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2005-06-10 第162回国会 参議院 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十七年六月十日(金曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  三月八日     辞任         補欠選任      緒方 靖夫君     仁比 聡平君  三月九日     辞任         補欠選任      仁比 聡平君     緒方 靖夫君  六月十日     辞任         補欠選任      末松 信介君     水落 敏栄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         内藤 正光君     理 事                 景山俊太郎君                 小林  温君                 小川 敏夫君                 広野ただし君     委 員                 愛知 治郎君                 小野 清子君                 岡田 直樹君                北川イッセイ君                 関口 昌一君                 田中 直紀君                 水落 敏栄君                 山谷えり子君                 田村 秀昭君                 津田弥太郎君                 白  眞勲君                 林 久美子君                 木庭健太郎君                 渡辺 孝男君                 緒方 靖夫君    事務局側        常任委員会専門        員        泊  秀行君    参考人        北朝鮮による拉        致被害者家族連        絡会代表     横田  滋君                 横田早紀江君        特定失踪者問題        調査会代表        拓殖大学教授   荒木 和博君        静岡県立大学国        際関係学部教授  伊豆見 元君        拓殖大学海外事        情研究所長    森本  敏君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○北朝鮮による拉致問題等に関しての対策樹立に  関する調査  (北朝鮮による拉致問題等に関しての対策樹立  に関する件)     ─────────────
  2. 内藤正光

    委員長内藤正光君) ただいまから北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、末松信介君が委員辞任され、その補欠として水落敏栄君が選任されました。     ─────────────
  3. 内藤正光

    委員長内藤正光君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  北朝鮮による拉致問題等に関しての対策樹立に関する調査のため、本日の委員会参考人として北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表横田滋さん、横田早紀江さん、特定失踪者問題調査会代表拓殖大学教授荒木和博さん、静岡県立大学国際関係学部教授伊豆見元さん、拓殖大学海外事情研究所長森本敏さんの出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 内藤正光

    委員長内藤正光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 内藤正光

    委員長内藤正光君) 北朝鮮による拉致問題等に関しての対策樹立に関する調査を議題といたします。  本日は、参考人方々から御意見を聴取いたします。まず御意見を伺いますのは、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表横田滋さん、横田早紀江さん、特定失踪者問題調査会代表拓殖大学教授荒木和博さんの三名の方々でございます。  この際、参考人方々に対し、本委員会代表してあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところを御出席いただきまして、本当にありがとうございます。本来であれば先月二十三日に委員会を開催する予定でしたが、国会情勢により急遽中止することとなってしまいました。横田夫妻荒木代表には出席を御快諾いただいていたにもかかわらず、大変な御迷惑をお掛けいたしました。ここに深くおわびを申し上げます。  さて、横田夫妻におかれましては、最愛のめぐみさんが北朝鮮拉致されて以来、国会政府はもとより、大多数の国民北朝鮮による拉致問題について全く関心を向けることもない中、手作りで運動をスタートされ、配慮を欠いた社会の反応にくじけることもなく、二十八年間の長きにわたりめぐみさんの帰国に向けて尽力されております。さらに、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会活動を推進され、とりわけ横田滋さんは家族連絡会代表という重責を立派に果たされております。これまでの御夫妻の御心痛は察するに余りあります。その御努力に対し心から敬意を表する次第でございます。  また、荒木拓殖大学教授におかれましても、かねてより拉致問題の解決に向けて御尽力され、特定失踪者問題調査会の設立以来、その代表として活動に邁進しておられております。その御努力に対し衷心より敬意を表するものであります。  本委員会は、拉致問題に対する国民的な関心の高まりを背景に、昨年の六月、特別委員会として衆議院に先んじて設置されました。以来、委員会一丸となって精力的な審議を行い、去る十二月には北朝鮮による日本人拉致問題の解決促進に関する決議を全会一致で議決いたしました。そして、年末には新潟県に委員を派遣して拉致問題に関する実情調査を行ってまいりました。しかし、現状はといえば、北朝鮮横田めぐみさんのものと称する遺骨別人のものと判明して以来、拉致問題をめぐる北朝鮮との折衝は膠着状態にあります。  本委員会は、北朝鮮の人道にもとる理不尽極まりない姿勢に対し強い憤りを感じております。私たちは、横田夫妻を始めとする関係者皆様の真摯な取組要望にこたえ、拉致問題の解決政治に課せられた極めて重い課題であることを肝に銘じ、拉致問題の一日も早い全面解決に向けて今後も引き続き取り組んでいく決意でございます。  本日は、限られた時間ではありますが、参考人皆様にはこれまでの取組を踏まえ、国に対する忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いを申し上げます。ここでいただきました御意見、御要望につきましては、本委員会の今後の審議に反映するよう努めたいと存じております。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、横田滋さん、横田早紀江さん、そして荒木さんの順序でお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  また、御発言の際は、その都度委員長の指名を受けることになっておりますので、よろしくお願いをいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず横田滋さんからお願いいたします。横田滋さん。
  6. 横田滋

    参考人横田滋君) ただいま御紹介いただきました、昭和五十二年十一月十五日、新潟市で北朝鮮工作員拉致された横田めぐみの父、横田滋でございます。そして、現在は北朝鮮による拉致被害者連絡会代表を務めております。  金正日が、二〇〇二年九月十七日、拉致を認め、謝罪してから既に二年九か月近くが経過しているにもかかわらず、死亡されたと言われている人につきましては安否が確認されない状態が続いております。被害者家族高齢化が進み、家族と再会できないまま亡くなられる方が多数おられ、被害者の所在を一日も早く確認すべきだと思っております。  第三回日朝実務者協議めぐみのものとして提供された遺骨は、帝京大学がDNA鑑定した結果、十二月八日、別人のものということが判明いたしました。我々は、この鑑定結果を伺いまして非常に安堵をいたしました。北朝鮮側は、この遺骨は第三者の手を経ずに直接薮中団長に提供されたもので、本人のものには間違いないということで持ってきたわけなんですが、しかしこれが幸いにも別人のものと鑑定ができたから良かったものの、そうでなければ、これはもう夫が持ってきたもので間違いないものだ。しかし、科学的には鑑定できなかったものである。そして、同時に提供されました写真を示して、こんな不安そうな顔をしている中学生を我が国が立派な大人に育てて、車も使えるような身分にもなったんだけれども本人が体が弱くて入院して自殺したんだ。もうこれ以上のものを出せないから納得してほしいというようなことが言われれば、私たちだけでなくて、政府としてもそれを反論する材料というのが全くなくて、結局それで納得されてしまうおそれもあったわけですが、しかし別人のものと鑑定した結果、我々としましてはめぐみが生存している可能性が強いということを確信いたしました。国家間の交渉で、恐らく千二百度で焼けばDNA鑑定はできないだろうと見越して別人の骨を持ち出すということは、もう我々親だけでなくて日本政府全体をばかにしたものだと思っております。  この十二月の八日に別人のものと分かったときに、我々家族会、救う会は経済制裁発動お願いしたいというような声明を発表いたしました。そして、翌九日に拉致議連の総会が開かれまして、その席でも経済制裁をするしかないということが決議されております。また、私はその翌日の十日の自民党の拉致対策委員会、それからまた同じ日に開かれました衆議院拉致特別委員会にも傍聴に参りましたが、いずれも制裁をすべきだという意見が決議されております。  しかし、小泉総理は、対話の窓口が閉ざされるということを理由に慎重な姿勢を崩しておりません。  そして、この段階ではめぐみのものだけだったわけですが、しかし、その後持ち帰った資料の精査をして、二十四日の日に家族に対しても説明がありましたし、同日、細田官房長官が、北朝鮮側が迅速かつ誠意ある対応をしない場合、日本政府として厳しい対応を取らざるを得ないという立場を、制裁の予告とも取れる談話を発表いたしました。それから、日本政府北朝鮮側に対して抗議をし、そして鑑定説明はいつでも説明をするというふうに言っておりますが、北朝鮮側はそれを拒否して、鑑定は捏造であるとか遺骨を返せとかって言うだけで、現在は全く電話を掛けても出てこないというような状態だというふうに説明を受けております。  もう六か月たちましてもまだ何の説明もないということは、迅速に、かつ誠意ある対応態度を取っているとはとても考えられません。それで、四月に開かれました国民大集会でも制裁ということを決議しておりますし、家族会、救う会は、ちょうど官房長官談話から半年になります六月二十四日から二十六日まで三日間、官邸周辺で静かに座込みをするということを計画しております。  それで、政府に対するお願いでございますが、やはり、もし北朝鮮側に何か異変が起きた場合、被害者がどこにいるかといった情報が必要になっておりますので、是非情報収集に努めていただければと思います。情報収集というのは人脈づくり等ですぐにはできないとはおっしゃっていましたんですが、しかし小泉総理の最初の訪朝からはもう二年以上もたっておりますし、やはり一日も早く収集していただきたいと思いますし、それと、現在も拉致専門幹事会といって各省庁局長クラスの方が集まって横の連絡を取っていただいていますが、しかし、それぞれが情報を持っているというようなことだと思いますし、それからそういった方は通常はそれぞれの省庁の仕事をなさっておりますので、拉致のことだけをやっているというところは、部署はございませんので、一日も早くこの専門幹事会拉致対策本部というような形で常時拉致問題について対応が取れるようなシステムをつくっていただければと思っております。  一日も早い解決を我々家族は望んでおります。  以上でございます。
  7. 内藤正光

    委員長内藤正光君) ありがとうございました。  続きまして、横田早紀江さんにお願いをいたします。どうぞ。
  8. 横田早紀江

    参考人横田早紀江君) 私は横田めぐみの母でございます。  めぐみが行方不明になって二十年という長い間、本当にめぐみの姿が消えたままで、どうしてめぐみがいなくなったのかということが分からない長い長い苦悩の日々を過ごしてまいりました。そして、考えたこともない北朝鮮工作員によって拉致をされて、平壌にめぐみさんがいますという情報が入ったのが二十年たってからのことでした。  どうしてこんなに長い間このような大変なことが分からなかったんだろうと。私たちは、それでもめぐみが生きていたんだという喜びで、すぐにでももう会えるという思いで大変喜びましたけれども、今日のように、もう九年目に入る救出活動の中で、まだこれから、二十四日座込みというような、年老いた皆様方が一生懸命に遠いところからまたお出掛けになって三日間も座込みをしなければならない、このような状況がどうしていつまでも続いていくのかということが不思議でなりません。  私たちは、増元さんのお父様がおっしゃった言葉、私は日本を信じる、だからおまえも日本を信じろと増元照明さんに病の中からおっしゃった言葉が忘れられないんです。これは本当に国民全部が思わなければならない言葉だと思います。  そして、めぐみたちはまだ元気であちらにいるはずです。そして、あの国がいかに凶暴であり、人の命を何とも思っていないような国であるかということはもう世界じゅうが分かっています。ブッシュさんが悪の枢軸と言われるとおり、本当に人の命など何とも思っていない国にたくさんの日本の何の罪もない若者たちが二十九年間も監視をされ、そして向こうの思ったように動かなければ強制収容所なり、それこそ銃殺刑にされるかもしれないような状況の中で一刻一刻を助けを待っているんです。まだおぼれたままでいるんです。  おぼれた人がいれば、私たちはすぐにでも手を差し伸べるのではないんでしょうか。ほかのいろんな用事をまずおいて、大事な用事があってもまずそれをおいて飛び込んで助けるのが人の心ではないんでしょうか。どうしてこんなにたくさんの立派な日本のお父様、お母様がこの国にいらっしゃるのに、そして外交官政治家、首相、いろんな方が、その役職の中にあって、一つ一つの大事なときにチャンスをしっかりととらえて外交をしてくださり、また、日朝実務者協議のときでもやはりそうですし、首脳会談のときでも、やはり小泉さんがお一人の人として、父親として言うべきことを言い、しっかりと子供たちを返しなさいと、許せないとはっきりと言葉に出して金正日に迫って怒ってほしかったと私は思っています。  そして、骨が返ってきたときも、このようなことがうそであったら、自分子供が隣のおじさんに連れていかれてそのような形で現されたらそのお父さんはどうするでしょうか。そのうちの窓をけ破り、ドアをけ破ってでもそのお父さんに食って掛かって、首筋をつかまえて物すごい勢いで怒るのが本当ではないんでしょうか。命は同じです。見えるところにあっても見えないところにあっても、救いを求めている、一人の大切な命が今もわめいて、叫んで、早く来てくださいと助けを求めているんです。  お米を支援したとき、また金正男がこちらに不法入国したとき、またジュネーブに私たち強制失踪者調査会に伺ってお話をさせていただいたとき、出された書面はたった一枚でありました。十一行に簡単に書いてあっただけでした。北朝鮮からは何枚もの日本を誹謗する書面が届いておりました。  このような大事なとき、一つ一つチャンスを、一人一人のそれにかかわっている方々が本当に命懸けで、自分子供だったらという思いで、助けを求めている者を救わなければという思いで必死に動いてくだされば、こんなに長い間助けることができなかったということはなかったと私は思っています。  私たちは、本当にもう心身疲れ果てておりますけれども子供たち助けを求めている間はどんなことがあっても倒れることができません。そして、小泉さんにしっかりと怒っていただきたい、経済制裁発動をいたしますとはっきりと言っていただきたい、日本国民総意での怒りを私が負って怒っているんですと北朝鮮態度を示していただきたいと私は思っているんです。そのような毅然とした姿勢がなければ外国の諸国は何と思うでしょうか。一人二人の命であっても必死になるアメリカ、こんなにたくさんの人がまだ嘆いていても動かない、真剣さが感じられないそのような国を世界はどう見るでしょうか。  私たちは普通の主婦でしかありませんでしたけれども、このことを通して、本当にめぐみたちのこの苦しみを通してたくさんのことを学ばせていただくことができました。必ず、この拉致問題がかわいそうなことだけで終わってしまったということがないように、今からでも遅くはないんです。一人一人が力を合わせて、心を込めて、日本のことを思って頑張れば必ず成功に導かれると私は信じています。国際的なお力もかりながら、一つ一つチャンスをどんなときでも大事に扱って動いていただけることをお願いしたいと思います。  ありがとうございました。
  9. 内藤正光

