにうたってございます。  ①の「タイトル」、「仕事」、「給与」が分離ということは読んでいただくとおりでございますが、必ず独立法人の社長は一番タイトルの、社内のタイトルの上の人がなるというのが一般的でございます。例えば、取締役を退任して子会社の社長になるというのが一般企業で行われていますけど、私どもは、みんなをまとめる力がある人だったら課長でも、肩書は、タイトルは社長で実際の社内での序列というかタイトルは課長だと、対外的には社長を名のると、それがタイトルである部長である、あるいは理事を使うというちょっと変わったこともやっております。  ②のところで言っているのは、これは昭和五十一年で当時の社長で今名誉会長の前川正雄、今ちょっと海外に住んで海外本社的な役割をしております前川正雄が社長のころ、若い何人かの役員とディスカッションして作った「マエカワは五五才をこう考える」という小冊子がございまして、社員に全部配りました。  ここで言っているのは、右の四角い中に書いてございますように、二十代から四十代というのは力がある。力と技との比較、五十代から、右のⅡのところですね、五十代から七十代、力に対して技だ、動に対して静だ、変化に対して安定だ、攻撃に対して守りだ、成長に対して成熟だ、変革に対しては伝統だと。こんなような図も書いて、企業としての、五十五歳、当時定年でございましたけど、これに対する人間観を文章にして配りました。この静の立場、動の立場、いわゆる青と壮と、まあ今でいえば老も含めて、これが調和して今日の私どもの企業の活力になっております。  次へ行きまして、「共創とマエカワ」というのは、まあ社内用語的なんですけど、前川では長く、一人ではできることはもうたかが知れている、いろんな異質な人間が集まって独立法人をつくって、そして全体を分かりながら自分自身の個を磨いていくんだというような共創の理念がございました。これは最近では、お客様との関係もそういう関係に持っていく。前川と同じ土俵で、お客様は常に上にいるんじゃない、同じ土俵で、レベルで話し合うことによって、前川と付き合っているといろんなヒントをもらえると。まあ技術的な問題だけじゃなく、経営に対してもあるいはこういった体質に対してもいろんな共創関係に、まあ共同体と言う方が分かりやすいかもしれませんが、こういった考え方は企業にも根差しておりまして、最近ではお得意様だけでなくて、新しく工場を造った広島の工場などは、東広島市と地元の地域おこし的なプロジェクトも発足しておりますし、また農業とも組んで農業ロボット的なものの開発なども、県の支援もいただき、進めております。  次に、「人の成長と集団形成について」、まあ前川はこう考えるという文章が幾つか出ておりますけど、ここで象徴的に、二十代は失敗を恐れずにどんどんやりたいことをやらせろと、また、やりたくなかったら手挙げて次の職場にあるいは次の独立法人に移れというのは、もうかなり自由度を持ってやらせます。三十代になったら、自分はどの市場に対するどういう役割、私どもはエンジニアリングが主でございますから、製造をやるのか、あるいはプラントの設計をやるのか施工をするのか、あるいはメンテサービスで新しい顧客に提案をしていくのか、こんなことを大体、志を立てなさいと。それをさらに四十代で仕事の方向性を固めなさい。五十代に、ちょっと方向転換して新しいことをやってみたいという気持ちがあれば、新しい独立法人をつくってもいいじゃないか、前川グループの中でベンチャービジネスをつくってもいい。みんなが新たな好きなことを始めるという意味じゃなくて、ここではもう一つの言葉は書いてございませんけど、志の完成ということも申しております。自分がやってきた仕事の方向を、こういった業種のこういう設計を更にやりたいんだという志の完成も考えなさいと言っているのが五十代でございます。六十代になると、先ほど申し上げたような、集団のリーダーは降りてもらう、まあ取締役は別としてですね、本体の。自分の好きな仕事、得意な分野を少し狭めて、そしてそれを更に深めてくださいと、で、自分の世界の完成度を上げてくださいということを言っております。  「期待される資質、人間像」というのは、これは実は評価そのものでございます。  年一回の給与あるいは、ボーナスとうちは言わないで配当と言っておりますけれども、社員に対する配当の評価、これを、一、全体性、二、関係性、三、技能技術、この三つで一から五までのスコアを付けまして、そしてこの人は何%昇給するというようなことを、まあ上司がやるというより周りの意見を聞いて上司がスコアを付けるということで、我が社ではこの三点を非常に大事に、経理をやろうと営業をやろうと、物づくり以外でも技能技術というのはございますし、関係性、自分一人で何もできない複雑な社会になってまいりましたので、いろんな異質な知恵をかりて、そして仕事をチームでやっていくんだと。それから、一で言っている全体性というのは、自分営業だけだ、設計だけだ、そういう時代ではもうない、やはり設計するときには製造する立場を考えなきゃいけない、営業するときには設計の立場あるいは製造の立場を考える、全体を考えながら自分の得意の分野を極めようというようなことを言っているのがここでございます。  次に、八ページの「カウンセリング」、六の「カウンセリング」でございます。これはこの言葉のとおり、誕生日ごとに財団でやるケースもありますし、その集団のリーダーとのカウンセリングを必ずやっております。  あなたは更にこういうところを変えてほしいんだと、そうしたら更にみんなから感謝されるし、みんなといい仕事ができる。まあ例えばそんなようなことを「高齢者カウンセリングのポイント」というところに書くと同時に、本人も、あと何年で七十になりますと、だからもうちょっと今の仕事をやらせてくれと、じゃ、そうだったらこういう点をちょっと変えてくれるといいなというようなカウンセリングを、もう本当に裸のカウンセリングをしております。  七番に「永く仕事を続けるには」ということでございますが、先ほどの出てきた井上和平、今年九十四歳でも毎日欠かさず会社に来て、そして全然老いを感じさせません。だから、時々病気はしたことはありますけど、本人も言っておりますし、お手元の別冊の資料にもちょっと出てきていますが、マスコミでもかなり取り上げられ、またこの人のことを書いた本も、NHKのプロデューサーが書いた本も出ております。  常にやはり知的な興味が失っていないという感じがいたします。歯車のような仕事を、ただ機械と向き合って回すだけの仕事じゃなくて、心のある、自分自身のやはり関心を持ったことをやっている、続けている、それが自分は楽しいんだと、給料じゃありません、本当給料は申し訳ないくらいしか払っておりませんけど、それによって自分の孫に何か買ってやる喜びもあるんだとよくおっしゃっています。  一般的には定年になるとがたっときちゃう人もいるんですが、我が社においては余りそれは見当たりません。それが当たり前というふうに仕組みがなっている関係で、ここ二、三年前から高齢者を大事にし始めた企業ではございませんで、もう数十年前から、現名誉会長の前川正雄が社長のころから私たち若い役員とディスカッションしてこういった下地をつくり、現在も、若返ってまいった経営者たちもそのエキスを受け継いでくれて、それが企業体質及び企業文化になっているわけでございます。  ここには書いてございませんが、六十歳過ぎの方々とも、私もそうですけど、仕事をしていまして、やはり高齢の方はまじめです。もうハングリーなころに、終戦直後の貧しい生活を耐え抜いてきていますから、出勤時間も正確に参りますし、物の考え方も非常に、会社に対する考え方も忠誠心といいますか、これも最近の若者と違って、そういった先輩たち一緒になって仕事をしているということを若者に見せるということが私どもの企業の活力にもつながっているんじゃないかというふうに思っております。  また、ここには書いてございませんが、ここ数年の不況の日本でございまして、その間に、現在でもまだ、まあこの四月からは変えたと思いますけど、大企業、一部上場している企業の中に、五十五歳になると、部長以上、いわゆる管理職という、部長以上の管理職は辞めなければいけない、部長以上の上級管理職の定年を五十五歳に置いているという企業がかなりありました。まあこの四月で改善はしていると思いますけど。そういうところの方を逆に私どもは中途採用を意図的にしてまいりました。ひところは東大卒などなかなか採れないという時代もありましたけど、そういうのはほとんど、東大に限りませんけど、東大、京大、あるいは早稲田、慶応というような一流大学の人を、なぜこんなもったいない人をこの企業は手放すんだろうと思うような人たちを意図的に面接をして受け入れてきました。そうした方々は六十になれば定年ですから給料はダウンして、それでも私たちが持ってない知恵なり、あるいは特殊な分野の知識なり技術なり持って、私どもの企業がすそ野が広がっているということの一助になっております。  これ、年間十名を超える中途採用、それも五十代、六十代、自動車会社を辞めたと、それも役員を辞めたというような人まで中にはいます。私たち市場、食料とかそういうのが、食品関係が主でございますので、自動車の市場をやってきた人が食品工場を見ると、よだれが出るくらいまだ、ロボットを入れなきゃいけない、自動化するところ、無駄が多い。そういう知恵を異業種から入った人たちが食品のプロセス、フードプロセスの自動化に寄与していただいている現状でございます。  以上、時間になりましたので、このぐらいにさせていただきます。
  9. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) すばらしい御意見本当にありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行いますので、質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って着席のまま御発言くださるようお願い申し上げます。  なお、午後四時ごろに質疑を終了する予定になっておりますので、一回当たりの質問時間は三分以内でお願いいたします。また、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう質疑、答弁とも簡潔に行っていただきますよう、皆様方の御協力をよろしくお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方の挙手を願います。  南野知惠子さん。
  10. 南野知惠子

    南野知惠子君 本日は、お三人の先生方、本当にありがとうございました。  もう目の前に向かっている高齢社会、今突入している高齢社会、いろいろな表現のしようがあろうかと思っておりますが、その高齢社会という問題の中で働き手をどのようにするかということの大きな示唆をいただいたというふうに思っております。特に、今世紀は心の時代とも言われており、それを産業の面から切っていくこともできるような考えを持っておられる方も一杯あろうかなというふうに思っておりますけれども、その心をどのようにするかと、働き手の心をどのようにリードしていくのかということもお仕事をいい方向に持っていくことの一つではないかなというふうに思っております。  大久保先生の方から大変ユニークなお話もいただきました。  六十五歳の定年、その六十五歳というのが四月一日から解禁されたわけでございますので、それに適応しようという方々、また増えてくるのかなというふうにも思っております。それから、新規の卒業者が今度、団塊世代退職を見越してまた増えてくるのかな。そこで高齢者雇用と若者の雇用というのがドッキングするような形で、会社の中でのオリエンテーション、会社の方向を示すというところにも一つの大きな形があるのではないかなと思います。  そこで、雇用の多様化ではなく、働き方の多様化ということもお示しいただきましたので、そこら辺のことについてお示しいただければと思います。  また、高齢者は短時間作業というものを好む方向に向かっていると思いますが、高齢者の短時間と、それから正規雇用という形でみなすのか、いや、それはパートですよ、アルバイトですよという方向に持っていくのかというような見方などもあろうかと思いますので、そこら辺、お願いいたします。  それから、大橋先生の方からいろいろとお話しいただきました。  いろいろなことを考えると七十歳まで働けるよというようなお話もございました。まず健康が第一だというようなこともありましたが、最後お話しになられた位置付けという問題について、少しお話し足りなかったとお話がございましたので、その問題についてちょっと教えていただきたいなというふうに思っております。  それから、島賀先生は、本当実態を通しながらいろいろとお話しいただきました。また、日野原先生が推薦人になっておられるこの九十二歳の現役サラリーマン、そういう方々が今度うんと増えていくのかなと思っております。  刑務所の中で、これは、篤志面接委員という方も、この前、私お会いした方は百二歳であります。百二歳の方が、仕事を延長するために今二年間延長してきましたと言って御面接をいただいたときには、もう本当にびっくりいたしました。その方は女性でございましたが、そういういろいろな働き方の中にメンタルヘルスという問題が大きな課題を占めているのではないだろうか、やりがいというものが大きくその方のお仕事を前に突き進めていってくださってるのじゃないか。そういうようなものも考えながら、定年ゼロに向かっておられるということをお聞きいたしましたので、そこら辺のことに何かコメントございましたら、いただきたいと思っております。  以上でございます。
  11. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それではまず、大久保参考人からお願いいたします。
  12. 大久保幸夫

