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2005-10-25 第163回国会 参議院 厚生労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十七年十月二十五日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十月二十日     辞任         補欠選任      松下 新平君     下田 敦子君  十月二十一日     辞任         補欠選任      前川 清成君     島田智哉子君      山根 隆治君     津田弥太郎君  十月二十五日     辞任         補欠選任      下田 敦子君     白  眞勲君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岸  宏一君     理 事                 国井 正幸君                 武見 敬三君                 谷  博之君                 円 より子君                 遠山 清彦君     委 員                 坂本由紀子君                 清水嘉与子君                 田浦  直君                 中島 眞人君                 中原  爽君                 中村 博彦君                 西島 英利君                 水落 敏栄君                 朝日 俊弘君                 家西  悟君                 島田智哉子君                 津田弥太郎君                 辻  泰弘君                 白  眞勲君                 森 ゆうこ君                 鰐淵 洋子君                 小池  晃君                 福島みずほ君    国務大臣        厚生労働大臣   尾辻 秀久君    副大臣        文部科学大臣  塩谷  立君        厚生労働大臣  中野  清君    事務局側        常任委員会専門        員        江口  勤君    政府参考人        人事院事務総局        職員福祉局長   関戸 秀明君        内閣府規制改革        ・民間開放推進        室長       田中 孝文君        法務大臣官房審        議官       山下  進君        厚生労働省医政        局長       松谷有希雄君        厚生労働省健康        局長       中島 正治君        厚生労働省医薬        食品局長     福井 和夫君        厚生労働省労働        基準局長     青木  豊君        厚生労働省職業        安定局長     鈴木 直和君        厚生労働省老健        局長       磯部 文雄君        林野庁林政部長  石島 一郎君        環境大臣官房審        議官       寺田 達志君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○労働安全衛生法等の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     ─────────────
  2. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、松下新平君、前川清成君及び山根隆治君が委員辞任され、その補欠として下田敦子さん、島田智哉子さん及び津田弥太郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  労働安全衛生法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、厚生労働省労働基準局長青木豊君外十名の政府参考人出席を求め、その説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 労働安全衛生法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 西島英利

    西島英利君 自由民主党の西島でございます。  本日は、まず最初に、労働安全衛生法と違う質問だけ一つだけさせていただいて、本来の質問に移らせていただきたいと思います。  先日、医療構造改革構想厚労省の試案が発表されまして、その中に生活習慣病の徹底的な予防を行うと、そのためには健診の強化を行うということが書き込まれております。この健診事業というのは今様々な個別法によりまして行われているわけでございますが、その一元化がほとんど行われていないというのが現実でございます。健診というのは、そもそもがそのデータを生涯を通じて継続的に管理するというところに私は大きな意味があるというふうに思っております。現在、この今回検討されます労働安全衛生法の中にも健診事業が入っておりますし、老人保健法、それから政管健保も独自にやっております。このような様々な健診をやはり一元化する、一本化するということが私は必要ではないかというふうに思っています。また、このデータ標準化というのも実はきちんと行われていないという現状もございます。  これはこれとして別問題ではございますけれども是非大臣に御見解をお聞きしたいのは、健診の一本化といいますか一元化ということに関しての御見解をお伺いしたいと思います。
  7. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 御指摘のとおりに、健診につきましては、現在、労働安全衛生法に基づく健診として事業者老人保健法に基づく老人保健事業として市町村、医療保険各法に基づく保健事業として医療保険者等がそれぞれ法令趣旨対象者年齢等に応じた事業実施しているところでございます。これらの各事業の健診の実施に係る共通的な事項につきましては、健康増進法に基づきまして健康増進事業実施者に対する健康診査実施等に関する指針を策定いたしまして、各事業実施主体に対し本指針に沿った健診等の実施を求めているところでございます。  今後は、今もお話しいただきましたけれども生活習慣病予防を徹底してまいりますその観点から、これまで健診受診率の低かった被扶養者自営業者に対する医療保険者による健診及び保健指導の取組を強化いたしますとともに、都道府県が中心となって関係者の責任や役割分担明確化連携の促進を図っていく必要があると考えております。  今後、それぞれの法令趣旨を踏まえつつ、効果的な健診が各制度間で整合性を持って実施されるよう、御指摘のことなども踏まえまして医療制度改革の議論の中で更に検討を進めてまいりたいと存じております。
  8. 西島英利

    西島英利君 これは非常に重要なことでもございますので、速やかな御検討是非お願いを申し上げたいと思います。  それでは、労働安全衛生法の本来の質問に入らせていただきます。  今回の一つの目玉といたしまして、過重労働メンタルヘルス対策充実ということがうたわれているところでございます。恐らくこの充実ということの裏には、労災に関しましての脳・心臓疾患による補償の問題、それから精神障害うつ病の問題、いずれもこれは実は死に関する問題でもございますが、こういうことが増加してきたということが一番大きな原因だろうというふうに思っておりますけれども、脳・心臓疾患労災補償状況申請認定、それから精神障害者の同様の申請認定についての数字がありましたらお教えいただきたいと思います。
  9. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 平成十六年度における脳・心臓疾患認定件数は二百九十四件と、その前年度の十五年度に比べまして二十件減少しておりますけれども申請件数で見ますと八百十六件と、七十四件の増加となっております。  それから、精神障害につきましては、その認定件数百三十件と、二十二件の増加となっております。前年度の十五年度に比べまして二十二件の増加ということになっております。申請件数は五百二十四件と、過去最高だったその前年度に比べましても七十七件増加しているところでございます。
  10. 西島英利

    西島英利君 その中で、自殺をされたということの認定状況も実は増えてきているという現状があるんだろうというふうに思います。  お配りをいたしております資料を見ていただきたいと思うんですが、まず一ページ目、ストレスの強さという形で書かれておりまして、この強度Ⅱの中に拘束時間の長時間化ということが載っております。しかし、このストレスというのはこのように様々な、実は労働者環境の中で様々なストレスが起きているということはこれで御理解をいただきたいというふうに思います。そして、二枚目のページを見ていただきますと自殺者の推移が載っておりまして、これはもう皆様御存じのように、今三万人を超す自殺者が社会的な話題になっております。さらには、労働者方々自殺も九千人前後になっているという、こういう状況があるわけでございます。  特に精神障害に関して見ますと、厚生労働省が今回参考資料としてお配りになりました中で見てみますと、うつ病がそのほとんどを占めておりまして、うつ病と長時間労働関係、つまり自殺して労災認定を受けられた方々の長時間労働、時間外の労働でございますけれども、これは百時間以上が多いというふうに書かれているところでございます。しかし、これは百時間以上その時間外労働があったから認定されたのかどうか、これは詳細な検証が今後必要であろうというふうに思っています。それは、先ほど資料の中でこれだけのストレスの様々な原因があるんだということから御理解をいただければというふうに思います。しかし、長時間労働精神的疲労をもたらすのは、これは間違いのないことでございますので、メンタルヘルス対策というのは非常に重要だろうというふうに思っております。  そこで、医学的知見ということからいきますと、発症前一か月間におおむね百時間、又は発症前二か月間ないし六か月にわたって一か月当たりおおむね八十時間を超える時間外労働が認められた場合は、業務と脳・心臓疾患、つまり脳出血とか心筋梗塞のことでございますけれども、その発症との関連性が非常に強いということが言われているところでございます。その視点から、今回、事業者一定時間、つまり月百時間以上を超える時間外労働等を行った労働者対象として医師による面接指導等を行うと。つまり、こういうことが今回の法律改正趣旨になっているところでございます。  しかし、この中で、死に至る状況を防止する役割というのが実は産業医が持つことになります。非常にこれは重要な役割だというふうに思いますけれども、ここでお教えいただきたいんですが、産業医と称する人たちはどのような医師を指すのか。また、アバウトで結構でございますので、現在どのくらいの方々が、医師がいらっしゃるのか、お教えいただきたいと思います。
  11. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 産業医労働安全衛生法で定めているものでございますけれども、その要件といたしましては、厚生労働大臣が定める一定研修を修了した者、あるいは産業医科大学等産業医の養成を行う目的であって大臣の指定した大学医学課程を卒業して大臣の定めた実習を履修した者、あるいは労働衛生コンサルタント試験に合格した者、あるいは大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、助教授又は講師のいずれかに該当するということが定められておりまして、労働衛生産業医学に知識を持つ医師の方ということになっております。  これらのうち、日本医師会認定産業医ということで産業医が生まれておりますけれども、これが六万四千人でございます。それから、産業医科大学を卒業した者は千七百六十四人ということになっております。
  12. 西島英利

    西島英利君 今、産業医と称する方々、今の御報告のとおりたくさんの方がいらっしゃるわけでございますけれども、ところで、この労働安全衛生法の中で、産業医を置かなければいけないとか選任しなければいけないということが書かれているところでございますが、労働者数が五十人以上の人がいる事業場には産業医選任義務があるというふうになっております。  ところで、この産業医選任義務があるにもかかわらず産業医選任されていない事業場も多いというふうに聞いておりますが、その現状についてお教えいただきたいと思います。
  13. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 平成十二年の調査におきまして、産業医選任義務のある五十人以上の事業場産業医選任率というのは七五・八%となっております。したがって、それ以外のところで選任をされていないということになっております。
  14. 西島英利

    西島英利君 今回、この労働安全衛生法改正をするに当たりまして、この産業医というのは非常に重要な役割を負わされているということは先ほど述べたところでございます。  しかし、その中でも二五%近い事業場が実は産業医選任をしていないという状況が今報告としてございました。しかし、これはやはり大きな問題であろうというふうに思っております。  そこで、この二五%の事業場に対して選任を推進するようなそのような方策は何かお考えなのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  15. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今委員正に御指摘になっているとおり、産業医役割は大変重要でありますし、ますます重要となっているというふうに思っております。  ということで、産業医はきちんと選任をしていただきたいというふうに思っておるわけでございますけれども、今回の改正法でも、産業医役割というのは強化をする、充実をするということでなっているわけでありますが、今回の改正法周知と併せまして、産業医選任を我々としても指導していきたいというふうに思っておりますし、全国地域産業保健センターにおきましても産業医紹介を行うなど、未選任事業場の解消に努めていきたいというふうに思っております。
  16. 西島英利

    西島英利君 質問取りに来られたときにちょっとお聞きしたんですけれども産業医が、どの方が産業医なのかというリストがなかなかないというふうなこともお聞きをいたしております。事業場産業医選任をしようとするときに、やはりそのリストの整備というのは私は必要ではないかなというふうに思うんですが、その点について御見解があればお教えいただきたい。
  17. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今申し上げましたように、産業医紹介などを行っていきたいというふうに考えておりますけれども、それはやはり正に御指摘になりましたように、そのリストなりなければできないわけでございますので、私どもとしては、ネットワークづくりをしようということで、地域産業保健センター産業医登録をしてもらっていると。これを、精神科医でありますとか、産業医学振興財団研修などを行っておりますから、そういったところでありますとか、あるいは心療内科医でありますとか、そういったところの協力を得まして、そういった地域産業保健センターへの登録というのを進めて、委員が御指摘になったようなことで、産業医がより選任され、なおかつそういったものが十分に活用されるような仕組みをつくっていきたいというふうに考えております。
  18. 西島英利

    西島英利君 ところで、今回はメンタルヘルス充実ということでございますけれども、しかし、私も実は精神科医でございますが、このメンタルヘルスの面が実は産業医先生方お話をお聞きしますと得意ではないと、非常にこういうところに不安を持っておられる方々もたくさんいらっしゃるやに聞いております。  そこで、このメンタルヘルス対策充実ということになりますと、その内容が分かる方々をどう増やしていくのかという面が非常に重要だというふうに思いますが、産業医の質の担保という観点から何か御見解がありましたらお教えいただきたいと思います。
  19. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 確かにおっしゃいますとおりだと思います。産業医の質を確保するということも含めまして、そういったメンタルヘルスについての対応というものが十分に行われますように、産業医に対しましてメンタルヘルスについての研修実施いたしましたり、あるいは今ほど申し上げましたような産業保健推進センターにおいても専門的な相談への対応をするということにいたしましたり、あるいは今申し上げましたような精神科医とのネットワークの形成を進めるというようなことで、産業医の質の確保などの対策を講じていきたいというふうに思っております。
  20. 西島英利

    西島英利君 次に、メンタルヘルスに対する面接相談指導のところでございますけれどもメンタルヘルスに関しましては、まだまだ非常に本人も、またその周囲も偏見が強いというふうに考えております。精神障害のレッテルが張られますとなかなか職場復帰も難しいというような、そういう状況もございまして、その事業場の指定する産業医ではなく、外の医師相談するというケースが多いのではないかというふうに考えています。しかし、その場合の費用でございますが、これは相談でございますから医療保険の適用ではないわけでございまして、そのときの費用をどうするのか。ボランティア的な考えではこの体制はなかなか進まないのではないかというふうに考えております。  費用に対する考え方、つまり経済的なインセンティブというのは非常に重要だと思うんですが、この点について御見解をお教えいただきたいと思います。
  21. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 面接指導を行っていく上で、確かに費用の問題というのはあると思います。  それで、今回では、一定人たちについて義務付けあるいは努力義務として事業者に対しまして面接指導を受けさせる、医師面接指導を受けさせるというスキームを御提案をしているわけでありますけれども、それは事業主努力義務であれ、義務ということでありますので事業主負担になるだろうというふうに思いますけれども、今おっしゃいましたように、必ずしも事業者が指定する医師だけではなくて、それ以外の医師の方に労働者の方が診てもらいたい、面接指導を受けたいというようなことももちろんあるだろうと思います。  一つには、今お触れになりましたように、事業場における、言わば何といいますかメンタルヘルス不調によって、偏見とか誤解で解雇とか不利益取扱いが行われるんじゃないかということで、そういう事業者の下での面接指導を受け難いというような場合もあるかと思いますので、そういう場合も外に向かって、外の医師面接指導をしてもらいたいというのは分からないでもありません。  しかし、この場合の費用は必ずしもそういう意味では義務ということではありませんので、事業者負担ということになりませんので、これは私どもとしては、いろんな事業場内における健康管理あるいは面接指導もこの一つでありますけれども、これらについて、具体的なやり方でありますとか、あるいは様式でありますとか手続でありますとか、そういったものについては事業場内で労使でよく協議をしてシステムをつくってもらいたいというふうに言っておりますし、今後言っていきたいというふうに思っております。  そういう中で、事業者負担には当然にはならないわけでありますけれども、そういった費用の問題についても労使十分お話をいただいて対処していただきたいというふうに思っているところでございます。
  22. 西島英利

    西島英利君 先ほど資料でお示ししましたように、労働者自殺者は九千人、これは非常に大きい数字なんですね。そういう意味では、事業場に対してもやはり国がどう考えるのかというのは非常に重要でございますので、そういう観点からの御指導を是非していただくようにお願いを申し上げたいというふうに思います。  それから、労働者数が五十人未満の事業場では地域産業保健センター面接指導を行うということになっておりますが、精神科医確保などどのように充実していくのか、特に予算的な裏付けを中心に簡単にお答えいただければと思います。
  23. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 地域産業保健センターの、様々な事業を行っておりますけれども平成十八年度予算として二十五億円を要求しております。  主なものを申し上げますと、働き盛り層メンタルヘルスケアを支援していくということでセミナーをやりましたり個別相談をやったりいたしましたり、あるいは大都市圏における健康相談開設場所をやったり、あるいは中小企業に対する広報活動をやったりするということで用意をしているところでございます。そういうことで地域産業保健センター活動活性化を図っていきたいというふうに思っております。
  24. 西島英利

    西島英利君 よろしくお願いいたします。  さらに、五十人以上の事業場では精神科医との連携をどうすればいいのか。多くの産業医精神科医連携が余りないというのが現状でもございます。産業医科大学が北九州市でこの連携のためのモデル事業を行っておりますが、是非その成果それから課題を積極的に全国情報発信をしていただきたいというふうに思います。  また、産業医精神科医との連携コーディネーター役として産業保健推進センターの活用が私は考えられるんだろうというふうに思いますが、是非その充実強化も期待されるところでございますので、是非この点も御検討をいただければというふうに思います。  次に、労災の二次健診給付についてでございますけれども、この給付につきましては、脳血管障害それから心臓疾患に関連する血圧、血中脂質、それから血糖、肥満度の四つの検査すべてに異常所見が認められた場合には、労災保険からその後の健診について給付ができるというふうになっております。  しかし、メンタルヘルス面につきましては、実はこの異常値が出ないわけでございますが、うつ病の疑いということになりますと、先ほどから申し上げていますように、自殺の問題もございますし、またそれが脳出血心筋梗塞につながるということもあるわけでございまして、是非これを二次健診給付対象にすべきではないかというふうに思いますけれども、この点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  25. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 二次健康診断給付は、これは労災保険法で定めている健康診断についての給付ということでありますけれども、今委員が御指摘になりましたように、これは、一般の定期健康診断において担当医が脳・心疾患についての四項目について異常の所見があると診断した場合のほかに、産業医などがその四検査項目について、労働者就業環境等も総合的に勘案して、異常の所見だというふうに認めた場合には給付対象としてきたところでございます。  このような取扱いを踏まえて、御指摘のような健康診断につきましても、産業医が総合的に勘案して異常所見を認めた場合であれば二次健康診断等給付対象になり得るものであるというふうに考えております。
  26. 西島英利

    西島英利君 是非その周知徹底お願いを申し上げたいというふうに思います。  また、今後の課題といたしまして、事業場外資源先ほどから申しておりますように、事業場の外の医療機関を利用したりということでございますけれども精神科医とかかかりつけ医面接指導を受ける場合、事業主負担若しくは本人負担をできれば労災補償保険制度から支出していただくような、そういう御検討もできればお願いを申し上げたいと、これは要望でございます。  最後の質問に移らせていただきますけれども尾辻大臣お願い申し上げたいというふうに思いますが、メンタルヘルスの問題は、これは本人、それから事業場だけの問題ではございませんで、実は家族対応が非常に重要だというふうに考えております。家族対応によりまして状況がもっと悪化するということは、我々はいつも実は経験をしているところでございます。  そういう観点から、家族に対する指導、支援というのが非常に重要であろうというふうに思いますが、私の経験からいいましても、事業場ではなかなかそういうところまで私は至っていないというふうに考えております。是非そういうような対策指導も私は必要だろうというふうに思いますが、最後に大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  27. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 御指摘のとおりに、労働者メンタルヘルス不調にまず家族が気付くということは、これは少なくありません。そうした家族が気付いたことから必要な対応が取られるということは極めて重要であると認識いたしております。  このために、新たにお示しをいたします予定のメンタルヘルスに係る指針の中で、事業場内の産業保健スタッフが、労働者メンタルヘルス不調に気付いた御家族からの相談を受け付けるようにするなどの対応についても触れるように検討したいと考えておるところでございます。  また、今年度から地域産業保健センターにおきまして、働き盛り層メンタルヘルスケア支援のために労働者及びその家族対象としたセミナーを開催いたしますとともに、個別に相談を受ける事業を開始したところでもございまして、このような形で家族を含めたメンタルヘルス対策充実を図ってまいりたいと考えております。
  28. 西島英利

    西島英利君 今回、法の改正一つのきっかけにして、是非しっかりとした対策を、そしてそれぞれの事業場に対する指導をしっかりとしていただければというふうに思います。  終わります。
  29. 谷博之

    ○谷博之君 おはようございます。  民主党・新緑風会の谷博之でございますが、今日は大変重要な法案の質疑ということで、いろいろ西島委員から今御質問もございましたが、そういう質問に若干重複しますけれども、立場を変えた質問どもさしていただきたいと思っております。  この法案の実は質問の前に、一点だけ今日的な問題についてお伺いしておきたいと思いますが、実は十月の五日に、私ども民主党、そして共産党、社会民主党、それぞれの野党三党で参議院に被爆者援護法の改正法案を提出をいたしました。これは大臣ももちろん目を通していただいたと思っておりますけれども。  一言でこの法案の、改正法案の骨子というのは、韓国を始めアメリカやブラジルなどで在外の被爆者がたくさんおられるわけでありますが、そういう方々が例えば在外公館などを活用して被爆者健康手帳の申請と受理ができるような、そういうふうな仕組みを整備していこうという、こんな基本的な考え方の法案だったというふうに私たちは指摘をさしていただきます。  それにつきましても、実は二〇〇二年から今日までいろんな地方高等裁判所で在外被爆者についての判決が出ております。特に九月の二十六日の福岡高裁の判決というのは非常に重要な判決であったというふうに思っておりますし、それを受けて私たちがこの法案を提出した二日後に、政府も重い腰を上げたというか、対応策について具体的に乗り出してきていると、こういうことだと思うんですけれども、しかし残念ながらそれは健康管理手当のみに限って言うならば申請を認めると、こんなような措置のように聞いているわけでありますけれども、こういう私たちの出しているこの法案について、大臣は率直にどのような感想をお持ちでございましょう。
  30. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今回、被爆者援護法の改正法案が民主党外野党の三党の皆さんから提出をされたことは私も承知をいたしております。ポイントは、今お話しいただきましたように、被爆者健康手帳について国外からの申請を認めるということだというふうに存じております。  この手帳でございますけれども、この審査は六十年前の原爆投下当時の個別具体的な事実関係について詳細な確認を行う必要がございますので、これまでも都道府県、市の担当者が申請された方、申請者と直接会いまして審査をいたしてまいっております。そのことが極めて重要でありますので、これを国外から申請する場合には、直接会うということが、担当者が直接会うということが大変難しいことになりますので、これを進めるということになりますとどうしても実務上の問題が出てくるというふうには考えております。
  31. 谷博之

    ○谷博之君 おっしゃることもあって、例えば韓国のそういう被爆者の人たちが日本に来てその申請を受けるという、こういう仕組みも、その費用も含めて取っておられることも私たちは承知をしているわけですけれども。  ちょっと別の角度から御指摘しますと、これ、小泉総理の今回の靖国の参拝で、例えば日韓の外交関係が大分心配されておりますけれども、しかしそういう中で、韓国の潘基文外交通商大臣ですか、この方が、そういう状況にあるけれども十月の二十七日に訪日をして両国の外相会談に臨むと、こういう報道記事も出ておりまして、その中に、実はいろんな課題がありますけれども、この在外被爆者の問題も議論が出てくるというふうなことが言われています。  それからもう一点は、これは韓国のいわゆる被爆者団体の関係者の中の発言ということで、日本に例えばそういうことで来てそういう手続をしたくても健康上の理由等でやっぱりどうしても来れないというもう相当高齢者の方もおられますね。こういうふうな人たちに対して、現状日本に行くということについてはもう無理だという、こんなようないわゆる手帳を持っていない被爆者が四百名を超えるぐらいの人数がいるだろうと、こんなようなこともその団体の関係者は発表しております。  そういういろんなことを考えますと、当然これは両国の外相会談でも、例えばこの健康手帳の交付申請についても在外公館の活用を検討してほしいという、こういうふうな思惑というか感想を持っておられるということになれば、やっぱりこれはもう一歩踏み込んだ、今までの政府の対応よりも更に踏み込んだ措置というものが必要になってくるんじゃないかというふうに私は思っています。  その前に、今大臣がおっしゃったように、しかしそれは面接をして実際この、例えば広島なら広島のどの地点で被爆をされたかというふうなことも含めて聞き取り調査、面接もしなければいけない、これもよく分かる。  そういういろんなことを考えますと、これ一つの、例えばの話ですけれども、広島県や長崎県のいわゆる担当者の人が一定期間を決めて在外公館に行ってそういう方々の具体的な聞き取り調査なり対応をするということができないものだろうかというふうなことを、これは当然、担当官以外にも医学的なそういう専門家が必要ということであれば、そういう医学的な関係者も含めて行って対応するような、そういう仕組みというものができないものだろうかというふうに思うんですが、この辺はどういうふうに考えておられますか。
  32. 岸宏一

    委員長岸宏一君) まず最初に、じゃ、中島健康局長
  33. 中島正治

    政府参考人中島正治君) ただいまの御質問でございますが、現行の法律上の運用といたしまして、被爆者健康手帳の申請に当たりましては来日していただくということが法律上必要とされておりまして、御提案のように申請者が国外にいたままで手帳の交付を受けることはできないものというふうに考えております。  厚生労働省といたしましては、先ほどお話にもございましたが、手帳取得のための来日を支援する事業を現在実施しているところでございまして、今後ともこうした施策の推進により国外にお住まいの被爆者の方々の支援をしてまいりたいというふうに考えております。
  34. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今局長からもお答え申し上げましたけれども、ただこの問題は、この手帳の問題は、その前にお触れいただきました手当の問題も同じでありますけれども法律上の問題とそれから実務上の問題と、絶えずこう二つあるわけでございます。この両方を解決しないと実際にはやれないということで、手帳の場合は、まずその法律上の問題を解決しようということで法案をお出しになったという、そこはもうそのとおりでございますから、そこで私は実務上の問題を先ほどお答え申し上げたところでございます。  先ほどお触れいただきましたこの手当のことにつきましても申し上げたようにこの両面あって、そして法律上の問題は裁判の結果などもあって私どもは私どもなりの考え方もありましたけれども、これはもう御高齢になっておられるということなども、今これまた先生お話しになったとおりでありますから、そういうことも考えて、そして実務上の問題が何とか解決できるならばこれは是非そうやろうということで、御案内のとおりに在外公館を使ってやってもらうということにしたわけでございます。  今度は手帳の話になりましたときに、その実務上の問題が同じようなことでやれるかどうかということが大変私は難しいということをお答え申し上げましたら、今度は今先生から、じゃ担当者が行ったらどうだというふうに重ねてのお話でございますから、そのことに触れて申し上げますと、いろいろ状況を聞かなきゃならないものですから、担当者が一人行ってお話を伺っただけで解決できるかどうかというようなこともあろうかと思いますし、また今先生お触れになったようなその他の聞き取りの話もございますので、大変実務上は私どもは困難を伴っておるというふうには考えておるということを申し上げたいと存じます。
  35. 谷博之

    ○谷博之君 今大臣の方で整理していただいたので、そのとおりだとは思うんですね。私心配していますのは、先ほど局長の答弁ありましたけれども、例えばそういうことで在外の手帳を持っていない方々は、今後も日本に来ない限りはもう認めないという形の姿勢を貫いていっちゃいますと、しかも、それでこの在外被爆者の戦後処理と言うと恐縮ですが、対応はもうこれで厚生労働省としてはここまでだよという、こういう一つの姿勢が出てくると、これで事足れりということにはやっぱりならないんだろうと思うんですよね。  依然としてその人数はまだはっきり正確にはつかまれておりませんけれども、恐らく私は世界的にあちこちに手帳を持っていない被爆者の方も随分おられると思います、そんなに大きい人数ではないと思いますがね。こういう方々の私は問題というのはこれからも残っていくというふうに思うんですよね。  それを解決するのはおっしゃるとおりやっぱり法律、この法を改正するしかないわけで、そのためにも我々はこの法案を実は出さしていただいているということなんです。したがって、これは委員会一つは、あるいは国会の問題でもあるわけですけれども、我々がこの議員立法を提出をして、本当は法案を下ろしていただいてここで議論をできれば一番いいことなんですけれども、現実はそういうふうにはまだなっていません。  そんなこともありますけれども、これはこういうやり取りを幾ら続けても多分平行線だと思いますが、いずれにしても、大臣が最後にちらっとおっしゃったように問題はまだ残っているという認識は絶対していただいて、こういうことについて当然さっき言ったように二十七日の外相会談ではこれ出るはずです。これは当然日本政府としても、いや、これで終わりましたとやっぱり言えない問題でもあると思うんですよ。そういうことを考えると、これ是非大きな課題ということで検討してこれからもいっていただきたいと、このように思っておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、本論の法案の質疑に入りたいと思いますが、まず十七条、十八条、十九条の関係についてお伺いしたいんですが、これは先ほどもちょっと出ましたけれども、安全委員会、衛生委員会の問題です。  この安全衛生委員会は、労使で設置しなければならない事業所というのが全国的に対象として幾つぐらいあって、そして現実にその委員会が設置されている数はどのぐらいあるのか、まずお答えいただきたいと思います。
  36. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 労働安全衛生法の適用のある事業場で衛生委員会の設置義務のある労働者数五十人以上の事業場数は、総務省の事業所・企業統計調査によりますと、平成十三年で十五万二千七百四十二となっております。安全委員会につきましては、一定の業種及び規模の事業場に設置義務がありまして、その事業場数は統計の制約上その総数を把握することは難しいんですけれども、約大体五万弱というふうに見込まれます。  お尋ねのどのぐらいそのうちあるのかということでございますが、そのうち安全衛生委員会等を設置している事業場については、平成十二年に実施いたしました労働安全衛生基本調査によりますと、事業場規模五十人以上の事業場のうち、そういった安全衛生委員会等を設置している事業場の割合は七四・二%というふうになっております。
  37. 谷博之

    ○谷博之君 これは平成十二年、十三年の言うならば調査ということですけれども、その後、直近の調査というものはやられたような話もちらっと聞いているんですが、その辺はどうでしょう。
  38. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今申し上げました労働安全衛生基本調査につきましては、今年、一番直近のものは実施するということにしておりまして、これで一番最新のものが把握できるということでありますが、これはまだ現時点では集計結果出ておりませんので、お答えがちょっとできません。  いずれにしても、私どもは未設置の事業場に対しては指導を行って設置率の向上に努めていきたいというふうに思っております。
  39. 谷博之