    委員長内藤正光君) ありがとうございました。  それでは、最後に荒木さんにお願いをいたします。荒木さん。
  10. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 私のお話しすることは、お手元に二枚組みの資料で、左肩に参議院拉致特資料、十七年六月十日と書いてあるもので基本的にお話をいたしますが、冒頭に申し上げておきたいことは、拉致問題の解決というのは、北朝鮮拉致をされた日本人すべてが日本に戻ってくるということがあってこその解決でございまして、それ以外の解決はあり得ないということをまず御理解をいただきたいと思います。  この拉致問題の全体像が一体どういうものであるか。この総数は、北朝鮮の体制が崩壊して、自由に北朝鮮の中を移動し、また日本に出国できるようにならない限りは分かりません。私ども特定失踪者問題調査会の中にある特定失踪者リスト、これは約四百四十人現在ありますが、この中に拉致被害者がどれだけいるかということはもちろん我々も分かっておりません。その調査をしているところでございます。しかし、このリストにない方、身寄りのない人を拉致したケースが相当数あると思われます。現在の政府認定者の中でも、先日認定されました田中実さん、そして久米裕さん、原敕晃さんにつきましてはやはりこのケースに当たるというふうに思っております。また、御家族がおられて、そして拉致というふうに疑っておられても、警察にも私どものところにも名のり出てこない場合も相当数あるというふうに聞いておりまして、こういう場合には、調査会リストにも警察リストにも載ることはございません。したがって、そういう人たちは、もし向こうで自由に動けるようにならない限りは、拉致をされていることすら分からないということでございます。  申しましたように、日本政府が救出し保護する責任を負っているのはすべてのこの拉致被害者でございます。しかし、現状では政府認定者以外は北朝鮮日本政府は問い合わせをしておりません。ごく一部の例外はありますが、大部分政府認定者だけでございます。しかも、その認定者は、平成十四年九月の小泉総理が訪朝したときに、曽我ひとみさん、ミヨシさん、そして石岡亨さん、松木さんを追加認定して十件十五人となりましてから二年半たって、やっとこの四月二十七日に十六人目に当たります田中実さんを認定したにすぎません。この状況が続けば、拉致被害者方々は大部分北朝鮮で死んでいかなければいけないということを是非とも御認識をいただきたいというふうに思います。  現在の、そしてこの拉致解決するシステム、この国の中のシステムでございますが、今、日本政府がやっている対応というのは次のようなものでございます。  主に、警察捜査をして、そして立件するに足るほどの証拠が挙がった場合に内閣の方で認定を行うと。そして、その認定された方々について外務省が交渉に出すということでございます。  しかし、警察による捜査ということでいいますと、多くの事件が既に長い年月を経過しております。しかし、警察は法と証拠というのが原則でございますので、証拠が挙がらないということで、警察拉致であると確信を持てる事件というのは全体の一部にしかすぎません。実際、曽我ひとみさんにつきましては、北朝鮮が明らかにするまで新潟県警はこれを拉致でないというふうに認識をしておりました。  そして、内閣認定作業でございますが、これも、現在の十六人の大部分報道機関の発表とかあるいは工作員の逮捕によって明らかになったものであり、だれも知らないときに日本政府がこの人は拉致ですよというふうに明らかにしたケースというのはほぼゼロに等しいと言わざるを得ません。つまり、認定がいかに恣意的に行われているかということの証拠でございます。  現在、特定失踪者のお一人であります、皆様方にお配りいただいたポスターの中にもございますが、昭和四十八年の七月七日に千葉県市原市で失踪いたしました古川了子さんにつきまして、御家族行政訴訟提訴をいたしております、拉致認定を求めてでございます。この火曜日に第一回の口頭弁論が行われましたが、国側答弁書は、事実関係審理を避けて却下を求めております。これ自体、ここに事実関係審理に入らないということ自体が、認定が恣意的に行われているということの証拠であろうというふうに思っております。  そして、この古川さんの訴訟において、国側はこれまでも一生懸命にやってきており、そして、捜査して拉致と認められれば認定して対応していると、したがって提訴の意味がないということが門前払いにせよという理由でございますが、しかし、未認定拉致を疑われる国民北朝鮮交渉に持ち出された例というのは極めて例外的でございます。そして、認定者と未認定者の間には明確な区別が行われており、さらに、ここに横田さんの御両親おいででございますけれども、その政府認定者の中ですら帰国を果たしたのはわずか五人にしかすぎないという現実が存在をいたしております。  多くの拉致被害者北朝鮮に残したまま長い年月が経過して、そして被害者の大部分についてはそれがだれであるかも明らかにできないということは、間違いなく政府の不作為でございます。曽我さんが拉致被害者であるということを北朝鮮側が発表した後、日本警察であれ、あるいは国会であれ、内閣であれ、どこの機関一つとして、曽我さんに対して二十四年間拉致と気が付かなかったことを申し訳ありませんでしたと謝った方はおられませんでした。つまり、これはどういうことかというと、この国の中でだれが拉致をされているか、捜すことに責任を持っている機関自体存在をしていないということでございます。大部分のこの被害者がそして帰国できていない、しかし帰国できていない現状がずっと続いているわけでございますが、続いていることについてもだれも責任を取ろうとしないわけでございまして、このようなことは絶対に許されるべきではないということであるというふうに思います。  対話圧力という言葉がございますけれども、少なくとも日本政府は正面からの圧力は掛けておりません。話合い解決をするということができるならばもちろんそれにこしたことはございませんが、話合い解決ができるような相手であれば、そもそも多数の日本人拉致をしていくなどというようなことがあるはずがないわけでありまして、相手はそういう相手であります。そういう相手相手にして拉致された日本人を救出しようとしているんだということを御理解をいただきたいというふうに思います。  そういうような現状で、この政府の方の答弁書にございました、古川裁判答弁書にございました、これまでもやってきたというのであれば、これがもしこれまでも本当にやってきたということのすべてなのであるならば、政府は直ちに、自分たちには、日本政府には国民を救出する能力が存在をしていないということを明らかにしていただきたいと。  この横田さんの御両親もそうでございますけれども家族方々はみんな政府を信頼してきたんです。裏切られ続けながら、しかし政府が必ずやってくれるだろうというふうに言ってこられました。横田早紀江さんの今のお話の中にもございましたが、増元るみ子さんのお父さんは、日本を信じろと言って亡くなっていかれました。みんな信じてこられたんです。そういう中で、できないということであれば、そのできないことに対する応分の責任はあるべきではないだろうかというふうに思います。  時間の関係もございますので、救出に掛けて一体どういうことが必要であるかということについて、できるだけ簡単にお話をいたします。  現在の、先ほど申しました警察による捜査内閣認定、外務省の交渉というシステムを機能させるためには、まず認定の条件を大幅に緩和して、やはり、絶対ということではないにしても、かなり怪しいというケースについては政府認定をして、北朝鮮との交渉に当たるということが必要であろうというふうに思います。そして、その北朝鮮との交渉に当たっては、経済制裁、特に船舶の入港禁止を実施すること、あるいは日本国内において北朝鮮関連の不法行為を徹底的に取り締まるということが必要不可欠でございます。  これに関して、捜査権を持っているのは要は警察ということでございますが、警察は、その内部の機構上の問題である例えば県警間の壁などの問題もありますが、それ以外に、やはりこういうものを取り締まることができないという法的な不備、そして世論の冷淡さ等々のことがありまして、長期間にわたって両手を縛られて孤立無援に近い状態活動を続けてこられました。身を粉にして、我々もいろんな方々と連携をしておりますけれども、身を粉にして現場で闘っている担当者の方々の労苦が実るように、是非とも各方面のバックアップをお願いしたいと思います。  そしてまた、しかもこのシステムが機能しても、それだけでは先ほど冒頭に申しましたような理由拉致の完全解決は不可能でございます。そのためには別のシステムを機能させる必要がございます。日本には公安調査庁、海上保安庁、内閣調査室あるいは自衛隊等々、情報機関としての機能を持つ政府機関が幾つも存在して、そしてそれぞれの要員は一生懸命活動を続けております。しかし、この情報がなかなか共有をされていないと。この情報を共有し、そして最終的にはCIAのような形の専門の情報機関を警察と別途に設立して、外国からの諜報活動に対処すべきであるというふうに思います。  そしてまた、今後、北朝鮮の体制崩壊というようなことに備えて、直接の救出の準備も必要であるというふうに思います。最初に申しましたように、だれも気が付いていない拉致被害者がいるわけでございまして、これはもう行って助けてくるしか方法がございません。誤解を恐れず申しますが、それができるのは日本国内では自衛隊しかないと確信をいたしております。  憲法十三条、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」ということから考えても、ちゅうちょは私は許されないというふうに思っております。  今、政府拉致事件を個別の刑事事件というふうにしてとらえて対処をいたしております。これは、明らかな間違いというよりも、国民に対するミスリードでございます。これは個別の事件ではございません。北朝鮮の国が赤化統一、共産化統一という目的のためにやっていることの一環でございまして、これは、今北朝鮮は戦争をやめていない。昭和二十八年の七月二十七日に休戦になった朝鮮戦争は、今でも休戦であって終戦ではございません。北朝鮮はまだ戦争をやっているつもりであって、その戦争の中の一環として拉致をやってきている。  我々は、そういう意味で、この問題を解決をしていくためには、国家主権の侵害という立場で対応をしていかなければいけないであろうというふうに思います。この今、横田さんを始めとする拉致をされた方々助け出すことができなければ、次に拉致をされるのは今この国の中で無事に暮らしている国民なんだと、その危害を加えさせないために拉致をされた方々をすべて助け出すんだという視点で、是非とも委員各位の御尽力をお願いしたいと思います。  以上でございます。
  11. 内藤正光

    委員長内藤正光君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの意見の聴取は終わります。  これより参考人方々に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 岡田直樹

    ○岡田直樹君 私は、自由民主党で北朝鮮経済制裁を検討するチームにおります岡田直樹と申します。  本日、横田さん御夫妻にはわざわざお越しいただき、ただいまは本当に痛切なお話をいただきました。荒木参考人と併せて感謝を申し上げたいと思います。  昨年、この委員会新潟に参りまして、めぐみさんが寄居中学校から御自宅に戻るその通学路を歩きました。そして、御自宅のすぐ目と鼻の先のあの四つ角で、警察犬も追跡不能になったというあの拉致の現場を見ました。そして、海岸まで歩きました。本当にめぐみさんの味わった恐怖感というものを改めて思い、また御両親の心中をお察し申し上げた次第であります。  この委員会でも既に経済制裁を検討せよという決議をいたしておりますし、自由民主党でも我々のチームの提言に基づいて安倍晋三本部長とする拉致対策本部でそうした決議を行っておりますが、いまだに政府が積極的な姿勢を示さないことは、私ども与党でありますけれども、残念に思っている次第です。  ここで、時間もありませんので御両親に端的にお伺いをしたいことは、私も新聞記者として二度北朝鮮へ行きました。あの国が本当に底知れない恐怖の体制であるということを肌で感じてきたつもりであります。  経済制裁を検討しながら一つ気掛かりなことは、今も北朝鮮に生存をしていると信じる拉致被害者方々めぐみさんを始め拉致被害者方々が、この経済制裁によって状況が好転すればいいですけれども、裏目に出て万が一、不測の事態が生じはしないかということが我々も心配でならないわけであります。前のが偽の遺骨であったならば今度は本物を出そうと、こういうことを考えかねない国だと思うんです。  御両親に対して本当に言うに忍びないことを言い、聞くに忍びないことをお聞きしますけれども、そうしたおそれを抱きながらもなお今、経済制裁をとお求めになるのか。その辺りの御心境を御両親からお伺いしたいと思います。
  13. 内藤正光

    委員長内藤正光君) お二人からでよろしいですね。  では、まず横田滋さん、どうぞ。
  14. 横田滋

    参考人横田滋君) そういった懸念はゼロではございません。  それは、平成九年にめぐみのことが明らかになったときに最初に我々が直面しましたことは、名前を出して、かつ写真を公表するか、それとも匿名にするかというようなことで迷いました。やはり、実名を出して写真を出さなければ証言に信憑性ということが出てきません。しかし、それを明らかにすることによって、そんなことはなかったということで殺されてしまうというような心配もございました。  ですから、最初から、スタートの段階ではやはりそういったリスクというものがもうゼロというのではないわけですが、しかし、それを恐れていれば結局そのままの状況がずっと続いて、一生もう北朝鮮で何もなかったような形で終わってしまうというようなことになりますので、やはり救出ということになりますとそうせざるを得ないと思います。  そして、今経済制裁ということは、一つは日本姿勢を示すということにもなりますし、それと、現在、国際的な目がありますから、生きている者をそこでこれから殺したというようなことであれば、もう北朝鮮日本からだけではなくて、世界からもう、何といいますかね、交渉は、これは国としてはもう成り立たなくなると私は思っております。  ですから、絶対にないとは言えませんけれども、もしそんなことが行われた場合はもう北朝鮮は崩壊するということになりますから、それは北朝鮮はやらないと思っております。
  15. 内藤正光

    委員長内藤正光君) では、続きまして、横田早紀江さん、お願いをいたします。
  16. 横田早紀江

    参考人横田早紀江君) 今、主人が申しましたように、本当にこのことを表に公表するかどうかというところから私たちはもう覚悟をしておりました。もしものことがあっても、こんなに長い期間、めぐみの姿が何も分からない、だれにも分からないで、消えたままでこの世を終わってしまうということは許せないことでありましたので、どんなことがあるか分からないけれども、非常に悩みながらも公表するような状況になったわけです。  そして、今、この間のDNA鑑定のように、日本鑑定は非常に高度でありまして、いつごろこの人は亡くなったのか、どういう状況で亡くなったのか、いろんなことが全部分かるというぐらい高度なものだとお聞きしています。だから、そういうことをしっかりと日本北朝鮮にメッセージを常に送り続けて、そういうことはどんなことがあってもすべてのことが分かるように日本はできているということをメッセージを送り続けていただいて、そして、みんなが元気でいることができるような状況にできるだけ努力をしていただきたいと思っています。
  17. 岡田直樹

    ○岡田直樹君 どうもありがとうございます。  今、この国会でいただきました御両親の本当に強い覚悟というものを、この報道を通じて政府に届くものと思いますし、我々の委員会としても、また我々の党としても政府に伝えてまいりたいと思います。  ここで、荒木参考人に一つお伺いしたいんですが、もう一つの懸念は、今、日本と韓国や中国の関係が非常に悪化をしております。なかなか連携をして経済制裁その他の圧力を掛けにくい状況にあると思いますが、日本単独で今経済制裁をしてどのぐらいの効果があるものか。もし空振りに終わった場合、次に打つ手を失うのではないかと、このことが我々の懸念であります。  この点について、荒木参考人、どのようにお考えでしょうか。
  18. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 経済制裁をやっても中国や韓国が支援するから効果がないと、よくそういう言葉がございますが、私は、それは現実には合っていないと思います。  特に私が注目いたしますのは船舶の入港禁止でございますが、北朝鮮の船舶というのは、いわゆる問題になっております万景峰以外でもほとんどの船に北朝鮮の工作機関の要員が乗船して、そこに工作員を、日本の中にいる工作員とか朝鮮総連の幹部を呼び付けまして指示を出すというようなことをやったりいたしております。  当然、工作船の浸透は今でも頻繁に行われていると思いますけれども、やはりこういう公式ルートで来るものを遮断することができれば、北朝鮮側はそこを何かの無理をせざるを得ない。それは、やはり非常に北朝鮮側にとって負担になることでございまして、それをやるということは、プレッシャーは、その効果、さらにそれだけ日本が強い姿勢を示しているんだということによって、これが北朝鮮の体制の中に与えるプレッシャーという精神的な効果も極めて大きいと思います。  ですから、そして、この効果がないというのは、ある意味でいうと、北朝鮮側から流しているディスインフォメーションである可能性も極めて高いです。効果がないというのと、やったらミサイルが飛んでくるという二つありますけれども、私は、どちらもさせないための宣伝ではないだろうかと。実際に、つまり、これは逆に言いますと、やれば非常に効果があるということの裏返しではないだろうかというふうに思っております。
  19. 岡田直樹

    ○岡田直樹君 どうもありがとうございました。
  20. 広野ただし

    広野ただし君 民主党・新緑風会の広野ただしです。  横田夫妻、そして荒木参考人には、今日は本当にお出掛けいただきまして、また切実なお訴えをいただきまして、本当にありがとうございます。  私どもも、拉致された方々助けを求めておられる、それに対してしっかりとした手が打てないこの日本というのはどういうことなんだ、国家の意思をちゃんと示していないじゃないかと、そういういたたまれないような思いでおりまして、昨年十二月の十四日に私たちのこの委員会日本人拉致問題の解決に関する決議を採択をしました。それから、十二月十四日ですから、もう半年もたって、なお政府が動かないということですから、私たちも非常な怒りを持っているわけです。  そのときもいろいろと議論をいたしましたけれども、やはり日本がやらなければ効果がないとかなんとかというよりも、国家の意思をちゃんと示さないと、ほかの国は何にもやってくれないわけですから、そういう意味ではまず日本がやらなければならないと、こういうふうに思っておりますし、特に、経済制裁をしない方がいいんだとしたらば、交渉が中断をする、あるいは協議が中断をすると、こういうようなことを言われる方々がおられますけれども、それこそそれは北朝鮮のある意味で脅しであって、向こうの戦術なわけですから、私たちはそういう脅しに乗ることなく、毅然たる態度でやっていかなきゃならない。  改正外為法の問題もあります。ちゃんとそれも整備しました。そして、特定船舶入港禁止のことも整備をしたわけですから、それを政府発動をしないというのが誠に、本当に日本国民助けようとしておるのかどうか。先ほどおっしゃいましたように、おぼれて手を差し伸べている人に日本の国家は何もしないのかと、こういうことだと思うんです。  歴代政府、そしてまた小泉、私は軟弱外交だと、こう思っておりますが、そういうことについて、やはりこの脅しに、向こうの脅しに今は乗っているんではなかろうかと、こういう思いがいたすわけですが、御夫妻にまずお伺いをしたいと思います。
  21. 横田滋

