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2005-03-22 第162回国会 参議院 財政金融委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十七年三月二十二日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      若林 正俊君     中川 雅治君      峰崎 直樹君     林 久美子君      大門実紀史君     井上 哲士君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         浅尾慶一郎君     理 事                 愛知 治郎君                 中島 啓雄君                 山下 英利君                 平野 達男君                 若林 秀樹君     委 員                 金田 勝年君                 田村耕太郎君                 段本 幸男君                 中川 雅治君                 野上浩太郎君                 舛添 要一君                 溝手 顕正君                 若林 正俊君                 尾立 源幸君                 大塚 耕平君                 富岡由紀夫君                 林 久美子君                 広田  一君                 広野ただし君                 峰崎 直樹君                 西田 実仁君                 山口那津男君                 井上 哲士君                 大門実紀史君                 糸数 慶子君    国務大臣        財務大臣     谷垣 禎一君    副大臣        財務大臣    上田  勇君    事務局側        常任委員会専門        員        藤澤  進君    政府参考人        内閣計量分析        室長       大守  隆君        財務省主計局次        長        杉本 和行君        財務省主税局長  福田  進君        社会保険庁次長  小林 和弘君    参考人        東京大学大学院        経済学研究科教        授        井堀 利宏君        早稲田大学現代        政治経済研究所        特別研究員    飯塚 尚己君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○平成十七年度における財政運営のための公債の  発行特例等に関する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     ─────────────
  2. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成十七年度における財政運営のための公債発行特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として内閣計量分析室長大守隆君外三名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) 平成十七年度における財政運営のための公債発行特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 民主党の富岡由紀夫と申します。よろしくお願いいたします。  まず冒頭でございますけれども、先日発生しました福岡沖地震、大変な災害が発生いたしました。亡くなられた方もいらっしゃいますし、そして負傷された方も多数いらっしゃいます。昨年に引き続き、いろんな風水害、地震災害、大変多発しております。これに対して、私、まず亡くなられた方に対して、そして遺族の方に対してお悔やみ申し上げますとともに、負傷者の方、被害に遭われた方に対しましては心よりお見舞いを申し上げたいというふうに思っております。  そして、これに関連してでございますけれども、政府はこれに対しては当然のことながら十分な対処措置をとっていただけるというふうに考えておりますけれども、改めて政府の、財務大臣という立場でございますけれども、政府方針について確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  6. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 大きな地震がまた発生しまして、今、富岡委員からお話もありましたように、お亡くなりになった方、また被害をお受けになった方、たくさんいらっしゃると。心からお見舞いを申し上げたいと思っております。  それで、これに対しましては政府としても万全な策を講じなければならないわけでございますが、今のところまだ被害がどのぐらいのものなのかということを十分把握ができておりませんので、もう国土交通省等調査に行っていただいたりしているわけですけれども、まずその全体像と申しますか、そういうものを早期に把握することに努めなければならないと思っておりまして、またいろいろお教えをいただきたいと思っております。
  7. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 こういう災害について、ちょっと一言、私の私見でございますけれども、考え方をちょっと述べさせていただきたいと思います。  新潟のときの被災者の方もそうですけれども、生活再建にかかわる国の対応というか、その件でございますけれども、個人資産に係るものについては国が余り補償できないというような考え方、これはもう従来からの考え方なんですけれども、じゃ、どうしたらいいかというと、地震保険とか、自己責任においてやらなきゃいけないというのが今の日本状況かと思うんですが、地震保険というのは、まあ確かにいいんですけれども、私、若干火災保険なんかと意味合いが違うんじゃないかというふうに思っております。  地震保険というのは、本当に起こらないところは全く起こりませんし、起こらない期間も、起こる地域であっても全然起きないときはずっと起きないということで、なかなか、何というんですか、保険に対するイメージが、火災というのは自分で何か不始末をしてしまったらいつ起きるかも分かりませんけれども、地震というのはそういうたぐいのものじゃなくて、まさしく天災でございまして、保険というのはいまいちなじまないんじゃないかと私は思っているんですね。お金をずっと一生懸命それに対して掛ける人がどれだけいるかと。みんなが掛ければ保険金も下がってみんなが入りやすくなるんですけれども、なかなかそういうふうにはならないかと思うんですね。それをやるのが私は国の役目じゃないかというふうに思っているんです。広く薄く皆さんから税金をもらっていて、そして天災に、起きたときについては、それを、地震保険役割を国が取るような、そういった考え方も検討してみてはいいのかと私は思っております。  あくまでも私的財産を補償するという、そういうことだけにとらわれないで、みんなが広く薄く、税金という形で、地震保険みたいな形で、負担みたいな形で取って、国がその役割を果たすということもあってもいいんじゃないかというふうに私は思っております。国の役割というのは生命とそして国民財産国民生命財産を守ることでございますので、天災という本当に不慮の災難で失われた財産、そういったことに対しては十分な対策を国が取ってもいいんじゃないかと、私はこれは私見でございますけれども、思っているところでございます。  これに対して、谷垣財務大臣のお考えをちょっと、御感想というか、お聞かせいただければというふうに思っております。
  8. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 確かに、今委員のおっしゃるように、先般来、昨年もいろんなことがございましたので、この問題に関しては、この国会予算委員会でも相当議論が積み重ねられてきたところでございます。  今更申し上げることもないんですが、さきの通常国会支給限度額被災者生活再建支援法ですね、支給限度額が百万から三百万に引き上げられて、それでその住宅再建、補修する際に負担する経費の一部を支援する制度が設けられたというような改善等がなされたところでございますので、それを積極的に活用するというのが今の法制の下ではまず第一に申し上げるべきことかと思います。  それで、更に公的支援を充実すべきだという考え方に対しては、一つは行政は公共サービスの回復にまず力を注ぐべきではないかという考え方が一方にあって、個人住宅本体の、そういう考えからしますと個人住宅本体再建というのは少しまあ一歩後ろに下がったような考え方にそういう議論でいくとなるわけですね。  それからもう一つは、今、ちょっと地震保険等に関しましては、これも評価はいろいろだと思いますが、一方で地震保険の加入とかあるいは住宅耐震改修個人自助努力でやっておられる方もかなりあると。そういったこととのバランス、まずそういった方向を充実さすべきではないかという御議論もあるんだと思います。  したがって、今後とも、まだ議論が完全に決着が付いたという状況ではないと思っておりますので、十分議論を積み重ねなきゃいけないと思っております。
  9. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 ありがとうございます。  本題に入らせていただきたいと思います。  今回の定率減税の縮減についてでございますけれども、今回の定率減税を縮減するに当たっては、当初入れたときより景気、経済の環境が向上してきたということで、それが一つの理由。もう一つは、あるべき税制を構築するに当たって、その前段階としてイレギュラーな今の税制をまず元の形に戻すというお話があったかと思うんですけれども、その中で、いろんな今までの御答弁の中で、見解の中で、住民税フラット化して、応益負担というか、一〇%にして、それに対して所得税も変化させていくというようなお話があったかと思うんですけれども。  で、改めて確認したいと思うんですけれども、住民税が、まあいろんな階層の人がいますけれども、五%の適用の人、この方が一〇%に上がります、一律になったとすると。そのとき所得税階層の人は、一〇%の人と全然課税されない人がいるわけですね。一〇%の人は住民税が五%から一〇%に上がったんで、トータルの税負担をイコールにするためには一〇%から五%に下げるような趣旨のお話あったと思うんですけれども、そのほかに、さっき言いました所得税が課税されていない人、住民税が五%だけ課税されていた人が住民税が一〇%になってしまったと。で、所得税は課税されていなかった人がいます。その人の所得税についてはどういうふうに、もちろん、もうないわけでございますから、住民税だけ上げられてしまうわけでございますけれども、その点についてどういうお考えがお持ちなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  10. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) これもこの委員会で何度か申し上げていると思いますが、平成十八年度にいわゆる三位一体税源移譲をやると。それは所得税から地方住民税へという形で所得課税見直しという形でやりたいんだということを申し上げてきたところでございます。  それで、この三位一体関係地方税源移譲をしていくという関係で申し上げますと、今委員がおっしゃいましたように、地方税応益負担という考え方がありますので、所得割税率フラット化をしていこうというのが基本的な考えでございます。  それに対して所得税はどうするかというところは、これはまだ細部までの制度設計というのはできていないわけですが、基本的な考え方としては、税源移譲後においても所得分配機能というものを適切に発揮させていくべきであろうと。そういうことで税率構造等見直していくべきであるというのが基本方針ですが、更に申し上げると、この三位一体関係で申し上げるならば、個々納税者負担の変動を極力避ける形で制度設計をしていこうということでございまして、先ほど申し上げたような税率構造等見直し個人住民税フラット化ということに対応して行われるわけでございますが、細部はまだちょっと十分詰めておりませんし、いろいろやっていきますと難しい問題もあるんだろうとは思っておりますが、大きな方向は先ほど申し上げたような方向で整理をしていきたいと思っております。
  11. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 ということは、住民税が五%だけ課税されていて所得税課税されていない人のところについてはまだ方向性が決まってないというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  12. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) そこのところはまだ実は総務省とも十分詰めていないんですが、総務省で検討されていると承知しておりますが、要するに所得税非課税の人については住民税においてしかるべく対応するということになるのではないかと思っておりますが、これはまだこれからでございます。
  13. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 分かりました。  ということは、住民税で課税されてない人にどうやって対応するかというのはちょっと難しいかと思うんですけれども、あと同様に、住民税が逆に一三%から一〇%に下がった人、これについては所得税引上げ、三%分引上げというふうに考えてよろしいんでしょうか、基本的な考え方といたしまして。
  14. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) まだ詰まってないのでお答えしにくいんですが、基本的には先ほど申し上げたような個々の、個人個人の、まあ大きなところでは全体のあれを変えないということでやっておりますので、今委員のおっしゃったような方向になるのではないかなと思っておりますが、まだ確定的な、こうであるとお答えをするところまでは行っておりません。
  15. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 そして、今のお話の関連なんですけれども、今回は所得税率所得税定率減税と併せて、当初これが導入されたときに、所得税最高税率、そしてあと二番目の税率引下げがされたと思うんですけれども、具体的には五〇%の税率の人が三七%、四〇%の人も三七%に引下げされたということでございますけれども、ここについては戻さないという御見解というか、今回の法案にかかってないわけですから、ということになるんですけれども、これについて、いろんなところで財務大臣は、何というんですか、その税率を下げることによって労働意欲を向上させて、そして経済活性化に資するんだと、のもとにするんだというようなお話があったと思うんですけれども、そして本会議でも、我々の質問の方の中で、質問された中で、御返答いただいた中で、その労働意欲の低下については実証データがないというようなお話あったんだと思うんですけれども、これについて、私どもは、実証データがなくて何でそこの部分だけ戻さないでいいのか、放置しておいていいのかというところがやっぱり疑問として残るんですね。ですから、その辺のところをもう少しお詳しく教えていただきたいというふうに思います。
  16. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 恒久的減税方針を表明して、それを実現されたのは小渕総理のときでございますが、そのときの、当時の小渕総理所信表明の中では、個人所得課税については国民意欲を引き出せるような税制を目指すと、そういうことで所得税住民税を合わせた税率最高水準を、当時は六五%であったと思うんですが、それを五〇%に引き下げるということを言われたわけでございますね。  それで、現在、諸外国所得課税最高税率見ましても、これはまちまちでございますけれども、所得税住民税を合わせて今五〇%、日本は五〇%ということでありますけれども、六五%というようなところは、すべての国もちろん承知しているわけではありませんが、個人所得課税最高限としてはかなり高い水準になってきておりますので、これは国際的に見ても、確かに、今おっしゃるように、それについての実証データというものは特にあるわけではありませんけれども、国際比較等から、当時そういうような小渕総理方針を出されまして、それは現在でも引き続き妥当するものではないのかなというふうに考えているわけでございます。
  17. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 私、いつもこういう税率の、何というんですか、変更について議論されるときに、今言ったように、国際的にどのぐらいのところがいいのかというところはまた議論ありますけれども、そういう意見が出てくるんですけれども、実際に、今、日本の中で、それぞれその税率、三七%とか三〇%がありますけれども、それぞれどのぐらいの人がいるのかという議論がよく落ちているんじゃないかと思っているんですね。  やっぱり、最高税率その六五%というのは高いといったって、それが日本じゅうの人が六五%課税されてしまったんじゃそれはもう大きな問題ですけれども、ほとんどの国民というのはそういう税率とはどっちかというと余り無縁なところの人が多いわけですね。だから、私からしてみると、本当にどれだけの人がそういう適用税率適用されているのか、そういうのをちゃんと示した上で、国会の中でちゃんと議論して、みんなが納得いくような税の引上げ引下げを行っていかないといけないんじゃないかというふうに思っております。  今回の戻さないと言われた階層の人でございますけれども、今回の定率減税引下げとともに、最高所得税税率引下げを行われたら五〇%から三七%に下がった人、そして四〇%から三七%に下がった人、これらの階層の人が何人いるのか、そしてこれらの人が全人口に占める割合はどのぐらいなのか、教えていただきたいというふうに思っております。
  18. 福田進

    政府参考人福田進君) お答えいたします。  所得税最高税率三七%の適用を受けている人員につきましては、税務統計等を基に推計いたしまして、全体で二十二万人程度と見込んでおります。このうち、五〇%から三七%に引き下げられた階層に属する人員は八万人程度、四〇%から三七%に引き下げられた階層に属する人員は十四万人程度。全人口に占める割合、全人口一億二千七百六十八万人、これは平成十六年十月一日の推計でございますが、これで割り算をいたしますと〇・〇六%程度、五〇から三七%に引き下げた階層に属する人員の全人口に占める割合が〇・〇六%程度、四〇%から三七%に引き下げられた階層に属する人員につきましては全人口に占める割合が〇・一一%程度と見込んでいるところでございます。
  19. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 今のお話のように、最高税率を引き下げて労働意欲を向上させようというふうにお考え、ということで御答弁いただいたんですけれども、その恩恵を受けている人というのは、本当に、今言ったように五〇%から下げられた人が日本国民全体の〇・〇八%。わずかこれだけの人のために、これだけの人の労働意欲を向上させるために今回は戻さないと。そして、今、四〇から三七に引き下がった人も十四万人、〇・一一%。今回戻さない合計が二十二万人、〇・一七%ですか、の人のために、その人、日本全体のわずか〇・一七%の人のために今回戻さないというような政策なんですね。これが本当に日本にとっていいのかどうか。これは大多数の、ほかにもっと低所得の人も、理解を得るためにこういった内容をよく示して、どれだけの人がそういう効果を、恩恵を被っているのか、私は、国民全体に、納得して、ちゃんと内容を表示して示してもらわなくちゃいけないというふうに思っているんです。  要は、労働意欲をそがないようにするために今回は戻さないんだといっても、それがみんな国民自分たちにとってもプラスになるような錯覚を持っちゃう可能性があるわけですね。そうじゃなくて、それを受けているのは本当にごくごく一部の、わずか〇・一七%の人しか恩恵を被っていない。これを、あたかも日本国民全体が恩恵を被るような錯覚を持つようなそういう説明というか、そういうのはするべきじゃないと思うんですね。その点についてどうお考えでしょうか。
  20. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) これは、確かに数からいえば、委員のおっしゃったように、大して多くないじゃないかと、ごく一部の人たちだけじゃないかという御議論があるのは分かるわけでございます。ただ、これだけやはり個々人の経済活動も国際化してきたりなにかいたしますと、やっぱり諸外国との比較というようなことも私は必要ではないかと思うんですね。拠点をどっかに移してしまってというようなこともないわけではない。そういうことを全般的に考えてやっていく必要があるのではないかなと思っております。
  21. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 一律にその日本税率を上げろというんじゃなくて、私はどうしてこういうことを申し上げているかといいますと、やっぱり所得格差を余りにも広げ過ぎちゃうと、やっぱりいろんな経済のゆがみというか、いろんなマイナスが露見してきてしまう、出てきてしまうというのが心配しているところでございます。税制というのは、日本のあるべき税制というのは、言ってみれば日本社会をどういうふうにしていくかということにつながる非常に大きな意味を持ったものだと私は思ってるんですね。  国際的に比較してどうだと、よく引き合いにされるのがアメリカでございますけれども、アメリカ税制が本当にいいのか悪いのか、これはやっぱりしっかりと日本の中で議論すべきだと思うんですね。日本は、アメリカ税率階層を段階的に下げてきたら、まあどっちかというとフラット化してきたら日本もやってくると。アメリカが今度また戻してきたら日本はまた戻すんじゃないか。そういう後追いの税制をするんじゃなくて、やっぱり日本のあるべき社会というのはどういうものか、これをちゃんと考えた上で、それで、それをするために税制はどうしたらいいか考えていくべきだと思うんですね。  谷垣財務大臣所得の再分配機能資産の再分配、いろんなことを、そういう考え方はお持ちだということは理解しているんですけれども、それをやっぱりその税制の中でしっかりと具現化していかないといけないんじゃないかというのが私の考えでございます。  やっぱり日本社会をどういう社会にしていくかということは非常に重要なことでございまして、例えば、アメリカ社会がよく引き合いに出されるんですけども、アメリカは確かに成功した人はすごくお金をたくさんもらって裕福な生活をします。だけど、一方で、全然所得がなくて日々の食事にもあり付けないような人もたくさんいると思うんですよね。その光のところばかり今、日本はよく、マスコミもそうですけれども、取り上げて議論されていますけれども、そうじゃない部分もたくさんあるんですね。そういったところを全体的にやっぱり見て、本当にどういう社会がいいのか議論する必要があると思っているんです。  ちょっと前ですけれども、アメリカ社会アメリカ社会をやるような、何ていうか、NHKドキュメンタリードラマがあったんですけれども、ちょっとNHKだったかどうかはあれですけれども。例えば、ある企業が非常に売上げが、売上げというか、赤字体質で経営が非常に困窮していたという状況がございまして、不採算部門があるんですね。だけど、そこはなかなか処理できなくて、やっていたと。それで、あるときにそのCEOが替わって、急にもう大リストラをやったわけです。たしか千人ぐらいの工場を閉鎖して、千人の従業員を全部リストラしました。そうしたことによって、まあ、あといろんなこともやったんですけども、次の年、次の年かその後の年にすごく利益が出てきたんですね。そして、その利益が出たことによってそのCEOはどうしたかというと、たしか二十億ぐらいの報酬、年間の報酬を受け取ったわけです、成功報酬として、二十億円ぐらいの。  で、それに対してそのNHK、じゃなくて、そのアメリカドキュメンタリードラマのインタビュアーか何かが質問をしていたんですね。千人ぐらいの工場を閉鎖して、その人たちを解雇しましたと。千人の人ということは、家族を持っていれば二千人なのか三千人になるか四千人になるのか分かりませんけれども、それだけ後ろに多くの家族を抱えているわけです。千人以上の人たちを解雇して、あなたは会社を再建したと、その成功報酬で二十億円もらったということでございます。で、じゃその二十億円あればその千人の人の給料が払えるんじゃないですかということを質問していたんですね。それに対してあなたはどう思いますかというふうに言っていたんですけれども、そのときその経営者は、それは当然のことだと、自分たちはちゃんとそういうふうに会社の利益を上げたんだから、そんなの千人の人がカットされても、それに対して収益上げて成功報酬をもらって、それは当然自分の仕事の対価だということを言っていたんですけども。そのインタビュアーも同じ感想を持ってたんですけれども、これが本当に望ましい会社の在り方なのか、社会の在り方なのかということを訴えておりました。  要するに、二十億円一人に富を集中させて、で、二千人分の、例えば年収二百万であれば、年収二百万であれば千人分の給料を払えるわけですよ、二十億あれば。そういう社会が本当に望ましい社会なのかどうかというのを私そのテレビを見て非常に痛切に思いました。日本もややそれに今近づきつつあるんじゃないか、後で法人税率の話も質問させていただきますけれども、そういう状況に近づきつつあるんじゃないかというふうに思っているんですね。余り、だから最高税率を戻さないことが悪いんじゃなくて、その課税される人が年収幾ら以上の人なのかと、そういうところを私は議論をしていくべきだと思っているんです。  今、これ政府税制調査会さんの資料で、今の四〇%の税率になっている人の所得税の平均というか、基になる金額は、二千三百八十万円以上の人の所得の人が今四〇%の適用になっているという話なんですけれども、さっき言った、今まで三七じゃなくて四〇%だった人若しくは五〇%だった人が幾ら以上の所得を持っていたのか、もらっているのか、そういったところもやっぱり議論していくべきだと思うんですね。  例えば、年収十億円以上もらっている人に対してやっぱり同じこの三七%のままで本当にいいのかと。そういう人たちがどんどんどんどん、所得をどんどんどんどん蓄積していって、さっき言ったように貧富の差がどんどんどんどん拡大してしまうというような状況にもなる可能性が十分あるわけですよね。  ですから、今その二千三百万、四千万ぐらいの人がもっと税率を上げろというんじゃなくて、私が言っているのは、ちょっと幾らがいいかというのはまた議論ですけれども、年収が例えば一億以上とか二億以上、若しくは十億以上の人については税率をもっと上げて、そういった所得の、富の集中を解消するような考え方も持たないとおかしな社会になってしまうんじゃないかというふうに私は思っているんです。  ですから、よく今回の、税率の改正のときもいつもそうですけれども、そういうあるべき社会日本はどういうふうに税制であるべき社会に持っていきたいのか、その点をしっかりとやっぱりまずビジョンとして持って、その中で税制については議論をしていかないといけないというふうに思っているんですが、この今私のちょっと話したことについて、御感想というか御意見、もしありましたらお願いしたいと思います。
  22. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 富岡委員アメリカ社会の実情を引かれて御心配になったことは私はよく分かります。  日本人は、これはいろんな考え方の方がもちろん日本人の中にもおるわけですけれども、まあ特定の名前を出しちゃいけませんが、ビル・ゲイツみたいな人が次から次へと出てくる、そういう方もいたって悪くはないと思いますが、そういうのが当たり前で、あと一方、その非常におっしゃったような影の部分もたくさんあるような社会日本人が望んでいるわけでは私は決してないと思います。  ただ、そこらはもう少し、今委員のおっしゃったお話の中で、実証的な議論が必要だというのは私はそのとおりだと思いまして、じゃ四〇%の最高税率だといって、じゃ、どのぐらいの所得の方かっていいますと、現実に四〇%の掛かり始めのところはそんなに目をむくほどの高額所得者というわけじゃないわけですね。  そうしますと、日本の平均からしたらかなりいい水準ではあるけれども、まあ生涯働いてきてこのぐらいかなというようなところの方がやっておられるわけですから。確かにかつてのように相当所得分配に意を用いて、私どもも当選したころは、当時はまだ美空ひばりという方がいらっしゃって、美空ひばりさんが、一回百万円でステージやられると、もうそのうちどれだけ税金で持っていかれちゃうから歌う意欲がなくなるというような議論をよくしておりましたけれども、当時から比べると随分そういう点は改まってきて、それはそれの必然性があったと思います。  で、どこまで持っていったらいいかというのはまだまだ議論をしていく必要があると私は思っておりますが、でも、富岡さんのおっしゃったような、そんなアメリカのようなことを望んでいる日本人というのは私はほとんどいないと思いますんで、そこらはやっぱりよく目を光らせながらお互い議論をしていく必要があるなと思います。
  23. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 財務大臣がそういうお考えを持っていただけるというのは非常に心強く思っております。  ちょっと関連して、是非今の所得税のところで、ちょっと事前に質問のお話してたんで一応お伺いさしていただきますけれども、相続税率のところもやっぱり同じように、最高税率というか、が引下げになっているんですね。これは、資産の再分配という意味で、やっぱり大きく日本社会考えていく上で重要な問題だと思うんですけれども、相続税率も、これもう平成十五年のときに最高税率七〇%、これは二十億、課税、相続税評価額ですか、二十億円以上の人が、超の人が五〇%に引き下げられました。で、この引き下げられた人が、この階層の人が、適用を受けた人が、年間、さっきのまた話ですが、どのぐらいの人がいるかというのをやっぱり押さえておく必要があると思うんですけれども、この階層の人が年間何人ぐらいいたのか、そしてその人口割合は、その人たちの全人口に占める割合はどのぐらいなのか、教えていただきたいと思います。
  24. 福田進