    ○谷博之君 まだ集計できていないからお答えできないということですけれども、あくまでこれ推測の域というか、結論ではありませんけれども、どうもこの設置率は上がっていないというふうな話も聞いております。つまり、これは断定できる話じゃないんですが、そういうふうな話も聞いているというわけですけれども。そしてまた、設置されているところでも、この安全衛生委員会が形骸化していってほとんどその機能を果たしていないというふうな、そういう委員会もあるというふうに聞いているんですが、その辺についての調査、把握はしておられますでしょうか。
  40. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今ほど申し上げました労働安全衛生基本調査によりますと、安全衛生委員会等が設置されています事業場のうち、過去一年間に一度も開催のなかった事業場というのは、委員会が開催されなかったという事業場は四・〇%ということでございます。それから、開催されたところの開催回数というものを見ても、過半数の事業場が年十二回以上開催されております。まあ、開催については一定程度確保されているんではないかというふうに思っております。  しかし一方で、厚生労働省平成十五年に実施いたしました大規模製造業についての自主点検のこの結果を見ますと、労働災害発生率の高い事業場におきまして安全衛生委員会等の活動が必ずしも活発でない状況が見られております。単に伝達事項や現場からの報告事項が主体で意見交換など十分に行われていないなど、そんなような状況が見られます。このため、労働政策審議会の建議におきましても、「労働安全衛生法上期待されている機能も十分果たされていない状況にあることから、その活性化を図ることが必要である。」というふうにも指摘を受けているところでございます。
  41. 谷博之

    ○谷博之君 大変ある意味ではばらつきがあるという言い方でしょうかね。設置されているところでも、大変労使が一緒になって熱心に安全衛生を取り組んでいるそういう事業場もあれば、形骸的に設置だけしているというふうなところもあるということだと思うんですね。  それからもう一つは、今どこの事業場でもそうですけれども、多様な雇用形態というのが今行われております。例えばパートとか派遣とか裁量労働制、そういうふうないわゆる非正規の労働者人たちの数も非常に増えてきております。  この安全衛生委員会というのは労使の代表が構成して委員会を設置しているわけですけれども、いわゆる労働組合のないようなそういうふうな未組織の労働者のいるような職場、たくさんおられるようなところ、こういう方々の、例えば非正規労働者がいわゆる正規の従業員と同じような仕事をしている、しかも危険性を伴うような職場で仕事をしている、こういう方々に対して、じゃそういうふうな非正規の労働者の皆さん方の代表がこの安全衛生委員会に入っているかというと、これは入っていない、こういうこともありますね。そういうふうなことになってくると、このいわゆる構成そのものも私はもっともっと多岐多様にわたるような現実はあるんではないかというふうに思うんです。  こういう労働災害の責務、責任の第一義的な立場というのは、これは事業者であります。そういう意味では、この事業者がそういうふうな多様な現場の労働者に対するヒアリング等をどこまでやっているのかということについても、これはなかなか十分であるとは私は言えないだろうと思うんですね。  そういういろんなことを考えますと、僕はやっぱり一つは、そういう様々な事業場状況に対する助言や指針、こういうものをやっぱりそろそろ国が作っていく時期に来ているんじゃないかというふうに思うんですけれども、これらについてはどのような対応考えておられますか。
  42. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 確かに、個々の職場において様々な人たちが働いているという中にあって、そこの安全あるいは衛生、そういったものの確保をしていくということは大変重要でありますし、そういう意味でこの安全衛生委員会等において労使がともに話をして、お互いに現場をよく知る者同士でその危険度をチェックし改善を考えていくというのは大変有効なものだと思っております。  そういう意味で、様々な雇用形態の人たちがだんだんだんだん作業現場に出てきておりますんで、そういった人たちの作業についてもきちんとチェックをしていくということが必要だろうというのは御指摘のとおりだと思います。ヒアリングというお話もありましたけれども、確かにそういうことも重要であると思いますし、安全衛生委員会がきちんと機能をして、そういう真に作業現場における安全衛生の確保ということになるように、私どもとしても、そういった御指摘の方策も含めまして安全衛生委員会活性化が図られるように努めていきたいというふうに思っております。
  43. 谷博之

    ○谷博之君 これ大臣にちょっと要望させていただきたいんですけれども、今の御指摘のとおりです。設置率から始まって、それから先ほど西島先生の産業医の話もそうですけれども、これは我が党の小林正夫議員からも是非発言をしてもらいたいということがあったんですが、結局、こういう委員会を設置しても労働安全衛生法そのものの知識も十分理解されていないという現場もあるということですね。  したがって、私は、この法改正をするときにもう一度そういう意味で国なり地方自治体がこういう労働安全衛生法ということについての再認識をするような、そういう措置というか対応をやっぱりやるべきじゃないかなと。ただ単に国会がこの法を改正したということだけではなくて、もちろんいろいろ努力もされておられるのかもしれませんけれども、より徹底してやっぱりやる必要はあると。そのことがやっぱり法の趣旨に照らした対応だというふうに思うんで、これは是非、この後の質問にもちょっと関係することなんですが、冒頭御要望させていただきたいと思っております。  それから次に、二十八条の二項の問題です。これは、危険性又は有害性を調査しその結果に基づく措置を行う、こういうふうな項目があります。  ここで一つ取り上げたいのは林業労働者のことなんですけれども、日本の国土面積の約七割は森林に占められていると。森林のその多面的な機能というのは非常に最近特に見直されている。環境問題を始め様々な分野での森林の果たす役割が非常に大きくなってきた。しかし、残念ながら、日本の今の森林というのは荒廃をし、そして外国との関係で非常に対応に苦慮している状況に今あるということだと思うんです。  そういうことを受けつつ、しかし、なおかつこの林業に携わる現場の労働者、こういう方々は非常に今その事業の危険性、それから低収入、高齢化、こういう現状があって、大変な状況にあるわけであります。  政府は二〇〇三年から緑の雇用担い手育成対策事業、これを実施しておりまして、新規就業者は〇二年の二千二百十一人から四千三百三十四人に増加していると、こういう発表をしておりますが、しかし、今申し上げたように、高齢化と同時に定着率が非常に低い。なおかつ、この職場というのは、労働災害の実情から見ると、言うならば発生頻度、労働災害の発生頻度は、減少傾向はあるけれども依然として全産業中第一位というデータがあります。これはちょっと調べた資料ですが、災害の発生頻度を示す度数率については、今申し上げましたように、依然として全産業中第一位、これは規模が三十名から九十九人の事業所において平成十五年は全産業平均の十三・一倍、極めて高い発生率を示しているということです。  この辺のことについて、農水省ではどのように御認識されておられますか。
  44. 石島一郎

    政府参考人(石島一郎君) 林業の労働災害についてでございますが、林業の作業環境は天候に左右されやすく、また作業箇所の多くが傾斜地でありますことなどから、労働災害発生の頻度は依然として他産業に比べて高い水準にございます。  農林水産省といたしましても、林業労働者の安全を確保することが重要な課題であると考えておりまして、事業主に対します巡回指導や現地研修の開催などに対して支援を行うことによりまして、労働災害の防止に努めているところでございます。  また、労働災害の防止のためには、安全で使いやすい機械や器具が必要でありますことから、新技術や新素材を取り入れた機械や器具の開発、改良の取組に対しても支援しておるところでございます。  今後とも、厚生労働省や都道府県と連携を図りながら、林業における労働災害の防止が図られるよう努力してまいりたいと考えております。
  45. 谷博之

    ○谷博之君 厚生労働省の方にお伺いしたいんですが、今そういう御答弁がありましたけれども、いみじくも話ありましたように、労働環境一定しない特殊的なそういう職場だということでありまして、そういういわゆる特殊性を持つ林業の現場で、事業者は一体これからどう対応していくのか、何をどのように実施することが必要なんだろうかということになると思うんですが、この点はどういうふうに考えられておりますか。
  46. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 安衛法の二十八条の二においてリスクアセスメントといいますか、をやろうということであります。  御指摘ありましたように、林業については非常に災害率が高い、非常に危険だということであります。したがって、この二十八条の二で、具体的には、事業者は、従来から取り組んでいる危険予知活動の自主的な活動を通じて得た情報でありますとか災害事例の情報なども活用しながら、一つにはやはり木を切り倒すというのも非常に危険でありますし、そういった危険な作業における危険性、有害性を特定をまずいたしまして、それからそれらのリスクを評価をする、その評価結果に応じたリスク低減のための対策検討するというようなことが必要だというふうに思っております。こういったことが林業においても労働災害を防止する上で非常に有効だというふうに考えております。  林業労働の特性も踏まえまして、危険性あるいは有害性の調査、そういったものに関するリスクアセスメントに関する標準的なモデルを作成をしているところでございますし、その活用を促進して林業における労働災害の防止に努めていきたいというふうに思っております。
  47. 谷博之

    ○谷博之君 その取組の中で、一つちょっと要望をさせていただくというか、お伺いしたいんですが、現場の実態を調査する、そしてその対応策を決めていく、そしてそれを関係者に通達を流して徹底を図っていく、こういうことはいろんなやっぱり関係者に対する当然大きな仕事になると思います。  そういう中で、一番、私は何といっても、そこに働く現場の労働者の皆さん、こういう方々が、そういう調査から、そして対応策の検討から通達の各段階においてかかわっていかなければいけないだろうというふうに思っていまして、そういう意味では、関係する例えば労働組合の皆さん方や、あるいは関係者方々とも十分に協議してこれを行っていかなければいけないことだというふうに思っています。そういう点について是非そう行っていただきたいと思うんですけれども、その考え方がどうかということが一つ。  それからもう一つ、この林業分野のいわゆる労災対応ということで、労災の保険料率、これは先ほど申し上げましたように高い災害リスクを背負っているわけですから、こういうことを踏まえて千分の五十九になっております。これ、非常に高い設定ということですね。この千分の五十九というのは、給料掛ける千分の五十九を掛金として事業主が納める、労災本人負担はないということでありますが、この千分の五十九というのは非常にこれは高い設定になっています。  私が言いたいのは、この高いリスクを背負っているからこれでいいんだということではないと思うんですね。全くその逆でありまして、安全の確保労働安全衛生法に基づく予防策を第一に進められるべきだということが、これは大前提だと思うんです。  そういうことについて、この二点、お伺いしたいと思います。
  48. 青木豊

    政府参考人青木豊君) こういった労働災害を防止して危険を排除していくというためには、やはり実際に現場をよく知っている、そういう状況が必要であります。そういう意味では、正に御指摘になりましたように、現場関係者、当事者、そういった者の話をよく聞くということは大変重要だというふうに思っております。  私どもとしては、先ほど申し上げましたようなリスクアセスメントを進めていこうということで、その内容等を指針を作って進めていこうと思っておりますけれども、現在専門家による検討をそういった指針についても行っているところでありますけれども一定の成案を得られた段階でパブリックコメント制度などによりまして広く意見を求めることとしております。こういった手続によりまして、労働組合でありますとか現場関係者からの意見を反映させてまいりたいというふうに思っております。  また、正に災害が非常に多くて林業については労災保険の保険料率が非常に高く設定されているところでございます。労災保険は、正に御指摘のように労働災害を発生した場合の損害を補てんするということでありますので、災害の発生率に応じて業種ごとに保険料率を設定するというのが原則であります。したがって、非常に危険で災害発生率の高い林業については、正に御指摘のように極めて高いランクの労災保険率というふうになっております。  御指摘になりましたように、災害を補償すると、事故が起きてから補償するということではなくて、やはりそれ以前に予防をして災害を未然に防ぐというのがまずやっぱり我々としても一番取るべき道だと思っておりますし、保険のことからいいましても、予防をすることによってむしろ災害が発生をしなくなり、ひいては労災保険率も下がっていくという、そういう状況が生まれることが望ましいというふうに思っております。  林業につきましては、そういう意味労働災害防止上、重点といいますか、重点業種といいますか、でありますので、林業の事業者に対しましてまずは法令上のいろんな規制、規律を守っていただくということで監督指導を行っておりますが、そのほか、現場パトロールなど自主的な労働災害防止活動指導、援助するというようなことによりまして災害防止を図っているところでございます。  今回、安全対策充実強化をする法改正の内容も踏まえまして、関係省庁とも連携を図って、引き続き林業における労働災害防止対策の一層の推進を図っていきたいというふうに思っております。
  49. 谷博之

    ○谷博之君 これまた大臣に要望になりますが、そういう今申し上げたようないろんな産業の中には、極めて危険度の高い、そういうふうな職場もありますね。それを、私たち非常にそういう現場を見ておりまして、やっぱりそういう職場に対する一つのこの対応策といいますかね、そういうことを指針として明確にやっぱり作っていって、それに基づく指導というものがやっぱり必要になってくるんではないかなというふうに思っておりまして、そういう取組が今の御答弁ではある程度感じられますけれども、明確に出していただくような、そういう取組にこれから更に励んでいただきたいというふうな思いをしておるんですが、これは大臣、何か一言ございますか、その辺の感想が。
  50. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 先ほど先生がお触れになりました同じ資料だと思いますが、私の手元にもございまして、すなわち産業別死傷者年千人率という資料でございますが、これを見ましても、もう林業における災害の発生率、極めて高いということはもう確認できるところでございます。  したがいまして、特に林業についての取組につきましては局長からもお答え申し上げたところでございますけれども、林業に限らず、私どもは、労働災害というのはこれはもう防止しなきゃいけませんし、また防止することが保険についてもいい影響を与える、すなわちいい方へいい方へ、悪循環とすなわち反対の方にいい方へいい方へ転がっていくというふうに思っておりますので、これはもう全力を挙げてその対策取らなきゃいけないことだと思っております。今日の御指摘ども踏まえて私ども努力を続けてまいります。
  51. 谷博之

    ○谷博之君 是非前向きに取組をいただきたい、そのように要望いたします。  それでは、続きまして六十六条の関係ですが、実は今国会に民主党がこの労働安全衛生法改正法案を提出をいたしました。職場における歯科健診の必要性、これを盛り込んだ改正法案でありました。  その中で、提出しているこの法案の中にもありますけれども、学校を出るまでいわゆる学校保健によって培われた歯の健診、歯の健康、これが卒業していわゆる社会人になって、そこで人生の半分以上を過ごすその期間に、この歯の言うならば健診なり歯のそういう保健対策といいますか、こういうものが現状は率直に言ってちょっとおろそかになってきていると。それが結局最終のところ、いわゆる現役で働いた世代から退職した後、高齢化の段階でその影響が出てくるという、こういうことが非常に私たちは心配しています。  それで、そのいわゆる大きく言えば、老人保健における対策も含めて、この歯というのはもう食べる一番の大事な武器でありますから、これが歯が、例えば民主党は八十歳になって二十本以上の歯を持とうという、こういう一つ考え方を持っているわけですけれども、そういう状況に今ないですね。率直なところ、大変、言うならば歯の悩みを持っている方というのは非常に多いと思います、特に高齢になればなるほど。それがひいては健康をむしばむというか、健康に影響を与えてくるわけであります。  そういうことを考えると、今働いている現役の時代に歯のそういう保健あるいは健診というのは非常に重要なことではないかというふうに思うんです。そういう点から、この問題についてどのような考え方を持っておられるか、お聞きしたいと思うんです。
  52. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今、たしか八〇二〇運動についてもお述べになったというふうにお聞きをいたしました。お話しのとおりに、歯が私どもの健康に非常に大きな役割を果たしておる、もうそこに一番根幹の部分だと言ってもいいということはもう私もそのとおりだというふうに思っております。したがいまして、歯の健康ということのこの大事さにつきましてはもう全く否定するものじゃなくて、もうそのとおりだというふうに思っております。  ただ、今この労働安全衛生法における御審議の中で先生方の御提案もありますから、それについて触れてこの場で申し上げるようにお尋ねになったところだと思いますので、そのことについても申し上げておきたいと思います。  まずこの労働安全衛生法におきまして、歯科疾患を発症させるような有害業務につきましては、これは事業者に歯科健診の実施義務付けておるところでございます。労働安全衛生法でもそこまでの規定はいたしております。  ただ、この有害業務以外では、業務と歯科疾患の発症との関連性、業務と歯科疾患との発症との関連性ということであくまでも申し上げておるわけでありますけれども、というふうに言いますと、どうしても希薄であると言わざるを得ないものですから、事業者負担により、これも申し上げておりますのは、事業者負担ですべての労働者に歯科健診の実施義務付けるというところまでは私どもは必要ではないと判断いたしておるものですから、今労働安全衛生法で、冒頭申し上げた有害業務以外についての規定は設けていないということでございます。
  53. 谷博之

    ○谷博之君 私の方で尋ねようと思ったことについてお答え、先にいただきましたけれども、結局、有害業務における義務付け以外に事業主が自主的に歯科健診を実施している状況は非常に低いんだろうと、ほとんど低いんじゃないかなという気がしていますね。  それで、これはいろんな背景があると思います。歯科を入れるべきかどうかということについてのそれぞれ専門家の御意見もあるわけでありますけれども、しかし、私どもの地元の県の方で、高齢者の方々の歯科専門のそういう治療センターというものを十年ほど前に開設をさせていただいた。その当時、いろいろ記憶はあるんですけれども、お年寄りの方々の歯の治療をするというのは、これは大事なことだと思うんですね。  だけれども、そういうところになる前に歯のやっぱり健康というのを保つということは、これはさっき言ったように、何十年という勤労時代、この時代のやっぱり私は取組が極めて大事なんだということをやっぱり考えますと、これは私は、将来は避けて通れないそういう大事な課題だというふうに思っています。この次の法改正のときぐらいには是非我々のこの内容が改正できるように、ひとつ前向きの検討をしていただきたいと思っております。  それから次に、先ほど西島委員からお話、御質問ありましたけれども自殺対策メンタルヘルスについてでありますけれども、今度の法改正のこれは正に柱の一つでありますが、昨年の八月、過重労働メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会、こういう検討会から報告書も出ておりまして、国も一定程度の取組をしてきているということでありますけれども、ただ残念ながら、事業者への普及啓発はまだまだ不十分でありまして、国の更なる取組を求めているんではないかと、このようにこの報告書を私としては受け止めております。  そして、今、西島委員との質問のやり取りで地域産業保健センターお話が出てまいりました。これは、本年の二月二十四日に、参議院の厚生労働委員会での参考人質疑の中、これは自殺予防対策についての参考人質疑において、産業医科大学の中村純教授は、心の健康の問題に対する理解について、地域産業保健センターの働きぶりに温度差があるという、こういう趣旨の発言をされておられます。  これについて、大臣、御認識でありますか。
  54. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今お話しいただきました地域産業保健センターでございますが、これはもう改めて申し上げるまでもございません、小規模事業場に対する産業保健サービスの提供のために設置されておるわけでございまして、労働者メンタルヘルスに係る相談にも対応いたしておるところでございます。  度々話題にもなりますので、私も見にも行きました。そして、地域によっては精神科医心療内科医等の専門家が少ないところも確かにございまして、すべての地域産業保健センターメンタルヘルス相談が十分に行われているとは言えないという現状にあることは、私もそのように考えております。  まずここまでお答え申し上げればよろしいでしょうか。
  55. 谷博之

    ○谷博之君 一方、これは今年の七月の十九日、この参議院の厚生労働委員会で決議を行っております。これは自殺に関する総合的かつ緊急かつ効果的対策を求める決議、これを行っておりますね。この中で、決議の四に、民間団体との連携自殺予防総合対策センター(仮称)を設立することについては、その問題について大臣は次のように答えております。  自殺予防総合対策センターについては詳細は今後検討する、自殺予防対策や心のケア等の事後対策の取り組む地域団体や民間団体等とも連携強化を図り、総合的な自殺対策を推進、支援していきたい、このように答えているわけでありますが、まず、このその後の検討状況はどうなっておりますか。
  56. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) お話しのとおりの本委員会での御決議もございました。私どもも、関係省庁が一体となりまして取り組む体制の確保でありますとか、今まだ仮の名前でありますけれども自殺予防総合対策センターの設置等についての検討を始めました。  そこで、このセンターでございますけれども、国立精神・神経センター内に整備するということにいたしておりまして、その具体的な機能といたしましては、これも改めて申し上げるまでもないかもしれませんけれども、申し上げますと、情報の収集、発信、調査研究の支援、対策支援ネットワークの構築、関係団体等への支援、これは先生もお触れになった部分でもございます。また、研修、政策の提案などを考えておりまして、二千二百万円の概算要求を行っております。来年度からこれをつくりたいというふうに考えておるところでございます。
  57. 谷博之

    ○谷博之君 実は、今質問してきた流れがございまして、そういう地域産業保健センター、そして今御説明にあった自殺予防総合対策センター、それに、都道府県に設置されておりますが、産業保健推進センター、こういういろんな機関があるわけですね。この地域産業保健センターも三百四十七か所あるわけでありますし、各都道府県にも今申し上げたような産業保健推進センターがあります。今度つくられる自殺予防総合対策センター、こういうそれぞれの機関は相互連携を持って活動していかなきゃならぬ、そういう機関だと思います。  と同時に、これはいわゆる労働現場のメンタルヘルス対策自殺予防に極めて重要である以上、厚生労働省の中でも障害保健福祉部に縦割りで任せるという、こういうことではなくて、安全衛生部も検討段階からしっかり関係していく、こういう横の連携も必要なんだろうというふうに思うんですが、こういう事柄について、それぞれお考えをお聞かせいただきたい。
  58. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 十分連携を取って進めるようにという御趣旨お話だというふうに存じます。  今申し上げましたように、自殺予防総合対策センターの設置につきましては概算要求をいたしております。その概算要求どおりに予算が獲得できますと活動を開始させるということになりますけれども、その際には、特に産業保健推進センターなど、こうした産業保健サービスを提供するための機関もございますので、こうした関係機関との連携というのは、御指摘いただきましたように、十分効果的に図られるようにしながら実施してまいりたいと考えております。
  59. 青木豊

    政府参考人青木豊君) もう一つ自殺予防対策について、障害保健福祉部と安全衛生部も十分連携して事に当たれと、こういうお話でございました。  自殺予防対策は非常に重要な課題ということで、これまでもマニュアルを作成したりして普及啓発を図ってきておりますけれども、省内において自殺予防対策を総合的に推進するために設置されました自殺対策の推進に関する省内連絡会議、これは正に委員指摘になりましたように、障害保健福祉部長、安全衛生部長の下で、国立精神・神経センター精神保健研究所長そのほか関係の責任者を集めまして会議をして総合的に対策を推進しようというものでありますが、こういったものをつくりまして、省内の施策の検討段階から連携してやろうということでやっております。  さらにまた、委員は障害保健福祉部、安全衛生部という省内のお話、御指摘でございましたけれども、さらに政府全体としても内閣官房の下に設置されました自殺対策関係省庁連絡会議に障害保健福祉部とともに安全衛生部も一緒に厚生労働省から参画をいたしまして、政府全体としての対策検討にも関与してきております。今後とも密接な連携を図って予防対策に推進していきたいというふうに思っております。
  60. 谷博之

    ○谷博之君 もう一点、この分野ではNPOとか民間団体が非常にメンタルヘルスの各種相談とか研修講座、こういうのを取り組んでいる事例がたくさんあります。今後、国の施策と有機的な連携が十分にこういう団体と図られていかないといけないんじゃないのかなというふうに思っているんですが、今後具体的にどのようなそういう連携を取ろうとしているか、短くひとつお答えください。
  61. 青木豊

    政府参考人青木豊君) メンタルヘルス対策については、正にいろんな団体、もちろん事業者団体とか医療関係団体など関係する様々な団体と連携することが必要だというふうに思っておりますし、御指摘になりましたNPO法人などそういった民間団体も含めた機関については、まずこういった調査研究を行いまして、その調査結果を踏まえて活用方策について研究、検討していきたいというふうに思っております。
  62. 谷博之

    ○谷博之君 是非よろしくお願いしたいと思います。  時間が大分迫ってきました。ちょっと急ぎ足で次の質問をしたいと思いますが、中央労働災害防止協会、いわゆる中災防の問題についてお伺いしたいと思いますが、これは職場の管理とか監督者といういわゆるキーパーソンに対する教育啓蒙活動において、現在約二億六千八百万円の国の委託事業が全額この中央労働災害防止協会という特殊な民間法人に全額委託されております。  これはいろんな研修事業を行っているわけですが、例えば私の県の栃木県では、昨年度の例を見ると、実績はわずか一回開催をし、受講者数は四十九名だったと、こういうふうな数字も出ております。  本来、こういう事業は、先ほど申し上げましたように、この中災防だけではなくてNPO法人等々の活力を生かせるように、産業現場のメンタルヘルスの分野で委託や補助事業を積極的に行っていくべきだと、このように思っておりますけれども、そういうことを前提にしながらこの中災防についてお聞きしたいんですが、この団体は実は日本経団連の会長が会長を務めておりまして、事業者の自主的な団体ということであります。  ただ、決定的な問題が幾つかございまして、一つは、この中災防は天下りの実態が非常にあるということですね。有給役員七名のうち四人までが霞が関からの天下り、特にそのうち理事長、専務理事、常務理事の三名、このトップスリーは厚生労働省出身であるということ。そして、この自称民間法人は、実は社団、財団でもなくて、労働災害防止団体法という、これ昭和三十九年にできた法律、これに基づいて成り立っている特殊法人でありまして、厚生労働省から多額の補助金とか委託金を受けている団体だと、こういうことであります。この団体は、一九九七年の橋本行革の際には行政改革の対象になっておりまして、民間法人化が閣議決定をされて、二〇〇〇年六月にその定款を変えて民間法人化をしております。  ただ、このいわゆる民間法人の定義というのは、政府の定義によると、制度上業務独占がないことや役員の選任が自主的に行われていること、そして国の補助金などに経営経費が依存していないこと、このようにされておりますけれども、しかし今の中災防は、その実態は、補助金の額をなくすために単に補助金を委託金に付け替えたにすぎず、厚生労働省からの天下りの引受けと引換えに、毎年多額の補助金、委託金をもらっているんではないか、こういうふうな指摘がなされております。  しかも、この天下り人数も補助金も委託金も年々減少してきているとはいえ、今年度も補助金及び委託金の総額が六十億円にも上って、全収入の約五二%、これを占めています。そして、設置法である労働災害防止団体法もそのままに現在に至っていると。こういう意味ではこれは民間法人と言えるんだろうかというふうに我々は強く指摘をしたいと思うんです。  それを踏まえて、昨年の十二月二十四日の閣議決定で、この中災防について、今後の行政改革の方針に沿って今年度末までに、先ほど申し上げた労働災害防止団体法の改廃も含めて厳格な見直しを行う、このように出されておりますけれども厚生労働省はこの中災防についてどのような方針を年度末までに内閣官房行政改革推進室に行おうとしているのか、お答えいただきたい。
  63. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今御質問のありました中央労働災害防止協会でございますけれども、これは委員が御紹介ありましたように、平成九年に、民間法人化するということで補助金の縮減等を行いまして、あるいは定款を変更して自主的団体であるというふうなことを明確化して、政府としては民間法人化をしたということでございます。しかし、今正におっしゃいましたように、昨年の十二月二十四日に、特別の法律により設立されるこうした民間法人についても、見直しを十七年度末までに行うという閣議決定をいたしたわけでございます。  これについてでございますが、この昨年の十二月二十四日の閣議決定を踏まえまして、官民の役割分担規制改革あるいは国の関与等の明確化、合理化、そういう観点から見直しを行うということにいたしております。今後のこういった考え方も踏まえまして、九年の閣議決定で民間法人化されたところではありますけれども、更なる見直しをするということにいたしているところでございます。現在、そういうことで検討中ということでございます。
  64. 谷博之

    ○谷博之君 この中央労働災害防止協会も、先ほどの私指摘したことと同じなんですけれども、これはある意味では独占体のような形になっているわけでありまして、いわゆる完全な民間法人化することで、この分野における他の民間団体の協調といいますか、連携というものを取っていく必要が出てきているんじゃないかというふうに思います。  そのことと、もう一つは、この中災防のいわゆる役員構成を見ておりますと、多数の役員が列記されておりますけれども、そういうものの中に労働者側の代表というのが全くこれ入っていませんね。そういう意味で、これは事業者の団体であるけれども、しかし、実際その当事者である労働者の代表という者が当然この中災防の中にも役員として入るべきではないかというふうに思っておりますが、この辺はどのように考えておられますか。
  65. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 中央労働災害防止協会は、これはもう先生今お述べになったとおりでございまして、事業主団体を会員といたします自主的な団体でございますので、役員についても八割は民間企業の経営者などから構成されておるところでございます。  したがいまして、組合関係者は役員の中に含まれておりませんけれども、別途法律の規定に基づき、業務運営に参与いたします参与の制度が設けられております。この参与として労働組合の関係者が参加しておられるところでありまして、この制度の活用によりまして、労働組合の関係者の意見を取り入れた運営がなされているというふうに考えております。
  66. 谷博之

    ○谷博之君 この中災防は、現在、アスベストの問題とか、あるいはまた様々な活動をされておられまして、その実績について私たちはそれなりに評価をさしていただいておりますけれども、あえて申し上げれば、その取り組んでいる内容についてのいわゆる説明といいますかね、啓蒙宣伝というのが非常に不足しているような気もいたしておりまして、いろんな事業をやっておられることは分かっておりますが、これもう少しこう存在感を我々の前に見せていただきたいという、こういう希望を非常に持っております。  それから、どんどん次の質問さしていただきますが、法案以外のこの労働関係質問になるわけですが、今年の六月七日の本院の決算委員会で、私どもの同僚の松井議員がシー・エス・エスの問題について、天下り問題について取り上げております。  これは、簡単に申し上げますと、職業安定局の担当者が多額のコンピューターシステムの随意契約を交わしているシー・エス・エスという会社に天下りをした件でありますが、これについて、松井議員の質問に対し人事院は、これが事実とすれば国家公務員法第百三条違反であって、懲役一年以下の刑事罰の対象になり得ると答弁しております。総理も最後に厳正な対応をしたいというような意味の答弁もしておりますけれども、その後これはどういう経過をたどっておられるでしょうか。
  67. 岸宏一