    参考人横田滋君) 皆様がおっしゃいますように、一国でやっても効果が薄いということはある程度言えることだと思いますけど、しかし、効果がないということは絶対ないと思います。そして、国会国民の意思を反映して、万景峰号等の船舶を止める法律を作ったにもかかわらず、そういった制裁を、条件付ではありますけれども、行わないということを再訪朝の際に早々と発表したりするということは、やはり外交交渉としては余り望ましいことでないと思っております。  やはり、そこで一遍に、息の根を止めるということは難しいかもしれませんけれども、しかし、船を止めるだけでも相当大きな効果があると思います。そして、拉致をした人を返すことによって北朝鮮のいろんな秘密が外に漏れるというようなマイナスもあるかもしれませんが、しかし、経済制裁を受けるということのマイナスと比べてみれば、やはり拉致の人を返すことによって経済制裁を解除してもらいたいという、私出てくると思いますので、私たちは一日も早く経済制裁発動お願いしたいと思っています。  ですから、最近、五月、六月は万景峰号は月に三回ずつ、それからそれ以降は月に二回ずつの入港が予定されておりますが、しかし、今の保険の問題というのは制裁でなくて、やはり港を油で汚した場合の保険であって、それを、保険を掛ければ止められないというのがやっぱりもう実態で、幾ら岸壁で入港反対と言っても効果はありませんので、それはやはり政府が法律によって船を規制していただきたいと思っております。
  22. 横田早紀江

    参考人横田早紀江君) そうですね、小泉総理の考えていらっしゃることが私たちには分からないわけです。理解ができません。  そして、対話圧力と、北朝鮮に対しては対話が必要ですとおっしゃるのなら、日本の中でのこういった私たちの者にも対話をしていただきたいし、そして、どうしてこうなのか、どうして発動をしないのか、いろんなことが、お考えがあると思うんで、そういう細かいところをきちっと教えていただければ納得ができるかもしれないという思いはあります。けれども、やはり本当に悪いことを平然としていることが世界じゅうに明らかになっている国に対して、それに対してはっきりとした態度を示さないということは、本当に日本にとってもマイナスのことではないかと思っておりますので。  父親ならだれでも自分子供をかわいがりますけれども、本当に悪いときは殴り飛ばしてでもしかるのが本当の父親だと思っていますので、そのような一番根源的な人の大切なところを発揮ができていないんじゃないかなという思いがいつもいたしております。
  23. 広野ただし

    広野ただし君 小泉さんは、五人の拉致被害者が戻ってきた、そしてその家族も戻ってきたという一定の成果を言われるわけですが、荒木さんも先ほどおっしゃいましたように、特定失踪者を含めて全体が解決されないと、これは本当に日本の主権が守られた、私たち国民を守ったということには全くなっていないんだろうと私は思うんですね。そしてまた、ほかに、核実験の準備はする、ミサイル発射実験はする、そしてまた武装工作船は来る、こういうことをやり、また昨年は、遺骨といわれるものを提出して、それが正に捏造のものであると。先ほどもおっしゃいましたけれども日本の国家がばかにされていると、こういうことだろうと思うんですね。  それに対して、なお、国家の意思としての経済制裁発動しない、こういう国というのは何なんだと私たちも非常な怒りを持っておるわけですが、荒木さんに改めてお話を伺いたいと思います。
  24. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 今、国会、郵政民営化の問題で大変騒がしくなっているわけですが、私ども見ておりますと、小泉総理があの郵政民営化に懸ける情熱の十分の一だけでも懸けていただければ、恐らく日本の国力からして拉致問題は簡単に解決するのではないだろうかというふうに思っております。  よく私、例に挙げるんですが、例えばアメリカ人がキューバに拉致をされたとして、アメリカの政府から、我が国は国内事情からいって直接手が出せない、何もできないと、日本助けてくれというふうに言われたら、我々は一体どういうふうに反応するかと。それはまずあなたのところでやってもらわなきゃという話に当然なるわけでございまして、幾らアメリカ政府拉致問題で協力してくれるとは言ったとしても、これはあくまでやはり他人事でございます。この問題はあくまで日本の国家主権にかかわる問題でございますので、そこのところをクリアをしないと、問題は絶対に解決できないであろうというふうに思います。  しかし、日本の世論、そして国会でこうやって御熱心に取り組んでくださっていることがやはり実を結びつつあると思いますので、更に力を尽くしていただいて、政府是非動かしていただきたいというふうに思っております。  私、この国の国力からすれば十分にこの拉致問題というのは解決できると思います。北朝鮮日本の国力の差、国際的な信用の差、様々な能力の違いから考えて、決してこの問題は解決するのは難しくはないと思っておりますので、要は、その覚悟を持つかどうかということに懸かっていると思っております。
  25. 広野ただし

    広野ただし君 特定失踪者のことになりますけれども、先ほど、田中実さんが認定をされて十六名認定ということでありますけれども、なおこんなにたくさんの方々拉致を受けたおそれがあるということでありますから、私は、私自身も、もう三けたの方々、数百人の方々拉致被害を受けていると、それをもっともっと積極的に認定をしていく、このことは決議の中にも入っておるわけですが、なかなか認定が進まない。しかも、それはどうも相手国との協議に全部出してしまうと交渉がますます、交渉といいますか、それがますます難しくなるからというようなおもんぱかりでもってやっていない節が見えるわけで、その点どのように思われますか、荒木さん。
  26. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 安否確認をするということであれば、名前を出すこと自体に何の問題もないわけでございまして、私ども、今現在我々が公開しているリストが約二百三十ぐらいございますが、まずこれだけをともかくぶつけてくれと。それは別に、拉致したんだろうと言わなくてもいいから、こういう人たちがいないかということでぶつけてもらいたいということも言っております。ですから、認定の問題をクリアするのと同時に、その以前の段階でも北朝鮮側に問い掛けるということはまず十分にできる。そこからやっていただきたいと思っております。
  27. 内藤正光

    委員長内藤正光君) 時間が来ておりますが。
  28. 広野ただし

    広野ただし君 政府対応が非常に歯がゆくて、また頼りない、そして本当に御心配でたまらないというのが拉致被害者の、救う会の皆さん、家族会の皆さんの思いだろうと思いますが、私たちは御両親の訴えをしっかりと胸に受け、そしてまた、皆様が本当に毅然たる態度で今まで対応してきておられるのに本当に胸打たれる思いであります。  横田さんの最愛のめぐみさんが一日も早く帰国をされますように祈りますとともに、私ども全力を尽くして、また民主党、また心ある政治家を中心に頑張っていきたいと思っておりますので、それを訴えましてごあいさつとさせていただきます。  本当にどうもありがとうございました。
  29. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 公明党の木庭健太郎と申します。  今日は横田さん御夫妻、また荒木さん、率直な御意見をこの参議院の場に届けていただきまして、私どもも本当に有り難いと思っておりますし、またこれを受けての対応をしなければならないと感じながら、もう一点は、横田早紀江さんがおっしゃったように、何度でもいろんなチャンスがあったではないかと、そのチャンスのたびにどれだけものが動いたのかという厳しい御指摘については、胸に刻み付けてこれからの問題に取り組まなければならないということを痛感をいたしたということを申し述べておきたいと思います。  まず、家族会代表横田滋さん並びに荒木調査会代表のお二人にお聞きをしたいと思います。  その点、何をお聞きしたいかという点につきまして、確かにこの問題はおっしゃるように日本北朝鮮という二国間の問題である。この中でどうやっていくかということがもちろん大事である。ただ、それとともに、やはりこの拉致問題というのが何かといえば、国際的な人道問題であり人権侵害の問題である、この視点を持つことも私は大事な点だろうと思います。  もちろん、日本としてやらなければならない点が欠けていることを認めながらも、その一方で、やはり家族会の皆さんがやっていらっしゃるように、例えばアメリカに対する働き掛け、国連に対する働き掛け、先ほどジュネーブでのお話もありましたが、そういった点もやっていかなければならないだろうと、こう思うんです。  私がやっぱり心配するのは、例えばこの北朝鮮の核問題が緊急な対応になったときどうなるか。国際社会が核の問題へぐっと移行したときに、この拉致問題というのがどこかへ置き去りにされるようなことがあっては絶対ならないわけであって、その意味では私は、この拉致問題というこの大きな問題が、単に日朝間の問題だけでなく、国際問題として各国に認識をしていただく努力というものを我々も家族会同様していかなければならないし、この点について、つまり六か国だけでなく、言わば、EU諸国も含めてなんですけれども、こういったところの働き掛けの問題も強めていくべきだと感じておるんですけれども、この点について日本政府対応等についてもお気付きの点があるなら、横田滋さん、荒木さん、意見を述べておいていただければと思います
  30. 横田滋

    参考人横田滋君) 拉致問題は、先ほど荒木さんが話されましたように、やはり基本的には二国間の問題だと思っております。ですから、外国に仮にお願いするにしても、自分たちがまず制裁して、それで効果がないからそちらも協力してほしいということなら可能ですが、先にやってほしいというようなことはもうとてもできる問題ではありません。  そして、今委員がおっしゃいましたように、拉致事件というのは、国から見れば主権の侵害ですが、やはり究極の人権侵害でもあるわけです。拉致によって、憲法で保障されています人権とか、世界人権宣言によって保障されている人権というのがすべて侵されておりますし、それからめぐみのような十三歳ですと、国際児童の権利条約、これは北朝鮮も入っているんですけれども、そういったことに、親から引き離してはならないとか、いろんなことがすべて侵されているわけですから、やはり人権問題として世間に訴えていくという方が非常に、政治問題としてではあるんですが、やはり人権問題として訴えていくという方が効果が大きいと思います。  しかし、やっぱり国際世論というのの力も大きいわけでして、先般、私のところのマンション、四百世帯ぐらいなところですが、そちらの方が、是非拉致問題の解決に協力してほしいということで、主な十か国の首脳に対しての署名簿を作りまして、各国の大使館を回りました。韓国大使館だけは担当者に書面をお渡ししただけですけれども、それ以外のところはやはり公使級の方がほとんど出てこられて、協力するということをおっしゃってくださいましたので、やはり同時に国際的に北朝鮮に対して圧力を掛けるということは大事だと思います。例えばフランスなんかですと、国交がないわけですけれども、それでも国連の場なんかでは顔を合わせる機会があるから、そういった機会をとらえて拉致解決の必要性を訴えていくんだとおっしゃっていましたし、それぞれの方、非常に好意的な感じを受けましたから、これからは、国内の問題がどうしても中心になりますけれども、国際的にもいろんな形で訴えを行っていきたいと思っております。
  31. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 今のこの人権問題、人道問題という視点は、これも極めて重要な視点だと私も思っております。  北朝鮮拉致というのは日本人だけではございませんで、現在、韓国政府の発表で、朝鮮戦争の休戦以降、約半世紀の間に拉致をされ、いまだ戻ってきていない韓国人は四百八十六人、朝鮮戦争の休戦までの三年間に連れていかれた韓国の民間人は八万三千人以上でございます。それから、今分かっているだけで、一九七八年にレバノンで女性が四人、マカオで中国人女性が少なくとも二人、タイ人の女性が一人というようなことぐらいまで分かっておりまして、恐らく世界的な規模で拉致をやったというふうに考えております。  これに対しまして我々は、横田さんの御両親を始めといたしまして、韓国の拉致被害者家族方々とは連携を取りながらやっております。韓国の場合は更に日本よりも御家族の立場は悲惨な状態でございまして、韓国の拉致被害者の御家族の中には、もう日本の国籍を取りたいと、日本人になればこうやって一生懸命やってくれるからという思いをされる方が少なくございません。  外国から見れば日本はそれだけの能力がある国というふうに当然見えるわけでございまして、なおかつ、また北朝鮮の人権問題というのは拉致だけではなく、言われております強制収容所の問題とかあるいは公開処刑の問題とか様々な人権問題がございますので、やはりこれを包括的にアピールするということは、これはいわゆる日本人拉致という個別の主権の問題と別に国際的に極めて理解が得られやすい問題であり、なおかつ北朝鮮にとっては逃げ場がない問題でございますので、この点については日本政府も大分動いてくれているというふうに聞いておりますし、また国会でも視察等々の折にいろいろな形でアピールしていただいているということは聞いておりますが、やはり更に進めていただき、これによって北朝鮮を包囲をしていくということに持っていくことがやはり必要不可欠であろうというふうに認識しております。
  32. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私の持ち時間は、もうほぼ終わりでございます。  横田早紀江さんにもう一度何をお聞きしたいかというと、もう今はとにかく一つの方法は経済制裁しか道は残されていないというお気持ちを十分聞いたつもりですが、さらにもう一度、間もなく座込みもしなければならないという事態になっている、私たちもその思いをきちんと政府に伝えたいと思いますが、その強い決意をもう一度述べていただければ有り難いと思います。
  33. 横田早紀江

    参考人横田早紀江君) やはり、いろんなことを今までやってまいりました。本当にもうあらゆることを、デモをしたり署名活動、それから講演会はもう全国三県を残すだけ、あと全部回らせていただきましたし、小さなところから大きな講演からあらゆるところで聞いていただきまして、ほとんどの方が分かってくださるようになりましたけれども、それでも一番やってくださるのは、やはり政府の動きでなければできない問題ですから、私たちはできるだけのことをやってきました。その中で、まだお願いしてもしても発動しないという態度でいらっしゃるから、何とか強い姿勢を示してくださいという意味で、この制裁をしてくださいということを形で表してくださいとお願いする意味で座込みをしなければいけないと思っています。
  34. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  35. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  大変貴重なお話、ありがとうございました。  お話を伺いまして、拉致という国家的な犯罪に対して、文字どおり、めぐみさんを取り戻すために、そしてまた、そのほかの拉致被害者を取り戻すために奮闘されてきたその活動、そしてそのお気持ち、本当に痛切な思いで聞かせていただきました。  私は、第三回実務者協議の記録の一部ですけれども、読ませていただきました。それを読みますと、横田めぐみさんの生活した招待所についてというと、これは秘密警察、特殊機関の秘密になっていて答えられない、そういう答えが書かれています。そしてまた、臨時カルテについても、特殊機関が持って帰ってしまったと。また、めぐみさんの拉致が突発的なものだったという、そういうことに関連して、ならば本来業務の計画書を出せというと、これは特殊機関の秘密であって答えられない。ことごとく特殊機関が壁になっているというふうになっていると、そのことに気が付きます。そして、拉致を実行し、その特殊機関というのが今なお、現時点で北朝鮮のいう調査を妨害していると、その調査を管理下に置いているという驚くべきことが言われています。  そこでお伺いしたいんですけれども拉致問題の解決のためには、やはりここの特殊機関の壁を突破する、このことがどうしても必要だと思うんですけれども、その点について、御夫妻にお伺いしたいと思います。
  36. 横田滋

    参考人横田滋君) 私たちは、北朝鮮というのは金正日の命令があれば何でもそれが通るのかと思いましたんですが、再調査を約束しても、実際やろうと思うと、なかなかその壁が厚くてできない。当時の人が死んでいるというふうなこともあるらしいですけど、やはり根本的には、もうそれは本当に分かっているのにもかかわらず、何とか言い逃れをして、このままうやむやに終わらせたいという気持ちがあるのではないかと思っております。  それで、やはりこれは北朝鮮の制度ですから、日本側がそれを崩すとかといっても、それはちょっと不可能なことかもしれませんですけど、やはりいろんな矛盾点とかそれから疑問点等を日本側もたくさん今回も出しておりますが、それを何度も速やかに回答しろという形で催促していくしかないと思いますし、それでも応じなければ、やはり制裁というような形で日本姿勢を示すしか方法はないと思っております。
  37. 横田早紀江

    参考人横田早紀江君) 私は、特殊機関というのは何度もいろんなことで耳にはしておりますが、本当の意味でその特殊機関がどういうふうなものであり、どんなふうな働きをし、どれがどこまでが真実なのかということは全く承知しておりませんので、分かりません。
  38. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 私たちは、北朝鮮側態度いかんによっては経済制裁も選択肢の一つという、そういうふうに考えております。  ただ、やはりそういう、本当に拉致被害者を取り戻すためにも、本当に権限を持った強力な相手ときちっとした交渉をしなければならないと。いずれにしても、対話交渉がなければ物事は解決しないと。それと経済制裁関係となると思います。  そこで、端的にお伺いしたいんですけれども経済制裁とそして強力な交渉という、その関係についてどうお考えになっているのか、横田さん御夫妻にお伺いいたします。
  39. 横田滋