    政府参考人福田進君) 相続税の税率、仮に七〇%というふうに前提いたしまして、これを七〇%から五〇%に引き下げられたことになる階層に属する人員につきまして、これも税務統計を基に推計いたしますと、法定相続人ベースで年間三十人程度でございます。全人口に占める割合、一億で割るわけですので極めて僅少、あえて率求めますと〇・〇〇〇〇二%程度と見込まれます。
  25. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 ということなんですよね。わずか三十人の人しかいないと。逆に言うと、相続税評価額二十億円以上の人というのはまだまだごくごく一部の人なんですね。その人たちを優遇するためにこの最高、相続税の税率引下げを行ったということになっているんです。これがさっき言ったあるべき日本社会を目指す上で本当に必要だったことなのかどうか、これは私は十分議論する必要があると思うんですね。二十億円といったら、これ相続税評価額ですから、実際の金額はもっともっと上ですよね、一杯持っている資産は。こういう人たちを優遇させるようなことをしていくと、ますます富の集中というか、一部の偏りが非常に起こってしまうというのが私の危惧でございます。  ですから、最高税率を、相続税の税率を引き下げたと、非常にこれはいいことだというようなお話がよく新聞なんかでも出ているんですけれども、実際には三十人しか年間その適用を受けている人がいないというところなんですね。三十人の人のために税制改正をしたということなんですね。このことを私はしっかりと国民の皆さんにも言っていただきたいというのが私の思いでございます。本当にだれのために税制改正を行っているのか、どれぐらいの所得を持っている人のためにやっているのか、どれぐらいの資産を持っている人のためにやっているのか、私は本当にこのことをしっかりと明らかにしていく必要があるというふうに思っております。  ちょっとさっきの関連でございますけれども、この間、つい最近の新聞の記事で出ていたんですが、日本アメリカの乳幼児の死亡率の比較がございまして、千人に対して、一歳になるまでの間に幼児が死んでしまう確率が出ていたんですけれども、日本の場合は千人のうち二・五人ぐらいでしたか、それに対してアメリカはその倍ぐらいの五・何人死んでしまうという数字が出ていたんですね。  これはなぜかと。日本アメリカで何でこんなに乳幼児の死亡率が違うのかというふうに出ていまして、その新聞の記事によりますと、これは医療サービスの違いだそうなんです。アメリカというのは日本と違いまして皆保険制度がない。お金のある人は民間の非常にサービスの受けられる、高度なサービス、医療サービスを受けられる保険に入ることができますけれども、お金のない人は保険に入ることができない、医療サービスを受けられない状況らしいんですね。そういうことが大きく影響しているんじゃないだろうかというふうに新聞の中では分析されておりました。  これもやっぱり、だから、さっきの光の面と影の面でございますけれども、やはりこの影の面をしっかりと見て、今の相続税率適用人員、年間その最高税率三十人しかいない、その人たちだけを優遇するんじゃなくて、その他大勢の人に、それだけのお金があれば、さっきの会社のCEO報酬じゃないですけれども、何十倍、何百倍の人の生活を補うことができるわけです。ですから、そういったことも考えて、社会主義、共産主義のように全員同じようにするということじゃなくて、やっぱり労働意欲が必要ですから、成功したら、一生懸命働いたら年収何千万、もしかしたら何億ぐらいまではいいのかもしれませんけれども、その何十億というところの人だけを優遇するような政策というのは私は見直すべきだというふうに思っております。  ちょっと今の税率についてはこのぐらいにさしていただきますけれども、次に、同じように法人税率、これも引下げが行われまして、今回はそのままだということでございますけれども、その中で、なぜそれをやらないかというお話がございましたけれども、これは国際競争力を企業に付けさせるためだとか、いろんなお話ありました。そして、今の日本の景気の、経済状況についても、どういう状況かといういろんな議論の中で、企業収益もかなり上がってきたんじゃないかという議論がこれは頻繁にされております。  例えば、衆議院の財務金融委員会谷垣財務大臣は、景気が上がってきたという、何というんですか、実証データとして日銀の短観のデータを引き合いに出されたことがございますけれども、この日銀の短観を踏まえて、谷垣財務大臣の景気に対する見方、これをいま一度、ちょっと簡単で結構でございますので、御確認させていただければというふうに思います。
  26. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) しょっちゅういろんなデータが出ますんで、今の日銀短観の数字がぽんぽんと頭に入っているわけではないんだと思いますが、ごくかいつまんで申し上げれば、これを入れた当時の経済動向はやはり非常に悪くて、底の抜けるようなおそれを多くの方が持っておられたと思いますが、その点は不良債権処理やあるいはそれと車の両輪である産業再生みたいなのもかなり進んできましたし、企業にとってはいわゆる三つの過剰と言われたようなものがほぼ乗り越えつつある状況だろうというふうに私は思っております。  それで、皆共通してやはり心配しておりましたことは、それが個人消費にはなかなか、企業業績は良くなってきても個人消費には結び付かないではないかとか、あるいは失業率等々も、一時に比べますと失業率も戻ってまいりましたけれども、若年者雇用はどうなんだとか、ニートとかそういう問題があるではないかと、雇用構造も本当に良くなってはないんではないかというような心配がございましたけれども、まだ確定的とは言えないとは思いますが、そういうニートとかあるいはフリーターみたいなのに頼るといいますか、不正規雇用に頼るような構造もようやく、何というか、下げ止まりになってまいりましたんで、私は日銀短観等を見ましても企業業績等は比較的今堅調だと思いますんで、全体としてはその個人に回っていく下地はできてきたんではないかなというふうに見ているわけでございます。
  27. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 さっきの所得税率のときのもそうなんですけれども、景気が良くなったという判断するときに、やっぱりどういうデータ、どういう調査対象、どういう母体を選ぶかというのは非常に重要な問題だと思うんですね。  なぜこういうふうに思ったかといいますと、私、今年お正月、新年会で、地元の、群馬なんですけれども、商工会議所とか商工会とかいろんな新年会に出まして、そしていろんな企業のオーナーの方、経営者の方に、もう何百社の方にも会いまして、いろんなお話を伺いました。  その中で、よく日銀のいろんな経済の見通しなんかいって、踊り場に来ているというような御説明がいろいろとされたんですけれども、その場でもされたんですけれども、実際にその経営者の方はどういう感想を持っていたか、私が話した限りでどういうふうに思っていたかというと、踊り場、踊り場といっても、全くそういう、踊り場というか、踊り場というのは上り調子の踊り場というところなんですけれども、全くそういう状況にはないと。踊っているのは、これはちょっと耳障りかもしれませんけれども、踊っているのは政府と日銀だけが踊っていて、一般の企業は非常にまだまだどん底の状況から脱し切れてないという感想がほとんどなんですね。九割方以上の状況なんです。  これ、どうしてかなと私も思ってみたんですね。そうしたら、日銀が景況判断するときに、短観をするときにどういう母体を調査しているかというのをちょっと確認してみたんですね。そうすると、日本には法人というのが二百五十五万社あるそうなんですけれども、そのうちの資本金ベースで二千万以上の上位わずか二十二万社を調査対象としているらしいんですね。二十二万社のうち一万一千社ですか、を調査して、そしてその中で景気が上向くのか、下がっているのか、いいのかどうかという調査をしてるわけです。ですから、残りの、二十二万社引いた二百三十三万社、二百三十三万社ですか、の人たちは調査対象になってないんですね。  そこは私非常に大きな問題だと思うんですね。だから、私は、いろいろなところ、いろんな経営者と話してみると、九割方の人はみんなそういう実感を持っていないというのは、やっぱりそのとおりだと思うんですよ。一割の人を対象にして調査して、その人、それは上位ですよ、もちろん上位の、そこの人たちがいいからということで日銀のある支店長なんかはいいんだ、いいんだと言っているんですけれども、だれもそれもう、全然もう何言っているんだという感じなんですね。それはやっぱり、そういう調査対象がそうだからだということが私分かったんです。  ですから、そもそも景気判断というのは、国民がみんな納得して、国民が感想を持つのが私は本当の景気だと思うんですけれども、ただ、政府としてはいろんな経済政策、財政政策を行う上で景気判断を発表しないといけないんですけれども、そのときにやっぱり調査対象というのも、やっぱりそういう母体をよく考えた上で発表しないと非常におかしなことになっちゃうんじゃないかというふうに思っております。  日銀が調査している資本金二千万円以上の企業というのは本当に、地元で一般の地域経済からすると大企業です。本当の一部の、わずか上位一割の大企業なんです。大企業だけの感想を聞いて景気判断をするのは非常におかしなことになってしまうんじゃないかというのが私の思いでございます。  こういうことについて、是非、こういう、何かいろんな景気判断するときにそういった一部の、いろんな調査データはありますけれども、全体観をやっぱり見ていくような調査対象にしていかないと、それだけが先行、独り歩きしてしまって誤った方向に導く可能性があるんで、国民の感情からも乖離したものになってしまうんで、そういったところを、是非、調査対象、その母集団、それをちゃんとしっかりと改めるというか、考えた上でそれぞれの判断に必要なそういうデータ、調査を行っていただきたい、そしてそれを引用していただきたいというのが私の意見でございます。  是非、ちょっとこれについて御意見というか、御感想をお伺いしたいと思います。
  28. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 確かに、日銀短観等の大企業、中堅企業、中小企業と、こういうことでいろんな数字が出てまいりますけれども、そこでいう中小企業というのは、私も京都の北部の日本海側の方を選挙区にしておりますので、あそこでいう中小企業に当てはまるのは、私の選挙区でいえばもう輝くような優良企業ということになりますので、本当に、こういう言葉がいいかどうか分からないけれども、零細なところまでその調査が行き届いているのかどうかというのはあれだけでは分からない面があるかもしれないなと思っております。ですから、それぞれの調査の、何というんでしょうか、射程距離といいますか、妥当する範囲というのもよくよく吟味して使わなきゃならないだろうと思います。  他方、私、まあ二十数年国会でやっておりましてもう一つ感じておりますことは、やっぱり構造不況業種みたいな、やっぱりあるわけですね。私の、多分委員の御地元もそうだと思いますが、私のところは絹織物なんかやっておりましたので、こういうようなところは構造不況業種で、いいというときはまずめったにないわけなんですね。それに限らず、いろいろ話を聞いておりますと、本当に苦しいときは何かいろんなことを言って私のところに見えるわけです、もうこれじゃ何ともならぬと。しばらく来ないなと思っていると、その間は割合何とか、すごく良くなっているわけじゃないんですけれども、まあ何とかやっているときは余り私どものところにお見えにならないものですから、いいときも顔を出してよって、いいというのも聞かしてくださいよと言うんですが、そういういろんなその入ってくる情報というものをよくよくやっぱり吟味して、その情報の性格というものをよくつかまないと見通しは間違えるところがあるんだろうと思います。  そういうのは、我々も、政府としてももう少し精度を高めるような努力、これは主として内閣府のお仕事だと思いますが、やる必要があるなと思います。
  29. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 ありがとうございます。  今のお話で、法人税、法人が企業収益が良くなってきたということでお話伺っていたんですけれども、さっき言ったように、そういう母集団がどういうものかということを今改めてお伺いしたんですけれども。  それを裏付ける資料というんじゃないですけれども、これも財務省さんの方でいただいた資料でございますけれども、法人の税、法人税を納めている法人の内訳という表が、いただいておりまして、これも見て私も驚いたんですけれども、さっきの日銀の一部のところを調べているのと相通ずるんですけれども、全体の法人が二百五十五万社ありまして、そしてその所得金額、法人所得を納めている企業、そのうちどれぐらいの企業が納めているかという話なんですけれども、この表にいきますと、所得が八百万円以上の中小法人、中小法人というのはこの場合は資本金が一億円以下というふうに規定されているんですけれども、その所得が八百万円以上の中小法人と、あと大法人、これは資本金が一億円超の法人全体で法人所得のどのぐらいを占めているかというデータなんですけれども、表なんですけれども、これを見て驚いたんですけれども、その両者合わして全体の法人所得金額の九六・七%を占めているんですね。  その両者というのはどれぐらいの数があるかというと、そのさっき言った資本金一億円以下の中小企業のうち、所得八百万円以上の企業が二十万一千社、二十・一万社。そして大法人、これが資本金一億円以上ですけれども、一・六万社、一万六千社でございます。それぞれの全体の比率は七・九%と〇・六%です。要するに、上位、合計すると八・五%、上位八・五%の企業が法人所得の全体の九六・七%を占めているというようなデータを、これ財務省さんからいただいております。まさしく日銀のさっきの短観と同じようで、本当に上位わずか一割弱のところだけが全体の収益の、所得の九六%以上を占めているというような偏った今状況が、今の日本経済状況だというふうに思っているんでございます。  もっと驚いたのは、まあそうなんです、当然なんですけれども、欠損法人が百七十五万八千社、全体の六九%、約七割、全体の七割の企業は欠損法人でございます。そして、わずか上位八・五%の企業が法人所得の全体の九六・七%を占めているというのが今の日本状況なんですね。景気がいい、経済が回復した、そういうようなお話ありますけれども、これを見ても分かるように、ごくごく一部の企業だけが景気を回復した、経済のどん底からはい上がってきたというような状況が今の日本状況だと思っております。  ですから、いろんな税制改正等々のときに、こういったやっぱり実証データ、どれだけの企業が、本当にいい、いいと言っても、そういう抽象的な表現だけじゃなくて、本当に何社の人が、何人の人がそういう景気が良くなってきたのか、そういったことをしっかりと踏まえた上で私は判断すべきだというのが私の思いでございます。是非、このように勝ち組のところだけ、一部の、ごくごく一部の勝ち組のところだけを見てすべてのいろんな行政判断をするんじゃなくて、しっかりとやっぱり全体観を見てやっていただきたいというのが私の思いでございます。是非この点について、是非これからも考えて、重きを置いて運営をしていただきたいというのが私からのお願いでございます。  そして、ちょっと、今の法人税率の話でございますけれども、これも三四・五%から三〇%に引き下げられまして、事業税率も一緒に引き下げられました。これを今回戻さないということでございますけれども、これについての理由というか、簡潔に、何回もいろいろ御説明いただいていると思いますので、簡潔に改めてお伺いしたいと思います。
  30. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 済みません。今のはあれですね、ちょっと資料を、委員のお読みになったんであろう資料を一生懸命見ておりましてちょっと聞き漏らしたんですが、要するに、法人税率をかつて引き下げたけれども、それは元に戻さないということはなぜかというお問い掛けですね。  これは、委員が先ほどもちょっとお触れになりましたけれども、言わば主たる考え方は、グローバル化や何かが進んできた、そういう中で国際的な整合性であるとか企業活動にゆがみの少ない中立的な税制は何かというようなことでやってきたわけですけれども、こういう一環として、平成十一年度、小渕内閣のときに、国際経済社会の構造変化に対応した税制改正の、言わばあるべき税制の先取りのつもりでやったわけでございますが、法人税率を引き下げた。当時、国税が三四・五%を三〇%に、それから国税、地方税を合わせた実効税率が四六・三六%を四〇・八七%に行ったということで、諸外国とのほぼ横並びの水準に持っていったということでございますので、これはこの言わばあるべき税制を先取りしたものと思われますので、これを元に戻すということは今考えていないわけでございます。ということでございます。
  31. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 今おっしゃられたように、これはちょっとさっきと観点また違うんですけれども、国際競争力を何か維持するというか、回復させるためというお話だったんですけれども、これもたしか平野議員から質問されたときに御返答をされて、中で、そんな国際競争力と言うけれども、ちょっと私も記憶が定かじゃないんですけれども、やっぱりその実証データというか、国際競争力がどれだけ上がってきたかというお問い掛けに対して、実証データみたいなのは余りないようなお話だったんですけれども、これについてちょっと改めて確認をさせていただきたいと思います。
  32. 上田勇