    委員長岸宏一君) じゃ、後で大臣お答えを。
  68. 鈴木直和

    政府参考人(鈴木直和君) 今御指摘のシー・エス・エスの関係の問題でございますが、この事案につきましては、先般人事院から、本件事例が惹起するに至った事実関係を十分に把握し、その事実関係を踏まえた上で、この就職事案にかかわった人事担当者それから管理監督者等の責任について的確な判断を行い、懲戒処分その他の措置により厳正に対処するよう求められたところでもありますので、現在もその事実関係の十分な把握に努めているところでございます。  その上で、具体的な措置につきましては人事院とも十分相談しながら早急に対応していきたいと考えております。
  69. 岸宏一

    委員長岸宏一君) じゃ、尾辻大臣お答えになりますか。
  70. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今局長からもお答え申し上げましたけれども、いずれにいたしましても厳正な処分をいたします。
  71. 谷博之

    ○谷博之君 今日は人事院の職員福祉局長もお見えいただいておりますから重ねてお伺いしたいんですが、公務員が公務員法を知らなかったということで済まされる話ではこれはないと思うんですね。そして、そういうことがもしまかり通ればだれも法律なんか守らないですよ。これが現実です。人事院はそれでよしというふうにしているのか、本人の処分を行わない方向で了解するということなんでしょうかね。  厚生労働省が刑事告訴しないならば、これは民主党、我々としてもやむを得ないというふうな認識も多少はしておりますけれども、しかし、人事院としてこれはどう対応するかについて、刑事告訴も含めて考えるべきじゃないかというふうに思うんですが、いかがですか。
  72. 関戸秀明

    政府参考人(関戸秀明君) お答えいたします。  今般の御指摘厚生労働省の退職者が十五年四月二日でございますけれども、株式会社シー・エス・エスに就職していた事例というのは、先般総裁からもお答えしましたように、国公法百三条に違反しているという事案であるというふうに認識しております。  このように、公務に対する信頼を裏切るような違反事案が明らかになったということは極めて我々としては遺憾であるという認識を持っております。そのため、こういう事態がまた再発するということは許されないということで、指導強化していかなきゃいけないということを考えておりまして、具体的には今年の人事院勧告の際、八月十五日でございますけれども、の報告の中で本件事例について言及をいたしております。各府省において改めて関係者に、制度を知らないということは許されないわけでございます。制度の徹底を図るなど適切な対応を求めたところでございまして、さらに厚生労働省につきましては、今局長からの答弁にもございましたけれども、事実関係を踏まえた上で、しっかり事実関係を把握して、事実関係を踏まえた上で関係者の責任について厳正に対処をしていただきたいということと、把握された事実関係を踏まえまして、国家公務員法に違反するような今回のような違法な再就職が再発されないように、その防止策の策定、実施を徹底していただきたいということをお願いしているところでございます。  今答弁にもございましたように、我々も相談に応じていますけれども、事実関係の最終的な段階に行っていると思いますけれども、整理をしていただいているところでございまして、すべてその事実関係が判明してから検討をする問題であろうかと思っております。
  73. 谷博之

    ○谷博之君 まあ、そういう御答弁ですから、我々はこれからも厳格にこの動きを注目さしていただきたいと思っています。是非ひとつ、大臣答弁もありました。それから今もお話ありましたが、そういう対応をしていただきたいと思っています。  最後に、時間が来ましたが一点だけ、今まで委員会でも一般質疑でも触れられていますが、タクシー運転手の問題ですね、この労働問題。  労働基準法の第二十七条、これは出来高払制の保障給というこれは条文でございますが、これは戦後、タクシー運転手の実態を念頭に入れて作られた条文だと聞いております。この条文については、労働法の専門家の菅野和夫先生が解説書で書かれておりますが、出来高払制下にあるタクシー運転手などの労働者の実収賃金が、客不足などの労働者の責に帰すべきでない事由によって著しく低下するのを防止するための規定としてこの条文が作られている。つまり、この条文は「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」、こういう条文であります。  ところが、これに対して、これは一つの例ですが、本年四月十三日、北海道新聞に出ておりますけれども、増車規制緩和後の経営について、あるタクシー会社の経営者は、経営は簡単ですよとコメントして、二年前に給与の最低保障を撤廃し、完全歩合制に移行したと。月給やボーナス、燃料手当などを含めた運転手の取り分を売上げの六割に固定したと書いている。こういうふうなことで、正に丸投げですよね。そして、この二十七条に違反するような、賃金の保障など一切しないでいる。こういう現実が今のタクシー業界にまかり通っているんですよ。これは北海道の事例だけではありません。  こういうことを考えると、再三再四このタクシー運転手の問題については当委員会でも議論が出ておりますけれども、私は、労働監督行政の立場からすると、この条文の今日的意義というのは完全にもう空文化していると、このように言わざるを得ないと思うんです。この点について、大臣、どう考えます。
  74. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) これはもう今お話しいただいたとおりでございまして、労働基準法第二十七条は、出来高払制その他の請負制で使用される労働者の賃金については、労働者が就業した以上は、仕事した以上は、たとえその出来高が少ない場合でも、労働した時間に応じて一定額の保障を行うべきことを使用者に義務付けたものでございます。  これは、必ず守ってもらわなきゃならない正に法律でございますから、私どもはその立場で適切な監督指導実施し、法違反が認められた場合には厳正に対処もしてまいりたい、厳しく監督指導を続けてまいりたいと存じております。
  75. 谷博之

    ○谷博之君 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、私も、民主党のハイタク政策議員懇談会という会がありまして、その事務局長もさせていただいておりまして、全国のあちらこちらの実態を調査しています。そういう中で、我々もまたそういう現場を踏まえた具体的な問題点なり提言をさせていただきたいと思っておりますので、この部分については非常に大きな問題だということを是非お互いに認識をし合いまして、今後、対応を是非していただきたいと思っています。  以上で私の質問を終わります。
  76. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 民主党、津田弥太郎であります。  本法案に関しましては、先週水曜日にかなり力を入れて本会議で質問をさせていただきました。引き続いて、本日、この委員会でも質問をさせていただきたいと思います。  そもそもこの法案は、通常国会に提出されながらも、突然の衆議院の解散により廃案になったものであります。法案の立案過程には公労使の三者が参加をし、真摯な討議を経て取りまとめが行われたものと承知をいたしております。民主党は、そうした法案作成の経緯を踏まえて、労働者の生命や安全にかかわる問題への対応が不可欠であるという認識の下に、総論としては賛成の方向で法案審議に協力をしてまいりました。  そのような法案であるにもかかわらず、郵政民営化を実現したいがために、政府自らが一度は法案を廃案に追い込んだわけであります。障害者自立支援法の質疑の際、解散について大変残念だったという大臣の率直な思いを述べていただきました。私は、改めてここで大臣を責めるつもりはありません。一点だけ確認の意味でお尋ねをいたします。  解散により廃案となった厚生労働省所管の二つの法案のうち、障害者自立支援法案については法案の施行日を延期をして特別国会に出し直しをいたしました。しかし、本法案については通常国会で廃案になった法案と施行日に変更がありません。施行までの日程がタイトになる中で、必要な政省令の策定に支障は生じないのでしょうか。  中野副大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  77. 中野清

    ○副大臣(中野清君) 津田委員さんの御質問にお答えしたいと思います。  今お話しのとおりでございますが、本法案の施行日につきましては、御承知のように、現在の過重労働の問題など働き方の多様化に伴うところの労働者の生命や生活にかかわる問題の深刻化、これに対しまして一刻も早く対処するためには、日程的にも今委員がおっしゃるとおり窮屈だということは存じてはおりますけれども、再提出に際しまして遅らせず、十八年四月一日とさせていただいたわけでございます。  そういう意味でございまして、関連政省令の制定につきましては、法案が成立次第、速やかに労使政策審議会におきまして労使中心にした御議論をいただきましてできるだけ早期に内容を改定させるとともに、政省令を制定した後は改正内容についても事業主への周知徹底に努めて円滑な施行に万全を期してまいりたいと、そういうつもりでございますので、どうか御了解願いたいと思うわけであります。
  78. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 今回の法改正で、昭和六十三年五月以来政府目標として国内外に掲げてきました年間総実労働時間千八百時間は最後のとりでというべきものでありますが、時短促進法に基づく労働時間短縮推進計画も廃止をされようとしております。私は、政府が具体的な数値を掲げ中長期にわたってその実現を目指しながらも、実現できずに政府目標から外した事例というものはそれほどないのではないかというふうに考えており、厚生労働省は重く受け止めていただきたいと思います。  現在、労働時間については二極化が進み、全労働者という枠組みで一律の労働時間目標を掲げることの意味が薄れていることは確かかもしれません。しかし、フルタイムの一般労働者に限っては、昨年の総実労働時間二千二十一時間に上っております。近年、ドイツやフランスなどにおいて労働時間が増加していることが指摘されておりますが、それでも両国の労働時間は我が国と比べればはるかに短く、例えばドイツにおける昨年フルタイムの一般労働者の年間総実労働時間は千六百六十五時間であります。  私は、法成立後に定められる指針において、引き続きフルタイムの一般労働者に限っては千八百時間という数値目標を掲げていく必要があるものと強く考えております。この件については労働政策審議会において議論されるものと衆議院の委員会審議においても御答弁されております。是非、私の思いを大臣として率直に受け止めていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
  79. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 改めて申し上げることになりますけれども、今後の労働時間対策における目標の在り方につきましては、今お話しいただきましたように、労働政策審議会において御議論をいただきまして、法律自体の問題ではなく、法に基づく労働時間等設定改善指針指針において対処すべき問題であるという共通認識、ここまでは共通認識であったというふうに思います。その共通認識の下で、更に目標を掲げること自体に意義が存在し、例えば一般労働者に限って引き続き目標を掲げることが必要であるという意見、ただいまの御意見でございます、がございます一方で、今後、労働時間が成果に直結しない働き方が一層広がるという展望に立てば数値的な目標は不要であるという意見、この両方が示されております。  今後の段取りでございますけれども、公労使一致して、目標に関して、改正法に基づく指針の策定の際に、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進等の課題ごとにその要否や、必要であるかどうかということや、内容を個別に検討していくことが適当とされておりますので、この建議を踏まえまして、法律が成立いたしましたら、再三申し上げておりますように、同審議会において検討していただくということになります。  先生のただいまの御意見なども踏まえまして、今後、様々の御意見を伺った上で私ども検討していきたいと存じております。
  80. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 是非、私の意見を踏まえてお願いを申し上げたいと思います。  次に、統括安全責任者の選任義務付けについてお尋ねをしたいと思います。  実は、私は参議院になるまでは産業別労働組合、JAM、ジャムという機械・金属産業で働く労働者の役員をしておりました。製造業の現場では、近年、分社化の進展に伴い様々な就業形態が混在をしております。  実は、昨年、工場内のコンテナの中で点検作業を行っていたところ、別の作業員がベルトコンベヤーを作動させたため、コンテナがライン上を移動し三人が挟まれ、うち二人が死亡、脱出を試みた一名も両足を挟まれ、その後病院に運ばれた後、翌日に死亡するという大変痛ましい労働災害が発生をいたしました。このうち二名の方は、私の出身母体であるJAMの組合員でもあります。  この事故の発生原因一つとして、事故で亡くなった三人のいずれもが親会社からの出向者で、ベルトコンベヤー稼働の指示を出した監督者はその会社の正社員、そして、実際にベルトコンベヤーのスイッチを入れたのは派遣社員であったことが挙げられております。すなわち、職場上下間及び職場間の連絡調整が十分に行き届かない面があったことが指摘をされており、仮にこうした多様な就業形態の労働者間の十分な連絡調整が法律において義務付けられていたならば、三人の尊い命が失われることがなかったかもしれません。その意味で、今回の法改正で、製造業の元方事業者等の講ずべき措置として、作業間の連絡及び調整その他必要な措置が規定されましたことは一歩前進と評価をいたすところであります。  ただし、既に造船業と建設業では、今回製造業に盛り込まれる措置以上の対策、すなわち、親会社に統括安全衛生責任者の選任義務を課し、安全衛生協議会の設置や作業場巡視、教育指導と援助、安全衛生管理指導義務付けておりまして、これが大きな成果を上げているものと承知をいたしております。製造業についても、是非とも早期に同様の義務付けを行っていただきたい。  本会議で私の質問に対して大臣のお答えは、製造業は、建設業等と比較して請負事業者の数や重層度が少ないこと等から、統括管理を義務付ける必要はないと考えているというものでありました。しかし、製造業の現場では、一昨年、二〇〇三年、電機連合が実施したアンケート調査でも、回答事業所の八六・八%が製造業務に請負スタッフを活用しております。しかも、そうした事業所のうち半数はここ数年になってからの請負スタッフの活用であります。現場のオペレーターが正規社員から派遣や請負社員にどんどん変わっているんです。さらに、御存じのとおり、昨年からは製造業においても派遣労働が解禁をされ、これが急速かつ加速度的に広まっているんです。事実、先ほど紹介した痛ましい事故も、ベルトコンベヤーのスイッチを過って押してしまったのは派遣社員ということです。  二度とこうした痛ましい事故を起こさないためにも、事故防止の措置に十分過ぎる対応を行っていただきたい。尾辻大臣の明確な答弁をお願いいたします。
  81. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 本会議では、ただいまのいろいろお述べになりましたような措置につきまして、一律に義務付けるまでの必要はないと考えておりますということをお答え申し上げたところでございます。  しかしながら、作業間の連絡調整を的確に実施いたしますためには、統括安全衛生責任者に準じてその役割を行う者を置くことなどは労働災害防止上望ましいと考えておりまして、そうした措置が適切に実施されるよう、ガイドラインを策定いたしまして指導してまいりたいと考えておるところでございます。
  82. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 是非進めていただきたいと思います。  続きまして、安全衛生委員会の設置基準についてお尋ねをしたいと思います。  政府の第十次労働災害防止計画でも、中小企業労災発生率は大企業に比べ高いということが計画のねらいとして記されております。今回の法改正においても、中小規模の事業場でいかに労働安全衛生を徹底させるかが大きな課題一つであったのではないかと思いますが、大臣、その認識自体は間違いないですね。
  83. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) その認識は、私どももそのように考えております。
  84. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 本来、労働安全衛生は、就労する労働者の人数に関係なく担保されるべきであります。これは、ここにいらっしゃる皆さんすべてが同じ認識だと思います。  しかし、現実には、事業場内の労働安全衛生の確保に大きな役割を果たしている安全衛生委員会の設置義務は従業員規模五十人以上に限定をされています。総務省の事業所・企業統計調査によりますと、二〇〇四年、すなわち昨年の場合で、従業員五十人以上の企業というのは、先ほど質問されておりましたけれども、五十人以上の企業というのは我が国企業全体のわずか五・七%にしかならない。その程度の比率しか安全衛生委員会による取組がなされていない。  なぜ五十人以上なのか。実は、今回の法改正の説明資料が、我が党の部門会議で度々厚生労働省から提出をされていますが、年間実労働時間の推移にしても年次有給休暇の取得率にしても、大事な数字はすべて事業所規模三十人以上のデータであります。これは、毎月勤労統計調査が平成元年以前は三十人以上のものしかないことによるものでありますが、このように厚生労働省自身が各種政策立案の基礎として従業員三十人以上の事業所を対象にしているのですから、是非とも、労働安全衛生における最も基盤的な制度でもある安全衛生委員会の設置基準を三十人以上に拡大をしていただきたい。  仮に、これを三十人以上に拡大しますと全企業の九・七%となります。五十人以上の五・七%からは大きく拡大しますが、それでも一割もカバーできない。こんな状況であります。  尾辻大臣の決意をお伺いをしたいと思います。
  85. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 安全委員会及び衛生委員会の設置範囲の拡大につきましては、労働政策審議会安全衛生分科会でも御議論がございました。その同分科会では、まず現行の小規模事業場における安全衛生管理の実態を把握するというふうにされたところでございます。そのために、まずその実態や委員会を設置する効果などの把握を進めまして、その調査結果を踏まえながら小規模事業場における安全衛生管理体制を強化をしてまいりたいというふうに考えております。  今、まず実態の把握に努めておりますから、そうした実態がはっきりいたしました後、しっかりとその体制については私ども強化を図ってまいりたいと考えております。今日、議員からいろいろお話もございました。そうした内容も含めまして、その在り方をしっかりと検討をいたします。
  86. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 是非積極的に検討を進めていただきたいと思います。  次に、ILO条約についてお尋ねをいたします。  これは、本会議でも、本法案と関係をしますILO第百四十八号条約及び百五十五号条約の早期批准を大臣に求めました。今日は、とりわけ改正案と密接にかかわる第百五十五号条約についてお尋ねをいたします。  改正案の内容はILO第百五十五号条約と密接な関係があるという認識をまずお持ちだと思いますが、そうだと思いますね。百五十五号条約の理念と改正案を含めた我が国の国内法が矛盾していることはないものと私も大臣も受け止めているという認識でいるんですが、よろしいでしょうか。
  87. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) まず、今回の労働安全衛生法等改正法案の中には、従来の建設業及び造船業に加えまして、製造業の元方事業者についても作業間の連絡調整等の実施義務付けることとしておりますので、この改正は第百五十五号条約第十七条の趣旨に添ったものであるというふうに考えております。  そして、ILO第百五十五号条約は、その目的として加盟国に対して就業中に生じる災害及び健康障害を防止する政策を策定することを認めており、職場における労働者の安全と健康の確保等を目的とする労働安全衛生法と理念的に矛盾するものではないと認識をいたしております。
  88. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 理念は矛盾しないというお答えでしたので、是非とも早期の第百五十五号条約批准に向けて厚生労働省としても最大限の努力を行っていただくようお願いをしたいと思います。いかがでございますか。
  89. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 政府といたしましては、それぞれの条約の目的、内容、我が国にとっての意義等を検討の上、その時々の国内のコンセンサス、国際世論等も勘案して、批准することが適当と考えられるものについては国内法制等との整合性確保した上で批准すべきものと考えております。先日もお答え申し上げたとおりでございます。  そこで、お尋ねの第百五十五号条約につきましては、複数の企業が同一作業場で活動する場合の協力義務等について、国内法制との整合性観点からなお検討をする必要があると考えております。検討をいたしてまいります。
  90. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 一字一句本会議のときの答弁と同じでございました。多少時間が経過をしているんで少しは進歩しているかなと期待をしておったんですが、なかなか難しいようでございます。  ILO条約に批准するかどうかについては、そういう答弁になると思います。しかし、その前提として可能な範囲でILO条約を批准していこうという我が日本政府として当然持つべき姿勢だというふうに私は思うわけであります。  そのことについて、例えば国連安保理における常任理事国入りも政府は目指してきました。そういうことであるならば、余計に世界の常識は日本の非常識とならない努力が必要だ。国際社会において名誉ある地位を占めたいと思うという我が国憲法の理念も踏まえ、各論としてはともかく、総論としては可能な限りのILO条約の批准を目指すべきだと思うんです。受け身ではなく、日本から積極的に新たな内容の条約などを提案すべき、そういうことも含めて、尾辻秀久政治家として、厚生労働大臣じゃなくて政治家尾辻秀久としての答弁をいただきたいと思います。
  91. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 一字一句同じに答えたというふうに言われましたその一般論をまた繰り返すことにもなるわけでございますが、正に一般論として言いまして、国内のコンセンサス、それから国際世論等も勘案して、批准することが適当と考えられるものについては国内法制等との整合性確保した上で批准すべきと考えております。これはもう正に一般論で申し上げるところでございます。  そこでこの具体的な話でございますけれども、この整合性観点から検討する必要がございますけれども、私どもとしても、これは前向きに考えなきゃならないことだという認識は当然のこととして持っておりますので、申し上げましたように、今後検討をする必要はございますが、そうした中で、申し上げましたように前向きの検討はしなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。
  92. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 尾辻秀久さんは、学生時代に五年間掛けて世界を一周されていると。国が違えば多くの物事が違ってしまうという体験をされ、同時に、国が違っても世界共通の価値観があるということも身をもって感じられたはずであります。  ILOというのは、そうした価値観の具現化を私は目指しているのではないかというふうに思うわけでありまして、是非とも大臣の、この後厚労大臣としてどうなのかは知りませんが、最後の仕事になるかもしれませんが、この発議をしていただきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。  続いて、学校教育の場での労働安全衛生についての徹底について塩谷副大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  本法律案の背景には、企業間競争の激化という我が国の経済産業状況がございます。企業の経営が人事労務重視から財務重視へと、近年、ともすれば移行しており、短期利益重視のせつな的経営がはびこっております。これは極めて憂うべき状況であります。こういう状況下でコストダウンが優先され、とかく労働安全衛生の重要性が置き去りにされてきております。このことが、私が本会議でも指摘をしましたように、近年の重大災害の多発やメンタルヘルスの急増につながっております。したがって、職場の当事者、すなわち労使双方のみならず、国民すべてが労働安全衛生法の重要性を常識として考えられる基礎的な思考を兼ね備えていくことが大切であります。恐らく、国民の中で労働市場に一度も参入したこともないという方は極めて少数、例えば現在の子供たちも将来いずれかの時期にいずれかの形で労働という行為を行うものと考えます。その意味で、学校教育の場でその理解力に応じて労働安全衛生法の背景について学ぶことは、安全で安心して働き続けることのできる社会づくりのために不可欠であると私は考えます。  文科省からは事前に現在の取組についての資料をいただきました。学習指導要領、これによりますと、高校の保健体育で指導がされておるようです。これでは不十分、更にきめ細かい指導が不可欠であると私は考えます。塩谷副大臣、是非ともそのような認識に立って、現在の重大災害の多発やメンタルヘルスの急増などの問題やそのことに対して講じている対策などについて、学校教育の場で必要な指導を徹底していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  93. 塩谷立

