運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2006-02-15 第164回国会 参議院 経済・産業・雇用に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年二月十五日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         広中和歌子君     理 事                 北岡 秀二君                 南野知惠子君                 松村 祥史君                 谷  博之君                 和田ひろ子君                 浜田 昌良君     委 員                 岩井 國臣君                 大野つや子君                 小池 正勝君                 小泉 昭男君                 佐藤 昭郎君                 西島 英利君                 野村 哲郎君                 松山 政司君                 吉村剛太郎君                 伊藤 基隆君                 池口 修次君                 大久保 勉君                 津田弥太郎君                 峰崎 直樹君                 松 あきら君                 井上 哲士君                 渕上 貞雄君    事務局側        第二特別調査室        長        富山 哲雄君    参考人        三菱UFJ証券        株式会社チーフ        エコノミスト   水野 和夫君        東京学芸大学教        育学部教授    山田 昌弘君        独立行政法人労        働政策研究・研        修機構労働経済        分析研究部門研        究員       勇上 和史君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○経済産業雇用に関する調査  (「成熟社会における経済活性化と多様化する  雇用への対応」のうち、経済及び所得格差問題  について)     ─────────────
  2. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ただいまから経済産業雇用に関する調査会を開会いたします。  経済産業雇用に関する調査を議題とし、「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、経済及び所得格差問題について参考人から意見聴取を行います。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、三菱UFJ証券株式会社チーフエコノミスト水野和夫さん、東京学芸大学教育学部教授山田昌弘さん及び独立行政法人労働政策研究研修機構労働経済分析研究部門研究員勇上和史さんに御出席いただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  御多用のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本日は、本調査会が現在調査を進めております「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、経済及び所得格差問題について忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にさせていただきたく存じますので、よろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず水野参考人山田参考人、勇上参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、午後四時ごろまで各委員からの質疑にお答えいただきたく存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず水野参考人からお願いいたします。
  3. 水野和夫

    参考人水野和夫君) 水野です。どうぞよろしくお願いいたします。(資料映写)  それでは、お手元資料に基づきまして、最初に私から経済及び所得格差問題というテーマについて御報告させていただきたいと思います。  本日申し上げたいことは、お手元資料の表紙の、一番、二番、三番と示してありますが、主に二番のグローバル化格差拡大、このところを中心に御紹介申し上げたいと思います。二番のところに四つほど、四行ほど示してありますが、こういった格差が今生じているんじゃないかなと思いますので、それを具体的に御報告申し上げたいと思います。  それでは、最初に一ページ目をごらんいただきたいと思いますが、今起きております問題というのはおよそ九〇年代半ばから少しずつ、格差もそうだと思いますし、それからその他のいろんな経済構造変化というのは九五年前後から、今までと大きく違って表面化してきているだろうと思います。特にこの一ページ目の三つ①番②番③番と示してありますが、これはイギリスのスーザン・ストレンジという国際政治学者の方が、九六年の段階で既に二十一世紀の、二十一世紀というのはこういう三つの問題が起きるだろうというふうにおっしゃっていました。その後ちょうど十年たって振り返ってみますと、正にこの三つの問題で、特に②番のところに示してありますが、雇用あるいは所得、そういった問題が非常に顕在化してきているということだと思います。この問題は、したがいまして、二〇〇〇年とかから急に生じたわけではなくて、九五年からの問題だというふうに考えております。  で、その九五年というのは何があったかといいますと、グローバル化が進展し、そして同時にIT革命が起きたということだと思いますので、かなり構造的な変化によって格差問題が表面化しているというふうに考えています。  二ページ目になりますけれども、それでは具体的な変化というのはどういうことかということですが、IT革命グローバル化というのが九〇年代半ばから非常に強まってきたと思います。その結果、経済的には、今まで格差というのは先進国途上国の間の格差問題、豊かな先進国と貧しい途上国ということだったと思いますが、経済的な国境がかなり低くなりまして、この右上の二重の四角で囲ってありますような、日本先進国製造業途上国近代化と一緒になって成長するようなメカニズムが生じたと思います。  今の日本製造業というのは、一九六〇年代の高度成長日本高度成長のときとほとんど変わらないような成長率になってきております。高度成長が復活しているセクター日本に存在するということでありますし、一方、中国アメリカの非常に高い成長率に基本的には連動することが難しい非製造業というのは、九〇年からもう既に十五年たってほとんどゼロ成長が続いております。これだけ長期にわたってゼロ成長が続いたというのは、ほとんど例を見ないという現象であります。日本だけではなくて、諸外国におきましても、十年以上にわたって低迷するというのは非常にまれな、一世紀に一回起きるかどうかというような非常に珍しい現象であります。  九五年以降の特徴がこの下半分のところに示してありますが、グローバル化IT革命の背後にある問題だと思いますが、先進国投資に対するリターンが非常に低くなってきたというのが九五年以降から見られるようになりました。したがいまして、投資機会を極力途上国に求めるという動きが先進国で起きたと思います。いわゆる海外生産比率を上げたり、海外での直接投資を行うということだと思います。  そうなりますと、②番のところに書いてありますように、今までは、いろんな指標がいったん上がれば、再び一つ景気循環、おおむね四年のサイクルの間にはまた元に戻るという現象が起きていたんですが、最近、九五年以降、いろんな指標がずっと上がり続けるという現象が起きるようになりました。  例えば、その具体的な例がここに示してありますが、アメリカ個人消費の対GDP比率上昇基調、もう十年近く上昇し続けております。中国設備投資も、これもまた十年近く上昇し続けております。これはGDP内訳項目ですから、普通は一つ景気循環の中で上がったり下がったりしてまた元の水準に戻るという傾向があるんですけれども、全くそういう傾向が見られなくなりました。日本の輸出もほとんど同じであります。  さらに、今の景気回復というのは、企業収益、あんまり雇用者所得が増えませんので、景気がいいか悪いかは企業収益に表れるようになりました。その企業収益も、すべての企業収益で好調であるわけではありません。とりわけ大企業製造業利益がシェアをどんどん高めている、そういう現象があります。  それから、原油価格も同じでありまして、今までは、期近物の値段が五十ドル、六十ドル、あるいは二十ドルから四十ドルへ上がっていくというときも、七年先物値段は常に二十ドルで安定していましたが、二〇〇〇年以降、七年物、七年先の原油先物価格が、七十ドルと書いてありますが、済みません、これ今六十四ドルでありますけれども、非常に高い水準で、全く元の二十ドルの水準に戻らない、そういうような現象が起きております。  そう考えますと、今の格差拡大という問題も、なかなか自然に元に戻る力というのは備わっていないんじゃないかなというふうに思います。何らかの政策的な手段をしませんと、ますます広がっていくだろうというふうに言えると思います。  三ページ目は、今の製造業現状と非製造業現状を示したものであります。  二つの折れ線が示してありますが、こちらの青い線の方ですね、青い線はおおむね製造業、これはIT産業自動車産業鉄鋼産業、主に中国近代化アメリカ消費ブーム連動性が高いところの産業を抜き出しました。もう九五年から十年間にわたって年率八%を超える高度成長です。この右側グラフを見ていただきますと、一九五六年から七三年の日本の九%の成長率ともうほとんど現在でも変わらないという、非常に調子がいいという状況になっております。  一方、こちらのほとんど水平状況、一人当たりGDPが水平になっている、これが非製造業でありまして、これが十五年間にわたって長期低迷という状況になっております。  次に、このグローバル化によって格差がどのような形で生じているかということでありますが、最初に、企業利益雇用者所得がかなり明暗を分けるようになってきました。通常景気回復といえば、雇用企業利益両方が増えるということが景気回復意味だったと思いますが、最近の、二〇〇二年からのこの四年間、もうすぐイザナギ景気を超えるであろうと言われる景気回復におきまして、雇用者報酬マイナスであります。実質GDPは二・三%成長。特に九〇年代以降、そんなにGDP成長率が悪いわけではありません。  雇用者所得マイナスでありますけれども、景気が回復してもマイナスでありますが、すべてのセクター企業セクター雇用者所得マイナスであるわけではありません。プラスになっているのがこの右下テーブルの大企業製造業であります。右側二つ数字を見ていただきますと、上から二番目ですが、二〇〇二年以降、現在の四年間経過した景気回復におきまして、年率プラス〇・九%。あとずっと下見ていただきますと、全部マイナスであります。それからもう一つ前の景気二つ景気循環、八年間で計算しますと、大企業製造業プラス一%。やはりそれ以外のセクターでは全部マイナスです。  法人企業統計雇用者というのは四千五百万人対象にしておりますが、大企業製造業に従事する人々は六・七%でありますから、六・七%の人たち所得が、一人当たり所得が増えて、それ以外の約九三%のところでは八年間にわたって所得が減少しているという傾向が続いております。  次に、大企業と、それから中小企業雇用者所得が増えてないというふうに御紹介しましたが、これは利益が増えておりません。特に一番右側テーブル個人企業ですね、混合所得と書いてありますところを見ますと、九九年から現在、二〇〇四年にかけまして三〇%も減少しております。そうしますと、こういった個人企業のところでは利益が三割も減少しているわけでありますから、なかなかそこで働く従業員の方に所得を上げるということは難しいということが起きているんだろうと思います。  で、大企業製造業への利益集中度合いを示したものがこのグラフであります。ピンクの太い線、赤い線が、やはり九八年からトレンドが変わりました。全企業部門の中に占める大企業製造業のウエートがずっと上昇しております。今までは上がれば下がるという一つ景気循環の中で一定平均値を維持してたんですが、二回の景気循環を経ましてもずっと上がり続けているという状況になっております。いかに今回の景気回復海外との連動性が高いかということを示していると思います。  次に、もう一つ格差でありますが、都会と地方でありますが、これの今一番好調なのは東海地区であります。東海地区工業生産上昇率が一番高いです。そこで、全国平均鉱工業生産東海地区鉱工業生産比率分子分母に取って計算しましたのがこの赤い、ピンクのラインであります。やはり二〇〇〇年からずっとこの比率上昇しています。全国平均を上回って東海地区生産が増えます。反対側北海道はずっと減少です。今までは一定の範囲で上がったり下がったりするといういわゆる回帰性がありましたけれども、二〇〇〇年以降からそれがなくなってしまいました。  ある地域が好調だとそれが日本全体に波及するかどうかを見たものが右側グラフでありますが、〇四年の夏以降、これは踊り場になって、去年の、〇五年の六月から踊り場脱却して景気が回復しているというサイクルで取ってみますと、鉱工業生産全体で一%増えましても、ある地域マイナス〇・一%になる可能性が出てきました。この上限と下限がどんどん広がってきているということは、全国鉱工業生産指数はこの青い棒グラフで、ほとんど九〇年代、どの景気回復期におきましても四%から六%ぐらい生産は回復するんですけれども、非常に散らばりが大きくなってきている。で、マイナスになりましたから、ある地域が好調だとそれが全体に波及するという可能性がなくなりつつあるということだと思います。  どういう地域にそういう特徴が現れているかということですが、この七ページ目のグラフを見ていただきますと、東海地区との連動性が高いところは上から四つです。中国地方近畿地方関東地方、北陸であります。もうこの東海地区生産プラスになってもほとんどプラスになるかどうか分からないという、そういう地域が東北、四国、九州。北海道は今逆の相関になっております。東海地区プラスになると北海道地区マイナスになってしまう。まあ別にそれは因果関係があるわけではないと思いますが、東海地区に連動していないということになります。上四つ地域はほとんど日本列島の真ん中ということになりまして、今、日本列島がちょうど三つに分かれてしまうような、そういう状況になっているんだろうと思います。  次に、企業間の格差グローバル化で非常に広がってきました。そこで、製造業の大企業と非製造業のこれは中小企業の一人当たり人件費分子分母に取って一九六〇年から比較したものが青い線です。一人当たり人件費の差というのは今二・三倍まで拡大しました。この比率が急速に上がってきたのがやはり九四年の半ばからです。九四年から二〇〇〇年にかけて非常にこの傾きが急になりました。七一年からも緩やかに所得格差というのは広がっていたんですけれども、七一年から九〇年にかけてのスピードの今は三倍です。三倍の速さで所得格差が広がっております。  で、分母の非製造業中小企業の一人当たり人件費は幾らかと計算しますと、三百七十七万円です。働く人が受け取る収入はこの三百七十七万円よりちょっと低いということになると思います。福利厚生費等がこの三百七十七万の中に入っております。九四年からは四百三十三万円でありましたから、もう既に六十万円近く減っています。で、所得が減っていきますと貯蓄を取り崩さざるを得ないという状況が生じてくると思います。それが今、この貯蓄保有世帯上昇のテンポとほとんど同じような軌跡を描いております。今の傾向が続く、何らかの対策がないということになりますと、恐らくあと五年後の二〇一〇年には、今二・三倍だった所得格差が二・八倍まで広がって、そのときには恐らく貯蓄保有世帯は三三から三八%ぐらい、三世帯に一人ぐらいに広がってしまう可能性が高くなってきているという状況だと思います。ちょうど二〇〇〇年、九五年から所得格差が広がりましたが、さらにこの後ろの三年間、二〇〇三年から二〇〇五年にかけては更に格差の広がりのスピードが強まっています。今一番強いという状況になっております。  ちょうどその辺りから、よく新聞等で報道されております、児童生徒就学援助率が、平成十三年と十六年では、より就学援助率が高い地域ほどより高くなっているという傾向が見られるようになりました。それが就学援助率とそれぞれ、これは数学と書いてありますが、これは小学生ですから算数ということになって、申し訳ありませんが、算数平均点と、これは代表的に算数だけ挙げたんですけれども、ほかの国語や理科、社会でやっても同じであります。中学生でも同じ傾向が出ております。そうしますと、機会均等のところも少し今、日本では危うくなってきている。御両親の年収の多い、低いというのはお子さんの努力の結果ではないということだと思いますので、機会均等のところが少し崩れ掛けているということだと思います。  そうなりますと、それは日本経済にとってどういう影響かということを、最後にこの十ページ目で御紹介を申し上げたいと思います。  日本は少子化で人口が減り始めました。そうしますと、今、インフレ率をどうするかという議論も経済財政諮問会議等で議論されていると思いますが、実質経済成長率も高めていく必要があると思います。人口が増えないときに実質経済成長率を高めていくには、全要素生産性、いわゆる技術進歩に頼らざるを得ない。で、技術進歩は何で決まるかといいますと、教育で決まる面が多いということでありますから、そうしますと、少子高齢化でまずその潜在成長率を決める人口が増えない。あと残るは資本投入量技術進歩でありますけれども、今のままですと、技術進歩のところもどうも中長期的に伸びにくくなってきているということでありますので、あと残るは資本を投入しなきゃいけないということになりますが、その資本はお隣の中国で過大とも思えるぐらい資本を投入しておりますから、非常にやはり資本を投入して成長率を上げるというのは日本はなかなか選択肢は取れないと思いますので、そうしますとやはり教育のところの水準をもう一度引き上げていくということが必要じゃないかなと考えております。  以上で私からまず御報告、終了したいと思います。
  4. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、山田参考人、お願いいたします。
  5. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) 東京学芸大学山田昌弘でございます。お呼びいただきまして、どうもありがとうございます。  私は家族社会学かつ感情社会学というのをやっておりまして、本来なら経済財政雇用ということに関しては直接専門ではないのですが、家族生活というものから見て経済というものがどう見えているのか、特に若者がどう見ているのかという点、さらに感情社会、まあ社会心理学と昔は言ってたんですけれども、私、今人々感情意識というものがどういうふうになっているのかということについて主に御報告したいと思います。さらに、逆に、経済学専門家ではありませんので、逆に社会学から見た場合に今の社会経済的にどう見えているのか、どう変化しているのかというのを、逆に私、大胆に言える立場にあると思いますので、その点についても述べさせていただきたいと思います。  最近、格差に対する関心が非常に高まってきたということがあります。さらに、ジニ係数等で見ればそれほど広がっていないというようなデータも出てきます。逆に言えば、社会学者としての関心としては、統計数字でそれほど広がっていないのに、これだけ人々格差意識や将来に対する不安ということに関して強く、将来に対して強く不安を持つのは何かということに関して、私なりの解釈を示していきたいと思っております。  済みません、研究所の方に比べて大学はローテクで、そういう意味での格差がありますので、紙資料でやらさせていただきます。大学というのは経済改革、そういうところから取り残されているところですので、こういう格差も付いてしまうという一つの見本、まあ私以外の先生はやっていらっしゃる方もいますけれども、やらさせていただきたいと思います。  まず、格差に対する私の考え方を述べさせていただきますと、格差自体は良いものでも悪いものでもない。なければやる気がなくなるし、開き過ぎれば絶望を増すし、格差がない社会という、経済格差という意味格差がない社会は存在しないわけです。問題は、人の格差に対する感じ方の問題なわけです。つまり、統計数字を見せられても、人は別に統計数字を見て、広がってないじゃないかと言われて、じゃ安心するというわけではないわけです。つまり、今の経済状況がどういう形で人々感情影響し、特に私が分析している若者感情影響し、さらにそれが集計されて社会的活力、秩序というものにつながっていくか、私はその点について御報告、御意見、陳述したいと思っております。  そして、水野参考人も言われたように、私もいろんなデータを見てみますと、九〇年代後半が転換点だと思っております。水野さん、ポスト近代という形で述べましたが、私はロバート・ライシュの言葉を使って、オールドエコノミーからニューエコノミーへの転換点がどうも一九九〇年代後半に来て、その影響人々生活社会意識に現れ始めたのが九八年、七、八年ごろからだと考えております。逆に言えば、戦後から一九九五年ぐらいまでは、非常に戦後安定した社会だと評価しております。  つまり、そのときに、ある時点経済格差があってもいつかは同じ水準に達するという希望を持てる、こういう状況であれば、たとえ格差があったとしても人々希望を持って生活できるわけです。今はテレビがない、隣はテレビがあるというようなものに格差を感じたとしても、来年になってボーナスが出ればテレビは買えるねというふうに考えれば、つまり成長の中で同じ水準に達するという期待が持てれば、格差があったとして、その時点格差があったとしても時間によって格差が解消されるというふうに思えることができたわけです。  そして、九五年ぐらいまでは生活というのはローリスク選択肢というものがあり、さらに中流化ということで皆、みんなが同じような生活を目指しました。そして、後で述べますが、だれでも努力すれば、つまり、すごいことをしなくてもだれでもこつこつ努力すれば中流生活で報われるということが可能だった社会であるわけです。そして、制度というものはその生活の向上と安定を前提に組み立てられていたわけです。  しかし、一九九五年ぐらいから起こっていることは何か。今起こっている格差というものは、単に量的な格差ではなくて、私は質的な問題だと評価しています。つまり、通常努力では乗り越えられないような格差が出てきて、それは、一つ生活社会生活の低成長化とか不安定化に伴って生じている意識だと思っています。そして、これは別に日本だけの問題ではなくて、一九九〇年代以降、先進諸国は同様の問題に直面しているわけです。  では、具体的にどういう不安かというと、将来不安が伴う格差拡大が起こっているわけです。つまり、それは将来中流生活から転落してしまうという不安、つまり、何かリスクがあったら立ち直ることができずに、今維持している人並みの中流生活というものができなくなってしまうのではないかという不安が広がっているということが大きいところです。そして、さらに、実際にそういうリスクが降り掛かってきて中流生活から現実に転落してしまう層というのが増え始めたのも実際に一九九〇年代後半でありまして、いわゆる普通に生活をしてても何かが起こると自分の生活も転落してしまうんだというような意識が広がれば、それは将来に対する悲観論となる、まあ悲観論というか不安となって現れてくるわけです。  特に、私の調査等によりますと、若者の親が不安を感じているわけです。つまり、親自身はオールドエコノミーの中で生きて、時間的に生きてきましたので、五十代、六十代の親はそれほど不安はなくても、自分の子供がフリーターやニートになってしまうんではないか。まあ、私はパラサイトシングルの提唱者ですので、同居してなかなか結婚しないんではないか、そしてそのまま自分と同じような生活が送れないんではないかというような不安というものが今広がってきているわけです。  下に図表として、東京と青森で調査して、青森と東京の数字は多少違って、それは後で参考人関連資料の方に別に載せてありますが、将来日本社会経済的にどうなるかと二十五から三十四歳までの若者調査をすると、今以上に豊かになると答えたのはわずか四%しかいなかった。六四・五%、三人に二人は余り豊かでなくなってると回答していますし、自分はどうなるかというと、多少は良くなるというのは増えるんですけれども、やはり五人に二人は今より豊かでなくなっていると回答しているわけです。  さらに、親の不安として、中年親同居未婚者、三十五歳を中年と言うとしかられるかもしれませんが、やはり九〇年代後半から三十五から四十四までで親と同居して結婚していない人、もちろんこれがすべて不安定だというわけではありませんが、特に男性の中では不安定雇用なために親と同居して結婚していないという層が相当含まれているわけです。もう二〇〇四年の時点で三十五から四十四までで親と同居している未婚者の数はもう二百万人近くに達しております。  つまり、そこが希望格差というところが出てきたゆえんだと思っております。つまり、希望格差というのは、努力が報われると思う人と努力が報われないと思う人が出てきたということで、才能がある人は自分の努力が報われると思って希望を持てるわけですけれども、余り恵まれない人は、努力しても報われる見込みが薄いと思った人は何かしらの夢を見る、そして、何度努力しても駄目だった人は絶望感に襲われる。そして、これは、まあそうですね、欧米でも同傾向でありまして、あるイギリスのロントリー財団のデータを見ますと、八一年には軽度の、ノンクリニカル・デプレッションですから、軽度のうつの人が八一年から九六年まで倍になっているというデータもあります。  そして、希望格差の関係について次に述べさせていただきます。  つまり、社会の活力とか秩序の安定というのは、その社会に住んでいるすべての人々希望を持って生活できるかどうかに懸かっております。すべての人が努力、つまり仕事をするとかルールを守るとか勉強するとか子育てするとか話をするとか、日常生活で行っている努力というものが何らかの形で報われる、それは周りの人々、もちろん神でもいいですし、宗教を信じている方は神が見ていてくれるでもいいですし、周りの社会が認めてくれる、国、職場の仲間、いろんな人々がいると思いますけれども、周りの人々が肯定的評価を受けるかどうかに懸かっているわけです。  前近代社会というものは、宗教とかコミュニティーが希望を保証していました。つまり、経済格差は存在するし、それは固定化されているし、生存を脅かす貧困も前近代社会は存在していたわけです。しかし、宗教というものが信じられていれば、今やっている努力は神様が見ていてくれて、来世に報われるという意識を持つことができたわけです。さらに、コミュニティーが、生まれて育って亡くなる、同じコミュニティーが存在していましたから、周りの人々が自分の努力を見ていてくれたわけです。  つまり、貧しい者には希望、さらに重要なことには、お金持ちには節制、節度のある生活社会貢献活動などが行われる基盤になったわけです。多分、アメリカとかヨーロッパには格差日本以上に開いている国もありますけれども、まだ余りそういう問題にならないというのは、まだアメリカには宗教的な基盤、ヨーロッパには階級的な基盤があって、寄附文化なりノブリスオブリージュなりがうまく機能しているというふうに考えています。  これは内閣府の二十一世紀ビジョンのワーキンググループに参加したときもいろいろ議論になったんですけども、アメリカでは家計支出の二・二%が寄附で回っているのに、日本は〇・五%しか回っていないとか、あと、前近代社会には価値の逆転、つまり偉いとされる者、武士とか農民は質素な生活をし、お金をもうける人は身分的に下位に置かれるとか、貧しい人ほど、まあ聖職者、質素に暮らす貧しい人ほど尊敬されるというような文化が存在していたから格差が容認されていたという面があるわけです。  しかし、近代社会になりますと、現世での経済的報いというものが社会希望の原動力になったわけです。そして、日本では高度成長期から一九九〇年ごろはほとんどの人が希望を持てる社会であったと考えることができます。つまり、平凡な能力の人でも一定努力をすれば将来豊かな生活が築けるという期待が持てたわけです。そして、私はそれを努力保証社会と名付けたわけですが、勉強して学校を出れば良い職に就ける、男性でまじめに仕事をこつこつしさえすれば終身雇用、年功序列で収入が上がる。男は仕事、女は家事で努力すれば持ち家、家電、子供の学歴が付く。つまり、賃金格差生活水準に、到達点に差があったかもしれないけれども、質的には同じように努力が報われると思えたので、質的には一緒と思えたんだと思います。  そして、一九九八年から社会不安定化が始まっていきます。あっ、これは済みません。次ページと書きましたが、表が別に印刷されましたので表の方を、図表の方をごらんください。つまり、私は自殺者数が平成十年に突如増えたことに興味を、興味っていいますか、関心を持ちまして、いろんな統計を調べてみたわけですが、やはり九〇年代後半にいろいろなところで数字が悪化しています。ホームレスの人数、自己破産、生活保護数、さらにその次のページをごらんいただくと児童虐待数、少年凶悪犯の再増加、不登校数。  さらに、子供の学習時間が低下し、そして全く勉強しない小中学生が増えている。これは、まあ多くの教育学者が言うところによると、やっぱり九六、七年ごろからの傾向でございます。そして、教育学者等、前回耳塚先生等も発言していらっしゃったと思いますが、つまり、九五年以前は学力の低い子も学力の高い子も同じように勉強していた。しかし、九八年以降は学力の高い子はますます勉強するんだけれども、学力の低い子はあきらめて勉強しなくなってくる。つまり、学力が低下が起きたんではなくて、学力の二極化が起きて平均した学力の低下が起きた。つまり、逆に言えば九五年ぐらいまでは学力が低い子であっても、一生懸命勉強すれば会社に入って終身雇用、年功序列でいい生活ができるという希望を持てたんだけれども、どうも九八年ごろからそういう学力の高低によって希望の持ち方というものが格差が出てきたと考えざるを得ない状況が生まれてきたわけです。  では、それが何が原因かというふうに言いますと、ここは私は経済学者でないので逆に大胆にしゃべれるところだと思っております。これは、バブル後の不況が原因ではないというのは、九一年から九六年にかけてはこういう意味社会生活上のことはほとんど安定、逆に一番安定していた社会だったわけです。そしてかつ、日本の政策失敗ではないというのは、あらゆる先進国で九〇年代に若者を中心とした不安定化、そして希望の喪失ということが議論されてきたわけです。  それはやはりニューエコノミーが九〇年後半に日本に上陸した。つまり、IT化、グローバル化、サービス産業化、知識産業化、文化産業化というのが一気に上陸して、もちろんプラスの側面としては我々の生活をますます便利かつ快適にするという側面が出た反面、職業を不安定化させて生活の将来見通しが立たなくなり、希望を失う人が増えたというふうに私は考えております。  それは元々、これはまあロバート・ライシュの説をほぼリバイズしているだけでございますが、つまり、オールドエコノミーというのは、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで仕事に習熟するということが可能だけれども、商品やシステムのコピーが容易なニューエコノミーの下では、商品生産において生産性の高い人と低い人の格差が拡大していったと。そして、その影響若者がもう真っ先に受けたのだと思っております。  図表の最後から二番目はフリーター数の増大に関するものでして、さらに、図表の四の上半分が雇用者所得のジニ係数の推移を表していますが、特に男性を見ていただくと、昔は、若いころは格差がなくて、年を取るに従って格差が付いていくというような状況になっていたんですが、九七年から二〇〇二年のところに断絶がありまして、もう二十代前半、二十代後半から早く格差が付いてしまう。つまり、四十代、五十代の格差は余り上がらなかったけれども、若者の間での雇用所得格差というものがここ十年ぐらいの間に付いてきたというのが明白な図だと思っております。  そして、それが、もう時間がありませんので、あとは短く要約させていただきますと、まあそういう状況にあって、能力がある者は希望を持って社会に入って、若くしても収入が高くなるというふうに希望を持てるけれども、能力がそこそこな者という者は、努力が保証されるということが失ったがために自分の人生をギャンブル化してしまう。つまり、ニューエコノミーから脱落してしまって、夢を見ながらフリーターをやっている人が増える結果になっているというふうに私は分析しております。  済みません、多少時間を超過しまして、どうも申し訳ございませんでした。あと残りの部分は質問のときに答えさせていただきたいと思います。
  6. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、次に勇上参考人、お願いいたします。
  7. 勇上和史