    ○副大臣(上田勇君) 企業の国際競争力を判断するときには、これはいろんな指標がありますし、またそれぞれにいろんな要因があるのはもう御存じのとおりだというふうに思いますので、じゃ、法人税の減税が具体的にどれだけ国際競争力の向上に寄与したのかというと、なかなかこれは定量的に把握、そこだけを切り取って把握するというのは非常に難しい面がございます。  ただ、この数年間の国際競争力、様々なデータがありますけれども、私ども企業全体の国際競争力というのはやっぱりこれ確実に向上しているんではないかというふうに考えておりまして、例えば幾つかデータを示させていただくと、OECDで取っている統計などもあります。これ、労働生産性について、〇四年、これは我が国の労働生産性が二〇〇四年に前年比で四%、これは主要な先進諸国、英米仏独、これをしのぐ成長率になっておりますし、これは、九八年、九九年当時は我が国はずっとそうした先進国に比べて低かったということから比べると、やはり国際競争力が向上しているんじゃないかということが言えるというふうに思いますし、また内閣府におけるアンケート調査などでも、三年前に比べて競争力が強まったとする回答が三二%に対して、競争力が低下したとする回答というのは二一%。これは企業の判断からしても、競争力、改善が見られるんではないか。あるいはROAなどを比較いたしましても、ここ一、二年上昇に転じているという意味からは国際競争力が改善しているということは言えるんではないかというふうに思っております。  ただ、これが税制改正とどういうような形でリンクしていて、そのうちのどの部分が寄与しているのかというと、これはなかなかそこは定量的に把握しづらい部分があるということは御理解いただきたいというふうに思います。
  33. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 ありがとうございます。  国際競争力付くことは、これはもう非常にいいことでございまして、問題は、国際競争力が付いて企業が収益をますます上げてくる、これはいいことなんですけれども、その収益がちゃんと国民全体に波及するかというところが最大の問題だと思うんですよね。国の企業とか一部の産業だけが生き残って、そこで働いている従業員とか、若しくは下請企業とか納入業者とか、そういったところが死んでしまったら全く本末転倒だと思うんですね。企業若しくは一部の産業だけが生き残って、国民がないがしろにされてしまうというようなことが絶対起こらないようにしないといけないのが政府役割、国の役割だというふうに思っております。  その中で、今の国際競争力を上げて企業収益を上げた企業の収益はどういうところに行っているのか、私ちょっとやや疑問に思うところがあります。名前は申し上げませんけれども、例えばある企業は、さっきのあれじゃ、アメリカの企業じゃないですけれども、工場を閉鎖して従業員をリストラして、そして今まで正社員だった人も給料を引き下げて、それだけじゃなくて、正社員だった人を派遣社員とかパート社員に切り替えたり、あと下請企業に対する発注価格を下げたり、あと部品とかいろんな材料の納入業者の単価を引き下げたり、そうすることによって利益を上げているわけですね。  だから、周りの人はみんな、何というんですか、痛みを押し付けられているわけです。従業員は給料は下げられる若しくは解雇される、今まで正社員だったのがパート社員、派遣社員に切り替えられる、下請の発注価格、金額も下げられる、材料を納入しても部品納入しても単価を引き下げられる、このような苦しい目に遭っているのが日本の大多数の、一部の大企業を除いた企業だと思うんですね。  そういった企業、一生懸命利益を上げて、そこに対して最高税率を引き下げてあげると、そしてその税引き後利益で何をするかというと、企業は内部留保をして翌年の設備投資に、いろんな将来の設備投資に備えたりとか、若しくは研究開発費に備えたり、いろいろ、あと自分財務体質を強化して、企業体質を強化するためにやりますけれども。そうじゃなくて、やっぱりその税引き後利益の中で配当金というのを支払ったり、当然ですけれども、あと役員の賞与を支払ったりするわけでございますけれども、ある会社はそうやってリストラ、大リストラやって、企業、利益が出ました、法人税率も下がりました、で、その残った利益で配当を一杯増配しました、そして役員賞与も一杯やりましたというようなことでございまして、その恩恵を被っているのは一部の株主とか一部の役員というのが、今の日本の企業の中でそういうところが大分出てきているんじゃないかというように思っているんですね。  これもあれですけれども、万が一その株主が、すごい最高収益を上げた株主、これが外国資本、これは別に、それがいいか悪いかは別ですけれども、その大企業の大株主が外国の企業であったと、そして経営者も外国人になってしまったといったときに、さっき言ったように配当金とか役員賞与、これがみんな言ってみれば国外に移転してしまうわけですよね。これについて私は何かちょっと釈然としないところがございます。  一生懸命日本人が、リストラされて、そして単価引き下げられて働いて上げた収益が国外に移転してしまうというのが非常に私としては釈然としないところがあるんですけれども、この考え方はちょっとやや偏っているかもしれないんですけれども、こういった点について財務大臣はどういうふうに御感想をお持ちになられるのか、お伺いできればというふうに思います。
  34. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) まず最初に、企業業績、法人税なんかも安くして、競争力も付いて企業業績も上がっているけれども、それを一体どっちに持っていっているんだろうかと。例えばこの委員会の御議論でもあるいは予算委員会の御議論でも所得分配率の問題等が度々議論になってまいりました。これは私どもが、分配が直接このぐらいが適当だと政府が言うべき筋合いのものではないと思いますけれども、是非ともそこのところはそれぞれ労使でよく議論をしていただいて、適切な水準に私はしていただきたいものだというふうに思っているわけでございます。それを超えて、今おっしゃったようなそういった経営者なり資本が海外から来て、結局のところ配当や何かといっても、国内に言わば蓄積をされる、留保されるという形が取らずに回ってしまうのはどうかと、これはなかなか難しいことだと、問題だと思いますね。  私は、その大きな問題意識としては、今の日本の貯蓄と投資のバランスみたいのをどう見るかということもあるわけでございますけれども、かつては最大の投資をしていく主体であった企業が今は貯蓄の、一番大きく貯蓄を持っているようなことになり、我々政府の方は一番言わば金を、何というのか、吸い寄せることになり、個人の方は、最近はちょっと下げ止まりがあると思いますけれども、高齢化が進んできて貯蓄率というのは下がってきたような状況になってきているわけですね。  これが今のままでいいのかどうかというのは我々もいろいろ問題意識を持っておりまして、国が余り資金を取っていくような体制というのはやっぱり良くないんじゃないかと。民間に資金が流れていって、それを活用していただくような体制をつくらなきゃいけないんじゃないかというのが構造改革の目的の一つであるというふうに考えているわけですが、大きく言えば、やっぱり人口が減っていく中で貯蓄率も、高齢化が進んでいく、貯蓄率も下がっていく、これから日本の発展を支える資本といいますか、そういうもの、貯蓄原資がどこにあるのかというのはこれから真剣に考えていかなければならない問題だろうと私は思っております。  昨年、アメリカとの関係で租税条約なんかも三十年ぶりに改定した考え方一つは、やはり投資を呼び込まないとこれから先に日本経済の伸長を、成長を支えていく原資がなくなってくるんではないかという考え方が背後にございまして、その考えをとことん出していけば、今の委員の御懸念とはまた逆方向考え方になるわけですね。でも、他方、いろいろ組合等をつくって、言わば海外から、海外で組合をつくり、ファンドを作って、そういうところで投資していくような方々の構成しておられる方の税金というのはなかなかやりにくくなってきて、そこら辺りはメスを入れて、やっぱりきちっと、あんまりおかしなことがないようにしていかなきゃならないと。やはり、投資を世界から招かなければならないときに税制等をどうしていくかというようなことは、更にいろいろ議論をきちっと詰めていって、変な穴のないようにしていかなけりゃならないということはあるんだと思っております。
  35. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 ありがとうございます。  ちょっと非常に難しい問題なんで、これは何がいいかというのはよく考えていかないと、あと日本の国益というか、そういう観点も踏まえて考えていかないといけないと思うんで、これはなかなか結論をすぐには見いだせないかと思うんですが、その辺も是非頭の片隅に考慮していただいて、いろんな政策の立案について当たっていただきたいというふうに思います。  ちょっと次の質問に入らさせていただきます。予算の、公債特例に関連して、予算の件についてお伺いします。  私、一期生なんですけれども、この特別会計というのが本当に、改めてよく分からないというのが感想でございます。この分厚い書類は、予算書、一杯いただいておりますけれども、これをどこをどう見たらいいのかというのがさっぱり分からないんですね。  特別会計といっても、一般会計の方の予算から回っているものもあるし、特別の税源から行くのもあるし、いろんな負担金とか保険料とか、そういったもので入ってくるものあるんですけれども、やっぱりどれを取っても国民の大事な税金なりそういう保険料なり、そういったものが使われているわけでございます。ですから、それが本当に正しい使われ方をされているのかというのは、やっぱり国会の中で審議する中で我々議員もみんなが納得しておかないといけないと思うんですね。だけれども、これはどう見ても、納得しようにも分からないです、内容がね、中身の内容が。本当に正しいものに使われているのか、効率的なものに使われているのかというのが分からないんです。  私は民間の企業にいましたけれども、例えば費用でも、本当にその費用が妥当なものかというのはやっぱり細目、細かいところまで見ないと分からないんですね。人件費っていったって、従業員が何人いて、一人当たりがどのぐらいなのかと。いろんな、視察費とか接待費ってありますけれども、それがどういう内容で使われているのか、金額だけ出ていたんじゃ分からないんですね。ですから、あと投資の中身、これもいろいろ、この間、グリーンピアですか、いろんな問題出てきましたけれども、それはもう本当に氷山の一角で、本当に使われる、必要なものに、投資対効果のちゃんとあるものにちゃんと使われたのかどうかということが判断のしようがないんですね。  これを見て、例えば地元の有権者の方に特別会計についてどう思うって言われたと、言われて聞かれたとしても、私、答えようがないんですね。いいものか悪いものか、ちゃんと使われているのか使われていないのか、細目、これじゃ分からないと思うんですけれども、この私の考えというのは間違っているのかどうか、ちょっと財務大臣に御所見をお伺いしたいと思います。
  36. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 確かに委員のおっしゃることは一つの問題点でございまして、我々も今委員のおっしゃったような疑問と申しますか、問題点に答えられるようにしようという取組をまだ始めたばかりでございます。  それで、よく引かれることですが、一昨年だったと思いますが、国会審議の中で、私の前任者である塩川大臣が、相当特別会計の方では無駄がたくさんあるんじゃないかというような御議論に対して、一般会計、つまり母屋でおかゆをすすっているのに離れで子供たちがすき焼きを食っているようなことはけしからぬというようなせりふを吐かれまして、それで政府の財政審議会でも総ざらい的に特会を平成十五年の秋にやっていただいて答申を出していただきました。  それを受けて、平成十六年度で打てる改革はし、そして平成十七年度でも、更に三十一ある特別会計のうち三分の一ぐらい深掘りしていただいたのを今度の平成十七年度にしておりますが、もう一つ、それと併せてやっていかなければならないのは、結局、全体像がなかなかつかみにくいということでございます。  今、結局、国の会計、一般会計と特別会計がいろいろ出入りがあったり、金のやり取りがあったりして全体がどのぐらいになるのかというのはなかなか今までつかみにくいことがございまして、そういう辺りもできるだけ一覧性のある書類にしていって、この国会での御審議でもできるだけ見えるようにしていこうという取組を始めたばかりでございますし、それぞれの特会当たりの分析も相当進めてまいりましたけれども、できるだけそういった成果を分かりやすく還元して、国会での御議論に供していただくように今努めている最中でございます。  それから、あわせまして、予算書そのものも見にくいという、一般会計そのものも見にくいという御批判がございます。  要するに、この予算書というのは、ある政策をやるためにどういう予算が付いて、どういう人を付けてというふうな体系になっておりませんので、あっちこっちに、同じことをやるにしてもあっちこっちにばらばらになっていて見にくいと。どうしたらそういうものをもう一つ政策ごとに分かりやすくするのかというような宿題を今いただいておりまして、そういったそっちの方の作業も進めなければならないと思っておりますが、ちょっと具体的な検討状況、もしあれば事務方からも答弁をさせたいと思います。
  37. 杉本和行

    政府参考人(杉本和行君) 大臣から御答弁ございましたように、特別会計につきまして分かりやすい説明をどうするかということは私どもも重大な問題意識ではありまして、検討を進めているところでございます。  一つは、ディスクロージャーとアカウンタビリティーをどうやって強化するかということでございますが、財政制度審議会等からも御答申をいただいておりまして、特別会計の財務書類につきまして、その発生主義など、いわゆる公会計の考え方を導入した財務諸表を公表するということにしてございまして、そういった作成指針を定めて、十一年度決算から公表させていただいております。  それから、昨年の財政制度審議会におきましても、そのアカウンタビリティーの強化について提言をいただいておりまして、各特別会計の人件費、事務費等、それから資金の流れ、こういったものについて新しい資料を作らせていただきまして開示を進めさせていただいているところでございます。これにつきましては財務省のホームページにも掲載させていただいております。  それから、公会計の関係で省庁別財務諸表という試みを始めているところでございまして、各省庁ごとに特別会計と一般会計と合わせたところでどのような姿になるかということを示させるような資料を今検討させていただいておりまして、いずれ公表させていただきたいと考えております。
  38. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 ありがとうございます。  特別会計の中の財投特別会計についてお伺いしたいと思います。  財投のいろんな改革行って、いろいろと今進展中だということで御説明はいただいておりますけれども、今まで直接、年金とか簡保とか、そういった資金が特殊法人等に流れていた部分を、そうじゃなくて、財投債の発行とか、若しくは財投機関債の発行で資金の流れを変えようというふうに計画されているところだと思うんですけれども、ただ、そのお金が財投債という形、若しくは財投機関債という形になっても、その特殊法人にお金が流れていくということは、全体的なそのお金の流れというのは変わっていないというふうに思うんですね。財投機関債は分かりませんけれども、財投債、これをやっぱり同じように、いろんな、年金とか郵貯とか、そういったところが引受けしている内容は変わりませんので、お金の流れは変わっていないということでございまして、ここはやっぱり変えていく必要があると。  もし、それが本当に変わっているんだと言うんであれば、小泉総理大臣がおっしゃっているお金の流れを変えていくんだということが既にもう達成してしまうことになってしまうんで、されていることになってしまうんで、非常にここは矛盾点を抱えた問題だというふうに思っております。  それで、ちょっと細かい話なんですけれども、財投債、これは国債でございますから、例えば財投融資がいろんな特殊法人等に流れていっていますので、それが例えば焦げ付きになった場合でも、国債ですからこれは国が一〇〇%保証することになりますよね。これは当然なんですけれども。ただ、この財投債を発行するに当たって、これは要するに、将来その焦げ付きが幾ら発生するか分からない、国の負担が幾ら発生するか分からないという非常に大切な問題でございますから、問題ですから、ちゃんと国会の中で十分議論しないといけないと思っているんですけれども、これについてもどういうふうにお考えなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。財投債の発行考え方についてお伺いしたいと思います。
  39. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) ちょっとその前に、一般論になりますが、平成十三年に、さっきおっしゃいましたように、今までは郵貯等は全額財政投融資、資金運用部に預託するという仕組みを切り離しまして、必要なものは財投債ないし財投機関債で調達をすると。それから、それぞれのそういうマーケットの、マーケットで必要な資金を調達するようにして、そして、それぞれの財投機関も政策コスト分析等々のことをきちっとやって、全体の財務体質も明らかにし、その事業の内容も透明なものにしていこうということで進めてきておりまして、その結果、ピーク時には財投の額が四十兆を超えておりましたのが、現在はその四割ぐらいの十七兆強というところまで全体の姿は圧縮してまいりましたので、昔と資金の流れは変わらないという状況は、かなり、総額から見ましてもこれだけ圧縮してきたというのは、かなり財投を通しての資金の流れというのは変わってきたんではないかというふうに思っております。それで、もちろんまだ経過措置として財投債を直接引受け、郵貯等にしていただいている分は残っておりますが、これも平成十九年度までにすべて終わろうということでやっているところでございます。  その上で、今おっしゃったように、結局、財投も国債でやって、財投債といえども国債だから、それを焦げ付いたときには、結局最後は国が穴埋めをしなければいけないんではないかという御疑問でございますけれども、そういうような事態に陥らないように、まず財投機関が業務運営の効率化を行っていかなきゃならないわけでございまして、十七年度の財投計画編成においては、すべての財投事業について総点検を行いまして、住宅金融公庫については民間で取り組んでいるような直接融資を廃止する、それから都市再生機構についてはニュータウン事業から撤退するというような見直しをやっておりまして、委員のおっしゃるような最後焦げ付いたということにならないように、今取組を強化しているところでございます。
  40. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 ちょっと私もあれなんですけれども、財投債の発行については毎年この予算審議書の中で限度枠というか、そういうのが規定されているんですよね。その点についてちょっと確認したいと思います。
  41. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 財投計画は、財政融資それから産業投資、政府保証から成っているわけですが、これらすべてについて予算総則に載っけまして、要するに予算の議決という形で国会の議決をいただいております。
  42. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 いや、これ、本当は我々も、それぞれ予算総則の中身を見てどれだけ本当に発行していいものか、さっき言った住宅金融公庫とか都市再生機構みたいな不良債権化、国民の最終的な税の負担でなるものが発生する可能性があるわけですから、その枠についてはちゃんとしっかりと議論をしないといけないと思うんですけれども、なかなかこれ見てもよく、細かいところを見ないとその金額は分かってこないんですね。だから、これはやっぱりさっきの改める、改善の御努力はされているということなんですけれども、もっとそこは分かりやすくしないといけないものだというふうに思っています。  今言ったように、今、保証とか財投債の発行については予算審議書の中で入っているということだったんですけれども、財投機関債、これについてちょっとお伺いしたいんですけれども、財投機関債というものがあります。これは国が保証はしないものだ、要するに国債みたいに税金を投入しないものだというふうに考えてよろしいんですね。財投機関がそれぞれ独自に発行する債券であって、国は一切関知しないということで考えてよろしいんでしょうか。
  43. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) これは財投機関において発行するものでございまして、政府保証がないと、こういうことで、政府保証のない、要するに財投機関の責任において発行される公募債券である、こういうことであります。
  44. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 じゃ、例えば発行機関が財投債を発行して、例えばその財投機関債がデフォルトになってしまったと、破綻してしまって返せなくなってしまったといったときに、国の税金を当てにして、国会の中で、一般予算から回すような、そういったことは絶対想定しなくていいということですね。財投機関債の、我々のこの国会の中でそのことは一切議論しないというふうに考えていいのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  45. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 要するに、財投債、財投機関債を発行している法人といいますか、公法人というんでしょうか、そういうものの破綻処理をどうしていくかということになるわけでございまして、国が金、税金をつぎ込んで、そこをうずめていくというような性格のものではないと、こういうふうに考えております。
  46. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 分かりました。  財投機関債の発行についてはさっきの予算審議の中で諮ってないということだったものですから、そこをちょっと心配していたんです。諮っていないのに、どんどんどんどん財投機関が財投機関債を発行して、それで将来国民税金にツケが回ってくるようなことになってしまったら大変なことになってしまいますから、今の御答弁ではそういったことはないということで理解してよろしいんですね。はい。
  47. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) そうでございます。
  48. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 是非、さっきの税のときもそうなんですけれども、私は、さっき、今改善中だというお話だったんですけれども、やっぱり民間の企業とか、特に銀行には、資産の中身をよく査定して、開示して、そしてちゃんと分類して、処理すべきものは処理するし、引き当てを積むものは引き当てを積めというふうに指示しているわけでございますから、是非、財投機関、特殊法人等についても、その資産の中身についてはちゃんと明示をさせて、それぞれ資産の中身を、国民が安心できるような、納得いくような形でお示しいただけるような方向で開示の方をしていただきたいというふうに思っております。  そして、さっき住宅金融公庫と都市再生機構の不良債権の中身についていろいろ手当てを取ったということなんですけれども、本当にこれだけなのかというところがやっぱりまだ疑問に思うところがございますので、こういった、特に大口の資金が国のそういった特別会計を通して行っているところについては、更なる明細の、不良債権の全貌というか、資産の中身の解明をお願いしたいというふうに思います。  ちょっとそれについて、住宅金融公庫と都市再生機構だけじゃなくて、全体について、そういった中身、資産の中身を開示していただけるかどうか、お願いしたいと思います。
  49. 杉本和行

    政府参考人(杉本和行君) 特殊法人のディスクロージャーの問題にも絡むと思うんでございますが、特殊法人につきましても、平成十二年分の決算からでございますが、民間企業として活動しているという仮定の下に、最新の企業会計原則に準拠して作成した貸借対照表や損益計算書といった形で、行政コスト計算書と名付けられておりますが、そういったものが各法人より公表されているところでございます。それぞれの特殊法人におきましては、この行政コスト計算書で民間並みにそれぞれ資産等を計上させていただいているところでございまして、そういった形でディスクロージャーを進めてまいりたいと考えております。  財務省といたしましても、特定の事業の遂行により当該法人の業務に支障がないようにという観点から、財政の健全性に配慮しながらいろんな査定を行っているところでございまして、こういった形で特殊法人の財務の健全性というものを確保していく必要があると考えております。
  50. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 ありがとうございます。是非、十分な納得いく解明を、明細、ディスクローズをお願いしたいと思います。  次に、公債特例に関連して、いろんな、プライマリーバランスの見通しとか、いろいろと試算が出ておりますけれども、内閣府の構造改革と経済財政の中期展望二〇〇四年度改訂版についてお伺いしたいと思うんですが、このいただいた表によりますと、竹中大臣なんかは、これはもう十分何回も議論されておりますけれども、名目成長率が名目長期金利を上回るんだという御説明をいただいておりますけれども、この内閣府のつくった数字ですら、二〇一一年度、そして二〇一二年度については逆に名目長期金利の方が名目成長率を上回るような内容になっておりまして、言っていることと実際にこの計画で挙げている数字が逆転しているんですけれども、逆なことを言っているんですけれども、この点について内閣府さんからちょっと御説明をいただきたいと思います。
  51. 大守隆

    政府参考人(大守隆君) 名目成長率と名目長期金利の関係は、一つのある理想的なといいますか、定常的な状態においてはほぼ等しいという議論もございますけれども、実際にはそのときの事情によって、一方が他方を上回ったり、また他方が一方を下回ったりというような関係があると思っております。  今御指摘いただきましたように、この展望、参考試算におきましても、ある時期においては名目長期金利の方が下回って、それからその後上回るというような形になっております。
  52. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 これ、財務省さんの、財務省じゃなくて内閣府さんの計画であるんですけれども、ちょっと私、是非、財務省の考えるそのプライマリー赤字、それを黒字化させる、プライマリーバランスを黒字化させるということについて、具体的な方策について私ちょっと確認したいと思っているんですけれども、財務省さんのやつは黒字する二〇一〇年代初頭までの計画はお示しいただいてないと思うんですね。  何でもそうなんですけれども、計画を立てたときにはやっぱり、できるかできないかは別として、ちゃんと目標数値を置いて、具体的にここを手を入れていくんだみたいな、やっぱりそういうものが、数値的なものがないとやっぱりなかなか実現できないと思うんですね。ただ単に精神論でやっていくんだと。これは地方も合わせてでございますけれども、やっぱり財務省としては、国単独でもプライマリーバランスの黒字化をどうやって目指していくんだと、そういったビジョンが国、国民に対して私は示す必要があると思うんですね。そこはやっぱり財務大臣のリーダーシップで、こういうふうに財務省としてはやっていくんだからみんな付いてきてくれというようなお考えをお示しいただくことが必要だと思うんですけれども、この点についてちょっと考え方をお伺いしたいと思います。
  53. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) その辺の考え方につきましては、一つは、今おっしゃったような内閣府で「改革と展望」の参考資料として試算を出していただいておるわけですが、これは国と地方を合わせたものですが、いつも引かれますのは、どちらかというとベストプラクティスといいますか、一定の仮定はありますけれども、非常に調子良くといいますか、うまくいった場合の図式と、それから改革が余り進まない、進んでいかない場合の想定と、二つ今年は出していただいているわけですね。  私どもの方は後年度試算というのを昔から出しておりまして、これはプライマリーバランスの改革のための手法というわけでは必ずしもないわけですが、余り努力をしないとこういうふうに、今の前提のままでいくとこうなるぞということをお示しして、ある程度の材料はお出しをしているつもりなんです。  それで、要するに国と地方と一体というよりも、国だけの方を、つまり二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復と言っておりますが、内閣府のおつくりになったものでも、今、今年お出しになったのは二〇一二年に一応回復するということになっておりますが、それは国、地方を合わせてでありまして、国の方はまだバランスを取れないという姿になっているわけですね。  それで、これ、どうして国と地方と一緒にしたものを出しているのかといいますと、国と地方の財政、片っ方だけきれいにしたら片っ方がじゃどうなっていくというものでもございませんで、例えばほかの状況を、条件を動かしませんと、仮に交付税をたくさん持っていけば地方の方は非常にいい数字になるけれども、国の方は悪い数字になるというような、全体を見ないとなかなかできないところがございますので、私は、国と地方の一体のものとしてプライマリーバランスを見直すようにというふうに示していただいてきた内閣府のこの試算は、それなりそういう意味があったんだろうというふうに思っております。  それで、ですから、私どもも地方と要するに協力しながら何とかこの内閣府の試算に合わせてやっていきたいというのが当面の目標でございますが、それを超えて何が必要かということになってくると、むしろ国だけ、地方だけというよりも、国債残高全体の、公債というか、長期債務全体の管理をどうしていくかという問題が正面に出て来ざるを得ないだろうと思っております。  それは、先ほど委員も指摘されましたように、長期金利と経済成長率の関係というような辺りが非常にシリアスな問題になってくるわけでございまして、経済財政諮問会議でも、要するにGDP全体に対して長期国債の残高のパーセントをどの程度抑えていくかとか、次の目標をそろそろつくるべきではないかという議論になってきておりますので、今、国だけのをつくれということよりも、むしろ二〇一〇年代初頭にできた後、どういうことを考えながらやっていかなきゃならないかというところを少しこれから詰めていかなければならないのかなと思っているところでございます。
  54. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 ちょっと限られた時間なので余り十分にできないんですけれども、やっぱり今、国債の、国の借金、地方の借金も含めてですね、財政問題、赤字の問題が私最大のこれからの問題だと思っています。  そして、ちょっとまたお聞き苦しいことを言うかもしれませんけれども、財務省さんは非常に危機だ危機だという資料を一杯出しているんですね。政府もそれを認めているわけで、出しているということは認めているわけでございますからそうなんですけれども、この莫大な借金というのは、どうしてこんなになってしまったんだと。私は、やっぱり日本の、何というんですか、お役所というか、役人の中で一番いけないのはやっぱり責任を取らないというか、これはやっぱり政治の世界もそうだと思うんですね。責任をまず明確にした上で、そして改めていかないといけないと思うんですね。いつまでたっても責任を明確にしないで、どんどんどんどん、何というんですか、次から次へ、次のことばっかり考えますけれども、それはやっぱり改める必要があると思うんですよ。なぜこんなに国の借金が膨れてしまったんだ、国の借金が膨れてしまったんだと。これをまず正確に分析して責任をちゃんと明確にする必要があると思うんですね。  ですから、あたかも何もしないで、今こんなになっちゃったんで大変だ大変だというような言い方ではなくて、今までの政策はこういうことでちょっと読み違えてしまったと、したがってその読み違えによってこういう結果になってしまったんだと、その点についてはまず素直に謝罪をして、そしてその上で、ついてはこのまま放置すると更に悪化してしまう、とんでもないことになってしまうということで国民に増税なりいろんな負担のそれぞれをお願いしないといけないと思うんですけれども、そういうことが、私、今の日本の国の中では欠けているんじゃないかというふうに思っております。  是非、ちょっと改める、危機意識を共有化する意味で是非お伺いしたいと思うんですけれども、平成十七年度末で公債・借入金残高の種類別合計というのが、これは財務省さんの資料で出ております。八百八十七兆円ありますということでございますけれども、これは国だけの債務、国債・借入残高の債務だというふうに理解しているんですが、これに地方の債務を加えると、国全体で、今年度、十七年度末でどれぐらいになるのか、改めて確認をさせていただきたいと思います。
  55. 上田勇

