○富岡由紀夫君 私は、
民主党の富岡由紀夫でございます。
民主党・新緑風会を代表し、
会社法案及び
会社法の
施行に伴う
関係法律の
整備等に関する
法律案について
質問させていただきます。
今回の
会社法案によって、有限会社が新設できなくなり、株式会社に統一されることになります。しかし、株式会社といっても、その実態は大きく二つに分類されると思います。公開会社と非公開会社であります。公開会社は株式を公開し、資本市場から広く
資金調達を行います。したがって、
基本的には所有者と
経営者はイコールではありません。一方、非公開会社は
資金調達を公募で行いませんので、所有者と
経営者はイコールとなるケースが大部分です。この
観点で日本の会社を分類すると、公開会社は約三千七百社で、会社総数二百五十五万社のうち、わずか〇・一五%です。
現行の有限会社等を含め、非公開会社は全体の九九・八五%を占めております。
このように、一言に会社と言っても、その資本形態が大きく異なるものが存在するのです。本
会社法案によって新設会社は株式会社に統一されますが、資本形態の異なるこの二つの会社は
基本的に分けて考えなくてはなりません。しかしながら、
会社法案はこの分類が不明確であるように思われます。まず、分類に関する全体的な考え方について、
概要を法務
大臣にお伺いいたします。
この分類によって、最初に公開会社について
質問いたします。
公開会社は、株主からの投資リターンの
向上を求められることになります。公開会社の
経営者は、
経営効率を引き上げ、企業価値を
向上させる義務があるのです。株主は、
経営者が投資に見合うリターンを上げているのかをチェックします。そして、期待にこたえられない
経営者であれば更迭をしなければなりません。しかし、
我が国の公開会社においては、一般株主が
経営者をチェックするための情報が制限されており、それ以上に、
経営者の
責任を追及することは非常に困難であると言わざるを得ません。
一番の
原因は、株主総会の形骸化であります。日本の公開会社の株主総会は、安定株主と言われる大株主が事前に書面投票又は委任状
提出を済ませており、最初から会社側提案が承認されることが決まっています。商事法務研究会の調査では、安定株主比率が五〇%以上の会社が全体の半数以上になっております。
公開会社における大前提となる株主総会が機能していなければ、
会社法を
幾ら整備しても意味を成さない部分が多いのではないかと思います。株主総会を形骸化させている
原因である安定株主に対する問題については、今回全く対処がされておりません。安定株主問題については放置しておき、一般株主の権利は無視し続けるのか、株主総会を形骸化したままで
会社法を絵にかいたもちのままにしておくのか、法務
大臣のお考えをお伺いいたします。
続いて、コーポレートガバナンスについて
質問します。
社長の多くは、取締役や監査役を選ぶだけでなく、社外取締役や社外監査役も選任します。社長は自分の意にかなう人を選任し、意にかなわない人はもとより選任することはありません。その結果、選任される役員は社長の顔色だけを見ているイエスマンばかりとなり、
経営の取締りや監査は形骸化しています。
経営のチェックなど機能しないのが実態です。社外取締役や社外監査役を導入すれば
経営のチェックができるという考えは、昨今の続く企業不祥事を見れば空想にすぎないと言わざるを得ません。
これも、本来であれば株主総会で役員の選任をチェックできるはずですが、株主総会が形骸化しているため機能しておりません。株主総会が機能している会社は別として、株主総会が形骸化している会社においては役員選任のチェックに対する対策はどのようにお考えなのか、法務
大臣にお伺いいたします。
また、本
法案により内部統制システムの構築が義務化されましたが、内部統制をする人員、システムが会社に人事権を持たれ、会社から報酬をもらうイエスマンでは実質的な統制など不可能です。内部統制システムを機能させるために、具体的にはどのような形骸化防止対策をお考えなのか、法務
大臣にお伺いいたします。
次に、企業結合法制について
質問します。
昨年、UFJ銀行は三菱東京フィナンシャル・グループに優先株を発行した結果、UFJ銀行の持ち株会社の株主が事実上の権利を奪われました。現在の持ち株会社
制度においては、持ち株会社の株主は権利を奪われたことに対して子会社の役員を代表訴訟できません。多重的代表訴訟が認められていないのです。持ち株会社
制度が創設される時点でも、企業結合法制の欠落は
