○長島昭久君
民主党の長島昭久です。
私は、
民主党・
無所属クラブを代表して、
施政方針演説に対しまして、内閣
総理大臣に
質問いたします。(
拍手)
まず、国家の安全、すなわち外交・安全保障
政策からお伺いいたします。
かつて、ウィンストン・チャーチル英国首相は、外交は八割が常識、あとの二割はニュアンスの違いと喝破いたしました。
政権を目指す
民主党の外交・安保
政策は、万年野党型の何でも
政府の逆というのではなく、この八割の常識に基づいて、あくまでも
現実的な外交の選択肢を
国民に提示することを心がけてまいります。ただし、変人と呼ばれる
小泉総理の外交は、八割方が非常識なものでありますから、その点は徹底的にただしてまいります。(
拍手)
さて、
総理は、常々、
日米関係が緊密であればあるほど、
中国や
韓国、
アジア諸国初め世界各国と良好な
関係が築ける、このようにおっしゃってこられました。私は、率直に、この
日米関係を基盤にした
アジア外交という前提は正しいと思っております。
しかし、問題なことは、五年近くにわたる
小泉政権下で、
日米関係緊密化の努力はそれなりに一生懸命やってこられたと評価いたしますが、それが
アジア外交にどう結びつくのか、具体的な成果が全く見られません。最近では、さすがに
アメリカでさえ、
日中関係の険悪化が
アジアにもたらす悪影響について心配をしております。
これは当然のことであります。
アメリカにとってみても、世界戦略を
考えた場合、
アジア太平洋地域で同盟の
パートナーを探すとき、
アジア地域に確固とした外交基盤を持った国を望むか、それとも、八方ふさがりで孤立感をますます深めているような国を望むかは、答えは明白であります。
一方、私は、
アメリカか
アジアか、言いかえれば、
アメリカと距離を置いて
アジアと親密にいこう、そういう命題の立て方も誤っていると思っております。それは必ずしも
現実的な選択肢ではありません。
しかし、小泉外交に決定的に欠落しているのは、
アジアとの
関係と
アメリカとの
関係が、
日本の外交戦略上、
相互に補完
関係になっていること、このことへの
認識が全くないということであります。
アジアとの
関係、これを基盤にして
日米関係をさらに強化していこうという視点が私は足りないと思っています。
そういった外交基盤を持たずに
アメリカとの
関係にしがみつこうとするから、BSEのような問題で結局譲歩を強いられて、
国民の命と健康を危険にさらすようなことになるのです。
日本が
アジアに外交基盤を築いていく上で大きなかぎを握っているのは、何といっても首脳外交だと思います。首脳外交のインパクトについては、
総理御
自身が身をもって実感しておられると思います。戦後最高と言われる
日米関係をもたらしたものは、
ブッシュ大統領と
小泉総理というリーダー同士の
信頼関係だと思います。また、あの
北朝鮮の最高指導者に
拉致事件の
存在を認めさせ、謝罪させ、
再発防止を約束させたのは、まさに
小泉総理による首脳外交の成果であります。
にもかかわらず、
中国と
韓国との
関係に限っては、首脳会談は開けなくても問題ない、首脳間の往来が途絶えていても、
民間交流がうまくいっているから心配ないと強弁される。このダブルスタンダードは一体何なのでしょうか、
総理。
中国と
韓国との間に首脳同士の
信頼関係がないことを
総理はどのように
考えておられるのでしょうか。自分は対話の扉を閉ざしていない、相手が悪いといった開き直り
答弁は、もう聞き飽きました。
日本国の最高指導者として、中韓の首脳との
信頼関係構築の重要性についてどんな
認識を持っておられるのか、首脳外交を進めるために、相手国を非難する以外にこれまでどんな努力をしてこられたのか、今後どのような努力をなさる
おつもりか、明快な御
答弁をお願いいたします。(
拍手)
仮に、今のような冷え切った
日中関係のままで、例えば二〇〇一年四月に起こった米中軍用機の接触
事故のような事態が発生したら、どうなるでしょうか。
あのときは、両首脳間に一定の
信頼関係があり、米中両国の指導者たちが協力