    ○副大臣(上田勇君) お答えいたします。  今委員が、その前にちょっと今委員がお示しになった八百八十七兆円という数字でございますが、これは十七年度末におきます普通国債、それから財政融資資金特別会計の国債、いわゆる財投債ですね、それから借入金及び政府短期証券等の残高見込み、これが八百八十八兆円ということでございます。  これは、申し上げましたのは、通常財務省で使っています数字とちょっと違うものですから、そういう前提でありますが、これに地方の長期債務残高の見込みであります二百五兆円を加えますと、これは単純に合計いたしますと約一千九十三兆円ということになります。
  56. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 一千九十三兆円、これは非常に恐ろしい数字だと思うんですね。ちょっともう時間がないんであれなんですけれども、一%金利が上昇すると、これ十兆円以上利払い費が負担が増加するという数字ですよね。三%だと三十兆円。今、国の予算が四十四兆円ですか、こんなの、あっという間に吹っ飛んでしまうような状況でございます。これはやっぱり、だから財政問題、この債務の問題、長期金利の問題、金利と債務というのは非常に密接に関係しております。どんどんどんどん国債を発行しようと思えば金利を上げていかないといけないような状況にもなってきますので、これは十分危機意識を私は持たないといけないと思っておりまして、これは次回の質問に継続させていただきますけれども、この点を主張させていただいて、私の質問とさせていただきます。  本日はどうもありがとうございました。
  57. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 お伺いいたします。  しょうちゅうに対する課税強化問題について、まずお伺いしたいと思います。  これは、沖縄県内の泡盛製造業者に対して、沖縄振興特別措置法の減免分、平成十九年の五月十四日までに酒税が二〇%軽減に加えて、租税特別措置法に基づく全国の中小零細業者に対する特別措置によって酒税の負担額が大幅に引き下げられています。これは、地元の報道によりますと、平成十四年度の実績で見た全事業者の軽減総額がおよそ十八億八千万円に上るとされておりまして、これは全体の経常利益総額のおよそ十八億五千万円に相当しておりまして、酒税の軽減がなければ県内の製造業は利益が出ない状況になっているとされています。このために、沖縄の泡盛製造業者の方々は二年後の沖縄振興特別措置法の期限切れに危機感を高めています。  こうした中で、第三のビールへの課税強化を名目にして、十八年度の税制改正において全酒類間の課税の均衡を図ろうとしていますが、これは泡盛製造業者の方々からすればしょうちゅうに対する増額となり、沖縄振興特別措置法の期限切れと併せてダブルパンチとなり、経営への影響も大きいと思われます。  第三のビールへの課税強化を名目にして、しょうちゅうへの課税強化を見送るべきと考えますが、財務省の見解はいかがでしょうか。
  58. 上田勇

    ○副大臣(上田勇君) お答えいたします。  沖縄産の泡盛につきましては、今先生からいろいろと御紹介をいただきました様々な税制措置が講じられておりまして、今そうしたことについて、見直し方向等についての御質問でございましたけれども、今委員の方から御指摘があったように、酒税についてはやはりその税制の中立性とか公平性を確保する観点から、酒類の生産や消費動向等の変化に応じ適切に対応していく必要があるというのが基本的な考え方でございます。  今後、政府それから与党の税制調査会の議論も踏まえまして、平成十八年度の税制改正に向けまして、酒類間の税負担格差を縮小するという観点、それから酒類の分類の簡素化、これはやっぱり余りにも酒の種類によって税率が変わっているとそれがいろいろな支障もあるということから、そういうような方向で酒税全般の見直しについて検討を進めさせていただいているところでございます。  なお、今委員から御紹介のあった沖縄の泡盛についてどうするかというような個別のことについて、それは今下げるとか上げるとかというような議論がまだ提起をされているという段階ではございませんが、先ほど申し上げましたように、中立性、公平性、そうした観点から議論していきたいというふうに思っておりますし、同時に、今とられております沖縄に対する本土の税率に対して三五%軽減しているという特別措置、これなどについても、その地域の特性に十分配慮していくというのが基本的な考え方だろうというふうに思っております。
  59. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 今、沖縄県の酒造連合組合の調べによりますと、二〇〇四年の泡盛のその製造量、これ四十四度ベースなんですが、二万六千百十八キロリットルで、前年に比べますと二〇・三%増と過去最高の伸びを示しています。総出荷量が二万八千七百四十八キロリットルで、これ前年対比で一二・九%伸びておりまして、県外出荷量が六千三百四十五キロリットルで、前年度比四三・二%と伸びております。  これ、過去二番目の伸び率となっておりまして、今沖縄ではこの泡盛を全米へということで、アワモリ・アクロス・アメリカのその頭文字を取って、AAAプロジェクトというのを発表いたしまして、今年の四月からロサンゼルスなど全米四大都市を中心に販売を計画しています。ですから、このように意欲的に県外や海外まで展開して、沖縄県でのもう本当に数少ない成長産業であります泡盛製造業に対して、やはりこの酒税改正で生産意欲をそぐことのないようにということで、是非ともお願いを申し上げたいと思います。  次に、財政問題について、財政再建問題についてお伺いしたいと思います。  まず、構造改革と経済財政の中期展望の内閣府の財政再建に対する試算では、改革が進展した場合、二〇一二年度に国と地方のプライマリーバランスを黒字化できるとしています。この試算では、基礎年金の国庫負担割合引上げの財源について、二〇〇六年度以降二年間は所得税計一・五兆円、それから残りの二年間は消費税が計一・五兆円としており、消費税の引上げに一部含みを持たせたものになっておりますが、この試算について谷垣財務大臣は、先ほどもおっしゃっていらっしゃいましたベストプラクティス、まあ従来からその表現をしていらっしゃいますけれども、この試算どおりに改革が進展するとしても、プライマリーバランスの黒字化のためにこの消費税の引上げが必要ということになるのでしょうか。お伺いしたいと思います。
  60. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 確かに、委員がおっしゃいますように、この内閣府の試算では二〇一二年度にプライマリーバランスを回復する、その前提で、委員がおっしゃいましたように、基礎年金の国庫負担部分所得税と消費税に求めるということになっておりますが、委員の今の御質問は、それは一応前提として置いておいて、それでも二〇一二年に一応プライマリーバランスを回復できるんだから、それ以上その消費税に、増税に頼るということは考えなくてもいいんではないかという御趣旨ですよね。  それで、これにつきましては、先ほども私申しましたけれども、ベストプラクティスと申しておりますのは、確かに、ほかの税に頼らずにやるということも考えられない、全く不可能かどうかは、こういう数字が出ているわけですから、何とも不可能とまでは言い切るつもりはございませんけれども、しかし現実にじゃその間何をしていくかということを具体的に考えますと、結局無駄なものは省けというのは一つやらなければならないことは当然でございますけれども、必要な公共的サービスの水準は何なのかというのをよく見極めていかなきゃならない。そして、その必要な公共的サービスの給付に対する負担というものはバランスを取っていないと長続きしないということになるわけですね。  それで、必要な公共的サービスというものを議論していきますときに一番中心になる課題は、やっぱり高齢化に伴う社会保障をどうしていくのかという議論になるんだろうというふうに思います。これは、ある程度はやっぱり、無駄は省くにしても、ばさっと削るような性格のものではそもそもないんだろうと思うんですね、これはこれからの御議論ですけれども。そうしますと、それを併せて負担していくときに消費税ということをどうしても議論になってくるのではないかというのは私の考え方でございます。  それと、もう一つは、現在でも毎年かなり社会保障の見直し等もやっていただいて自然増を抑えるという努力をやっていただいているわけでありますけれども、現在政策経費、一般歳出のうち四割を超える部分社会保障になってきております。四三・一%だったと思いますが、これが、ほかのところは相当圧縮してきて、現に実額も減らしているんですが、社会保障だけはやっぱりどうしても増えてくるということになりますと、要するに一年間の予算のバランスで、社会保障だけがどうしても増えてくるということになりますと、ほかの必要な経費に果たして回さなくていいのかという議論がやっぱり出てくると思います。無駄は省かなければならないと思いますが、じゃ、そこをどうするかということも視野に置かないとなかなか現実には議論が進まないのではないかと、こんなふうに考えているところでございます。
  61. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 今、大臣、御答弁ございましたが、しかし内閣府の「改革と展望」の参考試算、財務省の後年度影響試算はそれぞれその性格が異なっているように思うわけですが、消費税の引上げについては、国民の無用の混乱を招かないようにするためにも、やはり政府試算の策定に当たっては内閣府と財務省がもっと意見のすり合わせをすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  62. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) それはもう確かに糸数委員のおっしゃるとおりだと思います。  今回、内閣府試算を作るときに、経済財政諮問会議で、去年の十二月の末ごろだったと思いますが、私から竹中大臣に、財政にかかわる部分については十分に事前協議を、調整をお願いしたいと、分かったということで竹中大臣にも受けていただきまして、内閣府と財務省で従来にも増して事務的な調整に力を入れてきたわけでございます。  それで、別に私ども全く違うこと考えているわけではなくて、これは一つのやっぱり、何というんでしょうか、経済財政モデルというのを内閣府でお作りになって、そこに一定の仮定を置いてこういうものを出しておられるわけですから、現実にやっていくとなるとどうしても制度をいじるとか、私どもの具体的な予算編成作業になると制度をいじるとか、そういうことがもう不可避になってまいりますので、そこら辺りは、大きなマクロ経済的な見通しと私どもの現実的な予算編成作業との間には若干また違いが出てくるのは調整をしてもやむを得ないところかなと思っております。
  63. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 次に、橋本内閣時代の財政構造改革法は、新規国債の発行の縮減や歳出分野ごとの上限制などを定めて財政再建を目指してきましたが、御存じのように、九兆円にも上る国民負担増による景気の失速、同時に起こってきた金融危機などによって凍結されてしまいました。  現在、国と地方を合わせたプライマリーバランスを二〇一〇年代初頭に均衡化させるとしていますが、今後の国の具体的な財政再建のその目標はどこにあるのでしょうか。また、具体的な歳出削減目標や歳入目標を定めた財政改革法の策定も検討していくべきではないかと考えますが、大臣見解をお伺いいたします。
  64. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 委員おっしゃいましたように、橋本内閣のときのあのいわゆる財革法と言われておりますものは、いろんな数字、数量的な目標値も入れて財政再建を図ったわけでございます。それで、現在あれと同じものが私どもにあるわけではありませんが、財政再建の目指していく大きな目標として、委員もお触れになりました二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復していこうと、そのときにいただける税金でその年の政策を打って、ツケを後の世代に先送りしないようにしようというのが現在の目標でございます。  それで、今の委員のお尋ねは、国と地方内閣府の試算は国と地方と一体になったものとして書かれておりますので、国はじゃどうするんだという、先ほど富岡委員からも同じような御質問がありましたけれども、恐らく共通の御関心なんではないかなというふうに思います。  そこで、実は先ほども御答弁申し上げましたけれども、国と地方の財政というのは非常に結び付いているところがございまして、やはり地方に交付税をお出ししていくと、たくさん出せば地方は良くなるけれども国は悪くなる、ちょっとしか出さなきゃ国はいいけれども地方は悪くなるということでございますから、どっちが、どっちだけが笑ってどっちだけが泣くというようなものでは余りうまくいかないんだろうと思います。したがいまして、プライマリーバランスを回復していくときに国と地方と両方合わせて目標にしてやっていこうということで今日までやってまいりましたのは私は意味のあったことではないかなと思うわけでございます。  その上超えて、国として何を目標にするかということになりますと、まだ十分議論は整理できておりませんけれども、要するに、これだけ長期債務残高を持っておりますと、金利がちょっと上がればばあんと金利負担も重くなる、金利の動向と、一方、経済成長がどんどん進んでいけばおのずからその全体の中での負担は軽くなっていくというわけでありますから、そこのバランスをどう取っていくかというのが多分これから先の大きな課題になってくると思いますが、しかしながら長期金利を器用に政策的にコントロールしていくというようなことは言うべくして実際にそんなできるわけのものでもございませんが、要するに、今後どういう目標を仕入れてやっていくのかということは経済財政諮問会議でも問題提起をしていただいて、今これから議論をしていかなければならない段階でございますので、要するに、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランス回復した後の大きな目標は何、どういうことにしていくのかということをこれからもう少し議論を詰めていきたいと思っております。
  65. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 次に、潜在的国民負担のその負担率についてお伺いしたいと思います。  租税が二一・五%、社会保障が一四・四%、二〇〇五年度の国民負担率三五・九%、財政赤字の対国民所得比の八・九%を加え、潜在的国民負担率は四四・八%となっていますが、政府はこれを高齢化のピークのときである、ピーク時である二〇二五年度においても五〇%以下に抑えるというふうにしています。政府部内では、厚生労働省の幹部などは、これは例示にすぎず拘束力はないと、こう見ている向きもありますが、この潜在的国民負担率を五〇%以下、この目標は現在でも政府の目標になっているのでしょうか。
  66. 上田勇

    ○副大臣(上田勇君) お答えをいたします。  正確に申し上げますと、この国民負担率につきましては、経済財政運営と構造改革に関する基本方針、この二〇〇三年及び二〇〇四年といった閣議決定をされました文書におきまして、今委員がお読みになりましたように、「例えば潜在的国民負担率で見て、その目途を五〇%程度としつつ、政府の規模の上昇を抑制する。」というような形で記述がされております。これは例えばということでありますので例示というふうにも取れなくもないのかもしれませんが、私どもとしては、これは閣議という場で政府方針としてこういう方向が定められているわけでございますので、政府の目標として位置付けて今財政の運営に努めているところでございます。
  67. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 厚生労働省の推計によりますと、二〇二五年度にこの潜在的国民負担率は五六%まで上昇するとされています。財務省はこれを五〇%以下に抑制するために年金や医療や介護など社会保障の給付を二割削減すると、その必要があると機械的に試算をしていますが、谷垣大臣は潜在的国民負担率五〇%以下の政府目標を達成するためにはどのような具体的なビジョンを持っていらっしゃるのか、その見解をお伺いしたいと思います。
  68. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) やはり社会保障、一体になって考えなければいけないと思うんですが、医療、介護、年金、基本的に身の丈に合ったものでないと持続可能ではない。どんどんどんどん我々の実力を超えて大きくなるようなものではなかなか長続きしないんではないかということでありますから、三つの、三つの制度というよりか社会保障全体をやはりそういう目で、どう経済成長と平仄が合うかという形、制度に、仕組みにしていくということが一つだろうと思います。  それから、自助、公助、共助とあるわけでございますが、共助についてはちょっとおくとしまして、国が制度をつくってバックアップすべき公助と、それから本来自分でやはり、何というんでしょうかね、自ら助くる、助けるといいますか、そういう自助、どこまでがそういう役割分担なんだろうかということはきちっと見直しをして、必要な線引きをきちっとすると。つまり、社会保障が担うべき役割というのはやっぱりきちっともう一回見直していくという必要もあるのではないかと。それと併せて、給付の重複とか、あるいは過剰な給付とかいうものがございますから、そういうものを排除して、公平な制度と皆様に思っていただけるようにしていくと。  それから、私は、この問題を考えますときに一番時間の掛かる問題は意識の変化なのではないかなというふうに思っているわけでございます。年金を議論いたしましたときも、やっぱりこれからの支え手、これだけ出生率が低くなって年金が維持できるのかという御議論がございましたけれども、やっぱりみんなで次世代の子供たちを育てていく、安心して育てられるねという仕組みも必要でありますけれども、やっぱりそういったことに、お互い子育てを一生懸命やって生きがい感じられたねというような、何というか、意識をみんなで持てるか持てないか。あるいは、高齢者にしても、単に弱者というだけじゃなしに、お金持ちで能力のある方もいらっしゃるわけで、やっぱり高齢者に対する、何というんですか、意識の在り方というような、そういう意識改革も、制度を支える側、支えられる側、双方の意識改革というものもなければいけないのではないかと。  今申し上げたようなことを併せて議論をして、努力して何とか潜在的な国民負担率というものを抑制することができればと思っているわけでございます。
  69. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 次に、定率減税の縮減問題についてお伺いいたします。  恒久的減税である定率減税を縮減し、国民に大幅な負担増を求める際には、まず政府自身が徹底した行財政改革を行うとともに、今後の少子高齢社会で必要となる財源と我が国の将来ビジョンを国民に明らかにすることが必要と考えます。  「改革と展望」を読みますと、確かに、歳出面での改革では、公共投資の削減や重点化、効率化、人件費の抑制、一般歳出の聖域なき見直しと抑制などについて、構造改革の推進では、官から民へ、国から地方へなどについて言及しています。  定率減税を縮減させる前提として、政府自身はどのような行財政改革を行ったのでしょうか。また、我が国の将来ビジョン、早急に明らかにすべきではないかと思います。
  70. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) まず、財政構造改革ということでありますが、歳出改革路線の堅持、強化と、今年もそういう方針で予算を作ったわけでありますが、その歳出、無駄な歳出は徹底的に見直すと、聖域なき歳出改革をやろうということで、平成十七年度予算も社会保障関係費と科学技術振興費以外は皆抑制すると。例えば、公共事業関係費は四年連続、防衛関係費は三年連続マイナスというような形で、主要経費は対前年度マイナスということをやりまして、その結果、三年ぶりに一般歳出については前年度の水準以下に抑制するということができたわけであります。  それから、行政改革について申し上げますと、これまでも特殊法人等改革ということでやってまいりまして、特殊法人等向けの財政支出を実質的に一兆五千億円削減するというような取組を進めておりますし、それから、昨年末に決定しました今後の行政改革の方針というのに従いまして、独立行政法人については、三十二ある法人を二十二法人に再編する、それから八千三百人余りの役職員を非公務員化するといった取組を進めているところでございます。  今後とも、こういう歳出削減あるいは行政改革、徹底的に取り組んでいくことが私は必要だと思っておりますが、同時に、先ほども申したことの繰り返しになりますが、社会保障給付、どうしても増えていく、増加圧力と言うと言葉は悪うございますが、どうしてもそういう面がございますので、歳出歳入両面のバランスを取っていくということが併せてありませんと、国の予算というものが余りにもいびつなものになってしまうと。この両面併せてやっていく必要があるのではないかと思っているところでございます。
  71. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 平成十七年度の与党税制改革大綱では、「今後の景気動向を注視し、必要があれば、政府・与党の決断により、その見直しを含め、その時々の経済状況に機動的・弾力的に対応する。」としています。この与党の大綱の趣旨からすれば、景気が失速すれば縮減や廃止時期を見直せる弾力条項をその法案に盛り込むべきではなかったかと言われておりますが、いかがでしょうか。
  72. 福田進

