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2006-05-08 第164回国会 参議院 環境委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年五月八日(月曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  五月八日     辞任         補欠選任      大石 正光君     神本美恵子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         福山 哲郎君     理 事                 関口 昌一君                 橋本 聖子君                 岡崎トミ子君                 鰐淵 洋子君     委 員                 大野つや子君                 西田 吉宏君                 真鍋 賢二君                 足立 信也君                 神本美恵子君                 小林  元君                 広野ただし君                 草川 昭三君                 市田 忠義君                 荒井 広幸君    事務局側        常任委員会専門        員        渋川 文隆君    参考人        島根県中山間地        域研究センター        鳥獣対策グルー        プ科長      金森 弘樹君        江戸川大学社会        学部教授     吉田 正人君        兵庫県立大学自        然・環境科学研        究所生態研究部        門助教授     坂田 宏志君        株式会社野生動        物保護管理事務        所代表取締役社        長        羽澄 俊裕君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○鳥獣保護及び狩猟適正化に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 福山哲郎

    委員長福山哲郎君) ただいまから環境委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、大石正光君が委員を辞任され、その補欠として神本美恵子君が選任されました。     ─────────────
  3. 福山哲郎

    委員長福山哲郎君) 鳥獣保護及び狩猟適正化に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、参考人から意見を聴取いたします。  本日は、本案審査のため、参考人として島根県中山間地域研究センター鳥獣対策グループ科長金森弘樹君、江戸川大学社会学部教授吉田正人君、兵庫県立大学自然・環境科学研究所生態研究部門助教授坂田宏志君及び株式会社野生動物保護管理事務所代表取締役社長羽澄俊裕君の四名に御出席いただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案審査参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  本日の会議の進め方でございますが、まず、金森参考人吉田参考人坂田参考人羽澄参考人の順でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は、意見質疑及び答弁ともに着席のままで結構でございます。  それでは、まず金森参考人から御意見をお述べいただきます。金森参考人
  4. 金森弘樹

    参考人金森弘樹君) 島根県中山間地域研究センター金森弘樹と申します。  今回の鳥獣法改正案に対しまして、野生動物保全農林業被害対策推進観点から、基本的に賛成の立場からの意見を述べさせていただきます。  パワーポイントを用意しておりますので、そちらをごらんいただきながらお話しさせていただきます。(資料映写)  まず、私が所属しております島根県中山間地域研究センター概要役割について簡単に述べさせていただきます。  島根県中山間地域研究センターは、平成十四年に全国で初めて中山間地域の振興に係る総合研究機関として設置され、地域研究、農業、林業、畜産を中心とした分野横断型の研究を行っております。また、Web—GISを活用した住民主体情報共有を目指した取組を展開しております。  私が所属しております鳥獣対策グループでは、イノシシニホンジカ、ニホンザル及びツキノワグマについて、適正な保護管理効果的な被害対策確立についての調査研究を行っております。  次に、島根県の鳥獣被害状況対策について述べます。  本県では、平成八年には、この図に示しておりますように、鳥獣による被害が三億三千万を超えておりましたが、平成十七年には、ほぼ十分の一の四千万円余りにまで減少をいたしました。特に、この赤い部分ですね、イノシシ被害が大きいというのが島根県の特徴であります。  このように大きく被害を減らすことができたのは、イノシシニホンジカについて特定鳥獣保護管理計画を策定して、適正な個体管理計画的に実施したこと、また集落を囲うなど広域にわたって効果的な防護さく設置するなどの被害対策を多くの地域で実施したこと、さらに耕作地周辺の草刈りなどの生息地管理モデル事業などによって推進した効果だと考えております。  これがイノシシ特定計画概要を示しておる図です。この図に示しておりますように、一九七〇年代から島根県におきましてはイノシシ捕獲数増加してまいりまして、平成十六年度には一万四千六百頭を捕獲するまでに至っております。このように、田んぼの周り、非常に繁茂した状況であったんですけれども、モデル事業におきまして、こういうふうに幅三十メートルにわたってきれいに環境整備を行ったというふうな状況であります。  次に、ツキノワグマについてでありますけれども、西中国地域ツキノワグマ絶滅が危惧される地域個体群ということで指定されておりますが、この赤い線で示しております範囲が生息地域に当たります。このブルーで塗ってある部分生息中核地域に当たります。  ツキノワグマにつきましては、西中国地域個体群を将来にわたって安定した状態で維持、存続するとともに、農林作物への被害減少させ、人身事故の回避を図りながら人との共存を目指しております。そのために、広島県、山口県とともに三県で保護管理計画の指針を策定し、それに基づいた統一的な特定鳥獣保護管理計画平成十五年から施行いたしました。また、三県でツキノワグマ保護管理対策協議会設置し、保護管理に係る重要事項を協議し、関係者共通認識の下で地域個体群一体となった保護管理対策に努めております。  なお、島根県では、ツキノワグマ民家周辺へ出没するのを防ぐために、人里周辺域を約二十五メーター幅に伐採して緩衝帯を形成する事業本年度事業で実施する予定にしております。  次に、平成十五年度から実施しておりますしまね鳥獣対策指導員事業について御説明いたします。  これまでは農家等被害対策について、誤った知識技術によって必ずしも被害減少につながらない現状がありました。そこで、被害現地において農家を直接指導できる人材育成を目指し、鳥獣対策専門員指導員の養成を行って、被害対策などの正しい知識技術普及に努めました。現在、指導員指導する鳥獣対策専門員は県の出先機関に二十五名程度配置し、また市町村には現地鳥獣対策指導を担当する鳥獣対策指導員を二百名程度配置しております。  なお、鳥獣対策専門員指導員研修の受講によって認定しておりますが、現場普及指導がしやすいように、このようなイノシシ対策のビデオ、DVD、あるいは獣害防護さく設置マニュアル、そういうものを携帯しております。  これが鳥獣対策専門員指導員農林家、それから県庁、中山間地域研究センターそれぞれの情報の伝達、あるいは指導の流れを示したものです。  また、この写真防護さくを実際に設置してみて、専門員指導員研修を行っている様子であります。  島根県では、平成十七年に構造改革特区によって網・わな免許特区をスタートさせました。島根県の狩猟者免許所持者数は、近年、この図に示しておりますように、三千数百名程度で推移しているものの、五十歳代が三五%、六十歳代以上が五〇%を占めるように、高齢化が進んでおります。そのため、有害鳥獣捕獲の担い手となる狩猟者免許所持者を将来にわたって確保するために、この特区について認可をいただきました。  これまで、農林業者が自らの耕作地イノシシから守るためにわな免許を取得する場合、取得目的ではない網の知識操作方法を習得し、さらに狩猟対象鳥類の見分け方などについての知識を持つ必要があるなど、受験者には大きな負担となっておりました。そこで、網とわな免許を分けることによって、農林業者イノシシ捕獲するための狩猟免許取得負担軽減を図りました。このことによって、平成十七年度は前年に比べて約三倍の新規免許取得者を得ることができました。そのため、本県での狩猟免許所持者数はやや増加傾向にあります。なお、島根県では、特区を設けたことによって従来の免許と比べて試験内容が軽減されたことから、本年度から特区免許取得に係る手数料を減額する予定です。  次に、本県での状況やこれまでの取組などから、今回の法改正について意見を述べます。  まず、網・わな猟免許網猟免許わな猟免許に分離することについてですが、本県での特区推進中の事例からも分かるように、全国的に減少している狩猟免許所持者確保には大きな効果があると考えます。また、鳥獣による農林水産業被害対策のためには、わなによる捕獲は必要であると思います。島根県の状況から、特に新規狩猟者が比較的簡単にイノシシ捕獲できるはこわなによるイノシシ捕獲数増加に寄与するものと考えます。足くくりわなについては、設置場所設置方法に熟練が必要であり、イノシシを多数捕獲するためには免許を取得してからある程度経験年数が必要なようです。  二番目に、休猟区においてシカイノシシなどの特定鳥獣狩猟が可能になることについてですが、これまで休猟区に生息するこれらの特定鳥獣捕獲ができないために特定計画捕獲目標頭数が達成できない地域があったと推測されますので、この法改正特定計画目標達成に対して有効であると考えます。  三番目に、入猟者承認制度についてですが、例えば孤立個体群では、捕獲し過ぎると個体群の存続に影響があると考えられますが、かといって狩猟圧を掛けないと被害が減らない場合があると思います。そのような地域では、入猟者調整を図ることによって捕獲総数をコントロールできるようになるため、狩猟による個体管理が可能となり、特定計画による目標達成が容易になると考えます。  四番目に、わな猟に関する適正化についてですが、人への安全を確保する観点から、くくりわなとらばさみなどの危険性の高いわな使用禁止又は制限する区域を指定することは有効だと考えます。また、網やわなの違法な設置を的確に防止するために、狩猟において義務となっております網・わな猟具への架設者名等掲示を、許可による捕獲を含めたすべての網、わな設置者の氏名、住所等の表示を義務付けることは、わな猟を適正に推進するためのセーフティーネットだと考えます。島根県では、既に条例、鳥獣保護法施行細則によって狩猟者有害捕獲許可者のいずれも網、わなへの標識の設置義務付けており、違反捕獲防止等に大きな効果を上げております。  以上で私の意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。
  5. 福山哲郎

