○大江康弘君 民主党・新緑風会の大江康弘であります。
今年で四回目になる
小泉総理の
施政方針演説を聞かされる不幸な現状を
質問に込めまして、以下、幾つかただしたいと思います。
昨年、我がふるさと紀州は、奈良県、三重県とともに長らく運動を進めてまいりました高野・熊野、この霊場を世界遺産として登録していただきました。
その遺産の一つである熊野古道を本年正月に久しぶりに歩く
機会を得、かつて、中世時代、アリの熊野もうでと言われ、皇族始め多くの民衆が太平の豊かさの中でぽかんと空いた心のすき間を埋めるため、また信仰を求めるため歩いたこの古道を歩きながら感じたことを申し上げ、
総理に
お尋ね申し上げたいと思います。
生来、我が
日本民族は節目というものを大切にしてきたと思います。今年は戦後六十年、還暦を迎え、初心に戻る年であります。さきの大戦以来、幾多の試練を乗り越え、わずか数年前までは
国民の九割以上が中流意識を持つという
経済大国に育て上げてまいりました。世界一を誇る新幹線や車、電化製品等、これら文明の利器は我々の
日常生活を大きく変えたのであります。
古代、中世、近代、そして現代と続く時代の流れの中で、とりわけ近代以降、人間の持つ欲望、欲求をもっともっとと求め続け、作り上げたこの現代という時代は、本当の進歩や発展を遂げたのだろうか。また、戦後
日本が走り続け、求めてきたことが真の進歩、発展であったのだろうか。
ただ単にお互いの
生活が楽になり、便利になっただけであり、真の進歩、発展とは絶えず我々のうちにある心や精神が伴わなければならないのに、一番大切なものを置き忘れてきた戦後の歩みであり、今我々がなさなければならないことは、そのことによって生じたひずみやゆがみを是正し、一日も早く誇れる
日本をつくることと思いますが、
総理は今をどう認識されておられるのか、また、節目を迎えた
日本が変えなければならないこと、守るべきことは何なのかも教えてください。
ある学者は、先進国になった国家が必ず迎える四つの症状があると
指摘されております。
一つは、
人口減少、高齢化。二つは、
財政の破綻。三つ目は、その国が作り上げてきた
伝統、
文化、道徳が衰退をしていくこと。そして四つ目が、正に
総理、あなたのことであって、政治家がしっかりと決断ができないということであります。
これら四つの症状は、悲しいかな今の
日本を象徴していると思いますが、あなたは、この国や
国民をどの方向に持っていこうとされるのか、その理念も併せて
お尋ね申し上げます。
総理の
施政方針演説を聞いて感じたことは、あなたは現下の
我が国の現状を全く分かっておられないということ、今、我々が直面している
課題、とりわけ
国民が何を一番望んでいるのか。それは、
景気の
回復、
経済の再生、そして雇用、また年金を含む将来へのこの社会不安の解消等であって、それも一も二もこの不安定な
状況を作ってきたのはあなた方の政権の結果であります。
それにもかかわらず、
施政方針演説の原稿を一ページ半も割いて言わなければならない
郵政民営化の問題がそれほど大事な政策なのかと
理解に苦しみます。
平成十七年度末の
政府債務残高は七百七十四兆円と見込まれ、OECDベースでは対GDP比一七〇%にもなっています。
国の長期債務だけ見ても、国債残高は五百三十八兆円であり、これはGDPを超え、一般会計税収の十二年分に相当する金額であり、この巨額債務が生む利子だけでも一分間で千七百万円、一日に二百四十三億円であり、正に
財政危機であります。
昨年の
予算委員会では、
政府が
目標にしている
プライマリーバランスを二〇一二年に
黒字化するという公約も数字のつじつま合わせにすぎないことが判明をしました。
一体、この
財政の
状況をどう健全化していくのか、説得あるビジョンを聞かせてください。
また、国債管理政策ですが、就任当初、国債発行三十兆円以下を公約に掲げられましたが、この公約は一度も守られることなく、挙げ句は公約など大したことはないというあなたの正に口約束の口約の結果、今年度、十七年度は、新規国債が三十四兆円、借換債が百三兆円、財投債が三十一兆円等と、合計百六十九兆円もの国債発行がされるようですが、歴代
総理の中で最も多く国債を発行してきたのはあなたであります。
今日までは、日銀が量的緩和政策を継続し、郵貯、簡保や