    参考人大久保幸夫君) 御質問いただきました二点について御説明したいと思います。  まず一点目、若者の雇用高齢者雇用の組み合わせたところに非常に大きな可能性があるだろうということでございますが、私、この高齢者の問題を高齢者だけの問題として考えるんじゃなくて、だれと高齢者一緒に働くかというふうに考えると非常にいろんな示唆がそこにあるんではないかというふうに感じております。  例えば、今の若年は非常に採用難でございまして、なかなか若手が採れないということなんですが、その中で、例えば会社にいる高齢者人たちが直接若い人たちに、自分はこういう知恵とかこういう技術を持っているんだけど、そういうのを是非若い人たちに教えたいんだということを採用時に訴え掛けると大変多くの若者がそれに反応して集まるんですね。そういうことで、高齢者若年の組合せは非常に可能性があると思いますし、あるいは、せんだって私、北欧の企業を見学させて、情報をいただいたときに大変興味を持ったことがございまして、ある北欧の、まあ販売店、百貨店、というかスーパーですかね、がありまして、ここでは高齢者若手だけが働いているんだそうです。そうすると、荷物を陳列したりとか、あるいはある時間、長時間働くことになったりした場合は若手対応して、お客さんの相談に乗ったりとか、あるいはお客さんからのクレームに対応したりとかということは高齢者がやっているというふうに、役割を分けている。その中で高齢者が若い人たちにいろいろ教えているというんですね。この方法に変えたら離職率が下がって、コストが下がって、お客さんの満足度が上がったという話を聞きました。このような若手高齢者の組合せには非常に大きな可能性があると感じております。  それから、二つ目、その働き方の多様化、雇用の多様化ではなく働き方の多様化で、特に短時間働くという形の雇用の場をつくるというお話でございましたけども、大変重要な私も問題だと思っておりまして、日本は、採用する、つまり雇うと、すべての人に長時間労働をさせようとしてしまうところがあります。ですから、こここそが多様化しなければいけないところだと思います。  高齢者はもちろんもう少し短い時間働くことを望んでいるわけですが、雇用の形態に関しては、御指摘のあった正社員じゃなくても構わないというふうに高齢者は考えております。お手元にお配りした資料の六ページにも数字を出しておいたんですが、正規雇用として雇ってほしいというふうに言っている方は二〇%、で、非正規雇用がいいんだというふうに言っていらっしゃる方が四八%ですので、定年以降については正社員としての雇用に余りこだわってないということだろうというふうに考えております。
  13. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、大橋参考人、お願いいたします。
  14. 大橋勇雄

    参考人大橋勇雄君) 私は、基本的にこれまで企業高齢者の方を雇用した際に活用する方法として四つぐらいの形でやってこられたと。一つは、まず仕事量、特に労働時間とか負荷を軽減すると。それから二つは、仕事の内容そのものを、まあ職務再編成という言葉がよく使われますけれども、仕事の内容を変更すると。それから、作業改善と。ロボットの導入等々をおやりになると。それから、教育訓練というふうにあります。  で、その仕事量の調整で一番問題になるのは、これは仕事量が軽減するわけですから、賃金どうするかと。これはかなり一律にやってこられています。でも、この一律というのはかなり問題があるなというふうに私は思っております。  それから、二番目の仕事の内容の変更、これは、今日、前川製作所さんのようにメーカーの方いらっしゃいますけれども、例えば高齢者はラインの後工程の方に持ってくると。前工程ですと、これ、仕事が最初に滞ると困りますから、後工程の方に持ってくると。あるいは、仕事を部品の供給の方に回してくると。あるいは、検査なんかに回してくると。いろんなことをやられております。この方策は比較的やりやすいんですけども、ただ、もう回す仕事がない、警備とかそういうのを全部回して、もう回す仕事がないというのが一つ大きな問題としてあります。  それから、作業改善です。この作業改善というのは、ロボットの導入とか滑車とか、随分いろんな工夫をなされている企業もあります。ただ、これの問題はコストが掛かると。したがって、会社の特にトップの認識がないと、なかなかこれも進展しないというような状況。  教育訓練につきましては、これはもう残り余り長くないわけですから、投資コストが悪いと。  それぞれにいろんな問題を抱えております。  これからどうするかと。これからは本格的に、さらに高齢者の六十代の方、活用していかなきゃいけないと。そういったときに、これまではどちらかというと高齢者の方を、例えば前川さんのように高齢者専用会社をつくる、高齢者専用職場をつくると、こういうのが一つの方向です。ただ、これも、中小の、もう少し、何千人という大企業じゃなくて、高齢者を抱えている比率が高いところは、まず職場に女性が多いところ、これは女性でもできる仕事高齢者が行うと。それからもう一つは、規模の小さいところというところが高齢者を非常に多く抱えているところでございます。  こういったところでは、高齢者若年者も、大久保参考人の方からお話ありましたように、これからは高齢者若年者が一緒になって働かなければいけないと。実際に、建設現場なんかではそういうことが多々あります。そういうところで必要なのは、高齢者はどうしても力は衰えるわけですから、体力的にですね、もちろん技術とか専門といった分野ではいい話ができますけれども、もう力勝負のところもかなりあります。重いものを移動させなければいけないと。そうすると、若い人はそれは高齢者一緒に働くのは嫌だなという思いは強くなってきます。  そういったものに対して、例えば賃金をある程度調整するとか、それも一律じゃなくて、高齢者の働き方に応じて賃金を調整するというのも大事なんですけども、もう一つは、先ほどから出ていますように、職場の理念と申しますか、そういったもの。例えば、前川さんの場合、共創という言葉が使われております。あるいは、ゼロ定年ですね。高齢者を多く活用している企業というのは非常にファンタジックなスローガンというのが出てまいります。従業員はすべてパートナーであり、定年自分で決めるとか、いつまでも働き続けたいとか、これはどうしてだろうかなと思いましたら、やっぱり職場でやっぱり互いが一緒になってやっていくという理念がどうしても問題の解決には必要であるということで、そういったスローガンが出てまいります。そういう点では職場の理念というのも非常に、これからは高齢者若年者が共同で働いていく、チームワークで働いていくときにはそういった職場の理念が大事だなというように思います。  以上です。
  15. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、島賀参考人、お願いいたします。
  16. 島賀哲夫