    政府参考人福田進君) お答え申し上げます。  御指摘の与党大綱の一文につきましては、単に定率減税縮減の見直しについてのみ述べられたものではなくて、経済財政運営全般にわたっての政府・与党の基本的な考え方が表明されたものと私ども理解しておりまして、こうした内容を何らかの形で税法に盛り込むことは必ずしも適当でなく、また与党大綱の趣旨もそういうものではないというふうに考えております。  大臣のお言葉をおかりしますと、経済は生き物でございまして、政府といたしましては、今御指摘の与党大綱の趣旨も踏まえつつ、その時々の経済状況に応じまして、政策的な対応が必要となった場合には、経済のどこに一体問題があるのか、それに応じた適切な対応を機動的、弾力的に行っていくべきものであると、かように考えております。
  73. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 定率減税個人所得課税の抜本改革までの過渡的な税制改正であるというのであれば、十八年度税制改正で予定している所得税個人住民税への三兆円規模の税源移譲に伴う税制改正の全体像をできるだけ具体的に明らかにすべきであると考えます。  つまり、住民税を一〇%フラット化することによって、一〇、二〇あるいは三〇、三七%とする現在の所得税の最低税率、そしてその最高税率はどうなるのか、やはり、各種所得控除の見直しはどうするのか、低所得者、中堅所得者、高所得者ごとに税負担の構造はどうなるのか、そして現在と変わるのか変わらないのか、これを明らかにすべきだと思いますが、大臣の御見解をお伺いいたします。
  74. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 近年の税制改正では、経済社会が構造も変わってきましたので、それに対応した税制に持っていかなきゃいけない、これをあるべき税制と、こう言っているわけですが、個人所得課税についても、配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止、これは家庭の主婦の就業構造も変わってきたということ、それから年金税制見直しも必要だといった見直しをやってきたわけですが、平成十八年度では三位一体の改革を併せてその所得課税の抜本的見直しをしなきゃいかぬと。  そこで、今、糸数委員もおっしゃいましたように、個人住民税については、これは所得割税率フラット化するという方向考えていこうと。それに対応して、所得税については、所得分配機能がもう少し発揮できるようにして、税率構造を見直す必要があるんではないかという方向議論しているわけでありますが、要するにこの三位一体との関係でいえば、できるだけ個々納税者に、国と地方の、国税に持っていく部分地方税に払う部分はそれぞれ違っても、全体としてそう大きな変化があるようであってはなかなか問題があるだろうということでございまして、そういう考えの下で、まだ細部にわたる制度設計はこれからでございますが、補助金改革の帰趨も見ながら、その辺のことをもう少し詰めていきたいと思っております。  定率減税については、こういう個人所得課税見直しを見ながら、経済の影響も考えて、段階的にやっていこうということで今年は二分の一縮減をお願いをしたと、こういうことでございますが、そういう流れの中で所得課税について更に設計をきちっと議論をさせていただきたいと思っているわけでございます。
  75. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 最後に、環境税の導入問題についてお伺いいたします。  地球温暖化防止のための京都議定書の発効に向けて、環境税の導入の是非が議論になっています。環境省は、我が国、国際公約いたしました温室効果ガスの削減目標、すなわち二〇〇八年から二〇一二年の温室効果ガスの総排出量を一九九〇年比で六%削減する、その目標を達成するためには環境税の導入が不可欠だと言われております。それに対して経済産業省は、省エネ対策など抜本的に強化すれば環境税を導入しなくても目標は達成できるとしています。  財務省は、環境税の意義は理解しつつも、経済や産業の国際競争力に与える影響、税収の使い方、既存のエネルギー税制とその関係を整理する必要があるとして、今のところ中立的な立場を取っているように思われます。京都議定書の発効によるこの温室効果ガスの削減意義が生まれる二〇〇八年に向けてもうすぐのところまで来ておりますが、大臣は環境税の導入についてどう考えていらっしゃるのか、御見解をお伺いいたします。
  76. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 環境税については非常に影響するところも大きい税制だと思っておりまして、私どもも非常に関心を持っているわけであります。  そこで、今、京都議定書目標達成計画というのを作ろうということで、一体その計画に何を盛り込むかと、温暖化対策等々の検討が行われているわけでありますが、要するに、この温暖化対策全体の中で税制をどういうものとしてしつらえていくのか、どういう機能を担わすものとしてやっていくのかと、単に税だけ取り上げてもなかなか答えが出ないんだろうと思います。この全体の計画の中でどうやっていくのかということが必要だろうというふうに思っているわけであります。  それで、温室効果ガス六%削減目標ということでありますけれども、個々の温暖化対策がどういう温室効果ガス削減に資するのかというのは、やはり相当具体的、定量的に専門的検討を経なければ、専門的、技術的な検討を経なければならないだろうと思っておりますが、そういうことをやっていきますときに、今委員がおっしゃいましたようなエネルギー関係のほかの税制との調整とか、いろんなことが出てくると思いますし、その税をどういう目的で使うのか、どういう効果を期待して使うのかというようなことも更に詰めていただかなければならないんじゃないかなと、こんなふうに思っているところでございます。
  77. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) 時間が参っていますので、おまとめください。
  78. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 既存のエネルギー税制との関係では小泉総理も道路特定財源の一般財源化の検討について言及されていますが、なかなか進んでいない状況です。財務省としても是非、環境省と経済産業省の調整、見守るのではなくて、主体的に取り組んでいただくことを要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  79. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩といたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  80. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、若林正俊君、峰崎直樹君及び大門実紀史君が委員を辞任され、その補欠として中川雅治君、林久美子君及び井上哲士君が選任されました。     ─────────────
  81. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) 所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、参考人として東京大学大学院経済学研究科教授井堀利宏君及び早稲田大学現代政治経済研究所特別研究員飯塚尚己君に御出席いただいております。  この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人におかれましては、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず井堀参考人、飯塚参考人の順序でお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答え願いたいと存じます。  また、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おき願いたいと存じます。  なお、参考人質疑者ともに御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず井堀参考人にお願いいたします。井堀参考人
  82. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) 今紹介いただきました井堀です。よろしくお願いします。  それでは、私のレジュメ、簡単なやつが、三枚組のやつがあると思いますが、それを参考にしていただいて、お話ししたいと思います。  今日お話しするタイトルは、税制改革の展望、財政再建経済活力ということですけれども、時間の制約もありますので、所得税の話を中心にして、あとはその環境ということでそれ以外の点についても少しお話ししたいと思います。  それで、今、やはり税制改革の話をするときに、どうしても全体として税収をどのくらい上げなければいけないのかという、そういう制約がかなり厳しいと思うんですけれども、そこを、どのくらいの税収を確保すべきかという点についてある程度前提をはっきりさせておかないと、要するに税制改革というのは基本的には減税が一番望ましいわけで、減税することがある意味じゃその最適な税制改革であることはこれは確かなんですけれども、これはほかの条件が許せばという前提が当然付くわけですね。日本のその現状では、財政赤字が今非常に厳しい状況ですから、減税しようとしてもできないときに、どれだけの税収を確保する必要があるのかについてきちんと認識を共通にしておくことが必要だろうと思います。  問題は、その財政破綻がこれからどのくらいの額で起きるのか、あるいはそのときにそれを避けるための必要な増税額がどのくらいかということなんですが、これはもちろん、一つには、今後税を、税制をほうっておいたときに、歳出がどのくらい増えるのか、あるいは削減できるかという歳出サイドの問題に当然かかわってくる話ですし、それから税や歳出を自然体で五年、十年延ばしたときに、当然その金利分だけ財政赤字の残高が増えますので、片方、税収の自然増収は経済成長率に対応した形で増えますので、金利と成長率の大小関係が今後どうなるのかということにも依存するわけですね。それから、税収の方でいえばインフレ率であり、あるいは一人当たりのGDP成長率、つまりその生産性がどのくらい向上するのか、そういった要因にも依存しますし、金利の面でいえば貯蓄率が今後どうなるかとか、いろいろな要因に依存しますので、何とも正確なことは言いにくいと思うんですが。  ただ、常識的な前提で今後五年、十年ぐらいを想定しますと、今の日本のその財政赤字をすべて歳出の削減だけ、あるいは景気の回復に伴う自然増収だけで対応するのはやはり無理があるのではないかと思います。  その意味では、そういったその歳出の削減なり景気の回復に伴う自然増収を見込んでも、残りが、裁量的な増税はやはり中期的には避けて通れない課題なのかなと思います。  その辺は、金利と成長率とか、いろいろな、社会保障歳出がどのくらいこれから抑制されるかとか、いろいろな要因にも依存するわけですが、インフレ率とかですね、普通のシナリオでいきますと、私の感じだと、今後十年ぐらいの間に、年率、毎年毎年の年のオーダーで見ますと、GDPで四%ぐらいの裁量的な増税をしておかないと財政危機が将来ますます深刻になるだろうと思います。  GDPで四%の裁量的な増税といいますと、消費税で、大ざっぱに言えば八%ポイントぐらいの消費税率になるわけで、その意味で、仮に消費税だけで対応するとすると、今五%の消費税を一三%ぐらいまで上げるというのが一つの裁量的な増税のスタンスになります。  ただ、これはもちろん消費税だけがその増税の対象ではありませんし、ほかの所得税なり、いろんなほかの税制も有力な税制になるわけですけれども、いずれにしても、裁量的な増税幅を、その程度の増税を同時に実施しないと、歳出の削減なり自然増収だけに頼っていたのでは十年たってもなかなか財政的には厳しいのかなと思います。  そのときに、問題は、じゃ増税が避けられないとしても、経済活力を損なうような増税は望ましくないわけで、なるべく経済的には特に民間の活力が両立するような増税が望ましい。  そうしますと、どういう増税が必要かというと、やはり平均税率は確保しつつ限界税率を引き下げるという、そういう形の増税しかないんじゃないかと思います。平均税率を確保するということは、要するに、租税負担率で見て、GDP比で見ても国民所得率で見ても、租税負担で見てある程度の税収は確保しなきゃいけないわけですけれども、ただ、その経済活性化という観点から考えますと、人々が所得とか消費、あるいは企業であれば利益ですけれども、いろいろな形で経済活動をしたときに、それに伴って税負担が大きく増えるようだと余り経済活力をこれから増やそうというインセンティブはないわけですね。だから、限界的なレベルでは税率は下げる必要があるんですけれども、そうかといって税収を全然確保しないのではそもそも国の予算が組めませんので、きちんと税収を確保しつつ限界税率を引き下げるような、そういう努力が一つ必要だろうと思います。  それからもう一つは、一時的に減税するということがマクロ経済にどのくらい活性化の効果を持つかというと、これはなかなか限界があるのではないかと思います。つまり、一時的に減税しても、それが恒常的な減税につながらない限りは、民間の家計にしても企業にしても安心して使うことを増やさないわけですね。  問題は、その一時的な減税が恒常的な減税につながるためには、歳出全体が下がって、一時的な減税しても将来増税圧力にならないという担保が出てくる必要があるわけですけれども、そのためには、減税したものが政府の歳出の削減につながる必要がありますし、同時に、財政状況が悪いときに減税したものが公債残高の、過去の残高の削減につながるという形で将来の増税要因にならないという、そういう担保がないと、なかなか、減税してもその分だけ財政赤字が増えただけでは余り、将来の増税要因が増えるだけなので、なかなか経済活性化にはつながりにくいと。その面では、財政状況悪いときに減税するというのはそれほど経済的には効果が薄いという、そういう厳しい状況考えざるを得ないということだと思います。  それで、どういう形の増税なり減税を考えるかということなんですけれども、レジュメですと二ページ目のところの基本的なスタンスは、無駄な歳出を助長するような税制から政府の歳出を引き締める税制ということで、増税が避けられないとしても、必要最小限の増税の上限を明示すると。  今の小泉政権というのは、消費税は引き上げないという形で、増税しないということで歳出の抑制への圧力を掛けようという、そういう方針取っているわけですけれども、これはその財政状況が厳しいときに増税しないと言っても、余り現実的でない公約を続けていても余り信用されないという側面があるわけですね。  だから、ある程度増税が避けられないときには、これ以上の増税はしない、しかし財政再建のためにはこれだけの増税が必要だということをもう少しオープンに国民に示して、例えば消費税であれば、一〇%までの消費税は引き上げるけれども一〇%以上上げないと。一〇%まで上げて、あとは歳出の削減で対応するという、最小限の増税の上限を明示して、それ以上の増税にしないということがコミットできるような財政再建のより現実的なシナリオを示す必要があるのではないかと思います。  時間が来ましたので所得税の話に入りますけれども、まず定率減税の縮減、廃止に関しては、今の厳しい財政状況の中で税収の増加を図るとすれば、最も最初に手を付ける課題というのは定率減税を縮減あるいは廃止だろうと思います。  これはなぜかといいますと、既に九〇年代に減税しているわけですから、それを元に戻すということだけなので、徴税上のコストあるいは課税ベースの捕捉等が容易ですので、増税策としては一番税制上はしやすいという側面もありますし、しかも所得税の増税なので、これは所得分配の観点からいいますと、相対的に所得の高い人が税負担も重くなるという所得税の公平性の観点からいえば、消費税を増税する場合に比べると国民の不公平感の面での不信感も多少は緩和されている、そういう側面があります。  それからもう一つは、マクロ経済との観点でいいますと、確かに増税なので景気に対してマイナスの効果は全然ないわけではないんですが、ただそのマイナスも景気抑制効果は余りないのだろうと思います。これは程度問題ですけれども。つまり、増税しても恒常的な可処分所得はそれほど減少しないと。これはどういうことかといいますと、増税しても、その増税した担保は財政赤字の縮減の方に向きますので、将来の歳出の増加要因になりませんから、増税した分だけ将来の増税分が消えますので、中長期的に見ますと、家計の可処分所得はそれほど減少しないとすると、余り消費は現在から減らないんではないかと思います。  それから、もう一つのポイントというのは、ここ四、五年、公共事業は御存じのように削減してきたわけですが、公共事業は削減しても、実は景気がそれほど大きく底割れしなかったわけですね。常識的なマクロ経済考え方でいいますと、公共事業の削減の方が増税よりははるかにGDPに対するマイナスの効果は大きいんですね。ところが、公共事業の削減がそれほどGDPを抑制しなかったということであれば、増税してもそれがGDPに与えるマイナスの効果ははるかに小さいだろうと思います。  それから、そもそも、本来、減税、増税ということがマクロの景気政策にどういう役割を持つべきかというそもそも論で考えますと、景気の安定化政策というのは、財政面からいいますと、裁量的に所得税法を変えて減税したり増税したりするよりは、累進的な所得税とか法人税のいわゆる自動安定化機能、ビルトインスタビライザーと呼んでいますけれども、要するに景気のいいときには自然に課税ベースが増えるわけですから税収が増えると、景気悪いときには自然に課税ベースが減るわけですから税収減ると、その効果に頼る方がはるかに必要なときに必要なだけの景気安定化効果が効くわけですね。裁量的に減税したり増税したりしますと、いつの時点で減税するか増税するかということと、それが実際に行われるタイミングは必ずしも景気を安定化するタイミングと一致する保証がありませんので、場合によっては不安定化要因にもなります。  その意味では、裁量的に増税、減税ということをなるべく税制でやらないように、本来のその税の持っている自動安定化機能を活用すべきであると。そういう観点からしても、九〇年代に裁量的に減税したことのツケは今のうちに補整しておく方が望ましいのではないかと思います。  それから、時間が来ましたので、最後に所得税に関しての考え方だけ簡単にお話ししますと、所得税については、やはり控除を基本的に見直して、本人控除と子供の控除だけに整理して、配偶者控除は縮減あるいは廃止するのが望ましいと思います。それは、女性の労働供給に中立的だという、そういう功利性の観点からもありますし、そもそも所得がないということは必ずしも働けないということではありませんので、子供とそれから大人を同じ形で被扶養者と認定するのは余り筋が通らないのかなと思います。  それから、累進構造あるいは課税最低限に関しては、これはもう消費税をどのくらい活用するかとの相対的な兼ね合いで、累進構造をよりフラット化して課税最低限を引き下げれば相当消費税と似たような形の所得税になりますので、今後消費税率を上げるとすれば、その分だけ所得税を余り増税しなくてもそれなりのその効果は出るわけですが、逆に言いますと、消費税を余り上げないとすると、所得税のところをもう少しより広く薄く、多くの国民がそれなりの税負担所得税を通じて払う形で納税者となって、納税者となることで税収の使われ道にもきちんと監視するインセンティブを持つという、そういう要するに受益と負担のリンクを回復させる一つの大きな役割というのは、直接税である所得税をもう少しきちんと活用すべきだと思いますので、その観点からいいますと、納税者所得税納税者をもう少し広げるような税制改革というのは望ましい方向だろうと思います。  消費税等におきましては、時間が来ましたので、もし質問があれば後でお答えしたいと思います。  以上で終わりにしたいと思います。
  83. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) ありがとうございました。  次に、飯塚参考人にお願いいたします。飯塚参考人
  84. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) 御紹介いただきました飯塚でございます。簡単にちょっと自己紹介だけさせていただきますと、これまで十年間、民間のシンクタンクの方で、景気動向でございますとか経済予測、こういったことに携わってくると同時に、その経済政策という観点で早稲田大学の方で研究をしてきたというところでございます。本日、政策に絡む観点ということで、早稲田大学特別研究員ということでお邪魔させていただきました。  実は、私、必ずしも税制に関する専門というわけではございませんので、本日、こちらの法案につきましてどこまで御意見述べられるかというところはあるわけでございますけれども、いただきました資料を拝読させていただきまして、例えば中小企業に対する優遇税制、こちらの拡充でございますとか、あるいは人的な投資に対する減税措置の創設、非常に意義深い内容、結構な内容が多いのではないかなと思っておる次第でございます。  ただ、一点のみ、いろいろ報道などでもございましたけれども、こちらの定率減税の縮減、廃止といったことでございますが、こちらの時期につきましては若干時期尚早の嫌いがあるのではないかということを考えております。その点につきまして、こちら、本日横長の資料をお持ちさせていただきましたが、こちらに沿いまして私の考え方お話しさせていただきたいと思っております。  こちら、一枚おめくりいただきまして、本日お話しさせていただくポイントでございますが、三つほどございます。  まず第一点目でございますが、ただいま参考人の井堀先生からもお話がございましたけれども、やはり財政再建というのは日本経済にとって極めて重要な課題と認識しております。そうした中で、個人所得課税、こちらも増税の方向で見直さなければいけないということは私も深く認識しておる次第でございます。  ただ、そうは申しましても、やはりその増税につきましては、それは景気への配慮が極めて重要ということでございまして、その縮減の廃止の時期としては、もしかしますとちょっと早過ぎるのかもしれないのかなという感想を持っております。  また、三点目としましては、それでは、じゃ、どのようにこの縮減のタイミングを考えていけばいいのかというところにつきまして、私は一つ名目GDP成長率が四%に達したような段階ということを考えておる次第でございますけれども、そこの辺りのお話をしたいと思います。  では、一枚おめくりくださいませ。  まず第一点目、二ページ目でございます。まず、やはり財政再建考える上で個人所得課税見直しは必要不可欠ということでございまして、今恐らく財政再建日本経済にとって極めて重要な課題であるというのは研究者あるいはエコノミストの間でも完全なコンセンサスになっていると思います。また、やはり最近は、この増税、財政再建等を行うに当たって、自然増収あるいは歳出削減だけではなく、やはりある程度制度的な増税をもってやっていかなければいけないということにつきましてもほぼコンセンサスになっていると思います。  その際に、やはり基幹税の所得税、こちらの部分、図表一の方に、こちらグラフを示しておりますが、ピーク時に比べますと非常に税収が減っており、また所得に対するその割合というものも低下しているということでございますので、ここの部分見直していかなければいけないということは間違いないのかなと思います。  ただ、問題はやはりそのタイミングということでございまして、三ページ目の方でございますが、現時点における定率減税の縮減ということにつきましては、場合によっては少し時期尚早になってしまうかもしれないと、このように考えております。  そう考える理由、二つございます。  一つ目でございますが、まず日本の消費者を取り巻く環境ということを見ますと、まだなかなか景気回復の恩恵が伝わってきていないということがございます。  こちら、まず日本の景気ですが、二〇〇二年の一月から回復しているということでございまして、企業の方を見てみますと、相当体質の改善が進んでいるということでございます。日本経済、三つの過剰、こういう重荷があったと言われますが、こちら、図表の二の方には、企業の設備あるいは雇用に対する過剰感、このグラフをお示ししておりますけれども、いっときに比べまして相当過剰感が下がってきているというのがごらんいただけます。  また、図表の三の方は、これは企業の債務、これは借入金と社債の合計でございますが、これのキャッシュフローに対する倍率を見たものです。簡単に言いますと、何年間、キャッシュフローをその借金の返済に充てると何年間で返せるかと、こういうことでございますが、いっときこれが七年間を超えるような非常に高い水準にございましたが、債務削減進めてきた結果として、もう八〇年代の前半と同じぐらいのところ、バブル前のところにまで下がってきていると、相当企業の体力強化は進んでいるということでございます。  ただ、次のページごらんいただきまして、家計の方を見ていただきますと、なかなか状況は厳しゅうございます。こちら、図表の四というところに、就業者、あるいは失業、あるいは家計の賃金といったものをお示ししておりますが、丸を打ったところで失業者数見ていただきますと、二〇〇四年度、これまでのところを平均しますと三百十二万人ということです。景気が大幅に悪化したのは九七年のところからということでございますが、その前の九六年、この時点を正常な状況考えますと、そのときとの対比ですと八十七万人失業者が多いということでございます。また、下で丸打っているところで、いわゆるサラリーマンの給与でございますけれども、こちらもピーク対比で二十八万円ほど低いと。最後の丸のところ、可処分所得ですが、これは今までの減税などによって少しマイナス幅は縮小しているということでございますけれども、そうは申しましても、やはり二十四万円ぐらいおっこっているということでございます。  図表の五と六というところは、それぞれ現金給与総額、失業者数のグラフでお示しておりますので、御参照いただければと思います。  続きまして、二点目でございます。  減税の縮減が時期尚早と考える二つ目の理由でございますが、こちらは、御承知のとおり、日本経済が今まだ景気の安定的な回復というところには至っていないということでございます。先般、十一月、十二月と政府の方でも景気判断を引き下げましたけれども、やはり日本経済、現状では景気は踊り場にあるということでございます。  図表の七のところはGDPの成長率でございますが、二〇〇四年度に入って二回ほどマイナス成長を記録しているということでございますし、前年比で見たその伸びを見ましても、やはり足下、随分縮小してきているということでございます。私自身の考え方も、あるいは政府考え方もそうですが、この踊り場から夏場ぐらいまでにはほどなく景気回復してくるという見方も多いわけでございますけれども、一方で二〇〇五年度一杯景気の停滞が続くと、このように悲観的に見る専門家もまだ多いという状況でございます。  このように、景気がデリケートな中でございますと、なかなかやはり増税論議というものが、家計、消費者のマインドに冷や水を浴びさせてしまうんじゃないかということをちょっと懸念しております。  七ページ目の図表の九でございますが、これは代表的な家計の気分のところ、消費マインドを示した消費者態度指数というものでございますが、年末に向けて大きくこれおっこってきておりました。年が明けまして少し経済指標あるいは株価といったところにも少し明るさが見え始めまして、少し持ち直している感はございますが、一方で、図表の十の方をごらんいただきますと、少し増税に対する不安が高まっているかなという兆しもございます。  この図表の十の方は、日本銀行が四半期に一度定期的に調査をしている生活意識に関するアンケート調査というものでございますが、こちらで、大体四千人ぐらいを対象にして三千人ぐらいの有効回答者ということでございますが、消費を減らしましたという回答をした人たちに対して、なぜ消費を減らしたんですかという、回答をいたしますと、やはり増税に対する不安というものが高まっていると、このように回答している方が少し増えているということでございます。  次のページへ行っていただきまして、仮に、増税に対する不安というものが仮に消費の減速につながってしまうということになりますと、景気、相当微妙な局面でございますので、失速のおそれもありということなんでございますが、恐らく、その悪影響というのは、場合によっては消費だけではなくて企業の設備投資にも及んでくるかなと思っております。  実は、こちら、図表十一というのは、企業の先行きの五年間ぐらいの成長期待、これをお示ししたものでございますが、非製造業の方を見ますと、足下五年間ぐらいずっとこれが下がってきていると、あるいは非常に低い水準にとどまってしまっているということになっています。製造業が少し底打ちしたのに比べると非常に印象的なわけでございますが、この背景は、図表十二にございますけれども、こちら、非製造業の需要の構成、売上げあるいは利益がどこから生み出されているか、これを需要項目別に見たものでございますけれども、やはり個人消費の部分が五割を超えているということでございます。  これまで雇用不安でございますとか、あるいは先ほど申し上げたような所得の減少という中で、個人消費なかなか振るわない状況が続いてきましたが、そういう中でやはり非製造業の方も期待成長率が下がって、それゆえに設備投資がやりづらい、こういう状況になっているわけでございます。逆に、個人消費が安定的に回復していくという期待が広がりますと、非製造業の設備投資も増加してくると。非製造業は、実は日本に占める割合、大体もう設備投資で見ても雇用で見ても七割ということでございますので、ここが安定化してくれば日本経済全体の成長も相当安定化してくるということになると思います。  以上、二点、理由を申し上げましたが、ややちょっと定率減税の縮小というのは時期尚早かもしれないと思っているというところでございます。  三点目入ります前に、簡単にこれまでのお話をまとめておきますと、私、個人的にやはり増税は不可避だと思っておりますが、一つには、その所得、雇用など家計を取り巻く環境がいまだまだ十分に回復していないということ、二つ目として、景気が必ずしも安定的な回復局面に入っていないということから、少し時期が早過ぎるのではないかということをお話ししてまいりました。  では、どうすればいいのかという論点、三点目の論点でございますけれども、私としましては、基本的には、御提案といたしまして、定率減税の縮減、廃止を行うに当たっての条件と申しますか、そういったところを少し明確にしてあげることによって国民あるいは企業の増税に対する不安の心理というものを大きく緩和できるのではないかと考えております。  こちら、図表十三のところに与党税制改正大綱のところから抜粋させていただきましたが、弾力条項と申しますが、景気動向に配慮して定率減税の縮減、廃止を決めていくということでございますが、ここをより分かりやすい形で条件を提示してはいかがかということでございます。  その条件として私が考えておりますのは、一つ目としましては、先ほど申し上げました失業率あるいは所得といったところが景気が大きく悪化する前の九六年度の水準にまで戻ってくるというのが一つ。もう一つとしましては、冒頭申し上げましたが、名目GDP成長率が四%ぐらいに達するということが一つ条件になるのではないかなと思っております。  一枚おめくりくださいませ。  私が、じゃ名目GDP四%ということを申し上げておる根拠でございますが、大きく分けますと二つございます。  一つ目は、まず日本の潜在成長率、これは大体実質のベースで見まして一・五%から二%ぐらいと言われております。これに加えまして、望ましいインフレ率、これどれくらいかというのはなかなか難しゅうございますが、例えば金融政策でインフレターゲットを導入している国、この中で日本比較可能な主要先進国ということで申し上げますと、例えばイギリス、カナダといったところがございますが、こういったところは大体CPI、消費者物価で二%ぐらいという数字を置いております。この数字を正しいとしまして考えますと、名目の四%ぐらいというのは政策目標として考えたときにあるべき水準ではないかなということ。  あと、二つ目の理由は単純です。こちら、図表十五の方に主要先進国の名目GDP成長率を置いておりますけれども、ごらんいただきますと分かりますとおり、日本比較可能な主要先進国、G7、日本を除くベースで見てみますと、過去平均で四%を超えるぐらいということでございます。日本もデフレを脱却すればこれぐらいの水準に達することは可能だろうと、正常な状態に行けばこれぐらいになるのかなというところです。  最後になりますけれども、名目四%成長といいますと非常に高い数字かなという御印象を持たれる先生方も多いと思うんでございますけれども、私は政策次第では十分達成可能な数字かなと思っております。  二〇〇三年度の成長率、二%実質であったわけでございますけれども、仮にデフレが終わっていてインフレ率が二%ぐらいであれば、実は四%の成長率だったということもございますし、多くのエコノミストが予測している二〇〇六年度の水準は実は一・四%というところになっています。あと一押しでまあ何とかこの二%に達しそうだということなんでございますが、そのためには少し政策的な後押しがあってもよろしいのかなということを考えています。  ごく簡単に申しますと、こういう言い方はどうかと思いますけれども、当面はやはり景気に優しいマクロ政策を行って、何とかデフレ脱却、これを実現するということがあると思います。  また、構造改革という観点について申し上げますと、生産性を上昇させることによって潜在成長率を高める、これによって経済成長率全体を高めて財政再建をやりやすくするということもございますし、また家計がこの後増税を余儀なくされるということでございますと、それを少し緩和する措置として、特に公共料金などの引下げですとか、そういった実質的な購買力の面から少しその財政再建の重荷の部分を緩和してあげると、こういった政策も同時にやっていくということがひとつ重要になってくるのかなと思われます。  私の方からは以上でございます。
  85. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、質疑時間が限られておりますので、簡潔に御答弁いただくようお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  86. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 自民党の愛知治郎と申します。  両参考人におかれましては、大変お忙しい中、わざわざこの財政金融委員会に御出席を賜りまして本当にありがとうございます。時間が限られておりますので、数点に絞って両参考人の御意見を伺いたいというふうに思うんですが。  まずは、この財政再建、どうしてもやらなくてはいけないと、厳しい問題ではあるけれども必ずやらなくてはいけないということは全くだれも疑う余地がないことだと思います。両参考人におかれてもこの点だけは一致している御意見かと思います。しかしながら、今定率減税に対してどうするかというのは、多少両参考人御意見が違うように思われましたけれども、最初にこの定率減税の効果について両参考人の御意見を伺いたいというふうに思います。  もちろん、これは緊急避難的な措置として、景気対策の一環として、大幅な一時的な減税ということで導入して、もちろん効果はあったと思うんですが、私自身ちょっと疑問に思うところが、思ったほどの効果は得られなかったんじゃないかという部分もあるんですね。  といいますのも、こういった、まあ残念、いいんだか悪いんだかあれですけれども、私自身が一般の方にお会いしていて話を聞いているところ、もちろん随分納税者という意識、納税者意識は高まってきていると思うんですが、まだまだその正確な理解というか、それはまあ私自身が見ていても非常に難しい問題あるんで正確な理解なかなか難しいと思うんですが、こういった所得税に掛けてあるもの、例えばやはり消費税ですよね、目に見える形で税金が掛かっている、それの増減については物すごい関心あるんですけれども、なかなかこちらの定率減税に関しては実感がわかない部分もあるんじゃないか。  その点でいいますと、減税規模に比べて効果は、まあ間接税に比べては随分薄いんじゃないか。逆を返せば、今減税幅を縮減してもそれほどの影響は出にくいのではないか、だからこそやらなければいけないかというふうには思うんですが、この点について両参考人の御意見を伺いたいというふうに思います。
  87. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) 定率減税の効果ですけれども、九〇年代の後半に減税をしたことがそのときの民間消費をどのくらい刺激したのか、あるいはその結果としてGDPがどのくらい刺激したのかという観点で考えてみますと、残念ながらそれほど、特にGDPを増やすほどの効果は特にデータ上で見る限りはなかなか観察されなかったと思います。  これは、定率減税だけじゃなくて、いわゆる地域振興券も当時ありましたけれども、同じような形で、一時的な減税なんですけれども、なかなかGDPを増やすところまではいっていなかったと。ただ、もちろん減税ですから、家計から見ればその分可処分所得は増えるので助かることは助かるわけですね。  だけど、景気対策というのは、景気が悪いときにその実質的な所得が減りますから、そのときに可処分所得が増えるということは、その意味では、社会保障的な意味でいうとある程度その効果はあるんですけれども、問題はそれが、消費がどんどん増えて、企業の投資もそれが呼び込んでGDPが増えるほどの、経済活性化につながるような、いわゆる景気刺激策としての効果まではなかったと。社会保障的な意味では緊急避難への、言わばまあ地震が起きたときの災害救助みたいな、そういう形の効果は多少あったと思うんですけれども、それを超えて経済を活性するまでの効果はなかったのではないかと思います。  その意味からいいますと、今回定率減税を縮小しますと、逆に経済は、どんどん景気が回復しているところを抑えるほどの、それほどのマイナスの効果はないと思うんですが、もちろん可処分所得はその分減りますから、多少は家計にとって苦しいことは確かだと思います。ただ、問題は、それがマクロ経済全体にとってのマイナスの強い圧力にはならないという意味で、あえてその程度負担というのは、厳しい財政状況の下ではまあ仕方ないのではないかというのが私が思っているところです。
  88. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) 私はもう少しその効果のところを肯定的に考えています。  先ほどあちらのグラフでお示ししましたけれども、やはりまだピーク時に比べると家計の所得の環境というのは必ずしも改善していないということでございますので、そうした中で、その減税が少し可処分所得ということで家計のその消費活動というものを目に見えない形で下支えしているということはあるのだと思います。ただ、先生から御指摘がありましたとおり、導入当時に比べますと徐々にこれが目に見えなくなっているというか、当たり前になってしまっているというか、徐々にその効果が薄れてきているということはあると思うんですけれども。  九九年当時、こちらが導入された当時を考えてみますと、やはり景気全体が非常に急速に悪化していく中で、その家計の消費支出を支えるという一つの大きな材料にはなったと思いますので、逆にこれをやめてしまったときに出てくる悪影響、当時の九九年に効果があったということを考え合わせると、実は無視できないものがあるのかもしれないなというリスクはあると思います。  ただ、ある程度景気がもう水準として回復してくる、所得が回復してきた段階でこれをなくすということであれば相当その悪影響は小さくなってくると思いますので、そういう段階まで待って縮減するということがやはり大事なのではないかと考えています。
  89. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございます。  大体御意見一致している部分と、私自身も効果がなかったとは思わないんですが、やはりその比較、消費税と比較したときの効果ということでお話をさせていただいたんですけれども、これは非常に難しい問題で、皆さん絶対の答えというのがない問題ですから難しいんですが、やはり鶏が先か卵が先かという話ありまして、これも構造改革か景気回復か、どちらがという議論そのままだと思うんですが。  私自身は、構造改革路線を取って、考え方もそういう考え方を一応しているんですが、小泉総理が誕生したときに痛みを伴ってでもということをおっしゃられて、国民も一応理解をして支持をしたという経緯があると思うんですけれども、やはり将来に対する信用というか、安心感の方が今必要なものではないのかなというところも私自身は考えております。  井堀参考人もおっしゃられましたけれども、増減の上限を決めて、はっきりと明示して計画的にやれというお話をされました。  私もそのとおりだと思いますし、それをしっかりと国民に理解をしてもらって段階的に健全化を図っていくということは必要だと思うんですけれども、また、ちょうどせっかく資料をいただいて、飯塚参考人なんですが、七ページのところ、ありますけれども、今と同じような話でありますけれども、図表の十で、増税の不安等というのは支出を抑える要因として上がってはいるんですが、所得の減少というところは逆に要因として、理由として下がっている。つまり、先ほどの所得税率定率減税の縮減に対しての不安というのはそれほどない。  というのは、減税の、減税というか、あるべき税制の姿、位置というのははっきりしていまして、そこまで定率減税を減らしていくということですから、国民にとって分かりやすくて、しかも無尽蔵な増税というところにつながらないという意識があるんで、まだ安心感があるんではないかというふうに思います。  ちょっと長くなりましたけれども、結局、直接的この減税の効果よりも、将来に対する政府の信用というところに対する影響の方がやはり国民のマインドからすると大きいのではないかというふうに私は考えておるんですが、その点、両参考人の御意見をお伺いしたいというふうに思います。
  90. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) 今の点は私も重要だと思います。  増税への不安というのは、今議論になっておる定率減税の縮小、廃止よりも、むしろ今後どういう形で消費税も含めて税が上がっていくのか分からないと、どの程度の増税で日本の財政がもつのか、あるいは年金も含めればどの程度保険料の引上げでできるのかという、そういった将来への漠然とした不安の方がむしろ大きいと思いますので、そこの点が過度に不安がありますとかえって家計は貯蓄に走りますので、ある程度現実的な増税で大丈夫だという、そういうシナリオをむしろ出す方が増税を先送りするよりはかえって消費にはプラスかなと思います。
  91. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) その点は私も全く同感でございます。  先ほど参考人、井堀先生からありましたように、非常に明確な将来の増税のプラン、あるいは最低限必要な増税の金額といったものを明示していくということは、国民の将来に対する不安心理を抑制して、結果的にその中期的な景気回復というものに資することになるんだという点については全く同感でございます。
  92. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございます。  次は、また飯塚参考人にちょっとお伺いをしたいんですが、要件を定めて、このような、これは七ページ、八ページでしたっけ、八ページですね、基準を定めて、これに合わせてしっかりと計画を立ててこの定率減税の縮減、廃止も実施したらいいんじゃないかというお話しされましたけれども。  これも先ほどの議論と同じになるんで鶏が先か卵が先かになるんですが、ただ黙っていて、そのまま減税策とか景気刺激策を取っているだけで本当にGDPが上がっていくのか、それから雇用環境、所得・雇用環境の水準が回復していくのか。これはなかなか難しいんじゃないか。待っているとき、待っているだけで、いつまでたってもこういう政策が取れない状況をずるずると続けていくんじゃないか、その間にだんだん財政が悪くなってこの国の将来に不安を抱えるんじゃないかということで、今本当に痛みを伴っても、しようがないからやらなくちゃいけないんじゃないかと私自身は考えているんですが、この要件を定めることに関しても逆にリスクの方が大きいのではないかと私は思うんですけれども、その点について御意見お伺いしたいと思います。
  93. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) 御懸念はごもっともかなと思います。  ただ、例えば日本の企業を見ていただきますと、非常に環境厳しく、また政策的にも改革重視という中で非常にやはり企業のリストラというのは進んできて、円は競争力が非常に付いてきたというのはもう御承知のとおりでございます。  今、これが、家計の方にこれが波及してくるかどうか非常に微妙なタイミングにあると思っておりまして、例えば冬のボーナスを見ますと、多くの企業がようやく前年を上回る水準を供給できるようになってきたという状況になっています。今、ようやく、私の個人的な感覚でいきますと、家計の方に向けて景気回復が大きく波及していこうというタイミングにあると思うんですけれども、このタイミングに若干少し後ろ向きの政策をやってしまうということがこれをとんざさせてしまうんじゃないかというところにちょっと危険を感じているということでございまして、全体的に改革が重要だというその主筋のところは私も全く同意するところでございます。
  94. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございます。  ちょっと時間がなくなりましたんで、最後に一点だけ、国債についてちょっとお伺いをしたいんですが、結局、日本の信用度が上がらなければこの国債に対する影響というのも大きく出てくると思うんですが、この点、財政再建をしっかりとして健全化を図ること、これは国債を通じての経済への影響について両参考人の御意見を伺いたいというふうに思います。
  95. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) 国債はもう残高が累増していますし、問題は、累増するだけじゃなくて、どんどん発散傾向にありますので、この発散傾向にあるということは非常に財政的には大きなリスクですし、これが将来の金利の引上げにつながるとマクロ経済にも、あるいは予算が組めなくなるという意味では国民生活にも大きなリスク要因ですので、なるべく国債の発散傾向を抑制するという、そういう観点からも財政再建というのは重要で、要するに、借金というのは国の場合は民間と違って、ある意味では短期的には幾らでもできるんですよね。短期的に幾らでもできるので先送りが可能な、ある意味じゃネズミ講は政府だからやれるというところがあるわけですけれども、だからといって幾らでもやっていいというものではないと、そういうことが国債に関しては言えるのかと思います。
  96. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) 私は、基本的に、今参考人、井堀先生からお話があったとおりかと思っておりますけれども、一点付け加えさせていただくとしますと、やはり財政の健全化という観点からしても、やはり成長率の重視ということは重要かと思っております。  ドーマーの法則などというものがございますけれども、やはり名目のGDP成長率が安定的に長期金利の水準を上回っていくような状況、あるいは少なくとも超えないような状況というのを総合的なマクロ経済政策あるいは国債管理政策の中で考えていくということが重要かと思っております。
  97. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございました。
  98. 平野達男

