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藻谷参考人 おはようございます。
私は、
商業に直接携わっている
人間ではございませんけれ
ども、こういう場にお呼びいただきましてまことに恐縮でございます。
日本政策投資銀行、
参事役というのは偉そうなんですが
担当課長のことでございます、
藻谷と申します。よろしくお願いします。
私は、
まちづくりにつきまして、現場を回りまして、やっている
方々にアドバイスをするというような
仕事をしております。総論や
法律についてどうこうという知見は余りないんですが、この町についてこういうことをしたらいかがでしょうか、あの町ではこういうことをしていましたということを話して歩きながら、
皆さんの認識を喚起するというのが役目でございます。
きょうは、そういう
観点から、
市街地活性化のポイントにつきまして、
大変僣越でございますが、私の思うところを日ごろ使っている紙の中から要点をまとめてまいりました。お手元にあります
カラーコピーのものでございます。表題はちょっと大げさでございますが、「
中心商業地活性化 三つの
課題と
対処策」と書いてあります。本当はこれで二時間ぐらいしゃべるものの本当に一番大事なところだけを抜いてまいりました。
法律どうのこうのではなくて、こういうことが言えるんじゃないかということを御
参考に供したいと思います。
一枚おめくりいただきますと、二ページ、
自分でも
色彩感覚がちょっと間違っているかもしれませんが、画面に映すときはこれぐらいがよろしいということで、ここに「
市街地商業の
三重苦」と書いてございます。
市街地は、実は
商業だけではないんですけれ
ども、特に
お話をする
相手が
商店街の方が多いものですから、こういう書き方になっています。
三重苦と申しますか、
三つの
課題、
三輪車でございます。二輪車ですと
車二つでも走りますし、一輪車であれば
車一つでも走るんですが、実は
市街地商業は
三輪車でして、その結果、
一つの
車輪でも回らないと、ハブが折れておりますと全体がとまるということがあります。実は、
市街地活性化はなかなか
成功例がない、難しいというんですけれ
ども、その理由は、その
三つがそろうことが非常に難しいということです。
ただ、
一つ車輪が壊れているのと、二つ壊れているのと、
三つとも壊れているのは違うわけでありまして、まだ走らないからといって、
車輪二つまで直したということをもって、何もしていない人と一緒にして
効果がないと言うのは大変失礼であると私は思っております。
三つの
課題でございますが、一番目は、そもそもそこで
商売をしている人の
経営能力です。これは、
個人の
経営ですので、国や自治体が
手とり足とり、おまえ、こう
経営しろと言うのは基本的に無理な
世界、市場の
世界です。ちなみに、したがって、周りがどんなに
努力をしても、そこにいるお店の方が
努力をしない場合、これは残念ながら
活性化しないということになります。
二番目が、非常に
商業床がふえ過ぎて、ふえればふえるほど売り上げが落ちていくという
現象でございます。これにつきましては、先般の
都市計画法の方で
議論になったところでございます。
三つ目が、「
市街地における「
まちづくり」の失敗」と書いてあります。ちょっと抽象的に見えますが、実は、
個人個人が一生懸命
経営され、そしていろいろな
法律な
ども活用されて、
都市計画をちゃんと
運用されて、やたらめったら過剰にお店ができる
状態が防げたとしても、それだけでは実は
市街地が
活性化しないという問題がありまして、それが
まちづくりです。
具体的に、非常に赤裸々に書いています。「
自分は一生懸命
経営していても、
やる気のない店の
おかげで
商店街全体は沈滞」、「
自分の店の
跡継ぎは、
跡継ぎのない高齢の
商店街幹部に頭を抑えられ、
意欲喪失」、これは私の友達に実例がございます。そして、一番恐ろしいのが三番目、「
空店舗を空いたまま放置する
無気力家主の
おかげで、人通りは減る一方」。
例えば、
郊外の
大型店に、もし仮に一店でもテナントが抜けているところがあれば、その
大型店は埋めるために死に物狂いの
努力をします。ところが、
商店街の場合、前の
商店主が、おい、あそこを埋めてくれ、何とかしてくれと言っても、そこの
空き店舗を持っている
家主が全く何もせずに、税金だけ払いながらただ上に住んでいるという
ケースが間々あるわけであります。もし仮にそれが
ショッピングセンターであれば、それだけでつぶれる
可能性もあります。もちろん、同じお客様を
相手に同じ商圏で
商売をしているわけですから、実は
商店街でも、本当は、
空き店舗が一戸も二戸、十戸もあれば、それだけで客は減っていくわけであります。これを指して私は
まちづくりと言っています。つまり、
個人の
努力あるいは
都市計画における
ゾーニングを超えて、本来頑張るべきところにいる
関係者の中に頑張らない人がいることが全体の足を引っ張る、これが
まちづくりの問題であります。
ところで、そういう問題が
三つともある程度そろいますと何とか走るわけですが、一番よくこけているのが実はこの
まちづくりでございます。逆に、どんな
商店街にもまじめに
経営している人は必ずいますし、また、
大型店の問題は、今後少しましになっていくと思うんですが。これが恐らく今回の