    参考人島賀哲夫君) 二つお話し申し上げたいと思います。  一つは、高齢者集団がどういう、高齢者だけの集団も社内にございます。例えばどういうことをやっているかといいますと、現在の自動車産業もそうですし、私たち冷凍機のような機械もそうなんですけど、ほとんどコンピューター屋さんがプログラムを組むとそのとおり工作機械が働いてくれて、そこに、アタッチメントっていうんですけど、その削りたい機械をちゃんと自動で据え付けて、そして中を穴を空けたり、ボルトの穴を空けたり、フライスといって表面を削ったり、それを全部プログラムでやってしまうんですね。そうすると、昔は、工作機械、例えば旋盤を動かすという昔の技能的な職人がだんだんいなくなります。ただ、物によっては、一日何百台も流す部品を作るのと違って、一日一台、私ども産業用でございますので、カークーラーとか家庭用の電気冷蔵庫のような冷凍機、そういった商業用、家庭用はやっておりませんので、産業用というのはこういう機械を一台作ってくれというようなことがあるんです。そういう場合にコンピューターで制御できない場合もあります。そうすると、そこでやはり経験の豊富な、工作機械を、昔の工作機械を動かした経験者が出番があります。それのときに若い人も一緒に勉強するということもございます。  それからもう一つ、最近非常に海外を含めて仕事が増えてきているのは、もったいないという日本の造語がございますけど、工作機械も最近は、国民性かもしれませんけど、動かなくなるともう電話一本でメーカー呼んで直してもらう。それはテレビを壊れてもテレビのサービスマン呼ぶようなもんで。そうじゃなくて、自分たちで直せないだろうかというときに、これまた六十歳以上の経験豊富な人たちの出番がございます。これのための一つ会社をつくりました。  そうしましたら、私ども前川は茨城県の守谷市とそれから広島県の東広島市と長野県の佐久市、国内三つでございます。海外にはロサンゼルスあるいはメキシコ、韓国、ベルギー、そんなようなところにも工場がございます。そこには機械もあります。したがって、その社内の機械を直す仕事をやっていきます。ちょっと狂ってきたと、使っていると、まあ専門的になりますけど、その狂いを是正する。そうすると、でき上がる製品が精度が上がるわけでございます。これを一々外注で海の向こうから日本の工作機械メーカーさん来てくださいなんという無駄なことをせずに、うちの人間が行ったついでに調整してくると。そうしましたら、社外からもそういううちの工作機械が狂っているから直してくださいというような仕事が入ってまいりまして、これはコンピューター屋がやっているような今の工作機械を扱うのと違って、やはり昔からの、手動とは言いませんけど、まあ旋盤やなんかをいじった人でないとできない技能だと思います。  もう一つは、コンサルタントの仕事もやっております。私ども、食品メーカーさんがお得意様としては圧倒的に多いんですが、ほとんど中小企業が多うございます。そうすると、ISOを取りたい、品質管理だ、あるいは環境のISOの14000を取りたいと。そういう時に私どもの前川総合研究所という会社でコンサルティング、ISOの取れるまでの指導を割安でやっております。そんな仕事も、これは老齢者、高齢者に向いた仕事だと思っております。  もう一つさっき言い残したことでございますけど、高齢者雇用させるというより、してもらうということは国にとっても私は家庭にとっても非常にハッピーなことだろうと思います。  なぜ国にとってハッピーなのか。もう先生方お分かりと思いますけど、少子高齢化の時代になってきました。そこで、高齢の人を、それが六十代の方を使うと、給料は比較的安いんですね、もう年金も出るようになってくるし。したがって、消費者対策にもなる、国にとっては。まあ少子化による労働不足を埋めるという意味でございます。  それからもう一つは、公的年金の支給年齢の引上げの今環境ですけど、それの対策にもなるんじゃないか。  また、家庭にとってはどういうメリットがあるか私なりに考えますと、やはりお父さんが朝から晩までまだ元気なのにいると。で、三食御飯作る。これはまあ主婦にとっては大変な負担だと、家内にも言われていまだにまだ働いてるんですけど、これは冗談じゃなく、かなり深刻な問題のようでございます、奥さんも疲れてきているし。会社に規則正しく、体力に合わせて週三日とか、あるいは朝ゆっくりとか、そういう労働体制にしております、健康じゃない方に関しては。したがって、奥さんも規則正しいリズムに乗った生活ができる。本人も、満員電車に揺られるのはつらいですけど、まあ孫に何か買ってやれるという喜びもあるわけでございます。  また、ぼけ防止にも私はつながると思うんです。家庭に入って、まあNPOもいいですし町会の役員もいいですけど、やはり一つの今まで住み慣れた、慣れた仲間たち、若い人たち一緒に、自分の仲人をやってやったやつが社員にいるとか、あるいは仲間がまだいるというところへ毎日行くということ自身が、そして自分が、狭い範囲の仕事になってきたとはいえ、給料もダウンはしてきたとはいえ、一つのリズムに乗った仕事をできますんで、まあ生きがいとよく言いますけど、生きがいだけじゃなくて、やはり頭も使うし刺激にもなるんですね。だから、認知症になる度合いも少ないんじゃないかというふうに思います。  以上です。
  17. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  では、次、伊藤基隆さん。
  18. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 民主党・新緑風会の伊藤基隆でございます。  本日は、大変お忙しいところおいでいただきまして、ありがとうございます。  私は、事前にいただきました資料を検討して、またさらに今日お話をお伺いして、実は今日扱っておる問題は高齢者雇用問題ということなんですが、大変大きな問題ではないだろうかと思います。少子高齢化社会がもたらす将来の日本社会状況ということについて考察しなきゃならないというふうに思ってます。  最初に私の感想といいますか考えていることを述べまして、基本的な問題を三人の方に同じ質問をしたいと思います、三点。その後、お一人お一人に一点ずつお聞きしたいというふうに思っております。  これは、うっかり対応を間違うと社会の活力の低下日本社会の活力の低下につながるわけでありまして、少子高齢化に加えて団塊世代問題、すなわち大量な優秀な技術者、技能集団が第一線から去っていくと。さらに、中小企業群の持っている、日本の製造業を名実ともに支えている中小企業群の力の継続は可能なのかどうかということでの総合的な政策が特に急いで立てられなきゃならないというふうに思ってます。  そこで、まず各国の年齢労働力の比率とか高齢者就業意欲とか調べてみました。国によって極端に異なる状況もありまして、フランスが特に違うなというふうに印象を持ちましたが、本来、高齢者仕事に就くとか就かないとかという選択は、置かれた社会的又は経済的な環境と個人の体力や意思によって左右される問題だということは、先生方のお話を聞いていて、そういうごく生活に密着した現実の問題の中で起こっていると、とらえられているというふうに思います。  もちろん、生涯現役という人がいたり、適度な労働は肉体的、精神的健康に良いという考え方もあるでしょうけれども、一つは、生活を守らなきゃならないということと、もう一つは、予想以上に進行してきた少子高齢化のマイナス面の負担を高齢者が負わなきゃならないというような宿命があるんじゃないかというふうに思っています。  一つは、その生活を守らなきゃならないということでいえば、二〇〇一年度より開始されました年金支給開始年齢の引上げが順次行われて、従来は六十歳から支給されていた年金が二〇二五年には六十五歳から支給されることになります。さらに、先ほども申し上げました団塊世代がこれから退職時期を迎えることと考え合わせますと、年金支給開始年齢前に定年退職を迎える高齢者が相当発生すると。当然、生計維持のために収入を確保しなきゃならない。年金をもらうのには若くて定年退職をしたと。年金若年定年退職者希望者全員の雇用創出をきちんと社会的にやらないと、これが日本社会の将来に大変な影響を及ぼすんじゃないかというふうに思っています。  本委員会の調査室に若干の試算をお願いしまして、男性の年金支給が完全に六十五歳からとなる二〇二五年、平成三十七年四月には百四十万人程度が六十歳から六十五歳に達するという結果のようであります。かなり難しい試算であるふうにお聞きしましたが。  現在三十九歳から四十三歳の年齢層の男性の労働人口は三百五十万人なので、新たにこの約四割に当たる人々の雇用を確保しないと六十歳から六十五歳の間が無収入になる推定が成り立ちます。これは、一人一人の労働者から見るとそういうことなんであるけど、社会から見ると働き手がいなくなるという状況がそこで起こってくる。その働き手が生活に困ったような状況高齢化を迎えると。そういうことも同時に起こってくるということだと思います。  そこで、まず第一問なんですが、四月一日から改正高齢者雇用安定法が施行されました。高齢者雇用の取組はスタートしたばかりでございますが、将来にわたってこの法律、安定法が本当希望者全員の雇用確保の安定ということを実現することは可能なのかどうかということについてお聞きしたいと思います。  次に、これまで我が国の産業、とりわけ製造業の競争力を支えてきたのは、前川製作所の会長さんのお話がありましたように、物づくりを中心とする現場力の強さと言われております。しかし、技術、技能やノウハウを身に付けた団塊世代の大量引退とともにこれが急速に失われることが懸念される。すなわち、継続されないと。物づくりの現場だけに限らず、ホワイトカラーの現場でも同様の現象が起きているようでございまして、我が国の強みであります現場力を円滑に継承していくためには、これからを担う若年者を確保した上で、技術、技能を持つ団塊世代の人材を現場に供給し、技能継承を進める必要があるのではないかと。  技術、技能継承を進めるためにはどのような問題点があるか、また政府はどのような支援を行う必要があるかとお考えか、お聞かせいただきたいと思います。  次に、高齢者雇用の分野では格差は拡大しているのではないでしょうか。企業の規模、地域差はどうだろうかと、リストラなどの対象となり、定年延長や再雇用の対象にならない人々には相当厳しい道が待っているのが現実ではないかと思います。特に地方の景気がいまだに厳しい状況の中で、どのようにお考えかと。  私は、今から七、八年前、まだリストラということが現実にならない、しかし世の中にささやかれているときに、本院の予算委員会でよく問題提起をいたしました。今企業はリストラをやろうとしていると。しかし、日本企業が今日まで発展してきた力というのは、そこに働く人たち企業に対する忠誠心というか、企業、我が社を大事にするという心というものがあったんだと。これが失われたら、例えば景気が回復して同じ仕事を再開するにしても、そのことは、今日までのようなことは達成できないんじゃないかと思っている。だからリストラしてはならないんだと。労働組合と話し合っても、現状の雇用をきちんと守って、給料は下げても乗り切るというところに全体が行かないと日本の将来は崩れてしまうんじゃないかということを問題提起しました。  いろんな反応が私のところへ来ました。例のノーベル賞を田中さんがもらった島津製作所はそのようにしているとか、日野自動車がそうだとかいう話も聞きました。この間、松下電器のOBの方が来られて、企業に対する働いている者の認識は全く変わったと、あれ以来全く松下の中で変わったという話がありまして、これが日本の将来を不安にしている最大の要因になるかもしれないというふうに思っています。是非、今の三点についてお伺いしたい。  それから、大久保参考人にお伺いしたいんですが、高齢者職業能力の高さについて先ほど触れられました。団塊世代が大量に定年を迎えて労働人口の減少が予想される中で、企業はどのように人材を確保しようとしているのか、企業が必要としている人材はどのような人材なのかということが、特に団塊世代から見たときの彼らの意識というものはそこに非常に強いと思いますが、企業の方はそのことを全く考えていないのか、あるいは考えられないんじゃないかと、御都合主義での継続雇用定年延長ということが行われているんじゃないかという気がいたします。  また、高年齢労働者を実際に雇用している事業所はどのような事業規模でどのような産業が多いのか、お聞かせいただきたいわけでございます。  さらに、先生は、勤務形態や労働時間等の希望の分布とか継続雇用定年延長の希望はどうなっているか、雇用形態は正社員がよいと考えているか、パート、嘱託がよいと考えているかという、いわゆる雇用形態の問題について触れられました。しかし、実際の就業の現場は、背に腹は代えられないという状況の中で、こういうことが全く無視されていっているんじゃないかというふうに思います。  そうすると、団塊世代問題からして、その持っている背景からして、さらに少子高齢化の問題からして大きな社会問題に、先生方今日述べた現状というのは大きな社会的な問題に発展しかねない、日本の将来への影響が大きく残っていくんじゃないかと、対応を誤れば。これに対してどのような対応が考えられるかと。それは高齢者雇用の安定法の問題もあるでしょうし、ハローワークやリクルートという、そういう事業をやっている現場での対応が少しの変化が必要なんじゃないか。  また、労働組合の結集率は非常に弱くなっていますが、労働組合が衰退している社会というのは非常に不安感の強い安定しない社会だと、私は労働組合出身ですけれども、よく分かります。労働組合を不逞のやからと言った人もいますけれども、そんな程度のものではないわけで、労働組合の機能がそういうことにある程度の手を差し伸べることも可能なんじゃないかと思いますが、その辺について大久保参考人に考え方をお聞かせいただきたいと思います。  次に、大橋参考人にお聞かせいただきたいんですが、人口減少社会を迎えた中で、経済社会を支える必要性から高齢者雇用を考えていく観点は分かります。また、日本高齢者就業意欲は高くて、働く意欲があるにもかかわらず、働くことをあきらめて労働市場から引退し、高齢者の意欲と能力が生かされないのは避けるべきだということを考えても理解できるわけでありますが、一方で、有能な高齢者を活用したいとする企業と働きがいを求める高齢者の需要と供給の関係からいわゆるミスマッチが生じ、安価な労働力の提供につながることが懸念されるわけであります。すなわち、現場においては様々な人たちが問題提起していることが生かされるシステムがないということなんでありますが、高齢者が単なる安価な労働力の供給源になるという悲劇的なことにならないようにするにはどのようなことが必要かということを述べていただければと思います。  島賀参考人にお聞きいたします。  この問題について様々な実際に対応している人たちから話聞いてきましたが、四月一日から改正高齢者雇用安定法が施行され、年金支給開始年齢までの希望者全員の雇用の継続が義務化されることになりましたけれども、施行前になって現場ではトラブルが発生していると。それはどういうことかというと、過去五年間にわたり無遅刻無欠勤の者しか継続雇用をされなかった、A評定と相当程度の評価を受けていないと継続雇用をされなかったと。自分では当然継続雇用されると思っていたが継続雇用されなかったという具体例がかなりあるようであります。  私は、前川製作所のお話をずっと聞いていて、生涯現役がポリシーということもあって、様々な働き方又は提案が述べられましたけれども、何かシステム的に一定の流れがあって動いているというものを感じます。それは、決め手といいますか、つまるところは競争と前川の具体化というのは深川高齢職業経験活用センターの存在が大きいんじゃないかというふうに思います。これがどのような経過の中で生まれてきたのか、どのような考え方でつくられたのか、具体的にどのような運営がされているのかと、このセンターの動きが、私が思うように、全体の前川の現状を律しているのかどうかということについてお話しいただきたいと思います。  どうも、ちょっと長くなって済みません。
  19. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 長い質問でございますが、時間の制約もございまして、手短にお願いいたします。  まず、大久保参考人、よろしくお願いいたします。
  20. 大久保幸夫