    参考人(勇上和史君) 労働政策研究・研修機構の勇上と申します。本日は、このような機会にお招きいただきまして、どうもありがとうございます。  私は、労働経済学という分野を専攻しておりまして、本日の経済及び所得格差問題ということに関しましては、特にその所得格差の数値の水準とその見方につきまして最初に御説明申し上げます。それから、所得格差の大きな構成要素として言われております賃金につきましても、その文脈から賃金格差一つの動きにつきまして後ほど御説明申し上げたいと思います。  基本的には、お手元にお配りいたしましたパワーポイントのレジュメで御説明申し上げます。(資料映写)  まず、私の報告ですけれども、一番最初に、所得格差が今注目されている、その一番注目されている数値について最初に見ていきたいと思っております。  レジュメで言いますと三ページの、最近二十年間の課税前の所得格差というところ、図一というところをごらんいただきたいと思います。  図一を見ますと、これはよく使われますけれども、所得格差の、格差の程度を示す指標といたしまして、ジニ係数という数値を使います。これは、ゼロから一の間取りまして、数値が高いほど格差が大きいというふうに理解するわけですが、代表的な所得統計を四つから格差水準を見ていきますと、一番まあ目立っておりますのが図一の緑の所得再分配調査による所得です。これを見ていきますと、一九八〇年の〇・三四九という水準から、一番最新年であります二〇〇一年の〇・四九八という水準まで、特に〇・四九八という数値は非常に高いということで、非常に注目されております。  それから、その他の数字ですけれども、青いグラフというのは、同じように、全世帯の間でどれぐらいの所得格差があるかというものを見たものです。それから、赤いグラフと四角い黒い点のグラフは、二人以上の世帯でどれぐらいの格差があるのかというのを見たものです。  当然ながら、全世帯格差というのは非常に数値が大きくて、二人以上だけに限っていきますと少し均質化されるということで数値が小さくなっておるわけですが、すべての指標を、調査によるデータの動きを見ましても、やはり八〇年代の後半、バブルのころですが、八〇年代の後半と九〇年代の後半に非常に数値の上昇というのが見られると。特に注目されております、その所得再分配調査というのがマスコミでも特に注目されておりますが、この数字を見ますと、直近の〇・四七二という九八年の数値から〇一年まで、非常に急激なカーブを描いて拡大しているように見えるということがまずございます。  この数値に関して非常にいろんな議論が起きたわけですけれども、ところが、五ページ目、レジュメの五ページ目に、やはりその数値の見方について私の方からひとつ、注意点といいますか、を申し上げたいと思います。  まず、所得の定義が違うということがよく言われます。所得再分配調査と、先ほど非常に数値が高い、格差水準が高い調査データがありましたが、この数値は、高齢者について特にそうなんですが、例えば企業から退職する人については退職金を含むと。ほかの調査では退職金というのは計上されません。ですから、リストラなどが進んで希望退職あるいは早期退職が進みますと、その人が一時的な所得が物すごく多くなるという傾向があります。  それから、所得再分配調査の当初所得というのは社会保険の給付を含まないと。ですから、企業を引退しますと、年金をもらっている人が当然増えてくる、そういった人口が増えてくるわけですが、そういう人たち所得がこの定義によりますとゼロ円になってしまうと、極端に言いますとですね。ですから、高齢化が進んで企業から退職する人が増えますと、一時的に非常に退職金を取って、もらって大きな所得を得た人と、その一年後にはゼロ円になってしまうというような人たちが増えるというふうな見え方をしてしまいます。ですから、所得の定義が違いますよということをまず強く注意点としてあるんですが。  それからもう二つ、これはもう皆様、先生方もう十分に御承知のことかと思いますけれども、この所得格差指標が拡大していることについては、やはり二つの点を考慮して本当に格差が拡大しているのかどうかというのをチェックした方がよいという注意点がやはり挙げられております。  一番最初の、二つのうちの一つ目ですが、レジュメの五ページの真ん中辺りに文章が書いております。まず、人口の高齢化の影響が非常にあると。これは、厚生労働省の方でもあるいは内閣府の方でも最近こういった説明を多くなされていると思いますが、改めて私の方から申し上げますと、同じ年齢の中での格差というのは、若い人から年を取った人の中をそれぞれ見ていきますと、年齢が上がるほど所得格差というのは拡大すると。それは先ほどの山田先生の御報告にもありましたが、今でも若い人の格差の方が年をいった人の中での格差よりも小さいと。そうしますと、格差が大きなグループというのが人口の高齢化で増えていきますと、全体の格差というのも拡大しているように見えるというのがまず一番目です。  それからもう一つですが、核家族化が進んでおりますし、若者については単身世帯が増加しております。そうしますと、一人当たり所得が低いような世帯というのが、やはり世帯が小さくなっていくと増えてくると。  ですから、そうした人口の高齢化、我が国は非常に高齢化のスピードが速いと言われておりますが、そういった高齢化と、それから各家族単位が小さくなってくると、世帯構成の人数が少なくなってくるといったことが、二つをやはりチェックしてから格差の動向というのを見ないといけないだろうというふうに思われます。  その後のお話は、では、この二つをチェックした後に、格差は拡大しているのかいないのかということがやはり最も問われるだろうというふうに思っております。  そのお話を申し上げますけれども、私は、ここでは真の格差というふうに記しております。二つ、最近、データを、元々のデータを駆使しないとなかなかこういった計算ができないんですが、二つの推計があります。  まず、全世帯の動向については厚生労働省が、先ほど使いました調査所得データを使いまして、二つ時点格差を比較するには、やはり世帯の年齢が変わってしまうこと、それから世帯の構成が変わってしまうということは取り除いた上で計算した方がいいということでやっております。  この結果を見ますと、一九九五年と九八年の比較では、見た目上は七%拡大しているように見えるけれども、世帯の年齢構成、それから世帯の構成、単身世帯の数とかですね、そういった構成を調整しますと、同一にしますと、七%から三・二%へと減ってしまうと。それから、九八年から二〇〇一についてはもう少し細かく調整をしておりますので更にその効果が大きく出ておりまして、前の年と、前回の調査と同じ年齢構成、世帯構成であるとするならば格差は〇・六%の上昇にとどまるということで、こういったことが最近資料として出されているわけですが、しかしながら、〇・六という数字を大きいと見るか小さいと見るかはありますが、拡大しているということは言えるかと思います。  それから、二人以上の世帯に関しては大阪大学の大竹文雄教授が研究なされております。少し、時間がございませんので結果だけ申し上げますけれども、レジュメの七ページにそうした結果を載せております。やはり同じように、年齢別に見た方がいいと。高齢者のウエートが、比重が増してくると見せ掛けの格差の問題がありますので、年齢別にどの年齢で格差が拡大しているのか見た方がいいと。さらに、一人当たりに近いような、世帯の人数で割ってあげた所得を見てあげた方がよいと。そうすれば二つ影響というのはなくなるだろうということをやっております。  結果ですが、九四年までの結果では、このコントロール、制御をしますと、ほぼ縮小若しくは横ばいであったと。ところが、九四年から一九九九年にかけては、大竹教授の結果によりますと、二十歳から三十歳の辺りの年齢の一人当たりに近いような所得が拡大しているということが分かっております。最新の全国消費実態調査をやっております総務省の結果でも、これに近いような二十代の格差というのが出ております。  ですから、各論としては、やはり拡大している層があるというのが私の報告の一点目の結論でございます。  その各論として拡大しているところは何かということがレジュメの十ページの図四というところに記しております。先ほど、若い層で所得格差が拡大していると申し上げましたけれども、これはやはりこの図の四についても言えるということを示しております。グラフがカラーでないので恐縮なんですが、やはり大竹先生の結果をここでは引用しておりますが、グラフが右上がりになっているものが一つ、あるいは九〇年代後半に関して二つあるかと思います。一番上がっておるのが二十代の前半、それから最近もう一つ上がっているのが二十代の後半というものです。これは、全世帯の、百人いるとしますと五十番目の人の所得の、つまり真ん中ですから、真ん中のその半分以下しかもらっていない世帯はどれぐらいの割合あるかというのを年齢別に見たものなんです。そうしますと、若い人のところで、全世帯の中央値、真ん中の更に半分以下しかもらっていない人が四割ぐらいいるというような形で、しかもその数値が上がってきて四割ぐらいになっているということを示しております。  私は、こうした若年層に見られる格差拡大の背景としては、非常にオーソドックスな見解かもしれませんが、やはり正社員と非正社員の就業機会、それからその中に見られる賃金格差というのが原因であろうということをこの報告では後半で示させていただいております。  その若い人の就職というのは、やはり入口の問題でかなり左右されていると。レジュメの十一ページ、十二ページというのは、内閣府のデータを引用してきまして、高卒者の進路、大卒者の進路というのを見たものですが、やはり九〇年代後半に高卒についても、進学者が増えたということもありますが、就職率、グラフの青い数字ですが、下がってきていると。大卒についてもやはり九五年ぐらいに、図の六というのを見ていただきますと、青いグラフ数字が九五年にがくんと、就職者比率が六七%、以前は八割だったんですが、六、七割に下がったということで、入口が、正社員に関して、あるいは就職するということに関して、かなり九〇年代の後半、半ば以降に格差が広がっていると。特に、ここで挙げているフリーターというのは就職も進学もしなかった人なんですが、その比率が就職者に対して大体半分、半分弱ですね、ぐらいの比率で上がってきていると。  そうして就業機会が入口でまず違ってきますと、十三ページに、非常に急ぎ足で恐縮なんですが、十三ページに掲げております正社員とパート、ここでは時間が短い労働者という意味でパートを使っておりますが、そうしたその賃金格差影響を完全に反映してしまうだろうと。  例えば、年齢別に男性のものを見たものが十三ページの図の七ですけれども、例えば、十七歳あるいは十八歳、十九歳のところでは、仮にボーナスを含んで時給を換算しましても、正社員一〇〇に対して短時間のパートと言われる人たちは八、九割はもらっていると、時給換算で、年収で。ところが、二十代の前半あるいは二十代の後半というふうに年齢が上がっていきますと、この数字が七〇%になり、六〇%になりということで、当然ながら正社員は勤続の年数に応じて賃金が上がっていくわけですが、パートに関しては賃金が勤続に応じて上がっていくということは非常に弱いと。ですから、二つの差というのはどんどん、企業内で勤続、同じように長期化していっても拡大していってしまうということが現状でございます。女性についても同じようなことが言えます。  私は労働経済学というのを専攻しておりますので、意識については非常に素朴なことしか申し上げられないんですが、最後にレジュメの十五ページで意識について申し上げたいと思います。  やはり、そうした就業機会の格差というのが拡大しておりますと、若者については失業の不安、失業のリスクというのを感じる人というのが増えているということが現れているのではないかというのが十五ページの図の九ですね。男性についても女性につきましても、特に若年者で拡大して、不安意識というのが広がっていると。  それから、仕事の満足度ですけれども、やりたい、やりがいのある仕事に就けるかどうかということですが、十六ページの図の十を見ますと、やはり一九九九年と二〇〇二年の比較で不安意識というのは少し高い、若年層で高まっているだろうということです。こうした格差の、客観的な格差の拡大とそれから主観的な不安意識というのは、やはり若年層に関してはリンクしたものが見られるのではないかというふうに思っております。  私がこの格差の拡大の問題に関して最後に十七ページで申し上げたいのは、やはり就職の機会、新卒一括採用という雇用慣行の中で就職の機会というのが若年層についてはずっと低下傾向にあったと。それが非常に長く続いたわけですから、一方では長期不況ということで言えるかと思うんですが、しかし、景気回復しても、そこで正社員になれなかった層、あるいは選ばなかった層もいるかと思いますが、そうした層がここで訓練を積まなければ、次に景気が良くなっても簡単には正社員に移行したり、あるいは昔の、賃金が上昇するようなカーブのところに乗ってきたりということは非常に難しいと。そうしますと、行く行くは生涯の賃金が全く違ってくる。それから、それが子供の教育投資なり、あるいは結婚するかどうかにも既に影響があるというふうに言われておりますが、そうした構造問題、次の世代の問題も含めて長期的な問題になり得る、つまり構造問題への転化が懸念されるであろうということです。  私は雇用の問題について特にふだん研究しておるものですから、所得格差という非常に大きな問題から最後に提言が非常にミクロな問題に近い提言になってしまいますが、やはり長期不況の影響を受けるというのが若年層に一番行くということは先進国共通して言われております。  そうしますと、やはり多様な入口というのを保障する必要があるだろうと。非正社員化の波というのは非常にトレンドとしては高いですが、じゃ、正社員にならなかった層、なれなかった層については、一方で戦力化していこうという企業の動きはございます。大体三、四割の企業が正社員に登用するという制度を設けておりますし、私が調査した中でも、いい人を、その中から何度も来てもらって、契約社員と言われる人の中で何度も来てもらって正社員を勧めるというふうなことをやっている企業も、メーカーあるいは小売業、あるいは福祉関係ですね、限らず出てきておりますので、そうしたものを推奨する、グッドプラクティス、良い事例を発掘して啓発していくということが必要だろうと。それから、正社員が一方で非常に仕事がきついということがありますから、多様化の話も、正社員という中でいろんな層をつくっていく必要があるんではないかということも述べております。  また、雇用保障が不安定であったり、あるいは能力開発の機会が限られているということがございますので、それは個人にお金を費やして教育開発、訓練するということが難しいことであれば、政策によってそれを訓練、支援していくといったこともやはり非正社員から正社員へ、あるいはスキルアップということに関して政策的にできることがあるのではないかということで考えております。  以上でございます。
  8. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行いますので、質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って着席のまま御発言くださるようお願い申し上げます。  なお、午後四時ごろに質疑を終了する予定になっておりますので、一回当たりの質問時間は三分以内でお願いいたします。また、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう質疑、答弁とも簡潔に行っていただきますよう、皆様方の御協力をお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方の挙手をお願いいたします。  松村祥史さん。
  9. 松村祥史