    参考人横田滋君) 経済制裁というと何か北朝鮮いじめみたいな形をお持ちの方がもしかしたらいらっしゃるのかもしれませんですけど、やはりそれはもうあくまでも手段であって目的ではありません。ですから、例えば交渉によってとか、もっといい方法があるのであれば、是非我々としても政府にそういった方法で解決していただきたいと思いますけど、じゃ何があるかというと、結局、今のような不誠実な態度であれば、ただもう時間だけが過ぎて、その間には核の開発を進めていくというようなことになりますから、やはり私は、経済制裁というのは望ましいことではありませんけど、それをしないで解決できる方法がなければ、やはりやむを得ないと思っております。
  40. 横田早紀江

    参考人横田早紀江君) 経済制裁というと非常に何か堅く感じますが、北朝鮮の本質というのは、本当に物すごく二重構造というか、何重構造といいますか、経済を支援をした場合にも、それが本当に今テレビでよくあるような、苦しんでいる子供たちとか郊外に置かれている人たちにそれが本当に与えられていないという現状があります。  そして、ほとんどがそれが軍備に使われたり、そして平壌にいらっしゃる多くの高官たちにそれが回ってしまっているという状況がもうはっきりと表れているような状況の中で、そのようなことを幾らやっても、そのような実情がずっと長引いていくだけであるということを私は思っておりますので、やはり制裁ということは、日本姿勢という意味で、日本が怒って、本当にもう許せない、この拉致問題、こんな本当に悲惨な人生を送らせられている、このようなことが許せないんだと、みんなが怒っているんだという姿勢を示すという意味での経済制裁発動ということで私は思っておりますので、本当に、何て言ったらいいんでしょうかね、今までも何度か交渉をしてくださった、過去、金丸さんの時代とか、いろんな方が何度も北朝鮮を訪れて、議員の方々がいろんな形で交渉をしてくださいましたけれども、本当にその資質というんですか、お一人お一人の資質というものが問われなければ、どんなに何度交渉をしても本当の意味での良い交渉ができないんではないかと私は思っております。
  41. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 荒木参考人にお伺いいたします。  兵庫で失踪した田中さんの事案についてですけれども警察庁は四月に拉致容疑事案として判断したわけですけれども、先ほどもお話がありましたけれども、この一つの具体的な事案についてどのように時間を要したのかということについてお話しいただければ幸いです。
  42. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 田中実さんにつきましては、これが世に明らかになりましたのは、平成九年一月の月刊文芸春秋でございます。張龍雲という、もう亡くなりましたが、在日朝鮮人の方が元北朝鮮の工作組織の中におりまして、この方が自分の仲間がやったということで自供したことが、告白をしたことがその発端でございました。  警察庁が四月二十五日に発表した文書の中では、これについて警察はこの文芸春秋以前から分かっていたというようなことを言っております。これが本当かどうか分かりませんが、ともかく、この時点で明らかに出て、そしてもうこのときから拉致は間違いないと。実際にかかわっておりました二人の在日朝鮮人も、田中実さんが北朝鮮に行ったことについては認めておりまして、ただ、自分が実行犯でないというふうに言っていただけでございますので、間違いがなかった事件です。  ですから、逆に言うと、何であのときに出てからこれまで時間が掛かったのかということは非常に疑問を感じますし、今何でこういうふうな形で出してきたのかということも、そこにやはり恣意的なものがあったのではないだろうかと。出そうと思えばもうはるか前に出せていたのではないかというふうに認識しております。
  43. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 最後に、御夫妻にお伺いしたいんですけれども、本当にこの間の粘り強い御努力でかなりの事実が分かってまいりました。なお明らかにされて拉致解決をということになっていくと思うんですけれども、この間、いろんな形で話を聞かれてきたと思います。もし可能ならば、この間聞かれてきたことで、現時点述べても構わないようなことがありましたら、そういうことについて、私たちこれから問題として更に取り組んでいく上で有益と思われる事柄についてお話しいただけたらと思います。
  44. 内藤正光

    委員長内藤正光君) お二人からですか。
  45. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 はい。時間の範囲で。
  46. 内藤正光

    委員長内藤正光君) 時間もございませんが、横田滋さん、どうぞ。
  47. 横田滋

    参考人横田滋君) 運動の間にいろんな話を聞くということは、政治家の方から伺うこともありましたし、それから帰国した人からも聞いたこともありますけど、やはりいろんな、めぐみについてはうわさのようなものがたくさんありまして、週刊誌等もにぎわしておりますが、それを前の支援室、現在の調整室なんかに確認しましたところ、それは、いや、それはすべて事実が、事実でないというようなことを伺っております。  ですから、情報としていろんなことが言われていますけど、それがどの程度のことが信用できるかということになると、私たちもよく分かりませんし、やはり公式的なこと以外には、外務省等からも、何といいますか、情報みたいなものは何も得ておりません。一般の方と同じぐらいの情報しかありません。
  48. 横田早紀江

    参考人横田早紀江君) ただいま主人が申しましたように、お帰りになった方からお聞きしたようなことは、大抵テレビとか新聞とかに書かれていることがほとんどでありまして、それ以上細かいことは何も聞いておりませんし、外務省とか、それから政府筋、そして警察の方に、おっしゃったことと照らし合わせて、どれを聞いていないとか、これは聞いていないとかということも分かりません。全然照らし合わせておりません。
  49. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 ありがとうございました。
  50. 内藤正光

    委員長内藤正光君) 以上で横田滋さん、横田早紀江さん及び荒木さんに対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様方に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして御出席を願い、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日賜りました御意見、お訴え等はしっかりと受け止め、一日も早い全面解決に向け本委員会としても頑張っていく所存でございます。  どうもありがとうございました。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  51. 内藤正光

    委員長内藤正光君) 速記を起こしてください。  次に、御意見を伺います参考人を御紹介をいたします。  静岡県立大学国際関係学部教授伊豆見元さん、拓殖大学海外事情研究所長森本敏さんの二名の方々でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところを本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人皆様方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査に生かしてまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  それでは、議事の進め方について申し上げます。まず、伊豆見さん、そして森本さんの順序で、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  また、御発言の際は、その都度委員長の指名を受けることになっておりますので、よろしくお願いをいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず伊豆見さんからお願いをいたします。伊豆見さん、どうぞ。
  52. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  本日は、当委員会にお招きをいただきまして大変光栄に存じております。  十五分程度ということでお時間をちょうだいしておりますが、私は、昨今の六か国協議をめぐる動きを少し中心にいたしまして、北朝鮮の核問題につきまして私が考えておりますことの一端をここで述べさせていただきたいと思います。  御案内のように、六か国協議、六者会合が再開するのではないかという期待が出ております。六月六日に、いわゆるニューヨーク・チャンネルと呼ばれておりますアメリカと北朝鮮との間の言わば外交接触の場で北朝鮮側が六か国協議へのコミットメントを表明したと。しかし、いつ六者会合の場に戻るかは特に示唆するところはなかったというのがアメリカ側の照会でありますが、少なくとも北朝鮮が六か国協議のプロセスについてのコミットメントを確認をいたしましたので、再開も可能ではないかという見通しがたくさん出てきておるところかと思います。  しかし私は、これを北朝鮮の観点に立って考えるならばという条件を付けてみますと、やはり難しいだろうと。北朝鮮が六者会合、六か国協議の場に戻ってくることは極めて難しいというふうに思っております。  大きな理由として二つ御指摘できると思いますが、御案内のように、現在は関係各国すべてが六か国協議を通じて外交的、平和的にこの北朝鮮の核問題を解決しようと、アメリカ・ブッシュ政権もそういう立場でありますし、したがって、簡単には今六か国協議の枠組みというのは崩れないような状況になっています。  そういう中でなかなか開けないまま一年が過ぎようとしているわけでありますが、しかし、開催できないということは、六か国協議が崩壊するという話ではないわけでありまして、むしろ六か国協議を再開しない方が、しない方がというのは言い過ぎかもしれませんが、六か国協議が再開されなくとも、少なくとも当分の間、これが数か月か半年か、あるいは一年近くになるかはよく分かりませんが、当分の間は六か国協議の枠組みは残ることになる。これは、私は恐らく確実であろうと思いますし、北朝鮮の目から見ましても、六者に出ていかない方が実は六者の枠組みは残るんだという考え方は非常に強くあるであろうと思います。  なぜ六か国協議は開かれなくても枠組みが残る、あるいは六か国協議というものが完全に終わりにならないのかといえば、まだまだ関係各国は北朝鮮を六か国協議の場に戻す、あるいは六か国協議の場で外交解決を図るための努力を尽くしていないと、まだまだやれることがあると、やるべきこともあるという立場にあるからだというふうに思っております。  したがって、ブッシュ政権も、仮に今回北朝鮮がすぐ六か国協議、第四ラウンドの第四回会合に出てこないということになりましても、すぐさま国連の安全保障理事会にこの問題を付託するということは私はないと思っております。国連の安全保障理事会に持っていく前に中国にもっと役割を果たしてもらう。端的に言うならば、中国に影響力を行使せいと、圧力を掛けよと、そういう努力をアメリカは最優先させると思いますし、最近では、南北間の政府間の対話、協議というものもまた再開されましたので、中国に加えて韓国にもそういう努力北朝鮮圧力を掛け北朝鮮態度を変えさせるという、そういう努力をしばらくしていくであろうと思います。  そういう努力がすべて功を奏さなかったと、万策尽きたという形になれば、そこで初めて国連の安全保障理事会に持っていくという話になるんであろうと。これは今の段階で国連の安全保障理事会に持っていきましても、ただ話合いが続くということしか想定できない。国連の場で圧力北朝鮮に掛けていくような方向に持っていく、あるいは最終的な経済制裁というような形に持っていくということも、現時点では可能性はほとんどないと断定できると思います。ともかく、中国、韓国はそういう方向に行くことに反対をしておりますし、中国が反対している限り、国連の安全保障理事会でそのような話が進むことも考えられないということになります。  したがって、北朝鮮の観点をもう一度申し上げますが、六者会談、六か国協議というのは、今回出ない方が逆にその枠組みはしばらくは残るんだということがあると。一方、六か国協議に参席した場合にどうなるかということでありますが、むしろ参席しますと、今度は協議が完全に決裂して六か国協議そのものに終止符が打たれるという可能性が相当程度あります。あるいは、そのリスクが極めて高いというふうに言えるであろうと思います。  これはもはや、六か国協議の中で結果を出すということについての、どうやって結果を出していくかという方法あるいは課題等について、もうアメリカの考えていることと北朝鮮の考えていることがもはや天と地の差があるほどの開きが出てきたということであります。  御案内のように、アメリカはもちろん北朝鮮の核を完璧に二度と後戻りしないように、しかも検証可能な形で廃絶する、廃棄、解体させるということに相当な重点を置いております。そして、そのために、昨年の第三回目の会合、ちょうど六月でございましたが、昨年の六月の第三ラウンドの六か国協議の場でアメリカは相当細かい、かつ具体的な解体のための提案を出しました。これは、本当にそのとおりに実行するんであれば、まず確実に北朝鮮の核プログラムというものは廃棄、解体に持ち込めるだろうと思える程度の詳細かつ具体的なものであったようであります。といいますのは、もちろん全文は公開されているわけではありませんので、我々はそれを手に取って見るわけにはいきませんが、しかし相当具体的で詳細なものであることは間違いないと。ところが、それでは北朝鮮はもちろん応じるわけがありませんので、いわゆる見返りの対応措置というふうに、コレスポンディングメジャーズというふうに呼んでいますが、対応措置をこちら側もとっていくことになります。まあ一種の見返りでありますが。その見返りの部分北朝鮮の目から見るとどうしても納得できない。  アメリカの提案によりますと、一番最初の初期段階におきまして、北朝鮮が明確に核の廃絶ということにコミットメントをするその段階で、六か国協議のほかのメンバーは北朝鮮にある種のエネルギー支援、まあ重油支援になると思いますが、それを行うということになりましたが、この時点でアメリカはそこに参加しないということになっています。ですから、最初に北朝鮮が動き出すときにアメリカは一切参加しないという形になっている。そして、第二段階以降、実際の実行段階でありますが、実行段階というのは核の解体が進んでいく段階に入りますと、アメリカがそれに応じてある程度見返りに参加して出していくということになりますが、これが非常にまだ茫漠としたものであるということが一つ。二つ目に、ロードマップの形を取っておりません。すなわち、北朝鮮が何かある行為に出る、すなわち核の解体のある具体的なステップを踏んだときに、アメリカから一体どんな見返りがあるのかというのが組合せにはなっていないわけですね。  ですから、こういうのは北朝鮮の目から見ますと、一方的に自分たちの核解体が進んでアメリカから何の見返りが得られないかもしれないと、下手をすると一方的に武装解除を迫られ、あっと気が付いたときには自分は丸裸になっているが、とても自分の安全も確保できなければ物も得られないという、そちらの方向に行く可能性があるということでありました。  実は、過去一年、北朝鮮はそれをいろんな形でアメリカに修正してほしいと、すなわち第一段階で少しでもコミットしてほしい、あるいは第二段階以降の実行の過程になってきて、履行の過程になってきた場合には、そこにロードマップのようなかちっとした道筋を付けてほしいということをいろんな形で要求してきましたが、ずうっとはねのけられてまいりました。今のブッシュ政権、第一期目もそうでありますが、第二期目ももとよりそういうものを聞き入れるという形にはなっておりません。ですから、そういうのがアメリカの立場。で、北朝鮮の要求は全然聞いてもらえない。  一方、北朝鮮はこの一年間、もちろん核開発を継続して進めてまいりましたし、なおかつそれを今後も進め、拡大しようとしております、御案内のように。二月十日に外務省声明が出ました。これを一般によく核保有宣言という言い方をすることがありますが、私はそれは極めて不適当な表現であると。保有ではなくて、核を継続して拡充していこうと、核兵器を継続して拡充していきたいという宣言を彼らは行ったわけでありまして、実際にそれにのっとった方向に今動いております。  そうしますと、北朝鮮にしてみますと、売値が高くなったということであります。昨年の六月と一年たった現在の六月では全く状況が異なる。昨年北朝鮮が解体、廃棄しなければいけなかった核プログラムと、現在北朝鮮が、あるいは将来北朝鮮が廃棄、解体しなければいけない核プログラムの中身は全く違うものになりつつあると。要するに、たくさん彼らは譲らなきゃいけないという話になります。要するに、核開発をどんどん進めたということはそういうことであります。そうしますと、譲らなきゃいけないものが増えたわけです。まあ増えたというか、自分で増やしたんですが。増やしたわけですから、見返りは当然それに合うほど多くなきゃいかぬという話です。昨年六月の段階でアメリカが、あるいは我々国際社会が対応措置として考えている見返りでは不足なわけでありますので、すなわち北朝鮮は要求をつり上げたわけであります。  これがまあいろいろ言われております、軍縮会談にしたい、我々はもう核保有国だからそうやって認めてそれなりの扱いをせよ、あるいは対等の立場で交渉をせよとか言っているのは、すなわち自分たちの売値を上げたという、つり上げたという話でありますから、そうしますと、この二つがぶつかってうまくいくであろうという見通しはまずないわけであります。したがって、六か国協議が再開される、これがぶつかる、どうしようもないなと、六か国協議という場ではとても北朝鮮の核開発は止められるかどうか分からないなという雰囲気になる可能性が相当程度ありますので、したがって六か国協議はむしろここで終止符が打たれる可能性がある。  しかし、誠に皮肉な話でありますが、六か国協議に北朝鮮が出てこない方が六か国協議は残るけれども、出てきたら最後、終わりになるかもしらぬという話ですし、終わると、当然のことながら、これが国連の安保理に行くかもしらぬということでありますので、北朝鮮は恐らく、そこら辺を計算いたしますと、私は、今回、六か国協議に応じてくる可能性は少ないという、まあほとんどないと、まずないというふうに思っております。  そうしますと、結局は、当面、しばらくの間、ぐずぐずっとした状況が恐らく続くんであろうと。六か国協議も開かれないけれども、国連の安保理に行くわけでもないという。周辺では中国も韓国も一生懸命外交努力はしているというような状況。一種の現状維持であります、ステータスクオでありますが、現状維持がそのまま続くというその公算が、少なくともまあ半年程度は私は一番それがあり得ると、まあ来年になるまではそういうふうになるんではないかと思いますが。  その間も問題は、御案内のように、北朝鮮の核開発は粛々と進んでいく、彼らの売値は更に更に高くなっていく。既に北朝鮮は、この二年間稼働をしてまいっておりました五メガワットの黒鉛型の原子炉、まあ実験炉、小さいものではありますけど、それを稼働を止めました。そこから使用済みの燃料棒八千本以上を引っこ抜いたと、引き抜いたということもはっきりさせました。これでこれを再処理に掛けますと、更にさてどのくらいできるかでありますが、最低二、三発分、十五、六キロ、あるいは多ければ三、四十キロぐらいの兵器級のプルトニウムを彼らは更に抽出できるという状況になっている。  その五メガワット関連でいいますと、そういう再処理もありますし、さらに、これはもう相当近く、直近にそうなると思いますけど、彼らはさらに燃料棒、新しい燃料棒を再装てんしまして、また五メガワットを稼働させると思います。で、稼働させて、二年ぐらいこれを稼働させて燃焼させていると、また二年後には全部、八千本引っこ抜いて、かなりの程度の兵器級プルトニウムが手に入る段階へと進められるということになる。  ですから、五メガワットで進めている核開発がありますし、二つ目には、建設途中で工期を中断しておりました五十メガワット、さらに二百メガワットという、電力の規模でいうとそれだけになりますが、プルトニウムをもしそこから抽出するんであれば、また量が飛躍すると、拡大するというものの建設も始めると、再開するということを今非常に強く示唆しておりますが、恐らくこれは現実のものになるであろうというふうに思います。  まあ、ただ、五十メガワットであっても最短で二年ぐらいかと。北朝鮮は二年以内ぐらいに何とかしたいと言っているようでありますが、まあ二年として、二年でできて、そこから原子炉を動かすと、更に二年ぐらい掛けないと燃料棒を燃焼させられない。それから、それを引っこ抜いて、引き出してきて再処理に掛けてプルトニウムを作る、また一年という話ですから、これはまあ最短で恐らく五年ぐらい掛かりますので、五年掛かるということは、すなわちブッシュ政権の間には実は北朝鮮のプルトニウムは増えないということですが、しかし核の開発はどんどん進む。  さらにもう一つ、三番目には、秘密裏に彼らが進めておりますウラニウムの方でありますが、ウランの濃縮プログラムによる核開発というものも、当然これも進んでいると考えるべきであろうということであります。そうしますと、継続して現状維持を続けるという意味では、当面はこれでいいわけでありますが、少し先を見ますと、問題はより困難になりますし、危険度は更に増すということになります。  例えば、半年あるいは一年、数年たってこの問題を外交的に解決しようと、そのチャンスがそのときまで残っているかどうか分かりませんが、そうだとしますと、少なくとも売値が物すごく高くなりますから、それを北朝鮮に放棄させるためのコストは物すごく高くなる。後になればなるほど、我々が支払わなければならない見返り、コストというのは相当高くなると。これはもう明らかでありますし、そのコストをうまくみんなで分担して調整できるかどうかも余りよく分からないような話になります。  あるいは、交渉の取引、交渉、取引というのが不備に終わると、外交的にうまく解決できなかった場合には、北朝鮮の核開発はどんどん進んで、最後は核ミサイルというものを手にした北朝鮮と我々はどう共生するかと、どう一緒に生きていくかという問題にどうしても直面する。その際どう対応するのかと。日本も核武装を行うべきなのか、あるいはアメリカのそのエクステンデッド・ディターランスですか、核の傘あるいは拡大抑止というものでアメリカに守ってもらうのか。そのアメリカの核の傘の有効性みたいな問題も更に考えなきゃいけないと思いますし、その際、例えば非核三原則というのでよろしいのかと、持ち込ませないというその三番目の原則をそのまま維持していることが意味があるのかどうかと。  そういう問題にも我々は直面するということになりますし、あるいは北朝鮮の核開発がうんと進んだ段階で北朝鮮が不安定、混乱の状況に追い込まれた場合にどうなるかと。今度はたくさん持っている北朝鮮の核が外に流出するかもしれません。拡散する。拡散というのは、もちろん北朝鮮の核に対抗するために別の国が核兵器開発に走るというのも拡散ですが、北朝鮮の大量の核兵器が外に流出していくというのもありますし、とりわけ、それは少ないときにはその心配というのは相対的に小さいわけでありますが、量が多くなれば、流出というのは、北朝鮮はやっぱり売っ払うかもしらぬということを当然我々は考えなきゃいけないわけですし、それが例えばアメリカの一番の懸念であることは御案内のとおりでありますが、アルカイーダのような国際的なテロ組織の手に渡った場合にどうなるのかということも我々が考えなきゃいけないということであります。  したがって、今、北朝鮮の核問題というものが私は当面みんなで先送りしようとしている状況にあると思いますし、実際先送りするんであろうというふうに私は予測をしております。しかし、そういう状況で果たしてよろしいのであろうかという大変強い疑問を持っております。現在、我々には危機感は明らかにあるでしょうが、切迫感は全くないというように私は思います。危機感に加えて切迫感を持ち、今すぐ直ちにこの問題をできるだけ早く解決するための処理、対応ということを考える時期に来ているのではないかというふうに思っております。  時間を若干超過いたしましたが、ありがとうございました。
  53. 内藤正光