    参考人大久保幸夫君) 幾つかにまとめてお答えをさせていただきたいというふうに思いますが。  まず一つは、今回の法改正というのは定年の問題、定年延長の問題に取り組んだわけですが、実は定年年齢まで会社に在籍をしている人というのは逆に一部で、もう少し早い段階で様々な選択をしている人たちが多いと。あるいは、五十歳、五十五歳という段階で別の道をもう選んで、できればもう少し長く自分の職業人生を全うできるように新しい道を探ろうとする動きが当然あるわけであります。ですから、定年退職という問題にこうフォーカスをして法的な整備をすることは必要だと思いますが、その中ではカバーし切れない領域というのは相当にやっぱりあるんだろうというふうに思いますので、今回の法は、全体の中の問題解決の一部ではあっても、まだまだほかに考えなけりゃいけないことがあるだろうと思いますね。  つまり、多くの企業が最近、役職定年制を採用し始めていて、五十五歳ぐらいになると役職を外して元のプレーヤーに戻るという段階になります。プレーヤーに戻るだけじゃなくて、実質的にそこからは悠々自適な生活に入る人たちもいて、この悠々自適って余りいい意味で私は思っていなくて、どちらかというと余り、本当にやらなきゃいけない仕事はなくなってしまうというような状態のままのんびりと定年年齢を待つというようなことになることもあるわけですけれども、私は、もうこの五十五歳ぐらいの年齢段階で次の道をしっかり考えるということも重要なことで、もちろん定年延長の流れに乗ることもいいですし、そうじゃない道を取ることも非常にいいと。  労働組合のことでいえば、全体としての標準的なその水準企業との間で調整して高めていくということだけではなくて、個人が高齢に至るプロセスでいろんな選択ができるようにしていく、キャリアの選び方のバリエーションを整えていって、また個人のキャリアのカウンセリング、相談にきっちり乗っていくということに、つまり多様な選択を支援する方向にもう一歩の力を労働組合というのは私は是非役割を担った方がいいんではないかというふうに感じております。本当に個人の選択が多様になってきていることにどう対応するかということだろうというふうに思います。  それから二つ目に、物づくりの技能が損なわれるという問題、大変大事な御指摘でございまして、逆に言うと、二〇〇七年問題と呼ばれる技能の継承が問題になるというのは専ら製造業の問題なんですね。これは製造業が高年齢人口構造比率が高いからこういう問題が起こるわけであります。  実は私も、この問題を非常に大きな問題というふうにとらえておりまして、実はトヨタ自動車さんと合同で新しい取組をやったことがございまして、トヨタ自動車で五十五歳で役職、五十七歳でしたかね、ちょっと正確には忘れてしまったんですけど、役職定年を迎えた人たちに、トヨタ自動車と我々のところで合弁に別の会社をつくって、そこに移動してきていただいて、トヨタグループでない別の中小の製造業のところにトレーナーとして派遣をすると、こういう形の事業を始めました。つまり、物づくりトレーナーという役割を担ってもらって、自分がこれまで積み上げてきた経験がトヨタグループだけではなくて日本の製造業のために本当に役立つんだということを実感しながら、長い間、その後、継続的に働ける仕組みをつくったわけですけれども、こういったような取組というのは広げていける可能性があるかなというふうに思っております。  それから、どのような企業は人材を求めているかとか、あるいはどういう分野で高齢者が生かせるんだろうかというような御質問もあったわけでありますが、私は、一連、高齢者のどういう働き方をしたいかとか、どういう仕事に価値を感じるかという質問の中で思い至ったのは、高齢になればなるほど、何というんでしょうかね、組織に貢献したいというよりも、具体的なだれだれさんのためにという、個人のために貢献したいという気持ちが非常に強くなるんですね。ということはどういうことかというと、目の前に何かを買いに来ているお客さんのために親身になって相談に乗ってあげたいとか、単に物を売るだけじゃなくて、どうしたらいいかということに関してアドバイスをしてあげたいとか、あるいは悩んでいる人の悩みを一生懸命聞いてあげたいとか、普通の会社であればとても利益を考えたらそんなに手間を掛けていたら割が合わないよというような問題に関しても丁寧に対応して、本当にありがとうというふうに感謝された、あるいは本当にそれを喜んでくれた、こういうことにすごく価値観を見いだすわけですね。  ですから、高い人件費では企業的には収支に合わないけれども、もう少し高齢者の年金プラス賃金でよろしければ、十分に生産性が合う業務というのもたくさん世の中にはあるはずでございまして、私は、このような対個人サービスのところに、高齢者の本来、自分の気持ちにも合う、そしてまた世の中の人たちが求めているサービスというのが存在しているんではないかというふうに感じておりまして、そこに大きな可能性を感じていますし、そのような働き方を開発する、あるいはそのような働き方で個人にサービスをする事業を開発するということを企業には取り組んでほしいというふうに強く思っております。
  21. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、大橋参考人、よろしくお願いいたします。
  22. 大橋勇雄

    参考人大橋勇雄君) 幾つか質問いただきましたけれども、私が多少一般的な意見と違うことを言える点についてお答えさしていただきます。  まず、物づくりをきちっとやっていけるかどうかという問題でありますけれども、私は、若干、技能継承の問題についてはちょっといかがわしい議論、内容も入っているんじゃないかと。  まず第一、きちんとした会社ならば、人口高齢化というのは、あるいは雇用者高齢化というのは、もう何年も前から予測できたことなんですね。それを二〇〇七年問題なんて言っている会社は、まあつぶれたって構わないかなという思い。  それからもう一つ本当にその会社高齢者の方が一線の技能、知識をお持ちなのかなと。と申しますのは、高齢化が実際に組織の中で人為的に進んでいるという面もあるんですね。  例えば、工場に新しい設備、機械が入ってきたと、高速の。それ、だれを付けますかと。それは、もう新鋭の、ばりばりの中年あるいは若年労働者を配置すると。高齢者は、どちらかというと汎用性の高い、技能水準の低い設備に依然として配置されていると。そういう状況で、一体全体高齢者の技能がそこまで維持されているのかどうか非常に私は疑問に思っています。  それから、ホワイトカラーの仕事でも、新しいプロジェクトにだれを付けるんですかと。高齢者、六十前の高齢者を付けるんでしょうかと。やはり新しい知識なりアイデアを持った人たちを付けるわけですから、そういう点では、技能伝承、高齢者の高い技能伝承という話にはちょっといかがわしい面もあるなというふうに思っています。  ただ、言えることは、それはあくまでも一つ企業で、これまで高齢者が働いてきた企業の話でありまして、特に大企業で技術水準の高いところで働いてこられた高齢者の方は、もうちょっとほかの中小零細へ行かれれば、これは十分にその知識、ノウハウを活用できるというふうに私は思っています。そういう点では、外に出られるというのも一つですので、社会的に見て非常にいい政策かなとは思います。  それからもう一つは、安価な労働力に高齢者がならないかという。基本は、やっぱり高齢者雇用の拡大の基本は、労働市場の自律的な調整にゆだねるというのが私はこの社会では基本だと思っています。そういう点では、法的規制で高齢者雇用を進めるというやり方が適切かどうかは疑問に思うんですけれども、ただ、日本という国は何かこういうことをしないと何も進まないというのがありますから、取りあえず法律でもって高齢者雇用を進めてみましょうと。その後で実はいろんな問題ができてくると。  ただ、取っ掛かりさえできれば日本企業はすごく柔軟に対応する能力を持っていますから、そういう点では、高齢者雇用につきましても、特に私は高齢者の賃金の決め方、それから、当然、毎年体力が低下していきます、去年の自分ではありません。そういう人に対してどういうように仕事を調整し賃金調整していくかというのは非常にクルーシャルな問題になります。単純にこれまでのように例えば年功賃金の逆年功賃金というような仕組みで賃金決められたら、これは高齢者は特に能力差は非常に大きいわけですから、大変心配。  そういう点では、日本のこれまでの賃金の決め方も少し、一律処遇じゃなくて、少しじゃなくて大幅に変えていかなきゃいけないと。そうすれば、できるだけ高齢者の方がこれまでの経験、知識を活用して、そういった仕事内容に合わせて雇用を確保していくということが、私は高齢者の方は労働市場で非常に、ちょっと話がそれるかもしれませんけれども、若年者よりか優位な立場にあると思うんですね。ある程度資産、貯蓄、蓄えはお持ちであると、年金も入ってくると。したがって、若年者との競争の上で、しかも人間力等々も高齢者の方が高いとすれば、賃金なんかで競争したら、安い賃金でも高齢者雇ってくれたらいいというように言ってきたときには、若年者に負けちゃうというのが非常に心配ですから、高齢者が安価な労働力になるのも心配ですし、それに伴って若年者も安価な労働力になるのも心配しております。  以上です。
  23. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、島賀参考人、お願いいたします。
  24. 島賀哲夫

    参考人島賀哲夫君) 先生方がお答えになったこととダブらない範囲で。  一つは、高齢者の働く場がだんだんなくなってくるんじゃないか。現状、確かにそういうのが一般社会としては行われていると思います。私ども業種は違いますけど、白物家電といういわゆる家庭用の電気冷蔵庫とかあるいは洗濯機とか、あれらは大手電機メーカーはほとんど中国で作っております。それが日本のメーカーが作っているうちはいいんですけど、中国辺りの地場の企業がどんどんまねをして作り出した。これは、大体日本の家電メーカーの定年過ぎの人たち採用されて、再雇用の場として中国へ渡って、中国企業日本の技術を移転しているわけでございますので、こういうことがだんだん行われているということは非常に危機感を製造業として持っております。  ただ、日本の現在しばらく続いた不況の中でも、資本財の輸出というのは日本の輸出のほとんどを賄っていたわけで、やはり物づくりの本当にいい製品は日本しか作れないという自負を私などは持っております。したがって、やはり日本企業もそれなりに、六十歳になったからぽい捨てというのは、中国辺りのライバル会社に入ってしまうということはもう技術移転でございますから、経営者の方も危機感を持って更に国内でそういった高齢者方々の働く場を、まあ経団連始めいろいろ考えなきゃいけないだろうと、日経連を中心にですね。  私どもに関しては、まあ幸いなことに何とか若干ずつでも発展を続けてきておりますので、リストラは過去にやったことございません。したがって、自慢にはしておりませんけど、給料も決して世間より飛び抜けていいとは思っておりませんけど、労働組合は、創業以来八十二年目でございますけど、なくて何とかやってきていると。リストラをするよりも、やはりその人たちを生かせる仕事を考えようというようなことを社内で常に話し合ってまいりました。  それから、先生の最後の御質問の深川の財団の話でございますけど、これは正確に申し上げまして平成九年にスタートしておりまして、このときの高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部改正として、開設をしたときに事務経費の二分の一を、当時労働省だったと思いましたけど、助成をしていただきました。これは三年間でございます。正確には、第一期である平成九年から十年の三月にかけては二千五百万ぐらいの国庫の助成をいただきました。それに対して前川製作所自体から三千万寄附をいたしまして、それを元手に財団を設立いたしたわけでございます。それが三年続いて、その後は継続雇用定着促進助成金というものを、年によって違いますけど、百八十万、年間だった年もあれば、一千万程度いただいた年もございまして、ただ派遣業だけを、もちろん資格は取っていますが、高齢者の派遣業だけをやっているんではなくて、高齢者の、例えば五十八歳になったときに、あと二年後になりますよと、定年に。これからは少し伸びますけど、実質は。そのカウンセリングもこの高齢者センターでやっております。先ほどの資料にもちょっと出ておりますけど、財団でやるカウンセリングと、所属していた、また将来そこに所属し続けたいと思っているところのリーダーと本人と三者でカウンセリングをするというような、まあ心の準備をしてもらうと。収入がこの程度減りますと、だけど継続して是非働いてもらいたいというような、本人のやる気を余り損なわないようにやっております。  ただ残念なことに、平成九年に設立した私どもの財団は日本では第二号だったと記憶しております。横河電機さんが第一号で、二号が私どもで、三号が北九州の方に、会社じゃなくこういった財団ができました。ただし、その後ほとんどできなくなってしまったと、まあこれは不況の影響もあったかと思いますけど。したがって、また厚生労働省では別な助成を考えているやに伺っております。例えば、高年齢者等共同就業機会創出助成金なんというのが今年から第一回の募集を始めておりますし、まあ私どもの財団は対象になりませんけど、三人以上集まって新しい事業を高年齢者が始めるときに特に雇用保険被保険者を雇い入れてもらえれば、助成金、最高限度額五百万ですけど、三分の二ぐらいの助成をするというような制度も新しく今年から発足しているやに伺っております。  以上でございます。
  25. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  それでは、浜田昌良さん。
  26. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。  本日は三人の参考人の先生方、貴重なお話ありがとうございました。    〔会長退席、理事和田ひろ子君着席〕  まず、大久保先生にお聞きしたいと思います。  資料の御説明で、改正高齢者雇用安定法課題というところで若干私自身ショックに思いましたのは、継続雇用制度を持つ事業所がほとんどなんですが、そのうち継続雇用をされない定年退職者比率は七二・八%にも上っているという御説明がございました。その背景として、お話では、いわゆる退職者のニーズと継続雇用ミスマッチがあるということなんですが、このミスマッチをどう埋めていくかについて、お知恵をありましたら御説明をいただきたい、こういう提案がありましたらお話しをいただきたいなと思っております。その点お願いしたいと思います。  続きまして、大橋先生には、お話しいただきましたデータで図の六の一といったのがございまして、就業希望だが仕事に就けない理由というようなデータいただきました。適当な仕事がないと答えているのが男性六十歳から六十四歳で約六〇%、六十五歳から六十九歳で五〇%ですが、その理由として挙げられている下の円グラフを見ますと、技能、知識が生かせないというのが六割もあると。このいわゆる高齢者方々の技能、知識をいかに生かすような仕組みをつくっていくかと。社会的なその仕組みが多分要るんだと思うんですが、その点について御提案あればお願いしたいと思っております。  最後に、島賀先生にお聞きしたいと思いますが、前川製作所様のこの定年ゼロの制度、すばらしいと思っております。それで、かつ、多分この定年ゼロの制度がうまく回っているのは、きめ細かないろんな制度をされている、例えば先ほどカウンセリングを細かくやっておられるというお話もございました。また、仕事自体が独立法人というフラットな組織で、いわゆる肩書とリーダーとは違うとか、そういうことをやっておられるという話もございましたですけれども、もし他の企業でこの定年ゼロを導入していく上で併せて留意すべき点、こういう仕事をしていく上でこういうことをした方がいいですよというのがありましたら、お話をいただきたいと思います。
  27. 和田ひろ子

