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参考人(
山崎養世君)
山崎養世です。よろしくお願いいたします。
それでは、お手元の資料に沿いまして御
説明をさせていただきたいと思います。
今、
中村先生の方からもお話ありまして、
中村先生のいろいろな御著作も私も勉強させていただきまして、
国土総合開発法が
達成したもの、やはり
中国が大きくなっているとはいえ、今、
日本が
世界第二位の
経済大国であるという大きな
達成をしてきたこと、そして様々な
所得格差が少ない
近代国家であり続けているということについて、この
国土計画あるいは全総というものが大きな役割を果たしてきたということは、これは
紛れもない事実でございまして、これは特に現在非常にあらゆる
意味の
格差の大きい
中国というものを見るにつけ、やはり
日本が
国土の均衡ある
発展という
方向を目指してきたということは非常に大きなことかと思います。
しかしながら、各全総の
計画を見まして、毎回のように登場してくるにもかかわらず、やはりまだ未
達成である
部分、その
国土の均衡ある
発展という
観点から見ても未
達成であるのは、これいろいろな言い方ができると思います。特に、
東京一極
集中が
解消されない、分散型・多
極型国土ができない、それによって過密と
過疎が
解消しない、
地方分権の
実現あるいは
縦割り行政の
解消ということができないと。
この辺りにつきましては、一九七二年、もう今から三十三年前ですか、
田中角栄元首相が
日本列島改造論を著したときに、既に過密と
過疎の弊害はもう
限界に来ていると、
東京一極
集中を排さなくてはいけないと、こう高く掲げて、しかも
国民が高い支持を与えて、もう全
国民一丸となって取り組んだはずなのに、いまだにこの同じ
課題を抱えてやはり二十一世紀に来ている。この点をやはり、今回の
法改正そのほかについて、少なくともここについての
本当の
解消の道筋を付けていくということが一番大きなポイントになるのかなというふうに思います。
ただ、その
角栄さんの
時代、これは
東京一極
集中が非常に大きな大
成功ビジネスモデルであったということは、これはもう
紛れもない事実でございまして、一九八九年に東西の冷戦が終わるまではやはり
アメリカを見て、
アメリカを最大の
市場としてそこに対して
臨海部、特に
東京で
世界じゅうから安い原料を持ってきて作って、そこからすぐに輸出をしてドルをもらって円に替えてまた
全国に配ると、これはもう大変成功したやり方であったわけでございますから、その
時代、言わば八〇年代の終わりまでにこれの本格的な
解消をしようというのは、これはまた無理であったろうと。
しかし、今もこの言わば過密と
過疎、こういった状態のままになるとどのような問題をやはり
日本にもたらすのかということになりますと、指摘もされております
少子高齢化、こうなってきますと、平たくいいますと、
少子高齢化社会というのは
東京が没落する
社会であるというのがはっきり見えてきておると。これから二十年間で
所得が最も減るのが、二五%も減るのが
東京。これは団塊の世代、言わば今までの
経済の担い手が引退されるわけですから当たり前でございまして、何と二五%ぐらい
所得が減ると。一方で、最も
個人も
企業も
財政も負担が増えるのは
東京であると。これは当たり前でございまして、高齢
社会問題は一面からいえば
土地問題でございますから、
介護施設、病院そのほか、
土地の上に建物を建て、
サービスを提供し、更にもうけを取る、それが一坪百万円、二百万円のところへ造るか、木更津に行って一坪三万円で造るか、都城で一坪三千円で造るか、これによって
人生設計も
財政も大きな
影響を受けると。
つまり、今は
交付税をもらっていないのは
東京都だけ、ほかの道府県すべてもらっておって依存している、この
構造自体がもうもたないと。
東京依存では
財政も破綻をしていくということがはっきりしているわけですから、まず、お金の面から見ても、
東京一極
集中であってはこれはもたない。
戦後、やはり五十年間で
東京、いわゆる
首都圏に二千万人人が増えたと。これの
影響がこれから大きな言わば
マイナスになる、今まではプラスであったのが大きな
マイナスになるということがはっきりしているんじゃないかと。
加えまして、
財政危機というのがこの
高齢化、それからもう
一つは
構造改革と叫ばれておりますが、
一言で申し上げて
本当の
構造改革ではない、というのは、今般の
民営化、いろいろな
観点で見ておりますが、
一言で申し上げれば、
財務省理財局が
財投国債というのを発行して
特殊法人に貸すという
構造は
郵政民営化であろうが
道路公団民営化であろうが全く変わらないわけでございまして、何とこれが
日本の総税収とほぼ等しい金額の
国債を
特殊法人のために出すということがいまだに続いておるわけでございますから、それを