    ○松村祥史君 三人の先生方、貴重なお時間をいただきまして、貴重な御報告聞かせていただいてありがとうございました。自民党の松村祥史でございます。  格差の広がった背景、また要因、それぞれの観点からお聞かせをいただいたと思っております。その中で、特に若い方々、とりわけ山田先生のお話の中に、若い方々の将来に対する不安であるとか、こういったものは非常に興味がございました。そういう観点から考えたときに、これからその若い方々に対する教育の観点から、この格差を埋めていく現在の教育制度について何か御意見があればお聞かせをいただきたいし、将来的にこういったことも取り組むべきだという具体的なものをお持ちであればお聞かせをいただきたいなと。  それから、水野参考人にこれと別にお伺いしたいんですが、まあ格差と言いますと、光と影であるとか、大企業中小企業、それから人口格差所得格差、多様化していると思いますが、とりわけ企業に関して、大企業、中堅、そして小規模事業者と、こういった観点から見ると、参考資料の中に、混合所得利益は九二年比で四割減というような数字を出さしていただいております。これは、もう実際現場に参りますと肌で感じることでございます。どういった点を、例えば小規模事業政策であるとか中小企業政策であるとか構造改善を含めて、どういった御意見をお持ちか聞かしていただければ大変有り難いと思いますので、よろしくお願いいたします。
  10. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) まず、山田参考人
  11. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) どうもありがとうございます。  若者たちが将来への不安を持っているということなんですが、若者たちを調査していまして、やはり若者たちが一番求めているのは、いわゆる努力を保証をしてくれということなんです。つまり、逆に言えば今までは、九五年ぐらいまでは勉強をして学校を出さえすれば就職先はあったという形で保証をされている、しかし今は学校を出ても、勇上さんの報告にあるように、フリーターになってその努力が無になってくるかもしれない、その不安が非常に強くなっているんだと思います。  そうすると、何か、学校なり、まあ専門学校なり何でもよろしいのですが、これだけのことをやればほぼ確実、もう一〇〇%は無理だとはしても、ほぼ確実にこういう仕事に就けるよといったような保証を付けた学校というものが今後求められてくるというのが第一点です。  あと第二点は、やはり今までの教育の中でキャリア教育、まあ私は別に仕事の訓練をするとかそういうことではなくて、リスク教育というものが必要になってくるのではないかと思っております。つまり、今までの教育というのはとにかく学校を出さえすれば何とかなるという形で、自分のキャリアや将来の職業リスクに対して何も考えなくてもよかったからそういう教育がなされないんだと思うんですけれども、今後は学校教育の過程で、こういうふうな方向に行ったらこういう確率でこういうふうになれるんだとか、そういう形での、自分の能力と見合った形でのカウンセリング機能も含めた個別的なキャリア教育というものが必要になっていると思っております。  以上です。
  12. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、水野参考人、お願いいたします。
  13. 水野和夫