    ○副大臣(塩谷立君) 津田委員の御質問にお答えを申し上げます。  既に資料等で学習指導要領の内容等をお渡ししてありますので御承知のとおりだと思いますが、いずれにしましても、児童生徒が社会生活において生涯にわたっての健康保持やあるいは労働と健康の関係について理解することが重要だと思っておりまして、高等学校の保健体育の学習指導要領において、職業病の、労働災害の防止には作業形態や作業環境の変化を踏まえた健康管理及び安全管理を行うことが必要であるということを記述しているところでございまして、実はこれは実際の高校の教科書でございますが、私が思っていた以上に、十ページにわたって、例えば、労働と健康について、生き生きと働くために、そして、労働災害とその防止、安全な職場生活のために、さらには、職業病とその予防、職場での健康な生活のために、そして、職場と健康と労働安全衛生管理、快適な職場づくり、さらには、働く人の健康増進ということで積極的に余暇を利用、活用しようと。  また、これをごらんになっていただければと思いますが、かなり十ページにわたって詳細に記されておりますので、こういったことを中心にまた学校教育の中で今後とも適切な教育が行われるように、各教育委員会等にいろんな会議を通じて指導の徹底を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  94. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 教育を受ける権利、受けさせる義務と勤労の権利、義務は、我が国憲法でも第二十六条、そして第二十七条、両者は並んでおります。正に学校教育と労働の現場とはこのように密接な関係にあるわけでありますから、これからもあらゆる場において厚生労働省、文科省、両省の密接関係を深めていただきたいということを希望しておきたいと思います。  次に、歯科健診の義務付けにつきましてお尋ねをしたいと思います。  民主党は、浅尾参議院議員が中心となりまして、今回の政府案の内容とは別に、去る十月十二日に本院に労働安全衛生法の一部を改正する法律案を議員立法として提出し、現在、委員会付託をされております。その主な内容は、産業歯科保健対策の推進であります。  現在、歯科保健対策については、学校保健、老人保健、地域保健等の分野では健康診断における歯科健診の実施など一定対策が取られておりますが、雇用者を対象とした産業保健の分野においては有害業務における歯科健診が事業主義務付けられている以外はほとんど講じられておりません。  国民が人生の半分近くを過ごす産業保健の分野で歯科保健対策充実しなければ、学校保健によって培われた他の保健が損なわれますし、老人保健における対策は手後れなものになります。産業保健を含めた国民のライフステージ全般にわたって歯科保健対策を講じることによって、国民の健康増進のみならず、歯科医療費抑制の、ここが重要なんです、医療費の費が入るんです、観点からも急務であると思います。  厚労省は、去る十月十九日に懸案の医療制度構造改革試案を公表をされました。その内容の全般に対する評価はさておくとして、その中で厚労省自身も、医療費の伸びの抑制という観点から、生活習慣病予防の徹底ということで医療保険者に対し、健診、保健指導実施義務付けをうたっております。確かに、医療費の抑制のためには予防的な事業保健事業充実が最も重要であり、都道府県別の一人当たり医療費が最も低額である私が住んでおります長野県の例を見てもそのことは明らかであります。  そこで、大臣にお尋ねをいたします。  こうした医療費抑制のためにも健診、保健指導義務付けなどの施策が必要であるというのは医療に限定したものですか、それとも歯科医療も理念の上では共通をいたしておりますか、いかがでしょう。
  95. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 一言で申し上げますと、当然、歯科医療もその中に入るというふうに考えております。
  96. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 私が知る限りでは、職場を挙げて歯科健診を行っている事業場は歯科医療費が節約できているように思われます。早期の健診等、必要な対応を行うことにより、職場で働く労働者も健康が維持できますし、事業者も貴重な人材を活用することができますし、国としても医療費が節約できるならば、正に言うことなしの改革と考えるわけであります。  大臣、是非、事業主への歯科健診の義務付けによって歯科医療費にどのような影響を及ぼすかの公的な調査を早期に行っていただきたい。その結果に基づいて十分な効果が実証されたならば、是非とも歯科健診の義務付けを行っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。調査の実施を約束していただきたいと思います。どうぞ。
  97. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今、その御提案、初めてお聞きをいたしましたので、そういうやり方が実際できるかどうか、よく検討もしてみなきゃならぬと思いますので、御提案を踏まえての検討はさせていただきます。
  98. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 検討という言葉の中には進めたいという気持ちも含まれているというふうに理解をしつつ、私の質問を終わります。
  99. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 午後一時二十分から再開することとし、休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ─────・─────    午後一時二十分開会
  100. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ただいまから厚生労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、労働安全衛生法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  101. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日です。  午前中に引き続きまして、主として労働安全衛生法改正、とりわけメンタルヘルスにかかわる部分を中心に幾つか質問をさせていただきます。ただ、午前中からも関連する質問がございましたので、できるだけ重複は避けて私なりにお尋ねしていきたいと思います。  まず最初に、ごらんいただきたい表がございます。お手元に、労災保険における年度別の新規支給決定件数、一九九四年から約十年分資料を作っていただきました。これをごらんいただきますと、下のグラフの方が分かりやすいかもしれません、新規の認定者数は幸い少しずつ減少傾向にあるわけですが、逆に自殺を含む精神障害についてはこの数年間急増してきていると、こういう実態でございます。数が増えてきたということは恐らく全体的な、この七年間自殺者が三万人を超えるという、こういう大きな流れの中の一部だというふうにも思いますが、もう一面、注の二に書いておきましたように、一九九九年に精神障害等の判断の指針が策定をされて、そのこともあるいは件数に一定の影響を与えているのかなというふうに思います。  そこでまず大臣に、この資料をごらんいただきながら、最近特に精神障害労災認定の件数が急増をしてきているという、このような動向についてどのように認識をされているのか、お伺いします。
  102. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 最近の精神障害等の労災認定件数につきましては、お示しいただいておりますように、ここ五年間の実績で見ますと、平成十二年に三十六件であったものが毎年増加をいたしまして、平成十六年度においては百三十件と過去最高となっております。このような状況にありますことについては、近年、働く者にとって職場環境が厳しい状況にあることを反映いたしましておるとともに、お触れいただきましたように、平成十一年に精神障害等の判断指針の策定により精神障害労災補償上の取扱いが広く周知されたことによるものと受け止めております。
  103. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 それで、ここに出てきている数字申請が上がってきて認定された数字なわけで、実は申請の数はもっともっと多いんですね。詳しく十年間分を調べたわけじゃありませんが、例えば平成十五年度で見ますと、このグラフでいくと右から左めのところですね、平成十五年度で見ますと、一応精神障害等で認定された件数は百八なんですが、ここにもありますように、申請は実は四百三十八あるんですね。それから、自殺についても、平成十五年度、四十が認定された数となっているんですが、申請は百二十一あるんですね。  つまり、お尋ねしたいのは、申請をして認定をされるという数の間に大きな開きがあるわけで、これは一体何でだろうということで調べてみますと、要するに労災認定するための一定の要件があると。この要件が、例えば事故でけがをしたような場合は比較的分かりやすいですね。しかし、どうも精神障害となるとなかなかこの要件を満たすということが難しい面が多々あるのではないか。  例えば、ちょっと後で御説明いただければと思うんですが、精神障害労災認定に当たっては幾つかの要件がありまして、その中の一つにこう書いてあるんです。対象疾病の発病前おおむね六か月の間に客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められることと、こう書いてあるんですね。これ結構難しい。客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務というのは一体どういうことなのか。  実は精神障害原因そのものもまだ必ずしも十分に解明されていないわけで、そういうところへもってきて客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務というふうに書かれちゃうと、これ結構、厳しく考えたら物すごく厳しくなっちゃうというふうに思われる。その辺が、先ほど数字で挙げましたけれども、例えば四百三十八例申請をしているのに認められたのは百八件とか、あるいは百二十一例申請をしている自殺が、未遂も含めてですが、四十例と、こういう差になってきているのではないかというふうに思えてなりません。  そこで、お尋ねは、ちょっとこの際、ほかの労災認定に関する要件のことはあえて触れないとして、少なくとも精神障害労災認定に当たって、従来定められている認定の要件について再検討していただけないかということが御質問でありますが、いかがでしょうか。
  104. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 先生も御専門のお立場でございますし、今お話しいただきましたように、精神障害につきましては、何がストレスになって発症したのかという労働者の心の中の問題を判断する必要がございまして、困難な作業を伴うことはもう御指摘のとおりだと思います。  ただ、過去の最高裁の判例など照らしてみましても、どうしても、今先生お述べになりましたように、うんと広げて補償するということは、やはり制度趣旨を逸脱すると私どもは判断をいたしておるところでございます。
  105. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 えらくそっけない返事ですね。  確かに難しい側面があるということは重々承知の上で、しかし、例えば事故でけがをしたような場合とは違って、なかなか相当の因果関係があるというふうに証明することが難しいことが多いので、私は、できれば、明らかにこういうほかの原因による発病だということ以外は、申請が上がってきたら、まあ事細かにああだこうだ言わないで、ざっくり受け止めていただけないかというふうにぶっちゃけた話思うんですけれども、どうですかね。
  106. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今、正に先生がお述べになりましたように、過去の判例で言っておりますことも、相当因果関係があることが必要だというふうに言っております。あるいは、業務に内在し、通常随伴する危険が当該疾病の発症に相対的に有力な原因となったと認められることが必要と、いろいろ過去の判例で述べておるわけでありますが、申し上げておりますように、相当の因果関係が必要であるというふうにいたしますと、今先生がおっしゃったように、明らかにそうでないと、明らかにそうでないと分かるもの以外を全部対象にしろというふうに言った途端に、やはり相当な因果関係というふうに今度は言えるのかということにどうしてもなってしまいます。  そういう意味で、先ほどそっけないと言われてしまいましたけれども、私どもは、やはり制度趣旨に照らし合わせますと、そこまで広げるというのは大変困難だというふうに判断いたしておるところでございます。
  107. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 もうこれ以上やりませんけれども、ただ、一つ考え方として先ほど申し上げたんで、一気にそこまで持っていけというつもりではなくて、一度、これ、この十年間の表をずっと見ていただくと分かるように、実は労災としてはほとんど認定していなかったんですよ、つい十年ぐらい前までは。少しずつその認識というか理解が深まっていって、しかも制度上の判断指針ども変更をしていただいて、ようやくというかこういう数字になってきているということでありますから、ということは、多分十年前にもそんなに似たような事例はあったんだろうと、ゼロゼロということはないだろうと。しかし、こういうふうに変わってきたということは、申し上げたいのは、制度上の受け止め方と判断の基準によって随分幅ができますよということをこの数字が示しているんだろうと。  だから、一定程度御努力をされていることを認めながら、しかし今後労災における精神障害の問題というのは確実に増えますから、しかも、皆さん御存じのとおり、ここに出ているのは労災認定の分だけでして、ほかに公務災害の認定の件数もあるわけですから、例数としたらこれにプラスされるわけですね。そういう数字を改めて見ますと、これは今後相当に、これから後で議論になりますメンタルヘルス対策も含めて、きちっと受け止めていかなきゃいけないということだと思いますので、是非、機会を見て再検討することも是非考慮していただきたいなということを、これは要望として申し上げておきます。  さて、その次に、今回の法律、法改正について何度も読み直してみたんですけれども、現行法とそれから改正法律の中身と。法律の条文を読む限り、どうもよく分からぬのです。つまり、従来はどういう法律のどの条項に基づいてどのようにメンタルヘルス対策がなされてきて、今回の改正でどこが変わってどう充実強化をされるのかというのが法律の条文を見ているとほとんど分からない。もちろんメンタルヘルスという言葉も出てこない。これは片仮名だから法制局があかんと言ったのかもしれませんけれども。ということで、少し初歩的な質問で申し訳ないんですが、一体どこがどう変わったんですかということを御説明ください。
  108. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 現行の労働安全衛生法におきましては、労働者の総合的な健康づくり対策の一部として心の健康づくりを取り上げてきたほか、メンタルヘルスケアを進めるため通達で具体的に指針を示してまいりまして、この周知啓発を行ってまいりました。  今回の改正法におきましては、時間外労働が月百時間を超えて疲労の蓄積が認められる労働者に対しまして医師による面接指導を行うことを事業者義務とすると、法律上の義務とするということ。それから、面接指導義務付けられている労働者以外の労働者でありましても、健康への配慮が必要な者に対しまして必要な措置を行うことを事業者努力義務とするということであります。それで、面接指導の際にはメンタルヘルス面のチェックにも留意するということを内容とするということでありまして、これにより、長時間労働による脳・心疾患予防と併せまして、メンタル不調の予防にも資そうというものでございます。  なお、メンタルヘルスにつきましては、現行、通達でやってまいりました指針についても見直しを行いまして、この労働安全衛生法に基づく、法の根拠を持つ指針とすることといたしまして、またメンタルヘルス対策でありますとか過重労働対策を衛生委員会等の調査審議事項に追加するというようなことを進めようということを考えているわけでございます。
  109. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ちょっとまだのみ込めないんですけれども、そうすると、法律に定める努力規定に基づいた指針という形に、従来の位置付けよりもワンランク強められた位置付けになるという理解でいいんですかね。
  110. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 委員おっしゃるとおりでございます。
  111. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 もう一つ確認させてください。  その法律に書いてある条文の中で、メンタルヘルス対策というか精神保健というか心の健康づくりというか、そこはどう、どこで読み込むんですか。何ぼ読んでも読めないんですよ。
  112. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今度の法律の中で、面接指導を重点として、対策一つとして医師による面接指導を上げておりますが、これが六十六条の八で定めているわけでございます。そしてその中で、ちょっと読みますと、事業者は、労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、ちょっと飛ばしまして、医師による面接指導、それで問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいうということですが、こういう面接指導を行わなければならないということで、この心身の状況を把握し、これに応じて面接、必要な指導を行うこと、これを面接指導ということで定義をいたしまして、この医師による面接指導をこの法律上の義務付けといたしているということでございます。
  113. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 分かりました。その六十六条の八の面接指導の括弧のところに問診その他の方法により心身の状況を把握しと、ここで読むんだと、こういうことだと思いますが。そうすると、法律ではここまでしか定めてなくて、より詳しくは政令とか省令とか、そういうレベルで定めることになるんでしょうか。ちょっとそこも併せてお聞きします。
  114. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 正に委員がおっしゃるとおりで、この六十六条の八で今おっしゃいました、ちょっと上のところですが、厚生労働省令で定めるところにより行わなければならないということになっていますが、その厚生労働省令で定めよということでございます。
  115. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 はい、ようやく分かりました。  次に、もう少し具体的な中身に入っていきます。  今日午前中、西島委員からも御指摘があったと思うんですが、精神障害にかかわる様々なストレス要因というか、いうのがあるという御説明ございました。私もそのとおりだと思うんですが。ただ、今回の改正を見ますと、時間に着目しているんですね。要するに長時間労働。それも確かに一つの要因であることは間違いない。しかし、長時間労働イコール発病という話では、そう単純な話ではない。  そこで、まず最初にお伺いしますが、時間外労働時間が百時間以上の者については面接指導義務付けると、八十時間の者については努力義務だと。この百と八十の差というか意味について御説明ください。
  116. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今回創設しますこの面接指導は、脳・心臓疾患発症リスクが高いというふうに考えられるものにつきまして、健康管理の面からのチェックと指導、それを行おうとするものでございます。  この対象者は、時間外労働が月百時間を超える者とする予定でございます。これは百時間以上の時間外労働ということでありますけれども、これは、この時間外労働を行った上で一日二十四時間のうち人間として必要な労働以外の生活時間を六時間確保しようとすると、睡眠時間は五時間以下にならざるを得ないと。そして、睡眠時間が六時間から八時間の場合と比較しまして、睡眠時間が五時間以下になると脳・心臓疾患発症する危険性が二倍から三倍になるという医学的知見があるということを踏まえたものでございます。したがって、この百時間を超える者について疲労の蓄積が認められると、こういうことで面接指導対象者としての義務付けを行っているわけであります。  八十時間というお話もございましたけれども、この面接指導対象となっているこの百時間以上の人以外の人、つまり義務付けの対象とならない労働者でありましても、この法律上、健康への配慮が必要な者につきましては必要な措置を講ずるよう努めなければならないといたしております。この対象者には、もちろん月八十時間を超える時間外労働により疲労の蓄積が認められる労働者で申出があれば、そういう労働者についても考えようということでありますし、更にこの対象者には事業場で定めた基準に該当する労働者ということも対象にしようというふうに考えておるわけでございまして、言わばそういう意味で八十時間の者についても、労働時間が長時間にわたる者があるとき、百時間を超えたからといって直ちに今まで危険のなかった人が急になるわけではもちろんないわけでございますし、危険は徐々に徐々に高まっていくと、段階的といいますか、徐々に高まっていくということでございますので、義務付けをしてきちんとまずはやっていただくというところは百時間ということで切りましたけれども、それ以下の人たちにつきましても、言わば予防的にそういった措置を講じてもらうということは望ましいことでありますので、努力義務としてやっていただこうと、そういう考えでいるわけでございます。
  117. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ちょっと確認をしておきたいんですが、そうすると百時間以上については面接指導義務規定としたと、しかしそれ以外はほっておいていいですよということにはならないから、取りあえずそれに近い八十時間の者については努力義務として定めたと。  一月の時間外労働四十五時間を超える場合は、また何か定めがあるんですか。そのどうも数字が百と八十と四十五が出てくるんですけれどもよく分からないんですが、ちょっと説明してください。
  118. 青木豊

    政府参考人青木豊君) これは、努力義務としてこの面接指導対象とする者についてはこの百時間を超える者とする予定でいるわけでありますけれども、八十時間を超える時間外労働の方については、まずもってこの努力義務対象にしていただこうというふうに考えております。  そして、じゃ八十時間行かないような人たちはいいのかということでありますが、それは更にそういった努力義務事業主がやるように努めなければいけない場合には事業主一定事業制度として仕組むわけでございますので、その際の考え方として、事業場で基準を定めていただいて、その中で自分のところの労働者についてそういった面接指導もできるだけやっていくという形を取りたい、取るというふうに考えておるわけでございまして、そういった事業場で定めた基準の中で、四十五時間以上の方々についてもやっていただくように私どもとしては勧奨していきたいというふうに考えております。  これは労働基準法の三六協定の上限、限度というもの、一定の目安も我々は、私どもとしては定めておりまして、月四十五時間を超えないようにできるだけしてくださいということで指導もしているわけでございますので、それを超える者につきましては、やはりそういった事業場で定める基準の中で対象にしていただいて、できるだけこういった面接指導を受けるチャンスを与えるようにしてもらうように勧奨したいと、こういうことでございます。
  119. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 少し分かってきたんですけれども、そうすると、百時間という時間にしても、必ずしも精神障害メンタルヘルスの問題を念頭に置いての数字というよりは、むしろ先ほどお話の中で出てきたように、脳・心臓疾患についての統計で見るとある程度そういうデータが出ているから、それを一つデータとして百時間という時間を設定したということで、そうすると、必ずしも精神障害のことを念頭に百という数字を設定したというわけではないと、たまたまそれ同じ時間で区切ったというか、それだけのことだということですか。
  120. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 端的に言えばそういうことであります。基本的には、脳・心疾患が非常に危険度が高まるということで医学的な知見が得られておりますので、そこでの基準として採用して、それでこの制度のスキームを考えたということでございます。  ただ、それは法律先ほどの条文にありますように、心身の状況を把握して面接指導をやるということでございますので、メンタルヘルスを無視してといいますか、メンタルヘルスのことを考えないでこの制度全体を考えていることではなくて、それはメンタルヘルスについても同様にこの制度の中で対応ができるだろうということで今回の法律改正お願いしているということでございます。
  121. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ちょっと私の方が精神障害というところに注目して時間を見るものだから、何か腑に落ちないと、何で百なのか、何で八十なのかと。むしろ、午前中西島先生がお出しになったようなストレス要因を一つ一つチェックして、その点数が多い人をやるというふうにした方がより妥当だなと私なんかは思うので、時間を物差しにしてこうこうこういうふうに決められたことについて多少の違和感があったんですが、必ずしもそういう考え方で設定したんではなくて、むしろ一定の、メンタルヘルスも含めて脳・心臓疾患に関連するデータとかいうことを参考に一定の時間を区切ったという理解でおおむねよろしいんですかね。  じゃ、そのことを前提に、むしろ私は今もちょっと言いましたけれども、精神疾患を念頭に置いた基準の作り方というか、あるいは要素、精神疾患を念頭に置いた要因、要素分析みたいなことをやっていただくとより的確にキャッチできるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、そういうお考えはあるんですか、ないんですか。相当法律上は難しいのかもしれませんけれども、ちょっとその点お聞かせください。
  122. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今、直ちにこの今度のお願いをしている法律の中で具体的な基準を定めるということは、今にわかには考えておりませんけれども先ほど労災認定の件もそうでございますけれども労災認定の基準を判断指針ども定めてまいりました。様々な面でも定めてきておりますけれども、それまでの新たな疾患、労災として認定する事例、申請、そういうものが出てまいりまして、個別の対応ではこれは迅速な処理ができないというような状況になって、いろんな専門家にお願いをしてその見直しを行うというやり方でやってきております。そういう意味では、現在の対策あるいは今後法律改正をしてお願いをしている対策労災ども含めましてその状況に応じた対策を講じていくということは重要でありますので、そういった蓄積といいますか、症例とかあるいは知見の蓄積、そういうのを踏まえて、私どもとしては十分検討をしていきたいというふうには思っております。
  123. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 分かりました。是非、方向としてそういうことができないか、検討お願いしたいなと思います。  さて、その次に、面接指導については当然労働者による申出が前提というか、があってその上で面接指導をすると、こういうことになると思うんですが、もちろん本人の意思というか気持ちを尊重することは大変大事なんですけれども、逆に裏返して読めば、申出がなければしなくてよろしいというふうにも読めちゃうので、そういう点を強調すると逆に管理者側の安全配慮義務をより消極的なものにしはしないかという気もするんですが、この辺についてはどうお考えですか。
  124. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 面接指導対象となる労働者としては、今ずっとお話しいただいておりますように、時間外労働が月百時間を超えているということ、それから疲労の蓄積が認められること、この二つの要件を満たす者を予定をいたしておるわけでございます。  この二つのうちの疲労の蓄積につきましては、通常、体調の不良、気力の減退などほかの人には、他の者には認知しにくい自覚症状として現れるものでございますので、要件に該当するか否かの一義的な判断については労働者本人にゆだねざるを得ないことから本人からの申出という手続を設けることとしたものでございまして、これはむしろ面接指導を確実に行う担保としようと私ども考えてこういうふうなことにいたした次第でございます。  改正に当たりましては、事業場においては労働者が確実に申出を行うことができるように事業者指導いたしますとともに、産業医面接指導を受けさせる必要があると判断した者に対して申出を勧奨することができることといたしておりまして、面接指導マニュアルでその趣旨の徹底も図ることといたしております。  さらに、今回の改正におきましては、面接指導の申出を行わない労働者についても面接指導等の必要な措置を実施する努力義務を課しておりまして、事業者側の安全配慮義務が全うされるよう配慮した改正案となっているところでございます。
  125. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 趣旨は分かりましたが、私はあえてこのことをお聞きしましたのは、少なくとも申出がしやすいような環境整備というか、条件づくりは是非とも必要だというふうに思うんですね。それしないでおいて、申し出なさいというのはないだろうと。例えば、申出の窓口を人事管理課の隣に置いたりする場合があるんですよ。そうすると、これはおいでと言っても行きにくいわけでして、そういうことへの配慮も含めて、本人が余り周囲に気兼ねなく申出できるような条件づくりみたいなことをした上で申し出てくださいということにしないと、最初からもう障害を設けてしまうようなところも間々なきにしもあらずなものですから、それであえてお尋ねしたわけであります。是非、そんな点も含めての、個別のマニュアルをお作りになるとすれば是非お願いしたいなと思います。  さて、じゃ改めて、職場におけるメンタルヘルス対策の必要性、重要性を、どういう実態があるというふうに認識されているのか。つまり、メンタルヘルス対策の必要性を裏付ける幾つかの調査というか、データがあるんだろうかと。意外とこれはないんですね。厚生労働省としても、もし余り乏しいようであれば、そういう基礎的なデータも含めて、これ、きちっと調査、検討されるべきではないかというふうに思うんですが、現時点でこんなデータがありますというのがあれば教えていただきたいし、今後どういうふうにして考えていこうとされているのか、お聞かせください。
  126. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 職場におきますメンタルヘルス対策につきましては、私ども厚生労働省において五年ごとに実施をいたしております労働者健康状況調査においてその実態の調査を行っておるところでございます。  直近の平成十四年の調査結果によりますと、千人以上規模の大企業では九割以上の事業所で何らかの取組が行われているのに対しまして、やはり中小企業では二ないし四割程度でありますこと、それから、何らかの取組を行っている事業所の六割以上が対策の効果があるとしておることなどがこの調査の結果として得られておるところでございます。  厚生労働省といたしましては、引き続き、このような調査を通じまして実態把握を行いますとともに、様々な機関で実施されております調査の情報収集に努めまして、事業所におけるメンタルヘルス対策の実態把握を進めてまいりたいと考えております。
  127. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 そこで、その実態把握の中で、是非メンタルヘルスに係る相談体制というか、企業の側の受け止める体制がどうなっているのかという点も是非調査をしていただきたいと思うんですが、今日も午前中にいろいろ、例えば産業医選任状況はどうかとか、あるいは安全衛生委員会の開催状況がどうだとかいうことがありました。そういう言わば基礎的な体制を示す数値の調査も一方で是非とも必要だというふうに思いますから、相談体制の実態がどうなっているのかということも併せて是非調査をお願いしたいと思います。  では、その次に、幾つかメンタルヘルスにかかわる相談体制についてお尋ねしようと思ったんですが、これまでの質問と重なりますので一問だけにとどめたいと思います。  労働安全衛生法に基づくメンタルヘルス対策の言わば実施体制は、基本的には企業の側で産業医選任も含めて、あるいは安全衛生委員会の設置も含めて体制を取っていくというのが原則だと思うんですが、ただ、そうはいっても、なかなか人材を確保するという面ではすべて企業が抱え込むというか用意するということには必ずしもならない。  そこで、ちょっと思い出したんですが、三年前に健康増進法という新しい法律を作ろうというときに、産業保健、職場における健康づくりの活動と地域保健、地域における様々なヘルス活動とその両者が協力し合えるようなことができないかという議論がありました。そのために、高知県でたしか二〇〇一年からだったと思うんですが、これ間違っているかもしれませんけれどもモデル事業として、保健所を中心に、地域の保健所を中心に職場における健康づくり、保健サービスを提供するモデル事業というようなことをやっておられたという話を参考人の甲田先生からお聞きをしました。  で、二つお尋ねしたいんですが、その後、高知県でのこのモデル事業の評価というか、はどんな評価だったんだろうかということと、こういう事業の実績を踏まえて、今後職場のメンタルヘルス対策充実させる視点から、保健所を中心とする、あるいは精神保健福祉センターなどもあります、地域保健サイドとの連携協力をどうつくっていくのかという観点についてはどう考えているのか、この二点をお尋ねします。
  128. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今御指摘になりました高知県の事業ということでありますけれども、これ二〇〇一年、平成十三年度、それから十四年度に地域職域健康管理総合化モデル事業としてその実施を高知県に委託したものでございます。これは、個人による健康管理に加えて保健事業者間の連携を図るということで、継続的な健康管理への支援を可能として国民の生涯にわたる健康づくりの推進を図るということのために、地域及び職域の健診情報の相互利用が可能となるような体制を整備しようと、そういうモデル事業でございます。  このモデル事業によりまして、地域保健と職域保健の連携には双方の理解があるキーパーソンの存在であるとか、あるいは標準的な項目に沿った健診データを一元管理できるような健診情報システムの構築、そういうことについて地域や職域の関係者が調整、支援を行う推進協議会を設置していくというようなことが言わば連携への推進要因だというようなことがこのモデル事業を通じて分かりました。  一方で、個人情報である健診情報の管理の在り方でありますとか、連携事業による連続した健診データ保健事業への活用方法の構築などが今後の課題とされました。  でありますので、この保健事業はそれぞれ異なる制度によりまして実施されているので、継続的、包括的な保健事業を展開していくためには、地域保健と職域保健が連携して、健康情報だけでなく、そういった保健事業をも共有していくことが重要となるということで、こういった協議会の設置を進めたり、あるいはガイドラインを取りまとめたということでございます。  委員が御指摘になりましたように、メンタルヘルス対策充実するという観点からも、地域保健の資源、保健所が中心となるとは思いますけれども、そういったものの活用は大変望ましいことだというふうに思いますし、労働安全衛生法事業者責任に立脚をしておりますので、そういった事業者責任の考え方について留意しながらも、地域や職域の連携による活動の推進に向けて検討していきたいというふうに考えております。
  129. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 確かに、メンタルヘルスの場合などは、特に個人情報というかプライバシーの問題が大変重要ですから、十分そこは検討しなければいけないと思うんですけれども、しかも労働安全衛生法におけるメンタルヘルス対策は基本的には事業主の責任ということであるということもおっしゃるとおりなんですが、ただ人材、人的資源を考えますと、そこそこ大企業ならできるのかもしれませんけれども、今朝ほど来議論のある例えば五十人以下の事業所などについていえば、それぞれ専属の精神科医を抱えるなんて話にはちょっとならないだろうと。そうすると、地域産業保健センターということになるんだろうけれども、そこにまた専属の人を何人か抱えるということにもなかなかなりにくいのかな。  とすれば、私は、企業も地域の構成要素というか一つの大きな要因としているわけだから、地域保健の活動をそこは全部丸々省いちゃうというか除いちゃうというのはかえって不自然なんじゃないかと。そこそこ地域の中にある幾つかの中小の事業所については、これはここの部分は労安法で企業責任だよといって地域保健の人が素通りしちゃうというのもかえって変なんではないかと思うんですね。  だから、もう少しこの両者の連携というのはあっていいんじゃないかと思っているんですが、それで高知県のモデル事業については注目をしていたわけですけれども、どうなんですかね、余りそういう方向で進めようという流れになっていないんですかね。
  130. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 人的資源が非常に少ない中でそれを活用することは大事だというのはもうおっしゃるとおりだと思います。  そのメンタルヘルスに関しては産業医精神科医ネットワークをつくろうということで、そういった人的資源あるいはそういったところに関係するいろいろな機関との連携協力体制を今回つくっていこうということで、一応地域産業保健センターを中核としながら、精神科医でありますとか心療内科医でありますとか、あるいは地域のそういう医療機関、そういったものの連携を組み立てていこうというふうに思っております。  で、今とりわけ御指摘になりました企業における、そういった人的資源を中心とする企業の中にある資源でございますけれども、これもおっしゃるように、各地域においてそういったものを有効活用できるということであれば大変結構なことでありますので、具体的にどうやって進めていくのか十分検討して、具体的な進め方というものを考えてみたいというふうに思っております。
  131. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 是非少し、具体的なモデル事業でやるのか何でやるのか、実践的なことも含めて検討してほしいなと思うんですね。  たしか健康増進法ができたときに、母子保健、学校保健、それから職域産業保健、そして老人保健と、それぞれが制度がばらばらにあっていてなかなか、必ずしも生涯の健康づくりという面からいってうまく機能しているのか、ワークしているのかという、そういう問題意識があったはずで、個別の領域におけるヘルス活動はヘルス活動としながらも、もう少しそれぞれの間の連携、協力、支援ができないかと、そのためのノウハウをつくっていこうじゃないかという問題意識はあったと思うんですね。しかし、その取組が必ずしもその後十分展開されていないような感じがして、これは局長お話しするだけじゃなくて厚生労働省全体にお話ししたい話でありますけれども、是非検討をしておいてほしいというのが私の問題意識であります。  じゃ、次の問題に移ります。  次は、宿題が残っていたと思います。大臣、記憶にあるでしょうか。ついこの間、通常国会で障害者雇用促進法の改正案の審議をいたしました。そのときに、障害者雇用促進法のサイドからの在職中の職員に対する支援というような話も出てきておりまして、私は、ちょっと思い出していただきたいんですけれども、その話とこの労働安全衛生法に基づくメンタルヘルス対策の話とごっちゃにしない方がいいんじゃないかと、むしろきちっと分けて考えた方がいいと思いますよという話をしました。  なぜそんなことを申し上げたかというと、どうも職場におけるメンタルヘルス対策対象者は、全部が全部そうだとは言いませんけれども一定程度ある企業に就職されて、途中で、五年とか十年とか経過したところで何らかの精神的な障害を罹患されて、その上で職場における様々な問題があったりして、そういう人たちに対してどう周りが支援していけるかということなんだろうと。  一方、障害者雇用促進法で念頭にあるのは、主として念頭にあるのは、文字どおり障害者雇用を促進するための法律であるからして、何らかの条件の下で結構、比較的若いうちから精神障害発症してなかなか就職にも恵まれず、しかし治療をきちっと受けて大分安定してきたから頑張って仕事を探そうというような方が典型的なんだろうと思うんですね。  つまり、申し上げたいことは、対象がかなり違うんじゃないかと。したがって、ベクトルも違うんじゃないかと。だから、両者で協力し合うことはあり得る話だけれども、しかし変に連携というふうに頭から言わないで、両方の施策は一遍それぞれきちっと区分けをして考え、その上で何が必要かということなんだろうという、そんなことも意見を申し上げました。そのときの答弁ではもう少しすっきりしなかったので宿題として検討しておいてくださいということを申し上げた。思い出されました。  是非、ちょっとその点について、改めて大臣のお考えをお聞かせください。
  132. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 先生から六月の委員会だったと思いますけれども質問いただき、よく整理するように宿題としておくぞと言われましたことは記憶をいたしております。  私どもも、その後、先生の御趣旨も踏まえながらこの問題を整理をいたしました。整理したところを改めて申し上げたいと思います。  労働安全衛生法に基づく対策は、労働者の安全と健康の確保観点から実施されるものでありまして、職場復帰に対する支援は職場復帰の過程での再発や症状の悪化を防止し、労働者の心の健康を確保するために行うものでございます。これは、先生がお述べになったことと同じことを言っておるつもりでございます。それからまた、一方で障害者雇用促進法に基づく対策は、障害者の雇用の安定を図る観点から実施されるものであり、職業リハビリテーション等により新たな就業や職場復帰を進めようというものでございます。こういうふうに整理をさせていただきました。  私の理解するところでは、先生がお述べになっておることと同じことを言っておると理解をいたしております。
  133. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 恐らく、具体的な事例になってくると相互の連係プレーも必要になってくる事例もあるのかもしれません。しかし、施策の主たる目標は何かと、あるいは主たる機能は何かというのはきちっと押さえておく必要があると思いますから、あえてくどくどと申し上げました。是非、そのような整理を前提にこれからの施策をそれぞれに充実をしてほしいというふうに思います。  さて、その上で、そのこととも関連するんですが、そしてそのときにも議論になりました、障害者雇用促進法の改正によってただ単に新たに雇用を支援するという、雇用のために支援をするということだけではなくて、在職の労働者に対しても一定の支援を行いますということが示されました。  そのことは一見有り難いことのように見えるんですが、やや危惧すれば、現在勤めている労働者で精神的に具合が悪くなった人たちを、積極的に精神障害者の手帳を持ってくださいと、そして障害者雇用率をアップさせましょうということに使われてはかなわないなと。そのことによってメンタルヘルス対策がおろそかになっても困るなということが指摘されていました。ですから、うまく表現されていないかもしれませんが、附帯決議にもそのような趣旨のことが、障害者雇用促進法の附帯決議にも盛り込まれていたと思います。  この点について改めて、今回労働安全衛生法改正するに当たって厚生労働省としてはどのように、少なくとも変な誤解をされたり、あるいは変な利用のされ方をされては困るわけですから、事業者に対してどうきちっと指導されるのか、お聞かせください。
  134. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今お話しいただいたような誤解があってはなりませんし、また私どもがそのようなことを毛頭考えてもいないわけでございまして、そのことは私どもも御説明もしっかりさせていただき、御理解いただいた上で、この法律に合わせて皆さん方のまた取組をしていただきたいというふうに考えるところでございます。  附帯決議のことについてもお触れいただきましたので申し上げますと、今回の法改正と併せまして現行のメンタルヘルス指針の見直しを行いまして労働安全衛生法に基づく指針とし、事業者又は団体に対して必要な指導を行いますとともに、衛生委員会の審議事項としてメンタルヘルス対策を追加することにより労使による自主的な取組を推進するなどの対策を予定しておりまして、今お触れいただきました障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議を踏まえながら、事業場におけるメンタルヘルス対策充実、促進してまいりたいと考えております。
  135. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 これは多分法律を作るときからの、かなり審議会でも議論になった課題であると思いますから、もちろんそこに参加されている企業側の皆さんもある程度御理解はされていると思いますけれども法律ができるとそれはそれで独り歩きする場合もありますから、十分そういうことのないように必要な手だてを講じていただきたいということを私からもお願いをしておきたいと思います。  あと二つほどお尋ねをして終わります。  一つは、厚生労働省が、昨年ですか、心の健康問題により休業した労働者職場復帰支援の手引、こういうものを作りました。このブルーの結構中身のあるパンフレットだというふうに思います。  そこはそこで評価をするんですが、さて、このプログラムをお示しになって、これに基づいて職場ではどのような取組が展開されて、その結果どういうふうな効果というか評価がされていくのかという点が気になります。なかなか難しいのかもしれませんが、それなりの手引を示して、それなりの取組をお願いするとすれば、それなりの評価をしなければいけないと思うんですが、この点についてはどうお考えですか。
  136. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今お触れになりました職場復帰支援の手引でございますが、これはお話ありましたように、昨年に、十月に公表いたしました。まだ一年ということでありますので、事業場におけるこの職場復帰プログラムへの取組状況について集計をしてデータとして蓄積をするというところまでは今のところ至っておりませんけれども、公表した時点で数多くの問い合わせもあり、マスコミにも取り上げられ、関心が非常に高いということは認識しております。  今委員がおっしゃいましたように、そういうのを公表して、そういうことで指導していくということでありますので、もちろん状況の把握、あるいはこれの評価、分析、こういったものは当然しなければいけないというふうに思っております。こういった職場復帰支援の促進のために、手引の中で示しましたプログラムの普及のためにも、その普及状況あるいはその状況の把握、評価について、今後、私ども検討していきたいというふうに思っております。
  137. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 お願いは、具体的な取組、こんなふうにやったという事例紹介が是非欲しいなと思うんです。あちこちに行って、この種の学習会に行きますと、実際にどうしたらいいんだろうかという問い合わせが企業の側からも、あるいは労働組合の側からも出てきて、そのときに一番欲しいのは、こんな事例でこんなふうに実践したとか、それで良かった場合と悪かった場合とか、要するに事例報告がかなり大事のようなので、ただ単に数字でもって評価するだけじゃなくて、幾つかの事例を紹介するようなこともできれば取り組んでいただきたいなというふうに思います。  それで、そういうふうに評価した後で、ちょっと文句を付けたい点が一つあるんですが、この心の健康問題により休業した労働者職場復帰支援の手引、職場における心の健康づくりというパンフレットの十二ページのところに欄が囲ってあって、本手引の適用に当たっての留意点というのがあるんです。読んでみると、本手引は、心の健康問題による休業者で、医学的に業務に復帰するのに問題がない程度に回復した労働者対象としたものである。問題がない程度に回復した労働者だったら、別に問題ないんでしょうに。その後、続きがあって、本手引の適用が困難な場合には、主治医との連携の上で、地域障害者職業センター等、外部の専門機関が行う職業リハビリテーションサービス等の支援制度の活用について検討することが考えられる。ということは、医学的に業務に復帰するのに問題がない程度の人はこれで支援するけれども、それを超えたらというか、それよりも具合の悪い人は外へ行けみたいなふうに聞こえるんですね、これ。どういう意図でこんな留意点をわざわざ書いたんです。ちょっと説明してください。
  138. 青木豊