関係を維持しようと懸命に努力したことが事態の悪化を防ぎました。直接的には、パウエル国務長官が率直な謝罪をし、
中国政府も人民解放軍の強硬路線を抑えることができ、
事故発生から十日余りで米中衝突の最悪のシナリオは回避されました。
しかし、今の
日中関係、あるいはその背後にある
日中両国の世論に、そのような抑制のきいた態度を期待することができるでしょうか。
例えば、海洋権益をめぐり緊張が高まっている東シナ海で突発
事故が起こった場合、両国内のナショナリズムに火がついて、両国
政府とも振り上げたこぶしのおろしどころを見失って、危険なチキンゲームに突入してしまうかもしれません。昨年四月の
中国各地で起こった反日暴動の例を引くまでもありません。
総理、今あなたがなすべきことは、自国のナショナリズムに迎合したりあおったりすることではなく、
アジアの二つの大国に
たまっているナショナリズムのマグマを適切に管理することだと思うのです。それこそが真のリーダーシップではないでしょうか。この点についての
総理の御
見解を承りたいと思います。(
拍手)
もう一つ私が危惧するのは、今のような
日本外交の行き詰まり状態の中に、
我が国が
アジアの外交舞台で
中国に大きくおくれをとってしまっていることであります。
中国は、自国の平和的台頭を補強する国際
環境を整備するために、ここ数年、極めて積極的な近隣外交を展開してまいりました。まず、中央
アジア諸国との間に上海協力機構という対話の枠組みをつくり西側を固め、長く続いたインドとロシアとの国境問題に決着をつけて北と南を固め、ASEAN諸国との間にFTAを中心に積極的な
経済協力
関係を樹立、さらには、
北朝鮮をめぐる六
者協議でリーダーシップを発揮して、北東
アジアの秩序形成で主導権を握るような勢いを見せています。
これは、
我が国にとって看過すべからざる事態と
考えますが、
総理はどのような現状
認識、そして危機感を持っておられますか、御所見を承りたいと思います。
このような
中国の積極的な外交攻勢に比べて、
小泉政権五年の近隣外交は、まさに貧困の一語に尽きます。
FTAにしても、二〇〇三年十月の日韓首脳共同発表で二〇〇五年末までに実質的な交渉を終えると合意しながら、やがて暗礁に乗り上げ、いまだに次回の交渉日程すら決められない状況です。ASEANが友好協力条約を締結した際にも、
中国は直ちに加盟いたしましたが、
我が国は八カ月もおくれをとってしまいました。もちろん、
拉致問題の解決が大前提でありますけれども、六
者協議における
我が国の
存在感は極めて薄い。昨年末に行われた史上初の東
アジア・サミットでも、
我が国は辛うじてメンツを保ったにすぎません。インドやロシア、オーストラリアとの戦略的連携も、
アメリカに背中を押されているようなていたらくであります。
総理、あなたは、残された
任期の中で、
アジア外交におけるみずからの負の遺産を帳消しにするような具体的なアクションプランを持っておられますか。
総理大臣として、例えば、あなたの師匠であった福田
総理の福田ドクトリンのような
アジア外交の総合戦略を期待するのは無理なんでしょうか。その
必要性も含めて、明快な御
答弁をお願いいたします。(
拍手)
我が国の
アジア戦略を描く場合、
中国の
存在を無視することはできません。
中国の台頭は、一時的なブームなどではなく、世紀の単位でとらえるべき歴史的現象です。しかも、その動向は世界
規模で衝撃を与えるものです。この
中国を、かつてのような朝貢システムではない、欧米と調和し得る価値観に基づいた
責任ある地域大国へと導いていくために、
日本の果たすべき役割は大きいと思います。
その際、ポイントとなるのは、
日中間の共同作業のアジェンダをいかに見出すかということだと思います。たとえ
脅威に感じるような強大な軍事力を有していても、共同作業を進めることによって、
中国を平和協調的な路線に導いていくことが可能であります。
今の
中国の最大の外交
課題は何でしょうか。それは、
経済成長のボトルネックになっている