    参考人水野和夫君) 今、先生からの御質問で混合所得ですね。これは個人企業の方の所得と利潤が両方入った概念でありまして、これはもうピーク時の九二年に三十四兆円あった個人企業の方の労働報酬とそれから利潤、両方合わせたものが今二十兆円になっているということでありますから、ここがよく言われる駅前のシャッター通りというのがそのまま数字に私は出ているんじゃないかなと思います。  そうしますと、これは郊外に大手流通業が進出して、そして駅前のところが寂れていくというそういう現象だと思います。そうなりますと、じゃこの流れを止めることができるかということですが、私はどうやったら止められるのかというのは実はよく分かりません。これでまた大手流通業に規制を掛けてというのも、これも日本の大手流通業が世界の流通業と競争条件をまだ十分回復していないと思いますので、そうしますと、じゃ規制を強化すれば町が、駅前商店街が良くなるということでもないと思いますので、そうなりますと、もうこれは地方分権を進めて、そして地域人たちがもう自ら考えるということしか私は最終的にはないんじゃないかなと思いますので、なるべくその地域人たちが自由に活動できるような環境を整えるということぐらいしかないのかなというふうに考えています。
  14. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  では、次、津田弥太郎さん。
  15. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 どうもありがとうございます。民主党の津田弥太郎です。  まず最初に、山田参考人にお伺いをしたいんですが、希望格差という大変刺激的な言葉を使われております。現代の格差の拡大あるいは二極化ということが大変顕著になっている、これは山田参考人は、その格差あるいは二極化については従来から、量的な格差だけではなくて質的な格差が含まれているということを指摘をされておられます。フリーターと正社員の年収格差、まあこれは量的な格差としては年間百五十万円といった金額以上に、そこには質的な格差と、すなわちステータスの格差であるとか将来見通しの不安定などによる心理的格差というものが生じていることを希望格差というふうに私は理解をしているんですが、そのような理解の仕方でいいかどうか。  で、いろんな問題がたくさんあるわけですが、例えば、高収入の夫と高収入の妻が結婚するというケースが増えているわけで、一方で不安定な低収入同士が結婚するということになりますと、先ほどもおっしゃっていましたように世帯としての生活水準格差が更に拡大する。当然この親の格差が子の格差ということにつながって、次世代も同じような形で大きな格差、生まれながらにして格差が拡大をしていくということになるだろうというふうに思うわけであります。  私はこうした格差の拡大というのは行き過ぎているというふうに思えてならないわけでありまして、この格差の連鎖といったものをどこで断ち切るかということが大変不可欠ではないか。行政とか立法という形でこの格差の連鎖を断ち切るということを考えた場合に様々な切り口があるだろうというふうに思うわけですが、最も効果が大きくかつ緊急性があると思われる施策、これを是非、山田参考人のお考えをお聞きしたい。  それから、水野参考人にお伺いしたいんですが、現代の格差、特に若年層の問題出ておるわけでして、フリーターが二百十三万人、ニートが六十四万人を超えていると。今、今国会で政府が職業能力開発促進法の一部改正ということで、何とかそのフリーター、ニートをできるだけ出さないようにしようという取組は今しようとしているわけですけれども、この公的な支援策ですね、フリーター、ニートを出さないための支援策という。そのために公的な支援策というのはどのようなものが考えられるか、御意見をお伺いをしたいと思います。  以上です。
  16. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) お二人から。はい、分かりました。  それではまず、山田参考人
  17. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) 大変難しい課題をいただいて、私も特効薬というものは多分ないというふうに考えている次第ですが、まず第一の質問の方からお答えさしていただきたいと思います。  つまり、昔の格差と今の格差の違いというのは特に若者においての格差だと、まず第一点は若者についての格差だと思っております。つまり、昔は時間とともに徐々に格差が付いていくので、何らかのあきらめというか、まあこんなもんだろうと思っていたというのがあるわけですけれども、今は、若者社会に出た時点で相当の収入格差なり、かつ将来の格差が見えてしまうというような社会になっているので問題が深まっているというふうに思っております。  あと、二番目の家族に関しては、つまり、今までは家族というものが調整機能を果たしていました。つまり、収入の高い夫の妻は専業主婦で、収入がそれほどでもない夫はパートで働くという形で、世帯内で格差調整というのができていたんですけれども、今はその機能が果たせなくなって、専業主婦もいれば高収入共働きもいれば、できちゃった結婚等で低収入のまま結婚してしまった人が出てきているというふうに考えております。  緊急的にできることという、そのどの程度の緊急性というのがちょっと私、つまり政策担当者じゃないので分からないのですが、つまり、どのようなライフコースをたどっても公平になるような様々な社会保障制度を用意していくことによって社会的なリスクというものを低減させる、そして若者の自立能力を付けるということがやはり一番のことだと思います。先ほども松村委員からの質問で教育というのがありましたけれども、つまり、自立してやっていける能力がすべての若者にあるわけではないし、家庭によっての格差が大きいというところがあるならば、そういう能力が持てずに来た若者に対して自立を支援するような施策というものが必要になってくると思います。これは、フリーターの人たちに職業訓練を施して能力が発揮できるような職に就く、つまりフリーター期間やニート期間というのをなるべく短くして、将来は、まあすべてフリーターがなくなるという社会にならないと思いますけれども、なるべく期間を短くするような方策は現実的かつ緊急性のある課題だと思っております。  以上です。
  18. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  次、水野参考人、お願いいたします。
  19. 水野和夫

    参考人水野和夫君) フリーター、ニートの方をなるべく出さないように公的支援はどのようなものが考えられるかという御質問ですけども、私は、以前まではワークシェアリング的なものは余り生産性が上がらなくて駄目だなと思っていました。でも、これだけやはり社会問題になってきますと、もうやっぱりワークシェアリング的なことも考えなきゃいけないんじゃないかなというふうに、企業の競争力が多少落ちるということを覚悟しても、もうそこまでそういう段階に来ているんじゃないかなと思います。  これは二〇〇四年の十一月に、これは週刊東洋経済なんですけども、京都大学の橘木先生が、「働きすぎの人が若者の職を奪っている」というタイトルで、中身を読んでみますと、ああ、実感的によく分かりまして、私もその中高年なんですけども、三十から四十四歳の男性社員が働き盛りでもう働き過ぎて、確かに一日十二時間以上働いて二百五十日掛けると大変な時間になるなと思ってですね。で、まあ解決策は割増超過金を掛けろというふうに、恐らく、そういうことでもしない限り、中高年の人たちは多分嫌々働いているわけじゃないと思うんですね。嫌だなと思って仕事しているわけじゃなくて、仕事は恐らくみんな一生懸命やっている、意欲的にやっていると思います。で、時間が一日十二時間ぐらい恐らく働いていてということになっていると思いますんで、それに対しては割増超過金ですかね、それでワークシェアリング的な方向に持っていければ私はいいんじゃないかなというふうに考えています。
  20. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  次、浜田昌良さん。
  21. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 ありがとうございました。  公明党の浜田昌良でございます。  最初に、水野参考人にお伺いしたいと思いますが、御説明の中で、格差拡大の背景にはIT革命グローバル化があるという御説明がございましたが、このIT化、グローバル化というのは世界に共通する事象だと思うんですけれども、そうしますと、この格差拡大というのも、世界、先進各国に共通する事象としてとらえていいのかどうなのかについてお聞きしたいと思います。  次に、山田参考人にお聞きしたいと思いますけども、希望格差社会とはニューエコノミーが背景であるという御説明がございました。そのような文明論的な背景だとしますと、人為的な補整というのは次の新しい文明が出てくるまではどうしても限界があるのかどうなのか、それとも新しい文明が出始めるのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。  最後に、勇上参考人にお聞きしたいと思いますが、この格差の問題を循環問題から構造問題へ転化をさせないために、正社員登用制度の奨励とか正社員雇用の多様化を提言されているんですけども、この景気回復の中で、また団塊世代が大量退職する中で、今一部の企業はそういう方向に動きつつあるんじゃないかと思うんですけども、その辺の評価についてお聞かせ願いたいと思います。  以上です。
  22. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございます。  じゃ、水野参考人からお願いいたします。
  23. 水野和夫

    参考人水野和夫君) 推測ですけども、このグローバル化とIT化が格差拡大のデジタルデバイドとか言われていますので、これは私は世界的な傾向だと思います。  それを裏付ける指標が、じゃ持っているかということですけれども、なかなかほかの国で、先ほどの企業統計を使って企業規模別とか業種別で比較することがなかなか難しいんですけども、アメリカでも大企業を中心とした経済指標成長率でいえば五%ぐらい成長している、で、トータルのGDPは三%ぐらいという数字が発表されておりますので、そうしますと、差引きしますと規模の小さい企業というのは成長率が相当落ちているということがアメリカでも起きておりますので、そうしますと、やはり世界的な傾向だと思います。  ただ、アメリカは、恐らく以前から移民社会格差がある程度是認されていたんじゃ、まあ是認なんて言うといけないかもしれませんけれども、ある程度こう、人々意識の中にそういうもんだというのがあると思いますけども。ただ、移民の人たちも、自分の国を出てくるときよりはアメリカ、低い層に入ったとしてもそれは豊か、出身の国よりは豊かになるでしょうから、それで何とか社会が回っていたと思いますが、日本の場合はみんな一億総中流から上下に分かれるということで、余計日本の場合は格差が、ほかの国に比べると、より大きな問題、社会問題として出てくるんじゃないかなと考えております。
  24. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、山田参考人、お願いします。
  25. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) ありがとうございます。  水野委員の続きにもなるかと思うんですけれども、私は全世界をやはり文明論的、それほどすごい大きな、大文明転換とは思わないんですけれども、小文明転換ぐらいのことは起こっているというふうに私は思っております。でもその際に、日本が不利な点というのがありまして、つまり、私はリスク社会化とか、まあ言っているわけですけれども、日本の九〇年代までが余りにもノーリスク社会であり過ぎたということがあると思います。  つまり、あらゆる社会リスク化というのは起こっているんだけれども、特に日本においてはリスク化の影響が強い、さらに、中流に関しましても、まだヨーロッパやアメリカでは割と階級的な意識、いわゆるプライドというのが残っていたんですけれども、日本においては中流でなければプライドが保てないということで九〇年代まで来てしまいましたので、それから新しいニューエコノミーに対する私は適応をしていかなくてはいけないと思うんですけれども、その適応に関する痛みというものが、今日本で一番大きく起きているんだと思っております。  で、多分新しい、すごく新しい文明というわけではないんでしょうけれども、新しい生き方、生活の仕方、希望の持ち方というものが、まあ何年先か、何十年先か出てくるというふうに私は期待しておりまして、非物質主義的価値観であるとか、そういうものが浸透してくるんではないかと思ってはいるんです。思ってはいるんですけれども、今の現状でいきますと、なかなか適応するのが難しいかな、でも適応するんでしたらその混乱期間というものはなるべく短くした方がいいだろうというふうに思っているものでもあります。失礼しました。
  26. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、勇上参考人、お願いします。
  27. 勇上和史

    参考人(勇上和史君) ありがとうございます。  御質問の団塊の世代の大量退職を控えて、正社員雇用を上向きにしたり、あるいは非正社員の活用を強めている企業が増えているのではないかという御質問だったと思うんですが、やはり私はそれはあると思います。  で、元々パートタイマーであるとかアルバイトというのをですね、活用動機はやはり賃金が安いからということで当初、まあ採用するというのは、それはそのこと自体は大きくは変わっていないと思うんですが、やはりその期間を定めて三か月だけを雇用するとか、あるいは非常に限定的な職域をやっていたというところから二回目、三回目というふうにその会社に来るとか、あるいは二年、三年と勤めていくにつれて、かなりそのコアとまでは言いませんが、その中での仕事を身に付けてくると。そうした人を、今、循環問題でというところも私はちょっと述べておりますが、少し循環的に見ますと、良くなっていると。  それで、新しい人を採るというときに、やはりふだんうちに来てもらっている人から採りますという大手メーカーの、私も調査をしましたが、優先的に正社員登用するということを、新卒とは別に入り口を設けてくると。その正社員登用の数を見ますと、一年目が数十人だったのが、次の年に五百名になったりとかという会社がございます。名前を出すとすぐに分かってしまうんですが、やはりその会社の事例を見てみましても、その動機が変わってきたなということを思いますし、そうした企業が増えているのではないかというふうに思っております。
  28. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、井上哲士さん、お願いします。
  29. 井上哲士

    ○井上哲士君 今日は三人の参考人の皆さんありがとうございます。  今度の国会でもその格差問題というのは大変大きな論争のテーマになっておりまして、当初総理も、格差が開いているとは思わないという答弁から、格差があっても悪いとは思わないということを、当参議院の予算委員会でも言われました。  それで、それぞれの方から評価や程度の差はあれ、格差が拡大をしているということについては共通の御意見だったと思うんですが、そこで、まず水野参考人と勇上参考人にお聞きするんですが、山田参考人は、あらゆる先進国不安定化が発生したのであって、日本の政策失敗ではないと、こういうふうに言われたわけですが、先ほども、全体、世界的なIT化の関係のお話はありましたけれども、しかし、これだけあらゆる分野で、まあ大企業中小企業地方と大都市なども含めて格差が広がっているというその日本特徴を言わば加速をさせた政策的対応については、それぞれどうお考えになっているかということをそれぞれにお聞きしたいと思います。  それから、山田参考人に二点お聞きしたいんですが、私はやっぱりすべての人々希望を持てる社会というのが必要だと思っているんですが、中には、一握りの能力がある人が全体を引っ張って、あとは言わば分を知って生きればいいんだと、こういう議論もあると思うんですね。山田参考人は、そういう希望格差社会と言われるものが、今の若い人たち状況がずっと主流になって年を取っていく、そういう社会になることが、どういう社会、やはりどういう問題をお持ちとお考えになっているかということが一つです。  それからもう一つは、今あのいわゆるライブドアの堀江氏の問題が起きているわけですが、いわゆる彼に対して、非常に若い人たち、特にフリーターなんかをされている人たちが彼に夢を感じて支援をしたということも随分あるわけですね。今回のああいう事件によって、そういう、まあ先生、意識の問題が御専攻なので、そういう若者の今後の意識にどんな変化を与えるとお考えか、少し御意見があればお聞きしたいと思います。  以上です。
  30. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) では、水野参考人、お願いします。
  31. 水野和夫

    参考人水野和夫君) この格差が拡大したことについての政策の評価という御質問だと思いますが、私はいろんな格差というのが九五年ぐらいから加速的に付いてきて、さらに、二〇〇〇年以降、二〇〇一年、二〇〇二年ですかね、その辺りから一段と更に加速しているという現状だと思います。  これは、本来ならば九五年前後に世界の枠組みが大きく変わってきたのだと思います。ところが、日本の場合は、幸か不幸か、まだそのとき不良債権問題があって、まだ過去の対応に追われていて、で、世界のグローバル化、あるいは山田先生がおっしゃるようなニューエコノミーとか、それに、前に世界が進んでいるのに後ろ向きの処理に追われていて、それが二〇〇二年、二〇〇一年ぐらいまで掛かってしまって、その後、市場原理主義的な政策を取ることによって今までの九五年から本来やっておくべき世界の流れに付いていくのを一気に取り戻そうとしたということで、より、ちょっと加速させるのもやむを得ないような選択だったと思います。  ただ、その結果、いろいろな指標を見ますと、非貯蓄保有世帯がもう四世帯に一軒とか、それから就学援助を受けているお子様が区によっては四割にも達するというような、もうこれは明らかに私は行き過ぎの領域に入っていると思いますので、加速、二〇〇〇年以降から世界の大きな変化が起きたために市場原理主義的な施策を取ること自体は、それは、まあやむを得なかったと思いますが、同時に、やはりこれだけ格差が増えるということはある程度予見して、セーフティーネットとかそういうものはやはり同時進行、本当はした方がよかったかなと思いますので、功罪私は半ばだなというふうに思っています。
  32. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) じゃ、勇上参考人、お願いいたします。
  33. 勇上和史

