○太田
参考人 ただいま御紹介いただきました
財団法人公益法人協会理事長の太田でございます。どうかよろしくお願いいたします。
まず、本日の
法案御審議に当たりまして、
参考人といたしまして
意見を述べる機会をお与えいただきましたこと、深く御礼申し上げます。
以下、お
手元の私
どものレジュメに従いまして
意見を述べさせていただきます。
最初に、財団
法人公益法人協会というものにつきまして、若干自己紹介をさせていただきたいと思います。
当協会は、昭和四十七年、一人の
民間人が私財を出捐し設立しました財団
法人でございまして、
公益法人の健全なる育成発展に貢献し、もって
公共の福祉に
寄与することを
目的といたしております。具体的には、非営利公益組織に関する相談、出版、研修など支援
事業、海外事情を含む調査研究
事業、あるいは
政策提言活動などの
事業を行っております。
公益法人制度改革につきましても、当初から今日に至るまで節目節目でいろいろな提言をさせていただいております。これらに関する資料は、お配りいたしました茶色い私
どもの封筒の中に一式入れておりますので、後ほどごらんいただければ大変幸甚に存じます。
次に、
公益法人制度改革に関する私
どもの従来からの主張をかいつまんでお話ししたいと思います。
まず、本
改革の理念と
目的でございますが、本来、
公益法人というものは、
民間による、
民間の、
民間のための組織であります。従来の
制度は、官庁による介入支配が余りにも強く、
民間による自由な活動が制約されておりました。今回の
改革の
目的は、市民の先見性のある創造的で自由闊達な公益活動が今後の日本
社会にとって極めて重要であり、これを支援し、奨励することが
目的であり、また
改革の理念でなければならないということを私
どもは常に主張してまいりました。
次に、主務官庁
制度でございますが、現在の
制度は、主務官庁が
法人の設立を許可し、設立後も引き続き指導監督するという、他の私
法人にはほとんど類例のないほど官僚支配色の強い
制度であります。
明治憲法による、まさにお上と下々の関係のもとにつくられた
制度と言ってよいのではないかと思っております。
このような
制度を役所が濫用した結果、官製談合、天下り、不当利得の蓄積、
不要不急の補助金支出など数々の弊害が出てまいりましたことは、多くの皆様が御指摘になるところであります。
しかし、ここで一つ、ぜひ皆様方に誤解のないようにお願いをしたいわけでございますが、そのような官製
法人と一般の
民間公益法人とは全く違うわけでありまして、二万六千の
公益法人の多くは、
民間の知恵、
民間の
資金、
民間の活力でもって日夜活動をしている
法人でございまして、一部の利権癒着的な目ですべての
公益法人をごらんいただくということについては、私
どもは大変残念に思っております。
また一方で、
公益法人を市民がつくろうといたしますと、何年もの実績が必要だとか、何億円以上必要だとか、この
分野では既に他の
公益法人があるから重複するのでだめだとか、定款の案につきまして枝葉末節について指摘を、しかも小出しにされまして、それも省庁あるいは局、課によりまして指導の中身が違うという、まことに善良なる市民といたしましては、疲れ果てまして、もう設立はあきらめてしまう、こういう事例は枚挙にいとまがございません。
このような主務官庁
制度は、私は百害あって一利なしと考えておりますので、なるべく早く撤廃していただきたいというふうにずっと主張をしてまいりました。
続きまして、
廃止いたしました場合には、その主務官庁にかわりまして、英国におきまするチャリティーコミッションのような、
民間有識者から成る独立した中立的な公益認定
機関をつくるようにも提言してまいりました。その認定基準は、明瞭かつ具体的に法令で規定し、市民が容易に理解できる、市民の予見可能性の高い、そういう明確な基準にしていただきたいということを主張してまいりました。
さらに、認定、不認定、取り消しなどにつきましては、理由を付してこれを
国民に公開するなど、極めて透明性のある、公平性のある、そういった
制度の仕組みを私