    委員長福山哲郎君) ありがとうございました。  次に、吉田参考人にお願いいたします。吉田参考人
  6. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 御紹介いただきました江戸川大学吉田でございます。  日本自然保護協会の理事並びに野生生物保護法制定をめざす全国ネットワークの世話人を務めております。非常に長い名前ですので野生ネットと省略させていただきますが、このネットワークは、平成十一年の鳥獣保護法改正における議論をきっかけに、全国野生生物保護にかかわる四十五団体が鳥獣保護法抜本改正を含みます野生生物保護法体系体系的確立を目指してつくったネットワークでございます。平成十六年には鳥獣保護法改正の要点を「鳥獣保護法 ここを変えたい九項目」という冊子にまとめました。これは参議院環境委員会調査室がまとめられた参考資料の百四十三ページに載っております。本日は、その中から五点に絞って意見を申し述べさせていただきます。  平成十一年の鳥獣保護法改正は、これまで有害鳥獣駆除で場当たり的に対処してきたのに対して、科学的、計画的保護管理を行う特定鳥獣保護管理計画制度、これも長いので特定計画と呼ばさせていただきますが、これを導入したことです。しかし、地方分権一括法に基づく捕獲許可権限の自治体への移譲が同時に審議されたため、科学的、計画的保護管理が担保できないとして強い反対の声が上がりました。そのため、三年後の見直しを定めた附則を付けて採択されたものです。  そこで、まず特定計画の評価からお話しいたします。  野生生物保護管理には、この図にかきましたように、個体管理被害管理生息地管理三つの柱がございます。昨年、この野生ネット都道府県に出しましたアンケートの結果からも、特定計画シカなどの個体調整計画としては効果を上げておりましたが、被害対策生息地管理というものについては十分効果を上げていない、あるいは効果測定を行っていないという県が多いということで、十分な効果を上げているとは言えませんでした。  これは、被害管理生息地管理などは農林水産部局が担当している場合が多く、鳥獣保護を担当する部局との連携が十分でないためだと考えられます。被害管理生息地管理をしっかり行うためには、現在のように単独の県内で単一の種を対象として作成する特定計画では十分とは言えません。むしろ、広域の圏で複数種対象とした地域管理計画に統合した方が実効性が上がるのではないかというふうに考えております。  具体的に申し上げます。例えば、一つ山系が二つの県にまたがっているといたします。その山系野生生物生息している場合、現在は都道府県ごとの、こちらのA県B県都道府県ごと特定計画を策定することとなっています。そのため隣県との調整が十分でないという場合もございます。また、一つの県の中でもシカイノシシ、猿、クマなど複数特定計画を作っている場合、特定計画間で調整仕組みが必要ですが、そういった仕組みを持っているとお答えになったのは、丹沢大山保全計画を作った神奈川県など五県のみでした。  しかし、野生生物は県境などお構いなしに移動いたします。農林業被害を防ぐ防護さくも、一つ防護さくで猿、シカイノシシ、それぞれの防護役割を果たすというものがつくられております。こういったように、猿、シカイノシシなどが一緒に生息する地域では被害管理生息地管理を強化するため、都道府県知事はこれまでの特定計画を統合して地域管理計画を策定することができる、あるいは隣県知事と共同で地域管理計画を立てることができるというような法改正が必要だと思います。  次に、人材育成配置の話をいたします。  現在、野生鳥獣捕獲を大きく狩猟者に依存しておりますが、狩猟人口の推移を見ますと、一九七〇年代に五十万人を超えていた狩猟者は二〇〇〇年には二十万人近くまで減り、年齢も五十歳代、六十歳代以上が大半を占めるなど高齢化が進んでおります。もう十年もいたしますと、狩猟者に依存して野生鳥獣捕獲をするということが非常に困難な時代になってまいります。  平成十四年の鳥獣保護法改正生物多様性確保目的に入りました。また、この鳥獣保護には希少種保護ですとか、外来種駆除ですとか、野生生物問題非常に多様化しております。そこで、野生生物科学的保護管理には専門家配置がどうしても不可欠になってくるわけでございます。  平成十一年に環境庁が設置した野生鳥獣保護管理検討委員会平成十六年末に報告書をまとめました。私もその一員として参加したわけでございますが、この中では野生生物保護管理人材育成確保が最重要課題に上がっております。また、当時、環境相は、野生生物保護管理資格制度創設を今回のまとめの目玉だと発言されていらっしゃいました。また、野生ネットが取りました都道府県アンケートでも、人材育成確保というのは一番の要望項目として上がっておりました。  ところが、いざ野生生物保護管理資格創設するという段になりますと、国家資格の新設は非常に難しいとか予算がないなどの理由で専門家配置は聞かれなくなり、代わって、農林業者が自衛のためにわな免許を取りやすくするという改正にすり替わってしまいました。ここで改めて、野生生物専門家配置を促進するため、野生生物保護専門員国家資格創設と、この資格を持った人材都道府県担当部局鳥獣保護センターなどの現場配置されることを提案いたします。  人材配置予算がないことが専門家配置の妨げになっていると言われますが、現在の目的税狩猟税の中からだけでも、職員費十八億円、放鳥費四億円、鳥獣保護員委嘱費六億円、合わせまして二十八億円の原資がございます。これを人材の再配置原資とすれば、自然保護センター専門職員鳥獣保護現場スタッフ増加に使える原資を生み出すことは不可能ではありません。また、現在の鳥獣保護法でも、狩猟免許の種類を一般狩猟免許野生生物保護管理免許に分けるなどの工夫も可能であると思います。  三番目に、わなのお話をさせていただきます。  今回の改正目玉一つは、網・わな免許網免許わな免許に分けることによって、わな免許を取りやすくするものと言われています。しかし、わな鳥獣を無差別に捕獲いたします。希少野生鳥獣さえ、その被害に遭っています。また、ホームセンター、インターネットでだれでも狩猟免許を提示せずに購入できるため、無免許、無許可わなが野放しにされているのが現状です。  昨年十二月に環境省が、都道府県免許掲示義務付けるように通知を出しましたけれども、地球生物会議、ALIVEの調査ですと、七〇%の県が受け取っただけでその後は何もしていないということでございます。したがって、わな免許創設の前に、危険なわなであるとらばさみや一部のくくりわな使用のみならず販売も禁止すべきであると思います。これは、絶滅のおそれのある野生動物である長崎県のツシマヤマネコ、それから北海道のオジロワシがとらばさみに掛かってしまったという写真でございます。くくりわなでも、ストッパーが付いていないもの、また細いワイヤーを使ったもの、イノシシ用とらばさみにツキノワグマが掛かって、誤って掛かったとしても野生に復帰させることは困難です。これがそういったわなツキノワグマが掛かってしまった場合で、そういった場合にはやむを得ず射殺するということをせざるを得ません。  このように、目的としない動物わなに掛かることを錯誤捕獲と言いますが、錯誤捕獲個体報告義務がないため、その実態が明らかとなっていません。アライグマ、都道府県アンケートを取った結果、錯誤捕獲の統計のある六県だけで、昨年、六十九頭のクマ錯誤捕獲されたそうです。錯誤捕獲報告義務付け野生復帰義務付け錯誤捕獲防止のための見回りの強化、違法なわなをだれでも撤去できるようにすること、また、わなだけではなくて、鳥獣保護法違反の罰則を外来生物法と同様に、懲役三年、罰金三百万円以内まで引き上げるなどが重要だと思います。  四番目に、昭和五十三年の自然環境保全審議会で大きな議論となった狩猟の場の話をいたします。  この審議会では、鳥獣保護区、銃猟禁止区域など狩猟制限する場を指定する方式から、猟区、可猟区など狩猟が可能な場を指定する方式への転換が議論されました。簡単に言えば、ゴルフは、昔は牧場とか野原とかどこでもできたものを、ゴルフ場でするというふうに決めたようなものです。しかし、これは合意には至りませんで、現在も狩猟期間中であれば鳥獣保護区や銃猟禁止区域などを除けばどこでも狩猟ができます。猟区以外で狩猟ができる場所、これを乱場と呼んでおります。  しかし、近年、狩猟者高齢化もあり、狩猟事故増加しております。農作業や登下校時などに弾が飛んでくるといった、乱場における第三者への事故も発生しております。栃木県では登下校時に弾が飛んできた、あるいは滋賀県では学校の体育館に弾が飛んできたという事件が起きております。また、乱場における狩猟自由狩猟であるため入猟者数制限などがしにくく、科学的な保護管理につながらないことが問題となっております。このように、危険防止という観点からも、野生鳥獣科学的保護管理という観点からも、狩猟の場の在り方を見直すべき時期に来ております。  具体的に申し上げます。現在は狩猟期間中であれば鳥獣保護区あるいは銃猟禁止制限区域、市街地、公道などを除けばどこでも狩猟ができます。猟区以外で狩猟ができる場所乱場と呼んでおります。これに対して、国土を野生生物保護ゾーン管理狩猟ゾーン、人と野生生物共存ゾーン三つに分け、現在、乱場とされている区域では人と野生生物とのあつれき解消のため、農林被害防除科学的根拠に基づく捕獲を行うとする、これが野生ネットが提案する制度であり、平成十四年の国会に四万人の国会請願を、署名を提出いたしました。  しかし、一方で狩猟の場の減少する声、あるいは農林業被害の拡大を危惧する声もあります。そこで、狩猟による事故防止科学的野生生物保護管理目的として、全国流域ごとにこのようなジグソーパズルのようにすき間なく分けて、このパズルごと保護管理方針狩猟方針を定めることで乱場をなくす方向で検討すべきではないかと思います。これは既に丹沢や房総などのシカ問題でも既に試行されておりまして、法的な根拠を与えれば科学的保護管理に資するものと思われます。  本改正案では、わな制限区域休猟区における特定鳥獣捕獲都道府県知事承認による狩猟区域の設定が提案されておりますが、これは言わばこの都道府県知事による区域指定に当たるわけですけれども、ますます制度としては分かりにくくなっています。むしろ、都道府県知事鳥獣保護事業計画を作る、その中で乱場を区分して、その区画ごとに独自の計画を設定できるという方が分かりやすいのではないかと思います。  五番目に、平成十四年の法改正鳥獣保護法第一条に生物多様性確保が盛り込まれ、第二条で鳥獣とは鳥類又は哺乳類に属する野生生物という定義がなされたことは画期的でした。一方で、八十条で、他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣適用除外とされ、ジュゴン、アシカ、アザラシなどが対象とされる一方で、トド、ラッコ、オットセイ、クジラ類などほとんどの海生哺乳類適用除外とされています。しかし、対象とされた鳥獣適用除外とされた鳥獣にほとんどはっきりした区別はございません。例えば、ジュゴン対象となっている一方、クジラの中ではスナメリのようにジュゴンと同じように沿岸で繁殖しているものもございます。ですから、この適用除外というものについて科学的に見て除外することが適切なのかどうか、定期的に見直す科学委員会設置して、将来的に改正法によりすべて鳥獣保護法対象とすべきではないかというふうに考えております。  最後に、野生生物と人との共存を実現するためには野生生物保護基本法が是非とも必要であるということを申し上げて、締めくくりたいと思います。  野生生物と人間との共存は、個体管理被害管理生息地管理三つ一体となって初めて実現されるものです。それには数多くの法律が関係されておりまして、関係する省庁も複数にまたがっております。そこで、野生生物保護に関する国の方針を定め、専門家配置や市民参加を強化する基本法がどうしても必要なのです。こういった野生生物保護基本法を議員立法によって是非早期制定していただくことをお願いして、私の発表を終わります。  御清聴ありがとうございました。
  7. 福山哲郎