指摘されておりました。実際に問題が発生している現在、企業結合法制の
整備をしない理由を法務
大臣にお伺いいたします。
次に、MアンドAについて
質問します。
MアンドAといっても、これには良いMアンドAと悪いMアンドAがあります。会社の
経営効率と業績を
向上させ、企業価値を高めることにより、一般株主にとって投資リターンの
向上が期待できるものは良いMアンドAと言えます。これは単純に拒否すべきものではありません。しかし、中には、企業買収後に解体し切り売りするなど、企業価値を
向上させるとは言えない悪いMアンドAが存在します。これに対しては当然防衛しなくてはなりません。
重要な点は、この良いMアンドAと悪いMアンドAの判断でございます。この判断を
経営者だけに任せておいてよいのかが問題となります。
経営者は保身の問題があり、冷静な判断は困難でございます。客観性を持たせるためには一般株主の判断を優先すべきであります。
本
法案により、強制
転換条項付株式、新株予約権、拒否権付株式等のMアンドA防衛手段が導入しやすくなります。私は、これらの防衛手段については株主総会で丁寧な説明がなされ、一般株主の納得の上で導入が図られるべきであると考えております。防衛手段を導入してもよいのか、その発動を
経営者に授権してよいのか、十分な説明がなされるべきです。
ここで問題になるのが、やはり株主総会の形骸化です。
特別決議案件でも、定足数を三分の一に下げておけば、安定株主比率が九分の二、すなわち二三%以上あれば理論的には会社側提案が承認されてしまいます。安定株主比率が三〇%以上の公開会社が八割を超える
現状において、ほとんどの会社はMアンドA防衛手段を簡単に導入できるのです。
株主総会が形骸化している状態でのMアンドA防衛手段の導入条件緩和が一般株主軽視につながらないということをどう保証するのか、経済産業
大臣にお伺いいたします。
関連して、合併対価の柔軟化が一年
施行延期されました。しかし、合併するかしないかは取締役会、株主総会の
議決を必要とし、その際の合併対価が何であろうと、MアンドA防衛手段とは何の関係もありません。一年延期する意味がどこにあるのか、経済産業
大臣にお伺いいたします。
次に、投資環境について
質問します。
政府は、貯蓄から投資へと、個人資産の運用を投資へ向けようとしています。しかし、
現状を見ると、いわゆる一般の個人は怖くてとても資産を投資で運用できる環境ではありません。どれだけ多くの人が投資に失敗し
損失を出しているか分かりません。
原因として、投資環境の複雑さと情報の閉鎖性があると考えます。
会社法の関連でいえば、種類株や新株発行予約権の発行、ましてや先ほどのMアンドA防衛手段が導入された場合、もうほとんどの
一般国民はお手上げです。一部の企業が導入している株式分割による意図的な株価上昇を利用した
資金調達に泣いた一般投資家がどれだけいるか。とてもではないですが、安心して投資できますよと株式を
一般国民に推薦できる
状況ではありません。投資環境の複雑さと情報の閉鎖性が与える投資拡大への影響についてどのようにお考えなのか、金融担当
大臣にお伺いいたします。
続いて、非公開会社について
質問いたします。
会計参与
制度の導入についてお伺いいたします。
会計参与は、決算書の作成に
責任を負い、社外取締役と同等の
責任を負うことになります。取引銀行などは会計参与に連帯保証を要求することも考えられます。そのことが会計参与の普及に影響を及ぼすのではないかと思いますが、この点について金融担当
大臣のお考えをお伺いいたします。
次に、最低資本金
制度が廃止されること、休眠会社の整理対象
期間が五年から十二年になることにより、過去の実績から休眠会社や名目だけの株式会社が大幅に増加することが見込まれますが、これらについてやむを得ないと考えるのか、法務
大臣にお伺いいたします。
最後の
質問でございます。
現行の商法においても株式会社は決算公告を義務付けられていますが、これを履行している企業はごく一部です。大多数の株式会社においては、形骸化しているにもかかわらず、罰則が執行されることはないと伺いました。最低資本金
制度が撤廃されると、会社の資本や信用力を判断する上で決算公告の重要性が高まります。
会社法の
施行に伴い、罰則を厳格化するお考えはないのか、法務
大臣にお伺いいたします。
以上で
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣南野知惠子君
登壇、
拍手〕