    委員長内藤正光君) ありがとうございました。  続きまして、森本さんにお願いをいたします。森本さん。
  54. 森本敏

    参考人森本敏君) ありがとうございます。本日、この委員会にお招きいただきまして、ありがとうございます。  私は、朝鮮半島の専門家というわけではありませんで、したがって私が今からお話しするのは、日本の安全保障という観点からこの北朝鮮問題、特に北朝鮮による拉致問題というものをある一定の視点で切ってみようと思いますが、結論を最初に申し上げると、結論については伊豆見先生ともうほとんど同じでございまして、伊豆見先生がお触れにややならなかった部分だけを取りまとめてお話をしてみたいと思います。  私は、防衛庁、外務省の仕事を経て今日の職にありますが、ずっと考えていることは、北朝鮮についてのあらゆる情報は本当だろうかということです。つまり、何が真実であり何が真実でないかということをどうやって検証できるのか、確かなのかということについては常に我々は疑いを持って見ないといけないということで、私は余りたくさんのことを信じるわけにはいかないと思います。  しかしながら、一つだけどうも確からしいと思っていることがあります。それは、北朝鮮の現在の一切の政策上の優先課題が金正日体制が生き残るというこの一点に絞られているということなのではないかと。例えば、その問題の核開発あるいはミサイル開発というのも、北朝鮮が述べているように、これは抑止力として開発しているのであり、自衛のためであるという説明が正しいのか、あるいはこれは単なる言い訳であって、実はバーゲニングチップとしてこのような開発をしているのだという説明も、ともに突き詰めて考えると、これは金正日体制が生き残るためであって、最終的な究極目標は一点に絞られるということなんではないかと思います。  どうも八〇年代から金正日の指導の下に始められた核開発はおよそ二十年の歳月を経ており、通常の国であれば、これが成功していないということであれば、これは開発に携わった人は恐らく多く処罰されるということであり、そういうことは少し考えにくい。したがって、何かしらの核兵器、これが仮に初歩的なものであれ、既に持っていると考えるのが周辺国の安全保障上の言わば最低条件なのではないかと考えます。  もしそうだとすれば、その核開発の結果として出てくる核兵器というものを北朝鮮はどう考えているかというと、間違いなく核を持って、それによって抑止をする。すなわち、大国アメリカが軍事的に手を出すということを防ぐ。つまり、北朝鮮が間違いなく核を持っているということを相手にコンビンスさせるということが必要で、コンビンスさせるために最も良い方法は、核実験をして核兵器を持っているということを世に示すということでありますので、可能性は、後でお話をしますが、低いのですが、しかし、低いという状況がどのように変化するかというと、結局はアメリカの対応次第なのではないかと思います。  私は、いずれの日にか北朝鮮が核実験をして核兵器の保有を世に示し、パキスタンのような核保有、つまり核兵器を現に持っているということを結果として認められると、暗黙に認められるという核保有国としてのポジションを目標にしているのではないかと考える次第です。  したがって、その意味において、六か国協議というのは何のために北朝鮮がやっているかというと、北朝鮮の側から見れば、自分たちの核兵器開発を削減しあるいは完全廃棄して、その見返りに何かを取るというのではなく、六か国協議に応じるあるいは応じる姿勢を示すということによって辛うじてアメリカが軍事的な対応をしないという安全弁、すなわち保険のようなものをここで担保しておくというために六か国協議に入るあるいは入るふりをするという手段を取っているのではないかと思います。  このことをより現実的に考えると、したがって六か国協議を通じて北朝鮮の核開発というものを完全に廃棄するというアメリカの目標が真に達成されるかどうかということについては悲観的にならざるを得ないと。もしそうだとすれば、一体アメリカの方は何を考えているかというと、少なくともこの枠組みを通じて北朝鮮を公の場に引き出し、常に対話の道を維持するというある種の信頼醸成措置として位置付けられているという可能性があるのではないかと思います。  北朝鮮が核実験をするかどうか分かりませんが、今の時点で北朝鮮が核実験をすると大変大きなそれは政治的、経済的リスクを負います。国連安保理で何らかの制裁を受けるという可能性もあり、場合によってはアメリカが部分的な軍事的対応をするという可能性があり、それを覚悟しないといけないわけで、そういう意味ではこのリスクは大変高いものだと思いますが、しかし、にもかかわらず、アメリカが本格的に軍事オプションを取るかもしれないというおそれを抱いたときは、間違いなく自分たちが核を持っているということをアメリカに示して抑止力を誇示するというために実験をするという手段が残されているのではないかというふうに思います。  核実験というのは、今日では多くが地下核実験で、地表でも水中でも宇宙でもできませんが、地下核実験は通常の場合、直径六メートルぐらいで深さは三百メートルから七百メートルの地下の施設を、非常に堅い施設を、高度な施設を造り、そこに核兵器と起爆装置と計測器を据え置いて核爆発を起こします。  こういう実験をした場合、当然のことながら地表に幾らかの放射能が散布されるという可能性はありますが、最も深刻な被害は地下水を傷めるわけで、したがって各国は広大な砂漠の真ん中でやるというのが通常の例であります。しかしながら、北朝鮮には御案内のとおり砂漠なるところがありませんので、北朝鮮の土壌で地下核実験をした場合、豊富な地下水を通って日本海にその放射能が出てくるという環境上の影響が深刻なものであるということは当然考え得ると思います。  アメリカの対応こそがこの場合重要なのですが、アメリカは、御承知のとおり、まだイラクに相当の兵力と経済力、財政力を投入し、ほとんどアメリカの政策はイラクに消耗し切っていて、その次のプライオリティーは恐らくイランの核開発をどのように防ぐかということであり、この二つの中東湾岸地域の問題を解決し、中東和平にめどを付けるまで北朝鮮に本格的に対応できる余裕はないということが現在のブッシュ政権の現実の姿ではないかというふうに思います。  もっとも、このことについて、ブッシュ政権の北朝鮮政策に一貫性がない、あるいは北朝鮮に時間稼ぎをさせているだけではないかという非難が共和党の中にあって、共和党の中の強硬派は現在のブッシュ政権の北朝鮮政策に非常に飽き足らないものを感じているということだと思います。  しかしながら、ブッシュ政権が最後に北朝鮮を、二〇〇八年、次期選挙があるまでの間にどのようにこの問題を解決するのか。合計八年のブッシュ政権、第一期、第二期を通じて、結局のところ北朝鮮の核開発は何ら成果を得ることなく、事実行為として北朝鮮の核開発だけが残ったという失策は何としても防ぎたいと考えていると仮にすれば、それはいかなる方法によってやるのかということについて、最終的な決断がまだブッシュ政権によって行われていないという強い印象を私は持っています。  取りあえずは、伊豆見先生がおっしゃったように、六か国協議なる外交手段によってできるだけこの問題を解決し、その間、北朝鮮に対する軍事的な圧力を掛けるため、ある種の抑止機能を強化するものとして、ミサイル防衛、あるいはステルス機の在韓米軍への配置、あるいはグアムにおける戦略爆撃機の配置、あるいはイージス艦の日本海に対する、日本海への展開、あるいはPSIの加盟促進などいろいろな軍事的な、軍事外交的な締め付けを北朝鮮にやっているわけですけれども、しかし、これを北朝鮮がどのように受け止めるかということは正に北朝鮮の最終的な判断にゆだねられているということではないかと思います。  中国がなかなか本格的に真剣に対応しないのは、恐らく中国としては現状維持が一番望ましいと考えているからではないかと考えますが、しかし中国がある種の影響力を持っているということを思わせ、断固として北朝鮮対応を取らないで、言わば北朝鮮をかばってアメリカに譲歩を求めているという姿が中国が考えている現状維持に最も望ましいという状態で、そのことについてはアメリカの不満があって、今回は米朝の直接対話が行われていますけれども、伊豆見先生おっしゃったように、仮に北朝鮮が六か国協議に戻ってきたとしても、本格的かつ真剣に北朝鮮がその核開発計画を削減あるいは中止、あるいは一時であれ凍結するという対応を示すことはまずないのではないかと。とすれば、アメリカが北朝鮮にどのように断固とした対応を取り得るかというところまで北朝鮮は見抜いていて、ぐずぐずしていても、六か国協議に戻ってくるという期待感が各国にある限りアメリカが軍事的に手を出す可能性はなく、今はその余裕もないと。  したがって、私は、アメリカの対応こそこの一連の問題の最終的なかぎであり、その時期は恐らく、イラク問題がおおむね解決し、イラクに新しい政権ができ、イラクから大宗の軍事力を引くことができるような状態になり、イランの核開発が峠を越し、アメリカがある種のフリーハンドを持ってくる時期、しかも、それはトランスフォーメーションという現在の一連のプロセスが同盟国との協議を経て一応の結論が得られる来年早々以降になるのではないかと考えているわけです。  そういう意味で、私は、今のような状態が続くと、伊豆見先生が最後に強調されたように、我々は、周りに核保有国というものが現実の姿で存在するということを十分に念頭に入れて安全保障政策というのを見直していくという必要があるのであって、現在の日米間で行っているトランスフォーメーションを幾ら進めても、それだけでは北朝鮮の核開発を抑止し、防止し、これに対して対応を効果的にするということが必ずしも期待できない限り、我が国の安全保障というのは非常に不透明な状態であり続けるということなのではないかと考えるわけです。  北朝鮮に対する拉致問題への制裁、その他北朝鮮に対する直接の政策及び日朝関係については、質疑応答の時間をおかりして幾つか所見を申し述べたいと思います。  以上でございます。ありがとうございます。
  55. 内藤正光

    委員長内藤正光君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人方々に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  56. 小林温

    ○小林温君 自民党の小林温でございます。  森本、伊豆見両参考人には、大変示唆に富むお話をいただきました。第一部では、横田夫妻そして荒木代表から拉致問題についての質疑が行われたわけでございますが、今のお二人の参考人は、拉致そして核、ミサイルと、包括的なアプローチについて御意見をいただいたものと思います。私もそういった観点で少し質問をさせていただきたいというふうに思います。  今ほど、北朝鮮の核開発の状況についてお二人からお話がございました。また、核実験の可能性についても森本参考人から御発言がございました。中国の対外連絡部長が、いやロシアの高官が、もしかすると六月中にでも核実験があるんじゃないかと、こんな発言もあるわけでございます。  その核の汚染の問題のみならず、仮に北朝鮮で核実験が行われたと、我が国に与える経済上あるいは政治上のインパクトというもの、これは計り知れないものがあると思います。それがもしかすると今月中にもあるかもしれないというふうに言われているわけでございますが、この点について、両参考人、どの程度の確率でこの核実験があるものというふうにお考えか、できれば簡潔に御意見をいただければと思います。
  57. 内藤正光