エネルギー問題のリスクを軽減することであります。東シナ海での強引な資源開発や、世界各地の産油国に地域の安定や国際規範を無視してプレゼンスを
拡大していく姿勢は、その端的なあらわれであります。世界
経済に影を落とす原油高の重要な要因の一つが
中国の需要増加であることは、周知の事実であります。
中国の
エネルギー効率を劇的に
改善し得る
我が国の技術力や経験が、
中国にとってそれこそ垂涎の的であります。
かつて、ヨーロッパ連合の前身であるECが、一九五〇年、独仏を中心に創設された石炭鉄鋼共同体という
エネルギー協力に端を発していたことを想起していただきたいと思います。同じように、
日本と
中国にも今、東
アジア共同体創設に向けた構想力が求められていると思います。
例えば、東シナ海の海洋資源開発やシベリアの天然ガス開発などは、将来的な共同体建設への推進力となり得ると思いますが、
総理がどのような
長期的な構想をお持ちなのか、ぜひお伺いしたいと思います。(
拍手)
このほかにも、
日中間で協力し得る
テーマは幾らでもあります。
環境問題、テロ
対策、核やミサイルの不拡散、平和構築、シーレーンの安定確保、そして
鳥インフルエンザなど
感染症対策。特に、
環境問題や
感染症対策といった人間の安全保障にかかわる非軍事の民生協力は、もともと
我が国の得意とする
分野であり、ここにこそ大きな協力の
可能性が秘められていると私は
考えます。
このように、地域の発展にとって不可欠な
分野の日中協力が、やがて地域の公共財にまで高められていったとき、初めて、
お互いの自国の勝手な都合で簡単には協調
関係を崩せなくなるはずです。
こういう大きな外交のかじ取りは、事務方に任せるには荷が重過ぎます。首脳同士の
信頼関係に基づく共同のリーダーシップが不可欠なのではないでしょうか。
総理にそのようなリーダーシップを発揮される意思がおありかどうか、覚悟のほどをお伺いしたいと思います。
事務方の限界という意味では、上海総領事館の情報担当職員がとうとい命を落とされた
事件について触れなければなりません。
もちろん、
中国公安当局による遺憾な行為が自殺の原因との外務省の主張を裏づけるためには、真相究明を徹底的にやらなければなりません。
民主党は、当時の
責任者だった川口順子元
外務大臣の
証人喚問を要求いたします。
総理、
国会での真相究明に御協力いただけますね。お答えください。
それ以上に重要なことは、
我が国のインテリジェンスが全く機能していないという驚くべき事実であります。在外公館における最前線の情報担当者を守り切れなかった
日本政府は、情報戦で敗北したも同然です。
ところが、麻生
外務大臣は、外交
演説の中で、情報の重要性を強調されたにもかかわらず、この
事件で明らかになった外務省のカウンターインテリジェンスのお粗末さには一言もお触れにならなかった。
政府は、いまだに、この問題が内包する
日本外交の危機的な状況に対する自覚が薄いように思われますが、
総理、真相究明を含め、今後どのように対処していく
おつもりなのか、具体的にお示しください。(
拍手)
次に、
アメリカ合衆国との同盟
関係について伺います。
小泉外交で辛うじて及第点をつけられるのは、
日米同盟の強化を積極的に進めた点のみと言えます。
昨年十月末に発表された
日米同盟の変革と再編は、大変意義深いものだというふうに思っています。さらに、二月に合意した
日米共通の戦略目標は、さらに意義深いというふうに
考えております。特に、台湾海峡をめぐる問題に、「対話を通じた平和的解決を促す。」と明記するなど、これまであいまいにしてきた問題にもきちっと踏み込んでおり、
日米両
政府の、
アジア太平洋地域における平和と安定に向けた並々ならぬ
決意がうかがわれます。
しかし、同盟強化は、
我が国の安全保障にとって、ほんの一部、軍事的な側面でしかないこともきちっと
認識をしておく必要があります。軍事面ばかりを強調すれば、近隣諸国が警戒感を持つのは自然の成り行きであります。
したがって、同時にやるべきことは、周辺国の不安にこたえる丁寧な説明や信頼醸成のための真摯な努力です。