    ○平野達男君 民主党・新緑風会の平野達男でございます。  今日は、井堀参考人、飯塚参考人、ありがとうございます。時間が限られていますので早速質問に入りたいと思いますが、井堀参考人にお伺いしたいと思います。  先ほど言われましたように、本来、税を上げたり下げたりしないで、ビルトインスタビライザーというか、本来の税の機能で景気のいろんな調整機能を持たせるべきだという意見は私も賛成でございます。今何で悩んでいるかといいますと、今本当に増税のタイミングかどうかということで今悩んでおります。今回は定率減税の半減ということなんですが、まず第一問目は、ストレートに、今減税をやるタイミングになっているかどうか、これをまず井堀参考人にお聞きしたいと思うんですが。
  99. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) その減税、増税というのは裁量的な意味での減税、増税ということですか。
  100. 平野達男

    ○平野達男君 増税ですね。  失礼しました。実質の定率減税の半減ですから、増税をやるタイミングになっているかどうかということです。
  101. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) はい。  そこが、常に増税は、飯塚参考人もおっしゃられたように、コストは当然伴いますし、増税して、ほかの条件が一定であってマクロ経済にいい話ではないので、その意味では増税しようと思うと何らかの悪影響は出てくるわけですね。  問題は、それがマクロ経済で吸収できないほどの今経済環境が悪いのかどうかという点だと思うんですけれども、私はそれほどマクロの経済環境は悪くないんだろうと思います。少なくとも経済成長率がマイナスで、二けたでどんどん落ちていくような状況で増税するということはあり得ない政策だと思いますけれども、経済成長率がある程度のプラスの水準で、四まで行けばもちろんそれにこしたことはないんですけれども、四%以下であっても、そこそこの経済成長率で動いている限りにおいてはマクロ経済にそれほどの悪影響はないんだろうと思うんですね。  問題は、増税したときに、その使い道が無駄な歳出の増加となるという形で増税が使われるとなるとこれは非常に大変で、単に増税するかだけで、その増税することによって得られる財源がどういった形で使われるかということの方がむしろ中長期的には重要だろうと思います。  今回の定率減税の縮減の場合には、それによって増税したものは財政赤字の削減の方に使われるということなので、表面的にはですね、これは、仮に無駄な公共事業の方に行ってしまえばこれはまた問題が起きると思いますけれども、財政赤字の縮減の方に行くということであれば、それは将来の増税要因を消しているわけですから、それほどのマイナス要因ではないのかなと。それで、その景気自体もそんなに不況で底がないという状況ではありませんので、そういう意味では増税は十分吸収できるだけのものだろうと思います。
  102. 平野達男

    ○平野達男君 もう一点、今度はタイミングということに関連しまして、今度は両参考人にお伺いします。  先ほどのお話の中に増税のシナリオを出すべきであるという御意見がございました。問題は、私はこれ賛成かどうかというのはちょっといろいろ意見があるところなんですが、その増税のシナリオを出すにしても、それを、出したシナリオを国民が信じるかどうか、そういう状況にあるかどうかということが非常に大事なんだろうと思います。  今、財政赤字がどんどん増えている。それから、デフレの脱却の出口も見えていない。この増税のシナリオを出す条件というのはやっぱりもう一つあるんではないかというふうに思うんですが、この出す条件、どういう条件になれば、これから例えば消費税は何%、こういうスケジュールで上げていきますとか、あるいは所得税の控除についてもいろんな見直しをしますというような、そういったスケジュールが出せるのか、それをちょっと両参考人に御意見として伺いたいんですが。
  103. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) 順番はどうされますか。
  104. 平野達男