    委員長内藤正光君) では、まず、伊豆見さんからよろしいでしょうか。どうぞ。
  58. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  私も、先ほどの森本先生の御発言にもちろん大賛成でございます。核実験の可能性についても、私もないと、基本的に私は今回はないというふうに思います。ただ、将来ないかというと、それはあると、あり得る、あり得べしというふうに考えなきゃいけないと思いますが、今この時点で北朝鮮が核実験を行うかどうか、しかも今報道にありますような、その日本海寄りの吉州というところでやるかどうかというと、非常に疑問だと思っております。ただ、将来的にあると、今、先ほどの森本先生のお話は、私全く賛成でございます。  それともう一つは、やるんであればもうちょっと違う形で私はやるんだろうと思います。今よりももっと小規模にして、例えば一キロトンとかあるいはサブキロトンぐらいの小さなものでやる、ほとんど地表には放射能汚染その他は全く出ないような形で、地震計で少し分かるかどうかというようなものをこっそりと隠れてやるという方がよりありそうなシナリオだろうと思います。  仮に、今申し上げたようなシナリオでやった場合は、恐らく国際世論はもう瞬時に二つに割れます。核実験をやったという恐らくアメリカと日本と、やってないだろうという中国と韓国というふうにきれいにすぐ割れると思いますので、そういうような形の方がよりあり得るシナリオであろうと、現時点では、私はないというふうに思っております。
  59. 森本敏

    参考人森本敏君) 私は、こういうふうに考えているんです。  確かに、近々核実験が行われるという蓋然性は極めて低いと。しかし、アメリカの対応次第で、アメリカの共和党が非常に強硬な対応に出て、断固北朝鮮が六か国協議に戻ってこないのであれば、とにかく中国に圧力を掛けても断固安保理で制裁という議論になると、北朝鮮は危ないと思って自分たちが持っている核兵器の能力を実証しようとして核実験をするという可能性が常にあるが、この場合、決断が行われて準備をし、実際に実験をするまでの間、恐らく一か月から一か月半ぐらいの時間が掛かるというのが考えられると思います。その間、実験に必要な施設、装備等を動かしますので、それはある程度探知ができるということで、全く探知のない状態北朝鮮の中で突然ある日実験が行われるということは考えにくいので、何らかの兆候が事前に察知されるという可能性があるのではないかというのが第一です。  それから、伊豆見先生が非常に面白いことをおっしゃって、小型の一キロトン、そういう実験をするのであれば、実は核実験でなくてもよいかもしれないと。すなわち、非常に大規模なTNTというんですか、通常爆弾を地下に仕込んで爆発させ、地震計で探知をさせ、いかにも核実験であるかのように見せ掛け、どうも疑わしいがよく分からない、しかし実験をした模様だけども探知ができない、放射能も探知されないというような非常に不透明な状態をつくって、いかにも持っているかのように振る舞うというやり方があり得る、軍事的にはあり得ると思います。  他方、もう一つ疑問に思うのは、その場合、そのような小型の核兵器を持っているんだろうかと。つまり、五十年代型の原子爆弾というのであればかなり大きな核兵器しか持ってない可能性があり、一キロトンとか一・五キロトンなどという小型化された核兵器を造るために核兵器の開発に必要な核実験をするということが核実験を行う二つの目的の一つであると。  もう一つの目的は、もちろん起爆装置から核兵器を爆発させるプロセスが設計どおりであるかどうかということをテストするという目的はあるんですが、いずれにせよ、そういうプロセスを経て核兵器を開発しようとするのであれば、その結果として小型化された核兵器ができるというのは分かるが、一番最初に小型の核実験をするということが一体あり得るんだろうかというふうに考えますと、最初の核実験というのは、パキスタンやインドのようにかなり大きな核実験をかなり深いところに掘ってやるということが技術的には考えられるということではないかというふうに考えます。
  60. 小林温

    ○小林温君 お二人の専門家から今言われているものとは違ったオプションについても御言及をいただきました。  次に、六か国協議についてでございますが、六か国協議が始まったときは、我々はロシアと中国は別にしても、日米韓の三国が一体となって北朝鮮にいろんな譲歩を迫っていくという、こういう期待をしていたわけでございますが、今年になって、私、数回韓国に行きました。五月にはアメリカにも行って、政府や民間の北東アジア、朝鮮半島あるいは核の専門家といろいろ議論させていただきました。この一年間の間にもいろんなことが変わっているなということを感じたわけでございますが、と同時に、この日米韓、正にこの北東アジアの安定のために大変必要不可欠なこの同盟関係が揺らいでいるんじゃないかということを強く私は感じているわけでございます。  そこで、朝鮮半島の専門家でございます伊豆見先生に、現在の韓米関係、私、これ極めて最悪だと思います。明日、ブッシュ・盧武鉉会談が行われるわけでございますが、軍事的にもどうも対北融和路線の中で衝突も起きているようでございますし、明日の米韓の首脳会談もどういうことが起きるか予断を許さない状況にあるかと思いますが、今の米韓関係の具体的な姿についてコメントをいただければと思います。
  61. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  今、小林先生の印象と私は相当近いものを持っております。最悪かどうかは、まだ分からないと思いますのは、済みません、最悪ではないと思います。というのは、もっと悪くなり得るだろうという意味でありまして、したがって、現在がボトムだとはやっぱり考えられないほどであります。まだ一回底を打ってないなという感じであります。ただ、一方でそれだけ悪くなってきている。それは、双方のやっぱり認識が相当ずれてきているということがありますし、その認識のずれというのはそう簡単に一致させる、あるいは近づけることができないのは別段米韓関係だけが特別ではないと思いますので、もうここぐらいまで認識の差、とりわけ安全保障上、あるいは政治外交上の認識の差というのが随分明確に見えてくるようになると、これはほぼ所与のものとして今後考えていかなきゃいけないと。今後良くなるよりも恐らく悪くなることはあり得るけれども、その点については元に戻るのも難しいと。  ただ、まだその共通の課題、共通の問題についてのある共通のアプローチを取っていく、できるだけ近いアプローチあるいは共同の努力をしていくという、これはまだまだやれる範囲も残されていると思いますし、今随分、そこもうまくいかなくてぎくしゃくしてきていることがありますが、これは将来、やりようによってはもう少し、認識は相当ずれていても、できるだけ共通のアプローチを取る、あるいは共同行動を取るようにしていこうということは、まだその望みは持てるんであろうと。  それは最終的な、究極的なところで共通の目標であり共通の利益でありというのを持つという、そこに関しては大きな差は依然としてないわけでありますので、米韓がもう全く共通利益をなくしているというわけではありませんから、まず、その共通の利益を持っているということから、できるだけその共通の利益を達成させるためのアプローチであり政策であり、そこでの協力でありというものにもう少し工夫を凝らしていくということは、まだ将来、少し、少しじゃなくて大いに私は期待をしたいというふうに思っておりますが、しかし、同盟関係というものとそれは違う形のものになっていくことも十分にあり得るであろうと。  やはり共通の目標についての共通のアプローチというものは、同盟という形で取りにくくなってきていることは間違いないと思いますし、それを将来続けていく、あるいは元に戻すということも極めて難しいというふうに思いますので、同盟関係ではない、極めて密接な友好あるいは協力関係というような形に形を変えていくということは当然あると思いますので、私は個人的には、米韓同盟というものは同盟から非常に密接な友好協力関係というようなふうに形を変えていくのではないかというふうに見ております。
  62. 小林温

    ○小林温君 実は日韓も、六月二十日に首脳会談、予定されておりますが、本当にできるのかという懸念を私は実は持っています。  それで次に、日米なんですが、先ほど来お二方からお話がございました。私の懸念は、例えばアメリカの政府あるいは民間の専門家と話をすると、どうも北朝鮮の核の保有は結果的に認めてしまうんじゃないのか。まあ幾らかの時間的なずれはあるのかと思うんですが。ただ、拡散については、これは断固とした態度で臨むというのがアメリカの姿勢の中にあるんじゃないかと思います。  これは、日本にとっては正に、身近なところに核を持った、しかも独裁者がいる国が出現するわけでございますから大きな脅威には違いないんですが、日米の間でも実はこの北朝鮮政策に関してはこういう温度差が生じる可能性があるんではないかという懸念を持っております。この点についてお二方から御感想をいただければというふうに思います。
  63. 内藤正光

    委員長内藤正光君) では、まず森本さんからお願いをいたします。
  64. 森本敏

    参考人森本敏君) アメリカの政府北朝鮮対応について、いわゆる専門の言葉で言うとレッドラインといいますか、つまり、この一線を越えた場合、アメリカが忍耐しないというこの一線とは実態として何かということについては私は三つあるのかなと思っています。  一つは、今、伊豆見先生もさっきおっしゃったように、大量破壊兵器、特に核兵器及びそのノウハウといいますか、技術及び核兵器そのものを第三国あるいは第三国を通じてテロといったところに譲り渡す、売り渡すという可能性、これは蓋然性として割合高いと思いますが、それが第一です。それが実際に発覚した場合、あるいはそれを輸送し、正に運び出そうとするという事態が分かった場合。  第二は、本格的な核実験を行って、核実験そのものが正に疑義なく核実験であると。放射能収集のための特殊な航空機をアメリカは、これはAFTACといって、技術評価用の空軍の特殊航空機を嘉手納に配備していますけれども、空中の放射能のちりを収集できる、特殊航空機でも探知できるような大規模な核実験を実際にした場合。  第三は、核兵器開発ではなくミサイル開発が進み、そのミサイルの射程が延び、アメリカの本土に間違いなく届くというふうなミサイルの発射実験を例えば日本海に展開しているイージス艦の方に向かって撃つということが起きたら、アメリカは自衛権、個別自衛権を行使して反撃するということは大いにあり得るということです。これはかつてアメリカは何度もやったことがありますが、イランに対しても。  したがって、最近、北朝鮮がミサイル発射をやっていますが、極めて短距離で、自分の近海にぽちゃっと落とすという程度のことしかできないのは、日本海に時々アメリカがイージス艦を入れているからであります。さすがにその上を飛び越える、飛び越すということはなかなか勇気が要るわけです。  この三つのレッドラインを越えた場合、アメリカは恐らく同盟国の協議なく必要な措置を自衛権を行使してやるという可能性が私はあると考えます。  そういう意味では、このことが、すべて今の三つが日本の国家の安全保障にとって極めてクリティカルかどうかということについては、第三番目だけは必ずしも疑問で、既に日本北朝鮮のミサイルの射程の中に入ってしまっていますので、射程が延びようが延びまいがはっきり言って日本の安全保障にとっては、百発撃たれるか百十発撃たれるかという程度の話で、飛び越える射程が二倍になろうが三倍になろうが既に射程の中にある限り本質的に変わらないと言や変わらないんですけれども、したがって、日米間が共有する安全保障上の利益はほとんど私は同じで、日米間にこの点について深刻な温度差はないと考えます。
  65. 内藤正光

    委員長内藤正光君) 済みません。では、小林温君の持ち時間が過ぎてしまっておりますので、簡単に伊豆見さんの方からお願いをいたします。
  66. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  じゃ、簡単にといいますか、できるだけ短く申し上げますと、やはり、差があるというよりも、今、森本先生がおっしゃった中は、やはりアメリカにとってのレッドラインという、これを一線越えちゃいけないというのは、本当は、アメリカが直接脅威を受ける、トランスファーというのはそもそも、攻撃の対象、核が外に譲渡されればアメリカは攻撃されるんではないかという話ですし、あるいはミサイルが距離が延びるというのは、アメリカは直接攻撃されるんではないかという話です。そういう直接の攻撃されるかもしれないといったら、そこに、レッドラインにするというのは本当に分かる話でありますが、日本にはそういうレッドラインがあるんでしょうかと私は疑問に思います。  日本でいえば、もうとっくのとうにそのレッドラインを越えられているかもしれない、今の北朝鮮のやっていることは。それを認めているというのは、日本が直接攻撃の対象になるかもしれない、大変危険かもしれないというものを日本はレッドラインとして設定しているんでしょうかどうかということでありまして、そういう点では、例えばレッドラインを引くということでいうと、日本とアメリカとの間に随分私は落差があるんではないかというふうに思っております。
  67. 白眞勲

    ○白眞勲君 民主党・新緑風会の白眞勲でございます。  今日は両先生方、雨の中、お足下が悪い中、来てくださいまして、本当にありがとうございます。  本当にいろいろと参考になるお話というものを私も拝聴したわけでございますけれども、まず森本先生にお伺いしたいんですけれども、先ほど、金正日体制の維持のために彼らは核を持ち、そしてすべての体制というのはその維持のためにいろいろなことをしているんだというようなことをおっしゃったわけなんですけれども、今、在韓米軍がどんどん兵力が削減されているという中、今も先生の方でおっしゃいましたように、最近、F117ステルス戦闘爆撃機十五機が韓国に配置され、あるいは日本海にはアメリカのイージス艦三隻が配置されると。それもまた、今後も増強されるんではないかという話もあると。  つまり、一見、韓国にある在韓米軍は削減をされながらも、なおかつ逆に増強しているという矛盾しているような形というのが見え隠れするわけなんですけれども、それはやはり、六か国協議というものを視野に入れた形でのアメリカ軍の、アメリカの動きであるというふうにも言えるかもしれませんが、その辺について先生の御認識はどうなのかなというのをまず聞きたいと思うんですけれども
  68. 森本敏

    参考人森本敏君) アメリカが九六年ごろからずっと今日まで続けているいわゆるトランスフォーメーションという一連のプロセスは大きく二つ目的があって、一つは、言葉は良くないのですが、彼らが言う不安定の弧、つまり非対称脅威というものに最も有効に対応できる新しい米軍の体制を再編する、グローバルに再編するということが一つで、そのためには、兵力を再編するだけではなく、指揮機能だとかというようなものも再編する。しかし、そのことによって抑止機能を減らすということをしない。むしろ、抑止機能については同盟国の協力も得て強化するということが第一で、もう一つは、例えば冷戦時代にドイツとか韓国に配備していた米軍の一部を削減し、アメリカの本土の国土安全保障に資するようにアメリカの本土の防衛を行うと。  この二つの目的を同時に達する、いわゆる軍及びグローバル・ポスチャー・レビューと言って、米軍そのものの再編を同盟国との協議を経て進めているというふうに理解していますので、したがって、在韓米軍の地上兵力を削減をしながら、一方において在韓米軍の持っている抑止機能を強化するために、在韓米軍あるいは朝鮮半島における新しい脅威というものに最も有効に対応できる抑止機能を強化して、全体として抑止機能は下がらないようにすると。そのために、今、偵察能力、情報能力、あるいは必要な場合には攻撃能力を含めステルスを配備し、場合によってはグアムから戦略爆撃機を投入し、原子力潜水艦を増加配備し、今後は、空母機動部隊を増強し、そして在日米軍の再編を行い、今先生がおっしゃったように、日本海にイージス艦を出して偵察能力を強化する。これは一連の抑止機能の強化のための政策であって、在韓米軍の地上兵力の削減というものと何ら矛盾しないということではないかと思います。  以上であります。
  69. 白眞勲

    ○白眞勲君 そういう中、今、六か国協議につきまして森本先生からもお話があったわけなんですけれども、よくこういう話がありまして、六か国協議である程度の進展がない限り、拉致問題が解決しないんではないかというような話があるわけなんですが、私は、六か国協議と拉致問題は別個にして考えるべきであるというふうに考えているんですけれども、済みません、森本先生に、じゃその件につきましてちょっとお聞きしたいと思いますが、いかがでございますでしょうか。
  70. 森本敏

    参考人森本敏君) 確かに、六か国協議というのは核開発計画を念頭に始められたものですが、これは核開発問題だけに議題がとどまっているということではなく、拉致問題もすべての国が合意すれば議題にもなり得るし、これを日本として進めることは日本の最優先課題であるということに何ら変わりはないと思います。  したがって、六か国協議は核開発、日朝関係拉致問題、そういうふうにはなってないです。日朝関係及び六か国協議すべてが、日本にとって拉致問題と核開発という二つの重要な問題を同時に相互に関連させながら進めていくということに私は変わりはないのではないかと。また、そのように政府はずっと今まで努力してきたのではないかというふうに考えます。
  71. 白眞勲