    政府参考人青木豊君) これは、この手引を作る際に、メンタルヘルス対策については、先ほど来の委員お話にもございましたように、人的資源というものを有効活用するということで、このメンタルヘルスのヘルスケアの中でも、様々なところでの対応のほかに、事業場内での対応が困難な場合には必要に応じて様々な事業場外の資源を活用を図るんだと、そういうことで、いろんな力を集めて進めていくという考え方が取られているわけであります。  この手引を作るに際しましても、労働者状況によっては事業場内のスタッフ等による支援のみでは職場復帰が困難なケースも考えられるということで、地域障害者職業センターが提供する専門的なリハビリテーションなどのノウハウを活用する方が円滑に職場復帰を進められる場合も考えられるということで、こういうような記載になったというふうに理解をしております。  今委員が御指摘になりましたように、この手引を作る、あるいはこの利用を進めるに当たりまして、確かに誤解が生ずるようなことのないように表現については十分慎重に検討し、また改定をも検討したいというふうに考えております。
  139. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 是非、こういうことだと思うんですよ。実際、あるプログラムに沿ってやってきたと、しかしなかなかそのプログラムどおりに進まない場合があるだろうと思うんです。そのときには改めて、例えば主治医があれば主治医と相談をして、もう一遍しばらく休むとか、そしてもう一遍そのプログラムをもう一遍一からやり直す方法だってあるんじゃないかと思うし、つまり、これで乗らぬかったらこっちだよという言い方ではなくて、あるプログラムがうまく生きた形でつながっていかない場合には、そこで改めて主治医とも相談をしたり、あるいは家族とも相談をしたり、場合によっては職場の同僚と相談したりして、改めて別のプログラムを作るとかいうことだってあるわけですよね。だから、こう乗ってこなかったから、だからこっちだよという言い方ではないはずなんです。もう一遍やり直す方法だってあるはずだし、あるいはしばらくお休みする方法だってあるわけですから、是非ここは誤解というか、素直に読むとそういうふうに読めちゃうので、機会があれば検討お願いしておきたいと思います。  最後に、ちょっと大臣お願いをしておきたいことがあります。お答えは結構ですけれども。  今日、一番最初にお示しをした数字労災認定の件数なんです。公務災害もあるでしょうと言ったら、いやそれはこっちでとか言って振られちゃって、この数字しか出てこなかったんですけれども、確かに今の所管は違うんだろうけれども、しかし現象は同じですよね。要するに、働いている人の精神障害であり自殺の問題であると。とすれば、この労災の方の資料に加えて参考として、例えば公務災害ではこういう数字になっているよというふうなのがあっていいんじゃないかと思うんですね。トータルして働いている労働者精神障害というのはこういう経緯ですよと、こうなるはずなんですよね。だから、ちょっと今後、資料を作るときにそういう御配慮を是非いただければ大変有り難いということを申し上げて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  140. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 公明党の鰐淵洋子でございます。労働安全衛生法等の一部を改正する法律案につきまして質問させていただきます。  まず初めに、厚生労働大臣質問をさせていただきますが、今回の法改正は、働き方の多様化が進む中で重大な労働災害が頻発し、長時間労働による健康問題の増加、また仕事と育児の両立など課題や問題が深刻化している中で、それに対処するために整備充実されるものと承知をしております。これらの法案は、社会情勢も刻一刻と変わっておりますので、その状況に合わせて法改正も重ねられてきたと思いますが、私たちも、それぞれ職業、職種も違いますけれども、お一人お一人が仕事そして育児、趣味、自己啓発の取組など、それぞれが自分の働き方に充実感を持てる、また満足感を持てる、そういった生き方ができているかどうか、そのような見直しをすることが重要なことではないかと思っております。  私は、今回の法改正で、一人一人の働き方、ひいては生き方を見直していくという観点に立ちまして法改正が進むべきであると考えておりますけれども、今回の改正に取り組む大臣の御所見をお伺いいたします。
  141. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 健康で充実した人生を国民一人一人が送ることができるようにしていくためには、仕事と仕事以外の活動、例えば家庭、学習、地域活動など、こうしたものを様々に組み合わせ、両者の調和を図ることが必要であると考えます。  今回の改正におきましては、労働者の健康や安全を確保いたしますとともに、労働者がその希望により仕事と生活を生涯の様々な段階において多様に組み合わせ、働くことができるようにすることを一つの目的として労働時間の設定の改善等を促進することにしたものでございます。先生がお述べになったようなことを念頭に置いての改正であるということを申し上げたところでございます。
  142. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  それでは、具体的に質問に移らせていただきたいと思いますが、まず労働安全衛生法について質問をさせていただきます。午前中よりそれぞれ委員先生方からも質問が出ておりまして、多少重なっているところもあるかと思いますが、確認も含めまして質問させていただきたいと思っております。  労働災害の発生状況でございますが、長期的には減少傾向のようですが、昭和六十年以降は重大災害が頻発しております。事業規模別の労働災害の発生状況がどのようになっているか、特に中小企業での発生が多いようですが、改めて現状をお伺いしたいと思います。
  143. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 労働災害の発生状況でございますけれども労働者千人当たりの労働災害による死傷者数、千人率によって労働災害の発生頻度を見ますと、平成十六年におきましては、労働者数十人未満の事業場で三・五一、三百人以上の事業場では一・〇三と、約三倍以上の差がございます。五十人未満のところでは三倍、三前後というようなことでございます。  規模の小さい事業場ほど労働災害の発生率が高くなる傾向が見られているところでございます。
  144. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  今、労働災害の状況をお伺いいたしまして、小さな事業所また中小企業におきまして労働災害の発生が多いということでお話しいただきましたけれども、特に小さな事業所また中小企業におきましては、団塊の世代の方がこれから退職されていくということで、技術面はもちろんでございますが、安全確保のための知識だったり技術の継承が難しくなってくるのではないかと思っております。  このような現状を踏まえまして早急に対策検討していかなければいけないと思いますが、そこで、この平成十六年の建議におきまして、団塊の世代の退職等による安全衛生活動の弱体化を防止するためということで労働安全衛生マネジメントシステム、これが導入を促進しようということで掲げております。これはどのようなシステムなのかお伺いしたいと思います。  また、あわせまして、これを導入することによりまして安全衛生水準の向上にどのような効果があるのか、併せてお伺いをいたします。
  145. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 労働安全衛生マネジメントシステムについての御質問でございます。  これは、このシステムは、個人の経験と能力のみに依存しないで、経営トップの方針に基づいて事業者労働者と協力をしながら職場の危険性あるいは有害性、それの調査を行いまして、その結果に基づく改善対策を組織的、継続的に実施するための自主的な安全衛生活動の仕組みでございます。  経営トップが安全衛生方針を表明いたしまして、それに基づいて労働者の意見を反映しながら危険有害性の調査をして、それの改善のための、あるいは危険有害性の回避のための経過措置についての計画を作りまして、そしてその計画に基づいて、具体的な計画に基づいて具体的な措置を実施すると。そしてまた、その実施したものについて今度はその評価をすると。そして、その評価を踏まえてまた今度その計画、作った計画の改善をすると。そしてまた、その改善をしてでき上がった計画についてまた具体的に実施をしていくという、ぐるぐると、そういう継続的にかつ組織的にやっていくというものでございます。  これについての効果についてのお尋ねもございました。  これは、平成十五年十一月に全国の大規模製造業を対象として実施しました自主点検の結果によりますと、労働安全衛生マネジメントシステムを導入している事業場は、関連する活動を行っていない事業場に比べて労働災害の発生率が平均で約四割低いとの結果が得られております。さらに、労働安全衛生マネジメントシステムを導入した事業場に対して行いましたアンケートによりますと、七割以上の事業場が安全衛生水準の向上が見られたというふうに回答がなされておりますし、また、導入前後の労働災害の発生率を比較いたしますと、導入後は労働災害発生率が平均で約六割に減少しているとの結果が得られているところでございます。  というふうなことで、労働安全衛生マネジメントシステムは労働災害の発生率の低下を始めといたしまして安全衛生水準の向上に効果があるものと考えております。
  146. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  今御報告していただきましたが、このシステムの導入によりまして安全衛生水準が向上したと答えたところが七割以上あったということで今御報告いただきましたが、かなり効果があるのではないかと私も思いまして、しっかりと今後、この安全確保のためにもしっかりとこういったシステムを導入を促進していくべきであると思っております。  しかし、人的、財政的にも十分でない中小企業が取り組むにしましては大変厳しい状況もあるかと思いますので、このシステムの普及促進を図るために何か支援が必要ではないかと考えておりますが、御見解をお伺いいたします。
  147. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今回の改正で導入する危険性、有害性の調査というのは、従来から事業場で行われている職場パトロールなど、そういったものの災害防止活動の結果を活用するとか、あるいは機械等の取扱説明書を活用するとか、あるいは災害事例の情報を活用するということが可能でございますし、また労働安全衛生コンサルタントなどの外部の専門家の活用もできるということでございますので、中小零細企業も含めまして十分実施可能なものと考えております。  この労働安全衛生マネジメントシステムについても、従来から事業場で行われている安全衛生活動の延長線上にあるものでございますし、経営トップの方針に基づいて労働者の協力の下に組織的に継続的にこれを実施するためのシステムとして、大臣告示として既に指針を公表しております。そういうことでございますので、十分実施可能な状況はあると思います。  また、厚生労働省といたしましては、中小企業がこれらの取組を円滑に実施することができるように、普及促進のための支援策としまして、標準モデルの作成でありますとか、研修会に対する講師派遣を実施しようということで予定をしているところでございます。
  148. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 分かりました。ありがとうございます。  次に、メンタルヘルス対策について質問をさせていただきます。  近年、過労死についての労災認定件数が高水準で推移するなど、過重労働による健康障害や過労自殺が多発しておりまして、深刻な状況でございます。冒頭にも申し上げましたが、一人一人が心身ともに充実した生活を送ることができるように、これが目指すべきところであると思いますが、現実はなかなか大変厳しい状況であると思います。  これもまた当たり前の話ではありますが、会社があって人間があるのではなくて、人間があって会社があるわけでございますので、やはりこれらの問題を解決する方向に持っていくためには会社の、企業の経営者、トップの意識が変わらなければ様々対策を図っても解決が進まないのではないか、そのように考えております。  経営者、企業のトップへの意識の変革を促すような取組について、何かお考えがありましたらお伺いしたいと思います。
  149. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 過重労働メンタルヘルス対策について、経営者の意識、経営トップの意識というのが大切だということはおっしゃるとおりだというふうに思います。  今回の法改正内容については、法改正内容を広く、当然周知に努めることとしていますけれども、特に経営者の方に対しましては、経営者団体の協力を得ながら直接の周知を図るということを考えたいというふうに思っております。  先ほど申し上げましたように、安全衛生マネジメントシステムもそうでありますし、それから現行のメンタルヘルス指針におきましても、心の健康づくり計画の策定に当たっては、経営者自らが事業場メンタルヘルスケアを積極的に実施することを表明をすると。経営トップの態度といいますか、そういうことが効果的であるというふうに明記をしているところでもございますし、今後ともそういった指針ども周知徹底して、協力が得られるように努めてまいりたいと思います。
  150. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 是非よろしくお願いいたします。  次の質問に移らせていただきますが、今回の改正で、面接指導制度の創設を図るなどメンタルヘルス対策強化されておりますが、月に百時間を超える時間外労働にさらされている方が自らの体調の変化を産業医や、また事業主に訴えるのは大変に難しいのではないかと思っております。調子が悪いと言えば解雇されるのではないかとか、また、自分が実際にそこまで心身ともに疲労がたまってひどい状況であるとか、そういったことに気付いていない方も中にはいらっしゃるかもしれません。様々状況もございますので、労働者の健康、また命を守るためにも、様々な角度からこの対応策も検討していくことが重要であるかと思っております。  この労働者本人のメンタル面における変化につきましては、身近な家族や同僚の方が気付く場合もございますので、職場の実態を把握しております産業医家族、また同僚の方がしっかりと連携をつくっていく、そういった体制づくりも大切かと思っております。  また、厚生労働省平成十五年に労働者本人とその家族のために疲労蓄積度自己診断チェックリストというものを作成されておりますが、これは、自分や家族の疲労蓄積が診断できるものということで、中央労働災害防止協会と厚生労働省のホームページに掲載されておりました。  私自身も実際にこれをやってみましたけれども項目の中に、イライラする、不安だ、落ち着かない、よく眠れない、以前より疲れやすい、こういった項目がございまして、これに一つ一つ答えていく中で自分の疲労の蓄積をチェックするというものでございました。  これで正しく診断されるかどうかというのは別の問題といたしましても、こういったものをきっかけに、相談してみようかなとか、また病院に行ってみようかなといった次の行動に移せるようなきっかけにもなるかと思いますので、これもとても重要な取組かとも思いました。  実際に、このチェックリストでございますが、公開された直後はアクセスが殺到いたしましてホームページがダウンするぐらいだったということで聞いております。ですので、本当に本人が気付かないうちに、また知らず知らずのうちに疲労が蓄積しているケースもございますし、また家族が気付くケースもあると思いますので、そういったときに、自己判断、また身近な人が判断できるようなこういった、今紹介いたしました疲労蓄積度自己診断チェックリスト、こういったものを充実させて、例えば年に一度実施されます健康診断におきましても広報のパンフを配付するなど周知していくことも必要ではないかと考えておりますけれども、今後の対応についてお伺いいたします。
  151. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今委員がるるお述べになりましたことは、そのとおりだというふうに思います。  この疲労蓄積度自己診断チェックリストにつきましても、これは平成十六年六月に公表いたしまして、その際には、今お話ありましたように、ホームページに出したところ非常にアクセスが多くなってダウンをしてしまったというようなこともございました。これは、このリストはそういうことで非常に関心が高いということを改めて認識をさせられたところであります。  このチェックリスト労働者用と家族用と分けておりまして、労働者用は、労働者自身が過重労働による健康障害防止のために疲労の蓄積というものをセルフチェックするツールとして使うと、それから家族用は、家族がはたで見て労働者の疲労の蓄積度を判断できる、判断する目安として活用できるように作成したものであります。  過重労働による健康障害を防止する上で、このチェックリストが広く活用されるということは有効であるというふうに思っております。  今回、法改正で様々の内容の改正をするわけでありますけれども、当然、その法改正の内容の周知ということもいたしますが、それと併せてこのチェックリスト周知、活用を図るなどをしてまいりたいと思いますし、今後ともこういったものの普及に努めていきたいというふうに思っております。
  152. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。是非よろしくお願いいたします。  また、同じくメンタルヘルス対策でございますが、専門の先生方の前で大変に私が言うのも恐縮でございますが、やはりこれは早期発見、早期治療が一つの大きなかぎにもなってくるかと思います。そういった意味で、本人やその家族、周りの方が、ちょっといつもと違うなと、そのように感じたときに速やかに手を打てるような取組をしっかりと積極的に推進していくことが重要かと思っております。そういうときに気軽に、そして身近なところで相談できるような、そういった体制づくりも重要かと考えております。  例えば、委員の皆様も御存じかと思いますが、若者の就労を支援するジョブカフェがございますけれども、これは気軽に立ち寄れる雰囲気ということで、またいつでも相談に乗ってくれる、また具体的なアドバイスもしてくれて職業紹介もしてくれるということで、大変に好評だと思いますが、このような、ジョブカフェのような身近なところで気軽に相談できるような体制づくりが重要ではないかと思っております。  今、相談窓口といたしまして地域産業保健センターがございますが、これも先ほどからお話が出ておりますけれども、その取組として大田区、東京の大田区では中小企業が多いということもありまして大変充実をしておりまして、区役所をお借りして週に一度相談室が設けられているそうです。そこには精神科のお医者さんがいらっしゃいまして、そして今利用者も増えているということで、大変好評であるということを聞いておりますけれども地域産業保健センター充実も含めまして、こういった相談体制の充実全国的にしっかりと展開していくことが必要ではないかと考えておりますが、御見解をお伺いいたします。
  153. 青木豊

    政府参考人青木豊君) このメンタルヘルス対策としては、お話ありましたように、労働者本人あるいは家族などが気軽に相談に応じられるようなものというのがやっぱり必要だろうということでございます。事業場における相談体制の整備などももちろん必要だと思いますし、やっていかなければならないということでありますけれども、それと同時に、お話ありましたような地域産保センター、地域産業保健センターにおいても家族を含めた相談体制の整備を図って、場所も、相談窓口を駅前などに開設するなどして利用しやすいように工夫をするというようなことも努力をし、小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の支援を図ってまいりたいというふうに思っております。
  154. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 よろしくお願いいたします。  同じくこのメンタルヘルス対策といたしまして、柔軟な勤務体制を整えていくことも必要ではないかと思っております。休職の規定がない職場では発病と同時に解雇されるというようなケースもあると聞いておりまして、安心して治療ができることが重要でありますし、そのためにも労働契約法で休職規定を設けることが必要ではないかと考えております。御見解をお伺いしたいと思います。  また、あわせまして、休職できたとしましても、職場復帰をする際に働くことへの焦りを感じて無理をすればまた再発のおそれもありますし、この再発防止という観点からも、ゆっくりと慣れるまでリハビリ的な感じで出勤できるような、こういった復職体制も必要かと考えておりますが、併せて御見解をお伺いしたいと思います。
  155. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今御質問にありました労働契約法制で、労働契約法で休職についての規定を設けるということでございますが、労働契約法制につきましては、人事労務管理が随分と変化をし就業形態も多様化するという中で、新しいルールが必要ではないかということで今研究会で研究をしていただきまして、さらに中間取りまとめを出して、平成十七年中に所要の検討を深めまして考えていこうということで取り組んでいるところでございます。その中では、労働政策審議会で議論をしていただきまして、その在り方を労使で十分話をして決めていただくことになっておりますけれども、その際には、休職に関することも含めまして当然議論の対象になるということを思っておりますので、そこで議論がなされるだろうというふうに思います。  再発防止のためのリハビリ出勤についても話がございまして、今回の法案において、労働時間等の設定に当たりまして労働者の心身の健康に配慮すべきことを事業主努力義務としております。事業主が具体的にどのような配慮をなすべきかは、この労働時間等設定改善指針においてこれから定めるということとしておりまして、これについては法成立後、労働政策審議会において検討をまずしていただこうというふうに思っております。  御指摘ありました点も含めまして、国会での御議論を踏まえて御検討いただくことにいたしておりますので、そのような中で検討させていただきたいというふうに思います。
  156. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  先ほども申し上げましたが、復職制度、柔軟な対応策が必要かと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  続きまして、時短促進法の改正について質問させていただきます。これにつきましては、少子化対策という角度を付けて質問をさせていただきたいと思いますが、まず初めに大臣にお伺いしたいと思います。  もう大臣も言うまでもなくもう御存じのことと思いますが、この平成十五年版の厚生労働省の白書によりますと、就学前の児童のいる父親のうち二十三時以降に帰宅する方が全国平均で一割を超えている。また、南関東では二割を超えておりました。そして言うまでもなく、この労働者の比率が高い地域ほど出生率は低くなっている、そういうデータもございました。  長時間労働の影響というのは、健康障害だけではなくて、結婚をして子供を生み育てたいが時間的にも環境的にも厳しいからあきらめざるを得ない、そういったような個人の生き方にも影響しておりまして、またこの少子化という社会の構造にも影響が出てきていると思います。また、結婚をして子供を生み育てるということは個人の自由ではございますが、男女を問わず、自分の生き方、また自分の希望どおりの生き方ができるようなそういった働き方、これがなければ今日本の抱えますこの少子化の流れというものも止めることはできないと考えております。  今回の法改正では、年間総実労働時間千八百時間を目標とする労働時間の短縮の推進を図る法律から、労働者の健康と生活に配慮したものへと改善されると伺っておりますけれども、この仕事と育児の両立についてどのような配慮がなされているのか。この長時間労働問題の解決に取り組まれる大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  157. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今回の改正法におきましては、労働時間等の設定改善に当たりまして育児に配慮すべきことを事業主の責務としておりまして、このような事業主の取組を促進するため国が支援を行っていく考えでございます。  少子化は国の未来にかかわる重大な問題であると認識をいたしておりますけれども、少子化を解決していくためには総合的な取組が必要でございまして、労働時間等の面からの取組も当然必要と考えております。このため、所定外労働の削減、年次有給休暇の取得促進に引き続き努めてまいりますほかに、今回の法改正により、育児に配慮した労働時間等の設定改善を進めまして、労働時間等の面からも育児をしやすい環境の整備を行う決意でございます。
  158. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  今回の法改正では、先ほども申し上げましたが、個々の労働者の健康や生活に配慮した労働時間の設定を改善することが目的でございますが、その具体的な取組を進める上で参考となるこの労働時間等設定改善指針、これは厚生労働大臣によって定められることになっております。これによりまして、今労働時間一人当たり平均が、昭和五十年代では二千百時間と言われておりましたが、これが千八百時間に減少してきているということで、しかし現状労働時間の分布が二極化したり、また、特に三十代の男性がちょうど子育て世代で当たりますけれども、六十時間の割合が高いということで、これらの実態を踏まえた上で、今回この労働時間千八百時間、この目標の扱い、どうされるのか、お伺いをしたいと思います。
  159. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今後の労働時間対策における目標の在り方についてでございますけれども、これは、労働政策審議会におきまして労働時間等設定改善指針において対処すべき問題であるという認識をしていただいております。そこで、目標を掲げること自体に意義が存在して、例えば一般労働者に限って引き続き目標を掲げることが必要であるという御意見と、今後、労働時間が成果に直結しない働き方が一層広がるという展望に立てば数値的な目標は不要であるという御意見、この双方が示されておるところでございます。  今後の段取りといたしましては、公労使一致して、目標に関して、改正法に基づく指針の策定の際に、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進等の課題ごとに、その要否や内容を個別に検討していくことが適当とされたところでございまして、この建議を踏まえて法成立後に同審議会において検討していくこととしており、御指摘を始めとする国会での御論議等を踏まえて検討してまいりたいと考えております。
  160. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 それでは、最後に要望だけ申し上げて終わりたいと思いますが、今お話しいただきましたこの労働時間等設定改善指針、この中に是非、今大臣から決意もいただきましたけれども、この仕事と育児の両立ができるような環境づくり、これを是非とも全面的に入れていただきたいとも思いますし、また、設定改善委員会が設置されるわけですが、その際には是非育児の経験のある女性だったり、そういう方を是非とも入れていただきまして、こういった子育てと仕事の両立をできる社会づくりに是非とも進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  以上で終わらせていただきます。     ─────────────
  161. 岸宏一

    委員長岸宏一君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、下田敦子さんが委員辞任され、その補欠として白眞勲君が選任されました。     ─────────────
  162. 小池晃

    ○小池晃君 日本共産党の小池晃です。  年間総実労働時間千八百時間というのは国際公約で、十九回も閣議決定をされながら一度も実現しなかった。それどころか、正社員の労働時間は逆に伸びております。ところが今回、時短促進法をなくしてしまい、改善を労使の現場に任せるというわけですね。日本のように過労死が世界語として通用するような異常な働き方が蔓延している社会で、政府が千八百時間の目標を投げ捨てるというのは、私は労働行政の責任放棄になると思いますし、断じて認められないというふうに思います。加えて、労働安全衛生法改正で過労死防止の通達まで後退させられようとしていますので、その問題を今日はちょっと取り上げたいと思うんです。  これまで月八十時間だった面接指導の基準を、先ほども議論ありましたが、百時間にするというわけですね。局長、これは八十時間を百にするということですから、これは幾ら過重労働対策充実といっても、これはどう考えたって、これ後退だということになるんじゃないですか。
  163. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今回、百時間、月百時間を超えた時間外労働を行った者については医学的所見に基づいて、これは、これ以上のものについては極めて脳・心疾患の発生が高くなるということに基づいて努力義務にしようということであります。  今、お触れになりました八十時間ということでありますけれども、これまで、過重労働による健康障害を防止するために平成十四年二月に策定いたしました過重労働による健康障害防止のための総合対策というものがございます。これは通達でそういうことを、総合対策をするということでありますけれども、この中で、時間外労働が月百時間を超える者か、あるいは二月から六月間の月の平均の時間外労働が八十時間を超える者について、事業者に面接による保健指導を行わせるというようなことをやっておりました。そのことをおっしゃっていることだと思います。  これについてでありますけれども、これは法律に基づかない行政指導でありましたために、すべての事業場に対して指導を徹底するというのはなかなか難しくて、その効果も限られたものでございました。今回は面接指導を法制化するということで、面接指導について事業者が果たすべきそれは社会的責任であるということを明確にするということだろうというふうに思っておりますし、法律を根拠とした指導を可能として、全事業場に対しましてその実施を図ろうというものでございます。  それで、現行の通達において面接指導対象としている者につきましては、今度のスキームにおきましても義務又は努力義務でカバーをすると、その上でいろいろな対策を講じていこうということで考えているものでございます。
  164. 小池晃

    ○小池晃君 しかし、面接指導の基準というのは八十から百時間になると。もちろん、法的に事業主の責務を明確にしたことはいいと思うんですよ。じゃ、なぜそのときに今までの八十時間の面接指導の基準をそのまま義務化しなかったのかと。  過労死や過労自殺で亡くなられた家族の皆さんは、過労死してからでは取り返し付かないんだと、自分たちのように悲しむ家族をもう増やしてほしくないんだと、こういうふうにおっしゃっているわけです。  百時間の時間外労働というのは、これは過労死認定基準の八十時間を大きく上回るわけで、私は過労死を防止するというのであれば、当然八十時間を超える前の段階で是正の措置を義務として求めるというのが、私は当然の過労死防止対策ではないかと思いますが、いかがですか。
  165. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 過労死をしたら取り返しが付かないというのはおっしゃるとおりだと思います。私どももそういうことで、労災認定というのは不幸にも労働災害によって被害を受けたという方に対しまして補償しようということであります。  我々は今回の法案でお願いをしておりますのは、やはり未然にできるだけ災害を防止していこうと、そのためには平生の健康管理というのが大切だということだというふうに思います。そういう意味で、月百時間については、先ほども申し上げましたように、飛躍的に違うと、脳・心臓疾患に陥っていく危険性というのが飛躍的に高まるということから、医学的にそういう知見が得られているということで、これはそういうことにいたしたわけであります。  ただ、おっしゃったような八十時間につきましても、努力義務の中で十分カバーをして、それについても面接指導を受けさせるように努めるようにさせるということを考えているところでございます。
  166. 小池晃

    ○小池晃君 医学的に脳・心疾患の可能性が飛躍的に高まる時点で本格的な措置をするというのでは対策にならないと私は思うんです。  しかも、八十時間前提になっているけれども、もっと別の数字も出てきていて、社会経済生産性本部が今年の八月に産業人メンタルヘルス白書というのを出していまして、ここで何と言っているかというと、月六十時間の残業を超えると、六十時間ですよ、六十時間超えると正常な家族関係に問題が出て、自殺念慮が起こってくるということを報告をしております。  具体的にイメージしていただきたいんですが、月六十時間の残業というと、毎日三時間程度残業することになる。通勤時間片道一時間当たり前、二時間もまれではない、そういう実態の中で朝七時に出て家に帰るのは夜の九時か十時だと。もう一杯飲みに行くとかそういうのは別にして、仕事だけでそうなると。実に十四、五時間拘束されるわけです。八十時間というふうになればプラス一時間、百時間となればプラス一時間また拘束時間が増えていく。  私、大臣にちょっとお伺いしたいんですが、社会経済生産性本部、労使官入った組織ですわね、ここが六十時間で自殺念慮が起こるという報告を今年出しているんですね。私、深刻な内容だというふうに思うんです。  しかし、今度のやり方というのは、正に致死的な脳・心疾患が飛躍的に起こる時点で初めて本格的な対策を打つ、百時間超えないと面接を義務付けない。これでは過労死してから相談に来いということになるんじゃないですか。私はこれ、根本的に考え直すべきだと思いますが、大臣、いかがですか、大臣。ちょっともういいですよ、何度も答えたんだから。大臣
  167. 岸宏一