    委員長福山哲郎君) ありがとうございました。  次に、坂田参考人にお願いいたします。坂田参考人
  8. 坂田宏志

    参考人坂田宏志君) 兵庫県立大学坂田といいます。  私からは、兵庫県、私は兵庫県の野生生物保護管理のための調査研究、それと、それを地方自治体でやっていくための体制づくりにかかわっております。そういう立場から意見を述べさせていただこうと思います。  鳥獣保護法をめぐる私自身の現状認識ですけれども、被害対策生物多様性や生態系の保全についての課題は深刻で複雑になってきていると思います。これは、これまでこちらの場でも議論されてきたことだと思いますけれども、野生動物生息状況なり被害状況というのは、場所によっても、時期によっても大きく変わっていくものです。例えば、外来種なんかはそうですけれども、三年たてば、もうその被害状況生息状況というのは圧倒的に増えてしまうというような状況です。  そういうような中で、動物の種類や地域状況に合わせた対応が絶対に必要になってきます。その中で、一九九九年の特定鳥獣、あの保護管理計画制度などを含めた改正以来、地域ごとに科学的、計画的な施策を実施するという方向での改正、今回もその流れにある改正だと思います。その中で、一方で地方自治体の責任や負担というのは非常に増えてきて、地方自治体の担当の方は、被害の問題、保全の問題、いろいろある中で、なかなかきちんとした情報も集まらない、予算確保しにくい、そういう中で四苦八苦しながら何とか状況の改善をという方向で努力しているというのが現状だと思います。  今回の改正に対する認識ですけれども、捕獲制限のための入猟者数の承認制度ですとか、休猟区における捕獲の特例措置、特定猟具を指定して、区域と猟具を指定しての禁止や規制というようなことで非常に対策のための選択肢が増えて、細かい設定をして地域地域の事情に合わせた対策を取れるようになるという方向の法改正だと思います。これは是非、今の野生動物対策にしても、保全に対しても必要なことだと思います。  ところが、一方で、選択肢が増えて制度が高度になっていったことで、それを判断する、それを決めていく行政機関の方ではより高度な情報とそれを判断できる能力、あるいは判断したとして、その意思決定のための合意形成ですね、いろんな意見の方がおられますから、その辺の合意形成をしていくかなりの力量が必要になってくるんだろうということを強く感じています。それをサポートする体制や人材というのが非常に大きな課題だなと思っていますのは、先ほど吉田参考人の言われたことと同じことです。  それで、人と野生動物のあつれきが増える要因ですけれども、先ほどこれまた吉田参考人が言われたことと同じ、個体管理被害管理生息地管理につながっていくことですけれども、大きく分けて三つの要因があります。  一つ動物の数です。これは分かりやすくて、動物の数が増えれば被害も増えるでしょうし、減れば被害も減るでしょうというようなことですね。あと、動物の数が減り過ぎれば、絶滅という意味でもう一つの別なあつれきになります。それともう一つ動物の数が幾ら同じであっても、動物の行動が変化して、例えば里に慣れて出てくると。そうすると、少ない動物でも大きい被害を、イノシシでも何遍も出てくればこれは甚大な被害になるわけです。そういう意味で、数とは関係なく行動の変化というのも被害を、人間とのあつれきを引き起こす大きな要因になります。それで、最後の一つが環境の要因です。これは生息環境が保全されなければ野生動物生きていけませんし、あるいは環境の攪乱なり食物が急になくなった、食べる物が急になくなったということで里に出てくるということもあり得ます。これは、やはり数の問題や行動の問題とも連動することですけれども、独立に生息地の管理ということがあると思います。  これらの要因がどれだけ影響して今の被害なりあつれき、あるいは絶滅の危惧なりが生じているかということをきっちりと判断しないといけないわけです。これを間違ってしまいますと、例えば動物の数は減っていないのに、行動が変化したり環境の問題で里に出てくるようになったという、本当はそうであるのに勘違いして、よく動物が出てくるようになったから数が増えてしまったんだと勘違いして個体調整をしてしまうと、これは被害は収まらないし、最後の一頭まで捕らないと被害は収まらない、絶滅も危惧されるということになります。  また、逆の勘違いもあります。動物は数が増えてきて、環境条件もいいし、それで被害が出ているのに、これは環境条件が悪いせいだと、そういうふうに勘違いをしてしまって山の中でのえさの供給を増やす。そういうことをすると、今度は動物の数、増えて出てきた動物の数をもっと増やすことになります。そうなってくると、また間違った判断ということがあり得るということで、保護管理のためのオプションというのは増えていくわけですけれども、その選択を誤ると対策を誤ることにつながるんではないかというふうなことがあります。  それで、例えば、私の方でシカイノシシの例を簡単に挙げて説明します。  シカイノシシも兵庫県では非常に農業被害多いですし、シカの場合は、これ、下の写真はウバメガシの林、備長炭を作るウバメガシの林なんですけれども、これがシカの食害のために全く再生しないという状況になって、大台とか尾瀬などではシカの、国立公園の中で植生がシカのために衰退していくという事情がありますけれども、これは国立公園じゃなくても普通の里山なり森林の中でシカによる食害で自然の植生が衰退していくということもあります。イノシシの方は農業被害が深刻だということですね。  兵庫県の中でイノシシシカ状況がどうなっているかというのを次のグラフ、これは赤いところで多いという。ようやくこの調査が完了してイノシシシカの分布図出せるのは、これ、いる、いないで分布図を作ってみますと、兵庫県のほとんどの地域シカもいる、イノシシもいるというふうな、いる、いないレベルの調査というのは割と簡単にできるんですけれども、こういうふうに密度の勾配、どこに多くてどこに少ないかということをデータを挙げているのはかなり大変なことになるわけです。それを挙げてみますとはっきり見て取れると思いますけれども、イノシシのいるところとシカのいるところが全く分かれていますね。イノシシの多いところでシカは少ない、シカの多いところでイノシシは少ないという状況です。  この辺の要因をなぜかと考えてみます。次の図が、左の図を見ていただけたらと思いますけれども、緑に濃い緑と薄い緑、分かりづらいと思いますけれども、あります。濃い緑は杉、ヒノキの植林地です。薄い緑は二次林だったり雑木林だったり、主にコナラの林が多いんですけれども、そういうところです。振り返って見てみますと、杉、ヒノキの多いところにイノシシはほとんどいないということが分かります。シカの方は、杉、ヒノキの多いところでもシカはたくさん、むしろそっちの方にたくさんいるぐらいです。というようなことで、環境条件というのは、動物によって生息しやすい条件というのは違うわけですね。それが一つと。  もう一つは、これはデータを分析してみて分かったことですけれども、シカが増えてきたところではイノシシが減っているという状況があります。イノシシシカは別々に分布域は分かれているんですけれども、シカが増えると下層植生がさっき言ったようになくなります。イノシシは主にやぶの中で子供を育てたり繁殖したりしますので、それがなくなってくると生息に都合が悪くなるわけですね。そういう意味で、シカが増え過ぎるとほかの動物、ここではイノシシを例に挙げましたけれども、ほかの動物が住みづらくなるということはあります。  その辺のところを考えますと、種を、特定鳥獣を指定しての休猟区、休猟区での捕獲というのは非常に、場所によってはきちっと状況が分かってこの場所で必要だということが分かれば非常に有効に機能するものだと思います。一方で、それがきっちり分からなければなかなか道具、いい道具を持っていても使い方が分からないというふうになってくると思います。  それともう一つ、右の方の図を見ていただけたらと思いますけれども、銃猟の出猟回数、これを集計したものです。黒が多いところが狩猟者がよく入っている場所ですね。これは、狩猟者というのは大体イノシシを捕りたい、シカは余り捕りたくないというのが今例えば兵庫県ではそういう方が多いです。それで、出猟する人がどこに行っているかということを見ると、例えばイノシシ被害が深刻な北の方ですね、北の方のイノシシ、真っ赤になっているところ、ここには余り狩猟者が入っていないことが分かります。一方で、イノシシが少なくなっているところ、そういうところに割とたくさん狩猟者が入っているというようなことがあります。この辺も、被害の防除なり対策のために狩猟を生かすということであれば、うまくこういう情報を行き渡らせて、狩猟者、こっちの方に行ったら捕れますよと、捕れるだけじゃなくて被害に対しても効果がありますという具合になればいいなと思うんですけれども、この辺りも、狩猟者はそれぞれ趣味、趣味というか自分の好きで行っているものですし、その辺りでこれをどのくらい調整できて、例えば今回の改正にある入猟者承認制度などの仕組みをうまく生かしてできるかどうか。これも情報なり、その調整能力、力量、地方自治体の力量が問われるところかなと思います。  あと、生息環境の例をもう一つお話ししたいと思います。  よく私が聞くストーリーに、山の環境が荒れて動物が出てくるようになって被害が起こるというストーリーはよく語られます。実際にはどうなっているかということは、しかし実際にきちんと調べないといけないと思います。  これはクマ人身事故が起こった場所ですけれども、昭和五十年と平成十四年比べています。やはり、昔は人間が山の中入って、薪を取ったり牛を放牧したり、実は森林の状況なんか見ると、昔の方が山が荒れている場所もあります。  そういうようなことで、きちっと生息環境の変化、そこの実態を押さえないといけない。まあ、こういう場所だけではないんで、これは地域によって違うことなんで、慎重にいかないといけないことですけれども、兵庫県全体のものを見てみますと、例えば大きく変わったのは灰色のところ、一九五〇年の図には灰色のところがあります。これは荒れ地です。それが一九八〇年にはほとんどなくなっています。そういう変化が一つ。あと、一九八〇年には濃い緑のところがあります。これは杉、ヒノキの植林です。こういう変化が一つ。あと、ピンクのところが住宅地、市街地ですけれども、瀬戸内側ではやはり開発、住宅地や市街地が広がっていると。あと、瀬戸内側の中段辺りに薄緑のところが見えると思いますけれども、これはゴルフ場です。  そういう環境の変化は、荒れ地がなくなって森林化しているところ、杉、ヒノキの林が増えていっているところ、住宅地が増えていっているところ、あるいは人が撤退して森林が回復しているところ、いろいろあるわけです。その辺のところを踏まえて、鳥獣保護区の管理なり、あるいは生息地管理をやっていかないといけない。  これが兵庫県の縮図だと思って皆さんにお見せします。兵庫県の縮図ということは日本の縮図かもしれません。神戸市の北区なんですけれども、昭和五十年代の地図と最近の地図です。右の方は住宅地が非常に増えて、当然、野生動物生息場所はなくなっています。ところが、左側の方は林が、農耕地が非常に広がっていて、それが近年になると少なくなって、木の高さも量も豊富になってきているというような、開発されているところと、自然環境が回復していってという場所被害問題がやっぱり大きいのは、人のいないところ、人が撤退していく流れにあるところというところもあります。この辺の事情なんかは、まあこれは地域によって違いますし、場所によって違います。この辺をきっちり押さえた上で対策を練っていかないといけないというのを痛切に感じております。  兵庫県の中では、そういうふうに科学的な知見の蓄積というのが足りない、あと人材が足りないということで、その課題の認識の下、森林・野生動物保護管理研究センター、これ仮称ですけれども、十九年四月に設立するということで進めております。そこでは、調査研究をきちっとやるということと、専門的な技術職員による関連機関、農業、林業、場合によっては生活衛生の方もあるかもしれません、そういう方への支援、そういうことを行っていこうということで、庁内公募によって五名の候補者を選抜して二年間掛けて研修をするという体制でやっております。今年が最後の一年の研修期間で、オン・ザ・ジョブ・トレーニングとして今試験的に予備活動や情報収集、仕組みづくりの検討を行っているという段階です。  この辺が五人の配置でどういうふうに県の中の保護管理の体制を改善させていくかということで、今のこの財政の事情なんかかんがみますと、なかなかそうたくさんの職員を配置できるわけではないですし、これだけでも非常に期待されている、県の中では期待されている段階だと思いますんで、これをきちっとやっていかないといけないということ。それと、時間が少なくなってきましたので簡単にいきますけれども、それは、制度が高度になって複雑になっていく分、当然、狩猟者にも、狩猟捕獲班で捕獲に従事される方にも高度な判断なり規制なりが掛かってくるわけです。この辺についても非常に能力や努力が求められるというところになっています。  今、ほとんどボランティア状態、まあ地域扶助、地域の相互扶助的な考え方で、皆さんが困っているんだったらできる者がやろうというような考え方で駆除班活動をやられておられる方が私は多いと思っています。そういう方たち、ただ、ボランティア活動だけでは、今やはりお金がないと生きていけませんので、その辺のところで本当に社会に必要な仕事であるんであれば、能力や労力に見合った報酬が支払われるべきで、それをきちっとしていけば、規制なんかでも、これをきちんと守ってくださいという高度な規制を掛けることも効果的かなというふうに思っております。  最後、まとめですけれども、今回の改正、一連の改正で、選択肢が増えてきめ細かい対策が必要になると。それに対応するためには、多くの情報と判断や合意形成の能力というのが必要になってきます。その意味では、私たち、私も含めて、地方自治体でその対策に取り組む人間としましては、ますますの努力必要だなというふうに思っておるところです。  以上で終わらせていただきます。
  9. 福山哲郎