    ○理事(和田ひろ子君) まず、大久保参考人にお答えをいただきます。
  28. 大久保幸夫

    参考人大久保幸夫君) いわゆる継続雇用制度が用意されても、その制度を使わない人たちが多いと。そのミスマッチをどう埋めていったらいいんだという御質問だったかというふうに思いますが、まず一つは、これは比較的取り組みやすい問題だと思いますけども、定年退職以降、再雇用のときにおける働く日数と時間に関して、もう少し短時間なものを企業側が用意するということでありましょう。ここについてはそれほど大きな支障はないというふうに思いますが、現状のところは定年前と同じ水準労働時間になっているところが多いので、これは今後、取組としてそのような働き方の選択はある程度広がってくるだろうというふうに期待をしているところであります。  それから二つ目は、前の仕事と同じ仕事をやり続けるという中で、高齢者が比較的望まない、抵抗があるというのは、いわゆる元やっていた仕事を今度は管理職としてでなく一プレーヤーとしてやるということを期待されると、いわゆる元部下の指揮命令の下にやらなければならないというのは、余りはっきり言って気持ちのいいものではないわけでありまして、そういったところに対する、もう少し別の仕事もとか、あるいは別の組織高齢者の力を生かしてあげるというような選択をちゃんとできるようにした方がいいのではないかというふうに思いますし、あるいは、すべての高齢者が今までやってきたことを、同じ仕事をやり続けたい、つまり今までの経験を生かして同じ仕事をやり続けたいと思っているわけじゃないんですよね。むしろ、ある仕事については大分自分はしっかりやり切ってきたと、残りまだ短からぬ人生があるわけですから、今まで経験していないこともやってみたいというような、ただもちろんベースとして今まで培ってきた経験は人間力という意味ではいろんな形で生かせるんですけれども、業務の専門性からいったら少し違う種類のものもやってみたいというような志向を持った人が非常に多いわけです。ですから、先ほど言った、もう少し人の役に立つということが実感できるような事業をその会社が子会社とか別会社で事業として展開をして、そこに高齢者が動いて、その上で従事するという形であれば、このような低い選択率にはならないんではないかなというふうに考えております。    〔理事和田ひろ子君退席、会長着席〕  また、高齢者自分で気の合う、例えば社内でも昔から一緒にやってきた仲間たちと数人で独立して会社をやると、そのような選択を希望している人たちも多いわけであります。ですから、そのようなグループでの新規の創業、独立を企業側が支援するような制度をつくって、一定のスタートのときの支援をしてあげて、場合によっては会社仕事をそこに出してあげるというような形の仕事上の支援もしてあげるというような、そのような選択も含めてバリエーションをつくっていけば、本当意味でその会社が、我が社で働いてきた定年退職者にいい職場環境を提供したり選択を提供することになるんではないかと。これは、この法律の下で実態的にそれを活用する人が少ないとか、あるいはそうじゃない希望を言う人たちが多いということであれば、今後企業の中でもそのような変化が起こってくると思いますけれども、ある程度実態としてこのような高齢者志向が分かっておりますので、そのような選択肢をつくることを併せて企業側には働き掛けていく必要があるのかなというふうに思っております。
  29. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、大橋参考人、お願いいたします。
  30. 大橋勇雄

    参考人大橋勇雄君) 高齢者の技能、知識を生かす仕組みができないかという。実はこれ考えるのは私のような象牙の塔の狭い研究室で勉強している者じゃなくて会社の方が、企業の方がお考えいただければいいと思うんですけれども、ただ、幾つかの、あっ、面白い事例だなというものは紹介できます。  例えば、田丸屋さんというワサビの会社がありまして、それで、そこには特攻隊というグループがあります。これは高齢者ばっかりです。この特攻隊というのは高齢者の方ですから、既にいろんな仕事を回っておられますから、あの職場はこういう仕事で、あそこにはあいつがいると、この職場にはこいつがいると、こういうことが分かりますので、その特攻隊というのは、各職場で欠員が出た場合あるいは有給休暇を取った人が出た場合に、そこに特攻隊から高齢者の人が配置されると。長くいるわけじゃないわけですから、迎える方も歓迎なんですね。この人が一時的にここへ応援に来てくれて、また戻っていってくれると。そういう意味で、高齢者の方も非常にやる気が出てくるし、迎える職場も応援で有り難いと。  それからもう一つ、修理肥やし隊というのが、これが名古屋のめいらくというスジャータで有名な会社さんですけれども、そこに修理肥やし隊と。食料品ですから、ここは、したがって、売れ残ったら腐っちゃうという、したがって、もう賞味期限が切れそうになったスジャータを売りまくると。そのときに高齢者の方は、販売関係の方ですけれども、非常に顔が広いと。それを生かして、人脈を生かして売りまくると。こういう仕組みもございます。  ただ、こういう仕組みがいつまで続くかというと、大体、私、高齢者のこういう職場ができたといって喜んで飛んでみると、もう今はありませんとか、したがって、どこまで定着するかというのは非常に難しいところでございます。  それから、もう一つ大事な話は、技能、知識が生かせない。これが微妙でして、大体一つ企業でかなり上の方まで行った人、これは余りこれまでの仕事にこだわりません。要するに、自分に自信がある。例えば某自動車会社の、これはホワイトカラーじゃなくてブルーカラーの方ですね、職制を務めて工長とか職長になった、こういう人たちは、意外に、じゃ六十過ぎてどこか配置されると、どこでもいいよ、頑張るよと。それに対して一番困るのは、職制を経験しなくて、ずっと長い間同じ職場にいた人たちです。こういう人たちが圧倒的に多いわけですね。こういう人たちは、もうやっぱり今の仕事で今の機械でやりたいという人が非常に多い。だから、そういう点では、この技能、知識が生かせないという言葉の裏にある現実もちょっと注意して読む必要があるというふうに私は思います。  以上です。
  31. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、島賀参考人、お願いいたします。
  32. 島賀哲夫

    参考人島賀哲夫君) ほかの企業参考にしていただくようなことがあるかどうか余り自信はありませんけど、やってきたことを今日お話ししているわけでございますけど。  やはり、何だかんだ、若者の考え方が変わっていても、日本の良さというのは終身雇用制というのがまだまだ根強いものでございます。やはり一度縁があってこの会社を選んだ以上、本人も働きたいと思っているわけで、働き続けたいと。それに対してやっぱり経営者、私も最初から経営者だったわけじゃございませんけど、経営者の方でも、なるべくもうその人に働いてもらう、一生。流通業などは入社式だけ華々しく何百人なんて新聞で報ぜられますけど、定着率は非常に悪いと伺っております。私どもはその点地味な物づくりですので、一年後、二年後、こう見ていても本当に、家庭の事情でやむを得ずというような方はいますけど、定着率は自信を持っております。非常にいい企業だろうと思っています。  それには、創業者、この会社をつくった創業者は、よく私も聞いておりましたけど、運命共同体という言葉を使っていました。縁があって前川製作所を選んだ以上、上も下もみんな運命共同体なんだと、浪花節みたいですけど。現在の名誉会長である二代目のオーナーの前川正雄は、それを現代風に共創という言葉を言って、あるいは共同体という言葉で言っております。ただ、この言葉の中に非常に、ちょっとやっぱりニュアンスが時代とともに変わってきておりまして、特に、先ほども申し上げましたけど、共創というのは一人一人が非常に謙虚でないと駄目なんですね。だから、先生がおっしゃっていただいたように、フラットな組織と、もうそのとおりで、前川の経営形態を、あるいはユニークな経営をしておりますので、取り上げていただいた本はかなりございますけど、そういう中で個を非常に大事にすると。個と集団というときに、個を大事にする、そして集団の中で個が生きるようにやっていくというようなことで、個と全体との融合なんという社内用語もあるわけでございます。  したがって、経営者側にも、縁あって入ってきた人たちを、これは給料だけじゃないわけですね、やはり本人が中高齢者方々を見ていて、自分が将来こうなるんだという姿を見ているということは、本人の生活設計にも結び付くわけでございますし、また時間がなくて申し上げませんでしたけど、若いころ海外に赴任して帰ってきて、そして子供を産み、子供たちの子離れをした、もう世帯も持った、そうした六十歳過ぎの人がまた海外へ奥さんと一緒に、あるいは単身で赴任して、そして自分の経験を生かすというようなケースも多々我が社の場合ございます。したがって、年取ってもああいうふうに生きるんだということを見せ付けるということが若年人たちにも希望になり、定着率も増えるだろう。  そして、何よりも老人たちを大事にしているなと思わせる一つの催しに、我が社で、五五―三〇の会というのがございます。これは、五十五歳以上の人で勤続三十五年以上、ただ中途入社が最近増えていますので、中途入社の人は二十年以上といっていますけど、本人も月何がしか会費を払い、そして会社はその倍払って、そして共済会ではありませんけど、年一回温泉旅行してみたり、これが逆にだんだん増えてまいりまして、OBにも数万円の負担をしていただいて声を掛けますと、最近OBでも三十人ぐらいは参加するようになってきて、バス一台だったのが二台になり、昨年などは三台になる。そういうような自分が出た、辞めた会社の連中ともまだ酒を酌み交わすという帰属意識的なものが大変喜ばれております。  旅行のないときには研修会的なものを、私ども財団法人和敬塾というのを創業者が残していってくれましたので、目白台にございますけど、男子の学生寮でございますけど、そこを借りてセミナーをやって、慶応の清家先生なんかにも講演していただいたことございますが、中高年の連中が参考になるようなお話を、大学の先生方にお話を聞かせていただくと。こういう、まあ悪口言うような、老人会と言っているのもいるようですけど、五五―三〇の会というのが我が社ではユニークな形かと思っております。  また、知識偏重の時代に今なっているわけでございますけど、先ほど言い逃したので付け加えさせていただくと、やはり経験豊富な老齢者、高齢者知恵が出るわけです。記憶力は落ちておりますけど、だんだんこの複雑な時代になってきますと、知識だけでは太刀打ちできない、企業活動でもそうでございます。したがって、そこにちょっと先輩がいい知恵のアドバイスを出してもらう、これが大変まあ味付けになるわけで、こういった点からも高齢者のメリットというものをもっと経営者の人たちも認識していただくということも大事だろうと思います。  少々長くなりましたが、もう一言申し述べますと、中小企業、私どもも中堅企業自分では言っておりますけど、逆に私たち中小企業から大企業を見ると、何で六十歳でぽんと捨てちゃうのかというような、役員にしても六十二歳ぐらいで優秀な、役員を辞めてうちへ入った方もいますけど、役員としてじゃございませんが。もっとその人たちを、後ろに、大企業の場合は若年、ところてん式に優秀な人材がいるからと言い訳するかもしれませんけど、そういった人たちをもっと生かす仕事を考えることも、場を考えることも、経営者の仕事じゃないかというふうに私は思っております。  以上です。
  33. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  次に、井上哲士さん。
  34. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  今日は、参考人皆さん、ありがとうございます。  まず、大久保参考人改正高齢者雇用安定法の施行にかかわってお聞きをいたします。  年金支給年齢を六十五歳に遅らせるということが契機になったことを考えますと、先ほどもありましたように、希望者全員の雇用ということが、本来、法の精神だと思います。ただ、やはり、これも先ほどありましたが、施行を前にいたしまして、過去五年の平均考課が何々以上とか、それから過去何年間の出勤率が何%以上とか、こういうようなことが出て、事実上の選別というようなことがあるじゃないかということで、いろんなトラブルもあるわけですね。先生、この施行に当たって、いろいろの御研究の中で、こういう現状をどのようにつかんでいらっしゃるのかという点と、それからやっぱり法の本来の精神からいった場合に、どのようにこの点をお考えで、どう改善をすべきとお考えかということをお聞きしたいと思います。  それから、大橋参考人にお聞きいたしますが、いただいた資料の表の二で、「高齢者に対する特別の措置の現状」というのが最後の表がありましたけれども、先ほどありましたように、特別の措置を取っていないというところが職種全体でいいますと七七・六%、実に四分の三というのはちょっと私も驚いたんですけれども、これだけこの問題が言われながら、こういうところにとどまっているという理由はどうお考えか。そして、手を付けるとすれば、まず優先的にどこからここで言われている課題についてやるべきとお考えか、お聞かせいただきたいと思います。  それから、島賀参考人にお聞きいたしますが、やはり大きな一つの鍵は財団にあるんだろうと思うんです。それで、資料の中では、特に人事部というのが会社にはないんだということも書かれておりますと、この財団の運営というのが非常に大事な鍵になっているんじゃないかと思うんですが、先ほどいわゆる運営費の点は会社とのかかわりも出されたわけですけれども、日常的な運営とか人的配置とか、そういう点での今の会社の経営陣との関係はどのようにされているのか、その辺をお聞きしたいと思います。  以上です。
  35. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それじゃ、まず大久保参考人、お願いします。
  36. 大久保幸夫