郵政民営化ということであたかも解決したかのように
説明がなされるということは、この
財政構造の先送りもまた明確であろうかというふうに存じます。
そして、もう
一つやはり大きな問題なのは、
地方から成長する
経済になっているか、これは
現実からいえばノーでございます。いまだに
上場企業の七割が
東京に
本社があり、しかも
新規上場、
IPO企業の七割も
東京に
本社を置くというこの著しい
東京一極
集中が終わらないと。これは
アメリカを見れば明白でございます。
アメリカでは、今ダウ三十種の
企業のうちわずか七社しか
東京におらない。マイクロソフト、インテル、ウォルマート、すべてここ二、三十年の
世界的大
企業はニューヨーク以外で生まれている。つまり、
日本も
東京以外から大
企業が生まれ、そこに若者が夢を託して就職ができる、そういう
社会になっていかないと、これはなかなか
本当に
地方からの腰の据わった成長というパターンにはなっていかないのではないか。
現実に何が起きているか。
東京が駄目だから
中国に行くということが行われて、向こうで反日デモの洗礼を受けると。ちょっと待ってくださいと、木更津では
中国語は要りませんよと私は申し上げたい。羽田から十分、十五分で行ける木更津、そこが例えばアクアラインをただにすればどれだけ
首都圏が潤うか、助かるか。そこに
介護施設だって病院だってショッピングセンターでも会社でもつくれるわけでございます。
つまり、今、
日本はいろいろな生産要素の中で、なるほどお金、ビッグバン進みました。情報、携帯でこれ
全国非常にコストが安くなっております。問題は、人と物が動く交通のコスト、それによってどこに住むのかという
土地のコスト、この二つの巨大コストが相変わらず高止まりをしていて、三%の
国土に八千二百万人の人が住むというこの非常に偏った状態をこの二十一世紀にも続けてしまっていると、そこに根本的な変更というのが起きていない、そのままでは
本当に伸びていく
企業は海外に行かざるを得ない。そうすると、国内には雇用は残らない。雇用は残らないが
高齢化の負担は残るというこのままでは袋小路に行くと。そして、
東京依存でいいんだというのは、はっきりともうこれは将来がないというのがこれはもう見えているわけでございますから、ここで待ったなしで転換をしなくてはいけないのではないかというふうに思います。
そういう
意味では、やはりこれから見ていかなくてはいけないのは、一人一人が楽しく、
一言で言えば
地方の方が元気になって、喜んで
東京から引っ越しをする、
個人も会社も引っ越しをできる、そういう
社会をつくるんだと。このコンセンサスがいま
一つまだでき上がっていないのかなというところが、これはやはり今
国土総合開発法、今も
中村先生がおっしゃいましたように、国の形を考える非常に重要な
法律でございますから、そこで是非そういったことを新しいこの
形成法の中での大きな議論あるいはその
中心にしていただきたいなと。
二ページの方に参ります。
僣越でございますが、現行の小泉改革、なるほど非常にいい
部分もございますが、
一言で言えば改革の
方向が人がいないところに公共
サービスは要らないじゃないかと、こういうことで貫かれている、ということは
過疎のところは人は住むな、ということはますます過密の三%の
国土に人を集めて、それでいいのかと私は思います。
これは、やはり
地方のインフラを切り捨てて
東京一極
集中が進むと、
道路公団民営化ということは
世界一高い、特に
地方に過酷な料金体系を永続化し、郵政を
民営化して郵便局をなくせば、年金の受取もできない、貯金もできない、そういう村落が物すごく増えていくと、それを無理やり維持しようとすれば、一兆円にも上る
財政負担をしなくてはいけない、そういうことを今決めようとしている。目先の公共
サービスを減らす、それによるちょっとのコスト削減で大きな国家的損失を招くのではないかと、それを私は危惧をいたしております。
私は、今回の今
改正の問題点、
方向性は、私は先ほどの
中村先生の
意見に賛成でございます。非常にいい
方向性を出している。問題は、これを実行していくその枠組みと、さらに手段、そして方法、検証、その辺りが
本当にできているのかなと。
まず、これは国家全体のグランドデザインですから、
国土交通省だけで決める問題でなくて、国家そのものが決めていく、そういうもう少し大きな枠組みが要るのではないかと。目的を実行する手段、さらに、やはり問題に今
道路公団でもなっております
効率性、執行の透明性、どうやって担保されていくのか。あるいは
地方自治の枠組み、あるいは農地
法等々、後でお話ししますが、食料自給という目的に沿ったときに、そういった
土地利用
計画あるいは
地方自治の在り方とどのように整合性、実効性を持たせるのか、これも他省庁、あるいはもう国家全体をわたる大きな
課題ではないかと。