    参考人(勇上和史君) 今の御質問にお答えしますと、私は雇用問題専門にやっております。その点から見ますと、やはり九五年ごろから、本日お話ししました若者格差につながるような動きが見られたと、労働市場において見られたと。ただ、若年の就業機会が極端に量的にも質的にも変わってきたというときに、やはり、今でこそ若年の問題はかなり政策的なマターになりますし、一括のワンストップセンターとかそうしたものが、施策的なものが整備されてきたわけですが、やはりそこを九五年から見ますと、もう既に十年たっております。ですから、そうした意味で、何かをやったことの失敗という評価よりは、やはり基本的には不況の問題だということで、十年前から少しその取組が遅れたことがあるのかなというふうなことは感じます。  ですが、雇用形態の多様化自体がその政策の下で進んだということは、特に派遣社員に関して規制緩和はありましたが、まだ就業人口で見ますと女性でも数%、三十代の雇用者の中の例えば女性の派遣社員の比率というのは三%ぐらいとかですので、やはり若年、本日お話ししたお話につながる問題としては、やはり若年への対応がそれまでなかった経験ですので、うまく、学校から職業へとうまく転換していたということが機能しなくなったということに対する対応がやはり少し遅れたことがあるのかなという気がしております。  以上です。
  34. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、山田参考人、お願いいたします。
  35. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) どうもありがとうございます。  先ほど井上委員からの質問のどういうふうになってしまうかというところなんですが、レジュメの五ページの下の方に、希望の喪失からの帰結としてまあこういうのが起こってくるのではないかという形で書いてあります。  私、リスクからの逃走って名付けたんですけれども、親と同居していれば生活ができるんだからわざわざ努力が報われない体験を実社会でしなくたっていいだろうという形で逃走してしまったり、さらに、まあ別にパチンコ、ゲーセンが、私もゲームはよくやりますので悪いというわけではないのですが、つまり実社会努力が報われないので、そういうバーチャルな世界で努力が報われて、画面の向こうからあんたすばらしいと言ってくれるようなものにふける人が増える。さらに、もう将来どうやったっていい生活が送れそうもないという人は、まあやけになって幸福な人を道連れにするような形の犯罪が起きたりするでしょうし、さらに、将来が不安定でリスクがあるんだったら、ちょっと子供を持つのを、結婚したり子供を持つのを先延ばしにしようという人が増えて少子化が起こるといったような問題が起きると思っております。  少子化の面では、去年は少子化の調査会報告をさしていただいたんですけれども、やはりこれも日本社会の負の遺産で、イギリス人の方と議論をしたときに、不安定な雇用リスクがあるんだから結婚しないなんてイギリスで言ったらだれも結婚しなくなってしまうよというふうに言われたので、それだけ日本社会というのは、結婚して子供を育てるんだったら安定した収入が確保されなければ先送りするということが、意識が強いんだと思っております。  今はオールドエコノミーにつかっている親にパラサイトしていますので、まあ二十、三十、四十でも親と同居している不安定雇用者が大きいのでまだ顕在化しませんけれども、親が弱ったり亡くなったりしてきたときに相当社会、顕在化してくるということは、逆に、今対策をやっておけば大きな問題にならずに済むというふうに私は思っております。  あと、まあライブドア事件に関してですが、私も、学生等をつかまえたり、学生にブログやインターネットに飛び交うことを検索させたりして、助手に検索させたりして反応を調査したのですが、やはり夢を見ていたという人は三十代ぐらいで、もう二十歳ぐらいの人は結構さめていて、いや、あんなことをしたって、ああいうことはおれには、私にはなりっこないだろうと思う、割と、私は比較的健全だと思うんですけれども、割とあきらめ、そういう夢には踊らされないぞという人が増えているような気がします。  むしろ逆に、もう少し現実的に、そこそこ努力が報われてそこそこ周りから評価されるような場、要するにNPOでも何でもいいんですけれども、そういうところがもっと与えられて、さらにそこそこ生活ができる見通しというものを持たせられることができたら、若者というのはどんどん元気になってくるのではないかと思っております。
  36. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、渕上貞雄さん。
  37. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社会民主党の渕上でございます。  参考人の方々、本日は大変御苦労さまでございます。  まず水野参考人にお伺いしますけれども、格差問題で地域格差の問題、とりわけ地域地方におりますと、中央はいいけれど地方はまだまだだなと。だけれども、最近は、以前ですと、まあそのうち来るだろうという期待感がありましたね、景気の問題についても。しかし、先生の言われる東海地区とその他の地域の広がる地域格差という問題で、はっきり東海ブロックを中心としたところ、九州や北海道をしたところの格差というのは歴然と表れてきていますが、そういう中央からの波及効果というのがなぜこのようにきちっと表れるようになってきたのか、そこら辺のところを御説明いただければというふうに思います。  それから山田参考人には、二極化社会というものが今後どのような社会をつくり出すのかというところが若者は不安というふうに感じているようですけれども、例えば負け組、勝ち組、量的な格差、質的な格差、正社員、非正規社員、このようにきちっと分けてしまうことということはいいことなのかどうなのかですね、今の社会にとって。そうすると、結果的に表れてくるのは、生活水準で物を考えればいいのか、労働の水準で考えるのか、例えば雇用水準で物を考えるのか、賃金の水準で考えるのか、言うなら所得水準で考えるのか。二極社会というのは今後こういうことを含めてどのように私どもは理解をしていってどこに対応策を設けていけばいいのか、そこら辺りをちょっとお教え願いたいと思います。  最後に勇上参考人にお伺いいたしますけれども、先生の資料の一番最後の今後の懸念と政策課題というところで、近年ほどフリーター離脱が困難化ということに言われていますけれども、結局、結果としてはそれは教育訓練投資へということを考えなきゃならないというふうに言われているんだろうとは思うんですけれども、結局、雇用する側にも問題があるのではないかと、このように思います。  主に今議論されているところは、働く側の問題として、働き方の問題だとかというところが問われているんじゃないかと。雇用する側ももう少し考えていかなくてはならないのではないかと。それは、例えば企業側も、インターンシップ制度などを企業として取り入れることによって、こういう格差社会の中で、言うならばフリーターにならざるを得ない人たちをどのようにして少なくしていくかという努力はやっぱりお互いやっていかなきゃいけないと私は思うんでございますが、フリーターから正規社員になりたいという若者は大変多いんですよ。そして、そのことを求めてやっぱりしっかり頑張っている若者多いわけですね。ですから、そこら辺り、何が原因なのか、お分かりになればお教えいただきたいと思います。  以上でございます。
  38. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、水野参考人からお願いします。
  39. 水野和夫

    参考人水野和夫君) 地方格差、どうしてこういうふうに分かれてしまったのか、波及性がなくなってしまったのかということですが、この七ページでお示しした資料はあくまで製造業であります。  そうしますと、東北、四国、九州、北海道、こういったところは製造業よりもどちらかといいますと観光とか非製造業のウエートが高い地区だと思いますので、そうしますと、今起きていることは、従来は製造業が良くなると、それは半年か一年ぐらいで非製造業、サービス産業も良くなっていくという波及効果が見られました。それが製造業だけ良くなっていって、非製造業の方にはそれが九五年ぐらいから及ばなくなりましたので、それがこの地域統計でも、これは二年間のデータを相関係数を取りながらですから、ちょっと遅れて二〇〇五年辺りからその特徴地域間でも出始めてきたのかなと思いますので、製造業と非製造業のウエートの大きさがそのままこの地域のところに私は反映している可能性が高いというふうに思っております。
  40. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、山田参考人、お願いします。
  41. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) どうもありがとうございます。  ごめんなさい、私も余り負け組、勝ち組という言葉がいい言葉とも思っていない、まあ、あんたが書いてて何を言うんだと言われるかもしれませんが、こんなに人口に膾炙するとは思わなかったというのが一つでございます。  単に生活水準が高い低いということだけではなくて、いわゆる、私は希望と書きましたが、ある人はプライドというふうに言う人もいます。つまり、プライドが保てる人とプライドが保てない、逆に言えば、人が出てきている。それは何が困るかというと、社会的に対話ができなくなるということがやはりあると思います。  もし二極化なり、生活水準はかかわりなくということであるならば、いわゆる生活水準が高くなくても尊敬、周りの人から尊敬できるような生き方というものをもう奨励していくしかないのではないかというふうに思っています。でも、それは、ただフリーターの人に、ただおまえフリーターでもプライドを持てと言っても主観的に持てるものではなくて、我々の社会が、みんながああそういう生き方はすばらしいねと言えるような生き方を提示していくことが大事だと思っております。  ちょっと余りお答えになっていないかもしれませんが、この程度で御容赦くださいませ。
  42. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 勇上参考人、お願いします。
  43. 勇上和史

    参考人(勇上和史君) どうもありがとうございます。  御質問は、やはりフリーターが非常に増えたということに関して、企業サイドの、労働需要サイドの原因といいますか、ものはないのかという御指摘だったと思うんですが、やはりそれはあると思います。  というのは、フリーターを雇うときにどう評価しますかという調査が最近何回か行われておりますが、マイナスの評価というのが非常に高いんですね。その理由を、つまりフリーター経験というのはいい経験ととらえていないと、企業はですね。で、その原因を、理由を見ますと、その人材像が分からないと、何がしたいか分からないということですね、まず。それから、辞めてしまうのではないかということです、すぐに辞めてしまうのではないかと。それが一番理由が高いんですが、そういったある種の思いといいますか、思い込みというか、あるいはイメージがあるわけですから、それについては、既に活用している企業の実態といいますか、そういった努力みたいなものは学ばなければいけない企業が多いかと思います。  ただ、そのフリーター経験自体がやはり企業の採用のときの合理的な判断にマイナスに映るというのは、やはり非常に奥行きが浅い仕事しかやっていなかったり、あるいは全く脈絡のない仕事経験をしているとかですね。それで五年たち、十年たちますと、やはり中途採用として即戦力として採る、その俎上にのせられるかということがございます。  ですから、やはり早いうちにそうしたキャリアデザインを、公的なりあるいは学校を通じてもそうですが、するということと同時並行でなければ、やはり企業は悪いイメージを持ち過ぎだというのもやはり理由はあるということは、現状では、つまり脈絡のない転職とかというのを非常に、フリーターだろうが正社員から転職する場合も全く同じような評価をしておりますので、企業はですね、何回も移るとか、理由のない、分からない転職をしていることに関して非常にマイナスの評価をします。ですから、やはりそれはキャリアデザインみたいなものを同時にやっていかざるを得ないというふうに思っております。
  44. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) はい、ありがとうございました。  それでは、小池正勝さん。
  45. 小池正勝

    ○小池正勝君 はい、ありがとうございます。  自由民主党の小池正勝です。  私は、水野先生と山田先生にお伺いをいたします。  私は四国の徳島でございますけども、水野先生の区分けに従えば、大都市と地方、正に地方であります。そして、地方であるがゆえに大企業なんというのはありません。ほとんど、九九・九%が中小企業ということになっております。正にそういう意味では格差のダブルパンチみたくなっているわけです。  で、先ほど先生がおっしゃってた例えば就学援助の率にしましても、ここのところずうっと上がっておりまして、市の財政も圧迫するぐらいに上がりつつあるというのが今の状況です。そんな中で若者の働く場がない。当然、正職員として雇用してもらえる機会というのは非常に少ないんです。ですから、やはり希望というのについては厳しい。これはもう事実なんです。  希望が持てないというのは事実、そんな社会が現にありまして何とかしなければいけないと、これはもうそのとおりだと思うんですが、しかし、先ほど山田先生のお話の中で、希望のセーフティーネットというんで、例えば教育分野であれば勉強という努力が仕事や昇進に直結する仕組みとか、職業分野ではどのような雇用形態であってもキャリアアップのチャンスをつくるということは必要だとおっしゃっておられるわけですが、しかし、勉強すればするほど若い人は働く場がないから出ていってしまうんですよ。徳島にいなくなってしまうんです。キャリアアップしたってしたってしたってしたって、働く場がないから出ていってしまうんです。  こんな状況地方なんですが、どうしたらいいんでしょうか。これをまずお伺いしたいと思います。両参考人にお伺いしたいと思います。  で、もう一つお伺いしたいのは、先ほど山田先生は非物質的価値観が必要だということをおっしゃいました。正にそういう発想の転換が必要なんだろうと思うんですね。  例えば、先生の指標の中で自殺の拡大ということをおっしゃっておりました。徳島県は全国で自殺率が最低です。経済的には低いんですよ、県民所得も低いんですよ。しかし、自殺の割合は全国最低です。原因は何だろうかと、いろいろ言う人はいるんですけれども、やはり価値観の転換みたいのをしていく必要があるんじゃないか。豊かさって何だろうか、そんなことを考え直していく必要があるんじゃないだろうか。  で、先生も先ほど非物質的価値観への転換ということをおっしゃったわけですが、私も大賛成なんですけども、それは抽象的に言えても、なかなか若い人に、ニートの人に、フリーターの人に非物質的価値観を持てと言ってみたってなかなか難しいというのはもう事実なわけでして、具体的に、そういう気持ちを持っているのは恐らくほとんどの人がみんなそう思っていると思いますが、どうしたらいいだろうか。その二点についてお伺いいたします。
  46. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) まず、水野参考人からお願いします。
  47. 水野和夫