小泉政権に欠けているのは、そういった外交のデリカシーだというふうに思います。
例えば、一九九六年から九七年の、
日米防衛協力のガイドライン改定のときを思い出してください。当時は、事務方だけに任せずに、
総理大臣以下、
外務大臣、防衛庁長官、
官房長官、
与党の政調会長など
政策責任者らが、それこそ入れかわり立ちかわり
中国や
韓国、ASEAN諸国に直接足を運んで、その趣旨や進捗状況などを懇切丁寧に説明しています。
これに引きかえ、
小泉政権の無頓着、無神経さにはあきれるばかりです。今回の同盟変革をめぐる周辺諸国への説明
責任について、
総理は一体どのようにお
考えか、御所見を承りたいと思います。
このデリカシーの欠如は、米軍再編のプロセスにおいても、基地を抱える自治体に対する
政府の姿勢に顕著にあらわれております。
その最たるものが、沖縄の普天間基地の移設問題で見せた
小泉政権の強引な手法であります。
一九九六年、
日米で返還が決まって以来、普天間基地移設をめぐり、
日本政府、沖縄県、移設先の名護市、そして米軍との間で、慎重の上にも慎重な折衝が積み重ねられてまいりました。しかし、今回、
小泉政権は、これまでの経緯を一挙に吹っ飛ばして、九九年の閣議決定からも大きく逸脱して、渋る米軍を説得して、沖縄県や名護市の頭越しに移設先を決定してしまいました。
しかも、昨年十月末の
日米合意から既に二カ月以上も経過しているのに、当然予想されたはずの地元からの
環境や騒音に関する基本的な疑問や懸念に全く答えられない現状は、無
責任のきわみではないですか。
総理の現状
認識を承りたいと思います。(
拍手)
昨日行われました名護市の市長
選挙の結果、三人の
候補者の中では最も柔軟な方が当選されましたが、
政府の決めた移設案に対しては、市長も明確にノーと言っております。
政府として、まさか特別措置法などによって力ずくの解決を図ろうとするわけではありませんね。この点、
総理の口からはっきりとした
答弁を求めます。
十一月には沖縄県知事
選挙も控えております。
政府が強引な手法に訴えた場合、いやが応でも沖縄県全体を反米、反基地運動に駆り立ててしまうことにもなりかねません。これまで、この問題を半ば放置してきた
小泉総理の猛省を促したいと思います。沖縄のSACO合意実施に向け努力した橋本、小渕政権とは雲泥の差であることを申し上げたいというふうに思います。今後、どのように沖縄の皆さんに御理解と御協力を求めていこうとするのか、具体的な方策をお尋ねしたいと思います。
沖縄以外でも、昨年十月の
日米合意によって、いきなり基地機能の強化が打ち出され、周辺
住民に不安の声が広がっている自治体が多数あります。
例えば、
アメリカ空軍の横田基地には、航空自衛隊の司令部が移駐され、事実上、ミサイル防衛に係る
日米共同の防空司令部が創設されることになります。米陸軍の司令部が移ってくる神奈川県の座間基地や、空母艦載機の移駐が決まった山口県の岩国基地などでも、基地の性格を一変させるような計画が進められております。しかし、この基地機能の強化が周辺
住民にどのようなリスクをもたらし得るのか、説明は全くなされておりません。
米軍再編における二つの原則は、抑止力の維持と
負担の軽減だとされました。
我が国の安全保障を
考えた場合、この原則は妥当なものだと思います。しかし、基地機能が軽減される自治体はともかく、逆に強化される場合には、その不安にこたえる、より丁寧な説明が必要なはずです。
原子力空母の配備が発表された横須賀基地について、神奈川県の松沢知事は、外務省は通常型空母の
可能性はまだあると
最後まで期待を持たせてきた、これは明らかにだまし討ちだと憤慨しておられます。
総理にしても外務省にしても、
政府の姿勢は地元自治体に対し甚だしく不誠実なのではないでしょうか。それとも、
政府は、その意に反してすべて
アメリカに押し切られたとでもいうのでしょうか。米軍基地再編をめぐる
政府の説明不足に対する
総理の反省の弁とともに、基地機能の強化に伴うリスクについても、
総理御
自身からきちっとした説明を求めます。
こうして見てまいりますと、
小泉政権の説明
責任に対する