どもは提案してまいりました。
一方、新しくできる
公益法人側にも、私
どもはいろいろと新しい考え方を提案してきております。
新しくできる
公益法人制度は、
基本的には、団体自治が尊重され、自己責任のもとで自立的な運営ができるような仕組みでなければならないということは申すまでもないと思います。
さはさりながら、一方で、寄附者、ボランティア、受益者、そして納税者でもある市民一般の
方々から信頼される組織でなければなりません。すなわち、あのような立派な団体だから寄附をしよう、あるいはボランティアで協力をしよう、そして、あのような団体だったら税制支援も当然だ、こういうふうに市民の
方々が思っていただくような、透明性のある、立派なガバナンスのきいた運営というものが私は必要だというふうに思っております。つまり、市民に対する受託者としての
社会的な責任を全うできるような組織でなければ、やはり
公益法人としての資格はないのではないかというふうに思います。
また、市民の信頼を裏切るような行為があった場合には、認定取り消しなど、厳正な処置を機敏に対処できるシステムというものも必要だと思っております。
次に、税制でありますが、そもそも
民間公益活動は、他人を愛するいわゆる利他主義と、何の代償も求めない奉仕の精神がその
基本にあります。その活動は、福祉、
環境保全、青少年教育、学術振興、人権擁護、国際協力、文化芸術など、およそ人々が必要とする
社会の多岐にわたる各
分野にわたっております。
このような
民間が担う公益の活動には、税制による国の支援が不可欠であると信じております。特に、寄附税制について言えば、公益活動における先進諸国はできるだけ市民に寄附してもらおうという税制であるのに対し、日本はなるべく市民に寄附させないようにつくられている税制なのではないかと疑いたくなる場合がございます。
米国の寄附金優遇公益団体百万、
個人の年間寄附金が二十三兆円に対しまして、
我が国の
公益法人二万五千のうち、特定公益増進
法人制度の指定を受けているものはわずか九百団体、NPOも、二万五千のうちわずか四十団体しか税制優遇、寄附金優遇が与えられておりません。そして、寄附金の総額も、多目に見ましても大体二千億円
程度ということで、余りにも、アメリカと日本との差にため息をつくばかりでございます。
私
どもは、このような実情にかんがみまして、
公益法人に対する抜本的な税制支援を
検討していただきたいと主張してまいりました。そこで、このような主張をしてまいりました
公益法人協会といたしまして、本
法案、ただいま御審議をいただいておりますこの
法案に対して、どのように
評価をしておるかということを申し上げたいと思っております。
本
法案、特に、
公益法人にとりまして中核となる
公益社団法人・財団
法人の
認定等に関する
法律は、主務官庁による
法人設立の許可制と設立後の指導監督といういわゆる主務官庁
制度を
廃止する点では、現行
制度に比べて大きな前進であるというふうに
評価をいたしております。ただ、新
公益法人のガバナンス等運営のルールや認定
機関と認定要件の設定については、市民の団体自治を極力尊重し、
民間公益活動を活性化させようとする
視点からはなお問題点や不十分な点があり、詳細についてのさらなる解決策が必要ではないかというふうに考えております。
それでは、どのような問題点をどのように解決していけばいいのかということを最後に申し上げます。
まず、税制でございます。
本来、新しい
制度をつくりますときに、その税制がどのようになるのかということがわかりませんと、その
制度の総合的な良否を判断することは困難であります。本
委員会でも税制に関する質疑が繰り返し出ており、
政府答弁にもありますように、まず
制度ができて、それにふさわしい税制を
検討することが事の順序であるというお考えはそれなりには理解できますが、私
ども、現に
民間公益活動に携わる者として、あるいはこれから携わろうとする
方々にとりましては、その税制がどうなっているのかというのは最大の関心事でございます。
今後の日本
社会におきまして、非営利公益セクターが果たす