    参考人水野和夫君) 非常に難しい問題でして、最初に私自身お答えを持っていないということを申し上げた上で、次善の策としてはこういうことがあるかなという程度しか申し上げられないんですけども。  雇用をどうやって生み出していくかという、まあ雇用雇用創出だと思うんですけども、いわゆる日本製造業はまず生産性が高いですけども、生産性が高いということは少ない人数で同じものをできる、あるいは同じサービスが提供できるということですから、生産性上げるということは、その局面だけ取り出しますとより雇用が減ってしまうということになりますけども、それを少ない人数でやればその分野では一人当たり賃金が少し上がるということになりまして、そうすると、そこで一人当たり賃金が初めて上がると他のサービスを受けられる、受けることができるということになると思いますので、そうすれば、まあこれは具体的には流通業で一番生産性を上げやすい。  ITを使って流通業、小売業と卸売業と物流業、こういったところが一応諸外国では、日本以外の国では、まあ日本以外といってもアメリカやイギリスやオーストラリアとかそういった国々は物流とそれから流通業の生産性が高くて、そういった国は、比較的、日本が一%台から二%しか成長できないのに三%ぐらい成長できる。それは、流通業のところで少ない雇用生産性を上げて、その他狭義のサービス業のところで雇用が増えてという仕組みになっておりますので、まず真っ先にやることは、比較的やっぱり生産性が低いところをいかにITを使って少ない人数でよりいいサービスを提供するかということが第一段階じゃないかなというふうに考えています。  余り答えにならないんですけど。
  48. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、山田参考人
  49. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) どうもありがとうございます。  多分、前者と後者の問題が多分、相当私はつながっている問題だと思っております。  例えばIT化に関して言えば、実はIT化が進んだころは、いわゆるネットで仕事ができるのでどこに住んでもよくなるので、全国各地に優秀な技術者が分散するだろうというような仮説を言う人もいるんですけれども、結果的にそういう人たちは東京の一部分のところに住んでしまう。それはなぜだろうというのを考えた場合、資本の蓄積とかそういうことではなくって、どうも同じライフスタイルを取った仲間がそばにいるっていう、いわゆる非経済的理由でそういうところに住んで仕事をするっていうことが大きな理由であるらしいということが、まあ私は推定しているわけです。  となると、非物質的価値観ということも絡めていいますと、やはり価値観というのは一人で持てといって持てるものではなくって、その価値観を共有する仲間というものが、コミュニティー内の仲間というものが一緒になってつくり出すものだと思っています。で、それを地方なりにつくり出すことが可能になるならば、例えば私、内閣府の国民生活審議会でコミュニティーの再生というのをやっていて、NPO等で新しい形のコミュニティーを再生しようというような審議に加わっているわけですけれども、そういう魅力のあるNPO等の何か面白いことをやる集団というものを各地にできたものを育てて、そこに生産性の高い人が住みやすいところにするということが一つの手だてではないかなというふうには思っております。  ちょっと余り答えになっていないかもしれませんが、今考えられるのはそれくらいのことです。どうも済みません。
  50. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、峰崎直樹さん。
  51. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 済みません。民主党の峰崎でございますが、水野参考人とそれから後で時間があれば山田参考人にもお聞きしたいんですけれども、一つは、水野先生おっしゃった、九五年ということを非常に強調されておられたんですけれども、何かメルクマールがあるのかなと。  と申しますのは、山田参考人の方からは九八年ごろから非常に自殺が増えてくると。私は北海道なもんですから、山一証券と拓銀が崩壊をしたのは九七年の十一月なんですけれども、非常に大きなショッキングな、すなわち、この会社はつぶれないだろうと思われていたものがあえなくつぶれていったわけですね。つぶして良かったかどうかというのはまた別問題としても。そうすると、そのことが雇用に与えた影響というのは大変深刻だったんじゃないかなと。つまり、ここに入っていればまあ安心だという安心感というものが非常に僕は薄れてしまったんではないかなと思っているんですが、そこから非常に雇用、もちろん規制緩和もあって行き過ぎもあったと思うんですが、非常に雇用問題に深刻さが出てきていったんじゃないかなと。  そういう意味で、九五年というものをおっしゃっていた意味ですね。私は別の意味で九五年を取り上げるとすれば、サリン、あの地下鉄サリン事件、あるいはあの震災というのもあったんですが、経済的に見るとデフレ経済ですね。実は国会の中で、資産デフレじゃなくてフローのデフレをデフレーターで初めて出てきたのが九五年から出てくるんですけれども、そういう意味で我が日本経済がデフレ化していった要因ですよね。そういうものがやはり先生の頭の中にあるのかどうかということを一つですね。  それと、ここに書かれている九五年以降の特徴の中で、回帰性が消滅したとおっしゃっているんですが、私は本当にそうかなと。  と申しますのは、アメリカの消費支出、これは住宅バブルで消費が非常に活発になっている、今や貯蓄率がマイナスになってきていると。それから、中国設備投資と。GDPに占める比率が四七%ぐらいまで高まっているというのは、これは我が日本高度成長のときには高くて三五%、三〇%そこそこだったと思うんですが。この二つ経済が好調さに裏付けられて日本経済が伸びていったというのは間違いないんですが、これは果たして、回帰性が消滅したんじゃなくて、やはりアメリカの住宅バブルと、それから中国のいわゆる設備投資バブルと、この二つが存在していて、やがてこれはサステナビリティーを失うんではないか。そうなったときには、このいわゆる構造的現象とおっしゃっているやつについてはちょっとどうなのかなというのは、ちょっとこれは格差問題とはやや離れてしまうんですけれども、教えていただきたいなと。  実は、それと、次のページの三ページ目に、実は近代化経済圏とポスト近代経済圏と、こうあるんですけれども、私は、そこの中でおっしゃっているポストという言葉は、モダン、ポストモダン、プレモダンと、こうあったときに、どうも我々歴史を発展させていくと考えたときに、ポストといったら近代よりもそれ良くなるという意味でとらえることが多いんですけれども、このポストという言葉を付け加えられた意味というのはどうなったのかなということで、実はそこの中で非常に九〇年代停滞しているのは、どう見てもやはり不動産、建設、それから小売、ここら辺のいわゆる三業種と言われたバブルに実はまみれてつぶすにつぶせない。あのダイエーだとかですね、ああいう問題になってくるんですけれども、そごうとか。そういう問題が非常に大きく影響しているがゆえにこの停滞が起きているので、実は我々は、もう少しあれしますと、サービス経済化ということを考えたときには、このポスト近代経済圏と書かれている中身の実態というのは、実はその重厚長大からいわゆるそういう新しい産業に移っていくというのは、やや僕は必然というか、サービス化していくというのが必然ではないかなと思っているんですが。  その意味で、この停滞というのはやや日本の場合にはバブルの崩壊の特異な現象なんじゃないかなというふうに思っておりまして、それが格差の問題で言えば近代化経済圏とポスト近代経済圏というものの格差というふうにとらえられていることに対して、ちょっとやはり、そうではなくてこれからまた違った展開を示すんじゃないかなというふうに思っていまして、その辺りはどのようにお見えになっていらっしゃるのかなということでございます。  それから、先ほど、北海道でございますので、北海道東海地区がこんなワニの口のように開いているんですけれども、先ほど私は、これは私の見解なんですけれども、地方をどうしたらいいかというさっき非常に悲痛な思いが、我々もそうなんですけれども、基本的にはやっぱり分権型社会でもって、北海道北海道でもうこれだけの税財源、権限もあげます、ここでしっかりやってください、徳島は徳島でやってくださいと、こういう分権型社会に持っていく以外には、私はある意味では知恵を発揮して新しい時代にチャレンジするというのは、それぞれの地域に大胆に任せていく以外にないんじゃないかというふうに思っているんですけれども、この点どのように水野参考人、あるいは山田参考人ももしよければ教えていただきたいと思うんです。  最後になりますけれども、ちょっと長くなりました。山田参考人、さっき価値観の転換とおっしゃったんですけれども、私が今からやや二十年ぐらい前にちょっと習ったことなんですけども、社会学の中に社会的地位の非一貫性ということがあって、権力を持っている人、財力を持っている人、それから権威を持っている人、これは日本の場合には過去非常にうまく分かれていたと。ところが、だんだんとお金を持っている人間と権力を持っている人間と権威を持っている人間が一本化して、その格差が開いてきているんじゃないかというようなそういう指摘が最近されるようになったんですが、余りそういうことが議論に最近はならないんですけれども。やはり僕は、理想的なのはそういう権力と権威とそれから財力というのはやはり分散してそれぞれ存在した方がいいというふうに思っているんですけれども、こういった点について何か山田参考人からあればお伺いしたいと思います。  最後になりますけれども、ちょっと私も三時ちょっと過ぎから、お答え聞いた後で退席しなきゃいけないんで大変申し訳ないんですが、お話を聞かしていただければと思います。ありがとうございました。
  52. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは水野参考人、よろしくお願いします。
  53. 水野和夫

    参考人水野和夫君) はい。最初に、第一点目の九五年をどういうふうに考えているかということでありますが、御指摘のとおり一番大きいのはGDPベース、GDPデフレーターで初めてマイナスになったという、今まで世界、戦後あるいは資本主義、産業革命以来、基本的にはずっとインフレ、二十世紀インフレ基調で来た経済が初めてデフレに直面したということだと思います。戦後ですかね、大恐慌とかそういうのを除いてデフレに直面したという経済現象が一番大きいと思います。  さらに、九五年というのは、日本だけではなくて先進国の実質、実物投資のリターンがそれまで四、五%あったのが、九五年を境にそこから今二%前後へ、先進国の一単位投資すると二%ぐらいしかリターンが得られないというふうに徐々に低下していった最初の年です。  あと、九五年をグローバル化との関係で私は特徴的だなと思っておりますのは、グローバル化するにはお金の流れが国境を越えて自由に、まあいわゆる国際資本の完全移動性という現象が成り立たないと人も物も動けないということが言えると思いますが、九五年以降のデータですと、初めてOECD加盟国の中でどの国も自分の、自国の貯蓄に関係なく投資ができるという状況が九五年以降のデータで確認できるようになりました。それ以前は、やはり自国の投資は自国の貯蓄を使ってしかできないという関係がありましたので、グローバル化に一番必要な条件が九五年から整ったのかなというふうに思ってます。  で、峰崎議員がおっしゃったその九五年、オウム・サリン事件というのも実は大きいかなと思います。これは、大澤真幸先生でよかったと思いますが、オウム・サリン事件は二・二六事件と同じような思想、社会的背景がある、で、もはや戦後というフレームワークでくくっちゃいけないとおっしゃっていまして、それは経済現象にもやはり、もう日本でデフレが生じて、それから、グローバル化貯蓄、自分の貯蓄が、例えば赤字国は自分の少ない貯蓄に依存できなくても他国の貯蓄を利用できるようになったということで、やはり戦後のフレームワークが九五年辺りから、経済のですね、フレームワークがやっぱり崩れた最初の年だと思います。  金融危機につきましても、大手金融機関の、前にたしか、東京で二つの信用、信組でよかった……
  54. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 信組。
  55. 水野和夫

    参考人水野和夫君) 信組ですかね、が、九四年末ぐらいだったと思いますが、銀行神話が崩壊するというのがありましたので、世界的に、もう貯蓄と、貯蓄投資の関係がフラットになるという意味で世界的にも九五年だと思いますし、まあそれはルービン財務長官が登場してそういうふうにしたということだと思いますけれども、非常に大きな年だったなと思ってます。  回帰性、二番目の回帰性が消滅したというのは、それは、将来は住宅バブルと中国設備投資バブルがはじけたら元に戻ると思います。これ消滅性がまた元に戻って、で、私が申し上げた消滅性というのは、一景気循環で戻るという意味の消滅性がなくなって、九八年からですから、二つ景気循環、八年合わせてもずっと上がり続けるから、まあ一景気循環で元に回帰性が戻るというのは消えたという意味でありますので、前提条件の住宅と、アメリカの住宅と中国投資がもしおかしくなったらこれは八年分の反対現象が起きると思いますので、相当これは経済的には大変だなと思います。  それから、ポスト近代経済圏というのは、普通はポストモダンですから、いい方向にというのはそのとおりですけど、私がイメージしたのは、ちょっと表現が悪いと思いますが、ポストモダンに本当は行かなきゃいけないサービス産業なのに全然それができてないという意味で、済みません、そういう意味で使いたかったわけでして、ちょっとネーミングが実際悪いと思います。ほかの方にも全く同じような御指摘を受けましたので、ちょっと名前を変えなきゃいけないなと思います。
  56. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは山田参考人
  57. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) ありがとうございます。  まず最初の方に関しては、私は社会意識という側面で見ると一九九八年が多分転換点であって、まあいわゆる経済構造はそれ以前から多少変わっていて、それが顕在化したのが九八年だと思っております。  あと価値観に関しては、これはちょっとなかなかいつもしにくいんですけれども、私は価値観というものをうらやましいという言葉でとらえています。つまり、どういう人がうらやましいと思うかということが人間の希望とか社会意識とかそういうのを決めているんだと思います。確かに一九八〇年ぐらいまでは地位の非一貫性というのがあって、私は学生に説明するときは医者と官僚と大学の先生というのをやって、医者はお金はたくさん稼げるけれども余り、別に名誉はともかく、稼げる、官僚は権力がたくさんある、大学の先生は何かいいように思われるけれどもお金も権力もないというふうな例として使っていたんですけれども、それは相互に何らかのうらやましさというものが循環していたと思うんです。つまり、大学の先生だったら権力があるとかお金がたくさんある人がうらやましいと思うけれども、別の人から見ればそういう結構いい、それほどきついことをしなくてもいいわという形でうらやましがられるという形で、うらやましさが循環していたところに非一貫性があったと思います。  今起きていることは、そのうらやましいということが一方的になってしまって、こうはなりたくないと思う人とうらやましいと思う人が二極化してきているということが今問題になっているんだと思っております。となると、いかに我々、多分、安定しているかどうかはともかくとして、一応希望があるような地位に就いている我々が、いかにしたらフリーターとかニートの人をうらやましいなと思えるようになるかというような仕組みというのを今後構築していかなくてはいかないというのが、ちょっと済みません、半分分かりにくかった例え話かと思いますが、と思っております。
  58. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、そちら側。野村哲郎さん。
  59. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 自由民主党の野村でございます。  大変貴重なお話をお伺いしまして、いろいろ考えさせるところが多々あるわけでありますが、まず水野参考人にお伺いしたいと思うんですが、私ども、前もっていろいろ先生たちの資料もいただいて読まさしていただいておりますけれども、その中で先生お書きになっているのが、景気が回復しても日本人の所得は上がってないと、そういうところがあるんですけれども、特にその中で若者を取り上げていただいて、そのしわ寄せというのは若者に来ているんだと、失業率も高いじゃないか、あるいは所得も、貯蓄の非保有者というのも非常に今高くなっているというのがありました。  特に、先生の今日いただきました資料を見ていきますと、やはり地域格差というのは非常に出ているんですね。先ほども我が同僚の小池議員からも話が出ましたように、私は、失業率の裏返しで求人倍率を考えた場合に、私は鹿児島でございますけれども、私のところは〇・五三であります。愛知県は一コンマたしか六を超えてたと思いますが、三倍からの格差があるわけですね。そうしますと、昔でいきますと、就職列車が走っていきまして、鹿児島から東海地方にどんどんどんどん人出ていったんです。倍率は低くても、東海地方で吸収してもらってた。そこが、非常に少子化になりまして、親も子供も調査いたしますとやはり地元志向というのはやはり強いわけですね。そうしますと、愛知県まで行って仕事はしたくない、住みたくない、やはり地元だという、そういう少子化が究極的には私はこう何か影響しているのかなという気持ちになってくるんですけど、それともう一つは、企業の再配置みたいなのができますね、今の求人倍率あるいは失業率というのも緩和されるんだろうと思いますが、そういうやはり少子化との影響もあるし、いろんな企業が集中、一極とまではいきませんけど集中し過ぎている、その弊害が今いろいろおっしゃってたようなお話につながるのかなというふうに思うんですが、その辺をまた御示唆いただければ有り難いなというふうに思います。  それから、山田参考人にお伺いしたいんですけれども、我々の総理が言っていますように、いろんな生活水準格差なりいろんな所得格差、それは昔からやっぱりあったと思うんです。それは当たり前といえば当たり前だったんだろうと思うんですけど、私は、先生のお書きになっているので、非常に格差をみんなが納得していたというお話を、お話というよりも書いておられるのを見て、非常に説得力があるなと思うんですね。やはりみんなが納得している社会、その格差があるのが当たり前の社会、そのことにある程度納得していたんじゃないのかと。じゃ、昔は納得していたにもかかわらず、昨今なぜ納得できないのかという、そこのところが、格差が非常に顕在化してきたといいますか、言葉もそうですけれども、いろんな現象面での格差に対して、まあ過剰意識とは言いませんけれども、非常に、格差社会と言われるように、みんながこのことについての関心度合いが非常に深くなってきている。それは、先生がお書きになっている納得との兼ね合いを少し教えていただければ有り難いなというふうに思いますんで、どうかよろしくお願いいたします。
  60. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、まず水野参考人からお願いいたします。
  61. 水野和夫