    ○平野達男君 井堀参考人と飯塚参考人で。
  105. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) そうですね、条件っていろいろあると思うんですけれども、経済的な環境とか政治的な環境とか、いろいろとあると思うんですが、一つは、やはり財政状況が非常に厳しくなって、そういう条件を出さなくても増税に関する国民の不安感が出てきている場合には、やはりどの程度の増税が本来必要最小限の増税かということをむしろ出す方が余計な増税不安に対する心配を打ち消すという意味では有効だろうと思うんですね。  だから、全く経済的に財政状況が問題なくて、自然な景気回復に伴う自然増収で税収が確保できるのであれば中長期的な増税シナリオはもう出す必要はないわけで、だから、増税シナリオを出す必要がある最大の一つの大きな条件というのは財政状況が非常に厳しいと。これは、日本、御存じの、毎年毎年公債残高の対GDP比がどんどん上昇傾向で、発散に歯止めが掛からない状況ですと、当然、政府が増税しないと言っても、消費税上げないと言っても、いずれ消費税上がるぞと国民の方が思い込んでいるわけですから、それによってもう既に消費マインドが抑制されるという、そういう悪影響も起きるわけですから、どの程度の消費税の引上げで済むのかということはむしろはっきりとさした方がいいのではないかと思います。それが第一点です。  それから、経済環境という点でいいますと、これは非常に悩ましいのは、実は名目四%も、あれもそうなんですけれども、ある条件の下で増税しますということを言ったときに、その条件を実は判断するまでに時間が掛かるわけですね。これ、名目成長四%になるときに、実際のその経済が四%で動いてから政府がそれを認識するまでに当然ラグがありますから、しかも、それから増税しますとなると、そこで増税というのは昨日から今日に急に税制変えるというわけにいきませんから、そこから後で執行するわけで、当然ラグが起きるので、そういうことを考えますと、なかなかある条件の下で何とかやりますという形の議論は難しくて、むしろ私は、余り、そういったマクロの経済環境とは独立に増税のシナリオというのを出した方が国民としてもある意味では安心があると思うんですね。  景気が良くなればなくなるのか、あるいは悪くなればもっと出てくるのかという不安感があると、かえって税制に対する不安定要因が出てくると思うんですね。だから、よほどの大きなマクロ環境の変化以外に関しては、マクロ的に景気が良くなっても悪くなってもこのスケジュールで税というのはきちんと集めますという、そういうシナリオを出す方がいいのではないかと思います。
  106. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) そうですね、私は、済みません、ばかの一つ覚えのように成長成長と言っておりますけれども、やはり基本的に国民の不安心理を取り除くということに立った場合に、ある程度景気動向とは独立に将来的な増税のプランを考えていくというところについては賛成でございます。ただ、そうは申しましても、やはりどうしても実際の増税というのは所得の実際の減少ですとかいった形でマクロ経済への悪影響を及ぼしてくる、そういうリスクはあることでございますので、やはりある程度景気動向への配慮ということは重要になってくると思います。  あと、それから財政、この財政に対する信認がなくなってしまって、これが内外の不安を増長しているということは事実かなと思うんでございますけれども、その点につきましても、先ほど国債のところで申し上げさせていただいたところでございますが、やはり名目の成長率というものが安定的に長期金利を上回っている、あるいはそれと同水準にあるという場合には、財政の状況は基本的には現状以上に大きく悪化する、あるいはいつまでも悪化していくということにはならないということがございますので、やはりそういった観点でも、まず成長をある程度安定させて、その後にやはり増税等に入っていくという方が政策運営としては望ましいのではないかと考えております。
  107. 平野達男

    ○平野達男君 今日は税の話だったんで、今日はひょっとして入らない方がいいかなと思ったんですが、飯塚参考人が先ほどから名目成長率と名目金利の話をされていましたので、これに関してちょっと質問をさしていただきたいと思います。  今、御承知のように、名目金利が名目成長率を上回っているという状況です。まず、井堀参考人にお伺いしますけれども、これから五、六年、あるいは二〇一〇年代初頭までにこれが逆転する可能性があるかどうか、これは逆転するとすればどういう条件で逆転するのか。それから、あともう一つは、いろいろ質問して申し訳ございません。これは、まず、一杯質問すると分からなくなるかもしれませんから、取りあえず、この点をまず井堀参考人にお伺いしたいと思います。
  108. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) この点は、私、二月の衆議院の予算委員会の公聴会でもしゃべったんですが、今の政府の「改革と展望」というのは、再来年から金利の方が成長率よりも低くなって、名目成長が金利を上回って、結果として公債残高の対GDP比は実は再来年から安定化するんですね、「改革と展望」のシナリオですと。だから、無理に二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを均衡化しなくても、その前の段階から最低限の財政再建で済むようなそういう形になっているわけですから、消費税を増税しなくても。その最大の要因は、今御指摘いただいたように、金利よりも成長率がこれから数年間は高くなるという、そういうシナリオなんですが、これは相当、もちろんそうなれば財政再建には非常にプラスですけれども、それは相当楽観的過ぎるシナリオだろうと思います。  むしろ、金利は成長率よりも高い状況の方がある意味で正常な状況で、つまり景気が良くなると金利が高くなるのは自然で、金利の方が成長率よりも低いというのは、八〇年代以前の、金融を、人為的に金利を規制したときに、国債を出しても、強制的に中央銀行は民間の金融機関に割り当ててきたような状況のときには、金利、国債の金利の方が経済成長率よりも低い状況というのはあったわけですけれども、金利自由化が起きた以降の八〇年代以降はどこの国で見ても平均的には金利の方が経済成長率よりも高いので、要するに、経済が、マクロ景気が良くなれば当然金利は上がりますので、その意味では金利の方が経済成長率よりも高いと思って、それでも財政再建はできるという形できちんとシナリオを作るべきだろうと思います。
  109. 平野達男

    ○平野達男君 時間がなくなりましたけれども、両参考人にもう一度この件に関して今度はお伺いしますけれども、この名目成長率と名目の金利という関係は政策で逆転できるものなのか、あるいは直接的な政策ではなくて別な政策でやることによって結果的にそうなるものなのか。つまり、今政府のいろんな見通しは、取りあえずプライマリーバランス均衡、二〇一〇年代初頭に持っていきますと言っていますが、この名目成長率と名目金利の関係については見解をほとんど述べてないんですね。  内閣府が、今後、いろんな見通しを出していまして、当分の間は、あれは当分の間じゃない、再来年ぐらいからは名目成長率、名目金利が上回る、そして二〇一〇年代初頭ではまた逆転するみたいな、ちょっと訳の分からぬシナリオになっているわけです。これが、繰り返しになりますけれども、政策として逆転できるものなのか、そうじゃなくて、例えば財政規律とかそういった、財政規律を保つとか、あるいはほかの政策のことをやることで結果的に逆転するものなのか。これは、井堀参考人と飯塚参考人にちょっと御見解を伺いたいと思うんですが。
  110. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) 政策的にやろうとすれば、長期金利を人為的に抑え込むしかないんだろうと思います。それができなければ無理だろうというのが私の見解です。
  111. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) 確かに、長期金利を成長率が大きく上回る状況というのはなかなか実現するのは難しいと思うんでございますけれども、一方で、今現在日本にはまだ失業が多くいて、需給ギャップがある状況です。これが潜在成長率にまで追い付いてくるまでの段階ではある程度その成長率を通常以上に高く保つことは可能だと思いますので、そういった政策運営をすることによって、需給ギャップがなくなるまでの間は名目成長率が長期金利を上回る状況、これを実現することが可能かと思います。  もう一点、先ほど先生から御指摘あったとおり、やはりその財政規律などについて配慮することによって、よりその長期金利のリスクプレミアムの部分、ここを最小限に抑え込むということが一つその長期金利を抑制する手段にはつながるのかと思います。  以上でございます。
  112. 平野達男

    ○平野達男君 まだ時間がありますから、じゃ関連してもう一問質問いたしますけれども、長期金利を抑えるというのは、今のゼロ金利、金融緩和政策の継続という意味なんでしょうか。井堀参考人にお伺いします。
  113. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) よろしいですか。  ゼロ金利政策は基本的に短期金利の話ですから、それだけで長期金利まで抑え込むのは無理で、今でも御存じのように長期金利は名目経済成長率より高い状況が続いております。だから、それを抑え込むには長期金利自体に直接何らかの形で規制を掛けるしかないのかなと。それはなかなか大変だろうと思います。
  114. 平野達男

    ○平野達男君 いろいろ御質問したいことがございますけれども、時間になりましたので終わります。  ありがとうございました。
  115. 山口那津男

    山口那津男君 公明党の山口那津男でございます。  お二人の参考人の先生には貴重な御意見を賜りまして、大変ありがとうございました。  まず、井堀先生にお伺いしたいと思います。  定率減税の効果について先ほど来御意見を賜っておりますが、マクロ経済の観点からすると、減税を導入したときの効果と、またこれを縮減するときの効果というのはそれほど大きい効果を与えないであろうと、しかしまた一方で、家計、消費マインドに対する影響というのはある程度考えられるだろうと、こういう御意見かと承りました。  そこで、その定率減税を縮減した場合、それを財源として歳出をどういう部門に向けるかということがどんな効果、影響を及ぼしていくかということについてお尋ねをしたいと思います。特に、財政赤字を縮減するという意味での効果はもちろんあるわけでありますけれども、また一歩進んで、これを例えば年金の、基礎年金の財源に充てようと、こういうメッセージも付けられているわけでありますが、この歳出との関係、歳出を合わせた効果についてどのようにお考えでしょうか。
  116. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) 歳出の効果は、ある意味では、その筋論からいえば、減税なり増税という税制自体の効果とそこから出てきた財源をどう使うかという効果は一応分けて議論をした方が話としてはすっきりするんだろうと思います。  つまり、政府というのは予算を取ってきて、それを使うときに、先ほど年金の話がありましたけれども、目的税であれば必ずある財源はどこに使うというのがコミットされているわけですけれども、所得税の場合は御存じのように基幹税ですから、そこで集めた財源は一般的な歳出に使われますので、この縮減自体がどういった形の歳出かということにコミットしていないという点では、増減税それ自体の効果と歳出の効果は分けた方がすっきりするのかなと思います。  それで、分けたとしたときに、年金の、基礎年金への歳出を増やすという形でそれ自体がどういった効果を持っているかということを考えますと、それは当然年金から見れば財政的に非常に助かるわけで、収入が入ってきますから年金の保険料の抑制につながりますし、あるいはそうでなかったとしたら、年金の給付水準を切り下げるなり年金の積立金が減るということを緩和するという意味で年金にとってはプラスの効果がもちろんあるんですけれども、ただ、その分だけ年金の方につぎ込みますと、一般税源として例えばその財政赤字の削減に回る分とか、あるいはそのほかの歳出に回る分が減るわけで、当然そのバランスになるわけですね。  だから、一般会計の中での使い道と年金会計を補助する使い道のどちらが国民経済にとって有効なのかというメリット、デメリットの相対的な比較の問題になるんだろうと思います。  その意味では、年金に、特に基礎年金のところのいわゆるいろんな問題を抱えているときに、補助率を上げることによって、その結果として年金自体の保険料を上げなくて済むということがもちろん最大の目的だとすれば、そのメリットが何かということだと思うんですね。  私は、確かに、それをすることによって、基礎年金は皆年金ですから、保険料をある程度払えば、国庫補助が付いていますから、結果として払った人は得をする形になるわけですね。国庫補助を付けないと、若い人は、年金払っても、将来平均的に生きれば払った額以下しかもらえないことになると、自発的に入らない方が得だという形でどんどん逃げる人がたくさんいて、未納、未加入の問題が深刻になってくるわけですから、それを解決する一つの有効な手段として国庫補助をたくさん付けることによって、多少自前で保険料を払うと老後の面倒は最低限国が見てもらえます、そこに自発的に入るインセンティブを高めますというのはそれなりのインセンティブ効果はあると思うんですが、ただそうしますと、問題は、年金自体の中の保険料とそれから給付とのバランスが非常に崩れて、少ししか保険料を払わないけれどもちゃんと給付をもらうと、これは社会保険の方式としては多少問題が行き過ぎるのかなというそのデメリットもありますので、その辺りをどちらを評価するかによって分かれるのかなと思います。  いずれにしても、縮減で得た税収をどこに使うのかというのは、一般会計で使う場合とそれから年金で使う場合のメリット、デメリットの比較になるのかなと思います。
  117. 山口那津男

    山口那津男君 続いて、井堀先生にもう一つ伺います。  消費税について、レジュメによりますと、一%ずつ八年間にわたって一三%まで引き上げるべきであると、このように御説明でありますけれども、この消費税、仮に上げるとした場合に、上限を決めて段階的に上げていく場合に、この一%ずつ毎年というんではなくて、例えばもうちょっと、三とか五とか、もうちょっと大まかな刻みである程度の年限を付けてやるというやり方と、あと上限を示さないである程度上げて、状況、結果を見ながらその次を考えると、こういう選択肢もあろうかと思います。一方で、八年間というスパンを考えますと、その間やっぱり景気の変動というのはある程度予測されるわけですね。これを一%上昇というふうに固定してしまいますと、この景気に対する消費税の限定要因というのが非常に強くなるだろうと思います。  そうした意味で、この消費税の段階的引上げ、是とするならば、その在り方はどうするのが妥当かというところをお聞かせいただきたいと思います。
  118. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) これは、仮に対GDP比で四%程度の増収を仮に消費税でやるとすればこれが一つのシナリオですということで、必ずしも一%ずつ八年間上げるのが最適なシナリオという形で出したものではなくて、あくまでもこの程度の増税が想定できる増税幅ですということを示しただけなんですけれども。  じゃ、具体的にじゃどういった、仮に消費税でやるというのが前提になったとした場合にどういった形の消費税の引上げが望ましいのかといいますと、確かに一度に上げる、あるいはまとめて何回かに分けて上げる方がいろいろ消費税を上げる場合の徴税上のコスト等を考えますとやりやすいと思います。ただ、国民負担という観点から考えますと、一度に消費税率が五%とかぐらい上がりますと、かなりその時点では大きなショックになって、いわゆる駆け込み需要もそのときに集中する形になりますし、税負担の面からいっても、急に税負担が増えるというのは余り負担する側にとって望ましいことでないわけですね。  どうせ増税するんだったら、少しずつ上げるというのはいわゆる課税平準化という考え方でして、税負担の増加分をなるべく中長期的に分散して吸収するという観点から考えますと、少しずつ増税は、増税がやむを得ないとすれば、少しずつやった方が国民に対する税のコスト感というのは相対的には小さくなる。ただ、それを余り小刻みにやりますと、徴税面でのいろんな問題もありますから、その二つのバランスを考えますと、二回か三回かに分けてやるのがいいのかなと、仮に一三まで上げるということになると、一度にやるよりは数回に分けてやるのがいい。  そのときに、どの程度景気への影響を考えるかということなんですけれども、これは私が今日何回か言っていますように、よほどの大きな景気の底割れのような状況以外では、むしろ景気とは独立にやった方が結果として景気にもプラスになるんじゃないかと思います。
  119. 山口那津男

    山口那津男君 続いて、飯塚先生にお伺いいたします。  個人所得税見直しは財政再建の意味から不可欠であると、こういう前提で、なお定率減税の縮減、廃止は時期尚早と、こういう御意見だと承りました。  そこで、この所得税抜本改正というのが政治日程としては来年度というふうに言われているわけでありますが、先生が所得税の改正の在り方、内容についてどのような構想をお持ちなのか、教えていただきたいと思います。
  120. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) まず、全体的なあれとしましては、正に直間比率の見直しなども含めまして、消費税も含めた議論が必要になってくるんだと思います。今後、個人に対する課税の在り方という観点に立った場合に、増税の主体は、ここは井堀先生と同じかもしれませんけれども、やはり消費税を中心にやっていくべきじゃないかなと思っております。  現状で、税制改正などに関する御意見、いろいろ勉強させていただきますと、大きな流れとしまして、住民税個人住民税につきましてはやはり応益的な部分ということでございまして、ある程度広く薄く負担を持っていくと。これに対しまして、所得税というところにつきましては、ある程度累進構造などを見直すことによってある意味所得の再分配機能のところを所得税のところに大きく持たせていくというような方向議論がされているというように聞いておりますけれども、私も個人的にはそういった方向感でやるべきかと思っております。そうした際には、恐らく、人的控除なども含めまして、様々な控除などにつきましては、いろいろ、歴史的ないきさつですとか、あるいは個々の事情とかあると思いますので、その点については個別にきちんと議論する必要があるかなと思っておりますけれども、最終的に個人所得課税の在り方を見直す際にはいろいろそういったことも含めて検討していくべきかなと思っております。
  121. 山口那津男

    山口那津男君 時間に限りがありますけれども、もう一問だけ井堀先生に伺いたいと思います。  所得税の自動安定化機能、これを景気対策のためには重視すべきと、こういう御意見だと思います。抜本改正の中でこれをどう扱うべきか、先生はレジュメの中でその累進課税の見直しとか課税最低限の見直しということもお触れでありますが、これとの関係も含めて、この自動安定化機能をどう進めるべきか、これについて御意見賜りたいと思います。
  122. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) 自動安定化機能は、これを重視するという観点からはやはり累進的な所得税の方が望ましいわけですね。累進的な税というのは、景気が良くなりますと、その分、課税ベースから税としてとらえる部分が増えますから、景気のいいときに大幅な税収増になりますし、景気が悪くなると逆に減税額が増えますので、結果として、可処分所得が景気のいいときには余り増えなくて、景気の悪いときには余り落ち込まなくて安定化すると、そういうことですね。その観点から言いすと、累進的な税を維持して、あるいはもう再分配政策を強化した方がいいという議論もできるんですけれども、私は、所得税というのは比例税であってもある程度の自動安定化効果あるわけで、要するに景気が良くなったときに、税収は、比例税であってもプラスの限界税率ですから、税収は増えるわけですね。ということは、可処分所得はその分減るわけですから、安定化政策には役立つわけですね。  問題は、極端に累進的な税構造にしますと、どういう問題が起きるかというと、表面的に再分配政策を強くしますと、結果として脱税、節税を促して、効果は余り、実質的な効果がないんですね。今の現状でも最高税率、国税でいいますと三七%ですけれども、そこに入っている納税者というのはほんの一握りで、全体からいくと一%もいないような、そういう状況ですから、そこのところを上げますと、かえって上げると、そこに入っている人というのは節税、脱税すると非常に税収の節約になりますから、一生懸命節税する方向に神経を使う形になって、余り税収が増えない割には無駄なエネルギーの方に、インセンティブを損なう形になりますので、自動安定化の観点からいえば、ある程度比例的な税であってもそういった効果は期待いたしますから、累進的な税構造はむしろ実質的に所得分配が本当に可能であるような、そういう観点から、極端に表面税率を上げるよりは、むしろ納税者番号制度を入れて資産なり所得をきちんと捕捉できる形で、あとは相続税で対応するとか、そういう方が税率構造を変えるよりははるかに有効かなと思います。
  123. 山口那津男

    山口那津男君 それでは飯塚先生に、その消費税のその予測可能性を付けるということは大事であろうと思いますけれども、この消費税の歳出の在り方、これがどういう効果を持つかということも含めて、この消費税とその歳出の在り方について御意見がありましたら承りたいと思います。
  124. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) 先ほど申し上げましたとおり、今後個人に対する課税、ここの部分は直間比率の見直しということも含めてある程度消費税を主体にということになりますと、やはりその財源として非常に大きい部分を占めてくるんだと思います。この場合に目的税化するのか、それとも一般財源にするのかということにつきましては、その他の部分が決まってこない以上なかなか言えないわけでございますけれども、柔軟性を持たせるという観点でございますと、ある程度やはり一般財源という形で検討すべきかなと思っております。  ただ、一般財源として検討していくということになりましても、やはりその多くの部分というのが、少子高齢化進んでいく中で、福祉の部分でございますとかいったところに流れていくということは大きな流れとしては変わらないと思いますので、柔軟性を維持するという観点で言えば、ある程度一般財源という観点で考えるべきところかなという見解です。
  125. 山口那津男