役割は極めて重要でございます。心豊かで美しい、そして品格のある日本をつくっていく、そういう一翼を担う組織といたしまして、新しい
公益法人に対する期待は大変大きいと思います。
公益
認定等委員会が、真に民が担う公益活動に専心する
法人であり、かつ、しっかりした規律を備えているということを認定される以上、寄附金による
民間の
資金、
民間の知恵、
民間の活力が十分
社会において生かされるよう、国としても
法人税制並びに寄附税制両面から力強く支援することをぜひお願いしたいと思います。
幸い、昨年の六月に、
政府税制調査会の基礎問題小
委員会は、寄附税制について立派な報告書を発表されております。
第三者
機関が認定した公益性のある非営利
法人は
原則非課税、これに対する寄附金は寄附金控除、損金算入の
対象とする、相続財産寄附についても同様の方向で考える、有価証券など現物にかかわるみなし譲渡所得も見直すという、どうかこの
基本方針に沿って今後なるべく早く詳細を御決定いただきたいと思います。
次に、公益
認定等委員会でありますが、何といっても新
制度の柱になるものはこの
委員会でございます。
この
委員会の
委員は、当然、公益活動に十分見識のある
民間の有識者から起用されるものと理解いたしておりますが、
事務局も大変重要な問題であります。この
事務局が現主務官庁からの出向者で構成される寄り合い世帯では、何のことはない、主務官庁制が形を変えて温存されるという結果になりかねません。少なくとも、
事務局の主要幹部は
民間人を登用し、認定
委員会委員長を初め
委員が名実ともに
事務局の指揮命令権を持ち、
民間の公益活動を発展させるという
視点に立って透明性の高い運営がされるような
制度設計をお願いしたいと思います。
なお、中央だけではなく
地方も、大変重要な
委員会であります。同じように、
地方についての御
配慮もお願いをしたいと思います。
それから、政省令でございますが、新
制度の組織要件や運営ルールが、新会社法の
影響を受けましてか、余りにも過重で重装備と言える部分がございます。例えば、一般社団・財団法では、設立時の役員の選解任や設立時役員の責任、また諸
機関の運営ルールなど、事細かに決めており、一般市民にとっては到底理解不可能と思われる部分がございます。
公益法人と一口に申しましても、大きな
法人もございますが、総務省の
公益法人白書によりますと、常勤役
職員が三名以下の小
規模法人が全体の半分でございます。こういうような小
規模の
法人が余りにも負担の大きい煩瑣な手続を強いられるということになりますと、肝心の公益活動ができなくなるということになりますので、そこの点の御
配慮をぜひお願いしたいと思っております。
また、公益認定要件や財務的基準の中にも、一部、機械的に適用いたしますと大変問題のある規定がございます。例えば、公益
目的事業比率、遊休財産額の算定、収入が適正な費用を上回ってはならないとする収支相等の
原則等でございますが、こういったことにつきましては、大部分、政省令に委任されております。政省令に委任されております箇所が何と二百カ所以上ございますが、この政省令を今後内閣並びに各省庁におきましておつくりになります場合に、どうか、実際の実務を行っております
公益法人界など
民間非営利団体と意思疎通を十分にされまして立案に当たっていただくように、ぜひお願いいたします。
以上の三点を本
委員会が御
配慮され、附帯決議により確認し、さらに一定期間後の
見直しを図る措置をぜひとも御
検討いただくようにお願いしたいと思います。
私
ども非営利公益セクターに身を置く者といたしましては、百十年ぶりに現行
制度が改正され、新しい
制度が発足するこの機会に、改めて身と心を引き締め、この
法律の
目的にありますように、
民間の団体が自発的に行う公益を
目的とする
事業に専念する所存でございますので、どうか引き続き今後の御支援、御指導を心よりお願い申し上げる次第でございます。
これで私の
意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)