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参考人(
渡久山長輝君) 渡久山でございます。
我が国の
教育、特に
義務教育が極めて
危機的な
状況のときに、このようにして
亀井委員長を始めこの
委員会の皆さん方が
教育について
審議をされることについて心から敬意を表したいと思います。
私は、今日はレジュメとそれから
資料を
提出してございますので、それを
中心にして提起をしたいと思います。
先週の二十二日ですけれども、
内閣府の調査室がニートについて報告いたしました。これは、十五歳から三十四歳までの独身の若年層のうちで、仕事をせず、それから学生でもなく、職業訓練もしない無業者、これをニートと呼ぶそうですけれども、これが二〇〇二年の推計では約八十四万七千人だということが言われています。また、厚生労働省が二〇〇四年に報告したものによりますと、いわゆるフリーターと言われる皆さんが二百十四万人と言われています。我が国の十五歳から三十四歳、あるいは仕事をしていかなくちゃいけないような
状況の中でこういうことが起こっているというのは、十五歳といいますとちょうど
義務教育を終わった段階であります。そうしますと、そこに、
義務教育の中で何かまだ
課題があるんじゃないか。特にニートの場合、働く意欲を持っていない。それからまたフリーターの場合は、自己実現のために仕事を変えるということもありますけれども、一つは、やっぱり自分の知識あるいは技能が十分備わっていない。そういう中で、結局定職を持たないというような
状況があると、こういうように思います。
また、せんだってOECDがPISAの報告をいたしました。これによりますと、
日本の、御案内のとおり、学力が非常に落ちているというような問題があります。ただ学力が落ちているだけではなくて、その中で非常に特徴的なのは、二極化している。要するに、優秀な
子供たちとそうでない
子供たち、特に成績の悪い
子供たちが増えているんですね。ほかの、他の国に比べて非常に増えているというのがあります。それはなぜだろうかというと、結局、
日本の
子供たちは自ら進んで勉強をするという態度がない。それは、一つの、勉強する目標がない、目当てがないというようなことが言われているわけですね。そうすると、ニートにおいても、正に働く意欲や働こうという気持ちがないというようなことについて、非常にこれは
義務教育の持っている一つの
課題じゃないかというような気がいたすのでございます。
そういうことを踏まえながら、やはり今まで
教育改革についていろいろなことがなされてきました。例えば少人数学級だとか、あるいは習熟度別指導だとか、あるいは授業の
改革だとか、そういうことがなされてきておりますけれども、必ずしも十分ではないというのが今の
状況じゃないかと思います。
特に、このOECDなんかのものによりますと、各教科への応用力がないというようなことで、
文部科学省は二〇〇二年から総合的な
学習というのを取り入れて、ゆとりといいましょうか、考える力、自らやっぱり選択して生きる力を付けていかなくちゃいけないというようなこと等を踏まえて今指導要領がなされているわけですね。これは正にフィンランドもそういう形でできていっているわけです。フィンランドは一九七〇年代に実は六三制をしいたんですが、これは
日本の六三制から学んでフィンランドは取り入れているんですね。ですから、そういうことを考えてきますと、やっぱり今
義務教育の中でまだ定着は十分していないけれども、総合的
学習の中でやはり
日本の
子供たちが自ら選択して生きる力や考える力というものを付けていくということは非常に大事なことじゃないかと思います。
そういう意味で、一つは、このレジュメの五番のところに
義務教育費国庫負担法の制定の必然性と先見性というのがありますが、先ほど
鳥居会長からもございましたけれども、
昭和二十八年に現行法ができたわけでありますけれども、これは、正に
義務教育は憲法の要請に基づくものであり、
国民として必要な基礎的資質を培うものであり、国は、やはり憲法及び
教育基本法にうたう
教育の
機会均等、あるいは
全国的な
教育水準の
維持向上を図る
責任を有していると思います。特に、
義務教育国庫負担制度というのはこのような国の
責任を果たす
制度でありまして、正に今後とも堅持をされ、特に
義務教育が、ノーマルな形でますますきちっとして
日本の国の基礎をつくっていく、あるいは
国民の基礎をつくっていくためにこれが機能することを心から期待をしたいと思うわけであります。
だから、そういう意味で言いますと、私
たちはもう一度