認識の甘さが、
日米同盟の基盤である
国民の支持にいかに深刻な亀裂を生じさせているかがわかります。この
国民の
不信感を払拭しなければ、三月を期限としている在
日米軍基地の再編着手など実行できるはずがありません。これを挽回するためには、
政府挙げての相当な努力が必要だと思います。
その意味では、外務省がこれまで渋ってきた
日米地位協定の改定は避けられないと
考えますが、いかがでしょう。例えば、最近、横須賀で起きた米兵による強盗殺人
事件などへの対応をめぐっても、
政府は、米軍に対し、何かはれものにさわるような姿勢に終始しました。
国民は、一体だれのための
政府なのかと怒っているんです。
これまで
事件が起こるたびに同盟
関係を揺るがせてきた、例えば、犯罪の被疑者の身柄をいち早く
日本当局に引き渡す問題や、
環境や安全基準の国内法の適用など、これまでのような運用
改善というびほう策ではなく、半世紀以上も前にできた
日米地位協定そのものの改定を一日も早く
実現すべきと
考えますが、
総理の御
見解をお伺いいたします。
総理、このことは
日米同盟の安定性にかかわる根本問題です。
政府が及び腰であれば、私
たち民主党は、独自の改定案に基づいて、渉外知事会を初めとする基地を抱える全国の首長の皆さんとともに、地位協定改定の
国民運動を展開してまいります。(
拍手)
次に、内政問題について、三点に絞ってお尋ねいたします。
まず、
地方分権について
質問いたします。
国の未来像を描こうとすれば、中央と
地方のあり方は根幹にかかわる重大問題です。
私
たち民主党は、その名のとおり、
国民の力を信頼しておりますから、公の仕事も民と官で分担し、官はまず
地方から
考えてまいります。外交、防衛のように中央
政府が担わなければならない仕事は別として、基礎自治体が主役となり、広域自治体や中央
政府はこれを補う補完性の原則を重視いたします。原則に基づいて仕事の仕分けを進めることが最優先
課題であって、中央が
地方に口を挟むべきでないことは言うまでもありません。
その私たちの立場から見ると、
政府の
三位一体改革が目指すゴールは全く見えません。これまで
総理は、補助金
削減四兆円、税源移譲三兆円という数字だけを掲げ、全体像は
平成十八年度までの
改革を具体化してから
考えると言い続けて、理念を全く示してきませんでした。結局は、霞が関の権限を温存しつつ、
負担を
地方に押しつける補助率カットという最悪の手法を許して、中央官僚にとりあえず数合わせをさせただけではないでしょうか。もし
総理に反論がおありでしたら、ぜひ承りたいと思います。
地方分権を本気で進めていくためには、権限と財源ばかりでなく、自治体の立法権、広域のイメージ、
住民の直接参加なども重要な
テーマです。ぜひ
総理の基本的な
考え方を
国民に示していただきたい。補助金の廃止や税源移譲は必ず行うべきものですが、これで一件落着というわけではないはずです。
平成十九年度以降の具体的な方針もお聞かせ願います。
今
国会の焦点
課題の一つは、
医療制度改革であります。
小泉総理は、厚生大臣を二度経験され、これまで累次にわたる
医療制度改革に深くかかわってこられましたから、だれよりも大きな
責任があると言うことができます。そして、今回も、
医療財政の逼迫を理由に、
国民への
負担増を押しつけ、保険の抜本的な
改革も
医療の質の向上も先送りする、これまでと全く同じパターンの繰り返しをされるんでしょうか。
人口の減少、高齢者比率の上昇、
医療給付費の増加見通しといったデータに注目を集めて、高齢者にも
負担を求めつつ、
診療報酬改定においては、
総理みずから最大の下げ幅となるよう指示を出して、三・一六%という引き下げの数字によって
改革を演出していると同然であります。
しかし、公的
医療制度に求められるのは、
国民の命と健康が十分に確保されるサービスの提供、そして、透明で合理性があって
国民が納得できる
負担です。
診療報酬を引き下げるなとは言いませんが、今こそ
医療保険
制度の根本的な