    参考人大久保幸夫君) 再雇用等が選別、選抜を伴ったものになっているということに関しては、実際そのとおりでございます。  非常に企業側の方々の悩ましい部分も、お話を伺っておりますと、要するにこの背景には、それぞれの企業が六十歳を超えた人たちをどういう形でその企業、事業の中で生かしていくのか、何をやってもらうことが彼らにとってもやりがいがあるし、企業にとってもちゃんと企業、事業に貢献してもらうことになるのかという、その方法論がやっぱり見出せていないんですよね。  ですから、結果的には、やはりそれは法律で決まったから、いわゆる定年退職してこれまで貢献してもらった人への一種退職金や年金にプラスアルファするような、そういう感覚の中でこの再雇用の問題をとらえざるを得なくなっている企業が非常に実態として多い。そこでは、要するに全部雇って給料払うということは、それを企業価値に転嫁できないわけですから、どうしてもその選抜とかという問題がまたそこにも出てくるという。もちろん、そのことがいいことだというふうには思っていませんけども、足下が全然できていないということがやっぱり背景にはあるのかなと。つまり、本当意味では、どういう形で高齢者とそれを雇い入れる企業とがお互いにメリットのある就業関係がつくれるのかというところがやっぱりない限り、この問題はなかなか前に進まないかなというふうに今の段階では思っています。  それからもう一つは、私は、企業高齢者雇用の場をすべて、その元々所属していた企業にですね、求めることのやっぱり限界もあるなというふうに感じていまして、企業の中では六十歳定年を前に本当のピーク時を超えてしまっていて、その後の段階、もうあと五年引っ張るというような、そういう感覚にどうしてもなっているところがありまして、元々いた企業責任を持ってもらうということ以外の選択の場もつくっていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思うわけです。  例えば、私は、その一つのヒントは、仕事を分かち合うジョブシェアリング型の仕組みがあるんじゃないかと。  例えばサービス業なんかでいうと、サービス時間がすごい長いわけですよね。ある企業なんかでは、朝の時間帯は高齢者人たちにメインで店長をやってもらって、昼間の時間は主婦の人たちに頑張ってもらって、夕方以降の時間は学生に頑張ってもらうとか、そういうようにいろんな人たちを組み合わせてうまく使うみたいなこともやっているわけですが。  そういうことについてももっと検討する必要があるだろうと思いますし、あともう一つは、何といいますかね、ある程度経験した人が、できたばかりのベンチャー企業みたいなところに行って、ベンチャー企業の経営を安定させるというサービスをする会社も最近は出てきているわけです。若い人ばかりでやっていくと、非常に勢いはいいんだけど同時に危なっかさもあるわけで、そういうところに定年退職近くまで企業で幹部をやっていた方が行くと、非常にいいアドバイスをしたりとか、経営に対して参考になると。そういう人たちを取締役で入れたり監査役で入れたり顧問で入れたりするというような仲介をしている会社も最近はあるわけですけれども、実は高齢者はいろんな形で貢献できるところがあると思っているんですけど、その本当にいろんなパターンをこれから作っていかなければいけないのかなというふうに感じております。
  37. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 大橋参考人、お願いいたします。
  38. 大橋勇雄

    参考人大橋勇雄君) 表二について、高齢対応、特別な措置が、非常に企業の割合が低いということで、実は私もこれはショックを受けております。これ、二〇〇〇年、平成十二年のデータなんですけど、こんなに低いのかと。  これをいろいろ考えましたけれども、結局のところ、例えば高齢者専用会社をつくるとかそういった、あるいは作業改善をする、そういうしゃれたことをするのは、大手の企業さんはそういうことをおやりになる体力もある。ところが、五から九十九人ぐらいの小企業、実はここのところで高齢者比率は、従業員のうち高齢者比率が圧倒的に高いんですね。  ちなみに、千人以上の大企業、これは高齢者比率が、六十歳以上の高齢者比率はわずか四%です。続いて、百から九百九十九人、まあ中企業ですね、これはその倍ぐらいで七・六%。小企業、五から九十九人ですと一五・二%高齢者の方が占めておられます。そういう意味では圧倒的に多くが五から九十九人の小企業であると。しかも、数も多いですし、そういう小企業では余り高齢化対策なんてやってないんじゃないかなというのが私の解釈なんですね。そういう点では、これはちょっと心配すべきことだと思うんですね。だから、今後こういった対応をどういうふうに進めていくのかというのが大きなテーマになると思います。
  39. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、島賀参考人、お願いいたします。
  40. 島賀哲夫

    参考人島賀哲夫君) 深川高齢者職業経験活用センターについて先生からもうちょっと突っ込んだ御質問があったわけでございますけど、先ほど、前川製作所がスタート時に三千万の寄附をしたということ以外には、人材派遣がメインでございますので、前川製作所グループ会社に年間給与を決めるときに手数料をこの事務経費として入金しております。したがって、前川製作所グループの独立法人がその費用を負担しているということが一つ。それからもう一つは、働いている方といっても大した人数おりませんで、常務理事が一人とそれから女性が二人ぐらいでほとんど事務をこなしておりますので、その給与の半分ぐらいのものを年間、前川製作所が負担して助成をしております。  先ほどの記載でちょっと誤解があってはいけないんで、総務部というのは、あるいは人事部というのはないんですけど、総務グループというのはございまして、各大学、工業専門学校等にリクルートをする採用の動きだとか、あるいはグループの給与計算をするとか、あるいは社会保険の関係の手続、計算事務をやるとか、これらは製作所本体の総務グループがほとんど代行しております。  したがって、人材派遣業がメーンであるということ、そこからは、経費だけは採用してもらうその独立法人に負担させますから赤字にはならずに、今財団法人の見直しが今国会で行われているようでございますけど、その点では非常に、基本財産などは幾らもありませんけど、赤字にならずにぎりぎりやっているという財団でございます。  あともう一つ、先ほどちょっと触れましたけど、地域に開かれた形にしなければいけなかったわけです。したがって、深川という名前を付け、前川じゃなかったということで、事務所は同じビルの中にございますけど、私が副会長をやっております東京商工会議所の江東支部などにもパンフレットをスタート時に配りまして、募集をしたんですが、意外に反響が少なかった。まだPRが足りないのかもしれませんが、地域に根差してだんだん広げていきたいと。  前川グループでまだ、これ七、八年やってきましたけど、この先はできれば派遣する企業も、ほかの前川製作所グループ外の企業で手を挙げるところがあれば、そこへも派遣していきたいと。あるいは、ここへ登録する方々も今いる人数より、百二十一名と申し上げましたけど、だんだん増える傾向ですが、社外の方も登録できれば、特殊技能を持った人がですね、受け入れていきたいということで、門戸をいつも開いてございます。  以上です。
  41. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  それでは、渕上貞雄さん。
  42. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 どうも、参考人の方、御苦労さんでございます。  まず、大久保参考人にお伺いしますが、高齢者雇用問題を考えるときに、今の団塊世代と言われるところの一固まりの大きな固まり、ここの対策と一般的な高齢者に対する対策の違いはあっていいのではないか。今、その固まりが終わった後、恐らく高齢社会にはなりましょうが、その対策を今やる必要ないのではないか。したがって、この団塊世代だけの固まりのところの対策をどのようにするかということが私は大事なことじゃないかと思っているんですが、その点、どのようにお考えでしょうか。  それから、大橋参考人にお伺いいたしますが、高齢者雇用確保高齢者雇用不安、まあ生活不安にもつながってきていると思うんでありますが、そういうものがやはり一つの問題となって、高齢者雇用に対する阻害要因というものがあって、その阻害要因に対してどのような対策を取っていけばよいのかどうか、お考えあればお教え願いたいと思います。  それから、最後になりますが、島賀参考人に伺いますが、定年ゼロという言葉を聞いたときにはちょっとショックを覚えました。どういうことだろうということでいろいろ、私どもの調査室の方から出ている参考資料を読まさせていただきました。そこで、それでもなお定年六十という区切りを一つつくっていること、このことと定年ゼロというところのかかわりといいましょうか、やはり六十でひとつ区切ろうという意味のところをもう少し分かりやすく御説明いただければと思っています。  ちょっと風邪引いて、変な声で済みませんでした。ありがとうございました。
  43. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、まず大久保参考人からお願いいたします。
  44. 大久保幸夫

    参考人大久保幸夫君) 私は、高齢者雇用の問題、大変重要で大きな問題だというふうに思っておりますが、大きな問題だというふうに思っている理由は、団塊世代の二〇〇七年問題では実はないんです。  私、昨年、日本二十一世紀ビジョンというビジョン作成のワーキンググループに参加させていただいて、二〇三〇年までの日本の姿というのを考える、ちょうどそういう機会に恵まれたわけですが、そういうように長い視点で見たときに、本当に実は高齢雇用の問題って非常に重要だなというふうに感じたわけであります。非常に多くの人たち高齢者になり、その人たちが今の就業率のままだと本当にこれは年金財政ももたないだろうし、日本全体の構造が非常にきつくなっていくということを改めてそのときに実感をいたしました。ですから、私の世代が、要するに実際に本当に六十五歳からの年金支給になる世代なんですけど、どちらかというと自分たち高齢化を迎えるときのために今から準備をしておかないと間に合わないという感覚もありまして、非常に大きな問題だというふうに考え始めたわけであります。  団塊世代については、そのもっと下の世代に比べた場合の貯蓄率、額の問題とか、あるいは、現在はまだそうはいってもまだ六十五歳よりもっと手前でもらえるとかということも含めて考えると、今よりも先の方が重くなる問題だというふうに思っています。  ところが、実は高齢者雇用の仕組みをつくるというのはなかなか難しい問題でございまして、今現在は学校を卒業して新卒で入社した人たちが年次管理されながら企業の中で正社員としてやっていって定年退職するというものが日本の戦後の仕組みを支えてきたわけで、この仕組みに入らない人というのは非常に不利な状況に追い込まれるわけであります。つまり、非正規の人たちだったりとか、あるいは女性でいったん退職をしてしまった人たちとか、あるいは高齢者とか、正社員で働いている人たちが守られれば守られるほど、そうじゃない人とは二極化してしまうみたいな構造があると。  じゃ、正社員で働いている人の比率がこれだけ少なくなってきている中で、どうやってもう一回全体にとってすばらしい仕組みをつくっていくかということに取り組まざるを得ない。これは相当の時間が掛かる話だろうというふうに思っていまして、今この団塊世代定年退職をしたり本当に人の採用が厳しくなってきているこの環境が、取り組み始める大きなチャンスだろうというふうに思っているわけであります。  ですから、団塊世代の心配というよりは、もうちょっと長期的な構造の問題として、私はこの高齢者雇用の問題というのを考えていく必要があるんだろうと。当面の団塊世代の問題であれば、今の改正法というのは非常に有効な当面の策にはなるんではないかというふうに感じております。
  45. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  大橋参考人、お願いいたします。
  46. 大橋勇雄