    ○白眞勲君 伊豆見先生にお伺いしたいんですけれども、今まで先生の論文の中にも書かれている、いわゆる疑惑としてですけれども、麻薬や偽札、そしてミサイルの輸出などの引締めというものが最近強くなってきていると。  そういう中、日本においては原産地の表示義務を厳しくしてアサリの輸入というのはほぼ、ほとんどストップしていると、あるいは、三月一日に改正油濁法ですか、が施行されまして北朝鮮の船舶の日本入港というのも大分少なくなってきたというふうに、北朝鮮をめぐる経済情勢は大変厳しくなっていることは間違いないと思うんですけれども、まず先生の御認識は、この件につきましてはいかがでしょうか。
  72. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) 今、先生御指摘の部分というのは、北朝鮮の非合法な経済活動部分についての、我々がそれに対応措置、対抗措置あるいは取締り等を強化してきて効果が上がっているという話であって、これはもちろん、全体で見ても、そういうものが絞り込まれると北朝鮮の経済は悪くなるのかもしれませんが、それはそれでも結構な話ですよね。非合法な部分は何としてもやめてもらわなきゃいけないわけですし、それが効果が上がることが、逆に北朝鮮が真っ当な経済活動をきちんとせざるを得ないという方向に行く可能性も十分にあるわけですから、北朝鮮の経済というのを測る場合は、表の部分の経済とその裏の部分の、裏というよりも非合法な部分に関して言えば、これはもっともっとそこから彼らが得られるお金というのは絞り込んでいかなきゃいけないということだと思いますし、過去数年、相当それは努力されてきた。  PSIというのだけが有名になりますが、もう一つ、IAIというふうに呼ぶものがあって、イリシット・アクティビティー・イニシアティブというのは非合法活動規制イニシアティブとでも言いましょうか、そういうものも今並行して国際社会は進めてきているわけですが、余りスローガンにして目立つ形でやっているわけではありませんが、それは相当私は効果を上げていると思いますし、その効果を上げてその部分で経済が悪くなるというのではなくて、むしろそういう非合法な活動が規制されて、北朝鮮が少しは真っ当になってくれる機会も生じたというふうに考えるべきだと思います。
  73. 白眞勲

    ○白眞勲君 それに関連しまして、非合法であり、相当それは、ある意味、北朝鮮の軍部とかそういったところに直接払い込まれるんではないんだろうかというような話もあるわけなんですけれども、そういったものと拉致問題との関連性について、拉致問題解決との関連性につきましては、先生はどういうふうにお考えになるのでしょうか。
  74. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  今、先生御指摘のように、非合法な活動によって得られた金というのは、基本的に、軍部のみならず、私は金正日のポケットマネーみたいなものだと思っていますので、自分の権力を、独裁権力を維持していくために彼が使っているということは、幹部であり、あるいは軍でありというもので使っていると。その部分が、そこに使い得るお金が減ってきていることは私は間違いないと思いますし、それが何らかの形で金正日書記長の考え方に影響を与えていることも事実だと思いますけれども、ただ、非合法なお金が絞り込まれてきたと、それによって拉致問題に直接考え方が変わってくるかどうかというような影響があるかとは、分かりませんと申しますか、恐らくないんであろうというふうに考えます。  しかし、もう少し違う観点からしますと、やっぱり非合法なお金がない、それで幹部やエリート連中の忠誠というものを維持するのがだんだん難しくなるということになるならば、やっぱり国全体の経済をちゃんと再建し何とかしなきゃいけないと、あるいは表の部分での経済というものをちゃんと活性化できるような方向に、要するにまともな経済活動を通じてまともに再建を図らなきゃいけないという方向にもし変わるんであれば、その中で、拉致問題を解決せずして日本との関係がいい方向に行くわけがありませんし、日本との経済協力が得られないままに北朝鮮の経済が再建できることもあり得ないわけですから、結果的には非合法な部分を絞ったことが北朝鮮を少し真っ当に経済を考えさせるようにし、それが拉致問題の解決の方に近づくということも一応論理上は考えられると思います。
  75. 白眞勲

    ○白眞勲君 正に、私もその論理上の考えといいますか、いわゆる北朝鮮金正日あるいはその側近の人たちのポケットマネーを絞り込む、そしていわゆる外、表に出ている経済というものとの関連性において真っ当なものにしていきながら、その体制の維持のためにはやはり日本からのきちんとした経済支援が必要だというもの、そのためには拉致解決、いわゆる二〇〇二年の九月十七日の小泉訪朝でも金正日氏が拉致を認めたのは、これはもうあくまでも低迷する北朝鮮経済を何とか立て直すためには日本のお金が必要だという部分から私はやったという観点からすると、やはり拉致解決したら国交正常化ができ、そして金が入るんだという明確なメッセージを日本政府が出すということが必要なんじゃないかなと私は思うんですけれども、先生、その件につきましてはいかがお考えでしょうか。  伊豆見先生にお聞きしたいと思います。
  76. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  それは駄目だと思います。駄目だと思いますという言い方は変ですが、今の先生の御意見に私は反対でありまして、なぜかと申しますと、今までずっと小泉内閣は明確に包括的な解決が必要であると、正常化のためには。すなわち、拉致、核、ミサイルと、こういうものがすべて包括的に解決されたときに正常化だと言われてきています。私はそれは大変結構なことだと思いますので、したがって拉致問題だけ解決すれば正常化になるよと、したがって経済協力も得られるかもしれないよというメッセージを出すことは私は全く反対であります。  やはり、日本が言えることは、包括的に拉致と核とミサイル、最低この三つはきちっと解決してもらわない限り我々は北朝鮮と一切正常化できない、日本の経済協力は一切北朝鮮には行かないというメッセージといいますか、その主張は堅持すべきだと思います。
  77. 白眞勲

    ○白眞勲君 私は、何と言うんでしょうね、拉致解決したら国交正常化ということではなくて、国交正常化への道筋を付けようじゃないかということの、一種の馬の鼻先ニンジン方式みたいな、そういう観点からどうなんだろうかということを聞いているんですけれども、もう一度ちょっとお伺いを、聞きたいと思います。
  78. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) そういうニンジンとして出していくのは結構なお話だろうというふうに思います。  やっぱり北朝鮮にとってみますと、拉致問題を解決するということが自分たちにとってメリットになると考えなければ動かないだろうというふうに思います。既にそれを我々が目撃しましたのが、先ほど先生が御指摘の二〇〇二年九月の北朝鮮の変化。やっぱり二〇〇二年九月と以前、九月十七日以前と九月十七日以降は実は拉致問題は大きく変わったわけですが、変わった中にいろいろありますけれども、大進展をしたことも間違いないと。二〇〇二年九月十七日以前の北朝鮮の立場は、基本的に拉致問題というのは存在しないと、日本人拉致したというようなものは言い掛かりであると、でっち上げであると言っていた人たちが、ともあれ認めて、五名の方を日本に戻すというところまで来たわけですから、それは北朝鮮にとってのインセンティブがあったからこそ変わったであろうという考え方は当然できるわけでありますし、それをまた将来も出して北朝鮮態度の変更を促すというのは、私は当然あり得るべきだと思います。
  79. 白眞勲

    ○白眞勲君 最後でございますが、三月末に日朝国交促進国民協会のメンバーが訪朝しておりますが、こういったことについて、北朝鮮側のねらいについて伊豆見先生、どうお考えでしょうか。
  80. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) 今、北朝鮮は、日朝関係はしばらく動かしたくないんだろうと思いますけれども、そういうさなかにあっても、日本側がどういうことを考えているのか、日本側の雰囲気はどうなのかというのを直接日本の人から聞いてみたいということが相当大きな動機だったと思いますし、また同時に、今、北朝鮮側がとりわけ日朝関係についてどう考えているのかということを日本側に直接知らしめるという、その目的があったと思います。  三月三十日の訪朝を通じて、日朝関係を大きく変化させたい、動かしたいということよりも、今の段階では、日本側の考え方、状況、雰囲気を知りたい、あるいは北朝鮮が考えていることを伝えたいという、その目的であったというふうに受け取っております。
  81. 白眞勲

    ○白眞勲君 ありがとうございました。
  82. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 公明党の木庭健太郎でございます。  まず、両参考人にというか、森本参考人も先ほど日本対応の問題、つまり日朝の直接の問題、さらに拉致経済制裁、いろんな問題を含めて質問があればお答えしたいとおっしゃっておりましたので、どうぞ時間を使っていただいて、少しその辺についての御説明もいただきたいし、とにかく六か国協議の問題を含めて、確かに伊豆見先生がおっしゃるみたいに、拉致問題については小泉さんの訪朝で大きな動きはあったものの、今ちょっと本当にぱたんと止まったような状態の中で、極めて厳しい状況にあることも事実でございまして、何かこれを動かしようがないのかと、我が国として、直接動くことによって何かできないのかという思いがあることも事実だと思うんですよ。  そういうものも含めて、まず森本参考人日本対応の問題についてお話をいただき、伊豆見参考人も我が国としてどうなんだという部分についてお話しいただける点があったらお話をいただきたいと思います。
  83. 森本敏

    参考人森本敏君) 北朝鮮から見て、今六か国協議であれ日朝関係であれ、前向きに積極的に対応しようという強い動機付け、インセンティブが見られないということは先生御指摘のとおりだと、そう思います。  彼ら何を考えているかと、冒頭申し上げたように本当によく分からないんですが、しかし彼らが恐れていることは、とにかく外側からの力、圧力で体制が揺らぐ、体制が壊れるということだけは絶対に防ぎたい。多国間の協議に行っても、自分たちが持っている有利なてこを失ったり減らされたりするということは防ぎたい。できれば、彼らの文化というのは足らないものは外から手に入れるということのようですから、したがって外側から、常に彼らがやっているいわゆる瀬戸際政策というのは、何かしらの不安定状況をつくって、周りがそれをなだめるために何かしらのものを与えて、とにかくその事態を済ますという今までの政策及び彼らの実体験を踏まえて考えると、交渉に出ていって何かしらのものが手に入るかどうかということを現実的に計算して彼らはその対応を決めるということではないかと思います。  そのコンテキストでまず六か国協議をどう見ているかというと、多分今、これから次に行ったら、伊豆見先生さっきおっしゃったように、一年前アメリカから投げられたボールを返さないといけない、すると北朝鮮の核開発の解体のプロセスを一歩前に進めないといけない、それは損であるということで、しかし断固拒否する、六か国協議にはもう絶対永久に入らないなどと言ってみても、それは非常に危なっかしいことが起こるので、いかにも将来会いそうな感じでぐずぐず言うという対応にしてとどめている。これが一番有利だと彼らは考えているんだろうと思います。  日朝交渉については、どうも動かしてみて、日朝国交正常化交渉をやってみたけれども日本側が前向きに、日朝いわゆる平壌宣言にあるような大型の経済協力がすぐ手に入るということではなさそうであると見て、彼らはそのインセンティブを急速に冷却したというか、冷え切ったような状態になり、拉致問題についてこれ以上、体制そのものの心臓部に、のどから手を出されるという状態は避けたいと彼らは思っているのではないかと考えます。  すると、この二つの問題を同時に考えた場合に、私は、北朝鮮に対してきちっと経済制裁を取るという意思を我が国として示すということは必要ですが、ただこの場合、できればアメリカと図って、アメリカと協力をするという形で経済制裁ができれば一番良いが、もちろん安保理決議が通って安保理決議の下でやれれば良いのですが、しかしそれはまだ時間も掛かるし、そのような条件には今のところない。中国の協力を得ることもとても難しい。日本は安保理の常任理事国入りという問題を目の前に控えているので、安保理がすぐにこのような問題を取り扱ってくれるというふうな客観情勢にはないと。  諸般の情勢を考えると、日本とアメリカ、日本がアメリカを説得し、日米で非常に強いメッセージを北朝鮮に投げるということが今は最も現実的で、北朝鮮を両方の交渉に引き出すというために効果的なのではないかなというふうに私は考えているわけです。
  84. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ちょっと森本先生とは意見が違うんですけれども、今、森本先生がおっしゃったように、日米での経済制裁って、これ、拉致でというお話ですか。
  85. 森本敏

    参考人森本敏君) そうです。
  86. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) それはやっぱり私は不可能だと思います。アメリカは、核で日米だけでも経済制裁をやろうとしている段階にすらないときに、拉致問題でアメリカが日本とともに経済制裁に踏み込んでくれる、経済制裁的な行為に出てくれるということは私は全く期待できないというふうに思います。  そうしますと、ましてや、それは森本先生の御指摘のとおり国連の安全保障理事会で、あるいは中国、韓国を巻き込んで、これも一〇〇%以上私は不可能だと思っておりますので、経済制裁を行うとすれば日本単独でしかないと。しかし、単独でしかないものが拉致問題の解決に資するような効果を生むということを私は期待できないというふうに思っております。  もちろん何らかの形でのプレッシャー、圧力部分、あるいは毅然たる態度を示す部分での制裁的な措置というのは考える必要は確かにあるであろうと。我々は、一九八三年のラングーンにおける北朝鮮の大統領暗殺未遂テロ事件というのがありましたが、その後、そして一九八七年の大韓航空機の爆破テロ事件の後、さらに一九九八年のテポドンミサイルを我が国の上空を越えて飛ばした後、三回制裁的な措置を我が国政府はとっているわけでありますから、少なくともそういうものを考えるというのは十分これは単独でやれる話でありますし、日本の意思、メッセージというものを示すというものになるということにはなると思いますので、私はそういう点を御考慮いただくのは必要ではないかというふうには思います。  同時に、もう一方では、やはり交渉という面もあるわけでありまして、今、北朝鮮との交渉が完全に止まるのは拉致問題に限るからであります。拉致問題の先ほど申し上げましたように解決は正常化には結び付かない。日本政府は明確に、正常化に結び付くためには包括的な解決が必要だ、拉致と核とミサイルだとずっと言い続けているわけですから、その拉致と核とミサイルが最低入る交渉北朝鮮に私は投げ掛けるべきだと。そうなれば北朝鮮側交渉に応じてくる可能性というのは十分にあると思います。  拉致問題が進展しなければほかの問題に関して一切交渉できないという、今、私は日本の取っている立場は明らかにおかしいと思います。何よりも私にとって理解がし難いのは、二〇〇二年九月十七日の日朝の平壌宣言の中で、日朝間に安全保障協議を立ち上げるということが明確にうたわれたわけであります。安全保障協議がこういう状況の中でどうして一回も開かれないのでしょうか。日本が主張して入れたものを、どうして日本はそれを持ち出さないのでしょうか。なぜそれを北朝鮮に訴えて主張していくという機運が日本に生まれないのでしょうか。私は大変疑問に思います。また、そういう点をやっていくのであれば、日朝交渉でやれる範囲というのはまだ十分にあるというふうに思います。
  87. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ありがとうございました。  それと、もう一つ、その六か国協議のとらえ方なんでございます。  何を申し上げたいかというと、お二人から意見を聞いておりまして、私は、六か国協議が早く開かれれば様々な問題の解決へ向かって、再開されることによって物が動き始めるのかなと、こう安易な期待をしておりましたが、お二人の意見を聞く限りは、六か国協議が始まれば始まったで、そこで北朝鮮に粘られてその間にいろんな核開発が進んでいくというような、そういう現状も起こりかねない。じゃ、一方で、六か国協議について、これを開けないということで早くつぶしてしまうというような選択肢を取った場合は、これはこれでまたその北朝鮮が核開発に向かって、六か国協議が終わり、安保理への問題へと突き進むことで加速させることにもなりかねない。どちらを取ればいいのかというような、ある意味では非常にジレンマに陥るような感じもお二人の御意見を聞きながら感じたところではあるんです。  したがって、これ本当に進め方としてどういう構造でいけばいいのか。まずはとにかく再開させることが大事であり、日本としてはその六か国協議の再開というものへ向かって全力で突き進んだ方がいいのか、いや、もうこれはそろそろ難しいんだと、問題は六か国協議より一歩進めて国際社会の中で、つまり国連へのプロセスを歩み始めた方がいいんだという働き掛けをしていった方がいいのかと、そんなことも思いたくもなるようなことがございましたが、お二人の方から御意見を、この辺、進め方についての御意見、再度伺っておければと思います。
  88. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  私は、依然として六か国協議を目指すと、これは関係者すべてのコンセンサスでありますから、六か国協議再開あるいは六か国協議を通じての問題の解決というのを目指していくというのが第一義にあるのは当然だというふうに思います。  しかし、これは先ほど来御説明をいたしましたように簡単な話ではないわけですし、その見通しはほとんど立たないというような状況。そうしますと、当然のことながら国連の安全保障理事会を考えなきゃいけないということももちろんでありますが、しかし国連の安保理に持っていった場合に、やはり有効な措置がとれるような段階になって持っていかなきゃいけないと考えているであろう今のアメリカの立場というのも私は理解ができるところでありまして、そうしますと、そのつなぎの間をぐずぐずと過ごすのかという話になるわけでありますが、我々はただ見ているだけでいいとはもちろん思いませんし、我々にできることは、なぜ日本がそのときに直接交渉してはいけないのでしょうか、なぜ日本が直接北朝鮮に核問題で彼らの態度を変えるように働き掛けてはいけないのでしょうか。私はそこがおかしいと思っておりまして、日本にはできるわけでありますし、是非やっていただきたいと。つなぎで十分できますし、あるいはそういう日本側が直接北朝鮮交渉することは六か国協議のプロセスとは全く矛盾しませんし、あるいは将来国連の安保理に場所を移した場合でも全く矛盾しないと。できることを是非やっていただきたいと思う次第です。
  89. 森本敏