義務教育の目的についてやはり考えていかなくちゃいけない。これは、
子供たちが
全国のどこにいても無償で
小中学校の九年間の
義務教育を受けることができるという法律の定めによって保障されている、あるいは
子供たちの
教育権の権利というものが保障されている、あるいは保障しなくちゃいけないということの要請だと思います。人格の形成の基礎、あるいは
国民としての素養を身に付けるということでありますし、具体的には、やはり
教育の
機会均等、
全国どこにいてもすべての
子供に
教育が保障されるということでありますし、また
水準の確保、要するにナショナルミニマムとしての最低必要の
水準の
教育を受けることを保障するということでありますし、
無償制度という、今、
日本の場合は授業料あるいは教科書の無償になっていますけれども、ただ、
教育基本法の無償制ができたときには何かというと、あのときには、国の
財政がまだ逼迫しているので
財政が豊かになったらもっと多くの無償制、無償をすべきだという確認も
国会でなされているわけでありますが、そういうことを前提にして、私は、
義務教育国庫負担法ができたということには極めて必然性と同時にやはり先見性があったと、こういうように思います。これが正に
日本の高度経済成長を支えていた国力をつくってきた原動力にもなったと思うのであります。
次に、そういう
状況の中でも、
地方自治体の
教育施策への努力と、それから
教育諸費の現状をちょっと見てみたいと思います。
地方自治体は、
市町村は
小中学校の設置
義務がございます。先ほど知事が言われたとおりでありますし、また
都道府県については
教職員の
給与負担というものを実際やっているわけであります。
ただしかし、実際、現在の
地方自治体の
財政状況を見てみますと、この
資料の一
ページを見ていただきたいと思いますけれども、こういうように万が一
義務教育費国庫負担というのを
廃止した場合の、これ試算ですけれども、このような
状況になっています。緑色の棒がいわゆる増えていくところでございまして、これは七県しかございません。あと四十県は、全部赤い棒で書かれていますように
財政は極めて逼迫し、非常にこれでは、これはもちろん個人住民税をフラット税率で計算したときのものでございまして、こういうように全部下がっていくというのが
状況であります。
こういう
状況の中で、今現在でもやはり、この
一般財源化された
教育に関する
予算等をちょっと見てみたいと思いますが、これは二
ページ目に書いてあります。これは教材費と
教員の旅費の措置の問題でございますけれども、この旅費の一〇〇と書いた線というのが標準の線ですけど、これから比べますと、例えば
昭和六十年に教材費、旅費が、
教員旅費が
一般財源化されました。このときの
状況が今
グラフに出ているところでございますが、これがだんだんだんだん
地方財政、この
地方財政は、
地方債現在高と書いていますけど、赤い
グラフで書いていますけど、これがだんだんだんだんやはり額が高くなっていくところ、特に今の
平成の七年辺りから非常に
地方財政は
地方債で賄っていくという
状況になってくるわけです。そうして見ますと、ここでクロスしておりまして、教材費とか旅費とかっていうのがこのようにだんだんだんだん少なくなっていって、要するに
予算措置が十分されていないというのが現状であります。
私も、もう少し前ですけれども、ちょうど旅費が
一般財源化されたときに
現場におりましたけれども、本当に逼迫した
状況で出張が不可能だという
状況も起こっていました。
次に、三
ページ目を見ていただきたいと思いますが、具体的に教材費の措置率というものについて書いてます。これは一〇〇%というのが交付税積算ベースで、基準
財政需要額ベースで積算されているものであります。ですから、国から見ますとここに措置されていくのが当然だというのですけれども、必ずしもそうはなっていません。ですから、八〇%以上の県というのは十一都府県しかございません。ですから、八〇%です。だから、一〇〇%の県というのはここにごらんのとおり四つ、あるいは三つか四つの県しかございません。そのように、
地方財政の
危機の中では教材費は必ずしも教材費になっていないというのが現実であります。これを見ていただきたいと思います。
ただ、この東京都なんかは不交付
団体でありますけれども、これは一六三・七%というような膨大なものにもなっておりますし、大阪が一一八・八%であります。いや、これはまあついでの話ですが、ここに岡山の知事がいらっしゃいますから、岡山は七一・二%になっています。これは、済みません、そういうこともあります。
次に、四
ページをちょっと見ていただきたいと思いますが、四