法律でも
議論になって、
対処策が打たれつつあるところだと思います。
次の三ページ目でございますが、「空洞化する
まちの
共通点」の中に、やはり、私が全国を観察して、だめな町には
共通点があります。
一つは
郊外開発をやり過ぎる。これは今回の
都市計画法の話です。そして、逆に
皆さんが
商業のことだけ考えている。これはちょっと、今回の
法律にも入ったかもしれません。総合的にもっと、人が住むところからスタートしなきゃだめですよということが書いてあるんです。三番目に、「
地権者は、「
景気回復」や「
街路拡幅」を待って、空地や
空店舗を空いたままにしている」ということが書いてございます。必ずこういう
現象が観察されるところというのはうまくいかない。
一ページめくっていただきまして四ページ目でございます。これは
講演用の資料でございましたので、何やらわかったようでわからない表現かもしれませんが、逆に、そういうのがわかりやすいと言われます。
「
まちは「花」」と書いてございます。例えでございますけれ
ども、町を、仮に
商業を、お店を
花びらだとすれば、
花びらがきれいに咲いた方がきれいです。ただ、
花びらは、根や
葉っぱがないところに咲くことはあり得ません。地味でございますが、茎もあった方がいきなり
葉っぱから花が生えているよりはきれいであります。やはり、根、葉、茎をそろえることによって花を咲かせるということを考えなければ、
まちづくりというのは難しいということを書いてございます。
根っこが家。人が住んでいないところに
商業が成り立つのは非常に難しい。
葉っぱは
企業の
事業所。店に物を買いに行くだけではなく、何か別の用事でそこに行く人がたくさんいなくてはなかなか
商店は成り立ちません。その一番
最大のものが毎日行く
事業所、
職場であります。家と
職場がやはり私は根と葉、根本だと思うのであります。
根っこもそうなんですが、余り
根っこがむき出しだと汚くなります。家が生活感あふれて
むきむきにむき出しておりますと、ちょっと町としてはおしゃれじゃなくなってくる。このあたりの
バランスを微妙にとらなきゃいけないところが
まちづくりでありますが、かといって
根っこを全部切ってしまうと桜でも枯れます。
そして茎、「
病院・
学校・
役所・
集会所」と書いてありますが、これは茎ですから、なくてもいいことはいいんですが、できればあった方が
バランスがいい。それは、人がたくさん行く公共的なものでございます。よく
ホールというのがつくられるんですが、
人間が一番よく行くのは
病院である、次は
学校であります、大分落ちまして
役所、
集会所。やはり
病院、
学校というのが根幹的に町のコアになっていなきゃいけないというのが私の観察でございます。
では、根や茎がそろうと必ずお花が咲くかと申しますと、
世の中には雑草というものもありまして、しぶとく、たくましく生きているんですが全く華やかじゃないという。要するに、せっかく根や茎がそろっても店が全くない
地域もあるわけですが、やはり逆に、店が栄えている
地域は必ず根、葉、茎があります。東京でいえば、吉祥寺なんていうのはこれがきれいにそろっている典型であります。逆に、
新宿西口のように、
オフィスはあるんですがほかのものがないということになりますと、夜になるとしんとしていたりする。実は、
まちづくりはこれを
バランスよくそろえる必要があります。
それに対して、従来、非常に
駐車場という
議論が起こります。これは、大人の
議論としては実態的にはあるんですが、
駐車場は、根、葉、茎、花がそろっていて初めて機能します。逆に、だれも種を植えていないところに
駐車場だけあっても機能しない。いわば、用水路だけあってだれも植えていないということになります。
それでは、あと一枚で終わりますけれ
ども、その次の五枚目をごらんください。というわけで、やはり、こういう
状態をつくり出すには、従来の
商店、住民、
行政に加えて、
地権者の方を巻き込むことが非常に重要であるということを、私は、年来、主張してまいりまして、そして、そういう方向に
世の中の
議論が行っているということを大変すばらしいと思います。
やはり、家や
事業所はお店に比べて払う
家賃が低いです。さらに言いますと、
オフィスに比べれば
住宅は
家賃が低い。ましてや、
病院、
学校はほとんど
家賃負担力がありません。そういうさまざまに
家賃負担能力が違うものをまぜてつくらなければいけない。各人が
利益最大化を追求するとうまくいかない。もう
一つは、
利益を全く追求せずに
土地建物をあけている人がいると、これはもう最初から論外であります。
ということで、
地権者の
方々に実情をよく勉強していただいて、おたく様の町というものを長期的に子供に残せる
相続財産としてきちんと育てましょう、
皆さんこそが土です、根、葉、茎、花を育てる土は
地権者なんでございますということをきちんと巻き込んで説得していくことが
まちづくりのスタートである。
実は、すぐれた
まちづくりと言われている事例は、ことごとく
地権者が裏できちんと
協力しています。ただ、そういう
切り方で把握されていないために、
商店の
努力や
行政の
努力という形で報道されていますが、必ず
地権者の
協力を得るという過程を踏んでいるということを最後に申し上げておきます。
どうも、時間をオーバーしまして大変失礼いたしました。終わります。(
拍手)