    参考人水野和夫君) 今御指摘のその地域格差というのは、やはり少子化と私も非常に関係していると思います。恐らく、一人っ子だとしたら、郷里を離れて、とても、私も自分が親として、自分の住まいが遠くへ行くなんというのは多分拒否するだろうと思いますので、そうしますと、少子化になればなるほど、先ほどの愛知県の有効求人倍率をほかの地域で埋め合わせるということが事実上できなくなって、かといって企業は、立地は、国際競争しているでしょうから、なるべく立地は愛知県の方に集中させて、かんばん方式で効率化したいということでしょうから、企業の方が地域分散していくというのはなかなか難しいと思いますので。  そうしますと、少子化を解決するには二十年間掛かる、効果が出てくるまでに掛かるわけですから、決め手がないという結論になっちゃって、それで、プラス、いろんな先生方が書かれている書物を見ますと、どうも中高年が若い人の職場を奪っていると、こう出ていまして、まあそれはやっぱりそのとおりだなと思いますので、最初の方の問題に、御質問とも関係するんですけれども、やっぱりワークシェアリング的なものを考えていかなきゃいけない時期にもう日本は入っているなというふうに私は思います。で、少しでも中高年の働き過ぎのところをそこで割増し課徴金掛ければ、企業もやっぱり若い人一人正社員で雇った方がコストが安いというぐらいになれば、そこでうまく歯車が回っていくんじゃないかなというふうに思います。
  62. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) どうもありがとうございます。  まあ、格差の納得ということが確かに私の議論のポイントにもなっているかと思いますけれども、希望のところで述べましたように、前近代社会はまあ簡単でありまして、神の前ですべてが平等でありますから、現世で多少不平等があっても裁きは同じように受けるという形で納得できるんだと思います。  問題は、そういう意識がないときに納得できるかどうかということなんですが、やはりまず一つはスタートラインの問題があると思います。先ほども見たように、日本社会は、高度成長期から九〇年ぐらいの日本社会は、若者時点ではそんなに格差がないんだけれども、徐々に企業規模とか学歴のように格差が付いていく、これはまあ能力や努力の違いによる格差だろうという形で納得ができたんだと思います。  それに対して、今はもうスタートラインのところから違ってきてしまって、もちろんそれがまあ能力や努力によるものである場合もあるでしょうし、逆に言えば、親の影響等による場合もあると思います。そして、それがどうもその格差を埋められずに一生続くんだろうというふうな不安を持てば、人々格差に対して納得できなくなる。  で、一番納得できない、納得していないのは、当の本人というよりもその実は親でございます、調査によりますと。自分の子供に同じ教育を受けさせたのに、何で隣の子供はどんどん正社員であるのにうちの子供はフリーターだというふうに言うと、親の方はすごく納得ができないということを、私は調査、聞き取りでやっておりますが、一つです。  あともう一つは、格差があろうがなかろうが、やはり下降移動というんでしょうか、つまり、自分は努力をして一生懸命今までどおりやっているのに生活水準が下がっていくということに関しては、やはり納得ができないと考える人が多いと思います。つまり、高度成長期は、格差が開こうが縮まろうが、自分の生活水準が上がっていくということであれば格差があっても納得ができたんだと思いますけれども、一方で上昇する人がいるのに、一方で自分はこんなに努力しているのに生活水準が下がっていくということに関しては納得がしにくい社会になっているんだと思っております。
  63. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  じゃ、池口修次さん。
  64. 池口修次

    ○池口修次君 民主党の池口でございます。  まず、水野参考人にお伺いしたいんですが、水野参考人の書かれたものの中で、景気が回復することと個々人の所得が増えることは別個のことであるという表現でありますが、ただ、最近のいろいろ政策運営の中では、景気が回復したから何々と、具体的に言うと答えがしづらいかもしれませんが、あえて具体的に言うと、景気が回復したから減税をやめてもいいとかいう政策があるわけですが、これについて参考人はどういうふうに見解を持っていらっしゃるのかというのをお聞きをしたいなと。余りに分かりやすいんで答えたくないというのなら、まあそれはそれで結構です。  それと、山田参考人にお聞きしたいのは、最近、勝ち組と、勝ち組でもなくて負け組ではない組が、何か待ち組みというようなことをだれかが命名したというような話を聞きまして、その意味するところは、その人がどう思っているかどうかは分かりませんが、やっぱりチャレンジして勝つか負けるかというようなことをある意味奨励するような報道が、私は聞いたわけですが、ただ、私は、やっぱり日本がこれだけ成長してきたのは、必ずしも大きなチャレンジをしたんではなくて、自らが与えられた仕事を着実にこなす人が日本の中には多数いて、その人たちが今の日本経済発展を支えてきたんじゃないかというふうに私は思っていますが。  今のこの勝ち組、負け組、まあ勝った人はもう大変ある意味評価されるべきだし、負けた人も、チャレンジして負けたんだから、まあその人も評価されるべきであるというような傾向は、私は必ずしもこれが日本にとって本当にいいことかどうかというのはそうは思わないんですが、これについての御意見をちょっとお聞きしたいということと、勇上参考人にお聞きしたいのは、やっぱり私は、これから若年層の格差が拡大してきて、ある意味格差が悪い人はある意味希望が持てない社会になると思います。  問題は、人数が少なくなって更にそういう人が増えてくるということは日本の将来にとって大変ゆゆしき問題だと思いますが、その中の政策的課題の中で、多様な入り口の保障と均衡処遇に向けた取り組みということで書いていますが、私は、やっぱり均衡処遇というのがないと、多様な入口の保障ということは、経営者から、雇う側から見ると多様な雇い方ということになりますから、そうすると、どうしても今の傾向としては、やっぱりコストが安い雇い方になるというふうに思いまして、やっぱり余り、多様な入口の保障というのは、逆に言うとちょっと広げ過ぎたんじゃないかなという私は意識を持っていまして、まずは均衡処遇の制度を作る。多分私は、欧米なんかは結構この均衡処遇の制度ができておって、さらに多様な働き方ということだと思うんですが、これについての事例なり御意見がありましたらお聞きしたいと思います。
  65. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございます。  それでは、まず水野参考人から。
  66. 水野和夫

    参考人水野和夫君) 景気が回復しても所得が増えない。それは今の、今回の二〇〇二年からの景気回復、そうなっていると思います。じゃ、所得が増えないんだったら減税をやめるべきかどうか、継続したらいいのか、あるいはやめてはいけないのかということだと思いますが、特別減税ですね、特別減税、九九年でよろしかったですかね、九九年に導入されて、あのときの特別減税は、私は九九年から二〇〇一年にかけての景気を回復させた理由にはほとんどなっていないと思うんですね。IT、これもやっぱりアメリカで、そのネットバブル化した景気で、それに連動して世界的に景気が良くなっていったと思いますので、特別減税がもし景気対策としてやられているんだとしたら、そもそも余り効果がなかったんじゃないかなと思いますので、それはやめてもいい、元に戻すべきだと思います。  ただ、景気が回復しても所得が増えないということを重視されるんでしたら、それは分配政策として、税率を変えるなり、もう一度累進税にするなりカーブをきつくするなりという、別な、何というか、景気対策じゃない、分配政策というのは、税率をいじって変更されるんだったらそれは非常にいいんじゃないかなと思いますので、景気対策としてはもう余り効果がなかったからと私は思うんですけれども、効果なかったものは早めに元に戻した方がいいというふうに考えています。
  67. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それじゃ、山田参考人
  68. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) 私は、百人以上のフリーター、非正規の方にインタビューしてきて幾つか質問をしているので、そのエピソードを紹介させていただきたいと思います。  ある人は、チャレンジということに関しては、もうチャレンジしろとか努力しろとか、何度やっても駄目だった、もうそう言われるのに飽き飽きしたというふうに答えた人がいました。さらに、私はよく十年後どうしているかというような質問をするのですが、あるロックスター志望の三十代の若者は、十年後、ロックスターになっていたらそれで食っている。でも、なっていなかったらと聞いたら、死んでいるというふうに答えられてしまってちょっと私も困ってしまいました。あと、ある女性、フリーターの女性は、いや、結婚して専業主婦になっていい生活を送っていると答えましたが、もし結婚しなかった、できなかったらという質問をしたら、ちょっと口から泡を吹いてフリーズしてしまったということがありまして、つまりチャレンジとかそういうのはいいんですけれども、競争というのはもちろんなくてはいけないことだと思うんですけれども、私は、今最近の競争がバトルロワイヤル化している。つまり、勝ったらいいんだけれども負けたら知らないよというふうになっているのではないかということを私は懸念してしまいます。  そうすると、何か私はフリーターの印象だと、何か人生がギャンブル化しているような、人生をギャンブルみたいに考えてしまっていて、もう負けたときのことは考えないでという形のチャレンジというのはやはり将来が心配になってしまいます。つまり、同じ競争といっても、勝っても負けても同じ枠の中にとどまるという形での競争というものがいろんな人のやる気を引き出すんだと思っております。
  69. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございます。  じゃ、勇上参考人、お願いいたします。
  70. 勇上和史

    参考人(勇上和史君) 今後の課題のところで私が書きました均衡処遇とそれから多様な入口の関係について、特に均衡処遇の方が重要ではないかという御指摘だったと思いますけれども、やはりどちらも重要だということで、私、このレジュメを書くときにどちらが前に来るべきだろうかと。最初は逆だったんです、実は。だったんですが、どちらがより重要かと思いまして、ちょっと順番を変えた経緯がございます。  というのは、やはり雇用形態の多様化が進んでいるということで、一方で本当に多様な雇用形態を保障するためには、処遇がその仕事の責任なり内容あるいはそのスキルに合ったものでないといけないということが一方で言われております。  で、特に若者に関して言いますと、新卒一括採用に漏れてしまった後の道、パスが同じ若者の中で違ってきてしまっているということがまず第一の問題であろうというふうにこの文脈でとらえまして、欧米で、最初にいきなり正社員として雇われるわけではなくて、非常に、そこのところでアルバイトをしながら、彼はいい人だからということで本採用に結び付く。あるいは、それが無理であれば、ほかのところでまた同じような経験をして、そこでマッチすれば、求人と求職がマッチすれば、そこで本採用になるといったパスを確保するためにも、まずその多様な入口ということが必要ではないかなと思いまして、あえて順番を逆にしたわけですが。  一方で、やはり非正社員と正社員という区分が非常に断崖絶壁のようにあるということは、多様な雇用形態ということを本来の意味で多様化ということを保障し得ないわけですから、それは同時に進めていかざるを得ないということだと思います。  以上です。
  71. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、西島英利さん。
  72. 西島英利

    ○西島英利君 ありがとうございます。西島でございますけれども、お三人の方にそれぞれ今から言います質問にそれぞれの立場でちょっとお答えいただければというふうに思うんでございますけれども。  というのは、先ほどから格差の話、それから勝ち組、負け組の話が出てまいりまして、その中でニート、フリーターの話がこう絡んでいるわけでございますけれども、ずっといろんな資料をこう見させていただきましても、若者が本当に勝ち組、負け組という意識があるんだろうかと。私は、そういう意識は全くないんじゃないか。つまり、将来の設計を立てない。立てられないんじゃないんですね、立てないと。  その理由は、やっぱり過保護と言われている、先ほど自分の息子はどうしていい方に行けないんだろうかという、親がそう言ったというんですけれども、やはり、何といいますか、昔の話をしてはいけませんけれども、昔は結構厳しくやはりしつけられたといいますか、学校も含めて。そういう環境の中じゃない、まさしく過保護の中で育てられた、あんたいい子だということになると、自分の思うとおりになるのが当たり前なんであって、思うとおりにならないことがおかしいというような状況の中でこのフリーターとかニートというそういう存在があるのではないかなというふうに、全く違った視点で私は今お話をさしていただいているんですが、そういうふうに思うんですね。  で、この中で、勇上さんの中で不安意識と、仕事の満足度とか失業の不安とか、こういうのを見てみると、物すごく、余り満たされていない、ほとんど満たされていないというのが多過ぎるんですね。希望があるんであれば、余り最初はこういう状況は来ないと思うんですね。途中から来るはずなんです。最初からこういうことが来ているというのは、そういう考え方もできるのではないかなと、私ちょっと思ったものですから、それぞれの立場でお聞かせいただければとちょっと思いまして。全然視点が違って大変申し訳ございません。
  73. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、順番、勇上参考人からお願いいたします。
  74. 勇上和史

    参考人(勇上和史君) 御指摘ありがとうございます。  若者の甘えの問題かと私とらえましたが、やはり先生から御指摘ありましたその不満の意識が非常に高いということは、現実を知らずに、やはり満たされている、自分の希望を持っているということは、希望といいますか、水準を持っていると、自分の中でのハードルを持っているということはあるかと思います。ですが、一方で、若者のその甘えが進んできて、若者の中でそういう層が増えてきたからフリーター、ニートが増えたかというと、私はそういった分析は非常に弱いんですが、かつてはそういった甘えがあってもエスカレーターに乗るように就職できたということだったと思うんです。非常に当たり前の御返事になるかもしれないんですが。しかし、そのパイが小さくなってしまってくると、やはりそうじゃない、熱心ではない層がはじき出されてしまうと。あるいは自分で、元々職業教育というのはそんなに強くやられてなかったわけですから、自分が将来何になりたいかというのは非常に就職活動の時点でしか、初めて考えたりするわけですから、そういったものを突然突き付けられる経済状況になったときに就職できないという層が増えてきたということかなと思うんです。  ですから、やはり若いときに希望が甘いということは一方でありながら、その甘い希望を許さないようになってきてしまっているということはあります。それがやはりフリーター、ニートなり、はじかれ、はじかれたというと変ですが、今までの大量の主要な部分を占めていた層から外れた人たちが出てきた理由かなというふうに思っております。  以上です。
  75. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございます。  じゃ、山田参考人お願いします。
  76. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) どうもありがとうございます。  若者、私も印象、印象というか調査等でも、きちんと将来の設計をしている若者が少ないというふうに私も思っております。逆に言えば、昔は考えなくてもよかったというのが一つあると思います。考えなくてもエスカレーター式に学校を出てればそれが保証されてきたということだったと思います。今は時代として考えなくてはならないのに考える訓練を受けてこなかった。つまり、親からも受けないし、家庭でも受けないし、学校でも受ける場がなかったというところで格差が出てきているんだというふうに思っております。  あと、私はパラサイトシングル論の提唱者ですので、今、日本若者というのは、やはり親と同居していさえすれば収入が低くても楽しく生活ができてしまう、それゆえに脱出する意欲が弱いという面があるということは確かです。  ただ、それはプッシュ要因とプル要因がありまして、私は逆に、仕事として活躍できる場がないから逆に親と同居せざるを得なくなって、親と同居せざるを得ないとその結果として、別に一生懸命やらなくてもいいじゃないかというふうになってしまうというふうのロジックの方が強いというふうに思っております。  以上です。
  77. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) では、水野参考人
  78. 水野和夫