見直しを実施すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
財政面では、
医療費全体を見ることが重要です。国の給付費だけを抑えても、全体がふえれば
国民の
負担となります。
医療費は、保険料と
患者負担、税によって賄われています。
負担の
総額もバランスも問われているのです。総合的な保険
制度のビジョンを、
総理、ぜひお示しください。
問題は財政だけではありません。三時間待ちの三分
医療や
医療事故など、
患者やその御家族が切実に求めている
医療の質あるいは必要なサービス量は本当に確保できるのか、
経済弱者や健康弱者が
医療制度からはじき出されていくようなことが本当に起きないのか、
国民の間に深刻な懸念が広がっているんです。
総理の明快な御
答弁を求めます。
先般、NHKスペシャルで、がんに関する特集がありました。
患者も
医療を提供する側も苦悩している状況が如実にあらわれていました。
国民病ともなっているがん
対策や小児救急の整備体制のおくれ、産科医の減少など、現在直面している緊急
課題にどう取り組もうとされているかについてもぜひお答えください。(
拍手)
内政問題の
最後は、犯罪
被害者への
支援策です。
私がしているこのハートバンドは、その犯罪
被害者への
支援のシンボルです。人が
被害者となった刑法犯の認知件数は、
平成十六年で約三百五万五千件余りにも上りました。毎年これだけ起こっているということは、一生の間に犯罪
被害者とならずに過ごすことの方がむしろまれだとも言えます。
昨年十二月に閣議決定された犯罪
被害者等基本計画は、確かに一歩前進ではあります。しかし、愛する肉親を卑劣な犯罪や突然の交通
事故などで失った
被害者の皆さんが切実に訴えてこられた、肝心かなめの
経済的な
支援策については、そのあり方すら決まりませんでした。周知のとおり、欧米に比べて、
我が国の
被害者への
経済支援は著しく貧弱であります。なぜなら、基本理念が全く異なるからであります。
欧米の
被害者支援の基本理念は、国家が、テロや犯罪から自
国民を守れなかったために、
被害者の人権が侵害されたと受けとめるんです。したがって、侵害された人権を回復し
救済するために、国家が補償金という形で
被害者に給付をいたします。
翻って、
我が国の給付金
制度は、あくまで見舞金的な性格だと言われています。そこには、犯罪を防げなかった国の
責任意識も、
被害者の人権を
救済しようという姿勢のかけらも見られません。このような基本思想を根本的に転換しなければ、欧米並みの
被害者の
支援制度は確立できません。
総理、ぜひとも、
経済支援のあり方は、犯罪
被害者の基本的人権を保障するという憲法の要請に従ってこれを定める、このような明確な指針を示していただきたい。いかがですか。(
拍手)
結びに、憲法改正について述べたいと思います。
自由
民主党は、結党五十年に合わせて憲法草案をまとめられましたが、党内にまで異論が噴出するありさまで、とても
国民的な
議論を積み重ねて決めたとは言いがたい状況です。
これに対して、私
たち民主党は、憲法提言というアウトラインをまず取りまとめ、ことし一年間かけて全国津々浦々を回り、
国民の皆さんと直接
議論し、幅広い
意見を取り入れながら、あくまでも
国民のコンセンサスを重視した憲法草案づくりを進めてまいります。
いずれにしても、ことし還暦を迎えた
日本国憲法を見直すことは、私たちの戦後の生き方を見直すことにもつながります。
小泉政権は、ホリエモンやヒューザーに象徴される短絡的な競争原理や表面的な効率化を称揚し、官の
責任放棄、民の堕落を招き、まさしく国家の品格をおとしめました。
私
たち民主党は、官の効率化は進めつつも、民の公共性をはぐくむことによって、地域のきずなと公の精神に支えられた公正で誠実な
政府を樹立し、
小泉政権五年で失われた国家の品格を取り戻してまいります。そのためにも、一日も早く政権交代を
実現して、
国民の皆様の期待にこたえてまいることをお約束して、
質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