財政は厳しいわけですから、予算を最大化するという行政から、費用対
効果を最大化し、それをやった人が出世をするきちんとしたメカニズム、お題目ではなくて、そういうことを実際にやった人が、行政であればちゃんと出世をし、あるいは首長さん、あるいは政治家であればきちんとそれが選挙民に伝わって当選の確率が上がるような、そういった枠組みに転換をしない限り、なかなかそれが進んでいかないんじゃないかなというふうに思っております。
先ほどのいろいろな、福祉、健康、住宅、交通、そのほかの総合的な
地域ニーズの集約、これはこれからの
課題、どうすれば要は衆知を結集するのか、これが今後の大きな
課題かと思います。
最後に申し上げたいのは、二十一世紀のこの
現実は今までとかなり大きな断絶があると。それに従った国家戦略がこの
国土計画と対になっていなくてはいけないのじゃないかと。
東西冷戦の
時代というのは、
アメリカだけに極端に言えば依存をしていればいい、そこだけを見ていればいいわけでございますが、今や、
中国、ロシア、インド、ベトナム、すべて資本主義国になっております、実質的には。ということは、そういう枠はないわけですから、
アメリカだけ見ているのではなくて、そういった国々がすべて
市場にもなり
競争相手にもなり脅威にもなるんだというこの多面性を持っているということは、外交を全方位外交に転換をしなくてはいけない。もちろん、強弱は付け、
アメリカは一番大事でございます。しかし、ロシアとも
中国とも南北朝鮮ともベトナムとも台湾とも仲良くできる、インドとも仲良くできる、そういった全方位外交に転換をしていくこと、実はここは、昔の
日本はそうであったわけでございます。東洋というのはそのように成り立っていたのではないかと私は思います。
私の出身地、博多でございますが、そこに鴻臚館というものがある。今ではないような広大な巨大な交易、外交施設が博多にもあり、大阪、なにわの都にもあったわけでございますね。ということは、今後の
地域というのも、例えば台湾のためには沖縄、鹿児島であったり、ロシアのためには北海道、青森、秋田であったり、あるいは韓国のためには出雲であったり、あるいは
中国そのほかのためには
九州、西
九州であったり、必然的に
アメリカだけを見ていれば
東京湾が一番カリフォルニアに近いわけでございますが、逆に、上海を見れば福岡は
東京と上海のちょうど中間でございます。
ですから、この省庁移転とかいうお話も、そこに一番近いところに外交、通商の戦略拠点を置くと。あるいはそこを思い切って特区にして、
本当に優れた
企業家の外国人、そこに住んでもらうと。これは実際に博多でもあったわけでございます。唐人町という町があり、何千人が住んでおったわけです。そういうところが
日本には各所に一杯あるわけでございます。ですから、そういったむしろ歴史にもう一度学んでいくことによって、各場所が持っている自然な、歴史的な重要性とか戦略性というものをもう一度掘り起こすという作業も今後の
時代には非常に必要になってくるんじゃないかと。
これは特にエネルギー問題にとって重要でございまして、第二位の石油埋蔵量を持っている例えばロシアとどのような戦略的な関係を持っていくのか、そしてその石油を争うであろう
中国との間ではどのような形で逆にうまくけんかをしない関係をつくるのか、石炭が余っているインドとはどのような関係をつくるのか、こういったことも、やはり多元的な外交をやり、かつその前線が各
地域であるというふうにつくっていかないと、
東京中心のやり方では今後の二十一世紀の
現実にはうまく適応できないのじゃないかと。
そして、あと二つ申し上げれば、食料が今後
世界的に逼迫してまいります。
日本は、
国土、土壌、水でいえば本来は自給体制をつくれる、
ドイツと同じように食料自給一〇〇%できるだけの実力があるわけですから、今後の
国土計画には、やはりかつて
田中角栄さんが指摘したように、農地法の全廃であるとか永久農地の確定であると、そういった思い切った
土地の利用のやはり根本的な改革というものも
地方本位、その
地域本位で決めていくことが必要になるのではないかと思います。
そして、最後に重要なことは、やはりこれからエネルギーも
資源も食料も足りない、そうなっていくと、どのような環境技術を持ち、かつそれが
社会的な活用体制になっているのかというのが国家にとって一番大事なことになると思います。つまり、リサイクルそのほかの、要するにもう一度回収して生かすという、そういう
経済系というのを、生産という動脈と同じように、そういう静脈が同じように大切な裏と表になるような、そういったエネルギー、それからこういった環境技術の体制というものもこれからこの
国土計画の中に是非入れていただきたいなというふうに思っております。
甚だ浅学でざっとした感想めいたことで大変恐縮なんでございますが、私、今回の
意見としてはそのようなものでございます。
ありがとうございました。