    参考人水野和夫君) 非常に難しい御指摘ですので答えになるかどうか分からないんですけれども、私もやはり三十年ぐらい前に就職するときは、何も考えずにとにかく採用してくれるところに入ってよかったというので、全く、将来どうなるかなんて全く分からないまま就職しました。恐らく周り見ていてもみんなそんな状況だったと思います。  今、山田先生がおっしゃったように、昔は考えなくても、とにかくいったん入れば後はそういうレールに乗って、そこの就いた仕事でとにかく一生懸命やるということで、全員がそれでうまくできたと思いますが、今は何といいますか、それだけ社会がもっと豊かになって、所得水準が上がって、もし希望が合わなければもう少し待ってみたらいいかということになっていると思うんですけど、それはそれで日本全体が水準がやっぱりレベルアップした結果だと思いますので、昔はこうだったからといってまた昔に戻るというわけにも恐らくできないと思いますので、そうなりますと、やはり若い人たち希望を持ってですかね、希望を持って働けるような社会をどうやってつくっていける、つくっていくのかというのが大人の責任じゃないかなと思いますので、雇用の機会をどうやってつくり出すかというところですかね、そこにやっぱり帰着するんじゃないかなと。で、いったん若い人たちが職に就く、希望するかしないかは別にして、とにかく職、正社員に就けるというのがあれば、後はそこで若い人たちがどういうふうに切り開いていくかは、それはその人の個人だと思いますが、入口の段階で正社員になれないという、そういう状況はやっぱり非常に望ましくないなというふうに思います。
  79. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) はい、ありがとうございました。  それでは、大久保さん。
  80. 大久保勉

    ○大久保勉君 民主党の大久保勉です。  本日は、格差に関する様々な分析、本当に参考になりました。今回聞きまして、格差自身が非常に複雑な背景でなかなか特効薬がないのかなという印象を受けました。  そこで、今回、勇上参考人及び水野参考人に質問したい点があります。  一つは、格差が世代間を超えまして階層問題にしては少なくともいけないと、こういう思いなんです。そこで、ここに関しまして、勇上参考人の方でジニ係数に関しましていろんな分析をされていたんですが、こちらはどちらかといいましたらインカム、いわゆるフローの分析でありまして、いわゆるストック分析、資産における格差というのはどの程度日本社会に広がっているのか、こういった参考値がありましたら是非教えてもらいたく思っています。  また、もし格差があるとしましたら、それを配分問題という形で、いわゆる税金でもって再配分するという機能が重要じゃないかと思いまして、それがインカム、つまり所得における格差でしたらやはりこれは累進課税、所得税、もしこれが資産の方の格差が広がっているんでしたら相続税とか、いろんな対応が出てくると思います。また、金融資産が多いんでしたら資産に関する課税と。この点に関して分析するためにも、勇上先生のお考えを教えてください。  あと、続きまして、水野参考人に関しましては、いわゆる世界的にグローバル化、IT化が必然的に格差を拡大したと、若しくは競争だということで私は理解しておりますが、実際、私もそう思います。  先日、ODA視察でインドに行ってまいりましたら、世界銀行のオペレーションはインドでアウトソーシングされていると。アメリカの生命保険会社若しくは銀行もそうです。つまり、十分の一以下のところの労働力でもってアメリカ経済を支えていると。同じことが日本にも起こりますから、現代社会におきましては企業、人がもうボーダーを越えて競争していると。こういう環境下におきまして、一国だけで格差を是正するということが本当にできるのか、この点に関して水野先生の御認識及び御意見を是非とも聞きたく思います。  で、最後は、じゃもうそれで格差が解消できないとしましたら、最終的には税金を使いました所得再配分でやらざるを得ないのかなと。そしたら、必ずしも小さな政府路線というのは正しくないのかなと、こういったことを是非とも聞きたいと思います。  以上です。
  81. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) では、勇上参考人お願いします。
  82. 勇上和史

    参考人(勇上和史君) 御指摘ありがとうございます。  資産格差につきまして、私、本日の御報告で全く触れませんでしたが、やはりその格差の中で所得格差最初に非常に議論の話題になったわけですが、次いで資産格差の方に焦点が移ってきているように感じております。で、資産格差水準ですけれども、まあ持っている、ゼロの人ですね、例えば金融資産であれば貯蓄ですが、ゼロの人も最近増えているということが言われておりますし、それを踏まえてやはり格差水準というのは所得格差を上回っているということがジニ係数ですけれどもあります。で、ただその推移については、格差調査ごとによって増えたり減ったりという傾向があります。  ただ、それを分解した研究がございまして、それを見ますと、所得格差については、高齢者が増えたことが格差拡大の原因だということが言われていますが、同じ手法を使っても、金融資産格差に関しては高齢化では説明できないと。むしろ、年齢内で格差が拡大していることが原因であるというふうなことが言われておりまして、特に高齢層と若年層ですね、若年層での貯蓄、例えば金融資産ですと貯蓄ですが、格差が広がっていると。  で、まだ確定的な答えが出ていないようですので私も確定的なことは言えませんが、特に高齢層で貯蓄格差が広がるというのは、非常に貯蓄がある人とまあ最後の、最後と言ったら失礼ですが、人生の終わりの方で貯蓄を切り崩していくという人、あるいはためてこなかった人とか、まあ格差は広がるんですが、若年層で高いというのはどうもその相続関係があるのではないかと。移転ですね、世代間の移転があるのではないかということが言われておりまして、そこを十分に検討した上で、先ほど申し上げましたように、その労働所得で見ましても若年層では格差が拡大しているわけですから、ましてその自分の能力や努力とは関係のない相続の話で格差が生じるというのはよろしくないということもありますので、その判断の下ではやはり相続税の問題が、強化の問題が出てくるのではないかというふうに思っております。はい。
  83. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) はい。ありがとうございました。  それでは、水野参考人
  84. 水野和夫

    参考人水野和夫君) 格差グローバル化とIT化という、その原因として生じている可能性が高いと思いますので、そうなりますと一国だけで、一国だけでその格差が是正させていくことができるかどうかという点につきましては、実際には私も難しいと思います。一国だけで是正しようとしましても、企業はより安い労働力を求めて海外に結局行ってしまうということになるでしょうから、なかなか一つの国だけで是正するということはできないと思いますので、そうなりますと、やはりあとは税制ということにやっぱりなってくると思います。  で、小さな政府というのは、恐らく無駄遣いはみんなやめましょうというのはだれでも納得できると思いますので、それは小さな政府だと思うんですけれども、これだけ格差が広がってくれば、ある程度格差を是正しようという、そういう政策は恐らくそんなに日本の中で拒否される私は政策じゃないと思いますので、そういう理由で格差是正の方で税率を上げていこうというのだったら、私はそんなに無理な政策じゃないと思いますので、小さな政府というのも、単に規模を全部金額ベースで縮小していけばいいというものではないというふうに私は思います。
  85. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  では、谷博之さん。
  86. 谷博之

    ○谷博之君 まあいろいろ参考人の先生方からお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。  私、ちょっと場違いな話をするようになるかもしれないんですが、山田参考人にちょっとお伺いしたいんですが。実は、若者を中心にしたいろんなそういう現実の問題というのが出されておりますが、これ、ちょっと分野は違うんですが、私、最近いろんなところでいろんな本を読んだりしておりまして、心理学の本をちょっと何冊か読んだことがあるんですが、一九三〇年代から四〇年代ぐらいに掛けてアメリカを中心にしてアルフレッド・アドラーという心理学者がいて、彼がいろんなことを言ったり、学会で学説発表しているんですが、一言で言えば、悪魔のささやきと天使のささやきということで、要するに先生が先ほど触れておられますが、努力しても駄目な人、それから自分は何やっても駄目だと。そういうふうな心理的に後ろ向きといいますかね、そういうふうな生き方をしている若者が非常に多いのかなというふうに思うんですが、そういう中で、今までのそういう心理学の経過というのを見ますと、そういう原因、何でそうなったかということを解明しないと次に行かない。そういうふうなことではなくて、そのアドラーは、失敗しても失敗しても天使のささやきを耳元でささやいて乗り切っていくというか、勝ち抜いていくというか、生きていくというか、そういうふうなことをかなり、言うなら説いているわけですよね。  そういう、この心理学というのは一つの、これはどういうふうに言ったらいいんでしょうかね、手段と言ったらいいんでしょうか、そういうふうなこともあるかと思いますが、何かそういうふうな現実を肯定しながら、そこに何か前向き志向ができるような、そういうふうな一つの学問体系といいますかね、そういうようなものをちょっと考えられないのかなというふうな感じが実はしているんですが、そこら辺の何か研究なり考え方みたいなものがあれば、ちょっと聞かせていただきたいなと。  それからもう一点は、勇上参考人がお話ありましたように、ジニ係数について詳しく説明していただきましたけれども、どうも世界的に見ると、日本のジニ係数というのは非常に格差が広がってきているというふうなことを言われておりますけれども、全体として、まあ言うならば、北欧を中心にしたそういう地域と、それから特にアメリカ日本などが、言うなら世界的にそういうデータとしてランク付けなんかもされているような、そういう数字も実は出ておりますけれども、日本の今のそういう実態というのはどういうところで推移しているのかということを参考人にお聞かせいただきたいと思います。  以上です。
  87. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 最初の御質問は山田参考人でよろしいんですか。  山田参考人、お願いいたします。
  88. 山田昌弘

    参考人山田昌弘君) ありがとうございます。何か願ったりの質問でございまして、今、東大の玄田有史様、ニート問題で玄田有史さんが中心となって今、希望学プロジェクトというのをやっておりまして、人間はどういうときに希望を持って、特に若者に関してということに関して調査研究を続けております。  でも、その中で、まあ、もう明らかになったというのは、その天使のささやきというのは、キリスト教国でしたら神様がささやいてくれるんで構わないんですけれども、やっぱりそういう宗教的基盤がないところでは天使のささやきというのは仲間なんですね。つまり、周りの仲間、職場の仲間から、おまえ頑張れとか、そういうふうに言われることというのが必要なわけです。そして、まあ、調査等で明らかになっているのは、フリーターとかニートという立場にいる人は余り仲間にも恵まれていない、職業にも恵まれていないんだけれども、友達関係、その他も含めた中にも恵まれていないという特徴があるというところまで分かっております。  あと、二番目のジニ計数なんですが、まあ日本社会では多分諸外国に比べて、特にヨーロッパ諸国に比べてジニ計数は高めにずっと出てきたと思うんです。それは一時点で、日本は年功序列でしたので、若いころは低いけれども中高年になると高くなるということで、ジニ計数が高かったんだと思います。となると、昔はジニ計数が高いとしても、若いうちは低くても将来高くなるというふうな見通しが持てれば、それは全然問題なく納得できたんだと思うんですけれども、今起きているのは、もう若い人の間から差が付き始めているという事態を私は憂慮しているところでございます。
  89. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 山田参考人だけでよろしいんですね、答弁。
  90. 谷博之

    ○谷博之君 勇上参考人にも、もし。勇上参考人にお願いいたします。
  91. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 勇上参考人。  失礼いたしました。
  92. 勇上和史

    参考人(勇上和史君) 御指摘ありがとうございます。  本日の御報告でジニ計数の国際比較というのをこれまた御報告申し上げませんで、その点について御指摘いただいたものと思います。  最近、やはり二〇〇五年ですね、昨年度です、昨年ですか、OECDが出した報告というのがかなりいろんなところで影響を持っているようでして、日本アメリカとかイギリスに次いで、フランスとかドイツよりも不平等度が高いと。アメリカ、イギリスに次いで非常に高いというふうに言われて、計測結果が出たというふうになっております。  やはり所得格差が拡大したかどうかというのを国内で見る場合も、非常にその論争が起きるぐらい非常に難しい数値です。まして、国際的に見るときに、一つの手続は、私レポートを読みまして一つの手続は踏んであるなと思ったんですが、もう一つの手続をやっぱり踏んでないと。といいますのは、OECDの中で六十五歳以上の高齢者の比率が高いのはスウェーデンとイタリアと日本なんです。で、アメリカは移民の流入もありますから、非常に人口の若いということで言いますと、若い国と、年を取ったといいますか、人口が非常に高齢者が多くなっている国というのを比較する場合は、やはりその人口構成というのはちゃんと見ないといけないだろうと。その上で順番がどうかということを見ないといけないだろうとは思います。  ですから、それは、昔日本が平等社会だと言われたときの統計も、もう同じように日本が非常に若かったころですので、非常にまあ下から何番目というふうに言われ、ランク付けされたころの話ですが、それもやはりそのデータなり何なりを見ていくと真ん中ぐらいじゃないかという話が、どうも私がやってみたところそうでしたし、ほかの方も何度か言われております。  ですから、どうも先進国みんが拡大傾向にあるというのは水野先生がおっしゃったとおりですし、その中での日本のランク、つまり順番ですが、はどうも激変したということはなさそうではないかと今のところは思っております。ですから、真ん中辺りを推移しているのではないかなと。  ですから、まあここはちょっと確定的なお答えができないところでございます。失礼します。
  93. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それじゃ、北岡秀二さん。
  94. 北岡秀二

    ○北岡秀二君 各参考人の先生方、本当に貴重な御意見ありがとうございました。  ただいまの質問で実は終わる予定だったんですが、私、レジュメの記述で一点だけ引っ掛かる、引っ掛かるというか聞いてみたいところがありまして、もうおまけの質問ということで聞かしていただきたいと思います。  水野参考人のレジュメなんですが、一番最後に記述されていらっしゃる、技術史上最大のなぞ、中国が十四世紀以降なぜ技術的優位を持続できなくなったのかというところで、中国の王朝支配という記述をされていらっしゃいますが、これは何をおっしゃりたいのか。前と後で何か示唆に富むような何かあるんでないかなというような書きぶりでございますので、是非ともこれ具体的にお話をいただいたらと思います。  私はこれだけです。よろしくお願い申し上げます。
  95. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 水野参考人。  私も関心持ちました。
  96. 水野和夫

    参考人水野和夫君) 済みませんでした。  これは、全要素生産性を決める要因、すぐその上に教育とか研究開発費、社会資本と書いて、そのすぐ下に経済社会制度とありまして、その経済社会制度がいかにTFPを決めるのに大きな要素だったかという一つの例が、中国の王朝支配のときにはいろんな技術革新が起きたんですけれども、それを社会に還元することができなかったと。王様が全部決めて、この技術は使えるか使えないかなんか一人で判断してて、それで普及しなかったそうであります。一方、ヨーロッパの方はもう議会制民主主義ができて、民主主義ですから、この仕組みがいいか悪いかというのはみんなで話し合いながらということで、いろんな、たしか中国が発明したものがほとんどヨーロッパで普及していくということがありましたので、必ずしも技術革新だけすればいいわけではないということで、社会制度の仕組みが非常にこのTFPを決める一つの例でしたというので書いただけであります。
  97. 北岡秀二

    ○北岡秀二君 ありがとうございました。
  98. 水野和夫

    参考人水野和夫君) ですから、今の社会制度も非常に大事なことだと思います。
  99. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  他に御発言もなければ、以上で参考人に対する質疑を終了いたします。  水野参考人山田参考人及び勇上参考人には、御多用の中、本調査会に御出席をいただき、誠にありがとうございました。  本日お述べいただきました御意見は今後の調査参考にさせていただきたく存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  次回は来る二十二日午後一時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十一分散会