    委員長福山哲郎君) ありがとうございました。  次に、羽澄参考人にお願いいたします。羽澄参考人
  10. 羽澄俊裕

    参考人羽澄俊裕君) 株式会社野生動物保護管理事務所の代表をしております羽澄と申します。よろしくお願いいたします。  私どもは、国の関係省、国交省、あるいは地方の都道府県、市町村から野生動物調査あるいはコンサルティングの委託を受けまして仕事をさせておりまして、既に今年で二十四年目になりますが、全国各地を歩かせていただきましたその経験を踏まえて、現在、各地で蔓延しております問題の深刻さについてお話をさせていただきたいと思います。  初めに、今回の法改正につきましては特に細かい異論を述べるようなことはいたしませんけれども、現状のあふれ出る野生動物と増大する被害問題、これに対しまして、今回の法改正によって抜本的な解決につながるということは恐らくないだろうと。この問題を放置しますと更に大きな社会的コストが掛かってくることは間違いございません。そのことを軽視することなく、適切な御判断をお願いしたいというふうに考えます。  例えば、法改正の提案理由の記述の中に「狩猟を活用した鳥獣の適切な保護管理を進め、」とございますが、これはもう既にお三方のお話にもありましたように、あと十年もしますと狩猟者というものはほとんどいなくなってしまいます。実質的に有害駆除、有害捕獲等で機能していただける方、こういう世代というのは六十未満の世代だと思われますが、そうした皆さんは恐らく十年過ぎればほとんどいなくなってしまう。そういうことを前提にしますと、例えば休猟区を開けたというようなことぐらいではあふれ出る獣を阻止する、防衛するということはほとんどできない。  それから、同じく、高齢化した農家捕獲努力に期待するといいましても、年老いた農家の方々が野生動物被害を防ぐ、そのための野生動物の進出を食い止めるというのは、ほとんどこれはもう既に現段階でも不可能でございます。  またさらに、違法わなの取締りや監視の体制がない現状でございますので、そのような中で、わなに名前を付けるというようなことをいたしましても、基本的には全く効果は期待できないということをまずお話ししたいと思います。  それから、基本的な問題でございますが、二ページ目に入りまして、野生動物の問題というのは、一般の世間の皆様からしますと非常にマイナーな世界の非常に特殊な分野のお話かというふうにとらえられがちでございますけれども、野生動物の問題といいますのは地域の社会経済と密接に関係しておりまして、今風に申しますと、格差社会の一方の極であります過疎の進んだ中山間地域において蔓延している問題でございます。  そして、このような問題を放置しますと、恐らく農業が次第にもう後退し、衰退し、更に消滅してまいりますが、農業が消滅すれば農業被害というのは失われていきます。では、いいではないかというふうにとらえることができるかというと、そうではなくて、あふれ出る野生動物は更に市街地の方まで出てまいりまして、既にこれは西日本では非常に顕著になっておりますが、市街地の生ごみをあさるようになります。で、更に普通の一般住宅の屋根裏に入り込んで、ふん尿で汚すというようなこともしまして、生活環境がひどくなってまいります。  また、最近の鳥インフルエンザなどもございますけれども、人獣共通の伝染病の問題も非常に大きな問題になってまいりますので、こうした問題をできるだけ早い段階で食い止めてしまう必要があるというふうに思います。  こうした問題は、人間への被害であると同時に、野生動物にとりましても、生ごみをあさって生きるような形、その野生の行動習性をすべて失ったような生き方になってしまいますので、野生動物にとっても害以外の何物でもないわけでございます。そういう意味では、人と野生動物がきちんとすみ分けて暮らすような社会構造、こうしたものを生み出さなければいけません。  何よりも、市街地にまで野生動物が進出する状況を食い止めるということになりますと、最前線でありますやはり農業や林業の活性化、これがまず基本にないといけません。で、農業や林業を、ここで農業をやると、ここで林業をやるんだということを明確にしていただければ、そこから先の山の奥は獣の住むところでいいわけですし、そのボーダーにおいて適切な被害管理野生動物の進出を食い止めるということをやっていけばいいわけですから、そうしたことを適切に計画し、実行していく体制が必要になります。  ところが、現在、その鳥獣管理の政策の立案の実行者が各地に抜けております。また、現場被害対策、あるいは捕獲、あるいはその調査などを実行する人々が全く現場に抜けております。これがまず一点ございます。  それからもう一つは、やはり一九九二年に生物多様性条約というものが生まれまして、我が国でも生物多様性国家戦略というものが描かれたりしておりますが、この生物多様性国家戦略の理念が現場におきましては全く浸透していない。そうなりますと、地域におきましてはどうしても地域住民の財産の保全ということが優先しますので、被害を出す野生動物駆除しておきなさいという思考がどうしても優先してまいります。  それから、鳥獣保護法の中に特定鳥獣保護管理計画制度というものがありまして、これは日本初の野生動物管理の画期的な仕組みでございますが、これが現在、ほとんど機能不全に陥っております。それはなぜかと申しますと、正に現在の地方の不況状況によりまして、この特定計画制度の柱というのはモニタリング調査を行って、野生動物状況をきちっと把握して、その上で的確なその対策を取るという制度でございますが、モニタリングの調査そのものの予算が真っ先に削られていっている状況にございます。  ですから、この特定計画制度、非常に重要な制度でございますが、これが全く動かなくなってしまっているということがございます。これも、やはり生物多様性条約の理念が地域に浸透していない、そのことによる結果であるというふうに考えます。  次、行きまして、四ページになりますが、では、こうした問題を解決するためにどうしたらいいのかということでありますが、これはもうはっきりしておりまして、先ほど来、島根金森さん、兵庫の坂田さんのお話にもありますが、こうした専門性のある方がいらっしゃる県というのは非常に特異な例でございまして、ほとんどの自治体ではそういった専門家というのがいらっしゃいません。ですから、こういった方々をきちっと各地に配置するということが最優先の課題でございます。恐らく、それが一番将来に向けてコストの掛からない選択肢であるというふうに申し上げたいと思います。  また、こうした問題は、今小さい政府論でございますから、民間民間ということを言われておりますが、まず第一に、行政組織の中に、この四ページに書きましたように、国レベルの基本的指針の策定、それから複数都道府県をまたがる広域的な管理指針の策定、さらには都道府県ごと特定計画などの策定、更に言うならば、市町村レベルのきめの細かい実施計画の策定、そういった分野には必ず現場の方をリードする計画策定の専門家というのが行政サイドに必要であるというふうに考えます。  その上で、次のページにございますが、計画の実行者として、これは民間で結構だと思いますが、実はこの具体的な作業というのはどういうものかといいますと、捕獲技術者、これは正に現在の猟師さんたちでございます。それから、被害防除の技術者、これは本来ならば農家の通常の業務でございます。それから、生息環境整備技術者、これは林業技術家あるいは森林組合の中に残っている技術を活用する分野のことでございます。それと、野生動物をモニターしていく調査技術者というのが必要になりますが、こうした技術者というのが、実は地域においてはこれまで普通に生活技術、伝統的な生活技術として地域軸ごとに残っていたものでございますが、正に日本は多様な風土を持った国でございますので、それぞれの地域の生活技術、それを活用することがワイルドライフマネジメントを有効に運用していくために非常に重要なノウハウでございます。  それが今、このバブルはじけて以降の過疎の進む地域の中で枯渇しているということを是非認識していただいて、是非こうした技術を持った方々が存在していらっしゃるうちに新しい若者がそこに入って技術を伝承して更に働いていくような社会、そういったものをつくっていただきたい。その仕掛けが、最後のページになりますが、六ページになりますけれども、地域において、地方において重要な産業とは何なのかと、これは正に農林業の再興、これが一番の柱になるはずでございます。  その際に、その農林業のリスクとしての鳥獣害、これをきちんとコントロールする、マネジメントするという、そういう専門家というものが必要になってまいりますので、こういうスタッフをきちっと雇用して、雇用促進していくこと、その仕掛けが必要であると。  現在、日本のどの大学でも、自然あるいは野生動物の仕事をしたいという、希望する若者は非常に多うございますが、そういった学生さんたちは、そういうことをする職種がないとすると、どんどんこの分野から離れていってしまいます。ですから、是非雇用をつくると、雇用の入口を、窓口を生み出すということをすれば若者はどんどんそういうところに入ってまいりますので、技術をきちっと伝授して、そういう方々が地方の、地域ごとにどんどん張り付いて、野生動物管理、ワイルドライフマネジメントをするという職種をしょっていくという、そういう社会構造をつくっていただければ、恐らく被害問題というのは激減していくものと、さらには生物多様性の保全というものもきちっと担保されていくんだというふうに考えます。  以上をもちまして私のお話とさせていただきます。ありがとうございました。
  11. 福山哲郎

    委員長福山哲郎君) ありがとうございました。  以上で参考人の皆様からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  各参考人の皆様にお願い申し上げます。  御答弁の際は、委員長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。また、時間が限られておりますので、できるだけ簡潔な御答弁をお願い申し上げます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 座ったままで失礼いたします。  自民党の橋本聖子でございます。  本日は、当委員会参考人の皆様方に大変お忙しい中お越しをいただきましたことに心から感謝を申し上げます。それぞれの御専門の分野から御指摘をいただきまして、大変参考になりました。今お伺いしましたことにつきまして、さらに私の方からまた御質問をさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。  このゴールデンウイーク中にも、野生動物との人間のかかわり方や共存について、また考えさせられるようなことがありました。ちょうどゴールデンウイーク中の五月の四日ですけれども、岩手と秋田で山菜取りに入った人がクマに襲われて重傷を負うというような事故がありましたり、また日光では、ニホンザルが観光客のお弁当を取るために人に襲い掛かったりですとか、また北海道においては、トンビが行楽客のお弁当を取るために滑空をしているというようなところがテレビに報道をされたというようなことがありまして、本当に毎年、今、特にクマが冬眠から覚めるようなこの時期というのは必ずと言っていいほど人身事故が起こっているわけでありますけれども、山に入る際に十分注意するように地元住民ですとか観光客には呼び掛けるのはもちろんですけれども、生ごみを放置しないなどの対応策というのも同時に今やっていかなければいけない問題の一つだというふうに思います。  私自身も小さいころは大変な山奥に、過疎地に住んでおりまして、北海道ですけれども、本当に、クマが出る、シカが出るというようなことで、また、家から迎えに来ない場合は学校から出てはいけないですとか、そういうような地域で育ちまして、正に自然との共生といいますか、動物との共生というような中で育ったもんですから、この問題については特に取組を新たにしていかなければいけないということを常日ごろから思っているわけでありますけれども。  そもそも、例えばクマが人里に下りてくる、これは自然環境の破壊によるのも一つですけれども、山に食べ物がなくなったからでありまして、そういった中でニホンザルやトンビが人間の食べ物を襲うようになったのも、はっきり言いますと人のえ付けによってだというようなことも指摘をされております。日光ですとか軽井沢、いろいろなところで、地元の人はむやみにえ付けをすればやはりそういうものが害が発生するということで危険性を知っているんですけれども、観光客というのは、その観光に行ったいっときのことであって、興味本位によってえさを与えてしまうというような、そういうようなことが原因でなっているということもあります。観光客のマナーですとか、ごみだとかトイレ不足だということも今大変な早急にやらなければいけない問題の一つですけれども、もう一つは、やはり野生動物とのかかわり方について、そういった啓蒙活動というものも同時に行っていかなければいけない問題だなということを今回特にいろいろなニュースを見て改めて感じたところであります。  一つ質問に入らせていただきたいというふうに思いますけれども、農業被害人身事故などが起きて、その対策として有害駆除が行われてきたわけでありますけれども、今後、野生動物との真の共存を図っていくためには、生息密度や個体数の調査、そしてその調査を行うこと、それぞれの取組効果を検証することが必要だというふうに思いますけれども、先ほど金森参考人から、策定した特定鳥獣保護管理計画にのっとって先進的な取組についていろいろと御報告を、意見を述べていただきまして、その中で、特に島根県においては平成八年、三億三千万を超えていた鳥獣による被害が約十年後にはその十分の一の約四千万円に減少したということですけれども、これについてはその中の一つ個体管理計画的に実施したということが一つの要因であるというふうにありましたけれども、この適正な個体管理というもの、個体数を管理するというものも一口に言って簡単なことではないというふうに思うんですけれども、このことについてどのようなことに特に配慮をされてきたかということを一つお伺いをしたいというふうに思います。金森参考人、お願いします。
  13. 金森弘樹

    参考人金森弘樹君) どのようなことに配慮してきたかということについてでありますけれども、イノシシシカにつきましては特定計画個体管理をやっていこうということで、イノシシにつきましては、被害状況あるいは捕獲数の動向、その辺を見まして年間捕獲目標頭数というものを県の方で定めまして、現在一万五千頭という目標頭数を設けておりますけれども、これを特定計画で定めまして、各町村、これまでの捕獲実績あるいは被害状況を勘案しながら各町村の捕獲目標頭数をこれに基づいて設定し、それに基づいた各町村が努力して捕獲を実施しているというふうな体制を取っております。  各市町村におきましては、捕獲数が達成するように捕獲奨励金、捕獲した場合の捕獲奨励金とか、あるいは出動に掛かった経費、そういうふうなものを負担しております。また、ハンターさんを各町村で確保していくために、狩猟免許を取るための経費を各町村が負担しているというふうなこと、あるいは万一の事故に備えたハンター保険、このような経費も各町村が負担する、そういうふうな形でハンターさんを確保していく。また、集落ぐるみでいろんな対策が進むようにということで、各集落にイノシシ捕獲用のはこわなを置く。そういうふうなことも各町村で行い、それを管理するための人と狩猟者も必要だということで、各町村のリーダー的な方に狩猟免許を取っていただいて、そのはこわな管理もお願いする、あるいはえさの管理、そういうこともやっております。  そういうふうな努力の結果、先ほど申しましたように、平成十六年度にはほぼ目標頭数である一万五千頭弱を捕獲することができた、そういうふうなことで被害も減ってきたというふうに考えております。  また、シカにつきましては、毎年生息調査を行って、被害状況等から管理目標頭数というものを設けまして、そこまで減らしていこうというふうな形で毎年度何頭を捕獲していくかというふうなことを計画で定めまして、その目標に到達するような捕獲ということを行っております。  以上です。
  14. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。  捕獲頭数をしっかりと策定をして、そして各市町村に振り分けといいますか、しっかりとした対策を練るということでは本当に効果があったんだというふうに思いますけれども、同時に生息密度というものも、管理といいますか調査をしていかなければいけないということにおいては大変な難しさがあるんではないかなというふうに思うんですけれども、捕獲頭数ということでしっかりとした個体管理をされている、そういうことの中で、例えば乱獲ですとか又は違法な捕獲というのもやはり起こりにくくなったのかどうかということもちょっとお伺いをしたいなと思います。金森参考人
  15. 金森弘樹