    山口那津男君 時間が来ましたので、終わります。
  126. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。今日はお二人の参考人の先生方、本当にありがとうございます。  今回のこの定率減税の廃止、縮小でありますけれども、様々な社会保障の負担増と一体となって行われるということを見ることが私ども非常に大事だと思っております。それ自体が国民の暮らしに大変な破壊的影響を与えるということが一点。  それから、景気との関係でいいましても、だれもが思い起こすのが橋本内閣のときの消費税増税を含む大負担増で、上向きかけてきた景気が冷や水を浴びるようなことになって不景気に突入をしていった。当時はまだそれでも毎年国民の家計の方は五兆から六兆円ぐらい増えていたわけですが、今は三年間で十二兆円ぐらいむしろこの家計収入が減っているという状況ですから、下り坂で背中を押すようなことになっていると。大変な景気への悪影響を及ぼすんではないかということを私たちはやるべきではないと、こう思っております。  そこで、まず井堀参考人にお聞きをするんですが、飯塚参考人の最初のお話の中では、家計が大幅に悪化する前の九六年度と比較しても雇用、所得関連のほぼすべての指標が悪化をしていて、定率減税実施検討時の九八年度と比較しても改善が進んでいるとは言い難い状況だと、こういう認識を言われたわけですけれども、この点、井堀参考人は、この定率減税が実施をされたときと比べまして、こうした雇用や家計を中心とした景気の状況についての現状の認識はいかがでしょうか。
  127. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) そうですね、今の景気状況を九六年と比較してどうかということについて、いろんな見方があると思うんですね。つまり、飯塚参考人の出てきた図表の四というのも、これも一つのデータですけれども、この八年間、全体として見れば、全体として見れば日本のGDPはむしろ増えているわけで、トータルで見て、あるところで実質的に経済環境が悪くなっている、そういう経済主体というんですかね、そういう人たちが、いないわけじゃないんですけれども、トータルで見れば、失われた十年とはいっても、その後の経済成長のプロセスも含めて、ここの十年ぐらい、今二〇〇五年ですから、一九九六年ですとちょうど十年間ですよね、この十年間を見ますと、そんなに、私は、マクロも含めて、あるいはミクロ的にも状況は悪くなっているとは思いません。  むしろ問題は、ここの十年間で一番悪くなったのは要するに政府の財政状況で、これは圧倒的に悪くなっていますね。十年前と比べると、特に九〇年代の後半に景気対策を借金でやった、反映して、公債残高の対GDP比はもう圧倒的に悪くなっているわけですね。  この景気対策の効果を考えるときに一つ重要なのは、飯塚参考人のあれでも出てきましたけれども、いわゆる景気がある程度安定化したときの潜在的な日本の実力がどの程度であるのかというこの数字自体が、実は九〇年代の当初あるいは八〇年代と比べて、だんだんと下方に修正してこざるを得なかったと。  ところが、実際にはそれに適応するまでに時間が掛かりましたので、そこの調整プロセスで短期的に、例えば雇用、所得が下方に修正されるとか、いろんな問題が起きているわけですけれども、例えばここ、特にバブルの後遺症がある程度整理された、不良債権もそうですけれども、二〇〇〇年代以降を見ますと、ようやく日本の潜在的な成長率にほぼ民間の企業、家計も含めて適応しつつある、そういう環境になってきたと思うんですね。  九〇年代というのは、まだ潜在的な成長率よりも過大なところに、いろんな制度なりあるいは賃金にしても、いろんな、雇用水準にしても相当実力以上のところを維持しようとして、それが、そのツケがいろいろ回ってきたと。  ところが、現在はある程度そこが調整されてきた側面ですので、そういう意味で言いますと、それほど今の状況で増税を段階的にやるということはマクロ経済にそんなに大きな影響は与えないと、そういうレベルのマクロの経済環境にあるのかなと思います。
  128. 井上哲士

    井上哲士君 これは予算委員会でもずっと議論をしてきていることなわけですが、この家計所得減っているときに大増税の国民負担路線をやってもいいのかと、こう政府に問いますと、これは竹中大臣が、日本の労働分配率はずっと高くなってきて修正せざるを得ないし、まだそれは半分だと、こういう議論をされました。  労働分配率上がると言うけれども、働く皆さんからいいますと、そういう賃金の伸びなどは実感できないというのが状況のわけです。確かに、統計的に見ますと分配率の伸びということがあるわけですけれども、この点、飯塚参考人に、どのように見るべきなのか、お願いしたいと思います。
  129. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) 労働分配率につきましては様々な見方があると思います。私は、かなり逆に調整が進んできたのではないか、逆に言うと、これから先、少し労働分配率の下げ方が少し緩やかになって、家計の方にも所得が回ってくるのではないかという見方をしておるわけでございますけれども、ただし、そういう観点でいきますと、先ほど、私、資料の方で三ページ目のところに企業の雇用過剰感あるいはその設備過剰感のグラフをお示しさせていただいておりますが、ようやくこれまでの調整の結果としまして、昨年の十二月の段階でその企業の雇用過剰感というのがちょうどゼロのところに参りました。そういう観点でいいますと、その労働分配率の調整あるいは過剰と言われていたその雇用の調整というものも大方峠を過ぎて、そろそろいいところまで来ているのではないかなと思っております。  ただし、これはその業種あるいは企業の規模という観点で見た場合には、やはり相当まちまちな状況かと思います。労働分配率を法人企業統計なんかで見ていきますと、大企業の製造業、正にこれまでリストラを進め、競争力をびかびかに磨いてきたところですけれども、こういったところにつきましては相当労働分配率が下がっております。  一方で、例えば中小企業の非製造業、あるいは非製造業、大企業でも非製造業のところ、これについて見ますと、まだ若干その労働分配率が高くあって、こういったところで少し調整の圧力が残っているのかもしれないなというところがございます。ここは、いましばらくこの統計の動きですとか、実際にその企業の雇用政策、人事政策などを見ていきながら先行き判断をしていきたいと思いますけれども、大方まあ調整は峠を過ぎていると思いますが、まだそのまちまちなところがあるといったところかと思います。
  130. 井上哲士

    井上哲士君 今のに関連して井堀参考人にお伺いをしますけれども、この期に定率減税もしても大丈夫というのは、企業収益の改善などが家計に回っていくと、こういう前提の御議論なんだと思うんですが、今、労働の実態を見ますと、確かに失業率などは減る部分もありますけれども、かなりの部分が派遣労働であるとか、それから請負労働であるとか、こういう不安定、しかも低賃金雇用に変化をしていると。まあ請負などでいいますと、正規社員の三分の一というような状況もあるわけで、更にこれが広がるという状況になりますと、必ずしもその企業収益という部分が家計に波及をし、そして景気を底上げするということにはならないんじゃないかという予測があるわけですけれども、この点、いかがでしょうか。
  131. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) 定率減税の効果という観点で考えますと、御存じのように、その定率減税というのは税額の二〇%控除ですので、所得の低い人はそもそも余りその所得税が払っていませんので、定率減税が廃止になってもそれほど負担額は大きくならないんですね。逆に言うと、ある程度、いわゆる派遣労働者等で収入の少ない方よりは、いわゆるフルタイムで働いているサラリーマンの方の方が所得税額も多いわけですから、定率減税が縮減、廃止したときの税負担額の増加額も多くなっているわけですね。  つまり、税額の二〇%控除が廃止ないし縮減されたときに、それが一番効いてくるのは高額の所得税を払っている方ですから、その人たちの消費がどの程度抑制されるかという点はもちろん一つのポイントですけれども、余り所得税を払っていない人あるいはそもそも所得税の課税最低限から落ちている人に関しては、定率減税の縮減、廃止というのは定義によってほとんど影響がないはずですから、その意味では派遣労働の話と定率減税の効果の話というのは余りですね、もちろん全くないわけじゃないですけれども、定量的な効果という観点から考えますと、もう少し所得税を払っている人がどの程度その税負担額が増えたときにそれによって消費を抑制する効果があるのかという、そちらの方が重要かなと思います。  そういった観点から考えますと、そのときに問題になるのはやはり定率減税が廃止され、ないし縮減されたときの増税が何を意味する、どういうシグナルかというのが重要だと思うんですね。  つまり、要するに消費をする場合は、単に今年だけの可処分所得が減ったから消費を減らすというよりは、中長期的な視点で、来年以降、じゃ増税がどうなるか、所得がどうなるかということも考えて、ある程度消費計画を普通のサラリーマンは考えると思いますので、その限りでは今年が廃止になり増税が行われるということは、将来の財政赤字の削減に本当に使われるとすれば、将来の増税要因を消すわけですから、その分、将来の所得税の増税がある程度小さくなると考えると、もちろんそれが完全に一対一には対応するということは余り考えられませんけれども、ある程度そういうロジックが働けば、所得税の増税が今年増えたからといって同額だけ消費が減るというのはなかなか考えにくいと。つまり、余り量的にも極端に消費が抑制するという形でマクロの経済の足を引っ張るということはなかなか想定できないのかなと思います。
  132. 井上哲士

    井上哲士君 高額所得者の方は定率減税も額の頭打ちがあったので、一番やっぱり影響があるのはいわゆる中堅どころだと思うんですね。  それで、最後、消費税の増税というようなこともそれぞれ出たわけでありますけれども、今回の定率減税も、当時、高額所得者減税とセットでありましたけれども、そちらは据置きのまま、定率減税については縮小、廃止をしていくという方向にあります。  いわゆるジニ係数というものがありますけれども、これを見ますと、九〇年代後半以降、非常に上昇してきているわけですけれども、再分配で見ましても、日本の値が〇・三二二、アメリカ、イギリスに次いで高くて、フランスの〇・二八八、ドイツの〇・二五二などと比べると、かなり高いことになっております。  こういうむしろ所得格差が広がっているという状況の下で、あるべき今後の税制の姿について、時間もありませんけれども、簡潔にそれぞれお願いしたいと思います。
  133. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) 所得格差が拡大している一つの大きな理由は、世代の高齢化が進んでいますので、高齢化要因を調整して、所得格差がどのくらい広がっているかというのも一つの大きな問題で、つまり高齢者になれば、ほかの条件が変わらなくても、結果としての所得格差が広がるのはある意味で当然ですから、ミクロ的には同じだと思うんですね。マクロの人口構成が変わることによって、統計としてのジニ係数が、再分配が、要するに格差が広がるというのはある意味では自然な状況です。それはもちろん、それがどの程度ミクロ的な格差の拡大に終わっているのかというのはもう一つの問題ですけれども。  それで、その格差に関してどう考えるかというのは、やはりフローの所得レベルでの格差なのか資産の継承レベルでの格差なのかという、そういう違いだと思うんですね。やはり一番大きな格差というのは、やっぱり相続に関する格差だと思いますから、相続税できちんと対応すると。  それからもう一つは、フローの格差に関しては、資産に関して、例えば金利で、高額所得者と低額所得者で金利が、銀行の金利が違うということは余りないので、フローに関しては、やはり一番大きいのはいわゆる運、不運というんですか、それによる格差あるいは勤労所得の格差ですから、それにはある程度累進的な所得税が適当だと思いますけれども、それも余り表面税率でがりがりやろうとすると、先ほどお話ししましたように脱税、節税になりますので、ここはやはり納税者番号制度等を入れてきちんと資産所得を把握するというのがまず大前提で、その後どの程度の格差是正のために再分配政策やるかというのは国民の合意の下でやるべきだろうと思います。
  134. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) 基本的に、ジニ係数、所得格差が広がっているということにつきまして、高齢化が大きく影響をしているという点については井堀参考人と全く同意見でございます。また、それに対してどう対応していくのか、所得あるいは資産の格差というものにどう対応していくのかというところにつきましても基本的には同じ意見でございます。  付け加えさせていただくとすれば、恐らく、ここ十年ぐらいの労働市場でございますとかいったところをみていきますと、恐らくその働き方でございますとか家族の形態でございますとかいったところがある程度大きく構造的に変化してきているという側面はあると思います。その構造的な変化に際しまして、果たして現在の税制というものが果たして完全にイコールである、平等であるのか、適切であるのかというところにつきましては別途また議論が必要なところだと思いますので、その点を見直していくということが追加的な課題として出てくることかなと思います。  以上でございます。
  135. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 無所属の糸数と申します。今日は井堀、飯塚両参考人、お忙しい中、ありがとうございます。  まず、井堀参考人にお伺いいたします。  定率減税を廃止しても税負担増はわずかで、マクロ経済に大きな悪影響を与えることはないとして、財政再建のために定率減税の廃止が不可欠だというその立場にございますが、しかし、今回と同様に、先ほどもありました、景気の先行きが不透明な平成九年に九兆円の国民負担増、これは二兆円の特別減税の廃止とそれから消費税の五%への引上げなど強行いたしました橋本内閣がその後の長期にわたる景気後退を招いて、結果として平成十年以降、減税規模の拡大、これ二兆円の特別減税、四兆円の特別減税、恒久的減税や財政支出の拡大、特に公共事業費の大幅増もありましたが、この余儀なくされたことについて、どのような御見解を持っていらっしゃるか、まずお伺いいたします。
  136. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) 確かに、今御指摘いただいたいわゆるその橋本構造改革の教訓をどういう具合に認識するかというのは、これから定率減税の縮小、廃止も含めて、今後量的に財政再建を進める場合にはきちんと押さえておく重要なポイントだろうと思います。  今指摘していただいたように、国民の多くの方は、橋本構造内閣というのは完全な失敗であって、あれをすることによってむしろ財政赤字を拡大させる要因になっちゃうと。要するに、財政再建をすることがマクロ経済を悪化させて、結果として、その後、財政面から、景気対策として公共事業の増加、減税をせざるを得なくなったので、むしろ財政赤字を拡大させる要因であったと、こういう理解が非常に強いんですが、ただ私の理解はそれとは正反対でして、橋本構造改革が失敗した非常に大きな要因というのは財政的に緊縮的な、消費税の引上げとか公共事業の削減をやったから失敗したのではなくて、むしろその効果は、もちろん全くゼロとは言いませんけれども、それが失敗の決定的な要因ではなかったと思います。  むしろ、そのときの大きなマイナス要因というのは、あの当時の金融不安によるいろんな混乱が民間の企業なり家計の将来に対する期待を極端にマイナスにさせて、企業も家計も縮小均衡に走ってしまったと、そこが非常に大きな要因で、それは財政的な、量的な削減のシナリオ自体はそれほど破滅的なシナリオではなかったわけですね。当時であっても財政的には非常に大変だったので、それを何とか日本の財政状況が、当時のヨーロッパ諸国並みの財政再建のためには多少の増税とそれから公共事業の縮減というのはやむを得ないという形で議論は進んできたわけですけれども、それはそれで正しい方向だったんだろうと思います。  問題は、そのときに金融不安という大きなショックが同時に起きて、それと重なったがゆえに橋本構造改革自体が引き金となってマクロ経済が不安定化したという、そういうある意味ではその定説が国民の間に存在してしまったというのは非常に不幸な結果で、それがあるがゆえに、今後財政再建をするときに、結果としてその当時のマイナスのことがある意味で実力以上に国民にとって不安定化要因として覆いかぶさってくる、そういう可能性があります。  本当はそうだったのかというのは、例えば九〇年代後半のデータを見て、いろんな、消費とかいろんなデータと、それから財政の、税とかそれから公共事業も含めた歳出のデータとをもって統計的にいろいろと検証してみたんですけれども、どうも九〇年代の後半の橋本構造改革のときのマイナスのショックがマクロ経済を大幅に縮小させた主要な犯人であるというのはなかなか検証できなかったと。むしろ金融ショックの方が大きかったというのが私の判断です。  その意味からいいますと、今回の定率減税の縮減を、その縮減なり廃止を今後、来年からやるとしたときに、あるいは消費税を引上げというのが今後数年以内に行われるとしたときに、また九七年のような、あるいはそれを上回る金融不安なり、いろんなことが起きてマクロ経済が混乱してしまえばこれはぐじゃぐじゃになってしまいますけれども、そうでなくて、通常のマクロの経済の前提のまま財政再建が徐々に動き出すとすれば、それは九七年の再来にはならないのではないかと思います。
  137. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 飯塚参考人に伺います。  十七年度の政府の税調答申ですが、今回の定率減税の取扱いについて、現在の経済状況平成十一年度当時と比べて著しく好転している、かかる状況の下、定率減税を継続しておくことは必要性は著しく減少したと表現しています。この著しさを強調していらっしゃいますけれども、谷垣大臣のその見解もほぼ同様だと思われますが、飯塚参考人は、経済が著しく好転した、それと定率減税の必要性が著しく減少したというその政府の認識についてどのような御見解をお持ちか、お伺いいたします。
  138. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) その点につきましては、若干その政府見解というところと私の見解は違うところでございます。  二つございまして、まず一つ目でございますけれども、まず九九年との比較というところでございますが、まずそことの比較というのが果たしてよろしいのかどうか、ここは一点疑問なところでございます。  御承知のとおり、景気、その当時は九七年の五月のところから景気は後退をしておりまして、九九年の水準は既に大きく落ち込んだところでございます。記憶しておりますところでは、九七年の十二月の時点から特別減税の復活ですとか景気配慮的な財政の運営ということで少し政策の方向変わったと思いますけれども、以降、九八年度の段階というのは総合経済対策あるいは緊急経済対策などを打ちまして景気を底上げさせようと思っていたところです。その当時に、じゃ経済が正常な状況という時点としてどこを想定していたのかといいますと、先ほどのあれでございますけれども、やはり九六年度、景気が後退する前の水準というのをやはり一つ比較の対象にすべきでないのかというのが私の意見です。  二点目としまして、では仮に九九年といたしまして、その水準から見て著しく日本経済状況が好転したのかと申しますと、半分イエスで半分ノーだと思います。  半分イエスというところは、やはり企業部門について見ますと、やはり相当な構造改革あるいは調整というものが進んできておりまして、当時に比べますと日本企業の競争力は相当回復してきたと言ってよろしいかと思います。もちろん、業種別、規模別にまちまちでございますが、企業部門全体としてはそれなりにやはり状況は改善したということかと思います。一方で、やはり家計の部門、こちらの方を見ますと、失業率あるいは所得状況しかりでございますが、やはりまだ、著しく改善したと言うにはまだ及んでいない。むしろその回復は道半ば、始まり始めたばかりではないかという認識を持っております。  以上でございます。
  139. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 谷垣財務大臣は、定率減税の縮減それから廃止の後に、早ければ十九年度から消費税の引上げを行いたい意向のようでありますが、両参考人経済状況がどのようになれば消費税の引上げを行い得るその環境が整うという、そういう見解を持っていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  140. 井堀利宏

    参考人(井堀利宏君) 私は、消費税を引き上げるということに踏み込む場合は、最初からお話ししましたように、やはりどの程度の消費税の引上げで財政的な量的な再建が可能になるのかという、そういうシナリオをきちんと示すのが重要だろうと思います。その上で、なるべく消費税引上げ負担がある一時点に集中しないように、分散して課税の平準化をやるべきだろうと。  そのときに、じゃ景気との関係をどう考えるかということなんですけれども、ここは人によって判断分かれると思いますが、私の場合は、余り極端な景気の後退を別にすれば、景気とは独立に消費税の引上げを徐々にやる方が望ましいと。その意味では、例えば何%の名目成長率だったら消費税引き上げるとか、そういうようなコミットメントはしないで、むしろある程度中長期的に、つまり五年なり十年の間にこのくらいまで消費税を段階的に引き上げて、同時に歳出の削減も徹底的にやることによってある程度財政の量的な再建にめどが付くことをして、そのときに、余り景気動向によって消費税率を、引上げのスピードを遅らせたり速めたりという、そういうあいまいさをむしろ持たせない方が民間の経済活動にも好ましいと思うんですね。  例えば、失業率が何%を超えたから消費税率引上げをやめるとかなんとかといいますと、そういう数字の予想でかなり投機的な動きも出ますし、むしろかえって経済には悪影響が出てくると思いますので、やると決めた以上はマクロ経済環境の指標に余り惑わされないで粛々とやる方がむしろ望ましいのかなと思います。
  141. 飯塚尚己

    参考人(飯塚尚己君) 済みません、先ほどから名目四%、四%と言っておりますけれども、少し中身の話をさせていただきますと、私がある程度それぐらいの成長率というのをイメージしておりますのは、経済の実態を見ますと、恐らく、成長率がその程度まで達した段階では、恐らく企業の収益の増加が例えば企業の設備投資に結び付いて、あるいは個人所得の増加が個人消費の増加に結び付いてという、いわゆる自律的な回復と申しますか、安定的な景気の回復軌道に日本経済が移行している、このように思っているからでございます。  仮に、いったんこういった自律的な回復軌道に経済が乗った場合には、ある程度の外生的な景気に対するショックが加わっても景気は恐らく腰折れすることなくある程度回復を続けていくことになるんだと思います。その外生的なショックということでいいますと、消費税率引上げですとか、あるいは所得税等の引上げということがあってもある程度景気は安定的に回復を続けていくだろうと、このように考えているという次第です。  消費税率引上げということについて申し上げますと、先ほどから景気に配慮すべきと言っていることからは少し若干逆説的になるかもしれませんが、この点につきましては井堀参考人と同じでございまして、いったん上げ始める、始めるそういった段階では、それは景気動向とはある程度独立に上げていくべきかと思っています。恐らく、ただその上げ方としましては、やはり余り大幅に上げてしまうとなかなか難しいということでございますので、先ほど山口先生からも御指摘があったところでございますけれども、大きく数回にわたってやるのか、それとも例えば毎年一%ずつ段階的に上げていくのかということでございますと、私はどちらかというとその段階的に一%ずつぐらい上げていくという方が望ましいのではないかなと思っています。  仮に、そういった段階的に上げていくということになりますと、例えば一〇%としましても五年間掛かるということでございまして、景気の循環的なサイクルというのは大体三年ぐらいで回っておりますから、その間に当然のことながら景気の後退局面というものは、程度の差がどれくらい、大きいものか小さいものか分かりませんが、そういう景気の調整があることは想定しておかなければいけないと思います。  仮に、消費税率を段階的に引き上げている最中に景気がよほど大きな後退になりそうだということがあった場合には、消費税率引上げをストップするというよりは、こちらの恒久的な増税については粛々と進めていって、もう一方であくまで一過性の措置という、特別減税というような形で例えば所得税などで何がしかの措置を打つ。こういったことを組み合わせることによって恒久的な増税と景気への配慮、こういったバランスを取ることができようと思っております。  あと、若干財政というところから離れますけれども、やはり追加的な増税を行っていくという中では、やはり金融政策の面からのある程度の後押しでございますとか、あるいは規制緩和などによる生計費などのコストの削減、こういった形である程度家計や国民に対する増税に対する負担感というのを緩和していく、あるいはマクロ政策、マクロ経済への悪影響を緩和していくといったポリシーミックスが重要になってくると、このように考えております。  以上でございます。
  142. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) 糸数慶子君、時間が参っていますので簡潔にまとめてください。
  143. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 はい。  ありがとうございました。  今回の定率減税の縮減、廃止、あるいは中低所得者に対する問題、特に子育てで頑張っている家庭の方々から考えていきますと、やはり消費税の引上げに関しても、国民としては、私、反対の立場ということで質問させていただきました。  ありがとうございました。
  144. 浅尾慶一郎

    委員長浅尾慶一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  一言御礼のごあいさつを申し上げます。  両参考人におかれましては、大変お忙しい中、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十八分散会