ページは
小学校一校当たりの図書購入費であります。これも
全国平均が四十二・一万円と、こうなってますけども、この
全国平均を下回った県というのが非常にあるわけです。上回った県が単なる、十五都府県でございます。ですから、十五都府県以外は全部国の積算ベースで交付税がなされていますけれども、
図書費は
学校の
図書費としては回っていないというのが現実でありまして、こういうのを見ますと、
地方財政の
危機では、こういう実際の、具体的に
学校には金が回っていないというのが現実でございます。これは図書購入費でございます。
それでは、次にこの五
ページを見ていただきたいと思います。これは
学校のLANの整備率でございます。これは、
政府としてe―Japan計画の中でこれはLANをやっていく、要するにITの時代だといってこんなに非常に
政府は高らかにうたっていますけれども、具体的に、じゃ
学校の中でLANがどれぐらい措置されているかというのはこのような
状況でございまして、四〇%以下、
全国平均が三七・二%であります。この棒
グラフを見ていただければ分かりますように、三〇%以上の県は十二県ぐらいしかありません。東京は何か分かりませんが、金はあるけれどもなかなかできてないですね。しかし、それは残念ながら非常に膨大な金が掛かる、教室一つずつにLANを入れるわけですから。それと、もう一つはやっぱり首長の姿勢もあると思うんですね。これは神奈川もそうですけども、そういう大きなところでなかなかできていないというのが、これが現実でありますが。
ただ、全体的に目標一〇〇%には至っていないというのが現状でありますから、そういう意味では、やはり
政府が一定
程度イニシアを取って一つの交付税化して金を決めても、結局は、金がどう使われているかという問題は具体的にこういうようにして見ていかなくちゃいけないと思います。
次に、六
ページを見ていただきたいと思います。六
ページは、
小中学校の耐震化の率でございます。これはもう御案内のとおり、いろいろ最近は地震が非常に多うございます。だがしかし、それに対して校舎あるいは体育館を含めて耐震化率がどれぐらいか、あるいは耐震診断率がどうなっているかというような
状況であります。これ見たら、御案内のとおり、緑色が耐震化率でございます、率でございますね。ですから、これを見ますと、この耐震化率の平均は二〇・八%、二〇%であります。御案内のとおり、耐震化のためには国が
補助が二分の一かあるいは三分の一ですね、三分の一か二分の一。そうしますと、やっぱり国が二分の一出すとしても、あとの二分の一は自治体が
負担しなくちゃならない。しかし、多くの場合は、これは三分の一になっています。そうしますと、三分の二は各自治体が出さなくちゃいけない。そうなりますと、それは金が
地方財政非常に
危機だということで耐震化ができてないわけですね。
それで、非常にこれは、ちょっと新潟を見ていただきたいと思いますが、新潟は診断率も非常に低いんですね。それからもう一つ、福岡も診断率は非常に低いんです。だがしかし、実際、新潟や福岡で地震が起こっています。ということは、
日本は地震国とはいいながらも、いまだに地震がどこで起こるかというのはきちっと把握されていない。要するに、そこまでまだ地震科学というのは進んでいないという
状況ですね。だからってこういう耐震化診断が、それで遅れていたかもしれませんけれども、こういう
状況になっています。
これはやっぱり、今例えば新潟辺りで地震が起こって体育館に従来避難している。ところが、体育館自身が耐震化されていないというような
状況があって、そこに避難ができないという現実も出てきているわけですね。そうなりますと、やっぱり
学校が大体震災のときに避難場所にするということであれば、やはり少なくとも
学校については積極的な耐震化というのが進められなくちゃならないと、こういうように思いますが、これはまた国の方で是非とも
議論をしていただきまして、しかるべき措置をとっていただきたいと思います。
次に、七
ページをちょっと見ていただきたいと思います。
地方財政の中で、実は先ほど
鳥居会長からも言われましたが、実はこれが現在の
教職員の年齢構成でございます、年齢構成でございます。
小学校においては、今一番ピークになるのが四十八歳であります。それから、
中学校においては、今ピークが四十六歳であります。そうしますと、この皆さんは毎年毎年退職していくわけですね。退職していきます。そうしますと、これはどういうことが起こるかというと、退職に伴って新しい
教員を補充しなくちゃいけないというのはもちろんですけども、しかし、それに伴って退職手当、共済手当というのを払って、年金ですね、これを払っていかなくちゃいけないということも出てくるわけですね。