    参考人金森弘樹君) 当然、モニタリングにつきましても、うちのセンターの役割だということで、例えばイノシシにつきましては狩猟カレンダー、各ハンターさんがいつ、どこに出掛けていって、その結果、何頭のイノシシを捕ったのか、あるいは捕れなかったのか、そういうことをすべて記入していただくような狩猟カレンダーを配付しておりまして、そういうふうなものを回収して、例えば先ほど坂田参考人からありましたような、ハンターさんが一人一日当たり一体何頭のイノシシを捕っているのか、そういうふうなことを分析しておりまして、島根県内のイノシシが増えているのか減っているのか、そういうふうな把握にも努めております。  それから、乱獲とか違法な捕獲についてでありますけれども、島根県の場合はイノシシ捕獲数増加に伴ってツキノワグマ錯誤捕獲というものが増えてきております。これに対する対応につきましても現在、一生懸命取り組んでいるところでありまして、くくりわなの径を、ワイヤーの直径を太くするとか、あるいはワイヤーの輪っこの大きさを十二センチ以下の小さなものにして足がその中になるべく入らないようにと、そういうふうな取組も、新たに狩猟免許を取られた方を集めて研修会を行ったりして、なるべくそういうふうなことが起こらないようにというふうな研修も行っております。  また、やむを得ず掛かってしまった場合にはなるべく放してやれるようにというふうな体制もつくっております。クマの多い地域にはツキノワグマ対策専門員というものも設置しておりまして、そういうふうな場合が起こった場合にはすぐに出掛けていって、吹き矢あるいは麻酔銃によって麻酔を行って放獣をするというふうな体制にも努めております。  ただ、なかなか現場で、地域住民の方々がそういうふうな現場を見られますと、なかなかクマは非常に怖いものだという認識が非常に強くて、非常に放獣に対して反対されるというふうな現状もございます。そういう中で、なかなか一〇〇%放してやるということができない状況ではありますが、いろいろな普及啓発、そういうふうなところで、昨年、平成十七年度におきましては錯誤捕獲されたクマの大体七割近いものは放獣できたというふうな実績も残しておりまして、次第にそういうふうな体制、あるいは普及啓発によってそういうふうなところも改善されつつあるというふうに認識しております。
  16. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございました。  引き続いて、いろいろな御努力をお願いをしたいというふうに思います。  もう数分の時間しかありませんけれども、吉田参考人坂田参考人羽澄参考人に一言ずつだけお伺いをしたいんですけれども、この鳥獣保護管理計画制度というのは科学的裏付けの下に野生動物の保全、基本理念としているところなんですけれども、これが導入されてからの効果と、また今後の課題について一言ずつ述べていただきたいというふうに思います。
  17. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 特定鳥獣保護管理計画制度効果ということでございますが、先ほど金森参考人がおっしゃったような、目標をしっかり決めて、それに到達したかどうかをしっかりとモニタリングしていくということが非常に重要だと思うんですが、それができているところはまだ少ないということですね。シカなどに関しては目標頭数を決めて、どれぐらい到達しているかということをチェックしている県が多いんですけれども、ほかの動物に関しては具体的な数値目標までできていないというところが多かったのが私どものアンケートの結果でございます。やはり、そういったことを行うには専門家配置が必要ですし、それから先ほど、もう繰り返しになりますが、生息地の保護、それから被害防除というものも一緒に行っていくためには、農林部局なども含めた県の中で一体となった計画が必要であると思います。  以上です。
  18. 坂田宏志

    参考人坂田宏志君) 管理計画の策定のためにと、それをやっていくために、例えば先ほど私が見せたようなシカの分布、そういうようなことは分かるようになってきました。で、イノシシについても、まだ計画は立ててませんけれども、計画の策定を目指して今のようなデータの集積をしているところです。  ただ、それが不十分、これだけで十分に分かるということでありませんし、分かったとしても、あとそれをきちんと個体数の抑制なりしていけるかなというのがまだ、シカ個体数なんかですと半減が目標なんですけれども、横ばいという状況です。そういうところでたくさんの課題があります。
  19. 羽澄俊裕

    参考人羽澄俊裕君) 話は重複しますけれども、やはり科学性を担保して実行するための専門性のある人材をきちっと張り付けるということが非常に重要であると。  それから、特定計画制度の中で自治体の方では個体調整部分のみが突出して議論されますが、やはり被害を抑制するという観点からしますと、生息環境の適切な管理、それから被害対策、それが総合的に見合った計画といいますか、そういったものにならなければいけないんですが、そこのところが他の鳥獣行政以外の部署との連携というのがなかなかスムースにいっていないと、それもその専門性のあるスタッフが抜けているためであるというふうに理解しております。  以上です。
  20. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 どうもありがとうございました。
  21. 小林元

    ○小林元君 民主党の小林元でございます。  本日は、四人の参考人の方から大変貴重な御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。今後の審議に役立てていきたいと思っております。なお、多少質問ございますので、よろしくお願いしたいと思います。  ただいま橋本委員からもお話があったんですけれども、この特定計画といいますか、九九年の改正のときの目玉と言っていいと思いますけれども、そういうことで三年後に見直すというふうなことがあったんですが、それも見送られて現在に至っているというようなことでございまして、今特定計画について評価あるいは問題点というお話がありましたが、この改正法等につきましてどのような評価といいますか、現在時点でトータルとしてどのように評価をし、そしてどのような問題があるか。先ほど特定計画について、あるいは専門技術家の云々という問題はありましたが、それを含めてもう一度、順次四人の参考人からお願いをしたいと思います。
  22. 金森弘樹

    参考人金森弘樹君) 評価につきましては、島根県の特定計画につきましてはシカイノシシについてはまずまずうまくいっているのかなというふうには感じておりますが、クマにつきましては三県で、先ほど言いましたように、広島、山口とともに一緒に西中国のクマ管理していこうという形でやっておりますけれども、その中で三県での捕獲上限数というものを設けておりまして、年間四十八頭というふうなものを設けております。  しかし、一昨年ですね、平成十六年、全国的に非常にツキノワグマが出没した年、また人身被害も非常にたくさん起こった年でありますけれども、この年には西中国につきましても非常に被害、これは人身事故は一件も島根県については起こらなかったんですけれども、夜になるともう民家の庭先の柿の木に登っているというふうな状況が頻発いたしまして、地域住民の方々の不安が非常に大きなものとなったということから、三県で二百二十三頭ものクマを殺してしまったというふうな状況になってしまいました。  そういうところから、非常にクマ保護管理というのは難しいなと、地域住民の方々のいかに理解と協力を得ていくのかということが非常に大きな課題となっております。ほぼ二年に一回、これまでの状況からすると異常出没ということが起こっておりまして、今年の秋にもまた起こるのかなというふうに予想しているんですが、そういう中で地域住民の方々の理解、協力、これをいかに今後求めていくかと、理解を得ていくかということが非常に大きな問題点になっていると感じております。  以上です。
  23. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 先生の御質問は、九九年の改正特定計画が導入された、それを踏まえて今回の改正法についての評価ということであるかと思うんですけれども、九九年の改正のときにはたくさん、いろいろな反対もありましたけれども、提案した側も科学的、計画的な保護管理に持っていこうということで非常に意欲がございました。そして、実際、この特定計画を作るに当たっては都道府県に対する補助もございまして、その策定のための委員会の中には研究者も入り、あるいはNGOも入り、作ってきたという経緯があるわけでございますけれども、これを実現に移していくということの背景には、やはりその実行部隊ですとか、それからそれを計画して見直していく側の中にも野生生物専門家が今後配置されていくと、こういったことをやっていけば必然的にそういった専門家が必要になってきて都道府県配置されていくという、そういう期待を持って作られていったものだと思います。  ただし、その現状は、現在見てみますと、むしろ後退してきていると。それは、国から都道府県に対するこの策定への支援がなくなって、都道府県のみの予算で作るということになりますと、その設定のための委員会も策定のときのみでもう解散してしまって後は常設のものはないとか、あるいは実行するときなども、例えばイノシシ捕獲の実行というときも県の立会いはないとか、いろんな面で省略型省略型にだんだんなっていって、専門家がなくてもできる小型のものになっていくというような傾向にございます。  そういった面からいきますと、今回の改正法は、九九年の改正の意欲というものを非常に強めるものではなくて、むしろそれが、専門家配置ができないがために被害に苦しんでいらっしゃる農家の方が自衛でやってくださいと、そういうような方向に流れていっているものというふうに私は考えざるを得ないと思います。
  24. 坂田宏志

    参考人坂田宏志君) 私は、その特定鳥獣保護管理計画制度というのは、地方できちんとやっていくという意味で必ず必要なものだと思っています。それがきちんとできたかできてなかったかということには議論がありますし、物に、動物の種類や地域によってはうまくいっているところも、まあ先ほど金森さんの話のように、あると思います。あと、特定計画によるモニタリングが行われたおかげで、うまくいってないこと、うまくいってるかうまくいってないかさえも分からなかったものが、少なくともうまくいってないことが分かるということだけでも、まあそれが分かって皆さんがっかりということにもなってしまうんですけど、それ自体が必要なことだと思っています。  それで、この流れとしては、なかなか今の地方自治体で、先ほど吉田参考人の方からあったように、なかなか体制が組めない、それなりの情報人材を充てることができないという苦しみの中で、簡便なものあるいは余り効果のないものになってしまうというところもあると思いますけれども、ただこれは、だからといってその改革が、改正が間違いだったかと僕は考えず、それをきちっとやる体制を、それをつくるのはやはり、七年たちましたけど、地方自治体の今の体制を考えればまだまだ時間の掛かるものだというふうに感じています。で、時間が掛かるし、努力も要ることですけど、これはやるべきことだと私は感じています。
  25. 羽澄俊裕

    参考人羽澄俊裕君) 私は特定計画調査の委託を受けて各地で仕事をさせていただいておりますが、まず一つ特定計画の柱は、モニタリング調査を行って計画を作っていくということであります。  で、モニタリング調査というのは具体的にどういうことかといいますと、一番自治体から要求されるのは、我が県にはシカが何頭いるかと、我が県にクマは何頭いるかということを要求されます。じゃ、その県の動物の数を数えるために何をするかということなんですが、これはもうこの急峻な島国でございますから、ひたすら人が山を歩いて、それで動物と遭遇した頻度あるいは痕跡をこつこつ拾い上げて、一定距離当たりのふんの数であるとか、一定時間当たりの遭遇率とか、そういったことで、あとは統計処理をして個体数の予測をしていくということになります。  で、本来ならば、全県の数を数えるわけですから、やっぱりサンプリングをする箇所数というのはたくさんないといけません。ところが、この不況下の中で予算がどんどん削られていきますと、わずかな箇所数のサンプリングデータだけで全県の数のことを論じるということを余儀なくされるというのが実態でございます。もう現状からしますと、ここまでいったらもう余りにも雑なデータ、精度のないデータになりますから、これはもう個体調査ということ自体をやめて、その予算被害対策の方に振り分けた方がよろしいんじゃないかというふうに申し上げるぐらいにこの特定計画制度はとんざしております。計画の数はたくさん出てきたかもしれませんが、中身はほとんど有効に、科学的には機能しておりません。そのことをやっぱりきちっと御認識いただいて、そのための少なくとも調査のできるスタッフがそこで活躍できるぐらいの予算制度、体制の整備というのはしていただかないと、この計画は全く無駄なものになってしまっているということをまず申し上げたいということと、それから計画を作った後の実行の段階で、先ほど来、何度も申し上げますが、正に猟師さんいなくなっていますから、例えば我が県に何頭、例えば一万頭いるからそれを五千頭に減らしましょうとか、北海道レベルでいくと数十万頭いるからそれを、五十万頭いるから二十万頭に減らしましょうとかという話になっても、それを捕獲する人たちが本当にいなくなっていますので、計画を作っても実行できないという、そういう現状になっております。  それから、被害額が激減しているというふうに見える統計、グラフは、それは農業がもうお手上げで、農業が放棄されたその裏返しであるということも一つの要因であるというふうにお考えいただきたいと思います。  以上でございます。
  26. 小林元

    ○小林元君 四人の参考人から、まあやっぱり鳥獣保護知識や技能を持つ専門家育成配置がどうしても必要だという御意見を伺いました。  で、既に兵庫県と島根県、金森参考人坂田参考人には、先進県というようなことで御尽力をされているわけでございますけれども、その、どうして、どうしてというのはおかしいんですが、このように現実的にそういう組織が立ち上がり専門家集団ができたのかと。いろいろ御苦心談があろうかと思いますが、それを、簡単にはまとめるわけにもいかないかもしれませんが、お話をいただければと思います。  そして、吉田参考人羽澄参考人には、この専門家配置、あるいは組織と、集団といいますか、組織制度あるいは財源等について、これはまあ法的にも全然担保も何もされていないわけでございます。そういう中で、どういう具体的な仕組みをつくっていったら各県がこの鳥獣保護を実効あるものにできるというようなことで、具体的な御意見がございましたらお願いをしたいと思います。
  27. 金森弘樹

    参考人金森弘樹君) 島根県の場合でありますけれども、十分な体制ができたのは実は平成十五年からです。それまでは私一人が島根県の鳥獣害担当だという形でやっておりまして、とてもじゃないですけれども全部手が回らないという状況が約二十年続いていました。そういう中で、やはりもっと人員を増やして対応しなければならないんじゃないかというふうな声が大きくなってまいりまして、平成十五年に島根県中山間地域研究センターができたときに鳥獣対策グループというものができまして、現在、嘱託職員を含めて五名体制になっております。この五名で、イノシシクマ、猿、シカ、四つの鳥獣に対する調査研究を行っているというふうな状況であります。  以上です。
  28. 坂田宏志