民間銀行に至っては、困っている中小零細
企業に対する融資を貸し渋ってまでも買い続けてきた結果、安定消化につながってきましたが、小渕
内閣が発行した大量国債の十年物の償還が四十兆円近くとピークを迎え、百三十四兆円を借り換える必要が生じる国債の二〇〇八年問題も迫っております。
そこで、ここに来て
政府は、高齢化に伴う貯蓄率の低下など
国内消化の不安定を恐れて、物価連動債の外国
民間企業保有を解禁する方向で、既にロンドン、ニューヨークでIRも開かれたようですが、保有先の多様化への取組自体は間違っていないと評価をします。
しかし、
日本企業よりも経営への発言力が強い海外
企業の株主が、果たしてボツワナ以下のA2との格付をされている
日本の国債にどれほど魅力を感じ、大量買い付けをしてくれるのか。
企業が格付の低い国債を買って失敗すれば当然
責任を問われるだろうし、また、現在四%という海外保有比率が増えれば、格付を材料に投機的に取引されるリスクも発生し、また、
財政バランスが悪く、超低金利のままでヘッジファンドなどが国債市場に入れば、かえって市場の攪乱要因になりかねないとの懸念も予想され、果たして国債の国際化の政策がどこまで安定消化につながっていくのか。
これが困難になれば国債価格が暴落し、キャピタルフライトが発生、
国民生活は大きなダメージを負うことにもなりかねないと思いますが、谷垣大臣、説得ある国債管理政策を聞かせてください。
さて、この三年余り、小泉政権を
地方の目線を持つ
立場の者として見て感じることは、
小泉総理は東京という大都会、大都市が大好きで、
地方や田舎には全く興味や関心のない人だということが政策に反映をされております。
例えば、国土交通省から出てきた都市再生や都市再
開発等の
法案は正に東京をかつてのバブルをほうふつさせるに十分ですが、今、田舎や
地方へ行っても、あなたや
竹中大臣が言われている
経済は良くなったなどという印象は全くなく、一体どこを見て言われているのか、教えていただきたいと思います。
竹中大臣、
竹中大臣はふるさと紀州に帰っていますか。私は今まで同郷のよしみであなたを大きな気持ちで見てまいりました。それだけに、あなたの
答弁で私は議場からやじったことはない。しかし、元来我々紀州人というのは心優しい県民性であります。しかし、ここはやはり、あなたが
経済大臣になったり小泉政権になってから、私が一番嫌いな負け犬だとか、あるいは負け組なんという言葉がはんらんをするようになった。どうか一度和歌山へ帰って御先祖のお墓参りをして、和歌山のDNAを取り戻してきていただきたいということを要望いたしております。
しかも、
地方切捨ての最たる政策が
三位一体などというまやかしの政策です。
得意技である丸投げで
地方六団体へボールを投げたのはよいが、投げられた方も右往左往、
総理も自分の手を汚そうとしなかった結果、中途半端で終わり、
地方交付税を昨年度並みにし、
地方の不満のはけ口の方向を変えただけで、
地方分権など何一つ進んでいないのが実情ではないですか。
国が集めた税金を
交付金だ
補助金だなどといつまでも下げ渡すようなことではなく、
政府が握っている
補助金を
地方へそっくり渡して自由に使わせてやるのが
地方分権であり、簡単な話です。
今、国がやろうとしていることは、自らの権限を残しながら、国が作り上げてきた赤字のツケ、
財政再建を
三位一体などと称してごまかしているだけであります。権限も財源も取れない
地方はいい面の皮であり、本当にこのようなことが
地方分権と言えるのか、教えてください。
時代の流れの中で
地方分権が歴史的蓋然性のある事柄と本当にとらえるならば、あなたはもっと泥まみれにもなってやり遂げる蓋然性があったはずですが、どうして逃げたのか。本当に
地方分権を推し進める覚悟があるのか、聞かせてください。
同時に、
地方に唯一の
理解者である麻生大臣の
考えも併せて聞かせていただきたいと思います。
また、
政府が進めている
三位一体でどうしても賛成できないことは、義務
教育を
地方に任せるという
考えであります。
今日まで資源小国
日本が頑張ってこれた背景には、憲法に保障された
日本じゅうどこでも同じ学力が得られるという理念の下、今日まで
整備されてきた