    委員長岸宏一君) まず、じゃ局長から答えて、大臣答えてください。
  168. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 現行法との、現行のやり方との違いは、通達で八十時間を超えた者については面接による保健指導をやるということを指導しているわけであります。今度のお願いをしておりますのは、百時間は、これは法律上の義務ということにするわけでありますけれども、それ以下の人たちにつきましては、もちろん八十時間超の人が入るわけでありますが、これは面接指導して、そして必要な措置を講じてもらうと、そこまでが努力義務としてやってもらうということでありますので、少なくとも八十時間を超えた者だけを見ても決して現在の制度が後退するものというふうには思っておりません。
  169. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今の局長の答弁の繰り返しになるようでありますけれども、今回、まず法律できっちり義務付けたということは、これは先生御自身も評価をしていただいております。ただ、これは百時間。  それでは、その後どうするかということで、今お話いただいておりますような八十時間とかそうしたところは努力義務にしておるわけでございますから、そこも後退していない、前進をさせたというふうに理解をいたしております。
  170. 小池晃

    ○小池晃君 これは前進ではないと思いますね。しかも、実態から比べれば、私は過労死防止に基づかない、結び付かない措置だというふうに思うんです。  もう一つの問題点としては、労働者本人の申出を要件としていることです。これは現行、現状では会社側の有形無形の圧力で労働者が申し出ることができない事態というのは起こり得るわけですね。また、疲れ切ってしまって申し出るような気力もないようなケース、うつ病になって申出が困難というケースもあると思うんです。  私は、本人の申出というのを要件にすれば、医師による面接指導が必要な場合であっても、本人の申出がないために必要な措置がとられないという事態が起こりかねないんじゃないかと思いますが、参考人、いかがですか。
  171. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 月百時間を超える時間外労働につきましては、それに伴って疲労が蓄積した労働者について面接指導対象としているわけですけれども、疲労の蓄積は通常、体調不良とか気力減退ということでほかの人には認知しにくい自覚症状として現れるものでございます。  この要件に該当するか否かの一義的な判断については、やはり労働者本人からの、労働者にゆだねざるを得ないということを前提にいたしまして、労働者本人からの申出という手続を設けるものとしたものでございます。逆に、この手続は面接指導を確実に行う担保となるものだというふうに考えております。  確かに、申出が適切になされなければ、これは問題だというふうに思います。したがって、この申出が適切になされるように、改正法が成立した際には、事業者等に対しまして改正法趣旨周知徹底いたしまして、また同時に、労働者に対しましても時間外労働が月百時間を超えた場合には面接指導を受けるよう様々な場面でパンフレットなどを用いながら周知啓発を行うということにいたしております。
  172. 小池晃

    ○小池晃君 いや、現場の実態は大分違うと思うんですね。いろいろとお話をお聞きすると、例えば、過労自殺した二十四歳男性の方ですが、残業で一日の勤務が約十七時間になる。過酷な労働で精神的、肉体的な疲労が蓄積して、何度も上司に退職を申し入れたが慰留され働き続けたと。ノイローゼかもしれないというふうに周囲に漏らしながら、自殺をされている。あるいは、ホテルの料理長をしていた男性ですが、脳動脈瘤の破裂によるクモ膜下出血で亡くなっていますが、倒れる一か月前からほとんど眠れない、毎日会社に殺される、会社を辞めたいとうわ言のように言っていたというんですね。  私、本当にぎりぎりまで追い詰められて、過労死、過労自殺に追い込まれる人の状況というのは本当に過酷な状況にあるというふうに思うんですね。そういう人たちが、これは担保だとおっしゃるけれども、果たして自らの疲労状況を非常に困難な職場の中で進んで上司に申し出ることが果たしてできるのか。そこのところ、本当にできるというふうにお考えなんですか。
  173. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 先ほど申し上げましたような周知を図ると同時に、やはり周りの状況といいますか、そういったものも整えるということは必要だというふうに思っております。やはりきちんと申出ができるような環境を整えるということは大切だというふうに思っております。  事業場におきましても、過重労働対策メンタルヘルス対策を衛生委員会の審議事項に追加をして、そこで労使共々十分留意をしながら審議をしてもらう、あるいは、産業医がいる場合には、産業医面接指導を受けさせる必要があると判断した者に対して申出を勧奨することができるというようなことを明示するというふうなことを考えております。そのほか、事業場において確実に労働者が申し出ることができるように、労働者が時間外労働時間数を確認できる仕組みを整備するとか、あるいは申出をする様式でありますとか、申出窓口を設定するとか、そういう申出手続を事業場に整備をさせるとか、あるいは事業場内における面接指導実施方法、具体的な実施方法を周知をするというようなことについて事業主の方に対しても指導をしていきたいというふうに思っております。
  174. 小池晃

    ○小池晃君 いろいろおっしゃいましたけれども労働者が申出を行った場合に心配なのは、不利益取扱いを受けるのではないかということなんですね。不利益取扱いをしないことは明文化されていないんですね。なぜなんですか。
  175. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 面接指導を受ける旨の申出をしたということで労働者が不利益な取扱いを受けるようなことはあってはならないと思います。過労死を防止するためにもそのようなことがあってはならないというふうに思います。  改正法が成立した際には、事業者等に対しまして改正法趣旨周知徹底いたしまして、長時間に及ぶ時間外労働は極力避けるよう指導を行いたいと思っておりますし、労働者に対しましても周知啓発を行うということで、我が国のすべての事業場に対しまして、月百時間を超えると面接指導を受けるのが当然であるという認識をあまねく定着させるように努力をしてまいりたいというふうに思っております。  個々の、個別の事業場に対しましても、衛生委員会等で面接指導の申出を理由として労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないこと、あるいは労働者が申出を行いやすい環境をつくることについて審議するよう指導してまいりたいというふうに思います。
  176. 小池晃

    ○小池晃君 いや、だから、それだけやるのであれば、あってはならないことまでだと言うんだったら、何でそれは禁止すると、不利益取扱いしないと明文化しないのかと私聞いているんです。あってはならないことだったら、しっかり法律にしっかり書き込むというのは当然じゃないですか。
  177. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今申し上げましたように様々な労働者自身あるいは事業者に対しまして、あるいは事業者における事業場の中の環境につきましても申出を、百時間も超えて時間外労働を行った労働者については申出をして面接指導を受ける、面接指導を受けさせるのが当然であるという認識を定着させるということがまずもって大事だというふうに思っております。  そういうような中で不利益取扱いがもし仮にあるようなことがあれば、それはあってはなりませんので、そういったことのないように個々の事業場労使で様々な衛生に関する協議をし、具体的なことについても審議をする、衛生委員会等でもきちんと定めて、事業場の中にそういったことについての言わば考え方が定着するようにしていきたいというふうに思っております。
  178. 小池晃

    ○小池晃君 今の説明では納得できません。  百時間超えないと面接指導しないという基準も、本人の申出が必要だという基準も、これは過労死を増やすことすらあれ減らすことにはならないというふうに思いますし、不利益取扱いしないという当然のことすら法文化されておりません。本人の申出という要件は撤回すべきであるというふうに思いますし、この問題はあくまで客観的に判断できる基準を明確にしなければ義務付けの意味はないというふうに思います。  引き続いて、現行の過労死防止通達では、月四十五時間を超える時間外労働をさせた場合に、事業主産業医の助言、指導を受けるとなっておりますが、この四十五時間と定めた根拠は何でしょうか。
  179. 青木豊

    政府参考人青木豊君) この四十五時間については、一つには、これ今現在そうでありますけれども、時間外労働については労働基準法の三十六条で労使協定があれば行うことができるわけでありますけれども、そうはいいましても、非常に長時間にわたって時間外労働をするというのは好ましいことではありませんので、一応私どもとしては上限を定めて指導しているところでございます。それが月四十五時間ということで指導しているところでございます。  これは、これと同様でありますが、四十五時間を超えるとやはりそういった脳・心疾患の危険性が高まっていくということから、四十五時間を超えた場合についてもきちんと事業場においてその面接指導を受けられるようにしていくことが望ましいというふうに考えております。
  180. 小池晃

    ○小池晃君 だから、私はこの四十五時間というのが出発点になるべきだと思うんですね。現実には、じゃ、その四十五時間の段階でどれだけの措置が行われているのか。月四十五時間を超える時間外労働の場合の様々な今までの措置の実施率の調査、簡単に報告してください。
  181. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 月四十五時間を超える者について、現在、産業医による助言、指導を受けた事業場割合というのは、平成十五年度の調査によりますと一八・八%ということでございます。
  182. 小池晃

    ○小池晃君 月八十時間を超えた場合の医師面談と両方やった場合が一七・五%あると思うので、要するに四十五時間で何らかのことをやっているのは三六%、四割弱の事業場で極めて不十分なわけですよ。  局長ね、過労死の防止というのであれば、正にこの四十五時間というのが、脳・心疾患発症との関連性強まるということで基準も設けているわけですから、私はここを超えた段階で対応することを義務規定とするというのが当然の措置ではないかと思いますが、いかがですか。
  183. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 月四十五時間を超える時間外労働を行った者についても、先ほど来申し上げておりますように、事業主による面接指導を受けさせる努力義務としてそういう措置の対象となるように勧奨したいというふうに考えております。
  184. 小池晃

    ○小池晃君 何かよく分からないのですけれども努力義務とするよう勧奨するというのは、かみ砕いて言うとどういうことなんですか。
  185. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 月百時間を超えた者につきましては、法律上の義務ということであります。それ以下の者については、一つには、八十時間を超える者について努力義務とするということでありますけれども、もう一つは、事業場内の労働者について基準を個別に設けまして、それで面接をさせるように努力義務を課したいというふうに思っているわけでありますけれども対象としたいというふうに思っておりますが、その際、その基準、個々の事業場で定める基準の中にその四十時間を超えるものについても入れるようにということで勧奨していきたいというふうに考えております。
  186. 小池晃

    ○小池晃君 要するに、分かりやすく言うと、事業主にそうしてくださいとお願いするというだけの話でしょう、四十五時間のところは。イエスかノーかで言ってください。
  187. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 事業主に対しまして勧奨していきたいというふうに考えております。
  188. 小池晃

    ○小池晃君 それは、お願いするだけで何の保証もないんですよ、ここは、四十五時間というのは。  大臣、これ時間外労働、月四十時間を超えて長くなるほど業務と脳・心疾患発症関連性強まると判断されるからこそ、過労死防止通達でも四十五時間以上で医師の助言、指導を必要にしたんですよね。過労死した家族の願いに本当に正面からこたえて、本当に過労死をなくす、あるいは減らす、本気で取り組むのであれば、私はこの四十五時間以上で医師面接指導法律義務付けるというのは原点ではないかと、そこからやるべきではないかというふうに考えますが、大臣、いかがですか。
  189. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) できるだけ一番いい姿に向かって努力をしていく、私どもは絶えずそれをやらなきゃいかぬのだと思います。  そこで、今回の改正では、もう先ほど来何回も申し上げておりますように、まず百時間を超えたら義務付けるということできっちり法律に定めた。これは今まで法律にきっちり定めるということはなかったわけでありますから、前進させた。さらに、努力義務も課す。そして、今局長からも申し上げておりますように、四十五時間を超える時間外労働を行ったものも努力義務としての措置の対象となるように勧奨したい、こうお答えを申し上げておるわけでございますから、一歩一歩近づけていく努力をしておるというふうに御理解いただきたいと存じます。
  190. 小池晃

    ○小池晃君 私は、本当に、過労死した家族抱えた家族から見れば、一歩一歩というけど、何と遅々とした取組なんだというふうに、本当に怒りといら立ちを覚えていらっしゃると思うんです。こういうやり方では本当に過労死なくすということにはならないというふうに思うんです。  ちょっと、更に今日突っ込んで、何でこんな事態になっているのか。そもそも労基法三十二条というのは週四十時間労働と決めているわけですよ。で、時間外労働は三六協定、年間三百六十時間で厚労大臣告示ですね、これは。この範囲で労使協定を結べば残業できるという例外規定になっている。私は三百六十時間も長くて、残業時間の上限百二十時間にすべきだということを我が党はこの間提案をしてきておりますが、少なくとも三百六十時間守れば、残業は月平均三十時間なはずなんです。ところが、はるかに超える残業時間で過労死が発生している。  なぜかといえば、この例外規定である三百六十時間の上に特別の事情が生じた場合に限りということで、特別条項付き協定を結べば三百六十時間を超えて更に時間外労働ができる仕組みになっているわけですね。  局長、お聞きしますが、この特別条項付き協定では三百六十時間を超えてどこまで働かせることができるとなっているんですか。限度が設けられているのかいないのか、それはなぜかをお示しください。
  191. 青木豊

    政府参考人青木豊君) これ、今お話しになりました特別条項でございます。これは、労使当事者間で手続を定め、その手続を経て限度時間を超える一定の時間まで延長することができるというふうにされておりますので、上限時間については労使の自主的な協議にゆだねられているというものでございます。
  192. 小池晃

    ○小池晃君 結局、労使合意すれば何時間働かせてもいいということになるわけですね、これ。これ、実際に厚労省資料を見ると、一千時間を超えているところが〇・四%ですが存在しています。正に青天井ですよね。  更にお聞きしたいんですが、直近の調査でこの特別条項付き協定を結んでいる事業場事業場の規模別に、百人未満、三百人未満、三百人以上で三百六十時間以上の協定を結んでいるところが何%あるか、お示しください。
  193. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 平成十四年度に厚生労働省実施をいたしました労働時間等総合実態調査でございますが、これでよりますと、特別条項付きの協定を締結している事業場は全体の一四・六%でございます。事業規模別の割合を見ると、三十一人から百人が二五・〇%、百一人から三百人までが三五・九%、三百一人以上が五三・八%となっております。
  194. 小池晃

    ○小池晃君 正に大きい企業ほど特別条項付き協定を結ぶ率が増えるわけなんですね。三百一人以上ではこれ半分以上ですから、例外でも何でもない。  局長、こうした実態を少しでも改善するということで通達出されたと思うんですが、通達出された理由とその後の状況を簡潔に御説明願いたいと思います。
  195. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 平成十五年に、この上限特別条項が入っている告示の改正をいたしました。特別条項付き協定が臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行うことが予想される場合があるために設けられたにもかかわらず、恒常的に時間外労働が行われている事業場がございました。そういったことからこういった改正を行いまして、特別の事情を、特別条項付き協定が必要となる特別の事情というものを臨時的なものに限るということを明確にする通達を発出いたしたものでございます。
  196. 小池晃

    ○小池晃君 その後の実態どうかというのはちょっとお答えなかったんですが、まあ、今調査中だというふうに一応事前にはお聞きをしているんですね、結果出てないと。  私、現在どうなっているか幾つかの大企業で調べてみました。驚くべき結果なんですね。これはその通達出た後の協定ですよ。出た後結ばれた協定で、石川島播磨重工業、八百時間、スズキ自動車が五百四十時間、JFEの京浜製鉄所は八百四十時間、新日鉄の八幡製鉄所は七百五十時間、マツダは八百七十四時間、三菱電機伊丹が七百二十時間。これ、一か月協定で見ますと、石川島播磨が二百時間、JFE京浜が百時間、新日鉄八幡が八十時間、マツダが九十二時間、三菱電機伊丹が八十時間。正に世界的に有名な大企業が過労死の認定基準を超えて働かせるような協定を結んでいる。石川島播磨に至っては、月の時間外労働二百時間。一日残業十時間ということですからね。この基準は、もう驚くべき延長ができる仕組みになっているんですよ。  石川島播磨の職場では、十四年度、原因別疾病休業の四七%、これはメンタルヘルスであります。ある技術系の労働者は、もう夜眠れない、家族から命危ないからもう会社辞めてもいいと言われているという声も聞きました。ある家族は、娘はいつも深夜に帰って、最終に間に合わない日もあると、半病人のようだ、伴侶を見付ける時間もないと、こう言っているんですね。  大臣、これ是正の通達、告示の改正した後でも、こういうちょっと本当に異常とも言えるような、例外と言うけれども、こういう特別協定が結ばれている。こういう時間外労働がまかり通っている現実を、大臣、これ率直に、大臣、人間として、政治家としてどう思われるか、私、大臣、ちょっとこれは政治家として聞いているんだから、いいですよ、大臣、ちょっと答えていただきたい。ちょっと率直にどう思うか是非お答えいただきたい。
  197. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今局長からもお答えいたしておりますように、この特別条項に基づく時間外労働が行われるというのは臨時的な場合に限られることと、これをいたしております。  そしてまた、その通達で臨時的なものとは、一時的又は突発的に時間外労働を行わせる必要があるものであり、全体として一年の半分を超えないことが見込まれるものであって、具体的な事由を挙げず、単に業務の都合上必要なとき、又は業務上やむを得ないときと定める等、恒常的な長時間労働を招くおそれがあるもの等については臨時的なものに該当しないものであることということを明確に述べておるわけでございますから、そうなされておるというふうに理解をいたしておりますし、また、その周知に徹底してまいらなきゃならないというふうに考えておるところでございます。
  198. 小池晃

    ○小池晃君 いや、現状はそうなっていないんですよ。  私、持っている資料では、ある事業場のある企業、大企業ですが、その資料の中には、この特別条項付協定のことをエスケープ条項って書いてあるんですよ。要するに、特別な事情に限るっていうけれども、現場では正にエスケープ、残業やり放題のための抜け道条項としてまかり通っているという実態があるんです。実態なんですよ、もう否定のしようのない。実際に過労死の認定基準をはるかに超えるような時間外労働の協定が結ばれている。私は、こういうことを認めないというのが本当に第一歩ではないかというふうに思うんです。  私は、その特別条項付きの協定については、災害あるいは事故とか通常予測できない場合のみに限る。あるいは生産調整のためと、こういう理由は認めないようにしないと、どんどんどんどん野放しになると思うんです。理由が不確かな協定はこれ受理しないという厳しい対応が必要だというふうに思うんですね。  大臣、抜け道つくらないように厚労省は責任ある対応をしていただきたいというふうに思いますが、大臣、いかがですか。
  199. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 私ども通達で述べましたことは、述べておりますことは、今も読ませていただいたとおりでございます。したがいまして、この通達、厳守してもらわなきゃいけないわけでございまして、今お話しのようなことがあってはならない、まさしくあってはならないと考えておりますので、厳しく指導をしてまいります。
  200. 小池晃

    ○小池晃君 是非、私が指摘した事業場については調査をしていただきたいというふうに思いますが、局長、約束していただけますか。
  201. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 必要に応じ、調査なり指導なりをしてまいります。
  202. 小池晃

    ○小池晃君 改めて、本当に過労死なくすために、過労死基準のところで縛りを掛ける以前の問題として、抜本対策として労働基準法を改正して時間外労働の上限規制に踏み切るべきだということを重ねて主張をしたいというふうに思います。  引き続き、労働安全衛生上に重要な問題でありますけれども、アスベストの対策についてお聞きをしたいというふうに思うんです。  健康管理手帳が非常に重要な役割を果たすというふうに思うんです。これがあれば年二回無料で健診を受けたり健康管理が行われる。ところが、手帳を保持している人は、昨年新規に交付を受けた人で九十二名、トータルで五百九十二名にとどまっております。中皮腫だけを見ても、亡くなった方は昨年だけで九百五十三名、九五年以来七千名にもなるのに、余りにも手帳保持者は少な過ぎるというふうに思うんです。  大臣にお聞きしたいんですが、七月に通達出されて、今年は手帳保持者以外も健診を受けてもらうということになったと思うんですが、これアスベスト発病まで期間長いわけですから、今回の健診だけでは私は十分とは言えないというふうに思います。そこをどう考えるのか。恒久的に対応する必要があると思いますが、その点はいかがですか。
  203. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 石綿作業に従事をしていてその後退職した者の継続的な健康管理のために健康管理手帳制度を設けて、一定の要件を満たした者は手帳を交付し、毎年健診を受けられる仕組みとしておるところでございます。  また、厚生労働省では、今般の状況を受けまして、石綿を取り扱う作業に従事した者に対する健康管理として、在籍中の労働者はもとよりでありますけれども、元従業員に対しても健康診断実施するよう事業者に対して要請を行っておるところでございます。  こうしたこととともに、廃業等で事業場が存在しなくなった者等も考えられますので、平成十八年度予算要求におきましては、これらの者を対象とした無料の健康診断実施する経費を計上しておりまして、石綿作業に従事した者がすき間なく健診を受けられる対策を講じるようにいたしております。
  204. 小池晃

    ○小池晃君 いや、それは今やっていることで承知しているんですが、要するに一年だけじゃ駄目なんじゃないですかと、今後のことをどうお考えなんですかと。来年の健診の問題であるとか、あるいは手帳の交付要件の問題等、やはり恒久的な対策が必要ではないかというふうに考えておりますが、大臣、いかがですか。
  205. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今申し上げたのは現在やっておることでございますが、最後のところで申し上げましたように、石綿作業に従事した人がすき間なく健診を受けられるような対策を講じるということは、何も今後はやらないということではございませんで、今後とも引き続きそのことは当然私どもやらなきゃならないというふうに考えております。
  206. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ちょっと局長、特に実務的な問題ですから、局長答えてください。
  207. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今、今後の考え方については、大臣がおっしゃったとおりだというふうに思いますけれども、この十八年度の予算に関して申し上げれば、この健康管理手帳の支給要件については、やっぱりその在り方も含めて見直さなくちゃいけないということで、言わばそれまでの緊急避難的措置として今年度やってみようということであります。  したがって、この要件の見直しがどのタイミングでいろんな実情を把握した上でできるかにもよりますけれども、それによってそういったことを踏まえて新しいいろいろなやり方というのを検討していく必要があるだろうというふうに思っております。
  208. 小池晃

    ○小池晃君 その要件の見直しに当たって、例えば有機溶剤の被曝、ベンジジンは三か月以上、クロロメチル、ベンゾトリクロリド、舌かみそうですけれども、これ三年以上作業に従事したことで交付されるわけです。ところが、アスベストはレントゲン上の病的所見がある場合だけ交付するというふうになっているわけですね。  その交付要件の考え方として、アスベストというのは影響出てくるまで時間も長いわけですから、病的所見が現れていない段階で見逃されるとその後重大なことになる危険があるわけで、私は、有機溶剤は従事していたというだけで交付しているわけですから、やはりアスベストを使う仕事に従事していたことというのを要件にするというのは一つの見直しの考え方としてあり得るのではないかと思っているんですが、大臣、いかがですか。
  209. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 基本的なところは、私どもはもうすき間なく健診を受けていただけるようにするというふうに考えておりまして、そのようにいたしたいと思っております。  具体的には、したがって、先ほど局長がお答え申し上げておりますように、健康管理手帳の交付要件の見直しも含めて、石綿作業従事者の健康管理の在り方については早急に検討してまいるつもりでございますから、その中でしっかり検討させていただきます。
  210. 小池晃

    ○小池晃君 局長に、ちょっとそれは一つ考え方として、こういう従事歴だけということを基準にしていくというのも一つ考え方としてはあり得るかどうか、ちょっとお答えいただければと思うんですが。
  211. 青木豊

    政府参考人青木豊君) これについては、今大臣からもお話がございましたように、今その要件というのを見直しをするということも含めまして研究をすると、研究班は専門家の研究家の研究班を立ち上げてお願いをしております。その結果を踏まえて検討したいというふうに思っております。
  212. 小池晃

    ○小池晃君 それから、その健康管理手帳の保持者、これから増える、増やす方向でやられるんだろうと思うんです。その場合、指定病院で健診を受けるわけですが、数が現状では非常に少ないと。既に治療の実績がかなりあるような医療機関から指定病院にしてほしいという要望も上がっているんですね。  大臣、これ考え方としてで結構なんですが、実績のある医療機関であれば、やはり指定病院になってもらうように厚生労働省としても働き掛けしていく方向でやるべきだというふうに思うんですが、その点いかがでしょうか。
  213. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 健康管理手帳所持者の受診可能な医療機関については、これまでも健康管理手帳所持者の利便性に配慮した医療機関を必要に応じて選定するよう各労働局に指示してきたところでございます。  今後、石綿については、健康管理手帳の交付数が、今先生も言われましたけれども、増えることが当然予想されますことから、必要に応じて指定医療機関を増やすなど弾力的に対応してまいります。要するに、弾力的に対応しますということをお答え申し上げます。
  214. 小池晃

    ○小池晃君 これは、退職者の健康管理というのはアスベスト被害を救済する上でも非常に重要な役割を果たすので、やはり使う仕事に従事していた方すべて健康管理手帳の対象にする、それ以外の周辺住民の救済などももちろんですが、そういう方向で改善するように求めたいというふうに思います。  次に、労災保険法に係る労災申請についてお聞きをしたいと思うんですが、厚労省はアスベストによる疾病の労災請求の事務処理の迅速化を進める通達を出しました。  そもそも、行政手続法では請求から決定までは六か月というふうになっておりますが、局長にお聞きしたいんですが、昨年度に出されたアスベストの労災申請の受理日から給付日までの平均処理期間というのは何か月になるんでしょうか。
  215. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 石綿による肺がん、中皮腫の事案について、平成十六年度における状況でございますけれども、受付から決定までの平均の処理日数は集計をしておりません。  なお、この十七年度において既に決定を行った石綿による肺がんと中皮腫の事案の仮集計においては、平均の処理期間はおおむね六か月ということになっております。
  216. 小池晃

    ○小池晃君 いや、集計しておりませんということは、要するに、アスベストによる労災保険の請求日というのは、受理日等ですね、厚労省としては調査していないということなんですか。
  217. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 標準処理期間を私ども定めておりますのが、療養給付とか休業補償給付とかということで六か月というふうに標準処理期間を定めておるんですけれども、石綿による肺がん及び中皮腫についてだけ取り上げて集計をしていないということで、十六年度は分からないと。十七年度だけが既にあるものについて仮に今集計をしてみたところ、六か月ということだということでございます。
  218. 小池晃

    ○小池晃君 要するに、そういうのを調べてないんですよね、いろいろお聞きすると。過労死や過労自殺については一応これは受理日と給付日ということでデータを取っているようなんですが、アスベストについてはデータない。平成十七年度については、これだけ問題になったので、まあちょっと言葉悪いですけれども、慌てて調べているということのようなんですが、法律上六か月を目安にするというふうになっているのに実際にはいつどれだけ申請があったのかすら集計していないというのは、私は本当に怠慢だというふうに言わざるを得ないと思うんです。これでは幾ら迅速化の通達を出しても、元々何日だったのか分からないんですから、迅速化して何日になったのか分からないんですよ。これ本当にまずいと思うんですね。やっぱり実態をまともにつかんでいなかった。本気で解決する姿勢があるのかということを疑わざるを得ないというふうに思うんですが。  大臣、私、こういう事態になっているわけですから、現在労災申請が出されている全例について、本当に迅速化しているのかどうか、六か月で処理されているのかどうか、全部調べる責任あると思うんです、私、迅速化の通達出した以上。申請時期は一体いつだったのか、六か月たっても認められていないものがどれだけあるのか、調査して報告していただきたいというふうに思うんですが、この点、大臣いかがですか。
  219. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 青木局長。その後で大臣に。
  220. 青木豊

    政府参考人青木豊君) ちょっと、十七年度の件数については仮に集計をいたしましたのでやりましたけれども、できるだけさかのぼってできるものについては集計をしてみたいというふうに思います。
  221. 小池晃

    ○小池晃君 これ実態をいろいろと紹介したいと思うんですが、東京土建一般労働組合のまとめでは、東京土建にかかわった昨年度の、昨年度のですよ、昨年度の申請数が十七あるんです。ところが、処理が終わっていないのが五件もあるというんですね。昨年度ですから、要するに、もう最後に、例えば今年の三月に申請したとしても、もう六か月たっているわけです。それが、処理が終わっていないのが五件もあるんですね。既に一年以上経過した案件もあるというんですね。  迅速化しますと通達出しながら、昨年度に申請したのに未処理の案件が今も残っている、こういう実態があることを局長はお認めになりますか。
  222. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 先ほど仮に集計した数字お話ししましたけれども、それは平均でございます。もちろん短いものもあります。肺がん、中皮腫全体でいえば最短一か月ぐらいでやっているものございますが、長いものは六か月よりかなり掛かっているというものもございますので、委員がおっしゃったように、今まだ処理をしていないものについてさかのぼっていく場合にはそのようなものもあろうかと思います。
  223. 小池晃