    参考人坂田宏志君) 私たちの方は、施設が今度の十九年の四月、次の四月にできる予定ですけれども、これもなかなか簡単にできたわけではなく、検討自体は平成十一年、一九九九年から、本当にこういうことをつくるのかつくらないのかから、人員の配置なり施設なり、本当に要るのか要らないのか、ほかのいろいろな鳥獣害問題以外の課題もある中で、あるいは財政的な制限もある中で、本当に兵庫県としてそれができるのかというような議論はずっと続いてきた上で、やはり被害の問題ですとかツキノワグマの出没などあって、それと、保全と被害のバランスを取るということ、あるいは、あと各現場での担当の方々がいろいろ説明をしていく材料もない、それと、対策といっても何を対策を、何か県民に支援をしたいんだけれどもその内容自体をどうしたらいいのか分からないというようなそういうふうな現場状況、あるいは知事なり幹部の方なりも地域で話を聞く中でやはりこの問題が重要だというふうな認識と、あと何をしてやっていくのがいいかということで、私ども、先行研究としまして、施設ができたらこういう成果を上げるというようなもののシミュレーションみたいなことをして提出してきました。そのような中でやはりやっていこうという意思決定があったということだと思います。  ただ、これで完璧にできるかというと、今後の努力次第だと思いますので、まだこれで楽観視というわけでは決してないと思っています。
  29. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 私の方には財源確保仕組みという御質問でございましたので、先ほどのスライドをちょっと今出してみましたけれども、二つのシナリオが考えられると思います。  一つは、私どものネットワークなど、最初は専門家国家資格というものを最初から要望していたわけじゃなくて、公的機関による駆除ということを求めていったわけです。  ただ、公的機関による駆除といいましても、公務員の数をどんどん増やしていける状況にない中でそれは難しいじゃないかというそういう議論がございまして、それであれば、同じ公務員の数は変わらない中でも、その中で野生生物保護管理に非常に関心を持った人がこういった野生生物保護専門員のような資格を取ってそういったところに就けば、普通は二、三年でどんどん異動してしまうので、ちょっと仕事を覚えた段階でもう次のところに行ってしまうわけです。それを、先ほど金森参考人がお話ありましたけど、同じような方がずっと長く携わっているということでその全県の事情が分かってくるわけですので、そういった状況をつくっていくということが考えられまして、その財源としてはこういった目的税である狩猟税を使っていく。  今までですと、そういった狩猟目的税なのでキジなどの放鳥に使わなくてはいけないと、狩猟者にバックしなくちゃいけないという考え方だったかもしれませんけれども、これからの考え方としては、それは野生生物と人との良い関係をつくるためにだったらどういうふうに使ってもいいんだろうと思うんです。実際上、ヨーロッパなんかではそういう狩猟税で集めたものをイノシシ被害に遭った農家の方への補償などにも使われております。  もう一つのシナリオは、そういった国による財源とか、要するに税金によるものというのはやっぱり限界があると。そうなりますと、やっぱり民間活力ということになるわけですけれども、余り好きな言葉ではありませんが、ただ、どうしても狩猟者がもう十年後いなくなってくると、民間の力によってそれを捕獲するということがどうしても必要になってまいります。  そのときにどういった会社がそれを請け負うのかと。羽澄参考人がやっていらっしゃるような、本当にモニタリング調査もできてそういった捕獲技術もあるという方たちがやっているところが請け負うのか、あるいは、取りあえず今まで例えばネズミ駆除などをやっていた会社が急に野生生物保護管理の会社に変わって、とにかく捕るだけ捕るという会社が請け負うのか、すごく大きな違いがあります。科学的保護管理につながるかどうかという大きな分かれ目です。そのときに、やはりそういった資格制度があって、きちっとそういったものを持っている人たちがやっているかどうかというのは一つの大きな違いになると思います。  ただ、今までのやり方でいけば、単に安い入札をした会社が取るということになってしまいますので、それではまずいと思います。もしそういう民間による捕獲ということを今後考えていかなくてはいけないとすれば、やはり資格は必要になってくるんじゃないかと思います。
  30. 羽澄俊裕

    参考人羽澄俊裕君) ただいまの吉田参考人意見の続きになりますが、基本的に島根や兵庫のお二方のように、ワイルドライフマネジメントを実行するシンクタンク的な部門が、場所が、センターができればそれは理想的でございますが、まあそれはそれとして、被害であるとか野生動物の問題の現場というのは市町村でございますので、やはり都道府県、それから都道府県の出先、それから市町村に、これは時代と逆行するかもしれませんが、やはり理想を言えば、野生鳥獣の、野生動物の専門職という公務員の職種があれば、そういうものを目指して若者はどんどん入ってくるはずのものであると思われます。まあ、今は小さい政府の時代でございますので、そういうことはかなわぬということになれば、やはり金森さんや坂田さんのように専門性のある方をできるだけこのポストに就けていただくような仕掛け、そういったものが何とかできないかなというのが一つございます。  それから、吉田さんがおっしゃったように、民間の専門性の担保というところはやはり重要なことでございますので、何らか資格制度なり、何らかの形で担保していくということが必要かと思われます。  それから、この専門性というのは何も高学歴の人でなきゃできないというものではございませんので、先ほど来、意見のときに述べましたが、地域の猟友会であるとか、あるいは農業あるいは森林組合、そういったところで温存されてきた技術、それを活用するということでございますので、できるだけ地域から出てきた若者に雇用を生み出すという、そういう仕掛けで考えると。そういう意味では、公共事業、今まで道路やダムを造ることに動いていた予算をちょいとこっちへ、この分野に回すと。それから、自然生息環境、それから野生動物管理、これ正に公共事業あるいは社会基盤整備でございますから、そういう分野へ投資をしていくという社会にしていかなければいかぬだろうと。それはもう、もちろん地域の今後の将来ビジョンというのが明確に描かれないとなかなか描きにくい部分ではございますが、そういうふうな仕掛けというものを何らか工夫していく必要があると考えております。
  31. 小林元

    ○小林元君 ありがとうございました。  以上で終わります。
  32. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 公明党の鰐淵洋子でございます。  本日は、参考人の皆様、お忙しい中、国会までお越しくださいまして、また、貴重な御意見をいただきまして大変にありがとうございました。現場で実際に携わっていらっしゃる皆様の御意見で、大変に勉強になりました。感謝申し上げたいと思います。  それでは、早速質問させていただきたいと思いますが、まず金森参考人坂田参考人にお伺いしたいと思います。  今、鳥獣等による農林業被害が深刻になる中で、現場では高齢化も進んでいる、こういった状況の中で、被害を事前に防ぐ、被害を受けにくい地域をつくっていくことも重要な取組かと思います。それぞれ島根県、兵庫県で先進的な取組をされているお二人でございますが、今御説明いただいた中に重なる部分もあるかもしれませんが、改めて被害を受けにくい地域づくり、どのようにしていけばいいのか、改めてお伺いしたいと思います。
  33. 金森弘樹

    参考人金森弘樹君) 島根県の場合ですけれども、現在、先ほど申し上げましたような鳥獣対策専門員普及員を使って各地域指導ということをやっておりますけれども、うまくいっている地域を見ると、やはり集落ぐるみでいろんなことをやっていらっしゃる。リーダーになる方がいらっしゃる。そういう地域で、集落一緒になって防護さくイノシシ被害を受けないようにフェンスを集落の外にぐるっと一周囲う、そういうものを作ったり、あるいは管理したり、あるいは補修したり点検したり、そういうことを集落みんなでやっていらっしゃる。一方、捕獲についても集落ぐるみではこわな管理を行っていらっしゃる。そういうところでうまくいっているというふうな事例を見る場合が多いように思います。  それからまた、市町村においても、やはり市町村の担当職員のやる気といいますか、非常に熱心な方がいらっしゃる市町村においては非常に被害対策が進んでいるというふうな状況があります。そういうふうな中で、やはりリーダーをいかにつくっていくのか、また市町村においてもそういうふうな熱心な職員さんをいかにつくって配置していくのかというところがポイントになっているのかなというふうに感じております。
  34. 坂田宏志

    参考人坂田宏志君) 先ほどの金森さんのことと大体同じようなことになりますけれども、やはり集落で例えばさくをしたとしても、そのさくのメンテナンスですね、見回りをしないと、破けたところがあればそこからイノシシでもシカでも入ってくるわけで、そういうことをきちっと、当番をつくって、順番を立てて、それができるかどうかということですね。あと、さくを作るための合意形成が集落の中でできるかどうかというようなこともあります。  あと、例えば集落の中に放棄農耕地なんかができて、そこの放棄農耕地に獣が、イノシシなんかはよくそのやぶに来ます。そういうところの整理といいますか、そういうことができるかですとか、そういう意味では地域でどれだけ熱心にやれるかということも一つ重要だと思いますし、ただ、その一方で、今の山間地域での鳥獣害問題が、それができていけないところはどういうところかといいますと、やはり高齢化、過疎化が進んでまして、日中の猿が出る時間に若い人は当然いないですし、おじいさんとおばあさんぐらいしかいないというようなところで猿が出てきて農作物を荒らす、あるいは自分の家の中に入ってくると。それを、若い大人の男でしたら簡単に追い払えるものが追い払えないというような状況になっているところもありまして、非常に、先ほど羽澄参考人の方からもあったと思いますけど、そこの地域の振興と表裏一体となるところがあると思います。  その辺のところが非常に、例えば行政の方で幾ら熱心にしても、そういう地域の活力というのが防護の上で非常に重要かなというふうに考えております。
  35. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  続きまして、わなにつきまして金森参考人にちょっとお伺いしたいと思いますが、島根県で平成十七年に構造改革特区によって網・わな免許特区をスタートさせたということで、それによりまして十七年度は前年比に比べて約三倍の新規免許取得者を得ることができたと、このような報告がございます。実際、今回の法改正でもこれが取り入れられるようになっておりまして、これに対して無差別殺傷が起こるのではないか、それによってまた生態系に悪影響が起こるのではないか、こういった御意見もありまして、わな使用禁止とか、そういった御意見もある中で、実際に、余り時間がたってないのでどうだったのかというのはちょっと数として、報告として上がってないかもしれないんですけれども、実際にこの免許取得者が増えて現場ではどうだったのか。また、このわなは全面禁止だという考えに対しまして何か御意見がありましたら併せてお伺いしたいと思います。
  36. 金森弘樹

    参考人金森弘樹君) この特区につきましては、昨年初めて行ったということで、まだ一年の結果しかないわけですけれども、確かにこれまで網を使った猟というのはやらないのにその知識も勉強しなきゃいけない、あるいは鳥の種類も覚えなきゃいけないということで、農家の方がイノシシ被害を防ぐためにわな免許を取りたい、あるいははこわなを集落で管理するために免許を取りたいという場合に非常に大きな負担になっていたと。そういうふうな意見が非常に以前から強かったということから、島根県ではこの特区をつくって、それじゃやってみようということで行った結果、先ほどお話ししましたように、三倍の受験者、合格者があったというふうな結果が出ております。  この成果でありますけれども、まだ一年目でよく、データ等が出てきて、分かりませんけれども、はこわなによるイノシシ捕獲というのは比較的素人でも捕れやすいというところがあります。そういう中で、捕獲数の増大あるいはハンターの確保ということには今後非常に大きな役割を果たすんではないかというふうに考えております。  禁止区域の点については、確かに、先ほど申し上げましたように、クマにつきまして錯誤捕獲があるというふうな状況があったりしますけれども、それに対する対応ということもできるのではないかというふうに考えております。また、とらばさみ等につきましても、島根県で今ヌートリアの分布拡大というふうなことも起こっておりますけれども、使う場所ですね、非常に限られた場所でうまく使っていけば非常に大きな猟具になっていくと、なっているというふうな状況もありますので、その使い方、使用者、その辺をうまくやっていけば、必ずしも私はそういうふうなものを禁止するということは必要ないんじゃないかというふうに考えております。
  37. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  引き続き、このわなの件に関しまして、先ほども様々な御意見がありましたけれども、改めて一言ずつ、吉田参考人坂田参考人羽澄参考人からもわなに関して御意見ありましたら、一言ずつ御意見いただければと思います。
  38. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 先ほど私も申し上げましたが、わなに関してはもっと、わな免許をつくるんであれば、その免許を持ってないと買えないと、そういうようなところが徹底しないといけないと思うんですね。今はそういう免許の提示なくてもホームセンターでもインターネットでももう買えてしまいます。そして、無免許の人でも使ってしまう、そういったことがございます。  昨年の環境省の通知に対しても、都道府県の七〇%がそれらに対して対応してないというような、こういう現状の中で、このわな免許を、網免許と分ける、これだけ先へ進んでいきますと、私としては非常にわなによる乱獲という危険はあるんではないかというふうに懸念しております。
  39. 坂田宏志