ですから、この問題には大きくは二つの問題があります。一つは、
教員の安定的な供給をどうしていくかという
教員政策の問題、と同時に
退職金やあるいは共済年金をどう支払っていくかという問題です。
そこで、次の八
ページ目に、これは東京大学の苅谷研究室で苅谷先生が試算をしていただきまして、
中教審に
提出していただいた
資料でございます。このように増えていきます。給料・諸手当、それに退職手当、共済費の長期給付、いわゆる年金に当たる部分です、これがそういう、こういうようにして起きます。六兆円を
中心にしてこのように増えていくことが現実であります。もちろん給与は、若年者を雇いますから給与は減っていきますけれども、しかし、これは少子化に伴って
教員の数は減っていきます。そういうことも含めながら計算されたものです。
それで、次に、九
ページからは、各県でどういうことが起こるかということで各県のそれぞれの事情について書いてございます。先生方もそれぞれ県の御出身だと思いますから、それぞれ見ていただければいいんですけれども、ほとんどの県が増えていきます。増えています。そうしますと、今は
退職金や共済金も既に
一般財源化されていますから県の
負担、これになっていきます。これは非常に大きな問題となっていきますので。じゃ、これはちょっと全部、各、見ていただければ幸いであります。十四
ページまでありますから、それは各県で見ていただければと思います。
それと同時に、これは今、
義務教育費国庫負担による
負担金というのは、非常にそういう意味では、今まで僕が申し上げましたように非常に必要だと思いますけれども、実は
日本の
教育予算、
教育財政は必ずしも多くありません。例えば、十五
ページを見ていただきますと、いまだに、児童生徒の学ぶ
学級規模を見ていただきますと、御案内のとおり、三十六人以上で学ぶ小学生は二三%もいます。それから三十一人から三十五人の学級の
子供たちは三五%です。中学においては、三十六人以上学級というのが四七%もまだあるんです、
日本では。
しかし、これを、ちょっと次の
ページを、十六
ページを見ていただいたら御存じのとおり、これは一学級当たりの児童生徒数の国際比較でございます。そうしますと、韓国が一番高いんですけれども、
日本は次に高いレベルになっていますね。そうしますと、OECD各国を見ますとほとんどが平均的で二十一・九というような数字になっていますから、そう考えますと、
日本の今の
教育予算というのは必ずしも高くないどころか、非常に、OECD各国でも、まあそんなことを言っちゃ悪いけれども、劣悪と、ちょっと悪いということになります。
十七
ページにはそれを示しています。十七
ページにはいろいろありまして、各国首脳の
教育に対する考え方があります。もちろん
日本についても書いていますけれども。2に各国の国と
地方の
教員給与の
負担率が書いてありますけれども、フランスは
全額国庫負担であります。ドイツは
全額州
負担であります。それから、韓国も
全額国の
負担であります。同時に、公
財政による初等中等
教育費の国内総生産、
GDP比ですね、これを二〇〇一年で見ますとこのようになっています。これは、
日本は二・七という、フランス、
アメリカ、
イギリス、大韓民国、ドイツ、
日本と、こういうふうに一番下になっています。
ですから、私は、
義務教育費国庫負担法による国の
負担金を守っていただくと同時に、もっと
教育に金を掛けていただきたい。そうじゃないと国際比較にならないということを強く大きく言っていきたいと思います。特に、
全国の
教育水準を今後守っていくというようなことも大事だと思いますし、
国庫負担の必要性というものも非常に大事であります。昨日の毎日新聞によりましたら、やはり国が
義務教育費は出すべきだというのが五三%の
意見ですね。
地方がというのは一〇%です。そういうことを考えますと、やっぱりもっと国の責務、
責任というものを考えていただきたいと思うのであります。
それで、10にはこういうように書いていますが、
教育はやっぱり
子供たち一人一人の人格の完成と将来の
国家の有為な形成者としていくものでありまして、歴史的な変動の時代を切り開いていく人間力豊かな知識、社会を担う
国民の育成であります。天然資源の少ない我が国においては、やはり人材の育成というのが非常に大事であります。
教育は
国家百年の計とも言われますし、
教育への先行投資こそ百年の計だというように思いますので、先生方の今後の
審議の
参考にしていただければと思います。
以上です。ありがとうございました。