    参考人大橋勇雄君) 人間ですから、体力とか記憶力とかそういったものが低下するのはこれはもう自然の摂理で仕方がないわけですから、そういったものを何とか、阻害要因になりますけれども、阻止するというのはこれはかなり難しいというふうに私は思います。  ただ、できれば、先ほどのお話で紹介させていただいたような高齢者の活用方法とかあるいは作業改善とか、それも行政的には厚労省が例えば仕組みについては好事例集をいろいろと世間に紹介しておりますし、また補助も、政府系金融機関が例えば作業改善を企業が行うときには若干の補助が出る仕組みもございます。ただ、ほとんど活用されていないようですけれども、そういった仕組みもあります。  しかし、そういったもので対応するというのはやっぱりなかなか効果が上がらないだろうというふうに思うんですけれども、しかしまあやらないよりかやった方がいいと思うんです。ただ、最終的には賃金に手を付けるしかしようがないんじゃないかと。  その賃金を調整していくときにどういう仕組みがいいんだろうかということは考えられると思うんですね。年功的な制度、これは終身、なるべく長期雇用を前提に、これはもう雇用体系の基本ですので、これは維持しつつなおかつ企業内で高齢者の賃金を調整していく。  それ、どうやってやったらいいのかということを、これ一つは、私、高齢者というのは人によってかなり違いますし、それから年々変化しますから、かなり現場に賃金決定をゆだねるという、そのことが大事ではないかと。ともすれば日本企業というのは人事部が主導して賃金等々を決めますので、どうしても一律の処遇になりかねないと。でも、高齢者についてはできたら現場で、人によって大きく違いますから、現場で賃金の何か決め方を少し考えた方がいいんじゃないかというふうに。  だから、そういう点では、経済学者ですから、どうしてもそういう技術的な話よりかそういった仕組みの、雇用慣行の話になりますけれども、そういったところを何かいいアイデアないかなというのが私の考えでございます。
  47. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、島賀参考人、お願いいたします。
  48. 島賀哲夫

    参考人島賀哲夫君) 渕上先生の御指摘のとおり、定年ゼロというのはこれ偽称みたいで、実際は定年六十歳というのがあるわけでございますけれども、実質、社員の一人一人は定年はないというふうに感じているということからこういう表題にさせていただいております。実質定年ゼロというふうに御理解いただきたいと思うんです。  ただ、会社の立場に立つ、それから個人の立場に立つ、二通りあろうと思います、六十になったとき。  一つは、会社の立場としては、どうしてもこの人は協調性がない、みんなと仲良くやれない、一人でもう独善的なことばかりやって会社の進めている方向にはなじまないという人を辞めていただいたというのは、本当にまれなんですけれども、たまにございます。そのためにはこの制度を、今度は六十二まではいてもらわなきゃいけないんですけれども、一つの区切りとしてその制度を残しているわけでございます。  それからもう一つ、先ほどちょっと触れましたが、リーダーは降りてもらうと。役員になっている人は別として、若手もやはり活躍の場がなくなってしまいますので、いつまでも先輩がリーダー、独立法人の社長で頑張っているとかいうことではいけないので、定年制を、取締役だったら何歳とか、そういう定年制ももちろん設けておりますけれども、一般社員ですと、六十歳になったらアフターサービスのリーダーになっている人は降りてもらって、一先輩としてまた経験を生かして動いてもらうということがございます。  それから、個人の立場へ立ったときには、本人にとっても一つの区切りでございますから、六十になったら退職金をもらって自分は農業をやりたいという、最近の例ですけど、ワサビ作りをやってみたいんだとか、茨城の工場のそばで自分は農業をやりたいというような人などもそれぞれたまにいるわけですね、自分の人生設計で。そういった人たちは、この定年制によって退職金を払い、そしてその退職金を元手に新しい自分のやりたかったことをやっていただくという選択のポイントになるんじゃないか。  それから、田舎へ帰って、親だけ住んでいるから親と一緒に住みたいというような例もございました。なるべくそういうケースは、私どもほとんどの都道府県に営業所を出しておりますので、なるべくそこへ勤めてもらうように説得します。そして、親元から親の面倒を見ながら通える、自分のふるさとで、そういうような仕事をするケースも、六十歳を転機にそういうケースもございます。  以上でございます。
  49. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  それでは次は、松村祥史さん。
  50. 松村祥史

    ○松村祥史君 三人の参考人の皆様、本当に貴重な御意見ありがとうございました。自民党の松村祥史でございます。  それぞれに、高齢者雇用についてのニーズといいますか、高齢者の皆様方のことを詳しく御説明をいただいたんですけれども、私のある友人で中小企業をやっている方が、五十人ぐらいの会社なんですけれども、面白い試みをやられて高齢者雇用をやられたんですよ。  これはどういうことをやられたかといいますと、会社自体は物を、計測器みたいなテスターを作る会社なんですけれども、技能職とプログラマーの方がいらっしゃる。そこで、六十五歳以上のグランドシニアの皆さんに公募を掛けまして、是非知恵をかしてくださいと。そしたら、三十五名の公募がありまして三人採用されたと。もちろん、大学の先生であるとか某大手の電機会社の方であるとかという方を採用されたそうなんですけれども、この方々に何をやっていただいたかというと、会社の中で遊んでいてくださいと。若いプログラマーや若い方々が相談に来たときだけ話に乗ってくださいと。あとはテレビを見ていようが新聞読んでいようが何をやっても構わないと、こういったことをおっしゃったらしいんですね。  また、この三名の方々も御要望があったみたいで、採用に関しての要望があると。まず、給料は税金の掛からない十三万円以下ぐらいにしてくれと。およそ、まあいろんなたくさんの御収入があられるでしょうから。それから、仕事についても、十時半ぐらいからせめて三時ぐらいまでとか。それから、細かい作業は苦手だからと、まあそれぞれに、逆に言うと経験値の高い方々の強みであろうかなと、こう思うんですけれども、こういった方々が何をやっていただいたかというと、新しい技術の開発ができたと喜んでいらっしゃったんですね。  どんな技術かというと、物が劣化をするときに光を放つそうなんですね、このことを測定できないかという観点から、先輩方の知恵とのマッチングができて、まだ完成はしておりませんが、いろんな分野での活用ができるんじゃないか、会社としての武器になるんじゃないかと、こういう話がございました。例えばコンクリート、トンネルのコンクリートが劣化をしていると、そのときの測定ができる、これはもう大きな技術です。  これが五十人ぐらいの小さな中小企業でございますが、先ほどからずっと御意見を賜っておって、高齢者雇用についての大きな範囲でのお話は分かりましたが、先ほど大橋先生もおっしゃいました中小企業皆さん方とのマッチング、これをどうするかというのは私、一つ大きな問題ではないのかなと、こう思っております。  そういう意味では、それぞれの皆様方の観点の中で、日本の全企業の九九・七は中小企業と呼ばれておりますから、こういったところとのマッチング。また、こういう都会で人のいるところはたくさんのニーズもあります。たくさんの高齢者の方もいらっしゃいます。しかし、格差が広がる中で、地方に行くと高齢者しかいない地域もあります。こういった観点からして、どういうふうに高齢者雇用の場所をつくっていくかというのは、やはり国でやらなければいけない部分もたくさんあるんじゃないかなと、こう思いますけれども、それぞれに御意見がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。  それから個別に、大久保参考人にお伺いをしたいんですが、七ページに、EU諸国が二〇〇六年末までに年齢差別禁止を法制化するが、日本はどのような手順でいくのかという問題提起をされておられますが、実際具体的な恐らく御意見があられることと思います。お持ちでありましたらばお聞かせをいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  51. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、大久保参考人、お願いいたします。
  52. 大久保幸夫

    参考人大久保幸夫君) 特に高齢者の問題、地方とか中小企業という視点でどういうふうに整理するか、非常に重要な問題だというふうに思いました。今御紹介いただいた事例というのはまさしく典型的な中小企業のアイデアフルないい事例だというふうに思うんですね。  実は高齢者人たちの傾向を見ると、自分が頭、これ経験的に理解した体系とか秩序立ったものに基づいて相談をしたりアドバイスをするということが非常に得意であると。それに対して、もう少し年齢的に若い人たちは、何か新しいことを考え出したりすることが大変楽しいと感じる。この創造的に何かをしようということと今までの秩序に基づいて何かをしようというこの組合せが非常に新しいものを生み出す、創造性を促進するというふうに解釈できるというふうに言われております。  ですから、まさしくここはこの組合せの妙でございまして、しかも、おっしゃるとおり、若い人のために相談に乗るというのは、私が先ほど申し上げた絵にかいたようないい事例じゃないかというふうに思うんですけれども、このことは大企業に限らず、中小企業でも十分に現実の経営的にできる話だというふうに思っておりますので、むしろそういう事例がたくさん中小企業にとっては参考になるんじゃないかというふうに思うんですね。  それから、むしろ地方なんかに行くと、私この間ある話を聞いて大変、非常に感銘を受けたんですが、ある地方で高齢者方々が十人ぐらいで企業組合をおつくりになった。で、その企業組合をつくって何をやるのかと思ったら、民間企業であるとかあるいは地域の地方自治体の公共サービスのアウトソーシングを引き受ける仕事を始めたと。これは、いわゆる競争入札、入札をして落札した場合にそれを受けるわけですけれども、それが非常に連戦連勝であると。ただ、高齢者なので、それほど高い利益を取って更に事業を拡大していこうという志向はなくて、自分たちの仲間が自分たちに必要なだけの収入が得られればいいんだという考え方でやっているので、公共サービスのその非常に優れた受け手になっていると、こういうことがあるようなんですね。やっているうちに、今度はそのチームに自分も入れてくれという若手がどんどん応募に来て、どうしようかと悩んでいるという話をこの間聞いたわけです。  こういうように、特に地方圏においては、私は優れた公共サービスの担い手としての高齢者というものを考えていかなきゃいけないんじゃないかというふうに感じております。  それから、最後に、EUの年齢差別禁止の取組についての御質問をいただいたわけでありますが、私は、これまで定年とその定年延長を軸にして高齢者雇用の問題をずっと日本を考えてきたわけでありますが、そのことは今日までのやり方として私は正しかったというふうに思っております。つまり、定年制を維持したり延長したことによって雇用が守られてきた側面が、定年制によって一律に外に出してしまって働かなくなる部分と比べた場合に、プラスの要素の方が大きかったというふうに思っておりますので正しかったと思っているんですが、ただ、本当高齢者比率が高くなったときはこのままではきついんだろうというふうに思っていまして、そうすると、日本年齢差別禁止の問題に本気で取り組まざるを得ないんだろうというふうに思うんです。  じゃ、一体どういう状態をつくったら、定年制の延長じゃなくて年齢差別禁止の方がよりメリットのある形に変わるのかという、その判断基準を日本の中でちゃんと議論する必要があるんだと思うんですね。逆に言ったら、年齢差別禁止に移行するために何を準備したらいいのかということもちゃんと議論する必要があると思っていまして、私は、ここの部分のところが取組がちゃんとなされていない、空白になっているというふうに思っていますので、どうしたらいいかというすばらしいアイデアがあるわけじゃないんですけれども、ここの部分が議論が空白になっていることが私は問題かなというふうに感じているわけです。
  53. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 大橋参考人、お願いいたします。
  54. 大橋勇雄