教育システムで多くの人材が育てられたということではなかったでしょうか。
それでも、ここ何年かはゆとり
教育などという政策で正に緩み
教育になってしまった現状を憂うる一人ですが、世界や
我が国に貢献できる人材を育てることこそ国是であり、
地方自治体間の
経済力の格差が必然的に
教育に反映されていくことには危惧を覚える一人であります。
国家百年の大計である
教育の
基本方針を
地方にゆだねるということは、今の
地方の現状ではまだまだ早いという認識を持つ者ですが、本当にこんなことでよいのか。米百俵以来、
総理が
教育を語る姿を見たことがありません。
考えを聞かせていただきたいと思います。
同時に、中山大臣には大変御苦労されたと思いますが、このような義務
教育の
在り方が本当に正しいのか、率直な気持ちを語ってください。
市町村合併について
お尋ねします。
明治以降二度の合併を経験した
我が国の市町村ですが、三度目の今回はどうも今までとは合併の背景も違い、国の無駄な事業や政策に
補助金名目で付き合わされ、結果、残った借金、厳しい
財政事情の立て直しのための合併であり、
地方分権のための受皿づくりなどとはほど遠い、国主導による新たな品質管理
体制づくりが目的のような気がします。
しかも、合併に当たっては、本来あるべき姿は、それぞれの
自治体が自主的な話合い、
理解の下、まず将来像やビジョンを作り上げてやるべきところ、本末転倒、順序も全く逆で、とにかく急ぐ余り特例法まで作り、あの手この手のあめ玉も用意され、その効果も多少効いて進んでいるようですが、中にはあめ玉を求めることだけがゴールではなかったのかと思われるケースもあり、合併
協議が不調に終わった
自治体では住民投票やリコール運動まで発展し、
地域住民の間に要らぬ感情を生んでおるというのが実情であります。原因は、第一に、国がしっかりした合併の
目標、あるべき姿やビジョンを示すことができなかったことであり、国の
責任は大きいと言わねばなりません。
馬の前にニンジンをぶら下げて走らすようなやり方が果たして本当の
地方自治のあるべき合併の姿なのか。結局、
地方に関心や興味を持たない
総理ですから当然の結果とはいえ、改めて、市町村合併をどう認識され、今後どう進めていかれるのかを
お尋ねします。
また、麻生大臣にも、現状認識と、合併が進まない
自治体に、何が原因なのか、よく実態を調べておられるのか、特例法に誤りがなかったのか、一度検証する時期ではないでしょうか。
また、申請期限が過ぎてしまっても合併ができない
自治体に対し、国は強権をもって今度はむちを打つなどとよもや
考えていないだろうと思われますが、戦後、
地方は人材も資源も提供し、今日の
日本の繁栄と発展を支えてきた最大の功労者であります。これら
地方の
自治体に対してもっと敬意を払い、優しく接してやるべきで、現状の国の措置は今までどおり続けていくのが当然と思われますが、この点も併せて、今後の
方針も聞かせていただきたいと思います。
次に、知事の多選問題について
お尋ねします。
知事多選問題は古くて新しいテーマであり、
国会でも過去三回
法案が出されましたが、いずれも廃案になりました。そんな中、今月十日、自民党の武部幹事長が四選以上を目指す知事候補を推薦しない意向を表明され、これを受け、首相自身も、トップが長期間やるのも弊害があるのではと支持される
考えを示されましたが、その言をかりれば、小泉政権が一日も長く続くのが弊害があるのではと言わなければなりません。
もちろん、我が党も四選以上の推薦は支持しておりませんが、政権
与党の幹事長の
立場となれば話は別であります。一つは、憲法にうたわれている法の下の平等や職業選択の自由という民主主義の根幹を否定するということと同時に、いまだ明治以来の中央集権が続く今日の
行政機構
体制で、政権を握る
与党第一党の幹事長の発言は極めて重く、言われる方は大きな圧力として受け止められるものであり、どのような背景で言われたのかは分かりませんが、看過できないものであります。
また、問題のもう一つは、
地方分権が叫ばれながら、四十七都道府県のうち二十七の道府県が自民党が中心になって国の官僚の天下り先として知事を誕生させてきたことこそ、私は問題あると言わせていただきます。おかげで私も負けました。