    参考人坂田宏志君) わな、種類によりますけれども、わな自体は動物の種類や場所によっては非常に有効な道具です。ところが、有効な道具をどの範囲で規制するかというのはよく考えないと、例えば管理捕獲、まあ有害駆除なり個体調整のためにそれなりの力量のある人が使うということであれば非常にいい道具になると思いますし、これが余りその技術がない、くくりわなにしても、イノシシを捕るためにクマが引っ掛かってしまうということがあるわけですけれども、例えば、それはある意味やり方、道具の設定の仕方や置く場所でかなりその確率というのは下げることは、完全とは言わないと思いますけれども、下げることができるわけです。そういうことができる人が使うのか、それ以外の人は使えないのか、その辺りの、一律して駄目ということになってしまうと、せっかく人間が持っている文化的な仕掛け方の技術もありますし、道具を失ってしまうということになりますね。それがいいのか悪いのか、ちょっと私、今ぱっと判断はできませんけれども、そういうことも踏まえて考えないといけないことだと思います。
  40. 羽澄俊裕

    参考人羽澄俊裕君) 私、皆さんの今のお話を踏まえた上で付け加えますが、わなというのは現場で監視パトロールをする仕組みというのは全くないんです。ですから、違法わなを仕掛けようが正当な、まともな、法的には、わなを仕掛けようが、それをきちっと見回ってチェックする仕組みは全くございません。  わなというのは、針金をくるっとからげて引っ掛けただけでシカでもイノシシでも捕まえることができます。これは、ですから、わな猟師さんにしてみると、自分が工夫して作ったわなで獲物を捕らえるという楽しみがあります。ですから、いろんな工夫をしていろんな仕掛けで現場で楽しんでいらっしゃいますが、それが錯誤捕獲を犯すとかといういろんなことになります。だけれども、それを取り締まるという仕組みがございませんので、だから、そういうことがある中で法的にこういうわなは駄目ですとかというようなことを作ったとしても、現場ではだれも取り締まることはできませんし、そういう人はいません。ですから、本末転倒といいますか、そういうことになってしまっております。  だから、例えば地域的に、ここはそういうものを使ってはいけないというようなことをやれるとか、あるいは坂田さんおっしゃったように、専門性がきちっとある人だけが使っていいとか、そういうふうな仕組みであれば問題はないと思います。
  41. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  最後に、坂田参考人に質問させていただきたいと思います。  事前にいただいた資料の中に、アライグマの問題についても取り組まれているということで拝見させていただきました。ちょうど昨日も、昨日の夕方ぐらいだったと思いますが、テレビの方でもちょうど、京都の方で二、三年前ぐらいからアライグマが増えて、ペットとして飼い切れなくなって放したアライグマが増えて、農業やまた建物、お寺とかの建物に被害が増えているといった、そういった報道もございまして、私の持ち時間あと三、四分あるんですけれども、その中でこの今のアライグマの問題の現状、また課題について、最後お伺いしたいと思います。
  42. 坂田宏志

    参考人坂田宏志君) アライグマは、日本じゅういろんなところで本当に急激に増えております。兵庫県の場合は、北海道や神奈川やそういう先進、先進事例と言ったら言い方が悪いですけれども、先に増えた事例を見て、後追いということにはなっていますけれども、本当にかなり急速に増えて農業被害、特にイチゴとかトウモロコシとか割と価値の高いもの、被害を及ぼすということで深刻になっております。  やはり、それを駆除していくということになるんですけれども、最初のうちはだれもアライグマを捕獲したこともありませんし、そういうような状態ですので、なかなかやる人がいないという状況もあります。あと、シカイノシシのように、それなりに今までも狩猟としても趣味としてもやっておられる方があった動物とは違いまして、なかなか取り組みにくいというところもあります。  あと、一番困っていますのは、たくさんやはり殺すことになります。そのことについてやはりいろんな意見の方がおられます。本当に殺すべきなのかというようなことから、あと殺し方、あと殺したものをどう処分するかということで、ちょっと話せば長くなってしまいますけれども、様々な問題があって、今は、どんどん増えている中で何とかしよう何とかしようという計画作りをやっていってようやく、例えば兵庫県の場合ですと、六月をめどにアライグマの管理の指針を県が出して、それに基づいて市と町で対策を取っていくという仕組みづくりをちょうど今しているところです。
  43. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  今日、四人の参考人の方から様々御意見いただきましたけれども、しっかり今後の審議の参考にさせていただきたいと思います。  本日は大変にありがとうございました。
  44. 市田忠義

    ○市田忠義君 日本共産党の市田です。  今日は、四人の参考人の皆さん、大変貴重な御意見ありがとうございました。  近年、鳥獣による農業、林業の被害というのが大変増えています。農水省の調査でも農作物被害だけで二百億円を超えると言われていますし、さらに農作物の被害だけではなくて民家にまで近づいて人間の命や安全まで脅かされると、そういう事態も生まれています。こういう被害から農林業を守り、人間の生命、安全を守るというのは緊急の課題ですし、政治にとっての大きな責任だというふうに私ども考えています。同時に、国民共有の財産である野生動物保護、保全というのは大事だと。しかし、それが絶対的で、農業被害を防ぐためのあれこれの施策を論ずること自体が間違っているという立場はやはり正しくないと私は考えています。  四人の方のお話を聞いていて、鳥獣からの農林業被害を防ぐためには総合的な対策が必要で、ただ一つだけの特効薬というのはないというのはおよそ共通した意見だったかと思うんですけれども、その際、当面の対策と中長期的対策、いわゆる対症療法的対策と根本的解決策と言ってもいいと思うんですけれども、対症療法だけでは根本的な解決にならない、むしろ根本的解決を困難にするんではないかという考え。しかし、だからといって当面の緊急対策を否定していいんだろうかと。根本的解決が図られるまでは当面のことはやるべきではないという立場でいいんだろうかと。根本的解決につながる緊急策というものがあるんではないかと。  四人のそれぞれのお話の中にもそういう観点のお話がありましたが、先ほどの話で言い残されていたり、ここは補足したいという点で、対症療法の繰り返しではイタチごっこ、悪循環、中長期的に見てかえってまずい結果になるというお考えもおありでしょう。そういう点で、当面の緊急策と中長期的な対策の区別と関連というんでしょうか、ちょっと大ざっぱな質問で申し訳ないんですけれども、基本的なそういう問題についての考え方について四人の方から、先ほどのお話の補足でも結構ですから、お話しいただければ幸いです。
  45. 金森弘樹

    参考人金森弘樹君) やはり、当面の対策、長期的な対策という見方は必要だと思います。  ただ、これも獣の種類によってやっぱりその対応策が異なってくると、どの動物も同じ対応策でいいということではないと思います。例えば、シカとかイノシシのように非常に繁殖力の高い動物個体管理が基本となるような動物ですけれども。一方、ツキノワグマとかニホンザル、こういう動物は一遍減らしてしまうともう簡単に元に、増やすことができないという動物だと思います。そういうところで対応策は異なってくるというふうに考えます。  やはり、特にツキノワグマの場合なんかですと、やっぱり個体数を調整するという考え方は余りないですから、やはり生息環境ですね。やっぱり、なぜこんなにクマが出没するようになったかと、そこのところの根本的な生息環境対策ということも長期的に考えていく必要があるというふうに島根県でも考えておりますが、これがなかなか、膨大な面積を必要とするツキノワグマ生息環境対策というところをこの財政的にも非常に苦しい時代にどう進めていくかということが非常に大きな問題になっております。  イノシシにつきましては、やはり短期的には防護さく、あるいは個体管理というところが必要ですけれども、やっぱりイノシシという動物がいる限り被害というのはなくならないと思いますんで、やはり今、島根県で考えておりますのは、中山間地域の農業をこれから一体どういう方向に持っていくんだという視点をやっぱり持っておかないと、そういうところから土地利用の在り方、そういうふうなところからイノシシ被害対策をどう考えていくのかと、そういう根本的な、長期的な見方というところをやっぱり今後考えていかなきゃならないんじゃないかというふうに考えております。
  46. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 私は、当面の対策と中長期対策が矛盾するとは思いません。  例えば、今回の改正案で提案されておりますわな使用禁止制限区域の設定、あるいは休猟区の中での特定鳥獣捕獲、それから都道府県知事承認による捕獲制度、こういったものが個別にただ行われているだけでは非常に当面の対策なんですけれども、将来的にどういった形に持っていこうか、この都道府県の中で、都道府県知事鳥獣保護事業計画を作る中で、こういったツールをうまく使って科学的、計画的な保護管理に持っていくんだと、そういうような道筋が見えればこれも一つの第一歩ではあると思うわけですが、一方で、その当面の対策が逆に長期的な目標を見失わせることになってはいけないと思います。  一つは、それは人の問題なんですが、実は、人の問題というのはもうほとんど中長期的な問題ではなくてすぐにでもやらなくてはいけない問題になっているわけなんですが、環境庁に設置されました鳥獣保護管理の検討委員会の中でも、最後に委員のほとんどの意見で、今この人材育成配置ということをやらなければ、十年後にこういった会議がもう一度開かれたときにはもう手後れになっていると、何とかこれを今やらなくちゃいけないということでああいう提案になったわけです。ところが、それを先延ばしにしてしまうということでは、非常に、十年たったときにはもう手後れになっていると思うんですね。  先ほどちょっと言い忘れましたが、そういった専門家資格制度以外に、その委員会報告の中では総合保護管理団体の育成などというのもあったわけなんです。これは、民間の力をかりて、そういった狩猟者捕獲できなくなってきたときに対処できるような団体を育成するというようなアイデアもあるんですが、これなどもその後全くもう顧みられなくなっております。こういったことをやっていかないと、当面の対策だけでは駄目だという大事なものもあるんではないかと思います。  以上です。
  47. 坂田宏志

    参考人坂田宏志君) そうですね、今やっていることで当面の対策のように見えること、たくさんあります。  例えば、シカの数を減らそうということ。取りあえず減らそうという目標で、減らしたら終わりかとついつい考えがちですけれども、例えばシカというのは毎年一頭雌が子供を、二歳以上の、産みます。それで、毎年一・二倍か一・三倍ぐらい増えていくわけですね。そうすると、今当面の対策だと思ってシカを一生懸命減らしていますけれども、それは必ずその増えた分、もし、一定に保つのはなかなか難しいですけど、まあ波があるにしても、ある程度捕獲というのは常に継続して行わないといけないこと。これはイノシシについてもそうですね。  そういう意味でいけば、むしろ今当面の対策だと思ってやっていることが、実はそれは継続的な、やらないといけないことですよということを認識して今の対策をやることが必要かなと思います。  先ほど外来種の問題出てきましたけれども、外来種の場合は、例えば根絶してしまえばそこで外来種対策事業は終わりで、新しく入ってこない限りはそれで終わりということになるんですけど、やはり根絶というのは気の長い話になると思いますんで、その意味では、そこを見据えた上で、ただ終わりがあるものと考えてやっていくということだと思いますけど、ただ、今の野生動物の共生、共存ということは、終わりのない作業をずっとしていくと。そのつもりで、例えばシカ肉やイノシシの肉なんかは産物として利用するとか、そういうふうに持続的に、あるいは資源としての活用も含めてやっていくというふうな考え方が必要じゃないかなと思います。
  48. 羽澄俊裕

    参考人羽澄俊裕君) 私、当面の対策といいますか、直面する問題の改善は、ひたすらゾーニングだと考えます。  やはり地域、ベースとしてはその地域の将来ビジョン、活性化のビジョンを描いた上で、どこまでを農地として、どこまでを林業地域にするんだと、そこから先は自然域なんだというそのラインをきちっと描いた上で、これはほとんど恐らく里山管理ですね。里山の、先ほど坂田さんの映像にありましたように、里山ほど樹林が豊かになってきちゃっている。そこに獣が居着いて、そのすぐわきに農地があったり生ごみが放置されているという、そういう状況がございますので、背景の森林の手入れをする、それから農地における廃棄物をきちっと片付ける、そういったことはすぐにでもできることでございますから、それをどんどん進めていく。そのことによって、人がアクティブに活動しますと、獣は警戒して引いていきます。そういう環境構造をつくる、それからそういう社会構造をつくる、それが一番のポイントであると。それをリードする立場の専門性ある人が必要だというふうに申し上げたいと思います。  それから、長期的な課題としましては、やはり奥山の森林が荒廃しているという現状がございます。これにつきましては、林業地域が手入れ不足で、本当に荒れた状況になっております。これ、日本は暖かい国なので放置すれば広葉樹が生えてくるというほど簡単なもんではございませんで、今正に台風が毎年多くなっておりますが、それによる自然災害も物すごく増えております。そのことによって、自然植生がきちっとまともに回復するというのは非常に難しい状況になってきております。  またさらに、これは緊急の課題でありますが、シカによる自然植生を食べてしまって、その食害によって自然域が壊されているという、そういう実態がございます。この近くでも、神奈川の丹沢、東京都の奥多摩でもそうですが、その破壊のすさまじさは想像を絶するものでございまして、どんどん土壌流出が起きて、立っている木の根元が土がなくなって林木が倒れていっております。そういうものを阻止するには、やはりフェンスを張ってシカの侵入を防ぐ、それからシカの密度を下げる、そういったことを緊急にやらなければなりません。  それから、もう一方で緊急の課題はやはり外来生物の問題で、これはまあ法律が違いますが、やはり先ほど来ありましたアライグマ等の問題は、多分、今後ますますその対策のためのコストが自治体の負荷として掛かってくると考えられます。  それと、当面の対策ということでございますが、正に意見陳述のときに申しましたように、現在の被害問題というのは過疎地の問題でございますので、当面の対策というのは、実は中山間地域の高齢者福祉の問題でございます。農家の皆さん、本当に七十、八十のおじいさん、おばあさんが被害で泣いていらっしゃいます。そういった方々をきちっとケアしてさしあげるのは、これは鳥獣対策予算でどうこうじゃなくて、社会福祉のシステムの工夫でもう少しできることは十分あるんではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  49. 市田忠義