    参考人森本敏君) 日本は今年から二年、安保理の非常任理事国で、いずれ議長が回ってくるということなんですけれども。六か国協議というものに北朝鮮をできるだけ早く招き入れるというのは、六か国協議がどのような展開になるかは別にして、とにかくその対話のところに早く戻すということがまず必要だと思うんですが、そのためには事態を安保理に持ち込むのが一番良いと思うんです。  ただ、この場合、中国は反対するという簡単な議論を我々はやるんですが、ただ安保理というものを、安保理に持ち込んで安保理決議で制裁とかということになるから難しいわけで、安保理において北朝鮮に六か国協議に戻ってくることが国際社会の平和と安定のために役に立ちますという決議だったら中国は反対できないだろうと思うんです。だから、安保理といっても、これは制裁するとかというものではなく、北朝鮮に働き掛けるための安保理の決議というものは当然必要で、その前段階で安保理のといいますか、国連事務総長の例えば声明あるいは個人の議長声明といいますか、国連事務総長そのものの声明等で北朝鮮が六か国協議に戻ってくるように呼び掛けるということは、そのために日本が働き掛けるということはこれはできないわけではないと思いますし、また安保理をそのために開催するための外交的イニシアチブを日本は非常任理事国としてできるわけですから、それをまずやって、なぜ六か国協議が重要かというと、もちろん六か国協議というプロセスも重要ですが、その六か国協議に入っている北朝鮮と会議の中あるいは外で日朝の対話ができるという副次的な効果があり、その日朝の場を日本は十分に使うことができるということではないかと思います。  これからの日程を考えると、今月の末に、昨年三回目の協議が終わってもう一年になるんで、アメリカの中で内政上、非常に大きな圧力が掛かってくると思いますが、七月にはARFの場があり、北朝鮮の外務大臣がこれに入ってくるということですから、議長国はラオスですけれども、このときに日朝の外相会談をやって、日本は日朝の話合いの再開を促すという機会が来月にはもう出てくるということだと思います。幾つかのオケージョンがこれからあり、もちろん国連総会という場もあり、いろいろな場を使って日朝の働き掛けをするチャンスはこれから出てくるんで、それを最大限に活用するという必要があるのではないかというふうに考えます。
  90. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  91. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。両先生の大変含蓄のあるお話、大変ありがとうございます。  まず、伊豆見先生にお伺いいたしますけれども、日朝交渉の件なんですけれども、やはり今、大変行き詰まっている。公式にも非公式にも何もない、そしてまた人の往来も北京でさえもない、それが今の現状だと思います。その点で、やはり結局立ち戻るべきは平壌宣言と。私たちは野党ですけれども、この宣言についてはやはり非常に良くできたものだというふうに考えております。包括的にある、それからアメリカが普段入れたがらない、アメリカとだけ北がやりたがる核、ミサイルも入っている、そういうこともあります。そして拉致問題をやはりしっかりと解決していくという、そういう道も含まれていると思います。  その点で、やはり国交正常化ということまでも見通した、これは両首脳がサインしているわけですから、これは向こうも否定できない。まあ、ぐちゃぐちゃになっていますけれども、結局そこに立ち戻るしかないと、そう思うんですけれども、その意味と、それから今後の見通しについてお伺いしたいと思います。
  92. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  私も、日朝平壌宣言というのは依然として意味のあるものだと思いますし、平壌宣言に立ち戻ってそのプロセスで日朝関係が動かせるものであるならば、一番大事なところは精神ということでありますので、精神ということを重んじますと、少なくとも確実にやることは日本の安全保障上の脅威がなくなるということです。北朝鮮が我々に与えている安全保障上の脅威がなくなる、その中にはもちろん核、ミサイルはもとよりですが、拉致も入ります。これは我が国の国民の生命、安全に対する危機、危険な脅威であったわけですから。  ですから、平壌宣言というものに戻り、その精神というものに立ち戻ってやるということは、私は依然として有効だと思いますし、話だと思います。  ただ、今の日本の雰囲気を考えますと、正常化という言葉を持ち出すともうほとんど多くの方はそれに対して後ろ向きにならざるを得ないということでありますが、しかし、ですから私はやっぱり日本政府の御努力がもっと必要であろうと思いますのは、平壌宣言の精神にのっとって正常化をするということは、今の北朝鮮と正常化するわけではないということを明確にうたっていると言ってよろしいと思うんですね。  すなわち、生まれ変わった北朝鮮と我々は正常化するという意味ですよ、あれは。平壌宣言が確実に実行されて正常化にこぎ着けるときには、これは小泉総理が何度も強調されているように、包括的に拉致も核もミサイルも解決していなきゃあり得ないわけですし、この三つが解決するというところまで北朝鮮が変化するんであれば、これは今の北朝鮮とは全く別物だと。それが金正日北朝鮮なのか、そうでないポスト金正日北朝鮮か分かりませんけれども、少なくとも今の北朝鮮とは全く違う北朝鮮と我々は正常化をしようという話であって、今のまんまの北朝鮮とだれが正常化をしたいと思うかというところがどうも私は混同されているようなところがあって、いったん正常化というと、今のまんまの金正日かといいますか、今の北朝鮮とそのまんますぐ正常化するような印象があることが、実は平壌宣言にのっとって日朝関係を動かしていくことを難しくしていることだというふうに思います。  繰り返しですが、平壌宣言に立ち戻って私はやるべきだと思いますが、その前提になるのは、その平壌宣言に基づいて達成される正常化というのは、今の北朝鮮とは違う生まれ変わった北朝鮮だというところが、それを我々が国民として十分に理解して、その下で支持をしてそれをやっていただくというんであれば可能かなというふうに思いますんで、実際は平壌宣言にのっとった形の日朝関係の前進というのは、私は当面のところ期待できないというふうに思っております。
  93. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 もう一問、伊豆見先生にお伺いしますけれども拉致問題は北がこれまで犯してきた数々の蛮行の中で唯一トップが認めたという、そういうものだと思うんですね。それで、この解決を図ることが、もし北朝鮮に国際社会に復帰するという意思があるならば、それが促進剤にもなり得ると。非常に大事で、日本にとっても最優先課題だと思います。  この解決を何が妨害しているかというと、先ほども横田夫妻に御質問申し上げたんですけれども、やはり出てきたものを見ても、すべて特殊機関の介在があると。結局、拉致を実行したのは特殊機関だと。そして、今も北朝鮮調査しようとすると、特殊機関の介在で、あるいは妨害でそれができないと、先方も言うという、そういう状態になっております。結局、この問題というのは、まあ嫌な相手でも、どんな相手でも交渉しなければ解決しないということになると思います。  したがって、交渉の仕方として、やはり特殊機関に左右されない強力な権限を持った相手日本政府交渉してこの問題を打開するということが必要になっていると思いますけれども、その点についての先生の御見解をお伺いいたします。
  94. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  特殊機関よりも強力な存在というのは、それは金正日総書記だけだろうと思いますが、金正日総書記が本気になって取り組んでくださるならば、それほど多くの障害、多くの困難があるのかどうか、それは大変疑問といいますか、十分、金正日総書記が決断をし実際やる気になるならば、できる範囲はあると思います。しかし、そこまで金正日総書記の気持ちを持ってくるためには何らかの、彼にとってそれだけの動機が必要だとすると、今、金正日総書記の目から見れば、拉致問題を解決することで一体自分に何のメリットが、どれだけの得があるのかと、恐らく彼はそれは小さい、少ないと考えているんであろうと思います。  先ほどから申し上げておりますけれども拉致問題が解決したら日本と正常化できるかと、正常化して日本から経済協力が得られるのかというと、そうではないわけですね。ですから、拉致問題だけ解決して何の意味があるんだというふうに私は金正日総書記は考えていると思いますし、そうだとしますと、彼の気持ちが変わるほどの動機というのは形成できない。本来であれば、彼が決断をし実際動けば、特殊機関の介在などという問題は大した問題ではないと私は思いますけれども、そこまで金正日総書記は今決断する可能性というのは残念ながら薄いのではないかというふうに見ております。
  95. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 森本先生にお伺いいたします。  アメリカは、日朝交渉についてこれからどういう状態が望ましいと考えているのか、どういうスタンスで考えているのか、アメリカの外交政策としての一分野でありますけれども、それについてお伺いしたいと思います。
  96. 森本敏

    参考人森本敏君) アメリカから見た場合の日朝交渉は、あくまで日朝交渉の結果、あるいは日朝交渉のプロセスがアメリカの国益を損なわないということが必要だと考えているんだろうと思います。  裏返して言うと、つまり、日朝交渉のプロセスが進む、あるいは日朝交渉の結果、例えば伊豆見先生がおっしゃったように、確かに国交正常化交渉という、国交正常化交渉と国交正常化は全く違いますけれども、国交正常化というものは大変ハードルが高いんですが、この日朝が国交正常化して大型の経済協力が出るというようなことが六か国協議のプロセスが全く進まないのに進んでしまうということは、アメリカにとって国益ならずというふうに考えているのは、これは当然、当然というか、大いにあり得ると思います。  アメリカから見れば、日本が六か国協議に入っているということは、つまり、すべての問題の責任日本やアメリカや韓国や中国やロシアなど関係国がすべて共有し、アメリカだけの責任にはならない。一方、必要な北朝鮮政策をやるときに日本がそれなりの分野できちっとした貢献と役割を果たすことができるという意味において日本をメンバーとして入れているということがアメリカにとって意味があると考えているわけですから、例えば日本が持っているカードを全部切ってしまって、あとカードがないという状態をつくってしまうことは、アメリカにとっては決して国益ではないというふうにアメリカは考えているんだろうと思います。  そういう意味で、どうも伊豆見先生と私は大体考え方がよく似ているんですが、結論そのものは、私個人は、少し乱暴な言い方ですけれども、結局、この一連の拉致問題、日朝関係というのは、現在の北朝鮮の体制がそのままの状態で存続し、そのまま政策を進めているという状態でドラスチックな進展や改善があるとは期待できないということではないかというふうに思います。  仮に、北朝鮮が核実験というものに踏み切った場合、私は、日朝平壌宣言の、まあ朝鮮半島の非核化といった、一連の趣旨、平壌宣言の趣旨そのものに明らかに北朝鮮が一方的に違反してしまっているという状態で、いかに平壌宣言が重要なものであれ、日本側から、このような例えばことをやった場合、残念ながら平壌宣言は破棄せざるを得ないということをきちっと北朝鮮にメッセージとして投げるということが是非とも必要ではないかと。何が起きても平壌宣言にしがみつくというやり方は、日本としてやるべきではないと。  かように考えて、アメリカは日朝関係及び日朝関係の進展というものにアメリカの自分の国益を当てはめて、非常に注意深く見ているということではないかというふうに思います。
  97. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 森本先生に二問お伺いしますけれども、一つは、現時点で日本が単独で経済制裁をした場合、アメリカ政府がどのようにそれを見るのか、あるいは六か国協議への影響はいかんと、これが第一点です。  もう一つは、ちょうど京都で会議があったときに、中国と韓国の外相に対して町村外務大臣が五者協議ということを持ち掛けたことがありました。この経緯ですけれども、実際、北を除いて五者で会合するということがアイデアとしても実際上外交の舞台で打診されたという経緯がありますが、実際、アメリカと一緒になって、六者がいわゆる二対四、米日に対してほかの四という、そういうことも言われるわけですけれども、その経緯と、なぜこういうことになったのかということについてお伺いしたいと思います。
  98. 森本敏

    参考人森本敏君) 前者、最初の御質問については、これは大変難しいんですけれども、私は、日本がとにかく何であれ、日本の国家の意思を表明するためにきちっとした北朝鮮に対する制裁というのはやって、その制裁といっても、我々は簡単に制裁と包括的に言ってしまいますけれども、内容であれ段階であれやり方であれ、いろいろなやり方があると思いますので、その中身そのものはきちっと精査しなければなりませんが、国家の意思をきちっと示し、国民の怒りを北朝鮮に投げ、北朝鮮を動かすという意味において、制裁をきちっとするということは国家と国民の意思としてどうしてもこれはやるべきである。  先ほど申し上げたのは、できればアメリカと一緒にできればよいなという希望を述べただけで、アメリカとでなければやってはいけないということを申し上げたわけではありません。  他方、日本制裁をやって、その結果として北朝鮮が六か国協議に戻ってくるというのであれば、誠に正しい方法、正しい効果があったということですが、仮に、日本から制裁を受けたということで六か国協議に戻ってこないなどという言い掛かりを仮に付けたとしても、実は日本制裁というものと六か国協議とは直接関係がないわけで、それは単なる言い掛かりだということに私はなると思います。  現に、先ほど申し上げたように、北朝鮮としては、六か国協議をずるずると引き継いでいくといいますか、続けていくということが、北朝鮮がアメリカから軍事的な攻撃を受けないための最後の担保、いわゆるある種の保険というものでしょうから、したがって彼らは、真剣に応じるかどうかは別として、一切六か国協議を捨てる道を選ぶということは北朝鮮にとってできない話で、それは日本制裁をやろうがやるまいが本質的には関係ないということだと思います。  五者協議については、経緯をつまびらかにしませんが、つまりこの五者協議という意味は、北朝鮮を六か国協議に引き戻すためにどのような話合いをするかというコンテキストでやろうとしたんだと思いますが、しかし、これは私は公に言うべき外交事務ではないなと。つまり、五者だけでやっているということが北朝鮮に分かるということは、これはもうますます入りにくくするということであって、本当に五者だけで協議をするのであれば、一切、あることさえ秘して、どこかに集まって善後策を協議するというのであって、五者協議をやるなどと公に言って五者協議をやるなどというのは外交の一番下手なやり方だということなのではないかと、かように考えます。
  99. 内藤正光

    委員長内藤正光君) 時間も来ておりますが。
  100. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 最後です。  伊豆見先生にお伺いしますけれども、今話にあった六者協議ですけれども、六者協議をやっているということは結局北朝鮮にとっての安全保証になると、やっている間は攻撃されないというそういう見方もできるかなと思います。それは核兵器を持つよりもはるかに安全な道だと思いますけれども、その点についてお伺いして、終わります。
  101. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) いや、ただ、今やっていないで一年が過ぎているから何とかなりまして、やり始めて進めれば、結果が出ないといいますか、成果が出ないままに続けることはできなくなりますので、やっぱりそれをもって六か国協議をやれば安全だということではなくて、六か国協議をやれば結果を出さなきゃいけないという話ですよね。北朝鮮にとってみますと、六か国協議というのはいい面もありますけれども、やっぱり困った面も相当多いものだと。結果を出すという意味は、すなわち北朝鮮が核解体の方に進まなきゃいけないという話ですので、やっぱりある意味では皮肉なことですが、今みたいに六か国協議をみんなが目指して六か国協議が開かれないという状況北朝鮮にとっては比較的いい状況であって、実際六か国協議が始まりますと北朝鮮、それがしかも続くようですと決して北朝鮮にとってはいいばかりの話ではないと思います。
  102. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 ありがとうございました。
  103. 内藤正光

    委員長内藤正光君) 以上で伊豆見さん及び森本さんに対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼のあいさつを申し上げます。  本日は長時間にわたりまして御出席を願い、そして大変貴重な御意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございます。  本日の参考人質疑を通じて賜りました様々な貴重な御意見、今後の委員会審議に反映させていきたいと考えております。  本日は本当にありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十三分散会