地方分権を進めていく中で、どのような知事がふさわしいのかふさわしくないのか、多選が良いのか悪いのか、すべて住民の判断にゆだねることが第一義であって、権力の中枢にいる
立場の者が、知事の発言を牽制し、
地方自治に圧力を加えるかのごとき言動は、
地方分権の足を引っ張ろうとする傲慢な行為であり、大いに問題があると思いますが、
総理の
考えはどうでしょうか。
大事なことは、今後進むであろう
地方分権の流れの中で知事の力が一段と強まることが予想されますが、多選による弊害よりも、むしろ一人の為政者に独裁的な力を与えていくことの方が問題であり、このことに発する弊害を是正することが第一であって、そのことは立法
機関である我々の仕事でもあろうと思いますが、自民党総裁としての
総理のお
考えを聞かせてください。
最後に、地震防災対策について
お尋ねします。
昨年は風水害、
新潟県
中越地震、ちょうど今日で発生一か月である
スマトラ沖地震、インド洋大津波など激甚な
災害が頻発した年となりました。ここに改めて犠牲となられた方々に心から哀悼の意を表し、被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。
先週は神戸において、
我が国がホストカントリーとして百六十八の国と国際
機関が
参加して第二回国連防災世界
会議が開かれ、地球規模の防災力
向上に踏み出す国際社会の決意表明をしたことは大変意義深いことであったと思います。
しかし、
国内に目を向けてみますと、十年前の阪神・淡路大震災を契機に種々の対策を講じてきたにもかかわらず、依然として問題山積みという
状況を脱しておりません。内陸直下型地震が予想される主要都市の被災リスクの指数を見ても、ニューヨークの四二、パリの二五、北京、ソウルの一五に対して、東京、横浜はその数十倍の七一〇と突出しており、海底で起きると言われる東海・東南海・南海地震が発生した場合、一極集中の問題も加わり、
被害は計り知れないと言われています。
そこで、一つは、
国民の安全や安心の確保といった対策をどうされるのか。二つ目は、被災地の復興に当たっては、国と
地方の力関係が違い過ぎ、もっと
地方が主導で復興する仕組みを作るべきではないか。今、被災地の現場からは
災害復興基本法のようなものの制定を求める動きもありますが、これについてどのような
考えなのかも聞かせてください。
また、防災分野にODAの活用を
総理は言われましたが、今後、国際的責務をどう果たしていくのか、
政府の
方針も聞かせてください。
今も触れましたが、海溝型地震の東南海・南海地震が発生した場合、一万八千人の死者、五十七兆円の
経済的
被害が想定されています。
平成十四年に特別措置法が制定され、その中で
民間事業者に対し対策計画の作成、届出を義務付けておりますが、十分進捗していないと聞いておりますが、この対策はどうなのか。
また、既に国際語となった津波ですが、我がふるさとの浜口梧陵翁の「稲むらの火」が世界的に知られていたことはうれしい限りですが、これらの教訓をどう生かしていくのか。津波対策の先進国と言われている
我が国でも、海岸堤防の耐震性の調査もおぼつかず、想定される津波の高さでも半分以上は守れないとの現状。昨年九月に発生した紀伊半島沖地震でも、津波警報の発令や避難に当たり
考えられないような様々な混乱が生じており、ハードもソフトも対策の不備が判明しておりますが、この取組をどうされるのか。
住宅や公共施設の耐震診断や耐震改修は一向に進まず、耐震性の不十分な住宅は一千四百万戸、学校や病院、公共施設に至っては耐震比率も半分以下と、これ以上放置することはできません。
同時に、
災害時における道路ネットワークの
整備や迂回道路の
整備も重要ですが、現在は緊急輸送道路の耐震比率は
全国でわずか三〇%、地震が想定されている静岡県や和歌山県でさえも一〇%台とほとんど機能しないということであり、誠に心もとないことであります。
これら住宅、学校、病院等における耐震化
向上施策や救援
活動も含めた道路ネットワークの
整備などの問題に関する
政府一丸となっての取組について、国土交通、文部科学両大臣にお
伺い申し上げ、
質問といたします。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇、
拍手〕