    ○市田忠義君 時間が来ましたので、終わります。
  50. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 荒井でございます。大変参考になりました。ありがとうございます。  まず、わなについてなんですが、違法なわなについての監視体制やら取締りというのは、これはもう実質上難しいということを先ほど来からお話しされているようですが、改めて、現場であります県として、金森さん、そういった監視体制、取締り、違法わなに対してですね、こういったことの要員は現状満たされますか。
  51. 金森弘樹

    参考人金森弘樹君) 島根県の場合でありますけれども、違法わなという部分ですけれども、基本的には狩猟期間中、鳥獣保護員あるいは県の出先の機関の職員が定期的に巡回して見て回っております。  それから、最初にお話しいたしましたように、島根県の場合は、既にすべてのわなに氏名、住所等を記載するという形にしておりますんで、何も名前の付いていないわながあった場合はもうすぐに違法だということが分かるような仕組みにしております。そういう中で、うまくいっているのかなというふうに感じております。
  52. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 そういう違法をする人は非常に極めて少ないようだと、こういう御認識だろうというふうに思います。  そこで、くくりわなとらばさみなんですが、私もこれは禁止した方がいいんじゃないかなというふうにも思っておるんですが、皆様方の改めて御意見などを聞きますと、何というんでしょうか、私も不勉強なんですが、いわゆるアダプティブマネジメントというんでしょうか、先ほど来からお話がありましたように、個体数の管理生息地の管理被害管理というものを非常に適切に組み合わせていったり、フィードバックを掛けて順応させて対応していくということをすれば、このようなわなというものの必要性というのは少なくなるんじゃないかなというような感じも非常にしているんですが、その辺についての、とらばさみとかくくりわな禁止という部分と、先ほど来から四人の皆様方に共通している、先ほど申し上げたようないわゆるワイルドライフマネジメントの三要素の的確な把握と判断と、そして地域ぐるみの取組みたいなものとか、いろんな要素を勘案してやっていくと、これは極めて有効に働くんではないかというようなお話とも受け止められたわけでございます。そんな点から、逆に、羽澄さん、坂田さん、吉田さん、金森さんからちょっと御意見を承りたいと思います。  くくりわなとらばさみを禁止するというようなことよりも、使わなくてもできていくということ可能なのかと、こういったことについての御意見です。
  53. 羽澄俊裕

    参考人羽澄俊裕君) わなに関しましてはこれは捕獲の道具でございますので、今後の特定計画による計画に基づく捕獲というのは、これは狩猟者がいなくなった先においてもこれは必要なことになると思います。  例えば、奥山でシカが増え過ぎれば自然植生を破壊してしまいますから、そのシカの密度を抑えなければいけないとか、里のやっぱり被害を出す個体は的確に選定して捕獲をしなければいけませんので、その場合にわなは有効なツールになり得るというふうに考えます。  現状としてとらばさみを使う方というのはどんどん減っていると思いますが、くくりわなはやはり伝統的な狩猟法でございますので、これはやっぱり有効に活用していくべきだと私自身は思っておりますが、それをする際に、乱暴な掛け方、違法な形での仕掛けをしてしまう行為そのものをきちっと取り締まる体制ができれば、私は有効なツールとして活用していくべきではないかというふうに考えております。
  54. 坂田宏志

    参考人坂田宏志君) 私も、例えばくくりわなの代わりに考えますと、銃による捕獲、それとはこわなによる捕獲、そういうものが考えられ、例えばイノシシの場合だと考えられますけれども、例えばはこわなには、もうそれを覚えてしまってなかなか入らないイノシシいます。あるいは、銃を撃てない場所というのは、やはり銃を使えない場所というのもたくさんあります。そういうようなときの道具としてくくりわなというのは非常に有効な道具だと思っています。  全体の中で、例えば生息地管理ですとか被害管理の中で、その個体管理の、何といいますか、ウエートが軽くするような方法、それはできると思いますけれども、やはりそれも地域の事情なり条件次第によってやはりどうしても捕獲ということが必要な場所というのは必ず出てくると思います。  その意味でも、狩猟でどういうレベルでの規制をするかということは検討した上で規制を掛ければいいと思いますけれども、全面に禁止ということになって、それ自体が使えない、あるいはその技術がなくなってしまうということになると、将来的な保護管理の施策の中で必要な道具一つを失うということになると思いますんで、その辺は慎重に考えた方がいいと私は考えています。
  55. 吉田正人

    参考人吉田正人君) 今、わなで捕まえたいという要望はイノシシシカでございまして、それに関しては、はこわなですとか囲いわなですとか、そういったわなを使えばいいわけでございまして、とらばさみ、くくりわななどは元々小さな毛皮獣を捕まえるために開発されたものです。ですから、くくりわなに関しては、先ほどお二方の意見もございますけれども、かなりその仕組みなどについて錯誤捕獲が起こらない、起きても放獣できるというような仕組みに改良したものに限定する。  あるいは、とらばさみに関しては、私はもう廃止してもよろしいと思います。なぜなら、何度も環境省からいろいろ通知をしても県のところでストップして、ホームセンターなどで違法に、違法にというか、免許も確認せずに売っているという実態が全く変わらないわけです。そして、パトロールして撤去するという仕組みもないわけです。そういった状況が改善できないのであれば、もうこれは廃止すべきであると思います。
  56. 金森弘樹

    参考人金森弘樹君) 島根県の場合も、イノシシ、一万五千頭近く捕っておりますけれども、これの、このうちくくりわなで捕っているというのもかなり占めております。ですので、この特定計画捕獲目標頭数等を設けておりますけれども、このくくりわなが全く使えないという状況になるとその特定計画目標達成は非常に難しくなるんではないかというふうに考えております。そういうところでも、くくりわな、非常に名人級の狩猟者の方もいらっしゃって、非常にうまく捕らえる方もいらっしゃいますので、そういうふうな技術の伝承という点においても私はくくりわなは残すべきではないかと。  とらばさみについても、知識のない人あるいは免許のない人が使うという部分は確かに問題ではありますけれども、ヌートリア等で非常に使用場所を限ったり、あるいはその使い方をうまくやるような適正な使い方ということをやれば、いい道具ではないかというふうに考えます。  以上です。
  57. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 例えばそうした場合に、いわゆる間違うという、錯誤ですか、そういったことを含めて、それで放してやるというようなことで、こういった数字は先ほど来から少しはお話があったんですけれども、かなりきっちりつかまえておきませんと、先ほどの場合もそうなんですが、違法なものがどれぐらいあったかと、こういったところの生態をサンプリングするということだけじゃなくて、そうした行為における実態というものもひとつ大きく把握しておかないと、ある意味において有効性が、有効な対応が取れないんじゃないかと、このように思いますけれども、そこについては羽澄参考人、いかがでございましょう。
  58. 羽澄俊裕

    参考人羽澄俊裕君) 恐らく地域現場において、これは猟師の皆さんの中でも縄張意識が非常に強い世界の、山奥のそういう世界の問題でございますので、そういう情報というのはなかなか表に出てきにくい面がありまして、そのための実態調査というものもなかなか行いにくいという。  ですから、捕まってぶら下がっている錯誤捕獲の獲物があったとか、あるいは錯誤捕獲現場を見たとか、そういう情報が延々とずっと続いているということ。それから、例えば西日本でイノシシのくくりわなクマが掛かるという錯誤捕獲が非常に多いんでございますが、それは、ツキノワグマ自体がくくりわなに掛かって手のひらがもげてしまうとか指がもげてしまったまま生き続けて、そういう個体が捕まる事例が非常に増えていると、そういうことからも、錯誤捕獲というものが非常に多いということで保護団体からも非常に非難を受ける要因になっているものと思われます。
  59. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 坂田参考人にお尋ねいたしますけれども、先ほどのいわゆるメッシュというんでしょうかね、密度分布で非常に分かりやすかったんですけれども、やっぱりほかの、四参考人にも共通なんですが、もっと予算を立ててそしてきちんとモニター調査というんでしょうかね、あるいは統計上、すべてにはできませんから、統計上に置き換えて判断すればいいんだと思うんですが、まだまだ足りないという実感をしたんです。それはそのとおりだと思うんですが。そういったことをやらないからやっぱりミスマッチというんでしょうかね、これが非常に多いんじゃないかと、そういう印象を持ったわけです。  つまり、農村とか人に対するいわゆる被害、これをどう抑制するかという話と、それから生物多様性の保全の問題ですよね。殺すというのと生かすという、これを本当に無駄な殺生をしてないかというようなこと、そしてまた、人にまで間違ってそうしたことが及ばないかということがあると思うんですけれども、そういう意味では、やっぱり基本的にこのモニタリングといいますか調査というか、これが絶対的に欠けているというふうに何か印象ですごく思うんですね。  まず、そこの実態を調べろというようなことの予算の必要性というものを改めてお聞かせいただけますか。
  60. 坂田宏志

    参考人坂田宏志君) やはり、私たちが物事を判断していく上で、先ほど言われたように、その基本となる情報、データですね、それをきちんと作っていかないといけないと思います。  私たちもできる範囲ではやっておりまして、例えばツキノワグマの錯誤、今錯誤の捕獲のことがありましたけれども、錯誤捕獲があった場合は、それ一つ一つにきちんとカルテを作って記録しております。それで、実際に役場なり県の方に報告がないものは埋もれてしまうわけですけれども、必ず報告をしてもらって県の方で放獣すると。ツキノワグマに対してはそういう体制を取っておりますので、それでデータを、どのくらいの錯誤があるのかというような情報も蓄積しております。  ところが、やはり限られた人材の中で、人の中でやっておりますので、本当はこのデータが欲しいというものがあっても、私たち提示できないものが多くて非常に残念な思いをするわけです。そういうもののデータさえあれば正しい方向に物事が行くのに、私の方も、例えばツキノワグマなんかに対しても、増えているか減っているかというのは今ちょっと判断できませんと言わざるを得ないような状況であります。その意味では、本当にきちんと、私たちそれがある意味で仕事でもありますから、その仕事をきちんとしたいというふうには常々思っております。
  61. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 最後になりますけれども、羽澄参考人から、実はもう人間社会存続の問題であると、そして農村、格差が広がって過疎地の問題であって、そういう視点からさかのぼって見れば、もうある意味で生きていく公共的な発想というものを入れないと難しいんだろうというのは非常に賛同できることなんですが。  そこで、金森参考人にお尋ねしたいんですけれど、複数県にまたがって実際にやっていらっしゃるわけですね、島根、広島、山口と。それで、吉田参考人からありましたけれども、今回の法改正で、複数県にまたがる、いわゆる生態分布的な広い意味ですよね、里山含めて集落というふうなもっと身近な、先ほどの提示でもあった非常に幅広い問題だと思うんですが、今回の法改正で、金森参考人にはお尋ね申し上げたいんですけれども、その複数県にまたがるというところに対する手当てといいますか、こういったことは十分だと、このようにお考えでしょうか。吉田参考人はそこが不十分じゃないかと、こうおっしゃっていたわけだというふうに聞いたんですが、いかがでございましょう。
  62. 金森弘樹

    参考人金森弘樹君) そうですね、三県でツキノワグマ、西中国のツキノワグマ管理をやっているわけですけれども、現在その法改正、何らかの法改正がこのことに対してもっと必要だというふうな認識は、私は今のところ持っておりません。  ただ、いろんな問題はあってうまくいってない部分はありますけれども、その辺はやっぱりクマに対する認識、地域住民の方がいかに知識あるいは認識、理解をしていただくか、そういう部分が非常に大きいというふうに感じております。
  63. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 勉強になりました。ありがとうございます。
  64. 福山哲郎

    委員長福山哲郎君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十四分散会