    ○小池晃君 それでは、労災認定迅速化するといっても、実際は平均でやるんだと、長くなるものは置いておいていいんだというのでは私はまずいというふうに思うんです。実効性のある通達にならないと思うんですね、そういう姿勢では。本当に迅速化するためには、私はやはり一つは体制の強化もこれどうしても必要だと、現場のお話聞くと思うんですね。そこはしっかりやる必要があるのと、やっぱり労災認定基準の緩和だというふうに思うんです。  通達では、これ暴露歴を証明するために厚生年金保険等の記録を活用するというふうになっているんですが、これ実際お聞きをすると、これ会社勤めの人はそれでもいいんですが、国民年金の方は対象になってこないわけですね。やはり建築現場なんかでは、特に一人親方であるとかあるいは職場転々するとかいうケースが多くて、やはり十年以上の暴露歴の証明が本当大変だと。労災に特別加入、一人親方でしていても、やっぱり建設業転々としている人はなかなか暴露が証明できないというお話もお聞きしています。  私は七月の当委員会で、遺族が製造中止になったパイプのカタログをどこからか一生懸命探してきて、それを見せることでようやく労災認定されたという事例を紹介したんですけれども、今回の迅速化通達では、厚生年金の問題はありますが、国民年金の加入者に対して手だてが講じられていないというふうに私は思うんですね。  大臣、やっぱり国民年金の加入者を救済するためにも何らかの手だてというのを考える必要があるのではないかというふうに思っているんですが、その点はいかがですか。
  224. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今委員お話しになりましたように、厚生年金保険の被保険者であった者につきましては、その被保険者記録から石綿暴露作業に従事したことの事実認定ができることとしたわけであります。しかし、お話しになりましたように、国民年金保険に加入している労働者等の職歴につきましては、これは国民年金保険の記録からでは会社が特定できないというようなこともございますし、作業歴がなかなか把握し難いということでございます。したがって、私どもとしては、事業主やその同僚関係者等から聞き取りを行うことにより事実関係を確認するということにいたしております。  お話ありましたように、転々労働者の場合というのは非常に困難を伴うわけであります。あるいは事業場廃止労働者についてもなかなか石綿暴露従事歴の把握については難しいわけでありますが、監督署の職権等を行使しながら関係者をたどって事業主あるいは同僚労働者等を探し当てて聞き取り等を行って、事実関係の把握に努めているところでございます。
  225. 小池晃

    ○小池晃君 私は是非ちょっとそれだけじゃ不十分だと思いますので対策考えてほしいと。しかも、十年というこの期間の問題がやっぱり決定的に大きいというふうに思うんで、そのことをちょっとまた後で聞きたいんですが、その十年というのが問題になってくるのは肺がんの場合なんですね。  私は、アスベストのやっぱり中皮腫については大臣もかなり踏み込んで、疑わしきは救済するというふうにしていただいたのは、それは歓迎をしたいと思うんですが、肺がんの問題がやはり重大だというふうに思うんです。実際はアスベスト肺がんがかなり見逃されている可能性がある。  例えば、海老原勇医師の調査によれば、建設作業者の肺がん、七十七人をこの海老原先生検討した。そうしたらば、そのうち七割を超える五十七名がアスベスト肺がんの特徴を持っていたというんですね。海老原先生というのは労働衛生、アスベストの問題を専門にやってきた先生ですから、そういう目で見たら五十七名そうだった。しかし、この五十七人全員がアスベスト肺がんだと診断されたことはなかったと。職歴も聞かれたことなかったと。たばこをどれだけ吸っていたかしか聞かれたことがなかったというんですね。現場ではきちっと診断されず、アスベスト肺がんが見逃されているという可能性が非常に高い。  それから、一方で、ちょっとこれも傍証のようなことになるかと思いますが、アスベストの労災認定に一生懸命取り組んでいる労働組合の取組の状況を聞きました、神奈川県建設労働組合連合会の取組。ここでは、八九年以降、今年七月までにがんで労災認定された二十七人のうち、アスベスト肺がん二十名、中皮腫は七名なんですね。中皮腫よりアスベストの方が多いんですよ。それから、東京土建一般労働組合では、肺がん十七名、中皮腫五名、中皮腫の約三倍の肺がんが見付けられている。中皮腫の認定数より肺がんの認定数がはるかに多いんです。ところが、厚労省労災補償状況を見ますと、肺がん五十八名に対して中皮腫百二十八名。オールジャパンでいうと中皮腫が圧倒的に多い。しかし、一生懸命このアスベストの被害を掘り起こしているような労働組合から上がっている数字は逆に肺がんの方が多いという実態がある。  これだけでどうかというふうに、科学的にじゃ根拠あるのかと言われると、例えばほかにも、ILOのデータでは、実際はアスベストの被害というのは中皮腫よりも肺がんの方が多いのではないかという、ILOはそういう統計も出しておりますし、いろんな研究結果でも、今後の推計として、肺がんの死亡者数は中皮腫の二倍になるのではないかというような推計も出されているわけです。  私は、こういう一連の状況を見ると、果たして、アスベスト起因の肺がんで適切な労災認定がなされていないものが埋もれている可能性あるんじゃないだろうか。そういう可能性も念頭に置いて、大臣は中皮腫の問題については踏み込んだ対策をおっしゃられているんですが、私はアスベストの対策をする上で、この埋もれているアスベスト肺がんのことをしっかり念頭に置いて対策考えていくことが本当に今大事になっているんではないかというふうに思うんですが、大臣の認識をお伺いしたいと思います。
  226. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 私も認識はそのとおりに持っております。  ただ、肺がんが難しいのは、途中で先生もお述べになっておられるように、アスベストが原因なのか、あるいはたばこが原因なのか、いろんなその他の原因考えられるものですから、そこのところをどう判断するかというのは非常に難しい。その問題をどう解決するかだと思っておりまして、これは新法を作る際にもこの辺のところをよく検討しなきゃいけないと今考えているところでございまして、検討させていただきたいというふうに考えております。
  227. 小池晃

    ○小池晃君 この点で、たばこの問題もあるんですが、それだけじゃなくて、私、肺がんのやっぱり労災認定基準の見直しがどうしても必要なのではないかというふうに思っているんです。  やはり、十年という暴露期間を証明するというのは本当に私は大変なことになっているというふうに思いますので、やはり建設業に従事していたということ、それから、アスベストによる肺がんというのはやはり臨床的な所見があるわけですね。例えば、胸膜肥厚斑があるというような所見があるわけですから、やはり建設業に従事していたということが証明でき、アスベストによる肺がんだということが医学的に証明できれば、十年という暴露期間を問わずに労災認定していくという、そういう考え方でいくべきではないかと、前回もそういう主張をしたかと思うんですが、改めてお伺いしたいと思います。
  228. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 大臣からもお話ありましたように、石綿による肺がんについての判断というのは非常に難しいわけでございます。そういうことで、石綿暴露従事歴を十年以上としているわけですけれども、これは昭和五十三年に認定基準を策定したわけでありますけれども、その際に専門家会議で議論をしていただいて、その報告において石綿暴露期間がおおむね十年を超える労働者発症したものが石綿による肺がんが多いとされたことによるものでございます。平成十五年に認定基準を改正した際にもこのことに関して検討されまして、新たな医学的知見が得られていないということでございました。  そういうことで、労災認定基準の改正につきましては、基準を改正すべき医学的知見が得られた場合に行うというものでございますが、石綿による肺がんについては、まだ現時点においてそのような知見は得られていないというふうに理解をいたしております。
  229. 小池晃

    ○小池晃君 私は、疫学的に十年が発症の転機になるかどうかという問題と、十年間の暴露歴を被害者に証明させるという問題は、これは別問題だと思うんです。そこのところは柔軟に考えるべきだと思うんですよ。  大臣、やっぱりどんどん病状は悪化しているし、本当に、言わばある意味じゃ肺がんというのは頑張ればこれ助けることができる。中皮腫というのはそういう意味では非常に過酷な病気ですが、肺がんの場合は治療可能なケースもたくさんあるわけですから、やっぱりこれ救済するということを全力でやるべきだと。中皮腫ももちろんですよ、でも肺がんについて考えるべきだと。やっぱり肺がんの労災認定基準、見直しの対象に私は当然なるというふうに思うんですが、大臣の基本的な認識を是非お聞かせ願いたいと思います。
  230. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 先ほど来申し上げておりますように、私どもはやはりすき間なく対策を取らなきゃいけない、すき間をつくっちゃいけないと思っておりまして、それが基本的な今後の姿勢でございます。  その中で、具体的にどの問題をどうするかということになるわけでございますけれども、確かに肺がんの問題というのは難しいところはありますけれども、そこを乗り越えてできるだけきっちりした救済をしなきゃいけない。今後、いろんな皆さんの御意見、専門家の皆さんの今御意見も伺っておりますから、よくお聞きした上で、私ども対応をしっかりしたものにさせていただきたいと思っております。
  231. 小池晃

    ○小池晃君 最後に、アスベスト問題に関する厚労省の検証の内容についてちょっとお聞きしたいんですが、厚労省労災補償状況という報告書の中で、労災認定件数は一九七九年度以前、肺がんで十八名というふうになっているんですが、初めて労災認定されたのはこれはいつのケースになるんでしょうか。
  232. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 石綿による肺がんについて最初の労災認定事例は、厚生労働省において調査した限りでは昭和四十八年、一九七三年ということでございます。
  233. 小池晃

    ○小池晃君 独立行政法人産業医学総合研究所の森永謙二さんが今年出された「職業性石綿ばく露と石綿関連疾患」という本があります。この中で森永氏は、石綿による肺がんは一九六〇年ごろ初めて労災認定されたと表まで示して書かれているんですね。この本は八月の厚労省の検証でも引用されている本なんですが、厚労省報告書でも今の答弁でも最初の労災認定は一九七三年だと。森永先生は六〇年代だと言っていますが、どちらが正しいんでしょうか。
  234. 青木豊

    政府参考人青木豊君) たしか記憶では、石綿による原発性肺がんと合併症による肺がんの違いではなかったかというふうに記憶いたしております。
  235. 小池晃

    ○小池晃君 そうすると、今回の一九七三年というのはどういうことになるわけですか。原発性、石綿による原発性の肺がんだということになるわけですか。分かりました。ちょっとそこが違ったので、検証の内容についてお伺いしました。  最後、一言だけ。  先ほどちょっと谷議員の質問の中で被爆者援護法の問題がありまして、私どもも法案を提出をさせていただいた関係があって、大臣は手帳の発行について実務上の問題だというふうに、問題があるというふうにおっしゃられて、もちろん法律上の問題があるんですけれども、実務上の問題があるということで、頭から否定されるようなことはなされなかったのかなと、私は大臣の答弁をお聞きしていてそう思ったんですね。  私は、しかし、この手帳の問題をクリアしなければ、手当だけでは救済されない人がたくさん韓国なんかに残されているという実態があることはこれは事実としてあるわけですから、やはりその手帳の取得についても解決すべき問題だという認識はお持ちなのかどうかということだけ最後にちょっとお伺いしたいというふうに思います。
  236. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) いろいろ被爆者の皆さんをめぐる問題もございます。そうした課題一つであるというふうには認識をいたしております。
  237. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  前回、在日外国人の無年金問題についてお聞きをしたので、一点だけ再度確認させていただきます。  在日外国人の無年金問題は、附則第二条で検討というふうになっております。前回、検討いたしますという答弁だったので、もう一つ具体的にどうされるのかお聞きしたいと思います。  この問題は、在日韓国人の法的地位及び待遇に関する日韓局長協議において、これまでに既に十一回にわたって協議をされております。昨年の第十三回協議には厚生労働省からも出席をしております。いつまで放置をしておくのか。しかし、先週二十日の厚生労働委員会での答弁では、法案の施行から既に半年たっているにもかかわらず、何ら方向性や期限が決められていないことが明らかとなりました。  この問題の解決をいつまで引き延ばすつもりなのか、今後の対応についていつまでにどのような形で検討を進めるのか、具体的にお示しください。
  238. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今お話しいただきましたように、附則におきまして「今後検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする。」と、こういうふうに述べられておるわけでございます。  したがいまして、今後検討すべきものであるというふうに私どもも当然考えておるわけでございますけれども、今検討した結果が直ちに、ここで述べられておりますように、「必要があると認められるとき」というそのところに至っておりませんので、引き続き検討させていただくということを述べておるところでございます。
  239. 福島みずほ

    福島みずほ君 もう少し、検討というふうに附則に、第二条になっていて、これは具体的に日韓でなっている。もう少し踏み込んで、いつまでにどのようなというところまでもう少し踏み込んで是非答弁をお願いします。
  240. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 今そこまで具体的な答えを持っておればお答えできるんですが、正直に申し上げてそういう具体的な答えに至っておりませんので、再三申し上げておりますことの繰り返しになって申し訳ないんですが、引き続き検討をさせていただきたいと存じます。
  241. 福島みずほ

    福島みずほ君 いや、私は是非尾辻大臣の下でこれやはり促進していただきたいと心から思っています、十一回にわたって協議をされ、かつ検討となっているわけですから。どうでしょうか。
  242. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) とにかく、検討しますということはお約束を申し上げておるところでございますから、私に与えられた条件の中で精一杯努力はさせていただきます。
  243. 福島みずほ

    福島みずほ君 前回から前進していないので、やっぱりもう一回食い下がらしてください。  これ、法律検討と書いてあるんですよ。そして、十一回日韓の協議事項になっている。検討しますだったら、そんなのもう附則に書いてあるよと、そんなの見なくたって附則に書いてあるよと、検討しますという答弁では駄目だということを言っているんです。どう具体的に厚生労働省はこの期間やってきたのか。
  244. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 余り理屈を言うことでもないのかもしれませんけれども、附則に、その検討の前に何と書いてあるかといいますと、「障害者の福祉に関する施策との整合性等に十分留意しつつ、」ということも書いてございますので、私ども障害者の福祉に関する正に施策をお預かりする立場としては整合性等も配慮をしなきゃ、留意しなきゃいけないというようなことでございますと、どうしても検討の時間もいただきたいというふうには考えるわけでございます。
  245. 福島みずほ

    福島みずほ君 検討ということが続くのでは駄目ですので、今後もしつこく質問をさせていただきますので、厚生労働省内部で是非具体的にいつまでどうするのかやっていただくよう強く本日改めて要請をいたします。  次に、本案に入る前に、拘置所における出産問題についてちょっとお聞きをいたします。  東京新聞に「出産直前まで手錠」という記事が出ました。これは妊娠、被拘禁者、被疑者、被告人の段階で妊娠していて、出産直前まで手錠をされていた。諸外国では出産のときに手錠をする例などはありません。直前には外したようですが、非常にやはり人道上問題がある。産婦人科と相談しましたら、やはりそれは拷問に近いんじゃないかという意見も聞かれました。  これについて、まず法務省、これ手錠を掛けていた、これは極めて問題だと考えますが、いかがですか。
  246. 山下進

    政府参考人(山下進君) 行刑施設といたしましては、被告人の勾留場所に指定されました以上、その逃亡を防止し罪証隠滅防止を図る、同時に身柄の確保を図るということは極めて重大な責務だというふうに考えているところでございまして、ただ、行刑施設の外へ出ますと大変物的な条件が整いませんので、どうしても身柄の確保を確実にするためには手錠を使用しなければならないというのを私ども原則にしているところでございます。  ただ、医療上の配慮とかあるいは人道上の配慮を要する場面もあるかとは思いますので、そういう場合は手錠を片手にするとか、あるいはケースによっては手錠をしない、使用しないということもあり得るとは思いますが、先ほど申し上げたように原則として使用するということで、妊婦につきましても、もちろん医療上の配慮をしなきゃならない場面は別としまして、病室等においては手錠を使用させていただいているところでございます。
  247. 福島みずほ

    福島みずほ君 アムネスティ・インターナショナルによりますと、分娩時に手錠をした事件が国際法上虐待に当たるとされた国もあります。  今正に出産するというときに逃亡する人って余り考えられない。窓がなければドアのところに逃亡防止で刑務官が立っていれば逃亡をしないわけです。出産直前までこれ手錠をしている、これは極めて問題です。産婦人科に聞いても、私も実は出産の経験があるのですが、寝返りを打ったり歩き回ったり腰をさすってもらったり、耐えて子供を産むわけで、そのときにやっぱり手錠をしているというのは精神的にも肉体的にも非常にハンディだというふうに思います。  法務省はこのような運用を是非改めていただきたいと思いますが、いかがですか。
  248. 山下進

    政府参考人(山下進君) 分娩の場面で手錠を使用しているということはもちろんございません。ただ、病室においては、窓から飛び降りるとか、あるいは病室には第三者の出入りも自由でございますので、外部の者の手助けによる逃走ということも考えられなくはない。そういうこととの、リスクと医療上あるいは人道上の配慮とのバランスの上で具体的な状況を踏まえながら適切な措置をとっていきたいと、そういうふうに考えているところでございます。
  249. 福島みずほ

    福島みずほ君 いや、是非考え直してください。  つまり、陣痛が起きていたり病院で実際出産ということで入院しているときに、やっぱり手錠が掛けられると身体上もハンディですし、それからなかなか本当に身動きするのも大変です。これはやっぱり異常な事態で、窓がないところもあるわけですし、私は、刑務官が四人付き添っているということですから、ドアのところにいればいいわけです。妊婦で今生まれるという瞬間に逃げ出すということはやっぱり余り実際的には考えられないので、逃亡防止について配慮をすれば、この手錠をするというのは是非やめていただきたい。いかがですか。
  250. 山下進

    政府参考人(山下進君) 正に生まれるときに手錠をしているということはございません。  それから、手錠を使用する場合も、通常ですと両手を拘束するわけですが、病室等においては片方の手を拘束して、それを職員が逃げないようにつながれている縄の端を持つというような態勢で逃亡防止を図っているところでございまして、個別具体的な事情に応じながら適切な対応をするほかないというふうに考えております。
  251. 福島みずほ

    福島みずほ君 この人は出産の瞬間は外してもらっていますが、直前まで手錠を掛けられています。それから、家族は、その手錠のひもがベッドのロープにつながれていたと。私自身は、やはりかなり入院をして出産を控えている状況で苦しんでいるときに手錠があるというのは問題だと考えますので、法務省はこの点を是非、手錠で縛られる状態というのはもうやめていただきたいと、そういうことを強く今日要望いたします。  それで、このケースの場合、弁護士それから記者の人などに話を聞きましたら、陣痛促進剤、つまりゴールデンウイークが近かったということもありますが、出産の一か月前に病院から計画出産、陣痛促進剤の使用について合意を求められたという事実がありますが、それは事実でしょうか。
  252. 山下進

    政府参考人(山下進君) 個別具体的な状況、必ずしも正確、詳細にはつかんでおりませんが、お尋ねの事案について、外部で協力をいただいておる専門病院で陣痛促進剤の使用について説明をしたということはあったというふうに承知しております。
  253. 福島みずほ

    福島みずほ君 昨日質問を取りに来られた方は陣痛促進剤の使用について合意を得たというふうに回答されましたが、それでよろしいですね。
  254. 山下進

    政府参考人(山下進君) いろいろ経緯はあったようでございますが、途中において被収容者の方からの同意はあったやに聞いております。ただ、最終的には本人は自然分娩を希望されたということでございます。
  255. 福島みずほ

    福島みずほ君 拘置所は計画出産ということを本人に承諾を取る説明をしている、そういうことでよろしいでしょうか。
  256. 山下進

    政府参考人(山下進君) 外部の病院においても医師がいろいろ説明をされたということでございますが、東京拘置所においても当然、陣痛促進剤の問題等を含めて、それから出産の準備等、もろもろの問題を含めていろいろ説明をしたということでございます。
  257. 福島みずほ

    福島みずほ君 出産をするときに、陣痛促進剤を今使いますがいいですねということを同意を取るなら分かります。問題なのは、出産より前の段階、健診の段階で陣痛促進剤の使用について合意を取っているということです。計画で、この記事によりますと、東京拘置所は、収容中の妊婦に計画出産に応ずるか意向打診することは通常業務であり、問題ないと答えています。  拘置所は、妊婦に対して計画出産をすることを意向打診をするということでよろしいでしょうか。
  258. 山下進

    政府参考人(山下進君) 行刑施設の場合は、外部の病院の協力を得て外部の病院で出産をさせるという扱いをしております。そういうことで、外部の病院の治療の方針等も踏まえながら、場合によってはそういう陣痛促進剤の使用等についてのお話も拘置所としてするということはございます。
  259. 福島みずほ

    福島みずほ君 質問と答えがずれているので改めてお聞きをします。  計画出産に応ずるか意向打診することは通常問題ない、そういうことでよろしいですか。
  260. 山下進

    政府参考人(山下進君) 問題があるとかないとか申し上げる立場ではないのかもしれませんが、部外の専門家の適切な医療判断を踏まえて治療の方針が検討されているときには、それを踏まえた方向で拘置所もいろいろと御説明をさせていただく、あるいは意向確認をするということがあるということでございます。
  261. 福島みずほ

    福島みずほ君 これ、長く余り質問はできないんですが、ちょっと質問と答えがずれているのでお聞きをいたします。  収容中の妊婦に計画出産に応ずるか意向打診をすることが拘置所としてあるんですか。
  262. 山下進

    政府参考人(山下進君) そういう場面はあり得ると思っております。
  263. 福島みずほ

    福島みずほ君 九三年三月の衆院予算委員会で丹羽厚生労働大臣が、医療関係側の都合によって陣痛促進剤を使うことは許されないとの見解を明らかにしています。  厚生労働大臣、改めてお聞きをいたします。  医療機関の都合によって陣痛促進剤を使う、これはあってはならない、この丹羽大臣の答弁は維持されているということでよろしいでしょうか。
  264. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 私どもといたしましては、医療関係者の都合のみによってそうしたものが使用されるということは適切でないと考えております。
  265. 福島みずほ

    福島みずほ君 では、厚生労働大臣にお聞きをいたします。  勾留中の女性に対して、計画出産があり得る、あるいは計画出産について同意を拘置所がもし取っているとすれば、それは問題ではないでしょうか。
  266. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) では、専門家に答えさせます。
  267. 松谷有希雄

    政府参考人松谷有希雄君) 医療におきまして個々の医療現場において提供される医療内容につきましては、専門家としての医師の判断の下で行われるべきものでございまして、その際におきましても、患者が理解し納得して医療を受けられるよう治療方法及びその危険性等について十分な説明がなされるという、こういう関係であることが重要であるというふうに考えております。
  268. 福島みずほ

    福島みずほ君 そういうことを聞いているのではないんです。個々の医療の現場で同意を取る、当たり前です。しかし、少し前の段階で、勾留中の人間に対して計画出産をするのかと意向打診をすることが問題ではないかと。既に切迫流産とかあって促進剤を使うかどうかが問題になっているわけではありません。  大臣、どうでしょうか。私は、切迫したりして陣痛促進剤を使う必要性が生じた場合に使っていいかと聞くのは、それは当然です。しかし、それより前の段階で、拘禁されている人間に計画出産に従う意向があるかどうかということを聞くことは問題であると考えますが、大臣、いかがですか。
  269. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ちょっと、大臣答える前に医政局長
  270. 福島みずほ

    福島みずほ君 いや、いいです。大臣お願いします。
  271. 岸宏一

    委員長岸宏一君) じゃ、ちょっと、尾辻大臣
  272. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 私も、医師でありませんので、そういう意味で専門家でございませんので、どういう状況でどういうことが起こり得るのかということは言えませんけれども医師としての判断として、大きくいろんな状況を判断して医師としてこうした方がいいという、そういう判断はいろんな場面であり得るのかなと思っております。したがって、もう医師医師としての良心に基づいて判断すべきことである、そのことだけを申し上げたいと思います。医師はやっぱり医師としての良心に基づいて判断してほしい、そうあるべきだと。  ただ、自分の都合でそんなことをやっては、これはもう当然のことで、まずいわけでございまして、医師としての判断があるべきというふうに申し上げます。
  273. 福島みずほ

    福島みずほ君 医師の個別の判断ということではなく、拘置所側が収容中の妊婦に計画出産に応ずるかどうかを意向打診する、これは丹羽大臣が医療関係側、これは拘置所側ということも今日は入ると思いますが、で陣痛促進剤を使うことはよくないということに反するのではないか。いかがでしょうか。
  274. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ちょっと答弁の正確を期するために、まず局長から。
  275. 福島みずほ

    福島みずほ君 いや、ごめんなさい、時間がもったいないんで、大臣お願いします。
  276. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 医政局長、答えなさい。
  277. 松谷有希雄

    政府参考人松谷有希雄君) 答弁申し上げます。  その拘置所側というのが医療側に当たるのかどうか、具体的な状況は分かりませんので正確なお答えにはならないかもしれませんけれども、もし医療側であるということで医師と拘置所の間に何がしかの連携ができているという前提の下でお答えを申し上げますと、それは、先ほど申し上げましたように、大きな意味での医療の提供でございますので、きちんとした情報の提供、そして患者さんの納得、同意というものが必要になるというふうに考えております。
  278. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 大臣、何かお答えになりますか。
  279. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 先ほど来申し上げておりますように、私が、今の先生のおっしゃること、それからこちら側とのやり取りを聞いて思いますことは、勾留されておるというそういう状況の下で、またお医者さんはその状況の下で一番いい分娩してもらうにはどうしたらいいかという判断はやっぱりあるんだろうと思いまして、その判断の中であるいはそういう判断をすることもあるのかなとは思いますけれども、ただ基本的に、その都合でということは、これは絶対に私どもはあってはならないということを申し上げておるわけでございまして、そこのところの状況ではないのかなというふうに思っております。
  280. 福島みずほ

    福島みずほ君 私は、これは計画出産というのが、本人が私はいつまでに産みたいという希望があれば別として、そういう意味ではなく、陣痛促進剤を使用することの同意も、計画出産に合うかどうかも、これは拘置所側がそれをやるのが当然、通常業務だというふうに考えている点を問題としているわけです。  つまり、厚生労働省は、病院側の都合で陣痛促進剤などを使うのはよくないと言っているわけで、だとすれば、計画出産の意向打診は当然だと拘置所が言うのは、厚生労働大臣が、病院がその都合で、本人の要請ではなく、計画出産そして陣痛促進剤の使用を本人に同意をさせるというのは問題であるというふうに考えているわけです。いかがでしょうか。
  281. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) ですから、私が申し上げておりますことは、そういうことが、自分たちの都合でそういうふうにやっているということであれば、それは明らかにやってはいけないというふうに考えます。
  282. 福島みずほ

    福島みずほ君 どうもありがとうございます。  なかなか、こういう女性の被疑者、被告人の人ももちろんいるわけですし、妊娠、出産することもあると。それから、被疑者、被告人は特に無罪の推定がありますので、是非、法務省としては、刑務所の改革は進んでおりますが、被拘禁者、とりわけ未決の人間に対する、とりわけ女性の人権の問題、出産の瞬間まで手錠を掛けられるというのは、瞬間の直前まで手錠が掛かっているというのは、やはり肉体的にもとてもハンディだというふうに思います。ある種拷問ではないかと私は考えます。是非、再考してくださるようお願いをいたします。  では次に、今日は労安法の法案の審議です。これはある種労働時間の規制緩和の問題もありますので、次の質問をいたします。総合規制改革会議及び規制改革民間開放推進会議の委員及び専門委員についてです。  優れた識見を持つ者の中から内閣総理大臣選任することとなっておりますが、優れた識見の具体的基準は何でしょうか。
  283. 田中孝文

    政府参考人(田中孝文君) お答えいたします。  規制改革民間開放推進会議の委員については、先生御指摘のとおり、規制改革民間開放推進会議令第二条により、「委員は、優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。」とされております。同会議は、国家行政組織法第八条のいわゆる審議会等に当たるところから、こうした審議会等の共通の選任基準であります審議会等の運営に関する指針に定められております、例えば高齢者の者は原則として委員選任しないでありますとか、一の者が就任できる審議会の委員の総数は原則として最高三とするといった選任基準を踏まえながら、規制改革と民間開放の推進という会議の目的に照らして、最終的にはそれぞれの方々の識見について総理が総合的に判断し任命されたところでございます。  専門委員につきましては、会議の会議令第二条の二に、「専門委員は、当該専門の事項に関し学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。」とされているところであり、選任基準については委員とほぼ同等でございます。  それから、今御言及のありました総合規制改革会議、これは前身組織でございますが、平成十六年三月末で廃止されておりますが、当時におきましても、現在の会議令と同様の委員、専門委員の任命規則が置かれていたところでございます。
  284. 福島みずほ

    福島みずほ君 委員に経営者を選任する理由、及び労働界に属する優れた識見を有する人物を選任しないのはどのような理由でしょうか。
  285. 田中孝文

    政府参考人(田中孝文君) 委員選任に当たりましては、ただいま御説明いたしましたように、個々人の識見について総理が総合的に判断された結果でございまして、現在、その結果が現在の委員の構成になっているものでございます。労働界の方であるかどうかというのの選任基準にしていることはございません。  なお、今、労働界ということの理解でございますが、先生がおっしゃっていることがもし労働組合の役員や上部団体である労働組合連合会等の役職員を指すものであれば、現在の委員、専門委員には該当する者はございませんが、労働問題の専門家という観点からは、現在の八代委員労働経済についての多数の研究成果のある方であり、また労働法分野については小嶌典明大阪大学教授が専門委員として就任されてございます。
  286. 福島みずほ

    福島みずほ君 ここで議論されることが様々な規制緩和やいろんなことの提案となっております。私は、日本は今、サラリーマン、ビジネスマン、会社員が極めて人口比率でいえば多いですし、また非正規雇用の人が女性は半分に一人が非正規雇用となっています。必ずしも労働組合ではなくても、少なくとも働く人たちの代表やいろんな消費者の代表やいろんな人たち、いろんな立場の人が入ってこそ議論ができるというふうに考えます。  あえてお聞きをいたします。規制緩和に対する疑問を有する有識者を選任から除外する理由は何でしょうか。
  287. 田中孝文

    政府参考人(田中孝文君) 規制改革や民間開放を推進するという役割を担うという会議の目的に照らして、その識見について総合的に判断されているものでございまして、今その疑問を呈する有識者を排除するということは行っているところではございません。
  288. 福島みずほ