    参考人大橋勇雄君) 松村先生の方から出されました事例というのは、大企業あるいは大学の高い知識、技能なりを中小企業で生かせたという事例だと思うんですね。ここのところでよく問題にされるのが、心の問題というんですか、つまり、私がこういった高齢者の派遣会社でちょっとヒアリングをしたときにしばしば聞かれましたのは、大企業のあかが付いていて駄目だよと。  というのは、よくある例なんですけれども、やはり技能、知識自分は高いと。で、移った先では、こういうやり方こういうやり方ということで、断固としてそれがいいと思い込んでいるケースもあると。しかし、大企業と中小企業では環境条件が大いに違うと。それを理解できない人は使い物にならないよと。それが大企業のあかが付いていると。  そういう点では、私は移動はできるだけ早い方がいいと思うんですね。大学でも定年が六十三と六十五と六十。今は六十のところはないんですけれども、六十のその大学の方が、まあ優秀な先生が多かったこともあるかもしれませんけれども、いい大学に再就職できたと。逆に、もう六十五まで勤め上げたら、もうどこも採ってくれるところはありませんと。そういう点で、移動のタイミングの難しさというのは非常に難しいものがあるというふうに思うんですね。  ただ、いずれにしましても、これまでいた組織と新しく移った組織自分をどのようにすり合わせるかという作業をやると。そういった作業をやるのが、これが人材派遣会社等々の、あるいはそういったコンサルティング会社等の、そういったところでかなりコンサルティングをやっておられるようですけれども、その辺が非常に大事だというふうに私は思います。
  55. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それじゃ、島賀参考人、よろしくお願いいたします。
  56. 島賀哲夫

    参考人島賀哲夫君) 高齢者を中小企業にというのは、先ほど来私もちょっと触れましたけど、結構大企業には優秀な人材をもったいないくらい放出していますので、その中小企業の方への、どうやったら移動させるかという仕組みがまだ定着してないだろうと思います。かなりリクルートさん始めいろんな、東京商工会議所もやってますし、いろんな挑戦はしておりますけど、まだやや問題がある。中小企業の方は、おれがおれがという意識の強い、個性の強い社長さんが多いですけど、そういったところへ、どういうところへ相談に行ったらどういう人を紹介してもらえるのかというのはまだ十分分かってないんじゃないかという気がいたします。ですから、その仕組みをまた考えていただく必要があるだろうと。  それからもう一つ、松村先生おっしゃった地方企業に対する高齢者の問題でございますけど、確かに今、国もいろいろ検討していただいているように、かなり地盤沈下が激しゅうございます、地域は。これのやはり地域の活性化ということに先生方も腐心されていることは分かっておりますけど、これはもう早急にやっていただかないと、農林水産業も含めて、地方の活性化、企業の活性化、地方企業の活性化をやっていきませんと、やや景気が良くなったとはいえ、まだまだ地方都市行くと工業団地に空きが目立ちますし、そういった受皿がどんどんできることによってまた大企業からUターン現象で帰っていくことがあるんじゃないか、行われるんじゃないかというふうに思います。  それから今、ただいま大橋先生がおっしゃったことも非常に大事なことでございまして、私どもの経験からいっても、最近非常に市場に人が余っているのが銀行の業界でございます。大手の銀行がどんどん、三つ一つになってしまったり、ここ数年それなりの理由があって統合が進んだわけでございますけど、この統合によって、支店長が一年ごとに替わるとか五十五歳で肩たたきに遭うとか、こういった金融市場にいた人たちがかなりあふれている現状でございます。学歴だけは立派なんですけど、護送船団方式に乗ってきた銀行に長くつかった人はなかなか私どものような中堅企業では応用が利かなくて、非常に使い道に困っているというのが現状でございます。  したがって、本人にも、私は、そういう覚悟と、やはり自分の努力を大企業にいる間からしていかないといけないんじゃないか。これは心の問題でございますから簡単に叫んでも行われるとは思いませんけど、やはり自分が地域の小企業に入ったときに、あるいは東京の中小企業に行ったときに自分が何ができるかということを、やはり大企業方々も社員の方々も心の準備、それの努力をしておくことも必要かと思います。  以上です。
  57. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、津田弥太郎さん。
  58. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 民主党の津田弥太郎と申します。今日はありがとうございます。  最初に、大久保参考人にお聞きをしたいと思うんですが、今後の高齢者雇用という、あるいは狭い意味での雇用を超えた活動の在り方という点で、高齢者自身が主体となってNPOだとかボランティア活動というようなことを行うということも大変重要なことだと思うんです、リクルートさんのビジネスモデルになるかどうかはまあちょっと別にしまして。前回この調査会で、アメリカの全米退職者協会を参考にしてNPO法人のナルクを立ち上げた松下電器出身の高畑さんのお話も実は聞いたわけでございます。  実は、私の組合時代の仲間が定年退職後の高齢者に対して、とりわけ生きがいとかやりがい、実は、大久保さんの資料の中に無理なく、役に立つというキーワードがあるわけですが、そういう生きがいとかやりがいを求めているということを踏まえて公の、先ほど公共サービスという言い方をされておったんですが、公共に資する活動、自分の住んでいる地域で、都会の場合はまた別なんですが、例えば田舎であれば山、森林であるとか、最近非常に荒れ果てた状況がよく報道されるわけでありますが、そこに対して何とかして再生をしていこうと。これは地球の温暖化対策にもなるし治山治水対策にもなるし、花粉症対策という意味で杉とかヒノキを再生をすればそういうことにも役に立つんではないかというようなことで、私の仲間が実は今兵庫県で活動をいたしておるんですが。  お聞きをしたいのは、単に生活の糧ということだけではなくて、公に資する活動への高齢者の参加ということについて大久保参考人はどのように思われているか、お聞きをしたい。  これに関連して大橋参考人にお聞きをしたいんですが、当然、公に資する活動ということになれば行政の支援ということが出てくるわけであります。こういう行政の支援というものについてどのようなことが考えられるか、もし御意見をお持ちであれば御所見をお伺いをしたい。  それから、島賀参考人にお聞きしたいんですが、今日のテーマとちょっと外れるかもしれないんですが、前川製作所では特別な研修制度というのは特にはないんだと、むしろOJTを主体にして従業員教育をされているというふうに前いただいた資料で拝見をいたしました。  実は今、厚生労働省職業能力開発促進法というのを改正案を出してきておりまして、企業の中におけるOJT、それから専門学校等学校で行う座学、これをミックスさせた実習併用職業訓練という新たな提案を実は今この国会にしてきておるわけでございます。  そういう点で、いわゆる公共の職業訓練所の在り方というのが今大きく様変わりをしようとしておるんですが、商工会議所の副会長もおやりになっているということなんで多少地域のことについてお聞き及びかと思うんですが、公共職業訓練所のあるべき姿について御所見があればお伺いをしたいというふうに思います。  以上です。
  59. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、大久保参考人からお願いいたします。
  60. 大久保幸夫

    参考人大久保幸夫君) その公に資するところ、非常に私は高齢者の場としていろんな可能性があるんじゃないかというふうに思っていまして、特に最近注目をしておりますのは、定年退職を迎える年齢に達した高年齢者のうちの、いろんな調査がありますけど、恐らく二割弱ぐらいの人たちは地方に移住しながら新しい貢献の機会を見付けてみたいと考えている人たちがいるわけです。その先というのは、自分の元々のふるさとであったりとか、あるいは全然ふるさとと関係ないんだけれども自分が好意を持っている地域だったりとか、そういう地域のために、地域の活性化のために何かできるんじゃないかという、そういうことを模索している人たちがいる。  ところが、残念ながら、大都市圏にいてそういう地方圏の場を見付けるというのは非常に難しいことでありまして、それをつないでいる機関はほとんどないというのが現状でありますので、そこに、逆に言うと地域の活性化の視点からもその高齢者の力をかりるということに大きな可能性があるんではないかなと。  ただ、私も随分そのことについていろいろ取組をやったことがあったんですけれども、先ほど御紹介のあった例えば森林の仕事とかは実際にやったことがあるんですが、結構難しくて、かなり新規にやるには慣れがないと相当危険性も伴うし体力も要る仕事なんで、どういうものができるかはもうちょっと検討が必要かと思いますが、可能性があると思います。  加えて、高齢者志向の中には、大都市圏に家を持ちつつもう一か所住むという、二か所に居住するという生活スタイル志向している人たちも結構いて、ですから、東京に家があるんだけど、もう一戸、年のうちの幾分かはそちらに住んで、そこでその地域のために何かやりたいと、こういった志向を持っている人たちもいますので、少しすそを広げる、そこを広げるといろんな可能性があるじゃないかと思っています。
  61. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、大橋参考人、お願いいたします。
  62. 大橋勇雄

    参考人大橋勇雄君) ボランティアというのは、社会的な貢献というのもありますけれども、もうからないとボランティアと言う人もいるんですね、余りもうからないと。だから、こういう人たちは恐らく景気が良くなるとちゃんとした雇用者になられる可能性があります。  それからもう一つは、年金の支給開始年齢がかなりずれ込んでいきますと、やはりボランティアなんという格好いいことをやっておられないというのが、だからそういう点では、ここのところ行政の支援を、まず、そういった人たちが結構減ってくるんじゃないかということと、それから行政の支援といっても、これボランティアといっても随分いろいろありますから、だから、そこからサービスを、行政が必要なサービスを買うとか、あるいはそういった活動に支援するというのは十分あり得ると思うんですけれども、その辺の判断、非常に難しいなという、余りにもいろいろ多様にやり過ぎて、しかも何となく三、四人でやっている場合もありますから。これ、ちょっと、何とも言えないところで済みません。
  63. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、島賀参考人お願いいたします。
  64. 島賀哲夫

    参考人島賀哲夫君) まず、社内の研修制度のことでございますが、全然ないわけではございませんで、OJTをベースに先輩と一緒に現場、現物、現実主義という社内用語もありまして、現場に先輩と一緒に入ると、そういうことによって仕事を覚えていこうというのを原理原則にしておるものですから。ただ、おととい、まあ五十名弱の新入社員を入社式で迎えて、これもやはり一か月の研修は工場の方でやっておりますから、全然研修制度がないということではございません。また、全国に散っていますから、時々会社の方針というものを徹底させなきゃいけないとか、あるいは企業化計画といって、A4一枚に各独立法人が年頭に発表する企業化計画がありまして、それを進行状態を途中で発表する場なんかも、研修とは言いませんけど、最小限、まあ朝から晩まで会議ばっかり多いと大体ろくな会社がございませんので、なるべく少なくはしておりますけど、最小限そういった研修制度もございます。  それから、ハローワークを中心にした職業訓練、これを更に充実させるということは大変結構なことだと私は思います。  先ほど来申し上げているように、社内で私たちは六十歳の定年制が事実上ないんだというお話を。これは今までやってきた仕事の延長線ですし、周りも分かりますからいいんですけど、全然違う業種から入った方が戸惑わないためにも、最小限の職業訓練を経て現場の仕事に定職するということは必要だろうと思いますので、法的な整備を更に続けていただけるのは大変有り難いことだと思います。
  65. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 ありがとうございます。
  66. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  予定の時間が参りましたので、本日の参考人に対する質疑はこの程度でとどめます。  大久保参考人大橋参考人及び島賀参考人におかれましては、御多用の中、本調査会に御出席をいただき、誠にありがとうございました。  本日お述べいただきました貴重な御意見は今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。  本当にありがとうございました。(拍手)  次回は来る十九日午後一時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四分散会