    福島みずほ君 客観的に排除しているのはなぜですか。
  289. 田中孝文

    政府参考人(田中孝文君) 排除しているわけではなくて、先ほど言いましたように、委員選任につきましては、規制改革や民間開放の推進という役割を担う会議の目的に照らして、その識見について総理が総合的に判断されて任命されているものでございます。
  290. 福島みずほ

    福島みずほ君 規制緩和が必要だと考える人と、その規制緩和によって害を受ける、あるいは障害を受ける、困るという人もいるわけです。両方や、いろんな立場がぶつかり合わなければ、いろんな理解は得られないというふうに考えます。  結果的に規制緩和に対する疑問を有する有識者を排除していることの合理的根拠はないと考えますが、いかがですか。
  291. 田中孝文

    政府参考人(田中孝文君) 繰り返しになりますが、現在の選任規定、基準については、規制改革や民間開放を推進するというその立場からの識見について総理が総合的に判断されているということでございます。
  292. 福島みずほ

    福島みずほ君 政治は、推進する側もいれば、あるいはその推進に対して疑問、あるいは被害を被る、問題だと考える人間もいるわけです。推進する側の人間だけ集めて提言をしても、それは極めて偏った意見だと考えますが、いかがですか。  また、今日本は多くの人は働く人たちです。組合でなくてもいいです、組合あるいは何らかの働く人たち労働法制を規制強化すべきだという立場が一人も入っていない、これは問題だと考えますが、いかがですか。
  293. 田中孝文

    政府参考人(田中孝文君) 当規制改革民間開放推進会議は、その設置の目的等に照らして、規制改革や民間開放を推進する立場からの調査審議を重ね、その答申をいただいているところでございますので、その趣旨に沿った方が任命されているものと理解しております。
  294. 福島みずほ

    福島みずほ君 働く人たちは、規制緩和にもちろん賛成する人もいれば、例えばあることに反対する人もいるでしょう。国民の大多数の意見を反映する人が入っていないことは極めて問題であると考えますが、いかがですか。
  295. 田中孝文

    政府参考人(田中孝文君) 繰り返しになりますが、規制改革民間開放推進会議の目的、設置の目的等に照らしまして、適切な方に関して総理が総合的に判断されて任命されているものと考えております。
  296. 福島みずほ

    福島みずほ君 審議会等に様々意見があるかもしれませんが、私は様々な意見の人がいてぶつかり合うことで意味があると考えています。労働委員会でも、使用者側、労働者側、公益側、中立的、入っているからこそ意見が出せる。例えば、今は消費者の団体を入れたり、地方自治体ですと公募で委員を入れたり、いろんな意見をきちっと代弁できるよう工夫をしています。ですから、この規制改革民間開放推進会議などが全く規制緩和に対する疑問を有する有識者を初めから排除している、今日の意見ですと、開放だから反対する人間は入っていないということですが、そこから出てくる結論は、規制緩和に疑問を呈する人の意見が出てこようがないわけです。つまり、議論をする前から結論が分かっている。  このような委員会は客観的、合理的説得性を持ち得ないと考えますが、いかがですか。
  297. 田中孝文

    政府参考人(田中孝文君) 何遍も繰り返しになりますが、当会議のその目的、設置目的に照らしまして、規制改革や民間開放を推進するための会議であるという観点から、それに適した人材が、それに適した識見について総理が総合的に判断されて任命されているものでございます。
  298. 福島みずほ

    福島みずほ君 私は、このような委員会が極めて重要な日本の政策について意見を一方的に出すことが極めて問題であるということをこの委員会ではっきり申し上げさせていただきます。  問題を感じる人が発言を、初めから、今日の答弁ではっきり分かっているのは、そもそも初めから排除しているわけです。規制緩和をするための委員会だから、民間開放する委員会だからそうでない人間は入れないということであれば、議論する前から結論が決まっております。こういう議論でいいのかというふうに思いますが、この点については、今後とも、これはすべての規制緩和や様々な政策に反映いたしますので、問題があるということを申し上げます。  つまり、日本国民の一部の、改めてまた済みません、私、いつも食い下がって済みませんが、日本国民の一部の人間の利害しか代弁をしない、規制緩和で利益を受ける人しか入っていないこの委員会は問題だと思いますが、いかがですか。
  299. 田中孝文

    政府参考人(田中孝文君) 何遍も繰り返しになりますが、当会議は規制改革や民間開放を推進するという役割を担っている会議でございます。そうした立場からの調査審議がなされ、それに適した識見を持った方について総理が総合的に判断されて任命なさっているところでございます。
  300. 福島みずほ

    福島みずほ君 だとすれば、ここで労働法制の規制緩和に反対の意見表明などが出るわけがないんです。そういうことは初めからあり得ない、それは本当に問題であると思います。規制緩和で被害を受ける人々の意見が初めから、今日の答弁で、初めからそもそも排除をされている、労働組合あるいは働く人たち、非正規雇用や様々な人たちの意見が初めから入りようがない、規制緩和で利益を受ける人しか入っていないということに関して極めて問題であるということを改めて申し上げます。  労働安全衛生法案についてお聞きをいたします。これは今日同僚議員がたくさん質問しましたので、ダブるところがあるのは御容赦ください。    〔委員長退席、理事武見敬三君着席〕  百時間以上の残業をした者への医療面接指導では、過労問題は解決しないのではないでしょうか。産業医面接指導制度実施率、実績について教えてください。
  301. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 産業医面接指導実施率は、数字でございますので私から申し上げます。  これにつきましては、十五年度の調査研究、厚生労働省の調査研究でございますけれども、これによりますと、過重労働対策実施をしているところが六一・九%でございますが、そのうち月四十五時間以上の時間外労働をして産業医事業者に助言、指導いたしましたのが一八・八%、それから月百時間、あるいは二か月から六か月平均で月八十時間以上の時間外労働をして産業医事業者に助言、指導労働者に面談等保健指導をしたというものが二五・六%、ともに実施しているのが一七・五%という数字でございます。
  302. 福島みずほ

    福島みずほ君 この制度を有効に活用する場合、百時間以上を義務とし四十五時間以上を努力義務としていますが、本人面接指導を受けやすい環境をつくるのであれば、四十五時間以上を制度的に義務とすべきではないでしょうか。改めてお聞きをいたします。    〔理事武見敬三君退席、委員長着席〕
  303. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 四十五時間を超える時間外労働を行った方につきましては、先ほども御答弁申し上げましたけれども事業場で定めた基準に該当する労働者につきまして医師による面接指導を講ずるように努力義務規定の中に入れるということにいたしまして、私どもとしてはそういった方々に対しましてもその基準の中に入れるように勧奨したいというふうに考えております。
  304. 福島みずほ

    福島みずほ君 四十五時間以上の努力義務については今後も必要な措置をするよう指導していくということですが、具体的に今後も必要な措置の指導という中身について教えてください。
  305. 青木豊

    政府参考人青木豊君) これは、百時間を超える者につきまして医師による面接指導を受けさせなければならないという努力義務法律上書きまして、そしてそれ以外の者でありましても健康上必要であれば努力義務対象として事業主面接指導等必要な措置を講じなきゃいかぬようにしているわけでありますけれども、そういった中に入れるということでありますので、面接指導などの必要な措置を講ずるということで、その事業場における基準においてその対象者の中に入れるように進めていきたいというふうに思っております。
  306. 福島みずほ

    福島みずほ君 対象者の中に入れるよう努力するということは分かりました。ただ、そうであれば、先ほどからも同僚議員からありましたけれども、四十五時間以上についてもきちっと義務的にすべきではないかと考えますが、将来的にはそういうことも考えていらっしゃるのでしょうか。
  307. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今のところは将来的にそういう方向で考えているということではありませんが、私どもとしては、その時間外労働を縮減していくというのは、これは私どもやらなければいけないことだというふうに思っております。  先ほど来話も出ておりますけれども、三六協定で労使が協定をすればその範囲で時間外労働をすることができるということに法律上なっているわけでありますけれども、その上限について私どもとしては目安を示して、月四十五時間ということで指導しているわけであります。協定を作るに際して、あるいは協定の届出に際してそういう指導も行っているところでありますので、そういうことで私どもは今後も対応していきたいというふうに思っております。
  308. 福島みずほ

    福島みずほ君 今、働く人たちの中に三六協定ということそのものもなかなか浸透してないということもあるかもしれませんし、労働時間についての規制も余りないですし、それから労働組合の組織率も低くなっており、非正規の人たちは数%しか組合に入っていないという状況で、今後義務的にするよう、是非よろしくお願いをいたします。  千八百時間の年間労働時間という枠組みを撤廃し、労働の多様化の名の下に労使間の調整にゆだねるのは民間への丸投げではないかと、引き続き実効ある労働政策が必要ではないかというふうに考えます。労働時間の二極化が進み、長時間労働者にとって有休取得率の低下、過重労働による健康障害などが歴然と起きております。こうした問題を労使間の協議に任せてしまっていいのか、未組織労働者などへの対応はどうなるのでしょうか。
  309. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) 労働時間対策の目標につきましては、この法律成立させていただきました後に労働時間等設定改善指針の策定に際しまして、指針でやろうということになっておりますので、その指針に際しまして、公労使の代表から成る労働政策審議会で御議論いただいた上で厚生労働大臣が定めることといたしているところでございます。先ほど来言っておられますように、この問題はもうきっちり公労使の代表から成る御論議をいただくということにいたしておるところでございます。これは、指針を策定するに当たって直接の影響を受ける労使の意見を十分に尊重しようという趣旨でございます。したがいまして、労使のこのような自主的な取組を支援したいというふうに考えておるわけでございまして、正にその自主的な取組の長所を生かして私どもの政策を講じようとするものでございますので、そのように御理解をいただきたいと存じます。
  310. 福島みずほ

    福島みずほ君 中小零細企業などへの支援として、労働時間の設定などについて地域ごとに専門家のアドバイスをしていくというふうに厚生労働省から聞いておりますが、具体的にどういうふうにされていくのか教えてください。
  311. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 来年度の予算要求の中で、労働時間等設定改善援助事業といたしまして、個々の事業場におきまして仕事の内容や進め方までも含めて助言、指導を行って、そういった対策につなげていくというようなことをいたそうということで、専門家を地域の主要な事業主団体に配置をするということで、中小企業の団体に対しまして指導、援助を行うということが一つでございます。  それから、労働時間を、計画年休制度の導入だとか連続休暇の取得促進などということで、労働時間の設定を改善していくという、そういう取組を行う中小企業の団体に対しまして助成を行う、あるいはまた、都道府県労働局にそういった相談についての対応や助言、指導を行うということにいたしております。
  312. 福島みずほ

    福島みずほ君 是非、中小企業の中での労働時間、この労働実態について、是非実効性が上がるようお願いいたします。  複数事業場に就労する労働者事業者間を移動中に事故に遭った場合、給付基礎日額の算定を複数事業場の賃金合算で行うべきではないか、いかがでしょうか。
  313. 青木豊

    政府参考人青木豊君) これにつきましては大変、この法案をお出しして御検討お願いしている、御審議をお願いしているわけでありますけれども、私どもの中で、労働政策審議会において議論をしていただいたわけでありますけれども、その際にも随分と議論がございました。  この今回の改正についての議論の中で、これはやはり通勤災害だけでなくて業務災害にもかかわる基本的な問題ということだというふうに思っております。そういった影響が非常に大きな問題でございます。それから、給付増加対応した負担の在り方についても、これもまた十分な検討が必要だということでございまして、そういった問題点から、ここでおっしゃるような形での合意というのは得られませんでした。  昨年十二月の審議会の建議においては、この問題について、複数就業者の賃金の実態を調査した上で専門的な検討の場において引き続き検討を行うことが適当という考え方を示されておりますので、これを踏まえて実態調査などをした上で検討をするような、そういう対応をしてまいりたいというふうに思っております。
  314. 福島みずほ

    福島みずほ君 今は二つも三つも仕事を掛け持ちをする人たちが非常に増えています。非正規雇用で複数の仕事を行うという人が増えているわけです。ですから、これは今後、是非検討していただきたい。賃金合算も排除していないということでよろしいでしょうか。
  315. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 検討から排除するということではございません。実態を調査した上で十分専門的に検討してもらいたいというふうに思っております。
  316. 福島みずほ

    福島みずほ君 対応を是非よろしくお願いします。  労働安全衛生法の二十八条二項において、事業主に作業の危険性などを調査し必要な措置を求めておりますが、全産業に対して同様な対応を求めていると思いますが、例えば林業などのように九人以下の事業場が七割を占める産業については、支援策などが考慮されるべきではないでしょうか。いかがでしょうか。
  317. 青木豊

    政府参考人青木豊君) この二十八条の二において、事業主に作業の危険性、有害性の調査とそれに対する必要な措置というものを求めておるわけでございますけれども、これにつきましては、従来から、事業場で行われております職場パトロール等の災害防止活動の結果とか、あるいは機械等の取扱説明書とか、あるいは災害事例の情報というようなものを活用するということも認めると。あるいはまた、労働安全衛生コンサルタントなどの外部の専門家の活用もできるということにいたしまして、中小零細企業も含めて十分実施可能なものと考えております。中小零細企業は、さらに、そういった調査を円滑に実施することができるよう普及促進のための支援策として、標準モデルの作成だとかあるいは講師派遣等を予定しているところでございます。
  318. 福島みずほ

    福島みずほ君 機械などの設置にかかわる事前届出の義務が免除される事業者の適正基準とは何でしょうか。事業主の自主性を評価する余り、事故発生の懸念が増大するのではないかという点はいかがでしょうか。
  319. 青木豊

    政府参考人青木豊君) この危険性あるいは有害性の調査とそれに伴う低減措置を適切に実施しているという事業者の基準でございますが、その判断は労働基準監督署長が認定することによって行うということにいたしております。  その基準でございますが、具体的には、安全衛生管理体制、あるいはトップの安全意識、あるいは危険性、有害性の調査の実施状況でありますとか、あるいはその実績としての安全衛生水準の高さ、高いということについて書面による調査、あるいは実際に仕事が行われている当該事業場に赴いて実地調査により確認をするということで行うということにいたしております。
  320. 福島みずほ

    福島みずほ君 九人以下の事業場が非常に占めるところが高い、それから事前届出の義務免除があるので、今対応策を言っていただきましたが、是非きちっと今後対応してくださるよう、支援策を講じてくださるようお願いをいたします。  次に、アスベストについてお聞きをいたします。  アスベスト新法の運用なんですが、この申請に当たって、申請者は医学的な証明書を取得する費用を自己負担をするのか、アスベスト被害と認定された場合はその被害を弁済してもらえるのか、また周辺住民の方々健康診断費用負担をしてもらえないのか、高額の健康診断を受診することに抵抗感があれば申請を控える人が出ないとも限らない。このことについて、まずは広く費用負担実施するべきではないかという点についてはいかがでしょうか。
  321. 寺田達志

    政府参考人(寺田達志君) お答えいたします。  まず、先月二十九日に開催されました関係閣僚会合におきまして、御質問のアスベスト新法についての基本的枠組みというものを決定させていただきました。その中では、石綿を原因とする疾病であることを証明する医学的所見があることということをもってまず認定をされる、認定された方々に対して各種給付がなされると、こういう構造になっております。  よって、認定される以前に行われた検査についてさかのぼってその費用給付するということは検討しておりません。実は、これは類似の制度であります公害健康被害補償制度においても、認定を受ける以前の検査費用については支給されていないところでございます。  また、健診についてお尋ねがございました。  健診につきましては、環境省としても、様々な調査研究事業として健診の調査もやっておりますし、現在、各地で行われております、尼崎等での実施されている住民を対象とした健診についても情報の収集なんかしているところでございますけれども、一般的な健診ということになりますと、これは既に行われております例えばがん検診のようなものとの関係考えながら、その必要性、在り方、実施する場合の費用負担等々につきまして検討していきたいというふうに考えております。
  322. 福島みずほ

    福島みずほ君 他の公害健康被害救済制度とのバランスがあるかもしれませんが、自己負担原則というのに関して是非検討していただきたいと思います。  医師認定基準を標準化するためにどのような基準を設けるのでしょうか。専門医が少ない状況で、早急に専門医を教育していく場合、一律の診断が下せるような基準を作成すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
  323. 寺田達志

    政府参考人(寺田達志君) お答え申し上げます。  先ほど申し上げました基本的枠組みの中では、石綿を原因とする疾患であることを証明する医学的所見があることというのが認定の要件でございまして、これはすき間なく幅広い救済をするという観点から、地域を指定するとか職歴を問うとか、そういうことはせずに、正に医学的所見認定をするという考え方を取っております。  したがいまして、この基準につきましては、すぐれて医学的な問題であろうかと思いますので、専門家の御意見を十分聞きながら基準を作成してまいりたいと考えております。
  324. 福島みずほ

    福島みずほ君 業務上の暴露であることを申請者が証明困難な場合、どのような対応をするのでしょうか。何十年もさかのぼって自分の職歴からどこでアスベストに暴露したかなどを証明しなければならないという点は無理があるのではないでしょうか。
  325. 寺田達志

    政府参考人(寺田達志君) 正に、先生今おっしゃられたようなことが一つ原因となって、現在アスベスト被害を恐らく受けられたであろう方々、例えば中皮腫の患者さんはこれまで統計的に見ただけでも数千人以上が死亡されているわけでございますけれども労災認定というのはかなり低い割合にとどまっているという状況があるわけでございます。  こうしたことにかんがみ、今回の新法では、ただいま御指摘のございましたような、どういう職場にいらっしゃったのか、あるいはどういう地域に居住されていたのかとかいうことは基本的に問わず、アスベストによって疾病に罹患されたという医学的知見があれば、それで救済対象としようという考え方を取っているところでございます。
  326. 福島みずほ

    福島みずほ君 十八年度のアスベスト対策関係予算要求について、厚生労働省は十五億円なんですが、もっとばんと要求したらどうかと私は思いました。  予算要求の中で、労災補償を受けずに死亡した労働者家族、周辺住民への救済費用はどのような積算根拠によって幾ら程度要求する予定でしょうか。
  327. 寺田達志

    政府参考人(寺田達志君) 予算的な措置が必要であるということは当然かとは思いますけれども、現在基本的枠組みを踏まえまして、新法におきますところの公費負担の在り方、あるいは例えばその給付水準のレベル等を検討しているところでございまして、この検討の結果を踏まえまして適切な対応をいたしたいと考えております。
  328. 福島みずほ

    福島みずほ君 給付金の財源をアスベスト関連事業者負担してもらう場合、どの企業にどの程度の負担を求めていくのか。企業には輸入業者、第一次製造業者、第二次製造業者、販売会社など複数あり、また既に倒産している会社もあります。どのように財源を確保するために負担を要請していくのか。公費はどの程度の割合を負担すると考えているのでしょうか。
  329. 寺田達志

    政府参考人(寺田達志君) お答え申し上げます。  まず、事業者でございますけれども、救済の費用につきましては、原因者が負担するということが基本となると考えておりますけれども、石綿による健康被害につきましては、潜伏期間が非常に長いということが特殊性がございますので、原因者を特定して負担を求めるということが非常に難しい、こういった意味合いから、広い意味での原因者、すなわち石綿による健康被害に関係する事業者負担を求めるということとされているところでございます。この具体的な範囲については現在検討中でございます。  また、公費についても現在検討を進めておりますので、できるだけこういう問題をスピード感を持って検討を進めまして、次期通常国会のできるだけ早い時期に提出させていただきたいと考えております。
  330. 福島みずほ

    福島みずほ君 何を公平というのかなかなか難しいですが、関係するといっても、非常にたくさんあるでしょうし、また倒産をするところもあるでしょうから、是非基本的な考え方をできるだけ早くお示しいただきたいというふうに思います。  休業補償や治療費など、二年間の事故が起きたとき救済できる体制ができているのでしょうか。その際の予算は来年度予算要求に入っているのでしょうか。また、その積算根拠となる人数の把握など、どのようにしているのでしょうか。
  331. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 現在、環境省とともに検討している新たな法的措置においては、時効により権利を失った労働者の遺族について現行の労災補償に準じた救済措置を講ずることといたしております。  なお、休業補償でありますとか療養補償ということで、現在もそういう療養中の労働者につきましては現行の労災保険法制度の中でもう既にできますので、それは現行制度の中で迅速な補償に努めていきたいというふうに思っております。これらについては通常の予算の中で入っておりますし、遺族についての救済措置については、これはまた中身を検討いたしまして、改めて予算の措置を要求したいというふうに思っております。
  332. 福島みずほ

    福島みずほ君 医療費、療養手当、遺族一時金、葬祭料など、現段階での給付金の金額はどのレベルを想定されているでしょうか。
  333. 寺田達志

    政府参考人(寺田達志君) 給付金の内容といたしましては、ただいま御指摘ございました医療費の自己負担分、それから療養手当、遺族一時金、葬祭料を検討させていただいておりますけれども、このレベルにつきましては他の救済制度とのバランスということを配慮して検討を進めてまいりたいと考えております。
  334. 福島みずほ

    福島みずほ君 今日は文科省には来ていただいておりませんが、例えば学校現場についてアスベストがどれぐらい使われているかの調査のことで、現場は実はよく分からない、アスベストのことがよく分からない。例えば、あるものにどれだけアスベストが入っているかは、例えばファイバーを全部見て、専門家に見てもらわなければならないけれども、分からない。何か自治体の職員が今悲鳴を上げていて、やれと地方議会で追及を受ける。しかし、じゃ調査してくれと言っても、調査に当たれる人がほとんどいない。一体どうしていいか分からない。やらなくてはいけないけれども、実際調査できる人間がほとんどいない。対応できない。  あるいは、もっと言いますと、アスベストの診断ができる専門医師が極めて少ないというふうにも言われております。特に医者の問題は大きいと思いますが、これなどについてどのような方策と予算を付けていくのか、お聞かせください。
  335. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 今委員がおっしゃいましたことは大変重要な問題だというふうに思っております。特にこの石綿による疾病についての、とりわけ中皮腫などにつきましてのなかなか専門家が少ないということであります。これは今、現に労災病院などでアスベスト疾患センターなど、二十二だったと思いますが、そこでつくって、診療、それから相談、そういったことにも対応しているわけでありますけれども、そういった労災病院等ではお医者さんに対しまして説明会を開いたり現にいたしております。全国十一か所でもう既に説明会も開いているかと思います。  国としてもそういった研修等について今後きちんとやって、そういった要請等にも努めていきたいというふうに思っております。
  336. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 福島みずほさん、時間ですから最後にまとめてください。
  337. 福島みずほ

    福島みずほ君 はい、分かりました。ありがとうございます。  高齢者虐待について最後にお聞きをいたします。  DV防止法やストーカー行為規制法、児童虐待防止法が国会で成立をしました。高齢者虐待防止法案については議員立法で検討されているというふうに理解をしております。  ところで、高齢者虐待防止について対策が取られること、立法がなされることは歓迎をすべきことです。しかし、疑問点があります。なぜ範囲を限っているのかという点です。この問題につきましては、なぜ、例えば介護施設、療養型施設、一般病院、精神病院、さらには家庭の中で起きる虐待というのも多いわけですから、それがなぜ排除をされているのか。  それともう一つ、地域包括支援センターの職員が立入調査ができます。しかし、四月に初めて地域包括支援センターが立ち上がり、施行していくわけです。そこの人間に強力なる立入調査権限をすぐ与えるということが妥当かどうか、若干疑問と考えております。  これはまだ議員立法が出てきておりませんが、この高齢者虐待防止についてお聞かせください。
  338. 磯部文雄

    政府参考人(磯部文雄君) 老人が入所しております施設において虐待事例が発見された場合には、現在におきましても、当該施設を所管する都道府県知事が、それぞれの施設等に係る法律の規定に基づきまして適時適切な指導監督を行うところとなっております。  現在検討されております議員立法におきましては、迅速な通報システムなどを規定することによって老人虐待を早期発見、早期対応しようとしているものと承知しております。  厚生労働省といたしましては、こうした議員立法の状況を見守り、成立いたしました折には適切に運用していきたいと考えております。
  339. 福島みずほ

    福島みずほ君 以上です。
  340. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  341. 小池晃

    ○小池晃君 私は、日本共産党を代表して、労働安全衛生法等の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行います。  反対する第一の理由は、今回の労働安全衛生法改正が、過労死及び過労自殺精神障害の発生を防止するための措置を後退させるものだからです。  今日、事業主による労働時間管理が十分にされず、成果だけが要求されるという過酷な働き方が強いられ、多くの労働者が過労死の危険にさらされており、その防止措置の抜本的強化が求められています。ところが、今回の改定は、過重労働防止通達の中の産業医への面接、助言指導の基準である月の時間外労働が八十時間を、月百時間を超え、かつ身体に異常があり、労働者本人からの申出へと後退させるものです。予防どころか拡大する道へ逆行するものであり、賛成することはできません。  第二の理由は、労働時間の短縮に関する臨時措置法を廃止し、労働時間等の設定の改善に関する法律に変えることです。  今回の改正は、いまだ一般労働者の総実労働時間が二千時間を超えているのに、年間総実労働時間千八百時間という短縮目標を放棄し、閣議決定も廃止し、位置付けも厚生労働大臣指針にしてしまうものです。千八百時間への時間短縮は政府の国際公約であり、それに反して長時間労働を容認してきた政府の責任こそ問われる問題です。  第三の理由は、労働保険徴収法の改正で建設業などの有期事業の保険料メリット幅を拡大することです。元々、保険料増加を避けようと労災隠しが起こっていますが、これでは現状の問題点を拡大、助長するだけです。  最後に、今回、共通点は労働という言葉が名前に付いていることだけという四本の法律一つ法律案に一括して提出されています。この形式が許されるなら、国会の立法主義はますます形骸化してしまいます。このことも容認することはできません。  以上の理由から、本法律案には重ねて反対することを申し上げ、討論を終わります。
  342. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  労働安全衛生法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  343. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、谷君から発言を求められておりますので、これを許します。谷博之君。
  344. 谷博之

    ○谷博之君 私は、ただいま可決されました労働安全衛生法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党及び社会民主党・護憲連合の各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     労働安全衛生法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。  一、労働時間に着目した健康確保対策の実行に万全を期するとともに、賃金不払残業への厳正な対応や時間外限度基準の遵守の徹底に取り組むこと。また、始業・終業時刻の把握等労働時間管理の徹底を指導するなど、重点的な監督指導を行うこと。  二、面接指導制度は、事業者に法的に課せられたものであることにかんがみ、その適切な実施を図るため、義務規定に違反している場合又は努力義務規定の趣旨を満たしていない場合において、事業者に対し必要な指導等を行うこと。また、労働者の意思を尊重しつつ、確実に申出を行うことができるよう労働者が時間外労働時間数を確認できる仕組みの整備、申出手続の整備及び労働者に対する実施体制の周知並びに個人情報の保護の徹底などについて事業者指導すること。さらに、メンタルヘルス対策として、地域産業保健センターや精神保健福祉センターにおいて、労働者家族を含め、相談をしやすい体制を整えること。  三、過重労働対策メンタルヘルス対策を衛生委員会等の調査審議事項に追加するなど、衛生委員会等の機能強化に努めるとともに、小規模事業場における安全衛生管理体制を強化するため、その在り方について調査検討を進めること。また、中小企業に対し過重労働対策メンタルヘルス対策の必要性について周知徹底を図るとともに、地域における労使の参加と協力を進め、地域産業保健センターの機能と活動強化を図ること。  四、製造業における元方事業者等を通じた請負事業者との安全衛生管理体制に関しては、製造現場の実情を踏まえ、元方事業者による安全衛生協議会の設置や作業場巡視、教育指導と援助、安全衛生管理指導等一体的な管理体制の普及について、所要の措置を講ずるよう速やかに調査検討を進めること。  五、労働時間等設定改善指針の策定に当たっては、育児・介護、地域活動、単身赴任、自己啓発等を行う労働者の実情に応じた労働時間等の設定の改善を促進するものとなるよう留意するとともに、年次有給休暇の取得率向上に向けて、計画的付与制度や長期休暇制度の普及促進等実効性ある施策を推進し、一般労働者労働時間短縮対策に尽力すること。  六、労働時間等設定改善委員会の設置を促進するよう周知徹底を含め実効性ある施策を図るとともに、一定要件を満たした衛生委員会労働時間等設定改善委員会とみなすに当たっては、法に定める要件が遵守されるよう、制度運用に万全を尽くすこと。  七、複数就業者に係る労災保険給付基礎日額の算定方法については、その賃金の実態を調査し、早期に結論を得ること。  八、建設業等の有期事業におけるメリット制の改正に当たっては、いわゆる労災かくしの増加につながることのないよう建設業関係者から意見を聴く場を設けるなど、災害発生率の確実な把握と安全の措置を図るとともに、建設業の元請けの安全管理体制の強化・徹底等の措置を図り、労災かくしを行った事業場に対しては司法処分を含め厳正に対処すること。また、労働安全衛生マネジメントシステムの導入拡大による労働災害の予防を図るとともに、導入企業に対する公共事業の企業評価における優遇措置など導入促進を図るための多様なインセンティブを与える具体策について調査検討すること。  九、企業間競争の激化や働き方の多様化が進む中で、労働者の協力・参加の下で行う事業者の自主的な安全衛生活動役割が一層重要となることを踏まえ、その促進に向け格別の配慮を行うとともに、学校教育の場においても労働安全衛生の必要性について指導の徹底を図ること。  十、本法の内容と密接に関わるILO第一五五号条約の早期批准に向けて、検討を行うこと。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  345. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ただいま谷君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  346. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 全会一致と認めます。よって、谷君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、尾辻厚生労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。尾辻厚生労働大臣
  347. 尾辻秀久

    国務大臣尾辻秀久君) ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
  348. 岸宏一

    委員長岸宏一君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  349. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会